3.2 海嶺の火山活動 3.2.1 海嶺の地形・地質 a. 海嶺の長さと噴出率

3.2 海 嶺 の 火 山 活 動
3.2.1 海 嶺 の 地 形 ・ 地 質
a. 海 嶺 の 長 さ と 噴 出 率
海 嶺 で の 火 山 活 動 は ,噴 出 物 の 量 で 地 球 上 の 火 山 活 動 の お よ そ 80% を 占 め る( 表 3.1? ).
そ こ で の 拡 大 速 度 は , 北 極 海 嶺 や イ ン ド 洋 南 西 海 嶺 の 1cm/年 ( 10km/Ma) 未 満 か ら , 東
太 平 洋 海 膨 南 緯 8-15 度 の 16cm/年 に 渡 る ま で 広 い 範 囲 に あ る .拡 大 速 度 が 年 間 10cmの 海
嶺 で は 溶 岩 の 単 位 長 さ 当 た り の 噴 出 率 は 約 2* 10 - 4 km 3 /( 年 ・ k m ) で あ り ,活 動 的 な 島
弧 の 噴 出 率 ( 例 え ば , 東 北 日 本 弧 の 噴 出 率 : 2* 10 - 6
km 3 /(年 ・ km)と 比 べ る と ほ ぼ 2 桁
大きく,海嶺は地球内部の熱のマグマによる排出の主要な場であると云えよう.
b. 海 嶺 の 拡 大 速 度 と 地 形 ・ 溶 岩 組 成 の 相 関
海 嶺 は 幅 数 千 km,比 高 2∼ 4 km の 広 大 な 高 ま り で ,世 界 の 海 洋 に つ な が る 延 長 約 5 万
kmの大山脈である.海嶺での火山活動はその中軸部に集中している.海嶺中軸部の地形
は海嶺の拡大速度によって系統的に変化する.すなわち,大西洋中央海嶺のように拡大速
度 が 比 較 的 小 さ い 海 嶺 で は ,海 嶺 の 高 ま り の 頂 部 に は 幅 数 十 k m ,深 さ 2∼ 3k m の 中 軸 谷
が発達しており,その底は幅数kmで比較的平坦である.海嶺の拡大速度が大きくなると
中 軸 谷 の 深 さ は 浅 く な り( ガ ラ パ ゴ ズ 海 嶺 ,東 太 平 洋 海 膨 南 緯 17∼ 22 度;16cm/年 )中 軸
部 は む し ろ 凸 状 の 丘 の 連 な り か ら な り , そ の 中 軸 の 幅 1km 以 下 の 部 分 に 浅 い 窪 地 ( AST:
Axial Summit Trough) が 生 じ て い る .
海 嶺 中 軸 部 で の 火 山 岩 の 産 状 に つ い て は , FAMOUS 地 域 ( French-American
Mid-Oceanic Uncer Sea Study) や EPR( East Pacific Rise:東 太 平 洋 海 膨 ) 等 で の 潜 水 艇
に よ る 直 接 的 な 観 察 に よ っ て 具 体 的 に と ら え ら れ て い る .FAMOUS地 域 は ,大 西 洋 中 央 海
嶺 (Mid-Atlantic Ridge)北 緯 36°50
に 位 置 し ,幅 3kmの 中 軸 谷 の 底 の 部 分 の 地 質 図 が 作
成 さ れ た( Ballard and van Andel, 1977).個 々 の 小 丘 の 規 模 は 比 高 100∼ 200m で 平 面 的
な 大 き さ は 0.5×1 ∼ 1×5kmで あ る の で , 体 積 に す る と 10 - 2 - 0 km 3 程 度 で あ る . 海 嶺 で の
深 海 掘 削 に よ る 海 洋 底 基 盤 玄 武 岩 層 の ユ ニ ッ ト の 厚 さ は 数 m ∼ 200m で あ り , そ れ は 海 嶺
中 軸 谷 で の 小 丘 の 積 み 重 な り を 代 表 す る と 考 え ら れ る .深 海 掘 削 の 1 ユ ニ ッ ト 内 で は 岩 石
磁化方向がほぼ一定であり,その噴火は比較的短期間(せいぜい数百年)に生じたもので
あ ろ う .海 嶺 中 軸 谷 で の 調 査 結 果 で も う 一 つ 重 要 な も の は ,数 kmの 範 囲 内 で 玄 武 岩 の 化 学
組成は多様であり,お互いに独立な初生マグマに由来する玄武岩が隣り合って産すること
である.このことは大西洋中央海嶺の中軸部直下では,マグマ溜まりがあったとしても幅
1km以下の小規模なものであることを示している.地震観測の結果もこの地域での大規
模 な マ グ マ 溜 ま り の 存 在 に 否 定 的 で あ る . 一 方 , 比 較 的 拡 大 速 度 の 大 き い ( 6∼ 15cm/年 )
ガ ラ パ ゴ ス 海 嶺 ,東 太 平 洋 海 膨 な ど で は 枕 状 溶 岩 の 外 に 層 状 溶 岩 (sheet flow),縄 状 溶 岩 が
多 く 観 察 さ れ た .こ れ ら は 海 底 へ の 溶 岩 流 出 速 度 が 大 き い 場 合 生 じ る と 考 え ら れ て い る( 図
3.2.2).個 々 の 溶 岩 流 の 規 模 は ,大 西 洋 中 央 海 嶺 中 軸 谷 中 の 小 丘 と そ れ ほ ど 変 わ ら な い か ,
やや大きい.東太平洋海膨では地震波の観測から比較的大きなマグマ溜まりが,周期的に
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分布することが知られている.溶岩の化学組成も海嶺軸に沿って周期的に変化し,比高の
大きな部分ではより高温で比較的均質なマグマが,末端部では多様な組成で平均するとよ
り低温のマグマが噴出している.
