Xe-135

核燃料の燃焼
千葉 豪
核燃料の燃焼の重要性
・原子炉の核燃料は、核分裂反応によりエネルギーを発
生する。
・原子炉物理では、核分裂や中性子の吸収などにより、
核燃料の組成が変化していく過程を「燃焼」と呼ぶ。
・原子炉の特性は、核燃料の組成に依存する。従って、
燃焼に伴って原子炉の特性は変化する。
・原子炉の運転可能期間の予測、運転期間を通じた原
子炉の振る舞いの正確な予測の観点から、燃焼の解析
は極めて重要である。
UO2燃料の組成(重量比)
これを燃やすと、、、
UO2燃料の燃焼前後の組成
燃焼前
燃焼後
こうはなりません。
重核種(アクチニド核種)
中性子数
142
143
144
145
146
147
148
149
150
96
Cm-242 Cm-243 Cm-244 Cm-245 Cm-246
95
Am-241 Am-242 Am-243 Am-244
94
Pu-238 Pu-239 Pu-240 Pu-241 Pu-242
93
Np-237 Np-238 Np-239
92
U-234
陽子数
U-235
U-236
U-237
U-238
U-239
UO2燃料の燃焼に伴う組成変化
重核種の一群核分裂断面積(熱中性子炉)
縦軸が対数表示であることに注意
重核種の一群核分裂断面積(熱中性子炉)
U-235、Pu-239、-241よりも断面積が大きい核種もある。
U-238からのPu同位体の生成
原子番号
(n,γ)
241Am
95
239Pu
94
2.35d
238U
(n,γ)
23.5m β
239U
240Pu
β-
(n,γ)
241Pu
(n,γ)
β-
239Np
93
92
(n,γ)
14.4y β-
240Np
(n,γ)
14.1h
240U
β-
は核分裂性物質
それ自身は核分裂性物質ではないが、中性子の吸収により
核分裂性物質に変換する核種を「親核種」fertileと呼ぶ。
UO2燃料における核分裂への核種毎寄与割合
UO2燃料の燃焼前後の組成(重量比)
燃焼前
燃焼後
生成されたPu-239と-241を核燃料として再利用:
→ 熱中性子炉に使う場合はプルサーマル
→ UO2とPuO2の混合燃料:Mixed-oxide(MOX)燃料
UO2燃料の燃焼前後の組成(重量比)
燃焼前
燃焼後
残ったU-238を燃料として再利用し、Pu-239に転換して
燃焼させることにより、核燃料の利用率は大幅に上昇
→ 核燃料サイクル
UO2燃料の燃焼前後の組成(重量比)
燃焼前
燃焼後
ただし、原子炉で使用したウランは、もともとはU-235、-238(と僅かな
U-234)だけだったものと比べて、U-232、-234が含まれる(回収ウラ
ン)ため、燃料の線量率が上昇し、特別な取扱いが必要となる。
(回収ウランの濃縮度は1.5%程度。海外からの燃料には回収ウランを含んだものもあり)
MOX燃料の燃焼前後の組成(重量比)
燃焼前
燃焼後
MOX燃料の燃焼に伴う組成変化
UO2燃料とMOX燃料の燃焼に伴う組成変化
UO2燃料
MOX燃料
MOX燃料における核分裂への核種毎寄与割合
MOX燃料における核分裂への核種毎寄与割合
UO2
MOX
UO2燃料では核分裂を担うU-235が時間とともに
減損していくが、MOX燃料ではPu-239の減損は
それほどでもない。それはなぜか?
(これまでの解説で分かる筈)
燃料の燃焼に伴う物理現象
問:下の括弧内に「正」「負」をあてはめよ
(1)核分裂性核種の減少
・核分裂連鎖反応に対して(
)の効果
(2)親核種から核分裂性核種への転換
・核分裂連鎖反応に対して(
)の効果
(3)核分裂生成物の発生
・核分裂生成物は中性子の吸収物質であるため、核分
裂連鎖反応に対して(
)の効果
上記(1)~(3)を合計すると、軽水炉において、燃焼は、
核分裂連鎖反応に対して(
)の効果となる
燃料の燃焼に伴う無限増倍率の変動
Refective B.C.
燃料ピンセルモデル
燃料の燃焼に伴う無限増倍率の変動
燃焼直後に無限増倍率が
減少するのはなぜ?
Xe-135の蓄積
核分裂
で発生
核分裂
で発生
核分裂で
(ちょっと)発生
(n,g)
Te-135
Xe-135
I-135
β崩壊
19.0s
Xe-136
β崩壊
6.58h
β崩壊
9.14h
Cs-135
I-135が半減期約7時間で崩壊し、Xe-135が生成される。
断面積の比較(JENDL-4.0)
Xe-135は熱中性子領域で中性子吸収断面積が大
Xe-135の蓄積
核分裂
で発生
核分裂
で発生
核分裂で
(ちょっと)発生
(n,g)
Te-135
Xe-135
I-135
β崩壊
19.0s
Xe-136
β崩壊
6.58h
β崩壊
9.14h
Cs-135
I-135は[核分裂による生成]と[半減期6.58hでの崩壊]が
釣り合って、Xe-135は[I-135からの生成]と[強い中性子吸
収による消滅]が釣り合って、それぞれ原子炉の運転中は
平衡状態にあると考えてよい。
燃料の燃焼に伴う無限増倍率の変動
燃焼直後に無限増倍率が
減少するのはなぜ?
