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日本コンテンツの国際市場におけるビジネスの現状

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国際ドラマフェスティバル in TOKYO 2010
シンポジウム
日本コンテンツの国際市場におけるビジネスの現状
ヨーロッパの放送業界からみた日本の魅力と課題
2010 年 10 月 26 日 東京・千代田放送会館
「国際ドラマフェスティバル in TOKYO」では、日本のコンテンツの海外展開が停滞している現状
に鑑み、 どうすれば日本のコンテンツが効率よく国際化していけるのか 、また、 どのようなコン
テンツがヨーロッパで受け容れられるのか 、 それはどのような方法があるのか ―というテーマ
を立て、これらを検証するシンポジウムを開催した。
シンポジウムには、ヨーロッパのバイヤー、市場分析専門家、コンテンツ流通支援組織の代表
者が参加し、率直な意見を述べた。
このシンポジウムは、世界最大の国際映像コンテンツ見本市と国際会議 MIP/MIPCOM を主
催・運営するリード・ミデム社(パリ)と国際ドラマフェスティバル in TOKYO の連携企画として実施さ
れたもの。
登壇者
〔パネリスト〕
●ブルーノ・デロワ[Canal+(フランス)ディレクター]
●ヴァージニア・ムスラー[The WIT(フランス)CEO]
●マチュー・ベジョー[TV フランス・インターナショナル ディレクター]
〔進行〕
●ローリンヌ・ガロッド[リード・ミデム社 MIPTV/ MIPCOM 総合ディレクター]
(敬称略)
【MIPTV/ MIPCOMとは?】
ローリンヌ・ガロッド: 本日は、日本製コンテンツの輸出、特に日本のドラマを海外に輸出する際の
問題点などについて話し合いたいと思います。まず、本日のパネリストをご紹介します。
ブルーノ・デロワさんは、フランスの Canal+(カナル・プリュス)で、全ヨーロッパ向けチャンネルの
ディレクターをしており、バイヤーでもあります。
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ヴァージニア・ムスラーさんは、フランスの The WIT のCEOです。The WIT は、世界各国のテレビに
関して情報収集している専門機関であり、テレビ番組に関して最も情報を持っておられます。ムス
ラーさんは、世界各地の番組に関する最新情報をお持ちで、ドラマを含む各ジャンルのリポートも
書かれています。
マチュー・ベジョーさんは、TVフランス・インターナショナルのディレクターです。TVフランスは主に
フランスの番組の輸出を手掛けています。ベジョーさんは、在日フランス大使館のメディア担当官
として3年間日本に赴任されていたこともあり、日本のこともよくご存じです。
【注目集めるアジアのコンテンツ】
それでは、まず、私から MIPTV/ MIPCOM についてお話します。MIPTVは毎年4月、MIPCOMは
毎年 10 月にカンヌで開催しています。基本的にはどちらもコンテンツ販売のマーケットで、「年に2
回、国際的な場で出会う」ことを目的としていま
す。MIPTVのほうが古くからあり、来年(2011
年)で 48 周年、MIPCOMは 28 周年を迎えます。
日本は出展社数で第9位と、非常に大きなプレ
ゼンスを持っています。MIPTV/ MIPCOM の参加
者数は両者を合わせて1万5000人、うち4000
人くらいがバイヤーとして参加しています。コンテ
ローリンヌ・ガロッド 氏
ンツのライセンシングが主体のマーケットであり、
それぞれ何千もの取引が成立します。
48 年の歴史のなかで、徐々にトレンドに変化が出てきました。初期と比べ、好みが変わり、フォー
マットの変化が出てきています。特に最近は、景気後退の影響もあり、フォーマット志向が強く、制
作の前段階、つまり企画書の段階から話し合うのです。
本日のパネリストであるヴァージニア・ムスラーさんは、「フレッシュTV」というプレゼンテーション・
イベントを MIPTV/ MIPCOM の初日に行っています。ここには毎回約800人が参加して、世界各
地でどんな番組が作られているのかを見ていただくわけですが、今回のMIPCOMでは、「MIPフ
ォーマット」という企画を行いました。ここにもMIPCOMがフォーマットの取引を重視していることが
現れています。
もう一つのトレンドは、「国際共同制作」です。共同制作は昔からありますが、最近は明らかに新し
いトレンドとして現れてきています。09 年は、景気後退で、経済的に難しかったこともあり、 革新的
なやり方で制作しよう。そのためには、パートナーを探して国際的にも通用するコンテンツを作ろ
