脳科学と社会 - RISTEX 社会技術研究開発センター

戦略的創造研究推進事業(社会技術研究開発)
「脳科学と社会」研究開発領域
研究開発プログラム「脳科学と教育(タイプⅡ)
」
追跡調査報告書
平成25年10月
独立行政法人科学技術振興機構 社会技術研究開発センター
目
次
1.追跡調査実施要領 ...........................................................................................................................1
1.1. 経緯・背景 .................................................................................................................................................... 2
1.2. 追跡評価項目・基準 ................................................................................................................................... 2
1.3. 追跡調査対象 ................................................................................................................................................ 3
1.4. 調査内容と方法............................................................................................................................................ 4
2. 研究開発領域・研究開発プログラムの概要、評価の経緯 ......................................................7
2.1. 「脳科学と社会」研究開発領域の概要・目的 ................................................................................... 8
2.2. 研究開発プログラム「脳科学と教育(タイプⅡ)
」の概要 ........................................................... 8
2.3. 「脳科学と社会」研究開発領域 研究開発プログラム「脳科学と教育(タイプⅡ)
」に関
する評価の経緯について................................................................................................................................... 9
3. 調査結果の概要 ........................................................................................................................... 11
3.1. 「双生児法による乳児・幼児の発育縦断研究」
(研究代表者:安藤 寿康).................................................13
3.2. 「社会性の発達メカニズムの解明: 自閉症スペクトラムと定型発達のコホート研究」
(研究代表者:神尾 陽子).................................................41
3.3. 「高齢者と学習障害の脳機能改善コホート研究」
(研究代表者:川島 隆太).................................................75
3.4. 「言語の発達・脳の成長・言語教育に関する統合的研究」
(研究代表者:萩原 裕子)...............................................105
3.5. 「教育のためのバイオメンタル技術の開発」
(研究代表者:六反 一仁)...............................................133
3.6. 「非侵襲的脳機能計測を用いた意欲の脳内機序と 学習効率に関するコホート研究」
(研究代表者:渡辺 恭良)...............................................159
1.追跡調査実施要領
1
1.1. 経緯・背景
独立行政法人科学技術振興機構 社会技術研究開発センター(以下、
「センター」という)
が実施する戦略的創造研究推進事業(社会技術研究開発)において、事前・中間・事後に
実施した評価に加え、
「研究開発終了後一定期間を経過した後、副次的効果を含めて研究開
発成果の発展状況や活用状況等を明らかにし、事業及び事業の運営の改善等に資すること
を目的」として、追跡調査及び追跡評価を実施することとしている。
追跡評価は、研究開発終了後一定期間を経た後、研究開発成果の発展状況や活用状況、
参加研究者の活動状況等について、研究開発プロジェクトの追跡調査を行い、追跡調査結
果を基に、外部専門家により構成される委員会による評価を集約し、合意を以て評価結果
とすることとしている。
このたび、
「脳科学と社会」研究開発領域 研究開発プログラム「脳科学と教育(タイプ
Ⅱ)
」において、平成 16 年度に採択され平成 21 年度に終了した研究開発プロジェクト(6
課題)について、終了後約 3 年が経過したことを契機として、追跡調査・追跡評価を実施
することとした。
なお、本追跡調査は、それらの現状を把握し、追跡評価の基礎資料とすることを目的と
して、独立行政法人科学技術振興機構より調査を委託した株式会社リベルタス・コンサル
ティングが研究代表者への書面調査等により調査を実施した結果を取りまとめたものであ
る。
1.2. 追跡評価項目・基準
追跡評価を実施するための情報を取りまとめるにあたり、研究開発終了後一定期間を経
た後の研究開発成果の発展状況や活用状況、参加研究者の活動状況等について追跡調査を
実施した。追跡評価の項目・基準については、独立行政法人科学技術振興機構の「戦略的
創造研究推進事業(社会技術研究開発)に係る課題評価の方法等に関する達(平成 25 年 3
月 27 日 平成 25 年達第 39 号)
」第 18 条(追跡評価)に定める評価項目及び基準を基本と
し、センターの事業及び事業運営の趣旨をふまえて、以下のように整理した。
1. 研究開発成果の発展状況や活用状況
(1)研究開発内容の進展状況
①研究開発はプロジェクト期間終了後にどのように進展・発展したか。
②プロジェクト期間終了後の社会状況や環境の変化に対して、どのように対応し、研究
開発が新たな進展・展開へと繋がったか。
(2)研究開発成果の社会での適用・定着(社会実装)状況及び社会的課題の解決への貢献
状況
①研究開発成果は実社会でどのように活用され、広く適用・定着(社会実装)されてい
2
るか(されていない場合、どのような条件が揃えば社会実装の可能性が出てくるか)
。
②社会状況や環境の変化の中で、社会実装へ努力したプロセスはどうであったか。
③社会への実装の結果、プロジェクト実施時及び終了後に想定した社会的課題の解決に
貢献できたか(できなかった場合、その要因は何か)。
2. 研究開発成果がもたらした科学技術的、社会的及び経済的な効果・効用、波及効果
(1)研究者・関与者の活動は、科学技術的・社会的な面での人材育成・キャリアパスの開
拓や人的ネットワークの展開に繋がったか。
(2)研究者・関与者の活動は、社会の幅広い人々及び関与者(ステークホルダー)にどの
ような社会面(教育面)
・経済面での影響・効果をもたらし、研究開発成果の社会で
の活用・拡大・定着に繋がっているか。
1.3. 追跡調査対象
平成 16 年度に開始され、平成 21 年度に研究開発が終了した「脳科学と社会」研究開発
領域(領域総括:小泉 英明 株式会社日立製作所中央研究所 役員待遇フェロー)研究開発
プログラム「脳科学と教育(タイプⅡ)
」の研究開発プロジェクト(6 課題)を追跡調査の
対象とした。
調査対象となる研究開発プロジェクトは表 1 の通りである。
表 1 調査対象研究開発プロジェクト(平成 16 年度採択 6 課題)
研究開発プロジェクト
研究代表者(所属・役職)
双生児法による乳児・幼児の
発育縦断研究
安藤 寿康(慶應義塾大学 文学部 教授)
社会性の発達メカニズムの解明:
自閉症スペクトラムと定型発達の
コホート研究
神尾 陽子(国立精神・神経センター 精神保健
研究所 児童・思春期精神保健部 部長)
高齢者と学習障害の
脳機能改善コホート研究
川島 隆太(東北大学 加齢医学研究所 教授)
言語の発達・脳の成長・言語教育
に関する統合的研究
萩原 裕子(首都大学東京大学院 人文科学研究
科 教授)
教育支援のための
バイオメンタル技術の開発
六反 一仁(徳島大学大学院 ヘルスバイオサイ
エンス研究部 教授)
非侵襲的脳機能計測を用いた意欲の
脳内機序と学習効率に関する
コホート研究
渡辺 恭良(独立行政法人理化学研究所分子イ
メージング科学研究センター センター長、大阪
市立大学大学院 医学研究科 教授)
※所属・役職は研究開発プロジェクト実施期間中のものを記載
3
1.4. 調査内容と方法
追跡調査は、以下の方法で平成 25 年 4 月~9 月の間に実施した。
1.4.1 基礎データの把握と確認
調査対象研究開発プロジェクトの研究代表者について、現在の所属・役職・連絡先を確
認した。
また、
「研究開発実施終了報告書」
「研究開発実施成果報告書」および事後評価結果等の
内容を参考に、研究開発期間中の研究開発の目標・内容・成果を整理した。
1.4.2. 研究代表者への書面調査票の作成
研究開発プロジェクト別に、
「研究開発実施終了報告書」
「研究開発実施成果報告書」お
よび事後評価結果等を基に、研究開発期間終了後の研究の継続性・関連性を推察し、研究
の継続・発展状況と研究成果が及ぼした効果・効用・波及効果の内容について、研究代表
者への書面による調査を行う上での調査項目を整理し、
「書面調査票」を作成した。
1.4.3. 研究代表者等への書面調査の実施
研究開発プロジェクトにおいては専門分野や所属機関も異なる複数の研究者・関与者が
参画した研究開発体制により研究開発が進められたが、追跡調査では研究開発プロジェク
ト全体としての発展状況を追う必要がある。そこで、まず研究開発プロジェクト全体を最
も俯瞰的に見られる立場である当時の研究代表者に対して、前項において作成した記述式
の書面調査票を送付し、研究開発期間終了以降の展開状況、社会・経済的な効果・効用や
波及効果等についての回答を依頼した。
また、回答内容についてさらに詳細な情報や根拠となる資料等を必要と判断した場合に
は、研究代表者への往訪ヒアリング等による追加質問調査や追加調査を実施した。
なお、センターの追跡調査・追跡評価の趣旨をふまえて研究開発プログラム「脳科学と
教育(タイプⅡ)
」についてご意見や、社会技術研究開発センターの事業及び事業の運営の
改善に関する意見や提案等を記載する項目を書面調査票に設け、回答を依頼した。
1.4.4. 主要な参加研究者の現在の活動状況の調査
主要な参加研究者については、公開情報を基に現在の活動状況について整理をおこなっ
た。調査項目は、
(1)調査時点の研究活動内容、
(2)専門分野、
(3)発表論文、
(4)講演・
口頭発表等、
(5)発行書籍、
(6)競争的研究資金等による研究実施状況、とした。調査に
あたっては、所属機関等のウェブサイトの他、表 2 の方法を用いてデータ検索を行った。
4
検索の範囲はプロジェクト終了後(平成 21 年 12 月)から検索時点(平成 25 年 9 月)まで
とした。
表 2 成果データの検索方法
表 2
検索データ
英文
発表論文
和文
英文発表論文の被引用件数
書籍
特許
獲得グラント
プレス報道
受賞





















検索に使用したツール
J-Global(研究者データベース)
Web of Science(Thomson Scientific)
Google Scholar
検索対象者のホームページ
J-Global(研究者データベース)
論文情報ナビゲータ Cinii(国立情報学研究所)
検索対象者のホームページ
J-Global(研究者データベース)
Web of Science(Thomson Scientific)
J-Global(研究者データベース)
Webcat Plus(国立情報学研究所)
J-Global(研究者データベース)
特許電子図書館(特許庁)
European Patent Office(欧州特許庁)
科学研究費補助金データベース(国立情報学研究所)
科学技術振興調整費データベース(科学技術振興機構)
厚生労働科学研究成果データベース(厚生労働省)
戦略的情報通信研究開発推進制度(総務省)、NEDO プ
ロジェクト等の事業
日経テレコン 21(日本経済新聞)
検索対象研究者のホームページ
プレス報道検索結果
1.4.5. 追跡調査報告書の作成
以上をもとに追跡調査報告書をとりまとめた。とりまとめに際しては、研究代表者への
内容確認を行った。
1.4.6. 研究代表者による追跡調査報告書内容の確認
追跡調査報告書のとりまとめ後、内容に関し研究代表者への事実誤認及び非公開事項の
有無の確認を行い、適宜報告書の修正等を行った。
5
6
2. 研究開発領域・研究開発プログラムの概要、評価の経緯
7
2.1. 「脳科学と社会」研究開発領域の概要・目的
1
「脳科学と社会」研究開発領域では、①非侵襲的脳機能計測および行動学的観察を組み
込んだ追跡研究(コホート調査)を行い子どもの社会能力の獲得過程や神経基盤について
明らかにした計画型研究開発と、②発達関連の多様な課題に対して自然科学と人文・社会
科学を架橋・融合した視点から取り組むことで教育関連の問題の根幹に迫ることを目指し
た研究開発プログラム「脳科学と教育」
(タイプ I:全 11 プロジェクト、タイプⅡ:全 6
プロジェクト)を実施した。
計画型研究開発「日本における子供の認知・行動発達に影響を与える要因の解明」は、
行動観察・非侵襲脳機能描画等を組み込んだ追跡研究(コホート調査)を中心とし、子供
の社会能力の獲得過程やその神経基盤の解明を目的とした。研究開発プログラム「脳科学
と教育」は、発達関連の多様な課題を対象とし、先端技術・自然科学と人文学・社会科学
を架橋・融合した Trans-disciplinary(環学的)な視点から取り組むことで、教育関連問題
の根幹に迫ることを目指した。本研究の結果を基に、集中力・抑制力・協調性・生活リズ
ム・言語能力や他者を思いやる心の醸成等に関し、実証的結果に基づき提言することを目
指した。
2.2. 研究開発プログラム「脳科学と教育(タイプⅡ)
」の概要 2
最初に実施された「脳科学と教育」
(タイプ I )には、脳神経科学の蓄積されたデータ
の学習・教育への適用、発達認知神経科学や進化・発達心理学、各種神経科学を基盤とし
た知見の学習機序や広義の教育への応用、自然科学・人文学の成果と臨床、教育、保育等
の現場の知識を融合した学習・教育等、前胎児期から一生を終えるまでの全ての学習・教
育過程を包括的な視点で捉え直し、少子・高齢化社会における最適な学習・教育システム
とその社会基盤構築に資する研究開発等が含まれた。
「脳科学と教育」
(タイプⅡ)は、上記研究に加え、実証的な追跡研究による、発達認知
神経科学を含む脳科学、発達心理学や言語学、そして非侵襲脳機能計測や各種情報技術を
架橋・融合して実践的かつ人間性を基調とした学習・教育に関する研究開発を志向した。
具体的には、追跡研究的手法に非侵襲脳機能計測あるいは行動学的観察を組み込んだ手法
により研究開発を実施した。
1
2
(独)科学技術振興機構社会技術研究開発センター「脳科学と社会」研究開発領域ウェブサイト
(http://www.ristex.jp/result/brain/index.html)より抜粋
(独)科学技術振興機構社会技術研究開発センター「脳科学と社会」研究開発領域ウェブサイト内、研究
開発プログラム「脳科学と教育」ウェブページ(http://www.ristex.jp/result/brain/program/index.html)より
抜粋
8
2.3. 「脳科学と社会」研究開発領域 研究開発プログラム「脳科学と教育(タイプⅡ)
」
に関する評価の経緯について
2.3.1. 中間評価
社会技術研究開発センターの評価委員会は、科学技術振興機構の「社会技術研究開発事
業に係る課題評価の方法等に関する達」
(平成 19 年達第 80 号)に基づき、
「脳科学と社会」
研究開発領域
(領域総括:小泉 英明 株式会社日立製作所中央研究所 役員待遇フェロー)、
同領域研究開発プログラム「脳科学と教育(タイプⅡ)
」の個別研究開発プロジェクト及び
同じプログラム全体の中間評価を平成 19 年度に実施した(図 1 参照)
。
中間評価結果については、それぞれ下記の社会技術研究開発センター評価委員会による
「中間評価報告書」として取りまとめ、社会技術研究開発センターのウェブサイトを通じ
て公開している。
(http://www.ristex.jp/archives/mid/index.html)
以下、下記の報告書を「中間評価報告書」という。
・
「脳科学と社会」研究開発領域、同領域研究開発プログラム「脳科学と教育(タイプⅡ)
」
、
同プログラム研究開発プロジェクト中間評価 同領域計画型研究開発「日本における子
供の認知・行動発達に影響を与える要因の解明」年次評価 評価報告書(平成 19 年 7
月 18 日)
2.3.2. 事後評価
社会技術研究開発センター評価委員会は、科学技術振興機構の「社会技術研究開発事業
に係る課題評価の方法等に関する達」(平成 20 年達第 27 号)に基づき、「脳科学と社会」
研究開発領域(領域総括:小泉 英明 株式会社日立製作所中央研究所 役員待遇フェロー)
の研究開発プログラム「脳科学と教育(タイプⅡ)
」平成 16 年度採択研究開発プロジェク
ト(6 課題)の事後評価を平成 22 年度に実施した(図 1 参照)
。
事後評価結果については、社会技術研究開発センター評価委員会による「事後評価報告
書」として取りまとめ、社会技術研究開発センターのウェブサイトを通じて公開している
。
(http://www.ristex.jp/archives/final/index.html)
以下、下記の報告書を「事後評価報告書」という。
・
「脳科学と社会」研究開発領域、同領域研究開発プログラム「脳科学と教育」
(タイプⅡ)
及び同プログラム平成16年度採択研究開発プロジェクト事後評価報告書(平成 22 年 6
月 7 日)
2.3.3. 追跡調査・追跡評価
追跡調査・追跡評価は、研究開発終了後一定期間を経た後、研究開発成果の発展状況や
9
活用状況、参加研究者の活動状況等について、研究開発プロジェクトの追跡調査を行い、
追跡調査結果を基に評価を行うこととしている。
研究開発プログラム「脳科学と教育(タイプⅡ)
」においては、平成 16 年度に採択され
平成 21 年度に終了した研究開発プロジェクト(6 課題)について、平成 25 年度に研究開
発プロジェクト終了後 3 年が経過したことを契機に追跡調査・評価を実施した。
(年度)
公募型 ※1
(タイプⅠ)
(タイプⅡ)
H13
H14
H15
H16
H17
H18
H19
H20
H21
H22
H23
H24
H25
← 研究開発実施期間 →
(平成 13,14,15,16 年度採択プロジェクト)
← 研究開発実施期間 →
(平成 16 年度採択プロジェクト)
追跡調査
平成 25 年度実施
計画型 ※2
中間評価
事後評価
追跡評価
平成 19 年 7 月
平成 22 年 6 月
平成 25 年度実施
← 研究開発実施期間 →
(平成 16 年度~平成 20 年度)
※1 公募型…「脳科学と教育」タイプⅠ、タイプⅡ
※2 計画型…「日本における子供の認知・行動発達に影響を与える要因の解明」
図 1 「脳科学と社会」研究開発領域に関する研究開発実施期間と評価実施時期
10
3. 調査結果の概要
11
12
3.1. 双生児法による乳児・幼児の発育縦断研究
(研究代表者:安藤 寿康)
13
3.1.1. 研究開発プロジェクトの概要
研究開発領域
「脳科学と社会」研究開発領域
研究開発プログラム名
研究開発プログラム「脳科学と教育(タイプⅡ)
」
研究開発プロジェクト名
双生児法による乳児・幼児の発育縦断研究
研究代表者(現所属)
安藤 寿康(慶應義塾大学 文学部 教授)
研究実施期間
平成 16 年 12 月~平成 21 年 11 月
(2004 年 12 月~2009 年 11 月)
※現所属は、追跡調査時のものを記載
3.1.1.1. 研究開発の概要と研究開発目標
子どもの身体的、心理的、行動的な発育上の特性の発達に及ぼす遺伝要因と環境要因の
相互作用過程を乳幼児から始まる双生児コホートの縦断調査、ならびに 3 歳から 26 歳まで
の双生児横断調査により明らかにする。それによって、個人の遺伝的素質に適合し、より
よい社会化と自己実現を支える教育システムの設計がどのように可能かを考察するための
基礎的な情報を提供する(双生児による研究)
。さらに双生児の特殊性を明らかにし(双生
児の研究)
、双生児の成長とその家庭・親の育児環境を支援する方策もあわせて明らかにす
る(双生児のための研究)
。
3.1.1.2. 研究開発の実施体制
※所属・役職は研究開発プロジェクト実施期間中のものを記載
氏名
期間中の所属・役職
担当
参加期間
平成 16 年 12 月~
平成 21 年 11 月
安藤 寿康
慶應義塾大学 文学部 教授
研究代表者
野中 浩一
和光大学 人間関係学部 教
授
データベース構築
平成 16 年 12 月~
平成 21 年 11 月
加藤 則子
国立保健医療科学院 研修
企画部 部長
質問紙調査作成・分析
フィードバック作成
平成 16 年 12 月~
平成 21 年 11 月
大木 秀一
石川県立看護大学 助教授
質問紙調査作成・分析
平成 16 年 12 月~
平成 21 年 11 月
藤澤 啓子
慶應義塾大学文学部 助教
家庭訪問調査・質問紙調
査作成・分析
平成 16 年 12 月~
平成 21 年 11 月
尾崎 幸謙
科学技術振興機構 年俸制
研究員
統計解析
平成 18 年 1 月~
平成 21 年 11 月
垣花 真一郎
日本学術振興会 特別研究
員
言語調査課題作成
平成 18 年 4 月~
平成 19 年 3 月
山形 伸二
日本学術振興会 研究員
質問紙調査作成・分析
平成 17 年 6 月~
平成 21 年 11 月
質問紙調査作成・分析
平成 17 年 9 月~
平成 21 年 11 月
質問紙調査(横断)作成・
分析
平成 20 年 4 月~
平成 21 年 11 月
高橋 雄介
村山 航
日本学術振興会 東京大学
大学院総合文化研究科 PD
特別研究員 博士課程
日本学術振興会 特別研究
員
14
3.1.1.3. 研究開発の内容
(1) 双生児住所データベースの構築
1. 住民基本台帳閲覧による首都圏の双生児リスト構築
平成16年12月から平成18年3月まで、首都圏(東京都・神奈川県・千葉県・埼玉県全
域ならびに茨城県・群馬県・栃木県・山梨県・静岡県の一部)の全213の自治体の住民
基本台帳から「同世帯・同生年月日」の個人情報を抽出し、時点悉皆的な約47,000組の
双生児の住所リストを作成。うち平成16年11月~平成17年末に出生した約1,600組から
なる代表性の高いコホートサンプルを構築。
2. Webと育児雑誌などからの全国双生児登録
平成18年11月から平成12年3月まで、全国を対象としてインターネット、商業誌、お
よび保健所、クリニックを通じて新たに約160組を得た。
(2) 縦断調査のための予備調査
1. パイロット調査の実施
パイロット調査として、平成 16 年 1 月から 6 月までに生まれた 9 ヶ月から 14 ヶ月のふ
たご家庭に、調査への第一次案内文書(あいさつと趣旨説明のためのパンフレット)
、第二
次案内文書(あいさつとパンフレット)とエントリーシート(調査用紙と同意書を兼ねる
もの)を送付、自発的な参加家庭を得た。
2. 予備調査の結果分析
切手の貼り方や再依頼状送付による返信率の変化、サンプルの代表性などの検討と、
双生児相関の分析により妥当な結果が得られることを検討した。
(3) 縦断本調査
1. 質問紙調査
エントリー調査用紙の返信のあった 1,760 家庭を対象に、9、12、15、18、24+、36、42、
48 ヵ月時の各調査用紙を実施順次送付・回収・入力・解析・発表。
2. 個別発育調査
12、18、24、36、48 ヶ月のうち可能な時点で認知・言語能力と社会性を評価する課題を
150 組に実施。
3.
脳機能調査
6、7、10、11、17、18、36、48 ヶ月のうち可能な時点で、言語、社会性、音楽の NIRS
と ERP の調査、ならびに側性に関する運動機能調査を実施。
15
4. 言語調査
42 ヶ月と 60 ヶ月時に実施するかな文字習得課題の開発と一般児 55 名を対象とした予備
調査、そして本調査を実施。
(4) 横断調査
首都圏の 3 歳から 26 歳までの 22,000 組の双生児とその保護者を対象とし「ふたごを対
象としたこころと身体の成長・子育て・教育に関する大規模調査」のための発達段階別質
問紙を開発、平成 19 年 3 月に実施。約 4,000 組からの回答を得て、学業成績や社会的態度、
問題行動、性同一性など、縦断調査のカバーしていないさまざまなリサーチクウェスチョ
ンにアプローチした。
(5) 新たな統計的方法論の開発
構造方程式モデリングによる遺伝と環境のパラメータの推定のため、新たに一対比
較法による尺度化の応用、ならびに高次積率を用いたより多くのパラメータ推定法の
開発を実施。
(6) その他
1. 協力家庭へのフィードバック
縦断調査への協力家庭に対して、フィードバックとして、ニュースレター、速報、個別
情報、各種オリジナルグッズを渡す。また年 2 回の交流会を通して、参加協力家庭の声を
聞き、また直接結果報告を行う。
2.
研究会の実施
16
3.1.1.4. 研究開発の成果
遺伝要因と環境要因は、時間的にダイナミックにかつ複雑の相互作用しながら心身の発達
に関わっており、単純な遺伝決定論・環境決定論がいずれも現実と大きく異なっているこ
とを明らかにした
(1) 子どもの社会性、認知能力、身体の発達と遺伝、環境の関係に関する発見

