運転支援の仕組み と 運転支援されるドライバーとの関係 北原 孝 東京工業大学 特任教授 Kitahara 安全運転シンポジウム2007 1 運転支援の仕組みと運転支援されるドライバーとの関係 自動車の性能向上で事故を防ぐ ・ 1991年から始まった、先進安全自動車(ASV)研究の15年 にわたる成果を実用化して、ドライバーが運転しなくても走る自 動車が現れた。 事故の原因の大部分を占める人間の不注 意、ミスを警告するだけでなく、うっかりしていても事故が起こ らないようなシステムを車に搭載してドライバーを支援する。 ドライバーの性能向上で事故を防ぐ • 一方、人間の性能を上げれば事故を防ぐこともできそうだ。 運転する技術に加え、運転するときの知恵、経験、心がけと も言える精神的な部分の性能向上で事故防止を図る考え 方、「運転道」を提案する。 Kitahara 安全運転シンポジウム2007 2 目次 • 交通事故の現状 • ドライバーが原因となる事故 • ドライバー支援による事故予防技術: 先進安 全自動車の技術実用化例 • 運転支援技術実用化に当たっての課題 • 人間の弱さを自覚する • ドライバーの安全運転能力を向上させるための (運転道)を提案 Kitahara 安全運転シンポジウム2007 3 道路交通事故の現状 Kitahara 安全運転シンポジウム2007 4 死傷者: 3026人/日 事故: 2430件/日 死者: 17人/日 交通安全白書平成19年版 Kitahara 安全運転シンポジウム2007 5 ドライバーが原因となる事故 中でも、ミス、うっかりなどが多い (安全運転義務違反 54.4%) 交通安全白書平成19年版 Kitahara 安全運転シンポジウム2007 6 ドライバー支援で事故死者を75%減らせるか! Kitahara 安全運転シンポジウム2007 ITSハンドブック 7 ドライバー支援の効果予測 Kitahara 安全運転シンポジウム2007 ITSハンドブック 8 そこで研究者、技術者が考えた • ドライバーのミス、うっかりが無くなれば 事故死者は減るに違いない! • クルマ側で、ドライバーのミス、うっかり を補えないか? • 最新のエレクトロニクス技術などを使え ば、ある程度できる筈だ! Kitahara 安全運転シンポジウム2007 9 未来の車:欲しい車 自動車技術会自動車産業技術戦略検討委員会 2005年調査 安全・環境に関係する車 趣味・手軽さに関する車 • 排気ガスを出さない車 • 絶対にぶつからない車 • 走れば走るほど空気がき れいになる車 • 人を傷つけない安全な車 • 高齢者や身障者が安全に 運転できる車 • 空を飛ぶ車 • 乗ると健康になる車 • 会話ができて命令を聞いて くれる車 • 折りたたんだり大きさを変 えられる車 • こわれても元に戻る車 Kitahara 安全運転シンポジウム2007 10 ドライバー支援による事故予防技術: 先進安全自動車の技術実用化例 先進安全自動車(ASV) 計画とは: エレクトロニクス技術などの新技術により、 安全性を格段に高めること、利便性の 向上を図ることを目的に、自動車の高 知能化を図る Kitahara 安全運転シンポジウム2007 11 先進安全自動車(ASV)とはどんなクルマ? • エレクトロニクス技術の応用により自動車を高知能化し、 • ドライバが運転する車(ヒューマンーマシン系)としての安全性 を高め、 • 事故予防、被害軽減等に役立たせようとの目的のもと に、 • 21世紀に向けて開発される試作車 • ドライバ、車、周囲の状況を見張る各種センサー、コンピュー ター、作動装置等を車載し、運転を支援する Kitahara 安全運転シンポジウム2007 12 システムの作動の仕組み センサー:ドライバー、クルマ、まわりの現象を測定 コンピューター:測定した現象データを分析、評 価基準値と較べて危険度の判断 出力装置:コンピューターから来た出力を装置に入 れて、警報、さらには操作 Kitahara 安全運転シンポジウム2007 13 システム作動の原理 ドライバー: 顔、操作 クルマ: 運動状況 ドライバーが気がついて、 またはシステムが働いて事 故回避 周りの状況: 距離など コンピューター センサー データ分析 測定装置 判断 カメラ、レーダー 運動現象測定計器 Kitahara 警報 運転操作装置 出力 正常−異常 安全運転シンポジウム2007 14 実用化した技術 4期ASVパンフレット Kitahara 安全運転シンポジウム2007 15 実用化した技術 4期ASVパンフレット Kitahara 安全運転シンポジウム2007 16 実用化した技術 4期ASVパンフレット Kitahara 安全運転シンポジウム2007 17 実用化した技術 4期ASVパンフレット Kitahara 安全運転シンポジウム2007 18 実用化した技術 4期ASVパンフレット Kitahara 安全運転シンポジウム2007 19 実用化した技術 4期ASVパンフレット Kitahara 安全運転シンポジウム2007 20 ドライバー支援の仕方 • 認知の支援(気がつかないなら教えよう) 知覚機能拡大 情報提供 • 判断の支援(判断が遅いのなら速くさせよう) 警報 • 操作の支援(それでも駄目なら助けてしまえ) 事故回避支援制御 運転負担軽減制御 Kitahara 安全運転シンポジウム2007 21 4期ASVパンフレット Kitahara 安全運転シンポジウム2007 22 2000年までに研究開発された安全技術の例 