う という共同制作の動きがありました。新しい手法として、コンテンツのアイデアがいろいろなとこ
ろから持ち込まれ、さまざまな方法で制作され、うまく発展していき、その結果、各国で活用できま
2
した。
さらに、携帯電話など他メディアとの共存があります。日本では早くからこうした動きがあると思い
ますが、MIPでも 創造性をつなげる というアクションを起こしています。携帯電話の世界会議を
行っているGMSAを、われわれのショーに来られる方と引き合わせることもしています。テレビの
視聴者だけでなく、音楽やゲーム、出版まで広げていく。異なる業界とも一緒に仕事をしていくこと
が重要です。コンテンツの国際化のためには、世界各地で通用するコンテンツがあるということが
重要なのです。
ここ数年、われわれが注目してきたのはアジアのコンテンツです。アジアはプレゼンスが高まって
います。そこで、ヨーロッパのわれわれとしても、アジアのコンテンツを振興することに大きな関心
を持っているのです。
ムスラーさんはアジアのコンテンツを積極的に取り上げています。MIPCOMでも、その中心となる
中国、日本、韓国などのドキュメンタリーやドラマなどのうち、海外バイヤーが興味を持つと思われ
るものを選び、「フレッシュTV」で紹介しました。多くの人が集まってくださり、非常に興味を持って
いただいたと思います。昨年は、日本のドラマに特化してこのプレゼンテーションを行いましたが、
これも面白いものになりました。
そして、09 年からは国際ドラマフェスティバルと共同で「MIPCOM Buyers' Award for Japanese
Drama」という賞を設けました。これはドラマフェスティバルから候補作品を出していただき、それら
をヨーロッパを中心とするバイヤーが審査して、バイヤーの目から「このドラマは面白い」「世界各
地で通用する」という基準で選ぶものです。今年は 14 人のバイヤーが選考し、TBSの『JIN̶仁̶』
が選出されました。この結果は、「東京ドラマアウォード2010」と全く同じでした。また、09 年に選
ばれた『アイシテル
海容
』(日本テレビ)も「東京ドラマアウォード2009」のグランプリでした。
つまり、ドラマに対する国際的な好みは、ある意味で同じであるということ、良い作品への評価は
各国共通なのではないかと思います。
ある海外バイヤーにうかがったところ、彼らはそれぞれの国にあるものとは違うオリジナルなコン
テンツを探しているということでした。必ずしも「これが日本的だ」というものではなくても、キャラクタ
ーやプロットのオリジナリティが非常に高いもの。そして、感情に訴えかけるものがある作品を選ん
でいるということです。
審査の際にもう一つ指摘されたのは、番組の回数の問題です。エピソードが何話あるのか、それ
が各国の放送スケジュールと合うのかということです。日本のドラマは 11
13 話のケースが多い
のですが、それぞれの国の習慣に合わなければ、それはその国に適さないということになります。
それでは、具体的な話に移っていきたいと思います。
まず、日本のドラマにも詳しいブルーノ・デロワさんにバイヤーの視点から話していただきたいと思
います。
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【日本のドラマを知ってもらう場を】
ブルーノ・デロワ: 私が勤める Canal+は7つの専
門局、専門チャンネルを用いて大ヒット作品などさ
まざまな分野の作品を衛星で放送しています。
私たちは、これまでに大島渚監督や黒澤明監督
などの作品をはじめ、ヤクザ映画、時代劇、ポル
ノ映画などさまざまな日本の映画を放送していま
す。北野武監督、宮崎駿監督、是枝裕和監督、深
作欣二監督などの作品にも興味を持っています。
このように映画に関しては実績がありますが、ドラ
ブルーノ・デロワ 氏
マに関してはこの2年間くらいの活動にすぎません。
まず、最初に取り扱ったのは、日本のマンガを原作にしたものでした。また、『怪奇十三夜』(日本
テレビ、71 年)というホラーの時代劇も放送しました。これは中田秀夫監督の『リング』と同じ時期
に放送しました。日本の映画とのつながりを見せたい、日本の伝統的なものと日本のホラーをつな
げたいというこの試みは、大成功しました。この経騒からも私は日本の作品はもっと成功する可能
性を秘めていると思っています。そのために、新しいものを提案していきたいし、実際にこちらから
も働きかけていきたいと思います。
さて、日本のドラマを輸入するにあたって、私たちが抱える問題は何か? まず、日本のセラー側
からのアプローチが少ないことです。日本のドラマに関するヨーロッパの人々の関心は決して高い
