[E11] 無人搬送車の広域走行経路制御に関する研究

[E11]
無人搬送車の広域走行経路制御に関する研究
1 背景
高田研究室
0514048
白井 彰
作業場
工場群
工場
作業場
作業場
作業場
作業場
作業場
消費者ニーズが多様化した現代では多品種少量生産を
行える柔軟性の高い生産システムが求められている.そ
知能機械工学科
こで 1 つの生産設備やラインで複数の製品を生産するこ
とができる FMS(Flexible Manufacturing System) の
無人搬送車の
軌道
導入が進められてきた. FMS においては搬送システム
にも柔軟性が求められるが,そのような搬送システムの
工場
1 つとして,無人搬送車 (AGV:Autonomous Guided Vehicle) が用いられる.
工場
このような搬送システムでは,生産現場の規模に応じ
図 2: 本研究のモデル
て無人搬送車の投入台数を増減することで搬送能力を容
易に調整することができる.しかし,同一フィールド内
に複数の無人搬送車を投入した場合,ある無人搬送車が
最短経路で搬送しようとすると他の無人搬送車の経路の
妨げになり全体の搬送能力を下げることもありうる.
3.3 搬送効率を測る指標
以下の 2 つの値から搬送効率を考える.
速達性
無人搬送車が目的地に到着するまでの時間のこと
2 目的
で短いほど搬送効率が良いと考えられる.
本研究では,広域にわたって複数の無人搬送車が運用
輸送量
されている状況下で,個々の無人搬送車の効率よりも搬
一定時間内に軌道上を通過する無人搬送車の数の
送システム全体の効率を優先した搬送経路を割り当てる
ことで通過する数が多いほど搬送効率が良いと考
走行経路制御システムの構築を目指す.
えられる.
3 アプローチ
3.1 先行研究
輸送量を増やすには無人搬送車の台数を増やし数珠繋
ぎに走らせれば輸送量は増える.そこで無人搬送車が数
高田研究室では北野 [1] らが無人搬送車の走行経路制
御について研究を行ってきた.先行研究では図 1のよう
珠繋ぎに走行できるように,巡回軌道がとれるレイアウ
トで研究を考えた.
なモデルを扱ってきた.先行研究では無人搬送車の軌道
4 モデルの構成要素
を閉塞区間に分け,予約を行うことや将来の状態を予想
ネットワーク
することで各無人搬送車の経路が互いに干渉するデッド
に端子のついたブラックボックスで表すことにし,これ
ロックの状態を回避してきた.
をネットワークと呼ぶ.ネットワーク同士は端子を介し
多種多様な軌道をひとまとめに扱うため
て接続され,端子の数は接続しているネットワークの数
だけ存在する.ただし,端子の数は 1 つのネットワーク
作業場
に対し 2 個以上存在するとする.また,ネットワークの
無人搬送車の軌道
中には設定された台数だけ収容できる.
工作機
ライン
図 1: 先行研究のモデル
3.2 本研究
ネットワーク間をつなぐ軌道をラインと呼ぶ.
ラインは全て単線で,無人搬送車はライン上を双方向で
走行する.また,ラインには同時通過可能台数を設定す
る.無人搬送車がライン上を同方向に進むのならば同時
通過可能台数だけ通過できるものとする.
本研究では,今までのモデルよりももっと大きな規模
のモデルを扱う.例えば図 2にあるように工場群,工場,
作業場に分けて考える. 1 番小さい規模である作業場で
は先行研究の走行経路制御方法を利用することとした.
ネットワーク
端子
そして複数の作業場同士,工場同士をつなぐ軌道全体の
ライン
走行経路制御を本研究の対象とする.本研究の対象とす
る経路制御を広域の経路制御と呼ぶこととした.
図 3: ネットワークとライン
4.1 ネットワークの階層化
7 実験と考察
広域の制御では軌道が非常に多いため,経路探索を行っ
実験には図 6のレイアウトを用いた.端子 18 に無人
たときに選択肢が膨大になり,組み合わせ爆発が起りや
搬送車が 2 台,端子 4 に無人搬送車が 1 台いる.端子 18
すくなる.
から端子 14 に行こうとしている無人搬送車が 2 台がい
そこで図 4のようにネットワークを階層構造にし,エ
リアごとに区切るようにした.つまり,いくつかのネッ
トワークをまとめて上層では一つのネットワークとみな
る状況で端子 4 →端子 1 →端子 3 →端子 11 の順で無人
搬送車を動かした場合の動作実験を行った.
