solving for 2016 Market Insights and Outlooks from Senior Investors at Neuberger Berman 2016年の展望 ニューバーガー・バーマンの投資プロフェッショナルによる市場見通し Neuberger Berman ニューバーガー・バーマンは1939年に創業され、77年の歴史を経た 現在では、世界有数のプライベート経営による資産運用会社へと 成長を遂げています。当社は、深いリサーチを重視し、株式、債券、 ヘッジファンドおよびプライベート・エクイティといった、多岐にわたる 資産クラスの投資戦略をご提供しています。こうした先進的 かつ多様な投資機会は、高い評価をいただいており、グローバルの機関 投資家、委託会社、販売会社および個人投資家など、幅広いお客さまと の結びつきを強くする源泉となっています。今後も一貫して資産運用に 特化することにより、投資の目的をより明確に理解し、お客さまとの利益 一致を追求してまいります。 複雑なトレンドと厳しい市場環境 市場は依然、複雑な状況が続いています。金融政策のダイバージェンス (乖離)やエネルギー価格の急落、景気の変動等は全て、当社のプロフ ェッショナルたちが目を離すことができないファンダメンタルズ要因です。 こうした問題が2015年の大半で議論となり、株式と債券のいずれにおい ても市場に大きな変動をもたらしました。2015年は近年でも特に厳しかっ た年の一つとして記憶に残るでしょう。 2016年に入っても、世界経済の停滞や金融政策、中国経済の変化とい った問題が引き続き主な焦点となり、市場を動かすことになるでしょう。 当社では、FRBは緩やかなペースで利上げを行い、ECBは必要な限り緩 和政策を維持し、中国は「ハードランディング」を回避する金融政策上の 手立てを講じると考えています。コモディティ価格の下落につきましては、 現在は概ね有利に働いていますが、最終的に上昇に転じるには、経済全 般の健全化や需給バランスの適正化が必要となるでしょう。 本レポートでは、当社の株式、債券、オルタナティブ、マルチアセットクラ スのポートフォリオ・マネージャーによる年間の投資見通しをご提供いた します。全体として、当社は慎重な見方をとりつつも、ボラティリティと低成 長の状況下においては、先進国株式と一部のクレジット市場により魅力 があると考えています。皆様の2016年の投資戦略策定にあたり、本レポ ートにおいて提供する当社の見解が少しでもお役に立つことができまし たら幸いです。 ジョセフ V. アマト 社長 兼 株式部門 最高投資責任者 ニューバーガー・バーマン 1 目次 1 | ご挨拶 ジョセフ V. アマト 社長 兼 株式部門 最高投資責任者 視点・見通し 4 | 最高投資責任者(CIO)討論会 ジョセフ V. アマト 社長 兼 株式部門 最高投資責任者 エリック L. クヌーゼン、CFA、CAIA マルチ・アセット部門 最高投資責任者 ブラッド・タンク 債券部門 最高投資責任者 アンソニー D. テュトロン オルタナティブ部門 グローバル責任者 8 | アセット・アロケーション ニューバーガー・バーマン・アセット・アロケーション委員会 10 | マルチ・アセット エリック L. クヌーゼン、CFA、CAIA マルチ・アセット部門 最高投資責任者 株式市場 12 | 市場概観・米国株式 ジョセフ V. アマト 社長 兼 株式部門 最高投資責任者 2 5 | 先進国株式 1 ベンジャミン・シーゲル、CFA グローバル株式チーム 責任者 兼 ポートフォリオ・マネージャー 6 | 新興国株式 1 コンラッド A. サルダナ、CFA 新興国株式 ポートフォリオ・マネージャー 債券市場 18 | 市場概観 ブラッド・タンク 債券部門 最高投資責任者 8 | 1 先進国債券 アンドリュー A. ジョンソン グローバル投資適格債戦略 最高投資責任者 サノス・バルダス、PhD グローバル国債 兼 金利運用部門 責任者 ジョン・ジョンソン グローバル債券運用 シニア・ポートフォリオ・マネージャー 20 | 通貨 ウゴ・ランチオーニ グローバル債券戦略 兼 通貨戦略 ポートフォリオ・マネージャー 1 | 米国地方債 2 ジェームズ L. イスリン 米国地方債 運用責任者 22 | ハイ・イールド債券およびバンクローン トーマス P. オレイリー、CFA 非投資適格クレジット部門 責任者 ジョセフ P. リンチ ポートフォリオ・マネージャー 23 | 新興国債券 ロブ・ドライコナゲン、ゴーキー・アーキエタ 新興国債券 共同運用責任者 オルタナティブ市場 26 | プライベート・エクイティ アンソニー D. テュトロン オルタナティブ部門 グローバル責任者 27 | プライベート・デット スーザン B. カッサー、CFA プライベート・デット 責任者 デビッド・リヨン スペシャル・シチュエーション 責任者 29 | ヘッジファンド ジェフ・マジット、CFA デビッド・カッパーマン、PhD NBオルタナティブ・インベストメント・マネジメント 共同運用責任者 30 | 投資家向け討論会 リック・ドウェル グローバル・クレジット・ロング・ショート戦略 共同運用責任者 ダニエル・ゲバー グローバル株式ロング・ショート戦略 ポートフォリオ・マネージャー チャールズ C. カンター 米国株式ロング・ショート戦略 ポートフォリオ・マネージャー ジェフ・マジット、CFA NBオルタナティブ・インベストメント・マネジメント 共同運用責任者 新たな年の注目点 34 | 投資家動向の見通し アンドリュー S. コマロフ 最高執行責任者 38 | 著者略歴 Solving for 2016 視点・見通し 最高投資責任者(CIO)討論会: 次なる体制の品定め 低 成長、低金利、低インフレ。過去数年にわたりグローバルなファンダメンタルズを形成してきたこの三つ巴を断ち 切ったのが、ボラティリティの度重なる上昇です。今までのダイナミクスは変わりつつあるのでしょうか?この度の 年間見通しでは、当社の投資各部門を率いるシニアリーダーたちが幅広い討論を繰り広げ、グローバルベース の経済見通し、金融政策、投資機会について検討しました。 2015年の経済成長は期待外れに終わりまし た。2016年については、どのように見込んでい ますか? エリック・クヌーゼン:2015年を通じてみら れた経済的な緊張関係は、先進国市場で は成長見通しが次第に改善していったの に対し、中国をはじめとする新興国市場に 関しては急激な減速が連鎖的に発生して 「成長ショック」となった上に、コモディティ価 格も下落したというトレードオフの関係であ ったといえます。2016年に関しては、米国、 欧州そしてグローバルな景気サイクルがそ れぞれどの局面にあるかが、最大の問題で す。当社の見解では、まだ成長の余地はあ り、米国等一部の先進国では成長率が上 向き始める見通しです。 4 ジョセフ V. アマト 社長 兼 株式部門 最高投資責任者 エリック L. クヌーゼン、CFA、CAIA マルチ・アセット部門 最高投資責任者 ブラッド・タンク 債券部門 最高投資責任者 アンソニー D. テュトロン オルタナティブ部門 グローバル責任者 一つは、クレジットサイクルがどの局面にあ るかです。当社の見解どおり、依然として成 長局面の半ばにあるとすれば、クレジット市 場では比較的リスクの高いクレジット資産ク ラス、例えば、新興国債券やハイ・イールド 債券にとって幸先の良い展開になると考え ます。 アンソニー・テュトロン:プライベート・エクイ ティ市場では、ここ数年、バリュエーションの 上昇と、より積極的な資本構成の形成を 行う動きが続きました。そのため、2015年 半ばのボラティリティ上昇がもたらした明る い材料の一つは、数年来の行き過ぎともい える積極的な姿勢が後退し、その結果とし てより慎重な資本構成の形成とバリュエー ションの低下につながったことです。同時に スプレッドの拡大によって、流動性の低い債 券とディストレスト債、そしてスペシャル・シ チュエーションの分野において、投資機会 が生まれる可能性があります。ヘッジファン ドについては、パフォーマンスは概して振る わない一年になりましたが、当社の見解で は、その原因の多くは、2016年に繰り返さ れることのない特異な事象によるものとみ ています。アクティブ投資家にとって、この 状況はチャンス到来になるはずです。 ジョセフ・アマト:いつの日か2015年を振り 返ると、市場の不振は成長局面半ばの修 正であったことが判明するのだと思います。 この一年は中央銀行が政策を転換するの に手間取った一年でした。その中でも中国 の通貨切り下げはグローバルな成長見通 しを見直すきっかけになりました。2016年に ついては、投資家が新たな金利体制に順 応していく過程にあたるので、金融政策に よって状況が一時混迷する可能性があり ますが、それでもやはり経済成長と中国が 企業収益について多くの懸念があります。 重要な役割を担うでしょう。 どのように進展していくと予想しますか? ブラッド・タンク:債券運用の観点から見ま アマト:S&P500指数に組み入れられてい すと、注目に値するのは、成長待ちの姿勢 る企業の収益成長は基本的に横ばいの状 を反映して、先進国市場では金利変更の 態が続きましたが、2015年入りした時点で 観点からはほとんど何も起きなかったこと そうなるとは予想されていませんでした。グ です。2016年には、二つの要因が重要にな ローバル経済の成長遅延に加えて、特にド るでしょう。先ず一つ目の要因は米国にお ル高が重要な要因であり続け、後者は大 ける短期金利の上昇です。この動きは年 型株のうち米国輸出関連企業に下押し圧 間を通じて進行していくとみられます。もう 力をかけました。米国企業の収益に関する 焦点を当てる必要があります。 投資妙味がありそうなリスク資産 資産クラス別投資利回り 10% 米国 欧州 日本を除くアジア ラテンアメリカ 8% 6% 4% 2% 0% -2% 実質金利 国債 投資適格債 ハイ・イールド債券 上場株式 出所:ブルームバーグ、バークレイズ・キャピタル、JPモルガン、2015年11月30日時点。説明目的のみの提供。投資利回りプロフ ァイルのデータは説明目的に限定して提示されたものです。図表に示した投資利回りは前述の日付における資産クラスの状 況に基づいており、予告なしに変更することがあります。資産クラスの投資利回りは概して該当するインデックスの数値を用 いています。内訳に関しては、当資料の末尾にある情報等の開示をご参照ください。図表に示した投資利回りまたは投資利 回りプロファイルが今後実現される保証は一切なく、投資家はそのように想定すべきではありません。インデックスは運用され ているものではないため、直接投資に利用することはできません。元金を損失する恐れを含め、投資にはリスクが伴います。 過去のパフォーマンスは将来の結果を保証するものではありません。 米国企業の株式バリュエーションは徐々に上昇、利益率はピークに接近 利益率、PER、利益率に対するPER比率 S&P500指数 利益率 S&P500指数 実績PER 米国金利についてもっと話しましょう。どこまで 上がる可能性があるでしょうか? タンク:従来から連邦準備制度理事会 (FRB)の期待値と市場の期待値には大き なずれがあります。連邦公開市場委員会 (FOMC)メンバーは、2018年の年末まで にFFレートを約3.5%に引き上げることを想 定しています。ただし、市場が織り込んでい る同時期のFFレートは約2%です。一般的 に、金利サイクルが最終局面にある時は、 イールドカーブは反転とはいわないまでも、 きわめてフラットになります。ですから、2015 年は米10年国債が2%~2.5%のレンジ内 の動きにとどまったことを踏まえれば、市場 の見方は現在の水準から金利が大幅に 上昇することを示唆していません。2016年 について、当社の見通しでは米国で約50 ~100bpsの上昇、欧州および日本では短 期金利が超低金利の状態にとどまり、さら に金融緩和によって補完されると見込んで います。 利益率に対するPER比率 こうした金利環境は、銘柄選択と資産配分に どのように影響しますか? 4.0 アマト:米国株式市場における2016年の重 25% 3.5 要なテーマは、個人的には「質」にあると考 3.0 えています。過去6年間は、事業の質にか 20% 2.5 かわらず、低く抑制された金利水準と容易 2.0 15% に調達できる資金環境によって、株式にお 1.5 けるリターンが大幅に歪められていました。 1.0 10% 0.5 金利が正常化に向かう過程が始まる中、 0.0 5% 今後は各企業間の区別がより鮮明になっ '91 '93 '95 '97 '99 '01 '03 '05 '07 '09 '11 '13 '15 ていくと思われます。当社では低金利の状 出所:ブルームバーグ、ファクトセット、2015年11月まで 態が当面の間は継続すると考えますが、 次第に正常化に向かう金利動向が、良い 当社の見通しは、穏やかながらプラス、つま 利益率をピーク近くにまで回復させた市場 企業、悪い企業、そして酷い企業の区別を り1桁台半ばのプラス成長を見込んでいま はほぼ皆無です。したがって、そうした市場 つけ始めるはずです。 す。さらに2%の配当利回り、および自社株 では利益率拡大の余地が大いにあります。 買い戻しによる発行済み株式数の2%前後 同様に、その他先進国市場では一部の主 クヌーゼン:現在の低利回りで米国財務省 の減少も考え合わせれば、株価収益倍率 要国で混乱があり、結果的に利益率が縮 証券等の国債を所有し続けるか、あるいは (PER)の大幅な拡大を要することなく、米 小したケースもあるため、そうした地域では 別の選択肢として、例えば、堅実な収益と 国企業の株式価値は下支えされるように 利益率の回復があり得るとみています。 穏当なバリュエーションを兼ね備えた質の 思います。 高い企業の債券に投資するかを比較検討 テュトロン:ユーロ安および金融緩和を踏ま する場合、私が見る限り、投資家が現在の タンク:米国企業が収益に関して克服しな えれば、欧州は収益成長の準備が整ってい リスク・スペクトラムから抜け出して、より高 ければならない課題は、売上成長が収益 ますが、ミクロレベルでは話はより複雑です。 いリターンを獲得する可能性のある投資に の牽引役にならざるを得ない状況にあるこ プライベート・エクイティおよびヘッジファンド 向かえば、その行為には正当な報酬が伴 とです。その理由は、利益率が過去最高 に関しては、一般の予想に反するかもしれま うと考えます。 水準にあるためなのですが、それ自体の原 せんが、当社では価値拡大の機会が欧州 因としては、主に賃金率の抑制、超低金利 にあるとは必ずしも考えていません。 GDPの 金利は成長率に左右され、また成長率は中国 および超安値のコモディティ価格が挙げら 成長は必ずしも魅力的な投資環境をもたら の影響を受ける可能性があります。中国の状況 れます。そのため、この水準から利益率を すわけではありません。したがって米国の場 をどのように予想しますか? さらに拡大するのは困難です。ただし、世 合と同様、きわめて慎重な姿勢が必要であ クヌーゼン:リスクに関しては、中国はまさに 界中を見渡せば、欧州の先進国で企業が り、個々の企業ファンダメンタルズに真摯に 真っ先に顕在化する場になっています。そ 4.5 利益率に対するPER比率 利益率(%)、PER 30% 5 の重要性は、中国の成長率が2015年半ば にわずかに減速した際の市場の反応に顕 著に表れ、続いて人民元の通貨切り下げ に対する反応にもはっきり見て取れました。 当社の見解では、中国は減速しています が、ハードランディングにはならず、グローバ ルな経済成長にわずかながらも貢献し続 けるでしょう。 アマト:ただし同時に、ハードランディングを 討論の対象から外すわけにはいかないと思 います。この中国というのは、桁外れなまで に投資主導型の経済活動から抜け出し、 消費者主導型になる必要のある経済へと 移行しつつあります。そしてその移行をやり 遂げるのは至難の業です。中国政府の政 策介入によってリスクは低下しましたが、ま だ残っていると思います。 日本について、どのように考えていますか? クヌーゼン:多少の遅れはありましたが、日 本ではコーポレート・ガバナンスの有意な改 善や働く女性の増加をはじめとして、ようや く構造改革の効果が現れ始めています。年 13% 12% 11% アマト:日本には(高齢化等)人口学上の 膨大な課題が依然として存在しますし、近 年のような企業の収益成長を今後も維持 するには、生産性の大幅な向上が必要に なります。したがって、当社は日本について はかなり慎重にみています。ただし、政策の 見地から日本が一層積極的な行動に出る 際は、思いがけず何かが起こる可能性もあ るでしょう。金融財政上の対策は既に講じ られていますが、構造的な取り組みは当然 のことながら達成するのが遥かに困難であ り、完了までに長い年月を要するとみてい ます。 タンク:生産性向上の取り組みの欠如につ いての指摘は、確かに良いところを突いて います。ただし、それは日本だけの問題で はありません。欧米諸国を見ても、構造改 革は成長性を高めるのに大いに役立つ可 能性がありますが、その実現にはまだ至っ ていません。 10% 140 9% 120 100 8% 80 7% 6% 60 '10 中国GDP成長率 '11 '12 小売販売高 も上向いてきています。したがって、今後2 ~3年にわたる金融政策の引き締めに対し て、上記のような状況が均衡をもたらす存 在になるかもしれません。 大統領選挙は、市場に影響を与えると考えま すか? クヌーゼン:今のところ事前に米大統領選 の影響を評価するのは困難ですが、どの政 党も単独で抜本的な変化を起こせるほど の権力を十分に掌握することはなさそうだ と、当社は考えています。したがって、大統 領選挙は米国にとって、または世界的にも、 経済動向を大きく変化させる要因にはおそ らくならないでしょう。とはいえ、最近、薬価 について選挙向けの美辞麗句が発せられ た後、ヘルスケア部門で巻き起こった、特 定の政治問題を巡るマイクロ・バースト(破 壊的な強風を巻き起こす気流)のようなボ ラティリティが発生する可能性があります。 そうなれば、その市場変動から投資機会が 生まれることもあり得るでしょう。 アマト:私にとって、より気がかりな点は、 (米国よりも)経済成長が難しい課題であ り、かつ政策が大幅に変化するリスクが相 対的に大きい国が世界に散見されることで す。成長が遅い時は、変化に逆行する政治 家が台頭する可能性があり、それこそが問 アマト:興味深いことに、2010年から2015 題なのです。 年までの間、米国では基本的に緊縮財政 政策がとられましたが、その推進の原動力 新興国市場はこのところストレスを受けていま となった予算関係の取り組みは何年も前 すが、その結果は大々的に報じられているより から存在していました。また金融政策は経 も、もっと多様な様相を呈しているといえるで 済の成長と安定をもたらすエンジンの役割 しょうか? を果たしました。さて今や、予算の収支バラ タンク:政策、バリュエーション、投資機会の ンスが改善して、財政赤字がかつてほど膨 観点から、新興国市場はかなり多様性に 大ではなくなったため、財政政策の制約が 富んでいるという事実について、今や投資 若干緩和されています。また、経済成長率 家は啓発され見識を持ちつつある段階に あります。また、そうした多様化の流れは今 後も続くと思います。いくつかの地域は明ら かに素晴らしい投資機会を提示しつつあり ますが、他方、リーダーシップと堅実な将来 220 200 に向けた明確な道筋が全くないため、将来 180 にわたり敬遠したくなる地域もあるように思 160 います。 '13 電力消費量 出所:中国国家能源局(NEA) 、中国国家統計局、2015年9月30日まで '14 鉱工業生産 40 '15 小売販売高、電力消費量、鉱工業生産(いずれも指数化) バランスのとれた経済に向けて取り組む中国 中国経済指標 GDP成長率 6 タンク:2015年の一年間に投資家が学ん だ主要なポイントは、中国の株式市場は非 常に投機的であるため、実体経済で起き ていることから、当該株式市場を切り離し て考える必要があるという点です。先ほど 言及のあった移行は複数年を要するもの であり、結果的には現在よりも低い成長率 でより安定した経済成長が実現するはず です。ただし、私の考えでは、中国は当面 の間、市場にとって断続的なボラティリティ または不確定要素の発生源になると思い ます。その理由の一つとして、中国の政策 決定者たちが今なお事態を把握する過程 にあることが挙げられます。 