殺虫剤研究班のしおり

第 79 号(2008 年 11 月)
日本衛生動物学会
殺虫剤研究班のしおり
事務局:
国立感染症研究所昆虫医科学部内;
郵便振替:
口座番号
〒162-8640
00190-4- 742186;
東京都新宿区戸山 1-23-1; TEL & FAX 03-5285-1147
加入者名
日本衛生動物学会殺虫剤研究班
目次
1.2008 年度殺虫剤研究班研究集会報告.................................................................... 02
2.シンポジウム
Ⅰ.新規殺虫剤
アミドフルメト(千保
聡)……………………………………………................... 03
リアノジン受容体をターゲットとする新たな殺虫剤
-フルベンジアミドの生理活性(正木隆男)...............……………………………… 12
Ⅱ.殺虫剤忌避性
均)…………………………...................... 17
ピレスロイドの忌避性について(川田
蚊のピレスロイド剤接触忌避性(葛西真治)……..............................................…. 25
有機燐系薬剤抵抗性チャバネゴキブリに見られる薬剤忌避現象(田原雄一郎)…. 31
殺虫剤処理面に対するチャバネゴキブリの忌避行動(橋本知幸).......................... 38
ゴキブリを寄せつけない鋼板(新田勇)............................…………………………. 47
3.新上市品殺虫剤リスト 2004-2006 年度 ..............................................…………. 50
1
1.2008 年度研究班研究集会について
2008 年 4 月 17 日(木)13 時から自治医科大学地域医療情報研修センター(栃木県下
野市)にて研究集会を開催した。参加者は 54 名。総会(10 分)では下記の事項が審議
され,いずれも承認された。
1)前年度事業報告
①研究集会
2007 年 4 月 2 日に大阪市立大学杉本キャンパスで研究集会を行った。内容は「新規
殺虫・殺そ剤」をテーマとしたシンポジウムで,詳細は「殺虫剤研究班のしおり」第
78 号に掲載済み。
②研究班会報
「殺虫剤研究班のしおり」第 78 号を 2007 年 10 月に発行した。
③委員会の開催
2006 年 12 月 12 日に国立感染症研究所にて委員会を開催し,次期研究集会のテーマ等
に関して討議した。
2)前年度会計報告
収支状況は以下のとおりで,今次総会で承認された。
収入
2006年度繰越金
支出
1,439,331
5,000
大会参加費
団体会員年会費
印刷費
25,646
通信運搬費
11,720
会議費
15,260
96,000
(2008年度分)
40,000
講師謝金・交通費
(2007年度分)
15,000
雑費
0
個人会員年会費
(2008年度分)
86,000
(2007年度以前分)
44,000
0
雑収入
合計
1,629,331
148,626
1,480,705
差引残高(2007年度繰越金)
期間:2007.4.1~2008.3.31
3)会員数
個人会員 66 名,団体会員 10 社(2008 年 3 月 31 日現在)
2
新規殺虫剤
アミドフルメト
住友化学株式会社
農業化学品研究所
千保 聡
【はじめに】
一般の居住空間には様々なダニが生息しているが、その中でも人のフケや食物の残渣
等を餌にしているヒョウヒダニ類は数として最も多く見出され、その死骸や糞がアレル
ギーの原因となっている。そのため、ヒョウヒダニ類の防除は、近年小児や老人で増加
しているアトピー性疾患、特に喘息やアトピー性皮膚炎の対策上、重要な課題となって
いる。またヒョウヒダニ以外の重要な塵性ダニとして、時として貯蔵食品や畳などに大
発生するコナダニ、さらにその捕食性のダニであるツメダニ等が知られている。しかし、
塵性ダニ防除剤として使用されている殺虫成分の屋内に生息するダニ類に対する効果
は必ずしも満足できるものではなく、特に人を加害することもあるツメダニ類に対して
高い効力を示す殺虫成分は知られていなかった。住友化学㈱では、従来の屋内塵性ダニ
剤に比べて、幅広く高い効果を示す新しい塵性ダニ防除剤を探索してきた結果、アミド
フルメト(パンダック®)を見出し、開発するに至った。
【アミドフルメトの物性、安定性および毒性】
アミドフルメトの化学構造、物理・化学的性質を表1に示した。アミドフルメトは微
黄色〜白色の結晶性の粉末である。融点は 82℃付近であり、融解の際、アミドフルメ
トの分解は認められなかった。
急性毒性試験における概略の致死量は、経口投与ではラットの雄で 200 mg/kg、雌で
140 mg/kg であった。経皮投与ではラットの雌雄共に 2000 mg/kg を上回った。吸入曝露
ではラットで雌雄共に 5440 mg/m3 を上回った(表2)
。
抗原性についてはモルモットを用いた皮膚感作性試験(Maximization 法)および全身
アナフィラキシー反応について検討した結果、いずれも陰性であった。ウサギを用いて
皮膚および眼に対する刺激性について検討した結果、いずれも軽度の刺激性のみ認めら
れ、実際の使用条件では問題にならないと考えられた。ネズミチフス菌および大腸菌を
用いた復帰突然変異試験(AMES 試験)、チャイニーズハムスター肺由来の培養細胞を
用いた in vitro 染色体異常試験およびマウス骨髄細胞を用いた小核試験を実施した結果、
いずれも陰性であった(表2)
。
アミドフルメトは、25℃・湿度 60%で 36 ヶ月間および 40℃・湿度 75%で 6 ヶ月間保
存しても安定であった。また、温度、湿度、光照射の影響も認められなかった(表3)
。
各種の汎用担体下での安定性調査結果を表4に示した。各種溶剤中では概ね安定であ
3
ったが、エタノール中では他の溶剤中よりも安定性は劣った。固体担体下では、加熱蒸
散剤等の発泡剤の基材として使用されるアゾジカルボンアミド中で安定であり、他のタ
ルク、シリカ中においても概ね良好な安定性を示した。
【効力】
アミドフルメトの屋内塵性ダニに対する基礎活性をクリップ法にて調査した。本試験
方法は図1に示したように、供試薬剤を含有するアセトン溶液を処理したろ紙を風乾さ
せた後、これを二つ折りにして側辺をクリップで留めて袋状にし、この中に所定数の供
試ダニを入れ、開放部を更にクリップにて留め、供試ダニが強制的にろ紙に接触する条
件にて1日後の致死効果を判定する方法である。結果を表5、6及び7に示した。コナ
ヒョウヒダニに対してアミドフルメトはいずれの処理薬量でも 90%以上の高い致死率
を示し、サリチル酸フェニル及び安息香酸ベンジルより優れた活性を示した。ケナガコ
ナダニに対して、アミドフルメトは 500 mg/m2 処理では 100%の致死率を示したのに対
し、100 mg/m2 では約 50%に低下した。この活性は、サリチル酸フェニル及び安息香酸
ベンジルとほぼ同等活性と判断された。ミナミツメダニに対してサリチル酸フェニルや
安息香酸ベンジルは 500 mg/m2 処理において全く致死活性を示さなかったが、アミドフ
ルメトは 100%の致死率を示した。これらの結果から、アミドフルメトは3種の屋内塵
性ダニの中ではコナヒョウヒダニに最も高い致死活性を示し、かつ防除困難なミナミツ
メダニに対しても高い致死活性を有することが判明した。特に後者がアミドフルメトの
屋内塵性ダニ剤としての効力面での大きな特徴である。
続いて、アミドフルメトの屋内塵性ダニに対する速効性を黒紙接触法にて調査した。
本試験方法を図2に示した。アルミ皿上に黒ケント紙をのせ、ここに供試薬剤を含有す
るアセトン溶液を処理(有効成分量として 800 mg/m2 相当)し、風乾させた。黒ケント
紙の外周にダニの逃亡防止のために粘着剤を塗布した。所定数のコナヒョウヒダニ成ダ
ニをこの黒ケント紙中央上に放ち、以後、経時的に5,10,15,30,60及び1
20後の致死および苦悶ダニ数を調査し、以下の式より苦死率を求めた。
苦死率(%)=(死ダニ数+苦悶ダニ数)÷(全ダニ数−トラップダニ数)×100
結果を図3に示した。アミドフルメトでは5分後に苦死率 100%に達した。一方、サリ
チル酸フェニル及び安息香酸ベンジルでは5分後には半数以上の個体が正常に行動し、
30分後に両剤共に苦死率 100%に達した。以上より、アミドフルメトは極めて速効的
に塵性ダニに作用し、高い致死活性を示すことが明らかとなった。
次に実用的な製剤での活性を調査した。アミドフルメト原体 0.5g をイソプロピルア
ルコールと1号灯油の混合液に溶解し、噴射剤としてジメチルエーテルを用いた全量噴
射式エアゾール製剤を調製した。このエアゾール製剤を試験用チャンバー(縦4m、横
3m、高さ 2.3m)の床中央に置き、更に各供試ダニを入れたガラスシャーレを四隅に
配した。エアゾール製剤を全量噴射し2時間曝露させた後、これらのガラスシャーレを
取り出し、1日後に致死を観察した。結果を表8に示した。アミドフルメト 0.5g を配
4
合するエアゾール製剤(約 40 mg/m2 処理に相当)は、コナヒョウヒダニ及びケナガコ
ナダニに対し 100%の致死率、ミナミツメダニに対しても 97%の高い致死率を示した。
この効果は市販品と比較し同等以上であり、アミドフルメトは全量噴射式エアゾール剤
にて有効であると判断された。
以上のように、アミドフルメトは代表的な屋内塵性ダニであるコナヒョウヒダニ、ケ
ナガコナダニ及びミナミツメダニに対して高い致死活性を示した他、コナヒョウヒダニ
に対して速攻的な致死活性を有することが判明した。また、全量噴射式エアゾール剤で
の有効性も確認された他に、本報では記載していないが、燃焼熱や化学反応熱等により
有効成分を放出させる燻煙剤やシート製剤での塵性ダニに対する有効性についても確
認されていることより、様々な実用化が期待される。
【引用文献】
森達哉等(2007)住友化学誌 2007-Ⅱ, p4-13.
