ドライエア・マニュアル(pdf:560 kB)

乾燥空気システムについて
成田裕輔
平成 16 年 11 月 9 日
1
FMOS 冷蔵庫
光学装置が出す熱輻射によるノイズを排除するために、FMOS では、分光器は約 −50◦ C に冷やされた冷蔵庫に
入れている。図 1 のように、すばる OHS の結果から、−50◦ C まで冷却すれば、熱輻射ノイズを OH 夜光の抜け
残りのノイズよりも小さくできることが既に分かっている。
また、光学装置のうちカメラ部分は、デュワーに入れる。冷蔵庫の前面に穴を開け、デュワーの先端部分を庫内
に入れる設計になっている。
なお、庫内に設置された各種機器は、外部からのリモートで制御する。
107
Number of photons
106
105
104
103
102
10
1
10
-1
10-2
-100
-80
-60
-50 -40
-20
0
20
Temperature [degrees]
図 1: すばる OHS の結果における、1000 秒積分時、1 ピクセル当たりの熱輻射光子の数。−50◦ C まで冷却すれ
ば、熱輻射ノイズを、OH 夜光の抜け残りのノイズよりも小さくできる。
1.1
各種データ
冷蔵庫の各種データは以下のとおりである。
• (株)アビー製 FMOS 分光器収納用大型冷凍機箱 REFR-60
• 大きさ (単位 : mm) = 2340 × 2905 × 2300
• 前面のベローズ穴の大きさ = 約 1.3m
• 容積:10, 628.4l
• 冷却機部分は、三菱電機製コンプレッサ E7W-150UPA を使用
1
• 出力 15kW、−65◦ C まで冷却可能
• 冷媒:R22(クロロジフルオロメタン)
FMOS には高分散モードと低分散モードの 2 つのモードがある。この 2 つのモードをを実現するため、モード
によってカメラデュワーを移動させる構造になっている。そのため、ベローズ(蛇腹)のついた板を冷蔵庫にと
りつけ、板部分をデュワーとともに動かせるようにしている。
1.2
冷蔵庫の冷却原理
冷蔵庫の壁の中に冷媒を通すことで、庫内の空気を冷却する。冷却は、屋上の圧縮機/凝縮機と、サブクーラー、
中間膨張弁、冷蔵庫の膨張弁で行う。図 2 のように冷却ガスは冷蔵庫まで送られる。
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図 2: 冷蔵庫の冷却原理図。破線で囲まれているのは現在屋上に設置している部分、一点鎖線で囲まれているのは
冷蔵庫部分を指している。
1.3
冷蔵庫の冷却能力
図 3 が示すように、約 240 分(4 時間)で約 −50◦ C に達する。これは冷蔵庫の冷却性能としてはかなり強力な
冷却能力と言える。なお 1 日の冷凍能力=約 160,000[kJ/h](5.8 法定冷凍トン)である。
102
30
20
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10
temperature[degree C]
10
0
-10
-20
1
10-1
10-2
-30
10-3
-40
-50
0
50
100
150
200
250
300
350
time[min]
10-4
-100
-80
-60 -50 -40
-20
0
20
40
᷷ᐲ=͠?
