トルコ語の疑問文 - 日本語疑問文の通時的・対照言語学的研究 / A

トルコ語の疑問文
―日本語との対照的研究にむけて―
吉村 大樹*
0. は じ め に
本報告では、トルコ語の疑問文に関する形態・統語的ふるまいのうち、筆者
の知る限り日本語との対照研究という点において問題となると思われる現象を
指摘することにしたい。
現代トルコ語(以下、トルコ語)は語基に様々な種類の接辞が付加される、
いわゆる膠着語的な性格を強く有することで知られている。また、統語論的に
は強い傾向で主要部が補語・付加語に後続するという特徴を有している。この
点で、トルコ語と日本語は形態論・統語論的にきわめて類似した構造をしてい
る と 言 え る 。そ の 一 方 で 、疑 問 文 の 構 造 、と り わ け yes-no 疑 問 文 の 構 造 に お い
て 、(1)に 提 示 し た よ う に ト ル コ 語 に は 様 々 に 日 本 語 と は 異 な る 現 象 が 観 察 さ れ
る。
(1)
a. ト ル コ 語 に は 疑 問 接 語 が 文 中 に 生 起 す る こ と が あ り 、日 本 語 の「 か 」
と比較してかなりの程度に自由である
b. WH 疑 問 文 で は 、( エ コ ー 疑 問 文 を 除 い て ) WH 詞 と 疑 問 接 語 は 共 起
しない
以 下 、(1a)(1b)の 点 を 中 心 に 、音 韻 ・ 形 態 、統 語 、意 味 の 各 レ ヴ ェ ル か ら ト ル コ
語における疑問文のふるまいについての特徴をまとめ、日本語疑問文との対照
研究における問題点を整理することとしたい。
*
AA 研 共 同 研 究 員 / 龍 谷 大 学 他 非 常 勤 講 師 。 E-mail: [email protected]
本報告の執筆に際して、先行研究による引用を除いた例文については、トルコ語の例文コ
ン サ ル タ ン ト ( 男 性 、 52 歳 ) の 判 断 を 得 た 。 同 氏 に 心 よ り の 謝 意 を 表 し た い 。 な お 、 本 報
告の内容に関しては、報告者が全ての責任を負うことは言うまでもない。
1. 現 代 ト ル コ 語 の 概 略
本報告で言及するトルコ語は、チュルク諸語の分類上の観点では南西語群に
属する言語である。同じく南西語群に属する言語にはアゼルバイジャン語、ト
ル ク メ ン 語 な ど が あ る 。話 者 数 は 、ト ル コ 共 和 国 を 中 心 に 6500 万 人 以 上 と 推 定
されている。本節では、トルコ語の文法に関する大まかな特徴を紹介すること
としたい。
まず音韻論上の特徴として、母音調和効果が挙げられる。トルコ語では、接
辞や接語が直前の形式に膠着する時、その直前の音節の母音が有する音韻的特
徴、すなわち前舌性の有無、円唇性の有無、また高母音性の有無という 3 つの
媒 介 変 数 に 応 じ て 、 自 ら の 形 式 を 決 定 す る 。 た と え ば 、 (2)は そ の 一 例 で あ る 。
(2)
a. gün-ler / kitap-lar
日 -複
( /e//a/の 対 立 )
本 -複
「 日 々 」「( 複 数 冊 の ) 本 」
b. ben-im
私 -属 格
ad-ım /ev-im /göz-üm /kol-um
名 前 -1 単 家 - 1 単 目 -1 単
( /ɨ//i//y//u/の 対 立 )
腕 -1 単
「私の名前/家/目/腕」
(2a)で は 、 ler, lar と い う 2 種 の 形 式 が そ れ ぞ れ 複 数 で あ る こ と を 示 し て い る 。
こ の 2 種 の 形 式 の 母 音 部 分 は 、/e//a/と そ れ ぞ れ 異 な っ て い る 。 こ の 違 い は 、 こ
の 接 辞 の 直 前 の 音 節 の 母 音 に よ る も の で あ る 。 gün-ler の 場 合 、直 前 の 音 節 (gün)
の 母 音 部 分 は ü( 音 韻 は /y/) で あ り 、 前 舌 性 を 有 す る 母 音 で あ る 。 こ の た め 、
複 数 接 辞 の 母 音 部 分 も そ れ に 調 和 し て e( 音 韻 は /e/) と な る 。 一 方 、 kitap と い
う名詞の最終母音は a で、前舌性は有していない。このため、複数形語尾の母
音 部 分 も 、 同 じ く 前 舌 性 を 有 し な い a (/a/)が 選 択 さ れ る 。 こ の よ う に 、 母 音 部
分 が /e/ま た は /a/の い ず れ か に な る 語 尾 と な ら ん で 、 (2b)で 示 す よ う に 、 母 音 部
分 が 直 前 の 形 態 素 の 母 音 の 特 質 に 応 じ て /ɨ//i//y//u/の よ う に 4 種 類 に 変 化 す る 語
尾 が ト ル コ 語 に は 存 在 す る 。1 本 報 告 で 中 心 に 述 べ る 疑 問 接 語 は 、後 者 に 属 す る
1
こ の 母 音 部 分 を 、ト ル コ 語 学 の 伝 統 的 な 音 韻 形 態 表 記 に 従 っ て 大 文 字 で A と 表 記 す る こ
と に す る 。 ま た 、 /ɨ//i//y//u/の 4 種 類 に 変 化 す る 語 尾 の 母 音 部 分 は 大 文 字 I で 表 記 す る 。 こ
れ に よ り 、 た と え ば 複 数 形 接 辞 の 場 合 は -lAr, 名 詞 句 の 主 要 部 名 詞 に 付 加 さ れ る 1 人 称 単
数 所 有 接 辞 は -Im と 表 記 さ れ る 。後 述 の 疑 問 接 語 に つ い て は 、mi, mı, mü, mu の 4 種 が あ る
こ と か ら 、 本 報 告 で は mI と 表 記 す る こ と に し た い 。
語尾の一種であると言える。
またトルコ語の形態論的特徴については、典型的な膠着型言語の特徴を有し
て い る と い う こ と が で き る 。(3)の 例 は や や 極 端 で は あ る が 、ト ル コ 語 の 接 辞 や
接語の形態的膠着の特徴をよく表している。この例で示されているように、接
辞の膠着は派生接辞、屈折接辞、接語の順に行われるのが一般的である。
(3)
Çeko-slavakya-lı-laş-tır-a-ma-dık-lar-ımız-dan mı-sınız?