金基金の資産を債券から株式に再配分す る動きもかなり良い効果があるはずです。 ただし、そうした動向は個人消費と賃金の 増加や、インフレ率の上昇にはまだつながっ ていません。つまり本当に期待されている実 体経済の変化はまだ起きていません。 アマト:過去10年にわたって三つの要因が 新興国市場の成長を推進してきました。す なわち、コモディティのスーパーサイクル、資 金調達コストの低さ、そして構造改革です。 現時点では、コモディティのサイクルは基 本的に終了し、金利は上昇に向かうことが 確実であり、改革はきわめて困難であるこ とが判明しました。全ての新興国市場を一 つのものとしてとらえることは不可能ですか ら、今後は多様なトレンドを見ることになる プライベート・デットの利回りは、健全な非流動性プレミアムを提供 でしょうが、広義にいえば、よりチャレンジン ハイ・イールド債券 ハイグレード債券 第2順位担保権付ローン グな環境になると思います。 第1順位担保権付ローン プライベート市場は、これまでのところきわめて 堅調に推移しています。この状況は今後も続く 可能性がありますか? テュトロン:プライベート・エクイティの潜在 的なリターンは他の資産クラスと比較して 遜色ないと考えておりますが、バリュエーシ ョンの上昇と経済成長の鈍化を踏まえれ ば、過去5~6年の成果を再現するのは厳 しくなるでしょう。私の見解では、鍵となるの は、収益成長を加速するために、買収先の 事業で著しい変化を起こすことができるマ ネージャーを支援することです。そしてその ためには、運営面での専門知識が必要に なります。 米10年国債 15% 非流動性プレミアム クヌーゼン:明るい材料がいくつかありま す。アジア市場の一部は今なお妥当な成 長率を維持し、国レベルのバランスシートも 堅実でありながら、まるでラテンアメリカの コモディティ産出国であるかのように、債券 スプレッドが拡大した市場があります。現在 のノイズを受け流す投資家にとっては、概し て興味深い投資機会がいくつかあります。 したがって重要なのは、こうした市場に目を 向け続けることです。 12% 9% 6% 3% 0% '10 '11 '12 '14 '15 出所:ブルームバーグ、クレディ・スイス、バークレイズ、S&P LCD、2015年11月30日まで。説明目的のみの提供。図表に示した投 資利回りは前述の日付における資産クラスの状況に基づいており、予告なしに変更することがあります。資産クラスの投資利 回りは概して該当するインデックスの数値を用いています。内訳に関しては、当資料の末尾にある情報等の開示をご参照くだ さい。図表に示した投資利回りまたは投資利回りプロファイルが今後実現される保証は一切なく、投資家はそのように想定す べきではありません。インデックスは運用されているものではないため、直接投資に利用することはできません。元金を損失す る恐れを含め、投資にはリスクが伴います。過去のパフォーマンスは将来の結果を保証するものではありません。 7 良好であれば、利益が得られる可能性が あります。一方、エネルギーやコモディティの ような低調な分野はロング・ショート戦略の マネージャーにとって格好の狩場になる可 能性があります。プライベート・エクイティの 状況と同じく、ディストレスト投資にも機会 があります。また、一言申し添えれば、ヘッ ジファンドは投資カテゴリーの一つとして、金 当社がかなり強気に見ている分野は、プ 利上昇局面で良い成果を挙げることがし ライベート・クレジット市場です。スプレッドが ばしばあります。 拡大したことに加えて、特定の資金ニーズ 最後に、投資家の懸念について触れましょ に合うように債務の条件をカスタマイズす う。2016年入りに際して、投資家からどのような ることを厭わない投資家には、借り手が追 問い合わせがありますか? 加プレミアムを提供しています。アーリー・ス クヌーゼン:資産配分の見地から、多くの テージのベンチャー企業や比較的小規模 投資家は将来に目を向け、どの資産クラス の成長企業も面白い投資対象です。また がきわめてチャレンジングな投資環境にな エネルギー分野等の不振を踏まえれば、 りそうか、リターンの見通しが抑制されたも プライベート・エクイティとヘッジファンド全 のにならざるを得ない分野はどこかを解明 般にわたって、ディストレスト投資にも新た しようと取り組んでいます。これらの問題に な投資機会があります。安価なクレジット、 多面的な切り口から、具体的には長期的 つまり低コストで調達できる資金が、比較 な投資ホライゾン、非流動性リスクをとる 的脆弱な会社を数多く救済するのに役立 能力、より非伝統的な戦略またはより複雑 ってきましたが、そうした状況は薄れつつあ な戦略の採用に焦点を当てて取り組むこ ります。ひときわ明敏なマネージャーにとっ とは理にかなっていると思います。また資産 ては、この現状が投資機会をもたらす可能 配分の枠組みとして、リスクバランス型アプ 性があります。 ローチを採用すれば、様々な経済環境に ヘッジファンドの投資機会についてはどうお考え ですか? テュトロン:2015年に振るわなかった分野、 例えば、ヘルスケアやエネルギー絡みのト レードは2016年には改善する可能性があ ります。M&A関連のスプレッドは拡大したの で、M&Aを取り巻く環境が今後も引き続き '13 対応して投資対象を幅広く分散することが 可能になります。 テュトロン:投資家は相関性の低い資産の 組み入れによって目標リターンを達成する 方法を探しています。投資先の不足を感じ ているため、オルタナティブ投資に乗り出し ています。また投資目標を達成しようと取り 組む中で、多少の非流動性リスクを進んで とっています。 タンク:債券関連の良いニュースは、米国コ ーポレート・クレジット市場(特にハイ・イール ド債券と取引可能な銀行債務)や、新興国 市場の一部等で投資妙味が随所に現れ たことです。ただし、クレジットサイクルにつ いて頻繁に問い合わせを受けています。当 社が考えるように、現在の局面が長引くの であれば、バリュエーションの見地から、今 なら安心して投資に着手できますが、長引 かなければそれほど安心はできません。先 ほどの問い合わせに対する答えの中核とな るのは、FRBの利上げによる影響が2016年 の年間を通して継続する可能性です。当 社の見解はきわめて明快です。すなわち、 市場はこの可能性を既に織り込んでおり、 十分に対処できるはずです。 アマト:年金基金であれ、投資アドバイザー であれ、または個人投資家であれ、投資家 の皆さんは目下のところ頭をかかえていま す。2016年が近づくにつれ、我々全てが抱 える難題の一つは、これまでFRBの金融政 策がほぼ全ての資産価格をつり上げてし まったことです。したがって全ての資産クラ スを見渡しても、過去のバリュエーションの パターンと一致する投資機会を見出すこと が難しくなっています。私は金利正常化を 待ち望んでいます。その過程があらゆる資 産クラスにおいてリターンの差別化をもたら し、ファンダメンタルズ重視の投資家向け により多くの投資機会を創出するでしょう。 ニューバーガー・バーマン・ アセット・アロケーション委員会 アセット・アロケーション: 米連邦準備理事会(FRB)の緩やかな利上げペースがリスク資産の追い風に 2 016年において、投資家は一定期間にわたってFRBの利上げが続くと予想しています。今回の利上げは、過去の利 上げサイクルにみられたような急速な引き上げではなく、緩やかなペースで進められるでしょう。一方、欧州では景 気回復の継続を、日本においては景気後退の可能性を回避しデフレ脱却を目指すため、量的緩和による金融政 策に変化はないと予想されます。また、中国の成長減速による市場混乱の可能性は、同国が世界経済における中心的 な役割を考えると、こうした景気回復への道のりをやや困難なものにすると考えられます。こうしたことを全て検討した上 で、当社のアセット・アロケーション委員会としては、現在の金融環境と緩やかな景気回復傾向はリスク資産に追い風とな り、2016年は債券よりも株式が相対的に選好されるとみています。 8 グローバル株式:欧州市場を選好 当委員会では、グローバル株式、特に量的 緩和の継続とユーロ安が株式に有利に働く 欧州市場において、ポジティブな見方をして います。数カ月前までは、米国株をフェアな バリュエーションと2016年の利益改善の見 込みからオーバーウェイトを維持していまし たが、10月の急速な株価回復を受けて、そ の位置付けはニュートラルへと変わりました。 また、ここ一年で大幅に売り込まれたマスタ ー・リミテッド・パートナーシップ(MLP)には投 資機会があるとみています。短期的にはエ ネルギー価格と配当の持続可能性に懸念 があるものの、バリュエーションと利回りは魅 力的な水準と考えています。日本市場に対 しては、相対的に慎重な見方をしています。 株式には円安と公的年金基金の資産配分 の変更などによるメリットがあるものの、経済 成長が低位で推移しており、また中国経済 の減速の影響を受けやすくなっています。 新興国市場については、中国のボラティリテ ィ、コモディティ価格の急落、ドル高が経済に とって逆風となり、企業の収益性も圧迫され ていることから、ニュートラルな見方をしていま す。当委員会の見解として、国別および企業 別の見極めが引き続き最も重要になります。 債券:魅力的なスプレッド・セクター 当委員会では2016年のグローバル債券に おいて、米国の金利上昇傾向と欧州および 日本の金融緩和政策を背景に、主要先進 国のソブリン債市場は低リターンが見込ま れることから、アンダーウェイトしています。米 国におけるFRBの金利正常化は、過去の引 き締めサイクルと比較してハト派的なプロセ スになり、ゆっくりとしたペースで金利が引き 上げられると考えています。長期金利が大 きく上昇する可能性は低いとみていますが、 投資家としてはボラティリティの高まる期間 があることに備えるべきでしょう。緩やかな経 済成長見通しと、現在の魅力的なスプレッ ドの水準から、引き続きクレジットが魅力的 とみています。特にハイ・イールド債は、主に 軟調なコモディティ市場の影響で依然とし てスプレッドが拡大していることから、投資機 会があるとみています。当委員会の見解とし て、ハイ・イールド債市場のエネルギー関連 以外の銘柄の信用力およびファンダメンタ ルズは、引き続き健全とみています。 新興国債券市場のクレジット・ファンダメン タルズは比較的堅調で、これは主に過去20 年間で外貨準備の水準が向上し、政策決 定が大きく改善したためです。しかし主要な 新興国市場では、最近の諸問題による国 内需要の軟化が成長の鈍化に拍車をかけ ています。今後一年間の見通しについては、 足元ではニュートラルとしていますが、先進 国市場の回復が新興国市場の成長とクレ ジット・ファンダメンタルズを下支えすると考 えており、長期的にはよりポジティブな見方 をしています。 オルタナティブ:ディレクショナル・ヘッジファンド にとって、ボラティリティの高い市場環境が有利 となる可能性 オルタナティブにおいては、ボラティリティの 上昇によって俊敏なトレーダーやよりアクティ ブなマネージャーが付加価値を生む機会が 増えていることから、ディレクショナル・ヘッジ ファンドをややオーバーウェイトにしています。 このグループのうち、ディストレスト投資マネ ージャーは2015年にプエルトリコやギリシャ、 エネルギー・セクターへの投資で損失を受 けていますが、今後12カ月は多くの投資機 会があると考えています。低ボラティリティ・ ヘッジファンドについてもややオーバーウェイト としており、アセット・アロケーションの中で、特 にボラティリティが上昇し、米国の金利上昇 が予想される環境において、引き続き重要 な役割を果たすと考えています。プライベー ト・エクイティについては、成長の長期サイク ルやバリュエーションの上昇に鑑み、引き続 きニュートラルな見方をしています。 コモディティについては、市場に対する下押 し圧力が既に非常に強く価格は大幅に下落 していますが、これ以上の急激な下落は考 えにくいことから、ニュートラルとしています。 中国の成長に対する懸念は貴金属価格の 下支えとなることが考えられる一方、米国 各地の干ばつは、ソフト・コモディティや農産 物商品に有利となるはずです。石油価格 はレンジ相場になると思われますが、需給 改善の可能性もわずかながら想定していま す。コモディティ市場全般については、金利 上昇の可能性とそれにより一部コモディティ 生産者に対する圧力となると予想されるこ とから、減産や需給バランスの改善が考えら れます。 不確実な道のり 2016年の大半は金融政策の動向、地政 学的イベントや原油価格、中国の成長鈍 化の程度を巡り、投資家にとって不確実性 の高い市場環境になると考えています。当 委員会としては、現在の困難な環境におけ る道標を提示できるよう、今後も市場動向 を注意深く見守る必要があると考えます。 市場見通し 今後一年間の資産クラス別 長期平均 リターンを 下回る見通し 5~7年間の平均 リターンと同程度 の12カ月見通し 長期平均 リターンを 上回る見通し 債券 グローバル債券 投資適格債 米国国債 投資適格社債 政府系住宅ローン担保債(MBS) 資産担保証券(ABS)/商業用不動産担保証券(CMBS) 米国地方債 米インフレ連動債(TIPS) ハイ・イールド債 先進国債(米国除く) 新興国債券 株式 グローバル株式 米国オールキャップ株式 米国大型株式 米国中・小型株式 MLP 先進国株式(米国を除く) 新興国株式 リート 実物資産・オルタナティブ コモディティ 低ボラティリティ・ヘッジファンド ディレクショナル・ヘッジファンド プライベート・デット プライベート・エクイティ 2015年第4四半期時点。上記は主にニューバーガー・バーマンのアセット・アロケーション委員会の見解であり、ニューバーガー・バーマンのグループとして のハウスビューではありません。そのため、当社のアドバイザーやポートフォリオ・マネージャーの推奨や投資見通しが当資料に掲載される見通しとは異な る場合もございます。当委員会の見解は、将来の事象や市場動向の予想や予測ではありません。様々な要因により、実際の事象や市場動向は当資料 に掲載される見解と大幅に異なる場合があります。 アセット・アロケーション委員会について ニューバーガー・バーマン・アセット・アロケーション委員会は、原則四半期ごとに開催され、上述の各資産クラスの向こう12カ月間 の見通しについて、各メンバーから意見を収集しています。当委員会は、平均24年の実務経験を有する専門家の多岐にわたる 知見を結集し、投資および市場全般について検討しています。 9 地域別動向 マルチ・アセットの見通し: 債券・株式・通貨 困難な市場環境の中における投資機会 ニュートラル 以下 ニュートラル ニュートラル 以上 地域別債券 米国10年国債 ドイツ10年国債 英国10年国債 日本10年国債 現地通貨建て新興国債券 ハードカレンシー新興国債券 ハードカレンシー新興国社債 地域別株式 欧州 10 日本 中国 ロシア インド ブラジル 通貨* ドル ユーロ 円 ポンド スイスフラン EM FX(ブロードバスケット) *通貨予想は対ドルではなく、対その他主要通貨で表示しています。したがって、 予想は対ドルの方向性の予想ではなく相対価値予想としてみる必要がありま す。通貨予想はその性格上、短期(1~3カ月)のものです。地域別株式と債券 の見方は一年間の見通しを反映しています。上記リストの資産クラスについて 各委員の意見を集計しており、上記の見解はアセット・アロケーション委員会の コンセンサスを示しています。 エリック L. クヌーゼン、CFA、CAIA マルチ・アセット部門 最高投資責任者 2 016年およびそれ以降の市場を見渡したとき、投資 環境を巡る風景にはどこか重苦しい空気が漂ってい るように思えます。株式市場においては低迷する経済 成長とバリュエーションの上昇により、リターン見通しは低位 となっています。中央銀行の政策は債券市場全体の下押し 圧力となっており、金利とリターンの見通しも低いままです。 最低水準のコモディティ価格によりインフレ率や実物資産の 収益機会も低く抑制されています。同時に、新興国市場の テール・イベントの可能性や流動性リスク、地政学的混乱に より、世界のリスク環境はかつてないほど複雑化しています。 この困難な転換期において、当社とクライアントとの会話は、 アセット・アロケーションにおける新しい考え方や、長期投資へ の取り組みを巡るものが多くなっています。この点で魅力的な アプローチやアイディアとしては、次のものがあります。 リスクバランス型アプローチによるアセット・アロケーション: 目標リターンに基づいて資本配分する伝統的なアプローチと は異なり、リスクバランス型の手法は各資産に対する目標リス ク・バジェットに基づいて資産配分を行います。これは、伝統的 な株式6割・債券4割ポートフォリオにおいて株式リスクの割合 が過大になるという問題に対処するのに有効です。また各資 産のリスクはリターンと比較しより安定的に推移することから、 リスクバランス型アプローチはより効率的なポートフォリオ構築 を可能とすると考えています。この枠組みに戦術的オーバー レイを適用することで、ポートフォリオにおいてよりダイナミック に資産分配を行い、短期的な市場の歪みからリターン獲得機 会を得ることが可能です。 非流動性プレミアム獲得の追求:流動性をある程度犠牲に し、資産を長期間ロックアップできる投資家にとって、プライベ ート市場には魅力的なリターン獲得を可能とする有意義な投 資機会が存在します。例えば、投資家はプライベート・デット 市場に投資することで銀行に対する新たな規制環境を収益 獲得機会として活用できるとともに、バイアウトやスペシャル・ シチュエーション、ベンチャー・キャピタル/レイト・ステージ・グ ロース企業などの領域において投資機会を追求することも可 能です。 投資制約の緩和と機会的投資:市場や資産クラス間の垣 根を越え、よりフレキシブルに投資を行う戦略やデリバティブ や選択的なショートを活用する柔軟性の高い戦略であれば、 魅力的なリターン獲得の可能性があります。このような柔軟な アプローチを採用する機動的なマネージャーにとって、市場の 混乱は魅力的な投資機会となるでしょう。 投資マネージャーに対する要求水準の引き上げ:投資家は マネージャーに対して、柔軟性の高いカスタマイズと付加価値 のある投資戦略を求めるとともに、資産クラスの垣根を越え た洞察を得ることが必要となります。また、投資家とマネージ ャーとの間で一層の利害の一致を図ることも、長期的な成果 への意識を高める上で有効となります。 上述のいずれのアプローチも、それだけで投資家が直面す る多くの課題に対する解決策になるものではありません。しか し、マルチ・アセット投資というより幅広い枠組みで考えた時、 こうしたアプローチはリスク・リターン特性を改善するのに役立 つと考えられます。 Solving for 2016 株式市場 ジョセフ V. アマト 社長 兼 株式部門 最高投資責任者 グローバル株式: 正常化は進むのか 来 年のグローバル株式市場を左右する要因として、米国の金融政策の趨勢、中国がどの程度経済 成長を下支えできるか、そして原油価格とコモディティ価格を取り巻く不透明感が重要になると 考えています。当社のグローバル株式市場に対する見通しは、全般的にポジティブです。それは、 先進国経済にみられる堅調さが新興国経済の減速を上回り、控えめながらも株式市場にプラスのリターンを 提供できる環境であると考えているからです。 12 昨年の今頃、グローバル投資家の間で は「ダイバージェンス(乖離)」―世界の各 地域で、経済成長や金融政策が異なる 経路をたどる可能性―が議論されていま した。2015年は新興国市場の経済減速 と先進国市場の経済安定の兆候とが対 照的な予想通りの展開になったといえま す。しかし、多くの面で予想外の展開がみ られました。米国の景気回復の足取りが 鈍く、米連邦準備制度理事会(FRB)は利 上げ時期を遅らせ、米国の金融政策に対 する不確実性が高まりました。一方で、想 定以上に減速感が強まった中国経済と 人民元の唐突な切り下げによって下半期 のグローバル市場は乱高下しましたが、 米国と欧州の堅調な指標を受けて市場 は落ち着きを取り戻しました。 2016年を見通す上では、経済成長、金 融政策、中国をはじめとする新興国市場 の減速、そしてコモディティ価格が世界の 株式市場を動かす重要な変動要因にな ると考えています。 ユーロ安とECBの金融緩和策に支えられ、 デフレスパイラルを何とか回避し、今後 一年で持続的な回復軌道に乗ると思わ れます。