縦断研究により、遺伝と環境の両要因が発達と共に変化すること、特に遺伝要因が発
達と共に新たに発現してくる様子が、社会性、認知能力、身体のいずれの側面でも見
出された。

【社会性】11 ヶ月時点では家族が共有する環境要因(共有環境)が優性だが、18 ヶ月
までに遺伝要因が発現する。

【認知能力】24 ヶ月に遺伝要因が発現し 36 ヶ月にまで影響を及ぼす。

【身体(体重、身長、胸囲、頭囲)
】出生時よりも数ヶ月後の方が遺伝の寄与率が高く、
出生時までの母胎環境の制約から解き放たれ、自らの遺伝的素質を開花いてゆく様が
うかがわれる。社会性の発達の高さは頭囲の成長が早いほど、遺伝的には低く、環境
的には高くなり、自閉症の発症と頭囲との関係について示唆を与える。
(2) 問題行動と親の養育態度との関係に関する発見

感情問題の 36 ヶ月から 42 ヶ月にかけての変化の大きさには、家庭が冷たく、身体的・
心理的統制が甘く、しつけが厳しいほど、遺伝要因の個人差が大きく関与する。

6 歳時に多動・不注意傾向がボーダー以上の子の場合、親のネガティブな養育行動が
子どもの問題行動を助長するという因果関係があるが、定型の子の場合、子どもの遺
伝的素因により起こされた問題行動が親のネガティブな養育行動を引き起こすことが
示された。親の心理的サポートや育児支援によって子どもの問題行動の改善に効果が
あるのは、多動・不注意傾向の高い子どもであり、逆に定型の子の問題行動は本人の
遺伝要因に由来する部分が大きいので、親を介するよりも、教育機関等による介入や
訓練が効果的であることが示唆された。
(3) 少年期、青年期、成人期の発達段階特有の課題(学業成績、性同一性等)に関する分析

【学業成績】中・高の成績と相関の高い学習時間・学習方略・動機づけなどの関連要
因は、すべて単一の一般学力因子によって媒介されており、その個人差に対する遺伝
の寄与は 66%と高く、共有環境の寄与はなかった(中学生男児)。一方、所属する高
校の大学進学率の推定値の個人差には中程度、共有環境の影響によって媒介されてお
17
り、大学進学には親の金銭的投資が、その遺伝子以上に親の与える環境の効果があら
われる。

【性同一性障害】女子は児童期から成人期までの間に遺伝率が減少し、代わって共有
環境要因が増加する一方、男子については共有環境が占める割合が高かった。性科学
分野でも特筆すべき大規模調査で、本領域に大きく寄与した。

【いじめ】中・高の双生児は全体的にいじめられる頻度が単胎児よりも少なく、
「いじ
められにくい」傾向にあることがわかった。しかし、その中では二卵性女児が突出し
ていじめられる傾向にある傾向があった。
3.1.2. 研究開発プロジェクトの事後評価結果の概要
「事後評価報告書」に基づき、本研究開発プロジェクトに関するセンターの評価委員会
による事後評価結果を以下のように整理した。
(1) 総合評価
研究開発目標の達成度、学術的・技術的・社会的貢献、成果の社会における活用・展開
などを中心に総合的に判断して、一定の成果が得られたと評価する。
本プロジェクトでは、子どもの発達に及ぼす遺伝的要因と環境的要因の相互作用の実態
を明らかにするために、双生児を対象に縦断コホート調査を実施した。遺伝と環境のどち
らが重要かという単純な図式ではなく、二つの間の複雑な相互作用を発達過程に沿って明
らかにしようという試みは重要であり、養育環境が乳児の認知発達に及ぼす影響にかかわ
る成果は社会に有用な知見をもたらす。他方、いろいろな課題(乳幼児の認知発達、中学
生の学業成績、児童期の問題行動、性同一性など)が個別に取り上げられているため、全
体としての関連付けが弱く、全体像が見えにくいという問題点を指摘できる。大きな視野
に立ち、遺伝と環境の相互作用の図式を全体的に明らかにすることを期待したい。
双生児研究と言う日本ではユニークな研究テーマを、その手法の基盤から確立し、双生
児研究の認知度を高めた功績は大きい。また、住民基本台帳から双子を掘り起こすと言う
地道な作業でコホート研究を行ってきた努力は高く評価される。一方で、成果の脳科学へ
の影響は必ずしも明確でなく、これからの課題である。今後、双生児法のメリットを活か
した脳科学への貢献を期待したい。
本プロジェクトでは、データ収集、解析とも今後も引き続き実施されるということであ
り、現時点での暫定的な結論を社会に公表する際には、歪曲された捉え方をされないよう
十分注意をすることが必要である。双生児のデータベースは我が国の貴重な財産であり、
18
この基盤を活かしたさらなる発展が望まれる。
なお、
本プロジェクトの中で双生児家庭どうしの交流の場と情報交換会、
ニュースレター
の発行、質問への回答等、双生児の子育て支援が行われたことは、副次的貢献として大き
く評価できる。
(2) 目標達成の状況
本プロジェクトの研究開発目標は、ある程度達成されたと評価する。
大規模双生児コホートを首都圏に構築し、乳児・幼児の双生児の発育縦断研究を実施し、
その成長と発現しやすい問題行動の発生に及ぼす遺伝的影響と環境的影響の相互作用を、
一卵性双生児と二卵性双生児の統計的解析により解明する、という研究開発目標は明確で
妥当であった。自治体等との調整に時間と費用がかかったが、首都圏の 4 万組の双生児住
所リストを作成し、1,600 組を超える大規模な双生児のコホート集団を構築して調査が進め
られ、当初計画からやや遅れたものの目標からはほぼ乖離なく進捗した。ただし、途中で
加えられた横断調査の解析が終わっていないこと、データ解析とまとめが十分ではなかっ
たこと、近赤外線分光法(Near Infra-Red Spectroscopy:NIRS)による脳機能計測や遺伝と
環境の影響の総合的解析に関する成果が部分的であることなどから、目標を全て達成する
には至っていない。
(3) 学術的・技術的貢献
これまで国内ではなかった双生児の本格的大規模コホート集団を構築し、国際的な指標
を使用して調査を行った事は、国際水準に追いつくものと評価できる。また、コロラド大
学と連携して国際指標の開発を行っていることも評価される。一方、脳科学という面では、
NIRS を用いて乳幼児期の言語認知機能、運動機能の特性を調査して遺伝的要因が関与し
ていないという結果を導くなど、発達と脳科学のつながりをある程度つかんだことは評価
できるが、未だ大きな学術的・技術的貢献には至っておらず、今後のデータ解析の進展に
期待したい。
統計的には構造方程式モデルを用いて、子どもの社会性発達に関して興味ある仮説を導
いているが、モデルパラメータが多く、再現性のチェックやモデル適合度の指標の提示が
不十分で、今後の検証が望まれる。また、共有環境と非共有環境の効果を分離出来るのが
双生児コホート研究の特徴であるが、親の各種養育態度と子の問題行動に対する非共有環
境効果には多重性や一貫性にかかわる問題があり、その結論をそのまま受け取ってよいか
検討を要する。今後は統計指標の有意性だけから結論を導くのではなく、実質科学的説明
19
を追求する必要があろう。
(4) 社会的貢献・成果の社会での活用・展開
本プロジェクトの成果は、学習・教育に関する科学的根拠を提供する意味で、限定的と
はいえ貢献があり、今後はさらに貢献しうると評価する。
随所に興味深く重要な知見がみられ、特に共有環境と遺伝の複雑な相互作用の可能性を
指摘した点は重要な貢献と考えられる。ただし、統計解析を更に慎重に進める必要がある。
世の中でいわれている「遺伝か環境か」という二分法ではなく、遺伝と環境の相互作用を
含んだ総合的な影響を考えないといけない事を具体的に示した事は大きな貢献であり、今
後解析を進めて確実な知見を得た上で、一般に向けてわかるように丁寧に説明することで、
発達障害の診断と治療、保育・教育に貢献することが期待される。
双生児研究の基盤が構築された結果、双生児研究の重要性が認知され、副次的ではある
が、双生児家庭同士の交流ネットワークができ、双生児をもつ親の子育て支援になったこ
とも評価できる。ただし、全容が見えないうちに部分的にわかりやすく説明すると、遺伝
と環境の関係が単純化される危険性があると思われるので、注意が必要と考える。
(5) 研究開発体制と管理運営
研究開発体制及び管理運営は比較的適正・妥当であったと評価する。
1 グループ体制で研究開発を進めたことが有効に作用したが、様々なテーマがあり、も
う少し調査を絞るか、精神医学、疫学等の専門家の関与をより充実させればさらによかっ
たのではないかと考える。
(6) 費用対効果比
投入された研究開発費と予想される社会的貢献から考慮した費用対効果比については、
ほぼ見合っていると評価する。
住民基本台帳から双生児名簿作成にかかった費用は全体の半分近くに達し、費用対効果
比を下げているが、これは現状の住民基本台帳閲覧に係る費用(手作業による書き写しの
人件費も含め)が高いことに起因している。人件費の割合が高いが、これは若手研究者の
育成には有効であったと考えられる。
なお、本プロジェクトをベースに科学研究費基盤研究 S「社会性とメンタルヘルスの双
生児研究-遺伝子と脳活動をつなぐ」が開始され、慶応義塾大学に「ふたご行動発達研究
センター」が設立されており、本プロジェクトで構築された双生児コホート及びデータが
20
有効に活用されれば、費用対効果比は高まると見られる。
(7) 特記事項
このようなデータベースやコホートの研究を進める場合、チーム構成は例えば公募など
で外部専門家を取り入れ、多分野の一流の研究者の関与を求めることが好ましい。
双生児のコホートを作り上げたことは非常に意義深いが、双生児の研究には遺伝的側面
とエピジェネティクス(遺伝子の発現制御)の側面とがあり、この限界理解した上で、今後
の研究に期待したい。
21
3.1.3. 研究開発プロジェクト終了後の展開
3.1.3.1 研究開発成果の発展状況や活用状況
(1) 研究開発内容の進展状況
① コホート研究(データの収集・蓄積・分析等)の継続・発展
RISTEXの研究開発プロジェクト(「本プロジェクト」
)で開始された乳幼児・児童コホー
トによる行動学的な調査については、
本プロジェクト終了後も追跡調査が継続されており、
縦断データをより一層充実させることに加え、特に幼児期から児童期にかけての教育的問
題(とりわけ幼稚園から小学校への橋渡しである幼小連携の問題)を精緻に把握するため
に、その時期の教育環境に関する単胎児を対象とした独自の大規模予備調査(Japan
Developmental Environment Inventory; JEDI 3)を実施して、ふたご研究の妥当性を確認する
ための対象データを得て、問題行動に関連性の高いことが予測される環境指標を選択し、
新たな質問紙調査を実施した。
また、本プロジェクト終了後も蓄積されたデータの収集・分析が進められている。成果
発表の際に、解析手法が難解であることが指摘されていた構造方程式モデリングについて
は、ビッグ・データ時代における統計学の高度な手法の普及により、少なくとも専門家の
間では理解が深まったことから、
以前と比較し、わかりにくさは相対的に軽減しつつある。
一方で、成果を一般に広めるために、抽象度の高い統計的結果だけでなく、生の事例に即
した結果の解釈が可能な補助的情報も必要となるという認識から、ふたごの日常生活を丸
ごと動画データとして記録し、随時適当なビデオクリップとして利用可能な動画データが
収集されており、動画データベース「まるまる」としての蓄積が進められている。
行動の個人差を規定する最も基本的な形質として心理学の中で扱われている「認知能力」
と「パーソナリティ」について、本プロジェクトは豊富かつ多様なデータを収集してきた
が、認知発達、学業成績、問題行動等が、実行機能(executive function)の発達を軸として、
統一的に解釈し得る可能性が、本プロジェクトのデータならびに関連領域の研究から示唆
されるようになってきた。例えば幼児期の実行機能は青年期の認知能力を、また青年期の
ワーキングメモリ(実行機能の指標の一つ)が成人期の認知能力とパーソナリティを、そ
れぞれ遺伝要因を媒介として予測することが双生児のデータから示された。また生後 1 年
間の脳(頭囲)の発達速度が、幼児期の認知・社会能力と遺伝的、環境的に関連すること
を示した本プロジェクトの成果も、その傍証となると考えられる。
実行機能は主として前頭前野、あるいは前頭-頭頂のコネクティビティの活動として注
目が集まっていることから、認知能力において差の大きな不一致一卵性の脳機能の fMRI
による差の比較、ならびに遺伝子発現の差異の比較が現在進められており、今後の成果創
3
ふたごコホートが幼稚園から小学校に上がる年齢に差し掛かったことから、幼少連携の問題など、その
年齢の教育環境がこども発達におよぼす影響を明らかにするために、どのような教育環境の変数が重要で
あるかをあきらかにする予備調査としての位置づけで、単胎児 4,345 人(依頼数 14,400 人有効回答率
30.2%)を対象に実施された。ここで得られた成果は、日本発達心理学会のシンポジウムで発表されると
ともに、双生児調査の設計に活かされている。
22
出が期待される。遺伝子の全く等しい一卵性双生児に顕著な表現型の差異があった場合の
エビゲノムの差異についての研究は、方法論的にも新しく、双生児でなれば行うことので
きないユニークな研究手法である。
将来的には、子ども期と青年・成人期を総合したふたごコホート調査を継続し、脳科学
と遺伝子研究との統合を実現することが目指されており、そのための外部資金の継続的獲
得が試みられている。
② 新たなグラント取得等による研究の発展
研究継続を意図して、科学研究費補助金により基盤研究(S)「社会性とメンタルヘルスの
双生児研究-遺伝子と脳活動をつなぐ」
(研究代表者:安藤寿康、平成 21 年~23 年)が実
施された。また、新学術領域「精神機能の自己制御理解にもとづく思春期の人間形成支援
学」の公募研究「思春期の精神病理に対する情動・認知的自己制御力の影響に関する発達
行動遺伝学研究」
(研究代表者:藤澤啓子、平成 21 年~23 年)等、新たなグラントを取得
し、研究成果の創出に結びつけている(
「3.1.8 付属資料」参照)
。
このうち科研費基盤研究(S)は、本プロジェクトで蓄積してきたコホート縦断研究と、同
じく平成 10 年より継続してきた青年期・成人期の双生児研究を統合した「慶應義塾ふたご
行動発達センター」としての活動を遂行するものであり、遺伝子と脳にかかわる研究に積
極的に参入するため、分子生物学的情報と MRI 脳構造・脳画像のデータを収集し、遺伝子
から脳を経て社会行動までをつなぐ behavioral neurogenomics を目指すものとして実施され
た。分子生物学的研究では神戸大学・戸田達史研究室と連携して、また MRI 研究は慶應義
塾大学グローバル COE「論理と感性の先端的教育研究拠点」
(CARLS)が平成 23 年度まで
保有していた 3T の MRI を用いて実施された。特に IQ に差のある成人一卵性双生児の遺
伝子発現と fMRI による resting state に関する研究を発進させるところまで到達しているが、
現在も進行中である(MRI は玉川大学と連携関係が結ばれている)
。
23
科学研究費補助金基盤研究(S)「社会性とメンタルヘルスの双生児研究-遺伝子と脳活動を
つなぐ」の主な研究成果
下記二つのコホート調査により、幼児期から成人期にかけての広範な社会的適応性形成
過程における遺伝要因の発現過程が、社会的環境条件との関係で具体的に明らかにされつ
つあるといえる。
幼児期コホート
1)幼児期、児童期の社会性、認知・言語能力の発達的変化を支える遺伝要因の発現の変化
の諸相を明らかにしつつある。たとえば、3 歳半から 5 歳にかけての「読み」能力の発達
に、言語処理の下位過程である音韻意識、語彙、視覚処理技能、そして一般認知能力との
遺伝と環境の媒介過程を明らかにした。
幼児期の認知能力ならびに「かな」文字の読み能力の関連とその発達におよぼす遺伝と環境の
影響を明らかにするために、3 歳半および 5 歳時点で K-ABC、ならびに「かな」の読み能力検
査とその下位過程である音韻意識、語彙、視覚処理技能の検査を実施した。K-ABC の測定する
経時処理、同時処理、達成間には、いずれの時点でも互いに高い遺伝相関と共有環境相関があ
るが、達成には相対的に共有環境の効果の方が大きい。
図 2 5 歳時点の K-ABC の遺伝環境構造
2)この時期のこれらの心理・環境指標の縦断データとしては単胎児を含めて、我が国最大
規模である。しかも双生児だけでなく、単胎児のデータを 1,000 人を超すサンプル数を有
しており、極めて貴重なデータベースとなっている。特にわが国の幼小時の社会的適応性
の発達にかかわる環境指標(Japan Environment and Development Index(JEDI))を開発した。
24
成人期コホート
1)さまざまな遺伝×環境交互作用がみいだされていること。たとえば共感性の個人差にお
よぼす共有環境の影響が親の情愛の程度が大きいと大きく出ること、社会的ジレンマゲー
ム他者が協力的であるほど集団への投資量への遺伝の影響が大きく出るなど、遺伝と環境
の社会におけるダイナミズムの詳細を記述できた。
2)
成人期における心理的形質の発達に及ぼす遺伝と環境の影響の安定性と変化がみいださ
れていること。認知能力が比較的安定していると考えられるこの時期の数年間に遺伝率は
増大し、安定とともに新たな遺伝要因の開花が見いだされた。
3)社会経済的指標に関する遺伝と環境の影響を解明しようとしている。これまで心理学的
変数を扱ってきたが、社会的に重要な学力や論理的推論能力、経済的判断などに焦点を写
し、社会構造の遺伝学的解明という新たなテーマに着手し始めた。
親の学歴が子どもの学歴に遺伝と共有環境それぞれを介してどの程度伝達するかをみると、
子どもの学歴の 22%は遺伝を媒介とした親の学歴、12~14%が共有環境を媒介とした親の
学歴で説明できる。これらは社会学で通説となっている「文化再生産」という現象が環境
ではなく遺伝によって媒介されている可能性を示唆するものである。
図 3 学歴の親子間伝達
4)認知能力の差異にかかわる候補遺伝子が同定されようとしていること。まだ萌芽的であ
るが behavioral genomics 研究への途を開きつつある。
資料:科学研究費助成事業研究成果報告書
25
③ 論文発表、学会発表、著書刊行
本プロジェクト期間中ならびにその後に収集・蓄積されたデータは随時、さまざまなテー
マのもとに解析され、国内・国際誌上の論文発表、国内・国際学会発表、著書等で発表さ
れている(
「3.1.8 付属資料」参照)
。
図 4 著書「遺伝子の不都合な真実」と「遺伝子マインド」
④ 国内外における共同研究の展開
本プロジェクト終了後、国内外において、下記等の共同研究が進められている。

平成 21 年 4 月に、同じ霊長類のふたごであるチンパンジー双生児が高知県立のいち動
物公園に誕生したことから、比較認知行動学を応用した「比較双生児学」の構想の下
に、京都大学霊長類研究所・友永雅己教授との共同研究として、親や他の大人の育児
行動、ふたご間の社会的関係等の縦断調査が進められている。

行動遺伝学的な発達研究の知見を教育の問題に科学的に導入するため、
新学術領域
「ネ
アンデルタールとサピエンス交替劇の真相」
(研究代表:赤澤威)に、安藤教授が連携
研究者として参加しており、教育行動そのものの生物学的・進化的基盤の研究に着手
している。

多様なパラメータを用いたデータ解析は、他の関連データを取り込みながらメタ解析
を行うことにより、より簡潔なモデル構成をすることが可能であるが、これは本プロ
ジェクトのデータだけで完結するものではなく、他の研究データとの比較や統合が必
要である。そのために異なる研究チーム間でデータの互換性を持つための data
harmonization を行うことが必要となる。そのためにふたごの研究チーム間の国際連携
を意図した第 2 回 International Twin Registry 会議(ソウル大学、平成 25 年 5 月 31 日
~6 月 1 日)に安藤教授等が参加し、意見交換を行っている。

認知能力にかかわる遺伝子の特定を目的に、神戸大学大学院医学研究科・戸田達史研
究室と連携し、不一致一卵性の遺伝子発現研究を展開している。また、平成 25 年度か
26
らは国立遺伝学研究所比較ゲノム解析研究室の豊田敦特任准教授と全ゲノム・エクソ
ンのシーケンスに関して連携を組むことになった。

「意思決定」にかかわる認知過程の研究に双生児法を援用する連携プロジェクトを、
フランス高等師範学校(エコール・ノルマル・シュペリウールÉcole Normale Supérieure)
のSacha Bourgeois‐Gironde及びイスラエルの共同研究チームから依頼され、東京で 2
回、パリで 1 回の打ち合わせを実施、その準備期の業績として、現在E-journalに特集
号を編纂する計画を進めている 4。

