第1回 ヒューリック学生アイデアコンペ 審査員からのメッセージ 隈 研吾氏/東京大学教授 建築家 建築を学ぶ今時の若者に、現実というものの醍醐味を味わってもらおうというのが、この コンペのユニークな特質である。現実というものの複雑さ、困難、そしてそれゆえの、そ の困難を解いた時の楽しさ、充実 – そういったもののすべてを、彼らに味わって欲しい。 そのために、東京の中でも、最も複雑にして大きな可能性を持った興味深い敷地が選択さ れた。 一度このような「現実」の醍醐味を体験すると、画面上のヴァーチャルな設問が薄っぺら に見えてくるかもしれない。そしてこの「現実」にもっとどっぷりつかって、苦労したく なるのかもしれない。そういう効果を期待している。それが日本に新しい可能性をもたら すことまで、僕は期待している。 伊香賀 俊治氏/慶應義塾大学教授 2020 年に建つ「TOKYO COMPLEX 2020」には、利用する人々の健康を維持増進し、 知識創造性を高めと共に、低炭素性能と震災時における業務継続性能を兼ね備えているこ とが求められます。これらの優れた性能を具備し、魅力的な都市景観形成に寄与する建築 デザイン提案を期待します。 亀井 忠夫氏/日建設計常務執行役員 都市間競争が激しくなっている。アジアの中で東京はどうだろうか。残念ながらシンガポ ール、香港、上海の勢いに優っているとはいえない。一方で、外国人から東京には他にな い魅力があるという声も聞く。もちろん、都市の魅力は建築だけではないが、シドニーの オペラハウス、ビルバオのグッゲンハイム美術館のように、建築が都市の象徴となってい る場合もある。東京をどうすればよいのか?という視点をもって、東京ならではの画期的 な提案を期待したい。東京は負けてはいられない! 根本 祐二氏/東洋大学経済学部教授 ペリー提督は日本の商家で奉公している娘が、両親に手紙を書いているのをみて驚いたと いう。立派な施設なしでも町人の知恵で子どもたちを育てた寺子屋というシステムが、日 本の識字率を当時世界最高に押し上げた。ユネスコは World Terakoya Movement として、このスマートな知恵を新興国の模範としている。今、日本 は縮小する時代に突入した。派手なプラン、豪華なはこはいらない。先人に見習ったスマ ートな知恵を期待します。 畠中 克弘氏/日経アーキテクチュア編集長 日本の 10 年先、20 年先を考えると、グローバル化への対応が一つのカギを握ります。海 外へ積極的に展開するのはもちろん、日本で働いたり暮らしたりする人を海外からいかに 呼び込むかが重要です。国際交流の重要性が増すそんな時代に、存在感を示せる魅力的な 施設や運営とはどのようなものでしょうか。学生の皆さんの自由な発想を期待しています。 西浦 三郎氏/ヒューリック代表取締役社長 このコンペは不動産会社として、学生の皆さんが都市や建築についての提案をするお手伝 いができればと企画いたしました。同時にこのコンペが、当社のことを知っていただく機 会になればとも考えております。今回課題に設定した敷地は、実は当社が近い将来開発を 予定している場所です。東京オリンピック、国際交流といった近未来のマーケットニーズ にどのようなソリューションが考えられるのか、学生の皆さんの自由な創造力に期待しま す。
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