チ ェ コ ス ロ ヴ ァ キ ア -J 派 生 - V 派 生 -使 役 - 不 可 能 -否 定 - 分 詞 -複 数 -1 単 -奪 格 Q -2 単
「( あ な た は )わ れ わ れ が チ ェ コ ス ロ ヴ ァ キ ア 人 化 で き な か っ た う ち の 一 人
ですか?」
なお、正書法上は多くの接辞と異なり、前の語とは分かち書きされる。本報告
で は こ の 疑 問 ( よ り 厳 密 に 言 え ば 、 yes/no 疑 問 ) を 表 示 す る 形 式 を 、 音 韻 ・ 形
態・統語的特徴から「疑問接語」と呼ぶことにしたい。
形態・統語的特徴の 1 つとして、主要部・依存語の二重標示言語であること
も 指 摘 し て お き た い 。(4)に 示 す よ う に 、た と え ば 属 格 名 詞 句 で は 修 飾 語 で あ る
属格名詞だけでなく、被修飾語である主要部名詞も形態的に所有接辞を標示す
る。
(4)
çocuğ-un
baba-sı
子 ど も -属 格
父 -3 単
「( そ の ) 子 ど も の 父 親 」
ト ル コ 語 の 統 語 論 的 特 徴 の 1 つ は 、 基 本 語 順 が OV 型 で あ り 、 依 存 語 ( つ ま
り、補語または付加語)が主要部に先行するという、強い主要部後置の傾向を
有 す る と い う こ と で あ る 。 以 下 (5)で は 、 2 つ の 語 ど う し の 語 順 関 係 に つ い て い
くつかの代表的なパターンを提示してある。
(5)
a. sevimli
çocuk (Adj. + N)
かわいらしい
子ども
「かわいらしい子ども」
b. çok
pahalı (Adv. + Adj.)
とても
高価な
「とても高価な」
c. Ben
Japonca-yla
uğraş-ıyor-um (N(subj.) + N (comp.) + V)
私(主格)
日 本 語 -具 格
関 わ る -進 行 - 1 単
「( 私 は ) 日 本 語 に 関 わ っ て い ま す ( 日 本 語 を や っ て い ま す )」
また従属節の動詞は、ペルシア語起源の接続詞を用いるようなパターンを除け
ば、分詞や動名詞の形式をとる(つまり、非定形化する)パターンが支配的で
あ る 。後 者 の パ タ ー ン に よ る 複 文 で は 、(6)に 示 す よ う に 従 属 節 が 主 節 の 述 語 に
先行する。
(6)
(Göksel and Kerslake 2005: 90-1)
a. [Sorun yarata-acağı]
問 題 生 み 出 す -未 来
belli.
明らかな
「( 彼 / 彼 女 が ) 問 題 を 起 こ す で あ ろ う こ と は 明 ら か だ 」
b. [Sorun
問題
yarat-an]
kuruluş-lar
uyar-ıl-dı.
生 み 出 す -分 詞 形
組 織 -複
警 告 す る -受 身 -過 去
「問題を起こした組織は警告を受けた」
c. [Sorun yarat-maktansa]
問題
生 み 出 す -副 動 詞 形
sonuç-lar-ı
kabullen-di.
結 果 -複 -対 格
受 け 入 れ る -過 去
「問題を起こすことを選ばず、
(彼/彼女は)
( そ の )結 果 を 受 け 入 れ た 」
以上がトルコ語の大まかな特徴であり、特に形態・統語的特徴について日本
語と多くの共通点があることを示した。以下では、トルコ語における疑問文の
実例を提示し、その形式的な諸特徴について論じることとしたい。
2. ト ル コ 語 の 疑 問 文
2.1 yes/no 疑 問 文
本 節 で は 、ま ず ト ル コ 語 の yes/no 疑 問 文 の 形 式 的 特 徴 を 指 摘 す る 。こ れ ま で
述 べ て き た よ う に 、ト ル コ 語 で は yes/no 疑 問 文 で あ る こ と を 表 示 す る た め に 疑
問 接 語 mI が 用 い ら れ る 。以 下 2.1.1 節 で 、こ の 疑 問 接 語 が 文 末( よ り 正 確 に 言
えば主節の述語動詞形式の内部)に生起するときの形態・統語的ふるまいにつ
い て 明 ら か に す る 。2.1.2 節 で は 、疑 問 接 語 が 文 中 に 生 起 す る 現 象 に つ い て 述 べ
る こ と に す る 。 本 節 2.1 節 の 構 成 か ら 明 ら か な よ う に 、 ト ル コ 語 の 疑 問 接 語 の
文法的ふるまいで最も重要な点は、話し手の疑問の焦点位置に応じて生起位置
が変化するということである。この点は、類似した機能を有する(と一見思わ
れる)日本語の「か」や「の」等との対照を考慮する場合、特に重要になる。
2.1.1 文 末 ( 主 節 の 動 詞 複 合 形 式 内 部 ) に 疑 問 接 語 が 生 起 す る 場 合
す で に 述 べ た 通 り 、ト ル コ 語 で は yes/no 疑 問 文 で あ る こ と を 表 す た め に 、疑
問 接 語 mI を 用 い る 。 (7)は yes/no 疑 問 文 の 一 例 で 、 話 し 手 が 聞 き 手 に 、 発 話 時
の翌日にイスタンブルに行くか行かないかを質問している。述語動詞部分は、
動詞語幹の後にテンス/アスペクト/モダリティ(のいずれかの、あるいはそ
れ ら 複 数 を 同 時 に 表 す )要 素 を 表 す 接 辞( 以 下 、TAM 接 辞 と 称 す る )が 後 続 す
る。疑問接語はその後に生起し、人称接語(接語代名詞)がさらに後続する。
(7)
Sen
yarın
İstanbul-a
gid-ecek mi-sin?
君
明日
イ ス タ ン ブ ル -与 格
行 く -未 来 Q - 2 単
「君は明日イスタンブルに行く予定ですか?」
なお、動詞の時制/アスペクト(/ムード)の種類により、人称語尾形式との
相 対 的 位 置 が 異 な る 。 た と え ば (8)の 例 で は 、 (7)の 例 と は 異 な り 、 TAM 接 辞 に
定過去接辞が用いられている。この形式が選択された場合、まず人称語尾が先
行し、疑問接語はそれに後続する。この順序は厳密であり、前後を逆にした場
合 は 非 文 法 的 に な る (*git-ti mi-n)。
(8)
a. Sen
君
geçen hafta
İstanbul-a
先週
イ ス タ ン ブ ル -与 格
git-ti-n mi? /*git-ti mi-n?
行 く -過 去 -2 単 Q /行 く - 過 去 -Q-2 単
「君は先週イスタンブルに行ったの?」
b. Sen
her sabah
kahvaltı yap-ıyor mu-sun? /*yap-ıyor-sun mu?
