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JARI Research Journal
20160604
【研究活動紹介】
イラン自動車産業政策立案支援調査
Survey on support for planning policies of the automobile industry in Iran
鈴木
徹也 *1
Tetsuya SUZUKI
米沢
Mitsuo YONEZAWA
1. はじめに
1. 1 調査の背景および目的
イランの自動車産業は,非石油部門では同国最
大の産業であり,中東有数の産業基盤を誇ってい
る.2011年度の自動車生産台数は164万台のピー
クに達し,その後,同国の核開発問題に伴う経済
制裁により2013年度に74万台まで落ち込んだも
のの,2014年度は113万台まで回復した.イラン
は,自動車産業の成長を一層加速させ,中期的に
は石油に次ぐ輸出産業に育成したいと考えており,
2025年までに312万台をイラン国内で生産し,う
ち103万台を近隣諸国(イラク,アフガニスタン,
CIS諸国等)に輸出するという積極的な目標を掲
げている.
上記目標を達成すべく,イランは外国企業との
合弁会社設立等を通じた技術移転や現地生産によ
って,国産車の品質向上および輸出競争力の強化
を目指しており,外国企業等の持つ魅力的なリソ
ース(ヒト,モノ,カネ等)に対して極めて高い
期待を寄せている.また,外国企業も,同国市場
に対して高い関心を有しており,国際情勢が許す
限りイランビジネスを継続するなど,イランとの
経済関係を可能な限り維持してきた.
今後イランが希望している外国企業との長期的
な協業を実施するためには,経済制裁の緩和に加
えて,健全な市場および事業環境を作り出すため
の自動車産業政策の存在が必要不可欠である.し
かしながら,外国企業や一部地場メーカーからも,
現状と乖離した自動車産業政策の存在が外資のイ
ランでのビジネス拡大を妨げ,国産車の競争力強
*1 一般財団法人日本自動車研究所 エネルギ・環境研究部
博士(工学)
*2 一般財団法人日本自動車研究所 国際渉外広報室
*3 一般財団法人日本自動車研究所 エネルギ・環境研究部
JARI Research Journal
三津夫 *2
船 崎
敦 *3
Atsushi FUNAZAKI
化を阻害しているとの声が聞こえている.
そこで本調査は,イランが掲げる自動車産業の
現状と自動車産業政策との間にあるズレ・ギャッ
プを調査・分析した上で,経済制裁緩和後を見据
えて制度再検討の機運高まるイランに対して,検
討プロセスに必要な情報を提供し,貿易投資環境
の整備にかかる制度設計,人材育成等に関する政
策立案につなげることを目的とする.
なお,本調査は,経済産業省通商政策局中東ア
フリカ課からの委託で,2015年12月から2016年3
月に実施された.
1. 2 調査の概要
本事業では,国内調査とイランでの現地調査を
実施した.
国内調査では,文献調査として国内外の各種文
献やインターネットから,またイラン関連のセミ
ナーにも出席し情報を収集した.併せて,有識者
およびイランと関係のある自動車メーカーへヒア
リングを行い,イランの自動車産業の状況やイラ
ンでビジネスを行う上での課題等について情報を
収集した.ヒアリング先は以下である.
・ 日系自動車メーカー 3 社
・ 自動車基準認証国際化研究センター(JASIC)
2 回の現地調査では,以下にヒアリングを行っ
た.
<公的機関(日本)>
・ 在イラン日本国大使館
<公的機関(イラン)>
・ 商 業 ・ 工 業 鉱 山 省 ( MIMT : Ministry of
Industry, Mine and Trade)
・ 産 業 開 発 ・ 革 新 庁 ( IDRO : Industrial
Development and Renovation Organization
- 1 -
(2016.6)
2010年6月の国連安保理による第4次経済制裁を
契機とし,2013年7月には米国大統領令による制
裁を受けて,欧日韓自動車メーカーのイランから
の撤退が相次いだ.2013年度は73.7万台となり,
2011年度ピーク値の半分以下まで落ち込んだ.そ
の後,2013年11月のイランとP5+1(国連常任理
事国5か国+ドイツ)による暫定合意によって,
2014年1月に一部の経済制裁が緩和されたことか
ら,自動車部品や原材料の輸入が再開され,2014
年度(2014年3月20日~2015年3月19日)の自動
車生産台数は,前年比53.3%増の113.0万台となっ
た.Iran Khodro GroupとSAIPA Groupのシェア
は,それぞれ53.5%,37.0%である.イランの自
動車生産台数の推移を図1に示す.