火 山 活 動 の 大 部 分 は 海 嶺 中 軸 部 の 幅 数 km∼ 数 10k m の 部 分 に 集 中 し , そ こ で は 主 に 割
れ 目 噴 火 で 生 じ る 単 成 火 山 が 集 積 す る .周 辺 に は 小 規 模 な 複 成 火 山 を な す 海 山 も 分 布 す る .
パ ー フ ィ ッ ト ・ チ ャ ド ウ ィ ッ ク ( 1998) に よ る と , 高 速 拡 大 境 界 で は ,新 し い 火 山 活 動 の
範 囲 は 中 軸 部 数 100mに 限 ら れ , 一 方 低 速 拡 大 境 界 で は 中 軸 部 か ら 数 k m に 拡 が っ て 火 山
活 動 が 生 じ る .単 位 長 さ 当 た り の 噴 火 頻 度 は 拡 大 速 度 2cm/年 で は 1 万 年 当 た り 1 回 で ,拡
大 速 度 が 増 加 す る と 指 数 関 数 的 に 増 加 し , 拡 大 速 度 10cm/年 で は 数 年 に 1 回 程 度 と な る .
ま た 一 回 の 噴 火 で 生 じ る 噴 出 物 量 は 低 い 拡 大 速 度 で は 数 1000 万 m 3 ∼ 数 億 m 3 で あ る の に
対 し て , 高 速 海 嶺 で は 数 10 万 ∼ 数 100 万 m 3 程 度 と 小 さ い 噴 出 単 位 と な る ( 図 1 ). 海 嶺
下のマグマ溜まりの存在については地震波を用いた検討がなされており,拡大速度が高い
東 太 平 洋 海 膨 で は 定 常 的 な メ ル ト レ ン ズ が 観 測 さ れ て い る の に 対 し ,拡 大 速 度 が 2cm以 下
では定常的なメルトレンズは存在しないものと考えられている.
c. 溶 岩 の 種 類
噴 出 物 は お お ま か に , 層 状 溶 岩 ( sheet flow), 枕 状 溶 岩 ( pillow lava), ハ イ ア ロ ク ラ
ス タ イ ト ( hyaloclastite) に 区 分 さ れ る . 活 動 の 水 深 は 2,000∼ 3500m ( 200-350 気 圧 に
相 当 ) に あ り , 噴 火 の 原 動 力 と し て マ グ マ の 発 泡 の 役 割 り は 小 さ い . Bonatti &
Harrison(1988)は 拡 大 速 度 に 対 応 し て 溶 岩 の 種 類 が 変 化 す る こ と を 示 し た .( 図 2 ) す な
わち,層状溶岩の割合が拡大速度とよい正相関を示し,高速拡大境界の溶岩の大半は層状
溶岩となる.一方,低速拡大境界では大半の溶岩は枕状溶岩となる.これは噴出率の違い
を反映しているものと考えられる.
d. 海 嶺 の 不 連 続 性 , セ グ メ ン ト 構 造 , 伝 播 性 海 嶺 , 重 複 拡 大 境 界
海嶺はその延長方向で様々な不連続を示す.最も大きな規模のものはトランスフォーム
断 層 で あ り 海 嶺 探 査 の 初 期 に 発 見 さ れ ,1960 年 代 の 海 洋 底 拡 大 説 や プ レ ー ト テ ク ト ニ ク ス
の 誕 生 の 際 に そ の 成 因 が 重 要 な 役 割 を 果 た し た .一 方 ,1980 年 以 降 の 詳 細 な マ ル チ ビ ー ム
海底地形探査や玄武岩の検討から,海嶺はその延長方向で様々な波長でセグメント構造と
よばれる高まりを呈し,噴出物の種類,溶岩の性質に系統的な変化が認められることが判
明した.それらのセグメント構造は,トランスフォーム断層と関連した伝播性海嶺や,よ
り 小 規 模 な 海 嶺 の 不 連 続 で あ る 重 複 拡 大 境 界 と 密 接 に 関 連 し て い る ( 図 3 ).
伝 搬 性 海 嶺( propagating rift)は 海 嶺 に お け る 地 磁 気 異 常 縞 模 様 が 破 砕 帯 に 斜 交 す る 現
象 を 説 明 す る モ デ ル と し て Hey, R.N.(1977)に よ り 提 唱 さ れ た も の で , 破 砕 帯 で 結 ば れ た
不連続な海嶺の片方が海嶺軸に平行に伝播(進行)し,もう一方が漸次終息(退行)する
というモデルである.世界の海嶺で拡大速度に関係なくこのような現象が認められ,それ
は 海 嶺 を 挟 ん で 対 称 的 な V 字 型 の 地 磁 気 異 常 縞 模 様 と し て 認 識 さ れ る .こ の V 字 型 の 海 嶺
となす角度は海嶺の拡大速度と伝播速度(=終息速度)の比によって決まる.多くの例で
は 伝 播 性 海 嶺 と 退 行 海 嶺 は 少 し 斜 交 し て お り ,こ の よ う な 伝 播 性 海 嶺 が プ レ ー ト の 運 動( 拡
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大)方向の変化に伴う拡大方向の調整をしていることが考えられる.
