人口低密度地域における食品加工業の振興による活力

平成 26 年度
人口低密度地域における食品加工業の振興に
よる活力ある地域づくりに関する基礎調査
報 告 書
(概要)
北海道開発局 開発調査課
目
Ⅰ
次
調査概要 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
1 調査目的 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
2 調査の全体像 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
1
1
2
Ⅱ 優良先進事例の収集・整理 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
3
・農産物加工品 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 4
・畜産物加工品 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 12
・水産物加工品 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 18
Ⅲ モデル地域における調査・検討等 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 24
1 概要 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
2 各モデル地域における調査・検討等 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
(1)真狩村における地域活力向上アクションプラン策定 ・・・・・・・・・・・
(2)美幌町における地域活力向上アクションプラン策定 ・・・・・・・・・・・
24
26
26
33
(3)羅臼町における地域活力向上アクションプラン策定 ・・・・・・・・・・・ 39
Ⅳ とりまとめ(他地域へ展開するための方策)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
1 食品加工業の振興に地域一体で取り組むことにより
期待できる効果 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
(1)食品加工業の振興により期待できる効果 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
(2)地域の多様な主体の参画・連携により期待できる効果 ・・・・・・・・・
2 取り組むにあたってのポイント ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
(1)食品加工業の振興のためのポイント ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
46
① 企画構想段階 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
② 事業立ち上げ段階 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
③ 拡大・発展段階 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
(2)地域全体へ展開するためのポイント ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
3 各主体に期待される役割 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
4 おわりに ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
53
61
67
74
80
87
46
46
51
53
53
Ⅰ 調査概要
1 調査目的
我が国では、人口減少の進行による地域活力の低下が全国的な課題となっており、産
業の低迷などが懸念される状況にある。
北海道においては、他地域に比べ人口減少が早く進行しており(図Ⅰ-1)、地域そ
のものの維持が困難になることが懸念されるなど、食料供給基地や観光拠点といった、
我が国の発展に貢献する北海道の地域活力の維持・向上が重要な課題となっている。
現在、北海道には、高品質な農水産物が多くあるものの、付加価値化が遅れているな
どそのポテンシャルが十分に活かしきれていない実態にあり(図Ⅰ-2)、北海道の強
みである農水産資源を活かした取組が求められている。
また、農水産業を基幹産業とする北海道の多くの地域では、製造業に占める食品加工
業の割合が高く(図Ⅰ-3)、地域経済の核となり得る食品加工業の振興による北海道
の強みを活かした取組が地域の活力向上の鍵と考えられる。
このため、本調査では、国内の食品加工業において地域の経済・社会への貢献が特に
顕著な優良先進事例を収集・整理するとともに、食品加工業の振興による地域活力向上
を目指す道内3町村をモデル地域とし、当該地域において地域活力向上を実現するため
に必要な調査・検討等を行う。そして、これらを通じて得られた成果・知見等を基に、
今後の北海道の人口低密度地域における地域の活力向上に向けた方策について検討を行
うものである。
図Ⅰ-1
図Ⅰ-2
人口の対前年増減率の推移
(%)
1
食料品製造業の付加価値率
35.2%
40%
28.3%
20%
0
H6
H8 H10 H12 H14 H16 H18 H20 H22 H24
0%
北海道
▲1
全国
※付加価値率=付加価値額÷製造品出荷額等
北海道
出所:国勢調査(総務省)及び人口推計(総務省)
図Ⅰ-3
35.0%
全国 13.3%
0%
北海道
46.1%
全国 14.7%
86.7%
食料品製造業
製造品出荷額等
従業者数
65.0%
50%
出所:平成 24 年 工業統計調査(経済産業省)
製造業に占める食料品製造業の割合
事業所数
北海道
全国
100%
その他製造業
北海道
53.9%
全国 8.4%
85.3%
0%
50%
食料品製造業
出所:平成 24 年 工業統計調査(経済産業省)
1
30.0%
100%
その他製造業
0%
70.0%
91.6%
50%
食料品製造業
100%
その他製造業
2 調査の全体像
(1)優良先進事例の収集・整理
国内の食品加工業の取組事例について既存の公開資料、文献等により情報収集し、
地域の経済・社会への貢献が特に顕著な事例を抽出し、優良先進事例として整理する。
(2)モデル地域における調査・検討等
本調査におけるモデル地域として選定した道内3町村(真狩村、美幌町及び羅臼町)
において、食品加工業の振興による地域活力向上を実現するために必要な調査・検討
等を行う。
具体的には、上記3町村それぞれにおいて有識者を交えた検討会を設置し、地域活
力向上を実現するためのアクションプランを策定する。
(3)とりまとめ(他地域へ展開するための方策)
上記(1)及び(2)により得られた成果・知見等を汎用的にとりまとめ、他地域へ
展開するための方策として整理する。
2
Ⅱ 優良先進事例の収集・整理
国内の食品加工業の取組事例について既存の公開資料、文献等により情報収集し、地
域の経済・社会への貢献が特に顕著な事例を抽出し、優良先進事例として整理した。
なお、事例の抽出にあたっては、以下の2点を念頭に置いた。
■域外からの財の獲得と域内循環により地域経済の活性化に貢献
地域の一次産品を原材料に活用し、加工することで付加価値を高めた上、域外(首都
圏等の大消費地、海外等)から財を獲得し、域外から獲得した財を域内循環(原材料調
達、新規雇用創出等)させ、地域経済の活性化に貢献している事例
■地域の多様な主体の参画・連携により地域社会の課題解決に貢献
食品加工事業者のみならず、地域の多様な主体(行政、地域住民、NPO、大学・研
究機関、異業種企業等)が参画・連携し、地域一体となって取り組むことで、直接的な
経済効果に加え、地域社会の課題解決にも貢献している事例
特定地域や特定業種(品目)に偏らないよう留意した上で、60事例(農産物加工品
27事例、畜産物加工品18事例、水産物加工品15事例)を抽出・整理した。
3
【農産物加工品:27事例】
標
概
題
要
地域への貢献
1
ポ イ ン ト
主な参考文献
標
概
題
要
地域への貢献
2
ポ イ ン ト
主な参考文献
標
概
題
要
地域への貢献
3
ポ イ ン ト
主な参考文献
高付加価値商品を存在感のあるブランド名で
大都市に浸透
事業者名等
株式会社白亜ダイシン
事 業 所 在
北海道岩見沢市
安全・安心な北海道産の農産物にこだわった付加価値の高い加工品を開発・製造・販売。ターゲット
となる消費者を絞り込んだ上で、商品包装デザイン等にもこだわって高級感を演出し、「ノース・フ
ァーム・ストック」ブランドを確立している
・売上げによる経済効果と雇用創出
・首都圏や道外都市部における北海道ブランド向上
・地元農産物の活用による農業の経営安定
・家庭用金物の販売を行う会社が、農協婦人部が作った濃厚でどろっとしたトマトジュースと出会った
ことがきっかけで、トマトジュースの生産に参入
・トマトジュースは、ワインボトルを容器として意外性とおしゃれ感覚をアピール。また、価格設定は
一般的な製品の2倍に設定(価格競争を避けるため、また、良質なものには高価格なりの価値がある
ことを認知してもらう)
・生食用のミニトマトを用いたトマトジュースのほか、ジュース、ジャム、パスタソース、パスタ、ク
ッキー、チーズケーキ、チョコレートなど商品ラインナップを充実(約 100 種類)
・安全・安心で良質な素材が持つ味をそのままに良い物を提供したいとの想いから、厳選された道産食
材のみを使用し、農業者と密接に連携(加工ノウハウや販路を持たない農業者とウィン・ウィンの関
係を構築)しながら製品づくりを行う
・あえて大量生産はせず、ひとつひとつしっかりと商品をつくっていく(多品種少量製造)
・富裕層やファッションに敏感な女性をターゲットとするデザイン戦略で高級感あるブランドを確立
し、首都圏の有名百貨店、高級スーパー、高級ホテル等を通じて販売
・北海道 HP 経済部中小企業課「訪問企業の紹介」
・AFC フォーラム(平成 26 年 5 月 日本政策金融公庫)
餅のイメージを押し出した道の駅が人気観光
スポットに
事業者名等
株式会社もち米の里ふうれん特産館
事 業 所 在
北海道名寄市
もち米農家が、出稼ぎ脱却、付加価値、雇用創出を目指して加工事業に参入。大手企業との取引を経
て事業を拡大し、道の駅の指定管理者として売店やレストランも運営。道の駅は餅のイメージを押し
出し、地元特産品や農産物の販売にも力を入れ、人気観光スポットになっている
・売上げによる経済効果と雇用創出
・道の駅は人気の観光スポットに成長(道内旅行情報誌による道の駅人気ベストテンで第1位を獲得)
・もち米生産農家7戸で創業、「5年間は無報酬」など厳しい条件を定めて仲間内で結束
・社長が自ら交流会等の場に積極的に参加して人脈形成を図り、大手外食企業との契約に成功
・その後、大手コンビニチェーンのおでんの原料にも採用され、事業が安定
・原料供給を機に大手外食企業から専門スタッフが派遣されて製造や衛生に関する様々なノウハウの
提供を受け、大手のレベルに対応することで品質の向上と信用力を得て次の取引につながる
・主力商品「ソフト大福」の味は 18 種類。開発にあたり、製造技術が未熟な自社だけでは困難と判断
し、洋菓子メーカーと共同開発。マイナス 50℃まで下げられる冷凍機を使い、「流通のために冷凍し
なくてはならない」というマイナス面を「より美味しくするための冷凍」というプラスの発想へ転換
・農家が作る餅のイメージが感じられる商品づくりを心がけ、ストーリーで大手と差別化
・専門家に商品の包装紙と箱のデザインを依頼し、包装の見た目の良さで売上げが増大
・もち米の里なよろ もっともち米プロジェクト HP(名寄市食のモデル地域実行協議会)
・北海道内の取組に見る地域活性化のポイント(平成 22 年度 国土交通省北海道開発局)
地域資源の「農と食」をテーマに中心市街地
を活性化
事業者名等
ふらのまちづくり株式会社
事 業 所 在
北海道富良野市
「フラノマルシェ」は、地域最大の資源である「農と食」をテーマに中心市街地活性化を目指して整
備した複合商業施設。開業以来多くの来場者で賑わうとともに、周辺商店街にも波及させ、まち全体
の活性化に大きく貢献している
・年間来場者数 70 万人超、開業以降約4年で、累計来客数 300 万人を突破
・経済効果と雇用創出
・中心市街地の賑わい創出
・「農と食」をテーマとして、まちなかのにぎわい滞留空間の創出を目的とし、スーベニアショップ、
農産物直売所、スイーツ&カフェ、テイクアウトのフードコート等からなり、観光客・商業者・地元
民が楽しく交流する「まちの縁側」を目指す
・富良野のブランドイメージを活かしたテナント構成とし、商品も徹底的に富良野産にこだわる
・地産の食材を活かして作った長さ 33 センチに及ぶ巨大な揚げ餃子「なまら棒」がメガヒット
・食をテーマとしつつ敢えて軽食以外の食事を提供するスペースを設けず、周辺の飲食店情報を充実し
て商店街への誘導を狙ったり、周辺商店街と連携したイベントを実施するなど来場者のまちなか回遊
を促し、中心市街地全体の活性化につなげる
・きっかけは、富良野市には多くの観光客が訪れるものの中心市街地への入込みはごくわずかで、いか
に観光客を市街地に誘引するかが課題となっていた。市が財政難で病院跡地の再利用が白紙だった
中、現代表ほか数名が将来への危機感を強め、民間主導で取組を開始した。ただし、市職員も各種調
整等に尽力し、また、市が一等地を軽減賃料で賃貸するなど官民協働で事業を推進
・基本計画策定にあたっての市民のコンセンサス形成は、当初困難を伴ったものの、イメージを共有(危
機感の共有と夢の共有)しつつ議論し、「共感づくり」を地道に重ねた
・がんばる商店街 30 選(平成 27 年 3 月 中小企業庁)
・政府広報オンライン「まち・ひと・しごと創生 事例紹介」
4
標
概
4
題
要
地域への貢献
ポ イ ン ト
主な参考文献
標
題
概
要
地域への貢献
5
ポ イ ン ト
主な参考文献
標
概
6
題
要
地域への貢献
ポ イ ン ト
主な参考文献
標
概
題
要
地域への貢献
7
ポ イ ン ト
主な参考文献
離島でしかできない天然ミネラル豊富なワイ
ンづくり
事業者名等
株式会社奥尻ワイナリー
事 業 所 在
北海道奥尻町
地元の建設企業が、震災からの復旧後も地域の雇用を維持し、継続して発展させてゆける事業を作り
上げようとワイン事業を開始。遊休地を活用したぶどう栽培を開始し、ワイナリーを設立
・売上げによる経済効果と雇用創出
・工場見学を受け入れ、島の新たな観光資源に
・自社グループ保有地以外に、地域内の離農者の農地を引き受けてぶどうを栽培
・対岸にある別ワイナリーの契約農家のぶどうを引き取って OEM 生産し、広域的な活性化にも貢献
・海からのミネラルを存分に吸収したぶどうを醸造したワインは、若干の塩味を感じさせる深い味わい
が特徴。十数種類のラインナップで展開
・塩害が多いなど気候的にはデメリットがあるが、離島でしかできない潮風が育むミネラル分豊富なぶ
どうからできるワインとして差別化を図り、ブランド化
・醸造技術者の確保のため、道内ワイナリーの協力を得て、社員を派遣し技術を習得
・6次産業化優良事例 66 選(平成 26 年 3 月 野村アグリプランニング&アドバイザリー㈱)
・6次産業化の取組事例集(平成 27 年 2 月 農林水産省)
地元産ぶどうのワイナリープロジェクト
事業者名等
株式会社 OcciGabi Winery
事 業 所 在
北海道余市町
国内外から人が集まるワイナリーゾーンを目指して、100%地元産のワインの製造、見学型ワイナリー、
自家製ワインと野菜や水産物など地場産食材を使用したレストラン及びショップ等を複合的に展開
・売上げによる経済効果と雇用創出
・周辺農業者とも連携し、農業の経営安定に寄与
・起業を目指す人向けのスクールを開設して仲間を増やし、町の産業としての確立を目指す
・本格的なワイナリーゾーンとしての集客・観光化による町全体の活性化を目指す
・余市町は醸造用ぶどうの一大産地だが、地元ではワイン造りが盛んではなく、収穫されたぶどうの多
くが大手ワインメーカーや他地域のワイナリーに出荷されていた中、新潟県でワイナリーリゾートを
創り上げた人物が余市町でのワイン造りを決意。余市産ぶどうを原料に特色ある高級ワインを醸造
・畑と醸造設備を見学した上でファンになってもらうというインディヴィデュアル・マーケティング
(ひとりづつ対面商法)を実施、また、ワインの木オーナー制度で、消費者とのつながりをつくる
・農林漁業成長産業化支援機構(A-FIVE)のサブファンドが出資
・農林水産省・観光庁 HP「農観連携のモデル事例集」
・aff(あふ)(平成 25 年 12 月 農林水産省)
採れたて農産物の加工販売と、ファームレス
トランの運営
事業者名等
有限会社仲野農園
事 業 所 在
北海道長沼町
観光農園、ファームレストラン、ファームショップを開設し、自社農園で収穫された新鮮な食材を、
レストランの材料として使用するほか、観光農園での直売やジュース、ジャム等の加工品として販売
・レストランの食材を自家農産物のほかに周辺農家や地元商店から仕入れ地域経済に貢献
・雇用創出(地元採用、Uターン含む)、就農希望の若者の受け入れなど若者定着の場づくり
・年間来客者数7万人以上で観光に貢献
・農家が生産から加工、レストランまでを営み自家農産物を高付加価値化(生産する果実の8割を直売
やレストランで使用)、加工品としてはリンゴジュース、アップルパイ、焼菓子、ジャムなどを販売
・都市近郊という地の利を活かした農村観光を土台とする6次産業化
・レストランとファームショップを併設し、相乗効果による加工品の売上げ増
・平成 22 年度北海道食料・農業情勢報告(平成 23 年 7 月 農林水産省北海道農政事務所)
・北海道果樹農業振興計画(平成 23 年 3 月 北海道)
積極的な「情報発信」で地域全体の農産物の
知名度向上とブランド価値創出に成功
事業者名等
美瑛町農業協同組合
事 業 所 在
北海道美瑛町
販路開拓や商品開発につなげるため、美瑛全体の農業の情報発信拠点としてショールーム「美瑛選果」
を開設。特定の農家の販売向上ではなく、美瑛全体の農家の直販販路拡大とブランド価値向上のため
に、全国への情報発信拠点(アンテナショップ)として展開している
・年間来訪者数 10 万人以上、観光と農業の連携を構築
・ブランド価値を付けて直販することで農家の収入を向上(知名度向上で、産地主導の価格決定に)
・レストランへの食材供給のため、従来生産者がいなかった小物野菜の生産者グループを新規立ち上げ
・消費者の農場視察も増え、生産者と消費者の交流により生産者にとってもよい刺激に
・地元中学生の食育体験研修を実施し、食育の場としても活用
・「美瑛選果」のコンセプトは「全国に産地提案型のおいしさを発信するアンテナショップ」
・農産物直売所「選果市場」、スイーツのテイクアウト「選果工房」、野菜レストラン「アスペルジュ」、
ベーカリー「美瑛小麦工房」から構成し、インターネットでの農産物の販売も行う
・2号店として新千歳空港内に出店
・事業立ち上げに先だって、プロジェクトメンバー2名を大手広告代理店の研修会に派遣
・野菜レストランは北海道を代表する著名シェフから、パン工房は道外のパン事業者から協力を得た
・積極的に販促イベントや商談会に参加してバイヤー等から反響を得て農協が販売の第一線の情報を
持ち、生産者はどのような農産物を作るべきかを農協に相談するとともに、PRや販促活動に協力
・ショールームでは、野菜のおいしさを知ってもらうため、試食コーナーを常設
・JAによる農業振興の取り組み事例集(平成 26 年 12 月 北海道農業協同組合中央会)
・サービス産業生産性協議会(SPRING)HP「ハイサービス日本 300 選受賞企業・団体」
・6次産業化優良事例 25 選(平成 27 年 3 月 野村アグリプランニング&アドバイザリー㈱)
5
標
概
8
題
要
地域への貢献
ポ イ ン ト
主な参考文献
標
題
概
要
地域への貢献
9
ポ イ ン ト
主な参考文献
標
概
10
題
要
地域への貢献
ポ イ ン ト
主な参考文献
標
概
題
要
地域への貢献
11
ポ イ ン ト
主な参考文献
行政、農協、企業の三位一体の連携による工
場新設
事業者名等
株式会社山口油屋福太郎
事 業 所 在
北海道小清水町
九州本社の企業が主力商品のせんべいの主原料であるでん粉の安定調達のため、原料供給地の北海道
に工場を新設。北海道進出を機に地域の特産品を原料に活用した新たな商品「ほがじゃ」を開発し、
北海道のお土産市場で人気商品になっている
・地域雇用創出(大部分を地元採用)
・工場は見学可能、直営店舗を併設し、新たな観光拠点の創出と地域経済の活性化に貢献
・工場は閉校した旧小学校校舎を買い取り、避難所の指定を引き継ぎ、防災拠点としての機能も維持
・地元産のでん粉を使った製品が身近となったことで、農業者の生産意欲が向上
・全国に誇る特産商品ができたことで、地域への愛着と住民同士の一体感が生まれ、行政、企業、住民
が一体となって地域おこしに取り組もうとする機運が高まる
・「ほがじゃ」は、小清水町産のでん粉を主原料に、北海道産のホタテやチーズを練り込んだせんべい
・過疎化に悩む行政(町)と、豊かな農産物の生産地(農協)と主力原料調達ニーズ(企業)の三位一
体の連携による工場新設により、地域・企業それぞれの課題を解決
・町、商工会、農協が連携して工場進出を歓迎する「のぼり」を掲げるなど、町外から進出する企業を
町をあげて歓迎する雰囲気づくり
・工場の一部を無料で開放、多くの観光客が来館するとともに地域住民の憩いの場にもなっている
・調査報告「小清水町産のばれいしょでん粉を利用したせんべい製造」(平成 26 年 2 月 独立行政法人
農畜産業振興機構)
良質な冷凍枝豆の商品化とトップセールスに
よる販路拡大
事業者名等
中札内村農業協同組合
事 業 所 在
北海道中札内村
生産者と農協が一体となって枝豆の生産から加工、販売まで取り組む。良質な冷凍枝豆を生産するた
めの加工処理施設を導入し、組合長自らのトップセールスにより販路を開拓。冷凍処理することで年
間を通じた安定的な供給を確保して有利販売を実現、海外への輸出にも積極的に取り組む
・売上げによる経済効果(H15→H20 で域内総生産額が年平均 5%の成長)と雇用創出
・農家が生産した枝豆は全て農協が買い取り、農業経営が安定
(作付面積・生産量とも大幅に増、エダマメは利益率が高く農業所得が増、平均農業所得が日本一に)
・学校給食への供給、工場見学会や体験実習受け入れなど食育にも積極的に対応
・畑での収穫後、3時間以内に液体窒素で瞬間冷凍し、収穫したままの新鮮な風味を封印
・主力商品の「そのままえだ豆」のほか、「えだ豆カレー」「えだ豆餃子」など多彩な商品を開発
・加工施設を順次増強して原料処理量及び貯蔵能力を向上させ、実需者のニーズに応じた通年安定供給
体制と安定した販売ルートを確立
・組合長自ら積極的に商談会等に参加して、トップセールスにより需要先を開拓
・商談会等での意見を参考に加工品を開発、多彩な商品アイテムは地元メーカーと連携して展開
・欧米の健康志向や日本食ブームも背景に、海外への輸出を拡大
・減農薬・減化学肥料による安全・安心な栽培、工場は「北海道 HACCP」を取得
・農林水産省 HP「農業の発展に成果を出している農協の取組事例」
・JA総研レポート第 16 号(平成 22 年 社団法人JA総合研究所)
青森から世界へはばたく黒にんにくの輸出事
業
事業者名等
有限会社柏崎青果
事 業 所 在
青森県おいらせ町
野菜生産のほか、自社生産野菜を使った加工品の製造販売業を営む。自社の農産物や「おいらせ黒に
んにく」などの加工品をアジアや欧米に輸出し、その売上高は全体の1割を占めている
・輸出量の拡大による経済効果と雇用創出(従業員は女性が多く、女性の活躍の場を増やす)
・生産者から規格外品も含めて1籠単位で市場価格で買い取り、農家の負担軽減と所得向上に貢献
・「青森」の名を世界に広げるとともに、県民の誇りにもつながる
・「おいらせ黒にんにく」は、ポリフェノールなどの栄養価が高く、消費者の健康志向を受けてヒット
・加工品には食品添加物を一切使用していないため、輸出自体も食品添加物による制限がなく、余計な
心配をせずに輸出できることに加え、健康に興味がある消費者に訴求力がある
・海外見本市等に積極的に出展し、試食のほか、料理のレシピなど自社製品の様々な食べ方を提案。社
長自ら渡航し、商談相手と直接会って信頼関係を築く
・アグリ・フードサポート(平成 25 年 10 月 日本政策金融公庫)
・農林水産省 HP「農林水産物等の輸出取組事例(平成 25 年度版)」
高級ジュースで差別化し、首都圏や海外へ戦
略的に販売
事業者名等
農事組合法人大沢ファーム
事 業 所 在
秋田県横手市
県内有数のぶどう産地である横手市大沢地区で、ぶどうや洋なしなどの果実を原料にして高級ジュー
スを製造し、首都圏や海外の富裕層をターゲットに戦略的な販売を行っている
・売上げによる経済効果と雇用創出
・加工部門の安定化による果樹生産のさらなる活性化
・ジュースに加工するぶどうは、糖度 23 度以上の完熟したスチューベンを使用
・ジュース用ぶどうは樹上で完熟させ、品質向上と生産の安定化を図る
・県外へ委託加工していた際の物流コスト等の負担を解決するため、自社の加工場を整備
・旧学校給食センターを活用してジュース加工場を整備し、施設整備費を低減
・県外のジュース加工業者による技術指導を活用し、加工技術を習得
・地元観光協会と連携して販路を拡大、秋田空港、道の駅、百貨店等で販売するほか、海外へ輸出
・6次産業化の取組事例集(平成 27 年 2 月 農林水産省)
6
標
概
題
要
地域への貢献
12
ポ イ ン ト
株式会社しらかわ五葉倶楽部
事 業 所 在
福島県白河市
植物工場と加工工場を併設し、高齢者や障がい者向けのムース食品を製造。自社工場での野菜栽培か
ら、加工、販売までを一貫して行う6次産業化事業を推進している(平成 26 年 11 月工場完成)
・売上げによる経済効果と雇用創出(地域に少ない業種であり、女性や高齢者の雇用につながっている)
・地域の病院や介護施設への供給や地域住民への宅配サービスにより高齢社会に貢献
・また、今後、敷地内に高齢者向け福祉施設を併設し、介護で働くことが難しくなった人でも要介護者
を預けながら働くことができる環境づくりを目指す
・福島の農家が抱える風評被害を、農家自らの手で払拭することを目指している
・植物工場では年間 100 トンのホウレンソウを生産し、ほかに地元の契約農家が栽培するかぼちゃやト
マトなどを用いて、年間 750 万食のムース食品を製造する
・植物工場は閉鎖型で、LED 照明等を使用して、季節や天候の影響を受けずに、ホウレンソウやレタス
などの農作物を屋内で計画的に栽培できる
・高齢者や障がい者向けに食べる楽しみを兼ね備えた商品を製造・販売。また、地域に根ざした「味」
による商品の開発を目指し、漬物や伝統食などの商品開発を実施
・「カフェきずな農場」では、地産地消のメニューやムース食品を使ったメニューを提供
・商品の宅配など、他の福祉サービスとの連携による事業を推進
・将来的には、給食・宅配センターやデイケアセンター施設の建設を計画。高齢化対策、介護関係の一
大施設として、商工業と医療・福祉分野との連携による産業活性化が期待されている
・農林水産省東北農政局 HP「六次産業化・地産地消法に基づく事業計画の認定事業者の取組紹介」
標
広域連携により地域特産品を使った新たな介
護食品を開発
題
要
地域への貢献
ポ イ ン ト
14
事業者名等
主な参考文献
概
13
植物工場と加工工場を併設して野菜をムース
・ペースト加工し、高齢社会に貢献
事業者名等
東京中央食品株式会社
事 業 所 在
神奈川県伊勢原市
鹿児島県種子島の農家と首都圏の病院・福祉施設向け業務用食材メーカーが連携し、地域特産品(安
納芋)を使った新たな介護食品として「安納芋ゼリー」を開発した
・高齢化社会が進行する中で、介護施設における課題(嚥下困難、栄養不足等)に対応
・鹿児島県種子島の特産品の新たな市場を開拓(地産東消)
・農業生産者と食品加工メーカーが広域的に連携、かつ「農」と「福祉」の連携(医福食農連携)によ
り地域特産品を活用した新たな商品を開発(新たな介護食品「スマイルケア食」)
・介護施設では、高齢者が便秘になりやすく、また、嚥下機能が低下した高齢者から甘くて美味しい介
護食品を食べたいとの要望があり、需要が見込まれる
・産地の農家が地下のムロで保管した安納芋を周年供給することで、商品の安定供給を可能としている
主な参考文献
・「医福食農連携」取組事例集(平成 26 年 9 月 農林水産省)
標
題
地豆を活用したコミュニティビジネスで地域
活性化
概
要
地域への貢献
ポ イ ン ト
主な参考文献
標
題
概
要
地域への貢献
15
ポ イ ン ト
主な参考文献
事業者名等
横山振興会、株式会社のろし
事 業 所 在
石川県珠洲市
まちづくり団体が地区でかつて生産されていた大浜大豆を復活させ、様々な商品開発に取り組んでき
た後、同団体メンバーを含む地区住民が出資して株式会社を設立し、市が整備した交流施設の管理運
営、大豆加工品等の販売、体験教室などを行い、地域産業の振興と交流人口の拡大を図っている
・売上げによる経済効果と雇用創出
・農業者の生産意欲の向上
・株式会社の活動の成果を、地区の集会場の修繕など地区住民へ還元
・交流施設は地域住民の買い物場所及び観光バスのルートとして定着、地域内外から親しまれる存在に
・地豆「大浜大豆」と珠洲産天然にがりを使用した地豆腐や豆乳ソフトクリームなどを製造・販売
・京都の高級豆腐店の指導を受け、豆腐づくりを研究
・自分達の商品への強い思い入れと黒字経営にこだわる強い意志により、事業開始初年度から黒字経営
・交流施設では豆腐づくり体験などを実施、農業と観光との連携を強化し、農家民宿の開業などへ展開
・報道資料「平成 24 年度過疎地域自立活性化優良表彰団体の決定」(平成 24 年 9 月 総務省)
・いしかわ地域づくり往来 vol.5(平成 21 年 3 月 石川地域づくり協会)
・農林水産省北陸農政局 HP「北陸農政局管内における農山漁村活性化プロジェクト支援交付金取組事例」
有限会社わくわく手作りファーム川
事業者名等
六条大麦を使った機能性物質を含む地ビール
北
の開発・販売
事 業 所 在
石川県川北町
白山の伏流水、自社農地で生産した六条大麦など地元産の原料を用い、また、健康・機能性に着目し、
血圧降下等の機能性成分 GABA(ギャバ)値の高いこだわりの地ビール「金沢百万石ビール」を開発
・売上げによる経済効果
・大麦の生産は休耕田を活用、農業による地域おこしで、郷土の美しい風景を保全
・原料に北陸の気候に適した六条大麦を使用して生産の安定を図るとともに、独自性と地域性を打ち出
し、さらに、大手のビールに比べて GABA が多く含まれる製法を確立し、機能性で差別化
・ニーズを重視した商品開発(北陸新幹線開業を見据え、ビジネスマンや旅行者をターゲットに)
・金沢をイメージしやすく、かつ目に留まりやすいデザイン(加賀らしい華やかな色合いで、国に伝統
工芸品として指定されている加賀友禅の模様をあしらったデザインを採用)
・瓶ビールよりも缶ビールの方が新幹線の車内や駅での販売に向いていると判断し、新たに設備投資を
し、缶ビールの製造ラインを整備
・同ブランドのシリーズとして、「コシヒカリエール」や黒ビール「ダークエール」も展開
・AFC フォーラム(平成 27 年 1 月 日本政策金融公庫)
・6次産業化の取組事例集(平成 27 年 2 月 農林水産省)
7
標
概
題
要
地域への貢献
16
ポ イ ン ト
主な参考文献
標
題
概
要
地域への貢献
17
ポ イ ン ト
主な参考文献
標
概
題
要
地域への貢献
18
ポ イ ン ト
主な参考文献
地域食材を活用した独自商品を大都市圏でブ
ランド化
事業者名等
有限会社菓匠禄兵衛
事 業 所 在
滋賀県長浜市
老舗の和菓子屋が、法人化を契機に、味と品質にこだわりながらもジャンルにとらわれない新商品の
開発と首都圏への進出を始め、ブランド力を高めている
・売上げによる経済効果と雇用創出(地域での人気就職先に)
・和菓子を通じて地域を広める(地域を知ってもらい、足を運んでもらえるよう意識している)
・連携する農業生産者においても収益向上、販路拡大、計画的な生産が実現
・菓子製造過程で排出される卵の殻等を土づくり・土壌改良に使用し、循環型農業を構築
・自家栽培よもぎ等を使用した「草餅」を主力に出店を拡大、さらなる商品力・ブランド強化を目指し、
農業生産者と連携して特別栽培技術で生産した滋賀羽二重糯米等を使用した「豆大福」を開発
・ブランド力を高め、東京駅構内の商業施設や大阪の百貨店に出店
・滋賀の素材・伝統・地域性にこだわった商品開発、また、原材料もこだわって厳選
・プレミアムタイプと通常タイプの2種類の商品展開(話題性があり味の評価が高いプレミアムタイプ
の商品が広告塔となって、通常タイプの商品の売上を底上げ)
・デザインにこだわり、おしゃれな和菓子という新たなカテゴリーを創造し、顧客単価も上昇
