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The world of Takayuki Fujimoto, a lighting artist at the forefront in

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国際交流基金 The Japan Foundation
Performing Arts Network Japan
Artist Interview
2009.7.31
アーティスト・インタビュー
The world of Takayuki Fujimoto, a lighting artist
at the forefront in Japan’s multimedia performance scene
日本のマルチメディア・パフォーマンスを支える
照明アーティスト藤本隆行の世界
Profile
藤本隆行(ふじもと・たかゆき)
1987年よりパフォーマンス集団「ダムタイ
プ」に参加。パフォーマンス作品『S/N』
『OR』『memorandum』『Voyage』の
照明を手がけ、『OR』以降はテクニカル・
マネージメントも担当する。また、池田亮司
の映像と音楽によるコンサート作品シリーズ
「formula」や、香港の振付家ダニエル・ユ
ン、ベトナム生まれのフランス人振付家エ
ア・ソーラ、シンガポールの映像作家チョ
イ・カーファイほか海外のアーティストのパ
フォーマンス作品などに照明デザインを軸に
マルチメディア・パフォーマンスの先駆けであるダムタイプのメンバーとして、コ
ンピュータ制御による照明の世界を切り開いてきた藤本隆行。近年では、LED照明
の可能性を追求するプロジェクトに力を入れ、パフォーマーやIAMAS(国際情報科
学芸術アカデミー)出身のクリエーターたちと組み、音、映像、パフォーマーの動
き、照明を同期させた空間表現を模索してきた。その代表作『true/本当のこと』
の再演(2009年8月~)による海外ツアー(オランダ、ドイツ、フランス、ブラジ
ル)を前に、ダムタイプ時代からLED照明の未来まで、マルチメディア・パフォー
マンスを支えてきた“特殊照明家”藤本の世界について聞いた。
(聞き手:川口隆夫(ダムタイプ)、坪池栄子)
参加している。近年は、ギタリストの内橋和
■
久やシンガーのUAとのインスタレーション
/コンサート『path』、ダンスカンパニー
Monochrome Circusとのコラボレーション
『Refined Colors』『lost』で、LED照明デ
ザインを特徴とする作品を制作。2007年に
は最新作『true/本当のこと』において、白
井剛(AbsT/発条ト)、川口隆夫(ダムタ
イプ)の2人のパフォーマーと、多彩なアー
ティストで編成されたテクニカルチームを率
いて、LED照明を含めたデジタル・デバイス
の同期にフォーカスを当てた有機的な舞台作
品を構築。その作業では、デジタル技術を舞
台作品に積極的に援用することで、パフォー
マーが客席と対峙する強度と比べても遜色の
ない、観客への直接的な回路を新たにつくり
出すことを目指した。
http://dumbtype.com/
http://www.refinedcolors.com
http://www.true.gr.jp
ダムタイプで育まれたマルチメディア・パフォーマンスとしての照明
川口:私と藤本さんは二人ともダムタイプのメンバーで、私は1999年から、藤本さ
んは初期から参加しています。当初は照明の担当じゃなかったみたいですが、これ
までの経緯を聞かせていただけますか。
藤本:僕とダムタイプの中心的存在だった故・古橋悌二とは同じ高校で学年も一
緒、共に京都市立芸術大学に進学しました。
僕は芸大バレーボール部に入ったのですが、その歴代のメンバーがすごかった。
名前を挙げると、もう卒業していましたが、上級生に美術家の椿昇さんがいて、1
年上が同じく美術家の藤浩志、そして僕。その下にダムタイプメンバーの小山田徹
とキュピキュピの江村耕市が入って、さらにその1つ下には同じくダムタイプの泊