1.8
1.6
1.4
1.2
1.0
0.8
0.6
0.4
0.2
0.0
(100万台)
乗用車
商用車
1998
1999
2000
2001
2002
2003
2004
2005
2006
2007
2008
2009
2010
2011
2012
2013
2014
of Iran)
・ イ ラ ン 工 業 技 術 院 ( ISIRI : Institute of
Standard and Industrial Research of Iran)
・ 環境庁(DOE:Department of Environment)
<自動車メーカー(イラン)>
・ Iran Khodro(IKCO)
・ SAIPA
<業界団体>
・ イラン自動車部品工業会(IAPMA:Iranian
Auto Parts Manufacturers Association)
ヒアリングでは,共通の内容として,組織の概
要,イラン自動車産業の現状および課題・将来展
望,日本からの投資に対する期待等を質問した.
また各論では,自動車産業発展戦略に対する見解,
車両安全・環境規制,国際基準調和(日本の車両
基準の並行認証)等を取り上げた.
また,2 回目のイラン訪問時に,MIMT を再訪
し,在イラン日本国大使館員同席の下,自動車産
業局長へ調査結果と政策提言を示し意見交換を行
った. ISIRI への再訪では,初回訪問時に強く要
望された日本の車両法規の詳細情報(日本とイラ
ンの車両基準の対応状況等)を提示し意見交換を
行った.
年度(イラン歴)
(出所)FOURIN世界自動車調査月報より作成
2. イランの自動車産業と自動車産業政策
2. 1 イランの自動車産業
イランは人口 8,200 万人(2015 年推計)を有す
る地域大国で,24 歳以下の若年層が 41%(2015
年推計)を占める 1).1,000 人あたりの自動車保
有台数は 170 台(2014 年)2)と先進国の 1/3~1/2
程度であり,国内市場の拡大の余地は大きい.
イランにおいて自動車産業は,石油・天然ガス
産業に次ぐ第 2 の主要産業であり,GDP に占め
る比率は 10%以上で,70 万人以上(就業人口の
4%)の雇用を生んでいる 3).1960 年代に欧日メ
ーカー車の組立生産から開始し,Iran Khodro と
SAIPA の 2 大国営自動車メーカー(現在は半官半
民)が,欧日韓自動車メーカーから技術・ライセ
ンス供与を受けて自動車を生産する形で自動車産
業が発展した.
イランの自動車生産台数は,1990年代から伸び
続け,2011年度(イラン歴:2011年3月21日~2012
年3月20日)には164.2万台となった4).これは中
東最大で世界第13位の生産台数である.しかし,
JARI Research Journal
図1 イランの自動車生産台数
自動車輸出に関するイラン全体の統計は入手で
きなかったが,2012 年の Iran Khodro の輸出台
数は約 2 万台 5),2014 年の SAIPA の輸出台数は
約 2 万 3 千台 6)であり,イランで生産される自動
車は殆どが国内向けと言える.
主要自動車メーカーは,イランでのビジネス再
開に動き出している.特に積極的なのはフランス
の PSA(PSA Peugeot Citroën)と Renault であ
る.日本メーカーについても,Iran Khodro がス
ズキと,SAIPA が日産と提携を継続していくこと
を明 かしてい る.また,民 間企業 の Bahman
Khodro がマツダやいすゞとの関係強化を進めよ
うとしている.イランの国別(ブランド別)自動
車生産台数シェアの推移(2009~2014 年度)を
図 2 に示す.経済制裁の影響で生産台数が 2011
年度のピーク後に激減していた間も,欧州車の減
少は比較的小さく 2014 年度は 35.3%(うち 93%
が PSA)であったのに対し,韓国車と日本車のシ
- 2 -
(2016.6)
ェアは大きく減少した.それでも 2014 年度の韓
国車のシェアは 22.4%と一定の存在感があるが,
日本車は 0.7%とごくわずかであった.その間にイ
ランと中国は大きくシェアを伸ばし,2014 年度は
それぞれ 32.1%,9.5%であった.
45%
40%
35%
イラン
30%
欧州
25%
韓国
20%
中国
15%
日本
10%
その他
5%
0%
2009
2010
2011
2012
年度(イラン歴)
2013
2014
(出所)FOURIN世界自動車調査月報より作成
図2 イランの自動車生産の国別(ブランド別)シェア
イランは既に 160 万台の自動車生産の実績があ
るだけに,自動車部品産業の裾野は広い.イラン
自動車部品メーカーは約 1,200 社で,経済制裁下
で稼働していないところもあるが,800 社前後は
操業を続けている 7).自動車部品の 90%以上は国
内調達可能と言われており,発展のポテンシャル
はあるものの,現時点では品質が不十分との指摘
もある 8).
