暴力やいじめの予防に関する研究 PART2

暴力やいじめの予防に関する研究
PART2
暴力意識尺度-改訂版(VCS-R)の妥当性と教育プログラムの効果検証について
研究の概要
本研究は,暴力やいじめの予防に向け,学校でどのような取組が考えられるのか,について研究す
るものである。昨年度,全ての児童生徒が暴力やいじめの加害者や被害者になりうるという前提に立
ち,諸機関で報告されている顕在化した暴力やいじめの実態ではなく,暴力に対する知識や考え方,
態度,価値観,行動様式など,潜在化した意識に関する実態を把握した。また,それに基づいて,暴
力予防教育を実践していくための取組の視点を考察し,予防教育プログラムの効果を測定するための
質問紙,『暴力意識尺度-改訂版(VCS-R)』の開発を行った。
本年度は,昨年度の成果と課題を受けて,暴力やいじめの予防に関する第二歩目となる研究である。
まず,
『暴力意識尺度-改訂版(VCS-R)』の妥当性について検討した。さらに,中学生を対象にした
暴力予防教育プログラムを作成し,実施した効果の検証をVCS-Rによって行った。
キーワード
暴力,いじめ,暴力予防教育,暴力意識尺度,暴力の定義とメカニズム,ストレスマネジメント教育
Ⅰ
主題設定の理由
1
暴力の諸問題
文部科学省(2008)によると,平成 18 年度の小学校・中学校・高校における暴力行為の発生件数
は,44,621 件(平成 17 年度 34,018 件)であった。内訳は,小学校 3803 件(2176 件),中学校 30,564
件(25,796 件),高校 10,254 件(6046 件)である。いずれも前年より上回っているが,平成 18 年度
より国私立学校の児童生徒も含めるようになったことによる。いじめに関しての統計は,平成 18 年
度より「いじめの発生件数」から「いじめの認知件数」の調査となったが,小学中高特あわせて,124,898
件であると報告されている。山梨県教育委員会(2009)は,本県の暴力の発生件数が小学校で 6 件(18
件),中学校 135 件(180)件,高校 72 件(62 件)と報告している。
こうした暴力に関する諸問題への教育的な取組として,山梨県総合教育センター教育相談部は,
2007 年度より暴力予防教育に取組みはじめた(廣瀬・上田・深澤・一瀬,2007)。
ところで,一口に暴力の予防と言っても,学校や家庭,社会で生じる暴力には,体罰・いじめ・虐
待・ドメスティックバイオレンス・暴行・恐喝・殺人,暴力団やカルト集団などによる抗争,セクハ
ラ・アカハラといったハラスメントという用語でくくられる暴力,テロ,紛争,戦争など,様々な暴
力が挙げられる。身体的な暴力を使わずとも,人種差別や性差別,洗脳といった暴力もある。このよ
うな様々な暴力に向け,学校教育という枠組みの中で予防し,児童生徒の暴力に対する知識や考え方,
態度を,
「望ましいものかどうか」と判定するためには,我々がこうした様々な暴力を俯瞰し,何を以
て「望ましい」とするのか,という根本的な立場を明確にする必要があった。
そこでまず我々は,J.Galtung(1991)の暴力の定義を理論的支柱とした。さらに,暴力に関する
心理的なメカニズムとして,大渕(2000)の『攻撃の二過程モデル』を参考に,暴力を引き起こす攻撃
性の「衝動性」と「戦略性」について理解を深めることにした。
-1-
2
暴力の定義
J.Galtung(1991)は,
「肉体的無力化または健康の剥奪という行為が,行為主体により意図的に行
われること」と暴力を捉えることは狭く,そのような定義のもとでは,
「受け入れることが極めて困難
である社会秩序さえも,平和と両立することになる」と述べた。例えば,18 世紀に結核で死亡したと
しても,当時においてこれを暴力と見なせないが,医学が発展した今日,様々な救済手段が備わって
いる中で人が結核で死亡するならば,そこには暴力が存在するというわけである。そして,
「ある人に
対して影響力が行使された結果,彼が現実に肉体的,精神的に実現しえたものが,彼のもつ潜在的実
現可能性を下まわった場合,そこには暴力が存在する」と述べ,暴力とは,
「実現可能であったものと
現実に生じた結果との間のギャップを生じさせた原因であり,実際に実現されたものと潜在的に実現
可能であったものとの間にギャップを生じさせたもの」と定義した。
さらに J.Galtung は,暴力を様々な側面から類型化し,最も重要な区別として暴力を行う主体が存
在するかしないかという観点から,
「個人的暴力」と「構造的暴力」という二つの類型を示した(図1)。
そもそも暴力には,意図された暴力と意図されない暴力,顕在的暴力と潜在的暴力の側面があるとし,
その暴力は「個人的暴力」と「構造的暴力」の二つに類型化されるとした。そして,それぞれの暴力
には,物理的か心理的か,積極的か消極的か,傷つけられる者(客体)が存在するかしないか,意図
されたか意図されないか,顕在的か潜在的か,といった視点で捉えることができるという。
J.Galtung は,これまで「構造的暴力」よりも「個人的暴力」に関心が向けられてきたことについ
て触れている。個人的暴力は主体が存在し,目に見えるものであり,客体は暴力を知覚するのが普通
である。しかし,構造的暴力は主体が存在せず,客体は暴力を全く知覚しないように条件付けられて
いる場合もある。個人的暴力は時間的に大きな変動を見せるが,構造的暴力は社会構造に組み込まれ
ている暴力で,安定性を備えたものである。構造的暴力は「おだやかな水」に例えられ,
「おだやかな
水の流れや勢いの方がはるかに暴力的となる危険があるにもかかわらず,個人的暴力の方が注目され
ることになる」としている。
Galtung は,暴力をこのように見ることで,暴力の問題を統一的に考えることが可能になること,
構造的暴力の被害も個人的暴力の被害に値するほど大きい問題と捉えられる,という。Gultung の考
え方に基づき,本研究グループが現実的な暴力を分類したものを表1に示す。
(図1)
J.Galtung による暴力の類型
意図的
暴 力
顕在的
潜在的
意図的でない
個人的暴力
構造的暴力
物理的
物理的
心理的
心理的
客体が存在しない
客体が存在しない
客体が存在する
客体が存在する
-2-
(表1)
J.Gultung の考え方に基づく暴力の分類
意図的である
顕在的
意図的でない
個人的暴力
意図的である
潜在的
意図的でない
暴力
意図的である
顕在的
意図的でない
構造的暴力
意図的である
潜在的
意図的でない
物理的か・心理的か
相手が存在するか・しないか
具体例:身体的暴力,DV,性暴力,強盗,無視
物理的か・心理的か
相手が存在するか・しないか
具体例:ネグレクト,○○ハラスメント
物理的か・心理的か
など
相手が存在するか・しないか
具体例:タテ社会に見られるしごき
物理的か・心理的か
など
など
相手が存在するか・しないか
具体例:親子・夫婦・嫁姑関係,職場など関係性に現れるもの
物理的か・心理的か
相手が存在するか・しないか
具体例:各種差別,仲間はずれ,核保有
物理的か・心理的か
相手が存在するか・しないか
具体例:いじめ傍観,
物理的か・心理的か
割礼・纏足 など
相手が存在するか・しないか
具体例:ペットの飼い捨て,食品偽装
物理的か・心理的か
など
など
相手が存在するか・しないか
具体例:環境破壊,貧困紛争地域の環境
など
J.Galtung の定義に従えば,いじめも,いじめの傍観も,またネグレクトなど行為者が意図してい
ない行為であっても暴力になる。さらに,いわゆる“愛の鞭か体罰か”の捉え方も,それが受ける側
の潜在的な可能性を低める行為であれば,それは暴力であり,行為者の判断によって,
“暴力ではない”
ということはできないことになる。
本研究での取組は,そこで扱う暴力が,学校内でのいじめや暴力行為,社会問題となっている児童
虐待や DV,それから非行・犯罪などをターゲットにしたプログラムであったとしても,プログラムの
理念は「暴力」全般の予防である。また,暴力加害者の再教育プログラムではなく,教室内での一般
児童生徒を対象とした予防啓発のためのプログラムである。そのように位置づけた場合,本研究で扱
う「暴力」は,J.Galtung のいう「個人的暴力」のみならず「構造的暴力」をも含むものであると言
える。森田・清水(1994)は,日本のいじめが集団的暴力であると指摘したが,これは,まさに「構
造的暴力」に類型化される暴力である。
学校で「暴力予防」に取り組む時,
「個人的暴力」だけでなく「構造的暴力」をも扱う必要性は高い。
本研究では,J.Galtung の「暴力」の定義にしたがって暴力を俯瞰的に捉え,
「個人的暴力」と「構造
的暴力」の両面へもアプローチするための取組と位置づけることにした。ただ,限られた授業の中で
全ての暴力を取り上げることはできないので,今回,我々が暴力予防プログラムの中でターゲットと
する暴力は,表1に照らし合わせてみると,点線で示した枠内の暴力であると言える。また,本研究で
表記する「暴力」には,当然「いじめ」も含んでおり,
「暴力やいじめ」といった表現を本論の中では
用いていないことを断っておく注)。
注)尺度項目の中での用いる表現は,小中学生には「暴力やいじめ」とし,高校生には「暴力」とした。これは,
小中学生において,
「いじめ」が「暴力」に統合されていない児童生徒が多いのではないかと予想したためである。
また,高校生においては,尺度を用いた予防教育を行っていく過程で,
「いじめ」も「暴力」であるという正しい
知識を身につけてもらいたいという意図から「暴力」という表現を用いることにした。
-3-
3
暴力のメカニズム『攻撃の二過程モデル』
大渕(2000)は,暴力を特殊な人々の特殊な行為と見るのではなく,暴力はどんな社会にも起こりう
る病理であり,暴力が生み出される人間の心理を,
「普通の人々をモデルに分析すること」を目的とし,
戦略的攻撃と衝動的攻撃という視点を提供した。そして,攻撃行動が発生されるメカニズムを,戦略
的攻撃と衝動的攻撃を統合して捉えた「攻撃の二過程モデル」を提唱した。
大淵は,攻撃性に,ストレスにより不快情動が自動的に処理され,暴力行動が活性化される衝動的
な攻撃と,
「危険を回避するために暴力を行う」,
「人を従わせようとするために暴力を行う」,
「仕返し
をするために暴力を行う」,「自分を印象づけるために暴力を行う」といった戦略的な意志の決定過程
による攻撃との二つの過程があると述べた。そして暴力を引き起こす攻撃性の「衝動性」と「戦略性」
の背景として,衝動性には身体的・社会的なストレスが,戦略性には個人の過去の経験から培われた意
志の決定過程が関連していると述べた(図2)。
また,中村(2002)は「道具的暴力」という言葉も用い,暴力がストレスの解消,支配感や優越感を
満たす,不快感を除去する,といった何らかの要求や欲望を表現する行動とみなし,暴力の戦略性を
強調している。そして,加害者の更正援助として,認知の修正,感情表出,行動変容の段階を挙げ,
行動変容にアンガーマネジメントやソーシャル・スキル・トレーニングなどの有効性を示唆している。
本研究では暴力予防の実践に向け,正しい知識や態度,価値判断をするために,J.Galtung の定義
に従うことした。また,取り組む内容を考えるために,大淵の二過程モデルを参考にすることとした。
4 暴力予防教育のための効果測定尺度の作成
文部科学省が発表した各都道府県での暴力予防に向けた取組をみると,全般的に連携や環境整備と
いったハード面での取組が中心で,暴力予防に向けた具体的な心理的教育活動は少ないようである。
冨永・吉永・安田(2004),また鮎川(2000)らは,いじめ・DV・虐待・衝動行動の防止プログラ
ムの開発の必要性を挙げ,それを受け宮下・冨永(2005)が,高校生と自立支援施設に入所・通所の
青年に対する暴力予防の取組を報告している。 また,山崎(1999)は「こころの健康教育」に対する試
みとして PHEECS(フィークス)を提唱し,攻撃性を低減させるための総合的な教育プログラムを開発
し実践している。しかし,学校で行うプログラムは少なく(宮下,2004),その開発が望まれている。
ところで,暴力予防教育に取り組む上で,何を以て予防できたと言えるのかを検証する指標は不可
欠である。それに関連した尺度として,大淵・山入端・藤原(1999)による機能的攻撃性尺度(FAS)
や小学生用攻撃性質問紙(HAQ-C)などによる効果測定も考えられるものの,短期間でのプログラム
による変容や,戦略性に関した内面を明らかにするものとしては実際的ではない(一瀬,2005)。
(図2)
攻撃の二過程モデル(大淵,2000)
自動的な認知過程
身体的なストレス
や社会的なストレ
スが関係する
衝動的攻撃
動機づけ
覚
認知的決定過程
回避・防衛しようかな
影響・強制しようかな
制裁・報復しようかな
これまでの学習経
験から判断し,動機
づけされる
-4-
戦略的攻撃
動機づけ
攻 撃 反 応
知
社会的葛藤
感情の制御を失う
生理的に不快な状態
心的ネットワーク活性化
そこで我々は,暴力意識尺度-改訂版(VCS-R)を作成した(廣瀬ら,2007)。VCS-R は,宮下(2004)
の取組や大淵ら(1999)の FAS,暴力加害者更生プログラムに関する文献を参考に作成された一瀬
(2005)の「暴力意識尺度」の改訂版として,信頼性の向上と小学校・中学校・高校それぞれの校種
で使用できるような項目の精選をねらって作成されたものである。
小中高 2466 名を対象に調査を行い,項目の精選を,反応分布を検討,偏りのある項目の削除,質
問紙全体の得点の傾向と関係のない項目の削除(I-T 相関),因子分析という手順でていねいに行い,
校種で一貫した因子を同定した。その後に校種に適した項目の精選と,α係数による内的整合性の検
討を行った。因子は,「暴力を容認する態度」,「暴力抑止に向けた適切な態度」,「暴力被害への理解」
と命名した3因子を同定した。
α係数による内的整合性の検討結果は,項目全体で,α=.799。因子毎では「暴力を容認する態度」
因子がα=.784,「暴力抑止に向けた適切な態度」因子ではα=.758,「暴力被害への理解」因子では
α=.611 であった。高種別の各項目数は,平均や分散,因子負荷を考慮して,最終的に小学校用・中
学校用が全 20 項目,高校用が全 25 項目を暴力意識尺度-改訂版(VCS-R)とした(表5)。
各校種ごとの,暴力意識尺度-改訂版(VCS-R)による実態を図3~5,表2~4に示す。いずれの
因子においても,男子生徒の方が女子生徒よりも望ましさに欠け,校種においては中学校の生徒に望
ましさに欠けていた。
VCS-R による実態把握では,性差で男子,校種では中学校男子の暴力意識が高いことがわかった。
また,VCS-R は,暴力予防プログラムを作成する上での視座を与えるものであり,攻撃の二過程モ
デルと対比させると,「暴力を容認する態度」と「暴力被害の知識」が戦略的攻撃に,「暴力抑止に向
けた適切な態度」が衝動的攻撃に対応する項目であるものと考察した。そして,前者が心理教育,後
者がストレスマネジメント教育による予防プログラムでアプローチしていくことが考えられるとした。
暴力を容認する態度
(図3・表2)
3.50
3.30
3.09
2.99
男子
女子
2.62
2.50
小
中
暴力を容認する態度の校種毎の実態
3.67
3.67
高
小学生
中学生
高校生 学校差 性差 交互作用
男 女
男
女 男 女
F値
F値
F値
n=330 n=291 n=364 n=327 n=642 n=512
平均 2.99 2.62 3.67 3.30 3.67 3.09 131.31 158.71 5.38
SD 0.86 0.78
0.80 0.83 0.87 0.77
*
*
*
暴力抑止にむけた適切な態度
(図4・表3)
3.05
3.00
2.93
2.92
2.78
2.77
男子
女子
2.66
2.50
小
中
高
暴力抑止に向けた適切な態度の校種毎の実態
小学生
中学生
高校生 学校差 性差 交互作用
男 女
男
女 男 女
F値
F値
F値
n=330 n=291 n=364 n=327 n=642 n=512
平均 2.78 2.66 3.05 2.92 2.93 2.77 27.03 23.50 0.18
SD 0.69 0.66 0.71 0.61 0.65 0.59
*
*
n.s.
