工場製作編 - 一般社団法人 日本建設業連合会

制定
鉄骨工事
Q&A
改訂
鉄骨工事Q&A
A.工場製作編
一般社団法人 日本建設業連合会
建築本部 鉄骨専門部会
日建連/鉄骨専門部会
2016年7月1日
鉄骨工事Q&A (工場製作編) 目次
項目
1.材料
番号
鋼材規格
各鋼材記号の数字が意味するものは?
A-1-2
平鋼と厚板
平鋼と厚板の違いは?
A-1-3
BCP
BCP原板のミルシートの確認は必要か?
A-1-4
BCRとBCP
BCR(ロール成形角形鋼管)とBCP(プレス成形角形鋼管)の違いは?
A-1-5
BCP325T
BCP325Tの「T」の意味と、BCP325との違いは何か?
A-1-6
超高力ボルト
超高力ボルト(例えばSHTB)と一般の高力ボルトの違いは何か?
A-1-7
被覆アーク溶接棒
被覆アーク溶接棒の記号の意味は?
A-1-8
被覆アーク溶接棒
被覆アーク溶接棒のJIS規格改正前後の記号の違いは?
A-1-9
ソリッドワイヤ
YGW11~YGW19などのソリッドワイヤの記号の意味は?
A-1-10
ソリッドワイヤ
ソリッドワイヤの記号の意味は?
A-1-11
ソリッドワイヤ
ソリッドワイヤの記号について2009年のJIS規格改正前後の違いは?
A-1-12
フラックス入りワイヤ
フラックス入りワイヤの記号の意味は?
A-1-13
フラックス入りワイヤ
フラックス入りワイヤの記号について2009年のJIS規格改正前後の違いは?
A-1-14
アンカーボルト
アンカーボルトの転造ねじと切削ねじの違いは何か?
A-1-15
アンカーボルト
構造用アンカーボルトのABRとABMはどのような材料なのか?
A-1-16
電炉鋼材
A-2-1
A-2-2
A-2-3
A-2-4
A-2-5
A-2-6
A-2-7
A-2-8
A-2-9
A-2-10
A-2-11
A-2-12
A-2-13
A-2-14
A-2-15
A-2-16
A-2-17
A-2-18
A-2-19
A-3-1
電炉材の使用制限の理由は?
溶接ワイヤの規格・種類、ワイヤ径をAW検定受験時のものに合わせるとの特記がある場合、
AW検定と溶接ワイヤ
変更できないか?
床書き現寸
床書き現寸はどのような場合省略できるか?
シナイ
シナイとは何か?
鋼材識別
鋼材の材質確認にはどんな方法があるのか?
鋼材識別
切板はどんな方法で識別されているのか?
鋼材識別
切板の鋼材識別塗色マーキングのルールは統一できないか?
けがき
鋼材面へポンチは打ってよいか?
スカラップ加工
スカラップ工法とノンスカラップ工法の構造性能の違いは?
曲げ加工
鋼板の曲げ半径の規定は、JASS6と告示のどちらを優先するのか?
仮組
「仮組」はどのようなものが対象となるのか?
孔あけ加工
孔あけをレーザーやプラズマで行ってもいいのか?
拡大孔
高力ボルト摩擦接合でボルト孔をルーズ(拡大孔)にしたいが、問題はないか?
摩擦面処理
発せい(錆)促進剤や溶融亜鉛めっき面へリン酸塩処理をするのに必要な手続きは?
発せい促進剤
発せい(錆)促進剤を使用するに当たっての留意点は?
サンドブラスト
何故、サンドブラスト処理の場合、赤さびが必要なのか?
CFT造コンクリート圧入口 CFT造のコンクリート圧入口の誘導管(エルボ)を省略できる根拠は無いか?
バンドプレート
十字柱のバンドプレートのピッチに規定はあるのか?
ひずみ矯正
ひずみを加熱で矯正する場合の留意点は?
ダイアフラムの出寸法
コラム柱の通しダイアフラムの場合、出寸法は何㎜ にするのがよいのか?
構造用アンカーボルト(ABR、ABM)をL形・J形に曲げ加工したりめっき処理しても問題ない
アンカーボルト
か?
組立て溶接と仮付け溶接 組立て溶接と仮付け溶接の違いは?
A-3-2
ロボット溶接
A-3-3
AW検定資格
A-3-4
代替エンドタブ
A-3-5
3.工場溶接
質問
A-1-1
A-1-17
2.工作
キーワード
A-3-6
A-3-7
A-3-8
A-3-9
A-3-10
A-3-11
A-3-12
A-3-13
A-3-14
A-3-15
A-3-16
A-3-17
A-3-18
サブマージアーク溶接
エレクトロスラグ溶接
鋼製エンドタブ
鋼製エンドタブ
アークストライク
NBFW法
NBFW法
NBFW法
食違い
食違い・仕口のずれ
付属金物
入熱・パス間温度測定
完全溶込み溶接
隅肉溶接
予熱
溶接ロボットの定義は?また、ロボット溶接が適切に行われるための条件とは?
工事現場溶接のAW資格保有者に工場溶接を行わせる事は資格の面で問題ないか?
AW検定資格を適用条件として溶接技能者を選定する場合、AW試験で使用された代替エンド
タブ(メーカー、型式)で、溶接を行うことが条件となるのか?
サブマージアーク溶接(SAW)、エレクトロスラグ溶接(ESW)の承認試験において、JASS6の付
則と一般の溶接施工試験の使い分けは?
何故、鋼製エンドタブが必要なのか?
構造品質を確保するために鋼製エンドタブの切断は必要な処置か?
アークストライクは、どの様な理由で不具合とされているのか?
NBFW法とは?
使用鋼材はBCP325Tだが、設計図書にNBFW法の記載が無い場合の対応は?
NBFW法はロボットを使用しないで半自動溶接で行うことは可能か?
通しダイアフラム板厚と内ダイアフラム板厚の決定基準は何故違うか?
「突合せ継手の食い違い仕口のずれの検査・補強マニュアル」の運用方法は?
付属金物の溶接方法や検査で注意すべき点は?
入熱とパス間温度の測定方法は?
柱脚の柱材とベースプレートの溶接で、完全溶込み溶接と隅肉溶接の使い分けの根拠は?
予熱の目的は何か?
A-3-20
AW検定
AW検定ロボット溶接
オペレーター資格
溶接部補修
誤作した部分を取り替える場合、溶接の上に溶接を行うことになるが問題ないか?
A-3-21
鋼製エンドタブ
鋼製エンドタブの長さはどの位必要か?
A-3-19
AW検定とは?
AW検定ロボット溶接オペレーター資格とは?
項目
4.製品検査
5.さび止め塗装
6.発送
7.溶融亜鉛めっき
8.その他
番号
キーワード
質問
A-4-1
寸法許容差
管理許容差と限界許容差の違いは何か?
A-4-2
書類検査1
寸法精度の受入検査方法「書類検査1」とは何か?
A-4-3
対物検査2
寸法精度の受入検査方法「対物検査2」とは何か?
A-4-4
寸法検査手法
寸法精度の受入方法「書類検査1、対物検査2」以外の組合わせは?
A-4-5
スチールチェッカー
スチールチェッカーの原理は?
A-4-6
社内検査、受入検査
社内検査と受入検査で食違いがあった場合はどうすればよいか?
A-4-7
超音波探傷
2枚のダイアフラムの間隔が狭い場合、探傷可能な間隔は?
A-4-8
超音波探傷
溶接部の検査はいつ行いますか?
A-4-9
超音波探傷
ペンキの上やめっきの上からでも超音波探傷検査はできますか?
A-4-10
養生方法
柱に取付くブラケットの角のつぶれを防止する方法は?
A-4-11
社内検査と受入検査
社内検査と受入検査の違いは?
A-4-12
第三者検査
A-4-13
受入検査
A-5-1
塗布部位
A-5-2
溶射
さび止めに使われる溶射とは?
A-5-3
重防食塗装
重防食塗装とは?
A-6-1
多段積み
多段積みの時、安全上、配慮すべき点は?
A-7-1
めっき槽
溶融亜鉛めっきが可能な部材の大きさはどの程度か?
A-7-2
材質変化
A-7-3
裏当て金
A-7-4
仮設ピース
第三者検査会社の発注・契約は誰が行うのか?
工場の社内UT検査で不合格となり補修した箇所について、施工者へ報告する必要がある
か?
大梁のデッキ掛り代部分には、さび止め塗装を施さなくてもいいのか?
溶融亜鉛めっきによる鋼材材質の変化は?
柱梁接合部の完全溶込み溶接に、裏当て金を用いて片面溶接する部材を溶融亜鉛めっきする
場合の留意点は?
仮設ピースが取り付いた部材を溶融亜鉛めっきする際の留意点は?
A-7-5
めっき抜き孔の形状
めっき構造物のめっき抜き孔は、どのような形状が良いか?
A-7-6
ダイアフラムの孔
構造用鋼管を溶融亜鉛めっきする場合、ダイアフラムにはどんな孔が必要か?
A-7-7
冷間成形角形鋼管
冷間成形角形鋼管を溶融亜鉛めっきする場合の注意点は?
A-7-8
不めっき処理
不めっき処理が必要な部位と、その方法は?
A-7-9
溶接
溶融亜鉛めっきした鋼材を溶接する場合、そのまま溶接することは可能か?
A-7-10
コンクリート付着性
屋上工作物の根巻き部分も溶融亜鉛めっきをして問題はないか?
A-7-11
コンクリート耐食性
溶融亜鉛めっき鋼材をコンクリートに埋め込んでも問題無いか?
A-7-12
異種金属接触腐食(電食) 溶融亜鉛めっき鋼材と他の金属部材を組合せて使用できるか?
A-7-13
めっきの種類
溶融亜鉛めっき、金属溶射、高濃度亜鉛末塗装の特徴は?
A-7-14
めっき前検査
溶融亜鉛めっき前の検査の留意点は?
A-7-15
めっき割れ検査
溶融亜鉛めっき割れの検査方法は?
A-7-16
めっき後の検査
溶融亜鉛めっき後の検査項目・方法は?
A-7-17
白さび
溶融亜鉛めっき表面に、白墨の粉のようなものが付着していますが問題はないか?
A-7-18
めっき光沢
溶融亜鉛めっき表面の光沢にばらつきがあるのはなぜか?
A-7-19
めっき剥離
溶融亜鉛めっきの付着量が多いと剥離するか?
A-7-20
ひずみの原因と対策
溶融亜鉛めっきすると製品にひずみが発生したがなぜか?
A-7-21
ふくれ
重ね合わせの溶接構造でめっきすると変形したがなぜか?
A-7-22
溶融亜鉛めっき高力ボルト 溶融亜鉛めっき高力ボルトの摩擦面の処理は?
A-7-23
りん酸塩処理
A-7-24
低光沢処理
溶融亜鉛めっき初期の金属光沢をなくすことは可能か?
A-7-25
めっき溜まり
めっき溜まりが生じた場合の処理方法は?
A-8-1
資格
建築鉄骨の技術者の資格にはどのような資格があるか?
A-8-2
露出柱脚
阪神淡路大震災で認定工法の露出形式の柱脚は被害がほとんどなかったが何故か?
A-8-3
資格
鉄骨工事の特記仕様書で指定されている「施工管理技術者」とは何か?
溶融亜鉛めっき鉄骨の摩擦面にりん酸塩処理を行う場合の留意点は?
A-1-1
鉄骨工事
Q&A集
鋼材規格
材料
制定
2011年7月1日
改訂
2016年7月1日
Q.各鋼材記号の数字が意味するものは?
A.
鋼材や鉄筋には、指定建築材料としてJIS規格適合品および大臣認定品があります。
下表に示すように、JIS規格の鋼材の呼称の数字(SS400の400等)は引張強さの下限値を表しま
す。一方、鉄筋とほとんどの大臣認定鋼材は、呼称の数字が降伏点 又は 0.2%耐力※の下限値の
数値が使用されています。そのため、強度の高低が数字の大小から判断しづらい面があります。
鋼材の規格(着色部分は、規格名の数値が含まれる部分)
降伏点又は
耐力※ N/mm2
引張強さ
N/mm2
SD345
345~440
490以上
SD390
390~510
560以上
SD490
490~625
620以上
JIS G 3101
SS400
235~
400~510
一般構造用圧延鋼材
JIS G 3106
SM490
325~
490~610
溶接構造用圧延鋼材
JIS G 3466
STKR490
325~
490~
一般構造用角形鋼管
JIS G 3136
SN490
325~445
490~610
建築構造用圧延鋼材
大臣認定品
BCP325
325~445
490~610
建築構造用冷間成形角形鋼管
大臣認定品
SN490-FR(常温性能は
JIS G 3136等に準拠)
325~445
490~610
建築構造用耐火鋼
大臣認定品
TMCP355
355~475
520~640
建築構造用TMCP鋼材
大臣認定品
TMCP385
385~505
550~670
建築構造用TMCP鋼材
大臣認定品
SA440
440~540
590~740
建築構造用高性能590N/mm2鋼材
大臣認定品
HSA700
700~900
780~1000
建築構造用高性能780N/mm2鋼材
種類
規格
鉄筋
JIS G 3112
鋼材
応力(N/mm2)
1000
780N/mm2
800
備考
鉄筋コンクリート用棒鋼
0.2%
耐力
級鋼
600
SM490
400
応力度σ
590N/mm2 級鋼
破断強さ
SS400
引張強さ
低降伏点鋼
200
降伏点
0
10
20
30
40
50
ひずみ(%)
ひずみ度ε
0.2%残留ひずみ
種々の鋼材の応力-ひずみ曲線
高張力鋼の応力-ひずみ曲線
※引張試験において、規定された伸びを生じるときの試験力を平行部の原断面積で除した値。
降伏点が明確でない材料では、降伏点の代わりに耐力が用いられる。JIS規格では、特に規定のない場合には、
塑性伸びの値を0.2%としている。耐力の測定は、JIS規格では、次のいずれかの方法による(詳細は省略)。
a)耐力(オフセット法)、b)耐力(永久伸び法)、c)耐力(全伸び法)
日建連/鉄骨専門部会
A-1-2
鉄骨工事
Q&A集
平鋼と厚板
材料
制定
2011年7月1日
改訂
2016年7月1日
Q. 平鋼と厚板の違いは?
A.
平鋼は、長方形断面の4面を熱間圧延して製造されるもので、このうち幅が180mmを超えるものを
広幅平鋼といいます。平鋼には、丸コバ平鋼,テーパー平鋼,開先平鋼などの様々な異形平鋼も
あります。
厚板は、板厚6mmを超える鋼板をいい、2面を圧延した後、長さを切断(場合によっては幅も切断)
して出荷されます。
板状鋼材の分類
分
類
寸法・形状
厚鋼板
圧延鋼板
薄鋼板(薄板)
(冷延鋼板)
鋼帯
平鋼
厚板
厚さ 6mm以上の平板状のもの
中板
厚さ 3mm以上、6mm未満の平板状のもの
厚さ3mm未満の平板状のもの
広幅帯鋼
幅500mm以上のコイル状のもの
帯鋼
幅500mm未満のコイル状のもの
広幅平鋼
幅180mmを超えるもの
平鋼
幅180mm以下のもの
平鋼
丸コバ平鋼
テーパー平鋼
開先平鋼
平鋼製品の例
平鋼の圧延
(参考) JIS規格に規定されている平鋼の定義を以下に示します。
1.JIS G 0204 「鉄鋼用語(鋼製品の分類及び定義)」より
①長方形の断面をした棒鋼。
②製品は、4面とも圧延される。
③一般に、厚さは5mm以上、幅は500mmを超えない。
④熱間圧延された平鋼をとくに「熱間圧延平鋼」と呼ぶ。冷間圧延された平鋼を「冷間圧
延平鋼」と呼ぶ。
2.JIS G 3194 「熱間圧延平鋼の形状、寸法、質量及びその許容差」より
①平鋼は、厚さ100mm以下、幅1250mm以下の寸法のものをいう。
出典:(一社)日本建築学会_鉄骨工事技術指針・工場製作編,2007年
日建連/鉄骨専門部会
A-1-3
鉄骨工事
Q&A集
材料
BCP
制定
2011年7月1日
改訂
2016年7月1日
Q. BCP原板のミルシートの確認は必要か?
A.
通常施工者は、工事監理者の指定のない限り原板ミルシートの確認を行わない場合が多いです。
これは、BCPが大臣認定品であり、原板についても規定を満足したものが使われている事によりま
す。原板に使用される材料の規定は、以下に示すように定義(「一般社団法人日本鉄鋼連盟」)さ
れています。
「BCP235,325は冷間プレス成形設備によって、JIS G 3136に規定される建築構造用圧延鋼材に、N(窒素)
の上限規定を付加した規格を満足する鋼帯または鋼板を角形断面または一対の溝形断面に成形し、溶接
継目部を半自動もしくは自動アーク溶接して製造される直及びテーパー形の角形鋼管」
種類の記号
種類の記号
BCP235
BCP325
鋼帯または鋼板
(JIS G 3136 SN400B 又は C)※
(JIS G 3136 SN490B 又は C)※
※JIS G 3136の規格に冷間加工性を考慮し、N規定を付加したもの
下記に示す内容が、特記仕様書に示されている場合など必要に応じて問い合わせて原材料のミ
ルシートを入手の上、仕様を満足しているか確認してください。
・主要構造部の鋼材に対して高炉材が指定されている場合
・電炉材を主要構造部に使用するときの成分や機械的性質の確認規定がある場合
参考として、建築構造用冷間プレス成形角形鋼管(BCP235、BCP325)の日本鉄鋼連盟製品規定
の「13.報告」を以下に示します。
「検査及び試験に合格した角形鋼管に対して、検査証明書を発行する。報告内容は、製造履歴※1が確認で
きる識別番号※2の他、以下の内容を含むものとする。
(1)受注内容
種類の記号、注文寸法、注文数量
(2)鋼帯または鋼板の化学成分
表2に規定されるすべての元素、Ceq又はPCMと、それに係る元素 (表2は出典を参照)
表2の備考1によった場合の添加元素 (表2は出典を参照)
(3)引張試験結果
平板部分の降伏点又は耐力、引張強さ、降伏比、伸び
(4)衝撃試験結果
平板部分の0℃における吸収エネルギー
(5)外観、寸法検査結果
上記識別番号を記載する目的は、必要な場合に素材製造業者が発行する鋼材検査証明書との照合を可
能とするためである。
※1 製造履歴の範囲は、溶鋼から冷間成形角形鋼管メーカー出荷時点の製品までとする。
※2 識別番号は、鋼帯又は鋼板の製造業者が発行する鋼材検査証明書(ミルシート)番号、製鋼番号、鋼
材の製造番号、及び冷間成形角形鋼管の製造番号、等である。」
注文者である鉄骨製作工場には、成績表や品質証明書が、製造会社から提出されていますので、
この中に記されている製品番号(厚板)から、原板メーカーを確認し原板のミルシートを取り寄せる
事が可能です。
出典:(一社)日本鉄鋼連盟製品規定 MDCR 003-2014 建築構造用冷間プレス成形角形鋼管
日建連/鉄骨専門部会
A-1-4
鉄骨工事
Q&A集
材料
BCRとBCP
制定
2011年7月1日
改訂
2016年7月1日
Q. BCR(ロール成形角形鋼管)とBCP(プレス成形角形鋼管)の違いは?
A.
BCR(ロール成形角形鋼管)は、鋼帯を一度、円形に成形し、シーム部を溶接したものを角形に成
形します。よって、平坦部も冷間加工されています。BCP(プレス成形角形鋼管)は、厚板の鋼管の
角になる部分をプレス成形し、シーム部を溶接します。両者は、コーナー部の曲率半径も異なりま
す。更に告示により設計法も異なっていますので、同じ径・板厚であっても取り替えて使用すること
は出来ません。また、機械的な性質については、下表を参照ください。
ロール成形+電気抵抗溶接
溶接部
BCR
建築構造用冷間
ロール成形角形鋼管
・□150×6~□550×25mm
・角部外R= 2.5t
プレス成形+アーク溶接
溶接部
BCP
建築構造用
プレス成形角形鋼管
溶接部
(2シーム溶接)
・□300×9~□1000×40mm
・角部外R= 3.5t
溶接部
プレス成形+アーク溶接
(1シーム溶接)
BCRとBCPの機械的性質の比較表
種類の記号
BCR295
BCP235
BCP325
板厚
t (mm)
降伏点又は耐力
(N/mm2)
6≦t<12
12≦t≦16
16<t≦22※
6≦t<12
12≦t≦16
16<t≦40
6≦t<12
12≦t≦16
16<t≦40
295以上
295以上
445以下
235以上
235以上
355以下
325以上
325以上
445以下
引張強さ
(N/mm2)
400以上
550以下
400以上
510以下
490以上
610以下
降伏比
(%)
伸び
試験片
-90以下
5号
1A号
※メーカーによっては、板厚25mmまで製造可能
日建連/鉄骨専門部会
18以上
22以上
-80以下
23以上
27以上
-80以下
伸び(%)
1A号
17以上
21以上
シャルピー吸収エネ
ルギー(J)0℃
-t>12の場合
平坦部:27以上
-t>12の場合
平坦部:27以上
-t>12の場合
平坦部:27以上
A-1-5
鉄骨工事
Q&A集
材料
BCP325T
制定
2011年7月1日
改訂
2016年7月1日
Q. BCP325Tの「T」の意味と、BCP325との違いは何か?
A.
冷間成形角形鋼管のうちプレス成形角形鋼管は、プレスにより鋼管の4隅の部分を塑性加工して
います。そのために、窒素量の上限を制限するなどした鋼管用の素材が、使用されています。
一般的な建築構造用冷間プレス角形鋼管(例:BCP325)は、平坦部のみシャルピー吸収エネルギ
ー27J(0℃)が規定されています。
一方、建築構造用高性能冷間プレス角形鋼管(例:BCP325T)は角部・平坦部ともシャルピー吸収
エネルギー70J(0℃)を保証した材料です。なお、引張試験の規定は両者とも同じです。
「T」は「Tough」(タフ)のTを示しています。
この材料を使用してNBFW法で溶接を行う場合、構造設計上、有利になります。
もし、BCP325TからBCP325に変更する場合は構造設計に用いる係数が異なっていますので、必
ず構造設計者に確認する必要があります。構造計算をやり直す可能性があります。
ちなみに,BCPは一般名称ではなく,(一社)日本鉄鋼連盟の登録商標です.
角部
溶接部
平坦部
溶接部
出典: 2008年版 冷間成形角形鋼管設計・施工マニュアル
日建連/鉄骨専門部会
A-1-6
鉄骨工事
Q&A集
超高力ボルト
材料
制定
2011年7月1日
改訂
2016年7月1日
Q. 超高力ボルト(例えばSHTB)と一般の高力ボルトの違いは何か?
A.
超高力ボルトは、一般のトルシア形高力ボルト(S10T)の引張強さ(1000N/mm2級)の約1.5倍
(1400N/mm2級)に高強度化したボルトです。強度が高いと、締付け後に遅れ破壊が起きる可能
性がありますので、耐遅れ破壊特性に優れた素材開発、応力集中を緩和できるボルト形状、新ね
じ形状を採用しています。締付け方法、手順は一般のトルシア形高力ボルトと同じですが、導入張
力が高いため専用機器を使用します。
M20の場合の一次締付けトルクですが、一般のトルシア形高力ボルト(S10T)の約150N・mに対し
超高力ボルトは約300N・mです。
ボルト頭部首下Rの増大
ボルト軸からねじ部への移行部の形状改良
ねじ部形状の改良
S10T
SHTB
ねじ形状の改良
日建連/鉄骨専門部会
※SHTBは商品名です。
A-1-7
鉄骨工事
Q&A集
被覆アーク溶接棒
材料
制定
2011年7月1日
改訂
2016年7月1日
Q. 被覆アーク溶接棒の記号の意味は?
A.