君
毎朝
朝食
す る -進 行 Q - 2 単 / す る -進 行 -2 単 Q
「君は毎朝朝食をとっていますか?」
(7)(8)に 代 表 さ れ る よ う に 、 ト ル コ 語 で は 、 動 詞 の TAM 接 辞 が 過 去 形 ・ 仮 定
形の場合は人称語尾が常に疑問接語に先行する。一方で未来形、現在進行形等
の TAM 接 辞 が 用 い ら れ る 場 合 は 、 疑 問 接 語 が 先 行 し 、 人 称 語 尾 は そ れ に 後 続
する。2 この疑問接語と人称語尾の相対的な順序の違いは、系列ごとの人称語
尾の形式の形式的特性が影響していると考えられる。すなわち以下表 1 で示し
た よ う に 、(7)で 提 示 し た 例 の よ う な z 系 列 の 人 称 語 尾 は 接 語 代 名 詞 (pronominal
clitic)、 そ の 他 の 系 列 の 人 称 語 尾 は 屈 折 接 辞 (inflectional suffix)で あ る (cf. Good
and Yu 2005)。こ の 区 別 が 正 し け れ ば 、接 語 化 は 屈 折 接 辞 の「 外 側 」で 生 じ る と
いう通言語的な傾向として説明できる。
k 系列
z 系列
希求法
命令法
1 人称単数
-m
-(y)Im
-(y)EyIm
--
2 人称単数
-n
-sIn
-(y)EsIn
(null), -sEnE (familiar)
系列/人称・
数
-(y)In,
-(y)InIz,
-sEnIzE
(formal)
3 人称単数
--
--
-sIn
-sIn
1 人称複数
-k
-(y)Iz
-(y)ElIm
--
2 人称複数
-nIz
-sInIz
-(y)EsInIz
-(y)InIz
3 人称複数
-lEr
-lEr
-sInlEr
-sInlEr
表 1: ト ル コ 語 に お け る 人 称 語 尾 の 系 列
こ れ に 加 え て 、 あ る 動 詞 語 幹 に 2 つ の TAM 接 辞 が 後 続 す る よ う な 、 複 合 動
詞 時 制 の 場 合 に つ い て も 指 摘 し て お き た い 。た と え ば 以 下 の (9a)(9b)で は 、動 詞
語幹に 2 つの定過去形接辞が後続することによって、過去完了の文法的意味が
表されている。このようにトルコ語では、2 つ(場合によってはそれ以上)の
TAM 形 式 が 同 時 に 用 い ら れ る こ と に よ っ て 、 単 独 の TAM 接 辞 だ け で は 表 す こ
2
た だ し 、い わ ゆ る エ コ ー 疑 問 文 の 場 合 は こ の 形 態・統 語 的 順 序 が 変 更 さ れ る 場 合 が あ る 。
こ れ に つ い て は 3.1 節 で 触 れ る こ と と す る 。
とができない文法的意味を表すことができる。この場合も接辞・接語の順序は
か な り の 程 度 に 厳 密 に 定 め ら れ て い る 。す な わ ち 、動 詞 語 幹 に ま ず 1 つ 目 の TAM
接 辞 が 後 続 し 、 さ ら に 疑 問 文 の 場 合 は 疑 問 接 語 、 助 動 詞 、 2 つ 目 の TAM 接 辞 、
そして最後に主語を示す人称語尾が後続する。
(9)
a. git-ti-y-di-m
行 く -過 去 -助 動 詞 -過 去 -1 単
「( そ の 時 ) 私 は も う 行 っ て し ま っ て い た 」
b. git-ti mi-y-di-n? / *git-ti-y-di-n mi?
行 く -過 去 Q - 助 動 詞 -過 去 - 2 単 / 行 く -過 去 -助 動 詞 -過 去 -2 単 Q
「( そ の 時 ) 君 は も う 行 っ て し ま っ て い た の ? 」
2.1.2 文 中 に 生 起 す る ト ル コ 語 の 疑 問 接 語
ト ル コ 語 の 疑 問 接 語 mI は 文 末 だ け で な く 、 文 中 に も 生 起 す る 。 こ の こ と に
よ り 、 話 し 手 は 質 問 し た い 部 分 ( こ れ を 本 報 告 で は 以 下 「 焦 点 」( フ ォ ー カ ス )
と呼ぶことにする)を限定することができる。つまり、話し手が特定の要素だ
けを聞き手に質問したいときに、疑問接語を焦点化したい部分の直後に生起さ
せる。
(10)
a. Ali
kitab-ı
Ayşe-ye
ver-di mi?
アリ
本 -対 格
ア イ シ ェ -与 格
与 え る -過 去 Q
「アリは(その)本をアイシェにあげたの?」
b. Ali
kitab-ı
Ayşe-ye mi
アリ
本 -対 格
ア イ シ ェ -与 格 -Q
ver-di?
与 え る -過 去 Q
「アリはその本をアイシェにあげたの?」
c. Ali
kitab-ı mı
Ayşe-ye
ver-di?
アリ
本 -対 格
ア イ シ ェ -与 格
与 え る -過 去 Q
「アリはその本をアイシェにあげたの?」
d. Ali mi
kitab-ı
Ayşe-ye
ver-di
アリ Q
本 -対 格
ア イ シ ェ -与 格
与 え る -過 去
「アリが(その)本をアイシェにあげたの?」
管見の限り、他のチュルク諸語では文中に疑問接語が生起するような現象は見
られない。たとえばトルコ語と同じくチュルク諸語の 1 つであるウズベク語で
は、話し手が特定の部分だけを疑問の焦点として限定したい場合であっても、
疑問接語は文末(述語部分)にのみ生起し、特定の構成素に韻律上の焦点(フ
ォ ー カ ス ) を 与 え る ( cf. 吉 村 (2012))。
(11)
a. Dilshod
kitob-ni
Anor-ga
ber-di-mi?
ディルショド
本 -対 格
ア ノ ル -与 格
与 え る -過 去 -Q
「ディルショドは本をアノルに渡しましたか?」
b. */??Dilshod
kitob-ni
Anor-ga-mi
ber-di?
ディルショド
本 -対 格
ア ノ ル -与 格 -Q
与 え る -過 去
( 意 図 :「 デ ィ ル シ ョ ド は 本 を ア ノ ル に 渡 し ま し た か ? 」)
c. */?? Dilshod kitob-ni-mi
ディルショド
本 -対 格 -Q
Anor-ga
ber-di?
ア ノ ル -与 格
与 え る -過 去
( 意 図 :「 デ ィ ル シ ョ ド は 本 を ア ノ ル に 渡 し ま し た か ? 」)
d. */?? Dilshod-mi
デ ィ ル シ ョ ド -Q
kitob-ni Anor-ga
ber-di?
