Technical News ●Caco-2 細胞を用いた P-gp・BCRP トランスポーター評価 TN449 Evaluation of P-gp and BCRP Transporter using Caco-2 Cells [概 要] P-gp 及び BCRP はいずれも消化管、肝臓、腎臓及び脳に発現し、組織からの薬物の排泄に関わり、経口吸 収性や組織、中枢への薬物の移行性に影響しうる重要なトランスポーターです。そのため、P-gp・BCRP の 基質となる可能性を in vitro にて評価することが必要となります 1)。 in vitro の評価法としては、P-gp・BCRP が発現している Caco-2 細胞あるいは特定のトランスポーターの 過剰発現細胞を用いた、双方向性の経細胞輸送能試験が推奨されています 1) (図 1、2) 。当社では、Caco-2 細胞を用いた双方向性の経細胞輸送能試験による Flux Ratio の算出と典型阻害剤を用いた阻害試験により、 被験物質が P-gp あるいは BCRP トランスポーターの基質となる可能性を評価しております。 P-gp*の典型基質を用いて輸送能が確認された細胞を用いた経細胞輸送実験系において、 被験物質の Flux Ratio**は 2 以上となるか? Flux Ratio≧2 Flux Ratio<2 Efflux が P-gp 典型阻害剤により有意に阻害されるか? 弱い P-gp の基質又は P-gp の基質ではない Yes No P-gp 基質 P-gp 以外の efflux トランスポーターの基質 P-gp 基質としての薬物相互作用リスク評価は不要 P-gp を介した薬物相互作用リスク有り。 臨床薬物相互作用試験の必要性を考察 *BCRP についても同様 **Flux Ratio:薬物の頂端膜側(A)から基底膜側(B)への透過性/薬物の基底膜側(B)から頂端膜側(A)への透過性 図1 被験物質が P-gp 及び BCRP の基質となる可能性の検討 図2 Caco-2 細胞双方向経細胞輸送評価の概略 [実施例] 1.輸送能の確認 Caco-2 細胞膜(21 日間培養)を用いて、P-gp の典型基質であるジゴキシン 1) とエリスロマイシン 2) 及び BCRP の典型基質であるエストロン三硫酸 1)及びニトロフラントイン 3)について A to B 並びに B to A の Papp(見かけの透過係数)と Flux Ratio を算出しました。その結果、双方向の輸送に差があり、P-gp 及び BCRP が機能していることが確認されました(図 3)。 Flux Ratio ジゴキシン 56.1 エリスロマイシン 166.7 エストロン三硫酸 23.5 ニトロフラントイン 41.1 図 3 典型基質の見かけの透過係数と Flux Ratio 2.阻害の確認 P-gp の典型阻害剤である PSC8331)及び、BCRP の典型阻害剤である Ko1341)を各トランスポーターの典型基 質と併用し、双方向経細胞輸送評価を実施しました。PSC833 の添加時には P-gp の基質であるジゴキシンとエ リスロマイシンのみ Flux Ratio が低下し、また Ko134 の添加時には BCRP の基質であるエストロン三硫酸とニト ロフラントインで大幅な Flux Ratio の低下が確認されました(図 4、5)。 図 4 PSC833 添加時の Flux Ratio の変化 図 5 Ko134 添加時の Flux Ratio の変化 以上の結果から、当社の試験系では典型基質の Flux Ratio が 2 以上であり、典型阻害剤の添加により基質 となる化合物の Flux Ratio が低下することが確認できました。これにより、本試験系は P-gp 及び BCRP の評価 を行うために十分な信頼性のある評価系であることが確認されました。 [引用] 1) 2) 3) 医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン(案) 厚生労働省(医薬食品局) Pachot, JI.; Botham, RP.; Haegele, KD.; Hwang, K. Experimental estimation of the role of P-Glycoprotein in the pharmacokinetic behavior of telithromycin, a novel ketolide, in comparison with roxithromycin and other macrolides using the Caco-2 cell model. J. Pharm. Pharm. Sci., 2003, 6(1), 1-12. Wright, JA.; Haslam, IS.; Coleman, T.; Simmons NL. Breast cancer resistance protein BCRP (ABCG2)-mediated transepithelial nitrofurantoin secretion and its regulation in human intestinal epithelial (Caco-2) layers. Eur. J. Pharmacol., 2011;672(1-3), 70-76. [関連技術リンク] 当社では創薬初期段階での探索的薬物動態評価試験を幅広く取り揃えております。 P-gp 親和性評価、阻害能評価(MDR1-MDCKⅡ細胞) http://www.scas.co.jp/analysis/pdf/tn393.pdf Caco-2 細胞膜透過性評価 http://www.scas.co.jp/analysis/pdf/tn382.pdf 作成:作成:バイオ技術センター(MK1504) 3-MO-(39) 当社ホームページはこちらから: http://www.scas.co.jp/ その他技術資料も用意致しております: http://www.scas.co.jp/analysis/
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