5
表1.アミドフルメトの化学構造および物理・化学的性質
一般名
アミドフルメト (amidoflumet)
分子式
C9H7ClF3NO4S
構造式
CO2CH3
Cl
NHSO2CF3
性状
微黄色〜白色の固体
融点
81〜85℃
蒸気圧
1.51×10-1 Pa
表2.アミドフルメトの毒性
(急性毒性)
動物種
投与形態
概略の致死量
ラット
経口
♂ 200 mg/kg
♀ 140 mg/kg
ラット
経皮
> 2000 mg/kg
ラット
吸入
> 5440 mg/m3
(その他毒性)
試験項目
抗原性
皮膚感作性 (Maximization)
全身アナフィラキシー反応
刺激性
ウサギ
遺伝毒性
結果
陰性
陰性
眼及び皮膚刺激性
いずれも軽度
AMES, 染色体異常試験、小核試験
いずれも陰性
6
表3.各種環境下での安定性
25℃
60%RH
暗所下
40℃
75%RH
暗所下
保存期間
36 ヶ月
容器
結果
保存条件
50℃
暗所下
25℃
100%RH
暗所下
25℃
1000 lux
6 ヶ月
3 ヶ月
3 ヶ月
50 日
ポリエチレン袋
ポリエチレン袋
ガラスバイアル
(密封)
ガラスバイアル
(開封)
ペトリ皿*1
安定
安定
安定
安定
安定
*1 : ポリ塩化ビニリデン製フィルムで被覆
表4.担体下での安定性
(液体担体下*1)
担体
回収率(%)
メタノール
99
エタノール
80
2−プロパノール
100
塩化メチレン
100
(固体担体下*2)
担体
回収率(%)
アゾジカルボンアミド
100
タルク
96
シリカ
98
*1 : 1%w/v 溶液中での安定性
*2 : 1%w/w 粉体での安定性
保存条件:60℃、1ヶ月
7
表5.アミドフルメトのコナヒョウヒダニに対する効果
供試薬剤
各処理薬量(mg/m2)での1日後致死率(%)
500
100
20
アミドフルメト
100
99
94
サリチル酸フェニル
100
45
28
安息香酸ベンジル
100
19
6
試験方法:クリップ法
無処理区の致死率:11%
表6.アミドフルメトのケナガコナダニに対する効果
供試薬剤
各処理薬量(mg/m2)での1日後致死率(%)
500
100
20
アミドフルメト
100
47
1
サリチル酸フェニル
100
51
6
安息香酸ベンジル
100
69
1
試験方法:クリップ法
無処理区の致死率:4%
表7.アミドフルメトのミナミツメダニに対する効果
供試薬剤
各処理薬量(mg/m2)での1日後致死率(%)
500
100
20
アミドフルメト
100
63
18
サリチル酸フェニル
0
−
−
安息香酸ベンジル
0
−
−
試験方法:クリップ法
無処理区の致死率:0%
8
表8.全量噴射型エアゾール剤でのアミドフルメトの殺ダニ効果
致死率(%)
供試品
アミドフルメト
市販品
*2
コナヒョウヒダニ
*1
ケナガコナダニ
ミナミツメダニ
100
100
97
100
100
89
*1:アミドフルメト 0.5g を有効成分とするエアゾール(約 40 mg/m2 処理に相当)
*2:有効成分として、d-T80-フェノトリンとメトキサジアゾン配合
9
図1.クリップ試験法
コナヒョウヒダニ成ダニ
アルミ皿
経時的に黒紙上の
苦死ダニ数を観察
速効性
黒ケント紙
(薬剤処理)
粘着剤
図2.黒紙接触法
苦死率(%)=(死ダニ数+苦悶ダニ数)÷(全ダニ数−トラップダニ数)
×100
10
アミドフルメト
100
苦死率(%)
80
安息香酸ベンジル
60
サリチル酸フェニル
40
20
無処理
0
5
10
15
30
60
経過時間(分)
図3.アミドフルメトのコナヒョウヒダニに対する速効性
試験方法:黒紙接触法、処理量:800 mg/m2
11
120
リアノジン受容体をターゲットとする新たな殺虫剤
〜フルベンジアミドの生理活性〜
正木隆男
まさき たかお
日本農薬株式会社
細 胞 が発 現 する働 きの多 くは細 胞 内 カルシウムにより調 節 され,これを可 能 とす
るため、定 常 状 態 の細 胞 内 カルシウムを極 めて低 い濃 度 に保 つ精 巧 な仕 組 みが
存 在 する。この細 胞 内 カルシウムの恒 常 性 を選 択 的 に攪 乱 することにより病 害 虫
を防 除 する試 みは,多 くの研 究 者 がその可 能 性 を指 摘
1),2),3)
してきたにも関 わら
ず,あまり実 例 がなかった。フ ル ベ ン ジ ア ミ ド は 日 本 農 薬 株 式 会 社 に よ り 独
自に創出され,現在世界規模での開発が進められている新規殺虫剤であ
る (図 1)
4)
。我 々は本 化 合 物 が昆 虫 の細 胞 内 カルシウム動 態 を撹 乱 することで殺
虫 効 果 を示 し
5),6)
,その標 的 分 子 が細 胞 内 カルシウム動 態 の重 要 な制 御 因 子 の
一 つであるリアノジン受 容 体 (RyR)であることを明 らかにした。
図 1.フルベンジアミドおよびリアノジンの化 学 構 造
12
フルベンジアミドは,既 存 薬 剤 抵 抗 性 系 統 を含 む鱗 翅 目 昆 虫 を中 心 に選 択 的
かつ速 効 的 な防 除 効 果 を有 し
4)
,野 菜 ,果 樹 ,茶 を中 心 とした登 録 が予 定 され
ている。また,非 標 的 昆 虫 に対 する影 響 が小 さいことから,有 効 な IPM 資 材 として
の期 待 も大 きい。本 化 合 物 の作 用 症 状 は虫 体 の持 続 的 な体 収 縮 や嘔 吐 ,脱 糞
など,既 存 の殺 虫 剤 とは明 らかに異 なる極 めて特 徴 的 なものである(図 2)4)。フル
ベンジアミドと同 様 の症 状 は RyR を活 性 化 することで知 られるリアノジン(図 2)を虫
体 に注 射 することによって再 現 されたことから,このような症 状 は RyR の異 常 な活
性 化 が誘 起 する特 有 の症 状 と推 定 された。さらに,こうした症 状 は筋 の持 続 的 な
収 縮 によるものであることが単 離 したハスモンヨトウ消 化 管 の収 縮 実 験 により明 らか
にされている。
図 2.化 合 物 注 射 24 時 間 後 のハスモンヨトウ 6 齢 幼 虫 に観 察 される作 用 症 状
A: 0.24 µg flubendiamide, B: 2.4 µg Ryanodine, C: control
冒 頭 に述 べたように,カルシウムは細 胞 の機 能 発 現 を調 節 する役 割 を持 ち,筋
細 胞 におけるカルシウム濃 度 の上 昇 は筋 収 縮 の導 引 として作 用 する。ここで使 わ
13
れるカルシウムは細 胞 外 から流 入 するのではなく,細 胞 内 の特 定 の場 所 (小 胞
体 )に貯 蔵 されており,RyR は小 胞 体 からのカルシウムの放 出 を司 るカルシウム放
出 チャネルとして機 能 する。図 3 に示 す様 に,フルベンジアミドは先 ず RyR に結 合
し,チャネルを開 口 状 態 に固 定 することにより,小 胞 体 内 に蓄 えられたカルシウムを
放 出 させ筋 組 織 中 のカルシウム濃 度 を上 昇 させる。カルシウムはトロポニンへの結
合 を介 して,アクチンとミオシンとの収 縮 反 応 を誘 起 し,筋 繊 維 が収 縮 する。一 方 ,
カルシウムの放 出 により,RyR とは逆 にカルシウムを小 胞 体 内 に汲 み上 げる機 能 を
持 つカルシウムポンプ活 性 を速 やかに亢 進 する。これらの結 果 ,虫 体 の収 縮 を初
めとする特 徴 的 な症 状 を伴 う殺 虫 作 用 が発 現 することがほぼ明 らかとなっている。
フルベンジアミドによる細 胞 内 カルシウムの変 動 は,カルシウムイメージングと呼
ばれる手 法 により明 らかにされた
5)
。この手 法 は培 養 した鱗 翅 目 昆 虫 神 経 細 胞 に
カルシウム感 受 性 色 素 を取 り込 ませ,蛍 光 を顕 微 測 光 することにより,細 胞 質 のカ
ルシウム濃 度 変 化 を測 定 するものである。フルベンジアミドと同 様 の生 理 活 性 を示
す類 縁 化 合 物 は,鱗 翅 目 昆 虫 の培 養 神 経 細 胞 における一 過 性 のカルシウム濃
度 の上 昇 を誘 起 する。また,ハスモンヨトウ筋 組 織 より調 製 した膜 小 胞 にカルシウ
ムポンプ活 性 を利 用 してカルシウムを能 動 的 に取 り込 ませた後 ,フルベンジアミドを
処 理 しても,同 様 のカルシウム放 出 作 用 が確 認 された
6)
。
カルシウムポンプはATPの加 水 分 解 と共 役 していることから,カルシウム依 存 的
なATPの加 水 分 解 速 度 を測 定 することにより,カルシウムポンプ活 性 を知 ることが
出 来 る。フルベンジアミドはカルシウムポンプ活 性 を明 らかに亢 進 し,その 50%作 用
濃 度 (EC50)は 10nMであった
6)
。同 様 の作 用 は他 の RyR 活 性 化 物 質 であるリア
ノジンやカフェインでも認 められたが,これらに比 較 しフルベンジアミドの作 用 は顕
著 であり,こ の よ う な 特 徴 は 本 化 合 物 の 引 き 起 こ す RyR の 機 能 変 化 が こ
れ ま で の R y R 作 用 物 質 に よ る も の に 比 較 し ,よ り 強 力 か つ 安 定 で あ る
ことを示唆している。
14
RyR は昆 虫 のみならず哺 乳 類 にも存 在 することから,選 択 的 作 用 は農 薬 として
の安 全 性 を確 保 する上 で重 要 である。事 実 ,哺 乳 類 RyR を活 性 化 するリアノジン
を哺 乳 動 物 に投 与 することにより,拘 縮 や嘔 吐 ,脱 糞 など昆 虫 とよく一 致 した症
状 を伴 う,極 めて強 い急 性 毒 性 を発 現 することが明 らかとなっている
7)
。一 方 ,フ
ルベンジアミドの場 合 ,哺 乳 動 物 への投 与 による急 性 毒 性 はこれまで認 められて
いないことから、本 化 合 物 は昆 虫 リアノジン受 容 体 に対 し選 択 的 に作 用 するものと
推 察 される。
本 研 究 の結 果 ,フルベンジアミドは鱗 翅 目 の昆 虫 リアノジン受 容 体 を選 択 的 に
活 性 化 することにより殺 虫 作 用 を示 すことが明 らかとなった。衛 生 害 虫 の中 で、フ
ルベンジアミドが標 的 とする鱗 翅 目 に属 するものは、イガ、ドクガ、イラガなどが挙 げ
られるが、現 在 のところ農 業 害 虫 ほどその重 要 性 は高 くないようである。本 研 究 の
結 果 は、RyR が特 定 の害 虫 種 に対 する高 度 な選 択 性 と哺 乳 類 に対 する安 全 性
を兼 ね備 えた、殺 虫 性 化 合 物 の標 的 分 子 であることを示 すものであり、双 翅 目 を
中 心 とした衛 生 害 虫 を選 択 的 に駆 除 する新 たな化 合 物 開 発 への応 用 も期 待 さ
れる。
図 3.フルベンジアミドの作 用 機 構 概 略
15
引用文献
1)
E. Lehmberg and J. E. Casida: Pestic. Biochem. Physiol. 48,
145-152 (1994).
2)
M . S c h m i t t , A . Tu r b e r g , M . L o n d e r s h a u s e n a n d A D o r n : P e s t i c . S c i .
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6)
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16
ピレスロイドの忌避性について
長崎大学熱帯医学研究所
川田 均
1.はじめに(忌避とは何か?)
