豪州インフラ開発と プロジェクトファイナンス

豪州インフラ開発と
プロジェクトファイナンス
シドニー日本商工会議所
理事
桝谷 亨
平成26年12月9日
A member of MUFG, a global financial group
豪州プロジェクトファイナンス(PF) ~ マーケット動向
PF国別市場規模 過去推移
豪州はPF国別市場規模で、毎年トップ3
以上をキープする「PF大国」
豪州
インド
英国
スペイン (累積上位5カ国)
米国
USD bn
資源、電力、インフラと、セクターは多岐に
亘る
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
60
40
資源案件は開発から操業期に
(今後大型開発は限定的)
20
0
2005 2006 2008 2008 2009 2010 2011 2012 2013
インフラは、過去2年で180億米ドル相当の
PFが組成されており、資源とほぼ同規模
但し、傾向としては、資源からインフラへの
シフトが顕著
地場通貨で組成され、リファイナンスを繰り
返すインフラ案件は、今後も豪州PF市場
の中心
豪州PF市場 セクター比率
100%
90%
80%
70%
60%
50%
40%
30%
20%
10%
0%
資源
インフラ
電力
2012
1
2013年PF市場規模 上位10カ国
(単位: USD bn)
国名
金額 シェア 案件数
米国
31
15.4% 70
豪州
20
10.0% 48
英国
16
8.0% 42
インド
15
7.3% 47
韓国
7
3.6% 15
トルコ
7
3.5% 10
サウジアラビア
7
3.4%
5
カザフスタン
7
3.2%
2
カナダ
6
3.1% 27
UAE
6
2.8%
2
合計
204 100.0% 584
2013
インフラ案件におけるPPP方式の活用
「インフラ」は、一般的に「経済インフラ」と「社会インフラ」に分類される(下図参照)
経済インフラ : 一国の産業活動を支えるために不可欠なインフラのことを指し、エネルギー、
通信、運輸・交通関連等を含む
社会インフラ : 人々の日常の生活に不可欠な設備で、医療、教育施設等を含む
従来は公的資金での建設・運営が一般的であったが、近年は競争原理の導入や効率的なサー
ビスの提供を意図して、民間資金やノウハウを活用した案件が多い
社会インフラに加え、道路、鉄道、上下水道(淡水化施設等)案件は、PPP方式の活用が盛ん
で、近年は特にマーケットリスクを政府が取る「Availabilityベース」の案件が主流
経済インフラ
ユーティリティ 通信 ガス
電力 上下水道
交通 空港 道路
港湾 鉄道
2
社会インフラ
医療
教育
司法 刑務所 会議場
州・市・郡関連施設 等
PPP案件として開発
豪州PPP市場の特徴(1)
シドニーハーバートンネルが初の豪州PPP案件(1988年)
PPP活用の枠組みをいち早く確立したニューサウスウェールズ州とビクトリア州に加え、
クイーンズランド州による取組が顕著
入札要件が細かく多岐に渡る上に、金融機関・投資家のコミットが要求されるため、設計・
デューデリコストを含めた入札費用が他国に比べて高くなる傾向
豪州PPP案件 州別比率 (組成総額 663億豪ドル)
1.0%
3.4%
6.0%
0.9%
0.3%
クイーンズランド州
ビクトリア州
2.9%
32.2%
QLD
ニューサウスウェールズ州
連邦政府
NSW
24.7%
南オーストラリア州
VIC
西オーストラリア州
タスマニア州
28.6%
ノーザンテリトリー準州
ACT
(出所)Infrastructure Australia, Contracted PPPs August 2014
3
豪州PPP市場の特徴(2)
交通関連が過半を占め、医療と水関連が続く
近年、大型化の傾向(交通、病院、淡水化施設等に大型案件が多い)
「Availabilityベース」が中心
豪州インフラPPP案件 セクター別比率 (組成総額 663億豪ドル)
3.2%
2.6% 0.3%
3.9% 3.4% 2.7%
3.9%
11.3%
水関連
交通
56.0%
医療
12.5%
交通
医療
水関連
教育
司法
スポーツ関連施設
政府
会議場・催事場
兵舎・住宅
ゴミ処理
ガスパイプライン
その他
(出所)Infrastructure Australia, Contracted PPPs August 2014
4
豪州政府による新たなインフラ施策
アボット政権による「資産リサイクル・イニシアティブ」の発表
インフラ資産の民営化促進と、その売却益及び連邦政府補助金による新規インフラ開発促進を
期待
民営化対象資産(一例)
資産リサイクル・イニシアティブ(民営化推進)
 2014-15年度連邦予算にて50億豪ドルを割当。
港湾
 メルボルン港(VIC州)
 グラッドストーン港(QLD州)
 タウンズビル港及びMt Isa線(QLD州)
 クイナナ港(WA州)
 ユタポイントターミナル、ポートヘッドランド
(WA州)
 ダーウィン港(NT準州)
電力関連
 デルタコースタル社保有石炭・ガス火力焚き
発電所(NSW州)
 スタンウェルコープ社保有発電資産(QLD州)
 CSエナジー社保有発電資産(QLD州)
 オウスグリッド(送配電・NSW州)
 トランスグリッド(送電・NSW州)
 エンデヴァーエナジー(配電・NSW州)
 パワーリンク(送電・QLD州)
 アーゴンエナジー(配電・QLD州)
 エナージェックス(配電・QLD州)
水事業
 下水・水処理施設(WA州)
 サンウォーター社パイプライン(QLD州)
 州政府が資産を売却、新規インフラ開発に再投資する際の
インセンティブ。資産売却価格の15%相当の奨励金を連邦
政府が州政府に支払い。
 主な売却候補資産は電力、港湾、水事業等。概算で330億
豪ドルの資産売却及び同額の再投資が期待される。
売却代金を新規の