JIS Z 3211(軟鋼,高張力鋼及び低温用鋼用被覆アーク溶接棒):2008の解説を示します。
従来からのJIS Z 3212,3241はこのJIS Z 3211に統合され廃止されました。
JIS Z 3211:溶接棒の種類の区分記号
被覆アーク溶接棒の記号
溶着金属の引張強さの記号
被覆剤の種類の記号(溶接姿勢、溶接電流の種類など)
溶着金属の主要化学成分の記号
溶接後熱処理の記号
記号なし:溶接のまま、P:溶接後熱処理あり
AP:溶接のまま及び溶接後熱処理あり
シャルピー吸収エネルギーレベルの記号
記号なし:規定試験温度で27J以上または要求なし
U:規定試験温度で47J以上
溶着金属の引張特性の記号は、溶着金属の引張強さMpaの上2桁を示します。
例:E4916は、引張強さの下限値が490MPaですので、上2桁の49が記号となります。
旧JIS規格名
JIS Z 3211
「軟鋼用被覆アーク溶接棒」
JIS Z 3212
「高張力鋼用被覆アーク溶接棒」
JIS Z 3241
「低温用鋼用被覆アーク溶接棒」
改正JIS規格名
JIS Z 3211
「軟鋼,高張力鋼及び低温用鋼用
被覆アーク溶接棒」
※JIS Z 3212,JIS Z 3241 は廃止
出典:JIS Z 3211:2008解説
日建連/鉄骨専門部会
A-1-8
鉄骨工事
Q&A集
被覆アーク溶接棒
材料
制定
2011年7月1日
改訂
2016年7月1日
Q. 被覆アーク溶接棒のJIS規格改正前後の記号の違いは?
A.
JIS Z 3211(軟鋼,高張力鋼及び低温用鋼用被覆アーク溶接棒):2008とそれ以前の分類の違い
をメーカーの資料で説明します。これは各メーカーにより異なりますので注意して下さい。
なお、JISでは、イルミナイト系が「01」から「19」へ改定されました。
JIS Z 3211(軟鋼,高張力鋼及び低温用鋼用被覆アーク溶接棒):2008 と旧分類の比較
銘柄
旧分類
KS-8
KS-7
RV-01
RV-03
KS-03R
KS-R
KS-300
D4301(イルミナイト系)
YP≧345MPa TS≧420MPa
EI≧22% vE0℃≧47J
改正後分類
備考
E 4319U
YP≧330MPa TS≧430MPa
EI≧20% vE-20℃≧47J
400MPa級鋼用
E 4319
YP≧330MPa TS≧430MPa
EI≧20% vE-20℃≧27J
400MPa級鋼用
E 4303
YP≧330MPa TS≧430MPa
D4303(ライムチタニア系)
EI≧20% vE0℃≧27J
YP≧345MPa TS≧420MPa
E 4303U
EI≧22% vE0℃≧27J
YP≧330MPa TS≧430MPa
EI≧20% vE0℃≧47J
E 4313
D4313(高酸化チタン系)
YP≧345MPa TS≧420MPa YP≧330MPa TS≧430MPa
EI≧17% -(規格なし)
EI≧16% -(規格なし)
E 4340
D4340(特殊系)
YP≧345MPa TS≧420MPa YP≧330MPa TS≧430MPa
EI≧22% vE0℃≧27J
EI≧20% vE0℃≧27J
400MPa級鋼用
400MPa級鋼用
400MPa級鋼用
400MPa級鋼用
溶着金属の引張特性の記号は、溶着金属の引張強さMpaの上2桁を示します。
例:E4319Uは、引張強さの下限値が430MPaですので、上2桁の43が記号となります。
YP:降伏点(Yield Point)又は耐力(Yield Strength)
TS:引張強さ(Tensile Strength)
El :伸び(Elongation)
vE :シャルピー吸収エネルギー
出典:㈱JKW資料
日建連/鉄骨専門部会
A-1-9
鉄骨工事
Q&A集
材料
ソリッドワイヤ
制定
2011年7月1日
改訂
2016年7月1日
Q. YGW11~YGW19などのソリッドワイヤの記号の意味は?
A.
JIS Z 3312(軟鋼,高張力鋼及び低温用鋼用のマグ溶接及びミグ溶接ソリッドワイヤ):2009の内、
YGW11から19の解説を示します。
溶接ワイヤのJIS規格は2009年にISOに準拠して改正され、符号の付け方がISOのスタイルとなり
ました。しかしながら、日本国内ではYGW11~19は建築鉄骨をはじめとし広く使用されていました
ので、これら業界の混乱を防ぐため従来通りの符号が残りました。
なお、JIS Z 3312の改正に伴い、JIS Z 3325は廃止されました。
従来のYGW21~24については、種類名称がISOにならって変更されました。
JIS Z 3312:ソリッドワイヤの種類の記号
日本のユーザーニーズにより従前のJISの一部を追加。ただし、溶着金属の機械的性質
は鋼材にあわせて一部改正した。下記は代表例。(YGW11~YGW19は残存)
(上記赤字は、2009年のJIS改正により変更となった箇所)
シールドガスの種類の記号
C:炭酸ガス
M:炭酸ガス20%~25%(体積分率)とアルゴンとの混合ガス
旧JIS規格名
JIS Z 3312
「軟鋼及び高張力鋼用
マグ溶接ソリッドワイヤ」
JIS Z 3325
「低温用鋼用マグ溶接ソリッドワイヤ」
改正JIS規格名
JIS Z 3312
「軟鋼,高張力鋼及び低温用鋼用の
マグ溶接及びミグ溶接ソリッドワイヤ」
※JIS Z 3325 は廃止
出典:JIS Z 3312:2009解説
日建連/鉄骨専門部会
A-1-10
鉄骨工事
Q&A集
材料
ソリッドワイヤ
制定
2011年7月1日
改訂
2016年7月1日
Q. ソリッドワイヤの記号の意味は?
A.
JIS Z 3312の内、ISOにならった表現をする場合の記号の意味を示します。
YGW11~19は従来通りの記号が使用できますが、YGW21~24については下記の記号のみとなり
ました。
JIS Z 3312:ソリッドワイヤの種類の記号
マグ溶接及びミグ溶接ソリッドワイヤの記号
溶着金属の引張特性の記号
溶接後熱処理の記号
A:溶接のまま、P:溶接後熱処理あり
AP:溶接のまま及び溶接後熱処理あり
衝撃試験温度の記号
Y:20℃、0:0℃、1:-5℃、2: -20℃
以下n:(-n×10℃)、Z:試験を規定しない
シャルピー吸収エネルギーレベルの記号
記号なし:規定試験温度で27J以上または要求なし
U:規定試験温度で47J以上
シールドガスの種類の記号
C:炭酸ガス、M:炭酸ガス20%~25%とアルゴン
の混合ガス、A:酸素1%~3%とアルゴンの混合ガ
ス、G:受渡当事者間の協定
ワイヤの化学成分の記号
例 : G 49 A 0 C 3M1T
化学成分
C≦0.12、Si:0.40~1.00、Mn:1.40~2.10
P≦0.025、S≦0.025、Mo:0.10~0.45
Cu≦0.50、Ti:0.02~0.30
シールドガス:CO2
シャルピー衝撃試験の試験温度は0℃
0とCの間に記号がないので吸収エネルギーは27J
溶接後、熱処理をせずそのまま試験を行う
溶接金属の引張強さ:490~670MPa、耐力≧390Mpa
伸び≧18%
出典:JIS Z 3312:2009解説
日建連/鉄骨専門部会
A-1-11
鉄骨工事
Q&A集
ソリッドワイヤ
材料
制定
2011年7月1日
改訂
2016年7月1日
Q. ソリッドワイヤの記号について2009年のJIS改正前後の記号の違いは?
A.
旧YGW21,23の表現方法の変更は下記のようになります。これはメーカーの呼称ですので、注意
して下さい。
旧YGW21,23の表現方法の変更
銘柄
KC-60
KC-65
KM-60
旧分類
改正後分類
YGW21
G59JA1UC3M1T
YP≧490MPa TS≧570MPa YP≧500MPa TS≧590-790MPa
EI≧19% vE-5℃≧47J
EI≧16% vE-5℃≧47J
YGW21
YP≧490MPa TS≧570MPa
EI≧19% vE-5℃≧47J
YGW23
YP≧490MPa TS≧570MPa
EI≧19% vE-20℃≧47J
G69A2UCN1M2T
YP≧600MPa TS≧690-890MPa
EI≧14% vE0℃≧47J
G59A2UMC1M1T
YP≧490MPa TS≧590-790MPa
EI≧16% vE-20℃≧47J
YP:降伏点(Yield Point)又は耐力(Yield Strength)
TS:引張強さ(Tensile Strength)
El :伸び(Elongation)
vE :シャルピー吸収エネルギー
・YGW11~19:種類名称の変更はありません。
・YGW21~24:種類名称がISOにならって変更されました。
出典:㈱JKW資料
日建連/鉄骨専門部会
備考
590MPa級鋼用
690MPa級鋼用
590MPa級鋼用
A-1-12
鉄骨工事
Q&A集
フラックス入りワイヤ
材料
制定
2011年7月1日
改訂
2016年7月1日
Q. フラックス入りワイヤの記号の意味は?
A.
JIS Z 3313(軟鋼,高張力鋼及び低温用鋼用アーク溶接フラックス入りワイヤ):2009の解説を示し
ます。
JIS Z 3313:フラックス入りワイヤの種類の区分記号
アーク溶接用フラックス入りワイヤの記号
溶着金属の引張特性又は溶接継手の引張特性の記号
衝撃試験温度の記号(ソリッドワイヤの場合とほぼ同じ)
使用特性の記号
適用溶接姿勢の記号 0:下向き及び水平隅肉、1:全姿勢
シールドガスの種類の記号
C:炭酸ガス、M:炭酸ガス20%~25%とアルゴンの混合ガス
G:受渡当事者間の協定、N:シールドガスなし
溶接の種類の記号
A:マルチパス溶接の溶接のまま、P:マルチパス溶接で溶接後
熱処理あり、AP:マルチパス溶接で、溶接のまま及び溶接後熱
処理あり、S:1パス溶接で溶接のまま
溶着金属の化学成分の記号
溶着金属の水素量の記号
シャルピー吸収エネルギーレベルの記号(ソリッドワイヤと同じ)
例 : T 49 J 0 T1-1 C A-U
シャルピー吸収エネルギー47J以上
溶接の種類がマルチパス溶接で溶接のまま
シールドガスが炭酸ガス
適用溶接姿勢が全姿勢
使用特性がシールドガスあり、ワイヤプラス、ルチール系
シャルピー衝撃試験の試験温度は0℃
0とCの間に記号がないので吸収エネルギーは27J
溶接金属の引張強さ:490~670MPa、耐力≧400Mpa
伸び≧18%
出典:JIS Z 3313:2009解説
日建連/鉄骨専門部会
A-1-13
鉄骨工事
Q&A集
材料
フラックス入りワイヤ
制定
2011年7月1日
改訂
2016年7月1日
Q. フラックス入りワイヤの記号について2009年のJIS改正前後の違いは?
A.
JIS Z 3313(軟鋼,高張力鋼及び低温用鋼用アーク溶接フラックス入りワイヤ):2009では下記のよ
うになります。なお銘柄はメーカー独自のものですので注意して下さい。
JIS Z 3313(軟鋼,高張力鋼及び低温用鋼用アーク溶接フラックス入りワイヤ):2009と旧分類の比較
銘柄
FG-50S
FG-50P
FG-50M
FG-55S
FG-60S
旧分類
YFW-C50DR
YP≧390MPa TS≧490MPa
EI≧22% vE0℃≧47J
YFW-C50DM
YP≧390MPa TS≧490MPa
EI≧22% vE0℃≧47J
YFW-C50DM
YP≧390MPa TS≧490MPa
EI≧22% vE0℃≧47J
YFW-C55DR
YP≧430MPa TS≧540MPa
EI≧22% vE0℃≧47J
YFW-C602R
YP≧490MPa TS≧590MPa
EI≧19% vE-20℃≧27J
改正後分類
T49J0T1-1CA-U
YP≧400MPa TS=490-670MPa
EI≧18% vE0℃≧47J
T49J 0T1-0CA-U
YP≧400MPa TS=490-670MPa
EI≧18% vE0℃≧47J
T49J 0T1-0CA-U
YP≧400MPa TS=490-670MPa
EI≧18% vE0℃≧47J
T55 0T1-1CA-U
YP≧460MPa TS=550-740MPa
EI≧17% vE0℃≧47J
T59J 1T1-1CA-N2M1-U
YP≧500MPa TS=590-790MPa
EI≧16% vE-5℃≧47J
備考
400MPa級鋼用
490MPa級鋼用
400MPa級鋼用
490MPa級鋼用
400MPa級鋼用
490MPa級鋼用
490MPa級鋼用
520,550MPa級鋼用
建築590MPa級鋼用
(SA440、高降伏YP500鋼)
溶着金属の引張特性の記号は、溶着金属の引張強さMpaの上2桁を示します。
例:T49・・・は、引張強さの下限値が490MPaですので、上2桁の49が記号となります。
YP:降伏点(Yield Point)又は耐力(Yield Strength)
TS:引張強さ(Tensile Strength)
El :伸び(Elongation)
vE :シャルピー吸収エネルギー
出典:(株)JKW資料
日建連/鉄骨専門部会
A-1-14
鉄骨工事
Q&A集
材料
アンカーボルト
制定
2011年10月1日
改訂
2016年7月1日
Q.アンカーボルトの転造ねじと切削ねじの違いは何か?
A.
転造ねじは、強い力を加えて素材を変形させる塑性加工でねじ山を形成するもので、切削加工と
異なり、メタルフロー・ファイバーフロー(繊維状金属組織)が切断されません。また、塑性変形に
よって被加工面が塑性硬化します。 このため、ねじ部と軸部の強度差も小さく、軸部降伏後の耐
力上昇も可能で、結果として靭性に富んだ性能を確保できます。
一方、切削ねじは、ねじ山を軸から削り出すことで形成します。転造に比べ断面欠損が大きく、
ねじの谷部で降伏が先行するために、使用する素材の降伏比上限値を低く設定する必要性が生
じます。
以上のメカニズムの違いにより、転造ねじの方が伸び能力が大きくなるため、転造ねじが指定され
るケースが多くみられます。ただし、同じボルトの呼びの場合、転造ねじの方が切削ねじより軸径
が細いため、全て転造ねじが良いという事ではありません。
アンカーボルトは、建方用と構造用に分類されますが、建築構造用両ねじアンカーボルトは
ABR : 構造用転造両ねじアンカーボルトセット (JIS B 1220)
ABM : 構造用切削両ねじアンカーボルトセット (JIS B 1220)
として、その耐力と性能がJIS規格化されています。
また、JIS規格の元となった(一社)日本鋼構造協会(JSSC)の規格
JSS Ⅱ13 「建築構造用転造ねじアンカーボルト・ナット・座金のセット」
JSS Ⅱ14 「建築構造用切削ねじアンカーボルト・ナット・座金のセット」
により製造するメーカーのJSSC工場認定制度は2015年3月に廃止されました。
転造ねじ
切削ねじ
転造ねじ(ABR)と切削ねじ(ABM)の伸びの比較データ
構造用アンカーボルトのねじ形状の違い
メタルフロー・ファイバーフロー
転造ねじの金属組織イメージ
切削ねじの金属組織イメージ
出典:建築用アンカーボルト協議会 パンフレット「構造用アンカーボルト」
日建連/鉄骨専門部会
A-1-15
鉄骨工事
Q&A集
材料
アンカーボルト
制定
2014年6月1日
改訂
2016年7月1日
Q.構造用アンカーボルトのABRとABMはどのような材料なのか?
A.
ABR、ABMは、兵庫県南部地震での露出柱脚の被害の反省から、露出柱脚用として制定された
構造用アンカーボルトのセットの規格における種類の記号です。
(一社)日本鋼構造協会の規格(JSS規格)が2000年に制定され(2004年改定)、その規格を元に、
2010年にJIS規格が制定されましたが、2015年3月にJSS規格ボルトを製造する工場の認定制度
が廃止されました。
ABR、ABMとも、ボルトの材料はSNR400B,SNR490B,SUS304A(JIS規格のみ)で、
ABRは転造ねじ加工したボルトを使い、ABMは切削ねじ加工したボルトを使います。転造ねじは、
強い力を加えて素材を変形させる塑性加工でねじ山を形成するもので一方、切削ねじは、ねじ山
を軸から削り出すことで形成します。
・(一社)日本鋼構造協会規格
JSS Ⅱ13 「建築構造用転造ねじアンカーボルト・ナット・座金のセット」
(炭素鋼:ABR400/490)
JSS Ⅱ14 「建築構造用切削ねじアンカーボルト・ナット・座金のセット」
(炭素鋼:ABM400/490)
・JIS規格(ステンレス製のものやめっきの表面処理法が追加されている)
JIS B 1220 「構造用両ねじアンカーボルトセット」
(炭素鋼:ABR400/490、ABM400/490、ステンレス鋼:ABR520SUS、ABM520SUS)
建築基準法では、指定建築材料(主要構造部材等に
使用する建築材料)は、JIS規格適合品ないし大臣認定
品となっていますが、このアンカーボルトのJIS規格は
指定建築材料に含まれていません。
JSS規格が制定された際、国土交通省の見解として
「これらのアンカーボルトは両端に定着用のねじ部を有
するだけの棒鋼であり、指定建築材料としては、
JIS G 3183 建築構造用圧延棒鋼SNR400/490として扱
う」とされています。
転造ねじ
切削ねじ
構造用アンカーボルトのねじ形状の違い
本Q&A
A-1-14「アンカーボルトの転造ねじと切削ねじの違いは何か?」
A-2-19「構造用アンカーボルト(ABR、ABM)をL形・J形に曲げ加工したりめっき処理しても問
題ないか?」
も参照して下さい。
出典:建築用アンカーボルトメーカー協議会パンフレット「構造用アンカーボルト」
日建連/鉄骨専門部会
A-1-16
鉄骨工事
Q&A集
電炉鋼材
材料
制定
2012年9月1日
改訂
2016年7月1日
Q. 電炉材の使用制限の理由は?
A.
鋼材のJIS規格では、高炉、電炉といった製鋼法は規定していませんので、その意味で公的な制
限はありません。従って、設計図書で「JIS規格適合品とする」といった場合は、高炉材、電炉材に
限らず使用できることになります。
しかしながら、電炉材の主原料が「スクラップ」であることから感覚的に材料が悪いというイメージを
もたれることもあります。
また、スクラップを原料とするためにSn、Cr、Cuといった電炉材特有の化学成分が高炉材に比べ
多いといったこともあります。これらは必ずしも鋼材の性質に悪い影響を与えるものでは有りませ
んが、多すぎると悪い影響を与える場合もあります。このようなことから、鋼材の機械的性質や化
学成分について、高炉材の有するレベルを目標として特記される場合がありますので、構造特記
を十分照査することが大切です。
電炉材は高炉材に比べコストが低いので使用したいといった要求は有りますが、使用箇所と予定
メーカーを明確にして予め工事監理者と協議することが重要です。
製品が完成し、製品検査時のミルシート確認で初めて電炉材が使用されていることが分かる、
といったことのないようにしたいものです。もし、「使用しない」ことが指示事項として事前にあった
場合、再製作といわれても仕方がありません。
最近、電炉メーカーでもJIS規格よりも化学成分、機械的性質の規定を厳しくしている「高規格」材
といったものを製造していますので、電炉メーカーのホームページなどで確認をして下さい。
製鋼
製銑
石灰
精錬
コークス
合金鉄
石灰
タンディッシュ
モールド
石灰
コークス
酸素
スクラップという言葉のもつイメージが
「製品」も悪いのではないか、につながること
もある。
出典:東京製鐵㈱ホームページより
日建連/鉄骨専門部会
A-1-17
鉄骨工事
Q&A集
AW検定と溶接ワイヤ
材料
制定
2014年6月1日
改訂
2016年7月1日
Q. 溶接ワイヤの規格・種類、ワイヤ径をAW検定受験時のものに合わせるとの特記がある場
合、変更できないか?
A.
溶接ワイヤの硬さが、溶接のしやすさや、しにくさに影響するといわれます。YGW11、YGW18クラス
であればその化学成分に大きな差は無い(硬さも差が無い)ので両者による技量の差は無いと考
えます。また、ワイヤ径についても、通常使用されている1.2φもしくは1.4φであれば技量に差がで
るとは考えにくく、AW受検時と違っていても特段問題は無いと考えます。
ただし、FR鋼用ワイヤや590N/mm2級などの高強度鋼用ワイヤ等は、その合金成分の影響などに
よりYGW11,18クラスと比較して、溶接技能者の溶接作業時の溶接のしやすさ、しにくさに影響する
という意見もあり、別途試験が要求される場合があります。
溶接ワイヤの化学成分(単位%)
C
Si
Mn
P
Ni
Cr
Mo
Cu
Ti
YGW11
0.02~0.15
0.55~
1.10
1.40~
1.90
0.030
以下
-
-
-
0.50以下
Ti+Zr:0.02~0.30
YGW18
0.15以下
0.55~
1.10
1.40~
2.60
0.030
以下
-
-
0.40
以下
0.50以下
Ti+Zr:0.30
以下
出典:JIS Z 3312:軟鋼,高張力鋼及び低温用鋼用のマグ溶接及びミグ溶接ソリッドワイヤ
日建連/鉄骨専門部会
A-2-1
鉄骨工事
Q&A集
工作
床書き現寸
制定
2011年7月1日
改訂
2016年7月1日
Q. 床書き現寸はどのような場合省略できるか?
A.
一般的には、工作図で現寸の役割が代替できる場合に省略できるとしています。細かい納まりが
工作図だけでは分かりにくい場合は、現寸フィルムで確認するのがよいと考えます。
最近では、CADのデータをディスプレーに映す「CAD現寸」という方法もあります。部分的な詳細を
確認するには良いのですが、全体像がわかりにくいことやスケール感が無いという欠点もあります。
床書き現寸図の例
現寸フィルムによる確認例
基準墨を床に書き、その上に現寸フィルムを
おき確認します。
出典:(一社)日本建築学会_建築工事標準仕様書 JASS6 鉄骨工事、2015
(一社)日本建築学会_鉄骨工事技術指針・工場製作編、2007
日建連/鉄骨専門部会
A-2-2
鉄骨工事
Q&A集
工作
シナイ
制定
2011年7月1日
改訂
2016年7月1日
Q. シナイとは何か?
A.
鉄骨工事技術指針でいう「定規」の一種で、鋼帯に長尺部材の長さ方向の各種寸法(切断位置、
部材取付位置、孔位置など)を記載したものをいいます。最近では、NC切断やNC孔あけが採用さ
れるケースが多く、シナイの使用頻度はかなり低くなっています。
シナイをあてて
ガセットプレート等の部材の
位置を確認している
シナイの使用例
現寸場でシナイに組立部材位置を記入
出典:建築構造・構造力学・設備・測量編 職業能力開発大学校研修研究センター 編集
日建連/鉄骨専門部会
A-2-3
鉄骨工事
Q&A集
鋼材識別
工作
制定
2011年7月1日
改訂
2016年7月1日
Q. 鋼材の材質確認にはどんな方法があるのか?
A.
