2012 年度 活動報告書

2012 年度 活動報告書
2013 年 1 月
ビール酒造組合国際技術委員会
Brewery Convention of Japan (BCOJ)
目
次
ビール酒造組合国際技術委員会(BCOJ)2012 年度活動報告
. . . . .
3
BCOJ 分析委員会
. . . . .
7
. . . . .
9
2012 年度活動報告
BCOJ プログラム委員会
2012 年度活動報告
2012 年度 BCOJ 共同実験報告書
. . . . . 11
2
ビール酒造組合国際技術委員会(BCOJ)2012 年度活動報告
2013 年 1 月
ビール酒造組合
国際技術委員会
議長
名川
誠
2012 年度の国際技術委員会は、下記のメンバーで活動した。
国際技術委員会議長
: 名川 誠
国際技術委員
:
(キリンビール株式会社)
相澤 正幸 (アサヒビール株式会社)
岡
賀根雄 (サントリー酒類株式会社)
執行
達朗 (サッポロビール株式会社)
金城
正吉 (オリオンビール株式会社)
分析委員長
: 古庄
重樹 (サッポロビール株式会社)
プログラム委員長
:
ビール酒造組合審議役 :
事務局長
岸本 徹
関
:
弘行
吉田
学
島田
和彦
(アサヒビール株式会社)
2012 年 8 月まで
2012 年 9 月より
吉崎 成洋 (キリン株式会社)
本年度も、BCOJ 活動の目的の実現に向けて取り組み、国際技術委員会を 5 回、分析委員会を 8 回、
プログラム委員会を 6 回開催した。
<BCOJ 活動の目的>
1. ビール醸造及び関連産業に於ける原料、資材、生産物を評価するための分析法の統一
2. ビール製造技術者相互交流による科学的、技術的研究の促進
3. 同様の目的を持つ他の国外及び国内の組織との協働
7 月には、米国オレゴン州ポートランドで開催された World Brewing Congress に参加し、BCOJ と
してシンポジウムを開催し、加盟各社より高水準の技術発表を行なった。
また、第22回年次大会を11月に開催し、加盟各社、関係官庁・企業から約200名が参加した。魅力的
な商品の開発や美味しさの実現、安全の確保等に関する技術的な知見の向上等を目的として、本年も活
発な技術発表、意見交換を行なった。
1. 海外関連団体との技術交流
(1) World Brewing Congress 2012 への参加
BCOJ 議長・事務局長・その他関係者にて、World Brewing Congress 2012(以下 WBC、7 月 28 日~
8 月 1 日、アメリカ・オレゴン州ポートランド)に参加した。
※WBC は 4 年に 1 度、American Society of Brewing Chemists(ASBC)と Master Brewers Association
of Americas(MBAA)により共同開催されるビール関連の学会で、今回は 25 カ国より約 1,200 名
が参加した。また、協力団体として、BCOJ、European Brewery Convention、Institute of Brewing
3
and Distilling が参加した。
その中で、BCOJ は「Technology for the Future」のタイトルでシンポジウムを開催し、加盟各社
より、下表の演題にて高水準の技術発表を行なった。また、シンポジウムの中で、加盟各社のビール
製品の試飲会(米国内流通品を使用)を実施し、各国の参加者より好評を得た。
社名
キリン
アサヒ
サントリー
発表者
善本裕之氏
尾形智夫氏
乾隆子氏
演題
酵母の発酵力評価のための総合的分析システム
酵母のゲノム情報に基づく研究
魅力的なホップ香気の研究
サッポロ
オリオン
佐藤雅英氏
-
酵母の栄養源不足による香気生成等への影響
-
試飲サンプル
一番搾り
-
ザ・プレミアム・
モルツ
プレミアムビール
ドラフトビール
また、WBC 大会事務局より、BCOJ に対して、「Contribution Organization」として表彰をいただい
た。
BCOJ シンポジウムでの技術発表
試飲会
試飲会
WBC 事務局より表彰
(2)BCOJ 年次大会への ASBC 議長の招聘
ASBC 議長(Charles Fred Strachan 氏)、Asia Liaison Officer(Xiang Yin 氏)を、BCOJ 年次大
会(11 月 8 日~9 日、東京)に招聘した。また、ASBC 議長より、
