第43回東京モーターショー2013 デンソー・プレスカンファレンス 株式会社デンソー 取締役社長 加藤 宣明 皆さま、こんにちは。デンソーの加藤でございます。本日はデンソーブースにお越しいただき、誠にあ りがとうございます。 「地球と生命を守り、次世代に明るい未来を届けたい。」 この言葉は、2020 年に向けて、デンソーの目指す姿を表したものでして、「社会のお役に立ちたい」と いう志のもと、世界の人々から共感いただける企業でありたいという想いを込めています。 今後の地球環境の変化を考えますと、2020 年頃には、人口は 77 億人に達し、二酸化炭素の排出量 は地球が吸収できる量の 3 倍以上に増え、気候変動の影響がより深刻な問題として顕在化すると予測 されます。またグローバルな自動車保有台数は 14 億台に達し、交通事故で失われる尊い生命は、成り 行きでは 200 万人にも達すると予測されております。こうした中で、デンソーは地球環境を守り、交通事 故を少しでも減らすことを最大の使命と考え、「環境」と「安心・安全」分野にこれまで以上に注力してい くことといたしました。 本日はこの「環境」と「安心・安全」分野におけるデンソーの考え方、技術開発の動向を中心にご説明 をさせていただきます。 まず「環境」分野では、クルマから排出される二酸化炭素の削減に向けて省燃費に着目し、「パワー トレインの高効率化」、「多様な燃料への対応」、「クルマ全体のエネルギーマネジメント」の3つを軸に技 術開発に挑戦しています。特に、「パワートレインの高効率化」は省燃費効果が大きく、ガソリン車、 ディーゼル車、ハイブリッド車や電気自動車など主要なパワートレインのすべてにおいて取り組んでい ます。ガソリンやディーゼルでは、吸気から燃料供給・噴射・点火・排気に至るシステム視点で培った 知見を生かした「燃焼改善」、ハイブリッド車や電気自動車などでは、電動化コンポーネントの「高性能 化と小型化」に着目しています。 パワートレインごとに個別にご説明しますと、ガソリン車では、シリンダー内で、より希薄な混合気でか つ安定した燃焼を得るため、「燃料噴射圧力」や「噴射タイミングの精度」を向上させるインジェクターや 「高着火性」を実現する点火システムを開発しています。 ディーゼル車では、燃料の噴射量や噴射時期をモニターし、より適切に燃料噴射を制御する世界初 の i-ART システムを量産していますが、更に、センシング技術と高度な演算技術を駆使して燃焼状態を 見える化し制御することで、より燃料消費の少ない燃焼を目指していきます。 こうした技術開発により、2020 年に向け、ガソリン車とディーゼル車それぞれにおいて、燃費を 10%良く することを目指しています。 ハイブリッド車、電気自動車などでは、長年の蓄積がある冷却や巻線技術、また、パワーエレクトロニ クスの技術を基に、インバーター、モータージェネレーター、DC-DCコンバーターをはじめとする電動化 コンポーネントの「高性能化、小型化」を推進しています。 1 インバーターを例に挙げますと、パワーデバイスの発熱による効率低下を防ぐため、パワーデバイス の両面冷却技術を世界に先駆け開発し、単位体積あたりの出力を 60%向上させました。現在では、 発熱が少ないシリコンカーバイド(SiC)製のパワーデバイスの採用により、現行モデル比 1/2 以下の世 界初の小型インバーターを開発中であり、基礎的な研究を 2015 年までに終え、2016 年以降、量産化に 向けた開発に移行する予定で進めております。 次に、「安心・安全」分野についてご紹介いたします。 デンソーは、「いつもの安心、もしもの安全」をスローガンに予防安全と衝突安全の技術開発に積極 的に取り組んでおります。特に予防安全の分野は、検知・認識・制御の3つの観点で、技術の高度化を 進めております。ミリ波レーダーやレーザーレーダー、カメラなどのセンサーで、人やクルマを確実に検 知し、画像処理したうえで、ECUにより各種システムを適切に作動させて、衝突回避や車線逸脱防止な どにつなげる、一連の技術を追求してまいりました。 今後さらに、一人でも多くの生命を守るためには、「ドライバーの認知・判断・操作のミスが交通事故原 因の 75%」と言われる中、特に人的要素に着目した技術開発が必要と考えています。デンソーでは、 ドライバーの認知、判断、操作を的確に支援し、より安心して運転していただけるよう、走行状態を正し く認識する「センシング技術」と、音声や画像で周囲や外部からの情報を伝え、適切な操作に結びつけ るヒューマン・マシン・インターフェイス、「HMI技術」の開発を加速しています。 「センシング技術」では、複数のセンサーからの情報を組み合わせ、歩行者や自転車などを、より確実 に「歩行者」「自転車」と認識したり、車車間・路車間通信を活用し、人の目では見えない死角の障害物 を検知するなどの技術開発を進めています。また、センシング技術と、ステアリング、アクセル、ブレー キなどの車両制御技術を連携させた高度運転支援技術の研究も行っています。 もう一方の「HMI技術」では、近年の情報通信技術の急速な進化に伴い、ドライバーが運転中に得る 情報や操作機器が増加すると見込まれております。そうした中で、メーターやヘッドアップディスプレイ、 リモートタッチコントローラーなどを連携させ、必要とする情報を、適切なタイミングで、画像や音声で、 わかりやすく伝えるコックピットの開発を進めています。 こちらは、初めてご披露するインタラクティブ・コミュニケーション・コックピットで、未来のHMIを具現化 したものです。デンソーが考える未来は、クルマとのコミュニケーションを通じ、より安心・安全で楽しい ドライブを実現することです。前方風景と重ねて進行方向や注意すべき歩行者などを表示する大型の ヘッドアップディスプレイ、ドライバーの心拍や脈波を計測する生体センサー、光学ミラーよりも広いエリ アを表示する電子ミラーなどを体験することができます。 こうした技術をいち早く実用化させ、より安心・安全なクルマ社会の実現に寄与していきたいと願って おります。 また、デンソーでは、クルマで培った技術を活かし、環境に優しく、安心・安全に暮らせる社会づくりに 向け、「クルマと家をつなぐ」ことで電力をより効率的に利用するシステムや、健康・医療、セキュリティな ど、新たな事業分野にも挑戦をしています。 さて、クルマや社会にとって新たな価値につながる新しい技術を紹介してまいりましたが、こうした新 技術は商品として、より早く具現化し、提供することが大切です。デンソーでは、技術開発部門と製造部 門が開発の初期の段階から連携し、製品設計と同時に製造工程や加工技術の開発を行い、信頼性の 高い製品づくりと早期の量産化につなげられるよう、日々、取り組んでおります。 2 また、ものづくりの革新に向けて、これまでの「1/N」の小さな生産ラインや設備づくりにも取り組んでい ます。設備コストや面積、エネルギー費をこれまでの 1/3、1/5 に大幅に低減するとともに、海外での小 規模生産にも対応できるよう、製造部門を挙げて進めております。既に国内を中心に 1/N 設備を稼動さ せており、今後は、海外のグループ会社にも展開し、全世界規模で、ものづくりの革新に取り組んでま いります。 最後になりますが、デンソーは、地球環境の維持と安心・安全に暮らせる社会の創造に向けて、 これからも技術とモノづくりで社会や人々の生活に新しい価値を提供してまいります。 「地球と生命を守り、次世代に明るい未来を届けたい。」 デンソーは、グループ一丸となって未来に向けて挑戦し続けてまいります。 ご清聴、ありがとうございました。 以 上 3
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