ミルメーカーなどから搬入された鋼板や形鋼は規格品証明書と照合確認をします。また、SN材の
鋼板では、プリントマークで、形鋼では印字などで確認できます。間接的には、ネスティングシート
による方法もあります。また、400N級鋼と490N級鋼を識別する時は、「スチールチェッカー」も目安
になります。
スチールチェッカーのメーカー・ホームページによりますと、左側のタイプの生産は2008年12月末
日で終了(在庫品は販売する)、修理対応期間も2015年12月末日で終了しています。
スチールチェッカー:アナログ表示
スチールチェッカー:デジタル表示
SN材
の鋼板
SN400
SN490
H形鋼(SS400)
冷間成形角形鋼管(BCP325)
この「400」という表示はメーカーがサービスでSS400に付けている印です。
SM材には、特にマークが付きません。
SN材には、SN400,SN490といった表示がされます。
出典: (一社)日本建築学会_鉄骨工事技術指針・工場製作編、2007
日建連/鉄骨専門部会
A-2-4
鉄骨工事
Q&A集
鋼材識別
工作
制定
2011年7月1日
改訂
2016年7月1日
Q. 切板はどんな方法で識別されているのか?
A.
鋼材種ごとに決められた色でプロジェクト名、材質、部品名を書くのが一般的です。鋼材種と識別
色は製作要領書に表で記載し、同じものを工場内に掲示しておきます。
鋼材種毎に識別色を決めておき、工場内に掲示しておくと、管理が容易になります。
一つの工事で複数の切板会社を使用する場合は、識別色を統一しておく必要があります。
工場内での掲示例
端面塗色の例。切板会社で塗色して、納入
された切板。
出典: (一社)日本建築学会_鉄骨工事技術指針・工場製作編、2007
日建連/鉄骨専門部会
A-2-5
鉄骨工事
Q&A集
工作
鋼材識別
制定
2011年7月1日
改訂
2016年7月1日
Q. 切板の鋼材識別塗色マーキングのルールは統一できないか?
A.
鋼材の識別表示標準としては、日本鋼構造協会が2004年に制定した、「鋼材の識別表示標準
JSSⅠ02-2004」があります。この標準は、「建築などに使用されるJIS規格又はそれに準ずる規定
に基づいて品質表示のなされている鋼材の流通過程で、切断等を施した加工部材の鋼種(種類
の記号)を識別する場合の表示方法を規定」したものです。鋼材の識別は、文字表示と塗色表示
の2種類があり、このいずれかで識別することになっています。
しかし、現状の識別表示は鉄骨製作工場で独自に取り決めている場合が多く、それぞれの工場で
鋼材への記入方法も「社員の誰でも分かること」を基本に工夫されていますので統一すること
(ルールを変えること)は難しいようです。
鋼材の識別表示標準JSSⅠ02-2004(日本鋼構造協会)
識別色 塗色線表示
の組合せ (塗色本数)
鋼種
色文字表示
SS400
STK400
STKR400
白
STKR490
青
B
黄
BCP325
-
2本
A,B,Cの別を緑の文字で表記
C
3本
A
緑1本、白1本
B
緑2本、白1本
C
緑-白 緑3本、白1本
緑2本、白1本
BCP235
SN490
1本
1本
A
SN400
-
2本
BCR295
SM490
1本
B
C
黄-白
A,B,Cの別を緑の文字で表記
し、かつアンダーラインを付す
Bの緑の文字で表記し、かつ
アンダーラインを付す
黄2本、白1本 B,Cの別を黄の文字で表記し、
黄3本、白1本 かつアンダーラインを付す
黄2本、白1本
Bの黄の文字で表記し、かつ
アンダーラインを付す
工場での表示例
出典:(一社)日本鋼構造協会_鋼材の識別表示標準JSSⅠ02-2004
日建連/鉄骨専門部会
A-2-6
鉄骨工事
Q&A集
工作
けがき
制定
2011年7月1日
改訂
2016年7月1日
Q. 鋼材面へポンチは打ってよいか?
A.
鋼材面へのポンチについて、認められない場合を以下に示します。
①曲げ加工される部分の外面
②490N/mm2以上の高張力鋼や疲労を考慮する部材(曲げ加工される部分の外面に限らず全て
の部分)
いずれも、けがき部分が亀裂発生の起点となるおそれがあります。
一方、その上から溶接され完全に溶込む場合は問題ありません。
基準墨のポンチ
上から溶接されない部分はNG
(高張力鋼の場合)
上から溶接される部分はOK
(ただし、その部分が完全に溶込む事
が条件となります)
上から溶接されない部分はNG
(高張力鋼の場合)
出典: (一社)日本建築学会_鉄骨工事技術指針・工場製作編、2007
日建連/鉄骨専門部会
A-2-7
鉄骨工事
Q&A集
工作
スカラップ加工
制定
2011年7月1日
改訂
2016年7月1日
Q. スカラップ工法とノンスカラップ工法の構造性能の違いは?
A.
従来型のスカラップの問題点を踏まえ、複合円形スカラップ、ノンスカラップ工法が提案されていま
す。図1,2は、現場溶接、工場溶接のスカラップ(複合円形)およびノンスカラップの累積塑性変形
倍率、耐力上昇率の比較を示します。図1,2からわかるようにノンスカラップの方が良好な変形性
能、耐力性能を有しています。なお、複合円形スカラップでも溶接材料や溶接条件を十分管理して
溶接を行い、溶接金属が十分強度があれば十分な性能を示すことが分かっています。
(複合円形スカラップ)
・現場溶接
・工場溶接
図1 累積塑性変形倍率の比較
(ノンスカラップ)
工場溶接
図2 耐力上昇率の比較
出典:2009年度日本建築学会大会_材料施工部門PD「梁端現場溶接接合が抱える課題」
日建連/鉄骨専門部会
A-2-8
鉄骨工事
Q&A集
工作
曲げ加工
制定
2011年7月1日
改訂
2016年7月1日
Q. 鋼板の曲げ半径の規定は、JASS6と告示のどちらを優先するのか?
A.
告示は法律の一部ですので、実務では告示を優先する必要があります。
JASS6の規定は学術的な立場から作成されていますので、一部で告示と異なっている部分があり
ます。JASS6および告示における曲げ加工による曲げ半径に関する記述がどのように異なるかを
次に示します。
JASS6
・告示は部位に関係なく決められています
・曲げ半径のとり方と値が異なっています
・JASS6の曲げ半径とする場合は、加工後の品質証明が必要です
平成12年12月26日建設省告示2464号
「鋼材等及び溶接部の許容応力度並びに材料強度を定める件」
加工後の機械的性質、化学成分その他が加工前の品質と同等以上であることを確かめなけ
ればならないが、①~③に該当する場合はこの限りではないという記述がされています。
① 切断、溶接、局部的な加熱、鉄筋の曲げ加工その他構造耐力上支障がない加工を
行うとき
② 500℃以下の加熱を行うとき
③ 外側曲げ半径が板厚の10倍以上で曲げ加工を行うとき
日建連/鉄骨専門部会
A-2-9
鉄骨工事
Q&A集
工作
仮組
制定
2011年7月1日
改訂
2016年7月1日
Q. 「仮組」はどのようなものが対象となるのか?
A.
一般的には、橋梁などで行われています。建築鉄骨では、複雑な形状のもの、大型のトラス、曲面
を有する構造体などで行われる場合がありますが、一般的なラーメン構造では不要です。
工場で一旦、組立てて、組立て後の部材寸法や取合部の精度などを確認し、その後、解体して工
事現場へ運びます。
もし、仮組の指示があった場合は、仮組範囲を特定し要領書を作成して工事監理者の承認を得ま
す。
送電鉄塔の仮組
鉄骨トラスの仮組
(トラスの長さやせいの寸法確認)
仮組時の現場溶接部精度の確認
出典:(一社)日本建築学会_鉄骨工事技術指針・工場製作編、2007
日建連/鉄骨専門部会
A-2-10
鉄骨工事
Q&A集
工作
孔あけ加工
制定
2011年7月1日
改訂
2016年7月1日
Q. 孔あけをレーザーやプラズマで行ってもいいのか?
A.
現在のJASS6では、高力ボルト用の孔あけはドリルあけとしていますが、それ以外の孔でも問題
は無いと考えます。
高力ボルト用の孔あけにレーザーやプラズマを使う場合、施工試験を行ってすべり係数あるいは
耐力を確認してから採用するといった方法が考えられます(但し、工事監理者の承認は必要です)。
下記の文献では、「外周部に溶損部が発生するが、高力ボルト接合部として問題無い」と報告され
ています。
高力ボルト用の孔の径は建築基準法施行令で規定されています。ドリルであればドリルの取り付
けなどが適正であれば(がたが無い)その孔径が変化することは考えにくいのですが、レーザーな
どであける場合は、いかに孔径を管理するのかが課題です。孔径を守ることのできる手順と加工
後の検査方法の確立が必須です。
また、レーザーやプラズマの熱による孔壁の硬さの変化を確認することも必要といわれています。
下記の3つが最低限、確認すべき項目と考えます。
ピアシング※して外周部切断:①外周部ノッチの有無
※ ピアシング
ドリル、ガス、レーザーなどで
貫通孔をあけること
②孔径の精度
③孔壁の傾き精度
出典:(一社)日本建築学会 技術報告書,第21巻第48号 広島工大 清水他
「高力ボルト摩擦接合の孔あけ加工にレーザー加工を用いた場合のすべり係数および引張耐力に関
する実験的研究」 他
日建連/鉄骨専門部会
A-2-11
鉄骨工事
Q&A集
工作
2011年7月1日
改訂
2016年7月1日
拡大孔
制定
Q. 高力ボルト摩擦接合でボルト孔をルーズ(拡大孔)にしたいが、問題はないか?
A.
高力ボルト接合における高力ボルト孔径については、建築基準法施行令第68条第二項において
以下のように規定されており、拡大孔についての規定はなく、認められていません。
建築基準法におけるボルト孔径の基準
呼び径d
孔径
d<27
d+2mm以下
d≧27
d≧3mm以下
標準孔
拡大孔
スロット孔
参考として、拡大孔に関しての各種規定を紹介します。
日本建築学会「鋼構造接合部設計指針」(2012年改訂)においては、「母材に限り下記に示す
拡大孔を使用できる。ただし、一面せん断の場合には、添え板と同厚以上の補強版を添え板と
反対側(拡大孔を設けた板側)に用いなければならない」と示されており、低減係数も記載されてい
ます。
拡大孔の規定(鋼構造接合部設計指針)
また、アルミニウム合金構造においては、告示にて2面せん断の場合の拡大孔を高力ボルト径の
1.25倍まで大きくすることが出来ることが規定されています。
なお、AISCやユーロコードでは、規定で以下の条件で拡大孔が認められています。
拡大孔の規定(海外の諸規定を集約)
しかし、前述のように基準法違反となりますので扱いには注意が必要ですが、
建物毎に大臣認定を取得して「拡大孔」を採用した事例もあります。
出典:建築鉄骨工事の新たな課題への取り組み
(日本建築学会・鉄骨工事運営委員会調査研究報告会・資料集 2010)
日建連/鉄骨専門部会
A-2-12
鉄骨工事
Q&A集
工作
摩擦面処理
制定
2011年7月1日
改訂
2016年7月1日
Q. 発せい(錆)促進剤や溶融亜鉛めっき面へリン酸塩処理をするのに必要な手続きは?
A.
工事監理者の承認を得る必要があります。そのためには、同一条件で行った試験結果の提示や、
別に試験を行うことが必要となる場合があります。
過去に行われた実験結果では、発せい促進剤処理、リン酸塩処理の場合とも、良好なすべり係数
が発揮できていますので、採用検討の参考にして下さい。
発せい促進剤の場合の組合せ
[ ]内:部材処理、( )内:側板処理
発せい促進剤の場合のすべり係数値
1:[
2:[
3:[
4:[
5:[
6:[
7:[
グラインダー処理+促進剤A ]+(ブラスト処理)
ブラスト処理+促進剤A ]+(ブラスト処理)
グラインダー+促進剤A ]+(グラインダー処理+促進剤A)
グラインダー+促進剤A ]+(ブラスト処理+促進剤A)
ブラスト処理+促進剤A ]+(ブラスト処理+促進剤A)
グラインダー処理+促進剤B ]+(ブラスト処理+促進剤B)
ブラスト処理+促進剤B ]+(ブラスト処理+促進剤B)
リン酸塩処理の場合の組合せ
[ ]内:部材処理、( )内:側板処理
リン酸塩処理の場合のすべり係数値
1:[ めっきブラスト処理 ]+(めっきブラスト処理)
2:[ めっきブラスト処理 ]+(めっきリン酸塩処理)
3:[ めっきリン酸塩処理 ]+(めっきリン酸塩処理)
出典:建築鉄骨工事の新たな課題への取り組み
(日本建築学会・鉄骨工事運営委員会調査研究報告会・資料集 2010)
日建連/鉄骨専門部会
A-2-13
鉄骨工事
Q&A集
工作
発せい促進剤
制定
2011年7月1日
改訂
2016年7月1日
Q. 発せい(錆)促進剤を使用するに当たっての留意点は?
A.
JASS6では高力ボルトの摩擦面処理として、自然発生の赤さびもしくはブラスト処理以外の摩擦面
処理は、原則として認められていません。しかしながら工程上のやむを得ない事情により、自然発
せいが得られない場合、発せい剤・発せい促進剤が設計者・工事監理者の承認の下、用いられて
います。
(1)発せい促進剤の現状
発せい促進剤として、一般に販売されているもののうち、代表的な銘柄とその特徴について下表
に示します。これらの発せい促進剤は、グラインダーあるいはブラスト等により黒皮を除去した後
の発せいを促進させるタイプのものです(一部には黒皮上から塗布するものもありますが、腐食が
必要以上に継続する場合もあるので使用しない)。
代表的な発せい促進剤
銘柄
性質
主成分
ヒットロックB 酸性(PH2~3)
サビX
μロックA
使用条件
無機塩類
原液
下地条件
締付までの
時間
すべり
係数
腐食進行
黒皮除去
48時間
0.45以上
1年半で
ゼロに収束
中性(水と酸素による酸化反応)
無機ハロゲン
10倍希釈
化物
黒皮除去
24時間
0.45以上
100日で
ゼロに収束
弱酸性
塩基
黒皮除去
24時間
0.45以上
-
3~5倍希釈
(2)発せい促進剤による摩擦面のすべり係数
各薬剤メーカーが示しているカタログに記載されたすべり係数を下表に示します。カタログ値によ
ればここに示したものはいずれもすべり係数として0.45を確保できます。
カタログ記載の摩擦係数
銘柄
ボルト
サイズ
締付けまでの時間とすべり係数
24時間
48時間
72時間
96時間
処理方法
120時間
部材
ヒットロックB
F10T・M20
0.437
0.513
0.535
0.501
0.530
側板
サビX
μロックA
部材
F10T・
M20×75
0.588
F10T・
M20×80
0.700
-
-
-
-
側板
部材
-
-
-
-
側板
グラインダー+
ヒットロックB
ショットブラスト+
ヒットロックB
グラインダー+
サビX
グラインダー+
サビX
グラインダー+
μロックA
グラインダー+
μロックA
(3)発せい促進剤使用の留意点
1)発せい促進剤塗布前の下地処理管理を厳格に行う(黒皮を除去する)
2)発せい促進剤の希釈の必要性の有無を確認する(原液のままのものと希釈タイプがある)
3)発せい促進剤塗布後、所定のすべり係数が得られるまでの時間を確認する(24時間タイプと48
時間タイプがある)所定のすべり係数が得られるまでの時間は、塗布後の温度・湿度に大きく依存
しています。特に気温5℃以下、湿度80%以上などの悪条件ではその効果がほとんどないことも
報告されています。このように塗布後ボルト締付けまでに必要な時間は気象条件と関連して決め
るべきであるのに、各社カタログ等では平均的な温度・湿度に対しての時間設定のみを記載して
いるので注意が必要です。
4)発せいするまで、雨に掛からないようにする。
出典:建築鉄骨工事の新たな課題への取り組み
(日本建築学会・鉄骨工事運営委員会調査研究報告会・資料集、2010)
日建連/鉄骨専門部会
A-2-14
鉄骨工事
Q&A集
工作
サンドブラスト
制定
2011年7月1日
改訂
2016年7月1日
Q. 何故、サンドブラスト処理の場合、赤さびが必要なのか?
A.
摩擦接合に必要なすべり係数0.45を確保する方法として自然発生の赤さびによる場合とブラスト
処理による場合があります。ブラスト処理とは、研削材を圧縮空気などを利用して加工面に高速で
噴射し、その衝撃力で黒皮などの異物を除去するとともに、適度の粗さを持った粗面を作る
表面加工です。研削材の種類によってショットブラスト、グリットブラスト、サンドブラストなどがあり
ます。
JASS6では表面あらさを50μmRz(マイクロメーターアールゼット)以上確保すれば、ショットブラス
ト、グリットブラスト面を摩擦面として良いとしています。しかし、サンドブラスト処理面は所定のす
べり係数が得られないことがあり認められていないため、赤さびの発生が必要になります。
■ショットブラスト
鋼製の球形の粒を吹き付ける。
ショットブラスト機械
■グリットブラスト
■サンドブラスト
鋼製の鋭くとがった角を持つ粒を吹
き付ける。
ガーネットや各種粉砕スラグなどを吹き付ける。
ケイ砂は研削材のJISから削除されています。
出典:(一社)日本建築学会_鉄骨工事技術指針・工場製作編、2007年
日建連/鉄骨専門部会
A-2-15
鉄骨工事
Q&A集
CFT造の
コンクリート圧入口
工作
制定
2011年7月1日
改訂
2016年7月1日
Q. CFT造のコンクリート圧入口の誘導管(エルボ)を省略できる根拠は無いか?
A.
(一社)新都市ハウジング協会から省略できる根拠は公表されていません。施工会社各社が独自
に実験を行なった結果により省略できる根拠としたり、過去の文献等を参考にして資料作成し設
計者・工事監理者の承認を得ています。
参考文献を以下に示します。圧入工法における誘導管の役割は、コンクリートの流動方向を上に
誘導することで鋼管に余分な圧力をかけないようにするためですが、文献1)の結果では誘導管を
設置するほうが圧入圧力は大きくなるとの報告もあり、また各文献とも鋼管の水平方向歪に対す
る影響はほとんどないとしています。
カバープレート
(母材と同厚)
カバープレート
(母材と同厚)
誘導管
170φ
170φ
350
圧入口レベルは
コンクリートの自由落下
高さが1m以内に
なるようにする
誘導管を設置した例
誘導管が無い場合
出典:
・文献1)「CFT柱の圧入工法における誘導管の検討」
日本建築学会大会梗概集1999年1261 大成建設 谷垣ら
・文献2)「誘導管の有無によるCFT柱の圧入時角形鋼管挙動の相違」
日本建築学会大会梗概集2002年1415 熊谷組 宮原ら
・文献3)「CFT造柱の圧入工法における誘導管の影響」
日本建築学会大会梗概集2003年1251 竹中工務店 三好ら
日建連/鉄骨専門部会
350
A-2-16
鉄骨工事
Q&A集
工作
バンドプレート
制定
2012年9月1日
改訂
2016年7月1日
Q. 十字柱のバンドプレートのピッチに規定はあるのか?
A.
一般にバンドプレートは、T字形または十字形鉄骨を組み立てるための形状維持として設置されま
すので製作側の精度保持方法によりそのピッチは決まってきます。
しかし、逆打ち工法などで柱に大きい圧縮力が生じるときに、フランジが局部座屈を起こさないよう
に設ける場合がありますので、この場合はバンドプレートの仕様を設計者・工事監理者に確認する
必要があります。
バンドプレートのピッチに規定はありませんが、タラップとして兼用することもあるので、その場合は
400mm程度の間隔で取り付けることが多いようです。タラップとしてバンドプレートを使用する場合
は、安全管理上、バンドプレート取付溶接部の品質も管理する必要があります。
バンドプレート
日建連/鉄骨専門部会
A-2-17
鉄骨工事
Q&A集
工作
ひずみ矯正
制定
2012年9月1日
改訂
2016年7月1日
Q. ひずみを加熱で矯正する場合の留意点は?
A.
全ての鋼材は、化学成分の調整と圧延温度、圧下量1) の制御、熱処理の組合せにより造り込ま
れています。したがって、加熱矯正が実施された場合、材質への影響は免れることはできません。
影響因子としては、①加熱温度、②加熱時間、③加熱範囲、④冷却条件であり、これらの条件と
鋼材成分の相互関係により加熱矯正部分の材質への影響度合いが異なります。
鉄骨工事技術指針・工場製作編では、下記のような加熱矯正基準が示されていますので、この基
準を遵守する管理が必要です。また、熱影響を表面近傍のみに止めるように、管理することが重
要です。
平成12年建設省告示第2464号では、「500度を超える加熱を行う場合は加工前の当該鋼材等の
品質と同等以上であることを確認しなければならない。」とされていますが、同告示のただし書きに
は、「局部的な加熱はこの限りではない」とされています。加熱矯正は温度は500度を超えていま
すが、局部的な加熱ですので、告示に抵触することはありません。
1) 圧下量 : 圧延材料が1回の圧延で薄くなった量
加熱矯正基準
凡例
表中の◎は実施可、×は実施不可。 ○はさらに厳密な温度管理と加熱時間、
加熱範囲を最小限とすることを前提に実施してよい。
出典:(一社)日本建築学会_鉄骨工事技術指針・工場製作編、2007
日建連/鉄骨専門部会
A-2-18
鉄骨工事
Q&A集
工作
ダイアフラムの出寸法
制定
2012年9月1日
改訂
2016年7月1日
Q. コラム柱の通しダイアフラムの場合、出寸法は何㎜にするのがよいのか?
A.
「2008年版 冷間成形角形鋼管設計・施工マニュアル」では、ダイアフラムの出寸法eは下記の値
が推奨されています。
e=25㎜(tc<28㎜) e=30㎜(tc≧28㎜)
tc:角形鋼管の厚さ
これは次の点を考慮して決められています。
①板厚方向応力に対するダイアフラムの安全性確保(ラメラテラによる開裂防止など)
②ダイアフラムと柱・梁フランジの溶接による熱影響部の干渉及び性能低下の防止
③柱とダイアフラムの溶接によるダイアフラムの傘折れの発生の防止
①については、当該溶接部位が入熱の小さいガスシールドアーク溶接であり、またダイアフラムの
材種もSN材でかつ板厚方向の特性(Z方向絞り値・材料UT検査)が規定されたC種を用いること
が一般的であることから、板厚方向のラメラテア(開裂)の問題は無いと考えます。
②については、①と同様に当該溶接部位が入熱の小さいガスシールドアーク溶接であることから、
母材への熱影響の範囲は数mmと小さく、ダイアフラム製作出寸法を25~30mm程度確保すれば、
熱影響部同士が干渉して溶接部の性能を低下させる、ということは無いと考えます。
③については、ダイアフラム出寸法を大きくすると、溶接の順序にもよりますが、傘折れ量が大きく
なります。特にトッププレートの場合、片側溶接になるため傘折れが発生するケースが多く、事前
に逆ひずみをつけるなど対策を講じても、中々コントロールできないのが現状です。傘折れが発生
した場合、ダイアフラム板厚が厚い場合は加熱矯正でも完全な修正は困難であり、梁フランジとの
溶接で食い違いが生じ易くなります。したがって、①と②を満足したうえでダイアフラムの出寸法は
短くする(一般に25~30mm程度)のが良いと考えます。
tc
e
傘折れ
(特にトッププレート)
25~30mm
食い違い
傘折れ・目違いの発生
出典:2008年版 冷間成形角形鋼管設計・施工マニュアル
(一社)日本建築学会_鉄骨工事技術指針・工場製作編、2007
日建連/鉄骨専門部会
ダイアフラムの出寸法
A-2-19
鉄骨工事
Q&A集
工作
アンカーボルト
制定
2014年6月1日
改訂
2016年7月1日
Q. 構造用アンカーボルト(ABR、ABM)をL形・J形に曲げ加工したりめっき処理しても問題ないか?
A.
