5月号 - 東京都立大塚ろう学校

ひよこだより
都立大塚ろう学校 乳幼児教育相談
平成28年5月11日 NO.2
~自分でできる~
5月風の心地良い季節になりました。木は葉っぱの緑がとても濃くて、ぴかぴかしてい
ます。梅雨に入る前のこの時期は、暑すぎず、公園で遊ぶにも最適な時期です。親子で沢
山散歩をしてみてくださいね。あげは蝶が飛んでいたり、おたまじゃくしを発見したり、
四季折々の発見がきっとあるはずです。この季節にしか見られないものがたくさん見られ
ますよ。
ひよこだよりでどんな内容を扱おうかなと思っていたときに、本屋さんでこんな本を見
つけました。
「子どもと一緒にたのしく おかたづけ育、はじめました」整理収納アドバイ
ザーの Emi さんが書かれた本です。
「おかたづけ育」とは、かたづけが特別に上手な子供に
育てるのではなくて、物が増えたら必要なものだけを使いやすいように整理する(整理収
納)
、それを自分で考え決定する力、工夫する力、行動にうつす力を楽しみながら身に付け
て欲しい、そんな想いを込めて実践している、Emi さん流の子育てです。
Emi さんの本の中には、たくさんの工夫があります。玄関で靴をそろえることがなかな
か難しいと思ったら、A4のクリアファイルに紙を入れ、その紙にくつ型を描く、くつ型
シートと名付けたファイルを玄関に置いておくと、自然と子どもはそ
のシートの上に靴を置く、子どもが自分でできる、思わずやりたくな
ってしまうちょっとした工夫がたくさんあふれています。家に帰って
きたら、着ていたアウターと帽子は下駄箱の下においてある、ケース
の中に入れる。アウターをハンガーに掛けるのは難しくても、入れる
ということは子供にもできます。この他面白い取り組みのいくつかを
紹介したいと思います。
①1ジャンル1ボックスのおもちゃ収納:12個の白いボックスを4つ×3段でずらっ
と並べ、1種類のおもちゃを1つのボックス(100 円ショップで購入、幅 19×奥行 36×高
さ 13.5 程度のもの)に収納します。例えば積み木だったら、積み木をボックスに入れ、そ
のおもちゃの写真をラベル(透明のカードケースに写真を入れ、両面テープで貼ったもの)
として貼ります。子供が見て片づけやすいように工夫をしています。このおもちゃ収納の
良いところは、持ち運べること、ふたもないオープンボックスなので、見てすぐに好きな
おもちゃを出すことができますし、おもちゃを元に戻すこともできます。このおもちゃ収
納のポイントの一つは12個のうちの1つを何でもボックスにすること。おもちゃにはお
まけでもらったものなどこまごまとしたものがだんだんたまってきま
す。それを何でもボックスとして入れてしまうと、これはどこに分類し
ようと考える手間がなくなるそうです。3歳になった頃からボックスの
中がいっぱいになってきたら、子供と相談をして、いるものいらないも
のを分類して、リサイクルに回したり、他のお友達に譲ってあげたりと
整理しているそうです。
②身支度ロッカー:年齢に応じて、自分でできるように工夫がされているロッカー。素
材はカラーボックスを使用しても良く、一番下に着ていたパジャマを入れる。その上には
靴下と下着、その上に着る洋服のカゴ。洋服は上下4セットぐらい。朝起きたら、パジャ
マを一番下に放り込み、靴下を履き、洋服のカゴから自分の着たい洋服を取り出し、着る。
洋服は子供達が自分で管理できる量にしているそうです。パジャマを引き出しに入れると、
1アクションではなくなってしまうため、引き出しを抜いて、ほうりこむだけで良いよう
に工夫がされています。
③ごはんできたよワゴン:子供たちがごはんをおかわりするようになったら、何度も行
ったり来たりごはんのところまで戻るのが大変に。子どもでも押せる高さ50㎝のワゴン
に、炊飯器、のり、ゴマ、しょうゆ、箸やコップにお茶のポットを入れてご飯を食べてい
るすぐそばに運びます。自分でご飯をよそうようになってから、ご飯を残さなくなること
が増えたそうです。
「自分でできるが子どもの自信につながる」毎日の子育てを通してそ
う感じるようになりました。自分でできることを増やしたい、そう強
く思うようになりました。集団生活が始まると、自分で洋服を脱いだ
り着たり、食事を自分で食べたり、片づけたり、いろいろなことが始
まります。その一つ一つで子供は躓きを感じると自信をなくし「自分
はできない」と思ってしまいます。我が家の息子も「僕は、できない」
が口癖の頃がありました。洋服の後ろ前が分からないと「僕は後ろ前が分からないからで
きない。
」洋服を上手くたたむことができないと「僕はきれいにたためない。
」、保育園の先
生からも自信がないようですという報告を何度ももらいました。でも考えてみれば家でそ
んなことやってこなかったんですよね。子供は自然にできるわけではなく、毎日の生活が
全てだということを強く思った時でした。手を出し過ぎていたことを、改めて反省しまし
た。子供が大きくなると、よく自分が小さくなって、子どもの肩にのって、
「これはこっち
だよ!」と教えてあげたい、そんな話をお母さんたちから聞くことがあります。その気持
ちが痛いぐらいよく分かります。でも忍法を使っても小さくなる技術を身に付けるのには
相当時間がかかりそうなので、子供が少しでも躓きを感じないように「自分でできる」を
増やしてあげたいとそう思っています。
「自分でできる」ことは、子どもの発達によってそ
の内容が違います。子供の今に必要なことをぜひ考えて工夫をしてみてくださいね。
たかがお片付けだけれど、次使う人が困らないように、そして自分が困らないように整理
する力は、いずれ人を思いやれる力につながります。習い事をしても学べない、大切な力
が、毎日の生活の中にたくさん転がっています。
(文責:江川)
*こんな声かけを意識しています。
(「OUR HOME 子どもと一緒にたのしく おかたづけ育、
はじめました。
」より)
①「かたづけて!」ではなく具体的な言葉で伝えよう。
「かたづけなさい!」ではなく、
「リュックをロッカーにしまおうね。」
「ぬいぐるみ、赤い
かごにいれようね」などの具体的な言葉
②子どもが安心するのは「オウム返し」
③“自分でできた!”と思わせてあげる
④最後の最後は「お母さんも一緒にしよう」が効果大!
わが家は小さいころからシステムをつくり、いろんな仕掛けや声かけをたくさんトライし
てきましたが、子どもたちがどうしてもやる気がなくなったときの最終兵器はやっぱりこ
れ!「おかあさんも一緒にしようか!今なら特別大サービス!」結局のところ、これが一
番効果を発揮します。考えてみれば、子供が一緒にやろうと親に求めてくれるのも、人生
のたった数年、ですものね。
☆「OUR HOME 子どもと一緒にたのしく おかたづけ育、はじめました。」
著者:整理収納アドバイザーEmi
発行所:大和書房
HP:ourhome305.com