暴力被害への理解
(図5・表4) 暴力被害への理解の校種毎の実
3.64
3.50
3.35
3.22
男子
女子
3.00
2.84
2.82
2.74
2.50
小
中
高
小学生
中学生
高校生 学校差 性差 交互作用
男 女
男
女 男 女
F値
F値
F値
n=330 n=291 n=364 n=327 n=642 n=512
平均 3.22 2.82 3.64 2.84 3.35 2.74 4.04 202.71 3.05
SD 0.50 0.53
0.48 0.50 0.36 0.40
*
*
*
-5-
表5 暴力意識尺度-改訂版(VCS-R)の構造
1
2
3
小
中
高
33 怒りの気持ちを暴力で発散したら,気持ちがスッキリすると思います。
.667
.114
-.046
.601
.709
.675
9 問題を解決するのに,時には暴力を使っても良いと思います。
.653
.018
.114
.635
.539
.626
29 人の痛みを知るためには,暴力が必要だと思います。
.587
.035
.100
.568
.515
.543
1 正しさを主張するためには,暴力を使わざるを得ないときがあると思います。
.576
.064
.096
.644
.472
.516
.547
.207
-.155
.521
.566
.538
.544
.027
-.046
.454
.439
.541
13 私は殴られたら殴り返すと思います。
.502
.054
.081
-
-
.517
21 もし,世の中を自分の思い通りに変えることができたら楽しいと思います。
.452
.013
-.073
.460
.442
.439
17 人が自分の言うことを何でも聞き,思い通りになったら,良い気分になると思
います。
.414
.011
-.100
.456
.500
.383
20 私は,友達や下級生から,なめられないようにしています。
.282
-.102
-.116
-
-
.309
α
=.750
α
=.751
α
=.776
第1因子<暴力を容認する態度>
34 私は気に入らないことがあった時,人や物などに当たり散らすと気持ちがお
さまると思います。
5 暴力を振るいたくなる衝動は,人間の本能としてもともと備わっているものだ
と思います。
α
=.784
第2因子<暴力抑止に向けた適切な態度>
30 私は,友達がケンカをしていたら止めに入ると思います。
-.005
.531
-.023
.528
.567
.453
-.026
.505
.117
.448
.552
.464
.036
.473
-.158
.537
.342
.488
4 私は,自分の気持ちの変化に気づくことができる方だと思います。
-.192
.454
.138
.511
-
.426
12 私は,怒りの気持ちを,落ちついて相手に伝えることができると思います。
-.041
.448
-.073
.477
.434
.437
14 私は,自分と考え方が違う人とでも上手につきあうことができると思います。
-.018
.447
-.094
.528
.449
.361
40 私は,暴力を受けたら,信頼できる人に相談すると思います。
.074
.432
-.046
-
.447
-
.007
.415
-.034
.357
.488
.436
.034
.415
.096
-
.446
-
26 私は,無視されている人をみると,何かしてあげたくなります。
.081
.411
.143
-
-
.458
38 私には,嫌なことがあってもホッとできる場所があります。
.000
.409
-.078
-
-
.350
18 私は,相手に気持ちを伝えるとき,相手がそれをどんなふうに感じるかを考
えます。
-.016
.394
.134
-
-
.462
10 私は,意見が対立したとき,話し合いで解決できると思います。
.059
.391
.088
.446
-
-
α
=.707
α
=.676
α
=.699
6 私は身近な人が暴力を受けている時それを止めるために自分にもできること
があると思います。
22 私はイライラしたとき人や物などを傷つけずにその気持ちを落ちつかせる方
法を知っています。
8 私は,腹が立ったとき,冷静に自分の気持ちに気づくことができると思いま
す。
28 暴力をなくしていくためには,自分の気持ちに気づくことが大切だと思いま
す。
α
=.758
第3因子<暴力被害への理解>
19 暴力を受けるとその時のことを急に思い出して勉強や仕事に集中できなくなる
ことがあると思います。
3 暴力を受けたことを思い出すと,ドキドキしたり寝られなくなったりすることが
あると思います。
11 暴力を受けている人は,それを知られたくないため,隠そうとすると思いま
す。
-.004
-.021
.724
.734
.626
.715
.077
-.040
.649
.661
.535
.677
-.125
.066
.381
.352
.498
.376
15 暴力を受けている人は,それを人に相談できないことがあると思います。
-.138
.101
.378
.377
.472
.360
23 暴力を受けても,死にたくなるほど辛くなることはないと思います。
.096
-.155
.337
-
-
.390
α
=.611
α
=.618
α
=.612
α
=.638
注:項目は高校生用のものである。
-6-
5
これまでの研究成果と課題
これまでの研究成果として,暴力意識尺度-改訂版(VCS-R)を作成したことによって,今後の暴力
予防教育に向けた第一歩を踏み出すことができた。
J.Galtung(1991)の「暴力の定義」と大淵(2000)による攻撃の二過程モデルを支柱にしたこと
で,暴力を俯瞰的に捉えることができた。それにより,我々が暴力予防教育に取り組む上で,暴力意
識尺度-改訂版(VCS-R)と作成するプログラムが,暴力のどの部分へ焦点を当てたもので,どのよう
な暴力の予防を目的としているものなのか,という立脚点を明確に捉えることができるようになった。
また,昨年度の研究の中で VCS-R と「楽しい学校生活を送るためのアンケートQ-U」との比較
検討を行った。そこから,暴力を抑止するような態度を持っている生徒であっても,暴力加害者の中
核である「支配性」が低いとは言えないのではないか,学校生活に満足している生徒であっても,被
害者への理解は乏しいのではないか,ということが示唆をえることができた。
しかし,昨年度の研究には残された研究課題と第二歩目となる研究課題が存在している。
まず,VCS-R で評価される児童生徒の有り様である。
VCS-R で「望ましい」,もしくは「望ましくない」と評価される生徒が,暴力やいじめの問題に関
連する他の概念とどのような関連があるか,という検討が必要である。例えば,VCS-R で評価される
生徒が,攻撃性や権力志向性といった概念とどの程度関連があるのか,また,日常接している教師の
主観とどの程度一致しているのか,について検討し,VCS-R の妥当性について検討する必要があった。
もうひとつは,暴力予防教育プログラムの作成である。
昨年度,ストレスマネジメント教育と暴力に関する知識理解をねらいとした心理教育という二つの
アプローチによるプログラム作成について触れたが(廣瀬ら,2007),具体的なプログラムを作成す
ることが第二歩目となる課題である。
ストレスマネジマント教育とは,ストレスに対する自己コントロールを効果的に行えるようになる
ことを目的とした教育的な働きかけ(山中・冨永,2000)のことである。ストレスマネジメントの手
法をプログラムの支柱とし,暴力の衝動性や VCS-R の「暴力抑止に向けた適切な態度」へ働きかけ
る体験的なプログラムを作成する。さらに,暴力の戦略性や「暴力を容認する態度」へ働きかけ,
「暴
力被害への理解」を育むと考えられるプログラムを,同じフローチャートの中に盛り込まれるような
プログラムを作成する。そして,VCS-R による効果検証を行うことが本年度の課題である。
さらに,より予防効果の高いプログラムを作成していくためには,単年度のみのプログラム効果の
検証に終えることはできない。本年度のプログラム修正に加え,あらたな取組の視座が得られるよう
に,暴力に関する知識や考え方,態度に影響する他の心性を把握することも意味があると考えている。
また,前述したように,学校生活に満足していたりコミュニケーション能力の高いと見受けられる
生徒の中にも,暴力を容認していたり被害者への理解が乏しかったりする可能性がある。VCS-R の妥
当性が検討に加え,学校生活に満足しているか否か,と暴力意識との間に関係性は見られないという
関係が明らかにされれば,新たな施策が求められることになるだろう。
本年度の課題は,暴力意識尺度-改訂版(VCS-R)の質を高め,暴力予防教育プログラムを実施する
ことにとって,どのような取組にどのような効果があったか,という成果を考察し,さらにより効果
のあるプログラムの作成に向けた検討を加えることである。そして,取組を積み重ね,成果を蓄積し
発信することで,山梨県や我が国の学校において,暴力予防教育がひろく取り組まれるようになるこ
とをねらいとしている。
-7-
Ⅱ
研究の目的
1
暴力意識尺度-改訂版(VCS-R)の妥当性の検討
VCS-R の構成概念妥当性の検討として,日本版 Buss-Perry 攻撃性質問紙:BAQ(安藤ら,1999)
との相関関係を測り,各クラス担任によるノミネート法により VCS-R の妥当性を検討する。
2
暴力予防教育プログラムの効果検証
暴力予防教育プログラムを作成し,VCS-R による効果の検証を行う。
3
暴力意識尺度-改訂版(VCS-R)とその他の心性との関係
今後の研究に向け,他の尺度と VCS-R との関連を考察し,新たな視座を得る。
Ⅲ
研究の基本的な考え方
1
暴力意識尺度-改訂版(VCS-R)の妥当性の検討について
暴力の問題を引き起こす背景として,もっとも深い関係にある人間特性は「攻撃性」であろう。山
崎・島井(2002)らは,暴力と攻撃性に関する研究を幅広く紹介し,考察している。また,こころの
心 理 教 育 の 枠 組 み と し て 攻 撃 性 の 低 減 を 目 的 と し た , フ ィ ー ク ス ・ プ ロ グ ラ ム ( PHEECS :
Psychological Health Education in Elementaryschool Classes by Schoolteachers)による実践報告も
報告されている(今川・笠井・山崎,1999)。攻撃性の低減が,そのまま暴力の予防となるのかどう
かについては,深い論議が必要であるが,暴力に対する望ましくない考え方や態度と攻撃性の高さと
の間に相関関係があることに論をまたない。そこで本研究では,VCS-R の構成概念妥当性の検討とし
て,日本版 Buss-Perry 攻撃性質問紙:BAQ(安藤ら,1999)との相関関係を測ることにした。
さらに,日常的に児童生徒の暴力の問題に関わっている教員の評価と VCS-R がどの程度一致して
いるものなのか,基準関連妥当性の検討として各クラス担任によるノミネート法を実施することにし
た。VCS-R は,必ずしも顕在化した児童生徒だけが高得点となるような尺度ではない。特に,「暴力
被害への理解」は,学校生活に満足している生徒であっても,被害者への理解は乏しいのではないか,
という示唆も存在する。とは言え,いったん問題が顕在化した児童生徒が VCS-R 得点で高得点にな
らなければ,この尺度を使用する価値はない。
「暴力を容認する態度」や「暴力抑止に向けた適切な態
度」によって,暴力やいじめの顕在化を予測するものであることが望ましい。
以上のことから,攻撃性尺度との相関,ノミネート法による平均値の差の検討を,妥当性の検討と
して行うことにした。
2
暴力予防教育プログラムの効果検証について
(1)
研究の進め方
ストレスマネジメント教育と暴力に関する知識理解をねらいとした心理教育という二つのアプロー
チを支柱にプログラムを作成し,その効果の検証を VCS-R によって測定することにした。
