改正違法ダウンロード法と未成年者の利用と問題点 The revised illegal

改正違法ダウンロード法と未成年者の利用と問題点
The revised illegal downloading law and minors
田村 悟, 小野 友理子, 柴田 若奈
Satoru TAMURA, Yuriko ONO,
Wakana SHIBATA
大東文化大学 経営学部
Daito Bunka University Faculty of Business Administration
Email: [email protected]
あらまし:我々は,未成年者の違法ダウンロードに注目し,違法ダウンロードを防止するためにはどの
ような解決策が必要なのかを見つけるために,高校生を対象にアンケートを用いて調査・研究を行った.
その結果から,問題の本質を理解しない限り,違法ダウンロードを防止することは難しいと思った.又,
そのために最も効果的なのは教育であり,様々なネット問題を解決する糸口にもなり得ると考えた.
1.
はじめに
2012 年 6 月,違法ダウンロードに刑事罰が導入さ
れることが決まった.従来は違法ながら罰則規定は
なかったが,修正案ではこれに対し 2 年以下の懲役
または 200 万円以下の罰金(※親告罪)を科す,と
されている.そこで我々は,未成年者の違法ダウン
ロードに注目した.
修正法案は 10 月 1 日から施行されるが,そもそも
未成年者は違法ダウンロード刑罰化についての認知
度は極端に低いのではないか.そして,この認知度
の低さが,今後さまざまな問題を引き起こすのでは
ないだろうか.
本稿では,違法ダウンロードを防止し,未成年者
を犯罪者にしないために,どのような解決策が必要
なのかについて調査を実施し,検討するものである.
2.
「はい」と回答した人に対し,知るきっかけをた
ずねたところ,
「インターネット」38.1%,
「テレビ」
30.6%,
「親・知人」28.4%,
「新聞」2.2%,
「その他」
0.7%であった(図2)
.
アンケート調査結果
被験者は,高校生(16 歳~18 歳)237 人を対象に
アンケート調査を実施した(2012 年 10 月).
まず,10 月 1 日から違法ダウンロードが刑罰化さ
れることを知っているかの問いに,「はい」56.1%,
「いいえ」43.9%と予想に反して過半数が知ってい
るた.(図1)
図2.違法ダウンロード刑罰化を知った理由
次に音楽・動画ファイルの無料ダウンロード経験
について,
「はい」56.8%,
「いいえ」43.2%であった
(図3)
.
図3.音楽・動画ファイル無料ダウンロードの有無
図1.違法ダウンロード刑罰化の認知度
この設問に「はい」と回答した人を対象に,違法
と知りつつ,アップロードされた音楽・動画ファイ
ルを無料でダウンロードしたことはあるかの問いに,
「はい」39.0%,「いいえ」61.0%となった(図4).
しきれない」といった意見もあった.
図6.違法ダウンロードに罰則は必要だったか
図4.違法無料ダウンロードの認識の有無
10 月 1 日以降に違法となる音楽・動画ファイルを
ダウンロードするかの設問に対し,
「利用する」8.5%,
「回数減らす」13.6%,
「一切利用しない」78.0%と
この改正案の効果は一定の割合でみられる(図5).
しかし,回数減らす,利用する,を合計すると
22.1%がまだ利用すると言っている.
図7.罰則が必要な理由
3.
図5.違法ダウンロードの利用意思の有無
違法ダウンロード行為に罰則は必要と思うかにつ
いて,
「必要」と答えたのは,33.3%であった(図6)
.
その内,なぜそう思うのかという問いに対しては,
「違法だから」という意見が最も多くを占めた(図
7)
.
そして,「どちらともいえない」と答えたのは,
47.5%と最も多かった.その内,なぜそう思うのか
という問いに対して,
「分からないから・知らずにダ
ウンロードしてしまう場合があるのではないか」と
いう意見が最も多かった.少数意見として,
「厳しく
罰する必要はない・大きな問題になることではない」
といった事態を軽視した意見や,
「数の多さから対応
今後の課題
この改正案の効果は一定の割合であったといえる
が,それでも使用をやめない未成年者も少数である
がいることが分かった.調査して我々が感じたこと
は,未成年は刑事罰という罰則に反射的に「もう利
用しない」と言ったのであって,違法ダウンロード
によってどんな実害が生じているのか,違法ダウン
ロードするとどんな影響があるのかという,問題の
本質は見えていないと感じた.
問題の本質を理解しない限り,さらなる違法ダウ
ンロードを防止することは難しい.そのためには,
一見遠回りのように見えるが,やはり最も効果的な
のは教育であるだろう.学校でのネットを扱った授
業のほか,学生・生徒を対象にするだけではなく,
保護者に向けたインターネット事件の事例報告や問
題が生じる可能性を伝えることが,違法ダウンロー
ドだけでなく様々なネット問題の解決の糸口になっ
ていくだろう.