博雅。その下がヤノベケンジと高嶺格、それから現代美術家で建築物ウクレレ化保
存計画の伊達伸明、そのもうちょっと下にはキュピキュピの石橋義正がいました。
他にもいろいろな人がいて、今では伝説になっていますが、これだけのアーティス
トが皆な同じバレー部で、筋トレから始まってすごく厳しくやっていた。その上、
藤、小山田、泊、高嶺は同じ鹿児島出身だったから、人間関係がとても密接だった
んですね。
それで藤さんはダムタイプの前身となる京都市立芸術大学演劇部「劇団座カル
マ」にも入っていて、やがて座長になる。古橋や小山田や泊など後のダムタイプの
コアメンバーとなる面々はこのカルマで活動していて、そこからダムタイプができ
あがっていきました。
僕自身はカルマには参加してなくて、絵を描きながら大学1年の時から始めた舞台
大道具のアルバイトを続けていた。大道具は芸大バレー部定番のバイト先で、京都
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照明アーティスト藤本隆行の世界
の公共ホールや、宮川町歌舞練場などで働いていました。そのうち舞台用語にも詳
しくなり、どうやって舞台が動いているのか、舞台監督の指示の下にどう動くべき
かといった裏方のこともわかってきた。仕事がすごく面白くて、大学4回生の頃には
フリーの大道具さんみたいな状態になっていました。
大学を卒業した時に(1984年)、京都の嵯峨野に25畳ぐらいの広いアトリエを
借りたんですが、しばらくして同じ建物の上の階が空いたので、卒業を控えていた
ダムタイプのメンバーが事務所として借りることになった。それで、『睡眠の計
『true/本当のこと』公演情報
http://true.gr.jp/
h t t p : // w w w . j p f . g o . j p / j / c u l t u r e /
new/0907/07-03.html
画』で初めての学外公演を行った時に、劇場のことに詳しいからと大道具として駆
り出されたのが、ダムタイプに入ったきっかけです。
次の『036-PLEASURE LIFE』(87年初演)でダムタイプは初めてメディアを
東京公演
採り入れましたが、僕の知り合いに電子回路を組むヤツがいて、彼に頼んで、ビデ
2009年08月6日~9日
オ・スイッチャーや照明制御装置、モーターのコントローラーなどをつくってもら
会場:シアタートラム
h t t p : // s e t a g a y a - p t . j p / t h e a t e r _
info/2009/08/true.html
いました。そして僕は、あの頃は小山田と一緒に大道具・小道具なんかをやってい
ました。
オランダ公演
・アムステルダム
2009年9月25日~26日
会 場:Stadsschouwburg A msterdam
(SSBA)
h t t p : // w w w. s s b a . n l /p a g e .
ocl?pageid=3&ev=35742
・アイントホーフェン
川口:僕は『PLEASURE LIFE』をプロモーション・ビデオで見たのですが、丸い
蛍光灯をたくさん使っていて、こんなことができるのかとビックリしました。あれ
は高谷のデザインですか?
藤本:『036-PLEASURE LIFE』『PLEASURE LIFE』『pH』『S/N』の照明デ
2009年9月29日
会場:Parktheater Eindhoven
ザインは高谷です。高谷の照明は格好いいのですが、舞台照明はほとんど使ってな
http://www.parktheater.nl/
い。彼は建築を学んで設計事務所に行っていて、建築用のカタログから照明を選ん
ドイツ公演
で、それ以外は必要に応じて自分たちでつくっていました。
・デュッセルドルフ
2009年10月3日、4日
会場:Tanzhaus NRW Dusseldorf
h t t p : // w w w . t a n z h a u s - n r w .
d e /d e /s p i e l p l a n / i n d e x .