新車乗用車販売に占める輸入車は 1 割程度であ
るが,国産車との品質や装備の差はイランの消費
者にも知られてきている.Iran Khodro によれば,
イランの消費者が求めているのは,0.8 万~1.2 万
ドルの自動車で,国産車よりも 3 割ほど高いが,
品質や装備が優れていれば,同価格帯の自動車が
支持されると見ている 9).よって,政府および自
動車メーカー,自動車部品メーカーは国産車の技
術レベルの向上のため,国内メーカーと外国メー
カーの合弁(JV)を強く望んでおり,特にオート
マチックトランスミッション(AT)技術への関心
が非常に高い.日系メーカーの進出にも強く期待
している.
2. 2 イランの自動車産業政策
2. 2. 1 自動車産業発展戦略
イラン政府は,2025 年までに年間生産台数を
乗用車は 300 万台,商用車は 12 万台まで引き上
げ,そのうちの乗用車は 100 万台,商用車は 3
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万台を輸出するという野心的な目標を掲げてい
る 10).イランは 50 年以上の自動車生産の歴史を
持ち生産規模拡大の素地はあるものの,長期間の
経済制裁下で,自動車輸入を高い関税で制限して
国内メーカーを保護してきたため製品競争力が
弱い.こうした現状はイラン政府も認識しており,
競争力強化に向けて外資優遇政策などのビジネ
ス環境整備を進めている.2013 年 3 月には,競
争力向上のため,国内メーカーの反対により長年
見送ってきた乗用車の輸入関税の引き下げ(90%
→40%)に踏み切った 11).
イラン政府および自動車メーカー,自動車部品
メーカーは,外国メーカーとの合弁や技術導入な
どを通じたビジネス拡大,品質向上を模索してお
り,世界の自動車市場を牽引する日本企業の優れ
た技術やノウハウに極めて高い期待と関心を持っ
ている.そのため,政府は現地調達率の向上を目
指しており,関税が優遇される現地調達率を 2016
年 3 月から 20%に引き上げ,将来的には 40%にす
る計画がある.
2. 2. 2 車両基準
イランの国家規格・基準は,農産物から工業製
品,品質管理に至るまで,大統領直轄のイラン工
業技術院(ISIRI:Institute of Standard and
Industrial Research of Iran)が管轄しており,
ISO にも加盟している.
イランの車両基準は 53 項目あり,51 番まで
Directive 2007/46/EC に準拠している.イランで
自動車を販売するには,EU で販売しない車両に
ついても,
これらの 53 項目全てをクリアするか,
EU の車両型式認証を取るかのいずれかが必要で
ある 12).
これに関して ISIRI は,今後各国の自動車ビジ
ネスがイラン国内で円滑に拡大していけるように,
日本・米国・韓国の車両基準もイランの基準に取
り込めるか検討を開始し,詳細情報を収集してい
る.日本の車両基準の一部は UN 規則に対応して
おり,UN 規則と EC 規則は殆ど同一と見なせる
ことから,表 1 のように,イラン基準/EC 規則
/UN 規則/日本基準の対応表を作成し ISIRI に
提示した.53 項目のうち 28 項目に対応する UN
規則は日本においてすでに採用されている.
また,ISIRI では,現在 53 項目ある車両基準を
- 3 -
(2016.6)
82 項目に拡大(実質的に EU の車両型式認証を取
ることに等しい)することを検討しており,2016
年 6~8 月頃の決定を目指している 13) 82 項目の適
用が開始されるのは,国産車および現在生産して
いる CKD(Complete Knock Down:完全現地組
立生産)は 3 年後(2019 年 3 月 21 日)
,輸入車
および今後生産を開始する CKD は 1 年後(2017
年 3 月 21 日以降)である.今のところ,国産車
と CKD を区別する現地調達率は未定である.
3. イランの自動車産業が発展するための方策
3. 1 海外外資を促す環境整備
2025 年までの自動車発展戦略は,2011 年度に
164 万台生産の実績があるとはいえ,この 2 倍の
規模を目指すものであり達成は容易ではない.輸
出 103 万台が目標達成へのキーポイントであり,
生産車両に輸出競争力があることが不可欠である.
そして,輸出競争力を高めるには,特に車両プラ
ットフォームの刷新とオートマチックトランスミ
ッション技術の現地化が不可欠である.イラン政
府および現地の自動車メーカー,自動車部品メー
カーもこのことを認識しており,外国メーカーと
の合弁による技術移転を望んでいる.日本メーカ
ーに対しても,早期参入を強く期待している 14).
