家畜衛生情報 家畜衛生情報 第 136 号 平成 26 年 1 月 石狩地区家畜自衛防疫推進協議会・北海道石狩家畜保健衛生所 1 高病原性鳥インフルエンザ防疫演習の実施 平成25年11月28日、当所において「平成25年度石狩振興局高病原性鳥インフルエンザ防 疫演習」を、石狩振興局並びに公益社団法人北海道家畜畜産物衛生指導協会との共催で実 施しました。 今回は、鶏の殺処分作業の実地演習を行い、防疫対応時に作業方法を周囲に指示、助言 できる人材の育成を目的とし、生産者や関係機関・団体等から50名が出席しました。 まず、本病発生時の防疫対応全般及び殺処分作業の方法について説明を受けた後、実地 演習を行う24名は、当所職員を班長とする4班に分かれ、防護服を着用しました。 [防護服着用の説明] [防護服の着用] その後、屋外へ移動して、鶏舎に見立てた車庫内で、ケージから生きた鶏を捕鳥し、炭 酸ガスの噴射場所へ運搬、殺処分後に解剖室内のフレコンバッグに死体を投入する一連の 作業を、班長の指示のもと、係を交代しながら演習し、研修室で防護服を脱衣しました。 参加者の手際が大変良かったため、200羽の作業を30分程度で完了しました。 なお、気温0℃前後では、30㎏入りの液化炭酸ガスボンベ1本で840羽に対応できると 推測されました。 実際の本病の防疫対応は、道だけでなく、関係機関・団体の皆様と協力して実施しなけ ればなりませんので、出席された方は、広く職場内で今回の演習内容を周知していただく ようお願いします。 演習後、出席者へアンケート調査を行い、の結果は次のとおりでした(回答者32名)。 ① 防護服の着用、脱用の手順について ・以前からよく知っていた:10名 ・以前から多少は知っていた:12名 ・今回初めて知った:10名 ② 防護服を着用しての作業の感想(※実地演習参加者24名のうち21名回答) ・支障なく作業できる:6名 ・1時間なら作業できる:12名 ・1時間は厳しい:3名(45分なら可:1名、30分なら可:2名) ③ 鶏の殺処分作業の手順について ・以前からよく知っていた:8名 ・以前から多少は知っていた:11名 ・今回初めて知った:13名 ④ 今回の演習に参加して、鶏の殺処分作業の手順の理解について ・より理解が深まった:30名 ・理解に変化はない:1名 ・まだよく理解できない:1名 ⑤ 今回の演習に参加したことで、万が一の発生時に自分が殺処分作業を行うことにな った場合、作業未経験の周囲の作業者に、作業の内容や手順を ・率先して指示や助言できる:9名 ・多少は指示や助言できる:22名 ・全く指示や助言はできない:1名 ⑥ 今回のような実地型の防疫演習について ・今後もぜひ実施してほしい:28名 ・どちらでもよい:4名 ・実施の必要はない:0名 [鶏の捕鳥、運搬容器への投入] [運搬容器への炭酸ガス噴射] [フレコンバックへの死体の投入] [実施演習の全景] 自由記載欄では、演習の内容、班長の指示に好評をいただきました。 一方で、 「ゴーグルが曇る」 、 「防護服着用後に隙間等が無いかの相互確認の必要性」、 「炭 酸ガスを噴射する穴の大きさ(大きいと逆流する)」、 「装備や作業手順の一つ一つの意味 の説明が不足」という課題もあげられました。 今後も、万が一の対応に備えるため、実地型も含めた防疫演習を企画します。 2 海外悪性伝染病の侵入防止のための農場における衛生管理の徹底 韓国、中国など近隣諸国では、悪性伝染病の発生が続いています。侵入防止のため、農 場に対する衛生管理の徹底への指導をお願いします(数字は平成26年1月22日現在)。 (1)韓国/高病原性鳥インフルエンザ[血清型 ○発生状況 H5N8亜型] 発生場所:韓国全羅北道のあひる農場 発生日:2014年1月16日1戸、17日1戸、18戸1戸、21日1戸(疑い) 症状等:自然へい死の増加、産卵率の急減 ○防疫措置 殺処分:発生農場及び疫学関連農場6戸90,000羽 一時的な移動停止命令:全羅南道、全羅北道、光州広域市の家きん、家 畜、関係者、関係車両が対象 *韓国では、H5N8亜型の鳥インフルエンザウイルスに感染した死亡野鳥も確認。 (2)中国/低病原性鳥インフルエンザ[血清型 ○発生状況 発生場所:中国浙江省・広東省の農産物市場 発生日 2013年12月8日、12月18日(OIEへの報告:2014年1月16日) 発生状況 ○防疫措置 H7N9亜型] 国家サーベイランス計画に基づく検査、臨床症状はなし 飼養全羽のとう汰、移動制限、施設の消毒、ゾーニング (3)2013年、近隣諸国での海外悪性伝染病の発生 ○口蹄疫 中国:17件(牛16件、牛・豚1件)、ロシア:14件(牛11件、牛・豚3件)、 モンゴル:2件(牛2件、牛・羊・山羊1件) ○高病原性及び低病原性鳥インフルエンザ 中国:4件(継続発生を除く)、台湾:1件、 北朝鮮:1件 ○豚コレラ 韓国:1件 ○アフリカ豚コレラ ベラルーシ:2件 、ロシア:40件 (4)海外悪性伝染病の我が国への侵入を防ぐために 旧正月に入りアジアを中心に海外からの旅行者の増加が見込まれるため、防疫の強化 が必要です。 <日本政府による対策> ○口蹄疫等発生国からの畜産物輸入の禁止 ○空港等での入国者の靴底消毒や車両消毒 ○渡航者や入国者に対し、動物検疫に対する情報提供と注意喚起 <家畜飼養者が行わなければならない対策> ○家畜伝染病予防法に基づく飼養衛生管理基準の遵守徹底 特に遵守を徹底すべき項目 ☆ 関係者以外の立入制限や導入家畜の一定期間の隔離、観察 ☆ 農場(衛生管理区域)出入りの際の人・車両の消毒 ☆ 畜舎出入りの際の消毒(豚については、畜舎毎に長靴・衣類の交換) ☆ 畜舎の清掃・消毒 ☆ 野生動物の侵入防止対策 飼養家畜に異常が見られた場合は、速やかに家畜保健衛生所へ連絡して下さい 3 動物薬事・安全対策 (1)薬事監視 当所では「流通段階における動物用医薬品等の品質・安全性の確保」を目的に動物用 医薬品等販売・賃貸業者に立入し、監視指導を行っています。 今年度は、12月末現在で、22件の業者に立入検査を行った結果、6件で違反が確認さ れました。動物用医薬品等の販売・賃貸にあたっては薬事法の遵守をお願いします。 主な違反内容 ○未許可の動物用医薬品を販売していた。 ○動物用医薬品の貯蔵・陳列が不適切であった。 ○動物用医薬品の陳列、保管場所の変更について未届けであった。 (2)抗菌性物質残留防止 平成25年10月に石狩振興局管内で生乳の抗菌性物質残留事例が発生しました。この事 例では、健康牛と治療牛の混在、牛体へのマーキングの不徹底、医薬品使用記録簿への 未記載、獣医師の診療を受けず自己判断による投薬により、事故が発生しました。 抗菌性物質残留事故は、消費者の畜産物に対する安全性への信頼を大きく損なう恐れ があります。このような事態を防ぐため、畜産関係者の皆さまには次の事項について、 ご理解されるとともに、生産者へのご指導をお願いします。 ア 畜産関係機関・団体の皆さま ① 残留防止対策について生産者への周知徹底 ・ポジティブリスト制度に基づく、医薬品の使用の記帳・記録の保管 ・治療牛の隔離、識別の徹底(誰でも・どこからでも分かる複数識別後の治療) ・農場内の連絡徹底(口頭、連絡・記録ボード、看板等) ・出荷制限期間の遵守・出荷前の残留検査の受検(クォーターミルカーの使用禁止) ② 残留事故発生防止に向けた注意喚起(特に農作業の繁忙期) ③ 事故発生時には、再発防止に向けた対策の検討及び指導 イ 診療獣医師の皆さま ① 口頭と文書による投薬及び出荷制限期間の指示 直近の出荷予定がない家畜についても出荷制限期間を必ず伝える。 ② 治療牛の隔離、識別の指示 ③ 搾乳牛を治療した際は、出荷前の残留検査受検の指示 *参考 石狩管内における残留事故発生状況(H25.12末現在) 発生年度 件 生乳 数 畜肉 H15 H16 H17 H18 H19 H20 H21 H22 H23 H24 H25 1 1 2 3 2 1 1 治 療 中 2014:1/15治療 1/18まで廃棄 4 1 1 1 4 病性鑑定依頼に当たっての注意事項 - 検査材料の採材・送付方法 - 牛の呼吸器病の診断のため、当所へ病性鑑定を依頼する場合は、送付又は持参する前に ご連絡をお願いします。また、検査・診断に適した検査材料とするため、次のとおり採材 し、送付してください。 (1)採材頭数 5~10頭(症状を呈していない牛から発症している牛まで、幅広く複数頭を採材) (2)採材方法 ア 鼻汁:鼻の穴の入口をアルコール綿花でよく消毒し、綿棒を鼻腔の奥まで入れて粘膜 をこするように拭う。1頭当たり綿棒2本を採材。 