20170116 ch10 - 名古屋大学 大学院国際開発研究科

生物多様性
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生物多様性 もくじ
 生物多様性とは
 生物多様性と政策
基礎から学ぶ環境学
 問題解決に向けた動き
10章 生物多様性
名古屋大学大学院国際開発研究科
藤川清史
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生物の進化と生物多様性
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生物の系統樹
 生物の進化
 生命の誕生は46億年前
 環境に適応しながら進化=全生物は同じ起源
 生命系
 地球上の生物の総体=生物多様性
 遺伝によって,生物の構造や機能が受け継がれる
 有性生殖のはじまり
 15億年前に大変革=一対の遺伝子(DNA)を持つ生物の出現
 子孫は2つの固体から別々のDNAを受け継ぐ
 子孫を残す際に個体間の競争・選抜がおこる
 単細胞生物の分裂よりも,進化の速度が加速
 結果として,生物の構造や機能が高度化➔生物種や遺伝情報の多様化
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生物多様性とは
生物多様性の意義
 生物多様性=Biodiversity or Biological diversity
 生物多様性1:種の多様性
 もっともイメージしやすいもの
 異なる種類の生物が存在すること
 生物多様性2:遺伝的な多様性(種内の多様性)
 同じ種の中でも多様性がある
 種の中の多様性は何らかの環境変化があった場合,その変化への抵抗
力や回復力(レジリエンス)を高める
 生物多様性3:生態系の多様性
 生態系とは種が環境と相互に作用することで成立するシステム
 生態系の多様性は,多様な生息・生育環境を提供する
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 倫理的な意味
 生物多様性は長い進化の歴史の中で作られてきたもの
 人間が勝手にそれを喪失させて良いものではない
 経済的意味
 生物のもつ遺伝資源の価値は大きい
 何が将来の医薬品や食料として大きな役割を持つかは予見できない
➔現在の生物多様性は保全すべき
 国連による「ミレニアム生態系評価」(2005年)
 生態系サービスが価値を持つものという認識を確立
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絶滅スピードの加速
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生物多様性現状(絶滅スピードの加速)
 自然保護連合(IUCN)の調査
 レッド・リストの公開
 生物の4割程度が絶滅の危機
あるいは危険
 生物多様性条約事務局
 地球規模生物多様性概況
(GBO)の公表
 種,遺伝子,生態系のすべて
で生物多様性の損失が継続
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生物多様性と生態系サービス
日本の生物多様性の現状
 第1の危機:開発など人間活動による危機
 開発:沿岸の埋め立てや森林の他用途への転用
 乱獲:観賞用,商業的利用
 第2の危機:自然に対する働きかけの縮小による危機
 ライフスタイル(エネルギー)の変化
 里山の利用価値の低下➔働きかけの減少
 第3の危機:人間により持ち込まれたものによる危機
 外来種による在来種の減少
 第4の危機:地球環境の変化による危機
 地球温暖化などによる生物多様性への影響
 生物多様性総合評価報告書 (2010年)
 人間活動による損失が大きい
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 「生物多様性条約」(1992年のリオデジャネイロ,地球サミット)
① 生物多様性の保全
② 生物多様性の構成要素の持続可能な利用
③ 遺伝資源の利用から生じる利益の公正で衡平な配分
 名古屋議定書(2010年) (後述)
 生物の多様性に関する条約の遺伝資源の取得の機会及びその利用か
ら生ずる利益の公正かつ衡平な配分に関する名古屋議定書
 遺伝資源(医薬品や食品の開発につながる動植物や微生物)を利用した
場合に得られた利益について,金銭の支払いや共同研究への参加を通
じて,資源がもたらす利益をその資源を提供した国(原産国など)と利用
国とで分け合うことを規程
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生物多様性と政策 (国内政策)
生物多様性と政策 (国際的な政策)
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 生物多様性国家戦略 2012-2020 (2012年)
 生物多様性基本法に基づいた戦略
 愛知目標(後述)に向けたロードマップ
 日本の生物多様性国家戦略としては5回目のもの
 ハイデラバードの生物多様性条約COP11で報告
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国有林野の生物多様性政策
生物多様性と政策 (国内政策)
 国有林は国土全体の約2割
 国有林の分類
1.保護林(849箇所,97万ha)
国有林野における貴重な自然環境としての天然林等の適切な保存等を図る
原生的な森林生態系や希少な野生生物の生育・生息の場等を保護林に設定
2.緑の回廊(24箇所,58万ha)
野生生物の生育・生息地を結ぶ移動経路を確保し,個体群の交流促進による種や
遺伝的な多様性の保全を図るため,保護林を中心にネットワークを形成
保護林制度を補完するものであって,保護林とは接するが重複はしない。
3.レクリエーションの森(1,083箇所,39万ha)
優れた自然環境を有し、森林浴、自然観察、野外スポーツ等を推進する
保護林とは目的、管理方法等が異なるので保護林とは原則として重複しない
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 ラムサール条約
 水鳥の生息地として国際的な重要な湿地に関する条約
 世界遺産条約
 自然遺産,文化遺産
 自然公園
 国立公園,国定公園,都道府県立自然公園
 あわせて543万ha,国土面積の14.4%
 鳥獣保護区
 国指定鳥獣保護区,都道府県指定鳥獣保護区
 あわせて364万ha,国土面積の9.6%
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生物多様性政策と法制度
根拠法
目的
保安林
森林法
森林の保続培養と森林生産力の増
進
自然公園
自然公園法
優れた自然の風景地を保護するとと
もに,その利用を増進
自然環境保全
地域
自然環境保全
法
生物の多様性の確保その他の自然
環境の適正な保全を総合的に推進
天然記念物
文化財保護法
文化財を保存・活用を図り,世界文化
の進歩に貢献
鳥獣保護区
鳥獣保護法
鳥獣の保護及び狩猟の適正化
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野性生物の保全制度
備考
国民の生命、財産を守るための
森林
自然環境保全地域は自然公園と
は重複しない.
 種の保全法
 希少種の捕獲および譲り渡しの規制
 生息地域の保護区の指定
 外来生物法
 明治以降の外国起源の外来種に焦点
 生態系に重大な被害を及ぼすものを指定外来生物に指定
 指定外来生物の飼育,栽培,保管,運搬を禁止
http://www.rinya.maff.go.jp/j/keiki/hogorin/pdf/siryou2.pdf
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生物多様性愛知目標
問題解決に向けた動き
 生物多様性条約COP10,カルタヘナ議定書COP5(バイオ改変生物)
 遺伝資源へのアクセスと利益配分(ABS:Access and Benefit Sharing)
に関する議定書の締結
 遺伝資源と並び遺伝資源に関連した先住民の伝統的知識も利益配分の
対象とする
 利益には金銭的利益と非金銭的利益を含み,配分は互いに合意した条
件に沿って行う
 遺伝資源の入手には資源の提供国から事前の同意を得ることが必要
 多国間の利益配分の仕組みの創設を検討する
 各国は必要な法的な措置を取り,企業や研究機関が入手した遺伝資源
を不正利用していないか各国がチェックする
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IPBES
 生物多様性と生態系サービスに関する政府間科学政策プラットフォーム
 Intergovernmental (Science and Policy) platform on Biodiversity and
Ecosystem Services
 科学的な評価,能力の開発,知見の生成,政策立案の支援
 生物多様性や生態系サービスの現状や変化を科学的に評価し,それを
政策に反映させることにより,生物多様性保全の取り組みに寄与
 「生物多様性版のIPCC」とよばれる
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