コンフォーカル顕微鏡

第12編 オプトデバイス製造装置
●第12編●第4章●第25節●
コンフォーカル顕微鏡
レーザーテック
1. はじめに
コンフォーカル顕微鏡の特徴は以下のようにまとめ
近年、PC、プリンタ、デジタルスチルカメラ、携帯
られる。
電話などの情報端末機器の発展に伴い、様々な電子部
①解像力が高い。
②Z軸の測定が非接触でできる。
品やLCDパネルなどの観察/測定ニーズが高まっている。
しかし、従来の単一波長のレーザ顕微鏡では、材料が
③測定ダイナミックレンジが大きい。大きなサンプ
多様化すると分光反射・吸収特性が異なるため、サン
ルも計測が可能。
④色情報が取得できる。
プルへの柔軟な対応が困難な場合が出てきていた。
⑤電子顕微鏡のような真空引きや、サンプルの蒸着
このような問題を解決し、より正確で高スループッ
のような前処理が不要。
トな計測・検査の要求に応えるために、レーザーテッ
クでは従来の技術を進化させ、高精細、高速、高精度
を実現した最新モデル、3ラインCCDカラーコンフォー
3. レーザーテックのコンフォーカル顕微鏡
カル顕微鏡「オプテリクス H1200(WIDE)」を新たに
コンフォーカル顕微鏡は、レーザダイオード(波長
開発した。本稿ではnmレベルの3次元計測に対応できる
408nm)を用いたバイオレットレーザ顕微鏡「VL
微分干渉や位相シフト干渉などのオプション機能と併
2000DX」をラインナップしているが、近年では光源を
せて紹介する。リアルな質感を再現できるリアルカラ
レーザに限定せず、キセノンランプなどの白色光源を
ーコンフォーカル顕微鏡「オプテリクス C130」と、高
採用することで、より自然な色合いでの表面観察を実
い解像能力に5つの波長選択性を併せ持つファイブライ
現したカラータイプのコンフォーカル顕微鏡のライン
ンコンフォーカル顕微鏡「オプテリクス S130」の従来
ナップが充実している。オプテリクス C130は、色にじ
の2機種もこれまで、様々な評価要求に対してソリュー
みがない、リアルカラーのコンフォーカル高精細画像
ションを提供してきた。
(130万画素)を取得できる。さらに、フィルム、ガラ
ス、高分子の表面と内部情報の観察や測定を、5種類の
2. コンフォーカル(共焦点)顕微鏡
波長(405/436/546/577/630nm)からワンタッチで選択
コンフォーカル顕微鏡では、回折限界まで絞った微
できるファイブラインコンフォーカル顕微鏡 オプテリ
小スポット光で試料を照明し、試料表面からの反射光
クス S130は、初めて多層構造の3Dを構築可能とした。
を微小面積の光検出器で受光している。この光学系で
従来モデルをさらに進化させ、最先端のニーズに応
は、焦点ずれ箇所からの反射光は、光検出器のピンホ
えようというのが、業界初の3ラインCCDコンフォーカ
ールを通過できず、合焦点箇所の反射光のみが検出で
ル顕微鏡 オプテリクス H1200(WIDE)である。業界
きる。従って、受光強度は合焦点で最大となり、焦点
最高の最大1200万画素(RGB×400万画素)の高画質表
ずれによって急速に減衰するので、凹凸のある表面を
示を可能とし、業界最速の120フレーム/秒の高速走査
観察すると、合焦点であたかも試料を輪切りにしたよ
モードを実現している。さらに3ラインCCDを採用して
うな画像となる(オプティカルセクショニング)。合焦
いるため、色再現性が良く高精彩な観察ができ、2048
高さは画像の各ピクセルの輝度が最大となる試料のス
画素の1次元CCDは経年劣化が少ないので、高精度の計
テージの高さ(レーザスケールで高精度に検出)から
測が可能である。顕微鏡の構成を写真1に示す。
判断されるので、試料表面の3次元構造を正確に把握で
各種の計測ソフトウェアには操作性を向上させるた
きる。
めに、1クリックオペレーション機能が搭載された。3D
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2008 オプトデバイス技術大全
第4章 オプトデバイス用検査・測定器
(a)明視野像
写真1 「オプテリクス H1200(WIDE)
」の外観
(b)Blue測定
(a)多層3D
(c)Red測定
図1
フレキシブル基板
表示、高度差計測、2D表面粗さ計測、3D表面粗さ計測
など、1クリックでフィルタ処理や水平補正処理まで簡
単に自動処理することが可能となった。
オプテリクス H1200(WIDE)は、光源にキセノンラ
ンプを使用しているのでフルカラーを実現することが
できる。測定の場合も、RGBの3つのチャネルを自由に
選択できるのでサンプルを選ぶことがなく、測定可能
性が広がった。さらに、波長選択オプションを導入す
ることにより、照明光波長を干渉フィルタの自動切り
換えで選択することができる。光源に水銀キセノンラ
ンプも使用でき、白色および5種類の波長(436/488/546/
577/630nm)から最適波長をワンタッチで選択できる。
例えば、透明なフォトスペーサのようなものは、通
常の白色照明のままでは正確に高さを測定できない場