ところで,プログラムによる効果であるということを実証するためには,群や他の効果など多くの
点について統制する必要がある。しかし,実験デザインは,学校の実際的な制約を踏まえ,日常の教
育課程の枠組みの中で行うことを最優先することにした。
-8-
(2)
暴力予防教育プログラム概要
ストレスマネジメント教育と暴力に関する知識理解をねらいとした心理教育という二つのアプロー
チによるプログラム作成を作成した。
プログラムは,通常の授業(50 分)の枠組みの中で行えるものとし,体験を取り入れ,上意下達式
に陥らないように配慮した。また,児童生徒が暴力の問題に向き合う上で生じる恐れのある不快な感
情に自ら対処できるような体験を最初の授業で行うことにした。さらに,昨年の調査で得られた,
「暴
力被害への理解は,学校生活に満足している子どもにおいても望ましさに欠けている」という示唆を
念頭に,
「暴力被害への理解」へのアプローチにも重点を置いたプログラム内容を作成することにした。
ア
プログラム1
主
題
「ストレス理論の学習と暴力予防教育への導入」
内
容
ストレス理論の学習,リラクセーション体験,ストレッサーやストレス対処としての暴力
教
材
ストレス反応チェックリスト,イメージ呼吸法
ねらい
ネガティブな感情を伴う「暴力」をテーマにした一連の授業をする上で,生徒がそのことに
向き合うための入り口となるような授業を目指す。そのためには,ストレスマネジメント教育モデ
ルを授業に盛り込み,まずネガティブな感情を自ら対処できる体験として,リラクセーションを施
す。そして,ストレスモデルの中に「暴力」を位置づけて,次回への導入を図る。
イ
プログラム2
主
題 「『暴力はなぜいけないか』についてストレス反応の循環の視点でとらえ,トラウマ反応とし
ての暴力被害について知る」
内
容
ストレス対処としての暴力・いじめ,ストレスの循環,トラウマ反応の理解
教
材
グループディスカッションと発表,ロールプレイ
ねらい
暴力はなぜいけないのか,という課題について,ストレスを循環させてしまうという捉え方
ができ,被害者の立場から暴力によるストレス反応を考えようとする視点が促進することをねらう。
単に暴力はいけないこと,というステレオタイプの教授にならないようにする。
ウ
プログラム3
主
題
「さまざまな暴力のあり方を考え,その中で『衝動的暴力』と『意図的暴力』について理解
し,意図的な暴力の意図としての支配を理解する」,
「意図的な暴力」被害者にならないために適切
な姿勢で主張する体験をする」
内
容
暴力の分類,意図的暴力の学習,暴力を受けたときの適切な対処の体験
教
材
作話
ねらい
動作とイメージによるアサーション的なストレス対処
生徒達の暴力に対する既存の考え方を出発点に,
「個人的・構造的」,
「衝動的・意図的」二つ
の視点で暴力を捉えることができるようになる。また,暴力を断ち切る体験として,動作による構
え作りとアサーションによるイメージによる対処の体験を行う。
エ
プログラム4
主
題 「こころとからだ,わたしとあなた,私と大いなるいのちとのつながりを感じ,考える。
『居
心地の良いクラスで,可能性を高めよう!』というメッセージの締めくくり」
内
容
共感性を高めるワーク,スピリチュアリティを高めるワーク
教
材
パワーポイント,紙芝居
ねらい
個を超えたように感じられる体験を通して,難しい問題に共に向き合った級友との肯定的な
つながりを促進する。また,スピリチュアリティの変化と暴力予防との関連についての課題を得る。
-9-
(3)
ア
暴力予防プログラムの具体的内容
プログラム1
時間
学習活動
<導入>
1.オリエンテーション
(1) 目的の提示
(2) 生徒から出されたストレ
スになる出来事の提示
10 分
<展開>
2.ストレスの概念教育
(1) ストレッサーの理解
(2) ストレス反応
こころの反応とからだの反応
(3) 自分のストレスを知る
教師の発言,使用教材,指導上の留意点,おさえ
4回行う授業の目標(意義)を示す。
「居心地の良いクラスになるといいね。自分の可能性を高める
ための授業だよ」
「居心地が悪くなったり,可能性を低めてしまうこと」として
ストレスを取り上げる。「みんなに聞いてみましたね」
生徒から出されたストレスになる出来事を提示
ストレッサー:「普段とちょっと違う大変な出来事だね」
「ストレッサー事に出会うと,みんなはどんなふうになる?」
おさえ:ストレス反応は,とっても自然なことである
擬似的なストレッサーとして授業者が怒りを表現し,ストレス
反応の増幅をねらう。その後,
『ストレス反応チェックリスト』
生徒各自のコーピングを発言させる。
(4) ス ト レ ス 対 処 ( コ ー ピ ン
グ)体験
3.リラクセーション体験
30 分
40 分
<発展・導入>
4.暴力・いじめを主題にする
ことへの導入
(1) ストレッサーとしての「暴
力・いじめ」
イメージ呼吸法
『ストレス反応チェックリスト』でセルフコントロールの体験
「自分でコントロールできるようになることは可能性を伸ば
すことにつながるよ」
(2) コーピングとしての「暴
力・いじめ」
「ストレスはなくなれば良いものかなあ?」
おさえ:適度なストレスは,自分の可能性を伸ばす上で必要
「ストレス反応が,適度を超えてしまうストレッサーは?」
トラウマティックストレス:事故,災害,犯罪,暴力・いじめ
「イライラしたときについカッとなって,ものを壊したり,誰
かを殴ったりしてしまうことはないかな」
「本当にないの? 先生にはあるよ」
おさえ:「暴力・いじめ」がストレス対処になることもある
「暴力やいじめは,やってはいけないことなのかな」
(3)次回の主題の提示
「色々な考えがあるようだね。それでは次回そのことについて
考えていくことにしましょう」
シェアリング
①
ストレスには,ストレッサー,こころとからだのストレス反応,ストレス対処があることを
知る。
生徒が 理解す るこ と
②
ストレス反応は,普段とちょっと違う出来事に遭遇したときの自然な反応であり,それを知
らせてくれる大事な反応であることを知る。
③
ストレス対処のひとつの方法として,イメージ呼吸法を体験し,自分でストレスを軽減させ
ることができることを知る。
④
ストレッサーはなくなるものではなく,適度なストレスを感じ,乗りこえていくことが可能
性を高めることであることを知る。
⑤
セルフコントロールできなくなるストレッサーとしての「暴力」,ストレス対処としての「暴
力」があることを知る。
-10-
イ
プログラム2
時間
学習活動
教師の発言,使用教材,指導上の留意点,おさえ
<導入>
1.復習と課題の提示
(1) 前回,学習した言葉
4回行う授業の目標(意義)を掲示
「ストレッサー」,
「ストレス反応」,
「ストレス対処」,
「コント
ロールできなくなるストレッサー(トラウマティックストレ
ス)」,「暴力・いじめ」,「反応は自然なこと」など学習した用
語を掲示
『ストレス反応チェックリスト』(合計はしない)
ストレス対処として「暴力・いじめ」がある。
「暴力・いじめ」による対処をしたことがあるか?
(2) 本日の学習の提示
「暴力はなぜいけないのだろう
か」
10 分
25 分
40 分
<展開>
4人一組になる
2.暴力はなぜいけないか
(1) ストレス反応(怒り感情) 「どんなときに暴力・いじめをしたくなるのかな」
の対処としての「暴力・いじめ」 イライラする時,ムカつく時,といった「怒り」感情としての
ストレス反応を誘発するようなストレッサーを取り上げる。
「イライラしたり,怒ったりすることはいけないことなの?」
「もし,暴力・いじめでの対処をしたとしたら,した人はどう
なることが考えられるのかな?」
加害者の視点で:新たなストレッサーが生じる。
(2) ストレスの循環
すっきりする。気が晴れる。
おさえ:「暴力」による対処は,新たなストレスを生み出す
前回の『連鎖する』という発言を取り上げ,「こういうことを
君は言いたかったのかな? 連鎖なのかな?」
被害者が加害者に変わるという発言を予測する。
「暴力」をしてすっきりする人もいる。そのことは課題。
<発展・導入>
3.暴力・いじめの体験
「今日は,簡単なゲーム(ロールプレイ)を考えてきたので,
(1) ワーク:簡単なロールプレ ちょっと体験してみましょう」
イ
[ゲーム内容] ①『3人だけでカードの絵を見ている』/
[4人一組で,1人が暴力・い ②『チラッと見て3人で顔を合わせ笑う』/③『話しかけても
じ め の 被 害 の 状 態 を 味 わ う 体 無視される』/④『話し合いの司会で無視される』
験]
(1分×4:課題4つ,色々な 「どんなことを感じたか」,
「もし,毎日,被害者側の日々だっ
無視)
たらどうなるか?」,「どんなストレス反応になるか」
被害者の立場の姿勢を強調し,つぶやきに気づく
「どのようなストレス対処が考えられるか」
(2) 話し合い・発表
「過覚醒」,「フラッシュバック」,「回避・マヒ」,「自己否定」
(3) 被害者のこころとからだ
というトラウマ反応を説明する。
おさえ:暴力・いじめは「いのちに関わるストレス」である。
(4)
48 分
暴力・いじめの被害の理解
「もし,被害を受けた生徒が先生に相談して,注意されたら加
害者側はなんて答えるか」,
「暴力・いじめ」をして,すっきり
する人もいる。または,「自分はいじめていない」という場合
がある。では,いったい暴力・いじめとはどういうものでしょ
うか?
次回の主題の提示
理解内容
『ストレスチェックリスト』
① ストレス対処として「暴力」があることを知る。
② 暴力によるストレス対処は,新たなストレスを生むというストレスの循環を知る。
③ 被害者の視点で,暴力が「いのちに関わるストレスである」ことを理解し,トラウマ反応を
知る。
-11-
ウ
プログラム3
時間
学習活動
5分
『ストレスチェックリスト』
<導入>
1.復習と課題の提示
(1) 練習
(2)
15 分
暴力とけんかの違い
(3) 復習
生徒達が考える暴力を加害者
の視点と被害者の視点で,行為を
捉える。
「これも暴力?」という視点を,
無視するワークとつなげて提示
被害者のトラウマ反応の復習
[脱自己中心性ワーク:腕あげ]
<展開>
2.暴力とは何か
(1) 暴力の分類
個人的暴力と構造的暴力
衝動的暴力と意図的暴力
(2) 意図的暴力の意図を考える
[作話(別紙)]
40 分
48 分
教師の発言,使用教材,指導上の留意点,おさえ
「りんご(赤)」,
「みかん(オレンジ+葉)」,
「トマト(赤+葉)」
の分類(イラスト),果物か野菜か,赤とオレンジ,葉付き,
全て食べ物という視点で分類
「暴力」,「いじめ」,「けんか」の分類,二つに分類
おさえ:「暴力・いじめ」と「けんか」の違い。①けんかは力
が同じもの同士によるもの,②けんかでは,どちらかが負けた
ら終わり,③けんかは,その後に仲直りするもの
事前調査した結果をまとめたプリントを配布
加害側の行為,被害側の受け止め方にわけてまとめたプリント
「いじめを見ている(傍観者)」,
「いじめがあるのに止めない」
は暴力か? 「いじめられているのに,誰も助けてくれない」
と被害者がされることをどう思うか考えさせる。
「やられたほうはどうなっちゃうの?」,
『やられたものが「暴
力だ」と思ったら暴力』という生徒の発言を紹介
おさえ:暴力は,被害を受ける方から考えることが大切
加害者の行為について,生徒が書き込んだ行為を取り上げる。
「からだの暴力」と「こころの暴力」の分類
「カッとなってする暴力」と「冷静に行われる暴力」の分類
⇒生徒から発言がされなければ,教師が提示する。
「その暴力が怖いか,悪いか,嫌か?」
「冷静に行われる暴力について深めていこう。加害者にはどの
ような気持ちがあるか?」
加害者の行為が,暴力なのか,どのような意図があったか,加
害者・被害者・傍観者の感じていること,加害者・被害者・傍
観者はこれと違ったどんな態度がとれたか。についてグループ
ディスカッション。
おさえ:冷静に行われる暴力の裏には,支配しようとする気持
ちがある。支配は「わたし」を奪われること!
