大分大学 大崎ゼミ

分科会番号 16
テーマ 経営戦略論 サブテーマ 携帯電話の市場
大分大学 大崎ゼミ 鴨川駿
目次
1. はじめに(p1)
2. CM、その他の広告戦略(p2~4)
3. 定額サービスなど料金面での戦略(p5~p8)
4. スマートフォンの誕生とこれからの携帯電話市場(p9~11)
5. 結び(p12)
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はじめに
近年、携帯業界は大きく変革し、従来のものからから、iphone をはじめとしたスマートフ
ォンと呼ばれる携帯電話が日本に浸透している。スマートフォン利用者はこの 1 年で倍増
し、国内普及率は 9.5%となり、主に 20 歳代の若者が市場を牽引している。
「携帯電話・ス
マートフォン“個人利用”実態調査 2011(報告書を 2011 年 7 月 26 日に発行)」そもそもスマー
トフォンとは、携帯電話にパソコンや PDA(携帯情報端末)の機能が備わったものであり、コン
ピューターを内蔵した、通話以外に様々なデータ処理を可能とする携帯電話である。それに加え、
様々なアプリケーションを追加し、機能強化やカスタマイズができ、ハードウェアに依存する
ネイティブアプリケーションも利用できる携帯電話をスマートフォンと定義する。スマー
トフォンのメリットとしては、手軽にインターネットが閲覧できること、画面が大きく尐
ないスクロールで観覧できること、mixi や Twitter 等のコミュニティサイトを簡単に見る
ことができること、携帯アプリが豊富な事などが挙げられる。ただそれに対して、デメリ
ットも浮上している。それは、消費電力が多いこと、操作が難しいこと、片手で文章が入
力できないこと、赤外線等の機能が付いていないこと、携帯サイトが閲覧できないなどと
いった問題が挙げられる。またコンピューターが内蔵されていることから、ウイルスに侵
されるといった深刻な問題も起きている。そのような面もあるが、顧客はスマートフォン
を求め、携帯業界のスマートフォンの販売は拡大し続けている。この拡大は、端末メーカ
ーや直接関係する企業だけではなく、多くの企業にも大きな影響を与えている。例えば、
スマートフォンに求められる部品が従来のものから変化したことにより、それにより部品
製造を担う会社が影響を受けた。また様々なアプリを利用することが可能となったため、
アプリの開発に携わる企業も大きな影響を受けている。また近年では、アプリの開発が学
生などの間でも広がりを見せている。そのような広まりを見せるスマートフォンは、各携
帯会社で顧客を巡る競争激化の源となり、スマートフォンを従来のものより多く新機種と
して売り出す会社がほとんどである。そのため顧客獲得を巡り、各企業は戦略を繰り広げ
ている。その戦略として各企業がどのような戦略を打ち出しているのかを、CM 面・料金面
について説明し、それによる今後の携帯市場について順を追って説明したい。
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参考文献
http://www.street-ft.info/ スマートフォンとは
http://www.nttdocomo.co.jp/product/ ドコモ
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CM・その他の経営戦略
携帯電話がここまで普及したのは、携帯電話会社それぞれが様々な経営戦略を行ってきた
からである。そして現在日本の携帯電話業界には docomo、au、Softbank の3社が存在し、
この3ブランドがともに活用している経営戦略の1つは CM である。
まず、docomo はドコモだけというキノコ型のオリジナルキャラクターを作った。この名前
の由来は、通話料金プランに含まれる無料通話分の2ヶ月繰り越しに加えて、ファミリー
割引契約者間で分け合えるサービスを最初にドコモが開始したことで“このサービスはド
コモだけ(only)
”というのと“ドコモ茸”とがかけられているが、そのかわいさで人気を
集めた。Au は、非常に有名な俳優を起用したユニークな CM を多用した。CM という経営
戦略で最も成功した Softbank は、ハリウッド俳優であるキャメロン・ディアスとブラッド・
ピッドを CM に出演させ、Softbank のブランドを伝えた。また、白戸家、ソフトバンクシ
ョップのスタッフである上戸彩、お父さんである犬、お母さんは樋口可南子、日本語を話
す黒人の兄、おばあちゃんを岩尾文子、おじいちゃんを松田翔太という家族構成でコミカ
ルに演出し、Softbank のプランを消費者に伝えた。更に、
「プロポーズを電話でする編」や、
