中国地域における パワー半導体の現状整理と 関連事業の参入可能性調査

第二部
中国地域における
パワー半導体の現状整理と
関連事業の参入可能性調査
(本編)
巻
頭
言
現在、様々な電気・電子機器に使用されているパワー半導体の材料はシリコン(Si)
であるが、より一層の機能高度化ニーズに対応するためには、物性面で限界にきて
いると言われている。東日本大震災以降の電力不足問題への対応や地球環境問題へ
の意識の高まり等を背景に、大幅な省エネルギーが図れるシリコンカーバイド
(SiC:炭化ケイ素)のパワー半導体が世界的に注目され、本格的な応用期を迎えよ
うとしている。足許では実用化の壁であった、結晶成長方法やウエハ・デバイス化
技術が進展し、素材・デバイスメーカなどが実用展開に向けて大きく動きだしてい
る。
このような流れの中、東京メトロ 銀座線やエアコン等に SiC パワーデバイスが搭
載され、大幅な損失低減の成果が得られるとともに、国家プロジェクトにおいても
超高耐圧デバイスの開発が進展し、電力インフラ装置等での小型化、省エネ化の期
待が高まっている。
かつて、我が国は 1970 年代後半~1990 年代にかけ、欧米諸国のフォロアーとし
てターゲットが明確になっている場合には、技術レベルが高く、世界一高品質の製
品を作製するものの、一旦 フロントランナーとなってからは何を作製していいか分
からなくなるという時期を経験した。結果、長期的な国内経済の停滞にも繋がった。
SiC パワー半導体に関連しては、同じ轍を踏むことなく、“How to make”指向か
ら“What to make”に重点をおいた研究開発が求められるとともに、そのような思
考の出来る人材の育成や幅広い分野における交流による価値創造が不可欠であると
考えられる。
本報告書は、中央でのパワーテクノロジーにおける研究開発の進展を踏まえ、次
ステップとして地域での方策展開を図るものである。内容としては、SiC の特徴、
技術概要を俯瞰したうえで、地域の学識経験者、企業家等の意見を基に、地域実態
に即した産業振興策が取纏められている。併せて、アプリケーション側がリードす
る“What to make”的な研究開発や“地域でしかできない分野”における取組み、
地域における人材育成等にも言及している。
このような点を含め、委員会での活発な議論を行い、中国地域におけるパワー半
導体産業の振興に資する報告書となったと思われる。今後、本報告書が地域におけ
る半導体関連施策の実現化に寄与するとともに、パワー半導体分野において広範囲
に活用されることを期待している。また、事業者・若手研究者・産業支援機関等そ
れぞれが出口意識を持ち、各分野における力量発揮や連携が実現するようエールを
送りたい。
最後に、本調査においては、産学官の有識者・関係者で構成する委員会での審議、
また調査機関として、中電技術コンサルタントの協力を頂いた。さらに、全国・中
国地域の大学、高等専門学校、企業等に対して実施したヒアリングは、本調査の根
幹をなしている。これらの調査に協力いただいた関係各位に厚く感謝する。
平成 25 年 3 月
「中国地域におけるパワー半導体の現状整理
と関連事業の参入可能性調査」委員会
委員長
松波
弘之
中国地域におけるパワー半導体の現状整理と関連事業の参入可能性調査
委員会名簿
(敬称略:所属五十音順)
区分
氏
名
所属・役職
委員長
松波
弘之
京都大学
名誉教授
副委員長
吉川
公麿
広島大学
教授
勝志
委
員
西
委
員
稲原
宏昭
中国経済産業局 地域経済部
委
員
都留
良男
中国経済連合会
委
員
名雪
稔
公益財団法人ちゅうごく産業創造センター
委
員
藤波
恭一
株式会社トクヤマ
委
員
佐賀
浩
株式会社日本政策投資銀行
委
員
石井
昭正
広島県
委
員
勝代
健次
広島大学
産学・地域連携センター
委
員
黒木
伸一郎
広島大学
ナノデバイス・バイオ融合科学研究所
委
員
谷
委
員
柴沼
隆之
三井物産株式会社
中国支社長
委
員
山口
寿夫
三菱商事株式会社
中国支社
委
員
マジュムダール ゴーラブ
三菱電機株式会社
半導体・デバイス事業本部
委
員
小関
浩幸
山口県
委
員
崎谷
文雄
ローツェ株式会社
オブザーバー
吉木
大司
地方独立行政法人山口県産業技術センター
専門研究員
事務局
中野
直文
公益財団法人ちゅうごく産業創造センター
専務理事
事務局
吉澤
洋一
公益財団法人ちゅうごく産業創造センター
常務理事
事務局
石岡
孝治郎
公益財団法人ちゅうごく産業創造センター
調査部 部長
事務局
三宅
秀雄
公益財団法人ちゅうごく産業創造センター
産業部 部長
シンクタンク
山名
良明
中電技術コンサルタント株式会社
地域マネジメント部
シンクタンク
岡村
幸壽
中電技術コンサルタント株式会社
電気通信部長
シンクタンク
佃
中電技術コンサルタント株式会社
電気通信部
英昭
寛介
岡山県
ナノデバイス・バイオ融合科学研究所長
産業労働部
産業振興課
専門研究員
参事官(電子・情報産業担当)
理事
商工労働局
研究センター
主任研究員
中国支店
次世代産業課
企画調査課
課長
産業振興監
特任教授
フェニテックセミコンダクター株式会社
商工労働部
コーディネーター
准教授
代表取締役
副社長
業務・開発グループマネージャー
新産業振興課
役員技監
主幹
代表取締役社長
部長
第1グループ
中国地域におけるパワー半導体の
現状整理と関連事業の参入可能性
調査報告書
平成 25 年 3 月
公益財団法人ちゅうごく産業創造センター
目
次
調査の目的 ················································
1
1.調査の目的 ······················································
1
2.調査対象地域 ····················································
1
Ⅰ.パワー半導体の現状 ····································
2
1.パワー半導体の種類と開発状況 ····································
2
(1)パワー半導体デバイスとは ······································
2
(2)パワー半導体の種類 ············································
4
(3)ダイオードとトランジスタの構造 ································
5
(4)パワー半導体の開発状況 ········································
9
(5)次世代パワー半導体への期待 ···································· 12
2.パワー半導体の利用技術 ·········································· 18
(1)パワー半導体が組み込まれた商品 ································ 18
(2)SiC パワー半導体を用いたシステム ······························ 20
3.パワー半導体の市場動向 ·········································· 22
(1)パワー半導体市場への参入企業 ·································· 22
(2)パワー半導体の市場規模 ········································ 24
(3)メーカ別 世界市場動向 ········································· 25
(4)知財状況から見た企業総合力 ···································· 26
(5)国内パワー半導体の生産動向 ···································· 31
Ⅱ.SiCパワー半導体
結晶からデバイスまでのプロセスと技術的課題
35
1.SiCパワー半導体の製造プロセス ··································· 35
(1)SiC の特徴 ···················································· 35
(2)全体的な製造プロセス ·········································· 37
(3)個別製造プロセス ·············································· 41
2.SiCパワー半導体の開発上の問題点と課題 ··························· 52
(1)SiC パワー半導体の技術的課題の概要 ···························· 52
(2)SiC パワー半導体の材料開発における問題点と課題 ················ 53
(3)SiC パワー半導体の製造技術における問題点と課題 ················ 55
3.SiCパワー半導体の市場競争力確保に向けた問題点と課題 ············· 59
(1)国内における SiC パワー半導体に関する取組状況 ·················· 59
(2)世界における SiC パワー半導体に関する取組状況 ·················· 60
(3)アプリケーションからの取組状況 ································ 61
Ⅲ.SiCパワー半導体に関する行政の施策および大学・企業の研究開発動向 68
1.SiCパワー半導体開発の方向性および行政の施策 ····················· 68
(1)SiC パワー半導体開発の方向性 ·································· 68
(2)行政の施策等 ·················································· 74
2.大学・研究機関の開発動向 ········································ 88
3.企業の開発動向・企業戦略 ········································ 94
(1)SiC ウエハの製造企業 ·········································· 94
(2)SiC パワー半導体デバイス・モジュールの製造企業 ················ 98
(3)SiC パワー半導体製造装置の製造企業 ···························· 106
(4)SiC パワー半導体のアプリケーション企業 ························ 114
4.中国地域での取組み ·············································· 122
Ⅳ.SiCパワー半導体に関する先進事例調査
127
1.先進事例調査の目的 ·············································· 127
2.先進事例調査の実施及び調査結果の整理 ···························· 127
(1)実施内容 ······················································ 127
(2)調査結果の整理 ················································ 127
Ⅴ.中国地域におけるSiC半導体に関連する技術シーズと利活用に
関する状況調査(ヒアリング、アンケート調査)
132
1.中国地域の学識経験者へのヒアリング調査 ·························· 132
(1)ヒアリング調査の目的 ·········································· 132
(2)ヒアリング調査の実施概要 ······································ 134
(3)ヒアリング結果 ················································ 137
(4)ヒアリングのまとめ ············································ 185
2.パワー半導体関連企業へのアンケート調査 ·························· 197
(1)アンケート調査の目的 ·········································· 197
(2)アンケート調査の実施概要 ······································ 197
(3)アンケートの回収結果 ·········································· 204
(4)アンケート調査結果 ············································ 205
(5)アンケートのまとめ ············································ 243
Ⅵ.中国地域におけるパワー半導体関連産業の新たな振興に向け
て(提言)
1. 中国地域におけるパワー半導体関連産業の振興のための方向性の抽出手法 · 244
2.中国地域のパワー半導体関連産業の現状整理 ························ 245
3.中国地域におけるパワー半導体関連産業の振興のための方向性の抽出 ·· 246
4.中国地域におけるパワー半導体関連産業の新たな振興に向けて(提言) 254
(参考)中長期戦略 ················································ 274
資料編
(資料1)パワー半導体関連産業の動向に関するアンケート調査
(製 造 側 )
調 査 票 ······························· 291
(資料2)パワー半導体関連産業の動向に関するアンケート調査
(ユ ー ザ 側 )
調査票
··························· 305
( 資 料 3 ) SiC パ ワ ー 半 導 体 紹 介 リ ー フ レ ッ ト ················· 316
調査の目的
1.調査の目的
中国地域の半導体産業には、製造装置・半導体製造受託メーカ、太陽光発電シ
ステム開発・モジュール・セルメーカなど、幅広い製造技術が集積している。し
かしながら、韓国、台湾などの諸外国の半導体産業の進展には目覚しいものがあ
り、諸外国ではできない高品質の製品を製造する事業を創出することにより、中
国地域の半導体製造関連産業を活性化することが求められている。
一方、東日本大震災以降、製造拠点分散化の社会的要請、国内の電力事情から
も、より省エネを実現できるパワー半導体を用いた製品の開発普及が期待されて
いる。また、現在主流のSiパワー半導体も性能限界に近づいており、今後、次世
代パワー半導体として注目されているのが、より高温度領域・高電圧高電流で使
用可能なSiCパワー半導体である。
現状では、三菱電機、ローム、富士電機などのメーカや産学官の研究機関等が、
SiCパワー半導体やそれを使用した製品の開発・事業化に精力的に取組んでいる
が、結晶欠陥低減、素材の均一性、再現性に加え、SiC半導体製造プロセスについ
ても高温処理等各プロセスでの課題も多い。
以上を踏まえ、半導体製造技術が集積している中国地域において、
「パワー半導
体の現状整理と中国地域における新産業創出の可能性」について調査を行うこと
により、新たな産業創出に向けた課題を抽出し、その課題を解決するための方策
を提言し、新たなパワー半導体関連分野への参入に向けた提言を行う。
2.調査対象地域
中国地域を対象とする。
-1-
Ⅰ.パワー半導体の現状
1.パワー半導体の種類と開発状況
(1)パワー半導体デバイスとは
パワー半導体デバイスとは、電力の変換と制御を行うデバイスの総称であり、
それを担う半導体材料をパワー半導体と呼ぶ。通常の半導体デバイスといえば、
マイコン(CPU)やメモリなどのLSIがよく知られているが、これらは「演算」や
「記憶」などの働きをする半導体デバイスである(図表Ⅰ.1)。
図表Ⅰ.1
マイコンとパワー半導体
マイコン・
メモリ
パワー
記憶・演算
を行う
電力の制御・供給
を行う
半導体
これに対しパワー半導体デバイスは、電気を直流から交流に、あるいは交流か
ら直流に変えたり、電圧を上げたり下げたり、電力を効率よくコントロールする
などの(図表Ⅰ.2)、電力の制御や供給を行う半導体デバイスをいう。電気製品
の内部で使われているLSIやIC、モータなどの駆動に最適かつ安定的に供給する
図表Ⅰ.2
パワー半導体の役割
+
交流
電
圧
整流
直流
-
+
交流
電
圧
周波数変換
交流
-
+
直流
電
圧
レギュレータ
(昇圧・降圧)
直流
インバータ
交流
-
+
直流
電
圧
-
出典:サンケン電気ホームページ
-2-
電気製品に欠かせないデバイスである。
各種半導体デバイスを人体に例えれば、マイコンが人間の脳にあたるキーデバ
イスであるが、人間が大脳だけでは生きていけないように、他のデバイスも必要
となる。センサなどは目や耳の五感に、電源ICは、太陽電池等が外からパワーを
もらって体全体に使えるように変換する胃腸として存在している。パワー半導体
は筋肉であるモータ等へ供給する電力の流れを整えるとともに有害な物(ノイズ
等)を排除するため神経や血管に該当すると言える。
パワー半導体デバイスは、通常高電圧や大電流を扱うため、保護回路が必要と
なり、それらの保護回路を含めてパッケージとしたものがパワーモジュールとい
う上位の製品となる。さらに上位の応用分野に向け「機器」、「装置」に組み込ま
れ使用されることとなる(図表Ⅰ.3)。
図表Ⅰ.3
パワー半導体の応用技術
技術進展
重電
プラント
家電
OA機器
ロボット溶接機
アクチュエータ
音響機器
LEDドライブ
エレベータ
応
用
技
術
ダイオード
モジュール
ダイオード
DC/DC
コンバータ
直流チョッパ
サイリスタ
モジュール
トランジスタ
モジュール
サイリスタ
産業
適用分野
汎用インバータ
サイクロコンバータ
三相インバータ
交流電力
調整装置
IGBT
モジュール
バイポーラ
トランジスタ
-3-
機器
機器
装置
装置
UPS
交直変換器
MOSFET
モジュール
電力
パワーコンディショナ
発電機制御
装置
EV充電器
単相インバータ
整流回路
レーダー
パワーアンプ゚
PMモータドライブ
エアコン
新エネ
スイッチング電源
CVCF
携帯機器
IHコンロ
自動車
(EV)
鉄道
高耐圧
モジュール
パワー
MOSFET
回路
ユニット
IPM
モジュール
デバイス
IGBT
(ディスクリート)
(2)パワー半導体の種類
パワー半導体デバイスの材料としては、現在、主にシリコン(Si)が使われて
いる。これは、シリコンが地球上に多く存在し、入手しやすいという事もあるが、
一番の理由は酸化物である二酸化珪素(SiO2)が非常に安定的な物質で、保護膜
として最適なためである。
図表Ⅰ.4
種
ダ
イ
オ
ー
ド
ト
ラ
ン
ジ
ス
タ
類
概
要
PN ダイオード
半導体の PN 接合の整流性を利用する、基本的な半導
体ダイオード
ショットキーバリア
ダイオード(SBD)
順方向の電圧降下が低く、逆回復時間が短いため、
超高速スイッチングや高周波の整流に適する
バイポーラトランジ
スタ(BJT)
キャリアを 2 種類もつためバイポーラと呼ばれる。
電流増幅・スイッチング機能を持つ
パワーMOSFET
1
IGBT2
サ
イ
リ
ス
タ
主なパワー半導体デバイスの種類
外部から電圧を加えることで電流の流れを制御。ス
イッチング速度が速く、低電圧領域での変換効率が
高い
MOSFET とバイポーラトランジスタの長所を活かした
パワー半導体デバイス。MOSFET に比べ低抵抗化が可
能
サイリスタ
3 端子の半導体素子で、電力量の最適化や突入電流防
止のために用いられる
GTO サイリスタ
ゲートに逆方向の電流を流すことでターンオフでき
るサイリスタ
このようにシリコンを材料としたパワー半導体は、DRAM( Dynamic Random Access
Memory)のように単一種類のもので市場が構成されているわけではなく、アプリ
ケーションごとに適した複数種類のデバイスが存在している(図表Ⅰ.4)。
どのようなパワー半導体を使用するかは、主に動作周波数と出力容量の観点で
決まる。サイリスタは、スイッチング速度は遅いが、数十MVAという大電力装置に
適用できる。MOSFETは、スイッチング速度が 20kHz以上の高周波領域で、数kVA以
下の小容量の装置に適用される。IGBTは、高速スイッチング動作と大電力容量を
備えた素子で、その適用範囲が拡大しつつあり、従来はサイリスタやGTOが使用さ
れていた数MVAの大容量装置にも応用されている(図表Ⅰ.5)。
1
2
Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor の略
Insulated Gate Bipolar Transistor の略
-4-
図表Ⅰ.5
動
作
周
波
数
(
任
意
単
位
)
各パワー半導体の棲み分け(イメージ図)
IGBT
パワーMOSFET
GTO サイリスタ
バイポーラトランジスタ
サイリスタ
出力容量(任意単位)
(3)ダイオードとトランジスタの構造
a.主なダイオードの構造
ダイオードは、電圧をある一定方向に印加したときだけに電流が流れる整流作
用を有する2端子の半導体素子であるが、代表的なPNダイオードとショットキー
バリアダイオードの構造について簡単に説明する。
(a)PNダイオード
PNダイオード素子はPN接合と呼ばれる構造を持っている(図表Ⅰ.6)。正孔が
多数キャリアとなるP形半導体領域からの端子をアノード、電子が多数キャリアと
なるN形半導体領域からの端子をカソードといい、アノードからカソードの方向に
順バイアスに電圧をかけた場合のみ電流が流れ、その逆(逆方向)はほとんど流
れないという働きがある。この効果を整流作用といい、言い換えれば、交流を直
流に変換する働きのことである。
-5-
図表Ⅰ.6
PNダイオード(プレーナ型)の基本構造
アノード(陽極)
カソード(陰極)
出典:玉井輝雄「図解による半導体デバイスの基礎」コロナ社(1995 年)
(b)ショットキーバリアダイオード
ショットキーバリアダイオード(SBD)は、PN接合の代わりに、半導体とモリブ
デンなどの金属を接合した構造の素子である(図表Ⅰ.7)。PN接合のダイオード
と異なり、多数キャリアのみで動作するため、順方向電圧が小さく、逆回復時間
が短いことから、高速スイッチング動作に適している。
図表Ⅰ.7
ショットキーバリアダイオードの基本構造
カソード(陰極)
アノード(陽極)
出典:玉井輝雄「図解による半導体デバイスの基礎」コロナ社(1995 年)
-6-
b.トランジスタの構造
トランジスタは増幅、またはスイッチ動作をする半導体素子で、近代の電子工
学における主力素子であるが、ここではパワー半導体の中で利用頻度が高く市場
規模の大きい電界効果型トランジスタであるMOSFETと絶縁ゲート型バイポーラト
ランジスタであるIGBTの構造について簡単に説明する。
(a)MOSFETの構造
MOSFET は Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor の略である。MOS
とは金属(Metal※1)、酸化絶縁膜(Oxide※2)、半導体(Semiconductor ※3)を順番に重ね
合わせた構造をしている。
パワーMOSFET の基本的な構造は、DMOS(Double-Diffused MOSFET)と呼ばれる構
造で、N+基板の上に形成された N エピタキシャル層表面側に低濃度の P 型層(P ボ
ディ)と高濃度の N 型層を二重拡散で形成した構造である( 図表 Ⅰ.8)。
バイポーラトランジスタが入力電流により出力電流を制御するのに対して、
MOSFET は入力の電圧(電界)で出力電流を制御している。
電流の流れはソースに対してドレインの電位を高くして、ソースゲート間に電圧
を加えると、ドレインに電流が流れる。つまりゲートに電位をかけることで、ドレ
イン電流を自由に変化させることができる。
図表Ⅰ.8
※1
金属
パワーMOSFET の基本構造
※2
酸化
絶縁膜
※3
半導体
ドレイン
ドレイン
出典:電気学会「電気機器工学Ⅱ
-パワーエレクトロニクスと電動機駆動の基礎-」(2008 年)
-7-
(b)IGBTの基本構造
IGBTはInsulated Gate Bipolar Transistorの略である。IGBTはMOSFETの下部に
バイポーラトランジスタを付加し、MOSFETの高速スイッチング性能とバイポーラ
トランジスタの高電圧・大電流処理能力とを合わせ持った素子である。これらを
一つのチップに構成することによって、導通時に伝導度変調と呼ばれる現象が発
生し、電流導通時の抵抗を大きく減少させることができる。
動作はゲート、エミッタ間への電圧印加によってMOSFET部がオンとなり、MOSFET
のドレイン電流がPNPトランジスタのベース電流となって流れる。このベース電流
によってPNPトランジスタ部がオンし、IGBTがオン状態になる(図表Ⅰ.9)。
図表Ⅰ.9
出典:電気学会「電気機器工学Ⅱ
IGBT の基本構造
-パワーエレクトロニクスと電動機駆動の基礎-」(2008 年)
-8-
(4)パワー半導体の開発状況
ここではシリコンパワー半導体の開発動向としてトピックス的に「IGBT特性向
上への取組」と最先端のMOSFETとして注目されている「Super Junction MOSFET」、
モジュールの進化系である「IPM化の進展」について説明する。
a.IGBT特性向上への取組
IGBTは当初プレーナゲート型 3PT(パンチスル-) 4IGBTが主流であった。当時
のPT型IGBTはエピキャシタルウエハを用い、注入効率とライフタイムコントロー
ルの最適化、表面構造の微細化することにより特性改善を図った。
さらに、2000 年前後からは設計コンセプトも変化させそれまでのPT構造からラ
イフタイムコントロールを行わないで輸送効率を向上するNPT(ノンパンチスル
-) 5 構造や 100μm近くまで薄ウエハ化したFZ(Floating Zone) 6 ウエハを使用
するプロセス技術革新を行ったことにより大幅な低損失化を実現してきた。
さらに最近の世代ではFS(Field Stop) 7 構造の採用やトレンチゲート構造 8 によ
り表面セル密度を大幅に増加させたことで、低損失と高速スイッチング化の双方
を達成している。
図表Ⅰ.10
1985 年
90 年
IGBT の技術ロードマップ
2000 年
95 年
05 年
PT 型(エピタキシャルウエハ、ライフタムコントロール)
10 年
薄ウエハ技術
微細加工技術
トレンチ技術
NPT 型(FZ ウエハ)
FS 型(FZ ウエハ)
3, 4, 5, 8
6
7
IGBT の構造は表面の「ゲート構造」、ベース層を形成する「バルク構造」の二つに大別する
ことができる。表面の「ゲート構造」にはウエハ表面にゲートを形成する「プレーナゲート
構造」とウエハの中に溝を掘ってゲートを形成する「トレンチゲート構造」の 2 種類がある。
一 方 、 バ ル ク 構 造 に は オ フ 時 に 空 乏 層 が コ レ ク タ 側 に 接 触 す る 「 パ ン チ ス ル - ( Punch
Through)型」とそれに接触しない「ノンパンチスル-(Non Punch Through)型」に大きく
分けることができる。
シリコン単結晶を育成する方式の一つ。石英るつぼを使わず、異物と接触しないので、純度の高
いシリコン単結晶が作れる
n ベース層(n ドリフト層)に濃度が高い FS(フィールドストップ)を設けた構造
-9-
以上のようにIGBTは継続的に特性向上が図られている一方で、ここ 10 年近く大
きなブレイクスルー技術が出現していないこともあり、シリコンパワー半導体の
限界説の一因ともなっている(図表Ⅰ.10)。
b.Super Junction MOSFET
耐圧とオン抵抗との間には材料によって決まる理論限界(シリコンの場合はシ
リコンリミット)が存在しており、この理論限界を超えるオン抵抗を得ることは
できないと考えられていた。この問題をブレイクスルーしたのがSuper junction
(SJ)構造であり、劇的なオン抵抗 9 の低減が可能となることから、最先端のMOSFET
として取り扱われている(図表Ⅰ.11)。
Super junction MOSFETは従来MOSFETのドリフト層をP型とN型とが交互に並んだ
構造に置き換えたものである(図表Ⅰ.12)。一般的にはイオン注入(P.44 参照)
とエピタキシャル成長(P.43 参照)を繰返すマルチエピタキシャル法が主流であ
るが、その他にトレンチ埋込法、トレンチ側壁からの不純物導入法、高加速イオ
ン注入法があり、近年では全ての方式で製品化され、注目される製品となってい
る。
図表Ⅰ.11
Super junction とシリコンリミット
出典:財団法人新機能素子研究開発協会ホームページ
9
図表Ⅰ.12
従来 MOSFET と SJ-MOSFET の構造
出典:富士電機「富士時報
パワー素子の動作時、つまり通電状態での抵抗値
-10-
Vol.82 No.6」(2009 年)
c.IPM化の進展
パワー半導体デバイスは単独で使用するのではなく、制御回路、保護回路など
と組み合わせることが必要となる。パワー半導体デバイス以外の回路も組み合わ
せて集積化するという考えがパワーモジュールである。
さらに、1990 年代にはIPM(Intelligent Power Module)というパワーモジュ
ールが開発された。IPMは、パワー半導体デバイスの性能を最大限に発揮させるた
め、電力損失を極力抑えた最適な「駆動回路」や「制御電源」、そして短絡保護、
過電流保護、電圧不足保護、過熱保護を保障する「保護回路」などを専用IC化し
た高機能モジュールである。
IPMはIGBTモジュールの改良を目指した発展型としての開発経緯から、一般的に
IPMとはIGBTのIPMを指し、省エネルギー化の推進を契機としたインバータ利用の
拡大とともにその開発が進展した。
IPMはパワーエレクトロニクス技術が高度に集約され、壊れにくいのが特徴であ
り、応用部門での「装置の小型・軽量化」、大幅な「開発コストの低減」、
「開発期
間の短縮」が図れるため、使用目的に特化した多くの製品が実用化されている。
例えば、産業分野ではセンサによる保護を徹底した比較的大容量の汎用インバ
ータ向けIPM、家電分野では小容量で小型・軽量・低価格で量産向けのDIPIPM(Dual
Inline Package Intelligent Power Module)、輸送分野では電車の駆動インバー
タ向けに高電圧のHVIPM(High Voltage Intelligent Power Module)、この他に太
陽光発電・風力発電、ハイブリッド自動車用途等がある(図表Ⅰ.13)。IPMは個
別ニーズに対応した、カスタム志向の強いモジュール型パッケージと言える。
図表Ⅰ.13
IPM
IPMの例
DIPIPM
出典:三菱電機HP
-11-
HVIPM
(5)次世代パワー半導体への期待
a.SiとSiC、GaN等との比較
前項で触れたとおり、Siパワー半導体デバイスはSiの物性で決まる理論的な性
能限界に近付きつつあることやSiでは物理的に困難であった市場(高温動作、対
厳環境動作、小型軽量化、高性能高効率化)からの要求もあり、ワイドバンドギ
ャップ半導体材料によるパワー半導体デバイスの開発が進展しつつある。具体的
にはシリコンカーバイド(SiC)、窒化ガリウム(GaN)といった材料である。
Si、SiC、GaN、ダイヤモンドの物性値の比較を図表Ⅰ.14 に示す。
図表Ⅰ.14
パワー半導体材料の物性値の比較
Si
SiC(4H型)
GaN
ダイヤモンド
バンドギャップ(eV)
1.12
3.26
3.42
5.47
絶縁破壊電界(MV/cm)
0.3
2.8
3
8
1,350
1,000
1,500
2,000
1
2.2
2.4
2.5
1.5
4.9
1.3
20
キャリア移動度(cm2/Vs)
電子飽和速度(1×107cm/s)
熱伝導率(W/cmK)
出典:松波、大谷、木本、中村「半導体 SiC 技術と応用 第 2 版」日刊工業新聞社(2011 年)から作成
図表Ⅰ.15
物性上の特性
絶縁破壊電界
が大きい
物性値とパワー素子としての特性の関係性
パワー素子としての特徴
インバータとして利
用した場合の利点
オン抵抗が
小さい
電力損失の
低減
バンドギャッ
プが大きい
熱伝導率が高
い(SiC)
電子飽和速度
が高い
機器に採用した場合
の利点
効率向上
冷却機構の
小型化
高温動作
周辺製品の
小型化
高速動作
(スイッチング)
キャリア移動
度が高い(GaN)
出典:ロームHPより作成
冷却機構の小
-12-
型化
(省エネなど)
電力変換器の
小型化
SiとSiC・GaNの物性値を比較すると多くの面でSiC・GaNの値が高く、バンドギ
ャップは 3 倍、絶縁破壊電界は 5 倍以上、電子飽和速度は 2 倍以上である。SiC
は熱伝導率も高い。
以上のような物性上の特徴からSiC、GaNはパワーデバイス用半導体として「低
損失」、
「高温動作」、
「高速動作(スイッチング)」の特徴を持つこととなり、これ
らを利用すればインバータやコンバータといった電力変換器の小型化と損失低減
が可能となる(図表Ⅰ.15)。
b.SiCとGaNとの比較
前項では従来型のSiとSiC・GaN との比較を行ってきたが、ここではSiCとGaN
との比較を行う。内容は図表Ⅰ.16 のとおりである。
図表Ⅰ.16
項
SiC と GaN 半導体デバイス
目
比
作製面での比較
較
【大口径化】GaN が現時点では優れているが、解決のスピードという
基板製造
点では SiC が早い。SiC は 4 インチで量産、6 インチ研究開発段階
【欠陥密度低減】SiC と GaN とも課題がある。解決のスピードという
点では SiC が早い
「縦構造」の
SiC が優れている。GaN は「横構造」が主流(GaN on Silicon)で、
デバイス作製
パワー(耐圧)が取れない。
チップ加工
プロセス
GaN は比較的低い処理温度で加工。SiC は高温処理技術が必要となる。
ノ―マリーオフ
型素子作製
SiC が優れている。酸化膜が作り易いという要因による。
(図表Ⅰ.21 参照)
出典:各種新聞・雑誌・聞取情報より作成
以上のような優劣関係を含め相対的に「低~中電圧」、
「低~中容量」、
「高周波」
の領域をGaNが、
「高電圧」、
「大容量」、
「低周波」の領域をSiCが受け持つ可能性が
高い。具体的な分野・製品は図表Ⅰ.17 のX軸(電圧)-Y軸(電流)領域に示し
たとおりである。
-13-
図表Ⅰ.17
SiC・GaN デバイスの対象領域(電圧・電流・周波数から)イメージ図
GaN が期待される領域
SiC が期待される領域
1GHz
1MHz
高
周
波
数
化
衛星通信
電子レンジ
移動体通信基地局
UHF/VHF
ラジオ放送
汎用
インバータ
衛星通信
SW 電源
自動車 家電
電装機器
オンボート
HEV/EV
産業
機器
電車
新エネ
分散電源
電 力 基
幹 系 統
機器
電源
HDD
高圧・大電流化
低耐圧
デバイス
Z(周波数:対数目盛)
Y(電流:対数目盛)
中耐圧
デバイス
高耐圧
デバイス
X(電圧:対数目盛)
出典:三菱電機資料、荒井和雄他「新規半導体(SiC、GaN)のパワーエレクトロニクスの展開、
季報エネルギー総合工学、Vol.29 No.3」(2006 年 10 月)などから作成
-14-
図表Ⅰ.18
SiC、GaN パワーデバイスの開発状況
◎:市販
○:試供、パワエレ実証
△:研究開発
縦型素子
SiC
・ショットキーバリアダイオード
GaN
横型素子
SiC
◎
GaN
◎
(SBD→JBS/MBS)
ユニポーラ
デバイス
・接合 FET(JFET)
◎
・MOSFET
○
△
△
・MESFET10
△
△
◎
◎
・GaN-HEMT11
○
・スーパージャンクションデバイス
△
・PIN ダイオード
◎
バイポーラ
・バイポーラトランジスタ(BJT)
○
デバイス
・IGBT
△
・サイリスタ(GTO)
○
〔GaNデバイスについて〕
GaNでは縦型のFETの構造が困難という課題がある。現在公表されているものは
横型のMOSFETである。この理由は、ウエハの構造上の制約である。GaN基板はSi
ウエハ上にヘテロエピタキシャル成長して得られているため、基本的にウエハの
厚さ方向にFETを作る縦型は困難である。
図表Ⅰ.19 のi-GaNのiとは意図的にn型やp型の不純物を含んでいないという意
味で、iはintrinsic(真性領域)の略である。
図表Ⅰ.19
(a)横型GaN FET
ソース
縦型と横型のGaN MOSFET
(b)縦型GaN FET
ゲート酸化膜
ゲート
ソース
ドレイン
ゲート
i-AIGaN
i-GaN
n-基板
バッファー層
Si
ドレイン
10
Metal-Semiconductor Field Effect Transistor の略
11
High Electron Mobility Transistor の略
-15-
ゲート酸化膜
ソース
EV用のインバータへの応用を考えた場合、高い電圧の主機には縦型、低い電圧
で良い補機には横型という考え方もある。
SiC-MOSFETはSi-MOSFETと同様、大電流を流すため、基板方向に縦に電流を流す
構造となっている。同じ構造をとるため、Si-MOSFETのプロセスを踏襲できるメリ
ットがある。一方、Si-MOSFETと同様、一層の小型化を目指してトレンチ型の構造
も実用化されている。
図表Ⅰ.20
SiC-MOSFETの構造
(a) プレーナ型SiC-MOSFETの模式図
ソ ー ス
ゲ ー ト
ソ ー ス
ゲ ー ト 酸 化 膜
ゲート電極
p
n+
n+
p
n-基板
n+層
金 属 電 極
ド レ イ ン
(b) トレンチ型SiC-MOSFETの模式図
ソ ー ス
ゲ ー ト
ソ ー ス
ゲ ー ト 酸 化 膜
p
n+
ゲート電極
n+
p
n-基板
n+層
金 属 電 極
ド レ イ ン
また、半導体デバイスの特性分類としてノーマリーオン型とノーマリーオフ型
がある。ノーマリーオフ型とは、ゲートに電圧を印加しないとき、ドレインに電
圧を印加してもドレイン-ソース間に電流が流れない、すなわちMOSFETがオフに
-16-
なっているものである。
図表Ⅰ.21
ノーマリーオフとノーマリーオンの比較
(a)ノーマリーオフ
(b)ノーマリーオン
(
対
数
対
数
ド
レ
イ
ン
・
ソ
ー
ス
間
電
流
0
)
(
ID
)
ID
ド
レ
イ
ン
・
ソ
ー
ス
間
電
流
オン抵抗
ゲート電圧
VG
0
オン抵抗
ゲート電圧
VG
グラフの線が立っているほど立ち上がりが速く、スイッチング速度を高くする
ことができる。ノーマリーオフではゲート電圧が 0 ではMOSFETはオンしていない
が、ノーマリーオンではゲート電圧が 0 でもオンしている。ゲートに電圧を印加
しない状態でオンすることは、ドレイン-ソース間電流があるということであり、
損失を生じさせる。上記のことから、パワー半導体ではノーマリーオフ型が望ま
しい。
しかし、GaN-MOSFETでは通常の構造ではノーマリーオン型となるため、特殊な
構造とするか外部回路で対応するかの方法が必要となる。
-17-
2.パワー半導体の利用技術
(1)パワー半導体が組み込まれた商品
電気電子機器の利用において、負荷に応じた高効率な動作点での機器の運転や、
機器の高機能制御のためには、電力の変換と制御が不可欠であり、パワー半導体
を用いたパワーエレクトロニクス技術の導入が必須となる。パワーエレクトロニ
クスは、発電や送電などの電力分野、回転機・ファン・ポンプ・ブロワなどを利
用する産業分野、通信システムや工場などの電源分野、省エネルギー分野、電車
の駆動・変電などの電気鉄道分野、自動車分野、家電分野、新エネルギー分野な
ど非常に幅広い応用分野で使用されている。
パワー半導体が組み込まれている主な製品に次のようなものがある。
・エアコン等で、周波数変換に用いるインバータ(洗濯機・蛍光灯・IH 調理器など)
・モータやアクチュエータ
・パワーウィンドウ
・電車用モータ制御のための超高耐圧パワー素子
・太陽電池や風力発電用インバータ・各種車載電装機器の制御システム
・鉄道、船舶、白物家電、PC 電源、無停電電源装置(UPS)
エアコン
溶接ロボット
新幹線
IH 調理器
無停電電源装置
電気自動車
上記のように、数多くの製品にパワー半導体が入っている。
なお、具体的なアプリケーションにおけるSiパワー半導体の採用傾向を示すと
図表Ⅰ.22 のとおりとなる。
-18-
図表Ⅰ.22
インバータ・コンバータ用素子の採用状況
デバイス
ダイオード
S
B
D
トランジスタ
B
J
T
(
P
N
ダ
イ
オ
ー
ド
モジュール
S
J
M
O
S
F
E
T
含
む
)
M
O
S
F
E
T
I
G
B
T
サイリスタ
サ
イ
リ
ス
タ
ト
ラ
イ
ア
ッ
ク
G
T
O
/
G
C
T
ダ
イ
オ
ー
ド
モ
ジ
ュ
ー
ル
サ
イ
リ
ス
タ
モ
ジ
ュ
ー
ル
M
O
S
F
E
T
モ
ジ
ュ
ー
ル
I
G
B
T
モ
ジ
ュ
ー
ル
冷蔵庫
洗濯機
ルームエアコン
民
IH 調理器
生
液晶 TV
プラズマ TV
ノートパソコン
情
サーバ
報
小容量 UPS
HEV 駆 動 用 イ ン バ
ータ
自
動
PHEV 駆動用インバ
ータ
車
EV 駆動用インバー
タ
HV/PHV/EV 用 DC/DC
コンバータ
電
鉄
電鉄用インバータ
新
PV パワーコン
エ
風力発電パワーコン
ネ
燃料電池パワーコン
汎用インバータ
産
AC サーボドライバ
業
電動工具
エレベータ
水色部分:標準搭載
黄色部分:オプション搭載
出典:(財)東北活性化研究センター「低炭素社会構築に伴う東北地方電子デバイス関連産業のビジ
ネスチャンスに関する調査報告書」(2011 年)を基に委員等の意見を反映し作成
-19-
I
P
M
(2)SiCパワー半導体を用いたシステム
a.SiCパワーデバイスの既存回路への適用
SiC-SBD の 特 長 を 利 用 し た 電 力 変 換 回 路 に 力 率 改 善 PFC(Power Factor
Corrector)回路がある。従来、Si-PiNダイオードがPFC回路に用いられていたが、
SiC-SBDを用いることにより、高周波スイッチングを行い、損失を増大させること
なく総合効率を改善させることができている(図表Ⅰ.23)。
ま た 、 モ ー タ 駆 動 に 広く 用 い ら れ て い る 電 圧型 イ ン バ ー タ 回 路 に おい て、
Si-IGBTに逆並列接続される還流ダイオードとして、Si-PINダイオードの代わりに
SiC-SBDを用いることにより損失低減が行われている。
図表Ⅰ.23
PFC 回路における SiC-SBD のメリット
■変換効率の向上
・SiC-SBD は特に高 SW 周波数での動
作において、効率向上効果が大
■付加部品の削減
・ノイズ・サージ対策部品をなくせ
る
・SW 周波数を上げることができれば
部品を小さくできる
出典:ローム社
報道資料
b.汎用インバータ回路への応用
汎用インバータのインバータユニットの主な構成部品は、パワーモジュール、
冷却器、平滑コンデンサである。半導体モジュールにSiCデバイスが搭載され、SiC
デバイスに流れる電流密度を高密度化できれば、チップの搭載面積を小さくする
ことができる。
-20-
図表Ⅰ.24
SiC-IPM について
Siのインバータに比べ、インバータ損失を約 70%低減、体積を 1/4
出典:三菱電機
報道資料(2009 年 2 月)
c.車載インバータ回路への応用
車載インバータは、パワーモジュール、制御回路、平滑コンデンサ、冷却装置
で構成される。車両搭載機器は高温に耐える必要があるため、SiCパワーモジュー
ルは有効である。また、冷却装置が低減できるため、機器をコンパクトにできる。
車両重量の低減にも寄与し、メリットが大きい(図表Ⅰ.25)。
図表Ⅰ.25
ハイブリッド車へ SiC パワーデバイスの適用効果
■SiC は 250℃以上の
高温動作も可能とな
るため、エンジンと
の冷却系統の共用化
やモータ一体型イン
バータが実現できる。
出典:四戸 孝「次世代パワーデバイスの電動自動車応用の可能性」EE TiMES JAPAN(2009 年 1 月)
-21-
3.パワー半導体の市場動向
(1)パワー半導体市場への参入企業
かつては、産業の米と言われ、日本の経済成長の原動力の一角を担った半導体
デバイス製造業も、メモリやロジック分野は再編のさなかにある。その中で国産
パワー半導体デバイスが多くの製品で高い世界シェアを占め、日の丸半導体産業
の最後の砦とも言われる状況にある。
また省エネ・環境分野においてのトップレベルの技術を有する日本は、次世代
パワー半導体の開発による製品の普及・拡大により関連する国内産業の成長が期
待されている。
パワー半導体の主なデバイスメーカは三つのグループに分けられる。ひとつは
伝統的な総合電機部門を持つメーカである。我が国で言えば東芝、三菱、日立、
ルネサス、富士電機である。海外ではインフィニオン(独シーメンスから分離)、
フェアチャイルド(米GEの一部門)などである。もうひとつはパワー半導体専
業メーカである。全社的な事業規模は縮小傾向にあるが、我が国では新電元工業、
旭化成東光、三社電機、新日本無線、海外ではインターナショナル整流器が該当
する。
この他には幅広く半導体事業を展開している中でパワー半導体を扱う企業であ
る。我が国ではローム、海外ではNXP(オランダ
フィリップスより分社)や
STマイクロ(スイス)などがある(図表Ⅰ.26)。
図表Ⅰ.26
パワー半導体の主なデバイスメーカ
重電系からの参入
幅広い展開からの参入
専業メーカ
海外
フェアチャイルド(GE)
インフィニオン
東芝
NXP
三菱
日立
国内
STマイクロ
ルネサス
インターナショナル
整流器
新電元工業 旭化成東光
ローム
富士電機
新日本無線
三社電機
出典:佐藤淳一「パワー半導体の基本と仕組み」秀和システム(2011 年)
国内における、主なパワー半導体デバイス関連企業の工場立地状況は図表Ⅰ.
27 のとおりとなっている。
-22-
図表Ⅰ.27
主なパワー半導体デバイス製造拠点の分布
GTO:ゲートターンオフサイリスタ
VPT:垂直柱トランジスタ
FRD:ファーストリカバリーダイオード
BPT:バイポーラトランジスタ
IGCT:ゲート転流型ターンオフ
サイリスタ
前:前工程
後:後工程
図表Ⅰ.28
企
業
名
主なパワー半導体デバイス製造拠点の分布
事業所・関係会社名
所在地
福岡県福岡市
三菱電機
パワーデバイス製作所
富士電機
松本工場
長野県松本市
岩手東芝エレクトロニクス
岩手県北上市
加賀東芝エレクトロニクス
石川県能美市
姫路半導体工場
兵庫県姫路市
ロームつくば
茨城県つくば市
ローム・ワコー
岡山県笠岡市
ローム・アポロ
福岡県八女郡広川町
日立原町電子工業
福島県南相馬市
日立事業所臨海工場
茨城県日立市
高崎事業所
群馬県高崎市
山形サンケン
山形県東根市
石川サンケン
石川県羽咋郡志賀町
秋田新電元
秋田県由利本荘市
東根新電元
山形県東根市
つくば事業所
茨城県つくば市
東芝
ローム
日立製作所
ルネサス
サンケン電気
新電元工業
日本インター
熊本県合志市
出典:(財)東北活性化研究センター「低炭素社会構築に伴う東北地方電子デバイス関連産業のビジ
ネスチャンスに関する調査報告書」(2011 年)より作成
-23-
(2)パワー半導体の市場規模
パワー半導体の世界市場規模を見ると、富士経済のデータによれば、2011 年(実
績)で約 1 兆 8,650 億円であった。市場は民生機器産業の減退や欧州・中国での需
要停滞から、回復の力強さに欠け、2015 年までは緩やかに需要が回復するとしてい
る。その結果 2020 年には 2011 年と比べ約 1.5 倍の 2 兆 8 千億円規模となる予測を
立て、前年の予測を下方修正している(図表Ⅰ.29)。一方で、パワー半導体構成部
材・装置については次世代パワー半導体への対応から 2011 年と比べ約 3 倍の伸びを
見込んでいる。
図表Ⅰ.29
パワー半導体関連の世界市場
2011 年実績・見込
パワー半導体
パワー半導体構成部材
パワー半導体製造装置
2020 年予測
2011 年比
2012 予測
1 兆 8,649 億円(実績)
2 兆 7,921 億円
149%
2011 予測
2 兆 2,079 億円(見込)
4 兆 4,837 億円
203%
2012 予測
1,200 億円(実績)
3,280 億円
273%
2011 予測
1,170 億円(見込)
3,555 億円
304%
2012 予測
1,440 億円(実績)
4,085 億円
284%
2011 予測
1,453 億円(見込)
3,659 億円
252%
出典:富士経済「次世代パワーデバイス&パワエレ関連機器市場の現状と将来展望 2011」および
「同 2012」(2011 年、2012 年)
SiC および GaN の次世代パワー半導体関連の世界市場に関連し、同じく富士経済
のデータによれば、2011 年時点で市場が顕在化しているのは SiC のみとし、63 億円
の市場規模であったとしている。SiC については、現状の情報通信向け中心から今
後は、自動車電装向けの需要の伸びが期待されている。一方 GaN については、現状
市場を形成するに至っていないものの、高耐圧化対応の進展に伴い需要が拡大する
可能性が示唆されている。
その結果 2015 年には SiC、GaN を合せ 239 億円、2020 年には 1,740 億円と 2011
年と比べ約 28 倍の急成長を見込み、前年の予測から上方修正している(図表Ⅰ.30)。
図表Ⅰ.30
次世代パワー半導体関連の世界市場
2011 年実績・見込
2020 年予測
2011 年比
2012 予測
63 億円(実績)
1,740 億円
2,762%
2011 予測
72 億円(見込)
1,260 億円
1,750%
63 億円(実績)
860 億円
1,365%
880 億円
-
次世代パワー半導体
内
SiC パワー半導体
2012 予測
訳
GaN パワー半導体
2012 予測
-
出典:富士経済「次世代パワーデバイス&パワエレ関連機器市場の現状と将来展望 2011」および
「同 2012」(2011 年、2012 年)
-24-
(3)メーカ別 世界市場動向
パワーデバイス市場におけるデバイスメーカ別の世界市場シェアを見ると、ド
イツのインフィニオンが首位であり、続いて日本勢の三菱電機、東芝、米国のフ
ェアチャイルドセミコンダクターが続いている(図表Ⅰ.31)。
そのうち、今後年率 7%程度の成長が期待される(IC Insights調べ)IGBTモジ
ュールの分野ではトップは三菱電機、続いてインフィニオン、さらに富士電機の
順番となっている(図表Ⅰ.32)。いずれにしてもパワー半導体分野における日本
勢の優勢度合いが伺える結果となっている。
図表Ⅰ.31
パワー半導体全体のシェア
図表Ⅰ.32
IGBTモジュールのシェア
11%
19%
9%
29%
4%
8%
12%
56%
8%
15%
21%
8%
出典:日刊工業新聞(2012 年 5 月)
出典:富士電機
IR資料(2011 年 11 月)
従来、加工技術などから参入障壁が高いと見られていたパワー半導体市場では
あるが、日本のパワー半導体メーカのシェアは 2000 年代前半の約 4 割から長期的
には低下傾向にある。
足許では小容量品でのアジア勢の新規参入や海外メーカによる大口径化の動き
などもあり、半導体産業を何度も襲った汎用化の波がパワー半導体にも迫ってい
る可能性がある。また、パワー半導体はお家芸の「すりあわせ」技術を有する分
野と考えられていたが、パッケージ化の進展に伴い「すりあわせ」領域が減少す
るとの指摘もあり、日本メーカは分岐点に立っていると言ってもよいかもしれな
い。
-25-
(4)知財状況から見た企業総合力
今後のパワー半導体開発に対する企業の先進的な取組み状況を明らかにするた
めに、 特許として出願された技術の注目度を指標化したパテントスコアを考え
る。 これは、出願人、審査官、競合他社の 3 社のアクションに着目し、同一技術
分野、出願年のほかの特許との相対比較により偏差値で評価したものである。
つまり、
「パテントスコアの数値が高い特許は市場の注目度が高い特許」、
「パテ
ントスコアの数値が低い特許は、誰も関心を持たない特許」ということになる。
調査対象範囲は、出願日が 1992 年 1 月以降で、1993 年から 2011 年 1 月末までに
公開された特許公報を対象とした。公開、登録、公表、再公表のすべてが対象で、
登録と、公開・公表・再公表が重複している場合は、登録を優先。企業等の集計
単位は権利者ベースとしている。
a.パワー半導体デバイス
パワー半導体関連市場は、今後大きな広がりが期待できることから参入企業が
多い分野だが、デバイス分野についてパテントスコアを用いた分析を行うと、総
合力1位の東芝から6位の富士電機までの6社が他社を大きく引き離しており、
これらの企業が幅広い強さを持っていると考えられる(図表Ⅰ.33、図表Ⅰ.34)。
図表Ⅰ.33
順位
企業名
1
パワー半導体デバイスのパテントスコア表
総合力
開発規模
個別力
(権利者スコア)
(出願件数)
(最高スコア)
東芝
1,543.35pt
1,016
82.56pt
2
デンソー
1,524.69pt
551
80.33pt
3
三菱電機
1,371.47pt
517
79.34pt
4
パナソニック
1,291.75pt
571
84.83pt
5
Cree
1,164.48pt
123
76.55pt
出典:パワー半導体デバイス(http://www.patentresult.co.jp/news/2011/02/3-18.html)
日本企業以外では、5位にCree、9位にInternational Rectifierが入るなど、
米国企業が比較的目立っている。
-26-
図表Ⅰ.34
パワー半導体デバイスのパテントスコア
富士電機
出典:パワー半導体デバイス(http://www.patentresult.co.jp/news/2011/02/3-18.html)
b.パワー半導体モジュール
前述のパワー半導体「デバイス」で 3 位の三菱電機がトップに、また6位以下
の日立製作所が3位という結果から、両分野の上位企業には違いがあることがわ
かる。その中で、デンソーは両分野において2位となっており、パワー半導体技
術の中で広く競争力を持っていることが伺える(図表Ⅰ.35、図表Ⅰ.36)。
図表Ⅰ.35
順位
企業名
1
パワー半導体モジュールのパテントスコア表
開発規模
個別力
総合力
(権利者スコア)
(出願件数)
(最高スコア)
三菱電機
1,810.04pt
771
77.l6pt
2
デンソー
1,241.86pt
451
78,68pt
3
日立製作所
923.42pt
516
74.49pt
4
日立オートモテイブ
システムズ
740.34pt
107
82.26pt
5
富士電機
678.29pt
522
82.56pt
出典:パワー半導体デバイス(http://www.patentresult.co.jp/news/2011/02/3-18.html)
その他「デバイス」分野と異なる点として、米国企業があまり目立たないとい
うことが上げられる。
「デバイス」分野で5位であったCreeは出願件数自体がわず
かであり、
「モジュール」分野では少なくとも日本市場の優先順位が低いのではな
いかと考えられる。
-27-
図表Ⅰ.36
パワー半導体モジュールのパテントスコア
出典:パワー半導体デバイス(http://www.patentresult.co.jp/news/2011/02/3-18.html)
c.SiC基板
現在SiCパワー半導体デバイスが注目されているが、そのための基板の作製が難
しく、かつてはCreeのほぼ独占状態となっていたものの、近年では参入企業も増
え、品質も向上し、コスト削減のための大口径化も進んできた。
図表Ⅰ.37
総合力
開発規模
個別力
(権利者スコア)
(出願件数)
(最高スコア)
デンソー
495.6pt
152
75.3pt
Cree
420.1pt
39
73.lpt
420.1pt
98
73.4pt
順位
企業名
1
2
3
SiC 基板のパテントスコア表
新日本製鐵
12
4
豊田中央研究所
141.9pt
34
75.3pt
5
住友電気工業
135.7pt
39
77.7pt
出典:SiC基板(http://www.patentresult.co.jp/news/2011/04/sickiban.htm 1)
上位3社ともバルクSiC結晶基板
13
に関する特許が多く見られる。1位 デンソ
ーは豊田中央研究所との共同出願であるa面成長
14
に関する特許、2位 Creeは欠
12
2012 年 10 月 1 日に旧住友金属工業と合併し、新会社「新日鐵住金」が発足
13
バルクSiC結晶基板についてはP.39 図Ⅱ. 5 を参照
14
SiC結晶成長において、c軸に垂直方向となるa軸方向の成長を繰り返すことにより、結晶内部の
欠陥の形態を基底面内の欠陥に変換して閉じ込め、その後に行うc軸成長において結晶外部に掃
きだすことで大幅に結晶内の転位を低減する手法
-28-
陥密度規定に関する特許などの評価が高いが、これら2社にはエピタキシャル基
板
15
に関する特許にも高評価のものが存在する。3位 新日本製鐵はSiCインゴッ
ト
16
に関する特許の評価が高いことが特徴である(図表Ⅰ.37、図表Ⅰ.38)。4
位 豊田中央研究所は集計対象特許のすべてがデンソーとの共願となっており、5
位 住友電気工業は同社発ベンチャー企業であったシクスオンが共同出願人であ
る特許の評価が高くなっている。また、子会社の日新電機を含めて計算すると、
4位 豊田中研を抜く結果になる。Creeのほかにも外国企業が見受けられ、件数は
多くはないものの、ロームが買収したSiCrysta1 やII-VI(ツーシックス)、NORSTEL
などが比較的高い評価になっている。
図表Ⅰ.38
SiC基板のパテントスコア
出典:SiC基板(http://www.patentresult.co.jp/news/2011/04/sickiban.htm1)
d.SiCパワー半導体デバイス
1位 CreeはSiC基板で有名だが、特許を通して分析すると、デバイス化につい
ても強みを持っているということがわかる。また、5位に日産自動車が入ってい
ることも大きな特徴といえる。日産自動車は出願件数も2位と多く、車載用パワ
ー半導体デバイスに対する自社開発の意欲が現れているといえる(図表Ⅰ.39、
図表Ⅰ.40)。
15,16
エピタキシャル基板、インゴットについてはP.39 図Ⅱ. 5 を参照
-29-
図表Ⅰ.39
順位
企業名
1
SiC パワー半導体デバイスのパテントスコア表
総合力
開発規模
個別力
(権利者スコア)
(出願件数)
(最高スコア)
Cree
685.7 pt
62
76.56 pt
2
デンソー
589.4 pt
173
73.08 pt
3
パナソニック
554.4 pt
102
86.5 pt
4
三菱電機
391.8 pt
103
78.63 pt
5
日産自動車
354.5 pt
131
77.66 pt
出典:SiC パワー半導体デバイス(http://www.patentresult.co.jp/news/2011/03/sic.htm1)
図表Ⅰ.40
SiC パワー半導体デバイスのパテントスコア
円の大きさ:出願件数
出典:SiCパワー半導体デバイス(http://www.patentresult.co.jp/news/2011/03/sic.htm1)
-30-
(5)国内パワー半導体の生産動向
a.パワー半導体デバイスの生産状況
我が国におけるパワー半導体の生産動向等を経済産業省の最新統計データ (工
業統計表:2010 年度)で見ると、デバイス関係では、産業コード 2810「半導体素
子製造業」において、全国に 99 事業所が存在し、従業員数は 2 万人強、生産額は
約 7,300 億円に及んでいる。地区別の生産額では、2010 年度は関東地域、近畿地
域、東北地域、九州地域の順で多くなっている(図表Ⅰ.41)。
なお、この「半導体素子製造業」には「ダイオード」、「整流素子(100 ミリア
ンペア以上)」、
「シリコントランジスタ」、
「トランジスタ(シリコントランジスタ
を除く)」、「その他の半導体素子」といった品目が含まれている。
図表Ⅰ.41
半導体デバイスの地域別生産額(2009・2010 年度)
東北
億円
4,000
3,000
2,000
1,000
580
747
09
10
0
中国
億円
億円
4,000
4,000
3,000
3,000
2,000
1,000
320
0
九州
10 年
度
億円
4,000
4,000
3,000
3,000
2,000
2,000
1,050
1,000
3,000
671
近畿
1,237
3,238
2,522
2,000
1,000
474
714
09
10 年
0
0
09
関東
4,000
2,000
665
1,000
億円
億円
中部
年度
09
度
10
年
度
1,392
1,000
0
0
09
10 年
度
09
10 年
度
出典:経済産業省「工業統計表」
また、中国地域においては、
「半導体素子製造業」として島根県に1事業所、岡
山県に2事業所、広島県に3事業所、山口県に1事業所の計7事業所が存在し、
-31-
中国地域全体では従業員数が約 1,000 名、生産額は 320 億円に及んでいる。
時系列でみると 2000 年代後半は全国シェア約 6~10%程度で推移していたもの
の、2010 年度は全国では生産額が増加する中、広島県での生産減等もあり、約 4%
程度と落ち込みを見せている(図表Ⅰ.42)。
図表Ⅰ.42
中国地域における半導体デバイス生産額の推移
金額(左軸:半導体素子製造業)
億円
2,000
全国シェア(右軸:半導体素子製造業)
14%
12.3%
12%
10.1%
1,500
9.5%
10%
1,544
8%
1,000
6.1%
5.9%
6.1%
6%
4.4%
500
1,047
1,107
895
4%
665
829
2%
320
0
0%
04
05
06
07
08
09
10 年度
出典:経済産業省「工業統計表」
b.半導体製造装置の生産状況
同様に国内における半導体製造装置の生産動向等を見ると、産業コード 2671
「半導体製造装置製造業」において、全国に 1,226 事業所が存在し、従業員数は
5 万 2 千人強、生産額は約 1 兆 6,800 億円に及んでいる。地区別の生産額では、
2010 年度は関東地域、近畿地域、東北地域、九州地域の順で多くなっている(図
表Ⅰ.43)。
なお、この「半導体製造装置」には「ウエハプロセス用処理装置」、「組み立て
用装置」、「その他の半導体製造装置」、「その他の半導体製造装置の部分品・取付
具・附属品」等の品目が含まれている。ただし、一般的に半導体製造装置に含ま
れる真空装置・真空機器(ドライエッチング装置、CVD装置等)や検査用装置
で当該区分に含まれないものが存在しているため留意が必要である。
-32-
図表Ⅰ.43
半導体製造装置の地域別生産額(2009・2010 年度)
東北
億円
8,000
6,000
4,000
2,000
2,292
1,202
0
09
10 年
度
億円
億円
中部
中国
億円
2,000
4,000
290
09
億円
09
8,000
億円
6,000
8,000
4,000
6,000
10 年
四国
度
近畿
4,000
2,000
0
09
10 年
度
2,000
1,086
0
10 年
度
09
10 年
度
6,000
2,000
967
3,950
8,000
4,000
2,126
2,000
447
0
九州
365
0
2,000
億円
4,000
4,000
6,000
7,805
6,000
6,000
8,000
関東
8,000
8,000
2,870
1,586
0
09
247
232
09
10 年
10 年
度
0
度
出典:経済産業省「工業統計表」
また、中国地域においては、
「半導体製造装置製造業」として鳥取県に 6 事業所、
島根県に 3 事業所、岡山県に 9 事業所、広島県に 26 事業所、山口県に 13 事業所
の計 57 事業所が存在し、中国地域全体では従業員数が約 2,200 名、生産額は 447
億円に及んでいる。
時系列でみると生産額に増減はあるものの、全国シェアは 3%前後で推移し、比
較的安定した動きを見せている(図表Ⅰ.44)。
-33-
図表Ⅰ.44
中国地域における半導体製造装置生産額の推移
金額(左軸:半導体製造装置製造業)
億円
全国シェア(右軸:半導体製造装置製造業)
1,000
5%
800
4%
3.7%
600
2.8%
3.0%
2.8%
3.4%
3%
2.7%
2.3%
400
2%
930
650
842
717
545
200
290
1%
447
0
0%
04
05
06
07
08
09
10 年度
出典:経済産業省「工業統計表」
中国地域の半導体製造装置の仕向先を見ると海外・国内他地域・中国地域各々1/3
といった状況である( 図表Ⅰ.45 )。半導体製造装置の需要は半導体メモリ不況やそ
の後の世界同時不況の影響により 2009 年度まで落ち込みを見せていたが、最新データ
である 2010 年度には需要の 3~4 割を占める韓国、中国、台湾などの海外需要が堅調
に推移し( 図表Ⅰ.46)回復が見られた。
図表Ⅰ.45
半導体製造装置の最終需要地
図表Ⅰ.46
半導体製造装置の輸出の推移(前年比)
500%
491.9%
全国
中国
中国地域
400%
東北
1.8%
300%
200%
海外
33.7%
159.6%
103.3%
100%
域内
31.3%
九州 16.0%
関東
7.7%
4.2%
近畿
-13.4%
-32.2%
0%
0.9%
中部
最終需要
4.3%
四国
54.9%
-5.6%
-100%
-50.7%
08
出典:中国経済産業局「平成 17 年(2005 年)産業連関表」
より作成
-34-
09
10
出典:財務省「貿易統計」より作成
11 年度
Ⅱ.SiCパワー半導体
結晶からデバイスまでのプロセスと技術的課題
1.SiCパワー半導体の製造プロセス
(1)SiCの特徴
SiCは、Siが 50%、C(炭素)が 50%の化合物半導体である。SiCを半導体として
見たとき、共有結合による高い原子間力により広いバンドギャップと高い絶縁破
壊電界強度を有し、熱的にも安定しているなど優れた特性を備えている。前述の
とおり広いバンドギャップと熱的安定性は高温動作を可能とし、高い絶縁破壊電
界強度は高耐圧・低損失なデバイスが作製可能であることを示している。
SiCとSiを比較したとき、次のことが言える。
1)
通常、Siを用いたデバイスでは、最高動作温度が 150~200℃に制限されるが、
SiCでは理論上は 800℃以上の温度でも動作可能である。
2)
SiCはSiの約 10 倍の絶縁破壊電界強度を有するため、Siの理論限界を大幅に
凌駕する低オン抵抗・高性能パワー半導体デバイス化を実現できる。
上記 2)の性質より、図表Ⅱ.1 に示すようにSiCはSiよりも同耐圧で比較すると
デバイスを非常に小型化できる。
図表Ⅱ.1
現材料(Si-MOSFET)と新材料(SiC-MOSFET)の比較
出典:荒井和雄他、新規半導体(SiC、GaN)のパワーエレクトロニクスの展開、季報エネルギー総合
工学、Vol.29 No.3、2006 年 10 月
SiCは常圧では液相が存在せず、約 2,000~2,200℃以上の高温で昇華する性質
を有する。SiC特有の重要な物理現象として、SiCの結晶多形(ポリタイプ)現象が
挙げられる。SiCでは 200 種類以上のポリタイプが確認されているが、発生確率が
-35-
高く応用上重要なのは 3C-、4H-、6H-SiCである。ちなみに最初の数字は積層方向
の 1 周期中に含まれるSi-C単位層の数を意味し、後ろのC、Hは結晶系の頭文字(C:
立方晶、H:六方晶)を表している。図Ⅱ.2 に 3C-、4H-、6H-SiCの積層構造の模
式図を示す。同図におけるA、B、Cの表記は、六方最密充填構造における 3 種類の
原子の占有位置を意味している。
図表Ⅱ.2
SiC の積層構造の模式図
・・・C原子
A
C
B
A
B
C
A
C
B
A
・・・Si原子
C
B
A
B
C
B
A
C
B
A
C
B
A
3C-SiC
4H-SiC
6H-SiC
出典:松波、大谷、木本、中村「半導体SiC技術と応用 第 2 版」日刊工業新聞社(2011 年)
-36-
(2)全体的な製造プロセス
パワー半導体の製造プロセスは大きく分けて図表Ⅱ.3 に示すようにウエハプ
ロセス(前工程)と組立て・試験(後工程)に分けられる。
図Ⅱ.3
シリコン結晶工場
半導体デバイスの製造フロー
Si多結晶製造
回路設計
Si単結晶製造
パターン設計
鏡面Siウェハ製造
鏡面
Si ウエハ製造
マスク製作
ホトマスク工場
ウェハプロセス
ウエハプロセス
(前工程)
半導体工場
(プロセス)
基板工程(FEOL)
←トランジスタを
形成する工程
配線工程(BEOL)
←配線を
形成する工程
組立て工程(後工程)
ウェハ
ウエハ
チップ
試験工程(後工程)
組立て・試験工場
(アセンブリ/テスト)
信頼性試験工程
(後工程)
パッケージ
製品出荷
出典:前田和夫、はじめての半導体プロセス、技術評論社、2011 年 8 月
半導体プロセスを実現するためには半導体製造装置が必要である。半導体製造
装置は図表Ⅱ.4 に示すように分類される。本表では、LSIの製造工程(前工程、
後工程)で使用される装置・設備に重点を置かれており、CAD・CAM・CAEなどの半
導体設計用装置は除かれている。また、マスク・レチクル製造用装置、ウエハ製
造用装置は「その他関連装置」に含められている。組立装置と検査装置・テスタ
が後工程の装置である。
-37-
図表Ⅱ.4
大分類
中分類
露光・描画装置
小分類
ステッパ、アライナ、電子ビーム描画装置、その他
レジスト処理装置
コータ&デベロッパ、アッシング装置、その他
洗浄・乾燥装置
ドライエッチング装置(Poly-Si 用、酸化膜用、メタ
ル用)、ウェットエッチング装置、その他
洗浄装置、スクラバ、乾燥装置、その他
熱処理装置
酸化・拡散炉、ランプアニール装置、その他
エッチング装置
前工程装置
PVD18 装置
中電流イオン注入装置、高電流イオン注入装置、高
エネルギーイオン注入装置、その他
常圧 CVD 装置、減圧 CVD 装置、プラズマ CVD 装置、
メタル CVD 装置、エピタキシャル成長装置、その他
スパッタリング装置、蒸着装置、その他
CMP19 装置
CMP 装置
Cu めっき装置
ダイシング装置
Cu めっき装置
ウエハ表面欠陥検査装置、ウエハパターン検査装置、
測長 SEM20、SEM レビュー、膜厚測定装置、顕微鏡、
その他
ダイサ、その他
ボンディング装置
ダイボンダ、ワイヤボンダ、TAB21 ボンダ、その他
イオン注入装置
CVD17 装置
ウエハ検査・測定装置
組立装置
パッケージング装置
テスタ
検査装置・
テスタ
モールディング装置、ばり取り装置、シーリング装
置、封止用加熱装置、組立工程用洗浄・乾燥装置、
キュア・ベーキング装置、マーキング装置、その他
ロジックテスタ、メモリテスタ、ミクストシグナル
テスタ、その他
プロービング装置
プローバ、その他
ハンドラ
ハンドラ、その他
環境試験装置
バーイン装置、プレッシャクッカ、その他
マスク・レチクル製造用
装置
その他関連
装置
半導体製造装置の分類
ウエハ製造用装置
半導体製造用関連装置
電子ビーム描画装置、レジスタ処理装置、薄膜形成
装置、エッチング装置、洗浄・乾燥装置、マスク・
レチクル検査装置、その他
単結晶引き上げ装置、ウエハ加工装置、検査・評価
用装置、その他
搬送装置、純水・薬液関連装置、ガス関連装置、ク
リーンルーム関連装置、その他
出典:半導体製造装置技術ロードマップ報告書、2010 年 4 月、(社)日本半導体製造装置協会
17
18
19
20
21
Chemical Vapor Deposition 化学気相成長
Physical Vapor Deposition 物理気相成長
Chemical Mechanical Polishing 化学機械研磨
Scanning Electron Microscope 走査型電子顕微鏡
Tape Automated Bonding の略称
-38-
SiCパワー半導体の製造技術は「①材料技術(基板製造、エピタキシャル成長)」、
「②プロセス技術(イオン注入、ゲート形成、電極形成など)」および「③実装技
術」に大別できる。その内容はSiパワー半導体の製造技術と類似している面もあ
る反面、従来のSiパワー半導体での技術をそのままでは活用することが出来ない
プロセスもある。
全体のイメージ図を図表Ⅱ.5 に示すが、赤字で記載してあるプロセスは従来
のSiと異なるものであり、スタートである結晶成長から、硬い材料を切断するた
めの切断技術、高温を必要とするイオン注入技術、メタルが異なる電極形成技術、
MOSチャネル移動度を改善するためのゲート形成技術など、それぞれに特徴的な技
術が必要とされる。
図表Ⅱ.5
結晶からインバータまでのプロセス
①材料技術
SiC粉末
インゴット
バルクウェハ
切断研磨
ダイヤモンド砥粒、放電加工
昇華法
(~2200℃)
エピタキシャルウェハ
エピタキシャル薄膜成長
(1600~1800℃)
ドライエッチ
メタル蒸着
高温イオン注入
高速熱アニール
(1500~1800℃)
インバータ
デバイス回路
構造設計
実装(高温、大電流)
デバイスチップ
(MOSFET,
ショットキーダイオードなど)
ダイ シング、ボンディング、モールド
回路設計(寄生パラメータ)
③実装技術
出典:SiCアライアンス シンポジウム(2012 年 6 月 28 日)資料を基に作成
一例として、SiCトレンチMOSFETのプロセスを図表Ⅱ.6 に示す。
-39-
②
プ
ロ
セ
ス
技
術
図表Ⅱ.6
SiC トレンチ MOSFET プロセス
エピタキシャル成長
SiO2膜の形成
pエピ層
pエピ層
pエピ層
n-エピ層
n-エピ層
n-エピ層
SiC基板(n+)
SiC基板(n+)
SiC基板(n+)
イオン注入+アニール
SiO2マスク除去
n+
p
p
n+
p
SiO2膜の加工
SiO2
SiO2膜の形成
p
n+
p
p
n-エピ層
n-エピ層
n-エピ層
SiC基板(n+)
SiC基板(n+)
SiC基板(n+)
SiO2膜の加工
n+
p
SiCエッチング
n+ p
p
n+
SiO2
SiO2マスク除去
n+ p n+
n+ p
n+
n+
n-エピ層
n-エピ層
n-エピ層
SiC基板(n+)
SiC基板(n+)
SiC基板(n+)
p
n+
電極形成(ソース・ゲート・ドレイン)
n+ p
n+
n+
ゲート電極
SiO2エッチング
SiO2膜の形成
+
p n
n+
p
n+
n+
p
n+
n+
p
n+
n+
n-エピ層
n-エピ層
n-エピ層
SiC基板(n+)
SiC基板(n+)
SiC基板(n+)
ソース電極
p
n+
ドレイン電極
出典:松波委員長、第1回小委員会提供資料を基に作成
関連 URL:http://www.samco.co.jp/products/app/05_power.php
-40-
(3)個別製造プロセス
a.SiCの結晶成長
SiCパワー半導体のためには、大面積で高品質な単結晶基板が必要である。現在、
工業的にSiC単結晶を製造する方法として用いられているのは昇華再結晶法であ
る。近年は、新しい方法として溶液成長法及び気相成長法が注目されている。
SiC単結晶は天然には存在しない物質で、これまで人工的に製造されてきた。図
表Ⅱ.7 はSiC単結晶成長法の模式図を示しており、(a)は昇華再結晶法あるいは
昇華法、(b)は溶液成長法、(c)は高温CVD法あるいはガス成長法である。
図表Ⅱ.7
SiC単結晶成長法の模式図
種結晶
成長結晶
SiC2
Si Si C
2
C
SiC結晶粉末
Si
SiC2 Si Si C
2
C
分解ゾーン
C
Si融液
C
黒鉛るつぼ
SiH4 C2H4
原料ガス
(c)
(b)
(a)
出典:松波、大谷、木本、中村「半導体SiC技術と応用 第 2 版」日刊工業新聞社(2011 年)
SiC単結晶のこれまでの大型化について、シリコン(Si)、ガリウムヒ素(GaAs)
単結晶との比較を図表Ⅱ.8 に示す。SiC単結晶は、現在、4 インチ(100mm)口径ま
でのウエハが市販されており、2010 年には 6 インチ(150mm)口径ウエハの製造に
成功している。今後、150mm口径SiC単結晶ウエハが市場に供給されるものと考え
られている。
図表Ⅱ.8
SiC単結晶の大口径化の推移
500
450
400
結晶口径(mm)
350
Si
300
250
200
GaAs
150
SiC
100
50
0
1950
1960
1970
1980
1990
2000
2010
暦年
出典:松波、大谷、木本、中村「半導体SiC技術と応用 第 2 版」日刊工業新聞社(2011 年)
-41-
(a)昇華再結晶法
昇華再結晶法の基本プロセスは、準閉鎖空間内で、原料から昇華したSiとCから
成る蒸気が、不活性ガス中を拡散により輸送されて、原料より温度の低く設定さ
れた種結晶上に過飽和となって凝結するというものである。従って、結晶成長速
度は、原料の温度と系内の温度勾配、圧力によって決定される。現在市販されて
いるSiC単結晶ウエハのほとんどが、この昇華再結晶法により製造されている。
SiCは、大気圧下では 2,700℃超の高温で、固体SiC(固相)から融液(液相)を経
由せずに、熱分解して昇華ガス(気相)に直接相転移するという性質がある。これ
が昇華であり、昇華再結晶法では、ほぼ全てのプロセスが 2,000℃を超える高温
環境下で行われるため、大口径化技術を困難にしている。その技術課題として、
るつぼを含めたホットゾーンの大型化に伴う品質の維持、高周波誘導加熱におい
ては表皮効果を考慮したホットゾーンの検討が挙げられる。また、大口径SiC単結
晶材料そのものについても、下記の技術課題が重要となる。
1) 大口径結晶成長におけるポリタイプ安定性確立
2) 熱応力起因の結晶割れ抑制
3) 転位欠陥低減化による高品質化
(b)溶液成長法
溶液成長法は融液から結晶を育成する方法である。溶液成長法は熱力学的平衡
状態に基づく成長法であり、高い結晶性が期待できる。
溶液成長法では昇華法に比べ各種の多形の安定性に関する知見が少なく、使用
する溶媒によっても多形の現れ方が異なることから、その制御が大きな課題の一
つとなっている。
(c)ガス成長法
ガス成長法は、高純度のガス原料を用いて成分組成を安定的かつ柔軟に制御可
能な手法で、大口径かつ高品質なSiCウエハを低コストに安定供給を可能にする量
産技術として期待される。
ガス成長法の技術課題としては次の事項が挙げられる。
1) 連続・長尺成長装置の開発
2) 高品質化の実証
3) 大口径化の実証
b.SiCのウエハ加工
SiC単結晶は硬くて脆く、加工が難しい材料であるため、SiC単結晶を高効率・
高歩留まりに決められた形状・表面品質のウエハに加工できるかは、SiCパワー半
導体デバイスの実現にとって重要である。
-42-
(a)SiCのウエハ切断
1 つのインゴットから大量のウエハを高精度かつ安定的に切り出す装置とし
て、マルチワイヤソーがある。マルチワイヤソーにおけるスライシングでは振動
方式がとられている。
大口径のSiCウエハのスライシングに関しては課題も多く、新たな加工方法の検
討も含めて技術進展が求められている。
(b)SiCのウエハ研磨
SiCはダイヤモンド、炭化ホウ素に次ぐ硬度を持ち、常温ではエッチングできる
薬液が存在せず、加えて最表面昇華開始温度が 1,000℃以上の熱的安定性を持つ。
そのため、SiCは他の半導体材料に比べてデバイスレディ加工が困難な材料であ
る。デバイスレディとは、半導体プロセスラインに投入できる状態までに基板の
形状、表面性状を整えた状態をいう。研磨工程におけるSiCとSiの違いは、次のと
おりである。
1) 炭化ケイ素等の汎用砥粒を用いたラッピングが高硬度の SiCには適用できな
い。
2) Siにおいて前加工ダメージ層除去に使われるウェットエッチングが化学的に
安定的なSiCには適用できない。
c.エピタキシャル成長
エピタキシャル成長技術とは、単結晶基板上に結晶軸の揃った高純度で欠陥の
少ない結晶薄膜を成長させる方法である。基板となる結晶の上に結晶成長を行い、
下地の基板の結晶面にそろえて配列する。
SiCを電子デバイスへ応用するためには、異種ポリタイプのないSiC単結晶のエ
ピタキシャル成長技術が極めて重要になる。六方晶SiC(4H-、6H-SiC)は単一ポ
リタイプで良質のSiC{0001}22 基板が入手できるのでこの上へのホモエピタキシ
ャル成長が行われる。エピタキシャル成長の方法として、化学気相成長(CVD)、
液相エピキタシー(LPE)などが研究されているが、デバイス作製に適しているの
はCVD法である。
CVD法において六方晶基板のSiC{0001}面に数度のオフ(傾き)角度を設ける
ことにより(図表Ⅱ.9)、比較的低温で高品質ホモエピタキシャル成長層が得ら
れ、「ステップ制御エピタキシー法」と名付けられている。1986 年に開発された
22
六方晶においては慣用的に下図のような a1、 a2、 a3、 c の四つの
軸を用いて方向面の指数を(hklm)と現わす。この方法では、Z軸方向の
指数は[0001]となる
-43-
(-2110)
(1-101)(10-10)(0001)
この技術により、デバイス作製を可能にする高品質のSiCエピタキシャル成長層が
初めて得られるようになっている。なお、この方法は 4H-SiCなど任意のSiCポリ
タイプのホモエピキタシ―に有効であることが示されている。
図表Ⅱ.9
6H-SiC{0001}オフ面上の成長モードの模式図
出典:松波、大谷、木本、中村「半導体SiC技術と応用 第 2 版」日刊工業新聞社(2011 年)
d.イオン注入
イオン注入は、ドナーやアクセプターとなる不純物をイオン化し、加速して半
導体基板内に打ち込むことで不純物を添加(ドーピング)する方法である。同じド
ーピング技術として拡散法があるが、イオ
ン注入法は拡散法に比べて不純物の分布
図表Ⅱ.10
イオン注入イメージ
や接合の深さなどを精密に制御できる。
結晶にイオン注入を行うと、格子欠陥が
発生するため、注入した不純物を電気的に
活性化したり、結晶性の回復を図るため、
注入後にはアニール処理が必要となる。
イオン注入とアニールプロセスは Si半
導体のデバイス作製プロセスにおいて一
般的に行われるが、SiCではプロセス温度
が異なる。Siへのイオン注入は室温で行わ
れることが通常であるが、SiCでは被注入
試料を 300℃~800℃に加熱する高温注入
技術が用いられる。昇温注入後のアニール
はArガス中で 1,500℃~1,800℃の高温下
で行われる。
SiCへのイオン注入技術の大きな課題と
して、高温アニール後もSiC表面の平坦性
-44-
(株式会社イオンテクノセンターHPより抜粋)
を維持すること、高濃度イオン注入領域のシート抵抗を十分下げること、注入し
た不純物原子の分布を制御するといったことが挙げられる。
e.エッチング
エッチングは半導体基板の膜を削ることにより表面加工を行う技法である。
エッチングにはウェットエッチとドライエッチがある。ドライエッチはエッチ
ングガスをウエハ表面にぶつけてメカニカルな力と化学反応で膜を削るものであ
り、ウェットエッチは水溶液を使い化学反応によって膜を削るものである。一般
的な特長として、ウェットエッチは簡単で速く、ドライエッチは精度良い加工が
できる。ドライエッチとしてプラズマエッチング、ウェットエッチとして溶液エ
ッチングがある。
(a)プラズマエッチング
プラズマを用いてエッチングするもので、反応性イオンエッチング (reactive
ion etching;RIE)法が一般的な手法である。プラズマはRIE装置の反応室へ導入し
たガスに高周波電力を印加して生成される。そこで生じた化学的に活性なラジカ
ルとイオンを試料へ照射し、半導体基板表面がエッチングされる。
図表Ⅱ.11
方式
主要なプラズマエッチング 2 方式の比較
バレル型
平行平板型
反応ガス
反応ガス
~
高周波電源
半円筒
型電極
石英円筒
模式図
ウェハ
~ 高周波電源
プラズマ
プラズマ
排気
ウェア位置
ガス圧力
排気
放電領域外
10-1~1 Torr(※)
ラジカル
放電領域
10-1~1Torr(※)
ラジカルおよびわずかのイオン
反応種
(わずかなスパッタリング効果)
エッチング状態
等方性
等方性/異方性
ポリシリコン、シリコン、Si3N4、 ポリシリコン、Al、SiO2(シリコ
エッチング
フォトレジスト、PSG(リンケイ ン上)、PSG(リンケイ酸ガラス)
対象物
酸ガラス)
アンダーカット(サイドエッチン アンダーカット(サイドエッチ
欠点
グ)、シリコン上の SiO2 エッチン ング)、フォトレジストの耐久性
グ不可能、Al エッチング可能
不良、放射線損傷
(※) 1 Torr = 約 133.322368 Pa
出典:「実用真空技術総覧」、(1990 年 11 月 26 日)、実用真空技術総覧委員会編、産業技術サービス
センター発行、747 頁、表 2.2、ドライエッチング方式の比較
-45-
エッチング用のガスとしてフッ素系、塩素系、臭素系が使われ、六フッ化硫黄
(SF6)を用いたとき比較的速いエッチング速度が得られる。化学的に活性な反応種
を増やすために、これらガスに酸素(O2)を添加することがある。プラズマエッチ
ングに使われるマスク材料としては、金属や酸化物が用いられる。
プラズマエッチング装置にはバレル型(円筒型)、平行平板型がある。
(b)溶液エッチング
SiCは化学的に安定な半導体材料であるが、溶融塩法や光電気化学法を使うとエ
ッチングすることができる。SiCは常温の王水やフッ硝酸でエッチングされない
が、500℃付近の溶融した水酸化カリウム(KOH)と容易に反応する。
SiC を エ ッ チ ン グ す る と き の 電 解 液 は 室 温 で 、 フ ッ 化 水 素 酸 (hydrogen
fluoride:HF)やKOH水溶液などが用いられる。エッチング速度はSiCと電解液の接
合に流れた電流に比例しエッチングされた量はファラデーの電気分解の法則で与
えられる。この方法で得られるエッチング表面の形状は電解液の濃度や電流密度
によって変わる。
溶液エッチングでは強アルカリや酸を使うため化学的に安定的なマスク材料が
ほとんどなく、マスク形状に沿った微細加工が難しい。
f.熱処理(アニール)
ウエハ表面へのゲート酸化膜の形成やアニールのために熱処理を行う。アニー
ルは「焼鈍(しょうどん)」=「やきなまし」であり、均一な拡散、再結晶、合金の
固相転移、残留歪みの除去などを目的とする加工方法である。半導体デバイス製
造プロセスの場合は、様々な目的を持った加熱プロセスを一括してアニールと呼
んでいる。熱 処理装置 としては古典 的なファ ーネスおよび RTP(Rapid Thermal
Process)が用いられている。
-46-
図表Ⅱ.12
ファーネスと RTP の比較
ファーネス
均熱管
石炭チューブ
ウェハ
RTP
反射板
ランプ(上部)
ヒーター
支持台
(石英)
ウェハ
反射板
ホルダー(石英)
・バッチ式 ・ホットウォール
・長時間加熱、熱的平衡状態
・昇降温に時間を要する(熱容量最大)
・ウエハの温度は安定している
(ウエハの温度を直接測定できない)
・処理の均一性は高い
・スループットが大きい
・床面積が大きい
・徐熱、徐冷により欠陥発生の抑制可能
・あらゆる温度領域に対応可能
石英窓
チャンバー
石英窓
ランプ
(下部)
・シングルウエハ式 ・コールドウォール
・短時間加熱、熱的非平衡状態
・高速に昇降できる(熱容量最小)
・ウエハ温度は輻射率の影響を受ける
(温度計測法に課題がある)
・処理の均一性(温度の均一性)の問題
・スループットが小さい
・床面積が小さい
・スリップ欠陥制御が困難(大口径/高温)
・高温プロセスには適していない
出典:前田和夫「はじめての半導体製造装置」技術評論社(2011 年)
g.露光
露光は、ウエハ基板上に回路パターンを縮小投影露光するものである。半導体
露光装置は、1 枚のウエハ上に数百のチップを逐次移動(ステップ)しながら露
光するため、ステッパとも呼ばれる。
図表Ⅱ.13
露光のプロセス
感光剤塗布
露光 1
露光 2
現像
パターン形成に用
フォトマスクを介
パターンを焼き付
感光したレジスト
い る 感光 剤 (レ ジス
して、半導体パター
け
を除去
ト)を塗布
ンをウエハに転写
出典:半導体製造工程 HP
h.洗浄
半導体デバイスの製造工程においては、まず洗浄からスタートし、各工程の前
後に必ず用いられ、数十回反復される。洗浄はウエハ表面の洗浄のほか、製造装
置、使用器具、部品などの清浄化まで含んだ技術である。その中でもウエハ表面
-47-
の洗浄は最も重要かつデリケートな清浄技術である。
ウエハの洗浄には、ウェット、ドライ、その他の 3 つに分類される。ウェット
洗浄法は薬液中にウエハを浸漬し、化学的溶解などによって汚染を除去するが、
汚染物を含んだ薬液を洗い流すためのリンスと乾燥が必要となる。ドライ洗浄は
ガス中で表面の汚染を除去する。
特に、SiCのゲート酸化膜形成においてはSiC基板の洗浄が重要である。一般的
には、Siで用いられている酸アルカリと過酸化水素水およびフッ化水素酸をベー
スとしたRCA洗浄 23 がSiCに対しても広く用いられる。
i.ゲート酸化膜形成
SiCで は 、 そ の 上 に 形 成 し た 酸 化 膜 を ゲ ー ト 絶 縁 膜 と し た MOS(Metal Oxide
Semiconductor)型デバイスの作製が可能である。SiCはSiと同様な熱酸化によって
良好な絶縁膜であるSiO2 を形成できる。酸化温度は 1,100℃以上がよく用いられ
るが、結晶面によって界面特性の温度依存性が異なる。
SiC-MOSFETでは、ゲート絶縁膜とSiCの界面特性がデバイス特性に大きな影響を
与える。これまではゲート絶縁膜として熱酸化膜が用いられてきたが、今後は堆
積酸化膜が有望である。堆積膜の形成にはLPCVD(Low-pressure Chemical Vapor
Deposition)法やPECVD(Plasma-enhanced Chemical Vapor Deposition)法がよく用
いられる。
j.アッシング
アッシングとはフォトレジストを分解・除去するレジスト剥離、試料を加熱・
燃焼し無機化合物にすること(灰化(かいか))の二つの意味を持つ。レジスト剥
離(Resist Stripping)とは、エッチング工程後不要となったレジストを除去す
ることであり、当初はウエットプロセスであったが、最近はドライプロセスが主
流となっている。ドライプロセスは、レジストを気相中でオゾンやプラズマによ