<発展・導入>
3.スキル訓練
(1) された時の対処の体験
理解内容
2 人一組になり,加害者・被害者となってのロールプレイ(作
話の3日後,加害者と被害者の対話)
被害者は,腰を立て,肩に力を入れて抜き,一呼吸してから,
それぞれの言葉で,暴力を断ち切る体験
『ストレスチェックリスト』
加害者は,「よく,言えたね!」
① 「暴力・いじめ」と「けんか」は違う。
② 行為を加害側,被害側で捉えることができる。
③ 加害者の行為を,個人的暴力と構造的暴力(こころの暴力とからだの暴力)として,衝動的暴
力と意図的暴力(カッとなってする暴力と冷静に行われる暴力)として,捉えることができる。
④ 意図的暴力の意図として,「支配」を理解する。
⑤ 「支配」を断ることができる発言を体験する。
-12-
エ
プログラム4
時間
学習活動
5分
『ストレスチェックリスト』
<導入>
1.復習と課題の提示
(1)復習
イメージ呼吸法によるストレ
ス対処体験
呼吸は無意識に行われている。
(2)提示
教師の発言,使用教材,指導上の留意点,おさえ
「こころには,自分でやろうと考えなくても,知らず知らずに
やっていることがあるよ。それは無意識の力によるものです」
「やろうと思わなくても,やっていることはたくさんあるね。
例えばどんなこと? 呼吸は無意識にやっているよね。でも,
呼吸は意識してすることもできるね」
10 分
<展開>
2.無意識とのつながり
(1) シェブリエルの振り子
催眠体験
(2)
20 分
こころの構造
3.こころとからだのつながり
& 他者とのつながり
(1) O リングテスト
(2) 肩のワーク
思索・協調
肩のペアリラクセーション
35 分
4.個を超えたものとのつながり
(1) 共時性の紙芝居
ユングの普遍的無意識
(2)
「無意識の力を体験してみましょう」
「ぼんやり,ただ5円玉を見ているだけで良いよ」
「無意識の力を体験するためには,こころを弛めることが大切
だよ」
「その時の肯定的なメッセージはとっても役立つよ」
「こころは島のようにたとえられるよ」
2 人一組
「無意識の力はとっても強いんだよ」
「自分自身への肯定的なメッセージやイメージが力を生むよ」
「イメージがからだの動きに現れるよ。また,それは友達にも
伝わるよ。友達は,その人の思いを感じ取ることができるかな」
「頑張っている様子が友達にも伝わるよ。頑張った後は気持ち
いいね。自分に対する肯定的なメッセージを送りましょう!」
「こころがゆったりしていると,とっても不思議なことを体験
することがあるよ。みんなはビックリするような偶然に出会っ
たことがありますか?」
体験発表
「目に見えないけれど,宇宙には自分を支えている大きな力が
あります」
「わたしたちは,大いなる力と周りの人の力によって,そして
自分の力によって困難があってもきっと乗り越えていくこと
ができると思います。居心地の良いクラスで,可能性を高めて
いきましょう!』
5.人と人とのつながり
(1) 昔の人とのつながり
(2) しめくり
48 分
『ストレスチェックリスト』
① 無意識の働きに関する体験をして,潜在的なこころのあり方への関心を高める。
② こころとからだのつながりについて,関心を高める。
③ 動作を通して,他者への共感性を高める。
④ さまざまなつながりを主題とした授業を通して,個を超えた大いなる力への肯定的関心を高め
る。
理解内容
40 分
-13-
3
暴力意識尺度-改訂版(VCS-R)とその他の心性との関係について
(1)
VCS-Rと権力的・社会的・宗教的な価値志向との関係
Ellen Pence & Michael Paymar(2004)は,1984年,暴力男性の教育プログラム“ドゥルース・
モデル”を開発した。このモデルの主たる目的は,暴力男性がパートナーを力で支配するために使う
暴力の行使に焦点を当てた教育とカウンセリングである。暴力の背景にある「権力と支配」を重要視
し,暴力を支配の方法として考え,被支配的で非暴力的な態度について考え実践する,ことが教育さ
れる(中村,2002)。ドメスティックバイオレンスや児童虐待,または,教員による生徒への暴力も,
行為者が他者に対して権力を使い,思い通りに支配しようとする暴力である。こうした暴力の背景に
ある権力と支配に対して,教育とカウンセリングによって変容を期待しようというのが,ドゥルース・
モデルである。
本研究では大淵(2000)の攻撃の二過程モデルにしたがって,暴力を衝動的側面と戦略的側面とし
て捉えた。そして,VCS-R の「暴力を容認する態度」が,主に戦略的攻撃とか道具的暴力(中村,2002)
と呼ばれるような暴力に関する意識を評価し,
「暴力抑止に向けた適切な態度」が,主に衝動的に行使
される暴力に関する意識を評価するものであるとした。そして,ドゥルース・モデルなど暴力の背景
にある「権力と支配」を重要視する暴力予防プログラムに倣い,本研究においても「暴力を容認する
態度」への予防に向け,「権力と支配」に働きかけるような取組を考えていくことを課題としている。
ところで,Spranger,E.(1921)は,個性の理念的基礎類型として,理論的人間(理論),経済的人
間(経済),美的人間(美),権力的人間(権力),社会的人間(社会),宗教的人間(宗教)の6つに
類型化した。これらの6つの類型は,人間が志向する基礎的・普遍的価値であり,人格の形成に大き
な役割を果たす精神作用である(酒井・久野,1997)。例えば,ある人が指輪を手にしている状況一つ
にしても,理論的人間は“金でできている”,経済的人間は“貴重なものでできている”,美的人間は
“輝いている”,権力的人間は“私の方が良いものを持っている”,社会的人間は“私の母からもらっ
た”,宗教的人間は“私を守っている”,といったそれぞれのタイプの精神作用が生じるというわけで
ある。また,村田(1997)は,Spranger,E.の教育学を紹介し,Spranger,E.が生徒の陶冶性の問題に
大きな意義を認めていると述べている。Spranger,E.は,心理的法則に基づく個々人の自己発展的な心
意の特性を陶冶の可能性とし,これを把握することを重視しているという。
このことを学校で行う暴力予防教育と照らした時,児童生徒が個々人の価値の志向性と VCS-R との
関連を調べることは,今後の暴力予防教育をさらに発展していく上で,意義深い視座を得るものにな
るのではないかと考えた。どの価値を志向するタイプが,暴力の問題に望ましさを示すのか,という
ことが把握できれば,何に重点を置いたプログラムを作成したらいいのか,ということへの視座とな
ると考えるのである。また,特に権力的人間と「暴力を容認する態度」に関係性について調べること
で,前述したような,昨今社会問題化されているドメスティックバイオレンスや児童虐待の背景であ
る意図的暴力や「支配と権力」に対する一考ができるのではないだろうか。
もちろん,自我の確立がなされていない児童生徒にとって,こうした価値志向性が大人と同じよう
に,ある程度固定化したものとして内在しているとは思えない。とは言え,発達途上にある児童生徒
であったとしても,暴力予防教育の中で実施するプログラムを開発発展していくためには,こうした
価値志向と VCS-R との関連を調べることに意義があると考えている。
(2)
VCS-RとQ―Uとの関連
『楽しい学校生活を送るためのアンケートQ-U』
(河村・小野寺・粕谷・武蔵,2004)とは,児童生
-14-
徒を「学級生活満足群(満足群)」,「侵害行為認知群(侵害認知群)」,「非承認群」,「不満足群」へと
群分けし,クラスの様子や児童生徒の実態を把握しようというものであり,教師がその対応に向けて
活用できる優れたアセスメントツールである。
『Q-U』では,単に「学級生活満足群」に属している
からといって,いわゆる“望ましい生徒”であることを評価するものではない。例えば,学級崩壊状
態になるクラスでは,問題を引き起こす児童生徒が,自分の意のままである状態に満足し,
「学級生活
満足群」に群分けされることもある。教師が,日々の主観的なアセスメントに加え『Q-U』を活用
することにより,実態に即したクラス全体や,児童生徒一人一人の様子を把握することができ,より
よい教育実践のアプローチに生かすことができるものである(河村ら,2004)。
昨年度の調査から,
『Q-U』の評価と「暴力意識尺度」の評価との間には,あまり関連がないので
はないか,という示唆を得た。つまり,学校生活に満足していたり,一見,教員からも望ましい生活
態度を有していても,暴力に関して望ましい考え方や知識態度を有していない児童生徒も多く存在す
ることが予想され,特に,
「暴力被害への理解」に関しては,そうした傾向が強く覗える,という示唆
である。そこで,本年度も新たなデータを得て再度分析してみることにした。
Ⅳ
研究の内容と方法
1
手続き
暴力意識尺度-改訂版(VCS-R)の妥当性の検討には,日本版 Buss-Perry 攻撃性質問紙:BAQ(安
藤ら,1999)との相関関係と,VCS-R の各因子にあてはまるような生徒を「高群」,まったくあては
まらない生徒を「低群」とし,担任に各5名ずつノミネートさせ,2群による平均値の差の検討を行
うことにした。
暴力予防プログラムの検討は,実験協力校の実情に併せ,1学年4クラスの中で1クラスを実験群,
他の3クラスを統制群として,実験群との比較を検討することにした。また,プログラム内容と生徒
の変容との関係を考察するために,授業の様子を VTR で記録した。さらに,生徒にとって体験した
学習内容がいかなるものであったかについて,印象に残った内容をチェックさせたり,無記名での感
想を書かせたりして調べることにした。
また,今後の予防プログラムを随時検討していくための資料として,酒井・久野(1997)による価
値志向尺度の項目を事前事後調査の質問紙に加え,データを得ることにした。価値志向性尺度とは,
E.Spranger(1961)の提唱する6種の普遍的価値(理論・経済・美・宗教・社会・権力)を個人が
どの程度志向し,体験しているかを測定する尺度である。本調査では,VCS-R との関連を調べたい志
向として,
「権力」,
「社会」,
「宗教」に着目し,各因子項目をそれぞれ6項目ずつ選択し,調査項目に
加えることにした。
2
調査の時期と概要
(1)
調査時期
平成20年11月から12月
(2)
調査対象
県内公立中学校1学年生徒4クラス
(3)
50 分授業(道徳)を6回(プログラムは4回)
合計 133名
男子生徒
63名
女子生徒
70名
調査対象の内訳
実験群
1クラス
合計
35名
男子生徒
17名
女子生徒
18名
統制群
3クラス
合計
98名
男子生徒
46名
女子生徒
52名
-15-
(4)
調査方法
実験群は,6時間のうち,最初と最後の1時間ずつを質問紙の回答の時間にし,間の4時間で予防
プログラムを実施した。統制群は,実験群と同じ日に事前調査を行い,事後調査は,実験群と同じ時
期に随時行った。また,十分説明をした後に出席番号で対応づけが可能なデータのなるようにした。
(5)
各質問紙の因子と項目数
暴力意識尺度-改訂版(VCS-R)20項目
因子:暴力を容認する態度(容認態度),暴力抑止に向けた適切な態度(適切態度),暴力被害へ
の理解(被害理解)
日本版 Buss-Perry 攻撃性質問紙:BAQ20項目
因子:短気,敵意,身体的攻撃(身体),言語的攻撃(言語)
価値志向性尺度(酒井・山口・久野,1998)18項目
(表6)
おもな項目(※は,逆転項目)
因子:権力,社会,宗教
各尺度の因子名を(
)内のように記述する
因
子
日本版 Buss-Perry 攻撃性質問紙:BAQ
短
気
私は,ちょっとした言い合いでも,声が大きくなります。
短
気
私は,カッとなることを抑えるのが難しいときがあります。
短
気
私は,いらいらしていると,すぐ顔に出る方です。
敵
意
私は,陰で人から笑われているように思うことがあります。
敵
意
私を嫌がっている人は結構いると思います。
敵
意
私は,人からばかにされたり,意地悪されたと感じたことはほとんどありません(※)。
身
体
私は,相手が先に手を出したとしても,やり返さないと思います(※)。
身
体
私は,挑発されたら,相手をなぐりたくなるかもしれません。
身
体
私は,人をなぐりたいという気持ちになることがあります。
言
語
私は,でしゃばる人がいても,注意することができません(※)。
言
語
私は,誰かに不愉快なことをされたら,不愉快だとはっきり言う方です。
言
語
私は,友達の意見に賛成できないときには,はっきり言うと思います。
因
子
価値志向性尺度
権
力
私は,他の人に自分の弱点やもろい面を知られないように,用心しています。
権
力
私は,人にものを頼んだり,自分の要求を伝えたりするのが苦手です(※)。
権
力
私は,どうしたら相手をうまく説得できるか,ということに関心があります。
権
力
私は,色々な出来事を自分がコントロールできないと,じれったいと思うことがあります。
社
会
私は,相手の話を良く聞いて,気持ちを受けとめようとする方です。
社
会
私は,困っている人を見ると,放っておけない気持ちになります。
社
会
私は,他人のことを,深く理解したいとは思いません(※)。
社
会
私は,あまり人と親密な関係になりたいと思いません(※)。
宗
教
私は,大きな運命の流れを感じることがあります。
宗
教
私は,自然や宇宙の偉大さにたいして,素直な気持ちでありたいと思います。
宗
教
この世界には,人間の力をはるかに超えた大いなるものの力が働いていると思います。
宗
教
私は,生命の素晴らしさ,不思議さにたいして,深く尊敬の気持ちを持っています。
-16-
Ⅴ
研究の結果と考察
1
暴力意識尺度-改訂版(VCS-R)の妥当性
(1)
暴力意識尺度-改訂版(VCS-R)と攻撃性の相関関係
表7,暴力意識尺度-改訂版(VCS-R)と日本版Buss-Perry攻撃性質問紙(BAQ)との相関係数
を示す。値は,Pearsonの積率相関係数。*は5%水準,**は1%水準で有意であることを示す。
VCS-R全体とBAQ全体との相関は,有意(.383)であった。
各因子別では,VCS-R全体が“短気”と“身体”において相関が見られた。特に,“身体”とは,
高い相関(.603)を示した。さらに,
“容認態度”は,BAQ全体,
“短気”,
“身体”,
“言語”において,
相関を示し,
“身体”とは高い相関(.632)を示した。
“適切態度”では,BAQ全体,
“短気”,
“身体”
相関があり,
“言語”との間には負の相関が見られた。
“被害理解”では,BAQ全体,
“短気,”,
“敵意”
との間に相関が見られたが,すべて負の相関であった。
以上のことからVCS-Rは,ある程度,攻撃性と関連した子どもの考え方や態度を評価する項目で構
成され,かつ,相関が見られなかった因子や逆に負の相関を示した因子が示そうとする子どもの考え
方や知識態度が,VCS-R独自の視点であると言える。
相関が高かった“容認態度”は,これまでの生活体験の中から養われた意志の決定過程により,暴
力を意図的に道具のように行使するようなタイプの児童生徒を評価する項目群である。それらの項目
が“身体”と高い相関したことは,
“容認態度”の項目が,身体的暴力や顕在化する暴力に関して望ま
しくない児童生徒を評価しようとする項目である妥当性の程度を示すものであろう。
負の相関は,
“被害理解”の因子に多くみられた。これは,攻撃性の高い児童生徒でも被害理解に関
して望ましい考え方や知識態度を持っている,あるいは,被害理解に望ましい態度を持っている生徒
であっても攻撃性が高いという結果である。特に,BAQの“敵意”との相関が高い(-.351)が,“敵
意”項目を見ると,自分が「笑われている」,「嫌がられている」と攻撃を受けている側の感情を表現
した項目との負の相関が高かった。
“被害理解”に関しては,すでに言及したように,学校生活に満足
していない児童生徒の方が,むしろ望ましい考え方や知識態度を保持しているのではないか,被害者
側の視点に立って問題を捉えることができるのではないか,という示唆があった。こうした負の相関
は,まさにこうした背景を裏付けるものとも考えられる。
また,“適切態度”に見られた“言語”との負の相関(-.225)は,相談したり,言葉に置きかえた
りすることを望ましい態度として評価するVCS-Rに対して,BAQの“言語”では,自己主張したり,
言葉を使って積極的に関わろうとする態度を「攻撃性が高い」と評価する点が影響したと考えられる。
こうした点が,攻撃性の高さを必ずしも望ましくない態度とすることができない考え方や知識態度で
あり,VCS-Rの独自性を表す項目であるとも考える。
(表7)
VCS-R
VCS-R各因子とBAQとの相関
BAQ全体
短気
敵意
身体
言語
VCS-R全体
.383**
.308**
-.026
.603**
.065
暴力態度
.534**
.370**
.078
.632**
.267**
適切態度
.225**
.316**
.111
.347**
-.225**
被害理解
-.189**
-.234**
-.351**
.063
.026
*p<.05
-17-
**p<.01
(2)
VCS-Rとノミネート調査との相関関係
担任によるノミネート調査は,データの得られた全3クラスを分析した。結果を表8・図6に示す。
担任による主観の差が考えられ,ばらつきが予想されたが,
「暴力を容認する態度」については,担
任が望ましくない考え方や知識,態度を有すると判断する主観と一致した。教師による主観的な判定
とVCS-Rの「暴力を容認する態度」とは,ある一定の関係性を持っているものであると言えよう。
しかし,
「暴力抑止に向けた適切な態度」に関しては,1クラスで10%水準での差が確認できたもの
の,VCS-Rでの判定と教員の見方との一致は,教員によって異なることが予想されるものとなった。こ
れは,「暴力を容認する態度」が比較的顕在化される面を明らかにしようとするものであり,「暴力抑
止に向けた適切な態度」が内面を明らかにする面が強いということによるものではないだろうか。
「暴力被害への理解」では,高群と低群との差が認められなかった。しかし,「暴力被害への理解」
におけるこうした結果は,ある程度予想できた。すでに何度も記述してきたように,
「暴力被害への理
解」は,概して望ましさに欠け,一見,暴力やいじめに対して望ましい考え方や知識態度を有してい
るように見えても,被害者の視点で問題の深さや重さを捉えることが難しいという示唆がある。
「暴力
被害への理解」の項目は,暴力予防に取り組む上で,教員の主観や他の尺度では捉えられない重要な
視点を図るものと考えられる。
表8 ノミネート調査による群間の平均値の差
暴力を容認する態度
α 組
(N=5)
β 組
(N=5)
平 均 値
標準偏差
平 均 値
標準偏差
高 群
30.2
9.34
27.0
8.34
低 群
23.4
11.4
20.2
7.79
t値
1.88
1.33
n.s.