生物にとって、忌避という現象はどういう意味を持っているのだろう?常に合
目的的に考えたがる進化論学者は、それは種の保存(あるいは自らの遺伝子の保存)に
とって必要な防衛反応ととらえるかもしれない。また、人間以外の生物にも意思や感情
の存在を信じるロマンティックな行動学者の目には、自論を証明するために都合のいい
事例に映るであろうし、生態学者は、エネルギーのコスト・パフォーマンスで説明しよ
うとするだろう。勿論、これらの見方はいずれも間違ってはいないだろうし、それぞれ
を批判するつもりも資格も筆者にはないが、ディートを塗られた皮膚を忌避して近寄ろ
うとしない雌蚊にとって、最も重要な仕事である産卵のための栄養源摂取をさえ躊躇さ
せる「忌避」という現象に一体どんな意味があるのだろうと考えると、単細胞の思考回
路しか持たない筆者には、悲しいことにどうしても「それが嫌だから」という結論しか
浮かんでこない。「飛んで火にいる夏の虫」とはよく言うが、いかに昆虫といえども、
捕食者が眼前に迫ってくればそれを回避しようとするし、火や水・天候の変化など、自
分に危害を及ぼす可能性のある事象に対しては防衛本能が働くはずである。「嫌」とい
う現象は、人間のように複雑に進化した生物においては、危険からの回避という原始的
な目的以外に多くの不可解な理由から惹起される。その不可解な部分は、全て「こころ」
というブラックボックスで説明されてしまうようだ。ジャン=アンリ・ファーブルは、
昆虫が自然界で見せる数々の驚くべき能力を、「それがもともと昆虫に備わっていたも
のである」とし、当時流行していたダーウィンの進化論に真っ向から反論していた。彼
の頭にあったのは「こころ」よりさらに崇高なもの「神」であったに違いない。昆虫の
中の「こころ」や「神」の存在の是非を証明するには、まだまだ時間が必要であろう。
しかし、忌避という現象を様々な側面から見て、これを分類したり解析したりすること
は可能である。今回は、現象面から見た「忌避」について、しかもピレスロイドという
特殊な化合物群の持つ「忌避性」に絞って、少し考えてみたいと思う。ここであらかじ
めお断りしておきたいが、筆者が蚊の研究に従事していることもあって、話題が主に蚊
を中心としたものになることをお許し頂きたい。
2.ピレスロイドは忌避剤なのか?
17
筆者は、殺虫剤の有効成分、なかでもピレスロイドをもっぱら開発している化
学会社に20年近く勤めた経験を持つが、その当時からピレスロイドは真の意味での忌
避剤ではないと信じていた。その理由を考えてみると、下記のようになる。
(1)代表的な忌避剤であるディートは、処理面に昆虫が接触する前に忌避するが、ピ
レスロイドは昆虫が接触して初めて忌避性を示す。
(2)ディートは、昆虫を殺すことはないが、ピレスロイドは昆虫をノックダウンさせ
たり、殺したりする作用を持つ。
上記について考察してみよう。まず、
(1)については、ディートはその高い蒸気圧(5.6
×10-3 mmHg)のために、人体に塗布すると、気化した有効成分が塗布面からある一定
の距離の層を形成するのに対し、多くのピレスロイドは蒸気圧が低いために、このよう
な層を形成しないことが原因の一つと考えられる。近年、高い蒸気圧を有し、常温で揮
散し効力を発揮するピレスロイドがいくつか上市され始めたが、例えばメトフルトリン
(エミネンス®)の蒸気圧にしても、1.87 × 10-3 Pa (=1.4 × 10-5 mmHg)と、ディート
のそれとは依然オーダーが違うようである。しかし、よく考えると、蒸散した気体分子
に反応して忌避するかしないかが重要なのは、蚊などの飛翔性昆虫の場合に限られ、害
虫に対して空間にバリアーを形成するしないは、忌避剤であることの十分条件ではある
が必要条件ではないように思える。実際、最近上市された(国内では未上市)ピカリジ
ン(KBR3023)という忌避剤は、蚊に対する高い忌避効果を示すが、蚊は処理面にラン
ディングすることが知られている(Licciardi et al. 2006)
。次に(2)であるが、これは
「迷信」と言っても過言ではない思い違いであって、ディートは立派な殺虫力とノック
ダウン活性を持っており、むしろ殺虫活性のないピカリジンの方が純粋に忌避剤として
働いているようにさえ思える(Licciardi et al. 2006)
。最近の電気生理学的研究により、
ディートは昆虫に対し強い神経毒作用を示すことが報告されており(Pennetitier et al.
2005)、これは神経細胞のカルシウムイオンの平衡をディートが攪乱するためらしい
(Lapied et al. 2006)
(上記2つの電気生理学的研究の文献は、いずれも学会発表のプロ
シーディングで、筆者も実際に読んではおらず、孫引きさせてもらっただけである。さ
らにご興味のある方は入手して読むことをおすすめする)。これでは、ピレスロイドと
変わりないではないか・・・。
さて、こうなってくると、ディートは真の忌避剤なのか?という疑問さえ起こ
ってくる。なにしろ、先に挙げた忌避剤の条件は、どちらもディートは忌避剤であると
言うことを大前提にしていたのだから、この大前提が崩れると全ての理論も推測も意味
のないものになってしまう。しかも、ディートに関する文献を読んでみると、「ディー
トの作用機作については不明の点が多いが・・・・」とか、「ディートの作用機作につ
いてはまだよく分かっていないが・・・・」というような但し書きが必ず目に入る。な
るほど、はっきり分かっていないものを基準にしているから分からないのだと言うこと
18
が分かってきた。以上のような経緯から筆者の導き出した結論は、「やはりピレスロイ
ドは忌避剤なのだ」である。
3.ピレスロイドはどんな忌避効果を持つのか?
3−1
現象面からの分類
ピレスロイドの忌避性を現象面から分類すると、下記の3つになる。
(1)処理平面あるいは空間への進入(あるいは摂食・吸血)阻害
(2)処理平面あるいは空間(あるいは摂食・吸血対象)からの回避
Distance Tunneled (cm)
(3)処理面あるいは空間での定位阻害、摂食(吸血)による行動異常
10
8
処理
6
4
無処理
2
0
100
Mortality (%)
500
250
100
50
10
1
Control
50
0
Fenvalerate
Permetrhrin
Chlordane
図1 ピレスロイドのシロアリに対する忌避性 (Smith and Rust, 1990)
(1)の例としては、ピレスロイドを処理した土壌にシロアリが進入することを忌避す
る現象がある(図 1、Smith and Rust 1990)
。ピレスロイド(フェンバレレート、ペルメ
トリン)を処理した土壌へのシロアリの進入はピレスロイドの濃度に依存して阻止され
るが、致死作用は低いこと、これに対してクロールデンでは濃度依存的な忌避作用は認
められないことを彼らは報告している。同様な忌避現象には、ゴキブリ(Ross and
19
Cochran 1992)やイエヒメアリ(Buczkowski et al 2005)の侵入阻害が挙げられる。この
種の忌避現象は、接触して初めて作用するピレスロイドにとっては、匍匐性の昆虫類に
対して有効な効果を示すものと思われる。
(2)の例としては、フェンプロパスリン(ダ
ニトール®)を処理した面からナミハダニが逃げ出す現象が知られている(図 2、Hirano
1987)。無処理の葉面には平均3.6分留まっていたナミハダニは、フェンプロパスリ
ナミハダニの歩行軌跡
0.1 ppm
1 ppm
10 ppm
Control
図2 フェンプロパスリンのナミハダニに対する忌避性 (Hirano, 1987)
ンを処理した葉面では、濃度に依存して葉面に留まる時間が減少し、1ppmの処理区
ではほぼ直線的に処理葉面からの回避を行ったことが報告されており、著者はこれを
“locomotor stimulant” と説明している。同様な現象が蚊でも報告されている。タイの研
究者による報告が多いが、ピレスロイドを内面に処理した小箱に蚊成虫を放つと、時間
経過と共に小箱に開けられた小窓から蚊が逃げ出す現象が見られる(Pothikasikorn et al.
2007, Polsomboon et al. 2008 など)。著者らは、この現象を蚊のコントロールに結びつけ
るというよりも、残留散布処理面への吸血蚊の定位回避による防除の効率低下を危惧し
ているようである。したがって、著者らの試験デザインは、(2)の忌避現象を意図し
てはいるが、実際には(1)に分類される現象であろう。
(1)と(2)の忌避現象は、
忌避源を基点としたある程度方向性のある忌避現象であるが、(3)は方向性を持って
いないという意味でかなり複雑になってくる。筆者らが報告しているメトフルトリン
(Kawada et al 2006, 2008a など)や、アレスリンその他の成分を含有した蚊取り線香な
どの蚊取り製剤による、いわゆる Spatial repellency が、
(3)の現象に含まれる。アレ
スリンを主成分とする蚊取り製剤の蚊に対する効力試験は古くから行われているが、最
20
初に Spatial repellency や吸血忌避(あるいは吸血阻害)について報告したのは、MacIver
(1964) および Chadwick (1970)であろう。蚊取り線香の煙に曝された蚊成虫は、まず正
常な
1)
Resting state から、2) Irritation or threshold activation に移行し、3) アンテナのグル
ーミングや附節のリズミカルな上下運動が開始される。次に
れ、速くしかも混乱(confused)した飛翔活動が観察され、
後に
6)
5)
4)
Activation フェイズが訪
ノックダウンが見られた
死に至る (MacIver 1964)。また、上記の Activation あるいはノックダウンのフ
ェイズではおそらく吸血する意欲もなくなっているであろうと著者は述べている。
Chadwick (1970) は吸血阻害剤としての蚊取り線香の効果を報告しているが、これをさ
らに定量的に示したのが Teshima (1993) である。Teshima (1993) は、d-allethrin を 0.1%
以上含有する蚊取り線香において、明かな吸血源への定位阻害および吸血阻害を確認し、
さらに古くから言われている煙のみによる吸血阻害効果を否定している。
3−2
作用性からの分類
次に、作用性の面からピレスロイドの忌避効果を分類してみよう。用語は適当
ではないかもしれないが、下記の3つに分けてみた(図 3 も併せて参照)。
(1)接触忌避(Contact repellency)
(2)摂食(吸血)忌避(Feeding deterrency)
(3)行動異常(Excito-repellency)
(1)松永(1993)は、ネッタイシマカの各部位にピレスロイドを処理することにより、
吸血行動の阻害を観察し、味覚器の多く存在する附節と口吻が最も阻害効果が高いこと、
および昆虫(特に蚊)が薬剤処理面に摂食した場合、薬剤が最も早く進入するのは、附
節の化学感覚毛(味覚器)であろうことを報告している。松永(1993)は、さらにネッ
タイシマカの附節にプラレトリンの低濃度溶液を触れさせることにより、化学感覚毛か
ら異常スパイクが発生することを明らかにし、これが忌避行動と関連することを示唆し
た。化学感覚毛は、触角、palp、口吻、附節に分布するが、これらがピレスロイドに接
触することにより、接触忌避効果が発現するものと考えられる。
(2)Umeda and Hirano (1990) は、タイワンツマグロヨコバイの吸汁行動を電気生理学
的に調べ、エスフェンバレレート(スミアルファ®)によって処理された稲に対して、
唾液分泌、吸汁などの正常な行動を示さなくなることを報告している。ここでは明らか
にされていないが、エスフェンバレレートを附節で感じているのか、口吻で感じている
のかという疑問が残る。実験条件(エスフェンバレレートは植物体に散布されている)
から推測すると、附節が大きく関与していると思われるが、その場合この現象は接触忌
避に含まれることになり、あまりいい例ではないかもしれない。むしろ、ここではアル
21
カロイド等を含んだ植物を好まない植食性昆虫を例に挙げた方がよいかもしれない。
Death, Knockdown
Spiracle
Spacial Repellency
Palp,Tarsus, Antenna
Excito-Repellency
Orientation
Flight, Resting
Alighting
Contact Repellency
Feeding
Palpation
Probing
Proboscis
Gustatory Repellency
図 3 ピレスロイドの忌避性と作用部位および蚊の行動との関係(Chadwick 1970 に著
者の考えを盛り込んで改変)
(3)先に述べたように、
ピレスロイドは 1) Resting state 、2) Irritation or threshold activation、
3)
アンテナのグルーミングや附節のリズミカルな上下運動、4) Activation、5) ノックダウ
ン、6) 死といった一連の行動を蚊成虫に励起するが、これらの異常な行動のある過程に
おいて、吸血源への定位や吸血に対する意欲を阻害する。これは当然ピレスロイド分子
が空中を漂いながら蚊にヒットした後に起こるわけであるが、この場合のピレスロイド
の侵入経路とはどこなのであろうか?最近、Sugiura et al. (2008) は、ピレスロイドが他
の薬剤に比べて速効的に作用する理由の一つとして、ピレスロイドが最も有効に侵入す
る経路が気門であることを証明した。ピレスロイドの忌避性が、ノックダウンから死に
至る一連の行動の中の一つの過渡期的現象であると仮定すると、この場合の侵入経路も
同じように気門であると言っていいであろう。
4.おわりに
近年、蚊のピレスロイド抵抗性が問題となりつつある。2005 年から 2008 年に
かけてのベトナムでの調査によると、全国に分布する古タイヤに発生するネッタイシマ
カのピレスロイドに対する感受性低下が、山間部を含む南部一帯に広がっていることが
分かった(Kawada et al. 2008b)
。しかし、この感受性低下はデング熱対策のために散布
22
されたピレスロイドの量とは相関しなかった。その後の調査により、ベトナムでは近隣
アジア諸国と比較しても、かなり大量のピレスロイドをマラリアコントロールプログラ
ムの一環として 1994 年頃から使用していたことが分かり、ネッタイシマカのベトナム
南部での感受性低下は、このマラリアコントロール用の残留散布剤等の散布によるもの
であることが明らかになってきた。マラリアコントロールに使用されたピレスロイドは
全て、λ-サイハロスリン、α-サイパーメスリン、ペルメトリンなどの photo-stable な
ピレスロイドである。このようなピレスロイドに抵抗性となった蚊は、当然他のピレス
ロイド、特にアレスリンなどの photo-unstable なノックダウン剤にも抵抗性を示す。こ
れは非常に憂慮すべき事態である。
今回述べてきたように、蚊取り製剤による吸血忌避は、理論上蚊の個体群に選
択圧を加えない(蚊を殺すことが目的ではないため)。さらに化合物自体は、室内条件
でも比較的不安定なために、速やかに分解失活し、抵抗性の発達を最小限に抑える。吸
血忌避は、媒介蚊による疾病伝播をブロックする最も有効で確実な方法である。ピレス
ロイドに代わる有効な剤が発見されていない現在、この方法をもう一度見直し、必要最
小限の薬剤処理で最大の効果を引き出す努力をすることが、ひいてはピレスロイド自身
の寿命を延ばすことになるのではないだろうか。
引用文献
Buczkowski, G., M. E. Scharf, C. R. Ratliff, and G. W. Bennett (2005): Efficacy of simulated
barrier treatments against laboratory colonies of Pharaoh ant. J Econ Entomol.