本プロジェクト実施期から共同研究を進めていた University of Colorado at Boulder の行
動遺伝学研究所 Institute for Behavioral Genetics の John C. DeFries ならびに Richard Olson
らと、
児童期の読み能力の発達研究を進めており、本年に論文が国際誌に採択された。
その縦断研究の継続を現在検討中。
なお研究の実施には至っていないが、行動・労働経済学への行動遺伝学の応用を目的と
して、東北大学、大阪大学、東京大学の社会学者、経済学者と連携して科研費特別推進研
究と基盤研究(S)に研究代表として応募申請した。また新学術領域への研究計画として京都
大学霊長類研究所を中心に応募申請したプロジェクトに計画研究班の代表として参加した。
いずれも採択に至らなかったが、今後も共同研究の検討を続ける予定である。
今後とも、現在連携中あるいは連携に向け具体的準備を進めている機関との共同研究を
推進し、領域横断的なふたご研究を推進することが目指されている。
4
青年期から成人期の双生児研究においては、平成 23 年 3 月に 20~22 歳の双生児 1,086 人の新たな協力
者を得て、学歴、職業達成、行動経済学的意思決定などの調査を実施し、日本社会心理学会などで発表
をしている。その成果がフランスとの共同研究へと結びついている。
27
(2) 研究開発成果の社会での適用・定着(社会実装)状況及び社会的課題の解決への貢献状況
プロジェクト実施当時に用いた双生児法は、原則として遺伝子の行動に及ぼす影響を、
分子レベルではなく統計レベルで把握するものであったが、DNA 解析技法の進歩、NIRS
及び fMRI の普及等の技術的進展に伴い、遺伝子に対する関心、特に遺伝子と行動との関
連に対する関心が社会一般に高まってきている。そのためにプロジェクトの成果の社会へ
の発信を求められる機会が増えてきている。
他方、本研究グループは、脳と教育と遺伝子をつなぐという本来の目的から、基礎研究
が重要であり、ただちに社会実装をもたらすような成果を出すことは困難であり、具体的
な教育方法や教育制度を提案することを目指すのではなく、むしろどのような教育方法や
教育制度の下でも利用することのできる、科学的に信頼性の高い基礎データを提供するこ
とを目的とする旨を、本プロジェクト開始当初から訴えている。そのような状況下で、下
記のような社会実装事例を創出している。
① ふたご研究の認知度向上
研究グループは、各種メディアを介した成果発表や研究紹介により、ふたご研究の認知
度向上に努めている(
「3.1.8 付属資料」参照)
。双生児による行動遺伝学研究の関連諸学会
ならびに隣接学会への知名度の高まりに伴い、共同執筆や学会での共同のシンポジウムの
依頼数が、プロジェクトメンバー全体で飛躍的に増大している。また、メディアからのア
プローチも同時に増加しているが、これらには「ふたごの面白さ」紹介を意図した興味本
位な企画も少なくないため、安易な協力は慎む姿勢をとっている。
② 安易な実装(遺伝子検査等)に対し警鐘を鳴らす
廉価で大量の遺伝情報の解析が可能になり、個人の疾患・健康関連の遺伝情報を調べる
「遺伝子検査ビジネス」が一般大衆の関心を集め、
「才能の遺伝子検査」までが市販ルート
に乗るようになった今日、優生思想に対する考察は極めて重要になりつつある。
本研究グループは、ふたご研究を、健康や行動への遺伝の影響を科学的に明らかにする
強力なツールと位置づけ、その科学的証拠を数多く示してきた一方で、それは少数の遺伝
子で予測や診断が可能な単純な現象ではなく、環境との長い間の相互作用過程の重要さも
示してきた。その経緯から、本研究グループは、むしろ現時点では、遺伝子検査等の安易
な「社会実装」に警鐘を鳴らすことが、最も必要な社会への適用であるという立場をとっ
ている。
本プロジェクトの成果もふまえて執筆された安藤寿康「遺伝子の不都合な真実」
(ちくま
新書)は、その一章を遺伝子検査批判に割き、世に注意を促している。また、 Science
Media Center「遺伝子診断による教育サービス」に対して下欄に示すコメントを寄せており、
28
その内容は Web 上で公開されている。
遺伝子検査等に警鐘を鳴らす著書・メディア掲載事例

安藤寿康「遺伝マインド」
(有斐閣)

安藤寿康「遺伝子の不都合な真実」
(ちくま新書)

NHK スペシャル「あなたは未来をどこまで知りたいですか-運命の遺伝子」
(平成 25
年 7 月 7 日放映)への取材

Science Media Center「遺伝子診断による教育サービス」
(平成 22 年 11 月 10 日)に対
する専門家コメント(下記)
「遺伝子診断による教育サービス」に対する安藤教授のコメント 5
ふたごによる行動遺伝学研究にたずさわっている研究者です。遺伝子が体つきや病気だ
けでなく、能力や性格、才能にも少なからぬ影響を及ぼしていることは、私たちの研究か
らも明らかになっています。しかしそれは何百何千もの遺伝子の全体的な効果であって、
いま進められている遺伝子検査でわかるような単一、もしくは少数の遺伝子の影響はきわ
めて小さいこともまた明らかになっています。それは百人からなるオーケストラが奏でる
音楽のよしあしを、たった一人のヴァイオリン奏者の出来不出来で説明するようなもので
す。確かに一人ひとりの演奏の積み重ねが全体の音楽のよしあしを形作ってはいます。し
かし一人の奏者の音質のちょっとしたちがいが音楽全体に及ぼす影響はごくわずかで、他
の奏者の音(=他の遺伝子の影響)や、どの指揮者のもとでどんな曲を弾くか(=環境や
状況の違い)によって、その影響は異なってきます。
もしそのヴァイオリンが壊れていたり、まったくのド素人が調子っぱずれの音を出して
いたら、確かに音楽全体がおかしくなることはあるでしょう。それが単一遺伝子による遺
伝病に相当します。しかし通常の演奏家たち(ノーマルな遺伝子群)の個性の違い(遺伝
子のタイプの違い、いまの遺伝子検査でわかるのはこのレベル)から、オーケストラ全体
の音楽性(才能や性格に相当する)を説明するのは、ほとんど無意味です。
いま研究が本当に明らかにしようとしているのは、オーケストラのなかの一人の「天才」
を探すことではなく、遺伝子たちのオーケストラがどんな編成をし(遺伝構造の解明)
、一
つ一つの楽器がどのように音を出しているのか(個々の遺伝子の発現過程)を明らかにす
ることです。
③ 一般向けの講演会、書籍による研究成果の社会発信
本プロジェクト終了後は、双生児家庭への直接的な子育て支援や交流機会の創出は行っ
ていないが、地域への講演会や著書による学術的成果発表を通じて、一般に向けた研究成
5
参考 URL:http://smc-japan.org/?p=489
29
果の発信を行っている。
講演会としては、地域の子育て支援グルーブからの依頼を受け、ふたごの発育研究や行
動遺伝学の知見を育児に役立てるための講演を行い、成果を社会に還元している。

板橋区志村健康福祉センター「ツインキッズ講演会」
(2011 年 10 月 13 日、講演者:
野嵜茉莉・安藤寿康)

多摩市教育相談センター「教育相談にいかす行動遺伝学:子どもの問題行動における
遺伝要因・環境要因」
(2012 年 6 月 12 日、講演者:藤澤啓子)

国立市公民館講演会「遺伝と環境は人の成長にどう影響するか?-『遺伝子の不都合
な真実』
」
(2013 年 5 月 18 日、講演者:安藤寿康)

千葉敬愛短期大学「現代子ども学」公開講座「
『環境の不都合な真実-すべての能力は
環境である』の裏側にあるもの」(2013 年 5 月 21 日、講演者:安藤寿康)
また、前述のチンパンジーの双生児と人間の双生児のデータを比較分析した研究結果は、
学会発表されるとともに、動物公園の一般客対象のセミナーにて紹介されている。
一般向けの著書としては、前述の「遺伝マインド」
(有斐閣、2011)、
「遺伝子の不都合な
真実」
(ちくま新書、2012)に加え、㈱創元社より、シリーズ「ふたご研究の世界」(仮))
順次刊行予定である。
④ 教育的な示唆の提示(ADHD 傾向の高低と親の子育ての方法との関係)
直接教育的な示唆をもつ研究成果としては、Fujisawa,K., Ozaki, K., Suzuki,K., Yamagata,Y.,
Kawahashi, I. & Ando, J. (2012) The genetic and environmental relationships between head
circumference growth in the first year of life and sociocognitive development in the second year: A
longitudinal twin study. Developmental Science ,15(1), 99-112.が挙げられる。この研究では、
ADHD(注意欠陥・多動性障害)傾向の高低によって、親のネガティブな養育態度と子ど
もの行為障害の因果関係が異なり、特に ADHD 傾向の高い子ではこの因果関係が親の子育
ての仕方によって導かれている傾向が大きい(低い場合は遺伝要因による傾向が強いのに
対して)ことを示した。この場合は親が自らの養育行動を制御するトレーニングを行うこ
とで、行為障害症状の改善が期待できる。逆に ADHD 傾向の低い健常域の子どもの場合は、
特定の行為障害を増幅させてしまう特定の環境をみつけてそこに特別な介入が必要である
ことを示唆している。このように子どもの遺伝的素因に合わせて教育の方法を変えること
で効果を期待できるような現象(
「遺伝・環境交互作用」
)は、今日の行動遺伝学研究の一
つの主流であり、本研究チームの蓄積したデータベースからも、様々な発見が出てきてお
り、今後さらなる発見が生じる可能性もある。
30
3.1.3.2. 研究開発成果がもたらした科学技術的、社会的及び経済的な効果・効用、波及効果
(1) 研究者・関与者の活動は、科学技術的・社会的な面での人材育成・キャリアパスの開
拓や人的ネットワークの展開に繋がったか。
① 若手人材による研究・教育職の獲得
研究員等として本プロジェクトに参加し業績を挙げた若手人材は、そのすべてが研究・
教育職に就いている。

尾崎幸謙氏:国立統計数理研究所研究員→筑波大学大学院ビジネス科学研究科

鈴木国威氏:大阪人間科学大学人間科学部

山形伸二氏:(独)大学入試センター研究員

高橋雄介氏:京都大学大学院教育学研究科助教

佐々木掌子氏:立教女学院短期大学特任助教

出野美那子氏:武蔵大学通信教育課程特任助教

野嵜茉莉氏:博士号取得(東京大学)、東京大学大学院総合文化研究科生命・認知学
科助手
② 新たな研究ネットワークの形成、異分野研究者との連携の発生
本プロジェクトを契機に、大阪大学医学部ツインリサーチセンターとの交流が生じてい
る。第 27 回日本双生児研究学会(平成 25 年 1 月 27 日)にてジョイントシンポジウムを開
催した他、随時研究打ち合わせを実施している。その他、前述のように、各国のふたご研
究チーム間の国際連携に向けた International Twin Rsgistry 会議メンバーの活動、フランス高
等師範学校エコール・ノルマル・シュペリウール及びイスラエルの研究者との共同研究、
京都大学霊長類研究所との連携等が生じている。
また、特にこれまで遺伝的な視点からのアプローチが、その必要性は認識されつつも実
際に行われることのほとんどなかった行動経済学、社会学(特に階層論)の研究者との連
携がなされるようになった。①行動経済学と意思決定の領域でフランス・イスラエルの研
究者との共同研究が開始された事例、②研究の実施には至っていないが、行動・労働経済
学への行動遺伝学の応用を目的として、東北大学・大阪大学・東京大学の社会学者、経済
学者と連携して科研費特別推進研究と基盤研究(S)に研究代表として応募申請した事例等
がこれに該当する。
31
(2) 研究者・関与者の活動は、社会の幅広い関与者(ステークホルダー※)にどのような
社会面(教育面)
・経済面での影響・効果をもたらし、研究開発成果の社会での活用・
拡大・定着に繋がっているか。
(※当初想定していなかったステークホルダーも含む)
① 慶應義塾ふたご行動発達研究センターの運営継続
本プロジェクト実施期間中の平成 19 年に設立された「慶應義塾ふたご行動発達研究セン
ター」を維持し、青年期・成人期の双生児コホートとあわせた包括的なふたご研究の拠点
として研究活動を続けている。
慶應義塾大学ふたご行動発達研究センターの研究活動
ふたご行動発達研究センターは、近年発展の著しいゲノム科学や脳科学、進化生物学など
の生命科学的アプローチと、心理学、社会学、経済学などの社会科学的アプローチを統合し、
人間の個性についての総合的理解を探求することを目的としている。現在、青年期・成人期
のふたごを対象とした「慶應義塾双生児研究(KTS)6」と、乳幼児期・児童期のふたごを対
象とした「首都圏ふたごプロジェクト(ToTCoP)」の研究活動を実施している。RISTEXの
研究開発プログラムの成果は、主に「首都圏ふたごプロジェクト」に継承されている。
図 5 ふたご行動発達研究センターの活動
資料:慶應義塾大学ふたご行動発達研究センターHP(http://kotrec.keio.ac.jp/)
6
KTS グループ は、慶應義塾大学先導研究センター内「ふたご行動発達研究センター」
(KoTReC)のプ
ロジェクトとして、人間のパーソナリティ、メンタルヘルス、認知能力、社会性などに及ぼす遺伝と環
境の影響の解明を目的とした学術研究組織である。慶應義塾大学の研究者を中心に、東京大学、京都大
学、神戸大学、九州大学、大阪大学などの研究者、大学院生がこの研究に関わっている(資料:KTS
ホームページ)
。
32
② 著書の影響
本プロジェクトの成果もふまえて執筆された安藤寿康「遺伝子の不都合な真実」
(ちくま
新書)は、読売新聞、日本経済新聞、中央公論等に書評を取り上げられ、刊行後 1 年間に
4 刷 17,500 部を発行していることから、一定の評価を得ているものと言える。
なお、本書は平成 25 年度日本大学歯学部の入学試験問題(国語の読解問題)に引用され
ている。
③ 双生児研究データベースのアーカイブ化への取組
前述の動画データを含む双生児研究に関するデータベースのアーカイブは我が国の貴重
な財産となり得る。双生児データベースについては、現在ふたご行動発達研究センターと
して利用するために内部的にデータの整理統合が進められており、一部利用を始めている
段階にあり、
双生児データを利用できるような教育プログラムの開発も目指されているが、
データベースを対外的に公開するめどは立っていない。これは、同センターが外部資金に
よる研究活動を実施している時限りの時限的な組織であり、大学のでの恒常的な組織に
なっておらず、遺伝子情報を含む個人情報を機関として責任を持って長期的に保持できる
制度的基盤を伴っていないことに起因している。データベースのアーカイブ化に向けては、
同センターが大学内に研究組織として公認される、あるいは NPO 化する等の制度的変革が
必要であり、研究代表者等は学内の支援を求めている状況である。
33
3.1.4. 付属資料
3.1.4.1 主要研究者動静表
氏名
研究期間中の所属・役職
安藤 寿康
慶應義塾大学 文学部 教授
野中 浩一
和光大学 人間関係学部 教授
国立保健医療科学院 研修企画部
加藤 則子
部長
大木 秀一
石川県立看護大学 助教授
藤澤 啓子
慶應義塾大学文学部 助教
現在の所属・役職
慶應義塾大学文学部教授
和光大学人間関係学部 教授
国立保健医療科学院 統括研究官
石川県立看護大学 教授
慶應義塾大学文学部 助教
3.1.4.2. 研究開発プロジェクト終了後(平成 21 年 12 月以降)の主要研究成果
(1) 論文
1
2
3
4
5
6
論文名
Genetic and Environmental
Etiology of Infant
Hemodynamic Response to
Speech Stimuli: A
Near-Infrared Spectroscopy
Study of Twins.
著者
掲載媒体
Suzuki, K. & Ando,
Psychology, 4, pp.14-18
J.
Shikishima,C..,
Culture moderates the genetic
Hiraishi, K.,
and environmental etiologies
Yamagata, S.,
of parenting: A cultural
Neiderhiser, J.M. &
behavior genetic approach.
Ando, J.
Yamagata, Shinji
Bidirectional influences
Takahashi, Yusuke
between maternal parenting
Ozaki, Koken
and children's peer problems:
Fujisawa, Keiko K.
A longitudinal monozygotic
Nonaka, Koichi
twin difference study.
Ando, Juko
Keiko K.
Fujisawa, Sally J.
Wadsworth,
A multivariate twin study of
Shinichiro Kakihana,
early literacy in Japanese
Richard K. Olson,
kana.
John C. DeFries,
Brian Byrne, Juko
Ando
Two Cohort and Three
Ando, J.; Fujisawa,
Independent Anonymous Twin
K.K.; Shikishima,C,
Projects at the Keio Twin
Hiraishi, K.他 20 名
Research Center (KoTReC)
Yu, C. C, Furukawa,
Genome-wide DNA
M., Kobayashi, K.,
methylation and gene
Shikishima, C., Cha,
expression analyses of
P. C., Sese. J.,
monozygotic twins discordant
Sugawara. H.,
for intelligence levels. " .
Iwamoto, K., Kato,
doi:10.1371/journal.pone.0047
T., Ando, J., & Toda,
081
T.
34
年月
2012
Social Psychological &
Personality
Science,4(4),pp,434-444
2012
Developmental
Science,16(2),pp,249-259
2013
Learning and Individual
Differences,24,pp,160-167
2013
Learning and Individual
Differences,16(1),pp,202-21
6
2012
PLoS ONE, e47081
2012
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
The second to fourth digit
ratio (2D:4D) in a Japanese
twin sample: Heritability,
prenatal hormone transfer and
association with sexual
orientation
On “Homo educans”
hypothesis
The Association between
Sibling Relationships and
Adjustment among Japanese
Twin Children Compared with
Singletons.
Hyperactivity/inattention
problems moderate
environmental but not genetic
mediation between negative
parenting and conduct
problems.
The genetic and environmental
relationships between head
circumference growth in the
first year of life and
sociocognitive development in
the second year: A
longitudinal twin study.
Gray の行動抑制系と不安・
抑うつ—双生児法による 4
つの因果モデルの検討
Cloninger のパーソナリティ
次元と IQ―遺伝要因と環境
要因の重なりから
Genetic and environmental sex
differences in mental rotation
ability: A Japanese twin study.
Kai Hiraishi, Shoko
Sasaki, Chizuru
Shikishima, &
Juko Ando
Archives of Sexual
Behavior,41(3),pp,711-724
2012
Ando, J.
Logic and
Sensibility,3,pp,147-156
2012
Nozaki, M.,
Fujisawa, K. K.,
Ando, J., &
Hasegawa, T.
Proceedings of the 15th
Eoropean Confrence of
Developmental
Psychology,pp,181-186
2012
Fujisawa,K.K.,
Yamagata,S., Ozaki,
K. & Ando, J.
Journal of Abnormal Child
Psychology.,40(2),pp,189-20
0
2012
Fujisawa,K., Ozaki,
K., Suzuki,K.,
Yamagata,Y.,
Kawahashi, I. &
Ando, J.
Developmental
Science.,15(1),pp,99-112
2012
山形伸二・高橋雄
パ ー ソ ナ リ テ ィ 研
介・木島伸彦・大野
究,20,pp,100-117
裕・安藤寿康
2012
敷島千鶴・木島伸
彦・安藤寿康
2012
パーソナリティ研
究,21(2),pp,197-200
Suzuki, K.,
Twin Research and Human
Shikishima, C. &
Genetics,14(5),pp,437-443
Ando, J.
Chizuru Shikishima,
Shinji Yamagata, Kai
A simple syllogism-solving
Hiraishi, Yutaro
test: Empirical findings
Intelligence,29,pp,89-99
Sugimoto, Kou
and implications for g research
Murayama, & Juko
Ando,
共感性形成要因の検討—遺
敷島千鶴, 平石 界, 社 会 心 理 学 研
伝—環境交互作用モデルを
山形伸二, 安藤寿康 究,26(3),pp,188-201
用いて—
日本社会精神医学会雑
双生児研究と心の遺伝
安藤寿康
誌,20,pp,323-330
パーソナリティ特性研究の
高橋雄介 , 山形伸
新展開と経済学・疫学など
心理学研究,81(1),pp,63-67
二 , 星野崇宏
他領域への貢献の可能性
幼児の箸の持ち方の発達的
生活科学研究
変化における遺伝と環境の 鈴木国威・安藤寿康
33,pp,141-145
影響
35
2011
2011
2011
2011
2011
2011
(2) 発表・講演
発表・講演名
Development and education of
formal and informal logical
1
thinking ability: A Japanese
twin study.
Genetic overlapping among
intelligence, educational
2 attainment, occupational
status, marriage, and having
children: Japanese female
Long term genetic effects of
working memory on cognition
and personality in adolescence
and adulthood: A 14 year
3
longitudinal study of twins.
4
コミュニケーションの教育
の生物学的基盤
シンポジウム・セミナー名
(会場)
Shinji Yamagata; 43rd Annual Meeting of
Chizuru
the Behavior Genetics
Shikishima; Kai Association(Marseille,
Hiraishi; Ju
Frnace)
Chizuru
43rd Annual Meeting of
Shikishima;
the Behavior Genetics
Shinji Yamagata;
Association(Marseille,
Kai
Hiraishi;
Frnace)
Nobuhiko Kijim
Juko Ando;
Chizuru
Shikishima;
43rd Annual Meeting of
Nobuhiko
the Behavior
Genetics
Kijima; Kai
Association(Marseille,
Hiraishi; Yusuke Frnace)
Takahashi;
Shinji Yamagata
日本発達心理学会第 24
回大会(大会委員会企画
安藤寿康
シンポジウム)(明治学院
大学、東京)
講演者
藤澤啓子・安藤
日本発達心理学会第 24
シンポジウム「自己制御の 寿康・出野美那
回大会(明治学院大学、東
5
発達行動遺伝学」
子・田中麻未・
京)
子安増生
Genetic and cultural
transmission of political
6
attitude: A study of Japanese
adolescents and their parents
Genetics of decision making:
7
A Japanese twin study
Shinji Yamagata,
Chizuru
Shikishima, &
Juko Ando
Chizuru
Shikishima, Kai
Hiraishi, Shinji
Yamagata, Juko
Ando,&
Mitsuhiro Okada
2013.6.28-7.2
2013.6.28-7.2
2013.6.28-7.2
2013.3.15
2013.3.15
42nd Annual Meeting of
the Behavior Genetics
Association(Edinburgh,
United Kingdom)
2012.6. 22-6.25
42nd Annual Meeting of
the Behavior Genetics
Association(Edinburgh,
United Kingdom)
2012.6. 22-6.25
2012.6. 22-6.25
Genetic stability and change
of personality traits in
8
adulthood: A 7-year
longitudinal study
Juko Ando
42nd Annual Meeting of
the Behavior Genetics
Association(Edinburgh,
United Kingdom)
Gene-environment interactions
in development of merits
9
among Japanese
middle-school students.
Yamagata, S.,
Shikishima, C.,
Muayama, K. &
Ando, J.
The 2012 Annual Meeting
of the American
Sociological
Association(Denver, USA)
36
年月
2012.8
Yu, C. C.,
Furukawa, M.,
Kobayashi, K.,
Genome-wide DNA
Shikishima, C.,
methylation and gene
Cha, P. C.,
10 expression analyses of
Sesse, J.,
monozygotic twins discordant
Sugawara, H.,
for intelligence levels.
Iwamoto, K.,
Kato, T., Ando,
J., Toda, T. ,
The 62nd Annual Meeting
of American Society of
Human Genetics,( San
Francisco, USA)
利き手、利き足、利き耳に
日本双生児研究学会第
鈴木国威・安藤
26 回学術講演会(Bergen,
11 影響を与える遺伝及び環境
寿康
構造
Norway)
Whose happiness increases,
and why? A longitudinal twin
12
analysis over a decade-long
interval
13
Identifying the univariate
ACDE model.
Twin study of Big 5
14 personality traits and
substance use/abuse
Chizuru
Shikishima,
Shinji Yamagata,
Kai Hiraishi, &
Juko Ando
The 41st Annual Meeting
of the Behavior Genetics
Association(Newport,
USA)
The 41st Annual Meeting
of the Behavior Genetics
Association(Newport,
USA)
21st World Congress on
Psychosomatic
Medicine(Seoul , Korea)
Ozaki, K.
Ando, J
Hiraishi, K.,
Shikishima, C.,
Heritability of decisions and
Takahashi, Y.,
15 outcomes on public goods
Yamagata, S.,
games
Sugimoto, Y., &
Ando, J
社会階層・メリットと教育 山形伸二, 敷島
16 達成—行動遺伝学的アプ
千鶴, 鹿又伸
ローチ—
夫, 安藤寿康
On Homo educans hypothesis:
Ando, J.
17 Evolution of teaching and
genetic variation in education.
Homo educans 仮説の理論
18 的・実証的検討 -狩猟採集 安藤寿康
民の技能伝達の事例から
メンタルローテーション能
力の遺伝及び環境の影響と
19
鈴木国威
加齢による変化 双生児法
を用いて
指差しや把握動作時の手の
20
鈴木国威
選択に関して
Human Behavior and
Evolution Society 23th
Annual Conference
(Montpellier, France)
日本教育社会学会第 63
回大会(お茶の水女子大
学, 東京)
慶應義塾大学グローバ
ル COE シンポジウム
"Toward an Integration of
Logic and Sensibilityfrom Neuroscience to
Philosophy"(慶應義塾大
学三田キャンパス)
第 4 回日本人間行動進化
学会(北海道大学)
2012.11
2011.8.23-8.27
2011.6.6-6.9
2011.6.6-6.9
2011 8.27
2011.6.29-7.3
2011.9.23-9.25
2011.9.12
2011.11,19
日 本イメー ジ心理学 会
第 12 回大会(富山国際学 2011.10.15-10.16
園)
第 23 回日本発達心理学
会大会(愛知)
37
2012.3.9
子どものパーソナリティテ
鈴木国威・安藤 第 8 回子ども学術会議学
21 ンポの遺伝的影響と環境的
術集会(武庫川女子大学)
寿康
影響
鈴木国威・安藤 日本心理学会第 75 回大
22 幼児のリズム動作の個人差
寿康
会(日本大学)
山形伸二・加藤
憲司・出野美那
就学前後期の子どもの適応
日本心理学会第 75 回大
23
子・藤澤啓子・
と慢性疲労
会(日本大学)
鈴木国威・高橋
雄介・安藤寿康
CC Yu, M
Furukawa, K
Genome-Wide DNA
Kobayashi, C
Methylation and Gene
Shikishima, PC
Expression Analyses of
日本人類遺伝学会第 56
Cha, J Sese, H
24
Monozygotic Twins
回大会(日本大学)
Sugawara, K
Discordant for Intelligence
Iwamoto, T
Levels.
Kato, J Ando, T
Toda
Genetic and environmental
etiologies of logical thinking
日本心理学会第 75 回大
25
山形伸二
会(日本大学)
ability: Do genes and school
matter?
指比(2D:4D)の双生児デー
平石 界・佐々
タ分:遺伝率、出生前ホル
日本心理学会第 75 回大
26
木掌子・敷島千
モン移動、性的指向との関
会(日本大学)
鶴・安藤寿康
係
Chihchieh Yu、
古川真理、小林
Genome-Wide DNA
千浩、敷島千
Methylation and Gene
鶴、Pei-Chieng 第 34 回日本分子生物学
Expression Analyses of
Cha、瀬々潤、 会年会(パシフィコ横浜
27
Monozygotic Twins
菅原裕子、岩本 (横浜))
Discordant for Intelligence
和也、加藤忠
Levels.
史、安藤寿康、
戸田達史
(3) 書籍・報告書等
書籍・報告書名
遺伝子の不都合な真実-すべ
1
ての能力は遺伝である
遺伝マインド-遺伝子が織り
2
なす行動と社会
教育心理学―教育の科学的解
3
明をめざして
4 発達科学入門Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ
著者
出版社
2012.10.2-10.2
2012.9.15-9.17
2012.9.15-9.17
2011.11.12
2012.9.15-9.17
2012.9.15-9.17
2011.12.13
安藤寿康
筑摩書房(ちくま新書)
年月
2013
安藤寿康
有斐閣
2012
安藤寿康・鹿毛
慶應義塾大学出版会
雅治編
高橋恵子・湯川
良 三 ・ 安 藤 寿 東京大学出版会
康・秋山弘子編
2011 遺伝と環境 無藤隆・子安
安藤寿康
増生編 『発達心理学Ⅰ』38-46
遺伝と環境 京都大学心理学
6
安藤寿康
連合編 『心理学概論』179-183
5
38
2013
2012
東京大学出版会
2011
ナカニシヤ出版
2011
7
8
9
10
認知の個人差と遺伝日本認知
心理学会(監修)箱田裕司編 『現
安藤寿康
代の認知心理学 7―認知の個人
差―』103-129
パーソナリティと遺伝 鈴木
公啓編『パーソナリティ心理学 山形伸二
概論―性格理解への扉』39-49
パーソナリティの遺伝子探し
鈴木公啓編 『パーソナリティ 高橋雄介
心理学概論―性格理解への扉』
知能の遺伝鈴木公啓編『パーソ
ナリティ心理学概論―性格理 敷島千鶴
解への扉』50
北大路書房
2011
ナカニシヤ出版
2012
ナカニシヤ出版
2012
ナカニシヤ出版
2012
(4) 新聞・テレビ等
内容
年月
1
NHK 総合 「爆笑問題のニッポンの教養~双子だけの秘密」 出演
2010.4.13
2
TBS ラジオ 「夢・夢エンジン」 出演
2011.11.26
3
FM 東京
2012.1.13
4
TBS テレビ 「健康カプセル!ゲンキの時間」 出演
2013.1.13
5
日朝日新聞朝刊 「能力と性格の遺伝子検査」に対する安藤の批判コメン
ト
2011.6.27
6
日讀賣新聞夕刊 双生児研究の紹介と安藤のコメント
2010.4.22
7
ニュートンムック別冊「知りたい! 遺伝のしくみ」にプロジェクトとその
成果紹介、安藤の寄稿論文掲載
2010.1
8
ニュートンムック別冊「遺伝とゲノム-どこまでわかるのか」再録
2013.7
9
ナショナルジオグラフィック日本版 「研究室へ行ってみた」に安藤のイ
ンタビュー記事
2012.1.17
10
週刊現代 2013 年 5 月 4 日号 「大研究 遺伝するもの、しないもの」
に安藤へのインタビュー紹介
2013.5.4
「シンクロのシティ」 出演
(5) 特許
なし
39
(6) 獲得グラント
グラント名
1
2
3
4
5
科学研究費補助
金・基盤研究(S)
財団法人こども
未来財団 児童
関連サービス調
査研究等事業
調査研究
財団法人中山隼
雄科学技術文化
財団 研究助成
事業
科学研究費補助
金 新学術領域
研究
科学研究費補助
金 若手研究(A)
配分額
実施
年度
社会性とメンタルヘルスの双生
児研究-遺伝子と脳活動をつな 安藤寿康
ぐ
163,300 千円
2009~
2011
就学前児童の社会的適応に寄与
する養育環境:ふたご「の」及 藤澤啓子
びふたご「による」研究
3,000 千円
2010
幼児期の社会的認知能力と遊び
藤澤啓子
に関する発達行動遺伝学研究
300 千円
2011
9,600 千円
2012~
2014
21,100 千円
2012~
2015
タイトル
採択者
思春期の精神病理に対する情
動・認知的自己制御力の影響に 藤澤啓子
関する発達行動遺伝学研究
養育態度が実行機能の発達に及
ぼす影響に関する発達行動遺伝 藤澤啓子
学研究
(7) その他
受賞
受賞名
タイトル
共感性形成要因の検討—遺伝—環境交互作
第 13 回日本社会心理学会奨励 用モデルを用いて—『社会心理学研究』26(3),
1
論文賞
188-201.敷島千鶴, 平石 界, 山形伸二, 安藤
寿康
40
年月
2011
3.2. 社会性の発達メカニズムの解明:
自閉症スペクトラムと定型発達のコホート研究
(研究代表者:神尾 陽子)
41
3.2.1. 研究開発プロジェクトの概要
研究開発領域
「脳科学と社会」研究開発領域
研究開発プログラム名
研究開発プログラム「脳科学と教育(タイプⅡ)
」
研究開発プロジェクト名
社会性の発達メカニズムの解明:自閉症スペクトラムと定型発
達のコホート研究
研究代表者(現所属)
神尾 陽子(国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所
児童・思春期精神保健部 部長)
研究実施期間
平成 16 年 12 月~平成 21 年 11 月(2004 年 12 月~2009 年 11 月)
※現所属は、追跡調査時のものを記載
3.2.1.1. 研究開発の概要と研究開発目標
自閉症スペクトラム(ASD:Autistie Spectrum Disorders)の発達パターンを明らかにし、
早期マーカーや病態形成モデルを提示する。具体的な研究開発目標は以下の通りである。