図 3: 冷蔵庫の冷却曲線。約 4 時間で約 −50◦ C に達する。
2
図 4: 大気圧下における飽和水蒸気量。
60
2
結露の問題
冷蔵庫の運転試験を開始したところ、短時間に非常に大量の結露(発生した瞬間に凍るので実際には結霜)が
発生した。床に 5cm ほど霜が積もる状態になっていた。
図 4 に大気圧下における飽和水蒸気量のグラフを示す。これによると −50◦ C での飽和水蒸気量は 0.0617[g/m3 ]
であり、これは 20◦ C における飽和水蒸気量の 0.35%である。
このことから考えると、常温 (20◦ C) から冷却していった場合、−50◦ C に達する前に結露が起こる可能性が非常
に高いといえる。結露が発生したのは当然の結果と言える。
2.1
冷蔵庫の穴や隙間
冷蔵庫には、デュワー穴、ファイバー導入用の穴など、複数の穴が開いている。一応穴を塞いだが、まだ不十
分である。また、内圧調整用穴が開いている。そのため、これらの穴から外部から水分を含んだ空気が入ってき
てしまう。
また冷蔵庫は、ハワイへの輸送を考えて、人の手で各パーツに分解できる構造になっている。現在実験中のた
めパネル同士の接着は仮止めとなっている。そのため、パネルの微小な隙間から水分を含んだ空気が入ってしま
うことが考えられる。
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図 5: 冷蔵庫には穴が複数開いている。たとえば、デュワー穴、ファイバー導入用の穴、内圧調整用穴などがある。
なおデュワー穴については、現在はベローズ板によって覆われている。
2.2
庫内空気の体積減少
さて、結露の発生原因を詳しく調べるため、冷却時の庫内空気の体積減少を大ざっぱに計算することにする。
冷蔵庫の容積 V = 10628.4[l]
(1)
シャルルの法則 V /T = (一定) より、庫内温度が T = 293[K] → 223[K] に変化したとすると、その時の庫内空気
の容積 V は
10628.4
V
=
, V = 8089.19[l]
293
223
従って、∆V = 10628.4 − 8089.19 = 2539.2[l] の体積減少が発生する。
(2)
4 時間で約 −50◦ C に達するので、
2539.2 ÷ 240 = 10.58[l/min]
3
(3)
毎分 10.58[l] の体積が減少している。
冷却が進んで庫内空気の体積が減少すると、それを補うために冷蔵庫の外部から空気が流入する。上の計算か
ら、庫内温度 −50◦ C に達するまでの間、毎分約 10 リットルの空気が流入していると考えられる。
結果として、冷却して庫内温度が下がると、外部からより温度の高い空気がどんどん流入し、結露を生む大き
な原因となっていた。
2.3
予想される結露の量
2.2 節の結果をもとに、実際に結露がどのくらい発生するのか見積もることにする。
(温度 20◦ C、湿度 50%)→(温度 −50◦ C、湿度 100%)と仮定。また気圧は変化しないとする。
初期状態からの冷却で体積が減少することによる結露は
10.6284[m3 ] × 8.65[g/m3 ] − 8.089[m3 ] × 0.0617[g/m3 ] = 91.5g
(4)
−50◦ C の空気が保持できる飽和水蒸気量は微小なため無視すると、平衡に達するまでに流入する空気の含む水分
の結露は
(0.01058[m3 /min] × 8.65[g/m3 ]) × 240[min] = 22.0g
(5)
したがって、−50◦ C に達するまでに、合計 91.5g + 22.0g = 113.5g の結露が発生する。
2.4
冷却の性質と結露の関係
図 6 のように、冷蔵庫は庫内温度が設定温度(−50◦ C)に達すると、いったん冷却が停止する。その後、庫内
温度が −45◦ C 程度まで上昇すると、再び冷却が開始される。これを繰り返すことにより、庫内温度が一定に保た
れる仕組みとなっている。
