クーポンのない生活は考えられない

流通科学大学卒業論文
向山
雅夫ゼミ
―ク ーポンのない生活は考えられない
―
商学部
流通学科
経営学科
学籍番号
35001381 為石百合子
35001704
信國由希
35002417
矢辺慶子
37000896
黒川嘉彦
提出日
12月19日(金)
目次
序
章
P.3
★ ∼なぜクーポンが今∼
★ クーポンの定義
第1章 世
界
の
歴
史
と
日
本
の
歴
史
P.4∼P.8
第1節 世
界
の
歴
史
の
歴
史
P.4∼P.6
第1項 クーポンの始まり
第2項 初期のクーポン
第3項 クーポンビジネスの時代到来
第4項 アメリカの現状
第2節 日
本
P.6∼P.8
第1項 日本のクーポン事始め
第2項 日本にも遂にクーポンビジネスの時代到来か
第3項 日本の現状
番 外 編
知 っ て お く べ き
ク ー ポ ン 付 き 広 告 の 法 的 規 制
P.9∼P.12
【HAVE A BREAK 1】
∼ 日 本 ク ー ポ ン の 草 分 け 的 存 在 、「 な る ほ ど , ザ ・ ク ー ポ ン 」 ∼
P.13
第
2
章
ク
ー
ポ
ン
の
い
ろ
い
ろ
P.14∼P.29
第1節 ク
ー
ポ
ン
の
意
味
ー
ポ
ン
の
機
能
ポ
ン
の
種
類
P.14
第2節 ク
P.15∼P.16
第3節 ク
ー
P.16∼P.28
第1項 モバイルクーポン
第2項 インターネットクーポン
第3項 ダイレクトメール(DM)
第4項 新聞折り込みチラシ
第5項 フリーペーパー
第6項 レジクーポン
第4節 値
引
き
と
ク
ー
ポ
ン
の
違
い
P.28∼P.29
【HAVE A BREAK 2】
∼ 幻 の フ リ ー ペ ー パ ー 「 dictionary 」 と は !? ∼
P.30∼P.31
第
3
章
ホ
ッ
ト
ペ
ッ
パ
ー
に
つ
い
て
P.32∼P.55
第1節 ク
ー
ポ
ン
に
対
す
る
消
費
者
意
識
の
変
化
パ
ー
」
P.32
第2節 ク
ー
ポ
ン
マ
ガ
ジ
ン
「
ホ
P.33∼P.46
第1項 ホットペッパーとは
第2項 ホットペッパー誕生の経緯
第3項 サンロクマル・ホットペッパー媒体概要
第4項 ホットペッパーの経緯
ッ
ト
ペ
ッ
第5項 ホットペッパーの収益源
第6項 ホットペッパーの商品設計
第3節 リ
ク
ル
ー
ト
の
戦
略
P.47∼P.55
第1項 情報誌の機能
第2項
在庫 のない情報誌事業
第3項 地域の読者と店をつなぐ
第4項 ショートレンジでのコミュニケーションがブランドをつくる
★ 大 手 居 酒 屋 に ク ー ポ ン を 出 す 意 味 を 聞 い て み よ う ! ! ★
P.51∼P.53
☆
ホ
ッ
ト
ペ
ッ
パ
ー
パ
ー
テ
ィ
ー
☆
P.54∼P.55
【HAVE A BREAK 3】
∼なぜホットペッパーのCMはあんなにおもしろいのか!?∼
P.56∼P.57
第 4 章
日 本 に ク ー ポ ン 文 化 は 根 付 く の か
P.58∼P.63
第 1 節
ホ ッ ト ペ ッ パ ー が 流 行 り だ し た 理 由
P.58∼P.60
第1項 ターゲットの明確化
第2項 個性的な CM による クーポンマガジン というブランド確立
第3項 ちょっとした気配り
第 2 節
ク ー ポ ン が 根 付 き 始 め た 理 由
P.60∼P.6
第1項 長引く不況とフリーメディアの浸透
第2項 社会的評価
第3項 割引にとどまらないクーポン
【HAVE A BREAK 4】
∼あなたのクーポンのめり込み度をチェックしよう!!∼
P.64∼P.65
終
章
文
献
P.66∼67
参
考
P.68∼P.70
序章
∼なぜクーポンが今∼
最近、街で「ホットペッパー」を見ながら食べに行く店を探している人を多く見かける
ようになった。しかも、ここ2、3年の話である。私が人生で始めて使ったクーポンは高
校2年生の時のローソンクーポンである。私は、そのとき「なんだ、このお得感は…」と感
じたことを覚えている。しかし、それ以来ホットペッパーが出てくるまでクーポンという
存在を忘れかけていた。
それ以前は、店独自のスタンプカードが埋まると割引が受けられたり特典がついてくる
というものが主流であった。しかし現在は、初めから割引や特典がついてくるクーポニン
グがマーケティング手法としてクローズアップされている。流行りにうといはずの私の母
親も毎月ホットペッパーを持って帰ってくる。そのクーポンを使っているかどうかはわか
らないが、リクルートにとっては発行部数が増え広告収入アップにつながるのでありがた
い客である。また、ホットペッパーが流行ったことで、既存のネットクーポンやクーポン
雑誌も再び注目され始めた。
日本にクーポン文化が根付きつつあるのは、急激にクーポンに対する消費者の考え方が
変わったせいか。不況でお金がなく、
「少しでも安く」という単純な消費者心理なのか。ア
メリカでは、クーポニングが盛んであるのでアメリカのマーケティング手法を真似してい
るだけなのか。いや、それだけではないはずである。そこには、きっと、消費者と出版社・
小売店・飲食店の間で様々な思惑が飛び交い、まさに凄まじいドラマが生まれているはず
である。それを解明していくことがこの卒業論文最大のテーマである。
【クーポンの定義】
私たちは、消費者側の定義「紙片や携帯画面を見せることによって、代金が割り引かれ
たり、何か特典がつくもの」
。小売店・飲食店側の定義「広告、集客効果」という両者の立
場にたった定義をもとにこの卒論を進めていきたい。
第1章
世界の歴史と日本の歴史
第1節
第1項
世界の歴史
クーポンの始まり
ローマの化粧品を販売するペドラーはその商品を購入した客にインセンティブと
して小物を提供した。これがインセンティブとして金券を提供するプロモーションの
起源である。このようなプロモーションが、この200年の間に成長した。
クーポン等のプロモーション・テクニックのルーツを探ると、いくつかの例がある。
例えば、昔の小売店はしばしば、おつりの代わりに「木製ニッケル」を渡した。このニ
ッケルは、その店でしか利用できない。したがって、再度来店させることを目的に発
行された。また、木製ニッケルは記念コインとして利用され、一定期間の間は貨幣と
しても有効であった。しかし、有効期限をすぎると、ただの木片となった。木製ニッ
ケルを通常の貨幣と交換する人もいた。
最初のクーポンは、1895年、ミシガン州のバトルクリークにあるシリアル・メ
ーカー、C・W・Post 社が発行したクーポンである。社長のポスト氏が、新製品であ
る「グレープ・ナッツ」を市場に導入する際、グローサリー・ストアで値引き券として
1セントのクーポンを消費者に提供した。
1920∼30年代、クーポンは、新聞媒体に掲載された。この時代は同時に、マ
ーケティングがメーカーのさまざまな活動の中でも主要な役割を果たすようになっ
た時代でもある。先進的な企業は、プリント媒体を利用したセールス・プロモーショ
ンを展開した。その1つの手法がクーポニングであった。
第2項
初期のクーポン
1950年代、大量生産の時代に入るとセールス・プロモーションのクリエイティ
ビティも開花し始めた。コンテストやプレミアムが流行し、TV も全盛、広告代理店
は「ライフ」や「ルック」の雑誌にみえる見開きの広告に力を注いだ。また、数多くの新
製品が市場に導入され、徐々に新製品トライアル促進のためにクーポンが利用され効
果をあげた。この頃、クーポンはあまり組織化されておらず、活動記録はあまりない。
しかし、次に挙げる7社が、クーポニングに積極的であった。プロクターアンドギャ
ンブル、ゼネラルフーズ、コルゲート、リーバー・ブラザーズ、ゼネラル・ミルズ、
スコット・ペーパー、そして A・C・ニールセンである。
1965年には、A・C・ニールセンのクリアリング・ハウスがクーポンの発行に
関する数字を公表し始め、他の情報ソースとあわせ、クーポンに関する状況がある程
度明らかになった。
第3項
クーポンビジネスの時代到来
1960年には、アメリカ内で配布されたクーポンの総数は、50億枚に手が届く
に過ぎなかった。しかし、1970年には3倍以上に当たる164億枚を突破した(ク
ーポンの配布増加は、インフレーションによるところが大きかった)。さらに、クー
ポンの配布枚数が再び3倍増加するのに、今度はわずか6年しかかからなかった。1
976年の総配布枚数458億枚、翌77年には620億枚へと増え続けていった。
1980年には964億枚、1990年には2800億枚へと増え続けている。
第4項
アメリカの現状
アメリカは、まさに「クーポン天国」である。アンケートによると、消費者の約8割
がショッピングでクーポンを「たまに使う」と答え、4分の1は「毎回使う」と答えてい
る。最近の1年間におけるクーポンの総配布枚数は、約3000億枚で、1世帯当た
り年間3000枚配布されている。まさに「クーポン洪水」と言っても過言でない状況
である。アメリカでは、至る所でクーポンに出会う。例えば、毎日配達される新聞本
体に刷り込まれているのは当たり前で、雑誌も同様である。新聞の日曜版には「スタ
ッファー」と呼ばれるクーポンのようなものが入ってくる。さらには「バリュー・パッ
ク」と呼ばれるクーポンがいっぱい詰まった DM が郵便で送られてくることもある。
大学の講義要項の中にもクーポンが刷りこまれている。若者がよく行く日焼けサロン
やレストラン、文具店、スポーツ用品店などのクーポンである。また、サランラップ
を使っていくと、最後の芯のところ50セント引きのクーポンがついていたり、クッ
キーの箱の中に入っていたりする。
消費者にとってだけではなく、企業にとってもクーポンはプロモーションの主要な
手法である。アメリカ企業が行なう消費者向けプロモーションの約4分の3をクーポ
ンが占めている。文献も、消費者向けプロモーションの項目と言うとほとんどクーポ
ンが終始している。アメリカでは店頭 POP、キャンペーン、プレミアム、サンプリ
ングよりクーポンのほうが圧倒的に多いのである。クーポンはアメリカの生活文化に
根付いている。
アメリカのクーポンはこの数年で非常に変化した。年間総配布枚数は、現在、次第
に頭打ちになっている。アメリカの消費者がクーポンから離れてしまい、企業もクー
ポンを軽視し始めているのか。答えは「ノー」である。従来のようにマス媒体を用い、
誰かれ構わず配布する「紙爆弾」といえるようなパターンは減少し、もっと焦点を絞っ
て、ターゲットの明確な媒体に載せたり、限られた人に DM で送るといった配布方
法が増えている。
第2節
日本の歴史
日本のクーポニング、クーポン広告についての歴史は、他のプロモーション活動(店
頭 POP、キャンペーン、プレミアム、サンプリングなど)に較べると非常に浅い。
アメリカでは古典的なツールであるクーポンは、新たなプロモーション手法として1
990年代に導入し始められ注目されたが、すぐには日本人の日常に根付くほど成長
しなかった。
第1項
日本のクーポン事始め
1990年10月、日米経済摩擦から市場開放を目指す一策として、日米構造協議
が日本の規制緩和、アンフェアな商習慣(系列、談合など)を廃止すべく、アメリカ
主導でスタートした。その結果として大きく揺さぶられたのが、大店法の緩和・改正
であり、そして日本の消費者にも安く良い商品を提供する施策として新聞のクーポン
が解禁された。翌3月には新聞折り込みチラシによるクーポン広告も実施可能になっ
た。
新聞クーポン第1号が、電通と2大新聞社により首都圏でスタートした「ザ・メー
カー・クーポン」である。並行して、新潟、徳島、静岡などの地方紙でも、新しい広
告収入源として導入された。「ザ・メーカー・クーポン」は、クーポンというよりは別
刷り版広告でコストも安く、そのうえクーポンで消費者にディスカウントが提供でき
ると、広告媒体としてのウエートのほうが強かった。一方、店頭型クーポンは、19
84年に日本クーポンシステムにより「なるほど、ザ・クーポン」として、新聞クーポ
ン解禁前から大手スーパーの店頭密着型としてスタートしていた。
第2項
日本にも遂にクーポンビジネスの時代到来か
1996年、インターネットのグルメサイト「ぐるなび」開設。インターネットのグ
ルメサイトでの「クーポンのパイオニア」的存在である。
1997年、日本マクドナルドは、Web ページ上でインターネットクーポンの配
布を開始した。また、ローソンがキャンペーンの一環としてクーポンを導入した。商
品力がある商品にクーポンを付与した場合、その効果が大きいことが明らかになる。
日本マクドナルドやローソンのクーポンが「日本にクーポン文化」定着の地ならしに
なった。不況化で「少しでも安く」という客のニーズにも合った。
また、アメリカで普及したカタリナ社のレジクーポンが、1998年のイオングル
ープを皮切りに、西友、ハックキミサワ、イトーヨーカ堂でそれぞれ実験導入され、
償還率が平均10%にものぼり、効果があることが示された。 1999年12月、
「ぴあ」がグルメサイト「グルメぴあ」を開設した。
2000年7月、リクルートが「360(サンロクマル)」から発見した成功のポイ
ントをブラッシュアップしクーポンマガジン(無料配布誌)「ホットペッパー」を創刊
した。広告料を取り、クーポン付きで店舗情報を載せるシステムである。
2002年5月、㈱有線ブロードネットワークスが「タウンピタ」を開設した。