自閉症スペクトラムの 1 歳から 3 歳までの発達パターンを明らかにする。

自閉症スペクトラムの早期マーカーを探索して、妥当性を検証する。

地域コホートのデータに基づき、自閉症スペクトラムの症状発展の保護要因・リスク
要因を同定する。

児童・青年・成人での症例対照研究により、自閉症スペクトラムの社会性障害のライ
フステージにおける現れのメカニズムを明らかにする。

自閉症スペクトラムと Broader autism phenotype の遺伝子発現パターンを明らかにする。

自閉症スペクトラムの病態形成モデルを提案する。

自閉症スペクトラム者の電気生理学的、神経機能画像的、神経構造画像的特徴を同定
する。特に、これまで系統的研究が空白であった視覚処理機能を中心に系統的に調べ
る。

定型発達過程におけるコミュニケーション行動及びその基盤の実験的検討とデータ
ベースを構築する。
42
3.2.1.2. 研究開発の実施体制
※所属・役職は研究開発プロジェクト実施期間中のものを記載
(1) 自閉症行動グループ
氏 名
所
神尾 陽子
加我 牧子
井口 英子
小山 智典
福井 裕樹
稲垣 真澄
属
役
職
研究開発項目
参加時期
国立精神・神経セ 児童思春
すべての研究項目の研究統 平成16年12月~
ンター精神保健 期保険部
括
平成21年11月
部長
研究所
国立精神・神経セ
ンター精神保健
研究所
国立精神・神経セ
ンター精神保健
研究所
国立精神・神経セ
ンター精神保健
研究所
国立精神・神経セ
ンター精神保健
研究所
国立精神・神経セ
ンター精神保健
研究所
精神保健
研究所所 自閉症児の診断
長
自閉症幼児、学童を対象と
する自閉症スクリーニング
研究員
と行動評価・診断・データ
平成19年4月~
平成20年3月
平成18年4月~
平成21年11月
精神発達 自閉症データの臨床疫学統 平成19年4月~
研究室長 計的解析
平成21年11月
司法精神
医学部室 MRI、DTI解析
長
平成19年4月~
平成20年3月
知的障害
自閉症児の診断
部部長
平成20年4月~
平成21年3月
自閉症児、学童、成年成人を
対象とする実験計画立案・行
動実験・脳機能測定・解析
自閉症児、学童、成年成人を
博士研究
対象とする実験計画立案・行
員
動実験・脳機能測定・解析
研究員
平成21年4月~
平成21年11月
片桐 正敏
JST
田中 優子
JST
村井 俊哉
京都大学大学
講師
院・医学研究院
自閉症学童および青年成人 平成16年12月~
の脳機能測定
平成18年3月
長谷川寿一
東京大学大学
院・総合文化研究 教授
科
自 閉 症 お よ び 定 型 発 達 幼 平成17年7月~
児・学童の行動実験計画
平成19年3月
東条 吉邦
茨城大学・教育学
教授
部
自閉症学童を対象とする行 平成17年7月~
動および脳機能実験の計画 平成19年3月
安達 潤
北海道教育大
教授
学・障害児教育
斎藤 真善
北海道教育大
准教授
学・障害児教育
大森 隆司
玉川大学学術研
究所・知能ロボッ 教授
ト研究施設
室橋 春光
北海道大学大学
教授
院・教育学研究科
高木 晶子
国立秩父学園
園長
自閉症幼児、学童および青
年成人を対象とする行動実
験・データ解析
自閉症幼児、学童および青
年成人を対象とする行動実
験・データ解析
自閉症児童および成人を対象
とする行動および脳機能実験
の計画・実施・データ解析
自閉症児童および成人を対
象とする行動および脳機能
実験のデータ解析
自閉症児の診断
43
平成17年2月~
平成21年11月
平成17年4月~
平成21年11月
平成17年4月~
平成21年11月
平成19年4月~
平成21年11月
平成19年4月~
平成21年11月
平成21年4月~
平成21年11月
(2) 脳測定グループ
氏
名
飛松 省三
緒方 勝也
山崎 貴男
所 属
役 職
九州大学大学
院・医学研究院・ 教授
臨床神経生理
九州大学大学
院・医学研究院・ 助教
臨床神経生理
九州大学大学
院・医学研究院・ 特任助教
臨床神経生理
研究開発項目
脳機能測定実験の統括
参加時期
平成16年12月~
平成21年11月
脳機能測定実験のデータ解 平成17年4月~
析
平成21年11月
脳機能測定実験の研究計画 平成17年4月~
立案・解析
平成21年11月
後藤 純信
国際医療福祉大
准教授
学リハ科
脳機能測定実験のデータ解 平成16年12月~
析
平成21年3月
前川 俊彦
九州大学大学院
医学研究院精神 助教
病態医学
脳機能測定実験の実施・解 平成19年7月~
析
平成21年11月
谷脇 考恭
九州大学大学
助教授
院・医学研究院
脳機能データ解析
平成16年12月~
平成19年3月
吉浦 敬
九州大学病院臨
助教
床放射線科
脳機能測定実施・解析
平成16年12月~
平成21年11月
脳機能データ解析
平成19年4月~
平成21年11月
脳機能データ解析
平成17年4月~
平成21年11月
重藤 寛史
原
寿郎
吉良龍太郎
村田 勉
宮内 哲
九州大学大学
院・医学研究院・ 講師
神経内科学
九州大学大学
院・医学研究院・ 教授
成長発達学
(独)国立病院機
小児科医
構福岡東医療セ
長
ンター
( 独 ) 情 報 通 信 機 研究
構 バ イ オ ICT グ マ ネ ー
ループ
ジャー
( 独 ) 情 報 通 信 機 研究
構 バ イ オ ICT グ マ ネ ー
ループ
ジャー
定型発達児の神経発達評価 平成17年4月~
および脳機能データ解析
平成21年11月
fMRI実験プロトコルの検討
平成19年4月~
平成21年11月
実験デザイン、プロトコル 平成19年4月~
の検討、実験刺激の作成
平成21年11月
44
3.2.1.3. 研究開発の内容
(1) 行動と脳の発達データをマルチディシプリナリーなアプローチを用いて分析
一地域の集団コホートから、早期診断評価システムにより自閉症スペクトラムと暫定診
断を受けた児を対象として、早くは 0 歳から前向き追跡により、症状形成と密接に関連す
ると考えられる行動と脳の発達データを、児童精神医学、脳科学、発達心理学、言語学な
どのマルチディシプリナリーなアプローチを用いて分析した。
(2) ASD の 1 歳から 3 歳までの発達パターンを明らかにした
多様性で特徴づけられるパターンを抽出し、ASD の早期発見・早期支援の有用性のエビ
デンスとなる重要な結果が得られた。
(3) ASD の早期マーカーを探索して、妥当性を検証した
1 歳前後での行動セットを実用的な早期行動マーカーとしうることを示し、広く乳幼児
期に芽生える社会的行動への気づきと発見の喜びに転換する手がかりとなるよう、保護者
向けのリーフレットを作成した。また、ASD 群の成長軌跡は均質ではなく、症状の重症度
によって異なる成長パターンを示すことが見出され、特徴あるサブタイプに注目すること
で一層解明される可能性が示唆された。
(4) 地域コホートのデータに基づき、ASD の症状発展の保護要因・リスク要因を同定した
ASD の環境要因について、初めて、ASD のみならず早期社会的行動との関連を見出した
が、これについても結論を出すにはさらに追試が必要である。
(5) 児童・青年・成人での症例対照研究により、ASD の社会性障害のラ イフステージ
における現れのメカニズムを明らかにした
ASD 幼児のミラーシステム機能に関連する行動を調べ、自閉症症状がミラーシステム障
害によって説明しうるとする仮説に反証的な結果を提出した。
発達的起源の古い低次知覚処理(これまでほとんどまとまったデータがない)を系統的
に調べた結果、1 次視覚領野で測定可能な低次視覚経路機能の異常が同定された。これは、
自閉症病態モデルに貢献するものと考えられる。
(6) ASD の病態形成モデルを提案した
(まだモデル構築には仮説的な段階であるが、)低次知覚処理における上記の神経生理学
45
的異常に加えて、コホートのデータベース解析から早期の感覚や運動に関する異常(未発
表)が見出されており、早期の感覚、運動異常から後の対人コミュニケーションといった
社会的異常へと発展していく経年的な病態形成過程が自閉症発症の背景にあるものと推測
された。
3.2.1.4. 研究開発の成果
自閉症スペクトラムの発達パターンを明らかにし、早期マーカーや病態形成モデルを提示
した。
(1) ASD の 1 歳から 3 歳までの発達パターンを明らかにした。

多様性で特徴づけられるパターンを抽出し、ASD の早期発見・早期支援の有用性のエ
ビデンスとなる重要な結果が得られた。
(2) ASD の早期マーカーを探索して、妥当性を検証した

1 歳前後での行動セットを実用的な早期行動マーカーとし得ることを示し、広く乳幼
児期に芽生える社会的行動への気づきと発見の喜びに転換する手がかりとなるよう、
保護者向けのリーフレットを作成した。
行動セットの具体例は以下のとおり。
<0 歳後半>
 目が合う
 身体を揺らすと喜ぶ
 イナイイナイバーを喜ぶ
 微笑みかけると微笑み返す
 名前を呼ぶと反応する
 他の子どもに興味を示す
<11 カ月~12 カ月>
 大人の注意をさかんにひこうとする
 大人の真似をする
 大人が指さしたものを見る
 欲しいものを指差しで伝える
 興味があるものを指差しで伝える
<15 カ月~17 カ月>
 興味があるものを見せに持ってくる
 大人の視線を追って、大人が見ているものを見る
 いつもと違うことがあると、親の顔を確認する
(注)国立精神・神経研究センターが保護者向けに作成しているリーフレットは次ペー
ジを参照。
46
図 6 保護者向けリーフレット
資料:国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所
「1 歳を迎えるお子さんをもつ保護者の方へ」
47

ASD 群の成長軌跡は均質ではなく、症状の重症度によって異なる成長パターンを示す
ことが見出され、特徴あるサブタイプに注目することで一層解明される可能性が示唆
された。
(3) 地域コホートのデータに基づき、ASD の症状発展の保護要因・リスク要因を同定した

ASD の環境要因について、初めて、ASD のみならず早期社会的行動との関連を見出し
たが、これについて結論を出すにはさらに追試が必要である。
(4) 児童・青年・成人での症例対照研究により、ASD の社会性障害のライフステージに
おける現れのメカニズムを明らかにした

ASD 幼児のミラーシステム機能に関連する行動を調べ、自閉症症状がミラーシステム
障害によって説明し得るとする仮説に反証的な結果を提出した。

発達的起源の古い低次知覚処理(これまでほとんどまとまったデータがない)を系統
的に調べた結果、1 次視覚領野で測定可能な低次視覚経路機能の異常が同定された。
これは、自閉症病態モデルに貢献するものと考えられる。
(5) ASD の病態形成モデルを提案した