とは言えませんが、それは日本の番組を知る機会が少ないからだと思います。試写会も少ないし、
見本市などで実際にお会いする機会も少ない。私自身、これまで日本の会社から直接話を持ちか
けられたことはありません。一方で、アメリカの配給会社からのプレッシャーは、比較にならないほ
どすごいものです。したがって、皆さんにはぜひ、もっと積極的になっていただきたい。自分たちの
作っているものに自信を持ってください。そして、皆さんが一番良いと思う作品を、毎年ヨーロッパ
で試写会をして見せてはいかがでしょう。作品を選び、またMIPCOMやMIPTVなどで見せて、輸
出する。その際、どのような番組が国際的に通用するのかを皆さんの側で決めていく必要がある
と思います。昨日の東京ドラマアウォードで『JIN̶仁̶』や『Mother』(日本テレビ)を見ましたが、私
は皆さんの番組にはヨーロッパの人々を魅了するだけの十分な力があると思います。
ただし、フランスをはじめヨーロッパでは政府によって海外作品の放送時間に関する制限がありま
す。放送局には「6割はヨーロッパ製の番組を放送しなければならない」という義務があり、他の地
域の番組を放送できる時間が限られているのです。つまり、皆さんはヨーロッパで番組を売るため
には、アメリカのようなコンテンツ大国と闘っていかなければならないということです。しかし、それ
を恐れることはありません。日本の番組はアメリカと並ぶ、いやそれ以上に水準が高い̶̶それを
示してはいかがでしょうか。
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皆さんにはぜひ、自発的で道理にかなったアプローチをしていただきたい。例えば、周辺から攻め
るアプローチがあります。フランスでアメリカのテレビシリーズが最初に紹介されたとき、アメリカの
番組内容がやや先鋭的すぎたため、アメリカ側の戦略として、彼らは最初に衛星放送局で放送す
ることから始めました。そこから徐々に浸透させて、口コミなどで情報を高めていったのです。それ
で一般市民も興味を持つようになりました。
このようなトロイの木馬的な方法をとれば、ヨーロッパでも十分なチャンスはあると思います。視聴
者はいろいろな番組に興味があります。特に文化的に関心を惹きつけるものは十分にあると思い
ますので、それを売っていってほしいと思います。
ガロッド 積極的に営業をしてほしいということですが、実際に買われた番組はどうでしたか?
デロワ そのときは、日本の企業からのアプローチではなく、フランスの配給会社からの紹介でした。
その会社は日本の時代劇に詳しく、そこがセレクトしてくれたのです。日本にはさまざまな番組が
ありますが、英語の字幕が付いていれば、私も理解できますし、素晴らしさもわかります。日本の
セラーの方が営業活動で細かい説明をすれば、もっと売れるのではないかと思います。フランスは、
日本の映画に大きな敬意を払っていますので、フランス人の関心をテレビを通じて高めるところか
ら始めていただきたいですね。
【10 代の若者からトレンドを発信】
日本のドラマの台本を読みます。かなりの作業でも
あるのですが、とても楽しんでいます。
ヨーロッパ人として、日本のドラマを見てどう思うか
というお話をします。最初、日本のドラマは時代劇
などの歴史ものが多いのかなと思っていました。と
ころが、何百という台本を読んでいくうちに素晴らし
ヴァージニア・ムスラー 氏
いバリエーションがあることに気づきました。ストー
リーが実に複雑で、また、人物の性格が本当に深い。ですので、4月と 10 月にはすべての台本を
ガロッド: 次にヴァージニア・ムスラーさん
関心を持って読んでいます。台本を読む限り、私は日本のドラマはヨーロッパのプロデューサーに
にお話をうかがいます。
対して大いに刺激になるのではないかと思っています。
ヴァージニア・ムスラー: 私は、The WIT と
ヨーロッパやアメリカのドラマシリーズと日本のドラマを比べると、どこが違うのか? 私が最も関心
いう会社のCEOをしています。The WIT
を持ったのは、まず年齢層です。つまり、10 代の若者が対象になるということです。フランスをはじ
は、世界 40 カ国以上の新しい番組を分析
めヨーロッパではマンガが大人気ですが、例えばドラマコミュニティのようなものを作り、市場に
しています。ドキュメンタリー、ドラマ、エン
除々に浸透させていってはどうでしょうか。周辺から攻めていくという方法です。
ターテインメント、バラエティ、トーク番組、
一方、時代劇もヨーロッパで成功しないというわけではありません。ヨーロッパには世界各国の歴
ゲームなどさまざまなジャンルの分析を行
います。毎年4月と 10 月には、日本の新
5
しいドラマも届きますが、私は
