日立のIPテレフォニー事業は健在

ビジネス最前線
Business Frontline
「MX-01」強化しスマホ/UC 提案を加速
日立のIP テレフォニー事業は健在
「撤退か縮小か」などという憶測も広がった日立の IP テレフォニー事業だが、
日立情報通信
エンジニアリング
IPTソリューション事業部
副事業部長
竹内公敏氏
心配は無用だ。スマホ連携/UC 提案の活性化に向けて開発体制も増強。
「NETTOWER MX-01」の機能強化版も近く投入する。
「日立のI P テレフォニー事業が撤
文◎ 坪田弘樹
(本誌)
退するとか縮小するとか、そうしたこ
PBX 事業は「これまで通り」
とは一切ない。それどころか、これか
日立のPBX 事業について2月以降、
ら2016 年度以降にどう伸ばしていく
通信系ディーラーの間で、ある憶測が
かと事業計画をまさに論議していると
広がった。日立製作所が 2月3日の決
ころだ」
算説明会で、事業体制を16 年 4月1日
そう話すのは、日立情報通信エン
付で一新すると発表したのを受けた
に、グループ会社である日立情報通
ジニアリングのI P Tソリューション事
ものだ。一部報道で、通信ネットワーク
信エンジニアリングが統括するI P テ
業部・副事業部長を務める竹内公敏
事業を大幅に縮小し、日立製作所が
レフォニー事業と結びつけて考える
氏だ。2016 年度以降の事業計画にお
開発する通信事業者向けハードウェア
のは行き過ぎといえよう。
いても、
「I P テレフォニー事業の成長
の自社開発から事実上撤退するなど
2月3日の発表を整理すると、その
に向けてソリューション提案を強化し
と伝えられたことから、PBX 事業への
主旨は、情報・通信システム社、電力
ようという方針でいる。そのための仕
影響を懸念する声が上がったのだ。
システム社など 9 社で構成する従来の
込みとなる開発も着々と進めてきた」
だが、新体 制の詳 細は明らかに
製品別カンパニー制を改めて、電力・
という。
なっておらず、また、この発表を直ち
エネルギー、産業・水などマーケット
日立情報通信
エンジニアリング
IPTソリューション事業部
IPTソリューション企画部
技師
遠藤浩氏
別に
「12のフロントBU
(ビジネスユニッ
ト)」を置くというもの(図表)。マー
図表 4 月1日以降の日立グループの事業体制
社長 兼 CEO
サービス主体の事業群
中国総代表
アジア・パシフィック総代表
EMEA・CIS総代表
米州総代表
金融・公共・
ヘルスケア
のフロントBU
アーバン
ヘルスケアBU
公共BU
金融BU
産業・水
ディフェンスBU
アーバン
ソリューションBU
鉄道BU
ビルシステムBU
水BU
産業・流通BU
エネルギー
ソリューションBU
電力BU
原子力BU
電力・
エネルギー
12
でフロント営業を強化するのが狙い
だ。これに伴い、情報・通信システム
社は金融 BU、公共 BU、および新設
のICT事業統括本部に分割。ICT事
業統括本部は全フロントBUと連携す
るという。
なお、日立のI P テレフォニー事業
は 14 年 4 月に、日立製作所から、グ
サービス &プラットフォーム BU
プロダクト主体の事業群
インダストリアルプロダクツBU
ケット別の事業体制に移行すること
グループ会社
ループ会社である日立情報通信エン
ジニアリングおよび日立システムズに
製品・部品・材料など
事業移管されている。日立情報通信
出典:日立製作所 発表資料
エンジニアリングが同事業全体を統
●この冊子は「月刊テレコミュニケーション」2016 年 4 月号より抜粋したものです。
●掲載記事の複写・無断転載を禁じます。
テレコミュニケーション_April 2016
日立 情 報 通 信エン
ジニ アリン グ が 提
供 する Web 電 話 帳
ソリューションの画
面。PC のブラウ ザ
画 面 上で 社 員の 検
索やコメント文によ
る状況確認、電話・
メールの発信、テキ
ストメモの送付など
が行える
I P 共通線により可能だ。
「異なる機種
を組み合わせたセントレックス、ロー