冷却機のオン/オフが繰り返されるため、庫内温度は −50◦ C ∼ −44◦ C 付近を上下する。その周期は約 1 時間
である。
庫内温度の上昇・低下が繰り返されることによって、新たな空気の出入りが生じるため、実際の結露量は 2.3 節
の結果よりもさらに多くなってしまう。
30
temperature[degree C]
20
10
0
-10
-20
-30
-40
-50
0
100
200
300
400
500
600
700
800
900
time[min]
図 6: 冷蔵庫の冷却の性質を表すグラフ。−50◦ C に達すると、冷却機のオン/オフが繰り返されるため、温度は
−50◦ C ∼ −44◦ C 付近を上下する。
以下、冷凍機のオン/オフによって生じる結露の量を見積もる。条件は以下のような仮定を置く。
1. 温度の上下動は 1 時間の周期で起こると仮定
4
2. 温度変化の範囲は −50◦ C ∼ −45◦ C とし、圧力は一定とする。
3. 飽和水蒸気量は −45◦ C で 0.106[g/m3 ]、−50◦ C で 0.0617[g/m3 ] とする。
4. 体積の減少は温度下落時に起こる。
10.6284[m3 ] の空気が −45◦ C → −50◦ C になると、庫内空気の体積は
10.6284 ×
223
= 10.3953[m3 ]
228
(6)
従って、1 時間あたりに生じる結露は
10.6284 × 0.106 − 10.3953 × 0.0617 = 0.485g
(7)
つまり、−50◦ C に達したあとも、1 日あたり 0.485 × 24 = 11.64g の結露が発生すると考えられる。
2.5
結露の原因
これまでの考察から、結露は以下のようなシナリオで発生すると考えられる。
• 20◦ C の空気が −50◦ C まで冷却されるのに伴い、飽和水蒸気量が減少する。これにより水分が凝縮し、結露
が発生する。
• 冷却が始まると、庫内空気の体積が減少し、冷蔵庫の穴や隙間から、外部の水分を含んだ温かい空気が庫内
に流入する。流入した空気は冷やされ、さらに結露を生む。
2.6
対策
これまでの考察から、対策すべき点としては以下の 3 つが挙げられる。
1. 庫内空気を除湿する
2. 冷却中に、庫内への外気の流入を防止する
3. 完全に密閉は不可能だが、できるだけ隙間を無くす
1 と 2 については、乾燥空気システムを導入することにより解決を図った。3 についても、常に乾燥空気を送りつ
づけて、冷蔵庫内をわずかに加圧状態にしておけば問題ないと思われる。
3
乾燥空気システムの導入
結露を防止するため、除湿器を用いて冷蔵庫内に乾燥空気を入れることにした。求められる乾燥空気システム
の条件としては、以下のようなものが挙げられる。
• 露点温度 −50◦ C より優れた除湿性能
• 毎分 10 リットル以上の流量性能(毎分の体積減少量より算出)
• ハワイ・マウナケア(標高 4000m)の環境でも十分使用できるもの(平均気圧 600hPa、気温 −5◦ C ∼ 10◦ C)
これに加えて、マウナケア山頂という過酷な使用条件のため、できるだけメンテナンスが少なくて済むものが望
ましい。
5
3.1
エアドライヤの種類
エアドライヤ(除湿器)は、現在発売されている製品のほぼ全てが、コンプレッサから出る圧縮空気を除湿す
ることにより乾燥空気を得る仕組みになっている。
また、水蒸気除去の方法の違いによって、膜式エアドライヤ・冷却式エアドライヤ・吸着式エアドライヤの大
きく三種類に分類することができる。
3.1.1
膜式エアドライヤ
一般に中空糸を使用し、圧縮空気中の水蒸気を除去する。中空糸の水蒸気透過が酸素や窒素と比較して著しく
早いことを利用して、濃度と圧力差を利用して水蒸気を除去する。
長所:電源を必要としない。メンテナンスがほとんど不要。
短所:水蒸気を排出するためのパージ空気を必要とする。そのため、20%ほどの空気ロスがある。
3.1.2
冷却式エアドライヤ