史ものを専門に放送するチャンネルもありますし、時代劇に関心を持つ視聴者もいます。ヨーロッ
パでは、歴史もので二つの作品が大成功しています。まずは、イギリスのBBCが放送している『カ
ジュアルティ990』です。20 世紀前半のイギリスの病院が舞台です。こうした医学もので 20 世紀初
頭の設定ということでは、昨日の「東京ドラマアウォード2010」でグランプリを受賞した『JIN̶仁
̶』を思い出しますが、『JIN̶仁̶』には過去の病院の話だけではなく、医者が未来から来ていると
いうひねりがあります。そういったところが若い世代にウケるのではないかと思うのです。
もう一つの例は、ロマンチックなドラマとして、スペインのロマネスク時代のドラマ『赤い鷲』です。こ
れも公共放送が放送したもので、ヨーロッパで大きな存在感を示しました。非常に冒険的なストー
リーであり、 冒険もの にありがちなヒーローもいるわけです。
私が見た日本の刑事ドラマで、 人生に何か失敗したことがある。でも自分のキャリアを取り戻す
ためにがんばって闘わなければならない といった設定がありました。ヨーロッパでも同じように個
人が問題を抱えている設定はあるのですが、日本の刑事ドラマとはテーマの取り上げ方が異なり
ます。日本のドラマシリーズでは、ヨーロッパではあまり見受けられないひねりが多いと思います。
09 年に日本で見たのですが、『メイド刑事』(テレビ朝日)というドラマは、有名人の家で家政婦をす
る女性が実は警察官という設定です。掃除機をかけたりしていますが、実は、スパイをしている。
いわゆるコメディのキャラクターなのですが、日本のこうしたコメディでは、一人の登場人物の中に
二つの違った性格を持たせることがよくあります。二つの生き方が対立するということもあるのかも
しれません。
同年のテレビ東京の『ママはニ
ューハーフ』というドラマも、会
社の役員が、夜はホステスをし
ているというニューハーフの話
でした。これは西洋人にとって
全く新しい発想で、コメディとし
ても成功しました。南米でも広く
受け入れられ、このフォーマット
を使って、スペイン、イタリアな
どで『ラララ』というタイトルでリ
メイクされたのです。傲慢で女
性をひどく扱うような男性なの
シンポジウムの様子①
ですが、違うタイプの女性に会
い、その人に魔法をかけられて女性にされてしまう。そして、いままで女性にしてきたことを今度は
自分が味わわなければならないというストーリーでした。
医療ドラマも世界的に人気があるジャンルです。特に日本の医療ドラマはひねりがあり、主人公は
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人間関係に問題を抱える天才という場合が多い。アメリカにも似たようなドラマに『ドクター・ハウ
ス』というシリーズがあります。でも、日本の場合、医者は素晴らしいことをします。例えば、今年の
10 月に日本テレビが放送した整形外科医のドラマ(『Face Maker』)などがあります。
もう一つ、アンダーワールドの話もしたいと思います。家賃も払えない女医がナイトクラブで働くと
いう話がありました。また、フジテレビでも今シーズン『流れ星』というドラマがありました。自殺を企
てた風俗嬢が暗い過去を持つ男性に出会うという内容です。このようなドラマは、ヨーロッパでは
あまりありません。いまヨーロッパで大変人気のある『娼婦の館』というショーもやはり歴史もので
アンダーグラウンドの世界を描いています。
最後にテーマとして挙げたいのが ティーンエイジ や ハイスクール ドラマです。ヨーロッパで最も
ウケるテーマですが、日本でも予想できる傾向ではないでしょうか。日本テレビの『Q10』というドラ
マで思い出すのは、スペインで4シーズン前に始まった『ボーディング・ルーム』という人気ドラマで
す。寄宿舎で殺人が起こる話ですが、テレビ朝日の『熱海の捜査官』というドラマに似ているかもし
れません。
結論として、西欧諸国における日本のドラマの成功や突破口は、さまざまな分野にチャレンジする
ということなのではないかと思います。ありきたりの内容ではなく、若い世代、特に 10 代の若者に
問いかけるということです。若者たちは、マンガに大変興味を持っています。日本のマンガは、従
来のフランスのコミックとは違います。したがって、日本がヨーロッパの市場に出ていくための突破
口としては、メインストリームの内容や従来の伝統的な分野で闘うのではなく、新しいコミュニティを
作っていくということだと思います。10 代の若者に新しいコミュニティを作ってもらい、トレンドにして
もらうのです。
ガロッド: 脚本付きのフォーマット、つまり番組を直接購入するのではなく、リメイクするということで
しょうか。