(店舗設計、商品設計、パッケージをデザイン事務所と連携して総合的にブランドイメージを形成)
・地道な営業を積み重ねて常設店舗設置(多数の催事に出展することでバイヤーとの関係を形成)
・地域外ブランディングから地域内ブランディングへの戦略的展開(通常のパターンとは逆)
・地域資源を活かした食料品の販路拡大に関する調査研究(平成 25 年 3 月 中小企業基盤整備機構)
ICT を活用して高品質なみかんを生産すると
事業者名等
株式会社早和果樹園
ともに、こだわりの製法で多様な加工品を開
事 業 所 在
和歌山県有田市
発し、国内外に販売展開
ICT 農業システム等を活用して高品質なみかんを生産するとともに、特殊な搾汁技術を用いてみかん
ジュースをはじめ多様な商品を次々と開発。社員総出で試飲・試食販売を積極的に展開し、販路は有
名百貨店、高級スーパー、高級ホテル等、さらには輸出も行い、経営規模を拡大している
・売上げによる経済効果と雇用創出
・加工用みかんを、自社生産のほか、地域のみかん農家(契約農家)、JA、共同撰果場から調達し、地
域農業の活性化と発展に貢献(付加価値の高い加工を行うことにより加工用みかんの価格を引上げ)
・60 歳以上のシニアレディによる子会社を新たに設立し、高齢者の活躍の場を創出(予定)
・高級有田みかんジュース「味一しぼり」のほか、販売価格をやや低めに設定した「飲むみかん」も販
売。みかんジュースのほか、小さなみかんを丸ごとシロップに漬けた「てまりみかん」をはじめ、ジ
ュレ、ジャム、みかんポン酢、アイスバーへと商品を拡大
・マルドリ方式、ICT 農業システム、光センサーの活用により、天候による変動を最小限にとどめ、美
味しい(高糖度)みかんの生産を実現(「できたみかん」ではなく「つくったみかん」で勝負)
・ICT 農業システムは、大手 IT 企業及び県の果樹試験場と連携。樹木1本ごとに ID を付与した上で、
センサー、スマートフォンでデータ収集・蓄積し、生育状況、作業内容、作業コストを「見える化」
・地元食品加工業者と連携した特殊な搾汁技術(チョッパー・パルパー方式=みかんの皮をむいて裏ご
しする)により、皮をむいた生のみかんを食べた食味をジュースで実現し、他の製品との差別化を図る
・地元観光スポット(南紀白浜の大型水産物直売所や伊勢神宮前)で土日・休日の試飲販売を実施する
ほか、全国の百貨店・高級スーパーの催事に出展。社員総出で試飲・試食販売を全国各地で展開(年
間の試飲カップは 65 万個)し、販路開拓とともに消費者ニーズを把握
・和歌山大学の学生と商品開発を行い、若者世代の志向・ニーズに対応
・海外展開に積極的に取り組み、東南アジア(台湾、香港、シンガポール)や EU 諸国等へ輸出
・6次産業化の取組事例集(平成 27 年 2 月 農林水産省)
・6次産業化優良事例 25 選(平成 27 年 3 月 野村アグリプランニング&アドバイザリー㈱)
農業者が中心となり地域一丸で取り組む6次
産業化
事業者名等
株式会社きてら、株式会社秋津野
事 業 所 在
和歌山県田辺市
地域のコミュニティづくりからコミュニティビジネスを発展。みかんなどの特産物、廃校、耕作放棄
地といった地域資源を活用し、直売所、加工事業、農家レストラン、農業体験、農家民泊など地域一
丸となってグリーンツーリズムに取り組んでいる
・売上げによる経済効果(秋津野ガルテンや直売所の地域への経済波及効果は年間約 10 億円との試算)
・年間交流人口約 12 万人、農家レストラン利用者年間 5 万人以上で、観光に貢献
・新たな市民農園の開設やレストラン向け野菜生産ほ場の整備にあたり、耕作放棄地を有効活用
・新規就農者の育成プログラムを実施し、Uターン・Iターン者を雇用
・農家民泊による農家の所得向上
・事業内容ごとに住民出資による法人を設立し、補助金だけに頼らない地域づくりを進める
・地域づくり塾「秋津野塾」を基礎とする地域内連携に加え、地元行政や大学とも連携し、廃校を活用
した都市農村交流施設「秋津野ガルテン」を開設、直売所と農家レストランによる相乗効果も創出
・加工品は、みかんジュースや梅ジュースを主とし、さらに、スイーツやパン、菓子へと拡大展開
・季節の柑橘と農産加工品を詰め合わせた「きてらセット」等の宅配で地域外の顧客も取り込む
・年間を通して柑橘類が途切れないように、消費者ニーズを先取りした多品種の柑橘生産に努めるとと
もに、ジュースやドレッシング等の加工品の商品開発を積極的に展開
・直売所には仕入れ商品や転送商品は置かず、全て地元産にこだわった直売所を目指す
・収穫体験など農業体験による消費者との交流を図り、農家有志で「秋津野農家民泊の会」を発足し、
学童等を中心とする農家民泊の受け入れを進める
・農林水産省・観光庁 HP「農観連携のモデル事例集」
・6次産業化の取組事例集(平成 27 年 2 月 農林水産省)
・農林水産省 HP「地産地消優良活動表彰事例」
8
標
概
題
要
地域への貢献
19
ポ イ ン ト
主な参考文献
標
概
建設業から農業参入、6次産業化で「奥出雲
ブランド」確立
事業者名等
株式会社奥出雲中村ファーム
事 業 所 在
島根県奥出雲町
建設会社3社が農業へ新規参入し、有機農産物や機能性を有する農産物の生産を開始。「安全・安心・
安定」にこだわって生産した有機農産物(エゴマ、トウガラシ)を使用し、機能性食品等の加工品製
造を行い、「奥出雲ブランド」として販売している
・雇用創出
・栽培面積の拡大による耕作放棄地の減少
・地域を巻き込んで「奥出雲ブランド」として商品を販売
・公共事業の減少により、建設業から成長性のある農業へ新規参入。荒廃した農地の改良に各社が所有
する重機を使用、本業のノウハウを活用して土づくりに注力
・超高齢化社会を考え、エゴマに含まれる「オメガ3脂肪酸」を活用した機能性食品を着想し、エゴマ
ドレッシング等を開発
・3社で連携して、「奥出雲町健康食品産業生産者協議会」(通称:MOHG)を結成し、情報交換、商
品の共同販売等の協力体制を作る(その後、農産物の加工・販売部門を現社に一本化)
・地域の農家にもエゴマの栽培を勧め「奥出雲エゴマの会」を組織、エゴマの苗を農家に販売し、農家
が生産したエゴマの種を全量買い取る。町は農家に対し、エゴマの苗を購入する資金を支援
・エゴマ油が健康食品として注目される中、東京の健康食品販売会社や食用油専門店等を販路に
・著名な料理研究家と連携し、古民家を改修した交流施設で田舎の癒やしを提供
・6次産業化の取組事例集(平成 27 年 2 月 農林水産省)
・中国地方における企業の農業分野への参入実態と今後の取組方策調査報告書(平成 27 年 3 月 中国経
済連合会、株式会社日本政策投資銀行中国支店)
事業者名等
株式会社ベジタコーポレーション
事 業 所 在
広島県福山市
題
広域連携体制による実需者ニーズに対応する
カット野菜加工
要
広域にまたがる1次産業者、2次産業者及び3次産業者が連携して、カット野菜の製造・販売会社を
設立し、工場を新設。品質管理を徹底するとともに、連携体制を活かして原材料の安定調達と製品の
安定供給体制を確立、実需者のニーズに対応し、販路拡大を図る(工場は平成 27 年 2 月稼働予定)
地域への貢献
20
ポ イ ン ト
主な参考文献
標
題
概
要
地域への貢献
21
ポ イ ン ト
主な参考文献
売上げによる経済効果と雇用創出
・業務用・市販用のカット野菜を加工・製造(主要野菜として、キャベツ、たまねぎ、レタス、彩り野
菜として、にんじん、パプリカ、紫キャベツ)
・1次産業者(農業生産者)、2次産業者(漬物協同組合)及び3次産業者(漬物卸、青果卸)が連携
(共同出資)した合弁事業体(6次産業化事業体)
・1次産業者は茨城県、長崎県、宮崎県、2次産業者は広島県、3次産業者は広島県、福岡県、東京都
と広域にまたがる連携体制を構築
・農林漁業成長産業化支援機構(A-FIVE)のサブファンドが、工場建設資金として1億円を出資
・原材料は、共同出資者の農業生産者から仕入れるほか、同じく共同出資者の青果仲卸の青果市場ネッ
トワークを活用して各地の農業者から仕入れ、広域連携体制を活かした産地リレーで安定調達を図る
・外食チェーン店など大手企業の高度なニーズ・品質基準を満たす能力を備えた設備を導入(365 日体
制で、加工から流通まで4℃以下での管理)し、高品質(安心・安全)なカット野菜の安定供給を図る
・関西、九州、四国へのアクセスが良い地の利を活かし、西日本一帯にカット野菜の安定供給を図る
・農林水産省中国四国農政局 HP「加工・業務用野菜取組事例」
・「ちゅうぎんアグリサポートファンド」第1号投資案件について(平成 26 年 4 月 株式会社中国銀行、
中銀リース株式会社)
瀬戸内海の島の果実による手作りジャム工房
事業者名等
株式会社瀬戸内ジャムズガーデン
事 業 所 在
山口県周防大島町
都市部ではできない適地適作の果実からできる新鮮なジャムづくりを決意し、周防大島町で生産され
た四季折々の果実を使ったジャム・フルーツソース等を開発・製造・販売
・売上げによる経済効果と雇用創出
・観光マップの企画や、ジャム屋での集客イベントの企画等で地域への観光客増にも貢献
・原料となる地元産の果物等の買取価格は市場価格よりも高く、地元農家の所得安定化に貢献
・新規就農希望者を雇用し、加工・販売を経験してもらうことにより、地域内での新たな起業家人材の
育成に取り組むとともに、減少する農家と増加する休耕地の課題解決にも貢献
・島名産の柑橘系を使ったミックスジャムやマーマレードは種類も多く人気商品で、それぞれの甘味や
苦みを活かすため、皮を下ゆでしたり、そのまま煮たり、繊細なレシピで調理
・果樹園を併設したカフェも展開し、観光客等による購入と通販等で売上高は創業以来9年連続で増加
・事業立ち上げにあたり、企画書を作成するなどして十分に下調べをし、長期の展望などもまとめた
・ジャム製造に関する知識を習得するため、手作りジャム工房等を訪ね、加工や封入、賞味期限の設定
方法等を独学で取得
・添加物を使用しないことを基本に、安心・安全の手づくり
・観光客が減少する冬季の売上確保のため、冬でもおいしく食べられる「焼きジャム」を開発・販売す
るとともに、季節便制度を取り入れた年間販売の仕組みをつくる
・年間で 110 種類もの商品を販売、また、地元の豆腐店や餅店とのコラボ商品を開発
・6次産業化の取組事例集(平成 27 年 2 月 農林水産省)
・地域産業担い手たちの挑戦(平成 21 年 3 月 経済産業省中国経済産業局)
・がんばる中小企業・小規模事業者 300 社(平成 26 年 2 月 中小企業庁)
9
標
概
題
要
地域への貢献
22
ポ イ ン ト
地域の自然資源を活用した「葉っぱビジネス」 事 業 者 名 等
で地域活性化
事 業 所 在
株式会社いろどり
徳島県上勝町
地域の様々な植物を採集し「つまもの」(日本料理に装飾として添えられる葉、枝、花など)として
販売。地域住民(主に高齢女性)主役のビジネスモデルを確立し、産業福祉を実現
・年商 2.6 億円、生産者 190 名で、町の基幹産業に成長
・視察やセミナー等により交流人口が増加し、町内産業(宿泊施設、産直市)にも波及
・高齢者が生きがいを感じながら収入を得ることができ、産業を通じた福祉が実現
・荒れた耕作放棄地に様々な植物を植えることで、景観・環境保全にも貢献
・国内外から注目を集め、町民の間で誇りと自信が醸成されている
・町内で栽培する様々な植物と伝統的な日本料理に添えられる「つまもの」を結び付け、新たな市場を
開拓(当初は「つまもの」市場が存在せず、ニーズも把握できず、なかなか契約を結ぶに至らなかっ
たが、時間をかけて調査して「つまもの」に求められる条件を把握し、ビジネスとして軌道に乗せる)
・町ぐるみでのビジネス展開(個々の住民が主役として生産に携わり、町及び農協がサポート及び販売
を行う。会社は個々の生産者と市場をつなぐ存在として、営業活動、情報提供、受発注を行うための
情報ネットワークシステムの運営等を行う)
・安定供給と販路拡大を可能とした情報ネットワークの構築(短時間で商品を準備して発送する必要が
あるため、個々の生産農家と迅速かつ的確な受発注を行うための情報ネットワークを構築。「必要な
ものを、必要な時に、必要な数だけ」市場に出荷することを可能とし、信頼性が向上)
・パソコンは受発注に利用するだけではなく、生産者が市場の状況や自らの取組の成果(売上高や順位
等)を見ることができ、意欲向上や工夫を促すことにも寄与
・商品である葉や花は、簡単に採取でき、軽くて、かさばらないため、女性や高齢者でも容易に参加可
能(190 軒のうち半数以上が女性、平均年齢 70 歳)
主な参考文献
・環境省 HP「自然資源の持続可能な利用・管理に関する手法例集」
標
企業、自治体、農協等が連携した業務・加工
用野菜への取組
概
題
要
地域への貢献
23
ポ イ ン ト
主な参考文献
標
題
概
要
地域への貢献
24
ポ イ ン ト
主な参考文献
事業者名等
株式会社サンライズ西条加工センタ
ー
事 業 所 在
愛媛県西条市
大手農業資材メーカーが、自治体、農協等と連携して農業に参入した後、地元運送会社、農協、金融
機関等と共同出資で加工会社を設立し、カット野菜工場を新設(平成 26 年 11 月稼働開始)
・売上げによる経済効果と雇用創出
・農業活性化(農産物の出口をつくることで、新たな産地化を図る)
・地産地消(四国で生産した野菜を、四国で加工し、四国で消費する流れに)
・業務用カット野菜として、キャベツ、タマネギ、ニンジン、レタス等を加工(順次拡大予定)
・四国最大級の HACCP 基準を満たしたカット野菜工場を新設し、万全なセキュリティ対策で、しっか
りと品質管理された安全・安心なカット野菜を提供
・大手農業資材メーカーのほか、地元運送会社、地元農協、卸会社(県外)、市の第3セクター、地元
金融機関が出資し、多様な主体による連携体制を構築(産・官・金連携)
・自治体、農協、農家等と共同して業務・加工用野菜に取り組み、地域全体一体となって、産地イメー
ジの創生、商品ブランド力の構築を図っている
・原料は、グループの農業生産会社のほか、農協、農家、場合によっては市場からも調達
・販売先は、四国、九州、東海地区などの CVS、スーパー、惣菜・弁当業者、産業給食業者など
・地元金融機関が仕入れ先や販売先を紹介し、取引が増加傾向
・世界初の鮮度保持技術である「iR フレッシャー(近赤外光を活用した鮮度保持機械)」を導入、近赤
外光照射により蒸散を抑制、しおれや傷みを低減し、みずみずしさやツヤを維持
・参入のきっかけは、市長によるトップセールス。「西条農業革新都市」プロジェクトを推進するため、
市の体制を強化するなど市が全面的にバックアップ
・地域活性化総合特区申請にあたって地域協議会を設立し、地域全体として取り組む体制を構築
・農林水産省中国四国農政局 HP「加工・業務用野菜取組事例」
・政府広報オンライン「まち・ひと・しごと創生 事例紹介」
馬路村の名前をPRする多様なゆず加工品
事業者名等
馬路村農業協同組合
事 業 所 在
高知県馬路村
特産品の「ゆず」を商品化し、商品を売るのではなく「馬路村」という村の名前を前面に出して地域
ブランド化し、知名度を上げて村へ観光客を呼び込む農業と観光を結び付けたビジネスモデルを確立
・売上げによる経済効果と雇用創出(Iターン者を含む)
・村の知名度やイメージが向上し、アクセスが良くはない村に年間6万人超の観光客を呼び込むととも
に、村人たちの地域への愛着や誇りにつながる
・生産者から市場より高い価格で全量を買い取り、また、加工品の販売利益も配当として生産者に還元
し、農家所得の向上・安定に貢献
・ポン酢醤油「ゆずの村」、ゆずドリンク「ごっくん馬路村」が代表的なヒット商品
・商品開発にあたっては、実際に村の人に飲んでもらい、美味しいという段階まで試作を重ねる
・「ゆずや製品だけではなく、村をまるごと売る」という外部デザイナーとのコラボレーションによる
広告戦略(地元の人にとっては当たり前の、のどかな農村風景、素朴な村人たちの笑顔、元気な子供
たちなどをテレビコマーシャル等で発信し、大反響を呼ぶ)
・商品ラインナップを拡充し、ドレッシングや調味料等も加えて約 60 種類に。近年は、未利用だった
ゆずの種に着目し、地元大学と共同研究を行い、新規に化粧品を開発
・役場、農協、森林組合、商工会、観光協会等で協議会を設立し、地域活性化に向けそれぞれの組織が
連携しながら観光客の受け入れ態勢を整え、農業と観光を結び付けたビジネスモデルを確立
・地域活性化 100(平成 27 年 2 月 中小企業庁)
10
標
概
題
要
地域への貢献
25
ポ イ ン ト
主な参考文献
標
概
題
要
地域への貢献
26
ポ イ ン ト
主な参考文献
標
概
題
要
地域への貢献
27
ポ イ ン ト
主な参考文献
地域の活性化を目指して異業種から農業に参
入
事業者名等
JR九州ファーム株式会社
事 業 所 在
九州各地
JR九州グループは、鉄道以外の新規事業として農業分野に参入することを通じて、地域の雇用創出
や遊休地の活用など九州地域の活性化を目指している(大分県大分市:ニラ栽培、大分県臼杵市:甘
夏栽培・甘藷栽培、福岡県飯塚市:鶏卵生産、熊本県玉名市:ミニトマト栽培、宮崎県新富町:ピー
マン栽培、熊本県宇土市:かんきつ類栽培)。加工品として、甘夏を使ったジェラート、鶏卵を使っ
たカステラ・ケーキ・プリン、さつまいもを使ったソフトクリームを展開
・雇用創出(各地で現地雇用を創出、軽度障害者施設の就業支援も受け入れ)
・遊休地の有効活用(甘夏は廃園予定の樹林地を借り受け、甘藷は廃作(葉たばこ)農地を活用等)
・地域ブランドの再興(「網田ネーブル」が産地縮小状況だった中、市からの要請を受けて参入)
・人材育成(就農希望者を雇用者として受け入れ、新規就農者を支援)
・地域内で農業や地域の将来についての関心が高まった
・マスコミ等への露出が増えることによる地域の注目度アップ
・農業参入にあたり、行政(県、市)、農協、農業者など地域の関係者と合意形成を行った上で、参入
する地域・品目を決定するとともに、県の公社等の仲介により円滑に農地を賃借
・地域の農業者から技術指導を受け、生産物は主に農協を通じて出荷しているほか、従業員の地域雇用
に積極的に取り組むなど、地域との連携を密にしている
・養鶏事業では、「健康なたまごは健康な親鶏から」という理念の下、鶏の福祉を優先した飼育方法に
より健康な親鶏の飼育にこだわる
・加工品(ジェラート、カステラ)の製造にあたっては、地域の加工会社や老舗菓子店と連携
・鶏卵は「うちのたまご」でブランド化、ロゴマークなどデザインもこだわる。現地直売所、JR博多
駅内や周辺の百貨店、羽田空港内等において、こだわりの生産方法のPRと併せて卵やスイーツを販
売するなど、ブランド価値向上や加工品への展開など高付加価値化を進める
・平成 25 年度食料・農業・農村白書(平成 26 年 5 月 農林水産省)
・農林漁業等の活性化に向けた取り組みに関する事例集(平成 25 年 7 月 一般社団法人日本経済団体連
合会)
国産冷凍野菜のニーズの増大に対応し、加工
用ほうれんそうの大規模産地を形成
事業者名等
株式会社ジェイエイフーズみやざき
事 業 所 在
宮崎県西都市
JA宮崎経済連の子会社として会社設立、九州最大規模の冷凍野菜工場を新設し、冷凍ほうれんそう
を中心に冷凍野菜の製造と販売を行っている。需要が増加している冷凍野菜の新たなバリューチェー
ンを構築し、全国有数の大規模加工ほうれんそう専用産地を形成している
・売上げによる経済効果と雇用創出
・地域農業の再生と農家の所得向上(口蹄疫からの復興と葉たばこからの生産転換)
・元々県内にほうれんそうの栽培ノウハウがあったこと、他の野菜と比べ安定出荷が可能だったことに
加え、事前の聞き取り調査で需要が見込まれたため、ほうれんそうをメインとした
・品目内訳は、ほうれんそう7割、さといも2割、その他1割で、収穫期の異なる原料野菜 13 品目(全
て国産)を加工し、多様化する商品ニーズや実需者からの要望に対応するとともに、ほうれんそうの
端境期に対応、通年操業を可能とし、稼働率向上によるコスト低減と雇用の安定を確保
・100t単位で製造可能で、大口需要者の要請に対応可能(周年供給可能)
・市内の生産者と契約栽培を行うとともに、加工用に特化した大規模機械化一貫体系と大型コンテナの
導入や作業受託により生産コストの削減に取り組んでいる
・5人の社員がフィールドコーディネーターとして全てのほ場を毎週1回以上巡回し、生育状況を把握
するとともに除草や防除、収穫時期等を生産者に指導
・生産管理システムを導入して完全なトレサシステムを構築し、ほ場ごとの状況を把握
・平成 25 年度食料・農業・農村白書(平成 26 年 5 月 農林水産省)
・農林水産省九州農政局 HP「九州地区の加工・業務用野菜優良事例について」
・月報野菜情報(平成 26 年 3 月 独立行政法人農畜産業振興機構)
総合体験型ファームで沖縄の活性化にチャレ
ンジ
事業者名等
株式会社あいあいファーム
事 業 所 在
沖縄県今帰仁村
外食産業から農業に参入するとともに、廃校となった小学校を再利用して、農園をはじめ、加工所や
直売所、セミナールーム、レストラン、宿泊施設を整備し、総合的な教育ファームとして6次産業化
による取組を実践している
・売上げによる経済効果と雇用創出
・栽培面積の拡大に伴い、地域の耕作放棄地を集約し、農地を保全
・観光客を呼び込むことにより、農村活性化に貢献
・農業体験や県産農産物によるものづくり等の体験学習を通じ、地産地消・食育を実践
・廃校の有効活用
・県内で有機無農薬の食材を使用する外食チェーンが、食材の安定調達のため、自ら農業に参入
・農業を取り巻く課題に気付き、単なる食材供給基地ではなく、地域活性化に貢献する拠点にと考える
・加工品として、無添加で安心・安全なパン、国産大豆だけを使った豆腐や味噌、スイーツ、野菜のう
まみを活かしたドレッシング、タンカンのジャム、無添加の手づくりソーセージ、ソースなどを製造
・有機農場、加工施設のほか、農業体験(野菜の収穫など)、ものづくり体験(ソーセージづくりなど)、
研修施設(青少年の宿泊研修や企業研修に対応)、宿泊施設(レストラン、直売所を併設)を運営
・観光協会、民泊受け入れ農家と連携・分担して、修学旅行生の農業体験を受け入れ
・旅行会社と連携して、農業と観光と医療を結び付けたヘルスツーリズム(健康体験ツアー)を実施
・現場の先進事例集(平成 27 年 1 月 農林水産省)
・りゅうぎん調査第 529 号(平成 25 年 11 月 琉球銀行、りゅうぎん総合研究所)
・6次産業化の実践モデル(平成 26 年 3 月 野村アグリプランニング&アドバイザリー㈱)
11
【畜産物加工品:18事例】
標
概
題
要
地域への貢献
28
ポ イ ン ト
主な参考文献
標
概
題
要
地域への貢献
29
ポ イ ン ト
主な参考文献
標
概
題
要
地域への貢献
30
ポ イ ン ト
主な参考文献
地域貢献で異業種から農業に参入し、6次産
業化を積極展開
事業者名等
かわにしの丘しずお農場株式会社
事 業 所 在
北海道士別市
市や農協からの要請を受け、建設業からビートのコントラクター事業に参入。その後、市の指針(サ
フォークランド士別プロジェクト)に沿って、サフォーク羊の飼育を始め、さらに、直営レストラン、
宿泊施設(ファームイン)、羊肉加工品の製造・販売と農業関連事業を多角的に展開している
・ビート作付け減少による地元の甜菜製糖工場の閉鎖の危機を回避
・農地の取得・拡大による耕作放棄地の再生
・地域をあげて「サフォークランド士別」プロジェクトを推進する中、プロジェクトの中核企業として
サフォークめん羊商品の市場展開を行い、「士別サフォーク」ブランドを全国に発信
・レストランや体験型観光による観光面での貢献
・農業衰退を起因とする地元の甜菜製糖工場閉鎖の危機と公共工事減少等による地元建設企業の危機
という地域経済の危機に際して、市・農協・建設企業が連携して、地域・企業それぞれの課題を解決
・安易な異業種参入による失敗を防ぐため、未知の領域であった羊の飼育方法や農場の運営方法は徹底
的に視察して研究し、綿密な事業計画を作成
・生産期間が限られるラム肉を CAS 冷凍で品質を保持した上、通年で安定的に出荷するとともに、ベ
ーコン、ソーセージ、カレーなど多彩な商品を開発し、製造・販売
・CAS 冷凍設備の導入と、産学官連携(帯広畜産大学、市)で取り組んだ人工授精による出生時期のコ
ントロールにより高品質なラム肉の通年出荷体制を確立
・生産、加工から販売までの一貫体制によりトレーサビリティと安全・安心を確保
・高級にこだわり、大都市圏で積極的に販路を開拓し、高級レストランや百貨店との取引に成功
・建設企業の新たな挑戦(平成 22 年 国土交通省)
・平成 20 年度地域雇用おこし事例集(平成 21 年 6 月 北海道)
・中小企業と組合 NO.814(平成 24 年 12 月 全国中小企業団体中央会)
世界で唯一の「鶏醤」を地域ブランドとして
発信
事業者名等
株式会社中央食鶏
事 業 所 在
北海道三笠市
食鶏処理業において食用にならないため廃棄物として処理していた内臓部分の有効活用に取り組み、
鶏を主原料とした新しい調味料「三笠の鶏醤」を開発。さらに鶏醤をベースに地元産農産物を活用し
た新商品も開発し、新しい地域ブランドとしての定着を目指し、PRと販路開拓に取り組んでいる
・地域名を冠し、地元産農産物にこだわった製品により、新たな地域ブランドを創出
・希少品種の安定出荷による農業経営の安定化、遊休農地の活用による農業生産の増加
・食育等の取り組みにも参画し、地域と企業との繋がりが深まる
・食品リサイクル法改正による循環型社会の要請を踏まえ、廃棄物を有効活用した商品を開発
・商品開発にあたっては、内臓独特の臭みを抜くことが課題だったが、道の研究機関等の協力を得なが
ら、粘り強く研究を進めて商品化
・販路開拓にあたっては、商談会やイベントに積極的に出展するとともに、料理店等へ売り込み
・使い方を説明しなければ購入につながらないと考え、レシピづくりにも取り組んだ
・「三笠の鶏醤」をベースに、地元で栽培されている希少農産物(玉葱の「空知黄」やリンゴの「旭」)
を活用した「鶏醤ドレシング」や「鶏醤ポン酢」を開発し商品化
・商品ラインナップの拡充にあたっては、ニーズに対応するため、研究機関やフードコーディネーター
の指導を受けて試作品を開発するとともに、マーケットリサーチを実施
・要冷蔵製品は百貨店において取扱いに難があるが、ポン酢・ドレッシングとのギフト向けセット販売
とし、首都圏の百貨店で定番化を実現
・地元農業者を中心とする協議会や、市、商工会等と連携し、三笠の地域ブランド商品として地域を巻
き込んだ販路拡大を進め、道の駅やコンビニでの販売を契機に全道各地へ展開中
・北海道 HP「産消協働実践行動事例集」
・新事業展開の成果事例集(平成 24 年 3 月 経済産業省北海道経済産業局)
こだわりの乳製品を加工販売して人気観光ス
ポットに
事業者名等
株式会社高橋牧場
事 業 所 在
北海道ニセコ町
酪農経営とともに、加工販売施設「ニセコミルク工房」で、のむヨーグルト、アイスクリーム、シュ
ークリーム等の菓子類を加工・販売。また、地元農家と連携して野菜レストラン「PRATIVO」を運営。
ニセコ町の人気観光スポットの一つになっている
・売上げによる経済効果と雇用創出
・ミルク工房は年間来訪数約 30 万人で、人気観光スポットとして観光振興に貢献
・酪農家として独立を目指す若者や研修生を受け入れて、将来の担い手を育成
・レストランにおける地元野菜の活用により農業振興に貢献
・酪農部門の規模拡大や加工販売部門の多角化は、長期的展望の下、段階的に実施
・乳牛は、ホルスタイン種のほか、チーズなどの加工に適しているブラウンスイス種を導入
・加工品は、新鮮でこだわった生乳を使用し、素材の良さを最大限に引き出すことを第一とする
・道外ヨーグルトメーカーとの情報交換や機械メーカーとの商品開発など異業種と積極的に交流
・法人化により就労条件を整備して人材を確保、社会保険・労働保険加入による安定雇用
・レストランは窓から羊蹄山と麓の広大な牧場を一望できる抜群のロケーション
・レストランの料理は地元野菜を使用したビュッフェが中心で、食材調達にあたり地元農家と連携
・観光協会と連携して祭事やイベントを企画するなど地域を巻き込んだ取り組みを展開
・農林水産省 HP「農業生産法人の参入事例」
・6次産業化優良事例 25 選(平成 27 年 3 月 野村アグリプランニング&アドバイザリー㈱)
12
標
概
題
要
地域への貢献
31
ポ イ ン ト
主な参考文献
標
概
題
要
地域への貢献
32
ポ イ ン ト
主な参考文献
標
概
題
要
地域への貢献
33
ポ イ ン ト
主な参考文献
ふるさと納税を有効活用したまちづくり
事業者名等
上士幌町
事 業 所 在
北海道上士幌町
都市と農村における人・モノの交流を目指し、かねてから ICT を活用したネットショップ事業を展開
してきた中で、既に構築していたネットショップのシステムを有効活用してふるさと納税に係る取組
を強化し、寄付額を大幅に伸ばしている
・寄付額が急増(平成 25 年度:約 2.4 億円、平成 26 年度はそれをさらに大幅に上回る見通し)
・町担当者の意識の変化(プロ意識)とモチベーション向上(納税者の喜ぶ姿の共有)により、役場全
体が活性化し、関連企業の活性化、町全体の活性化に波及
・特産品のブランド化(道外でも知名度が向上し、リピーター購入者も現れる)
・使途を指定しない一般寄付で基金を設立し、子育て施策などを実施
・返礼品として、地元産の肉製品(牛肉など)、乳製品(ジェラートなど)などを取り揃える
・Web サイトの活用や内部のシステム改善など ICT の活用(Web サイト上からフォーム形式での直接
入力やクレジットカード決済導入で納税者側の利便性を向上。また、一連の業務をシステム化、関係
者が情報共有し、謝礼品の発送をスムーズに行う)
・特産品の開発・拡充や生産者とのやりとりをスムーズにするため、NPO 法人と連携(謝礼品の発送は
NPO 法人に委託。生産者や発送業者との調整や、在庫管理・発送管理を NPO 法人が一手に引き受け、
日頃から生産者との連携を密にできる仕組みを構築)
・大都市圏からの寄付額が大きな割合を占める(東京、神奈川、大阪、愛知、千葉で全体の 50%以上)
・寄付金の使途だけではなく、寄付者から寄せられたコメント等も Web サイトに掲載(寄付者に上士
幌を身近に感じてもらい、町のファンになってもらうことを目指す)
・寄付額の急速な増加に対応するため、町企画財政課にふるさと納税担当を新設し、一本化(地域おこ
し協力隊員をふるさと納税推進員として専任で配置)
・自治体における多様化する資金調達方法に関する調査研究(平成 27 年 3 月 一般財団法人地方自治研
究機構)
世界で一番に選ばれたチーズをつくり、販売
する
事業者名等
農事組合法人共働学舎新得農場
事 業 所 在
北海道新得町
牛乳の生産のほか、各種チーズを中心とした加工品を生産・販売し、カフェ、チーズ作り体験も実施。
なお、社会的弱者を地域の一員として受け入れ、その活動を事業に結びつけている
・売上げによる経済効果と雇用創出
・知的障害者、精神障害者、身体障害者、触法障害者、引きこもり、不登校児、ニートなど社会的弱者
等を含む幅広い雇用の受け入れ
・遊休地(町有地、離農農家の農地)の有効活用
・世界的な賞の受賞による新得町の知名度向上
・地域の関係団体や個人との連携による相互の交流機会の創出
・原料から手作りのナチュラルチーズは「自然のリズムにあわせ、生き物の命が熟す時間に合わせて人
は手をかし、工夫する」という姿勢で製造し、「本物のチーズ」にこだわる
・国内外でのチーズコンクールで多くの賞を受賞(モンドセレクション最高金賞など)
・HACCP 取得。また、加工施設への牛乳の運搬はポンプではなく傾斜地を利用した自然流下式として
品質を確保
・道内のチーズ工房6社と連携して、品質評価の仕組み・基準を作り高付加価値化
・十勝地方のチーズ工房 10 社以上と連携して、チーズの共同販売も実施
・経営者の熱意、行動力、アイデアによる事業推進
・6次産業化優良事例 66 選(平成 26 年 3 月、野村アグリプランニング&アドバイザリー㈱)
・農村活性化プロジェクト研究資料第5号「農業分野における障害者就労と農村活性化」(平成 24 年
10 月、農林水産省農林水産政策研究所)
有志の団体で加工事業を立ち上げ、事業拡大
により法人化
事業者名等
株式会社ドリームキッチンあごづ
事 業 所 在
岩手県奥州市
女性農業者有志が加工事業を立ち上げ、地元ブランド牛を使った前沢牛コロッケなどを製造・販売。
事業拡大に伴い家業との両立が困難となり株式会社に移行した
・売上げによる経済効果と雇用創出
・コロッケの原材料であるじゃがいもやたまねぎの栽培が盛んになり地域農業が活性化
・市内学校給食にも提供し、地産地消による食育の取組を実践
・「手づくりのこだわり」「地域の農産物を活用した商品開発」をキャッチフレーズに前沢牛コロッケ
や前沢牛ハンバーグなどを製造・販売
・アドバイザー(地元料理人)が、商品開発や資材調達、販路開拓などを支援
・農業改良普及センターが、設立時の経理指導や原料のじゃがいもの斡旋など様々な後方支援
・加工施設での直売のほか、地元スーパー、高速道路の SA や東京のアンテナショップ等で販売
・メンバーのアイデアを活かしたロゴマークやポップデザインを採用
・事業拡大に伴い、経営の拡充と安定化を目指し、アドバイザーを社長として株式会社化
6次産業化による農業・農村の活性化手引き書!