「田舎のお父さんに電話する編」などの心温まるシナリオの CM で温かみのある携帯電話
というブランドイメージを確立させることができた。
CM の他にも3社は他社と差をつけるためにそれぞれ独自の機能を考え開発した。まず、
docomo がデータ通信サービスである「iモード」という独自のサービスを立ち上げた。こ
れにより、携帯電話からインターネットに接続することが可能になり、電子メールの送受
信、ホームページへのアクセスなどいろいろなことができるようになった。この「iモー
ド」の確立により携帯電話は「話す道具」から「使う道具」へと進化したのだ。また、携
帯電話が普及しだしたばかりの当初は、NTTdocomo が最も売れていたのだが、一番の要因
は NTT 社というブランドの信頼の高さにあると思われる。なぜなら NTT を利用していた
日本国民の多くが、携帯電話という新しいものを買うにあたり信頼できるのは NTT のもの
という考えがあった。そのためだいたい同じ機能ならば NTT のものを買おうという消費者
が多かったのである。他にも、2007年の6月に「2in1」というサービスを搭載した携
帯電話を開発した。これは、2 つの電話番号と 2 つのメールアドレスを 1 台の携帯で使い分
けて利用できるサービスでる。電話帳やアドレス帳も個別に管理できるようになっている
ため、ビジネス用とプライベート用とに分けて使用することができた。更にこのサービス
の良い点は、「2in1」を既存のユーザーが契約すると、新規契約が 1 つ増えることになり、
新規契約数を計上させるということだ。また、「番号ポータビリティ制度」を利用するこ
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とによって、すでに NTT ドコモの携帯電話を所有しつつ、au やソフトバンクモバイルの
携帯電話を所有している「2 台持ち」のユーザーを、すべての電話番号を NTT ドコモに集
約することも可能になったのだ。そして、動画コンテンツに力を入れ、通信の主流と見ら
れる固定電話と携帯電話との融合サービスを開始した。これはNTTドコモの携帯電話か
ら自宅のパソコンの固定ブロードバンドを経由して通信できるサービスで、固定回線を経
由することで通話料を役 3 割近く安くし、動画などのコンテンツも送受信しやすくするの
を特徴とするサービスだ。このサービスには、
「ポケット U」、
「ホーム U」との2種類があ
り、ポケット U は NTT ドコモの携帯電話から自宅のパソコンに保管した文書ファイルを見
たり、音楽を聴いたりできるサービスで、ホーム U は自宅などにおいて、ブロードバンド
(高速大容量)
回線と無線 LAN ルータを利用し、
FOMA®/無線 LAN デュアル端末 N906iL
(onefoneTM)での送受信時最大 54Mbp の高速パケット通信や IP 電話(050 番号)発着
信が可能となるサービスだ。このようにして、グループ連携で通信サービスを提供するこ
とを可能にした。またサービス機能の他にも、2008 年 6 月 1 日に世界的に有名なプラダブ
ランドと作り上げたブランド携帯を発売した。このプラダ携帯の値段は 10 万円弱にもぼる
が、品質に対する妥協のないこだわりと、グローバル市場で培った技術を生かした無駄の
ないシンプルなボディラインを持ったデザインで、本体だけでなく、専用レザーケースや
アクセサリー、オリジナルボックスパッケージ、スタイラスペン、液晶クリーナー、グラ
フィックデザインにもプラダのこだわりが凝縮されている。
Au の企業戦略としてはCM以外にも以下のことがある。KDDI はパケット料金定額制を導
入し、着うたフルや EZ ナビウォーク、など他社にない新サービスを精力的に投入し着実に
顧客を増やした。また CD から楽曲をリッピングできたり、着うたフルをバックアップで
きたりするソフトや、端末側に音楽の嗜好が似た他のユーザーとコミュニケーションでき
る「うたとも」といった機能が搭載した「LISMO」を導入し、見事に「音楽=KDDI」と
いったイメージを作り上げることに成功した。KDDI の人気の大きな要因が、音楽やナビゲ
ーションなどによって築かれた「先進的なコンテンツを提供しているのは KDDI」というイ
メージである。
「au ケータイでサプライズな日々を」と、ジャニーズの人気グループ嵐を前
面に押し出して訴求する春のニューモデル群を出している。音楽特化モデル、3D 付きケー
タイ、タッチパネル対応モデル、世界で使えるグローバルパスポート機能搭載モデル、フ
ルチェンケータイと、
各機能特化モデルをたくさん出しているのも au の魅力の一つである。
Softbank の企業戦略としてもCM以外に様々なことが展開されている。Softbank は「ホワ