ムスラー: そうです。ほとんどの国で成功するドラマというのは、やはり自国のドラマなのです。一
般的に、人は誰でも自分たちの国や町を見たいし、役者も自分が知っているほうがよいのです。し
たがって、ここ数年の新しいトレンドとして、シナリオを別の国の作品から持ってきて、それを自分
たちの国で地元の俳優を使って制作するケースが多いのです。つまり、シナリオはどこの国から持
ってきてもよいということです。
例えば、ドイツとアメリカで大成功した『アグリー・ベティ』も、もともとはコロンビアからきたものです。
ドイツとコロンビアの作品の雰囲気はかなり違います。イスラエルの作品がアメリカに行き、それが
そのままオランダに行って成功したものもあります。アメリカ、オランダ、イスラエルと全く同じ脚本
ですが、違う役者で制作したのです。
日本のドラマは、インスピレーションが非常に豊富で、ストーリーが面白い。フランスやヨーロッパ
のプロデューサーは、良い脚本を探しているので、その意味で、日本はリメイクの可能性の宝庫だ
と思います。
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【マンガ文化をベースに】
ガロッド: 次にマチュー・ベジョーさんからうかがいましょう。
マチュー・ベジョー: 私は、フランスのTVフランス・インターナショナルという会社でテレビ番組を輸
出する側にいます。そして、たぶん皆さんと同じような経験をしていると思います。それは、アメリカ
に行くと、「フランスの作品もエスニックチャンネルのなかにならあるかもしれない
」と言われるの
です。われわれが国際市場のなかでどれだけ小さいのかということを思い知らされます。
では、どのように日本のドラマを輸出したらいいのか。二つのアプローチがあると思います。一つ
は、日本の文化的価値を高めようという動き。もう一つは、経済的な側面です。
私は、日本のドラマが輸出できていないことを驚くべきではないと考えます。フランスでも経験して
きましたが、日本は自国が非常に大きな市場で、しかも主にテレビ局が制作費を出しており、資金
調達面で問題がなく、少なくとも海外に輸出しなければならないインセンティブは全くありません。
フランスでも国内向けに制作しているので、わざわざ海外へ販売しようとは動機づけられていなか
ったのです。
日本では誰が著作権を持っているのか、著作権を
わざわざ販売するためのインセンティブがどこに働
くのか̶̶ということがあると思います。フランスやそ
の他ヨーロッパ各国においては、独立系のプロデュ
ーサーが著作権を持っています。生産コストは、国
内市場で放送することでどうにか得ており、それ以
上の利益を得たい場合は、その著作権を海外で売
マチュー・べジョー 氏
る、また、ある程度経ったところでDVD化して国内
で売るということで賄います。こうした点は、日本と
は状況がかなり違っていると思います。日本では、そのような動機づけがあえてされなかったと思
いますが、それが一つのプレッシャーになります。
ドラマについて言えば、実は国際的なドラマ市場というものは存在しません。市場というと MIPTV/
MIPCOM のような見本市ということになりますが、いわゆるテレビドラマ専門の見本市はありませ
ん。「国際ドラマフェスティバル」は例外であり、成功を収めていることをお祝いしたいと思います。
ただ、ドキュメンタリーやアニメーションなどは違った資金調達の方法やフェスティバルもあります
が、テレビドラマ専門の国際的なイベントはないのです。それは、他国に自国の番組を輸出しよう
とする際に、「プライムタイム用に売りたい」「主要な放送局に売りたい」と考えるからです。なぜな
ら、そこに一番お金が集まるからです。しかし、プライムタイムに放送するドラマは国内作品、ある
いはアメリカもののどちらかです。韓国やスペイン、メキシコの作品がフランスの主要な放送局の
プライムタイムに放送されることはないので、市場ができないのです。そういった余地が全くないわ
けではありませんが、実際にはドラマの輸出は昼帯やプライムタイムの前の時間帯、または専門
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局に放送させるのが現実的です。そういったマーケットを考えていくべきだと思います。
専門チャンネル、衛星放送、ケーブルテレビなどに売るのは、主要な放送局の場合と比べて値段
が全く異なります。吹き替えや字幕付けのコストもありますし、ビジネスモデルとしてかなり大変だ
とは思いますが、いろいろなチャンネルや新しいオペレーターが続々と設立されており、日本も地
上波がデジタル化すると、新たな機会ができることにもつながります。そういった意味では、番組に
対する新しい需要が非常に大きいということでもあります。