(まだモデル構築には仮説的な段階であるが)低次知覚処理における上記の神経生理
学的異常に加えて、コホートのデータベース解析から早期の感覚や運動に関する異常
(未発表)が見出されており、早期の感覚、運動異常から後の対人コミュニケーショ
ンといった社会的異常へと発展していく経年的な病態形成過程が自閉症発症の背景に
あるものと推測された。
3.2.2. 研究開発プロジェクトの事後評価結果の概要
「事後評価報告書」に基づき、本研究開発プロジェクトに関するセンターの評価委員会
による事後評価結果を以下のように整理した。
(1) 総合評価
研究開発目標の達成度、学術的・技術的・社会的貢献、成果の社会における活用・展開
などを中心に総合的に判断して、かなりの成果が得られたと評価する。
本プロジェクトでは、我が国の自閉症スペクトラムの発達研究に関し、重要な基礎的
データの蓄積が成された。学術的貢献としては、自閉症スペクトラムと定型発達にかかわ
る乳幼児期からの行動および脳のデータベースの構築、自閉症スペクトラム児において社
会性が発達しない過程の解明、これまでの自閉症仮説の検証と自閉症モデルの提唱、早期
発見と早期治療法の提案などが挙げられる。ただし、自閉症スペクトラムの乳幼児の脳デー
48
タは、技術的困難のゆえに収集できていない。社会的貢献としては、科学的エビデンスに
もとづいて、
「子どもによって発達過程は多様であり、多面的な角度から子どもを理解し、
その子にふさわしい学習・教育の可能性と支援が必要」という知見の提出、自閉症の早期
診断に寄与しえる乳幼児健診マニュアル改訂版の発行、かかりつけ小児科医のためのリー
フレットの作成と自治体や小児医会への配布、8 から 20 ヶ月齢乳幼児の社会的行動の発達
過程に関するベースラインの特定、発達里程標の同定等、多くの成果が得られた。今後は
これらの知見を発展的に検討し、海外の既存の自閉症研究による知見と比肩し得る新たな
視点を獲得して発展させることが望まれる。障害の有無にかかわらず、
「目の前の子どもを
深く理解する」ことの大切さを今後もっと社会に発信していくことも期待される。
(2) 目標達成の状況
本プロジェクトの研究開発目標は、相当程度達成されたと評価する。
自閉症スペクトラムについて、1 歳から 3 歳までの発達パターンを明らかにし、早期マー
カーを探索してその妥当性を検証すること、保護要因・リスク要因を同定すること、社会
性障害のライフステージにおける発現メカニズムを明らかにすること等、目標は明確で妥
当であった。目標設定は広範で、研究開発実施期間内では全てを達成することが困難な、
やや遠大な目標ではあるが、対象の全体を把握するためには必要であったと考える。
限られた地域で一定期間に出生した子どもの前向き追跡はほぼ遅滞なく進んだが、自閉
症スペクトラムの例数は限られていた。また、中間評価でのコホートの規模が小さいとの
指摘により、新たな対象地域の拡大を検討したが、結果的に研究開発実施期間内に対応は
困難であった。目標達成に関しては、基礎的なデータ収集と一定の結論の導出に成功した
が、例数が多くなく統計的な結論を出すにはまだ無理がある。また、脳科学との関係につ
いても整理が必要であり、今後もう一歩踏み込んだ検討が期待される。なお、途中から他
の研究開発プロジェクトとの協働で遺伝子発現パターンの解明を目標に加えたことは評価
できる。
(3) 学術的・技術的貢献
本プロジェクトの成果は、脳科学分野の科学や技術にもある程度貢献したと評価する。
日本における、発達障害に関する初の前向きコホート研究であり、脳過剰成長説、ミラー
システム欠損説の妥当性について問題提起を行ったこと、古典的脳局所病態説を見直した
こと、低次視覚処理経路の機能不全を見出したことは、脳科学へも寄与するところがある
と考えられる。また、自閉症スペクトラムの対人処理におけるトップダウン処理とボトム
アップ処理のバランスの特異性についての数学的モデルの構築は、認知科学に貢献してい
49
ると考えられる。
一方、過去に検証あるいは反証されてきた仮説への新たな知見を得るにあたって、例数
が小さくノイズの大きな調査から得られることもあり、
「統計的に有意ではないこと」によ
り反証を得たとするには慎重な判断を要する。反証を主張するにはしかるべく検出力を保
証するようなサンプリング計画を立てねばならない。なお、自閉症の早期予測については、
そのヘテロ性ゆえに否定的な結論となった。定型児の設問通過率は母集団特性としては興
味があるが、個々の児童をその表にあてはめて判断するのは困難と思われる。自閉症群の
例数によっては多変量判別関数のアプローチが良いとも考えられる。
(4) 社会的貢献・成果の社会での活用・展開
本プロジェクトの成果は、学習・教育に関する科学的根拠を提供する上で、社会的に相
当程度貢献し、また今後もかなりの貢献ができると評価する。
乳幼児期の子どもの発達に精神医学的観点を取り入れ、精神保健学的な評価の重要性を
示唆する貴重なコホート研究であり、データに基づき「子どもによって発達過程は多様で
あり、多面的な角度から深く子どもを理解することで、その子にふさわしい教育・支援が
計画できる」というメッセージを出したことは重要な貢献である。また、8から20ヶ月
齢乳幼児の社会的行動の発達過程に関するベースラインを特定し、どの月齢までにどのよ
うな社会的行動が期待されるかといった発達里程標を同定し、自閉症の早期診断に寄与し
える乳幼児健診マニュアル改訂版を発行した。
日本はこの分野は立ち遅れているが、コホー
トのデザインは比較的緻密であり、さらに大規模に進められれば、大きな貢献に発展する
可能性がある。
社会で成果を活用・展開する取り組みについては、経過・努力も含め、きわめて有効で
あると評価する。小児科医と連携して、1 歳前後からかかりつけの医者が継続的に診てス
ムーズに発達の指導に結び付けられるようリーフレット「1 歳を迎えるお子さんを持つ保
護者の方へ」を作成し、各自治体や福岡小児科医会などで活用されている等、自治体と協
力して、早期発見のシステム作りに寄与している。また、自治体スタッフの訓練、厚生労
働省発達障害情報センターからの情報発信、発達障害者センターでの研修にも活用されて
いる。これは先進的なモデルとして注目され、他の地域でも新たな乳幼児健診システム作
りが始められている。一方で、成果の公表については、拡大解釈されない注意が求められ
る。
(5) 研究開発体制と管理運営
研究開発体制及び管理運営は概ね適正・妥当であったと評価する。
50
研究代表者が福岡から東京に異動となり、コホートの拠点が福岡、データ取得・解析拠
点が東京と距離が離れたが、問題なく研究が遂行された。また、研究代表者のリーダーシッ
プの下、3 グループが有機的に作用し、成果を出した。
(6) 費用対効果比
投入された研究開発費と予想される社会的貢献から考慮した費用対効果比については、
比較的高いと評価する。
自治体及び小児科医と協力して、乳幼児の発達指導のリーフレット、乳幼児健診マニュ
アルを用いた自閉症スペクトラムの早期発見システムを作り、他の地域でも新たな乳幼児
健診システム作成につながっている。
(7) 特記事項
コホート研究として大事なのはさまざまな指標、測定法で収集されたデータから現象の
背後に潜む要因を抽出し、要因どうしの相関、因果関係を構造的にあぶり出すことだと思
われるが、個別の指標に対して個別に発達傾向を示したに留まっているきらいがある。コ
ホート研究の特徴を生かした分析がさらになされることを期待する。
51
3.2.3. 研究開発プロジェクト終了後の展開
3.2.3.1. 研究開発成果の発展状況や活用状況
(1) 研究開発内容の進展状況
① 1 歳での自閉症早期発見のエビデンスを得た
本研究は、自閉症早期発見研究のなかで、世界でもほとんど例のない、一定規模の地域
母集団幼児を対象とした前向き縦断研究であった。1 歳で自閉症早期兆候を把握し、その
後数年間地域サーベイランスを行い、地域内での自閉症スペクトラム障害診断のつく児童
を追跡調査した。平成 21 年に研究終了した後も地域からの情報収集を続けた結果、自閉症
スペクトラム障害の 1 歳 6 ヵ月健診での早期診断の可能性を検証し、自閉症早期発見の地
域スクリーニングの臨床的有用性のエビデンスを自閉症研究専門誌上で発表している
(Inada et al., 2010, 2011; Kamio et al., 2013, under review)。その他、国際学会での招待講演
を 2010 年(北京)
、2011 年(米国)
、2012 年(フィリピン、イタリア、韓国)
、2013 年(サ
ウジアラビア)に実施しており、国際的に高い関心を集めている。現在、これらの知見を
もとに、臨床研究だけでなく、定型乳幼児を対象とするアイカメラ、NIRS、脳波、音響解
析、そして遺伝市発現解析を用いたマルチディシプリナリーな共同研究を理化学研究所と
立ちあげたところである。
なお、本研究のコホートは一般的な健康や成長に関する情報を収集することを目的とし
ておらず、自閉症スペクトラム障害という症候群及びその閾下状態にターゲットを絞り、1
歳 6 か月という年齢から早期症状を繰り返し、前向きに収集した点に特徴があり、そうし
たコホートをベースにしないと得られない自閉症早期兆候の知見が得られ、その手法が高
く評価されている。
② エビデンスに基づく日本の乳幼児健診での活用
本研究の成果にもとづき、全国 20 市町村区(東京都、長野県、岐阜県、愛媛県、埼玉県、
滋賀県、千葉県)以上の自治体における乳幼児健診のシステム改善に貢献した。具体的に
は、日常の乳幼児健診で保健師や小児科医がチェックする際の判断に役立つ知識やノウハ
ウを、研修、e-ラーニング、テレビ会議、実践指導、地域内研修用資料等の提供を通して、
地域の専門家を支援している。これは「発達障害の子どもと家族への早期支援システムの
社会実装」
(社会技術研究開発事業「研究開発成果実装支援プログラム」)の主たる活動内
容として報告されている(2012 年 10 月)。今年 7 月にも、全国の乳幼児健診に携わるリー
ダーを対象として、8 回目の発達障害総合早期支援研修を実施している。
③ 自閉症スペクトラム障害閾下状態と自閉症スペクトラム障害の共通点を指摘
本研究の地域コホートデータにおいて、自閉症発症リスクとしてしばしば指摘される、
出生時の高い母親年齢の関与について、本研究グループは、自閉症スペクトラム障害のみ
ならず診断閾下ケースにおいても関連を見出した(Koyama et al., 2011)。この診断閾値と
52
閾下との共通点への注目は、2013 年 5 月に改訂が発表された国際的精神疾患診断基準の
DSM-5 の、新しい自閉症スペクトラム障害の定義で明示された、閾値と閾下の連続性を予
見し、支持するものであった。本研究グループのあらたな症状分布に関するデータも連続
性を支持している(Kamio et al., 2013)
。今後、さらに支持的な研究報告が続くことが期待
されている。
なお、自閉症に限らず、児の神経精神障害発症へのリスクを高める要因の一つである親
(卵子や精子)の高齢について、近年、注目が高まっている。その理由は、突然変異とし
て起きる遺伝子変異の確率が格段に高まるメカニズムが明らかになってきていることから、
医学的に様々な仮説が立てられ、今後ますます遺伝研究者によって研究がすすめられてい
くものと考えられる。ただし、育児環境の問題は付随するため、まったく関連しないわけ
ではない、かつ、地域支援の観点から重要であるが、どういった性質のものかはまだ明ら
かにされておらず、
(母子の愛着の問題に起因して自閉症が生じる、伝統的な子育てをすれ
ば自閉症を防げる、といった似非学説とは全く無縁な意味で)環境の問題は、いまだに謎
として残されている。
④ 自閉症スペクトラム障害の病態形成モデルを提案
社会性や言語など高次脳機能の障害を中核症状とする自閉症であるが、病態形成を考え
る上で、発達的起源の古い低次知覚処理(これまでほとんどまとまったデータがない)を
系統的に調べ、知覚処理にみられる機能異常について一連の成果を自閉症専門誌上で発表
した(Fujita et al., 2011, 2013; Yamazaki et al., 2011; Maekawa et al., 2011; Mitsudo et al., 2011)
。
特に、低次視覚処理についての異常は最初の報告であり、自閉症病態モデルに貢献するも
のとしてテキストの一章あるいは総説を発表した(Kamio et al., 2011 in The Oxford
Handbook of Social Neuroscience; Yamazaki et al., 2011, 2013)
。自閉症の対人処理機能との関
連で注目されてきた顔処理機能不全に関しては、前述の国際誌上の発表に加え、昨年の国
際児童青年精神医学会で主催国のフランスとの日仏合同シンポジウムを企画、発表、研究
代表者が座長を務めた(Kamio et al., 2012)。現在は、本課題の分担研究者であった九州大
学の飛松教授らと MEG を用いた研究を発展させ、研究代表者が所属する国立精神・神経
医療研究センターでの研究が始まっている。
⑤ 自閉症スペクトラム障害の行動と脳構造の関連
Diffusion Tensor Imaging を用い、高次脳機能をつかさどる背外側前頭領野における神経
線維走行の異常と対人行動異常との間に相関関係を見出し、Brain Research 誌上に発表した
(Noriuchi et al., 2010)。近年、注目されている手法であることと、脳行動関連を明らかに
したことにより、引用されている。
⑥ 環境省エコチル調査への参画
専門的で詳細な臨床情報のあるコホート研究は、今でも少ない。発達障害や児童期に始
53
まる精神症状は児童期だけでなく、人の生涯にわたって心の健康や社会全体の活性化に大
きく関連する。現在、環境省が行っている大規模出生コホートのエコチル調査では、研究
代表者自身がメディカルサポートセンターのワーキンググループメンバーであることもあ
り、本研究での経験(失敗も成功も)をもとに、プロトコール作成を検討する作業を継続
して行っている。
エコチル調査は、個人では不可能な、本格的大規模出生コホート研究であるが、その一
方で、発達障害をアウトカムとしていることを考えると、臨床情報が欠けている状況であ
る。エコチル調査は今後まだリクルートが続くので、リンクさせた遺伝と環境の相互作用
を明らかにする、追加調査を計画し、幼児から脳機能、脳構造、まで含めたプロトコール
を提案していく予定である。
(2) 研究開発成果の社会での適用・定着(社会実装)状況及び社会的課題の解決への貢献状況
① 自治体の健診等への影響
さまざまな規模の自治体(研究代表者が把握している限り、20 以上)において、医師、
研究者(臨床目的あるいは研究目的)が中心となって、一般地域(クリニック受診者では
なく、リスクの低い子どもが大半である母集団)を対象とした発達障害の早期発見法が取
り入れられている。なお、
「発達障害の子どもと家族への早期支援システムの社会実装」
(社
会技術研究開発事業「研究開発成果実装支援プログラム」
)の期間中、及び実装プログラム
終了後、現在もなお導入についての問い合わせが多数寄せられている。
発達障害の早期発見法を活用する主な担い手は、乳幼児健診に中心的な役割を果たす保
健師の他、クリニックでは小児科医、心理士、児童精神科医である。
今日の日本の社会の若者の心の問題、例えばひきこもり、うつ、対人関係トラブルなど
には、発達障害やそれと関連する精神障害が密接に関与している。知的障害のない発達障
害に対する各種サービスの確立、普及は喫緊の問題であるが、最も重要な取り組みは早期
発見、早期支援であり、そのための長期経過による実証性のある早期発見法は、これまで
多かった見逃しや不適切な対応を減らし、多くの人へのサービス提供の道を拓いた。
上記のような社会実装・臨床応用の展開にあたっては、方法がエビデンスに基づいたも
のであるということ以上に、一人ひとりの親子に対して運用する際の臨床スキルについて
の、持続的な研修、助言、スーパーバイズが欠かせず、人的、物的な専門家への後方支援
を支える JST 社会実装プログラムを受けることができたために、活動を続けることが可能
となった。その成果があって、本研究終了して数年たった今、なお継続、発展している。
② 発達障害の早期発見法に関する多様なツールの開発
自治体活用に際して、地域特性に応じて運用方法を丁寧に修正する必要があり、現在、
複数バージョンを作成、検証しているところである。より簡略化されたバージョンも選択
肢の一つとして提供される予定である。また、関心の高い小児科医と協力して、クリニッ
54
クベースでの運用についても研究する予定である。乳児の発達認知神経科学的研究におい
ても研究用バージョンを社会性発達の指標として使用している。
今後の課題は、それぞれの地域特性に即した運用方法の検証と普及である。基本となる
項目は標準化させる一方で、地域社会に受け入れられ、最大効果を発揮するためには、地
域のサービスを受ける人々と提供する人々の要因を考慮することが大切である。現在、研
究代表者は新たな研究を立ち上げ、全国の臨床科との共同研究に参画している。
③ 社会への情報発信
障害の有無にかかわらず、
「目の前の子どもを深く理解する」ことの大切さを周知・啓発
していくことが求められる。本研究結果もそのことを実証(障害のカットオフは恣意的で
あり、症状分布及びリスク、病態の一部は連続的)した。研究代表者は、社会への啓発に
関しては、
目の前の子どもを深く理解し、子どもにあった対応を支援することに力を入れ、
著書、論文、講演、研修などを通して、広く国内の専門家だけでなく、一般向けにも可能
な限り多数の発信を行っている。テレビなどのメディアでもこの着眼点は注目され、2013
年 NHK のクローズアップ現代、サイエンスゼロなどではデータ提供と同時に、解説を行っ
た。その他、多くの新聞、テレビ番組製作者のインタビューにも対応を行っている。厚生
労働省発達障害情報・支援センターの HP サイトの作成には研究代表者が委員として参画
し、新たな研究成果や支援資料もアップあるいはリンクされている。また、日本学術会議
の臨床医学委員会の各種分科会では、子どものすこやかな発達を支えるシステムの提言を
作成中である。
3.2.3.2. 研究開発成果がもたらした科学技術的、社会的及び経済的な効果・効用、波及効果
(1) 研究者・関与者の活動は、科学技術的・社会的な面での人材育成・キャリアパスの
開拓や人的ネットワークの展開に繋がったか。
① 若手人材の育成・キャリアパスの開拓
研究所、大学での常勤ポストを獲得(3 名)。学位取得(3 名)。現在も実績を積み上げて
いる。獲得ポストは、公益財団法人東京都医学総合研究所認知症・高次脳機能研究分野ヒ
ト統合脳機能プロジェクトの主任研究員、信州大学講師、富山大学助教、東京大学付属病
院心理士職である。
② 人的ネットワークの拡大
研究者同士のネットワーク化に関し、本研究で試みた、異なる多領域での共同研究は歩調
を揃えるのに相互の多大な時間と労力を要したが、ネットワークの拡大につながった。研究
終了後もより密接な関係を築いて研究を発展させている。基礎研究者からの共同研究のオ
ファーが増え、多数の新しい共同研究が立ち上がっている。研究代表者が所属する国立精
55
神・神経医療研究センター当該部の研究員への応募も多領域を専門とする研究者が多く、コ
ホート研究の深化に魅力と意欲を感じていることがうかがわれる。立ち上がった共同研究の
具体例は以下の通りである。
 発達障害における病態生理・発症脆弱性・治療反応性等の解明、および新規治療法・
診断予防法の開発を目指した遺伝子解析研究
 自閉症スペクトラムにおける遺伝子発現にみられる遺伝―環境相互作用に関する研究
 脳波事象関連電位による自閉症スペクトラム障害の知覚処理機能の神経生理学的メカ
ニズムの発達的研変化に関する研究
 自閉症における言語特有の音韻体系の獲得
 自閉症スペクトラムにおける聴覚性驚愕反射の制御機構の生理学的メカニズムの解明
の研究
 脳磁図による自閉症スペクトラム障害の知覚処理機能の神経生理学的メカニズムの発
達的研変化に関する研究
 発達障害の行動解析による現象論的モデリング開発
 近赤外分光法による自閉症スペクトラム障害の実行機能および心の理論に関連した前
頭葉活動の発達的変化に関する研究
 不安症状を呈する自閉症スペクトラム児童に対する認知行動療法の有用性に関する予
備的研究
臨床家とのネットワークについては、従来のネットワークに加え、異なる領域(小児医
学、言語、心理、教育)との連携が増え、貴重な意見交換の機会が増えた。また、多領域
の学会から講演の依頼が増え、共同研究のオファー、研究員ポストの応募が増えた。
③ 新たな学問分野や技術開発への展開
プロジェクトメンバーである九州大学の飛松教授の研究室では、新しい脳機能測定技術
である MEG(脳磁図)の解析方法の開発を行っているが、発達障害研究を継続しており、
研究代表者が所属する国立精神・神経医療研究センターにある MEG で測定したデータ解
析では継続的に飛松教授から指導、助言を受けている。MEG は所有する研究施設はきわめ
て限られており、今後、ますます注目されていくアプローチである。
別のプロジェクト代表者である徳島大学の六反教授の研究室とは、本研究実施中からプ
ロジェクトを超えた連携を始めており(成果は Kuwata et al., 2011)、以来、現在も共同で
自閉症者及び自閉症者の家族を対象とする遺伝子発現解析を行っている。現在は、治療前
後での発現の変化やマイクロ RNA 解析も着手している。具体的には、自閉症成人の認知
リハビリテーションの効果が行動に現れる前に遺伝子発現に変化が現れる、という予備的
な知見が出た、との報告がなされている。まだ少数例のため、今後、追試が必要であるが、
診断や治療効果判定に有望であると考えられる。
慶応大学の安藤教授とは、双子コホートでみられた自閉症症状の解釈について研究代表
者が意見を求められるなど、複数回、意見交換を行っている。
56
(2) 研究者・関与者の活動は、社会の幅広い関与者(ステークホルダー※)にどのような
社会面(教育面)
・経済面での影響・効果をもたらし、研究開発成果の社会での活用・
拡大・定着に繋がっているか。
(※当初想定していなかったステークホルダーも含む)
① 母子健康手帳の改定に伴う項目の追加
10 年ぶりの母子健康手帳改定に際して、研究代表者の働きかけによって、乳幼児自閉症
チェックリストの一項目である「共同注意行動」が取り入れられた。発達障害、特に自閉
症スペクトラムの早期発見、早期支援は、今では世界共通の発達障害の最優先課題となっ
ている。日本では、地域格差が大きく、乳幼児健診やその後のフォロー体制が整備されて
いない地域がまだ数多い。そのようななか、1 歳という診断前の早い時期にチェック項目
として取り上げられたことにより、
「発達障害の赤信号」ではなく、「注意深く大切に育て
るための点滅信号」のような役割を果たし、支援者も家族も取り組みやすくなることが期
待されるとともに、今後の一層の普及が期待される。
② 発達障害の早期発見に関するガイドラインの作成
発達障害のコホート研究の長期経過に基づき、有用性を検討したガイドラインを近刊す
る予定である。
③ 世界各国の関係者との協力・連携
発達障害は人種や文化にあまり左右されない、普遍的な病態である。しかしながら、成
長過程には社会文化的影響は無視することができない。コホート研究にかかわるなかで、
日本と米国、そしてヨーロッパ、アジア諸国との知見の比較、研究者との意見の交換を通
して、自閉症それ自体の共通性の発見と同時に、日本のシステムの独自性があらためて認
識されることになった。今後は、日本のシステムのよいところで、諸外国にあまりないも
の、特に米国とは異なるものについて、日本の研究成果の重要な知見の一つとして、発信
していく予定である。
④ 自治体・医療関係者等への意識啓発の必要性
自治体、医療関係者の一部の問題意識の乏しさが課題として挙げられる。基礎的な臨床
知識が乏しいために誤解している人々が専門家にも多い。根気よく、ツールの実際的な知
識だけでなく、育児支援や発達支援についての哲学とともに伝えていく努力が必要である。
なお、本研究の実施前は、発達障害に関する児童精神医学的視点を含めた国内研究は皆
無であった。本研究が実施され、それまでなかったエビデンスを得ることで、それ以前と
比べて大きく取り巻く状況と周囲への影響力、発信力は変化している。意見を表明する機
会、発信する機会は格段に増しているため、それらの機会を活用して、今後も社会への実
装や啓発を進めていく予定である。
57
3.2.4. 付属資料
3.2.4.1. 主要研究者動静表
(1) 自閉症行動グループ
氏
名
神尾 陽子
稲田 尚子
井口 英子
大森 隆司
高橋 英之
室橋 春光
研究期間中の所属・役職
現在の所属・役職
国立精神・神経センター 精神保 国立精神・神経医療研究センター 精神保
健研究所 児童思春期保険部部 健研究所 児童・思春期精神保健研究部
長
部長
国立精神・神経医療研究センター 精神
国立精神・神経センター 精神保
保健研究所 児童・思春期精神保健研究
健研究所 流動研究員
部 研究員
国立精神・神経医療研究センター 精神
国立精神・神経センター 精神保
保健研究所 児童・思春期精神保健研究
健研究所 研究員
部 研究員
玉 川 大 学 学 術 研 究 所 ・ 知 能 ロ 玉川大学工学部 機械情報システム学科
ボット研究施設 教授
認知アーキテクチャ研究室 教授
玉川大学 学術研究所 知能ロ
玉川大学 脳科学研究所 研究員
ボット研究施設 協力研究員
北海道大学大学院 教育学研究
北海道大学大学院 教育学研究員 教授
科 教授
(2) 脳測定グループ
氏 名
研究期間中の所属・役職
現在の所属・役職
飛松 省三
九州大学大学院 医学研究院 臨 九州大学大学院 医学研究 基礎医学部
床神経生理 教授
門生体情報科学講座 教授
後藤 純信
国際医療福祉大学リハ科 准教授
国際医療福祉大学大学院 作業療法学分
野 教授
3.2.4.2. 研究開発プロジェクト終了後(2009 年 12 月以降)の主要研究成果
(1) 論文
国際誌
論文名
Mirroring effect in 2- and
1 3-year-olds with autism
spectrum disorder
Developmental chronology of
preverbal social behaviors in
2 infancy using the M-CHAT:
Baseline for early detection of
atypical social development
Altered white matter fractional
anisotropy and social
3
impairment in children with
autism spectrum disorder
著者
Katagiri, M, Inada, N, &
Kamio, Y
掲載媒体
Research in Autism
Spectrum Disorders, 4,
pp,474-478.
年月
2010
Inada N, Kamio Y, &
Koyama T
Research in Autism
Spectrum Disorder,
4,pp, 605-611
2010
Noriuchi M, Kikuchi Y,
Yoshiura T, Kira R,
Shigeto H, Hara T,
Tobimatsu S, Kamio Y
Brain Research, 1342,
pp,141-149.
2010
58
4
5
6
7
8
9
Utility of the Japanese version of
the Checklist for Autism in
Toddlers (CHAT-J) for
predicting pervasive
developmental disorders at age 2
Top-down and bottom-up visual
information processing of
non-social stimuli in
high-functioning autism
spectrum disorder
Parvocellular pathway
impairment in autism spectrum
disorder: Evidence from visual
evoked potentials
Reliability and validity of the
Japanese version of the
Modified Checklist for Autism
in Toddlers (M-CHAT)
Electrophysiological evidence
for selective impairment of optic
flow perception in autism
spectrum disorder
Maternal age at childbirth and
social development in infancy
Determining differences in
social cognition between
high-functioning autistic
10 disorder and other pervasive
developmental disorders using
new advanced “mind-reading”
tasks
Koyama T, Inokuchi E,
Inada N, Kuroda M,
Moriwaki A, Katagiri M,
Noriuchi M, Kamio Y
Psychiatry and Clinical
Neurosciences, 64,pp,
330-332.
2010
Maekawa T, Tobimatsu S,
Research in Autism
Inada N, Oribe N,
Spectrum Disorders, 5,
Onitsuka T, Kanba S,
pp,201-209.
Kamio Y
2011
Fujita T, Yamasaki T,
Kamio Y, Hirose S,
Tobimatsu S
Research in Autism
Spectrum Disorders,
5,pp, 277-285.
2011
Inada N, Koyama T,
Inokuchi E, Kuroda M,
Kamio Y
Research in Autism
Spectrum Disorders, 5,
pp,330-336.
2011
Yamasaki T,Fujita T,Ogata Research in Autism
K, Goto Y, Munetsuna S, Spectrum Disorders, 5,
pp,400-407.
Kamio Y, Tobimatsu S
2011
Koyama T, Kamio Y,
Inada N, Inokuchi E
Research in Autism
Spectrum Disorders,
5,pp, 450-454.
2011
Kuroda M, Wakabayashi
A, Uchiyama T, Yoshida
Y, Koyama T, Kamio Y
Research in Autism
Spectrum Disorders, 5,
pp,554-561.
2011
Mitsudo T, Kamio Y, Goto
Neural responses in the occipital
Y, Nakashima T,
cortex to unrecognizable faces
Tobimatsu S
Prepulse inhibition of startle
Takahashi H, Hashimoto
response: recent advances in
R, Iwase M, Ishii R,
12
human studies of psychiatric
Kamio Y, Takeda M
disease
Autism-associated gene
expression in peripheral
Kuwano Y, Kamio Y,
leucocytes commonly observed Kawai T, Katsuura S,
13
between subjects with autism
Inada N, Takaki A,
and healthy women having
Rokutan K
autism children
A nationwide survey on quality
of life and associated factors of Kamio Y, Inada N,
14
adults with high-functioning
Koyama T
autism spectrum disorders
11
59
Clinical
Neurophysiology,
122,pp, 708-718.
Clinical
Psychopharmacology
and Neuroscience, 9(3):
pp,102-110
2011
2011
PloS ONE,
6(9):e24723. Epub, doi:
2011.9.15
10.1371/journal.pone.0
024723
Autism, 17 (1):pp,
16-27.
2013
15
16
17
18
19
20
21
22
23
Ito H, Tani I, Yukihiro R,
Adachi J, Hara K,
Validation of an Interview-Based
Ogasawara M, Inoue M,
Research in Autism
Rating Scale Developed in Japan
Kamio Y, Nakamura K,
Spectrum Disorders, 6,
for Pervasive Developmental
Uchiyama T, Ichikawa H, pp,1265-1272.
Disorders
Sugiyama T, Hagiwara T,
Tsujii M
Individuals with Asperger's
Disorder Exhibit Difficulty in
Katagiri M, Kasai T,
J Autism Dev Disord,
Switching Attention from a
Kamio Y, Murohashi H
43:pp,395-403
Local Level to a Global Level
Electrophysiological assessment
Yamasaki T, Fujita T,
Neurosci Biomed
of visual function in autism
Kamio Y, Tobimatsu S
Engineer,1:pp,5-12
spectrum disorders
Neuropsychiatric comorbidities
Neurology Asia, 18
Kamio Y, Moriwaki A,
in autism spectrum disorders
(Supplement 1):
Inokuchi E
without intellectual disability
pp,43-45.
Altered automatic face
Research in Autism
processing in high-funcitoning
Fujita T, Kamio Y,
autism spectrum disorders:
Yamasaki T, Yasumoto S, Spectrum Disorders, 7,
pp,710-720.
Evidence from visual evoked
Hirose S, Tobimatsu S
potentials
Tsuchiya KJ, Matsumoto
K, Yagi A, Inada N,
Kuroda M, Inokuchi E,
Koyama T, Kamio Y,
Tsujii M, Sakai S, Mohri
I, Taniike M, Iwanaga R,
Reliability and validity of the
Ogasahara K, Miyachi T,
Autism Diagnostic
J Autism Dev Disord,
Nakashima S, Tani I,
Interview-Revised-Japanese
43, pp,643-662.
Ohnishi M, Inoue M,
Version
Nomura K, Hagiwara T,
Uchiyama T, Ichikawa H,
Uchida H, Kobayashi S,
Miyamoto K, Nakamura
K, Suzuki K, Mori N,
Takei N.
Kamio Y, Inada N,
Quantitative autistic traits
Moriwaki A, Kuroda M,
Acta Psychiatrica
ascertained in a national survey Koyama T, Tsujii H,
Scandinavica, 128(1),
of 22,529 Japanese
Kawakubo Y, Kuwabara
45-53 ,DOI
schoolchildren
H, Tsuchiya KJ, Uno Y,
10.1111/acps.12034
Constantino JN
Effectiveness of using the
Modified Checklist for Toddlers
J Aut Dev Disord ,DOI
Kamio Y, Inada N,
with Autism in two-stage
10.1007/s10803-013-18
Koyama T, Inokuchi E,
screening of autism spectrum
64-1