一 方 , 重 複 拡 大 境 界 ( OSCs: overlapping spreading centers) は 海 嶺 軸 の 小 規 模 な ず
れがある場合,ずれた部分で2つの海嶺が並んでいる場合を云う.通常,重複した2つの
海 嶺 の 距 離 は 0.5∼ 10km で あ り ,重 複 し た 長 さ は 距 離 の 3 倍 程 度 で あ る .重 複 し た 部 分 で
は互いの海嶺の間に小規模な楕円状の海盆が生じ,海嶺はその海盆を囲むように弧状にな
る場合が多い.比較的大きな重複拡大境界は外側に過去の海嶺や海盆の痕跡が認められあ
る程度安定であると考えられるが,小規模な重複拡大境界は外側に痕跡が残らず,一時的
に存在するものと考えられる.これらの重複拡大境界でも片方の海嶺が伝播し,もう片方
が退行する場合があり,近年はそれらについて詳細な地球物理的観測からマグマ溜まりが
ある程度連続して存在することが示されている.また玄武岩の化学組成は,セグメント構
造の地形的高まりではより高温の均質なマグマが噴出し,マントルのダイアピル的な上昇
に 対 応 し て い る と 考 え ら れ て い る( 図 3 ).海 嶺 の 不 連 続 は セ グ メ ン ト 構 造 の 地 形 的 低 所 で
生じ,そこでは地殻が薄く,玄武岩組成は不均質で定常的なマグマ溜まりが殆ど存在しな
い.
e. 海 嶺 の で の 火 山 活 動 の 観 測 ・ 観 察
海嶺の火山活動はアイスランドを除いて深海中でおこなわれるため,一般にその直接的
な 観 察 は 容 易 で な い が ,1989 年 に Juan de Fuca 海 嶺 で 噴 火 活 動 を 音 波 等 で モ ニ タ ー し た
事 例 や ,1991 年 に 東 太 平 洋 海 膨 で 溶 岩 流 出 直 後 の 高 温 熱 水 噴 出 の 直 接 観 察 が 初 め て お こ な
わ れ た 例 な ど が あ る . 1998 年 1 月 25 日 に は , 東 太 平 洋 の フ ァ ン デ ・ フ ー カ 海 嶺 で , 海 底
火 山 活 動 を モ ニ タ ー す る 目 的 で 設 置 さ れ た 測 深 ・ 測 温 機 器 が 溶 岩 流 に よ り 3.5 メ ー ト ル 持
ち上げられ,その後溶岩のドレインバックにより沈下し,最終的には約1mの厚さの溶岩
が 残 る 事 例 が あ っ た ( Fox et al.,2001). こ の 際 , 測 温 機 は 約 4 ℃ の 温 度 上 昇 を 記 録 し た .
海嶺での火山活動の間接的な手法としては次のようなものがある.高分解能音波探査,地
震波探査,電磁気探査,潜水調査船や深海カメラによる海底観察,ドレッジや深海掘削に
よる火山噴出物の採取とそれらの岩石学的・地球化学的研究,海水についての地球化学的
観 測 ,お よ び 陸 上 に 露 出 し た 過 去 の 海 洋 地 殻 断 面( オ フ ィ オ ラ イ ト )の 観 察 ,な ど .今 後 ,
活発な海嶺での定常的観測体制が整えば,直接的な海底噴火現象の観察が可能となるであ
ろう.
f. 海 嶺 周 辺 の 海 山 と 火 山 の サ イ ズ 分 布
海 嶺 の 火 山 活 動 は 基 本 的 に は ,割 れ 目 噴 火 で あ り 単 性 火 山 の 集 積 で あ る と 云 え る .た だ ,
海嶺の周辺には多数の小規模な海山が知られ,それらは複成火山であると考えられる.海
洋 底 の 詳 細 な 海 底 地 形 図 を み る と ,比 高 3000m 以 下 の 海 山 が 数 多 く 認 め ら れ る .こ れ ら の
海山については高い分解能を持った多重音響測深記録によって詳細な地形図が得られ,ま
たそれらを構成する岩石についても詳細な研究が行われている.載頭円錐形の形とランダ
ムに分布した多数の海山の高さが指数分布をとるという仮定に基づいて太平洋東部の測深
プ ロ フ ァ イ ル の 解 析 を お こ な っ た 結 果 , こ の 地 域 の 海 底 の 約 6% が 海 山 に よ っ て 覆 わ れ て
お り , 体 積 で は 海 洋 地 殻 の 約 0.4% ( 27m厚 相 当 ) を 占 め る と い う 結 果 が 得 ら れ た . ま た
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分 布 密 度 は 比 高 300m 以 上 の 海 山 が 平 均 1600±400 個 / 10 6 km 2 存 在 す る . こ の 分 布 密 度
が平均的なものであるとすると,世界の海洋地域全体では数十万個の海山が存在すること
に な る . た だ し , そ の 大 部 分 は 比 高 1000m ( 体 積 約 30km 3 ) 以 下 の 小 さ い も の で , 巨 大
海山列をなすホットスポットの海山とは体積頻度分布,岩石の化学組成などで明瞭に区分
される.海嶺中軸部の単成火山と小規模海山のソレアイトは記載岩石学的,地球化学的に
ほぼ等しい性質を有する.