本 -対 格
与 え る -過 去
ア ノ ル -与 格
( 意 図 :「 デ ィ ル シ ョ ド が 本 を ア ノ ル に 渡 し ま し た か ? 」)
( 吉 村 2012: 94)
な お 、 yes-no 疑 問 の ( 疑 似 ) 分 裂 文 に よ る 表 現 は 、 埋 め 込 み 節 と 主 節 述 語 名 詞
の 間 に ポ ー ズ を 置 く こ と で 一 応 可 能 で あ る 。 3 mI の 文 中 生 起 と ど ち ら が よ り 多
用 さ れ て い る か 、 統 計 上 明 確 な 資 料 が あ る わ け で は な い が 、 (10)の よ う な 例 と
(12)の よ う な 語 順 を と る 場 合 と の 関 連 性 は 今 後 詳 細 な 分 析 が 必 要 で あ る と 思 わ
れる。4
3
(10)の 例 文 を 判 断 し て く だ さ っ た ト ル コ 語 イ ン フ ォ ー マ ン ト A 氏 ( 匿 名 : 男 性 ) に 謝 意
を表する。
4
ト ル コ 語 に は it や there な ど の 虚 辞 が 存 在 し な い た め 、(10)に 挙 げ ら れ た も の も 含 め た あ
く ま で 疑 似 分 裂 文 で あ る と Kornfilt (1997: 192-3)で 指 摘 さ れ て い る 。
(12)
a. Ali-nin
kitab-ı ver-diğ-i,
Ayşe mi? / *Ayşe-ye mi?
ア リ -属 格
本 -対 格
ア イ シ ェ Q / ア イ シ ェ -与 格 Q
与 え る -分 詞 - 3 単
「アリが本をあげたのはアイシェですか?」
a’. Ali-nin
kitab-ı ver-diğ-i
kişi
Ayşe mi?
ア リ -属 格
本 -対 格 与 え る -分 詞 -3 単
人
アイシェ Q
「アリが本をあげた人はアイシェですか?」
b. Ali-nin
Ayşe-ye
ver-diğ-i,
ア リ -属 格
ア イ シ ェ -与 格 与 え る -分 詞 - 3s g
kitap mı?
本 Q
「アリがアイシェにあげたのは本ですか?」
b’. Ali-nin
Ayşe-ye
ver-diğ-i
ア リ -属 格
ア イ シ ェ -与 格 与 え る -分 詞 - 3 単
şey
kitap mı?
もの
本 Q
şey
kitab-ı mı?
もの
本 -対 格 Q
「アリがアイシェにあげたのは本ですか?」
b’’. *Ali-nin
Ayşe-ye
ver-diğ-i
ア リ -属 格
ア イ シ ェ -与 格 与 え る -分 詞 - 3 単
( 意 図 し た 読 み :「 ア リ が ア イ シ ェ に あ げ た の は 本 を で す か ? 」)
c. Kitab-ı
Ayşe-ye
ver-en ? ? (,)
Ali mi?
本 -対 格
ア イ シ ェ -与 格
与 え る -分 詞
アリ Q
「( そ の ) 本 を ア イ シ ェ に あ げ た の は ア リ で す か ? 」
さらに指摘しておきたいのは、トルコ語の疑問接語が複文の内部にも生起可
能 と い う こ と で あ る 。 以 下 に 示 し た (13)の 例 か ら そ の こ と は 明 ら か で あ る 。 と
り わ け (13b)に お い て 、疑 問 接 語 が 従 属 節 の 中 に 生 起 し つ つ 、構 文 が 文 法 的 で あ
る こ と が わ か る 。こ こ で 明 ら か に な る 問 題 点 は 、mI が 文 中 に 生 起 す る 場 合 に お
け る 疑 問 の ス コ ー プ の 広 さ と 、話 し 手 に よ る 疑 問 の 焦 点 位 置 で あ る 。す な わ ち 、
(13b)や こ れ ま で 見 て き た (10b)(10c)(10d)の よ う な 例 で は 、 疑 問 の ス コ ー プ 自 体
は文全体にかかっているが、話し手の疑問の焦点は限定的である。どのような
文法理論的枠組みを使用するにせよ、スコープと焦点の関係、およびそれぞれ
の概念について説明する必要が出てくる。
(13)
a. Aynur
アイヌル
[Zehra-yla
buluş-tuk-tan
sonra]
ゼ フ ラ -共 格
会 う -分 詞 - 奪 格
後
okul-dan
al-dı?
学 校 -奪 格
得 る -過 去
mı
çocuk-lar-ı
Q
子 ど も - 複 数 -対 格
「アイヌルはゼフラと会ってから子供たちを学校で拾ったのですか?」
b. Aynur
[Zehra-yla
mı
buluş-tuk-tan
sonra]
アイヌル
ゼ フ ラ -共 格
Q
会 う -分 詞 -奪 格
後
çocuk-lar-ı
okul-dan
al-dı?
子 ど も -複 数 - 対 格
学 校 -奪 格
得 る -過 去
「アイヌルはゼフラと会ってから子供たちを学校で拾ったのですか?」
(Göksel and Kerslake 2005:293)
以上の問題に関連して、疑問のスコープが文全体ではなく、従属節内部のみ
に 限 定 さ れ る 可 能 性 も 当 然 あ り う る 。 以 下 (14)の よ う に 、 疑 問 接 語 自 体 は (13)
と 同 じ く 文 中 に 生 起 し て い る が 、 (13)の 場 合 と は 異 な り 、 疑 問 の ス コ ー プ が 文
全 体 で は な く 従 属 節 内 部 に 限 定 さ れ る 場 合 が そ れ に 該 当 す る (cf. Hayasi 1984)。
(14)
a. [Fatma-nın
İstanbul-a
gid-ip
git-me-diğ-i]-ni
フ ァ ト マ -属 格
イ ス タ ン ブ ル - 与 格 行 く -副 動 詞 形
行 く -否 定 -分 詞 -3 単 -対 格
bil-mi-yor-um.
知 る -否 定 -進 行 -1 単
「ファトマがイスタンブルに行ったかどうか、私は知らない」
b. [Fatma
İstanbul-a
git-ti
mi]
ファトマ
イ ス タ ン ブ ル -与 格
行 く -過 去 Q
bil-mi-yor-um.
知 る -否 定 -進 行 -1 単
「ファトマがイスタンブルに行ったか、私は知らない」
c. [Fatma
İstanbul-a
ファトマ
イ ス タ ン ブ ル - 与 格 行 く -過 去 Q
bil-mi-yor-um.