「BCOJ and ASBC Collaboration “All
about brewing science, technology and friendship” 」の演題にてスピーチをいただいた。
4
ASBC 議長によるプレゼンテーション
BCOJ 年次大会
2. 分析委員会による分析法の拡充
・本年度は 8 回の委員会を開催し、分析法の拡充に関する事項について、討議を行なった。
・国内共同実験として「HPLC-UV 法によるビール、発泡酒、新ジャンルの総プリン体定量法」の確立
に向け、前年度からの課題について改善策を講じ、本実験は成立した。今後、BCOJ ビール分析法へ
の追加作業を進めていく予定。
・BCOJ ビール分析法改訂版の発行に向け、校閲を進めた。2013 年春に電子版として発行予定。
・前年新設された BCOJ 分析法「真正(性)エキス アルコライザー法」
「全窒素 燃焼法(改良デュマ
法)」「生菌標準物質バイオボールを用いた培地の性能確認法」について日本醸造協会誌へ掲載した。
このうち、「真正(性)エキス アルコライザー法」に関しては、本法にて得たサンプル比重(20℃
/20℃)を比重(15℃/4℃)に温度補正しエキス分を求める方法について、BCOJ 各社での使用が国税当
局より認可された。
・前年 BCOJ 共同実験報告書「Quantitative analysis of total purine content using HPLC-UV
method in Beer, Low-Malt Beer, and Third-Category Beer」を、Journal of ASBC に掲載した。
・ASBC Technical Committee(7 月 27 日、米国オレゴン州ポートランド)に出席し、BCOJ 分析委員
会の活動等について報告した。
3. プログラム委員会による研究および技術交流の促進
・本年度は 6 回の委員会を開催し、年次大会の運営や共同研究の推進に関する事項について、討議を
行なった。
・第 22 回 BCOJ 年次大会を、11 月 8 日、9 日の 2 日間で開催し、加盟各社や関係官庁・企業より、延
べ 189 名の参加があった。大会での発表件数は、口頭発表 18 件、ポスター発表 8 件で、活発な技
術交流が行なわれた。
・年次大会の招待講演として、独立行政法人宇宙研究開発機構の川口淳一郎教授より、「『はやぶさ』
が挑んだ人類初の往復の宇宙飛行、その7年間の歩み」の演題にてご講演頂き、たいへん好評であ
った。
・年次大会において、2012 年度 BCOJ 功績賞の授与式を行なった。今年度は、アサヒビール株式会社
原山耕一氏が受賞した。
・2008 年より開始した東原和成教授(東京大学農学部生物化学研究室)との共同研究について、研究
5
室を訪問、意見交換を継続して、円滑な推進をはかった。
4. 国際技術委員会の開催
(1) 第 1 回ボード委員会(1 月 18 日、ビール酒造組合)
・2011 年度活動振り返り
・2012 年度活動計画
・WBC 大会の BCOJ シンポジウム準備
※2011 年第 4 回の繰越開催
(2)第 2 回ボード委員会(5 月 24 日~25 日、アサヒ社四国工場)
・WBC 大会の BCOJ シンポジウム詳細検討
・高知市 酔鯨酒造社との技術交流
(3)第 3 回ボード委員会(9 月 20 日~21 日、キリン社仙台工場)
・WBC 大会参加振り返り
・BCOJ 年次大会計画、BCOJ 功績賞審議
・秋田県立食品総合研究センターとの技術交流
(4)第 4 回ボード委員会(11 月 8 日、星陵会館)
・2013 年度予算案検討
(5)第 5 回ボード委員会(12 月 11 日、ビール酒造組合)
・2012 年度活動振り返り
・2013 年度活動計画
酔鯨酒造社との技術交流
秋田県立食品総合研究センターとの技術交流
以上
(作成:吉崎
ビール酒造組合国際技術委員会(BCOJ)事務局
〒104-0031 東京都中央区京橋 2-8-18
ビール酒造組合内
TEL:(03)3561-8386(代表) FAX:(03)3561-8380 E-mail:[email protected]
ホームページ:http://www.brewers.or.jp/bcoj/index.html
6
成洋)
BCOJ 分析委員会
2012 年度活動報告
2013 年 1 月
分析委員会委員長