しかしながら,日系自動車メーカーにヒアリン
グを行ったところ,現地メーカーと JV を組むよ
うな本格的なイラン進出には,以下のような点で
環境が改善されることが必要とのことであった.
・ 自動車生産,特に乗用車の生産は初期投資の大
きい産業であり,生産台数が拡大しないことに
は 1 台当たりの生産コストが下げられず投資
に踏み切れない.これは自動車部品産業にとっ
ても同様である.
・ 部品の関税が非常に高いなど現地調達のメリ
ットがあってはじめて現地調達を考える.一方
で,急激な現地調達義務化は投資の意欲を削ぐ.
・ 現地調達したくても,適切な品質の部品を確保
できない状況も考えられる.完成車メーカーだ
けでなく,Tier 1,
Tier 2 の育成が必要である.
・ イランの法規は EU の法規に準じているが,そ
の透明性に問題がある.日本車が正当に評価さ
れる規制・評価制度の導入を求める.
・ マーケティングに役立つ各種自動車統計を整
備してアクセスしやすくして欲しい.例えば,
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地域別の販売統計など.
・ 国際情勢の安定も重要.
イラン政府は現地調達率を高める方針で,特に
オートマチックトランスミッション技術の現地
化を重要視している.もちろん,外資を呼び込み
つつ国内部品メーカーを育成するには,例えば後
述するタイでの成功事例のように,国内部品メー
カー育成のインセンティブが重要であるが,現地
調達率の向上には時間がかかる.まずは,汎用部
品から始めて徐々に技術レベルを上げていくこ
とが必要で,初期段階でオートマチックトランス
ミッションのような高度な部品を扱うのは非常
に困難である.現地調達の難しさについて日系自
動車メーカー・自動車部品メーカーは以下のよう
に述べている.
・ 現地調達は簡単ではない.供給までに試作品の
テスト等も必要で,量産するまでに時間を要す
る.また継続供給できることも要求されるため
ハードルが高い.15)
・ 現地調達するかどうかの判断には,生産台数が
重要な要素となる.例えば,エンジン,トラン
スミッションは,1 タイプにつき 100,000 ユニ
ット製造しないと採算ラインに乗らない.15)
・ 自動車メーカーは,現地調達した部品を投資回
収するまで使わざるを得なく,その間にモデル
チェンジが行えない可能性が高い.16)
例えばトヨタのタイの事例では,図 3 に示すよ
うに,長い時間をかけて現地調達率を上げてきた.
すでに自動車生産国として実績のあるイランにお
いては,同じ期間を要することはないだろうが,
この発展の変遷は大いに示唆を与えるものである.
イランへ日本メーカーの参入を促すには,日本
車が正当に評価される規制・評価制度の導入も重
要である.イラン法規は EU 法規に準じており,
EU で販売しないイラン向けの車両についても
EC 規則に適合させるか,もしくは EU の型式認
証を取る必要があるため,日系自動車メーカーか
らは日本の車両基準も認めて欲しいとの声が挙が
っていた.これに関しては,先述のように,ISIRI
が日本の車両基準を適用できるかどうかの検討を
始めていることが判明し,日本からも詳細情報を
提供した.これがうまくいけば,イランにとって
も日本の投資を後押しすることにつながり有益で
ある.
- 4 -
(2016.6)
表1 イランと日本の車両基準の対応
IRAN
JAPAN
Permissible sound level
Braking
Steering effort / Steering equipment
Speed limitation devices
Speed meter equipment
Audible warning
70/157/EEC
71/320/EEC
70/311/EEC
92/24/EEC
75/443/EEC
70/388/EEC
Other standards
(UN standards, ISO)
UN 51
UN 13H
UN 79
UN 89
UN 39
UN 28
6485
6487
6483
6502
6493
4159
6683
6497
6670
6479
Recording equipment in road transport
Handling
Engine power
Radio interference (EMC)
Identification of controls, tell-tales and indicators
Defrost/demist
Wash/wipe
Indirect vision devices
Forward vision
Installation of lighting and light signaling device
85/3821/EEC
80/1269/EEC
72/245/EEC
78/316/EEC
78/317/EEC
78/318/EEC
2003/97/EC
77/649/EEC
76/756/EEC
ISO 7401, 4138, 3888
UN 85
UN 10
UN 121
UN 46
UN 125
UN 48
X
X
X
X
17
6494
Retro reflectors
76/757/EEC
UN 3
X
18
6651
End-outline, front-position, rear-position, stop, side marker, daytime running lamps
76/758/EEC
UN 7
X
19
20
21
6505
6495
6672
Direction indicators
Rear registration plate lamps
Head lamps
76/759/EEC
76/760/EEC
76/761/EEC
UN 6
UN 4
UN 31
UN 37
X
X
X
UN 98
UN 99
X
X
UN 112
UN 113
UN 19
UN 38
UN 23
UN 43
UN 58
UN 12
UN 17
UN 14
UN 16
UN 25
UN 73
UN 94
UN 95
UN 11
UN 107
UN 118
UN 105
X
X
X
X
X
X
X
X
X
X
X
X
X
X
X
-
1
2
3
4
5
6
ISIRI
Standards
4243
6742
3917
6484
6481
6482
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
No.