php?month=vorschau#49
『036-PLEASURE LIFE』の頃には、映像を入力できるソニーのモニター
(PROFEEL)が発売され、VHSのカメラも市販で買えるようになり、ライブ映像を
そのままモニターに映せるようになった。でもまだCGはあまり描けないし、描けて
も心電図みたいなレベルで。それでもダムタイプの表現はテクノロジーの進歩と密
・フランクフルト
接に関係していました。
2009年10月9日、10日
会場:Mousonturm Frankfurt
『S/N』(92年初演)の頃にはMacの性能もかなり上がってきて、自分たちでも
http://www.mousonturm.de/
CGを描けるようになった。ビデオプロジェクターも高かったんだけど、自分たちで
フランス公演
パリ
も何とか4台ぐらい買えるようになり、高谷が古橋と共に映像を担当することになっ
2009年10月15日~17日
会 場:パリ日本 文化会 館(M a i s o n d e l a
culture du Japon a Paris)
http://www.jpf.go.jp/mcjp
たんです。それで舞台照明ができる人がいるといいよね、ということになり、じゃ
あ劇場のことに詳しい僕がやろうと。自分でプランしたのは『OR』(97年)が初め
てです。
公演クレジット
[ディレクション・照 明 ] 藤 本 隆 行(d u m b
type)
[振付・出演] 白井剛(AbsT・発条ト)
川口:大道具だったんですね。それじゃあ、藤本さんは本当の叩き上げの照明家な
んだ。“叩き屋=大道具”から叩き上げた照明家(笑)。
[ 振 付・テクスト・出 演 ] 川口 隆 夫(d u m b
type)
[音響・振動・システムデザイン・プログラミン
グ] 真鍋大度
[ 音 響・映 像・ビジュアルデ ザイン] 南 琢也
(softpad)
[ 映 像 ・プ ロ グ ラ ミ ン グ ]
(rhizomatiks)
堀井哲史
[機構設計] 齋藤精一(rhizomatiks)
[ディバイスプログラミング] 石橋素(DGN)
[センサーシステム] 照岡正樹(VPP)
[衣装デザイン] 北村教子
藤本:きちんと照明技術を習ったわけでもないから、自分では“特殊照明家”って言っ
ているけど(笑)。
川口:『S/N』の時はどんな感じだったのですか?
藤本:『S/N』は最初インスタレーション『S/N #1』から始まって、デンマークの
ホテル・プロフォルマと別のコラボレーションする話が進んでいる時に古橋が倒れ
てしまった。彼を日本に残して僕らだけデンマークに行ったら、古橋からHIVに感染
していてAIDSを発症したという手紙が届いたんです。それで『S/N』パフォーマン
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スの方向性がはっきり見えてきたんです。アデレードに行くことになっていたので
必死でつくりました。照明プランは高谷が書いて、僕は現地スタッフに「パッチっ
て何?」とか聞きながらプログラムを組んで、夢中でオペレーションした。それが
最初の照明体験です。
そのうち、各メンバーが忙しくなってきたので、僕がテクニカルマネージャーと
してCADを使って舞台図面を描くようになりました。舞台・映像・音響・照明と、
『true/本当のこと』
(2007年9月1日/山口情報芸術センター
[YCAM]スタジオB)
ディレクション・照明:藤本隆行(Dumb
全体を見ながら打ち合わせを進めないとダムタイプの作品は出来ないので、大道具
もわかっていた僕が舞台の図面も照明の図面も全部引いて、外部とやりとりをする
ようになったんです。
Type)
振付・出演:白井剛(AbsT / 発条ト)
振付・出演・テクスト:川口隆夫(Dumb
Type)
川口:藤本さんが初めて照明プランを手がけた『OR』は、僕がパフォーマーとして
初めてダムタイプに参加した作品です。ストロボがシンボリックに使われていて、
真っ白い壁に真っ白い光で、本当にまぶしくて何もわからなくなる。真っ白い光の
時に全速力で走り、止まった瞬間に真っ暗になって、またストロボが光ると走り出
す。方向感覚も距離感もなくなって、何度も壁にぶつかり、凄く怖い体験でした。
藤本:『S/N』をやっていたときにデータフラッシュというDMX512(舞台照明
機器制御のための通信プロトコル)で動く、明るさも速さも変えられるストロボ
を見つけて、面白そうだからこれを使ってみたいというアイデアが浮かんできた。
『OR』ではそのストロボとHMIやHIDという高輝度放電ランプを使って、ホワイト
アウト(視界が白一色になって距離や方向感覚を失ってしまう現象)をテーマに作
