黒澤明監督全作品 タイトル 内容紹介 1943年 【出演】藤田 進、大河内伝次郎、月形龍之介、轟夕起子、志村 喬 他 黒澤明の監督デビュー作。富田常雄の「姿三四郎」を原作に、明治の柔術家姿三四郎の成長する 姿を描く娯楽作品。 姿 三 四 郎 柔術家姿三四郎は、柔術を近代化した「柔道」を提唱する矢野の強さと人柄にほれ込み、弟子入り する。厳しい修行の成果でみるみる腕をあげ、「四天王」と呼ばれるにいたるも、うぬぼれ心が芽生 えて師匠に反発し・・・ 武骨だが赤ん坊のように純粋無垢な三四郎が人間的に大きく成長していく姿、それを支えるキャラ クターがどれも魅力的。 娯楽が全くなかった戦時中の作品だが、人間が10m近くふっ飛んでしまう投げ技、三四郎と小夜の 淡いロマンス、吹きすさぶ強風の中での死闘などなど、観客の心を浮き立たせるような楽しさで いっぱいの映画である。 H@700@D5@1093 ほか 一 番 美 し く 1944年 【出演】矢口陽子、入江たか子、志村 喬 他 太平洋(大東亜)戦争さ中、学徒勤労動員令により勤労奉仕に従事する女子挺身隊の物語。 軍需工場で働く少女たちは、それぞれの想いを胸に秘めつつも国を信じ、作業にいそしんでいる。 稼働している本物の工場に女優を勤めさせて撮影したという半ドキュメンタリー。 H@700@D5@1097 ほか 1945年 虎 の 男 尾 達 を 踏 む 續 姿 三 四 郎 【出演】大河内伝次郎、藤田 進、榎本健一 他 能『安宅』と歌舞伎『勧進帳』を題材とした、黒澤初の時代劇。 安宅の関を通過しようとする義経と弁慶の他、当時の超人気コメディアン榎本健一(エノケン)がオ リジナルキャラクターに設定され、能の地謡には洋楽コーラスを採用するなど、ミュージカル映画・ コメディ映画としての性質も持つ。 本作は、日本の敗戦~戦後の時期に撮影された。当初は検閲により「歌舞伎を愚弄するもの」とし て、上映禁止処分となったが、後にGHQの映画担当官が大変面白がって上映禁止を解除してくれ たという。 H@700@D5@1104 ほか 1945年 【出演】藤田 進、大河内伝次郎、轟夕起子 他 大ヒットした「姿三四郎」の続編。すたれていく柔術界に苦悩する三四郎は、日本の誇りを取り戻す べく立ち上がる。 三四郎は、多くの柔術家が苦労している事を知って苦悩していた。欧米人が闊歩してさげすまれる 日本の誇りを取り戻すべく、破門を覚悟でボクサーと戦ったり、勝った賞金を貧しい柔術家にそっく り与えてしまうなど、本作もすがすがしい。 前作で三四郎に敗れた檜垣源之助の弟、鉄心と源三郎が果し合いを挑むのが本作のクライマック ス。三四郎の純粋さに恨みを捨てて改心するシーンは感動的である。真冬の志賀高原での撮影に 素足で挑んだという決闘シーンは必見。 ボクシングをはじめ、戦時中に撮られたとは思えないほど、盛り沢山のアクションシーンが面白い 娯楽作品である。 1946年 わ が 青 春 に 悔 な し H@700@D5@1094 ほか 【出演】原 節子、藤田 進、大河内伝次郎、河野秋武、杉村春子 他 戦中、国家主義によって言論・思想がことごとく弾圧されていた時代。反戦・平和運動に命を捧げ る男と共に、あえて自らの信念に従い、苦難の道を選んで生きる女性の物語。 大学教授の美しい娘・幸枝は学生たちのあこがれの的だった。幸枝を争う二人の青年のうち、野 毛は満州事変を機に反戦運動家になり、糸川は検事となる。幸枝は信念をもって行動する野毛と 結ばれるが、彼は戦争を妨害する非国民として逮捕されてしまい・・・ 小津安二郎の映画ではおっとりとしたお嬢様を演じる事が多い原節子が、本作ではボロボロの農 婦になっても自らの信念を貫く女性を熱演する。 