アジアクラブ通信

2016 年 7 月配信 【第 55 号】
名銀「アジアビジネスクラブ」
アジアクラブ通信
― CONTENTS (第 55 号) ―
○ トピックス
中国における SNS の役割 について
○ 次号のトピックス予告
次回は、ベトナムからの現地情報をご紹介する予定です
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ソーシャルネットワーキングサービス(SNS)といえば私たち日本人は「LINE」を真っ先に思い浮
かべます。スマートフォン利用者で「LINE」を利用していない方はほとんどいらっしゃらないのでは
ないでしょうか。チャットや無料音声通話が楽しめる「LINE」は大変便利なアプリですが、何を隠そ
う、実は中国では「LINE」の使用が規制されており利用することができません。
その代わりに中国ではスマートフォン向けアプリ「微信(We Chat)」が一般的に利用されています。
中国では、この「微信(We Chat)」を利用していないスマートフォン利用者を見つけることの方が難
しいとさえ言うことができます。利用者は既に全世界で 6 億人を突破しており、アカウント数は 11
億とも言われています。実はこの「微信(We Chat)」
、従来は「LINE」と同様、メッセージのやり取り
や無料音声通話のやりとり等の機能を備えているにすぎず、二つのアプリの機能に大差はありません
でした。しかし昨今の「微信(We Chat)」は従来のコミュニケーション手段としての機能だけでは無
く、重要な社会インフラ機能を備えるようになりました。その役割とは決済システムです。
今回は、中国版の LINE である「微信(We Chat)」の決済システムとしての機能に注目したいと思い
ます。
画像:「微信(We Chat)」のアプリ
1.ウォレット(財布)機能
「微信(We Chat)」には「ウォレット(財布)」という電子マネー機能があります。この「ウォレッ
ト」はウェブ上の銀行口座のようなイメージです。自分が使っている銀行口座との紐づけを行うこと
により、いつでも好きなタイミングで銀行口座から「ウォレット」にチャージをすることができ、逆
に「ウォレット」から銀行口座にお金を戻すこともできます。この“銀行口座に戻す”という行為が
可能な点で、
「ウォレット」は従来の仮想通貨とは安心感、利便性が大きく異なります。また、この
「ウォレット」とチャット画面を使用することにより、登録している友人や請求元に対して簡単に代
金を振り込むことができます。
例えば、私が友人の YAMADA さんに「あとで払うから僕の分もコーヒー買ってきて。」と頼んだと
します。YAMADA さんが「ウォレット」を利用していることが大前提となりますが、私は以下のように
「微信(We Chat)
」の「ウォレット」を利用してコーヒー代の 10 元を YAMADA さんに支払うことがで
きます。
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[図 1]
[図 2]
[図 3]
(1) あらかじめ紐づけしておいた銀行口座から「ウォレット」に 10 元補充。
(2) 友人の YAMADA さんに 10 元を送金、コーヒー代の支払いである旨を入力します。
(3) 暗証番号を入力したら送金完了です。友人の YAMADA さんは自分の「ウォレット」に 10 元が振
り込まれたことをメッセージ画面等で確認することができます。
この「ウォレット」機能の応用編ですが、
「AA 收款(割り勘清算)」という機能もあります。
(中国
で AA は割り勘という意味です。
) 夕食会の代金を立替払いして、後日夕食会に参加していた友人に
請求を行うとき、「微信(We Chat)」上で請求を行うことで代金回収の管理をすることが可能です。
(友人に口座番号を伝える必要はありません。)
2.微信支付(We Chat ぺイ)
昨今、中国の街中の多くの小売店で「微信(We Chat)
」を利用した代金決済が普及しています。
「微信(We Chat)
」を利用した決済を「微信支付(We Chat ペイ)」と言いますが、決済方法は 2 パ
ターンあり、1 つは We Chat に紐づけした銀行口座から支払う方法、もう 1 つは前述の「ウォレット」
から支払う方法です。日本でも Edy 決済等の携帯端末を利用した代金の支払方法がありますが、日本
と大きく異なる点はその普及度です。現在中国では約 6 億人の「微信支付(We Chat ペイ)」利用者
がいると言われており、日常生活における多くの場面において「微信支付(We Chat ペイ)
」が利用
可能です。利用方法は「微信(We Chat)
」を開いて、クイックペイという画面[図 4]を出し、
「微信
支付(We Chat ペイ)
」が利用可能な店舗([図 5]のような表示がある店舗)の専用端末で QR コード
を読み取ってもらえば支払完了です。
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[図 4]
[図 5]
実はこの「微信支付(We Chat ペイ)
」
、日本においても使用可能な店舗が増えています。
中国の経済成長は以前より鈍化したとはいえ、富裕層中国人観光客の爆買い消費は、日本の小売店に
とって依然魅力的であることには変わりありません。こういった爆買い需要を取り込む為には、「微
信支付(We Chat ペイ)
」のような中国の決済手段に対応しているか否かも重要なポイントです。「微
信(We Chat)
」の経営元である「中国 Tencent 社」についても、日本で「微信支付(We Chat ペイ)」
サービスを本格展開していくとのニュース(参考 http://www.travelvoice.jp/20160608-68019)が出
ており、早急な「微信支付(We Chat ペイ)
」への対応が小売店の商売の成否の分かれ目となるかもし
れません。
3.所見
上記の通り、中国の決済システムは、1 つのアプリを通じて生活に必要な代金の支払いがほとんど
できるという点で、利便性が次世代の域に達しています。ショッピングの代金決済以外にも、水道光
熱費や携帯電話料金等の公共料金も「微信(We Chat)
」を通じて払うことができる等、代理収納の機
能をも備えている為、既に日本の代金決済システムの先をいっていると言っても過言ではありません。
私は近い将来、日本においても中国と同様の代金決済システムが広範囲で整備される可能性が十分
あると考えています。(「微信(We Chat)
」が日本に普及するか、それとも他の SNS アプリが同様の
サービスを開始するかは未知数です。)仮に日本の全 LINE ユーザーがウェブマネー口座を持ち、日
本の全企業が LINE ウェブマネー決済に対応した場合、代金決済システムの歴史において大きな革命
となることは間違いありません。(銀行窓口や ATM での振込が無くなるかもしれません。)
しかしながら、上記のような機能には金銭が絡む為、利用の際に犯罪(新手の振り込め詐欺等)や
悪質行為等の被害に巻き込まれる可能性も排除しきれません。決して安易に利用すべきシステムでは
ないと考えます。もしそのような局面に直面した場合には、銀行員としてお客様に十分な注意喚起を
行っていきたいと思います。
名古屋銀行 南通支店
山田 晋士
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※ 現在のところ、日本の電話番号を使用して「微信(We Chat)
」のアカウントを作成した場合、「ウォ
レット」
「微信支付(We Chat ペイ)
」等の機能は利用できません。
※「We Chat」、「微信」、「ウェイシン」、「We Chat」などのサービス名やロゴは、テンセント社(騰
訊)の商標または商標登録です。
※「LINE」は、LINE株式会社の商標または登録商標です。
※「Edy」は、楽天Edy株式会社の商標または登録商標です。
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名古屋銀行の中国拠点
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中国江蘇省南通市経済技術開発区
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2F
TEL:<86>513-8919-2280
FAX:<86>513-8919-2281
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