古庄
重樹
副委員長
樋田
嘉典
2012 年度の分析委員会は下記メンバーで活動した。2012 年 1 月 1 日より同年 12 月 31 日の活動期間
を通じ、分析委員会を 8 回開催した。
委員長
:
古庄
重樹
(サッポロビール株式会社)
副委員長:
樋田
嘉典
(サントリー酒類株式会社)
委員
中原
正晃
(キリン株式会社)
橋本
卓哉
(サントリー酒類株式会社)
大内
敦史
(アサヒビール株式会社)
安里
拓也
(オリオンビール株式会社)
渡辺
敬之
(サッポロビール株式会社)
:
ビール酒造組合審議役: 関
弘行
吉田
学
島田
和彦
2012 年 8 月まで
1. BCOJ 共同実験
・国内共同実験として 2011 年に続き「HPLC-UV 法によるビール、発泡酒、新ジャンルの総プリン体
定量法」を実施した。本年度の共同実験においては、移動相 pH の適正化および絶対検量線法を採
用するなどの改善策を講じた結果、本共同実験は成立した。BCOJ 分析委員会で検討した結果、本法
を「総プリン体
HPLC-UV 法」として「BCOJ ビール分析法」に加えることを国際技術委員会に提案
した。
2. BCOJ ビール分析法改定版(電子書籍化)の出版について
・2004年版に散見された明らかな誤り、試薬・機器メーカーの名称変更などを校正するために、第3
回(5月30日~5月31日)、第4回(6月19日~6月20日)の両分析委員会にて集中作業を実施、7月上
旬に第2稿案として日本醸造協会へ提出。
・9月24日 第2稿ゲラが日本醸造協会より届き各社委員にてチェックした後、10月15日 第3稿案を日
本醸造協会へ提出。
・11月20日 第3稿ゲラが日本醸造協会より届き各社委員にてチェックし、12月14日 第4稿案を日本醸
造協会へ提出。改訂版は2013年に目処にCD-ROM版として発行する予定。
3. 国税庁への許可申請
・2011 年度新設された BCOJ ビール分析法「8.4 真正(性)エキス 8.4.3 アルコライザー法」が 1 月
中旬に日本醸造協会誌(第 107 巻第 1 号)に掲載、公開された。
7
・これに伴い、本法記載のアルコライザー法にて得られたサンプル比重(20℃/20℃)を比重(15℃/4℃)
に温度補正しエキス分を求める方法が「国税庁所定分析法と異なる測定方法で合理的かつ正確であ
ると認められる方法」として 6 月上旬に認可され、国税庁ホームページに掲載された。
⇒ http://www.nta.go.jp/shiraberu/senmonjoho/sake/sonota/sokuteihoho/08.htm
・国税庁ホームページへの掲載以降、順次 BCOJ 各社の代表事業場より所轄国税局に申請し 7 月末迄
には BCOJ 各社での本法使用が認可された旨を確認済。
4. 2012 年度 BCOJ 勉強会の開催
・10 月 15 日 ビール酒造組合会議室にて、以下の勉強会を開催した。
・参加者はビール各社及び酒造組合から 14 名が参加。
演題:「プリン体について(分析法~健康に及ぼす影響について)」
講師:帝京大学薬学部 金子希代子教授
5. 国際協力活動
(1) EBC 分析委員会
・EBC 分析委員会が開催されなかったため参加せず。
(2) ASBC 分析委員会
・7 月、アメリカ・オレゴン州ポートランドで開催され、委員長、副委員長及び吉田審議役の 3 名が
出席した。
(3)海外共同実験への参加
・ASBC 主催の共同実験「Rapid Immunoassay Method for Deoxynivalenol Analysis in Barley and
Malted Barley」に BCOJ より 2 ラボ(アサヒ社、サッポロ社)が参加した。2012 年度は麦芽を評
価したが、併行精度、室間再現精度共に十分な精度が得られず共同実験は不成立であった。
6. 情報公開活動
(1) 2011 年度新設 BCOJ ビール分析法として以下 2 件を日本醸造協会誌第 107 巻第 1 号に掲載した。
・8.4 真正(性)エキス 8.4.3 アルコライザー法
・8.9 全窒素 8.9.2 燃焼法(改良デュマ法)
(2) 2011 年度新設 BCOJ 微生物分析法として以下 1 件を日本醸造協会誌第 107 巻第 2 号に掲載した。
・8.5 生菌標準物質バイオボールを用いた培地の性能確認法