ミングができるメーカーは少ない。今
回のエンハンスの目玉だ」とI P T ソ
リューション企画部・技師の遠藤浩氏
は話す。
医療・介護、ホテルに重点
括、製品設計・開発・製造を行い、日
PBX”であり、中堅中小企業ではレガ
こうし た 機 能 強 化 を ベースに、
立システムズがパートナー向けも含め
シー型が主流で売れていることもあっ
M X-01 がターゲットとする中堅中小
て販売する体制がスタートしてから間
て、昨春、I P 内線端末の収容機能を
企業/拠点でも内線 I P 化、スマホ内
もなく丸 2 年となる。
持たない形でリリースした。
線やWeb電話帳を絡めたUC 提案を
日立のI P テレフォニー事業の事業
機能強化版では、I P 端末を収容で
進めていく。
「Skype for Business や
方針は変わらず、竹内氏も「我々の民
きるようになる。VoIP 通話アプリをイ
Office 365との連携や、当社のWeb
需向けの事業はこれまで通り。さらな
ンストールしたスマートフォンの内線
電話帳ソリューションの案件が徐々に
る強化を図る」と断言する。
収容も可能だ。
増えてきた。正直これまでは、うちが
もう1つ、16 年夏頃の発売予定とな
弱い部分だったが、16 年度はここに
るが、CX-01とMX-01のセントレック
力を入れていく」と竹内氏は話す。
同社は現在、これまでのハードウェ
ス構成および I P 共通線による連携も
また、これと平行して、特定業種向
ア中心のビジネスから「サービスやソ
可能になる。
けのソリューション開発・提案も進め
リューションを軸とした事業を強くす
複数拠点を持つ大企業では、本社
る。ターゲットは医療・介護業界とホ
るため、人員も増やし開発体制を強
やデータセンターにCX-01を置き、支
テル業界だ。これまでも、ナースコー
化している」
(竹内氏)ところだ。
社・営業所等にはゲートウェイと電話
ルシステムやホテルシステムとの連携
15 年度は、4 月に中小規模向けの
機のみを設置、CX-01に接続して内
で顧客を開拓してきたが、さらに「ス
「NETTOWER MX-01」を発売し、前
線電話を使う形態が 多い。ただし、
マートフォンやWeb電話帳をもっと活
機種 MX900IPのリプレースを中心に
この形態では、CX-01やI P 網に障害
用して、業種特有の働き方や課題に
販売。順調な出だしとなったが、PBX
が発生した場合に拠点側の電話も使
合わせた具体的なソリューションのメ
市場全体のトレンドを上回るには至
えなくなる。また、拠点側で事業所用
ニューを増やしていく」という。
らず横ばいの状態という。16 年度は
PH S や非常用電話を使いたいといっ
例えば、P C/スマートフォンで人を
大規模向けの CX-01と同様、M X-01
たニーズにも対応できない。
検索し、プレゼンスを見て電話をか
でもスマートフォン内線化やユニファ
そこで、MX-01を拠点に置き、セン
けるWeb電話帳は、一般的なオフィ
イドコミュニケーション
(UC)、業務シ
ター側の CX-01と連携させることで、
スでは効果があり案件も増えている。
ステム連携といった切り口でソリュー
通常時はCX-01配下のセントレックス
しかし、働き方やコミュニケーション
ション提案を強めていく方針だ。
構成で動作しながら、CX-01の障害
の仕方が異なる病院にそのまま提案
そのためのベースとなるM X-01の
時には拠点内をM X-01でバックアッ
しても受け入れられにくい。スマホや
新機能開発がまもなく完了し、4月以
プできるようにする。CX-01とMX-01
Web電話帳を“材料”として活用し、
降、機能強化版の提供を始める。
間のローミング(ある拠点のPBXに登
業務プロセスにもっと踏み込んだ提
機能強化の1つ目は I P 内線への対
録された PHS 端末を、別拠点のPBX
案ができるよう、ソリューション開発
応だ。MX-01はいわゆる
“レガシー型
経由で1つの内線番号で呼び出す)も
にさらに注力していく考えだ。
MX-01の機能強化版を今春投入
テレコミュニケーション_April 2016