平成23年

平成23年仕事始式訓示
(本庁・船泊支所)
平成23年1月6日
礼文町長
小野
徹
平成23 年仕事始式訓示
平成23 年
1月
6日
あらためまして、明けましておめでとうございます。
平成 23 年の新春を皆さんとともに元気に迎えることがで
きましたことを心からお慶び申し上げる次第でございます。
2011 年、今年は、卯年であります。
今年の干支は「辛卯(かのとのう、しんぼう)」と言いまし
て、元々は「草木が地面を覆う様子」を意味する「茂(ぼう、
しげる)
」に由来するそうでございます。
昨年の干支「寅」は、「春が来て草木が生えてくる状態」
をさすそうですが、今年の「卯」年は「その草木があふれて
地面いっぱいに覆う」状態になる意味があるそうでございま
す。何と言いましても、卯年は、明るく元気な年でありたい、
ウサギがジャンプするがごとく、大きな飛躍が期待されてい
るのでございます。
ただ、「ウサギとカメ」「因幡の白ウサギ」「カチカチ山」
など、昔話にでてくるウサギは、どこか愛らしいキャラを感
じさせるものでありますが、「二兎を追うものは一兎をも得
ず」の諺や「ウサギとカメ」のお話にあるように、カメを甘
く見て昼寝をしたためにウサギが競争に負けたことから、油
断して思わぬ失敗を招くなどの意味に使われていますので、
今年は、油断なく、注意を払って物事に取り組んでいくこと
に心がけたいものと考えているところであります。
さて、迎えた新しい年も、依然として景気の厳しい中で迎
えています。特に、わが町の水産水揚げは2年続きで大きく
減少し、観光も低迷が続いている厳しい年の幕開けでありま
すが、私たちはこのふるさとを、次の世代に引き継ぐ努力を
していかなくてはなりません。
国連の発表では、2008 年における地球温暖化や大気汚
染など、私たち人間が原因となっている地球の環境破壊が年
間 500 兆円以上の損害を生んでいるそうであります。
昨今の気象は台風が異常な発達をみせ強風、高波にゲリラ
豪雨や竜巻、雷など今まではあまりみられなかった大きな災
害が発生しています。
また、年末年始にかけ岩手や島根それに鳥取などでは過去
に例のない積雪を記録。 停電の中で新年を迎えたり、交通
機関がマヒし、列車や車の中で年を越すなどの異常気象が多
く見受けられました。
「このまま環境対策を放置すると今後の世界経済に大き
なリスクになる」と国連は警告しています。
特に、自然に恵まれた礼文島の環境はさまざまな生物によ
って成り立っており、その環境が一度壊れると、礼文島らし
さはまたたく間に消えてしまうおそれがあります。
こうしたことから、私は、礼文島らしさを守っていく取組、
所謂「生物多様性」の取組を進めたいと昨年12月に環境省
の支援を受け「生物多様性地域戦略検討委員会」を立ち上げ
ました。
人口1万人未満の町村では本町と黒松内町が初めての取
り組みであり、この「生物多様性」という言葉は、今年のキ
ーワードになると思っています。
「生物多様性」とは「さまざまな生き物がつながりあって
生きている状態」のことを指す言葉であり、自然がつくり出
した多様な生き物の世界で私たち人間の暮らしが成り立っ
ております。その中から生命に欠かせない大気や水が生み出
され、さらに、衣食住や医療にかかわるさまざまな原料や資
源を提供してくれています。また、礼文島の雄大な自然や希
少な高山植物もこうした中に存在しているのであり、私たち
は無意識のうちにこのような「生態系の恩恵」の中で生きて
いるのでございます。したがって、この多様性が損なわれる
と社会の持続性や人間の生存に必要な基盤さえも揺らいで
しまいます。
今、その保全に向け、そのことを意識する行動が求められ
ているのであります。
そして、全世界が、この「生物多様性の保全」を政策の基
本に置こうとしています。わが町の生物多様性をきちんと保
全すれば、礼文島の魅力が高まることにつながります。
もちろん、「生物多様性」というのは、大変難しいことで
あり、小さな町村だけで解決のできる問題ではありませんが、
私は、水産や高山植物など自然の恩恵を受けている礼文島だ
からこそ、世界に向かって発信し、将来に向かって持続可能
な恩恵を受け続けられる町づくりをしなければならないと
考えています。
「礼文島の海の生物多様性が増せば、漁業も自ずとその恵
みを受けることになり、また、礼文島の貴重な高山植物等の
多様性をきちんと保全することは礼文島の魅力が高まるこ
とに繋がり、結果として礼文島観光の魅力も高まることにな
る」のであります。 私は、生物多様性と地域の産業がどの
ように結びついていくのか?
