契 約 面 から見 た財 産 的 情 報 〜 禁 止 条 項 の有 効 性 を中 心 として 〜 専 修 コース 佐 久 間 央 目次 Ⅰ 目 的 .............................................................................................................................. 2 Ⅰ-1 問 題 提 起 ............................................................................................................... 2 Ⅰ-1-1 契 約 実 務 における当 事 者 の意 思 ................................................................ 2 Ⅰ-1-2 財 産 的 情 報 .................................................................................................... 3 Ⅰ-2 社 会 的 な背 景 事 情 ............................................................................................... 3 Ⅰ-2-1 有 形 媒 体 から分 離 した情 報 流 通 ................................................................ 3 Ⅰ-2-2 情 報 流 通 の視 座 ........................................................................................... 5 Ⅰ-3 本 稿 の検 討 課 題 .................................................................................................. 7 Ⅱ 使 用 許 諾 契 約 の各 条 項 の有 効 性 ............................................................................ 8 Ⅱ-1 使 用 許 諾 契 約 の実 態 .......................................................................................... 8 Ⅱ-1-1 使 用 許 諾 契 約 の内 容 ................................................................................... 8 Ⅱ-1-2 シュリンクラップ方 式 による問 題 .................................................................. 9 Ⅱ-2 使 用 許 諾 契 約 の条 項 の検 討 ........................................................................... 10 Ⅱ-2-1 使 用 許 諾 ...................................................................................................... 10 Ⅱ-2-2 複 製 .............................................................................................................. 11 Ⅱ-2-3 譲 渡 .............................................................................................................. 13 Ⅱ-2-4 貸 与 、再 許 諾 ............................................................................................... 15 Ⅱ-2-5 改 変 、翻 案 ................................................................................................... 16 Ⅱ-2-6 リバースエンジニアリング ............................................................................ 17 Ⅱ-3 その他 の検 討 課 題 ............................................................................................. 21 Ⅲ まとめ .......................................................................................................................... 22 1 Ⅰ 目的 Ⅰ-1 問 題 提 起 Ⅰ-1-1 契 約 実 務 における当 事 者 の意 思 私 は、富 士 ゼロックス株 式 会 社 法 務 部 在 籍 中 に少 なからぬ知 的 財 産 権 に関 する契 約 の作 成 や審 査 に携 わってきた。他 社 から、なんらかの情 報 のライセンスを受 ける。イニ シャルロイヤリティとしていくら、さらに当 社 がその情 報 のコピーを当 社 製 品 に組 み込 ん だ場 合 、そのコピー1本 あたりランニングロイヤリティとしていくら払 う。そのような契 約 が 多 いわけであるが、契 約 によって提 供 される情 報 は、著 作 物 に限 られない。それはプロ グラムであったり、ある種 のデータであったりするが、文 面 はさまざまであるにしろ、契 約 書 には総 じて「甲 が乙 に提 供 する○○は甲 の著 作 物 であり…」といった文 言 が付 されて いる。そういった情 報 の中 には、技 術 には素 人 の私 から見 ても、どう見 ても著 作 物 では ないと思 わせるものがある。 契 約 審 査 の際 に、取 引 される情 報 が著 作 物 ではないと考 える理 由 を付 して、著 作 物 性 を確 認 する旨 の文 言 を削 除 するようライセンサーに申 し入 れたことがある。契 約 の相 手 方 からは反 論 が返 送 されてきたが、結 局 、契 約 書 においては著 作 権 に特 に触 れずに、 利 用 条 件 のみを記 述 した契 約 を締 結 することができ、実 務 に支 障 はなかった。つまり、 当 事 者 にとって、取 引 される情 報 が著 作 物 であるか否 かは、契 約 の成 立 にとってさほど 重 要 な要 素 ではないと考 えられる。この点 について、山 本 孝 夫 教 授 は、「著 作 権 ライセ ンス契 約 がその本 質 である契 約 のもう1つの特 色 は、そのライセンス契 約 を締 結 する当 事 者 (ビジネス担 当 者 )がその契 約 を、単 なる「著 作 権 ライセンス契 約 」と意 識 していな いことが多 いということである。もっと、具 体 的 な商 品 名 を伴 った個 々の取 引 と認 識 して いる。」 1 と指 摘 しており、必 ずしも、私 一 人 の感 想 ではないと思 う。 著 作 権 を巡 る裁 判 には、契 約 当 事 者 間 における紛 争 2 が少 なくない。当 事 者 である以 上 、対 象 となる情 報 が著 作 物 であるか否 かについては争 う余 地 がないように思 えるが、 著 作 物 性 が争 点 になっている事 件 もある。また、契 約 関 係 があるにもかかわらず、契 約 上 の債 務 の履 行 ・不 履 行 、義 務 違 反 などを争 うのではなく、知 的 財 産 権 の侵 害 を争 う 裁 判 例 も少 なくない。きちんとした契 約 書 面 が取 り交 わされていない、契 約 の有 効 性 に 疑 問 が残 るシュリンクラップ方 式 の契 約 書 である 3 、といった理 由 も考 えられるが、契 約 締 結 時 において、当 事 者 は取 引 する情 報 が著 作 物 であるか否 かを意 識 していないことも その原 因 の一 つであると考 える。 著 作 物 のライセンス契 約 が争 われる訴 訟 において、裁 判 所 は、具 体 的 にライセンス契 約 が著 作 物 の支 分 権 の一 体 何 を利 用 許 諾 しているのかという点 を解 釈 する。すなわち、 著 作 権 法 に沿 って契 約 上 の紛 争 も解 決 されるわけである。 他 方 、非 著 作 物 のライセンス契 約 が争 われる訴 訟 の場 合 はどうなるであろうか。著 作 1 山 本 孝 夫 著 『知 的 財 産 ・著 作 権 のライセンス入 門 』147 頁 (三 省 堂 、1998 年 ) 例 えば、作 品 の制 作 委 託 者 と受 託 者 、創 作 者 と出 版 社 、共 同 制 作 者 同 士 、ライセンサーとライセ ンシーなど。 3 主 として損 害 賠 償 額 の算 定 が問 題 になった「東 京 リーガルマインド事 件 」(東 京 地 裁 平 成 13 年 5 月 16 日 判 決 判 例 時 報 1749 号 19 頁 )も、シュリンクラップ契 約 があるにもかかわらず、契 約 の条 文 に ついては特 に争 われていない事 例 である。 2 2 物 のように「具 体 的 にライセンス契 約 が著 作 物 の支 分 権 の一 体 何 を利 用 許 諾 している のか」という解 釈 はできない。したがって、契 約 条 項 の字 義 から当 事 者 の合 理 的 意 思 を 検 討 して解 決 されることになる。 契 約 当 事 者 は、著 作 物 と非 著 作 物 を区 別 していない。それにもかかわらず、当 事 者 の意 思 が反 映 される契 約 の解 釈 および契 約 によって保 護 される範 囲 が、著 作 物 か否 か によって異 なってしまう合 理 的 な理 由 が果 してあるのであろうか。特 に、非 著 作 物 の保 護 範 囲 は、契 約 によって定 まる部 分 も多 いと考 えられるため、この問 題 は重 要 である。 Ⅰ-1-2 財 産 的 情 報 財 産 的 情 報 とは、広 い概 念 である。ここでは、取 引 される価 値 がある情 報 の総 体 を財 産 的 情 報 と定 義 する。知 的 財 産 権 制 度 で保 護 された情 報 (発 明 、創 作 性 ある表 現 な ど)に限 らない。 情 報 は無 体 物 であり占 有 できるような物 理 的 形 態 がない。しかし、情 報 が財 として取 引 されるには、取 引 対 象 として特 定 可 能 な「形 」が必 要 であり、形 に縛 られる。いかなる 情 報 であろうとも、複 数 人 が当 該 取 引 対 象 の同 一 性 を認 識 できる形 にならなければ財 ではないし、また法 的 に保 護 されない。発 明 は、人 の頭 の中 にあるアイデアを実 現 した ものであるが、そのアイデアは、特 許 明 細 書 のクレームの記 載 という形 で他 人 が認 識 で きる形 にならなければ保 護 されないし、創 作 性 のある表 現 は、その名 のとおり、文 字 、図 画 、色 彩 、音 声 その他 の方 法 で他 人 が認 識 できる表 現 になったときに著 作 物 として保 護 される。 排 他 的 権 利 がない情 報 の場 合 は、対 象 となる情 報 を取 引 可 能 な形 にすることの重 要 性 が特 に高 い。「今 日 、○○株 式 会 社 の株 価 が大 幅 に下 落 した。」という情 報 は、株 式 投 資 に携 わる人 々にとっては非 常 に価 値 がある情 報 であるが、単 体 では取 引 される価 値 ある情 報 ではない。しかし、株 価 情 報 を継 続 的 に供 給 してくれる何 らかの仕 組 みがあ れば、その仕 組 みを提 供 する者 に対 価 を支 払 って、情 報 を得 ようとする人 々が出 てくる。 