空気を目的の露点温度以下まで冷却し、水分を凝縮させることにより、分離除去する。
長所:大容量に向いている。除湿と冷却が同時にできる。
短所:冷却して除湿するため、原理上低露点を必要とする時には向かない。
3.1.3
吸着式
シリカゲル・活性アルミナなどの吸着剤を利用して、空気中の水蒸気を除去する。
長所:除湿性能が高い。低露点を得られる。
短所:定期的に吸着剤の交換が必要で、吸着剤が廃棄物として出る。また水分を吸着剤した再生のための空気
が必要。
3.2
除湿器の選定
調査の結果、大気圧露点 −50◦ C を満たすエアドライヤはほとんど膜式であった。以下、候補に挙がった膜式エ
アドライヤ 3 製品、吸着式エアドライヤ 1 製品をを主な仕様とともに列挙する。
SMC(株) メンブレンエアドライヤ IDG シリーズ
膜式エアドライヤ。基準露点は −60◦ C。
入口空気圧力:0.3 ∼ 1.0[MPa]。
周囲温度・入口空気温度の範囲:−5◦ C ∼ 50◦ C。
出口空気流量は 50、100、150 [l/min] の 3 種類。(0.7MPa 時)
空気を流し始めてから基準露点に達するまで 120 分かかる。
CKD 社 スーパードライヤユニット SU3000・SU4000
膜式エアドライヤ。基準露点 −40◦ C, −60◦ C のタイプがある。
入口空気圧力:0.4 ∼ 1.0[MPa]
周囲温度・入口空気温度の範囲:5◦ C ∼ 50◦ C。
出口空気流量は 25∼650 [l/min] まで 5 種類ある。
6
日本精機 メンブレンエアドライヤ PERMA・DRI シリーズ
膜式エアドライヤ。出口空気露点は圧力下で約-40 ℃のタイプがある。
流入する水分を一定の割合で除去するため、圧力と処理空気量が一定であれば、入口空気温度または入口空気
露点温度(流入水分)の変化に応じて、出口空気露点が変化する。
周囲温度:1.7◦ C ∼ 50◦ C。
出口空気流量のタイプは多岐にわたる。
日本精機 DHW・DH シリーズ
吸着式エアドライヤ。乾燥剤は活性アルミナ。出口空気露点:圧力下 −40◦ C(大気圧下 −57◦ C)
入口空気圧力:0.34 ∼ 1.03[MPa]
入口空気温度:5◦ C ∼ 50◦ C。周囲温度:1.7◦ C ∼ 50◦ C。
乾燥サイクル:10 分切換・4 分切換
出口空気流量のタイプは多岐にわたる。
選定の結論
今回の FMOS における環境は、低露点が必要であり、また冷却設備は別に存在する。従って低露点に向かず、
別の冷却機を持っている冷却式は除外した。また、吸着式は、吸着剤交換が必要であり、マウナケア山頂上という
メンテナンスのしにくい環境を考えると利用しづらい。
従って、目立った欠点もなく、低露点を得ることができる膜式エアドライヤを採用することとした。性能・価格
等を比較して、我々が採用したのは SMC 社製エアドライヤ IDG-60S である。この製品の主な仕様は以下のと
おり。
• 基準露点:−60◦ C(大気圧)
• 出口空気流量:50[l/min]
• パージ空気流量:27[l/min]
3.3
中空糸の構造
この節では、膜式エアドライヤに用いられている中空糸について解説する。
中空糸は、「水蒸気は通しやすいが、空気(窒素と酸素)は通しにくい」という、一種の選択透過膜とも言える
高分子膜を用いて作られている。図 7 に中空糸の構造図を示す。中空糸の内側に圧縮空気を通すと、水蒸気だけ
が膜を通って外側へ移動する。空気はそのまま通過し、乾燥空気となって出ていく。この時、出口側の乾燥空気の
一部を、中空糸の外側へパージさせる。このパージ空気により、水蒸気は大気中へ排出される。
パージ空気として使われる乾燥空気は、全空気量の約 30 ∼ 40% であるが、流量性能としては毎分 10 リットル
あれば十分で、冷蔵庫内に入れる空気量に対しては、問題ない範囲のロスである。
4
圧力計と流量計の設置
乾燥空気システムが正常に動作しているか常に監視するため、冷蔵庫内の温度計・湿度計に加えて、圧縮空気