実験結果を図 7に示す.まず管制官 A.A は,管理する
すことにより,ネットワークを扱いやすい数にしぼるよ
最短経路を通ろうとする無人搬送車の要望を受け,ライ
うにする.こうすることで組み合わせ爆発を防ぐことが
ンに優先順位をつけて方向決めを行ってできたルートを
できる.
無人搬送車に渡している.
そして無人搬送車の位置が変わると管制官 A から指
上位層
令を受け取りそれにしたがって無人搬送車の要望を受け
方向決めを行われていることが分かる.
A.B
A
4
5 +A.2(4) 6
A.C
7 +
A.1(5)
A.3(4)
+
1
A.A
A.A.A
+
13
15
17
A.A.B A.A.3
(4)
18
ク内の無人搬送車がどこに行きたいかという要望を聞き
入れ,できるだけ全無人搬送車の要望に沿った経路決め
>>AGV.1.Position=#1
管制官はネットワーク 1 つに対して 1 つ配置し,その
ネットワークを管理する.管制官は担当するネットワー
を行う.このように無人搬送車の要望を集中管理して,
巡回経路を探し出して無人搬送車が目的地に早く着く経
路決めを行い,無人搬送車にルートを渡す.
6 システム構成
経路探索システムを構成するにあたって図 5のように
管制官と無人搬送車で構成した.図 5では, 4 つの階層
からなり,管制官の名前をピリオドで区切ることで階層
を分けている.
管制官A.B 管制官A.C
A.E
3 2
- +
18:17:14
18:17:14
2 18 14 3 18 14
1 1 11
Instruct A.E-3
agv 2,route 18:17:14
agv 3,route 18:17:14
agv 1,route 1:14:17:3
2:+:2
2:-:1
,,2,1 3
lineNum
1 3 2
direction - - +
agv 2,route 18:17:14
agv 3,route 18:17:14
agv 1,route 1:13:15:16:18:3
・
・
・
・
>>AGV.1.Position=#3
Add 1 3 11
Delete 1 1 11
controlagv 2 18 14 3 18 14
1 3 11
Instruct A.E-3
agv 2,route 18:17:14
agv 3,route 18:17:14
agv 1,from 3,to 3
2:+:2
,2,,1 3
lineNum
1 3 2
direction - - +
agv 2,route 18:17:14
agv 3,route 18:17:14
agv 1,from 3,to 3
>>AGV.1.Position=#11
Add
Delete 1 3 11
controlagv 2 18 14 3 18 14
agv 2,route 18:17:14
agv 3,route 18:17:14
2:+:2
,2,,1 3
lineNum
1 3 2
direction - - +
agv 2,route 18:17:14
agv 3,route 18:17:14
巡回軌道を取れる場合の広域走行経路制御方法を示す
ことができた.今後は巡回軌道でないレイアウトでも対
応できるようにすることと,そのシステムの搬送効率の
管制官
A.B.A
管制官
A.B.B
評価を行う必要がある.
ルート
無人搬送車
12 +
8 結論と今後の課題
下位の管制官の管理外の 上位管制官からの
指令
無人搬送車の要望
無人搬送車
11
図 7: 管制官 A.A の動作
上位管制官からの指令
現在地と目的地
18:17:14
18:17:14
Add 1 1 11
Delete
controlagv
管制官A
下位の管制官の管理外の
無人搬送車の要望
管制官
A.A.B
10
A.6(7)
+
A.5(6)
agv 2,route
agv 3,route
2:+:2
,2,,1 3
lineNum
1
direction agv 2,route
agv 3,route
管制官
A.A.A
3
A.D
図 6: 実験に用いたレイアウト
図 4: ネットワークの階層化
管制官A.A
A.4(8)
+
2
A.A.C
下位層
5 管制官
A.A.2(3)
16 +
ネットワーク
9
+
A.A.1(2)
ライン
端子
対外接続端子
8
14
参考文献
無人搬送車
無人搬送車
図 5: 管制官同士,管制官と無人搬送車の交渉
[1] 北野正典 「時間的制約を考慮した無人搬送車の走
行経路制御に関する研究」 (2006 年度 電気通信大
学大学院知能機械工学専攻修士論文)