り灰化することにより除去する。
k.電極
オーミック電極はコンタクタとも呼ばれ、半導体基板上に形成された各種配線
とデバイス上のn型領域やp型領域とを電気的に接続する役割を果たす。
Si半導体におけるAlのように、配線とコンタクトの両方を兼ねる配線材料があ
れば、図表Ⅱ.14(a)のようにコンタクトの構造もこれを形成するプロセスも簡略
23
1970 年代
洗浄法
米国RCA 社によって開発された、半導体製造工程における代表的なシリコンウエハ
-48-
できる。しかし、SiCでは 1,000℃程度の温度で急速熱処理(PDA:Post-Deposition
Anneal)してコンタクトを構成するため、Alなどは融解し構造を維持できない。こ
のため、SiCでは同図(b)のように、高温熱処理に弱い配線と高温熱処理を必要と
するコンタクトを分離して形成する。
図表Ⅱ.14
配線兼接触材
SiC コンタクトの構造
バリアメタル
配線
層間絶縁膜
層間絶縁膜
接触材
反応層
CVD酸化膜
熱酸化膜
n+,p+領域
SiC基板
(a)
(b)
理想型
実用型
出典:松波、大谷、木本、中村「半導体SiC技術と応用 第 2 版」日刊工業新聞社(2011 年)
l.モジュール化
SiC 等の次世代パワー半導体モジュールあるいは次世代パワー半導体実装基板を
製造するにあたっては、パッケージ、はんだ、コイル、コンデンサ等の周辺部材の
改良が必要である。パッケージについては高電圧対応の樹脂や沿面放電を防止する
工夫が課題である。はんだについては高温対応のものを開発する必要がある。コイ
ル、コンデンサは、高周波数とすることで小型化が可能となるが、次世代パワー半
導体の高周波特性に適合した製品を開発して低コストで供給できるようにする必要
がある。
(a)封止材料
現在広く使われているゲル材料は 200℃では長期間経過すると酸化が起こるため、
250℃以上の温度で安定的な封止材料の開発が課題である。また、封止材料の高耐熱
化だけでなく、運転時と停止時で大きな温度差が生じ、熱膨張率差が大きいと大き
な熱応力が発生するため、SiC の熱膨張率に合わせたような材料が必要となる。さ
らに、高電圧系の制御を行う場合、高温動作時に長期間に渡り高い絶縁破壊特性、
優れた絶縁抵抗を示す材料である必要もある。
(b)接合材料
現在広く使われているはんだ材では 200~250℃における信頼性を確保するのは
困難であり、高耐熱の接合材料・接合技術が必要となる。
-49-
(c)配線材料
現在広く使われている Al のワイヤボンドでは 200~250℃における信頼性を確保
するのは困難であり、高耐熱の配線材料が必要となる。
(d)絶縁基板
パワーモジュールの絶縁基板としてアルミナと窒化ケイ素が一般的に用いられて
いるが、高温かつ高信頼を実現するためには、高い耐電圧特性を有すると共に高い
破壊靱性と高熱伝導の両立が必要となる。また、絶縁基板および放熱用及び配線用
の C u 板を含めたメタライズ基板として耐ヒートサイクル性を確保するための高強
度化と高靱性化が求められている。
(e)受動素子
高温、高信頼性の要求に応えるコンデンサ、抵抗、磁性部品等を実現する必要が
ある。抵抗では、抵抗値の温度依存性の抑制が課題となる。また、コンデンサでは、
比誘電率の温度依存性抑制、高温でのリーク電流の抑制や高信頼性の確保、高誘電
率化が課題である。これらを実現する新規な耐熱抵抗体、耐熱高誘電材料の開発が
必要となる。
上記(a)~(d)の課題に関連して、現在のパッケージの主流は「シリコーンゲ
ル封止構造」
・
「はんだ接合(Sn-Ag 等)」
・
「アルミワイヤボンディング」等であるが、
SiC パワーモジュールにおいては「銅ピン接続」・「Ag ナノ粒子焼結体接合 or はん
だ接合(Au-Ge 等)」
・
「エポキシ樹脂封止構造」等への置換えの動きがみられる(図
表Ⅱ.15、図表Ⅱ.16)。
図表Ⅱ.15
車載用インバータ/モジュールの実装材料・形態動向
現行 Si
先端・将来(SiC)
封止技術
ゲル状シリコーン樹脂
+ケーシング
トランスファーモールド(エポキシ樹
脂)⇒新たな樹脂
接合材料
Sn-Ag/Sn-Sb/Sn-Cu-Ni/Sn-Cu
Ag ナノ粒子焼結体/Au-Ge
配線材料
太線 Al ワイヤ
太線 Cu ワイヤ/Cu リード
絶縁基板
Al 2O 3(アルミナ)、AlN、Si 3N 4
樹脂+Al/厚銅基板
出典:半導体新聞(2012 年 9 月 19 日号)を基に作成
-50-
図表Ⅱ.16
パワーモジュールの構造の比較
アルミワイヤボンディング構造(現行)
新たなパッケージ構造(一例)
須である。 出典:富士時報 Vol.84 No.5 2011「SiC パワーモジュールのパッケージ技術」
接合材料の点では高温時の金属組織の劣化に対応した融点等の高い材料が望まれる
-51-
2.SiCパワー半導体の開発上の問題点と課題
(1)SiCパワー半導体の技術的課題の概要
本節ではSiCパワー半導体の本来の特性を実現するために必要な製造プロセス
における問題点と課題について述べる。詳細については次項「(2)SiCパワー半
導体の材料開発における問題点と課題」および「(3)SiCパワー半導体の製造技
術における問題点と課題」で記述するが、全体的には図表Ⅱ.17 に示すように各
製造プロセスそれぞれに技術的課題が存在している。
図表Ⅱ.17
SiC パワー半導体開発の主な問題点と課題
製造プロセス
材
料
技
術
基板技術
エピタキシャル成長
技術
プ
ロ
セ
ス
技
術
主な技術課題
結晶欠陥の低減、低抵抗化、形状(大口径化、反り低
減、凹凸低減)
均一性の確保、スループット向上
イオン注入技術
残留欠陥解消、表面荒れの低減
ゲート形成技術
界面準位密度低減、酸化膜の信頼性向上
電極形成技術
低抵抗化、プロセスの低温化
ダイシング技術
切断幅縮小、低損傷化
実装技術
熱抵抗低減、耐熱性、低寄生インダクタンス化、低キ
ャパシタンス化
出典:住化分析センター「SCAS NEWS」2012-Ⅰ(2012 年)を基に作成
-52-
(2)SiCパワー半導体の材料開発における問題点と課題
a.SiC基板の大口径化
SiCパワーデバイスに関る要素技術の中で最も大きな課題を抱えているのは、
SiC基板の製造技術である。SiCは昇華法などの気相での結晶成長方法が用いられ
るが、大口径の基板作製は難しく、現在市販されているウエハの口径は 4 インチ
に留まっている。基板の欠陥もまだ多く、成長速度が遅いことが大きな問題であ
る。
高パワー密度化と、高温動作を可能とする新材料(ワイドバンドギャップ半導
体)としてSiCを用いたパワーデバイスの開発が進展し、2001 年にはSiC-SBDが製
品化された。SiC-MOSFETについても、SiCの理論限界には到達しないまでも、既に
Siデバイスを凌駕する特性のDMOS型SiCデバイスが得られている。2010 年の後半
に入ってからは、デバイスとしての出荷が開始されるなど、現在実用化への動き
が加速されている。
SiCデバイスの用途としては優れた特性を活かした新規な応用分野が想定され
ており、市場確立のためには、コストの低減と量産規模の確保が不可欠と考えら
れている。そのための重要課題のひとつとして基板の大口径化があげられ、研究
開発テーマとして「SiC基板の大口径化」が注目される。
図表Ⅱ.18 に、SiC基板の大口径化における出願先国別-出願人国籍別出願件
数を示す。各国とも自国への出願件数が多いという傾向が見られる。中国籍、韓
国籍の出願件数は小さく、両者とも自国へのみ出願している。全体的には、総数
が少なく、いまだこの分野のプレーヤは十分な数でないことがわかる。今後、戦
略的に強化することで、優位に立つ可能性がある。
図表Ⅱ.18
SiC基板の大口径化に関する出願先国別-出願人国籍別出願件数
(日米欧中韓への出願)
出
願
先
国
日本
58
10
2
米国
16
9
3
欧州
15
7
10
中国
4
4
1
韓国
10
6
3
日本
米国
欧州
4
6
中国
韓国 その他
出願人国籍
出典:平成 22 年度
特許出願技術動向調査報告書
-53-
グリーンパワーIC、特許庁
b.エピタキシャル薄膜の厚膜化・高速化
SiCパワーデバイス作製のトータルコストにおけるエピタキシャル成長工程の
占める割合が高いことから、この工程におけるコスト削減が求められる。エピ成
長のコスト問題は、成長速度が遅いことに由来している。Siのエピ量産装置の成
長速度が数十~数百μm/hであるのに対し、SiCのエピ量産装置は数μm/hと桁違い
に遅く、これが価格差に反映されている。
LPCVD〔low pressure chemical vapor deposition method:減圧CVD(化学気相
成長)〕によるエピタキシャル成長の高速成長に関する現状技術を図表Ⅱ.19 に
示す。
図表Ⅱ.19
項
目
高温成長法
LPCVD エピタキシャル成長の高速成長技術
内
容
通 常 の 成 長 温 度 (1,500 ~ 1,700 ℃ ) に 比 べ 、 100 ℃ 以 上 高 い
1,700~1,850℃で成長を行う。50~70μm/h が達成されている
分圧制御法
CVD 装置により、ある条件の下で、250μm/h が得られている
ハライド法
塩素系ガスを用いて、1,550℃で 112μm/h が報告されている
高効率ガス供給法
ガスの流れと基板との位置関係を調整して、原料ガスを効率良
く基板に供給することにより、140μm/h が達成されている
c.エピタキシャル薄膜の結晶欠陥の挙動解析・制御
SiC単結晶基板には数種の転位が含まれており、これらの転位がエピタキシャル
膜内に伝播して引き継がれる。その伝播過程では各種の構造転換がなされること
が知られている。また、エピタキシャル成長時に転位や積層欠陥が新たに導入さ
れることもあり、点欠陥も導入される。これらのエピタキシャル膜内に存在する
拡張欠陥や点欠陥の多くは素子の電気的性能に様々な影響を及ぼす。
拡張欠陥や点欠陥の密度を低減するため、欠陥構造や生成機構を解明して、こ
れらの制御手法を得る研究が行われている。
-54-
(3)SiCパワー半導体の製造技術における問題点と課題
SiC半導体デバイスを製造するにあたっては、従来のSi半導体デバイスの製造装
置を使える場合もあるが、装置を更新する必要がある場合もある。SiC MOSFET製
造プロセスの全般的な課題としては、SiC特有の高温プロセスによるものが多いこ
と、小口径基板(3~4 インチ)用プロセス装置がないことが挙げられる。
SiC半導体デバイス用プロセス装置としては次のものが挙げられる。
①エピタキシャル成長装置
② イオン注入装置
③ 活性化アニール装置
④ ステッパ
⑤ エッチング装置
⑥ 酸化膜形成装置
⑦ 洗浄装置
⑧ 加工装置
a.エピタキシャル成長装置
エピタキシャル成長は、基板となる結晶の上に結晶成長を行い、下地の基板の
結晶面にそろえて配列する薄膜結晶成長技術のひとつである。基板と薄膜が同じ
物質である場合をホモエピタキシャル、異なる物質である場合をヘテロエピタキ
シャルと呼ぶ。結晶成長の方法として分子線エピタキシー法や有機金属気相成長
法、液相エピタキシー法などがある。
エピタキシャル成長が起こるには格子定数のほぼ等しい結晶を選ぶ必要があ
り、温度による膨張係数の近い物でなくてはならない。
なお、現在GaNはサファイア基板上に結晶成長をする方法が広く採られている
が、両者の格子定数は大きく違うこと等があり、通常の方法ではエピタキシャル
成長できない。これを解決するために低温バッファー層を導入したことによりサ
ファイア基板上にGaNをエピタキシャル成長することに成功し、これにより窒化物
系半導体を用いた発光ダイオード、レーザダイオード、電子デバイス、受光素子
の発展へとつながった。
b.イオン注入装置
SiCは拡散係数が極めて小さいため不純物ドープはイオン注入でしか出来ない
といわれている。また、室温注入よりも高温注入の方が注入層の非晶質化が抑制
され、アニール後に異種ポリタイプが発生しないことが知られている。既存の量
産装置では高温注入の機能を搭載したものがなかったため、トレイの上にSiC基板
を 1 枚ずつ手動で取り付けていたことから 1 日の処理枚数はせいぜい数枚であっ
-55-
たが、最近では、量産型のSiC向けイオン注入装置が開発されている。
c.活性化アニール装置
イオン注入法により導入されたドーパントは活性化アニール処理により電気的
に活性化される。特に、SiCの場合は 1,600~1,800℃という超高温処理が必須で
ある事が特徴であると共に、大きな欠点でもある。超高温処理による表面元素の
脱離を防ぐために、シラン(SiH4)雰囲気中でのアニールやグラファイトキャッ
プを用いる手法が実用化していると共に、レーザアニールによる活性化も試みら
れているが実用化には至っていない。現状では、高周波誘導加熱や赤外線ランプ
加熱、電子衝撃加熱等、いくつかの手法を用いた活性化アニール装置が実用化さ
れている。
d.ステッパ
ステッパ(Stepper)は、シリコンなどのウエハに回路を焼き付けるため、ウエ
ハ上にレジスト(感光剤)を塗布し、レチクル
24
のパターンを投影レンズにより
1/4 から 1/5 に縮小して、ウエハ上を移動(ステップ)しながら投影露光する。1
つの露光エリアを露光する際にレチクルとウエハと固定して露光する装置(アラ
イナー)と、レチクルとウエハを同時に動かして露光する装置(スキャナ)とがあ
る。
ステッパ光源としては、i線(365nmにある輝線)等の水銀ランプが使われている
が、1990 年代後半にはKrFエキシマレーザ(波長 248nm)が実用化され、0.25μm
のパターンが解像可能となっている(現在のシリコンLSIの標準はArFエキシマレ
ーザ(波長
193nm))。
e.エッチング装置
SiC の 異 方 性 エ ッ チ ン グ に は 高 密 度 プ ラ ズ マ を 用 い た RIE(Reactive Ion
Etching) が 有 効 で あ る 。 高 密 度 プ ラ ズ マ 源 と し て は ECR(Electron Cyclotron
Resonance)、 ヘ リ コ ン 波 、 マ グ ネ ト ロ ン プ ラ ズ マ 、 ICP(Inductively Coupled
Plasma)などがある。現在は、ICPが最も簡素な構造で高密度プラズマが生成でき
るとして注目されている。
ICPはコイルに通電された数MHzの高周波電流により発生する誘導電界によって
得られる。発生した誘導電界はセラミックや石英などの誘電体製の反応室壁を介
して反応室内に導入されているエッチングガスをプラズマ化する。
24
基板上に焼き付けたいパターンを書き込んだ「マスク」
-56-
f.酸化膜形成装置
熱酸化法は、Siプロセスにおける酸化膜形成装置を転用し易いが、Siプロセス
より高温な 1,000~1,200℃を要する。熱酸化膜法の問題は、SiC基板のSiを利用
して熱酸化膜を形成するため、MOS界面に余剰の化合物が残留することである。
上記の問題を解決するため、SiC表面に酸化膜(SiO2)を堆積させるCVD(化学気相
成長)法の利用が図られている。
g.洗浄装置
シリコンの洗浄で一般的なRCA法は、アンモニア水や塩酸などの酸やアルカリ水
溶液に過酸化水素水を混合した溶液を用いて材料表面を少し酸化し、それをエッ
チングすることによって表面汚染物を除去する。しかし、SiCでは酸化やエッチン
グが起こりにくいため、RCA法を用いた洗浄のみでは不充分であり、新しい洗浄法
も開発されている。一例として、HCN水溶液を用いる欠陥消滅型半導体洗浄法(DPEL
洗浄法)が開発されている。
RCA洗浄とDPEL(Defect Passivation Etch-less Cleaning)洗浄はそれぞれ化
学的要因と空間的要因により単独ではSiC上の金属汚染を完全には除去できない
ため、二種類の洗浄法を組み合わせる方法が有効と考えられている。
図表Ⅱ.20
半導体の洗浄法
( a )従 来 の 洗 浄 法
( b )新 規 洗 浄 法(DPEL 洗浄法)
洗浄液
金属汚染
もとの表面
再付着せず
再付着 エッチング
洗浄液
エッチングなし
欠陥
欠陥修復機能あり
出典:小林;欠陥消滅型洗浄法によるSiCの洗浄、MATERIAL STAGE Vol.9、No.6、2009
-57-
h.加工装置
ウエハ加工装置として、切断、研磨といったものがある。ウエハ切断装置とし
てはマルチワイヤソーがある。これは、複数のワイヤをワークに押し付け、ワイ
ヤを往復運動させることによってインゴット(ワーク)をウエハ状にスライシング
する装置である。切断加工としては放電加工装置も開発されている。
ウエハ研磨装置としては、砥石による研削と砥粒によるラッピングがある。砥
石や砥粒としては主にダイヤモンドが用いられる。このような機械研磨において
はSiC基板表面には原子配列が乱れたダメージ層が残る。一方、エッチング等の化
学研磨では原子配列の乱れはないものの凹凸面が同時にエッチングされるため平
坦 化 が 困 難 で あ る 。 両 者 の 短 所 を 補 う 方 法 と し て CARE(Catalyst-Referred
Etching;触媒表面基準エッチング)法が開発されている。
-58-
3.SiCパワー半導体の市場競争力確保に向けた問題点と課題
(1)国内におけるSiCパワー半導体に関する取組状況
SiCパワー半導体の参入企業としては、図表Ⅱ.21 に示すように三菱電機、富
士電機システムズ、ローム、デンソー、新日本無線などがある。また、新日鐵住
金がSiC基板の生産を行っている。しかし、SiC関連の生産額はまだ小さいため、
生産量を増大させて、周辺装置の供給を含めたサプライチェーンを充実させるこ
とが課題である。
図表Ⅱ.21
次世代パワー半導体デバイスの製造拠点の分布
富士電機システムズ
(SiC-FET)前・後
三菱電機
(SiC-SBD)前・後
(SiC-FET)前・後
ローム
(SiC-FET)前・後
富士通セミコンダク
タ
(GaN)前・後
新日本無線
(SiC-SBD)前・後
デンソー
(SiC-SBD)前・後
三菱電機
(SiC-FET)前・後
前:前工程
後:後工程
出典:(財) 東北活性化研究センター「低炭素社会構築に伴う東北地方電子デバイス関連産業のビジ
ネスチャンスに関する調査報告書 」 (2011 年)
従来、我が国における新技術開発の取組みにおいては、要素技術開発までは国
が支援するものの、製品化になると各事業者の競争に委ねていたため、生産技術
で諸外国に遅れをとってきた苦い経験がある。これらの反省から、次世代パワー
半導体に関しては、製品化まで国を挙げた取組みが求められている。
上記の気運のなか、2010 年には、技術研究組合次世代パワーエレクトロニクス
研究開発機構(FUPET)におけるSiC研究開発体制の強化を図ると同時に、SiCに関
-59-
連する企業や大学など産学官が幅広く集まるオール・ジャパンの枠組みとして、
「SiCアライアンス(会長:松波弘之
京都大学名誉教授)」が発足している。
(2)世界におけるSiCパワー半導体に関する取組状況
SiCパワー半導体に関する勢力としては、大きく日米欧の3箇所が挙げられる。
欧米においてはウエハ、デバイス、アプリケーションの開発体制が整えられてい
るが、日本は両者と比較するとアプリケーションの開発体制の整備が相対的に遅
れている。
開発の流れも対照的であり、欧米はアプリケーションを起点として、ユーザ側
のニーズがデバイス、ウエハへ波及する流れが見られるが、日本は主としてウエ
ハを起点とし、それからデバイス、アプリケーションへの波及という対照的な流
れになっている。
ウエハに関しては、品質面では日本がトップだが、量産技術・市場化という点
では米国が優位に立っている。デバイスでは、日本は 1kVA程度までのMOSFET等の
領域では優れているが、従来、高耐圧インフラ用(10kVA程度)のSiCパワーデバ
イスを研究対象としてこなかったという点で出遅れが見られた。ただし、足許で
は 20kVのSiC-PiNダイオード、BJTが開発されるとともに、超高耐圧IGBTの開発も
進行している。
また、パワー半導体はメモリなどのデジタル回路とは異なりアナログ的であり、
品質と価格のバランスが難しいことから、日米欧以外の韓国や中国等のアジア新
興国が追い付くには時間がかかるものと考えられるが、その動向は注視しておく
必要がある。
図表Ⅱ.22
ウエハ
トップ品質
SiC パワーエレクトロニクス関連技術比較
耐圧 vs.オン抵抗
耐圧 vs.オン抵抗
ウエハ市場化
(<2kV 素子)
(>3kV 素子)
日本
◎
△
◎
△
米国
○
◎
○
○
欧州
△
○
△
-
出典:SiC パワー半導体関連プロジェクト合同シンポジウム(2012 年 11 月 22 日)資料を基に作成
-60-
図表Ⅱ.23
日本
SiC パワーデバイス開発に向けた各国の取組み状況
企業
概要
動向
三菱電機/ローム/
日立/東芝/パナソ
ニック/デンソー/
富士電機/新日鐵住
金/昭和電工など
10 年以上にわたり基礎技術研
究、インバータ基盤技術開発を
実施。国家支援により、実用化
検討ができる段階まで技術レ
ベルが向上
ウエハでは新日鐵住金、
デンソーが取組み。デバ
イス、応用機器までの研
究開発を推進
米国
Cree/
NorthropGrumman
欧州
Infineon/ST マ イ ク
ロエレクトロニクス
/Sicrystal
DARPA(国防高等研究計画局)
の資金により育成された Cree
社のウエハ、エピ、デバイス技
術は世界トップレベル。ウエハ
の量産技術は特に強い。
GaN-LED 用基板としての SiC 基
板でビジネスが成立
Infineon 社は SiC ダイオード
製品化の先駆。近年、ST マイク
ロ社も量産開始。太陽光発電用
としてドイツのフラウンフォ
ッファー研究所が All-SiC イン
バータに取組
ウエハの技術、シェアと
もにトップレベルの
Cree 社を中心に展開
ウ エ ハ は Sicrystal 社
(世界シェア第3位)が
有力。SiC ダイオードに
実績のある Infineon 社
に優位性あり
出典:「パワーエレクトロニクスインバータ基盤技術開発プロジェクト」(事後評価)
第1回分科会資料 5-2(1)2009 年 9 月 3 日を基に作成
(3)アプリケーションからの取組状況
前述のとおり欧米と比較し、アプリケーション部門でのSiCパワーデバイスの活
用ための体制整備が相対的に遅れている。
今後、SiCの市場を拡大させるためには、SiCパワーデバイスを組み込んだ製品
が市場に多数出回る必要がある。これによってSiCパワーデバイスの生産性が引き
上げられ、正のスパイラルが生まれる。アプリケーション側からの要望を掴み、
SiCパワーデバイスの優位性が発揮できる適用範囲を広げることが必要である。
a.太陽光発電システム・パワーコンディショナへの応用展開
図表Ⅱ.24 に太陽光発電システムの基本構成を示す。このシステムは、太陽電
池からの直流電流をパワーコンディショナ(PCS)で交流電流に変換し商用電力系
統へ並入する。太陽電池からのエネルギーを無駄なく送電するために、PCSには高
効率(おおむね 90%台後半)が求められる。
-61-
図表Ⅱ.24
太陽光発電システム
商用系統
一般負荷
太陽電池モジュール
パワーコンディショナ
(PCS)
連系リレー
・太陽電池電力制御
・インバータ制御
・連系保護
出典:齋藤;太陽光発電システム・パワーコンディショナへの応用展開、
SiCパワーデバイス最新技術、サイエンス&テクノロジー
産業用PCSは、メガソーラーとよばれる発電施設のほか、学校や工場などに向け
た太陽光発電システムに適用される。
数 10kWクラスのPCSでは、狭小な設置スペースに対応するため、図表Ⅱ.25 に
示すような非絶縁型PCSが採用される。系統・太陽光発電システム間の共通電位を
安定化(直流化)するため、直交変換には三相V結線インバータが用いられる。また、
インバータの直流電圧に 700V以上の高電圧が要求されるため、昇圧チョッパで太
陽電池電圧を昇圧する。電力系統への直流分流出は高精度な検出回路により防止
される。
図表Ⅱ.25
非絶縁型産業用 PCS と PCS への SiC デバイス適用の目的
昇圧チョッパ
V結線インバータ
図表Ⅱ.27 に、一般的に提唱されているPCSへのSiCデバイス適用の目的を示す。
SiCパワーデバイスの低損失性、高速スイッチング性を活用すると、インバータ・
非絶縁PCSの例
商用系統
チョッパ回路のスイッチング周波数を現在の 10 倍以上に増加でき、
トランスやリ
Boost Chopper また、SiCパワーデバイスの高温度動作性を活用す
V-connection Inverter
アクトルの小型化を見込める。
Lu
ると、システム冷却系の小型化を見込める。この結果、現在の
1~2W/cm3 前後の
φ3AC200V
Lw
太陽
~DC500V
Sw
Su
電力密度を
10 倍以上改善できると期待される。
電池
Sz
Sx
DC
Cw Cu
ところが、この電力密度上昇の議論に焦点を当てすぎると、
「高効率化」と「ロー
Source
コスト化」という PCS にとって極めて重要な市場要求を見失う。太陽電池からの電
力をいかに無駄なく系統連系するか、また、太陽光発電の普及拡大に向けいかに安
高周波スイッチング化
高dv/dt,di/dt化
高温動作化
く作るかが重要で、それらを踏まえた SiC デバイス適用の議論が不可欠といえる。
トランス・リアクトルの小型化
低スイッチングロス化
冷却系小型化
回路の高電力密度化
出典:SiCパワーデバイス最新技術、サイエンス&テクノロジーを基に作成
-62-
また、図表Ⅱ.25 下部に、一般的に提唱されているPCSへのSiCパワーデバイス
適用の目的を示す。SiCパワーデバイスの低損失性、高速スイッチング性を活用す
ると、インバータ・チョッパ回路のスイッチング周波数を現在の 10 倍以上に増加
でき、トランスやリアクトルの小型化を見込める。また、SiCパワーデバイスの高
温度動作性を活用すると、システム冷却系の小型化を見込める。この結果、現在
の 1~2W/cm3 前後の電力密度を 10 倍以上改善できると期待される。
ところが、この電力密度上昇の議論に焦点を当てすぎると、
「高効率化」と「ロー
コスト化」という PCS にとって極めて重要な市場要求を見失う。太陽電池からの電
力をいかに無駄なく系統連系するか、また、太陽光発電の普及拡大に向け、いかに
安く作るかが重要で、それらを踏まえた SiC デバイス適用の議論が不可欠といえる。
図表Ⅱ.26 に、市販 10kW級非絶縁型PCSの損失内訳を示す。システム全体の電
力効率は、92%台が一般的である。損失の 50%強をパワーデバイスが占める。注目
したいのがリアクトル損失で、全体の 20%程度を占める。その他は、制御回路や
スナバ回路など周辺回路の損失で、全体の 20%強を占める。仮に、理想的なSiCパ
ワーデバイスが出現し、そのデバイスでの損失がまったく生じないとすると、非
絶縁型PCSでは、50%強を占めるパワーデバイス損失が消失するので、システム全
体の効率が 95%台まで改善する。
図表Ⅱ.26
10kW級非絶縁型産業用PCSの損失内訳の例
その他(制御
回路など)
26%
パワーデバイス
52%
リアクトル
22%
出典:SiCパワーデバイス最新技術、サイエンス&テクノロジー
SiCパワーデバイス採用により数 10kW級非絶縁型PCSで 3%程度を上限に(実用ベ
ースでは 2%弱と推測される)効率改善が見込まれるが、市場では、この程度の効
率改善に対する販売価格上昇は認められない。したがって、SiCパワーデバイスの
低コスト化(現行Siデバイス並み)が進まない限り、PCSではSiCパワーデバイスに
よる低損失化の価値が見出しにくい。
-63-
実際のPCSでは、リアクトルをはじめとする種々の構成部品での電力損失が無視
できず、スイッチングデバイスの改良だけでは十分な効率改善を期待できない。
また、スイッチング周波数の高周波化は、種々の損失増加を招き、PCSの小型化に
必ずしも寄与しない。このような背景から、SiCパワーデバイスのみの議論でPCS
の小型化や効率改善を進めることの意味は小さい。SiCパワーデバイスの特長を上
手に活用する新しい回路方式が必要である。
b.産業用モータドライブへの応用展開
図表Ⅱ.27 はインバータ回路に次世代パワーデバイスを適用した場合に得られ
る効果の期待を示す。
図表Ⅱ.27
インバータに次世代パワー素子を適用した場合の期待
・リカバリ低減による低ロス化
リカバリ電流の低減による低ロス化
・低放射ノイズ化
Motor
AC200V/400V
・主回路パワーデバイス低ロス化
・高周波スイッチングによる周辺回路小形
化(フィルタ等)
・高温動作による冷却システム小型化
・高周波スイッチングによる電圧・電流制
御精度高精度化
インバータ回路において、主回路スイッチング素子にSiCなどの次世代パワー素
子を用いた場合、デバイス特性による低ロス化(高効率化)、高周波スイッチング
による周辺回路の小形化および高温動作による冷却システムの小形化。また、高
周波スイッチングによる電圧・電流の制御分解能向上による高精度化、さらに、
還流ダイオードにSBDが適用できることからのダイオードリカバリ電流低減によ
る低ロス化と放射ノイズ低減が期待できる。
インバータの還流ダイオードにSiC-SBDを用いることで、リカバリ電流の大幅な
低減ができる。これは、ダイオードのリカバリ損失低減に繋がるとともに、対向
側スイッチング素子(この場合はSiC-MOSFET)のターンオンスイッチング損失低減
に繋がる。SiC-MOSFETのターンオフスイッチング時は、Si-IGBTと比較してターン
-64-
オフ時の切れが良い。テイル電流が流れないためターンオフスイッチング損失の
低減に繋がる。多くの報告では、これらの効果によってPWMインバータの電力損失
を 50%以上低減できており、今後の産業用モータドライブシステムの高効率化が
期待できる。
また、スイッチング損失を低減できるということは、PWMインバータの高スイッ
チング周波数化が可能になるということである。これは、前述の電磁的悪影響を
軽減するために従来から必要であったインバータ入出力に配置されるフィルタ回
路の小形化が可能になるということである。一般的にこれらのフィルタ回路は受
動素子で構成されることが多く、インバータと比較しても全体の体積に占める割
合が多かったが、フィルタのカットオフ周波数を高めに設定できることから、大
幅な小形化に繋がる。
高スイッチング周波数化は、他方では、モータに流れる電流のリップル成分が
低減できることからモータの低損失化にも繋がり、結果としてモータの小型化に
寄与することも考えられる。
電圧・電流の高精度化に関しては、本来DC電圧をチョッピングして交流のパル
ス波形を生成するPWMインバータの出力パルス電圧の高分解能化が図れることと、
従来は 100μs程度であった電流制御ループをさらに早めることができる(高性能
プロセッサが必要ではあるが)ことから、電圧・電流の高精度化が可能である。こ
のことから、汎用モータドライブのみでなく、サーボモータなどの専用モータド
ライブ分野での高精度位置決め用途などにも、次世代パワーデバイスは効果を発
揮すると言えるであろう。
次世代パワーデバイスの高温動作に関しては、デバイス特性そのものの高温で
の良好な動作特性は報告されており、パワーモジュールなどでの周辺の材料技術
が確立されれば、具体的な量産インバータに搭載され、高温動作による冷却シス
テムの大幅な小形化が実現される。
c.EVへの応用展開
EV(電気自動車)は蓄電池(直流)から電気モータ(交流)を駆動するほか、様々
な補機を動かすために、多くのパワー半導体を利用している。自動車に搭載され
るため、機器のコンパクト化、燃費向上のための効率向上、耐温度特性は他の応
用分野に比べても非常にシビアであり、SiCへの期待は非常に大きい。
蓄電池から電気モータへの適用(主機系)においては、DC/DCコンバータで直流電
圧を数百ボルトまで昇圧して、DC/ACインバータで電気モータを駆動する。この
DC/DCコンバータ及びDC/ACインバータへのSiCの適用が今後進むと考えられる。
また、車内電装設備(補機系)等への電源供給用のパワー半導体としてはGaN
が有力と考えられている。
-65-
d.次世代電力システムへの応用展開
直流送配電やスマートグリッドなど次世代電力システムへの応用展開が期待さ
れている。直流送電では、高電圧直流送電(HVDC:high-voltage、 direct current)
や、東日本(50 ヘルツ)/西日本(60 ヘルツ)の周波数変換所での適用が考えられ
る。スマートグリッドでは、6,600 ボルト以上の高圧線のスイッチ(開閉装置や遮
断器)や、高圧の交流/直流配電に向けた多様な電力変換装置への応用が考えられ
る。
-66-
参考文献
・松波、大谷、木本、中村「半導体 SiC 技術と応用 第 2 版」日刊工業新聞社(2011 年)
・サンケン電気
ホームページ
・(財)東北活性化研究センター「低炭素社会構築に伴う東北地方電子デバイス関連産業の
ビジネスチャンスに関する調査報告書」(2011 年)
・玉井輝雄「図解による半導体デバイスの基礎」コロナ社(1995 年)
・電気学会「電気機器工学Ⅱ-パワーエレクトロニクスと電動機駆動の基礎-」
(2008 年)
・富士電機「富士時報
・富士電機
Vol.82 No.6」(2009 年)、「富士時報
Vol.84 No.5」(2011 年)
IR資料(2011 年 11 月)
・富士経済「次世代パワーデバイス&パワエレ関連機器市場の現状と将来展望 2011」(2011
年)
・ローム
・三菱電機
ホームページ・報道資料
報道資料(2009 年 2 月)
・四戸孝「次世代パワーデバイスの電動自動車応用の可能性」EE TiMES JAPAN(2009 年 1
月)
・佐藤淳一「パワー半導体の基本と仕組み」秀和システム(2011 年)
・パワー半導体デバイス(http://www.patentresult.co.jp/news/2011/02/3-18.html)
・パワー半導体デバイス(http://www.patentresult.co.jp/news/2011/04/sickiban.htm1)
・SiC パワー半導体デバイス(http://www.patentresult.co.jp/news/2011/03/sic.htm1)
・経済産業省「工業統計表」
・荒井和雄他「新規半導体(SiC、GaN)のパワーエレクトロニクスの展開、季報エネルギ
ー総合工学、Vol.29 No.3」(2006 年 10 月)
・SiC アライアンス シンポジウム資料(2012 年 6 月 28 日)
・SiC パワー半導体関連プロジェクト合同シンポジウム資料(2012 年 11 月 22 日)
・住化分析センター「SCAS NEWS」2012-Ⅰ(2012 年)
・特許庁「平成 22 年度
特許出願技術動向調査報告書
グリーンパワーIC」
・独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構研究評価委員会「パワーエレクトロ
ニクスインバータ基盤技術開発プロジェクト(事後評価)第1回分科会資料5-2(1)」
(2009 年 9 月 3 日)
・荒井和雄 、 吉田貞史共著 「SiC 素子の基礎と応用」オーム社(2003 年)
・横尾秀和「SiC 向け半導体製造技術と装置」、SiC パワーデバイス最新技術、サイエンス
&テクノロジー(2010 年)
・半導体新聞(2012 年 9 月 3 日)
-67-
Ⅲ.SiCパワー半導体に関する行政の施策および大学・企業の研究開発動向
1.SiCパワー半導体開発の方向性および行政の施策
(1)SiCパワー半導体開発の方向性
a.技術戦略マップによる見通し
経済産業省では 2005 年から、NEDO(独立行政法人新エネルギー・産業技術総合
開発機構)等の協力を得て、国家的に重要な産業技術のロードマップを俯瞰する
「技術戦略マップ」を策定・公表している。
最新の技術戦略マップ(2010)において、2010 年以降のSiCパワー半導体の開発
について見通しが述べられている。ここでは、SiCパワー半導体はデバイスとして
SBDが市販され、スイッチング電源等に使われ始めるとともに、スイッチング素子
として当初、JFET(接合型電界効果トランジスタ)等が使用されてきたものの、
ノーマリーオン型で使い勝手が悪いこともあり、ノーマリーオフ型の金属酸化膜
型電界効果トランジスタ(MOSFET)の実現を重要視している。
また世界的には、日米欧で熾烈な技術開発競争が行われているが、米国が、国
による高品質・低価格基板の量産化促進策等を背景に、世界トップレベルの技術
力、生産能力を有するとともに、基板供給において寡占状態を導出している一方
で、日本におけるプロセス、デバイス、実装技術は世界のトップレベルにあると
の認識が示されている。
今後は 2015~2020 年の間にSiCパワー半導体に関する基礎技術を確立させ、そ
れ以降ではデバイスの利用拡大を見込んでいる(ちなみに 2020 年過ぎにはダイヤ
モンドデバイスの登場・利用拡大を見込んでいる)。
個別技術分野においてはウエハでは 2015 年頃の6インチの確立、転位密度の低
下(2010 年から 2020 年の期間に 1/10 の水準に)、デバイスでは 2010 年代初頭に
MOSFETが開発され、2015 年頃にIGBTの開発(100kVクラス、2020 年頃には 1,000kV
クラス)を見込むとともに、併せてチャネル移動度の向上、ゲート酸化膜の信頼
性向上、低損失・高耐圧化を見込んでいる。
- 68 -
図表Ⅲ.1 技術戦略ロードマップ(パワーデバイス関係)
図3-1 技術戦略ロードマップ(パワーデバイス関係) 出典:経済産業省「技術戦略マップ」(2010 年)
出典:経済産業省「技術戦略マップ」(2010 年)
- 69 -
図表Ⅲ.2 SiC パワエレロードマップ
出典:産業技術総合研究所
資料
この技術戦略マップ等を基に産業技術総合研究所の作成した「SiCパワエレロード
マップ」では開発を3つの段階(世代)に分けている。
「第 1 世代(実用化加速段階)」
として、
「デバイス開発」
、
「変換器開発」(1kV程度)が完了しつつある。次のステー
ジである「第 2 世代(次世代技術開発)
」では、
(最低)6インチ ウエハをスタート
に「デバイス」での高耐圧化(5kV程度)、高信頼化、高温動作を図り、EVや鉄道への
利用を目論んでいる。さらに、
「第 3 世代(次々世代技術開発)」で昇華法
8インチ
および液相法(非昇華法)等のウエハをスタートにバイポーラデバイス(IGBT)での
10kVA程度の耐圧を目指している(図表Ⅲ.2)
。
さらに、NEDOの「パワーエレクトロニクスインバータ基盤技術開発プロジェクト」研
究評価委員会の資料によれば、パワー半導体デバイスに関しては、電力変換器のパワー
密度(大きさの指標)はこの 30 年で 2 桁向上し(図表Ⅲ.3)
、次のブレークスルー技術
はSiCであるとしている。また、SiCデバイス適用による省エネ効果予測では、2030 年に
は原油換算で年 5,000 万キロリットル超とされているなど(図表Ⅲ.4)、その技術革新
と普及を見込んでいる。
- 70 -
図表Ⅲ.3 電力変換器のパワー密度のロードマップ
出典:NEDO『「パワーエレクトロニクスインバータ基盤技術開発プロジェクト」
(事後評価)
第1回分科会資料5-2(1)
』(2009 年 9 月)
図表Ⅲ.4 2030 年までの SiC デバイス適用による省エネ効果予測
出典:NEDO『「パワーエレクトロニクスインバータ基盤技術開発プロジェクト」
(事後評価)
第1回分科会資料5-2(1)
』(2009 年 9 月)
- 71 -
b.技術トレンドと今後の方向性
SiC パワーデバイス製造における技術トレンドおよび今後の方向性について、製造プロ
セス毎に、図表Ⅲ.5 に示す。
図表Ⅲ.5 SiC パワーデバイス製造フローと技術トレンド
製造フロー
技術トレンドと今後の方向性
・ 昇華法が主流であるが、大口径結晶化において結晶欠陥
が多い。
SiC 単結晶
インゴッド
・ 溶液成長法が開発され、結晶欠陥を大幅に低減するため
ヘの取組みがなされている。
・ 現在数十 mm 程度のインゴッドの長尺化もコストダウン
には必須である。
・ ウエハの品質については、マイクロパイプの問題は解決
され、今後は転移欠陥の原因解明と改善が品質向上の最
重要課題となる。
・ ウエハ切り出し効率については、2 インチ基板までは 8°
オフが主流であったが、3 インチ移行に伴い今後は 4°オ
フへ。将来的には 0.5~2°オフの基板でもエピ層の形成
可能なレベルで技術進展が期待されている。
SiC ウエハ
・ 超硬質であるため、平坦度・反りレベルの向上が課題で
ある。大口径化につれて、ワイヤソーによる切断加工が
困難となり、解決策として非接触対応の放電加工機の適
用や、同一スラリーによる両面 CMP 処理のプロセス開発
が進められている。
・ パワーデバイスの最適ウエハサイズとしては、現在パワ
ーデバイスの量産ラインでは、6 インチ(150mm)が主流と
なっており、既存設備の共用(混載ライン利用)を視野に
入れた場合、6 インチの SiC ウエハが最もコスト効率が
良いと考えられている。
SiC エピタ
キシャルウ
エハ
・ デバイスメーカにとって利便性が高いのは、エピウエハ
として調達することであるが、量産出荷可能なウエハメ
ーカは現時点では Cree と Dow Corning の 2 社のみであり、
そのほかの SiC ウエハメーカはベアウエハの供給に限定
されている。ベアウエハを購入したデバイスメーカは、
エピ成膜装置を購入し自社でエピ成膜を行うか、エピハ
ウスと呼ばれる受託事業者に委託するかの判断が求めら
れる。
・ エピタキシャル装置においては、スループット改善、4
インチ以上の大口径化対応、マルチウエハ対応が求めら
れる。
- 72 -
図表Ⅲ.5 SiC パワーデバイス製造フローと技術トレンド(続)
製造フロー
技術トレンドと今後の方向性
・ 次世代パワー半導体(SiC/GaN)の製造フローは、従来の
Si 系パワーデバイスの製造フローと全く異なるわけでは
なく、特にダイシング以降の後工程については既存設備
も十分活用できる。
SiC パワー
半導体ウ
エハ
・ SiC 特有の高温プロセス(1,500℃~2,000℃)に対応した
専用装置としては、エピ成長、イオン注入、熱処理、ア
ニールが必要となる。
・ イオン注入工程は高温対応が要求され、イオン注入種が
Si の場合と異なり、アルミニウム/窒素を注入する。高ス
ループットも改善テーマである。
・ デバイスプロセスのソリューションも必要である。一例
として、通常 SiC-SBD の生産プロセスに必要な高温プロ
セス専用装置を利用せずに、一般的な半導体製造ライン
を用いて低コストで製造できる技術が開発されている。
SiC ディス
クリート
デバイス/
モジュー
・ SiC パワーデバイスについては実装技術も重要なポイン
トであり、特に熱抵抗の低減および 200℃程度を目安とし
た耐熱性が要求されるなど、実装・絶縁・放熱材料の重
要性が増す。
ル
- 73 -
(2)行政の施策等
a.行政等によるSiC関連技術支援
SiCパワー半導体は、次世代自動車やスマートグリッドなど新しい応用分野におけ
るさまざまなシステムでインバータ(電力変換装置)に用いられることにより、大幅
な省エネルギーを可能とし、低炭素社会の実現に大きく貢献すると期待されている。
また、インバータ等の電力変換装置の適用範囲が鉄道や次世代自動車などの環境産
業をはじめとして極めて広いことから、社会全体への波及効果が極めて大きく、さま
ざまな産業において、その成長の鍵となるものである。したがって、パワー半導体デ
バイスおよび電力変換機器における技術力は我が国産業の国際競争力を左右するも
のである。
図表Ⅲ.6 SiCパワー半導体
項
目
関連の国家プロジェクト等の内容(2011 年度)
(1)
(2)
SiC デバイス量産試作
研究
次世代パワーエレクトロニ
クス技術開発(グリーン IT
プロジェクト)
事業者
産業技術総合研究所
NEDO
経済産業省/NEDO
内閣府
段
第一世代
(実用化加速)
第一世代
(実用化加速)
第二・三世代
(次世代技術開発・次々世代
技術開発)
第三世代
(次々世代技術開発)
プロジ
ェクト
名
階
ウ
エ
ハ
-
(3)
昇華法 4 インチ
低炭素社会を実現する新材
料パワー半導体プロジェク
ト
(4)
低炭素社会創成へ向け
た炭化珪素(SiC)革新
パワーエレクトロニク
スの研究開発
昇華法6インチ
昇華法8インチ
液相法(非昇華法)等
-
【低コスト化】
タ
ー
ゲ
ッ
ト
デ
バ
イ
ス
機
器
概
要
素子の量産化
-
中耐圧
(1kV 級)
【高信頼化、高温動作(250℃
級)
、高機能化、集積化】
家電、照明、汎用インバー
タ、IT 電源、パワコン
(パワー密度
従来のチャンピオン
データ狙いから量産
技術にシフトし、試
作チップを提供する
ことにより変換器開
発の促進、新規分野
への適応を図る。
高耐圧
(5kV 級)
3
10W/cm 級)
①データセンタ用サーバ電
源技術開発
②太陽光発電用パワーコン
ディショナ技術開発を実
施。また、それらの共通
基盤的なものとして高温
実装の研究をつくば拠点
にて実施。
EV/HEV、鉄道、重電
(パワー密度
25W/cm3 級)
【低 EMI、高温実装、高パワー
密度】
第 2・第 3 世代のウエハの作
製をスタートとして高品質
エピウエハの作製技術と高
耐圧(5kV 級)パワーデバイ
ス(MOSFET)の製造技術の
確立を目標。
出典:SiC アライアンス シンポジウム(2012 年 6 月 28 日)資料を基に作成
- 74 -
超高耐圧(10kV~)バイ
ポーラ
系統インフラ
Smart Grid
(パワー密度
50W/cm3 級)
【高電圧】
超高耐圧(10kV 超級)
パワーデバイス基盤技
術の研究開発でバイポ
ーラ動作のものを目指
す(SiC-IGBT)
。
このような観点から、我が国においてはSiCパワー半導体に関連して、大学・研究
機関・企業等が参画した複数の国プロジェクトが進行し、足許では研究開発が加速化
してきている。
昨年度(2011 年度)は「図表Ⅲ.6
SiCパワー半導体
関連の国家プロジェクト
等」に示す通り4つのプロジェクトが進行しており、
「ウエハ」、
「デバイス」、
「機器」
の段階において様々な研究がなされた。
ただし、従来から、複数の国のプロジェクトが同時に実施されてきたが、スポンサ
ーの相異から、各プロジェクト間の横の繋がりが欠如しているとの指摘を受けてい
た。このような状況を解消する意味で 2010 年には「SiCアライアンス」が結成された。
図表Ⅲ.7 SiC パワー半導体関連プロジェクトの期間
年度
(1)産業変革研究イニシアティブ
(1’)つくばパワーエレクトロニクス
コンステレーションズ
2008
2009
2010
2011
2012
2013
産総研
産総研
(2)次世代パワーエレクトロニクス
NEDO
(3)新材料パワー半導体
METI
(4)最先端研究開発支援プログラム
CAO
SiC アライアンス 創設
出典:SiCアライアンス シンポジウム(2012 年 6 月 28 日)資料を基に作成
また、2012 年度からは「産業変革研究イニシアティブ」の流れを引き継ぎ、産業
技術総合研究所の「パワーエレクトロニクス」研究拠点において「つくばパワーエレ
クトロニクスコンステレーションズ(Tsukuba Power-Electronics Constellations:
ティーペック
以下 TPEC)
」が開始されている(図表Ⅲ.7)
。
TPECではパワーエレクトロニクスに関連する我が国のグローバル企業が研究開発
資金の大半を賄われており、パワーエレクトロニクスのオープンイノベーション拠点
を自立的に運営する民活型の共同研究体である。
「産業変革研究イニシアティブ」時に構築した、SiCチップ試作ラインは活用する
ものの、単なる量産試作工場ではなく我が国独自のパワーエレクトロニクスに関する
パワーエレクトロニクスに関する人材育成、研究開発、知識の獲得およびそれらを活
- 75 -
2014
用したビジネスモデルの構築を目指すものである。
参加メンバーは研究機関・大学、企業(18 社:2012 年 11 月時点)等であり、
「ウエハ」
~「アプリケーション」
、
「製造装置」に及ぶ業種から満遍なく構成され、
「同業種 1 社ま
で」といった制約がないのも特徴である(図表Ⅲ.8)
。
メンバーは「Principal Member」
、「Member」、
「Associate Member」、
「Academic Member」
の4つの区分に分けられ、
「産業変革研究イニシアティブ」から継続して分担リソース
(資金、装置、材料、人員等)が最上級の「Principal Member」は、TPEC経営会議、運
営会議への出席、各部会への出席、研究プロジェクトを発足できる権利を有することと
なっている。
役割
権限
大
図表Ⅲ.8 TPEC参加メンバー
活動領域
区分
ウエハ
デバイス・モジュール
アプリケーション
産業技術総合研究所
Principal
/部材
アルバック
富士電機
Member
住友電機工業
新日鐡住金/新日鉄住金マテリアルズ
Member
製造/検査・評価装置
デンソー
リガク
新日本無線
東京エレクトロン
東レ
日立化成工業
日立化成工業
東芝
日立国際電機
Associate
トヨタ自動車
三菱重工業
Member
ヤマハ
エスペック
JFE
小
Academic
筑波大学
京都大学
東京大学
Member
関西学院大学
SiC アライアンス
物質・材料研究機構
大阪大学
出典:TPECホームページを基に作成(活動領域は公開情報により推定。実際の研究領域と異なる可能性あり)
- 76 -
b.各国家プロジェクトの内容
(a)産業技術総合研究所
産業変革イニシティブ「SiCデバイス量産試作研究」
「SiCデバイス量産試作研究」は産業技術総合研究所の事業であり、従来のチャン
ピオンデータ狙いから量産技術にシフトし、試作チップを提供することにより変換器
開発の促進、新規分野への適用を図るものであり、2009~2011 年度に実施されたも
のである。
図表Ⅲ.9 SiC デバイス量産試作研究の概要
産業変革イニシアティブ
短期実用化が見込まれるテーマ:
企業との資金提供型共同研究を前提に、産総研運営交付金を投入(第1号は、北海道セ
ンターの植物工場)
素子試作組織
期間:2008.12~2012.3
産業技術総合
活動内容:
研究所
・SiC デバイス少量試作ライン構築
3~4インチライン
アライアンス
・量産レベルでの問題点抽出
デバイス企業
装置企業
・試作チップのユーザへの早期提供
変換器開発の促進
仕様:
資金、技術、人材、装置等の提供
・SBD:600V 1,200V/10A~100A
・MOSFET:600V、1,200V/10A~50A
応用システム企業
応用システム企業
出典:SiCアライアンス シンポジウム(2012 年 6 月 28 日)資料
具体的にはデバイスからシステムへの開発を加速する取組みが必要ということで、
「産業技術総合研究所(デバイス)
」、
「アルバック(装置企業)」、
「富士電機(生産技
術)」がアライアンスを組み、量産試作ラインを構築し、SiCデバイス(SBD、MOSFET)
のサンプルをユーザに供給することを目指したプロジェクトである。産業技術総合研
究所の西事業所に 1,500m2 のクリーンルームを設け、3 インチラインを構築している。
SiC-SBD、SiC-MOSFETの製作に関連して本プロジェクトの具体的な研究成果は図表
Ⅲ.9 のとおりとなっている。
- 77 -
図表Ⅲ.10
製作
産業変革イニシアティブ「SiCデバイス量産試作研究」の成果
SiC-SBD
物
SiC-MOSFET
・耐圧 600V と 1,200V のものを開発
・低 RonA(単位面積あたりのオン抵抗)、チャ
・低 VF(周波数変動)
、高アバランシェ耐量
のデバイス開発を完了
向上を実現する高信頼 IEMOS(Implantation
・2012 年 9 月にはデバイスはサンプル提供
研究
成果
ネル移動度の向上やゲート酸化膜の信頼性
(MTA:試料提供契約)
and Epitaxial MOSFET)プロセスの開発、試
作実験を実施
・モジュール装置にも搭載し、大幅な低損失
化(▲20%)、効率改善(95%→96%)を実現
するパワエレ装置として製品化予定
SiC- MOSFET と SBD(all-SiC)でインバータを作製した 20kW 級太陽光発電用 PCS(power control
system)の動作の確認およびスイッチング損失を IGBT と比較し、60%低減していることを確認
出典:SiCアライアンス シンポジウム(2012 年 6 月 28 日)資料を基に作成
(b)NEDOプロジェクト「次世代パワーエレクトロニクス技術開発(グリーンITプ
ロジェクト)
」
「次世代パワーエレクトロニクス技術開発」はNEDOのプロジェクトである。データ
センタやその電力源としての分散型太陽光発電システムにおける交流・直流変換等、
電力制御に用いられているパワーデバイスを、SiCを用いたものとする技術開発とと
もに、システムレベルでの実証を行うプロジェクトである(図表Ⅲ.11)
。2009~2012
年度のプロジェクトで、現在 4 年目に入っている。
図表Ⅲ.11
次世代パワーエレクトロニクス技術開発の概要
次世代パワーエレプロジェクト概要
①SiCパワーデバイスを用いたデータセンタ用サーバ電源技術開発
・サーバ電源での高効率性実証とデバイス/回路開発(JFET)
(FUPET:日立-国分寺拠点)
②SiCパワーデバイスを用いた太陽光発電用パワーコンディショナ技術開発
・パワーコンディショナでの高効率性実証とデバイス/回路開発(MOSFET)
(FUPET:三菱-伊丹拠点)
つくば拠点
③次世代SiCパワーデバイス・電力変換器基盤技術開発
・高温動作電力変換器設計試作技術
セラミック基板
(共同実施:首都大、千葉大、東工大)
・高温実装
ヒートシンク
・高パワー密度化統合設計
(AIST,FUPET:東芝、富士電機、サンケン電気、日産-つくば拠点)
SiCチップ
高温ハンダ
配線金属
ヒートスプレッダ
計算条件
回線
三相インバータ
SiC-MOSFET
耐圧
600V
SiC-MOSFET
電気密度
200A/cm2
スイッチング
周波数
20kHz
システム実証
①
システム実証
②
>50 W/cm3
共通基盤技術
③
冷却方式
共同研究体(AIST+FUPET)
出典:SiCアライアンス シンポジウム(2012 年 6 月 28 日)資料
- 78 -
・テーマは三つ
a.SiCパワーデバイスを用いたデータセンタ用サーバ電源技術開発
b.SiCパワーデバイスを用いた太陽光用パワーコンディショナ技術開発
c.次世代電力変換器基盤技術開発
であり、研究内容および研究の進捗状況は以下のとおりとなる。
図表Ⅲ.12
次世代パワーエレクトロニクス技術開発の研究開発内容
a.SiC パワーデバイスを用いたデー
テ
ー
マ
タセンタ用サーバ電源技術開発
究
概
c.次世代電力変換器基盤技術開発
陽光用パワーコンディショナ技
術開発
拠
点
研
b.SiC パワーデバイスを用いた太
日立製作所:国分寺拠点
三菱電機:伊丹拠点
産総研:つくば拠点
電力容量 2kW 級のサーバ電源のプロト
電力容量 30kW 級の太陽光発電用パ
デバイス温度を 200~250℃で動作さ
タイプを作製し、その電力変換効率が
ワーコンディショナのプロトタイ
せることを可能とする高温実装技術
負荷 50%で 94%以上であることを実
プを試作し、定格出力時に 98%以上
を開発し、40W/cm3 級の出力パワー密
証
のシステム効率を持つことを実証
度を持つ革新的電力変換器の動作検
要
証が可能なレベルの要素技術を確立
・デバイスは SiC-JFET(接合 FET)を
・デバイス開発においては、低抵抗
・電力変換器モジュールの高温実装技
選択し、自前の駆動回路を開発。構
化技術を基に 30kW 級パワーコン
術開発においては、SiC チップに対
造自体はノ―マリーオフ型で、世界
ディショナに必要とされる耐圧
する高信頼度の電極接合を実現す
NO.1 の性能を実現。
1,200V、定格電流 75A、オン抵抗
る拡散バリアについて 330℃ 100 時
・低損失ゲート駆動回路技術としては
ソフトスイッチング技術を適用。
2
5mΩcm の MOSFET を実現。
間までの接合信頼性を確認。
・回路・システム開発においては、 ・電力変換器モジュールの設計技術開
・最終的には Si ベースでの電源効率
太陽光発電用パワーコンディシ
発においては、実装基板の高信頼化
92.45%から、SiC+新規駆動回路の
ョナの高効率を実現する主回路
のため、既存シミュレーターによる
開発により約 0.6%UP し、93.01%へ。
方式の最適化設計を行い、30kW
熱・構造解析結果の妥当性の検証を
研
最終年度の本年度内に目標である
級の太陽光発電用パワーコンデ
目的に、熱変形観察により実データ
究
94%達成を目指す。
ィショナのプロトタイプ1相分
を設計にフィードバックする手法
成
を試作した。プロトタイプの定格
を確立。また、電力変換器の高速動
果
運転時の効率が 98%以上となる
作において素子の破壊につながる
見通しを得た。
ターンオフ時の過渡的なサージ電
圧の原因追及と対策を目的に、シミ
ュレーションモデルを開発。
・インバータ『NIJI』を開発し、連続
スイッチング試験(等価ストレス試
験)を実施し、本プロジェクトの最
終目標値である 40W/cm3 相当の出
力密度において正常動作の見通し
を得た。
出典:SiC アライアンス シンポジウム(2012 年 6 月 28 日)資料を基に作成
- 79 -
(c)経済産業省プロジェクト「新材料パワー半導体プロジェクト」
「新材料パワー半導体プロジェクト」は経済産業省のプロジェクトで、第 2・第 3
世代のウエハの作製をスタートとして、高品質エピウエハの作製技術と高耐圧(5kV
級)パワーデバイス(MOSFET)の製造技術の確立を目標したものである。2010~2014
年度のプロジェクトで、現在 3 年目に入っている。
結晶・ウエハから素子開発、電力変換器設計まで一貫研究体制で実用化の加速を目
指すプロジェクトであり、新しい形態の組織である「技術研究組合次世代パワーエレ
クトロニクス研究開発機構(FUPET)」が主に委託を受け研究を推進しているのも特徴
である。
図表Ⅲ.13
新材料パワー半導体プロジェクトの概要
新材料パワー半導体プロジェクト概要
SiC6インチ高品質ウェハ
目標
インフラ用5kV級パワーMOSFET
高品質・低コストな大口径SiC
ウェハ製造技術、及びSiC高
平成22年度
平成23年度
平成24年度
平成25年度
平成26年度
耐圧スイッチングデバイス製
1.結晶成長技術
造技術を確立する。
結晶・加工・エピの一貫した製造技術の確立
大口径化技術基盤技術の開発
確立
(1)昇華法
①高品質・大口径結晶成長、
要素技術の開発・確立
ポテンシャル評価の上、ス
ウェハ加工、エピタキシャル膜 (2)液相法
ケールアップ試験等を実施
要素技術の開発・確立
(3)ガス法
形成まで一貫した製造技術を
要素技術の開発・確立
2.加工技術
確立する。
3.エピタキシャル膜成長技術
②高耐圧スイッチングデバイス
実証スケールの技術開発
基礎技術開発
(1)大口径対応
製造技術の確立、及びこれを
実証炉による技術開発
用いたインバータの試作・実
プロトタイプ炉による基礎技術開発
(2)厚膜化技術
実証炉による厚膜エピウェハ
を用いた各社持ち帰り研究
証等を行う。
新規耐圧構造開発、信頼性向上・実装基盤技術
4.高耐圧デバイス製造技術
5.評価等共通基盤技術
シミュレーション、高耐圧デバイス評価、大口径、高品質ウェハ評価技術開発・確立
内容
①高品質・大口径SiC結晶成長技術開発/革新的SiC結晶成長技術開発
②大口径SiCウェハ加工技術開発
③SiCエピタキシャル膜成長技術(大口径対応技術/厚膜・高速成長技術)
④SiC高耐圧スイッチングデバイス製造技術
つくば研究開発センター(仮称)
実施:技術研究組合次世代パワーエレクトロニクス研究開発機構(FUPET)
出典:SiCアライアンス シンポジウム(2012 年 6 月 28 日)資料
プロジェクトの実施テーマは「結晶」⇔「デバイス」および「評価」において 2012
年度の中間目標と 2014 年度の最終目標が定められている。ちなみに各テーマの狙い
と 2012 年度半ばまでの進捗状況は図表Ⅲ.14 のとおりである。
- 80 -
図表Ⅲ.14
新材料パワー半導体プロジェクト 開発の狙いと進捗状況(その1)
テーマ
狙
昇華法
結
晶
成
長
い
大口径ウエハの
早期実現
進
捗
状
況
新日鐡住金の結晶成長安定化技術やデンソーの RAF 法を用い品質と生産性の確保
に取組み、6 インチ化を実現。デンソーについては転位密度:2~3×103 個/cm2
台(市販品の 1/10 以下)であり世界最高品質の 6 インチウエハを完成。
デンソーのガス成長技術に電力中央研究所の高速 CVD 技術を融合
革新的
成長法
ガス法
高品質・
し、昇華法を越える高速成長と高品質成長を両立する実証実験開
始の段階。3 インチ×30mm の長尺化および昇華法の 3~4 倍の高速
成長を実証。
低コスト化
結晶多形制御技術、ボイド抑制技術、雑晶抑制技術を開発し、2
溶液法
インチ×3mm 厚の 4H-SiC 育成に成功。また、オフ基板を使用する
ことにより転位密度が昇華法の数分の 1 になることを検証。
「電着ダイヤモンドワイヤ」を用いた「高速マルチワイヤソー」
の使用により 9 時間/インゴッド(2 インチ実績を 6 インチに換算)
で、従来比 3 倍以上を達成。合わせて高線速によりウエハの反り
切
断
も低減。
「マルチワイヤ放電加工機」ではダイヤモンドレスによる低コス
ト化/面精度を実現。4 インチまでの対応、最大 10 枚までのマル
加
工
トータル
最適化
チ切断と大幅な効率化に成功し、ポテンシャルを示す。
成行き 3 日/枚
⇒24 時間/枚
研
削
結合剤ポーラス(多孔)度を工夫し高番手でも高い切れ味を維持
する高速研削加工を実現。
「ラップ加工」では両面ラップにより切断面のうねりを高速に平
坦化するとともに、
「CMP 加工」では研磨スラリーとのパッドの組
研
磨
合せ検証や加工パラメータのログ分析によりスクラッチフリーで
超平坦化に成功。合わせて CARE(触媒基準エッチング)法による
高効率研磨への取組みも実施。
国産市販の CVD 装置を改造のうえ、6 インチ化(「3 インチ×2 枚のみなし 6 イン
チ」および「6 インチウエハ」
)のエピタキシャル成長を検討。欠陥(主にシャロ
大口径
エ
ピ
タ
キ
シ
ャ
ル
6 インチエピウ
ーピットと三角欠陥)密度とモフォロジーは C/Si 比が主因子であることを確認。
エハ早期実現
C/Si=1.0 の条件下でステップバンチングの無い表面、低欠陥密度、良好な均一性
を確認。ただし、6 インチウエハでは SORI(反り)がエピ成長により増大するこ
とを確認。
「ハライド法」および「ガスフロー制御法」によって高品質化と高速成長の両立
厚膜
・
高速化
3.3~ 5kV 用(高
を検討。
「ハライド法」では、塩化水素添加により、100μm/h 以上の高速成長を
速鉄道、系統)方
実現。4°オフ基板上ではステップバンチングが著しいが、8°オフ基板では鏡面
式検討⇒設備開
が得られる。「ガスフロー制御法」については「ガスフロー制御法」並の成長速
発導入
度と厚膜 50μm 以上での鏡面厚膜を実現。今後は「ハライド法」および「ガスフ
ロー制御法」の融合や微傾斜基板上へのエピ成長が課題。
- 81 -
図表Ⅲ.14 新材料パワー半導体プロジェクト 開発の狙いと進捗状況(その2)
テーマ
実
装
デ
バ
イ
ス
進
い
捗
状
況
高耐熱部品の開
高耐熱部品としての「高耐熱コンデンサ」
、
「高耐熱抵抗」、
「メタライズ放熱基板」
、
発・実装基盤技
「配線基板の部品」の開発および高耐熱部品の実装基盤技術として「モジュール
術の開発
化技術」
、
「信頼性評価」
、
「電気的特性評価」に関する取組みを開始。
プレ
現行要素技術を
オン抵抗は最終目標 15mΩcm2 を達成するも、耐圧構造に不良があり中間目標であ
ーナ
集積し高耐圧化
る 3kV を下回った(第二次試作で目標は達成)
。
トレ
産業技術総合研
ンチ
究所独自構造
高耐熱
高
耐
圧
デ
バ
イ
ス
狙
新規ダブルトレンチ構造の採用や堆積酸化膜を用いたゲート酸化膜形成の検討
により 600~3,300V の耐圧範囲で、プレーナ型では実現不可能な超低オン抵抗
(10mΩcm2 以下)が可能であることことをシミュレーションで確認。
SBD:3.3kV/75A を試作し、順方向電流 150A での安定動作を達成。
大容量変換
器
3~5kV 級実用化
ハイブリッドモジュール:3.3kV/1,000A 級を試作し、動作を確認。リカバリのな
いターンオン特性を実証。
MOSFET :3.3kV TEG(評価用素子)で 3.3kV 以上の耐圧、良好なオン特性を確認。
「結晶成長」~「加工」~「エピ成長膜」~「デバイス」までの評価の連続性の
確保の観点から、SiCA(明視野コンフォーカル微分鑑賞顕微鏡)を用いた欠陥の
評
価
一貫
結晶⇔加工⇔エ
評価
ピ⇔デバイス
座標による関連付けを用いた「観察システム」
(座標付結果 DB)およびそれを用
いた「欠陥構造解析」
、
「電気特性解析」を行う「SiC 統合評価プラットフォーム
(SiC ウエハ/エピタキシャル膜
データベース)
」を構築しつつある。
「データ
ベース」をその他のプロジェクトや「ウエハメーカ」、
「デバイスメーカ」と共有
することにより SiC の開発加速を期待。
出典:SiC アライアンス シンポジウム(2012 年 6 月 28 日)、SiC パワー半導体関連プロジェクト合同シン
ポジウム(2012 年 11 月 22 日)資料を基に作成
- 82 -
(d)FIRSTプロジェクト「低炭素社会創成へ向けた炭化珪素(SiC)革新パワーエレ
クトロニクスの研究開発」
「低炭素社会創成へ向けた炭化珪素(SiC)革新パワーエレクトロニクスの研究開
発」は3~5年で世界のトップを目指した先端的研究を推進する内閣府の最先端研究
支援プロジェクト(FIRSTプロジェクト)によるものであり、超高耐圧(10kV超級)
パワーデバイス基盤技術の研究開発でバイポーラ動作(SiC-IGBT)のものを目指すも
のである。2009~2013 年度のプロジェクトで、現在 4 年目に入っている。
SiCのパワーデバイスでは 600V~1,200VのSBDやMOSFET等の市場が立ち上がりつつ
あるが、本プログラムでは 10kV超級の高耐圧のバイポーラであるPiNダイオードや
IGBTを対象としており、系統制御、50/60Hzの電力変換、将来的にはリニアモーター
カー等への利用を視野に入れている。概要は図表Ⅲ.15 のとおり。
図表Ⅲ.15 「低炭素社会創成へ向けた炭化珪素(SiC)革新パワーエレクトロニ
クス」のプロジェクト概要
出典:SiCアライアンス シンポジウム(2012 年 6 月 28 日)資料
サブテーマは三つあり、
a.SiC の欠陥・物性制御とデバイス基礎
b.超厚膜・多層 SiC エピウエハ技術
c.プロセス・超高耐圧 SiC デバイス技術
その研究概要および研究成果は以下のとおりとなっている(図表Ⅲ.16)
- 83 -
図表Ⅲ.16
低炭素社会創成へ向けた炭化珪素(SiC)革新パワーエレクトロニクスの
研究開発
a.SiC の欠陥・物性制御とデバイス
b.超厚膜・多層 SiC エピウエハ技
基礎
サブテー
マ
術
SiC の欠陥・物性制御とデバイス基礎
サブテー
マリーダ
・SiC 厚膜エピ成長層の欠陥評価と低
減方針提示
超厚膜・多層 SiC エピウエハ技術
土田秀一
プロセス・超高耐圧 SiC デバイス
技術
産業総合技術研究所
福田憲司
上席研究員
主幹研究員
・超厚膜、超高純度 SiC エピ成長
・13kV 級 SiC-PiN ダイオードの作
・ドーピング制御と多層膜形成
・SiC-IGBT のデバイス、回路シミュレ
概要
イス技術
電力中央研究所
京都大学 木本恒暢教授
ー
研究
c.プロセス・超高耐圧 SiC デバ
・キャリア寿命向上、欠陥低減
ーション
製
・13kV 級 SiC-IGBT の作製
・デバイスの超高耐圧、高温動作
・MOS 界面の基礎研究と特性向上の指
実証
針提示
・SiC-IGBT のデバイス、回路シミュレ
ーション
・超高耐圧電力回路の設計指示提示
・バルク中の点欠陥、拡張欠陥を一つ
ずつ潰していく作業を実施。
・評価手法も開発中。バルク中で転位
がどのように変化しているか三次元
・13kV 級のデバイス(IGBT)ではエ
カーボン注入と熱処理のライ
・100μm 以上の厚膜
フタイム増大プロセスをした
・平坦な表面
場合、オン電圧改善とオン電圧
13
で示すことを可能とした。
成果
密度
のばらつき低減を確認。この効
果は PiN に限らずあらゆるバイ
影響を明確化し、界面転位は卒業し
・基底面転位を限りなく 0
つつある。基底面転位も同様に低減
・キャリア寿命の考慮
の方向。
研究
-3
・1×10 cm 以下のドーピング
・界面転位形成に及ぼす熱ストレスの
・p 型、n 型の多層構造
・積層欠陥については PL 発光と断面
・13-15kV 級の PiN ダイオードで
ピ成長に関連して
ポーラ型の素子に適応可。
・ 耐 圧 の
JTE ( Junction
Termination Extension:)領域
とすることが求められるが
のドーズ依存性を調査し、その
TEM(断面透過電子顕微鏡)観察に一
電中研、京都大学、産総研の連携に
結果 Two-zone JTE と独自の空
対一の関係を確立し、データベース
より
間変調 JTE を組み合わせること
化。
・N 型のライフタイムキラー
Z1/2 セ
ンターは「C イオン注入+アニール」
または「熱酸化」によって消滅でき
・エピ成長の厚さ:140μm
で耐圧 21.7kV の PiN ダイオー
・表面ラフネス:0.2nm
ドを作製。
・ ド ー ピ ン グ 密 度 : 2-3 ×
14
10 cm
-3
・MOSFET のチャネル移動度向上に
n 型および(今まであまりなか
ることを確認し、ライフタイムは大
・Z1/2 欠陥(炭素空孔子欠陥)
ったが)p 型にも取組み、向上
幅に向上。
密度:1-3×1012cm-3
が図られた。
・キャリア寿命と転位の関係について
・キャリア寿命:1.6μs
14
-3
・高温(250℃)・高耐圧(20kV)絶
も検証。貫通らせん転位(TSD)の方が
・低濃度の P 型(10 cm )も TMA
縁封止技術、キャリア分布の制
貫通刃状転位(TED)よりライフタイ
供給系の改良によりドーピン
御のためのミュレーション等
ムに与える影響が大きい。ただしそ
グ制御を確立
の研究開発を実施。
の影響は転位の周辺のみであること
との結果を得ている。
を確認。
出典:SiC アライアンス シンポジウム(2012 年 6 月 28 日)資料を基に作成
- 84 -
c.行政の施策等
行政等によるSiC研究開発支援については前節で述べたとおり国家戦略として行わ
れているものの、地域での企業や研究機関においては、純粋な研究開発だけではなく、
現実の事業運営や人材確保など様々な課題を抱えている。例えば身近な自治体との連
携も図りながら地元でいかに事業継続していくかといった課題が存在する。
地域の企業や研究機関から行政に対する要望としては、研究開発リスクに対する下
支え、市場開拓にあたっての支援、教育や人材育成に対する支援等が期待されている。
研究開発支援においては、前節のSiC関連技術支援で述べたプロジェクトの推進と
SiCアライアンスのような横断的な組織との連携が求められる。半導体の研究進展は
速いため、新技術開発の補助事業においては、審査期間を短縮するなどスピード化が
必要である。
市場開拓支援においては、海外マーケットに進出している企業に対する様々な障壁
の排除に向けた取組みが求められる。たとえば、海外への製品販売における規格認証
の取得に係る費用負担の問題がある。(⇒コラム①) 海外特にアジア諸国では国家プ
ロジェクトとして強力に技術開発を支援している。
教育・人材育成においては、既に各地で取組みが行われている。たとえば、半導体
ネットおかやま (⇒コラム②)や島根県、島根大学を中心としたパワーエレクトロニ
クス研究会(⇒コラム③)等の例がある。これらの取組みに対して支援を行うととも
に、的確な施策が行われるための産学官における継続的な情報共有も重要である。
コラム①「規格認証」
海外への製品販売における規格認証の取得に係る費用が地域の中小企業の大きな
負担となっており、規格認証における行政支援が求められている。現状では、製品輸
出先毎の規格認証の取得が必要であり、ヨーロッパへの輸出には CE マーク、韓国に
は KCC マーク、中国には CCC マークの取得が必要である。認定マーク取得の申請・試
験には、製品1件あたり 2~5 百万円程度、年間で 2~3 千万円程度を要している。ユ
ーザのニーズにより仕様を少し変えるだけでも取得が必要である。一方、韓国は KCC
マーク、中国は CCC マークを取得すれば、それぞれの規格が CE マークと同一のため、
自動的に CE マークも取得できる。CE マークは半導体を含めほとんどの産業製品が対
象となっており、行政がマーク取得の認定への支援に期待している。
地域においては、例えば CE マークをベースに
した県独自の規格認証の創設や、認証規格取
得時の費用面での補助等を要望している。ま
た、認証や RoHS 指令(有害物質使用制限指令)
へのデータ収集における公設試験研究機関等
の有効活用策への期待も大きい。
- 85 -
図表Ⅲ.17 CE マーク
コラム②「半導体ネットおかやま」
岡山大学、岡山県立大学、岡山理科大学、津山工業高等専門学校、岡山県工業技術
センターに所属する研究者等が中心となって 2005 年 12 月に発足。中国職業能力開発
大学校、倉敷芸術科学大学、岡山工業高等学校等を含めて現在 60 名弱の参加者で構
成され、下記の目的でフォーラム開催、会員の交流、情報発信等の活動を行っている。
・ 岡山県における半導体研究・開発ポテンシャルの顕在化と強化
・ 具体的な共同研究課題の策定、共同研究実現のためのコンソーシアムの形成によ
る共同研究の活発化
・ 企業技術者、大学・高専・工業高校の学生・生徒の人材育成
図表Ⅲ.18
半導体ネットおかやま設立趣意
出典:半導体ネットおかやまパンフレット
- 86 -
コラム③「島根県パワーエレクトロニクス技術研究会」
経済のグローバル化に対応した産業構造の転換を目指した「ものづくり産業戦略的強
化事業」に取組む島根県は個別企業のレベルアップや共同受注に向け、県主導で研究会
の立ち上げが盛んである(図表Ⅲ.19)
。
その一つである「島根県パワーエレクトロニクス技術研究会」は島根県、島根県産業
技術センター、島根大学が中心となって 2012 年 12 月に発足した研究会で、パワー半
導体や太陽電池、リチウムイオン電池などグリーンデバイスの基本技術となるパワー
エレクトロニクスを取り込むことで、新たな産業展開を図る。初年度は電源にテーマ
を絞り、電源技術における最新技術動向や電源技術の基本を学んだうえで電源装置の
製作実習の講座も設け、地域での電源装置の自社開発による低コスト化を図るもので
ある。
現時点では県内のパワーエレクトロニクス関連企業や関心を持つ県内企業約 20 社
が参加しているが、将来は島根県内に事業所などを設置する考えがある県外企業にも
広く呼びかける。島根県の電気・電子関連産業は製造品出荷額の 1/3 を占め、地域経
済をけん引しているが、同分野の技術革新のスピードは速く、従来のままでは厳しさ
を増すと判断。パワーエレクトロニクスで先導的な役割を果たすことで、新規分野へ
の参入を促す。
島根大学は、電気自動車を中心としたパワーエレクトロニクス分野への SiC パワー
半導体の活用について研究を進めている。総合理工学部電子制御システム工学科のパ
ワーエレクトロニクス研究室では、電気自動車等における車載用モータ駆動インバー
タなど SiC の特性を活かした応用製品の研究開発を進めており、島根県発のコア技術
を組み込んだ製品の世界展開という戦略を描いている。
島根県では上記のほか、行政と連携し、
「堀川遊覧船の電動化」
「しじみ漁の漁船の
電動化」を進めている。船は、電動モータ化で駆動装置がコンパクトになり、水中の
魚網等との接触が回避できる利点がある。また、観光用の小型 EV の配置に併せ、非
接触用充電器の設置も検討されている。
図表Ⅲ.19 島根県の主導で設立した製造業の主な研究会組織の一覧表
設立年度
組
織
名
在籍企業指数
2005 年度
しまね金型研究会
14 社
2010 年度
島根県次世代自動車等技術研究会
44 社
2011 年度
島根特殊鋼関連産業振興総合特区推進協議会
11 社
2011 年度
水環境ビジネス研究会
7社
2011 年度
グローバル経営戦略研究会
42 社
2012 年度
島根県パワーエレクトロニクス技術研究会
20 社
2012 年度
島根県鋳造関連産業振興協議会
19 社
出典:週刊山陰経済ウイークリー(2012 年 7 月 24 日号)
- 87 -
2.大学・研究機関の開発動向
(1)東北大学
SiCの物性特性の解明・評価などデバイスの開発につながる基礎的な研究を行って
いる。大学院工学研究科において、単結晶Si表面の表面再配列構造制御とナノ構造形
成、単結晶Si表面の酸化・成膜における表面化学とナノ構造制御プロセスの開発等を
行っているほか、金属電極をSiC上に安定的に積層する技術開発と界面特性の解明等
の研究も行っている。また、電気通信研究所において、SiC基板上にナノの表面ステ
ップ(段差)を抑制したデバイス構造を作製する研究等を行っている。
(2)埼玉大学
SiC/酸化膜界面の構造やSiCの酸化メカニズムを解明する研究を行っている。(1)
酸化膜をnmオーダーの傾斜型に加工する独自の技術を開発しているほか、SiCの酸
化の振る舞いを説明する「界面SiおよびC原子放出モデル」を提案し、面方位や酸化
条件によるSiCの酸化速度の違いを統一的に説明する酸化モデルの構築と、本モデル
を用いた界面層形成と界面準位発生のメカニズム解明を目指した研究を進めている。
(3)京都大学
SiCパワーデバイスの研究開発にいち早く取組み、世界をリードしている。2011 年
SiCバイポーラトランジスタ(以下SiC-BJT)で世界最高の電流増幅率を実現した。SiC
-BJTは特に太陽光発電のパワーコンディショナ、電気自動車、鉄道車両、工場の産業
機器など、
(家電製品と比べると)比較的大容量・高電圧の用途で高い性能が期待され
る。
MOSFETでは 2009 年 10 月にロームと共同で、低抵抗SiCトレンチMOSFETの大幅な大
容量化に成功した。従来は大電流化が難しいとされていたSiCを用いた大面積トレン
チゲート縦型MOSFETで、大幅な大電流化を実現、単チップ 300A駆動に成功した。こ
のチップの開発により、これまでSiパワーデバイスでしか実現できていなかった大電
流電力変換モジュールへのSiCパワーデバイス適用の可能性が大きく広がった。
2012 年 6 月には、世界最高となる 20,000Vの電圧に耐えるSBD、10 月には同じく耐
圧 20,000Vのバイポーラトランジスタの作製を発表した。(2)これにより高電圧を扱え
る電力変換回路を構成するために必要なスイッチング素子と整流素子の両方の技術
実証に成功したこととなる。
また、アプリケーションに関する研究としては、電化製品ごとに電源を使い分ける
「電力ルーター」の装置開発においてSiCパワーデバイスが活用されている。
- 88 -
(4)奈良先端科学技術大学院大学
SiCの界面評価技術、界面欠陥低減技術等について研究を行っている。(3) SiCの絶縁
膜/半導体界面にリンを導入し、界面欠陥を劇的に低減させてMOSチャネル移動度を向
上させる等の研究に取組んでいる。
(5)大阪大学
SiCパワーデバイスの研究開発からパワーエレクトロニクス応用まで幅広く研究が
行われている。産業科学研究所において、SiCパワーデバイス用酸化膜の形成方法の
研究を行っている。(4)また、2009~2013 年度の最先端研究開発支援プログラム「低炭
素社会創成へ向けた炭化珪素(SiC)革新パワーエレクトロニクスの研究開発」を行
っている。
また、SiCウエハの研磨では「プラズマ援用研磨法」を用いたウエハを傷つけず、
短時間で研磨する技術について研究が行われている。
(6)関西学院大学
SiC材料・プロセス研究開発センターにおいて、SiCの材料・プロセス技術の開発に
取組んでいる。大口径・高品質SiC単結晶成長技術の開発等を行っている。(5)
また、2009 年より三社電機製作所とSiCデバイスの製品化に向けた共同研究を開始
している。SiC材料・プロセス研究開発センターの持つ高温環境制御技術を応用し、
SiC-SBD製品化に向けた取組みを行っている。
(7)広島大学
SiCデバイスについては、ナノデバイス・バイオ融合科学研究所が研究を行ってい
る。SiCデバイスの試作を 2~3 ヶ月に 1 度のペースで作製し、問題抽出、評価を行っ
ている。現在はSBDで試作実験を行っているが、次年度はSiC-MOSFETの開発予定であ
る。基板はCreeから 4 インチの基板を仕入れ、カットして使用している。エピは新日
鐡住金とノステルに委託している。SiCデバイス開発について、フェニテックセミコ
ンダクター、ローツェ等、地元企業との連携を深めている。
GaN半導体に関しては、他の多くの研究機関が取組んでいるため、研究対象として
いない。
(8)産業総合技術研究所
先進パワーエレクトロニクス研究センターSiCパワーデバイスチームでは、
「a.超
低損失SiCパワーデバイスの開発」
、
「b.超低損失SiCパワーデバイス作製のための要
素技術開発」、「c.SiCパワーデバイスの信頼性評価」の 3 つのテーマで研究開発を
進めている。(6)
- 89 -
a.超低損失SiCパワーデバイスの開発
(a)IE-MOSFET(Implantation Epitaxial MOSFET)
従来のSiC縦型パワーMOSFETは、MOSゲートを形成するSiO2/SiC界面におけるチャン
ネル移動度が低いため、オン抵抗が期待よりも遥かに高かった。この問題を解決する
ため、IE-MOSFETを開発している。
(b)SiC-BGSIT(SIC Buried Gate Static Induction Transistor)
SiC静電誘導型トランジスタ(SiC-SIT)は、MOSFETのような酸化膜/半導体界面が存
在しないため、低オン抵抗と高信頼性を両立した理想的なパワースイッチング素子で
ある。これまで電圧型インバータに一般的に用いられてきたノーマリーオフ型の素子
開発が困難であったが、産業総合技術研究所において新たに開発したプロセス技術を
活用することにより、超低オン抵抗埋込ゲート型SiC-SIT(SiC-BGSIT)の開発に成功
し、更に素子設計の最適化によりノーマリーオフ特性を実現している。(7)
図表Ⅲ.20
SiC-BGSITの構造
G
S
n channel
D
出典:産業技術総合研究所
資料
(c)SiC-PiNダイオード
SiC-PiNダイオードは 3kVを超える高電圧用途(配電系統、高速鉄道等)において、
超低損失パワーダイオードとしての活用が期待されている。3kVを超えるような高耐
圧素子を実現するためには、チップ端における耐圧構造を工夫する必要がある。産業
総合技術研究所では、メサ構造とJTE(Junction Termination Extension)構造を組み
合わせた耐圧構造を最適化することにより、7kVを超える耐圧を有するSiC-PiNダイオ
ードの開発に成功している。
- 90 -
図表Ⅲ.21 SiC-PiN ダイオードの構造
Anode
p-contact layer
Passivation layer
p-anode layer
Junction termination
extension
Channel stop
n- drift layer
~1.0e15.70 μ m
n- sub strate
~5.0e18.250 μ m
Cathod
出典:産業技術総合研究所
資料
b.超低損失SiCパワーデバイス作製のための要素技術開発
(a)UMOSFET
これまでのSiC-MOSFET開発でオン抵抗の低減に成功したが、競合するSiデバイスは
トレンチゲート、IGBT、スーパージャンクションなど構造開発により理論限界を超え
たオン抵抗低減が進んでいることから、SiCの実用化のためには、現在開発中の
IEMOSFETに次ぐ、次世代MOSFETの開発を進めておく必要がある。トレンチゲートであ
るUMOSFETはプレーナMOSFETに比べてセルピッチが縮小でき次世代構造として期待さ
れているが、基板オフ角により、トレンチ面の方位により特性がばらつくこと、トレ
ンチ底の酸化膜に高電界がかかるなどSiC特有の問題があった。現在、この問題を解
決するため微傾斜基板を用いた六角セルUMOSFETを開発中である。
(b)Super Junction
SiCの物性限界を超える更なるオン抵抗の低減を目指し、スーパージャンクション
(Super Junction : SJ)構造を有するSiC-SJデバイスの開発を進めている(図表Ⅲ.
22)。SJ構造とはpn接合が横方向に交互に配置されていることに大きな特徴があり、
作製上の困難さからこれまでSiCを用いたSJ構造形成の試みはなかったが、各種のプ
ロセス技術〔トレンチ形成技術(図表Ⅲ.23)、エピ成長技術、イオン注入技術等〕
を駆使し、世界に先駆けSiCにおけるSJ構造の形成に挑戦している。
- 91 -
図表Ⅲ.22 SJ 構造によるオン抵抗低減効果
ドリフト抵抗[ohm-cm2]
1.00E-02
1.00E-03
1.00E-04
d=1.0um
d=2.5um
d=5.0um
Std.
1.00E-05
1.00E-06
100
1000
10000
耐圧[V]
出典:産業技術総合研究所
図表Ⅲ.23
資料
深いトレンチ形成(t~7um)
出典:産業技術総合研究所
資料
(c)ゲート酸化膜形成プロセス
高チャネル移動度、高信頼性を両立させた新規SiCゲート酸化膜形成法の開発を行
っている。コールドウォール型の超高温酸化炉(株式会社アルバック、アルバック理
工株式会社との共同開発)では 1,400℃以上という極めて高温での酸化膜形成及び各
種雰囲気中での熱処理が可能となっている。また、超高濃度オゾンガスを利用したSiC
上への熱酸化膜形成法及び表面クリーニング法の開発(株式会社明電舎との共同開
発)を進めている。
(d)MOS構造の信頼性評価
MOSFETを基幹構造としたSiCパワーデバイスの実現に向けた高信頼性SiC MOS界面
構造の開発を行っている。
- 92 -
(9)電力中央研究所
SiCに関する研究開発は、エピタキシャル厚膜生成等の基礎研究を横須賀地区の材
料研究所で行っている。その他、パワーエレクトロニクス分野を同地区の電力技術研
究所で、電力系統システムへの応用研究を狛江地区のシステム技術研究所で行ってい
る。横須賀地区にはクリーンルームを設置し、エピ成長装置、分析装置等多くの実験
装置を有している。
SiCの研究は 1992 年頃から、電力応用の研究を開始した。SiCの高耐圧性能を利用
し、電力用遮断器への適用検討を行った(電力中央研究所報告「パワー半導体素子の
現状と高性能化の課題に関する調査-半導体開閉装置への適用-」
)。
1994 年頃から、10kV以上のバイポーラデバイスを対象のSiCのエピ成長の研究を始
めた(電力中央研究所報告「厚膜SiC単結晶成長ならびにSiC表面吸着質・酸化膜評価
に関する研究」
)
。
現在、NEDOの新材料パワー半導体プロジェクトに参加し、SiC結晶成長において高速
CVD技術を応用したガス成長法の研究を行っている。また、FIRST(最先端研究開発支
援)プログラム「低炭素社会創成へ向けた炭化珪素(SiC)革新パワーエレクトロニク
スの研究開発」において、サブテーマ「超厚膜・多層SiCエピウエハ技術」のサブテー
マリーダを務めている。FIRSTプログラムでは「超厚膜、超高純度SiCエピ成長」、「ド
ーピング制御と多層膜形成」
、
「キャリア寿命向上、欠陥低減」に取組んでいる。(8)
- 93 -
3.企業の開発動向・企業戦略
国内のパワー半導体製造メーカについて、SiC関連の開発状況について述べる。SiC
パワーデバイスの製造については、Siパワー半導体でシェアを有している三菱電機、
富士電機、東芝の大手電機メーカに加え、ロームなどが試作・量産ラインの設置を準
備している。また、パナソニック、新日本無線などが取組みを開始しているいるほか、
半導体製造関連企業の取組みも進められている。
SiCパワー半導体市場の拡大が期待されるが、企業の対応においては「積極的に開
発・製品投入を加速する企業」と「市場を見極めている企業」とに大きく二分される
傾向にある。前者はロームであり、後者が多くの大手電機メーカとなる。
積極派のロームは自社にアプリケーション部門を持たないこともあり、市場におけ
るSiCパワー半導体需要の喚起のため商品ラインナップの拡充、他研究機関・企業と
の共同研究、展示会への出品、説明会の開催等を頻繁に実施し、メディアへの露出度
が高い。
一方、大手電機メーカにおいては、一部のメーカにSiCパワー半導体のデバイス・
モジュールのサンプル提供等の活発な動きが見られるものの、多くのメーカはSiCパ
ワー半導体に関する開発状況についての情報発信が活発には行われていない。これ
は、若干緩和されつつあるとは言え、SiCウエハが寡占状況にあり、将来においても
価格の高どまりが懸念されるとともに、現在シェアを押さえているSiの既存製品の競
争力が廃れていないことがその背景にあると思われる。大手電機メーカがSiCパワー
半導体デバイス・モジュールの供給において自社機器向けが中心であることがそのこ
とを示していると言える。
SiCパワー半導体の時代が到来するのは確実な情勢とも言えるが、一方では既存技
術も枯渇しておらず既存技術から新技術への移行時期の見極めが重要となる局面を
迎えている。
(1)SiCウエハの製造企業
SiCウエハを製造・供給する企業は、主に米国企業と日本企業が占めている。米国
企業としては、Cree(クリー)
、Dow Corning(ダウコーニング)、II-VI(ツーシック
ス)などがあり、日本企業としては新日鐵住金、昭和電工、HOYA、エア・ウォーター、
住友金属工業などがある。ちなみに欧州には 2010 年にロームが買収したSiCrystal
(サイクリスタル)などがある。
a.Cree
Creeは、1978 年に設立されSiCやGaNのウエハを開発・製造する米国の企業。また、
LED関連の部品や電子機器の生産も手がけ、LED業界の中では大手 5 社の 1 角に位置づ
けられる企業でもある。
- 94 -
SiCウエハに関しては 2011 年時点で 130 億円市場(富士キメラ総研調べ)とされて
いるが、Creeは 2 位を大いに引き離し圧倒的優位な地位にあるとともに、6 インチウ
エハの量産化にも取組んでいる。加えて、MOSFETの製品化、インバータの作製等も行
っている。
図表Ⅲ.24
SiCパワー半導体に関する記事(Cree)
ウエハ