γ 組
平 均 値
(N=5)
標準偏差
全 体
平 均 値
(N=15)
標準偏差
暴力抑止に向けた適切な態度
α 組
平 均 値
(N=5)
標準偏差
β 組
平 均 値
(N=5)
標準偏差
γ 組
平 均 値
(N=5)
標準偏差
全 体
平 均 値
(N=15)
標準偏差
暴力被害への理解
α 組
平 均 値
(N=5)
標準偏差
β 組
平 均 値
(N=5)
標準偏差
31.2
7.45
29.8
7.73
高 群
25.0
5.24
19.8
5.36
23.7
6.93
22.4
6.53
高 群
12.6
3.58
11.8
5.59
18.5
4.57
20.3
6.28
低 群
19.8
4.38
21.8
5.17
18.0
3.74
19.9
4.40
低 群
10.4
3.05
11.2
5.26
4.22
**
3.68
**
t値
1.70
n.s.
-.601
n.s.
13.7
3.92
13.1
4.43
13.6
3.40
12.4
4.26
γ 組
(N=5)
全 体
(N=15)
平 均 値
標準偏差
平 均 値
標準偏差
2.09
+
1.21
n.s.
t値
1.05
n.s.
.175
n.s.
.040
n.s.
.420
n.s.
p<.10+
-18-
+
p<.05*
p<.01**
(図6) ノミネート調査により群分けした各因子得点,VCS-R得点の平均の差
VCS-R 合計得点
35
容認態度
容認態度
容認態度
30
容認態度
適切対処
適切対処
25
適切対処
適切対処
20
15
被害理解
被害理解
被害理解
被害理解
10
低群
高群
低群
高群
低群
高群
低群
高群
低群
高群
低群
高群
低群
高群
低群
高群
低群
高群
低群
高群
低群
高群
低群
高群
5
0
α組
β組
※
2
γ組
全体
表中のα,β,γ組は実際のクラス順と一致していない。
暴力予防教育の効果検証
(1)
授業の効果について
暴力意識尺度に関して群(実験群,統制群)と 時期(実施前,実施後)を独立変数とする二要因分
散分析を行った。(表9及び図7)
(表 9)
授業効果の比較
実 施 前
尺 度
実 施 後
交互作用
群
平均(標準偏差) 平均(標準偏差)
統制群
2.78(0.50)
2.97(0.59)
実験群
2.95(0.58)
3.15(0.48)
統制群
2.81(0.79)
2.93(1.02)
実験群
2.99(0.96)
3.39(0.86)
統制群
2.6(0.64)
2.81(0.69)
実験群
2.50(0.69)
2.7(0.53)
統制群
3.15(0.95)
3.35(1.08)
実験群
3.76(0.86)
3.55(0.79)
暴力尺度全体(20問)
n.s.
-容認する態度(8問)
*
-抑止に向けた適切な態度(8問)
n.s.
-暴力被害への理解(4問)
**
二要因分散分析の交互作用の結果 ** p<.01, * p<.05, n.s. 有意差なし
-19-
(図7)
VCS-R と各因子の授業効果の比較
(1) 暴力意識尺度全体
(2) 容認する 態度
3.5
4
3
2.951
2.795
3.146
2.968
3.5
3.389
3
2.5
統制群
実験群
2
2.992
2.809
2.93
統制群
2.5
実験群
2
1.5
1.5
1
実施前
1
実施前
実施後
実施後
(3) 抑止に向けた適切な態度
(4) 被害への理解
4
5
3.5
4.5
4
3.76
3
2.5
2.604
2.503
2.812
2.7
3.55
3.353
3.5
統制群
3.15
3
実験群
統制群
実験群
2.5
2
2
1.5
1.5
1
1
実施前
ア
実施後
実施前
実施後
暴力意識尺度(合計点の平均値)
表9,図7からわかるように,時期の主効果は 5%水準で有意であり(F(1,123)=22.345,p<.05),
群については有意な差はない( F(1,123)=2.751,n.s.)。したがって全項目の合計点の平均値は,
実験群と統制群には有意な差はなく,実施後に平均値が高くなった。
イ
暴力を容認する態度
表9,図7からわかるように,交互作用が5%水準で有意であり(F(1,123)=6.135,p<.05),
単純主効果の検定をおこなった。実験群において実施後に平均値が高くなり,統制群においては実施
前後における有意な差はなかった。
ウ
暴力抑止に向けた適切な態度
表9,図7からわかるように,時期の主効果は 5%水準で有意であり(F(1,123)=22.345,p<.05),
群については有意な差はない( F(1,123)=2.751,n.s.)。
エ
暴力被害への理解
表9,図7からわかるように,交互作用が5%水準で有意であり(F(1,123)=6.135,p<.05),
単純主効果の検定をおこなった。実験群において実施前後において平均値の差がなく統制群において
実施後に上がった。
オ
各因子の授業効果のまとめ
ア,イ,ウ,エにより表 10 のようにまとめることができる。本プログラムの目的は,プログラムの
実施により,実験群において暴力意識尺度の平均値を下げることであった。しかし暴力被害への理解
の因子以外は平均値が上がった。
-20-
(表 10) 各因子の授業効果のまとめ
暴力意識尺度
(Q1~Q20)
暴 力 を 容 認 す る 態 度
暴力抑止に向けた態度
暴力被害への理解
(Q1,Q3,Q6,Q8,Q11
(Q2,Q4,Q7,Q9,Q12
(Q5,Q10,Q15,Q20)
Q13,Q16,Q18)
Q14,Q17,Q19)
統制群
実施前<実施後
実施前=実施後
実施前<実施後
実施前<実施後
実験群
実施前<実施後
実施前<実施後
実施前<実施後
実施前=実施後
カ 質問項目ごとの分析
質問項目ごとに分析すると,Q12,Q16,Q18,Q20のみ交互作用が有意であった。(表11,図8)
(表 11)交互作用があった質問項目(授業効果比較)
尺 度
16. 怒りの気持ちを暴力で発散したら
気持ちがすっきりすると思います。
容認する
態度
18. 私は気に入らないことがあったとき
人や物などに当たり散らすと気持ち
がおさまると思います。
12. 私はイライラしたとき人や物になどを
抑止に向けた
傷つけずにその気持ちを落ち着かせ
適切な態度
る方法を知っている。
20. 暴力やいじめを受けるとその時の
暴力被害への
ことを急に思い出して勉強に集中
理解
できなくなることがあると思います。
(図8)
実 施 前
実 施 後
平均(標準偏差)
平均(標準偏差)
2.54(1.19)
2.77(1.37)
群
単純主効果
交互作用
統制群
統制群 実施前=実施後
**
実験群
2.74(1.27)
3.57(1.46)
統制群
2.70(1.25)
2.76(1.51)
実験群 実施前<実施後
統制群 実施前=実施後
**
実験群
2.46(1.29)
3.37(1.42)
統制群
3.17(1.47)
3.31(1.35)
実験群 実施前<実施後
統制群 実施前=実施後
*
実験群
3.49(1.42)
2.97(1.29)
統制群
3.64(1.64)
4.22(1.68)
実験群 実施前>実施後
統制群 実施前<実施後
**
実験群
4.63(1.50)
実験群 実施前=実施後
4.17(1.40)
交互作用があった質問項目(授業効果比較)
Q18
Q16
4.00
4.00
3.50
3.57
3.50
3.37
3.00
3.00
2.50
2.76
2.70
2.77
2.74
2.54
2.50
2.46
統制群
実験群
統制群
2.00
実験群
2.00
1.50
1.50
1.00
実施前
実施後
1.00
実施前
実施後
Q12
Q20
5.00
4.00
4.50
3.50
3.49
3.17
3.00
4.63
4.22
4.17
4.00
3.31
3.50
2.97
3.64
統制群
3.00
統制群
2.50
実験群
2.50
実験群
2.00
2.00
1.50
1.00
1.50
実施前
1.00
実施前
実施後
-21-
実施後
(2)
授業内容について
授業内容の分析を示す。分析は,各プログラム毎に,暴力意識尺度-改訂版(VCS-R)の各因子にむ
けた“おさえ”を中心に,それに対する生徒の反応や感想,活動内容に対する印象度,プログラム前
後のストレス反応の変化をまとめた後に,詳細に考察する。教員の発言は<
「
>で示し,生徒の発言は
」で示す。また,各プログラムのストレスの変化を,図9に示す。
プログラム1
暴力を容認する態 度
プログラムのおさえ
*「暴力・いじめ」がストレス対処になることもある
授業場面
生徒の反応
*<適度を超えてしまう自分ではコントロールできないストレスって何?>
「・・・」考えているが出てこない。 トラウマティックストレス(事故・
犯罪・災害)を提示する。
*<トラウマティックストレスにもう一つ加えたい。何か?>「勉強・友達関
係・いじめ暴力」
*<思うようにいかなくてイライラしていじめ暴力をする。だからストレッサ
ーにもなるしストレス対処にもなる。>
暴力・いじめがストレス対処になることがある・・19/35(人)
アンケート
生徒の印象度
プログラムのおさえ
授業場面
生徒の反応
暴 力抑 止 に 向 け た 適 切 な 態 度
アンケート
生徒の印象度
被害理 解
*ストレス反応は,とっても自然なことである。
*適度なストレスは,自分の可能性をのばす上で必要である。
*生徒から事前アンケートで出されたストレッサーを示し<どんなふうにな
るかな?>「イライラする・ぐれる・ブルーな気持ちになる・落ち込む」等
ストレス反応とストレス対処が区別されることなく次から次へと出てくる。
*生徒から出されたストレス反応とストレス対処を区別し,<ストレス反応に
ついてはとっても自然な反応>と話す。
*呼吸法・・腹が立った時などに有効であると紹介し、T が言葉でリードする。
全員が真剣に取り組む様子あり。<気持ちがゆったりしたところで自分自身
に送るメッセージは本当に驚くほど叶うよ>
呼吸法の後のストレスチェックで,ほとんどの生徒がストレスの度合いを下
げていた。・・・自分で自分をコントロールした(セルフコントロールした
ということ)それは必ず自分の可能性を高めるというメッセージを送る。
*<ストレスってなくなればいいの?>「ダメ!・・のり越えることで強くな
るから」「イイ!・・幸せな日々が送れる」
*<そもそもなくなるもの?>「無理!!」<のり越えることで強くなる適度
なストレスは自分の可能性を引き出すために必要です。>
ストレス反応は、とても自然なこと・・19/35(人)
適度なストレスは大切・・24/35(人)
ストレスを自分でコントロールできると可能性が高まるよ・・16/35(人)
呼吸法・・25/35(人)
プログラムのおさえ
授業場面
生徒の反応
アンケート
生徒の印象度
その他
授業前後のストレス反応の変化
増加・・・1名
減少・・・32 名
変化なし・・0名
-22-
未記入・・2名
プログラム2
暴力を 容認す る態度
プログラムのおさえ
*「暴力」による対処は,新たなストレスを生みだす。
授業場面
生徒の反応
*<何らかのストレッサーが入り,イライラ・ムカツクなどのストレス反応が
出た時に暴力・いじめで対処した人はどうなるか>「エスカレートしていじ
めることを頑張る・気分が良くなる・スッキリする・後悔する・気分が良く
なる・スッキリする・やっちまったな・罪悪感・大きな事件を起こす」色々
出てくる。
*エスカレートして・・・大きな課題
<後悔する,これってどう?この間ズバッと言ってくれた人がいたんだけど
な>少しの間,生徒からの返答なし。「エンドレス・らせん」
連鎖すると言った前回の生徒の発言を取り上げた。
暴力・いじめのストレス対処は連鎖する・・12/35(人)
アンケート
生徒の印象度
プログラムのおさえ
適 切態 度
授業場面
生徒の反応
アンケート
生徒の印象度
プログラムのおさえ
授業場面
生徒の反応
暴力被害への 理解
アンケート
生徒の印象度
その他
*暴力・いじめは「いのちに関わるストレス」である。
*暴力・いじめの体験ゲーム。
*4人一組で一人が暴力・いじめの被害の状況を味わう体験
(1分×4:課題4つ,色々な無視)一人一人指示の書かれたカードをもらい
生徒はそれに沿って行動する⇒一人にされた生徒は戸惑い・不安の表情を見
せ、キョロキョロしたり「ねー何?」との声も聞かれる。その後それぞれに
書かれていたことを見せ合い,大いに盛り上がり安堵の表情を見せる。
*<順番に,しかとされた時,感じたことは何?もしこのことが毎日続いたら
どんなふうになるか?どんなストレス反応が出るかな?>「暗くなる・気に
なる・学校へ行けない・ひきこもる・ちょっとしたことでも話したくない・
悲しくなる・気にくわない(怒り)・非行に走る」色々出てくる。
*毎日無視された感じを身体で味わう。下を向いて上目使い・・<だんだんど
うなる?>「怖くなる・自殺・殺人・暴力」このような言葉が飛び出す。
*過覚醒・フラッシュバック・回避マヒ・自己否定というトラウマ反応を話す。
被害者だったのが加害者になるこれも一つの連鎖
暴力・いじめはいのちに関わるストレス・・13/35(人)
トラウマ反応 20/35(人)
無視する・無視されるゲーム 32/35(人)
授業前後のストレス反応の変化
増加・・・22 名
減少・・・8名
変化なし・・2名
-23-
未記入・・3名
プログラム3
プログラムのおさえ
暴力を 容認す る態度
アンケート
生徒の印象度
* 暴力・いじめとけんかの違い
* 冷静に行われる暴力の裏には,支配しようとする気持ちがある。
支配は,わたしを奪われること!