Item
EU standards
Adopted
UN standards
X
X
X
X
22
23
24
25
26
27
28
29
30
31
32
33
34
35
36
37
38
6488
6504
6492
6894
6480
4164
6503
4017
779
6506
6671
6652
4239
6773
4160
6625
6741
Front fog lamp
Rear fog lamp
Reversing lamp
Safety glazing
Fuel tanks / rear protective devices
Protection of the driver against the steering mechanism in the event of impact
Seat strength
Seat belt anchorages
Seat belts and restraint system
Head restraints
Lateral protection
Frontal impact
Side impact
Door latches and hinges
Buses and coaches
Flammability
Vehicles intended for the transport of dangerous goods
76/762/EEC
77/538/EEC
77/539/EEC
92/22/EEC
70/221/EEC
74/297/EEC
74/408/EEC
76/115/EEC
77/541/EEC
78/932/EEC
89/297/EEC
96/79/EC
96/27/EC
70/387/EEC
2001/85/EC
95/28/EC
98/91/EC
(ECER-105)
39
40
6491
6772
Rear registration plate space
Interior fittings
70/222/EEC
74/60/EEC
UN 21
X
41
6622
Exterior projections
74/483/EEC
UN 26
X
42
43
44
45
46
6624
6489
6486
6501
1093
External projections of cabs
Statutory plates
Wheel guards
Spray-suppression systems
Tyres
92/114/EEC
76/114/EEC
78/549/EEC
91/226/EEC
92/23/EEC
UN 61
47
48
49
6500
6499
3478
Masses and dimensions (cars)
Masses and dimensions (other than vehicles referred to in item 47)
Couplings
92/21/EEC
97/27/EC
94/20/EC
50
51
6490
6623
Towing hooks
Anti-theft and immobiliser
77/389/EEC
74/61/EEC
52
9190
Fire extinguisher installation requirements
-
53-1
53-2
4241-2
8361
Light vehicle (Gasoline, Diesel and Bi-fuel vehicles) - fuel consumption
Heavy and medium on road and off road vehicles Diesel Engines - fuel consumption
-
-
UN 30
UN 54
UN 64
UN 55
UN 102
UN 18
UN 116
FC 401
ECE 2006/23
EN 3
-
X
X
X
X
Safety Regulations for Road Vehicles
30
12
11
N.A.
46
43
46
Noise Control Device
Brake System
(Steering System)
Speedometers, etc.
Horns
Speedometers, etc
N.A.
17-2 Electrical System
10 Control System
44
21
32
33
34
35
36
37
38
39
40
41
41-4
41-5
42
35
38
63
34
37
39
39-2
41
36
32
32
33
34
35
36
37
38
39
40
41
41-4
41-5
62
63
32
32
33
34
35
36
37
38
39
40
41
41-4
41-5
32
32
33
37-2
40
29
18-2
11
22
22-3
22-3
22-4
18-2
18
18
25
N.A.
N.A.
(50-2)
(51)
(52)
Rear-View Mirrors, etc.
Driver's Seat
Headlamps, etc.
Front Fog Lamps
Front Position Lamps
Front Reflex Reflectors
Number Plate Lamps
Rear Position Lamps
Rear Reflex Reflectors
Stop Lamps
Reversing Lamps
Direction Indicator Lamps
Emergency Stop Signal Lamps
Rear-End Collision Alert Signal Lamps
Restrictions on Other Lamps, etc.
Front Reflex Reflectors
Rear Reflex Reflectors
Rear Reflex Reflectors for Motor-Driven Cycles
Front Position Lamps
Rear Position Lamps
Stop Lamps
Auxiliary Stop Lamps
Direction Indicator Lamps
Number Plate Lamps
Headlamps, etc.
Headlamps, etc.
Front Fog Lamps
Front Position Lamps
Front Reflex Reflectors
Number Plate Lamps
Rear Position Lamps
Rear Reflex Reflectors
Stop Lamps
Reversing Lamps
Direction Indicator Lamps
Emergency Stop Signal La
Rear-End Collision Alert
Headlamps for Motor-Driven
Rear Reflex Reflectors for
Headlamps, etc.