(平成 23 年 3 月 社団法人全国農業改良普及支援協会)
13
有限会社伊豆沼農産
事 業 所 在
宮城県登米市
題
身近にある資源の価値を引き出した「農村産
業」の展開
概
要
ブランド豚肉「伊達の純粋赤豚」を使用した加工事業や地元野菜を使用したレストラン事業を展開
地域への貢献
34
ポ イ ン ト
主な参考文献
標
概
35
事業者名等
標
題
要
地域への貢献
ポ イ ン ト
主な参考文献
標
概
題
要
地域への貢献
36
ポ イ ン ト
主な参考文献
・売上げによる経済効果と雇用創出
・レストラン年間来店者数 2.5 万人で観光に貢献
・「農業を “食業” に」をコンセプトに大規模経営から地域資源を活かした高付加価値型経営へ転換
・ブランド豚肉「伊達の純粋赤豚」の確保のため、自社生産のほか地域の農家と連携(「伊達の赤豚会」
を組織し、生産を委託)
・消費者や実需者の目線で品質にこだわり、自分たちで検食して一定レベル以上の生肉のみを出荷
・産学官連携で地元乳酸菌(伊豆沼めぐみ乳酸菌)を発見し、「発酵生サラミ」に活用
・大手百貨店などへの出品とともに香港に輸出、香港の富裕層からも安全安心な肉として高評価
・マスコミ効果による知名度向上(鹿児島で販売し、伊達(赤豚)VS 薩摩(黒豚)と話題に)
・6次産業化の取組事例集(平成 27 年 2 月 農林水産省)
・元気なみやぎの農商工連携・6次産業化取り組みレポート集(平成 25 年 3 月 宮城県)
・aff(あふ)(平成 23 年 3 月 農林水産省)
飼料用米を活用した豚肉生産と農業保全によ
る地域活性化
事業者名等
株式会社平田牧場
事 業 所 在
山形県酒田市
養豚事業から精肉、ハム・ソーセージ等の肉加工品製造、物販・レストラン等の事業を展開。品種開
発、子豚生産から肥育までを手掛ける自家繁殖生産や加工部門の自社運営等、早くから独自の一貫生
産・加工流通システムを構築し、品種改良と植物系のエサのみを与える等飼育環境の改善を進めるこ
とにより、「平牧三元豚」「平牧金華豚」のブランドを構築。近年、農家等と連携して飼料用米の活
用に積極的に取り組み、「こめ育ち豚」としてブランド化
・売上げによる経済効果と雇用創出
・飼料用米生産者数が大幅に増加し、農業者の新事業による農業経営の安定化、休耕地の農地保全、食
料自給率向上に貢献
・酒田市の北に接する遊佐町が「食料自給率向上特区」の認定を取得して「飼料用米プロジェクト」を
開始し、農業生産者(農協、農家)、畜産生産者(平田牧場)、消費者(生活クラブ生協)及び行政
(遊佐町)等の連携のもとで飼料用米の生産・利用を実現
・豚の品種開発から飼料の吟味を東北農業研究センターや山形大学等とも技術面において連携
・豚の排泄物の堆肥化を行い、農業、畜産業の垣根を超えた自然循環機能を構築するとともに、生産・
流通・販売まで一貫で行う品質管理体制(トレーサビリティ)を確立
・飼料用米の栽培に関する連携農家は、山形県を中心に北海道、東北、北関東にも拡大
・無添加商品の製造販売に関する輸送・保管のノウハウを有する
・6次産業化優良事例 66 選(平成 26 年 3 月 野村アグリプランニング&アドバイザリー㈱)
・経済産業省 HP「農商工連携 88 選」
住宅地の中にある都市型酪農ファーム
事業者名等
磯沼ミルクファーム
事 業 所 在
東京都八王子市
駅から徒歩5分という場所で都市型酪農を経営。自農場の生乳を活用したヨーグルト及びチーズ等の
関連商品の開発・加工・販売により、経営の改善及び安定化を実現
・雇用創出
・酪農教育ファームとして、消費者の動物福祉、癒し、教育の場に牧場を活用
・ジャージー種やブラウンスイス種等の乳脂肪分の高い品種に合わせた飼養管理
・都市型ファームとして周辺住民への配慮から臭気対策を実施(コーヒー・ココア滓を敷料利用)
・新聞記事への掲載をきっかけに有名デパートに商品が認められ、その後、雑誌やテレビ等の紹介によ
る集客力の向上や各種料理店や菓子店での食材使用により売上が向上
・プレミアムヨーグルトや限定販売の牛乳など商品のプレミアム化
・少量パッケージ化によるリーズナブルな価格設定と顧客への丁寧な説明
(消費者からの要望を受け、ヨーグルトの食べ切りサイズとチーズの新製品を開発)
・チーズ参入にあたり、製造技術習得のため、6次産業化プランナーから指導を受ける
・直売体制による販売強化のため、八王子駅ビルに直営店を設置し、イートインスペースを開設
・6次産業化の取組事例集(平成 27 年 2 月 農林水産省)
・農林水産省 HP「現場の宝」
14
標
概
題
要
地域への貢献
37
ポ イ ン ト
主な参考文献
乳製品の直売や加工体験の提供で観光拠点へ
成長
事業者名等
有限会社フジタファーム、
有限会社レガーロ
事 業 所 在
新潟県新潟市
乳製品への加工に適した生乳生産を確立するため、地域農家と連携した循環型酪農を実践するととも
に、自ら生産した生乳の高付加価値化を図り、消費者に直接提供したいとの思いから、ジェラート専
門店をオープン。さらに、加工体験メニューを提供し人気を呼んでいる
・売上げによる経済効果と雇用創出
・年間来店者数約 20 万人で観光に貢献
・耕畜連携による循環型農業を実践、また、近隣農業者の野菜をジェラートの原料に活用
(地域との連携・つながりを意識した経営により、地域全体での活性化に取り組む)
・酪農教育ファームとして、小学校等の乳搾りや加工体験を実施し、食育を実践
・耕畜連携による循環型農業(農業者が生産する飼料作物を酪農部門で利用するとともに堆肥化し、農
業者に還元)で、安心・安全を求める消費者に訴求
・ジェラートは、地域住民をターゲットに、自社生乳(低温殺菌)と地元産の旬の食材を使用し、季節
の移り変わりを感じる多彩なメニューを用意
・市中心部から車で1時間程度かつ温泉に隣接という立地条件を活かして、米粉ピザ作り、ジェラート
作り、バター作り、搾乳の体験メニューを提供
・乳製品の加工技術やノウハウの不足に際し、国内外での技術研修に参加(ジェラートの本場イタリア
での研修を含む)したほか、酪農家との意見交換等によりノウハウを取得
・地元の観光協会のHPにおいて紹介されたことで観光スポットとして成長
・ミルクカフェをオープンし、牛乳消費者向け直売に進出するとともに、通年営業を可能に
・新規事業であるミルクカフェの集客に際し、マスコミを活用したPR等を実施
・農林水産省・観光庁HP「農観連携のモデル事例集」
・6次産業化の取組事例集(平成 27 年 2 月 農林水産省)
・6次産業化優良事例 66 選(平成 26 年 3 月 野村アグリプランニング&アドバイザリー㈱)
事業者名等
有限会社池多ファーム
事 業 所 在
富山県富山市
標
題
自社生産の牛肉を使用した高付加価値な食肉
加工・販売事業
概
要
肉用牛を飼養・出荷するとともに、自社農場で生産した牛肉を使用してビーフジャーキーやハム・ソ
ーセージなどを製造し、自社直売店「メッツゲライ・イケダ」等で販売している
地域への貢献
・売上げによる経済効果と雇用創出
ポ イ ン ト
・自家生産の飼料を使用することで、経営コストの削減と肉質の向上等を図る
・先輩の食肉加工店で製造技術等を習得
・岩塩やスパイス、ハーブはドイツから輸入、肉本来の旨みを活かす本場仕込みのこだわりの製法で多
様な商品を開発し、消費者のニーズに対応
・ドイツで行われるハム、ソーセージの最高峰のコンテストで金賞を受賞
・消費者にきめ細かなサービスを提供するとともに、HP やブログを活用した情報発信で固定客を確保
主な参考文献
・6次産業化の取組事例集(平成 27 年 2 月 農林水産省)
標
新ブランド「納豆喰(なっとく)豚」の精肉・
加工品等の製造・販売
38
概
題
要
地域への貢献
39
ポ イ ン ト
主な参考文献
事業者名等
株式会社天狗、堀田農産有限会社
事 業 所 在
岐阜県下呂市
従来の三元豚をベースとして、飼料に納豆粉末を加えた「納豆喰豚」を育成し、各部位の肉質を活か
した精肉及び加工品等を製造・販売し、新ブランド豚の普及・確立を図っている
・売上げによる経済効果と雇用創出
・相対取引(一頭売り)による養豚経営の安定、ブランド確立・普及による売上げ増加
・豚肉及び加工品を学校給食の食材として提供し、食育や地産地消に貢献(地元学校給食センターが、
地産地消給食等メニューコンテストで農林水産省食料産業局長賞を受賞)
・市内の耕作放棄地で豚の糞から作った堆肥を用いた野菜を生産し、地元の温泉旅館等に地産地消食材
として提供(検討中)
・排せつ臭を低減するため飼料について独自に研究を行い、納豆粉末が効果的であることを発見。納豆
粉末のほかに、ビタミンEや飼料米を加え、臭いの低減に加え、適度な脂乗りと抗生物質の使用を必
要最小限に抑えた豚の育成が可能となった
・市場価格よりも高いが、有名ブランド豚と比べると低価格で、量販店に対抗できる商材として消費者
に品質を評価してもらうことで販売につなげている
・加工品として、ロースハム、ウインナー、フランクフルト、飛騨牛と組み合わせた合挽ハンバーグや
肉みそなどを開発・販売
・ハムはモンドセレクション銀賞受賞、肉みそは観光庁「究極のお土産」にノミネート
・加工品は、市内の土産物店や旅館・ホテルの売店、直営店、インターネットなどで販売(下呂温泉の
観光客がお土産として買っていくことも多い)
・ブランドを広く周知するため地元の協力を得た(地元高校生がかわいらしいイメージキャラクターを
デザイン、商標権の取得に際して弁理士の助言と県や市からのサポートを得た)
・岐阜県(地元)出身のタレントにより週刊誌で紹介され、全国から注文が殺到した
・平成 25 年度農業の6次産業化に関する調査(平成 26 年 3 月 日本政策金融公庫)
15
標
概
題
要
地域への貢献
40
ポ イ ン ト
豚の生産から加工・販売までの一貫経営によ
る独自ブランドの構築
事業者名等
有限会社石川養豚場
事 業 所 在
愛知県半田市
独自飼料配合と衛生管理による安心で美味しい豚肉を生産し、独自のブランドを構築。新鮮な豚肉と
加工品(ハム、ソーセージ等)を自社直売所や契約店で販売している
・売上げによる経済効果と雇用創出
・直売所では地元野菜も販売。施設周辺の景観整備、地域の祭りの実施、農業研修や小学生の体験実習
の受け入れなど地域連携体制を構築
・都市近郊で養豚の規模拡大が困難な中、生産から加工、販売の一貫経営により、規模は現状を維持し
たままでも付加価値を高め利益率を向上させる6次産業化の取組を決意
・安心・美味な豚肉の安定した生産、出荷体制を構築し、自己ブランド出荷と加工・販売により 60%
強の直売体制を構築
・おいしく安心できる豚肉の生産と加工、直売事業への安定した供給体制を構築するため、豚舎の衛生
管理を徹底し、飼育する豚の血統を絞り込み、飼料内容を定期的に見直した(トウモロコシ主体の独
自配合飼料により、肉や脂の付き具合を調整)
・加工品の開発にあたり、取引先の協力と技術支援を受けた
・直売所を設けるにあたり、優良直売所の事例調査を行い、自社店舗の運営に活かしている
・直売所は全て自社製品での品揃えにより、消費者に安心を付与
・新たに串カツや煮豚を中心とした和風総菜など付加価値の高い新商品を開発(地元の嗜好に合ったみ
そ味の商品など土地柄にマッチした商品を開発)
主な参考文献
・6次産業化の取組事例集(平成 27 年 2 月 農林水産省)
標
「農」を通じたコミュニティづくりと6次産
業化
概
題
要
地域への貢献
41
ポ イ ン ト
主な参考文献
標
概
題
要
地域への貢献
42
ポ イ ン ト
主な参考文献
事業者名等
株式会社伊賀の里モクモク手づくり
ファーム
事 業 所 在
三重県伊賀市
農業、食農学習をテーマに、農業生産、加工、直売所、宿泊施設、レストランなどを運営し、食と農
を通じたコミュニティづくりに取り組む農業テーマパークを運営。自ら生産、加工、販売を一貫して
行うことで、農業で生活できる経済拠点づくりを目指している
・売上げによる経済効果と雇用創出
・年間来場者数約 50 万人で観光に貢献
・研修生を年間 300 名前後受け入れ、担い手育成に注力
・様々な収穫体験や教室・イベントを企画し、子供から大人までに対し積極的な食農育を行っている
・遊休農地や後継者のいない農地を有効活用、連携する契約農家の栽培面積は 100ha 規模に
・日本で最初の手作りウインナー体験教室を開始。口コミで母親層や保育園等へと広まり、その後マス
コミでも紹介されて人気を確立
・経営理念を明確化(7つのテーゼ)し、商品開発や新たな取組はこれに照らした判断を徹底
・加工品として、手作りハム、手作りパンのほか、ビール、菓子、豆乳、乳製品を製造
・地元に密着し「生産者」「地域性」を前面に大手と差別化、仕入れが高くても地元食材にこだわる
・経営理念に共感する消費者を組織化(モクモクネイチャークラブ)し、コミュニケーションを図るこ
とで経験価値を共有するコミュニティが形成され、それが販路としても機能(会員に対するきめ細か
な情報発信を通じてリピーターを確保、消費者の声を積極的に取り入れ商品開発に反映)
・価値観を共有した人材でなければ消費者にメッセージを伝えられないとの考えの下、デザイン担当者
(7 名)を内部に置き、パッケージデザイン、POP、DM、情報誌などを戦略的に展開
・価格は割高だが、生産者のこだわりや想いを伝えてブランド化、価格主導権を自ら持つ販路を形成
・地域資源を活かした食料品の販路拡大に関する調査研究(平成 25 年 3 月 独立行政法人中小企業基盤
整備機構)
・6次産業化優良事例 66 選(平成 26 年 3 月 野村アグリプランニング&アドバイザリー㈱)
酪農家女性による高付加価値ジェラートの開
発・販売等
事業者名等
有限会社池田牧場
事 業 所 在
滋賀県東近江市
女性取締役(代表の夫人)の着想により、酪農経営を発展させ、地産地消にこだわったジェラートの
製造・販売、農家レストラン、宿泊体験施設の運営を展開している
・売上げによる経済効果と雇用創出
・年間来場者数約 10 万人で、市の人気観光スポットとして地域振興に貢献
・農業者として自立を目指す若い女性などの常時雇用や、地元の女性の就労の場として臨時雇用を行う
・地元農産物を使用した料理教室を開催し、先人の知識を若い人に伝える技術伝承の場に
・ジェラートは、牧場で毎朝搾りたての牛乳を使用し、出来立て出荷がモットー
・農家レストランでは、ジビエ料理(鳥獣被害防止のため駆除された鹿肉の料理)を提供
・米国での低脂肪アイスのブームを受けて、日本でも流行ると直感し、女性取締役自ら単身でイタリア
に渡り、ジェラートの味や販売方法、スローフードの考え方を学ぶ
・女性の視点で消費者ニーズ(地産地消、スローフード)を捉え、レストランや宿泊体験施設を展開。
また、交流の場として、山羊や鶏の放し飼い、蒟蒻芋の栽培等も行い、観光エリアを創設
・農家レストランは「田舎の親戚」がコンセプト。顔が見える野菜へのニーズを捉え、地産地消にこだ
わる(地元の有機米、有機野菜、鹿肉等を利用したメニューを提供)
・森の体験小屋では、こんにゃく、バター、そば打ちなどの体験教室を開催
・農林水産省 HP「地産地消の仕事人の紹介」
・6次産業化の取組事例集(平成 27 年 2 月 農林水産省)
16
標
概
題
要
地域への貢献
43
ポ イ ン ト
主な参考文献
標
概
題
要
地域への貢献
44
ポ イ ン ト
主な参考文献
標
概
45
題
要
地域への貢献
ポ イ ン ト
主な参考文献
こだわりのブランド卵「天美卵」の直売とス
イーツへの加工
事業者名等
有限会社ひよこカンパニー
事 業 所 在
鳥取県八頭町
こだわりの飼料と平飼いによる養鶏を行い、新鮮な朝採れ卵を自社ブランド「天美卵」として全国へ
通信販売。その卵を使ったスイーツの製造と直売所を併設したカフェ事業を展開
・売上げによる経済効果と雇用創出
(本社内にコールセンターを設置、直売所・カフェの開設により中山間地域で地元雇用を創出)
・年間来店者数約 10 万人で観光に貢献
・耕畜連携(耕作放棄地の活用含む)を構築し、地域全体で循環型農業を実践
・地元の農業生産者との連携(加工原料調達、宅配セット)により地元農業の活性化に貢献
・自治体や JA、生産者と協議会を設立して、農業体験を通して里山の復活に取り組み、地元の景観を保全
・地下水と自家配合の天然飼料(添加物や抗生物質等の薬品を一切使用しない)を給餌し平飼いするこ
とで、安全・安心なこだわりの鶏卵を生産
・コストがかかる生産のため高価な卵となる(最終小売価格が1個 100 円)が、卵を無料で配付して食
べてその価値を理解してもらって顧客をつかみ、リピーターを増やす
・加工品として、「天美卵」とこだわりの素材を使った無添加スイーツ(プリン、パンケーキ、バーム
クーヘン等)を製造・販売
・直売所・カフェは消費地から遠い立地だが、自然豊かな景観を生かすとともに、季節ごとのイベント
を開催して集客力を向上
・「地域との共生」を経営理念とし、耕作放棄地で栽培した飼料米や、地元の豆腐店や農家から調達し
たおから・米ぬかを飼料に使う一方、鶏糞を発酵させて肥料にして地元農家に還元
・フリーズドライ商品の原料(野菜)は地元生産者から調達、また、地元野菜と「天美卵」を詰め合わ
せた「野菜BOX」の宅配を新たに開始
・6次産業化の取組事例集(平成 27 年 2 月 農林水産省)
・6次産業化優良事例 66 選(平成 26 年 3 月 野村アグリプランニング&アドバイザリー㈱)
“A級グルメ” による町づくり
事業者名等
邑南町
事 業 所 在
島根県邑南町
「食」と「農」を切り口にした町づくりを推進するキャッチフレーズとして「A級グルメのまち」を
商標登録。優れた食材や生産者への誇りも込めたネーミングで町全体をブランド化し、認知度やイメ
ージの向上につなげている。上記とともに充実した子育て支援と徹底した移住者ケアを併せて実施し、
移住者が増加
・食と農に関する起業家を多数輩出(女性含む)、定住人口確保
・観光入込客数年間約 92 万人
・地産地消、食育の実践、伝統的な食文化の伝承、地域住民の誇り(ビレッジプライド)醸成
・石見和牛のほか、自然放牧牛から搾った牛乳、わき水で養殖したチョウザメからとれるキャビアなど
豊かな自然のもとで育成した高品質の地元食材を活かして「ここでしか味わえない食や体験」を “A
級グルメ” と定義し、地域ブランドの構築と関連産業の活性化を図る
・「産直市みずほ」は、「農家による農家の店」がコンセプト。全国でも先駆的な IT 技術を導入(生
産者が販売状況を把握できる独自のバーコードシステムを導入し、品切れを起こさない)
・「みずほスタイル」は、全国でもいち早く立ち上げた自治体が運営するネットショップ。特産品のブ
ランド化や販路拡大に貢献するとともに、観光・宿泊情報の発信により観光客やUIターン希望者の
情報収集源になった
・「Oh!セレクション」は、全国の田舎の逸品を集め、邑南町独自の審査を行う全国公募の認定制度。さ
らなるブランド化とともに、審査員に著名人を起用してメディア報道が増え、販路拡大につながった
・「素材香房 ajikura」は、地産地消の町営レストラン。地元の生産者が作る豊かな新鮮食材を使い、
素材を大事にしたイタリア料理を提供するA級グルメの発信基地
・「耕すシェフ」制度は、地域おこし協力隊を活用し、食に関心のある都会の若者を募集して3年間町
に住んでもらい、料理と野菜作りを実際に行いながら学んでもらう研修制度。食や農に関わる人材を
育成するとともに、将来的に町内で起業してもらうことも期待
・町立「食の学校」は、地域の農業と食文化を 100 年先の子どもたちに伝承することを目的とし、食の
プロや伝統食を知る地元の方々などによる料理教室等を実施する新商品開発と人材育成の場
・地元高校生(H25・H26 スイーツ甲子園全国大会出場)と連携して特産スイーツを開発
・調理専門学校等と連携協定を締結し、優秀な食の人材を安定的に確保するシステムを構築
・隣接する浜田市との連携、都市部との連携(千代田フードバレー構想)など広域連携体制を構築
・第 31 次地方制度調査会第 11 回専門小委員会資料(平成 26 年 12 月 邑南町)
・日本食文化ナビ(農林水産省)
自家製牛乳や地元農産物を活かしたジェラー
ト開発など
事業者名等
有限会社伊盛牧場
事 業 所 在
沖縄県石垣市
石垣の海と美しい夕景を眺めることができる場所に加工工場兼直売所を開設してジェラートなどの製
造・販売を行っており、自社生乳などの生産から加工・販売までを一貫体制で取り組んでいる
・売上げによる経済効果と雇用創出
・自社牛乳のみならず地元産農作物(果樹など)を使用して地産地消にも寄与
・ジェラートは、自社生産の新鮮な生乳と島の素材(果樹など)を活用し、南国色豊かな味のラインナ
ップを揃える。ほかに、更新牛を活用した精肉と加工品(ハンバーガーなど)を製造・販売
・余剰分の生乳や更新牛を活用した高付加価値化と経営多角化
・抜群のロケーションに直売所を開設し、観光客を中心として売り上げは拡大傾向
・2号店として新石垣空港内に出店して事業拡大(当該年度の売上高は、前年度の約2倍の見込み)
・沖縄振興開発金融公庫 HP「出融資事例の紹介」
・6次産業化の取組事例集(平成 27 年 2 月 農林水産省)
17
【水産物加工品:15事例】
標
概
題
要
地域への貢献
46
ポ イ ン ト
主な参考文献
標
概
題
要
地域への貢献
47
ポ イ ン ト
主な参考文献
標
題
概
要
地域への貢献
48
ポ イ ン ト
主な参考文献
北海道より世界の調味料を!北の魚醤油「雪
ひしお」の商品PR
事業者名等
北海道魚醤油生産組合
事 業 所 在
北海道各地域
北海道魚醤油生産組合加盟の各社では、サンマ、サケ、ホッキ、タコ、ウニといった北海道近海で水
揚げされる豊かな水産資源を原材料に、魚醤油づくりを進めている(この 10 数年で、魚醤油の製造・
販売及び試作を行う企業が 40 社超)。北海道魚醤油の統一名称、ロゴ、イメージキャラクターを作成
してブランドを構築し、認知度アップ、消費拡大に取り組んでいる
・新たな加工品(小樽雪ひしおくんラーメンなど)が開発された
・各地で魚醤油の製造を検討する動きが広がる(森町、登別市、豊浦町、伊達市など)
・水産加工に伴う副産物(内臓、魚皮、カット残渣など)の有効活用による環境配慮
・北海道の魚醤油は様々な魚介類を原料に、発酵により素材の味を活かした様々な魚醤油が製造され、
種類の多さは他の地域に類を見ない
・商品開発にあたっては、北海道立総合研究機構食品加工研究センターほか、道内各地の試験研究機関
や大学から技術指導を得た
・統一名称を公募し、「雪ひしお」と決定。ロゴ及びイメージキャラクター「雪ひしおくん」を作成
・魚醤油を使用したレシピを開発(活用ポイントや 16 品の料理によるレシピ集を作成)
・道総研食品加工研究センターが開発した特許技術をベースに新型魚醤油を開発し、これを使用した加
工品(海鮮丼のタレ、カルパッチョジュレ、海鮮やきそばソース)を試作
・上記の取組が、TV、新聞等メディアで数多く取り上げられ、普及促進
・北海道魚醤油生産組合 HP
・平成 23 年度「戦略的食クラスター先導的モデル事業」事業報告書 -魚醤油の活用による高付加価値
商品の開発促進と商品PR-(平成 24 年 3 月 北の魚醤油発信!プロジェクト受託コンソーシアム)
地域の力を集め、地元産水産資源の価値を高
める
事業者名等
有限会社釧路フィッシュ
事 業 所 在
北海道釧路市
規格外の魚を活用するために研究機関と共同でスケトウダラを原料とする魚味噌を開発。チーズやサ
ンマなどと組み合わせて、これまでに約 50 種類の商品を開発している
・未利用の地域資源(従来処分されていた規格外のスケトウダラ、チーズの製造過程で発生する絞り汁
「ホエー」など)の有効活用
・物産館などで観光客向けに土産物として販売し、漁業、畜産、観光の分野で地域活性化に貢献
・障害者の雇用、活用を積極的に行っている(パート職員で雇用しているほか、職業訓練としても受け
入れ、魚の下処理やラベルの貼り付けを任せている)
・「おかず味噌」「みそ糠さんま」「釧路産塩さばホエー仕込み」などを商品化
・消費者の視点を活かすため、女性従業員に率直な意見を求め、皆で試食し、改良を重ねる
・社外にも協力を求め、「浜のおばあちゃん」が作る昔ながらの家庭の味(煮昆布)を商品に活用
・試験研究機関(道総研食品加工研究センター)や近隣のチーズ工房とも連携
・「糠さんま」など地元の伝統的な食文化を活用し、隠れた味覚を新しい味として全国に発信
・「みそ糠さんま」は、土産物として扱えるよう真空パックにしたり、主婦目線で食べきりサイズにし
たりと改良を重ね、同社の主力商品に成長
・ホームページには、商品紹介のみならず、製造の工夫や開発秘話、地域の情報も併せて掲載
・がんばる中小企業・小規模事業者 300 社(平成 26 年 2 月 中小企業庁)
・日本政策金融公庫調査月報(平成 25 年 10 月 日本政策金融公庫総合研究所)
株式会社パイオニアジャパン、
事業者名等
大女子(おおなご)の有効利用による高付加
中野水産株式会社 ほか
価値製品の製造・販売
事 業 所 在
北海道稚内市
食用魚としてあまり利用されていなかった稚内産大女子(おおなご)を、蒲焼きやフライ製品に加工
し、北海道ブランドとして全国に販売している
・売上による経済効果
・販売単価の増加による漁業者の所得向上
・大女子の知名度向上
・全道の学校給食の食材として採用されるなど新しい需要の拡大に貢献
・オオナゴはほとんどが養殖ハマチの餌として本州に出荷され、地元の人にも食用魚としてのなじみが
あまりなかった中、未利用資源を有効利用して地域の新たな特産品を創出
・産地とメーカーとの有機的かつ密接な役割分担が機能(大女子は傷みやすいため、漁協と地元水産加
工業者が連携し、船内での鮮度管理を徹底するとともに水揚げした即日に開き加工して凍結、輸送す
ることとし、最終製品の品質向上につなげている)
・東京でのシーフードショーに出展するなど、積極的な販促活動を実施
・平成 21 年度北海道食料・農業情勢報告(平成 22 年 7 月 農林水産省北海道農政事務所)
・中小企業家同友会 HP「DOYU NET」
・一般財団法人さっぽろ産業振興財団 HP「さっぽろ産業ポータル」
18
事業者名等
株式会社おくしり桜水産
事 業 所 在
北海道奥尻町
標
題
高品質冷凍保存技術を活用し、離島のハンデ
ィを克服
概
要
奥尻島の水産物(真ホッケ、いか等)を独自の技術で冷凍し、刺身用、しゃぶしゃぶ用の製品を加工
地域への貢献
49
ポ イ ン ト
主な参考文献
標
概
題
要
地域への貢献
50
ポ イ ン ト
・売上げによる経済効果と雇用創出
・輸送コストが大きい奥尻島では値が付かずほとんど廃棄されていた真ホッケの有効活用による漁業
者の収益向上
・地域ブランド「おくしり桜ほっけ」の創出
・とりたての魚を特殊な方法で冷凍保存することにより、解凍後も鮮度が損なわれず、しかも、臭みが
取り除かれ、生のままでも食べられるように加工
・漁業者と連携し、漁業者は収穫後の鮮度保持に適した「朝刺し」漁法により真ホッケを漁獲し、原料
として供給する
・高品質冷凍保存技術を持つ食品製造業者と連携し、当該業者は技術を提供するとともに、新商品の首
都圏を中心とした全国への販路開拓を行う
・北海道渡島総合振興局 HP「渡島・産学官連携ウェブサイト」
・「農商工連携」を始めよう!(平成 21 年 2 月 農林水産省)
地元で獲れた海産物を加工し、催事やネット
通販で販売
事業者名等
有限会社マーレ旭丸
事 業 所 在
北海道せたな町
主に自社漁船や地元漁業者の獲った海産物を仕入れて自ら加工し、商品化。吟味した海産物からつく
られた高級珍味などを百貨店の催事やネット通販などで販売している
・売上げによる経済効果と雇用創出
(漁業就労者支援事業で、地元青年を研修生として受け入れ)
・地域の食を守る団体「桧山北部産業クラスター研究会」に立ち上げ時点から積極的に関与し、また、
スローフードの活動も実施しながら、地域全体で食を守り PR
・「一次産品を自分が獲っていることは強み」との思いを持ち、あくまで一次産業(漁業部門)を基盤
として、加工・販売を発展させる
・自社で購入すると高額になる機械が必要な加工については、地元の企業に生産委託
・加工・販売部門の売り先は、百貨店の物産展が7割以上
・百貨店に常設店舗・常設コーナーはなく、全て催事
・自ら催事の店頭に立つ漁業者は数少ないが、それを今に至るまで続けて、顧客の声を直接吸い上げ、
確実に顧客(消費者)をつかんできた
・ネット通販を早くから開始。登録会員がメールアドレスとパスワードの組み合わせでログインすると
発送状況の確認やかんたん購入機能を利用できる仕組みを用意。また、会員向けの割引価格も設定し
てリピート顧客を獲得
主な参考文献
・6次産業化優良事例 66 選(平成 26 年 3 月 野村アグリプランニング&アドバイザリー㈱)
標
冷凍加工場の整備によるさく加工したマグロ
の通年安定供給体制の構築
概
題
要
地域への貢献
51
ポ イ ン ト
主な参考文献
事業者名等
株式会社あおもり海山
事 業 所 在
青森県深浦町
地場産マグロの冷凍加工場を整備して、地元のご当地グルメ「深浦マグロステーキ丼」(マグステ丼)
を提供する飲食店等への通年安定供給体制を構築し、県内一の水揚量を誇る「深浦マグロ」のブラン
ド化を推進する(冷凍加工場は平成 26 年着工、平成 27 年度に稼働予定)
・地元に還元される付加価値の増加と雇用創出
・漁業経営の安定(大漁時は価格が安くなり、不漁時は収入が少なくなるという状況を改善)
・観光振興(年間 120 万人の観光客に「マグステ丼」を通年供給可能に)
・深浦町のクロマグロ漁獲量は県内一を誇る反面、漁期が限られる(5~8 月)ことと、一度に水揚げ
される量が多く需給バランスにより低価格での取引を強いられ、有名な「大間マグロ」の半額以下と
なっていた。そうした中、新ご当地グルメ「深浦マグロステーキ丼」が大ヒット
・地元漁業者とパートナー企業(東京の飲食店等経営会社)が共同出資して合弁会社を設立
・農林漁業成長産業化支援機構(A-FIVE)のサブファンドが1億円を出資
・地元金融機関が「6次産業化アドバイザー」等を派遣し、総合化事業計画の策定を支援するとともに、
合弁企業の設立に必要な共同出資者(パートナー企業)のマッチングを行った
・「深浦マグロ」をさく加工した後、マイナス 55℃で冷凍保管し、解凍後のドリップ量が少なくなる
など品質劣化を抑えたマグロの通年で安定した出荷を可能とする予定
・食の観光資源として深浦町及び青森県内での流通を促進するとともに、首都圏ベンダーへの直接販売
やネットや対面による消費者への直接販売に取り組む予定
・マグロのほか、産地における未利用資源の有効活用にも取り組む予定
・「マグステ丼」を開発したきっかけは、著名なご当地グルメプロデューサーによる講演会。その後、
地元の旅館、飲食店の7名の料理人が連携し、当該プロデューサーの指導を受けながら、試行錯誤を
重ねた末にメニュー化に至る
・「マグステ丼」の仕掛け人は町役場観光課職員で、タレント的に活動して話題性を発信。また、役場
の若手職員でダンスチームを結成し「踊る公務員」としてPR活動を展開。また、土産品として新た
に「ザ・深浦マグロカレー」(レトルトカレー)を商品化するなど取組を拡大
・農林水産省・観光庁HP「農観連携のモデル事例集」
・「とうほくのみらい応援ファンド」における第1号出資案件の決定について(平成 26 年 1 月 株式会
社みちのく銀行)
・広報ふかうら(平成 25 年 5 月 深浦町)
・経済産業ジャーナル(平成 26 年 12 月/平成 27 年 1 月 経済産業省)
19
標
概
題
要
地域への貢献
52
ポ イ ン ト
主な参考文献
標
概
題
要
地域への貢献
53
ポ イ ン ト
主な参考文献
標
題
概
要
地域への貢献
54
ポ イ ン ト
主な参考文献
「あみえび醤油」(魚醤)と関連商品の開発
とブランド化事業
事業者名等
新栄水産有限会社
事 業 所 在
山形県酒田市
生鮮の卸売り事業に加えて加工食品事業への展開を図り、未利用のアミエビを原料として魚醤「あみ
えび醤油」を開発・商品化し、販売している
・売上げによる経済効果
・未利用魚の活用と漁師の収益源の拡大による浜の活性化
・若者への魅力作りによる漁業後継者の育成
・地域ブランド力の向上
・魚食文化の保持
・保存料をいっさい使用せず、アミエビと塩のみで製造した無添加の商品で、アミノ酸など成分が非常
に豊富な健康志向の万能調味料
・永らく未利用資源となっていたアミエビを活用し、生鮮魚介卸売業で築いたノウハウを加工食品に活
かして独自性の高い商品を開発
・成分分析を行い、既存の各地で生産されている魚やイカを原料とした魚醤油と比較してアミエビ特有
の優位性を見出す
・地元漁協と連携し、漁協は、海産物の流通ノウハウを活かした鮮度管理による原材料の安定供給と加
工食品の認証制度による販売のバックアップを行う
・近郊の人気イタリアレストランと連携し、レストランは、魚醤油を使用した料理提供とプロデュース
店舗での販売促進活動と認知度向上を行う
・私の街さかた平成 26 年 11 月 1 日号(酒田市)
・農商工等連携事業計画の認定について(平成 25 年 7 月 経済産業省東北経済産業局)
「氷見の寒ぶり」冷凍加工品の製造・販売
事業者名等
マルカサフーズ有限会社
事 業 所 在
富山県氷見市
富山の深層水を活用した独自の冷凍技術により、鮮度を保持して部位ごとに冷凍加工した、今までに
ない「氷見の寒ぶり」の料理食材を製造・販売している
・地域ブランド品の需要の更なる拡大と新たなニーズの掘り起こし
・地元水産加工組合で中心的役割を担い、漁業者とともに地域の発展に向け、積極的に活動を推進
・背、腹、アラ、尾など部位ごとに切り分けた上での冷凍加工提供により、通年販売・少量販売に対応
し、業務用・一般消費者の双方をターゲットに
・冷凍技術の課題に直面した際、県の食品研究所や県立大学に指導を仰ぎ、切り分けたぶりを深層水に
浸けた後に急速冷凍する方法を開発
・食品加工をより衛生的に行うため、HACCP 導入
・既存取引先に加えて、新規に業務用(すし屋等飲食店)、大手百貨店、量販店に拡販。新規販路開拓
のため、マーケット調査、展示会への参加等、販売促進を積極的に展開
・経済産業省中部経済産業局 HP「地域産業資源活用事業計画認定事業者のご紹介」
・公益財団法人富山県新世紀産業機構 HP「支援事例の紹介」
時流に適った佃煮を開発し、国内外へ販路開
拓
事業者名等
株式会社平松食品
事 業 所 在
愛知県豊橋市
時代のニーズに見合った付加価値の高い佃煮を開発、提案し、国内外への販路開拓を行っている。佃
煮を「食材化」して新たな価値を見出して海外に積極展開するとともに、国内では「地産地消」をキ
ーワードに地元水産高校と連携して未利用魚介類を活用した新たな商品を開発した
・高校生とコラボしての商品開発による教育貢献、話題性向上
・上記取組は、地元の関係者を広く巻き込んで未利用の地元産魚介類を活用した商品化へと発展、地域
全体が関わる波及効果の大きい地産地消のビジネスモデルを構築
・海外において日本の食文化を発信、異業種の食品企業と連携して「愛知県食品輸出研究会」を結成し、
共同して “愛知の食” を地域一体となって世界へ発信するための体制を構築
・HACCP、ISO22000 等の認証を取得し、品質管理、衛生管理を徹底
・海外シェフのアドバイスでオリーブオイルと甘露煮を融合した商品、海外の食文化に対応したジュレ
状の佃煮開発など、時代を見据えた様々な取組を積極的に行っている。「ご飯に佃煮」が通用しない
海外において、「食材化」して佃煮の新たな価値を見出して展開を図るとともに、海外で得た経験を
国内にフィードバック(商品名を「TERIYAKI FISH」としてシリーズ化し、売り場で陳列しやすい
瓶詰型にするなどパッケージ面でも工夫)
・地元水産高校が実習により漁獲したものの地元では取引されなかったカツオを高校生とともに商品
化し、「愛知丸ごはん」シリーズをラインナップとして確立。地元漁協と連携し、カツオを水揚げし
て流通させる体制を確立するとともに、高校生の意見を積極採用(ジュレ化など)して若い感性によ
る新たな商品を開発。目新しさに加え、ストーリー性があり、地域からもバックアップを得る
・さらに、水産試験場の協力も得て、未利用の地元産魚介類を活用した商品化を進め、地元流通・加工
業者も加わってインターンシップも視野に入れた活動へと発展
・がんばる中小企業・小規模事業者 300 社(平成 27 年 3 月 中小企業庁)
・公益財団法人あいち産業振興機構 HP「企業ルポ 翔 魅力ある愛知の中小企業」
20
標
概
題
要
地域への貢献
55
ポ イ ン ト
主な参考文献
標
概
題
要
地域への貢献
56
ポ イ ン ト
主な参考文献
「海」「潮風」「塩」をキーワードに「島ま
るごとブランド化」
事業者名等
海士町
事 業 所 在
島根県海士町
地域資源を活かした産業振興と定住対策に取り組み、U・I ターン定住者が増加。島外からの若者たち
によって町の経済やコミュニティが活性化し、新たな起業など好循環が生まれている
・U・I ターン者の雇用創出多数、I ターン定住者多数
(商品開発研修生(町の臨時職員)の中から町内で就職または起業する者も)
・CAS 工場における雇用創出
・CAS 冷凍による鮮度維持、流通コスト削減による漁業者所得向上、販路拡大による意欲向上
・直売所設置により、地元野菜が島内で流通するようになり、地産地消が明確化するとともに、生産者
グループが設立され、生産者の意欲向上や高齢者の生きがいづくりにつながる
・昔ながらの製法で製造した塩を使った特産品づくりに集落やグループで取り組み、伝統文化、食文化
の復活と女性や高齢者を中心とした島内の地域コミュニティの再生が図られる
・過疎化、少子高齢化が進行する中、地方交付税の大幅削減により、財政再建団体転落の危機に直面。
町の生き残りをかけ「海士町自立促進プラン」を策定、「守り」として徹底した行財政改革を行うと
ともに、「攻め」として地域資源を活かし、島に産業をつくり、島に人(雇用の場)を増やし、外貨
を獲得して島の活性化を図ることとした
・「島じゃ常識!さざえカレー」(レトルトカレー)は、商品開発研修生(=よそ者)の視点で、島の
食文化を発掘して商品化し、ヒット商品となった
・「隠岐海士のいわがき・春香」は、U・I ターン者と地元漁師が協力して、いわがきの養殖に成功し、
築地市場や首都圏のオイスターバーで大ヒット
・「CAS 冷凍商品」は、第3セクター「㈱ふるさと海士」を立ち上げ、CAS(細胞組織を壊すことなく
凍結するシステム)を導入し、旬の味と鮮度を保持したまま大消費地への出荷が可能となった。白い
か、いわがきなどの魚介類を冷凍加工するほか、いわがきご飯、さざえご飯などの加工品も製造し、
「島風便」ブランドで全国各地に出荷
・「島生まれ、島育ち、隠岐牛」は、建設業者が特区による農地法の規制緩和を受け異業種参入、ミネ
ラル分を含む牧草で肥育し肉質良好。東京食肉市場に出荷
・「海士乃塩」は、昔ながらの塩炊きの塩づくりを復活(製塩施設「海士御塩司所」を整備)。ミネラ
ル豊富な天然塩を活用して、島国らしい産品(梅干し・塩辛・干物)も製造
・「隠岐産干しナマコ」は、I ターンの若者が起業し、中国へ輸出
・成長を島の外に求める(外貨獲得)とともに、現場第一主義の体制を構築(町役場に「交流促進課」
「地産地商課」「産業創出課」を設置し、当該3課を町の玄関、情報発信基地、アンテナショップで
ある港のターミナル「キンニャモニャセンター」内に置き、ニーズを肌で感じる)
・産業振興のキーワード「海」「潮風」「塩」を三本柱に地域資源を有効活用し、異なるもの同士をつ
なぎ、その中から島ブランドを生み出し、新しい産業を創出
・商品開発研修生や U・I ターン者など「よそ者」の発想と視点を活用するとともに、これに町役場や
従来からの地元住民が協力し、力を合わせ、よい相乗効果を生む
・新たな技術(CAS)の導入により、輸送に時間がかかる離島のハンディを克服するとともに付加価値
を高める
・島の伝統文化を活かした商品開発(塩を単なる食品としてではなく、島の歴史文化的背景も表現しな
がら、製造販売し、加工商品化)
・離島発!地域再生への挑戦(平成 24 年 10 月改 海士町)
・農林金融(平成 24 年 12 月 農林中央金庫)
・第2回活力ある農山漁村づくり検討会資料「地域活性化に向けた取組の事例」(平成 26 年 8 月 農林
水産省)
夢を橋にかけた島の女性起業活動
事業者名等
有限会社フレッシュしおかぜの里
事 業 所 在
山口県下関市
地域特産開発に意欲的な女性たちが、角島大橋開通に併せて、食堂・直売・加工の一体的施設を開店。
地元食材にこだわることで付加価値化に成功するとともに島内女性の就業の場を創出している
・売上げによる経済効果と雇用創出
・地元食材にこだわり、農林水産物の付加価値づくりと地元還元に寄与
・女性の就業の場を確保するとともに、幅広い年齢層にメンバーが分散しており、世代間の交流や生活
技術伝承の場にもなっている
・地域産物を使った新鮮な料理を提供することで、新鮮な島の食文化と魅力を発信
・レストランにおいて新鮮な地元食材を活用した刺身定食などを提供するほか、ワカメを使ったソフト
クリームやワカメを練り込んだうどんを開発
・食材の地元調達を心がけ、JA や地元朝市と連携した食材供給体制を構築
・試食会、地元関係者との意見交換、アンケートにより消費者ニーズに応じたメニューを開発
・遠方からの観光目的の客をターゲットに、刺身を使用した高価格な定食メニューを新設(一品 1,600
円~2,000 円)して売上げ向上を図る
・女性の起業活動に際して家族の理解と協力を得るため家族経営協定を締結、また、新規メンバー募集
や繁忙期はパートを雇用するなど、女性が働きやすい環境を整備
・出役体制については3部門制をとり、各部の連携をとりながら責任ある運営体制を構築
・複式簿記の研修や税理士を招いた研修会を実施して会員の経営管理能力を向上
・立ち上がる農山漁村選定事例(平成 18 年度、農林水産省)
・国産水産物の流通における諸取組の事例考察調査報告書(平成 25 年 3 月 財団法人魚価安定基金)
21
標
概
題
要
地域への貢献
57
ポ イ ン ト
主な参考文献
標
概
題
要
地域への貢献
58
ポ イ ン ト
主な参考文献
標
概
題
要
地域への貢献
59
ポ イ ン ト
主な参考文献
多品種少量の魚産地を強みに変え、地場産魚
をブランド化
事業者名等
ふるさと萩食品協同組合
事 業 所 在
山口県萩市
地産地消スタイルの水産物直売所「道の駅・萩しーまーと」を運営。加えて、多獲性・低利用度魚類
を原料とした新規商材開発と販路開拓に取り組んでいる
・売上げによる経済効果
・年間来客数 150 万人で観光に貢献
・直売所が市民の台所として定着し、地産地消を実践。市民と観光客の交流の場としても定着
・これまで無名の存在だった地魚のブランド化に取り組み、新たな特産品・地域ブランドを創出
・地場水産物の新たな需要の掘り起こし、新たな価値形成で、漁業関係者の所得向上にも貢献
・市と連携して「地魚料理教室」を開催するなど、魚食普及・食育活動にも積極的に対応
・市、漁業協同組合、水産加工業者などの関係団体が連携
・「萩しーまーと」は、漁協直営の鮮魚店や水産加工、青果、肉類、食料品店、海鮮レストランなど 17
店舗で構成。「地元を大切に」というコンセプトで、地元リピーターを確保
・どこにでもある全国共通的な商品は売場から排除、館内の商品アイテムの約8割を地元萩産に
・駅長を全国公募で採用するなど斬新なアイデアと行動力で多品種少量産地の特徴を活かしたマーケ
ティング戦略を展開(プロジェクトの中心人物である駅長(組合専務理事)は民間の大手広告企業出
身者でIターン(よそ者)、外部からの客観的な視点を施設運営に取り入れている)