知 る -否 定 -進 行 -1 単
git-ti mi
git-me-di
mi]
行 く -否 定 -過 去
Q
「ファトマがイスタンブルに行ったか行かなかったか、私は知らない」
疑問接語の生起位置については、さらに様々なトピックが存在する可能性が
あるが、本報告では現時点で報告者が言及できる範囲の現象のみを提示してい
る 。そ れ で も こ こ ま で 明 ら か に な っ た こ と と し て 、(13)と (14)の 例 な ど か ら 、ト
ルコ語の疑問のスコープおよび焦点をどのように説明するかという問題がある
ことは間違いない。また、従属節内部に疑問接語が生起しつつ、スコープが文
全体にわたる場合と従属節のみにとどまる場合とが存在することが明らかにな
った。はたして統語構造が互いに異なっていると言えるかどうかは今後検証さ
れなければならないであろう。もし、統語構造が異なるとすれば、それをどの
ように記述・説明するのがよいかについても今後検討する必要がある。
2.2 WH 疑 問 文
本 節 で は 、 ト ル コ 語 の WH 疑 問 文 ( 疑 問 詞 疑 問 文 ) に つ い て 概 観 す る 。 ト ル
コ 語 の WH 疑 問 文 で は 、 疑 問 詞 を 用 い る こ と で WH 疑 問 文 で あ る こ と を 表 す 。
主 要 な 疑 問 詞 と し て 、 ひ と ま ず 以 下 の も の を (15)に 挙 げ て お く こ と に す る 。
(15)
a. ne「 何 」
b. kim「 誰 」
c. ne zaman「 い つ 」
d. nerede「 ど こ で 」
e. nasıl「 ど の よ う に 」
f. hangi「 ど の 」
g. kaç「 い く つ 」
ト ル コ 語 は い わ ゆ る 、疑 問 詞 が 元 位 置 に と ど ま る (WH-in-situ)言 語 で あ る 。す
な わ ち 、 (16)の 各 例 か ら 明 ら か な よ う に 、 疑 問 詞 が 文 頭 に 生 起 す る な ど の 統 語
的操作は義務的ではない。
(16)
a. Sen
ne
iç-er-sin (*mi)?
2 単
何
飲 む -中 立 -2 単 (Q)
「君は何を飲みますか?」
b. Kim İstanbul-a
誰
gid-ecek?
イ ス タ ン ブ ル - 与 格 行 く -未 来
「誰がイスタンブルに行く予定ですか?」
c. Serkan
セルカン
ne zaman
geri
dön-dü?
何 時
戻って
帰 る -過 去
「セルカンはいつ戻ってきたの?」
d. Pardon,
失礼
Osaka
Üniversite-si
大阪
大 学 -3 単 ど こ -位 格
nere-de?
「すみません、大阪大学はどこですか?」
e. Semra-nın
セ ム ラ -属 格
ev-i-ne
nasıl
gid-il-iyor?
家 -3 単 -与 格
どのように
行 く -受 身 -進 行
「セムラの家にはどうやって行きますか?」
(Göksel and Kerslake 2005: 303)
f. Sınıf-ta
教 室 -位 格
kaç
kişi
var?
いくつ
人
いる
「教室には何人いますか?」
また、日本語の疑問詞疑問文と対照する際の重要な違いとして、通常の疑問詞
疑問文では、トルコ語では疑問詞と疑問接語は共起しないという点を指摘して
お き た い 。共 起 す る 場 合 、疑 問 接 語 は WH 詞 の 直 後( ま た は WH 詞 が 述 語 の 直
接的な構成素でない場合は、その構成素の主要部の直後)に生起し、文の読み
は い わ ゆ る 聞 き 返 し の 疑 問 文 ( エ コ ー 疑 問 文 ) と し て し か 解 釈 さ れ な い (cf.
Kornfilt 1997)
(17)
Kim
誰
Türk?
トルコ人
/
!Kim
Türk mü? /
!Kim mi Türk?
誰
トルコ人 Q
誰 Q
「誰がトルコ人なの?」/
トルコ人
「誰がトルコ人かって(言ったのか)?」
し た が っ て 、 上 で 提 示 し た (17)の よ う に 聞 き 返 し の 意 図 を 話 し 手 が 持 た な い 限
り、トルコ語では疑問詞だけを文中に生起させることになる。
ま た 、( 疑 似 ) 分 裂 文 に よ る WH 疑 問 文 は ト ル コ 語 で も 一 応 存 在 す る 。 た だ
し 、 以 下 (18)に 示 す よ う に yes/no 疑 問 文 の 場 合 と 同 様 、 義 務 的 な 統 語 的 操 作 で
はない。
(18)
a. Dün sinema-ya
昨日
映 画 館 -与 格
gid-en,
kim-di?
行 く -分 詞
誰 -過 去
「 昨 日 映 画 館 に 行 っ た の は 誰 で す か ? 」 (Kornfilt 1997: 29)
b. Kim dün
sinema-ya
git-ti?
誰
映 画 館 -与 格
行 く -過 去
昨日
「誰が昨日映画館に行ったのですか?」
c. Ahmed-in
dün
sinema-da
gör-dük-leri,
kim-(ler)-di?
ア フ メ ト -属 格
昨日
映 画 館 -位 格
見 る -分 詞 -3 複
誰 -( 複 数 ) - 過 去
「アフメトが昨日映画館で見たのは誰(と誰)でしたか?」
(Kornfilt 1997: 29)
d. Ahmet
dün
sinema-da
kim-(ler)-i
gör-dü?
アフメト
昨日
映 画 館 -位 格
誰 -( 複 数 ) - 対 格
見 る -過 去
「アフメトは昨日映画館で誰を見ましたか?」
複 文 に お け る WH 詞 の ス コ ー プ も 、 yes/no 疑 問 文 の 場 合 と 同 じ く 、 記 述 的 ・
理 論 的 な 問 題 と し て 存 在 し て い る と 思 わ れ る 。 な お 、 以 下 (19)の 和 訳 部 分 の 下
線は、報告者によるもので、話し手が質問したい部分を表示するために用いて
いる。以下の例文でも同様の意図を示すために下線部を用いる。
(19)
a. Ali
[ne-yi
Ayşe-nin
oku-duğ-u]-nu
アリ
何 -対 格
ア イ シ ェ -属 格
読 む -分 詞 -3 単 -対 格
bil-mi-yor-muş.
知 る -否 定 -進 行 -不 定 過 去
「 ア リ は 何 を ア イ シ ェ が 読 ん だ か 知 ら な い ら し い 」 (Uzun 2000: 311)
b. Ne-yi [Ali
アリ
何 -対 格
Ayşe’nin
oku-duğ-u]-nu
ア イ シ ェ -属 格
読 む -分 詞 -3 単 -対 格
bil-mi-yor-muş?
知 る -否 定 -進 行 -不 定 過 去
「 ア リ は ア イ シ ェ が 何 を 読 ん だ か 知 ら な い っ て ? 」 (Uzun 2000: 311)
(20)
[Fatma-nın
nere-ye
git-tiğ-i]-ni
bil-mi-yor-um.