日本のセラーの皆さんが直面する困難は、輸出に際しての問題だと思います。例えば私がTVフラ
ンスの番組を輸出しようとすれば7割から8割が西欧や東欧です。ドイツやイタリア、スペインなど
大きな市場もありますし、ライセンス費程度は支払う余裕がある国もあります。こういった地域は、
われわれにとって文化的にも地理的にも非常に近いわけです。
われわれは、日本にもフランスの番組を売っていますが、フランス番組をキー局でご覧になったこ
とはないと思います。日本はかなり特殊な市場ですが、大きなテレビ局に接近しようとしても、それ
は時間の無駄ということになります。アジア諸国も同じで、韓国では、日本の番組は法律的にも衛
星放送やケーブルテレビのみにしか許されていません。中国でも1980年代から 90 年代には日
本の番組に大きなプレゼンスがありましたが、新たな規制が導入され、プライムタイムは海外ドラ
マの放送が規制されています。中国という大きな市場、日本のドラマについての意識を高められる
はずの市場が解放されていないということです。
ヨーロッパは、非常に成熟した市場です。広告やライセンスなど、放送局にとってお金を儲けられ
るとても大きな市場ですが、こちらも6割がヨーロッパのものでなければいけません。残りの4割が
非ヨーロッパであってもいいわけですが、競争が厳しく、特に米国からの攻勢は非常に厳しいので
す。さらに、イスラエルなど新しいコンテンツ制作国からの番組販売も出てきており、この4割の枠
をめぐる競争は熾烈です。
プライムタイムだと、主要局ではほぼ放送が不可能なので、日中の時間帯ということになりますが、
全 11 話といった短いものではなく、毎日見てもらうためにもっと長いシリーズが必要になる。です
から、成功したものは、放送が毎日できて、視聴者にいつも見てもらえたということが要因だったと
思います。話数が短いと、そのような時間枠を確保することがなかなか難しくなるのです。
また番組には、オリジナリティがなければいけないと思います。ヨーロッパでは4割しか海外用の
放送枠がないわけですから、目立つものを見せていかなければいけません。ムスラーさんからも
指摘されたように、売っていくことも大事ですが、日本の価値観、日本にとって大事なことを伝えて
いくべきです。NHKの大河ドラマ『龍馬伝』が台湾、中国、韓国、ベトナムなどで売れているという
ことは、皆さんも期待したとおりの結果だと思います。それはヨーロッパ人から見ても同じかもしれ
ません。日本の映画を考えたときには、やはりサムライの映画と考えてしまうからです。
また、私たちが好きなものは、必ずしも皆さんが見せたい日本ではないかもしれません。日本の暗
い部分をわざわざ海外に紹介したくないと思うかもしれませんが、人々は、そうした刺激を求めて
います。ビジネスにあたって、日本の素晴らしい点を伝えることができれば、何でも売れるのでは
9
ないかと思いますが、それと同時に、日本のダークな部分、社会が抱える問題などを描いたもの
が売れていくかもしれません。過去2年間、私たちは日本のドラマを見てきたなかで、『JIN̶仁̶』
や『のだめカンタービレ』(フジテレビ)などはすべてマンガが題材だと聞きました。これは日本の強
みになります。フランスのコミック誌のうち3割が日本のマンガです。世界中に素晴らしいファンの
ベースがあると思います。そこを通じて市場へ向かっていってはいかがでしょうか。皆さんはすで
にマンガの読者を十分確保しているのですから。
私たちは日本のドラマについての知識が浅く、日本語ももちろん読めないので、「TVI」「Variety」な
どハリウッドの雑誌を読むのですが、それらには日本のことがほとんど書かれていません。例えば、
新シーズンが始まった日本でどのようなドラマが放映されているのか、どのような視聴率なのか̶
̶こうした情報は全く手に入らないのです。したがって、皆さん側からそのような話題を作ることも
重要だと思います。人々にとって、マンガの認知度は十分に高いし、相応のお金を払ってくれてい
ます。パリの本屋などではマンガを立ち読みしている少年少女たちがたくさんいます。そのようにド
ラマに対しても口コミで広めていってはどうでしょうか。
『花より男子』(TBS)というドラマは典型的でした。もともとは日本のマンガで、ドラマ化され、韓国
でリメイクされ成功し、アジア各国で販売されたと聞いています。これは、マンガを土台にフォーマ
ットとなり、1シリーズが海外で新たに現地の俳優を使って制作されるということです。フォーマット
を作るのは、大変難しいことです。もしかしたら、新しいバージョンがもとのバージョンよりも人気が
出てしまう。そして輸出市場で競合するかもしれません。このようなリスクがあっても、取り組むべ
きではないでしょうか。