第3項
日本の現状
日本では、現在、飲食店、美容院、カルチャースクール、スーパーなどでクーポン
が多く配布されている。ターゲットを絞って配布しているというよりは、多くの消費
者にクーポンの存在を知ってもらう段階(紙爆弾)にある。
クーポンがアパレル業界で普及してない理由として、季節はずれの商品や売れ残り
商品はバーゲンで割り引かれるという点と飲食店に比べ利益率が低い点があげられ
る。今後もこの状況は変わらないのではないかと考えられる。
番外編
知っておくべき
クーポン付き広告の法的規制
日本では新聞・雑誌のクーポン付き広告が許可されているが、いくつかの規制が定めら
れている。クーポン・プロモーションを実施するにあたって必要不可欠なこの規制を、ここ
で紹介しよう。
雑誌
雑誌のクーポン付き広告が承認されたのは87年。これをきっかけに、新聞も承認さ
れることとなっていく。
雑誌業における景品類の提供の制限に関する公正競争規約
第6条及び同規約試行規則第8条第2号についての運用基準
公正取引委員会
1.雑誌発行業者は、雑誌発行業者以外の者による経営上の利益(広告に係る事業者が供
給する商品又は役務の割引又は引換え)の提供に関する広告(以下「クーポン付広告」
という。)を自己の雑誌に掲載するに当たって、次のような方法によってクーポン付広
告を当該雑誌の販売促進に利用してはならない。
(1) 他の媒体を利用して当該雑誌の広告を掲載する場合に、クーポン付広告が当該
雑誌に掲載されていることを表示すること。
(2) クーポン付広告の掲載を事前に当該雑誌に告知すること及び当該広告掲載号
の表紙等に表示すること。
2.クーポン券には、次の事項が表示されていなければならない。
(1) 有効期間
(2) 提供される商品又は役務の内容
(3) 利用できる店舗、場所又は事業所等の有効使用範囲
(4) 無料の場合はその旨、値引きの場合はその額又はその割引率
3.雑誌発行業者は、クーポン券と対象商品の引換え等に関わる一切については責を負わ
ないものとする。
雑誌公正取引協議会では、広告の中の一部に印刷されているクーポン券を切り取り、そ
れを広告主が指定した小売店などに持参した消費者が、商品やサービスの割引を受けたり、
無料でサンプル品をもらえる広告のことを「クーポン付広告」としている。
こうした広告を掲載する雑誌は単なる媒体で、雑誌はクーポンの券面に表示された各種
の条件などについて一切の責任事項は追わないとされているが、いくつか注意事項がある。
① クーポン券は切り取られるもの。裏面の広告主にも配慮する必要がある。また、同1
号に2つ以上の広告を掲載する際に、券の印刷位置が表裏で重ならないよう注意が必
要。
② 単に広告原稿を掲載するだけであるので、雑誌の販売促進には利用できない。つまり、
表紙や目次にクーポン付広告が掲載されていることを告知したり、テレビ、新聞、交
通広告などのほかの媒体で告知することはできない。ただし、広告目次への掲載は許
容されている。
③ 広告は原則として本誌の中に掲載することになっており、クーポン付広告をまとめた
別冊や付録は認められていない。
④ クーポン券の形状、数量、割引率、金額には何ら制限がない。また、雑誌1号あたり
の広告主の数や枚数についても制限はない。
新聞
「新聞のクーポン付広告に関する規則」は新聞公正競争規約第11条のもとで、新聞事
業者が新聞の購読勧誘を目的にクーポン付広告を用いることを禁止し、そのための必要事
項を定めたものである。
新聞へのクーポン付広告掲載は90年に許可された後、93年に規則が全面改正されて
いる。規則は擁護を定義して新聞事業者や類似の事業者がしてはいけないことを挙げてい
る「規則」
、規則を円滑に運用できるよう細部について定めた「運営細則」
、違反処理関係
をまとめた「違反処理規程」の3つに分かれている。ここでは「規則」
「細則」の一部を掲
載する。
違反した場合には、
新聞公正取引協議会へ違約金の支払いが義務づけられている。
新聞のクーポン付広告に関する規則
日本新聞協会
【目的】
第1条 この規則は、
「新聞業における景品類提供の禁止に関する公正競争規約」
(以下「規
約」という。
)第11条により、新聞事業者が新聞にクーポン付広告を掲載し、またはク
ーポン付広告を新聞に折り込み配布する場合について、その形式・方法のいかんを問わず、
顧客誘引の手段として利用することを禁止するとともに、その必要事項を定めることによ
り、規約の適正な運用を図ることを目的とする。
【定義】
第2条 この規則およびこの規則に基づく細則等において、次の各号に掲げる用語の解釈
に関しては、当該各号の定めるところによる。
(1)
「新聞事業者」とは、新聞を発行する事業者(以下「発行業者」という。)および新
聞を販売する事業者(以下「販売業者」という。
)をいう。
(2)
「兼業販売業者」とは、販売業者のうち、新聞販売業以外の事業を兼営する事業者
をいう。
(3)
「類似の事業者」とは、新聞事業者が株式を20%以上保有し、人事、資金、取引
などを通じ財務などに重要な決定ができる対象事業者をいい、特段の規定がない限
り新聞事業者とみなす。なお、上記株式を保有する新聞事業者を、類似の事業者と
の関係で、
「親事業者」という。また、複数の新聞事業者にあって、その間の株式
保有比率の多寡にかかわらず、人事、資金、取引等を通じ一方または相互に財務な
どに重要な決定ができる場合には、当該複数の新聞事業者の中の一事業者を親事業
者とする類似の事業者については、他の新聞事業者との関係でも類似の事業者とみ
なす。
(4)
「関連会社」とは、類似の事業者以外で、新聞事業者と資本関係、人事交流がある
会社をいい、あらかじめ所在する支部新聞公正取引協議会に登録したものをいう。
関連会社の系列会社、新聞事業者と同系列とみなされる会社を含む。
(5)
「見本等」とは、広告にかかわる事業者(以下「広告主」という。)が供給する商品
または見本(試供品等)
、もしくは広告主が供給する役務の全部又は一部をいう。
なお、見本に準じるものとして、広告主が供給する商品以外の物品(粗品)を含む。
(6)
「クーポン付広告」とは、広告主が、その供給する商品または役務の価格の割り引
きを約する券類もしくは見本等の無料提供を約する券類を、新聞の広告面もしくは
新聞折り込み広告に刷り込んだ購読者に対する広告をいう。
(7)
「新聞の販売促進を目的とする印刷物」とは、次のものをいう。
① 規約第5条で規定する「新聞類似の付録等」。ただし「新聞折り込み広告、官
公庁の公報その他これに類似するもの」を除く。
② 発行業者の販売部門が発行するもの。販売部門以外にあっても、新聞購読を勧
誘する表現のあるもの。
③ 販売業者がかかわる地域新聞その他購読者に提供する印刷物、販売業者の関連
会社が発行する地域新聞。
(8)
「デリバリー組織」とは、新聞事業者がかかわる新聞販売事業以外の配布組織をい
う。
【禁止事項】
第3条 新聞事業者は以下のことを行ってはならない。
(1) クーポン付広告の広告主となること。類似の事業者にあっては、親事業者が
発行しまたは販売する新聞の広告主になること、兼業販売業者にあっては、
自ら販売する新聞の広告主になること。
(2) 自ら主催または共催する催し物のクーポン付広告を、自ら発行しまたは販売
する新聞に、掲載または折り込み配布すること。
(3) クーポン付広告の掲載または折り込み配布をする旨を、新聞の紙名および掲
載または折り込み日を特定できる表現にて、事前、同時、事後にかかわらず、
読者に告知すること。
(4) クーポン付広告の掲載紙または折り込み広告を、現に購読している者以外に
提供したり、集金時等に配布すること。
(5) クーポン付広告の掲載・配布をうながすため、広告主に対して、正常な商慣
習を超えて、経済上の利益を提供すること。
(6) 前号の方法その他により、自らの代わりに第三者をして、クーポン付広告の
広告主とすること。
(7) 見本等を請求できることを約した券類の引き換えにかかわる業務をするこ
と。兼業販売業者と類似の事業者にあっては、見本等を直接読者に引き換え
提供する義務をすること。ただし、兼業販売業者と類似の事業者が自ら出稿
したクーポン券についてはこの限りではない。
(8)クーポンにより広告主の提供する経済上の利益が広告主に対する不当景品類お
よび不当表示防止法に基づく規制に反することとなるクーポン付広告の掲載ま
たは折り込み配布をすること。
(9)新聞の販売促進を目的とする印刷物に、クーポン付広告を掲載または折り込み
配布すること。
2.デリバリー組織は、見本等の配布に当たって、以下のことを行ってはならない。
(1) 見本等の請求者の住所、氏名が明記されていないものの配布。
(2) 見本等またはその包装紙等に、新聞紙名、新聞事業者の社名、店名を印刷し
たものの配布。
(3) 新聞の販売促進を目的とする印刷物との同時配布。
(4) 類似の事業者、兼業販売業者、関連会社が提供するものの配布。
【友の会】
第4条 地区新聞公正取引協議会運営細則に規定する「友の会」は、クーポン付広告
の広告主になってはいけない。
【券面表示】
第5条 クーポン券は原則として以下の事項を掲載するものとする。
(1) 広告主名または実施店舗とその住所。
(2) 対象商品または役務
(3) 割り引きの額または率と、もととなる金額。販売店舗により異なり、または
商品の性格等から、割り引きの額または割り引きの率のもととなる金額を表
示できない場合は、
「店頭販売価格」「店頭表示価格」等に代えることができ
る。
(4) 使用有効期限。
(5) 数量、重量、形状、その他必要事項。
2.割引券は1商品1枚とし、その内容が特定できること。
【違反に対する処置】
第6条 協議会は、この規則に違反する事実があると認めたときは、違反者に対して
別に定める措置をとる。
(参考文献:
「雑誌懸賞・景品基準」 雑誌公正取引協議会)
【HAVE
A
BREAK
1】
∼日本クーポンの草分け的存在、「なるほど,ザ・クーポン」∼
1984年10月に「なるほど!ザ・クーポン」と命名されたクーポン自動発券装置が
首都圏に登場した。テレビの人気番組にあやかったのか、 既存媒体によらないクーポン・
システム として注目をあつめた。これは、フジサンケイグループと日本クーポンシステ
ムが開発した初のコンピュータ利用システムで、いわば流通分野に的を絞ったVAN(付
加価値通信網)
。首都圏の主要量販店100店で、10月10日より一斉にスタートした。
これまで クーポン券の普及に最適の媒体 とされてきた新聞は、さまざまな事情から
クーポン券刷り込み広告を禁止してきた。そのため、クーポンの取扱い・クリアリングの
専門会社である日本クーポンシステムでも、クーポン券の利用促進を図るべく「クーポン
シート」
(店内配布地)など独自の 媒体開発 に腐心してきた。今回の自動発券システム
は、その仕組みや規模からも従来にない大掛かりな試みであった。なにしろこのシステム
は、フジサンケイグループの ニューメディア対策の一環として 開発されたものであっ
たからだ。
(写真 1→)
この機械(写真 1)は、縦型の小型ピアノのような形で、ユニフォームを着た女性が、
端末機のかたわらに立ち使い方を教えてくれる。まず、 クーポン券キイ を押すと、15
種類のクーポン券のカテゴリーが画面に表れる。そこで じゃあ、これを と希望のカテ
ゴリーナンバーを指示すると、画面が替わり商品名と値引き額が出てくる。次は枚数。画
面には「ご希望の枚数を番号(1∼5)で押して下さい」の文字・・・。表示された商品
の中にほしいものがなければ、別のカテゴリーの中から選んでくれ、という。つまり、操
作は実にカンタン、一度体験すればどんなメカ音痴でもとまどうことはない。
しかし、この試みは失敗に終わった。初めはクーポンに興味を持った人が珍しいという
ことで店に押し寄せてきたが、どんなにがんばっても1日あたりの配布枚数は1000枚
と限度があることから、見直しが図られた。また、設置コストが非常に高くつくこと、発
券マシンが高額なレンタルなため結果的に根付かなかったのである。
第2章
第1節
クーポンのいろいろ
クーポンの意味
これまで『クーポン』という言葉を使ってきたが、これは一体どういう意味を持つのだ
ろうか。
「小売店で商品価格の現金割引のオファーを証明する物である。ストアにはこれを扱うサ
ー ビ ス の 代 償 を 與 え る こ と に な る 」( Irving
Monmouth College
J.
Shapiro,
Dictionary of Marketing Terms,
Professor
Emeritus
1981, P.69.)
「売り手が発行する証明物で、これでその持ち主に指定商品の購入価格に関し特定額の値
引きを要求する権利が生じる」(Editor
Advertising,
Laurence
Urdang,
The
Dictionary
Of
1986, P.41.)
「買い手にクーポン商品を値引きで求める資格を與える証明物(voucher)または証明物
(certificate)である。クーポンは、特にメーカー・クーポンは、単なる値引きではなく、
それ以上のものである。クーポンは消費者からメーカーからのささやかなギフトと感謝し
てみられている有形物である。」
(John. R. Rossiter, Larry Percy,
and
Promotion Management,
Advertising
1987, P.345.)