・駅長が持つマーケティング等の知識・経験も活かして、TV、新聞、雑誌等にレギュラーを確保して圧
倒的なボリュームで “萩のお魚情報” を発信し、「萩市=美味しい魚の宝庫」というイメージを定着
・「萩の地魚もったいないプロジェクト」では、日本人の「魚離れ」に歯止めを掛けたいとの想いから、
“お魚を食べる。もっと気軽に、そしてオシャレに” をキャッチフレーズに商品開発
・水揚げ量が多いが利用度の低い地魚(小アジ、小フグ、金太郎、平太郎等)を原料に新しい加工品を
開発し、オイル・ルージュシリーズやいかたっぷり XO 醤など6品目が定番化
・オイルルージュといかたっぷり XO 醤は水産庁「ファストフィッシュ商品」に選定
・有名シェフとコラボレーションし、世界的な会議で使用された
・観光庁主催「究極のお土産」に選定、「フード・アクション・ニッポン・アワード」の流通部門優秀
賞を受賞し、これらの受賞以降、百貨店等からの注文が増えている
・農林水産省HP「地産地消優良活動表彰事例」
・旬レポ中国地域(平成 25 年 9 月 経済産業省中国経済産業局)
・農商工等連携事業事例集(平成 26 年 3 月 中小企業庁)
キッチンカーによる魚を活用した加工品販売
事業
事業者名等
遊子漁業協同組合女性部
事 業 所 在
愛媛県宇和島市
漁協女性部が、地元ブランドの確立を目指す漁協と一体となり、地元水産物を活用した新たな加工品
の開発と宣伝を兼ねた移動販売車による各種イベントへの出店に取り組んでいる
・売上げによる経済効果と雇用創出
・ブリ・マダイ等の養殖魚のイメージアップと「遊子」の PR
・たいやき形をした鯛めし焼きおにぎり「たべ鯛」などを販売
・立ち上げ当初、「遊子」の知名度が低いことを痛感し、漁協の勉強会や、県のセミナーを積極的に受
講し、PR 方法について検討
・販売する商品は、部員達がアイデアを出し合い、消費者の生の声を聞きながら開発・改良
(直接消費地に出向いて対面販売するので、消費者の嗜好を肌で感じ、人気商品を創出)
・養殖漁家の家業や子育てと女性部の活動を部員たちが両立できるようにするため、時給制の導入と作
業工程の一部を外注するなどの工夫を行い、このことにより若手部員が増え、20 代から 60 代までの
幅広い年齢層による継続性のある活動を実現
・商品パッケージ、ユニフォーム、移動販売車等への統一デザインにより、遊子ブランドを効果的に PR
・6次産業化の取組事例集(平成 27 年 2 月 農林水産省)
・平成 24 年度水産の動向(平成 24 年度水産白書)(平成 25 年 6 月 水産庁)
協業でマグロ養殖に取り組み、経営を改善
事業者名等
野間池マグロ養殖協業体
事 業 所 在
鹿児島県南さつま市
漁船漁業の閑散期である8月から9月に来遊するヨコワ(クロマグロの幼魚)を養殖用種苗として確
保し、養殖技術や鮮度保持技術を駆使して、良質な刺身マグロをリーズナブルな価格で供給すること
で、資源に優しく高収益な漁業につなげられるよう取り組んでいる
・売上げ増による経済効果と雇用創出(雇用の場の少ない漁村地域において、若者がマグロ養殖に参加)
・種苗買い取りで漁家の収入増に貢献(未利用資源を有効活用し、閑散期の新たな収入源に)
・テレビ、新聞等で紹介されることで野間池地区の宣伝が図られ、地域住民の励みに
・種苗採捕部門を担う漁船漁業者と養殖業者によるジョイントビジネス。種苗採捕、養殖、出荷加工に
おける技術開発と首都圏市場への販路拡大により経営を発展
・養殖技術開発にあたっては、県や町と共同で開発
・販路開拓にあたっては、試験出荷により消費者ニーズを調査
・種苗採捕部門においては、マグロ種苗の生存率を高めるため、漁具の改良や特殊水槽を設置
・養殖部門では、養殖網への激突防止を図るため生簀を改良、また、市場のニーズを考慮し餌へ植物由
来の粉末や栄養剤を添加するほか、出荷前一定期間は脂質の少ない餌へ切り替え、「赤身とトロが明
瞭に分かれた」天然マグロに近い肉質へ改良
・取り上げから消費地に着くまでの温度管理を徹底し、高鮮度・高品質のマグロを都会に届ける
・中間流通で大きな取扱シェアを持つ流通業者と提携し、首都圏市場の量販セクターで販売実現
・地元の食堂では「マグロどんぶり」が新しいメニューとなり、評判となっている
・農林水産省 HP「立ち上がる農山漁村選定事例」
22
標
概
題
要
地域への貢献
60
ポ イ ン ト
主な参考文献
地の利と最新冷凍技術を活かした車海老の周
年供給体制構築
事業者名等
沖縄栽培水産株式会社
事 業 所 在
沖縄県与那国町
気候が温暖な沖縄県与那国島の地の利を活かして、車海老の周年生産を実現するとともに、特殊凍結
技術を利用し、高品質な車海老の安定供給を実現。直接、ホテルやレストランなどに安定した価格(市
場動向に左右されない)で出荷できる強みで販路を拡大している
・離島の産業育成
・地域の雇用拡大
・未利用地域資源の活用
・国内の養殖車海老の高付加価値の販路拡大
・車海老は高級食材として知られるが、ほとんどが「活き海老」状態で流通し、流通過程で死んでしま
ったり、需要の集中に対応できないなど、品質保持や供給面の課題があり、これにより市場が拡大し
ないという面もあった
・福岡市の養殖業者は、車海老の養殖技術に定評があるが、従前の養殖場(佐賀県・長崎県・山口県)
では、海水温の関係で、出荷が8月~翌年の1月までに限定されていた。また、従前から冷凍車海老
の出荷も行っていたが、販売先の要望に十分応えられていない状況にあった
・養殖業者と養殖用飼料・資材販売業者が共同出資して、新会社を設立。養殖業者は新しい技術と車海
老を提供し、飼料等販売業者は販路を提供(新会社から車海老を仕入れ、同社のネットワークを活用
して販売を行う)する連携体制
・農林漁業成長産業化支援機構(A-FIVE)のサブファンドが4千万円を出資
・地元自治体及び漁協とも連携(自治体:雇用創出・人材育成、漁協:養殖場の活用)
・飲食店等のニーズに対応するため、冬場でも温暖な地の利を活かして、本土の端境期である春から夏
にかけても安定した出荷が可能な体制を構築
・最新技術を活用した冷凍加工は、活き海老と遜色ない品質と使い勝手から高い評価を受けており、初
めは躊躇していたホテルやレストランのシェフも、ユーザーになっている
・離島で交通の便はよくないが、冷凍加工することで大量に輸送できる船便での出荷が可能
・周年供給を活用し、飲食店、ホテル、ブライダル関係などの大口需要者を新たに開拓し、首都圏等へ
の販売チャンネルを拡大
・ほかにも、より付加価値を高めた商品の開発を進めており、品揃えの多品目化を目指している
・九州の未来力 2030 第2回資料「北部九州における6次化産業の現状等」(平成 26 年 2 月 財務省福
岡財務支局)
・『NCB九州6次化応援ファンド』「沖縄栽培水産株式会社」への出資決定(平成 25 年 9 月 西日本
シティ銀行)
・aff(あふ)(平成 25 年 12 月 農林水産省)
23
Ⅲ モデル地域における調査・検討等
1 概要
食品加工業の振興による地域活力向上を目指す道内3町村をモデル地域とし、各町村
において地域活力向上を実現するために必要な調査・検討等を行った。
(1)モデル地域
北海道内の全市町村を対象にモデル地域の募集を行い、応募があった市町村の中か
ら以下の3町村を選定した。
真狩村
6次産業化(新たな農産加工品の開発)による地域活力向上
美幌町
豚加工品の生産拡大・販売増による地域活力向上
羅臼町
水産加工の高次化等による地域活力向上
図Ⅲ-1
モデル地域3町村の位置
なお、モデル地域の募集・選定にあたっても、「Ⅱ 優良先進事例の収集・整理」
において事例の抽出にあたって念頭に置いた2点を考慮した。
(2)実施内容
各モデル地域の町村ごとに有識者を交えた検討会を設置し、当該検討会での討議を
踏まえた上で、食品加工業の振興による地域活力向上を実現するためのアクションプ
ランを策定した。
なお、アクションプランにおいては、地域の現状や課題を踏まえた上で、今後の方
向性、具体的な取組とスケジュール、関係者の役割分担などを整理した。
① 実施期間
平成26年12月~平成27年3月
24
② 検討会の概要
検討内容
・現状と課題の共通認識
・今後の取組の方向性の検討
・方向性の実現に向けて
・アクションプラン策定 等
・有識者
(大学教授等、試験研究機関研究者、経営アドバイザー等)
委員構成
・地域関係者
(食品加工事業者、一次産業関係者、金融機関、経済団体等)
・関係行政機関
(モデル地域の各町村、北海道、北海道開発局)
開催場所
各モデル地域の町村内
開催回数
3回
③ 検討会の流れ
第1回検討会
(12 月中旬~同月下旬)
・検討会の設置について
・現状と課題の共通認識
・今後の取組の方向性の検討①
第2回検討会
(1月下旬~2月上旬)
・今後の取組の方向性の検討②
・方向性の実現に向けて
第3回検討会
(2月下旬~3月上旬)
・アクションプラン素案(たたき台)
書面協議
(3月中旬~同月下旬)
・アクションプランとりまとめ案
25
2 各モデル地域における調査・検討等
(1)真狩村における地域活力向上アクションプラン策定
① 概要
真狩村は、道央圏の中央部、羊蹄山の南麓に位置する(図Ⅲ-2)。
図Ⅲ-2
所在地図
出所:真狩村HP
農業を基幹産業とし、食品加工の原材料となり得る農産物が豊富に存在するが、第2
次産業は脆弱であり(図Ⅲ-3)、食品加工業の振興が図られていない。
図Ⅲ-3
就業人口の産業3区分別割合
4.8%
真狩
北海道
全国
43.0%
52.2%
7.7%
18.1%
74.2%
4.2%
25.2%
0%
20%
第1次産業
70.6%
40%
60%
第2次産業
80%
100%
第3次産業
出所:平成 22 年 国勢調査(総務省)
そうした中、新たな農産加工事業の立ち上げ構想を持つ農業者がいるが、事業構想を
実現するためには検討・整理すべき点が数多く残されている。
また、基幹産業である農業は活気があるものの他の産業基盤は弱く、雇用の場も少な
い状況にあり、観光面でもポテンシャルを活かし切れていないと考えられる。
上記を踏まえ、地域の食品加工業の振興に向けて、新たな農産加工事業の立ち上げに
あたっての方向性及び具体的な取組について検討するとともに、これに連動した観光拠
点の強化や担い手の育成など地域づくりの総合的な展開による地域活力向上の実現に向
けて検討を行った。
26
② 検討会委員構成
区分
氏名
有識者
地域
関係者
関係
行政機関
所属・役職
役割
岩井 宏文
株式会社GB産業化設計代表取締役
委員
東山
北海道大学大学院農学研究院講師
座長
板敷 千穂
真狩村農産物加工研究会(まっかりまんま)
事務局
委員
梅田 高正
株式会社マカリイ代表取締役社長
委員
加藤 宏光
地域住民
(元ようてい農業協同組合営農購買事業本部長)
委員
川南 哲人
ようてい農業協同組合真狩支所営農企画課長
委員
菅谷 伸一
レストラン・マッカリーナ
委員
田村 豊和
農業者
委員
藤川 千鶴子
真狩村観光協会事務局
委員
中西
北海道真狩高等学校教諭
委員
宮部 和也
株式会社ジャパン・ミネラル経営企画室長
委員
山田 英幸
北洋銀行倶知安支店長
委員
横川 善安
農業者
委員
横山 喜貞
真狩村商工会副会長
委員
佐藤 昌彦
北海道経済部食関連産業室食クラスターグルー
プ主幹
委員
参鍋 修二
北海道開発局開発監理部開発調査課長
委員
長谷川 斎
真狩村総務企画課参事
委員
寛
聖
シェフ
※敬称略、各区分内で五十音順
③ 経緯
ⅰ)第1回検討会
日
時 平成 26 年 12 月 16 日(火)13:30~15:30
場
所
真狩村役場 2階大会議室
議
題
・検討会の設置について
・出席者の自己紹介
・座長選出
・資料説明:検討会の論点等
・意見交換:地域の現状について
食品加工業の現状と課題について
今後の取組の方向性について
・その他(今後のスケジュール等)
27
図Ⅲ-4
検討会開催状況(平成 26 年 12 月 16 日)
ⅱ)現地ヒアリング(過熱水蒸気加工事業者:株式会社パイオニアジャパン)
日
時 平成 27 年 1 月 19 日(月)13:30~15:30
場
所
株式会社パイオニアジャパン(札幌市)
議
題
・過熱水蒸気加工について
・過熱水蒸気加工機材について
・トウモロコシの委託製造について
・その他
ⅲ)第2回検討会
日
時 平成 27 年 2 月 5 日(木)15:00~17:00
場
所
真狩村役場 2階大会議室
議
題
・資料説明:第1回検討会議事概要
事務局提案
事例調査結果
・意見交換:今後の取組の方向性について
方向性の実現に向けて
・その他(今後のスケジュール等)
ⅳ)現地ヒアリング(6次産業化先進事例:株式会社高橋牧場(ニセコミルク工房))
日
時 平成 27 年 2 月 6 日(金)10:30~12:00
場
所
株式会社高橋牧場(ニセコ町)
議
題
・法人経営について
・全体的な運営及び経営状況について
・販売施設(ミルク工房・レストラン)の運営及び経営状況について
・その他
28
ⅴ)第3回検討会
日
時 平成 27 年 2 月 20 日(金)13:30~15:30
場
所
真狩村役場 2階大会議室
議
題
・資料説明:第2回検討会議事概要
アクションプラン素案(たたき台)
・意見交換:アクションプラン素案(たたき台)について
・その他(今後のスケジュール等)
ⅵ)書面協議
アクションプランとりまとめ案について書面協議を行い、了承を得た。
④ アクションプラン
体系図とともに、各戦略の概略を以下に記す。
29
戦略(1)スイートコーン過熱水蒸気加工事業の試行
【現状・課題】
地域の農業者が過熱水蒸気処理技術1を活用した生食用スイートコーン「恵味」の真空
レトルトパックの加工・販売事業の新規立ち上げを構想している。
地域住民や村と連携して試作に着手(平成26年8月、
北海道立総合研究機構食品加工研究センターにて試作(図
図Ⅲ-5 試作品
Ⅲ-5))し、商品化には一定のめどが立っているが、前
処理(皮むき)や保管方法など一連の工程全体までの整理
はできていない。
村内に工場を新設し、過熱水蒸気処理設備の新規導入を
前提に考えているが、設備導入には相当規模(数千万円か
ら億円単位)の初期投資を必要とする見込みの中、資金調
達のめどは立っておらず、また、マーケティングが精査で
きていない中、採算性も検証できていない。さらに、上記
規模の初期投資を回収するためには相当量の製造・販売が
必要になると想定されるが、その場合の人員(製造現場の
作業労働者だけではなく、事業運営にあたる専属人材が必 出所:真狩村
要と想定される)の確保のめども立っていない。
また、食品加工事業に係る情報、経験、ノウハウが不足しており、特に販売面につい
ての懸念が大きい。
【今後の方向性】
新規の過熱水蒸気処理設備の導入は現時点においてはリスクが大きいと判断して見合
わせ、村外企業に製造を委託して商品化する。
上記商品をもって実際に販売活動(テストマーケティング)を行い、消費者ニーズの
把握と営業販売ノウハウの習得を図る。
なお、過熱水蒸気処理に係る工場新設は見合わせる一方で、上記の村外企業との連携
の下、村内における農産物の一次加工工場(洗浄、皮むき、カット等)の新設に向けて
検討する。
また、地方創生交付金を活用して平成27年度に新たな協議会を立ち上げ、一連の検
討作業を継続する。
【具体的な取組】
当面は、新たな検討体制(協議会)を立ち上げて検討作業を継続するとともに、平成
27年夏のスイートコーン収穫期から加工・製造を開始し、その後、販売活動(テスト
マーケティング)を実施する。
平成28年度以降については、平成27年度の取組結果を踏まえて対応を検討する。
上記の取組を通じて、食品加工事業の新たな展開の本格始動を目指す。
1 沸騰した水から発生する水蒸気。それをさらに加熱して 100℃以上の状態にした高温水蒸気を「過熱水蒸気」といい、
これを食品加工に使用すると “蒸す” と “焼く” がほぼ同時にできます。主なメリットは、素材のうま味成分を逃さな
い(エキス損失抑制効果)、色艶がよくなる(色調改善効果)、高温で処理するため殺菌能力が高く衛生的で賞味期限も
延びること(表面殺菌効果)であり、その他の効果も明らかになってきています。
(出所:北海道経済部産業振興局食関
連産業室HP「あじ研北海道」)
30
戦略(2)加工品の販売促進に向けた観光拠点の強化等
【現状・課題】
豊富な農産物や美しい農村風景など地域資源として「食」と「農」に優位性がある一
方で、観光入込客数は近隣町村との比較では大きく下回る。
主要都市が日帰り圏内にあるため買物場所は村外の割合が高く、小売店は少数かつ減
少傾向で中心市街地の活気が失われている。
新たな加工品を販売していくにあたって、まずは足元を固める観点から、村内におけ
る魅力ある販売の場づくりと主な購買者となり得る観光客の集客向上が重要である。
【今後の方向性】
道の駅の機能拡充に向けて検討する。なお、地元産の素材を活かした良質な食事や加
工品などの提供を念頭に置き、イートイン・テイクアウトコーナーの設置や小規模な加
工場の併設などを検討する。
新たな観光メニューの創出に向けて検討する。なお、真狩流グリーンツーリズムの展
開として、農業体験、加工体験、農家レストラン、農家民宿などを検討する。
【具体的な取組】
当面は、新たな協議会において引き続き具体的な取組を検討する。
中・長期的には、上記検討に基づき事業化を図る。
上記の取組を通じて、加工品の販売促進に向けた環境整備、中心市街地活性化、観光
振興の並行展開を目指す。
戦略(3)事業推進に向けた組織づくり・人づくり等
【現状・課題】
食品加工事業をはじめとする地域活性化プロジェクトを推進する上では、資金や人材
の確保が障壁となるケースがある(スイートコーン過熱水蒸気加工事業立ち上げの検討
に際してもネックとなった)。
真狩高校では平成25年度より「野菜製菓コース」を設置しているが、高校生が専門
課程で習得した食品加工技術を卒業後に地元で活かせる場が少ない。
地域外からの人材等の受け入れ体制や意識の醸成が必ずしも十分とはいえず、地域外
からの新たな視点やノウハウ等を上手く活かせず、地域の魅力を十分に引き出せていな
いと考えられる。
【今後の方向性】
住民出資による株式会社等の事業運営法人の立ち上げに向けて検討する。なお、当該
法人においては、食品加工事業や観光関連事業などの展開をイメージする。
地域内の関係者の連携による地元高校生を対象とする人材育成システムの構築に向け
て検討する。なお、地元レストランによる高校生への技術指導や新たな加工品の商品開
発等への高校生の参画などを検討する。
地域外からの人材等の受け入れ促進に向けて検討する。外からの視点や新しい発想等
を活用することとし、地域おこし協力隊の活用促進などを検討する。
31
【具体的な取組】
当面は、新たな協議会において引き続き具体的な取組等を検討する。
中・長期的には、上記検討の具体化を図る。
上記の取組を通じて、内発的地域づくりの活発化、個別事業の強力な推進、将来に向
けた持続性・成長性の確保を目指す。
戦略(4)高校生らと取り組む地域内における6次産業化体制確立
【現状・課題】
まずはスイートコーン過熱水蒸気加工事業を製造委託で開始することとしたが、製造
委託の場合は加工・製造過程で生じる経済的効果は地域外に帰属するため地域への効果
は十分とはいえず、食品加工事業による効果を地域として最大限に享受するためには地
域内で生産・加工・販売の一貫体制を確立する必要がある。
【今後の方向性】
スイートコーン過熱水蒸気加工事業に続く食品加工事業の拡大展開を図ることとし、
情報ネットワークを構築(特に金融機関との連携を強化)の上、基本フレーム(商品構
成、事業規模)、数値目標、企業との連携、消費者ニーズを踏まえた商品開発、商品内
容に応じた販売戦略、消費者の心をつかむデザインについて検討する。
また、商品開発等にあたっては地元高校生の積極的な参画を促進する。
【具体的な取組】
当面は、新たな協議会において引き続き具体的な検討等を行う。
中・長期的には、上記検討等に基づき事業化を図る。
上記の取組を通じて、地域の強みを活かした新たな産業基盤の確立による地域活性化
を目指す。
32
(2)美幌町における地域活力向上アクションプラン策定
① 概要
美幌町は、オホーツク圏の中央部、管内の主要都市である網走市と北見市の間に位置
する(図Ⅲ-6)。
図Ⅲ-6
所在地図
出所:美幌町HP
農林業を基幹産業とし、地域資源活用型工業として砂糖工場、でんぷん工場、冷凍食
品工場等が立地するなど第2次産業も一定規模を占めている(図Ⅲ-7)が、食料品製
造業における付加価値は低水準にとどまり(図Ⅲ-8)、食品加工業の振興が十分に図
られていない。
図Ⅲ-7
図Ⅲ-8
就業人口の産業3区分別割合
食料品製造業の付加価値率
35.2%
40%
美幌
16.0% 20.6%
北海道
7.7%
18.1%
全国
4.2%
25.2%
28.3%
63.4%
20%
74.2%
17.5%
70.6%
0%
0%
20%
第1次産業
40%
60%
第2次産業
80%
100%
第3次産業
美幌
北海道
全国
※付加価値率=付加価値額÷製造品出荷額等
出所:平成 24 年 工業統計調査(経済産業省)
出所:平成 22 年 国勢調査(総務省)
そうした中、地域資源を活用した新たな食品加工業として、地元産豚を原料とする加
工品の製造・販売事業が展開されているが、事業立ち上げから一定期間を経過した中で
様々な課題に直面している。
また、地域は農林業を基幹産業とした上で商工業も一定程度立地しているが、人口減
少下で産業活動は必ずしも活発とはいえず、雇用の場も少ない状況にあり、観光面でも
ポテンシャルを活かし切れていないと考えられる。
上記を踏まえ、地域の食品加工業の振興に向けて、豚加工事業の持続的な成長・発展
のための今後の方向性及び具体的な取組について検討するとともに、農業や観光など地
域全体への展開の広がりによる地域活力向上の実現に向けて検討を行った。
33
② 検討会委員構成
区分
氏名
有識者
地域
関係者
関係
行政機関
所属・役職
役割
太田 裕一
北海道立オホーツク圏地域食品加工技術センタ
ー研究課長
委員
吉川 京二
株式会社ケーズマーケティング代表取締役
委員
黒瀧 秀久
東京農業大学生物産業学部長・オホーツク実学セ
ンター長・教授
座長
平野 陽子
有限会社ブレーン&ビジネス代表取締役
委員
大友 真佐美
合同会社びほろ笑顔プロジェクト業務執行社員
商品開発室長
委員
木村 しずか
JAびほろ総合企画推進室考査役
委員
竹下 友資
有限会社竹下畜産代表取締役
委員
久山 邦徳
合同会社びほろ笑顔プロジェクト代表社員
委員
藤田 吉一
美幌観光物産協会事務局次長
委員
三浦 隆雄
北海道美幌高等学校教諭
委員
横山 清美
美幌商工会議所事務局長
委員
吉江
網走信用金庫美幌支店長
委員
小室 秀隆
美幌町経済部商工観光グループ商工観光主幹
委員
佐藤 昌彦
北海道経済部食関連産業室食クラスターグルー
プ主幹
委員
参鍋 修二
北海道開発局開発監理部開発調査課長
委員
仁
※敬称略、各区分内で五十音順
③ 経緯
ⅰ)第1回検討会
日
時 平成 27 年 1 月 9 日(金)9:30~11:30
場
所
美幌商工会議所 3階会議室1
議
題
・検討会の設置について
・出席者の自己紹介
・座長選出
・資料説明:検討会の論点等
・意見交換:地域の現状について
食品加工業の現状と課題について
今後の取組の方向性について
・その他(今後のスケジュール等)
34
図Ⅲ-9
検討会開催状況(平成 27 年 1 月 9 日)
ⅱ)第2回検討会
日
時 平成 27 年 2 月 9 日(月)9:30~11:30
場
所
美幌商工会議所 3階会議室1
議
題
・資料説明:第1回検討会議事概要
事務局提案
事例調査結果
・意見交換:今後の取組の方向性について
方向性の実現に向けて
・その他(今後のスケジュール等)
ⅲ)第3回検討会
日
時 平成 27 年 3 月 2 日(月)9:30~11:30
場
所
美幌商工会議所 3階会議室1
議
題
・資料説明:第2回検討会議事概要
アクションプラン素案(たたき台)
・意見交換:アクションプラン素案(たたき台)について
・その他(今後のスケジュール等)
ⅵ)書面協議
アクションプランとりまとめ案について書面協議を行い、了承を得た。
35
④ アクションプラン
体系図とともに、各戦略の概略を以下に記す。
戦略(1)足下の課題解決による安定した経営基盤の確立
【現状・課題】
美幌豚醤「まるまんま」
(図Ⅲ-10)は、
美幌高校で規格外野菜を原料に独自に開発
した飼料を用いて飼育した「美幌豚」を使っ
た万能調味料である。
美幌商工会議所と美幌
高校が連携して商品開発を行い、
平成24年
に「合同会社びほろ笑顔プロジェクト」を設
立、製造・販売事業を開始している。
売上げが年々着実に増加している
(図Ⅲ-
11)など一定の成果を上げている一方で、
採算ベースに乗らず人件費に補助金を活用
した上での事業運営であることや、
全工程が
手作業で急激な需要増があった際に製造が
追いつかず欠品が生じたことがあるなど課
題も多い。
図Ⅲ-10
美幌豚醤「まるまんま」
出所:美幌町HP
図Ⅲ-11「まるまんま」の売上本数の推移
10,000
5,000
9,000
(本)
2,544
4,395
平成24年度
平成25年度
出所:美幌町HP
0
平成26年度
(見込み)
出所:合同会社びほろ笑顔プロジェクト
36
【今後の方向性】
現行の合同会社から株式会社に組織変更し、組織体制を強化する。
事業運営の改善に向けて具体的な対応を検討する。なお、検討にあたっては、「中・
長期的経営方針の明確化、収益改善」、「利幅の取れる派生商品の開発・販売による収益
改善」、「マネジメントの向上」を視点とする。
「まるまんま」の課題解決に向けて具体的な対応を検討する。なお、検討にあたって
は、「製造工程における技術的課題の解決」、「生産増に対応するための体制整備(人員
増又は機械導入)、「コスト削減」、「価格設定の再検討」を視点とする。
また、平成27年度に新たな検討体制を立ち上げて一連の検討作業を継続し、具体的
な取組へブレークダウンする。
【具体的な取組】
当面は、平成27年3月に派生商品「豚ジンカン」を販売開始、また、他の派生商品
の開発・販売に引き続き取り組む。平成27年度中に組織体制を強化する。
新たな検討体制を立ち上げ、中・長期的経営方針の明確化や生産増に対応するための
体制整備などについて、今後に向けてさらに検討する。
上記の取組を通じて、事業の安定・持続とさらなる成長・発展により地域経済や “まち
おこし” に貢献するとともに、地域内の雇用の維持・拡大や原料供給源である地元養豚業
の振興を目指す。
戦略(2)美幌豚醤「まるまんま」の “地産地消” の徹底・強化
【現状・課題】
「まるまんま」の売上げは年々増加している(図Ⅲ-11)が、地域内において十分
に普及・定着しているとまでは必ずしもいえない。なお、一部委員による聞き取り調査
結果を総合すると「知名度はあるものの、実際に使ったことがある人は少数」となって
いる。
図Ⅲ-12「まるまんまフェア」マップ
【今後の方向性】
地元飲食店における普及拡大、地元一般家庭にお
ける普及拡大及び地元学校給食への採用を図り、地
域の皆に知ってもらい、使ってもらい、愛してもら
い、町民一人一人に “営業マン” になってもらう。
また、美幌高校の高校生を積極的に活用してPR
する。
【具体的な取組】
当面は、平成27年3月に「まるまんまフェア」
(町内飲食店の協力によるスタンプラリー)を実施
(図Ⅲ-12)するほか、WEB等による情報発信
強化やレシピカード作成に取り組む。
普及拡大につなげるコンテンツづくりなどについ
て、今後に向けてさらに検討する。
37
出所:美幌町HP
上記の取組を通じて、売上げ増大、地域産品への愛着増大、特産品としての地位向上
など地元消費者からの支持の確立と幅広い世代への普及による食育の実践や高校生の積
極活用による地域づくりの担い手の育成を目指す。
戦略(3)美幌豚醤「まるまんま」の “地産全消” 展開
図Ⅲ-13「まるまんま」の平成 26 年度
【現状・課題】
月別売上本数
平成26年10月のテレビ番組での紹介を
(本)
2,000
きっかけに売上げが急増した(図Ⅲ-13)と
1,460
1,500
ころであり、地域外に潜在需要が多くあると考
えられるが、主に町内での販売となっており、 1,000 490 629 412 483 410 412
500
町外における取扱店舗はごく少数にとどまる
0
(札幌3店舗、東京1店舗、大阪1店舗(平成
4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月
26年10月時点))。
出所:合同会社びほろ笑顔プロジェクト
【今後の方向性】
まずは “地産地消” の徹底・強化に注力することとするが、“地産全消” を視野に入れ
た取組も並行して展開する。
【具体的な取組】
当面は、メディア露出やイベント出展などに取り組む。
他地域との連携による発信力強化などについて、今後に向けてさらに検討する。
上記の取組を通じて、資金循環サイクルの確立(地域内での付加価値の創出→地域外
からの財の獲得→地域内での原材料調達・雇用)による地域経済活性化と地域外での知
名度・地域ブランド力の向上を目指す。
戦略(4)地域内外との連携強化による展開の広がり
【現状・課題】
農業を基幹産業とするが農業従事者は減少傾向にあり、また、観光は郊外に全国的に
も有名な「美幌峠」があるものの通過型で、周遊・滞在型になっていない。そうした中、
「まるまんま」と農業や観光との連携は十分に図られていない。
【今後の方向性】
「まるまんま」と地域の農産物との連携強化を図る。
「まるまんま」を活かした周遊・滞在型観光の創出を図る。
また、地域外との連携を強化(オホーツク圏内での連携、北海道内他地域との連携、
東京都中央区(銀座)との連携などを検討)し、知名度向上を図る。
【具体的な取組】
当面は、地元飲食店における普及拡大に取り組む。
地域の農産物との連携強化などについて、今後に向けてさらに検討する。
上記の取組を通じて、農業振興、観光振興など地域全体への広がりと広域的な連携の
広がりによる北海道外での知名度向上を目指す。
38
(3)羅臼町における地域活力向上アクションプラン策定
① 概要
羅臼町は、道東圏(釧路・根室ブロック)の北部、知床半島の南側に位置する(図Ⅲ
-14)。
図Ⅲ-14
所在地図
出所:羅臼町HP
漁業を基幹産業とし、漁業と密接に関連する水産加工業も一定程度立地している(図
Ⅲ-15)が、その多くは低次加工にとどまり付加価値を高めることができておらず(図
Ⅲ-16)、食品加工業の振興が十分に図られていない。
図Ⅲ-15
羅臼
北海道
就業人口の産業3区分別割合
44.0%
17.4%
7.7%
18.1%
図Ⅲ-16
食料品製造業の付加価値率
35.2%
40%
38.6%
28.3%
74.2%
20%
19.0%
4.2%
全国
25.2%
70.6%
0%
0%
20%
第1次産業
40%
60%
第2次産業
80%
100%
第3次産業
羅臼
北海道
全国
※付加価値率=付加価値額÷製造品出荷額等
出所:平成 24 年 工業統計調査(経済産業省)
出所:平成 22 年 国勢調査(総務省)
道内有数の水産基地であるが、町内の水産加工業の多くは低次加工にとどまり、また、
漁獲量に対して町内の冷凍冷蔵保管能力も十分とはいえず、加工の高次化や冷凍冷蔵保
管能力の向上等による域内での付加価値向上が課題となっている。
また、基幹産業である漁業は活気があるものの他の産業基盤は弱く、雇用の場も少な
い状況にあり、観光面でもポテンシャルを活かし切れていないと考えられる。
上記を踏まえ、地域の食品加工業の振興に向けて、水産加工業における付加価値向上
のための方向性及び具体的な取組について検討するとともに、これに関連する地域内連
携による地元産魚介類を活かした多様な取組や産業横断的な共通課題の解決による地域
活力向上の実現に向けて検討を行った。
39
② 検討会委員構成
区分
氏名
有識者
地域
関係者
役割
岩井 宏文
株式会社GB産業化設計代表取締役
委員
木村
北海道立総合研究機構釧路水産試験場加工利用
部長
委員
佐野 修久
釧路公立大学地域経済研究センター長・教授
座長
池上 美穂
知床羅臼町観光協会事務局長
委員
石川 勝一
羅臼町飲食業連合会事務局長
委員
稲川 正春
釧根トラック協会羅臼支部長
委員
今井 隆博
釧路信用組合羅臼支店長
委員
羅臼鮮魚買受人組合事務局長
委員
羅臼町水産加工振興協会事務局長
委員
白濱 修治
羅臼町商工会事務局長
委員
千綾 昭彦
羅臼漁業協同組合参事
委員
本間 正子
羅臼町旅館組合事務局長
委員
三上
大地みらい信用金庫羅臼支店長
委員
羅臼町水産商工観光課長
委員
佐藤 昌彦
北海道経済部食関連産業室食クラスターグルー
プ主幹
委員
参鍋 修二
北海道開発局開発監理部開発調査課長
委員
稔
川口 賢治
堺
関係
行政機関
所属・役職
誠
昇司
※敬称略、各区分内で五十音順
③ 経緯
ⅰ)第1回検討会
日
時 平成 26 年 12 月 25 日(木)17:00~19:00
場
所
羅臼町役場 1階会議室
議
題
・検討会の設置について
・出席者の自己紹介
・座長選出
・資料説明:検討会の論点等
・意見交換:地域の現状について
食品加工業の現状と課題について
今後の取組の方向性について
・その他(今後のスケジュール等)
40
図Ⅲ-17
検討会開催状況
(平成 26 年 12 月 25 日)
ⅱ)現地ヒアリング(冷凍冷蔵倉庫事業者:横浜冷凍株式会社)
日
時 平成 27 年 1 月 21 日(水)13:30~15:00
場
所
ヨコレイ十勝物流センター(芽室町)
議
題
・事業概要について
・十勝物流センターについて
・冷凍冷蔵倉庫の地域性について
・水産品の取扱について
・その他
ⅲ)第2回検討会
日
時 平成 27 年 1 月 28 日(水)17:00~19:00
場
所
羅臼町役場 2階会議室
議
題
・資料説明:第1回検討会議事概要
事務局提案
事例調査結果
・意見交換:今後の取組の方向性について
方向性の実現に向けて
・その他(今後のスケジュール等)
ⅵ)書面協議①
アクションプラン素案(たたき台)について書面協議を行い、意見聴取した。
※第3回検討会について、当初、平成 27 年 3 月 4 日(水)に開催を予定したが、暴
風雪のため開催を中止し、書面協議に変更した。
ⅴ)書面協議②
アクションプランとりまとめ案について書面協議を行い、了承を得た。
41
④ アクションプラン
体系図とともに、各戦略の概略を以下に記す。
戦略(1)[ブランド力向上+地産地消]× 地域内連携
【現状・課題】
羅臼産の水産物は高い知名度とブランド力を有し、市場を通じて全般的に高値で取引
され、高級品として本州方面に出荷されるケースが多い一方、地元の飲食業・宿泊業に
とっては仕入れ値が高く、町内で出回らないケースも多い。
近年の傾向として、ホッケが不漁である一方で新たな資源としてブリが増加している
が、ブリは脂乗りなどの質は十分だが漁価が低く、また、地元の飲食業・宿泊業におい
てはホッケ以外の新たなメニュー展開も必要となっている。
羅臼産の水産物は観光資源としても対外的訴求力を十分に有するが、飲食業・宿泊業
における意思統一は十分とはいえず(地元産にこだわるところもあれば、必ずしもそう
でもないところもある)、また、地元産食材の調達にあたって、需要側(飲食業・宿泊
業)と供給側(漁協)との間の意思疎通が十分に図られていない側面が見られ、加えて、
飲食事業者等が水産物を市場から調達するにあたっては、ロットの問題(小規模事業者
単独ではまとまった必要量を確保できない)もある。
42
【今後の方向性】
羅臼ブランドのさらなる向上を図ることとし、ブリなど羅臼産魚介類のブランド化・
知名度向上を推進する。なお、ブランド化にあたっては、鮮度保持(活締めの徹底、シ
ャーベットアイス等の先進技術の活用など)に留意するとともに、ストーリー化や複数
のブランド品目を組み合わせたPR展開も有効である。
地元産食材を活かした観光客向け飲食サービスの強化・充実を図ることとし、地域内
の飲食・宿泊事業者間の連携による、新たな地産地消メニューの開発・共通化(地域固
有の希少魚種を活用した “羅臼めし” など)に向けて検討する。なお、取り組むにあたっ
ては、地元高校生の参画や著名料理研究家等とのコラボレーションによるメニュー開発
や対外PRの積極展開による観光誘客強化を図る。
地域内での食材調達の円滑化を図ることとし、需要側(飲食業・宿泊業)と供給側(漁
協)の認識共有のための情報共有・協議の場の設置と、需要側における計画的な仕入れ
(事前注文)や大ロット対応のための共同仕入れ体制の構築に向けて検討する。
【具体的な取組】
当面は、ブリのブランド化に取り組む。また、新たな地産地消メニューの開発・共通
化などについて検討する。
中・長期的には、上記検討の具体化を図る。
上記の取組を通じて、地元産魚介類の魚価向上・販路拡大や観光誘客拡大を図るとと
もに、地域内の関係者の連携の下、地元産食材を単に地域外からのニーズに応じて移出
するばかりでなく観光資源として地域内における流通を促進し、双方のバランス調整に
よる地域全体としての利益の拡大を目指す。
戦略(2)地域産業の成長・発展の土台となる基盤づくり
【現状・課題】
漁獲量に対して地域内の冷凍冷蔵保管能力が低く、特に水揚げが集中する9~11月
は直ちに容量を超過するため、加工用の原料を通年で安定的に確保することが困難とな
っている。また、保管可能容量を超過する場合は、水揚げ後直ちに町外に移出する必要
があるが、鮮度の低下は価格の下落に直結し、加えて、トラック不足の傾向がある中で
漁獲制限を設ける場合もある。一方、トラックを遠隔地から手配する中で、トラックが
当地に到着した時には水揚げ量が積載可能容量を著しく下回る場合もあり、非効率な運
用となっている。すなわち、水産加工業、漁業、運送業に共通して安定経営の阻害要因
となっている。
水産加工業は漁獲量に応じて、また、観光関連業は入込客数に応じて、ともに季節に
よる繁閑の差が激しく(図Ⅲ-18、図Ⅲ-19)雇用環境が不安定、かつ、計画的・
継続的な人材の確保・育成が困難となっている。
43
図Ⅲ-18
(トン)
月別漁獲量
15,000
9,693
10,000
5,000
12,040 12,936
3,596
922
37
1,145
2,042
1,580
822
1,512
2月
3月
4月
5月
6月
7月
8月
2,077
0
1月
9月
10月
11月
12月
出所:平成 25 年 羅臼町の水産(羅臼町)
図Ⅲ-19
月別観光入込客数
(千人)
200
157.7
150
91.5
100
50
33.2
93.5
53.0
42.9
9.2
0
4月
5月
6月
7月
8月
9月
10月
7.2
5.7
4.5
6.5
8.4
11月
12月
1月
2月
3月
出所:平成 25 年度 北海道観光入込客数調査(北海道)
【今後の方向性】
地域内における冷凍冷蔵保管能力の向上を図ることとし、大型冷凍冷蔵施設の新設を
目指し、中・長期的視点で、地域内の関係者(漁業、水産加工業、運送業)間の連携に
よる事業化に向けて検討するとともに、大手冷凍冷蔵倉庫事業者による施設新設(誘致)
に向けた情報収集を行う。なお、羅臼の地理的条件不利等を鑑み、周辺市町との広域連
携も視野に検討する。
地域産業の担い手となる人材の育成・確保に向けて、地元人材(高校生)の育成・輩
出・活用や地域間連携による人材確保の「しくみ」づくりに向けて検討する。
【具体的な取組】
当面は、上記それぞれに地域内の関係者等による検討体制を構築するとともに、漁繁
期における保管・輸送の実態調査や情報収集などに取り組む。また、人材の育成等につ
いて対応策を検討する。
中・長期的には、大型冷凍冷蔵施設の新設に係る検討・試算を行った上で、事業化を
図る。また、人材の育成等について、上記検討の具体化を図る。
上記の取組を通じて、地域特性に由来して複数の産業間において横断的に共通する課
題を解決し、ボトルネック解消による水産加工業の経営安定とバッファー充実による運
送業及び漁業の経営安定、担い手の育成・確保による地域産業全体の底上げを目指す。
44
戦略(3)水産加工業の戦略的展開
【現状・課題】
町内の食品加工事業所の大半は小規模で経営基盤が必ずしも強固とはいえない中、多
くは旧来からの水揚げに頼った低次加工にとどまり、地域の強みを活かした上で市場ニ
ーズ等に対応する戦略的な事業展開ができていない。
また、上記戦略(1)の記載と同様に仕入れ値が高く、戦略(2)の記載のとおり原料
の安定確保や人材の確保・育成が困難な状況である。
【今後の方向性】
高次加工品の開発・展開を図ることとし、羅臼ブランドを活かした付加価値の高い最
終消費者向け少量多品種の商品開発・販売展開に向けて検討する。なお、取り組むにあ
たっては、水産加工業界全体での意識改革(現状に対する危機感醸成)と認識共有、そ
して業界内の連携により経営体質の安定・強化を図るとともに、ソフト・ハード両面の
衛生管理対策、また、地元高校生の参画や著名料理研究家等とのコラボレーションによ
る商品開発を図る。
加工向け中核素材の安定供給を図ることとし、地域内における大型冷凍冷蔵施設の新
設により加工原料の貯蔵環境の改善を図るとともに、地域の豊富な漁獲物を活かした大
量流通向け一次加工品の安定供給体制の確立による付加価値向上に向けて検討する。
【具体的な取組】
当面は、経営状況や衛生管理状況の把握、数値目標設定、情報収集(消費者ニーズ、
実需者ニーズ等)などに取り組むとともに、経営効率化や衛生管理に係る施設整備に向
けて検討する。
中・長期的には、上記検討を具体化し、商品開発・販売展開を図る。
上記の取組を通じて、地域に根ざした準基幹的産業の持続的発展と付加価値向上によ
る地域経済活性化を目指す。
45
Ⅳ とりまとめ(他地域へ展開するための方策)
上記「Ⅱ 優良先進事例の収集・整理」及び「Ⅲ モデル地域における調査・検討等」
により得られた成果・知見等を汎用的にとりまとめ、他地域へ展開するための方策として
整理した。
なお、上記にあたっては、今後、食品加工業の振興による活力ある地域づくりを目指す
様々な関係者にとって参考となるように、具体的かつ実践的な提示となるよう留意した。
1 食品加工業の振興に地域一体で取り組むことにより期待できる効果
はじめに、
「Ⅱ 優良先進事例の収集・整理」及び「Ⅲ モデル地域における調査・検
討等」の結果を基に、食品加工業の振興に地域一体で取り組むことにより期待できる効
果について考察する。
なお、参考事例として示した中で「No.」欄に「Ⅱ」と表示がある事例については、既
存の公開資料、文献等に基づき当課の解釈により整理・分類したものであり、
「Ⅱ 優良
先進事例の収集・整理」において主な参考文献を示す。(以下、「2 取り組むにあたっ
てのポイント」
、
「3 各主体に期待される役割」について同じ)
(1)食品加工業の振興により期待できる効果
食品加工業の振興により、地域においては事業活動に伴う経済的効果はもちろんの
こと、加えて、地域の社会的課題の解決等にもつながることが期待できると考えられ、
それぞれの内容について整理する。
① 経済的効果
ア
商品の売上げによる経済効果
地域で生産された一次産品をそのまま出荷するばかりでなく、地域内で加工し
て付加価値を高めて販売することにより、地域への経済効果が期待できる。
特に、人口減少・高齢化で地域内の市場が縮小する中、地域外の市場(輸出を
含む)を積極的に開拓することにより、域外からの財の獲得が期待できる。
【参考事例】
No.