の経路中に圧力計と流量計を設置した。採用した製品は、エアドライヤと同じ SMC 社の製品を用いている。
7
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図 7: 中空糸の構造図。白い丸は空気、青い丸は水蒸気を表す。
4.1
圧力計
SMC 社の ZSE-30-C6H-26-MLA を採用した。
主な仕様
シリコン拡散型半導体圧力センサ
定格圧力範囲:−100kPa ∼ 100kPa
アナログ出力:1V∼5V
繰り返し精度:±0.2%
管接続口径:φ6mm
圧力計の測定原理
シリコンのダイヤフラム(隔膜)上に、不純物拡散で作られた 4 本のピエゾ抵抗がブリッジ状に蒸着されてい
る(図 8(a))。図 8(b) のように、抵抗は短冊状で同一方向に配置されており、このダイヤフラムに圧力が加えら
れると、ピエゾ効果により、A と D は図 8(c-1) のように、B と C は図 8(c-2) のように、それぞれ異なる変形をし
て、抵抗値が変化する。
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(a)
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(b)
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(c-1)
(c-2)
図 8: (a) 抵抗の回路図。4 本の抵抗でブリッジを形成する。 (b) ダイヤフラム上の抵抗の配置。短冊状の抵抗は
全て同じ方向に置かれている。(c) それぞれの抵抗の圧力を受けた時の曲がり方の違い。
8
ダイヤフラムは測りたい圧力(内圧)と大気圧の間に設置され、「内圧=大気圧」の場合に値は 0Pa を示す(図
9 左)。なお、内圧 − 大気圧 = ゲージ圧 という。大気圧より内圧が低い場合には、図 9 中央のようにダイヤフラ
ムが内側へ押し込まれて、ゲージ圧は負の値を示す。内圧の方が高い場合には、ダイヤフラムが外側へ押し出さ
れて、ゲージ圧は正の値を示す(図 9 右)。
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図 9: 内圧と大気圧。
「内圧 − 大気圧」をゲージ圧といい、
「内圧=大気圧」の場合にゲージ圧は 0Pa を示す。大気
圧より内圧が低いとゲージ圧は負の値となり、内圧の方が高いとゲージ圧は正の値となる。
4.2
流量計
SMC 社の PF2A511-03-1 を採用した。
主な仕様
サーミスタ式フロースイッチ。
使用流量範囲:10 ∼ 100[l/min]
繰り返し精度:±1%
配管口径:3/8 インチ(∼ 1cm2 )
流量計の測定原理
流路中に加熱したサーミスタを設置する。流体が流れるとサーミスタは熱を奪われ、抵抗値が変化する。この
抵抗値を測定することで流量値が得られる。
5
実際の運用と問題点
5.1
運用
プロジェクト室にて現在実験中の冷蔵庫に、実際にエアドライヤをつけて庫内除湿を開始した。
図 11 に乾燥空気システム全体の模式図、図 12 にエアドライヤの実物写真を示した。
コンプレッサで約 0.5MPa に圧縮された空気は、まずエアフィルタと呼ばれる部分を通る。エアフィルタには不
繊布で作られたフィルタがついており、圧縮空気がここを通ることで、空気に含まれる水分がある程度取り除か
れる。
取り除かれた水分はエアフィルタ内にためられる。水分がある程度たまると、フロート(浮き)を利用したオー
トドレン機能が働き、自動的にエアフィルタ下部につないであるホースから排出される。
9
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図 10: 流量計の原理図
このエアフィルタは、除湿効果を上げるために 2 つ取り付けられており、エアフィルタを 2 回通ることで、圧縮
空気中に含まれる水分の大部分が取り除かれる。しかし −50◦ C で結露を起こさないほど除湿されたわけではない。