「ときどき商品価格を値引きすることで、また商品<しばしばサンプル・サイズのもの>を提
供することで、ときに印刷広告物の一部分にすることで、ある商品を消費者に購入または
使用させたりすることを刺激づける証明物(certificate)である。」(
of
Advertising and Related Terms,
1977,
14
P.26. )
Ayer Glossary
第2節
クーポンの機能
クーポンにはどのような機能があるのだろうか。
① クーポン最大の機能の一つは、新規使用者(トライヤー)を獲得し、彼らを常規の利
用者に変えることにある。典型的な消費者用品、パッケージ商品としての新商品を市
場に送り込むときの戦略・戦術はニュー・トライヤーを効果的・効率的に把握するこ
とである。これにクーポンは役立つ。
② 消費者及び流通経路などへの販売を増大する。クーポンの効果は即効的である。消費
者や流通チャネルに対する販売は、クーポンで短期間のうちに高めることができる。
日本ではクーポン戦略・戦術の経験がマーケターの間では乏しいので、販売増しのた
めの魅力的手段としてのクーポンの真価は十分に認められていないが、クーポンの盛
んな米国ではこれが有力機能の一つとして高く認識・評価されている。
③ クーポンは新商品、改良商品、新サイズの商品を導入する際に格好なインセンティブ・
パワーになる。
④ 販売を増加するとともに消費者需要を創成する。
・ 新規利用者に商品を知らせる
・ 前の利用者に商品を再び知らせる
・ 繰り返し購入を刺激づける
・ 購入量の増大化を刺激づける
・ 販売店在庫を増大(または減少)する
・ 一時的な値引きで競争に対抗する
・ 商品の新しい利用を紹介する
・ 季節的商品を処理する
⑤ ブランド知名、新商品の知名、新パッケージの認知を高める。
⑥ 流通を拡大する、または主な流通ギャップを埋める。
⑦ クーポンで小売店側の支援を得る。
⑧ クーポンを用いて広告のリーダーシップを増大する。
⑨ プロモーション計画のテストに利用する。
15
⑩ クーポンのリデンプション(償還とか回収)分析を通じて販売員の地域的知識の増大
化を計る。
⑪ 最有力潜在市場をクーポンで再評価する、また全見込み販売量・高を決める。
クーポンにはこのようなマーケティング、マーケティング・コミュニケーションとかプ
ロモーションの機能が伴うといっても、厳しい広告規制の対象となっていると、その戦略・
戦術の策定・具体化はかなりの制約を蒙ることになる。
第3節
クーポンの種類
私たちの暮らしを見渡すと、割引付き、あるいは特典付きクーポンが数多くある。
クーポンはどのようなカタチで私たちの前に現れるのだろうか。それは、モバイルクー
ポン、インターネットクーポン、ダイレクトメール、折り込みチラシ、フリーペーパーな
どがある。
第 3 節では、そのようなクーポンの種類を紹介していきたいと思う。
第1項
モバイルクーポン
モバイルクーポンとは…液晶部分にクーポン券を表示し、それを店員に見せるだけで割引
などの特典が受けられるというもの。液晶に表示したクーポン券は、オンラインで接続し
たものを直接表示しなくても、保存したものでも良い。
インターネットに接続できる携帯電話をマーケティングツールとして活用するモバイル
マーケティングに取り組む企業が増えてきた。その理由は、なんといってもユーザーの多
さである。今や、携帯電話によるインターネット接続サービス契約数が 6,000 万件を上回
る。
モバイルマーケティングの一つにモバイルクーポンの発行がある。企業はどのようにモ
バイルクーポンを活用しているのだろうか。考えられる戦略は、次の3つである。
16
① 商品提供などによる新規利用者獲得、新規チャネル構築。
② 販売増、マーケットシェア拡大。
③ マインドシェア拡大、商品の認知獲得、ブランド育成。
など、広告主の持つ目的・課題に応じて使い分けられている。
ここで、モバイルクーポンが便利な点について触れることにする。
モバイルクーポンが便利な点は、これまでのように切り取ったり、印刷したりという手
間がなく、ただそのクーポンを携帯電話に保存しておくだけで、後は店頭に出向いたとき
に、保存したクーポンを見せるだけで利用できる点である。また、家、あるいは職場、学校
などの消費者のすべての生活の活動拠点や、コンビニ、小売店などの生活消費拠点、そして
電車、バスなどの各拠点における移動の導線といったあらゆるところで、クーポン情報に
触れることができるようになった。これは、携帯電話が持つ特性である「いつでも、どこ
でも」が、クーポンの世界でも「いつでも、どこでも」手に入れることができるようにな
ったからである。携帯電話が持つモビリティ(移動性)を最大限に生かした情報接触にな
ったといえるのではないか。
よって、時間が空いている時にクーポン広告を見てそのまま店頭に向かい利用すること
もできるし、今すぐ行けないのならその場で端末に記録し、利用するタイミングまで端末
に保存して後から利用することができるのである。現状では、端末機能である「画面メモ」
に保存しておくか、企業側がユーザーから取得したメールアドレスにクーポンがいつでも
取り出せる URL を案内するかの2パターンに分かれている。
次に、モバイルクーポンを提供する企業にとっての利点とはなにか。それは、
「リアルタ
イムに情報を送信できること」、
「コストの負担が少ないということ」である。パソコンに
おけるメール・マーケティングとは異なり、携帯電話端末は会員がいつも持ち歩いている
ため、会員がどこにいても確実に情報を送信できる。そのため、当日限りの割引クーポン
や特別メニュー、期間限定サービスのクーポンといったキャンペーンも可能である。そし
て、モバイルクーポンは紙のクーポンのように印刷の手間や配布コストがかからない。そ
のため小規模店舗でも配信が可能である。
それでは、モバイルクーポンを配信し成功している企業を紹介する。
17
『TSUTAYA online』
TSUTAYA
online(TOL)はビデオや音楽CD(コンパクトディスク)、DVD(デ
ジタルビデオディスク)
、書籍などの販売・レンタル店「TSUTAYA」のポータル(玄関の
意)サイトとも言えるオンライン・サービスである。TSUTAYA を全国にフランチャイズ
展開するカルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社(CCC)の子会社として、インタ
ーネット向け総合エンターテイメントサイトを運営している。登録会員限定のオンライン
クーポンの発行などで会員の来店を促す役割を果たす。また、インターネットや携帯電話
のネット接続サービスを使って、会員に映画や音楽、ゲームといったコンテンツの最新情
報や検索サービスなどを提供するサービスである。
2003年10月には、TOLの会員数が400万人突破。毎月、約10万人くらいの
ペースで増えている。これは、ツタヤ店舗の会員数約1800万人のうち約20%以上の
加入率である。1999年8月4日に I モード向けサービスを開始したところ、すぐに会
員数、ページヴューとも web サイトの2倍を記録した。そして、12月にはモバイルを中
心としたサービス構築にシフトした。
すでに、I モード、Vodafone live、Ezweb に対応していて、現在会員の7割が携帯電
話のユーザーである。
『TSUTAYA オンラインクーポン』
会員には 2 ヶ月に1回のペースでレギュラークーポンを出している。TOLでは、いろ
いろなパターンを試しているが、現在ベーシックになっているのは半額クーポン。クーポ
ン画面を液晶部分に表示、又はクーポン券をWebページ上に画像として表示し、それをプ
リントして店頭に持っていけばビデオ、CD、DVD のレンタル料金が半額になる。これを
発行すると、全店で15%∼20%程度来店客数がアップする。
一方、TOLでは非来店客者を対象としたクーポンの発行も行っている。月間の利用金
額によって会員をヘビー、ミディアム、ライト、ノン会員の4階層にランク分けし管理し
て、この中で利用金額ゼロのノン会員に対しインセンティブを与えて来店を促し、顧客ラ
ンクを引き上げようとしている。階層ごとの顧客に、データ分析をもとに、差別化された
クーポン発行を行っている。
18
第2項
インターネットクーポン
インターネットクーポンとは…クーポン券をWebページ上に画像として表示し(文字
の場合もある)
、それをプリントして店に持っていくと特典が受けられる。
最近では、インターネットを使ってクーポンを発行する店が増えている。ネットの普及
に伴い導入する店も増加。消費者にとっては、上手に使いこなせば、さまざまな商品を通
常より安く手に入れることができる。
ネットクーポンは通常の広告や紙媒体の DM・チラシなどについている割引クーポンより
も、割引率が高いものがほとんどである。その大きな理由として、企業からすればネット
で割引クーポンを提供するのは、印刷代業者などにチラシや DM を刷ってもらうより断然コ
ストが安くすむからである。その分、エンドユーザーに還元しようということである。
このようなインターネットクーポンが発行できるサイトを1つ詳しく紹介しておく。
『ぐるなび』
株式会社「ぐるなび」は、JRの主要駅構内を中心に広告業務を手がけるNKBが6割
出資して設立された。インターネットを使った検索サービスで現在年商10億円をあげる。
「ぐるなび」はインターネットで行きたい店がすぐに
見つかる日本最大級のグルメ情報メディアである。多くのユーザーから支持され、1ヶ月
に延べ3千万のページビューがある人気サイトである。
1996年に事業を開始。以来、インターネットやモバイルの飛躍的な進化とともに、
レストラン検索サービスの先駆者になっている。加盟飲食店の数は約2万店。それを、ネ
ットワーク化し、飲食店検索サイトではナンバーワンの座を占めている。その加盟してい
る店舗のうち、半数以上がクーポン券を提供している。クーポンの特典はさまざまで、飲
食代金からの10∼20%の割引、
食前酒などの酒類をサービス、幹事無料などが目立つ。
そして、ぐるなび最大の魅力は、店の住所や地図はもちろんのこと、店の外観、メニュ
ー、値段など、飲食店の情報を細かく見ることができることである。さらに、期間限定の
メニューや1日だけのスペシャルサービスもリアルタイムで見ることができる。また、店
舗によってはオンラインで申し込みができるところもある。
そして、日本国内だけでなく、ハワイや香港、パリなど海外のレストラン情報も充実し
19
ている。また、いつでも、どこからでも店の情報がキャッチできるように、携帯端末から
のアクセスにも対応している。
その他のクーポンが発行できるサイト
総合系
Lycos クーポン
検索エンジン Lycos のクーポンサイト。カテゴリー、エリア検索がで
き便利。情報量は多い。
Wari colle
カテゴリー別、都道府県別で分かれていて探しやすい。スキー場の割
(割引券コレクション)
引券・国内旅行・映画の割引券の特集をやっている。モバイルクーポ
ン対応。
クーポン王
地区、カテゴリー、キーワードで検索可能。プレゼント企画もやって
いる。
Shes.net
女性のための情報サイト。クーポンをジャンルやエリアなど様々な所
から検索できる。
割引・特典クーポンの総合サービスサイト。希望の店舗を検索して希
楽天クーポン市場
望のクーポンを選択、受け取り先のメールアドレスを記入すればパソ
コンや携帯電話のメールでクーポンを受け取れる。
クーポン券の情報検索サイト。旅行、飲食などのカテゴリー別に、ク
クーポン券
ーポン券を発行しているサイトへのリンクを集めている。都道府県別
情報検索
検索ができる。メールマガジンも発行している。モバイルクーポンも
紹介している。
20
飲食系
目的地周辺の飲食店情報を「料理別」「クーポン」といった条件で予
ぐるなび
算や目的別に検索することもできる。飲食代金からの10∼20%の
割引、食前酒などの酒類をサービス、幹事無料などがある。
たべあるきんぐ
全国約13000店舗の情報があり、得する情報コーナーでクーポン
が発行できる。
ぐるめピタ
全国のぐるめ検索サイト。その時々のおすすめのクーポンがある。
ロッテリア
有効期間内であれば何回でも使うことができ、1枚で5名まで利用可
能なクーポンがある。
ビッグボーイ
「ビッグボーイ」
「ミルキーウェイ」
「ヴィクトリアステーション」で
ドリンクバーが無料になる。
すかいらーくグループのファミリーレストランのクーポンが発行で
すかいらーく
きる。すかいらーく、バーミヤン、夢庵、藍屋、マルコ、スカイラー
クガーデンズ、スカイラークグリル、焼肉ほたる苑で使える。
カプリチョーザ
ファーストドリンク1人1杯最大6人まで無料のクーポン発行でき
る。
レジャー系
一年中ではないが、期間限定でオンラインクーポンを発行している。
TSUTAYA
メルマガに登録しておけば、キャンペーン情報などいち早く知らせて
くれる。モバイルクーポン対応。
BIG ECHO
室料10%割引クーポンが発行できる。
万博公園エキスポランドの入場料 20%割引チケット+ジャックポッ
エキスポランド
トゲームが無料になるクーポンが発行できる。名前と年齢と E メール
と住所を入力して申し込む。
サイバークーポン
ジョイポリスのクーポン。現在は東京、梅田、岡山の 3 ヶ所にある。
ファミリー割引、カップル割引、曜日別割引、イベント割引がある。
21
モバイルクーポン対応。
その他
エルセーヌ
総額10万円分割引クーポンが発行できる。エルセーヌ全店で使用でき
る超お得なクーポン。
洋服の青山
スーツやコートが、500∼2000円引きのクーポンがある。
第3項 ダイレクトメール(DM)
DM とは…企業等から消費者にはがきや封書等で郵送される広告物で、マスコミを使った
他のマーケティング方法(テレビや新聞広告)と違って、自分のメッセージを伝えるのに
別の媒体を使う必要はなく、全て自分でコントロールできるもの。DM は広告と販売が合
わさったユニークな方法で、商品やサービスの宣伝、提供、そして販売を終えるところま
で一度にできる。
家庭には毎日のように各種のDMが舞い込んでいる。昔は企業側が無作為に送っていた
印象を受けるが、現在では特定の見込み客の発掘から顧客を探し、DMを使って販売に結
び付けている。このマーケティングシステムを使うと、営業にかかる費用と時間、人手が
大幅に節約でき、加えて以前より営業成績をアップできる。では、どのようにして特定の
見込み客を発掘するのか。見込み客(顧客)とは、少なくとも一度は何らかの取引のあっ
た人や企業ということで判断する。つまり来店しただけの客は、顧客とは考えない。そし
て、そうした顧客に当てはまらない人は、顧客予備軍としてこれから顧客になる可能性が
最も高い営業対象と考えればよい。このようにしてDMは配られている。
DM の利点としては、特定の人に対してメッセージ(クーポン)を届けることができる
ことである。比較的経費は高くつくが、もし必ず来店してくれる人だけに的を絞ることが
できるなら、費用効果は高いだろうと思う。
では、実際にクーポン付き DM を使って顧客を引き付けている店について述べてみる。
梅の花(京風懐石料理専門店)
ヘルシーな懐石料理を手頃な価格で楽しみたい、そんな女性の心を魅了する「梅の花」