Cree、150mm 径の n 型 4H-SiC エピウエハを開発

クリー

12 年度投資 1.6 億ドル

「SiC 基板の特許総合力トップ 3 はデンソー、Cree、新日本製鐵」、パテントリザルトの調査か
設備投資を半減
6 インチ化緩やかに
2012 年 8 月
2012 年 2 月
クリー、6 インチ SiC で量産
2011 年 8 月
ら 2011 年 4 月
デバイス

Cree、377A 出力できる耐圧 1,500V の SiC 製 DMOS を発表

GaN パワー半導体デバイス、特許総合力トップ 3 は Cree、古河電工、パナソニック 2011 年 3 月

Cree も SiC パワーMOSFET を製品化へ、1,200V 耐圧でオン抵抗は 80mΩ
2011 年 6 月
2011 年 1 月
b.Dow Corning
Dow Corning は 1943 年に設立された米国の企業であり、自動車、建築、エレクトロニ
クス、ヘルスケアなど多分野に向け主に Si および関連化学製品の開発・製造・販売を行
っている。日本では 1966 年から、東レ・ダウコーニングを通じて事業を展開している。
同社は 2003 年には化合物半導体を手がける米 Sterling Semiconductor 社を買収し、
これを契機に SiC ウエハ事業に参入した。
日本市場向けには 3 インチエピ膜無しウエハからスタートし、2010 年には 4 インチエ
ピ膜無しウエハ、2011 年には 4 インチエピ膜付ウエハを提供している。
図表Ⅲ.25
SiCパワー半導体に関する記事(Dow Corning)
ウエハ

「ケイ素関連技術からイノベーションを生み出す」
、東レ・ダウコーニングが会見 2012 年 7 月

東レ・ダウ、4インチ SiC エピウエハの販売を開始 2010 年 9 月
c.新日鐵住金(新日鉄住金マテリアルズ)
新日鐵住金は国内鉄鋼最大手の新日本製鐵と同第 3 位住友金属工業が 2012 年 10
月に合併して発足した企業。なおSiCウエハに関する取組みは旧新日本製鐵側で行わ
れてきたものである。
新日鐵住金のSiCウエハの世界シェアは 5~6%程度と言われ、Creeを追いかける 2
位グループの1つといった位置付けである。
SiCウエハの研究開発に関しては旧新日本製鐵における 1980 年代半ばの『4 兆円ビ
- 95 -
ジョン』で製鉄事業以外の売上を半分にする取組みをスタートとし、シリコンウエハ
やその他の化合物の半導体等も含めた新素材の一つとしてSiCの研究開発をスタート
した。
当初は発光ダイオードの材料として研究に取組んだが、2001 年にパワーデバイス
用として開発する方向に転換し、2000 年代半ばには 2 インチSiC単結晶ウエハをサン
プル提供、2007 年には高品質の 4 インチの製造に成功し、デバイス量産に使える品
質保証品として供給を始めた。
2011 年には米CreeとSiCウエハに関する相互ライセンス契約を締結し、特許係争な
どの回避およびマーケットの立ち上がりへの対応を図っている。さらに同年 6 インチ
ウエハを開発し、2012 年度にサンプル出荷を始めている。
生産体制に関しては子会社の新日鉄住金マテリアルズ(埼玉県寄居町)にて月産
1,000 枚体制を整備し、自動車や鉄道などへの本格的普及等の動向を見ながら量産時
期を探る状況にある。
図表Ⅲ.26
国内初となる 6 インチ口径SiCウエハ
出典:新日鐵住金HP
図表Ⅲ.27
SiCパワー半導体に関する記事(新日鐵住金)
ウエハ

新日鉄

新日鉄、高性能パワー半導体向け6インチ SiC ウエハ開発

新日鉄マテリアルズ

新日鉄が SiC 基板の生産能力を 3 倍に増強、エピタキシャル基板は 2011 年内に発売へ
6 インチ SiC 開発
大面積デバイス製造可能に
SiC ウエハ出荷量を倍増へ
2011 年 12 月
2011 年 12 月
6 インチも 12 年度試供
2011 年 7 月
2011
年4月

新日鉄と Cree が SiC 基板に関する特許の相互ライセンス契約を締結、
「無駄な特許係争を避
ける」

2011 年 4 月
「SiC 基板の特許総合力トップ 3 はデンソー、Cree、新日本製鐵」、パテントリザルトの調査
から
2011 年 4 月
- 96 -
d.昭和電工
昭和電工は 1926 年設立の石油化学、化学品、カーボン、セラミックス各種製品、 ハ
ードディスクメディア、エレクトロニクス材料など多様な個性派製品を幅広い産業分
野に提供する化学メーカである。
SiCウエハに関してはパワー半導体用SiCエピタキシャルウエハを量産・販売するこ
とを目的とし、産業技術総合研究所、電力中央研究所とともに、産業移転ベンチャー
「エシキャット」を設立し、その後事業化の目途が立ったこともあり 2008 年末に事
業譲渡を受けた。
現在製造するウエハは 4 インチ口径であるが、今後は大口径化、低欠陥化及び特性
均一化の向上に取組むとともに、2011 年には秩父事業所(埼玉県秩父市)での生産
能力を従来の 2.5 倍にあたる月産 1,500 枚までに増強している。
図表Ⅲ.28
SiCパワー半導体に関する記事(昭和電工)
ウエハ

昭和電工、パワー半導体部材を増産

昭和電工、4インチ SiC エピウエハ量産成功、表面平滑性大幅改善
10 億円投じ 2 倍に
2011 年 8 月
2009 年 12 月
e.新興製作所
新興製作所は 1962 年に設立された、機械部品・電子部品精密研磨加工、ソーラー
用シリコン切断加工等を事業内容としている企業である。本社は大阪市ではあるが、
岡山県の津山工場(津山市)でスライス加工、落合工場(真庭市)でラップ・ポリッ
シュ加工を行うなど中国地域と関係の深い企業でもある。
SiCに関連しては従来の研磨加工の事業に加え、ウエハの製造に向けての研究開発
を兵庫県の伊丹工場(伊丹市)において取組んでいる。
ウエハに関しては改良レーリー法を採用し、自作の成長炉による結晶成長を図って
いる。開発費用のかかるパワーデバイス用の 4Hタイプではなく、6Hタイプに特化す
ることにより高速成長で大口径ウエハの早期開発の方針を採っている。ウエハの用途
としてはGaNエピ用基板、Si on SiC12 用基板を対象としている。
12
SiCを絶縁基板とするSOI基板上にSiデバイスを製作することで、デバイスから発生する熱を効率的に
逃がすことができるとともに、よりハイパワー、高温下での動作も期待できる
- 97 -
(2)SiC半導体デバイス・モジュールの製造企業
a.三菱電機
三菱電機は 1921 年設立の総合電機メーカである。半導体事業については、2003 年
4 月に日立製作所と旧ルネサステクノロジ(現ルネサスエレクトロニクス)を設立し、
システムLSIを中心に両社の事業を統合するとともに、DRAMも 2003 年 3 月末にエルピ
ーダメモリに事業譲渡している。
現在はパワーデバイスと高周波・光デバイスに注力しており、特にパワーデバイス
では、自動車、鉄道、民生分野など幅広い分野でIPM(Intelligent Power Module)
を展開している。2004 年には、東芝の大容量パワーモジュール事業の大部分を買収
し、2008 年にはルネサスエレクトロニクスの熊本工場を買収している。
三菱電機におけるSiC半導体の歴史は、2000 年まで基礎研究を実施し、2008 年まで
試作開発、2010 年から実用化というプロセスとなっている。2004 年に 3.7kWインバ
ータを開発し、動作損失 50%減、また 2007 年には、11kWインバータを開発し、動作
損失 70%減を実現している。現在SiCパワーモジュールが製作できる会社は世界に 3
~4 社程度であり、三菱電機はその中の 1 社である。
SiCパワーデバイスについては、2009 年に4インチ月産 3,000 枚の試作ラインをパ
ワーデバイス製作所(福岡)内に構築し、小~中規模量産を行っている。また、ライ
ンの仕様は 6 インチまで対応できるため大口径化と中規模生産への備えもある。
さらに、2012 年には、パワーデバイス製作所内に「SiC事業化推進センター」を設立
し、これまで研究開発本部の傘下にあったSiCデバイスを事業として拡大することを
明確化し、同年 7 月にはSBDやMOSFET搭載の家電製品・産業機器向けモジュール 5 品
種を社外サンプル提供開始するまでに至っている(図表Ⅲ.29)
。
なお、アプリケーション事業の展開については、P.114 に記載している。
図表Ⅲ.29 「SiC パワー半導体モジュール」サンプル提供開始のお知らせ
出典:三菱電機HP
- 98 -
図表Ⅲ.30
SiCパワー半導体に関する記事(三菱電機)
全
般

三菱電機、パワー半導体の開発施設を建設

「強い事業をより強くする」、三菱電機が経営戦略を発表
2012 年 5 月

パワーデバイス 30%増収へ
2011 年 9 月
2012 年 9 月
前工程 次期増強策を検討中
ウエハ

1 度に 40 枚をスライス---三菱電機が SiC 用のワイヤ放電加工機を開発
2013 年 2 月
デバイス

三菱電機、電流センス機能を備えた SiC 製 MOSFET を発表

電力節約のパワー半導体
次世代型
九州で量産
2011 年 6 月
三菱電機
福岡で年内試作
2010 年 1 月
モジュール

三菱電機、定格電圧が 1,200V、定格電流が 1,200A と世界最大容量のフル SiC パワー半導体モ
ジュールを開発
2013 年 2 月

「SiC パワー半導体モジュール」サンプル提供開始のお知らせ

「過電流保護回路の内蔵は世界初」、三菱電機が「フル SiC」のパワーモジュールを開発
2012 年 7 月
2011 年 2 月

三菱電機など、次世代パワー半導体サンプル出荷
2010 年 5 月
b.ローム
ロームは 1958 年設立の半導体・電子部品メーカである。各種カスタムIC等に特化
するとともに、近年ではデジタル家電・情報通信分野向けのシステムLSIやアナログ
IC、また、パワーデバイスにも注力している。
研究開発拠点は京都本社ほか4拠点、製造拠点はSiC製造のローム・アポロほか 10
拠点、欧米・アジア各所に海外営業・開発拠点を有する。最近では沖電気の半導体部
門を買収し、ラピスセミコンダクタを設立している。
中国地域では、岡山県笠岡市にグループ会社のローム・ワコーがある。ローム・ワ
コーでは、LSI、ダイオードを製造しており、海外展開にあたっての国内におけるマ
ザー工場の役割も担っている。
同社は次世代パワーデバイスとしてSiCデバイスとGaNデバイスを開発しているが、
SiCにおいて他社と比 較して積極的な展開が 目立っている。同社 は 2004 年に
SiC-MOSFETの試作に成功し、業界に先駆けてSiCデバイス、モジュールの研究開発を
進めてきた。SiC-SBDは 2005 年からサンプル出荷を開始し、2010 年には量産を開始
した。
2012 年 3 月、内蔵する全てのパワー半導体素子の材料にSiCを採用した「フルSiC
パワーモジュール」の量産を開始した。フルSiCパワーモジュールの量産は業界初と
いう。量産を開始する品種の定格電圧は 1,200V、定格電流は 100A。既存のSi-IGBT
モジュールを採用する場合に比べてスイッチング損失を 85%削減した他、定格電流
400AのSiのIGBTモジュールに比べて体積を 50%に抑えている。また、定格電流が 200
- 99 -
図表Ⅲ.31 フルSiCパワーモジュール
出典:ロームHP
~400AのSi製IGBTモジュールに対し定格電流は 100Aであるが、100kHz以上の高速ス
イッチングと低損失化によって、置換え可能としている。
各製造プロセスは、ウエハ製造は 2009 年に子会社化したドイツのSicrystal、前工
程はローム・アポロ(福岡県)、後工程は海外工場がそれぞれ担当している。フルSiC
パワーモジュールについては本社工場で製造している。
時期的には 2008 年にローム・アポロ筑後工場にSiC試作ラインを設け、2008 年夏
からサンプル出荷を開始するとともに、2010 年から量産化にも対応している。
図表Ⅲ.32 SiCパワー半導体に関する記事(ローム)
全
般

「SiC 関連事業の売上高を 2014 年度 160 億円に」
、ロームが発表
2012 年 3 月
デバイス

ローム、ウエハから一貫生産

SiC パワー半導体

従来比 1/25 の電力変換器を安川電機が試作、インバータ部の出力密度は 128kW/L と業界最高
水準
6 インチ SiC 量産へ
ローム、電力ロス半減
ロームのフル SiC モジュールを利用
2013 年 1 月
月内量産
太陽電池など向け
2012 年 11 月
2012 年 8 月

ローム、SiC-SBD と SiC-MOSFET の 1 パッケージ化成功

ローム、SiC 製 MOSFET を量産

業界最小の低 VF を実現した SiC ショットキーバリアダイオードを開発

「耐圧 600V で 1mΩcm2 を下回るのは世界初」
、ロームが新しいトレンチ型 SiC 製 MOSFET を試
作
2012 年 7 月
2012 年 6 月
2012 年 6 月
2011 年 12 月

ローム、トレンチ型の SiC 製 SBD と MOSFET を展示

SFJ パワーデバイスセミナー:SiC デバイスの報告相次ぐ。
ロームはトレンチ MOS 量産へ
2011 年 10 月
2011
年6月

世界で初めて SiC の DMOSFET の量産を開始、画期的な低オン抵抗と高速動作を両立 2010 年 12 月
モジュール

業界最小!車載向け絶縁素子内蔵ゲートドライバを開発
小型化、低消費電力化に大きく貢献
EV、HEV におけるインバータ回路の
2012 年 5 月

世界初!"フル SiC"パワーモジュールを量産開始

ローム、電気自動車向け制御部品開発
機
器

安川電、全体パワー密度 25 倍の新型ドライブシステム開発(ローム デバイス使用)
2012 年 3 月
モータに内蔵
年8月
- 100 -
2010 年 10 月
2012
c.富士電機
富士電機は 1923 年設立の総合電機メーカである。2003 年に富士電機ホールディン
グスとして純粋持ち株会社へ移行し、半導体・ハードディスクなどの電子デバイス部
門を「富士電機デバイステクノロジー」として分社化している。そのうち半導体・感
光体事業については、2009 年に電機システム部門の中核会社「富士電機システムズ」
へ統合したが、富士電機システムズは 2011 年に純粋持株会社制を廃止し、以前の「富
士電機」に戻している。
半導体分野では、自動車電装、産業、情報電源向けにパワーIC、IGBTモジュール、
パワーディスクリート、複合デバイス等を展開中である。
同社は次世代パワー半導体として、SiCとGaNの開発を強化し、両者を並行して実用
化する戦略をとり、SiCは産業総合技術研究所の「産業変革研究イニシアティブ」の
枠組を活用している。GaNはGaNウエハを開発している古河電気工業と技術研究開発組
合を設立し、それぞれ共同で開発してきた。
SiCについては 2010 年度に 3 インチのラインを立ち上げ、SBDおよびMOSFETの試作・
生産技術開発を行ってきた。震災等の影響もあり、当初のスケジュールより遅れたも
のの、2012 年 10 月にはSBD、MOSFETともサンプル提供を開始し、SBDは産業用インバ
ータへの搭載が予定されている。
また、SiC- MOSFETとSBD(all-SiC)でインバータを作製した 20kW級太陽光発電用
PCSの動作の確認およびIGBTと比較したスイッチング損失の 60%低減を確認している
(図表Ⅲ.33)。
図表Ⅲ.33
次世代パワー半導体SiC-SBD搭載産業用インバータの開発
出典:富士電機HP
今後は「産業変革研究イニシアティブ」を引き継いだ「つくばパワーエレクトロニ
クスコンステレーションズ(TPEC)
」において、アルバック、住友電工とともにPrincipal
Memberとして研究開発を継続している。設備的には産業技術総合研究所内にSiC専用の
4 インチウエハラインを新設し、試作を開始するとともに、本格量産時には自社の松本
工場に 6 インチでの生産体制を構築し、成長市場に備えるとしている。
- 101 -
図表Ⅲ.34
SiCパワー半導体に関する記事(富士電機)
全
般

SiC 生産を本格化

パワー半導体売上高
15 年度めど 1500 億円狙う

SiC 採用 量産ライン
パワー半導体
津軽で新製品創出を期待
2012 年 8 月
富士電機
2011 年 11 月
富士電機、長野で来春
2011 年 8 月
デバイス

省エネパワー半導体
基板材を大口径化
富士電機やルネサス
6 インチで量産検討
2011
年 12 月
モジュール

富士電機が SiC-SBD 搭載パワーモジュールを展示、2011 年内に量産出荷を開始へ 2011 年 7 月
機
器

国内初、次世代半導体 SiC-SBD 搭載産業用インバータの開発について
2012 年 4 月
d.デンソー
デンソーは自動車技術、システム、製品を世界の主要な自動車メーカに提供する自
動車部品製造企業で、トヨタ自動車が筆頭株主。次世代素材として損失低減・高耐圧
化が可能なSiCパワーデバイス技術開発を進め、トヨタ自動車、豊田中央研究所との
共同研究も実施している。
HV・EV分野で期待されているSiCデバイスの用途では、チョップサイズが 10mm角以
下で耐圧 600~1,200V、定格電流が 100~400Aの大容量のMOSFET、SBDが要望されてい
る。SiC-MOSFET(5mm×5mm)×2 とSiC-SBD(6mm×6mm)を用いた 1,200V、150AのSiCイン
バータモジュールの試作を発表した。
図表Ⅲ.35
SiCインバータ開発事例(デンソー: 1,200V、150A)
実用化のための最大の課題はコストであるとしている。最終的にはSiCパワーデバ
イスの適用によってインバータシステムの大幅な小型、低コスト化が期待されている
ため、少なくとも同じ定格容量のSiデバイスと同等以下のデバイスコストが実現でき
ないとSiCのEV・HVへの採用は進まないと考えている。HV・EV用Si-IGBTが 8 インチの
ウエハで製造されてきていることを考慮すると、たとえ同じ定格容量のチップ面積が
1/3 にできたとしても、SiCでも 6 インチ以上のウエハで製造しないと、Siデバイス
と同等以下のコストは到底実現できないため、今後、SiCウエハの更なる大口径化、
低コスト化を進めなければならないとしている。
- 102 -
図表Ⅲ.36
SiCパワー半導体に関する記事(デンソー)
全 般
 デンソー、エコカー向け半導体材料 部品の小型化可能 15 年以降の実用化めざす 2012 年 8 月
ウエハ
 「SiC 基板の特許総合力トップ 3 はデンソー、Cree、新日本製鐵」、パテントリザルトの調査か
ら 2011 年 4 月 12 日
デバイス
 デンソーが SiC デバイス開発を加速、2015 年以降発売の次世代 EV 搭載を目指す 2011 年 12 月
モジュール
 パワー半導体モジュール、特許総合力トップ 3 は三菱電機、デンソー、日立製作所 2011 年 2 月
機 器
 デンソー、出力密度 60kW/L の SiC インバータの仕様などを明らかに 2012 年 5 月
e.東芝
東芝は 1904 年設立の総合電機メーカであり、2011 年度の部門別売上構成比率は、
デジタルプロダクツが 25%、電子デバイスが 24%、社会インフラが 37%、家電が 9%
などとなっている。
半導体では、システムLSI、フラッシュメモリ、ディスクリートの 3 分野に注力し
ており、ディスクリート関連では、パワーデバイスの生産能力を増強するため、子会
社の加賀東芝エレクトロニクス(石川県)にSi の 8 インチラインを導入している。
SiCパワーデバイスに関しては、当初 2013 年に実用化する予定であったが、機器の
省エネルギー化の要望が高まる中、事業化を急ぎ、当初より 1 年程度早めて 2012 年
内での実用化を目指している。
このような状況のもと、2011 年にはSiC-SBDを搭載した鉄道車両向けインバータ装
置を開発し、さらにトランジスタにもSiCを用いるインバータの“フルSiC化”も進め
るとともに、2013 年からはSBDを量産予定である。現在、開発・試作は川崎市で行っ
ているが、今後一貫ラインを姫路半導体工場に設ける予定とされている。
図表Ⅲ.37
SiCパワー半導体に関する記事(東芝)
全 般
 東芝、次世代パワー半導体実用化を 1 年前倒し 2011 年 10 月
 東芝 パワー半導体事業 年平均成長 18%目指す 加賀東芝で増産投資 2011 年 9 月
デバイス
 13 年から SBD 量産 東芝、姫路に SiC 一貫ライン 2011 年 8 月
機 器
 東芝が SiC ダイオードを搭載した鉄道車両向けインバータ装置を開発、2012 年中に試験走行
開始 2011 年 12 月
 電力変換装置 SiC 利用、小型で高性能 東芝など開発 2011 年 12 月
- 103 -
f.新日本無線
新日本無線は 1959 年設立の半導体・マイクロ波関連メーカ。2005 年に日清紡ホー
ルディングスが株式公開買い付けを通じて同社株式を 6 割取得し、連結子会社化して
いる。
半導体では、オペアンプやコンパレータを中心に電源用IC、LCD/LEDドライバなど
アナログICが半導体売上高の 9 割前後を占める。
次世代パワー半導体分野ではSiC-SBDにおいて、既存のウエハをそのまま活用でき
る低温プロセスを開発している。通常SiC-SBDは高耐圧化に対応するため、アノード
電極端に高抵抗ガードリングというエッジ終端構造を形成する。従来はこのプロセス
に 1,600~1,900℃の高温が必要であったが、新日本無線はエピタキシャル層にボロ
ンを注入した後、1,050℃で 90 分程度熱処理することで工程ガードリングを形成する
ことに成功した。シリコンの融点を下回る低温プロセスが可能となったことで、既存
のシリコン 4 インチウエハ製造ラインを活用しつつ、十分な特性のSiC-SBDを製造す
ることが可能になっている。
同社のSiC-SBDは高級オーディオメーカのBEWITHへ供給されており、量産型オーデ
ィオ機器にSiC-SBDが採用されるのは世界で初めての事例。Siを上回るオーディオ信
号の高速処理・高速スイッチングを実現するためSiC-SBDを開発し、BEWITHのカーオー
ディオ用にカスタマイズして搭載した。
図表Ⅲ.38
SiCパワー半導体に関する記事(新日本無線)
デバイス

新日本無線、パワーデバイス向けに銅太線ボンディング量産技術

SiC ダイオード開発

オーディオ"専用"の SiC 製ダイオードを新日本無線らが開発、
「音質向上に寄与」
新日本無線
オーディオ専用に供給
2012 年 5 月
2012 年 1 月
2011 年
11 月

新日本無線:SiC デバイスは本格量産へ。民生中心に 600V 品展開
2011 年 11 月
g.ルネサスエレクトロニクス
ルネサスエレクトロニクスは、旧NECエレクトロニクス(2002 年にNECで半導体事
業を手がけていた社内カンパニーを分社・独立)と旧ルネサステクノロジ(2003 年
に日立製作所と三菱電機の半導体部門(電力制御用半導体を除く)を分社・統合)が
2010 年 4 月に合併してスタートした半導体専業メーカである。SOC(System on a chip)
、
マイコン、アナログ&パワー半導体の 3 事業に注力し、パワーデバイス事業では、売
上高を年平均 2 桁増で伸ばしていく方針で、低耐圧から高耐圧までの製品ラインナッ
プの強化により、パワーデバイスでの世界トップグループ入りを目指してきた。ただ
し、2012 年 7 月の再建計画に基づく国内の生産拠点の再編は、前工程と後工程それ
ぞれ 9 拠点(計 18 拠点)を対象としている。そのうち縮小もしくは譲渡・集約の対
- 104 -
象は 11 拠点に上り、先行きは不透明である。
SiCパワーデバイスに関しては 2011 年に 600V耐圧ダイオード投入を発表した。生
産に関しては、高崎工場にSiCデバイス生産に対応した高温のアニール装置やイオン
注入装置を導入し 3 および 4 インチSiCウエハを用いてSBDの量産を開始しているが、
今後の方向性については再建計画では明らかにされていない。
図表Ⅲ.39
SiC・GaNパワー半導体に関する記事(ルネサスエレクトロニクス)
全
般

省エネパワー半導体
基板材を大口径化
富士電機やルネサス
6 インチで量産検討
2011
年 12 月

次世代半導体
垂直統合で需要取り込む。ローム:基板から素子まで提供。住友電工:ルネ
サスの設備取得

2011 年 3 月
ルネサス:住友電工に高知工場を一部貸与。GaN を開発・生産
2011 年 2 月
デバイス

SiC-SBD 用いた複合パワーデバイス
電源変換回路 1 パッケージ化
ルネサスが発売へ
2012 年 1 月

ルネサス

ルネサスが SiC パワー半導体を発売、ダイオードを 2011 年 10 月から量産
SiC 半導体に進出
600V 耐圧ダイオード投入
2011 年 3 月
2011 年 2 月
h.パナソニック
パナソニック(旧松下電器産業)は 1918 年の創業。1952 年に松下電子工業を設立
し、半導体、ブラウン管、照明機器関連などを生産していたが、2001 年に吸収合併。
開発から販売まで一貫して行う社内分社「半導体社」となった。2008 年の社名変更
に伴い、半導体社もパナソニックセミコンダクターに変更した。
ただし、SiCに関してはセミコンダクター社ではなく、パナソニック本社の研究開
発部門で取組みが行われている。次世代パワー半導体の事業化と言う点ではGaNを優
先させているが、2011 年 12 月に素子内部の寄生ダイオードを還流ダイオードとして
利用可能なノーマリーオフ型のSiC-MOSFETを開発した。これによりSiCインバータの
部品点数とモジュールサイズを半減できるとともに、高価なSiCウエハを用いるSiC
デバイスの使用個数も半減でき、低コスト化が可能としている。
今後の事業展開にあたってはパナソニック本社からセミコンダクター社へ業務を移管
することも視野に入れているという。
図表Ⅲ.40
SiCパワー半導体に関する記事(パナソニック)
デバイス

パナソニック、還流ダイオードを一体化した SiC パワートランジスタを開発
機
器

パナソニックの太陽光発電システム、業界最高水準の発電量を実現

SiC インバータ回路
部品点数を半減
パナソニック
- 105 -
2011 年 12 月
2011 年 12 月
2012 年 1 月
(3)SiCパワー半導体製造装置の製造企業
a.AIXTRON
AIXTRON(アイクストロン)は 1983 年の設立のドイツ半導体製造装置メーカで MOCVD25
装置メーカ最大手である。
SiC パワーデバイス構造にはウエハ面積全体に渡り高いレベルの均一性を持ったエピ
層が必要とされる。AIXTRON AB(旧 EPIGRESS、1999 年に AIXTRON グループとなった)は
SiC エピウエハ量産のための CVD 装置技術に取組んでいる。
AIXTRON AB の SiC 用 CVD 装置には、量産用 VP2400HW(Hot Wall)
、AIX2800G4 WW(Warm
Wall)がある。これらのタイプでは、量産機として最も重要なパラメータであるエピウエ
ハ面内、ウエハ間、そしてバッチ間の各種均一性を達成するために、①フィリップス社の
特許であるプラネタリー(自公転)リアクター技術と、②高温でのエピ成長を実現するた
めのホットウォール技術の融合が図られている。
図表Ⅲ.41
SiCパワー半導体に関する記事(AIXTRON)
製造装置
 パワーデバイス用成膜装置の引き合い活発
2013 年 1 月
b.東京エレクトロン
東京エレクトロンは 1963 年設立の半導体製造装置メーカ。ドライエッチング装置、酸
化・拡散炉、減圧 CVD 装置などを主力製品としている。
SiC を含む半導体製造装置全般を提供している。SiC 基板向けエピタキシャル膜成膜装置
としては Probus-SiC を開発しており、高品質エピ膜を高い再現性で実現でき、高スルー
プットで低ランニングコスト、真空自動搬送機構付き等の特長を有するという。また、
最大 2 チャンバーを同時搭載することが可能となっている。また、ロームや京都大学
と共同で SiC ウエハ上に結晶膜を堆積成長させる CVD 装置を開発している。
図表Ⅲ.41
SiCパワー半導体に関する記事(東京エレクトロン)
製造装置
 東京エレクトロン、インフィニオン社から SiC エピタキシャル膜成膜装置 Probus-SiC(TM)
を受注 2012 年 3 月
 SiC エピタキシャル膜成膜装置 Probus-SiC(TM)が第 17 回半導体・オブ・ザ・イヤーでグラ
ンプリを受賞 2011 年 7 月
25
Metal Organic Chemical Vapor Deposition 有機金属気相成長法
- 106 -
図表Ⅲ.42
SiCエピタキシャル膜成長装置「Probus-SiC™」販売開始
出典:東京エレクトロンHP
c.Canon(キャノンアネルバ)
キヤノンは 1937 年設立の光学・OA 機器関連メーカ。半導体製造装置ではステッパ&ス
キャナやアライナなどの露光装置を主に取り扱う。SiC 関連では SiC 活性化用アニール装
置(EBAS)
、ステッパ等を開発している。
(a)露光装置
SiC 対応のi線 26 ステッパ(FPA-3030i5+)を開発している。Si、SiC、サファイアなどの
基板に対応している。150mm~200mm(6~8 インチ)基板を混用することが可能なマルチ
サイズウエハ搬送システムを装備し、設定を変えずに異なる大きさの基板を露光できると
いう。
(b)アニール装置
電子衝撃加熱方式(Electron Bomberdment Anneal System)により、優れたアニール特
性を実現した真空高温アニール装置である。SiC パワーデバイス研究開発・生産用として
販売している。対応基板サイズは、3 インチ、4 インチ、6 インチである。
d.ウシオ電機
ウシオ電機は 1964 年設立の半導体露光装置や複写機向けなど各種産業用ランプとラン
プを用いた工学装置等を展開している。
大面積一括投影露光が可能なステッパの開発し、通常のステッパがウエハを移動させな
がら分割して露光する投影方式であるのに対して、一括露光による投影方式を採用してい
る。分割露光では 1 枚あたりの処理時間がかかるが、一括露光では 1 枚あたりの処理時間
が短く、マスク、ワークのダメージも少ないという。
26
光源として使用している水銀ランプの 365nm にある輝線の呼称
- 107 -
e.アルバック
アルバック(ULVAC:旧日本真空技術。2001 年に現社名に変更)は 1952 年に設立され
た総合真空関連機器・装置における国内トップの研究開発型メーカ。近年は主力の FPD
製造装置関連で培ってきたノウハウを生かし、太陽電池向けターンキーソリューション
に注力している。半導体製造装置関連では、強みの真空技術を生かしたスパッタリング
装置やメタル CVD 装置を中心に、ドライエッチング装置、各種イオン注入装置を展開し
ている。
同社ではSiパワーデバイスに続き、SiCパワーデバイス向けのソリューション対応
を目指し、製造工程に使用される量産向け製造装置の開発、販売を行っている。(9)
SiC パワーデバイスへ対応する製造装置の一部は、SiC 材料の物性に対応した専用装置
が必要となる。SiC 専用の装置は既存の半導体製造装置と比べ、高いプロセス温度が要
求されることが特徴の一つである。その中で、従来の半導体製造装置に比べ、特に、温
度仕様が大きく異なるゲート絶縁膜形成装置、イオン注入装置、イオン注入後の活性化
アニール装置について述べる。
(a)コールドウォール型ゲート絶縁膜形成装置
SiC パワーデバイスを製造する上で、SiC-MOSFET における低いチャンネル移動度や低
いゲート酸化膜信頼性が障害となっている。通常の SiC の熱酸化によるゲート酸化膜形
成法においては、SiC/酸化膜界面は高密度の界面準位を有しており、酸化膜形成後に窒
化処理を行って界面準位密度の低減を図っている。これに対して、4 インチウエハに対
応させたコールドウォール型ゲート絶縁膜形成装置を開発しており、本装置は、ランプ
加熱方式を用いることにより、高速加熱・高速冷却、不純物混入を抑えた環境で高温で
の酸化・窒化処理を可能とした。また、コールドウォール型炉であることから、NO ガス
の熱分解が抑制され、高温領域においても効率良く窒化処理を行うことを可能としてい
る。
装置断面の概略を図表Ⅲ.43 に示す。石英管製の酸化炉周囲にはハロゲンランプが配
置され、反射ミラーを用いて試料上に集光されるため、効率良く、短時間(数分間以内)
に 4 インチまでの試料を 1,450℃以上の高温に加熱することができるという。また、高
温における窒化処理において NO ガスの分解を抑えるために、冷却空気を流すことによっ
て炉壁の温度上昇を抑えている。
図表Ⅲ.43
コールドウォール型炉の断面概略
- 108 -
(b)SiC 向けイオン注入装置
SiC 向けイオン注入装置の技術課題を「①高温注入」、
「②高エネルギー注入」、
「③Al
イオンビーム」と捉え、これらの技術課題をクリアした量産型高温イオン注入装置を開
発している。
SiC は拡散係数が極めて小さいため不純物ドーブはイオン注入でしかできないと言わ
れており、室温注入よりも高温注入の方がアニール後に異種ポリタイプが発生しない。
これらの技術に対応した量産型高温イオン注入装置 IH-860DSIC をリリースしデバイス
メーカ各社に納入している。
図表Ⅲ.44
SiC向けイオン注入装置IH-860DSIC
出典:アルバックHP
IH-860DSIC は基板を昇温する方法として、高温型静電チャックを搭載することにより
直接基板を加熱し、基板温度を正確にコントロールしているという。
SiC ウエハプロセスでは、アニール後の拡散が期待できないために高いエネルギーで
の注入要求があるが、
シリコン用のイオン注入装置で多数実績のある IH-860 装置の高電
圧ターミナルを使用することにより、最大エネルギーとして 1,290keV までのプロセスを
可能としているという。Al、N などの SiC プロセスで使用される特殊イオンに対しても、
対応可能としている。
(c)ポストアニール装置
既存の Si 半導体用のアニール装置では上限温度は 1,000℃程度であるが、SiC では
1,600~1,800℃と非常に高い温度が必要であり、高周波誘導加熱を行うことで最高加熱
温度 2,000℃を達成するアニール装置を開発している。また、表面荒れを抑制するため、
800℃から 1,800℃まで 5 分での高速昇温を可能としている。
- 109 -
図表Ⅲ.45
SiC向けポストアニール装置PFS-6000
出典:アルバックHP
f.東横化学
東横化学は 1952 年設立し、事業内容は高圧ガスの販売と半導体製造装置等の製造・関
連機器販売の2本柱の企業である。
SiC に関しては SiC パワーデバイス超高温熱処理装置の開発・販売を行っている。本
装置は、
SiC 基板の 1,300℃以上の超高温におけるゲート酸化膜形成やアニール処理を目
的として開発された。
SiC は Si と同様に熱酸化によるゲート酸化膜の形成が可能であり、Si プロセスとの親
和性に優れているという特長がある。N2O による 1,300℃超でのアニール処理が SiC 基板
と SiO2 膜との界面に存在する界面準位の低減に大きな改善効果を持つことが報告され
て以来、1,300℃超における SiC 基板の熱処理プロセス、特にゲート酸化膜の形成におい
て現在では重要な技術となっている。
装置構成部材としての SiC は製法によっていくつかの種類に分類でき、それぞれの使
用環境に応じて使い分けられる。それぞれの種類の特長を図表Ⅲ.46 に記す。
図表Ⅲ.46
製法によるSiCの違い
Si 含浸 SiC
多孔質 SiC
オール
CVD SiC
使 用 温 度
1,300℃ Max
~1,400℃
~1,400℃
昇 降 温 速 度
△
×
◎
実績は最大 20℃/min
ランニングコスト
△
×
○
洗浄の手間も考慮
度
△
△
○
立ち上げ期間を考慮
格
○
△
×
Si 含浸 SiC を基準とした場合
区
清
価
焼結 SiC
分
浄
- 110 -
備
考
実績が 1,400℃で、それ以上の温度
での実績無し
g.その他
その他のSiC関連の半導体製造装置企業について図表Ⅲ.47 に示す。
図表Ⅲ.47 SiC関連の半導体製造装置企業(その1)
MOCVD
ド
ラ
イ
エ
ッ
チ
ン
グ
AIXTRON AG
●
-
-
-
-
-
Veeco Instruments
(アメリカ)
●
-
-
-
-
-
大陽日酸
●
-
-
-
-
-
ニューフレアテク
ノロジー
●
-
-
-
-
-
東京エレクトロン
ローム
京都大学
●
●
●
●
-
●
企業名
各社取組み内容
/
/
装ウ 置検
置エ
査
ハ
装
加
置
工
計
搬
測
送
装
/
レプ
ーラ
ザズ
アマ
ニ
ー
ル
CVD/
熱イ
処オ
理ン
装注
置入
装
置
/
エ
ピ
膜
装成
置長
装
置
エピクエスト
関西学院大学
サンリック
●
●
-
-
-
-
サムコ
●
-
●
●
-
-
日立国際電気
●
●
-
-
-
-
アルバック
キャノンアネルバ
東横化学
-
●
●
●
●
-
●
-
●
-
-
光洋サーモシステ
ム
-
●
-
-
●
-
日新イオン機器
-
●
-
-
-
-
Centrotherm
(ドイツ)
-
-
●
-
-
-
- 111 -
本文中に記載
・GaN-MOCVD 装置メーカとして有数企業であ
り、近年はアジア市場を中心に拡販を進め
ている。
・ドイツの AIXTRON、アメリカの VEECO、ア
ルバックに並ぶ世界屈指の MOCVD メーカで
あり、LED エピウエハ用途だけではなく、
高周波デバイス向けでも実績がある。
・ウエハの高速回転によるシリコン単結晶膜
の高速成長技術を世界で初めて実用化さ
せている。
本文中に記載
・エピクエストは、SiC 用エピタキシャル成
膜装置「HTC3100」を開発。
・関西学院大学が 2006 年に NEDO プロジェク
ト「大面積 SiC 革新的基板技術の研究開発」
を受託した際に、エピクエストとサンリッ
クの 2 社も共同開発に参画し、SiC 用超高
真空高温炉を開発。
・MOCVD 装置、エッチング装置を展開する企
業である。
・エピタキシャル成長装置 DC シリーズ、各
種熱処理装置を展開している。
・SiC 半導体製造用の縦型バッチ式超高温ア
ニール装置を開発している。
本文中に記載
本文中に記載
本文中に記載
・SiC パワーデバイス開発に適した少量生産
用ミニバッチ縦型炉「VF-1000」
、量産型フ
レキシブル縦型炉「VF-5100」を開発。
・イオン注入装置、イオンドーピング装置の
分野においてトップ企業である。
・2002 年に本社工場内に、SiC デバイスの開
発・製造・販売を目的にエコトロンという
事業会社を立ち上げている。
・SiC 高温アニール炉、SiC 酸化炉を展開し
ている。日本国内では、伯東が取り扱って
いる。
図表Ⅲ.47 SiC関連の半導体製造装置企業(その2)
MOCVD
ド
ラ
イ
エ
ッ
チ
ン
グ
装ウ 置検
置エ
査
ハ
装
加
置
工
計
搬
測
送
装
/
レプ
ーラ
ザズ
アマ
ニ
ー
ル
各社取組み内容
/
/
/
熱イ
処オ
理ン
装注
置入
装
置
CVD/
企業名
エ
ピ
膜
装成
置長
装
置
日本製鋼所
-
-
●
-
-
-
フェトン
-
-
●
-
-
-
住友重機械工業
-
-
●
-
●
-
住友精密工業
-
-
●
●
●
-
パナソニック
ファクトリー
ソリューションズ
-
-
-
●
-
-
Lam Research
-
-
-
●
-
-
ナガセインテグレ
ックス
-
-
-
-
●
-
ダイトエレクトロ
ン
-
-
-
-
●
●
ディスコ
-
-
-
-
●
-
ハーモテック
-
-
-
-
●
-
テセック
-
-
-
-
-
●
- 112 -
・低温ポリシリコン TFT 型液晶の製造ライン
に用いられるエキシマ・レーザ・アニーリ
ング・システム(ELA)を 1995 年から製造販
売。
・レーザ加工技術に強みを持つ企業で、2 種
類のレーザを搭載した薄板 IGBT 裏面活性
化用レーザアニールを展開している。
・レーザ発振器を含むすべてのコンポーネン
トを国内で唯一内製化しているレーザア
ニーリング装置メーカである。(主力用途
は低温ポリシリコン液晶ディスプレイで
あり、パワーデバイス向けではない。
)
・プラズマ成膜装置、各種エッチング装置な
どウエハ前工程関連装置全般を提供。
・Si 系ウエハ基板向けのシリコン深堀り装
置、化合物・酸化膜エッチング装置などに
注目している。
・パナソニックグループの表面実装関連装置
などを製造しているメーカで、ドライエッ
チング装置を取り扱っている。
・半導体エッチング装置市場でトップ企業で
あり、パワーデバイス向け市場にも実績は
豊富。
・単結晶 SiC、GaN、サファイアなどの難削ウ
エハ材料をターゲットにした超精密加工
装置を展開している。
・パワーデバイス向け装置の拡販に注力して
おり、自社ブランドを中心とし、縦型ウエ
ハ端面形状研削機、フラットネステスター
などウエハ加工装置や検査装置を提供し
ている。
・パワー半導体に使用される SiC の加工に対
するソリューションとして超音波を使用
したダイシング技術を開発したことを発
表している。
・極薄ウエハの搬送技術を強みに「KUMADE」
シリーズを展開しており、搬送ロボットメ
ーカ向けの実績も豊富である。
・ディスクリートデバイス(個別半導体)の電
気特性を高速・高精度に測定するテストシ
ステムと接続されたテスタから測定デー
タを受け、設定されたレベルに応じて各種
半導体デバイスを自動的に分類、選別する
ハンドラ装置を軸に展開。
図表Ⅲ.47 SiC関連の半導体製造装置企業(その3)
MOCVD
ド
ラ
イ
エ
ッ
チ
ン
グ
ウ
エ
ハ
加
工
搬
送
装
置
検
査
装
置
/
レプ
ーラ
ザズ
アマ
ニ
ー
ル
/
/
/
熱イ
処オ
理ン
装注
置入
装
置
CVD/
企業名
エ
ピ
膜
装成
置長
装
置
計
測
装
置
日本マイクロニク
ス
-
-
-
-
-
●
レーザーテック
-
-
-
-
-
●
Agilent
Technologies
-
-
-
-
-
●
シバソク
-
-
-
-
-
●
アドバンテスト
-
-
-
-
-
●
エスペック
-
-
-
-
-
●
キャッツ電子設計
-
-
-
-
-
●
Keithley
Instruments
-
-
-
-
-
●
コペル電子
-
-
-
-
-
●
四国計測工業
-
-
-
-
-
●
ヨコオ
-
-
-
-
-
●
- 113 -
各社取組み内容
・半導体量産工程でのウエハ電気的特性検査
に使用される計測器具「プローブカード」
や計測機器「テスタ」、チップ実装後の特
性検査に用いられる「テストソケット」、
デバイスの研究開発時における評価・分析
で使用される測定評価システム「プロー
バ」などを提供している。
・パワーデバイスへの応用が進む SiC ウエハ
の欠陥を検査する装置「WASAVI シリーズ
CICA61」の受注を 2009 年 12 月から開始し
ている。
・B1505A「パワーデバイス・アナライザ/カ
ーブトレーサ」を展開し、業界で唯一のワ
ンボックス型のデバイス・アナライザとし
て販売している。
・半導体テストシステム、オーディオ・ビデ
オ用計測器、放送用機器、光ディスク・光
ピックアップ用計測器およびメカトロニ
クス応用機器などの事業を展開している。
・半導体検査装置の世界的メーカであり、特
にメモリテスタをはじめとする自動テス
ト装置ではパワーデバイス分野でも実績
豊富。
・試験計測装置メーカであり、SiC パワート
ランジスタ向け高温バーンインチャンバ
ー「RBC-HHH」、
「FET/IGBT パワーサイクル
通電試験装置」を開発。
・半導体試験装置メーカ。
・IPM/IGBT テストシステム、ダイオードテス
トシステムなどがある。
・電子計測機器を扱うグローバル企業
・パワー半導体分野においては、半導体パラ
メトリックテスト&デバイス特性評価関連
装置を提供している。
・パワーデバイス(大電力用半導体)を主体と
した各種半導体を対象とする静特性(DC 特
性)・動特性(スイッチング・タイム)・熱
抵抗等の測定器を提供。
・パワーデバイス DC 静特性試験装置、高精
度 DC テスタ、パワーデバイス動特性試験
装置などを提供している。
・2010 年春にパワーデバイス検査向けの狭ピ
ッチ・低抵抗プローブを投入する計画を発
表している。
(4)SiCパワー半導体のアプリケーション企業
a.三菱電機
SiCパワー半導体デバイス製造企業であると同時にアプリケーション提供企業であ
る。SiCパワー半導体を社内の他部署の製品に応用・搭載することで、SiC半導体の技
術を高める体制で開発を行い、近年では社外向けの製品も販売開始している。社内で
多種多様な製品を研究・開発・製作しているため、社内でSiC半導体を試用して改良
するという体制を採れることが強みである。現在、SiC半導体搭載のエアコンを一般
販売している。2010 年にエアコン「霧ケ峰」(DIPIPMの中にSiC-SBD搭載したモデル)
が省エネ大賞を受賞している。また 2012 年 2 月から東京メトロ銀座線の電車にSiC
適用鉄道車両用インバータ装置が搭載され、従来の車両と比較して、消費電力を
38.6%低減した。営業運転でのSiCの省エネ効果の実証は、
「世界初」である。また、
SiCダイオードの適用によって、電力回生性能を高めることで、消費電力の削減につ
なげ回生率(走行に使用した電力のうち、回生ブレーキで架線に戻した電力の割合)
を、従来の 22.7%から 51.0%にまで向上させた。
また、JRや私鉄と直通運転を行うDC 1,500V 鉄道架線に対応したインバータ装置お
よび高効率全閉形誘導電動機を開発し、2013 年 1 月に同じく東京メトロに搭載予定
としている。さらに 2013 年にはウクライナのキエフ市の地下鉄車両への納入も予定
しており、同社のSiCアプリケーション事業のみならず国内メーカの海外展開の先鞭
として期待される。
図表Ⅲ.48 SiC 採用ルームエアコン「霧ケ峰」の発売
図表Ⅲ.49
図表Ⅲ.50
SiC適用鉄道用インバータの製品化
SiCパワー半導体に関する記事(三菱電機)
出典:三菱電機HP
- 114 -
機
器

三菱電機、省エネ型の電力変換装置輸出

三菱電機、1500 ボルト対応、鉄道車両用インバータ、3 割節電

三菱電機、SiC パワー半導体搭載した NC 装置用ドライブユニット

「営業運転での実証は世界初」、SiC の効果を三菱電機が東京メトロ銀座線の車両で確認
鉄道車両向け
2013 年 1 月
2012 年 11 月
2012 年 10 月
2012 年 9 月

パワー密度 50kVA/l でインバータ動作を実証
高パワー密度フル SiC インバータを開発 2012
年3月

三菱電機、EV 用 SiC インバータ内蔵モータシステムを開発

三菱電機

三菱電機が鉄道向け SiC インバータ装置を製品化、地下鉄に搭載へ

三菱電機、SiC 実用化急ぐ

三菱電機、SiC 活用で太陽光発電用パワコンの電力変換効率 98.0% を実証

三菱電機、SiC パワー半導体をエアコンに初採用
SiC、車向け供給
15 年めど
2012 年 3 月
省エネ・部品軽量化
鉄道・FA向け相次ぎ供給
2012 年 1 月
2011 年 11 月
2011 年 6 月
2011 年 1 月
2010 年 8 月
b.日立製作所
日立製作所は 1920 年の設立で、情報・通信システム、社会・産業システム、デジ
タルメディア・民生機器などを事業領域とし、近年ではインフラをはじめとした社会
イノベーション事業の強化を行っている。
半導体事業については、DRAMをエルピーダメモリに、マイコン、ロジック、アナロ
グ、ディスクリートを含むシステムLSIをルネサステクノロジ(現ルネサスエレクト
ロニクス)に事業移管した。現在はマイクロデバイス事業部において、光伝送装置用
IC、メディアプロセッサなどを手掛け、パワーデバイス本部で高耐圧ICやIGBTモジュ
ールなどのパワー半導体も生産している。
日立製作所におけるSiCパワーデバイスの研究に関しては、2009 年に 3.3kV級
SiC-SBDを搭載したパワーモジュールの開発に成功するとともに、これをスタートに
2010 年にはSiC-SBDの鉄道車両用に事業化を図っている。この取組みの成果として、
2012 年にはSiCデバイス小型軽量化を図った直流 1,500V架線対応の鉄道車両用イン
バータを開発した。
このインバータには、サイズを約 2/3 に小型化した耐圧 3.3kVハイブリッドモジュ
ールを使用し、シンプルな回路構成を実現している。また、使用時に発生する熱を冷
やすための冷却器を小型化することで、装置全体の小型化も達成している。さらに軽
量コンデンサであるオイルレスコンデンサを採用することにより、インバータ全体の
軽量化にも成功し、
これらを合わせ、Siを用いたインバータと比べ容積と質量を 40%、
電力損失を 35%低減している。今後は同インバータを各種鉄道車両に適用を図る予
定とされている。
- 115 -
図表Ⅲ.51
SiCパワー半導体に関する記事(日立)
全
般

日立製作所、鉄道車両向けに SiC デバイス事業化
機
器

シリコン・カーバイド素子を用いて小型軽量化を図った直流 1,500V 架線対応の鉄道車両用
インバータを開発
2010 年 4 月
2012 年 4 月
c.日産自動車
日産自動車は 1933 年設立の自動車メーカである。日本のビッグスリーの一角で、
ルノー(フランス)と資本提携をしている。SiCに関しては、2008 年にSiCダイオー
ドを使用した車両用のインバータを開発し、燃料電池車で走行実験を開始したと発表
した。従来のSiダイオードと比べて、ダイオードの占める面積は 70%削減、インバー
タ回路のエネルギー効率は 20%改善し、さらに、インバータを 15%から 20%小型軽量
化することが可能であるという。
また、SiCパワーデバイスの高耐熱実装技術とその信頼性に関する研究開発を行っ
ている。SiC高耐熱モジュールを実現するためには、使用される高温域で目立った材
料劣化がなく、大きな温度差が加わっても十分な熱疲労信頼性を確保できる高耐熱材
料技術とその信頼性評価技術の確立が必要である。中でも、SiCチップを実装するた
めのはんだ代替技術の確立が強く求められており、これらの課題に関する研究開発を
行っている。
d.本田技研工業
本田技研工業は 1948 年設立の大手輸送機器及び機械工業メーカであり、オートバ
イや小型汎用エンジンに関してはシェア世界一である。
SiC に 関 し て は ロ ー ム と 共 同 で 、 SiC-SBD 、 SiC-MOSFET を 搭 載 し た 1,200V ・
230A(280kVA相当)クラスの次世代電気動力車向けハイパワーインバータモジュール
を開発した。コンバータ回路(1 相)とインバータ回路(3 相)を 1 パッケージに搭載し、
小型化を実現している。パワーモジュールの性能としてスイッチング損失が従来のSi
デバイスと比較して約 1/4 以下に低減されており、駆動周波数を上げることができる
ため、例えば従来Si-IGBTを使用した場合のPWM周波数 20kHzに対して、4 倍の 80kHz
の高周波化も図れるとしている。
図表Ⅲ.52
SiCインバータ開発事例(ローム:2008.9.11 プレスリリース資料より)
- 116 -
<参考>GaN パワー半導体に関する企業動向
SiC、GaN に関する研究については当初は欧米で開始されたものの、その困難さから次第
に廃れて行った。SiC においては京都大学 松波弘之名誉教授が寡勢ながらも革新的な結
晶成長技術を開発するとともに、デバイス応用にまで展開し、今日の次世代半導体として
の位置にまで導いているが、GaN も同様な状況であった。SiC の 松波名誉教授に相当する
のが名古屋大学 赤崎勇教授であり、結晶成長方法やドーピング手法について基礎固めを
行った。
加えて 1993 年に日亜化学工業が GaN 結晶欠陥の問題をクリアし、高輝度で、長寿命な
LED(発光ダイオード:Light Emitting Diode)を発表し、世界的に研究対象として復活お
よび開発ブームを引き起こした。
パワーデバイスに関しては従来同じⅢ‐Ⅴ族の GaAs が GaAs MESFET、AlGaAs/GaAs HEMT
等のデバイス構造により高周波アンプや BS アンテナの増幅器として使用されてきたが、
LED 材料として GaN が注目される中、GaAs からバンドギャップの大きな GaN への移行とい
う観点から高周波パワーデバイスの AlGaN/GaN HEMT 等が研究開発されてきた。
さらに GaN 発光デバイス、高周波パワーデバイスが商品化されると、2005 年頃から次の
研究開発の対象としてパワーエレクトロニクス用の GaN スイッチングデバイスが注目され
るようになってきた。
図表Ⅲ.53
GaN の特徴・用途
利用する特性:高絶縁破壊電界
高出力デバイス
高効率パワーデバイス
(インバータ、SBD、電
気自動車用)
高周波デバイス
移動基地局用アンプ等
電子デバ
イス
G
a
N
用
途
LED
(発光ダ
イオード)
光デバイ
ス
白色
LED
一般照明、カラーディ
スプレイ
青・緑
LED
バックライト、信号、ディ
スプレイ、自動車用部品
利用する特性:発光
レーザーダ
イオード
(LD)
CD/DVD リーダ
レーザプリンター
出典:JRCM「窒化物系化合物半導体の技術戦略マップ作成に関する調査」(2006 年)を基に作成
- 117 -
GaN パワーデバイスの構造、開発状況については P.15 図表Ⅰ.18 および図表Ⅲ.53
に記載のとおりであるが、AlGaN/GaN HEMT においては動作が原理的にノ―マリーオンであ
ることや、電流コラプス現象
27
の発生、GaN MOSFET においては MOS 酸化膜の寿命や再現
性等の技術的課題の解決が求められている。
図表Ⅲ.54
AlGaN/GaN HEMT 構造(横型素子)
ソース
ゲート
ドレイン
GaN
AlGaN
電子
基板(Si、SiC、Sapphire)
)
また、コスト面でも課題が存在している。GaN ウエハは SiC より高価である。ブルーレ
イ用のレーザ等の付加価値の高いものではコスト回収が期待されるものの、パワーデバイ
スとしては普及にあたって解決しなければならない課題である。
この課題の解決に向けては昇華法等の「気相成長」以外の GaN を融液化して再結晶化さ
せる「融液成長」や、溶媒に窒素や GaN を溶解させ成長させる「溶液成長」等の手法によ
る低コスト、大面積化へ向けた取組みがなされている。
また、コスト低減に向け、Si 等の基板上への GaN の作製の研究開発がなされている(図
表Ⅲ.54)
。Si ウエハを利用すれば、ウエハコストは Si デバイスと同等となり、Si ウエハ
上に GaN の結晶薄膜を作製する工程だけ追加コストがかかることとなるが、その後のデバ
イス作製行程コストは Si のそれと大差ない状況が可能となる。こうして GaN パワーデバイ
スのコストを Si 並に低減させることにより家電製品や情報機器への普及を期している。
以上のような GaN 半導体であるが、本欄では GaN 半導体に関連してウエハメーカ 2 社、
デバイスメーカ 3 社について、その事業展開について紹介する。
27
低電圧動作でのトランジスタのオン抵抗値と比べて高電圧動作でのオン抵抗値が高くなってしまう現象
- 118 -
図表Ⅲ.55
GaN パワーデバイスの現状と今後の展望
MOSFET(縦型)
HEMT(横型)
2000
年
2005
年
GaN
On
Sapphire
GaN
On
SiC
Panasonic
Velox
富士通
東芝
他多数
他多数
2008
GaN
On
Si
Panasonic
サンケン
富士通
IR
ほか
年
2010
GaN
On
Si エピ
DOWA
日本ガイシ
AZZURO
ほか
GaN
On
Sapphire
古河
RPI
ローム
GaN
On
Si
古河
シャープ
GaN
On
GaN
ローム
トヨタ
年
今後
の
展望
・実用化が近い
・600V クラスまでの高速用途を狙う
電源以外のアプリケーション模索
・コラプス、アバランシェを考慮した使い
方が必要
・GaN 単結晶技術の進展により、縦型
もターゲット
600V 以上の中、高耐圧のパワーデ
バイスも視野
・結晶高品質化、低コスト技術および
プロセス技術の開発が課題
(1)GaN ウエハの製造企業
a.住友電気工業
住友電気工業は 1920 年設立の自動車、情報通信、エレクトロニクス、電線・機材・エネ
ルギー、産業素材の関連事業を行う企業である。
GaN ウエハについては青紫色 LD(レーザーダイオード:Laser Diode)向けを中心に圧
倒的なシェアを有している。LD 以外の用途開拓にあたり、フランスのソイテック社と協
業し、低コスト GaN ウエハの開発を進め、2011 年には世界で初めて白色 LED 用の 6 イン
チウエハを開発し、既にサンプル出荷を始めている。今後は白色 LED 用に加えて、市場
の立ち上がりが予想されるパワーデバイス向けにも普及拡大を見込んでいるとのことで
ある。
- 119 -
図表Ⅲ.56 GaN パワー半導体に関する記事(住友電気工業)
ウエハ

住友電工と仏ソイテック社、低コスト大口径 GaN 基板の製造に成功、4 インチ径及び 6 イン
チ径量産ラインの整備を開始
2012 年 1 月

ルネサス:住友電工に高知工場を一部貸与。GaN を開発・生産
機
器

電源、製品ごと使い分け
電
京大 住友電工 通信分野を応用
電力会社の安定電力→医療機器
2011 年 2 月
発電量変動する太陽光電池→充
2011 年 7 月
b.三菱化学
三菱化学は 1934 年設立の総合化学メーカ。中国地域には水島(岡山県倉敷市)に事業
所があり、同社のエチレンセンターであるとともに、情報電子・新エネルギー関連製品
を生産する機能商品拠点としての役割を担っている。
水島事業所では機能商品の一つとして GaN ウエハを 2013 年度から本格量産、15 年度
には 6 インチ化を図る予定とし、LED、パワーデバイス用途への展開を本格化するとして
いる。
図表Ⅲ.57 GaN パワー半導体に関する記事(三菱化学)
ウエハ

三菱化学、GaN 基板を水島で量産、大型結晶成長設備が 13 年度稼働

三菱化学、白色 LED 照明部材の生産拡大、液相法 GaN 基板量産
2011 年 11 月
2011 年 3 月
(2)GaN 半導体デバイスの製造企業
a.パナソニック
パナソニックは次世代パワーデバイスとして特にGaNに注力し、活発に開発成果を
発表している。2009 年にはGaNトランジスタを 1 チップに集積したインバータICを開
発し、2010 年には理論的にGaNデバイスの耐圧を 3,000V以上にできる技術を発表して
いる。
現在、GaNパワー半導体(GaN-HEMT)をサンプル提供するとともに、2012 年度下期には、
北陸工場(富山県魚津市)で量産を開始予定としている。今後はグループ製品への搭載
に加え外販も見込んでいる。
- 120 -
図表Ⅲ.58
GaNパワー半導体に関する記事(パナソニック)
デバイス

窒化ガリ製パワー半導体

パナソニック、安価な Si 基板を使う GaN のダイオードと HFET の開発状況を報告 2012 年 1 月

パナソニック、GaN パワーデバイス評価ツールを統合

参入相次ぐ GaN 系パワー素子

パナソニック、GaN パワーを量産化へ。ノーマリーオフを実現

パナソニック、パワー半導体

パナソニック、インバータ IC 変換ロス 40%削減、GaN 系で実現
パナソニック量産
北陸で来春
2011 年 12 月
パナソニックや NEC が本腰
耐圧性能5倍に
2012 年 5 月
2011 年 10 月
2011 年 9 月
2010 年 12 月
2009 年 12 月
b.富士通セミコンダクター
富士通セミコンダクターの前身は、2008 年 3 月に富士通の LSI 事業を分社化した「富
士通マイクロエレクトロニクス」で、2010 年 4 月に現社名に変更した。
GaN パワーデバイスについては、
製造工程の改良で 600V 耐圧の製品開発にメドを付け、
2012 年内でのサンプル出荷、2013 年からは福島県会津若松工場で量産する予定。GaN が
高周波動作に向くことから、主なアプリケーションはサーバに組込むスイッチング速度
の高い電源とされている。
図表Ⅲ.59 GaN パワー半導体に関する記事(富士通セミコンダクター)
デバイス

