寄附の禁止

Ⅳ
寄附の禁止
1 寄附の禁止
【い み】
公職の候補者または公職の候補者になろうとする者(公職にある者を含む)は、当該選挙
区内にある者に対し、いかなる名義をもってするを問わず、寄附をすることはできません。
この場合、その寄附が選挙に関するかどうかにかかわらず、また、時期のいかんを問わず
禁止されています。
これは、公職にある者、公職になろうとする者の寄附を禁止することによってきれいな選
挙、金のかからない政治・選挙を実現しようとするものです。
【かんどころ】
(1)候補者等の寄附の禁止(法 199 の 2 ①)
候補者等がする寄附は、選挙に関するかどうかを問わず、一定の場合を除いてすべ
て禁止されており、その寄附には、金銭はもちろんのこと、花輪、供花、香典、祝儀
その他これらに類するものを含みます。
しかし、次に掲げる場合には、例外として寄附を行うことができます。
① 政党その他の政治団体またはその支部に対してする場合
② 候補者等の親族(6 親等内の血族、配
偶者及び 3 親等内の姻族)に対してする
豆 知 識
選挙区内にある者
場合
③ 候補者等が、専ら政治上の主義または
施策を普及するために選挙前の一定期
間外に行う講習会その他の政治教育の
ための集会(選挙区外で行われるものや
参加者に対して饗応接待が行われるも
のを除く)に関し、必要やむを得ない実
費の補償としてする場合(ただし、食事、
食事料の提供は禁止されています)
選挙区内にある者とは、その区域内に
住所または居住を有する者だけでなく、
一時的な滞在者も含み、さらに、人、法
人だけでなく、人格のない社団や地方公
共団体も含むと解されています。
候補者等はこの選挙区内にある者に
対して寄附することが禁止されていま
す。
また、候補者等は答礼のための自筆に
よるものを除き、時候のあいさつ状を出
すことも禁止されています。
◆ 候補者等が禁止される寄附をすることは、原則としてすべて罰則の対象とされてお
り、刑罰が科されると候補者等は原則として選挙権及び被選挙権が一定期間停止され
ます。
◆ 禁止される寄附(選挙に関しないもので、かつ、通常一般の社交の程度を超えない
ものに限ります)をしても、次に掲げる寄附については、例外的に罰則の対象となり
ません。
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ア 候補者等が結婚披露宴に自ら出席し、その場おいてする祝儀の供与
イ 候補者等が葬式に自ら出席し、その場においてする香典の供与
ウ 候補者等が葬式の日までの間に自ら弔問し、その場においてする香典の供与
(2)候補者等を寄附の名義人とする寄附の禁止(法 199 の 2 ②)
候補者等を寄附の名義人とする当該選挙区内にある者に対する寄附については、何
人もこれをすることはできず、違反した場合は罰則の対象となります。
(3)寄附の勧誘・要求の禁止(法 199 の 2 ③④)
何人も、候補者等に対して、当該選挙区内にある者に対する寄附を勧誘したり要求
することはできません。候補者等を威迫して勧誘や要求をすること、候補者等の当選
または被選挙権を失わせる目的で勧誘や要求をすることは罰則の対象となります。
また、候補者等を寄附の名義人とする寄附について、候補者等以外の者に対し、こ
れを勧誘し、または要求してはいけません。
(4)候補者等が関係する会社等の寄附の禁止(法 199 の 3)
候補者等が、その役職員または構成員である会社や団体等は、その選挙区内にある
者に対し、いかなる名義であっても候補者等の氏名を表示したり、氏名が類推される
ような方法で寄附をしてはいけません。
ただし、政党その他の政治団体またはその支部に対しては、寄附をすることができ
ます。
(5)候補者等の氏名を冠した団体の寄附の禁止(法 199 の 4)
候補者等の氏名が表示され、またはその氏名が類推されるような名称が表示されて
いる会社や団体等は、その選挙に関し、その選挙区内にある者に寄附をすることがで
きません。
ただし、政党その他の政治団体またはその支部に対して寄附をする場合またはその
候補者等に対してする場合は寄附を行うことができます。
豆 知 識
(6)後援団体に関する寄附等の禁止
(法 199 の 5 ①∼④)
後援団体は、当該選挙区内にある者に対