さらに、「MIPCOM Buyers' Award」の審査のためにDVDを見て、日本のドラマをあまりにも気に入
ってしまい、実はそのあとネットで調べてみたのです。すると、ネットに英語字幕の付いたドラマシリ
ーズが出ていました。それは違法に投稿されたものでしたが、『Mother』『JIN̶仁̶』といった作品
が隠れファンによってインターネットにアップされていたのです。短いフォーマットで3つから4つに
分けられて YouTube などに載っ
ていました。また、日本のドラマ
専用のウェブサイトもありました。
ハリウッドのスタジオもこうした海
賊版を警戒していますが、海賊
版が売れるということは、裏を返
せば、それだけ市場があるという
ことです。人々が字幕まで付けて
日本のドラマをインターネットにア
ップロードしているということは、
日本のドラマに関心があって見た
シンポジウムの様子②
10
がっている視聴者が世界にいるという証拠だと思います。
デロワさんがおっしゃっていたように、ヨーロッパなどのテレビ市場では、大きな視聴者層をターゲ
ットにしなくてもいいのではないでしょうか。今年のMIPCOMに『MADMAN』というテレビシリーズ
の2人の俳優が来ていました。いま一番話題のテレビドラマで、アメリカの 60 年代の広告業界の
話ですが、実はアメリカでの放送チャンネルはメジャーではなく、視聴率も低いのです。こうした例
を見ても、口コミを広める、視聴者を見つけることが大事であり、ヨーロッパや他の国に営業活動を
すれば必ず受け皿があると思います。時間はかかるかもしれませんが放送局の役員などに皆さ
んの番組を見てもらえば、買ってもらえるかもしれません。
フランスでは、フランス人以外の人がテレビに映っていることにまだ慣れていません。黒人がテレ
ビに映ることもあまりありませんが、現実にはフランスの街中では黒人は大変多いのです。アメリ
カのドラマでは日本人、韓国人、そしてたくさんの黒人がマイノリティとしてキャストされ、活躍して
います。フランスは、そのような部分では遅れていると思います。いま、政府の特別委員会には、
テレビで多様な人種を見せていこうという動きがありますので、中国人やベトナム人などマイノリテ
ィのテレビ出演がフランスでも一般的になるかもしれません。日本のドラマにも、より可能性が出て
くるのではないでしょうか。
まず、皆さんから話題を作ってください。チャンスは絶対にあります。例えば、映画祭を利用して、
そこでドラマを見せてはどうでしょうか? 今年は9月にフランスで開催された映画祭に初めてアメリ
カのドラマも上映され、アメリカにとって大きな土台となりました。アメリカ人の脚本家とフランス人
の脚本家によるパネルディスカッションもありました。このように日本もアジアの映画祭でドラマを
上映してみてはいかがでしょうか。そうして、人々の関心を高め、許容度を高め、話題を作ることが
必要だと思います。
【政府からの支援、フォーマット販売】
ガロッド: ベジョーさん、TVフランス・インターナショナルは、政府から援助を受けていますね? フ
ランスの番組を海外に輸出するための政府からの援助について教えてください。
ベジョー: 予算の3分の2は政府からの援助です。もともとは業界団体だったのですが、15 年ほど
前にテレビがグローバル化して、フランス国内だけに留まっていてはいけないが、フランス企業が
単独で国際市場に出るには十分ではないという状況にあったことから、それらを共同で行うため、
われわれの会社を立ち上げました。ただし、政府機関ではありません。
ガロッド: そのように政府が援助している国や企業が多く見られます。貴社も成功していますが、
韓国のKOCCA、シンガポールのMDAなども輸出活動の支援をして、成功しています。日本政府
にも同様の支援策があればいいと思いました。国際的なプロモーションを行うなかで、何らかの形
で政府の援助があればいいのではないかと思います。どういう作品を選ぶのか、どのような方法
11
をとっていくのか、ということも大事です。したがって、見本市を活用して、的確なメッセージを出し
ていく必要があるのではないかと思いました。
フォーマットを販売し、現地でものを作るのも一つの案ですね。
デロワ: 良い考えだと思います。現地のプログラムであることが重要だと思います。日本の良い番
組をリメイクするのであれば、市場拡大としても非常に望ましいのではないでしょうか。日本の番組
ももちろん使うことができると思います。その場合、スケジュールを検討して、どこが一番ふさわし
い枠なのかを検討していただかなくてはなりません。
ガロッド: いわゆる専門局で人々の関心を喚起してプロモーションのマーケティングをしていくのに
あたり、エピソードの数や長さは問題になりますか?