*<暴力いじめ・けんかはどう違う?>「喧嘩と暴力は一緒」
「3つ一緒」
「や
るほうやられるほうにも原因があるから・・」いろいろな意見が飛び出して
くる。
*暴力を仲間分けし,体の暴力と心の暴力・感情的な暴力と冷静に計画的に行
われる暴力に分ける(生徒が自分たちで分類わけをしていった)<どれが一
番しんどいと思う>生徒たちから意見が出てこない。
*冷静に行われる暴力の背景にある心理を考えさせる。(作話を提示)上の者
から脅かされて同級生を恐喝する A,被害を受ける B,周りにいる C。
<A は暴力をふるっていますか?>「自分もお金を貸してもらわないと困
る」<B に悪いところはありますか>「ある」「ない」「はっきり言えない」
「勇気がない」いろいろな意見が飛び出してくるが時間の関係で十分聞けな
い。
冷静に行われる暴力には支配しようとする気持ちがある・・13/35(人)
暴力とけんかの違い・・16/35(人)
暴力の仲間分け・・11/35(人)
* 冷静に行われる暴力の裏には,支配しようとする気持ちがある。
支配は,わたしを奪われること!
*<みんな B 君になってください>(作話の B)B君の立場で暴力を受けた
とき姿勢を正して断る練習を2人1組でしてみることを提案⇒それぞれが
A と B になりロールプレイを経験した。盛り上がり,時間ぎりぎりまで行
っている。
*ロールプレイを終了させ,冷静に行われる暴力の裏には支配しようとする気
持ちがあるという抑えを入れる⇒ロールプレイの余韻の中で聞いている様
子あり。
冷静に行われる暴力には支配しようとする気持ちがある・・13/35(人)
B君の立場で暴力を受けたとき姿勢を正して断る練習・・22/35(人)
プログラムのおさえ
*暴力は被害を受ける方から考えることが大切
授業場面
生徒の反応
*<暴力・いじめをされるほうにしてみたら,やられているのにだれも助けて
くれない。
・・・ずっと続いたらどうなる>「部屋に閉じこもる・鬱になる・
自殺・トラウマティックストレス」何人も発言してくる。
*<被害者の立場に立って考えることはとても大切なこと。難しいよ,コツを
教えるね(T のまねをして腕を上げるゲーム)今先生どんな気持ちでいるか
先生と同じ気持ちになって頑張ってることを共感するそれがコツかな>全
員が T をよく見ながら,同じスピードで行い最後のため息まで真似ている。
暴力は被害者の立場から考えよう・・15/35(人)
授業場面
生徒の反応
アンケート
生徒の印象度
暴力抑 止に向 けた適切な態 度
プログラムのおさえ
授業場面
生徒の反応
暴力被害への 理解
アンケート
生徒の印象度
その他
授業前後のストレス反応の変化
増加・・・10 名
減少・・・12 名
変化なし・・9名
-24-
未記入・・4名
プログラム4
(12月4日実施)
容認態度
プログラムのおさえ
生徒の反応
生徒の印象度
適 切態 度
プログラムのおさえ
生徒の反応
生徒の印象度
被害理解
プログラムのおさえ
生徒の反応
生徒の印象度
*共感性を高めるワーク
*スピリチュアリティを高めるワーク
こころとからだ・私とあなた・私と大いなるいのちのつながりを感じ考える。
呼吸法をしてリラックス
*5円玉の振り子・・・無意識の体験・・・人間の深い部分,見えないところ
で動かしていた。人間の心は見えないところがとても大きくて,とても大き
な力を持っている。⇒とても真剣に取り組んでいる。左右・前後・回転をほ
とんどの生徒が経験していた。
*0リング・・・無意識の力を身体で表す遊び・・・心と体はつながっている。
心で思ったことが体に現れる。プラスイメージはとても強い力⇒2人一組で
行う。かなり反応して楽しそうに行っている。
*腕を上げていくゲーム・・・自分では気づいていないことを相手にはわかっ
てしまう。・・・人間は繋がっている。⇒「腕の上げ方が何かいいかげんだ
ったからマイナスイメージだと感じた。」
*共時性の紙芝居・・・深いところで人と人は繋がっているし,もっと大きな
偉大なものとも繋がっている。⇒紙芝居の内容に「おお!!」
5円玉の振り子・・29/35(人)
無意識の力は強い・・19/35(人)
Oリング(O.K.サインでの強さの違い)・・19/35(人)
腕を上げていくゲーム・・21/35(人)
人と人はつながっているよ・・16/35(人)
目に見えない大きな力で支えられているよ・・17/35(人)
プログラムのおさえ
授業場面
生徒の反応
その他
アンケート
生徒の印象度
授業前後のストレス反応の変化
増加・・・1名
平均値(Max60 点)
20
18
減少・・・27 名
(図9)
プログラム1
変化なし・・7名
未記入・・0名
各プログラムのストレス反応の変化
プログラム2
プログラム3
前
前
プログラム4
16
14
12
10
8
6
4
2
0
前
後
後
-25-
後
前
後
ア
「暴力を容認する態度」に対する考察
暴力を容認する態度の平均値は,プログラム実施前と実施後を比較すると実験群が上がり統制群は
変化なしという結果(予想した変化と逆の変化)を示した。
項目別では「怒りの気持ちを暴力で発散したら気持ちがスッキリすると思います」という項目と「私
は気に入らないことがあったとき人や物などに当り散らすと気持ちが治まると思います」という項目
で交互作用が確認された。
このことについて,プログラムを検証し,生徒の感想なども参考に考察する。
プログラムは,全体を通して体験を取り入れ上意下達式に陥らないように配慮したもので,授業は
単に暴力を否定するのではなく,暴力について考えさせる内容であった。生徒からは「暴力やいじめ
のことを深く考えられた」,「もっと知りたい」,「普段何気なくやっている暴力やいじめのことを深く
考えられた」といった感想が寄せられている。
プログラム1・2は,ストレスマネジメント教育からのアプローチによる暴力予防プログラムであ
る。
「ストレス反応は自然なことである」とおさえ,
「ストレス対処としての暴力」を取り上げ,
「暴力
による対処は新たなストレスを生み出す」とした。しかし,生徒からは「暴力でスッキリする・気が
晴れる」という反応も出てきた。また,
「暴力やいじめはストレス対処になるということが初めて分か
りました。最初それはいけないと思いました。それは自然であると学びました」という生徒の感想も
あった。この感想からも伺えるように,生徒の中には,ストレス対処としての暴力を肯定的に解釈し
た生徒もいたと思われる。
プログラム2では,
「暴力やいじめでストレス対処したら,対処した人はどうなるか」の問いに「気
分が晴れる。スッキリする」という「暴力による対処を良いとする」反応と,
「後悔する。罪悪感が出
てくる。大きな事件に発展する」という「暴力による対処は良くないとする」反応があった。授業で
は「後悔する。罪悪感が出てくる。大きな事件に発展する。」という発言を取り上げ,「暴力による対
処は新たなストレスを生み出す」と導いた。この一連の授業展開では,暴力によるストレス対処は新
たなストレスを生み出し,適切なストレス対処にはならないということを理解させたかったところで
ある。しかし,「暴力による対処を良いとする」反応に対する踏み込みができなかったことと,「後悔
する。罪悪感が出てくる。大きな事件に発展する」という発言から,
「暴力による対処は新たなストレ
スを生み出す」ということを導き出したところで,暴力による対処で「後悔することや罪悪感を持つ」
ことが,良くないことのように受け止められ,暴力による対処で「気分が晴れる。スッキリする」と
いうことはOKなんだと受け止めた生徒も出てきてしまったのではないか。その結果,ストレス対処
としての暴力を肯定的に解釈してしまったのではないかと推察する。
プログラム3は,暴力に関する知識理解をねらいとした心理教育からのアプローチによるもので,
暴力の分類,意図的暴力の学習,被害者にならないための適切な対処の体験等が,主な内容であった。
そして生徒は様々な暴力の中で意図的暴力の裏には支配しようとする気持ちがあることを理解し,
「支
配」を断ることができる発言を体験した。しかし,生徒の感想の中には意図的暴力についての記述は
なく,印象に残っている内容をあげるアンケートでも「冷静に行われる暴力には支配しようとする気
持ちがある」という項目をあげた生徒は半数以下(35 人中 13 人)であった。暴力を容認する態度の
支配の意識と結びつく項目(項目6,8,11)においても,実験群と統制群の間に交互作用は見られ
ず,プログラム3の授業では,生徒の暴力を容認する態度の尺度に表れるような意識の変容をもたら
すことはできなかった。
実験群の暴力を容認する態度の平均値が上がったことの要因は,上述したように①プログラム全体
-26-
を通して,授業が単に暴力を否定するものではなく,暴力について考えさせる内容であり,中学1年
生の暴力に対する道徳的な意識,既成概念(暴力反対・暴力は絶対否定されるもの)をゆさぶるよう
な内容を含んでいたこと。②「ストレス対処としての暴力」を肯定的に受け止めてしまった生徒がい
たこと。等が考えられる。
イ
「暴力抑止に向けた適切な態度」に対する考察
暴力抑止に向けた適切な対処については,プログラム実施前と実施後を比較すると,実験群も,統
制群もその平均値は上がっており,交互作用は見られなかった。このことは今回の暴力予防教育では,
暴力抑止に向けた適切な対処については,生徒に尺度に表れるような意識の変容をもたらすことがで
きなかったということを示している。
しかし,質問項目毎に分析すると,
「私は,イライラしたとき人や物などを傷つけずに,その気持ち
を落ち着かせる方法を知っている」という項目については交互作用があり,実験群の平均値は実験前
より下がり,望ましい変容を示しており,授業の効果が数字として表れていた。
生徒はプログラム1で,イメージ呼吸法を体験した。
「呼吸法をやってその後すごく楽になりました。
イライラしているとき呼吸法をすると楽になって不思議だった。呼吸法を家でやったら,勉強に集中
できた。呼吸法でストレスの対処ができるようになった」等の生徒の感想もあり,ストレス対処とし
て呼吸法を体験した結果が尺度に数字として表れたものだと考えられる。プログラム1は,暴力予防
教育導入の部分であり,生徒が無理なく暴力と向き合うことができるように配慮しており,ストレス
マネジメント教育を盛り込んでいる。そして,ストレス理論の学習とリラクゼーションの体験,スト
レッサーやストレス対処としての暴力について理解を深めることを中心に授業が展開された。
印象に残っている内容をあげるアンケートで生徒は,
「ストレス反応はとっても自然なこと」19 人,
「適度なストレスは大切」24 人,「ストレスを自分でコントロールできると可能性が高まる」16 人,
呼吸法 25 人であった。ストレス対処に関する感想には,
「自分の気持ちをしっかりコントロールでき
れば,いじめや暴力などはおさまることを知った」,「ストレスは悪いものだと思っていたから,適度
なストレスはエネルギーになることを知って、へ~と思った。このことが一番驚いた。ストレスは自
然なことなんだ。ストレスが少しはないとだめのことが分かりました」,「ストレスを自分でコントロ
ールするという内容の授業はあまりわからなかった」等があった。
プログラム3では「支配」を断ることができる発言の体験(ロールプレイ)をした。この体験は 22
名が印象に残っている項目としてあげ,「暴力を受けたとき,姿勢を正して断る練習が心に残った」,
「いじめや暴力を受けている人は,やっている人に辞めて欲しいなら辞めて欲しいと言えば,やって
いる人も分かるかもしれないことが分かりました」等の感想が寄せられた。
暴力抑止に向けた適切な対処については,プログラム1・2でストレスマネジメントからのアプロ
ーチを試み,プログラム3では,被害者にならないために適切な姿勢で主張する体験をした。上述し
たように生徒には一定の反応があり,効果的だったと思われるが,VCS-R の数字には,その効果は表
れなかった。VCS-R の数字に有意差がでるような暴力予防教育を実施することの難しさを感じた。
ウ
「暴力被害への理解」に対する考察
暴力被害への理解の平均値は,プログラム実施前と実施後を比較すると実験群は下がり統制群は上
がるという結果を示した。2要因分散分析の結果 p<.01 で交互作用が認められた。しかし検定の結果,
実験群の数値の有意差ではなく,統制群の数値の有意差が交互作用に影響していることが示された。
項目別では「暴力やいじめを受けるとその時のことを急に思い出して勉強に集中できなくなること
があると思います」という質問項目で交互作用が見られたが,検定では,実験群の数値には有意差が
-27-
確認されず,統制群の数値に有意差が確認された。
暴力被害への理解については,今回の暴力予防教育で,3つの因子をそれぞれ分析した結果,唯一