し、いかなる名義であっても、寄附をする
ことはできません。
ただし、次に掲げる寄附は行うことがで
きます。
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後 援 団 体
政党その他の政治団体またはその支
部で特定の候補者もしくは候補者とな
ろうとする者(公職にある者を含む)
の政治上の主義施策を支持し、または
それらの者を推薦支持することが、そ
の団体の政治活動のうち主たるもので
あるものをいいます。
① 政党その他の政治団体またはその支部に対し寄附をする場合
② その後援団体が支持し、推薦する候補者等に対し寄附をする場合
③ その後援団体の設立目的により行う行事または事業に関し寄附を行う場合
(花輪、供花、香典、祝儀その他これらに類するものは、時期を問わず禁止され、
設立目的により行う行事または事業に関する寄附でも、選挙前の一定期間※1 は禁止
されています。
)
※1 任期満了の日前 90 日に当たる日から選挙の期日までの間
(7)県、市と特別の関係がある者の寄附の禁止
次に掲げる者は、それぞれの選挙に関し寄附することは禁止されています。
① 寄附をしようとする者が、県及び市と請負その他特別の利益を受けるような契約
の当事者である場合
② 会社その他の法人が、他から融資を受けていて、その融資をしている者に対し、
県及び市から利子補給金の交付があった場合
(8)政治資金規正法による寄附の制限
政治資金規正法では、政治活動に関する寄附について、次のような制限があります。
① 企業・労働組合等の団体の寄附の制限
企業・労働組合等の団体が政党、政治資
金団体以外の者に対して政治活動に関する
寄附をすることは禁止されています。
② 政党以外の者が、候補者等の政治活動(選
挙運動を除く)に関して金銭等(金銭及び
有価証券)による寄附をすることは禁止さ
れています。
豆 知 識
企業・労働組合等の団体
「企業・労働組合等の団体」とは企
業、労働組合、職員組合のほか、各種
業界団体、宗教団体、文化団体、労働
者団体、親睦団体等、法人であると否
とを問わず、すべての団体(政治団体
を除く)がこれに含まれます。
③ 寄附の量的制限
ア
政党及び政治資金団体に対する寄附の
限度額(総枠)は、個人のする寄附は年
間 2,000 万円、企業・労働組合等の団体
のする寄附は団体の規模に応じ年間 750
万円から 1 億円までとされています。
イ
資金管理団体
候補者等は、その者のために政治資
金の拠出を受けるべき政治団体として
自らが代表者である政治団体のうちか
ら、一に限り、資金管理団体を指定す
ることができます。
個人からは政党及び政治資金団体以外
の者に対しされる寄附は、年間 1,000 万円までとされ、同一の者に対しては総枠
の範囲内で年間 150 万円を超えることはできません。
ウ 政治団体は、同一の者から年間 5 万円を超える寄附を受けた場合には、収支報
告書に寄附者の氏名及び寄附金額を記載しなければなりません。
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④ 寄附の質的制限
ア 特定会社等のする寄附の禁止
・その県または市から補助金、負担金、利子補給金等の給付金の交付の決定を受
けている会社その他の法人
・その県または市から資本金、基本金その他これらに準ずるものの出資や拠出を
受けている会社その他の法人
・3 事業年度以上にわたり継続して欠損を生じている会社
イ 外国人等からの寄附の受領の禁止
何人も、外国人、外国法人等からの寄附を受けることはできません。
ウ 匿名寄附等の禁止
何人も、本人以外の名義または匿名で寄附をしてはならないし、これを受けて
はなりません。
◆ 公民権の停止(法 252)
候補者等が禁止される寄附をすることは、原則としてすべて罰則の対象とされてい
ます。そして、刑罰が科せられると候補者等は、原則として選挙権及び被選挙権が一
定期間停止されます。
【たとえば】
◇ 候補者等が選挙区内にある者に対してするお中元、お歳暮、入学祝、結婚祝、出産祝、
お祭り等の寄附、餞別等従来から慣行として行われているようなものについても寄附に
該当し、罰則をもって禁止されます。
◇ 候補者等が結婚式に招かれた場合、それが会費制の結婚式であれば、その会費を支払