Tsuchiya K, Kuroda M
disorder at the 18-month health
check-up in Japan
Teacher-Report Screening of
Autism Research and
Autistic Traits: Utility of the
Kamio Y, Moriwaki A,
Treatment, (under
Social Responsiveness Scale for Inada N
review)
Japanese Children
60
2012
2013
2013
2013
2013
2013
2013
2013
Qualitative analyses of verbal
fluency in adolescents and
24 young adults with
high-functioning autism
spectrum disorder
Brief Report: A proposal and
validation of a short form of the
25
Modified Checklist for Autism
in Toddlers- Japanese version
Inokuchi E, Kamio Y
Research in Autism
Spectrum
Disorders(under
review)
Journal of Autism and
Developmental
Kamio Y, Inada, N, Tani I
Disorders, (under
review)
国内誌
26
27
28
29
30
31
32
33
34
35
36
37
38
論文名
発達障害の診断の意義とその
問題点
望ましい子どものこころの育ちと
環境を実現するために
発達障害の子どものさまざまな
育ちを支える
いま発達障害をどうとらえるか
広汎性発達障害
広汎性発達障害(PDD):学童
期・アスペルガー症候群
自閉症スペクトラム障害の早期
発見をめぐって
カレント・トピックス 発達障害対
策はどのようにすすめられてい
るか
20 年後を見据えた精神医学・
心身医学研究の展望特集
著者
掲載媒体
コミュニケーション障害
学,26,pp,192-197
年月
神尾陽子
学術の動向,15,pp,7
2010
神尾陽子
学術の動向, 15, pp,58-63.
2010
神尾陽子
神尾陽子
地域保健, 41 (9), pp,24-31
Cefiro, 12, pp,25-28
2010
2010
神尾陽子
こどもケア,12・1 月号, pp,6-11
2010
神尾陽子
教育と医学, 60(1), pp,49-57
2011
神尾陽子
精神科治療学, 26(1),
pp,113-116
2011
神尾陽子
児童精神医学研究の将来展
望. 学術の動向, 7, pp.15-19
特集子どもの社会性の形成・
子どもの社会性の発達の障害 神尾陽子
発達の基礎基盤, 子どもと発
育発達,10,(3),pp,161-165.
稲田尚子, 神尾陽 臨床心理学,特集「発達障害
早期アセスメントと早期支援
子
支援」,12,(5),pp,628-633
高橋秀俊,深津玲
成人 ASD の社会参加に向けて
精神科,21(6):pp,687-691
子,神尾陽子
教育と医学, 特集 1 自閉症―
自閉症スペクトラム障害の診断
神尾陽子
新しい理解, 61(4), pp,4-14.
の根拠とは何か
神尾陽子
自閉症スペクトラム障害の早期
39 発見:ライフステージにわたる支 神尾陽子
援のために
コミュニケーション障害学, 30,
pp,18-24
乳幼児医学・心理学研究, 特
稲田尚子, 神尾陽 集「自閉症スペクトラム障害の
子
早期療育への前方視的研
究」, 20,(2) ,pp, 73-81.
稲田尚子, 黒田美
日本語版反復的行動尺度修正
保, 小山智典, 宇 発達心理学研究, 23
41 版(RBS-R)の信頼性・妥当性
野洋太, 井口英子, (2), ,pp,123-133.
に関する検討
神尾陽子
アイトラッカーを用いた高機能
広汎性発達障害者における会 安達潤, 齊藤真善,
児童青年精神医学とその近
42
話の同調傾向の知覚に関する 萩原拓, 神尾陽子
接領域, 53(5), pp,561-576.
実験的検討
自閉症スペクトラム幼児に対す
40 る早期支援の有効性に対する
客観的評価:成果と考察.
61
2009
2011
2012
2012
2013
2013
2013
2012
2012
2012
(2) 発表・講演
招待講演
シンポジウム・セミナー名
年月
(会場)
th
The 20 World Congress of
the International Association
Symposium “Recent advances in
Jean-Marc Guilé,
for Child and Adolescent
face processing in autism
2012.7.24
Yoko Kamio
Psychiatry and Allied
spectrum disorders”
Professions(Paris)
Altered automatic face processing
The 20th World Congress of
in autism spectrum
the International Association
disorders ,Symposium “Recent
for Child and Adolescent
Kamio Y
2012.7.24
advances in face processing in
Psychiatry and Allied
autism spectrum disorders”
Professions(Paris)
SNU-IBS-RISTEX Joint
Symposium: The Role of
(Invited Lecture) Promoting
Basic Science for Sustainable
community-based early
Innovation in the 21th
identification and intervention
Kamio Y
Century from the Perspective 2012.12.6
services for children with
of S & T for Society and
developmental disorders and its
Developing a Bridge towards
implications for basic science
the Policy Implementation
Process.( South Korea)
he 11th Course for Academic
Development of
What are expected in child
Psychiatrists, Japan Young
Kamio Y
2012.2.17
psychiatry in Japan?
Psychiatrists
Organization(Osaka, Japan)
le novità dalla ricerca.
Autismi Le Novità Su
Diagnosi Intervento E
(Plenarie) Epidemiologia
Kamio Y
2012.10.15.
Qualità Di Vita. 3˚Convegno
dell'autismo
Internazionale (Rival Del
Garda, Italy)
Neuropsychiatric comorbidities
The 9th Asian & Oceanian
2012.3.25
in autism spectrum disorders
Kamio Y
Epilepsy Congress(Manila)
without intellectual disability
Early detection of autism
spectrum disorder at 18 months.
Scientific Panels: International
The
10th
International
Kamio, Y
2011.5.13
applications of the Modified
Meeting
for
Autism
Checklist for Autism in Toddlers
Research(San Diego)
(M-CHAT) in level 1 screening
Early diagnosis of ASD in
toddlers and school children:
Findings from community studies
Joint Academic Conference
2011.12.3
and national survey in Japan.
Kamio, Y
on Autism Spectrum
Exploring Autism Research
Disorders(Tokyo)
Collaboration between Japan and
the United States
発表・講演名
1
2
3
4
5
6
7
8
講演者
62
9
The Utility of the Modified
Checklist for Autism in Toddlers
(M-CHAT) in the
community-based health
check-up at 18 months of age in
Japan: From 5-years prospective
study. Symposium “Early
detection and interventions for
the children of pervasive
developmental disorders”
The 19th World Congress of
the International Association
for Child and Adolescent
Psychiatry and Allied
Professions/ The 6th
Congress of the Asian
Society for Child and
Adolescent Psychiatry and
Allied Professions(Beijing)
Kamio, Y
神尾陽子, 森脇
教育と医療の連携をめざす研修
愛子, 高橋秀俊,
の試み:子どもの行動の包括的
10
飯田悠佳子, 武
評価という視点を共有するため
井麗子, 荻野和
に
雄, 稲田尚子
神尾陽子, 森脇
愛子, 武井麗子,
未診断自閉症スペクトラム児者
11
稲田尚子, 井口
の精神医学的問題
英子, 高橋秀俊,
中鉢貴行
2010.6.4
第 6 回世界精神医学会アン
チスティグマ分科会国際会
議シンポジウム 27. 教育と医 2013.2.14.
学・心理学の連携における
アンチスティグマ活動.(東京)
シンポジウム 発達障害再
考:診断閾値の臨床的意義
2012.5. 25
を問い直す第 108 回精神神
経学学術総会( 札幌)
自閉症スペクトラム障害の早期
12 発見:ライフステージにわたる支
援のために.
神尾陽子
第 38 回日本コミュニケーショ
2012.5.13
ン学会( 広島)
13 発達障害と脳科学
神尾陽子(教育
講演)
第 21 回日本 LD 学会(仙台) 2012.10.8
自閉症スペクトラムの早期診断と
神尾陽子:(教育
14 早期介入‐最近の国内外の動
講演)
向
自閉症の動物研究に期待するこ
神尾陽子: (招
15 と. 精神医学と脳科学のコラボ
待講演)
レーション:今後の展望と戦略
アスペルガー症候群からのレッ
16 スン:精神医学における発達障
害再考
子どもから大人への精神病理の
17 連続性と不連続性:よりよい長期
予後を目指して
広汎性発達障害のライフステー
ジに応じた介入と予防に向けて:
疫学研究から. シンポジウム「精
18
神医学における発達障害再考:
児童期から成人期へのさまざま
な発達軌跡」
小・中学校におけるエビデンスに
もとづく学校精神保健の課題.
19 シンポジウム「教育における精神
保健ネットワークの構築を目指し
て」
神尾陽子: (招
待講演)
第 53 回日本小児神経学会
総会(横浜)
2011.5.27
第 I 部 精神疾患のモデル
動物はどこまで可能か?包
括型脳科学研究推進支援
2011.8.22
ネットワーク夏のワークショッ
プ(神戸)
日 仏 医 学 コ ロ ッ ク
2011. 10.
2011/Colloque
médical
30
franco-japonais 2011(東京)
神尾陽子:(教育
講演)
第 3 回日本小児心身医学会
関東甲信越地方会(東京)
神尾陽子
第 107 回日本精神神経学会
2011.10.27
学術総会(東京)
神尾陽子
第 107 回日本精神神経学会
2011.10.27
学術総会(東京)
63
2012.3.4
精神医学における発達障害再
20 考:児童期から成人期へのさまざ
まな発達軌跡
学会企画シンポジウム「特殊教
育学」の更なる広がりと深化をめ
ざして(I)-特殊支援教育時代の
21 「特殊教育学」の役割と関連科
学・領域からの期待と提言‐児
童精神医学の立場から:特別支
援教育へ寄せる期待と提言
児童期から成人期へ: レジリエ
22
ンスという視点
小学校児童のメンタルヘルスに
おける発達特性の観察の意義.
ラウンドテーブル 発達障害が疑
23 われる児童生徒のためのアセス
メント・バッテリーの開発と適用:
学校での早期の気づきと理解に
向けて
口頭講演(招待講演以外)
発表・講演名
Effectiveness of the early
support program for
24
2-year-old children with
autism spectrum disorders
神尾陽子
第 107 回日本精神神経学会
2011.10.27
学術総会(東京)
神尾陽子
日本特殊教育学会第 51 回
大会(長崎)
2010.9.19
神尾陽子(教育
講演)
第 51 回日本児童青年精神
医学会総会(前橋)
2010.10.28
神尾陽子
日本発達心理学会第 22 回
大会(東京)
2011.3
講演者
シンポジウム・セミナー名
(会場)
年月
The 12th International
Meeting for Autism
Research(Toronto)
2012.5.18
Can the ADOS module 4
M. Kuroda, N. Inada, Y.
25 help differentiate ASDs from Kamio, Y. Uno,T.
other psychiatric disorders? Uchiyama
The 20th World Congress
of the International
Association for Child and
Adolescent Psychiatry and
Allied Professions(Paris)
2012.7.24
White matter structure and
social impairments in
children and adolescents
26 with autism spectrum
disorder: A preliminary
diffusion tensor imaging
study(poster)
IX International congress,
Autism –Europe( Catania,
Italy)
2010.10.8
~10.10
IX International Congress
Autism Europe(Catania,
Itary)
2010.10.8
~10.10
The 29th International
Congress of Clinical
Neurophysiology(Kobe,Ja
pan)
2010.10.28
~11.1
The 29th International
Congress of Clinical
Neurophysiology(Kobe,Ja
pan)
2010.10.28
~11.1
N. Inada, M. Kuroda, &
Y. Kamio
Noriuchi M, Kikuchi Y,
Yoshiura T, Kamio Y
Katagiri, M., Yamasaki,
Familiar voice processing in
T., Tobimatsu, S., &
children with ASD
Kamio, Y
Neural basis of familiar
voice recognition in
Yamasaki T, Ogata K,
Ijichi I, Katagiri M,
28 preschool children: A
near-infrared spectroscopic Kamio Y, Tobimatsu S
study
Neural basis of abnormal
Fujita T, Kamio Y,
face perception at a
29
Yamasaki T, Yasumoto S,
preattentive level in autism
Hirose S, Tobimatsu S
spectrum disorders
27
64
Problems of reading and
writing in elementary school
30
children: Part I.Nationwide
study in Japan
Problems of reading and
31 writing in elementary school
children: Part II
Determining Sex
Differences in Social
Cognition of the Individuals
32 with and without Autism
Spectrum Disorders using
Advanced “Mind-Reading”
Tasks
Association between
Delayed Bedtime and Sleep
Problems among
33
Community-Dwelling
2-Year-Old Children in
Japan
34
35
36
37
Sleep habits and sleep
problems in school-aged
children in Japan: A
cross-sectional study
Association between
symptoms of
sleep-disordered breathing
and daytime sleepiness with
school-aged children in
Japan: A large-scale
cross-sectional survey
我が国の一般児童・生徒に
おける自閉症的行動特性と
“不器用”との関連性
地域のニーズに応じた 5 歳
児健診のあり方についての
検討:保育所・幼稚園にお
ける年中児の行動と発達に
関する意識調査
長期予後からみた広汎性発
38 達障害児とその家族に対す
る早期支援の意義、そして
その阻害要因
成人用対人応答性尺度
(SRS-A)は成人自閉症スペ
39
クトラム障害のスクリーニン
グに有用か
Inagaki M, Kobayashi T, Excellence in
Kaga M, Kamio Y
Pediatrics(London, UK)
2010.12.2
~12.4
Kobayashi T, Inagaki M, Relationship with ADHD
Kaga M, Tanaka Y,
Rating scale Excellence in
Kamio Y
Pediatrics(London, UK)
2010.12.2
~12.4
Kuroda M, Wakabayashi The 10th International
A, Uchiyama T, Yoshida Meeting for Autism
Y, Koyama T, Kamio Y Research(San Diego)
2011.5.13
Kitamura S, Enomoto M,
Kamei Y, Koyama T,
Kuroda M, Inada N,
Moriwaki A, Kamio Y,
Mishima K
SLEEP 2011, 25th
Anniversary Meeting of
the Associated
Professional Sleep
Societies, LLC
(APSS)(Minneapolis,
Minnesota, USA)
2011.6.11
~6.15
Kitamura S, Enomoto M,
Tsukada E, Kamei Y,
Worldsleep2011(Kyoto,Jap 2011.10.16
Koyama T, Moriwaki A, an)
~10.20
Kamio Y, Mishima K
Tsukada E, Kitamura S,
Enomoto M, Kamei Y,
Koyama T, Asada T,
KamioY, Mishima K
Worldsleep2011(Kyoto,Jap 2011.10.16
an)
~10.20
飯田悠佳子, 中井昭夫, 第 11 回日本発育発達学
森脇愛子, 神尾陽子
会(静岡)
2013.3.17
遠藤明代,小保内俊雅,
高橋英俊,武井麗子,稲
田尚子,森脇愛子,中鉢
貴行,神尾陽子
第 53 回 日本児童青年精
2012.11.01
神医学会(東京)
荻野和雄,稲田尚子,
高橋秀俊,神尾陽子
第 53 回児童青年精神医
学会総会(東京)
2012.11.02
第 53 回日本児童青年精
神医学会総会(東京)
2012.11.02
第 53 回日本児童青年精
神医学会総会(日本都市
センターホテル/シェーン
バッハ・サボー, 千代田
区)
2012.11.1
武井麗子,稲田尚子,黒
田美保,中鉢貴行,高橋
秀俊,内山登紀夫,神尾
陽子
高橋秀俊, 武井麗子,
子どもの発達支援に関する
森脇愛子, 井口英子,
教育-医療連携モデル事
中鉢貴行, 荻野和雄,
40
業・学校コンサルテーション
飯田悠佳子, 稲田尚子,
事業について
神尾陽子
65
1 歳 6 ヵ月健診における
神尾陽子. 稲田尚子.
41 M-CHAT を用いた自閉症早
井口英子. 黒田美保
期発見
第 53 回日本児童青年精
神医学会総会(東京)
VEP を用いた自閉症スペク 藤田貴子,山崎貴男,
42 トラムにおける視機能評価: 神尾陽子,安元佐和,
廣瀬伸一,飛松省三
小細胞系の障害
第 23 回小児脳機能研究
会(第 42 回日本臨床神経
2012.11.8
生理学会サテライトシンポ
ジウム)(東京)
高橋秀俊, 中鉢貴行,
自閉症スペクトラム児におけ
森脇愛子, 武井麗子,
43 る聴覚性驚愕反射に関する
飯田悠佳子, 荻野和雄,
神経生理学的研究.
稲田尚子, 神尾陽子
保育所・幼稚園における年
中児の行動と発達に関する 遠藤明代,小保内俊雅,
44 意識調査~発達障害が疑 高橋英俊,稲田尚子,神
われる児の地域における就 尾陽子
学前支援を考える~
自閉症スペクトラム障害成
人への感情コントロール促
黒田美保, 川久保由紀,
進プログラムの有効性の検
浅見綾, 金生由紀子,
45
証. シンポジウム 発達障害
神尾陽子
再考:診断閾値の臨床的意
義を問い直す
発達障害が疑われる児童生
徒のためのアセスメント・
46 バッテリーの開発と適用:学 藤野博, 神尾陽子
校での早期の気づきと理解
に向けて
ポスター発表
発表・講演名
Quantitative autistic traits
ascertained in a national
47
survey of 22,529 Japanese
schoolchildren
講演者
第 42 回日本臨床神経生
2012.11.8-1
理学会学術大会(京王プ
0
ラザホテル, 新宿区)
第 108 回 日本小児精神
2012.11.10
神経学会(神戸)
第 108 回精神神経学学術
2012.5. 25
総会(札幌)
シンポジウム企画)日本発
達心理学会第 22 回大会
(東京)
2011.3
シンポジウム・セミナー名
(会場)
年月
The 12th International
Y. Kamio, N. Inada, A.
Moriwaki, M. Kuroda & Meeting for Autism
Research(Toronto)
J. N. Constantino
高橋秀俊, 軍司敦子,
金子裕, 中鉢貴行,
自閉症スペクトラム障害の
廣永成人, 萩原綱一,
48 聴覚誘発定常ガンマ律動
稲田尚子, 武井麗子,
に関する予備的検討
黒田美保, 稲垣真澄,
飛松省三, 神尾陽子
北村真吾, 榎本みのり,
小中学生を対象とした睡眠 塚田恵鯉子, 亀井雄一,
49 習慣と睡眠問題に関する全 小山智典, 稲田尚子,
森脇愛子, 神尾陽子,
国調査
三島和夫
一過性の有酸素運動が子 飯田悠佳子,小川景子,
50 どもの夜間睡眠の質に及ぼ 鳥居俊,神尾陽子,高橋
す影響
秀俊,内田直
自閉症スペクトラム障害の 高橋秀俊, 中鉢貴行,
51 児童の聴覚性驚愕反射に 森脇愛子, 稲田尚子,
関する研究
武井麗子, 神尾陽子
66
2012.11.2
神経オシレーション・カン
ファレンス(自然科学研究
機構岡崎コンファレンスセ
ンター, 岡崎市)
日本睡眠学会(神奈川)
2012.5.17
2012.7.12
~7.13
2012.6.
第 67 回日本体力医学会
(岐阜)
2012.9.14
~9.16
第 35 回日本神経科学大
会(名古屋国際会議場,
名古屋市)
2012.9.18
~9.21
自閉症スペクトラム障害の
聴覚誘発脳磁界反応に関
52 する検討. シンポジウム 18
脳画像を利用した精神疾患
研究シーズ
自閉症スペクトラム児の聴
覚性驚愕反射に関する神
53 経生理学的検討. シンポジ
ウム 25 発達障害の病態生
理解明の最先端
54
55
56
57
58
59
60
61
62
63
64
65
高橋秀俊,稲田尚子,
神尾陽子
第 34 回日本生物学的精
神医学会(神戸国際会議
場, 神戸市)
2012.9.28
~9.30
高橋秀俊,稲田尚子,
神尾陽子
第 34 回日本生物学的精
神医学会(神戸国際会議
場, 神戸市)
2012.9.28
~9.30
第 53 回児童青年精神医
日本語版 M-CHAT 短縮版 稲田尚子・黒田美保・井
学会総会抄録
2012.11.1
の開発に関する研究
口英子・神尾陽子
集.pp369(東京)
高機能自閉症スペクトラム
者における言語機能の特
日本生物学的精神医学 2011.5.21
井口英子,神尾陽子
異性と発達的変化 -言語
会第 33 回総会(東京)
~5.22
流暢性課題を用いた検討読み書きのつまずきに関す 稲垣真澄, 小林朋佳,
第 53 回日本小児神経学 2011. 5.26
る全国調査(その1)-担任 北洋輔, 井上祐紀, 加
会総会(横浜)
~5.28.
教師の視点‐
我牧子, 神尾陽子
読み書きのつまずきに関す 小林朋佳, 稲垣真澄,
る全国調査(その2)AD/HD 北洋輔, 井上祐紀, 加 第 53 回日本小児神経学 2011. 5.26
症状との関連-担任教師の 我牧子, 田中康雄, 神 会総会(横浜)
~5.28.
視点‐
尾陽子
自閉症スペクトラム幼児の
早期診断ー日本語版
稲田尚子, 黒田美保,
日本児童青年精神医学
2011.11.11
ADOS モジュール 1 の信頼 井口英子, 神尾陽子
会第 52 回総会(徳島)
性と妥当性
児童期における広汎性発
井口英子, 森脇愛子,
日本児童青年精神医学
2011.11.11
達障害の有病率と合併精
黒田美保, 稲田尚子,
会第 52 回総会(徳島)
~11.12
神障害-地域ベースでの
神尾陽子
検討-
通常学級に在籍する一般
児童・生徒における自閉症
日本児童青年精神医学
2011.11.11
的行動特徴の分布と発達 森脇愛子, 神尾陽子
会第 52 回総会(徳島)
~11.12
精神医学的ニーズとの関
連.(ポスター)
日本語版 Autism
日本児童青年精神医学
黒田美保, 稲田尚子,
Diagnostic Observation
会第 52 回総会(徳島)
2011.11.11
神尾陽子, 宇野洋太,
Schedule モジュール 4 の妥
内山登紀夫
当性に関する予備的検討
一般児童・生徒の情緒・行
武井麗子, 森脇愛子,
日本児童青年精神医学
2011.11.11
為の問題に対する自閉症
神尾陽子, 高橋秀俊
会第 52 回総会(徳島)
~11.12
的行動特性と気質の影響
拡散テンソル画像を用いた 則内まどか, 菊池吉晃,
社会性の障害に関する研 吉浦敬, 吉良龍太郎,
第 65 回日本生理人類学
2011.10.26
究:自閉症スペクトラム障害 重藤寛史, 原寿郎, 飛 会(大阪)
児の白質構造
松省三, 神尾陽子
一般児童・生徒のメンタル
森脇愛子・神尾陽子(一 日本精神保健・予防学会 2011.12.3
ヘルスに及ぼす自閉症的
般演題:口演)
第 15 回大会(東京)
~12.4
行動特徴の影響
2 歳の自閉症スペクトラム幼
第 31 回日本社会精神医
児に対する早期支援の有 稲田尚子、神尾陽子
2012.3.15
学会抄録集 pp126(東京)
効性
67
66
67
68
69
70
71
72
通常学級に在籍する一般
児童・生徒における自閉症
的行動特徴と発達精神医
学的ニーズとの関連
子どもの強さと困難さアン
ケート(Strength and
Difficulties Scale:SDQ)日
本版の標準化と信頼性・妥
当性検証
年中児の行動と発達に関す
る保育者ベースのアンケー
ト調査:発達に懸念のある子
どもへの地域支援システム
の構築にむけて
自閉症スペクトラム障害の
ある子どもたちにおける
familiar voice 聴取時の左
側側頭領域の脳血流変化
について
学齢期に高機能自閉症ス
ペクトラム障害児における
対人応答性尺度(SRS)日
本語版の臨床的利用につ
いて
自閉症スペクトラム障害幼
児にみられる限局的反復的
行動 -2~4 歳での変化高機能自閉症スペクトラム
児童の言語機能の特異性と
発達的変化 -言語流暢性
課題を用いた検討-
森脇愛子・神尾陽子(一 日本社会精神医学会第
般演題:ポスター)
31 回大会(東京)
2012.3.15
~3.16
森脇愛子・藤野博・神尾
日本社会精神医学会第
陽子(一般演題:ポス
31 回大会(東京)
ター)
2012.3.15
~3.16
遠藤明代,神尾陽子,高
橋秀俊,井口英子,武井
麗子,稲田尚子,森脇愛
子,中鉢貴行,小保内俊
雅
日本社会精神医学会第
31 回大会(東京)
2012.3.15
~3.16
片桐正敏,山崎貴男,
飛松省三,神尾陽子
第 51 回日本児童青年精
神医学会抄録集,p.378
2010
森脇愛子、神尾陽子
日本児童青年精神医学
会第 51 回総会(群馬)
2010.10.27
~10.30
井口英子,稲田尚子,
小山智典,神尾陽子
日本児童青年精神医学
会第 51 回総会(群馬)
2010.10.27
~10.30
井口英子,神尾陽子
日本児童青年精神医学
会第 51 回総会(群馬)
2010.10.27
~10.30
北村真吾,榎本みのり,
地域在住の 2 歳児における
亀井雄一,小山智典, 日本睡眠学会第 35 回定 2010.7.1~
73 睡眠習慣及び睡眠障害に
黒田美保,稲田尚子, 期学術集会(名古屋)
7.2
関する調査
神尾陽子,三島 和夫
(3) 書籍・報告書等
書籍・報告書名
Developmental disorders. In J.
Decety, J. Cacioppo (eds.), The
1 Oxford Handbook of Social
euroscience (Oxford Library of
Psychology), pp.848-858. Oxford,
Motion perception in autism
spectrum disorder. (eds.), In A.
2 M. Columbus (ed.),Advances in
Psychology Research, Vol.82,
Motion Perception. pp. 197-211
Early diagnosis of ASD in
toddlers and school children:
3 Community studies and national
surveys in Japan. : In V.B. Patel,
V.R. Preedy, C. Martin (eds.),
著者
出版社
年月
Kamio,Y.,
Tobimatsu, S., & Oxford University Press
Fukui, H.
2011
Yamazaki, T.,
Fujita, T., Kamio, Nova Science Publishers,
Y, & Tobimatsu, New York
S
2011
Kamio Y, Inada N
68
The Comprehensive Guide to
Autism,Springer, (in press)
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
自閉症の早期発見. 自閉症:幼
児期精神病から発達障害へ
自閉症の成り立ち:発達認知神
経科学的研究からの再考.自閉
症:幼児期精神病から発達障害
へ
自閉症研究:今後の課題. 自閉
症:幼児期精神病から発達障害
へ
自閉症スペクトラムの発達認知神
経科学. 発達障害の臨床心理学
自閉症スペクトラムと発達認知神
経科学. 脳とソシアル:発達と脳
―コミュニケーション・スキルの獲
得過程
広汎性発達障害の神経心理学.
広汎性発達障害:自閉症へのア
プローチ. 専門医のための精神
科臨床リュミエール 19.
自閉症(小児自閉症).今日の精
神科治療ガイドライン 2010 年版,
精神科治療学 Vol.25 増刊号
アスペルガー症候群の性差によ
る援助の違いは?EBM 精神疾
患の治療 2010-2011
広汎性発達障害の早期兆候. 精
神医学キーワード事典
子どものこころの発達. からだの
科学 272: 子どもの発育・発達と
病気
広汎性発達障害/アスペルガー
症候群以外. 精神科・わたしの
診療手順. 臨床精神医学第 40
巻増刊号
成人期の自閉症スペクトラム診療
実践マニュアル
今月の視点. 特集 大人の発達
障害. 治療 8 月号 vol.94
自閉性障害 a.乳幼児期. 現代
児童青年精神医学(改訂第 2
版)
スクリーニングのツール. 総説.
発達障害 早めの気づきとその
対応
M-CHAT (Modified Checklist for
Autism in Toddlers 乳幼児期自
閉症チェックリスト修正版). 発達
障害 早めの気づきとその対応
神尾陽子, 小山
智典
星和書店
2009
神尾陽子
星和書店
2009
神尾陽子
星和書店
2009
神尾陽子
東京大学出版会
2010
神尾陽子
医学書院
2010
神尾陽子
中山書店
2010
神尾陽子
星和書店
2010
神尾陽子
中外医学社
2010
井口英子,神尾陽
中山書店
子
2011
神尾陽子
日本評論社
2012
神尾陽子
アークメディア
2011
神尾陽子
医学書院
2012
神尾陽子
南山堂
2012
神尾陽子
永井書店
2012
稲田尚子,神尾陽
中外医学社
子
2012
稲田尚子,神尾陽
中外医学社
子
2012
69
(4)新聞・テレビ等
No.
内容
1 NHK クローズアップ現代「大人の発達障害」
2 朝日新聞 取材等
年月
2013.3.13
(5) 特許
なし
(6) 獲得グラント
No.
1
2
3
4
5
グラント名
厚生労働科学研究費補
助金(旧こころの健康科
学研究事業、現障害者
対策総合研究事業(精
神障害分野))
厚生労働科学研究費補
助金(障害保健福祉総
合研究事業)
独立行政法人科学技術
振興機構社会技術研究
開発センター社会技術
研究開発事業研究開発
成果実装支援プログラム
タイトル
採択者
配分額
実施
年度
1 歳からの広汎性発達障害
の出現とその発達的変化
平成 20
39,600 千円 -22 年
度
ライフステージに応じた広
汎性発達障害者に対する
支援のあり方に関する研究
平成 19
13,650 千円 -21 年
度
発達障害の子どもと家族へ
の早期支援システムの社会
実装
平成 21
97,500 千円 -23 年
度
就学前後の児童における
厚生労働省障害者対策 発達障害の有病率とその発
総合研究事業
達的変化:地域ベースの横
断的および縦断的研究
精神医学的障害の早期発
精神・神経疾患研究開 見と早期介入:児童期から
成人期への連続性・不連続
発費
性の解明研究
30,000 千円
平成 23
年度
28,000 千円
平成 24
年度
(7) その他(特記事項)
専門職および一般向けの研修、啓発目的の講演
行政機関等の会議での講演
 神尾陽子. 発達障害の理解と支援. 平成 24 年度第 2 回母子保健研修. 東京都福祉保
健局少子社会対策部, 東京, 2012.6.19.
 神尾陽子. 発達障害の早期発見・早期支援の重要性について. 発達支援サポーター
育成研修. 埼玉県福祉部福祉政策課, 埼玉. 2012.2.7.
 神尾陽子: 自閉症スペクトラム: 発達的観点から考える. 東京福祉大学, 群馬,
2011. 9. 7.
 神尾陽子. 発達障害の早期支援の意義と自治体の役割について. 発達支援マネー
ジャー育成研修. 埼玉県福祉部福祉政策課, 埼玉. 2011.4.26.
 高知県立精神保健福祉センター、高知県中央西福祉保健所主催, 高知, 2010.12.21.
 神尾陽子.ライフステージに応じた広汎性発達障害者の支援のあり方についての研
究。厚生労働省成果報告会, 東京, 2010.10.23.
70