価 値 があるのは株 価 情 報 であるが、株 価 情 報 を継 続 的 に供 給 してくれる仕 組 みがなけ れば、取 引 は為 されず、財 とはならない。 データベースも同 様 である。事 実 の集 合 体 としてのデータベースには(創 作 性 がなくと も)価 値 があるが、それは、個 々の情 報 にアクセスする仕 組 みとして、配 列 を工 夫 するこ とにより情 報 にたどりつきやすいように作 られたインデックスや検 索 システムがあるからこ そ、価 値 があるのであって、ひとつひとつの情 報 そのものの価 値 は高 くないし、また、そ れだけでは、取 引 の対 象 とはなり得 ない。事 実 もたくさん集 まれば価 値 が出 るが、それも 紙 に書 いたり、磁 気 媒 体 に記 録 して、他 人 が認 識 できる形 式 になってはじめて、取 引 す る価 値 が生 まれるのである。 Ⅰ-2 社 会 的 な背 景 事 情 Ⅰ-2-1 有 形 媒 体 から分 離 した情 報 流 通 情 報 化 社 会 は、近 年 ますます発 達 し、コンピューターネットワークが世 界 中 を結 んでお り、ネットワーク上 を流 通 する情 報 に限 って言 えば、媒 体 の流 通 に縛 られない状 態 に なってきている。これは、著 作 権 制 度 そのものに変 革 を迫 ろうとしている。 3 もともと、知 的 財 産 権 制 度 は、限 られた人 たちだけに関 りがあるものであった。特 許 を 中 心 とする工 業 所 有 権 制 度 は製 造 業 を中 心 とする産 業 界 、著 作 権 は音 楽 業 界 や出 版 業 界 、そして作 家 や作 曲 家 などのクリエーター達 だけが知 っていればよいものだった。 しかし、家 庭 で手 軽 に扱 える複 製 機 器 の登 場 が、まず著 作 権 制 度 に大 きな影 響 を与 え た。音 楽 業 界 も出 版 業 界 も自 らの製 品 が複 製 されるとどうなるかを考 えなければならなく なった。その結 果 、もともと一 般 消 費 者 が私 的 に行 う複 製 を枠 外 に置 いていた著 作 権 法 は、第 30 条 を修 正 してデジタル複 製 に関 する例 外 を設 ける、貸 与 権 を創 設 して、他 人 から著 作 物 を借 り受 けて家 庭 内 で複 製 する行 為 を有 償 化 するという修 正 を施 した 4 。 しかし、この時 点 でも、一 般 消 費 者 は、制 度 面 からするとあいかわらず著 作 権 法 の枠 外 にいる。デジタル複 製 に関 する機 器 やメディアの補 償 金 は、それぞれの商 品 の価 格 に 組 み込 まれているし、貸 与 権 についても貸 しレコード業 者 などが権 利 者 に支 払 い、その 分 がレンタル料 金 に(消 費 者 に意 識 させることなく)加 算 されているだけである。ここまで は、著 作 物 (をはじめとする財 産 的 情 報 )は、依 然 として情 報 が載 せられた「物 」による 制 限 があった。つまり、無 体 物 である情 報 も、その情 報 が載 せられている媒 体 という有 体 物 なしでは存 在 し得 ず、その媒 体 をいかに頒 布 するか、いかに複 製 するか、という問 題 があった。 ところが、インターネットという新 たなメディアの登 場 は、この媒 体 の束 縛 から解 き放 た れることを意 味 している。媒 体 という「物 」で流 通 していたものが、ネットワークという「仕 組 み」によっても流 通 するように変 わったのである。インターネットは、情 報 の複 製 を容 易 に しただけではなく、複 製 した情 報 を流 通 させることを容 易 にしたということに特 色 がある。 これまでは、家 庭 内 における複 製 というレベルでは、どれほどたくさん複 製 したとしても、 所 詮 、媒 体 という有 体 物 を大 規 模 に頒 布 する手 段 を個 人 が持 つことはまずないため、 著 作 権 者 が受 ける損 害 は、決 して大 きいとはいえなかった。しかし、インターネットは、 ちょっとした複 製 (従 来 であれば家 庭 内 の複 製 として捉 えられるようなもの)が、瞬 時 に 世 界 中 からダウンロードすることが可 能 な状 態 になってしまう 5 。ここに至 って、著 作 権 法 は、一 般 消 費 者 を取 り込 んだ仕 組 みを考 えることを迫 られている。個 人 が私 的 に行 う複 製 が、著 作 権 者 に大 きな損 害 を与 える可 能 性 が出 てきたからである。 一 般 消 費 者 の行 為 に対 して、権 利 団 体 が一 般 向 けに啓 蒙 活 動 を行 うなどの動 きが 出 ているが 6 、そもそも一 般 人 にはインターネットで行 われるさまざまな活 動 、例 えばファ イルをアップロード/ダウンロードする、ホームページを閲 覧 する、リンクをクリックするな 4 貸 与 権 は、貸 しレコード事 件 を契 機 として創 設 されたものだが、家 庭 用 複 製 機 器 が普 及 していな かったら、貸 しレコード事 件 はそれほど問 題 にならなかったのではないかと考 えられる。実 際 、貸 しレ コード店 よりはるかに以 前 から存 在 する貸 本 屋 は、あいかわらず附 則 第 4 条 の2により、対 象 外 とされ ている。書 籍 を1冊 まるごと複 製 するより、レコード1枚 をまるごと複 製 することがはるかに容 易 であるこ とが、この差 を生 じたと考 えることができる。 5 Napster 事 件 などを想 起 すればよい。また、従 来 、CD プレイヤーからポータブルオーディオプレイ ヤーに音 楽 を複 製 して楽 しむということはよく行 われてきた。この CD プレイヤーがパソコンの CD-ROM ドライブに、ポータブルオーディオプレイヤーが個 人 用 ホームページサイトに変 わったと思 えばよい。 著 作 権 法 的 な意 味 あいは全 く違 うが、一 般 消 費 者 からすれば、同 じ感 覚 であろう。 6 毎 日 新 聞 社 のホームページでの報 道 によれば、2001 年 5 月 18 日 、コンピュータソフトウェア著 作 権 協 会 が中 学 校 において著 作 権 保 護 教 育 を行 った。同 協 会 は、今 後 もこのような活 動 を行 っていく 模 様 。(http://www.mainichi.co.jp/digital/netfile/archive/200105/18-3.html) 4 どの行 為 のいずれが著 作 権 法 にいう利 用 にあたるのか、また使 用 であるかなどは判 別 できない。専 門 家 の間 ですら議 論 が別 れているほどのものなのである。さらにドッグイ ヤーなどとも呼 ばれる、進 歩 の早 いインターネットにおいては、次 から次 へと新 しい利 用 形 態 、使 用 形 態 が出 てくることは疑 いない。インターネットそのものですら、このままの形 で継 続 していくかどうかわからないのである。 Ⅰ-2-2 情 報 流 通 の視 座 現 在 の情 報 化 社 会 においては、単 に著 作 物 が取 引 されるだけではない。従 来 、法 的 保 護 は与 えられないとしてきた著 作 物 ではないもの、すなわち創 作 性 のない事 実 作 品 やデータベースなど、さまざまな情 報 が有 償 で取 り引 きされている。実 際 に、無 断 コピー 等 を争 う事 件 において、著 作 物 性 を否 定 しつつ、一 般 不 法 行 為 による損 害 賠 償 を認 め る裁 判 例 も出 ている 7 。創 作 性 のない事 実 作 品 やデータベースなどが取 引 されるのは今 に始 まったことではないが、著 作 物 のみならず、排 他 的 権 利 がない情 報 も情 報 化 社 会 の進 展 とともに広 く取 引 されるようになってきたのである。 取 引 される情 報 を著 作 権 法 の視 点 からみると、著 作 物 と非 著 作 物 に分 けることができ るが、Ⅰ-1-1 で述 べたとおり、取 引 の当 事 者 は取 引 される情 報 が著 作 物 であるか、非 著 作 物 であるかを意 識 していない。著 作 物 以 外 にも有 償 で取 引 される財 産 的 情 報 は 少 なくない上 、取 引 の当 事 者 たちは、取 引 する財 産 的 情 報 が著 作 物 であるか否 かにさ ほどこだわっていない。 端 的 な例 は、創 作 性 のないデータベースである。データベースは、情 報 の選 択 や体 系 的 な構 成 に創 作 性 があるものは、データベースの著 作 物 として著 作 権 法 の保 護 が受 け られるが、情 報 を単 純 に積 み重 ねて集 積 したものだと、創 作 性 がなく著 作 権 法 の保 護 が受 けられない。 しかし、EC データベース指 令 などに見 られるように、創 作 性 がないデータベースにも何 らかの法 的 保 護 を与 えるべきだという議 論 は強 くなってきた 8 。創 作 性 の有 無 を問 わず、 データベースの蓄 積 には相 当 な投 資 が必 要 であり、また、データベースは有 償 で取 引 する価 値 がある、ということが前 提 であろう。 こうした知 的 財 産 権 法 で保 護 されずとも有 償 で取 引 する価 値 がある情 報 は、従 来 から 少 なからず存 在 している。例 えば、タイプフェイスなどは古 くから取 引 されているものの、 著 作 権 法 での保 護 も否 定 されてきた 9 。しかし、近 年 、不 正 競 争 防 止 法 にもとづく差 止 が認 められる 10 など、法 的 保 護 の様 相 は変 化 してきている 11 。データベースとて、ここ数 年 で作 られたものではない。 7 「自 動 車 整 備 業 用 データベース事 件 」東 京 地 裁 平 成 13 年 5 月 25 日 中 間 判 決 最 高 裁 ホームペー ジ(http://www.courts.go.jp/)知 的 財 産 権 裁 判 例 集 8 創 作 性 のないデータベースの法 的 保 護 に関 する検 討 と立 法 動 向 については、梅 谷 眞 人 『データ ベースの法 的 保 護 』(信 山 社 、1999 年 )が詳 しい。 9 「ヤギ・ボールド事 件 」一 審 東 京 地 裁 昭 和 54 年 3 月 9 日 判 決 無 体 例 集 11 巻 1 号 114 頁 、二 審 東 京 高 裁 昭 和 58 年 4 月 26 日 判 決 無 体 例 集 15 巻 1 号 340 頁 10 「モリサワ仮 処 分 申 請 事 件 」抗 告 審 東 京 高 裁 平 成 5 年 12 月 24 日 決 定 判 例 時 報 1505 号 136 頁 11 タイプフェイスについては、大 家 重 夫 『タイプフェイスの法 的 保 護 と著 作 権 』(成 文 堂 、2000 年 )が 5 知 的 財 産 権 で保 護 されていなくとも、こういった情 報 を必 要 とする人 が少 なく、また、必 要 とする人 たちが取 引 ルールを守 っていれば問 題 は生 じない。当 事 者 が少 なければ、 私 的 なルールを当 事 者 のコンセンサスで形 成 し、それを守 っていくことが可 能 であるから である。契 約 や慣 行 で形 成 される業 界 ルールである。タイプフェイスが写 植 機 のみで利 用 されているうちは、デザイナー、写 植 機 メーカー、それに印 刷 業 関 係 者 だけが取 引 の 当 事 者 であったし、データベースにしても、それが高 価 な通 信 回 線 やシステムなどを必 要 としたため、それぞれの分 野 の専 門 家 とサービス業 者 だけが当 事 者 であった。 情 報 化 社 会 の進 展 は、こういった一 部 の人 たちだけであった情 報 を、より多 くの人 たち が利 用 できるようにした。誰 でもより綺 麗 な文 字 で自 分 の作 成 する文 書 を作 りたいと思 う し、個 人 で株 式 投 資 をする人 は、取 引 する証 券 会 社 の営 業 マンが持 ってくる情 報 だけ に頼 るのではなく、より直 接 的 に市 況 データを参 照 したいと思 う。情 報 化 社 会 の進 展 が それを可 能 にしたのである。 このように、大 衆 が非 著 作 物 の情 報 を有 償 の契 約 にもとづいて利 用 する現 状 を考 える と、非 著 作 物 の使 用 許 諾 契 約 における各 種 条 項 をどのように考 えたらよいのであろうか。 