(3) 2011 年度 BCOJ 共同実験報告書「Quantitative analysis of total purine content using HPLC-UV
method in Beer, Low-Malt Beer, and Third-Category Beer」を J. Am. Soc. Brew. Chem., 70(4):
328-329, DOI: 10.1094/ASBCJ-2012-1101-08, 2012.に掲載した。
(4) 2011 年度 BCOJ 年次大会にて委員長より分析委員会の活動紹介を口頭で行った。
以上
(作成:樋田
8
嘉典)
BCOJ プログラム委員会
2012 年度活動報告
2013 年 1 月
プログラム委員会委員長
岸本
徹
副委員長
丸橋
太一
2012 年度のプログラム委員会は、下記のメンバーで活動した。
委員長:
岸本
徹
副委員長:
丸橋
太一(サントリー酒類株式会社)
委員:
片山 雄大(サッポロビール株式会社)
竹村
ビール酒造組合 審議役: 関
島田
(アサヒビール株式会社)
仁志(キリン株式会社)
弘行
2012 年 8 月まで
和彦
蜂須賀
正章
2012 年 9 月より
1. 活動概要
・2012 年度のプログラム委員会は、計 6 回開催した。
・2012 年度第 22 回 BCOJ 年次大会は、11 月 8 日、9 日の 2 日間で開催し、189 名の参加があった。大
会での発表件数は、口頭 18 件、ポスター8 件であった。招待講演として独立行政法人宇宙研究開発
機構の川口淳一郎教授より、「『はやぶさ』が挑んだ人類初の往復の宇宙飛行、その7年間の歩み」
の演題にてご講演頂き、参加者アンケートにて招待講演に対する満足度 100%と好評を得た。大会開
催については引続き多数の方々から継続を支持されており、今後もより良い大会になるよう目指し
ていきたい。
・2008 年 6 月より開始した東原和成教授(東京大学農学部生物化学研究室)との共同研究について、
プログラム委員会がその企画、窓口となり継続した。円滑な研究推進に向けて、必要に応じて研究
室を訪問し意見交換を行なった。
2. プログラム委員会の開催
(1) 第 1 回委員会
(1 月 23 日、サントリー社武蔵野ビール工場)
・役割分担確認
・年間活動計画作成
・年次大会発表数の予備調査
・招待講演候補者リスト作成
(2) 第 2 回委員会
(3 月 14 日、キリン社横浜工場)
・年次大会発表演題数を一次確定しプログラム素案作成
・共同研進捗確認
9
(3) 臨時委員会
(4 月 11 日、ビール酒造組合)
・招待講演候補絞り込み
(4) 第 3 回委員会
(7 月 6 日、アサヒ社北海道工場)
・年次大会詳細スケジュール作成
・年次大会要旨集作成要綱確認
・年次大会運営詳細事項確認
(5) 第 4 回委員会
(10 月 15 日、星陵会館)
・年次大会会場現地にて準備事項および運営に関する詳細内容確認
(6) 第 5 回委員会
(11 月 30 日、サントリー社九州熊本工場)
・年次大会振り返り
3. その他打合せの実施
(1) 年次大会招待講演者との打合せ
・10 月 25 日 独立行政法人 宇宙研究開発機構(丸ノ内) 川口淳一郎教授 訪問
招待講演の演題および要旨の確定、講演内容の再確認(島田審議役、蜂須賀審議役、岸本委員長、
丸橋副委員長、竹村委員)
(2) 共同研究先との打合せ
・2 月 1 日 東京大学
東原和成教授
訪問
研究進捗に関するヒアリング、今後の方針・契約内容について意見交換
・5 月 14 日 東京大学
東原和成教授
訪問
研究進捗に関するヒアリング、契約内容の決定(本年度は 2012 年 6 月~2013 年 5 月、以降につい
ては順次 1 年間の契約とすることとした)
・8月30日 東京大学
東原和成教授
訪問
研究進捗に関するヒアリング
以上
(作成:岸本
10
徹)
2012 年度 BCOJ 共同実験報告書
HPLC-UV 法によるビール、発泡酒、新ジャンルの総プリン体定量
担当責任者:橋本
卓哉(サントリー酒類株式会社)
分析担当者:大内
敦史(アサヒビール株式会社)
角戸
洋一(サントリー酒類株式会社)
金井
宗良(独立行政法人
金子
希代子(帝京大学薬学部)
見城
千尋(株式会社島津製作所)
中原
正晃(キリングループオフィス株式会社)
仲村
周(オリオンビール株式会社)
半田
貴子(アサヒビール株式会社)
渡辺
敬之(サッポロビール株式会社)
酒類総合研究所)
結
論