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イトプラン」といった他社とは比べ物にならない破格の定額プランを打ち出した。内容と
しては月額基本使用料 980 円という圧倒的な安さや、家族への国内通話、限られた時間で
ソフトバンクモバイル同士の通話が無料になるといったことがある。また、「W ホワイトプ
ラン」で限られた時間、ソフトバンク携帯への国内通話料と他社への終日国内通話料が半
額になるといったプランも出した。このような破格のプランにより「安さ=ソフトバンク」
というイメージを市場に植え付けることに成功した。ソフトバンクの経営戦略ははっきり
しており、泥沼の価格競争を避け、収益力アップを確実に行うことを狙っている。スーパ
ーボーナス導入でインセンティブモデルを打破し、収益をあげるスーパーボーナスは新機
種を買ってすぐに次の機種に変更されることや、他社に移ることを抑制している。よって、
特別割引が従来のインセンティブモデルでの購入よりお得に設定されている。また、契約
数が長くなることで、収益が減ることを避けるMNPキャンペーン中のゴールドプランは
最初から11年目の料金を設定していたので、契約年数が長くなっても2880円以上の
収益が確保できる。ホワイトプランも継続割引などのサービスがないので、収入が980
円より下がることはない。さらに、全く同じプランを提供することで他社からの移行をし
やすくしている。無駄な設備投資をしないゴールド&ホワイトプランでは、一番会話が集
中する時間以外を無料にすることで、通話付加を均等にすることが可能になった。これに
より、ピークにあわせた設備投資を控えることが可能になる。
以上が au,docomo,Softbank のCMと経営戦略である。
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定額サービスなどの料金面での戦略
未使用料金プランの繰越サービスや、家族割引サービスなどの複数回線による割引サー
ビスで、利用者を携帯電話料金から囲い込んでいく戦略、低価格端末を調達して安価に新
機種購入や機種変更につなげてもらう戦略などが、それぞれの携帯会社の価格戦略として
想定される。携帯電話は普及期と比べると、各携帯会社が販売報奨金をかけにくくなって
きており、いったんつかんだ利用者を放さない戦略や、二台目、三台目の携帯電話という
ように、利用者に複数契約してもらうなどの戦略もある。
では実際に日本の代表的な携帯会社、ソフトバンク、au、docomo の 3 社がどのような価
格戦略となるプランや割引を行っているのか調べてみた。
まずソフトバンクについてだが、「ホワイトプラン」といった他社とは比べ物にならな
い破格の定額プランがあるが、
特徴としては月額基本使用料 980 円という圧倒的な安さや、
家族への国内通話、限られた時間でソフトバンクモバイル同士の通話が無料になるという
ものである。また、「W ホワイトプラン」で限られた時間、ソフトバンク携帯への国内通話
料と他社への終日国内通話料が半額になるといったプランもある。また、前途にもあるよ
うに、「ホワイト家族 24」といった家族割引サービスがあり、このプランでは家族間での
国内通話・メールが 24 時間無料といったサービスを行っている。あと他にもブループラン
やパケット定額など多くのプランがある。
次に au については、他社にあるような「家族割」と併用が可能な「誰でも割」というプ
ランがあり、2 年間継続契約で基本料金が安くなるというプランである。また、自宅の電話
とも 24 時間通話料が無料になる「まとめトーク」は他社ではみられない au 独自のプラン
と言える。
docomo は従来通りの料金プランの「ベーシックプラン」と、ベーシックプランよりも基
本料金が安くなった「バリュープラン」の二つから選ぶことができるが、ベーシックプラ
ンに関しては対象機種が決まっているようだ。他にも「使いすぎ防止プラン」、「ファミ
割」などがある。
このようにして各会社のプランを比べてみると、ソフトバンクが他社とは比べ物になら
ない破格の定額プランを打ち出していることが分かる。そこでソフトバンクを例にして、
携帯会社の具体的な価格戦略を分析したいと思う。
まずソフトバンクのような低額のプランで本当に利益が生まれるのか、という疑問が湧い
てくるが、こういった価格戦略をペネトレーションプライシングという。ペネトレーショ
ンプライシングとは、導入期から一気に市場への早期普及を図り、成長カーブに乗せることを目的とす
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る価格戦略のことであり、中長期的なコストの低下にともなって収益を確保するため、規模の経済性や経験