H@700@D5@1098 ほか 1947年 素 晴 ら し き 日 曜 日 【出演】沼崎 勲、中北千枝子 他 戦後まもない東京を舞台に、貧乏なカップルが過ごす日曜日。 週に一度のデートに出かけるも、二人の所持金はたった35円(当時コーヒー一杯10円)だけ・・・。 お金はないけれど、工夫すればそれなりに楽しめるはず!と奮闘するも、容赦ない現実の数々に がっかりする二人。 終戦後の当時は、日本全体がひどい貧乏にさいなまれていました。映し出される都市の荒廃した 風景からも、それを窺い知る事ができます。 でも主役のカップルが最後には明るい希望を抱き、互いに絆を深めあう物語に心温まります。 また、登場人物が直接観客に話しかけるという観客参加型の新しい手法をとり、パリで熱狂的に迎 えられたそうです。 H@700@D5@1105 ほか 【出演】志村 喬、三船敏郎、小暮美千代、山本礼三郎 他 黒澤と三船が出会った、記念碑的作品。戦後混乱期の闇市を舞台に、結核にかかったチンピラと 飲んだくれの開業医の交流をが描かれている。 1948年 酔 い ど れ 天 使 酒飲みで荒っぽいが純粋な医者・真田のもとに、銃弾の傷の治療に現れたヤクザ・松永。彼が肺 結核に冒されている事に気づいて真田は治療を勧めるが、松永は受け入れず、ヤクザ社会の闘 争と病気で次第にげっそりとやつれていく・・・ 松永を演じる三船敏郎のギラギラした存在感と繊細でワイルドな雰囲気が見どころ。棺桶から現れ て追ってくる自分の亡霊の夢に怯えるシーンなど、デビュー作とは思えない演技も見逃せない。 また終戦直後のリアルな雰囲気や、メタンガスが沸き立つ汚い沼の映像も印象的。 H@700@D5@1100 ほか 1949年 静 か な る 決 闘 【出演】三船敏郎、三条美紀、志村 喬、千石規子 他 戦時中、野戦病院で負傷兵を治療中に、傷ついた指先で手術を続行したばかりに梅每に感染して しまった若い医師の物語。 薬も満足にない戦地を転々とするうちに病は進行してしまい、戦後故郷に戻っても、待っていてくれ た婚約者に病気の事は言いだせない。町医者となって採算を考えずに貧乏人たちの治療に身を 捧げ、聖者先生と呼ばれるようになったが・・・ 医師として、高潔な倫理感を持った藤崎(三船敏郎)は、はからずも梅每に感染してしまった自分 の血を絶やすために自らの幸せも欲望も犠牲にし、自分に病を移した男にすら完治のための手助 けをする姿が切ない。 H@700@D5@273 1949年 【出演】三船敏郎、志村 喬、淡路恵子、木村 功 他 実際に起きた事件をヒントにした犯罪ドラマ。終戦直後の混乱の「恐ろしく暑い夏の日」、拳銃を盗 まれた新米刑事がその行方を追っていくうち、盗まれた拳銃による強盗傷害事件が発生す る...。 野 良 犬 悪党でなかった人間でも、あまりの暑さに悪事を働いてしまうのにも納得の、じっとりとした暑さが 伝わってくる映像。 戦争が終わり、同じ復員列車に乗っていた男達の一人は犯罪者となり、もう一人はそれを追う刑事 となる設定で、戦争がもたらした精神の荒廃を描く。 お花畑の格闘シーンに流れるブルジョア家庭のピアノ音楽や凝ったカメラアングルなど、非常に斬 新で完成度が高いとの評価を得た。 H@700@D5@1101 ほか 1950年 【出演】三船敏郎、京マチ子、森 雅之、志村 喬、千秋 実 他 原作: 芥川龍之介 「藪の中」 羅 生 門 都からほど近い山中で侍夫婦が山賊に襲われ、侍は死亡する。検非違使が事件を吟味するも、証 言が真っ向から対立。困った検非違使は死んだ侍の霊を口寄せで呼び出すが、その証言もまた食 い違っていて・・・ 様々な画期的手法を取り入れた作品として有名。