一方、円安は日本の輸出企業に 恩恵をもたらしていますが、日本全体とし ては景気回復の足取りは徐々に弱まって います。それは、アベノミクスが掲げる財政 支出拡大と金融緩和政策に次ぐ、十分 な構造改革がまだ実現していないからで す。全般的に、新興国市場の動向は今後 も懸念されます。とりわけコモディティの輸 出に依存している資源国は中国経済の 影響を受けやすく、株式市場にとってはテ ールリスクとなりそうです。 中国経済の構造変化が重要な問題に 目下のところ、世界経済の成長に最大 の貢献をしているのが中国だという実情 を踏まえれば、世界経済における中国の 重要性を否定することはできません。今 FRBの利上げは緩やかに FRBの利上げ前後のS&P500指数のパフォーマンス (緩やかな利上げと急速な利上げのサイクル1946~2004年) 115 利上げのみ 緩やかな利上げサイクル 急速な利上げサイクル 110 105 100 95 90 85 堅調な先進国市場の成長見通し 今後も続く緩和的な金融政策に支えら れて、世界経済は緩やかに成長すると当 社は予想しています。FRBは金融引き締 めに転じましたが、米国の金利は過去の サイクルを下回る水準で推移し、極めて 緩やかなペースで金利水準が上昇してい くと予想しています。米国経済は過熱感 こそありませんが、悪化もしていません。好 調な消費、堅調な住宅市場、そして原油 安に後押しされ、来年の米国経済は2.5% 前後で成長すると考えています。欧州は、 80 -252 -216 -180 -144 -108 -72 利上げに転じる前の日数 -36 0 36 72 108 144 180 216 252 利上げに転じた後の日数 利上げ時の価格を100としています。 出所:ネット・デイビス・リサーチ社 このチャートは例示することだけを目的として掲載しています。緩やかな利上げサイクル(1度 以上の会合をはさんで利上げされた)の開始日は、1946年4月25日、1955年4月15日、1958年9月12日、1963年7月17日、1977 年8月31日です。急速な利上げサイクル(平均すると、会合の都度利上げが実施された)の開始日は、1967年11月20日、1973 年1月15日、1980年9月26日、1987年9月4日、1994年2月4日、1999年6月30日、2004年6月30日です。各資産クラスの利上げ後 のパフォーマンスはさまざまで、将来の利上げ後の市場パフォーマンスを何ら示すものではありません。このチャートに含まれる 情報は、将来の事象や市場動向を予測するものではありません。変動要因が多様であることから、実際の事象や市場動向 は示された見解と大きく異なる可能性があります。投資には、元本毀損の可能性などのリスクが伴います。過去のパフォーマン スは将来の成績を保証するものではありません。 夏の出来事はどれも中国の影響力の大き さを浮き彫りにしましたが、その影響は必 先進国の株式市場:合理的に見える株式のリスクプレミアム 株式のリスクプレミアム ずしも好ましいものではありませんでした。 中国は結果的に金融市場安定化のため 欧州 アジア(日本を除く) 米国(S&P500指数) に多額の流動性供給を余儀なくされ、人 民元の切り下げで世界の金融市場を不 10% 安に陥れたからです。こうした中国政府の 8% 思慮に欠ける政策判断が中国A株式市 場に対する投資家の信頼感を大きく損な 6% う結果となったことを受け、中国政府の今 後の政策判断の方向性を注視する方針 4% です。 少し大きな視点で見れば、中国の成長 は明らかに減速していますが、中国が投 資主導の経済から消費主導の経済へと 困難な移行に取り組んでいることを考え れば、ある程度の減速は当然の帰結とも いえます。中国政府は来年のGDP成長率 を7%と予測していますが、市場はより悲観 的にみており、4~5%程度の成長を織り込 んでいます。 日本 2% 0% '02 '03 '04 '05 '06 '07 '08 '09 '10 '11 '12 '13 '14 '15 出所:ブルームバーグ、ニューバーガー・バーマン、2015年11月30日時点。株式のリスクプレミアムは、各地域の 株式ベンチマーク指数と10年債名目利回りのフォワード益利回り(フォワード株価収益率の逆数)で決定されま す。 るよりも先進国企業と比べた株価の割安 感に乏しいことは注目に値します。通貨と 経常収支の水準は、コモディティ価格の下 中央銀行の金融政策が今後も焦点に 落に応じて調整してきましたが、コモディ 2015年の大半において、市場が大きな ティの輸出に依存するブラジル、ロシア、南 関心を寄せたのがFRBの金利政策でした。 アフリカは依然として脆弱な状態にありま 概してFOMCのメンバーは高い透明性の維 す。全般にわたり、当社の新興国株式チー 持に努めていますが、金融政策の先行き ムは、投入価格低下の恩恵を受けている に関する市場との対話は難しさを増してお コモディティ輸入国の魅力が相対的に高 り、時に投資家の不安感を高め市場のボ いと考えています。また、世界経済の変動 ラティリティがたびたび上昇しました。今後 要因からある程度隔離されている内需型 FRBは慎重かつ緩やかに利上げを実施す の企業を選好しています。インドのような構 ると予想され、最終的に金利は適度な水 準に落ち着くでしょう。とりわけ異例の低イ 欧州の景気回復の足取りは鈍く、依然とし 造改革機運の高い国が長期的にみると ンフレ率と世界経済の成長に対する懸念 て回復の初期段階にあるといえます。しか 魅力的に思われますが、株価がファンダメ を払拭できない状況を考えれば、FRBが拙 し、株式投資の観点からは、欧州の上昇余 ンタルズの変化に先行している可能性も 速な利上げによって足取りが重い景気回 地はある意味米国よりも大きいと当社は考 あると考えています。 復の腰を折るようなことはないでしょう。緩 えています。特に利益率は2008年の金融 以上を総括すると、グローバル株式市場 やかな利上げサイクルでは、以下チャート 危機以前のピークには程遠い水準にあり、 は、米国の金融政策が引き締めサイクル で示されている通り、米国株のパフォーマン 金融緩和政策、ユーロ安、そして低エネル に入ったことで投資家のポジション調整が スが好調となる傾向があり、逆にFRBの利 ギー価格に後押しされて景気拡大が続け 進み、相対的にボラティリティの高い局面 上げペースが早い局面では、株式市場は ば、企業収益の改善につながることを示唆 を迎えると予想しています。金利環境の正 難しい局面を迎える傾向にあります。欧州 しています。当社のグローバル株式チーム 常化は長期的に見ればプラスですが、中 では、ECBがユーロ安への誘導とユーロ圏 は、通貨安によって(対米ドルでの)競争優 国経済の状況や世界の経済成長が控え 経済の活性化で成功を収めたことから、現 位のメリットを享受している米国以外の多 目な予想を更に下回っていること等から、 在の道筋を維持するか、また緩和姿勢を 国籍企業と、欧州の金融緩和サイクルによ 金融引き締めが景気に悪影響を及ぼす 一段と強めてくる可能性もあるでしょう。日 って恩恵を受ける企業に妙味を感じていま 可能性もあると考えます。さらに、地政学 本でも成長が停滞していることから、金融 す。また、日本の輸出企業は通貨換算によ 的リスクが高まるようなことがあれば、市 緩和姿勢を維持するでしょう。 り収益が下支えされますが、中国の一段の 場の混乱は深まる可能性もあります。こう した懸念の一方で、米国の成長と勢いを 減速の影響を受けやすいと考えています。 グローバル株式市場の見通し: 増している欧州経済に後押しされていま より見通しの明るい先進国市場 一見すると、特に企業業績の成長力を加 現在の低成長環境は株式市場にとって 味すれば新興国市場が割安に思われま す。全体的に見て、当社は概ね楽観的と 難しい環境ではありますが、緩和的な金融 す。しかし、より魅力的な市場で事業展開 いえる見通しを立てており、2016年のリタ 政策と緩やかな経済成長によって、2016 を行うクオリティの高い新興国企業につい ーンは控えめながらもプラスになる可能性 年のグローバル株式市場は底堅く推移す ては、幅広い企業を含むインデックスで見 が高いと考えています。 ると予想します。先進国市場の成長を牽 引している米国では、今夏の調整を経て 反発した株式市場のバリュエーション面で の魅力は低下しています。2015年の企業 収益は、主としてエネルギー会社の低迷と 多国籍企業がドル高の悪影響を受けたこ とで、まちまちとなりました。2016年につい ては、コンセンサスはプラス成長への回帰 を示していますが、利益率の改善余地が ほとんどないことに加え、予測されている経 済成長もわずかであることから、予想が下 方修正される可能性もあります。 13 適度なペースでの経済成長、 不透明な利益見通し 当社としては、米国では消費の好調とFRB の慎重な利上げアプローチにより、適度な ペースでの経済成長が続くものと考えてい ます。緩やかな雇用統計の改善も今のとこ ろ賃上げ圧力にはつながっておらず、投入 コストも低いままであることから、インフレに は過熱の兆候がみられません。一方、利益 見通しは不透明です。安価な労働力と低 賃金、原油安、様々なコスト削減の取り組 みにより、利益率は記録的な水準に上昇し ているものの、そこからさらに引き上げる要 素は見当たらず、逆に押し下げる可能性 のある要因-先ほど挙げたトレンドの逆転 やドル高の継続-が多く存在します。全体 としてS&P500指数の営業利益の増加率 は、自社株買いに伴う株式数の減少による 若干の後押しを受けて、5~7%とみていま す。市場セグメント別で2016年に興味深い 展開が考えられるものとしては、国内に注 力している企業(多くは中・小型株)や消 費財企業が挙げられますが、後者は技術 革新による影響や、消費者による選別が S&P500指数 100 1,400 80 60 1,000 40 600 20 200 0 '70 '75 '80 '85 '90 '95 '00 '05 '10 0 '15 S&P500指数:2016年増益率/売上増加率 16% 2016年増益率 14% 2016年売上増加率 12% 10% 8% 6% 4% 2% 0% ー ギ 信 ル ネ エ 事 益 通 業 業 製 造 公 活 必 需 品 IT 指 00 P5 生 数 融 金 ス ル ヘ S& ケ ア 材 素 財 -2% 費 一方で、製造業セクターの状況は強いものと はいえず、ドル高や経済的な不確実性、コモデ ィティ・セクターの縮小により、引き続き競争上 の逆風にさらされています。多国籍企業には 海外利益のドル換算の影響が出ています。そ してエネルギー・セクターは米国の原油生産 拡大が減速しているものの、OPECの産油量 が高止まりし、原油価格が依然50ドルを下回 っており、不安定な状況が続いています。 120 S&P500指数直近12カ月利益 S&P500指数 1,800 消 14 長期にわたる上昇相場が6年を超えた今、 米国株は利上げや中国、原油価格、ドル高 等、様々な困難に直面しているものの、景気 の見通しは経済活動の3分の2を占める消 費主導で、全般的に堅調と思われます。消費 マインドは年央に落ち込んだ後、原油価格の 低下や労働市場の改善を受けて回復してお り、住宅価格も上昇が続いています。また、失 業率は低下傾向が続き11月には5%となり、 雇用者数も順調に増加しています。 2,200 S&P500指数直近利益 米 国株は引き続き変動性の高い 環境が予想されるものの、当社 では、健全な経済ファンダメンタ ルズと緩和的金融政策の継続により、上昇 の可能性があるとみています。 S&P500指数と利益 般 緩やかな成長と利上げは リターンの向上につながるか? 米国企業の利益は緩やかな成長を予想 一 米国株式: 出所:ブルームバーグ、ファクトセット、2015年11月時点。2015年12月11日時点の増益率/売上増加率 厳しくなる可能性もあります。最後にM&A 市場は、大企業が成長のために引き続き M&Aを活用することから、現在の活発なト レンドが2016年も続くと予想しています。 2015年は、S&P500指数では利益全体に 占める上位10社の割合が極端に大きくな っており、これは市場のパフォーマンスが 横ばいか、ややプラスの時期にみられる現 象です。これを別の角度から見ると、指数 をアウトパフォームした銘柄は46%にすぎ ず、2007年以来最低の水準であり、厳しい 投資環境となっています。しかし、こうした 現象のパフォーマンス・パターンは周期的 な傾向があり、当社としては、市場のトレン ドが移行しつつあり、銘柄ごとの寄与のバラ つきおよびその幅が拡大することで、ファン ダメンタルズによるリターンの差別化が進 む可能性があると考えております。 済成長が予想を下回った場合、世界の需 要がさらに縮小し、新興国市場の成長の 下押し圧力となり、また米国経済の重点は 国内にあるとしても、究極的には米国の拡 大も影響を受けることになります。もう一つ の問題は、FRBです。FRBは世界中で金融 緩和が続く中で引き締め策を進めるとい う、困難な使命を抱えています。仮に1994 年時のように引き締めのペースが速すぎた 場合には、市場は厳しい調整に直面し、成 長が予想以上に低下する可能性がありま す。最後に、政治にも触れておく必要があ ります。10月の予算協議で困難な決定は 実質的に大統領選挙後に先送りとなり、現 在の膠着状況を考えると、2016年中に議 会で経済的に実のある成果が得られるこ とはほとんどないでしょう。それでも、11月 3日が近づくにつれてあらゆる方面で議論 が過熱し、自然と市場の変動要因になるこ とも考えられます。 リスクの検討 2016年の米国株式パフォーマンスに関す しかし究極的に、リターンを決定するのは る当社の見方にとって、主なリスクは何で 資産クラスのレベルではマクロ要因、銘柄 しょうか?既に挙げたように、一つは中国で レベルでは各企業のファンダメンタルズと す。中国人民銀行の金融政策は成功もあ 事業を行う市場であると考えています。 れば、そうでない場合もあります。中国の経 先進国株式(米国を除く): 欧州企業の利幅は米国の同業他社より有望 緩やかな回復見通し EBITDAの利益幅:米国対欧州 ベンジャミン・シーゲル、CFA グローバル株式 チーム 責任者 兼 ポートフォリオ・マネージャー 欧 州の景気回復に加え、企業業績 が回復し利益幅が拡大する可能 性を受けて、来年の先進国株式 (米国を除く)市場について当社は慎重ながらも 楽観視しています。 先進国の株式市場の多くは2015年にお ける極端な価格変動を乗り切り、現在、経 済成長は持続可能で低金利が続くという 楽観的な動きとなっています。昨年の今頃 に始まった原油とコモディティ価格の急落 を受けて消費者の可処分所得は増加し、 原材料の輸入国が多い先進国の景気見 通しに弾みがついています。一方、米国以 外に本社があり、米国のほか中国等、米ド ルに連動した市場で事業を展開している 多国籍企業のコストは、ドル高の恩恵を受 け抑制されています。 ユーロ圏:リスクとリターンのバランスに変化 当社は、昨年からの最も大きな経済的変 化は欧州連合(EU)の景気回復だと考 えておりますが、EUではGDP成長率がプ ラス圏に入ったとみられ、欧州中央銀行 (ECB)が打ち出した積極的な政策により、 「グレグジット(ギリシャのユーロ圏からの離 脱)」やそれが他の国に波及する懸念は 後退しました。欧州の経済政策はビジネス 寄りになってきており、フランスの社会党政 権も経済支援型の政策をとり入れ、2015 年5月に実施された英国の総選挙では財 界寄りの保守党が過半数を獲得して与党 の座を守りました。 米ドルはほぼ一年を通じて高止まりし、ス イス・フランと英ポンドも堅調に推移してい ます。超低金利政策を維持しているユー ロ圏や日本とは反対に米国と英国は利上 げに転じる見通しで、米ドルと英ポンドは 2016年も強含む見通しです。ユーロはドル に対して9%近く下落し(2015年10月31日 現在)、数年続いた低迷から内需が持ち 直しつつある中で、輸出を下支えしていま す。それに伴うクレジットへの需要が銀行 に恩恵をもたらし、不動産価格も回復し始 めています。キャッシュが豊富な優良な企 業が多いこと、低い借入コストと割安な資 産を背景に、合併買収等の企業活動も活 発化しており、株式のバリュエーションを押 し上げる可能性があります。 22% 欧州 米国 21% 20% 19% 18% 17% 16% 15% '05 '06 '07 '08 '09 '10 '11 '12 '13 '14 '15 出所: データストリーム、バーンスタインの分析、2015年9月30日まで 米国企業の利益幅は短期的に最高水準 に近づいていますが、米国に本社があり海 外で事業を展開する多国籍企業にとって ドル高は悪材料であることから、利幅が低 下するおそれがあります。これとは対照的 に、欧州企業の利益は史上最高水準を大 幅に下回っており、上振れ余地が大きいこ とを示唆しています。バリュエーションで見 ると、欧州の多くの企業は米国の同業他 社と比べて大幅な安値で取引されてお り、当社はグローバル市場の中ではEUの 投資機会の妙味が高いと考えています。 従前より強気にみている欧州の工業株や テクノロジー企業に加え、国内の景気回復 を控えて自己資本強化の恩恵を受けてい る欧州の銀行に投資機会が現れ始めて います。 日本:円安が輸出企業を後押し 日本の経済統計は軟調です。投資家は 一段の量的緩和が景気とインフレ率を押 し上げ、円安を期待し、日銀の動向に注視 しています。当社は個別企業を重視して、 リターンが魅力的で持続可能な成長を有 し、キャッシュフローの使途に規律がみられ る企業に注目しています。グローバルでの 競争に打ち勝ち、円安の恩恵を受けてい る輸出企業に特に投資妙味があるとみて います。 2016年はクオリティとバリュー 低価格は必ずしも高価値を意味するわけ ではなく、ファンダメンタルズを考慮して、 資本コストをカバーしていない企業が多い コモディティ・セクターについては引き続き 警戒していします。欧州を中心とする金融 株、一部のテクノロジーと工業株に最大の アップサイドが見込まれます。生活必需品 とヘルスケアにも多数の優良企業が存在 日本経済は足踏み状態 実質GDP成長率の推移 5% 15 4% 3% 2% 1% 0% -1% -2% -3% 9/14 12/14 3/15 6/15 9/15 出所:ブルームバーグ、前四半期比、季節調整後、年率換算 しますが、現在はクオリティ以上にバリュエ ーションが高くなっています。 消費主導型経済に移行する際に中国が 足踏みする可能性、ロシアと中東におけ る地政学的対立の激化、米連邦準備理 事会(FRB)の利上げ時の緊張感の高まり 等、確かにリスクは存在しますが、欧州を はじめ総じてバリュエーションは低く、リスク に見合っていると考えています。モメンタ ム要因に大きく左右された最近の市場と 異なり、アンダーパフォームしている銘柄 に投資家が投資機会を求める環境が予 想されます。今後12ヵ月間、バリューとクオ リティ重視の市場はファンダメンタルズ志 向のマネージャーに理想的な環境をもた らすと、当社は考えています。 新興国株式: 底入れしたか? コンラッド A. サルダナ、CFA 新興国株式 ポートフォリオ・マネージャー 2 16 016年は魅力的なバリュエーション と世界経済の安定化が当資産クラ スを下支え 2015年に入り、新興国市場は各国間お よび一つの市場内に限っても、パフォーマ ンスに大きなバラつきがありました。しか し、中国のGDP成長率の減速、通貨安、 米国の利上げ観測、原材料の輸出国の 場合はコモディティ価格の低迷等を受け て、リスク回避姿勢が強まり資金が大幅 に流出したことから、資産クラス全体とし ては軟調な展開が続きました。目先リスク は残るものの、世界の景気が回復する中 でバリュエーションが割安であることから、 足元までのアンダーパフォーマンスは収 束する可能性があると考えています。 引き続き限定的な成長要因 最近はマクロ経済のイベントが市場を支 配してきましたが、当社が長期にわたり 主張してきたベース・シナリオを再検討 する価値はありそうです。新興国は世界 のGDPの半分を占め、減速したとはいえ 2015年の成長を牽引してきました。新興 国の債務負担は国レベルおよび消費者 レベルで見ても、先進国を大幅に低い水 準となっています。世界経済の成長が低 調である中、アジアを中心に内需主導の 新興国が優位を維持するとみられます。 当社は国内主導型の企業やセクターを 長期にわたり選好してきましたが、輸出 企業に対しては慎重姿勢を維持していま す。