HPLC-UV 法によりビール、発泡酒、新ジャンルの総プリン体を定量する方法について、共同実験結果
を基に併行精度、及び室間再現精度を評価したところ、以下の結論が得られた。
1. 併行相対標準偏差RSDrは 0.8~4.6(%)、併行許容差r95 は 1.7~7.6(mg/L)の範囲であり、許容
範囲内であった。
2. 室間再現相対標準偏差RSDR は 11.6~16.8(%)、室間再現許容差R95 は 8.0~49.5(mg/L)の範囲で
あり、許容範囲内であった。
答
申
1.本法は総プリン体量約 20~140(mg/L)のビール、発泡酒、新ジャンルの総プリン体を定量可能であ
ると認める。
2.本法を「総プリン体 HPLC-UV 法」として「BCOJ ビール分析法」に加えることを提案する。
3.本結果を以って、本共同実験は完了とする。
11
___________________________________________________________________________________________
アルコール飲料中の総プリン体は他の食品と比べて多くはないものの、アルコールの影響が加わり尿
酸値が上昇するため、多飲酒の習慣がある人は痛風の危険度が増加し、特にビールを飲む人の危険度が
高い。近年、健康志向への高まりから、消費者のビール中総プリン体量に対する関心が高まっている。
そのため、ビール中の総プリン体を正確かつ高精度に定量する分析法を BCOJ ビール分析法として採用
することが必要である。本共同実験では、帝京大学金子らの方法を参考にして(1)、HPLC-UV 法を用いた
ビール、発泡酒、新ジャンルの総プリン体分析法を提案し、併行精度と室間再現精度の確認を行った。
本共同実験は本年度で 2 年目の取り組みとなる。昨年度の共同実験では室間再現相対標準偏差RSDR
が許容範囲外となり共同実験は不成立であった(2)。この原因を詳細に解析した結果、いくつかの実験室
で一部のピーク分離が不十分であることが判明した。そこで本年度の共同実験では、各実験室にて予備
実験を実施し、ピーク分離が十分に行われるように移動相 pH を 2.3~2.8 の範囲で最適化した上で、本
実験に臨むこととした。
操
作
共同実験には 10 実験室が参加した。担当責任者より各実験室に 8 組の試料ペアを配布した。液体試
料のため、均質性の確認は行っていない。各試料ペアは公称の総プリン体量を元に低濃度から高濃度含
有の製品を次のように選抜した。低濃度;約 20~30mg/L(A/B、C/D、E/F)、中濃度;約 40~90mg/L
(G/H、I/J、K/L)、高濃度;約 100~140mg/L(M/N、O/P)。
試料は以下の手順で前処理を行い、HPLC 分析に供した。
(1)氷中に置いた試験管に、試料を 4.5mL、70%過塩素酸 0.5mL と混合させた。その後、95℃以上で
攪拌しながら 60 分間加熱し、加水分解させた。
(2)試験管の温度を下げ、氷中にて攪拌しながら、8M KOH を 0.73mL 加え、pH 試験紙にて pH を確認
した。pH6~7 程度に中和されていなければ、適宜 KOH 及び過塩素酸を滴下して調整し、中和さ
せた。
(3)遠心処理 (3000rpm, 10min) により、中和反応にて生成した KClO4 を沈殿させ、上澄みを回収し
た。この時、純水によるメスアップ操作を行っても良い。
(4)上澄みを 0.45μm フィルター(親水性)に通した。
また、検量線は以下の手順で作成した。
純度 99%以上の Adenine, Guanine をそれぞれ 10.0mg、Hypoxanthine, Xanthine をそれぞれ 5.0mg 計
量し、極少量の 8M KOH に溶解させた後、混合し純水で 100mL にメスアップして、各成分濃度が
100.0mg/L(Adenine, Guanine) ないし 50.0mg/L(Hypoxanthine, Xanthine) 濃度になるよう調製し、混
合標準液とした。続いて、混合標準液を 1 倍、2 倍、10 倍、20 倍、40 倍、100 倍希釈し、絶対検量線用
サ ン プ ル と し た 。 こ の 時 、 検 量 線 用 サ ン プ ル の 濃 度 は そ れ ぞ れ 100.0, 50.0, 10.0, 5.0, 2.5,
1.0mg/L(Adenine, Guanine)、50.0, 25.0, 5.0, 2.5, 1.25, 0.5mg/L(Hypoxanthine, Xanthine) とな