3.2.2
岩石学的性質
a. 海 嶺 玄 武 岩 の 名 称 と 一 般 的 性 質
海嶺での火山活動で生じる火山岩は,大部分が比較的未分化なソレアイト質なもので,
地球上で広範囲にたいへん一定した組成を有している.近年では,深海掘削,ドレッジ,
潜水艇による調査で得られた海嶺地域の火山岩類について主成分,微量成分,同位体組成
分析が進んだ結果,海嶺玄武岩が地球上で占める特異な位置が明らかにされた.これらの
玄 武 岩 は ,海 洋 底 玄 武 岩 (ocean-floor basalt),深 海 玄 武 岩 (abyssal basalt),深 海 性 ソ レ ア
イ ト (abyssal tholeiite),海 嶺 玄 武 岩 (oceanic-ridge basalt),中 央 海 嶺 玄 武 岩 (mid-oceanic
ridge basalt: MORB)な ど と 呼 ば れ る . そ の 性 質 は 以 下 の よ う に 纏 め る こ と が で き る .
( 1) 比 較 的 一 様 な ア ル カ リ に 乏 し い ソ レ ア イ ト 質 組 成 を 有 し , 未 分 化 で Mg 値
(100*Mg/(Mg+Fe))が 50− 70 の も の が 多 い .
( 2) ポ テ ン シ ャ ル マ ン ト ル 温 度 は 1300℃ 程 度 で あ り ,拡 大 に 伴 う 受 動 的 マ ン ト ル 上 昇 に
よりマグマが発生すると考えられる.
( 3) 斑 晶 鉱 物 は , か ん ら ん 石 , ク ロ ム ス ピ ネ ル , 斜 長 石 , 単 斜 輝 石 な ど が 含 ま れ る .
( 4) K, Rb, Ba, H 2 O等 の 液 相 濃 集 元 素 に 乏 し く , (La/Sm) N <1,
8 7 Sr/ 8 6 Sr比 が
0.702−
0.703 と 低 く , 給 源 マ ン ト ル 物 質 が 著 し く 枯 渇 し て い る と 考 え ら れ る .
( 5) 海 嶺 軸 に 沿 っ て ,数 10k m の 周 期 で 組 成 が 変 動 し ,マ ン ト ル 湧 昇 が 海 嶺 軸 に 沿 っ て
不連続にくびれた構造を持つと考えられる.これはポテンシャルマントル温度,か
んらん岩の組成不均質,表層の断裂帯の分布等によっている.
( 6) 海 嶺 の 拡 大 速 度 に 応 じ た 組 成 変 動 が 認 め ら れ る . ま た , 同 位 体 組 成 と 主 成 分 組 成 が
無相関である場合が多い.
( 7) U-Th 系 の 非 平 衡 か ら の 噴 出 年 代 ,上 昇 速 度 の 見 積 も り が お こ な わ れ る よ う に な り ,
メ ル ト の 分 離 か ら 噴 出 ま で 短 時 間 で 生 じ る こ と ,海 嶺 軸 部 か ら 4km 離 れ た 処 で の 噴
火活動が生じていることが明らかになった.
b. 海 嶺 玄 武 岩 の 初 生 マ グ マ 組 成 と ポ テ ン シ ャ ル マ ン ト ル 温 度
海嶺の噴出物は大部分が液相濃集元素および揮発性成分の乏しいソレアイト質玄武岩で
ある.海洋底拡大によるマントルの湧き上がりは,そのヌッセルト数(対流による熱輸送
速度/熱伝導による熱輸送速度の比)が小さく,断熱的であると考えられる.マントルで
の部分溶融液の集積は極めて低い部分溶融度で生じることがかんらん石―メルトのぬれ角
から推定されており,部分溶融液の分離効率は十分高いと考えられる.マントルの断熱的
上昇では,部分溶融度やマグマ発生量は,ポテンシャルマントル温度によって決まり,こ
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れまでの高温高圧実験によって較正すると,海洋地殻の厚さ約6−7kmのマグマを発生
す る 条 件 と し て 海 嶺 の ポ テ ン シ ャ ル マ ン ト ル 温 度 は 約 1300℃ 程 度 と 考 え ら れ る ( 図 4 )
( McKenzie & Bickle, 1988). こ こ で ポ テ ン シ ャ ル マ ン ト ル 温 度 と は , 融 解 の 潜 熱 を 無 視
した場合のマントル温度を断熱的に地表迄外挿した温度である.この条件での初生マグマ
組 成 は MgO 量 は 10-12wt%程 度 で あ る .海 嶺 の マ ン ト ル 上 昇 は ホ ッ ト ス ポ ッ ト の 影 響 の な
い部分では受動的にプレート拡大に伴って生じると考えられ,そのポテンシャルマントル
温 度 は 1,300-1400℃ 程 度 で あ り ,ホ ッ ト ス ポ ッ ト の 影 響 の あ る 海 嶺 で は 1400-1500℃ で あ
る . ホ ッ ト ス ポ ッ ト で は ポ テ ン シ ャ ル マ ン ト ル 温 度 は 約 1500-1600℃ で , 通 常 の マ ン ト ル
よ り も 200℃ 程 度 高 温 で あ る .( 図 4 )
c. 海 嶺 玄 武 岩 の 分 化 の 程 度 と 多 様 性
海嶺玄武岩の初期の岩石学的研究では,限られた地域の海嶺玄武岩の組成変動がかんら
ん 石 , 斜 長 石 , 単 斜 輝 石 等 の 結 晶 分 別 で 説 明 で き る こ と が 示 さ れ た (Bryan and Morre,
1977).ス パ ー ク ス と ハ パ ー ト( 1984)は 海 嶺 玄 武 岩 で Mg 値 が 55− 60 の も の が 最 も 多 く
噴出していることに関して,そのような組成のマグマが,一連の結晶分化過程で生じるマ
グマの中で密度が最小になることを示した.従って地下のマグマ溜まりでは,中程度に分
化したマグマが上位を占め,より噴出しやすいと考えられる.より分化した鉄に富む玄武
岩質マグマはマグマ溜りの下部を占め,固化して鉄斑れい岩を形成する.