富士通セミコン、量産へ、パワー半導体 窒化ガリウム利用 2012 年 11 月

富士通セミコン、パワー半導体に参入、環境分野を開拓――福島県の工場で量産 2012 年 1 月

GaN 系パワー素子が実用化へコストは Si 並みに 富士通研、古河電工らが本腰 2011 年 10 月
機
器

富士通研、広帯域に対応の窒化ガリウム増幅器搭載通信機器を開発
2011 年 6 月
c.パウデック
パウデックは 2001 年に元ソニー研究者らが設立した、古河機械金属が出資する半導体
ベンチャーであり、GaN 半導体エピ基板およびデバイスの開発・生産を事業内容とする
企業である。デバイスについては、今年、超高耐圧トランジスタを開発している。新方
式の分極接合をゲートに採用し、 シンプルな構造がら、 電流コラプスの抑制と同時に
6,000V を超える高耐圧を実現しており、今後の用途拡大を見込んでいる。
図表Ⅲ.60 GaN パワー半導体に関する記事(パウデック)
デバイス

パウデック/GaN パワー半導体開発/超高耐圧、電力損失を減

高電圧下で抵抗抑える

新構造 GaN トランジスタの開発
パウデックがトランジスタ
2012 年 2 月
電極に窒化ガリウム
2011 年 4 月
- 低損失、高耐圧、電流コラプスをなくした新構造 -
2011 年 3 月
- 121 -
4.中国地域での取組み
中国地域には、現時点ではSiC関係の生産拠点は存在していないものの、パワー半
導体関連の工場や半導体製造装置等の工場は存在しており、今後、SiC関連の事業が
展開される可能性はある。中国地域では、各県の国立大学におけるパワーエレクトロ
ニクス関係の研究が活発であり、地元自治体と協力して地域産業の技術力の向上に力
が入れられている。特に、注目すべき取組みについて、次に述べる。
(1)フェニテックセミコンダクター
フェニテックセミコンダクターは 1968 年に設立された岡山県井原市に本社を置く
企業で、国内に数少ないディスクリート専業のファンドリーメーカ 28 である。海外の
大手企業から多くの受注を獲得している。同社は技術力に高い評価を受けるととも
に、国内外の企業とタイアップして、ディスクリート半導体から各種ICに至るまで効
率よくファンドリー事業を展開している。
SiCデバイスについては、
広島大学とSiCデバイスを共同開発し、2013 年度にSiC-SBD
のサンプル出荷を目指す方針。SiCデバイス市場が本格的に立ち上がった際、確実に
受託生産需要の対応を図って行くことを目指している。
設備投資に関しては 2011 年度よりSiCデバイスの製造ラインの整備を進め、2012
年度には高温アニール炉、酸化炉、2013 年度にはイオン注入装置を導入する予定で
ある。
図表Ⅲ.61
SiCパワー半導体に関する記事(フェニテックセミコンダクター)
全 般
 フェニテックセミコンダクター 12 年度投資 7 億円 SiC 用酸化炉など導入
デバイス
 フェニテック SiC 試作ライン設置 13 年度サンプル出荷 2011 年 8 月
2012 年 8 月
(2)ローツェ
ローツェは 1985 年に設立された広島県福山市に本社を置く企業で、半導体製造工
程、液晶パネル製造工程において、シリコンウエハやガラス基板を搬送するロボッ
ト・装置を開発、製造。ロボットを組み込んだ装置も含めたウエハ搬送機のシェアは
世界で第3位、日本企業ではトップである。
SiCに関しては平成 23 年度戦略的基盤技術高度化支援事業に、
「SiC基板向け大気圧
28
半導体チップの製造を専門に行う企業。ファンドリーメーカは発注元の半導体メーカから設計データを
受け取り、その設計に沿って半導体チップを製造する。ファンドリーメーカを利用することで、半導体
メーカは自社で製造設備を持たなくても製品を開発することが可能になり、メーカが本来得意とするチ
ップの設計などの業務に専念できるようになる。
- 122 -
プラズマ熱処理装置の開発と非接触基板温度測定装置の開発」が採択され、広島大学
ナノデバイス・バイオ融合科学研究所、アドテックプラズマテクノロジーと共同で取
組んでいる。これに関しては広島大学大学院先端物質科学研究科の東教授がアドバイ
ザーとして、フェニテックセミコンダクターが川下企業として参画している。
図表Ⅲ.62
SiC基板向け大気圧プラズマ熱処理装置の開発と非接触基板温度測定装置
の開発
〔概 要〕
SiC基板向け大気圧プラズマ熱処理装置の開発
と非接触基板温度測定装置の開発
自動車・家電・産業用モータ等に、現在シリ
コンパワー半導体がインバータとして使われ
ているが発熱損失が大きい。次世代 SiC(炭化
珪素)基板は、低損失性、耐電圧が共にシリコ
ン基板より 10 倍優れているが、素子製造工程
に お け る 熱 処 理 が 従 来 よ り 1,000 ℃ も 高 い
2,000℃近くを必要とする。本研究では、炉に
代えて熱源温度 10,000℃の大気圧熱プラズマ
を SiC 基板に直接噴射して急速加熱する省電力
熱処理装置を開発し、電力ロスが極めて少ない
SiC パワー半導体を普及させ、社会の省エネル
ギー化に貢献する。
出典:中国経済産業局「平成 23 年度戦略的基盤技術高度化支援事採択テーマ」(2011 年)
(3)長州産業
長州産業は 1980 年に設立された山口県山陽小野田市に本社を置く企業。事業内容は大
きく太陽光発電分野と半導体製造装置分野に分れる。半導体製造装置分野では、蒸着装
置、スパッター装置、CVD 装置などを半導体やディスプレイ向けに生産してきており、
NEDO の支援を受けた有機 EL 照明とディスプレイに向けた装置開発を国内大手関連企業
と共同で行っている。
太陽光発電分野のパワーコンディショナやインバータを外部から調達しており、それ
らの装置のコンパクト・低価格・高性能化に向けて、SiC 等を使用した高性能な半導体
に期待をしている。
- 123 -
(4)トクヤマ
トクヤマは 1918 年に設立された山口県周南市に本店を置く総合化学工業メーカ。最
先端のモノづくりに欠かせないキーマテリアルを提供する特殊品部門を有し、電子材料
や高機能材料などの事業を展開している。
具体的には Si 半導体ウエハの原材料ともなる多結晶シリコンの世界シェア 20%を占
めるとともに、半導体用封止材の材料である乾式シリカ(SiO2)、インバータ等の放熱材
(ヒートシンク)の窒化アルミニウム(AlN)など、半導体材料および周辺部材材料等を
生産している。
(5)ディスコ
ディスコは 1940 年設立の産業用精密加工装置メーカで、半導体製造装置関連のダイサ
/グラインダでは世界シェアトップで、ダイサなどに使う砥石(ブレード)などの各種精
密加工用部材も提供している。本社および研究開発部門は東京であるが、発祥の地は呉
市であり、現在も主たる工場が呉市に立地している。
同社は 2010 年には、SiC 加工用の超音波ダイシング技術を開発。特徴は超音波振動に
よりダイヤモンドブレードが半径方向に伸縮するため、対象物との断続的な接触加工に
より、送り速度を通常のダイシングブレードの3倍以上とすることが可能としている。
また、2011 年には SiC、サファイアなどの硬脆材料向け全自動グラインダを小型化し発
売している。
図表Ⅲ.63
SiC パワー半導体に関する記事(ディスコ)
ウエハ

ディスコ、設置面積3.5m2 に小型化した硬脆材料向け全自動グラインダ 2011 年 12 月

ディスコ、SiC ウエハ切断の新加工技術、超音波利用で速度3倍超
2010 年 1 月
(6)新電元工業
新電元工業は 1949 年設立のディスクリートや電源 IC などのデバイス事業、整流器や電
源装置、電源モジュールなどを扱うモジュール/システム事業を展開している企業。2010
年には、初の自社製となる SiC-SBD 製品の開発を発表するとともに、2013 年度には山形工
場においての量産化の報道がなされている。
基本的には東北地域を中心とした東日本に多く工場が立地する同社であるが、2012 年 9
月 でサンエー(広島県三次市)より「カスタムパワーモジュール事業」を譲受け、同社
広島分室を設置するとともに、今後はパワーモジュールへの注力および事業拡大を図るこ
ととしている。
- 124 -
図表Ⅲ.64
SiC パワー半導体に関する記事(新電元工業)
ウエハ

新電元工業、サンエーよりカスタムパワーモジュール事業を譲受 2012 年 9 月

炭化ケイ素パワー半導体
新電元工業が参入
山形に専用ライン
2012 年 5 月
(7)その他の企業
SiC のウエハに関連してはスライシングにおいてマルチワイヤ放電ソーを作製するト
ーヨーエイテック(広島市)
、その部材であるソーワイヤを製造するのジャパンファイン
スチール(山口県山陽小野田市)
、研磨・ポリシング・切断の新興製作所(岡山県津山市)
などが存在している。また、試験研究機関向けの SiC 結晶成長装置として竹内電機(本
社:兵庫県尼崎市)が松江市に研究室を立地している。
デバイス自体に関しては前工程・後工程の一貫工場としてフェニテックセミコンダクタ
ーのほかに関西学院大学と SiC デバイスの共同研究を行っている三社電機製作所(本社:
大阪市、工場:岡山県奈義町)が存在している。また、今後の対応という点からは Si か
ら SiC へのシフトに伴って大きなプロセス上の影響はないとされる後工程において、大手
電機メーカの協力会社を含め広島県の備北地区、島根県の石見地区に複数の工場が存在し
ている。
SiC パワーデバイスの応用に関して今後重要と考えられる回路・機器の周辺機器(受動
素子等)や素材に関しては、コンデンサの出雲村田製作所(島根県出雲市)
、低損失コイ
ル、鉛フリーはんだの日立金属(島根県安来市)
、モジュール化等の際の必要となる樹脂
ではクラレ(倉敷市)
、三井化学(山口県和木町)
、また装置用電源としてアドテックプラ
ズマテクノロジー(福山市)等、中国地域にも有力な事業者が存在している。
- 125 -
参考文献
(1) 土方:
「SiC パワーデバイスの欠陥解析・観察技術」SiC パワーデバイス最新技術、サ
イエンス&テクノロジー、第 18 章
(2) 京都大学 HP
(3) 矢野:
「SiC パワーデバイス用界面欠陥低減技術
徹底解説~重要課題 SiC-MOS 界面の
評価・欠陥低減技術を詳解」電子ジャーナル No.428
(4) 松本、小林:
「SiC パワーデバイス用酸化膜の形成方法」SiC パワーデバイス最新技術、
サイエンス&テクノロジー、第 11 章
(5) 大谷:
「SiC 単結晶成長技術(昇華法)~高品質化・大口径化~」SiC パワーデバイス最
新技術、サイエンス&テクノロジー、第 2 章
(6) 「パワーエレクトロニクスインバータ基盤技術開発プロジェクト」(事後評価)第 1 回
分科会資料 5-2(2) 産総研 http://unit.aist.go.jp/adperc/ci/teams/s-pdt.html
(7) 田中:
「SiC パワーデバイス用 SIT」SiC パワーデバイス最新技術、サイエンス&テク
ノロジー、第 16 章
(8) 土田:
「4H-SiC エピ成長における拡張欠陥の挙動」SiC パワーデバイス最新技術、サイ
エンス&テクノロジー、第 9 章
(9) 岡他:
「SiC パワーデバイスへ対応する製造装置について」MATERIAL STAGE Vol.9、No.6、
2009
- 126 -
Ⅳ.SiC パワー半導体に関する先進事例調査
1.先進事例調査の目的
先進事例調査の目的は、以下のとおりである。
(目 的)
先進的な取組みを行う SiC パワー半導体デバイス・モジュール製造事業者の事業戦略等
を聴取することにより、中国地域関連事業者の参入可能性の把握の参考とする。
2.先進事例調査の実施及び調査結果の整理
(1)実施内容
項
目
日
時
内
容
2012 年 10 月 3 日(月) 13:00~16:00
三菱電機株式会社 パワーデバイス製作所 福岡工場
視察先
(三菱電機ホームページより)
三菱電機株式会社
半導体・デバイス事業本部 役員技監
マジュムダール ゴーラブ 様
パワーデバイス製作所
眞田
所長
〃
対応者
大森 達夫
様
武井
様
英樹
事業推進部 企画課兼総合営業課 担当課長
朝倉 賢治
訪問者
様
副所長 兼 SiC 事業化推進センター長
中国支社 事業推進部長
〃
享
様
吉川副委員長ほか委員・オブザーバー13 名および事務局 6 名 計 20 名
(2)調査結果の整理
項 目
内
容
・組織は事業本部制を採っており、パワー半導体の関連の部署は「半導体・
①パワーデ
バイス製作
所について
(続)
デバイス事業本部」となる。実際の製造はその下部組織の「パワーデバイ
ス製作所」であり熊本工場(熊本県合志市:ウエハプロセス~裏面処理~
ウエハテスト・チップテスト)と福岡工場(組立・出荷テスト)で構成さ
れる。
・熊本工場の D 棟は 2003 年の事業再編で、一旦ルネサスのメモリ工場とな
ったが、08 年に三菱電機が買戻したもので、現在パワーデバイスの 8 イ
-127-
項 目
内
容
ンチ化の拠点となっている。
・その他の事業本部としては「社会システム事業本部(電車等)」
、「電力・
産業システム事業本部(電力変換等)」、
「ビルシステム事業本部(エレベ
ータ、エスカレータ等)」
、
「電子システム事業本部」
、「通信システム事業
本部」
、
「リビング・デジタルメディア事業本部(エアコン、洗濯機等)」、
「FA システム事業本部(産業機器等)」、
「自動車機器事業本部(HEV 等)」
が存在し、パワーデバイスの社内における仕向先として存在している。
・パワーデバイス自体の社内向けは 200 億円弱の規模ではあるが、それを利
用してのパワーエレクトロニクス機器・システムとしては 1 兆円に及ぶ。
三菱電機の骨格を担うキーデバイスという位置付けである。
・工場内の水路には絶滅危惧種のメダカもいる。水路には雨水と工場廃水が
流れ込むが、適切な排水処理により、メダカも生息できる清浄度を維持し
ている。このメダカは「三菱メダカ」と呼ばれ、市内の動物園や学校の種
メダカとして地元の人に可愛がってもらうとともに環境にも優しい工場
運営で自然との共存も心がけている。
・「パワーデバイス製作所」は三菱電機長崎製作所の電機関係(船のモータ
等)の分工場として福岡工場が設立された。当初は炭鉱で使うモータを作
っていた。1970 年代から半導体の後工程を北伊丹製作所から福岡へ移管
し、1989 年には北伊丹から完全移管。
(続)
①パワーデ ・福岡工場はパワー半導体におけるマザー工場の位置付け。ここで設計・開
発し、試作ラインである程度作ると、別の工場や海外へ移管する。
バイス製作
所について ・福岡工場ではエンジニアリングを中心とした製品開発、品質管理を行って
いる。実際の組立等の製造は協力会社(福岡市、兵庫県豊岡市)を使って
多くは行われている。海外の方では「消費地」を意識して中国にモジュー
ル製造工場を設けている。組立(後工程)に関しては生産効率の維持を前
提とし、
「消費地」において製造するというのが基本的な原則である。
三菱電機 パワーデバイス製作所 福岡工場における説明風景
-128-
項
目
内
容
・中国地域の協力会社では IT セミコン島根工場(島根県益田市)において、
パワーモジュールの主要部品である樹脂成形ケースや端子等の製造、金型
の設計、製作を行っている。
・三菱電機ではディスクリートでの出荷は行わず、モジュールもしくは IPM
で出荷しているのが特徴である。単なる素子ではなく付加価値を付けるの
が基本的な戦略。ちなみに IPM のコンセプトを作ったのは(本委員会の委
員でもある)役員技監のマジュムダール・ゴーラブ氏である。
・パワーモジュールのシェアでは三菱電機がトップ、次いでインフィニ
オン(独)
、セミクロン(独)という調査機関の結果がある。昨今の為
替変動でユーロが 30%下落するなど厳しい状況にある。来年度以降、
長期的には伸びるとは考えている。
・中国市場でも多くを占める鉄道向けが高速事故以来止まっていること
や、一次的ではあるが、補助金のインセンティブが中断し、エアコン
のインバータ需要も伸び悩むなどのマイナス要因がある。
・総合特別区域法に基づき福岡県、北九州市、福岡市が「グリーンアジ
ア国際戦略総合特区」の指定を受けているが、同社は特区事業の一つ
である「環境配慮型製品の開発・生産拠点の実現」の趣旨に合致する
ことから、指定法人の指定を受けた。パワーデバイス製作所において
は、制度を活用し、SiC を始め、パワー半導体の設計技術棟を新たに建
設等し、研究開発を加速化するとともに、それに伴う設備投資におけ
る税制優遇措置などを受ける予定となっている。
・現在の主力製品である IGBT については、トレードオフの関係にある「導
通損失」と「スイッチング損失」を改善してきている。第 3 世代まで
はプレーナ型、第 4 世代からトレンチ型、5 世代から CSTBT 化、構造最
適化等を図り現在第 7 世代(開発中)に至っている。FOM(Figure of
Merit)指標でも年々改善してきている。
・Si-IGBT も改善がみられるが、Si リミットとの兼ね合いもあり、高温
②SiC パワ
動作、低オン抵抗・高耐圧、高速動作、高熱伝導率という特性があり
ー半導体
SiC が注目を浴び、
「省エネパワエレシステム」、
「高周波制御システム」
、
について
「耐高温動作パワエレシステム」への用途が見込まれている。
・SiC に関しては社内外との関係を含めコーポレート全体を見る横断プロ
ジェクトとして「SiC 事業化推進センター」が本年度設立されており、
大森副所長がセンター長を兼任している。
・社内の研究は 1990 年頃より伊丹の中央研究所の材料部隊が研究開始。
京都大学 松波教授が提唱した近畿地区の国プロ 29 においては Si 基板
上での SiC エピ成長等に取組んだ。
(続)
①パワー
デバイス
製作所に
ついて
29
正式名称は地域重要技術研究開発制度「エネルギー使用合理化燃焼等制御システム技術開発」。
1994-2000 年に行われた我が国で SiC およびそのデバイス開発に、初めて国費が投じられたプロジェク
ト。三菱電機は SiC デバイスに関する技術開発において大口径エピ成長技術として Si 基板上に 3C-SiC
ヘテロエピタキシャル成長をスタートに取組んだ。
期間後半には SiC 基板上への 4H、6H-SiC ホモエピタキシャル成長の取組みも行われた。
-129-
項
目
内
容
・それ以降研究を進め、2004 年頃に 10A クラスの MOSFET を作り、それを
用いて 3.7kW のインバータを作ったところ、電力損失が 50%減ってい
た(物性上分ってはいたが実際に計測したのは初めて)。
・更に 2009 年頃に 11kW のインバータを作製したところ電力損失 70%減、
体積が約 1/4 となった。また、同年にはウエハも 4 インチが出てきた
ので、それに対応したラインを福岡地区(パワーデバイス製作所内)
に構築した。2010 年には世界初のエアコンの霧ケ峰の上級機種におい
て DIPIPM の中に SiC-SBD を搭載し、省エネ大賞を受賞した。2011 年に
は地下鉄銀座線の電車に 1.7kW のハイブリッド
(「SiC-SBD」+「Si-IGBT」
)
のインバータを搭載している。
・SiC パワー半導体の普及、顧客のニーズの把握といった観点から「SiC
パワー半導体モジュール」サンプル提供を 7 月から開始している。家電
製品にはハイブリッドとフルの DIPIPM/DIPPFC、産業機器にはハイブリ
ッドの IPM、フルの SiC モジュールを、有償で提供している(図表Ⅳ.1)
。
(続き) ・高温対応において SiC 自体は物性上問題ないところであるが、周辺部
材(はんだ、樹脂等)の対応に関して問題が存在している。最終アプ
②SiC パワ
ー半導体
リケーションの仕様等に影響を及ぼさないブレイクスルーが出れば普
について
及の可能性があると考える。
・今回のサンプル出荷も Si モジュールの Si を SiC に置き換えただけで
同じパッケージにして、アプリから Si モジュールをそのまま取り換え
ができるようにしている。仕様は 1 段上のもの(例:50A→100A のよう
に)としている。
・ただし、SiC は Si の代替としてよりも新しいマーケット(分野)を開
拓することを期待している。
・世間では、全国の電力変換器を全て SiC に変えると発電所何基分の電力
が省エネ可能とされているが、Si がすべて SiC に置き換わるとは考えて
いない。デバイスの性能というよりアプリの性能がどう良くなるか、SiC
が必要なアプリが出てくるかが重要。SiC に適したアプリを検討され、
当社の SiC モジュールを使って、研究や試作をしてもらいたい。そこで
いろんなデータが得られれば開発の参考となる。
・GaN についての研究は、福岡工場ではなく、兵庫県伊丹市の高周波光デ
バイス製作所で行っている。平面導通なので電力が取れないからパワ
ーデバイスより高周波のデバイスとして考えている。
③Si パワ
ー半導体
デバイス
製造ライ
ン見学
・見学したラインは、エアコン用パワーモジュールの後工程のラインで
ある。前工程は熊本工場でウエハ上にデバイスを作りこんで福岡に輸
送される。それをダイシングし、パッケージに並べるところからモジ
ュール完成までのラインを見学した。
・クリーンルームは広く、装置で埋まっていた。月 100 万個の生産能力
を持つ。次工程へのセットは人力で行っている(全て自動にすると、1
か所でトラブルと全体が止まるので効率が悪いとのこと)。
-130-
図表Ⅳ.1 「パワー半導体モジュール」サンプル提供のお知らせ
出典:三菱電機 報道資料(2012 年 7 月 9 日)
-131-
Ⅴ.中国地域におけるSiC半導体に関連する技術シーズと利活用に関する状況調査
(ヒアリング、アンケート調査)
1.中国地域の学識経験者へのヒアリング調査
(1)ヒアリング調査の目的
中国地域においては半導体に関連して Si ベースではあるが、デバイスメーカ、半導体
製造装置メーカ等の関係企業が 200 社程度存在している(図表Ⅴ. 1 参照)。
また、今後 SiC パワー半導体の利用が期待される「自動車〔マツダ(広島市、防府市)、
三菱自動車(倉敷市)
〕
」
「鉄道〔日立製作所(下松市)〕」
「産業プラント〔三菱重工業(広
島、下関市)
、石川島播磨重工業(呉市)〕」等の各分野のメーカが立地するとともに、地
元企業として国内・世界シェアの高い企業であるシンコー(船用ポンプ・タービン)
、サ
タケ(精米機)
、長府製作所(ボイラー等)が存在している。
さらに、SiC パワー半導体の有力な用途の一つでもある新エネルギー開発に取組んで
いる企業も約 20 社ある(図表Ⅴ. 2)
。
以上のような状況を踏まえ、全国・中国地域の次世代パワー半導体の関係者に対し、
研究開発状況、技術トレンドおよび市場動向 、次世代パワー半導体の産業振興策につい
てヒアリングを実施した。
-132-
図表Ⅴ.2 中国地域の新エネルギー関係企業数
図表Ⅴ.1 中国地域の半導体製造関係企業数
図表Ⅴ.3
中国5県(合計企業数:22社)
中国地域の新エネルギー関係の企業数
中国5県(合計企業数:175社)
15
70
63
63
60
( 50
企 40
業
数 30
20
)
10
10
39
)
10
0
1. 半導体
デバイスメーカー
2. 半導体用
製造装置
および材料・
素材メーカー
9
(
企
業
数
3. 半導体
および同製造
装置・材料・
素材等
の商社
4. その他
半導体
関連企業
8
5
5
0
風力
小水力
蓄電池
鳥取県(合計企業数:10社)
70
60
島根県(合計企業数:10社)
( 50
企 40
業
数 30
20
)
10
70
60
( 50
企 40
業
数 30
20
)
10
0
4
0
6
4
1. 半導体
デバイスメーカー
2. 半導体用
製造装置
および材料・
素材メーカー
0
3. 半導体
および同製造
装置・材料・
素材等
の商社
3
1. 半導体
デバイスメーカー
松江市
松江市
0
4. その他
半導体
関連企業
2
2. 半導体用
製造装置
および材料・
素材メーカー
1
3. 半導体
および同製造
装置・材料・
素材等
の商社
鳥取市
鳥取市
4. その他
半導体
関連企業
鳥取県
鳥取県
島根県
島根県
兵庫県
兵庫県
岡山県
岡山県
岡山市
岡山市
広島県
広島県
岡山県(合計企業数:49社)
広島市
広島市
70
高松市
高松市
60
( 50
企 40
業
数 30
20
)
10
山口市
山口市
山口県
山口県
山口県(合計企業数:28社)
0
70
松山市
松山市
愛媛県
愛媛県
60
( 50
企 40
業
数 30
20
)
10
0
香川県
香川県
20
19
徳島県
徳島県
1. 半導体
デバイスメーカー
2. 半導体用
製造装置
および材料・
素材メーカー
広島県(合計企業数:78社)
10
15
2
1. 半導体
デバイスメーカー
2. 半導体用
製造装置
および材料・
素材メーカー
3. 半導体
および同製造
装置・材料・
素材等
の商社
1
4. その他
半導体
関連企業
70
60
( 50
企 40
業
数 30
20
)
10
0
24
30
21
3
1. 半導体
デバイスメーカー
-133-
2. 半導体用
製造装置
および材料・
素材メーカー
3. 半導体
および同製造
装置・材料・
素材等
の商社
4. その他
半導体
関連企業
徳島市
徳島市
5
3. 半導体
および同製造
装置・材料・
素材等
の商社
5
4. その他
半導体
関連企業
(2)ヒアリング調査の実施概要
a.ヒアリング調査対象の学識経験者
ヒアリングは、ウエハ・デバイス関係の研究者と、回路設計・アプリケーション関
係としてユーザ側の研究者の双方にヒアリングを行った。
電力中央研究所の土田上席研究員については中国地域以外の研究者であるが、ウエ
ハ関係とユーザ側の電力関係分野の活用の両面から、ヒアリングを実施した。
図表Ⅴ.3 ヒアリング調査対象の学識経験者
部門
ウエハ
・
デバイ
ス
関係
回路設
計
・
アプリ
ケーシ
ョン
機関名
①
岡山大学
②
広島大学
③
広島工業大学
④
電力中央研究所
⑤
鳥取環境大学
⑥
島根大学
⑦
松江工業高等専
門学校
研究者
工学部機械工学科
岡本 康寛
助教
大学院 先端物質科学研究科
吉川 公麿
教授
黒木 伸一郎 准教授
工学部 電子制御工学科
田中 武
教授
材料科学研究所
土田 秀一
上席研究員
環境情報学部
鷲見 育亮
教授
⑨
中国職業能力開
発大学校
総合理工学部
山本 真義
准教授
電気工学科
渡邉 修治
准教授
大学院自然科学研究科 産業
創成工学専攻
塚田 啓二
教授
生産情報システム技術科
平島 隆洋
教授
⑩
津山工業高等専
門学校
電気電子工学科
田辺 茂
教授
⑪
津山工業高等専
門学校
電気電子工学科
長井 聡
准教授
⑫
山口大学
大学院理工学研究科 情報・デ
ザイン工学系学域
田中 俊彦
教授
⑧ 岡山大学
-134-
研究内容
レーザ加工・放電加工
の研究
SiC-SBD の研究ほか
スマートメータ、充電
器等の製作ほか
SiC のエピ成長、結晶
欠陥の研究ほか
デジタル回路・アナロ
グ回路、デジタル信号
処理
SiC の EV インバータ
の研究ほか
スイッチング損失低
減回路の研究
水素センサ、非破壊検
査の研究
高周波電源用の電力
分配器等の設計、製作
電力系統へのパワー
半導体の応用に関す
る研究
パワーエレクトロニ
クス(SiC-SBD 等のリ
カバリー損失等の特
性評価)
電力変換システムの
研究ほか
b.ヒアリング調査対象の企業
企業については、デバイスメーカと製造装置メーカにヒアリングを行った。
ロームについては、中国地域に工場を有するため(ローム・ワコー(岡山県笠岡市))
、
ヒアリングの対象とした。
図表Ⅴ.
部門
4 ヒアリング調査対象の企業
メーカ名
フェニテックセミコ
⑬ ンダクター株式会社
(岡山県井原市)
ウエハ
・
デバイ
ス
・
モジュ
ール
メーカ
⑭
新電元工業
株式会社
(広島県庄原市)
⑮
株式会社
山口光半導体研究所
(山口県宇部市)
⑯
製造
装置
メーカ
半導体
ユーザ
ローム株式会社
(京都市)
⑰
安田工業株式会社
(岡山県浅口郡
里庄町)
⑱
ローツェ株式会社
(広島県福山市)
⑲
長州産業株式会社
(山口県山陽小野田市)
⑳
株式会社シンコー
(広島市)
応対者
谷 英昭
代表取締役副社長
石井 弘幸 生産本部技術部部長
伊藤 修三
生産本部 技術部 京都 DC
電子デバイス事業本部 パワーモジ
ュール部 広島分室
大沢 裕 事業担当部長 兼 広島
分室長代理
杉浦 文彦 代表取締役
事業内容
広島大学と共同
で SiC-SBD を開発
中
カスタムパワー
モジュール製造
GaN サファイア加
工基板等の製造
西日本営業第 1 ユニット産機 SiC 営
業G
中村 孝司 グループリーダ
浦宗 麻純子 担当
市場調査部 市場調査二 G
奥村 健治 課長
ディスクリート生産本部 SiC パワー
デバイス製造部
伊野 和秀 副部長
SiC-SBD、
SiC-MOSFET ほか
SiC デバイスの国
内先進企業
田辺 洋始 取締役
製造本部本部長 兼
産機部部長
鳥越 弘啓 産機部産機管理課
課長
工作機械・金型メ
ーカ
崎谷 文雄 代表取締役社長
櫻井 俊男 監査役
ウエハ搬送装置
メーカ、SiC 半導
体用アニール装
置の開発
岡本 要
代表取締役社長
田尾 鋭司 技術担当課長
半導体製造装置、
太陽光発電製造
メーカ(製造側、
ユーザ側両メー
カ)
総務本部 総務部 総務課
迫 国臣
課長
-135-
船舶用のポン
プ・タービンの製
造
c.ヒアリング内容
対象の学識経験者は半導体に関連した研究者であるとともに、地域企業との連携等
を通じて中国地域の産業動向の知見も有していると考えられることから、ヒアリング
は、
「研究内容」に加え、前章までの国内の研究開発動向と対比する意味で中国地域の
「次世代パワー半導体(SiC、GaN等)に関する技術動向および産業動向」
、「次世代パ
ワー半導体による中国地域の産業振興策」の項目について実施した。
企業についても同様の視点でヒアリングを実施した。
図表Ⅴ. 5 ヒアリング内容
ヒアリング項目
ヒアリング内容
(1)パワー半導体、および次世代パワー半導体(SiC、GaN 等)に関す
1.現在の研究につ
いて
る研究状況について
(2)上記研究にあたり、他研究機関やメーカ等との連携について
(3)今後の研究の計画
2. 次世代パワー
(1)次世代パワー半導体の技術的な課題
半導体(SiC、GaN
(2)次世代パワー半導体の産業化への課題(製造側、アプリケーション
等)に関する技
側等)
術動向および産
業動向について (3)次世代パワー半導体の産業化事例
(1)次世代パワー半導体の適用が期待される製品について
3. 次世代パワー
(2)次世代パワー半導体に関わる中国地域企業の有力な技術について
半導体による中 (3)ユーザニーズに適したデバイス開発のための大学等研究機関、製造
国地域の産業振
メーカの役割
興策について
(4)次世代パワー半導体開発の先進企業、研究機関との連携のありかた
(5)産業振興のための行政の役割、施策について
-136-
(3)ヒアリング結果
a.学識経験者
(a)ウエハ・デバイス関係
①岡山大学
ヒアリング日時
工学部機械工学科 岡本 康寛 助教
2012 年 10 月 19 日
ヒ ア リ ン グ 結 果
1.現在の研究
について
(1)パワー半導体、次世代パワー半導体(SiC、GaN 等)に関する研究状況
 マルチワイヤ放電加工によるウエハのスライシングを研究。従来のダイヤ
モンドの砥粒によるメカニカルスライス(マルチワイヤソー)は、Si で
は問題ないが、硬い SiC では均一なスライス・反り返り等の課題が再発し
つつある。
 放電スライシングはピアノ線にμS の時間オーダのパルスで放電し、局所
熱でスライスする。SiC はウエハが高価なので、均一なスライスとともに、
薄くスライスすることが必要。メカニカルスライスは砥粒の管理にノウハ
ウが必要。放電スライスは電気条件の選定で管理できることから装置が運
用しやすくなる利点がある。
 放電スライシングの研究自体は退官された宇野義幸先生(現中国職業能力
開発大学校 校長)時代から十年来行ってきたものである。SiC の比抵抗
は、Si の経験を考えると放電加工に適した物性と考えている。
 スライシング装置は大規模なものではあるが研究室にある。大学で実機相
当サイズの装置を有するのは数少なく、大きな強みであると考えている。
金沢工業大学、中部大学でもスライシングの研究が行われている。大手電
機メーカも研究しており、何度か研究について議論をかわした。
 レーザ加工の分野ではサファイアのダイシング等を研究している。次のス
テップでは SiC のダイシング等の研究も行いたいと考えている。
(2)上記研究にあたり、他研究機関やメーカ等との連携
 マルチワイヤ放電スライスは、
「放電」とスライスする「ワイヤの走行(回
転速度等)
」の技術を組み合わせたところに意義、ノウハウがある。装置
開発をトーヨーエイテックと行っている。特許もトーヨーエイテックと連
名で取得した案件がある。
(3)今後の研究の計画
 更なるマルチスライスの安定化・スループットの向上を図りたい。
 本技術を利用したアプリケーション企業と共同研究したいと考えている。
(1)次世代パワー半導体の技術的な課題
 スライスの研究するにあたりインゴットの入手が困難。インゴットは国
内、海外メーカから入手している。いい材料が入手できないと研究が進ま
2.次世代パワ
ない。
ー半導体
 スライスの研究では問題はないが、結晶の品質もまだ悪い。Si と同一レ
(SiC、GaN 等)
ベルの高品位なウエハは数が少なく高価である。
に関する技術 (2)次世代パワー半導体の産業化への課題(製造側、アプリケーション側等)
動向および産  現状は入口である材料分野を Cree 社に抑えられ、アプリケーション開発
業動向につい
のボトルネックになっているとの印象を持っている。製造装置の研究開発
て
を進めても、上流の“材料”、下流の“アプリ”が開発されないと繋がら
ない。上流、下流の研究、早期実用化が課題である。市場は“アプリ”で
評価。“アプリ”に視点を置いた研究が必要。
 マルチワイヤ放電スライスの研究では、放電とワイヤ走行の双方の技術を
有するメーカ間での連携が必要。
-137-
3.次世代パワ
ー半導体によ
る中国地域の
産業振興策に
ついて
(1)次世代パワー半導体の適用が期待される製品
 大電流を必要とする、FA、自動車に応用できる。
(2)次世代パワー半導体に関わる中国地域企業の有力な技術について
 スライスでは共同研究している、トーヨーエイテックに期待したい。研
削・研磨では岡山に新興製作所の工場がある。スライスに用いられている
ワイヤ材を製造しているメーカとしてはジャパンファインスチール(山口
県山陽小野田市)
。
 “半導体岡山ネット“のメンバーにも、技術を有する研究者、企業があ
ると思う。同様の組織に、岡山県精密生産技術研究会、電気加工懇話会、
精密工学会中国四国支部がある。関連技術を有する企業があるかもしれ
ない。
(3)次世代パワー半導体開発の先進企業、研究機関との連携のありかた
 大学では装置を作れない。海外では研究機関で装置を作ろうとしている。
基礎研究から装置開発の実用化につながる研究のため、メーカと同一視点
での研究が必要と考える。トーヨーエイテックとは良好な関係を構築でき
ている。
 メーカが開発した装置は、機密上情報が公開されない。大学で装置を作れ
るようになれば、メーカも研究情報を得やすくなり、メーカが連携した開
発が進む。
(4)産業振興のための行政の役割、施策
 企業の一社での研究開発では限界があると感じている。オープンイノベー
ションで、一つの分野でも競合企業が参加するような仕組みを作らないと
いけない。また。量産化に向け、研究者だけでなく、企業の技術職員を巻
き込んだ研究(実証機の製造等)を行わなければ事業化は困難という印象
を持っている。
 そのような研究が進むよう、行政には、研究機関・メーカが一体となって
研究開発する環境を構築してもらいたい。
-138-
②広島大学 大学院 先端物質科学研究科
ヒアリング日時
吉川 公麿 教授、黒木 伸一郎
准教授
2012 年 10 月 2 日
ヒ ア リ ン グ 結 果
1.現在の研究
について
(1)パワー半導体、次世代パワー半導体(SiC、GaN 等)に関する研究状況
 広島大学は SiC デバイスの量産化をテーマに試作品を 2~3 ヶ月に 1 度の
ペースで製作し、その間問題抽出を行い、研究を進めている。
 耐圧のばらつきの課題は明確になってきている。計測技術、高耐圧の測定
技術も確立してきている。
 SiC デバイスの取組みは比較的新しく 3 年程度前からである。フェニテッ
クセミコンダクターから共同研究の依頼があり、それに対応したのが始ま
り。現状デバイス試作は、研究員 4 名、学生 1 名で行っている。
 基板は Cree 社から 4 インチの基板を仕入れ、カットして使用している。
エピは新日鉄とノステルに委託しており、2 社間で仕上り差がみられる。
 イオン注入は外注している(P 型領域のアルミが注入できないため)。それ
以外は大学での対応が可能。
 GaN 半導体に関しては、国内に GaN を研究している組織が多数あることも
あり研究対象としていない。
(2)上記研究にあたり、他研究機関やメーカ等との連携
 フェニテック社と共同で研究しており、同社技術職員 3 名が広島大学で研究
をしている。大学で共同研究し、量産化の目処がたてばメーカで量産化の
体制にあたり、国内でも数少ない量産化メーカを目指す研究体制である。
 広島大学はローツェ、その他 1 社とも研究の連携がある。
(3)今後の研究の計画
 SBD の基本はできているのだが、耐圧のばらつきが大きいため、そのばらつ
きをなくすことに尽力している。年度内に「この処理を施せば、ある程度
にばらつきが抑えられる」という段階まで研究を進めたいと考えている。
 耐圧は SiC のメリットが出てくる 600V を超えるものを作りたい。最終的
には 1kV が目標。
 SiC-MOSFET の研究も来年より開始の予定。MOS 界面の制御、物性評価、高
密度の MOS の開発を主テーマとする予定である。
 研究中の SiC-SBD はフェニテック社で量産化される予定であり、MOSFET も
成果がでれば量産化できるメーカと研究段階から連携したいと考えてい
る。
(1)次世代パワー半導体の技術的な課題
 一番の課題は基板の欠陥低減による耐圧のばらつきであり、このばらつき
により歩留まりが小さくなっている。
2.次世代パワ
ー半導体(SiC、  SiC-SBD デバイス本体は問題ないが、合金化した際に、カーボンがあると
GaN 等)に関する
問題が生じるため、信頼できるオーミック 30 をできるかが課題である。
技術動向および  モジュール化した際、電極部分、半田(ボンディング)等の金属の耐高温特
産業動向につい
性が課題である。SiC が 200℃で動作温度が制限されているのは、ボンデ
て
ィング等の金属部分が解けやすいためである。
 SiC 半導体は 1,500~1,800℃の高温で製造されるが、半導体デバイスの多
くは高温での使用実績がない。
30
接触(ohmic contact:シリコンと金属との間に電気的な壁が存在せず、シリコンの抵抗に比べて十分無
視できるほどの小さな接触抵抗である状態をいう)
-139-
(続き)
2.次世代パワー
半導体(SiC、GaN
等)に関する技術
動向および産業動
向について
3.次世代パワ
ー半導体によ
る中国地域の
産業振興策に
ついて
 周辺部品による SiC 半導体の動作温度領域の制限問題は、ある段階でブレ
イクスルーが必要である。
 GaN 半導体はデバイス温度が低いため、劣悪環境での動作が非常に厳しい。
(2)次世代パワー半導体の産業化への課題(製造側、アプリケーション側等)
 歩留まりを高くすると同時に信頼性も得られるかという課題がある。
 Si 半導体に対してどうメリットが出せるのかという課題もある。
(1)次世代パワー半導体の適用が期待される製品
 三菱、ロームが SiC デバイスを開発しているので、中国地域の企業がデバ
イスを製作しても大手デバイスメーカには勝てない。パワーデバイス自体
は基本的に儲からない分野。電源周りのニッチ製品が狙い目かと思う。
 Si の代替として SiC 製品でなく、超高耐圧、超高温等の Si が使用できな
い分野での研究開発を進めたほうが、これから開発を進める中国地域にと
っていい結果を生み出すのではないだろうか。
 オーダーメイドで SiC モジュールを製作するというビジネスモデルがあっ
てもいいのではないのか。ある意味大手メーカのやらないところを「手作
り」でするということもありうる。
(2)次世代パワー半導体に関わる中国地域企業の有力な技術について
 医療分野は医者(検査ではなく治療に関する)にメリットがなければ、高額機
材への投資の可能性は低い。開発スパンも 2~3 年でありスピードも必要。
 温度や耐圧の世界では SiC の物性が非常に強いため、耐高温対応のモジュ
ールで需要があると考えられる。
 SiC 半導体はアニール等高温処理を必要とするので、高温処理技術をおさ
えたメーカが業界のトップを走ると思われる。
 SiC 半導体の後工程では、非鉄金属系の会社と(モジュールの)組立会社を
見つけることが必要となる。
 中小の下請け企業は、自社の保有している技術の価値に気づいていないこ
とが多いと思われる。技術のある中小企業の発掘が必要である。
(3) ユーザニーズに適したデバイス開発のための大学等研究機関、製造メー
カの役割
 SiC デバイスの一貫製作、信頼性低下のメカニズム解明、歩留まり低下の
原因を解明し、それらの課題を解決して、企業に提供することで歩留まり
を高くすることが大学等研究機関の役割であるといえる。
(4)次世代パワー半導体開発の先進企業、研究機関との連携のありかた
 デバイスの試作を通して、広島大学は、メーカからの技術者派遣により、
同一視点で研究することで良好な連携が取れていると思う。他大学では、
大学とメーカの間で対等な関係を築けていないところがあるようである。
 今後の研究でもフォロアーとしての立場のメリットを活かし、効果的な研
究が出来ればいいと思っている。
(5)産業振興のための行政の役割、施策
 基礎的な知識や経験が豊富にある先生を迎え、広島の企業を対象に集め
て、講演をしてもよいのではないだろうか。
 地域に対し半導体専門実践講座を開催しているが、十分広く知れ渡ってい
ない。ただし、こういう活動も半導体産業の裾野を広げるという意味では
重要と思っている。
 「広島大学 ナノテクノロジープラットフォームプロジェクト」というプ
ロジェクトにおいて年間 30 件ほど、広島大学の施設を一般のユーザが無
料で利用(今後、有料化予定)している。利用したユーザは Web で利用履歴
が掲載され、有料で利用すれば Web 上に利用履歴が公開されない。
-140-
③広島工業大学 工学部 電子制御工学科
ヒアリング日時
田中 武
教授
2012 年 9 月 4 日
ヒ ア リ ン グ 結 果
(1)パワー半導体、次世代パワー半導体(SiC、GaN 等)に関する研究状況
 SiC デバイス等を使った回路製作は行っていないが、世の中に広まってコス
トが十分下がったときのアプリケーションについて様々な研究を行ってい
る。
1.現在の研究  SiC についてはシミュレーションにより学生に勉強をさせている。
について
 スマートメータ、LED 表示器、LED 照明、充電器等の製作を行っている。
(2)上記研究にあたり、他研究機関やメーカ等との連携
 出身の広島大学や北九州学研都市との連携がある。個人的には研究会等多
くの会合に参加している。
 医療分野にも注目しており、埼玉医科大学との連携も進めている。
(1)次世代パワー半導体の技術的な課題
 SiC の研究は先端研究者が研究開発し、最終的には生産業者が SiC デバイス
を作るようになる。そうでなければ機械にノウハウが組み込まれるように
なる。
 GaN は 40A の許容電流まで利用できるようになる見込みがあり、最近、東京
電力がはじめた 30A プランといったようなものに応用できるのではないか。
(2)次世代パワー半導体の産業化への課題(製造側、アプリケーション側等)
 SiC デバイスの新規工場にかかる総費用は 1,000 億円、中古でも 300~400
億円であるが、過去の LSI 工場の実績から考えれば劇的に下がるのは明ら
かと考えている。
 海外メーカ(アジア圏)の企業の動き次第で一気に低価格競争時代に入る。
その前に、稼ぐタイミングを考えておく必要がある。
 SiC デバイスは、
「誰が作っても高精度の製品を作ることが出来るようにし
ます」という方針も大事であるが、それだけでは機械が海外に流出した時
2.次世代パワ
点で技術勝負から価格競争に産業がシフトするため、日本は競争力を維持
ー半導体
できない恐れがある。
(SiC、GaN 等)
に関する技術  LSI の開発経験から言えば、マーケットは性能の細かい違いより、値段を重
視することが分かっている。多くの市場では 80%の性能を満たせば、後は
動向および産
コストで決まる。
業動向につい
て
 地域の研究者は、ニッチな分野でしか生きていけない。
 日本は SiC デバイスを性能の限界まで研究開発をして、アプリ等の開発に
あわせたチューニングが必要になるほどに研究を進めるのも手段の一つで
ある。
 近年は技術やノウハウを持った 40 代の技術者がどんどん流出する事態にな
っている。
(3)次世代パワー半導体の産業化事例
 SiC は、ロングテイルに売り、その研究者をサポートするという体制も良い
のではないだろうか。
 SiC デバイスは作る側に回っても勝つ確率は非常に低い。そこで早い段階で
アプリケーションの開発に力を入れたほうが賢明である。
 日本が SiC 半導体で生き残るには、すり合わせが多く、業界では「うっと
うしい」と言われるところ(全自動で出来ないようなところ)に力を入れた
ほうが良い。
 日本はいつも、新技術等の情報は新聞などによってヒントを世界に発信し
-141-
ている。
 活性化についての議論も非常に大切であるが、業界を長生きさせる議論も
する必要がある。
3.次世代パワ
ー半導体によ
る中国地域の
産業振興策に
ついて
(1)次世代パワー半導体の適用が期待される製品
 スマートグリッドが普及することから、個々の機器のスイッチングが必要
となってくる。これらの装置に多量に入ってくる可能性がある。
(2)次世代パワー半導体に関わる中国地域企業の有力な技術について
 フェニテックセミコンダクターなどのベースとなる資源を持っている企業
は 20 億円あれば SiC デバイス製造に参入できる。
 中国地域内で自己完結する振興策としては、フェニテック社に SiC デバイ
スを作ってもらい、それを中国地域の研究者に無料(もしくは無料に近い
額)で配布して、技術的にどういうニーズがあるかをマーケティングしたほ
うが良い。
(3)ユーザニーズに適したデバイス開発のための大学等研究機関、製造メーカ
の役割
 SiC 関連特許を取得後は、日本国民である研究者ならば無料で自由に技術を
使うことが出来るような企画・取組みがほしい。
 中国地域で SiC の産業活性化を図るならば、地域にモノを流通させる必要
がある。
 半導体産業の活性化には、人材育成も欠かせない要素であり、人材育成は
プロセスの要点を経験しただけでなく、酸化に 2 時間かかるのをずっと見
ているといった全体を通した体験が大事である。
(4)次世代パワー半導体開発の先進企業、研究機関との連携のありかた
 中国地域で SiC の産業活性化を図りたいならば、本調査業務の終了後に中
国地域はどうするのか、どこかから資金を調達して活性化の促進につなげ
られるのかを検討する必要がある。
 末端で SiC の研究をしている人たちが勝てるように企画をしてほしい。
 SiC のチップをまだ実際に見たことがない。それほど、SiC は地域には流通
していない。
 中国地域における SiC 半導体のロードマップを作成し、それに合わせた活
動を行うことが考えられる。本格的な普及の前に中国地域の大学に SiC デ
バイスを 100 個配布して研究を進めてもらうとか、回路設計を行ってもら
う等行い、それを学校間のコンペ形式で行うなどすれば、地域で盛り上が
るのではないか。
 ロボカップジュニアを開催する予定で、そこに SiC を利用することでロボ
の小型化に貢献できると考えている。
 人材育成という面において、最初から SiC ではなく、Si のパワーMOSFET を
小学校や中学校に配布して、教育の中に組み込んでもらい、大会を開いて
賞を用意するというのもいいのではないだろうか。
 産業がピンチになったときにだけ国からのサポートがあるのではなく、そ
れが継続してサポートが行われれば将来的に優秀な人材が豊富な状況にな
ると考えられる。
 広島大学あたりに寄付講座を設け、次世代パワー半導体の応用研究にてこ
入れしてはどうだろうか。
 パワー半導体自体ではないがスマートグリッドの普及に合せ、無線技術、
セキュリティ技術もシナジーが効く分野であると考える。
 液晶や太陽光発電分野での現状を見ると、シリコンサイクルやプロダクト
ライフサイクルの影響を受けないベース需要部分に対応した緩やかな増加
-142-
(続き)
3.次世代パワ
ー半導体によ
る中国地域の
産業振興策に
ついて
曲線を描く設備投資及び人材育成を行う戦略もありうると思う。
(5)産業振興のための行政の役割、施策
 中国地域は、デンマークと同程度の地域力がある。ポテンシャルはあるが、
まとまりに欠ける面がある。広島であれば、平和教育に加え電子教育を積
極的に行うことを提案したい。そのような裾野の広がりを進めることが長
期的に効いてくる。
 地域の半導体製造メーカや研究教育機関に最先端研究機関で役割を終えた
1~2 世代前の SiC 半導体製造装置を配り、製作された SiC デバイスを各大
学に 1 万個サンプルを配布するといったことを行えば、本当の意味で「中
国地域」の活性化につながる。
 島根県飯南町でスマートグリッド関係の取組みを行っている。島根県から
は企業立地アドバイザーという肩書きをもらっている。このように自治体
とタイアップすると動きやすいので活用すべき。
 SiC 半導体の普及には全般的な企画作りが必要である。
 台湾は国家プロジェクトとして SiC 半導体の研究開発に取組んでいる。
 アメリカの例であるが、アメリカ企業は即戦力を期待するため、テキサス
大学の電子工学科を出ても就職できないが、テキサス州の訓練機関を経由
すれば就職できるといった話もある。
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④電力中央研究所 材料科学研究所
ヒアリング日時
土田 秀一 上席研究員
2012 年 9 月 18 日
ヒ ア リ ン グ 結 果
1.パワーデバ
イス関連の研
究部門の概要
2.現在の SiC
パワー半導体
の開発状況
(1)組織(研究開発の拠点)・歴史的変遷・研究施設の状況
 研究は次の 3 つの体制で行っている。
①材料部門:横須賀研究所(土田研究員所属)
②パワエレ部門:電力技術研究所
③電力系統システム:システム技術研究所(狛江地区)
 SiC に関わる先進機能材料部門は、職員約 10 名+委託員・外部研究員約
10 名体制。
 それぞれの研究は基本的に分れて行われており、材料部門で作製した基板
を用いてパワエレ部門で素子を製作している訳ではない。
 研究内容は、①国プロ・メーカとの共同研究、②大学との共同研究、③①、
②に属さない基礎研究 に分けられる
 横須賀研究所にはクリーンルームを設置し、エピ成長装置、分析装置等多
くの実験装置がある。研究所外の研究者にも利用いただきたいと考えてい
る。
(2)SiC パワー半導体研究開発のスタート
 SiC の研究は平成 4、5 年から、電力応用の研究を始めた。対象機器は電力
遮断器。SiC の高耐圧性能が遮断器に適することから開始。短期的には Si
の改良、長期的に SiC への移行を想定していた(電力中央研究所報告「パ
ワー半導体素子の現状と高性能化の課題に関する調査-半導体開閉装置
への適用-」)
。
 平成 6、7 年から、10kV 以上のバイポーラデバイスを対象の SiC のエピ成
長の研究を始めた(電力中央研究所報告「厚膜 SiC 単結晶成長ならびに SiC
表面吸着質・酸化膜評価に関する研究」)
。
(1)取組んでいる研究テーマ、国等のコンソーシアムでの取組み
 NEDO の“新材料パワー半導体プロジェクト”で SiC 結晶成長において高速
CVD 技術を応用したガス成長法の研究を行っている。
 平成 17 年から、エピ成長の研究を産業技術総合研究所、昭和電工と行っ
た。現在の昭和電工のエピ成長受託事業のベースになっているものであ
る。
 FIRST(最先端研究開発支援)プログラム「低炭素社会創成へ向けた炭化
珪素(SiC)革新パワーエレクトロニクスの研究開発」において、サブテ
ーマ「超厚膜・多層 SiC エピウエハ技術」のサブテーマリーダーを務めて
いる(中心提案者は京都大学の木本先生)
。
 FIRST プログラムでは「超厚膜、超高純度 SiC エピ成長」、
「ドーピング制
御と多層膜形成」、
「キャリア寿命向上、欠陥低減」に取組んでいる。
 膜成長技術は、20 年前は 1 年間で 3μm/h であったが、
2000 年には 10μm/h、
2008 年には最大で 250μm/h まで可能とした。現在、通常では数十μm/h
で運用している。
 高速化による拡張欠陥については、数十μm/h 程度では新たな拡張欠陥を
生むことはない。100μm/h を超えるとリスクが増す。
(2)大学との取組み
 内外の大学にエピ膜付のウエハを提供したり、海外ではスウェーデンの大
学と結晶欠陥につき研究。
-144-
3.SiC パワー半
導体の技術的
な課題
4.SiC パワー
半導体の普及の
ロードマップ
5.メーカ、ユ
ーザ(電力会
社等)との役
割分担
6.行政の産業
振興策への期
待
7.地域におけ
る SiC 半導体
関連産業の振
興の可能性
 高電圧パワー半導体素子に用いる厚いエピ膜の形成や、高スル―プットで
のエピ膜の製造のためにより高い成長速度でのエピ成長の技術開発が求
められている。
 また、エピ成長における、成長時の基板よりの伝播、エピ成長初期あるい
は成長中での生成を通じて、素子の活性領域内に拡張欠陥(転位・積層欠
陥)が導入される。これらの拡張欠陥は、素子の電気的特性に様々な影響
を及ぼすため、拡張欠陥の挙動を明らかにし、その低減技術を得ることが
求められている。
 高電圧バイポーラ素子への適用には、十分なキャリアライフタイムを有す
る伝導度変調層を得るため、点欠陥密度を抑制、低減する必要がある。
 現在、SiC エピ膜の結晶は Si の品質に達していない。13kV 級のデバイス
(IGBT)への利用を念頭に「膜厚 100μm/h 以上」、
「ドーピング不純物 10-14
以下」、
「基底面転位を限りなく 0」にする等を目標に研究を進めている。
(1)SiC パワーデバイス普及の阻害要因(技術・価格)、価格水準の目標
 遮断器・直流送電周波数変換等、電力応用はシステム規模が大きいので、
材料・デバイス等 SiC が高価であっても、利用に支障はない。価格よりも
信頼度が重要となる。
 エピ成長速度や転位密度等の目標はあるが、それは全体的なデバイスの普
及のためのロードマップをベースにブレイクダウンされたものと認識し
ている。
(2)電力分野を中心に、既存の Si に置き換わると期待される装置
 SiC の優位性がある機器としては、自励式直流多端子変換器、太陽光発電
等系統に連携される電力を制御するループコントローラが挙げられる。
 普及には電力応用よりも、民生利用が先行すべきと思う。鉄道等もいいの
ではないか。
(3)GaN、Si との棲み分け
 耐圧が 600V 以下である GaN は電力応用では現状研究対象となっていない。
 メーカと連携しての研究はメーカ名の公表はできないが多数ある。公表で
きるものとしてはシステム技術研究所での SiC-SBD、JFET の研究等がある。
(電力中央研究所報告「SiC ダイオード適用インバータの設計指針と限界
性能」)
 電中研の SiC 関連の材料部門としては、結晶成長を核とした基礎研究に注
力し、電力分野での応用は電中研のパワエレ部門やシステム部門、あるい
はメーカでの製品開発に長期スパンで適用できれば良いと考えている。現
在のところ電力会社との共同研究はない。
 現在取組んでいる、“最先端研究開発支援プログラム”はフレキシブルな
支援であり、今後も同様の支援を望みたい。
 材料研究が主であるので、SiC 半導体による産業振興については分からな
い。SiC は高温、高周波での使用となるので、これら特性に対応するコン
デンサ、インダクタ等周辺機器の需要が見込まれる可能性はあると思う。
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(b)回路設計・アプリケーション関係
⑤鳥取環境大学 環境情報学部 鷲見 育亮 教授
ヒアリング日時
2013 年 1 月 17 日
ヒ ア リ ン グ 結 果
1.現在の研究
について
(1)パワー半導体、次世代パワー半導体(SiC、GaN 等)に関する研究状況
 三洋電機および地元鳥取三洋電機で PLL(位相同期回路)周波数シンセサイ
ザ等の研究開発を行ってきた。鳥取環境大学とは 12 年程前の設立準備から
関与している。
 現在、研究対象分野は幅広いが、次世代パワー半導体の活用が見込まれる、
太陽光発電、風力発電等の再生可能エネルギーに関連した研究にも取組んで
いる。
 鳥取市が推進するスマート・グリッド・タウン推進協議会の会長にも就任し、
鳥取市の産業振興及び雇用創造への展開を図っている(主たる実証実験場で
ある鳥取市若葉台地区は鳥取環境大学の所在地と同じ)。
 再生可能エネルギーは、自然が豊かで既存のインフラの制約を受けない“農
山村”から進展すると考えている。かつて、戦後の家電製品も“農山村”か
ら普及した。中国・韓国の携帯電話は、固定電話のインフラ整備が遅れてい
た都市部で、あたかも農山村のようなところから爆発的に普及しはじめた。
「イノベーションは農山村から起っている」と実感しているところである。
 現在の主な研究テーマは次の2つである。
① 追尾式の太陽光発電システム
 太陽光発電は、パネルが塵とかゴミとか雪に覆われると全く発電しない
か発電効率が低下する。この対策として、日照方向にパネルを移動し発
電効率向上を図る目的で研究に着手した。追尾方式では 1.5 倍の発電効
率向上を目標としている。
 自動追尾方式でパネルは 2 軸方向に移動させるので、モータ動力が必要
となる。パネル移動の ON・OFF、動力低減に次世代パワー半導体の適用
が見込まれる。また、パネルの発電効率向上にはパネルの冷却が望まし
いので、冷却用水の ON・OFF 制御にも次世代パワー半導体の適用が見込
まれる。
 応用として、ポールにこの追尾型太陽光発電システムを据付、田畑の畦
道に設置して、農地での発電を検討している。畔道に設置すれば、日照
も阻害されず、農作物の生産と発電の両方を行うことができる。
 このシステムでは太陽光パネルのメンテフリー化も目指しており、故障
診断機能、発電電力バイパス機能等を有するパネルコントローラを研究
している。ストリング方式と呼ばれる直列接続による複数の太陽光パネ
ルでは、一部が故障した場合では発電能力が大幅に低下するが、検討方
式では故障したパネルのみをバイパスさせて発電能力をほとんど低下さ
せずに継続できる。このようなことにより、太陽光パネル耐用年数 20
年を目標としている。このパネルコントローラ軽量化にも次世代パワー
半導体の適用が見込まれる。
② 画像認識を活用した風力発電システム
 風力発電の効率化には天候の予測が重要。天候予測を画像認識技術で行
い、風力発電の効率化を図るシステム。
 その他、鳥取三洋電機では技術者としての開発業務経験から、デジタル・ア
ナログ回路、デジタル信号処理、マイコン制御技術を活用し、大学ではロボ
ットアーム、電気自動車を開発した。なお、会社時代の取得特許は約 130
件に上る。
-146-
(2)上記研究にあたり、他研究機関やメーカ等との連携
(続き)
 これまで特には無い。次年度鳥取市が、人材育成事業として再生可能エネル
ギー事業をさらに推進する。これに太陽光追尾式発電システムに取組む企業
1.現在の研究
の申込みを望んでいる。
について
(3)今後の研究の計画
 太陽光発電と風力発電を連携した高効率発電システムの研究に取組む計画
である。
(1)次世代パワー半導体の技術的な課題
2.次世代パワ
ー半導(SiC、  SiC デバイスが手元まで回ってきている状況にはない。地方での普及が必要
である。
GaN 等)に関す
る技術動向お (2)次世代パワー半導体の産業化への課題(製造側、アプリケーション側等)
 (1)の普及には、製品の信頼性確保が必要。普及のため、耐用年数保証の期
よび産業動向
間の提示も必要と考える。この分野では公設試験研究機関の活躍が期待され
について
る。
(1)次世代パワー半導体の適用が期待される製品
 耐熱性があるため、モジュール等が露出しても使用できるという用途がある
のではないか。
追尾式太陽光発電システムの駆動装置の軽量化、メンテフリーのパネルコン
トローラの軽量化等に寄与すると考えられる。冷却装置が不要な空冷のモジ
ュールであれば機器の軽量化の効果はさらに大きい。
 再生可能エネルギーはメガソーラのように大電力化に進んでいるので、次世
代パワー半導体の適用分野はこれから多くなると思われる。
 エネルギーギャプも大きいので、電磁波への耐性が必要な宇宙用機器への応
用も十分に期待できるのではないか。
 鳥取は中国地域では降雪(豪雪)地域でもある。雪の多い地域では、従来は
電球信号機の発熱で信号機が雪に覆われてもその発熱で融けていたが、信号
機が LED に代わってから認識できにくなる問題が発生してきた。LED 化がさ
れている信号機の、LED の駆動半導体の発熱による融雪に適用できないかと
考えている。
(2)次世代パワー半導体に関わる中国地域企業の有力な技術について
3.次世代パワ  追尾式の太陽光発電システムの研究・実用化では、地元企業の技術開発等に
協力したいと考えている。
ー半導体によ
る中国地域の (3)ユーザニーズに適したデバイス開発のための大学等研究機関、製造メーカ
の役割
産業振興策に
 自治体の公設試験研究機関には、研究機関とメーカの中間的な役割を果たし
ついて
てもらいたい。民間ができないことをする組織として、開発した製品の信頼
性試験を行うなど、地域の中小企業への事業化支援を望みたい。
(4)次世代パワー半導体開発の先進企業、研究機関との連携のありかた
 自分はメーカから大学に移り、双方の立場を経験した研究者として、研究機
関とメーカの役割分担の明確化が必要と考える。
大学等研究機関はシーズを作る組織であり、メーカは独自開発のみならず、
シーズを活用し量産化をも図る組織であると思っている。この役割があいま
いになっていると感じている。研究機関がサンプルを作れば基本的にその役
割は終了であり、メーカは自らの技量で量産化を行う気概を持ってもらいた
い。
 パワー半導体分野は地味であるが、根気のいる分野である。そういう意味で
は、鳥取を含め農山村を抱える地域は開発・生産の人材供給地になりうるの
はないか。
(5)産業振興のための行政の役割、施策
 鳥取環境大学は昨年(2012 年)から公立大学に移管した。私立大学時代は、
企業からの寄付金は、公立大学に移管後とは異なり、国の補助金のように予
-147-
(続き)
3.次世代パワ
ー半導体によ
る中国地域の
産業振興策に
ついて
算消化の年度区切り、購入品の制限等の制約等が少なく、研究費として自由
度があった。行政の補助は、研究テーマの選定、成果の評価も事務的になっ
ているように思われる。研究内容を理解しての審査・評価により、従来の発
想の延長線上にない、人材を見ての自由度のある補助金制度が必要ではない
か。
 エレクトロニクスのデジタル技術は韓国・中国に模倣され、価格競争で負け
衰退している。しかし、アナログ技術は経験にもとづく技術を要し、韓国・
中国にはハードルが高いはずだ。パワー半導体は電気分野で残る数少ないア
ナログ技術である。行政には、“日の丸半導体”
、“半導体は産業のコメ”の
言葉を再認識し、業界支援を切に望みたい。
鳥取環境大学 鷲見教授の研究内容、研究装置
追尾式太陽光発電システム実験装置
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⑥島根大学 総合理工学部
ヒアリング日時
山本 真義 准教授
2012 年 8 月 29 日
ヒ ア リ ン グ 結 果
(1)パワー半導体、次世代パワー半導体(SiC、GaN 等)に関する研究状況
 SiC による HV 車の主機駆動用インバータ、PHV 車の充電器、GaN による HV
車のパワーウィンドウ等補機インバータ、非接触電力伝送システムを研究し
ている(P.153 参照)
。
(2)上記研究にあたり、他研究機関やメーカ等との連携
 現在 4 メーカとタイアップしている。うち 3 社はデンソー、ローム、サンケ
ン電気である。あと 1 社は公表できないが非接触給電でのタイアップであ
る。
1.現在の研究  HV 車の主機駆動用インバータ・PHV 車の充電器・HV 車の補機インバータは
について
デンソーと研究している。デンソーは SiC デバイスを開発しているが、昇圧
コンバータの自社開発が難しいことから、共同研究依頼をうけた。
 地元の三菱農機と農機用 HV も研究している。
 その他にも SiC についてはローム、GaN についてはローム、サンケン電気等
と共同研究している。
(3)今後の研究の計画
 経済産業省の「グリーン IT プロジェクト」の次世代電力変換器基盤技術開
発にも FUPET(技術研究組合 次世代パワーエレクトロニクス研究開発機構)
から依頼があり、今年から参加している(高温実装の関係)。
(1)次世代パワー半導体の技術的な課題
 応用側からすれば、SiC、GaN とも回路技術での対応は可能で、技術的な問
題はない。
(2)次世代パワー半導体の産業化への課題(製造側、アプリケーション側等)
 性能は問題ない。普及には価格である。SiC は Si の 2.0 倍以下 1.5 倍が望
まれる。
 パワー半導体は、運用方法にノウハウがあるので知財化も必要。
2.次世代パワ  EV への適用では、現状では、主機側は SiC、補機側(パワステ等)は GaN
の適用が良い組合せである。
ー半導体
(SiC、GaN 等)  従来大容量は SiC、小~中容量は GaN とされてきたが、GaN も 100A 流せるよ
に関する技術
うになってきており、SiC の優位性は相対的に薄れているとの認識である。
動向および産
SiC パワーデバイスに関してはウエハ価格の低下により早急の普及が求め
業動向につい
られる状況でもある。
て
(3)次世代パワー半導体の産業化事例
 島根県では上記のほか、行政と連携し、
「堀川遊覧船の電動化」
「しじみ漁の
漁船の電動化」を進めている。船は、電動モータ化で駆動装置がコンパクト
になり、水中の魚網等との接触が回避できる利点がある。
 観光用の小型 EV の配置に併せた非接触用充電器の設置も検討している。
アメリカでは航空機への適用が考えられており、ボーイング社が機内の電力
変換器のコンパクト化に GaN の適用を検討している。これにはアメリカ空軍
も関わっている。
-149-
3.次世代パワ
ー半導体によ
る中国地域の
産業振興策に
ついて
(1)次世代パワー半導体の適用が期待される製品
 島根県では上記事例があるが、他県についてはわからない。SiC は価格が課
題であり、現状では、導入に積極的な自動車メーカ、常時運用で確実にラン
ニングコスト低減となるデータセンタくらいでないと採算が見込まれない
だろう。
 データセンタのように消費電力量が多く、変換の効率性が重視されるところ
で SiC の優位性が維持されるのではないか。また、研究中の「非接触電力シ
ステム」も SiC パワーデバイスの有効な利用先として考えている。
(2)次世代パワー半導体に関わる中国地域企業の有力な技術について
 デバイス本体に関われる企業は無いであろう。先行している中央メーカに追
いつくことは困難である。中央メーカは、デバイスを他企業に製造委託する
とデバイスのノウハウほか、性能検査を通じ回路・機器のノウハウも開示さ
れるので他企業への委託はしない。
 しかし、回路・機器の周辺機器には中国地域企業も関われる。デンソーとの
車載インバータでは、コンデンサを「出雲村田製作所」、低損失のコイルに
「日立金属」の素材を使用している(山本准教授を介してデンソーに紹介)
。
これに関しては意識して地元島根県の企業の製品を採用した結果である。
 松江市内のアクティブという会社が EV を製作している。SiC ではないが島
根大で開発したインバータを入れている。
(3)ユーザニーズに適したデバイス開発のための大学等研究機関、製造メーカ
の役割
 デバイスを開発しているメーカはデバイスを活用できるアプリメーカを探
している。ロームが営業活動に積極的である。研究面でデバイスメーカと接
触がある大学研究機関が仲立ちとなり、地元企業に照会し、デバイスメーカ
と一体となってのアプリケーション化が産業化の 1 つのモデルになると考
える。
 製造においては海外メーカに太刀打ちすることは難しいと考えられ、日本で
は研究・設計におけるノウハウの優位性を維持することが重要である。これ
からの世代については、教育を通じてその優位性を維持することが必要。
 現在、教育に携わるベンチャーを立ち上げている。数ヶ月毎に一線の技術者
を招いて講演してもらっており、ドクターの学生の指導の一貫としている。
(4)次世代パワー半導体開発の先進企業、研究機関との連携のありかた
 ノウハウのあるデバイス本体の開発に地元企業は関われない。上記(3)のよ
うにデバイスメーカと一体となり、周辺機器・部品の供給、共同してのアプ
リケーション開発が、産業化にむけた連携になると考える。
(5)産業振興のための行政の役割、施策
 上記のように、デバイスを開発しているメーカはデバイスを活用できるアプ
リメーカを探している。行政も、大学と一体となりデバイスメーカとの接触
を支援することが産業化の方策となる。
 パワエレ関係と言う点では島根県および島根県産業技術センターが設立し
た二つの研究会「①島根県次世代自動車等技術研究会」、
「②島根県パワーエ
レクトロニクス技術研究会」に参画している。
 「①島根県次世代自動車等技術研究会」は 2010 年に設立されたもので、島
根県内の機械加工、ソフトウエアメーカなどの約 50 企業と島根大学が会員
となっている。
 現在までに EV の実車の購入・分解による構造研究や市販の軽自動車を独自
製作したコンバート EV の展示会の出展等をしている。
-150-
(続き)
3.次世代パワ
ー半導体によ
る中国地域の
産業振興策に
ついて
 また、研究会の活動はロームとタイアップして支援してもらっている。ロー
ムはアプリ部門を自社に持たないので、アプリ先の開拓に積極的である。
 「②島根県パワーエレクトロニクス技術研究会」は今年 5 月に設立された研
究会で、県内のパワーエレクトロニクス関連企業や関心を持つ県内企業約
20 社が参加している。今年は電源技術における最新技術動向や電源技術の
基本を学んだうえで電源装置の製作実習の講座も設ける。
 またパワーデバイスのユーザということで、地元での有力企業として三菱農
機、島根三洋電機、ホシザキ電機にも声をかけて参加してもらうなど、地域
での展開を考えている。
 島根県では島根大学、島根県(商工労働部)
、産業振興財団が共同で月 1 回
「パワーエレクトロニクス研究会」を開催している。約 20 社を公募により
選定した。電気関係以外の業種もあり、新技術分野への取組み意欲も高い。
行政の役割としては、新技術の啓蒙・情報発信が、産業化にむけた役割とし
てあると考える。
 人材育成という点ではパワーエレクトロニクスを企業等に教育講習するた
めのベンチャー企業を設立する予定である。
 地元企業の規模・ラインナップ等を踏まえ、適切な出口戦略を策定(前述の
インバータの作製、船、農機、観光等での活用)により適度な集積を図ると
ともに、研究会の開催等などによる人材育成を含め持続的な好循環を導出す
ることが重要と思われる。
 ただし、デバイス企業が誘致できれば地域で自己完結てきるので、それにこ
したことはないが、なかなか難しいことではある。独自の高度な研究開発を
行っていれば地域であっても、中央から声をかけてくれる状況にはある。
-151-
島根大学 山本准教授の研究内容
-152-
⑦松江工業高等専門学校 電気工学科 渡邉 修治 准教授
ヒアリング日時
2012 年 8 月 29 日
ヒ ア リ ン グ 結 果
(1)パワー半導体、次世代パワー半導体(SiC、GaN 等)に関する研究状況
 現在、本研究室において次世代パワー半導体に関わる研究は未着手。従
来の Si パワー素子を用いたスイッチング損失低減回路の検討や太陽電池
パネルよりバッテリーへ非接触充電する回路について、学生の研究指導
に合わせて実施している。
1.現在の研究 (2)上記研究にあたり、他研究機関やメーカ等との連携
について
 メーカとの連携は現在のところない。スイッチング損失低減回路に関連
する技術は、一部島根大学の山本真義先生の助言をいただき、進めてい
るものもある。
(3)今後の研究の計画
 次世代パワー半導体を使用した半導体電力変換回路については、これか
ら検討する予定。
(1)次世代パワー半導体の技術的な課題
 次世代パワー半導体の生産技術に関する課題はわからない。一般的に考
えれば SiC のように研摩に用いられる「固い」材料を薄膜化し、歩留り
よく集積化して生産することに課題が多いことは想像される。
(2)次世代パワー半導体の産業化への課題(製造側、アプリケーション側等)
 半導体電力変換回路技術分野の立場からはコスト面と信頼性が課題と考
えている。
従来から、電力変換効率の向上を目的として、ソフトスイッチング回路
2.次世代パワ
技術が検討されている。使用される半導体素子の性能を考慮し、その欠
ー半導体
点は回路構成を工夫することによってカバーしている。その一方で部品
(SiC、GaN 等)
点数の増加とコストの上昇が課題となっている。
に関する技術
しかしながら、次世代パワー半導体を使用することによって、部品点数
動向および産
を増加させることがない、すなわち、教科書に掲載されるような最も基
業動向につい
礎的な回路構成での電力変換回路の効率がソフトスイッチング化された
て
回路を上回る可能性はあると思われる。この際に使用される素子自体の
コストが高いと意味がないが、今後コストの問題が解消されれば、
IPM(Intelligent Power Module)化されたパワー半導体素子単位に電源回
路が置き換わる可能性はあると考えている。
(3)次世代パワー半導体の産業化事例
 産業化事例についてはわからない。産業応用分野においては、新開発さ
れた次世代パワー半導体の特性を実験で調べ、旧来のものと比較をして
いる段階と思われる。
3.次世代パワ
ー半導体によ
る中国地域の
産業振興策に
ついて
(1)次世代パワー半導体の適用が期待される製品
 半導体スイッチング電源全て(≒電気機器すべて)と考える。
(2)次世代パワー半導体に関わる中国地域企業の有力な技術について
 不明。
(3)ユーザニーズに適したデバイス開発のための大学等研究機関、製造メー
カの役割
 ユーザは通常、パワー半導体や電源回路などを意識することはなく、使
用する機器に対する目的の機能、コスト、信頼性で価値判断するものと
考えている。大学等研究機関において、デバイス開発の立場からはこれ
らを満足するものを作る、または作るためのアイディアを発信し、回路
技術の立場からは新規に開発されたデバイスを電源回路に使用した場合
の損失を明らかにすることが求められる役割と考える。
-153-
(続き)
3.次世代パワ
ー半導体によ
る中国地域の
産業振興策に
ついて
(4)次世代パワー半導体開発の先進企業、研究機関との連携のありかた
 前述のとおり、一般家庭に回路素子が売られるわけではなく、機密事項の
多い開発部品であるがため生産拠点も限られれば、パワー半導体の開発や
生産のみでは産業振興につながらない。次世代パワー半導体をこれまでの
素子に置き換え、新しい価値を生み出すことで振興につながると考えるが、
これは中国地域に限らず、全国の各機器デバイスに共通と思う。
-154-
⑧岡山大学大学院 自然科学研究科
ヒアリング日時
産業創成工学専攻 塚田 啓二 教授
2012 年 9 月 11 日
ヒ ア リ ン グ 結 果
1.現在の研究
について
(1)半導体、次世代半導体(SiC 等)に関する研究状況
 マイクロイオンセンサ、高機能水素センサおよびセンサネットワークの
研究、磁気計測用センサと応用研究、非破壊検査に関する研究を実施。
 (パワー半導体デバイスを直接的に研究するのではなく、)半導体パワー
デバイスをベースにゲート金属の部分を感応膜に代え、センサとして機
能するケミカルセンサを開発。
現状では Si の電界効果トランジスタ(FET)
をベースに開発中。
 マイクロイオンセンサでは血中電解質や血中ガス+水素イオン濃度を測
定することにより代謝異常判定や呼吸系、循環器系の判定や術中、術後
の管理への用途が見込まれる
 高機能水素センサに関しては FCV(燃料電池自動車)向けの水素ステーシ
ョンの普及に伴う、水素漏洩・拡散検知システムとしての活用が見込ま
れる。
 センサにはバルク型等その他の型式もあるが、半導体デバイスを用いる
のはセンサの信頼性が高まることと、半導体デバイス製造プロセスの応
用により安価に製造できるためである。
(2)上記研究にあたり、他研究機関やメーカ等との連携
 センサ開発にあたっては、岡山県工業技術センターの照会によりフェニ
テックセミコンダクター(岡山県井原市)の製造する MOSFET を活用。そ
の他半導体関係ではシャープタカヤ電子、非破壊検査では三造試験セン
ター等とも連携している。
(3)今後の研究の計画
 EV(電気自動車)の次に FCV(燃料電池自動車)が見込まれるため、長期
的に研究を継続したい。
(1)次世代半導体の適用分野・技術的な課題
 センサ分野での SiC デバイスの活用としては、過酷な環境でも耐久性の
あるワイドバンドギャップ半導体
2.次世代パワ
「高温でのモニタリングが可能」
「強度が高い」の特性から、自動車の酸
ー半導体
素濃度の測定等での活用が期待される。現状の Si を材料としたものでは、
(SiC、GaN 等)
長期安定性・耐環境性に課題があるため(P.157 参照)
。
に関する技術  ケミカル分野で SiC が直接活用できるというわけではない。
動向および産 (2)次世代半導体の産業化への課題(製造側、アプリケーション側等)
。
業動向につい  センサ自体は百円単位の安いものであり、それ自体のマーケット規模は
て
大きいとは言えない。事業化に向けてはモジュール化・システム化して
いくことで、付加価値・競争力を高めることが重要である。ただ、この
部分は日本産業界の弱い部分であると認識している。
(3)次世代パワー半導体の産業化事例
2.(1)参照。
(1)次世代半導体の適用が期待される製品
2.(1)参照。
3.次世代パワ
(2)産業振興のための行政の役割、施策
ー半導体によ
る中国地域の  海外でセンシング技術が広く展開されているのは(軍事的な用途も含め)
国の関与によるところが少なくない。米国のベンチャー企業も恩恵に浴
産業振興策に
している。
(日本のように)新しい分野・企業に「民生用の製品を安く作
ついて
れというのは」無理な話。
 スマートグリッドの展開をベースに太陽電池パネル、新しいエネルギー
-155-
(続き)
3.次世代パワ
ー半導体によ
る中国地域の
産業振興策に
ついて
システムの構築等において国の主導でコンソーシアムを形成し、地域の
力を結集することが重要ではないかと考えている。
「晴れの国おかやま」
という気候にもマッチするのではないか。
 (研究対象の一つである)水素に関しては九州では福岡県を中心に活動
が見られるが、当地では水島コンビナートがあるのにその副生水素を活
かした取組みが見られないのは残念。
(3)その他
 塚田教授は当センターの平成 20 年度新産業創出研究会において「低周波
磁気を用いた鉄鋼溶接部内部欠陥新検査法」のテーマで技術開発課題・
新商品開発課題に取組み。
岡山大学 塚田教授の研究内容(高機能水素センサ関係)
-156-
⑨中国職業能力開発大学校
ヒアリング日時
生産情報システム技術科
平島 隆洋 教授
2012 年 9 月 3 日
ヒ ア リ ン グ 結 果
(1)パワー半導体、次世代パワー半導体(SiC、GaN 等)に関する研究状況
 RF 帯(13.56MHz 帯、27.12MHz 帯、40.68MHz 帯、60MHz 帯)およびマイクロ波
帯(2.45GHz 帯)を対象に、増幅器や電力分配/合成器、方向性結合器などの
ハイパワー回路、半導体製造や液晶ディスプレイ製造、薄膜シリコン太陽電
池製造で利用される高周波電源用の各種コンポーネントを設計・製作してい
る(P.161 参照)。
(2)上記研究にあたり、他研究機関やメーカ等との連携
 平成 6 年度から、BISTEC(備後半導体技術推進連合会)の幹事として、半導
体・液晶および高周波関連のセミナーを実施。
 高周波関連では、アドテックプラズマテクノロジーから研究依頼を受け、大
学でプロトタイプの開発を実施。高周波・ハイパワー回路を扱うので、大電
1.現在の研究
力を計測する回路、個々のパワーデバイスの出力を合成する回路を開発。
について
 アドテックのほかダイヘンとも共同研究を行っている。
 企業との研究を通じ、高周波関連や組込みシステム関連の人材育成・教育も
行っている。高周波大電力に関するセミナーは年間 50 時間開催。
 中国職業能力開発大学校には、周波数特性評価用の高性能ネットワークアナ
ライザが 4 台あり、大学の中では西日本有数の整備状況である。企業から分
析評価を依頼されることも少なくない。
(3)今後の研究の計画
 ここ数年、これらアプリケーションが国内から海外生産にシフトしており、
最近はより高い周波数帯であるマイクロ波帯を対象としたハイパワー回路
の設計・製作の比重が高くなっている。
(1)次世代パワー半導体の技術的な課題
 使用台数の多いスマホの基地局や、車載用の高輝度 LED に GaN が使用されれ
ば普及は進む。
 高周波デバイスとしては、SiC は GaN の普及後となるであろう。
(2)次世代パワー半導体の産業化への課題(製造側、アプリケーション側等)
2.次世代パワ
 デバイスの普及とコストである。アプリ側は、デバイスがあれば有効活用で
ー半導体
きる回路の設計・製作技術を有している。ただ、デジタル化で回路設計技術
(SiC、GaN 等)
者がアジア各国にも多くなり、国内の技術者が減少していることが懸念され
に関する技術
る。
動向および産
 現状のコストでは、家電では採算が合わない。工場のパワコンや旋盤・フラ
業動向につい
イス盤等の工作機器への実装が考えられるが、産業用に制約される。トラッ
て
ク EV が実用化すれば普及が進むと考えるが大容量蓄電池の開発の方が問題
である。
(3)次世代パワー半導体の産業化事例
 現状では EV くらいか。
 周辺素子を含めればニッチ市場を取れる可能性がある。
3.次世代パワ
ー半導体によ
る中国地域の
産業振興策に
ついて
(1)次世代パワー半導体の適用が期待される製品
 私の研究分野である高周波・マイクロ波を利用した製品、またニッチ製
品として以下が期待される。
①次世代基地局用デバイス-基地局に使用されれば全世界への普及につ
ながる。
“周波数特性”
“出力”
“ノイズ特性”の問題がクリアされれば
適用分野は広い。
②半導体製造装置ではプラズマ発生装置-アジア勢が技術力を付けてい
-157-
(続き)
3.次世代パワ
ー半導体によ
る中国地域の
産業振興策に
ついて
るが、プラズマ発生装置は国内メーカが優っている。
③計測評価装置。
④医療用センサ~コストの制約が少ないので投資がしやすい。ただし、臨
床試験や審査が大変
⑤工作機器(旋盤等)
。
⑥カメラの連続フラッシュ。
 SiC パワー半導体は「f 特(周波数特性)が良く」
、
「ハイパワー」、
「NF が良
い」という 3 つの特徴がある。この 3 つを合わせるとアプリで有望なのはス
マホの基地局等の通信機器になる。
 ただアプリとして早く着手できるのは「f 特(周波数特性)が良く」、
「ハイ
パワー」の二つで対応できる半導体製造用の高周波電源等ではないか。プラ
ズマ発生用のマグネトロンを GaN 等で置換え、コンパクト化できればインパ
クトがある。
 SiC デバイスでインバータを生産しても、将来は価格競争に巻き込まれて赤
字になるだけ。アプリは「高周波電源」のように Si ベースでもニッチで競
争優位性が確保できる分野でないと意味がないのではないか。
 事業化は技術力とともにタイミングが重要である。急激な普及を狙って安易
に海外市場に投入すると、価格低下を招くこととなる。
(2)次世代パワー半導体に関わる中国地域企業の有力な技術について
 パワー半導体やその部材の製品開発実績があるフェニテックセミコンダク
ター、城南マイクロデバイス、三社電機製作所、新興製作所等が次世代パワ
ー半導体の開発技術を有すると思われる。パワー半導体に特化しなければ、
岡山村田製作所、タカヤ、タツモ、東洋電器も技術力がある。基板材料では、
クラレ、三菱化学。
(3)ユーザニーズに適したデバイス開発のための大学等研究機関、製造メーカ
の役割
 これまで行ってきた企業と連携しての共同研究やセミナーは、パワー半導体
の産業化にも有効と考える。
(4)次世代パワー半導体開発の先進企業、研究機関との連携のありかた
 これまでも多数のメーカとハイパワー系の高周波・マイクロ波機器を開発し
てきた。情報共有による連携は重要である。
(5)産業振興のための行政の役割、施策
 中国経済産業局からは“半導体ネットおかやま”で参事官が講演、当大学に
おいてもフォーラム、セミナー開催を支援いただいている。情報発信・啓蒙
として引き続き支援をお願いしたい。
 岡山県庁も、
“半導体ネットおかやま”に参画いただいている。引き続き情
報発信・啓蒙・施策支援をお願いしたい
 新技術開発には研究費・人材の集中が欠かせない。半導体の技術進展は速い。
行政の支援のスピード化を望みたい。
“審査期間を短縮する”
“申請書を簡易
にし、研究者の技術・技能を重視する”
“優秀な研究者・テーマに研究開発
費を集中する”等を要望したい。
-158-
中国職業能力開発大学校 平島教授の研究装置・機器
電流分配装置
電流計測装置とデータ解析パソコン画面
-159-
⑩津山工業高等専門学校
電気電子工学科 地域共同テクノセンター長 田辺 茂 教授
ヒアリング日時
2012 年 11 月 6 日
ヒ ア リ ン グ 結 果
1.現在の研究
について
(1)パワー半導体、次世代パワー半導体(SiC、GaN 等)に関する研究状況
 専門は送配電の高電圧大容量パワーエレクトロニクス。大電力の直流送電
(HVDC)
、VBO フリー光サイリスタ(VBO:Voltage Break Overfree~ 過電
圧をトリガー信号として電力ダウンすることなく回路を保護する。過電圧
用の保護回路が不要となる) の研究等である。現時点で SiC のデバイスは
使用していない。
 また、Si→SiC 等へのシフトを見据え高電圧半導体モジュール樹脂ケース
の汚損耐電圧特性の研究も行っている。その他に太陽電池と燃料電池の組
み合わせ、地域に最適な分散電源適用等の研究も実施。
 同じ電気電子工学科の長井准教授が SiC、GaN デバイスで回路を製作し研
究をしている。
 IEC/SC22F(国際電気標準会議の送配電システム用パワーエレクトロニク
スの部会)の委員長を務めている。委員会においては HVDC の機器の試験
法、スペックの設定、自励式変換器の損失の算定等について日立、東芝、
三菱電機、電力会社等の委員と共に企画の設定にあたっている。特に自励
式の HVDC に関しては用語の定義に始まり、システムの使用、変換器の損
失等について企画の検討を行っている。
(2)上記研究にあたり、他研究機関やメーカ等との連携
 かつてはメーカとの共同研究を行っていたが、研究上の制約が少なからず
あり、現在は行っていない。
(1)次世代パワー半導体の技術的な課題
 HVDC に使用されている変換装置には転流回路が必要な「他励式」と同回
路が不要な「自励式」とがあり、従来の他励式ではサイリスタが使用され
て技術は完成の域に近づいている。一方自励式では Si-IGBT 等が使用さ
れ、変換装置の開発も進展してきている。
 コスト面では自励式と他励式に大きな差異はないが、自励式の通電損失が
他励式の 4 倍という問題がある。この観点から Si→SiC にシフトすること
に大きな意義があるのではないか。
2.次世代パワ  周波数変換、Back-to-back(交流送電ループを作らないための非同期連系
用)、STATCOM(無効電力補償装置)も HVDC と同様の原理。STATCOM の関
ー半導体
係では最近では中部電力の変電所で三菱電機が GTO サイリスタを使用し
(SiC、GaN 等)
た装置を納入している。
に関する技術