神尾陽子. 早期発見・早期対応(ケア)について. 発達障害施策に関する勉強会. 厚
生労働省障害保健福祉部障害福祉課主催, 東京, 2010.6.17.

神尾陽子「アセスメントの意義について: 発達障害評定尺度(PARS)」平成 22 年度
第 1 回発達障害者支援センター職員研修会. 国立障害者リハビリテーションセン
ター自立支援局秩父学園, 埼玉, 2010.5.13.
 神尾陽子「幼児期のアセスメント: PARS 使用の留意点と演習」平成 22 年度第1回
発達障害者支援センター職員研修会. 国立障害者リハビリテーションセンター自
立支援局秩父学園, 埼玉, 2010.5.14.
 神尾陽子「学童期のアセスメント: PARS 使用の留意点と演習」平成 22 年度第1回
発達障害者支援センター職員研修会. 国立障害者リハビリテーションセンター自
立支援局秩父学園, 埼玉, 2010.5.14.
 神尾陽子「成年期のアセスメント: PARS 使用の留意点と演習」平成 22 年度第1回
発達障害者支援センター職員研修会. 国立障害者リハビリテーションセンター自
立支援局秩父学園, 埼玉, 2010.5.15.
 神尾陽子. ライフステージに応じた自閉症スペクトラム者への支援のありかた. 平
成 22 年度発達障害支援者研修会.
社会的活動(新聞,雑誌等への掲載、講演、外部向けの研修の実施等
 神尾陽子(2013). 自閉症の子どもの育ちを支える社会に. 第 899 号, pp.62-67. 東京,
社団法人学士会.
 神尾陽子, 岩宮恵子, 後野文雄, 角野善宏, 松木邦裕. 第 14 回リカレント教育講座
シンポジウム抄録「心の教育」を考える:対応に困る子どもたちへの多面的理解と
関わり. 京都大学大学院教育学研究科附属臨床教育実践研究センター紀要, 15,
3-34, 2012.
 神尾陽子. 世界の医学誌から-JAMA-「自閉症児は前頭前野の神経細胞が過剰に増
加」. 解説:胎生期から始まる自閉症脳の発達病理の1つの直接的証拠. The Minichi
Medical Journal, 8(2), pp.95, 2012.
 神尾陽子 (2012): 総合医学としての子どもの心の診療のあり方. 温故知新シリー
ズ. 治療 8 月号 vol.94, pp.1360. 東京, 南山堂.
 高橋秀俊, 神尾陽子, 長尾圭造. 地域で子どもの支援に関わっておられる方へ. 災
害時の子どものこころのケア. 国立精神・神経医療研究センター災害時こころの情
報支援センター
http://saigai-kokoro.ncnp.go.jp/
 市川宏伸, 太田昌孝, 神尾陽子, 清水康夫. 特集 1.自閉症の医療について. 座談会,
いとしご増刊, かがやき No.7, pp.2-25. 東京, 日本自閉症協会, 2011.
 神尾陽子. 東北地方太平洋沖地震から1ヵ月、災害からの回復に向けて.厚生科学
WEEKLY、大臣官房厚生科学課, 487、4.15, 2011
 神尾陽子. 災害時に見えてくる、これからの子どものメンタルヘルス対策に必要な
こと(巻頭言). 精神医学, 53, 934-935, 医学書院, 2011.
 日本学術会議臨床医学委員会臨床研究分科会. 提言 エビデンス創出を目指す検証
的 治 療 研 究 の 推 進 ・ 強 化 に 向 け て .2011.7 月 13 日 ( 共 著 )
http://www.scj.go.jp/ja/info/index.html
 神尾陽子. 発達障害. 厚生労働省 知ることからはじめよう:みんなのメンタルヘ
ルス総合サイト http://www.mhlw.go.jp/kokoro/know/disease_develop.html
 神尾陽子: 質疑応答:自閉症スペクトラム障害と感覚過敏. 日本医事新報, 4486,
83-84, 2010.
 神尾陽子: 発達障害の多様性と遺伝・環境相互作用. Endocrine Disrupter News Letter,
12(4), pp2, つくば, 環境ホルモン学会 2010.
 神尾陽子: 発達障害について. 厚生労働科学研究事業 障害者対策総合研究, 3-4, 財
71
団法人精神・神経科学振興財団 2010.
神尾陽子: 特集 児童・思春期発達障害に求められる視点と役割: 発達障害におけ
る療育. PSYCHIATRIST, vol.12., 33-39, 2009.
外部向け講演
 神尾陽子.自閉症の診断と評価. 平成 24 年度第三期特別支援教育専門研修. 自閉
症・情緒、発達障害教育専修プログラム. 独立行政法人国立特別支援教育総合研究
所主催. 横須賀, 2013.3.12.
 神尾陽子. 平成 24 年度精神保健に関する技術研修. 第 5 回発達障害精神医療研修.
国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所, 東京, 2012.9.26-28.
 神尾陽子.成人期の発達障害の臨床的問題. 平成 24 年度精神保健に関する技術研修.
第 5 回発達障害精神医療研修. 国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所,
東京, 2012.9.26.
 神尾陽子.広汎性発達障害児・者の認知研究からわかること. 平成 24 年度精神保健
に関する技術研修. 第 5 回発達障害精神医療研修. 国立精神・神経医療研究セン
ター精神保健研究所, 東京, 2012.9.26.
 神尾陽子. 地域で育む発達障害の子どもたち: 研修会第1弾~保育現場編~主催国
立精神・神経医療研究センター精神保健研究所児童・思春期精神保健部, 東京,
2012.8.22.
 神尾陽子. 発達障害の理解と対応. 第 96 回信濃木崎夏期大学, 長野, 2012.8.6.
 神尾陽子. 自閉症スペクトラム障害:子どもから大人までの発達過程. 第1回 NHO
精神科レジデントフォーラム. 国立病院機構本部主催. 東京, 2012.7.27.
 神尾陽子.平成 24 年度精神保健に関する技術研修. 第 7 回発達障害早期総合支援研
修. 国立精神神経医療研究センター精神保健研究所, 東京, 2012.6.20-22.
 神尾陽子. 自閉症スペクトラム児の早期診断とその意義:ライフステージの観点か
ら. 平成 24 年度精神保健に関する技術研修. 第 7 回発達障害早期総合支援研修. 国
立精神・神経医療研究センター精神保健研究所, 東京, 2012.6.20.
 神尾陽子. 地域における自閉症スペクトラムの早期発見・早期支援. 平成 24 年度精
神保健に関する技術研修. 第 7 回発達障害早期総合支援研修. 国立精神・神経医療
研究センター精神保健研究所, 東京, 2012.6.20.
 国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所児童・思春期精神保健研究部. 特
別支援教育コーディネーター研修. 小平市教育と医療の連携モデル事業. 東京, 小
平市, 国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所児童・思春期精神保健研究
部.2012.2.22.
 神尾陽子. 自閉症スペクトラム児の早期診断とその意義:ライフステージの観点か
ら.平成 23 年度埼玉小児保健セミナー. 埼玉県小児保健協会主催, 埼玉, 2012.1.14.
 神尾陽子. 自閉症・発達障がい児の早期発見と支援. 子どもの心の診療関係者研修
会. 子どもの心の診療拠点病院推進室(鳥取大学医学部付属病院), 米子,
2011.11.20.
 国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所児童・思春期精神保健研究部. 第
2 回特別支援教育校内研修会. 小平市教育と医療の連携モデル事業. 東京, 小平市,
鈴木小学校.2011.10.19.
 国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所児童・思春期精神保健研究部. 第
1 回特別支援教育校内研修会. 小平市教育と医療の連携モデル事業. 東京, 小平市,
鈴木小学校.2011.7.25.
 神尾陽子. ストレス状況での子どもの反応とその対応. 岩手県メンタルケア勉強
会, 日本イーライリリー株式会社主催, 盛岡, 2011. 7. 21.
 神尾陽子. 発達障害を再考する: 子どもから成人までの精神発達にみられる個人
差. 八戸精神科医会・ファイザー株式会社共催, 八戸, 2011.7.22.