イ 血液:発症のピークを超えてしまうと、鼻汁の検査だけでは原因を特定出来ないこと があるので、抗体検査用に1回目の鼻汁採材時とその約2週間後に血液を必 ず採材。 (3)送付方法 ア 鼻汁:乾燥しないように少量の生理食塩水を試験管にいれ、その中に鼻汁を含ませた 綿棒を入れて送付。 イ 血液:血清の場合を除き、凍結しないように冷蔵便で送付。 ・冬季に血液材料を送付する場合 遠心分離した血清では問題は無いのですが、採血したままの血液を送付する 場合、輸送中に凍結させないように注意してください。凍結した血液は検査不 能となります。凍結防止のためなるべく冷蔵便で、もしくは、普通便で送付す る場合は、断熱性の高い発泡スチロールの箱に、血液を入れた容器を梱包材(ぷ ちぷち等)で包んでから入れ、密閉して送付してください。 (4)その他 発生農場(住所、名称・氏名)、検査牛の詳細(個体識別番号、生年月日、症状)、発生 や治療経過、ご担当者の氏名、連絡先(検査・診断に必要な情報の照会先)を記載した依 頼書等を必ず同封してください。ご不明な点は、病性鑑定課までご連絡ください。 ○ 牛の呼吸器病:牛RSウイルス病が流行する季節です! 寒さがいっそう厳しくなり、呼吸器病が流行する季節になりました。そこで、今回は、 特に冬期に多発し重症化しやすい牛RSウイルス病についてお話しします。 本病は、牛RSウイルスの感染により呼吸器症状と発熱を呈する急性伝染病です。伝 播速度は速く、年齢・品種に関係なく発生します。他のウイルスは主に上部気道に感染 して発症するのに比べ、RSウイルスは肺炎を起こして重症化することがあります。 ・症状:鼻汁漏出、咳など。40~42℃の発熱が長期間持続し、結膜が著しく充血、流涙 がみられることもある。重症例では頭部・頸部、背部に皮下気腫が認められる。 ・感染経路:発症牛との接触や咳や鼻汁などの飛沫によって感染する。 ・治療:対症療法。本ウイルスに有効な薬剤はない。 ・予防:ワクチン接種。牛RSウイルス病単味と呼吸器病5種または6種混合がある。 本病主体の対策であれば、単味ワクチンが効果的である。 - 本病が流行する前にワクチン接種をしましょう! - 5 家 畜 の 監 視 伝 染 病 の 発 生 状 況 ( 平 成 25年 1 月 ~ 12月 ) 北海道 畜種 区分 病名 石狩管内 戸 数 頭 (羽 、 戸 数 頭 (羽 、 群 )数 牛 法定 ヨーネ病 125 433 1 8 47 126 1 1 3 4 8 938 169 289 1 1 1 1 牛丘疹性口炎 3 3 1 1 破傷風 6 6 1 1 サルモネラ症 1 2 ネオスポラ症 4 6 牛カンピロバクター症 1 1 気腫疽 1 1 20 46 1 2 13 138 1 17 豚赤痢 2 5 1 4 サルモネラ症 2 6 1 3 届出 伝染性膿疱性皮膚炎 1 15 届 出 伝 染 性 フ ァ ブ リ キ ウ ス 嚢 病( I B D ) 1 5 1 1 1 2 1 2 届出 バロア病 37 1,143 2 2 ノゼマ病 3 3 64 848 6 16 1 1 1 1 届出 牛ウイルス性下痢・粘膜病 (BVD・MD) [疑症] 牛伝染性鼻気管炎(IBR) 牛白血病 (BLV) [疑症] [疑症] 馬 届出 馬鼻肺炎 豚 届 出 豚 繁 殖 ・ 呼 吸 障 害 症 候 群( P R R S ) 豚丹毒【下記参照】 めん羊 鶏 マレック病 蜜蜂 法定 腐蛆病 チョーク病 犬 ○ 群 )数 届出 レプトスピラ症 石狩管内で急性敗血症型豚丹毒が発生! ~ワクチン接種による予防を!~ 豚丹毒は豚丹毒菌を原因とする伝染病で、豚に敗血症、蕁麻疹、心内膜炎、関節炎を 起こします。本病は家畜伝染病予防法の届出伝染病に指定されているとともに、と畜場 法では全部廃棄の対象となります。国内では毎年発生があり、平成21年以降は2,000頭 以上、平成25年は9月末現在ですでに3,448頭発生しており、道内でも発生頭数は年々 増加しています(道内では平成25年12月現在138頭発生)。その多くはと畜場での蕁麻疹、 心内膜炎、関節炎による発生ですが、平成20年以降、急性敗血症型豚丹毒が全国で発生 し、多数の死亡豚を出すなど大きな被害をもたらしています。この急性敗血症型豚丹毒 から分離された豚丹毒菌の多くが、今までとは異なる、新しい遺伝子配列を示す型であ ることが報告されています。 