例えば、ディフェンシブ(景気非循環) な性質が強い生活必需品は、世界的な バリュエーションの低さもあって、新興国の 他のセクターと比べて大幅に割高に取引 されています。 コモディティの輸出国 対 輸入国 中国景気の減速と新規生産能力を理由 に、コモディティ価格は低迷が続いていま す。このため、ブラジル等のコモディティ輸 出国のほか、素材、鉱工業、エネルギー等 のセクターは逆風にあえいでいます。しか し、コモディティと景気循環株の下落によ って、少数の優良銘柄に投資機会が生じ ると見込んでいます。 もちろん、原材料価格の低下(および、低 インフレ)はコモディティの輸入国にとって コモディティ価格の低下を反映して、インフレ率は総じて低下 消費者物価指数(前年比推移、%) 20% 2014年 2015年予想 15% 10% 5% 0% -5% ロシア ブラジル インドネシア インド 南アフリカ メキシコ マレーシア 中国 韓国 タイ 台湾 出所:ブルームバーグ、2015年11月2日時点 はポジティブ要因となります。これらの市 場では、インフレ率と財務のバランスシー トが改善し、製造業と消費者ともに投入コ スト減少の恩恵を受けています。物価が 安定したとしても比較的低水準が続き、 消費者および価格決定力のある生産者 にとって追い風となるでしょう。 新興国市場は予想成長率に対して バリュエーションが相当割安 政策に注目 インドやインドネシアでは、改革を公約に 掲げた新政権の発足に対して、当初大き な期待が広がりましたが、投資家は大国 ほど改革の実施は困難であるという現実 を受け入れつつあります。一方、中国は固 定資産投資依存型経済から消費主導型 経済への脱皮を図っていますが、当社は 中国の例外的ともいえる高いGDP成長率 からの移行をポジティブに捉えています。 これにより持続的な成長が可能になり、長 期的には魅力的な国内投資の機会に恵 まれると考えられるからです。そうなれば、 低いバリュエーション、安定化、より楽観的 な市場センチメントによって、様々なニッ チの分野でボトムアップの投資家にアップ サイドが生じるでしょう。 0.8% 警戒すべき分野 当社は比較的楽観的な見通しを立てて いますが、リスクにも注意を払っています。 市場は、中国が一段と減速する可能性と FRBの利上げの影響という二つのテーマ を引き続き注視しています。最初のテーマ については、中国経済の主体が変化して いる状況の中で、今後も景気減速が見込 まれますが、世界第二の経済大国である 中国のGDP成長率に市場が執着するの を「やめる」ことが必要だと考えています。 二つ目のテーマについては、FRBの政策へ の感応度が低い国々の方が堅調な展開 となるかもしれませんが、通貨安は一段 PEGレシオ 1.6% 1.4% 1.2% MSCIワールド MSCIエマージング・ マーケット 1.0% 0.6% 0.4% 0.2% 0.0% 出所:ブルームバーグ、2015年9月30日時点 落したとみており、経常収支の改善が見 込まれます。 魅力的なバリュエーション 当社は、足元の企業収益の下方修正は コモディティと景気循環的な要因が原因 とみています。新興国企業は収益の伸び 悩みに慣れていませんでしたが、ようやく 現実に順応したようです。設備投資の安 定化に伴い、利益とキャッシュフロー重視 が現実味を帯びたものになるかもしれま せん。現在のバリュエーションは弱気のシ ナリオを織り込んだものであり、慎重なが らもポジティブな見通しを有する余地があ るとみています。 リスクは高止まりしているものの、新興国 株式市場の大きな魅力である高成長の 可能性は、世界の成長が減速しているだ けに魅力的です。価格決定力と増収基調 が鮮明な国内主導型の企業を筆頭に、こ の可能性を達成しうる市場と銘柄を特定 できれば、優位性のあるパフォーマンスに つながると見込んでいます。 Solvingfor for2016 2016 Solving 債券市場 Global Fixed Income ブラッド・タンク 債券部門 最高投資責任者 グローバル債券: ボラティリティ要因の変曲点 世 界経済と債券市場では、予想外の経済成長率低迷、中国への失望、コモディティ価格への打撃、米国の金融 政策の不透明感により、過去一年間、繰り返しコンセンサスが覆されました。2016年の環境を予想するにあた り、そうした要素の多くは引き続き存在しており、市場の心理やパフォーマンスに大きく関与しています。 18 10年近い期間、各国市場には前例のない 金融緩和策があふれていましたが、今や 米連邦準備制度理事会(FRB)は痛みを 伴う利上げへと向かっています。この動き は経済成長率の低迷により遅れ、他の先 進国市場の金融緩和バイアスと、FRBの 情報発信方法が期待通りの効果を上げ なかったことにより複雑化し、結果的にボラ ティリティを上昇させました。政策正常化に は数年を要する可能性があり、市場では 引き続き不安材料となるでしょう。反面、 欧州が緩やかな経済成長のモメンタムを 維持し、また日本が立ち直りを目指す等、 他の先進国市場ではむしろ金融緩和策 が加速する可能性が高くなっています。 もう一つ、2016年以降の市場で重要な 要素となるのは中国です。中国市場は昨 夏の終わりの混乱を経て、政府による異 例の行動を通じて一旦は落ち着きを戻し ました(何よりも通貨切り下げは投資家の 不安を拡大しました)。現在、世界経済に おける役割の拡大が続く中国の経済成 長へ向けた道のりが、きわめて大きな注 目を集め続けています。 当然ながら、こうしたボラティリティは孤立 した現象ではなく、数年がかりで中国が製 造業主導経済からサービス主導経済へと 移行していることを反映しています。これ は、持続可能な安定成長を達成する上で 不可欠な動きと考えられます。全容を理 解するために挙げると、仮に2016年に中 国の経済成長率が5%だったとしても、そ の世界のGDP成長率への絶対寄与度は 2007年当時における同国の15%成長の 寄与度よりも大きくなることは特筆に値し ます。中国経済はいわば巨大な船ですが、 当社では中長期的にこうした進路変更は 成功できるとみています。中国の政府と中 央銀行は利用可能な多くのツール(およ びリソース)を保有しており、たとえ間違い を犯すことはあっても、最終的に正しい成 果を得ることに重点を置いているようにみ られます。 その成功(または失敗)は当然のことな がら、他の地域にも影響します。とりわけ、 中国経済が著しく鈍化するようであれば、 コモディティ価格が一層下落し、既に困難 に陥っている多くの新興市場やコモディテ ィに対する感応度の高いクレジット銘柄に 悪影響を与える可能性があります。より広 範には、新興市場の輸入需要が減少する ことで先進国市場にも波及し、結果として リスク資産全般にマイナス影響を与え、世 界経済の成長およびインフレ見通しが変 化する可能性があります。 債券投資家にとっての結論は何でしょう か。第一に、2016年も不確実性が継続す ると思われ、地政学的要因や米国の大統 領選挙による混乱がこれを悪化させる可 能性があります。しかしこれは全てネガティ ブというわけではなく、ボラティリティは、と りわけ複数のセクターや地域に投資するこ とのできる投資家に対し、価格が不適正 な資産への投資機会をもたらす可能性が あります。続くページでは、当社の債券チー ムメンバーが、当社の見通しや投資機会 とリスクについて、より詳細な説明をいたし ます。 先進国債券:余波を乗り切る アンドリュー・A・ジョンソン、グローバル投資適格 債戦略 最高投資責任者 サノス・バルダス、PhD、グローバル国債 金利 運用部門 責任者 ジョン・ジョンソン、グローバル債券運用 シニア・ ポートフォリオ・マネージャー 界経済の緩やかな成長を背景 に、2016年はスプレッドの縮小傾向 を見込んでいます。 世 2008年の世界金融危機は歴史上の出 来事となりつつありますが、その余波は超 低金利や生産能力過剰、経済成長の低 迷、インフレ率の横ばい等の形で今も続い ています。中国経済の成長鈍化が世界経 済についての楽観的な見通しを脅威にさ らし、市場の不透明感が高い水準にとどま っています。全体としては、コモディティ価 格の低迷と金融緩和政策の組み合わせ が個人消費を支え、今後12カ月間、世界 経済は緩やかな成長が続くと予想してい ます。このような環境において、国債の低 利回りは投資意義を見出しづらい状況で はありますが、クレジット・セクターについて は割安になっているものがみられており、 来年はスプレッドの緩やかな縮小が見込 まれます。 個人消費が米国経済の成長を 下支えする見通し 米国経済は、引き続き好調な消費に牽 引されると思われます。財務体力の向上、 エネルギー・コストの低下と穏やかなインフ レ率がこれを支えるでしょう。右上の図が 示す通り、個人消費支出は堅調で、米国 米国消費は上昇傾向を維持 ユーロ圏:輸出が支配、投資は域外へ 米国の個人消費(前年比増減 %) ユーロ圏のGDP構成要素(2007年12月=100) 5% 120 4% 115 3% 110 2% 105 1% 100 0% 家計 政府 輸入 GDP '09 '10 資本形成 95 -1% 90 -2% -3% 総消費 輸出 85 '01 '03 '05 '07 '09 '11 '13 '15 80 '07 '08 '11 '12 '13 '14 '15 出所:ブルームバーグ、2015年9月30日時点 が投資支出の低迷や米ドル高による輸出 減少を乗り切る原動力となりました。将来 は市場が予想しているよりも明るいかもし れません。財務体質の改善がピークを迎 え、賃金が安定すれば、消費者は貯蓄を 通常の水準に戻すことに安心感を覚える ことで、予想を上回る消費増加につなが っていく可能性があります。 消費が経済成長を牽引していくという当 社の見解は、労働市場や金融政策につい ての見通しとも連動しています。2015年 の労働市場改善のペースは2014年ほど の勢いはなかったものの、市場は健全な 成長を維持しています。金融政策につい ては、2016年も緩和的な政策スタンスが 継続すると予想しています。当社の見解 では、米連邦準備制度理事会(FRB)の 金融引締めサイクルは非常に緩やかな ものとなる可能性が高く、2%のインフレ率 が達成されかつ持続可能であるという確 信を強めるまでは、労働市場の改善を重 要視していくとの見通しを有しています。 全体としては、年を通じて3、4回の利上げ が実施され、フェデラル・ファンド・レートの 中央値は2016年末までに1%~1.125% 程度になると予想します。利上げのペース は、歴史的な水準からすると緩やかなも 出所:ブルームバーグ、ニューバーガー・バーマンの算出値、2015年6月30日時点。総消費:最終消費支出(FCE)、 家計:家計および対家計非営利団体、政府:一般政府FCE、資本形成:総固定資本形成。 のとなるでしょう。 インフレ率は数年にわたってFRBの目標 を下回ってきたものの、2016年には上昇 が予想されます。2015年はエネルギー 価格の急落がインフレ率を抑制しました が、この下降スパイラルの影響は解消さ れる見通しで、結果として消費者物価指 数(CPI)に上昇圧力が生じるでしょう。さら に、今年はインフレ率が低かったにもかか わらず、CPIバスケットの構成要素は依然 として堅調であり、とりわけシェルター項目 (居住用住宅家賃、持家帰属家賃等)や コア・サービス業で顕著となりました。 欧州では金融緩和と経済成長が加速? 2015年は、欧州中央銀行(ECB)がよう やく量的緩和を実施した年となる一方、 域内では政治的な地雷原での永続的な 「小競り合い」が続いています。最終的に は冷静さが取り戻され、ギリシャのユーロ 脱退は回避されました。しかし、新たに生 じた難民問題による緊張は依然として最 優先課題です。このような課題が残り続 ける中でも、ドイツと他のユーロ圏諸国の 経済的格差は縮小し始めています。アイ 2016年経済成長率および政策金利見通し 米国 ユーロ圏 英国 日本 *ドイツ国債 GDP成長率 2.5% (+/- 0.5%) 1.5% (+/- 0.5%) 2.2% (+/- 0.5%) 1.0% (+/- 0.3%) 出所:ニューバーガー・バーマン、2015年11月15日時点 インフレ率 2.0% (+/- 0.3%) 1.0% (+/- 0.3%) 1.5% (+/- 0.5%) 1.0% (+/- 0.3%) 10年国債金利 2.8% (+/- 0.5%) 1.3% (+/- 0.3%)* 2.5% (+/- 0.5%) 0.9% (+/- 0.3%) ルランドとスペインは、最近になって欧州 で最も成長率の高い国々としての位置付 けを固めています。イタリアも、長期的な 景気収縮を経てプラス成長を回復しまし た。周辺国の失業率も、非常に高い水準 からとはいえ、低下しています。 ユーロ圏がGDPを金融危機前のピークを 上回る水準に回復しようとする中、景気 回復が不安定であるという印象は容易に は払拭されません。下振れリスクは域内 外を通じて依然として燻っており、購買担 当者景気指数(PMI)等の先行指標はモメ ンタム鈍化の可能性を示唆しています。ま た、外部要因としては、新興市場の見通 しが不確実なことやユーロ圏輸出業者へ の需要に対する影響が重大なリスクとな っています。 こうした背景に対して、ECBは警戒態勢 を緩めていません。事実、12月には資産 購入プログラムが少なくとも2017年3月ま で6カ月延長され、これには量的緩和資 金の無期限の再投資や預金金利のマイ ナス0.3%への引き下げも含まれました。こ うした措置により、当社の2016年予想で ある実質GDP成長率約1.5%とヘッドライ ン・インフレ率約1%が達成される可能性 は高まっていくと考えています。景気サイ クルとユーロ安による輸出増が経済成長 を押し上げていくことで、利回りが若干上 昇する可能性があります。また、イタリアと スペインの10年国債利回りは、対ドイツ国 債スプレッドで80~100bps程度の水準で 推移する可能性があるとみています。当 社の展望に対する主なリスクは、政治不 19 英国の労働市場力学が引き続き改善 通貨:乖離する各国の 失業率と業績成長率(%) インフレ率と金融政策 ウゴ・ランチオーニ、グローバル債券戦略 兼 通貨戦略 ポートフォリオ・マネージャー 世 界経済の成長への懸念、各国 の金融政策の乖離の見込み、 ボラティリティの高まりが通貨 市場の動きを活発にしており、この傾向は 来年も持続するとみています。 20 米国連邦準備制度理事会(FRB)による 利上げが行われるとの観測は、2014年に 加えてやや落ち着いたものの、2015年も 米ドルを押し上げました。経済指標の弱 さ、低いインフレ率、その後の世界的な政 情不安といった兆候から判断し、FRBはゼ ロ金利解除を12月まで見送りました。その ため市場はレンジ相場となり、コンセンサ ストレードは徐々に巻き戻されました。 2016年の展望としては、インフレと金融 政策が、引き続き通貨市場の主要なドラ イバーになると思われます。ほぼ例外なく 全世界的に経済成長は鈍化し、インフレ 率は総じて低く抑えられています。その結 果、各国中央銀行の多くが緩和的な金 融政策をとり続けてきました。米国経済 に弱さは残るものの、その回復は持続可 能であり、インフレ率も来年は控えめなが ら上昇すると、当社はみています。したがっ て来年はFRBが徐々に金利を引き上げ、 それが米ドルをさらに押し上げるでしょう。 対照的に欧州と日本では、経済活動は 緩やかに回復しつつあるものの、インフレ の欠如から、ECB(欧州中央銀行)と日本 銀行が緩和的なスタンスを維持せざる を得なくなっています。金融緩和政策と不 利な利回り格差は続くものの、欧州と日 本のマクロ経済の全体像が徐々に改善 される中で、ユーロ市場と円市場はレンジ 相場になると予想されます。 上記の通貨以外では、当社はスイスフラ ンに悲観的な見方をとっています。2015 年のギリシャ危機を背景に、スイスフラン は総じて資金の安全な逃避先とみなさ れてきました。現在ギリシャへの懸念が 後退しつつあることから、来年スイスフラ ンは値を下げる可能性があります。コモデ ィティ通貨に関しては、豪ドルとニュージー ランド・ドルが、エネルギー価格の下落と 新興国市場の需要低迷に引きずられる 形で下落しています。両通貨とも中長期 的な見通しはそれほど悪くはありません が、当面は慎重な見方を維持します。 10% 賞与を除く平均週次収入(前年比、%) 英国失業率(%) 8% 6% 4% 2% 0% '03 '04 '05 '06 '07 '08 '09 '10 '11 '12 '13 '14 '15 出所:ブルームバーグ、2015年9月30日時点 済成長の足かせとなっています。依然とし て中国が主な貿易相手となっているため、 英国については慎重、 輸出についての見通しは明るくありません 日本の景気回復は不透明 が、米国からの需要が増加するようであれ 史上最悪の景気後退の後、英国経済は ば、その影響は緩和されます。日本経済は 不況からの脱出に向かっているとみていま 依然として幾分脆弱であり、量的緩和の す。米国同様、主にエネルギー価格下落 更なる拡大の可能性を示唆しています。 が理由となって、労働市場が急速に安定 化する一方で、インフレ率が低下しました。 スプレッド・セクターに注目 投資家は、2015年が英国の金融政策正 先進国市場の国債は、米国や欧州の中 常化に向けた動きが始まる年となるとみ 核国、日本等の地域で割高となっている ていました。しかし、世界経済の成長低迷 と考えますが、スプレッド・セクターの様相 と穏やかなインフレ率が金融引締めサイク は異なります。現在のバリュエーション水準 ルの開始を遅らせました。イベント・リスクに と、米国経済について緩やかな成長が予 よる景気混乱の可能性が高まる中、イン 想されることを勘案すると、2016年の米 グランド銀行(BoE)は来年を通じて慎重な 国クレジット市場については全般的にポジ 姿勢を維持すると思われます。こうした背 ティブな見通しです。中国経済の成長鈍 景から、BoEによる利上げは今後12カ月間 化とコモディティ市場の低迷から、市場で で1回か2回にとどまる見通しで、リファイナ は現在のクレジット・サイクルは終盤に近 ンス金利は1%でピークを迎え、実質GDP づいているという懸念が高まりましたが、 成長率は2%をわずかに上回る水準となる 当社はまだ余地があると考えます。米国 でしょう。国内経済のサイクルやFRBの利 の投資適格債市場については、今後12カ 上げサイクルを勘案すると、英国の10年 月間に緩やかなスプレッド収縮と、一時的 国債の利回りは緩やかに上昇する見込み なボラティリティ上昇によるミスプライス銘 です。 柄への投資機会発生を予想しています。 一方で、とりわけコモディティへの直接的・ 過去数年間、日本経済、日銀、および金 間接的エクスポージャーを有するセクター 利構造はちぐはぐな動きをみせています。 については、一部で低迷が続くと思われま 日本のマクロ経済展望を巡る議論は、量 す。セクター別では、米国の銀行セクター 的緩和政策やアベノミクスのリフレ政策に が魅力的とみています。同セクターはクレ 大きく影響されてきました。こうした異例な ジット・サイクルの早期にあり、銀行はバラ 措置にもかかわらず、経済成長率は明確 ンスシート改善と事業リスク削減を続けて なトレンドを欠いて変動し続け、ヘッドライ います。スプレッドは縮小し、上振れ余地 ン・インフレ率は今やゼロパーセント前後で もより小さくなっていますが、同セクターは 停滞しています。他のG4諸国同様、日本 2016年に魅力的なリスク/リターンを提供 の経済成長も個人消費に牽引される見通 すると考えられます。 しです。アベノミクス導入後の急激な円安 にもかかわらず、過去数年間、純輸出が経 米国以外の銘柄については、魅力的な 安の再発です。 投資機会が散見されます。当社の見解で は、欧州は2016年に経済成長が加速し、 低水準にとどまっている市場期待を上回 る可能性があります。ユーロ圏はユーロ安、 緊縮財政の緩和、クレジット・フローの増加 と原油価格下落の恩恵を受けています。 さらに、ECBが最近のユーロ安の固定ない しさらなる下落を志向する中、非常に緩和 的な政策が予想されます。このような環境 から、リスク資産に有利な条件が整う見通 しです。社債については、バリュエーション が割安で現在のスプレッド水準が投資適 格債よりも優れたキャリーを提供している ハイ・イールド債が特に魅力的です。 RMBSとTIPSに魅力 証券化セクターでは、非政府系住宅ロー ン担保証券(RMBS)の相対的価値が依然 として堅調となっています。当社の見解で は、これらの証券は金利リスクが非常に低 く、損失調整後利回りが魅力的とみてお り、また過去一年間の格付機関の発表を みても、格下げとの比較で格上げに大きく 寄っています。