曲線の低下が起こることが前提となる。つまり、思い切った低価格設定をしてシェアを稼ぐことに
注力する戦略と言える。当然利益率は犠牲にせざるを得ない。しかし、前途にもあるよう
に規模の経済性などを利用して、コストダウンを図り、中長期的視点で最終的には利益獲
得を狙うことが可能なのである。一般にこのペネトレーションプライシングには、以下の
条件が必要と言われている。
(1) 規模の経済性や経験曲線によるコストダウン効果
当然将来的にコストが下がるのであれば、短期的にはある程度利益率を犠牲にしてもシェ
アアップを図る意義はある。一般に、初期投資などの固定費が大きいビジネスは規模の経
済性が効きやすくなる。
(2) 低価格化による期待需要
低価格にすることで規模が拡大することが必須である。つまり、価格弾力性の問題であり、
低価格化によって顧客の購買意欲が大きく向上する傾向を指す。
(3) 早期顧客獲得の影響力
そして、早期に顧客基盤を作ることが当該ビジネスにおいて成功要因になることである。
(1)から(3)の条件を見てみると、携帯キャリアは典型的な規模ビジネスであり、若
年層は価格弾力性が高いことが安易に予想できる。また、携帯電話は一度キャリアを決め
てしまうとなかなかキャリアを切り替えにくいこともあり、以上のことから携帯電話(ソ
フトバンク)がペネトレーションプライシングの条件を満たしていると言える。
また、ソフトバンクの格安プランでも利益が出る理由としては、ペネトレーションプライ
シングの戦略以外にも以下のようなことが影響していると言える。
第一に、加入者全体に占めるソフトバンクのシェアが小さい分他社ユーザーあてに電話を
かける場合が多くなり、その場合は有料になるため利益が出る。
第二に最近は新規の 6 割が「W ホワイトプラン」を利用しているが、こうしたユーザーは通
話時間が多い上、他社着信のたびに接続料も入る。また、こうしたユーザーはパケット使
用量も多く、通信事業における、加入者一人あたりの月間売上高(ARPU)が著しく高い、
という以上のような顧客層が“お得意様”として顧客ミックス上、貢献している面もある
のだ。
また、ソフトバンクが利益を得ている理由として、端末の価格設定にもあると言える。
今まで携帯各社は販売奨励金(販売数量の拡大を目的に、販売店などに継続的に支払われ
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ている金銭)を出して端末の価格を下げていた。しかし、これでは高額の販売奨励金が必
要になりやすい高機能端末を出せば出すだけ、その分奨励金がかさみ収益に響くことにな
る。そこでソフトバンクはこの方法をやめ、販売奨励金を大きく削減する変わりに、端末
を割賦で販売するようにして、節約した販売奨励金の一部を月々の支払いの補助に当てた
のである。この制度変更により何が起きたのかというと、まずユーザーは端末を購入する
際には、今までよりも安く買えるようになった。そして、月々の支払いはソフトバンクが
補助してくれるので、大して増えることはない。
一方で、ソフトバンクは、高機能端末を0円で買えるという即物的な魅力を持てるよう
になった。その上、奨励金最大の問題である端末の頻繁な乗り換えを防ぐことができるよ
うになり、他社に比べて販売奨励金を大幅に削減できたのである。
何故ならば、販売奨励金方式は、その後ユーザーがどのような行動を取ろうとも既に使っ
てしまったお金ですのでどうしようもないものである。しかし、2 年契約をすることによっ
て価格がより安くなる端末割賦販売方式は、期間を設定し契約することでソフトバンクモ
バイル利用者が簡単に逃げないようにすることが期待できる。またそれだけでなく、途中
でユーザーが端末を買い換えたりキャリアを乗り換えたりした場合に、月々の支払い支援
をやめることが可能となるのだ。
最後に、2 台目として通話だけの利用のために使うユーザーの増加が負担になるのではな
いかと考えられる。しかしこの 2 台目として購入するユーザーには利益につながる傾向が
ある。こうしたユーザーは「試しに使ってみよう」とソフトバンクに半信半疑で加入し、2
~3 カ月、2 台の端末を持ち歩く。しかし次第に 2 台の併用が面倒になり、どちらかに一本
化しようと検討を始める。そうなると「高い方をキープするより、安く話せる方をポケッ
トに残そう」となり、数カ月使って不安も解消したソフトバンクを選ぶ、といった傾向が
あることが分かっている。
以上のような価格戦略や利用者の傾向などによって得られる利益のおかげで、ソフトバ
ンクは他社に比べてより安価な価格設定で企業経営が可能となっていると言える。
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参考 URL