自分たちにとって何がいい
のかを考え、礼文島のためになるいいことをしよう!という
考えをもって、「生物多様性」には多くのテーマがあるけれ
ども、その中から「礼文島らしさをなくさないために礼文島
の希少な高山植物とお花畑を守っていく」ということに着目
した取り組みを進めてまいります。
礼文島の財産、わが町の宝をなくしてはならない。
これからも元気な礼文づくりに活用していくためには、今、
これを町の意志として進めなくてはならないとの思いであ
りますので、職員みなさんのご理解ご協力をあらためてお願
い申し上げる次第であります。
もうひとつお話したいことがあります。
元日の新聞に「先例なき時代に立つ」という記事がありまし
た。今年を占う内容の記事でありましたが、
「三度目の奇跡」
という副題がついていました。
わが国は幕末の国難を乗り切り、第 2 次世界大戦の敗戦
から奇跡の復興をとげました。そして、今、三度目の危機を
迎えているということでございます。
明治維新のときは19世紀後半にアジア各国が欧米諸国
に植民地化されるなかで、明治政府は国家の独立を守ろうと、
欧米列強と平等になることを目標に掲げ、欧米に留学して新
しい技術の習得に努め、「富国強兵」をスローガンにして近
代化を進めたのであります。
第二の奇跡は、第 2 次世界大戦での敗戦後、焼け跡の廃
墟から立ち直るため、アメリカなどの背中を追いかけ、ひた
すら経済成長に専念し世界でも稀な急成長を遂げました。
結果は、世に云うところのカネ余りの時代、みなさんご承
知の「バブル経済」となったものでございます。
しかし、1989 年 12 月に日経平均株価は 3 万 8915 円
という最高値をつけた後、1991 年バブルは崩壊しました。
そして、このバブル経済崩壊後の「失われた20年」を経
た今日、長期にわたるデフレ、そして急速に進む高齢化や人
口減少という世界でどの国も経験したことがない未知の難
題に直面し、衰退の先頭を走るわが国には、過去2回の奇跡
と違ってモデルも目標もありません。 加えて、人口減少や
人口構成の変化はわが国の財政難を生み、国民負担の増加と
なって跳ね返っています。しかも、このまま放置すればわが
国は衰退の一途をたどることは明らかであり、この停滞は放
っておいて自然に解消するものではない。今こそ政治が再生
する環境を整え将来の具体的な形を示す時だ。と結ばれてい
ました。
まさしく、今、日本は政治も経済もお手本やモデルが見当
たらないまま元気なく立ちすくんでいる状態で、私達公務員
にとっても厳しい時代の幕開けとなっております。
でも、ノーベル化学賞を受けた北大の鈴木教授はこうおっ
しゃられました。「希望や理想は、決して人から与えられる
ものではなく、自分で考えて見つけ出していくものです。だ
から自分がやりたいことは何かをしっかり考えてほしい・・」。
与えられるのではなく、自分で切り拓いていく気概を持て!
と云うことだと思うのでございます。
私は、この言葉を
かみしめてほしいと思っています。
職員の皆さんには、あふれる使命感と気力をもち、常に、町
民みなさんの幸せのために何が必要かを考え「元気なふるさ
と礼文町」を創る「清く正しく美しい」リーダーになって頂きた
いと思っているからでございます。
新年早々とりとめのない話をしましたが、今年はウサギ年、
飛躍の年であります。 多くの先人が苦労して築いてこられ
たふるさとを、より元気な町にして未来に引き継いでいくた
め、職員みなさんの温かいご理解ご協力をお願い申し上げ、
また、本年が皆様にとりまして素晴らしい年になりますよう
心からお祈り申し上げまして、平成 23 年の「仕事始めのあ
いさつ」とします。今年もよろしくお願い致します。