98:485-92.
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Kawada, H., Y. Higa, T. Y. Nguyen, H. S. Tran, T. H. Nguyen, and M. Takagi (2008b):
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24
蚊のピレスロイド剤接触忌避性
国立感染症研究所昆虫医科学部
葛西真治、駒形修、冨田隆史
はじめに
オリセット
Ⓡ
ネットは、疾病媒介蚊(おもにマラリア媒介蚊)対策として開発された蚊
帳である。ピレスロイド剤ペルメトリンが練り込まれた樹脂の繊維によって作られており、
薬剤が表面から流出しても再び樹脂内部から徐々にしみ出すコントロールドリリース技術
によって、洗濯しても防虫効果が低下せず薬剤の再処理が不要である。また、従来型の蚊
帳に比べて編み目が大きく、通気性が高いため熱帯地方での使用に、より適した改良が施
されている。これらの長所とマラリア防除の有効性が認められ、2001 年にオリセット
Ⓡ
ネ
ットは、WHO から使用の推薦を受けた(Ito and Okuno, 2006)。一方で、マラリア対策を必
要とする現場では、媒介蚊が徐々に薬剤抵抗性を発達させていることから、抵抗性蚊に対
する防御効果の有無は、今後のマラリア対策に影響を及ぼすことが考えられる。
ピレスロイド剤の昆虫に対する忌避作用は古くから知られているが、ピレスロイドが抵
抗性の蚊に対しても忌避効果を発揮するのか、室内実験の報告例はない。そこで本研究で
は、オリセット Ⓡ ネットを用いて神経の感受性低下(knock down resistance, kdr)とピレスロ
イド剤の忌避効果に対する抵抗性がリンクするのか否かを検証した。
材料と方法
モデル材料として、ピレスロイド剤や DDT の作用点であるナトリウムチャネル(SC)上
に、薬剤非感受性の原因となるアミノ酸変異を 1 カ所ずつもつアカイエカ種群 3 系統を用
いた(表 1、図 1)。JPal-per (A)と JPal-per (B)はともにサウジアラビア産のネッタイイエカ
であるが、SC の 999 番目のロイシンと 1001 番目のバリンがそれぞれフェニルアラニンとグ
リシンに変異した kdr 因子をもつ抵抗性系統である。林試系統は 2003 年に品川区林試の森
公園で採集されたコロニーをエトフェンプロックスにて 7 世代室内淘汰して確立された系
統で、999 番目のロイシンがセリンに変異した kdr 型抵抗性系統のアカイエカである。感受
性系統としてネッタイイエカの小笠原系統およびアカイエカの洞穴系統を用いた。抵抗性
系統は幼虫期にピレスロイド剤で淘汰して確立されたため、幼虫のピレスロイド剤に対す
る感受性が大きく低下している。JPal-per (A)および林試系統の 4 齢幼虫期におけるペルメト
リンおよびエトフェンプロックスに対する抵抗性レベルは小笠原系との比較においてそれ
ぞれ 1299 倍と 167 倍である(表 1)
。成虫におけるピレスロイド感受性は、JPal-per (A)系で
45 倍、JPal-per (B)で 27.4 倍、林試系で 5.9 倍である。幼虫期には kdr に加えて解毒酵素シト
クロム P450 の要因が大きく関与していることが知られるが、成虫における抵抗性は kdr 単
25
独によるものと考えられる。蛹化直前の幼虫 200 匹を少量の昆虫用試料とともに直径 12 ㎝、
高さ 6 ㎝のガラスシャーレに入れ、20 ㎝×20 ㎝×30 ㎝のケージ内に放置し、羽化させた。
成虫には砂糖水を与え、羽化後 7~10 日目の個体を実験に供試した。直径 12 cm、高さ 6 cm
の腰高シャーレ内に無毛系マウス(Hos: HR-1)を固定し(図 3)、シャーレ上面をオリセッ
ト
Ⓡ
ネットで覆い、幅広のゴムバンドで固定することでシャーレ上面のみをネットが覆う
ようにした。これをケージ内に 18 時から翌朝 10 時までの間静置した(図 2)。22 時から 7
時を暗期とし、暗期の前後 1 時間ずつを薄明条件下に置いた。対照区としてペルメトリン
が練り込まれていない樹脂繊維を用いて同様の試験を行った。実験直後のケージ内の死亡
個体数を計測後、ケージを炭酸麻酔およびクロロホルム処理し、生存個体数(吸血の有無
を含め)を計測した。実験は各系統 3 回ずつ繰り返し行い、平均値を算出した。
結果
オリセットネットの殺虫効果を観察する目的で供試虫の死亡率を観察した(図 4)。ペル
メトリンが練り込まれていないネットを用いた対照区では死亡率が最高で 0.4%であった。
オリセットネット区では、小笠原系のオス、洞穴系のメスで 30%程度の死亡率が確認され
たが、全体的に死亡率は低く、雌雄間の差も認められなかった。
供試メス個体数に占める吸血個体数の割合を図 5 に示した。対照区における吸血率は洞
穴、JPal-per (A)、JPal-per (B)、林試、小笠原系統の順でそれぞれ 89.6、77.2、78.9、62.6、
59.4%と高い値を示した。いずれも吸血蚊の多くはシャーレの外で確認されたことから、メ
ス蚊の多くは対照区のネットを通過してマウスから吸血後、再びネットを通過してシャー
レから出たことが分かった。一方、オリセットネット区では、吸血率が著しく低く、感受
性の洞穴、小笠原系統でそれぞれ 0.7%(2 個体)と 0%であった。吸血個体はいずれもシャ
ーレ内で死亡していた。オリセットネットの吸血抑止効果は抵抗性系統においても確認さ
れ、JPal-per (A)、JPal-per (B)、林試系統における吸血率はそれぞれ 0.3、5.3、3.0%であった。
オリセットネット区で吸血していた個体の 80%以上はシャーレの中で死亡していた。
考察
今回供試した 5 系統ではいずれも対象区において高い吸血率が認められたことから、メ
スは 4 ミリの網の目を容易にくぐり抜けて吸血できることが判明した。一方で、オリセッ
トネット区においては全ての系統において吸血率が低く押さえられていた。それはペルメ
トリンの殺虫効果によるものではなく、忌避効果によるものであることは、感受性、抵抗
性の両系統における死亡率の低さから窺うことができる。ペルメトリンの蒸気圧は極めて
低い(trans 体の vapour pressure は 0.0015 mPa)ことから、今回認められた忌避行動は、接
触忌避によるものであると考察される。つまりオリセットネットに練り込まれたペルメト
リンが抵抗性、感受性に関わらずメス蚊がネット表面に長期間とどまるのを許さず、蚊に
付着する薬剤量が致死量に達する前に蚊は危険を察知し、ネットから離れたことを意味す
る。さらに、その接触忌避効果は、Gly1001、Ser999 のような Phe999 とは異なる kdr 因子に
26
対しても発揮されることが明らかになった。
今回の実験では、少なくとも kdr 因子単独の機構に対してはオリセットネットが十分に防
御効果を持つことが明らかになった。マラリアが蔓延するアフリカ諸国では近年、kdr のみ
ならずシトクロム P450 酸化酵素の活性化によって抵抗性を獲得した蚊の存在が報告されて
いる(Nikou and Ranson, 2003)。複数の抵抗性機構を獲得した蚊は kdr 単独の場合に比べはる
かに高い抵抗性レベルを発達させることが予想される。そのような蚊に対し、オリセット
ネットが本実験同様に高い忌避効果を発揮するかどうかが今後焦点となりうる。一方で、
私たちはアカイエカ種群蚊において、幼虫期に淘汰され高度の抵抗性を発達させた抵抗性
系統が成虫においてはそれほど高い抵抗性レベルを示さなかったという現象も経験してい
る。ピレスロイド系殺虫剤や DDT の残留噴霧による成虫の淘汰圧は(室内淘汰試験と比し
て)それほど高くないことから、ハマダラカ成虫が(イエバエ成虫に見られるような)高
い抵抗性レベルを発達させにくいのではないかという推測もある。今後、ハマダラカ成虫
(野外集団)のピレスロイド剤抵抗性レベルに関する報告に注目していきたい。
本研究では、マラリア対策で開発されたオリセットネットの抵抗性系統に対する忌避効
果をマラリア媒介蚊ではないアカイエカ種群蚊を用いて行った。ナトリウムチャネルの
L999F や L1001S といった変異はハマダラカにおいても共通に確認されているため、入手が
困難な抵抗性ハマダラカに代わって実験に供試することとした。したがって、アカイエカ
とハマダラカとの行動学的差違に関しては考慮がなされていない。また、今回マウスを用
いて設計した実験系がマラリア流行地の状況をどれだけ再現しているか、その違いも考慮
に入れなければならないであろう。オリセットネットの抵抗性マラリア蚊に対する防御効
果をより正確に評価するためには、実際に抵抗性のハマダラカを対象とした実地試験を行
う必要がある。
引用文献
伊藤高明、奥野武 (2006)マラリア防除用資材オリセット Ⓡ ネットの開発
住友化学 2006-II、
4-11.