最後に、この資産クラスは他 の非投資適格債との相関性が比較的低 くなっています。政府系住宅ローン担保証 券(MBS)については、テクニカル要因から 歴史的にタイトなスプレッドで売買されて いるため、それほど強気の見方をしていま せん。ただし、現在のタイトなスプレッドは FRBの市場関与に変化が見られる、または 与信基準が緩和され、供給が増加するま で継続するでしょう。最後に、最近のスプ レッド拡大から、商業用不動産ローン担保 証券(CMBS)市場が魅力を増しています。 しかし、最近発行されたCMBSについては 参照資産における質の低下が見られるた 米国地方債は依然として割安 10年一般財源債と同等の米国債の利回り比較 め、慎重に選別を行う必要があるとみてい に、FRBの影響を相殺する可能性のある点と して、地方債市場が、高格付債券との比較 ます。 この他では、今後一、二年間を通じて、米 国インフレ連動債について非常に健全な 環境が予想されます。実質利回りは今や プラスの領域にあり、先進国市場では最も 高い水準です。さらに、FRBの利上げは通 常よりもゆっくりとしたペースになると予想 されるため、2%のインフレ目標達成を確 保するため、FRBは労働市場のさらなる改 善を認めると思われます。 において(とりわけ税調整後ベースで)、依然 として魅力的なバリュエーションを提供するこ とが挙げられます。基本的に、当社は米国経 済が緩やかなインフレ状態で上昇軌道を維 持すると考えています。しかし、現在の米国 経済の回復期間の長さや、支出抑制要因を 勘案すると、信用力改善による上昇余地は 限定的となるでしょう。 利回りの平坦化と供給圧力の低下 こうした背景から、米国地方債の利回りは 2016年中に若干フラット化し、短期債の金 米国地方債:レラティブ・バリュー 利は長期債よりも大きく上昇すると予想し が慎重なFRBに勝利 ています。この資産の相対的価値の魅力は ジェームズ・L・イスリン 2015年末にかけて認識されるようになりまし 米国地方債 運用責任者 たが、高税率が続く環境での堅実な需要に 支えられ、このトレンドは継続すると考えられ 国地方債市場は2015年初来、他の ます。地方政府は既存債務のリファイナンス 債券セクターをアウトパフォームしてい と借入コスト引き下げのため、2015年の低金 ます。1 現在の状況を勘案すると、この 利を積極的に活用しました。2016年に予想 トレンドは2016年も継続すると思われます。 される利上げ環境下においてこうした活動は 米国地方債市場は2015年、将来的な金融 減少し、結果として魅力的な需給環境にな 政策についての不透明感、プエルトリコ等の る可能性があります。 銘柄固有のヘッドライン、供給過剰等、多く 他の要素としては、プエルトリコの債務再編 の課題に直面しました。しかし、全般的なファ の余波やその他の一過性のクレジット・イベ ンダメンタルズが底堅かったことから、地方 ントを巡り投資センチメントが悪化すること 債は底堅さを維持し、年末に向けて相対的 や、11月の大統領選挙に向けて税法改革に に優れたパフォーマンスを実現しています。 関する議論が行われる可能性があります。し 2016年については、市場のパフォーマンス かし、現在の連邦政府の機能不全を勘案す を左右する大きな二つの要素がみられます。 れば、広範な税法改革が実現する見込みは 第一に、米連邦準備制度理事会(FRB)が 少ないでしょう。 米 ゼロ金利政策を脱却するに伴い、絶対リター 結論としては、市場のボラティリティは高止 ンに対する圧力が生じるでしょう。これはイー まりとなる可能性があるものの、全般的には ルド・カーブに不均一な影響を与える可能性 米国地方債市場にポジティブな見通しであ があり、積極的なイールド・カーブ管理による り、銘柄選択と積極的なイールド・カーブ管 収益機会が生じる可能性があります。第二 理がリターンを牽引すると考えます。とりわ け非課税市場の相対的な魅力度を勘案す れば、投資家の需要は全般的に旺盛となる でしょう。 200% 150% 平均 100% 50% '95 '96 '97 '98 '99 '00 '01 '02 '03 '04 '05 '06 '07 '08 '09 '10 '11 '12 '13 '14 '15 出所:トムソン・ロイターズ、2015年11月30日時点。地方債市場汎用データ、10年AAA格一般財源債と10年米国債の比較。 年初来2015年11月30日まで。 1 21 ハイ・イールド債券 およびバンクローン: するのはGDP成長率およびデフォルト率で あり、いずれも2016年にハイ・イールド債を 下支えすると考えています。さらに過去の 例では、緩やかに金利が上昇する環境に おいては、概して経済情勢が堅調であり、 ハイ・イールド債券およびバンクローンは下 支えされる傾向にあります。こうしたことか ら、当社はハイ・イールド債券およびバンク ローン市場に対してポジティブな見通しを 有しており、コモディティ関連セクターを除 の、全般的なファンダメンタルズ けば、今後12カ月間にスプレッドが縮小す しかしながら、今後のハイ・イールド債券 は底堅く、2016年の米国や欧州 る可能性があると考えています。 におけるハイ・イールド債券市場およびバン 市場においてはボラティリティが高止まり する展開が続く可能性はあると考えてい 欧州のハイ・イールド債券の クローン市場は下支えされる見通しです。 ます。現時点 2において、米国のハイ・イー ファンダメンタルズは引き続き堅調 米国:緩やかな経済成長 ルド債券のデフォルト率は、2015年は約 欧州のハイ・イールド債券市場は、エネル およびデフォルト率の上昇 1.5%、2016年には3%まで上昇する可能 ギー関連銘柄の割合が小さく、発行体の 2015年のハイ・イールド債券およびバン 性があると予想しています。コモディティ関 多くが厳しい経済環境に慣れているという クローン市場は、エネルギーおよび金属・ 連企業のデフォルトが増加した場合には、 点において、米国のハイ・イールド債券市 鉱業セクターの低迷に市場の注目が集ま ハイ・イールド債券市場におけるデフォル 場と異なるといえます。欧州の企業はクレ りました。中国からの需要鈍化を勘案すれ ト率はさらに押し上げられ、2017年末まで ジットの質が依然として高く、デフォルト率 ばこの傾向は継続すると思われますが、こ に長期平均の4.0%に近い水準に達する可 は長期的平均よりも低位で推移するとみ れら二つのセクターが米国のハイ・イール 能性があるとみています。 ています。ECBの追加的な金融緩和策と ド債市場に占める割合は20%に満たない 2014年のソブリン債務を巡る懸念の後退 もう一つの不透明要素は、FRBによる金融 ことは着目すべき点であり、同市場の残り も、市場を下支えすると考えられます。欧 80%における全般的なファンダメンタルズ 緩和策が終了へと向かうことです。2016 州経済の緩やかな成長は企業の経営陣 の底堅さが見落とされていると当社では 年には数回の政策金利引き上げが実施 に保守的な経営スタンスを促すことから、 されると予想していますが、FRBは穏やか 考えています。 株主寄りの企業活動に伴うイベント・リスク な金融政策の舵取りを行うことで、従来の が緩和されるとみておりますが、これは債 足元のハイ・イールド債券市場におけるバ 市場予想よりも緩やかな利上げを行うと 券投資家にとってはポジティブな要因で リュエーションは、想定されるデフォルト・リ みています。また、金利動向がハイ・イール す。テクニカル面では、低金利環境の継続 スクを埋め合わせる水準にあると思われま ド債券のパフォーマンスの主な牽引要素と が底堅い需要を牽引することで、欧州ハ す。ファンダメンタルズの観点からは、2%前 ならない傾向にある点も重要なポイントで イ・イールド債券市場の急速な拡大が継 後の成長率を維持することが見込まれる す。むしろ、ハイ・イールド債券を主に牽引 続する可能性があります。市場の拡大が 潤沢な銘柄選択の機会を創出し、市場を ハイ・イールド債のスプレッドはデフォルト・リスクを過度に織り込んだ水準にある 注意深く洞察できる投資家にとっては、断 続的にボラティリティが高まる局面におい 額面価額加重デフォルト率(%) スプレッド(bps) て魅力的な投資機会が得られるものと考 12% 2,600 えられます。2016年、欧州ハイ・イールド債 2,200 10% 券市場は、インカム収益を中心とした魅力 的なトータル・リターンが得ることができる 1,800 8% 資産クラスであると考えています。 米国経済が同市場を下支えするとみてい ます。ハイ・イールド債券市場におけるレバ レッジは、キャッシュフローの4.1倍と依然とし 景気循環の長期化における て適度な水準を維持しており、短期的に満 期を迎える債券およびバンクローンはリファ 魅力的なバリュエーション トーマス・P・オレイリー、CFA、非投資適格クレジ イナンスを通じて大幅に減少しています。ま た長期的な観点から、過去ハイ・イールド債 ット部門責任者 ジョセフ・P・リンチ、ポートフォリオ・マネージャー 券およびバンクローンがボラティリティ対比 で魅力的なリスク・リターン特性を示してい 部に軟調な動きが見られるもの た点も興味深いといえるでしょう。 一 1,400 6% 1,000 4% 600 2% 0% '87 '89 '91 '93 '95 '97 '99 '01 '03 '05 '07 '09 '11 '13 '15E '16E 22 200 0 過去12カ月間のハイ・イールド債デフォルト率 ハイ・イールド債スプレッド格差幅 レバレッジド・ローンのスプレッド 出所:JPモルガン、S&P/LSTA、2015年11月30日時点。額面価額に基づくデフォルト率。ハイ・イールド債のスプレッド格差幅 はJPモルガン・グローバル・ハイ・イールド指数で表される。パフォーマンスが最低の銘柄と最高の銘柄の差を予想した値。 レバレッジド・ローンのスプレッドは、S&P/LSTAレバレッジド・ローン指数のディスカウント・マージン(3年)で表される。 2015年11月30日時点 2 新興国債券: 実質実効為替レートはコモディティ価格の下落圧力を反映 構造的逆風との戦い 1980年3月31日を100とした値 ロブ・ドライコナゲン、ゴーキー・アーキエタ 新興国債券 共同運用責任者 150 コモディティ輸出国1 製造業製品輸出国 市 場環境は依然として厳しいもの の、新興諸国の経済は景気循環 120 の底を打った可能性があります。 債券市場に影響をもたらす景気回復への道 のりは、経済改革により大きく左右される可 90 能性があります。 問題の根源と市場による調整 新興国債券市場における最近の状況を 把握するためには、世界金融危機まで時 系列を遡って見る必要があります。2007 ~2008年の一連のイベントを受けて先進 国市場がレバレッジを解消するにつれ、新 興国市場の経済成長は数年間で大きく減 速しました。またその過程で、経済拡大の 主軸として国内需要への依存度が高まりま した。当初は管理可能な水準に収まってい ましたが、経常赤字が次第に膨らむ結果と なり、とりわけ2013年のFRBによる「量的緩 和の段階的縮小(テーパリング)」発言以後 は、経常赤字が経済の脆弱性をもたらしま した。世界経済の成長は与信拡大によると ころが大きかったため、世界全体にみたコモ ディティ需要の下落は深刻なものでした。 中国と先進国市場の多くが経済の軸足を 製造・生産部門からサービス部門に移した ことも追い打ちをかけました。サービス部門 への納入業者の大半が国内企業であった ことは、コモディティ輸出国の市場での立場 を圧迫しました。右図に示すように、これらの 国々の実質実効為替レートは、実際に激し く変化しており、2008年の金融危機当時を 下回る水準にまで達しています。当社では、 こうした為替レートの変化は、コモディティ価 格による交易条件の悪化要因を上回る水 準まできていると考えています。 60 '95 '96 '97 '98 '99 '00 '01 '02 '03 '04 '05 '06 '07 '08 '09 '10 '11 '12 '13 '14 '15 出所:ブルームバーグ、2015年11月30日まで。製造業製品輸出国は、インド、韓国、フィリピン、タイ、ポーランド、チェコ共和国、 ハンガリー、トルコ、イスラエル、メキシコ コモディティ輸出国は、ブラジル、チリ、コロンビア、南アフリカ、インドネシア、マレーシア 1 新興国市場のスプレッドは急激に拡大 デュレーション調整後対米国債スプレッド:新興国市場と先進国市場の投資適格債を比較 ベーシスポイント 新興国市場 350 先進国市場 300 250 200 150 100 '12 '13 '14 '15 出所:JPモルガン、2015年11月30日まで。新興国市場はEMBIグローバル・ディバーシファイド投資適格債指数、先進国市場 はJPモルガンUSリキッド指数(JULI)から新興国市場を除外したもので表記。 くの地域で景気は底を打った可能性がある と当社はみています。過剰生産能力と(特に アジアで顕著な)レバレッジ解消の必要から、 政策当局は経済改革の導入を迫られていま す。これらの問題に首尾よく対処できるかど もう一つの景気圧迫要因は、米国の金融 うかが、2016年に市場の負け組と勝ち組を 引き締め政策による直接的な影響です。こ 分けるというのが当社の見解です。特に中国 れは新興国市場の資本収支流出の原因と は、今後も国営企業セクターの改革を強力 なり、さらにブラジル、ロシアその他の国々で に推し進める可能性があります。これは、世 は国内での問題が、また新興国市場全体 論の支持が得られた財政改革とは逆に、政 では経済改革の欠如が事態を悪化させま 治的に難しい問題であると考えられます。メ した。その結果、先進国市場における信用 キシコ、インド、インドネシアといった国々では、 スプレッド拡大の影響もあり、様々な新興諸 今後も改革努力が実を結ぶ可能性がありま 国の信用格付けが引き下げられ、スプレッド す。逆に原油輸出国の大半は、原油価格の が拡大しました。 大幅な回復が当面見込めないことから、引 景気循環は底を打ち、焦点は改革へ ヘッドラインと対照的なパフォーマンス き続き厳しい環境に見舞われる可能性が高 新興国市場全体において、構造問題は依 悲観的なヘッドラインにもかかわらず、2015 いとみています。また、最近アルゼンチンとベ 然として残っているものの、新興国市場の多 年(12月半ばまで)の新興国市場のソブリン 債および社債のトータルリターンは概ねプラ スとなり、他の債券カテゴリーの多くを上回っ ています。ただし、現在のファンダメンタルズ を反映した為替相場の下落から、現地通貨 建てのエマージング債は下落しています。現 地通貨建て債については、リスクプレミアム が上昇する一方で、ローカル金利が過去最 高水準(2008年を除く)に達し、為替リスクを 相殺するとともに、通貨安に関連したインフ レ圧力を抑制する原因となりました。低調な 経済成長と世界的なディスインフレを背景 に、ローカル金利は実質ベースでも高い水準 にあるといえます。 23 新興国市場の実質利回りは急騰 新興国市場と先進国市場の実質利回り 平均 +1標準偏差 -1標準偏差 4.0% 3.5% 3.0% 2.5% 2.0% 1.5% 1.0% 0.5% '06 '07 '08 '09 '10 '11 '12 '13 '14 '15 '16 出所:JPモルガン、ブルームバーグ、ニューバーガー・バーマンの算出値、2015年11月30日まで。点線は、現在の名目利回りと 2016年5月までの当社インフレ予想に基づく、2016年5月までの実質利回り予想を示す。新興国市場の利回りはブラジル、 チリ、中国、コロンビア、ハンガリー、インドネシア、マレーシア、メキシコ、ペルー、ポーランド、南アフリカ、タイ、トルコ、フィリピンのGBI EM利回りの平均を算出。 24 ネズエラで政権が交代したことは、これまで の誤った政策で拡大した不均衡が是正さ れる望みをもたらしていますが、ブラジルで も、経済が実質的に回復するかどうかは政 治の先行きにかかっています。中国の国内 総生産(GDP)成長率は2016年には減速し て現在の約6.8%1から5.5~6.5%まで低下す ると考えられ、世界経済にとっては米国より も大きな影響を及ぼすとみています。その結 果、中国が現在の投資と純輸出中心の経 済から消費型経済へと転換する重要性は さらに高まると考えています。こうした変化は 大きな試練を伴うものであり、様々なコモデ ィティ生産国への後ろ盾が弱まることを示 唆する一方で、世界的な生産能力過剰の ために、製造業部門が直ちに等しく恩恵を 受けることはないと考えられます。その他、中 国については他国の経済成長を犠牲とする ような、通貨下落を利用した経済対策は行 わず、むしろ経済の回復に一致するペース の、引き続きより控えめな実質実行為替レ ートの上昇が見込まれます。 新興国市場と先進国市場の成長が相互 に依存していることを考えると、世界規模の 経済拡大を持続するためには、新興国市場 の役割が欠かせません。歴史的に見ても、 新興国市場の世界経済成長への寄与率は 70%前後にのぼっています。米国の金融政 策でさえ、世界経済の成長にある程度依存 して成長を遂げてきました。FRBはコアインフ レ率の上昇圧力を生み出していますが、欧 州中央銀行と日本銀行は正反対の方向に 進みつつあることから、新興国諸国の軟調 出所:当社の新興国市場債券チームによる2015年予想。 1 な経済状況と相まって、米国の流動性引き 締めが新興国市場にもたらす影響をある程 度相殺する可能性が高いと考えています。 乖離は弱まるか 少なくとも新興国市場における経済の 循環的回復が達成され、先進諸国の現 在の経済成長が引き続き順調に推移し た場合には、今後の経済のパフォーマン スと金融政策については、各国間の乖離 が弱まるとみています。2016年の後半に は原油の需給バランスの改善により、原 油価格が若干持ち直すと予測していま す。ハードカレンシー債、ローカルカレンシー 債、社債の価格は総じて高水準のリスク を織り込んでいるため、ソブリン債とローカ ル金利の投資配分を増やすことでより高 いリスク調整後リターンを得ることができ る可能性があります。企業のバランスシー トは、依然としてソブリン債対比で経済成 長に感応度が高いものの、市場は徐々に 織り込むようになっています。ある程度慎 重なバランスシート管理と少なくとも部分 的な景気回復の見通しから考えて、こうし たリスクは引き続き低く抑えられると考え ます。また、高い外貨準備高、公共セクタ ーにおける低位な債務比率、変動金利制 度、(ポートフォリオの調整が既に大部分 終了したことによる)資金流出ペースの低 さを特徴とする新興国市場の構造的な 力強さを考えると、過去に脆弱性の要因 となり国際収支危機をもたらした状況は 現在では大幅に改善されていると考えら れます。 Solving for 2016 オルタナティブ市場 アンソニー・D・テュトロン オルタナティブ部門 グローバル責任者 プライベート・エクイティ: 市場ダイナミクスの変移と投資機会の継続 プ ライベート・エクイティ市場は、公開市場のボラティリティが高まる中、過去12ヶ月にわたり堅調に推 移しており、企業と投資家は引き続きプライベート・エクイティのストラクチャーを通じて、ビジネスの 構築および向上と、差別化されたリターンの創出を追求しています。このような健全な投資環境下 において、投資機会は継続して幅広く、また特定の分野においては2016年に大きく拡大すると考えます。 26 バイアウト戦略: 複数の要素が活発な年を示唆 プライベート・エクイティ企業は新規投資 に充てられる潤沢なドライパウダー(投資 可能資金)を保有しているとみられ、景気 も緩やかな持続的成長を示していること から、2016年も活発なバイアウト活動が続 くと思われます。一時期のデット・プロバイ ダーによる積極的な引き受けに続いて、 市場のボラティリティ上昇、規制当局の監 督強化と利上げ観測から、信用基準が引 き締められています。資金調達がより困 難となる中、企業のバリュエーションは直 近数カ月の高水準(金融危機前のピーク は下回る水準)から低下するでしょう。ま た、企業は資本構造を保守化させると考 えられますが、全体としては現在のバリュ エーションは依然として高い水準です。金 融工学への依存度が低く、セクターまたは 業界経験を有し、とりわけ経営改革やコス ト構造改善、買収による成長を通じた収 益拡大に注目するマネージャーは、2016 年にアウトパフォームできるとみています。 