事業者名等
Ⅱ株式会社もち米の里ふうれん特産
2
館
(北海道名寄市)
Ⅱ有限会社柏崎青果
10
(青森県おいらせ町)
Ⅱ17
株式会社早和果樹園
(和歌山県有田市)
内容
・ソフト大福は、道の駅などで年間 100 万個の売り上げ
・もち米で販売するよりも、付加価値が約5倍に増加
・「黒にんにく」を主体に輸出に取り組み、アメリカで 400 店舗を展
開するスーパーマーケットとの大口取引が決まるなど輸出を拡大
(輸出額は、平成 24 年度:1.3 百万円→平成 25 年度:19.8 百万円)
・加工品の販売が国内外で順調に伸び、製造が追い付かなくなったた
め、設備を増強、製造担当を3倍に増員
・平成 16 年から、みかんジュース等の加工品の販売を開始
・売上高は、H15:0.2 億円→H26:6.25 億円
・販路は有名百貨店、高級スーパー、高級ホテル等、また、東南アジ
ア(台湾、香港、シンガポール)やEU諸国等への輸出も行う
イ
地域内における新たな雇用の創出
地域内において加工・販売等に係る労働需要が発生し、新たな雇用の創出が期
待できる。
また、地域外で売り上げた中から従業者の給与が支払われ、地域内において従
業者が消費活動を行うことにより、域外から獲得した財の域内循環が期待できる。
46
【参考事例】
No.
事業者名等
Ⅱ株式会社山口油屋福太郎
8
(北海道小清水町)
Ⅱ株式会社サンライズ西条加工セン
23
ター
(愛媛県西条市)
Ⅱ有限会社ひよこカンパニー
43
(鳥取県八頭町)
内容
工場進出により、約 40 名の雇用を創出(大部分を地元採用)
・新会社設立・工場新設により、社員 10 人、パート 35 人を新規雇用
・今後、120~150 人規模へ拡大予定
本社内にコールセンターを設置、直売所・カフェの開設により中山間
地域において 65 名の地元雇用を創出(H25)
ウ
原材料となる一次産品の生産拡大等による一次生産者の所得向上
食品加工事業の成長・発展に伴い、原材料需要の増加、新たな生産品目への展
開、未利用資源の付加価値化などによる一次生産者の所得向上が期待できる。
また、地域外で売り上げた中から地域内において原材料の対価が支払われるこ
とにより、域外から獲得した財の域内循環が期待できる。
【参考事例】
No.
事業者名等
Ⅱ中札内村農業協同組合
9
(北海道中札内村)
Ⅱ26
Ⅱ57
株式会社ジェイエイフーズみやざ
き
(宮崎県西都市)
ふるさと萩食品協同組合
(山口県萩市)
内容
・エダマメ冷凍加工事業の成長とともに、エダマメの作付面積・生産
量ともに約 10 倍に増加
・エダマメは利益率が高く農業所得が増、平均農業所得が日本一に
九州最大規模の冷凍野菜工場の新設により加工用ほうれんそうの大
規模産地が形成され、地域農業の再生と農家の所得向上(口蹄疫から
の復興と葉たばこからの生産転換)に貢献
地産地消スタイルの水産物直売所の運営や利用度の低い地魚を原料
とする新たな加工品の開発により、地場水産物の新たな需要を掘り起
こし、新たな価値形成で、漁業関係者の所得向上にも貢献
エ 地域内産業連関による経済波及効果
上記の雇用創出や一次産品の生産拡大等をはじめ、設備投資(工場新設に係る
建設工事等)や観光への影響など、経済波及効果が期待できる。
【参考事例】
No.
事業者名等
Ⅱ中札内村農業協同組合
9
(北海道中札内村)
Ⅱ18
株式会社きてら、株式会社秋津野
(和歌山県田辺市)
内容
小地域産業連関表による分析で、
・H15→H20 で域内総生産額が 43 億円増加し、年平均5%の成長
(H15:159 億円→H20:202 億円)との試算
・農業と食品加工業のつながりが強まった結果、H15 と H20 を比較
すると、食品加工業の増産による地域農業への波及効果が 54%増加
秋津野ガルテンや直売所の地域への経済波及効果は年間約 10 億円と
試算されている(平成 23 年度)
② 社会的課題の解決等
ア 一次産業の振興
[担い手育成]
食品加工事業と併せて体験農場等を開設し、就農希望者等を研修生として受け
入れることにより、一次産業の担い手育成が期待できる。
【参考事例】
No.
事業者名等
Ⅱ有限会社仲野農園
6
(北海道長沼町)
Ⅱ株式会社きてら、株式会社秋津野
18
(和歌山県田辺市)
Ⅱ株式会社伊賀の里モクモク手づく
41
りファーム
(三重県伊賀市)
内容
レストランの従業員は地元から採用し、将来就農を希望する若者も受
け入れるなど、地元に若者が定着するための場となっている
新規就農者の育成プログラム(廃園を活用した野菜園や市民農園での
野菜づくりの実践等)を実施し、Uターン・Iターン者を雇用
研修生を年間 300 名前後受け入れ、担い手育成に注力
47
[耕作放棄地の有効活用]
食品加工事業の成長・発展に伴う農地拡大や体験農場等の開設等に伴い、耕作
放棄地の有効活用が期待できる。
【参考事例】
No.
事業者名等
Ⅱ株式会社奥尻ワイナリー
4
(北海道奥尻町)
Ⅱ株式会社きてら、株式会社秋津野
18
(和歌山県田辺市)
内容
自社グループ保有地以外に、地域内の離農者の農地を引き受けて、ぶ
どうを栽培
新たな市民農園の開設やレストラン向け野菜生産ほ場の整備にあた
り、耕作放棄地を有効活用
[生産意欲向上]
生産した農産物を使った製品が身近で見える形になることや、食品加工事業と
併せた収穫体験等への展開に伴い、一次生産者と消費者との交流機会が生まれる
ことにより、一次生産者の意欲向上が期待できる。
【参考事例】
No.
事業者名等
Ⅱ美瑛町農業協同組合
7
(北海道美瑛町)
Ⅱ株式会社山口油屋福太郎
8
(北海道小清水町)
イ
内容
消費者の農場視察も増え、生産者と消費者の交流により生産者にとっ
てもよい刺激となっている
地元産のでんぷんを使った製品が身近となったことで、農業者の生産
意欲が向上
観光振興、交流人口拡大
[観光スポット創出]
食品加工事業と併せて直売所やカフェ・レストラン事業等を複合的に展開する
ことにより地域の観光スポットとなり、観光振興や交流人口拡大が期待できる。
【参考事例】
No.
事業者名等
Ⅱ株式会社もち米の里ふうれん特産
2
館
(北海道名寄市)
Ⅱ30
株式会社高橋牧場
(北海道ニセコ町)
Ⅱ41
株式会社伊賀の里モクモク手づく
りファーム
(三重県伊賀市)
内容
・道の駅の指定管理者として売店やレストランも運営
・道の駅は餅のイメージを押し出し、地元特産品や農産物の販売にも
力を入れ、人気観光スポットに成長(道内旅行情報誌による道の駅
人気ベストテンで第 1 位を獲得)
ニセコ町の人気観光スポットの一つ
・加工販売施設「ニセコミルク工房」
:年間約 30 万人が来訪
・野菜レストラン「PRATIVO」:土日は 400 人/日が来訪
食と農を通じたコミュニティづくりに取り組む農業テーマパーク(農
業、食農学習をテーマに、農業生産、加工、直売所、宿泊施設、レス
トランなどを運営、様々な体験教室を実施)に年間約 50 万人が来場
[視察等による交流人口拡大]
地域活性化事例として有名になることにより視察等が増加し、交流人口拡大に
貢献するケースもある。
【参考事例】
No.
事業者名等
Ⅱ株式会社いろどり
22
(徳島県上勝町)
内容
視察やセミナー等により交流人口が増加し、町内産業(宿泊施設、産
直市)にも波及
ウ
知名度向上
地名を冠した商品を地域外に向けて販売することにより、知名度向上が期待で
きる。
【参考事例】
No.
事業者名等
Ⅱ有限会社柏崎青果
10
(青森県おいらせ町)
Ⅱかわにしの丘しずお農場株式会社
28
(北海道士別市)
内容
黒にんにくを「AOMORI BLACK garlic」として輸出し、
「青森」の名
を世界に広げている
地域をあげて「サフォークランド士別プロジェクト」を推進する中、
プロジェクトの中核企業としてサフォークめん羊商品の市場展開を
行い、「士別サフォーク」ブランドを全国に発信
48
エ 食育、地産地消
加工品の学校給食への供給や、食品加工事業と併せた体験農場等への学童等の
受け入れ等により、食育や地産地消の推進が期待できる。
【参考事例】
No.
事業者名等
Ⅱ中札内村農業協同組合
9
(北海道中札内村)
Ⅱ株式会社天狗、堀田農産有限会社
39
(岐阜県下呂市)
Ⅱ41
オ
株式会社伊賀の里モクモク手づく
りファーム
(三重県伊賀市)
内容
学校給食への供給、地元小学生等を対象とする工場見学会や体験実習
受け入れなど食育にも積極的に対応
豚肉及び加工品を学校給食の食材として提供し、食育や地産地消に貢
献(地元学校給食センターが、地産地消給食等メニューコンテストで
農林水産省食料産業局長賞を受賞)
・日本で最初の手作りウインナー体験教室を開始
・様々な収穫体験や教室・イベントを企画し、子供から大人までに対
し積極的な食農育を行っている
多様な人材が活躍できる場を創出
[女性の雇用機会の創出]
食品加工事業には作業内容的に女性が従事できる場合が多く、女性の雇用機会
の創出が期待できる。
【参考事例】
No.
事業者名等
Ⅱ有限会社柏崎青果
10
(青森県おいらせ町)
Ⅱ遊子漁業協同組合女性部
58
(愛媛県宇和島市)
内容
仕事内容的に従業員は女性が多く、女性の活躍の場が増えている
漁協女性部が、地元水産物を活用した新たな加工品の開発と宣伝を兼
ねた移動販売車による各種イベントへの出店に取り組んでいる
[高齢者の雇用機会の創出]
食品加工事業には作業内容的に高齢者が従事できる場合も多く、高齢者の雇用
機会の創出が期待できる。
高齢者の収入増とともに生きがいとなり、さらには健康増進による医療費低減
にまでつながる場合もある。
【参考事例】
No.
事業者名等
Ⅱ株式会社早和果樹園
17
(和歌山県有田市)
Ⅱ株式会社いろどり
22
(徳島県上勝町)
内容
60 歳以上のシニアレディによる子会社を新たに設立し、高齢者の活
躍の場を創出(予定)
・生産者の半数以上が女性で、平均年齢 70 歳
・高齢者が生きがいを感じながら収入を得ることができ、産業を通じ
た福祉が実現
・老人ホームの利用者が減り、町営の老人ホームがなくなった
[障害者の雇用機会の創出]
食品加工事業には作業内容的に障害者が従事できる場合も多く、障害者の雇用
機会の創出が期待できる。
【参考事例】
No.
事業者名等
Ⅱ農事組合法人共働学舎新得農場
32
(北海道新得町)
Ⅱ有限会社釧路フィッシュ
47
(北海道釧路市)
内容
知的障害者、精神障害者、身体障害者、触法障害者、引きこもり、不
登校児、ニートなど社会的弱者等を含む幅広い雇用を受け入れ
パート職員として障害者を雇用しているほか、職業訓練としても障害
者を受け入れ、魚の下処理やラベルの貼り付けを任せている
カ 地域への愛着、コミュニティ再生等
[地域の拠点づくり、憩いの場の形成]
食品加工事業と併せて交流施設の運営や体験農場等を展開することにより、地
域の拠点づくりや憩いの場の形成が期待できる。
49
【参考事例】
No.
事業者名等
Ⅱ株式会社山口油屋福太郎
8
(北海道小清水町)
Ⅱ14
Ⅱ36
横山振興会、株式会社のろし
(石川県珠洲市)
磯沼ミルクファーム
(東京都八王子市)
内容
・工場の一部を無料で開放し、見学可能、直営店舗を併設
・多くの観光客が来館するとともに地域住民の憩いの場にもなってい
る(廃校時の児童が描いた絵を飾るなど地域によりそう姿勢)
管理運営する交流施設は地域住民の買い物場所及び観光バスのルー
トとして定着し、地域内外から親しまれる存在になっている
酪農教育ファームとして、消費者の動物福祉、癒し、教育の場に牧場
を活用
[地域への愛着心や誇りの醸成]
加工品が地域を代表する存在として広く知られることにより、地域住民の地域
への愛着心や誇りの醸成が期待できる。
【参考事例】
No.
事業者名等
Ⅱ株式会社山口油屋福太郎
8
(北海道小清水町)
Ⅱ24
Ⅱ44
馬路村農業協同組合
(高知県馬路村)
邑南町
(島根県邑南町)
内容
全国に誇る特産商品ができたことで、地域への愛着と住民同士の一体
感が生まれ、行政、企業、住民が一体となって地域おこしに取り組も
うとする機運が高まる
村の知名度やイメージが向上し、村人たちの地域への愛着や誇りにつ
ながる
「A級グルメ=永久」と考え、100 年先の子どもたちに伝えられる邑
南町の食文化を発信し、町を誇りに思う「ビレッジプライド」を醸成
[コミュニティ再生、伝統的な食文化等の継承]
食品加工事業に幅広い世代が参加することにより世代間の交流が生まれ、コミ
ュニティ再生や伝統的な食文化等の継承が期待できる。
【参考事例】
No.
事業者名等
Ⅱ有限会社釧路フィッシュ
47
(北海道釧路市)
Ⅱ55
海士町
(島根県海士町)
Ⅱ56
有限会社フレッシュしおかぜの里
(山口県下関市)
内容
・地元の「浜のおばあちゃん」が作る昔ながらの家庭の味(煮昆布)
を商品に活用
・「糠さんま」など地元の伝統的な食文化を活用し、隠れた味覚を新
しい味として全国に発信
昔ながらの製法で製造した塩を使った特産品づくり(梅干し・塩辛な
ど)に集落やグループで取り組み、伝統文化、食文化の復活と女性や
高齢者を中心とした島内地域のコミュニティの再生が図られる
幅広い年齢層にメンバーが分散しており、世代間の交流や生活技術伝
承の場にもなっている
キ 廃校等の有効活用
工場等として廃校等を再利用することにより、既存施設の有効活用に資すると
ともに、防災拠点としての機能維持も期待できる。
なお、食品加工事業者側にとっても施設整備に係る費用を低減できるというメ
リットがある。
【参考事例】
No.
事業者名等
Ⅱ株式会社山口油屋福太郎
8
(北海道小清水町)
Ⅱ11
Ⅱ18
Ⅱ27
農事組合法人大沢ファーム
(秋田県横手市)
株式会社きてら、株式会社秋津野
(和歌山県田辺市)
株式会社あいあいファーム
(沖縄県今帰仁村)
内容
工場進出にあたって、町との協議により閉校した旧小学校校舎を買い
取り、また、旧小学校が受けていた避難所の指定をそのまま引き継ぎ、
防災拠点としての機能も果たしている
旧学校給食センターを活用してジュース加工場を整備し、施設整備費
を低減
廃校を活用した都市農村交流施設「秋津野ガルテン」(農家レストラ
ン等)を開設
廃校となった小学校を再利用して、農園をはじめ、加工所や直売所、
セミナールーム、レストラン、宿泊施設を整備し、総合的な教育ファ
ームとして6次産業化による取組を実践
50
(2)地域の多様な主体の参画・連携により期待できる効果
上記(1)に加えて、地域の多様な主体が参画・連携して取り組むことにより、特に
期待できる内容について整理する。
ア 地域の実情に即した合理的・効果的な展開と推進力、相乗効果
幅広い主体が参画した中での協議等を通じて、地域の実情に即した合理的かつ
効果的な取り組みが期待できるとともに、全体合意の下での強力な推進や異なる
立場の者が相互に関係し合う中での相乗効果などが期待できる。
【参考事例】
No.
事業者名等
Ⅲモデル地域:真狩村
(1)
Ⅱ18
株式会社きてら、株式会社秋津野
(和歌山県田辺市)
Ⅱ24
馬路村農業協同組合
(高知県馬路村)
Ⅱ55
海士町
(島根県海士町)
内容
食品加工事業の新規立ち上げに向けた検討を契機に、道の駅の機能拡
充、中心市街地活性化、新たな観光メニュー(グリーンツーリズム)
の創出、住民出資会社立ち上げ、将来に向けた人材育成など地域活力
向上に向けて活発な意見が交わされた
農家以外の住民増加を背景に発足した地域づくり塾「秋津野塾」が母
体となっており、「秋津野塾」には住民のほか地区内の全ての組織・
団体が参加し、幅広い合意形成を図りながら、活発な地域づくりへの
取組が進められている
役場、農協、森林組合、商工会、観光協会等で協議会を設立し、地域
活性化に向けそれぞれの組織が連携しながら観光客の受け入れ態勢
を整え、農業と観光を結び付けたビジネスモデルを確立(温泉、キャ
ンプ場、宿泊施設等の整備、森林鉄道の復元、各種体験教室や村内案
内ツアーなど、村の特産品や自然を活かした体験型観光を積極的に行
っている)
U・I ターンで島外から入ってきた若者と町役場や従来からの地元住
民が協力し、よい相乗効果を生み出しながら、新しい事業を展開
イ 地域全体としての課題解決
[横断的に共通する課題の解決]
複数の主体間において横断的に共通する課題に対して各主体が連携して取り組
むことにより、それぞれが抱える課題が解決し、地域全体としての課題解決につ
ながることが期待できる。
【参考事例】
No.
事業者名等
Ⅲモデル地域:羅臼町
(3)
Ⅱ28
かわにしの丘しずお農場株式会社
(北海道士別市)
内容
地域特性に由来して、水産加工業に限らず複数の産業間において横断
的に共通する課題である「漁獲物の保管容量不足」と「人材不足」を
解決することで、ボトルネック解消による水産加工業の経営安定とバ
ッファー充実による運送業及び漁業の経営安定、担い手の育成・確保
による地域産業全体の底上げを目指すこととした
農業衰退を起因とする地元の甜菜製糖工場閉鎖の危機と公共工事減
少等による地元建設企業の危機という地域経済の危機に際して、市・
農協・建設企業(かつ同社グループの運送会社では甜菜製糖工場への
ビート運搬を請負)が連携、建設企業がビートのコントラクター事業
に参入し、地域・企業それぞれの課題を解決
[強みと弱みの相互補完による課題解決]
多様な主体が連携してそれぞれが持つ「強み」と「弱み」を相互に補完するこ
とにより、それぞれが抱える課題が解決し、地域全体としての課題解決につなが
ることが期待できる。
【参考事例】
No.
事業者名等
Ⅱ株式会社白亜ダイシン
1
(北海道岩見沢市)
Ⅱ株式会社山口油屋福太郎
8
(北海道小清水町)
内容
農業者と密接に連携し、加工ノウハウや販路を持たない農業者とウィ
ン・ウィンの関係を構築
過疎化に悩む行政(町)と、豊かな農産物の生産地(農協)と主力原
料調達ニーズ(企業)の三位一体の連携による工場新設により、地域・
企業それぞれの課題を解決
51
ウ
主体間の利害調整による地域全体としての利益の拡大
複数の主体間で利害関係が相反する状況がある中で、それぞれの主体が連携し
てバランス調整を行うことにより、地域全体としての利益の拡大につながること
が期待できる。
【参考事例】
No.
事業者名等
Ⅲモデル地域:羅臼町
(3)
Ⅱ3
ふらのまちづくり株式会社
(北海道富良野市)
Ⅱ9
中札内村農業協同組合
(北海道中札内村)
内容
地元産食材を単に地域外からのニーズに応じて移出するばかりでな
く観光資源として地域内における流通を促進し、双方のバランス調整
による地域全体としての利益の拡大を目指すこととした
「フラノマルシェ」は、食をテーマとしつつ敢えて軽食以外の食事を
提供するスペースを設けず、周辺の飲食店情報を充実して商店街への
誘導を狙うなど来場者のまちなか回遊を促し、中心市街地全体の活性
化につなげる
多彩な商品アイテムは地元メーカーと連携して展開(JAの事業だけ
が伸びても地域の振興につながらなければダメだという考え)
なお、食品加工業と個別の各分野との連携により期待できる具体的な内容につ
いては、
「2 取り組むにあたってのポイント」内、
「(2)地域全体へ展開するた
めのポイント」において後述する。
52
2 取り組むにあたってのポイント
続いて、
「Ⅱ 優良先進事例の収集・整理」及び「Ⅲ モデル地域における調査・検討
等」の結果を基に、食品加工業の振興による地域活力向上の実現に向けて取り組むにあ
たってのポイントについて考察する。
(1)食品加工業の振興のためのポイント
食品加工業は基本的に民間企業によるビジネスであり、市場における熾烈な競争の
中で需要をつかんで商品を販売し、利益を上げていかなければならない。地域におい
て取り組む上では、スケールメリットを有する大企業の商品との差別化はもちろんの
こと、全国各地において様々な地域特産品が次々と生み出されている中で、消費者等
に選ばれ支持される魅力ある商品を開発し、着実に販売していく必要がある。
ここでは、事業確立にあたっての3つのステップ(①企画構想段階、②事業立ち上
げ段階、③拡大・発展段階)におおまかに分類した上で、重要と考えられるポイント
について整理する。
① 企画構想段階
ア
基本フレームの明確化
まずは、地域が有する資源や特性等を把握した上で、準備できる資金や人員等
も考慮して、基本フレーム(コンセプト、ターゲット、商品構成、事業規模)を
明確化する必要があり、おおまかに分類して、
「少量・多品種、高付加価値の商品」
「中間レベルの商品」
「大量・低価格の商品を安定供給」の3つのパターンが想定
される。
[少量・多品種、高付加価値の商品]
設備投資を抑え、手づくりの感覚で付加価値が高い商品を少量・多品種で製造・
販売する。
食にこだわる消費者や観光客などを主なターゲットとする。
【参考事例】
No.
事業者名等
Ⅲモデル地域:美幌町
(2)
Ⅲ(3)
Ⅱ21
モデル地域:羅臼町
Ⅱ50
有限会社マーレ旭丸
(北海道せたな町)
株式会社瀬戸内ジャムズガーデン
(山口県周防大島町)
内容
・美幌豚醤「まるまんま」は製造に係る全工程が手作業
・派生商品の開発・販売に取り組むこととした(多品種化)
・”地産地消“の徹底・強化を図るとともに、”地産全消“展開として地域
外への販売促進に取り組むこととした
羅臼ブランドを活かした付加価値の高い最終消費者向け少量多品種
の商品開発・販売展開に向けて検討することとした
・瀬戸内海の島の果実(島みかん・カボス・ユズ・イヨカン等)を使
ったミックスジャムやマーマレードは種類も多く人気商品
・それぞれの甘みや苦みを活かすため、皮を下ゆでしたり、そのまま
煮たり、繊細なレシピで調理し、年間で 110 種類もの商品を販売
・冬でもおいしく食べられる「焼きジャム」を開発
・吟味した海産物からつくられた高級珍味などを販売
・あくまで一次産業(漁業部門)を基盤として、加工・販売を発展さ
せる
・自社で購入すると高額になる機械が必要な加工については、地元の
企業に生産委託
・加工・販売部門の売り先は、百貨店の物産展が7割以上
[中間レベルの商品]
上記「少量・多品種、高付加価値の商品」と下記「大量・低価格の商品」の中
間として、中規模の設備投資を行った上で、お土産品等として一定量を製造・販
売する。
観光客や上記「少量・多品種、高付加価値の商品」よりも幅広い層の消費者な
どを主なターゲットとする。
53
【参考事例】
No.
事業者名等
Ⅲモデル地域:真狩村
(1)
Ⅱ15
有限会社わくわく手作りファーム
川北
(石川県川北町)
Ⅱ30
株式会社高橋牧場
(北海道ニセコ町)
内容
当初構想は、過熱水蒸気処理設備を新規導入してスイートコーンのレ
トルトパックを加工・製造し、地元のおみやげ品等として販売するこ
とを想定した(検討の結果、新規設備導入は現時点においてはリスク
が大きいと判断して見合わせ)
・自社で麦芽製造設備や缶ビールの製造ラインを導入してこだわりの
地ビールを製造
・北陸新幹線開業を見据え、ビジネスマンや旅行者をターゲットに新
商品「金沢百万石ビール」を開発
・加工販売施設「ニセコミルク工房」を建設し、のむヨーグルト、ア
イスクリーム、シュークリーム等の洋菓子を加工・販売
・ニセコ町の人気観光スポットの一つ
[大量・低価格の商品を安定供給]
大規模の設備投資を行った上で、冷凍、カット、レトルト、ペースト等の一次
加工品を需要に応じて大量かつ安定的に製造・販売する。
主に業務用食材として、外食産業、コンビニ、スーパー、総菜・弁当業者、産
業給食業者などをターゲットとする。
【参考事例】
No.
事業者名等
Ⅲモデル地域:真狩村
(1)
Ⅲモデル地域:羅臼町
(3)
Ⅱ20
株式会社ベジタコーポレーション
(広島県福山市)
Ⅱ26
株式会社ジェイエイフーズみやざ
き
(宮崎県西都市)
内容
村内における農産物の一次加工工場(洗浄、皮むき、カット等)の新
設に向けて検討することとした
地域内における大型冷凍冷蔵施設の新設により加工原料の貯蔵環境
の改善を図るとともに、地域の豊富な漁獲物を活かした大量流通向け
一次加工品の安定供給体制の確立による付加価値向上に向けて検討
することとした
・業務用・市販用のカット野菜を加工・製造する工場を新設(総事業
費 14 億円)
・実需者の高度なニーズ・品質基準を満たす能力を備えた設備を導入
し、西日本一帯にカット野菜の安定供給を図る
・九州最大規模の冷凍野菜工場を新設し、冷凍ほうれんそうを中心に
冷凍野菜の製造と販売を行っている
・100t単位で製造可能で、大口需要者の要請に対応可能(周年供給
可能)
イ 数値目標設定
事業構想の推進を図る上では、ビジョンの共有や意欲向上のため、まずは粗々
でも一定のシミュレーションの下で数値目標を設定することが有効である。
【参考事例】
No.
事業者名等
Ⅲモデル地域:真狩村
(1)
Ⅱ44
邑南町
(島根県邑南町)
内容
有識者委員から、以下の例が示された
年間 100 万人の観光客×購買率 30%
⇒ 年間 30 万人の購買客数
⇒ 年間 30 万人×購買単価 1,000 円
⇒ 村として年商3億円
“A級グルメ” 立町を打ち出した「農商工等連携ビジョン」において、
5年後を目途に以下の数値目標を設定
・食と農に関する 5 名の起業家輩出
・定住人口 200 名の確保
・観光入り込み客数 100 万人の実現
ウ 外部との連携
一次生産者による食品加工事業への新規参入や小規模な食品加工事業者におけ
る新たな事業展開にあたっては、食に関する専門知識、情報、ノウハウ、資金、
人員等が不足する場合が想定され、企画構想段階から積極的に外部との連携を図
り、不足する部分を補完することが有効である。
54
a)食に精通した専門家との連携
食に精通した専門家と連携し、専門知識等のアドバイスを得ながら市場競争力
のある商品を開発する。
なお、著名な料理人等と連携することにより、商品開発時のみならず、商品化
後の販路開拓時においてPR効果や強力なバックアップを得られる場合もある。
【参考事例】
No.
事業者名等
Ⅲモデル地域:真狩村
(1)
Ⅲモデル地域:羅臼町
(3)
Ⅱ7
美瑛町農業協同組合
(北海道美瑛町)
Ⅱ33
Ⅱ52
株式会社ドリームキッチンあごづ
(岩手県奥州市)
新栄水産有限会社
(山形県酒田市)
内容
食品加工事業を展開していくにあたり、地元レストランの著名シェフ
から商品開発サポートや対外 PR 等について協力を得ることとした
新たな地産地消メニューや高次加工品の開発にあたっては、既に交流
のある著名料理研究家や料理人とのコラボレーションを図るとした
上で検討することとした
野菜レストランは、北海道を代表する著名シェフとの共同プロジェク
トとして企画し、これまでの取引関係では気づかなかった野菜の魅
力、使い方を学ぶことができた
地元料理人がアドバイザーとして参画し、商品開発や資材調達、販路
開拓などを支援(後にアドバイザーを社長として株式会社化)
近郊の人気イタリアレストランと連携し、レストランは、魚醤油を使
用した料理提供とプロデュース店舗での販売促進活動等を行う
b)大学・試験研究機関との連携
大学や試験研究機関と連携し、専門的知見からのアドバイスを得ながら商品開
発や製造技術の確立を図る。自らの懸案事項について相談して課題解決を図る場
合のほか、大学等における研究成果を活用した商品化についての提案を受けて共
同で取り組む場合もある。
【参考事例】
No.
事業者名等
Ⅲモデル地域:美幌町
(2)
Ⅱ46
Ⅱ47
Ⅱ53
北海道魚醤油生産組合
有限会社釧路フィッシュ
(北海道釧路市)
マルカサフーズ有限会社
(富山県氷見市)
内容
美幌豚醤「まるまんま」の製造工程における技術的課題の解決及び新
商品開発に係る技術的な面についてオホーツク圏地域食品加工技術
センターから助言を得ることとした
道総研食品加工研究センターが開発した特許技術をベースに新型魚
醤油を開発し、これを使用した加工品を試作
道総研食品加工研究センターからスケトウダラから味噌をつくるこ
とを提案され、共同開発に取り組み「魚味噌」を商品化
冷凍技術の課題に直面した際、県の食品研究所や県立大学に指導を仰
ぎ、切り分けたぶりを深層水に浸けた後に急速冷凍する方法を開発
c)企業との連携
情報、ノウハウ、資金、人員等が不足して、単独での事業化が難しい場合は、
企業との連携が有効であり、おおまかに分類して、
「既存の食品加工事業者等との
連携」「食に興味を持つ新規参入企業との連携」「特殊技術を持つ企業との連携」
の3つのパターンが想定される。
[既存の食品加工事業者等との連携]
既存の食品加工事業者等と安定的な取引関係を構築し、事業の安定を図るとと
もに、情報、技術、ノウハウ等の提供を受け、商品開発や品質向上等を図る。
【参考事例】
No.
事業者名等
Ⅲモデル地域:真狩村
(1)
Ⅱ株式会社もち米の里ふうれん特産
2
館
(北海道名寄市)
内容
既存の食品加工事業者との連携の下、村内における農産物の一次加工
工場(洗浄、皮むき、カット等)の新設に向けて検討することとした
・大手外食企業や大手コンビニチェーンの原料に採用され、事業が安
定するとともに、原料供給を機に大手外食企業から専門スタッフが
派遣されて製造や衛生に関する様々なノウハウの提供を受け、大手
のレベルに対応することで品質の向上と信用力を得て次の取引につ
ながり、農家の自信、向上心にもつながった
・大福もちの開発にあたっては、製造技術が未熟な自社だけでは難し
いと判断し、洋菓子メーカーと共同開発
55
[食に興味を持つ新規参入企業との連携]
平成 21 年の農地法改正により企業等が農業に参入しやすくなり、また、CSR
(企業の社会的責任)に対する要請の高まりなども背景に、農業や食関連産業に
新規参入する企業が少なからずある中、十分な経営体力を持つ企業と連携し、資
金、人員、設備等の拠出を得て、共同で食品加工事業を立ち上げる。
【参考事例】
No.
事業者名等
Ⅱ株式会社サンライズ西条加工セン
23
ター
(愛媛県西条市)
Ⅱ25
JR九州ファーム株式会社
内容
・大手農業資材メーカーによる農業参入の一つで、加工会社を設立し、
カット野菜工場を新設
・当該社のほか、地元運送会社、地元農協、市の第3セクター、地元
金融機関等が共同出資するなど地域と連携した取組
・大手鉄道会社が九州各地で農業に参入
・行政(県、市)
、農協、農業者など地域の関係者と合意形成を行った
上で参入し、従業員の地域雇用に積極的に取り組むなど、地域との
連携を密にしている
・加工品(ジェラート、カステラ)の製造にあたっては、地域の加工
会社や老舗菓子店と連携
[特殊技術を持つ企業との連携]
特殊な技術を持つ企業と連携し、特殊技術を活かして商品の差別化や不利な条
件の克服などを図る。
【参考事例】
No.
事業者名等
Ⅲモデル地域:真狩村
(1)
Ⅱ17
株式会社早和果樹園
(和歌山県有田市)
Ⅱ49
株式会社おくしり桜水産
(北海道奥尻町)
内容
過熱水蒸気処理技術を活用してスイートコーンの採れたての美味し
さをそのままパックして他社先行品との差別化を図ることとし、当該
設備を有する企業と連携(委託)して商品化することとした
・地元食品加工業者と連携した特殊な搾汁技術(チョッパー・パルパー
方式=みかんの皮をむいて裏ごしする)により、皮をむいた生のみ
かんを食べた食味をジュースで実現し、他の製品との差別化を図る
・搾汁は委託加工だったが、経営規模を拡大し、自社搾汁工場を建設
高品質冷凍保存技術を持つ食品製造業者と連携し、奥尻島の水産物
(真ホッケ等)を独自の技術で冷凍・加工し、離島のハンディを克服
エ 商品開発
地域において地元の資源を活かした新たな加工品を開発しようとする場合、大
手メーカー等との差別化を考えると、まずは、「地域性」「素材や製法へのこだわ
り」「新鮮さ」「安全・安心」といった面でのアピールが重要になる。ただし、全
国各地で同様の考えの下、こだわりの加工品が次々と生み出されている中で、た
だ単に「いいもの」を作っただけでは市場に受け入れられるとは限らない。すな
わち、消費者や実需者のニーズを十分に把握した上で「求められるいいもの」を
商品化することが重要である。他方、コスト低減等を考慮し、規格外品や未利用
資源を有効活用するという視点も重要である。
a)地域性、素材や製法へのこだわり、新鮮さ
他者の商品との差別化を図る上では、ここだけにしかないこだわりの商品、産
地ならではの新鮮なおいしさ、消費者の食の安全・安心への意識の高まりへの対
応などが重要である。
【参考事例】
No.