非 著 作 物 の場 合 でも、その取 引 契 約 は使 用 許 諾 の形 であり、契 約 の内 容 は、プログラ ムなどの著 作 物 の使 用 許 諾 契 約 と実 質 的 に同 じである。また、プログラムといえども著 作 物 性 がないものもあるであろうし、それらも著 作 物 性 のあるプログラムの使 用 許 諾 契 約 と同 じ内 容 の契 約 で提 供 されているのである。 まず、非 著 作 物 は、創 作 性 がないなどの理 由 により、著 作 権 法 の保 護 が及 ばないもの である。したがって、複 製 しようが再 配 布 しようが、本 来 は、万 人 が自 由 に利 用 できる性 質 のものである 12 。しかし、現 実 にはⅡで検 討 するように、ライセンシーは契 約 に記 載 さ れた各 種 の禁 止 条 項 による制 限 を受 けており、自 由 利 用 とはほど遠 い現 状 にある。著 作 物 であれば著 作 権 法 の権 利 制 限 規 定 との関 係 で、ある程 度 禁 止 条 項 の一 部 が無 効 になり得 ると言 えるが、非 著 作 物 にはそのような権 利 制 限 規 定 に相 当 するものはな い。 そうすると、本 来 、ライセンサーの権 利 が強 力 であるはずの著 作 物 だと、著 作 権 法 の 権 利 制 限 規 定 によりライセンシーが自 由 に利 用 できる範 囲 があり、非 著 作 物 の場 合 、 契 約 によりライセンシーはがんじがらめに縛 られて、結 果 的 には、ライセンサーにとってよ り有 利 な状 況 となり得 る。このような帰 結 は「おかしい」のではないだろうか。 非 著 作 物 の使 用 許 諾 契 約 は、あくまでも当 事 者 間 でのみ有 効 なものであり、第 三 者 効 がないという面 もあるものの、排 他 的 権 利 より弱 いとはいえ、このような創 作 性 のない 情 報 についても、一 般 不 法 行 為 により第 三 者 の侵 害 に対 して保 護 され得 る場 合 がある 13 。 さらに、技 術 的 保 護 手 段 (コピープロテクション)がある。著 作 権 法 と不 正 競 争 防 止 法 の改 正 により、これらの技 術 的 保 護 手 段 を破 る機 器 やプログラムをマーケットで提 供 す る行 為 が規 制 されている。これらの技 術 的 保 護 手 段 は、年 々より強 固 に、また、細 かい 詳 しい。 12 無 論 、特 許 法 その他 の法 的 保 護 が受 けられる場 合 があることは言 うまでもない。 13 前 掲 注 7「自 動 車 整 備 データベース事 件 」判 決 6 制 限 をかけていくことができるようになると考 えられる 14 。 著 作 権 の権 利 制 限 は、「文 化 的 所 産 の公 正 な利 用 という観 点 の下 に、公 益 上 の理 由 から、あるいは当 該 著 作 物 の特 性 や利 用 形 態 からみて権 利 者 への影 響 が少 なくむしろ 著 作 物 の円 滑 な利 用 という観 点 から権 利 を及 ぼすことが妥 当 でないとの理 由 から 15 」設 けられているものである。排 他 的 権 利 と情 報 利 用 による社 会 的 発 展 バランスをはかるた めの政 策 的 配 慮 にもとづくものともいえるから、そのような排 他 権 が存 在 しない、非 著 作 物 の契 約 においては、どのような制 限 をかけてもよいという考 え方 も成 り立 たなくはない。 しかし、自 由 利 用 を前 提 として考 えられている情 報 が、著 作 物 よりその利 用 や使 用 につ いて自 由 度 がより低 いというのには、財 産 的 情 報 の法 的 保 護 制 度 全 般 から見 て、平 仄 を欠 き、大 きな問 題 があるのではないだろうか。 単 に著 作 権 のみをもって情 報 政 策 を考 えるのではなく、広 く情 報 流 通 という観 点 から 考 察 しなければならないことは、すでに指 摘 されているのである 16 。 Ⅰ-3 本 稿 の検 討 課 題 近 年 、知 的 財 産 制 度 の中 で、契 約 の果 たす役 割 が大 きくなることが指 摘 され、契 約 に よる情 報 財 の保 護 の妥 当 性 に関 する議 論 も高 まりつつある 17 。知 的 財 産 権 に関 する契 約 の中 核 であり、また情 報 取 引 契 約 の性 格 をもっともよく表 しているのがライセンス契 約 である。情 報 の特 徴 である重 畳 的 利 用 可 能 性 18 を前 提 にした取 引 であり、物 や債 権 の 取 引 には見 られない形 態 である。 ライセンス契 約 にはさまざまなものがあるが、おおむね次 のような分 類 が可 能 であると 考 える。 (1) ライセンス対 象 物 の種 類 による分 類 …技 術 /標 識 /作 品 など (2) ライセンス対 象 物 の保 護 法 による分 類 …特 許 法 ・実 用 新 案 法 /意 匠 法 ・商 標 法 /著 作 権 法 /不 正 競 争 防 止 法 など (3) ライセンス形 態 による分 類 …利 用 権 付 与 (主 として知 的 財 産 権 )/使 用 許 諾 (主 としてプログラム、デジタルデータなど)/アクセス権 付 与 (主 としてオンライン 付 加 サービスなど) (4) 当 事 者 の動 機 による分 類 (侵 害 回 避 ・紛 争 和 解 /情 報 提 供 ) 契 約 による情 報 流 通 を検 討 するにあたっては、(4)の分 類 による「情 報 提 供 型 のライセ ンス契 約 」を検 討 する必 要 がある。「侵 害 回 避 ・紛 争 解 決 型 のライセンス契 約 」において は、実 質 的 な情 報 流 通 がないからである。侵 害 回 避 ・紛 争 解 決 型 のライセンス契 約 に おいては、ライセンサーからライセンシーへの実 質 的 な情 報 移 転 はほとんど行 われず、 14 事 実 、2001 年 にリリースされたマイクロソフト社 の最 新 OS である WindowsXP は、プロダクトアクティ ベーションという技 術 を導 入 することにより、著 作 権 法 上 、第 30 条 第 1項 の規 定 により許 されると考 え られる、個 人 での複 数 PC へのインストールを不 可 能 にした。(使 用 許 諾 契 約 上 は、複 数 PC へのイン ストールは禁 止 されている。) 15 作 花 文 雄 『詳 解 著 作 権 法 』261 頁 (ぎょうせい、1999 年 ) 16 パメラ・サミュエルソン(財 団 法 人 知 的 財 産 研 究 所 訳 )『情 報 化 社 会 の未 来 と著 作 権 の役 割 』63 頁 (信 山 社 、1998 年 )、中 山 信 弘 「21 世 紀 の知 的 財 産 制 度 を巡 る諸 問 題 」司 法 研 修 所 論 集 106 号 15 頁 以 下 (2001 年 ) 17 中 山 ・前 掲 注 (16)12 頁 〜13 頁 7 ライセンス料 がライセンシーからライセンサーに支 払 われるのみであるからである。一 見 不 自 然 に思 えるが、実 務 としては珍 しいものではない。現 在 、当 業 者 間 においてさほど 隔 絶 した技 術 格 差 があるわけではなく(無 論 、多 少 の凹 凸 はある。)、事 業 者 は技 術 開 発 競 争 にしのぎを削 っており、出 願 のわずかな先 後 が特 許 権 の取 得 を決 めてしまう。そ の結 果 、技 術 開 発 がわずかに遅 れた事 業 者 が、先 に出 願 した事 業 者 とライセンス契 約 を結 び、特 許 権 侵 害 を回 避 するのである。ライセンシーは、技 術 そのものの開 発 は自 ら 完 了 させているから、ライセンサーから技 術 情 報 を得 る必 要 はないのである 19 。 同 様 のことは、標 識 のライセンスについても言 えるだろう。商 標 のライセンス契 約 を結 ぶ 場 合 も、自 ら考 案 した名 称 がすでに商 標 出 願 されているため、ライセンス契 約 を結 ぶも のと考 えられる。通 常 、事 業 者 は特 許 庁 の商 標 登 録 一 覧 を眺 めて名 称 を考 えるわけで はなく、マーケティング部 門 が名 称 を考 案 し、候 補 の中 から他 社 の登 録 商 標 を避 け、抵 触 調 査 から漏 れて事 後 的 に侵 害 が判 明 したり、どうしてもその名 称 を用 いたいときに、 50 万 円 〜100 万 円 程 度 の対 価 で商 標 権 を買 い取 ったり、ライセンスを受 けたりする事 例 が多 いのである。 本 稿 の目 的 に照 らして、財 産 的 情 報 の流 通 を契 約 面 から検 討 するため、「情 報 提 供 型 のライセンス契 約 」の中 でも特 にライセンサーの意 図 が もっとも顕 著 に出 ているマス マーケットにおけるコンピュータープログラムの使 用 許 諾 契 約 を対 象 とする。使 用 許 諾 契 約 は、コンピュータープログラムでよく用 いられるほか、非 著 作 物 と考 えられるコン ピューターデータや機 能 作 品 などの取 引 などにも用 いられ、著 作 物 と非 著 作 物 それぞ れの場 合 における解 釈 の違 いを比 較 検 討 することが可 能 である。当 事 者 の意 図 に促 し た法 的 保 護 を与 えることによって創 作 のインセンティヴを確 保 することと、創 作 された財 産 的 情 報 の自 由 な流 通 ・利 用 による社 会 の発 展 を図 ることとのバランスに関 する議 論 を 踏 まえつつ、特 に使 用 許 諾 契 約 の禁 止 条 項 の有 効 性 を検 討 する。本 稿 は、このような 検 討 によって財 産 的 情 報 の法 的 保 護 範 囲 を画 する理 論 を提 示 することを目 的 とするも のである。 Ⅱ 使 用 許 諾 契 約 の各 条 項 の有 効 性 Ⅱ-1 使 用 許 諾 契 約 の実 態 Ⅱ-1-1 使 用 許 諾 契 約 の内 容 使 用 許 諾 契 約 の代 表 的 なものは、プログラム(ソフトウェア)使 用 許 諾 契 約 である。ライ センサーからライセンシーにプログラムが提 供 され、契 約 期 間 中 、ライセンシーがそのプ ログラムを自 己 のコンピューターで実 行 できるというものである。このプログラム使 用 許 諾 契 約 は、無 名 契 約 であり、その契 約 の法 的 性 質 は実 態 を法 律 に照 らしあわせて考 える ほかない。プログラムの使 用 許 諾 契 約 は、著 作 権 の支 分 権 のライセンス、つまり利 用 許 諾 契 約 であると解 釈 されるが、当 事 者 は特 に著 作 権 の利 用 許 諾 であるという意 思 は 18 中 山 ・前 掲 注 (16)2 頁 無 論 、実 際 に技 術 指 導 や資 料 の譲 渡 を伴 う特 許 権 通 常 実 施 権 許 諾 契 約 というものも存 在 するが、 それは内 容 としては、その技 術 指 導 や資 料 の譲 渡 を受 けることが主 たる目 的 であり、特 許 権 はそれら の情 報 に付 された権 利 であると見 るべきである。 19 8 もっていない 20 。また、これらの契 約 によって提 供 されるプログラムがすべて著 作 物 である とも限 らない。使 用 許 諾 契 約 は、許 諾 されるプログラムが著 作 物 であろうと非 著 作 物 で あろうと大 きく異 なるところはなく、主 要 な部 分 はほぼ同 じである。無 論 、個 々の事 情 によ り異 なる部 分 はあるが、それは著 作 物 であるか否 かによるものではなく、そのプログラム の機 能 、期 待 される使 用 方 法 などによる差 異 である。 一 般 的 な使 用 許 諾 契 約 書 は、次 のような内 容 で構 成 されている 21 。 ・ 使用許諾 ・ 契約期間 ・ 複製 ・ 譲渡 ・ 貸 与 、再 許 諾 ・ 改 変 、翻 案 ・ リバースエンジニアリング ・ 保証 ・ 免責 ・ 契 約 の解 除 ・ 著 作 権 の表 示 ・ 輸出規制 ・ 管轄裁判所 本 稿 においては、以 上 の条 項 のうち、一 般 的 な条 項 や宣 言 ・確 認 的 な条 項 を除 き、 契 約 のライセンスに関 りある内 容 を示 しているものと考 えられる主 要 な条 項 を個 別 に検 討 する。 