Headlamps, etc.
Front Fog Lamps
Front Position Lamps
Front Reflex Reflectors
Number Plate Lamps
Rear Position Lamps
Rear Reflex Reflectors
Stop Lamps
Reversing Lamps
Direction Indicator Lamps
Emergency Stop Signal La
Rear-End Collision Alert
Headlamps, etc.
Headlamps, etc.
Front Fog Lamps
Rear Fog Lamps
Reversing Lamps
Window Glass
Pedestrian Protecting Side Guards, etc.
(Steering System)
(Seat)
Seat Belts, etc.
Seat Belts, etc.
Head Restraints, etc.
Pedestrian Protecting Side Guards, etc.
Frame and Body
Frame and Body
Entrance
(Motor Vehicles with Gas-Transporting Containers, etc.)
(Motor Vehicles Carrying Gunpowder)
(Motor Vehicles Carrying Dangerous Articles)
20
22
45
2
18
18
Riding Accommodation
(Seat)
Windshield Wipers, etc.
Length, Width and Height
Frame and Body
Frame and Body
9
9
9
56
Running Systems, etc.
Running Systems, etc.
Running Systems, etc.
(Relaxation of Regulations – Temporary Operation)
N.A.
N.A.
11-2 Locking Devices, etc.
11-2 Locking Devices, etc.
43-5 Unauthorized Use Alarm Devices
-
-
(注)網掛けは,イランの車両基準に対応するUN規則が日本で採用されていることを示す.
(出所)ISIRIおよびJASIC資料より作成
JARI Research Journal
- 5 -
(2016.6)
(出所)北川史和:アジア経済圏における自動車市場での成功戦略,野村総合研究所,p.29(2008.6)
図3 トヨタのタイにおける部品調達先と現地調達率の変遷
3. 2 他国の事例からの示唆
イラン政府は,日系自動車メーカーが培ってき
た海外生産に関する知見と経験(関連産業育成,
雇用創出,技術移転など)を活かすことに大きな
期待を寄せている.例えば,イランと人口・経済
が同規模の新興国であるタイでは,以下のように
自動車生産・輸出国として発展してきた.
日系自動車メーカーのタイ進出は,1961 年の
タイ投資奨励法に基づき,1960 年代に SKD
(Semi Knock Down)組立から始まった.タイ
政府は,当初,組立車種の制限,国産化義務,完
成車輸入制限など保護政策を行っていたが,
1991 年に完成車の輸入解禁,輸入税の大幅引き
下げ,1993 年に組立工場の新設禁止措置解除を
実施し,高度経済成長を背景に,1970 年の生産
2 万台から 1995 年には生産 52 万台にまで成長
した 17).
1997 年のアジア通貨危機により生産・販売台
数は大幅に落ち込んだが,2000 年以降,タイ政
府は「アジアのデトロイト」を目指して,インフ
ラ整備や法人税減税などの投資恩典を拡充し,日
系自動車メーカーを中心に現地調達率の向上,部
品メーカーの集積が進み,2005 年に生産 100 万
台,2011 年に生産 200 万台を超え(日系シェア
9 割)
,自動車産業は GDP の約 10%,雇用者数
50 万人に達した基幹産業に育った.更にタイ政
府は,2017 年までに生産 300 万台という拡大目
標だけでなく,自動車産業の高度化(環境配慮型
自動車の生産拠点,研究開発拠点)を狙ってい
JARI Research Journal
る 18).
これとは対照的に,国産自動車メーカーの保護を
優先し続けたマレーシアでは,輸出の点でタイと大
きな差が生じている(図 4)
.確かに,自動車の輸入
代替化と裾野産業の育成という点では,国産ブラン
ドを構築しようとする方法は妥当であるが,いつま
でも制度に守られて育成された国産ブランドは,市
場開放に耐えうる技術力を持てず,また技術レベル
にも課題があるため輸出競争力が強化されない.こ
のため,2010 年に国家自動車政策(NAP:National
Automotive Policy)を発効し,排気量 1,800cc 以上,
価格 15 万リンギ(約 400 万円)以上の自動車製造
について,外資 100%が認められるようになった
が 19),市場開放策としては不十分である印象は否め
ない.関税率は下がっても高い物品税がかけられ海
外ブランドの販売価格が高止まりし続けているため,
海外メーカーが現地で育たず,部品メーカーが進出
せず,産業集積ができない 20).その結果,現地調達
率を上げるほど物品税が減免される制度があっても,
現地調達率が依然低いままである.