うことは差し支えありません。
◇ 氏子になっている神社や檀家となっている寺(選挙区内にある)の社殿や本堂修復の
ため、候補者が寄附をすることは、罰則をもって禁止されています。
◇ 後援団体の設立目的に「会員の親睦」が入っている場合でも、花輪、供花、香典、祝
儀等としてされるものは常時罰則をもって禁止されています。
◇ 後援団体が、市内の老人クラブの旅行に際し、クラブに餞別を贈ることは、一般にそ
の後援団体の設立目的により行う行事または事業に関するものとは認められず、罰則の
対象となるものと考えられます。
◇ 個人が候補者に対して行う選挙中の陣中見舞は認められますが、企業・労働組合等の
団体のする陣中見舞は禁止されています。
◇ 物品による寄附、便益・労務による寄附(事務所用の部屋や労務の無償提供等)は、
金銭に換算します。
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2 参 考
※『候補者等』とは、
「候補者、候補者となろうとする者、現に公職にある者」のことです。
(1)候補者等の行う寄附の禁止
Q 罰則をもって禁止される候補者等の祝儀、香典の例は。
A 1.候補者等が結婚披露宴や葬式に出席を予定している場合であっても、祝儀や香
典を事前に相手方に届けること。
2.候補者等の秘書や配偶者等の親族が、葬式に代理出席して候補者等の香典を相
手方に渡すこと。
3.候補者等が、葬式の際、供花、花輪を相手方に渡すこと。
※ いずれも相手方が選挙区内にある者で親族でない場合
Q 香典は金銭に限られるか。例えば、線香を持っていくことはどうか。
A 香典は金銭に限られます。線香を持っていくことは罰則をもって禁止されます。
Q 祝儀は、金銭に限らず品物も含むか。
A 品物も含みます。
Q いわゆる「通夜」に政治家が、自ら出席して香典を渡すことは罰則の対象か。
A 罰則の対象とはなりません。
Q 会費制でない結婚披露宴に候補者等が招待された場合に、本人が出席できないため、
秘書を代わりに出席させ、かつ、相手方(親族でない選挙区内にある者)の了解のも
とに、提供される料理代等に見合う実費程度の金銭を相手方に支払う場合。
1.候補者等が経費を負担して、政治家の名義で支払うことはどうか。
2.候補者等が経費を負担して、秘書の名義で支払うことはどうか。
A いずれも法第 199 条の 2 第 1 項に違反し、罰則の対象となります。
Q 会費制でない出版祝賀会に候補者等が招待された場合に、提供される料理代等に見
合う実費程度の金銭を相手方(親族でない選挙区内にある者)に渡すことはどうか。
A 罰則をもって禁止されます。
Q 罰則をもって禁止される候補者等の行う寄附の例は。
A 1.候補者等が、妻や秘書名義で選挙区内にある者に対して寄附をすること。
2.町内会の野球大会に際して、カップや記念品を贈ること。
3.町内会の野球大会に際して、持ち回りとするためのカップを貸与すること。
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Q 選挙区内の過疎地域で交通不便な場所において行う純粋な政治講習会に関し、候補
者等がバスをチャーターして、その参加者を会場まで運ぶことは寄附の禁止に当たら
ないと思うがどうか。
A その地域の交通事情等から判断して、必要やむを得ない実費の補償と認められる限
り、寄附に当たりません。
※ 公選法第 199 条の 2 第 1 項但書の「必要やむを得ない実費の補償」とは、金銭によ
る実費の弁償だけではなく、現物支給も含みます。なお、
「必要やむを得ない実費の
補償」には「食事についての実費の補償」は含みません。
Q 事務所開きにおいてお茶及びお茶うけの提供はできるか。
A 通常用いられる程度のものなら差し支えありません。
Q 候補者等が選挙区内で花火大会を主催し、住民に花火を見せることはどうか。
A 公選法第 199 条の 2 に違反します。また、時期、態様によっては公選法第 129 条、
第 221 条に違反する場合もあります。
Q 候補者等が自己の財産を当該選挙区内にある次の相手に対して寄附することは、罰
則をもって禁止されるか。
1.市町村
2.当該市町村を包括する都道府県
3.国
A いずれも罰則をもって禁止される。