Ⅱ-1-2 シュリンクラップ方 式 による問 題 マスマーケットにおけるプログラムの使 用 許 諾 契 約 は、その多 くのものにシュリンクラッ プ方 式 やクリックオン(クリックラップ)方 式 の契 約 書 が用 いられている。 シュリンクラップ方 式 あるいはクリックオン方 式 の契 約 には、さまざまな問 題 が指 摘 され ているが 22 、その大 半 は契 約 の成 立 に関 するものであり、各 条 項 の内 容 の有 効 性 に関 20 久 保 田 裕 「パソコンプログラム(ソフトウエア)の使 用 許 諾 契 と著 作 権 」斎 藤 博 ・牧 野 利 秋 編 『裁 判 実 務 体 系 第 27 巻 知 的 財 産 関 係 訴 訟 法 』692 頁 (青 林 書 院 、1997 年 )では、「しかし、ソフトウェア は、その「使 用 」にこそ価 値 があるものであり、この点 において、絵 画 、音 楽 、小 説 といった従 来 の著 作 物 を保 護 する著 作 権 法 にうまくなじまない部 分 も出 てくるのである。」と述 べている。 21 本 項 における使 用 許 諾 契 約 の条 項 は、主 に次 の資 料 を参 考 にした。 ・藤 原 宏 高 ・平 出 晋 一 『プログラマのための最 新 著 作 権 法 入 門 』203 頁 (技 術 評 論 社 、1991 年 )掲 載 の日 本 電 気 株 式 会 社 の使 用 許 諾 契 約 書 ・久 保 田 ・前 掲 注 (20) 696 頁 掲 載 の使 用 許 諾 契 約 書 実 例 一 および二 。 ・日 本 電 子 出 版 協 会 ・マックス法 律 事 務 所 著 『デジタル時 代 の著 作 権 ビジネス契 約 実 務 マニュアル』 225 頁 以 下 (インプレス、1999 年 )に掲 載 のシュリンク・ラップ契 約 のひな型 。 ・マイクロソフト株 式 会 社 『マイクロソフト ソフトウェア製 品 のライセンスポリシーハンドブック』(マイクロソ フト、1999 年 版 )(このハンドブックは、マイクロソフト株 式 会 社 のホームページからダウンロードできる。 URL は、次 のとおり。(http://www.microsoft.com/JAPAN/legal/license/default.htm)) 22 芹 澤 英 明 「Pro CD v. Zeidenberg の分 析 −制 定 法 解 釈 のコンテクスト論 ・その二 −」法 学 61 巻 2 号 214 頁 以 下 (1997 年 )、那 須 詳 司 「ソフトウェア使 用 許 諾 契 約 論 ―シュリンクラップ・ライセンス契 約 9 するものでない。本 稿 の目 的 は、契 約 条 項 の有 効 性 を検 討 することであることから、契 約 の成 立 に関 する問 題 は取 り上 げないこととする。古 来 、音 楽 や絵 画 などの創 作 者 を 保 護 し、生 活 を保 証 してきたパトロンに変 わって、創 作 者 の収 入 を確 保 するという面 から すると、著 作 権 制 度 は、大 衆 から薄 く広 く対 価 を得 ることとを前 提 にしている。すなわち、 その創 作 物 を大 量 かつ広 範 囲 に流 通 させなければならない以 上 、契 約 を画 一 的 に処 理 する何 らかの工 夫 が必 要 となる。ライセンサーとしては、多 くのユーザーに対 して、そ れぞれ別 々の取 引 条 件 でライセンスを行 うことは、非 常 に困 難 であるからである。 すでに指 摘 されているような、現 状 のシュリンクラップ方 式 あるいはクリックオン方 式 の 契 約 締 結 過 程 には改 めなければならない部 分 が存 在 するとは考 えるが、逆 にそういっ た部 分 が改 められれば、シュリンクラップ方 式 の使 用 許 諾 契 約 を否 定 する必 要 はないし、 大 量 かつ画 一 的 に契 約 を処 理 できるという点 で、情 報 流 通 のためのメリットも大 きいと考 えられる。つまり、どのような方 式 が最 終 的 に取 られるにしろ、情 報 流 通 を前 提 にした場 合 、約 款 のような形 で契 約 を処 理 することは不 可 避 である。 契 約 条 項 の有 効 性 に関 する議 論 としては、任 意 法 規 の秩 序 づけ機 能 をベースとして、 契 約 条 項 の内 容 規 制 を行 おうするものがある 23 。これは、任 意 法 規 の修 正 は対 等 な当 事 者 による合 意 によってなし得 るのであり、約 款 のように一 方 の当 事 者 により契 約 条 項 が決 められる場 合 、任 意 法 規 の修 正 には、正 当 化 または合 理 的 理 由 が必 要 とされると するものである。この考 え方 に添 えば、使 用 許 諾 契 約 の各 条 項 のうち、著 作 権 法 の権 利 制 限 条 項 を修 正 するような条 項 を有 効 とするには、正 当 化 または合 理 的 な理 由 が必 要 になる。これについては、Ⅱ-2 において、個 別 に検 討 することとする。 Ⅱ-2 使 用 許 諾 契 約 の条 項 の検 討 Ⅱ-2-1 使 用 許 諾 使 用 許 諾 契 約 においては、通 常 、1台 のコンピューターのみで使 用 すること、および LAN 24 での使 用 制 限 が記 述 される。ライセンサーや製 品 によっては、同 時 に使 用 しない ことを条 件 に、複 数 のコンピューターへのインストールを認 めるものもある。 著 作 権 法 第 47 条 の 2 第 1項 を根 拠 とした複 数 コンピューターへのインストール 25 や、 個 人 の場 合 、第 30 条 第 1項 にもとづく私 的 複 製 により、複 数 のコンピューターへのイン ストールを避 ける目 的 があると考 えられる。LAN での使 用 制 限 は、プログラムをサーバー に置 き、プログラムを使 用 する場 合 には、ネットワーク接 続 により端 末 コンピューターが都 度 ダウンロードして実 行 する方 式 を排 除 するものであろう。日 本 の著 作 権 法 の解 釈 上 、 を中 心 に―」工 業 所 有 権 法 研 究 40 巻 2 号 1頁 以 下 (1998 年 )、同 41 巻 1 号 1 頁 以 下 (1999 年 )、 曽 野 裕 夫 「情 報 契 約 における自 由 と公 序 」アメリカ法 1999-2 号 184 頁 以 下 (1999 年 )など 23 那 須 ・前 掲 注 (22)13 頁 以 下 24 Local Area Network の略 。構 内 情 報 通 信 網 などと呼 ばれる。著 作 権 法 との関 係 では、公 衆 送 信 の例 外 である「有 線 電 気 通 信 設 備 で、その一 の部 分 の設 置 の場 所 が他 の部 分 の設 置 の場 所 と同 一 の構 内 (その構 内 が二 以 上 の者 の占 有 に属 している場 合 には、同 一 の者 の占 有 に属 する区 域 内 ) にあるものによる送 信 (プログラムの著 作 物 の送 信 を除 く。)を除 く。」に相 当 する。 25 著 作 権 法 第 47 条 の 2 を根 拠 として、複 数 コンピューターへのインストールは許 されないとするのが 通 説 であるようである(加 戸 守 行 『著 作 権 法 逐 条 講 義 三 訂 新 版 』292 頁 (著 作 権 情 報 センター、 2000 年 )、中 山 信 弘 『ソフトウェアの法 的 保 護 (新 版 )』83 頁 (有 斐 閣 、1988 年 ))が、ライセンサーとし ては念 を押 している、という意 味 合 いもあろう。 10 「一 時 的 蓄 積 は複 製 に当 たらない」とする説 が有 力 であることから、この規 定 を置 いたも のと考 えられる。平 成 11 年 改 正 により、公 衆 送 信 権 が創 設 されたため、プログラム全 体 をダウンロードして端 末 コンピューターで実 行 する方 式 は、著 作 権 法 上 も違 法 となること となり、その意 味 ではこの条 項 を置 く意 義 は減 ったと見 ることはできる。しかし、端 末 コン ピューターに固 定 記 録 装 置 を有 せず、プログラムのうち実 行 のために必 要 なモジュール を処 理 の都 度 、RAM 26 に読 み込 む方 式 のものでは、公 衆 送 信 にあたらないと解 する余 地 があるため、この点 においてはなお意 味 があるものと考 えられる 27 。 使 用 許 諾 は、ライセンス契 約 におけるライセンサーからの給 付 の根 幹 を為 すものであ るから、その妥 当 性 は、原 則 として対 価 との関 係 において考 えられるものであり、契 約 自 由 の原 則 のもとで、使 用 方 法 にいかなる制 限 を課 すことも原 則 として自 由 であろう。 (もっとも、最 近 のプログラムの実 行 には複 製 が伴 うため、上 述 したように、使 用 制 限 の 方 法 によっては著 作 権 法 の権 利 制 限 条 項 と交 錯 する。この問 題 は、第 2 項 の複 製 条 項 のところで検 討 する。)この結 論 は、使 用 許 諾 の対 象 が著 作 物 であるか、非 著 作 物 で あるかを問 わず、同 じである。 このほかに、使 用 許 諾 を巡 る問 題 としては、そもそも著 作 権 にもとづく「利 用 権 」ではな く、「使 用 権 」を許 諾 するのがおかしいのではないかという問 題 があるが、これは複 製 権 や上 映 権 などの物 権 的 権 利 として「使 用 権 」なる権 利 を捉 えるからおかしく見 えるので あって、使 用 許 諾 契 約 の内 容 によってライセンシーに許 諾 された行 為 の集 合 体 として 「使 用 」という概 念 を捉 えれば何 ら著 作 権 法 と不 整 合 はないものと考 える。当 事 者 がさほ ど著 作 権 というものを意 識 していないということからすると、このように解 するほうが取 引 の 実 情 にも合 致 していると言 える。 Ⅱ-2-2 複 製 使 用 許 諾 契 約 においては、複 製 を全 面 禁 止 またはバックアップの目 的 で 1 部 のみ複 製 することを認 め、それ以 外 は禁 止 するのが通 常 である。これは、(1)の場 合 と同 様 に著 作 権 法 第 30 条 第 1項 の私 的 複 製 や著 作 権 法 第 47 条 の 2 第 1項 による複 製 を制 限 す る目 的 と考 えられる。 バックアップ目 的 の複 製 は、もともと記 録 メディアが損 傷 に弱 いために、これへの自 衛 策 としてユーザーがバックアップをとることが常 識 であることから、著 作 権 法 がこれを認 め たものと解 する。技 術 の向 上 により、記 録 メディアの信 頼 性 が向 上 したため、バックアッ プは不 要 という意 見 もあるようであるが、最 近 は、ライセンサーより供 給 されたプログラム の記 録 メディアのバックアップを取 るよりは、複 雑 化 かつ大 規 模 化 したコンピューターシ ステムの運 用 性 向 上 のため、固 定 記 憶 装 置 にインストールされたプログラムやデータを まるごとバックアップしてしまう方 式 のほうが主 流 と思 われる。この場 合 は、ライセンサーか 26 Random Access Memory の略 。揮 発 性 メモリーが用 いられることが大 半 であり、記 録 内 容 は、コン ピューターの処 理 の進 行 により、常 時 更 新 されていくものである。コンピューターをリセットないし電 源 を切 れば、通 常 、記 録 内 容 は消 去 される。 27 このような使 用 方 法 への対 策 を意 図 しているか否 かは不 明 であるが、RAM への一 時 的 蓄 積 も複 製 と見 なす規 定 を置 くべきだという主 張 もあるようである。ただ、主 たるプログラムをスタートさせるモ ジュールを自 ら開 発 してしまえば、仮 に一 時 的 蓄 積 を複 製 とみなしたとしても、なお問 題 は残 る。 11 ら供 給 されたプログラムをそのまま複 製 しているわけではないが、バックアップデータには、 当 該 プログラムの主 要 な部 分 は含 まれているので、著 作 権 法 にいう複 製 に当 たる。さら に、使 用 許 諾 契 約 には、プログラムの使 用 の結 果 生 じたデータの逸 失 などの結 果 責 任 は負 わない旨 の免 責 条 項 が設 けられていることが通 常 であ り、プログラムをコンピュー ターで実 行 している際 に、何 らかの理 由 でデータなどを失 ってしまうことがあることをライ センサーが予 期 しているとも言 える。