ペネトレーション戦略
IT メディアニュース
http://kayumi.jp/archives/126440.html
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0711/06/news121.html
ソフトバンク
http://mb.softbank.jp/mb/customer.html
au by KDDI
8 ページ
http://mb.softbank.jp/mb/customer.html
docomo
http://www.nttdocomo.co.jp/
知らないと損する端末割賦販売方式
http://d.hatena.ne.jp/minami-always/20070615/1181884673
ケータイビジネス 成功の新常識/著者 佐藤崇
124 ページ 5~13 行
9 ページ
スマートフォンの誕生とこれからの携帯電話市場
日本で最も販売数の多い携帯は日本のメーカーが日本市場に適応して提供したものであ
る。これは日本消費者のニーズにあわせてメーカーが独自に開発し機能を進化させたため、
ガラパゴス携帯などといわれている。ここで、この日本市場向け携帯電話とスマートフォ
ンの違い、利用状況、スマートフォンの誕生の背景について述べる。スマートフォンとは
全世界のユーザーに向けて提供された iPhone や BrackBerry、Android に代表される多機能
携帯電話のことをいい、携帯電話とパソコンや PDA(携帯情報端末)の機能の一部が融合し
たものである。コンピュータを内蔵しているため、本格的なネットワーク機能や PDA が得
意とするスケジュール・個人情報の管理など、多様な機能をもつ。つまり電子メール機能
や Web ブラウザを内蔵したインターネット接続等が可能であり、本来はどちらかといえば
携帯情報端末である PDA に音声通話機能を持たせたものをさす。しかし、ここで日本の高
機能な携帯電話を見てみると、Web ブラウザやメール、写真にビデオ、テレビ機能など様々
な機能が使用できる多機能携帯電話であることがわかる。機能面だけではスマートフォン
と日本の高性能な携帯電話はさほど違いはないが、大きく違うのは機能の追加ができるか
できないかという点である。日本の高機能携帯電話は買ったら最後、機能を追加すること
は不可能だが、スマートフォンは、各製品を開発した会社以外が提供したソフトをユーザ
ーが自由にインストールできる。アプリケーションをインストールすることによって、最
新のソフトウェアが利用でき、機能の強化・拡張やカスタマイズが可能となった。以上の
ことからスマートフォンはパソコンに非常に近いものであるといえ、買ってきたての状態
でも同様であまり多くの機能は内蔵されていない。もちろんそのままでも問題なく使用は
できるのだが、スマートフォンはカスタマイズしてこそ真価を発揮する。普通の携帯電話
のように「古くなったから最新機能を求めて買い替える」というようなことはないのだ。
2012 年現在の日本のスマートフォン累計契約者数は 1000 万人を越えている。スマートフ
ォン端末市場は、パケット定額プランが 2 段階に移行してコスト面のハードルが下がった
ことや、高機能な iPhone の投入で拡大傾向を示したためである。利用者からみると、スマ
ートフォンは個人の利用にとどまらず、法人にも利用されている。個人はメールの利用、
ネットショッピング、Web 閲覧での利用が多いのに対し、法人は仕事用途のメール、営業・
渉外業務、社内コミュニケーション、幹部社員連絡に活用されている。年代別にみると、
男性の 20~50 歳代が仕事関係のメールで利用する比率が高く、女性の 20~30 歳代はネッ
トショッピング、20 代は動画・音楽の利用比率が高い。スマートフォンはアプリケーショ
ンを無限にインストールすることができる利点がある。現在は男女合わせて 20~30 代の利
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用が最も多いのだが、例えば高齢者向けの使いやすさを求めたスマートフォンが普及され
れば将来的に年代に関係なく幅広く多くの消費者に利用されると考えられる。
スマートフォン誕生の背景には、プロセッサなどのハードウェアの進化に加え、モバイ
ルネットワークの高速化が挙げられる。現在のデータ通信速度は 7.2Mbps と、一昔前の ADS
lよりも高速である。また、メモリも増大し、Flash や動画などのマルチメディアコンテン
ツが手軽にダウンロードできるようになった。このようにインフラが急速に整い、ハード
ウェアが高性能になると、携帯電話によりパソコンの世界に近い環境が求められてきた。