フ ァ ト マ -属 格
ど こ -与 格
行 く -分 詞 -3 単 -対 格
知 る -否 定 -進 行 -1 単
「ファトマがどこへ行ったか、私は知らない」
(19a)(19b)の 対 照 か ら 明 ら か な よ う に 、疑 問 詞 が 従 属 節 の 内 部 に と ど ま る か 、そ
れとも従属節の外側に生起するかによって、疑問のスコープが変化するという
こ と が Uzun (2000) で 指 摘 さ れ て い る 。 こ の こ と は 、 前 節 で 見 た ト ル コ 語 の
yes/no 疑 問 文 の ス コ ー プ の 問 題 と 並 行 し て い る 可 能 性 が あ る 。す な わ ち 、yes/no
疑 問 文 で 義 務 的 に 生 起 す る 疑 問 接 語 mI が 従 属 節 の 内 部 に と ど ま っ て い れ ば 、
mI を 統 語 的 に 支 配 し て い る 場 所 が ど こ か( 従 属 節 内 な の か そ れ と も 主 節 な の か )
によって疑問のスコープが変わってくる、ということである。
3. 理 論 上 ・ 記 述 上 の 諸 問 題
前節をふまえて、本節ではトルコ語と日本語の疑問文の対照研究に向けた問
題 点 を も う 一 度 整 理 し て お き た い 。 ま ず 3.1 節 で 、 ト ル コ 語 特 有 の 様 々 な 疑 問
に 関 す る 問 題 点 を 提 示 す る 。 そ の 後 3.2 節 で 、 日 本 語 と の 対 照 研 究 を 視 野 に 入
れた場合に浮かび上がる問題点について指摘する。
3.1 ト ル コ 語 独 自 の 問 題
トルコ語固有の問題はいくつか考えられるが、疑問文に関する問題として以
下のようなものが考えられる。まず、音韻・形態レヴェルにおいて、疑問接語
が直前の語の最終音節の母音に対して母音調和することをどう説明するかとい
うことである。すでに指摘したように、トルコ語の接辞、特に派生接辞・屈折
接辞は、最終的にどのタイプの母音で具現化されるかを母音調和効果によって
決定される。トルコ語の疑問接語もこの母音調和の規則に従い、直前の語の最
終音節に従って母音調和することを前節で確認した。ここで注意するべきこと
は、多くの派生接辞・屈折接辞と異なり、疑問接語が形態・統語的な何らかの
制約に反しない限り文末や文中にある程度自由に生起可能であるということで
ある。そうであるとすれば、統語的に他の要素から独立しているように見える
疑問接語がなぜ音韻論上においてのみ多くの接辞と同様に直前の語からの制約
を 受 け る の か 、そ の こ と を 理 論 的 に 説 明 す る 必 要 が 生 じ る で あ ろ う 。5 こ れ に 関
連して、形態論上の問題として、トルコ語の疑問接語が直前の語の一部として
説明されるべきかそれとも独立した語形とみなされるべきかも説明する必要が
ある。さらに、述語部分が疑問接語を構成要素の一部に含む場合、形態素(接
辞)の配列を正確に予測する理論的枠組みも必要となる。
また統語論的観点からは、文中に生起する際に、どの程度まで生起位置が制
限 さ れ る か に つ い て も 考 察 が 必 要 で あ る 。以 下 (21a)に 示 さ れ る よ う に 、疑 問 接
語は属格名詞を伴う名詞句の内部に生起することが可能である。しかし
(21b)(21c)の よ う に 、非 属 格 名 詞 を 伴 う 名 詞 句 、限 定 形 容 詞 を 伴 う 名 詞 句 の 内 部
には生起することができない。
(21)
a. Ahmet
アフメト
Berna‟nın mı
günlüğ-ü-nü
bul-du?
ベ ル ナ -属 格 Q
日 記 -3 単 -対 格
見 つ け る -過 去 : 3 単
「アフメトはベルナの日記を見つけたの?」
b. *Ahmet
アフメト
çalışma mı
kitab-ı-nı
kaybet-ti?
練習 Q
本 -3 単 -対 格
失 う -過 去
( 意 図 し た 読 み :「 ア フ メ ト は 練 習 ( 用 の ) 本 を な く し た の ? 」
c. *Ahmet
アフメト
kalın mı
kitab-ı
oku-yor?
厚い Q
本 -対 格
読 む -進 行
( 意 図 し た 読 み :「 ア フ メ ト は ぶ 厚 い 本 を 読 ん で い る の ? 」)
(21)の 例 か ら 、疑 問 接 語 は 統 語 的 に 独 立 し た 形 式 で あ る と 考 え ら れ る (Yoshimura
2012)。し か し こ の こ と を ど の よ う に 説 明 す る か は 、依 拠 す る 理 論 的 枠 組 み に よ
っ て 様 々 な 可 能 性 が 考 え ら れ る 。 た と え ば Besler (2000)は 、 名 詞 句 や 後 置 詞 句
に隣接する(つまり、文中に生起する)疑問接語は、句構造上名詞句および後
5
なお、トルコ語で接語の下位種と広く認識されているものの中には、前接する要素と母
音 調 和 し な い も の も あ る( た と え ば 接 続 詞 的 接 語 ki は 、直 前 の 音 節 が ど の よ う な 母 音 を 有
し て い よ う と 母 音 部 分 /i/は 変 化 し な い ) た め 、 母 音 調 和 の 有 無 そ れ 自 体 は 統 語 的 な 独 立 性
の決定的な根拠とはみなすことができない。
置詞句の姉妹位置に基底生成されるが、述語動詞形式に隣接、または述語動詞
内部に生起する場合、動詞句の主要部の補語位置に基底生成されるという分析
を 提 案 し て い る 。ま た Yücel (2012)は 、疑 問 文 で あ る こ と を 明 示 す る た め に「 音
調 形 態 素 」(intonation morpheme)と い う 理 論 的 な 概 念 を 利 用 し 、こ の 要 素 が 補 文
標 識 句 (CP)内 に あ り 、文 中 に あ る 疑 問 接 語 の Q 素 性 を 制 御 し て い る と い う 枠 組
み を 提 示 し て い る 。た だ し 、Besler (2000)の 分 析 は 文 中 に 生 起 す る 場 合 の mI は
統 語 的 独 立 性 の 強 い 接 語 で あ る 一 方 、 文 末 に 生 起 す る 場 合 は mI は 屈 折 接 辞 と
して扱われることになり、生起位置の違いで形態・統語的なサイズが異なると
い う 二 重 標 準 的 な 分 析 に な っ て し ま う と い う 問 題 が 指 摘 さ れ て い る (cf. Yücel
2012, Yoshimura 2012)。 一 方 で Yücel (2012)の 分 析 も 、 そ れ 自 体 は (21b)(21c)の
ような非文法的な構文を排除するような理論的枠組みを提示していない。この
2 人 の 分 析 以 外 に は 、Yoshimura (2012)が 依 存 文 法 の 枠 組 み で 疑 問 接 語 の 生 起 位
置を予測しているが、どの理論的枠組みがより優れた分析を提示することがで
きるのかも、今後の検討課題であると思われる。
統 語 論 に 関 連 す る ト ピ ッ ク と し て は 、mI の 直 前 の 語 、お よ び 述 語 動 詞 と の 統
語関係(すなわちそれぞれの要素の主要部は何か、どこにあるか)に様々な分
析の可能性が残されていることが挙げられる。また、Q 要素が移動するという
仮 説 を ふ ま え (cf. Hagstrom 1999:1)、Aygen (2007)や 前 述 の Yücel (2012)で は 、ト
ル コ 語 で も 疑 問 接 語 が 節 の 内 部 (clause-internal position)か ら 周 縁 部
(clause-periphery)に 移 動 し て い る と 主 張 し て い る 。Aygen (2007)は こ の Hagstrom