現 実 に、信 頼 性 が高 いと考 えられる金 融 機 関 や通 信 会 社 のコンピューターシステムがダウンして、サービスがしばらく利 用 できなくなるとい うことも、年 に1度 か2度 は報 道 で目 にする。このような現 状 からすると、なおコンピュー ターシステムにおけるバックアップの重 要 性 は変 化 していないと見 るべきであろう。この 点 については、消 費 者 、事 業 者 を問 わないと考 える。 複 製 制 限 条 項 を巡 る問 題 としては、著 作 権 法 第 30 条 および第 47 条 の 2 第 1項 が強 行 法 規 なのか否 かという問 題 になる。第 47 条 の 2 第 1項 に関 しては、任 意 規 定 であると の見 解 が多 いようである 28 。これに対 し、消 費 者 取 引 のような場 合 には、強 行 法 規 と解 するべきだとの意 見 もある 29 。 前 述 したように、現 状 のコンピューターシステムの運 用 を考 えると、バックアップをも禁 止 する弊 害 はあまりにも大 きいと思 われる。欧 州 で 1991 年 に採 択 された「コンピューター プログラムの法 的 保 護 に関 する理 事 会 指 令 」において、バックアップコピーを禁 ずる契 約 条 項 は無 効 としているのもこのような評 価 が背 景 にあるものと考 えられる。したがって、 バックアップのための複 製 をも禁 ずる条 項 は、現 状 を無 視 したものであって、無 効 と解 す るべきであろう。 さらに一 歩 進 んで、バックアップ以 外 の目 的 における複 製 であるが、事 業 者 における 複 数 コンピューターへのインストールを前 提 とした複 製 を許 す必 要 がないのはほぼ間 違 いないであろう。実 際 、著 作 権 法 第 47 条 の 2 第 1項 の下 でもこれは許 されないというの が通 説 である 30 。ただし、私 人 における複 数 コンピューターへのインストールについては、 若 干 考 慮 の余 地 があると考 える。最 近 のパソコンの普 及 により、1 人 でデスクトップパソコ ンと携 帯 用 パソコンの 2 台 を持 つ人 も少 なくはない。また、親 と子 でそれぞれ別 々にパソ コンを保 有 する家 庭 も少 なくない。このような人 または家 庭 に、高 価 なソフトウェアを複 数 本 購 入 させるというのは、少 々酷 である気 がしないでもない。後 者 の場 合 はともかく、前 者 のケースでは、パソコンは複 数 台 でもユーザーは 1 人 であり、1 人 が同 時 に別 々のパ ソコンを使 用 するのは困 難 であることを考 えると、このような場 合 には、複 数 コンピュー ターへのインストールを認 めても良 いのではないかと考 えられなくもない。この問 題 は、個 人 を前 提 としているため、第 47 条 の 2 第 1項 の問 題 ではなく、第 30 条 第 1項 の私 的 複 製 の問 題 として扱 うほうが適 当 であろう。 私 的 複 製 は、制 限 されてもよいのではないかという考 え方 のほうが多 数 意 見 であるよう な印 象 を受 けているが、むしろ私 は、私 的 複 製 こそ制 限 すべきではないのではないか、 28 中 山 ・前 掲 注 (25)78 頁 、紋 谷 暢 男 ほか『プログラム著 作 権 とは何 か』130 頁 (有 斐 閣 、1988 年 )、 植 松 宏 葦 『改 訂 新 版 コンピュータプログラム著 作 権 Q&A』178 頁 以 下 (きんざい、2000 年 )など。 29 渡 邉 倫 子 「情 報 財 取 引 における公 衆 向 け定 型 ライセンス契 約 の有 効 性 〜著 作 権 法 の視 点 から の考 察 〜」コピライト 2001 年 3 月 号 17 頁 30 前 掲 注 (25)参 照 12 と考 えている。私 的 複 製 により、著 作 権 者 が多 大 な損 害 を被 っているとの意 見 もあるが、 そういった損 害 は私 的 複 製 そのものではなく、私 的 複 製 により作 成 された著 作 物 の複 製 物 が著 作 物 の所 有 者 から他 人 に譲 渡 、貸 与 などされていることに起 因 するものである。 公 衆 に該 当 しないとしても、友 人 知 人 に、片 端 から複 製 物 を渡 すような現 実 があるので あれば、そのような複 製 は確 かに著 作 権 者 に損 害 を与 えるであろうが、これは、すでに 私 的 複 製 の範 囲 を超 えた行 為 である。一 人 の人 物 が音 楽 CD を購 入 し、それをミニディ スクに複 製 して散 歩 しながら聴 こうが、パソコンで MP3 ファイルにして、ワープロソフトで 書 き物 をしながら BGM として聴 こうが、あくまでも個 人 (および家 族 )程 度 に留 まっている うちには、たとえ複 製 物 を 100 枚 作 成 しても、著 作 権 者 が法 的 に填 補 されるべき実 際 の 損 害 を被 っているとは考 えにくい 31 。もし、私 的 複 製 の範 囲 が拡 大 解 釈 され、本 来 の趣 旨 にそぐわないような複 製 がまかりとおっているような現 実 が存 在 するのであれば、私 的 複 製 の範 囲 をより厳 格 に解 釈 し 32 、その解 釈 の明 確 化 を計 ったうえで、私 的 複 製 を認 め る著 作 権 第 30 条 第 1項 を強 行 法 規 と解 すべきではないかと考 える。 したがって、使 用 許 諾 の対 象 が著 作 物 である場 合 、複 製 の制 限 により、バックアップま でも禁 止 するようなものは、第 47 条 の 2 第 1項 を強 行 法 規 と解 するか、禁 止 する合 理 的 な理 由 がなく約 款 によって任 意 法 規 を修 正 しているものとして、無 効 と解 するべきである。 また、私 的 複 製 を禁 止 するような契 約 条 項 は、第 30 条 第 1項 を強 行 法 規 と解 して、無 効 と解 すべきである。ただし、コピープロテクトと併 用 した私 的 複 製 禁 止 条 項 は、第 30 条 第 1項 第 2 号 の例 外 規 定 により、私 的 複 製 との関 係 では有 効 と解 さざるを得 ない。 使 用 許 諾 の対 象 が非 著 作 物 である場 合 、著 作 権 法 の権 利 制 限 規 定 の問 題 が生 じな いから、複 製 禁 止 条 項 は有 効 になる。ただし、バックアップまでもが禁 止 されてしまうの は、上 述 したような状 況 からすると不 合 理 である。 Ⅱ-2-3 譲 渡 使 用 許 諾 契 約 においては、譲 渡 をすべて禁 止 するか、またはコピーをすべて廃 棄 す ることおよび譲 受 人 が使 用 許 諾 契 約 に同 意 することを条 件 に譲 渡 を認 める場 合 が見 ら れる。また、譲 渡 を認 めているものでも譲 渡 回 数 を制 限 しているものもある。 ライセンサーの主 たる目 的 は、中 古 品 の流 通 などによる販 売 機 会 の減 少 を避 けること であると考 えられる。この他 の目 的 としては、譲 渡 した場 合 、譲 受 人 は、そのソフトウェア を新 規 に利 用 することになることから、ユーサーサポートの負 担 が大 きくなることが予 想 さ れる 33 。譲 渡 回 数 を制 限 しようというものは、サポートの負 担 を避 けまたは負 担 を軽 減 す ることを狙 っているものと考 える。 平 成 11 年 の著 作 権 法 改 正 により新 設 された譲 渡 権 の消 尽 に関 する規 定 (著 作 権 法 31 個 人 が複 数 台 のパソコンを持 っていて、その台 数 分 コピーして、インストールすれば、形 としては、 ライセンサーは、コピー分 販 売 機 会 を逸 したと言 えるかもしれない。現 実 には、その個 人 は、プログラ ムをコピーできなければ、そのプログラムを1台 のパソコンだけで使 い、他 のパソコンにはインストールし ないであろう。そういう意 味 では、販 売 が伸 びる可 能 性 は大 きくない。 32 加 戸 ・前 掲 注 (25)216 頁 では、「本 条 の立 法 趣 旨 が閉 鎖 的 な範 囲 内 の零 細 な利 用 を認 めるという ことにあることからすれば、度 を過 ぎた行 為 は本 条 の許 容 する限 りではないと厳 格 に解 釈 するべきで あります。」と述 べられており、私 もこれに賛 同 する。 33 ユーザーサポートにとっての最 大 の負 担 は、初 心 者 のサポートであることは言 うまでもない。 13 第 26 条 の 2 第 2 項 )は、強 行 法 規 であると考 えられており 34 、したがって譲 渡 禁 止 条 項 は無 効 になる。 問 題 は 、 使 用 許 諾 契 約 に「 ソフ ト ウェアを 販 売 したの で はなく、 使 用 許 諾 する もので す」との文 言 を入 れている契 約 における場 合 である。すなわち、ライセンサーの意 図 とし ては、複 製 物 を販 売 したのではなく、使 用 許 諾 契 約 によりユーザーに対 し「使 用 権 」を 付 与 し、その使 用 権 を付 与 したことに附 帯 して、プログラムを提 供 しているのに過 ぎない、 ということであろう。これは、ライセンシーが「複 製 物 の所 有 者 」ではなく、著 作 権 法 第 47 条 の 2 第 1項 の適 用 がないこと、また、プログラムを再 譲 渡 できないことを法 的 に根 拠 づ けようとする意 図 があると考 えられる。このように複 製 物 の所 有 権 を移 転 しない理 論 構 成 は、後 述 の改 変 、翻 案 の禁 止 条 項 などのバックボーンでもある。 この考 え方 をベースにすれば、プログラムをライセンシーが第 三 者 に譲 渡 することは、 契 約 上 の地 位 の移 転 である。契 約 上 の地 位 に移 転 に関 して、相 手 方 の同 意 が必 要 か 否 かについては、負 担 している債 務 が相 手 方 にとって、重 要 か否 かという点 にあるものと 考 えられる。債 務 が未 履 行 の売 買 契 約 においては、同 意 が必 要 と解 されている 35 。マス マーケットの使 用 許 諾 契 約 については、形 式 的 には、ライセンサーが継 続 的 に「使 用 権 」を提 供 しつづける債 務 やサポートの債 務 を負 ってはいるものの、対 価 の支 払 いは完 了 し、プログラムも現 実 に提 供 されている以 上 、主 たる債 務 は完 了 している。したがって、 債 務 履 行 能 力 の変 化 に対 する当 事 者 の利 害 関 係 は小 さく、別 段 、ライセンサーの承 諾 なく地 位 を移 転 しても実 害 は生 じないはずである。しかしながら、この考 え方 は法 律 上 の 明 文 規 定 があるわけでもなく、また、実 務 においてはライセンス契 約 に限 らず、相 手 方 の 同 意 がない限 り契 約 上 の地 位 は移 転 できないという文 言 を入 れるのが通 常 であり、契 約 上 の地 位 の移 転 を契 約 条 項 で禁 止 することを無 効 とすることは相 当 ではないと考 え る。 しかし、パッケージをパソコンショップなどで購 入 するような形 態 のプログラムの使 用 許 諾 契 約 において、「ソフトウェアを販 売 したのではなく、使 用 許 諾 するものです」ということ は、あまりにも一 方 的 である。ライセンサーがそのような意 図 であったとしても、ライセン シーは「パッケージを購 入 した」という意 識 であり、ライセンシーの「プログラムの複 製 物 を 所 持 し てい ない」と いう 主 張 は 、 あまり にも 一 方 的 な 意 思 であ ると 言 える 。した が って、 パッケージ販 売 の形 態 で提 供 されたプログラムについては、「ソフトウェアを販 売 したの ではなく、使 用 許 諾 するものです」という文 言 の有 無 を問 わず、ライセンシーはプログラ ムの複 製 物 の所 有 者 であると解 するべきであろう。 したがって、使 用 許 諾 の対 象 物 が著 作 物 である場 合 のうち、パッケージ販 売 形 態 であ る場 合 は、著 作 権 法 第 26 条 の 2 第 2 項 の規 定 に照 らして、譲 渡 禁 止 条 項 は無 効 であ る。