前方障害物衝突防止支援システム 後側方・側方情報提供装置 カーブ進入危険速度防止支援システム 車線逸脱防止支援システム(レーンキーピング) ブレーキ併用式車間距離制御機能付定速走行装置 (オートクルーズ) • 居眠り警報装置 • 夜間前方歩行者情報提供装置(ナイトビジョン) • • • • • Kitahara 安全運転シンポジウム2007 23 高度道路交通システム(ITS)の事故低減効果 Kitahara 安全運転シンポジウム2007 ITSハンドブック 24 前方障害物衝突防止支援システム 前方対応衝突被害軽減システム (トヨタ) プリクラッシュ ブレーキアシスト システム Kitahara 安全運転シンポジウム2007 25 夜間前方歩行者情報提供装置 インテリジェント・ナイトビジョン システム (ホンダ) Kitahara 安全運転シンポジウム2007 26 車線逸脱防止支援システム レーン デパーチャー プリベンション (日産) Kitahara 安全運転シンポジウム2007 27 追突被害軽減システム (日野) Kitahara 安全運転シンポジウム2007 28 先進技術実用化に当たっての課題 ASVの基本理念 • ドライバー支援の原則 ドライバーが主体の運転 • ドライバー受容性の確保 ドライバーが支援されていることを知らせる • 社会受容性の確保 他の交通に迷惑でなく、受け入れられる Kitahara 安全運転シンポジウム2007 29 ASVの基本理念 4期ASVパンフレット Kitahara 安全運転シンポジウム2007 30 支援システムからの運転支援の考え方 運転負荷軽減技術、事故回避支援技術 1.ドライバーの意思に沿った支援 2.安全運転を支援 3.ドライバーにわかる支援 4.頼り過ぎや不信を抱かない支援 5.ドライバーの操作を優先する支援 6.支援範囲を超えたらドライバー操作に変われる支援 7.安全性が低くならない支援 8.社会に受け入れられる素地がある支援 Kitahara 安全運転シンポジウム2007 31 運転支援の考え方 Kitahara 4期ASVパンフレット 安全運転シンポジウム2007 32 人間の能力を 劣化させてしまって よいのか? Kitahara 安全運転シンポジウム2007 33 人間の弱さを自覚する • • • • • • 機能を勘違いして、かえって事故にならないか? 装置に頼ってしまって、運転ができなくなる? 不注意運転、居眠り運転を推奨することにならないか? 違う車に乗ったとき、勘違いする? 万一故障した時に慌ててしまう? 運転しているのは自分だと言う意識が減少? Kitahara 安全運転シンポジウム2007 34 人間の能力を 向上させて事故を 防ぐ方法を考えよ う! Kitahara 安全運転シンポジウム2007 35 ドライバーの安全運転能力を向上させ るための「運転道」を提案 • 事故原因となっているドライバーのミスを防ぐた めに、機械に頼らないで、人間の性能アップで 事故を防ぐ! • 運転する技術に加えて、運転するときの知恵、 経験、心がけなど、精神的な部分の性能向で 事故を防ぐ方法は? • 自分を守り、他人に害を与えない方法とは! Kitahara 安全運転シンポジウム2007 36 老子による「道」 「道」とは万物を成り立たせている根源 自分を誇示しない謙虚さ • 自在に対応する柔軟性 • 無為、無心、無欲、質朴、控え目などの徳 Kitahara 安全運転シンポジウム2007 37 「運転道」の概念 • • • • • • 人間ー自動車ー生活のある世界の根源規範 生きること、生活を充実させる生き方 自分の目的を達成するための極意 運転することは人間社会生活の一部 車の使い方、役割り、付き合い方、知識 宗教の考え方に近い Kitahara 安全運転シンポジウム2007 38 宗教の戒律の例 モーセの十戒 • • • • • • • • • • 運転に関する十戒(バチカン教皇) 他の神様禁止 偶像崇拝禁止 神様をやたらに呼ぶな 休みの日には休め 父母を敬え 殺人するな 姦淫するな 盗むな 偽証するな 隣の人を羨むな Kitahara • • • • • • • • • • 殺すな 道路では仲良く 礼儀正しく、高潔、慎重 困っている人を助けなさい 自動車は権力とは無関係 体調が悪いときは運転しない 事故犠牲者の家族を支えなさい ドライバーと犠牲者を会わせなさい 弱いものを守りなさい 他者に責任を感じなさい 安全運転シンポジウム2007 39 「運転道」の効用 • • • • 剣道、柔道、茶道、華道 実用価値あり:実際の場面で役立つ 所作が美しい 精神的な充足感が得られる Kitahara 安全運転シンポジウム2007 40 「運転道」の方法 • 自分の目的を達成する方法、考え方 • 自分が不愉快にならず、他人を不愉快に させない • 回りとギクシャクしない和の関係 • 自然で違和感がない • 上手に運転するための「運転術」ではない Kitahara 安全運転シンポジウム2007 41 「運転道」の考え方の例 • 自分にとって最適な方法:安全・快適 • 急いでいる人には譲る:度量と余裕 • 戒律、法律は守らされるもの、道は自 分を守るもの • 運転技術、知識は自分を守るために 必須 Kitahara 安全運転シンポジウム2007 42 「運転道」で自分を守る Kitahara 安全運転シンポジウム2007 43
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