は全国に店舗を拡大する注目の外食チェーン。看板料理は手間のかかった、一人前300
22
0∼5000円の豆腐やゆば料理が中心である。
とかく作り手の都合が優先される板前の世界を否定、客の側から発想する店を作ろうと
懐石料理では初めてコックレス業態を実現、総てパート・アルバイトで運営できる仕組み
を作り上げた。福岡県久留米市で夫婦だけで始めたこの店の数は毎年5∼10店舗づつ増
え、東京にも進出し、今や46店舗もある。
梅の花は、基本的には飲食代金の割引はない。その代わり、ドリンクサービス券がある。
それには種類あり、①店独自に発行しているもの②裏にクーポンの付いた店長の名刺③D
M④リビングクーポン⑤ぐるなびから発行するもの、がある。①④では、ソフトドリンク
とグラスワインのいずれかをサービスしている。③では店内にあるドリンク600円以上
のもの以外のソフトドリンク・アルコール類をサービスしている。②では、③と同じ内容
のドリンク or デザート一品サービスをしている。⑤はウーロン茶一杯サービスをしている。
DM について・・・DM は客に書いてもらうアンケートの住所を基に抽選で送っている。
内容はその都度違うが、過去には DM を持ってきてもらうと、季節懐石25%OFF とい
うものや、ドリンク一杯サービス+プレゼントなどというものもあった。また DM ではな
いのだが、
「人生の記念日特別プラン」というイベント時には、還暦やお誕生日・結婚記念
日など人生の記念日に、その日の料理一人様分無料ということをしていた。これは予約の
み有効だったのだが、約10ヶ月という期間行っていた。誕生日の身分証明などというも
のは一切なかったのだが、店側からすれば赤字覚悟のサービスだったと思う。実際一番安
いコース料理と高い料理を頼み、高い料理分を無料として食べていく客もいたそうだ。
梅の花のクーポンというものは、ほとんどがDMによる既存客に対するサービスだ。新
規客には大々的な新聞やクーポンサイトで広告をし、ドリンク一杯サービスなどをしてい
る。そしてその客が一度来てアンケートを書き、そのアンケートを基に DM がきたりして
何度も利用するのである。
梅の花が実際に使用している DM
第4項
↑
新聞折り込みチラシ
新聞折り込みチラシとは…新聞と一緒に折り込まれて配布されるチラシのこと。
23
週末の新聞にはたくさんの折り込みチラシが入っている。折り込みチラシは中小店にと
っても比較的なじみのある販促媒体であり、これといった顧客名簿をもたない店や自主配
布が難しい場合でも、ある程度の効果は期待できる。折り込みチラシはいろいろなアプロ
ーチの方法がある。これらを目的や結果によって使い分けると、より大きな効果を期待で
きる。そして、折り込む曜日を考えるのも重要なポイントである。
最近では、クーポン券付きの折り込みチラシが多い。スーパーマーケットやファースト
フード店、ファミレスなどのチラシに「この券を持参の方は100円割引」といったクー
ポン券が印刷されていて、それをハサミで切り取り、利用することで、少々安い買い物を
した経験のある人は多いと思う。しかしクーポン券を印刷したり配布するためには、相当
の手間とコストがかかるのが大きなネックとなっている。また、
チラシはごみ箱へ直行し、
目もくれない可能性もある。
第5項
フリーペーパー
フリーペーパーとは…新聞の形式を取りながら、購読料を取らず広告収入を運営の柱とし
て無料で発行される媒体のことである。厳密には、ある特定の家庭又はある特定の地域の
家庭や職場に、無料で届けられる新聞タイプの媒体で、主に女性や家庭を対象に地域に密
着した生活周りの情報誌を中心に構成されたタブロイド版又はブランケット版の定期発行
の情報誌のこと。収入源は主に広告、アドバトリアル(記事体広告)で、一部を事業収入
に負っているところもある。
また、配布方法は主に独自の配布組織による戸別配布、一般誌や地方紙などへの折り込
み配布が普通であるが、対象読者により、企業や学校などへの組織配布、ホテル・駅・店
頭配置のものなどがある。週刊、隔週刊、月刊が多いが、中には日刊、隔月刊、季刊とい
うのもある。
日本では、フリーペーパーであるサンケイリビング新聞が、本格的クーポン券として「リ
ビング・クーポン」システムを開発した。1981年3月から、紙面展開。しかし、この
クーポンは、フリーペーパーの最も魅力的な機能であるにもかかわらず、他紙にあまり浸
24
透しなかった。なぜなら、日本新聞協会が「クーポン広告は、新聞の不公正な拡売競争を
招く」として新聞でのクーポン広告を禁止してきたことが一因であるといわれているから
だ。
購読料を取らないフリーペーパーは、新聞の枠外にあることから、クーポン広告が許さ
れていたが、フリーペーパーに携わる人たち自身が、フリーペーパーの存在を認識できず
(運営上においても)フリーペーパーを新聞だと考えていたことにも問題があった。
しかし、1990年10月1日をもって、新聞クーポン広告が解禁となって以来、各新
聞がクーポン広告を実施し始めたことから、いよいよフリーペーパー各社が本格的な稼動
を始めた。
また、一般の新聞広告などでも、割引券の清算業務を行う、クリアリング・システム(消
費者の利用済みクーポンを小売店が回収すること)が全国規模で整備されていないことか
ら、新聞社が地元の企業と提携して展開しているのが現状である。しかし本来、これこそ
が、地域に密着したフリーペーパーならではのサービスでもあるわけで、今後はフリーペ
ーパーが新聞社を巻き込んで、新たなサービス競争へと発展することも予想される。
近年は、クーポン広告ばかりを集めたクーポン帳のようなものが、続々と登場して、そ
の中身もクーポンと他の手法(インターネットと接続するなど)がミックスされたものに
とバリエーションを広げて展開されている。
2002年9月創刊の、20代の OL を対象にしたクーポン主役のフリーペーパー「ホ
ットペッパー」はクライアントにとって大量の集客・新規の顧客獲得を可能にする媒体と
して有名である。このことについては、第3章で述べることにする。
クーポン付きフリーペーパー
25
主婦をターゲットとした生活情報誌。全国主要都市をよくカバー
リビング新聞
し、1971年の創刊以来、主婦の暮らしに役立つ地域生活情報を
発信。
ホットペッパー
20代の OL をターゲットとしたクーポン主役の情報誌。食べる・
遊ぶ・勉強するなど何でもそろっている。
あさひ GREEN
FAMILY
朝日新聞地域情報誌として発行。確実な配布率、広告のみの媒体と
違い保存効果の高い「読ませる情報誌」
。
クーポンランド・
総合ジャンルのクーポンマガジン。クーポンを活用したおしゃれな
アミューズメント
節約ライフスタイルを提案。タレント起用のコラムや市販誌のよう
な編集記事が多い。
第6項
レジクーポン
レジクーポンとは…アメリカで「インストア・エレクトロニックマーケティング」と呼ば
れる店舗内での消費者プロモーション手法の一つで、スーパーマーケットの POS システ
ムと連動してクーポン券を自動発券するシステムである。これは、アメリカに本社を構え
るカタリナ・マーケティングが独自に開発したシステム。スーパーマーケットの POS シ
ステムと連動して顧客が購入した商品のバーコードを読み取り、あらかじめプログラムさ
れているクーポン券を、レジに設置してある専用のプリンターで自動発券するというもの。
このクーポン券は、次回店舗来店時に有効となる仕組みである。
さまざまな種類のクーポンの発行が可能になるが、主なプログラムは次の5つとなって
いる。
①
自社ブランドクーポン
自社商品の購入者に対し、次回の買い物で自社商品を購入すると○円引きというクー
ポンを発行する。
②
カテゴリークーポン
同じカテゴリー内の競合商品購入者に対して自社商品用クーポンを発行し、ブランド
スイッチを促すもの。例えば、A 社ビールの購入者に B 社ビールのクーポンを発行する
など。
③ カテゴリークーポン
26
別カテゴリーの商品購入者に対して自社商品用クーポンを発行し、購入を促す。例え
ば、牛乳を購入した人にシリアルのクーポンを発行するなど。
④
アドクーポン
メーカーと小売のタイアップによるクーポン。小売側が POP を用意し、対象商品に
棚を提供。タイアップするメーカーの商品購入者にその店舗の全商品に使用可能なクー
ポンを発行する。割引額はメーカーが負担する。
⑤
タイアップクーポン
第三者とのタイアップで、通常告知を行うプログラム。スポーツイベントやアミュー
ズメント施設(遊園地・動物園など)の優待割引券を提供するなどし、購入を促す。
タイアップクーポンを除き、店頭などでの告知は基本的には一切行わない。消費者は
クーポン発券を意識することなく、自然な購入行動に合わせたクーポンの提供を受ける
ことができるため、利用率が自然と高くなる、という仕組みになっている。
4年前から各地のスーパーで導入され始め、現在、イトーヨーカドー、ジャスコ、西友
などの大手、中小合わせて計約1000店舗で使われている。
第4節
値引きとクーポンの違い
値引きは、小売店が自店の集策用として、基本的には自店のリスクで行うもので、メー
カーの意図は通りにくい。もし、特売セールのようにメーカーの意図を通すとなると、更
なるリベート、マージンの犠牲を払う必要が出てくる。
また、店によってはマーチャンダイジングの戦略上、メーカーの意図を受け入れない店
もあり、面としての戦略にはならない。
一方、メーカー・クーポンの場合は、メーカーが値引き額面を保証するため小売店にリ
スクを与えず、メーカーの戦略のもとで面としての戦略が打てる。ただ、メーカーの一方
的な戦略ではなく、小売側の協調が得られる戦略であることが好ましく、その効果も大き
く違う。
値引きは購入者全員がその恩恵を蒙る。
しかし、
現在のように恒常的値引きの状態では、
27
その価格があたりまえで得をしたという気持ちにはならない。また、メーカーの意図が強
く入る特売は、買い控えの問題や、ややもするとブランド・イメージのダウンに繋がり、
長期間特売期間を設定することは難しい。
クーポンは、クーポンを利用するという行為によってキャッシュバックの恩恵を蒙るも
ので、行為によって得をしたという意識を植え付ける。しかも、商品購入者全員が自動的
に恩恵を蒙る値引きとは違い、常に節約意識が色褪せずに保てる。そして、利用者のみが
恩恵を蒙るということは、
全員が恩恵を蒙る手段より、恩恵を大きくできる可能性がある。
また、クーポンは、メーカーの戦略に沿って有効期限が設定でき、消費者にとっては特売
にくらべ、どこの店でも利用できることも含め、自由な利用ができる。
クーポンはクーポンを清算時に提出するまでの過程にクーポン部分を切り取ったり、買
い物に行く際に持参するといった手間が入り面倒である。そのことを問題視する人もいる。
しかし、むしろその手間は、クーポン商品を強く意識させることになるのではないか。言
い換えればマインドを強めることになり、
ブランド・ロイヤリティを促進するものである。
値引きの場合、販売促進の特徴であるブランド・ロイヤリティを打ち破ることにより、
競合商品の強固なロイヤリティを崩すことが可能にもなるが、自ら、自社ブランドのロイ
ヤリティを崩壊させることにも繋がる。長期的なブランド・ロイヤリティの構築を目指す
広告戦略を無意味なものにする恐れがあるのではないか。その点、クーポン広告の場合、
その内容を吟味し、発行タイミングを考えるならば、ブランド・ロイヤリティの補強を行
い販売増に繋げることが可能となる。
クーポン広告はメーカーのマーケティング戦略を堅持しながら、長期的マインド層をつ
かみ、小売店の活性化をする。利益向上に繋げるものといえる。クーポンは値引きと違い、
消費者に対する一時的な、積極的な金銭の恩典の給与である。極端な言い方をすれば「損
をして得をする」ということになる。
【HAVE
A
BREAK
2】
28
∼幻のフリーペーパー「dictionary」とは!?∼
「dictionary」とは、株式会社クラブキングが1988年に創刊した、 社会のがんじが
らめのシステムにもう一つのポジティブな視点を見つけたい。未来を明るくするための知
恵を満載した辞書「dictionary」でありたい
というコンセプトで作られた、さまざまな
カルチャーを紹介・考えていくフリーペーパーである。音楽、映画、ファッション、政治 etc
を中心に記事を編集し、10代の若者から60代の業界関係者まで、幅広い層からの支持を得
ている。2003年で発刊14年目を迎え、来年10月で100号を迎える。時代と共に
サイズや内容も変化を続けながら、今ではラジオ版「クラブ・ラジオ・ディクショナリー」
や、ビデオ版「ビデオ・ディクショナリー」などがある。
では、なぜ幻と呼ばれるのか。
「dictionary」は隔月5万部、年間6冊を偶数月15日に
発刊している。版型はCDケースサイズで、平綴じ、120ページ(カラーページ32P
以上)で構成されている。「配布」という独自のディストリビューション形態をとってお
り、全国のセレクトショップ、CDショップ、カフェ、ギャラリーなど850箇所以上で
配布されているが、それぞれ置いている部数は30部。国内全体に流通が確保されている
こと、14年という歴史をもっていること、そして、当然ながら優れた内容をもっている
こと。これらをすべて満たしている点からみても、日本を代表するフリーペーパーと言っ
ても過言ではないだろう。ここ数年の傾向として、ビジュアルを中心とするフリーペーパ
ーが多い中で、発刊当初から、
「主張あるテキスト」を多く盛り込んできた「dictionary」
の「言葉」を大切にする姿勢は国内で未だにオリジナルティのあるものだと思われる。
近場で置いてあるお店
SHIPS神戸元町店(洋服)
TOWER RECORDS 神戸店(レコード)
BLUE BLUE 神戸(洋服)
ラフレア(カフェ)
LANTIKI D.G.D.S(洋服)
cafe SPARK(カフェ)
numero M(洋服)
Battery CAFÉ(カフェ)
JUNK SHOP FACTORY(洋服)
トリトンカフェ(カフェ)
AGEHA(洋服)
Daily Heartful Dining 港町MOTHER(飲食店)
<dictionary バックナンバーの一部>
15
選曲家/プロデューサー/株式会社クラブキング代表兼編集長でもある「桑原茂一さん」
は、1973年より米国「ローリングストーン」日本版創刊号に参加、77年プロデュー
スしていた「スネークマンショー」でYMOと共演、同年「コムデギャルソン」のショー
選曲を開始する。82年原宿に日本で初のクラブ「ピテカントロプス」をオープンさせる。
89年フリーペーパー「dictionary」を創刊、96年東京 SHIBUYA FM にて「club radio
dictionary」を開始し放送中。
現在、メディアクラブキングとしてフリーペーパー・コミュニティーラジオ・interFM・
・WEB(ホームページ)を駆使し LOVE&PEACE に
TBS ラジオ・DVD(映像メディア)
生きるオルタナティブなメディアを目指し活動を続けている。
16
第3章
第1節
ホットペッパーについて
クーポンに対する消費者意識の変化
ここ2∼3年で、飲食店クーポンに対す
2∼3年前に比べ利用頻度は?