Klein & Langmuir(1987)は ,各 海 洋 の 海 嶺 玄 武 岩 の 組 成 を MgO=8% に 規 格 化( MgO 変
化 図 で MgO=8wt%の と き の 各 酸 化 物 の 重 量 % で , 例 え ば , Na 2 Oに つ い て は Na8.0 と 表 示
する)することにより全地球的な元素相関を認め,それらが,海嶺の深さ,地殻厚さと密
接 な 相 関 を 有 す る こ と を 指 摘 し た . 図 5 に 示 す よ う に , Na8.0 は Fe8.0, Ti8.0, Ca/Al8.0
と逆相関を示し,海嶺の深さとは正の相関を示す.このような海嶺の平均的な玄武岩組成
と 水 深 の 相 関 は ほ ぼ 海 嶺 下 の ポ テ ン シ ャ ル マ ン ト ル 温 度( PTM)の 違 い で 説 明 で き る .つ
ま り ,PTMの 大 き な 海 嶺 で は ,マ ン ト ル の 上 昇 は 浅 く ま で 生 じ ,部 分 溶 融 度 の よ り 高 い メ
ル ト が よ り 多 く 発 生 す る た め ,地 殻 が 厚 く ,海 嶺 の 水 深 は 浅 く ,マ グ マ の Na 2 O量 は 低 く ,
ま た FeO量 は 高 く な る .
一方個々の海嶺について,地域的な組成変化を検討すると,グローバルな組成相関とは
異 な る 組 成 相 関 が 見 出 さ れ た .図 6 に あ る よ う に ,個 々 の 地 域 で の Na8.0 は Fe8.0 と は 正
相関を示している.このような地域的な組成変動については,給源かんらん岩組成の多様
性,特に含水量による可能性が指摘されている.一方,海嶺での拡大速度が噴火する玄武
岩組成に影響を与える場合や,大陸から海嶺の距離が相関を示すことから,マントル組成
の大陸下マントルからの影響も指摘されている.
d. 海 嶺 玄 武 岩 の 含 水 量 ・ 揮 発 性 成 分 組 成
海嶺玄武岩中の水を始めとする揮発性成分については,特に枕状溶岩の急冷周縁ガラス
や 斑 晶 ガ ラ ス 包 有 物 の 分 析 が 行 わ れ て い る .例 え ば ,Saal他( 2002)は 東 太 平 洋 海 膨 の シ
カ エ ロ ス 断 裂 帯 の 枯 渇 し か つ 未 分 化 な N-MORB(Normal MORBの 略 )に つ い て , か ん ら ん
石斑晶中のメルト包有物と石基ガラスの揮発性成分の分析をおこない,それらが発泡の影
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響を受けておらず,初生的な揮発性成分量,液相濃集元素組成を有することを示した.そ
の H 2 O量 は 0.04-0.1wt%,CO 2 量 は 100-200ppmで あ り ,Cl, Nb量 等 と も よ い 相 関 を 示 す .
こ の 分 析 結 果 か ら , 大 半 の 海 嶺 玄 武 岩 は CO 2 に つ い て 飽 和 し て , 海 底 で 発 泡 脱 ガ ス し て い
る こ と が 示 唆 さ れ た . た だ , 発 泡 の 大 半 は CO 2 の 飽 和 に よ る も の で , H 2 Oに つ い て は 脱 ガ
ス の 影 響 は 少 な く , N-MORBガ ラ ス の 含 水 0.1-0.5wt%( 平 均 0.3wt%) は 元 々 の 値 を 示 す
と考えられている.海嶺玄武岩の一部には,海底から引き上げると大気圧下で弾けてしま
う 発 泡 度 16-18% の「 popping rock」と い う も の が あ る が ,こ れ は 気 泡 の 大 半 を 占 め る CO 2
が 全 岩 で 4000ppm程 度 含 ま れ た も の で あ る .
e. 海 嶺 玄 武 岩 の 生 成 モ デ ル と 橄 欖 岩 の 含 水 量
海嶺でのプレート拡大に伴うマントル上昇流については,鉱物物性の面からの検討がさ
れ て お り , 特 に か ん ら ん 石 中 の 含 水 量 ( 50ppm程 度 ) が そ の レ オ ロ ジ ー に 大 き な 影 響 を 与
えることが指摘されている.マントル中のいわゆる無水鉱物が若干の水を含み,例えばか
んらん石の場合,無水条件と比べると含水条件ではその粘性係数が2桁程度小さくなるこ
と が 実 験 的 に 示 さ れ て い る . Karato(1988) は , マ ン ト ル か ん ら ん 岩 の 部 分 溶 融 が 生 じ る
とそれまでかんらん石に含まれていた水がメルト中に入るため,かんらん石の含水量が低
下 し て , か ん ら ん 岩 全 体 と し て は 粘 性 係 数 が 増 加 す る こ と を 指 摘 し た . Hirth &
Kohlstedt(1996)は こ の モ デ ル を さ ら に 定 量 的 に 検 討 し 海 嶺 玄 武 岩 の 給 源 マ ン ト ル で は か
ん ら ん 石 に H/10 6 Si比 で 810±490 の 水 が 含 ま れ て い る こ と を 推 定 し ,さ ら に ,こ の よ う な
マ ン ト ル 物 質 が ,ポ テ ン シ ャ ル 温 度 1350℃ で 上 昇 し た 場 合 ,深 さ 115k m 程 度 で 部 分 溶 融
が 開 始 し , ド ラ イ ソ リ ダ ス と 交 差 す る 深 さ 65k m で は か ん ら ん 石 の 含 水 量 は <10ppmで か
ん ら ん 岩 の 粘 性 係 数 は 深 部 で の 10 1 8 Pa sec か ら 10 2 1 Pa secに 上 昇 す る こ と を 指 摘 し た .