この他には、成熟した企業が資金調達の ために資産売却や株式発行を必要として いるエネルギー・セクター等におけるディ ストレスト投資が活発となることが予想さ れます。 スペシャル・シチュエーション戦略: ターンアラウンド(企業再生)とディストレスト債 投資の機会が増加 スペシャル・シチュエーション戦略には、 オペレーショナル・ターンアラウンドやディ ストレスト債、ディストレスト資産への投資 といった、株式および債券を対象とした様 バイアウトの取引高は依然として堅調 プライベート・エクイティにおけるバイアウトとレバレッジド・ローンの取引高(単位:10億ドル)1 $700 $600 $500 $400 $300 $200 $100 $0 '02 '03 '04 '05 米国LBO取引高 '06 '07 '08 '09 欧州LBO取引高 レバレッジド・ローン総額 '10 '11 '12 '13 '14 3Q'15 年初来年率換算 年率換算 出所:S&Pレバレッジド・バイアウト四半期レビュー、LCD2015年第3四半期レバレッジド・レンディング・レビュー。EUの取引高 は期間中の平均為替レートで換算。 々な投資戦略が含まれます。過去数年 間、低金利、緩やかな経済成長、市場の 安定と低いデフォルト率という条件が重な り、ディストレスト債の投資家の投資機会 は比較的低く抑えられていました。しかし 最近になって、複数の要因からボラティリ ティが上昇しており、ディストレスト投資の 機会が増加する可能性が生まれていま す。こうした要因には、コモディティ価格急 落とこれによるエネルギーおよび関連セク ターの混乱、経済成長率鈍化の可能性、 世界的な金融政策についての不透明感、 市場の流動性を巡る懸念、世界的なテロ リズムや複雑な地政学的問題が含まれ ます。1ドル当たり50セント未満の価格で 売買される債券が額面総額で1,000億ド ルを超えていることは、注目に値します。 年初来11月までの「フォーリン・エンジェル (投資適格からジャンク債となった債券発 行企業)」のドル建て時価総額は、2012 年、2013年と2014年の合計を上回ってい ます。市場は信用力の低い企業に厳しい 姿勢をとり続けており、発行体が「問題の 先送り」のために借換えを行うことは一層 困難となっています。また、とりわけ銀行が レバレッジ解消を進めている欧州で、ディ ストレスト金融資産の売買が継続してい ます。こうした動きは、今後数年間続くと 思われます。最後に、オペレーショナル・タ ーンアラウンドの見通しは好調で、個々の 経営管理の失敗事例が継続的な投資機 会をもたらすでしょう。 出所:2015年11月13日付JPモルガン「クレジット・ストラテ 1 ジー・ウィークリー・アップデート」 ベンチャー・キャピタル/グロース・エクイティ: 安定性を模索 2015年は、ベンチャー・キャピタルにとって 「プライベートIPO」の年となりました。2015 年11月時点で、ベンチャー・キャピタルの 投資先のうちバリュエーションが10億ドル を超える未公開企業は130社を超え、そ のうち評価額が50億ドルを超える企業は 20社を超えています。 2これらの企業の多 くは、直近の資金調達で1億ドルを超える 株主資本を調達しています。3このように大 規模なプライベート・ファイナンスも一因と なって、2015年はIT企業のIPOの数が減少 しました。レイト・ステージのプライベート・フ ァイナンス参加者には、しばしば大規模な ロング・オンリーのエクイティ投資プラットフ ォームが含まれており、これにより、既に対 象企業へのエクイティ投資を行っている大 手投資家候補からの需要が減少したた め、株式公募にマイナスの影響を与えまし た。反対に、ベンチャー・キャピタルのM&A エグジットは適度なペースで継続してお り、M&Aを通じたエグジットを中心とした戦 略は長期的にはボラティリティが低いと考 えられます。 新規投資の環境についてみると、ベンチャ ー・キャピタルの投資先であるレイト・ステ ージ企業のバリュエーションはここ数年急 騰しており、全般的に過度に上昇している 模様です。レイト・ステージの資金調達に は大きなダウンサイド・プロテクションを組 み込んだ複雑な条件が含まれることが多 く、それ以前に行なわれた投資は、巨額の 契約で調達されたレイト・ステージ資金に 劣後することになる場合があるため、注意 が必要です。しかし、こうした企業を巡るノ イズやメディアの注目は、ベンチャー・キャ ピタル全体の環境について幾分誤解を生 んでいると思われます。当社の見解では、 投資サイクルがより早期の段階にある企 業は、バリュエーションや資金調達の水準 がより適正となっています。 全体としては、当社はアーリー・ステージの ベンチャー・キャピタルとグロース・エクイテ ィが景気の循環の全ての局面で比較的 安定したリターンを維持できると考えてお り、2016年の資金投入先として魅力的な 分野と考えます。 セカンダリー市場: プライベート・エクイティにおける成長勢力 過去数年間に見られたプライベート・エク イティのセカンダリー市場の活況は、2016 年も続く見通しです。近年の成長要因とな った、売り手のユニバースの拡大、規制の 変化、よりアクティブなポートフォリオ管理、 プライベート・エクイティ投資の拡大は、 プライベート・デット:銀行離れを有利に活用 スーザン B. カッサー、CFA、プライベート・デット責任者 デビッド・リヨン、スペシャル・シチュエーション責任者 大 規模な銀行離れと全般的な市場のボラティリティ上昇という長期的傾向は2016年も継続し、 多面的な投資能力を持つオルタナティブ・クレジット投資家に魅力的な投資機会を提供すると 思われます。 銀行は撤退へ 銀行統合の巨大な波や当局による監督強化等、過去30年 間を通じて企業融資の市場は大きく進化しており、米国の銀行 離れは目新しい概念ではありません。この進化は、2008年から 2009年の信用危機をきっかけに過去5年間に加速しており、数 年をかけて実施されたドッド・フランク法やバーゼルIII、ボルカー・ ルールの導入が終了した今、規制監督の真の影響をようやく評 価できる段階に至りました。 債務者と債権者の関係の進化は、様々な形で市場のボラティリ ティを上昇させています。自己勘定取引に伴いローンや債券を組 成・保有し、活発な市場を創出してきた数多くの銀行が、この事 業の大部分から撤退し続けており、社債市場の奥行きと流動性 に直接的な影響を与えています。当社は、この流動性の欠如が、 資本構造全体を通じた資産にアクセス可能で十分な資本を有 する賢明な投資家に大きな投資機会を提供していると考えます。 「消える」流動性 もう一つの要素として、一部のクレジット投資家が柔軟性を失 い、現在の投資機会を活用できない可能性が挙げられます。 例 えば、ヘッジファンドは、市場の混乱期にしばしば低流動性クレジ ットの周辺的な買い手の役割を果たしてきました。しかし、最近 の業績低迷や償還を勘案すると、ロング・ショート型ヘッジファン ドの多くは一部のクレジット購入に伴う流動性リスクを負担でき ないか、その意思がありません。ローン担保証券(CLO)ファンドや 事業開発会社(BDC)等の伝統的な競合相手は、規制のハード ルや格付機関のテスト、そして常時資金の全額投資を義務付 けられており、こうした制約により、市場の混乱期における柔軟な 対応が難しい可能性があります。 ペイシェント・キャピタル(忍耐強い投資資本)に投資機会 結果として、競合する投資家が限られる市場低迷期に市場に 参入することができる、短期的なリターンを追求しないペイシェ ント・キャピタルが利益を得られる環境が形成されています。最 近の市場の混乱は、セカンダリー市場における潜在的リターンを 拡大させていますが、新規発行市場にも魅力的な投資機会が 存在します。ボラティリティの上昇から調達案件の執行の確実 性を求める発行体にとって、プライベート・デットの魅力が増す可 能性があります。2011年から2014年の間に調達された、未投資 のプライベート・エクイティ資本は4,400億ドルを超えており、こう した資金によるバイアウト投資に伴いデット資金調達案件が創 出されるとみており、2016年はプライベート・デット市場がさらに 下支えされると予想しています。 出所:2015年11月時点の評価額10億ドル新興企業。ウォールストリート・ジャーナル、ダウ・ジョーンズ・ベンチャーソース。 2 出所:ベンチャー・キャピタル・ジャーナル・ニュース 3 27 セカンダリー市場の取引は引き続き健全 セカンダリー市場の取引高 (単位:10億ドル) 予想: $35 – $45 $50 $40 $30 $20 $10 $0 '12 '13 '14 1H '15 出所:コージェント。セカンダリー市場の取引高予想は当社予想に基づく。予想は実現しない可能性があります。 28 基本的には持続性の高い長期トレンドで あると考えられ、今後もしばらくは投資案 件の供給を生み出すと思われます。 加えて、セカンダリー市場は引き続きよ り洗練され、今日では、リミテッド・パートナ ーとジェネラル・パートナーの両者に、創造 的かつカスタマイズされた流動化ソリュー ションを世界規模で提供するまでになっ ています。プライベート・エクイティという資 産クラスが引き続き成熟化を遂げるのに 伴い、リミテッド・パートナーが望んでいる 流動化がジェネラル・パートナーの利益に 相反する場合もあるものの、一定期間経 過した、または終了時期に近いプライベー ト・エクイティ・ファンドに実現可能な投資 ソリューションを提供することができるセカ ンダリー市場の活用余地は長期にわたり 持続するであろうと当社は予想します。 セカンダリー市場は大きく変動する可能 性があり、また公開市場環境や投資先企 業からの配当の状況に応じて急激に変 化する傾向があります。当社の見解として は、投資先企業のファンダメンタルズを理 解し、市場の非効率を活用可能なバリュ ー志向の投資家にとっては、魅力的な投 資機会が生まれると考えています。 変化しつつも、引き続き魅力的な市場環境 プライベート・エクイティは、他の投資手 段との相関性が低く、良好なリターンの創 出追求が可能であり、2016年も引き続き 魅力的な資産クラスであると考えます。バ イアウト活動を鈍化させる可能性のあるト レンドが、さらに魅力的なバリュエーション をもたらす可能性もあります。徐々に新た なディストレス・サイクルが始まることで、 より多くの投資機会が生まれ、アーリー・ス テージ企業の適正な評価額とグロース・ エクイティの魅力的なリスク・リターンが提 供される可能性があります。セカンダリー 市場の成長は、プライベート・エクイティに 対する需要の継続と、ロック・アップ期間 の縮小や利用可能な流動性がもたらす 柔軟性の拡大を示唆しています。こうした 分野の魅力の変化を評価すると、この資 産クラスが提供する幅広い投資対象は、 来年も投資家に多くの投資機会をもたら すことが予想されます。 ジェフ・マジット、CFA デビッド・カッパーマン、PhD NBオルタナティブ・インベストメント・マネジメント 共同運用責任者 ヘッジファンド: 業界固有の課題は解消 ト ンネルの出口にようやく光が見え始めたようです。低金利と資産価値の上昇で空売りを困難にする量的緩和に、 ヘッジファンド戦略は頭を悩ませてきました。ボラティリティが低い中で資産価値が上昇すると、ショート側の投資機 会となる下落局面が限定されるからです。しかし、FRBによる資産購入の圧縮と利上げへの転換により、多くのヘッ ジファンド戦略に収益機会の可能性がでてきています。 2015年は多くのヘッジファンドマネージャ ーや戦略にとって、忘れてしまいたい年に なりました。堅調であった上半期の後、様 々な要因が絡み合い、下半期のパフォー マンスは近年で最悪の年になりました。特 にボトムアップ分析でバリューを重視する ロング・ショート戦略、とイベント・ドリブン株 式戦略やクレジット戦略への影響が過大 でした。後ほど述べますが、これはファンダ メンタルズと無関係な一過性の要因によ るものであり、これらの戦略は2016年に数 年ぶりに強い収益機会に恵まれることを 期待しています。 ロング・ショート: 魅力的な投資環境への変貌? 8月と9月の市場の混乱は、中国景気の 減速とそれに伴う世界経済全体について の懸念が発端でした。大部分のヘッジフ ァンドにとってこれらは些細な悪材料でし たが、第3四半期と第4四半期のパフォー マンスのドライバーは、ヘッジファンド業界 全体に特有なものであったとみています。 パフォーマンスが低下した部分的な要因 としては、年間を通じてエネルギーとヘル スケア事業へベットしたセクター投資が挙 げられます。エネルギーは原油価格の下 落、ヘルスケアは政治的駆け引きにより、 セクター全体が下落に苦しみました。いず れも、セクター全体に幅広く影響された下 げによって、ロングとショートの銘柄選定に よる収益機会が豊富となり、その結果、コ モディティ価格の水準や薬価関連の法案 可決の見通しにかかわらず、今後は成果 を挙げると考えます。 イベント・ドリブン:クラウディング(過大な 集中)による困難と今後 一方で、近年のアンダーパフォーマンスは ヘッジファンド業界自体が原因であるとい う説明がより適切だと考えます。ヘッジファ ンド業界は2008年の世界金融危機以降 かなりの成長を遂げ、現在の市場規模は 3兆ドル近くに達しています。こうした大量 の資金流入により、アクティビスト・ファンド やイベントドリブン・ファンドは大きな恩恵を 受けてきました。その主たる資金は、各企 業が自発的に実施したか、株主価値を高 める方法として時にヘッジファンドが主導 したかにかかわらず、合併、資産の売却、 分社化、自社株買い等、体制に変化を求 められる企業へ投資されてきました。こう したポジションの収益結果は、本来市場 の方向性よりも予想されたイベントが成 就するかどうかに左右される傾向がありま す。ただし、同様の考えを持った多数のヘ ッジファンドが、上記のとおり市場方向性 を無視してポジションを集中させると、クラ ウディング(資本の過大な集中)が起きる ことがあります。通常はクラウディングが問 題になることはありません。しかし、こうした クラウディングの状況下では、リスク管理 やその他のビジネス目的(戦略の変更、 投資家への償還原資等)でポジションを 手仕舞う必要性に迫られた少数の投資 家の売りの影響を、ファンダメンタルの良 クラウディッド・トレード:雨降って地固まる? ヘッジファンドが「最も集中した」銘柄の90日リターンからS&P500指数の90日リターンを差し引いたもの 40% 30% 20% レンジ相場 10% 0% -10% 2011年10月7日 = -8% -20% -30% '04 2015年10月14日 = -15% 2008年12月30日 = -25% '05 '06 '07 '08 '09 '10 '11 '12 '13 '14 '15 出所:Novus、2015年6月30日時点の大手機関投資家の四半期報告に基づく。パフォーマンスのデータは2015年10月14日 までのもの。ヘッジファンドが「最も集中している」銘柄とはNovusの定義に基づき、時価総額に占めるヘッジファンドの割合が 最も高い20銘柄で構成されたバスケットを意味する。過去のパフォーマンスは将来の結果を示唆するものではありません。 29 し悪しにかかわらず、過大に受けやすくな ります。2015年下半期はこの現象がみら れ、ヘッジファンドのポジションが「最も集中 している」銘柄の損失額はS&P500指数の 損失を15%近く上回りました1。 30 しかし、市場の変換は急速です。例えば、 前頁の図は2008年12月頃にヘッジファン ドが最も集中した銘柄は大幅にアンダー パフォームしていたことを示していますが、 その後まもなく2009年に入ると、パフォー マンスの堅調な時期が続きました。同様 の動きが2011年10月もみられました。昨 今のヘッジファンドのポジションが集中して いる銘柄のアンダーパフォーマンスは、フ ァンダメンタル要因よりもテクニカル要因 によるところが大きいと当社は考えていま す。足元のヘッジファンド業界特有の困難 な局面は落ち着き、今後十分にリサーチさ れヘッジされたイベント・ドリブンの銘柄は 反発する可能性があり、売りを免れたマネ ージャーは2016年に向けてより良いポジシ ョンにいると考えます。 ディストレス投資: 回復に向け ての準備は万全か? デフォルト率が低く、ジャンク債以外は資 本市場からの起債が容易で平穏だった 2年が過ぎ、2016年はディストレスト・デッ トのヘッジファンドの回復への期待ができ ます。額面の総額で見ると、現在1ドルにつ き50セント未満で取引されている債券は 1000億ドル以上にのぼっており、年初来か ら11月にかけて、投資適格からジャンク債 に格下げされた企業の数は、2012~2014 年までの3年間の総数を上回っています。2 このように、ストレス投資とディストレス投 資のユニバースが大幅に拡大し、金融危 機以降最も魅力的な環境となると当社は 考えています。エネルギー、海運その他コ モディティ価格に敏感な工業株がサイク ルの第一段階を迎えると同時に、2016年 は金利の上昇と閉ざされた資本市場が幅 広い企業を圧迫します。その影響により、 ストレスとディストレス銘柄の供給は増加 し、また投資銀行の自己勘定部隊との競 争が少ないことも、この戦略を重視するヘ ッジファンドへの後押しとなるでしょう。 幅広い意味でのヘッジファンド 試練の年の総集として、当社はヘッジフ ァンド戦略の魅力と思われるものをポート フォリオ全体の中で改めて強化することが 重要だと考えています。この資産クラスは 時間の経過とともにポートフォリオ全体の ボラティリティを低下させ、リターンを高め る可能性があります。2015年が試練の年 になったのはヘッジファンド業界特有の問 題によるものですが、足元の環境は変化 しているため、ヘッジファンドマネージャーは 2016年により多くの収益機会に恵まれる と考えます。 投資家向け討論会: 市場におけるボラティリティが2016年のヘッジファンドに与える影響 リック・ドウェル グローバル・クレジット・ロング・ショート戦略 共同運用責任者 ダニエル・ゲバー グローバル株式ロング・ショート戦略 ポートフォリオ・マネージャー チャールズ・カンター 米国株式ロング・ショート戦略 ポートフォリオ・マネージャー ジェフ・マジット、CFA NBオルタナティブ・インベストメント・マネジメント 共同運用責任者 激 動の一年が終わり、多くの疑問を抱えつつ新たな年へ向かう中、当社から4人のポートフォリオ・マネージャーを 迎え、ヘッジファンドの今後の見通しについて議論を行いました。株式ロング・ショート、クレジット、マルチ・マネ ージャー戦略の各分野を代表するベテラン投資家が、不安定な、しかしある意味魅力的な環境における絶対 リターンの追求について意見交換を行いました。 2015年の状況をどのように総括しますか? ヘッジファンドのパフォーマンスに影響を与えた 要因は何でしょう。 ダニエル・ゲバー:株式市場はボラティリ ティの高い年でした。当社の考えでは、こ れは米国、欧州、中国、日本の金融政策 とファンダメンタルズ、経済であれ企業関 連であれ、その両方の不確実性が要因と なっています。金融政策とファンダメンタ ルズに関する投資家の期待も一年を通し て変動し、そのためにボラティリティが上昇 しました。さらにプラス・リターン獲得のため のアグレッシブな投資行動もみられ、その 結果多くのマネージャーが同様のポジショ ンをとり、それにより急速な巻き戻しが起こ ったケースもいくつかありました。 ジェフ・マジット:マネージャーの取引パタ ーンも結果に影響したことは確かです。イ ベント・ドリブン戦略を見ると、9月の下落 の主な要因は多くのヘッジファンドによる 取引集中です。大手ヘッジファンドの多く は保有するポジションが重複しており、数 年おきにそのうちの一つまたはいくつかが パフォーマンスの悪化によるリスク軽減の ため、あるいは投資家の解約に応じるた めに、広く保有されているポジションを大 量に売り出すことがあります。こうした動き により一時的な悪循環が発生します。つ まり売りによって価格が下落し、それがさ らに多くのヘッジファンドによる売りを呼ぶ 出所:Novus、2015年6月30日時点の大手機関投資家の四半期報告に基づく。パフォーマンスのデータは2015年10月14日までのもの。ヘッジファンドが「最も集中している」銘柄とはNovus の定義に基づき、時価総額に占めるヘッジファンドの割合が最も高い20銘柄で構成されたバスケットを意味する。過去のパフォーマンスは将来の結果を示唆するものではありません。 1 出所:JPモルガンクレジットストラテジー 2 ことになります。