→I-135の崩壊によって生成
するXe-135の吸収による
燃料の燃焼に伴う無限増倍率の変動
燃焼直後に無限増倍率が
減少するのはなぜ?
→I-135の崩壊によって生成
するXe-135の吸収による
→では、原子炉を止めたら
Xe-135はどうなるでしょう?
Xe-135濃度の時間変動
Xe-135濃度
原子炉起動
運転停止
時間t
Xe-135濃度の時間変動を考えよう。
中性子増倍率の時間変動
中性子増倍率
原子炉起動
運転停止
時間t
次は、中性子増倍率の時間変動を考えよう。
原子炉停止直後の中性子増倍率の変動
いったん下がって、
また上がる。
原子炉停止直後の中性子増倍率の変動
0日の時点で臨界の原子炉を
停止した場合に、再び原子炉
を臨界にするために必要な正
の反応度
原子炉停止直後の中性子増倍率の変動
0日の時点で臨界の原子炉を
停止した場合に、再び原子炉
を臨界にするために必要な正
の反応度
実際のPWRでは最大0.025程
度の負の反応度が入る。実効
増倍率は一か月あたり0.01程
度低下するため、寿命末期の
二か月程度は再起動不能時
間が発生する。
Xe-135蓄積の影響(補足)
- 中性子束レベル(=原子炉出力)が大きくなっ
た場合、Xe-135蓄積の影響は大きくなるか、
小さくなるか?
- 高速中性子炉ではXe-135蓄積の影響は大き
くなるか、小さくなるか?
断面積の比較(JENDL-4.0)
高速中性子領域ではXe-135の中性子吸収断面積は小さい
Sm-149の毒物効果
Sm-149も大きい熱中性子断面積を持つが、
Xe-135と比べて二桁程度小さい
Sm-149の毒物効果
核分裂で発生
(n,g)
Pr-149
Pm-149
β崩壊
2.26m
Sm-150
Sm-149
β崩壊
2.21d
- Sm-149はXe-135と比べて熱中性子断面積が二桁
程度小さい
- Sm-149自体は崩壊しない:停止後、減衰しない
- 親核種のPm-149の半減期が比較的長い(2.21日)
→ 影響は時間的に比較的ゆっくり
Sm-149に起因する原子炉停止後の反応度効果は?
原子炉停止後の核種別反応度効果(UO2燃料、45GWd/t)
・Np-239の崩壊(半減期2.35日)によるPu-239の生成
・Pu-241の崩壊(半減期14.4年)とそれに伴うAm-241の生成
原子炉停止後の核種別反応度効果(UO2燃料、45GWd/t)
・Pm-148mの崩壊(半減期4.3日)
・Pm-147の崩壊(半減期2.6年)とそれに伴うSm-147の生成
Burnable poisonによる反応度制御
臨界を維持するためには、この「余
計な」反応度を抑制する必要あり
→多数の制御棒が必要となる
Burnable poisonによる反応度制御
臨界を維持するためには、この「余
計な」反応度を抑制する必要あり
→多数の制御棒が必要となる
→Burnable poisonの導入
Burnable poisonの例:Gd
中性子捕獲断面積(JENDL-4.0)
Burnable poisonの適用例:炉工OB高田君の研究
• 空孔にPuO2粉末を装填した混合燃料が提案されている。
• 彼の研究ではこのPuO2粉末を可燃性毒物に代えたものとして
可燃性毒物入り燃料棒を提案した。
METMET fuel with
higher open porosity
BP Powder
Pores
可燃性毒物:
ガドリニア(Gd2O3)、炭化ホウ素(B4C)、酸化エルビア(Er2O3)
Burnable poisonの適用例:炉工OB高田君の研究
可燃性毒物の集合体内配置
可燃性毒物棒
制御棒・計測装置用のガイド管
16本
24本
36本
52本
Burnable poisonの適用例:炉工OB高田君の研究
ガドリニアの場合:
Burnable poisonの適用例:炉工OB高田君の研究
炭化ホウ素の場合:
反応度抑制能力は高いが、B-10の(n,α)反応によりHeが生成し、被覆管の内圧を
高めてしまうため、装荷可能量は非常に小さくなってしまう。
Burnable poisonの適用例:炉工OB高田君の研究
酸化エルビアの場合
残りは補足資料
原子炉の燃焼計算
[1] ある時点での原子炉内の巨視的断面積を計算
(Σ=Nσ)
[2] ある時点での原子炉内の中性子束分布を計算(例:
拡散方程式)
[3] 原子炉出力から中性子束の絶対値を計算
[4] 燃料を構成する核種の反応率(核分裂、吸収など)を
計算
[5] ある時間経過後における核種の原子数密度を計算
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原子炉の燃焼計算
[1] ある時点での原子炉内の巨視的断面積を
計算(Σ=Nσ)
[2] ある時点での原子炉内の中性子束分布を
計算(例:拡散方程式)
[3] 原子炉出力から中性子束の絶対値を計算
[4] 燃料を構成する核種の反応率(核分裂、吸
収など)を計算
[5] ある時間経過後における核種の原子数密
度を計算 →[1]へ戻る