Q 1.候補者等が選挙区内にある者に対し、色紙を贈ることは寄附の禁止に該当する
か。
2.選挙区内にある者から差し出された色紙に、候補者等はサインをすることがで
きるか。
3.候補者等が購入した色紙について実費をもらい、これにサインをして選挙区内
にある者に渡すことはどうか。
A 1.該当します。
2.一般には、差し出された色紙にサインすることは、寄附に当たりません。
3.相手方が色紙代を払って色紙を購入し、それにサインを求める場合、2と同様
と考えます。
Q 候補者等が葬儀に際し神官、僧侶等にいわゆるお布施を出すことは寄附に当たるか。
A 役務の提供に対する債務の履行と認められる限り、寄附には当たりません。
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Q 候補者等が選挙区内にある者に対して、匿名で寄附をすることはどうか。また、配
偶者や秘書等の名義で寄附することはどうか。
A 匿名であっても他人名義であっても、実質上候補者等が寄附をするものである限り、
罰則をもって禁止されます。
Q 候補者等がパチンコ店の開店に際し、花輪を贈呈することはどうか。
A そのパチンコ店が当該選挙区内にあるときは、選挙に関するものでなくても、贈呈
することは罰則をもって禁止されます。
Q 候補者は、選挙区内の他の選挙の候補者等に政治献金や選挙献金ができないか。
A 寄附になり、罰則をもって禁止されます。
Q 祝電や弔電を打つことも寄附となるか。
A 祝電や弔電は、財産上の利益供与ということにはならないので、寄附には当たりま
せん。
(2)候補者等を名義人とする寄附の禁止
Q ○○株式会社社長の千曲太郎が候補者等である場合、○○株式会社が「○○株式会
社社長 千曲太郎」と記載したのし紙をつけた中元を選挙区内にある者に贈ることは
できるか。
A 公選法第 199 条の 3 の候補者等の関係会社等の寄附の禁止規定に該当するものであ
り、選挙に関するものであれば、罰則の対象となります(法第 249 条の 3)
。また、寄
附の態様により、会社ではなく候補者等が寄附していると相手方に思わせる場合(例
えば、
「千曲太郎」の部分をことさら大書きし、あるいは「千曲太郎からです」などと
いう場合)には、
『候補者等を寄附の名義人とする寄附』にも該当し、選挙に関するも
のでなくても、罰則の対象となります。
(3)勧誘・要求
Q 自治会役員が、区域内にいる候補者等に対して祭りの寄附を勧誘、要求することは
できるか。
A できません。
Q 候補者等を威迫して寄附の勧誘、要求をした場合は、罰則の対象となりますが、こ
の「威迫」とはどういう意味か。
A 「威迫」とは、
「人に不安の念を抱かせるに足りる行為」という意味です。
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(4)後援団体の寄附の禁止
Q 選挙前の一定期間以外の期間において、後援団体が主催する会員のマレットゴルフ
大会を開催した場合、後援団体が優勝者に賞として後援団体の会長杯を寄贈すること
はどうか。また、高額な時計等を贈ることはどうか。
A 後援団体の設立目的により行う行事、事業に関してされるものであれば禁止されま
せん。
高額な時計等を寄贈することは、後援団体の設立目的により行う行事、事業に関す
るとは認められない場合が多く、祝儀に該当すると認められる場合もあると考えられ
ます。
(こうした場合は罰則があります。
)
Q 候補者等が会長である団体が、候補者等の氏名を表示した表彰状を授与することは、
公選法第 199 条の 3 に違反しないと解するがどうか。また、記念品やカップを贈るこ
とはどうか。
A 前段 違反しません。
後段 公選法第 199 条の 3 に違反します。なお、候補者等の氏名等を表示しないで、
記念品やカップを贈ることは同法第 199 条の 3 の違反にはならない。
Q 後援団体が選挙区内にある者に対してすることが禁止される寄附の例は。
A 1.会員あるいはその身内の不幸に際し、花輪、香典を出すこと。
2.市内の老人会の設立 10 周年記念やマレットゴルフ大会に祝儀を出すこと。
3.選挙区内にある者の家の新築祝を出すこと。
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