こうした現象はこれまでに も見られ、最近では2011年の夏から秋に もありました。多くの場合は一時的な要因 で、その後、市場は戻しています。 チャールズ・カンター:今年の環境は正 しい選択をするのが非常に難しいもので した。エクスポージャ-の「方向転換」を積 極的に行ったものの、結果的にはパフォー マンスの下落要因となりました。私の考え では、ロング/ショート戦略は銘柄選択と エクスポージャ-の双方を適切に行うこと で有効な戦略となります。当社は常に企 業のファンダメンタルズの見極めに注力 し、短期的なノイズに基づいて市場の方 向を考えることはしません。また市場にお ける銘柄選択の幅が小さいことも大きな ハードルとなりました。これはS&P500指数 の時価総額加重指数と均等加重指数の パフォーマンスの乖離に現れており、2015 年は現時点で後者が前者を350bps以 上下回っています。もう一つ顕著な例を 挙げると、10月には超大型テクノロジー関 連企業3社の時価総額が、一日だけで約 1,000億ドル変動しました。要するに、少数 の極端に規模が大きい有名企業が指数 のパフォーマンスを支配していると、差別 化された投資アイデアを持つことはきわめ て困難になります。 リック・ドウェル:クレジットでは、FRBの金 融政策の「リフトオフ」に対する関心が高 まりました。しかしヘッジファンドが落ち込 んだ原因を実際に考えると、それは素材 とエネルギー分野のボラティリティです。こ れは通信やヘルスケア、医薬品等の分野 にも波及しました。ロング/ショートのマネ ージャーにとって、非常に機敏かつ適切に 対応する必要があり、非常にハードルが高 い環境といえます。 不確実性の大部分は成長性に関するもので した。今後の動向についてどうお考えですか? カンター:市場全般で、今後の成長性が 議論になっています。一方の立場は停滞 論で、米国では利益の拡大が頭打ちとな り、名目GDPの成長率も非常に低くなると いうものです。私自身はむしろ、徐々に正 常化するという立場にいます。市場全体 としては停滞論が信じられているため、予 想より少しでも高い成長が実現すれば、 投資家から非常に好意的に受けとめられ ることになると考えています。 ドウェル:7年前の金融政策によって、 グローバルな環境の種はある程度蒔かれ ていました。低金利の資金が設備投資に 回り、コモディティとエネルギーの過剰供 給の一因になりました。今は世界の成長 が試され、一部の先進国は依然としてデ フレ環境と戦っています。幸いなことに、当 社は将来の成長に対する希望や夢にあ まり依存しないと思われる証券にフォーカ スしています。その点で、一般にこうした証 券の発行企業は、債務を返済できる安定 的な営業利益構造を維持してくれさえす ればよいのです。 成長要因の現状から見て、ショート(空売り)の 機会があると思いますか? ゲバー:思います。例えば、中国の減速に よる波紋はまだ消えていないため、そこに 機会がありますし、より広く新興国やコモ ディティ全般にもあります。例えば、鉱業株 等では明らかにショートが行われています が、歴史的に回復力があると考えられて きたサプライヤー等の関連企業に対する 副次的影響については、市場で理解され ていない可能性があると思います。 成長の減速一般以外にも、米国では利 益率低下の可能性や企業の自社株買い が先細るリスクがあり、これが大きな後押 しになっています。また金利上昇に向けた FRBによる利上げの影響を巡る不確実性 も、成長の道筋が困難になっているグロ ーバル経済の現況を踏まえれば、市場ボ ラティリティの一因になる可能性がありま す。さらに、ファンダメンタルズや金融政策 に対する市場の期待を考慮することも重 要だと考えています。こうした要因が常に 変化することから、市場のボラティリティは 今後も続くとみています。 ロングについてはどうですか? ゲバー:世界的な成長鈍化の裏返しとし て、米国以外では金融緩和政策が進め られています。ですから、好機があると考 えられるのは、欧州の量的緩和(QE)から 恩恵を受けることができる企業でしょう。 欧州ではQEが規模と期間の面で拡大す る可能性が非常に高く、資産リフレのスト ーリーに有利になると考えています。また 今後とも、回復力のある成長と「自助」の 投資ストーリー(例えば、世界的な防衛セ クターへの投資)を選好していきます。 ドウェル:クレジットで当社が注目している のは、バランスシートの強さ、つまり現在の コモディティ/エネルギー価格サイクルに 耐えることが可能で、成長が試される市 場で価値を持つと思われる企業です。バ ランスシートに問題を抱え、資本構造に見 合った成長が必要な、コストのかかる企業 は回避しています。また米国で利上げが 見込まれることから、デュレーションの長い 資産と低クーポン、限定的なクレジット・ス プレッドの組み合わせも避けています。 カンター:株式のロングについては、質の 高い成長、つまりアセットライトで投下資本 利益率が高く、優秀な経営陣を有し、魅 力的な再投資の機会がある企業が望ま しいと考えています。現在の環境では、資 本利益率とバランスシートの強さで測定 したクオリティ曲線上でより高い位置を選 ぶことになります。それに若干の成長を組 み合わせることができれば、リスク調整後 の観点からは非常に魅力的な投資アイ デアになる可能性があります。最後に、同 一業種内や大・中・小型株それぞれの中 でのパフォーマンスのバラつきに今後も着 目していきます。これはロング/ショートい ずれのポジションにとってもメリットがありま す。例えば、消費財景気循環株の場合、 インターネットによる競争上の脅威を理解 し適応を進めている企業がある一方で、 対策が遅れているために、選択の目が厳 しく、価格意識が高く、利便性志向の強い 消費者に十分対応できないと思われる企 業もあります。 マジット:そのようなバラつきの存在が、 株式であれクレジットであれ、基本的なロ ング/ショート・アプローチについて非常に ポジティブな見通しをもっている理由の一 つです。FRBの金融引き締め政策により、 企業間で効率的な資金調達能力の差も 明らかになるはずです。これは過去7年に わたるQEの間は問題にならない要因でし た。世界的には、金融政策の軌道がそれ ぞれ異なることも機会になります。証券は 市場で急激に売り込まれる、あるいは買い 進められる際に、一時的に銘柄同士の相 関が高くなる可能性がありますが、ファン ダメンタルズのリサーチを十分に行った有 能なマネージャーであれば、競争力のある パフォーマンス成果を挙げることができる と確信しています。 その他のヘッジファンド戦略で、2016年に特に 魅力的と思われるものは何でしょうか? マジット:当社はマネージド・フューチャー ズのようなシステマティックな戦略が有望 とみています。こうした戦略は、コモディテ ィや通貨、債券、あるいは株式のトレンドを 利用するものです。特に期待しているのは 31 32 株式のパフォーマンスのバラつきはロング/ショート戦略のアルファに有利 マネージャーのアルファと銘柄間の相関 0.8 35% 0.7 年率換算アルファ 45% 0.6 25% 0.5 15% 0.4 5% 0.3 -5% 銘柄間の相関 通貨のトレンド・トレーディングで、中央銀 行間で政策の乖離が続くことで利益の機 会が生じるはずです。自己裁量型のグロ ーバル・マクロはここしばらくより魅力的に 思えますが、この戦略が継続的に効果を 発揮するには依然厳しい状況です。現在 の市場では、「正しい」ポジション/テーマ がいくつかある場合でも、予想外の大きな 変動によってたちまち打ち消される可能性 があります。こうした例は今年初めにスイス フランで見られました。大手の有名な自己 裁量型マクロ・ファンドの中にも、この一回 の取引で逆方向のポジションをとっていた ために破綻したところがいくつかあります。 0.2 -15% 12/97 6/99 12/00 6/02 12/03 6/05 12/06 6/08 12/09 6/11 12/12 6/14 1年アルファ(米国株式) 1年アルファ(世界株式) 0.1 銘柄間の相関 2016年の主な懸念事項をいくつか 挙げてください。 出所:HFR、MSCI、Russell、2015年10月31日まで。HFR株式ヘッジ指数のRussell3000指数(米国株式)とMSCI ACWI指 マジット:市場全体としては、主な懸念事 数(グローバル株式)に対する過去1年ごとのアルファ。銘柄間の相関データはS&P500指数内の各時点における上位 項は広く知られていると思います。一つは 100銘柄の月次リターンと、S&P500指数の月次リターンの1年間の平均相関。 成長の鈍化です。その代表は中国で、中 国の成長の急減速は、それが米国経済に 直ちに波及するかどうかにかかわらず、市 とボラティリティの継続が予想され、引き 場にマイナスの影響を与えるでしょう。 続き機敏さと、ダウンサイド・リスクの軽減 もう一つのおそらくより大きな懸念は、 に努めることが重要になるでしょう。当社 FRBが市場の信頼を失うことです。この の見解では、2016年は世界中でショートに 場合、債券利回りの上昇スピードが上がり、 もロングにも興味深い投資機会があるは 今後数年にわたり段階を踏んだ緩やかな ずです。 利上げを予想している市場参加者の大半 カンター:当社のロング/ショート運用で にとっては、逆をつかれた形になります。で はまずボトムアップで銘柄選択を行い、投 すから、当社のアプローチでは、リスクは市 資対象企業が成長を追求するにあたり、 場の方向性というよりも、むしろ究極的に 慎重で堅実な方法で資本を配分している はマネージャーが個々のロング/ショート かを評価します。とはいえ、現在は非常な 銘柄で適切なポジションをとる能力によっ 「低」成長環境にあるために、リスクが拡大 て決まります。 しやすくなっています。これは過去数年に ドウェル:当社は予想外の事態を警戒して 比べて今は間違いの許容範囲が小さくな います。注意深く観察しているのは、新興 っているためです。さらに、短期的投資行 国市場のうち社会構造の安定のために原 動によって間違いを重ねるリスクを軽減す 油高に依存している国と、それがグローバ ることが重要と考えています。鍵になるの ル環境に与える影響です。世界の成長率 は、基本的な銘柄選択プロセスで厳格な は低下しているといわれていますが、各国 規律を保ち、投資対象の収益動向に集中 政府は金融政策や知的資本、バランスシ することだと思っています。 ートを動員して、再び成長を実現しようとし ドウェル:当社の見方として、リスクが拡大 ていることから、世界の成長減速と動員さ する一方、間違いの許容範囲は極端に狭 れた対策の効果の両方がクレジットに与え くなると予想しています。したがって重要 る影響を見極めたいと考えています。 なことは、マネージャーがそうした状況を ゲバー:2015年に出た話題は、その多くが 見極め、適切かつ素早い行動をとること 2016年に持ち越されるでしょう。不確実性 だと思います。 33 Solving for 2016 新たな年の注目点 アンドリュー S. コマロフ 最高執行責任者 新たな年の注目点: 2016年投資家動向の見通し 投 資家の目標は従来と概ね変わらないものの、現在の市場が直面している困難、つまり低調なリターン見通し、 低利回り、成長の鈍化のために、こうした目標の実現は容易なものではなくなっています。このような制約のも とではより幅が広く、革新的で、制約の少ない運用戦略を提供することが、投資家の利益になると考えていま す。例えば、株式や債券等の伝統的な資産に対する新たなアプローチや、規制の変化によって生じる歪みに着目したり、 また、ニッチな分野で運用される特殊な戦略等があります。その結果、投資家グループによって優先順位も異なってくる と考えています。 34 機関投資家:新たな経路の模索 新 た な 市 場 の 現実に適応す る た め、 2016年に機関投資家は、投資目標や積 立不足に対して、革新的、独創的な発想 で対処しようとする傾向が高まるでしょ う。当社のマルチ・アセット部門最高投資 責任者であるエリック L. クヌーゼンが前述 したように(10ページご参照)、傾向として 以下のことが考えられます。 アセット・アロケーションに対するリスクバラ ンス型アプローチ。目標とするリスク水準に 基づいてアロケーションを行うリスクバランス 型の手法は、伝統的な株式6割・債券4割ポ ートフォリオにおける株式リスクに対処する上 で有効であり、当社の見解として、より適切 な情報に基づいたポートフォリオを実現する ことが可能と考えています。 非流動性プレミアム獲得の追求。資本を 長期間ロックアップできる投資家にとって、 プライベート市場には魅力的なリターンを獲 得できる機会が存在しているといえます。 制約を減らし柔軟性を持たせること。市場 や投資対象資産の垣根を越え、デリバティ ブや選択的なショートを利用してリターンを 追求できる柔軟性の高い戦略であれば、魅 力的なリターンを得ることができる可能性は 高いと思われます。市場の非効率性は、柔 軟なアプローチを採用している俊敏性の高 いマネージャーにとってリターンを上げる良い 機会となるでしょう。 投資マネージャーに対する要求水準の引き 上げ。投資家はマネージャーに対して、さらに 高水準のカスタム化と付加価値のあるサポ ートを求めるとともに、投資対象資産の垣根 を越えた洞察を要求することも可能です。マ ネージャーとの間で一層の利害の一致を図 ることも、長期的な成果への意識を高める 上で有効です。 こうした要素は、投資規模や長い投資期 間といった機関投資家の主な投資スタン スを反映しています。例えば、機関投資家 の場合、特殊な市場要因をとらえようとす る特化型のプライベート投資を利用した り、高度にカスタマイズ化された投資手法 を選択したりすることも可能です。また、身 近な自国の資産への投資比率を引き上 げることを再検討し、一部の新興国市場 へ投資するよりもGDPベースで成長性の ある地域への投資比率を増やす運用手 法を採用したいと考えることもあるでしょ う。最後に、全体論的な志向によってポー トフォリオ全体にわたる環境・社会・ガバナ ンス(ESG)要因の統合が進みつつあり、 その根底には、ESG要因が投資パフォー マンス全体に影響する可能性があるとい う考え方があります。 保険会社: 市場と規制の現実にどう適応するか 保険会社は規制と経済的不確実性とい う、時に相反する二つの課題に直面してい ます。この問題にどのように対処するかは、 今後の事業の成否に大きな影響を与え るため注目しています。 経済/市場の逆風。保険会社はグロー バルな規制条件の変化、つまりソルベンシー IIやORSA等に対応する準備を進めています が、長期的な影響が完全に理解されている わけではありません。現在はバラバラである 基準も、徐々に統一化が図られています。よ り差し迫った課題は経済環境や市場動向、 特に債券利回りの低下であり、様々な市場 において収益性に影響を与えています。 分散を進めること、ただし慎重に。こうした ことを背景に、保険会社の多くは引き続きポ ートフォリオの分散を進め、リスク資産へのア ロケーションを増やしています。地域や体制 による若干のバラつきはあるものの、パブリッ ク/プライベート・クレジット(ハイ・イールド債 やローン担保証券(CLO)等)や、オルタナテ ィブ戦略(プライベート・エクイティやヘッジフ ァンド等)への資金流入は引き続き増加して います。保険会社は常に、規制の中で利回 りの確保とリターン目標を追求するという、絶 妙のバランスが求められます。 パートナーシップの新たな機会。保険会社 は複数の資産への分散を推進するため、ア セット・マネージャーとパートナーシップを組 み、資産運用への支援を第三者に求めるこ とが増えています。当然こうした活動は、保 険会社の従来の専門知識にはない領域、つ まり特殊な債券や株式、オルタナティブ戦 略で行われるようになっています。 保険業態による投資。銀行への規制強化、 つまりバーゼルIIIとドッド=フランク法により、ク レジット市場では構造変化が起きており、こ れに伴い保険会社には、様々な資産クラス において魅力的な利回りを得ることができる 可能性があります。多くの保険会社は長期 の資金調達を行い、流動性もあることから、 市場の非流動性プレミアムを活用して利回 りを向上することも可能です。 資プランニングの「第三の矢」であるオルタ ナティブを採用し、ボラティリティの軽減と適 度な成長の可能性の実現を図ろうとするこ とも考えられるでしょう。 ポートフォリオにおける責任投資の実現。 ESG問題は社会的責任を果たす上でも、ま た健全なビジネス慣行を発展・維持する上 確定拠出(DC):絶妙なバランスが必要 確定拠出においては、確定拠出年金を導 でも、事業においてますます重要な考慮す 入する企業は市場の進化への対応を図 べき事項になっています。しかしそうした組織 り、年金プランのオプションの更新に取り組 であっても、加入者の多く、特に若い加入者 む中、ポートフォリオの拡大と利回りの追求 の関心はよく知られているにもかかわらず、こ とボラティリティの軽減が、中心的な課題 うした考え方をDCプランのオプションに取り 入れるまでには至っていない場合が多いこと になっています。 も事実です。幸いなことに、加入者の関心や 成長性の追求。2016年も確定拠出年金を 社会的責任投資戦略(SRI)の魅力的なパフ 導入する企業(以下、スポンサー)の間では ォーマンス実績を受けて、スポンサーによる 資産選好の変化が継続し、グローバルなオ ESG問題への取り組みが拡大しています。 プションを追加して国内のオプションを補う ことにより成長を追求することになるとみて 個人投資家と投資アドバイザー: います。米国では中・小型株ファンドが、非効 特有の課題に取り組む 率性の大きさおよびフィナンシャル・アナリス 個人投資家と投資アドバイザーにとって常 トによるカバー率の低さ、健全な米国経済へ に変わらぬ目標は、インカムの創出、資産 のエクスポージャ-比率の高さによって、魅力 価格成長の追求、ボラティリティの管理で 的な投資機会を提供しています。欧州の株 あるからこそ、現在の環境においては投資 式市場ではバリュエーションが割安であると 手法の拡大への要求が高まっていると考 ともに、景気回復の初期段階にあることから、 えられます。こうした戦略やアプローチの拡 スポンサーにとって今は米国外のグローバ 大の必要性は、世代間の富の移転にまつ ル・ポートフォリオのオプションを拡大する好 わる課題によって一層高まっています。 機ともいえるでしょう。 インカム・ソースの拡大。2016年には、個人 インカム・オプションの拡大。現在の低金利 投資家や投資アドバイザーが伝統的な資産 環境において、資産運用にマイナスの影響を 分散の手段を補うために、利用できる戦略 受けやすい人を挙げるとすれば、それはポー の幅が広がると想定しています。債券利回 トフォリオからのインカムゲインによってライフ りが1桁台の低空飛行を続ける中、リスク/ スタイルを維持しようとしている退職間近、ま リターン・スペクトラムのさらに外側に位置す たは既に退職している人たちでしょう。残念 る、例えば、バンクローンやMLP、また選り抜 ながら、多くのDCプランの商品ラインナップ かれた新興国市場債のような、非伝統的な では債券商品は比較的限られており、主要 利回り資産による「利回りの新秩序」を評価 な債券のベンチマークの取引に近いマネー・ することがきわめて重要になると考えていま マーケットやコア・ボンドのオプションが中心に す。クレジット・ロング/ショート戦略も、金利リ なっています。低利回り環境では、こうした状 スクやデュレーション・リスクを高めずにアル 況は参加者をリスク/リターン・スペクトラム ファを捕捉できることを考えると、効果的で のさらに外側へ向かわせることになり、リスク しょう。 許容度の低い投資家には困難が生じます。 ボラティリティの管理:市場が混乱する中、 当社ではスポンサーがコアプラス、あるいはさ ポートフォリオ全体のボラティリティを抑えな らに制約の少ない債券のような、インカムゲ がら株式に近い資産価格値上がりの可能性 インの可能性を向上できるより柔軟性の高 を持つ投資商品の役割が、一層重要になっ い債券戦略に向かうとみています。また、投 ています。ヘッジファンド戦略は、かつては機 関投資家や富裕層だけのものでしたが、現 在はいわゆる「リキッド・オルタナティブ」、つま りヘッジファンド戦略を採用した個人向けのフ ァンドによって、より幅広い層が利用できるよ うになっています。現在の低金利・高ボラテ ィリティ環境の中、投資家の間ではこうした 商品の潜在的価値への理解が高まってい ます。 