日本における HVDC は「北海道・本州間連系設備」、
「紀伊水道直流連系設
動向および産
備」の
2
箇所であるが、海外では現時点でも
100
箇所以上あり、中国、ロ
業動向につい
シア等で今後も建設ラッシュが見込まれている。北海油田でも自励式の
て
HVDC が検討されている。
 このように市場の拡大が期待される HVDC であるが変換装置の分野では 1
位 ABB(スイス)、2 位 Siemens(独)、3 位 Alstom (仏)である。1 位、2
位はデバイスも自ら製作している。日本においては日立、東芝、三菱電機
となるが、3 社とも自らデバイスは製作していない。日本メーカもポテン
シャルはあるものの、国内では需要が継続的に発生しないのがネックであ
る。
 中国、韓国、マレーシアのメーカも進出してきている。ちなみにこの分野
では米国のメーカは存在しない。
 大電流の送電用のデバイスには口径の大きいウエハ(Si で 6 インチ)が必
-160-
要である一方で、結晶欠陥が不存在という課題のクリアが求められる。
(2)次世代パワー半導体の産業化への課題(製造側、アプリケーション側等)
 ウエハの大口径化と信頼性の向上による大容量化への対応。
 HVDC 分野における海外メーカとの競争。
3.次世代パワ
ー半導体によ
る中国地域の
産業振興策に
ついて
(1)次世代パワー半導体の適用が期待される製品
 デバイスの信頼性が確保されれば、送電分野での応用範囲は多い。離島へ
の送電、洋上風力からの送電等に伴う装置への SiC の使用が期待される。
(2)次世代パワー半導体に関わる中国地域企業の有力な技術について
 デバイスに関しては中国地域に大容量デバイスを製作するメーカがない
ため HVDC との関係性は薄いと考えるが、周辺部材という点では、現在研
究している樹脂を含め技術があれば参入できる余地があるのではないか。
(3)産業振興のための行政の役割、施策
 学内で地域共同テクノセンター長も兼務しており、産学連携の難しさは痛
感している。
 ただし、津山市の支援も受けて“津山高専技術交流プラザ”を開催してい
る。高専のシーズと地元企業のニーズのマッチングが図られている。
 津山地域には三社電機、新興製作所等の半導体関連メーカがあるが、交流
が盛んとは言えないのは残念である。
 地域の企業にとって新たな技術に対応するには資金的な面で困難であり、
ベンチャーキャピタル等による中小企業の支援があってもいいのではな
いかと考える。
津山工業高等専門学校 田辺教授の研究装置
手前左:大容量サイリスタ、手前右:パッケージ樹脂(沿面絶縁特性試験用)
-161-
⑪津山工業高等専門学校 電気電子工学科
ヒアリング日時
長井 聡
准教授
2012 年 11 月 6 日
ヒ ア リ ン グ 結 果
1.現在の研究
について
(1)パワー半導体、次世代パワー半導体(SiC、GaN 等)に関する研究状況
 SiC-SBD 等のリカバリー損失等の特性を研究している。
 SiC は、Cree、インフィニオン、ロームの市販品を購入。5 年くらい前か
ら研究しており、当初はインフィニオンのデバイス(第 1 世代)しかなか
った。その後、インフィニオンは第 3 世代まで評価対象とした。ダイオー
ドについてはやり尽くした感じはする。
 またインバータにも組み込みを行いスイッチング損失の減少を確認した。
 きっかけはデバイスを入手する機会があり特性評価を継続的に行った。た
だし研究自体は本年度で終了の予定である。
 最近では SiC-MOSFET が出てきたので、Cree 製を入手し同様に特性評価を
実施した。
 SiC-SBD なら 300V-15A で 1,000~1,500 円程度であるが、MOSFET となると
8,000 円となり研究費となると負担感が出てくる。
 研究結果は高専の紀要として、ホームページに掲載しているが、アクセス
数が多く SiC への関心の高さに驚いている。
 GaN については対象としていない。
(2)上記研究にあたり、他研究機関やメーカ等との連携
 特にメーカとの連携はない。
2.次世代パワ
ー半導体
(SiC、GaN 等)
に関する技術
動向および産
業動向につい
て
---
3.次世代パワ
ー半導体によ
る中国地域の
産業振興策に
ついて
(1)次世代パワー半導体の適用が期待される製品
 アプリケーションの研究を行っているわけではないので、具体的には難し
いが、ハイパワー、高速スイッチングでの使用が想定されると思う。
(2)産業振興のための行政の役割、施策
 学生のパワエレ人気は自分のゼミに関しては「普通」といったところ。
 現状のデバイスは通販(チップワンストップ)等で入手したものであるが、
メーカ等からサンプル提供等のアプローチがあれば研究が捗るのではな
いかと思う。
 これまで基本的に学内で研究してきており、半導体メーカとコンタクトす
る機会がなかなかない。こういったところのつなぎ役を行政に期待してい
る。
-162-
⑫山口大学
ヒアリング日時
大学院理工学研究科 情報・デザイン工学系学域 田中 俊彦 教授
2012 年 11 月 30 日
ヒ ア リ ン グ 結 果
(1)パワー半導体、次世代パワー半導体(SiC、GaN 等)に関する研究状況
 専門は電力変換工学。次世代パワー半導体は、GaN-HEMT(High Electron
Mobility Transistor)の電気自動車等、家電民生機器への応用を研究して
いる。SiC は研究していない。
(2)上記研究にあたり、他研究機関やメーカ等との連携
 北海道大学 橋詰教授と豊田中央研究所と共同で GaN-HEMT のインバータ
展開の研究を行っている。デバイス構造についての研究を橋詰教授(理論
設計)が行い、結晶成長・デバイスの作製を豊田中央研究所(デバイス設
計)
、田中教授(回路設計)がインバータ用の回路検討・損失計算を行っ
ている。
 JST の CREST のスキームを活用し、2015 年までの 5 年間のプロジェクトで
ある。今年中間報告を行ったところ。きっかけは研究代表者である同郷の
橋詰教授から学会で「使う立場」としての相談を受け参加することとなっ
た。総額 2~3 億円程度のプロジェクト。
 国プロでの共同研究は通常別々で研究が進捗すると思うが、本研究は 2
ヵ月に1回程度会議を開催するなど密に行っている。
 デバイスのスイッチング性能としては、そのまま発信機に接続した値を提
示しているが、実用化には(c 言語で)プログラムした「信号マイコン(sh
マイコン)」-「ドライブ回路」-「HEMT]の接続が不可欠である。ここで、
GaN デバイスに対応した、ドライブ回路設計が必要となってくる。
1.現在の研究
について
Sh
マイコン
田中教授
ドライブ
回路
v
V
分担領域
 具体的には、Si-IGBT はターンオン時間が 4μs、ターンオフ時間が 2μs
であるが、GaN-HEMT はターンオン時間が 20ns、ターンオフ時間が 40ns
で、IGBT の約 1/100 程度である。IGBT の場合はさほど問題とならなかっ
たが、HEMT の場合はドライブ回路に遅れがあるとデバイスの性能を活か
せない状況となる。
(3)今後の研究の計画
 今後の研究でターンオン・オフ時間を素子単体ベースである 1 桁 ns にし
たい。
 研究対象の GaN-HEMT の耐圧は 400~600V 程度。今の用途を考えれば十分
である。ただし、本来の研究対象は中・大電流パワエレであり、GaN-MOSFET
の開発が進展すれば次世代パワー半導体に関連する研究範囲も広がると
期待している。
 GaN デバイスはサファイアベースを使用している。将来的には Si ベース
にしないとコスト面で太刀打ちできないと思っている。
-163-
(1)次世代パワー半導体の技術的な課題
 SiC のダイオードを使用すれば、
(インバータで)Si-IGBT+Si-SBD で従来、
回復電流が短絡する問題が解決され、電力損失の大幅な低減につながる。
よって、GaN-HEMT と SiC ダイオードを合わせるということもあるのでは
2.次世代パワ
ないかと思う。
そういう意味で SiC と GaN は共存するのではないかと思う。
ー半導体
。
(SiC、GaN 等) (2)次世代パワー半導体の産業化への課題(製造側、アプリケーション側等)