Nikou D, Ranson H (2003) An adult-specific CYP6 P450 gene is overexpressed in a
pyrethroid-resistant strain of the malaria vector, Anopheles gamibae. Gene, 318, 91-102.
27
表 1 供試アカイエカ種群系統とナトリウムチャネル変異およびペルメトリン抵抗性レベル
系統
亜種名
ナトリウムチャネルフェノタイプ
1035
1037
抵抗性比
幼虫
成虫
小笠原
ネッタイイエカ
ロイシン
バリン
1.0
1.0
洞穴
アカイエカ
ロイシン
バリン
1.9
-
1299.0
45.0
-
27.4
Jpal-per (A)
ネッタイイエカ
フェニルアラニン
バリン
Jpal-per (B)
ネッタイイエカ
ロイシン
グリシン
林試
アカイエカ
セリン
バリン
*etofenprox のデータ
図1 供試系統のナトリウムチャネル
図 2 実験のタイムテーブル
28
167.0 *
5.9
BB
A
B
C
図 3 実験の様子
(A、B) マウスの固定風景
(C) 実験ケージの全体像
29
図 4 オリセットネット区における実験開始 16 時間後の死亡率
図 5 対照区とオリセットネット区の吸血率の比較
30
有機燐系薬剤抵抗性チャバネゴキブリに見られる薬剤忌避現象
Insecticide repellent behavior in the field collected colonies of
the German cockroaches
田原雄一郎,岩本和人,山﨑尋晶,渡部泰弘,小長谷貴昭
Yuichiro TABARU, Kazuto IWAMOTO, Hiroaki YAMASAKI, Yasuhiro WATABE and
Takaaki KONAGAYA
㈱フジ環境サービス
〒334-0013 鳩ヶ谷市南一丁目 27-4
Fuji Environmental Service Incorporation
27-4 Minami 1, Hatogaya, Saitama, 334-0013 Japan
はじめに
都市のチャバネゴキブリの効率的防除は PCO にとって最大の関心事である.すでに,野
外のチャバネゴキブリが各種の殺虫剤に対する抵抗性を獲得していることが報告されてい
る(高山ら,1995, 羽原ら,1996, 山田ら,1997).殺虫剤散布でチャバネゴキブリの生息密
度を低く抑え,そのレベルを維持することは容易なことではない.また,チャバネゴキブ
リが殺虫剤残渣に対して忌避性を示すことも確認されている(Tabaru, et al. 2001).
我々は,IPM の理念のもとに,Less chemicals を考慮しながらチャバネゴキブリの生息
レベルを低く抑える努力を行ってきた.
ここでは,東京都内の数箇所から得られたチャバネゴキブリに対して数種薬剤の効力確
認とゴキブリの薬剤忌避行動に着目した試験を行い,注目すべき結果を得たので報告する.
試験材料と方法
供試ゴキブリ:感受性(渡田系),野外採集コロニー,総武系(中華料理),総武 2 系(ラ
ーメン),目黒系(カレー)野外系は F3 の♂を供試した.
31
フィールドのゴキブリは江東区と目黒区の雑居ビルの飲食店から採集され,
当社の研究室で累代飼育されているものである.当該飲食店は開設され 15
年を経過しており,有機燐剤による駆除が長年にわたり実施されてきた.
今回は F3 を供試した。ドッグフードで飼育されている.飼育環境は 27℃,
75%RH で,12D:12L である.
供試薬剤:Fentrothion: 10% EC & 20% MC
Propetamfos: 20% MC,
Chlorpyrifos-methyl: 10% EC
殺虫剤抜きの溶剤 (Chlorpyrifos-methyl 10% EC) から主剤を除去
試験容器: 25cm x 35 cm, 25cm height のプラスチック容器,逃亡防止のために内部壁面
に流動パラフィンを塗った.
薬剤処理シェルター: 5cm x 5cm, 5mm single void のベニヤ板製
シェルター受け皿:シェルターの下にはプラスチック受け皿(100mm diameter, 4mm
depth)をおいた.
餌と水:餌は顆粒状のドッグフード,水はフィルムケースに脱脂綿を入れて水を満たして
与えた.
任意接触試験:ベニヤ板製のシェルターの一方に殺虫剤を処理し,もう一方のシェルター
は無処理(対照区)として,試験容器の両端に置いた.チャバネゴキブリ ♂20 頭
を放った.試験容器ならびに材料の配置を図 1 に示した.繰り返しは 2 回おこな
った.
C
D
C
A
B
E
図1 試験容器と材料の配置
A: 殺虫剤処理シェルター、B: 無処理シェルター、
C: プラスチック受け皿、D: 餌、E: 水
死亡率判定:48 時間後の死亡率を求めた.
忌避率判定:それぞれのシェルターの下においた受け皿に 48 時間に落下した糞数から忌避
係数を求めた.
32
忌避係数=対照区の糞の数÷(双方の糞数の合計)x 100
評価基準: Repellent index: 50 忌避も誘引もない
>50 (忌避)
<50 (誘引)
試験結果及び考察
1.4 種殺虫製剤の感受性ならびに野外採集コロニーに対する効力
図2は 4 種の殺虫製剤の感受性ならびに野外採集コロニーに対する効力を比較したもの
である.感受性系統はプロペタンフォス MC 剤(サフロチン)の 1000 倍希釈液(0.02%)まで
100%死亡した.これに対して,クロルピリフォソメチル乳剤は 60 倍(0.16%)で 100%死亡,
フェニトロチオン MC 剤は 125 倍(0.16%)以上で 90%の死亡率を示した.一方,フェニトロ
チオン乳剤は 62 倍(0.16%)で 80%の死亡にとどまった.野外採集コロニーに対しては,プロ
ペタンフォス MC 剤が総武系(中華店)に 125 倍(0.16%)で 100%死亡,総武 2 系(ラーメン)
には 62 倍(0.32%)以上でのみ 100%の死亡が得られた.目黒系(カレー)には 125 倍で 80%
の死亡にとどまり,62 倍でも 100%死亡は得られなかった.フェニトロチオン MC 剤は
総武系のみ 0.16%以上で 80%の死亡率が得られたものの,総武 2 系と目黒系には 0.32%液で
Susceptible
Sohbu strain
Meguro strain
Chlor-py
Fenit EC
Fenit. MC
Saflotin MC
Chlor-py
Fenit .EC
Fenit. MC
Saflotin MC
Chlor-py
Fenit. EC
Fenit. MC
Saflotin MC
Chlor-py
Fenit. EC
0.32%
0.16%
0.08
0.04
0.02
0.01
0.005
Fenit. MC
100
90
80
70
60
50
40
30
20
10
0
Saflotin MC
Mortality(%)
15%の死亡にとどまった.なお,フェニトロチオン乳剤ならびにクロルピリフォスメチル
Sobu 2 strain
Strains and insecticides
図2
チャバネゴキブリに対する 4 種殺虫剤の感受性ならびに
野外採集コロニーに対する効力比較
乳剤の効果は 0.32%(32 倍液)で両コロニーに対して無効であった.このことから,野外
採集コロニーの中には,有機燐系乳剤の実用濃度では効力が得られない場合があることを
示唆している.プロペタンフォス MC 剤の効果は野外系に対しても十分であった.
33
100
90
80
70
60
50
40
30
20
10
0
Susceptible
Sobu strain
Meguro strain
Sobu 2 strain
R epellent index
R epellent index
2.4 種殺虫製剤の4系統のチャバネゴキブリに対する忌避性
0.16%
0.08
0.04
0.02
0.01
100
90
80
70
60
50
40
30
20
10
0
0.005
0.16
0.08
0.04
100
90
80
70
60
50
40
30
20
10
0
0.16
0.08
0.04
0.02
0.01
0.005
0.01
0.005
100
90
80
70
60
50
40
30
20
10
0
0.16
Fenitrothion EC
図3
0.02
Fenitrothion MC
Repellent index
R epellent index
Safrotin MC
0.08
0.04
0.02
0.01
(Chlorpyrifos-methyl EC)
種殺虫剤に対する色々なコロニーの忌避現象
4 種殺虫製剤の4系統のチャバネゴキブリに対する忌避性を図3に示した.忌避性を判断
する基準は,殺虫剤処理シェルターと無処理シェルターのそれぞれに落下した糞数から導
き出したものである(試験法参照).チャバネゴキブリは一日の大半を隙間に隠れる.当然,
そこには多くの糞が落下する.シェルターの下にプラスチックの受け皿(アイスクリーム
カップの蓋)をおき,どちらの受け皿(処理シェルターと無処理シェルター)に多くの糞
が落下したかで忌避性を確認する方法である.Tabaru, et al (2001, 2005), 渡部ら(2002,
2003),高橋・田原 (2005) は,この方法で殺虫剤,ハーブ,木材の忌避性を確認した.
今回の試験では,感受性系統や野外採集コロニーの全てについて,フェニトロチオン乳
剤やクロルピリフォスメチル乳剤は 0.02%(500 倍)から 0.16%(62 倍液)までの各段階で強
い忌避性が見られた.他方,MC 剤の忌避性は乳剤に比べて格段に弱いことが示された.興
味深いことは,MC 剤では系統あるいはコロニー間で忌避性に違いが見られたことである.
例えばフェニトロチオン MC 剤に対しては,目黒コロニーは全ての濃度段階で忌避性が強く,
総武 2 コロニーは低かった.感受性系統は濃度が低いレベルにおいて忌避性が高い傾向に
あった.プロペタンフォス MC 剤は総武 2 コロニーでやや強い忌避性が確認されるが,感受
性も含めて他のコロニーの忌避性はほとんど確認できなかった.このことが前項で見られ
た効力にも影響したことがうかがえる.図 4,図5は薬剤処理シェルターと無処理シェルタ
34
ー区での糞数や隙間潜伏性を示したものである.
図 4
殺虫剤処理シェルターならびに無処理シェルターの
下の受け皿に落下した糞の状況
Non-treated shelter
Solvent treated shelter
上段(2隙間):無処理シェルター
下段(2隙間):スミチオンEC10倍処理
シェルターに潜伏中のチャバネゴキブリ
図
5
無処理シェルター(右上)と薬剤処理シェルター(同、下)への
チャバネゴキブリの潜伏状況
3.溶剤の忌避性
クロルピリフォスメチル乳剤から主成分を除去した溶剤について 10 倍から 80 倍までの
希釈液で忌避性を調べた.その結果を図 6 に示した.その結果,殺虫効力は見られなかっ
たものの忌避性は高かった.前項の試験で乳剤の忌避性が強かったのは主剤による影響で
はなく,溶剤の影響とも考えられる.その点,マイクロカプセル化剤は溶剤を含まなく,
また主剤の濃度が高いために高倍率に希釈されることでチャバネゴキブリに対する忌避性
が緩和されたものと考えられる.