プ レ ー ト の 下 で マ ン ト ル 対 流 が 生 じ る 粘 性 の 閾 値 が 10 1 9 Pa sec 程 度 と 推 定 さ れ て お り
(Forsyth, 1992), Hirth & Kohlstedt(1996)の 結 果 は , 海 嶺 下 で は プ レ ー ト の 厚 さ が 温 度
分 布 だ け で な く , 含 水 量 で も 左 右 さ れ , 60k m 程 度 に な り , そ の ダ イ ナ ミ ク ス を 理 解 す る
上で水の分布と部分溶融過程による再分配が重要であることを示した.マントルかんらん
岩のレオロジーはこの他に,鉱物組成や粒径,変形速度等にも依存し,今後より精度の高
い 物 性 論 に 基 づ く 計 算 機 実 験 が 進 む と 考 え ら れ る ( 例 え ば , Braun他 , 2,000). ま た , 近
年 地 震 波 ,電 磁 気 観 測 等 に よ り 海 嶺 下 マ ン ト ル の 微 細 構 造 が 解 明 さ れ る よ う に な っ て お り ,
MELT(Mantle Electromagnetic and Tomography)実 験 で は 東 太 平 洋 海 膨 下 マ ン ト ル の 非
対称性が,地球物理学的観測,物性論に基づく計算機実験,岩石学的分析等から総合的な
検討がおこなわれている.
f. ハ フ ニ ウ ム パ ラ ド ッ ク ス
わずかな水の存在によりかんらん岩のソリダスが低下し部分溶融が深部で生じるという
考えは,海嶺玄武岩の微量成分の特徴からザクロ石が部分溶融に関与した証拠が認められ
る こ と と 調 和 的 で あ る . Salters & Hart (1989) は , 海 嶺 玄 武 岩 に 見 ら れ る 高 い ハ フ ニ ウ
ム 同 位 体 比 ( 1 7 6 Hf/ 1 7 7 Hf)と 低 い Lu/Hf比 の 関 係 を「 ハ フ ニ ウ ム パ ラ ド ッ ク ス 」と 呼 ん だ が ,
こ れ は 海 嶺 下 で マ ン ト ル の 部 分 溶 融 が ザ ク ロ 石 の 安 定 な 領 域( >70km)で 生 じ た と す れ ば ,
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重 希 土 で あ る Luが ザ ク ロ 石 に 入 り 海 嶺 玄 武 岩 の 低 い Lu/Hf比 を う ま く 説 明 で き る . マ ン ト
ル か ん ら ん 岩 中 で は 玄 武 岩 質 メ ル ト の か ん ら ん 石 に 対 す る 濡 れ 角 は 60 度 以 下 で 微 小 な 部
分溶融液が連結して容易に集積すると考えられており,深部で溶融した液が周囲のかんら
ん岩と反応することなくより浅所で発生した液と混合することにより,微量成分と同位体
組成に深部の液の特徴が反映されるものと考えられている.
g. 同 位 体 非 平 衡 と マ グ マ 過 程 の 時 間 ス ケ ー ル
ウ ラ ン 238,ウ ラ ン 235 お よ び ト リ ウ ム 232 壊 変 系 列 に は そ れ ぞ れ 多 様 な 放 射 性 核 種 が
含まれる.系が十分長時間閉じた状態に保持されると母核種と娘核種の存在比は夫々の半
減 期 の 比 に 等 し く な り ,こ の 状 態 を 放 射 平 衡 と 呼 ぶ .放 射( 同 位 体 )非 平 衡 は ,部 分 溶 融 ,
結晶分別,マグマ混合,脱ガス等のなんらかのマグマ過程で,母核種と娘核種の分別が生
じ,放射平衡が破られた状態を呼ぶ.同位体非平衡が生じた後,マグマが噴出固化した場
合は系は閉じ,半減期に従って徐々に放射平衡状態に漸移してゆく.従って,火山岩試料
で同位体非平衡が観測されれば,それから母核種と娘核種の分別以降の時間スケールを推
定 す る こ と が で き る .2 3 8 U( 半 減 期:4.47*10 9 yr)系 列 の 主 な 壊 変 核 種 は 2 3 0 Th(7.6*10 4 yr),
2 2 6 Ra(1600yr), 2 1 0 Pb( 22.6yr)
, 2 1 0 Po(138day)な ど で あ る . 例 え ば , 部 分 溶 融 で U/Th比
が 分 別 し た 場 合 ( 通 常 ざ く ろ 石 で は D(U)/D(Th)=3-5), 液 に Thが 濃 集 し , 2 3 0 Th/ 2 3 8 U比 は
同位体平衡の値よりも高い値にずれる.最近噴出した溶岩については通常そのような非平
衡 が 認 め ら れ , 部 分 溶 融 過 程 の 経 過 時 間 は 数 10 万 年 ( 2 3 0 Thの 半 減 期 の 10 倍 ) 以 内 で あ
ることが考えられる.実際には,同位体非平衡の解釈については,給源物質の組成の不均
質 ,部 分 溶 融 で の 元 素 分 配 機 構 ,,マ グ マ 混 合 ,結 晶 分 別 過 程 等 ,多 く の パ ラ メ ー タ を 含 む
モ デ ル で の 検 討 が 必 要 で あ る .近 年 ,他 の 長 い 半 減 期 の 同 位 体( Sr,Nd,Pb等 ),微 量 元 素 ,
主成分と同位体非平衡をあわせた総合的なモデルの検討がおこなわれるようになっている
( こ の 問 題 に 関 す る 総 説 は Reviews in Mineralogy & Geochemistry, vol.52, 2003 に あ る ).