パッケージ販 売 でなく、複 製 物 の移 転 を伴 わないもの、例 えば、送 信 によりプログラ ムが提 供 された場 合 などは、著 作 権 法 第 26 条 の 2 第 2 項 が適 用 されないため、ライセ ンシーとしての契 約 上 の地 位 を移 転 することを禁 ずる趣 旨 の条 項 は有 効 であり、プログ ラムを再 配 布 することは許 されない。 34 35 加 戸 ・前 掲 注 (25)192 頁 内 田 貴 『民 法 III』222 頁 (東 京 大 学 出 版 会 、1996 年 ) 14 使 用 許 諾 の対 象 が非 著 作 物 である場 合 、譲 渡 禁 止 条 項 を無 効 にすべき法 的 根 拠 は なく有 効 となる。ただし、上 述 したようにパッケージ販 売 の場 合 には、ライセンシーは対 象 物 を「購 入 した」という意 識 であるから、「なぜ自 分 の物 を他 人 に譲 渡 してはいけない のか」という疑 問 が生 じるであろう。 Ⅱ-2-4 貸 与 、再 許 諾 使 用 許 諾 契 約 においては、貸 与 ・再 許 諾 をすべて禁 止 することが一 般 的 である。 これらの条 項 の意 図 は、Ⅱ-2-3 で述 べた譲 渡 制 限 の場 合 とほぼ同 じである。自 分 は コピーを使 用 して、元 の複 製 物 を他 人 に貸 与 したり、再 許 諾 したりすることを防 ごうとす るものと考 えられる。また、ユーザーサポートの負 担 増 についても譲 渡 制 限 と同 様 に考 えられる。 貸 与 36 の制 限 については、譲 渡 と同 様 な論 理 が考 えられ、したがって、パッケージ販 売 などのようにプログラムの複 製 物 をライセンシーが所 有 しているような場 合 では、公 衆 への貸 与 でない限 り、禁 ずることはできないと解 釈 すべきである。譲 渡 と異 なるのは、短 いサイクルで貸 与 を繰 り返 すことで、実 質 的 に複 数 ユーザーでプログラムを使 用 できて しまう可 能 性 があることである。公 衆 への貸 与 ではなく、同 一 人 物 に複 数 回 数 に渡 って、 必 要 な都 度 貸 し借 りを行 うような場 合 が考 えられる。もっとも、このような繁 雑 なことを多 く の人 々が行 うとも思 えないし、また、返 却 したときに、自 己 のコンピューターにプログラム がインストールしたままであるような場 合 には、複 製 権 侵 害 になる。 また、貸 与 を受 けたものは、「プログラムの所 有 者 に該 当 しない」と考 えられているため 37 、第 47 条 の 2 第 1項 の適 用 がなく、コンピューターの固 定 記 憶 装 置 にインストール(複 製 )することはできず、記 録 メディア上 から実 行 することしかできない。記 録 メディア上 か ら実 行 できないタイプのプログラムであれば、貸 与 を受 けても使 用 できないことになる。 貸 与 を 受 け た も の が 私 人 と し て 用 い る 場 合 に は 、 第 30 条 第 1 項 の 適 用 に よ り 、 コ ン ピューターの固 定 記 憶 装 置 にインストールできる。 再 許 諾 については、特 定 の一 人 に再 許 諾 するというよりは、複 製 して多 数 人 にライセ ンスするような場 合 を想 定 しているものと考 えるべきであろう。このような行 為 は、契 約 条 項 がなくとも複 製 権 侵 害 を構 成 し、許 されないのは自 明 である。また、自 己 の使 用 を中 止 し、プログラムを複 製 せずに他 人 にプログラムなどを渡 して、再 許 諾 するというような ケースは、譲 渡 または貸 与 のいずれかと同 様 に判 断 すればよいと考 える。譲 渡 か貸 与 の区 別 は、再 許 諾 の終 了 時 に再 許 諾 の対 象 物 を返 却 する義 務 の有 無 で判 断 する。し たがって、自 己 の使 用 を中 止 し、他 人 に再 許 諾 するような行 為 の禁 止 条 項 の有 効 性 は、 譲 渡 禁 止 条 項 または貸 与 禁 止 条 項 と同 様 に解 釈 される。 以 上 の考 え方 により、使 用 許 諾 の対 象 が著 作 物 である場 合 、公 衆 への貸 与 にあたら ない貸 与 を禁 止 する条 項 は無 効 と解 すべきである。根 拠 は、譲 渡 禁 止 の場 合 と同 様 に、 第 47 条 の 2 第 1項 を強 行 法 規 と解 するか、任 意 規 定 であるとしても、任 意 規 定 の修 正 に合 理 的 な理 由 がないというものである。再 許 諾 を禁 止 する条 項 は、自 らは使 用 せず、 36 ここでの「貸 与 」とは、公 衆 への貸 与 を含 まない。公 衆 への貸 与 は、本 条 項 がなくても貸 与 権 との 関 係 で禁 止 される。 15 プログラムを複 製 せずに他 人 に再 許 諾 するような場 合 は、再 許 諾 の実 態 により、譲 渡 ま たは貸 与 とみなして有 効 性 を判 断 すればよいと考 える。 使 用 許 諾 の対 象 が非 著 作 物 である場 合 には、貸 与 禁 止 条 項 や再 許 諾 禁 止 条 項 を 無 効 とするべき法 的 根 拠 はなく有 効 となる。パッケージ販 売 の場 合 、ライセンシーの意 識 から生 じる疑 問 が残 るという点 はⅡ-2-3 の場 合 と同 じである。 Ⅱ-2-5 改 変 、翻 案 使 用 許 諾 契 約 においては、改 変 ・翻 案 を禁 止 することが一 般 的 である。 著 作 権 法 第 20 条 第 2 項 第 3 号 による改 変 および第 47 条 の 2 第 1項 の定 めによる 翻 案 を禁 止 することを目 的 としているものと考 えられる。ライセンサーのメリットとしては、 ユーザーサポートの負 担 を軽 減 すること 38 、改 変 を認 めた場 合 に改 変 によって生 じた不 具 合 に起 因 する損 害 についての、瑕 疵 担 保 責 任 または不 法 行 為 責 任 などを回 避 する こと 39 などを目 的 としているのではないかと考 えられる。また、翻 案 の結 果 作 成 されたプロ グラムの著 作 権 の問 題 も考 えられる。改 変 ・翻 案 されたプログラムの著 作 権 は、次 のよう に考 えられる 40 。①改 変 の程 度 が低 く、創 作 性 があるとは認 められないものについては、 元 の著 作 者 に帰 属 する。②翻 案 の結 果 、新 たな創 作 性 を付 加 されたものと見 られるも のについては、二 次 的 著 作 物 として、元 の著 作 権 者 の権 利 が及 ぶものの、二 次 的 著 作 物 の創 作 者 に帰 属 する。③さらに翻 案 の程 度 が大 きく、原 著 作 物 とは相 当 にかけ離 れ たもの(本 質 的 特 徴 を感 得 することができないもの)が出 来 上 がったときには、もはや元 の著 作 権 者 の権 利 が及 ばず、翻 案 を為 した創 作 者 に単 独 で著 作 権 が帰 属 する。 ③のようなプログラムは、元 のプログラムの競 合 製 品 になる可 能 性 を持 っているため、 これを防 止 する目 的 があるとも考 えられる 41 。 改 変 禁 止 条 項 の有 効 性 について、著 作 権 法 上 の問 題 は、基 本 的 には第 47 条 の 2 第 1項 の問 題 であり、この問 題 についてはⅡ-2-2 ですでに述 べた。 複 製 のケースでのバックアップのように、実 情 から考 えて不 可 欠 である可 能 性 がある他 の行 為 としては、異 機 種 に移 行 するためのプログラムの改 変 、翻 案 が考 えられる 42 。 通 常 、自 己 使 用 のために著 作 物 を改 造 する行 為 は、第 20 条 第 2 項 第 3 号 に 該 当 する場 合 を除 けば、同 一 性 保 持 権 の侵 害 になるものと考 えられているようである 43 。 37 中 山 ・前 掲 注 (25)75 頁 ユーザーが改 変 した事 実 を説 明 せずに、不 具 合 などを報 告 してくる場 合 などが予 想 できるのでこ れを防 止 する効 果 を狙 っているものと考 えられる。 39 製 造 物 責 任 において、合 理 的 に予 想 される製 品 の改 造 や誤 った操 作 方 法 などについては、これ に適 切 な対 策 (設 計 上 の工 夫 や警 告 の表 示 など)をしなかった場 合 、製 造 物 責 任 を負 うことになると いう考 え方 がある。この考 え方 が、ソフトウェアにそのまま適 用 されるかどうかの問 題 はあるが、このよう な責 任 をあらかじめ回 避 しておくことを狙 っていると考 えられる。 40 植 松 ・前 掲 注 (28)196 頁 以 下 41 もっとも、このような著 作 物 はいわば、「元 の著 作 物 を参 考 にした程 度 」と見 られるため、改 変 ・翻 案 禁 止 条 項 がこのような著 作 物 に対 してまで実 効 性 があるかは疑 問 がある。 42 中 山 ・前 掲 注 (25)81 頁 注 5 では、ソフトウェアのコストがハードウェアのコストより大 きいことから、 ハードウェアリプレースの場 合 に既 存 のソフトウェアをそのままかまたは手 直 しして利 用 できないと事 実 上 リプレースは不 可 能 になる、と述 べている。 43 単 純 に自 己 使 用 のケースでなく、自 己 使 用 のためのツールなどを提 供 した事 業 者 が同 一 性 保 持 権 侵 害 に対 する寄 与 侵 害 を理 由 として差 止 、損 害 賠 償 を負 ったケースがある。(「ときめきメモリアル 38 16 これには異 論 も多 く、「書 籍 に書 き込 みをしたからといって、著 作 者 は一 体 どんな損 害 を 受 けるのか」という端 的 な意 見 がある 44 。実 際 問 題 として、第 三 者 に頒 布 できるわけでも なく 45 、また、当 該 プログラムの著 作 者 が改 変 内 容 を知 り得 るわけでもないので、著 作 者 の心 情 を害 したり、名 誉 を傷 つけるといったことも考 えにくい。したがって、情 報 の効 率 的 利 用 の観 点 からも、同 条 に定 めるような改 変 ・翻 案 行 為 を自 由 に認 めても問 題 はな いと考 える。 使 用 許 諾 の対 象 物 が著 作 物 である場 合 、第 47 条 の 2 第 1項 を強 行 法 規 と解 するか、 任 意 法 規 であるとしても約 款 による一 方 的 な修 正 であり、当 事 者 間 の対 等 な契 約 交 渉 による修 正 ではないがゆえにその修 正 に正 当 化 または合 理 的 な理 由 が存 在 しない、と 考 え、改 変 ・翻 案 禁 止 条 項 を無 効 とするべきである。 使 用 許 諾 の対 象 物 が非 著 作 物 である場 合 、著 作 権 法 の権 利 制 限 規 定 の問 題 が生 じないから、改 変 ・翻 案 禁 止 条 項 は有 効 になる。ただし、自 己 使 用 のための改 変 ・翻 案 までもが禁 止 されてしまうのは、上 述 したような状 況 からすると不 合 理 である。 また、改 変 、翻 案 の禁 止 は、独 占 禁 止 法 上 の問 題 を生 じるが、この問 題 については、 リバースエンジニアリングの問 題 と密 接 な関 係 があることから、Ⅱ-2-6 で検 討 する。 Ⅱ-2-6 リバースエンジニアリング 使 用 許 諾 契 約 においては、リバースエンジニアリングを禁 止 することが一 般 的 である。 リバースエンジニアリングそのものが著 作 権 法 上 許 されるかどうかについては、学 説 上 は許 されるとの説 が通 説 のようである 46 。ただし、特 許 法 と異 なり、著 作 権 法 上 は明 文 の 規 定 がないため、リバースエンジニアリングを実 際 に行 う場 合 の複 製 行 為 をどのように合 法 と位 置 づけるかについては、諸 説 があるようである。 リバースエンジニアリングが実 際 にどのような行 為 なのかについては、かなりの文 献 で 説 明 されている 47 。もっとも広 い意 味 でのリバースエンジニアリングは、プログラムを動 作 させてみる、マニュアルの分 析 などが含 まれる。このような行 為 は、プログラムを使 用 する ことと変 わりないため、著 作 権 法 上 の問 題 は基 本 的 には起 こらないし、ライセンサーとい えどもこういった行 為 までを禁 止 できるとは考 えていないであろう。