①ABR、ABMのアンカーボルトのセットを図に示します。図のようにナット4個、丸座金1枚及び直形
状のアンカーボルト1本のセットでJIS規格化されています。なお定着板は規格に入っていません。
JISマーク表示認証取得工場で曲げ加工する場合、曲げ加工自体は可能ですが、形状が変わっ
てしまうためアンカーボルトの「セットとしてのミルシート」は発行されませんので、この点を考慮し
てメーカーと相談して下さい。
②アンカーボルトの表面処理について、JIS規格の附属書(規定)の抜粋を示します。
・JIS B 1220:2015 附属書A.7 ボルトの表面処理
A.7.1 ABR用ボルトに表面処理を施す場合は、電気又は溶融亜鉛めっきとする。溶融亜鉛
めっきを施す場合は、ねじのはめあいを考慮してJIS H 8641に規定するHDZ35とする。
A.7.2 ABM用ボルトの表面処理にめっきを施す場合は、電気めっきとする。
①のようにボルト・ナット・座金のセットで構成されています。表面処理としてめっきを施す場合は、
ボルトの表面処理と同等の表面処理を施したナット及び座金を組み合わせることが規定されて
いますので、材料が入荷された際、現物や検査証明書で組合せを確認する必要があります。
図 アンカーボルトのセット
本Q&A
A-1-14 「アンカーボルトの転造ねじと切削ねじの違いは何か?」
A-1-16 「構造用アンカーボルトのABRとABMはどのような材料なのか?」
も参照して下さい。
出典:建築用アンカーボルトメーカー協議会パンフレット「構造用アンカーボルト」
JIS B 1220:2015 構造用両ねじアンカーボルトセット
日建連/鉄骨専門部会
A-3-1
鉄骨工事
Q&A集
工場溶接
組立て溶接と
仮付け溶接
制定
2011年7月1日
改訂
2016年7月1日
Q. 組立て溶接と仮付け溶接の違いは?
A.
以前、部材を組立てるための溶接は「仮付け溶接」といわれていましたが、その語感から「いい加
減な溶接でも構わない」といった誤解がありました。そのため、部材を組立てるための溶接という
意味合いから「組立て溶接」という言い方に変更されました。
組立て溶接には、そのまま残されるものと、その上から溶接を行うものがありますが、そのまま残
されるものは、断続隅肉溶接といえます。
いずれの場合であっても、所定の溶接長さと脚長の確保、アンダーカットなどの欠陥が無いことを
検査します。
この上から本溶接が行われます。(注)
このまま残ります。
また、閉鎖断面なので最終製品では長さなど
が確認できません。そのため、中間検査や工
程写真で確認します。
(注)本溶接の一部となる組立て溶接に使用する溶接材料の選定にあたっては、以下の点に留意
します。
1. 被覆アーク溶接棒は本溶接に使用するものと同じ種類とするのが原則ですが、低水素系の溶
接棒に統一しておくのが望ましい。また、ガスシールドアーク溶接は、拡散性水素量が非常に少な
いので組立て溶接にも適しています。
2. 溶接材料の強度レベルは、母材の強度レベルに応じて選定する必要がありますが、引張強さ
590N級以上の場合は、組立て溶接に割れを生じることがあるため、1ランク下の溶接材料を用い
て割れを防止するという選択も考えられます。
出典:(一社)日本建築学会_鉄骨工事技術指針・工場製作編、2007
日建連/鉄骨専門部会
A-3-2
鉄骨工事
Q&A集
工場溶接
ロボット溶接
制定
2011年7月1日
改訂
2016年7月1日
Q. 溶接ロボットの定義は?また、ロボット溶接が適切に行われるための条件とは?
A.
建築鉄骨では、アーク溶接を行う産業用ロボット(産業用ロボットのISOの定義は、3軸以上の自由
度を持つ、自動制御、プログラム可能なマニピュレータ)をいいます。多くのロボットが多関節型で、
人間の溶接作業を再現するコンピューター制御装置を有しています。
建築鉄骨を溶接できるかの確認が必要ですので、そのためにロボットの型式認証(日本溶接協会、
日本ロボット工業会)、オペレーターの認証制度(日本溶接協会)があります。この二つが両輪とな
り初めてロボット溶接が適切に行われるといえます。
なお、認証を受けたロボットには認証シールが発行されます。
オペレータ-についてJASS6では、JIS Z 3841の基本となる級(下向き)の有資格者であれば従事
できるとしています。技量付加試験は特記により実施しますが、日本溶接協会のオペレーター (*)
試験とAW検定協議会のオペレーター試験が技量付加試験の代替として考えられます。
(*)日本溶接協会では、「オペレータ」と表記してい
るが、ここでは、JASS6の表現に合わせた。
型式認証シール(適合性マーク)
出典:(一社)日本ロボット工業会「建築鉄骨溶接ロボット型式認証制度について」
http://www.jara.jp/system/02.html
(一社)日本溶接協会「建築鉄骨ロボット溶接オペレータの認証」
http://www.jwes.or.jp/jp/shi_ki/ninsyou/pdf/2015ro.pdf
日建連/鉄骨専門部会
A-3-3
鉄骨工事
Q&A集
工場溶接
AW検定資格
制定
2011年7月1日
改訂
2016年7月1日
Q. 工事現場溶接のAW資格保有者に工場溶接を行わせる事は資格の面で問題ないか?
A.
AW検定では工事現場と工場の試験内容が異なり、それぞれ実情に応じた試験を行っているため、
資格の面では問題があります。適用にあたっては設計者・工事監理者と協議してください。
下向き溶接(工場溶接・工事現場溶接共通)
工場溶接
工事現場溶接
横向き溶接
柱継手を想定し、エレクションピース
を「じゃま板」として再現した試験体と
なっている
AW検定における工場溶接、工事現場溶接の試験体比較
日建連/鉄骨専門部会
A-3-4
鉄骨工事
Q&A集
工場溶接
代替エンドタブ
制定
2011年7月1日
改訂
2016年7月1日
Q. AW検定資格を適用条件として溶接技能者を選定する場合、AW試験で使用された代替エンドタ
ブ(メーカー、型式)で、溶接を行うことが条件となるのか?
A.
AW検定協議会の資格証の裏面に、「当協議会の試験規定に従って実技試験を行い、合格者に対
し資格証を発行している。この資格者が行った溶接部の品質を保証するものではない」ことが記載
されています。これは、実工事の溶接部の品質については工事監・管理者の責であることを確認
しているものです。また、一般に、資格試験はその資格範囲の代表的な条件での試験により、一
定レベル以上の溶接技能者を資格者として選定していると考えられます。従って代替エンドタブの
種類をはじめ、施工条件については工事監・管理者が品質を確保できる範囲内であることを判断
することになります。AW検定資格者の技量でも品質が確保できないと判断される特殊な条件の
場合には、別途、施工試験等を実施して確認することになります。
溶接前(代替エンドタブ取付け)
溶接後
代替エンドタブ(工場溶接)のAW検定試験状況
AW検定資格証の裏面(説明のため、下線を追記した)
出典:AW検定・Q&A集「A) 試験運用規定に関して」より抜粋
日建連/鉄骨専門部会
A-3-5
鉄骨工事
Q&A集
工場溶接
サブマージアーク溶接
エレクトロスラグ溶接
制定
2011年7月1日
改訂
2016年7月1日
Q. サブマージアーク溶接(SAW)、エレクトロスラグ溶接(ESW)の承認試験において、JASS6の付
則と一般の溶接施工試験の使い分けは?
A.
JASS6の付則は基本的な溶接作業ができるかどうかの確認を行うことを目的としており、初めてこ
れらの溶接を行うときの承認試験として考えられています。実工事で行われる溶接施工試験は、
板厚や開先などを工事の実態に合わせた試験体を用いて適正な性能が確保できるかを確認する
ことを目的として実施されます。
大電流サブマージアーク溶接
エレクトロスラグ溶接
マクロ試験による、きずの有無や溶込みの確認
出典:(一社)日本建築学会_鉄骨工事技術指針・工場製作編、2007
日建連/鉄骨専門部会
A-3-6
鉄骨工事
Q&A集
工場溶接
鋼製エンドタブ
制定
2011年7月1日
改訂
2016年7月1日
Q. 何故、鋼製エンドタブが必要なのか?
A.
溶接の始端は、アークが不安定であったり、シールドが不十分な場合があり、ブローホールや溶込
み不足といった「きず」が発生しやすく、また、溶接終端はクレータ処理が不十分で割れが入る可
能性があります。これらの不具合を母材内に残さないように鋼製のエンドタブを取り付けます。
溶接の始端では、鋼製エンドタブの長さの中でアークを安定させてから本溶接線へ移動します。
溶接終端では、最終のクレータを鋼製エンドタブの範囲内に収める必要があります。
特に板厚が厚い場合は、相対的にクレータも大きくなりますので、鋼製エンドタブの長さ一杯を有
効に使用する必要があります。そのために、鋼製エンドタブの外端に薄鉄板や代替エンドタブを取
り付ける技能者もいます。
なお、鋼製エンドタブの範囲は、外観検査の対象外です。
図は、AW検定の代替エンドタブ試験におけるX線の結果です.このように溶接の始端・終端にきず
が多く発生しています。このきずを本溶接線から外すのが鋼製エンドタブの目的です。
きずの発生率
溶接線幅方向のきずの分布
:不合格きずを示す
:合格きずを示す
出典:(一社)日本建築学会2009年度大会材料施工部門PD資料
日建連/鉄骨専門部会
A-3-7
鉄骨工事
Q&A集
工場溶接
鋼製エンドタブ
制定
2011年7月1日
改訂
2016年7月1日
Q. 構造品質を確保するために鋼製エンドタブの切断は必要な処置か?
A.
JASS6においては、柱梁接合部における鋼製エンドタブの切断の要否および切断要領については、
特記事項としています。つまり、耐震安全性に関して重要な部位であるために、設計者が判断す
る内容とされています。
また、切断することが望ましい場合として、鉄骨工事技術指針では以下の3つの条件のすべてに
該当する接合部を挙げています。
①大地震時に塑性ヒンジを形成し、大きい塑性変形能力が要求される梁端の接合部
②梁材490N/mm2級鋼とワイヤYGW11の組合せで溶接施工される接合部
③柱材に幅厚比25以上の角形鋼管が用いられている接合部
なお、以下の条件のいずれかに該当する接合部では、鋼製エンドタブを切断する必要はないとさ
れています。
①終局状態において塑性ヒンジを形成しない梁端接合部
②梁材が400N/mm2級鋼の接合部
③柱材にH形断面柱が用いられている接合部
いずれにしろ、施工者では判断できない内容ですので設計者に確認してください。
エンドタブ切断前
エンドタブ切断後、グラインダ仕上げの例(*1)
*1
全てこの程度が必要ということではない。あくまで、
「例」として示した。
出典:(一社)日本建築学会_鉄骨工事技術指針・工場製作編、2007
日建連/鉄骨専門部会
A-3-8
鉄骨工事
Q&A集
工場溶接
アークストライク
制定
2011年7月1日
改訂
2016年7月1日
Q. アークストライクは、どの様な理由で不具合とされているのか?
A.
アークストライクは、JIS Z 3001-4において「母材の上に瞬間的にアークを飛ばし、直ちにアークを
切ったときに生じる不完全部」と定義されています。実際には、溶接を開始する際に溶接ワイヤや
溶接棒を不用意に母材に接触させアークを発生させることにより起こります。
アークストライクが母材に対して及ぼす影響は、瞬間的なアークの発生により鋼材の表面が溶融
温度まで加熱されて周囲の鋼材により急激に冷却される「急熱急冷」が生じ、通常の溶接熱影響
部に比べて硬くて脆くなることです。鉄骨構造の耐力として、初期き裂発生の起点となり、母材の
破断耐力を低下させる不具合が発生する可能性があります。特に、柱梁接合部などの応力レベ
ルが高い構造上重要な部位に生じたアークストライクについては、構造的な大きな欠陥となるため
注意が必要です。
アークストライクの例
溶接金属
切り欠き
母材
熱影響部
アークストライクの断面例
日建連/鉄骨専門部会
A-3-9
鉄骨工事
Q&A集
工場溶接
NBFW法
制定
2011年7月1日
改訂
2016年7月1日
Q. NBFW法とは?
A.
Non Brittle Fracture Weldingの略で、冷間成形角形鋼管スキンプレートとダイアフラム間の溶接止
端部のビード形状を工夫した溶接方法です。図に示すように溶接ビードUを置くことで、熱影響部
の傾きを梁の長さ方向へ傾けます。更にビードTによりビードUの急冷を防ぎます。こうして溶接部
形状及び材質を改善し、脆性破壊しにくくした溶接積層方法をいいます。
図は「改訂NBFW積層法」で、日鉄住金コラム(注)、セイケイ、佐々木製罐の三社が(一財)日本建
築センターの任意評定(BCJ評定-ST0170-01)を取得しています。
図のビードU、ビードTの各寸法精度を確保するためには、ロボット溶接がかかせません。
また、ビードUの始端位置を確認するためには開先の肩からある決まった寸法に逃げ墨をひき、そ
こからの距離で測定を行います。
なお、 490N/mm2を超える冷間成形角形鋼管への適用可否については各社異なりますので、注
意して下さい。
ビードT
5mm以上12mm以内
8mm以内
ビードU
HAZ U
コラムスキンプレート
事前に逃げ墨を引き、開先の肩からビードU
始端までの長さ測定の基準とする。
寸法の確認状況
(注) 2016月4月1日に日鉄住金コラム(株)と日鐵住金建材(株)は合併し、日鐵住金建材(株)となりました。
出典: 2008年版冷間成形角形鋼管設計・施工マニュアル
日鉄住金コラム(株)ホームページ
日建連/鉄骨専門部会
A-3-10
鉄骨工事
Q&A集
NBFW法
工場溶接
制定
2011年7月1日
改訂
2016年7月1日
Q. 使用鋼材はBCP325Tだが、設計図書にNBFW法の記載が無い場合の対応は?
A.
NBFW法は溶接止端部の溶接部形状および材質を改善し、脆性破壊し難くした溶接積層方法です。
建築基準法施行令およびその関連告示では、一般的な冷間成形角形鋼管(通常のBCP、BCR、
STKR)を使用した場合、柱の設計に制限をかけています。例えば崩壊形の確認を行うことや設計
用応力の割増しを行うことが、この設計制限に該当します。
一方、BCP325T(建築構造用高性能冷間プレス成形角形鋼管)を使用して設計制限を行わない
(溶接組立箱形断面や熱間成形角形鋼管と同等の設計を行う)場合には、NBFW法を採用するこ
とが必須となります。
採用する設計法が施工方法に制限を与えるならば、設計者はこのことを設計図書で明示しなけれ
ばならないので、NBFW法の適用の要否は設計図書に記載すべき事項であると考えます。
BCP325Tを採用することによる設計上の最も大きなメリットはNBFW法と組み合わせて使用するこ
とで得られるものなので、明記されていない場合は構造設計者または工事監理者に確認してくだ
さい。
ビードT
5mm以上12mm以内
8mm以内
ビードU
HAZ U
コラムスキンプレート
改訂NBFW積層法の積層図
日建連/鉄骨専門部会
A-3-11
鉄骨工事
Q&A集
工場溶接
NBFW法
制定
2011年7月1日
改訂
2016年7月1日
Q. NBFW法はロボットを使用しないで半自動溶接で行うことは可能か?
A.
ビードT、ビードUのサイズ規定は、H20年9月26日付け「改訂NBFW積層法」として改訂されました。
当初の規定より緩和されたことにより、半自動溶接でも技能的には不可能ではなくなりましたが、
適用に当たっては溶接の施工試験等で必要なサイズが確保できるかの確認が必要です。
現状では、ロボット溶接で対応することが現実的です。鉄骨製作工場の選定にあたっては、ロボッ
ト溶接においてNBFW法溶接用のソフトによる溶接施工実績の確認が必要です。
ビードT
5mm以上10mm以内
4mm以内
ビードU
HAZ U
コラムスキンプレート
当初の「NBFW積層法」
ビードT
5mm以上12mm以内
8mm以内
ビードU
HAZ U
コラムスキンプレート
H20年9月26日付けで、溶接の積層法が変更された「改訂NBFW積層法」
日建連/鉄骨専門部会
A-3-12
鉄骨工事
Q&A集
工場溶接
食違い
制定
2011年7月1日
改訂
2016年7月1日
Q. 通しダイアフラム板厚と内ダイアフラム板厚の決定基準は何故違うか?
A.
通常は、通しダイアフラム板厚は梁フランジ板厚の2サイズアップ。内ダイアフラム板厚は、梁フラ
ンジ板厚の1サイズアップの指定が多くなっています。こうした決定基準の違いは以下の理由によ
るものです。
建設省告示1464号により、「通しダイアフラムと梁フランジの溶接(突合せ継手)は、通しダイアフラ
ムの板厚内部で溶接をしなければならない」という規定があります。このため、製作誤差を考慮し
て、梁フランジより2サイズアップ(3サイズの場合も有り)した板厚が多くなっています。一方、内ダ
イアフラム-梁フランジの仕口は、ずれをある範囲内で許容しているため、上記より緩和された板
厚(1サイズアップ等)とすることが多いようです。
板厚を増すことは、製作側のリスク回避策といえますが、設計図確定後の変更は難しいため、最
近では設計者が先取りした形で図面に表現しています。
名
図
称
寸法・形状・欠陥など
t ≦ 15mm e ≦ 1.5mm
e
突合せ継手の
食違い e
e ≦ t/10
e
t > 15mm
かつ e ≦ 3mm
柱フランジ
梁フランジ
t
通しダイア
フラム
柱フランジ
t2
t1
ダイアフラム
e
梁フランジ
ダイアフラム
e
t2
仕口のずれ e
(ダイアフラムと
フランジのずれ)
柱フランジ
t1
日建連/鉄骨専門部会
この場合において、通しダイアフラ
ムと梁フランジの溶接部は、梁フ
ランジは通しダイアフラムの厚み
の内部で溶接しなければならない。
t1≧t2
e≦t1/5 かつ e ≦ 4mm
t1<t2
e≦t1/4 かつ e ≦ 5mm
A-3-13
鉄骨工事
Q&A集
工場溶接
食違い・仕口のずれ
制定
2011年7月1日
改訂
2016年7月1日
Q. 「突合せ継手の食い違い仕口のずれの検査・補強マニュアル」の運用方法は?
A.
「突合せ継手の食い違い仕口のずれの検査・補強マニュアル」は、設計、施工、検査、鋼材等の生
産、鉄骨製作等に関わる団体及び研究者並びに行政機関が検討を行ってとりまとめ、独立行政
法人建築研究所が監修しています。
突合せ継手の食い違いや、柱はり仕口のずれ等について、その許容値が告示第1464号で規定さ
れましたが、同時にただし書きとして、これら許容値を満たせない場合は「適切な補強」で対応でき
るとしています。
本マニュアルは、これまであまり検討されてこなかった加工・施工の誤差に対する対策を、現時点
での最新の知見としてまとめたものであり、鉄骨製作業者のみならず、設計者や工事監理者等に
もそれぞれの立場で鉄骨造建築物の精度・品質確保のために役立つ内容となっています。
この検査・補強マニュアルを適用するかどうかは設計者・工事監理者の判断になります。運用にあ
たっては、食い違いずれの検査・補強マニュアル作成委員会作成の「食い違い・ずれの検査に関
して工事契約時又は製作打合せ時に取決めておくべき事項」を参考にしてください。
(参考)
補強が必要となった場合の補強の時期(下記のa,b,cの3パターン)についてどの段階で行なうか、
当事者間で事前に取り決めておく必要がある。
受入検査と補強の時期
製品検査前に補強
a.製品検査後に補強
b.受入検査会社による補強前の検査後に補強
c.補強済後に受入検査
補強の時期
出典:〔食い違い・ずれの検査に関して工事契約時又は製作打合せ時に取決めておくべき事項〕
平成15年11月1日 食い違いずれの検査・補強マニュアル作成委員会(委員長 森田耕次)
http://www.jsfa.or.jp/topics/pdf/torikime.pdf
日建連/鉄骨専門部会
A-3-14
鉄骨工事
Q&A集
工場溶接
付属金物
制定
2011年7月1日
改訂
2016年7月1日
Q. 付属金物の溶接方法や検査で注意すべき点は?
A.
一口に付属金物と言っても様々な種類がありますが、本体と同じように慎重に溶接を行う必要が
あります。材料強度に見合った溶接材料を使用する、必要な溶接長を確保するなどです。溶接長
は、最低限でもショートビードとならない長さ40mm以上を確保します。隅肉溶接についてはアン
ダーカットなどの表面欠陥検査と溶接長の確認を行います。
特に安全に関わる部材の溶接部は、 吊足場の落下、タラップの外れなどの事故に直結しますの
で、溶接後の検査を確実に行う必要があります。
社内(自主)検査を行った印です。
溶接長さが短い。また冷間成形角形鋼管の角部への溶接は不適切です。
丸鋼を曲げた仮設ピースを使用する場合、曲げ
加工で塑性硬化した部分には溶接を行わない。
出典:(株)鋼構造出版_上級技術者のための建築鉄骨外観検査の手引き、2002
日建連/鉄骨専門部会
A-3-15
鉄骨工事
Q&A集
工場溶接
入熱・パス間温度測定
制定
2012年9月1日
改訂
2016年7月1日
Q. 入熱とパス間温度の測定方法は?
A.
入熱の測定方法
入熱を直接測定することはできませんが、電流、電圧および溶接速度が測定できれば、以下の式
から算出することができます。
HI 
60  E  I
V
ここで、
HI :入熱(J/cm)
E :アーク電圧(V) ⇒テスター等で測定する
I :溶接電流(A) ⇒クランプメーターやテスターで測定する
V :溶接速度(cm/min) ⇒溶接長さを溶接時間で除して算出する
溶接時間はストップウォッチで計測する
なお、アーク電圧は、溶接電源が近く電圧降下のおそれが少ない場
合は溶接電源の電圧計を読む事でも可です。
クランプメーター
パス間温度の測定方法
建築鉄骨では、パス間温度は「多パス溶接において1回のパスの溶接が終わり、この上に次のパ
スを溶接する直前の溶接線近傍の母材の温度」と定義されています。建築鉄骨の場合の具体的
な測定位置は下図の通りです。パス間温度は接触型・非接触型温度計を使用して測定することが
できますが、実際の施工では管理温度に対応した温度チョークを使用して確認することも多く見ら
れます。
パス間温度の管理点
接触型温度計
非接触型温度計
シオンクレヨン
また、温度チョークとは別に、不可逆性という性質を利用して入熱・パス間温度を管理して溶接さ
れたか否かを溶接後に推定できる商品として、シオンクレヨン(株式会社内外コーポレーション)が
販売されています。
ただし、B-3-13の回答にもあるように各パスのパス間温度や入熱量の確認はできませんので注
意してください。
入熱およびパス間温度の測定方法の概要は以上の通りですが、実際に全ての溶接部を計測・管
理することは大変な作業です。
(参考)溶接用語のJIS Z 3001-2でのパス間温度の定義
多層溶接において次のパスを溶接する直前の溶接金属及び近接する母材の温度
日建連/鉄骨専門部会
A-3-16
鉄骨工事
Q&A集
工場溶接
完全溶込み溶接
隅肉溶接
制定
2012年9月1日
改訂
2016年7月1日
Q. 柱脚の柱材とベースプレートの溶接で、完全溶込み溶接と隅肉溶接の使い分けの根拠は?
A.