(1999)の 考 え を 踏 ま え て 、 ト ル コ 語 で は Q 移 動 は LF レ ヴ ェ ル で 行 わ れ る 潜 在
的 移 動 (covert movement)で あ り 、 yes-no 疑 問 文 ま た は エ コ ー 疑 問 文 の 時 に の み
顕 在 化 す る と い う 考 え を 提 示 し て い る 。 前 述 の Yücel (2012)も 、 カ ー ト グ ラ フ
ィ ー を 利 用 す る 立 場 を 新 た に 導 入 し つ つ 、 Aygen (2007)の 考 え 方 に な ら っ て い
る。この路線に基づく分析の妥当性については本報告では論じないことにした
いが、前述の通り統語的位置が不適格な場合の非文法性をどのように説明する
かが重要な課題となると思われる。
最 後 に 統 語 論 上 の ト ピ ッ ク と し て 、mI の 生 起 位 置 と 、疑 問 の 焦 点 位 置 の ミ ス
マ ッ チ が 生 じ る 場 合 が あ る こ と を 指 摘 し た い 。以 下 (22a)の 例 で は 、疑 問 接 語 が
文末ではなく、述語の直前語に前接するとき、結果的には文中に生起している
ことになる。それににもかかわらず、疑問の焦点は疑問接語が前接している語
に 限 定 さ れ ず 、文 全 体 に か か る と い う 指 摘 が な さ れ て い る (Zimmer 1997, Göksel
and Kerslake 2005)。
(22)
a. Nermin
okul-a mı
git-miş?
ネルミン
学 校 -与 格 Q
行 く -不 定 過 去
「ネルミンは学校に行ったの?」
b. Nermin
okul-a
git-miş mi?
ネルミン
学 校 -与 格
行 く -不 定 過 去 Q
「ネルミンは学校に行ったの?」
(22a)(22b)い ず れ も 、疑 問 の 焦 点 は 文 全 体 に か か っ て い る こ と が 上 記 の 先 行 研 究
で 指 摘 さ れ て い る 。(22a)が 今 問 題 と な っ て い る 例 で 、Göksel and Kerslake (2005)
によると、話し手が非言語的な手がかり(発話場面の状況等)から、聞き手に
質 問 す る 内 容 に つ い て な ん ら か の 想 定 を し て い る 場 合 は (22b)で は な く (22a)の
ほうが自然である。このような例が存在することは、疑問接語の生起位置以外
の何らかの要素が、疑問文の構造に影響を及ぼしていることを示している。報
告者自身は、この現象は意味構造のレヴェルで説明がなされるべきことである
と現段階では考えている。いずれにせよ、この現象を説明する枠組みの構築も
今後の課題である。
また、以下のような現象も発話行為と形態・統語論が相互に関連する問題と
し て 興 味 深 い と 思 わ れ る 。(23)の 例 で 、本 来 な ら 話 者 B の 発 話 に お け る gidiyorum
mu は 形 態(・統 語 )的 に は 許 容 さ れ な い は ず で あ る (cf. (8b))。し か し 、(Kornfilt
1997: 32-33)が 指 摘 す る よ う に 、 実 際 に は 文 法 的 で あ る 。
(23)
Speaker A: Sinema-ya
映 画 館 -与 格
gid-iyor-um.
行 く -進 行 -1 単
「映画館に行ってきます」
Speaker B: Sinema-ya
映 画 館 -与 格
gid-iyor-um mu
de-di-n?
行 く -進 行 -1 単 Q
言 う -過 去 -2 単
「『 映 画 館 に っ て き ま す 』 っ て 言 っ た の ? 」 (Kornfilt 1997: 33)
(23)の 例 は 問 い 返 し と い う 発 話 行 為 が 、 形 態 ・ 統 語 論 に 直 接 的 に 影 響 を 及 ぼ し
ていると思われる例であり、この現象を理論的にどのように説明するか、管見
の限りでは研究がなされていない。
最後に、意味と発話行為の問題についてもまとめておきたい。これまで見て
き た よ う に 疑 問 接 語 mI に よ っ て ど こ が 焦 点 化 さ れ る か を 説 明 す る 枠 組 み が 必
要 で あ る 。ま た 、疑 問 の ス コ ー プ の 広 さ を ど の よ う に 説 明 す る か も 、Yücel (2012)
に代表されるような分離補文標識句仮説の妥当性も含めて今後検証する必要が
あるであろう。
3.2 日 本 語 と の 対 照 に つ い て
前 節 ま で 、 主 に ト ル コ 語 に お け る 疑 問 接 語 (mI)に ま つ わ る い く つ か の 課 題 を
明らかにした。本節では、日本語の疑問文との対照をふまえる際に浮かび上が
る問題点を明らかにしてみたい。
まず、日本語における「か」の音韻・形態的ステータスの対照について指摘
し て み た い 。 こ れ ま で 見 て き た よ う に 、 ト ル コ 語 の mI は 統 語 的 に は 他 の 語 と
独立した単位でありながら、形態論上は接語形式と直前の語形から形成される
よ り 大 き な 語 形 の 一 部 で あ り 、 典 型 的 な 「 接 語 」( clitic; Erdal 2000, Sezer 2001
他)であるといえる。一方、機能的に類似しており、対照研究の直接的な対象
は「か」であると想定してよいかどうかは検証が必要であるだろう。そうであ
れ ば 、mI と 同 じ く 音 韻・形 態 上 の 単 位 と し て「 疑 問 接 語 」で あ る と 言 う こ と は
果たして可能か、という議論がより詳細に行われる必要がある。
ま た 、mI と 日 本 語 の 疑 問 文 マ ー カ ー の 生 起 の 制 約 の 対 照 も 重 要 な ト ピ ッ ク で
あると思われる。すなわち、トルコ語では疑問接語の生起に動詞形式の制約は
ない。ただし、動詞のテンス・アスペクト形式の種類により人称語尾との相対
的位置をどのように説明するかという問題がある。一方よく知られているよう
に 、 日 本 語 の 「 か 」 が 生 起 す る と き は 、 以 下 (24)で 示 す よ う に 、 動 詞 形 式 に 制
約がかかる場合がある。
(24)
明 日 の パ ー テ ィ ー に は 誰 が 来 る { *か / の }。
また、統語的位置とスコープとの関連についても議論が必要である。日本語
の『 か 』の ス コ ー プ は そ れ が 付 加 さ れ て い る 動 詞・形 容 詞・『 名 詞 / 形 容 動 詞 +
だ 』 に 限 ら れ る こ と が 指 摘 さ れ て い る ( cf. 田 窪 2011、 金 水 2013)。
(25)
a. ??君 は 一 九 二 〇 年 に 生 ま れ た か 。
a’. 君 は [ 一 九 二 〇 年 に 生 ま れ た の ] か 。
b. ??君 は こ の 時 計 を パ リ で 買 っ た か 。
(25a)(25c)の 例 が 不 自 然 で あ る こ と は ト ル コ 語 の 類 似 例 と は 対 照 的 で あ り 、両 言
語の統語構造になんらかの違いがある可能性が高い。
また、スコープと焦点についての課題も指摘できる。日本語では間接疑問文
を 示 す の に 「 か ど う か 」 が 使 用 さ れ る 一 方 、 ト ル コ 語 で は 疑 問 接 語 や WH 詞 を
使 用 せ ず に 選 択 的 な 間 接 疑 問 文 を 表 す こ と が 可 能 で あ る (14a)(26b)。
(26)
a. [ お 父 さ ん が 来 年 家 を 建 て る か ど う か ]、 私 は 知 り ま せ ん 。
b. [Baba-m-ın
gelecek yıl
ev
yap-ıp
父 -1 単 -属 格
来年
家 作 る -副
yap-ma-yacağ-ı]-nı
作 る -否 定 -未 来 -3 sg -対 格
bil-mi-yor-um.