る消費者の意識が激変している。日経レス
減っ た
6%
トラン誌が全国の消費者300人に対して
アンケートを行ったところ、飲食店クーポ
かなり増
えた
24%
変わら な
い
27%
ンの利用頻度が2∼3年前に比べて「増え
た」とした人は、
「かなり増えた」
(24%)
、
少し増え
た
43%
「少し増えた」
(43%)を合わせて7割近
くに上った。
飲食店を選ぶ際に「必ずクーポンのある
クーポンは店選びに影響する?
店を選ぶ」
(23%)、
「クーポンのある店を
選ぶことが多い」
(44%)と、クーポン店
選びの重要な条件にしている人も6割以上。
クーポンに対するイメージも向上しており、
店選びと その他
クーポンは
2%
あまり関係
ない
31%
9割近くの人がクーポン導入店に好イメー
クーポンの
ある店を選
ぶことが多
い
44%
ジを抱いていることがわかった。
これほど消費者の意識が変わった背景に
は、クーポン発行店が増えたこと、そ
クーポン導入店は好イメージ?
れにクーポン媒体が増え、利便性が増
したことが大きい。確かに、ここ数年
のクーポン媒体の増加はすさまじい。
必ずクーポ
ンのある店
を選ぶ
23%
クーポンは当
たり前だから
特にイメージ
は湧かない
8%
きっかけとなったのは、リクルートに
その他
2%
料理に自信が
ない店
1%
人気のない店
3%
よる無料クーポン雑誌「ホットペッパ
ー」の創刊。その後、同様のクーポン
経営努力をし
ている店
60%
付き地域情報誌が次々と発行された。
<日経レストラン2003年 7 月号/調査対象>
週1回以上夜外食する男女300人
32
サービスの良
い店
26%
第2節
第1項
クーポンマガジンホットペッパー
ホットペッパーとは
「食べる(飲食店)」
「きれいになる(美容室)」
「買う(ショッピング)」
「遊ぶ(アミュー
ズメント)」
「癒す(リラクゼーション)」
「学ぶ(スクール)」
「住まう(不動産)
」等、生活
領域全般のクーポンをメインとするお得情報を集めたリクルート社発行のフリーペーパー。
ホットペッパーは、クーポン情報に特化した今までにない販売促進メディアで、地域密
着型のエリア情報誌なのでエリア内の新鮮な情報が満載されている。発行部数は北は北海
道・旭川から南は鹿児島と、全国42エリアにわたり、毎月約462万部が読者の手元に
届いている。単純にこの数字を他メディアと比較すると、CM や有力女性誌を超える勢い
までの到達率だ。また、100万部を超えるオフィス配布は新聞並の部数をほこる。
また、情報に敏感な F1層(20∼34歳の働く女性)をメインの読者ターゲットとし
て編集し、女性に人気の高い「グルメ」
「美容室」をはじめ「スクール」
「エステ」
「ブライ
ダル」
「レジャー」など女性向けのテーマ別編集で多彩な情報を網羅している。消費意欲が
旺盛で行動的な層にターゲットを絞っている為にクーポンの利用は非常に多い。その中で
もグルメクーポンは特に人気がある。また、その他の特徴としては、次のことがあげられ
る。
・独自の掲載審査基準を運用 → 確かな効果は読者の信頼から
・広告効果のでやすい発効日(毎月最終金曜日)→ 一般的な「給料日」前後の発行
・ 女性のバックに携帯しやすいサイズ → A4変型版
このように、ホットペッパーは多彩な情報とクーポン掲載量の多さに加え、様々な工夫
がされており、読者はホットペッパーを何度も読み返し、長期保存をしている。それだけ
広告効果もアップすることになるのである。
33
☆発行部数☆
新宿
札幌
旭川
仙台
郡山
新潟
長岡
金沢
宇都宮
池袋
30 万部
3.6 万部
22 万部
5.1 万部
7 万部
4 万部
6 万部
6 万部
20 万部
浦安
町田
八王子
相模原
多摩
厚木
立川
川崎
大宮
渋谷
銀座
吉祥寺
市川
横浜
蒲田
浦和
船橋
鶴見
習志野
15.1 万部
20 万部
7.5 万部
静岡
浜松
15 万部
12.5 万部
千葉
21 万部
京都
名古屋
岐阜
幕張
10 万部
11 万部
6 万部
18 万部
7 万部
8 万部
堺
茨木
南大阪
高槻
大阪
滋賀
6.5 万部
7 万部
15.7 万部
24 万部
13 万部
5 万部
姫路
神戸
岡山
広島
7.5 万部
18 万部
高松
松山
福岡
北九州
長崎
加古川
15 万部
熊本
10 万部
8 万部
鹿児島
6 万部
江坂
柏
新大阪
松戸
湘南
7.5 万部
6 万部
6 万部
20 万部
10 万部
高知
7.2 万部
7.4 万部
5 万部
(2003年11月在)
第2項
ホットペッパー誕生の経緯
34
5.3 万部
クーポンが日本に入ってきたのは戦後すぐの時期だったが、公正取引規制などのからみ
で爆発的に普及することはなかった。ただ、規制はあったものの、やってはいけないとい
うことはなかった。誰もが参入できる環境だったにもかかわらず、クーポンを主体にした
事業はなかったのである。ちなみにアメリカでは、いわゆる販促費の7割ほどがクーポン
に投下されていたにもかかわらずだ。つまり、ホットペッパーのようなクーポン事業は誰
もやっていなかった事業だからこそ成功の可能性が大きかったといえる。
今でこそ若い女性の間で知らない人はいないと言われるホットペッパーだが、その前身
として「360(サンロクマル)」というエリア情報誌の存在があった。従来、リクルート
のメディア系の事業のほとんどは大都市で展開されており、ローカル、あるいはもっと小
さなエリア(狭域)でのビジネスがなかった。これをテーマにつきつめてできた事業がサン
ロクマルであり、その革新的な継承がホットペッパーという位置付けだ。つまり、6年間
地道に積み上げてきた狭域ビジネスが、ホットペッパーによって爆発的な成長へと切り替
わったのである。サンロクマルは全国12地域で発行されていて、飲食や美容、アミュー
ズメント関係の店舗紹介を行う情報誌だった。また、消費者が行動を起こしやすいメディ
アとして、
「ク−ポン」に注目した。価格のお得感だけでなく、
「季節感のあるメニュー」
「夜10時まで営業している美容室」
「腕のいいシェフ」
「17∼19時限定メニューのあ
る店」など、店舗の個性や特徴を、読者に伝えていた。
「1回きりのクーポンの効果を狙っ
ても、サービス面での工夫や努力がなくては、再び来店してもらえない、リピートしない。」
そういった店側の意識の向上が、地域の商品・サービスを充実させ、消費を促進していく
と考えられていた。
そして、地域ごとに横並びで見ていくと、札幌だけが突出して好業績をあげていた。それ
にはエリア特性云々というよりも、編集方針に違いがあった。クーポンを大きく誌面に取
り入れ、読者やクライアントにとっての価値を明確にしていたのだ。つまり読者には購読・
利用を促進するための具体的なツールとして、かつ、クライアントには広告効果を認識し
てもらうツールとしてクーポンというツールが採用されている。この、ターゲット、コン
テンツ、ツールという、札幌版で培った3つの知識を核にしながら、ホットペッパーのビ
ジネスが造り上げられたといっても過言ではない。だから、ホットペッパー立ち上げにあ
たり、
「このコンセプトなら全国各エリアで汎用的に展開できるだろう。さらに編集・誌面
レイアウトも完全フォーマット化することでロースキル・ローコスト化も図れるのではな
いか。
」と、そんなふうに仮説が立てられていったのだ。さらに、
「消費活動の70%は生
35
活行動圏で行われる」という仮説に基づき、地域ごとにあみをかけ、クーポンというツー
ルを来店の動機づけ、フックにすることで、F1層のリーチ確立するようになった。この
ように、クーポンをキーワードにしてさまざまな仮説が立てられ、それらを結びつけてい
く中で、ほぼホットペッパーのコンセプトができていったのである。
第3項
サンロクマル・ホットペッパー媒体概要
サンロクマル
対象読者
ホットペッパー
20∼34歳の働く女性(F1 層)
男女比
約1:9
発行エリア
全国12地域
発効サイクル
毎月最終金曜日 発行
発行部数
仕様
全国42地域
総計210.1万部
B4
オールカラー 中綴じ
462万部(2003年11月現在)
A4ワイド(297mm×230mm)
オールカラー 中綴じ
購読料
配布方法
無料(フリーペーパー)
ラック設置、オフィス配布、街頭配布
■サンロクマル誌面イメージ
企画タイトル及び
あちゃら編集長のワン
36
プロバイダ特集
インターネット入門誌 あちゃら 編集長が指南するプロバイダ選びのポイント
各社 PR
各社 PR
スペース
スペース
各社 PR
各社 PR
スペース
スペース
クーポン
クーポン
クーポン
クーポン
誌面を4分割し、各社の PR スペースとする
【各社 PR スペースイメージ】
ACARA−NET
お薦めポイント
料金コース等基本データ
周辺エリア
問い合わせ
アクセスポイント情報
■ホットペッパー誌面イメージ
各社 PR
37
スペース
各社 PR
各社 PR
スペース
スペース
誌面の9分の1
誌面の6分の1
誌面の3分の1
誌面を分割し、各社の PR スペースとする
【各社 PR スペースイメージ】
飲食分類
見出し
写真
広告そのものを切り
取るクーポンデザイ
ンにより、写真・地
図・お店情報が常に携
帯でき、より読者の利
便性を高めている。
特典内容
TEL
地図
第4項
ホットペッパーの経緯
38
地域名
住所
お薦めポイント
メニュー
店名
☆ A4 ワイド版
☆ オールカラー
2000年7月
新潟・長岡・高松で実験的に創刊。
2001年3月
銀座・渋谷・新宿・名古屋・茨木高槻・姫路・熊本・郡山で創刊。
7月27日
先行エリアでの確かな手ごたえを得て、
「生活情報サンロクマル」の1
3版(札幌、旭川、仙台、横浜、町田・相模原・厚木、さいたま、上
尾、八王子・多摩・立川、大阪、堺・南大阪、神戸、京都・滋賀、広
島、福岡版)を「クーポンマガジンホットペッパー」に誌名変更・内
容刷新。また、上野・神田・御茶の水、池袋、千葉・幕張、浦安・市
川・船橋・習志野、北九州、熊本、鹿児島版を創刊。全国30版に。
2002年2月22日
川崎・蒲田・鶴見版、吉祥寺・荻窪版、岡山版、金沢版を創刊。全国
34版に。発行部数368万部。
4月
新宿版と池袋版、銀座版と上野版を統合し、それぞれエリアを拡大。
東京23区内を強化。全国32版に。
5月
岐阜、静岡、浜松、宇都宮の4エリアで創刊。全国36エリアに。
8月
松山、長崎の2エリアで創刊。全国38エリア、総発行部数全国41
2万7000部。
この時点でのクーポン利用者数 約102.6万人
(1ヶ月間、飲食店利用者に限る)
2003年10月
11月
全国42エリア、発行部数446万部。
柏・松戸版、高知版発行 全国42エリア
2005年をメドに発行地域を100エリアに拡大予定。
39
発行部数462万部。
第5項
ホットペッパーの収益源
今では読者の大きな支持を得ているホットペッパーだが、
「創刊当時は単なるフリーペー
パーでしょ、という扱われ方だった」(リクルート担当者)という。最近ようやく飲食や美
容などのナショナルクライアントに販促媒体として認められつつあると、リクルートは手
ごたえを感じているようだ。
無料の媒体であるホットペッパーの収益源は、誌面に掲載する広告料。全国42エリア
それぞれの情報が細かく掲載されるため、広告に載せるスポンサーが重複しない。このた
め単純計算でもおよそ4000ページ分の広告料が見込める。各エリアで誌面のボリュー
ムはバラバラだが、仮に1部平均を約100ページとすると、1ページ当たり約60万∼
90万円程度の売上高を確保できる。それでは、ホットペッパーを1部作るのにどのくら
いの広告料が集まるのだろうか。実際に、ホットペッパー1部あたりの広告料を計算して
みた。広告料は地域や広告部分の大きさにより違いがある(下記広告スペースイメージ、
料金表を参照)が、今回調査した「神戸版10月号」は約113535000円という結
果が出た。この113535000円から、CM などのプロモーションにかかる広告費用
や人件費、印刷代などを引いたものがホットペッパー(リクルート)の収益になるといえ
る。
フリー1/6P
天地 90mm×左右 103mm(囲み罫含み)
囲み罫は、太さ 0.5mm のスミベタ罫
フリー1/3P
天地 90mm×左右 210mm(囲み罫含み)
囲み罫は、太さ 0.5mm のスミベタ罫
表 2・表 3・表 4・フリー 天地 297mm×左右 230mm(トンボ 5mm)
1P
表 2-表 2 対向・表 3-表 3 天地 297mm×左右 460mm(トンボ 5mm)
対向・見開きフリー2P
ホットペッパーによる売上高は、02年度の145億円から、03度は210億円になる
見通しだ。さらに今後は現在の発行エリアを倍以上に増やし、100エリアを目指してい
る。
40
☆料金表☆
札幌
1/18P
仙台
新潟
6万円
6万4千円
4万円
1/9P
12万円
12万8千円
8万円
1/6P
18万円
19万2千円
12万円
1/3P
34万円
38万4千円
24万円
1P
94万円
90万円
60万円
見開き2P
188万円
180万円
120万円
巻頭フリカラー
104万円
92万円
65万円
目次対向1P
104万円
92万円
65万円
表2
130万円
95万円
80万円
表2対向
130万円
95万円
80万円
表2・表2対向
260万円
190万円
160万円
表3
100万円
92万円
70万円
表3対向
100万円
92万円
70万円
表3・表3対向
200万円
184万円
140万円
表4
150万円
100万円
90万円
単独はがき/1枚
105万円
85万円
35万円
カラーしおり/1
200万円
170万円
115万円
500万円
400万円
210万円
750万円
590万円
340万円
1P
枚
定価ブックイン
4P
定価ブックイン
41
8P
定価ブックイン
1250万円
1000万円
渋谷
横浜
555万円
16P
1/18P
静岡
5万円
5万5千円
5万円
1/9P
10万円
11万円
10万円
1/6P
15万円
16万5千円
15万円
1/3P
30万円
33万円
24万円
1P
85万円
99万円
65万円
170万円
198万円
130万円
90万円
105万円
70万円
90万円
105万円
70万円
表2
110万円
110万円
80万円
表2対向
110万円
110万円
80万円
表2・表2対向
220万円
220万円
160万円
表3
95万円
105万円
75万円
表3対向
95万円
105万円
75万円
表3・表3対向
190万円
210万円
150万円
表4
120万円
120万円
85万円
単独はがき/1枚
65万円
85万円
45万円
カラーしおり/1
150万円
170万円
115万円
見開き2P
巻頭フリカラー
1P
目次対向1P