Photo by Ryuichi Maruo
Presented by Yamaguchi Center for Arts
and Media (YCAM)
品をつくりました。
古橋が死んでしまったことをどう受け止めるかというダムタイプの状況もあり、
生死のボーダーについて考えていた時期で、メンバーとそういう話しをしながら出
来たのがこの作品です。目の前が真っ白になって何も見えなくなるとか、死んでい
るのか生きているのか、その境目はどこにあるのかとか、そういうことを話しなが
らつくっていきました。
『OR』で試行錯誤して、僕も自分が照明の仕事をやる動機を見い出していまし
た。当時は舞台照明の現場はある意味遅れていて、劇場のインフラが整っているだ
けに逆に新しいものがあまり入ってこなかった。映像は技術がどんどん進んで、
『OR』の時にはもうSMPTE(シンプティー)という同期信号によって映像と音響
を同期させることは当たり前になっていました。でも照明はいつまでたってもそれ
ができなくて、手押しで合わせなければいけなかった。
『OR』からは池田亮司も音楽で参加していたので、音声の別トラックの中にドー
ンというトリガー音を入れて、それがきっかけで照明が点くという機器を使い、
データフラッシュと音を同期させたんです。パターンは限られていましたし、スト
ロボ以外は手動でしたが、やっと音に合わせて自動的に照明を光らせることができ
て手応えを感じました。
川口:『OR』には、照明が超高速で点滅して、オン/オフの境目がわからなくなる
シーンがたくさんあった。人間の眼が識別できる点滅速度の限界を見たような気が
しました。
藤本:蛍光灯も実は点滅しているけど、速すぎて人間の眼にはそうは映らない。
ON/OFF──瞬間瞬間で事が生起して終わり、また生まれて終わる──を繰り返し
ているのに頭の中では一連の時間が繋がって見えている。そういう照明のON/OFF
みたいなことが、生と死のグレーゾーンとか、自分が自分自身だと思っているもの
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がどこまでちゃんと自分自身としてあるのか、みたいなテーマに繋がっていきまし
た。
それで、速い点滅であるとか、人間が見ることができる限界を超える真っ白さと
か、池田の場合だと、どこまでが耳で聞こえてどこまでが身体で感じる音なのかと
か、そういう限界を探そうといったことが『OR』の裏のテーマになっていた。
坪池:『OR』ではどのような共同作業が行われたのですか? 総合ディレクション
をされていた古橋さんが亡くなられて大変だったのではないですか。
藤本:高谷が中心的な役割を果たしていましたが、それまでのつくり方の遺産みた
いなものがあったので、これまでのようにみんなでオフィスに集まって延々と話し
合った。それでテーマ的なことを共有して、とりあえず出てきたものは全部舞台に
上げてみる、という感じでした。構成したら2時間ぐらいあって長すぎるからと、そ
の晩また話し合いをして翌日には40分ぐらいになっていたみたいな(笑)。考え方
によっては不安定なつくり方ですよね。
川口:テクニカル・チームだけじゃなくて、パフォーマーからもどんどんアイデア
やイメージが出てくる。僕は『OR』で初めて体験したけど、いつまでたっても決ま
らないけど面白いみたいな感じですよね。
藤本:『OR』で僕が照明をやり始めた頃は、照明の世界でもコンピュータが身近に
なり、DMXが世界標準の制御規格になるなど新しく始めるにはすごくいいタイミン
グでした。それ以前は、メーカーによって制御規格が乱立していてコントロールの
仕方が違っていたので、各ディマー(自動調光機能)専用のコントローラーを使う
しかなかったんです。それがDMX照明卓さえもっていけば、どのディマーに繋いで
も制御できるようになった。
それまで、どれだけ異なる操作卓のプログラミングの仕方を知っているかとか、
フェーダーを上げるのが上手いかとか、そういう経験値が幅をきかせていたのに、
デジタル化されて誰でも同じスタートラインに立てたわけです。僕としてはとても
ラッキーなタイミングでした。
LED照明を使った新たなプロジェクト
坪池:コンピュータ制御による照明の黎明期だったわけですね。
藤本:僕が今使っている根幹的な技術は90年代の初めに出てきたもので、ダムタイ
プや僕が活動を始めた時期と重なっています。80年代半ばには、ローリー・アン
ダーソンなどのマルチメディア・アーティストたちが次々来日して、そういう作品
にふれることもできたし、いろんな意味で僕らは非常にタイミングに恵まれていた
と思います。「次は何をつくろうか?」「あんなことができたらいいのに」と探し