エアフィルタを通った圧縮空気は、エアドライヤ本体を通過する。中空糸の働きにより、圧縮空気は、ほぼ完全
に乾燥した空気となる。その際、除去された水分を含む空気が、パージ空気として外部に排出される。
しかしそのままでは圧縮空気の圧力は約 0.5MPa であり、冷蔵庫内に入れるには高すぎるので、レギュレータで
圧力を大気圧より少し高い程度に調整し、冷蔵庫内に入れる。
なおコンプレッサは、タンク内圧力が 0.69[MPa] になるといったん圧縮を停止し、圧力が 0.49[MPa] まで下が
ると再び圧縮を開始する。すなわち、圧縮のオン/オフが繰り返される。ただ圧力はタンク内で調整され、レギュ
レータでも制御されているので問題はない。
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図 11: エアドライヤを含む、乾燥空気システム全体の取り付け模式図。赤い矢印は圧縮空気の流れの向き、緑の
矢印はドレン、青い矢印は冷媒の流れる向きを表している。
5.2
問題点と対策
庫内の空気を完全に乾燥空気で満たしてから冷やさないと結露・結霜が生じる。
地上の空気に含まれる水蒸気は思いのほか多く、エアフィルタでは十分に水分を取りきれないことがある。
今回採用したエアドライヤは、液体の水が膜モジュール部に入ると、除湿性能が著しく落ちる。
10
5.2.1
流入空気の温度
いくら乾燥していても、庫内に比べて著しく温度の高い空気が冷蔵庫内に入ってしまうため、大気のゆらぎが
発生し、観測精度に大きな影響を与えるおそれがある。実際、空気の吐出口付近の温度は、ほぼ室温と同じ状態
であった。
対策として、乾燥空気の配管を長くして、冷蔵庫内壁の冷媒配管に這わせる形で配置し、できるだけ冷たい空
気が庫内に入るようにした。これにより、流入空気による庫内温度の変化は抑えられた。
5.2.2
エアドライヤ水浸し
エアドライヤ本体から液体の水が大量に漏れている状態になっていた。原因としては、プロジェクト室内のエ
アコンによる急激な湿度の上昇、エアフィルタの目詰まり、エアフィルタのオートドレン機能の不調などが考えら
れる。
• 室内エアコンの設定が「自動」になっていたため、急激な気温低下に伴って自動的に暖房に切り替わってい
た。このため、室内の湿度が著しく上昇し、エアフィルタでは水分を除去しきれなかった。
• 長期間にわたり連続運転を行っていたため、エアフィルタのフィルタが目詰まりしていた可能性もある。
• エアフィルタ自体のオートドレン機能が何らかの理由で働かず、たまったドレンが配管内部にまで浸入した
ことも理由として考えられる。2 つのエアフィルタにたまった水が排出されなかったため、空気配管内部に
まで大量に水が流れ込んでしまった。
ただどれも確たる証拠はなく、現状では推測にすぎない。一つの考え方としては、これらの原因が重なった結果、
エアドライヤ部分にまで水が浸入したのではないだろうか。
なおこれらの点への防止策として、エアコンの設定は「ドライ」に変更し、エアフィルタのフィルタエレメン
トと、エアドライヤの膜モジュールを交換した。
5.2.3
エアフィルタの空気漏れ
膜モジュールを交換した直後に、エアフィルタから空気が漏れて圧力が上がらないことがあった。対策として、
エアフィルタをいったん取り外し、清掃を行った。その際に、エアフィルタ下部についている手動排出用ねじ(図
13 参照)の調整が不十分であったことが判明した。このねじは非常に締め加減が微妙なため、調整の際は注意を
要する。清掃後は問題なく動作している。
11
a
b
c
d
e
f
g
h
i
j
k
䉬䊷䉴
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図 12: エアドライヤの写真。左からエアフィルタ、エア
ドライヤ、レギュレータ、バルブとなっている。
䊄䊧䊮
図 13: エアフィルタの断面図。k の「ドレンコック」が
手動排出用のねじである。
12