事業者名等
Ⅲモデル地域:真狩村
(1)
Ⅲ(2)
モデル地域:美幌町
内容
・軸付きスイートコーンの真空レトルトパックの商品化を目指すにあ
たり、甘さと食感が特徴であるブランド品種「恵味」を使用
・過熱水蒸気処理技術を活用してスイートコーンの採れたての美味し
さをそのままパックして他社先行品との差別化を図る
・美幌豚醤「まるまんま」は、オレイン酸が通常の豚の 1.5 倍ある「美
幌豚」を原料に使用した万能調味料であり、豚肉を使ったうま味調
味料は全国的にも珍しい
・製造過程において水を一切加えず、豚肉本来の味を凝縮
56
Ⅱ15
有限会社わくわく手作りファーム
川北
(石川県川北町)
Ⅱ30
株式会社高橋牧場
(北海道ニセコ町)
Ⅱ43
有限会社ひよこカンパニー
(鳥取県八頭町)
ビールには二条大麦を原料に使用するのが一般的である中、北陸の気
候に適した六条大麦を使用して独自性と地域性を打ち出し、さらに、
大手のビールに比べて GABA が多く含まれる製法を確立し、機能性
で差別化
加工品は、新鮮でこだわった生乳を使用し、素材の良さを最大限に引
き出すことを第一とする(シュークリームのクリームは食べやすさよ
りも素材の良さを優先し、流れ出すほどやわらかい)
地下水と自家配合の天然飼料(添加物や抗生物質等の薬品を一切使用
しない)を給餌し平飼いすることで、安全・安心なこだわりの鶏卵を
生産(最終小売価格が1個100円)
b)安全・安心、鮮度保持
最終消費者向け商品において「新鮮さ」や「安全・安心」のアピールが重要で
あることは前述のとおりであるが、業務用取引においても大手外食チェーン等が
求める品質基準レベルは高く、今や「安全・安心」は必須条件とも考えられ、ま
た、先進技術の活用等により鮮度保持を図ることも重要である。
【参考事例】
No.
事業者名等
Ⅲモデル地域:羅臼町
(3)
Ⅱ株式会社ベジタコーポレーション
20
(広島県福山市)
Ⅱ23
株式会社サンライズ西条加工セン
ター
(愛媛県西条市)
Ⅱ60
沖縄栽培水産株式会社
(沖縄県与那国町)
内容
ブリのブランド化にあたっては、活締めの徹底、シャーベットアイス
等の先進技術の活用など鮮度保持に留意することとした
外食チェーン店など大手企業の高度なニーズ・品質基準を満たす能力
を備えた設備を導入(365 日体制で、加工から流通まで4℃以下での
管理)し、高品質(安心・安全)なカット野菜の安定供給を図る
・四国最大級の HACCP 基準を満たしたカット野菜工場を新設し、万
全なセキュリティ対策で、しっかりと品質管理された安全・安心な
カット野菜を提供
・世界初の鮮度保持技術である「iR フレッシャー(近赤外光を活用し
た鮮度保持機械)」を導入、近赤外光照射により蒸散を抑制、しお
れや傷みを低減し、みずみずしさやツヤを維持
・特殊凍結技術を利用し、高品質な車海老の安定供給を実現
・最新技術を活用した冷凍加工は、活き海老と遜色ない品質と使い勝
手から高い評価を受けており、ホテルやレストランで採用
c)ニーズへの対応
素材が良い場合などはプロダクトアウト的思考(いいものだから売れるはず)
に陥りがちになるが、あくまでマーケットインのスタンス(ユーザー側の視点)
で、ニーズに合致した商品を開発することが重要であり、ニーズに対応するため
には、まずは情報の感度を高め、広く情報を収集する必要がある。
なお、昨今の情勢を踏まえ、「手軽さ」
「健康志向・機能性」「介護食品」「女性目
線」
「和食で海外展開」の5点をニーズへの対応にあたっての視点として例示する。
[マーケットインのための情報収集]
マーケットインのスタンスから売れる商品づくりを行うには、消費者ニーズ等
を把握するための情報収集が重要であり、金融機関等のネットワークからの情報
収集や商談会等におけるバイヤー等との意見交換、また、自ら店頭に立って直接
消費者の声を聞くことも大切である。
【参考事例】
No.
事業者名等
Ⅲモデル地域:真狩村
(1)
Ⅲ(3)
モデル地域:羅臼町
Ⅱ16
有限会社菓匠禄兵衛
(滋賀県長浜市)
内容
・スイートコーン過熱水蒸気加工の試作商品をもってテストマーケテ
ィングを行う中で消費者ニーズを把握し、今後の商品開発につなげ
ることとした
・情報をまず広く、多く、そして状況に応じてより深く入手するため
のネットワークを構築(特に金融機関との連携を強化)の上、消費
者ニーズを踏まえた商品開発等について検討することとした
水産加工業の戦略的展開(高次加工品の開発・展開、加工向け中核素
材の安定供給)に向け、まずは消費者ニーズ、実需者ニーズや業界動
向などの情報収集等から取り組むこととした
多数の催事に出展することでバイヤーとの関係を形成するとともに、
常に訴求力のある商品をバイヤーに提案できるように日頃から商品
開発のための情報収集を行う
57
Ⅱ17
株式会社早和果樹園
(和歌山県有田市)
Ⅱ22
株式会社いろどり
(徳島県上勝町)
Ⅱ50
Ⅱ58
有限会社マーレ旭丸
(北海道せたな町)
遊子漁業協同組合女性部
(愛媛県宇和島市)
・地元観光スポットで土日・休日の試飲販売を実施するほか、全国の
百貨店・高級スーパーの催事に出展
・社員総出で試飲・試食販売を全国各地で展開(年間の試飲カップは
65 万個)し、販路開拓とともに消費者ニーズを把握
当初は、「つまもの」市場が存在せず、ニーズも把握できず、なかな
か契約を結ぶに至らなかったが、時間をかけて調査して「つまもの」
に求められる条件を把握し、ビジネスとして軌道に乗せる
自ら催事の店頭に立つ漁業者は数少ないが、それを今に至るまで続け
て、顧客の声を直接吸い上げ、確実に顧客(消費者)をつかんできた
直接消費地に出向いて対面販売するので、消費者の生の声を聞き、消
費者の嗜好を肌で感じ、人気商品を創出
[ニーズへの対応にあたっての視点の例]
(視点①:手軽さ)
昨今、いわゆる「中食」
(なかしょく=調理済みのものを自宅で食べる)市場が
拡大し、消費者が簡単・手軽に調理できる加工品への需要が伸びていると言われ
ており、
「Ⅱ 優良先進事例の収集・整理」においても、冷凍野菜やカット野菜等
への参入が増加している傾向が伺えた。また、「缶つま」(=自宅でお酒を飲む際
に便利な缶詰のおつまみ)がブームとも言われている。
なお、水産庁では、平成 24 年 8 月から、気軽においしく食べられる水産加工品・
調味料を公募して「ファストフィッシュ商品」として選定する仕組みを設け、水
産物の消費拡大に取り組んでいるところである。
【参考事例】
No.
事業者名等
Ⅱ株式会社ジェイエイフーズみやざ
26
き
(宮崎県西都市)
Ⅱふるさと萩食品協同組合
57
(山口県萩市)
内容
国産冷凍野菜ニーズの増大に対応し、冷凍ほうれんそうを中心とする
冷凍野菜工場を新設。新たなバリューチェーンを構築し、全国有数の
加工用ほうれんそうの大規模産地を形成
・「萩の地魚もったいないプロジェクト」は、 “お魚を食べる。もっ
と気軽に、そしてオシャレに” をキャッチフレーズに商品開発
・オイルルージュといかたっぷり XO 醤は、水産庁「ファストフィッ
シュ商品」に選定
(視点②:健康志向・機能性)
昨今、
「健康」ブームと言われており、特定保健用食品(トクホ)の許可を受け
た食品など健康を気にする消費者をターゲットとする商品が数多く見られる。
なお、平成 27 年 4 月から、「機能性表示食品」制度(消費者庁への事前届け出
により、事業者の責任で、科学的根拠を基に商品パッケージに機能性を表示する
ことができる)が開始される見通しであり、また、北海道においても「北海道食
品機能性表示制度」
(健康食品等に含まれている機能性成分に関して、「健康でい
られる体づくりに関する科学的な研究」が行われている事実を、北海道が認定す
る制度。愛称:ヘルシーDo)を平成 25 年 4 月から実施しているところである。
【参考事例】
No.
事業者名等
Ⅱ有限会社わくわく手作りファーム
15
川北
(石川県川北町)
Ⅱ株式会社奥出雲中村ファーム
19
(鳥取県奥出雲町)
内容
六条大麦など地元産の原料を用い、また、健康・機能性に着目し、血
圧降下等の機能性成分 GABA(ギャバ)値の高いこだわりの地ビール
「金沢百万石ビール」を開発
超高齢化社会を考え、エゴマに含まれる「オメガ3脂肪酸」を活用し
た機能性食品を着想し、エゴマドレッシング等を開発
(視点③:介護食品)
高齢社会が進行する中、ペースト・ムース・ゼリー等の高齢者でも食べられる
やわらかい食事の需要が伸びていく可能性がある。
なお、農林水産省では、平成 26 年 11 月に、新しい介護食品の愛称を「スマイ
ルケア食」と定め、認知度向上や普及促進に取り組んでいるところである。
58
【参考事例】
No.
事業者名等
Ⅱ株式会社しらかわ五葉倶楽部
12
(福島県白河市)
Ⅱ13
東京中央食品株式会社
(神奈川県伊勢原市)
内容
植物工場と加工工場を併設し、植物工場で生産されるホウレンソウ等
を自社工場でムース・ペースト化し、高齢者や障がい者向けに食べる
楽しみを兼ね備えた商品を製造・販売
鹿児島県種子島の農家と首都圏の病院・福祉施設向け業務用食材メー
カーが連携し、地域特産品を使った新たな介護食品として「安納芋ゼ
リー」を開発
(視点④:女性目線)
昨今、
「○○女子」や「女子力」といった言葉がブームと言われており、消費市
場における女性の存在感はより高まっているとも考えられる。
なお、農林水産省では、平成 25 年 11 月に「農業女子プロジェクト」を立ち上
げ、女性農業者の知恵と民間企業や団体のシーズを結びつけ、新たな商品やサー
ビス、情報を社会に広く発信し、女性農業者の存在感を高めるとともに、企業連
携によるビジネス発展や生産物の高付加価値化を図っているところである。
【参考事例】
No.
事業者名等
Ⅱ有限会社池田牧場
42
(滋賀県東近江市)
内容
・女性取締役(代表の夫人)の着想により、酪農経営を発展させ、ジ
ェラートの製造・販売、農家レストラン、宿泊体験施設の運営を展開
・女性の視点で消費者ニーズ(地産地消、スローフード)を捉える
(視点⑤:和食で海外展開)
平成 25 年 12 月に「和食」がユネスコ無形文化遺産に登録され、昨今、海外に
おいて「和食」がブームと言われている。また、平成 27 年 5 月に開幕が予定され
るイタリア・ミラノ国際博覧会は「食」をテーマとしており、日本館において日
本の食や食文化が世界に向けて発信される見通しである。
【参考事例】
No.
事業者名等
Ⅱ中札内村農業協同組合
9
(北海道中札内村)
Ⅱ有限会社柏崎青果
10
(青森県おいらせ町)
内容
欧米の健康志向や日本食ブームも背景に、海外への輸出を拡大
(アメリカ、シンガポール、ロシアなど)
健康食品としての黒にんにく(にんにくを発酵させ熟成させたもの)
を世界各地に輸出(スイス、台湾、ベトナム、アメリカなど)
d)規格外品や未利用資源の有効活用
規格外品を加工原料として活用すると、低コストで仕入れができると同時にそ
れまで廃棄していたものに新たな価値を付加することとなり、また、生食に向か
ないなどで未利用となっている資源を加工原料に活用して新たな価値を付加する
ケースもあり、商品開発の上で重要な視点の一つである。
【参考事例】
No.
事業者名等
Ⅲ
モデル地域:真狩村、美幌町
Ⅱ10
Ⅱ29
Ⅱ48
有限会社柏崎青果
(青森県おいらせ町)
株式会社中央食鶏
(北海道三笠市)
株式会社パイオニアジャパン、
中野水産株式会社 ほか
(北海道稚内市)
内容
両町村において、規格外品は不使用を前提とする中、コスト削減のた
め規格外品の活用について意見があり、検討することとなった
規格外のため「はねもの」として廃棄するニンニクの有効活用のため、
黒ニンニクに着目し、
「おいらせ黒にんにく」を商品化
食鶏処理業において廃棄物として処理していた内臓部分の有効活用
に取り組み、鶏を主原料とした新しい調味料「鶏醤」を開発
主に養殖ハマチの餌として本州に出荷され、食用魚としてあまり利用
されていなかった稚内産大女子(おおなご)を有効利用して、蒲焼き
やフライ製品に加工し、北海道ブランドとして全国に販売
ただし、一方で、一次生産者側においては、生食用として出荷できない規格外
品を「 “すそもの” として加工に回す」という意識が根強くあると思われるが、昨
今、加工・業務用野菜の需要が高まる中で、前述のとおり、マーケットインやニ
59
ーズへの対応が重要となっている状況から、発想の転換(実需者のニーズに応じ
て、加工適性品種を導入し、加工・業務用規格で出荷するなど)が求められてい
ることに留意する必要がある。
【参考事例】
No.
事業者名等
Ⅱ有限会社仲野農園
6
(北海道長沼町)
Ⅱ株式会社ジェイエイフーズみやざ
26
き
(宮崎県西都市)
内容
多種類の果樹を栽培し、果樹の中心であるリンゴは消費者ニーズに応
じた品種を選定するとともに加工専用品種も栽培
産地への加工用ほうれんそうの導入にあたって、種苗メーカーや県試
験場と連携して加工適性に優れた品種の選定とその栽培方法を確立
し、加工用に適した品質・規格で安定供給
オ 前提条件整備
食品加工事業の立ち上げに向けた検討を行う上では、前提条件として、一定規
模の初期投資に耐え得る経営体力や、事業運営に必要不可欠である原材料の安定
調達についても考慮する必要がある。
a)経営体力強化
食品加工事業の立ち上げにあたっては、設備導入等に係る一定規模の初期投資
を必要とする場合が想定され、初期投資に耐え得る経営体力の強化が求められる。
先に「ウ 外部との連携」内、「c)企業との連携」において、十分な経営体力を
持つ企業との連携による共同事業化について記述したところであるが、地域内に
おいて対応する場合は、複数の事業者間の連携による分業・協業も一法である。
【参考事例】
No.
事業者名等
Ⅲモデル地域:羅臼町
(3)
Ⅱ19
株式会社奥出雲中村ファーム
(島根県奥出雲町)
Ⅱ59
野間池マグロ養殖協業体
(鹿児島県南さつま市)
内容
高次加工品の開発・展開にあたっては、水産加工業界全体で将来を見
据えた意識改革と認識共有を図った上で、業界内の連携による経営体
質の安定・強化を図るとし、経営状況などの現状把握を行った上で、
分業・協業などによる効率化に向けて検討することとした
建設会社3社それぞれが農業へ新規参入した後、3 社で連携して、
「奥
出雲町健康食品産業生産者協議会」
(通称:MOHG)を結成し、情報
交換、商品の共同販売等の協力体制を作る(その後、農産物の加工・
販売部門を現社に一本化)
種苗採捕部門を担う漁船漁業者と養殖業者によるジョイントビジネ
ス(協業)でマグロ養殖に取り組む
b)原材料の安定調達の確保
事業を運営していく上では、原材料の確保が必要不可欠であり、原材料生産に
係る地域の潜在力を見極めるとともに、安定調達のための一次生産者との連携体
制の構築が求められる。特に、生産量が限られる高品質な一次産品(ブランド品
種など)を原材料として使用する場合は留意する必要がある。
また、消費者に対して「安全・安心」をアピールする上で、トレーサビリティ
を確保する観点からも、一次生産者との連携体制の構築による原材料調達ルート
の明確化は有効である。
【参考事例】
No.
事業者名等
Ⅲモデル地域:美幌町
(2)
Ⅱ16
有限会社菓匠禄兵衛
(滋賀県長浜市)
Ⅱ34
有限会社伊豆沼農産
(宮城県登米市)
内容
・美幌豚醤「まるまんま」は、美幌高校で規格外野菜を原料に独自に
開発した飼料を用いて飼育した「美幌豚」を使用
・美幌高校のほか、町内の養豚農家とも連携して豚肉を調達
農業生産者と連携し、地元滋賀の素材をより活かした商品として「豆
大福」を開発(連携する農業者が特別栽培技術で生産した滋賀羽二重
糯米、赤えんどう、小豆を使用)
・ブランド豚肉「伊達の純粋赤豚」の確保のため、自社生産のほか地
域の農家と連携(
「伊達の赤豚会」を組織し、生産を委託)
・消費者や実需者の目線で品質にこだわり、自分たちで検食して一定
レベル以上の生肉のみを出荷
60
なお、商品の通年安定供給のための原材料の安定調達に関する内容(冷凍貯蔵、
産地リレー等)については、「③拡大・発展段階」内、「エ 商品の安定供給体制
の構築」において後述する。
② 事業立ち上げ段階
ア 事業の実現性と採算性の確保
新たな事業の立ち上げにあたっては、実現性を高め、かつ、採算性を確保する
ため、綿密な事業計画を作成するとともに、施設整備等にあたっては、必要に応
じて行政等による支援制度(補助金等)を活用することも有効である。
a)綿密な事業計画の作成
新規事業にはリスクが必ず伴うものであり、当該リスクを回避して事業を成功
させるため、綿密な事業計画を作成することが重要である。
事業計画においては、事業目的、具体の事業内容、要員計画(事業運営、現場
作業)
、年間売上高(販売単価、数量等)
、仕入(相手先、条件)、生産(時期、単
価、数量等)
、販売(相手先、条件)
、投資(運転資金、設備資金)
、資金調達(手
元資金、借入金)
、利益等を整理するのが一般的と考えられる。
【参考事例】
No.
事業者名等
Ⅲモデル地域:真狩村
(1)
Ⅱ21
株式会社瀬戸内ジャムズガーデン
(山口県周防大島町)
Ⅱ28
かわにしの丘しずお農場株式会社
(北海道士別市)
内容
当初は数千万円以上の初期投資をして新規に設備を導入する考えだ
ったが、アドバイザーからの助言を踏まえ、リスクが大きいと判断し
て設備導入は見合わせ、まずは製造委託により商品化することとした
事業立ち上げにあたり、企画書を作成するなどして十分に下調べを
し、長期の展望などもまとめ、起業における問題点を把握・解析する
とともに経営理念を確立
安易な異業種参入による失敗を防ぐため、未知の領域であった羊の飼
育方法や農場の運営方法は徹底的に視察して研究し、綿密な事業計画
を作成
b)行政等による支援制度(補助金等)の有効活用
事業に必要となる施設整備等にあたっては、規模や内容にもよるが事業者にと
ってそれなりの負担となる場合が想定され、六次産業化・地産地消法に基づく「総
合化事業計画」や農商工等連携促進法に基づく「農商工等連携事業計画」等の認
定を受け、補助金等の支援制度を有効活用することも一法である。
なお、平成 25 年 2 月に株式会社農林漁業成長産業化支援機構(A-FIVE)が開
業して「農林漁業成長産業化ファンド」が制度化され、また、同じく平成 25 年 2
月から「地域経済イノベーションサイクル」の先行モデル事業(地域経済循環創
造事業交付金)が開始されるなど、地域金融機関との連携の下で、多様な資金調
達により事業化を図る枠組みもある。
【参考事例】
No.
事業者名等
Ⅲモデル地域:羅臼町
(3)
Ⅱ株式会社 OcciGabi Winery
5
(北海道余市町)
Ⅱ17
Ⅱ51
株式会社早和果樹園
(和歌山県有田市)
株式会社あおもり海山
(青森県深浦町)
内容
施設整備にあたっては、支援制度(補助金など)の活用も検討するこ
ととした
農林漁業成長産業化支援機構(A-FIVE)のサブファンドである「北
洋6次産業化応援ファンド」からの出資を受け、ワイナリーとレスト
ランをオープン
・地域経済循環創造事業交付金を活用して、みかん搾汁工場を建設
・地元信用金庫と連携(融資等)
・農林漁業成長産業化支援機構(A-FIVE)のサブファンドである「と
うほくのみらい応援ファンド」からの出資を受け、地場産マグロの
冷凍加工場を整備
・総事業費は約 4 億円で、資金調達は、補助金 2 億円と出資 2 億円(う
ちファンドからの出資 1 億円)で賄う予定
61
イ
事業推進体制づくり
新たな事業を立ち上げ、運営・推進していく上では、
「組織」や「人」が重要な
要素と考えられ、必要に応じて新たな「組織づくり」を行うとともに、外部との
連携を図った上での「人づくり」が重要である。
a)組織づくり
事業立ち上げにあたっては、新たにグループを結成して取り組む場合や、法人
(新会社)を設立する場合があり、新会社については、関係者による共同出資や、
住民出資による事例が見られる。
[有志によるグループ結成]
有志が集まってグループ(任意団体)を結成して食品加工事業に取り組む。農
(漁)協女性部を母体とする事例などが多く見られる。
ただし、事業が拡大するとともに家業との両立が困難となって、法人化する事
例も見られる。
【参考事例】
No.
事業者名等
Ⅱ株式会社ドリームキッチンあごづ
33
(岩手県奥州市)
Ⅱ有限会社フレッシュしおかぜの里
56
(山口県下関市)
Ⅱ58
遊子漁業協同組合女性部
(愛媛県宇和島市)
内容
・女性農業者有志 10 名が集まり任意組合を設立し、加工・直売に挑戦
・事業拡大に伴い家業との両立が困難となり株式会社に移行
・地域特産品開発に意欲的な女性有志 15 人でグループを組織して加
工・直売・食堂に挑戦
・後に法人化
漁協女性部が、地元水産物を活用した新たな加工品の開発と宣伝を兼
ねた移動販売車による各種イベントへの出店に取り組んでいる
[関係者の共同出資による新会社設立]
地域内外の関係者が共同出資して株式会社等を新たに立ち上げ、強固な連携体
制の下で事業に取り組む。
なお、農林漁業成長産業化支援機構(A-FIVE)による「農林漁業成長産業化フ
ァンド」を活用する場合は、農林漁業者と2次・3次事業会社の共同出資による
合弁事業体(6次産業化事業体)設立が前提条件となっている。
【参考事例】
No.
事業者名等
Ⅲモデル地域:美幌町
(2)
Ⅱ株式会社しらかわ五葉倶楽部
12
(福島県白河市)
Ⅱ株式会社ベジタコーポレーション
20
(広島県福山市)
Ⅱ23
Ⅱ51
株式会社サンライズ西条加工セン
ター
(愛媛県西条市)
株式会社あおもり海山
(青森県深浦町)
内容
美幌豚醤「まるまんま」の事業化にあたって、商工会議所と地元高校
生が中心となって合同会社を設立
・地域の農業者と九州で農産物の生産に取り組む法人により会社設立
・大手商社系の震災復興を支援する財団が出資
・1次産業者(農業生産者)、2次産業者(漬物協同組合)及び3次産
業者(漬物卸、青果卸)が連携(共同出資)した合弁事業体
・農林漁業成長産業化支援機構(A-FIVE)のサブファンドが出資
異業種から参入の大手農業資材メーカーを中心に、地元運送会社、地
元農協、卸会社(県外)
、市の第3セクター、地元金融機関が出資し、
多様な主体による連携体制を構築(産・官・金連携)
・地元漁業者とパートナー企業(東京の飲食店等経営会社)が共同出
資して合弁会社を設立
・農林漁業成長産業化支援機構(A-FIVE)のサブファンドが出資
[住民出資による新会社設立]
地域をあげて食品加工事業等の地域活性化に資するプロジェクトを推進するた
め、趣旨に賛同する地域住民等の出資により株式会社等を新たに立ち上げ、事業
の実施主体とする。
62
【参考事例】
No.
事業者名等
Ⅲモデル地域:真狩村
(1)
Ⅱ14
Ⅱ18
横山振興会、株式会社のろし
(石川県珠洲市)
株式会社きてら、株式会社秋津野
(和歌山県田辺市)
内容
食品加工事業をはじめとする地域活性化プロジェクトを地域一体と
なってビジネスの手法を用いて推進を図るため、住民出資による株式
会社等の事業運営法人立ち上げに向けて検討することとした
地区の多くの住民の出資により株式会社を設立し、市が整備した交流
施設の管理運営や地元農産物を活用した6次産業化に取り組む
事業内容ごとに住民出資による法人を設立(直売所:きてら、農家レ
ストラン等:秋津野)し、補助金だけに頼らない地域づくりを進める
b)人づくり
事業立ち上げにあたっては、外部企業等との連携による人材育成や外部人材の
受け入れなど外部が持つ技術・ノウハウ等を積極的に活用することが有効である。
また、将来に向けた人材育成を図るという観点から、地元高校生を巻き込んだ
取り組みも有効である。
[外部企業等との連携による人材育成]
新規参入等で自らが技術・ノウハウ等を有しない場合は、外部企業等との連携
を図り、従業員を研修に派遣するなどにより人材を育成する。
【参考事例】
No.
事業者名等
Ⅱ株式会社奥尻ワイナリー
4
(北海道奥尻町)
Ⅱ美瑛町農業協同組合
7
(北海道美瑛町)
Ⅱ有限会社フジタファーム、
37
有限会社レガーロ
(新潟県新潟市)
内容
醸造技術者の確保のため、道内ワイナリーの協力を得て、社員を派遣
し技術を習得
事業立ち上げに先だって、プロジェクトメンバー2名を大手広告代理
店の研修会に派遣
乳製品の加工技術やノウハウの不足に際し、国内外での技術研修に参
加(ジェラートの本場イタリアでの研修を含む)したほか、酪農家と
の意見交換等によりノウハウを取得
[外部人材の受け入れ]
地域外からのいわゆる「よそ者」を受け入れ、外部からの客観的な視点を取り
入れるとともに、外部人材が有する経験・ノウハウや行動力などを活かす。
なお、
「地域おこし協力隊」を有効活用している事例が見られる。
【参考事例】
No.
事業者名等
Ⅲ
モデル地域:3町村
Ⅱ44
邑南町
(島根県邑南町)
Ⅱ55
海士町
(島根県海士町)
Ⅱ57
ふるさと萩食品協同組合
(山口県萩市)
内容
・3町村とも共通して地域関係者委員等の中に地域外出身者が含ま
れ、外部からの客観的な視点や斬新な発想による提案があり、活発
な意見が交わされた
・うち真狩村については、地域おこし協力隊の活用促進など、外から
の視点や新しい発想等を活用するため、地域外からの人材等の受け
入れ促進に向けて検討することとした
・うち美幌町については、
「よそ者」の視点による新しい食べ方の提案
に向けて、地域外の専門家(シェフ等)によるメニュー開発につい
て検討することとした
・うち羅臼町については、スキーリゾート地域と連携して、観光ノウ
ハウを有し英会話にも対応できる人材をそれぞれの繁忙期・閑散期
に応じて地域間で交流し、インバウンド観光の推進に活かすなど、
繁閑の時期に応じた地域間連携による人材確保の「しくみ」づくり
に向けて検討することとした
地域おこし協力隊を活用した「耕すシェフ」など外部人材を積極的に
受け入れ、 “A級グルメ” による町づくりを担う人材を育成するとと
もに、将来的に町内で起業してもらうことも期待
外部人材を積極的に受け入れて地域産業が活性化
・島外出身の商品開発研修生の視点で島の食文化を発掘してさざえカ
レーを商品化
・U・I ターン者と地元漁師が協力していわがきの養殖に成功
・I ターンの若者の起業による干しナマコの輸出事業 など
・プロジェクトの中心人物(道の駅駅長・組合専務理事)は、全国公募
で採用された民間大手広告企業出身のIターン者
・外部からの客観的な視点を取り入れるとともに、当該者が持つマー
ケティング等の知識・経験も活かして、マスコミ媒体を通じて活発
に情報発信
63
[地元高校生等の活用・育成]
地元高校生等と連携し、高校生等の若い感性によるアイデアや活発な行動力を
活用するとともに、高校生等に実体験を通じて食品加工事業に関する様々なノウ
ハウを学んでもらい、将来の地域産業を担う人材の育成を図る。
【参考事例】
No.
事業者名等
Ⅲ
モデル地域:3町村
Ⅱ44
邑南町
(島根県邑南町)
Ⅱ54
株式会社平松食品
(愛知県豊橋市)
内容
3町村とも共通して、商品開発や販売PR活動等に地元高校生の積極
的な参画を図り、高校生のアイデアや行動力を活用するとともに、将
来の地域産業の担い手の育成を図ることとした
・地元高校生(H25・H26 スイーツ甲子園全国大会出場)と連携して
特産スイーツを開発
・平成 26 年にオープンした町立「食の学校」は、地域の農業と食文
化を 100 年先の子どもたちに伝承することを目的とし、食のプロや
伝統食を知る地元の方々などによる料理教室等を実施する新商品開
発と人材育成の場
・地元漁協と連携し、地元水産高校が漁獲したカツオを水揚げして流
通させる体制を確立するとともに、高校生とコラボして商品開発に
取り組み、高校生の意見を積極採用(ジュレ化など)して若い感性
による新たな商品を開発。目新しさに加え、ストーリー性があり、
地域からもバックアップを得る
・さらに、水産試験場の協力も得て、未利用の地元産魚介類を活用し
た商品化を進め、地元流通・加工業者も加わってインターンシップ
も視野に入れた活動へと発展
ウ 販売戦略
食品加工事業を新たに立ち上げるにあたっては、つい商品づくりの面ばかりに
傾注してしまうケースが少なくないと想定されるが、当然のことながら、「造る」
だけではなく「売る」ための戦略も重要である。
a)地域内及び周辺における着実な販売
商品の販売にあたっては、まずは地元でしっかり売る、すなわち「足元の徹底」
が重要であり、地元直売所や道の駅等の観光拠点、また、周辺の駅・空港等にお
ける着実な販売を確立する必要がある。
[地元直売所・道の駅等で販売]
地域外からの観光客等をターゲットに、地元直売所や道の駅等で販売する。特
に、観光拠点としての存在感が増している道の駅の活用が有効である。
また、観光客等のみならず地元住民への普及・浸透を徹底し、地元の特産品と
して愛着を持ってもらい、安定したリピート顧客を確保するとともに、口コミ等
による地域内外への販売拡大に向けた “営業マン” になってもらうという視点も
重要である。
また、価格決定権がある自社直売所で安定した直売体制を構築することができ
れば、経営基盤の安定・強化が期待できる。
【参考事例】
No.
事業者名等
Ⅲモデル地域:真狩村
(1)
Ⅲモデル地域:美幌町
(2)
Ⅱ2
Ⅱ6
株式会社もち米の里ふうれん特産
館
(北海道名寄市)
有限会社仲野農園
(北海道長沼町)
内容
地域内における商品販売の場として道の駅を活用することとし、道の
駅の集客力強化のための機能拡充について検討することとした
・地元の物産館(JR 駅舎内)や地元スーパーで販売
・“地産地消” の徹底・強化を図り、地域の皆に知ってもらい、使って
もらい、愛してもらい、町民一人一人に “営業マン” になってもら
うことを目指すこととした
・道の駅の指定管理者となり、直営店にあった売店とレストランを道
の駅に移転
・道の駅売店の売上額は、従来店舗に比べて約3倍に増加
農家が生産から加工、ファームレストランまでを営み、自家農産物を
高付加価値化(生産する果実の8割を直売やレストランで使用)
64
Ⅱ40
Ⅱ57
有限会社石川養豚場
(愛知県半田市)
ふるさと萩食品協同組合
(山口県萩市)
独自ブランドの豚肉と加工品(ハム、ソーセージ等)を自社直売所等
で販売し、60%強の直売体制を構築
地産地消スタイルの水産物直売所「道の駅・萩しーまーと」は、「地
元を大切に」というコンセプトで地元リピーターを確保し、市民の台
所として定着
[周辺の駅・空港等で販売]
道外からの観光客等をターゲットに、旅客流動の多い周辺の駅・空港等におい
て販売する。
まずは、地元直売所から販売を始め、その後順次拡大を図っていくにあたって
の第2ステップとして駅・空港等内への出店する事例が見られる。
【参考事例】
No.
事業者名等
Ⅱ美瑛町農業協同組合
7
(北海道美瑛町)
Ⅱ有限会社わくわく手作りファーム
15
川北
(石川県川北町)
Ⅱ磯沼ミルクファーム
36
(東京都八王子市)
Ⅱ有限会社伊盛牧場
45
(沖縄県石垣市)
内容
地元ショールームに続き、2号店として新千歳空港内に出店
北陸新幹線開業を見据え、ビジネスマンや旅行者をターゲットに、こ
だわりの地ビール「金沢百万石ビール」を開発し、金沢駅、小松空港
等で販売
直売体制による販売強化のため、八王子駅ビルに直営店を設置し、イ
ートインスペースを開設
地元加工工場兼直売所に続き、2号店として新石垣空港内に直営店を
出店して事業拡大(当該年度の売上高は、前年度の約2倍の見込み)
なお、地域外へ向けた販売にあたってのポイントついては、
「③拡大・発展段階」
内、
「ウ 域外需要を開拓するための販売戦略」において後述する。
b)ストーリーづくり
大手メーカーや他の地域で作られる類似商品との差別化を図るため、ストーリ
ー性をもって消費者にアピールする。
特に、商品が高品質であるがゆえに高価格帯である場合などは、商品づくりの
背景や作り手のこだわりなどを積極的にアピールして、消費者にその価値を理解
してもらうことが重要である。
【参考事例】
No.
事業者名等
Ⅲ
モデル地域:3町村
Ⅱ2
Ⅱ25
Ⅱ41
株式会社もち米の里ふうれん特産
館
(北海道名寄市)
JR九州ファーム株式会社
株式会社伊賀の里モクモク手づく
りファーム
(三重県伊賀市)
内容
3町村とも共通して、
「こだわりのアピール」や「ストーリーづくり」
が重要という旨の意見があった
農家が作る餅のイメージが感じられる商品づくりを心がけ、ストーリ
ーで大手と差別化
養鶏事業では、「健康なたまごは健康な親鶏から」という理念の下、
鶏の福祉を優先した飼育方法により健康な親鶏の飼育にこだわり、そ
のこだわりの生産方法のPRと併せて卵やスイーツを販売
・経営理念を明確化(7つのテーゼ)し、商品開発や新たな取組はこ
れに照らした判断を徹底
・地元に密着し「生産者」
「地域性」を前面に大手と差別化
c)消費者の心をつかむデザイン
販売促進にあたっては、デザイン面も要素として重要であり、必要に応じて外
部デザイナー等を活用した上で、訴求力のあるデザインとする。
【参考事例】
No.
事業者名等
Ⅲモデル地域:真狩村
(1)
Ⅱ16
有限会社菓匠禄兵衛
(滋賀県長浜市)
内容
デザイナーを活用(外部に依頼又は専属で確保)した上で、消費者の
心をつかむ斬新かつ洗練したパッケージデザインやデザイン性の高
い情報発信について検討することとした
デザインにこだわりおしゃれな和菓子という新たなカテゴリーを創
造(店舗設計、商品設計、パッケージをデザイン事務所と連携して総
合的にブランドイメージを形成)
65
Ⅱ24
馬路村農業協同組合
(高知県馬路村)
Ⅱ41
株式会社伊賀の里モクモク手づく
りファーム
(三重県伊賀市)
遊子漁業協同組合女性部
(愛媛県宇和島市)
Ⅱ58
外部デザイナーとのコラボレーションによる「ゆずや製品だけではな
く、村をまるごと売る」という広告戦略により、地元の人にとっては
当たり前の、のどかな農村風景、素朴な村人たちの笑顔、元気な子供
たちなどをテレビコマーシャル等で発信し、大反響を呼ぶ
デザイン担当者(7名)を内部に置き、パッケージデザイン、POP、
DM、情報誌などを戦略的に展開
商品パッケージ、ユニフォーム、移動販売車等への統一デザインによ
り、遊子ブランドを効果的にPR
d)試食による価値の理解
商品が高品質であるがゆえに高価格帯である場合などは、そもそも商品を手に
取ってもらえないということも想定されるため、試食を通じて食べて価値を理解
してもらい、納得した上で購入してもらえる顧客を開拓する。
【参考事例】
No.
事業者名等
Ⅱ美瑛町農業協同組合
7
(北海道美瑛町)
Ⅱ株式会社早和果樹園
17
(和歌山県有田市)
Ⅱ43
有限会社ひよこカンパニー
(鳥取県八頭町)
内容
ショールームでは、野菜のおいしさを知ってもらうため、試食コーナ
ーを常設
・地元観光スポットで土日・休日の試飲販売を実施するほか、全国の
百貨店・高級スーパーの催事に出展
・社員総出で試飲・試食販売を全国各地で展開(年間の試飲カップは
65 万個)し、販路開拓とともに消費者ニーズを把握
コストがかかる生産のため高価な卵となる
(最終小売価格が 1 個 100
円)が、卵を無料で配付して食べてその価値を理解してもらって顧客
をつかみ、リピーターを増やす
e)食べ方の提案(レシピ作成)等
食べ方の提案(レシピ作成)や使い方の説明を併せて行い、顧客拡大を図る。
なお、昨今、インターネット上のレシピサイトが普及拡大しており、紙媒体の
みならずインターネット上でのレシピの発信も有効と考えられる。
【参考事例】
No.
事業者名等
Ⅲモデル地域:美幌町
(2)
Ⅱ10
Ⅱ46
有限会社柏崎青果
(青森県おいらせ町)
北海道魚醤油生産組合
内容
一部委員による聞き取り調査において「使い方が分からない」という
意見が多かったことを踏まえ、レシピカードを作成することとし、ま
た、レシピコンテストの実施等について検討することとした
海外見本市等に積極的に出展し、試食のほか、料理のレシピなど自社
製品の様々な食べ方を提案
魚醤油を使用したレシピを開発(活用ポイントや 16 品の料理による
レシピ集を作成)
f)リピーター獲得
安定した販売を確保するため、消費者に対するきめ細かな対応などで強固なフ
ァンをつかみ、リピーター獲得を図る。
【参考事例】
No.