柱脚部の溶接仕様は柱脚部をどのように設計するかにより決まるので、施工者が勝手に判断でき
るものではありません。
単純にせん断力のみ負担させるのであれば、隅肉溶接となります。引張力を負担させる場合は、
通常は完全溶込み溶接とします。もし、隅肉溶接(基準法では突合せ以外の継目)に引張力を負
担させる場合、建築基準法ではせん断力と同じ許容応力度しか与えられていませんので注意が
必要です。(建築基準法施行令第98条)
また、柱の板厚が厚い場合、隅肉溶接で行うと脚長が大きくなるので板厚によっては開先をとって
部分溶込み溶接とする場合もあります。
溶接の仕様をまとめると、次のようになります。
・ 隅肉溶接
・ 完全溶込み溶接
・ 部分溶込み溶接
超音波探傷検査の有無も含め、構造図をしっかり照査することが大切です。
鋼管柱の場合
上の図は全周開先溶接ですが、次のような注意が必要です。
・裏当て金無しの場合は、設計的には隅肉溶接の耐力となります。
・裏当て金有り、UT有りの場合は、完全溶込み溶接扱い。引張力負担が可能。
・構造図では、裏当て金の有無が分かりにくい場合があります。
その場合は、質疑を行い明確にしておくことが大切です。
クロスH柱の場合
上の図はフランジ開先溶接あるいは溶込み溶接、ウェブ隅肉溶接ですが、次のような注意が必要です。
・裏当て金無しの場合は、 設計的には隅肉溶接の耐力となります。
ただし、裏はつりの場合は、完全溶込み溶接扱いが一般的です。
・裏当て金有り、UT有りの場合は、完全溶込み溶接扱い。引張力負担が可能。
・構造図では、裏当て金の有無が分かりにくい場合があります。
その場合は、質疑を行い明確にしておくことが大切です。
日建連/鉄骨専門部会
A-3-17
鉄骨工事
Q&A集
工場溶接
予熱
制定
2012年9月1日
改訂
2016年7月1日
Q. 予熱の目的は何か?
A.
JIS溶接用語では、「溶接又は熱切断に先立って行う母材の加熱」と定義され、溶接による主として
低温割れ※の防止を目的として必要に応じて行われます。
低温割れは、次の三要因の相互作用により発生します。
①溶接部に侵入した水素、②室温付近で溶接部に生じる応力、
③熱影響部または溶接金属の硬化
予熱は溶接後の冷却速度を遅くすることで溶接部に含まれる拡散性水素の放出を促し、熱影響部
の硬さを減少させ、また、溶接部付近の温度勾配が緩やかになるため溶接応力も少なくなり低温
割れに効果があります。
同様の効果を得る為の方法として「後熱」という方法もあります。
予熱は、対象物全体を均一に加熱するのが理想的ですが、建築鉄骨では対象物が大きいため
局部加熱が標準施工法となっています。予熱範囲は溶接線全周の約100mm離れた範囲までを
行います。
予熱の方法としては、電気抵抗加熱、赤外線電気ヒーター、
固定・手動バーナーなどがあります。
バーナーを使用する場合、気温が低い時には燃焼ガスの水素
成分から発生する水蒸気が水分となり溶接に悪影響を与える
ことがありますので、開先内の水分が蒸発するまで加熱する
必要があります。
溶接時の温度管理ということでは、「パス間温度管理」があり
ますが、その両者の違いを示します。
予熱状況
予熱を管理する = 溶接開始時の最低温度を確保する。規定温度を下回らないようにする。
パス間温度管理= 溶接開始時の最高温度を抑える。規定温度を上回らないようにする。
従って、予熱温度以上でパス間温度管理の温度以下という2つの条件で溶接することが求められ
ることもあります。
参考に、日本建築学会鉄骨工事技術指針で提案している予熱温度の標準を示します。
この表には「注」が記載されていますので、適用にあたっては、原本を確認して下さい。
予熱温度
板厚(mm)
鋼 種
溶 接 法
t<25
低水素系以外の被覆アーク溶接
SN400
SM400
SS400
SN490
SM490
予熱なし
25≦t
<32
50℃
32≦t
<40
40≦t
≦50
50<t
≦75
75<t
≦100
50℃
50℃
50℃
50℃
80℃
50℃
低水素系被覆アーク溶接
予熱なし
予熱なし
予熱なし
炭酸ガスシールドアーク溶接
サブマージアーク溶接
予熱なし
予熱なし
予熱なし
予熱なし
予熱なし
低水素系被覆アーク溶接
予熱なし
予熱なし
50℃
50℃
80℃
100℃
炭酸ガスシールドアーク溶接
サブマージアーク溶接
予熱なし
予熱なし
予熱なし
予熱なし
80℃
100℃
※低温割れ : 溶接後、溶接部の温度が常温付近に低下してから発生する割れの総称。
ルート割れ、ビード下割れ、止端割れなどはこの割れに属する。(JIS Z 3001-4)
出典:(一社)日本建築学会_鉄骨工事技術指針・工事現場施工編、 2007
溶接接合設計施工ガイドブック、2008
日建連/鉄骨専門部会
A-3-18
鉄骨工事
Q&A集
工場溶接
AW検定
制定
2012年8月1日
改訂
2016年7月1日
Q. AW検定とは?
A.
鉄骨工事に関わった方であれば、建築工事特記仕様書の鉄骨工事の中で溶接技能者の技量付加
試験に関して、
「AW検定協議会の検定試験に合格した溶接技能者は原則として技量付加試験を免除する」
といったような文章が記載されているのを見たことがあると思います。 しかし、AW検定の実態がよ
く分からないのが現状ではないかと思います。
■建築鉄骨溶接の特異性(造船や橋梁と比較して)
(1) AW検定の目的について
建築鉄骨の溶接は、建築特有のディテール
溶接試験
品質の確保
とその複雑さから、高度の技術を要求される
溶接接合部
施工法・技量の
高度な製作技術
裏付け証明
ため、これらを考慮した技量付加試験を実施
して建築鉄骨溶接技能者の技量を確認する
ことが個々の工事単位で行われていました。 1.作用応力が大きい
・工場溶接(鋼製エンドタブ・代替エンドタブ)
2.独特のディテール
・工事現場溶接(鋼製エンドタブ・代替エンドタブ)
しかし、このような技量付加試験を各工事で
①レ形の開先
・鋼管溶接
②溶接線が短い
個々に実施することは、時間とコストがかか
・ロボット溶接オペレータ
③ビードの継ぎ目ができる
り無駄が多いことから、これを改善する手段
として統一した仕様による技量付加試験を行って、個々の技量試験の繰り返しを免除する方策がと
られました。これが、AW検定協議会が実施している「建築鉄骨溶接技量検定(略称;AW検定)」
(1986年AW委員会発足)です。
(2) AW検定の内容
AW検定の資格、試験種目・内容について以下に示します。
試験項目
判定項目
試験種目
S種
溶接姿勢
完全溶込み溶接
工場溶接
(鋼製エンドタブ)
A種
工場溶接
S種
(代替エンドタブ)
現場溶接
現場
(鋼製エンドタブ) S種
現場
現場溶接
(代替エンドタブ) S種
鋼管溶接
隅肉溶接
完全溶込み溶接
完全溶込み溶接
マクロ
試験
曲げ
試験
○
○
○
○
○
○
○
○
○
-
○
○
○
-
○
○
○
○
○
-
備考
H
横向
H
水平
V
立向
F
下向
H
横向
○
○
○
-
F
下向
○
○
○
○
H
横向
○
○
○
○
V
立向
○
○
○
○
Ⅲ類資格者(F,H,V合格者)
F
下向
○
○
○
-
Ⅳ類資格者(ⅡorⅢ、代替エン
ドタブのFの合格が必要)
H
横向
○
○
○
-
Ⅴ類資格者(ⅡorⅢ、代替エン
ドタブのF,H両方の合格が必要)
○
○
○
○
○
-
○
-
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
自由
1パス
自由
自由
自由
固定管水平
管の分岐継手
主管水平
F
下向
H
横向
V
立向
RC種 角形鋼管継手溶接
F
下向
RP種 円形鋼管継手溶接
F
下向
参考:AW検定協議会ホームページ
放射性
透過試験
下向
管の直管継手
RT種 平板十字継手溶接
外観検査
F
完全溶込み溶接
ロボット溶接
オペレーター
溶接総数
自由
○
「施工要
領書」に
定める
層数
○
○
○
UT試験
引張試験
衝撃試験
○
http://www.aw-kentei.gr.jp/
日建連/鉄骨専門部会
A種合格が必要
JIS Z 3801-1997の中の資格の
一部で免除される
工場溶接(鋼製エンドタブ)
の資格が必要
Ⅱ類資格者(F,H合格者)
・直管、分岐両方の合格が必要
・工場、現場溶接の両方に適用
A-3-19
鉄骨工事
Q&A集
AW検定ロボット溶接
オペレーター資格
工場溶接
制定
2012年8月1日
改訂
2016年7月1日
Q. AW検定ロボット溶接オペレーター資格とは?
A.
最近では、非常に多くの鉄骨製作工場で鋼管柱の仕口、大組溶接でロボットが活躍しています。
ロボット溶接に関する認証や資格は以下の3つです。
①(一社)日本ロボット工業会の建築鉄骨溶接ロボット型式認証制度(ロボットの性能に対する認証制度)
②(一社)日本溶接協会の建築鉄骨ロボット溶接オペレータ資格(ロボット溶接の経験が無くても資格取得
できる)
③AW検定協議会のロボット溶接オペレーター資格(実技試験)
数年前から、特記仕様書の鉄骨工事の中に、
「AW検定協議会のロボット溶接オペレーター資格保有者」がロボット溶接を行うことが明記される
ケースが多くなってきました。
(1) AW検定のロボット溶接オペレーター資格の目的
下記の図に示したように、適正なロボット溶接の適正な品質を実現するためには、「4つの要素」が
バランスよく確保される必要があります。
AW検定協議会
①ロボットの性能
ロボット
②溶接に関する基本知識・技量
溶接施工
適正な
工業会の ロボットの性能
要領書の
溶接条件
③適切な溶接条件
型式認証
審査
制度
④ロボット溶接に関する専門知識・技量
ロボット溶接は、全て自動でロボットが行なう
わけではなく、オペレーターがロボットに対し
品質
て、「教示操作」により鉄骨のサイズ、溶接条
機械試験
件等をコンピューターに入力して初めて溶接
ロボット溶接に 総合判定
が開始されます。
溶接に関する
関する専門
また、溶接部の品質に大きな影響を与える
基本知識・技量
知識・技量
技量検定
受験資格
「入熱」や「パス間温度」はロボットが自動管
(立会試験)
理しているわけではなく、オペレーターの運
用に委ねられています。従って、ロボット溶接
と言えど、品質面ではオペレーターの技量によるところが大きいため総合的な技量を検定する目
的で「AWロボット溶接オペレーター資格」があります。
(2) 試験種目
試験種目は、大きく分けると以下の3種目です。鋼管柱の大組みや仕口部溶接の資格にはRC種
(角形鋼管)とRP種(円形鋼管)の2種類がありますので、実際に製作する製品に適合する資格保
有者がいるか鉄骨製作工場に確認をしてください。
写真.試験状況(溶接中)
表.試験種目一覧
試験種目
平板十字継手溶接
(RT 種)
試験体
板厚
形状
19mm
平板十字
平板
溶接姿勢
下向
横向
立向
角形鋼管継手溶接
角形鋼管継手
(RC 種)
19mm
角形鋼管
((400 ×400 )
下向
円形鋼管継手
円形鋼管継手溶接
(RP 種)
19mm
円形鋼管
((500 φ))
下向
参考:AW検定協議会ホームページ
http://www.aw-kentei.gr.jp/
日建連/鉄骨専門部会
A-3-20
鉄骨工事
Q&A
工場溶接
溶接部補修
制定
2012年9月1日
改訂
2016年7月1日
Q. 誤作した部分を取り替える場合、溶接の上に溶接を行うことになるが問題ないか?
A.
一般的に溶接部の溶込み不良等の内部欠陥でも、欠陥部分をアークエアガウジング等を用いて
完全に除去後、溶接済みの溶接金属上から補修溶接を行っており、溶接金属への溶接自体は問
題ないとされています。
ガスシールドアーク溶接の内部欠陥を1~3回ガウジング除去して補修溶接を施した場合を想定し、
複数回のガウジングが母材および本溶接部に与える影響を検討した研究があります。この研究か
らは溶接の上に溶接を行う場合の影響についても知見が得られ、これによれば、母材側熱影響部
および本溶接熱影響部ともシャルピー衝撃値の劣化は見られず、逆に上昇する傾向を示していま
す。これは先行の溶接パスが後続の溶接パスにより再熱効果(焼きならし)を受け、原質部の組織
が細粒化して、再熱効果を受けた溶接部の靱性が向上したためです。また、補修を繰り返した場
合の溶接部硬さの変化については、若干の硬さ上昇はあるものの溶接部硬さが全体的に平準化
される傾向を示し、鋼材性能に及ぼす影響はほとんど無視できる程度のものといえます。
ただし、同じ箇所へのあまりに度重なる重複溶接は性能に影響があると言われており、誤作の発
生要因を明確にすると共に防止対策を検討の上、再施工を行う必要があります。
Base
Metal 側
HAZ
Welding
Metal 側
HAZ
250mm
250mm
250mm
250mm
本溶接および補修溶接の要領
硬さ分布(本溶接部と3回補修溶接部)
出典:補修溶接再加熱部の性能評価試験(建築鉄骨における溶接部の欠陥及び補修方法の一考察 その4)
日本建築学会大会学術講演梗概集(東海)2003年9月
日建連/鉄骨専門部会
A-3-21
鉄骨工事
Q&A集
鋼製エンドタブ
工場溶接
制定
2014年6月1日
改訂
2016年7月1日
Q. 鋼製エンドタブの長さはどの位必要ですか?
A.
鋼製エンドタブの目的は、それを溶接部の始終端に取付けることにより、始終端に発生しやすい溶
接欠陥を、母材幅の範囲外に置くことにあります。
したがって鋼製エンドタブに必要とされる長さは、始終端に発生しやすい各種溶接欠陥(溶込み
不良、ブローホール、クレータ割れ等)が、鋼製エンドタブ内に納まるように決めればよいといえま
す。各層・各パスのクレータが母材内に入らないようにエンドタブの長さの範囲に納まるように考え
ると被覆アーク溶接や半自動アーク溶接であれば30㎜程度の鋼製エンドタブであれば納まると思
います。
しかしながら、実際の溶接においては溶接の種類(被覆アーク溶接、ガスシールドアーク溶接、
サブマージアーク溶接)および多層盛溶接とするのか、それとも大入熱の1パス溶接とするのかで
もクレータの長さが変わりますので、それぞれの状況に合わせて調整されています。
30㎜以上
30㎜以上
鋼製エンドタブの使用例
サブマージアーク溶接の溶接方向
ノズル
裏板
エンドタブ
※サブマージアーク溶接の場合は、始端
と終端でエンドタブの長さが異なる
サブマージアーク溶接のエンドタブの例
出典:(一社)日本建築学会_鉄骨工事技術指針・工場製作編、2007
日建連/鉄骨専門部会
エンドタブ
A-4-1
鉄骨工事
Q&A集
製品検査
寸法許容差
制定
2011年7月1日
改訂
2016年7月1日
Q. 管理許容差と限界許容差の違いは何か?
A.
一般の構造物の主要な鉄骨の製作、施工に関して寸法精度の許容差が、日本建築学会「鉄骨精
度測定指針」(JASS6 付則 鉄骨精度検査基準)に定められています。その許容差には、限界と管
理の二つがあります。
限界許容差 : これを超える誤差は原則として許されないと定義した許容差。
この規準値を超えた製品は再製作・再施工されることが原則ですが、
補修により機能を回復できる場合には、適切な補修も可能です。
管理許容差 : 全製品中の95%以上の製品が満足するような製作・施工上の目標値。
製品寸法精度が正規分布している前提で考え、管理許容差を95%の製品が
満足するように製作すれば、限界許容差を超える製品の割合は0.3%程度に
なるとの正規分布表の統計的数値によっている。
管理許容差を越えてもその製品は補修・廃棄の対象とはなりません。しかし、
全製品中に管理許容差を超える製品が多数ある場合は、限界許容差を超え
る製品が製作される可能性が高いので、製作工場は管理許容差を超える製
品の割合を把握して、その割合によって適切な対策を講ずる必要があります。
なお、管理許容差と限界許容差の数値の大きさの関係は、おおむね2:3の関
係にあります。
特に精度を必要とする構造物または軽微な構造物の許容差は、
「鉄骨精度測定指針」によらず工事ごとに関係者が協議して定めて下さい。
出典:(一社)日本建築学会_鉄骨精度測定指針、 2014
日建連/鉄骨専門部会
A-4-2
鉄骨工事
Q&A集
製品検査
書類検査1
制定
2011年7月1日
改訂
2016年7月1日
Q. 寸法精度の受入検査方法「書類検査1」とは何か?
A.
寸法精度の受入検査は書類検査と対物検査があります。
■書類検査 : 鉄骨製作工場の社内検査結果の記録により寸法精度の確認を行うものです。
書類検査1、2があります。
■対物検査 : 受入検査時に実際の製品の寸法を確認して精度の判定を行うものです。
対物検査1、2、3があります。
書類検査1は下記の内容となります。参考に、書類検査2の内容も記載しました。
書類検査 1
記録用紙例
・社内検査記録が全数ある場合を対象とします。
・検査項目ごとに計測箇所数300個以下で1検
査ロットを構成します。
・そのロットの全計測個数に対して管理許容差
を超える割合が 5%以下で、かつ限界許容差
を超える割合が 0%のとき、ロットを合格とし
ます。JASS6に示されている方法になります。
記録用紙例
書類検査 2
・社内検査記録が部分的にある場合を対象とし
ます。
・検査項目ごとに計測箇所数300個以下で1検
査ロットを構成します。
・その社内検査記録からロット内の寸法誤差の
分布を統計的に推定し、管理許容差を超える
割合が5%以下のとき、ロットを合格とします。
ここで言う、検査項目とは
検査項目について特記がなければ、JASS6では
柱の長さ・階高・仕口部の長さ・柱のせい・仕口部のせい・梁の長さ・梁のせい
の7項目。
詳細は、「鉄骨精度測定指針」第5章、第6章を参照して下さい。
出典:(一社)日本建築学会_鉄骨精度測定指針、2014
日建連/鉄骨専門部会
A-4-3
鉄骨工事
Q&A集
製品検査
対物検査2
制定
2011年7月1日
改訂
2016年7月1日
Q. 寸法精度の受入検査方法「対物検査2」とは何か?
A.
寸法精度の受入検査は書類検査と対物検査があります。
■書類検査 : 鉄骨製作工場の社内検査結果の記録により寸法精度の確認を行う
ものです。書類検査1、2があります。
■対物検査 : 受入検査時に実際の製品の寸法を確認して精度の判定を行うもの
です。対物検査1、2、3があります。
対物検査2は下記の内容となります。参考に、対物検査1、3の内容も記載しました。
対物検査 2
検査項目ごとに計測箇所数300個以下で1検査ロットを構成します。
各検査ロットごとに合理的な方法で5個のサンプリングを行います。
サンプリングした製品の測定値と同一の製品の社内検査記録の差が、通常の測定で生ずる誤差
範囲かどうかを確認しロットの合否を判定します。
対物検査 1
第1回サンプリング(10箇所)
検査項目ごとに計測箇所数300個以下で
1検査ロットを構成し、10個のサンプリング
を行います。右図のような手順でロットの合否を
判定します。
0か所
2か所以上
不良箇所
1か所
第2回サンプリング(10箇所)
1か所
第1回、第2回
不良箇所の和
2か所以上
合格
不合格
全数検査
受入れ
対物検査3
検査項目ごとに計測箇所数300個以下で1検査ロットを構成します。
5個以上のサンプリングを行い、社内検査結果とサンプリング結果を比較し、かたよりと
ばらつきの差が大きいかどうかを確認しロットの合否を判定します。
ここで言う、検査項目とは
検査項目について特記がなければ、JASS6は
柱の長さ・階高・仕口部の長さ・柱のせい・仕口部のせい・梁の長さ・梁のせい
の7項目。
詳細は、「鉄骨精度測定指針」第5章、第6章を参照して下さい。
出典:(一社)日本建築学会_鉄骨精度測定指針、2014
日建連/鉄骨専門部会
A-4-4
鉄骨工事
Q&A集
製品検査
寸法検査手法
制定
2011年7月1日
改訂
2016年7月1日
Q. 寸法精度の受入方法「書類検査1、対物検査2」以外の組合せは?
A.
寸法精度の受入検査は書類検査と対物検査があります。
書類検査 : 鉄骨製作工場の社内検査結果の記録により寸法精度の確認を行う
もの。書類検査1、2がある。
対物検査 : 受入検査時に実際の製品の寸法を確認して精度の判定を行うもの。
対物検査1、2、3がある。
組合せは、鉄骨製作工場の社内検査記録の有無や対物検査の有無とその判定方法の種類に
よって、7種類の組合せがあります。この組合せを選定する手順を示すフローチャートが、日本建
築学会「鉄骨精度測定指針」にありますので下記に示します。
判定方法の
特記
判定方法の
特記
寸法精度の受入検査フローチャート
特記仕様書に記載されている組合せとして多いのは、「書類検査1」+「対物検査2」です。
出典:(一社)日本建築学会_鉄骨精度測定指針、2014
日建連/鉄骨専門部会
A-4-5
鉄骨工事
Q&A集
製品検査
スチールチェッカー
制定
2011年7月1日
改訂
2016年7月1日
Q. スチールチェッカーの原理について、教えて下さい
A.
スチールチェッカーは、鋼材に微弱電流を流し鋼材の電気抵抗の差を利用して材質を判別する装
置で、400N級と490N級鋼材のみを判別する装置として作られています。鋼材中の、炭素、シリコン、
マンガンの含有量によって抵抗値が異なるため、近年新たに出てきた種々の鋼材に対しては対応
できない場合があります。このような場合には、該当する材料のミルシートの該当する成分の数値
を、下図の数式に入れて抵抗値を算出して下さい。スチールチェッカーの目盛りはこの抵抗値に
なっていますので、目盛り(デジタル式は数値)と算定値を確認して下さい。
なお、計算式から明らかなようにSi(シリコン)含有率の寄与率が大きいので、Si含有率の低い
490N級鋼材では針が大きく振れない場合があります。その場合にも、計測値とミルシートからの算
定値を比較することにより、ミルシートと鋼材が一致していることの証明として下さい。
スチールチェッカーの目盛り(数字は抵抗値)
※SS400,SM490と表記されているが、
400N級と490N級の鋼材を識別する装置
鋼材識別状況
R=(0.66+C/5+Si/1.1+Mn/4)×α ・・・・①
R : 電気抵抗率(10-6Ω・cm)
C : 炭素含有率(%)
Si :シリコン含有率(%)
Mn:マンガン含有率(%)
α : 補正係数で、高炉製品は、18.0 電炉製品は 19.0
または、
R=(0.66+C/5+Si/1.1+Mn/4+Cu/4+Ni/8+Cr/8+Mo/10)×18.0 ・・・・②
Cu : 銅含有率(%)
Ni :ニッケル含有率(%)
Cr :クロム含有率(%)
Mn :モリブデン含有率(%)
ただし
1)Si>0.5%の場合には、0.5を超える部分について
のみSi/1.6とし、これを0.5/1.1に加算する
2)Cr>10%かつCr>Niの場合はNiを無視する
鋼種と電気抵抗率
(計算例)
C=0.15
Si=0.35
Mn=1.28
高炉製品 α=18
①式で計算すると R=23.9
12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27
軟鋼
SPHC
普通鋼
SS400
STK400/STKR400
高張力鋼
出典:メーカー技術資料
R : 電気抵抗率(10-6Ω・cm)
SM490
STK490/STKR490
日建連/鉄骨専門部会
A-4-6
鉄骨工事
Q&A集
製品検査
社内検査、受入検査
制定
2011年7月1日
改訂
2016年7月1日
Q. 社内検査と受入検査で食違いがあった場合はどうすればよいか?
A.