タイの発展を成功事例として取り上げたが,すで
にIran KhodroとSAIPAという2大国内自動車メー
カーが存在し160万台生産の実績があるイランへ,
自国発の国産ブランド確立を目指さなかったタイの
政策をそのまま導入することはできない.既存の国
産ブランドを育成する一方で,輸出競争力も上げな
ければならないイランにおいて,タイとマレーシア
における自動車産業の発展の違いは,大いに示唆を
与えるものである.
- 6 -
(2016.6)
【初めは、両国とも、国産化推進政策】
途上国における自動車産業育成
Proton社(三菱自工と合弁)
Perodua社(ダイハツと合弁)
出資比率で、マレーシア主導
2000年頃、2社のシェア80%
規制に守られ、地場メーカーは
品質面で輸出競争力なし。
所得が向上した国民は、高くて
も輸出車に流れ始める。2005
年頃、2社のシェア60%に。
日マレーシア経済連携協定に
基づき、日系メーカーの専門家
が技術支援を開始(自動車産
業協力事業MAJAICO)。一部
車種の外資100%を認可。
政策オプション
オプション1:
国産ブランドの構築
(国民車構想)
オプション2:
海外ブランドの誘致
手段
・ 高関税
・ 特定企業優遇
・ 投資抑制
・ 直接投資融資
・ ローカルコンテンツ要求
・ 人材育成
輸入代替
(ISI)型
1997年のアジア通貨危機を期
に、バーツ安を利用して、輸出
産業育成へ。国産化規制撤廃
や貿易自由化を促進。
「アジアのデトロイト」をスロー
ガンに産業クラスターを形成。
近年、ASEANだけでなく、日
本にも完成車を輸出。
輸出指向
(EOI)型
マレーシア
タイ
2014年、生産60万台。
2社のシェア52%、日系の
シェア40%、輸出わずか。
2014年、生産188万台。
日系のシェア80%超。
輸出110万台。
(出所)黒川基裕:タイ国自動車産業の歴史的変遷,季刊国際貿易と投資,No.100,2015夏号,p.62(2015.6)の図2に加筆
図4 自動車産業育成の2つの方向性と結果の比較(マレーシア vs. タイ)
4. 自動車産業の発展に関する政策提言
イランはすでに年間 164 万台の自動車生産を達
成しており,経済制裁が緩和され今後外国からの投
資が進み,また若年層を主体とする地域随一の人口
を抱えていることなどを考慮すると,自動車産業が
ますます発展する可能性が高い.
一方で,2025 年までに 300 万台を生産し,その
うちの 100 万台を輸出するという発展戦略はきわ
めて野心的である.これには,外資を呼び込みつつ
国内メーカーを育成し,輸出競争力を高めることが
必要である.また,イランの自動車関連法規は EU
法規に準じているが,EU 以外からの投資も積極的
に呼び込むには,それらの国の法規も認める国際基
準調和が必要である.
以上を踏まえて,本事業では以下のように政策提
言をまとめ,商業・工業鉱山省(MIMT)への再訪
時(図 5)に提示した.
・ イランの自動車産業の発展を考える際,輸出指
向型のタイと輸出代替型のマレーシアの発展の
違いが大きな示唆を与える.
 イラン自動車メーカーのレベルアップは必
要だが,保護しすぎるとマレーシアのよう
に輸出競争力がなくなる懸念がある.バラ
ンスが重要.
 地域の輸出大国として成功したタイの外資
誘致策と適正なローカルコンテンツ要求が
JARI Research Journal
ベンチマークとなるのではないか.
・ 2025 年 300 万台生産の目標達成には,300 万台
のうち 100 万台を輸出する戦略がポイント.
 輸出台数を増やすには,商品競争力が不可欠.
商品競争力を上げるにはオートマチックト
ランスミッション(AT)技術が不可欠.
 まずは AT を 1 機種輸入し,外資メーカーが
輸出をイランメーカーが内需を担当する分
業体制を確立し,その間にイランの AT メー
カーが技術力を高めて,将来的に AT の独自
開発・生産を目指してはどうか.
・ 国際的なビジネスを円滑に進めるために国際基
準調和が重要.
- 7 -
図5 MIMT自動車産業局長訪問の様子
(在イラン日本国大使館員も同席)
(2016.6)
5. まとめ
本事業では,イラン政府が,
「2025 年までに 300
万台をイラン国内で生産,うち 100 万台を近隣諸
国に輸出」という野心的な目標を達成すべく,外
国企業とイラン企業との合弁設立等を通じた技術
移転や現地生産によって,国産車の品質向上およ
び輸出競争力の強化を目指している中,自動車産
業の現状と自動車産業政策との間にあるズレ・ギ
ャップを調査・分析し,イラン政府へ政策提言を
行った.