たら、そこに技術があったみたいな感じで進んでいきました。
坪池:そういった技術革新の流れの中で、藤本さんはダムタイプとは別にLED(発
光ダイオード)照明を効果的に使った作品のプロジェクトに取り組まれるようにな
ります。
藤本:初めてLED照明を使ったのは、2003年の川口さんのパフォーマンス作品『夜
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色(ヨルイロ)』でした。先ほども言ったように、音と映像は同期しながら制御で
きるようになってきたのに、照明はセットアップも大変で自由に色も変えられな
い。その上、秒間30フレームのビデオと同期しようにも、実際にフィラメントが発
光している照明機器だと、ON/OFFに時間がかかり過ぎて1フレーム(0.03秒)の
変化に対応することはできない。
そんな時に見つけたのが、LED照明でした。これなら色も自在に変えられるから
いいかもしれないと思って、『夜色』公演のときにその製品を扱っている東京のカ
ラーキネティクス・ジャパン社に行って初めて機材を貸してもらいました。そうし
たら、動作も速いし、電気容量も少なくて済む。デジタルなので直接コンピュータ
で制御できる。これはいいと思いました。
『夜色』でLEDの効果がわかったので、舞台設備の都合でダムタイプでは公演
できないような場所にもって行ける作品がつくれるのではと『Refined Colors』
(http://www.refinedcolors.com/)の企画書を書きました。『Refined Colors』
(2004年)は、3人のダンサーと2人のテクニカル、それに28台のLED照明とラッ
プトップ2台、それから舞台上に白い床と壁を立てればどこでも公演できるという作
『true/本当のこと』トラス部分のLED照明
仕込み図面
Drawing by Takayuki Fujimoto
品です。機材一式で旅行トランク5個分ぐらい。これで日本数カ所とヨーロッパ、東
欧3カ国や東南アジアなどを回りました。
2005年には、シンガーのUAさん、維新派の音楽監督でギタリストの内橋和
久さんと一緒に『path』(http://path.ycam.jp/)をつくりました。『Refined
Colors』は、音と照明が決まったところで同期しているのですが、『path』は完全
にインプロ形式で、ギターの即興演奏やボーカルをその場でコンピュータ解析し、
照明と映像をコントロールします。入ってくる音によって映像と照明の出方が異
なってくるので、コンサートは常に違ったものになります。そして、その後に企画
したのが『true/本当のこと』です。
坪池:『true』には川口さんと白井剛さんがパフォーマーとして参加されていまし
た。音と映像と照明とパフォーマーの動きが有機的な同期の仕方をしていて、不思
議な世界が出現していました。
『true/本当のこと』ステージレイアウト
Drawing by Takayuki Fujimoto
藤本:『Refined Colors』でコンテンポラリーダンスらしい作品を、『path』で音
楽の作品をつくったので、次はダムタイプで蓄積したテクニカル面でのノウハウを
活かしたパフォーマンス主体の作品をつくりたいと思っていました。
坪池:テクニカル面でのノウハウというのは、具体的にはどういったものでしょ
う?
藤本:LEDでやってきた視覚的なことに加えて、もっと聴覚や触覚といったところ
にも及んでいきたいと思ったら、周りに使えるものがたくさんありました。
まず、『Refined Colors』以降、音響やシステムデザインを担当してくれていた
プログラマー/アーティストの真鍋大度さんに声をかけて、彼の作品で使っていた
筋電センサーや体感型ゲーム用として市販もされているBUTTKICKERという振動子
『true/本当のこと』の主な舞台装置として
用いられるテーブルの内部構造。DLPプロ
ジェクター、サーボモーターなどが組み込ま
れている
Photo by Motoi Ishibashi
(音と同期して物体を振動させる)を持ち込んでもらおうと思いました。真鍋さん
は、川口さんの『TABLE MIND』でも筋電センサー等を使ってパフォーマンス作品
をつくっていますから、作品として「使える」こともわかっていました。さらに、
彼と一緒に活動しているアーティスト(Rhisomatiksの齋藤精一、堀井哲史、石橋
素、照岡正樹)にも加わってもらい、彼らと技術的な仕掛けをつくっていきまし
た。
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『true』では、川口さんと白井さんに筋電センサーを着けてもらって、筋肉の動