h. 熱 水 活 動 と 鉱 床 ・ 生 物 活 動
1979 年 に 東 太 平 洋 海 膨 北 緯 21N で ブ ラ ッ ク ス モ ー カ ー (300-400℃ の 硫 化 物 粒 子 を 含 む
黒 色 の 熱 水 噴 出 )が 見 さ れ て 以 来 ,多 く の 海 嶺 で 同 様 の ブ ラ ッ ク ス モ ー カ ー や ホ ワ イ ト ス モ
ーカー(高温であるが硫化物粒子を含まない熱水噴出)が発見されている.海嶺での熱水
活 動 は 海 洋 地 殻 の 形 成・進 化 ,お よ び 多 様 な 鉱 床 の 形 成 に 関 与 す る .TAG( Trans-Atlantic
Geotraverse) 熱 水 地 域 は 大 西 洋 中 央 海 嶺 北 緯 26 度 08 分 に 位 置 し て お り , 直 径 200m 高
さ 約 50m の 主 に 硫 化 物 の 角 礫 か ら 成 る マ ウ ン ド に 多 数 の ブ ラ ッ ク ス モ ー カ ー や ホ ワ イ ト
ス モ ー カ ー が 噴 出 し て い る . こ の マ ウ ン ド は 国 際 深 海 掘 削 ( Ocean Drilling Program) 計
画 第 158 航 海 で 掘 削 さ れ そ の 構 造 が 明 ら か に さ れ た .こ の マ ウ ン ド の 特 徴 は ,破 砕 さ れ た
角 礫 か ら 構 成 さ れ て お り , そ の 中 に 硬 石 膏 (anhydrite)が 多 量 に 含 ま れ て い る こ と で あ る .
硬 石 膏 は 海 水 中 で は 150℃ 以 上 で 飽 和 す る が 低 温 で は 不 飽 和 で 溶 け る 性 質 を 持 つ の で , 高
温のマウンドでは安定に存在するものの,低温部では溶出して周囲の硫化物を力学的に不
安 定 に し て 崩 壊 を 引 き 起 こ し 多 量 の 硫 化 物 の 角 礫 を 生 じ る と 考 え ら れ る .TAG で の 観 察 は ,
現 在 陸 上 の 硫 化 物 鉱 床 と た い へ ん 類 似 し て い る .ま た ,TAG を は じ め ,多 く の 熱 水 噴 出 孔
7
の周囲にはこれまで知られなかった代謝系を持つ生物群集が発見されている.さらに,地
殻内深部の様々な環境下に多様な微生物生態系が存在することが明らかにされつつある.
1000m を 越 す 深 海 掘 削 ボ ー リ ン グ コ ア で も 多 様 な 微 生 物 種 が 同 定 さ れ て お り ,地 球 上 で の
生 命 の 誕 生 の 問 題 と も 関 連 し て , 今 後 の 中 央 海 嶺 研 究 の 方 向 の 一 つ を 示 し て い る ( Kelley
他 , 2002).
3.2.3 背 弧 海 盆 の 火 山 活 動
背 弧 海 盆 (back-arc basin), ま た は 縁 海 (marginal sea)の 拡 大 の 原 因 と し て は , ① 上 盤 プ
レートが海溝軸から遠ざかる報告に運動する場合,②海溝軸が大洋側に移動する場合,③
沈み込みプレートの引きずり込みによる二次的な対流の上昇域で拡大が生じる場合,など
が 考 え ら れ て い る ( Uyeda & Kanmori, 1978). い ず れ に し て も , 島 弧 の 大 陸 側 で 張 力 が
働き,そこでプレートの拡大に伴って火山活動が生じる.その結果形成される海洋地殻は
大洋のものとほぼ同じ厚さ,構造を持つ場合が多く,その形成機構がほぼ同じものである
ことを示唆している.しかし,背弧海盆と大洋では次の 3 点で違いが認められる.すなわ
ち,背弧海盆では地磁気異常縞模様の振幅が大洋の場合と較べて小さく,また拡大の中軸
谷 の 地 形 が 明 瞭 で な い 場 合 が 多 い . ま た , 背 弧 海 盆 の 基 盤 岩 を 構 成 す る 岩 石 は MORB と
島弧ソレアイトの中間的な性質を有しており,多かれ少なかれ沈み込みプレートの影響を
受 け て い る と 考 え ら れ て い る ( Taylor & Martinez, 2002). さ ら に , 日 本 海 の 場 合 の よ う
に , 地 殻 が 異 常 に 厚 く ( 15km), 玄 武 岩 組 成 も 通 常 の 背 弧 海 盆 の も の よ り も ホ ッ ト ス ポ ッ
ト玄武岩に近い場合がある.