受入検査は工場製作の完了した部材が設計図書の要求品質を満足し、工作図どおりに製作され、
建方等の現場施工に問題ないかを最終的に判定する目的で行われます。受入検査の結果を正と
することが原則ですが、可能な限り社内検査側にも受入検査の結果が正であると納得してもらうこ
とが必要です。
そのため、両者立会いで再測定を行うことが必要です。また、その再測定方法は、検査計画書が
提出されている場合は検査計画書に基づいた方法とし、検査計画書がない場合は受入検査で用
いた方法を原則とします。
ただし、上記以外の方法でも、有効性が確認され、工事監理者の了解が得られればその方法とし
ます。
再測定方法が決定したら、その方法で再測定を行い、両者が確認し、その結果を正とします。
日建連/鉄骨専門部会
A-4-7
鉄骨工事
Q&A集
製品検査
超音波探傷
制定
2011年7月1日
改訂
2016年7月1日
Q. 2枚のダイアフラムの間隔が狭い場合、探傷可能な間隔は?
A.
ダイアフラム間内面の距離(h寸法)が150mm以上確保されないと、製作に支障が発生するといわ
れています。しかし、板厚 t が厚い場合は、hが150mm以上確保されていても、超音波探傷検査に
支障をきたす場合があります。
この場合は、事前に下図に示すような溶接の余盛を図示した断面図を作成して、実際の探触子の
可動位置を正確に表現して、溶接部に探傷不能範囲が生じないか確認する必要があります。
一般的には、L / t (探触子移動可能距離/板厚)<6 の場合、通常使用される屈折角70°の探
触子では探傷不能範囲が発生します。この場合は、屈折角65°の探触子を使用するか、もしくは、
70°の探触子と併用して 45°の探触子を使用することになります。
探傷不能範囲
梁
鋼管柱
h
梁
L
t
h
出典:「建築鉄骨溶接部検査の留意点シート」 (構造物第三者検査機関協会)
日建連/鉄骨専門部会
探触子
A-4-8
鉄骨工事
Q&A集
製品検査
超音波探傷
制定
2011年7月1日
改訂
2016年7月1日
Q. 溶接部の検査はいつ行いますか?
A.
溶接部の検査は、社内検査と受入検査に分かれます。
社内検査は結果を製作工程へフィードバックすることを勘案すれば、製作終了後ただちに実施す
ることが望ましいです。また、溶接組立箱形断面柱のダイアフラムのような閉鎖断面材内部の溶
接部に欠陥が発生した場合には、補修に多額の費用を要するため、素管製作完了直後に検査を
行うことが望ましいです。
受入検査に関して、従来は低温割れの発生が溶接後24時間以降であることが多かったため、溶
接完了後24時間経過後に検査が行われていました。
しかしながら、近年鋼材・溶接材料が改善され、溶接金属組織の硬化や溶接金属中の拡散性水
素が少なくなり、最近では低温割れはほとんど発生していません。
不適切な施工条件で溶接を行うなどして、低温割れが発生する場合でも、溶接部が常温程度に
なった時点でほぼ確実に発生します。そのため、溶接部が常温以下になった時点で検査を行えば、
問題がないといえます。また、鋼材温度が高いと屈折角が変化するので、正確な検査が出来ない
可能性もあります。
ただし、現場溶接において板厚の半分以下で降雨等により溶接を中断した場合は、低温割れが発
生することがあります。割れの原因としては、降雨による水分が鋼中に浸入し、拡散・集積する水
素による影響と、半分以上開先を残した状態では溶接金属の収縮が大きく、ひずみによる影響が
考えられます。このような溶接部では、溶接完了後に十分な時間を経過してから検査を行う必要
があります。
日建連/鉄骨専門部会
A-4-9
鉄骨工事
Q&A集
製品検査
超音波探傷
制定
2011年7月1日
改訂
2016年7月1日
Q. ペンキの上やめっきの上からでも超音波探傷検査はできますか?
A.
塗料またはめっきなどで表面を処理する場合には、処理前に超音波探傷検査を行うことが原則で
す。これらの探傷面は探触子と被検材との接触面における超音波の伝播に影響を与えるので、探
傷感度に直接影響してしまうのがその理由です。
塗装またはめっき後にその処理された面で探傷することを余儀なくされた場合は、感度低下量を
確認するか、適正な感度補正等を行った後に探傷しなければなりません。
「鋼構造建築溶接部の超音波探傷検査規準・同解説」(日本建築学会)には、溶融亜鉛めっき厚さ
によるエコー高さの影響を実験した結果が示されています。これによると、
①めっき厚さが100~200μmの範囲では、感度低下はほとんど見られない。
②めっき厚さが250μmを超えると感度低下が大きくなるため、適切な感度補正が必要
と記載されていますので参考にして下さい。
建築鉄骨で使用される溶融亜鉛めっきの仕様HDZ55の付着量の下限値が550g/m2なので、めっき
膜厚は、76μmに相当します。この下限値近傍であればほとんど問題ないと考えられますが、念
のためめっき膜厚を測定の上、感度調整をすることが望ましいと考えます。
溶融亜鉛めっき膜厚と超音波探傷感度低下量
出典:(一社)日本建築学会_鋼構造建築溶接部の超音波探傷検査規準・同解説、2008
日建連/鉄骨専門部会
A-4-10
鉄骨工事
Q&A集
製品検査
養生方法
制定
2012年9月1日
改訂
2016年7月1日
Q. 柱に取付くブラケットの角のつぶれを防止する方法は?
A.
かつて、鉄骨製作工場の工場内の床は土、砂利敷きの場合が多かったのですが、近年では土間
コンクリートなどが多くなりました。その結果、作業環境は良くなりましたが、製品が直に置かれる
と角がつぶれたり、デッキ受けが痛むといったことが起きるようになりました。このようなことを防ぐ
ために、枕木を敷く、あるいは角部保護冶具の利用が望ましいと考えます。
鉄骨製品がどのように扱われているかは、その工場の品質管理状況を評価する項目の一つです。
下の写真にあるように市販されている製品もありますが、残材を利用するなど工夫している工場も
あります。
架台が鉄骨なので、製品のウェブが
曲がることが多い。
鋼板の残材(貫通孔を抜いた残材
など)を利用した保護冶具
既製品の保護冶具
日建連/鉄骨専門部会
A-4-11
鉄骨工事
Q&A集
製品検査
社内検査と受入検査
制定
2012年8月1日
改訂
2016年7月1日
Q. 社内検査と受入検査の違いは?
A.
それぞれの内容について説明します。
(1) 社内検査(自主検査)
鉄骨製作会社(ファブリケーター)が、加工の各段階で自主的に行う検査で、
①設計品質を満足していることを発注者に保証するため
②自主管理を行い、品質の維持・向上を図るため
検査要領書・社内標準によって規定された検査項目・検査方法に従って実施し、加工過程の部品
あるいは製品が設計品質を満足しているか否かを判定します。
(2) 受入検査
施工者(ゼネコン)が、工場製作が完了した部材が設計図書の要求品質を満足し、工作図どおりに
製作され、建方等の現場施工に問題がないかを最終的に判定する目的で行います。受入検査で
の検査項目は、一般的に、
寸法精度検査、取り合い部検査、外観検査、溶接部の内部欠陥検査、スタッド溶接部検査、付属
金物類検査、出来高検査等が挙げられます。
工場製作
計画
承認
工
場
審
査
承諾
加
工
組
立
溶
接
社内(
自主)
検査
現
寸
図
作
成
社内(
自主)
検査
鋼
材
発
注
鋼材の受入検査
工
作
図
作
成
建
入
れ
検
査
現
場
搬
入
現
場
建
方
製
品
搬
出
出典:(一社)日本鋼構造協会_建築鉄骨品質管理機構「建築鉄骨の基本」
日建連/鉄骨専門部会
建
入
れ
本
締
め
検
査
溶
接
部
検
査
)
製
作
工
場
選
定
中
間
検
査
製品検査
施工者
設
計
図
検
討
現
寸
検
査
中間検査 行(政
承認
設
計
受入検査
設計者・
工事監理者
鉄
骨
製
作
会
社
現場施工
鉄
骨
工
事
完
了
A-4-12
鉄骨工事
Q&A集
製品検査
第三者検査
制定
2012年8月1日
改訂
2016年7月1日
Q. 第三者検査会社の発注・契約は誰が行うのか?
A.
一般的には、第三者検査会社の発注、契約は、施工者が行います。
下図に、検査会社の発注・契約形態の関連図を示します。
「検査会社A」が行う検査を一般に「第三者検査」と称しています。
「検査会社B」が行う検査は、鉄骨製作工場の社内検査(自主検査)です。
「検査会社C」が行う場合もありますが、ほとんど採用されていません。
注意すべき点として、検査会社AとBを混同しないことです。AとBが同一の会社では、検査として
の意味が無くなります。
検査
発注
建築主=工事監理者
報告
検査会社C
建築全体発注
検査発注
契約
施工者
(ゼネコン)
鉄骨発注
実施
鉄骨製作工場
(自社内で検査できない場合)
検査会社A
報告
実施
検査発注
検査会社B
報告
検査会社の発注・契約形態
出典:鉄骨工事管理責任者講習テキスト (毎年発行 建築鉄骨品質管理機構)
日建連/鉄骨専門部会
A-4-13
鉄骨工事
Q&A集
製品検査
受入検査
制定
2014年6月1日
改訂
2016年7月1日
Q. 工場の社内UT検査で不合格となり補修した箇所について、施工者へ報告する必要があるか?
A.
鉄骨製作工場の社内検査(自主検査)は加工の各段階で自主的に行う検査で
① 設計品質を満足していることを発注者に保証するため
② 自主管理を行い、品質の維持・向上を計るため
に行うものです。
そして鉄骨製作工場は社内検査(自主検査)不合格箇所については補修し、補修後の検査で合格
を確認する必要があります。
一方、受入検査は、施工者が鉄骨製品を受け入れる際に、実施する検査をいいます。
施工者は、社内検査が完了した製品に対して受入検査を実施し、これに合格したものを受け入れ
します。
従って、鉄骨製作工場は、社内検査(自主検査)における不合格箇所を施工者へ報告する必要
はありません。但し、補修方法については、製作要領書に記載させ、工事監理者の承認を得ておく
必要があります。
なお、JASS6では、超音波探傷検査のロットの処置に関連して、「・・いずれの検査でも検出され
た不合格の溶接部は、すべて補修を行い再検査する」としています。
受入検査での超音波探傷検査は一般的に抜取検査になりますので、社内(自主)検査時に不合
格となって補修した箇所を受入検査時に検査するとは限りません。例外として、不合格箇所が補
修されたことを確認するため、製品検査時に社内検査(自主検査)不合格補修箇所を確認する場
合もあります。
本Q&A
A-4-11 「社内検査と受入検査の違いは?」
A-4-12 「第三者検査会社の発注・契約は誰が行うのか?」
も参考にして下さい。
出典 :(一社)日本建築学会_建築工事標準仕様書 JASS6 鉄骨工事、2015
(一社)日本建築学会_鉄骨工事技術指針・工場製作編、2007
日建連/鉄骨専門部会
A-5-1
鉄骨工事
Q&A集
さび止め塗装
塗布部位
制定
2011年7月1日
改訂
2016年7月1日
Q. 大梁のデッキ掛り代部分には、さび止め塗装を施さなくてもいいのか?
A.
特に見え掛りとなる場合や、湿度が高い環境となる部位等においては、フランジ天端のデッキ掛
かり代部分のみさび止めを行うことは、建物の使用を開始してからフランジ角部からのさびの発生
を防止する対策として有効です。
梁フランジのデッキ掛かり代を防せい塗装した例
梁フランジのデッキ掛かり代を防せい塗装した例
日建連/鉄骨専門部会
A-5-2
鉄骨工事
Q&A集
さび止め塗装
溶射
制定
2012年9月1日
改訂
2016年7月1日
Q. さび止めに使われる溶射とは?
A.
溶射とは、溶射材と呼ばれる材料を加熱して母材の表面に吹き付け、皮膜を形成する表面加工
処理法の一種です。溶射材には、亜鉛・アルミニウム・鉛などの金属の他、プラスチックなどを用
いることがあります。使用する溶射材の種類によっては、防せい防食の他にも、耐摩耗、電気絶
縁などの性能を期待する場合もあります。溶射材を加熱する熱源の違いによって様々に分類され
ますが、詳しくは日本溶射工業会のホームページなどをご覧下さい。(http://www.jtsa.jp/)
様々な溶射工法の中で建築鉄骨でよく使われるのは、アーク溶射法を改良した常温金属溶射工
法です。溶射材にアルミニウムと亜鉛を混合して使用し、アルミニウム・亜鉛擬合金被膜を形成さ
せる工法などがその例です。これらの工法のメリットとしては、
1.現場施工が容易である
溶射装置はコンパクトなので移動性に富んでいる。
2.熱ひずみによる影響が少ない
常温に近い温度なので母材に熱による変形を生じ させない。
3.下地処理が容易である
ショットブラスト処理を必ずしも必要とはせず、従来の金属溶射工法と比較して下地処理が容易
である。
4.水素脆化がない
溶融亜鉛めっきの下地処理である、酸洗いを必要と しないので鋼材が水素を吸収しない。
5.耐久性に優れる
溶射材によっては溶融亜鉛めっきと同様に電気化学的な犠牲防食作用による防食効果が期待
できる。
などが挙げられます。溶融亜鉛めっきが適用できない形状や大きさの部材を中心に、現場施工で
高い防せい防食性能が要求される部位に採用されます。
一方、
1.封孔処理(溶射粒子間にできる隙間を埋める処理。防食効果を高めたり剥離を防止するた
めに樹脂や塗料を用いて孔埋めをする)が必要となる
2.被膜が厚すぎると剥離のリスクが高くなる
3.比較的高価である
などのデメリットもありますので注意をして下さい。
常温金属溶射の作業状況
常温金属溶射装置の構成
出典:日本溶射工業会HPなど
日建連/鉄骨専門部会
A-5-3
鉄骨工事
Q&A集
さび止め塗装
重防食塗装
制定
2011年8月1日
改訂
2016年7月1日
Q. 重防食塗装とは?
A.
「重防食塗装」に明確な定義はありません。橋梁・高速道路・送電鉄塔等の構造物は、風・雨・
雪・寒暖差等の厳しい環境にさらされるため、防せい(防食)対策なくしては存在しえないといって
もよいでしょう。こうした厳しい環境から被塗物を保護する塗装が重防食塗装と呼ばれています。
製品を長寿命化にするために、塗装を厚く塗り、長期間の防せい・防食性を保持する塗料を使用
し厳しい腐食環境に耐えるような塗装を行います。総合膜厚は 200μm以上となります。代表的
なものとしてジンクリッチペイント※1及びエポキシ樹脂系厚膜形防食塗料などがあります。
重防食塗装の工程例として鋼道路橋防食便覧から一般外面の塗装仕様C-5塗装系を下表に示
します。
重防食用塗料は粘度が高く、一度で厚く塗れるような仕様となっています。そのため、建築で通
常使用される塗料に比べて重く、タレやすくなります。
C-5塗装系
※1 多量の亜鉛(zinc)を含む塗料のこと。 顔料の金属亜鉛末(ジンクダスト)を塗膜中
に80%~90%含有し配合された高濃度、高純度亜鉛末塗料。 塗る亜鉛めっきとして開
発され、すぐれた防せい力を有し重防食塗装において欠くことのできない塗料。多くの合
成樹脂塗料の下塗りに使う。
建築では、JASS18に鉄骨製作工場にて素地調整1種(ブラスト処理)を施した後に、有機ジンク
リッチプライマーや構造物用さび止めペイントを下塗りし、工場または現場にて耐候性に優れる2
液形ポリウレタンエナメル、アクリルシリコン樹脂エナメルあるいは常温乾燥形ふっ素樹脂エナメ
ルを上塗りする塗装仕様が規定されています。
出典:(一社)日本鋼構造協会_重防食塗装 ~防食原理から設計・施工・維持管理・補修まで~
日建連/鉄骨専門部会
A-6-1
鉄骨工事
Q&A集
発送
多段積み
制定
2011年7月1日
改訂
2016年7月1日
Q. 多段積みの時、安全上、配慮すべき点は?
A.
多段積みの場合、固定用のワイヤーを最外端でかけると、ワイヤーを外した際、製品が崩れる可
能性があります。そのため、製品固定用のワイヤーは各段に掛ける必要があります。
製品固定用のワイヤーは各段にかける。
外すときは荷崩れが起きないように十分注意をする。
日建連/鉄骨専門部会
A-7-1
鉄骨工事
Q&A集
溶融亜鉛めっき
めっき槽
制定
2011年7月1日
改訂
2016年7月1日
Q. 溶融亜鉛めっきが可能な部材の大きさはどの程度か?
A.
めっき槽は、大きいもので長さ10m、幅1.5m、深さ2.0m程度で、めっき会社によって異なります。
しかし、浸漬可能な部材の大きさはめっき槽の大きさに対して各寸法とも小さく、特に高さについて
はめっき槽底部に堆積するドロス(亜鉛鉄化合物の堆積物)の深さを考慮して、めっき槽の深さか
ら400mm程度を減じる必要があります。標準的なめっき槽の大きさに対して許容される部材の寸
法を下図に示します。なお、寸法検討の際には、クレーンによる吊り下げの姿勢を想定する必要
があります。めっき槽にギリギリのサイズの場合は、めっき槽内の不純物が大量に付着する不具
合が生じます。
また、溶融亜鉛めっきは、一度漬けが基本です。採用予定工場のめっき槽の大きさを考慮して、部
材を分割する処置が必要です。二度漬けは外観や性能が悪くなるだけでなく、反転時に危険作業
を伴う上に、ひずみやねじれが生じるおそれがあります。
さらに、めっき工場のクレーンの吊り能力が小さい場合は、部材重量と吊り能力の確認が必要とな
ります。部材を小さく分割すると接合部が増える可能性がありますので、その場合は必ず設計者
の承認を得るようにして下さい。
めっき槽
底にドロスが
溜まる
吊り下げ姿勢を考慮した部材の幅と高さ
めっき材の許容最大寸法
(寸法は一例)
はね出しの長い飛行機梁(一般には1.5mを超える場合)はH形鋼のウェブを水平にしてめっきされ
ることが多く、めっき溜まりやたれ、かすびき等の外観不良やひずみが発生しやすい形状です。
1.5m
部材のせい 3.0m
1.5m
めっき槽深さ 2.0m
二度漬けの例
飛行機梁のめっきの例
なお、溶融亜鉛めっき会社のめっき槽の大きさは、(一社)日本溶融亜鉛鍍金協会のホームペー
ジに掲載されています。
出典:(一社)日本鋼構造協会_建築用溶融亜鉛めっき構造物の手引き 《改訂版》
日建連/鉄骨専門部会
A-7-2
鉄骨工事
Q&A集
溶融亜鉛めっき
材質変化
制定
2011年7月1日
改訂
2016年7月1日
Q. 溶融亜鉛めっきによる鋼材材質の変化は?
A.
建設省告示第2464号において、500℃以下の加熱であれば、鋼材の機械的性質などを加工後に
確認する必要はないとされています。鋼材に溶融亜鉛めっきを施す場合のめっきの付着量は、
550g/㎡(≒めっき膜厚76μm)以上とすることが一般的ですが、JIS認証を受けためっき工場では
下記の工程を守って行われ、また溶融亜鉛浴の温度は450℃程度ですので、めっきによって材質
が損なわれることはないと考えて問題ありません。
しかし、炭素、ケイ素、マンガンなどを多く含む鋼材、570N/㎜2級を超える鋼材、高力ボルト、ばね
鋼などは、めっき前処理工程の酸洗中に水素を吸収しやすく、水素脆性のおそれがあることから、
除せい(錆)はブラスト処理などの機械的方法で行わなければならないことに注意が必要です。こ
れらの特殊な鋼材を使用する場合は、事前にめっき会社と協議する必要があります。
査
製品出荷
検
仕 上 げ
却
洗
仕上げ工程
冷
酸
脂
フラックス処理
脱
素材受入れ
めっき工程
溶融亜鉛めっき
前処理工程
ブラスト
・脱脂
鋼の表面に付着した油脂類(機械油や防せい油等)を除去する作業。一般に苛性ソーダ等に
よるアルカリ脱脂法が採用されています。
・酸洗
溶融亜鉛めっきの障害となる鋼の表面に付着した鉄酸化物を除去する作業。さびやミルス
ケールを除去する場合、通常は塩酸や硫酸が使用されますが、その他に硝酸、フッ酸なども
使用されます。
・フラックス処理
鉄と亜鉛をスムーズに反応させるための表面処理をする作業。一般に塩化亜鉛アンモニウム
または塩化アンモニウムが使用されます。
出典:(一社)日本建築学会_鉄骨工事技術指針・工場製作編、2007
日建連/鉄骨専門部会
A-7-3
鉄骨工事
Q&A集
溶融亜鉛めっき
裏当て金
制定
2016年7月1日
改訂
2016年7月1日
Q. 柱梁接合部の完全溶込み溶接に、裏当て金を用いて片面溶接する部材を溶融亜鉛めっきする
場合の留意点は?
A.
JASS6では、溶融亜鉛めっきを施す柱梁接合部などの完全溶込み溶接部については、裏はつりを
する両面溶接で、かつ、その溶接部両端には鋼製エンドタブを用いず溶接後に端部をはつり、回
し溶接を行って施工することを規定しています。ただし、工事監理者の承認を受けることによって、
裏当て金を用いた片面溶接で施工できるとされています。
裏当て金を用いる場合は、ぜい性破壊の起点とならないように下図に示す溶接不可の部分が規
定されています。この状態で溶融亜鉛めっきを行うと、この溶接不可部分の隙間がめっきされない
ため、さび汁が出る不具合が生じることになります。
従って、やむを得ず裏当て金を用いた完全溶込み溶接部のディテールを採用する場合は、裏当て
金に母材を全線隅肉溶接する必要があります。ただし、ぜい性破壊の起点にならないか、工事監
理者と協議して、承認を得ることが必要です。
鋼製エンドタブ
溶接不可によるすき間
フランジ
すき間
裏当て金
溶接不可によるすき間,5mmを超える長さ
溶接端部に固形エンドタブを使用した
場合に発生するすき間
裏当て金・鋼製エンドタブの組立て溶接要領
JASS6で規定されている溶接不可部分
出典:(一社)日本建築学会_鉄骨工事技術指針・工場製作編、2007
日建連/鉄骨専門部会
A-7-4
鉄骨工事
Q&A集
溶融亜鉛めっき
制定
仮設ピース
2016年7月1日
改訂
2016年7月1日
Q. 仮設ピースが取り付いた部材を溶融亜鉛めっきする際の留意点は?
A.