デロワ: 大きいチャンネルでは問題かもしれませんが、小さい放送局なら問題ありません。例えば、
われわれも日本の番組用として放送枠の確保は可能だと思います。フランスでは、日本の映画を
大変高く評価していますから、映画とドラマを組み合わせることもできます。したがって、日本のテ
レビドラマを映画祭に出してみる方法もあります。それによって、興味や関心も高まると思います。
ガロッド: 本日は、貴重なご意見をありがとうございました。
12
ローリンヌ・ガロッド 氏 (Laurine Garaude)エール大学卒業後、1993 年リード・ミデム社に入社。エンターテ
インメント(テレビ、音楽、ゲーム、出版)とデジタル技術の有力企業を集めたコンテンツマーケット「MILIA」を
立ち上げる。10 年以上にわたり MILIA D'OR 大賞の新設や話題を集めたシンクタンク会議の創設などに従
事。2004 年、同社のマーケティングチームに参加。カスタマー・リレーションシップ・マーケティングのディレク
ターとして、研究部門とダイレクト・マーケティング部門のトップを務め、「顧客認知プログラム」や「リード・ミ
デム品質基準」など、数々の顧客向けイニシアチブを発案。2010 年 MIPCOM/MIPTV ディレクター。
リード・ミデム社入社以前は、ラジオのプロデューサー、ニューヨークの出版社で外国版権担当を務めた後、
フランス・パリに移住し、「Nathan Publishing グループ」に入社。年間 50 作品以上の制作・販売を担当し、多
くの写真・アート・旅行・生活関連のベストセラーを出版。
ブルーノ・デロワ 氏 (Bruno Deloye)1963 年生まれ、パリ・ダウフィン大学で放送・通信技術、テレビシステ
ム・通信マネジメントの修士号を取得。1989 95 年の間、Region Cable(ヴィヴェンディの子会社)のディレク
ターの第 1 アシスタントとして勤務、91 年にフランス初のペイ・パー・ビュー方式のチャンネルを立ち上げた。
その後、MCM-Euromusique グループのマネージャーとして Muzzik(初のクラシック・ジャズ専門チャンネル)
の開局も担当。
2000 年、Canal+グループの映画専門テレビ局「Cinecinema」(フランスで最も有力なケーブル・衛星テレビグ
ループ)入社。フランス・イタリア・スペインの Cineclassic のマネージャーを務める。02 年 9 月、テーマ特化
型チャンネルの Classic、Club、Famiz、Star を立ち上げ、現在も各チャンネルのマネージャーを務めている。
また、CNC(フランス国立映画センター)の映画遺産委員会のメンバーのほか、さまざまな映画祭の審査員
を務める。
ヴァージニア・ムスラー 氏 (Virginia Mouseler)大学で哲学・精神分析学を専攻。卒業後、一流ビジネススク
ールを修了。精神分析学者として働くかたわら、作家としても精神分析に関する 2 本の小説と 1 本のエッセ
イを出版。いずれも複数の言語に訳され、多くの国で読まれている。
1996 年、「The WIT」を創設。テレビ業界に着目し、世界各国で放映されているテレビ番組に関して最も幅広
い情報を取り扱う世界有数の専門組織に発展。The WIT のリポートやオンラインサービスは、各国の主要
放送局、制作会社や配給会社に利用され、新番組の企画やライセンス取得の推進に役立っている。CEO
を務めると同時に、セラピストとしての活動や思考過程の研究も引き続き行っている。
マチュー・べジョー 氏 (Mathieu Béjot)2000 年、テレビ番組販売に携わるフランス企業の連合体、TV フラン
ス・インターナショナル(TVFI)に入社。
TVFI には制作会社、配給会社、放送局など約 150 社が加盟し、加盟社の番組販売量はフランス全体の
90%以上を占める。同社はフランスのテレビ番組試写会「Le Rendez-Vous」を主催し、海外の放送局を対
象にフランスの最新テレビ番組の視聴や、フランス各社との商談の機会を設けている。主要地域における
販売促進のための展示会の開催や、主要な国際テレビ番組見本市でのパビリオン・ブース出展も行う。
TVFI 入社以前は、各国のフランス大使館(日本=1997 2000 年、香港=1994 1997 年、カナダ=1988
1993 年)で、広報担当として勤務。
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