The 21st Art Film Festival

第21回アートフィルム・フェスティバル
AFF21
The 21st
Art Film Festival
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特集プログラム「水のイメージ」
自主制作映画や実験映画では、何故かラストシーンで海が映し出されるものが多い、という指摘は、映画ファンや関係者の間でしばしば取り上げられて
きた話題です。波が絶えず寄せては返す浜辺は、動的なイメージに満ちた場所なので、ラストをドラマチックに演出するのにふさわしい、というメリット
があるのは確かです。しかしながらこの指摘は、それ以上深く追及されることがなかったともいえるでしょう。
本プログラムはその源流の一つに、アヴァンギャルド映画の古典であるルイス・ブニュエル『アンダルシアの犬』
(1929年、共同脚本:サルバドール・ダリ)
があるのでは、という仮説からスタートします。それが意識的なのか、無意識的であったのかはともかく、この“ラストシーンを海で締める”という
パターンは、マヤ・デレンやビル・ヴィオラといった実験映画/ビデオ・アートの重要作家に引き継がれ、近年では美術家・山城知佳子の作品にも見出せる
ものです。具体的に作品を辿りながら、この重要問題の隠された意味を考える、一つの契機となることを願っています。
本プログラムⅡ〈フランス作品集〉では、今年、長編アニメーション『レッド・タートル ある島の物語』
(2015年)が劇場公開され話題となった、マイケル・
デュドク・ドゥ・ヴィットが監督した短編『お坊さんと魚』(1994年)や、ノアの方舟の物語を想起させる長編アニメーション『かえるの予言』
(2002年、監督:
ジャック=レミー・ジレール)など、水との関連深い作品を上映します。
「アートフィルム・フェスティバル」は、実験映画やビデオ・アート、ドキュメンタリー、アート・アニメーション、自主制作映画など、商業
ベースでは鑑賞する機会の少ない作品を紹介するとともに、これら既存のジャンル区分を越えた独自の視点から作品を選出し、映像表現
石田尚志『海の映画』2007年
愛知芸術文化センター・アートライブラリー蔵
の先端的な動向を照らし出すことを意図した特集上映会です。
第21回となる今回は、水をテーマやモチーフとした様々な作品を集めた特集「水のイメージ」を行います。もともと水はフォトジェ
ニックな対象として、映像メディアと縁の深いものですが、その魅惑的な美しさや変幻自在さから、実験映画の成立にも大きく寄与して
いるのです。
ルイス・ブニュエルとサルバドール・ダリによる『アンダルシアの犬』(1928年)は、アヴァンギャルド映画の代表作であり、この作品で
形成された鮮烈なイメージは後の実験映画や自主制作映画に多大な影響を与え続けています。その具体的な表われの一つとして、ラスト
シーンに突如として海が映し出されることを指摘できるでしょう。本特集ではその系譜に連なる作例を紹介しつつ、さらに映像表現に
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天野天街『トワイライツ』1994年
愛知芸術文化センター・オリジナル映像作品(愛知県美術館蔵)
Photo:羽鳥直志
愛知芸術文化センター・愛知県美術館オリジナル映像作品最新第25作初公開
田村友一郎『アポロンの背中』
オリジナル映像作品は、
“身体”を統一テーマに、ユニークで多彩な作品を
生み出してきました。しかし、
“ 身体”をテーマとしながらも、何故かボディ
おいて水がいかに多様で豊かなイメージを提供してきたかを検証します。
ビルに焦点を当てた作品は作られていませんでした。映画にはボディビルで
また、愛知芸術文化センターが1992年の開館以来、継続的に行っている、実験的な映像作品の自主制作事業「愛知芸術文化センター・
鍛えた肉体美を誇るスターが数多く登場しており、両者の関係には浅からぬ
愛知県美術館オリジナル映像作品」の最新作となる、美術家・田村友一郎による『アポロンの背中』(2016年)の初公開も行います。この
映像制作シリーズでは、一貫して“身体”をキーワードに、制作を担当する作家がその都度、独自の切り口からアプローチを試みましたが、
“ボディビル”をテーマとした本作では、ユージン・サンドウを始祖とする近代ボディビルについて、19世紀末に誕生した映画・映像
大林宣彦
『ÉMOTION=伝説の午後=いつか見たドラキュラ』
1966年
PSC
ものがあるはずです。田村友一郎は、入念なリサーチにより得た新たな発見
を、写真、映像、インスタレーション、パフォーマンス等、様々な手法を柔軟に
用い、提示してきたアーティストです。今回、シングル・チャンネルでの投影
という、古典的ともいっていい映画スタイルの作品を手掛けることで、映画
とボディビルの草創期からの密接な関係を明らかにするとともに、その
メディアとの関係にも言及しつつ、思索的に読み解いてゆきます。
未来像をも示すことになるでしょう。上映に合わせ作家によるトークや、
関連する旧作の上映も行います。
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田村友一郎『アポロンの背中』2016年
愛知芸術文化センター・愛知県美術館オリジナル映像作品
「日本で洋画、どこまで洋画?」展関連プログラム
同時期開催
「インター・カレッジ・アニメーション・フェスティバル2016」(ICAF2016)
本来は静止した画を連続的に提示することにより、動きのイリュージョン
を作り出すアニメーションは、絵画と映像のちょうど中間に位置するもの
アニメーションを専門的に学べる学校が推薦する作品を一堂に集めた、
ともいえるでしょう。それぞれ独自のドローイング・アニメーションの手法を
学生アニメーション作品の祭典です。学生作品というと習作的なレベルに留
探求することで、映像と美術の二つのジャンルで活動する石田尚志と辻直之
まるものと思われがちですが、映像制作にデジタル技術が導入されて以降、
は、その代表的な作家です。本プログラムでは、レオナルド・ダ・ヴィンチの
フレッシュかつ斬新なアイディアが、そのまま具体的なヴィジョンとして
名画『モナ・リザ』に、70年代当時の最新画像変換テクノロジーを導入するこ
結実するものも少なくなく、在学中から作家として注目されるケースもしば
とで、その現代的変容を試みた松本俊夫『モナ・リザ』(1973年)に始まり、CG
しば見られます。本フェスティバルに参加した全28校から選抜された「各校
での制作をベースに、写真のテクスチャーをコラージュ的に導入して、独特な
選抜プログラム」、実行委員会が選出した本年度優秀作品集「実行委員会セレ
映像的質感を構築した大山慶『HAND SOAP』(2008年)に到るまで、様々な
作品を通してその境界とは何かを探ります。
クション」、名古屋の参加校の作品を集めた「名古屋特別プログラム」により
松本俊夫『モナ・リザ』1973年 愛知芸術文化センター・アートライブラリー蔵
構成します。アニメーション表現の最先端の動向をぜひ目撃してください。
岡崎恵理『FEED』2016年 多摩美術大学グラフィックデザイン学科