仮設ピースや取付ける溶接部に隙間があると隙間部分がめっきされずに、さびが発生する可能性
があります。隙間のない仮設ピースを使用し、溶接端部は隙間のないように回し溶接をする必要
があります。
例えば次のようなピースに留意しましょう。
仮設ピースがスリット型に
なっている
2面溶接
全周溶接
通常のネットフックでは、
回し溶接がしにくい
ピース類の溶接
通常の吊りピースのようにスリット型になったものは使用しません。また、丸鋼を曲げたネットフック
は曲げ部に割れが発生したり回し溶接がしにくいため、写真のようなプレート型のものを使用する
とよいでしょう。
曲げ加工品は溶融亜鉛めっき後に大きく変形する場合があるので、事前にめっきし変形がないこ
とを確認する必要があります。また、仕上げ部材取付けガセットや屋根の母屋受けのように長い
部材は長さを1m以下となるようにし、高さも10cm以下とすることが望ましいです。
長さ1m以下
平板
高さ10cm以下
長さ1m以上の場
合はすき間を設け
ること
高さが10cm以上の場合は数か
所の孔を設けること
ネットフックの例
ガセットプレートの取付け要領
出典:(一社)日本建築学会_鉄骨工事技術指針・工場製作編、2007
日建連/鉄骨専門部会
A-7-5
鉄骨工事
Q&A集
溶融亜鉛めっき
めっき抜き孔の形状
制定
改訂
2016年7月1日
2016年7月1日
Q. めっき構造物のめっき抜き孔は、どのような形状が良いか?
A.
鉄骨工事技術指針・工場製作編では、リブ・スチフナなどに設けるめっき抜き孔として、円形孔が
規定されています。大梁に取付く小梁のガセットプレートやリブプレートのようにH形鋼の両面に連
続して溶接される部材では、写真のようにめっき溜まりやたれが生じやすくなるため、スカラップ形
状が望ましいと思われます。ただし、大梁などでフランジ板厚が厚く、ガセットプレートやリブプレー
トなど板厚が薄い場合は、板厚差によるめっき割れが発生する可能性があります。その対策とし
て、ガセットプレートやリブプレートなど板厚を厚くすることが望まれます。(本Q&A A-7-20 参照)
めっき溜まり
ただし、柱梁接合部のような地震時に大きな荷重を受ける部位は、載荷試験の結果からスカラッ
プ形状ではなく、ノンスカラップ形状で円形孔にします。
※ めっき抜き孔 : 溶融亜鉛・空気流出入用の孔を指す
日建連/鉄骨専門部会
A-7-6
鉄骨工事
Q&A集
溶融亜鉛めっき
ダイアフラムの孔
制定
2016年7月1日
改訂
2016年7月1日
Q. 構造用鋼管を溶融亜鉛めっきする場合、ダイアフラムにはどんな孔が必要か?
A.
冷間成形角形鋼管のような閉鎖されている断面における通しダイアフラムに必要な孔の大きさは、
JIS H 8641の解説では断面積の25%以上、鉄骨工事技術指針では1/3以上が必要としています。
この孔が小さい場合には、空気の抜けや亜鉛の流出が容易にできないために「不めっき」や「めっ
き溜まり」の外観不良が発生します。また、めっきの浸漬速度が遅い(沈みにくい)および引き上げ
速度が遅い(上げにくい)ために「歪み」や「やけ」の現象が発生しやすくなります。
構造設計図に示されている開口で不足する場合は、4者間(設計者、施工者、鉄骨製作会社、
めっき会社)と協議して開口の大きさを決めます。このような場合、取付く梁フランジからの応力の
処理のため、構造的に板厚をアップしないといけない場合が生じるので、注意が必要です。
また、下図のように通しダイアフラムの場合は四隅の開口を円形孔としますが、内ダイアフラムの
場合は、角部に溶接しないようにスカラップ形状とすることが望ましいです。
通しダイアフラム
開口部
開口部
通しダイアフラム形式
内ダイアフラム形式
特にトッププレートでスラブがない場合は、塞ぎプレートを溶接する必要がありますので、トッププ
レートは不めっき処理とします。スラブがある場合は、必ずしも不めっきとする必要はなく、めっき
後に簡易的な孔を塞ぐ処理をすればよいと考えます。
出典:(一社)日本建築学会_鉄骨工事技術指針・工場製作編、2007
日建連/鉄骨専門部会
A-7-7
鉄骨工事
Q&A集
溶融亜鉛めっき
冷間成形角形鋼管
制定
2011年7月1日
改訂
2016年7月1日
Q. 冷間成形角形鋼管を溶融亜鉛めっきする場合の注意点は?
A.
冷間成形角形鋼管を溶融亜鉛めっきした場合には、角部内面割れが発生する可能性があります。
原因についての発生メカニズムは完全には解明されていませんが、以下の要因が過去の事例や、
実験から明らかになっています。
・鋼材に関する要因
製造履歴、特に熱制御の有無に影響される化学成分、機械的性質、結晶組織、結晶粒度、
結晶形状
・曲げ加工に関する要因
角部曲げ半径(告示第2464号では外側曲げ半径10t以上であるが、冷間成形角形鋼管では角部
の曲げ半径は2.5t~3.5t)と小さいため、角部内面の圧縮塑性ひずみによる結晶形状の変形、
引張残留応力
・めっき施工に関する要因
めっき前の酸洗処理に影響される水素吸蔵量、めっき浸漬条件に影響される発生熱応力、部材
の形状と組合せ部品の板厚差に影響される発生熱応力
つまり、熱応力、溶接部の残留応力および冷間成形による残留応力により、角部内面に割れが発
生することがあります。傾向として、ダイアフラムやベースプレートと溶接接合した部分は割れにくく、
現場溶接部のように素管を切断しただけの形状の場合に角部内側の残留応力が引張となる部分
にめっき割れが発生しやすくなります。
平行部が外側に膨らみ断面変形
角部内面に引張応力発生
割れ
角形鋼管の割れ発生位置
と断面変形想定図
角形鋼管のめっき割れ事例
変形防止拘束材
現場溶接部
対策としては、鋼管角部に不めっき処
理を施す、または変形防止拘束材を
取り付けることが内面割れ防止に効果
があることが報告されています。
角部の内外面
不めっき処理
不めっき処理
変形防止拘束材
出典:(一社)日本建築学会_鉄骨工事技術指針・工場製作編、2007
(一社)溶接学会_建築鉄骨における溶融亜鉛めっき割れの発生とその防止法、2007
日建連/鉄骨専門部会
A-7-8
鉄骨工事
Q&A集
溶融亜鉛めっき
不めっき処理
制定
2011年7月1日
改訂
2016年7月1日
Q. 不めっき処理が必要な部位と、その方法は?
A.
不めっき処理が必要な部位を以下に示します。
①めっき後に溶接する接合部
これは、亜鉛蒸発による溶接施工上の障害を排除し、溶接熱による亜鉛層の損傷を回避する
ために行います。
②高力ボルト接合部(溶融亜鉛めっき高力ボルト接合部を除く部位)
不めっき処理方法を以下に示します。
①エポキシ樹脂塗料などの耐熱耐酸塗料を塗布する方法(メーカー指定の膜厚と乾燥時間を
確保することが重要)
②マスキングテープ(耐酸シールテープ)を貼付する方法
めっき浸漬時間が長い場合は、いずれの場合でも不めっきが不完全となることがあるので、事前
にめっき会社との協議が必要です。
また、不めっき剤は塗布後充分な乾燥時間を必要としますので、めっき工場に搬入される前に不
めっき処理を設計者、施工者、ファブと協議の上、塗布しておきます。
めっき後の不めっき処理部が不完全な場合は、残存塗料や付着亜鉛を完全に除去する必要があ
りますので、不めっき処理範囲を少なくするほうがよいです。
不めっき
塗料を塗布
不めっき
塗料を塗布
不めっき塗料の塗布例
めっき
水切りプレート
不めっき処理して
高力ボルトを
使用する
めっきして
溶融亜鉛めっき
高力ボルトを
使用する
高力ボルト接合部の正しい事例
高力ボルト接合部の不具合事例
不めっき処理は少ない方がよい。溶融亜鉛めっき高力ボルトを使
用しているので、接合部付近はめっきをしておく必要があった。
(この場合は上図の右側とすべきであった)
出典:(一社)日本建築学会_鉄骨工事技術指針・工場製作編、2007
日建連/鉄骨専門部会
A-7-9
鉄骨工事
Q&A集
溶融亜鉛めっき
溶接
制定
2011年7月1日
改訂
2016年7月1日
Q. 溶融亜鉛めっきした鋼材を溶接する場合、そのまま溶接することは可能か?
A.
原則として、溶融亜鉛めっき上に溶接することはできません。溶融亜鉛めっきされた鋼材の溶接時
には亜鉛の融解、蒸発現象が伴います。この亜鉛蒸気によりブローホールが発生しますので、溶
接金属の引張強度等の機械的性質が劣化し、健全な溶接部を得る事が難しくなると共に、溶融亜
鉛めっき皮膜も損傷を受けて、耐食性が著しく低下します。また、その時発生する亜鉛蒸気は空気
中の酸素により微細な酸化亜鉛となり、有害な多量の白煙を発生しますので対策が必要です。
やむを得ず溶接する場合は、まず溶接部近傍の亜鉛をグラインダーで除去する必要があります。
鉄の地肌まで達したかは、グラインダー切削時の火花で判断できます。
溶融亜鉛めっき用の溶接材料も販売されていますが、建築鉄骨で使用されるHDZ55(付着量550g
/㎡以上)といった溶融亜鉛めっき量の多い場合にそのまま溶接する場合には、試験的に溶接して
溶接性や欠陥発生の有無、溶接部の性能(強度)を事前確認しておく必要があります。
日建連/鉄骨専門部会
A-7-10
鉄骨工事
Q&A集
溶融亜鉛めっき
コンクリート付着性
制定
2016年6月1日
改訂
2016年7月1日
Q. 屋上工作物の根巻き部分も溶融亜鉛めっきをしても問題はないか?
付着強度(N/㎟)
A.
根巻き部分の鉄骨に関して溶融亜鉛めっきを行う際に考えられる問題としては、コンクリートとの
付着性が挙げられますが、本Q&A集のA-7-11で示されている通りコンクリート中に発生する腐食
生成物のコンクリートへの拡散により、溶融亜鉛めっきとコンクリートとの付着性には問題がなく、
むしろ良いことが研究報告されています。
溶融亜鉛めっき鋼材とコンクリートの付着性能に関して、『鉛と亜鉛』誌(日本鉱業協会発行:2003
年1月号)に鋼材とコンクリートの付着強度に関する研究報告があり、溶融亜鉛めっき鋼材の方が
付着強度が高いという報告がなされています。
試料名
試料名と付着強度の棒グラフ
また構造的に付着力に類する応力伝達を期待する場合は、頭付きスタッドなどのシアコネクターを
配置することが一般的であり、シアコネクターを配置しない場合は根巻き頂部における支圧力に
よって応力伝達を期待している場合が殆どです。
一方、根巻き部分の鉄骨に不めっき処理を行い、溶融亜鉛めっきを行うことは可能ですが、不めっ
き範囲が広い場合は溶融亜鉛めっき後のめっきの除去に手間がかかります。
構造性能的には問題がないので、溶接
接合部を除く範囲は溶融亜鉛めっきを
構造的にシアコネクターを溶接すること
行った方が、耐久性・施工性が良いと考
が求められる場合は、めっきに先行して
えられます。また、シアコネクターが取り
シアコネクターを取付ける
つく場合はシアコネクターを先行して溶
接した後にめっきを行っても問題は発生
しません。
出典:『鉛と亜鉛』誌 (日本鉱業協会発行:2003年1月号)
日建連/鉄骨専門部会
A-7-11
鉄骨工事
Q&A集
溶融亜鉛めっき
コンクリート耐食性
制定
2016年6月1日
改訂
2016年7月1日
Q. 溶融亜鉛めっき鋼材をコンクリートに埋め込んでも問題無いか?
A.
溶融亜鉛めっきされた鋼材は、コンクリート中でも防食性を発揮します。
打設直後のコンクリート中のカルシウムを多く含む強アルカリ環境中では一旦溶融亜鉛めっきの
表面は溶解しますが、カルシウムと反応して溶融亜鉛めっき表面に安定な保護性被膜(CaHZn :
カルシウムヒドロキシジンケート)が生成することでアルカリ環境でもほとんど溶解しなくなり、下地
の亜鉛皮膜を保護します。また、この生成物は微細な粉状の物質で、 ‘コンクリート/鉄界面’で
の細孔空間が埋められて、塩化物の様な腐食性の高い物質の侵入を防ぐために防食性が高く、
良好な密着性が保持されていると言われています。
近年、コンクリートの中性化による鉄筋の腐食が問題になっていますが、この中性化した場合にも
溶融亜鉛めっきした鉄筋は高い防食効果が期待されます。
また、海外では上記の内容が古くから研究されており、オペラハウス(オーストラリア)やベニカル
ロ魚市場(スペイン)、タッパンジー橋(アメリカ)等、多くの建築物でコンクリート中に溶融亜鉛めっ
き鉄筋が使用されています。
コンクリート埋設
黒鉄筋
亜鉛めっき鉄筋
初期
(アルカリ環境)
鉄筋表面に不動態皮膜
を形成し、さびない
めっき表面に難溶性の生成物
を形成し、防食性を発揮する。
中期
(中性化)
コンクリートの微細な空隙から
水分が侵入。さびが発生。
コンクリートの微細な空隙から
水分が侵入。亜鉛めっきの高い
防食効果を発揮する。
後期
(腐食性物質の
侵入)
鉄さび(赤さび)が多く発生。
粒子が粗大なため、コンクリートを
押し上げ、コンクリートに
大きな割れが発生する。
亜鉛めっきの高い防食性を発
揮。白さびが発生しても、粒子が
微細であるため、コンクリートの
空隙を埋めて、防食性を発揮。
コンクリートが割れにくい。
出典:国際亜鉛協会(IZA) 「溶融亜鉛めっき鉄筋コンクリートへの投資」(2010)
(一財)日本鉱業協会 鉛亜鉛需要開発センター
日建連/鉄骨専門部会
A-7-12
鉄骨工事
Q&A集
溶融亜鉛めっき
異種金属接触腐食
(電食)
制定
2011年7月1日
改訂
2016年7月1日
Q. 溶融亜鉛めっき鋼材と他の金属部材を組合せて使用できるか?
A.
溶融亜鉛めっき鋼材と他の金属を組み合わせて使用するときに最も懸念される問題は、イオン化
傾向の違いにより生じる異種金属接触腐食(ガルバニック腐食)です。一般的にはこの現象を電食
と呼んでいますが、JIS Z 0103 - 1996「防せい防食用語」で電食は、迷走電流腐食と同義語と定
義されています。
溶融亜鉛めっき鋼材と異種金属接触腐食を起こす例として、裸鋼材やステンレス鋼材が挙げられ
ます。溶融亜鉛めっき鋼材をステンレスボルトで締め付けると異種金属接触腐食による不具合が
発生する可能性がありますので注意して下さい。また、アルミニウムや裸鋼板でも同様の不具合
が発生する可能性があります。(一社)日本溶融亜鉛鍍金協会のホームページによる10年間の試
験結果(溶融亜鉛めっきの腐食速度と腐食量)を次に示します。
この試験によると、特に都市・工業地域(横浜)では異種金属と接触した境界部の溶融亜鉛の腐
食が促進される傾向があり、田園地域(奈良)でもこの傾向は少ないながら生じています。
異種金属接触腐食には、次の対策が考えられます。
①同一材料を使う
② 塗装により絶縁する
③樹脂材料により絶縁する
鋼材に対する溶融亜鉛めっきには、亜鉛の皮膜によって鉄の表面を保護する保護皮膜作用の他
に、万が一溶融亜鉛めっき表面に傷ができてしまった場合も、イオン化傾向の違いによる電気化
学的な犠牲防食作用によって鉄を守るという効果があります。
異種金属接触腐食(bimetallic corrosion , galvanic corrosion):
異種金属が直接接続されて、両者間に電池が構成されたときに生じる腐食。
ガルバニック腐食ともいう。
電食(stray current corrosion):
迷走電流腐食と同義語。
迷走電流腐食(stray current corrosion):
正規の回路以外のところを流れる電流によって生じる腐食。
出典: (一社)日本溶融亜鉛鍍金協会 ホームページ
日建連/鉄骨専門部会
A-7-13
鉄骨工事
Q&A集
溶融亜鉛めっき
めっきの種類
制定
2016年6月1日
改訂
2016年7月1日
Q. 溶融亜鉛めっき、金属溶射、高濃度亜鉛末塗装の特徴は?
A.
鉄骨造構造物では、防せい(錆)し耐候性を向上させるために、溶融亜鉛めっきを施します。
・溶融亜鉛めっきとは、高温で溶かした亜鉛に鋼材を浸し、表面に亜鉛皮膜(合金層)を形成する
技術です。合金層を形成しているため密着性がよく剝れにくく、耐キズ性も高く、溶融亜鉛めっき
の錆を防ぐ保護被膜作用と鉄の腐食を防ぐ犠牲防食作用によりさびを防ぎます。
・金属溶射とは、鋼材より卑な電位の金属(亜鉛、アルミニウム、それらの合金など)を電気または
燃焼エネルギーによって溶融し、圧縮空気などで微細化して吹付けて被膜を形成させる表面被
膜法です(防食溶射協同組合ホームページより)。ブラスト等の素地調整が有効ですが、ブラスト
なしで粗面化処理をする工法もあります。
・高濃度亜鉛末塗料とは、乾燥塗膜中の亜鉛含有率を95%以上含有することにより、防せい(錆)
効果があると言われています。高温で加工処理しないことから、常温亜鉛めっきと呼ばれること
があります。ただし、耐久性の向上にはブラスト等の素地調整が重要です。
それぞれの特徴(優位性)の例を次の表に示します。
溶融亜鉛めっき
金属溶射※
高濃度亜鉛末塗料※
工期
○
○
△
密着性
◎
△
△
耐食性
◎
○
△
耐キズ性
◎
△
△
コスト
◎
△
○
現場施工性
―
△
○
※ 素地調整により異なる
日建連/鉄骨専門部会
A-7-14
鉄骨工事
Q&A集
溶融亜鉛めっき
めっき前検査
制定
2016年6月1日
改訂
2016年7月1日
Q. 溶融亜鉛めっき前の検査の留意点は?
A.
めっき前の検査では、JASS6の記述に加えて、次の点に留意が必要です。
・溶接部にピットや割れがないか、溶接部のスラグやスパッタの除去を行っているか確認します。
不十分な場合はめっきが付着しない不具合が生じます。フラックス入りワイヤを使用するとスラ
グ除去が容易です。
・高力ボルト孔にまくれやばりがないことを確認します。不十分な場合は、めっき後に亜鉛たれが
孔縁に生じて摩擦面が密着しない不具合が生じます。
ボルト孔回りのバリ
を除去しないでめっ
きをしたため、摩擦
面に不具合が 生じ
ている
ガセットの隅肉溶接
部のスラグ清掃が不
十分なのが原因で
めっきが付着しな
かった
スラグ処理不良で不めっきとなった例
ボルト孔回りのバリ除去不良の例
・不めっき処理が図面通りの位置に、適切な方法で施工されていることを確認します。
・金絵符が短いと本体に付着するので、ねじりをつけて離しておきます。
金絵符
不適切な不めっき事例
ねじりがなく、金絵符が本体に付着してしまう
・全周回し溶接が十分に行われているかを確認します。不十分な場合は、そこからさびが発生し
不めっきを生じます。
・重ね合わせ部がある場合は、適正な面積範囲(200㎜x200㎜以下)で全周回し溶接されており、
溶接前に内面の水分(スパッタ防止剤等)が残っていないことを確認します。全周回し溶接され
ていない場合は、隙間からさびが発生する不具合が発生し、また水分が内面に介在している場
合は、製品が変形・破損してしまうおそれがあります。
・めっきの抜き孔が適正な位置に適正な形状・大きさで開けられていることを確認します。孔位置
や大きさが適正でないと、不めっきや亜鉛だまり、製品変形の可能性があります。
※ めっき抜き孔 : 溶融亜鉛・空気流出入用の孔を指す
日建連/鉄骨専門部会
A-7-15
鉄骨工事
Q&A集
溶融亜鉛めっき
めっき割れ検査
制定
2011年7月1日
改訂
2016年7月1日
Q. 溶融亜鉛めっき割れの検査方法は?
A.
写真に示すスカラップ周辺や応力集中が発生しやすい箇所に、めっき割れが発生する場合があり
ます。基本は目視検査ですが、微細な割れは目視では発見できません。したがって構造的に重要
な部材(例えば、柱・梁接合部等)に関しては鉄骨製作工場とあらかじめ協議しておき、浸透また
は磁粉探傷、超音波探傷などの非破壊検査方法でチェックをします。検査の場所は、めっき工場
あるいは鉄骨製作工場となるので、それぞれ非破壊検査有資格者と検査機器を準備しておく必要
があります。
めっき工場から直接現場へ発送する場合は、めっき工場で検査することになりますが、めっき工場
には非破壊検査技術者が在籍していないことが多いので、その場合は鉄骨製作工場の技術者が
行う必要があります。
めっき割れの指示模様
めっき割れの指示模様
浸透探傷試験で浸透液が
「赤色」に現像されたものです
浸透探傷によるめっき割れの検査例
(通常は、目視検査で十分です)
出典:(一社)日本建築学会_建築工事標準仕様書 JASS6 鉄骨工事、2015
(一社)日本建築学会_鉄骨工事技術指針・工場製作編、2007
(一社)日本鋼構造協会_建築用溶融亜鉛めっき構造物の手引き 《改訂版》
日建連/鉄骨専門部会
A-7-16
鉄骨工事
Q&A集
溶融亜鉛めっき
めっき後の検査
制定
2016年6月1日
改訂
2016年7月1日
Q. 溶融亜鉛めっき後の検査項目・方法は?
A.
溶融亜鉛めっき後の検査については、JASS6により寸法精度検査・外観検査を行います。寸法精度
検査では曲がり、ひずみ(A-7-20)、ふくれ(A-7-22)やねじれも確認をする必要があります。
外観検査では、下記の項目がありますが、基本的に目視検査です。
・不めっき
局部的に溶融亜鉛めっき皮膜がなく、素材面の露出しているものをいいます。局部的な欠陥が
点在する場合、ワイヤーブラシで入念に素地調整を行った後、高濃度亜鉛末塗料(金属亜鉛末
を90%以上含むもの)を2回以上塗布します。欠陥が広範囲の場合は再めっきを検討しますが、
再めっきは強度の低下やめっき割れなど、不具合が生じる可能性があるので注意が必要です。
・きず
めっき作業中、めっき用具と溶融亜鉛めっき表面とが接触した痕をいい、その発生位置、大きさ
及び深さにより有害性を判断し、有害と判断された場合は、上記不めっきと同様の処置をします。
・かすびき
溶融亜鉛めっき表面に亜鉛酸化物又はフラックス残さが付着したものをいい、著しく付着してい
る場合は、やすりなどで除去します。
・摩擦面の処理(A-7-12の溶融亜鉛めっき高力ボルトを参照)
摩擦面のたれは平滑に除去され、決められた方法で適切に処理されていることを確認します。
・開先面(不めっき処理部)のめっき付着
開先面(不めっき処理部)にめっき付着がないか確認します。めっき付着があった場合は、やすり
またはグラインダーで完全に除去します。
・割れ
残留応力の多い素材や応力集中を受けやすい部位(スカラップ周りや冷間成形角形鋼管の角
部内側など)では、めっき割れが発生する場合があります。基本は目視検査ですが、超音波探傷、
浸透探傷または磁粉探傷などの非破壊検査方法でチェックすることもあります。
・めっき溜まり(A.7-24の「めっき溜まり」を参照)
構造上ボルトが締められない問題のあるめっき溜まりがないかを確認します。
・その他の外観
やけ、白さび、汚れ等はめっきの耐食性に問題はないが、製品の使用上支障のある場合は、設計
者、施工者、ファブ、めっき会社の4者間の協議により適切な処置を行う必要があります。
・その他の検査
付着量・密着性については、JIS H 8641に規定されていますが、特記がない限り省略しています。
付着量は膜厚計により確認でき、付着量550g/㎡では76μm以上の膜厚が必要となります。
出典: (一社)日本建築学会_建築工事標準仕様書 JASS6 鉄骨工事、2015
(一社)日本建築学会_鉄骨工事技術指針・工場製作編、2007
(一社)日本鋼構造協会_建築用溶融亜鉛めっき構造物の手引き 《改訂版》
日建連/鉄骨専門部会
A-7-17
鉄骨工事
Q&A集
溶融亜鉛めっき
白さび
制定
2011年7月1日
改訂
2016年7月1日
Q. 溶融亜鉛めっき表面に、白墨の粉のようなものが付着していますが問題はないか?
A.