る。
HPLC-UV 機器はメーカーを問わず、Shodex Asahi Pak GF-310 HQ (7.5mmID×300mm) または GS-320
HQ(7.5mmID×300mm)カラムを用いた。移動相は 150mM リン酸ナトリウムバッファー(リン酸二水素ナト
リウム(無水)(Nacalai tesque, 98%相当)を 150mM 濃度へ調製した後、リン酸で pH を調整)で流速
12
0.6mL/min、カラム温度 35℃、検出波長 260nm、注入量 20μL とした。この時、移動相 pH は原則として
2.5 とするが、予備実験にてプリン体のピークに夾雑が認められる場合は pH を 2.3~2.8 の間にて適宜
調整し、ピーク分離が最適となる条件にて実施した。分析はそれぞれ 2 連で行った。
各プリン体(Adenine, Guanine, Hypoxanthine, Xanthine)のデータは機器に表示される出力値(ク
ロマトグラムのピーク面積値より算出した値)を整数値に丸めた。小数点以下の数値の扱い方は「JIS Z
8401:1999 数値の丸め方」 (3) に従った。得られた各プリン体(Adenine, Guanine, Hypoxanthine,
Xanthine)の合計を総プリン体量とし、分析結果の統計解析は「JIS Z 8402-2:1999 測定方法及び測定
結果の精確さ(真度及び精度)-第2部:標準測定方法の併行精度及び再現精度を求めるための基本的
方 法 」 (4) お よ び 「 Appendix D: Guidelines for Collaborative Study Procedures To Validate
Characteristics of a Method of Analysis」(5)に従った。
結果及び考察
分析により得られた総プリン体量を表 1 に示した。実験室 7 は、データ解析の段階でプリン体のピー
クに夾雑が認められたため全データを解析から除外した。残りの 9 実験室のデータについて統計解析を
実施した。外れ値の検出を Mandel の h,k 統計量、Cochran 検定、Grubbs 検定により行った。まず Mandel
の h,k 統計量計算を実施し、1%棄却限界値を超えたデータを棄却した。その後 Cochran 検定、Grubbs 検
定を実施したが、外れ値は検出されなかった。
外れ値を除いたデータについて、併行精度、及び室間再現精度を求めた(表 2)。その結果、併行相対
標準偏差RSDrは 0.8~4.6(%)、併行許容差r95 は 1.7~7.6(mg/L)、室間再現相対標準偏差RSDR は
11.6~16.8(%)、室間再現許容差R95 は 8.0~49.5(mg/L)の範囲であった。また、HorRat 値より、化学分
析の定量法の精度について妥当性に問題がないことが確認された。
以上の結果から、HPLC-UV 法によるビール類中の総プリン体定量は、併行精度・室間再現精度共に良
好であったことから、BCOJ分析法として採用可能であると結論づけた。
表1
実験室
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
平均値
総平均
試料ペア 試料ペア
A
B
C
D
17
16
19
21
14
14
20
21
13
14
22
22
14
14
19
19
21
21
28
28
18
16
25
25
22a
20a
32a
32a
20
18
27b
31b
20
21
26
27
17
17
26
26
17.1 16.8
23.1 23.6
16.9
23.4
HPLC-UV 法による総プリン体量
試料ペア
E
F
30
30
24
25
26
25
23
23
35
35
30
28
34a
37a
30
28
33
32
30
30
29.0 28.4
28.7
試料ペア
G
H
64
62
57
57
59
55
50
48
73
75
62
62
89a
89a
55
60
66
65
64
64
61.1 60.9
61.0
試料ペア 試料ペア 試料ペア
I
J
K
L
M
N
85
85
73
72
110
108
75
75
66
64
102
106
67
66
78
76
106
104
64
65
57
57
87
90
99
99
87
89
138