現地調査で訪問したイラン政府および業界全て
の組織から,日本企業のイランへの本格的な進出
への強い期待が寄せられた.商業・工業鉱山省
(MIMT)の自動車産業局長に提言書を提出し意
見交換を行った際,確かにイラン政府は現地調達
率を向上させたい意向ではあるが,義務的な数値
ありきではなく,メーカーのビジネスプランに基
づき柔軟に交渉する用意があるとのことであった.
実際に欧州の自動車メーカーとはそのような交渉
を行っているが,残念ながら日本からは交渉以前
にそもそもビジネスプランの提示がないので,ぜ
ひビジネスプランを積極的に提示していただき議
論を行いたいと再三強調していた.
また,イラン工業技術院(ISIRI)は,国内・
外国メーカー問わず,適切な品質の車両がもっと
イラン国内で流通する環境にしたいとの意向であ
る.高品質の日本車がより普及するように,日本
の車両基準をイランでも認めることができるか自
主的に検討を開始しており,本事業を通じて日本
の関連法規の詳細情報を ISIRI に提出し検討を促
せたことは,本事業の大きな成果である.
本事業で得られた様々な知見やイランのキーパ
ーソンとのコミュニケーションが,これからます
ます発展が期待されるイランの自動車産業におい
て,イランに関心のある日本の自動車メーカー,
自動車部品メーカーが円滑にビジネスを進めてい
く際の一助になれば幸いである.
second biggest sector in country(2015.11)
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http://www.howtoinvestiniran.com/iran-automotive-in
dustry-is-the-second-biggest-sector-in-country/
(2016.3.18閲覧)
4) FOURIN:世界自動車調査月報,p.42-43(2012.8)
5) 国際自動車ニュース:ホドロ,12年の輸出台数は150%増
の2万台(2013.04.12)
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http://www.autosurvey.jp/index.php?section=news&
action=view&id=3427(2016.5.9閲覧)
6) ILIA Corporation : Key Players of the Iranian
Automotive Industry(2016.3.3)
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http://www.ilia-corporation.com/de/key-players-iranian
-automotive-industry/(2016.5.9閲覧)
7) 日本貿易振興機構:生産・販売は回復傾向,制裁解除後
の発展に期待-ジェトロが自動車関連企業交流会開催
(1)
,JETRO通商弘報(2015.12.16)
8) 日系自動車メーカーへのヒアリング(2016.1.7)
9) FOURIN:世界自動車調査月報,p.42(2015.9)
10) Iranian Ministry of Industries and Mines,Automotive
Industry Policy Council,The Industrial Development
and Renovation Organization of Iran (IDRO Group):
Automotive Industry Development in Horizon 2025
Goals and Policies(2014.8)
11) Scandinavian-Iranian Chamber of Commerce:Iran –
en nygammal marknad(2014.10)
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http://www.fkg.se/wp/wp-content/uploads/2014/10/
Iran-en-nygammal-marknad-14015.pdf(2016.3.18閲覧)
12) ISIRIへのヒアリング(2016.2.9)
13) ISIRIへのヒアリング(2016.3.7)
14) 日本貿易振興機構:ビジネスフォーラムも盛況,関係者
ら80人が参加-ジェトロが自動車関連企業交流会開催(2)
-,JETRO通商弘報(2015.12.17)
15) 三菱総合研究所:平成25年度経済連携促進のための産業
高度化推進事業(ベトナム社会主義共和国の自動車市場
の成長可能性調査事業)報告書(2014)
16) 日系自動車メーカーへのヒアリング(2016.2.24)
17) 丸 山 恵 成 編 : 新 版 ア ジ ア の 自 動 車 産 業 , 亜 紀 書 房 ,
p.316-320(1997.7)
18) 若松勇・助川成也編:タイ経済の基礎知識,日本貿易振
19) 久保島悠・他監修:自動車産業ASEAN攻略,日経BP社,
1) Central Intelligence Agency:The World Factbook,
p.75-76(2013.4)
https://www.cia.gov/library/publications/theworld-factbook/geos/ir.html(2016.3.18閲覧)
JARI Research Journal
3) How to invest in Iran:Iran automotive industry is the
興機構,p.74(2015.2)
参考文献
2) International
Organization
of
Motor
Manufacturers(OICA)
:自動車保有統計,
http://www.oica.net/category/vehicles-in-use/
(2016.3.18閲覧)
20) NNA:産業政策に尽きない矛盾:行き着く先はプロトン
Vehicle
- 8 -
(2015.5.29)
(2016.6)