石狩管内では、過去5年間、豚丹毒の発生はありませんでしたが、平成25年5月に管 内1養豚場で急性敗血症型豚丹毒の集団発生がありました。今回分離された豚丹毒菌を 調査した結果、道外で流行しているものと同様に新しい遺伝子型の豚丹毒菌であること が判明しました。なお、本菌についてもワクチンの効果は確認されています。 本病は、飼養衛生管理基準の遵守と、適期でのワクチン接種により予防が可能です。 最近の豚丹毒の発生数増加は、ワクチン接種率の低下も原因の一つと考えられます。ワ クチンを接種していない農場で万一発生した場合には、感染が拡大することが多く、対 策に時間がかかるうえに経済的な損失も大きくなります。平成24年度の当所の調査では、 石狩管内で豚丹毒ワクチン接種を実施しているのは33戸中7戸のみで、抗体調査の結果 では抗体を保有していない豚が多く存在することがわかっています。豚丹毒ワクチンを 接種していない農場の方は、万一に備え、是非ワクチンを接種するようにしてください。 ◎ 豚流行性下痢(PED)が発生してます!! ~注意喚起と予防対策!!~ ◆豚流行性下痢(PED)とは ・PEDウイルスが含まれる糞便から経口感染します。 ・年齢に関係なく発生し、元気・食欲の減少、水様性下痢や嘔吐がみられ、哺乳豚は50 ~100%が死亡します(成長に伴い死亡率は低下します)。 ・母豚では泌乳が減少、停止するため、哺乳豚の死亡の要因となります。 [PED発症哺乳豚(水様性下痢)] [未消化固形物を含む黄色水様性下痢] 昨年9月、沖縄県での発生が確認されて以降、茨城県(2戸)、熊本県(1戸)、宮崎 県(16戸)、鹿児島県(85戸)及び沖縄県(3戸)で発生しています(平成26年1月22 日現在)。 本道では、平成10年2戸2,159頭の発生以降、本病の発生はありませんが、冬から春 にかけて発生しやすいことから、病原体侵入防止のため、養豚場における消毒等の予防 対策の徹底をしましょう。 ◆予防対策 ・看板等を設置し、関係者以外の農場(衛生管理区域)への立入制限 ・農場(衛生管理区域)を出入する人や車両の消毒の徹底 ・家畜運搬車は使用の都度、清掃・消毒 ・豚舎ごとの踏み込み消毒槽設置、出入りの際の長靴を消毒 ・豚舎ごとに専用の作業衣・長靴を設置 ・導入豚は隔離飼養し、毎日、健康観察 ・母豚へのワクチン接種は、獣医師の指示により用法・用量に従い適切に使用 ※本病を疑う異常豚を発見した場合は、速やかに家畜保健衛生所へ連絡して下さい。 6 飼養衛生管理基準に係る定期報告について 家畜伝染病予防法において、家畜の所有者は、年1回、飼養する家畜の種類、頭数、衛 生管理状況等を知事へ報告することが義務付けられています(法第12条の4)。 例年同様、各市町村にご協力いただき、平成26年の定期報告(平成26年2月1日現在の 内容)について取りまとめを行いますので、農場へ出入りする関係者の皆様からも、家畜 飼養者への周知をお願いします。 平成26年の定期報告 提出期限 及び 提出先 飼養する家畜の種類 報告期日 牛、水牛、馬 平成26年4月15日 鹿、めん羊、山羊、豚、いのしし 鶏、あひる、うずら、きじ、 平成26年6月15日 ほろほろ鳥、七面鳥、だちょう 7 提出先 市町村の畜産担当部署 石狩家畜保健衛生所 職員配置図・緊急連絡先 北海道石狩家畜保健衛生所 TEL:011-851-4779 E-mail:[email protected] FAX:011-851-4780 http://www.ishikari.pref.hokkaido.lg.jp/ds/khe/top.htm 所 長 三田清成 090-9435-6490 次 長 中城 090-9514-5005 指 導 一 課 指導課長 予 髙久英徳 080-5593-5379 主査(動物薬事・安全) 防 課 予防課長 獣医師 戸澤世利子 病性鑑定課 横井佳寿美 病性鑑定課長 011-815-8229 011-799-0030 主査(危機管理) 主査(病性鑑定) 萩谷香織 ※ 〒062-0045 札幌市豊平区羊ヶ丘3番地 林 専門員 絋太郎 山之内 健 大根田則広 和田好洋 専門員 永井章子 萩谷主査は、現在、育児休業中です。 専門員 小林亜由美 動物薬事に関する照会等は、指導課長へお願いします。 専門員 榊原道子 獣医師 川嶋千晶
© Copyright 2024 Paperzz