第65号:2016年10月

とよしん
海外貿易投資ニュース
第65号
発行日:2016.10.17
日本人も出資、コロンボに富裕層向け老人ホーム開業 (スリランカ)
コロンボ市内で6月、日本人も出資した高級老人ホーム「NAGAI」が開業した。日本のおもてなしとスリランカのホスピタリティーを
生かし、医療と介護を兼ね備えたハイブリッド型サービスで、高齢化社会を迎えた現地の富裕層を取り込むという。現地で介護人材
を育成し、日本への人材支援も視野に入れる。
<病院を一部改装、日本の製品も導入>
「NAGAI」は総合福祉施設れんげ荘(大阪府高槻市)を運営する社会福祉法
人・高志会理事長の高橋弘充氏と地場のナワローカ・ホールディングスがそれ
ぞれ49%、51%を出資して設立した。両者の合弁企業ナワローカ・ガーディア
ン・インターナショナル(Nawaloka Guardian International)が運営する。ナワロー
カ・ホールディングスが運営していたナワローカ病院の7階部分を改装し、リビン
グ付きの個室を新たに9部屋設け、全食事付き、24時間体制で入所者をフル
サポートする。目指すのは高級ホテル並みの居住空間やサービスで、使用する
ベッドやマットレスは日本の製品を導入、バリアフリー改修工事も日本の技術が
生かされている。毎月の利用料は約49万スリランカ・ルピー(約34万3,000円、
1スリランカ・ルピー=約0.7円)からで、ターゲットは60歳以上の富裕層だ。ナワ
ローカ・ガーディアン・インターナショナルは、都市部を中心に核家族化が進み、
生活スタイルの変化とともに若者たちが高齢者の面倒を見なくなりつつあることから、NAGAIをその受け皿としたいと考えている。
<日本へ供給する介護人材の育成も>
ナワローカ・ガーディアン・インターナショナルのディレクター前川太朗氏は、スリランカ進出のもう1つの狙いとして日本国内の介護人
材の確保を挙げる。超高齢社会に突入している日本での介護分野の人材確保に危機感を覚え、海外からの人材供給を視野に入
れた活動を進める中で、何度かスリランカを視察に訪れ、ナワローカ病院の医療・介護の技術や教育レベルが十分なこと、勤勉な職
員が多いことを知り、進出することを決めたという。同社は日本へ供給する介護人材の育成に向け、ナワローカ病院の教育施設の活
用やコロンボ市内の日本語学校との連携も進める予定だ。日本の介護サービスのノウハウをスリランカに伝えることで、両国の介護業
界に貢献したいという。スリランカ政府も高齢化対策に着手、8月には首相直属の高齢者対策事務局・委員会が、介護サービスの向
上を目的に、介護アシスタント養成カリキュラムを完成させると発表した。
<南西アジアで最も高い高齢化率>
世界銀行によると、スリランカは65歳以上の人口が約195万人(2015年)と全体の9.3%に達し、南西アジアでは最も高く(インドは
5%台、バングラデシュとパキスタンは4%台)、介護需要への対応が大きな課題となっている。また、1人当たりの名目GDPは3,924ド
ル(2015年)と「中進国」入りが目前で、購買力のある層が増加しつつある。「親日国」で日本語を理解する人材も少なくなく、こうした
ことが同社のビジネスを後押しする背景となっているようだ。
(出所:ジェトロ通商弘報2016年9月9日 650233242f9e8b06 「日本人も出資、コロンボに富裕層向け老人ホーム開業(スリラン
カ)」)
第65号
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高い価格設定とパリの発信力が決め手−豆腐ビジネスの「総合コンサル」ミナミ産業− (フランス)
豆腐をテーマにしたフランス初のショップ&カフェ「TOFUYA」をパリに開店したミナミ産業。豆腐ビジネスの「総合コンサルタント」と称し、豆
腐や豆乳だけでなく、大豆パウダーを使った菓子を販売するなど幅広く事業を展開している。代表取締役社長の南川勤氏と部長の山川裕
未氏に聞いた。
<豆乳のもととなる大豆パウダーを開発>
ミナミ産業(本社:三重県四日市市、従業員:28人)は1951年の創業以来、豆腐生産装置の開発や地元の萬古焼を活用した「萬来鍋(ばんらい
なべ)」の開発を行ってきたが、2000年ごろからは大豆パウダーの開発・販売事業も手掛けている。一般的な豆乳の製法は、大豆を洗浄、浸漬(し
んせき)、加水・磨砕、加熱、分離して作るが、大豆をまるごと使った同社の大豆パウダーによる製法は、加水・攪拌(かくはん)、加熱のみで豆乳を
作る(豆乳から豆腐を作る工程は同じ)。従来、10時間前後かかった豆乳生産の時間が30分前後に大幅に短縮でき、また工程が簡略化できる
分、初心者でもおいしく作れるという。さらに、従来の製法ではおからが大量に排出され、廃棄物として処理しなければならなかったが、大豆パウ
ダーは大豆同士をぶつけ合うことで粉砕する独自の製法で生産されるので、スギ花粉よりも小さい100分の2ミリにまで超微細化され、おからが出な
い。
<優良物件の確保が重要>