きをトリガーにして、照明と音と映像を動かしています。また、僕が照明を動かす
ことによって音が動き、音が動くことによって映像が動くなど、複雑に絡み合って
いるので、そういう意味ではあらゆることがキューになっています。
この中で今回一番使ってみたかったのが筋電センサーです。筋電センサーは、筋
肉が動こうとした時に発する微弱電流をキャッチするもので、それをコンピュータ
『true/本当のこと』
(2007年12月8日、9日/金沢21世紀美術
館シアター21)
ディレクション・照明:藤本隆行
振付・出演:白井剛
振付・出演・テクスト:川口隆夫
で処理してメディアと同期させるといろんな面白い表現に繋がるのではと思いまし
た。極端に言えば、(筋肉を動かす)脳からの指令でメディアが作動する仕組みと
いうわけです。
例えば、身体の速い動きに合わせて音が鳴り、照明が変わっていくようなシー
ンをつくるとすると、普通はまず変化する音と照明をつくってパフォーマーに見
せて、それに合わせて身体を動かしてもらう。それでは、パフォーマーにとっては
きっかけに合わせて身体を動かす訓練の賜物というシーンになる。でも、『true』
の場合は、パフォーマーが動くことによってすべてが生起し、パフォーマーの動き
に周りの状況がついていくわけです。
それと振動子ですが、舞台に組んだ足場に振動子を仕掛けて、人間の耳では聞こ
えない20ヘルツ以下の低音を使って足場を揺らしています。人間の可聴域は2万ヘ
ルツから20ヘルツぐらいで、それ以下の低音はいくらスピーカーに入れても低すぎ
て聞こえない。その聞こえない部分の音を実体験化するのに振動子は使えると思い
ました。『true』には、実際に、音がすごく低いところから高いところに上がって
いくシーンがあるのですが、最初は音としては聞こえないけどガーッと足場が揺れ
て、それが段々低い音になって最後は高すぎて聞こえなくなるんです。
藤本:そうしたテクニカルな表現は『true』のテーマとどのように関わっているの
でしょう。
藤本:それは『true/本当のこと』というタイトルの意味にも繋がっていることな
のですが、自分があると思っているものが「本当に」あるのか? という問いが
テーマになっています。自分に聴こえるのが音だと思っているけど、音は振動だか
ら聴こえない音もある。じゃあ音って本当は何なのだろう? パフォーマンスはラ
イブだと言うけど、振付が決められていて音に合わせて動いているだけなんじゃ
ないか。じゃあライブって何なのだろう? 色も同じで、どうしてRGB(Red、
Green、Blue)でいろいろな色が見えるのだろう? とか。目の前にあるものが、
あなたが信じている世の中が揺るぎないものとしてそこにあるように思っているけ
ど、それは「本当」にあるのか、ちょっと考えてみようよみたいな。禅問答ですね
(笑)。
坪池:『true』は、真鍋さんをはじめとした多くのクリエーターとのコラボレー
Photo by Hiraku Ikeda
Presented by 21st Century Museum of
ションです。こういうマルチメディアのコラボレーションはどのように進めるので
すか。
Contemporary Art, Kanazawa
藤本:どうやって情報をシェアしながら作品をつくっていくかはいつも課題になっ
ています。僕も学校の連絡ノートみたいなものをネット上に置いておいて、そこに
皆が情報を貼り付けていくとか、いろいろ試していますが、今でもまだ試行錯誤し
ています。ダムタイプではすごく長い時間を共有していて、お互い何を考えている
のかおおよそは把握していたし、共通言語のようなものもあったので、もう少し曖
昧模糊として進んでいけたのですが、新しい作品を新しい仲間とつくる場合はそれ
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では通用しません。
それで『true』では、製作ノートのようなマトリクスをつくって進めました。
シーン毎に分けてあって、ここで何が起こりたいとか、いろんなところから参照
してきた文章なんかが載っている。それが確定ではなくて進めながら組み直してい
く。
マトリクスはExcelで作成してあって、とりあえず1日の作業が終わって何か進展
『true/本当のこと』
(2007年12月14日~16日/横浜赤レンガ
倉庫一号館3Fホール)
ディレクション・照明:藤本隆行
振付・出演:白井剛
振付・出演・テクスト:川口隆夫
があったら皆に同報メールを送って、それに合わせて次の作業について各自に書き
込んでもらっていました。それをどんどんアップデートしていきながら、最後にそ