事業者名等
Ⅱ株式会社 OcciGabi Winery
5
(北海道余市町)
Ⅱ31
上士幌町
(北海道上士幌町)
Ⅱ38
Ⅱ41
有限会社池多ファーム
(富山県富山市)
株式会社伊賀の里モクモク手づく
りファーム
(三重県伊賀市)
Ⅱ50
有限会社マーレ旭丸
(北海道せたな町)
内容
・畑と醸造設備を見学した上でファンになってもらうというインディ
ヴィデュアル・マーケティング(ひとりづづ対面商法)を実施
・ワインの木オーナー制度で、消費者とのつながりをつくる
寄付金の使途だけではなく、寄付者から寄せられたコメント等も
Web サイトに掲載(寄付者に上士幌を身近に感じてもらい、町のフ
ァンになってもらうことを目指す)
消費者にきめ細かなサービスを提供するとともに、HPやブログを活
用した情報発信で固定客(リピーター)を確保
・経営理念に共感する消費者とのコミュニケーションを図って組織化
(モクモクネイチャークラブ)し、それが販路としても機能。会員
に対するきめ細かな情報発信を通じてリピーターを確保
・会員数:46,000 人(入会金を払い(年会費無料)
、商品の割引、限
定イベントへの参加などのメリットがある)
利便性が高い会員制ネット通販を展開するとともに、会員向けの割引
価格も設定してリピート顧客を獲得
66
エ 衛生管理の徹底
「こだわり」や「安全・安心」をアピールして付加価値の高い商品を展開して
いく上では、製造過程における衛生管理の徹底が重要であり、従業員への研修等
のソフト面及び施設整備等のハード面の両面における対策が必要である。
また、海外への輸出を視野に入れる場合は、輸出先国の求める衛生条件を満た
すため、HACCP 認証等の取得を前提に検討する必要がある。
【参考事例】
No.
事業者名等
Ⅲモデル地域:羅臼町
(3)
Ⅱ32
Ⅱ54
農事組合法人共働学舎新得農場
(北海道新得町)
株式会社平松食品
(愛知県豊橋市)
内容
付加価値の向上にあたっては衛生管理が大前提となることを踏まえ、
ソフト・ハード両面での衛生管理対策を図ることとし、まずは現状を
把握した上で、講習会・研修会の開催や施設整備に向けた検討等を行
うこととした
HACCP 取得
・HACCP、ISO22000 等の認証を取得し、品質管理、衛生管理を徹底
・佃煮を「TERIYAKI FISH」と表現して、積極的に海外マーケットを
展開している
オ 通年操業による雇用安定とコスト低減
事業立ち上げにあたっては、従業員の通年雇用の確保や、設備の稼働率向上に
よるコスト低減を図るため、加工場の通年操業が望まれる。
「商品ラインナップの充実」や「商品の安定供給体制の構築」による対応が考
えられ、これらについては、下記の「③拡大・発展段階」内において詳述する。
【参考事例】
No.
事業者名等
Ⅲモデル地域:真狩村
(1)
Ⅲ(3)
モデル地域:羅臼町
Ⅱ2
株式会社もち米の里ふうれん特産
館
(北海道名寄市)
Ⅱ26
株式会社ジェイエイフーズみやざ
き
(宮崎県西都市)
内容
当初構想は、過熱水蒸気処理設備を新規導入し、設備を通年で稼働さ
せるため、スイートコーンのみならず、将来的には、ジャガイモ、カ
ボチャ、ユリ根等の他の地元産品を活用した展開を想定(ただし、検
討の結果、新規設備導入は見合わせることとした)
・水産加工業においては、漁獲量の季節変動に連動して繁閑の差が激
しく、雇用環境が不安定、かつ、計画的・継続的な人材の確保・育
成が困難となっている(なお、繁忙期は一時的にパート労働者や旅
行者を活用して稼働している)
・加工原料を安定確保し、加工場の通年操業に資する地域内における
大型冷凍冷蔵施設の新設等に向けて検討することとした
・当初の主力商品だった「切り餅」ギフトの製造・販売は冬期年末に
集中し、夏期は需要が少なく、従業員の通年雇用は困難だったため、
通年でも一定の需要が見込める大福もちの開発に取り組み、「ソフ
ト大福」を商品化
・マイナス 50℃まで下げられる冷凍機を使い、「流通のために冷凍し
なくてはならない」というマイナス面を「より美味しくするための
冷凍」というプラスの発想へ転換
・ほうれんそうを中心に収穫期の異なる原料野菜 13 品目(全て国産)
を加工し、多様化する商品ニーズや実需者からの要望に対応すると
ともに、ほうれんそうの端境期に対応
・通年操業を可能とし、稼働率向上によるコスト低減と雇用の安定を
確保
③ 拡大・発展段階
ア 地域ブランド力の向上
事業の拡大・発展に向けては、より多くの消費者に認知され、そして信頼され
るべく、地域ブランド力の向上に努める必要がある。また、地域内の複数のブラ
ンド品目を組み合わせたPR展開なども有効である。
なお、平成 26 年 6 月に「特定農林水産物等の名称の保護に関する法律(地理的
表示法)
」が成立し、地理的表示保護制度の運用が開始される見通し(平成 27 年 6
月施行予定)である。この制度は、地域で育まれた伝統と特性を有する農林水産
67
物・食品のうち、品質等の特性が産地と結び付いており、その結び付きを特定で
きるような名称(地理的表示)が付されているものについて、その地理的表示を
知的財産として登録し、保護するものであり、当該制度を活用して地域ブランド
力を高めることも有効と考えられる。
【参考事例】
No.
事業者名等
Ⅲモデル地域:羅臼町
(3)
Ⅱ19
Ⅱ29
株式会社奥出雲中村ファーム
(島根県奥出雲町)
株式会社中央食鶏
(北海道三笠市)
Ⅱ51
株式会社あおもり海山
(青森県深浦町)
内容
・従前から地元産水産物のブランド化に取り組んできたが、近年漁獲
量が増加しているブリのブランド化など、羅臼ブランドのさらなる
向上を図ることとした
・複数のブランド品目を組み合わせた PR 展開として、昆布とブリの
コラボレーション(昆布出汁のブリしゃぶ等)などについて検討する
こととした
地域を巻き込んで「奥出雲ブランド」として商品を販売
・地域の新しい特産品とすることを目指し「三笠の鶏醤」と命名
・地域名を冠し、地元産農産物にこだわった製品により、新たな地域
ブランドを創出
・地元農業者を中心とする協議会や、市、商工会等と連携し、地域を
巻き込んだ販路拡大を進めている
地場産マグロの冷凍加工場を整備して、地元のご当地グルメ「深浦マ
グロステーキ丼」を提供する飲食店等への通年安定供給体制を構築
し、県内一の水揚量を誇る「深浦マグロ」のブランド化を推進する
イ 安定経営体制確立
事業の拡大・発展に向けて、安定した経営体制を確立する必要があり、中・長
期的視点を持って経営に取り組むとともに、状況に応じて、事業運営マネジメン
トの向上を図ることが重要である。
a)中・長期的視点を持った経営
目先のことばかりではなく、中・長期的な視点を持って経営に取り組む。
また、前述のとおり、事業立ち上げ初期段階においては補助金等を有効に活用
することもポイントではあるが、いつまでも補助金等に頼らない健全経営への脱
皮を意識することも重要である。
【参考事例】
No.
事業者名等
Ⅲモデル地域:美幌町
(2)
Ⅱ30
株式会社高橋牧場
(北海道ニセコ町)
内容
美幌豚醤「まるまんま」の売上げは年々着実に増加しているものの採
算ベースに乗らず、補助金を活用した上での事業運営となっていたた
め、中・長期的経営方針の明確化など事業運営の改善に向けて具体的
な対応を検討することとした
酪農部門の規模拡大や加工販売部門の多角化は、長期的展望の下、段
階的に実施
b)事業運営マネジメントの向上
事業立ち上げ初期段階においては副業的な形で取り組んだところ、事業の拡大
に伴い本業との両立が困難となる場合があり、状況に応じて、専属人材を配置す
るなど事業運営マネジメントの向上を図る。
【参考事例】
No.
事業者名等
Ⅲモデル地域:真狩村
(1)
Ⅲ(2)
モデル地域:美幌町
Ⅱ33
株式会社ドリームキッチンあごづ
(岩手県奥州市)
内容
アドバイザーから、当初構想において必要となる事業規模を想定した
場合、農業者の兼業による事業運営は困難であり、事業運営にあたる
専属人材が必要との指摘を受けた
事業推進の「核」となり利益を追求する人が不在で、取組がその場限
りとなり、反省点等がその後十分に活かされていないとの意見を踏ま
え、PDCA を導入するとともに、事業全体を統括するマネジメント人
材の配置について検討することとした
・当初は女性農業者有志による任意組合で取り組んだが、売上げ増大
に伴い家業との両立が困難となる
・企業としての発展(経営の拡充と安定化)を目指し、アドバイザー
(地元料理人)を社長として株式会社化
68
ウ
域外需要を開拓するための販売戦略
商品の販売にあたっては、上記「②事業立ち上げ段階」内においては、まずは
地元でしっかり売ることが重要である旨記述したところであったが、事業の拡
大・発展に向けては、市場規模が限られる地域内だけの販売にとどまることなく、
積極的に地域外に向けた販売拡大を図ることが重要である。
a)商品バリエーションの拡充
[商品ラインナップの充実]
多様な消費者ニーズに対応するため、関連商品の開発等により多種多様な商品
ラインナップの充実を図る。
なお、商品ラインナップの充実とともに加工場の通年操業を確保し、従業員の
通年雇用の確保や、設備の稼働率向上によるコスト低減を図るという視点も重要
である(上記「②事業立ち上げ段階」内、「オ 通年操業による雇用安定とコスト
低減」参照)
。
【参考事例】
No.
事業者名等
Ⅲモデル地域:美幌町
(2)
Ⅱ1
株式会社白亜ダイシン
(北海道岩見沢市)
Ⅱ17
株式会社早和果樹園
(和歌山県有田市)
Ⅱ21
株式会社瀬戸内ジャムズガーデン
(山口県周防大島町)
Ⅱ24
馬路村農業協同組合
(高知県馬路村)
内容
・商品が1つしかないのが課題だったため、派生商品の開発に取り組
み、
「豚ジンカン」を商品化(平成 27 年 3 月販売開始)
・他の試作品についても引き続き商品化に向けて取り組むこととした
生食用のミニトマトを用いたトマトジュースのほか、ジュース、ジャ
ム、パスタソース、パスタ、クッキー、チーズケーキ、チョコレート
など商品ラインナップを充実(約 100 種類)
高級有田みかんジュース「味一しぼり」のほか、販売価格をやや低め
に設定した「飲むみかん」も販売。みかんジュースのほか、小さなみ
かんを丸ごとシロップに漬けた「てまりみかん」をはじめ、ジュレ、
ジャム、みかんポン酢、アイスバーへと商品を拡大
・年間で 110 種類もの商品を販売
・観光客が減少する冬季の売上確保のため、冬でもおいしく食べられ
る「焼きジャム」を開発・販売するとともに、季節便制度を取り入
れた年間販売の仕組みをつくる
・ポン酢醤油やゆずドリンクが代表的なヒット商品
・商品ラインナップを拡充し、ドレッシングや調味料等も加えて約 60
種類に。近年は、ゆずの種に着目し、新規に化粧品を開発
[セット販売]
多彩な商品や地域の一次産品との組み合わせなどによるセット販売で、
「お得感」
を提案するとともに、宅配や贈答品としてのニーズをつかむ。
なお、セット販売を通じた一次生産者等との連携により新たなビジネスに発展
する場合もある。
【参考事例】
No
事業者名等
Ⅲモデル地域:美幌町
(2)
Ⅱ株式会社きてら、株式会社秋津野
18
(和歌山県田辺市)
Ⅱ株式会社中央食鶏
29
(北海道三笠市)
Ⅱ有限会社ひよこカンパニー
43
(鳥取県八頭町)
内容
地元の野菜と組み合わせた販売や他の豚加工品(ハム、ソーセージ等)
へ展開した上でのセット販売等について検討することとした
店頭販売のほか、季節の柑橘とジュース等の農産加工品を詰め合わせ
た「きてらセット」等の宅配で地域外の顧客も取り込むことに成功
要冷蔵製品は百貨店において取扱いに難があるが、ポン酢・ドレッシ
ングとのギフト向けセット販売とし、首都圏の百貨店で定番化を実現
・地元の野菜と「天美卵」を詰め合わせた「野菜BOX」の宅配を新
たに開始
・地元の農業生産者と連携することで新たなビジネスに
b)域外へ向けた販売方法の確立
[アンテナショップ、地域産品セレクトショップでの販売]
こだわりの地域産品を求める消費者が来店するアンテナショップや地域産品を
専門的に取り扱うセレクトショップで販売展開し、北海道内の消費地や首都圏等
の大消費地における販売拡大を図る。
69
【参考事例】
No.
事業者名等
Ⅲモデル地域:美幌町
(2)
Ⅱ株式会社ドリームキッチンあごづ
33
(岩手県奥州市)
内容
美幌豚醤「まるまんま」は、札幌市内の「北海道どさんこプラザ」等
で取り扱いがある
加工施設での直売のほか、地元スーパー、高速道路の SA や東京のア
ンテナショップ等で販売
[インターネット通信販売]
インターネット通信販売により、地域外へ向けた販売拡大を図る。
なお、サイト開設にあたっては、充実した情報発信と消費者側の利便性向上が
重要である。
【参考事例】
No.
事業者名等
Ⅲモデル地域:美幌町
(2)
Ⅱ邑南町
44
(島根県邑南町)
Ⅱ50
有限会社マーレ旭丸
(北海道せたな町)
内容
美幌豚醤「まるまんま」の “地産地消” の徹底・強化と “地産全消” 展
開を図るため、WEB による情報発信を強化することとした
・自治体が運営するネットショップ「みずほスタイル」を全国でもい
ち早く立ち上げ(平成 17 年開設)
・特産品のブランド化や販路拡大に貢献するとともに、観光・宿泊情
報の発信により観光客や UI ターン希望者の情報収集源になった
・ネット通販を早くから開始(平成 14 年から)
・登録会員がメールアドレスとパスワードの組み合わせでログインす
ると発送状況の確認やかんたん購入機能を利用できる仕組みを用意
・会員向けの割引価格も設定してリピート顧客を獲得
c)ふるさと納税の有効活用
ふるさと納税を有効活用して対外情報発信を強化し、地域外へ向けた販売拡大
を図る。
なお、ネットショップのシステムを有効活用してふるさと納税の取組を強化し
ている事例もある。
【参考事例】
No.
事業者名等
Ⅲモデル地域:美幌町
(2)
Ⅱ上士幌町
31
(北海道上士幌町)
内容
美幌豚醤「まるまんま」の “地産全消” 展開を図るため、ふるさと納
税による対外PRのさらなる強化に向けて検討することとした
・既に構築していたネットショップのシステムを有効活用してふるさ
と納税に係る取組を強化し、寄付額を大幅に伸ばしている
・Web サイト上からフォーム形式での直接入力やクレジットカード
決済導入で納税者側の利便性を向上
・特産品のブランド化に貢献(道外でも知名度が向上し、リピーター
購入者も現れる)
・大都市圏からの寄付額が大きな割合を占める(東京、神奈川、大阪、
愛知、千葉で全体の 50%以上)
d)メディアを活用した情報発信
メディアを活用して強力な情報発信を行い、地域外における認知度を高める。
【参考事例】
No.
事業者名等
Ⅲモデル地域:美幌町
(2)
Ⅱ磯沼ミルクファーム
36
(東京都八王子市)
Ⅱ39
Ⅱ44
株式会社天狗、堀田農産有限会社
(岐阜県下呂市)
邑南町
(島根県邑南町)
Ⅱ57
ふるさと萩食品協同組合
(山口県萩市)
内容
平成 26 年 10 月にテレビ番組で相次いで紹介され、これを契機とし
て売上げが急増した(当該月だけで、直近半年間の月平均の3倍以上)
新聞記事への掲載をきっかけに有名デパートに商品が認められ、その
後、雑誌やテレビ等の紹介による集客力の向上や各種料理店や菓子店
での食材使用により売上が向上
新ブランド「納豆喰豚」の普及・確立に取り組む中、岐阜県(地元)
出身のタレントにより週刊誌で紹介され、全国から注文が殺到した
・全国の田舎の逸品を集め、邑南町独自の審査を行う全国公募の認定
制度「Oh!セレクション」を実施
・審査員に著名人を起用してメディア報道が増え、販路拡大につなが
った
TV、新聞、雑誌等にレギュラーを確保して圧倒的なボリュームで “萩
のお魚情報“ を発信し、「萩市=美味しい魚の宝庫」というイメージ
を定着
70
e)積極的かつ地道な営業活動
展示会や百貨店の催事等への積極的な出展などによりバイヤー等とのコネクシ
ョンを形成し、百貨店等での商品採用を図る。
なお、前述のとおり、展示会等の場で営業活動を行うと同時に消費者ニーズ等
の情報収集を行い、商品力向上や新たな商品開発にフィードバックすることも重
要である。
ただし、展示会等への出展は費用がかかる一方で一時的な効果にとどまる場合
が多いとの指摘もあるところであり、費用対効果も考慮しつつ、販売店との継続
的な取引につながる営業活動に努める必要がある。
【参考事例】
No.
事業者名等
Ⅲモデル地域:美幌町
(2)
Ⅱ16
有限会社菓匠禄兵衛
(滋賀県長浜市)
内容
・ “地産全消” 展開を図るため、観光物産協会と連携し、地域外にお
けるイベントに出展して積極的な営業、商談を行うとともに、商品
力向上や新商品開発のための消費者ニーズ等に関する情報収集を行
うこととした
・ただし、アドバイザーから、イベント出展は一定の効果は期待でき
るが、一時的な効果にとどまる場合が多く、一方でかかる経費が高
いので、イベントだけではなく販売店との継続的取引の確保が重要
との指摘があった
・百貨店の催事に積極的に出展し、バイヤーとの関係を形成
・地道な営業を積み重ねて常設店舗設置へ結び付ける
f)高価格を受け入れる大消費地(首都圏等)における販路開拓
[食にこだわる消費者や富裕層をターゲット]
高い品質を最大の武器とし、プレミアム路線の商品ラインナップや高級感ある
デザインを前面に打ち出し、食にこだわる消費者や富裕層をターゲットに首都圏
等の百貨店や高級スーパー等に向けた展開を図る。
【参考事例】
No.
事業者名等
Ⅲモデル地域:美幌町
(2)
Ⅱ株式会社白亜ダイシン
1
(北海道岩見沢市)
Ⅱ16
有限会社菓匠禄兵衛
(滋賀県長浜市)
内容
既に高価格帯であることを踏まえ、都市圏(札幌圏、首都圏等)の富
裕層をターゲットとした展開等について検討することとした
・トマトジュースは、ワインボトルを容器として意外性とおしゃれ感
覚をアピールし、また、価格設定は一般的な製品の2倍に設定
・富裕層やファッションに敏感な女性をターゲットとするデザイン戦
略で高級感ある「ノース・ファーム・ストック」ブランドを確立し、
首都圏の有名百貨店、高級スーパー、高級ホテル等を通じて販売
・プレミアムタイプと通常タイプの2種類の商品展開
・デザインにこだわり、おしゃれな和菓子という新たなカテゴリーを
創造し、顧客単価も上昇
[首都圏等のホテルや高級レストラン等をターゲット]
業務用高級食材として、首都圏等のホテルや高級レストラン等をターゲットに
販路拡大を図る。
なお、下記の「エ 商品の安定供給体制の構築」において後述するが、一般的
に業務用取引においては商品の通年安定供給を確保する必要があり、そのための
体制整備が重要となる。
【参考事例】
No.
事業者名等
Ⅱかわにしの丘しずお農場株式会社
28
(北海道士別市)
Ⅱ60
沖縄栽培水産株式会社
(沖縄県与那国町)
内容
・サフォークラム肉を CAS 冷凍で品質を保持した上、通年で安定的に
出荷するとともに、ベーコン、ソーセージなど多彩な商品を開発
・高級にこだわり、大都市圏で積極的に販路を開拓し、高級レストラ
ンや百貨店との取引に成功
・高級食材として知られる車海老を気候温暖な南の島で養殖して周年
生産を実現するとともに、特殊凍結技術を利用して安定供給を実現
・飲食店、ホテル、ブライダル関係などの大口需要者を新たに開拓し、
首都圏等への販売チャンネルを拡大
71
エ 商品の安定供給体制の構築
需要の拡大に際して、必要に応じて加工施設や貯蔵施設を拡充し、市場へ安定
的に商品を供給する体制を構築する必要がある。
また、前述のとおり、一般的に業務用取引においては商品の通年安定供給、す
なわち、一定時間に、一定量を、一定の品質、一定の価格で供給することが求め
られる(いわゆる「4定条件」=定時、定量、定品質、定価格)ことに留意する
必要がある。ただし、一方で、一般的に原材料となる農産物等には収穫時期等の
制約があることから、何らかの対策を講ずる必要があり、冷凍貯蔵又は産地リレ
ーにより通年安定供給に対応している事例が多く見られ、また、先進技術を活用
した植物工場等により原材料の周年生産を可能としている事例もある。
なお、商品の安定供給体制の構築とともに加工場の通年操業を確保し、従業員
の通年雇用の確保や、設備の稼働率向上によるコスト低減を図るという視点も重
要である(上記「②事業立ち上げ段階」内、
「オ 通年操業による雇用安定とコス
ト低減」参照)
。
[需要の拡大に応じた施設拡充等]
需要の拡大に際して、必要に応じて順次施設整備等を行い、商品を安定的に供
給できる生産体制を整える。
【参考事例】
No.
事業者名等
Ⅲモデル地域:美幌町
(2)
Ⅱ9
中札内村農業協同組合
(北海道中札内村)
内容
テレビ効果による急激な需要増があった際に製造が追いつかず欠品
が生じたことを踏まえ、人員増又は小規模な機械設備の導入による生
産体制の整備について検討することとした
加工施設を順次増強して原料処理量及び貯蔵能力を向上させ、実需者
のニーズに応じた通年安定供給体制と安定した販売ルートを確立
[冷凍貯蔵]
大型冷凍設備を導入し、加工用原料の安定確保又は冷凍加工品の大量貯蔵によ
る安定供給体制を整える。
【参考事例】
No.
事業者名等
Ⅲモデル地域:羅臼町
(3)
Ⅱ26
株式会社ジェイエイフーズみやざ
き
(宮崎県西都市)
Ⅱ28
Ⅱ51
かわにしの丘しずお農場株式会社
(北海道士別市)
株式会社あおもり海山
(青森県深浦町)
内容
漁獲量の季節変動が極端に大きい一方で、地域内における冷凍冷蔵保
管能力が低く、加工用の原料を通年で安定的に確保できないことが、
地域の水産加工業の発展を阻害する要因の一つであり、地域内におけ
る大型冷凍冷蔵施設の新設に向けて検討することとした
・九州最大規模の冷凍野菜工場を新設し、冷凍ほうれんそうを中心に
冷凍野菜の製造と販売を行っている
・100t単位で製造可能で、大口需要者の要請に対応可能(周年供給
可能)
CAS 冷凍設備の導入と、人工授精による出生時期のコントロールに
より高品質なラム肉の通年出荷体制を確立
地場産マグロの冷凍加工場を整備して、地元のご当地グルメ「深浦マ
グロステーキ丼」を提供する飲食店等への通年安定供給体制を構築
[産地リレー]
広域にわたる生産者との連携や卸会社との連携による市場ネットワークを活用
した各地からの調達など、産地リレーにより原材料の安定調達を確保し、通年安
定供給体制を整える。
【参考事例】
No.
事業者名等
Ⅱ株式会社ベジタコーポレーション
20
(広島県福山市)
内容
・1次産業者(農業生産者)、2次産業者(漬物協同組合)及び3次
産業者(漬物卸、青果卸)が連携(共同出資)した合弁事業体
・1次産業者は茨城県、長崎県、宮崎県、2次産業者は広島県、3次
産業者は広島県、福岡県、東京都と広域にまたがる連携体制を構築
・原材料は、共同出資者の農業生産者から仕入れるほか、同じく共同
出資者の青果仲卸の青果市場ネットワークを活用して各地の農業者
から仕入れ、広域連携体制を活かした産地リレーで安定調達を図る
72
[周年生産]
植物工場や養殖により周年生産体制を確立して原材料の安定調達を確保し、通
年安定供給体制を整える。
【参考事例】
No.
事業者名等
Ⅱ株式会社しらかわ五葉倶楽部
12
(福島県白河市)
Ⅱ60
沖縄栽培水産株式会社
(沖縄県与那国町)
内容
・植物工場と加工工場を併設し、高齢者や障がい者向けのムース食品
を製造
・植物工場では年間 100 トンのホウレンソウを生産し、ほかに地元の
契約農家が栽培するかぼちゃやトマトなどを用いて、年間 750 万食
のムース食品を製造
・植物工場は閉鎖型で、LED 照明等を使用して、季節や天候の影響を
受けずに、ホウレンソウやレタスなどの農作物を屋内で計画的に栽
培できる
・沖縄県与那国島で車海老を養殖し、周年生産
・従前の養殖場(佐賀県・長崎県・山口県)では、海水温の関係で、
出荷が 8 月~翌年の 1 月までに限定されていたが、気候が温暖な地
の利を活かして周年生産を実現
オ ICTの利活用
上記の「エ 商品の安定供給体制の構築」内において、植物工場について触れ
たところであるが、先進技術の活用という面では、昨今、食・農業分野において
もICT(情報通信技術)を有効活用している事例が見られるところであり、情
報通信ネットワークやクラウド技術を活用した作業の効率化・高度化なども有用
である。
【参考事例】
No.
事業者名等
Ⅱ株式会社早和果樹園
17
(和歌山県有田市)
Ⅱ22
株式会社いろどり
(徳島県上勝町)
Ⅱ26
株式会社ジェイエイフーズみやざ
き
(宮崎県西都市)
上士幌町
(北海道上士幌町)
Ⅱ31
内容
・マルドリ方式、ICT 農業システム、光センサーの活用により、天候
による変動を最小限にとどめ、美味しい(高糖度)みかんの生産を
実現(
「できたみかん」ではなく「つくったみかん」で勝負)
・ICT 農業システムは、大手 IT 企業及び県の果樹試験場と連携。セン
サー、スマートフォンでデータ収集・蓄積し、生育状況、作業内容、
作業コストを「見える化」
・高齢者でも容易に扱えるように改良したパソコンを開発し、個々の
生産農家と迅速かつ的確な受発注を行うための情報ネットワークを
構築
・パソコンは受発注に利用するだけではなく、生産者が市場の状況や
自らの取組の成果(売上高や順位等)を見ることができ、意欲向上
や工夫を促すことにも寄与
生産管理システムを導入して完全なトレサシステムを構築し、ほ場ご
との状況を把握
・かねてから ICT を活用したネットショップ事業を展開してきた中
で、既存システムを有効活用してふるさと納税に係る取組を強化
・Web サイト上からフォーム形式での直接入力やクレジットカード
決済導入で納税者側の利便性を向上
・一連の業務をシステム化、関係者が情報共有し、謝礼品の発送をス
ムーズに行う
73
(2)地域全体へ展開するためのポイント
食品加工業の振興による地域活性化の萌芽をより幅広く波及させ、地域全体の活力
向上へ展開するためには、地域内外の多様な分野との連携(=コラボレーション)が
重要である。
以下、主な連携対象分野ごとにポイントを整理する。
ア
一次産業とのコラボレーション
食品加工業と密接に関連する一次産業については、食品加工業の振興に伴い、
波及的に後継者不足、耕作放棄地など一次産業の抱える諸課題の解決につながる
ことが期待できることは前述のとおりである。
これらにとどまらず、両者がより積極的に連携して取り組むことにより、より
強力かつ相乗的な効果が期待できる。
[市場競争力のある産地形成]
食品加工事業者が大消費地等における営業販売活動を通じて農産物等に係る最
新の市場ニーズをつかんで生産者に還元し、生産者は当該情報に基づきニーズに
対応した生産を行うとともにPR活動など食品加工業の取り組みに積極的に協力
することにより、地域全体として市場競争力のある産地形成が期待できる。
【参考事例】
No.
事業者名等
Ⅱ美瑛町農業協同組合
7
(北海道美瑛町)
Ⅱ23
株式会社サンライズ西条加工セン
ター
(愛媛県西条市)
内容
・積極的に販促イベントや商談会に参加してバイヤー等から反響を得
て農協が販売の第一線の情報を持ち、生産者はどのような農産物を
作るべきかを農協に相談するとともに、PRや販促活動に協力
・美瑛選果の知名度で、様々な業者から取引の依頼が来るようになり、
産地主導による価格決定が可能となった
自治体、農協、農家等と共同して業務・加工用野菜に取り組み、地域
全体一体となって、産地イメージの創生、商品ブランド力の構築を図
っている
[機械化一貫体系の確立による収穫体系の改善等]
両者が連携して加工・業務用野菜のニーズに対応した冷凍野菜・カット野菜等
に取り組むことにより、加工・業務用野菜の大規模産地を形成し、収穫機等を導
入した機械化一貫体系の確立による収穫体系の改善(低コスト・省力化)や大型
コンテナの利用による流通コストの低減等が期待できる。
【参考事例】
No.
事業者名等
Ⅱ中札内村農業協同組合
9
(北海道中札内村)
Ⅱ株式会社ジェイエイフーズみやざ
26
き
(宮崎県西都市)
内容
高性能ハーベスターを導入し、収穫体系を大幅改善(適時の短期収穫
と労働負担軽減)
市内の生産者と契約栽培を行うとともに、加工用に特化した大規模機
械化一貫体系と大型コンテナの導入や作業受託により生産コストの
削減に取り組んでいる
[耕作放棄地の再編等による景観保全]
両者が連携して耕作放棄地の再編等に取り組むことにより、農山漁村の美しい
風景・景観の保全が期待できる。
【参考事例】
No.
事業者名等
Ⅱ有限会社わくわく手作りファーム
15
川北
(石川県川北町)
Ⅱ有限会社ひよこカンパニー
43
(鳥取県八頭町)
内容
大麦の生産は休耕田を活用、農業による地域おこしで、郷土の美しい
風景を保全
自治体や JA、生産者と協議会を設立して、農業体験を通して里山の復
活に取り組み、地元の景観を保全
74
[循環型農業による環境保全等]
「耕畜連携」などの連携体制が構築され、循環型農業の実践による地域の環境
保全や国産飼料の活用促進による食料自給率向上が期待できる。
なお、
「安全・安心」を求める消費者に対するアピールにあたっても有効である。
【参考事例】
No.
事業者名等
Ⅲモデル地域:美幌町
(2)
Ⅱ有限会社菓匠禄兵衛
16
(滋賀県長浜市)
Ⅱかわにしの丘しずお農場株式会社
28
(北海道士別市)
Ⅱ35
株式会社平田牧場
(山形県酒田市)
Ⅱ37
有限会社フジタファーム、
有限会社レガーロ
(新潟県新潟市)
内容
豚ぷん堆肥を活用した野菜との連携(環境配慮をアピール)について
検討することとした
菓子製造過程で排出される卵の殻等を土づくり・土壌改良に使用し、
循環型農業を構築
自家産のデントコーン、甜菜工場から出るビート粕や地元農家から集
める等級外の大豆・小麦を飼料に活用し、飼料自給率の向上とともに
トレーサビリティ確保とコスト削減を両立
・農家等と連携して飼料用米の活用に積極的に取り組み、「こめ育ち
豚」としてブランド化
・豚の排泄物の堆肥化を行い、農業、畜産業の垣根を超えた自然循環
機能を構築するとともに、生産・流通・販売まで一貫で行う品質管
理体制(トレーサビリティ)を確立
・休耕地の農地保全や食糧自給率向上に貢献
耕畜連携による循環型農業(農業者が生産する飼料作物を酪農部門で
利用するとともに堆肥化し、農業者に還元)で、安心・安全を求める
消費者に訴求
イ
食品加工事業者間のコラボレーション
食品加工事業者間で積極的に連携することにより、単体によるPR力の不足等
を補完するとともに、地域ブランド力の向上や加工事業の集積による一大加工産
地の形成など展開の広がりが期待できる。
【参考事例】
No.
事業者名等
Ⅲモデル地域:美幌町
(2)
Ⅱ株式会社 OcciGabi Winery
5
(北海道余市町)
Ⅱ32
農事組合法人共働学舎新得農場
(北海道新得町)
Ⅱ46
北海道魚醤油生産組合
内容
他地域との連携による発信力強化を図ることとし、北海道内他地域の
動物由来調味料製造事業者との連携について検討することとした
・起業を目指す人向けのスクールを開設して仲間を増やし、町の産業
としての確立を目指す
・本格的なワイナリーゾーンとしての集客・観光化による町全体の活
性化を目指す
・「本物のチーズ」のブランド化につながるよう、道内のチーズ工房
6社と連携して、品質評価の仕組み・基準を作り高付加価値化
・十勝地方のチーズ工房 10 社以上と連携して、チーズの共同販売も
実施
北海道魚醤油の統一名称を「雪ひしお」と決定、ロゴ、イメージキャ
ラクターを作成してブランドを構築し、認知度アップ、消費拡大に取
り組んでいる
ウ 商業・サービス産業とのコラボレーション
[中心市街地活性化]
地域の商店街などと連携し、食品加工業の取り組みと連動して、地域ぐるみで
中心市街地のにぎわい創出などに取り組むことにより、より強力かつ広範囲にわ
たって効果が波及する展開が期待できる。
【参考事例】
No.
事業者名等
Ⅲモデル地域:真狩村
(1)
Ⅱ3
ふらのまちづくり株式会社
(北海道富良野市)
内容
加工品の販売促進に向けた観光拠点の強化等として道の駅の機能拡
充等を図るとした中で、
「観光客の集客に加え、地域住民の交流の場
にもなり得る喫茶・カフェコーナーの設置」など中心市街地活性化を
並行して目指して検討することとした
「フラノマルシェ」は、食をテーマとしつつ敢えて軽食以外の食事を
提供するスペースを設けず、周辺の飲食店情報を充実して商店街への
誘導を狙ったり、周辺商店街と連携したイベントを実施するなど来場
者のまちなか回遊を促し、中心市街地全体の活性化につなげる
75
[新たなご当地メニューづくり]
地域内の旅館・飲食店と連携し、食品加工業の取り組みと連動して、地域ぐる
みで新たなご当地メニューづくりなどに取り組むことにより、より強力かつ広範
囲にわたって効果が波及する展開が期待できる。
【参考事例】
No.
事業者名等
Ⅲモデル地域:羅臼町
(3)
Ⅱ51
株式会社あおもり海山
(青森県深浦町)
内容
地元産食材を活かした観光客向け飲食サービスの強化・充実を図るこ
ととし、地域内の飲食・宿泊事業者間の連携による、新たな地産地消メ
ニューの開発・共通化(地域固有の希少魚種を活用した“羅臼めし“な
ど)に向けて検討することとした
・新ご当地グルメ「深浦マグロステーキ丼」は、地元の旅館、飲食店
の 7 名の料理人が連携し、著名なご当地グルメプロデューサーの指
導を受けながら、試行錯誤を重ねた末にメニュー化に至る
・地場産マグロの冷凍加工場を整備して、観光客に「マグロステーキ
丼」の通年供給を可能とする
エ
観光とのコラボレーション
食品加工事業に関連して直売所やカフェ等を併設することにより、地域の観光
スポットとなり得ることは前述のとおりである。
これにとどまらず、観光協会等と連携し、食品加工業の取り組みと連動して、
加工体験ツアー、さらには一次生産者も巻き込んだ収穫体験ツアー、農家レスト
ラン、農家民泊など地域ぐるみのグリーン・ツーリズム等に取り組むことにより、
より強力かつ広範囲にわたって効果が波及する展開が期待できる。
【参考事例】
No.
事業者名等
Ⅲモデル地域:真狩村
(1)
Ⅱ18
株式会社きてら、株式会社秋津野
(和歌山県田辺市)
Ⅱ27
Ⅱ30
株式会社あいあいファーム
(沖縄県今帰仁村)
株式会社高橋牧場
(北海道ニセコ町)
内容
観光協会と連携し、農業体験、加工体験、農家レストラン、農家民宿
など新たな観光メニューの創出(真狩流グリーンツーリズムの展開)
に向けて検討することとした
収穫体験など農業体験による消費者との交流を図り、農家有志で「秋
津野農家民泊の会」を発足し、学童等を中心とする農家民泊の受け入
れを進める
観光協会、民泊受け入れ農家と連携・分担して、修学旅行生の農業体
験を受け入れ
観光協会と連携して祭事やイベントを企画するなど地域を巻き込ん
だ取り組みを展開
オ
医療・福祉とのコラボレーション
「食」を通じて医療・福祉分野と連携することにより、高齢社会等の課題解決
への貢献が期待できる。
なお、農林水産省等では「医福食農連携」として、機能性食品や介護食品の開
発・普及、薬用作物の国内生産拡大、障害者等の就労支援など「農」と「福祉」
の連携等の医療・福祉分野と食料・農業分野との連携の取組を推進している。
【参考事例】
No.
事業者名等
Ⅱ株式会社しらかわ五葉倶楽部
12
(福島県白河市)
Ⅱ26
Ⅱ27
株式会社ジェイエイフーズみやざ
き
(宮崎県西都市)
株式会社あいあいファーム
(沖縄県今帰仁村)
内容
・高齢者や障がい者向けのムース食品を製造
・今後、敷地内に高齢者向け福祉施設を併設し、介護で働くことが難
しくなった人でも要介護者を預けながら働くことができる環境づく
りを目指す
・将来的には、給食・宅配センターやデイケアセンター施設の建設を
計画。高齢化対策、介護関係の一大施設として、商工業と医療・福
祉分野との連携による産業活性化が期待されている
宮崎県医師協同組合と連携協定を結び、病院食における県産冷凍野菜
の利用を促進しており、安全・安心な県産冷凍野菜を県内の病院等へ
提供することで、食の部分で県民の健康に貢献
・地域の診療所と連携して「健康カフェ」を運営し、予防医学(元気
なままの高齢者を増やしていく)に取り組む
・旅行会社と連携して、農業と観光と医療を結び付けた「ヘルスツー
リズム」による健康体験ツアーを実施
76
カ
教育とのコラボレーション
地元高校生等と連携して商品開発や販売PR活動等に取り組むことにより、高
校生等が実体験を通じて食品加工事業に関する様々なノウハウを学ぶとともに地
域への愛着心が生まれ、将来の地域産業を担う人材に育つことが期待できる。
【参考事例】
No.