35
100
Repellent index
90
80
70
60
Susceptible
Sobu strain
50
40
Meguro strain
Sobu 2 strain
30
20
10
0
10
20
40
80
Dilution
殺虫剤溶剤の忌避係数
全ての濃度で死亡率は0であったが、忌避性は極めて高い
図6
殺虫剤の溶剤のチャバネゴキブリに対する忌避性
まとめ
1.感受性系統に対してはスミチオン EC を除いて,基準薬量で十分の効果があった.
2.野外採集コロニーは,サフロチン MC を除く他の薬剤に強い抵抗性発達が見られた.
とくに,目黒系と総武2系はサフロチン MC のみが有効と考えられる.
3.落下糞の分布から得られた忌避係数では
①マイクロカプセル(MC)は乳剤(EC)に比べて忌避性が弱かった.
②サフロチン MC は総武 2 系に対し,スミチオン MC は目黒系にやや忌避性を示した.
④殺虫剤の溶剤は強い忌避性を示した.
引用文献
高山
渉,松谷修一,佐藤秋弘,山田英夫,川瀬
充,羽原政明,高橋朋也 (1995)
各地
で採集されたチャバネゴキブリの殺虫剤感受性.ペストロジー学会誌,10:62−64
佐藤秋弘,安藤義行,川瀬
充,高橋朋也,羽原政明,松谷修一,山田英夫 (1997)
各地
で採集されたチャバネゴキブリの殺虫剤感受性.ペストロジー学会誌,12:61-62
羽原政明,安藤義行,金山彰宏,城戸
山田英夫 (1996)
毅,佐藤秋弘,柴山
淳,高橋朋也,松谷修一,
各地で採集されたチャバネゴキブリの殺虫剤感受性(第2報).ペ
ストロジー学会誌,11:69-71
Tabaru, Y. K. Mochizuki, Y. Watabe and T. Takahashi (2001)
Repellency of insecticides
against German cockroach, Blattella germanica, observed by feces distribution in
36
insecticide-treated harborages. Med. Entomol. Zool., 52:81-86
Tabaru, Y. and Mochizuki, K. (2005) Repellency of ethanol extracts of herbs to the
German cockroach, Blattella germanica, observed by feces distribution in the
extract treated harborages. Med. Entomol. Zool., 56:139-143
高橋知代・田原雄一郎 (2005) 国産の各種木材で作成したシェルターに対するチャバネゴ
キブリの適応習性. ペストロジー 20(1):11-14
渡部泰弘・望月香織・田原雄一郎 (2003) クロゴキブリの糞の分布による殺虫剤忌避現象
の検証
ペストロジー学会誌
18(1): 19-24
37
殺虫剤処理面に対するチャバネゴキブリの忌避行動
財団法人日本環境衛生センター・環境生物部
橋本知幸
1. はじめに
チャバネゴキブリは、通常、明るい光条件下では行動が不安定となり、適当な潜み場
所がある場合には、その中に入り込もうとする。しかし、このとき、潜み場所に忌避効
力のある物質が処理されていると、その潜伏行動が阻害される。特にディートやピレス
ロイド系殺虫剤は、一定の忌避効力を発揮することが報告されてきた(林・廿日出、
1966;伊藤ら、1975;辻・志澤 2000;Tabaru et al.2001)。
近年、総合的有害生物管理(IPM)の思想が、衛生害虫防除においても重視されるに
至り、発生した害虫を駆除するばかりでなく、根本的に定着させないような、いわゆる
環境対策の重要性が強く認識されるようになっている(田中、2008)。このトレンドの
中で、「忌避」による害虫対策は、今後、一つの選択肢となりうるであろう。しかしな
がら、忌避効力の評価は、技術的に多くの難しさがあり、標準的な方法が確立されてい
ないのが現状である。
最近、筆者は、チャバネゴキブリに対する薬剤の忌避効力として、薬剤を処理した潜
み場所への潜伏阻止効果と薬剤処理面上の通過阻止という、2つの視点から評価を試み
たので、その概要をここに紹介する。
2.試験方法
①薬剤処理シェルター内への潜伏阻止効果の評価
薬剤を処理したシェルターへのチャバネゴキブリの潜伏状況により、忌避効果を評価
した。試験はシェルターの単独配置試験と併置試験で実施した。
1)単独配置試験
5cm×5cm の化粧板(非浸透面)2枚に、所定濃度の薬剤アセトン希釈液 0.25mL を
滴下処理した。この処理面を内側にして、高さ5mm の木片を挟んで木工用ボンドで固
定し、1時間風乾して、処理シェルターとした。なお、対照シェルターはアセトンのみ
を滴下したシェルターとした。
底面直径 10cm、深さ 10cm のプラスチック容器の内壁に、逃亡防止のためのバターを
塗布して、チャバネゴキブリ(渡田系;♂♀各5匹)を放し、作製したシェルター1個
を配置した(図 1-A)。プラスチック容器は常時、室内照明下に置き、配置後1、2、
4、6、24 時間後に、シェルター内への供試虫の潜伏数、およびノックダウン数をカ
ウントした。なお潜伏率は式Aにより算出し、供試虫数にはノックダウンおよび致死個
体も含めた。
38
供試薬剤および処理薬量は、ペルメトリン(16、80、400mg/㎡)とディート(160、
800、4000mg/㎡)で、反復は各薬量について4回ずつ行った。
式A)
潜伏率(%)=(シェルター内潜伏数/供試虫数)×100
2)併置試験
単独配置試験と同様の手順で、処理シェルターと対照シェルターを作製した。
22cm×28.5cm×9Hcm のプラスチック容器の内壁にバターを塗布し、チャバネゴキブ
リ(♂♀各5匹)を放し、処理シェルターおよび対照シェルター、餌、水を入れた平シ
ャーレを各々1個ずつ同時に配置した(図 1-B)。プラスチック容器は室内照明下に置
き、単独配置試験と同様に、シェルター配置からの時間経過に伴うシェルター内への供
試虫の潜伏数およびノックダウン数をカウントした。処理シェルターへの供試虫の潜伏
率は、式Aにより算出した。
本試験における処理薬量は、ペルメトリンが 16、80、400mg/㎡、ディートでは 32、
160、800mg/㎡とし、各薬量6反復で実施した。さらにこの2薬剤以外に、エンペント
リン、イミプロトリン、フェニトロチオン、ダイアジノン、メトキサジアゾンについて
も、処理薬量を 400mg/㎡として、反復4回の試験を行った。
餌
5cm
TまたはC
10cm
T
C
22cm
水
28.5cm
A 単独配置試験
B 併置試験容器
図1
試験装置概略(上部より見た図)
T:処理シェルター、C:対照シェルター
②薬剤処理面上の通過阻止効果の評価
薬剤処理面の忌避効果が高いほど、薬剤処理面の通過数が少なくなるものとみなし、
処理面通過数によって、忌避効果を評価した(橋本・伊藤、2007)
。
14cm×40cm×5.5Hcm のプラスチック容器の内壁にバターを塗布し、チャバネゴキブ
リ(♂♀各 10 匹)を放し、三角柱型のベニヤ板シェルター(1辺3㎝×長さ 7.5cm)
、
餌、水を各々1個ずつ配置した。プラスチック容器は実験終了時まで光条件 14L:10D に
設定した恒温器内に配置した。
39
5cm×5cm の化粧板に、薬剤アセトン希釈液またはアセトンのみを滴下処理し、そ
れぞれ、処理板、対照板とした。
シェルター内に全ての供試虫が潜伏している明時間帯に、各化粧板を1枚ずつ静置し、
両化粧板の上部から化粧板中央にセンサー光が当たるように、センサーユニットを2カ
所に設置した(図2)
。
センサー光下の供試虫通過数をカウントするようにセンサーを設定し、チャバネゴキ
ブリの活動時間帯である暗時間帯(20 時~翌6時)の通過数を記録した。
処理板の配置場所による影響を排除するため、2日目には新たに準備した処理板と対
照板を場所を入れ替えて設置し、この2日間の試験を1反復とした。処理板への処理薬
量はペルメトリンが 160、800、4000mg/㎡、ディートが 800、4000mg/㎡とし、各薬量に
ついて反復2回で実施した。処理板と対照板の通過数を1時間ごとに集計し、容器内の
供試虫ノックダウン数は1日ごとにカウントした。
さらに、上記と同様の試験容器を常時照明下に配置し、ディート 800mg/㎡処理板と
対照板を配置した際の、処理面通過数を継続記録した。反復は3回行い、各板の配置位
置は反復の都度、入れ替えた。各板面上通過数から式Bにより、通過阻止指数を算出し、
通過阻止効果の変化を評価した。
式 B)
通過阻止指数={1-(処理板通過数/対照板通過数)}×100
シェルター
処理板
対照板
餌
水
14cm
センサーレーザー光
40cm
図2
通過試験容器概略
3.結果および考察
①薬剤処理シェルター内への潜伏阻止効果の評価
1)単独配置試験
ディート、ペルメトリンの各処理薬量における、処理シェルターへの平均潜伏率なら
びに平均ノックダウン率の推移を表1(A、B)に示す。
ペルメトリンにおいては、16mg/㎡では対照区と同等の潜伏率で推移し、24 時間後ノ
ックダウン率も低く、潜伏阻止効果ならびにノックダウン効力は見られなかったのに対
40
して、80mg/㎡以上の処理薬量では潜伏率が対照区に比べて低い傾向が認められ、ノッ
クダウン率は時間経過に伴って増加した。ノックダウン個体は全てシェルター外部での
み見られたことから、ノックダウン個体の増加が、結果的に潜伏阻止効果を高めたもの
と判断された。一方ディートでは、160mg/㎡では潜伏阻止効果は得られなかったが、
800mg/㎡以上では高い効果が認められた。ただし、800mg/㎡では配置後時間経過に伴っ
て、その効果は低下する傾向にあった。なお、ディートでは高薬量でもノックダウン個
体はほとんど見られなかった。
表1
単独配置試験におけるチャバネゴキブリの潜伏状況
A ペルメトリン
配置後時間経過に伴う潜伏率[ノックダウン率](%)
処理薬量
(mg/㎡)
1
2
80
50.0[ 2.5] 52.5[10.0] 57.5[17.5] 52.5[30.0] 35.0[40.0]
0(対照)
60.0[ 0
7.5[67.5]
] 77.5[ 0
] 95.0[ 0
24(時間)
82.5[ 0
7.5[37.5]
] 97.5[ 0
6
16
400
] 90.0[ 0
4
5.0[77.5]
] 80.0[ 0
] 87.5[ 2.5]
5.0[82.5]
] 87.5[ 0
0
[85.0]
] 80.0[ 0
]
数値は反復4回の平均値(B も同様)
B ディート
配置後時間経過に伴う潜伏率[ノックダウン率](%)
処理薬量
(mg/㎡)
160
1
80.0[ 0
2
4
6
24(時間)
] 85.0[ 0
] 95.0[ 0
] 97.5[ 2.5] 72.5[ 2.5]
800
0
[ 0
]
0
[ 0
]
2.5[ 0
]
7.5[ 2.5] 12.5[ 2.5]
4000
0
[ 0
]
0
[ 0
]
0
]
0
0(対照)
65.0[ 0
] 72.5[ 0
[ 0
] 77.5[ 0