42
枚
定価ブックイン
300万円
400万円
210万円
480万円
590万円
340万円
775万円
1000万円
555万円
4P
定価ブックイン
8P
定価ブックイン
16P
名古屋
大阪
京都
滋賀
1/18P
5万円
5万5千円
5万5千円
1/9P
10万円
10万円
10万円
1/6P
15万円
15万円
15万円
1/3P
30万円
30万円
30万円
1P
85万円
88万円
88万円
170万円
176万円
176万円
90万円
98万円
98万円
90万円
98万円
98万円
表2
110万円
110万円
110万円
表2対向
110万円
110万円
110万円
表2・表2対向
220万円
220万円
220万円
表3
95万円
105万円
105万円
表3対向
95万円
105万円
105万円
190万円
210万円
210万円
見開き2P
巻頭フリカラー
1P
目次対向1P
表3・表3対向
43
表4
120万円
120万円
120万円
単独はがき/1枚
65万円
70万円
70万円
カラーしおり/1
150万円
150万円
150万円
300万円
300万円
300万円
480万円
480万円
480万円
775万円
775万円
775万円
枚
定価ブックイン
4P
定価ブックイン
8P
定価ブックイン
16P
神戸
1/18P
広島
福岡
5万5千円
5万円
5万円
1/9P
10万円
10万円
10万円
1/6P
15万円
15万円
15万円
1/3P
30万円
30万円
30万円
1P
88万円
90万円
90万円
176万円
180万円
180万円
98万円
95万円
95万円
98万円
95万円
95万円
表2
110万円
110万円
100万円
表2対向
110万円
110万円
100万円
見開き2P
巻頭フリカラー
1P
目次対向1P
44
表2・表2対向
220万円
200万円
200万円
表3
105万円
95万円
95万円
表3対向
105万円
95万円
95万円
表3・表3対向
210万円
190万円
190万円
表4
120万円
110万円
120万円
単独はがき/1枚
70万円
70万円
70万円
カラーしおり/1
150万円
150万円
170万円
300万円
300万円
300万円
480万円
480万円
480万円
775万円
775万円
775万円
枚
定価ブックイン
4P
定価ブックイン
8P
定価ブックイン
16P
第6項
ホットペッパーの商品設計
誌面づくりは、約30人の社員をエリアごとに編集長として配置し、その地域に密着し
た人を中心にリクルートが専属契約社員として採用して行っている。編集部の営業兼編集
者たちを読者と同様の感性を持つ20∼30代の女性にしていることも、若い女性の生活
感をつかむことを意識しているからだ。
「写真は大きめで、文字は少なめがいい」
「クーポ
ンは広告全体を大きく切り取りたい」という女性の声を誌面デザインに反映している。ま
た、ホットペッパーのキャラクターは誌面の特徴にもなっている。これまでリクルートの
商品にキャラクターを使ったものはほとんどなかった。ではなぜキャラクタ
ーを導入したかというと、読者と会話するためである。ホットペッパーは
クーポンブックなので通常の雑誌でいうところの記事部分がない。だから、
読者と接点を持つためにはキャラクターしかないと考えていたという。
インターネット情報に押されてしまうといわれたアナログの紙媒体だったが、
「べっとり
とした情報の羅列」よりも、読みやすさや読者の求める情報にきめ細かく対応するところ
45
が、大きく部数を伸ばしている理由にみえる。また、編集方針としては次のことがあげら
れる。
☆20∼30代女性の消費活動を支援する情報提供
生活領域全般のクーポンをメインとするお得情報提供
☆クーポン利用を前提とした機能的な編集
写真・地図情報の必須掲載。広告全体を切り取って使える体裁
☆読者が安心して利用できる掲載情報
関連諸法規の遵守・読者保護を前提とした掲載規定の設定
※ クーポン利用条件・期間の明記による利用時のトラブル回避
※ 掲載規定を徹底するため、両社の事業に関わる全従業員を対象とした広告取扱につ
いての社内教育・社内試験の実施
☆ホットペッパー読者プロフィール☆
46
「2001 年 4 月号読者アンケートより」
(調査母数 3,532 名)
第3節
リクルートの戦略
これまでホットペッパーの紹介をしてきたが、ではそのホットペッパーを発行している
リクルートにはどんな戦略があるのだろうか。まずは、情報誌の機能からみていくことに
する。
第1項
情報誌の機能
リクルートの情報誌には読者に「相場感」を与える機能がある。それは情報誌自体が、そ
の
正確さ と 豊富さ と タイミングのよさ ゆえに擬似市場化してしまうからであ
る。持ち歩きのできる 見本市 として株式市場や車のオークションと同じように市場機
能を持っているといえよう。このとき市場におこる変革は次の 3 つである。
①市場の自由化・オープン機能
それ以前には一部の玄人によって動かされていた市場を、素人一般のイニシアティブに
47
引き戻すことができる。不動産取引がいい例だが、情報が豊富で正確なオープンマーケッ
トでは、読者は素人であっても相場観が得られるので騙されることが少ない。
②商品の品質向上化機能
商品の価格を引き下げ、機能を向上させる(情報広告の)送り手側の努力が促進される。
一覧に付され比較検討されるので、いい商品でなければ売れない。このように情報誌は無
言のうちに企業の内部努力を引き出すパワーを持つ。
③資源の節約機能
受け手と送り手のコミュニケーション・ロスを減らし、行動を直接誘発するので、マス
コミュニケーション手段しかなかったときと比べてコミュニケーション・コストが下がる。
第2項
在庫
のない情報誌事業
数千社の広告出稿先(顧客)を先に集めて、それをインデックス別に(業界別や地域別、沿
線別、目的別、興味別など)分類・編集し、情報誌を刷ってから流通させるから在庫は残ら
ない。第2節、第3項でも述べたように収益の大部分が販売収入ではなく、広告収入によ
って成り立っているリクルートにとっては、返品コストは無視できるほど小さい。だから
ホットペッパーのような「情報誌事業」は利益率が高いのである。
第3項
地域の読者と店をつなぐ
では次に、リクルートの役割(提供できる価値)を店側と読者側からみていく。
☆店舗・企業に提供できる価値
①自由になる時間とお金を持ち、情報に敏感な消費の主役である F1層に集中したダイレ
クトで効率的・効果的な販促活動ができる。
②「トクする情報を得ること」を目的に読者が見ており、情報への注目度が高く、クーポ
48
ンを持って店いくという行動を引き起こすので販売促進の即効性がある。
③クーポンというフィードバック機能によって広告効果の確認を行いながらのセールスプ
ロモーションが可能になる。これによって、広告効果のデータベース化と計画的・経
済的なプラン・ドウー・シーによる広報戦略が可能になる。
④全国に商品・サービスを提供している企業にとっては、分割してエリアを選定できるた
め、エリアの特性を考慮したエリアマーケティングが可能。また、逆に主要都市を網
羅し、一気に話題性を高める広報も可能である。
☆読者(消費者)に提供できる価値
①日常生活まわりの商品・サービスを割安で手に入れられる。
②身近なエリア情報が満載され、発見があり消費活動の選択肢が増える。
③多くの比較検討しやすい情報の中からお得度を比較し、自分にとってのベストを選択
できる。
④定期的かつ継続的に信頼性の高い商品・サービスを安心して得られる。
今、流通の世界では、価格競争が中心である。
「絶対的に価格が低い」が消費者のメリッ
トであるが、果たしてそれだけだろうか。ファーストフードが流行する一方、都心の億
ションが即完売している。また、価格はそれほど安くなくても、メニューや雰囲気や接
客サービスの工夫で、たくさんの集客に成功している小さな店もある。
つまり、いい商品・サービスが自分にとって割安であれば、ためらっていた消費が動き
出すのではないだろうか。今まで動かなかったのは、ほんの一部の人しか知らなかったた
めや、工夫・サービスの改善が一部の店に限られていたためや、小さな店のサービスの改
善や工夫を手軽に紹介できるメディアがなかったことが理由だと思われる。
ホットペッパーがその役割を果たすことで、埋もれていた情報が流通し、提供されるサ
ービスの工夫が競われ、そのことが広告上の工夫として表れれば消費者の消費意欲を刺激
することができる。
第4項 ショートレンジでのコミュニケーションがブランドをつくる
広告という手法でブランドづくりをする商品もあるが、ホットペッパーのプロモーショ
ンでいえば、目的は商品告知・アピールである。ブランディングの根幹部分は、雑誌の本
49
誌側でとりにいく話なので、そのきっかけとなるプロモーションという位置付けだ。マー
ケットの中でのポジションをできるだけ早く高く獲得するというのが目的なので、多少目
立ったほうがいいし面白いほうがいい。名前が残り、手にとってみようというきっかけに
なればいいということだ。ちなみに、
「Hot Pepper(ホットペッパー)
」という
誌名の由来は、
「刺激的(スパイシー)な生活をこの街で」ということからきている。
今後のコミュニケーション戦略についても、プロモーションによってブランドを長期的
な視野でどうするかということは考えられていない。特にテレビ CM は短期的視野で考え
るべきものだ。その時々のホットペッパーがマーケット、読者、クライアントとの関係性
の中でどういう立ち位置にいて、その立ち位置で問題が発生しているのかいないのか。あ
るいはそういう人達に、コミュニケーションしていくためにはっきり言わなければならな
いことは何なのか。そのときのプロモーションの中身は、その「いわなければならないこ
と」に尽きるだろう。例えば、今はグルメ情報をメインにしているが、最終的には生活情
報全般をカバーする情報誌になるのではないか。その時には、コンテンツ量だけでなく分
野を拡大することで、新しい情報が入ったということこそ、読者に言わなければならない
ことだ。
このように、かなりコンセプトを絞っているからこそ、広告の役目としては、どのよう
にメッセージを点火して発信していくかということに尽きる。10年後、20年後という
先の話ではなく、とにかく今の時代に、一番消費者に受け入れられるように魅力的に見ら
れるような商品にするにはどうしたらいいかを常に考えている。商品力があれば、コミュ
ニケーションの世界観をつくって、それをマス媒体でその時に一番、効果的な手法で毎回
発信していく。ある程度、世界観を共有させていたりトーンをもっていれば、1本1本の
最強の商品広告が、ホットペッパーのブランド広告として見えてくるはずだ。単発のショ
ートレンジで考えて、結果としてブランドのイメージが1本の線のようになっているとい
うのが一番いいのではないだろうか。
50
★大手居酒屋にクーポンを出す意味を聞いてみよう!!★
12 月 9 日(火)に大手居酒屋チェーン「村さ来」大阪本部の辻本さんにお電話でお話を
伺った。
―クーポンをだす意義について。
辻本 もちろん広告効果。高い掲載料を払ってでも、
「ぐるなび」や「タウンピタ」、
「ホ
ットペッパー」などの媒体にたくさん載せているのは、それだけたくさんの人に 村さ来
を知ってもらうため。費用はそれだけたくさんかかるが、それ以上に来店してもらうきっ
かけ作りになる。どんなにいい店もお客様に来てもらわないと始まらない。特に「ホット
ペッパー」などの雑誌やフリーペーパーを見る人は、大体の人はどこに行こうかなと思っ
て店選びをしているので、値引率やこの店は雰囲気がいいな、などといった理由で選んで
いる。まず、新規客を獲得して、そこからリピーターにつなげていくために、サービスで
51
あったり、接客に力を入れているのだ。
クーポン=きっかけ作り
―「 村さ来」さんはたくさんの媒体にクーポンを掲載しているが、どこのクーポンの回収
率が高いのか。
辻本 店の出店場所によって変わってくる。都心部ではホットペッパーの回収率が一番
高い。
―値引率は月毎に変わるのか。
(もしくはクーポンの内容)
辻本 変わっていない。
「村さ来」は直営店と加盟店とで展開をしている。
「神戸版ホット
ペッパー」の場合、掲載しているのは「三宮北野坂店」と「三宮生田店」で、どちらの店
もフランチャイズ契約をしている加盟店。加盟店はそれぞれの店でサービス内容、クーポ
ン掲載を決めているが、直営店は本部が一括してサービス内容・クーポンの値引率を決め
ている。なので、加盟店は値引率を変えたりもしている。
―実際リピーターにつながっているのか。
辻本 長い目で見るとつながっている。クーポンは来店してもらうきっかけにすぎない
ので、その後どうやってリピーターにつなげていくのかというのは確かに悩むところ。ク
ーポンの内容を○○%割引といったものから、ワンドリンクサービス or1品サービスとい
ったものに変えたりして、お客様に飽きられないような内容にすることも大切なのかもし
れない。リピーターにつなげる努力としては、ポイントカードを発行したり、月曜日はビ
ール○○○円といったサービスをしている。また、店員と「じゃんけんゲーム」をして勝
てば景品が当たるということもしている。
―利益はでているのですか。
辻本 全体的にみるとつながっていると思う。
「村さ来」という店をたくさんの人に知っ
てもらうために、これからもクーポン雑誌に載せ続けますよ。
お話を伺ってわかったことは、直営店と加盟店とでクーポンの内容(割引率など)が違
うということだ。兵庫県の直営店は「東加古川店」のみで、ホットペッパーによく掲載し
ている「三宮北野坂店」と「三宮生田店」は加盟店だった。全国の直営店ではお話を伺っ
52
たように、ホームページにクーポンが掲載されていて「ワンドリンクサービス」というも
のだった。
他にもリニューアル店では、
「飲食割引券にて半額払い戻し」
を実施していたり、
店舗によってはポイントカードを導入したり、10%割引をしているところもある。
ホームページに掲載
中のクーポン
加盟店(ここでは上記 2 店舗とする)では、毎月発刊されているホットペッパーにク
ーポンが掲載されているが、月毎に割引内容は変わっている。ホットペッパーに初めて掲
載された当初、割引率は 30%だった。下記のクーポンは 8 月と 12 月のもので、やはり年
末の客のかきいれ時には割引率は低くなっているようだ。
<2003 年 8 月号>
<2003 年 12 月号>
53
☆ホットペッパーパーティー☆
ワタシの街をおトクにするクーポンマガジン とうたうリクルート「ホットペッパー」
が F1女性に絞り込み、楽しみながら商品価値を知ってもらう初のイベントを開催した。
名付けて「ホットペッパーパーティー」だ!!