136
85
86
79
74
110
114
119a 105a
107a 105a
173a
177a
108
105
74b
81b
69b
82b
85
87
76
77
122
120
87
87
76
76
117
118
80.9 81.3
74.0 73.1
111.1 111.2
81.1
73.6
111.2
試料ペア
O
P
143
141
126
125
131
136
109
117
169
171
142
140
228a
230a
155b
174b
156
157
142
138
139.8 140.6
140.2
(単位:mg/L)
a
プリン体のピークに夾雑が認められたため解析から除外したデータ
b
外れ値検定により棄却したデータ
13
表2
HPLC-UV 法による統計解析結果のまとめ
試料ペア
A/B
試料ペア
C/D
試料ペア
E/F
試料ペア
G/H
試料ペア
I/J
試料ペア
K/L
試料ペア
M/N
試料ペア
O/P
9
8
9
9
8
8
9
8
総平均値(m)
16.9
23.4
28.7
61.0
81.1
73.6
111.2
140.2
併行標準偏差(Sr)
0.8
0.6
0.8
1.7
0.7
1.6
1.9
2.7
併行相対標準偏差(RSDr, %)
4.6
2.6
2.7
2.8
0.8
2.1
1.7
1.9
併行許容差(r95)
2.2
1.7
2.2
4.8
1.9
4.4
5.4
7.6
7.0
6.6
6.4
5.7
5.5
5.6
5.2
5.1
実験室数
予測相対標準偏差(PRSDr, %)
a
b
b
b
0.4
b
b
0.3
0.4b
HORRATr(RSDr/PRSDr)
0.7
0.4
0.4
0.5
0.1
室間再現標準偏差(SR)
2.9
3.4
3.9
7.1
11.6
9.3
13.5
17.7
室間再現相対標準偏差(RSDR, %)
16.8
14.7
13.5
11.6
14.3
12.6
12.1
12.6
室間再現許容差(R95)
8.0
9.6
10.9
19.9
32.5
25.9
37.7
49.5
予測相対標準偏差(PRSDR, %)
10.4
10.0
9.7
8.6
8.3
8.4
7.9
7.6
HORRATR(RSDR/PRSDR)a
1.6
1.5
1.4
1.4
1.7
1.5
1.5
1.7
a
HORRAT 値;AOAC ガイドライン(5)に従い、0.5≦HORRAT≦2 以下は許容範囲
b
HORRATr 値が許容範囲を下回ったものの、高い精度で分析が行えたことを確認
参考文献
(1)Kiyoko Kaneko., Tomoyo Yamanobe., Shin Fujimori.
Determination of purine contents of
alcoholic beverages using high performance liquid chromatography. Biomed. Chromatography.
23: 858-864. 2009.
(2) Brewery Convention of Japan. Report of 2011 BCOJ collaborative work. Quantitative Analysis
of Total Purine Content Using the HPLC-UV Method in Beer, Low-Malt Beer, and Third-Category
Beer. J. Am. Soc. Brew. Chem. 70: 328-329, 2012.
(3)数値の丸め方(Z 8401). ”JIS ハンドブック 57
品質管理 2002” . 日本規格協会. p1003-1004.
(4)測定方法及び測定結果の精確さ(真度及び精度)-第2部:標準測定方法の併行精度及び再現精度を
求めるための基本的方法(Z 8402-2). “JIS ハンドブック 57
品質管理
2002”. 日本規格協会.
p246-278.
(5)Appendix D: Guidelines for Collaborative Study Procedures To Validate Characteristics of a
Method of Analysis. Official Methods of Analysis of AOAC INTERNATIONAL. 18th Edition. 2005.
14