しかし、高速なネットワーク環境でより高速に動作する端末を作ろうとすると、従来の携
帯電話では制限があり、新しいものを求めるニーズに対して消費者は新機能を導入した携
帯電話に買い替えるしかなかったのだ。そこで、パソコンの環境に近いオープンなプラッ
トフォームというものが求められたのがスマートフォン普及の所以だ。
また、携帯電話や OS、ネットワーク環境の進化に伴い、世界でも日本でもスマートフォ
ンの人気が高まっている。日本でのスマートフォンシェアは今後も大きくなるだろう。こ
のことがら今後の携帯電話市場にスマートフォンは不可欠な存在といえる。
スマートフォン人気の火つけやくはアップル社のアイフォンである。アイポッドで携帯音
楽端末のシェアのトップをとったアップルがそれらの機能を搭載したアイフォンをリリー
スした。日本でもスマートフォンのトップシェアである。アイフォン向けアプリも充実し、
ビジネスにも遊びにも使えるため人気は益々高まっている。開発も行っており、基本ソフ
トはアップルの iOS が搭載されている。iOS はアイフォン以外にも音楽プレイヤーのアイ
ポッドタッチやタブレットデバイスのアイパッドにも採用されている。国内ではソフトバ
ンクモバイルのみの販売である。アイフォン用のアプリは厳しい審査を通過しなければな
らないため、一定の基準を満たしたアプリが用意される。この審査によりアプリ全体のク
オリティも保たれ優良なアプリが多い。2011 年の段階で約 30 万本のアプリが用意されて
いる。操作の面ではアイフォンはホームボタンが1つだけというシンプルな造りになって
いて操作に迷うことは尐ない。不在着信や新着メールを表示するプッシュ通知機能が搭載
されていて、ホーム画面に受信・着信相手がそのまま表示される。また機種が尐ない分、
種類・付属品共に豊富である。
アンドロイドスマートフォンはグーグル社のアンドロイドという基本ソフトを搭載したス
マートフォン全般のことである。アンドロイドは広く公開されているため、様々なメーカ
ーが端末を製造することができる。アンドロイドスマートフォンはドコモや au、ソフトバ
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ンクなどの各通信キャリアがそれぞれのメーカー製の端末を販売している。キャリアごと
に独自のコンセプトがあり、性能や外観など多様なバリエーションを揃えている。端末の
開発に関しては国内外の各メーカーが行うが、基本ソフトはグーグル社が開発したアンド
ロイドを使用している。アンドロイドはメーカーがカスタマイズを施して提供することが
可能となっていて、独自のソフトウェアやハードウェアを搭載できる柔軟性を持っている。
メーカー独自のハードウェアとして日本国内ではワンセグやおサイフケータイ、赤外線通
信など、これまでの携帯電話に備わっていた機能を付けることが多い。このようにソフト
ウェア、ハードウェアの違いやデザイン、防水機能など機種ごとに様々な違いがあること
がアンドロイドスマートフォンの大きな特徴となっている。
一貫したデザインやサービス、クオリティを保証してくれるのがアイフォン、ソフトウェ
ア・ハードウェアの柔軟性を活かした多様な端末ラインナップがあるのがアンドロイドス
マートフォンだといえる。
スマートフォンの販売数は伸び続けていて、スマートフォン OS 別シェアではグーグルの
アンドロイドが Nokia 陣営の Symbian を抜きトップとなった。アンドロイドスマートフォ
ンはシェアを急速に伸ばしており今後も事業者、消費者が求める製品を多数提供できるプ
ラットフォームとして人気を高めていくだろう。この勢いを止めようと他の OS 陣営がより
よいサービスや製品を提供していくことで、スマートフォン業界全体が盛り上がっていく
ことは間違いない。
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結び
近年スマートフォンの誕生で携帯電話市場は大きな転換期を迎えており、またどの企業
もシェアの拡大を狙いさまざまな経営戦略を行っている。その戦略は各企業により異なる
が、そのどれもがスマートフォンを早く普及させようとする意図がわかる。例えば、タッ
チパネルも使え、従来通りのテンキーを使用することができる機種や、女性が使いやすい
ようにしたコンパクトな機種は今まで多かったメールや SSN などの書き込みが打ちにくい
などの不満を解消し、顧客のニーズに合わせている。このように、これからますます企業
間での差別化戦略が加速することが考えられるが、どのような私たち使用者にとって利用
がしやすく、かつ機能面やデザインで満足するようなスマートフォンが誕生するか、また
それをどのような広告で私たち利用者にその良さを伝えていくのか、楽しみである。