e-AT機器の利用状況と実現した夢の概要 ●相原 誠(応募者) 私は 1975 年生まれの筋ジストロフィー症デュシェンヌ型(全身の筋肉が徐々に壊れ筋力が落ち動けなくな る病気。同時に心肺機能も低下していく進行性の遺伝子疾患)という病気をもつ 31 歳です。障害に伴い 14 歳より気管切開をし呼吸器を装着し寝たきりの生活を送りながらも Macintosh と SwitchXS の e-AT 機器 ユーザとしてだけでなく AT-Market でアドバイザーをしています。また気管切開もしているため発声が困難 ですが、それに伴うコミュニケーションの不自由さを様々な e-AT 機器を使用し多くの部分を補っています。 技術ボランティア制作のワンスイッチTVリモコンやワンスイッチ iPod リモコン、ナースコールと緊急呼出ブ ザーをワンスイッチで切り替える切換機スイッチャ、また追加改造を施しナースコールと同一スイッチでパソ コン操作も可能とし活用しています。現在は毎日時間を惜しむように様々なことを僅かに残された親指を内 側に曲げる身体機能を活かしワンスイッチで Mac を操作しています。「自分が自分らしくいるために」活用し 「有能な専属秘書のように」感じています。作業療法士制作の手や指の変形、親指の動作からの力の伝達 を考慮した最適な入力スイッチ(マイクロスイッチを利用)のお陰で超高速入力が実現しています。これは 最適な e-AT 機器には最適な入力デバイスが不可欠であり単に入力が可能であれば「良」ではないことを 意味しています。 愛用している SwitchXS はワンスイッチ・フルオペーティング装置であるために Macintosh のありとあらゆる ソフトウェアを使うことが可能です。私は普段よく Mail を活用(用途に合わせた 17 個のメールアドレスを駆 使)し友人知人など様々な人々とコミュニケーションを楽しみ、色々な人が公開するブログにコメントを書き 込み交流も深めてもいます。Safari を使いホームページから数多くの情報と知識を得ています。更には iPhoto でデジカメ画像を編集・管理し友人知人に外出時の様子などの報告写真を.mac で公開もしていま す。デジカメ画像のスライドショーやエンコードしたテレビ番組や撮影したビデオの動画を QuickTime Pro や iMovie、iDVD、Toast で編集しオリジナル DVD を制作し記録用、友人知人に配布するなどしています。 また楽天市場や Amazon、AppleStore など様々なネットショップを利用したり、iTunesStore で楽曲のダウ ンロード購入や Podcast の視聴、オンライン CD/DVD レンタルサービスといった最新サービスを次々と体 験し活用しています。そのほか AppleWorks を使い原稿を書いたりドロー環境でリーフレットの作成、 Keynote でプレゼン用スライドを作成するなど様々なことに日々活用しています。iTunes と iPod で音楽を 楽しみながら!実を言うこの原稿も音楽が耳元で響き流れる中で書いています。コンピュータの存在、特に メールは単なる便利なコミュニケーションや情報を得る手段の1つであるだけではなく生活の質を幾億倍も 高め個性溢れる自分らしさを失わず維持し続ける為に必要不可欠な e-AT 機器、Tool であるとも自負して います。またメールで会話する中ふと障害を忘れさせてくれる、そんな夢のようなことを親指一本で実現さ せてくれた e-AT 機器と巡り会えた嬉しさ!それらを導き意向を親身に聞き入れ快く手を差し伸べてくれた 支援者に出会えたことに対し日々感謝して止みません。 パソコンはAppleのPowerMac G5 Dual2.3GHz、OSはMac OS X 10.4.8 Tigerです。 入力にはキーボードとマウスの替 わりにSwitchXSを用い、スイッチイ ンターフェースとしてねずみくんク リック2(改造版)を使っています。 入力スイッチは、病院の作業療法 士が右手(もしくは左手)に装着し て操作できるように制作してくれた ものを親指で押しています。 ●有限会社 エーティーマーケット 福祉情報技術コーディネーター1級 代表取締役 花岡 里美(支援者) 十数年前に、私が福祉機器販売会社へ勤めていた頃、高校生だった相原誠氏(以下、相原アドバイザー) と長期療養先である病院で出会いました。月日は流れ、4年前に、福祉情報技術コーディネーターとしてサ ポート中心の会社を立ち上げました。本来、特定の製品を取り扱うことはしない予定でしたが、Mac OS X 用のオンスクリーンキーボードが欲しい!というユーザの皆様の熱いご要望にお応えしたく、オランダの AssistiveWare 社が開発している「SwitchXS」のローカライズを決意しました。AssistiveWare 社とコンタク トしている間に日本で別の団体とユーザからも要望があるということを知りました。団体は MES 関東の大 杉成喜氏、ユーザは相原誠アドバイザーでした。日本初のユーザとして、彼らにはパネルの制作にも携わ って頂き、「SwitchXS 日本語版」が誕生致しました。彼らがいなくては、この製品は誕生しませんでした。そ の後、相原アドバイザーご自身が元気なこと、そしてコンピュータも元気なことをお知らせ頂くために弊社の 営業日には毎日メール(すでに3年)を頂いております。 