知 る -否 定 -進 行 -1 単
「お父さんが来年家を建てるかどうか、私は知りません」
こ こ で は 前 掲 (13)の 例 の よ う に mI が 従 属 節 内 部 に 生 起 し て い る 場 合 で 、疑 問 の
焦点は特定の語(または構成素)に限定されていながら疑問のスコープは文全
体にかかるような例を考慮に入れる必要がある。これが日本語にはない現象で
あるとすれば、やはりなぜそのような違いが生じるのかを検討する必要が生じ
るであろう。
スコープの広さの表示の仕方についても、トルコ語と日本語の対照研究の範
囲に含まれる。上述したように、日本語の疑問のスコープは、それが付加され
て い る 動 詞・形 容 詞・
「 名 詞 / 形 容 動 詞 + だ 」に 限 ら れ る こ と が 指 摘 さ れ て い る
( 田 窪 2011、金 水 2013)。一 方 、こ れ ま で 見 て き た よ う に 、疑 問 接 語 が 後 置 詞
に 付 加 さ れ て い な が ら 疑 問 の ス コ ー プ が 文 全 体 に か か っ て い る (13a)の よ う な
例、ならびに疑問接語の位置が表面上同じであるにもかかわらず、疑問のスコ
ー プ の 範 囲 が 異 な る (19a,b)の よ う な ト ル コ 語 の 例 は 、 日 本 語 の 疑 問 の ス コ ー プ
の説明がそのままトルコ語の疑問文のスコープの説明に適用できないことを示
し て い る 。両 言 語 に 同 様 に 適 用 で き る 説 明 の 枠 組 み は 今 後 の 重 要 な 課 題 で あ る 。
この他の対照研究のトピックとして、日本語の「なぜ」とトルコ語の
neden/niye/niçin(「 な ぜ 」) の 対 照 を 挙 げ る こ と が で き る で あ ろ う 。 す な わ ち 、
日本語の「なぜ・どうして」による疑問詞疑問文は基本的に「の」が必須であ
る (cf. 野 田 1995)が 、ト ル コ 語 で は「 な ぜ 」に 相 当 す る WH 詞 (neden/niye/niçin)
が用いられる場合でも、述語形式はそれに呼応する「の」のような特定の形式
が あ る わ け で は な い 。 ま た 、 neden/niye/niçin 等 の 疑 問 詞 と mI も 、 や は り ( エ
コー疑問文を除けば)共起しない。
(27)
a. な ぜ こ の プ ロ ジ ェ ク ト に 参 加 し た [ の / ??ø] ?
b. Neden
bu
proje-ye
katıl-dı-n?
なぜ
この
プ ロ ジ ェ ク ト -与 格
参 加 す る -過 去 -2 単
「なぜこのプロジェクトに参加したの(君)?」
ここまで、報告者が現段階で思いつく限りのトルコ語と日本語とを対照する
上 で 問 題 に な る と 思 わ れ る ト ピ ッ ク を 提 示 し た 。今 後 の 研 究 プ ロ ジ ェ ク ト で は 、
上述のトピックについて報告者自身も何らかの回答を提示することにしたいが、
これ以外にも報告者が見落としているトピックが多数に存在する可能性は十分
考えられる。
4. お わ り に
以上、トルコ語の疑問文に関連する諸問題を指摘し、その上で報告者が現段
階で思いつく限りの日本語との対照研究にむけたポイントを整理してきた。
最後に、上記のトピック以外に研究が発展する可能性として、トルコ語以外
のチュルク諸語を研究対象にすることを提案しておきたい。トルコ国内にもさ
まざまなトルコ語の地域方言によるバリエーションが存在する。このうちたと
えば北キプロスで話されているとされる、いわゆるキプロス方言では、本報告
で 述 べ て き た よ う な 疑 問 接 語 が yes/no 疑 問 文 で 用 い ら れ ず 、純 粋 に 焦 点 化 さ れ
る要素を韻律的に強調することで疑問文を表示する傾向がある、という指摘が
あ る (Demir 2009: 23)。 同 様 の 現 象 は 、 ト ル コ 語 と 同 じ く チ ュ ル ク 諸 語 の 1 つ の
ア ゼ ル バ イ ジ ャ ン 語 に も 観 察 さ れ る と い う (Demir 2009: 24)。6 そ の 観 察 が 妥 当 か
どうかという問題に加えて、本報告で提示してきたような複文の疑問文の構造
はどのように表示されるのかなど、日本語との対照という点においても興味深
い成果が出る可能性がある。また、本報告の例文で主に提示した、トルコ語を
除く多くのチュルク諸語では、トルコ語と異なり疑問接語が文中に生起するこ
とがないとされている。そのような言語において、疑問の焦点位置、および疑
問 の ス コ ー プ を ど の よ う に 表 示 し て い る の か に つ い て も 、今 後 調 査 す る こ と で 、
日本語との対照研究の可能性が広がってくる可能性も最後に指摘しておきたい。
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