場所は東京国際フォーラムの地下大ホールで、2003年3月19日∼21日の3日間、
20∼30代女性たちを中心に、約2万7000人を集めた。想定入場者はホットペッパ
ー読者=まさに消費を牽引している F1層の女性たち。いつも ワタシの街をおトクにす
るクーポンマガジン をうたうホットペッパーを賢く利用しつつ、店舗情報を収集したり、
新商品をお試しすることに長けている女性たちだ。そんな読者に向け、同誌での告知を行
った他、交通広告、公式ホームページによる告知を展開。当日、会場となった展示ホール
は入場制限が出るほどの大盛況ぶりとなった。会場内には、協賛企業のブースからなる「ト
レンドアイテムコーナー」
、その場でフラワーアレンジやウクレレレッスンが受けられる
「体験レッスンコーナー」
、
ヘアカットやネイルアート、占い、
居酒屋など出展者からなる、
「トライアルコーナー」などが設けられた他、ファッション人気投票コーナー、人気モデ
ル SHIHO のトークショーやヘアカットショーなどが行われるステージなど、学園祭のよ
うな賑やかさ。グルメやコスメはもとより、情報機器やクルマ、エンターテイメント、美
容にいたるまで、ライフスタイル全てにわたって女性たちの目線にあったブースが集積。
巡る楽しさとお得感を演出できた点が人気の理由ではないか。
ほとんどの人がイベント告知のされたホットペッパー本誌についているクーポンを切
り抜いて持参しており、中にはきちんとファイリングするなど用意周到な人もいた。核ブ
54
ースからプレゼントや抽選、サンプリングやサービス体験が受けられるとあって、どのコ
ーナーも身動きできないほどの混雑ぶりを見せていた。会場を巡るうちに、参加者がエン
トランスで受け取った
tokutoku 袋 (写真1参照)は、みるみる新商品やカタログでい
っぱいになっていく。
自分にとってその商品が本当に使い勝手がいいか、使用価値をしっかり見極めたい。そ
んな風潮が女性たちの間には広がっている。メディアを通じて認知を高めると同時に、リ
アルな場で来て見て触って、楽しみながら知らず知らずのうちに商品への親和性を高めて
いく。 来れば必ずトクする女の子
トは、まさにそんな
の祭典 をうたうイベン
(写真1)
女性たちのツボにハマッた企画。クーポンをしかけるホットペッパーが F1女性たちのア
クションメディアであることを証明したイベントとなった。
【HAVE
A
BREAK 3】
∼なぜホットペッパーの CM はあんなにおもしろいのか!?∼
リクルートのホットペッパーの CM は、映画のワンシーンのような映像にまったく関係
のない商品メッセージをのせることで、ギャップの面白さを狙っている。音声は製作者の
55
「山崎隆明さん」の声。一人二役で吹き替えしている。プロのナレーターよりも素人が喋
る事で、異物感を狙っているのだ。
広告において、この異物感は大事で、類型的な意外性のない表現では、全くメッセージ
が伝わらない。約3000本流れている CM の中で覚えられているのは、平均3.5本。
視聴者はとてもシビアである。CM は観てもらえるものという前提で企画を考えると、大
失敗してしまう。
↑
<電通関西支社クリエイティブ局 CM プランナー:山崎隆明さん>
製作者は、劣悪な状況下で CM を観てもらうための工夫をしなければいけないという。
ホットペッパーに関して言えば、あの素人の音声が、生命線だ。コピー自体はなんのレト
リックもパワーのある言葉でもない。普通の喋り言葉だ。ただ、あの映画風映像に合わせ
て、あの素人の声で喋るだけで、CM のアタマから、ほかとは違う独特の世界観と面白み
が生まれてくる。
山崎さんの場合、企画するときは理屈で考えるのではなく、思いつきで作るように心が
けているそうだ。ただの思いつきで作った企画の方が、脳を使って考えた企画よりも伝達
力が高いような気がするらしい。理屈で作った企画は、どうしても爆発しないというか、
意外性に乏しい。思い付きには、それだけで飛躍が生まれ、うまく商品に落とせば意外性
のある広告になるわけだ。
リクルート・ホットペッパー:
「食べました」篇
この CM も偶然夜中に映画を見ていて思いついたらしく、後日早速その映画に自分の声
を吹き込んで、簡単なビデオコンテを作り、お得意様に持って行った。実作業では、映画
の映像が借りられなかったので、50年代のアメリカ映画風映像を新たに撮影している。
CM の評判はよく、売上も爆発的に伸びた模様。
特に一番評判のよかった「食べました」篇に関しては、最初から一切コピーを考えずに、
絵を編集してダビング時に一気にアドリブに近い形で完成させたもので、製作者としては
本当に刺激的な作品になったそうだ。
また、このCMは2002年に最も優れたクリエイティブ活動を行ったクリエイターに
贈られる、2002年「クリエイター・オブ・ザ・イヤー」を受賞した。
「クリエイター・
オブ・ザ・イヤー」は、平成元年に社団法人日本広告業協会が制定したもので、今年で1
33
5回目を迎えている。これは、
(社)日本広告業協会の会員社の中から、その年に最も優れ
たクリエイティブ活動を行ったクリエイター1名に与えられるものである。
山崎さんの手掛けるCMは他に、マンダム
「ギャッビーブリーチカラー/人生いろいろ」
。
大日本除虫菊「タンスにゴンゴン」
、サントリー「BOSS/工事現場」などがある。
マンダム・ナチュラルブリーチカラー
金鳥タンスにゴンゴン
「モヒカン」篇
「そうそう」篇/沢口靖子
34
第4章
第1節
第1項
日本にクーポン文化は根付くのか
ホットペッパーが流行りだした理由
ターゲットの明確化
ホットペッパーの主要な読者である F1層(20∼34歳女性)は、消費活動のリーダ
ー的なポジションにある人たちである。情報感度が高く、旺盛な活動意欲を備え、自分の
ために使える時間とお金を比較的多く持っている。また、この世代は、クーポンを消費行
動に利用することに抵抗感を持たない層でもある。
クーポンは販売促進の方法としては、決して新しいものではないが、ホットペッパーの
ような形で大々的に展開するのは、おそらく初めてだと思われる。この媒体が成功したの
は、クーポンを利用することに抵抗のない F1層が母集団として存在していたことが非常
に大きい。
ホットペッパーのコンテンツは、現在のところ、グルメと美容にほぼ特化している。ク
ーポンを実際に利用する頻度が非常に高いのがこの2ジャンルだからだ。例えば、飲食の
機会は、基本的に1日3回、ひと月に90回ある。そのすべての機会において、クーポン
利用の可能性があるというわけだ。
クーポンがもつ重要な機能に、消費活動を促進するということがある。例えば、週に2
回しか夜友人との食事に行かなかった人が、クーポンがあることによって週3回・4回と
行くかもしれない。人々に、実際の消費へのアクションを起こさせること、
「プラス方向の
スパイラルを促進する」ことが、ホットペッパーが果たしている大きな役割だ。
事実、ホットペッパーの読者は非常にアクティブである。昨年12月にクーポンを利用
した人は、延べ230万人である。昨年実施したオープン懸賞では、2ヶ月間の告知で約
43万通の応募があった。これは読者の10分の1に当たるボリュームである。発行日か
ら1週間∼10日で、ほぼ8割から9割が配布されてしまうという点を見ても、読者が非
常に積極的にこの媒体を利用していることがわかる。このクーポンという手法に対して、
クーポンを使う人はお金がない人なのではないかという意見もあるが、決してそんなこと
はないと思う。ごく普通の生活者が、より合理的に消費行動を楽しむためにクーポンを利
58
用しているのだ。同じ物を買うのなら、少しでも安く買いたいという合理的な人、つまり
お金のない人よりも裕福な人が多いのである。
第2項
個性的なCMによる
クーポンマガジン
というブランド確立
ホットペッパーはフリーペーパーの一種に入るのだが、このクーポンつきフリーペーパ
ーを、 クーポンマガジン という呼び名にすることが提案された。フリーペーパーという
と「安っぽい」
「タダ」というイメージがあるが、こんな雑誌がただでもらえるというお得
な感じをしっかり植え付けたかったので、あえて クーポンマガジン と言い切ったらし
い。マガジンと言い切ってしまうことで、ホットペッパーというクーポンがついた雑誌が
ただで手に入って、なおかつビールをただで飲むことができたりもする、というお得感を
植え付けたかったのである。どれだけ情報が充実しているのだろうか、タダだからそれほ
どクオリティをあげなくてもいいだろうといった部分もあるように思えるが、ホットペッ
パーは、いわゆるフリーペーパーというカテゴリーの中で同一視されないようテレビCM
展開をしたのである。より認知度をあげ相対的な媒体力を上げていって、読者にもクライ
アントにもホットペッパーを選択してもらえる確率を上げていきたかったのである。単な
るフリーペーパーであれば、全国規模でテレビCMを展開するということはありえない。
手法も含めホットペッパーのステイタスをもう一段アップさせる、そんな意味からも ク
ーポンマガジン という打ち出し方は、非常に受け入れられやすかった。読者側の意見と
して挙げると、クーポンを使って得をしたという感想と同じくらい、自分の住んでいる街
の情報がたくさん載っていてうれしいという感想がある。
次にテレビCMのことについてだが、テレビCMは15秒がメインなので、できるだけ
商品のメッセージを頭から簡潔に言っている。まず、 クーポン0円
商品名 、そして ク
ーポンマガジン というホットペッパーの立ち位置、土俵をちょっとフリーペーパーとず
らして、気持ち的なありがたみをつける効果的な名前である。 クーポンフリーペーパー
を
クーポンマガジン に変えたからといって、内容的には違いはない。いかにこういう
商品があるかということを伝える事で、その後消費者に実際手にとってもらい、商品の価
値を感じてもらうかということで、世の中に広がっていくのである。
59
第3項
ちょっとした心配り
クーポンを手にした時、店頭で使ってみようと思い、店員さんにクーポンを見せると
「ハ?」という顔をされたことはないだろうか。そんな時によく、ちゃんとクーポンを使
えるということを認識していてくれればいいのにと思ったりする。
ホットペッパーでは、店外にオリジナルクーポンステッカーを貼ってアピールしている。
クーポンが使えるということが一目見てもわかるし、クーポンを持っていない客に「次回
はクーポンを持って来よう」と思わせ、リピーターをつくる働きをしているのだ。またホ
ットペッパーの担当者は、店のアピールポイントを判断し、クーポン内容の提案から、誌
面上でターゲットに的確に伝わる写真の撮り方、インパクトあるコピーなど、さまざまな
ことを提案し、
「来店・販売促進」を支援している。そのかいあってか、ホットペッパーの
持ち帰り状況はすこぶる良く、専用ラックはあっという間に空になった所が随所に見られ
るのである。
<専用ラックとオリジナルステッカー>
第2節
第1項
<ホットペッパーの誌面>
クーポンが根付き始めた理由
長引く不況とフリーメディアの浸透
ここ数年、日本の社会環境やメディア環境が大きく変わり、消費者の情報に対する意識
や態度も大きく変化している。99年以降、携帯電話のインターネットサービスが劇的に
普及するなどネットワーク化が進むと同時に、情報が無料で入手できるという環境や意識
が広がってきた。つまり、どの情報をどのメディアからどのように入手するのかを消費者
が主体的に選択できる環境が整い、すでに積極的に選択し始めているのだ。
60
また、長引くデフレ不況の中で「安い物は品質も悪い」というイメージが払拭され、ユ
ニクロやマクドナルドに見られるように「安くてもいい物もある」といった消費意識の変
化が生まれた。
このように、
「手軽に新しい情報を知るきっかけになる」あるいは「住んでいる地域の情
報収集に役立つ」としてイメージもよく、評価も高いフリーメディアだが、具体的にはど
のくらいの閲読率があるのだろう。大きく2つの配布形態に分けて分析してみた。(
「販促
会議」2003年9月号調査による)
1つは、ポスティングや折り込みなど家に配布される「宅配系」、もう1つは、駅や店舗
にラックを配置して配布する「街頭系」である。
「宅配系」の閲読状況は大変高く、ほぼ毎号読む人は約4割に達した。習慣的に安定し
て読まれていることがここからわかる。一方、
「街頭系」もほぼ毎号読む人は約1割と、
「宅
配系」には及ばないが高い結果になった。この2つのスコアの差は、家に居ながら入手で
きることと、自らが出向いて入手しなければならないという、入手環境の違いが大きく影
響していると考えられる。
閲読者の年齢構成を詳しく見てみると、居住地域密着の個人情報とタウン情報誌である
「ぱど」や主婦を主なターゲットにした「サンケイリビング」等に代表される「宅配系」
は、男女ともに30代以上の中高年層が多い。中でも30代∼50代の主婦層はその6割
以上が、ほぼ毎号読んでいると答えた。対照的に「街頭系」は、男性は20代、女性は1