合があるため、透過率の低い短い波長を選択すること
が必要となる。さらに、多層構造の測定においても、
各層による透過・反射特性の波長依存性を利用するこ
とで、多層の3次元構造を構築することが可能である。
オプテリクス H1200(WIDE)は、このような問題にも
100μm (b)微分干渉像
100μm
写真2 SiC単結晶表面
応じることができる。図1はフレキシブル基板上に形成
された透明膜に対して、表面は膜を透過しにくい波長
436nmで測定し、基板は膜を透過する波長630nmで測定
した結果である。膜の内部構造やμmオーダーの膜厚を
検査するには強力なツールと言える。
顕微鏡には全て3次元解析ソフト(段差測定、粗さ測
定など)が標準搭載されており、電動レボルバ(S130、
「S130IF」、H1200(WIDE)は標準)、自動ステージな
どのオプションも準備されている。
4. 微分干渉機能
コンフォーカル顕微鏡はz方向の高さ計測が可能であ
るが、観察視野の中で測定対象の凹凸や段差を探し当
てるのは意外に難しい場合がある。ガラス表面の傷な
どはその良い例である。この解決策として、微分干渉
法を使うことが有効である。微分干渉法は定量性はな
いが、振動に強く、0.1nm程度の高さ感度を持つと言わ
れており、表面観察手法として極めて強力なツールで
ある。
一般に、ノマルスキープリズムと偏光板(ポラライ
ザとアナライザ)をそれぞれ光路に挿入することで、
簡単に微分干渉コントラストを作り出すことができる。
干渉色は表面傾斜により相対的に変化するが、偏光板
方位やプリズム位置を調整することにより、コントラ
ストや干渉色を自由に変えてカラフルな映像を取得で
きる。
オプテリクス H1200(WIDE)はコンフォーカル光学
系での微分干渉観察が可能である。コンフォーカル光
学系による迷光除去が微分干渉のコントラストをより
明瞭にするため、ウェーハ上の微細な異物などを高コ
ントラストで浮かび上がらせることができる。SiC単結
晶の成長丘をコンフォーカルモードで観察した例を写
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125.0
100.0
nm
100
50
0
75.0 nm
100
50
0
50.0
75
25.0
75
50
μm
25
25
50
μm
0 0
図2 SiC単結晶表面形状の3次元表示
真2に示す。コンフォーカルの明視野像では見えない、
ナノレベルの凹凸まで微分干渉コントラストの付加に
より際立って見える。
5. 位相シフト干渉機能
コンフォーカル顕微鏡の高さ分解能は対物レンズの
開口数に依存するので、低倍率では高さの分解能が不
足する問題があった。また、ナノレベルの3次元形状を
測定するには高倍率でも垂直分解能不足であった。
そこで、オプテリクス H1200(WIDE)は干渉計の機
能を付加することで、垂直分解能をナノレベルまで向
上させた。コンフォーカル光学系は、透明で薄い試料
の裏面反射や迷光などを除去できるので、干渉計測に
おいても裏面反射などの除去に効果的である。ミラウ
型干渉計は位相シフト干渉法の適用により、1nm以下の
分解能を実現している。
ミラウ干渉対物レンズは、試料表面に焦点を合わせ
ると鮮明な干渉縞が生じる。この時、精密にz方向を移
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2008 オプトデバイス技術大全
動させることで、位相が変化する(レンズ駆動式とス
テージ駆動式の選択可能)。数秒間で位相の異なる3枚
の干渉画像を取り込み、位相シフト干渉画面として画
面表示できる。この画像の1階調が表現する高さは、約
0.1∼1nm程度となる。
性能評価として数種類の単結晶表面のナノトポグラ
フを測定した。SiC単結晶の表面を測定した結果を図2
に示す。位相シフト干渉法で、6nmの段差を高分解能で
計測することができている。
すでに位相シフト干渉機能を搭載したモデルとして、
「オプテリクス S130IF」がラインナップされており、オ
プテリクス H1200(WIDE)には波長選択機能と位相シ
フト干渉機能を合わせてオプション搭載可能である。
6. 共焦点顕微鏡の応用例
従来のマーケットであるマイクロマシン(MEMS)
加工の形状評価や半導体のパターンの幅/高さ計測、金
属材料を評価する際の表面粗さ・ボイドの計測に加え、
オプテリクス C130はLCDパネル、半導体/材料開発や、
化粧品開発など、色情報を重視するマーケットを拡大
し、オプテリクス S130はLCDパネルのガラス、高分
子、フィルムなどの多層構造や内部情報などのマーケ
ットを創設した。オプテリクス H1200(WIDE)はこれ
らに合わせて、カラーフィルタ上の突起欠陥などの高
速高さ測定、レーザマーカ、ベアウェーハのごみ検査
などの工場ラインなどの高速検査要求のマーケットへ
と展開していくものである。
7. おわりに
以上、レーザーテックが提供するコンフォーカル顕
微鏡は、今後もあらゆるアプリケーションにソリュー
ションを提供していき、さらなる可能性を広げるもの
である。