白墨の粉のようなものは、溶融亜鉛めっき表面が雨水等と接触して生じた白色状の亜鉛酸化物
(白さび)ではないかと思われます。白さびによる溶融亜鉛めっき皮膜の消耗はわずかで、耐食性
にほとんど影響はありません。
本来、亜鉛は鉄よりさびやすい金属ですが、溶融亜鉛めっきは大気に曝されると時間とともにめっ
き表面が徐々に酸化されて緻密な酸化亜鉛の皮膜を形成し、この緻密な酸化皮膜が水に難溶性
で大気中では非常に安定な状態であるために高い防食効果を発揮します。
従って、めっき当初の光沢ある状態は化学的に活性で不安定な状態であり、光沢を失って上記の
緻密な酸化皮膜が形成されることによって溶融亜鉛めっきは安定した状態となり、白さびが発生し
にくくなります。
『白さび』が発生しやすい主な条件は下記のとおりです。
①溶融亜鉛めっき皮膜が活性な状態である。(銀色の光沢のある状態)
②空気中の酸素が供給されにくい。(水が溜まり乾燥しにくい等)
③水分が供給される。(雨水・結露・湿度が高い等)
④腐食物質が多い環境(海岸地帯、凍結防止剤の散布等)
白さびが発生しても上記のような発生環境から解放されると次第に消滅し、通常の溶融亜鉛めっ
きと同じ外観となります。
白さびの発生状況
日建連/鉄骨専門部会
A-7-18
鉄骨工事
Q&A集
溶融亜鉛めっき
めっき光沢
制定
2011年7月1日
改訂
2016年7月1日
Q. 溶融亜鉛めっき表面の光沢にばらつきがあるのはなぜか?
A.
溶融亜鉛めっき表面の光沢は主に下記の要因でばらつきが生じますが、いずれの場合も溶融亜
鉛めっきの耐食性にはまったく問題ありません。
1)金属亜鉛の光沢の違い
めっきによるやけの現象が、被めっき材の材質などの違いで、つや消しや灰色等の状態となった
ものです。やけは鉄と亜鉛の合金層がめっき表面まで成長して生じますが、耐食性上は特に問
題はありません。
2)光沢に青色や黄色などの色味がある
溶融亜鉛めっき層表面の酸化皮膜の状態によって生じます。青色は空気中の湿気と炭酸ガスに
より、塩基性炭酸亜鉛の皮膜が青みを帯びます。また、めっき槽の温度が低いときには酸化皮
膜の干渉色が黄色、青色などであらわれることがあります。
3)花模様があるもの
一般に「スパングル」と呼ばれている現象です。亜鉛が凝固する際、結晶の核発生の遅速から、
大小様々の模様が形成されます。薄板をめっきした場合に多く見られます。
4)経年変化によるもの
溶融亜鉛めっき層表面は、大気中で使用していると亜鉛酸化物皮膜を形成します。溶融亜鉛
めっきが優れた耐食性をもっているのは、この亜鉛酸化皮膜が下地を保護するからです。めっき
直後の酸化皮膜は0.1μm以下と非常に薄いため光を透過し易くなり、下地の亜鉛の光沢があら
われます。しかし、時間の経過とともに次第に酸化皮膜が厚くなり、光を透過しなくなるため、光
沢を失います。
やけを生じた部材
スパングル
5年
経過
経年変化による光沢が低下した部材
同一試験体の経年変化による光沢の低下
出典:(一社)日本溶融亜鉛鍍金協会 ホームページ
日建連/鉄骨専門部会
A-7-19
鉄骨工事
Q&A集
溶融亜鉛めっき
めっき剥離
制定
2012年9月1日
改訂
2016年7月1日
Q. 溶融亜鉛めっきの付着量が多いと剥離しますか?
A.
溶融亜鉛めっきは他のめっきや塗装に比べて鋼材との密着性が非常に良い表面処理ですが、諸
条件により密着性の良さが変わってきます。付着量が多くても、打痕等により外部から過大な力を
かけない限り、自然に剥離することはありません。一般に付着量が変動する主な要因としては、鋼
材の成分および板厚が挙げられます。
鋼材成分としては、特にケイ素の影響(下図の「Si(シリコン含有量)と付着量の関係」)が大きく、
ケイ素の含有量により合金反応が活性化し、成長すると「剥離」の原因となります。JIS H
8641‐2007「溶融亜鉛めっき」の解説によりますと、含有量が0.02%以下なら問題なく、0.16~
0.23%の範囲でもやや抑制されるとあります。他、リン量も影響してきますので、詳しくはJIS H
8641‐2007の解説または各めっき会社に確認して下さい。
また、板厚の大きい鋼材はめっき槽に浸漬する時間が長くなり、亜鉛の付着量が大きくなる傾向
が一層強くなるので、十分な注意が必要です。
一般的な鋼材では特に対策をとる必要はありませんが、原因が上記化学成分の影響であるので、
対策を取る場合はできるだけめっきに適した化学成分の鋼材を選定するしかありません。すなわ
ち、鋼材が鉄骨加工工場に搬入されてからでは手の打ちようがないので、溶融亜鉛めっき仕様の
鋼材で対応するしかありません。鋼材の成分調整ができない場合は、溶融亜鉛めっき仕様を塗装
や溶射に変更するように設計者・工事監理者と相談する必要があります。
異常な付着量
適正な付着量
HDZ55
40程度
一般的な400N級鋼材
でのシリコン含有量
Si(シリコン含有量)と付着量の関係
部材角部の
めっき剥がれの例
一般的な490N級鋼材
でのシリコン含有量
出典:鉛亜鉛需要開発センター 技術資料 「溶融亜鉛めっきに対する鋼材の化学成分の影響」
日建連/鉄骨専門部会
A-7-20
鉄骨工事
Q&A集
溶融亜鉛めっき
ひずみの原因と対策
制定
2016年7月1日
改訂
2016年7月1日
Q. 溶融亜鉛めっきすると製品にひずみが発生したがなぜか?
A.
溶融亜鉛めっきは、約440℃以上の溶融亜鉛に製品を浸漬することにより施工されます。この熱に
より、主に下記の原因でひずみが発生します。同様の原因で割れを生じることもあります。
①溶接や冷間加工による残留応力の解放によるもの
②めっき槽へ浸漬時や冷却時の製品間の温度差による熱膨張速度の違いによるもの
③製品の板厚差による昇温速度の差から発生する熱膨張速度の違いによるもの
部材の曲がりが生じた例
上部片側にだけ部材を溶接したため
曲がりが生じた例
板厚が薄く長尺なため波打ちが
生じてしまった例
断面が細長い梁で曲がりが生じた例
主な対策としては、次のものが考えられます。
①めっき前の加工は熱間で行う。
②溶接個所はできるだけ少なく、左右対称に
溶接する。
③板厚をできるだけ厚くする。
④板厚差の大きい構造にしない。(2倍以内を
目安)
⑤左右対称の構造にする。
⑥やむなくひずみやすい製品は、補強材を
入れて拘束する。
t2
t1
t1
3
4
5
6
7
8
9
10
11
t2
限界値
7
10
12
14
17
20
21
24
26
t1
12
13
14
15
16
17
18
19
20
t2
限界値
28
30
32
35
37
39
40
42
45
t1
22
25
28
32
36
40
45
50
t2
限界値
50
55
60
70
75
85
95
100
t1,t2は図に示す板厚である。t2が上表の限界値を超える
場合は、変形、割れの防止対策を検討する必要がある。
ひずみの心配な製品がある場合は、事前に4者間(設計者、施工者、鉄骨製作会社、めっき会社)
で協議することを推奨します。
出典:(一社)日本建築学会_鉄骨工事技術指針・工場製作編、2007
日建連/鉄骨専門部会
A-7-21
鉄骨工事
Q&A集
溶融亜鉛めっき
ふくれ
制定
2016年7月1日
改訂
2016年7月1日
Q. 重ね合わせの溶接構造でめっきすると変形したがなぜか?
A.
溶融亜鉛めっき加工は約440℃以上の条件でめっきします。このため、重ね合わせ部を溶融亜鉛
めっきした場合、もし隙間に水分が混入していますと、一気に約3,300倍以上に膨張する力がかか
るために製品が膨れたり、破断したりします。また、溶融亜鉛めっき槽内で大きな爆発が発生し、
人身事故等重大事故が発生する危険性もあります。
また、この現象を防ぐために重ね合わせ部に、空気抜き孔や溶接に隙間をあける処置をとられ
ることもありますが、その隙間から酸洗い時に侵入した水分の水蒸気が噴き出して周辺が不めっ
きになったり、重ね合わせ内部はめっきされないために、後に隙間に水分が入って腐食され、さび
が染み出てきて製品を汚したりします。
このため、重ね合わせの構造はできるだけ避けてボルト留め等を検討するようにします。やむを得
ず重ね合わせの構造にする場合は、重ね合わせ部の面積はできるだけ小さく(200㎜x200㎜ 以
下)し、中に水分や油等が無いことが重要です。最近ではスパッタ防止剤で濡れたままの状態で
溶接されて爆発するケースもあり注意が必要です。
水分のためにめっき膨れした例
全周溶接した階段踊り場が
めっき膨れした例
重ね合わせ部が大きい場合は、200㎜x200㎜を超えるごとに下図のような栓溶接をするなど
の対策が必要になります。
B板に孔をあけ、A板と
栓溶接して孔を埋め、
溶接面を平滑に仕上げる
栓溶接の方法(JIS H 8641の解説より)
※ めっき抜き孔 : 溶融亜鉛・空気流出入用の孔を指す
出典:JIS H 8641 「溶融亜鉛めっき」、2007
日建連/鉄骨専門部会
A-7-22
鉄骨工事
Q&A集
溶融亜鉛めっき
溶融亜鉛めっき
高力ボルト
制定
2016年7月1日
改訂
2016年7月1日
Q. 溶融亜鉛めっき高力ボルトの摩擦面の処理は?
A.
溶融亜鉛めっきの摩擦面の処理としては、以下の方法があります。
(1)ブラスト処理
鉄素地の露出や溶融亜鉛めっきが剥離しないように軽くブラスト処理を施し、表面粗度を50μmRz
以上とする。めっき面の金属亜鉛の光沢が一様にくもったような状態になる程度を目標とします。
表面粗度の確認は、一般認定取得メーカーにより確認された摩擦面表面粗度標準試験片にて検
査をしますが、簡易粗さ計を使用して現場で確認することも可能です。
ブラスト
処理
ブラスト処理した摩擦面を
簡易粗さ計で粗さを測定
部材(母材)側ブラスト処理の範囲例
(添接板が接合する面は、全面ブラストとする)
(2)りん酸塩処理(A-7-13 りん酸塩処理 参照)
りん酸塩処理液を摩擦面に塗布する。この場合、すべり耐力試験またはすべり係数試験により性
能を確認する必要がありますが、「溶融亜鉛めっき高力ボルト技術協会」の認定する「技術者」が
過去にすべり試験を実施していて、その表面処理条件と当該摩擦面が同じと判断できる場合には、
工事監理者の承認を得てすべり試験は不要とできます。
(3)その他特別な処理
その他の特別な処理を施す場合は、その方法を特記する。この場合、すべり係数試験またはすべ
り耐力試験※を実施します。
※接合部のすべり性能確認としてはJASS6ではすべり耐力試験としていますが、摩擦面のすべり
係数を確認する必要がある場合(例えば上述の当該摩擦面が同じと判断できない場合や特記仕
様書に試験実施が記載されている場合等)には、すべり係数試験を行う必要があります。
出典:(一社)日本建築学会_鉄骨工事技術指針・工場製作編、2007
日建連/鉄骨専門部会
A-7-23
鉄骨工事
Q&A集
溶融亜鉛めっき
制定
りん酸塩処理
改訂
2016年7月1日
2016年7月1日
Q. 溶融亜鉛めっき鉄骨の摩擦面にりん酸塩処理を行う場合の留意点は?
A.
摩擦面にりん酸塩処理* をする場合、留意すべき点は以下のようになります。
・摩擦接合面のたれなど突起物を除く。
・処理液と摩擦面との反応を阻害する油や汚れを除く。
・外気温が氷点下の場合、処理面を加熱し、氷結水などを乾燥させると同時に、処理液も10℃
以上に加熱する。
・塗布法の場合、刷毛で均一に塗布し、必要以上に厚く塗らない。
(各りん酸塩処理液メーカーのホームページ参照のこと。)
・降雨時や降雪時に野外でのりん酸塩処理は行わない。
・刷毛などで塗布したものと浸せきで処理したものの
組合せを認めるが、異なる処理剤での摩擦面の
組合せとなってはならない。
・めっき面のアクリル樹脂系クリヤー(白さび防止処理剤)
などは、りん酸塩処理する前までに溶剤などを用いて
除去しておく。
・りん酸塩処理の範囲はブラスト処理の場合と同様、
下図に示す通りとする。
( * ) りん酸塩というのは、りん酸と金属との反応
生成物を表し、その金属が亜鉛の場合に反
応生成物はりん酸亜鉛となります。
厳密には「りん酸亜鉛処理法」といいますが、
通称として「りん酸塩処理法」と呼ばれてい
ます。
限度見本の例(メーカーのHPより)
薬剤
処理
フランジ部
ウェブ部
部材(母材)側 りん酸塩処理の範囲例
(添接板の接合する面は全面りん酸塩処理とする)
出典:(一社)日本建築学会_高力ボルト接合設計施工ガイドブック、2003
(一社)日本建築学会_鋼構造接合部設計指針、2005
(一社)日本建築学会_建築工事標準仕様書 JASS6 鉄骨工事、2015
溶融亜鉛めっき高力ボルト技術協会 溶融亜鉛めっき高力ボルト接合設計施工指針、2010
日建連/鉄骨専門部会
A-7-24
鉄骨工事
Q&A集
溶融亜鉛めっき
低光沢処理
制定
改訂
2016年7月1日
2016年7月1日
Q. 溶融亜鉛めっき初期の金属光沢をなくすことは可能か?
A.
溶融亜鉛めっき後に表面に化成処理を施し、めっき表面に低光沢の皮膜を形成することで、光沢
を抑えることができます。この主な方法として「りん酸亜鉛処理」があります。
溶融亜鉛めっき初期の金属光沢は、周りの環境と調和しない場合や近隣の住民から眩しいと苦
情がでる場合があり、この処理をすることで光沢を抑え、灰色の落ち着いた外観となります。また、
将来的にも光沢のある外観となることはありません。
溶融亜鉛めっき層への影響はごくわずかで、溶融亜鉛めっきとしての防食効果は低下しません。
ただし、このりん酸亜鉛処理は、処理槽に浸漬する必要があるので、処理が可能なサイズや重量
を事前に4者間(設計者、施工者、鉄骨製作会社、めっき会社)で協議することを推奨します。
りん酸亜鉛処理施工例 1
りん酸亜鉛処理施工例 3
日建連/鉄骨専門部会
りん酸亜鉛処理施工例 2
A-7-25
鉄骨工事
Q&A集
溶融亜鉛めっき
めっき溜まり
制定
2016年7月1日
改訂
2016年7月1日
Q. めっき溜まりが生じた場合の処理方法は?
A.
めっき溜まりと呼ばれる現象には、「亜鉛溜まり」と「亜鉛塊の付着」の二種類がありますが、ここで
は、亜鉛溜まりについて解説します。
亜鉛溜まりの主な原因はめっき孔の位置や大きさが不適切であるために、溶融亜鉛の流れが悪
いことが挙げられ、特に閉鎖型断面や袋状構造部位は生じやすく注意が必要です。
めっき溜まりは、めっきが過剰に厚く付着した状態であるので、耐食性や密着性には問題ありませ
ん。しかし、ボルト留め部や外観等の使用上問題がある場合は、グラインダー等で削るか、再めっ
きする必要があります。
また、除去が困難な場合や範囲が大きい場合は、再めっきとなります。この場合、製品を溶融亜
鉛浴に浸漬して亜鉛の塊を溶融させた後に、酸により溶融亜鉛めっき皮膜を除去して再めっきと
いう熱履歴を繰り返す工程となります。そのため、部材の強度の低下やめっき割れ等の不具合が
発生する可能性があります。
再めっきを防止するためにも、未然に4者間(設計者、施工者、鉄骨製作会社、めっき会社)で協議
して、対策をとる必要があります。
亜鉛塊の付着
亜鉛溜まり
※ めっき抜き孔 : 溶融亜鉛・空気流出入用の孔を指す
日建連/鉄骨専門部会
A-8-1
鉄骨工事
Q&A集
その他
資格
制定
2011年8月1日
改訂
2016年7月1日
Q. 建築鉄骨の技術者の資格にはどのような資格があるか?
A.
一般社団法人日本鋼構造協会(JSSC)・建築鉄骨品質管理機構では、鉄骨工事に関する4つの技
術者の資格があります。
・ 鉄骨工事管理責任者
・ 建築鉄骨製品検査技術者
・ 建築鉄骨超音波検査技術者
・ 建築高力ボルト接合管理技術者
各資格の認定基準は下表の通りです。
このうち、「鉄骨工事管理責任者」については施工者を主な対象とした資格ですので、施工者の技
術者は積極的な取得が望まれます。
資格と認定基準一覧
資格名
認定基準
(
)内数字は2015年4月現在の認定登録者数
鉄骨工事
管理責任者
建築鉄骨工事における鉄骨製作発注時の指示・指導、受入れ検査等
による鉄骨製品検査及び現場工事の管理を適正に行うことができ、併
せてその内容を現場作業者に指導できると認められる者 (6,389名)
建築鉄骨製品
検査技術者
建築鉄骨工事に関する知識及び製品の精度に関する知識を有し、か
つ建築鉄骨の材料、形状、精度、溶接部の外観等の検査について、計
画の立案、作業の実施及び結果の解読並びに合否の判定ができる高
度の知識と技術を有すると認められる者
(8,535名)
建築鉄骨超音波
検査技術者
建築鉄骨工事に関する知識及び超音波探傷検査(UT)に関する知識
を有し、かつ建築鉄骨溶接部の超音波探傷検査について、計画の立
案、作業の実施及び結果の解読並びに合否の判定ができる高度の知
識と技術を有すると認められる者
(3,270名)
建築高力ボルト接合
管理技術者
日本建築学会「建築工事標準仕様書JASS6鉄骨工事」(以下「JASS6」
という。)の内容※を理解して、JASS6に基づく高力ボルトの施工に関す
る管理を行うことができ、併せてその内容を技能者に指導できると認め
られる者
(6,775名)
※ JASS6の内容とは、JASS6のほかに、日本建築学会「鉄骨工事技術指針」及び「高力ボルト
接合設計施工指針」に示す、高力ボルトの施工に関わる内容と接合原理を含むものとする
また、その他の資格として、「鉄骨製作管理技術者 1級・2級」があります。
(一社)全国鐵構工業協会と、(一社)鉄骨建設業協会が共同で運営する鉄骨製作管理技術者登
録機構(以下「機構」)が実施する試験で、「大臣認定のための工場性能評価」の「性能評価基準
(書類審査/品質管理体制、工場審査/工場の品質管理体制他)」において、基準充足資格者の
一員として位置付けられている資格です。
鉄骨加工を行う上で、設計図書を受領した後、製作計画の立案から鋼材の加工、組立て、溶接、
塗装、発送及び現場における製品引き渡しまでの一貫した管理を行うために必要な専門知識・
基礎知識及び対応能力について審査します。
それ以外にもWES(特別級、1,2級溶接管理技術者)、JIS非破壊検査技術者等多くの資格があり
ます。
出典:(一社)日本鋼構造協会HP、(一社)全国鐵構工業協会HP
日建連/鉄骨専門部会
A-8-2
鉄骨工事
Q&A集
その他
露出柱脚
制定
2011年8月1日
改訂
2016年7月1日
Q. 阪神淡路大震災で認定工法の露出形式の柱脚は被害がほとんどなかったが何故か?
A.
震災のあった平成7年以前は、在来工法による露出柱脚のモデル化をピン(回転自由)として設計
した場合、柱脚には曲げが生じないことから、脚部の摩擦でせん断力が伝達できるとすれば、アン
カーボルトの負担がないため、アンカーボルトを少なくすることができました。
しかしながら、実状としては少なからず柱脚に固定度(回転拘束)があるため、曲げが発生しアン
カーボルトには引張が作用することになります。この引張によりアンカーボルトには伸び・引き抜き
が生じて被害が出ることとなりました。
これに対し認定工法の露出形柱脚は、柱脚の固定度を半固定とし、アンカーボルトの径・本数等
から回転剛性を求め、構造計算に反映させて脚部の曲げ応力を算定しアンカーボルトの設計を
行っていました。そのため、施工上の不具合や想定外の事象が起こらなかった部位については、
柱脚部にほとんど被害は生じませんでした。
N
固定度があり
曲げを考慮
N
M
Q
Q
軸力とせん断力のみで設計
在来工法 露出柱脚
曲げを考慮して設計
認定工法 露出柱脚
露出柱脚部に生じる設計応力の違い
日建連/鉄骨専門部会
A-8-3
鉄骨工事
Q&A集
その他
資格
制定
2014年6月1日
改訂
2016年7月1日
Q. 鉄骨工事の特記仕様書で指定されている「施工管理技術者」とは何か?
A.
設計図書の特記仕様書で、鉄骨工事における「施工管理技術者の適用」について記述されている
ことがあります。 この「施工管理技術者」については、公共建築工事標準仕様書で、下記のように
定められています。
施工管理技術者
(a) 鉄骨造建築物の設計、施工等にかかわる指導および品質管理を行う能力のある者とする。
(b) 当該工事の鉄骨製作に携わるとともに、品質の向上に努めるものとする。
特記仕様書に「施工管理技術者を適用する」旨の特記がある場合には、工事に先立ち、鉄骨製作
を行う工場に、工事監理者が「施工管理技術者」に規定する能力があると認める者が常駐すること
を確認する必要があるので、次の事項を記載した施工計画書を施工者から工事監理者に提出し、
承認を得る必要があります。
施工計画書に記載が必要となる「施工管理技術者」に関わる事項
(1) 工事実績
(2) 鉄骨製作工場での立場(役職等)
(3) 資格証明
(4) ほかの有資格
(5) その他
この場合の(3)または(4)に該当する資格の例として以下の資格があげられます。
・鉄骨製作管理技術者 (鉄骨製作管理技術者登録機構)
・鉄骨工事管理責任者 ((一社)日本鋼構造協会・建築鉄骨品質管理機構)
出典:公共建築工事標準仕様書(建築工事編)(平成25年版)
建築工事監理指針(平成25年版)
日建連/鉄骨専門部会