応募者と支援者のプロフィール 相原 誠(応募者) 病名:進行性筋ジストロフィー症デュシェンヌ型 障害:気管切開、人工呼吸器24時間使用、ベッド上生活 車椅子:ロールスチール 寝台型車椅子 人工呼吸器:東機貿 ニューポート HT-50 発声器具:フジレスピロニクス スピーキングバルブ <経歴> 1975年6月 千葉県千葉市生まれ、 1981年 大学病院にて筋ジストロフィー症と診断、 1983年9月 車椅子の使用に伴い地元小学校より2年生2学期から千葉県内の養護学校へ転校、 1990年 気管切開及び人工呼吸器装着に伴い病院に長期入院になり以後病室での床上学級学習、 1994年 高等部卒業後にパソコン(キーボード用斜面台と竹棒で複合キーとマウスキーの補助機能を併用し操作) 及びパソコン通信(NIFTY、社団法人日本筋ジストロフィー協会・全国福祉ネット「夢の扉」)を始める、1994年4月 放送大学教養学部専科履修生として受講し継続中、 1995年 社団法人日本筋ジストロフィー協会・全国福祉ネット「夢の扉」機関誌「ゆめ通信」編集委員に選出され 1999年5月まで活動、1997年9月雑誌「ASAHIパソコン」ハンディキャップコーナーに「パソコン通信が開いた社会 参加への扉」と題し掲載される、 2000年 パソコン操作方法をKe:nxに移行、 2001年2月/2003年3月 Macworld Conference&Expo/TokoyにてUsersGroup・MES関東会員として参加及び Ke:nx操作のデモを行う、 2003年6月 ナムコ福祉事業グループHP「ハッスル倶楽部」今月のゲスト(AT)に「キネックス装置でのパソコン利用」 と題し掲載される、 2004年 パソコン操作方法をKe:nxとSwitchXSの併用・同時期にAT-Marketと共にSwitchXS日本語ローカライズ に協力、 2004年6月 銀座AppleStoreにて行われたMES関東主催「MacOS X Panther AccessibilityTime」にMES関東会員 として参加及びAT-Marketと共にSwitchXSのデモを行う、 2004年7月 パソコン操作方法をSwitchXSに全面移行、同年ナムコ福祉事業グループHP「ハッスル倶楽部」今月の ゲスト(AT)に「AppleStore銀座でのプレゼン参加報告&銀座道中記」と題し掲載される、 2004年9月 早稲田大学にて行われた日本特殊教育学会にMES関東会員として参加し自主シンポジウム「重度障害 者のコンピュータ利用によりもたらされるもの-ユーザの立場から-」を発表、 2004年10月 AT-Marketに寄せられたSwitchXSやMacintoshに関する質問への回答の助言を依頼される、 2005年8月 THE MAGICAL TOY BOXに参加しAT-Marketと共にSwitchXSのデモを行う、 2006年7月 社会福祉迭人鉄道身障者福祉協会「リハビリテーション」7号特集「私の生活を支える情報機器」に「重 度障害者だからこそ情報機器を」と題し掲載される <使用e-AT機器> パソコン:PowerMac G5 Dual2.3GHzメモリ500MB(1GB増設)/HDD250GB(内蔵)×2 + 40GB(外付け) ディスプレイ:I-O DATE LCD-TV173CBR TVチューナー内蔵 周辺機器:I-O DATA Rec-On for Mac(ビデオ) TIMEDOMAIN miniステレオスピーカー Apple iPod FUJI FILM FinePix F710(デジカメ) I-O DATA EasyDisk(USBメモリ) 支援機器:AT-Market SwitchXS MES関東 ねずみくんのクリック2(改造版)(SwitchInterface) 技術ボランティア製作 iPod専用ワンスイッチリモコン、TVワンスイッチリモコン、 ナースコール・パソコン切替器(緊急時用ブザーに無線式ドアチャイムを改造し使用) その他:週間タイマーOTL-901(コンセント電源のON/OFF・TV内蔵ディスプレイのTVのON/OFFに使用) アーム式固定具付きSHARP小型液晶TV オリンパス Eye-Trek FMD-200(FaceMountDisplay) 入力スイッチ:作業療法士製作マイクロスイッチ(固定やフィッティングに医療用スプリント素材を使用) 花岡 里美(支援者) 有限会社エーティーマーケット 代表取締役 福祉情報技術コーディネーター1級 障害のある方の支援機器の導入・販売・サポートをする会社を経営。東京都障害者 IT サポートセンターでは、機器 のコーディネーターを務める。 相原氏が、単なるユーザではないと確信したのは、モニタが壊れた際に、元の同じ状態にするために、病院内の別 のユーザの方のコンピュータをお借りし、ご自身のバックアップ HDD とスイッチインターフェースと LAN ケーブルを繋 げてネットで発注。届いてから、元通りの快適な状態になったところで、当方には連絡があった。相原氏が直接連絡 出来ない場合のフォローは、彼のお母様と携帯メールで行っている。体調不良で連絡があったのは、3年間で一度 だけである。 障害のある人が、機器を活き活きと使えるようになった姿に立ち会えるたびに「必要は発明の母」という言葉を思い 出し、喜びを感じている。第二の相原氏と出会えるように、特に子ども達の教育に役立てるような活動に特に力を入 れている。
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