電源用ワンチップ 電源用ワンチップ

第
3
章
電源用ワンチップ
〜多機能充電ICから出力電圧可変のDC−DCコンバータ制御ICまで〜
3-1
出力 3.3 V 一定の 0.5 A 昇降圧型 DC− DC コンバータ制御 IC
入力が 1 〜 6 V と広くリチウム・イオンや各種 1 次電池に対応
漆谷 正義
Masayoshi Urushidani
この IC は,乾電池やニッケル水素 2 次電池 1 本(ワ
PWM モードのほうが効率が高くなります.昇圧,降
ンセル)から,5 V 程度のリチウム・イオン 2 次電池ま
でをカバーするバッテリ・システム向けの DC − DC
圧回路は独立しているので,直列
(昇降圧),単独,並
列(2 ch)で動作させることができます.
コンバータです(図 1).
昇圧型と降圧型を直列に接続し,昇圧電圧と出力電
このワンチップ IC は,次のような特徴があります.
(1)最低入力電圧 1 V
圧を内蔵の A − D コンバータとコンパレータで検出し,
(2)数 A の出力電流に対応
動作を切り替えています.昇圧回路は PWM,降圧回
路は PSM(Pulse Skipping Modulation)でスイッチン
(3)昇圧および降圧単独でも使用できる
(4)分割抵抗の設定により出力電圧の変更が可能
グしています.一般に負荷電流が大きい場合は,
(5)スイッチング周波数が 70 kHz と高い
(6)昇圧/降圧の動作は連続しているので動作点切り
降圧電圧検出
(出力電圧)
替えに伴うノイズや電圧変動がない
(7)入力電圧が一定電圧以下,または一定電圧以上
17
EA
でシャットダウンするので,過電流/過電圧によ
10
PSM
る素子の破壊を防止できる
● PIC16F88 で作る昇降圧型 DC − DC コンバータ
Vref
比較
入力電圧検出
1
使用する PIC16F88 の主な仕様を表 1 に示します.
機能ブロックを図 1 に,PIC16F88 の端子機能を表
EA:エラー・アンプ
Vref
昇圧電圧検出
2 に示します.
18
EA
Vref
VSS
VDD
LED駆動
5
14
12
誤差電圧は,入力電圧,昇圧電圧,出力電圧(降圧
電圧)の 3 系統の入力があります.昇圧制御は PWM,
9
PWM
15
OSC
降圧制御は PSM で行っています.昇圧用 PWM 制御
回路では,比例制御に微分制御を加えてレスポンスを
16
13
改善しています.入力電圧が 3.3 V 以上になった場合
図 1 本昇降圧型 DC − DC コンバータ IC の機能ブロック
PIC16F88
に定電圧動作を停止させて,出力電圧を比例的に上昇
最大定格
入力電圧
(V DD )
表 1 本ワンチップ IC PIC16F88 の主な
仕様
DC/AC 特性
電源電圧
(V DD )
− 0.3 〜 7.5 V
4.0 〜 5.5 V
最大電流
(V DD ,V SS )
200 mA
クロック周波数
20 MHzmax
I/O ピン吸い込み電流
25 mA
ブラウンアウト・リセット
3.65 〜 4.35 V
I/O ピン吐き出し電流
25 mA
供給電流
2.5 mA @ 20 MHz
端子
ポート
入出力
1
AN2
2
AN3
A − D 入力
̶
機
能
端子
ポート
入出力
出力
̶
入力電圧検出
10
RB4
NC
11
RB5
機
能
降圧用 PSM
NC
3
AN4
̶
NC
12
RB6
出力
LED(トリップ)
4
MCLR
̶
NC
13
RB7
出力
LED(過負荷)
5
VSS
̶
GND
14
VDD
̶
電源端子
6
RB0
̶
NC
15
CLKO
̶
XTAL
7
RB1
̶
NC
16
CLKI
̶
XTAL
8
RB2
̶
NC
17
AN0
入力
出力電圧検出
9
CCP1
昇圧用 PWM
18
AN1
入力
昇圧電圧検出
116
出力
表 2 本ワンチップ IC PIC16F88 の各端
子の機能
電気 2 重層キャパシタZ活性炭などでできた電極と電解液(2 重層)が,セパレ
ータで区切られた構造をもつコンデンサ.容量を大きくできることが特徴.
2008 年 1 月号
特集 マイコンで作るワンチップIC集
入力
Vin
R1
1
R2
C6
1k
0.01μ
2
3
4
5
100μH(2A)
Tr1
XP151A11
BOMR
(トレックス)
AN3
AN0
AN4
CLKI
CLKO
VSS
7
昇圧用
AN1
MCLR
6
L2
AN2
8
9
RB0
VDD
RB7
RB1
RB6
RB2
RB5
CCP1
RB4
PWM出力
L 1 100μH
マイコン用電源
1k
18
16
15
14
C 9 15p
13
D4
C5
0.022μ
D1
1N5818
Vout
3.3V
R7
330Ω
270Ω
過負荷
1k
R8
R 10 1k
C7
トリップ
Tr3
2N7000P
(Zetex)
PSM出力
C1
100μ
6.3V
3.5
3
出力電圧
効率[%]
出力電圧[V],入力電流[A]
図 2 1.2 〜 5 V の電源から 3.3 V/0.5 A を出力する応用回路
2.5
2
1.5
効率
1.0
100
入力電流
0.5
0
0
50
1
2
3
4
入力電圧[V]
5
6
7
図 3 入出力電圧と効率の測定結果
(実測)
させるためにオフセットを設けています.
● 応用回路
図 2 に応用回路例を示します.1.2 V のニッケル水
素 2 次電池や 4.2 V のリチウム・イオン 2 次電池を電
源として,3.3 V/0.5 A を出力することができます.
本 IC の最も典型的な応用例です.
PIC16F88
製作した基板の外観を写真 1 に,入出力電圧と効率
の測定結果を図 3 に示します.
写真 1 製作した基板の外観
D参考文献D
(1)Switch Mode Battery Eliminator Based on a PIC16C72A,
AN701,Microchip Technology Inc.,1999.
2008 年 1 月号
(2) DC/DC Converter Controller Using a PICmicro
Microcontroller,AN216,Microchip Technology Inc.,2000.
PFM
(Pulse Frequency Modulation)Z一定幅のパルス信号の繰り返し周期(つ
まり周波数)を変化させることで,情報を伝達する変調方法.PSM とも呼ばれ
る.
第
3
章
電
源
用
ワ
ン
チ
ッ
プ
1k
0.022μ
11
10
R6
R9
D5
出力
C4
D3
470μ
1N5822
1k
1k
C 8 15p
X1
20MHz
12
R5
R3
17
I C2 LT1073-5
(リニアテクノロジー)
3
1
I LI M
SW1
4
8
SENSE SW2
7
SET
6
AO
2
Vin GND
5
C2
100μ
降圧用
Tr2
2SJ377
L3
(東芝) 100μH(2A)
R4
(マイクロチップ・テクノロジー) 100μ
5.6k
(1.2〜5V)
C3
I C1 PIC16F88
Chapter number
D2 STPS1L30A
電源入力端子
(バッテリ)
117