実 際 に、リバースエン ジニアリング禁 止 条 項 の表 現 として、「お客 様 は、本 ソフトウェア製 品 をリバースエンジニ アリング、逆 コンパイル、または逆 アセンブルすることはできません。 48 」というものがあり、 主 に禁 止 したい行 為 は、逆 コンパイル、または逆 アセンブルなどの行 為 と同 視 でき得 る ようなもの、すなわちプログラムの内 部 を解 析 するような行 為 を意 図 していると考 えてよい だろう 49 。 メモリーカード事 件 」最 高 裁 平 成 13 年 2 月 13 日 判 決 民 集 第 55 巻 1 号 87 頁 ) 44 半 田 正 夫 『著 作 権 法 概 説 』182 頁 (一 粒 社 、第 10 版 、2001 年 )は、同 一 性 保 持 権 がその効 力 を 発 揮 するのは著 作 権 行 使 の際 であるとしている。 45 著 作 権 法 第 49 条 第 1項 および第 2 項 46 椙 山 敬 士 『ソフトウェアの著 作 権 ・特 許 権 』50 頁 (日 本 評 論 社 、1999 年 ) 47 椙 山 ・前 掲 注 (46)29 頁 以 下 、田 村 善 之 『著 作 権 法 概 説 第 2 版 』226 頁 以 下 (有 斐 閣 、2001 年 )、 大 澤 恒 夫 『IT 事 業 と競 争 法 』74 頁 以 下 (日 本 評 論 社 、2001 年 ) 48 マイクロソフト・前 掲 注 (21)92 頁 49 マーク・ミナシ(植 木 不 等 式 訳 )『いつまでバグを買 わされるのか』123 頁 (ダイヤモンド社 、2000 年 ) 17 ライセンサーのリバースエンジニアリングを禁 ずる目 的 は、競 合 製 品 の出 現 防 止 であろ う。また、プログラムのインターフェース情 報 などの秘 匿 という点 からすると、ライセンス対 象 になっているプログラムそのものにとどまらず、周 辺 ビジネスの独 占 またはライセンス収 入 の増 大 を狙 っているかもしれない。 逆 にリバースエンジニアリングを行 おうとするライセンシーの目 的 はどのようなものであ ると考 えられるか。自 己 使 用 目 的 のリバースエンジニアリングの典 型 例 として挙 げられる のは、デバッグである。このほか、Ⅱ-2-5 で述 べた改 変 、翻 案 を効 率 よく行 う目 的 が考 えられる。これらのリバースエンジニアリングは、著 作 権 法 第 30 条 第 1項 、第 47 条 の 2 第 1項 などを前 提 にしている。 競 争 事 業 者 が、自 己 の製 品 を開 発 するためにリバースエンジニアリングを行 う場 合 は どうか。同 種 のアプリケーションプログラムを開 発 するために、そのアプリケーションが扱 う ファイルフォーマットを解 析 し、互 換 性 を持 たせる、ネットワーク上 でシステムを混 在 させ ても大 丈 夫 なようにプロトコルを一 致 させるなどが考 えられる 50 。この場 合 には、著 作 権 法 第 30 条 第 1項 や第 47 条 の 2 第 1項 は働 かないため、形 式 的 には複 製 権 侵 害 が生 じる可 能 性 がある。しかし、明 文 上 の規 定 はなくとも、リバースエンジニアリングに必 要 な 複 製 を違 法 行 為 としてしまうと、実 質 的 に著 作 権 法 でアイデアを保 護 してしまうこととなり、 解 釈 としてこれを認 める必 要 があるとの意 見 が多 いと思 われる 51 。 このような見 解 が強 い理 由 としては、競 争 法 的 な視 点 があるものと考 える。リバースエ ンジニアリングの公 益 的 な効 能 として、「技 術 の発 展 には必 須 なこと」 52 、「積 み重 ねで発 展 していく技 術 の進 歩 を促 すためには、既 存 の技 術 の研 究 、解 析 を認 める必 要 がある」 53 などと言 われている。いずれも特 許 法 第 69 条 を念 頭 に置 いた考 え方 であると思 われる が、プログラムは著 作 権 法 で保 護 されるものとはいえ、小 説 、絵 画 などと異 なり機 能 に重 点 が置 かれる著 作 物 であり 54 、科 学 技 術 と深 い関 りがある。著 作 権 法 でプログラムを保 護 している以 上 、プログラムの社 会 的 基 盤 である科 学 技 術 の発 展 のために、権 利 が一 部 制 限 されることは当 然 といってもよいだろう。大 澤 弁 護 士 は、特 許 法 69 条 の規 定 は 「特 許 制 度 に内 在 する公 共 的 な観 点 からの制 約 を定 めたものであり、一 種 の公 序 を構 成 しているものと考 えるべきではないか」と説 き、さらにプログラムの場 合 、表 現 形 式 を認 識 するためには、リバースエンジニアリングが不 可 欠 であるから、「プログラムに関 する一 定 の改 変 を明 文 で認 めている著 作 権 法 の規 定 は、公 序 を構 成 するものと考 えるべきで はないか」と説 く 55 。この説 に従 えば、自 己 使 用 目 的 のリバースエンジニアリングを禁 ずる によれば、許 諾 なしに製 品 評 価 を書 くことを禁 止 する条 項 をライセンス契 約 書 に入 れているものが あったという。このようなライセンサーは、ソフトウェアを実 用 のために実 行 するのではなく、内 部 構 造 の みならず、プログラムの外 形 的 な部 分 のリバースエンジニアリング目 的 のも含 めて、プログラムを実 行 することを禁 じたいのかもしれない。 50 ワープロソフトが扱 う文 書 フォーマットの互 換 性 の例 として、ミナシ・前 掲 注 (49)157 頁 、ホストコン ピューターのプロトコルの例 として、植 松 ・前 掲 注 (27) 160 頁 。 51 中 山 ・前 掲 注 (25)130 頁 、デニス.S.カージャラ「リバースエンジニアリングに関 する最 初 の判 例 」椙 山 敬 士 ・デニス.S.カージャラ『日 本 アメリカ コンピュータ・著 作 権 法 』40 頁 (日 本 評 論 社 、1989 年 ) 52 中 山 ・前 掲 注 (25) 127 頁 53 田 村 ・前 掲 注 (47) 228 頁 54 中 山 信 弘 『マルチメディアと著 作 権 』55 頁 (岩 波 書 店 、1996 年 ) 55 大 澤 ・前 掲 注 (47)76 頁 以 下 18 契 約 条 項 は、著 作 権 法 の改 変 を認 める規 定 は、公 序 良 俗 に反 し、無 効 になる可 能 性 があるということである。しかし、科 学 技 術 の発 展 に不 可 欠 なリバースエンジニアリングは、 自 己 使 用 のためのリバースエンジニアリングではなく、競 争 事 業 者 によって行 われるもの が多 いだろう。競 争 事 業 者 によるリバースエンジニアリングを禁 止 する契 約 条 項 は、著 作 権 法 第 20 条 第 2 項 第 3 号 、第 47 条 の 2 第 1項 を強 行 法 規 と解 しても、なお有 効 と なる。 大 澤 弁 護 士 は、競 争 事 業 者 によるリバースエンジニアリングを禁 ずる契 約 条 項 は、独 占 禁 止 法 上 にいう、公 正 競 争 阻 害 性 が大 きい上 、リバースエンジニアリングを許 すこと による競 争 促 進 的 効 果 が大 きいとする 56 。次 にこの点 を検 討 する。 独 占 禁 止 法 の違 反 要 件 の基 準 は、「ある事 業 者 が、ある特 定 の1つの市 場 において、 正 当 化 事 由 がないのに競 争 減 殺 を起 こしたり不 正 手 段 を用 いたりする行 為 」である。白 石 助 教 授 はこの基 準 を「ものさし」と呼 んでいる 57 。このものさしを用 いるには、まず「事 業 者 」と「市 場 」を検 討 しなければならない。検 討 すべき行 為 は、リバースエンジニアリング 禁 止 条 項 を使 用 許 諾 契 約 に盛 り込 むことであるから、「事 業 者 」はライセンサーである。 「市 場 」は何 か。「市 場 」を画 定 するには、「問 題 となる商 品 役 務 は何 であり、それに関 す る供 給 者 ・需 要 者 はどのような者 なのか」ということを認 定 する必 要 がある 58 。市 場 におけ る供 給 者 は、ライセンサーとその競 争 事 業 者 である。ここで、需 要 者 として、すでにライ センサーからプログラムやデータ 59 のライセンスを受 けているユーザーを考 えてみる。 ユーザーがこういったプログラムやデータをずっと使 っていれば、そこに需 要 は生 じな いのであるが、コンピューターや周 辺 機 器 が発 達 し、オペレーティングシステムがバー ジョンアップすれば、既 に使 用 しているプログラムやデータを更 新 する必 要 が生 じてくる。 そこで、ユーザーは、現 在 使 っているプログラムやデータの後 継 品 を検 討 するが、ここで 選 択 する際 の重 要 なポイントとして、今 まで使 用 してきたプログラムやデータで築 いた資 産 が引 き続 き使 用 できるか、ということがある。現 在 のコンピューターシステムは、さまざま なハードウエア、ソフトウェアで構 成 され、すべてのハードウエアやソフトウェアを一 斉 に 一 新 するということはめったにない。そうすると、新 たに導 入 するプログラムやデータが、 更 新 しないハードウエアやソフトウェアで使 用 できるかということは非 常 に重 要 である。 データの例 として、フォント 60 を考 えてみる。 ユーザーは、Aというフォントを使 っている。あるとき、今 まで使 用 していたAフォントがオ 56 大 澤 ・前 掲 注 (47)82 頁 白 石 忠 志 『独 禁 法 講 義 第 2 版 』9 頁 (有 斐 閣 、2000 年 ) 58 白 石 ・前 掲 注 (57)134 頁 59 ここでいうデータとは、プログラムの動 作 のために必 要 なデータなどである。具 体 的 には、 RGB-CMYK 変 換 データ、フォント、出 力 フォーム集 などである。 60 ここでいうフォントとは、タイプフェイスのことではない。タイプフェイスは、文 字 のデザインを指 す言 葉 である。ここでは、フォントという言 葉 を、そのタイプフェイスを元 に、コンピューターで扱 えるデータ (バイナリーコード)としたものとして用 いている。なお、このようなフォントをプログラムと見 る説 がある (大 家 ・前 掲 注 (11)31 頁 )が、正 しい解 釈 とは思 えない。通 常 、フォントのデジタルデータは文 字 を描 画 するための線 や点 の情 報 である。通 常 はオペレーティングシステムが内 蔵 するラスタライザーと呼 ば れるプログラムがフォントを読 み込 んで画 面 や紙 に文 字 の形 を出 力 する。無 論 、例 外 的 にラスタライ ザーを内 蔵 するフォントもあるかもしれないが、現 在 パソコンでポピュラーな Type1 や TrueType と呼 ば れるフォントは、ラスタライザーを内 蔵 していない。 57 19 ペレーティングシステムのアップグレードにより使 用 できなくなった。後 継 のフォントを探 さ なければならない。Aフォントのライセンサー αは、新 しいオペレーティングシステム用 の フォントとして、Aフォントの後 継 バージョンを商 品 ラインナップとして持 っている。 βと いう 事 業 者 がいる。比 較 的 最 近 参 入 した事 業 者 でシェアは大 きくない。 βは 、Bというフォン トをユーザーに売 りこもうとしている。ところが、ユーザーは、BフォントはAフォントとは送 り 幅 が違 うため、Bフォントに変 えてしまうと、今 まで作 成 した(デジタルの)文 書 の体 裁 が 変 わってしまうから困 る 61 、と言 い、結 局 、ユーザーはAフォントの後 継 バージョンを購 入 した。つまり、 βと し てはAフォントのリバースエンジニアリングを行 い、送 り幅 を調 べ、そ の上 でBフォントを作 成 しないとAフォントの置 き換 え需 要 を得 ることはできない。しかし、 Aフォントを購 入 しても、契 約 でリバースエンジニアリングが禁 止 され、その契 約 条 項 が 有 効 であるならば、結 果 的 に送 り幅 を調 べることはできない。 つまり、ユーザーは互 換 性 の制 約 によってロックインされてしまっており 62 、しかもその ロックインされた中 では、他 に選 択 肢 を選 べない状 況 が生 じ得 ることになる。