同社はこの大豆パウダーを活用したフードサービス業を海外で展開している。5月にはパリに、豆腐をテーマにしたフランス初のショップ&カフェ
「TOFUYA」を開店した。2階が豆腐、豆乳、大豆パウダーを使った菓子工房とカフェ・レストラン、1階は豆腐工房と豆腐などの販売フロアとなってい
る。南川社長は「外からのぞけることで、豆腐になじみのない通りすがりの人にも『一体、何を作っているのか』と関心を持ってもらうため、1階に豆腐
工房を置いた」と説明する。実際、顧客の半分はフランス人だという。「TOFUYA」は同社唯一の海外の豆腐フードサービス店。パリに進出した理由
について、南川社長は「欧米よりも物価水準が低いアジアでは価格競争が激しい。一方で、フランスの物価水準は高いため、価格設定がしやすかっ
た」と話す。また、パリの発信力の大きさも進出理由だったという。「(同じくブランド発信力のある)ニューヨークのレストラン関係者に当社のパリ進出を
話すと、開店した場所が、賃料など投資コストが大きく、世界の有力レストランが進出して競争が激しいパリの一等地だったため、『すごい』と一目置
かれる。世界におけるパリの魅力をあらためて実感した」(南川社長)。現地パートナーとの出会いもパリ進出の大きなきっかけとなった。南川社長は
「現地パートナーとは事前に『いい物件が見つかるまで開店を急がない』と合意していた。しばらく待ったところ、パートナーがいい物件を確保してくれ
た」と振り返る。一般的にパリ市内で飲食店を開業する場合、レストランの営業権(ライセンス)を取得する必要があるが、ライセンスは原則、新規で
発行されないため、既存のライセンスを譲り受けるしかなく、パリにおける店舗開店のハードルの1つとなっている(注)。「パリでは(ライセンスとの関係
で)いい物件を見つけることは非常に重要」と同社長はコメントする。なお、許認可の遅れや店舗工事請負会社のずさんな工程管理などにより、当
初予定より半年近く遅れての開店となるなど、苦労もあったという。
<健康志向の欧米市場に商機>
同社は業務用豆乳などの輸出もしており、輸出先は香港、中国本土、ASEAN(マレーシア、ベトナム)、米国、欧州(英国、ドイツ、フランス、イタリ
ア、スイス)など15ヵ国・地域(輸出実績は25ヵ国・地域)。そのほとんどが、現地にある日系(高級)レストラン向けだ。各市場の特徴について、山川
部長は「欧米などの先進国は物価水準が高い分、商品の価格設定がしやすい。また、グルテンフリーなど健康志向の消費者が多い点も欧米で共
通する。一方、日本を含めたアジア市場ではグルテンフリーといっても消費者にはまだ響かない。なお、米国では遺伝子組み換え食品(GMO)は受
け入れられるが、欧州ではそうではない。欧州市場向けは米国産大豆が難しい分、(当社の)日本産大豆商品の輸出で対応できる」と話す。海外
における今後の豆腐ビジネスについて南川社長は、「世界の外食市場で日本食は伸びている。日本人が手掛けていない和食レストランも含めて、
料理のレベルは上がっている。また、従来の『和食レストラン』だけでなく、ラーメンなど日本食の専門店が海外で受け入れられるようになってきた。
ジェトロの報告書によると、日本で食べて『おいしい』と感じた商品で最も多かったのが『豆腐』だった。例えば中国などの豆腐料理は火を通すのがほ
とんどで、日本以外で豆腐を生で食べる習慣はあまりない。日本に来た外国人が生の豆腐を食べて、おいしさを初めて知ったのだと思う。世界の豆
腐マーケットにポテンシャルを感じる」としている。今後の取り組みについて南川社長は、「例えば欧州市場で訴求力が高い有機大豆は日本ではほ
とんど生産されない。有機ではないものの、一般的な国産大豆と差別化して付加価値を付けた『国産大豆』商品を開発し海外に輸出したい。また
『TOFUYA』のような店舗を欧州で広げていきたい。当社には商社・コンサル(テストマーケティング)機能を持つグループ会社『萬来トレーディングコ
ンサルタント』があるが、そこを通じて、他社の食品も一緒にフランスなど欧州に輸出していきたい」と前向きだ。
(出所:ジェトロ通商弘報2016年9月20日 cf34591ff405dd2d 「高い価格設定とパリの発信力が決め手−豆腐ビジネスの「総合コンサル」ミナミ
産業−(フランス)」)
次のセミナー等をご案内させていただきました。
セミナー等名称
東南アジアのビジネス(企業再生と起業)における課題と打ち手
開催地
名古屋
主催者
愛知大学国際ビジネスセンター
常州高新区投資説明会
名古屋
常州国家高新技術産業開発区管理委員会
輸出入門セミナー ∼農林水産物・食品の輸出を対象として∼
名古屋
ジェトロ名古屋
インドネシア現地経済事情講習会
名古屋
愛知県立大学
香港という選択肢
名古屋
香港投資推進局
電話 0565−36−1381
セミナー ∼アジア子会社のミス・不正の発見、牽制のための取組み∼
名古屋
あいち産業振興機構
海外環境ビジネス ベトナム展開セミナー
名古屋
ジェトロ名古屋
FAX 0565−36−1213
URL http://www.toyoshin.co.jp
国際業務部
〒471-8601
愛知県豊田市元城町1-48