文献
(できるだけ最近の主要なものを挙げた.以前の文献はこれらに引用されている)
Braun, M.G., Hirth, G. and Parmentier, E.M. (2000)
The effects of deep damp melting
on mantle flow and melt generation beneath mid-ocean ridges.
Earth and
Planetary Science Letters, 176, 339-356.
Hirth, G. and Kohlstedt, D.L. (1996) Water in the oceanic upper mantle: implications
for rheology, melt extraction and the evolution of the lithosphere.
Earth Plan. Sci.
Lett., 144, 93-108.
Kelly, D.S., Baross, J.A. and Delaney, J.R. (2002) Volcanoes, fluids, and life at
mid-oceanic ridge spreading centers.
Annual Review of Earth and Planetary
Sciences, 30, 385-491.
Langmuir, C.H., Klein, E.M., and Plank, T. (1992)
Petrological systematics of
mid-ocean ridge basalts: constraints on melt generation beneath ocean ridges, in
Mantle flow and melt generation at mid-ocan ridges,
Geophys. Monograph, 71,
Amer. Geophys. Union, 183-280.
Macdonald, K.C., et al. (1988)
of ridge- discontinuities.
A new view of the mid-ocean ridge from the behaviour
Nature, 335, 217-225.
McKenzie, D. and Bickle, M.J. (1988)
The volume and composition of melt generated
8
by extension of the lithosphere.
J. Petrol., 32, 1021-1091.
Niu, Y., Bideau, D., Hekinian, R., Batiza, R. (2001)
Mantle compositional control on
the extent of mantle melting, crust production, gravity anomaly, ridge morphology,
and ridge segmentation: a case study at the Mid-Atlatic ridge
33-35 N.
Earth
Plan. Sci. Lett., 186, 383-399.
Perfit,
M.R.
and
Chadwick,
W.W.
(1998)
Magmatism
at
mid-ocean
rediges:
constraints from volcanological and geochemical investigations.
in Faulting and
Magmatism
106,
at
Mid-Ocean
Ridges,
Geophysical
Monograph
American
Geophysical Union, 59-115.
Taylor, B. and Martinez, F. (2002)
Back-arc basin basalt systematics.
Earth Plan.
Sci. Lett., 210, 481-497.
図1
海 嶺 拡 大速 度 と 火 山活 動 に よ る山 体 体 積 ,噴 火 間 隔 ,単 位 長 さ 当た り 1 万 年の 噴 火
回 数 の 関 係 (Perfit & Chadwick, 1998).
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図2
海 嶺 の 拡 大 軸 で の 層 状 溶 岩 と 枕 状 溶 岩 の 面 積 比 と 拡 大 速 度 の 関 係 .( Bonatti &
Harrison, 1988)
図3
南部東太平洋海膨での重複拡大境界と伝搬性海嶺の分布,および海嶺の分割に関す
る 海 嶺 軸 部 で の 深 度 断 面 (Macdonald 他 ,1988).A − E で は ,各 々 部 分 溶 融 し た 上 部 マ ン
トルからマグマが分離し,海嶺軸部のマグマ溜りへマグマの注入・更新がおこなわれる.
マグマは上昇し,軸部沿いに給源から離れると下降する.海嶺軸部の深さに対応してマグ
マ の 化 学 組 成 が 変 化 す る ( → 図 4 を 見 よ ) (MacDonald ら , 1988)
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図4
ポ テ ン シ ャ ル マ ン ト ル 温 度 と マ グ マ の 生 成 量 の 関 係 ( McKenzie & Bickle, 1988) .
(a) 地 球 で の マ ン ト ル か ん ら ん 岩 の リ キ ダ ス 温 度 , ソ リ ダ ス 温 度 と , ポ テ ン シ ャ ル 温 度 勾
配を,圧力に対して示した図.リキダスとソリダスの間の曲線はそれぞれの数字の部分溶
融 割 合 を 示 し た も の .1,280℃ ∼ 1580℃ の 5 つ の 曲 線 は 夫 々 の 等 ポ テ ン シ ャ ル 温 度 を 示 す .
但 し , 融 解 熱 を 250J Kg-1 ℃ -1 と し た 場 合 . (b)そ れ ぞ れ の ポ テ ン シ ャ ル 温 度 で 生 じ る メ
ルトの厚さを深さに対して示した図.
図5
汎 地 球 的 な 海 嶺 の 軸 部 の 深 さ と 玄 武 岩 の 化 学 組 成 ( 平 均 ) の 関 係 ( Langmuir ら ,
1992). Na8.0, Fe8.0 は 夫 々 , MgO=8.0wt%で の Na2O, FeO 合 計 の 重 量 % . ■ は 通 常 の
海嶺,□はガラパゴス,アゾレス,ヤンメイヤン,アイスランド,トリスタン,ブーベホ
ッ ト ス ポ ッ ト に 影 響 を 受 け た 海 嶺 , ×は ホ ッ ト ス ポ ッ ト 直 上 の 海 嶺 , ◇ は 背 弧 海 盆 .
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図6
玄武岩組成について,個々の海嶺地域のデータと全体のトレンドの違いを示したも
の ( Langmuir ら , 1992). a: 通 常 の 海 嶺 の 組 成 関 係 . 個 々 の 地 域 の デ ー タ と 全 体 の ト レ
ンドの比較.b:ホットスポットに影響を受けている海嶺での個々の地域のデータと全体
のトレンド.
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