その成果が VCS-R の数字として表面的に表れた因子である。暴力被害への理解は,他の2つの因子
に比べてその値が高く,暴力被害を受けた者に対する理解が乏しいことが,昨年度,廣瀬ら(2007)の,
暴力やいじめの予防に関する研究でも示されていた。今回も3因子の中では最も高い値であった。
暴力被害への理解について,プログラム1・2ではストレス対処としての暴力があることを知り,
暴力によるストレス対処は,新たなストレスを生むというストレスの循環を知った。そして,暴力・
いじめの被害を味わうロールプレイを体験した。そして,被害者の視点で,暴力・いじめは命にかか
わるストレスであることを理解し,トラウマ反応を知った。
印象に残っている内容をあげるアンケートでは,
「無視する・無視されるゲーム」を32人の生徒が
あげており,このロールプレイは多くの生徒に強烈な印象を与えた。
このロールプレイについては「ゲームなどを通してどんな気持ちになるのか,身をもって体感した。
被害者の気持ちが分かった」,「無視されるゲームは自分で思っていたよりもきつく最悪だと思った」
「無視するゲームは,されるとムカムカしてとても嫌な気持ちになるけれど,やってみると楽しくな
ってしまう。ここからいじめが始まるのかなと思った」,「特にあのいじめられる立場になるゲームで
やられる側の気持ちが分かった」,「無視されるゲームで無視される順番になったときは本当に嫌だっ
たし,変な気持ちになりました」,「無視する・無視されるゲームはいじめをする側の気持ちとされる
側の気持ちが同時に分かって勉強になりました」等の感想が多くの生徒から寄せられた。
プログラム3では,
「暴力は被害を受ける方から考えることが大切」とおさえ,被害者の視点で暴力
を捉えることを復習した。
暴力被害への理解は,表面的には今回唯一ねらい通りの数字の変化を示した因子であるが,検定を
かけてみると,実験群の数値の変化には有意差がないという結果がでてしまい,暴力被害への理解が
すすみにくいことを改めて感じている。しかし,授業が「暴力被害への理解」に対する不適切な考え
方や知識や態度への増加を食い止めるような形で作用したと考えることもできる。
エ
「暴力予防教育」と「暴力意識尺度」の活用
今回4時間の暴力予防教育を実施し,VCS-R によってその効果を検証した。VCS-R 全体の平均値
は実験群も統制群も高くなり、交互作用は見られなかった。因子別に見ると「暴力を容認する態度」
の平均値は,目標と反対の変化に有意差を示し,
「暴力抑止に向けた適切な対処」の平均値の変化には
交互作用が見られなかった。
「暴力被害への理解」の平均値の変化が唯一目標と一致する変化であった
が,実験群の数値には有意差は認められなかった。項目別では,4つの項目で交互作用が確認された。
今回 VCS-R 全体の平均値からは、暴力予防教育の効果を検証することはできなかった。短時間の
暴力予防教育で,幅広い VCS-R 全体の平均値が望ましい変化を示すような結果を得ることは,簡単
ではないということが分かった。
暴力予防教育にもさまざまな観点での取り組みがあるので,VCS-R の活用については,VCS-R 全
体の変化だけではなく,因子別の変化や項目別の変化に着目して効果を検証することが VCS-R を有
効に活用することになると考える。暴力予防教育で何が変化して何が変化しなかったかという観点で,
項目別の変化に着目し,実践した資料を蓄積していくことも,今後の暴力予防教育につながっていく
ものと考える。暴力予防教育で,生徒の暴力に対する考えや価値観,行動様式など,潜在化した意識
の望ましい変容を目指し、それを VCS-R で測定し,暴力予防教育の成果が上がったと言えるように
つなげていきたい。
-28-
3
その他の心性との関係
(1)
VCS-Rと権力的・社会的・宗教的な価値志向との関係
価値志向性尺度と VCS-R の各因子との相関を,表 12 に示す。
多くの因子同士の間で,相関が認められた。そして,全て負の相関であった。VCS-R 全体と相関が
認められたのは,社会と宗教であった。また,適切態度は,権力,社会,宗教の志向性と負の相関が
認められた。被害理解と相関が認められたのは,宗教のみであった。
次に VCS-R 合計を目的変数,権力・社会・宗教
(表 12)
VCS-R と価値志向尺度との相関
を説明変数として,強制投入法による重回帰分析を
2
権
力
社
会
宗
教
行 っ た ( 図 10)。 そ の 結 果 , 重 決 定 変 数 R =.29
VCS-R全体
-.119
-.496**
-.425**
(p<.001)であった。さらに,社会(β=-.36,p<.001)
暴力態度
.091
-.247**
-.213*
適切態度
-.227**
-.598**
-.395**
被害理解
-.164
-.090
-.253**
p<.05*
p<.01**
と宗教(β=-.27,p<.01)の変数が有意であり,VCS-R
への影響が示された。
権力と VCS-R とで,適切態度以外に相関が認めら
れず,VCS-R に対して影響を及ぼしていなかった
ことは意外である。権力の項目には,
“相手を説得できるか”,
“出来事をコントロールできるか”とい
ったことへの志向を問い,いわば支配性の強さを質問している項目であった。しかし,こうした項目
から構成されている権力が,VCS-R や「暴力を容認する態度」とも相関がなく,
「暴力抑止に向けた適
切な態度」と負の相関が認められたという結果は興味深い。戦略的攻撃や道具的暴力が,
「支配と権力」
を背景としたものであっても,中学1年生時における権力志向は,そうした暴力と結びついていない
ということを示唆するものである。この時期の児童生徒にとって,自分の意志をしっかりと主張し,
自分の力で身の回りの出来事をコントロールすることは発達の課題とも言え,権力の項目で表現され
る素養は,この時期の子どもの成長促進のためにはむしろ肯定されるものであり,適切な態度につな
がるものとも考えられる。今後もこうした結果をどのように解釈できるか,検討していく必要がある。
社会がVCS-Rとの相関が最も高く,適切態度と高い相関を示し,VCS-Rに対しても負の影響を及ぼし
ていることは,当然の結果であると言える。社会的な志向性が強い児童生徒が,暴力に対して望まし
い考え方や知識態度を有することは,暴力予防教育の中にソーシャルトレーニングやグループエンカ
ウンターなどを取り入れ,関係性を育むことによって効果をねらう取組の裏付けとも言える。しかし,
「暴力被害への理解」との相関は認められず,やはり社会性を高めることだけを狙っても,こうした
面への効果は狙えないのではないだろうか。
宗教のVCS-Rへの影響は,スピリチュアリティとの関連で考察したい。
スピリチュアリティという概念が,WHO(世界保健機関)においても健康概念のひとつとして位
置づけようとする動きがあるのは,周知の通りである。WHOは,その憲章前文の中で,「健康とは,
図 10
権力,社会,宗教の VCS-R への影響
権
力
社
会
宗
教
n.s.
-.36***
-.27**
R2=.29***
暴力意識尺度-改訂版(VCS-R)
***p<.001,**p<.01,*p<.05
-29-
完全な肉体的,精神的及び社会的福祉の状態であり,単に疾病または病弱の存在しないことではない」
と定義していた。それが,1998年の執行理事会において,
「完全な肉体的(physical),精神的(mental),
sriritual及び社会的(social)福祉のDynamicな状態であり,単に疾病や病弱の存在しないことでは
ない」と改訂することについて議題に上がり,今後見直しを続けていくこととされた(厚生省,1999)。
スピリチュアリティを扱う心理学の分野はトランスパーソナル心理学である。尾崎・鈴木(2005)
は,我が国のトランスパーソナル心理学に見識のある多くの心理学者のスピリチュアリティに関する
見解を紹介している。ここで,スピリチュアリティ概念について論じることは,割愛するが,概して
「トランスパーソナル」という用語の所以である「超個」への希求や,自他の境界の統合への指向,
そうした希求や指向に即した人間関係やライフスタイルであると考えている。
「価値志向尺度」の宗教の項目は,
“大きな運命の流れ”,
“宇宙の偉大さへの素直な気持ち”,
“人間
の力をはるかに超えた大いなるものの力”といった,いわば個を超えたものとのつながりを求めよう
とする体験様式を問う項目であり,スピリチュアリティを問う項目である。そして,VCS-Rの高さに対
してスピリチュアリティが負の影響をもたらすということは,スピリチュアリティが暴力に対する考
え方や知識理解に対して,好影響をもたらす可能性を示唆するものと考える。
スピリチュアリティを扱うトランスパーソナル心理学の分野から,暴力予防に関する取組が報告さ
れている(例えば,高岡,1996 や 松本,2000)が,最も広く知られている取組は,トランスパーソ
ナル心理学と同流であるプロセス指向心理学を確立したA.Mindell(2001)のワールド・ワークであろ
う。ワールド・ワークとは,紛争解決のための集団療法のことである。A.Mindellはワールド・ワーク
によって世界各地で「紛争・葛藤解決」に取り組んだ。取り扱われるテーマは,
「テロリズム」,
「戦争」,
「人種(民族)差別」,「同性愛者への差別」,「ジェンダー」,「虐待」など,様々な歴史・社会・政治
的諸問題である。
藤見(2004)は,A.Mindellの取り組みについて,「内」と「外」の往来と述べた。藤見は,分離し
ているはずの個人の境界を逸脱してしまう概念が生み出され,個人療法や集団療法に役立てられるよ
うになったが,さらにワールド・ワークは,主体の外側の文字通りの集団とともに,主体の内側にも
集団を共に見,そこに「布置」をイメージし,そうした次元に目を向け敬うことで,紛争解決にヒン
トをもたらすものと述べた。つまり,ワールド・ワークとは,
「わたし」と「あなた」や「わたしのこ
ころ」と「外の世界」のように,日常感覚においては分離されていると感じている意識があり,その
意識において葛藤状態にある者が,その解決に向け日常感覚を外すことができ,深いレベルにおける
こころの働きを尊重することができ,かつそこに「外の世界」と同じことが相似的に起こっているこ
とに気づき,
「布置」と呼ばれるいわば超個的な体験をし,それが統合されていく過程を通して,対立
の解決を図っていこうとするものであるといえる。
宗教がVCS-Rに対して負の影響を持っているという事実は,まさにトランスパーソナル心理学やプロ
セス指向心理学のアプローチによる暴力予防教育の可能性を裏付けるものであると考える。宗教教育
を学校で行うことが難しいが,宗教のエッセンスとも言えるスピリチュアリティを育む教育活動は,
暴力予防に向けた一助になるのではないだろうか。ただ,自己中心性が強く,自我の確立の課題を達
成できていない児童生徒にとって,スピリチュアリティの開発という名の下に,安易な超個的な事象
を扱うことで,不健全な様相を示す恐れもある。尾崎(2005)は,健康なスピリチュアリティを求め
るために,①自我の確立,②論理的科学的視点を軽視しないこと,③自己,他者に対して受容的であ
り霊的防衛になっていないこと,④現実認識・適応が優れていること,⑤想像的・生産的であること
を挙げているが,学校でスピリチュアリティを扱うこと功罪を認識する必要がある。
-30-
こうした背景を踏まえ,教育という枠組みの中でどのような取組が考えられるのであろうか。また,
すでにこうした視点を生かした教育活動はあるのだろうか。
筆者らは,その示唆が『ホリスティック教育』(手塚,2003)から得られると考えている。
トランスパーソナル心理学の流れを汲み,1980年代より広がり始めた「ホリスティック教育」では,
Jung,G.C.の集合的無意識の考えを広げ,個人を超えた「つながり」を感じる能力の育成を重視してい
る(中川・金田,2003)。ホリスティック教育では,個人と自然,または他人,あるいはこころと身体
などのつながりについて,自然環境や先住民の慣習,各種ボディワークなどを題材に教育活動を行っ
ている(手塚,2000)。諸富(2003)も,子どもの荒れや暴力,いじめなどの解決に向け,こうした観
点の重要性を指摘している。
今回の研究の中で,第4回の授業はスピリチュアリティへ働きかけるような取組だったと言える。
しかし,残念ながらその授業による効果を検証するには至らなかった。今後は,児童生徒の健康なス
ピリチュアリティについて検討を加え,スピリチュアリティの程度や変容を測ることができるような
尺度を利用し,ホリスティック教育の手法を参考に,学校の授業という枠組みの中で可能なプログラ