0代∼40代の若い層が中心になっている。媒体としては特に、設置箇所が多く、関心あ
る情報をたくさん盛り込んだ「ホットペッパー」や「ローソンチケット」、
「TSUTAY
Aマガジン」等が人気だ。
さらに、読者特性を調べてみたところ、
「宅配系」の主な読者層である30∼50代の女
性は、フリーメディアを見ない人と比較して、
「買い物好き」で「値引きや特売といった価
格情報に敏感」であり、
「クレジットカードなどのポイント収集」や「キャンペーンへの応
募」にも関心が高かった。同様に「街頭系」の読者層でも「バーゲン好き」という傾向が
強く、
「掲載された店へ行った」
「付いている割引クーポン券を利用した」
「レジャー関連の
資料請求問い合わせをした」など、レスポンス行動のスコアが高かった。
このような結果から、お得な情報を無料で手に入れることができるフリーメディアに接
触することによって、消費行動が喚起されていると言えるのではないか。
61
第2項
社会的評価
「クーポン」というものの社会的評価がこの数年でぐっと上がったと感じられる。もち
ろんクーポンそのものは昔からあった。しかし、例えば折り込み広告の、もしくは街中で
配られるチラシのクーポンは、
「使うのが恥ずかしかった」というのが、女性の本音である
のではないか。損はしたくないが、
「他人の目に映る自分がかっこ悪いのはイヤ」と感じる
人が多々いたと思う。
しかし、リクルートがホットペッパーを創刊した頃からこの図式があっという間に変わ
っていった。同誌はまず、クーポンを利用することが当たり前である空気を、街の中につ
くっていくことを目指したのである。
「どこのお店でも発行している」
「皆が使っている」
という空気だ。今では、飲食店1店舗あたりのホットペッパーでの集客数は、月間平均約
200人にもなるという。
「クーポン文化」は消費場面に確実に芽生え、定着しようとして
いる。
第3項
割引にとどまらないクーポン
クーポンというと、いまだただの値引きという考え方に陥りやすいが、現在の状況はま
ったく変わりつつある。端的にいえば、自店と消費者を結ぶコミュニケーションツールだ。
クーポンの使用が常態化されてきたのは、ここ1年ぐらいのこと。リクルート社が発行す
る「ホットペッパー」がクーポンマガジンとしての地位を確立し、インターネットによる
「ぐるなび」や「グルメぴあ」などのサイト、
「オンラインクーポン」
、さらには NTT の
「L モード」のCMがテレビを通じて茶の間に流されたことが、クーポンの認知を飛躍的
に高めることとなった。
では、クーポンのもつ効用について書いてみる。クーポンはただの「割引」だけの意味
ではない。クーポンとは、それぞれの店(特に飲食店)が持つ課題を克服するためのツー
ルである。具体的に言えば次のとおりになる。
62
① アイドルタイム対策
時間帯や曜日を指定したクーポン
② 宴会集客対策
宴会客、団体客限定のクーポン
③ 客層対策
女性限定クーポンなど
④ 客単価対策
コース、ドリンク、フード限定クーポン
⑤ 新規客対策
メニュー特徴、店舗情報を付記・サービスするクーポン
いずれも飲食店が抱える大きな課題と言える。クーポンは、これら課題解決のための助
けとなりうる貴重なツールというわけだ。またクーポンの利用条件に「名前、連絡先、年
齢」などの記入を加えれば、マーケティングへの応用も可能である。
最近の傾向としては、定番化した10%引きなどの値引きクーポンから、その店が新た
に開発したメニュー、ドリンクのサービスなど、よりお店のオリジナリティを強調する内
容が増えてきている。というのも、クーポン使用の頻度が相対的に高まるにつれ、同様の
業態、価格、雰囲気の店ならばお得なクーポンのあるほうへと、店選びの決め手としてそ
の内容が重視されることが多くなっているからだ。そして一番大事なことは、店のオーナ
ーが自店をどうしていきたいのかという戦略を明確にすることである。その実現のために
クーポンをツールとして上手に利用することが必要となってくるのだ。単に値引きサービ
スのひとつという考え方では、もはや効果的な結果は得られにくいということを認識して
おいた方がよいのではないか。
63
【HAVE
A
BREAK
4】
∼あなたのクーポンのめり込み度をチェックしよう!!∼
スタート
YES
NO
インターネットでク
ホットペッパーは
ーポンが発行できる
欠かさずもらう
クーポンを使った
ことがある
サイトを 3 つ以上知
っている
クーポンを使うの
ファーストフード
お財布にはいつもク
or コンビニではク
ーポンが入っている
ーポンをよく使う
は面倒くさい or ち
ょっと恥ずかしい
たかがクーポン
モバイルクーポンを
月にクーポンを 3 回
やん という変なポ
使ったことがある
リシーがある
以上使う
街中でクーポンを配
クーポンと値引きの違
っているとついもら
実はこの論文を
ってしまう
最後まで読んでいな
いを知っている
い・・・
A
B
C
58
D
E
あなたのクーポンのめり込み度は??
A
100%
あなたは、クーポンにのめり込
みすぎたクーポンマニア!!
そんなあなたを、私たちは大好
B
きだよ♪
80%
クーポンと値引きの違いは、第
2 章、第 4 節に書いてあるよ♪
これさえ読めば・・・
C
☆☆☆クーポンマニア☆☆☆
50%
微妙やねぇ∼のめり込
んでるような、のめり
込んでないような・・。
D
30%
論文、読んでくれてありがと☆
それはそれとして、クーポンを
もっと活用してね☆☆クーポン
ってお得だよっ☆★☆
E
0%
読んでないの・・・この論文・・・
悲しいよ!おもしろいのに・・・
もっとクーポンにのめり込んで
ね!!
59
終章
私たちがクーポンを研究してきた結果として、小売店・飲食店に提案をしたいと思う。
まず、ぐるなび・ホットペッパーなどは、広告効果(店を知ってもらう)を高めるもので
あることを認識しておくべきである。価格競争をするのではないのである。ずばり、
「きっ
かけ」を作るのである。今まで、店の存在を知らなかった人に、ホットペッパーやぐるな
びで店を知ってもらい、来店してもらう「きっかけ」を作るのである。それが、新規客獲
得である。その新規客を、リピーター(固定客)にする方法は、店独自のクーポンを渡し
再度来店を促進する。また、アンケートと一緒に、連絡先やメールアドレスを書いてもら
い、後日お礼の文章と一緒にクーポンを送るのである。丁寧な対応が、リピーターにもつ
ながっていくし、
「価格」から「質」の勝負に持ち込めるのである。コミュニケーションツ
ールとしてクーポンを利用するという考え方も持っておこう。
第3章で述べたように、ホットペッパーやぐるなびに掲載してもらうためには、多大な
掲載料がかかる。店独自のクーポンや DM でそのような無駄なコストは削減できる。そし
て、現在、ホットペッパーやぐるなびに掲載している店は大体同じで、見ている消費者か
らすると珍しくもなく、その店の価値を下げてしまう恐れもある。たまに掲載されている
から行ってみよう(使ってみよう)と思うのである。最低でも3ヶ月に1回の掲載にする
べきである。
序章の消費者の定義で「クーポンとは、紙片や携帯画面を見せることによって、代金が
割り引かれたり、何か特典がつくもの」と述べた。しかし、現在は、
「代金が割り引かれる」
ことに終始している。つまり、価格競争をしているのである。割引効果で集客できても、
客単価や売上を落としてしまうとクーポンの意味がないのである。私たちは、今必要なの
は店に対する客のロイヤリティーを高めること、いかに低コストで店のファンを作る効果
のあるクーポンを作るかであると考えた。
そこで考えたことが「割引に終わらないクーポン」である。例えば、ラーメン屋で考え
るとトッピング・クーポンである。煮玉子を150円で提供しているが、クーポンを提示
すると100円で注文できるとなれば、トッピングの注文がない場合に比べて客単価があ
がるのである。クーポンを、ターゲット別、シーン別など数枚付けて、その中にトッピン
グ・クーポンを1∼2種類忍ばせておくのも良いと考えた。
66
クーポンを使えば、集客でき、売上が上がるという考えは捨てるべきだ。大事なことは、
「質」である。建物の「質」、接客の「質」
、商品の「質」である。すべての向上なしに、
リピーターの獲得はおろか経営は厳しくなるであろう。クーポンは、来店の「きっかけ」
を作るに過ぎないのだから。
クーポンをうまく使うことにより、店の利益は上がる。消費者は、この先どんなに景気
が回復しようとも、
「少しでも得」をしたいと考えるであろう。店にとって、私たち消費者
にとって、クーポンはなくてはならない存在になる。
まさしく
NO
クーポン
NO
LIFE!!である。
67
参考文献
【書籍】
・
『実践クーポン広告』
電通出版事業部
・
『クーポン・プロモーション戦略』
・
『新・生活情報視 フリーペーパーのすべて』
・
『ダイレクト・マーケティングの実態』
・
『図解 I モード・マーケティング&広告』
(株)ビジネス社
(株)電通
日本経済新聞社
東洋経済新聞社
【雑誌】
・
『宣伝会議』
1984年12月号/2003年6月号・10月号
・
『ホットペッパー』
各号
・
『ブレーン』
1995年5月号/1997年6月号
・
『販促会議』 1998年10月号/2001年6月号/2003年6月号・9月号
・
『日経情報ストラテジー』 2000年 11月号
・
『商業界』
2001年 3月号・8月号
・
『財界』
2001年 4月24日号
・
『Forbes』
2002年 10月号
・
『AERA』
2002年10月21日号
・
『創』
2003年5月号
・
『日経レストラン』
2003年8月号
・
『販促会議』
2003年 9月号
・ 『クーポン券を利用して、トクトク。』
・ 『JAPAN MARKETING JOURNAL』
・ 『消費者行動』
68
【WEB サイト】
・モバイルクーポン関連
http://www.fri.fujitsu.com/hypertext/fri/cyber/colum/fk/fk.html
http://www.netricoh.com/contents/antenna/web_biz/data/0017.html
http://www.m-report.net/2002/marketing.htm
・インターネットクーポン関連
http://n-income.com/coupon.htm
http://www.gnavi.co.jp/
・ダイレクトメール関連
http://www.onlinewbc.gov/docs/Japanese/directMail.html
http://www.umenohana.co.jp/body2.html
・フリーペーパー関連
http://www.jagat.or.jp/story_memo_view.asp?StoryID=6265
http://www.shift.jp.org/055/videodictionary/indexj.shtml - 9k
http://www.clubking.com/
http://www.fuga.ne.jp/shop/clubking/info_025.html
・ホットペッパー関連サイト
http://www.recruit.co.jp/corporate/news/2002pdf/hot0619.pdf
http://www.recruit.co.jp/corporate/news/2003pdf/hotpepper030908.pdf
http://www.hp360.com/
http://www.kk-spc.co.jp/top/topics_part/hot.html
http://www.srk.ne.jp/rex/interview03/
http://www.recruit.co.jp/corporate/news/2002pdf/hot0619.pdf
http://www.hp360.com/
http://www.hp360.com/contents/baitai.html
http://www.hp360.com/contents/baitai.html
http://www.recruit.co.jp/AD/doc/hp__/0109/hp__010901-200.html
http://www.srk.ne.jp/rex/interview03/index.html
http://www.recruit.co.jp/corporate/service/hot_pepper.html
http://www.recruit.co.jp/corporate/news/2002pdf/hot0619.pdf
69
http://www.murasaki-net.co.jp/index_main.html
・ビジネスレポート
http://www.food21.jp/open/report/
※本論文の原文に使用しておりました写真につきましては、肖像権の関係上、HP 掲載用の
本論文では省略をさせていただきました。
70