本稿は申込に際して著者が提出したものであり,大会発表の要件を満たしたもののみが正式に発表と認められます. 会期終了後に「大会発表論文集データベース」で公開されるものをご確認下さい. 人狼ゲーム経験が欺瞞検知の正確性に及ぼす影響 丹野 宏昭(東京福祉大学) キーワード:人狼ゲーム、欺瞞検知、嘘 問題と目的 Levine, Serota, & Shulmanm(2010)の実験の結果、嘘 対象は男性 56 名、女性 53 名、平均年齢 20.7 歳である。 (b)関東の大学2校の人狼ゲームサークルに1年以上所属 発見に関する犯罪捜査ドラマの視聴した群は非視聴群よ している 32 名(男性 21 名、女性 11 名、平均年齢 19.8 りも、本当のことを言っている人に対して「嘘をついて 歳)。人狼ゲーム経験歴は 13~84 カ月(平均 41.4 カ月) いる」と判断した傾向が高かった。この研究から、欺瞞 であり、いずれも「2 週間に 1 回以上」は人狼ゲームを 検知の正確性や欺瞞検知に対する信念は、仮想の嘘発見 していた。 場面を見聞きする経験によっても形成・変容することが 手続き 実験参加者に自己紹介動画 12 本(「真」4 本と 示唆されている。人狼ゲームは、嘘をついて村人を襲う 「偽」8 本)をランダムな順序で見せ、動画の自己紹介が 人狼陣営と、 参加者の中の人狼を探す村人陣営に別れて、 本当か嘘か 2 択で回答を求める課題を実施した。実験参 参加者全員で議論を行って進めていくゲームである。人 加者には「偽」の動画の自己紹介は 8 項目中 4 項目が嘘 狼ゲームは実際に欺瞞検知が行われるため、欺瞞検知の であること、 「真」でも「偽」でも被写体が内容や順番を 正確性への影響という点では、ドラマ視聴よりも強い影 忘れたときに手元の用紙を確認していることを教示した。 響があると考えられる。本研究では、Lee, Hill, & 12 本中いくつが「偽」かは伝えなかった。実験はディス Winkler(2001)および木藤・児玉(2003)の欺瞞検知実験の プレイに動画を投影し、複数の実験参加者が同時にそれ 方法を参考に、人狼ゲーム経験者と一般大学生の欺瞞検 を見て、手元の用紙に回答を記入する形式で実験を実施 知の傾向を比較することで、人狼ゲーム経験が欺瞞検知 した。また実験前に、実験参加者に「嘘を見抜くのが得 の正確性に与える影響を検討する。 意か」について「7.非常に得意である」から「1.非常に 方法 苦手である」の 7 件法で回答を求めた。 実験刺激 刺激材料として、男性 6 名、女性 6 名、計 結果と考察 12 名の大学生(年齢は 20 歳〜22 歳)の自己紹介動画を 「嘘を見抜くのが得意か」に関しては、一般大学生と 用いた。 被写体の 12 名には実験者が配布した用紙に自己 人狼サークル所属者の間で差がみられなかった プロフィール 8 項目(氏名、誕生日、きょうだい構成、趣 (t(139)=1.132, p=.259)。真偽判断の正回数を比較したと 味、出身高校の名前、高校時代の部活、高校のころ得意 ころ、人狼サークル所属者は一般大学生より「偽」の正 だった教科、 こどもの頃になりたかったもの)への記述を 回数が多かったが、 「真」の正回数は低く、全体では差が 求めた。さらに実験者はこのうち 4 項目をランダムに選 みられなかった。この結果は人狼サークル所属者が動画 び、その項目の嘘のプロフィールを記入させた。この記 の真偽に関わらず、動画の自己紹介を嘘であると判断し 述に基づき、被写体毎に「真(正しい自己紹介)」と「偽 た回数が多いことを示している。すなわち本研究の結果 (8 項目中 4 項目が嘘の自己紹介)」の 2 種類の自己紹介 からは人狼ゲーム経験によって欺瞞検知の正確性が増す 動画を撮影した。撮影順は 6 名の被写体が「真」から、6 とはいえず、むしろ他者の言動を嘘であると疑う傾向が 名は「偽」から撮影した。動画の撮影は椅子に座った被 増す可能性が示唆された。 写体の胸部から上を撮影した。被写体は撮影時にカメラ 表1 刺激の真偽別の正解数と正解率 に写らないようにプロフィール用紙を手に持ち、話す内 一般大学生 人狼サークル t検定結果 n =109 n =32 t Cohen's d 平均 1.46 (36.47%) 2.03 (50.78%) 2.99 0.60 偽 SD 0.94 1.00 p =.003 平均 3.55 (44.38%) 2.91 (36.33%) 2.13 0.43 真 SD 1.46 1.65 p =.035 平均 5.01 (41.74%) 4.94 (41.15%) 0.20 全体 SD 1.70 1.97 p =.840 注:括弧内は正解率、偽の刺激数は4、真の刺激数は8 容を忘れた場合はそれを見るように教示したが、なるべ くカメラのレンズを見て話すよう求めた。動画の長さは 30 秒程度であった。 実験参加者 (a)大学生 113 名。 このうち人狼ゲームでよ く遊ぶと回答した者 4 名を分析対象から除外した。分析
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