インフラへ再投資
売却資産の15%を
奨励金として支払
(予算50億豪㌦)
民営化案件
新規インフラ案件
(ブラウンフィールド) (グリーンフィールド)
330億豪ドル
+
330億豪ドル
=
660億豪㌦
規模のイン
フラ関連需
要発生
50億豪ドル
2014
5
2019
州別インフラ施策状況
西オーストラリア州
 237億豪ドルのインフラ投資(今後4年)
 交通、電力・水関連、医療、教育セク
ター中心
 港湾、水公社、及び州営電力会社保
有の資産等を売却し、原資捻出
ノーザンテリトリー準州
 Darwin港の民営化を検討中
クイーンズランド州
 336億豪ドルの保有資産売却を計画
 売却資金の75%を債務削減に充当、
残りを主に交通インフラ宛投資
連邦政府
 390億豪ドルのインフラ投資(今後6年)
 116億豪ドルのインフラ成長パッケージ
 66億豪ドルの新規投資(交通インフラ)
 50億豪ドルの連邦政府リサイクルイニシ
アティブ
⇒各州・準州による資産売却の呼び水となる
ことが期待される
ニューサウスウェールズ州
 615億豪ドルのインフラ投資(今後4年)
 交通が過半、医療、水、教育が続く
 原資は発・送・配電資産売却資金
ビクトリア州
南オーストラリア州
 121億豪ドルのインフラ投資(今後4年)
6
 274億豪ドルのインフラ投資(今後4年)
 特に、大型道路案件投資が目立つ
 原資はメルボルン港の民営化資金
(50億豪ドル等)
豪州プロファイ市場 ~ (1)インフラファイナンスの特色
豪州の資金調達は、他地域比短い3-7年程度のローンが中心(リファイナンス前提)
現状のクラブベース中心から、案件大型化に伴い引受・シンジケーションの流れも
完工済み大型PPP案件では、リファイナンス時にボンド発行を目指す動きが出てきており、
残る資金調達を銀行間で奪い合う形での一層の競争激化が予想される
単一プロジェクトを運営する企業による豪ドルでの発行例は、以下の通り
発行者
セクター
発行月
格付
発行金額
期間
プライシング
Port of Brisbane
Port
July 2014
BBB
A$175m
15yr
Coupon: 6.28%
Adani Abbot Point
Port
May 2014
BBB-
A$100m
6yr
Coupon: 6.10%
Port of Brisbane
Port
May 2014
BBB
A$100m
10/12yr
Coupon: 6.80%, 6.88%
Perth Airport
Airport
Mar 2014
BBB/Baa2
A$400m
7yr
Swaps +165bps
Brisbane Airport
Airport
Oct 2013
BBB/Baa2
A$350m
7yr
Swaps +180bps
ConnectEast
Toll road
Sep 2013
n/a
A$250m
7yr
Coupon: 5.75%
Eastern Distributor
Toll road
Nov 2013
n/a
A$300m
7yr
Coupon: 5.5%
Water
Dec 2013
BBB+
A$150m
7yr
Coupon: 5.75%
Aurizon Networks
Rail
Oct 2013
BBB-/Baa3
A$525m
7yr
Semi Annual Coupon:
5.75%
Adani Abbot Point
Port
Oct 2013
BBB-/Baa3
A$500m
5yr
Swaps +225bps
AquaSure
7
豪州プロファイ市場 ~ (2)銀行動向
豪州4大銀行がPF市場も上位を独占
金融危機の影響で欧州勢が撤退、新たな流動性の提供者として邦銀が台頭
その他アジア勢(中国・シンガポール等)、カナダ系もインフラ案件を中心に積極的に参加
今年に入り欧州勢が回帰傾向顕著。ボンド市場活性化により流動性も豊富となり、
金融機関の競争激化の様相
欧州
4大銀行
本邦
アジア・カナダ
8
豪州における弊行のプロジェクトファイナンスの取組
Global Bank of the Year
PF業務強化のため、豪州ストラクチャードファイナンス室を新設(2012年3月)
1. 体制
プロジェクトファイナンスチーム(16名)、アドバイザリーチーム(15名)
シドニー及びメルボルンの二拠点体制で、豪州及びニュージーランドのプロファイ全般をカバー
2. 特徴
豪州において、PPPアドバイザリー・ローンの両業務を遂行する金融機関の中で、最大プレーヤー
MUFGのネットワークをフル活用し、デリバ、DCM等を含めプロファイに関する総合提案が可能
PPP案件において、コ・スポンサーの一社(兼F/A)として入札者として名を連ねることも
2012年及び2013年は、リーグテーブル外銀NO.1
2013年 豪州プロファイローン取組実績
順位
銀行名
案件数
1
National Australia Bank
3,506
33
2
Westpac
3,373
35
3
Commonwealth Bank of Australia
3,229
31
4
ANZ
2,793
37
5
Bank of Tokyo-Mitsubishi UFJ
1,903
20
6
Sumitomo Mitsui Financial Group
1,411
14
7
Mizuho Financial Group
1,358
11
8
Bank of China
976
6
9
HSBC
855
5
10
CIBC
847
7
(出所: Dealogic Project Finance Review 2013)
9
百万米ドル
ご清聴ありがとうございました
The Bank of Tokyo-Mitsubishi UFJ, Ltd.
Level 45, 1 Macquarie Place
Sydney, NSW, 2000
www.mufg.jp/english
10