[ 0
] 75.0[ 0
]
0
[ 0
]
] 80.0[ 0
]
2)併置試験
シェルター併置時の各シェルターへの平均潜伏率ならびに平均ノックダウン率の推
移を表2(A、B、C)に示す。
ペルメトリンでは、80mg/㎡以上の試験区において、処理シェルターへの潜伏率は 24
時間後まで 10%未満で推移し、高い潜伏阻止効果が認められた。24 時間後ノックダウ
ン率は 80mg/㎡と 400mg/㎡で逆転したが、単独配置試験に比べて相対的に低かった。デ
ィートでは 800mg/㎡で、24 時間後まで潜伏を完全に阻止したが、160mg/㎡では潜伏阻
止効果は不明瞭で、32mg/㎡では、処理シェルター側に供試虫が誘引されているような
結果が得られた。
それ以外の薬剤では、エンペントリンとイミプロトリンの 400mg/㎡で、ペルメトリ
41
ンと同様の高い潜伏阻止効果が得られ、24 時間後にエンペントリンで 17.5%のノック
表2 併置試験におけるチャバネゴキブリの潜伏状況
A ペルメトリン
処理薬量
シェル
(mg/㎡)
ター*
16
80
400
配置後時間経過に伴う潜伏率[ノックダウン率](%)
1
T
20.0
C
25.0
T
8.3
C
38.3
T
0
C
63.3
2
[ 0
]
[ 0
]
[ 0
]
33.3
21.7
1.7
68.3
1.7
66.7
[ 0
4
]
[13.3]
[ 1.7]
43.3
28.3
0
71.7
0
80.0
[ 0
6
]
[15.0]
[ 3.3]
41.7
40.0
0
71.7
0
75.0
[ 0
24(時間)
]
[16.7]
[ 3.3]
28.3
48.3
0
70.0
0
88.3
[ 0.5]
[21.7]
[ 1.7]
*:T=処理シェルター、C=対照シェルター、数値は反復6回の平均値(B も同様)
B ディート
処理薬量
シェル
(mg/㎡)
ター
32
160
800
配置後時間経過に伴う潜伏率[ノックダウン率](%)
1
T
66.7
C
13.3
T
15.0
C
33.3
T
0
C
43.3
2
[ 0
]
[ 0
]
[ 0
]
61.7
5.0
33.3
41.7
0
60.0
4
[ 0
]
[ 0
]
[ 0
]
76.7
1.7
33.3
51.7
0
71.7
6
[ 0
]
[ 0
]
[ 0
]
81.7
3.3
31.7
55.0
0
78.3
24(時間)
[ 0
]
[ 0
]
[ 0
]
95.0
0
51.7
41.7
0
58.3
[ 0
]
[ 0
]
[ 0
]
C その他の薬剤(処理薬量は 400mg/㎡に固定)
供試薬剤
配置後時間経過に伴う潜伏率[ノックダウン率](%)
シェル
1
ター
エンペントリン
T
0
400mg/㎡
C
40.0
イミプロトリン
T
0
400mg/㎡
C
60.0
フェニトロチオン
T
62.5
400mg/㎡
C
17.5
ダイアジノン
T
20.0
400mg/㎡
C
45.0
メトキサジアゾン
T
42.5
400mg/㎡
C
42.5
2
[ 2.5]
[ 5.0]
[ 0
]
[ 0
]
[ 2.5]
7.5
47.5
0
62.5
35.0
42.5
20.0
42.5
40.0
27.5
4
[ 2.5]
[ 2.5]
[ 0
]
[ 5.0]
[ 0
]
42
0
62.5
0
92.5
45.0
42.5
15.0
40.0
15.0
47.5
6
[10.0]
[ 0
]
[ 0
]
[22.5]
[ 2.5]
0
67.5
0
95.0
35.0
52.5
5.0
40.0
10.0
45.0
24(時間)
[15.0]
[ 0
]
[ 2.5]
[50.0]
[20.0]
0
45.0
0
100
2.5
7.5
2.5
0
5.0
22.5
[17.5]
[ 0
]
[77.5]
[90.0]
[65.0]
数値は反復4回の平均値
ダウン率が見られたものの、イミプロトリンでは0%であった。フェニトロチオンとダ
イアジノンでは 24 時間後ノックダウン率はそれぞれ、77.5%と 90.0%で、処理シェル
ターへの潜伏率は低かったものの、潜伏阻止効果は不明確であった。またメトキサジア
ゾンに関しても、配置1時間後から 40%以上の潜伏率が認められ、潜伏阻止効果は明
確ではなく、24 時間後ノックダウン率も 65.0%に達し、有機リン剤と類似した結果と
なった(表 2-C)
。
処理シェルターの単独配置試験と併置試験では、試験容器等の条件が異なり、単純な
比較はできないが、どちらの薬剤も、他に潜伏場所がある場合には、一定の処理薬量以
上で、高い潜伏阻止効果が得られるものと考えられる。しかしながら、今回のペルメト
リン 400mg/㎡のように、単独配置試験と併置試験ではノックダウン率に大きな差があ
り、供試虫にとって潜伏する必然性がない場合、潜伏阻止効果はノックダウン効果、ひ
いては致死効果を低下させる要因ともなりうるであろう。
②薬剤処理面上の通過阻止効果の評価
ペルメトリン 160、800mg/㎡およびディート 800、4000mg/㎡処理時の、処理板と対照
板面上の、夜間通過数の推移を図3および図4に示す。なお、ペルメトリン 4000mg/㎡
では、配置後 30 分間ですべての供試虫がノックダウンしたため、通過数のデータは得
られなかった。
ペルメトリンでは処理薬量依存的に通過数の減少がみられたが、いずれの処理量でも
対照区と処理区の平均通過数に有意差(U検定、p<0.05)は認められなかった。また、
160mg/㎡処理では2日後ノックダウン率が10%であったのに対し、800mg/㎡処理では
90%に達し、潜伏阻止試験と同様に、ノックダウン効果により、2日目の通過数は大き
く減少したものと思われた。興味深いことは、単なる板で通過する必然性がないように
思われる処理面に接触し、多くの個体がノックダウンしたことは、シェルター併置試験
のペルメトリン400mg/㎡ではほとんどノックダウンしなかったことと相違する現象の
ように思われる。試験材料や薬量を統一して比較することが今後の課題である。
一方、ディートでは、800mg/㎡処理では、処理板と対照板上の通過数に有意差は認め
られなかったが、4000mg/㎡処理では 24 時間以上にわたり,処理面上の通過をほぼ完全
に阻止した。さらに、ディート 800mg/㎡処理板上の、処理面通過数を見ると(図5)、
配置直後の昼 12 時から、約 12 時間後までは比較的高い通過阻止効果が認められたが、
その後、処理板上の通過数が多くなる傾向があった。通過阻止指数は、配置直後では安
定して高かったが、その後、変動幅が大きくなり、効果が低減していることが認められ
た。
薬剤の「忌避効力」の前提として、供試虫がノックダウンせずに処理空面を避けるも
のとすれば、通過阻止試験のディート4000mg/㎡処理で見られたような、処理空間に侵
入さえさせないことが、もっとも高い忌避効力と言えるであろう。次の段階として処理
43
空間にいったんは侵入するものの、定着させない(潜伏させない)程度のレベルが考え
平均通過数 (回/時間)
50
40
ペルメトリン
160mg/㎡
1日目
(平均KD 0%)
■ 処理板
■ 対照板
2日目
(平均KD 10%)
30
20
10
0
20 21 22 23
0
1
2
3
4
5
20 21 22 23
0
1
2
3
4
5
4
5
A ペルメトリン160mg/㎡
平均通過数 (回/時間)
50
ペルメトリン
800mg/ ㎡
40
1日目
(平均KD 33%)
■ 処理板
■ 対照板
2日目
(平均KD 90%)
30
20
10
0
20 21 22 23
0
1
2
3
4
5
20 21 22 23
0
1
2
3
B ペルメトリン800mg/㎡
図3
平均通過数 (回/時間)
120
100
ペルメトリン処理板上のチャバネゴキブリ通過数の推移
ディート
800mg/㎡
2日目
■ 処理板
■ 対照板
1日目
80
60
40
20
0
20 21 22 23 0
1
2
3
4
5
20 21 22 23
0
1
2
3
4
5
4
5
A ディート800mg/㎡
平均通過数 (回/時間)
60
50
40
ディート
4000mg/㎡
2日目
■ 処理板
■ 対照板
1日目
30
20
10
0
20 21 22 23
0
1
2
3
4
5
20 21 22 23
0
1
2
3
B ディート4000mg/㎡
図4
ディート処理板上のチャバネゴキブリ通過数の推移
44
平均通過数(回/時間)
20
ディート 800mg/㎡
対照板
15
10
5
0
100 12 141618 2022 0 2 4 6 8 101214 161820 22 0 2 4 6 8
通過阻止指数
80
60
40
20
0
12 1416 182022 0 2 4 6 8 1012 1416 1820 22 0 2 4 6 8
図5
ディート処理板上の通過数と通過阻止指数の継続的推移
られる。今回の試験結果では、併置試験のペルメトリン 400mg/㎡処理やディート 800mg/
㎡処理は、これに該当するものと考えられる。さらに、「定着させない忌避効力」とし
ては、他に適当な潜伏場所がある場合には処理面を避けるという「相対的な忌避効力」
と、他に潜伏場所がない場合でも処理空間を避けるという「絶対的な忌避効力」に分類
することができる。今回の単独配置試験ではディート 4000mg/㎡が絶対的な忌避効力も
発揮しており、通過阻止効果がある薬剤・薬量は絶対忌避効果も有するものと考えられ
る。またペルメトリンの場合、今回の試験結果では相対的な忌避効力は得られたものの、
それよりも薬量を増加させた場合にはノックダウン率が高まり、先の前提条件から外れ
てしまう。供試虫のノックダウンや死亡による「結果的な潜伏阻止効果」は、今回の併
置試験のフェニトロチオン、ダイアジノン、メトキサジアゾンに見られたような現象で、
忌避効力と呼ぶことは適切ではないであろう。
参考文献
林晃史、廿日出正美.1966.ゴキブリの忌避剤の試験法について.衛生動物,17:68-70.
伊藤靖忠、緒方一喜、田中生男.1975.殺虫剤処理面に対するゴキブリの忌避性につい
ての検討.日本環境衛生センター所報,2:98-103.
辻英明・志澤寿保.2000.殺虫剤処理面上の餌(ベイト)へのチャバネゴキブリの接近
45
と死亡.ペストロジー.15:16-21.
Tabaru, Y., K. Mochzuki, Y. Watabe and T. Takahashi. 2001. Repellency of insecticides against
German cockroach, Blattella germanica, observed by feces distribution in insecticide-treated
harborages. Med. Entomol. Zool. 52:81-86.
田中生男.2006.厚生労働科学研究費補助金.健康科学総合研究事業.建築物における
ねずみ・害虫等の対策に関する研究.
平成 15 年度~平成 17 年度総合研究報告書.
90pp.
橋本知幸、伊藤靖忠.2007.レーザー光センサーを用いたチャバネゴキブリの徘徊行動
の日周性と薬剤忌避行動の観察.ペストロジー,22:53-59.