事業化の鍵はひとえにウエハの価格ではないか。
に関する技術
動向および産 (3)次世代パワー半導体の産業化事例
業動向につい  GaN デバイスメーカとしてはパナソニック、サンケン電気、ロームが先行
しているとの印象を持っている。
て
 エアコンの高級機種に SiC-SBD が採用されているが、エアコンでは「トッ
プランナー方式」が導入されている。これは 5 年前の効率トップの機種を
下回った商品は販売できないというもので、その結果(基準を達成でき
ず)
、OEM を受けているメーカもある。この制度との関係性を考えれば、
エアコンへの次世代パワー半導体の使用というのは興味深いものである。
3.次世代パワ
ー半導体によ
る中国地域の
産業振興策に
ついて
(1)次世代パワー半導体の適用が期待される製品
 GaN 半導体のアプリケーション先として考えるのは以下のとおり
①ノーマリーオンでもいいインバータ。具体的な用途としては EV の非接触
充電器。
②デバイスの冷却のいらない用途。
具体的には一つ目は HEV の車載インバータ。駆動部分にはエンジンとイン
バータ(Si-IGBT)が使用されており、エンジンには約 125℃の冷却ポンプ、
インバータには約 75℃の冷却ポンプが使用されている。IGBT を GaN-HEMT
に置き換えると、低損失に加え高温動作が可能であるため、冷却ポンプが
エンジンの約 125℃の冷却ポンプ1台となり、小型化が可能となる。
二つ目には太陽電池(の裏面)に直接インバータを貼り付けるもの。セル
インバータという概念。電気工事店は配線をするだけでいい。地域性を考
えると将来的には長州産業との連携もあり得るとは思う。
 そのほかにはモータの高速回転という用途もある。エアコンのファンのモ
ータを現状の 5 万 rpm を 50 万 rpm にすれば小型化になる。例えばレクサ
スには搭乗者各人向けにエアコンが付いており、そういう点でも自動車と
関係してくる。
 高周波のインバータに少なからず用途があると聞いている。非接触充電も
その一つ。
 ただし、Si-IGBT が「使いやすく」
、
「壊れにくい」というのは次世代パワ
ーデバイスの普及には難点。米国で開催された ECCE では Cree から
17,000V の IGBT が出品されていた。Si パワートランジスタは非常に駆動
しづらかったが、IGBT が出たとき余りの使いやすさに感動した。学生さ
んがすぐ動かせることができた。
(2)次世代パワー半導体に関わる中国地域企業の有力な技術について
 マツダグループはパワエレが強いという印象を持っている。近年では自動
車は電気関係部品が 5 倍に増えたと聞いている。
(3)ユーザニーズに適したデバイス開発のための大学等研究機関、製造メー
カの役割
 電気学会中国支部で発表会があったが、次世代パワー半導体の取組みは島
根大学の山本准教授(ヒアリング済)と田中教授のたった二人だった。ち
なみに山本准教授は田中教授の研究室(前任者時代)の出身。
 超伝導材料研究の際の組織替えで多くの電気機器の学科が改廃された。中
国地域の国立大学で残っているのは山口大学と島根大学である。時代的な
-164-
(続き)
3.次世代パワ
ー半導体によ
る中国地域の
産業振興策に
ついて
流行に基づくこのような改組は、電気電子工学の 3 本柱を維持するために
慎むべきではないかと思う。
(4)次世代パワー半導体開発の先進企業、研究機関との連携のありかた
 北海道大学と豊田中央研究所との共同研究がうまくいっているのは、研究
の進捗があろうがなかろうが、必ず 2 ヵ月毎に会合を持ったこと。研究が
進捗していない状況もあり、そのような場合、顔を合わせるのはある意味
つらかったが、会合は継続して開催した。ただし、実験が進まなくても
simulation を行うなどの出来る限りの工夫も行った。
 あと目標も現実的な目標を設定し、無理なく研究を進めたこともよかっ
た。このような点が CREST の中間評価においても高い評価を頂いた。
(5)産業振興のための行政の役割、施策
 行政への要望は 3 点
①研究プロジェクトへの支援の関係で、基礎のスキームがうまく行って、次
のステップ(実用化フェーズ)に行く際に(一部)自己負担を求められる
ケースが多い。制度としては理解するが、現実的には特定の大学・研究機
関しか対応できなくなり、結果としては不公平なものとなってしまう。
NEDO のプロジェクトでも自己負担の関係で結局辞退したことがあった。
②研究は進展するものの、事業化の際、中小企業を支援するスキームがなく、
断念せざるをえないケースが少なからずある。研究成果の結実という視点
から、ファイナンスの面でも支援をお願いしたい。
③国プロで費用負担分の支払いが事後である点も、中小企業の資金繰りを圧
迫する要因であるので一考願いたい。
-165-
b.企業ヒアリング
(a)デバイスメーカ
⑬フェニテックセミコンダクター株式会社
谷 英昭
代表取締役副社長
石井 弘幸 生産本部技術部部長、
伊藤 修三 生産本部 技術部 京都 DC
ヒアリング日時
2012 年 9 月 19 日
1.現状の取組
みについて
ヒ ア リ ン グ 結 果
(1)次世代(SiC、GaN)パワー半導体に対応するための研究開発・事業化状況
 現在、広島大学と SiC-SBD 製造の研究を行っている。設備の多くは広島
大学の装置を利用。広島大学に 3 名技術者を派遣している。概ね開発の
目安は得られている。
 広島大学との SiC 研究は、2004 年京都大学から来られた芝原教授とのエ
ピ成長の研究から続いている。2009 年からは芝原教授の後任の吉川教授、
本年からは黒木准教授にも指導をいただいている。
 2013 年度内の SiC-SBD のサンプル出荷を目指している。そのため 12 年度
には SiC 用酸化炉、アニール炉、13 年度はイオン注入装置の導入を予定
している。コストの点から将来的にはエピも内製化したいが、これは先
の話。
(2)大学や他メーカ(デバイス、半導体製造装置)等との連携、地域での取
組み
 上記のとおり、広島大学と連携している。
 また、ローツェ等が研究している戦略的基盤技術高度化支援事業(サポ
イン事業)のアニール装置の開発にも川下企業として参画している。
 岡山大学の塚田教授の Si 半導体を利用したセンサにもデバイスを提供し
ている。
(3)次世代パワー半導体に対応するための技術的課題
 SiC-SBD の開発の 目途はた っている が、需 要の多い インバー タには
SiC-SBD と MOSFET が必要であり、将来的には MOSFET の開発も視野に入れ
る必要があると思っている。ただし、MOSFET に関してはゲート酸化膜の
信頼性等の問題があり、SBD より技術的には難易度が高いと認識してい
る。
 SiC 半導体の製造装置については、高温に対する対応等が必要となる。
 ただし、アニール、イオン注入等の装置以外は、Si 半導体の製造装置を
使って問題ないため、そのまま使用している側面もある。今後 SiC の特
性に合せ、SiC 向けの製造装置を開発するようになれば、スループットや
品質が向上し、結果としてコストの低下が期待できるのではないか。
 ウエハメーカの品質状況が不明確なこともデバイス開発上の課題となっ
ている。ウエハの信頼度は昔と比べると格段に向上したが(マイクロパ
イプの消滅等)
、未だに拡張欠陥の問題は存在している。拡張欠陥が”0”
になるということではないので、このような結晶欠陥と“うまく付き合
う”という視点が必要ではないか。
 SiC は欠陥の問題が完全にクリアされていない。Si ではウエハの段階で
欠陥ゼロであるが、SiC ではゼロを目指すことは困難であるため、ライン
の中でスクリーニングを導入し、初期不良を検出するなどして影響を抑
えることになる。
-166-
2.次世代パワ
ー半導体に関
する技術動向
および産業動
向について
(一般論とし
て)
3.次世代パワ
ー半導体によ
る中国地域の
産業振興策に
ついての具体
的な考え
(1)次世代パワー半導体普及のロードマップ
 近年中に Si→SiC へシフトする手ごたえを感じている。開発中の SiC-SBD
サンプルを 2013 年度出荷の予定である。
 Si の場合はディスクリートメーカとして注力していればいいが、SiC に
おいては新たにその活用先のモジュールメーカやアプリメーカとの連携
が不可欠になってくると考えている。
(2)次世代パワー半導体の事業化への課題(技術・価格)
 事業化にはウエハを中心とした価格が課題としてある。本格的に研究を開
始した 2009 年時点で価格は下がると想定していたが、現状ウエハ価格は
10A-600V 用で Si 30 円、SiC 200 円と 6 倍となっており、依然として格
差がある。LED と比較すると価格低下のカーブが緩い。ただし、デバイス
の価格だけではなく SiC のメリット(高温動作、省スペース化等)をト
ータルで考える必要があるのではないか。
 対象製品が多い民生用の普及には、Si に対し SiC 価格 2 倍と言われるが
現状では厳しい。故障しても支障の少ない民生機器(エアコン)は品質
の低下(耐用年数 3 年程度)も許容して価格低下の方策も考えられるの
ではないか。
 Si で競争優位性のある大手パワー半導体メーカは、SiC 開発は横にらみ
で行っており、自社のアプリケーション部門への供給をメインで行って
いる。一方でデバイス専業メーカであるローム(株)が開発で先行し、ア
プリ先の発掘にも積極的であるという印象を持っている。
 SiC でプロセスが大きく変わるのは、①イオン注入(インプラ)、②高温ア
ニール、③ゲートオキサイド(酸化膜)であろう。オーミックもあるが大
きな変化ではない。
 プロセスの他にも評価手法が確立していない。例えば、酸化膜抵抗測定に
おいては、Si では 4 端子測定を行っているが、SiC ではこの方法では測
れない。
(3) 取引関係の変化の可能性
 現状ではわからない。
(1)次世代パワー半導体の適用が期待される製品
 メインは自動車、電車等への利用も考え、モータ系のインバータだろう。
スマートグリッドの関係もあり電力系統の分野も有望なのではないか。
また先日の委員会で伺った、音響装置も興味深い。
 デバイスも開発され普及が進みつつあるが、課題のコスト・高温対策と
して革新的技術が開発されれば一気に普及するであろう。
 現状の信頼度で産業分野での急速な普及を期待するのは難しい面もある
と思う。信頼度が優先されないが、SiC の特性が活かせるようなアプリケ
ーション(いわゆる“おもちゃ”のようなもの)があれば普及が加速す
るとは思う。
(2)次世代パワー半導体に関わる中国地域企業の有力な技術について
 現状ではわからない。
(3)次世代パワー半導体開発におけるデバイスメーカ、研究機関との連携の
ありかた
 SiC の事業展開においてはモジュール、アプリに関する情報や回路設計技
術等も必要となってくる。今後の社内での人材育成に向けて研究機関の
支援をいただきたい。
(4)産業振興のための行政の役割、施策
 海外とも競争が激しい半導体技術開発にはリスクがあるが、行政の支援
に関しては残念ながら及び腰という印象がある。研究開発分野にも積極
-167-
的に支援が頂ければありがたい。
 また、半導体産業は裾野が広い産業であるが、地域に核となる企業があ
れば直接取引がなくても自然と情報交流がなされ、地域の底上げが期待
できるが、エルピーダの状況等を踏まえればそのような機能喪失が懸念
される。情報共有機能の補完的な役割も行政に期待したい。
-168-
⑭新電元工業株式会社 電子デバイス事業本部 パワーモジュール部 広島分室
大沢 裕 事業担当部長 兼 広島分室長代理
ヒアリング日時
2012 年 11 月 22 日
ヒ ア リ ン グ 結 果
(1)事業全般の内容
〔パワー半導体業界について〕
 同じ半導体ではICと比べて地味な存在ではあるが、不景気でも相対的には
安定した分野である。需要も長期的には継続して増加するなど有望な分野で
あり、日本が比較優位性を確保している分野であるとの認識である。
〔サンエーについて〕
 1969 年、三菱電機半導体事業本部(当時は北伊丹)パワーデバイスの後工程
の協力会社として設立された。
 サンエーはミヨシ電子より分離して設立されたが、ミヨシ電子は高周波デバ
イスとセンサ、サンエーはパワーデバイスの分野で三菱電機との協力関係を
継続している。
 1980 年代にはパワーデバイス・パワーモジュール後工程製造が労働集約型か
ら自動機械のオペレーティングに変化した事、及び、三菱電機パワーデバイ
ス事業拠点が北伊丹から福岡へシフトした事に伴いサンエーも福岡地区(福
岡県糸島市)に工場を新設し、三菱製品専用工場として事業展開をする体制
を整えた。これに伴いサンエー三次工場では仕事が漸減し、ここから生き残
りを賭けた新事業を如何に立ち上げるかの開発を目指す事となった。
 2000 年代半ばにはシャープタカヤ電子工業から携帯電話用カメラモジュー
ルの組立を請負っていたものの、それも海外シフトで無くなり、併せてリー
マンショック等の影響から売上が減少した。三次地区での新たな事業展開の
必要性から、3年程前から「カスタムパワーモジュール」事業を開始した。
 「カスタムパワーモジュール」は顧客の製品にマッチした個別(カスタム)
のパワーモジュールで、形状(四角形、丸状等)、デバイスの種類(SBD、MOSFET、
IGBT 等)、電流・電圧等での顧客ニーズへの対応が可能である。また、パッ
1.現状の取組み
ケージの際には基板とエポキシ樹脂との間のシリコンゲルを省略化すること
について
によりモジュールの小型化・薄化が可能となっている。エネルギー・産業用
途、EV/HEV 等の車載用途での需要拡大を期待している。
 「カスタムパワーモジュール」は(場合にもよるが)話をもらって約半年程
度で製作する。最も時間がかかるのは設計部分のすり合わせであり、これに
2~3カ月程度を要する。
 ただし、引き合いがあるのは関東、東海地区からであり、残念ながら中国地
域からは無い。
〔新電元工業について〕
 今(2012)年9月に三次地区の「カスタムパワーモジュール」事業はサンエー
から新電元工業に事業譲渡され、組織的には「電子デバイス事業本部 パワ
ーモジュール部 広島分室」という位置づけになった。新電元工業は国内で
は主に東北地域(秋田県、山形県)にデバイス・モジュール工場を有してい
るが、本事業は R&D を担う飯能工場(埼玉県)との関係が深い。現在、広島
分室の人員は R&D が中心で少数人員である。
 事業譲渡にあたっては、
「カスタムパワーモジュール」の技術が評価されたと
いうことが第一ではあるが、新電元工業の東北大震災の経験を踏まえての
BCP といった観点からの西日本地域における生産拠点という発想も影響して
いるのではないかと思う。
 旧サンエーのモジュールは中電流パワーモジュールであり、新電元工業では
手薄な分野であった、またその特徴が車載用途に適すといった点でも、新電
元工業がこれまで培ってきた電装事業の範囲拡大に寄与できると判断された
可能性がある。
-169-
 「カスタムパワーモジュール」に内蔵する半導体パワーチップや IC は基本的
に新電元工業製造のものを使用するが、ラインナップにないものは他社から
調達して、又は顧客支給品を使用する。
(続き)
1.現状の取組み
について
(2)パワー半導体(次世代 SiC、GaN 半導体を含む)に関する研究開発・事業内容
 SiC、GaN とも実装面で試験的な取組みを行っている。
 SiC に関しては「SiC-JFET を用いた誘導加速シンクロトロン用高速・高電圧
スイッチング電源の開発」に参画している。これに関しては商用化というよ
りも超高性能・チャンピオンデータを目的とした趣旨が強い。
(3)大学や他メーカ(デバイス、半導体製造装置)等との連携、地域での取組み
 上記研究を国の研究機関(高エネルギー加速器研究機関)と行っている。
(1)次世代パワー半導体普及のロードマップ
 GaN より SiC の方が、基礎技術が確立していることもあり、早く普及すると
見込んでいる。GaN は歩留まりが悪く、高耐圧対応に難があるとの印象であ
2.次世代パワー
る。
半導体に関す
 ただし、SiC に関してはやはり価格が高いのがネック。早期の普及は困難か
る技術動向お
もしれないが、価格低下と需要拡大の好循環を導出できればいい。現状の Si
よび産業動向
のように、家電等への普及には 2020~2025 年頃になってしまうのではない
について(一般
か。
論として)
(2)次世代パワー半導体の事業化への課題(技術・価格)
 チップは Si→SiC により小型となるが、モジュール全般では端子等もあり同
等に小さくなるわけではない。
 合わせて SiC デバイスの特性を活かし、モジュール化のためには高熱伝導・
高耐熱の材料の開発が不可欠であると考える。
(1)パワー半導体(次世代 SiC、GaN 半導体を含む)に関わる中国地域企業の有力
な技術について
 後工程は大別すれば「アセンブリ」と「テスト(評価)
」に分けられるが、ア
センブリの部分で Si→SiC により、技術的に変わってくるのはダイシングの
部分である。そういう意味では中国地域ではディスコ(広島県呉市)という
ことになる。
「テスト」に関しての企業対応は遅れており、高温動作特性に対
応できる測定器や周波数追随性を改善した測定器など SiC 向けのパワーモジ
ュール測定器という分野が新たに立ち上がるのではないかと思っている。
 これに関しては既存の Si パワー半導体用の測定器を製造しているだけでは
なく幅広い意味で、IC や太陽光パネル向けも含め測定に関する要素技術を有
する企業なら参入可能性を有していると思う。地域の企業が生き残るには汎
用モジュール等の市場が大きく、結果、競争の激しい分野では困難と思う。
そういう意味では「カスタムモジュール」というのは地域の企業に適した市
3.次世代パワー
場規模であり、優位性を維持できる分野ではないか。
「カスタムモジュール」
半導体による
の事業が拡大することにより、三次地域での雇用拡大、産業振興に繋がるこ
中国地域の産
とを期待している。
業振興策につ
いての具体的
な考え
(2)メーカ、研究機関との連携のありかた
 三次市の他の電子デバイスメーカとの事業上の付き合いはないが、人的交流
はある状況。
 パワー半導体企業は地域において活動領域が狭く(自己完結的)、なかなか横
の繋がりを持つ機会がない。年に一回でも中国地域のパワー半導体関係者が
一堂に集うような機会があってもいいのではないかと思う。
 パワー半導体における地域振興という点では部品メーカの連携では限界があ
る。モータ、インバータの研究者・事業者を中心に裾野を広げる連携が必要
ではないか。逆に言うと地域の自動車メーカの EV 化対応の遅れが地域の弱み
に繋がっているのでは。
-170-
(3)産業振興のための行政の役割、施策について
 行政は同じ半導体でも LED、ソーラ、IC 等に目が向き、パワー半導体の重要
性に対する理解が十分でなく、資源配分(補助金等)も少ないのは残念なこ
3.次世代パワー
とである。
半導体による
 モジュール自体は自社で作製できるが、製作物のテスト等については広島の
中国地域の産
工業試験場で行うこともある。ただ、パワー半導体関係は試験装置が少なく、
業振興策につ
場合によっては大阪・九州方面に出向くこともある。このような装置も地域
いての具体的
で充実してもらえばありがたい。
な考え
 三次地域はやはりアクセス面では不便である。
(広島)空港とのアクセスが悪
いのが一番のネックであるが、尾道-松江線が出来れば改善されると思う。
三次-空港の直通バスを出すように声を上げている。
(続き)
カスタムパワーモジュールのパッケージング技術
略称を Simple & Flexible Power Module と呼びます。
特許取得済
カスタムパワーモジュールの例
出典:サンエーHPより
-171-
⑮株式会社山口光半導体研究所 杉浦 文彦 代表取締役
ヒアリング日時
2012 年 11 月 30 日
ヒ ア リ ン グ 結 果
(1)次世代(SiC、GaN)パワー半導体に対応するための研究開発・事業化状況
 山口大学大学院理工学研究科 只友一行教授の研究成果を活かしサファイア
加工基板の販売ならびに加工請負を展開。2010 年に設立された大学発ベンチ
ャー企業。
 具体的には顧客のニーズに応じてサファイア基板に凹凸の加工を加え、光取り
出し効率の向上や転位密度の低減などの機能を付帯させる事業(サファイア基
板は他社から調達)。
 凹凸に関する技術は 2 年程度前までは先進的なものであったが、最近では一般
的なものになりつつある。海外メーカとの価格競争という局面。サファイア基
板の価格低下に伴う加工費の低下が収益悪化要因となる。
 凹凸の加工関する特許は取得していないが(サファイア基板の表面加工に関す
る特許は存在しておらず、特許はその上の GaN に関係する技術で取得)
、顧客
ニーズに応じた加工や効率向上に向けたノウハウで優位性を確保したい。
 生産体制は長州産業が以前使用していた小野田工場(山口県山陽小野田市)の
一部を借り受け、約 5 億円の設備投資を実施。現在は 2 インチと 4 インチ製品
を生産している
(2) 大学や他メーカ(デバイス、半導体製造装置)等との連携、地域での取組み
 2009 年より文部科学省補助事業「地域イノベーション戦略支援プログラム」を
1.現状の取組み
活用した「やまぐちグリーン部材クラスター事業」という取組みの枠内の中で
について
も活動を行っている。ちなみにこの事業には山口大学、山口東京理科大学、水
産大学校の大学、長州産業、トクヤマ等の県内の主要企業が参画している。結
晶成長からアプリケーションまでの企業の連携を目指し、LED のアプリケーシ
ョンとしては漁業の集魚灯などもある。
 只友教授は「やまぐちグリーン部材クラスター事業」の中核研究者として参画
している。
 山口光半導体研究所の設立も本活動の一環として行われた。
 これ以前には 2004~2008 年までの「知的クラスター創生事業」を活用したや
まぐち・うべ・メディカル・イノベーションクラスターが存在しており、LED
の医療へのアプリケーション(内視鏡)等を目的としたものであった。
(3)今後の研究・事業化の予定
 サファイア加工事業のベースをしっかり確立し、将来的には GaN の事業を拡大
していきたい。ただし、そのためには数十億オーダでの資金調達が必要となっ
てくる。新たな製造装置の調達も必要である。
 加工したサファイア基板の上に非極性面(無限性面と半極性面との総称)GaN
の薄膜を堆積した GaN テンプレートを 2012 年度内に試験研究用に提供開始す
るとともに、非極性面 GaN の厚膜による光半導体用自立 GaN 基板、電子デバイ
ス用次世代 GaN 基板を 2014 年に商品化する予定である。
 ちなみに GaN の結晶成長は溶液・融液成長ではなく、気相成長である。これは
只友教授の研究を反映したもの。
(1)次世代パワー半導体の技術的な課題
2.次世代パワー  サファイア加工基板の品質・均一性の確保、GaN 結晶成長における転位密度の
改善
半導体に関す
(2)次世代パワー半導体の事業化への課題(技術・価格)
る技術動向お
 GaN 市場自体が確立しておらず先行きを見通すのが困難。
よび産業動向
 (GaN 向けには)Si 基板の方が価格的に有利との話もあるが、サファイアの価格
について
も低下していることに加え、Si の上に GaN を積んでまた Si を取るという手間
を考えれば、言われるほど Si に価格優位性があるとは思えない。
 Si は既存のラインを使おうとすると(現状の口径から)大口径でないといけ
-172-
ないが、サファイアは元々高価であったので 2 インチをびっちり敷き詰めて加
工という、両者は発想が違う。GaN で大口径化というのは歪み等の関係からな
(続き)
かなか難しいのではないか。
2.次世代パワー
 技術的にも可視域の光を吸収する Si よりも、可視光に透明なサファイア基板
半導体に関す
を使う自社の技術の方が圧倒的に有利である。また業界大手の住友電工の
る技術動向お
{20-21}面 GaN や三菱化学の気相成長法に対してもコスト的に優位性があると
よび産業動向
の認識である。
について
 また、非極性面 GaN の優位性を活かせるアプリケーションの発掘も今後の課題
の一つ。
(1)次世代パワー半導体の適用が期待される製品
 中国経済産業局が 2 年位前に自動車業界のニーズを調査したことがあったが、
その際は三菱自動車(岡山県倉敷市)から GaN 研究者というニーズが挙がって
3.次世代パワー
いた。そう考えると GaN デバイスは EV 分野での活用が期待できるのではない
半導体による
か。
中国地域の産
(2)次世代パワー半導体開発の先進企業、研究機関との連携のありかた
業振興策につ
 山口大学の只友教授の研究開発の進展に合わせ、継続的に技術の移転の受皿で
いての具体的
ありたい。
な考え
(3)産業振興のための行政の役割、施策
 大学の装置で作製したものは商用に使えず、評価用サンプルとして提供できな
いケースがある。その結果、今回は初期の設備投資額が嵩んだ。このような場
合、賃借料金等の適正な対価を払うので、作製物を商用として扱えるようにし
てもらいたい。
23
何を作り 何を売りにするか
④
非極性面GaN
非極性面GaN
③
サファイア基板
②
エッチング加工
GaN自立基板(非極性面)
次世代自社商品(2014年商品化予定)
パワーデバイス用部材
電源回路等に利用可能。高周波対応可能なデ
バイスを製作できる。家電メーカー、自動車
メーカー向けのデバイスに需要が見込める。
GaNテンプレート基板
(自社で加工・販売)
2012年度試験研究用提供開始
省エネ型高効率LED用部材
GaN層を非極性面にしたPSSを使ったLED。
GaN結晶の欠陥が半分に低減。発光効率が
5割アップ。投入電力を3割以上低減できる。
緑色光で発光効率が落ちるグリーンギャップを
解消できる。
サファイア加工基板
(自社で加工・販売)
2012年10月販売開始
PSSを使ったLED
標準品に比べ3割程度
光取出し効率アップ
LED用基板市場規模は2020年度で107億円(2,680万枚)。
①
サファイア基板
GaN層
サファイア基板
(購入品)
標準的なLED構造
c面サファイア基板
当社の保有するエッチング技術、結晶成長技術を使って、サ
ファイア基板をスタートにして、加工基板、
非極性面GaNテンプレート、非極性面GaN基板へとシームレス
に商品展開が可能。
非極性面GaNテンプ
レートを使ったLEDの光
株式会社山口光半導体研究所
商品
出典:株式会社山口光半導体研究所資料
-173-
⑯ローム株式会社 西日本営業第1ユニット SiC 営業 G 中村 孝司 G リーダほか
ヒアリング日時
2012 年 9 月 26 日
ヒ ア リ ン グ 結 果
(1) 組織(研究開発拠点、製造拠点)、歴史的変遷
1.関係部門の
概要
 研究開発拠点:京都本社ほか 4 拠点、製造拠点:SiC 製造のローム・アポロ
(株)ほか 10 拠点、欧米・アジア各所に海外営業・開発拠点あり。
最近では沖電気の半導体部門を買収し、ラピスセミコンダクタを設立して
いる。
 創業は 1958 年。当初は抵抗器の製造。
(2)全社売上に占める割合
 売上比率は、LSI49%、半導体素子 34%、その他 17%。ユーザは民生メーカ(パ
ナソニック、ソニー等)が多いが、自動車等産業機械分野に進出を進めてい
る。パワーデバイス自体は売上全体の 10%程度。
(3)中国地域の概要(ローム・ワコー(笠岡市)
)
 グループ会社で LSI、ダイオードを製造。品質管理は本社(LSI 生産本部等)
と一体で行い、海外展開にあたっての国内におけるマザー工場の役割を担
っている。
(1)研究開発のスタート
2.SiC パワー
半導体の開発
の歴史
 SiC は 1990 年より研究に着手し、パワー半導体の研究を開始。それ以前に
も研究に着手したことあったが、その際はウエハ結晶欠陥の課題で進まな
かったが、結晶成長技術の進展により再開した。2002 年の SiC-MOSFET の試
作の成功から事業化にむけ進展。
(2)歴史的変遷
 その後、2004 年に SiC-MOSFET のプロトタイプを開発、2005 年にサンプル
を出荷。
 2008 年にホンダと HV 車向け SiC パワーモジュールを試作、日産自動車と
SiC ダイオードを使用したインバータを燃料電池車に搭載し走行試験を実
施した。
 2009 年に SiC ウエハメーカであるドイツの SiCrystal 社をグループ会社と
した。これにより SiC デバイスの一貫生産体制を確立。2010 年に SiC-SBD
の量産開始(国内初)、SiC-MOS トランジスタの量産を開始(世界初)
 2011 年に APEI と共同で高速・大電流(1,000A 級)の SiC トレンチ MOS モジ
ュールを開発。
 2012 年にフル SiC モジュールの量産を開始(世界初)
。
(1)自社での取組み
3.現在の SiC
パワー半導体
の開発状況
 ウエハ引揚~組立まで一貫生産によりユーザのニーズにフレキシブルに対
応できる体制を確立。
 本年 3 月にフル SiC モジュール(1,200V,120A)の量産を開始。2013 年にフ
ル SiC パワーモジュール(1,700V,~300A)を開発の予定
 2011 年 11 月よりダイキンのエアコンに SiC-SBD を搭載。Alstom 社がロー
ムの SiC デバイスを用いて鉄道向けモジュールを開発することを発表。
(2)国等のコンソーシアムでの取組み
 会社設立当初から京大ほか地元大学と連携し研究開発を進めており、国プ
ロ等の応募は少ない。
(3)大学の取組み
 京大、阪大、同志社、立命館等関西の各大学と共同研究を実施。地元の京
大、同志社、立命館の大学にはローム記念館を開設し、人的交流も図って
いる。
-174-
4.SiC パワー
半導体の技術
的な課題
5.SiC パワー
半導体の普及
のロードマッ
プ
 SiC ウエハの品質は年々向上し、マイクロパイプ解消し、現時点では SBD、
MOSFET の量産には問題ないレベルに達している。欠陥が無くなったという
ことではなく、デバイスの生産に影響を与えるレベルの欠陥が無くなった
こと。
 逆にいうと欠陥が存在するウエハから、問題なく動作するデバイスを作製
するのがロームのノウハウとも言える。
 ただ、IGBT 等の大容量のデバイスへの適用においてはキャリアライフタイ
ムの向上等の別の課題があり、直ぐに製品化というレベルではない。
(1)SiC パワーデバイス普及の阻害要因(技術・価格)、価格水準の目標
 SiC-SBD は 2、3 年前では Si の約 10 倍であったが、現在 3 倍程度までにな
っている。民生用には、2 倍程度がベースとなるだろうが、価格が高価な産
業機械では機能上のメリットで採算レベルに達したと考えており、営業活
動を強化している。
(2)既存の Si に置き換わる分野と新たに活用が期待される分野
 民生に比較し、性能・信頼性が重視され価格も高価な産業機械分野に活用
が進むと考えている。2011 年度の世界の半導体需要は、産業部門 27%、民
生部門 19%、自動車部門 18%、通信部門 23%と大きな差はないが、2003 年度
と比較すると産業部門は約 2 倍伸びている。産業機械メーカは欧米・日本
が多く約 150 万社。中国等新興国が模倣できないアナログ技術を要するの
で市場として有望であると考えている。
 産業部門のユーザの特徴としては民生と異なり大手企業の寡占の比率が低
いため(大手 80 社で占有率 37%程度)
、普及の課題は“製品ラインナップの
充実”
“長期部品供給体制”
“高信頼性”
“小口注文体制”等があり、対策と
して WEB での情報提供、代理店教育を図っている。最近では WEB での問い
合わせが大手メーカも含め多くなっている。
 製品情報等を WEB にて積極的に情報開示をすることによりアプリケーショ
ンメーカからアプローチを受けることがある。
 産業部門のユーザは大手に限らす、製品単価が高い製品メーカを対象に考
えている。地方の地場企業も対象となる。
(3)具体的な SiC パワーデバイスの採用事例
 現時点では
○電源(サーバー、エアコン、各種産機用)
PFC 回路、SBD 採用による効率改善(0.5~1.5%改善)、高周波化・リカバ
リノイズ削減による受動部品数削減
○太陽光発電パワーコンディショナ
アップコンバータ、インバータ、SBD 採用による効率改善(0.5~1.5%改
善)、MOS 採用による高効率達成 98.7%
○EV 充電器
ステーション側(急速充電器)&車載側、PFC 回路&2 次側整流、SBD 採
用による効率改善、高周波化による小型化
○各種産業機器
高周波電源・レーザ-発振器、高周波誘導加熱、非接触充電、モジュー
ル・冷却機の小型化
などが挙げられる。
 現時点では太陽光発電パワーコンディショナでは「高効率(省エネ)
」とい
う視点が重視されているが、それ以外の製品では「小型化」という視点が
重視されている(
「省エネ」という視点では商品価値があがりにくい)
。
 来年から EV 急速充電器が急速に伸びるのではないかと思っている。
(4) GaN、SiC との棲み分け
 耐圧については、600V 以下が GaN、600V 以上を SiC という点は他社と同様
-175-
(続き)
5.SiC パワー
半導体の普及
のロードマッ
プ
であろう。会社としては需要があれば SiC、GaN ともに製品化の体制は確保
している。
 GaN は、現状の Si ウエハ上での製造では、横型デバイスしか製作できない
ため、大電流の市場は望めない。ただし、MHz帯までの高周波動作が可能
という Si、SiC では実現できない性能があるため、この特性を活かせるア
プリケーションが出てくれば有望。
6.社内におけ
る開発・製造
の役割分担
 研究開発は京都本社等、ウエハ製造はドイツの Sicrystal 社、前工程はロ
ーム・アポロ(福岡県)、後工程は海外工場がそれぞれ担当。フル SiC パワ
ーモジュールについては本社工場で行っている。
 他のパワーデバイスを作製する大手国内電機メーカのようにアプリケーシ
ョン部分は持っていないが、欧米では水平分業型が一般的であるとともに、
他企業との積極的な共同開発によりデメリットは感じていない。
7.生産ライン
のリスクマネ
ジメント
 ロームの特色としては製造工程における垂直統合体制を構築し、品質管理、
トレーサビリティ、生産能力面での対応でのメリットを享受している。
8.Si→SiC に
伴う関連産業
の関係の変化
の可能性
 SiC デバイスと Si デバイスの製造工程の違いは基本的に同じだが大きく異
なるのは
○SiC エピ
Si 800~1,150℃ ⇒ SiC 1,600~1,800℃ SiH(CH3)3⇒SiH4/C3H8/H2
○Si に比べ高温の熱処理
Si Max 1,100℃ ⇒ SiC MaX 1,600~2,000℃
高周波加熱
周波数:25kHz 近辺 電力:~数 100kW
○イオン注入に工程においてドーパント種として Al が必要
の点 3 点である。
この部分の製造装置が異なるだけなので製造装置企業との関係性の変化は特
にない。
9.行政の産業
振興策への期
待
 会社設立当初より、自社開発、大学との共同研究で開発してきたが、国プ
ロ等への参画はしてこなかった。特に忌避してきた訳ではないが、社風も
ある。国の各種補助に関しては、企業規模の規制等からの理由により、こ
れまで受けていない。
 SiC に関しては商用段階を迎え、超高耐圧デバイス(>10kV)等の作製を除
けば、国の支援の段階を過ぎているとの印象を持っている。
10.地方におけ
る SiC 半導体
関連産業の振
興の可能性
 これまで民生用のユーザとして中国地域では、パナソニック(岡山)
、鳥取
三洋と取引があった。会社として産業部門の営業強化を図っており、大企
業、中小企業を問わず技術力があるメーカと取り引きしたいと考えている。
 ロームにおいては SiC デバイスの顧客は Si からのシフトというよりも、新
規顧客と側面が強い。大学等も含めサンプルの提供も行っており、地方の
ユーザ゙に製品開発での活用を望みたい。
-176-
(b)製造装置メーカ
⑰安田工業株式会社 田辺 洋始 取締役 製造本部 本部長 兼 産機部
鳥越 弘啓 産機部 産機管理課 課長
ヒアリング日時
1.現状の取組
みについて
2.次世代パワ
ー半導体に関
する技術動向
および産業動
向について
(一般論とし
て)
部長
2012 年 11 月 9 日
ヒ ア リ ン グ 結 果
(1)次世代(SiC、GaN)パワー半導体に対応するための研究開発・事業化状況
 安田工業は自動車シリンダーのボーリング加工等を行う企業として 1929
年に創業。後に製品も自動ホーニング盤、中ぐりフライス盤と重点を移し
ながら、1966 年には我が国最初の「横型マシニングセンター」を開発し
た。現在は、各種マシニングセンター、CNC ジグボーラ等を製造している。
 宇宙開発やフォーミュラーカーを始めとする自動車のエンジン、携帯電話
などの通信機器、カメラなどの光学機器、プラスチックなどの高分子化学
製品など、超高精度な部品加工や金型加工といった極めて高い精度を必要
とする分野で高い評価を得ている。
 例えば、具体的にはマシニングセンターにおいて直線 3 軸(X、Y、Z 軸)
と回転 2 軸(A、B 軸)の 5 軸を正確に制御するための技術を有している。
 従来の加工物は鉄、アルミ、チタンが対象であったが、SiC のように硬い
ものを切削・研削する技術と 5 軸制御の技術を融合できないかと情報を収
集している段階である。装置のステージの製作技術はあるので、研削等の
技術(例:放電加工、レーザー加工、超音波加工)により新しい装置開発
に繋がればということである。
 SiC の結晶成長時にオフ角があるので、そのまま水平に切断するのではな
いと聞いている。そういったところに 5 軸制御等の用途がないかと思って
いる。
 製品の仕向先は国内が 6~7 割、海外が 3~4 割程度であり、国内の比率が
高い。一般的な工作機械メーカは国内・海外の比率が反対となる。
 また、OEM で半導体・液晶の製造装置・検査装置を製造している。発注元
は、ファブレスメーカなどである。
(2)大学や他メーカ(デバイス、半導体製造装置)等との連携、地域での取
組み
 社内に岡山大学の出身者が多く、岡山大学とは情報交換している。
 SiC 事業に関連しては、大学、研究機関、企業等を訪問し技術動向の調査
を行った。また、SiC に適用できる要素技術に関連しても、大学にヒアリ
ング等を行っている。
(1)次世代パワー半導体普及のロードマップ
 SiC の需要は各種情報から拡大基調にあると考えている。
(2)次世代パワー半導体の事業化への課題(技術・価格)
 事業化にあたって、ウエハメーカ等の情報が入らない。特に SiC の切断・
研削についてはインゴットの形状・厚さ等の詳細な情報が現時点でも不明
確なため、今後確認が必要である。Cree がどのようにスライスしている
か、新日鉄が何に苦労しているかというのは知りたいところではある。
-177-
3.次世代パワ
ー半導体によ
る中国地域の
産業振興策に
ついての具体
的な考え
(1)次世代パワー半導体の適用が期待される製品・有力な技術
 ウエハに関連しては、ダイヤモンド形の砥石、放電加工メーカ等が有望で
ないかと考えている。
 SiC のパワーデバイスは自社の産業機械にも適用できるが、電気系は外部
調達している部分であり、直ぐに次世代パワー半導体を組み込んだ製品化
という状況にはない。
 工場内の機器に SiC インバータ等が利用できれば、電気料金削減の効果は
あると思っている。工場内ではコンプレッサー・空調・ポンプ等が常時稼
動している。クレーンの運用も多い。
(2)産業振興のための行政の役割、施策
 かつては国プロ等にも取組んでいたが、委託期間が終了すると、大学の研
究者は研究開発に積極的でなくなる。企業としては期間経過後も研究開発
を継続してもらいたいところである。
 産総研等先進的な研究をしている国の研究機関に視察にいっても、クロー
ズされる部分が多く有益な情報が得られない。SiC 事業の地域での展開を
考え積極的に研究・技術情報を開示してもらいたい。
 また、安田工業が所持する技術についても中央の研究機関等に情報発信出
来る機会・組織等があれば有難い。
安田工業 立型 5 軸マシニングセンター
出典:安田工業 HP より
-178-
⑱ローツェ株式会社 崎谷
ヒアリング日時
1.現状の取組
みについて
2.次世代パワ
ー半導体に関
する技術動向
および産業動
向について
(一般論とし
て)
文雄 代表取締役社長、櫻井 俊男 監査役
2012 年 9 月 11 日
ヒ ア リ ン グ 結 果
(1)次世代(SiC、GaN)パワー半導体に対応するための研究開発・事業化状況
 広島大学(ナノデバイス・バイオ融合科学研究所 吉川所長)
、アドテック
プラズマテクノロジーと共同で、戦略的基盤技術高度化支援事業化(サポイ
ン)のテーマとして「SiC 基板向け大気圧プラズマ熱処理装置の開発と非接
触基板温度測定装置の開発」に取組んでいる。これに関しては広島大学大学
院 先端物質科学研究科の東教授にアドバイザーとして、フェニテックセミ
コンダクターにも川下企業として参画してもらっている。
 SiC デバイスの製造プロセスでは従来の Si に比べ高温でのアニール
(2,000℃程度)が必要となる。ただし、従来どおりの高周波誘導加熱炉を使
用する場合、炉自体の加熱と放電で大電力が必要となる。
そこで 10,000℃のプラズマを直接基板に噴射し、0.02 秒以下で 2,000℃ま
で加熱し、消費電力において 1/35 以下、スループットで 2.4 倍以上を目指
すというものである。
 プラズマ発生の電源は、アドテックプラズマテクノロジーの装置を使用し、
プラズマトーチの試作品も開発中である。
 従来はウエハ搬送装置がメインであったが、今回初めてアニール関係の装置
開発に取組んでいる。
(2)大学や他メーカ(デバイス、半導体製造装置)等との連携、地域での取組み
 上記のとおり、大学、メーカと連携している。
(3)次世代パワー半導体に対応するための技術的課題
 (1)の研究テーマについて、高温アニールではウエハの破損が課題としてあ
る。ウエハ自体の信頼性の可能性があるかもしれない。高温プラズマは概ね
目的の成果が得られている。
(1)次世代パワー半導体普及のロードマップ
 普及には(2)の価格である。現状、シェアの高い Cree 社のウエハは、デバイ
スを作る保証がないと国内の代理店からも購入できず、研究用のウエハも入
手しにくい状況である。
(2)次世代パワー半導体の事業化への課題(技術・価格)
 事業化には価格が課題である。過去の電気製品の新技術普及の状況(レコー
ド→CD 等)から、価格は Si の 2 倍が目安と考える。価格が 2 倍になってシ
ェアが新旧材料で半々になるのではないのか。また、ウエハに関しては価格
もそうだが品質等も含め材料メーカに期待したい。品質に関してはデンソー
の RAF 法により改善が期待されている。
 基板のコストに関しては、SiC 基板製作における歩留まりの問題が大きく、
結晶欠陥の克服が課題と考えている。
 パワー半導体に関しても、価格とともに、開発後中国等に市場を奪われない
ようにするには、パワーデバイスの規格も必要。
 現在優位のパワー半導体も製造技術が知れ渡れば、中国・韓国にシェアを奪
われることとなるが、太陽電池、LED と比較すると工程が多く技術を要する
ため相対的に優位性はあると考える。価格戦略とともに行政を含めた規格戦
略の策定により優位性を維持する必要がある。
(3) 取引関係の変化の可能性
 アニールの装置に関しては現在市場規模は 10 億円程度とみているが、H30
年に 70 億円に拡大を見込み、今回の開発した製品がその半分のシェアをと
れればいいと考えている。
-179-
3.次世代パワ
ー半導体によ
る中国地域の
産業振興策に
ついての具体
的な考え
(1)次世代パワー半導体の適用が期待される製品
 ウエハが安価となり、全体的に価格が低下すれば、機能が向上するモータ系
は普及する。利用される分野は広範囲に及ぶためかなりの市場規模になるの
ではないか。
(2)次世代パワー半導体に関わる中国地域企業の有力な技術について
 デバイスが普及すれば国内各メーカによる製品化が急速に進むだろう。この
中で、中国地域が新製品開発をできるか未定であるが、地域の自動車メーカ、
インバータ等装置メーカに頑張ってもらいたい。
 回路設計技術に関して中国地域が他地域に比べ優位にあるという状況には
ない。
(3)次世代パワー半導体開発におけるデバイスメーカ、研究機関との連携のあ
りかた
 SiC デバイスに関してはフェニテックセミコンダクターが開発中であり、前
述のアニール装置の開発等を併せ地域として盛り上がりつつあるのではな
いか。
(4)産業振興のための行政の役割、施策
行政の支援として、補助・研究支援のほか以下の施策を望みたい。
① 製品輸出の規格認定支援。
 海外販売において製品輸出先の規格認証の取得に費用を要している。ヨーロ
ッパへの輸出には CE マーク、韓国には KCC マーク、中国には CCC マークの
取得が必要であるが、認定マーク取得の申請・試験に、製品 1 件あたり 2~
5 百万円程度、年間で 2~3 千万円程度を要している。ユーザのニーズによ
り仕様を少し変えるだけでも取得が必要であり、企業としては非常に負担感
がある。
 一方で韓国は KCC マーク、中国は CCC マークを取得すれば、それぞれの規格
が CE マークと同一のため、自動的に CE マークも取得できる規格となってい
る。
 CE マークは半導体を含めほとんどの産業製品が対象である。行政がマーク
取得の認定を支援してもらえば、メーカの負担は軽減される。現在、このよ
うな点に行政の関心が低いのが残念である。
 地域においては、例えば CE マークをベースにした広島県独自の規格認証の
創設や、認証規格取得時の費用面での補助等を要望している。また、認証や
RoHS 指令(有害物質使用制限指令)へのデータの収集における公設試験場
等の有効活用策も検討してもらいたいと考えている。
② 材料費、電気料金等ユーティリティ費の削減。
諸外国に比較すると、製品製造の材料費、ユーティリティ費が高い。海外メ
ーカに勝てる価格とするため、規制緩和等でこれら価格の低減を望みたい。
-180-
⑲長州産業株式会社 岡本
ヒアリング日時
1.現状の取組
みについて
要 代表取締役社長、田尾 鋭司 技術担当課長
2012 年 9 月 21 日
ヒ ア リ ン グ 結 果
(1)次世代(SiC、GaN)パワー半導体に対応するための研究開発・事業化状況
 長州産業としてのパワーデバイス関連への関わりは直接的には半導体製
造装置(真空成膜装置)であり、デバイスそのものへの関わりは間接的
なユーザという立場である。
 売上比率は太陽光発電分野が圧倒的に高く、半導体製造装置は減少してい
る。
〔半導体製造装置〕
 これまでも蒸着装置、スパッター装置、CVD 装置などを半導体やディスプ
レイ向けに開発しており、現時点でも NEDO の支援を受けた有機 EL 照明
とディスプレイに向けた装置開発で国内大手関連企業と協業しており、
かなり成果が上がっている。それらの技術とこれまで培った装置技術で
将来のパワー半導体向け需要が有れば対応は可能であり、特にパワー半
導体向けの装置開発はしていない。
 高温対応のエピ成膜装置についても需要が合えば対応していく。現時点で
は中国地域の近隣からの具体的な装置依頼は来ておらず、ほとんどが関
東地域からの問い合わせ、製造依頼である。それら装置に関する開発依
頼は多くがプロセス上の必要性からくるもので、装置メーカが独自に開
発するのではなく、半導体製造企業の技術者からのプロセス仕様に基づ
いた開発が中心である。
〔パワーコンディショナ等について〕
 パワーデバイスについては太陽光発電装置の構成の一つであるパワーコ
ンディショナやインバータを外部調達しているという立場であるため、
それらの性能向上には常に関心を払っている。基本的それらの装置がコ
ンパクトで低価格・高性能になるよう調達先に要望しており、調達先の
開発に期待している。
 そういう意味では Si ベースの半導体を使用したパワーコンディショナよ
りは GaN や SiC を使用した高性能な半導体に期待をかけているが、それ
に伴ってコストが上がるようだと普及は遅れるだろう。
 SiC では、有機 EL の蒸着装置用の SiC ルツボの製造を行っている。ルツ
ボ形状で特許を取得している。
 結論として長州産業のパワー半導体への関わりは装置メーカとしてであ
り、その点からは現有の装置技術で対応可能である。
(2)大学や他メーカ(デバイス、半導体製造装置)等との連携、地域での取組み
 大学や研究機関との協業についても山口大学や東京理科大学、あるいは
Si のトクヤマなど個別のテーマでいろいろ進めているがその内容につい
ては開示できない。
(3)次世代パワー半導体に対応するための技術的課題
 半導体製造装置に関連して Si→SiC へのシフトに伴う対応に関しては、
(大きな変更点もなく)現状の技術力で対応が可能との認識である。
-181-
2.次世代パワ
ー半導体に関
する技術動向
および産業動
向について
(一般論とし
て)
3.次世代パワ
ー半導体によ
る中国地域の
産業振興策に
ついての具体
的な考え
(1)次世代パワー半導体普及のロードマップ
 SiC の成膜に関する問い合わせはここ数年来継続的にあるが、足元で増加
しているという印象でもない。各メーカが水面下で行っているため具体
的な状況は把握しかねる。
 (化学)ガスメーカ等を調査すれば状況が掴めるかもしれない。
(2)次世代パワー半導体の事業化への課題(技術・価格)
 メーカからの開発依頼の状況から技術課題は種々あるようである。また、
技術をオープンにすると中国等に模倣される状況から、メーカでは情報
公開・製品投入のタイミングを懸念されているようである。
(3)取引関係の変化の可能性
 パワーコンディショナに関して、小型化・低損失化は当社の顧客に対して
メリットとなりうる。
(1)次世代パワー半導体の適用が期待される製品
 基本的にはアプリメーカと接触はないので、何とも言えないところである
が、畜電装置や大電流変換装置が有望ではないか。
(2)次世代パワー半導体に関わる中国地域企業の有力な技術について
 備後地区の製造装置メーカと交流する機会は継続的にあるが、情報交換が
メインで、具体的な技術交流までにはいたっていない。詳細については
分らない。
(3)次世代パワー半導体開発におけるデバイスメーカ、研究機関との連携の
ありかた
 多くのメーカや大学等と連携はしているものの、基本となる技術、製造・
量産化に関する技術は内製化している。このように自社の技術力を高い
水準で維持することにより、ボイラをスタートとして現状の太陽光発電
分野へと事業展開できたのではないかと思う。
 人材育成の面でも入社 2~3 年の者でも海外商談会に参加させるなど積極
的に行っている。
(4)産業振興のための行政の役割、施策
 今の行政には先端技術を保持していくという気概がない。海外への人材流
出、円高、技術の模倣を看過している状況は、一企業では対応しきれな
い領域である。
-182-
(c)半導体ユーザ
⑳株式会社シンコー 総務本部 総務部 総務課 迫
ヒアリング日時
1.現状の取組
みについて
2.工場内設備
の状況、省エ
ネの取組みに
ついて
国臣 課長
2012 年 11 月 28 日
ヒ ア リ ン グ 結 果
(1)現状製作している製品ついて
 1938 年創業、船舶用のポンプ・タービンが主要製品で製品の約 80%、陸上
用の LNG ポンプ、バイオマスボイラのタービンが約 20%である。
 タンカー船の原油荷揚げ用 ポンプ(カーゴオイルポンプ)及び駆動ター
ビンでは、世界シェア 85%でトップである。
 ポンプの売上台数は、年間約 10,000 台、タービンが約 500 台。
 バイオマスボイラのタービンは国内では、ごみ処理場ボイラのバイオマス
ボイラ更新に伴い受注がある。年間 5 基程度である。海外でも、タイ、
インドネシアで、バカスやもみ殻を燃料とするバイオマスボイラのター
ビンを製作している。
 工場は広島市に 1 個所、隣接の府中町に 2 個所ある。営業所は東京支店、
神戸営業所、海外に 4 営業所(アムステルダム、バンコク、シンガポール、
上海)。
(2)今後開発に取組む製品について
 船舶用需要の低迷に加え、船舶用ポンプは、アメリカと韓国のメーカと
の価格競争が厳しくなってきている。船舶は CO2 排出量の多い重油船か
ら、LNG 船に移行が進んでいる。今後は LNG 関係の製品が主となると考え
ている。
 これまでのポンプ・タービンの製造技術を活かし、海上で採掘した FPSO
浮体設備による輸送ポンプの開発も検討している。
(3)製品開発での大学・研究機関との連携
 ポンプ・タービンの軸受けの研究を広島大学と行った。
(1)工場内の機械設備について
 3 工場で製造用の機械設備は多数ある。本社に隣接する大洲工場だけでも
クレーン約 30 台、ポンプ約 500 台、工作機械約 20 台。工作機械は 24 時
間稼働の機器もある。バイオマス発電設備にはファンもある(添付パンフ
レットの工場内写真参照)。
 製品の性能検査用に、検査時の起動電流の低減、機器の運用に合わせた電
圧、電流調整のため 3,000kVA のインバータを本年度大手電機メーカより
導入した。
 アンケートで“SiC パワー半導体で電力損失が7割減であれば工場内設備
のレトロフィットを実施し損失低減を図りたい”と回答した対象設備は多
数ある。具体的な品目というよりも機会があれば順次行いたいという趣旨。
(2)工場内での省エネの取組みについて
 上記のように多数の機器があるので、機器の運用状況を調査しインバータ
化、配管の漏洩を調べ補修等、省エネに取組んでいる。
 オフィスでは、公的な補助を受け、遮熱フィルムの設置、LED 照明化を行
った。工場内製造設備については補助制度は無いようである。
-183-
3.電力損失低
減効果のある
次世代パワー
半導体の導入
について
(1)工場内の設備で次世代パワー半導体の導入により電力損失低減が見込ま
れる機器について
 前項 2.(1)のように、工場内で電力損失低減がみこまれる機器は多数あ
る。クレーンについてはほぼインバータ化している。
 10 年前にインバータ化した機器も省電力化になれば、費用によるが次世
代パワー半導体でのインバータ化の対象となる。
(2)製造製品の船舶用タービン・ポンプ、環境製品への次世代パワー半導体
の導入の可能性について
 船舶用ポンプは、発電機によるモータ駆動の製品(タービン駆動でない製
品)はインバータ化の対象となる。年間約 10,000 台製造のポンプは対象
となる。EV ほどではないが台数はある。特殊なポンプはインバータ化し
ている。
 地球温暖化対策として船にも“ECO シップ”の導入が進んでおり、設備も
省エネ化が進むと思われる。
 ただし、モータの大半は発注元である造船メーカからの支給であるため、
基本的には当社から導入の可否は決定できない。よって、船舶に関する電
気設備については造船メーカにアプローチした方がよい。また、船舶設備
には特有の船舶規格があり(振動の許容値等)新製品導入には規格の準拠
が必要である。
 船舶の電気設備は船尾にあるが、人間が入る必要があり高温駆動で小型化
ということにはならない。
(3)次世代パワー半導体機器の導入の条件
 価格が主たる要因である。メリット計算の上での導入となるが、初期投資
の回収 5 年が目安である。よって損失低減や小型化のメリットを明示化し
てもらう必要がある。
(4)同業種の機械器具製造メーカでのパワー半導体機器の導入の可能性につ
いて
 上記(1)のように、当社と同様に製造用の機械設備は多数あると思われる。
価格により導入の可能性はあると思う。
(5)工場内の省エネ、また省エネ製品開発に当たっての行政、研究機関への
要望(補助、研究開発等)
 産業用機器の省エネ化については行政の補助制度が基本的には無いと認
識している。次世代パワー半導体機器の普及のためには何らかの制度があ
ってもいいのではないか。ちなみに設備導入においては、
(船舶という関
係から)日本財団(旧日本船舶振興会)の低利融資を活用している。
工場内の機械設備
製造製品:モータ駆動ポンプ
出典:シンコー パンフレットより抜粋
-184-
(4)ヒアリングのまとめ
ヒアリングでは中国地域におけるSiCパワー半導体に関する取組みとしては「①フェニ
テックセミコンダクターと広島大学を中心としたデバイス開発」および「②中央のデバ
イスメーカとの連携によるアプリケーション分野での研究開発」という大きく二つの流
れが見てとれた。
特に、フェニテックセミコンダクターに関しては、SiC-SBDにおいて早期の事業化を見
込んでいるが、大手電機メーカ以外では数少ない事例であり、地域における関係者の期
待も高かった。
一方ではSiCパワー半導体デバイスのユーザ側ではデバイスが流通せず、目に触れてい
ない研究者も少なくなかった。SiCパワー半導体の市場拡大に向け、ユーザ側での研究開
発を促進する意味でも、研究機関・企業等への積極的かつ早急なデバイスの提供(サン
プル提供を含め)が必要であると考えられる。
また、川上側であるウエハに関連しては、ウエハ製造自体は大規模な設備と既存メー
カとの競合関係上、中国地域での展開は困難であるが、ウエハの切断・研削・研磨等の
分野に関してはSiCに対応できる技術を有することが確認できた。一方、川下側でのモジ
ュール化に際しての部材等でも技術を有する企業を確認できた。
技術面・事業化面での課題ではウエハ価格や信頼性が共通的に語られているが、長期
的な視点では人材育成の観点から初等~高等教育の様々な局面でのパワーエレクトロニ
クス教育の重要性や海外需要への対応の際の「規格認証」等も対処が必要な問題として
提起された。
なお、詳細については「図表Ⅴ. 6 パワー半導体関係 ヒアリング調査概要」に取り
まとめを行った。
-185-
図表Ⅴ. 6 パワー半導体関係 ヒアリング調査概要(1-1)
ヒアリング先
①研究・事業
内容
②企業との連
携
①岡山大学
(岡山県岡山市)
工学部 機械工学科
岡本 康寛 助教
マルチワイヤ放電スライシング
トーヨーエイテックほか
③大学・研究
機関との連
携
④SiC(GaN)に
関連する技
術的課題
-
・マルチスライスの安定化
・スループットの向上
②広島大学
(広島県東広島市)
大学院 先端物質科学研究科
吉川 公麿
教授
黒木 伸一郎 准教授
SiC-SBD製作
③広島工業大学
(広島県広島市)
工学部 電子制御工学科
田中 武 教授
④電力中央研究所
(神奈川県横須賀市)
材料科学研究所
土田 秀一 上席研究員
スマートメータ、LED表示器、 エピタキシャル成長技術・欠陥
LED照明、充電器
評価
フェニテックセミコンダクター
(デバイス作製~技術員の大学
への派遣)
⑤鳥取環境大学
(鳥取県鳥取市)
環境情報学部
鷲見 育亮 教授
太陽光、風力等再生可能エネルギ
ーの高効率化
昭和電工
-
-
大阪大学(界面物性の数値解析) 広島大学、埼玉医科大学、北
東北大学(金属の特性)
九州学研都市
FIRSTプログラムで各大学、産総
研等と連携
・基板欠陥による耐圧のばらつ
き
・オーミック電極を形成する際、
カーボンが副生され高抵抗と
なる
・高温はんだの材料
・超厚膜、超高純度SiCエピ成長
・ドーピング制御と多層膜形成
・キャリア寿命向上、欠陥低減
-
-
-
性能が8割満たせば後は価格
で決まる
⑤SiC(GaN)の
価格につい
て
-
FA、自動車
-
劣悪な環境(超高温耐性がキー) スマートグリッド関係
⑥SiC(GaN)が
期待される
分野
-186-
-
-
○電力応用部門
・遮断器
・直流送電周波数変換器
・自励式直流多端子変換器
・ループコントローラ
○高温対応のコンデンサ、イン
ダクタンス
・モジュール等が露出で使用でき
る分野
・再生可能エネルギー関係(パネ
ルコントローラ、追尾式太陽光
発電システムの駆動装置、パワ
ーコンディショナ等の軽量化)
・宇宙空間
図表Ⅴ. 6 パワー半導体関係 ヒアリング調査概要(1-2)
ヒアリング
先
⑦SiC(GaN)
普及・事業
化・地域振
興に向け
た方向性
⑧中国地域
の期待さ
れる分
野・企業
⑨大学・研究
機関・企業
の連携の
あり方
①岡山大学
(岡山県岡山市)
工学部 機械工学科
岡本 康寛 助教
・現状は入口である材料分野を
Creeに抑えられ、アプリケーシ
ョンは進んでいない
・上流の“材料、下流の
“アプリ”が開発されないと
繋がらない
・大学でスライシング装置を有す
る(4 インチ対応)のは岡山大学
だけであり、大きな強み
②広島大学
(広島県東広島市)
大学院 先端物質科学研究科
吉川 公麿
教授
黒木 伸一郎 准教授
・デバイスのコスト低減、信頼性
向上
・ただし、パワーデバイス自体は
儲からない分野
・トーヨーエイテック
・非鉄金属(はんだ材料)
・新興製作所(研削・研磨)
・組立工場(後工程)
・ジャパンファインスチール(ス
ライスワイヤ)
・企業の一社での研究開発では限
界
・オープンイノベーションで、一
つの分野でも競合企業が参加
するような仕組みを作らない
-
といけない
・量産化に向け、研究者だけでな
く、企業の技術職員を巻き込ん
だ研究(試作ラインの構築等)
を行わなければ事業化は困難
③広島工業大学
(広島県広島市)
工学部 電子制御工学科
田中 武 教授
④電力中央研究所
(神奈川県横須賀市)
材料科学研究所
土田 秀一 上席研究員
⑤鳥取環境大学
(鳥取県鳥取市)
環境情報学部
鷲見 育亮 教授
・ローカルの研究者にはSiCデ ・電力応用はシステム規模が大き ・再生可能エネルギーは大電力化
バイス自体が目に触れるこ
いためでデバイスが高価でも
が進んでおり、次世代パワー半
とがないのが現状
利用に支障はない。価格よりも
導体の適用分野は多くなる
・中国地域内で自己完結する振
信頼度の分野
・再生可能エネルギーは、自然が
興策としては、フェニテック ・ただし、普及は電力応用よりも
豊かで既存のインフラの制約を
セミコンダクターにSiCデバ
鉄道等の民生需要の方が早い
受けない“農山村”から進展す
イスを作ってもらい、それを
のでは
るため、地域が主役となりうる
中国地域の研究者に無料(も
・製品の信頼性確保および普及の
しくは無料に近い額)で配布
ため、耐用年数保証の期間の提
して、技術的にどういうニー
示も必要
ズがあるかをマーケティン
グしたほうが良い
・擦り合わせが多く「うっとう
しい(全自動できない)」分
野が生き残る
フェニテックセミコンダクタ
ー
-
-
-
-187-
-
・研究機関はシーズの発掘、企業
はシーズの量産化という役割
の明確化が必要
・公設試験研究機関には、大学と
メーカの中間的な役割を果た
してもらいたい。開発した製品
の信頼性試験を行うなど、地方
の中小企業の事業化支援を希
望
図表Ⅴ. 6 パワー半導体関係 ヒアリング調査概要(1-3)
ヒアリング
先
⑩人材育成
教育活動
のあり
方・施策
⑪行政等へ
の期待・
要望
①岡山大学
(岡山県岡山市)
工学部 機械工学科
岡本 康寛 助教
②広島大学
(広島県東広島市)
大学院 先端物質科学研究科
吉川 公麿
教授
黒木 伸一郎 准教授
・中央の研究者による講演
・「半導体専門実践講座」の活用
【実施中】
・環境志向の若年者へのアプローチ
-
③広島工業大学
(広島県広島市)
工学部 電子制御工学科
田中 武 教授
〔高等教育〕
・中国地域の大学へのSiCデバ
イスの(無料)配布
・研究機関、メーカで古くなっ
た製造装置の配布
・ロボコン的なイベントでの
SiCデバイスの使用
・高専等での回路設計でのコンペ
・大学での寄付講座
〔初等教育〕
・小中学校へのSiデバイスの
(無料)配布
④電力中央研究所
(神奈川県横須賀市)
材料科学研究所
土田 秀一 上席研究員
パワー半導体は地味であるが、根気
のいる分野。農山村を抱える地域は
人材の供給地になりうる
-
FIRSTプログラムはフレキシブ
ルなプログラムで使い勝手が
いい
-
-
-
-188-
⑤鳥取環境大学
(鳥取県鳥取市)
環境情報学部
鷲見 育亮 教授
・研究内容を理解しての審査・評価
により、人材を見ての従来の発想
の延長線上にない自由度のある
補助金が必要
・
“日の丸半導体”
“半導体は産業の
コメ”の言葉を再認識し、業界支
援を望みたい
図表Ⅴ. 6 パワー半導体関係 ヒアリング調査概要(2-1)
ヒアリング
先
⑥島根大学
(島根県松江市)
総合理工学部
山本 真義 准教授
⑦松江工業高等専門学校
(島根県松江市)
電気工学科
渡邉 修治 准教授
⑧岡山大学
(岡山県岡山市)
大学院自然科学研究科 産業創
成工学専攻 塚田 啓二 教授
⑨中国職業能力開発大学校
(岡山県倉敷市)
生産情報システム技術科
平島 隆洋 教授
⑩津山工業高等専門学校
(岡山県津山市)
電気電子工学科
田辺 茂 教授
EV車用インバータ(主機・補
機)
、PHV車の充電器
・スイッチング損失低減回路設計
・太陽電池パネルよりバッテリ
ーへ非接触充電する回路の
設計
・マイクロイオンセンサ(代謝異
常判定や呼吸系、循環器系の判
定や術中、術後の管理)
・高機能水素センサ(燃料電池自
動車向けの水素ステーション
の水素漏洩・拡散検知システ
ム)
フェニテックセミコンダクター
(センサへSi-MOSFETを使用)
、シ
ャープタカヤ、三造試験センター
・RF帯およびマイクロ波帯を対象に、
増幅器や電力分配/合成器、方向性
結合器などのハイパワー回路
・半導体製造や液晶ディスプレイ製
造、薄膜シリコン太陽電池製造で
利用される高周波電源用の各種コ
ンポーネント
を設計・製作
アドテックプラズマテクノロジー、
ダイヘン
高電圧大容量パワーエレクトロ
ニクス
〔大電力の直流送電(HVDC)
、VBO
(Voltage Break Overfree)フリ
ー光サイリスタの研究 等〕
-
-
-
①研究・事業
内容
②企業との
連携
③大学・研究
機関との
連携
④SiC(GaN)
に関連す
る技術的
課題
⑤SiC(GaN)
の価格に
ついて
⑥SiC(GaN)
が期待さ
れる分野
デンソー、ローム、サンケン電
気、三菱農機、その他地元メー
カ
-
グリーンITプロジェクトの高
温実装部分に参画
島根大学
回路技術的に大きな問題はな
いと認識
・現状のソフトスイッチング回
路では部品点数の増加とコ
スト上昇が課題
・SiCになれば基礎的・シンプ
ルな回路構成が実現に
・GaNの大容量対応に伴い、SiC
の優位性は相対的に薄れて
いる
・価格がSiの 2 倍を切って 1.5
倍程度の低下により国プロ
が存続している期間でのSiC
の早期の普及が必要
【取組中】
・EV用インバータ
・農機用HV、船の電動モータ
(「堀川遊覧船の電動化」
「し
じみ漁の漁船の電動化」
)
・非接触電力システム(観光用
小型EV用)
【一般的】
・データセンタ
-
-
・回路設計側はデバイスさえあれば ・ウエハの大口径化と信頼性の向
有効活用出来る設計・製作技術を
上による大容量化への対応。
有している
・HVDC分野における海外メーカと
・人材面では設計者等の減少が懸念
の競争
・現状のコストでは、家電では採算
性が合わない。専ら産業用
-
SW電源すべて
-
自動車の酸素濃度測定(過酷な環
境での耐久性)
-189-
-
・次世代基地局用デバイス
・プラズマ発生装置
・計測評価装置
・医療用センサ
・工作機器(旋盤等の高速回転)
・デジカメの連続フラッシュ
HVDC(離島への送電、洋上風力か
らの送電等)に伴う装置
図表Ⅴ.6 パワー半導体関係 ヒアリング調査概要(2-2)
ヒアリング
先
⑦SiC(GaN)
普及・事
業化・地
域振興に
向けた方
向性
⑧中国地域
の期待さ
れる分
野・企業
⑨大学・研
究機関・
企業の連
携のあり
方
⑩人材育成
教育活動
のあり
方・施策
⑥島根大学
(島根県松江市)
総合理工学部
山本 真義
准教授
・インバータの周辺部材に地元
企業の部品(コンデンサ等~
出雲ムラタ、日立金属)を使
用し納品
・EV用インバータの知財を網羅
的に押さえたい
・出雲ムラタ、日立金属等周辺
部材メーカ
・地方でデバイスメーカは困難
・中央メーカの工場を誘致でき
ればベスト
デバイスメーカと一体となり、
周辺機器・部品の供給、共同し
てのアプリケーション開発が、
産業化にむけた連携になる
・パワエレ教育に関するベンチ
ャー企業を立上げ【実施中】
・「①島根県次世代自動車等技
術研究会」
、
「②島根県パワー
エレクトロニクス技術研究
会」に参画【実施中】
⑦松江工業高等専門学校
(島根県松江市)
電気工学科
渡邉 修治 准教授
-
⑧岡山大学
(岡山県岡山市)
自然科学研究科 産業創成工学専
攻 塚田 啓二 教授
⑨中国職業能力開発大学校
(岡山県倉敷市)
生産情報システム技術科
平島 隆洋
教授
⑩津山工業高等専門学校
(岡山県津山市)
電気電子工学科
田辺 茂 教授
・モジュール化・システム化して
いくことで、付加価値・競争力
を高めることが重要
・スマートグリッドの展開をベー
スに太陽電池パネル、新しいエ
ネルギーシステムの構築等にお
いて国の主導でコンソーシアム
を形成。
「晴れの国おかやま」と
いう気候にもマッチ
・SiCデバイスでインバータを作って
も価格競争で赤字
・アプリ先は「高周波電源」のよう
にSiベースでもニッチで競争優位
性が確保できる分野
・周辺素子を含めればニッチ市場を
取れる可能性
HVDCの変換装置を製造する日
本メーカは、自らデバイスを作
製していない。国内では需要が
継続的に発生しないのがネッ
ク
地域的な差異・優位性はないの
では
-
-
-
・パワー半導体~フェニテックセミ ・デバイスに関してはHVDCとの
コンダクター、城南マイクロデバ
関係性は薄い
イス、三社電機製作所、新興製作 ・周辺部材という点では樹脂を
所
含め参入できる余地がある
・その他~岡山村田製作所、タカヤ、
のではないか
タツモ、東洋電器
・材料~クラレ、三菱化学
-
-
-
-
・企業との研究を通じ、高周波関連
や組込みシステム関連の人材育
成・教育も実施
・高周波大電力に関するセミナーは
年間 50 時間開催
・BISTEC(備後半導体技術推進連合)
、
半導体ネットおかやまの役員に就
任
-
-190-
図表Ⅴ.6 パワー半導体関係 ヒアリング調査概要(2-3)
ヒアリング
先
⑥島根大学
(島根県松江市)
総合理工学部
山本 真義 准教授
⑪行政等へ
の期待・
要望
地元企業の規模・ラインナップ
等を踏まえ、適切な出口戦略を
策定(前述のインバータの作
製、前述の船、農機、観光等で
の活用)により適度な集積を図
るとともに、研究会の開催等な
どによる人材育成を含め持続
的な好循環を導出することが
重要
⑦松江工業高等専門学校
(島根県松江市)
電気工学科
渡邉 修治 准教授
-
⑧岡山大学
(岡山県岡山市)
自然科学研究科 産業創成工学専
攻 塚田 啓二 教授
⑨中国職業能力開発大学校
(岡山県倉敷市)
生産情報システム技術科
平島 隆洋 教授
⑩津山工業高等専門学校
(岡山県津山市)
電気電子工学科
田辺 茂 教授
海外でセンシング技術が広く展開
されているのは国の関与によると
ころが少なくない。米国のベンチ
ャー企業も恩恵に浴している。
(日
本のように)新しい分野・企業に
「民生用の製品を安く作れという
のは」無理な話
行政の補助は、スピード化を望みた
い
地域企業にとって新たな技術
に対応するには資金的な面で
困難。ベンチャーキャピタル等
による中小企業の支援が必要
-191-
図表Ⅴ.6 パワー半導体関係 ヒアリング調査概要(3-1)
ヒアリング先
①研究・事業内
容
⑪津山工業高等専門学校
(岡山県津山市)
電気電子工学科
長井 聡 准教授
⑫山口大学
(山口県宇部市)
大学院理工学研究科 情
報・デザイン工学系学域
田中 俊彦 教授
⑬フェニテックセミコンダクタ
ー株式会社(岡山県井原市)
谷 英昭
代表取締役副社長
石井 弘幸 生産本部技術部部長
伊藤 修三 生産本部 技術部 京都DC
⑭新電元工業株式会社
(広島県三次市)
大沢 裕
パワーエレクトロニクス
(SiC-SBD等のリカバリー損
失等の特性評価)
電力変換工学、太陽光発電ほ
か
( GaN-HEMT の イ ン バ ー タ 展
開に関する研究の回路設計
等)
SiC-SBD製作
(2013 年度内のSiC-SBDのサン
プル出荷を目指している。そのた
め 12 年度にはSiC用酸化炉、アニ
ール炉、13 年度はイオン注入装
置の導入を予定)
カスタムパワーモジュールの作
製
-
-
②企業との連携
-
③大学・研究機
関との連携
-
④SiC(GaN)に関
連する技術的
課題
⑤SiC(GaN)の価
格について
⑥SiC(GaN)が期
待される分野
・豊田中央研究所(JST CREST
を活用)
・地元企業 複数社
北海道大学(JST CRESTを活
用)
デバイスのスイッチングス
ピードに対応した回路設計
-
SiC-SBDなら 300V-15Aで 1,000
~ 1,500 円 程 度 で あ る が 、
MOSFETとなると 8,000 円となり
研究費の面で負担感
価格面で競争力があるのは
GaN on Si
ハイパワー、高速スイッチン ○ノーマリーオンでもいい
グでの使用が想定
インバータ
・ ・EVの非接触充電器
○デバイスの冷却のいらな
い用途
・H ・EVの車載インバータ
・
・セルインバータ
○
・車のエアコンのファン
広島大学
電子デバイス事業本部パワーモジュ
ール部広島分室
担当事業部長 兼 広島分室長代理
高エネルギー加速器研究機関
• ウエハメーカの品質状況が不 モ ジ ュ ー ル 化 の た め の 高 熱 伝
明確
導・高耐熱の材料の開発
・(エピ、インプラ、アニール以
外にも)SiC向けの製造装置を
開発されるようになれば、スル
ープット・品質向上、コスト低
減が期待
・対象製品が多い民生用の普及に ・SiCに関してはやはり価格が高
は、Siに対しSiC価格 2 倍と言
いのがネック
われるが現状では厳しい
・早期の普及は困難かもしれない
・故障しても支障の少ない民生機
が、価格低下と需要拡大の好循
器(エアコン)は品質の低下(耐
環の導出を
用年数 3 年程度)も許容して価 ・家電等への普及には 2020~
格低下の方策も
2025 年頃か
・モータ系のインバータ
・電力系統の分野
・音響装置
-
-192-
⑮株式会社山口光半導体研究所
(山口県宇部市)
杉浦 文彦 社長
・サファイア加工基盤の作製
・GaNテンプレート基板の作製
-
山口大学
・サファイア加工基板の品質・均
一性の確保
・GaN結晶成長における転位密度の
改善
(GaN向けには)Si基板の方が価格
的に有利との話もあるが、サファ
イアの価格も低下していることに
加え、Siの上にGaNを積んでまたSi
を取るという手間を考えれば、Si
に価格優位性があるとは思えない
自動車(EV)
図表Ⅴ.6 パワー半導体関係 ヒアリング調査概要(3-2)
ヒアリング
先
⑪津山工業高等専門学校
(岡山県津山市)
電気電子工学科
長井 聡 准教授
⑦SiC(GaN)
普及・事業
化・地域振
興に向け
た方向性
-
⑧中国地域
の期待さ
れる分
野・企業
-
⑨大学・研究
機関・企業
の連携の
あり方
⑩人材育成
教育活動
のあり
方・施策
⑫山口大学
(山口県宇部市)
大学院理工学研究科 情報・デ
ザイン工学系学域
田中 俊彦 教授
⑬フェニテックセミコンダクター株
式会社(岡山県井原市)
谷 英昭
代表取締役副社長
石井 弘幸 生産本部技術部部長
伊藤 修三 生産本部 技術部 京都DC
⑭新電元工業株式会社
(広島県三次市)
大沢 裕
・回路設計者等のユーザを念頭
に置いたデバイスの開発
・Si-IGBTが「使いやすく」、
「壊
れにくい」というのは次世代
パワーデバイスの普及には
難点
マツダグループはパワエレが
強いという印象
・現状の信頼度で産業分野での急速
な普及を期待するのは困難
・信頼度が優先されないが、SiCの特
性が活かせるようなアプリケーシ
ョンがあれば普及が加速
「テスト」に関しての企業対応は
遅れており、高温動作特性に対応
できる測定器や周波数追随性を改
善した測定器などSiC向けのパワ
ーモジュール測定器という分野が
新たに立ち上がる可能性
・ディスコ
・測定装置メーカ
GaN市場自体が確立しておらず先
行きを見通すのが困難
・パワー半導体企業は地域におい
て活動領域が狭く、自己完結的。
中国地域のパワー半導体関係者
が一堂に集うような機会があっ
てもいい
・部品メーカの連携では限界。モ
ータ、インバータの研究者・事
業者を中心に裾野を広げる連携
が必要
研究者(山口大学大学院理工学研
究科 只友一行教授)の研究進捗
に伴う技術移転の受皿としての
役割
-
-
-
共同研究プロジェクトでは現
実的な目標設定、明確な役割分
担、密な意思疎通が不可欠
-
現状のデバイスは通販等
で入手したものである
が、メーカ等からサンプ
ル提供等のアプローチが
あれば研究が捗る
-
時代的な流行に基づく学科の
改組は、電気電子工学の 3 本柱
を維持するために慎むべき
・SiCの事業展開においてはモジュー
ル、アプリに関する情報や回路設
計技術が必要
・社内人材育成の支援
-193-
⑮株式会社山口光半導体研究所
(山口県宇部市)
杉浦 文彦 社長
電子デバイス事業本部パワーモジュー
ル部広島分室 担当事業部長 兼 広島
分室長代理
-
図表Ⅴ.6 パワー半導体関係 ヒアリング調査概要(3-3)
ヒアリング
先
⑪行政等へ
の期待・要
望
⑪津山工業高等専門学校
(岡山県津山市)
電気電子工学科
長井 聡 准教授
⑫山口大学
(山口県宇部市)
大学院理工学研究科 情報・デザ
イン工学系学域
田中 俊彦 教授
半導体メーカとコンタクトする ・研究プロジェクトにおける実用
機会がなかなかない。繋ぎ役を行
化フェーズ面における自己負
政に期待
担分の撤廃、軽減
・研究プロジェクト終了後、事業
化の際の中小企業へのファイ
ナンス面での支援
・研究プロジェクトにおける企業
負担の費用における前払い
⑬フェニテックセミコンダク
⑭新電元工業株式会社
ター株式会社(岡山県井原市)
(広島県三次市)
谷 英昭
代表取締役副社長 大沢 裕
石井 弘幸 生産本部技術部部長
電子デバイス事業本部パワーモ
伊藤 修三 生産本部 技術部 京都DC
ジュール部広島分室 担当事業
部長 兼 広島分室長代理
・地域の中核的な役割であるエ ・行政は同じ半導体でもLED、ソ
ルピーダの今後の状況によ
ーラ、IC等に目が向き、パワー
っては地域半導体産業の全
半導体の重要性に対する理解
般的レベルダウンが懸念
が十分でなく、資源配分も少な
・行政には半導体産業における
い
情報共有機能の補完的な役 ・パワー半導体関係は地元の公設
割に期待
試でも試験装置が少なく、大
阪・九州方面に出向くこともあ
る。地域での充実期待
・三次地域はアクセス面では不
便。空港アクセス等の整備希望
-194-
⑮株式会社山口光半導体研究
所(山口県宇部市)
杉浦 文彦 社長
(大学発ベンチャーとしては)
大学設備の商用での使用を認
めてもらいたい
図表Ⅴ.6 パワー半導体関係 ヒアリング調査概要(4-1)
ヒアリング先
①研究・事業内
容
②企業との連
携
③大学・研究機
関との連携
④SiC(GaN)に
関連する技
術的課題
⑤SiC(GaN)の
価格につい
て
⑥SiC(GaN)が
期待される
分野
⑯ローム株式会社
(京都府京都市)
西日本営業第1ユニット 中村 孝司GL
SiCパワーデバイス製造部
伊野 和秀 副部長 ほか
⑰安田工業株式会社
(岡山県浅口郡里庄町)
田辺 洋始 取締役
鳥越 弘啓 産機部 産機管
理課 課長
⑱ローツェ株式会社
(広島県福山市)
崎谷 文雄 代表取締役社長
櫻井 俊男 監査役
⑲長州産業株式会社
(山口県山陽小野田市)
岡本 要
取締役社長
田尾 鋭司 技術担当課長
⑳株式会社シンコー
(広島県広島市)
迫 国臣
総務本部 総務部 総務課課長
SiC-SBD、SiC-MOSFET、all-SiCモ
ジュール
マシニングセンター(工作機
械)
・ウエハ搬送機
・
〔研究開発〕SiC基板向け大気
圧プラズマ熱処理装置の開
発
アドテックプラズマテクノロ
ジー、フェニテックセミコンダ
クター
・半導体製造装置(蒸着装置、ス
パッタ装置、CVD装置)
・太陽光発電システム
船舶用のポンプ・タービン、陸
上用のLNGポンプ、バイオマスボ
イラのタービン等
京都大学、大阪大学、同志社大学、 岡山大学ほか
立命館大学
広島大学
山口大学、東京理科大学
・SiC-SBD、MOSFETに関してはウエ
ハの欠陥の影響を受けないノウ
ハウを有していると自負
・IGBT等の大容量のデバイスへの適
用においてはキラー欠陥キャリ
アライフタイムの向上等の別の
課題があり存在があり、直ぐに製
品化というレベルではない
・SiC-SBDは 2、3 年前はSiの約 10
倍であったが、現在 3 倍程度ま
でになっている。
・民生用には、2 倍程度がベース
・価格が高価な産業機械では機能
上のメリットで採算レベルと認
識し、営業活動を強化
産業機械分野
・電源(サーバ、エアコン、各種
産機用)
・太陽光発電パワーコンディショ
ナ
・EV急速充電器
・各種産業機器(高周波電源・レ
ーザ発振器、高周波誘導加熱、
非接触充電)
・搬送機はSi→SiCでも影響な
し
・アニール時のウエハ破損はウ
エハの信頼性が影響してい
る可能性
・半導体製造装置(CVD)ではSi→ 機器導入時のメリット計算時の
SiCへのシフトに伴う対応に関 損失低減や小型化に伴うメリッ
しては、
(大きな変更点もなく) トが不明確
現状の技術力で対応可能
・高温対応のエピ成膜装置につい
ても需要が合えば対応
・事業化には価格が課題
・過去の電気製品の新技術普及
の状況(レコード→CD等)か
ら、価格はSiの 2 倍が目安
機器導入に伴うコスト回収期間
は 5 年が目途。そのためのコス
ト/ベネフィットが必要
-
-
・パワーコンディショナやインバ
ータ
(外部調達のためコンパクトで
低価格・高性能化を期待)
・畜電装置、大電流変換装置
ホンダ、日産自動車、APEI
-
SiCの切断・研削についてはイ
ンゴットの形状・厚さ等の詳細
な情報が不明確
-
-
-195-
トクヤマ
-
広島大学
-
図表Ⅴ. 6 パワー半導体関係 ヒアリング調査概要(4-2)
ヒアリング先
⑦SiC(GaN)普
及・事業
化・地域振
興に向けた
方向性
⑧中国地域の
期待される
分野・企業
⑨大学・研究
機関・企業
の連携のあ
りかた
⑩人材育成教
育活動のあ
り方・施策
⑪行政等への
期待・要望
⑯ローム株式会社
(京都府京都市)
西日本営業第1ユニット 中村孝司GL
SiCパワーデバイス製造部 伊
野 和秀 副部長 ほか
⑰安田工業株式会社
(岡山県浅口郡里庄町)
田辺 洋始 取締役
鳥越 弘啓 産機部 産機管理課
課長
工場内の機器用インバータ
⑱ローツェ株式会社
(広島県福山市)
崎谷 文雄 代表取締役社長
櫻井 俊男 監査役
-
ダイヤモンド形の砥石、放電加
工メーカ
-
自社開発、大学との共同研究で
開発してきたが、国プロ等への
参画はしてこなかった
-
-
⑲長州産業株式会社
(山口県山陽小野田市)
岡本 要
取締役社長
田尾 鋭司 技術担当課長
-
-
・地域の自動車メーカ、インバ
ータ等装置メーカに期待
・回路設計技術に関して中国地
域が他地域に比べ優位にある
という状況にはない
〔SiC関係の半導体製造装置に
ついては中国地域からの具体
的な依頼は来ておらず、ほとん
どが関東地域からの問い合わ
せ、製造依頼〕
多くのメーカや大学等と連携
はしているものの、基本となる
技術、製造・量産化に関する技
術は内製化
国プロでは、委託期間が終了す
ると、大学の研究者は研究開発
に積極的でなくなる。期間経過
後も研究開発を継続してもらい
たい
-
-
-
・中央の研究・技術情報の地域
での提供
・自社が所持する技術の中央の
研究機関等への情報発信
・規格認証に関して広島県独自
の規格認証の創設や、認証規
格取得時の費用面での補助等
を要望
・為替レート
-196-
自社の技術力を高い水準で維
持することにより、ボイラをス
タートとして現状の太陽光発
電分野へと事業展開へ繋げた
・今の行政には先端技術を保持
していくという気概がない
・海外への人材流出、円高、技
術の模倣を看過している状
況は、一企業では対応しきれ
ない領域
⑳株式会社シンコー
(広島県広島市)
迫 国臣
総務本部 総務部 総務課課長
・工場内の機器用インバータ
(インバータ化されていないモ
ータ等の存在)
・ECOシップ
-
-
-
産業用機器の省エネ化に関する
補助制度がほぼ無いと認識。次
世代パワー半導体機器の普及の
ためには何らかの制度があって
もいい
2.パワー半導体関連企業へのアンケート調査
(1)アンケート調査の目的
SiC パワー半導体の製造側に関連しては、中国地域におけるパワー半導体関連の要
素技術を持った企業、同分野への事業参入可能性のある企業や事業活動強化の意向を
持った企業等を発掘するとともに、全般的な参入課題や事業展開の方向性等を把握す
る。
SiCパワー半導体のアプリケーション側に関連しては、その使用が見込まれるユーザ
産業におけるパワー半導体の活用実態を把握するとともに、今後の活用意向、次世代
パワー半導体への期待・要望など、市場ニーズに関する項目を把握する。
(2)アンケート調査の実施概要
アンケート調査の実施概要は、以下図表V.7、9 のとおりである。
アンケートは「半導体製造側」、
「半導体ユーザ側」の二区分において実施した。それぞ
れ現状のパワー半導体の製造・使用状況を把握のうえ、SiCパワー半導体に関する現状認識、
課題、産業振興の方策等について調査を行った。
送付先は、
「半導体製造側」は、帝国データバンクによる半導体関連企業 773 社(図表V.
11 参照)
、産業タイムズ社による中国地域の半導体企業 66 社、および会社四季報による中
国地域以外のメーカ 159 社に送付した。
「半導体ユーザ側」は、帝国データバンクよる半導体関連企業 909 社、会社四季報によ
る中国地域以外のメーカ 163 社に送付した。
-197-
図表Ⅴ. 7 アンケート調査の実施概要(製造側)
1.パワー半導体関連産業の動向に関するアンケート調査(製造側)
中国地域におけるパワー半導体関連の要素技術を持った企業、同分野
への事業参入可能性のある企業や事業活動強化の意向を持った企業等を
発掘するとともに、全般的な参入課題や事業展開の方向性等を把握する。
目
的
資料:産業技術総合研究所
対
象
アンケー
中国地域におけるパワー半導体関連産業
具体的には、原材料、デバイス、製造装置、モジュール・周辺部材を
生産している企業および当該品目が該当する産業分類に属する企業
〔経済産業省商品分類表(小分類)
〕
21 窯業・土石製品 (2171 研磨材、2172 研削と石 ほか)
23 非鉄金属 (2341 電線・ケーブル、2399 他に分類されない非金属
(2399 29 シリコンウエハ(表面研磨を行う前のスライスしただけのも
の)ほか)
24 金属製品 (2464 電気メッキ、2465 金属熱処理 ほか)
26 生産用機械器具 (2652 化学機械・同装置、2661 金属工作機械、
2671 半導体製造装置、2693 真空装置・真空機器 ほか)
28 電子部品・デバイス・電子回路 (2813 半導体素子、2842 電子回
路実装基板、2899 その他の電子部品(2899 13 シリコンウエハ(表面
研磨したもの))ほか)
・773 社:帝国データバンク企業リスト、66 社:産業タイムズ社による
中国地域の半導体企業、159 社:会社四季報による中国地域以外のメー
カ
図表Ⅴ. 8 参照
ト項目
-198-
図表Ⅴ. 8 パワー半導体関連産業の動向に関する製造側アンケートフロー
(1)現状のパワー半導体分野について
業種(産業分類の小分類)
・品目の確認
①
要素技術(半導体製造プロセス上)の確認
②
③
パワー半導体関連分野への参入の有無・参入意向
④
今後参入
参入中
参入理由
今後の事業規模
⑤
無
調達先の国内・中国地域比率
販売先の国内・中国地域比率
(2)SiCパワー半導体分野について
無
⑥
SiCパワー半導体自体の認知
有
⑦
SiCパワー半導体のメリット・特性の認知
⑧
⑨
SiCパワー半導体全般の研究開発動向
(研究機関、大学、企業)の認知
自社のSiCパワー半導体の研究開発動向・開発意向
有・予定有
⑩
無
具体的な内容・品目・技術
⑪
研究開発を実施する理由
⑰
研究開発をしない理由
⑫
研究連携(希望)の有無
7
有⑬
7
研究連携(希望)先
⑭
設備投資(予定)額
⑮
投資回収期間
⑯
SiCパワー半導体の開発のための事業上の問題点
⑱
SiCパワー半導体の取組強化のための支援策
⑲
SiCパワー半導体に関する技術的課題
⑳
の構築
サプライチェーン上連携・事業連携に関するアイデア
SiCパワー半導体の中国地域で有望な分野
21
SiCパワー半導体に関する情報提供の希望
22
GaNパワー半導体自体の認知・特徴
23
ヒアリング対応の可能性の有無
-199-
図表Ⅴ. 9 アンケート調査の実施概要(ユーザ側)
2.パワー半導体の活用実態・ニ一ズに関するアンケート調査(ユーザ側)
今後の SiC パワー半導体のアプリケーションに関連し、その使用が見込ま
れるユーザ産業におけるパワー半導体の活用実態を把握するとともに、今後
の活用意向、次世代パワー半導体への期待・要望など、市場ニーズに関する
項目を把握する。
目
的
資料:ローム HP
全国・中国地域におけるパワー半導体の活用企業
電力、輸送、家電、情報、産業等の該当業種を想定
〔経済産業省商品分類表(小分類)
〕
25 汎用機械器具(2521 ポンプ・同装置、2532 エレベータ・エスカレータほか)
対
象
29 電気機械器具(2911 発電機・電動機・その他回転機器、2952 蓄電池 ほか)
30 情報通信機械器具 (3023 電気音響機械器具、3032 パーソナルコンピュー
タほか)
31 輸送機械器具(3111 自動車、3121 鉄道車両 ほか)
・909 社:帝国データバンク企業リスト、163 社:会社四季報による中国地
域以外のメーカ
項
目
図表Ⅴ.10 参照
-200-
図表Ⅴ.10
パワー半導体関連産業の動向に関するユーザ側アンケートフロー
(1)現状のパワー半導体分野について
①
事業内容・製造商品
②
製造品・設備へのパワー半導体の使用の有無
無
有
③
パワー半導体の調達先(国内・中国地域比率)
④
使用しているパワー半導体の種類
⑤
現状のパワー半導体(Si)の満足度
改善を希望する点
(2)SiCパワー半導体分野について
⑥
SiCパワー半導体自体の認知
無
有
⑦
SiCパワー半導体のメリット・特性の認知
⑧
SiCパワー半導体の利用実績・利用意向
有
⑨
具体的な内容・品目
無
⑩
利用する理由
⑪
使用しない理由
⑫
SiCパワー半導体の活用分野・機器、必要な研究開発
⑬
SiCパワー半導体の使用ための事業上の問題点
⑭
SiCパワー半導体の取組強化のための支援策
⑮
SiCパワー半導体利用のための技術的課題
⑯
6
サプライチェーン上連携・事業連携に関するアイデア
の構築
SiCパワー半導体の中国地域で有望な分野
⑰
SiCパワー半導体に関する情報提供の希望
⑱
GaNパワー半導体自体の認知・特徴
⑲
toku
ヒアリング対応の可能性の有無
-201-
図表Ⅴ.11
帝国データバンク企業リストによるアンケート送付先
1.製造側企業数(経済産業省商品分類 による)
経済産業省商品番号
経済産業省商品分類
2144 電気用陶磁器(がい子・セラミック製IC基盤)
2145 理化学用・工業用陶磁器(ファインセラミック)
2171 研磨材
2172 研磨と石
2161 炭素質電極
2169 その他の炭素・黒鉛製品
2251 銑鉄鋳物
2311 銅第一次製品・精錬品
2319 その他の非鉄金属一次製品・精錬品
2351 銅・同合金鋳物
2352 非鉄金属鋳物
2341 電線・ケーブル
2342 光ファイバーケーブル
2399 他に分類されない非鉄金属
2433 温風・温水暖房装置
2439 その他の暖房・調理装置
2465 金属熱処理
2464 電気メッキ
2469 その他の金属表面処理
2661 金属工作機械
2662 金属加工機械
2644 印刷・製本・紙工機械
2653 プラスチック加工機械・同付属装置
2651 鋳造機械
2652 化学機械・同装置
2671、2672、2815 半導体製造装置、フラットパネルディスプレイ製造装置、液晶パネル・フラットパネル
2691、2692 金属用金型・同部分品・付属品、非金属用金型・同部分品・付属品
2645 包装・荷造機械
2832 光ディスク・磁気ディスク・磁気テープ
2821 抵抗器・コンデンサ・変成器・複合部品
2823 コネクタ・スイッチ・リレー
2851 電源ユニット・高周波ユニット・コントロールユニット
2841、2842 電子回路基板、電子回路実装基板
2859、2599 その他ユニット部品、その他の電子部品・デバイス・電子回路
2811 電子管
2812、2813 光電変換素子、半導体素子
2814、2831 集積回路、半導体メモリメディア
【小 計】
鳥取県
2
1
0
0
0
0
1
0
0
0
0
1
0
0
1
0
1
3
1
4
3
0
0
0
2
1
10
0
0
5
6
0
7
11
2
2
1
65
島根県
岡山県
1
0
0
0
0
0
7
0
0
1
0
1
0
0
0
0
1
1
1
8
1
2
0
0
0
0
5
0
0
5
2
0
5
2
0
4
0
47
-202-
0
1
0
0
0
1
22
0
0
2
5
0
0
2
0
2
5
3
6
18
10
2
1
0
9
12
57
3
1
3
3
0
7
9
0
4
2
190
広島県
0
0
7
0
0
2
23
0
0
8
13
2
0
2
0
5
11
18
47
28
22
13
3
0
20
13
110
9
0
3
4
5
14
12
0
2
2
398
山口県
1
0
1
0
0
1
5
0
0
0
0
2
0
0
0
0
1
1
8
9
4
0
0
1
13
5
5
1
0
3
0
0
3
3
0
2
4
73
【合 計】
4
2
8
0
0
4
58
0
0
11
18
6
0
4
1
7
19
26
63
67
40
17
4
1
44
31
187
13
1
19
15
5
36
37
2
14
9
773
TDB業種
TDB主業業種細分類
コード
32414 電気用陶磁器製造
32415 理化学用・工業用陶磁器製造
32601 研磨材製造
32609 他の研磨材・同製品製造
32801 炭素質電極製造
32809 他の炭素・黒鉛製品製造
33201 銑鉄鋳物製造
33401 銅1次製錬・精製
33409 他非鉄金属1次製錬
33711 銅・同合金鋳物製造
33712 非鉄金属鋳物製造
33801 電線・ケーブル製造
33802 光ファイバー製造
33999 他の非鉄金属製造
34303 温風等暖房装置製造
34309 他の暖房等装置製造
34511 金属熱処理
34524 電気メッキ業
34529 他の金属表面処理
35411 金属工作機械製造
35412 金属加工機械製造
35641 印刷製本等機械製造
35661 樹脂加工機械等製造
35692 鋳造装置製造
35781 化学機械同装置製造
35693 半導体製造装置製造
35951 金型・同部品等製造
35961 包装・荷造機械製造
36617 磁気媒体製造
36621 IC除電子部品製造
36622 接続・切替部品製造
36623 SW電源等製造
36624 プリント回路製造
36629 その他電子部品製造
36631 電子管製造
36632 半導体素子製造
36633 集積回路製造
2.ユーザー側企業数(経済産業省商品分類 による)
経済産業省商品番号
経済産業省商品分類
2511 ボイラ
2512 蒸気機関・タービン・水力タービン
2513 汎用内燃機関
2519 その他原動機
2521 ポンプ・同装置
2522 空気圧縮機・ガス圧縮機・送風機
2532 エレベータ・エスカレータ
2533 物流運搬装置
2535 冷凍機・温湿調整装置
2915 配線器具・配線付属品
2911 発電機・電動機・その他回転機器
2912 変圧器類
2913、2914 電力開閉装置、配電盤・電力制御装置
2922 内燃機関電装品
2921 電気溶接機
2929 その他産業用電機機械器具
2931、2932、2933、2939 ちゅう房機器、空調・住宅関係機器・衣料衛生関連機器・その他民生用電気機械器具
2942 電気照明器具
2972 工業計器
2973 医療用計測器
2961 X線装置
2962 医療用電子応用装置
2969 その他電子応用装置
2951 蓄電池
2952 一次電池(乾電池等)
2999、2693 その他の電気機械器具、真空装置・真空機器
3011 有線通信機械器具
3012、3013 携帯電話・PHS電話、無線通信機械器具
3014 ラジオ受信機・テレビジョン受信機
3023 電気音響機械器具
3015 交通通信保安装置
2971、3031、3032、3033、3035、3039 電気計測器、電子計算機、パーソナルコンピュータ、外部記憶装置、印刷装置、表示装置、その他の付属装置
3022 デジタルカメラ
3111 自動車
3112 自動車車体・付随車
3113 自動車部分品・付属品(ガソリン機関等)
3131 船舶製造・修理
3134 船用機関
3121 鉄道車両
3122 鉄道車両用部分品
3141 航空機
3142 航空機用原動機
3149 その他航空機部分品・補助装置
3151 フォークリフトトラック・同部分品・付属品
3159 その他の産業用運搬車両・同部分品・付属品
【小 計】
鳥取県
島根県
岡山県
広島県
山口県
【合 計】
0
0
0
0
1
0
0
1
1
14
2
0
8
9
1
5
7
3
0
0
0
0
0
0
3
2
0
5
0
2
0
2
0
0
1
5
2
0
1
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
2
0
0
3
3
0
0
0
10
0
0
0
2
1
0
0
0
0
2
0
0
1
1
1
0
0
0
4
0
0
0
12
6
1
0
0
0
0
0
0
0
1
1
1
0
1
2
0
15
3
9
3
1
35
5
2
4
8
3
4
0
0
0
6
0
0
6
1
3
0
1
0
4
3
0
8
64
6
20
1
0
0
0
0
0
1
6
4
0
1
11
6
4
40
1
7
9
4
95
1
1
9
5
5
2
1
0
1
11
1
0
11
0
2
0
1
0
3
0
1
10
113
50
9
2
4
0
0
1
2
3
0
0
0
0
4
0
0
11
1
2
2
1
26
0
0
0
1
0
3
1
0
0
0
0
0
3
0
1
0
1
0
2
0
0
5
15
29
1
1
14
0
0
0
0
2
7
5
1
1
19
8
4
70
9
32
16
6
174
15
4
18
23
12
9
2
0
1
19
1
3
23
2
12
0
5
0
15
3
1
24
209
93
31
5
18
0
0
1
2
6
75
49
222
437
126
909
-203-
TDB業種
TDB主業業種細分類
コード
35101 ボイラー製造
35102 蒸気機関等製造
35103 汎用内燃機関製造
35109 その他の原動機製造
35711 ポンプ・同装置製造
35712 空気圧縮機等製造
35721 昇降機製造
35731 荷役運搬設備製造
35821 冷凍機空調装置製造
36111 配線器具等製造
36131 発電機電動機等製造
36132 変圧器類製造
36133 電力制御装置等製造
36141 内燃機関電装品製造
36191 電気溶接機製造
36199 他産業電気機器製造
36201 民生用電気機器製造
36502 電気照明器具製造
36702 工業計器製造
36703 医療用計測器製造
36802 X線装置製造
36804 医療用電子装置製造
36809 他電子応用装置製造
36901 蓄電池製造
