経営の 人事評価成功 (仕組み) の条件 中小企業診断士 賀口 裕史 1.役割使命の明快化 であり、一般的にはこの「成果評価」 「基本能力評価」 「応用能力 人事評価は、 「プロの組織人としての能力を高める(人的資源 評価」の3つの評価要素を組み合わせて人事評価を行う。 レベルの増幅) 」ことと「 『適正に評価され存在価値を認めても (1)成果の評価 らいたい』といった願望を叶える(活力のある職場風土の形成) 」 成果評価は測定可能な目標レベルの設定を前提に行う。測定 ことを目的とするのが一般的ではないか。もちろん評価データ 可能とは達成状態が目で見えることをいう。以下にその留意点 を処遇にも反映させているところも多い。 を記す。 ところが現実はほとんどがその目的とは随分かけ離れたもの ・目標テーマは必ず上位目標と連動したものとし、上司の職場 構想に基づき決める。そうでないものは差し戻す。 なっているところが多い。なぜか?それは評価対象者である社 ・目標テーマの記述は「何故?そのテーマを選定したか(現状 員の役割使命が全社的に共有化できていないからである。 人事評価は、人間そのものや性格を含めた全人格的価値を評 態) 」を必ず記述し、その状態を数値または指標で表し、ビ 定するものではなく、その人に課せられた役割仕事の職務活動の フォーアフターで表現する。目標表現は5 W1Hを基本とす る。この中で「Why」は極めて重要である。 事実に照らして、仕事の成果や能力を評価しようとするしくみで ・禁止用語は使用しない習慣を身につける。 「~の運営」 「~の ある。したがって、まずその役割使命を部門ごとに整理すること からスタートする。これが整理され全社員に共有化されない状態 推進」 「~の具体化」 「~の効率化」 「~の充実」 「~の徹底」 「~ で評価の仕組みを整えても浸透しないだろう。全員がこの役割使 の定着」 「~の浸透」 「~の円滑化」などなど・・・このような 命を十分理解し共有化しているならば、かりに評価者の「好き嫌 表現を使用すると目標設定したような気分に陥り、そこで発 い」や「鉛筆なめなめ」でもその評価結果に納得性を得ることが出 想が停滞する。これらの表現では、目標達成の事実確認が困 難となり、評価判断にブレが生じる原因にもなる。 来る。それだけ役割使命の共有化は大事ということである。 役割使命は単に今やっている仕事の内容を記したものではな ・テーマは数値、指標、状態で示す。たとえば・・・ い。現在あるいは将来のありたい仕事の姿とそれを遂行するあ ×「□□資格をとる」⇒○「取得した□□資格を活かして新た りたい人材要件を正しい経営方針や中期経営計画の内容に基づ な△△サービスを※※件こなす」~資格をとること自体 目標としない き部門ごとに記したものである。 ×「研修会に※※回参加する」⇒○「研修参加で学んだ知識を この役割使命をきちんと明快にすることが人事評価の成功条 社内に浸透するための社内勉強会を※※回社内講師と 件である。 して実施する」~研修会への参加回数は目標ではない 2.役割発揮を確認する3つの評価要素 ×「整理整頓を行う」⇒○「△△エリアに対し整理整頓を実施 人事評価は役割使命がどの程度遂行されたかの事実を確認 し整理整頓指数を※※点から※※点へアップさせる」 (2)基本能力の評価 することである。その確認の切り口は概ね ①役割使命を果たしたことの証の確認⇒成果の評価 基本能力とは、自部門の役割使命を果たすため、また成果を ②その成果を生み出した役割使命発揮度合いの確認⇒基本 出すために、たとえ部門や職種が異なっていても、一人一人の 職務の違いを超え自社の社員として共通に発揮してほしい能力 能力の評価 ③部門固有の専門知識や技能の確認⇒応用能力の評価 能力発揮の矛先(対象) 基本能力の種類 自 己 (自分自身の成長) 組 織 (職場全体の活性化) 対人影響力 自身の課題解決のために他者を納得ずくで動かし 職場の課題解決のために他者の能力、態度に働き 説得する力(表現力、説得力など) かけ向上させる力(指導力、統率力など) 仕事遂行力 自身の課題解決のために自らがとるべき行動を正 職場の課題解決の方策を自ら考える力(創意工夫 しく決定する力(理解力、判断力など) 力、企画力など) 改善・維持に関する能力 自身に与えられた課題を目標どおり完遂するよう 集団を維持するために決められた行動規範を守る 努める姿勢(責任感など) 姿勢(規律性など) 改革・発展に関する能力 自ら設定した課題をより向上させようと前向きに 職場の成果達成のために互いの守備範囲をカバー 努める姿勢(積極性など) しようとする姿勢(協調性など) (3)応用能力の評価 16 のことである。基本能力は以下のとおり概ね8種類である。 満足に大きな影響を及ぼすことから、独立した評価の切り口として 役割使命を果たすには経験と学習から培われた知恵とスキルが 本項目を設ける場合がある。社員として保有・発揮するスキルを 必要である。優れたスキルを持たなければ、その道のプロにはなれ 整理したのが「スキルマップ」である。スキルマップは部門別、職種 ない。成果評価には「たまたま?」の可能性があるが、スキル発揮に 別、経験別に保有発揮すべきスキルを分布化したものと想像して 生み出した成果にはラッキーはない。スキルの発揮度合いは顧客 いただきたい。スキルマップを活用することでスキル評価を行う。 BUSINESS SUPPORT FUKUOKA 2014.4
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