成長の可能性を探る。2016年は、市場のダ イナミクスがアクティブ運用マネージャーに有 利な方向に変化する可能性があると考えて います。米国の利上げに伴い、企業間で業 績のバラつきが大きくなることが考えられ、ア クティブ型の投資家は恩恵を受ける市場と なるでしょう。米国経済が緩やかに上向く見 通しであることを考えると、小型株に注目し た戦略に(国内での企業活動の比率が高い ことから)メリットがあると考えられます。米国 外の戦略では、米国と対照的に企業の収益 率がかつてのピークを大きく下回っているも のの、経済回復の兆しが見えている欧州地 域で、魅力的な投資機会があるものと考え ています。 「社会的側面」の強化。しばらく前から、環境 ・社会・ガバナンス(ESG)問題が個々の証 券を評価する上で、潜在的な投資機会とリ スクの両面において貴重な「覗き窓」になっ ています。さらに近年、企業からはESG問題 についてのレポートが増えており、投資家の 間では社会問題と投資の関係についての 意識が高まっています。2016年に、個人投 資家と投資アドバイザーは社会的責任投 資戦略を採用することで市場との対話を行 い、リターンを得る機会を拡げることが可能 となります。 実際のところ、ポートフォリオの組成方法は数多く 存在します。2016年の課題は、そうした方法を今 の市場の現実と長期的なファンダメンタルズの両 方に適合させるとともに、お客さまには明確なリタ ーン目標、投資目的、リスク許容度を考慮いただく ことになるでしょう。 35 36 Solving for 2016 著者略歴 著者略歴 ジョセフ V. アマト | 社長 兼 株式部門 最高投資責任者 ニューバーガー・バーマン・グループの社長兼株式部門最高 投資責任者であり、同グループの取締役会および監査委員 会のメンバーを務める。1994年入社、業界歴31年。ジョージ タウン大学卒業。 38 サノス・バルダス、PhD | マネージング・ディレクター、ポート フォリオ・マネージャー 複数の債券戦略のシニア・ポートフォリオ・マネージャー、 国債および金利運用部門のグローバル責任者を務める。 また、債券部門全体の運用方針を策定する債券投資チー ムのメンバーとして、LDIおよびインフレ戦略を担当し、運用戦 略の策定を行う。1998年入社、業界歴18年。ギリシャのアリ ストテル大学を優等成績にて卒業、同国クレタ大学修士課 程修了。ニューヨーク州立大学ストーニー・ブルック校博士課 程修了。 ロブ・ドライコナゲン | マネージング・ディレクター、新興国債券 共同運用責任者 新興国債券チームの共同運用責任者および新興国債券 戦略のシニア・ポートフォリオ・マネージャーを務める。2013 年入社、業界歴25年。ロッテルダムのエラスムス大学卒 業。DSI 認定を取得。 リック・ドウェル | マネージング・ディレクター、グローバル・ク レジット・ロング・ショート戦略 共同運用責任者 グローバル・クレジット・ロング・ショート戦略の共同運用責 任者およびポートフォリオ・マネージャーを務める。2015年入 社、業界歴21年。ユタ大学卒業、シカゴ大学MBA課程修了。 ダニエル・ゲバー | マネージング・ディレクター、グローバル 株式ロング・ショート戦略 ポートフォリオ・マネージャー グローバル株式ロング・ショート戦略を運用するゲバー・グル ープのポートフォリオ・マネージャーおよび責任者を務める。 2014年入社、業界歴21年。カリフォルニア大学ロサンゼル ス校卒業、スタンフォード大学MBA課程修了。 ジェームズ L. イスリン | マネージング・ディレクター、米国地 方債 運用責任者 米国地方債戦略の運用責任者およびシニア・ポートフォリ オ・マネージャーを務める。2006年入社、業界歴22年。デニ ソン大学卒業。 アンドリュー A. ジョンソン | マネージング・ディレクター、グロ ーバル投資適格債戦略 最高投資責任者 グローバル投資適格債券の最高投資責任者であり、複数の アクティブおよびカスタマイズ・ポートフォリオの運用責任者、 またニューバーガー・バーマン・フィクスト・インカムの取締役会 のメンバーを務める。1989年入社、業界歴26年。イリノイ工科 大学学士および修士課程修了、シカゴ大学MBA課程修了。 ジョン・ジョンソン | マネージング・ディレクター、ポートフォリ オ・マネージャー グローバル投資適格債券運用のシニア・ポートフォリオ・マネ ージャーおよび投資適格債券シニア・ポートフォリオ・マネジメ ント戦略チームのメンバーを務める。2013年入社、業界歴19 年。アイスランド大学卒業、ニューヨーク大学修士課程修了。 チャールズ C. カンター | マネージング・ディレクター、ポー トフォリオ・マネージャー 自らが率いるカンター・グループの設立者であり、ロング・ ショート戦略のシニア・ポートフォリオ・マネージャーを務め る。2000年入社、業界歴21年。ケープタウン大学卒業、 ハーバード・ビジネス・スクールにてMBA課程を優等成績に て修了。 スーザン B. カッサー、CFA | マネージング・ディレクター、 プライベート・デット責任者 ニューバーガー・バーマン・プライベート・エクイティのプライ ベート・デット投資業務の責任者を務める。2013年入社、 業界歴17年。ブランダイス大学卒業、CFA協会認定証券 アナリスト。 エリック L. クヌーゼン、CFA、CAIA | マネージング・ディレ クター、マルチ・アセット部門 最高投資責任者 全社的なアセット・アロケーション・プロセスを主導し、戦略的 パートナーシップおよびマルチ・アセット戦略にかかる投資 ソリューションの策定を行う。2014年入社、業界歴29年。ウィリ アムズ大学卒業、ハーバード・ビジネス・スクールにてMBA課 程修了。CFA協会認定証券アナリストおよび同オルタナティ ブ投資アナリスト(CAIA) アンドリュー S. コマロフ | マネージング・ディレクター、最高 執行責任者 ニューバーガー・バーマン・グループの最高執行責任者およ び顧客カバレッジの責任者を務める。2001年入社、業界歴 22年。ウィリアムズ大学卒業、スタンフォード大学ロースクール にてJD取得。 デビッド・カッパーマン、PhD | マネージング・ディレクタ ー、NBオルタナティブ・インベストメント・マネジメント (NBAIM)共同運用責任者 NBAIMのポートフォリオ・マネージャーおよび共同運用責任 者、またヘッジファンド戦略投資運用委員会のメンバーを 務める。2011年入社、業界歴17年。ジョンズ・ホプキンス大学 にて修士および博士課程修了、コーネル大学にて学士課程 修了。 ウゴ・ランチオーニ | マネージング・ディレクター、ポートフォ リオ・マネージャー 通貨戦略およびグローバル債券戦略のポートフォリオ・マネ ージャーであり、先進国市場通貨戦略における通貨チーム の責任者を務める。また、アクティブ通貨オーバーレイも担 当し、投資適格債券シニア・ポートフォリオ運用戦略チーム のメンバーも務める。2007年入社、業界歴19年。ローマの ラ・サピエンツァ大学修士課程修了。 ジョセフ P. リンチ | マネージング・ディレクター、ポートフォリ オ・マネージャー バ ン クローン戦略のポートフォリオ ・マネージャーを務 め る。2002年入社、業界経験19年。イリノイ大学卒業、デュポー ル大学MBA課程修了。 デビッド・リヨン | マネージング・ディレクター スペシャル・シ チュエーション 責任者 ニューバーガー・バーマン・プライベート・エクイティのスペシャ ル・シチュエーション投資業務の責任者を務める。2014入社、 業界歴19年。ノートルダム大学卒業、ハーバード・ビジネス・ス クールMBA課程修了。 ジェフ・マジット、CFA | マネージング・ディレクター、NBオ ルタナティブ・インベストメント・マネジメント (NBAIM)共同 運用責任者 NBAIMのポートフォリオ・マネージャーおよび共同運用責任 者、またヘッジファンド戦略投資運用委員会のメンバーを務 める。2000年入社、業界歴16年。アマースト・カレッジのファ イ・ベータ・カッパ会員として、経営学、言語学および文明学 の学位を取得。CFA協会認定証券アナリスト。 トーマス P. オレイリー、CFA | マネージング・ディレクター、非投 資適格クレジット部門 責任者 非投資適格債券の責任者、ハイ・イールド債券および総合 クレジット戦略のポートフォリオ・マネージャーを務める。また、 ニューバーガー・バーマン・グループのパートナーシップ委員 会およびアセット・アロケーション委員会のメンバーを務め る。1997年入社、業界経験26年。インディアナ大学卒業、ロヨ ラ大学MBA課程修了。CFA協会認定証券アナリスト。 コンラッド A. サルダナ、CFA | マネージング・ディレクター、 ポートフォリオ・マネージャー グローバル株式チームのポートフォリオ・マネージャーとして、 新興国株式戦略を担当。2008年入社、業界歴22年。カルカ ッタの聖ザビエル大学卒業、ヴァージニア工科大学MBA課程 修了。CFA協会認定証券アナリスト。 ベンジャミン・シーゲル、CFA | マネージング・ディレクター、グロ ーバル株式チーム 責任者 グローバル株式チームの責任者およびポートフォリオ・マネージ ャーを務める。1998年入社、業界歴22年。ケンブリッジ大学卒 業、ペンシルベニア大学卒業、ペンシルベニア大学ウォートン 校MBA課程修了。CFA協会認定証券アナリスト。 ブラッド・タンク | マネージング・ディレクター、債券部門 最高 投資責任者 債券部門の最高投資責任者およびグローバル責任者を務め る。また、シニア・マネジメント委員会およびアセット・アロケーシ ョン委員会のメンバーを務める。2002年入社、業界歴35年。ウ ィスコンシン大学卒業、同大学MBA課程修了。 アンソニー D. テュトロン | マネージング・ディレクター、オル タナティブ部門 グローバル責任者 プライベート・エクイティおよびselectヘッジファンド戦略を含む オルタナティブ部門の責任者を務める。2002年入社、業界 歴28年。コロンビア大学卒業、ハーバード・ビジネス・スクール MBA課程修了。 ゴーキー・アーキエタ | マネージング・ディレクター、新興国債券 共同運用責任者 新興国債券チームの共同運用責任者およびシニア・ポートフ ォリオ・マネージャーを務める。2013年入社、業界歴21年。ボリ ビア・カトリック大学(ラパス)卒業、ウィスコンシン大学修士課 程修了。 39 当資料は情報提供を目的として作成されたものであり、法的、税・会計上または投資のご提案のためのものではなく、また個別の有価証券等の勧誘 等を目的とするものでもありません。当資料は、作成時点において信頼できると思われる情報に基づき作成されていますが、かかる情報(第三者から の情報を含む)のいずれについてもその公正性、正確性、信頼性、完全性および妥当性について、明示または黙示を問わず表明または保証するもの ではありません。当資料に含まれる意見や見通しについては作成時点のものであり、今後予告なく変更されることがあります。当資料中の見通しや意 見については、必ずしもニューバーガー・バーマンとしての統一見解ではない場合があることにご注意ください。当資料に記載する商品または運用戦略 が、すべての投資家に適合するものではありません。 当資料は予想、見込み、見通し、その他の「将来予測に関する記述(Forward-looking statements)」を含みます。様々な要因により、実際に生起する 事象は当資料に記載されているものと大幅に異なる場合があります。投資はリスクを伴い、元本の毀損を伴います。当資料の受領者が当資料に含ま れる情報の利用あるいは当該情報に基づく行動の結果を含め、当該情報の開示または利用に関して生じた結果等について、ニューバーガー・バーマ ンおよびその役職員はいかなる責任や義務を負うものでもないことにご注意ください。ヘッジファンドやプライベート・エクイティ・ファンド等のオルタナテ ィブ投資は投機的な投資であり、高いリスクを伴います。これらの投資は当該投資に適合すると判断される一定の投資家のみを対象としています。イ ンデックスは運用されるものではなく、また直接投資はできません。過去の実績は将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。 40 ニューバーガー・バーマンの戦略に関し、投資一任契約を通じて投資する場合は、年率1.0%(税抜き)を上限として投資運用報酬を徴収いたします。 またこれとは別に、かかる戦略への投資を投資信託等の組入れにより実施する場合は、別途当該投資信託等の中で運用報酬等の諸費用が徴収さ れます。具体的な水準は、運用戦略、運用資産額、投資スキーム等に基づく商品の内容および成功報酬の徴収の有無等により個別案件ごとに異な りますので、詳細を表示することができません。さらに商品の種類、スキーム等により各種費用(運営費用、ファイナンス・コスト、組成費用、取引手数料 等)が発生しますが、これらの諸費用は運用状況および資産規模等により変動しますので、その総額や上限等についてあらかじめ記載することができ ません。 投資一任契約に基づき投資を行う投資運用商品には、投資信託、株式、債券、為替、先物、デリバティブ等、各種金融資産が含まれますので、各市 場等における相場その他の指標に係る変動等の影響により投資価値が下落し、損失を被ることがあります。外貨建資産への投資は、為替変動により 損失を被るリスクを伴います。投資運用商品は、投資元本が保証されているものではなく、投資元本を割り込むことがあります。投資信託、外国籍リミ テッド・パートナーシップ等のファンドに投資する場合、投資するファンドの種類により投資リスクは異なりますが、主なリスクとして、価格変動リスク、流動 性リスク、信用リスク、為替リスク、金利リスク、デリバティブ・リスクなどがあります。また、受託資産の運用に関してデリバティブ取引等を利用する場合 は、受託資産から委託証拠金その他の保証金(以下総称して「証拠金」と言います)を預託する場合がありますが、当該取引等にかかる想定元本の 額が証拠金の額を上回る可能性があるとともに、当該取引の対象となる有価証券の価格、利率又は参照する指標等の変動による損失の額が証拠 金の額を上回ることにより、証拠金を上回る損失が生じ結果として元本を上回る損失を蒙る可能性があります。なお、デリバティブ取引等の証拠金に 対する比率は、取引毎の具体的な条件に応じて決定されるため、予め算出することはできません。 当資料の図表が示す資産クラスの投資利回りは概して次に挙げるインデックスの数値を用いています。米国実質金利:ブルームバーグのジェネリッ ク米10年物インフレ連動債(TIPS)の利回り。欧州実質金利:バークレイズ・キャピタル・ドイツ・インフレ連動債・オール・マチュリティーズ・インデックス の利回り。国債:米国はブルームバーグのジェネリック米10年国債インデックスの満期利回り、欧州はブルームバーグのジェネリック・ドイツ10年国債イ ンデックスの利回り、アジアはバークレイズ・キャピタル・アジア太平洋(日本を除く)政府債インデックスの国債コンポーネントの利回り、ラテンアメリカは JPモルガンEMBIプラス・ラテン・ソブリン債インデックスの利回り。投資適格債:米国はバークレイズ・キャピタル米国コーポレート投資適格債インデック スの最低利回り、欧州はバークレイズ・キャピタル・ユーロ・コーポレート投資適格債インデックスの最低利回り、アジアはJACI投資適格債インデックスの 満期利回り、ラテンアメリカはJPMコーポレートEMBIハイブリッド・ブレンディド・ラテンアメリカ・インデックスの利回り。ハイ・イールド債券:米国はバークレイ ズ・キャピタル米国コーポレート・ハイ・イールド債券インデックスの最低利回り、欧州はバークレイズ・キャピタル・パン‐ヨーロピアン・コーポレート・ハイ・イ ールド債券インデックスの最低利回り、アジアはJACI投資不適格債コーポレート・インデックスの満期利回り。上場株式のバリュエーションは次に挙げる 各インデックスの12カ月後予想基準の株価収益率(PER)として算出しています。すなわち米国はブルームバーグ収益予想に対するS&P500インデッ クス、欧州はブルームバーグ収益予想に対するMSCI欧州インデックス、アジアはMSCIアジア(日本を除く)インデックス、ラテンアメリカはMSCI EMラテン アメリカ・インデックス。10年国債はブルームバーグのジェネリック米10年国債インデックス、投資適格債はバークレイズ・コーポレート投資適格債インデ ックス、第1順位担保権付ローンはクレディ・スイス・レバレッジド・ローンズ・インデックスから第1順位担保権付ローン現行利回り、第2順位担保権付ロ ーンはクレディ・スイス・レバレッジド・ローンズ・インデックスから第2順位担保権付ローン現行利回り、ハイ・イールド債券はバークレイズ・コーポレート・ハ イ・イールド債券インデックスの数値を用いています。 当資料は注記された場合を除き記載された日付時点の情報であり、従業員・運用資産高を含む当社のデータは、ニューバーガー・バーマン・グルー プLLC(以下「当社グループ」)に従属する個々の関連投資アドバイザーの情報をまとめたものです。当社グループの過去/時系列のデータは、1939 年に設立されたニューバーガー・バーマン(ニューバーガー・バーマンLLCの前身)に遡ります。 当資料は、ニューバーガー・バーマン・グループが作成した資料をもとに当社が翻訳・作成した資料であり、必ずしも原文の内容と一致するものでは なく、また、その正確性、完全性および信頼性を保証するものではありません。当資料の複写、転載および第三者への提供については、当社の同意な くこれを行うことは固くお断りいたします。 ニューバーガー・バーマン(“Neuberger Berman”)の名称およびロゴはニューバーガー・バーマン・グループLLCによりサービスマーク(“Service Mark”) として登録されています。 ニューバーガー・バーマン株式会社 〒100-6512 東京都千代田区丸の内一丁目5番1号 関東財務局長(金商)第2094号 加入協会:一般社団法人 日本投資顧問業協会、一般社団法人 投資信託協会、一般社団法人 第二種金融商品取引業協会 ©2016 Neuberger Berman East Asia Limited. All rights reserved. We are investors. 私たち自身も投資家です。 ニューバーガー・バーマンは、お客さまそれぞれの目的に適合した投資ソリュー ションをご提供し、真に投資家のためになる行動を徹底するという受託者責 任を真摯に果たしています。機関投資家、委託会社、販売会社および個人投 資家など、お客さまが誰であっても、その責務を果たすために全力で対応いた します。 当社は、独立性と独自性ある考えを重視しており、トップ・ダウンによるハウス ビューに依存することはありません。本レポートを通して、こうした熱意あふれる 投資文化をお伝えすることができれば幸いです。 お客さまには、ニューバーガー・バーマンについて、さらにはお客さまと当社が どのようなパートナーシップを構築することができるかについて、ご紹介をさせ ていただきたいと考えています。ニューバーガー・バーマンの多様な運用戦略、 投資アプローチ、運用サポート体制などに関するお問い合わせは、当社担当者 あるいは下記までご連絡ください。また当社ウェブサイトもぜひご覧ください。 ニューバーガー・バーマン株式会社 照会先 : [代表電話]03-5218-1930 [電子メール][email protected] ウェブサイト : www.nb.com/japan グローバル本部 米国 ニューヨーク 800.223.6448 地域統括本部 英国 ロンドン +44 20 3214 9000 中国 香港 +852 3664 8800 日本 東京 +81 3 5218 1930 その他主要運用拠点 イタリア ミラノ オランダ ハーグ シンガポール 米国 アトランタ 米国 シカゴ 米国 ダラス 米国 ボストン その他拠点 アラブ首長国連邦 ドバイ アルゼンチン ブエノスアイレス オーストラリア メルボルン カナダ トロント 韓国 ソウル コロンビア ボゴタ スイス チューリッヒ スペイン マドリッド 台湾 台北 中国 上海 ドイツ フランクフルト フランス パリ 米国 ウィルミントン 米国 サンフランシスコ 米国 タンパ 米国 パームビーチ 米国 ヒューストン 米国 ボストン 米国 ロサンゼルス L0284 12/15 ©2016 Neuberger Berman Group LLC. 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