46
ゴキブリを寄せつけない鋼板
アース製薬㈱
新田
業務用商品部
勇
防虫成分に「ピレスロイド」を用いた「ゴキブリを寄せつけない鋼板」は、2007
年9月20日に「環境にやさしい防虫鋼板(商品名:サニータ)を開発」として、JF
E鋼板㈱より、プレス発表いたしました。
ピレスロイドと忌避については、有効成分を入れた蚊取り線香と有効成分の無い蚊取
り線香を用いた実験で「忌避性あり」と「家庭用殺虫剤とピレスロイド」
(日本家庭用殺
虫剤工業会)に記載されております。
同様の方法で「ピレスロイドを忌避している」現象を確認いたしました。
また、ゴキブリでのトピカル施用後、麻酔から覚めた供試虫の動きを確認すると、ピ
レスロイド系では激しい動きが観察され、またガラス製の容器の出入り口にピレスロイ
ドを処理して、容器内にチャバネゴキブリを放して行動を見ると、明らかにピレスロイ
ドを避けていると思われる行動が確認されました。
他社より、引越時に食器棚を移動すると、食器棚の下の台輪の中にゴキブリの死骸や
糞が見られる場合が多くあるので、ゴキブリが台輪の中に入り込まないようにできない
か、との相談が有り、台輪内面にピレスロイドを処理して効果を確認いたしました。
ゴキブリを放した試験場所に、台輪と食器棚を入れると、ゴキブリは暗くなる台輪の
中に入って行くのですが、暫くすると飛び出し、やがて死亡しました。
ピレスロイドの処理量を抑えると、死亡ゴキブリ数は減少し、ピレスロイド処理した
台輪内に居住定着しないようになりました。
ゴキブリ等の害虫の侵入により被害を受けるのは、食器棚だけではなく、適度な温か
さがあり、暗く、狭い場所のある物が多く存在しておりました。
家庭用・業務用の電気製品の故障原因を調べる為機器内部を確認してみますと、主因
かどうかはわからないのですが、ゴキブリの死骸が多く確認されておりました。
47
そのような状況の中、今回の「ゴキブリが寄りつかなくなる」防虫鋼板「サニータ」
の検討が開始されました。
めっき
鋼板にめっきを施し、そのめっきの上を防錆用の皮膜で覆う。
この防錆塗膜溶液中に
防虫剤を添加し、防錆・防虫塗膜として塗工して防虫鋼板「サニータ」となります。
防虫鋼板の効力
透明プラスチックケースを防虫鋼板サニ
ータ・無処理鋼板の上に置き、供試虫を放
して2日後、各鋼板の上に居る供試虫を
カウントする。
試験用透明ケース
効力は、以下の式を用い「定着阻止率」を算出した。
定着阻止率(%)
(無処理鋼板定着数 − 防虫鋼板定着数)
×100
(無処理鋼板定着数 + 防虫鋼板定着数)
効力の持続性については、加速試験により求めた。
5年
→
50℃
75%RH
10年
→
50℃
75%RH
4ヶ月
8 ヶ月
95%以上の定着阻止効果を確認。
48
これについては、25℃、3年の経変
→
40℃
6ヶ月に相当
という関係に、
「高分子物質は、温度が 7℃上昇するたびに、同じ時間で約 2 倍の時間が経過した状態
になるという、アレニウスの原理」
(インテリアファブリックス性能評価協議会ホームペ
ージより)を適用して算出。
防虫鋼板「サニータ」は、害虫を「全く寄せつけない」のではなく「最低1度は接触
し、その後定着せずに逃げて行く」鋼板であります。
サニータのカタログの図が、その様子をわかりやすく表現しています。
種々の機器で、害虫の侵入で困っているというメーカーから問合せが有り、弊社にて
防虫効果の確認試験を行ってきました。
実際の試験状況を見ればより解りやすいと思われますが、上市前の機器等の関係から、
「内部部品等の写っている写真の公表はして欲しくない」とのメーカー側からの要望が
あり、写真の公表はできない状況です。
種々の場所に侵入する害虫が好む、
「温かく・狭い・暗い場所」は、台所・厨房使用の
機器や、常時通電している電子機器等、家庭内においても、業務場所においても多数存
在しております。
そのような機器の内部に、害虫が侵入居住することにより、以下の様な問題が生じて
おります。
①:内部の種々の配線端子間での短絡による機器のトラブル。
②:食品関係の機器での、害虫特有の臭いの問題。
③:種々の不衛生な場所を歩き回る害虫が、食品関係機器内部を移動することによる、
衛生上の問題。
この様な問題の解決の為に、機器内部に「防虫鋼板」を使用することにより、今までの
「機器内部に侵入居住する虫による害」を激減させる事ができると考えられる。
49
2004年度新上市品リスト(2004年4月〜2005年3月)
販売承認企業名
商品名
アース製薬(株)
販売名
剤型
有効成分名
承認年・月 上市年・月
電池でノーマット135日用つめかえ
ファン製剤
トランスフルトリン
2001年8月 2005年3月
アース製薬(株)
アースジェツトウオータータイプ
エアゾール
d-T80-フタルスリン,d-T80-レスメトリ
ン
2004年5月 2005年3月
アース製薬(株)
ブラックキャップ
毒餌剤(ゴキブリ用) フィプロニル
2004年8月 2005年3月
アース製薬(株)
アースゴキブリホウ酸ダンゴ,コンク
ゴキンジャムゴキブリ誘引ソース付
毒餌剤(ゴキブリ用) ホウ酸
2004年6月 2005年3月
アース製薬(株)
アースレッドノンスモーク霧タイプ
アース製薬(株)
アースレッドノンスモーク霧タイプダ
ニ・ノミ
全量噴射エアゾー
ル
全量噴射エアゾー
ル
キング化学(株)
ワイパアゴキブリ殺虫ゾル
エアゾール
メトキサジアゾン,d・d-T-シフェノトリン 2004年6月 2005年3月
フェノトリン,メトキサジアゾン
2002年6月 2005年3月
イミプロトリン
2005年1月 2005年2月
大日本除虫菊(株)
虫よけキンチョールローション
液剤
SRB
ディート
2004年5月 2005年4月
大日本除虫菊(株)
カトリス240A
ファン式蚊取り
トランスフルトリン
2004年6月 2005年4月
大日本除虫菊(株)
ダニキンチョールB
エアゾール
アミドフルメト
2004年10月 2005年4月
大日本除虫菊(株)
水性コックローチS2F
エアゾール
イミプロトリン,フェノトリン
2005年1月 2005年4月
フマキラー(株)
蚊とりジェット
蚊とりジェット2
エアゾール
トランスフルトリン
2003年3月 2004年3月
フマキラー(株)
どこでもべ一プ蚊取り30日
フマキラー殺虫T2A
蒸散剤
メトフルトリン
2004年11月 2005年3月
フマキラー(株)
どこでもべ一プ蚊取り60日
フマキラー殺虫T3A
蒸散剤
メトフルトリン
2004年11月 2005年3月
フマキラー(株)
スキンベープさらさらソフト
ササレンCD1
エアゾール
ディート
2005年1月 2005年3月
フマキラー(株)
スキンベープクール
ササレンCD1
エアゾール
デイート
2005年1月 2005年3月
フマキラー(株)
スキンベープミスト
ササレンH2F
液剤
デイート
2003年1月 2005年3月
50
2005年度新上市品リスト(2005年4月〜2006年3月)
販売承認企業名
商品名
アース製薬(株)
販売名
剤型
有効成分名
承認年・月 上市年・月
蚊に効くおそとでノーマット
ファン製剤
トランスフルトリン
2004年8月 2006年3月
アース製薬(株)
デスモアプロ
毒餌剤(ねずみ用)
ジフェチアロール
2005年1月 2006年3月
アース製薬(株)
アースレッドプロ
くん煙剤
メトキシジアゾン,d・d-T-シフェノトリン,
2005年7月 2006年3月
プロポクスル
大日本除虫菊(株)
カトりスM120B
ファン式蚊取り
メトフルトリン
2006年1月 2006年3月
大日本除虫菊(株)
カトリスM240
ファン式蚊取り
メトフルトリン
2005年2月 2006年3月
大日本除虫菊(株)
カトリスM720
ファン式蚊取り
メトフルトリン
2005年2月 2006年3月
大日本除虫菊(株)
カトリスM480
ファン式蚊取り
メトフルトリン
2005年10月 2006年3月
大日本除虫菊(株)
水性キンチョールSRE
エアゾール
d-T80-フタルスリン,d-T80-レスメトリ
ン
2005年6月 2006年3月
大日本除虫菊(株)
虫よけキンチョールローション
エアゾール
SRC
ディート
2004年5月 2006年3月
フマキラー(株)
どこでもベープ蚊取り30日
フマキラー殺虫C2
ファン製剤
メトフルトリン
2006年1月 2006年3月
フマキラー(株)
どこでもべ一プ蚊取り60日
フマキラー殺虫C3
ファン製剤
メトフルトリン
2006年1月 2006年3月
フマキラー(株)
フマキラーAダブルジェット
フマキラーAt
エアゾール
d-T80-フタルスリン,d-T80-レスメトリ
ン
2004年11月 2006年3月
ライオン(株)
バルサンダニ駆除フォーム
エアゾール
フェノトリン
2006年1月 2006年3月
51
2006年度新上市品リスト(2006年4月〜2007年3月)
販売承認企業名
商品名
アース製薬(株)
医薬品 ゴキジェットプロ 秒殺+まち
ゴキジェットD1
ぶせ
エアゾール剤
アース製薬(株)
医薬品 ダニアースレッド
ダニアースレッドM1
加熱蒸散剤
アース製薬(株)
ダニアース(ハープの香り)
ダニアースM1
エアゾール剤
アース製薬(株)
アース渦巻香(炭練り)
アース渦巻Nb
線香
dl・d-T80-アレスリン
2006年10月 2007年2月
エアゾール剤
d-T80-フタルスリン,d-T80-レスメトリ
ン
2003年4月 2007年2月
ファン製剤
メトフルトリン
2005年2月 2007年2月
ファン製剤
トランスフルトリン
2005年1月 2007年2月
アース製薬(株)
アース製薬(株)
販売名
庭仕事の前にシャッと一吹き(水性
アースジェットY1
ヤブ蚊ジェット:屋外用)
蚊に効く! おそとでノーマット200時
アース殺虫ファンNS2
間
アース殺虫ファン2
剤型
有効成分名
イミプロトリン 0.5g,メトキサジアゾン
0.41g/450mL
フェノトリン 10.9%,メトキサジアゾン
1.7%,アミドフルメト 4.2%
フェノトリン,メトキサジアゾン,アミドフ
ルメト
承認年・月 上市年・月
2004年12月 2007年2月
2006年7月 2007年2月
2005年11月 2007年2月
アース製薬(株)
電池でノーマット60日用
アース製薬(株)
サラテクトマイルドタッチ(虫よけぬ
サラテクトマイルド1
るタイプ)
液剤
ディート
2006年9月 2007年2月
アース製薬(株)
サラテクトUV
サラテクトm
エアゾール剤
ディート
1998年6月 2007年2月
(株)大阪製薬
ワイパアワンGコーナー
ワイパアワンB
ベイト
フィプロニル
2003年5月 2007年2月
小池化学(株)
スキンブロックマイルド
KI虫よけTA2
エアゾール
ディート
2007年1月 2007年2月
フマキラー(株)
どこでもベープ No.1 NEO
フマキラー殺虫N1
ファン製剤
メトフルトリン
2007年1月 2007年3月
ライオン(株)
バルサン虫よけ 無香性
L虫よけスプレーaa
エアゾール
ディート 10w/v%
2006年8月 2007年3月
ライオン(株)
バルサン虫よけ 緑茶の香り
L虫よけスプレーab
エアゾール
ディート 10w/v%
2006年8月 2007年3月
52