特に当時タブーとされていた逆光線撮影を初め て取り入れた「木漏れ陽」の美しさや、大量の墨汁を水に混ぜてホースで降らせたという雨のかも す陰鬱な雰囲気に注目! ヴェネチア国際映画祭サン・マルコ金獅子賞(1951), アカデミー賞名誉賞(1951) ほか受賞多数 H@700@D5@274 ( ス キ ャ醜 ン聞 ダ ル ) 白 痴 1950年 【出演】三船敏郎、志村 喬、山口淑子 他 戦後「言論の自由」をかさにきて、俗悪なスキャンダルを垂れ流すマスコミを批判した作品。 有名歌手とはつゆ知らず、写生中に知り合った美女を送って行った青年画家は、事実無根の捏造 記事や写真を雑誌に載せられてしまい・・・。現代に通じるマスコミ倫理と言論の自由を風刺した作 品。困惑する青江に裁判を起こすようそそのかす気弱な悪徳弁護士(志村喬)や、胡散臭いと思い つつも彼を信じようとする主人公のまっすぐな姿を見守る映像は人間味にあふれ、限りなく温か い。 H@700@D5@1065 1951年 【出演】森 雅之、三船敏郎、原 節子、久我美子 他 黒澤監督が敬愛するドストエフスキーの小説「白痴」を基に、舞台を終戦後の北海道に移し換えて 映画化した愛憎劇。 戦犯容疑による処刑寸前に釈放された青年・亀田は、ショックのあまり白痴になった。彼が故郷に 帰る途中で知り合った男・赤間は政治家の愛人、妙子を愛していた。美しい妙子に亀田も心を奪わ れるが、そんな亀田の赤ん坊のような純粋さに下宿先の娘も恋心を抱いていた・・・。純粋無垢な 青年とドロドロとした愛憎劇のコントラストが印象的。 黒澤監督は、作品の長さを巡って会社と衝突し、「どうしても切れと言うなら、フィルムを縦に切る」 とまで言って抵抗したというエピソードは、あまりにも有名。現在観る事ができるのは、結局大幅 カットされてしまった166分バージョンのみである。 H@700@D5@245 1952年 【出演】志村 喬、小田切みき、伊藤雄之助、金子信雄 他 余命いくばくもない男がこれまでの無意味な人生を悔い、最後に市民のための小さな公園を建て て残りの人生を完全燃焼させる姿を描いたヒューマンドラマの傑作。 生 き る 市役所勤めの渡辺は、ある日自分がガンで余命いくばくもない事を知る。それまで自分が首までつ かっていた事なかれ主義に疑問を抱き、市役所に提出される申請書に初めて真剣に目を通してみ ると、市民からの様々な陳情書が・・・ 責任を回避する官僚主義への批判や、人生の価値に対する哲学が表現されるとともに、主演の志 村喬の鬼気迫る演技が印象的。当時47歳だった志村は判で押したような生活をする孤独な老人を 見事に演じ切った。愛する息子からも冷たくされて一人雪の中で命を終えていく姿は観る者の涙を 誘う。 ベルリン国際映画祭ドイツ上院陪審賞(1954)ほか受賞多数 1954年 【出演】志村 喬、三船敏郎、木村 功、宮口精二、加東大介、千秋 実、稲葉義男 他 言わずと知れた日本映画の最高峰の一つ。 七 人 の 侍 生 き 記 も 録 の の とある貧しい村の収穫時期。盗賊と化した野武士集団が今年も襲来したら飢え死にしてしまう。で も百姓じゃ勝ち目はない・・・ そんな村人たちは、食べるのもままならない浪人たちを7人雇い、彼らとともに野武士に立ち向か おうと決意する。 百姓と侍の仲介をつとめながらも、荒々しく勇敢な菊千代(三船敏郎)をはじめ、魅力的なキャラク ターが満載。侍たちの中には宮本武蔵や塚原卜電(ぼくでん)など実在の剣豪をモデルにした人物 もいる。 H@700@D1@260-1,2,3 1955年 【出演】三船敏郎、志村 喬、千秋 実、青山京子 他 原水爆実験による人類の危機を叫ぶ老人と、冷やかな反応しか返さない家族・世間との対比を描 いた異色ヒューマンドラマ。 町工場を経営する中島老人は、ある日原水爆と放射能に強い恐怖を抱く。