ムを考案し,効果の検証を行っていきたい。
(2)
VCS-RとQ―Uとの関連
『楽しい学校生活を送るためのアンケートQ-U』
(河村・小野寺・粕谷・武蔵,2004)とは,児童生
徒を「学級生活満足群(満足群)」,「侵害行為認知群(侵害認知群)」,「非承認群」,「不満足群」へと
群分けし,クラスの様子や児童生徒の実態を把握しようというものであり,教師がその対応に向けて
活用できる優れたアセスメントツールである。
『Q-U』では,単に「学級生活満足群」に属している
からといって,いわゆる“望ましい生徒”であることを評価するものではない。例えば,学級崩壊状
態になるクラスでは,問題を引き起こす児童生徒が,自分の意のままである状態に満足し,
「学級生活
満足群」に群分けされることもある。教師が,日々の主観的なアセスメントに加え『Q-U』を活用
することにより,実態に即したクラス全体や,児童生徒一人一人の様子を把握することができ,より
よい教育実践のアプローチに生かすことができるものである(河村ら,2004)。
昨年度の調査の,
『Q-U』の評価と「暴力意識尺度」の評価との間には,あまり関連がないのでは
ないか,学級の中で満足している生徒であっても,暴力に関して望ましい考え方や知識態度を有して
いないのではないか,という示唆を,本年度も得られたデータセットで再度分析してみることにした。
それぞれの群における VCS-R の得点を比較した結果を,表13,図11に平均値を示す。
VCS-R 全体,
「暴力を容認する態度」,
「暴力被害への理解」,BAQ 全体の平均得点において,有意な差
は認められず,
「暴力抑止に向けた適切な態度」においてのみに差が認められた[F(3,122)=4.37,p<.01]。
多重比較を行ったところ,満足群と侵害認知群との間の差が確認できた。
こうした結果は,昨年度示唆されたことと,同じ結果であった。つまり,満足群において,
「暴力抑
止に向けた適切な態度」が望ましくとも,全体的と「暴力を容認する態度」には差はなく,
「暴力被害
への理解」においては,不満足群の生徒の方が望ましい態度を有している,という結果である。
このことから,暴力を予防しようとする上で,単に児童生徒間のコミュニケーション能力を高め,
学校生活への満足度を高めるだけでは不十分であり,暴力に関する正しい知識や考え方を教授し,定
着させる地道な心理教育が不可欠であると考える。
有意な差は見られなかったものの不満足群において,
「暴力被害への理解」に望ましい態度を有して
いる傾向は昨年度も確認できた。被害を受けた者が被害の理解をできているのは,いわば当然である
-31-
が,それにしても満足群に属する生徒が最も望ましさに欠けるということは,暴力予防に取り組む上
で十分に承知していなければならないことであろう。被害を受けた者でないと被害を理解できないと
いうことにならないように,こうした背景を理解した上でプログラムを立案していくことが必要であ
る。教育プログラムの効果検証の中で,授業が「暴力被害への理解」に対する不適切な考え方や知識
や態度への増加を食い止めるような形で作用したことは,大変意義のある結果であったと考える。
(表 13)
Q-Uの4つの象限に属する生徒の VCS-R と BAQ 全体の平均
満足群
n=91
侵害認知群
n=16
不満足群
n=13
非承認群
n=6
VCS-R 全体
2.79
3.08
2.80
2.93
1.497
容認態度
2.81
3.16
2.74
3.13
1.071
適切態度
2.46
3.00
2.88
2.56
4.370 **
被害理解
3.41
3.10
2.75
3.25
1.909
3.33
3.66
3.58
3.57
1.975
BAQ 全体
p<.10+
( 図 11 )
Q-U の 4 つ の 象 限 に 属 す る 生 徒 の VCS-R と BAQ 全 体 の 平 均
VCS-R
BAQ全体
p<.05*
p<.10+
F値
p<.01**
p<.05*
容認態度
4
4
3.5
3.5
3
3
2.5
2.5
2
2
1.5
1.5
1
1
満足群
侵害認知群
不満足群
満足群
非承認群
適切態度
不満足群
非承認群
不満足群
非承認群
被害理解
4
3.5
侵害認知群
4
p<.05 *
3.5
3
3
2.5
2.5
2
2
1.5
1.5
1
1
満足群
侵害認知群
不満足群
満足群
非承認群
侵害認知群
グラフのメモリは,平均値を示す。
-32-
Ⅵ
研究のまとめと今後の課題
暴力予防教育の第二歩目となる 2008 年度の研究成果と課題をまとめ,終章とする。
①
日本版 Buss-Perry 攻撃性質問紙(BAQ)との相関と,教員によるノミネート調査の分析結果に
より,暴力意識尺度-改訂版(VCS-R)の妥当性を示すことができた。
VCS-R の「暴力を容認する態度」が,BAQ の「身体的暴力」因子と高い相関を示し,ノミネート調査
でも有意差を示したことは,
「暴力を容認する態度」項目によって顕在的な暴力の問題を引き起こす可
能性のある生徒を予測できるものであると考える。VCS-R が暴力に関する潜在的な価値観や知識や態
度について明らかにしようとするものであるとはいえ,いったん問題が顕在化した児童生徒の VCS-R
得点が低ければ,予防教育で使用するに耐えない。そうした観点からも,これらの結果は有意味なも
のであったと考える。
②
VCS-R の「暴力抑止に向けた適切な態度」因子項目と「暴力被害への理解」因子項目の分析結果
は,VCS-R の独自性を示すものであると考えられる。
暴力予防教育をすすめていく上で,「暴力抑止に向けた適切な態度」へ働きかけようとする取組は,
いわば攻撃性が適切に処理されることを求める取組である。BAQ の「敵意」との無相関(.111)や「身
体的暴力」との負の相関(-.225)が示すことは,BAQ ではなく,VCS-R により暴力予防教育を行う意
義であると考える。つまり,我々が課題とする暴力予防教育が単に攻撃性を低減させることではなく,
自身の攻撃性を感じ取ることができ,それを受け止め,適切に処理できるようになることを求めるも
のであり,そうした児童生徒の内面を評価する項目が「暴力抑止に向けた適切な態度」なのである。
さらに,
「暴力被害への理解」と BAQ,およびノミネート調査の分析結果は,この因子項目が他に類
を見ない児童生徒の知識を評価する項目で構成されていると考えている。
被害者に対する正しい知識の理解は,非常に重要である。冨永・吉永・安田(2004)は,暴力を防
止するためにできることとして心理教育を挙げているが,そこで司法制度と関連させ,現状の司法制
度では,犯罪者の人権が尊重され,被害者の人権が法的に守られていないと指摘している。つまり,
児童生徒に対して被害者に対する正しい理解を教育していくことは,そうした現状の改善に向けても
重要であるということであろう。犯罪を被害者の視点から考えることの必要性は,社会の中で少しず
つ広まりつつある。しかし,
「暴力被害への理解」の分析結果からも,暴力の問題に対していかに被害
の側に立った理解が行われていないか,という現状を浮き彫りにするものであり,こうした項目によ
り暴力予防教育を行っていくことが,大切なのではないだろうか。
③
本年度のプログラムで望ましい効果が得られなかった背景には,ストレス理論の学習において,
ストレス対処の適切不適切に関するおさえが不十分であったことが考えられる。
すでに授業分析を詳細に述べているが,本年度のプログラムにおいて最も精査すべき点は「暴力を
容認する態度」へのアプローチの問題であった。授業は,むしろ生徒を望ましくない態度へと導いた
ものになってしまった。その大きな要因が,授業者の「暴力やいじめがストレス対処になることもあ
る」というおさえと「ストレス反応はとっても自然な反応である」というおさえの扱い方であったと
考えられる。授業に対する生徒の感想の中に,
“暴力やいじめはストレス対処になるということが分か
りました。最初それはいけないと思いました。自然であると学びました”という記述があった。この
言葉に象徴されるように,
「ストレス反応は自然であり,不快感や怒りといった感情表現は悪いことで
はないが,ストレス対処には望ましい対処と望ましくない対処がある」という望ましい知識が構成さ
れず,暴力という望ましくない対処が行われることも自然なのだ,という望ましくない知識を構成し
-33-
てしまったと考えられる。
④
中学1年生が暴力に対して,望ましさに欠ける知識や考え方,態度が高まる時期と考えられ,そ
うした時期においても,効果のある取組を明らかにすることができた。
本年度の事前事後の調査では,実験群統制群ともに VCS-R は全体的に上昇した。尺度自体の信頼
性の問題の影響も否定できないが,BAQ も上昇し,価値志向性は変化しなかったことから,この時期
の生徒の発達的な影響も考えられる。暴力に関する知識や考え方,態度および BAQ で測る攻撃性が,
ちょうど上昇する時期とは言えないだろうか。
文部科学省(2007)によれば,いじめの発生件数は,小学校6年次の 1637 件から中学校1年次に
は 5967 件へと急増するという。また,Moffitt,T.(1993)は,反社会的行動が 13 歳くらいから増加
すると報告している。齋藤(2008)は,思春期前期であるこの時期の子どもにいじめが急増するその
心性として,
「自分探し」に取り組んでいる年代であり,他の年代に比べて仲間集団への愛着とそこで
の傷つきやすさが際だつ時期であると述べている。
図 12 は,2007 年度の研究で明らかにした VCS-R による校種ごとの実態であるが,中学校生徒が
最も高い値を示している。縦断的な調査ではないために,小学校から中学校になると暴力意識尺度改訂版(VCS-R)が高まると言うことではできないが,文部科学省や Moffitt,T.の報告,また齋藤の
指摘などを鑑みると,この時期に VCS-R が上昇する可能性は高い。本年度,調査の前後で VCS-R や
BAQ が上昇したことも,こうした背景に合致し,自然な変化であるとも考えられる。
そうした中,「暴力抑止に向けた適切な態
度」因子項目の中の,ストレス対処法を身に
(図 12)
2007 年度の VCS-R の校種別の平均値
4
つけているかどうかについて問う項目では,
明らかな効果が確認できた。また,
「暴力被害
への理解」への効果を狙った取組の効果もあ
容認態度
3.5
ったと考える。実験群と統制群との間の有意
被害理解
差は,統制群の望ましさに欠ける態度の高ま
VCS-R 全体
3
りを示し,実験群の平均点は減少したものの
適切態度
あくまで誤差の範囲であり,取組によって望
ましく変容したということはできない。しか
2.5
し,VCS-R 全体や BAQ が上昇する時期にお
小学生
中学生
高校生
いて,上昇をさせない取組は評価できるので
はないだろうか。
⑤
暴力予防に向け,「社会」や「宗教」への志向性は望ましい態度につながり,「権力」への志向性
は「暴力を容認する態度」を高めない。
今後のプログラム開発に向け,社会性を促進させる取組は言うまでもないが,宗教性を促進するよ
うな取組も視野に入れるべきである。宗教性というよりむしろ,スピリチュアリティに働きかける取
組と言うべきであるが,スピリチュアリティの功罪を把握し,ホリスティック教育の手法を参考に,
今後もより有効なプログラム開発に取り組んでいきたい。
また,
「権力」への志向性は,この時期の生徒にとって自我の確立に重要な心性であると考えられる。
J.Galtung の定義を支柱に,単に権威やタテ社会を否定することなく,何が暴力であり,どんな考え
を改善し,どんな知識や態度を育んでいくのか,という根本的な教育理念を教員や授業者が確かなも
のとして暴力予防教育に望んでいかなければならないと考えている。
-34-
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関係性における暴力第4章,岩崎学術出版
研究協力校
笛吹市立御坂中学校
校長
早川
公仁
謝辞
本研究に対してご協力をいただいた御坂中学校の1学年の生徒のみなさん,学年主任や研究主任,
1学年の担任の先生方にこころより感謝いたします。特に該当クラスの担任の先生,生徒のみなさん
には言いつくせないほどの感謝の気持ちです。難しい暴力の問題についての授業の中で真剣な意見を
出してもらい,授業内容や体験に対する感想もたくさん書いてくれました。みなさんの力がなければ
このような成果をまとめることはできませんでした。本当にありがとうございました。
平成 20 年度
執筆者
山梨県総合教育センター
主幹・研修主事
相原
真樹
研 修 主 事
上田
信夫
研 修 主 事
深澤
浩美
研 修 主 事
一瀬
英史
-36-