しかし、リ バースエンジニアリング禁 止 条 項 を無 効 にした場 合 にはどうだろうか。βは A フ ォ ン トを 解 析 して、送 り幅 の情 報 を得 て、Aフォントの置 き換 え需 要 者 に対 してセールスをかける ことができることになる。 データベースでも同 じようなことが考 えられる。データベースは大 雑 把 に言 うと検 索 シス テムと情 報 (データ)の集 合 体 で構 成 される。通 常 、商 用 データベースでは双 方 が提 供 されているが、これを異 なる事 業 者 がそれぞれ販 売 することも考 えられる 63 。すでに市 場 にあるデータベースに対 して、検 索 システムだけを提 供 しようとする事 業 者 は、当 然 市 場 にあるデータベースのデータフォーマットを調 べる必 要 があるが、データベースの使 用 許 諾 契 約 でリバースエンジニアリングが禁 止 されていれば、そのようなことをできないことに なる。プログラムの場 合 についてはすでに述 べたが、同 様 の状 況 が考 えられる。 まとめると、プログラムやデータに関 する情 報 が特 定 のライセンサーによって専 有 され ており、財 産 的 情 報 が希 少 価 値 をもって特 定 の者 の実 質 的 な支 配 下 に置 かれている (代 替 的 供 給 源 の獲 得 が困 難 である)とき、リバースエンジニアリング以 外 の方 法 では、 このような情 報 にアクセスできないような場 合 には、リバースエンジニアリングを禁 止 する ことは、競 争 減 殺 を起 こしているということができるのではないだろうか。 今 までリバースエンジニアリングを例 にとって説 明 してきたが、改 変 、翻 案 についても全 く同 じことが言 える。Ⅱ-2-5 でユーザーにとって不 可 欠 な改 変 、翻 案 の例 として、異 機 種 への移 行 のための改 変 、翻 案 を挙 げたが、改 変 、翻 案 を禁 止 することにより、ライセン 61 このたとえは厳 密 には正 確 ではない。フォントの違 いで、文 書 の体 裁 が変 わってしまうのは送 り幅 だけではないし、文 字 そのものの大 きさなどの要 素 もあるので、あくまでも例 として考 えられたい。ただ、 この辺 りをすべて同 じにしてしまうと、字 形 そのものが相 当 そっくりになってしまい、不 正 競 争 防 止 法 上 の模 倣 などの別 の問 題 を生 じることになる。また、そもそも送 り幅 をどのくらいにするかは、デザイン 上 の要 素 でもあるため、単 純 に送 り幅 を揃 えることは、デザイン上 好 ましくない。 62 フォーマットなどによるロックインがソフトウェアの世 界 では珍 しくない旨 の指 摘 が公 正 取 引 委 員 会 の研 究 会 で指 摘 されている。(「ソフトウェアと独 占 禁 止 法 に関 する研 究 会 (第 2回 )議 事 概 要 」 (http://www.jftc.go.jp/pressrelease/01.september/01091901.pdf)1 頁 ) 63 実 際 、販 売 は同 一 事 業 者 でも、データの集 合 体 と検 索 プログラムの製 作 者 は別 であることのほう が多 い。インターネットの検 索 エンジンを考 えれば、データの集 合 体 と検 索 プログラムが別 々に提 供 できるものだということは容 易 に想 像 できよう。 20 サーは、実 質 的 に特 定 のハードウエアの使 用 をライセンシーに強 要 できることになる 64 。 なお、独 占 禁 止 法 違 反 を理 由 に契 約 を無 効 とするためには、独 占 禁 止 法 の具 体 的 な 適 用 条 文 (第 3 条 [不 当 な取 引 制 限 ]や第 19 条 [不 公 正 な取 引 方 法 ]等 )の解 釈 適 用 について解 明 しなければならず、かつ、独 占 禁 止 法 違 反 の契 約 法 上 の効 果 に関 する 理 論 を構 築 する等 、もういくつかハードルを超 えなければならない。この点 は、今 後 の課 題 として指 摘 するに留 める。 プログラムの場 合 には、リバースエンジニアリングは、著 作 権 侵 害 である可 能 性 がある という問 題 がある。すでに検 討 したとおり、競 争 事 業 者 によるリバースエンジニアリングは、 著 作 権 法 上 明 文 の規 定 はなく、ライセンサー側 からの反 論 は十 分 に予 想 できる。また、 「正 当 化 事 由 」も考 える必 要 がある。これは、個 々のケースにおいて、さまざまな理 由 を 検 討 していかざるを得 ないであろう。しかし、マスマーケットでの使 用 許 諾 契 約 におけるリ バースエンジニアリング禁 止 条 項 は、プログラム、データを問 わず、独 占 禁 止 法 に違 反 する可 能 性 が高 い、と解 するべきではないだろうか。私 もリバースエンジニアリング禁 止 条 項 を契 約 に入 れるのは、今 まで当 たり前 と考 えており、また、実 務 においてはこの考 え 方 が定 着 していると思 われる。 結 論 として、使 用 許 諾 の対 象 が著 作 物 である場 合 、すべてのケースにおいて、リバー スエンジニアリング禁 止 条 項 が無 効 になるとも考 えられないが、一 律 にリバースエンジニ アリングを禁 止 するような契 約 条 項 は、著 作 権 法 ないし独 占 禁 止 法 により無 効 となる可 能 性 が高 いと考 える。 使 用 許 諾 の対 象 物 が非 著 作 物 である場 合 、著 作 権 法 の問 題 は生 じないが、著 作 物 である場 合 と同 様 に、一 律 にリバースエンジニアリングを禁 止 する条 項 は、独 占 禁 止 法 違 反 により無 効 となる可 能 性 が高 い。 Ⅱ-3 その他 の検 討 課 題 最 後 に、著 作 権 法 や独 占 禁 止 法 以 外 の検 討 課 題 について、簡 単 に課 題 を指 摘 して おきたい。 第 一 に、契 約 法 による禁 止 規 定 の規 制 であるが、契 約 を一 部 無 効 とするのに適 用 で きそうな契 約 法 理 としては、信 義 則 違 反 、権 利 濫 用 または公 序 良 俗 違 反 が考 えられる。 これらの法 理 は、いずれも一 般 法 理 であることから判 例 などの積 み重 ねによるほかない が、このような財 産 的 情 報 に関 する判 例 の積 み重 ねがない。著 作 権 法 との関 係 でも、新 しい議 論 であり、まして著 作 権 の枠 を超 えた財 産 的 情 報 全 般 の議 論 は、十 分 になされ ていないので、ただちにこういった法 理 を導 入 して、問 題 を解 決 するのは難 しいと考 え る。 第 二 に、消 費 者 契 約 法 による解 決 も考 えられる。譲 渡 制 限 や改 変 、翻 案 禁 止 などの 条 項 には、消 費 者 契 約 法 第 10 条 の不 当 条 項 に該 当 する場 合 があるかどうかが検 討 課 題 である 65 。本 稿 では、情 報 流 通 という観 点 から、事 業 者 、消 費 者 に広 く適 用 できる法 理 の検 討 を中 心 としたので、消 費 者 契 約 特 有 の問 題 については触 れなかった。実 際 、 64 泉 水 文 雄 「コンピュータープログラムのライセンス契 約 と独 禁 法 」根 岸 哲 編 『コンピュータ知 的 財 産 権 』180 頁 (東 京 布 井 出 版 、1993 年 ) 21 情 報 流 通 という観 点 からすると、消 費 者 契 約 法 で解 決 できる範 囲 は決 して広 くない。特 に個 人 事 業 者 などには適 用 がないということは大 きいように思 う。さらに、この種 のライセ ンス契 約 において、小 規 模 事 業 者 に契 約 交 渉 能 力 があるとも考 えにくいし、実 際 問 題 としてみれば、大 規 模 事 業 者 といえども、個 々のパッケージプログラムの購 入 にあたって、 契 約 交 渉 をするなどということは行 っていないのである。コスト的 にも見 合 わないものであ るし、第 一 、そのようなパッケージプログラムのライセンサーが契 約 交 渉 に応 じるとも考 え られない。 情 報 産 業 は、事 業 開 始 時 に大 規 模 な設 備 を必 要 としないことが多 い、という点 で、個 人 事 業 者 、小 規 模 事 業 者 が新 規 に参 入 しやすい産 業 分 野 であると思 われるが、後 発 の参 入 事 業 者 は、使 用 許 諾 契 約 の文 言 通 りの制 約 を受 けるとなると、先 行 商 品 の研 究 や先 行 商 品 の互 換 品 を販 売 できなくなってしまう。これでは、情 報 産 業 の発 展 が阻 害 さ れるように思 う。したがって、消 費 者 契 約 法 をはじめ、消 費 者 保 護 に関 する諸 法 を適 用 して問 題 を解 決 するのでは不 十 分 であると考 える。 Ⅲ まとめ 以 上 、著 作 物 との対 比 、独 占 禁 止 法 の適 用 可 能 性 という2点 を中 心 に財 産 的 情 報 、 とくに非 著 作 物 が禁 止 条 項 を含 む契 約 の拘 束 力 によって法 的 に保 護 されるべき範 囲 を 検 討 した。 私 の結 論 をまとめると次 のようになる。 第 一 に、財 産 的 情 報 の使 用 許 諾 契 約 における禁 止 条 項 は、著 作 権 制 限 規 定 の強 行 法 規 性 または任 意 法 規 の修 正 に合 理 的 または正 当 化 事 由 がないという理 由 から、 無 効 と解 釈 すべきものが存 在 する。例 としては、バックアップ目 的 の複 製 禁 止 条 項 や大 衆 への再 流 通 を伴 わない自 己 使 用 目 的 の改 変 ・翻 案 がある。 第 二 に、財 産 的 情 報 の使 用 許 諾 契 約 における禁 止 条 項 は、競 争 法 的 配 慮 により、 独 占 禁 止 法 にもとづいて無 効 と解 釈 すべきものが存 在 する。例 としては、一 定 の状 況 下 におけるリバースエンジニアリングの禁 止 条 項 がある。 第 三 に、これらの解 釈 は、「契 約 当 事 者 の意 思 」の解 釈 および社 会 に有 用 な情 報 を バランスよく流 通 させる「情 報 政 策 」という観 点 から、著 作 物 と非 著 作 物 双 方 に適 用 でき るように構 築 されるべきものである。著 作 物 であるか否 かにかかわらず、財 産 的 情 報 の 契 約 法 による保 護 の範 囲 は、無 限 にしておいて良 いものではない。 今 後 の情 報 化 社 会 が発 展 していくにつれ、ますます情 報 流 通 は盛 んになるものと思 われる。著 作 権 法 の適 用 される場 面 も変 化 していくであろうし、また、非 著 作 物 の流 通 も ますます盛 んになり、契 約 の禁 止 条 項 の有 効 性 をめぐる課 題 が実 際 の事 件 として表 面 化 してくるのも時 間 の問 題 であろうと思 う。 以上 65 この点 を検 討 したものとして、大 澤 ・前 掲 注 (47)3 頁 以 下 がある。 22 <参 考 文 献 > (脚 注 に挙 げたものを除 く) 伊 従 寛 ・上 杉 秋 則 編 『別 冊 NBL No.52 知 的 所 有 権 と独 占 禁 止 法 入 門 編 』(商 事 法 務 研 究 会 、1998 年 ) 岡 邦 俊 『マルチメディア時 代 の著 作 権 の法 廷 』(ぎょうせい、2000 年 ) 清 川 寛 『プロパテントと競 争 政 策 』(信 山 社 、1999 年 ) 斎 藤 博 『著 作 権 法 』(有 斐 閣 、2000 年 ) 田 村 善 之 『機 能 的 知 的 財 産 権 の理 論 』(信 山 社 、1996 年 ) 苗 村 憲 司 ・小 宮 山 宏 之 『マルチメディア社 会 の著 作 権 」(慶 應 義 塾 大 学 出 版 会 、1997 年 ) 三 山 裕 三 『著 作 権 法 詳 説 【全 訂 新 版 】』(東 京 布 井 出 版 、2000 年 ) ロ ー レ ン ス ・ レ ッ シ グ『 CODE − イ ン タ ー ネ ッ ト の 合 法 ・ 違 法 ・ プ ラ イ バ シ ー 』 ( 翔 泳 社 、 2001 年) 23
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