れが台本になるみたいな。テキストで書けない人は、音や映像のサンプルを付ける
とか、実際舞台上でその断片でも発表する。それをみんながチェックして、フィー
ドバックを返す。そういうやりとりを数日おきに僕がまとめて、全員が共有できる
ようにしました。
それとマルチメディアの場合は、稽古が始まって最初の1週間ぐらいはみんなでカ
チャカチャとキーボードを叩いていて、パフォーマーは何もできないような状態が
続きます。練習が始まっても何かちょっと躓いたら「修正しま~す」って数時間は
平気でカチャカチャやっている(笑)。それで泣き出しそうになるパフォーマーと
は一緒にできないのですが、川口さんはもちろん大丈夫だし、白井さんは自分で映
像をつくる人だから、テクニカルが何をやっているのかわかるし、システムについ
ても提案できる。そういう人とでないとつくれないですね。
坪池:『true』では、各シーンを国語・算数・理科・社会・音楽という学校の時間
割に見立てて場面構成されていました。
藤本:そうです。シーンのタイトルとして国語・算数という教科の名前が付けて
あって、最初にみんなで教科毎のキーワードを出し合いました。例えば、「音楽は
波である」とか、「音楽は数学である」とか。そういう「◯○は△△である」とい
うキーワードもマトリクスに書いてあって、そこから具体的なイメージをつくって
いきました。小学校の教科というのは、善かれ悪しかれ、子どもが初めて社会で出
合う世界像ですよね。
川口:僕は国語のシーンの担当だったので、パフォーマンスだけでなく、具体的に
言葉を考えなくちゃいけなかったんだけど、浮かばなくて。「どうしよう」って
(笑)。
藤本:最初から言葉を使う部分は川口さんにお願いするつもりでシーンを用意して
あったんです。青い光のなかで単語の映像が浮遊するシーンがありますが、その言
葉は川口さんが書いたテキストから抽出したものです。生で見ると川口さんが喋っ
ている台詞にあわせて映像などが動いているように見えるのですが、実は逆で、録
Photo by Yohta Kataoka
Presented by Dumb Type office, Hi Wood
音した音声素材が最初に流れて、それに合わせて川口さんが喋るパフォーマンスを
やって、それをキューにして映像や照明がついていくという仕掛けになっていま
す。
坪池:『true』は、山口情報芸術センター(YCAM)で約1カ月間の滞在制作をして
つくった作品です。YCAMのようなマルチメディア系の滞在制作ができる施設や岐
阜県立情報科学芸術大学院大学/国際情報科学芸術アカデミー(IAMAS)のような
養成機関など、ダムタイプが出てきた当時では考えられなかった環境が整ってきま
した。
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藤本:YCAMはダムタイプと日本のメディアアートの拠点だったキヤノンアートラ
ボ(現在は閉鎖)が開設準備の時から協力者として関わってきた施設です。ダムタ
イプとしてはそれまでずっと海外で創作をしてきていて、なぜ日本で作品をつくれ
る場所がないのかと思っていたこともあり、マルチメディアアートのクリエーショ
ンができる施設になるよう意見を出しました。あそこには優秀なテクニカルのス
タッフもいるので、彼らと一緒に新しい技術を使った作品を実際にクリエーション
したいという思いがあり、YCAMで『Refined Colors』『path』『true』を創作し
ました。
坪池:メディアアート系で滞在制作できる場所は、YCAM以外にありますか。
藤本:日本ではYCAMのほかにはないと思います。そもそも、このような施設は世
界にも多くありません。ドイツのカールスルーエ・アート・アンド・メディア・テ
クノロジー・センター(ZKM: Center for Art and Media in Karlsruhe)や、ロッ
テルダムのV2などが挙げられるかもしれないですが、V2はパフォーマンスではなく
て、インスタレーションが主ですから、世界的にもYCAMの存在は貴重だと思いま
す。ちなみにメディアアート系のフェスティバルとしては、リンツのアルス・エレ
クトロニカが有名です。
坪池:メディアアート系の人材養成機関としてIAMASはなくてはならない存在
になっています。『true』の参加クリエーターたちも、真鍋さんをはじめとして
IAMASの出身者がほとんどです。
藤本:僕自身はあまりIAMASについて意識したことはありませんが、日本には
IAMASしかないので自ずと出身者が多くなるのだと思います。メディアアートの分
野でアルス・エレクトロニカの日本の受賞者を調べたら、大抵IAMAS出身です。た