36902 乾電池・湿電池製造
36909 他電気機械器具製造
36611 有線通信機器製造
36612 無線通信機器製造
36613 ラジオ・テレビ製造
36614 電気音響機器製造
36615 信号・保安装置製造
36801 電子計算機等製造
36803 ビデオ機器製造
37111 自動車製造
37121 自動車車体製造
37191 自動車部分品製造
37311 鋼船製造・修理
37331 舶用機関製造
37401 鉄道車両製造
37402 鉄道車両部分品製造
37601 航空機製造
37602 航空機エンジン製造
37609 他航空機部分品製造
37901 産業用運搬車両製造
37909 他輸送機械器具製造
(3)アンケートの回収結果
回収状況は、製造側は 998 社の郵送に対し 55 社回収で、回収率 5.5%である。中国
地域以外の中央メーカの回答は回収率が 3.1%と低い。
ユーザ側は、1072 社の郵送に対し 49 社回収で、回収率 4.6%である。同様に中国地
域以外の中央メーカの回収率は 1.8%と低い。
鳥取県
図表Ⅴ.12
アンケート
送付数(*2)
69(4)
島根県
製造側アンケートの回収割合
アンケート
回収数(*3)
アンケート
回収率
県別割合
3(-)
4.3%
6.0%
48(1)
2(1)
4.2%
4.0%
岡山県
215(25)
12(2)
5.6%
24.0%
広島県
418(20)
22(4)
5.3%
44.0%
山口県
89(16)
4(2)
4.5%
8.0%
その他(*1)
-
7(-)
-
14.0%
中国 5 県計
839(66)
50(9)
6.0%
中国地域外
159(-)
5(1)
3.1%
合計
998(66)
55(10)
5.5%
100.0%
*1:その他は所在県名が未記入の回答。*2:( )内は産業タイムズ社による
中国地域の半導体企業。*3:
(
鳥取県
)内はWEB回答分。
図表Ⅴ.13 ユーザ側アンケートの回収割合
アンケート
アンケート
アンケート
県別割合
送付数
回収数(*2)
回収率
75
5(-)
6.7%
10.9%
島根県
49
3(1)
6.1%
6.5%
岡山県
222
8(1)
3.6%
17.4%
広島県
437
25(1)
5.7%
54.3%
山口県
126
3(1)
2.4%
6.5%
その他(*1)
-
2(-)
-
4.3%
中国 5 県計
909
46(4)
5.1%
100.0%
中国地域外
163
3(1)
1.8%
1,072
49(5)
4.6%
合計
*1:その他は所在県名が未記入の回答。*2:( )内はWEB回答分。
-204-
(4)アンケート調査結果
a.製造側アンケート
問 1.貴社の主な業種を、以下商品分類表により選択ください(複数選択可)。
回答数 55 社のうち、生産用機械器具製造業が 15 社と多かった(業種未記入が 11 社有
り)。
図表Ⅴ.14
回答先の属性
番号
21 窯業・土石製品
2144
電気用陶磁器(がい子、セラミック製 IC 基盤)
1
2311
銅第一次製品・精錬品
2145
理化学用・工業用陶磁器(ファインセラミック)
2
2319
その他の非鉄金属一次製品・精錬品
1
2161
炭素質電極
2341
電線・ケーブル
1
2169
その他の炭素・黒鉛製品
2342
光ファイバーケーブル
2171
研磨剤
2351
銅・同合金鋳物
2172
研削と石
2352
非鉄金属鋳物
2399
他に分類されない非鉄金属
2399 29 シリコンウエハ(表面研磨を
行う前のスライスしただけのも
の)
1
分類 21 計
番号
2251
4
22 鉄鋼
銑鉄鋳物
分類 22 計
番号
番号
4
4
26 生産用機械器具
23 非鉄金属
2433
1
分類 23 計
番号
番号
2811
電子管
2645
包装・荷造機械
2812
光電変換素子
1
2651
鋳造機械
2813
半導体素子
3
2652
化学機械・同装置
2814
集積回路
2653
プラスチック加工機械・同付属装置
2815
液晶パネル・フラットパネル
2661
金属工作機械
5
2821
抵抗器・コンデンサ・変成器・複合部品
2662
金属加工機械
2
2822
音響部品・磁気ヘッド・小型モータ
2671
半導体製造装置
3
2823
コネクタ・スイッチ・リレ-
2672
フラットパネルディスプレイ製造装置
2831
半導体モメリメディア
2691
金属用金型・同部分品・付属品
2832
光ディスク・磁気ディスク・磁気テープ
2692
非金属用金型・同部分品・付属品
2841
電子回路基板
1
2693
真空装置・真空機器
2842
電子回路実装基板
2
分類 26 計
1
その他の暖房・調理装置
2439 12 太陽熱利用機器
電気メッキ
2465
金属熱処理
2469
その他の金属表面処理
分類 24 計
1
5
7
28 電子部品・デバイス・電子回路
印刷・製本・紙工機械
4
温風・温水暖房装置
2464
3
2644
1
2439
24 金属製品
15
2851
電源ユニット・高周波ユニット・コントロールユニット
2859
その他ユニット部品
その他の電子部品・デバイ
ス・電子回路 2899 13 シリ
コンウェハ(表面研磨したも
の)
2899
分類 28 計
-205-
1
3
11
問 2.
(1)パワー半導体製品(材料、デバイス、モジュール等)について。
「現状」および「今後」の貴社の製造製品に該当するものを以下から選択下さい
(複数選択可)
。
各製品とも無回答が多い。現在取組み中のメーカ(次頁図表Ⅴ.15 グラフの青)は中
央のメーカが多い。中国地域のメーカは、次のとおりで 6 社である。
①材料:1 社(広島県 研磨材)
②デバイス:ダイオード 2 社
(岡山県 半導体素子製造、山口県 半導体素子・小規模IC)
その他 1 社(岡山県 めっき加工)
③回路:インバータ 1 社(鳥取県 電子回路実装基板)
DC/DCコンバータ 1 社
(岡山県 電源ユニット・高周波ユニット・コントロールユニット)
モジュール開発中のメーカはない。
中国地域で、今後取組む計画の会社は、次のとおりである。
①デバイス:パワートランジスタ・IGBT
2社
②モジュール:IGBTモジュール・高耐圧モジュール・IPM 1 社
(島根県 半導体素子)
③回路:単相インバータ 1 社
(岡山県 電源ユニット・高周波ユニット・コントロールユニット)
交直変換器・交流電力調整装置 1 社(鳥取県 電子回路実装基板)
その他 モータ・コントローラ/ドライバ
1 社(広島県 半導体製造装置)
岡山県の金属表面処理業者 1 社からは材料・デバイス・モジュール・回路すべてに取
組むと回答があった。
-206-
図表Ⅴ.15
製造製品【材料、デバイス、モジュール等】 回答数 N=55
(社)
0
20
30
3 1
51
0-②インゴット製造
21
52
0-③ウェハ製造
21
52
0-①原料供給
材
10
40
50
料
0-④その他 1 0
54
4 1
1-①ダイオード
50
1-②サイリスタ 1 1
デ
1-③パワートランジスタ
バ
イ
ス 1-④パワーMOSFET
1-⑤ IGBT
1-⑥その他
53
3 2
50
3 1
51
3 2
50
30
52
2-①ダイオードモジュール 1 2
52
2-②サイリスタモジュール 1 1
53
モ 2-③トランジスタモジュール 1 1
ジ
ュ
ー2-④ MOSFETモジュール 2 1
ル
53
52
2-⑤ IGBTモジュール
2 2
51
2-⑥高耐圧モジュール
2 2
51
2-⑦ IPM 1 3
51
2-⑧その他 1 0
3-①単相インバータ
3-② DC/DCコンバータ
54
3 2
50
3 1
51
3-③サイクロコンバータ 0 1
回
路
・
ユ
ニ
ッ
ト
3-④三相インバータ
3-⑤整流回路
54
3 1
51
21
52
3-⑥直流チョッパー 1 1
53
3-⑦交直変換器 1 2
52
3-⑧交流電力調整装置 0 2
53
3-⑨その他 1 1
現在取り組んでいる
53
今後取り組む計画である
-207-
無回答
60
問 2.
(2)パワー半導体製造装置および技術分野について
半導体製造に関連して装置・技術分野を以下から選択下さい(該当する装置を製
造している場合は「1」
、今後製造予定は「2」
、装置は製造していないがそれに関
連する要素技術を所有する企業は「3」に○をしてください)。
各技術とも無回答が多い。
現在装置を製造しているメーカ(次頁図表Ⅴ.16 の青)のうち中国地域の企業は次の
4 社である。
①ウエハ加工装置・洗浄・乾燥装置
1 社(広島県 半導体製造装置)
②ウエハ加工装置・スパッタリング装置・搬送装置
1社
(岡山県 工業用セラミック半導体製造装置)
③その他薄膜形成装置 1 社(岡山県 電気メッキ・金属表面処理)
④搬送装置 1 社(広島県 半導体製造装置)
今後製造に取組むメーカは 3 社である。
①ウエハ加工装置・テスティング装置 1 社(岡山県 金属工作機械)
②熱処理装置 1 社(広島県 半導体製造装置)
③その他処理装置(真空印刷) 1 社(島根県 半導体素子)
各装置で、3~9 社要素技術を保有していると回答がある。
-208-
図表Ⅴ.16 製造製品【製造装置・要素技術】
回答数 N=55
(社)
0
ウ
用エ
装ハ
置製
造
10
20
30
1-①単結晶製造装置 10 3
1-②ウェハ加工装置
21
6
46
55
2-①露光・描画装置 0 5
50
2-②レジスト処理装置 0
6
49
2-③エッチング装置 0
6
49
2-④洗浄・乾燥装置
20
9
2-⑤熱処理装置 0 1
44
6
48
2-⑥イオン注入装置 0 4
51
2-⑦ CVD装置 0 5
50
2-⑧スパッタリング装置
2-⑨その他薄膜形成装置
10
7
47
10 6
48
2-⑩ CMP装置 0
6
49
2-⑪その他処理装置 0
55
3-①ダイシング装置 1 0 4
50
組
立 3-②ボンディング装置 1 0 5
用
装
置 3-③パッケージング装置 1 0 4
49
50
3-④その他処理装置 0 1 0
検
査
用
装
置
4-①テスティング装置
関
連
装
置
54
11
5
4-②その他処理装置 0
5-①搬送装置
48
55
30 5
47
7
48
5-②純水・薬液装置 0
5-③各種ガス装置 0 5
50
5-④クリーンルーム装置 0 6
49
5-⑤その他処理装置 0
50
51
1-③その他処理装置 0
ウ
ェ
ハ
プ
ロ
セ
ス
用
処
理
装
置
40
55
現在装置製造に取り組んでいる
今後装置製造に取り組む予定である
装置を製造する予定はないが、関連する要素技術は所有している
無回答
-209-
60
問 3.問 2(1)、
(2)で「1.現在取組んでいる」とお答えの方にお聞きします。
今後の事業規模をどのように考えておられるでしょうか?
開発に取組んでいると回答のあった 14 社のうち、50%の 7 社が事業を拡大すると回答が
あった。中国地域では、鳥取県が 1 社、岡山県が 2 社、広島県が 3 社である。
図表Ⅴ.17
今後の事業規模
回答数 N=14
無回答
(3社)
21.4%
わからない
(1社)
7.1%
拡大する
(7社)
50.0%
縮小する
(2社)
14.3%
変らない
(1社)
7.1%
問 4.問 2(1)
、
(2)で「2.今後事業へ取組む計画である」とお答えの方にお聞きします。
新規に事業に取組まれるのは以下のどの理由によるものでしょうか。
該当のない場合は、その他に理由を記述下さい(複数選択可)
。
回答のあった 7 社の今後事業に取組む理由は、“技術開発、研究開発の成果”が 4 社、
“取引先の事業拡大”、
“他社との連携で技術力、生産性向上”が 3 件で多い。
その他は、
“今後大きくなる市場と予測したから”であった。
図表Ⅴ.18
今後の事業規模
回答数N=7(複数回答)
(社)
5
4
4
3
3
3
2
2
1
1
1
そ
の
他
無
回
答
1
0
技
術
開
の 発
成 、
果 研
究
開
発
取
引
先
の
事
業
拡
大
低
コ
ス
ト
化
の
実
現
海
外
製
品
に
勝
る
新
規
事
業
化
行
政
の
支
援
に
よ
る
-210-
技
術
力
、
生
産
性
向
上
他
社
と
の
連
携
で
問 5.問 2(1)、(2)で今後事業への「1.現在取組んでいる」とお答えの方にお聞きしま
す。デバイス等製作にあたっての材料・資材の国内と中国地域の調達先の比率、
およびデバイス等製品の販売先の国内と中国地域の取引の比率を選択下さい。
回答のあった 14 社は、材料・資材の調達先、製品の販売先とも中国地域の比率は 20%
以下が多い。
図表Ⅴ.19
(1)材料・資材の調達先の比率
0%
国内の比率
20%
1 0 1
1
中国地域の比率
(鳥取、島根、岡山、
広島、山口県)
図表Ⅴ.20
40%
60%
4
回答数 N=14
80%
3
5
1 0 1 0 1
100%
4
2
4
20%以下
0~20%
20~40%
40~60%
60~80%
80%以上
わからない
無回答
今後の事業規模(2)製品の販売先の比率
0%
国内の比率 0 1
中国地域の比率
(鳥取、島根、岡山、
広島、山口県)
20%
40%
0
6
2
5
0 1 0
60%
80%
2
5
20%以下
0~20%
20~40%
40~60%
60~80%
80%以上
わからない
無回答
-211-
回答数 N=14
100%
3
3
2.SiCパワー半導体について
問 6.SiC パワー半導体が研究開発されていることをご存知ですか?
回答のあった 55 社の約 40%の 21 社が SiC について知識がある。
図表Ⅴ.21
SiCの認識度
回答数 N=55
無回答
(14社)
25.5%
はい
(21社)
38.2%
いいえ
(20社)
36.4%
問 7.問 6 で「1.はい」とお答えの方にお聞きします。
SiC パワー半導体の特性等についてご存知ですか?(複数選択可)
回答のあった 21 社の SiC の特性についての認識のうち、もっとも多いのは“機器の
電力損失が低減”の 18 件であり、もっとも少ないのは“高速スイッチングが可能”の 9
件である。
図表Ⅴ.22
SiCの特性の認識度
回答数 N=21(複数回答)
(社)
20
18
16
14
12
10
8
6
4
2
0
18
15
13
15
14
9
0
機
器
が の
低 電
減 力
損
失
機
器
サ
イ
ズ
が
縮
小
対
応
が
可
能
大
容
量
領
域
へ
の
高
温
動
作
が
可
能
へ
の
応
用
が
期
待
(
太
陽
光
、
風
力
等
)
-212-
新
エ
ネ
ル
ギ
ー
機
器
高
速
ス
が
イ
可
ッ
能
チ
ン
グ
そ
の
他
1
無
回
答
問 8.問 6 で「1.はい」とお答えの方にお聞きします。SiC パワー半導体の開発について
知っている研究機関、企業等の取組があればお答えください(複数選択可)
。
回答のあった 21 社のうち、
“企業による研究開発・製造”が 14 件と多い。
国のプロジェクトについては 3 件で、
中国地域のメーカは 1 件(NEDO グリーン IT プ
ロジェクト)である。
研究機関、企業名として、
“産業技術総合研究所”
、
“京都大学”、
“広島大学”、
“三菱
電機”
、“ローム”
、
“富士電機”、“富士通”
、
“東芝”、
“昭和電工”があげられた。
図表Ⅴ.23
SiC 開発の研究機関、企業等認識度
回答数 N=21(複数回答)
(社)
16
14
14
12
10
7
8
7
6
4
3
2
0
シ
ア
研 ム
究 に
よ
る
に
よ
る
コ
ン
ソ
ー
国
プ
ロ
ジ
ェ
ク
ト
大
学
・
研研
究究
機
関
の
研
究
開
発
・
製
造
-213-
企
業
に
よ
る
無
回
答
問 9.問 6 で「1.はい」とお答えの方にお聞きします。SiC パワー半導体の利用について
研究開発等の取組を実施されていますか?
回答のあった 21 社の内、SiC の研究開発に取組んでいるメーカが 5 社ある。中国地域
のメーカは次の 3 社である。
①岡山県:工業用セラミック・半導体製造装置
②岡山県:電源ユニット・高周波ユニット・コントロールユニット
③岡山県:半導体素子
計画・検討中の 4 社は中国地域の企業で次の 4 社である。
①岡山県:電気メッキ・金属表面処理
②岡山県:金属工作機械
③岡山県:電子部品・デバイス・電子回路製造(シリコン材料)
④広島県:金属表面処理
関心があるの 6 社は中国地域の企業で次の 6 社である。
①鳥取県:電子回路基板・電子回路基板実装、電源ユニット・高周波ユニット・コ
ントロールユニット
②島根県:半導体素子
③島根県:シリコンウエハ研磨加工
④岡山県:金属表面処理
⑤広島県:半導体、フラットパネルディスプレイ製造装置、真空装置・真空機器
⑥山口県:理化学用・工業用陶磁器
図表Ⅴ.24
SiCの研究の取組み状況
回答数 N=21
無回答
(0社)
0.0%
取り組んでいる
(5社)
23.8%
関心がない
(6社)
28.6%
計画・検討中
(4社)
19.0%
関心がある
(6社)
28.6%
-214-
問 10.問 9 で「1.取組んでいる、2.計画・検討中、3.関心がある」とお答えの方にお聞
きします。該当の製品・製造装置を選択下さい。
回答のあった 15 社の内、中国地域では次の 4 社がSiCの製品の開発に取組んでいる(次
頁図表Ⅴ.25 の青)
。
①材料:ウエハ製造 1 社(岡山県 工業用セラミック・半導体製造装置)
原料供給・インゴット製造・ウエハ製造 1 社
(岡山県 電子部品・デバイス・電子回路)
②デバイス:ダイオード 1 社(岡山県 半導体素子)
③回路:DC/DCコンバータ・その他(大型リチウム電池用保護)1 社
(岡山県 電源ユニット・高周波ユニット・コントロールユニット)
計画・検討中は次の 2 社があった。
①デバイス・モジュール:めっき 1 社(岡山県 電気メッキ・金属表面処理)
②回路:単相インバータ 1 社
(岡山県 電源ユニット・高周波ユニット・コントロールユニット)
回答のあった 15 社の内、製造装置について中国地域においては、次の 3 社がSiCの製
品の開発に取組んでいる(図表Ⅴ.26 の青)。
①ウエハ加工装置・スパッタリング装置・搬送装置
1社
(岡山県 工業用セラミック・半導体製造装置)
②ウエハ加工装置・単結晶製造装置
1社
(岡山県 電子部品・デバイス・電子回路)
③熱処理装置 1 社(岡山県 電気メッキ・金属表面処理)
同じく計画・検討中は次の 2 社があった。
①搬送装置 1 社(広島県 半導体製造装置)
②CVD装置 1 社(岡山県 電気メッキ・金属表面処理)
-215-
図表Ⅴ.25 SiCの開発の取組み状況(1)製品
回答数 N=15
(社)
0
材
5
10
0-①原料供給
2
0 1
12
0-②インゴット製造
2
0 1
12
15
料
0-③ウェハ製造
3
0
15
0-④その他 0
デ
バ
イ
ス
1-①ダイオード
2
0
1-②パワートランジスタ
1 0
2
1-③パワーMOSFET
2
0
1-④ IGBT 0
11
2
12
11
2
11
4
1-⑤その他
2
0
2
11
2-①ダイオードモジュール
2
0
2
11
2-②トランジスタモジュール
1 0
2
2
0
モ2-③ MOSFETモジュール
ジ
ュ
ー
2-④ IGBTモジュール 0
ル
12
11
2
11
4
2-⑤高耐圧モジュール
2
0
2
11
2-⑥ IPM
2
0
2
11
14
2-⑦その他 0 1 0
3-①単相インバータ
2
3-② DC/DCコンバータ
回
路
・
ユ
ニ
ッ
ト
10
2
3
3-③サイクロコンバータ
1 0
3-④三相インバータ
2
3-⑤整流回路
3-⑥直流チョッパー
1
11
0 1
11
1
14
12
0 1
1 0 1
1 0
13
14
3-⑦交直変換器
1 0 1
13
3-⑧交流電力調整装置
1 0 1
13
3-⑨その他
1 0
取り組んでいる
14
計画・検討中
-216-
関心がある
無回答
20
図表Ⅴ.26
SiCの開発の取組み状況(2)製造装置
回答数 N=15
(社)
0
ウ
用エ
装ハ
置製
造
5
1-①単結晶製造装置
2
1-②ウェハ加工装置
1-③検査評価装置
01
3
0
10
10
14
15
10
14
2-②レジスト装置
10
14
101
13
101
13
2
01
10
1
12
14
10
2
13
01
12
10
14
2-⑦エピタキシャル装置
10
14
2-⑧検査評価装置
10
14
2-⑨ CMP装置
10
14
2-⑩その他 0
3-①ダイシング装置
組
立 3-②ボンディング装置
用
装 3-③パッケージング装置
置
3-④検査評価装置
15
101
13
101
13
101
13
101
13
3-⑤その他 0
15
4-①テスティング装置
101
4-②ブロービング装置
10
13
14
4-③ハンドラ
101
13
4-④エージング装置
101
13
4-⑤その他 0
5-①搬送装置
関
連
装
置
2
2-①露光・描画装置
2-③エッチング装置
ウ
2-④洗浄・乾燥装置
エ
ハ
2-⑤熱処理装置
プ
ロ
セ
2-⑥イオン注入装置
ス
用
2-⑦ CVD装置
処
理
装 2-⑦スパッタリング装置
置
2-⑦真空蒸着装置
5-②純水・薬液装置
15
12
1-④その他 0
検
査
用
装
置
10
15
2
10
12
101
13
5-③各種ガス装置
10
14
5-④クリーンルーム装置
10
14
5-⑤その他 0
取り組んでいる
15
計画・検討中
-217-
関心がある
無回答
20
問 11.問 9 で「1.取組んでいる、2.計画・検討中、3.関心がある」とお答えの方にお聞
きします。SiC パワー半導体分野に進出意向は次のどの理由によるものでしょう
か?(複数選択可)。
回答のあった 15 社の内のSiCパワー半導体分野進出の意向は、
“既存技術をもとに技術
開発を行えば市場進出可能”が 8 件、
“既存の顧客関係、販路等の活用可能”が 6 件で多
い。
その他の回答には、
“通常の金属加工屋では、加工不可能!非常に高い能力が必要”
“オンリーワンをもつ迄やる。それは出来ると考えているのでよくよく検討してみたい”
“他社と差別化でき、高い成長性が期待できる新規事業。既存の顧客とは異なるが、既存
事業との関連は強い”があった。
図表Ⅴ.27
SiCの開発進出の意向
(社)
9
回答数 N=15(複数回答)
8
8
7
6
6
5
5
5
4
4
3
2
1
0
0
利
用
可
能
生
産
プ
ロ
セ
ス
を
現
状
の
製
造
品
や
市
場
進
出
可
能
技
術
開
発
を
行
え
ば
既
存
技
術
を
も
と
に
販
路
等
を
活
用
可
能
既
存
の
顧
客
関
係
、
新
規
事
業
と
し
て
有
望
-218-
高
い
成
長
性
等
か
ら
関
連
性
は
薄
い
が
、
既
存
事
業
と
の
そ
の
他
無
回
答
問 12.問 9 で「1.取組んでいる、2.計画・検討中、3.関心がある」とお答えの方にお
聞きします。SiC パワー半導体分野に進出のため、他機関(大学等)
、企業と共同
研究の実施の希望はありますか?
回答のあった 15 社の内、大学・企業との共同研究は、8 社が実施中(中国地域 6 社)
、
中国地域の 4 社が、今後実施を希望している。
図表Ⅴ.28 SiCの開発にあたっての大学・企業との研究の要望
回答数 N=15
無回答
(0社)
0.0%
ない
(3社)
20.0%
既に共同研究
を実施中
(8社)
53.3%
今後実施
を希望
(4社)
26.7%
問 13.問 12 で「1.既に共同研究を実施中」、
「2.今後実施を希望」とお答えの方にお聞
きします。連携先または連携希望先を回答ください(複数選択可)
。
回答のあった 12 社の共同研究先は、“半導体ユーザ企業”
、
“大学”が 7 件で多い。
その他の回答には、
“研究者”、
“現在SiCの研究に少しかかわっている”
、
“サプライヤ”
があった。
図表Ⅴ.29
SiCの開発・研究にあたっての連携先について
(社)
8
7
回答数 N=12(複数回答)
7
7
6
5
4
4
3
3
3
2
2
1
1
0
大
学
研
究
機
関
半
導
製
体
造
デ
企
バ
業
イ
ス
半
導
企 体
業 ユ
ー
ザ
ー
-219-
海
外
企
業
そ
の
他
無
回
答
問 14.問 9 で「1.取組んでいる、2.計画・検討中、3.関心がある」とお答えの方にお聞き
します。SiC パワー半導体関連の新規事業に取組まれる場合、設備投資額はどれく
らいをお考えでしょうか。
回答のあった 15 社のSiCパワー半導体の開発投資額は、中国地域では 1,000~5,000 万
円未満が 3 件で多い。1 億円以上も中国地域で 1 件ある。
図表Ⅴ.30
0%
0 1
SiCの開発の投資額について
20%
1
40%
3
回答数 N=15
60%
1
80%
4
100%
5
100万円未満
100万円以上~500万円未満
500万円以上~1,000万円未満
1,000万円以上~5,000万円未満
5,000万円以上1億円未満
1億円以上
わからない
無回答
問 15.問 9 で「1.取組んでいる、2.計画・検討中、3.関心がある」とお答えの方にお聞
きします。設備投資をする場合、どの程度の回収期間なら実施可能と考えます
か?
回答のあった 15 社のSiCパワー半導体の開発回収は、
“1~4 年程度”が 6 件、
“5~9 年
程度”が 8 件に二分された。
図表Ⅴ.31
0%
SiCの開発への投資回収について
20%
0
40%
60%
8
80%
6
回答数 N=15
100%
1 0
投資回収できれば15年を超えても実施
10~15年程度で投資回収できれば実施
5~9年程度で投資回収できれば実施
1~4年程度で投資回収できれば実施
その他
わからない
無回答
-220-
問 16.問 9 で「1.取組んでいる、2.計画・検討中、3.関心がある」とお答えの方にお聞
きします。SiC パワー半導体関連の取組強化や新たな事業進出を図る上での問題
点、課題につき回答下さい(複数選択可)
。
回答のあった 15 社のSiCパワー半導体開発・事業進出にあたっての課題は、
“技術開発・
事業企画等の人材不足”
、
“SiC市場や取引先等に関する情報不足”が 8 件、“開発投資・
生産設備の資金不足”、
“技術課題、技術発展性に関する情報不足”が 7 件で多い。
その他の回答には、
“ SiCの具体的製品の性能がまだまだ満足いかない”
“研究開発に欠かせないのは、その次に目標となる技・能・品。レベルと課題をも
視野に入れた研究開発であることも重要である”
“Siデバイスに対し、いかに価格差(コスト差)を小さくできるか”
があった。
図表Ⅴ.32 SiCの開発・事業進出にあたっての問題点・課題
(社)
9
8
7
6
5
4
3
2
1
0
8
回答数 N=15(複数回答)
8
7
7
4
3
3
1
の
人
材
不
足
技
術
開
発
・
事
業
企
画
等
に
関
す
る
情
報
不
足
S
i
C
市
場
や
取
引
先
等
の
資
金
不
足
開
発
投
資
・
生
産
設
備
に
関
す
る
情
報
不
足
技
術
課
題
、
技
術
発
展
性
に
関
す
る
情
報
不
足
-221-
企
業
・
大
学
等
の
連
携
先
制
度
に
関
わ
る
情
報
不
足
活
用
で
き
る
公
的
支
援
そ
の
他
無
回
答
問 17.問 9.で「4.関心がない」とお答えの方にお聞きします。利用・開発をされない
理由につき回答下さい(複数選択可)。
回答のあった 6 社のSiCパワー半導体の開発に取組まない理由は、
“技術的な開発情報
が入ってこない”、“設備投資・開発投資への対応が困難”、
“対応できる人材がいない”
が各 2 件である。
その他の回答には、
“業種上、基板に実装する部品のみなので”、
“事業所の集約”があ
った。
図表Ⅴ.33
SiCの開発に取組まない理由
回答数 N=6(複数回答)
(社)
3
2
2
技
術
入
的
っ
な
て
開
こ
発
な
情
い
報
が
設
へ備
の投
対資
応 ・
が開
困発
難投
資
2
2
2
1
0
0
0
0
市
場
動
向
が
不
透
明
対
応
が
で
い
き
な
る
い
人
材
-222-
他
を
の
行
材
っ
料
て
の
い
研
る
究
そ
の
他
無
回
答
問 18.問 6.で「2.いいえ」
、問 9.で「4.関心がない」とお答えの方にお聞きします。
同封の「SiC パワー半導体リーフレット」をご覧になり、SiC パワー半導体をど
のような分野・機器で活用できるとお考えでしょうか?また、そのためにどのよ
うな研究開発が必要とお考えでしょうか?
産業機械、インバータ、太陽光、自動車等多くの機器で活用可能の意見があった。機
器以外で、
“製造工程の省エネ化”もあった。
図表Ⅴ.34
SiCパワー半導体の活用できる機器・分野について
1
知識が不十分なため、コメントを控えます。(広島県
2
半導体装置関連事業より既に撤退しており、不明です。(岡山県
3
4
5
6
7
化学機械・装置)
限られた資源であるから、やはり発電関係の活用(例えば太陽光発電)に期待出来るので
は。(鳥取県
太陽光発電基板)
産業用コンプレッサのような発熱、高消費電力のような機器(広島県
金属用金型製造)
インバータ等、試作品が出来ている分野は製品化も有望と考える。製造段階で高温処理を
必要としているので、この点が問題とならないのか?(広島県
金属表面処理)
今後電気化が進む自動車分野等。分散型ではなく集中型での研究開発が必要。(広島県
金
属表面処理)
エネルギー節約技術であるので、販売価格が安価であること。電気を使う全ての産業。(広
島県
セラミック資材販売)
8
鉄道車輌~白物家電・製品の歩留まり(広島県
9
全ての産業、電子機器(岡山県
10 電力系のインバータ(山口県
金属工作機械製造)
半導体製造装置)
プリント基板製造)
11 コンタミ防止製造機器長寿命化(岡山県
12
機械工作器具製造)
金属表面処理)
自動車(ハイブリット、電気自動車等)、産業関係等半導体製品製造技術(プロセス、コ
スト、生産性)(山口県
半導体デバイス製造)
13 輸送機械に使用することが研究のテンポが上がると思われます。(広島県
14 設備省電力化。製造工程の省エネ化。(広島県
-223-
研磨材製造)
銅合金鋳造)
問 19.SiC パワー半導体は国内産業の成長が見込まれる分野として、国が研究開発支援
を行っています。今後事業化する場合、どのような施策が有効また必要とお考え
でしょうか?(複数選択可)
。
回答のあった 15 社のSiCパワー半導体開発に対する必要施策は、
“技術力向上の支援(研
修会等)
”が 9 件、
“連携企業とのマッチング”が 8 件となっている。
図表Ⅴ.35
(社)
10
9
8
7
6
5
4
3
2
1
0
SiC開発に対する必要施策について
回答数 N=15(複数回答)
9
8
6
4
4
3
連
携
企
業
と
の
マ
ッ
チ
ン
グ
支
援
制
度
の
情
報
提
供
大
学
等
の
研
究
者
の
紹
介
開
発
の
プ
立
ロ
ち
ジ
上
ェ
げ
ク
ト
技
術
(
研力
修向
会上
等の
) 支
援
(
広
報人
、 材
企確
業保
説の
明支
会援
等
)
0
0
0
0
0
研
究
研
機
( 究
関研機
へ究関
の者と
技のの
術派交
者遣流
派、 支
遣
援
等
)
金
融
機
関
と
の
マ
ッ
チ
ン
グ
製
品
紹
介
の
場
の
提
供
そ
の
他
無
回
答
問 20.
(主にご研究中の方に)SiC パワー半導体製造のための技術的課題があれば記述し
てください。
次の意見があった。
図表Ⅴ.36
SiCパワー半導体製造の技術的課題
1
生産技術の向上(工具類)(岡山県
窯業)
2
パワーデバイスは回路が簡単で後進国に追いつかれる心配がある。(広島県
3
ゲート酸化膜の信頼性向上。オーミック電極。(岡山県
半導体製造)
半導体製造)
Si を例にとると(1)①切断②加工③洗浄 etc1 ヶ所でやれること。
(2)現在の 2 倍の切断、加
4
工、洗浄レベルに上げる。
(3)洗浄液=汚染→再付着を再付着ナシのレベルへ。(4)効率 UP。
(5)エッチングの不用化(非エッチング化)(6)金属汚染除去のレベルの向上化技・能の研
開。
(広島県
金属表面処理)
5
基礎研究が足りない。まだ先の見えないパワー半導体に力を入れすぎ。
(岡山県
6
購入する SiC 基板の低コスト化、高品質化(中央メーカ)
半導体製造)
① Si デバイスに対し、いかに価格差(コスト差)を小さくできるか。
7
② デバイスとしての大きな課題はなくなりつつある。Si と同様に性能向上は永遠のテーマ。
③ ①にかかわるが、ウエハの大口径化とウエハ製造コストを下げながら実施。(中央メーカ)
-224-
問 21.SiC パワー半導体の開発・事業化に関連し意見・コメントがあれば記述してくだ
さい。
〔例:サプライチェーン構築や事業連携に関するアイデア・問題点、中国地域で
SiC パワー半導体に関連し事業化として有望な分野(自動車、家電等)〕
SiCの加工に取組んでいると思われるメーカ、液晶関係で開発に取組みたい意向のメー
カがある。また、具体的な事業の進め方を示した会社もある。
図表Ⅴ.37
1
SiCパワー半導体の開発・事業化への意見
通常の場合、SiC を加工する為には、特殊な設備・工具・工法が必要です。・日本は技術開発
遅れ!・日本は製品の大型化に対応遅れ(岡山県
窯業。製品に SiC 有)
1)電力が高い日本で高温処理が必要な SiC 基板やデバイスの製造競争力の維持は困難と思う。
2)欠陥ゼロの SiC 基板の完成とコストダウンが急務。中国地域には SiC 基板メーカがなく、
2
しかも新日鉄のような大企業でなければ事業化できない。
3)日本で技術開発、電力が安い海外で生産、となるのではないだろうか。(広島県
半導体
製造)
MOS-FET モジュールに比べて、SiC は高価なのに性能がいまいちです。価格はしかたないとし
3
ても商業ベースに乗せるには、性能向上をもっと追求してほしい。現段階ではまだコスト追
求の段階ではない。(岡山県
4
電子部品)
中国地域で開発・事業化を検討、着手している企業の規模(山口県
電子部品)
我々のような小規模で、関連機器の開発経験のない企業が SiC パワー半導体開発や製造に取
組むのは困難と考えている。しかし、できることなら SiC 半導体を使用した製品に使われる
5
部品には関わりたい。
しかし、実際にどのような部品が使われるかわからないので、我々の有するフィルム加工技
術が利用できるか分からず、具体的な行動をとることができていない。今後情報収集して参
入可否判断していきたいし、そのような情報を提供していただきたい。(広島県
液晶製品)
(1)よくよく調査した上で「出来る分野」を探して「技能コストの目標設定」が「トップレベ
6
ル」で設定できれば事業化へ乗り出せると考えます。(2)目標設定に当っては自からが大学、
現場 etc へ出向き、プランとか実行計画の作成に当ります。(広島県
7
事業化はまず製品コストの計画から。出口が見えない。(岡山県
8
自動車メーカとの連携(中央メーカ)
9
金属表面処理)
半導体製造)
新しい技術を国内のユーザにも積極的に採用・検討して頂きたい。欧州企業に比べ、国内企
業で積極的な企業数が少ないと思われる。
(中央メーカ)
-225-
問 22.全ての方にお聞きします。今後 10 年程度で数十倍にも市場が拡大することが期
待される SiC パワー半導体ですが、SiC パワー半導体に関する情報提供の場(講
演会等)があれば参加したいと思いますか?
SiCに関する情報提供は、23 社(全体の約 42%)が参加したいと回答があった。
図表Ⅴ.38
SiCに関する情報提供について
回答数 N=55
無回答
(16社)
29.1%
参加したい
(23社)
41.8%
参加したいとは
思わない
(16社)
29.1%
問 23.全ての方にお聞きします。SiC パワー半導体同様に次世代パワー半導体とし GaN
パワー半導体が研究開発されていることをご存知ですか?
SiCの認識度が、回答のあった 55 社の 21 社(全体の約 40%:図表Ⅴ.21 参照)である
のに対し、GaNは 14 社(全体の約 25%)であり認識度が低い。
図表Ⅴ.39 GaNの認識度
無回答
(14社)
25.5%
回答数 N=55
はい
(14社)
25.5%
いいえ
(27社)
49.1%
-226-
問 23 で「はい」とお答えの方にお聞きします。ご存じの GaN の性能・特徴を回答、記述
ください。
認識されている特性は“高周波域で応用される”が 8 件、
“低容量、低電圧で応用され
る”が 7 件で多い。その他の回答は“GaN はよくわからない”
“ Si 上に GaN が形成され
れば安価が期待できる(中央メーカ)”である。
図表Ⅴ.40
GaN の性能について 回答数 N=14(複数回答)
(社)
9
8
8
7
7
6
5
4
4
3
2
2
1
1
0
0
ウS
ェ i
ハC
がよ
製り
造大
可口
能径
S
i
C
よ
り
安
価
で
あ
る
低
容
量
、
さ低
れ電
る圧
で
応
用
-227-
高
周
波
域
で
応
用
さ
れ
る
そ
の
他
無
回
答
b.ユーザ側アンケート
問 1.現状の貴社の事業分野、過去、また今後の取組みで該当する「装置」、
「機器」、
「産
業製品」を以下から選択下さい(複数選択可)
各製品とも無回答が多い。現在取組み中のメーカ(次頁図表Ⅴ.41 グラフの青)は中
央のメーカが多い。中国地域の取組み中メーカで主なものは以下のとおり。
①装置:LEDドライブ
4 社(鳥取県 その他電子応用装置
広島県 電気照明器具
広島県 配電盤・電力制御装置
広島県 その他産業用電気機械器具)
発電機制御装置
4 社(島根県 配電盤・電力制御装置
広島県 配電盤・電力制御装置
広島県 その他産業用電気機械器具
広島県 不明)
②機器:ロボット溶接機
2 社(鳥取県
電気溶接機
広島県 配電盤・電力制御装置)
スイッチング電源
2 社(広島県 配電盤・電力制御装置 2 社)
パワーコンディショナー 2 社(鳥取県 電気溶接機
広島県
配電盤・電力制御装置)
③産業製品:
自動車(EV)
4 社(島根県 その他産業用電気機械器具
岡山県
自動車部品・付属品 2 社
広島県
自動車部品・付属品)
今後取組む計画は、発電機制御装置が 5 社で多い。
(岡山県 物流運搬装置
岡山県 自動車部品・付属品
広島県 配電盤・電力制御装置
広島県 その他電子応用装置
広島県 その他産業用電気機械器具)
-228-
図表Ⅴ.41
事業分野について
回答数 N=49
(社)
0
10
1-① LEDドライブ
1-② PMモータドライブ
20
30
4 01
装
50
60
44
2 10
46
1-③パワーアンプ 101
1-④ UPS
40
47
201
46
1-⑤ IHコンロ 0
49
置
1-⑥エアコン 01
1-⑦ EV充電器
48
2 3 1
1-⑧発電機制御装置
5
1-⑨汎用インバータ
2 10
5 0
39
46
1-⑩その他 1
2-①ロボット溶接機
43
48
2
47
2-②音響機器 01
48
2-③ CVCF 1 10
3 10
2-④スイッチング電源
機
器
47
45
2-⑤アクチュエータ 10
48
2-⑥携帯機器 01
48
2-⑦エレベータ 10
48
2-⑧レーダ 10
48
2-⑨パワーコンディショナー
2-⑩その他
2 10
46
30
46
3-① OA機器 10
4 0
3-②家電
産
業
製
品
48
45
3-③重電プラント 10
48
3-④鉄道 10
48
3-⑤自動車(EV)
3-⑥新エネルギー製品
3-⑦電力製品
3-⑧その他
現在取り組んでいる
5 01
43
2 11
4
45
20
43
4 10
44
今後取り組む計画である
過去に取り組んでいたが撤退した
-229-
無回答
問 2.自社製品にパワー半導体を使用していますか
パワー半導体の使用は、回答のあった 49 社の約 29%の 14 社である。
図表Ⅴ.42
製品へのパワー半導体の使用状況
回答数 N=49
無回答
(3社)
6.1%
はい
(14社)
28.6%
いいえ
(32社)
65.3%
問 3.問 2 で「1.はい」とお答えの方にお聞きします。パワー半導体はどのエリアから
調達されていますか。国内の比率および中国地域からの調達比率を選択下さい。
パワー半導体の調達地域について回答のあった 14 社の、中国地域の比率は 20%以下が
多い。
図表Ⅴ.43
パワー半導体の調達地域
0%
国内の比率 0 1
中国地域の比率
(鳥取、島根、岡山、
広島、山口県)
20%
1
40%
5
4
1 0
回答数 N=14
60%
80%
3
2
4
4
20%以下
0~20%
20~40%
40~60%
60~80%
80%以上
わからない
無回答
-230-
100%
3
問 4.問 2 で「1.はい」とお答えの方にお聞きします。どのようなパワー半導体デバイ
ス・モジュール等を使用されてますか?(複数選択可)
回答のあった 14 社は、各デバイス・モジュール・回路が使用されている(図表Ⅴ.44
の青)。多いのはデバイスの“ダイオード(11 社)”“パワートランジスタ(10 社)
”“サ
イリスタ(9 社)
”
“パワーMOSFET(9 社)
”、回路の“整流回路(9 社)”である。
図表Ⅴ.44
使用しているパワー半導体デバイス・モジュール等
回答数 N=14
(社)
0
5
1-⑤ IGBT
6
12
7
1
6
2
7
1
8
1
2-⑤ IGBTモジュール
11
4
2
8
2-⑥高耐圧モジュール 0 1
13
2
4
8
2-⑧その他 0
14
5
3-①単相インバータ
3-② DC/DCコンバータ
3
2
11
7
4
3-④三相インバータ
0
7
1
9
9
3-⑤整流回路
3
3-⑥直流チョッパー
6
2
0
0
3-⑦交直変換器
3-⑨その他 0
7
0
3-③サイクロコンバータ
3-⑧交流電力調整装置
6
1
5
2-③トランジスタモジュール
回
路
・
ユ
ニ
ッ
ト
5
3
2
2-②サイリスタモジュール
2-⑦ IPM
3
0
5
2-①ダイオードモジュール
モ
ジ
ュ
ー
ル
3
1
9
1-④パワーMOSFET
3
2
10
1-③パワートランジスタ
2-④ MOSFETモジュール
0
9
1-②サイリスタ
1-⑥その他 0
15
11
1-①ダイオード
デ
バ
イ
ス
10
11
1
7
1
11
2
使用している
5
12
使用していない
-231-
無回答
問 5.現状(シリコンを材料)のパワー半導体の性能につき、お考えの評価を選択くだ
さい。
回答のあった 14 社は、
“満足”
“おおむね満足”が 20%で以下であり、性能の評価は低
い。
7~11 社の、
“普通”
“やや不満”
“不満”の会社の内、問 6 のSiCの研究開発を知ってい
る会社は 4 社であり、Siの評価が低い会社が、SiCの認知度に直結している訳ではない。
図表Ⅴ.45
Siパワー半導体の評価
0%
20%
電力損失の低減対応
1
2
大容量対応
1
2
高速動作(スイッチング)対応
1
2
小型化対応
高温動作対応
価
満足
格
60%
1
5
2
4
3
0
6
やや不満
不満
3
0
2
2
0
2
2
0 1
2
2
2
2
2
0
4
5
100%
0
5
2
普通
80%
5
5
1 0
おおむね満足
40%
3
1 0
1
回答数 N=14
わからない
0
無回答
図表Ⅴ.46 <参考>Si パワー半導体の評価と SiC の認知度等に関係性(問 5・問 6・問 8 の関係性)
-232-
2.SiC パワー半導体について
問 6.SiC パワー半導体が研究開発されていることをご存知ですか?
回答のあった約 27%の 13 社が SiC について知識がある。製造側の約 40%の 21 社(図表
Ⅴ.21)に比較すると少ない。
図表Ⅴ.47 SiCの認識度
回答数 N=49
無回答
(3社)
6.1%
はい
(13社)
26.5%
いいえ
(33社)
67.3%
問 7.問 6 で「1.はい」とお答えの方にお聞きします。SiC パワー半導体の特性等につい
てご存知ですか?(複数選択可)
回答のあった 13 社の SiC の特性についての認識のうち、もっとも多いのは“機器の
電力損失が低減”の 11 件であり、もっとも少ないのは“高速スイッチングが可能”の 3
件、次いで大容量領域への対応が可能”の 4 件である。
図表Ⅴ.48 SiCの認識度
(社)
12
回答数 N=13(複数回答)
11
10
8
8
7
6
5
4
4
3
2
0
0
そ
の
他
無
回
答
0
機
器
の の
低 電
減 力
損
失
機
器
サ
イ
ズ
の
縮
小
対
応
が
可
能
大
容
量
領
域
へ
の
高
温
動
作
が
可
能
へ
の
応
用
が
期
待
(
太
陽
光
、
風
力
等
)
-233-
新
エ
ネ
ル
ギ
ー
機
器
高
速
ス
が
イ
可
ッ
能
チ
ン
グ
問 8.SiC パワー半導体の利用について研究開発等の取組を実施されていますか?
回答のあった 13 社のうち、SiC の開発に取組んでいる会社はない。関心がある会社が
7 社である。製造側に比較すると少ない。計画・検討中の 1 社は中央メーカである。
図表Ⅴ.49
SiCの利用にあたっての研究開発等の取組み
回答数 N=13
取り組んでいる
(0社)
計画・検討中
0.0%
(1社)
7.7%
無回答
(0社)
0.0%
関心がない
(5社)
38.5%
関心がある
(7社)
53.8%
問 9.問 8 で「1.取組んでいる、2.計画・検討中、3.関心がある」とお答えの方にお聞
きします。該当の装置、機器、製品を選択下さい。
「3 産業製品」については製品
をカッコ内に記述ください。
回答のあった 8 社のうち、次の 2 社がSiCの開発に取組んでいる。
①装置:LEDドライブ・EV充電器 1 社(広島県 産業用電気機械器具製造)
②産業製品:自動車(EV)の放熱基板
1 社(広島県 自動車部品製造)
①の“LEDドライブ”開発の企業は、
“PMモータドライブ・発電機制御装置”も計画・
検討中である。
-234-
図表Ⅴ.50
SiCの開発の取組んでいる製品
回答数 N=8
(社)
0
1-① LEDドライブ゙
2
1
1-② PMモータドライブ 0
装
0
4
6
1
2
8
6
0
6
1-③パワーアンプ 0
8
1-④ UPS 0
8
1-⑤ IHコンロ 0
8
1-⑥エアコン 0
8
置
1-⑦ EV充電器
1
1-⑧発電機制御装置 0
1
1-⑨汎用インバータ 0
1
0
1
6
1
6
7
1-⑩その他 0
2-①ロボット溶接機 0
器
1
8
2-③ CVCF 0
8
1
7
2-⑤アクチュエータ 0
8
2-⑥携帯機器 0
8
2-⑦エレベータ 0
8
2-⑧レーダ 0
8
2-⑨パワーコンディショナー 0
2
6
2-⑩その他 0
8
3-① OA機器 0
8
3-②家電 0
8
3-③重電プラント 0
産
業
製
品
7
2-②音響機器 0
2-④スイッチング電源 0
機
8
1
7
3-④鉄道 0
8
3-⑤自動車(EV)
1
3-⑥新エネルギー製品 0
1
1
6
0
3-⑦電力製品 0
3-⑧その他 0
0
7
8
1
取り組んでいる
7
計画・検討中
-235-
関心がある
無回答
10
問 10.問 8 で「1.取組んでいる、2.計画・検討中、3.関心がある」とお答えの方にお聞
きします。製品に SiC パワー半導体を使用される理由につき回答ください(複数
選択可)
回答のあった 8 社のSiCパワー半導体を使用する理由は、“自社製品の性能を満たすの
に必要”、
“自社製品の付加価値の向上”が 2 件で多い。
その他の回答は、
“製品の小型化”
“SiC用放熱基板のため、SiC半導体は直接使用していません”
等であった。
図表Ⅴ.51
製品にSiCパワー半導体を使用する理由
回答数 N=8(複数回答)
(社)
4
3
3
2
2
2
1
1
0
0
0
自
満
社
た
製
す
品
の
の
に
性
必
能
要
を
自
社
製
の品
向の
上付
加
価
値
低
価
高格
機で
能の
化製
品
の
他
使社
わと
ざの
る競
を争
得の
なた
いめ
に
-236-
そ
の
他
無
回
答
問 11.問 8 で「4.関心がない」とお答えの方にお聞きします。SiC パワー半導体を使用
されない理由につき回答下さい(複数選択可)
。
回答のあった 5 社のSiCパワー半導体を使用しない理由は、
“自社製品の使用環境(温
度・耐圧)では必要がない”が 2 件、
“開発中であり効果がわからない”が 1 件であった。
その他の回答は
“自社製品にSiCパワー半導体を使用できる製品がない”
“ラセン欠陥の影響が不明、低速応答であればシリコンで十分”
“社外秘扱いで回答出来ません”
である。
図表Ⅴ.52 SiCパワー半導体を使用しない理由
回答数 N=5(複数回答)
(社)
4
3
3
2
2
1
1
0
ア製
プ造
入
ロ メ
ーー手
チ カが
がか困
な ら難
いの
)
効
果開
が発
わ中
かで
らあ
なり
い
(
0
自
( 社
温
必度製
要、 品
が耐の
な圧使
い )で 用
は環
境
0
0
価
格
が
高
価
デ自
ザ社
イ製
を
ン品
懸
への
念
の機
影能
響 ・
-237-
0
そ
の
他
無
回
答
問 12.問 6.で「2.いいえ」
、問 8.で「4.関心がない」とお答えの方にお聞きします。
同封の「SiC 半導体リーフレット」をご覧になり、SiC パワー半導体をどのような
分野・機器で活用できるとお考えでしょうか?また、そのためにどのような研究
開発が必要とお考えでしょうか?
機械メーカからは産業用機器に適用できるとの回答が 2 社ある。1 社は自社工場に導入
したいという前向きな意見である。
図表Ⅴ.53
1
2
3
4
SiCパワー半導体の活用できる分野・機器について
船舶における電気・電子機器及び配線。(広島県
船舶製造)
太陽光発電、自動車、電車の回生制御、インバータ等。・必要な研究開発については現状どこまで研究が
進んでいるか解らないため、回答出来ません。(広島県
電子応用装置)
弊社は組立工場であり、部品その他は元請け会社より支給を受けています。(広島県
電力変換機器の小型化による、省スペース発熱最低下による電力削減、家電の買替。(広島県
電器溶接機、工場の各種動力機器等に適用が可能。(広島県
6
車両、軍事、電力分野
先行投資。(広島県
9
10
11
船舶製造)
電子機器)
初めて SiC 半導体というものを耳にしたのでよくわかりませんが、コンパクトで省エネタイプという事で
ますます需要が広がるでしょう。(岡山県
8
家電製品。(広島県
レーザ加工)
船舶製造)
小型化に依り、
電力損失が 7 割減との事であれば現在導入している工場内設備のレトロフィットを実施し、
損失の低減を計りたい。(広島県
ポンプ・タービン)
自動車用インバータなど。(岡山県
自動車部品)
SiC 基板の更にしっかりとして評価と結晶成長技術の改善をしたとすれば、同時にコストダウンができた
としたら可能性はありますが・・・三菱に相当がんばってもらわないと。(鳥取県
12
14
LED 照明)
ハイブリッドを含む、電気自動車・太陽光、地熱、海洋などの厳しい環境での発電機器☆耐熱性と小型化、
コストダウンが必要。(島根県
13
制御盤設
計)
5
7
半導体製造装置)
産業用機器。(島根県
クッション製品)
電気制御盤)
小型化できるメリットから、制御盤などで活用が可能であると考えられるが、専門知識を持つ人材がいな
いので、零細企業での研究開発は無理。(広島県
配電分電盤)
15
インバータとしての活用が予想されるが、低価格化・信頼性の向上が必要。(山口県
16
電気自動車。
(広島県
17
インバータ、スイッチング電源。
(広島県
電気器具製造(はんだごて))
配電盤・電力制御装置)
-238-
鉄道車両用部品)
問 13.SiC パワー半導体関連の取組強化や新たな事業進出を図る上での問題点、課題に
つき回答下さい(複数選択可)
。
SiCパワー半導体開発・事業進出時の課題について回答のあった 8 社では、
“技術開発・
事業企画等の人材不足”
、
“技術課題、技術発展性に関する情報不足”が 4 件と多い。
図表Ⅴ.54
SiCの開発・事業進出にあたっての問題点・課題 回答数 N=8(複数回答)
(社)
5
4
4
4
3
2
2
1
1
1
1
制
活
度
用
に
で
関
き
わ
る
る
公
情
的
報
支
不
援
足
そ
の
他
無
回
答
1
0
0
技
術
開
の
発
人
・
材
事
不
業
足
企
画
等
S
に i
関C
す市
る場
情や
報取
不引
足先
等
開
発
の投
資資
金 ・
不生
足産
設
備
企
に業
関 ・
す大
る学
情等
報の
不連
足携
先
技
に術
関課
す題
る、
情技
報術
不発
足展
性
問 14.SiC パワー半導体は国内産業の成長が見込まれる分野として、国が研究開発支援
を行っています。今後事業化する場合、どのような施策が有効また必要とお考え
でしょうか?(複数選択可)
。
製造側と同様、回答のあった 8 社の内、
“技術力向上の支援(研修会等)
“が 6 件で多
い。その他の回答は“大企業である三菱へも相当の支援策をすべき(100 億円ぐらいの開
発費を注入)
”があった。
図表Ⅴ.55
SiC開発に対する施策について
回答数 N=8(複数回答)
(社)
7
6
6
5
4
4
3
3
2
2
2
2
2
1
1
1
0
0
連
携
企
業
と
の
マ
ッ
チ
ン
グ
支
援
制
度
の
情
報
提
供
大
学
等
の
研
究
者
の
紹
介
開
発
の
プ
立
ロ
ち
ジ
上
ェ
げ
ク
ト
技
術
(
研力
修向
会上
等の
) 支
援
(
広
報人
、 材
企確
業保
説の
明支
会援
等
)
-239-
0
研
究 研
機 究
(
関 研機
へ 究関
の者と
技 のの
術 派交
者 遣流
派、 支
遣 援
等
)
金
融
機
関
と
の
マ
ッ
チ
ン
グ
製
品
紹
介
の
場
の
提
供
そ
の
他
無
回
答
問 15.
(主にご研究中の方に)SiC パワー半導体製造のための技術的課題があれば記述し
てください。
意見なし。
問 16.SiC パワー半導体の開発・事業化に関連し意見・コメントがあれば記述してくだ
さい。
〔例:サプライチェーン構築や事業連携に関するアイデア・問題点中国地域で
SiC パワー半導体に関連し事業化として有望な分野(自動車、家電等)〕
コメントは 1 件。中央メーカから“まだ価格がこなれていないという印象”との回答
があった。
問 17.全ての方にお聞きします。今後 10 年程度で数十倍にも市場が拡大することが期
待される SiC パワー半導体ですが、SiC パワー半導体に関する情報提供の場(講
演会等)があれば参加したいと思いますか?
SiCに関する情報提供(講演会等)については、約 43%の 21 社が参加したいと回答が
あった。
図表Ⅴ.56
SiCに関する情報提供について
回答数 N=49
無回答
(6社)
12.2%
参加したい
(21社)
42.9%
参加したいと
思わない
(22社)
44.9%
-240-
問 18.全ての方にお聞きします。SiC パワー半導体同様に次世代パワー半導体として
GaN パワー半導体が研究開発されていることをご存知ですか?
SiCの認識度が約 27%の 13 社であるのに対し、GaNは約 12%の 6 社と認識度が低い。
図表Ⅴ.57
GaNの認識度
回答数 N=49
無回答
(5社)
10.2%
はい
(6社)
12.2%
いいえ
(38社)
77.6%
問 18 で「はい」とお答えの方にお聞きします。ご存じの GaN の性能・特徴を回答、記述
ください。
認識されている特性は“高周波域で応用される”が 3 件で多い。その他の回答は“ 耐
圧が高い、大電流、低 ON 抵抗”
、
“SiC 同様電力機器の消費電力の低減が可能”である。
図表Ⅴ.58
GaNの性能について
回答数 N=6(複数回答)
(社)
4
3
3
2
2
1
1
S
i
でC
あよ
るり
安
価
で低
応容
用量
さ、
低
れ電
る圧
1
0
0
0
S
径
i
製化
C
造ウ
よ
可ェ
り
能ハ
大
が
口
-241-
高
周
さ波
れ域
るで
応
用
そ
の
他
無
回
答
問 20.貴社の主な業種を、以下商品分類表により選択ください(複数選択可)。
回答数 49 社のうち、電気機械器具製造業が 24 社と多かった(業種未記入が 7 社有)
。
図表Ⅴ.59
番号
25 汎用機械器具製造
2911
29 電気機械器具製造業
2942 電気照明器具
発電機・電動機・その他回転機器
2912
変圧器類
汎用内燃機関
2913
電力開閉装置
2519
その他原動機
2914
配電盤・電力制御装置
2521
ポンプ・同装置
2915
2522
空気圧縮機・ガス圧縮機・送風機
2532
エレベータ・エスカレータ
2533
物流運搬装置
2535
冷凍機・温湿調整装置
2511
ボイラ
2512
蒸気機関・タービン・水力ターヒ゛ン
2513
分類 25 計
番号
番号
回答先の属性
1
2951
蓄電池
2952
一次電池(乾電池等)
8
2961
X 線装置
配線器具・配線付属品
1
2962
医療用電子応用装置
2921
電気溶接機
1
2969
その他電子応用装置
1
2922
内燃機関電装品
2971
電気計測器
1
2929
その他産業用電気機械器具
(車両用、船舶用を含む)
2972
工業計器
2931
ちゅう房機器
2973
医療用計測器
2932
空調・住宅関連機器(エアコン等)
2933
衣料衛生関連機器
2999
その他 の電 気機 械器 具
(太陽電池モジュール)
2939
その他民生用電気機械器具(こたつ等)
1
4
30 情報通信機械器具製造業
1
4
1
31 輸送機械器具製造業
3011
有線通信機械器具
3111
自動車
3012
携帯電話・PHS 電話
3112
自動車社体・付随車
3013
無線通信機械器具
3113
自動車部分品・付属品(ガソリン機関等)
3014
ラジオ受信機・テレビジョン受信機
3121
鉄道車両
3015
交通通信保安装置
3122
鉄道車両用部分品
1
3022
デジタルカメラ
3131
船舶製造・修理
5
3023
電気音響機械器具
3134
船用機関
1
3031
電子計算機
3141
航空機
3032
パーソナルコンピュータ
3142
航空機用原動機
3033
外部記憶装置
3149
その他航空機部分品・補助装置
3034
印刷装置
3151
フォークリフトトラック・同部分品・付属品
3035
表示装置
3039
その他の付属装置
1
3159
その 他の 産業 用運 搬 車
両・同部分品・付属品
分類 30 計
1
分類 31 計
-242-
3
1
2
分類 29 計
番号
2
1
4
1
13
24
(5)アンケートのまとめ
アンケートの回収率は、製造側が 5.5%(中央メーカは 3.1%)、ユーザ側が 4.6%(中
央メーカは 1.8%)と低い。
回答者のうち、SiCについて認識している割合は、製造側が 21 社(回答 55 社の 38%)
、
ユーザ側が 13 社(回答 49 社の 27%)と少ない。
これはパワー半導体が、民生用に普及している、太陽光、蓄電池等比較すると産業用
製品であり、中小の電気・機械器具メーカには取扱いメーカが少ないからと思われる。
しかし、SiCパワー半導体の開発・事業化に関する意見では、次のような開発・導入
に関心のある前向きな意見があった。
図表Ⅴ.60
1
製造側回答のSiCパワー半導体の開発・事業化への意見
通常の場合、SiC を加工する為には、特殊な設備・工具・工法が必要です。・日本は技術開発
遅れ!・日本は製品の大型化に対応遅れ。(岡山県
2
窯業。製品に SiC 有)
我々のような小規模で、関連機器の開発経験のない企業が SiC パワー半導体開発や製造に取り
組むのは困難と考えている。しかし、できることなら SiC 半導体を使用した製品に使われる部
品には関わりたい。
しかし、実際にどのような部品が使われるかわからないので、我々の有するフィルム加工技術
が利用できるか分からず、具体的な行動をとることができていない。今後情報収集して参入可
否判断していきたいし、そのような情報を提供していただきたい。(広島県
図表Ⅴ.61
1
液晶製品)
ユーザ側回答のSiCの活用できる分野・機器について
電力変換機器の小型化による、省スペース発熱最低下による電力削減、家電の買替。(広島県
制御盤設計)
2
電器溶接機、工場の各種動力機器等に適用が可能。(広島県
3
小型化に依り、電力損失が 7 割減との事であれば現在導入している工場内設備のレトロフィッ
トを実施し、損失の低減を図りたい。(広島県
-243-
船舶製造)
ポンプ・タービン)
Ⅵ.中国地域におけるパワー半導体関連産業の新たな振興に向けて(提言)
1.中国地域におけるパワー半導体関連産業の振興のための方向性の抽出手法
本章では「Ⅰ.パワー半導体の現状整理」~「Ⅴ.中国地域における SiC 半導体に
関連する技術シーズと利活用に関する状況調査(ヒアリング、アンケート調査)」を
基に、全国の次世代パワー半導体を中心とした市場・研究開発動向を踏まえ、中国地
域の強みを活かした産業振興の方向性を探ることとする。
なお、方向性の抽出にあたっては以下の SWOT 分析を用いる。
【参考】SWOT 分析と産業振興のための方向性の抽出について
SWOT 分析を用いて産業振興の方向性を抽出する手順は、
概ね以下の通りである。
(1)SWOT 分析 →(2)クロス SWOT →(3)産業振興の方向性の抽出
(1)SWOT 分析
SWOT 分析とは、マーケティング戦略、企業
戦略、地域戦略等を立案する際に使われる分析
の枠組みで、内外の環境を、組織(地域)内部
のプラス要因=強み(Strength)とマイナス要
内
部
要
因
プラス要因
マイナス要因
強み
(Strength)
弱み
(Weakness)
因=弱み(Weakness)
、組織(地域)外部のプ
ラス要因=機会(Opportunity)とマイナス要
因=脅威(Threat)の 4 つの軸から評価する分
外
部
機会
要 (Opportunity)
因
脅威
(Threat)
析方法である。
(2)クロス SWOT
強み
SWOT 分析によって抽出された「強み」、
「弱
み」
、「機会」、
「脅威」をマトリックス表にし、
それぞれの組合せから対策の方向性を導出す
る分析方法である。
弱み
強みを活かして
機
機会で弱みを克
機会をものにす
会
服する
る
弱みと脅威で最
脅 強みを活かして
悪の状態を作ら
威 脅威を潰す
ないようにする
(3)産業振興の方向性の抽出
最終的に(2)クロス SWOT で導出された地域の課題等から、とくに重要なもの
を絞り込み、パワー半導体製造関連分野における産業振興の方向性を抽出する。
- 244 -
2.中国地域のパワー半導体関連産業の現状整理
第Ⅰ章~第Ⅴ章までの文献・アンケート・ヒアリング調査を中心に中国地域のパワ
ー半導体関連産業についてSWOT分析の手法を用い、
「強み」
・
「弱み」
、および周辺環境
の現状(
「機会」
・「脅威」
)を取りまとめると図表Ⅵ. 1のとおりとなる。
図表Ⅵ. 1 中国地域のパワー半導体産業の SWOT 分析(次世代を中心に)
強み(Strength)
弱み(Weakness)
○ウエハ加工技術に関する研究の進展【産学】
○国プロ等の先端研究の中央での実施【産学】
○デバイスメーカと大学の連携の存在【産学】
○ウエハメーカ、地域を牽引する大手デバイ
○モジュール化等の後工程企業の存在、大手電
機メーカとの繋がり【産学】
内
部
要
因
スメーカの不在【産】
○大学等における関連研究者の少なさ、研究
○有望なアプリケーション分野(自動車、鉄道、
太陽光発電等)における産業集積【産】
○半導体製造装置メーカおよび工作機械メー
カ等の親和性の高い要素技術を有する企業
の存在【産】
開発機能の不足【学】
○アプリケーション分野、社会的利用での取
組みの遅れ【産学官】
○高等教育におけるパワーエレクトロニクス
関連の講座の少なさ【学】
○モジュール化等における周辺部素材(受動素
子・樹脂等)メーカの存在【産】
○次世代パワー半導体の存在およびメリット
に関する認知度の低さ、デバイスの未流通
○IC、LED、太陽光発電分野での事業展開企業の
存在、技術蓄積、支援実績【産学官】
【産学】
○次世代パワー半導体用の分析・試験装置等
が不十分【産官】
機会(Opportunity)
脅威(Threat)
○次世代パワー半導体事業を展開している大手
デバイスメーカとの地理的近接性【産】
外
部
要
因
○次世代パワー半導体に関する技術・製品情
報が伝播しない【産学官】
○2015~2020 年頃にかけての次世代パワー半導 ○中国地域の企業等に関する情報発信が不十
体の本格的普及への期待(大口径化による価
分【産】
格低下、品質向上、アプリケーションの拡充) ○普及が期待される 2015~2020 年までの時
【産学官】
間的猶予のなさ【産学官】
○地域における環境志向、エネルギー問題への ○海外との競争、輸出に伴う制度的な問題の
関心の高まり【産学官】
存在【産官】
○国におけるグリーン産業創出施策の重点化
【官】
○IC 等に比較してのパワー半導体に関する認
知の低さ【産学官】
○オープンイノベーションによる研究開発の進
展【産学官】
○若者の理科系離れ【学】
○EV/HEV 等の中長期的な需要の拡大【産】
○後工程メーカの他地域・海外への移転、技
術人材の海外流出【産】
○キラーアプリケーションが不明確【産学官】
○Si と比較しての価格の高さ、経済的な提案
の困難さ【産学】
【 】は主たる関係プレイヤー、下線はクロス SWOT に使用する主な要因
- 245 -
3.中国地域におけるパワー半導体関連産業の振興のための方向性の抽出
(1)方向性の抽出
前節で行った SWOT 分析の「強み」
、「弱み」、「機会」、「脅威」のうち主な要因を掛
け合わせ中国地域におけるパワー半導体関連産業の振興のための方向性を抽出する
(図表Ⅵ. 2~図表Ⅵ. 9)。さらに、抽出された方向性について区分別に並替えると
ともに、さらに重点項目(短期集中戦略)の選出を行う(図表Ⅵ. 10)
。
図表Ⅵ. 2
方向性・戦略抽出のためのクロス SWOT
〔強 み〕
①
①
〔弱 み〕
有望なアプリケーション分野(自動車、
鉄道、太陽光発電等)における産業集積
【産】
×
アプリケーション分野、社会的利用で
の取組みの遅れ【産学官】
【方向性】
・アプリケーションメーカへの積極的なアプローチ【産学官】
図表Ⅵ. 3
方向性・戦略抽出のためのクロス SWOT
〔強 み〕
②
〔弱 み〕
モジュール化等における周辺部素材メ
ーカの存在【産】
×
ウエハメーカ、地域を牽引する大手デ
バイスメーカの不在【産】
〔強 み〕
②
ウエハ加工・デバイス製造装置等におけ
る研究者・メーカの存在【産学】31
×
【方向性】
・パワー半導体関連分野での川上・川下部門の連携強化【産学官】
・高温対応部素材の開発推進【産学】
31
図表Ⅵ. 1 の SWOT における「強み」の「ウエハ加工技術に関する研究の進展」、「デバイスメーカと大
学の連携の存在」、「半導体製造装置メーカの存在」等の項目をまとめて記載
- 246 -
図表Ⅵ. 4
方向性・戦略抽出のためのクロス SWOT
〔機 会〕
③
③
〔弱 み〕
次世代パワー半導体事業を展開してい
る 大 手 メ ーカ 工 場 との地 理 的 近 接性
【産】
×
ウエハメーカ、地域を牽引する大手デ
バイスメーカの不在【産】
【方向性】
・隣接地域との交流・連携【産官】
・リスク分散の流れ等を踏まえた企業誘致【産官】
図表Ⅵ. 5
方向性・戦略の抽出のためのクロス SWOT ④
〔機 会〕
〔弱
地域における環境志向、エネルギー問題
への関心の高まり 【産学官】
次世代パワー半導体の存在およびメ
リットに関する認知度の低さ、デバイ
スの未流通 【産学】
×
〔機 会〕
〔脅 威〕
2015~2020 年頃にかけての次世代パワ
ー半導体の本格的普及への期待【産学官】
④
み〕
〔機 会〕
国におけるグリーン産業創出施策の重
点化【官】
×
海外との競争、輸出に伴う制度的な問
題の存在【産官】
×
【方向性】
・事業のグローバル化への対応、海外展開の支援【産官】
・省エネルギーに関する企業の取組み、国等の施策との関連付け【産官】
・公設試験研究機関における研究開発等の促進【産官】
・地域資源、地場産業等での活用による地域独自性の発揮【産学】
図表Ⅵ. 6
方向性・戦略抽出のためのクロス SWOT
〔機 会〕
⑤
〔弱 み〕
2015~2020 年頃にかけての次世代パワ
ー半導体の本格的普及への期待【産学官】
×
アプリケーション分野、社会的利用で
の取組みの遅れ【産学官】
〔脅 威〕
⑤
×
キラーアプリケーションが不明確【産
学官】
【方向性】
・SiC の特性を活かした新たなアプリケーションの開拓【産学】
- 247 -
図表Ⅵ. 7
⑥
方向性・戦略抽出のためのクロス SWOT
⑥
〔強 み〕
〔弱 み〕
半導体製造装置メーカおよび工作機械
メーカ等の親和性の高い要素技術を有
する企業の存在【産】
国プロ等の先端研究の中央での実施
【産学】
×
【方向性】
・既存技術と SiC の特性に対応する要素技術の融合による新装置の開発【産学】
図表Ⅵ. 8 方向性・戦略の抽出のためのクロス SWOT ⑦
〔強 み〕
〔脅
ウエハ加工・デバイス製造装置等におけ
る研究者・メーカの存在【産学】
×
〔機 会〕
⑦
威〕
次世代パワー半導体に関する技術・製
品情報が伝播しない【産学官】
〔脅 威〕
2015~2020 年頃にかけての次世代パワー
半導体の本格的普及への期待【産学官】
×
中国地域の企業等に関する情報発信
が不十分【産】
【方向性】
・技術トレンド情報の域内流通とネットワーク構築【産学官】
・域内企業・技術情報の発信【産官】
図表Ⅵ. 9
方向性・戦略抽出のためのクロス SWOT
〔強 み〕
〔弱 み〕
デバイスメーカと大学の連携の存在【産
学】
次世代パワー半導体の存在およびメリ
ットに関する認知度の低さ、デバイス
の未流通 【産学】
×
〔機 会〕
⑧
⑧
〔弱 み〕
2015~2020 年頃にかけての次世代パワ
ー半導体の本格的普及への期待【産学官】
×
【方向性】
・教育機関へのデバイス提供【学官】
・寄付講座の設置と人材誘致【産学官】
- 248 -
高等教育におけるパワーエレクトロニ
クス関連の講座の少なさ【学】
図表Ⅵ. 10 クロス SWOT の結果の整理
クロス SWOT①~⑧から抽出さ
【重点項目】短期集中
中長期項目
れた方向性を区分別に並替え
クロス SWOT①
≪推進の仕組:【重点項目】短期集中≫
・アプリケーションメーカへの積極的なアプローチ
(1)アプリケーションメーカへの積極的なアプローチ【産学官】
クロス SWOT②
・パワー半導体分野での川上・川下部門の連携強化
(2)パワー半導体分野での川上・川下部門の連携強化【産学官】
(3)隣接地域との交流・連携【産官】
・高温対応部素材の開発推進
≪推進の仕組:中長期≫
クロス SWOT③
・隣接地域との交流・連携
(8)リスク分散の流れ等を踏まえた企業誘致【産官】
(9)事業のグローバル化への対応、海外展開の支援【産官】
・リスク分散の流れ等を踏まえた企業誘致
≪技術開発・アプリケーションの開拓:【重点項目】短期集中≫
クロス SWOT④
・事業のグローバル化への対応、海外展開の支援
・省エネルギーに関する企業の取組み、国等の施策との関連付け
・公設試験研究機関における研究開発等の促進
・地域資源、地場産業等での活用による地域独自性の発揮
クロス SWOT⑤
・SiC の特性を活かした新たなアプリケーションの開拓
(4)高温対応部素材の開発推進【産学】
(5)SiC の特性を活かした新たなアプリケーションの開拓【産学】
≪技術開発・アプリケーションの開拓:中長期≫
(10)既存技術と SiC の特性に対応する要素技術の融合による新装置の開
発【産学】
≪認知度向上・普及:
【重点項目】短期集中≫
(11)省エネルギーに関する企業の取組み、国等の施策との関連付け【産官】
クロス SWOT⑥
・既存技術と SiC の特性に対応する要素技術の融合による新装置
の開発
クロス SWOT⑦
(12)公設試験研究機関における研究開発等の促進【産官】
(13)地域資源、地場産業等での活用による地域独自性の発揮【産官】
≪情報:
【重点項目】短期集中≫
・技術トレンド情報の域内流通とネットワーク構築
(6)技術トレンド情報の域内流通とネットワーク構築【産学官】
・域内企業・技術情報の発信
≪情報:中長期≫
(14)域内企業・技術情報の発信【産官】
クロス SWOT⑧
・教育機関へのデバイス提供
・寄付講座の設置と人材誘致
≪人材育成・教育:【重点項目】短期集中≫
- 249 - (7)教育機関へのデバイス提供【学官】
≪人材育成・教育:中長期≫
(15)寄付講座の設置と人材誘致【産学官】
(2)重点項目(短期集中戦略)について
抽出された 15 項目のうち時間軸を中心に優先度合いの高い 7 項目を「
【重点項目】
短期集中戦略」とし、それ以外の項目を「中長期戦略」に区分けを行った(図表Ⅵ. 10)
。
それぞれの項目の特徴等は以下のとおりである。
図表Ⅵ. 11
項
目
時
期
次世代パワー半
導体産業の段階
次世代パワー半
導体産業の産業
振興の方向性
次世代パワーデ
バイスの認知
【重点項目】短期集中戦略
内
容
今後約 2~3 年以内
次世代パワー半導体の普及時の対応
・中央開発情報の入手・展開・キャッチアップ
・技術(価格)優位性によるリーディング(ニッチ)ポジションの確保
・地域内の連携の促進、隣接地域との連携
個別機器におけるメリットの認知
NO
方
向
性
関係者
≪推進の仕組み≫
(1) アプリケーションメーカへの積極的なアプローチ
産学官
(2) パワー半導体分野での川上・川下部門の連携強化
産学官
(3) 隣接地域との交流・連携
産官
≪技術開発・アプリケーションの開拓≫
(4) 高温対応部素材の開発推進
産学
(5) SiC の特性を活かした新たなアプリケーションの開拓
産学
≪情報≫
(6) 技術トレンド情報の域内流通とネットワーク構築
産学官
≪人材育成・教育≫
(7) 教育機関へのデバイス提供
学官
- 250 -
図表Ⅵ. 12 <参考>中長期戦略について
項
目
時
期
次世代パワー半
導体産業の段階
内
容
今後 5~10 年以上
次世代パワー半導体関連産業の確立~集積
次世
・技術(価格)優位性によるリーディング(ニッチ)ポジションの確保
次 世 代 パ ワ ー 半 ・人材育成を含めた地域における内発的・連続的なイノベーションの
導体産業の産業
導出
振興の方向性
・中央・他地域との役割分担の明確化
・海外展開を視野にした事業展開の支援
次世代パワーデ
バイスの認知
・インフラ等の社会システムの構成物としての認知
・先進的なエコエリアにおける不可欠な物としての認知
NO
方
向
性
関係者
≪推進の仕組み≫
(8)
リスク分散の流れ等を踏まえた企業誘致
産官
(9)
事業のグローバル化への対応、海外展開の支援
産官
≪技術開発・アプリケーションの開拓≫
(10) 既存技術と SiC の特性に対応する要素技術の融合による新装置の開発
産学
≪認知度向上・普及≫
(11)
省エネルギーに関する企業の取組み、国等の施策との関連付け
産官
(12)
公設試験研究機関における研究開発等の促進
産官
(13)
地域資源、地場産業等での活用による地域独自性の発揮
産官
≪情報≫
(14)
産官
域内企業・技術情報の発信
≪人材育成・教育≫
(15) 寄付講座の設置と人材誘致
産学官
- 251 -
図表Ⅵ.13 各施策の関係部門
中長期項目
短期集中【重点項目】
地域住民・顧客
川下
(13)地域資源、地場産業等
での活用による地域
独自性の発揮
(11)省エネルギーに関す
る企業の取組み、国等
の施策との関連付け
(5)SiC の特性を活かし
た新たなアプリケー
ションの開拓
(12)公設試験研究機関に
おける研究開発等の
促進
アプリケーション企業
アプローチ・擦り
合わせ
(1)アプリケーションメ
ーカへの積極的な
アプローチ
(10)既存技術と SiC の特性に
対応する要素技術の融合
による新装置の開発
半導体モジュール
半導体製造装置
域外との連
携・域外から
の誘致
〔域内川上~川下〕
半導体デバイス
受動素子
擦り合わせ
(2) パ ワ ー 半 導 体 分
野での川上・川下
部門の連携強化
評価試験装置
高度材料・部材供給
(4)高温対応部素材の開発推進
ウエハ
部素材の
供給
周辺部材
製造部品
トップクラスの技術の
確立
(6)技術トレンド情
報の域内流通と
ネットワーク構
築
幅 広 い 基 盤技 術
の活用
(14)域内企業・技術
情報の発信
切断切削
接合・溶接
成型加工
金型
SiC
GaN
鋳造
配線
評価試験
熱処理等
金属材料
樹脂材料等
サポーティングインダストリー
基盤技術
川上
素 材
基板・物性評価・デバイス構造・モジュール開発・回路技術・
設計ツール人材の育成と集積
(7)教育機関へのデバイス提供
(15)寄付講座の設置と人材誘致
〔域外・海外〕
(3)隣接地域との交流・連携
(8)リスク分散の流れ等を踏
まえた企業誘致
- 252 -
(9)事業のグローバル化へ
の対応、海外展開の支援
中国地域におけるパワー半導体関連産業の振興のための方向性
【重点項目】
短期集中戦略
- 253 -
4.中国地域におけるパワー半導体関連産業の新たな振興に向けて(提言)
前節「中国地域におけるパワー半導体関連産業の振興のための方向性の抽出」にお
いて抽出された「【重点項目】短期集中戦略」についてその内容を説明する。
≪推進の仕組み≫
中国地域における次世代パワー半導体に関する取組みはデバイス、製造装置等で
の研究開発の実施や潜在的参入者の存在は確認できるものの、あくまでも地域内に
おいて「点」在している状況である。この「点」を「線」へ、さらに「線」から「面」
へ、
「面」から「層」へと、次世代パワー半導体の産業集積を広げ深めていく、地域
内外における連携方策の実施、体制構築が求められる。
(1)アプリケーションメーカへの積極的なアプローチ【産学官】
第Ⅴ章までの文献調査、アンケート結果・有識者へのヒアリングのコメントにおい
て次世代パワー半導体の有望なアプリケーションとして期待される分野を取りまと
めると図表Ⅵ.14 のとおりとなる。
図表Ⅵ.14 アンケート・ヒアリングで提案された主な有望アプリケーション
●電動車両(HEV/EV 車、農機具 EV)
●電車、船舶、潜水艦
●非接触充電器・急速充電器
●FA(産業用ロボット)
●送電システム(遮断器、直流送電周波数変換器、自励式直流多端子変換器、ル
ープコントローラ)
●太陽光発電(パワーコンディショナ、セルインバータ、パネルコントローラ)
●音響装置
●酸素センサ、医療用センサ
●エレベータ
●白物家電
●パソコン(AC アダプタ)
●高周波電源
●高周波誘導加熱(IH ヒ-タ)
●デジカメ等の発光装置
●データセンタ用サーバ機
●工作機械
等
その範囲は輸送用機械、電気機械、一般機械の幅広い分野に及ぶとともに、地域にお
いて該当する企業をプロットすると図表Ⅵ.15 のとおりとなる。各県に SiC パワー半導体
の採用が期待される企業が少なからず存在する一方で、中国地域に関連して採用された
と報道されているのは、日立製作所の鉄道車両への搭載(P.116 参照)について程度であ
り、地域においてその取組みが進展しているとは言い難い。
ヒアリング結果でもあるように、Si と価格差のある現時点でも、価格感応度の低い製
品においては環境・省エネ志向の進展もあり、SiC パワーデバイスの採用による機能向上、
- 254 -
図表Ⅵ.15 有望なアプリケーション分野に該当する主な企業
鳥取オンキョー(音響機器)
ナノオプトニクス・エナジー(大陽光発電)
三菱農機(農業機械)
JUKI 松江(工業用ミシン)
ダイヤモンド電機(電子制御部品)
日本セラミック
(センサ、モジュール製品)
ホシザキ電機(冷凍機応用製品) 三洋 CE(生活家電、車載機器)
島根三洋電機(パソコン周辺機
パナソニック AVC ネットワーク
器、太陽電池)
社(音響機器)
島根富士通(ノートパソコン)
島根島津(医用機器、計測機器)
マツダ(自動車)
小橋工業(トラクター用作業機)
北川鉄工所
三菱重工コンプレッサ
セイレイ工業(農業用機械)
(産業機械、工作機器) 三菱自動車工業
(コンプレッサ、タービン)
滝澤鉄工所(NC 旋盤)
(自動車)
中国電機製造(配電盤、変圧器)
ナカシマプロペラ(舶用機器)
日本製鋼所(工作機械)
三井造船
三菱重工業(航空機部品)
尾道造船(貨物船)
(船舶、船用、陸用機械)
内海造船(造船) シギヤ精機製作所(研削盤)
マツダ
三菱重工業
テラル(ポンプ)
(自動車)日立製作所
(印刷機械、輸送機器) 日本ホイスト(クレーン、ホイスト)
(鉄道車両)
幸陽船渠(貨物船)
ホーコス(工作機械)
三菱重工業(船舶)
長府製作所(冷暖房機器) 宇部テクノエンジ
(産業用機械)
大晃機械工業(ポンプ)
不二輸送機工業(垂直搬送機)
長州産業(太陽光発電)
常石造船(貨物船)
アドテックプラズマテクノロジー
(高周波電源)
新日本造機(ポンプ、タービン)
IHI(航空エンジン、クレーン橋梁)
アイ・エッチ・アイ マリンユナイテッド(船舶)
神田造船所(船舶)
サタケ(精米機)
出典:新聞記事等を基に作成
小型化等により製品差別化が可能であると考えられる。アンケートに同封した SiC パ
ワー半導体を紹介したリーフレットにも反響があった。ただし、アプリケーションメ
ーカはデバイスメーカに対し高度な技術と提案力を求めているものの、情報の秘匿
性・機密性が高いがゆえ、自社のニーズを明らかにするインセンティブが少なく、そ
もそもニーズを明らかにする場がないケースがほとんどである。
中国地域は他地域とは異なり、アプリケーション部門を持つ大手半導体メーカは存
在していないため、SiC パワー半導体の普及のためには、地元メーカを含めデバイ
ス・モジュールメーカからアプリケーションメーカへの積極的なアプローチが不可欠
であり、併せてそれを支援するためのスキームの構築、産業支援機関等のコーディネ
ート活動が期待される。
- 255 -
(2)パワー半導体分野での川上・川下部門の連携強化【産学官】
〔川上・川下企業の連携強化〕
SiC パワー半導体に関する現状を地域間競争という観点で見れば、中国地域の取組
みは優位性を示す状況にはなっていない。デバイス、製造装置、アプリケーション等
の分野が有機的に結合し、成立しているパワー半導体産業においては、これらの技術
階層間のシナジー効果を発揮できるよう、川上・川下企業の事業連携を強化し、内発
的な共同研究開発や事業展開を誘発する必要がある。
パワーデバイスはターゲットとするアプリケーションによってコスト、信頼性とと
もに要求される機能と性能(低損失、大電流、高温動作、高耐圧等)が異なっている。
さらに個々のパワーデバイスの研究開発にあたっては、個別のアプリケーションで
必要とされる機能や性能をソフトウエア技術も含めチューニングする必要がある。
特にワイドギャップ半導体である SiC はその適用可能範囲が広いため、川上・川下
企業の課題の共有化と解決に向けた擦り合わせプロセスによる共同開発体制の強化
が期待される。
また、地域におけるパワー半導体産業の持続的な発展のためには、次世代パワー半導
体の 2015~2020 年頃の本格的な市場の立上がりに対応し、ウエハ加工、製造装置、アプ
リケーション等における、地域の技術優位性のある分野での、早期の事業展開によるリ
ーディングポジション(またはニッチポジション)の確保という短期的な取組みが求め
られる。さらに、現在、戦略的基盤技術高度化支援事業(サポイン)
「SiC 基板向け大気
圧プラズマ熱処理装置の開発と非接触基板温度測定装置の開発」等で行われているよう
な中長期的な市場を見据えた装置開発の取組みを並行して実施し、地域の技術力向上に
努めるべきである。
〔中国地域のフォロアーとしての方向性・独自性、中央との役割分担〕
SiC パワーデバイスに関しては中国地域でも企業・大学で研究開発が行われている
ものの、
「大手デバイスメーカは 20 年以上研究開発を継続しており、そのアドバンテ
ージは大きい」との委員からの指摘もある。
現状、次世代パワー半導体の研究は「中央」が大きく先行し、現時点での「中央」・
「地域」の役割分担は不明確な状況ではあるが、中国地域のメーカはフォロアーとし
て効率的な研究開発とともに、資源(人・物・金)制約の厳しい地域において、中国
地域経済への効果的な波及が見込める重点アプリケーション分野への「選択と集中」
が求められる。
中国地域におけるデバイスメーカは、隣接地域のように大手デバイスメーカそのも
のが主役となり地域産業を全般的に牽引するというよりも、地元企業として「中国地
域産業の競争力の強化」
、
「地域課題の解決」、
「新規市場を開拓するイノベータの出現
促進」のため、ある程度特定の分野に特化したサポーティングインダストリーとして
- 256 -
の役割が期待されるのではないかと思われる。
大手デバイスメーカとの競争は厳しいとともに、地域のデバイスメーカが将来的な
地域需要全てを賄うことができないのも確かである。
このようなことを勘案すれば、地域のデバイスメーカとしては、例えば、
「地域の
オンリーワン・ナンバーワン企業(例:ポンプ、送風機、クレーン、高周波電源等)
」
や、後ほど「「(5)SiC の特性を活かした新たなアプリケーションの開拓」に関連す
る新規分野」等をターゲットに絞り込みつつ、比較優位性の確保を目論む戦略も考え
られる。
以上のように当地域として地域経済全体の底上げにつながる、アプリケーション側
に軸足をおいた、川下・川上までの連携した研究開発が期待される。
図表Ⅵ.16 中国地域のフォロアーとしての方向性・独自性(イメージ)
川下
ア プ リ
ケ ー シ
ョン
優位性のある分野でのさらな
る競争力強化
新たなアプリケーションの開拓によ
る市場の創出
応用システムの実用化
サポート
システム化研究開発
拡大
サポート
デバイス研究開発
ウエハ材料研究
開発
川上
基礎研究
- 257 -
拡大
等
〔デバイス~アプリケーション研究者の情報交換・連携〕
複数の回路技術者・アプリケーション研究者へのヒアリングを総括すれば、「次世代パ
ワー半導体への対応は概ね可能ではあるが」
・
「今後の普及に備え高速スイッチング等のメリットを最大限に享受するにはデバイス
性能に関する情報提供が好ましい。
」
・
「パワーデバイス~アプリケーションまでの研究開発は、現在、各研究分野を積上げ、
リニアで行われているが、本来なら各々の研究を同時に統合して進め、開発全体の
自由度を高めた方がいい。
」
という意見が主なものであった(図表Ⅵ. 17 参照)
。
近々、中国地域においても SiC パワーデバイスの研究開発が SBD から MOSFET へ進
展することが予定されている。電力変換回路を構成するために必要な整流素子とスイッ
チング素子の両方が揃えば、これを契機に電動モータやインバータでの活用に向けての
関心や連携の可能性が高まり、裾野の広がりが期待される。地域内外の関係者が集い、
図表Ⅵ. 17
デバイス・アプリケーション研究者の情報交換・連携
〔現状〕
デバイス作製
回路
トポロジー
サーマル
32
マネジメント
EMI33
〔将来(好ましい図)〕
L、C、スイッチング素
子、ダイオード技術、
電気材料
最適化・設計ツール、
高密度化、モデリング
(解析)
コンポーネント
・デバイス(材料
部品)
パッケージ
ング
システム統合
化された技術
EMI、サージ、電気設計、
回路トポロジー、制御
(電気)
、最適化技術、
予測技術
32
回路設計マ
ネジメント
サーマルマネ
ジメント
電源回路の構成方法
Magnetic Interference:電磁波障害 の略
33 Electro
- 258 -
温度、信頼性、流体、
応力(機械)
、熱解析、
信頼性解析、磁界
地域版のミニ「グリーン IT プロジェクト」が成立すれば、アプリケーション分野におけ
る効率的な技術開発・新規開拓にも寄与することが見込まれる。また、このようなプロ
ジェクトを NEDO 等の省エネルギー関連プログラムを活用することで、費用の負担軽減
に繋げることも考えられる。
委員会等においては瀬戸内海との関係で「船舶分野」での SiC パワー半導体の活用
や新規用途等およびコンソーシアムの形成について言及があった。そのイメージを示
すと図表Ⅵ. 18 のとおりとなる。船舶はある意味、輸送機関としては電気自動車を大
型化したものと捉えることもできる一方で、「発電」、「通信」、「監視」、「制御機能」
を備えた都市(スマートシティ)を小型化したものと言える。このようなことから
SiC パワー半導体の新たなアプリケーションとして期待される分野でもある。
また、産業用機器分野での活用、「スマートファクトリー」との関連での取組み強化の
必要性の言及もあった。
「スマートファクトリー」とは、従来行われてきた受配電設備に
よるエネルギー総合管理に加え、工場における生産設備のエネルギー使用状況・稼働状
況等を把握し、エネルギー使用の合理化および工場内設備・機器のトータルライフサイ
クル管理の最適化を図るためのシステムである(図表Ⅵ. 19)
。この構成要素である「省
エネルギー設備(図表Ⅵ. 20)
」
、
「再生可能エネルギー発電設備」等での SiC パワー半導
体の活用も有望な分野である。
- 259 -
図表Ⅵ. 18
<参考>船舶分野における中国地域の SiC パワー半導体の活用に向けて(イメージ)
アプリケーション研究者
モジュール実装メーカ
デバイスメーカ
デバイス研究者
船舶用装置
船舶用装置
【SiC パワーデバイスとの関連性】
アプリケーション研究者
風力発電、太陽光発電、ポンプイン
船舶用装置
バータ制御、2次電池、ハイブリッ
EV/HEV 化⇒スマートシップ
【発電、通信、監視、制御機能】
ド型スーパーチャジャー、船内電動
化・・・・・
域外デバイス・モジュールメーカ
※特定の企業、研究者を意図したものではありません。
- 260 -
図表Ⅵ. 19 スマートファクトリーのイメージ
図表Ⅵ. 20 スマートファクトリーの構成要素である省エネ機器(例)
受変電設備
・高効率変圧器の導入
■アモルファス変圧器
■トップランナー変圧器
■高効率モータ
モータ設備
・高効率モータの導入
・可変速(インバータ)化
ポンプ設備
・台数制御装置の導入
・可変速(インバータ)化
送風機設備
・可変速(インバータ)化
圧縮機設備
■インバータ
■インバータ・ポンプユニット
■ファン・ポンプ用インバータ
■インバータ搭載圧縮機
■台数制御コントローラ
・台数制御装置の導入
・インバータ搭載機の導入
空調設備
・高効率空調機の導入
・省エネ制御システム
■高効率チラーユニット
■高効率ビル用マルチエアコン
■空調機省エネ制御システム
など
照明設備
・高効率照明設備の導入
■LED照明セラミックメタルハライドランプ
■省エネ制御装置
■インバータ式安定器
など
(公財)ちゅうごく産業創造センター「地産エネルギーを活用した中小企業工場のエネルギーマネジメントシステム構築の可能性調査」(2012 年)
- 261 -
■永久磁石モータ
また、大学等における次世代パワー半導体の研究開発状況を把握する意味で、図表Ⅵ. 21 に中国地域の半導体関連の研究者を記載する。現在、次世代パ
ワー半導体に関連している研究者は 10 名程度ではあるが、Si 半導体研究者よりも年齢層が若いため、今後の研究成果の蓄積と、中国地域における半導体分
野の「学」界におけるリーダー役としての活躍が期待される。
図表Ⅵ. 21
<参考>中国地域の半導体関連の主な研究者(赤枠は次世代パワー半導体に関する研究)
物性・デバイス
鳥取大学 工学部 安東孝止 教授
半導体超格子技術を 基礎にした
新機能光半導体素子(レーザ、受光
器、光センサ等)
鳥取大学 工学部 阿部友紀
准教授
ZnSe系ワイドギャップ半導体の超
格子
島根大学 理工学部 北原邦紀
教授
化合物半導体薄膜(GaAs、InGaP)
の成長と評価
島根大学 大学院総合理工学研究科
梶川靖友 教授
プラスチック上にも形成できる n
形および p 形の化合物半導体
島根大学 理工学部 土屋敏章
教授
SOI デバイス、TFT デバイス
島根大学
教授
理工学部
葉文昌
准
Si、Ge、SiC等による太陽電池デバ
イス
島根大学 理工学部 吉田俊幸
助教
III-V 化合物半導体 MOS 構造形成プ
ロセスの最適化
岡山大学 大学院自然科学研究科
山下善文 准教授
結晶欠陥の基本特性、欠陥の制御
方法
資料:大学HP等より作成
システム・回路
広島大学 ナノデバイス・バイオ融合
科学研究所 吉川公麿 教授
鳥取大学 工学部
多層配線技術の開発、アンテナを搭載
した半導体集積回路のワイヤレス通信
広島大学 ナノデバイス・バイオ融合
科学研究所 黒木伸一郎 准教授
SiC-SBDの作製
広島大学 大学院先端物質科学研究科
三浦道子 教授
デバイス及び回路設計のための物理モ
デルの開発
広島大学 大学院先端物質科学研究科
村上秀樹 助教
極微細MOSトランジスタの設計・開発及
び評価
山口大学 大学院理工学研究科
只友一行 教授
サファイア加工基板上への非極性面GaNの
結晶成長及、ハイドライド気相成長技術
山口大学 大学院理工学研究科
諸橋信一 教授
ナノメーターレベルでの高品質・高機
能な薄膜および多層構造作製技術、微
細加工技術
山口大学 工学部
山田陽一 教授
固体のレーザ分光、半導体量子ナノ構
造を対象とした励起子工学
製造装置・その他
津山工業高専 電気電子工学科
長井聡 准教授
岡山大学 工学部
硫化物半導体を用いた光デバイスの作製
SiC-SBD 等のリカバリー損失等の特性評価、
ΔΣ変調回路による PWM パルスパターン発生
マルチワイヤ放電加工によるウエハ
のスライシング
島根大学 理工学部 山本真義 准教授
山口大学 大学院理工学研究科
田中俊彦 教授
津山工業高専 電気電子工学科
田邊茂 教授
パワーエレクトロニクスの電力系統
への適用、高電圧半導体モジュール
ケースの絶縁信頼性向上
広島大学 大学院先端物質研究学科
横山新 教授
高性能な光配線を持った大規模集積
回路
広島大学 大学院先端物質科学研究科
東清一郎 教授
高性能多結晶シリコン薄膜トランジ
スタ製造低温プロセス技術
呉工業高専 電気情報工学科
田中誠 教授
直列静電レンズ型真空計、走査型電
子アナライザー
市野邦男 准教授
SiC による HV の主機駆動用インバータ、
PHV 車の充電器、GaN による HV 車の補機
インバータ、非接触電力伝送システム
松江工業高専 電気工学科 渡邉修治
准教授
単相高周波スイッチング電源の電力変換
効率向上
岡山大学 工学部
舩曳繁之 教授
ハイブリッド化した新しい分散型電源シ
ステム
岡山大学 大学院自然科学研究科
塚田啓二 教授
半導体マイクロデバイス化したケミカル
センサ
中国職業能力開発大学校 生産情報シス
テム技術科 平島隆洋 教授
RF 帯及びマイクロ波帯を対象とした増幅
器や電流分配・合成器などのハイパワー
回路
広島大学 ナノデバイス・バイオ融合科
学研究所 マタウシュハンス・ユルゲン教授
ナノデバイスを用いたシステムアーキテ
クチャ・回路設計
広島工業大学 工学部 田中武 教授
スマートメータ、LED 表示機、LED 照明、
充電器、システム LSI の設計教育手法
- 262 -
電力変換工学、太陽光発電ほか(GaN-HEMT の
インバータ展開に関する研究の回路設計等)
山口大学 工学部
小柳剛 教授
新材料を用いた熱電発電モジュールの開発
宇部工業高専 電気工学科 岡本昌幸 准
教授
GaN トランジスタを用いた高効率電力変換回
路・高周波スイッチング回路
岡本康寛 助教
(3)隣接地域との交流・連携【産官】
後ほどの「(14)域内企業・技術情報の発信」にも関連してくることであるが、当
面、中国地域において生産される次世代パワー半導体関連の部素材・装置の供給先は
域内に加え、大手電機メーカの工場が立地し、その協力会社群のある隣接の近畿地域
(京都市:ローム、姫路市:東芝)、九州地域(福岡市:三菱電機)になるものと見
込まれる。このような地域と交流・連携を深めることが中国地域の次世代パワー半導
体産業の振興にあたっては不可欠である。
近畿地域には部素材供給先、デバイス購入元として見込まれる企業のほかに、中国地
域の域内に工場のある企業の本社(大阪市:三社電機製作所、新興製作所)や、
「
(1)
アプリケーションメーカへの積極的なアプローチ」の図表Ⅵ. 15 で示したようなアプリ
ケーション先として期待される企業の本社(親会社)も存在しており、連携のパターン
も多岐に及ぶと想定される。
2008 年には「京都・備後半導体関連企業交流会」という、電子産業が盛んな京都
と備後地域の企業が 20 社程度で集い、取引拡大を目指した活動実績もあり、隣接地
域との連携の取組みの先例と位置付けることも出来る。
また、九州地域とは、SiC パワーモジュール、アプリケーションとトップランナー
の三菱電機の協力会社等が中国地域にあるなど、従来から関係はあるものの、主に
「個」社-「個」社ベースであるため、交流範囲は限定的である。この関係性を「面」
-「面」に広げるためには、例えば、九州地域には半導体関連産業の団体である「九
州半導体・エレクトロニクスイノベーション協議会(以下「SIIQ」)」が存在してお
り、そのような業界団体との交流も効果的である。SIIQ は本年度には「九州半導体
関連企業サプライチェーンの体系化調査」等も行っており、当該情報は九州地域以外
の企業にとっても、将来的な部素材・製造装置の供給に役立つものと考えられる。
図表Ⅵ. 22 九州半導体関連企業立地マップ
出典:九州半導体・エレクトロニクスイノベーション協議会「九州半導体関連企業立地マップ」
- 263 -
≪技術開発・アプリケーションの開拓≫
SiC の「硬度」
、
「耐熱性」
、
「化学的安定性」といった性質から従来の Si 半導体製造
プロセスの変更やアプリケーションの拡大が見込まれるとともに、周辺分野を含め新
たな技術開発・ビジネスチャンスが期待される。地域においては既存技術の優位性や
産業構造を活かした効率的な技術開発および事業展開が求められる。
(4)高温対応部素材の開発推進【産学】
SiC パワー半導体の大きな特徴は「高パワー密度化」を実現し、「高温動作」を可
能にする点である(P.12 参照)
。ただし、「高温動作」に関しては、デバイス自体は
高温動作(最高接合温度 200~300℃程度)が可能であるが、当然ながら現状の Si の
最高接合温度 125~150℃をベースとした周辺部材・部品まで高耐熱が保証されてい
るわけではない。
逆にいえば SiC パワー半導体の性能を十分引き出すために、「封止材」、
「ボンディ
ング」、「はんだ」
、「結線」、「接着剤」等の部素材に加え、「コンデンサ」、「抵抗器」
等の受動素子まで広範囲において、従来以上の性能や高信頼性がパッケージプロセス
において必須となる。
さらに、例えば絶縁材としては、セラミックより安価な耐熱プラスチックがコス
図表Ⅵ. 23
中国地域の主なコンデンサ、高耐熱樹脂製造メーカの分布
日立金属
出雲村田製作所
イワミ村田製作所
パナソニックエレクトロニクスジャパン
岡山村田製作所
ヤスハラケミカル
日本化薬
パナソニックエレクトロニクスジャパン
クラレ
日本ゼオン
三菱化学
旭化成ケミカルズ
三井化学
日本化薬
トクヤマ
日本ゼオン
東ソー
抵抗器、コンデンサメーカ
(高耐熱)樹脂等製造メーカ
出典:新聞記事等を基に作成
- 264 -
ト面から好まれるなど、技術的課題の解決と低コスト化の両立が可能である材料が開
発できれば、大きな市場を形成できる可能性がある。
現在この分野においては、国家プロジェクトでは「次世代パワーエレクトロニクス技
術開発」
、
「新材料パワー半導体プロジェクト」にて研究開発が行われているが、前者は 3
年前、後者は本年度よりスタートしたものであり、デバイスの研究開発と比較すればそ
の歴史は相対的に浅い。よって、場合によっては中堅・中小企業においても今後のノウ
ハウの獲得により市場参入できる余地があると考えられる。