財産を処分してブラジ ルに一家で移住しようと奔走するが、家族はそのテンションについていけず裁判所に訴え出る。次 第に孤立していく中島老人は・・・ 当時35歳の三船敏郎が、肋骨が出るほど痩せた老人の役を熱演している。 H@700@D5@1095 ほか 1957年 【出演】三船敏郎、千秋 実、山田五十鈴、志村 喬 他 シェイクスピアの「マクベス」を日本の戦国時代に置き換えた黒澤時代劇の傑作。 蜘 蛛 巣 城 戦国武将の家臣・鷲津武時は、妖婆に「貴方は城主になる」と予言される。そして武時の妻からも そそのかされて、時の城主を暗殺。予言通り武時は城主になったが ・・・ 武時の妻・浅茅が般若のごとき形相で血のついた手を洗うシーンや「動く森」など、妙に心惹かれ る不気味さや恐怖感にあふれた作品。また富士山五合目に建設した城の巨大な門構え、前当主 が殺された血糊の残る広間、矢を使った屏風など、美術へのこだわりが徹底している。500頭以上 の馬やエキストラによる映像は一大スペクタクルと言える。 無数の矢にさらされるラストシーンは三船に「黒澤の野郎、あいつバズーカ砲でぶっ殺してやる」と 言わしめるほど危険な撮影だったとの事。 H@700@D5@1111 ほか 1957年 【出演】三船敏郎、山田五十鈴、香川京子、左 卜全 他 ロシアの作家ゴーリキーの戯曲の映画化。 人生のどん底にもたとえられる場末の長屋を舞台に、社会の底辺の人々の生きざまを辛口に、か つユーモラスに描く。 ど ん 底 渡世人、しがない職人、女たらしの泥棒、夫殺しをたくらむ人妻など、個性的なキャラクターたちの 長屋生活が非常にリアル。 役者たちが「江戸の長屋暮らし」になじむよう、撮影前には長屋を舞台にした落語を古今亭志ん朝 などに噺してもらってからリハーサルに入ったなど、エピソードには事欠かない。テンポよい会話 や、複数カメラの撮影がかもす極限的な臨場感も素晴らしい。なぜか長屋でラップ調の歌が歌わ れるのもみどころか。 1958年 隠 し 砦 の 三 悪 人 H@700@D5@1109 ほか 【出演】三船敏郎、千秋 実、藤原釜足、上原美佐 他 敗軍の将が美しい姫を連れ、隠し置いた軍資金とともに、次々と遭遇する絶体絶命の危機を乗り 越えて敵国を脱出するスリリング・アクション時代劇。 気の強い姫君と狂言回し的な百姓コンビが世界のミフネに負けない存在感を放っている。(この百 姓コンビが『スター・ウォーズ』のC-3POとR2-D2に多大な影響を与えたのは有名な話である。) 森の木立や、モノクロならではの光と影のコントラストが幻想的で非常に美しい。またそれまでの黒 澤映画とは少し趣きを変えた、とにかく映画の面白さをストレートに堪能できる作品。 ベルリン映画祭銀熊賞・監督賞・国際評論家連盟賞(1959), ブルーリボン賞(1959) H@700@D5@1110 ほか 1960年 悪 よ い く 奴 眠 ほ る ど 【出演】三船敏郎、森 雅之、香川京子 他 汚職事件にからんで自殺した男の息子が、父親を死に追いやった政官財の有力者たちに復讐を 企てる姿を描いた社会はドラマ。 政治汚職に鋭く切り込むと同時に、サスペンスに満ちた娯楽映画としての性質も持つ。 重苦しいシーンと不釣り合いに明るい音楽を採用し、逆説的にドラマを盛り上げる「対位法」が効果 的に使われた。 H@700@D5@1106 ほか 1961年 【出演】三船敏郎、仲代達矢、山田五十鈴、東野英治郎 他 黒澤監督が初めて、意図的に娯楽性を前面に打ち出して作ったという、痛快娯楽時代劇。 用 心 棒 やくざと元締めが対立する宿場町に一人の浪人者がやって来た。早く出て行けという忠告を尻目 に自分を用心棒として売り込み始める男。 