だこうしたクリエーターたちはコマーシャルな分野で活躍することの方が多いので
はないでしょうか。
坪池:IAMASが出来て13年になりますが、せっかくの人材が舞台芸術の世界で新し
い表現を見せてくれないのは寂しい気がします。
藤本:そうした人材が活かせないのは、舞台芸術をやっている人たちの方にも問題
があると思います。もっとそういう分野に目を向けてほしいのですが、「私には関
係ありません」といった態度でいるのが不思議です。
悪口を言うつもりはありませんが、照明家にしても、新しいことにチャレンジし
ようとする人は少ないし、新しい機材が出ると嫌がる人もいますね。最先端のも
の、技術革新で作品が変わっていくという意識をもっている人が少ないんです。そ
れと、日本では、照明は照明、大道具は大道具と、裏方さんが裏方さんのままで終
わっている気がします。ディレクションするのはダンサーとかパフォーマー、演出
の人で。でも裏方さんと呼ばれる人たちの中から、自分でカンパニーを立ち上げ
て、自分で作品をつくって、アーティストになろうという人がいてもおかしくない
し、そういう道があってもいいと思います。
それがないから、新しい技術で何かやろうというのも、たまたまそれを使った作
品を見たパフォーマーや演出家が、面白いから使ってみよう、という取り組み方に
しかならない。池田亮司の音を聴いて「これで踊りたい!」と思って、ただCDを使
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国際交流基金 The Japan Foundation
Performing Arts Network Japan
Artist Interview
The world of Takayuki Fujimoto,
a lighting artist at the forefront in Japan’s
multimedia performance scene
日本のマルチメディア・パフォーマンスを支える
照明アーティスト藤本隆行の世界
うだけみたいなことになってしまう。もちろん、ダムタイプのようなアプローチが
逆に珍しいんだとは思いますが……。
人材はたくさん出てきているんだから、YCAMやICC(*)のようなメディアアー
ト系の機関がイニシアティブをとって、「あのテクニカルの人は面白いから、あの
パフォーマーと作品つくらせよう」といったコラボレーションをしてくれれば、何
かできそうな気はしますよね。
*ICC(NTTインターコミュニケーション・
センター)
日本の電話事業100周年(1990年)の記念
事業として、1997年4月に東京/西新宿・
東京オペラシティタワーにオープンしたNTT
東日本が運営する文化施設。ヴァーチャル・
リアリティやインタラクティヴ技術などの最
先端電子テクノロジーを使ったメディアアー
ト作品の企画展や、ワークショップなどを開
催している。
坪池:最後に劇場照明の未来についてご意見を聞かせてください。LED照明は色
が変えられる上に、寿命が長く、消費電力が少ない非常に優れた特性をもっていま
す。これからLEDに換わっていく可能性はあるのでしょうか。
藤本:僕も最初の頃は、劇場にどんどんLEDが入ればいいと漠然とイメージしてい
ましたが、日本の劇場はすでに一通りインフラが整っていますから、それがすべて
LEDに置き換わるのは無理があると思うようになりました。導入されたとしても、
ホリゾントライトの代替で設備されるなど、限定的だと思います。
それよりも、LED十数灯とちょっとした広さのスペースがあれば、コンピュータ
と基本的な音響設備を使って作品がつくれることのほうが面白い。LED照明にもで
きないことはたくさんありますが、インフラがないところで可能性を伸ばしていく
方向においては、すごく有効だと思います。それと、僕自身は、照明機材の革新と
いうとらえ方より、何かの代替ではないLED表現の可能性みたいなことを探ってい
くことの方が面白いのではないかと思っています。
坪池:現在、新しいプロジェクトは何か準備されていますか?
藤本:まだ具体化はしていないのですが、レバノンのラビア・ムルエさんと何かし
たいと思っています。本当に単純なのですが、ダンスをやって、コンサートをやっ
て、パフォーマンスもやったから、次はラビアさんと演劇をやりたいと(笑)。
ツアーで海外をずっと回ってきて、演劇にある言葉の壁を改めて強く感じてい
て。絶対的に言葉の壁を感じない演劇ができたらいいのになあと、ちょっと思って
います。どうすればいいのか、まだまったくわからないですけれど。
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