中国地域においても山陰・山陽ともに抵抗器、コンデンサメーカが立地するとともに、
パッケージ関連でも山陽のコンビナートを中心に封止材、基板材料を生産している化学
メーカが存在している。これらの企業の中には、国家プロジェクトには参加していない
ものの、その他の高温実装等の共同プロジェクトに参加している企業も複数存在して
いる。中央での研究活動を基に地方で生産活動が行われれば地域経済へは寄与するが、
その恩恵は個別企業ベースに限定される。中国地域に本社や研究部門があるメーカの
存在を踏まえれば、将来的にデバイスもしくはアプリケーションメーカ(場合によっ
ては成形メーカ)と連携のうえ、周辺部素材の研究開発が進展すれば、地域経済への
恩恵は相乗的なものとなることが期待される。
(5)SiC の特性を活かした新たなアプリケーションの開拓【産学】
〔中堅・中小企業にとって好ましい市場の特徴〕
SiC パワー半導体が活用されるボリュームゾーンの一つとして見込まれるのが汎
用インバータであるが、この分野は市場規模が大きく、成長性が期待される一方で、
製品のコモディティー化、価格下落により、企業の「体力勝負」となる可能性もある。
よって、企業規模の小さい地域の中堅・中小企業にとって別途、安定的な市場も開
拓する必要がある。その市場は「商品やサービスを要求する需要者の絶対数が少ない
(特定の用途・目的に特化した需要の)市場であり」かつ
「①潜在的なニーズのため、誰も「産業」として考えつかなかった分野」
⇒ 「SiC の優れた特性によって初めて可能となる分野」
「②既存の手法では収益性が悪く、市場としての魅力がない分野」
⇒ 「SiC の特性により大幅な性能向上が期待される分野」
であることが好ましいと考えられる。
このような市場は、限定的な分野であるため、インバータのようなマス市場ほど競
争による市場淘汰の圧力が強くない傾向がある。その一方で、常に品質を最上に保つ
ような技術力が求められることとなる。
- 265 -
〔新たなアプリケーションの可能性〕
新たなアプリケーションについては、今後、デバイスメーカとアプリケーションメ
ーカとの連携の中で具体化され、中国地域においても自律的に市場が創出されること
が期待されるが、ここでは、ヒアリングの中で前述の好ましい市場の趣旨と合致する
コメントのあった、
「①音」と「②極限環境」について述べる。
「①音」については、オーディオ機器への SiC パワーデバイス搭載について既に紹
介しているが(P.104 参照)、DC アンプの第一人者である金田 哲彦氏からは
Si-MOSFET と比較し『音が出た瞬間から音の鮮やかさに唖然とする。楽音の表情の
変化が多彩に表現され、激しさや優しさのコントラストが鮮明。SiC パワーデバイス
はオーディオに明るい未来を約束するだろう』34 とのコメントも寄せられており、規
模自体は大きくないものの、有望な市場であることを伺わせる。
また、音に関連しては、中国地域でも高周波音に関して「居眠り運転防止システム」
について大学とオーディオ部品メーカとで研究がなされていたり、中山間地域での獣
害対策において「音」の利用について研究がされるなど、SiC デバイスの高周波特性
を適用する素地があるのではないかと期待される。
「②極限環境」については「高温」がまず挙げられるが、既に述べたとおり冷却装
置が不要となる等の機器の簡素化に加えて、従来は半導体の範疇ではないと考えられ
ていた領域への進出も可能となる。例えば、半導体センサをエンジン付近の高温場所
で使用し、自動車の燃焼コントロールの効率化を図るといった用途が見込まれる。
加えて、「高温」、「高圧」の世界である地球内部、深海部においての活用が期待さ
れる。次世代パワー半導体で構成されたセンサ、通信機器、観測機器等の開発および
それを搭載した探査機、調査船が資源やエネルギーに関する情報を提供することも可
能となる。
また、「放射線」環境でも特性劣化の少ない、丈夫な半導体デバイスとして応用が
可能である。宇宙で使用する人工衛星、宇宙ステーション等における電子部品は多量
に存在する放射線により特性劣化、誤動作、破壊に至るが、SiC 半導体を用いること
で高信頼性、長寿命化が見込まれる。
さらに、耐放射線性デバイスを原子力施設や核融合施設へ導入することにより、高
精度への寄与や、メカトロニクスとの融合による耐極限環境でも活動可能なロボット
開発へとつながり、災害時等での活躍が期待される。
以上のような用途は市場規模が相対的に大きくないものの、SiC の特性をフルに活
かす高い技術力が要求される分野であると目される。
34
誠文堂新光社「MJ 無線と実験」2012 年 10 月号
- 266 -
図表Ⅵ. 24
次世代パワ
ー半導体
極限環境におけるアプリケーション
高温動作素子
高性能センサ
耐放射線素子
メカトロニクスとの融合
EV、船舶、
潜水艦、リニ
アモータ
資源探査
地球内部・深
海探査機
宇宙ロケッ
ト、原子炉、
核融合炉
宇宙ステーション、極限
環境用ロボット(災害救
助、惑星探査等)
また、このような市場へ参入する場合には、中小企業の技術力の面での対応は可能
であるが、事業資金の面での負担が大きく、事業化を断念することが少なからずある
との指摘がなされている。いわゆる「死の谷 35」や「ダーウィンの海 36」を越えるた
めには、技術力のある中小企業に対しての資金が循環するえw」「q仕組みを産学金
官連携のもと構築することが求められる。
≪情報≫
技術革新が進行中の次世代パワー半導体においては、多くの先進的な研究開発
が、国プロや大手半導体メーカによって推進されている。また、基板に関しては、
緩和されつつあるとはいえ、米国企業の寡占状況が継続している。中国地域の事業
者・研究者はこれらの研究開発動向から不可避的に影響を受けることとなるため、
その研究開発動向を注視し、その情報を地域内へ広げるという機能が求められる。
また、逆に、事業展開にあたっては、中央等に対し積極的に情報発信を行い、「繋
がっていく」姿勢が求められる。
(6)技術トレンド情報の域内流通とネットワーク構築【産学官】
事業者へのアンケート結果によると、SiC パワー半導体の認知度は 3 割程度と高い
とは言えないものの、同封のリーフレットの影響もあり、4 割以上が SiC パワー半導
体に関する情報提供を希望するとの結果であった。
また、半導体後工程の事業者へのヒアリングにおいては、発注元である他地域の大
手電機メーカとの関係性の強さが伺える一方で、中国地域内におけるパワー半導体関
35
基礎研究を応用研究、製品開発につなげるときの障害。開発資金不足・信用力不足など
36
製品開発したものを事業として軌道に乗せるときの障害。生産体制の不備、マーケティング能力の不足など
- 267 -
図表Ⅵ. 25
近年パワー半導体、パワーエレクトロニクスに関する講演・研究会を開催した組織
島根県パワーエレクトロニクス
技術研究会 2012 年~
大学等研究会員 59 名
企業会員 21 社
コーディネータ等 7 名
企業 約 20 社
企業 15 社
BISTEC(備後半導体技術
半導体ネット岡山
2006 年~
推進連合会)1993 年~
係者の交流・情報交換は限定的であるとの声があった。
このような状況を踏まえると、SiC パワー半導体に関する情報への個別ニーズはあ
るものの、中央への直接的なアプローチや自律的に情報が伝播する状況にはないこと
が伺える。ヒアリングでは特に、製品の歩留まりにも大きな影響を与える基板の品質
情報に関しては、生産拠点が中国地域にない(海外又は国内他地域)こともあり、情
報量が不十分であり、事業展開に支障を来たすとのコメントがなされた。加えて、同じ
電子デバイス分野でもパワー半導体分野は LED、太陽電池、IC 分野と比べ情報展開を含
め諸支援策の展開が遅れているとの指摘もある。
そのような観点からも、SiC パワー半導体の結晶成長やプロセス技術等に関する技術ト
レンドを明確にするための情報発信(講演会・見学会)を中国地域で実施することは有
意義であると考えられる。
また、そのような機会を捉え、地域のパワー半導体関係者がネットワークを構築でき
る場を設け、交流範囲を拡大することにより、域内での情報の自律的な伝播と域内企業
の連携への気運の醸成や、パワー半導体産業の振興のための旗振り役になるキーマンの
発掘を進めることも重要ではないかと考えられる。
さらに、P.75 で紹介した SiC アライアンスは各国家プロジェクトの進捗状況に関する
報告会やアプリケーション研究企業の見学会を開催している。大学や研究機関等は会員
となれば貴重な中央先端開発情報の入手が可能となる。
- 268 -
≪人材育成・教育≫
次世代パワー半導体産業が地域に根付くためには、技術的課題の解決・新技術創
出のための研究活動の推進、そのための産学官連携による支援等に加え、長期的な
視点から人材育成に取組み、中国地域において内発的に次世代パワー半導体産業が
発展するサイクルを確立していくことが求められる。
(7)教育機関へのデバイス提供【学官】
〔SiC パワーデバイスのサンプル提供〕
SiC パワーデバイスに関連しては、大学の研究者へのヒアリングの中で、「SiC パ
ワーデバイスを(話には聞くが)そもそも目にしたことがない」という意見が少なか
らずあった。また、地域の回路設計技術等の分野で大きな役割を担っている高等専門
学校においても同様の傾向にあり、実際に使用したことのある研究者にとっても、大
学と比べ相対的に少ない研究費のもとで、デバイス、特に MOSFET を調達するには
費用面で負担感があるとの意見があった 37。
高等専門学校については、地域の中小企業から「技術相談窓口」的な役割を期待さ
れている趣もある。よって、地域の教育機関へ SiC パワーデバイスを流通させること
により回路設計技術の向上とともに、2015~2020 年目途の本格的普及に備えた地域
の受皿作りという役割も期待される。さらに、研究者の経済的負担を軽減する意味で、
図表Ⅵ. 26 <参考>中国地域の高等専門学校
松江高専
米子高専
津山高専
呉高専
徳山高専
広島商船
大島商船
宇部高専
37
参考:ローム社 SiC-SBD: 600V/6A ⇒ 415 ~760 円/個 、600V/40A ⇒ 1,620 ~2,500 円/個
SiC-MOSFET:1,200V/35A ⇒ 7,800 円/個(代理店 HP 調べ)
- 269 -
行政・支援機関等による無償またはアカデミックプライスでのサンプル提供プログラ
ムが可能であれば好ましいと考えられる。
一方、デバイスメーカにとっては、ユーザからの声を吸い上げることにより製品の評
価・要望を把握することができるとともに、提供先の学校と関係のある地域企業との
連携といった可能性が広がるというメリットもある。
また、ヒアリングの中では、SiC 半導体研究が進展することにより、企業や研究機
関で発生する陳腐化した装置を、教育機関に提供することにより、デバイスと製造装
置を用いた実習機会が付与され、より高度かつ実践的な人材育成に繋がるとの提案が
なされた。
〔初等~中等教育を含めたパワーエレクトロニクス教育〕
また、提供したサンプルを活用してもらう意味からも、例えば、高等専門学校で盛ん
に行われている高専ロボコンのようなイベントでの採用や、各学校間での「回路設計コ
ンペ」を開催するなどの、認知度・技術力向上のための相乗効果のある取組みが望まれ
る。
さらに低年齢層(小~中学校)に対しては近年の理科離れやものづくりへの興味の減
退を憂慮し、電子工作教室を通して「ものづくり」の楽しさを実感してもらう取組みが
行われている。このような場で(SiC)パワー半導体を活用することや、合わせて地域の
パワー半導体関連研究者・企業家から開発のエピソードを聞き、
「ものづくり」の楽しさ・
夢・希望を持たせることで、地域経済を支える「ものづくり」意識や起業意識の高揚を
図ることも有益と考えられる。
図表Ⅵ. 27
回路設計コンペ(イメージ)
図表Ⅵ. 28 楽しい電子工作教室
ポリテクカレッジ福山、備後半導体技術推進連合会
(BISTEC)主催
回路設計コンペ(イメージ)
① 提示された仕様を満たす電子回路基
板・機器のハードウエアの設計・試作
② プリント基板の設計・製作を依頼する場
合などに必要となる回路図の作成やプリ
ント基板設計
③ 回路図と組立図(実装図面)に基づく電
子部品の実装・組立て
④ 提示された仕様を満たす電子回路基
板・機器のマイコンに組込むプログラム
の設計・実装・テスト
出典:ポリテクカレッジ福山 HP
- 270 -
図表Ⅵ. 29
中国地域におけるパワー半導体関連産業創出の方向性と施策
(【重要項目】短期集中)
方 向 性
関
係
者
施
策
≪推進の仕組み≫
(1)
アプリケーションメー
カへの積極的なアプロ
ーチ
(2)
パワー半導体分野での
川上・川下部門の連携
強化
(3)
隣接地域との連携・交流
産
学
官
産
学
官
産
官
・デバイス・モジュールメーカのアプリケーションメーカへの積
極的なアプローチおよびそれを支援するためスキームの構築、
産業支援機関等のコーディネート活動の実施
・川上・川下企業の連携
・技術優位性のある分野における早期の事業展開によるリーディ
ングポジションの確保と、それと並行した中長期的な市場を見
据えた製造装置開発の実施
・フォロアーとしての効率的な研究開発
・特定の分野に特化したアプリケーション主導の研究開発
・デバイス~アプリケーション研究者の情報交換・連携、地域版
のミニ「グリーン IT プロジェクト」の実施(例:船舶、スマ
ートファクトリー)
・関西・九州地域との連携・交流の深化
・地域の半導体関連企業団体との交流
≪技術開発・アプリケーションの開拓≫
(4)
(5)
高温対応部素材の開発
推進
SiC の特性を活かした
新たなアプリケーショ
ンの開拓
産
学
・中国地域の受動素子メーカ、化学メーカによるデバイス、アプ
リケーションメーカとの連携による高温対応部素材の開発。
産
学
・競争市場ではない市場導出とそのための新たなアプリケーショ
ンの開拓(例:「音」、
「極限環境」
)
産
学
官
・技術トレンドを明確するための情報発信(講演会・見学会)の
実施
・パワー半導体関係者のネットワーク構築、交流範囲の拡大
⇒ ・自律的な情報伝播と域内企業の連携への気運醸成
・産業振興の旗振役になるキーマンの発掘
学
官
・教育機関への SiC パワーデバイスのサンプル提供
⇒デバイス流通による回路設計技術の向上、市場拡大に備えた
地域の受皿作り
・高専ロボコン等のイベントでの活用、各学校間での「回路設計
コンペ」の開催
・初等~中等教育を含めたパワーエレクトロニクス教育の実施
≪情報≫
(6)
技術トレンド情報の域
内流通とネットワーク
構築
≪人材育成・教育≫
(7)
教育機関へのデバイス
提供
- 271 -
<施策展開イメージ>
ちゅうごく産業創造センターで実施するパワー半導体関連施策(案)
公益財団法人ちゅうごく産業創造センターでは平成 24 年度「中国地域におけるパワ
ー半導体の現状整理と関連事業の参入可能性調査」の結果を踏まえ、今後、以下の施策
の取組み検討を行う。
1.高等専門学校への SiC パワーデバイスのサンプル提供
中国地域における教育・研究機関における SiC パワーデバイスの認知度の低さ、流通
の度合いを勘案し、実践技術者の育成かつ地域社会でのリーダー養成機関である高等専
門学校に対し SiC パワーデバイスのサンプル提供を検討・協議する。
2.平成 24 年度 パワー半導体調査のフォローアップ調査
平成 24 年度「中国地域におけるパワー半導体の現状整理と関連事業の参入可能性調
査」のフォローアップ調査として、今後の中国地域のパワー半導体関連産業の先行きを
左右する「アプリケーション分野」、高温対応等の「関連部素材分野」の動向・見通し
等について調査を実施する。
3.中央研究機関・メーカ情報の地域での発信
SiC に対する社会的関心の高まり、中央研究機関の研究開発動向およびメーカ等の動
向に対する情報ニーズを踏まえ、「電子デバイスフォーラム」においての継続的な次世
代パワー半導体に関する研究開発動向・市場動向等の情報提供を行う。
4.その他
パワー半導体産業を含め中国地域の産業振興に向け以下の関連項目を実施する。
・本委員会委員でもあるコーディネータによる次世代パワー半導体に関連するコーディ
ネート活動
・事業化の関連調査である「中国地域における中小企業を中心とした「産学金官連携」
推進のための方策調査」
以 上
- 272 -
中国地域におけるパワー半導体関連産業の振興のための方向性
<参考>
中長期戦略
- 273 -
前節「中国地域におけるパワー半導体関連産業の振興のための方向性の抽出」にお
いて抽出された項目のうち「中期」
、
「長期」において、次世代パワー半導体の普及状
況、中央・他地域の状況に合わせ、随時実施または留意すべき内容を記載する。
≪推進の仕組み≫
(8)リスク分散の流れ等を踏まえた企業誘致【産官】
中国地域では東日本大震災後、東日本や近畿地域の企業が工場・事業所を進出させ
るケースが増加している。大地震・津波発生の恐れが少ないことに加え、地域の電源
構成が原子力への依存度が低く、比較的安定供給が見込めるといった等の要因による
と推測される。
2011 年の工場立地動向調査(経済産業省)によれば中国地域への工場立地のうち
約 1 割は東日本大震災を踏まえた、
「リスク分散」を立地要因に挙げている。例えば、
福島県いわき市の主力工場が被災した大手化学メーカ、クレハ傘下のレジナス化成は
東広島市に電子部品向け接着剤の新工場を建設している。また、医療機器大手のテル
モは国内工場が静岡・山梨両県に集中している状況を回避する意味からも、山口市に
新工場を建設する予定である。
東日本大震災後、電子デバイス関連企業の中国地域への工場立地は見られないもの
の、域内企業の東日本に生産拠点を有する半導体メーカへの事業譲渡の事例がヒアリ
ングの中で見受けられた。このような状況を鑑みれば、単にリスク分散要因を期待し
ての企業誘致は困難を伴うものの、東日本に立地する工場の既存生産ラインの老朽化
や生産条件の悪化と併せ、誘致を行えば、生産性向上の要因ともなることから実現の
可能性が高まると見込まれる。
さらに、新たなパワー半導体の量産ラインを構築する場合には、コスト面での優位
性から既存の半導体ラインを転用して需要拡大に対応していく事例も見受けられる。
図表Ⅵ. 30 中国地域の工場立地の推移
件
立地件数(左軸)
%
立地比率(右軸)
120
8
7
100
6
80
5
60
4
3
40
2
20
1
-
0
95
96
97
98
99
00
01
02
03
04
05
06
07
出典:経済産業省「工場立地動向調査」を基に作成
- 274 -
08
09
10
11
年
その意味で、既存のパワー半導体以外の半導体ラインの存在も、域外企業との連携
を視野に入れ、当該分野の誘致という意味では強みとなる可能性がある。現在の SiC
パワー半導体は 4 インチのウエハを 4 インチラインで流すか、6 インチラインにアタ
ッチメントを付けて流し、製作されている。今後は SiC ウエハの口径は 6 インチが主
流となることが見込まれるが、域内にはターゲットである 6 インチラインの半導体工
場が複数存在している。
また、ヒアリングの中で半導体工場立地の大きな要因として「市場への近接性」が
挙げられている。中国地域に SiC パワー半導体関連のアプリケーション産業が立上が
れば、市場(アプリケーション産業)への近接性の観点よりデバイス・モジュール工
場の立地可能性が高まることが期待される。
図表Ⅵ. 31 <参考>中国地域の半導体工場(パワー半導体を除く)の分布
シマネ益田電子 後
サンエス 後
シャープ 前
エルピーダメモリ 前
テラプロープ 後
ルネサス セミコンダクタ九州・山口
ウラベ 後
シャープ 前
パナソニック セミコンダクター 前
シャープタカヤ電子 後
前:前工程
後:後工程
前後
ルネサス柳井セミコンダクタ
後
ルネサス柳井セミコン
ダクタ 後
出典:産業タイムズ社「半導体工場ハンドブック
2012」を基に作成
(9)事業のグローバル化への対応、海外展開の支援【産官】
先ほど述べた「(3)隣接地域との交流・連携」での近畿地域、九州地域への製造
装置・部素材供給の同心円上には将来的なアジアへの輸出というシナリオがある。
アジアの新興国ではインバータ化の進展 38 など、パワーデバイスに対して継続的な
需要の増大が見込まれるとともに、中国においても、SiC ウエハ事業が立上がるなど
38
例えば日本のエアコンのインバータ化率はほぼ 100%であるが、中国は 10%程度であり今後の急速な
普及が期待される
- 275 -
(タンケブルー社等)、SiC パワー半導体関連の製造側およびユーザ側両面からの市
場が形成されつつある。
このような海外市場へのアプローチに関連して文献調査およびヒアリングにおい
て課題として指摘されている点について、2 点述べる。
1点目は「規格認証制度」である。現在、海外市場に対して製造装置等を輸出する
場合は「外国為替及び外国貿易法」等により経済産業大臣の許可とともに、多くの場
合は輸出先国の規格に適合していることの認証を受ける必要がある。この規格認証に
関する認定マーク取得の申請・試験には、製品1件あたり 2~5 百万円程度費用負担が
かかり、地域の中小企業の大きな負担となっており、行政支援もしくは国内規格の海
外規格(EC マーク等)とのリンケージの必要性について指摘されている(P.86 参照)
。
2 点目は「特許戦略」である。アジア等の新興国に対する優位性の維持のためには
海外を含めた特許戦略も不可欠であり、次世代パワー半導体デバイスやその周辺分野
に関わるコア技術を開発した場合には、その成果を早期に知財化して域内企業の資産
としていくことが重要である。併せて特許を取得するには費用負担がかかるだけでな
く、その申請に向けたノウハウが必要であるため、関係機関は取得費用・手続面で支
援していくことも求められる。
P.53 図表Ⅱ. 18「SiC 基板の大口径化に関する出願先国別-出願人国籍別出願件数」
でも見られるように、知財面での日本の SiC パワー半導体の研究開発は韓国、中国に
先行しているものの、IC、液晶パネル、太陽光発電の事例にも見られるように特許取
得数がビジネスに結びつかないケースも少なからずある。現在の優位性を維持するた
めにも、企業にとっては事業戦略と有機的に結びついた、知財戦略を策定することが
重要である。
≪技術開発・アプリケーションの開拓≫
(10)既存技術と SiC の特性に対応する要素技術の融合による新装置の開発【産学】
ヒアリングの中では SiC パワー半導体の製造装置は Si からのシフトに伴うイニシ
ャルコストが最小限かつ装置開発がスピーディーにできる方向で開発されてきた側
面が強いとのコメントがあった。よって、より SiC の特性に合せた装置が開発されれ
ば効率的な製造プロセスが実現化されるとともに、Si 半導体製造装置分野に参入し
ていない企業でも、SiC の特性にあった要素技術が確保できれば装置分野に参入でき
る可能性が示唆されている。
SiC は地球上でダイヤモンド、炭化ホウ素に次ぐ 3 番目に硬い化合物で、圧縮によ
る変形を受けにくいという性質がある。このような硬いものに対する「切断」・「研
削」
・
「研磨」に関する要素技術と地元工作機械メーカのプラットフォームや構造物(き
ょう体・フレーム)、精密位置決めに関する技術を融合することにより新たな装置が
開発される可能性がある。
- 276 -
中国地域には工作機械をはじめ機械加工技術に定評のある企業が存在しており、
「ウエハ製造工程」のほか「ウエハ処理工程」、
「チップ化工程」等における機械加工
技術分野での装置開発等が期待される。
図表Ⅵ. 32
要素技術の融合による新たな装置のイメージ
位置決め技術(イメージ)
切断技術(イメージ)
新たな SiC ウエハ 切断装置
さらに、ヒアリングの中では SiC パワー半導体に関連して試験・評価装置での対応
は遅れており、高温動作特性に対応できる試験装置や周波数追随性を改善した測定器
など SiC パワーモジュール向け評価・検査技術に関する新たな分野の立上がりと異業
種からの参入の可能性について言及されている。
この点に関しては、中国地域では、FPD、太陽電池分野での検査装置等を開発・販
売している企業が複数存在していることもあり、新たな参入者として期待される。
図表Ⅵ. 33
パワー半導体モジュールの信頼性試験(案)
Si モジュールの試験条件
熱衝撃試験
SiC モジュールの試験条件
-40℃~+125℃
-40℃~+250℃
高温保存
Ta39=+125℃、1,000 時間
Ta=+300℃、1,000 時間
低温保存
Ta=-40℃、1,000 時間
同左
高温バイアス
Tj40=+125℃、負荷、1000 時間
Tj=+250℃、負荷、1,000 時間
断続通電
ΔTj=100℃、5,000 サイクル
ΔTj=200℃、5,000 サイクル
+85℃ 85%
同左
高温高湿試験
出典:理想計測資料
39
ambient temperature 周囲温度
40
junction temperature 接合温度
- 277 -
≪認知度向上・普及≫
次世代パワー半導体関連産業の産業振興にあたっては地域のユーザに対してそ
の存在およびメリットを認知してもらうための効果的な PR や制度設計が求められ
る。本調査で実施したアンケートにも SiC パワー半導体のメリットを記載したリー
フレットを同封したところ、少なからず反応があった。次世代パワー半導体はユー
ザにとってかなりインパクトのある存在ではないかと思われる。
(11)省エネルギーに関する企業の取組み、国等の施策との関連付け【産官】
〔民生用産業用機器への導入に向けて〕
中国地域には約 11,000 社の中小製造業
図表Ⅵ. 34 省エネルギー行動の実施状況の調査
企業が存在しているが、昨年度当センタ
ーで実施した「地産エネルギーを活用した
中国5県割合
無回答
あまり行って 1.5% (7社)
いない
7.8% (37社)
中小企業工場のエネルギーマネジメント
システム構築の可能性調査」によると、省
N=475 社
特に意識して
行っている
17.3% (82社)
エネルギーへの取組意欲は高く、「特に意
識して行っている」、「ある程度行ってい
る」、「できるところから少し行っている」
できるところから
少し行っている
36.4% (173社)
を合わせると約 90%の企業が省エネを実
施している(図表Ⅵ. 34:赤枠部分)。
また、工場設備のうち SiC 半導体の活
ある程度
行っている
37.1% (176社)
用が期待されるモータ系の機器として「ポ
ンプ・ファン」
、
「コンプレッサー」
、
「電動
機」を保有し、かつ省エネルギーへの行動
の余地があるとしている企業の比率は全
出典:
(公財)ちゅうごく産業創造センター
「地産エネルギーを活用した中小企業工場のエネ
ルギーマネジメントシステム構築の可能性調査」
(2012 年)
体の 35~45%程度(図表Ⅵ. 35:赤枠部分)
に及ぶ。この結果、中国地域においては少なくとも 4,000~5,000 社程度が潜在的な
SiC パワー半導体導入企業と見込まれる。さらに、機器数ベースで言えば工場内に複
数台所有していることが見込まれるため、何倍にもなる。また、全国には同等の製造
業の中小企業の数は 41 万社程度あり、少なくとも 14 万~18 万社が同等に対象とな
ってくる。
このような中小企業の高い省エネルギー意識と SiC パワー半導体のメリットを結
び付け、需要を顕在化するためにも、企業に対する省エネルギー活動の一環としての
SiC パワー半導体の啓蒙・普及活動が期待される。
- 278 -
図表Ⅵ. 35 中国地域における中小企業の工場内設備の保有状況
中国5県
0%
20%
40%
60%
80%
312
① 空調設備
109
34
369
② 照明設備
75
161
③ ポンプ・ファン
180
80
218
④ コンプレッサー
100%
204
12 8
15 6 10
27
27
19
22 12
省エネ可能な設備保有会社数
10,836 社×35%=3,800 社
10,836 社×45%=4,900 社
10,836 社×35%=3,800 社
104
⑤ ボイラ
⑥ 工業炉
⑦ 蒸気系統
⑧ 熱交換器
31
265
27
54
43
326
131
80
⑫ 冷却設備
79
47
90
128
128
66
281
59
45
27
16
24
22
183
158
⑪ 電気加熱設備
16
327
45
⑩ 電動機
12 15
374
65
⑨ 受変電設備
⑬ 保冷・冷凍設備
79
292
345
保有している(省エネの可能性あり)
保有している(省エネの可能性なし)
保有していない
保有している(省エネの可能性あり)
保有している(省エネの可能性なし)
わからない
無回答
わからない
無回答
53
28
17
43
19
18
29
23
22
14
24
保有していない
N=475 社
出典:
(公財)ちゅうごく産業創造センター「地産エネルギーを活用した中小企業工場のエネルギ
ーマネジメントシステム構築の可能性調査」(2012 年)
〔公共用産業用機器への導入に向けて〕
前節においては民生部門における産業機器用の需要について述べたが、同じく公共
部門においても大きな需要が期待できる。導入効果の大きいものとしては 24 時間運
用され、エネルギー使用量が多い分野に上下水道が挙げられる。中国地域には 150
箇所の下水処理場が存在するとともに、都市部の施設は昭和の世代に作られたものも
あり、今後ポンプ等の機器は更新が見込まれている。
下水処理場では処理する下水量の時間、季節変動に合わせポンプは流量調整される。
古い処理場では流量調整は台数制御、バルブによる流量調整がされていたが、近年、
新設する処理場、また古い処理場でも更新時にポンプの流量調整はインバータによる
回転数制御が採用されている。24 時間運用するので、インバータによる省エネの効
果は大きい。大規模な処理場では、3kV の電圧の電動機を使用する機器もあり、省エ
ネルギーのために次世代パワー半導体でなければ対応できない場合もある。
また、上水設備のポンプ、またトンネル等の道路設備のファンも 24 時間運用され
ている。このように公共部門においても、SiC パワー半導体の採用により、効果が見
込まれる機器は多くあると考えられる。
- 279 -
図表Ⅵ. 36
下水処理場の設備・運転状況
下水処理量の変動に合せ
ポンプ等の排出量を制御
(インバータ、台数制御)
流
入
下
水
量
0時
8時
16 時
24 時
時間
広島市千田処理場の設備
地域のエネルギー環境対策として民生部門における省エネルギー意識の向上、エネ
ルギー消費機器性能向上に加え、公共部門においても「率先実行による省エネルギー
推進」が求められている。公共用産業機器の納入に際しては、機器の信頼性および高
い施工・設置技術が求められるなどハードルは低くないが、SiC パワー半導体を搭載
した機器の積極的な採用が期待される。
- 280 -
図表Ⅵ. 37
対
1
象
SiCパワー半導体製品導入のメリット
上下水道ポン
・ 本体価格(ポンプ本体 5 千万円~)が高価なため、SiC パワーデバイス
プ、ファン(24
時間運用機
器、重電設備)
24 時 間 運 用
施設(病院、
データセンタ
2
公共部門における導入対象とメリット(例)
ー、発電所運
転室等)のフ
ァン、ポンプ
等の弱電設備
を導入しても価格の影響は小さく、費用面の制約が低い
・ 24 時間運用で効果が大きく、採算性の確保が十分見込まれる
・ 行政の研究機関(各県の工業技術センター等)、大学との連携が得やすい
・
行政で導入し、中小工場の機器の普及につなげる理由付けとなる
・ 施設全体の機器に比較すると、部品として高価な SiC パワーデバイス
を導入しても価格の影響は小さく、費用面の制約が低い
・ 24 時間運用で効果が大きく、採算性の確保が十分見込まれる
・ 弱電設備は設計~製作~試験まで地元企業による対応が比較的容易
・ 大学病院であれば、ファン、ポンプ等の弱電設備は設計~製作~試験
まで学内ででき、学生の教育の一環となる
・ 行政の研究機関(各県の工業技術センター等)
、大学との連携が得やすい
・ 行政で導入し、中小工場の機器の普及につなげる理由付けとなる
〔省エネルギー制度と次世代パワー半導体の普及〕
ヒアリングの中では SiC パワー半導体の普及はユーザの価格感応度の関係もしく
は機器全体でのデバイス価格の吸収といった観点から産業用機器から始まり、その後、
白物家電等へ広がって行くというシナリオが主流であった。
これは専ら価格面からの要請によるものと思われるが、ルームエアコン、電気冷蔵
庫等などの機器には、エネルギー消費効率に関連して「トップランナー基準」という
制度が導入されている。この制度は、省エネルギー法に基づく機器の効率基準の策定
方法であり、特定機器の省エネルギー基準を、各々の機器において、基準設定時に商
品化されている製品のうち「最も省エネ性能が優れている機器(トップランナー)」
の性能以上に設定するというものである(図表Ⅵ. 38)
。
現在、次世代パワー半導体は白物家電においては、エアコン等の高級品種に採用さ
図表Ⅵ. 38
トップランナー基準による目標設定のイメージ
出典:資源エネルギー庁「トップランナー基準」(2010 年)
- 281 -
れているのみで、品目全体への影響は限定的である。ただし、今後、ある一社が積極
的に採用し、その影響から競争基準が達成できないような事態となれば、公表・罰則
(事実上市場から退出の可能性)を受けることから、競争他社もその状況を看過する
ことが出来ず、加速度的に SiC パワー半導体が採用される可能性がある。
白物家電への普及等においてはアプリケーション部門を持つ大手電機メーカの意
向が大きく影響するものと考えられるが、アプリケーション部門を持たない半導体デ
バイスメーカ、半導体部門を持たない家庭用電気製品メーカの動向にも注視しながら、
ビジネスチャンスを伺う姿勢も求められる。
〔社会実験への採用〕
SiC 半導体を含め、一般的に新技術に関連した産業の振興を図るうえで、当該技術
の可能性について大規模な実証実験を行うことで実現性の検証を図ると同時に、その
成果を社会に向けて広くアピールしていくことが重要である。地域における展開とし
ては各地で行われているスマートシティや水素タウンに関する社会実験などもその
一例である。
こうした社会実験の取組みは、技術開発の成果の可視化を進め、新技術への認知度
を高めると同時に、さらなる技術開発を促進する効果がある。現在、中国地域では鳥
取市において「スマートグリッドを活用した都市づくり」(図表Ⅵ. 39)を通じて、
低炭素社会の実現による「快適・環境都市 鳥取」を目指すとともに、産業振興及び
雇用創造に繋げていく取組みが行われている。中国地域における今後の同様な取組み
図表Ⅵ. 39 鳥取市スマート・グリッド・タウン構想
(若葉台地区スマート・グリッド・タウン実証事業)
出典:鳥取市資料(鳥取市スマート・グリッド・タウン推進協議会会長
- 282 -
鳥取環境大学
鷲見教授提供)
に、SiC パワー半導体を使用した機器・装置を採用し、地域住民にアピールすること
によって、SiC パワー半導体の認知度の向上、普及の進展が期待される。
(12)公設試験研究機関における研究開発等の促進【産官】
昨年度 当センターが実施した省エ
図表Ⅵ. 40 省エネルギー投資の推移(前年度比)
ネルギーに関するアンケート(P.278
参照)同様に、本年度に実施された公
省エネ
%
的金融機関の設備投資に関する調査
68.9
においても、東日本大震災以降の電力
60
供給問題の影響もあり、企業の省エネ
40
ルギーのための投資意欲は旺盛であ
る(図表Ⅵ.40)。SiC パワー半導体の
58.1
44.7
34.8
20
普及にとっては追い風の状況が続い
ており、この好機を逃さぬようコスト
全体
80
17.0
18.6
12.3
0
1.3
18.6
10.3
8.0
-1.8
-4.2
-7.7
-20
低減やアプリケーション開発が期待
-23.6
-40
される。
-41.0
産業用機器へのユーザのヒアリン
-60
05
グでは省エネルギーのための機器の
導入・リプレイスにあたっては、「投
資回収期間をベースに厳格なメリッ
06
07
08
09
10
11
出典:株式会社日本政策金融公庫「中小製造業設備投
資動向調査(2012 年度修正計画)」を基に作成
ト計算を行い、その可否を決定する」とのコメントがあった。
図表Ⅵ. 41 省エネ設備投資の投資回収期間
中国5県割合
無回答
2.1% (10社)
その他
3.4% (16社)
この当然なコメントに関連して留意
すべき点は 2 点ある。1 点目は、当セン
投資回収できれは
15年を超えても
実施する
10~15年程度で
1.7% (8社)
投資回収できれば
ター実施の省エネルギー投資回収期間
に関する調査によれば、省エネ機器の導
実施する
5.5% (26社)
入については、広く普及を促すために「5
年未満(1~4 年程度)の投資回収期間」と
省エネ対策のため
だけの投資は
考えていない
28.2% (134社)
5~9年程度で
投資回収できれば
実施する
24.8% (118社)
なるコスト水準を実現する必要がある
ということである(図表 Ⅵ. 41:赤枠
部分)。さらに回答の 3 割程度の企業で
は価格面のみならず、非価格面でのメリ
N=475 社
年
12 年度
1~4年程度で
投資回収できれば
実施する
34.3% (163社)
出典:
(公財)ちゅうごく産業創造センター
「地産エネルギーを活用した中小企業工場のエネ
ルギーマネジメントシステム構築の可能性調査」
(2012 年)
- 283 -
ットを提供できた方が好ましいという
結果も出ている(図表 Ⅵ. 41:緑枠部
分)
。
研究開発の進展によりコスト低減が
期待されるが、併せて国・地方自治体
等が当該省エネルギー設備の導入に補助制度を設ける場合には、割高な価格を、補助
により投資回収期間を「5 年未満の水準」まで低下させることが普及に繋がると見込
まれる。
また、今まで投資回収期間について述べてきたが、留意すべき点の 2 点目は、そも
そも投資回収期間を計算するためには「電力損失の低減に伴いどのくらい電気料金が
安くなるのか」
、
「小型化に伴いどのくらいの空きスペースが発生するのか」、
「耐用年
数は何年か」
、
「ライフタイムコストはどのくらいか」等の需要家への提示が不可欠で
あり、アプリケーションの早急な普及に備え、経済計算が可能となるデータ整備が求
められるということである。
デバイスについては半導体製造メーカの範疇となり、ある程度対応は可能である
と考えられるが、モジュール化し、実際の機器に搭載して、高温で使用した場合等
のケースとなると、耐用年数を踏まえての電気料金に関するメリット額等の経済的
提案に加え、省スペース化等に関する非経済的提案には困難が伴うことが予測される。
特に地域の中小企業等ではその傾向は顕著であることが見込まれる。今後、このよう
な状況に対し、試験・測定機器を解放している公設試験研究機関に対しては、今後の
更なる機器の充実と併せその期待は高まってくると思われる。
また、地域の公設試験研究機関に関しては、ものづくり基盤技術に係る実効性の高
い研究開発機関であることに加え、技術開発志向かつ地域企業との連携に積極的な研
究者も存在している。よって、企業の技術的課題へのサポートや県内を中心とした広
域的な連携のハブといった役割とともに、中国地域全体での共同研究や機器開放等の
連携も期待される。
(13)地域資源、地場産業等での活用による地域独自性の発揮【産官】
ヒアリングの中では SiC パワー半導体の普及の契機となるアプリケーションとし
て『「おもちゃ」のようなもの』というコメントがあった。この「おもちゃ」とは実
際の「玩具」を指すものではなく、SiC の特性を最大限に活かす精密機器に対して、
「身近なもの」
、
「娯楽」に関連し SiC のメリットを認識できる程度のアプリケーショ
ンという趣旨での「おもちゃ」と解することもできる。
これを中国地域での取組みに当てはめると、
「身近なもの」=「地域性のあるもの」
とすれば、現在、島根県で実施・検討されている、「堀川遊覧船」あるいは「しじみ
漁の漁船」への SiC パワー半導体の利用や、「娯楽に関連」するものとしてエコツー
リズムの乗物としての EV、非接触充電器への SiC パワー半導体の採用が該当する。
このように、SiC パワー半導体を「体験」することにより認知度を高めていくことも、
地域における裾野の広がりには重要ではないかと考えられる。
この取組みを中国地域全域で考えると、例えば同じ観光関連では世界遺産である石
見銀山や宮島の観光等に使用される EV/HEV や、身近な交通手段では岡山市、広島市
- 284 -
図表 Ⅵ. 42
堀川遊覧船
宍道湖 しじみ漁 (松江市)
での「路面電車」などが同様なアプリケーションに該当すると思われる。特に広島市
の路面電車は近々に全編成の 1/3 が更新時期を迎えるとの報道がなされるとともに、
低床化、バリアフリー化の進展に対応したインバータ等の小型化という観点からも
SiC パワー半導体の採用は有益と考えられる。
また、将来的に再生可能エネルギー利用の進展とともに、瀬戸内海の島嶼部におい
て地産地消型のエネルギーシステムが構築されれば、洋上風力発電や潮力発電から、
また、離島への高電圧直流送電(HVDC)において SiC パワー半導体が活用される
可能性がある。
このように身近なアプリケーションの浸透により、地域内での認知度向上に加え、
地域外からの来訪者に対しても当地域の先進性がアピールできるなどの相乗効果が
期待される。
≪情報≫
(14)域内企業・技術情報の発信【産官】
ヒアリングの中では SiC パワー半導体に関連する技術を有するものの、事業展開ま
たは共同研究に関連して、その発信先・発信方法が不明であるとの声が挙げられた。
このような声に対し行政や支援機関としては、大手電機メーカ、その協力会社また
は研究機関等に対し、製造装置または部素材の領域において接点を持ちつつ、技術開
発で対応できる地域のものづくり中堅・中小企業群を見極めながら、それらの企業群
を束ね、メーカが欲している総合的な技術の組合せを提供できるような土台づくりを
進めるべきである(図表Ⅵ. 43)
。
特に、川下(アプリケーション)企業ニーズとのマッチングやコーディネートは困
難が伴うことが見込まれるが、この解決に向けて、実務を担う、より専門性のあるコ
ーディネータ(目利き役)を育成していくことが重要である。このコーディネータに
は SiC デバイスとアプリケーションの橋渡し役とともに、関連する部素材メーカ等も
取りまとめ、アプリケーション側の用途や要望等に応じて最適なシステムを構築・提
案する役割が期待される。
- 285 -
また、地域の中堅・中小企業にとっても、川下側からの困難なニーズに対し、高い
技術・品質レベルを獲得する好機と捉え、挑戦していく気概が求められる。
図表Ⅵ. 43
域内企業・技術情報の中央企業・研究機関への発信のイメージ
問合せ
案件案内
企業群
コ
ー
デ
ィ
ネ
ー
タ
(
目
利
き
役
)
顧
客
(
メ
ー
カ
)
設計
モジュール
装置
デバイス
材料・部材
ソフトウエア
評価・解析
企業組合せ
B社
対応
アプローチ
C社
A社
≪人材育成・教育≫
(15)寄付講座の設置と人材誘致【産学官】
〔大学等でのパワーエレクトロニクスの寄付講座の設置〕
次世代パワー半導体の研究開発においては、材料、プロセス、デバイス、モジュー
ル、システム、アプリケーションの幅広い要素技術が必要となる。地域において次世
代パワー半導体産業を確立し、継続・発展させるためには、若手研究者・技術者がこ
図表Ⅵ. 44 パワーエレクトロニクスの解説
電子の振る舞いを解
明・理論化し、また半
導体等の素子、装置な
どの制御を扱う工学
分野
発電や電気の流通(送配
電力工学
電子工学
電)にかかわる機器、仕組
み、材料、あるいはそれら
パワーエレク
トロニクス
の応用を扱う工学分野
制御工学
入力および出力をもつシステムにおいて、その出力を制御する方法全般に係る学問分
野である。そのうち、数理モデルを使った制御理論とそれを実モデルに適用する制御
応用があり、特に後者はその発達の経緯から、電気系、機械系、および化学系が中心
となった工学分野
出典:財団法人エネルギー総合工学研究所「パワーエレクトロニクス」
(2008 年)
- 286 -
れらの分野をクロスオーバーし学習する機会を確保することが好ましい。
ただし、「エレクトロニクス」、「パワー」、「コントロール」の統合的な技術分野に
関する学問であるパワーエレクトロニクスの講座に関しては、全国的に講座数が少な
く、その伸びもわずかである。当該分野の自動車業界等での人材需要の高まりを勘案
すると、ミスマッチな状況が発生している(図表Ⅵ. 45)
。中国地域の総合大学におい
ても過去の組織変え等の結果、現時点では島根大学と山口大学の2大学しか講座が存
在せず、ヒアリングにおいても長期的な産業振興の視点から、教育機関においては「流
行に基づく改組は慎むべき」とのコメントがあった。
図表Ⅵ. 45
50
大学教育における産業界ニーズと教育カリキュラムのマッチング度合い
(自動車業界)
%
45.5
44.5
39.3
40
36.1
35.8
平均
33.8
30
33.2
33.1
32.2
30.1
25.5
17.9
20
10
関
連
技
術
I
T
・
I
T
S
制
御
シ
ス
テ
ム
設
計
電
子
機
器
開
発
(
車
両
ユ
ニ
ッ
ト
)
生
産
技
術
駆
動
系
開
発
エ
ン
ジ
ン
開
発
シ
ャ
シ
ー
設
計
安
全
性
機
械
系
実
験
・
評
価
車
体
設
計
ニ
ク
ス
関
連
開
発
パ
ワ
ー
エ
レ
ク
ト
ロ
機
械
会
系
系
C
C
A
A
E
E
分野内求人数
少ない
平均
少ない
多い
少ない
平均
少ない
少ない
少ない
多い
少ない
少ない
今後の需要
横ばい
増加
増加
増加
増加
増加
増加
横ばい
増加
増加
増加
増加
出典:経済産業省「大学教育における産業界ニーズと教育カリキュラムのマッチング度合いの分析結果」
(2008 年)
を基に作成
さらに、第Ⅲ章において紹介した TPEC が、2012 年 8 月、次代を担う、我が国の
パワーエレクトロニクス若手人材(35 歳以下)の育成のため、第 1 回「TIA パワー
エレクトロニクスサマースクール」を開催したが、中国地域からの参加者はいなかっ
た(図表Ⅵ. 46)
。主に Academic Member からの参加であるとは言え、残念な結果
となっている。
このような状況を踏まえれば、将来的には、中国地域においても人材育成を大学に
一方的に委ねるだけではなく、例えば、企業や公的研究機関に偏在しているエンジニ
- 287 -
図表Ⅵ. 46
第1回 TIA パワーエレクトロニクスサマースクール参加大学
東北:3 名
関西:18 名
中部:8 名
関東・甲信越:25 名
九州・沖縄:7 名
出典:SiC パワー半導体関連プロジェクト合同シンポジウム資料(2012 年 11 月 22 日)
アに次世代の若手の教育者として活躍の場を設けるなど、産業界から教育界をバック
アップする姿勢が不可欠である。
例えば、メーカから人材派遣等により、寄付講座等を開設することにより、パワー
エレクトロニクス講座のない大学にも実装・回路設計、応用技術分野などにおいて学
習・研究開発の機会を付与し、産学が一体となって、即戦力となる人材を養成するこ
とは、不足しがちな地域への人材供給・補填の観点から意義あることと考えられる。
〔核となる人材の誘致〕
同じく人材の観点からは、先端産業分野の振興に際しては、得てして「核となる人
材(研究者)」の存在が大きな鍵となるケースが多い。特に地方においてはその傾向
は顕著である。例えば、同じ地方における電気・電子関連分野では、山形県において
は、有機 EL の第一人者である城戸淳二教授が山形大学にいたことが有機 EL バレー
構想を進めるうえで大きな強みとなり、同氏を県の有機エレクトロニクス研究所の所
- 288 -
長に任命し、研究開発を進展してきた事例がある。
また、地域にそのような人材が見当たらない場合は、他地域から誘致することも検
討すべきである。中国地域では、島根県産業技術センターの吉野勝美所長は大阪大学
を退官した後、出身地である島根県松江市において、LED 高輝度照明装置や色素増感
太陽電池といった先端研究開発の指揮を執るとともに、既に紹介した「島根県パワー
エレクトロニクス技術研究会」
(P.88 参照)の設立にも大いに関与しているという例も
ある。
中長期的には若手研究者の育成も重要な課題ではあるが、一方では、地域において
リーダーシップを発揮できる人材の招聘により、次世代の技術者の育成が加速され、
さらに、優秀な人材確保が容易となることで企業の生産・研究点の誘致に繋がるとい
った好循環の導出が期待される。
- 289 -
図表Ⅵ. 47
方
中国地域におけるパワー半導体関連産業創出の方向性と施策
(<参考>中長期戦略)
向 性
関
係
者
施
策
≪推進の仕組み≫
(8)
リスク分散の流れ等を踏
まえた企業誘致
産
官
(9)
事業のグローバル化への
対応、海外展開の支援
産
官
・東日本に拠点を有する半導体メーカの中国地域への誘致
(設備老朽化時等)
・既存の半導体製造ラインを活用した企業誘致
・国内規格認証の海外規格(EC マーク等)とのリンケージ
および取得のための行政支援
・新興国に対する優位性維持のための特許戦略、事業戦略と
有機的に結びついた特許戦略の実施
≪技術開発・アプリケーションの開拓≫
(10)
既存技術と SiC の特性に対
応する要素技術の融合によ
る新装置の開発
産
学
・SiC 特性にあった要素技術が確保による装置市場への参
入、より効率的な製造プロセスの実現
≪認知度向上・普及≫
(11)
省エネルギーに関する企
業の取組み、国等の施策と
の関連付け
産
官
(12)
公設試験研究機関におけ
る研究開発等の促進
産
官
(13)
地域資源、地場産業等での
活用による地域独自性の
発揮
産
官
・民生用産業用機器への導入のための普及・啓蒙活動
・上下水設備のポンプ、トンネルの道路設備のファン等の公
共用産業用機器への導入促進
・スマートシティ等での社会実験への採用
・コスト低減、補助制度の導入による投資回収期間「5 年未
満」水準の実現、経済計算を可能とするデータの蓄積
・公設試験研究機関の試験・測定機器の活用、企業の技術的
課題へのサポートや広域的な連携のハブの役割
・
「身近なもの」、
「地域性のあるもの」への採用による、SiC
パワー半導体の「体験」
・身近なアプリケーションへの浸透による、域内での認知度
向上、域外への先進性のアピール
≪情報≫
(14)
域内企業・技術情報の発信
産
官
・総合的な技術の組合せを提供できる企業群の取りまとめ、
土台づくり
・より専門性のあるコーディネータ(目利き役)の育成
産
学
官
・材料、プロセス、デバイス、モジュール、システム、アプ
リケーションをクロスオーバーし学習する機会の確保、そ
のための寄付講座の設置
・先端産業分野の属人性を踏まえた「核となる人材」の誘致
≪人材育成・教育≫
(15)
寄付講座の設置と人材誘致
- 290 -
[FAX番号]082-254-0661⇒ 調査機関:中電技術コンサルタント(株)山名,高田 行き
資料編
(資料1)パワー半導体関連産業の動向に関するアンケート調査
(製 造 側 )
調 査 票 ································· 291
(資料2)パワー半導体関連産業の動向に関するアンケート調査
(ユ ー ザ 側 )
調査票
····························· 305
( 資 料 3 ) SiC パ ワ ー 半 導 体 紹 介 リ ー フ レ ッ ト ··················· 316
- 289 -
[FAX番号]082-254-0661⇒ 調査機関:中電技術コンサルタント(株)山名,高田 行き
- 290 -
[FAX番号]082-254-0661⇒ 調査機関:中電技術コンサルタント(株)山名,高田 行き
パワー半導体関連産業の動向に関するアンケート調査(製造側)
中国地域におけるパワー半導体の現状整理と関連事業の参入可能性調査
アンケートへのご協力のお願い(ご案内文)
調 査 主 体:公益財団法人 ちゅうごく産業創造センター
調 査 機 関:中電技術コンサルタント株式会社
拝啓
時下ますますご清祥のこととお慶び申し上げます。
現在 電力削減や環境負荷低減を求められる中、省エネに資する「パワー半導体」の活躍の場
が増えています。サーバーやパソコンなどの IT 機器、エアコンを始めとする白物家電、太陽光発
電システムで利用するパワー・コンディショナー、ハイブリッド車といった電動車両、鉄道や送
電システムなど、多岐に渡る分野で利用されています。
それに伴い、パワー半導体の性能も向上し続けるとともに、現行材料のSi(シリコン)では
実現できない大幅な効率向上や小型化を見込める次世代材料として、SiC(シリコンカーバイ
ド:炭化珪素)によるパワー半導体に大きな期待が寄せられています。
このような状況の下、公益財団法人ちゅうごく産業創造センターでは、
「中国地域におけるパワ
ー半導体の現状整理と関連事業の参入可能性調査」を国・地方自治体、大学、半導体関連企業等
の代表者からなる委員会を組織し、調査を実施しております。
当センターでは、従来より電子デバイス事業に関する講演会・交流会や事業化支援を行ってき
ましたが、全国的にSiCパワー半導体の研究開発が進められる中、今回の調査を通して
・中国地域におけるパワー半導体関連産業創出の方向性・戦略
・中国地域における行政の産業振興策
等
についての提言に繋げたいと考えております。
本アンケート調査はその基礎資料とするもので〔アンケート結果を基礎資料とした調査報告書
は、2013 年 5 月頃に当センターのホームページ(http://www.ciicz.jp/)で公表予定〕
、ご回答
いただいた内容は、本調査の目的のみに使用し、統計的に集計するもので、個別の回答内容がそ
のまま公表されることはございません。何卒ご協力下さいますようお願い申し上げます。
敬
具
「SiCパワー半導体」についてのご説明と当センターの活動概要については別添のパンフレッ
トをご参照ください。
- 291 -
[FAX番号]082-254-0661⇒ 調査機関:中電技術コンサルタント(株)山名,高田 行き
■ 本アンケートの回答にあたっての留意点 ■
本アンケートについて
 本アンケートは、中国地域に本社所在地がある製造業の企業のうち、半導体製造に関連する会社に
ご協力をお願いしております。
 本アンケートは、
(公財)ちゅうごく産業創造センターが実施し、同センターから委託を受けた中電
技術コンサルタント(株)がアンケート票の回収・集計を行います。
アンケート結果の取り扱いについて
 本アンケートの結果は、外部にデータが漏れることがないよう厳密に管理・保管します。
 アンケート結果は統計的な処理等を行い、調査報告書としてとりまとめます。無断で個別の内容を
発表する等、ご迷惑をお掛けしたりすることは決してありません。
 アンケート結果を基礎データとした調査報告書は、2013 年 5 月頃に(公財)ちゅうごく産業創造セ
ンターのホームページ(http://www.ciicz.jp/)で公表する予定です。
アンケートの回答方法について
 アンケートは、以下に示す3つの回答方法があります。回答しやすい方法でご回答ください。
回答方法①:郵送回答
(1)封入されているアンケート調査票に回答を記載する
(2)回答を記載したアンケート調査票を返信用封筒にいれ郵送する(郵送料は不要)
回答方法②:インターネット回答
(1)中電技術コンサルタント(株)ホームページ
[https://www3b.sppd.ne.jp/webcec.sppd.ne.jp/power_make/ ]にアクセスする
(2)アンケート回答用のユーザー名:powermake、パスワード:make111 を入力する
(3)アンケートの案内・留意点を記載した表紙画面の「OK」ボタンを押しアンケートを回答する
回答方法③:FAX回答
(1)封入されているアンケート調査票に回答を記載する
(2)回答を記載したアンケート調査票をFAX送信する
[FAX番号]082-254-0661⇒中電技術コンサルタント(株)山名、高田 行き
アンケート調査の締切について
 平成 24 年 10 月 1 日(月)までに、上記の回答方法のいずれかによりご回答いただきますよう、宜
しくお願い申し上げます。
【アンケートに関するお問い合わせ】
 本アンケートに関するお問い合わせがございましたら、下記までご連絡ください。
調査機関連絡先:中電技術コンサルタント株式会社(担当:山名、高田)
〒734-8510 広島県広島市南区出汐 2-3-30
TEL:082-256-3349
FAX:082-254-0661
- 292 -
[FAX番号]082-254-0661⇒ 調査機関:中電技術コンサルタント(株)山名,高田 行き
1.貴社の事業内容について
問1.貴社の主な業種を、以下商品分類表により選択ください(複数選択可)。
番号
2144
電気用陶磁器(がい子,セラミック製 IC 基盤)
21窯業・土石製品
番号
2311
23非鉄金属
銅第一次製品・精錬品
2145
理化学用・工業用陶磁器(ファインセラミック)
2319
その他の非鉄金属一次製品・精錬品
2161
炭素質電極
2341
電線・ケーブル
2169
その他の炭素・黒鉛製品
2342
光ファイバーケーブル
2464
電気メッキ
2171
研磨剤
2351
銅・同合金鋳物
2465
金属熱処理
2172
研削と石
2352
非鉄金属鋳物
2469
その他の金属表面処理
2399
他に分類されない非鉄金属
2399 29 シリコンウェハ(表面研磨を
行う前のスライスしただけのもの)
番号
2251
番号
22鉄鋼
銑鉄鋳物
26生産用機械器具
番号
番号
2433
2439
24金属製品
温風・温水暖房装置
その他の暖房・調理装置
2439 12 太陽熱利用機器
28電子部品・デバイス・電子回路
2644
印刷・製本・紙工機械
2811
電子管
2851
電源ユニット・高周波ユニット・コントロールユニット
2645
包装・荷造機械
2812
光電変換素子
2859
その他ユニット部品
2651
鋳造機械
2813
半導体素子
2652
化学機械・同装置
2814
集積回路
2653
プラスチック加工機械・同付属装置
2815
液晶パネル・フラットパネル
2661
金属工作機械
2821
抵抗器・コンデンサ・変成器・複合部品
2662
金属加工機械
2822
音響部品・磁気ヘッド・小型モータ
2671
半導体製造装置
2823
コネクタ・スイッチ・リレ-
2672
フラットパネルディスプレイ製造装置
2831
半導体モメリメディア
2691
金属用金型・同部分品・付属品
2832
光ディスク・磁気ディスク・磁気テープ
2692
非金属用金型・同部分品・付属品
2841
電子回路基板
2693
真空装置・真空機器
2842
電子回路実装基板
- 293 -
2899
その他の電子部品・デバイス・電
子回路 2899 13 シリコンウェハ(表
面研磨したもの)
[FAX番号]082-254-0661⇒ 調査機関:中電技術コンサルタント(株)山名,高田 行き
問2.半導体産業は材料・デバイスの製造側から,装置・機器のユーザー側まで多くの業種があります。
また、半導体製造には多くの製造装置があり、種々の製造技術が適用されます。
(1)パワー半導体製品(材料、デバイス、モジュール等)について
「現状」および「今後」の貴社の製造製品に該当するものを以下から選択下さい(複数選択可。本ア
ンケートは半導体の製造側の企業様を対象にしております。ユーザー側の企業様には別途アンケートを
行っております)。
【製 品】
1.現在取り組んで
いる
2.今後取り組む
計画である
①原料供給
1
2
②インゴット製造
1
2
③ウェハ製造
1
2
1
2
①ダイオード
1
2
②サイリスタ
1
2
③パワートランジスタ
1
2
④パワーMOSFET
1
2
⑤IGBT
1
2
1
2
①ダイオードモジュール
1
2
②サイリスタモジュール
1
2
③トランジスタモジュール
1
2
④MOSFETモジュール
1
2
⑤IGBTモジュール
1
2
⑥高耐圧モジュール
1
2
⑦IPM
1
2
1
2
①単相インバータ
1
2
②DC/DCコンバータ
1
2
③サイクロコンバータ
1
2
④三相インバータ
1
2
⑤整流回路
1
2
⑥直流チョッパー
1
2
⑦交直変換器
1
2
⑧交流電力調整装置
1
2
1
2
区
0
.
材
料
④その他(
1
.
デ
バ
イ
ス
⑥その他(
2
.
モ
ジ
ュ
ー
ル
分
)
)
⑧その他(
3
.
回
路
・
ユ
ニ
ッ
ト
)
⑨その他(
)
- 294 -
[FAX番号]082-254-0661⇒ 調査機関:中電技術コンサルタント(株)山名,高田 行き
(2)パワー半導体製造装置および技術分野について
半導体製造に関連して装置・技術分野を以下から選択下さい
(該当する装置を製造している場合は
「1」、
今後製造予定は「2」、装置は製造していないがそれに関連する要素技術を所有する企業は「3」に○を
してください)
。選択項目以外の装置・技術を製造されている方は、その他に装置・技術を記入ください。
【製造装置・要素技術(その1)】
区
装
1
.
ウ
ェ
ハ
製
造
2
.
ウ
ェ
ハ
プ
ロ
セ
ス
用
処
理
3
.
組
立
用
装
置
1.現在 装置
製造に取り組
んでいる
2.今後 装置
製造に取り組
む予定である
3.装置を製造
する予定はな
いが、関連す
る要素技術は
所有している
分
置
関連する要素技術
単結晶製造装置
単結晶引き上げ
1
2
3
ウェハ加工装置
切断,ラッピング,ポリッシン
グ,研削,ウェハマーキング
1
2
3
その他処理装置
(
1
2
3
露光・描画装置
コンタクトプロキシミティ露光,
投影露光,電子ビーム露光
1
2
3
レジスト処理装置
塗布,現像,レジスト剥離,ア
ッシング,ベーキング
1
2
3
エッチング装置
ドライエッチング
1
2
3
洗浄・乾燥装置
ウェットエッチング,乾式洗浄,
湿式洗浄,スクラブ洗浄,乾燥
1
2
3
熱処理装置
酸化,拡散,アニール
1
2
3
イオン注入装置
イオン注入
1
2
3
CVD装置
CVD,ALD
1
2
3
スパッタリング装置
スパッタリング
1
2
3
その他薄膜形成装置
真空蒸着,エピタキシャル,め
っき
1
2
3
CMP装置
CMP,CMP用洗浄
1
2
3
その他処理装置
(
)
1
2
3
ダイシング装置
スクライビング,ダイシング,
ウェハマウンティング
1
2
3
ボンディング装置
ダイボンディング,ワイヤボン
ディング
1
2
3
パッケージング装置
モールド,バリ取り,半田処理,
リード加工,マーキング
1
2
3
その他処理装置
(
1
2
3
)
)
- 295 -
[FAX番号]082-254-0661⇒ 調査機関:中電技術コンサルタント(株)山名,高田 行き
【製造装置・要素技術(その2)
】
1.現在装置
製造に取り組
んでいる
2.今後装置製
造に取り組む
予定である
3.装置を製造
する予定はない
が、関連する要
素技術は所有
している
置
結晶欠陥測定,加工検査,外観検
査,テスタ,X線検査,異物検査
1
2
3
その他処理装置
(
1
2
3
搬送装置
ウェハ搬送, ストッカー
1
2
3
純水・薬液装置
純水製造,滅菌,薬品供給,薬品
純化,廃液処理
1
2
3
各種ガス装置
ガス発生,ガス純化,ガス混合,
ガス検知,排ガス処理
1
2
3
クリーンルーム
装置
―
1
2
3
その他処理装置
(
1
2
3
区
装
4
.
検
査
用
装
置
5
.
関
連
装
置
分
置
テスティング装
関連する要素技術
)
)
問3、問5
問3.問2(1)、(2)で「1.現在取り組んでいる」とお答えの方にお聞きします。今後の事業規模
をどのように考えておられるでしょうか?
1.拡大する
2.変らない
3.縮小する
4.わからない
問4.問2(1)、(2)で「2.今後事業への取り組む計画である」とお答えの方にお聞きします。新
規に事業に取り組まれるのは以下のどの理由によるものでしょうか。該当のない場合は,その他に理
由を記述下さい(複数選択可)。
1.技術開発,研究開発の成果
2.取引先の事業拡大
3.海外製品に勝る低コスト化の実現
4.行政の支援による新規事業化
5.他社との連携で技術力、生産性向上
6.その他(
)
- 296 -
[FAX番号]082-254-0661⇒ 調査機関:中電技術コンサルタント(株)山名,高田 行き
問5.問2(1)
、
(2)で今後事業への「1.現在取り組んでいる」とお答えの方にお聞きします。デバ
イス等製作にあたっての材料・資材の国内と中国地域の調達先の比率、およびデバイス等製品の販売
先の国内と中国地域の取引の比率を選択下さい。
(1)材料・資材の調達先の比率
国内の比率
20%以下
0~20%
20~40%
40~60%
60~80%
80%以上
わからない
1
2
3
4
5
6
7
1
2
3
4
5
6
7
20%以下
0~20%
20~40%
40~60%
60~80%
80%以上
わからない
1
2
3
4
5
6
7
1
2
3
4
5
6
7
中国地域の比率
(鳥取県、島根県、岡
山県、広島県、山口県)
(2)製品の販売先の比率
国内の比率
中国地域の比率
(鳥取県、島根県、岡
山県、広島県、山口県)
- 297 -
[FAX番号]082-254-0661⇒ 調査機関:中電技術コンサルタント(株)山名,高田 行き
2.SiCパワー半導体について
電力制御用のパワー半導体は民生から産
業分野に広く活用されています。
現状のSi(シリコン)半導体が適用でき
ない条件(電圧、使用温度)でも利用可能な
パワー半導体として、SiC(シリコンカー
バイド:炭化珪素)半導体が期待されていま
す。
材料からデバイス・モジュールまで右図の
プロセスで製造されています。
以下SiCパワー半導体についてお聞きし
ます。
出典:産業技術総合研究所 資料
問6.SiCパワー半導体が研究開発されていることをご存知ですか?
1.はい
2.いいえ
問 18 へ
問7.問6で「1.はい」とお答えの方にお聞きします。SiCパワー半導体の特性等についてご存知で
すか?(複数選択可)
1.機器の電力損失が低減
2.機器サイズが縮小
3.大容量領域への対応が可能
4.高温動作が可能
5.新エネルギー機器(太陽光、風力等)へ
6.高速スイッチングが可能
の応用が期待
7.その他(
)
問8.問6で「1.はい」とお答えの方にお聞きします。SiCパワー半導体の開発について知っている
研究機関、企業等の取組があればお答えください(複数選択可)。
1.国プロジェクトによるコンソーシアムによる研究
(
)
2.大学・研究機関の研究(例:京都大学、産業技術総合研究所)
(
)
3.企業による研究開発・製造(例:三菱電機、ローム)
(
)
問9.問6で「1.はい」とお答えの方にお聞きします。SiCパワー半導体の利用について研究開発等
の取組を実施されていますか?
1.取り組んでいる
2.計画・検討中
3.関心がある
4.関心がない
- 298 -
問 10、11、12 、14、15、16 へ
問 17 へ
[FAX番号]082-254-0661⇒ 調査機関:中電技術コンサルタント(株)山名,高田 行き
問 10.問9で「1.取り組んでいる、2.計画・検討中、3.関心がある」とお答えの方にお聞き
します。該当の製品・製造装置を選択下さい。
(1)製品
区
0
.
材
料
分
1.取り組んでいる
2.計画・検討中
3.関心がある
①原料供給
1
2
3
②インゴット製造
1
2
3
③ウェハ製造
1
2
3
1
2
3
①ダイオード
1
2
3
②パワートランジスタ
1
2
3
③パワーMOSFET
1
2
3
④IGBT
1
2
3
1
2
3
①ダイオードモジュール
1
2
3
②トランジスタモジュール
1
2
3
③MOSFETモジュール
1
2
3
④IGBTモジュール
1
2
3
⑤高耐圧モジュール
1
2
3
⑥IPM
1
2
3
1
2
3
①単相インバータ
1
2
3
②DC/DCコンバータ
1
2
3
③サイクロコンバータ
1
2
3
④三相インバータ
1
2
3
⑤整流回路
1
2
3
⑥直流チョッパー
1
2
3
⑦交直変換器
1
2
3
⑧交流電力調整装置
1
2
3
1
2
3
④その他(
1
.
デ
バ
イ
ス
2
.
モ
ジ
ュ
ー
ル
⑤その他(
⑦その他(
3
.
回
路
・
ユ
ニ
ッ
ト
⑨その他(
)
)
)
)
- 299 -
[FAX番号]082-254-0661⇒ 調査機関:中電技術コンサルタント(株)山名,高田 行き
(2)製造装置
区
造
用
装
置
1
.
ウ
ェ
ハ
製
2
.
ウ
ェ
ハ
プ
ロ
セ
ス
用
処
理
装
置
1.取り組んでいる
2.計画・検討中
3.関心がある
①単結晶製造装置
1
2
3
②ウェハ加工装置
1
2
3
③検査評価装置
1
2
3
1
2
3
①露光・描画装置
1
2
3
②レジスト装置
1
2
3
③エッチング装置
1
2
3
④洗浄・乾燥装置
1
2
3
⑤熱処理装置
1
2
3
⑥イオン注入装置
1
2
3
・CVD装置
1
2
3
・スパッタリング装置
1
2
3
・真空蒸着装置
1
2
3
・エピタキシャル装置
1
2
3
⑧検査評価装置
1
2
3
⑨CMP装置
1
2
3
1
2
3
①ダイシング装置
1
2
3
②ボンディング装置
1
2
3
③パッケージング装置
1
2
3
④検査評価装置
1
2
3
1
2
3
①テスティング装置
1
2
3
②ブロービング装置
1
2
3
③ハンドラ
1
2
3
④エージング装置
1
2
3
1
2
3
①搬送装置
1
2
3
②純水・薬液装置
1
2
3
③各種ガス装置
1
2
3
④クリーンルーム装置
1
2
3
1
2
3
④その他(
4
.
検
査
用
装
置
5
.
関
連
装
置
)
⑦薄膜形成装置
⑩その他(
3
.
組
立
用
装
置
分
⑤その他(
⑤その他(
⑤その他(
)
)
)
)
- 300 -
[FAX番号]082-254-0661⇒ 調査機関:中電技術コンサルタント(株)山名,高田 行き
問 11.問9で「1.取り組んでいる、2.計画・検討中、3.関心がある」とお答えの方にお聞きします。
SiCパワー半導体分野に進出意向は次のどの理由によるものでしょうか?(複数選択可)。
1.現状の製造品や生産プロセスを利用可能 2.既存技術をもとに技術開発を行えば市場進出可能
3.既存の顧客関係、販路等を活用可能
4.既存事業との関連性は薄いが、高い成長性等から
新規事業として有望
5.その他(
)
問 12.問9で「1.取り組んでいる、2.計画・検討中、3.関心がある」とお答えの方にお聞きします。
SiCパワー半導体分野に進出のため、他機関(大学等)
、企業と共同研究の実施の希望はありますか?
1.既に共同研究を実施中
2.今後実施を希望
3.ない
問 13.問 12 で「1.既に共同研究を実施中」、「2.今後実施を希望」とお答えの方にお聞きします。連
携先または連携希望先を回答ください(複数選択可)。
1.大学
2.研究機関
5.海外企業
6.その他(
3.半導体デバイス製造企業
4.半導体ユーザー企業
)
問 14.問9で「1.取り組んでいる、2.計画・検討中、3.関心がある」とお答えの方にお聞きします。
SiCパワー半導体関連の新規事業に取り組まれる場合、設備投資額はどれくらいをお考えでしょうか。
投資額
設備投資
100 万円未満
1
100 万円以上
500 万円以上
~
~
1,000 万円以上
~
5,000 万円以上
~
500 万円未満
1,000 万円未満
5,000 万円未満
1 億円未満
2
3
4
5
1 億円
以上
わから
ない
6
7
問 15.問9で
「1.取り組んでいる、2.計画・検討中、3.関心がある」
とお答えの方にお聞きします。
設備投資をする場合、どの程度の回収期間なら実施可能と考えますか?
1.投資回収できれば 15 年を超えても実施 2.10~15 年程度で投資回収できれば実施
3.5~9 年程度で投資回収できれば実施
4.1~4 年程度で投資回収できれば実施
5.その他(
)
6.わからない
- 301 -
[FAX番号]082-254-0661⇒ 調査機関:中電技術コンサルタント(株)山名,高田 行き
問 16.問9で
「1.取り組んでいる、2.計画・検討中、3.関心がある」
とお答えの方にお聞きします。
SiCパワー半導体関連の取組強化や新たな事業進出を図る上での問題点、課題につき回答下さい
(複数選択可)。
1.技術開発・事業企画等の人材不足
2.SiC市場や取引先等に関する情報不足
3.開発投資・生産設備の資金不足
4.技術課題、技術発展性に関する情報不足
5.企業・大学等の連携先に関する情報不足 6.活用できる公的支援制度に関わる情報不足
7.その他(
)
問 19 へ
問 17.問9.で「4.関心がない」とお答えの方にお聞きします。利用・開発をされない理由につき回答
下さい(複数選択可)。
1.技術的な開発情報が入ってこない
2.設備投資・開発投資への対応が困難
3.市場動向が不透明
4.対応できる人材がいない
5.他の材料の研究を行っている
6.その他(
)
問 18.問6.で「2.いいえ」
、問9.で「4.関心がない」とお答えの方にお聞きします。
同封の「SiC 半導体リーフレット」をご覧になり、SiC パワー半導体をどのような分野・機器で活用
できるとお考えでしょうか?また、そのためにどのような研究開発が必要とお考えでしょうか?
問 22 へ
問 19.SiCパワー半導体は国内産業の成長が見込まれる分野として、国が研究開発支援を行っています。
今後事業化する場合、どのような施策が有効また必要とお考えでしょうか?(複数選択可)。
研究開発
1.連携企業とのマッチング
2.支援制度の情報提供
3.大学等の研究者の紹介
4.開発プロジェクトの立ち上げ
5.技術力向上の支援(研修会 等) 6.人材確保の支援(広報、企業説明会 等)
人材育成
7.研究機関との交流支援(研究者の派遣、研究機関への技術者派遣 等)
資金調達支援
その他
8.金融機関とのマッチング
9.製品紹介の場の提供
)
(
- 302 -
[FAX番号]082-254-0661⇒ 調査機関:中電技術コンサルタント(株)山名,高田 行き
問 20.(主にご研究中の方に)SiCパワー半導体製造のための技術的課題があれば記述してください。
問 21.SiCパワー半導体の開発・事業化に関連し意見・コメントがあれば記述してください。
〔例:サプライチェーン構築や事業連携に関するアイデア・問題点
中国地域でSiCパワー半導体に関連し事業化として有望な分野(自動車、家電等)
〕
問 22.全ての方にお聞きします。今後10年程度で数十倍にも市場が拡大することが期待されるSiCパ
ワー半導体ですが、SiCパワー半導体に関する情報提供の場(講演会等)があれば参加したいと
思いますか?
1.参加したい
2.参加したいと思わない
問 23.全ての方にお聞きします。SiCパワー半導体同様に次世代パワー半導体としてGaN(窒化ガリ
ウム)パワー半導体が注目されています。GaNパワー半導体が研究開発されていることをご存知
ですか?
1.はい
2.いいえ
「1.はい」とお答えの方にお聞きします。ご存じのGaNの性能・特徴を回答、記述ください。
1.SiCより大口径ウェハが製造可能
2.SiCより安価である
3.低容量、低電圧で応用される
4.高周波域で応用される
5.その他(
)
問 24.回答いただいたアンケートについて、貴社を訪問し詳細をヒアリングさせていただくことは可能で
しょうか?
1.ヒアリングは可能
2.ヒアリングには応じられない
- 303 -
[FAX番号]082-254-0661⇒ 調査機関:中電技術コンサルタント(株)山名,高田 行き
3.貴社の属性について
問 25.貴社の属性について教えてください。
企業名
所在地
(本社)
県
市・町・村
所在地
(主な工場)
県
市・町・村
主要製品
年間生産出荷額
(中国地域の代表的な工場)
億円/年
工場従業者数
(派遣・パート含む)
回
答
者
所属・氏名
連絡先(TEL)
以上でアンケートは終了です。ご協力ありがとうございました。
※ 本アンケート結果を基礎データとした調査報告書は、2013 年 5 月頃に(公財)ちゅうごく産業創造セ
ンターのホームページ(http://www.ciicz.jp/)で公表する予定です。
- 304 -
[FAX番号]082-254-0661⇒ 調査機関:中電技術コンサルタント(株)山名,高田 行き
パワー半導体関連産業の動向に関するアンケート調査(ユーザー側)
中国地域におけるパワー半導体の現状整理と関連事業の参入可能性調査
アンケートへのご協力のお願い(ご案内文)
調 査 主 体:公益財団法人 ちゅうごく産業創造センター
調 査 機 関:中電技術コンサルタント株式会社
拝啓
時下ますますご清祥のこととお慶び申し上げます。
現在 電力削減や環境負荷低減を求められる中、省エネに資する「パワー半導体」の活躍の場
が増えています。サーバーやパソコンなどの IT 機器、エアコンを始めとする白物家電、太陽光発
電システムで利用するパワー・コンディショナー、ハイブリッド車といった電動車両、鉄道や送
電システムなど、さらに多岐に渡る分野で利用されています。
それに伴い、パワー半導体の性能も向上し続けるとともに、現行材料のSi(シリコン)では
実現できない大幅な効率向上や小型化を見込める次世代材料として、SiC(シリコンカーバイ
ド:炭化珪素)によるパワー半導体に大きな期待が寄せられています。
このような状況の下、公益財団法人ちゅうごく産業創造センターでは、
「中国地域におけるパワ
ー半導体の現状整理と関連事業の参入可能性調査」を国・地方自治体、大学、半導体関連企業等
の代表者からなる委員会を組織し、調査を実施しております。
当センターでは、従来より
電子デバイス事業に関する講演会・交流会や事業化支援を行って
きましたが、全国的にSiCパワー半導体の研究開発が進められる中、今回の調査を通して
・中国地域におけるパワー半導体関連産業創出の方向性・戦略
・中国地域における行政の産業振興策
等
についての提言に繋げたいと考えております。
本アンケート調査はその基礎資料とするもので(アンケート結果を基礎資料とした調査報告書
は、2013 年 5 月頃に当センターのホームページ(http://www.ciicz.jp/)で公表予定)
、ご回答
いただいた内容は、本調査の目的のみに使用し、統計的に集計するもので、個別の回答内容がそ
のまま公表されることはございません。何卒ご協力下さいますようお願い申し上げます。
敬
具
「SiCパワー半導体」についてのご説明と当センターの活動概要については別添のパンフレッ
トをご参照ください。
- 305 -
[FAX番号]082-254-0661⇒ 調査機関:中電技術コンサルタント(株)山名,高田 行き
■ 本アンケートの回答にあたっての留意点 ■
本アンケートについて
 本アンケートは、中国地域に本社所在地がある製造業の企業のうち、半導体製造に関連する会社に
ご協力をお願いしております。
 本アンケートは、
(公財)ちゅうごく産業創造センターが実施し、同センターから委託を受けた中電
技術コンサルタント(株)がアンケート票の回収・集計を行います。
アンケート結果の取り扱いについて
 本アンケートの結果は、外部にデータが漏れることがないよう厳密に管理・保管します。
 アンケート結果は統計的な処理等を行い、調査報告書としてとりまとめます。無断で個別の内容を
発表する等、ご迷惑をお掛けしたりすることは決してありません。
 アンケート結果を基礎データとした調査報告書は、2013 年 5 月頃に(公財)ちゅうごく産業創造セ
ンターのホームページ(http://www.ciicz.jp/)で公表する予定です。
アンケートの回答方法について
 アンケートは、以下に示す3つの回答方法があります。回答しやすい方法でご回答ください。
回答方法①:郵送回答
(1)封入されているアンケート調査票に回答を記載する
(2)回答を記載したアンケート調査票を返信用封筒にいれ郵送する(郵送料は不要)
回答方法②:インターネット回答
(1)中電技術コンサルタント(株)ホームページ
[https://www3b.sppd.ne.jp/webcec.sppd.ne.jp/power_use/]にアクセスする
(2)アンケート回答用のユーザー名:poweruse、パスワード:use111 を入力する
(3)アンケートの案内・留意点を記載した表紙画面の「OK」ボタンを押しアンケートを回答する
回答方法③:FAX回答
(1)封入されているアンケート調査票に回答を記載する
(2)回答を記載したアンケート調査票をFAX送信する
[FAX番号]082-254-0661⇒中電技術コンサルタント(株)山名、高田 行き
アンケート調査の締切について
 平成 24 年 10 月 1 日(月)までに、上記の回答方法のいずれかによりご回答いただきますよう、宜
しくお願い申し上げます。
【アンケートに関するお問い合わせ】
 本アンケートに関するお問い合わせがございましたら、下記までご連絡ください。
調査機関連絡先:中電技術コンサルタント株式会社(担当:山名、高田)
〒734-8510 広島県広島市南区出汐 2-3-30
TEL:082-256-3349
FAX:082-254-0661
- 306 -
[FAX番号]082-254-0661⇒ 調査機関:中電技術コンサルタント(株)山名,高田 行き
1.貴社の事業内容について
問1.現状の貴社の事業分野、過去、また今後の取り組みで該当する「装置」、「機器」、「産業製品」
を以下から選択下さい(複数選択可。本アンケートは半導体のユーザー側の企業様を対象にしており
ます。製造側の企業様には別途アンケートを行っております)。
「3.産業製品」については製品をカッコ内に記述ください。
現在取り組んで
いる
今後取り組む計画
である
過去に取り組んで
いたが撤退した
①LEDドライブ゙
1
2
3
②PMモータドライブ
1
2
3
③パワーアンプ
1
2
3
④UPS
1
2
3
⑤IHコンロ
1
2
3
⑥エアコン
1
2
3
⑦EV充電器
1
2
3
⑧発電機制御装置
1
2
3
⑨汎用インバータ
1
2
3
区分
1
.
装
置
⑩その他(
2
.
機
器
1
2
3
①ロボット溶接機
)
1
2
3
②音響機器
1
2
3
③CVCF
1
2
3
④スイッチング電源
1
2
3
⑤アクチュエータ
1
2
3
⑥携帯機器
1
2
3
⑦エレベータ
1
2
3
⑧レーダ
1
2
3
⑨パワーコンディショナー
1
2
3
1
2
3
1
2
3
1
2
3
1
2
3
1
2
3
1
2
3
1
2
3
1
2
3
1
2
3
⑩その他(
3
.
産
業
製
品
)
①OA機器
(
)
②家電
(
)
③重電プラント
(
)
④鉄道
(
)
⑤自動車(EV)
(
)
⑥新エネルギー製品
(
)
⑦電力製品
(
)
⑧その他
(
)
- 307 -
[FAX番号]082-254-0661⇒ 調査機関:中電技術コンサルタント(株)山名,高田 行き
問2.自社製品・設備にパワー半導体を使用していますか?
1.はい
問6へ
2.いいえ
問3.問2で「1.はい」とお答えの方にお聞きします。パワー半導体はどのエリアから調達されていま
すか。国内の比率および中国地域からの調達比率を選択下さい。
20%以下
国内の比率
0~20%
20~40%
40~60%
60~80%
80%以上
わからない
1
2
3
4
5
6
7
1
2
3
4
5
6
7
中国地域の比率
(鳥取、島根、岡山、
広島、山口県)
問4.問2で「1.はい」とお答えの方にお聞きします。どのようなパワー半導体デバイス・モジュール
等を使用されてますか?(複数選択可)
区
1
.
デ
バ
イ
ス
分
使用している
使用していない
①ダイオード
1
2
②サイリスタ
1
2
③パワートランジスタ
1
2
④パワーMOSFET
1
2
⑤IGBT
1
2
1
2
①ダイオードモジュール
1
2
②サイリスタモジュール
1
2
③トランジスタモジュール
1
2
④MOSFETモジュール
1
2
⑤IGBTモジュール
1
2
⑥高耐圧モジュール
1
2
⑦IPM
1
2
1
2
①単相インバータ
1
2
②DC/DCコンバータ
1
2
③サイクロコンバータ
1
2
④三相インバータ
1
2
⑤整流回路
1
2
⑥直流チョッパー
1
2
⑦交直変換器
1
2
⑧交流電力調整装置
1
2
1
2
⑥その他(
2
.
モ
ジ
ュ
ー
ル
⑧その他(
3
.
回
路
・
ユ
ニ
ッ
ト
⑨その他(
)
)
)
- 308 -
[FAX番号]082-254-0661⇒ 調査機関:中電技術コンサルタント(株)山名,高田 行き
問5.現状(シリコンを材料)のパワー半導体の性能につき、お考えの評価を選択ください。
満足
おおむね満足
普通
やや不満
不満
わからない
1
2
3
4
5
6
1
2
3
4
5
6
1
2
3
4
5
6
4.小型化対応
1
2
3
4
5
6
5.高温動作対応
1
2
3
4
5
6
6.価
1
2
3
4
5
6
1.電力損失の低
減対応
2.大容量対応
3.高速動作(ス
イッチング)対
応
格
現状(シリコンを材料)のパワー半導体で改善が求められる点がありましたら記述ください。
改善を望
む点
- 309 -
[FAX番号]082-254-0661⇒ 調査機関:中電技術コンサルタント(株)山名,高田 行き
2.SiCパワー半導体について
電力制御用のパワー半導体は民生から産業分野
に広く活用されています。現状のSi(シリコン)
半導体が適用できない条件(電圧、使用温度)で
も利用可能なパワー半導体として、SiC(シリ
コンカーバイド:炭化珪素)半導体が期待されて
います。
右図の機器・製品への利用により機器の「電力
損失の低減・機器サイズの縮小」等が可能となり
ます。
以下SiCパワー半導体についてお聞きします。
出典:ローム社 ホームページ
問6.SiCパワー半導体が研究開発されていることをご存知ですか?
1.はい
2.いいえ
問 12 へ
問7.問6.で「1.はい」とお答えの方にお聞きします。SiCパワー半導体の特性等についてご存知
ですか?(複数選択可)
1.機器の電力損失の低減
2.機器サイズの縮小
3.大容量領域への対応が可能
4.高温動作が可能
5.新エネルギー機器(太陽光、風力等)へ 6.高速スイッチングが可能
の応用が期待
7.その他(
)
問8.SiCパワー半導体の利用のための研究開発等の取組を実施されていますか?
1.取り組んでいる
2.計画・検討中
3.関心がある
4.関心がない
問 11 へ
問9、10 へ
- 310 -
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問9.問8で「1.取り組んでいる、2.計画・検討中、3.関心がある」とお答えの方にお聞きし
ます。該当の装置、機器、製品を選択下さい。「3
産業製品」については製品をカッコ内に記述く
ださい。
区
1
.
装
置
分
1.取り組んでいる 2.計画・検討中
①LEDドライブ゙
1
2
3
②PMモータドライブ
1
2
3
③パワーアンプ
1
2
3
④UPS
1
2
3
⑤IHコンロ
1
2
3
⑥エアコン
1
2
3
⑦EV充電器
1
2
3
⑧発電機制御装置
1
2
3
⑨汎用インバータ
1
2
3
1
2
3
①ロボット溶接機
1
2
3
②音響機器
1
2
3
③CVCF
1
2
3
④スイッチング電源
1
2
3
⑤アクチュエータ
1
2
3
⑥携帯機器
1
2
3
⑦エレベータ
1
2
3
⑧レーダ
1
2
3
⑨パワーコンディショナー
1
2
3
1
2
3
1
2
3
1
2
3
1
2
3
1
2
3
1
2
3
1
2
3
1
2
3
1
2
3
⑩その他(
2
.
機
器
)
⑩その他(
①OA機器
(
②家電
(
③重電プラント
(
3
.
産
業
製
品
3.関心がある
④鉄道
(
⑤自動車(EV)
(
⑥新エネルギー製品
(
⑦電力製品
(
⑧その他
(
)
)
)
)
)
)
)
)
)
- 311 -
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問 10.問8で
「1.取り組んでいる、2.計画・検討中、3.関心がある」
とお答えの方にお聞きします。
製品にSiCパワー半導体を使用される理由につき回答ください(複数選択可)。
1.自社製品の性能を満たすのに必要
2.自社製品の付加価値の向上
3.低価格での製品の高機能化
4.他社との競争のために使わざるを得ない
5.その他(
)
問 13 へ
問 11.問8で「4.関心がない」とお答えの方にお聞きします。SiCパワー半導体を使用されない理由
につき回答下さい(複数選択可)。
1.開発中であり効果がわからない
2.入手が困難(製造メーカからのアプローチがない)
3.自社製品の使用環境(温度、耐圧)では必要がない 4.価格が高価
5.自社製品の機能・デザインへの影響を懸念
6.その他(
)
問 12.問6.で「2.いいえ」
、問8.で「4.関心がない」とお答えの方にお聞きします。
同封の「SiC半導体リーフレット」をご覧になり、SiCパワー半導体をどのような分野・機器で
活用できるとお考えでしょうか?また、そのためにどのような研究開発が必要とお考えでしょうか?
問 17 へ
問 13.SiCパワー半導体関連の取組強化や新たな事業進出を図る上での問題点、課題につき回答下さい
(複数選択可)。
1.技術開発・事業企画等の人材不足
2.SiC市場や取引先等に関する情報不足
3.開発投資・生産設備の資金不足
4.技術課題、技術発展性に関する情報不足
5.企業・大学等の連携先に関する情報不足
6.活用できる公的支援制度に関わる情報不足
7.その他(
)
- 312 -
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問 14.SiCパワー半導体は国内産業の成長が見込まれる分野として、国が研究開発支援を行っています。
今後事業化する場合、どのような施策が有効また必要とお考えでしょうか?(複数選択可)
研究開発
1.連携企業とのマッチング
2.支援制度の情報提供
3.大学等の研究者の紹介
4.開発プロジェクトの立ち上げ
5.技術力向上の支援(研修会 等) 6.人材確保の支援(広報、企業説明会 等)
人材育成
7.研究機関との交流支援(研究者の派遣、研究機関への技術者派遣 等)
資金調達支援
8.金融機関とのマッチング
その他
(
9.製品紹介の場の提供
)
問 15.(主にご研究中の方に)SiCパワー半導体の自社製品への利用における技術的な課題があれば記
述してください。
問 16.SiCパワー半導体の開発・事業化に関連し意見・コメントがあれば記述してください。
〔例:サプライチェーン構築や事業連携に関するアイデア・問題点
中国地域でSiCパワー半導体に関連し事業化として有望な分野(自動車、家電等)
〕
問 17.全ての方にお聞きします。今後10年程度で数十倍に市場が拡大することが期待されるSiCパワ
ー半導体ですが、SiCパワー半導体に関する情報提供の場(講演会等)があれば参加したいと思
いますか?
1.参加したい
2.参加したいと思わない
- 313 -
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問 18.全ての方にお聞きします。SiCパワー半導体同様に次世代パワー半導体としてGaN(窒化ガリ
ウム)パワー半導体が注目されています。GaNパワー半導体が研究開発されていることをご存知
ですか?
1.はい
2.いいえ
「1.はい」とお答えの方にお聞きします。ご存じのGaNの性能・特徴を回答、記述ください。
1.SiCより大口径化ウェハが製造可能
2.SiCより安価である
3.低容量、低電圧で応用される
4.高周波域で応用される
5.その他(
)
問 19.回答いただいたアンケートについて、貴社を訪問し詳細をヒアリングさせていただくことは可能で
しょうか?
1.ヒアリングは可能
2.ヒアリングには応じられない
3.貴社の属性について
問 20.貴社の属性について教えてください。
企業名
所在地
(本社)
県
市・町・村
所在地
(主な工場)
県
市・町・村
業種番号
(下表参照)
注1)主な業種番号を1つだけ
主要製品
年間生産出荷額
(中国地域の代表的な工場)
億円/年
工場従業者数
(派遣・パート含む)
回
答
者
所属・氏名
連絡先(TEL)
注1)業種番号:業種番号は経済産業省の商品分類表によります。
- 314 -
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番号
2511
2512
2513
2519
2521
2522
2532
25汎用機械器具製造
ボイラ
蒸気機関・タービン・水力タービン
汎用内燃機関
その他原動機
ポンプ・同装置
エレベータ・エスカレータ
番号
2911
2912
2913
2914
2915
2921
2922
29電気機械器具製造業
発電機・電動機・その他回転機器
2942
電気照明器具
変圧器類
2951
蓄電池
電力開閉装置
2952
一次電池(乾電池等)
配電盤・電力制御装置
2961
X 線装置
配線器具・配線付属品
2962
医療用電子応用装置
電気溶接機
2969
その他電子応用装置
内燃機関電装品
2971
電気計測器
2533
物流運搬装置
2929
その他産業用電気機械器具(車両用、
船舶用を含む)
2535
冷凍機・温湿調整装置
2931
2932
2933
2939
ちゅう房機器
空調・住宅関連機器(エアコン等)
衣料衛生関連機器
空気圧縮機・ガス圧縮機・送風機
30情報通信機械器具製造業
有線通信機械器具
番号
3111
31輸送機械器具製造業
自動車
3012
携帯電話・PHS電話
3112
自動車社体・付随車
3013
無線通信機械器具
3113
自動車部分品・付属品(ガソリン機関等)
3014
ラジオ受信機・テレビジョン受信機
3121
鉄道車両
3015
交通通信保安装置
3122
鉄道車両用部分品
3022
デジタルカメラ
3131
船舶製造・修理
3023
電気音響機械器具
3134
船用機関
3031
電子計算機
3141
航空機
3032
パーソナルコンピュータ
3142
航空機用原動機
3033
外部記憶装置
3149
その他航空機部分品・補助装置
3034
印刷装置
3151
フォークリフトトラック・同部分品・付属品
3035
表示装置
3159
その他の産業用運搬車両・同部
分品・付属品
その他の付属装置
工業計器
2973
医療用計測器
その他の電気機械器具(太陽
電池モジュール)
2999
その他民生用電気機械器具(こたつ等)
番号
3011
3039
2972
以上でアンケートは終了です。ご協力ありがとうございました。
※ 本アンケート結果を基礎データとした調査報告書は、2013 年 5 月頃に(公財)ちゅうごく産業創造セ
ンターのホームページ(http://www.ciicz.jp/)で公表する予定です。
- 315 -
SiC パワー半導体について
[FAX番号]082-254-0661⇒ 調査機関:中電技術コンサルタント(株)山名,高田 行き
●SiC(シリコンカーバイド:炭化珪素)はダイヤモンドに次ぐクラスの硬度を持つことから主に研磨材の材料
として使われてきましたが、最近では従来の Si(シリコン)に代わる半導体の材料として注目を浴び、研究
開発が進展しています。
●SiC は Si に比べ「絶縁破壊電界強度」、
「熱伝導」
、「耐熱性」
、「周波数特性」が優れ、SiC パワー半導体への
シフトに伴い以下のような期待が高まっています。
①電力損失を半分以上低減する特性から、「省エネの切り札」として注目されます。
②高温で動作するため冷却機器を小型化・省略でき、機器全体の小型化にもつながります。
③パソコンのような小型機器から産業用の大型機器まで様々な分野で普及し、市場も急成長が見込まれます。
①電力損失を大幅に低減可能 →「省エネの切り札」として期待される
 SiC パワー半導体を利用することにより主にスイ
ッチング損失の大幅な低減が見込まれます。
 インバータは,パワー半導体としてダイオードと
トランジスタを利用します。このダイオードを Si
製から SiC 製に置き換えるだけで,電力損失を 2
~3 割程度低減できるとされてます。
 トランジスタも Si 製から SiC 製に置換えれば電
力損失は半分以下に低減できるとされています。
出典:三菱電機資料
②機器の小型化が可能→小型化による応用機器の拡大
 SiC パワー半導体は,Si パワー半導体で限界とさ
れる 200℃以上という高温で動作することが可能
です。この高温動作により電力変換器の冷却機構
の小型化や省略が見込まれます。
 SiC パワー半導体は,Si パワー半導体の数倍の速
度でスイッチングが可能です。このことからイン
ダクタなどの電力変換器を構成する部品を小型化
しやすいというメリットがあります。
③様々な分野での活用が期待、市場も急成長 →今後 10 年で数十倍の市場の成長が見こまれる
出典:三菱電機資料
 SiC パワー半導体を用いた電力変換器はさまざま
な分野での利用が期待されます。
 送電システムや電車,ハイブリッド車や電気自動
車を始め,エアコンなどの白物家電,太陽光発電
システムで利用するパワー・コンディショナー,
サーバー機やパソコンなどの分野があります。
 その結果、電力変換効率の向上だけでなく機器の
小型化や軽量化への貢献が期待されます。
出典:ローム資料
- 316 -
公
公益
益財
財団
団法
法人
人ち
ちゅ
ゅう
うご
ごく
く産
産業
業創
創造
造セ
セン
ンタ
ター
ーの
のご
ご案
案内
内(
(主
主な
な事
事業
業に
につ
つい
いて
て)
)
[FAX番号]082-254-0661⇒ 調査機関:中電技術コンサルタント(株)山名,高田 行き
◎調査事業及びフォローアップ事業(調査事業の一環としてアンケートを実施しております)
産業活性化、地域振興及び技術に関して、地域が必要とするその時々のテーマについて、学識経験者、
団体・企業関係者、国・地方自治体からなる調査委員会
(例:中国地域におけるパワー半導体の現状整理と関連事
業の参入可能性調査委員会)を設置し、現状の情報・デー
タの整理分析を行って課題を抽出するとともに、課題解決
方策を発信します。なお、必要に応じて、課題解決方策へ
の取り組みを自ら実施します。
また、調査事業において課題解決へ向け発信した方策の
実現化を図るため、フォローアップ事業として、方策の実
現化のために立ち上がった団体・グループ等の活動に対す
る立上げ助成支援を行います。
調査報告書
◎研究開発支援事業
大学等の研究シーズを広く社会に還元し役立てるため、大学等の研究シーズと企業の事業化ニーズを
把握し、産学官でこれに関心を持つ方を集めたり、事業化の可能性を検討して、技術・商品開発課題を
解決すべく共同研究テーマの形成を促すとともに、公募の過程を経て、共同研究を資金面等から支援し
ます。このため、次の活動を行います。

シーズ・ニーズの発掘活動

ネットワーク構築支援活動

研究開発プロジェクト推進支援活動
・当センターによる研究開発支援
・国の委託事業を活用した実用化研究開発支
援(管理法人としての支援)
電子デバイス事業化フォーラム
◎事業化支援事業
研究開発支援を行ったプロジェクト等で、事業化の段階に進む案件について、他の支援機関との連携
による商品開発や、展示会への出展等に関す
る指導・助言を行うことにより、他地域を含めた
新たな企業との連携を図るなど、研究開発プロジ
ェクトの事業化支援を行います。
また、中小企業が新規事業を行う際に当該事業
における技術的な優位性等について、特に技術的
な目利きに焦点を置いた公正な事業評価を受ける
機会を提供することにより、新事業創出の支援を
行います。
ビジネスマッチング交流会
ビジネスマッチング交流会
- 317 -