事業者名等
Ⅲ
モデル地域:3町村
Ⅱ44
邑南町
(島根県邑南町)
Ⅱ54
株式会社平松食品
(愛知県豊橋市)
内容
・3町村とも共通して、商品開発や販売PR活動等に地元高校生の積
極的な参画を図り、高校生のアイデアや行動力を活用するとともに、
将来の地域産業の担い手の育成を図ることとした
・うち美幌町については、高校生の意識に変化(当初の「美幌には何
もない」から変化しつつある)
・地元高校生(H25・H26 スイーツ甲子園全国大会出場)と連携して
特産スイーツを開発
・平成 26 年にオープンした町立「食の学校」は、地域の農業と食文
化を 100 年先の子どもたちに伝承することを目的とし、食のプロや
伝統食を知る地元の方々などによる料理教室等を実施する新商品開
発と人材育成の場
・「A 級グルメ=永久」と考え、100 年先の子どもたちに伝えられる邑
南町の食文化を発信し、町を誇りに思う「ビレッジプライド」を醸成
・地元漁協と連携し、地元水産高校が漁獲したカツオを水揚げして流
通させる体制を確立するとともに、高校生とコラボして商品開発に
取り組み、高校生の意見を積極採用(ジュレ化など)して若い感性
による新たな商品を開発。目新しさに加え、ストーリー性があり、
地域からもバックアップを得る
・さらに、水産試験場の協力も得て、未利用の地元産魚介類を活用し
た商品化を進め、地元流通・加工業者も加わってインターンシップ
も視野に入れた活動へと発展
キ
地域住民・NPO等とのコラボレーション
地域住民やNPO等と連携して住民参加型による産業振興に取り組むことによ
り、成功体験を通じて地域づくりへの意識が向上し、様々な地域活性化活動へと
発展することや、地域住民も巻き込んで都市と農山漁村の交流が促進され、移住
定住促進へとつながることなどが期待できる。
【参考事例】
No.
事業者名等
Ⅱ株式会社いろどり
22
(徳島県上勝町)
Ⅱ31
上士幌町
(北海道上士幌町)
Ⅱ55
海士町
(島根県海士町)
内容
・地域住民(主に高齢女性)主役のビジネスモデルを確立し、産業福
祉を実現
・国内外から注目を集め、町民の間で誇りと自信が醸成されている
・元気で明るい高齢者と I・U ターン者とともに町民全員でゼロ・ウェ
イスト施策など様々な取組を行っている
・ふるさと納税において、移住定住・新商品開発・情報受発信を手掛
ける NPO 法人「上士幌コンシェルジュ」と連携
・謝礼品の発送は NPO 法人に委託(生産者や発送業者との調整や、在
庫管理・発送管理を NPO 法人が一手に引き受け、日頃から生産者と
の連携を密にできる仕組みを構築)
商品開発研修生や U・I ターン者など「よそ者」の発想と視点を活用
するとともに、これに町役場や従来からの地元住民が協力し、力を合
わせ、相乗効果を生み、さらに新たな移住・定住者や起業につながる
など好循環が生まれている
ク 地域全体が一体となった連携体制による総合的ビジネスモデルを確立し、
「まち
全体をブランド化」
行政等によるコーディネートの下、地域内の多様な主体を有機的に結び付けて
総合的なビジネスモデルを確立し、
「まち全体をブランド化」することにより、よ
り強力かつ広範囲にわたって効果が波及する展開が期待できる。
【参考事例】
No.
事業者名等
Ⅲ
モデル地域:3町村
内容
3町村とも共通して、検討会には、地域関係者として食品加工事業者
のみならず、農協・漁協、商工会議所・商工会、観光協会、地域金融
機関等が参画し、総合的な検討を行った
77
Ⅱ22
株式会社いろどり
(徳島県上勝町)
Ⅱ23
株式会社サンライズ西条加工セン
ター
(愛媛県西条市)
Ⅱ24
馬路村農業協同組合
(高知県馬路村)
Ⅱ44
邑南町
(島根県邑南町)
Ⅱ55
海士町
(島根県海士町)
町ぐるみでのビジネス展開(個々の住民が主役として生産に携わり、
町及び農協がサポート及び販売を行う。会社は個々の生産者と市場を
つなぐ存在として、営業活動、情報提供、受発注を行うための情報ネ
ットワークシステムの運営等を行う)
・地域活性化総合特区(西条農業革新都市総合特区)の指定を受け、
「西条農業革新都市」プロジェクトを推進
・特区申請にあたって地域協議会を設立し、地域全体として取り組む
体制を構築
・「ゆずや製品だけではなく、村をまるごと売る」という広告戦略で、
「馬路村」という村の名前を前面に出して地域ブランド化し、知名
度を上げて村へ観光客を呼び込む
・役場、農協、森林組合、商工会、観光協会等で協議会を設立し、地
域活性化に向けそれぞれの組織が連携しながら観光客の受け入れ態
勢を整え、農業と観光を結び付けたビジネスモデルを確立
「食」と「農」を切り口にした町づくりを推進するキャッチフレーズ
として「A級グルメのまち」を商標登録。優れた食材や生産者への誇
りも込めたネーミングで町全体をブランド化
産業振興のキーワード「海」
「潮風」
「塩」を三本柱に地域資源を有効
活用し、異なるもの同士をつなぎ、その中から島ブランドを生み出し、
新しい産業を創出。「島まるごとブランド化」
ケ
広域連携
上記までは基本的に地域内における連携を想定したが、地域内にとどまること
なく広域的な連携体制を構築することにより、地域としての「弱み」を補完する
ととともに、さらなる展開の広がりが期待できる。
【参考事例】
No.
事業者名等
Ⅲモデル地域:美幌町
(2)
Ⅲ(3)
モデル地域:羅臼町
Ⅱ2
Ⅱ27
Ⅱ44
株式会社もち米の里ふうれん特産
館
(北海道名寄市)
株式会社あいあいファーム
(沖縄県今帰仁村)
邑南町
(島根県邑南町)
Ⅱ51
株式会社あおもり海山
(青森県深浦町)
内容
地域外との連携も強化して知名度向上を図ることとし、以下について
検討することとした
・オホーツク管内6商工会議所による広域連携体制を活用した取組強
化
・「オホーツク」ブランドによる知名度向上
・北海道内他地域との連携(他の動物由来調味料製造事業者との連携)
・東京都中央区(銀座)との連携
地域内における大型冷凍冷蔵施設の新設を目指すにあたり、羅臼の地
理的条件不利や荷物量の確保に鑑み、周辺市町との広域連携も視野に
検討することとした
東京都杉並区と風連町の友好交流(平成元年に交流協定を締結、名寄
市に合併後も引き継ぎ)の機会を生かし、風連産の餅の知名度を一気
に高めることに成功
設立にあたっては、三重県の㈱伊賀の里モクモク手づくりファーム
(Ⅱ-41)に協力を依頼し、事業を拡大
・隣接する浜田市と「食を通じた観光・文化連携協定」を締結し、そ
れぞれ特色のある「食」を生かしたまちづくりを行っている両市町
が一緒になって、それぞれの豊かな山海の「食」の強みを生かす
・都市部との連携(千代田フードバレー構想)
地元漁業者とパートナー企業(東京の飲食店等経営会社)が共同出資
して合弁会社を設立
なお、昨今、加工・業務用野菜の需要が高まる中で、前述のとおり、商品の通
年安定供給体制を構築するためには産地リレー等による対応が必要となっている
ことから、従前の「産地間競争」から「産地間連携」への意識の改革が求められ
ていることに留意する必要がある。
【参考事例】
No.
事業者名等
Ⅱ株式会社ベジタコーポレーション
20
(広島県福山市)
内容
・1次産業者(農業生産者)、2次産業者(漬物協同組合)及び3次
産業者(漬物卸、青果卸)が連携(共同出資)した合弁事業体
・1次産業者は茨城県、長崎県、宮崎県、2次産業者は広島県、3次
産業者は広島県、福岡県、東京都と広域にまたがる連携体制を構築
・原材料は、共同出資者の農業生産者から仕入れるほか、同じく共同
出資者の青果仲卸の青果市場ネットワークを活用して各地の農業者
から仕入れ、広域連携体制を活かした産地リレーで安定調達を図る
78
【参考】 美幌町における検討会において、有識者委員の吉川京二氏(株式会社ケーズマ
ーケティング代表取締役)から示されたブランド化や地域活性化のためのポイン
トを以下に示す。
79
3 各主体に期待される役割
前述のとおり、地域内外との連携の下、地域一体となって食品加工業の振興に取り組
むことによって、地域の活力向上が大いに期待されるところであり、続いて、「Ⅱ 優良
先進事例の収集・整理」及び「Ⅲ モデル地域における調査・検討等」の結果を基に、
地域において取り組む上で各主体に期待される役割について考察する。
(1)食品加工事業者
[自身を中心とする取組]
食品加工事業の実施運営主体として、取り組みの中心メンバーとして重責を担う。
なお、一次生産者による経営多角化として生産者自らが食品加工事業の実施運営主体
となる場合もある。
地域内外の多様な関係者と活発なコミュニケーションを図りながら、意欲、熱意、
情熱をもって粘り強い取り組みが期待される。
【参考事例】
No.
事業者名等
Ⅱ株式会社もち米の里ふうれん特産
2
館
(北海道名寄市)
Ⅱ3
ふらのまちづくり株式会社
(北海道富良野市)
Ⅱ5
株式会社 OcciGabi Winery
(北海道余市町)
Ⅱ22
株式会社いろどり
(徳島県上勝町)
内容
・もち米生産農家7戸で創業、
「5年間は無報酬で、品質の高いもち米
を作る」
「少しでも利益が出たら加工用の機械を買う」と厳しい条件
を定めて仲間内で結束
・社長が自ら交流会等の場に積極的に参加して人脈形成を図り、大手
外食企業との契約に成功
基本計画策定にあたっての市民のコンセンサス形成は、当初困難を伴
ったものの、イメージを共有(危機感の共有と夢の共有)しつつ議論
し、「共感づくり」を地道に重ねた
・「日本一のワインぶどうの産地に、美しいワイナリーを作りたい」
との思いで、余市町でワインづくりを行うことを決意
・町と協働してワイナリースクールを開設し、仲間を増やして町の産
業としての確立を目指す
当初は、「つまもの」市場が存在せず、ニーズも把握できず、なかな
か契約を結ぶに至らなかったが、時間をかけて調査して「つまもの」
に求められる条件を把握し、ビジネスとして軌道に乗せる
[他者との連携]
地域全体としての加工品のブランド力向上や地域活性化を図る視点から積極的な連
携・協力(小規模事業者における経営体力強化のための分業・協業や異なる分野の食
品加工事業者同士のコラボレーションなどを含む)が期待される。
【参考事例】
No.
事業者名等
Ⅲモデル地域:羅臼町
(3)
Ⅱ32
農事組合法人共働学舎新得農場
(北海道新得町)
Ⅱ46
北海道魚醤油生産組合
Ⅱ47
有限会社釧路フィッシュ
(北海道釧路市)
内容
高次加工品の開発・展開にあたっては、水産加工業界全体で将来を見
据えた意識改革と認識共有を図った上で、業界内の連携による経営体
質の安定・強化を図るとし、経営状況などの現状把握を行った上で、
分業・協業などによる効率化に向けて検討することとした
・「本物のチーズ」のブランド化につながるよう、道内のチーズ工房
6社と連携して、品質評価の仕組み・基準を作り高付加価値化
・十勝地方のチーズ工房 10 社以上と連携して、チーズの共同販売も
実施
北海道魚醤油の統一名称を「雪ひしお」と決定、ロゴ、イメージキャ
ラクターを作成してブランドを構築し、認知度アップ、消費拡大に取
り組んでいる
近隣のチーズ工房と連携して、「釧路産塩さばホエー仕込み」を商品
化
(2)一次産業関係者
① 農家、漁家等
原料供給源として、食品加工事業に密接に関係する重要な存在である。契約農家
等として良質な一次産品の生産、安定的な原料供給、生産者の顔が見える商品とし
てのPR活動など食品加工事業者と緊密に連携した取り組みが期待される。
80
【参考事例】
No.
事業者名等
Ⅱ株式会社サンライズ西条加工セン
23
ター
(愛媛県西条市)
Ⅱ株式会社高橋牧場
30
(北海道ニセコ町)
Ⅱ株式会社天狗、堀田農産有限会社
39
(岐阜県下呂市)
内容
自治体、農協、農家等と共同して業務・加工用野菜に取り組み、地域
全体一体となって、産地イメージの創生、商品ブランド力の構築を図
っている
レストランの料理は地元野菜を使用したビュッフェが中心で、食材調
達にあたり地元農家と連携
養豚農家と地元精肉店が連携して、新ブランド「納豆喰豚」の普及・
確立を図っている
② 農協、漁協等
上記①と同様に、原料供給源として密接に関係するほか、食品加工業の取り組み
と連動した一次産業の振興に向けたリーダーシップやコーディネートが期待される。
また、流通・販売面での連携・協力や、投資規模が大きく生産者個人や小規模事
業者では実現が困難な形態など必要に応じて、農協、漁協等が主体となった食品加
工業の取り組みが期待される。
さらに、農山漁村における地域の主要な団体の一つとして、行政(市町村)等と
ともに地域づくりに資する活動への主体的な取り組みも期待される。
【参考事例】
No.
事業者名等
Ⅲモデル地域:羅臼町
(3)
Ⅱ7
美瑛町農業協同組合
(北海道美瑛町)
Ⅱ8
株式会社山口油屋福太郎
(北海道小清水町)
Ⅱ9
中札内村農業協同組合
(北海道中札内村)
Ⅱ26
株式会社ジェイエイフーズみやざ
き
(宮崎県西都市)
内容
漁獲量に対して地域内の冷凍冷蔵保管能力が低く、水産加工業、漁業、
運送業に共通して安定経営の阻害要因となっている中、当該関係者間
の連携による大型冷凍冷蔵施設の新設に向けて検討することとした
美瑛全体の農業の情報発信拠点としてショールーム「美瑛選果」を開
設。特定の農家の販売向上ではなく、美瑛全体の農家の直販販路拡大
とブランド価値向上のために、全国への情報発信拠点(アンテナショ
ップ)として展開している
行政、農協、企業の三位一体の連携による工場新設(企業が農協にで
ん粉供給を申し入れ、その後、町も交えて協議を進め、企業がでん粉
の優先供給を受ける代わりとして町へ工場進出することで合意)
生産者と農協が一体となって枝豆の生産から加工、販売まで取り組
む。良質な冷凍枝豆を生産するための加工処理施設を導入し、組合長
自らのトップセールスにより販路を開拓
・JA宮崎経済連の子会社として会社設立
・九州最大規模の冷凍野菜工場を新設し、冷凍ほうれんそうを中心に
冷凍野菜の製造と販売を行っている
(3)商工会議所、商工会
地域の民間経済団体として、地域資源を活かした新たな特産品づくりをはじめ、食
品加工業の取り組みと連動した商工業の振興(中心市街地活性化等)に向けたリーダ
ーシップやコーディネートが期待される。
また、一次生産者が食品加工事業に参入する場合などは、会社経営のノウハウが不
足しているケースが想定され、そのような場合における経営指導や事業計画立案サポ
ートなどの役割が期待される。
さらに、上記の(2)の②と同様に、地域における主要な団体の一つとして、行政(市
町村)等とともに地域づくりに資する活動への主体的な取り組みも期待される。
【参考事例】
No.
事業者名等
Ⅲモデル地域:真狩村
(1)
Ⅲモデル地域:美幌町
(2)
Ⅱふらのまちづくり株式会社
3
(北海道富良野市)
内容
農業者による新たな加工事業立ち上げに際し、商工会から事業計画作
成支援について協力を得ることとした
美幌豚醤「まるまんま」や「アスパラスープ」は、商工会議所が中心
となって地域の新たな特産品として商品開発
・「なまら棒」
(地産の食材を活かして作った巨大な揚げ餃子)は、商
工会議所が地域資源∞全国展開プロジェクトで開発
・商工会議所やまちづくり会社が中心となり、中心市街地活性化協議
会を設立。同協議会において民間主導で、中心市街地活性化基本計
画「ルーバンフラノ構想」を立案
81
(4)観光協会
地域の観光振興団体として、
「食」と「観光」による活発かつ効果的なPR活動をは
じめ、食品加工業の取り組みと連動した観光振興(加工体験ツアー、地域ぐるみのグ
リーン・ツーリズム等)に向けたリーダーシップやコーディネートが期待される。
また、加工品はお土産品として観光客を主なターゲットとする場合も多く、食品加
工事業者と緊密に連携した商品PR等による販売面でのバックアップが期待される。
さらに、上記の(2)の②及び(3)と同様に、地域における主要な団体の一つとし
て、行政(市町村)等とともに地域づくりに資する活動への主体的な取り組みも期待
される。
【参考事例】
No.
事業者名等
Ⅲ
モデル地域:3町村
Ⅱ11
Ⅱ37
Ⅱ44
農事組合法人大沢ファーム
(秋田県横手市)
有限会社フジタファーム、
有限会社レガーロ
(新潟県新潟市)
邑南町
(島根県邑南町)
内容
・3町村とも共通して、観光協会から加工品等の対外PRについて協
力を得ることとした
・うち真狩村については、道の駅の機能拡充や新たな観光メニューの
創出(農業体験、加工体験、農家レストラン、農家民宿など)に向
けて検討するにあたって、観光協会が村役場等とともにリーダーシ
ップを担うこととした
・地元観光協会と連携して販路を拡大
・秋田空港、道の駅、百貨店等で販売するほか、海外へ輸出
・ジェラートの製造・販売のほか、米粉ピザ作り、ジェラート作り、
バター作り、搾乳の体験メニューを提供
・地元の観光協会の HP において紹介され、観光スポットとして成長
観光協会が地産地消の町営レストラン「素材香房 ajikura」の運営を
担うなど、町役場とともに “A級グルメ立町” を推進
(5)地元企業等
① レストラン、飲食店等
食の専門家として、商品開発にあたっての食味をはじめとする各種アドバイス、
店舗の知名度等を活かした対外PR(加工品を活用したオリジナルメニューの作
成・提供を含む)や食の現場からの消費者ニーズ等のフィードバックが期待される。
また、食品加工業の取り組みと連動して、地域ぐるみで新たなご当地メニューづ
くりに取り組むにあたっては、地域内の旅館・飲食店等の料理人が連携・協力した
上での主体的な取り組みが期待される。
さらに、地元高校生等を対象に地域内において「食」に関する将来の担い手を育
成するにあたっての指導やインターンシップ受け入れも期待される。
【参考事例】
No.
事業者名等
Ⅲモデル地域:真狩村
(1)
Ⅲ(2)
Ⅲ(3)
モデル地域:美幌町
Ⅱ51
株式会社あおもり海山
(青森県深浦町)
モデル地域:羅臼町
内容
・地元レストランの著名シェフが検討会に参加し、加工品の食味に関
する指導や対外PR、今後の商品開発に向けての情報提供等につい
て協力を得ることとした
・地域内の関係者の連携による地元高校生を対象とする人材育成シス
テムの構築に向け、地元レストランにおける高校生への技術指導等
について検討することとした
町内飲食店 15 店舗の協力の下、
「まるまんまフェア」
(1ヶ月間「ま
るまんま」を活用したメニューを提供し、スタンプラリーを実施)
・地元産食材を活かした観光客向け飲食サービスの強化・充実を図る
こととし、地域内の飲食・宿泊事業者間の連携による、新たな地産
地消メニューの開発・共通化(地域固有の希少魚種を活用した “羅
臼めし” など)に向けて検討することとした
・上記にあたっては、地域内での食材調達の円滑化を図るため、共同
仕入れ体制の構築等に向けて検討することとした
・地域の水産加工・飲食・宿泊事業者におけるインターンシップ受け
入れ等を含む「食」に関する教育から就職まで一貫した人材確保・
育成システムの構築など地元人材の育成・輩出・活用の「しくみ」
づくりに向けて検討することとした
新ご当地グルメ「深浦マグロステーキ丼」は、地元の旅館、飲食店の
7 名の料理人が連携し、著名なご当地グルメプロデューサーの指導を
受けながら、試行錯誤を重ねた末にメニュー化に至る
82
② 流通・販売、卸関係
加工品の販売促進・販路開拓面でのサポート・バックアップとともに、流通・販
売現場からの消費者ニーズ等のフィードバックが期待される。
また、昨今、需要が拡大している冷凍野菜・カット野菜等については、実需者等
のニーズに対応した製品を通年安定供給するためには地域外からの原料調達を必要
とする場合も想定され、そうした際に市場等を通じて円滑に調達するためのコーデ
ィネートが期待される。
【参考事例】
No.
事業者名等
Ⅲモデル地域:真狩村
(1)
Ⅱ20
株式会社ベジタコーポレーション
(広島県福山市)
内容
オーガニック食品を取り扱う地域に密着した流通・販売企業が検討会
に参加し、販売面のサポート(スイートコーン加工品を店舗で取り扱
い)とともに、今後の商品開発に向けての情報提供等について協力を
得ることとした
・原材料は、共同出資者の農業生産者から仕入れるほか、同じく共同
出資者の青果仲卸の青果市場ネットワークを活用して各地の農業者
から仕入れ、産地リレーで安定調達を図る
・また、青果卸売業者等の販売ネットワークを活用して製品を出荷
・産地と実需者の両方に対するコーディネート力を有する卸売業者が
一層の需要拡大に寄与
③ 運送関係
消費地から遠く離れた農山漁村において食品加工事業を行う場合、製品出荷時の
輸送コストもビジネスの成否において重要な要素を占め、なおかつ、昨今は燃料費
高騰やトラックドライバー不足など輸送コストの上昇が懸念される状況にあり、十
分に考慮する必要があると考えられる。さらには、冷凍野菜・カット野菜等につい
ては、出荷輸送時における温度管理等の徹底も重要であるとともに、上記②で記述
したとおり、地域外からの原料調達を必要とする場合も想定され、製品出荷時のみ
ならず原料調達時も含めて総合的に輸送コストを考慮する必要があると考えられ、
効率的な物流システムの構築を併せて検討するための積極的な連携・協力が期待さ
れる。
また、状況に応じて、運送事業者側の課題解決にも資する形での共同事業化など
主体的な取り組みも期待される。
【参考事例】
No.
事業者名等
Ⅲモデル地域:羅臼町
(3)
Ⅱ23
株式会社サンライズ西条加工セン
ター
(愛媛県西条市)
内容
漁獲量に対して地域内の冷凍冷蔵保管能力が低く、水産加工業、漁業、
運送業に共通して安定経営の阻害要因となっている中、当該関係者間
の連携による大型冷凍冷蔵施設の新設に向けて検討することとした
カット野菜加工会社の設立にあたり、地元運送会社が共同出資(ほか
に、大手農業資材メーカー、地元農協、卸会社、市の第3セクター、
地元金融機関が出資)
④ 医療・福祉関係
食品加工業の取り組みを高齢社会等の課題解決につなげるための連携・協力が期
待される。
【参考事例】
No.
事業者名等
Ⅱ株式会社ジェイエイフーズみやざ
26
き
(宮崎県西都市)
Ⅱ株式会社あいあいファーム
27
(沖縄県今帰仁村)
内容
宮崎県医師協同組合と連携協定を結び、病院食における県産冷凍野菜
の利用を促進しており、安全・安心な県産冷凍野菜を県内の病院等へ
提供することで、食の部分で県民の健康に貢献
・地域の診療所と連携して「健康カフェ」を運営し予防医学(元気な
ままの高齢者を増やしていく)に取り組む
・旅行会社と連携して、農業と観光と医療を結び付けた「ヘルスツー
リズム」による健康体験ツアーを実施
83
⑤ その他異業種等
異なる視点からの発想・アドバイスや、地域全体が一枚岩となった取り組みとす
るための連携・協力が期待される。
【参考事例】
No.
事業者名等
Ⅲモデル地域:真狩村
(1)
内容
・地域内の異業種企業が検討会に参加し、異なる視点からの活発な意
見・提案が多数あった
・地域内の企業として可能な範囲で協力する旨の申し出があり、商品
の一時保管場所としての敷地の提供等について協力を得ることとし
た
(6)地元高校等
食育や地産地消等を推進する観点から、加工品の学校給食への採用や、「総合的な学
習の時間」において地域の食品加工業の取り組みに関する内容をカリキュラムに組み
込むことなどが期待される。
また、地元高校生等の若い感性によるアイデアや活発な行動力を活かすべく商品開
発や販売PR活動等への積極的な参画が期待される。
さらには、高校生等が実体験を通じて食品加工事業に関する様々なノウハウを学ぶ
とともに地域への愛着心が生まれ、将来の地域産業を担う人材に育つことが期待され
る。
【参考事例】
No.
事業者名等
Ⅲ
モデル地域:3町村
Ⅱ17
Ⅱ39
Ⅱ44
株式会社早和果樹園
(和歌山県有田市)
株式会社天狗、堀田農産有限会社
(岐阜県下呂市)
邑南町
(島根県邑南町)
内容
・3町村とも共通して、商品開発や販売PR活動等に地元高校生の積
極的な参画を図り、高校生のアイデアや行動力を活用するとともに、
将来の地域産業の担い手の育成を図ることとした
・うち美幌町については、美幌豚醤「まるまんま」の学校給食への採
用に向けた教育委員会との交渉や地域活性化をテーマとする「総合
的な学習の時間」への企画提案等について検討することとした
・うち羅臼町については、高校の「総合的な学習の時間」における地
域の水産加工事業者等による取組のカリキュラム化、インターンシ
ップ受け入れ等を含む「食」に関する教育から就職まで一貫した人
材確保・育成システムの構築など地元人材の育成・輩出・活用の「し
くみ」づくりに向けて検討することとした
地元大学の学生と商品開発を行い、若者世代の志向・ニーズに対応
新ブランド「納豆喰豚」を広く周知するため地元の協力を得、地元高
校生がかわいらしいイメージキャラクターをデザイン
調理専門学校等と連携協定を締結し、優秀な食の人材を安定的に確保
するシステムを構築
(7)地域住民、NPO等
食品加工業の取り組みを単なる「ビジネス活動」にとどめるのではなく、地域全体
の活力向上に向けた「地域づくり活動(地域ビジネス)
」へと昇華させるためには、地
域住民やNPO等の積極的な参画が期待される。
【参考事例】
No.
事業者名等
Ⅲモデル地域:真狩村
(1)
Ⅱ14
Ⅱ18
横山振興会、株式会社のろし
(石川県珠洲市)
株式会社きてら、株式会社秋津野
(和歌山県田辺市)
内容
食品加工事業をはじめとする地域活性化プロジェクトを地域一体と
なってビジネスの手法を用いて推進を図るため、住民出資による株式
会社等の事業運営法人立ち上げに向けて検討することとした
地区の多くの住民の出資により株式会社を設立し、市が整備した交流
施設の管理運営や地元農産物を活用した6次産業化に取り組む
・農家以外の住民増加を背景に発足した地域づくり塾「秋津野塾」が
母体となっており、「秋津野塾」には住民のほか地区内の全ての組
織・団体が参加し、幅広い合意形成を図りながら、活発な地域づく
りへの取組が進められている
・事業内容ごとに住民出資による法人を設立(直売所:きてら、農家
レストラン等:秋津野)し、補助金だけに頼らない地域づくりを進
める
84
(8)金融機関
事業資金の融資やファンドを通じた出資など事業者の資金需要への対応のほか、展
示会・商談会の提案や販売先の紹介などの販路開拓支援、情報網を活かした商品ニー
ズ等の情報提供やマッチングなどが期待される。
また、アドバイザーらとともに、事業計画のコンサルティングや行政等による支援
を受けるためのサポート・バックアップが期待される。
【参考事例】
No.
事業者名等
Ⅲ
モデル地域:3町村
Ⅱ17
株式会社早和果樹園
(和歌山県有田市)
Ⅱ23
株式会社サンライズ西条加工セン
ター
(愛媛県西条市)
Ⅱ51
株式会社あおもり海山
(青森県深浦町)
内容
・3町村とも共通して、金融機関から販路開拓支援(展示会・商談会、
販売先の紹介等)について協力を得ることとした
・うち真狩村については、関連情報提供(6次産業化ファンド等の提
案、支援制度の紹介、ビジネスマッチング等)について協力を得る
こととした
・うち美幌町及び羅臼町については、経営に関するコンサルティング
(助言、経営計画作成に係るチェック等)ついて協力を得ることと
した
・みかん搾汁工場の建設にあたり、地元信用金庫が融資(ほかに自己
資金及び補助金を充当)
・上記に加え、経営セミナーや物産展などの機会を提供することによ
る経営指導や商品の販売促進・販路拡大を支援
・カット野菜加工会社の設立にあたり、地元金融機関が共同出資(ほ
かに、大手農業資材メーカー、地元運送会社、地元農協、卸会社、
市の第3セクターが出資)
・地元金融機関が仕入れ先や販売先を紹介し、取引が増加傾向
・農林漁業成長産業化支援機構(A-FIVE)のサブファンドが出資
・地元金融機関が「6次産業化アドバイザー」等を派遣し、総合化事
業計画の策定を支援するとともに、合弁企業の設立に必要な共同出
資者(パートナー企業)のマッチングを行った
(9)外部専門機関等
① 大学、試験研究機関
食品加工技術等の専門家には、商品開発や製造技術などの面で専門的知見からの指
導・助言が期待される。
また、地域経済等の専門家には、地域経済活性化や地域づくり等の面で専門的知見
からの指導・助言が期待される。
また、上記の両者ともに共通して、幅広い人脈を活かした連携コーディネートが期
待される。
【参考事例】
No.
事業者名等
Ⅲ
モデル地域:3町村
Ⅱ15
Ⅱ18
有限会社わくわく手作りファーム
川北
(石川県川北町)
株式会社きてら、株式会社秋津野
(和歌山県田辺市)
内容
・3町村それぞれについて、地域経済や地域づくりに関する見識を有
する大学教授等に検討会への参加を要請し、専門的知見からの助言
を得るとともに検討を総括していただいた
・うち美幌町及び羅臼町については、食品加工技術に関する見識を有
する試験研究機関の研究者に検討会への参加を要請し、専門的知見
からの助言を得た
商品開発(麦芽製造)にあたっては、県の研究機関や地元大学と連携
して製法を確立
地域づくり塾「秋津野塾」を基礎とする地域内連携に加え、地元行政
や大学とも連携(和歌山大学観光学部が経済波及効果を試算など)し、
廃校を活用した都市農村交流施設「秋津野ガルテン」を開設
② アドバイザー
事業構想を具体化するための実現性・採算性のある仕組み(ビジネスモデル)づく
り、事業計画の作成・ブラッシュアップ、経営上の課題解決などに係る専門的知見か
らの指導・助言、行政等による支援を受けるための申請書類作成等に係るサポート・
バックアップ、また、幅広い人脈を活かしたマッチングや連携コーディネートが期待
される。
85
【参考事例】
No.
事業者名等
Ⅲ
モデル地域:3町村
Ⅱ39
Ⅱ51
株式会社天狗、堀田農産有限会社
(岐阜県下呂市)
株式会社あおもり海山
(青森県深浦町)
内容
3町村それぞれについて、経営コンサルタントや中小企業診断士に検
討会への参加を要請し、専門的知見からの助言を得た
農商工連携計画の申請にあたっては、中小企業診断士や中小機構担当
者から指導を受けた
地元金融機関を通じて派遣された「6次産業化アドバイザー」及び「ボ
ランタリープランナー」が、総合化事業計画の策定を支援
(10)行政機関
① 市町村
産業振興の観点からのサポート・バックアップはもちろんのこと、地域づくりの
観点から地域内外の多様な主体による連携体制を構築するためのコーディネートが
期待される。
また、状況に応じて、従来型の行政運営から一歩踏み込んで「地域を経営(マネ
ジメント)する」という観点からの主体的な取り組みも期待される。
【参考事例】
No.
事業者名等
Ⅲ
モデル地域:3町村
Ⅱ19
株式会社奥出雲中村ファーム
(島根県奥出雲町)
Ⅱ23
株式会社サンライズ西条加工セン
ター
(愛媛県西条市)
Ⅱ31
上士幌町
(北海道上士幌町)
Ⅱ44
邑南町
(島根県邑南町)
Ⅱ51
株式会社あおもり海山
(青森県深浦町)
Ⅱ55
海士町
(島根県海士町)
Ⅱ57
ふるさと萩食品協同組合
(山口県萩市)
内容
3町村とも共通して、町村役場が地域内連携に係る関係者間のコーデ
ィネートを行うこととした
・地域の農家にもエゴマの栽培を勧め、奥出雲中村ファームからエゴ
マの苗を農家に販売し、農家が生産したエゴマの種を全量買い取る
・町は農家に対し、エゴマの苗を購入する資金を支援
・市長によるトップセールスで、大手農業資材メーカーによる農業参
入が実現
・「西条農業革新都市」プロジェクトを推進するため、市の体制を強
化(農業革新都市推進室を設置し、専任3名を配属)するなど、市
が全面的にバックアップ
・ふるさと納税に係る取組を強化し、寄付額を大幅に伸ばしている
・町担当者の意識の変化(プロ意識)とモチベーション向上(納税者
の喜ぶ姿の共有)により、役場全体が活性化し、関連企業の活性化、
町全体の活性化に波及
・使途を指定しない一般寄付で基金を設立し、子育て施策などを実施
・町長のリーダーシップの下、攻めと守りの定住プロジェクトを推進
・プロジェクトは、以下の三本柱となっている
① “攻め” のA級グルメ構想
② “守り” の日本一の子育て村を目指して
③ 徹底した移住者ケア
・新ご当地グルメ「深浦マグロステーキ丼」の仕掛け人は町役場観光
課職員で、タレント的に活動して話題性を発信
・役場の若手職員でダンスチームを結成し「踊る公務員」としてPR
活動を展開
町長のリーダーシップの下、「守り」として徹底した行財政改革(人
件費等の歳出削減等)を行うとともに、「攻め」として地域資源を活
かし、島に産業をつくり、島に人(雇用の場)を増やし、外貨を獲得
して島の活性化を図ることとした
・「萩の地魚もったいないプロジェクト」チームのメンバーは、ふる
さと萩食品協同組合、市、漁協、水産加工業者等の約 20 名
・道の駅駅長(組合専務理事)がプロジェクトの “司令塔” を務め、
市が事務局として“調整役” を務める官民一体の連携体制
② 国、道
国や道においては、補助金等の各種支援制度が用意されている。
また、地域からの要請に応じて各種関連情報を提供するなど、地域における意欲
的な取り組みに対するサポート・バックアップが期待される。
【参考事例】
No.
事業者名等
Ⅲ
モデル地域:3町村
Ⅱ
既存の公開資料、文献等により情
報収集した事例
内容
3町村とも共通して、
・道(経済部食関連産業室)は、関連情報提供(支援制度や参考事例
の紹介等)によるサポート・バックアップを行うこととした
・国(北海道開発局開発調査課)は、地域における取り組みをフォロ
ーアップしていくこととした
多くが総合化事業計画や農商工等連携事業計画等の認定を受けた上、
支援制度(補助金等)を活用している
86
4 おわりに
本調査の結果として、人口低密度地域において食品加工業の振興により地域の活力向
上を実現することは十分に期待できると考える。特に、農業や漁業を基幹産業とする北
海道の農山漁村地域においては、食品加工業は一次産業と密接に関連して地域に根ざし
た準基幹的な産業として成立し得ると考えられ、また、急速な人口減少・高齢化に伴い、
地域経済の低迷とともに基幹産業である一次産業においても担い手減少などの課題を抱
える中、地域内で一次産品を加工して付加価値を高め、「域外からの財の獲得と域内循
環」及び「地域の多様な主体の参画・連携」によって、地域経済の活性化とともに、一
次産業の振興をはじめ、観光振興や中心市街地活性化、移住定住促進、将来の担い手育
成など地域社会の課題解決にもつながり得る取り組みは、農山漁村地域にとって最大の
資源である農水産物を有効活用した最適な地域活性化方策とも考えられる。
また、本調査を通じて明らかとなるところは、昨今、「6次産業化」という言葉の意
味合いが広がってきていることである。従前は「6次産業化」というと、専ら「一次生
産者の経営多角化」的な意味合いで使われる場面が多かったように思われるが、昨今は
農林水産省が「農山漁村の6次産業化」と表現しているとおり、「地域における生産・
加工・流通の一貫体系の確立」、すなわち、「1次産業者、2次産業者及び3次産業者
の連携体制による地域としての食産業ビジネスの構築」的な意味合いで使われる場面が
増えてきており、そして、そのような場面においては、地域金融機関が積極的に関与し
ている点に着目する必要がある。その背景としては、農林水産省が「攻めの農林水産業」
の一環として企業ノウハウ等を活かした農山漁村における地域ビジネス創出を推進し、
他方、金融庁が「地域密着型金融」として地域金融機関によるコンサルティング機能の
発揮や地域の面的再生への積極的な参画等を推進している中で、平成 25 年 2 月に農林漁
業成長産業化支援機構(A-FIVE)が開業して「農林漁業成長産業化ファンド」が制度化
され、また、同じく平成 25 年 2 月から「地域経済イノベーションサイクル」の先行モデ
ル事業(地域経済循環創造事業交付金)が開始されるなど、地域金融機関との連携を前
提とする事業化の枠組みが確立されたことが大きいと考えられる。
すなわち、本調査の中で、モデル地域とした3町村において、食品加工事業者、一次
生産者、農協・漁協、商工会議所・商工会、観光協会、地域金融機関等を含む地域の多
様な主体の参画による検討会を設け、食品加工業の取り組みを契機とした地域活力向上
に向けた検討を実施したところであったが、このような枠組みによる地域ぐるみの「農
山漁村の6次産業化」展開は、農林漁業成長産業化ファンド等を有効に活用することで
十分に実現可能と考えられ、「食」に十分なポテンシャルを有する北海道において、そ
の余地は大いにあると考える。本調査結果も参考にしていただいた上で、今後、北海道
内各地において、多様な主体による連携体制の下で地域一体となって食品加工業の振興
による地域活力向上を目指す取り組みが広がることを期待したい。
ただし、食品加工業はあくまで民間ビジネスであり、必ずリスクを伴うものである。
主観的・楽観的判断による安易な参入は避け、金融機関や信頼できる専門家などのサポ
ートを得た上で、実現性・採算性に留意し、慎重に検討した上で取り組むことが肝要で
あると考える。
87
【参考】 Ⅳ とりまとめ(他地域へ展開するための方策) の全体像
88
89
90