そんな桑畑三十郎をめぐって二つの勢力は対立を深め・・・ ダシール・ハメットの「血の収穫」を翻案し、西部劇のような設定で繰り広げられるアクションが痛快 で、『荒野の用心棒』等、マカロニウエスタンの原形になった。 砂と塩ときなこを混ぜた迫力満点の砂煙や、西洋かぶれ?でマフラーにピストルの用心棒(仲代達 矢)も登場するなども興味深い。 ヴェネチア国際映画祭主演男優賞 ; ブルーリボン賞(1961年) 他受賞多数 H@700@D5@1242 ほか 1962年 【出演】三船敏郎、仲代達矢、加山雄三、入江たか子 他 上司の不正を暴こうと立ち上がった若侍たちを助太刀する凄腕の浪人椿三十郎の痛快アクショ ン! 前作「用心棒」の桑畑三十郎よりも、一層ユーモラスで知略に満ちた人物像が魅力的。 椿 三 十 郎 薄暗い社殿で9人の若侍が密議をこらしていた。上司を告発したものの、策略にうとい彼らは逆に 窮地に陥っている。 そんな彼らの話をたまたま聞いていた浪人椿三十郎は、同情して一肌脱ぐことに。 三十郎の後ろに金魚のフン状態でいつも並んで行動する9人衆のおかしさや、赤白の椿の合図、 見上げるショットの多用による三十郎の頼もしさの演出など、印象的な場面が多い。敵の用心棒 (仲代)との一騎打ちが壮絶。 原作: 山本周五郎「日日平安」 H@700@D5@1099 ほか 1963年 【出演】三船敏郎、仲代達矢、山崎 努 他 原作: エド・マクベイン「キングの身代金」 天 国 と 地 獄 丘の上の豪邸に暮らす権藤のもとに「子供は預かった」と脅迫電話がかかる。だが、誘拐されたの は権藤の子供ではなく、運転手の息子だった。苦悩の末、全財産をなげうって少年を取り戻した が、権藤は社内権力闘争で会社を追われてしまい・・・ 身代金受け渡しの特急列車シーンは必見。完全主義の黒澤監督はなんと列車を借り切り、8台の カメラでリアルタイムで撮影が行われた。また、モノクロに突如使われるカラーの使い方も非常に印 象的。煙突からたちのぼる赤い煙は「踊る大捜査線」にも引用されている。 H@700@D5@1107 ほか 1965年 【出演】三船敏郎、加山雄三、山崎 努、二木てるみ 他 山本周五郎『赤ひげ診療譚』を基に描かれた江戸時代の小石川養生所を舞台としたヒューマンドラ マ。 赤 ひ げ 長崎でオランダ医学を学んだ青年・保本は見習医師として小石川養生所に住み込むことになる。 貧乏くさい養生所や武骨な所長赤ひげにも好感を持てず、投げやりに過ごしていた保本だったが、 患者との交流を経るうちに、次第に赤ひげの腕の確かさと、彼を頼りにする人々の姿に心を動かさ れていく。 女郎屋のやくざをやっつけた直後に「これは酷い」と彼らの治療を始める赤ひげ、効果的な風鈴の 使い方など笑いや切なさが色とりどりに盛り込まれ、あたたかな人情味に溢れた作品である。 H@700@D5@1096 ほか 1970年 ど で す か で ん 【出演】 頭師佳孝、伴淳三郎、菅井きん 他 山本周五郎の「季節のない街」を原作にした、黒澤映画初のカラー作品。貧民街に住む様々な人 たちが描かれている。 自分が電車の運転手だと思い込んでいる知恵遅れの少年六ちゃんは、毎日「どですかでん、どで すかでん」と叫びながら他人には見えない空想の電車を走らせている。ゴミためのような貧民窟に は様々な人がいる。 酒に溺れ近親相姦に陥ってしまう男。いつも大邸宅を建てる事を夢想している乞食の親子など。 社会の底辺の人々がもがく貧困と不幸の悲しみのドラマを描きつつ、彼らに温かい視線を向けた ユーモアにあふれた作品。 H@700@D5@1102 ほか 1975年 デ ウ ル ザ ース ・ ラ 【出演】ユーリー・サローミン、 マキシム・ムンズク 他 黒澤監督、唯一の海外での製作映画作品。 原作は20世紀初頭のシベリア極東地方の探検記。シベリアの厳しい自然を舞台に、学術探検隊 長アルセーニェフと老猟師デルス・ウザーラの心温まる交流。アルセーニェフは大自然に根付いて 素朴に生きるデルス・ウザーラの姿に、深い敬愛の念を抱いていく・・・ アカデミー賞最優秀外国語映画賞(1975) H@700@D5@1066-1,2 ほか 1980年 【出演】仲代達矢、山崎 努、萩原健一 他 武田信玄の影武者として生きた男の悲喜劇を荘厳・絢爛な映像で描いた時代劇大作。 影 武 者 家康の野田白攻めの折に、鉄砲で命を落とした武田信玄。弟はその噂を打ち消すべく、信玄の影 武者を立てる。選ばれたのは、盗みで処刑されそうになっていた信玄と瓜二つの男。引き受けては みたものの、戦国の勇猛な武将を演じるのはとてつもない過酷さで・・・ 主役に決まっていた勝新太郎が監督との意見の相違から途中降板するなど、話題に事欠かな かった作品。 カンヌ国際映画祭パルムドール, 英国アカデミー監督賞・衣裳デザイン賞, ブルーリボン賞, セザー ル賞(1980年)など受賞多数。 H@700@D5@1103 1985年 【出演】仲代達矢、寺尾聰、根津甚八、隆 大介 他 シェイクスピアの『リア王』」と、戦国時代の毛利三兄弟の物語を大胆に翻案した絢爛豪華なスペク タクル時代劇。 乱 七十歳を迎えた猛将一文字秀虎は、家督を三人の息子に譲り、順に彼らの城の客人となって余生 を送ろうと考えていた。しかし、息子たちの骨肉の争いと反逆にショックを受け、僅かな家臣ととも に荒野をさまよう秀虎は狂人と化していく・・・ 広大なロケーションとオープンセットをステージにした壮大な舞台劇とも言え、前作『影武者』にも増 して非常に美術的な映像作品。 アカデミー衣裳デザイン賞(ワダ エミ), 全米批評家協会作品賞・撮影賞, NY批評家協会外国映画 賞, 他多数受賞 1990年 [VHS] H@700@V1@322 【出演】寺尾聰、いかりや長介、マーティン・スコセッシ、笠 智衆 他 黒澤監督が、自分の見た夢をもとに撮り上げたオムニバス映画(短編8話)。 夢 狐の嫁入りをみた少年の話「日照り雨」、花吹雪に舞い踊る人形「桃畑」、ゴッホの世界がそのまま 映像化された「鴉(からす)」など、強烈な色彩と繊細なイメージに満ちた不思議な「夢」の世界。 幻想的な映像と豪華なキャストで話題となった。 H@700@D5@307 ほか 1991年 八 月 の 狂 詩 曲 【出演】村瀬幸子、吉岡秀隆、リチャード・ギア、井川比佐志 他 かつて原爆を体験した祖母のもとを訪れる孫たちが体験するひと夏の出来事を描き、淡々と反核 を訴える映画。 夏休み、長崎の祖母のもとを4人の孫たちが訪れる。田舎生活に退屈を感じながらも、長崎の街に 残る戦争の傷跡や、老人の語る体験談を通して、子供たちなりに戦争に対する考えを深めていく。 反戦・反核へのストレートな表現が賛否を呼んだ。 原爆のキノコ雲を「空を覆ったキノコ雲が、人を睨みつける巨大な目のように見えた」事を象徴する 「空と目の合成」も有名。 H@700@D5@244 1993年 【出演】松村達雄、香川京子、井川比佐志、所ジョージ、油井昌由樹 他 黒澤監督デビュー50周年に製作された30本目の映画であり、遺作となった作品。 ま あ だ だ よ 作家・内田百閒(ひゃっけん)とその教え子たちの交流をあたたかく描く。 還暦祝いの「馬鹿鍋」に使う馬肉を買いに行って馬に睨まれたり、愛猫ノラが行方不明になってか らは猫の健康を祈って「摩阿陀会(まあだかい)」を開いたり・・・ 戦時を舞台に、忘れかけていた古き良き時代へのノスタルジーやあこがれ、他人への思いやりの 気持ちをよみがえらせてくれる一本。 H@700@D5@275
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