72
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神尾陽子. 発達障害のある人々への精神科的介入のために:児童期から成人期へ.
第 12 回不安・強迫・抑うつ研究会. 不安・強迫・抑うつ研究会・Meiji Seika ファ
ルマ株式会社共催, 名古屋, 2011.6.15.
神尾陽子.自閉症の診断と評価. 平成 23 年度第 1 期特別支援教育専門研修. 自閉
症・情緒、発達障害教育専修プログラム. 独立行政法人国立特別支援教育総合研究
所主催. 横須賀, 2011.5.25.
神尾陽子. 社会性発達問題と M-CHAT による早期発見. 平成 22 年度発達障害児
(者)支援医師研修会. 岡山県医師会, 岡山. 2011.3.18.
神尾陽子. 精神医学における発達障害再考:児童期から成人期へのさまざまな発達
軌跡. CNS Symposium. うつ医療推進研究会・ファイザー株式会社共催, 東京,
2011.3.5.
神尾陽子.発達とこころの両方の観点からみた子どものメンタルヘルス:自閉症を
中心に. エコチルやまなしフォーラム 2011 春. エコチル調査甲信ユニットセン
ター主催, 甲府, 2011.2.26.
神尾陽子.子どものメンタルヘルス‐発達とこころの両方の観点から. 第 14 回リカ
レント教育講座「心の教育」を考える‐対応に困る子どもたちへの多面的理解と関
わり‐. 京都大学大学院教育学研究科付属臨床教育実践研究センター主催, 京都,
2011.2.5.
神尾陽子. 発達障害への多面的アプローチ:発達という観点から. アメニティ
フォーラム 15 記念大会. アメニティフォーラム実行委員会, 全国地域生活支援
ネットワーク主催, 大津, 2011.2.5.
神尾陽子. 発達障害に注目したわが国の子どものメンタルヘルスの研究:疫学調査
成果から予防的介入へ. 山梨大学との合同シンポジウム, 国立精神・神経医療研究
センター, 東京, 2010.11.29
神尾陽子. 自閉症スペクトラム障害の言語特性を踏まえた療育・保育支援. 第 20 回
障害児保育セミナー. 障害児保育セミナー実行委員会主催, 栃木県 栃木県社会福
祉協議会 栃木県小児科医会後援 栃木, 2010.11.28.
神尾陽子. 自閉症スペクトラム児の早期診断と支援のために. 言語聴覚士研修会,
国立障害者リハビリテーションセンター主催, 所沢, 2010. 11. 24.
神尾陽子. ライフステージに応じた自閉症支援のあり方をめぐって. 第 24 回全国
自閉症者施設協議会長野大会, 長野, 2010.11.11.
神尾陽子. 乳幼児期および児童期の発達障害. 2010 年度東北集中講座. 発達障害の
精神医学的理解について. 財団法人明治安田こころの健康財団主催.仙台, 2010.
11. 7.
神尾陽子. 児童理解のすすめ方. 特別支援教育全体会. 小平, 小平市市立鈴木小学
校 特別支援教育校内委員会主催, 2010.10.26.
神尾陽子. 自閉症スペクトラムの早期発見と早期介入の意義. 平成 22 年度発達障
害支援従事者養成研修会. 徳島県, 鳴門教育大学, 徳島県医師会主催.
徳島,
2010.10.9.
神尾陽子. 自閉症の診断と評価. 平成 22 年度第 2 期国立特別支援教育総合研究所特
別支援教育専門研修. 独立行政法人国立特別支援教育総合研究所主催. 横須賀,
2010.10.5.
神尾陽子. 発達障害児・者に対するライフステージに応じた支援をめぐって.第 28
回福島精神科治療懇話会. 福島, 2010.10.2.
神尾陽子. 発達障害児・者の自立に向けて今何ができるか:幼児期から取り組める
こと. 和歌山県発達障害者支援センターポラリス講演会. 和歌山, 2010. 8. 28.
神尾陽子. 児童精神医学領域の研究の動向について. 東京都立小児総合医療セン
ター, 東京, 2010.6.17.
73
74
3.3. 高齢者と学習障害の脳機能改善コホート研究
(研究代表者:川島 隆太)
75
3.3.1. 研究開発プロジェクトの概要
研究開発領域
「脳科学と社会」研究開発領域
研究開発プログラム名
研究開発プログラム「脳科学と教育(タイプⅡ)
」
研究開発プロジェクト名
高齢者と学習障害の脳機能改善コホート研究
研究代表者(現所属)
川島 隆太(東北大学 加齢医学研究所 教授)
研究実施期間
平成 16 年 12 月~平成 21 年 11 月(2004 年 12 月~2009 年 11 月)
※現所属は、追跡調査時のものを記載
3.3.1.1. 研究開発の概要と研究開発目標
本研究の目標は、脳科学の知識や技術を応用して、健常高齢者の認知機能の加齢に関す
るコホート研究と、学習障害者を対象とした認知発達障害に関するコホート研究を行うこ
とである。これによって、健常な高齢者の心身の健康を維持・向上させ、生産性を上げる
ための暮らしの工夫や生活介入方法を明らかし、医療費や介護保険などの社会保障費の低
減を目指し、少子高齢化社会に対する前向きの対応策を提言する。また、学習障害者の認
知機能と生活習慣等の関係を調査し、認知発達障害児の健やかで心豊かな認知機能発達を
促す生活の工夫を提言する。
3.3.1.2. 研究開発の実施体制
※所属・役職は研究開発プロジェクト実施期間中のものを記載
(1) 総括研究グループ
氏名
期間中の所属・役職
東北大学 加齢医学研究所
川島 隆太
教授
東北大学大学院 医学研究
辻 一郎
科 教授
東北大学 加齢医学研究所
Jorge Riera
准教授
東北大学 加齢医学研究所
杉浦 元亮
准教授
東北大学 加齢医学研究所
瀧 靖之
准教授
東北大学 加齢医学研究所
月浦 崇
准教授
東北大学大学院 医学研究
栗山 進一
科 准教授
東北大学 加齢医学研究所
横山 悟
助教
Tina
東北大学 加齢医学研究所
助教
Rasmuseen
東北大学 加齢医学研究所
秋月 祐子
助教
三浦 直樹
高知工科大学 講師
担当
研究総括
コホート研究の計画と
解析
脳電図および磁気刺激
による脳機能計測
機能的 MRI による脳機
能計測
機能的 MRI による脳機
能計測
機能的 MRI による脳機
能計測
コホート研究の計画と
解析
機能的 MRI による脳機
能計測
機能的 MRI による脳機
能計測
機能的 MRI による脳機
能計測
機能的 MRI による脳機
能計測
76
参加期間
平成 17 年 1 月~
平成 21 年 11 月
平成 17 年 1 月~
平成 21 年 11 月
平成 17 年 1 月~
平成 21 年 11 月
平成 17 年 1 月~
平成 21 年 11 月
平成 20 年 4 月~
平成 21 年 11 月
平成 20 年 7 月~
平成 21 年 11 月
平成 17 年 1 月~
平成 21 年 11 月
平成 17 年 1 月~
平成 21 年 11 月
平成 17 年 1 月~
平成 21 年 7 月
平成 20 年 4 月~
平成 21 年 11 月
平成 19 年 4 月~
平成 21 年 11 月
(2) 脳科学・認知心理学研究グループ
氏名
期間中の所属・役職
日本大学大学院 総合科学
泰羅 雅登
研究科 教授
立命館大学大学院 文学研
吉田 甫
究科 教授
立命館大学大学院 文学研
大川 一郎
究科 教授
立命館大学大学院 文学研
土田 宣明
究科 教授
担当
MRI による脳機能・形態
計測
高齢者の認知機能の維
持・改善への介入研究
高齢者の認知機能の維
持・改善への介入研究
高齢者の認知機能の維
持・改善への介入研究
認知心理課題・日常生活
白百合女子大学 文学部 教
田島 信元
調査票の解析および認
授
知・脳機能促進法の開発
東京外国語大学 外国語学 認知心理課題・日常生活
長沼 君主
部 専任講師
調査票の解析
認知心理課題・日常生活
石毛 順子
秋田国際大学 専任講師
調査票の解析
(3) 介入実践グループ
氏名
期間中の所属・役職
担当
くもん学習療法センター
大竹 洋司
学習障害調査
社長
日本公文教育研究会 副社
杉本 幸司
学習障害調査
長
くもん学習療法センター
松浦 巡
学習障害調査
取締役
くもん学習療法センター
湯前 大作
学習障害調査
チームリーダー
生活介入実践と学習障
田村 則夫
日本公文教育研究会 部長
害調査
日本公文教育研究会 チー 生 活 介 入 実 践 と 学 習 障
中村 千秋
ムリーダー
害調査
日本公文教育研究会 取締 生 活 介 入 実 践 と 学 習 障
若林 進
役
害調査
日本公文教育研究会 チー 生 活 介 入 実 践 と 学 習 障
田口 智啓
ムリーダー
害調査
中江 信一郎
公文公教育研究所 室長
学習障害調査
77
参加期間
平成 17 年 1 月~
平成 21 年 11 月
平成 17 年 1 月~
平成 21 年 11 月
平成 17 年 1 月~
平成 21 年 11 月
平成 17 年 1 月~
平成 21 年 11 月
平成 17 年 1 月~
平成 21 年 11 月
平成 17 年 1 月~
平成 21 年 11 月
平成 17 年 1 月~
平成 21 年 11 月
参加期間
平成 20 年 7 月~
平成 21 年 11 月
平成 17 年 1 月~
平成 20 年 6 月
平成 17 年 1 月~
平成 21 年 11 月
平成 18 年 4 月~
平成 21 年 11 月
平成 19 年 4 月~
平成 21 年 11 月
平成 19 年 4 月~
平成 21 年 11 月
平成 19 年 4 月~
平成 21 年 11 月
平成 19 年 4 月~
平成 21 年 11 月
平成 20 年 4 月~
平成 21 年 3 月
3.3.1.3. 研究開発の内容
(1) 高齢者のコホート研究で、地域社会で在宅生活健常を送っている 65 歳以上の高齢者
を対象に 586 名の調査を実施
コホ―ト調査は、アンケートによる日常生活習慣に関する調査と、面接法による認知機
能検査、運動、食に関する生活習調査を行った。また、全参加者を対象とし、能動的コホ
―トとして、JST「脳科学と教育(タイプⅠ)」の「前頭前野機能発達・改善システムの研
究開発」
(平成 14~16 年度、研究代表者:川島隆太)によって開発した読み書き計算によ
る生活介入を行い、日常生活習慣と残存認知機能の相関(横断的調査)
、生活介入効果をよ
り高める生活習慣の解析(縦断的調査)を行った。
(2) 高齢者のコホート研究:高齢者に有効な生活介入法を明確化
横断的調査からは、
「生きがい」や「はり」を持つ人、
「新聞を読む」
「トランプ・麻雀な
どのゲームをする」
「美術館・博物館に行く」といった認知刺激の頻度が高い人は、ほぼ全
ての認知機能検査値が有意に高いことがわかった。生活介入によって、FAB 得点、ストルー
プ課題、トポロジー課題、符号化課題、単語記憶課題の各項目において有意に得点の改善
が認められた。
一方、MMSE 得点、メンタルローテーション課題の成績は向上しなかったことから、読
み書き計算の生活介入によって主に前頭前野機能が向上することが証明された。また生活
関連 QOL スコアが身体的健康感、精神的健康感の双方とも統計的に有意に改善した。
MMSE 得点に関しては、軽度認知機能障害疑い者の約 70%が介入後に正常値に復帰してい
た。
地域社会で在宅生活を健常に送っている一般高齢者に対して、地方自治体が実施可能な
生活介入を行い、認知機能と生活習慣との関連を探るとともに、その介入効果及び効果的
な介入について検討した結果、本調査で提案した生活介入法が、高齢者の認知機能の向上
に役立つことが証明された。
(3) 学習障害のコホート研究:健常児においては、生活習慣(食事、睡眠等)及び親子
関係が、認知機能全般の発達に影響を与えることを示唆(特に朝食の質と認知機能の
関係性について新しい知見)
認知発達障害を持ち、㈱公文教育研究会の学習教室に通っている小学生と中学生を対象
として調査を行った。参加者は、㈱公文教育研究会を通じて、傘下の学習教室の指導者か
らの呼び掛けにより募集した。調査を行う前に、本人および保護者に、目的と方法につい
て文書と口頭で十分に説明し、本人および保護者から書面による同意を得られた者のみを
対象者とした。学習障害児と健常児の認知機能の比較(横断的調査)からは、学年ごとに
傾向がわずかに異なるものの、前頭前野機能検査は学習障害児が有意に低く、頭頂連合野
機能、側頭連合野機能検査は、健常児と障害児の間には大きな差がないことがわかった。
障害児の縦断調査では、1 年後のフォローアップで、前頭前野機能検査では、「符号」
「概
78
念」
「配列」の各検査項目が有意に向上し、頭頂連合野機能検査、側頭連合野機能検査は全
ての検査項目が有意に向上していた。前頭前野機能検査の変化と生活習慣の相関を解析し
た結果、
「絵本を読む頻度」が「概念」課題成績向上と正相関、「休日に親子で過ごす時間
の長さ」が「数唱」課題成績と正相関、
「親子でスポーツをする頻度」が「概念」課題成績
と正相関していた。親子関係と前頭前野機能の発達の間に関連があることが示唆された。
3.3.1.4. 研究開発の成果
一般高齢者の認知機能と生活習慣との関連を探るとともに、児童の学習障害に影響を及ぼ
す要因について明らかにした。
(1) 高齢者のコホート研究:高齢者に有効な生活介入法を明らかにした

横断的調査からは、
「生きがい」や「はり」を持つ人、
「新聞を読む」
「トランプ・麻雀
などのゲームをする」
「美術館・博物館に行く」といった認知刺激の頻度が高い人は、
ほぼ全ての認知機能検査値が有意に高いことがわかった。

生活介入によって、FAB 得点、ストループ課題、トポロジー課題、符号化課題、単語
記憶課題の各項目において有意に得点の改善が認められた。

一方、MMSE 得点、メンタルローテーション課題の成績は向上しなかったことから、
読み書き計算の生活介入によって主に前頭前野機能が向上することが証明された。

また生活関連 QOL スコアが身体的健康感、精神的健康感の双方とも統計的に有意に
改善した。MMSE 得点に関しては、軽度認知機能障害疑い者の約 70%が介入後に正常
値に復帰していた。

地域社会で在宅生活を健常に送っている一般高齢者に対して、地方自治体が実施可能
な生活介入を行い、認知機能と生活習慣との関連を探るとともに、その介入効果及び
効果的な介入について検討した結果、本調査で提案した生活介入法が、高齢者の認知
機能の向上に役立つことが証明された。
(2) 学習障害のコホート研究:健常児においては、生活習慣(食事、睡眠等)及び親子
関係が、認知機能全般の発達に影響を与えることが示唆された。特に朝食の質と認知
機能の関係性について新しい知見を得た

学習障害児と健常児の認知機能の比較(横断的調査)からは、学年ごとに傾向がわず
かに異なるものの、前頭前野機能検査は学習障害児が有意に低く、頭頂連合野機能、
側頭連合野機能検査は、健常児と障害児の間には大きな差がないことがわかった。

障害児の縦断調査では、1 年後のフォローアップで、前頭前野機能検査では、「符号」
「概念」
「配列」の各検査項目が有意に向上し、頭頂連合野機能検査、側頭連合野機能
検査は全ての検査項目が有意に向上していた。

前頭前野機能検査の変化と生活習慣の相関を解析した結果、
「絵本を読む頻度」が「概
79
念」課題成績向上と正相関、
「休日に親子で過ごす時間の長さ」が「数唱」課題成績と
正相関、
「親子でスポーツをする頻度」が「概念」課題成績と正相関していた。親子関
係と前頭前野機能の発達の間に関連があることが示唆された。
3.3.2. 研究開発プロジェクトの事後評価結果の概要
「事後評価報告書」に基づき、本研究開発プロジェクトに関するセンターの評価委員会
による事後評価結果を以下のように整理した。
(1) 総合評価
研究開発目標の達成度、学術的・技術的・社会的貢献、成果の社会における活用・展開
などを中心に総合的に判断して、大きな成果が得られたと評価する。
本プロジェクトでは、
「脳科学と教育」
(タイプⅠ)で開発した読み書き計算による生活
介入を行い、高齢者の認知機能の改善と QOL の向上、軽度認知障害の病態改善などが見
られたこと、作動記憶トレーニングの効果を脳形態の変化として捉えたことなどが評価さ
れる。一方、学習障害のコホート研究では、児童の日常生活活動・習慣およびその基盤と
なる社会的活動能力・活動スタイル、さらに養育者の養育行動などを調査し、それらが脳・
認知機能のレベルとどう関係するかを調べた。その結果、朝食の質と脳活動の関係が機能
的磁気共鳴画像法(functional magnetic resonance imaging:fMRI)等を用いて明らかにされた。
また、親子遊びを取り入れるなどの親子関係が、子どもの認知機能の発達に大きく影響す
るとしている。本プロジェクトが提起する脳科学及びその社会応用に関する問題は、イン
パクトが大きく、また将来の発展可能性も期待されるものであり、その意義は極めて大き
いものと評価できる。
高齢者の認知症改善・予防に役立つ本プロジェクトの成果は、既に一部社会で受け入れ
られ、高齢者に生きる意欲を与えることにつながった。また学習障害の調査研究について
は、親子の共同作業や褒めることによる親自身の子育てストレスの軽減等、幼児の認知発
達を支援し得ることを示している。
とはいえ高齢者への介入試験の効果は予想よりも高くなく、しかも、ランダム化比較試
験ではないことから、説得力が少し弱い印象も受けた。高齢者への脳機能改善あるいは劣
化防止の介入方法、さらに介入機材の検討を含めて今後の課題といえる。今後、効果の実
証をより厳密に進めるとともに、他の独立したグループによる検証が待たれる。
その一方で、事実の体系であるべき学術研究の企画と応用にあたって、価値誘導的な目
的論的構造の影響が懸念される部分がないとは言えない。これらの成果は、社会的にも大
きな影響をもたらすと思われるので、成果の発信にあたっては、拡大解釈されないよう十
80
分に注意することが求められる。
(2) 目標達成の状況
本プロジェクトの研究開発目標は、概ね達成されたと評価する。
高齢者の心身の健康を維持・向上させるための暮らしの工夫や生活介入方法を明らかに
し、認知症予防および学習障害児の心豊かな脳機能発達を促す方法の開発に資するという
目標は明確で妥当であった。研究は計画に沿ってほぼ遅滞なく進められ、特に高齢者の能
動的コホート調査については当初スケジュールよりも前倒しで進んだ。一方、学習障害児
については能動的コホートの中止もあり、予定通りとはいえないが、目標には到達してい
る。
高齢者の介入実験については、多くの自治体の協力が得られ、読み書き計算を用いた生
活介入法「学習療法」を用いて、高齢者の認知機能と QOL の向上が図れることを示した。
また、認知課題遂行中の脳活動を fMRI で計測し、認知機能の向上が、外側前頭前野で広
汎な可塑性が生じた結果である可能性を示した。さらに、作動記憶トレーニングによって
大脳皮質体積の増大を見出している。一方、学習障害の研究では、朝食が認知機能の向上
に与える影響を脳イメージング研究によって明らかにした。
また、
親子のコミュニケーショ
ンにおいては、ほめることが子どもの認知機能の向上によい影響を与えることを明らかに
している。
(3) 学術的・技術的貢献
本プロジェクトの成果は、脳科学分野の科学や技術に新しい問題を提起し、一定の貢献
をしたと評価する。
高齢者の認知機能トレーニング研究、学習障害・発達障害における認知機能発達研究、
子どもの認知機能に与える要因の研究など、いずれも研究テーマとして重要であり、コホー
ト研究を展開したことは高く評価される。特に高齢者への介入実験については、これだけ
の社会実験が行われ成果が得られたことは特筆すべきである。
ただし、研究のデザイン、統計的手法の展開には限界があり、エビデンスとして確立し
たというにはまだ十分とはいえない面もあり、今後精緻な研究を実施することでさらに大
きな前進があると考える。他の研究者の追試を経て初めてエビデンスとして確立される。
統計的には各要因の個別解析を主としており、多変量プロファイルが欠けている等の問
題がある。また、生活介入の方法についての比較検討が十分に行われていないので、検証
を兼ねていくつかの介入方式を前向きに比較することを検討されたい。
81
(4) 社会的貢献・成果の社会での活用・展開
本プロジェクトの成果は、学習・教育に関する科学的根拠を提供するなど、社会的に大
いに貢献し、また今後も貢献しうると評価する。
高齢者のコホート調査及び大規模な介入実験の経験とその実績の積み重ねは貴重で、既
に広く内外で認知され、多くの地方自治体から導入の成果が報告されている。高齢者の介
護や生活習慣、また学童の生活習慣に対してインパクトが大きいがゆえに、科学的根拠と
なるデータの統計解析についてはさらに慎重に検討する必要がある。
現状では統計解析の結果が十分とはいえないので、変数間の因果関係のダイナミクスが
明らかになるまでは、メディアや一般の人に曲解されないよう十分な配慮のうえで慎重に
成果を公表する必要がある。今後、学術的および統計結果の解釈に慎重な吟味検討がなさ
れ、制度設計などの体制が整えられれば、極めて有効な社会的貢献が期待される。
(5) 研究開発体制と管理運営
研究開発体制及び管理運営は、研究開発テーマを推進する上で概ね適正・妥当であった
と評価する。
研究デザインの策定、統計解析においては、疫学・統計の専門家のさらなる関与があれ
ばさらに良かったと考える。なお、民間営利企業との連携にあたっては、利益相反に掛か
る慎重な態度が望まれる。
(6) 費用対効果比
投入された研究開発費と予想される社会的貢献から考慮した費用対効果比については、
高いと評価する。
高度高齢社会における高齢者の QOL の改善、認知症の予防、進行の抑制などが実現すれ
ば、その経済効果はきわめて大きい。本プロジェクトは、その手法開発の基礎を与えるも
のである。
(7) 特記事項
本プロジェクトにみられるように営利企業と緊密に連携しつつ、政策運営にもかかわる
課題の実施体制の構築と運用を行うにあたっては、学問的見識とその価値中立性を担保す
るための慎重な吟味が必要であろう。特に、社会的観点から一般的に認められやすい社会
的価値を支持するような目的論的な学問的知見の考察や応用には、例えその社会的弊害が
少ないことが予想されるといえども、科学者としての良識と見識を損なうことのないよう
に厳に慎重になるべきであり、科学者として社会へ情報発信する際には科学的知見の学術
82
的な信憑性と確実性が常に優先されなければならない。これは、各プロジェクト個別の問
題というよりも、
「脳科学と社会」に関連する分野や学会全体に亘り、科学と社会との関わ
り一般において科学者が自然科学者として持つべき倫理規範に関する、今後の重要な検討
課題であろう。
統計解析は、単に変数どうしの関係をみる相関解析ではなく、複数の従属変数と複数の
独立変数を同時に考慮するモデルを構築する必要がある。現状ではある従属変数に対し、
単にもっとも相関が高かった変数が挙げられているが、これでは全体的にどのような因果
構造になっているのかという重要な図式が見えない。コホート研究の結果として、多数の
変数間の複雑な交互作用、相互依存関係を定量的に示すことによって、観測事象間の因果
関係をより信頼性高く確立し、その社会的主張の信憑性を担保するための一層の努力が求
められる。
83
3.3.3. 研究開発プロジェクト終了後の展開
3.3.3.1. 研究開発成果の発展状況や活用状況
(1) 研究開発内容の進展状況
① 高齢者のコホート研究の発展
<スマート・エイジング国際共同研究センターの設置>
平成 21 年 10 月に東北大学加齢医学研究所にスマート・エイジング国際共同研究センター
を設置 7し、研究を継続している。
スマート・エイジング国際共同研究センターの概要
スマート・エイジング国際共同研究センター(通称 SAIRC)は、平成 21 年 10 月に設立
された。
このセンターは、国際的な研究拠点として、超高齢社会における新たな統合的加齢科学
分野を切り開き、世界を先導するスマート・エイジング研究を通じて、持続可能型高度成
熟社会の形成に寄与するため、文系・理系に拘らない架橋融合的研究、国際共同研究、産
学連携研究などを展開していく。
本センターは、脳科学、認知心理学、老年学、医学などの自然科学系、社会学、教育学、
哲学、経済学などの人文社会科学系の知識と技術を結集し、個人および社会が健康に齢を
重ね知的に成熟できるための「スマート・エイジング」研究領域を創生するという明確な
目的を共有した学際融合的研究体制を構築し、新領域分野の研究・教育を行うものである。
これにより、従来行われている老年学研究の単領域研究とは異なり、エイジングに関する
あらゆる「知」を包括的に統合し、超高齢社会において個人の QOL を向上させ、社会の
諸問題に対処できる統合的加齢科学研究領域を確立することを目指す。
研究開発部門では、
「応用脳科学研究分野」「生体計測研究分野」「神経電磁気生理学分
野」の 3 つの研究分野を設定して、研究開発活動が実践されている。本研究の代表研究者
は、
「応用脳科学研究分野」を主導している。
【体制】
センター長:川島隆太教授
応用脳科学研究分野:川島隆太教授、助教 3 名、非常勤講師 1 名、博士研究員 4 名
生体計測研究分野:西條芳文教授
神経電磁気生理学分野:中里信和教授、助教 1 名
企画開発部門:村田裕之教授、客員教授 1 名
7
参考 URL:http://www2.idac.tohoku.ac.jp/dep/sairc/j_index.html
84
【運営資金】
センターの運営資金は運営費交付金、特別経費(概算要求)「スマート・エイジング研
究開発事業 平成 22~26 年度」
、産学連携共同研究費によって賄われている。
【本研究プロジェクトとの関連】
センターの活動は、本プロジェクトのメインテーマの一つである、健康な高齢者の認知
機能向上を継続発展させたものである。
【応用脳科学研究分野の取り組み】
本研究の代表研究者が主導する「応用脳科学研究分野」では、最新の脳機能イメージン
グ技術や、認知神経科学、心理学、疫学などの知識を架橋融合した応用脳科学研究を展開
し、健康な小児や成人、健全な社会生活を送っている高齢者の実行機能を向上させる原理
を開発している。高齢者の実行機能を向上させる原理については、作動記憶訓練、認知速
度訓練、有酸素運動と作動記憶訓練などによる生活介入法を開発し、その効果をランダム
化比較対象試験に心理指標、脳画像指標を用いて検証している。最近は SNIP 等遺伝的素
因との関係、介入後のタンパク、代謝の変化などオミックス解析も加えている。
また、応用脳科学研究で開発した新しい認知トレーニング方法の有効性を、生活介入実
験によって科学的に証明し、無害かつ有効なシステムを開発している。
過去に行った生活介入実験の例としては、認知症高齢者に対する認知機能向上研究
(Kawashima et al., 2005)がある。ここで開発されたシステムは学習療法と名付けられて
おり、読み書き計算が、認知心理学的に作動記憶(ワーキングメモリー)と実行機能を必
要とするという事実、脳機能イメージング研究で実際に読み書き計算をすると、ワーキン
グメモリーや実行機能を司っている背外側前頭前野が活動するという事実を元にして、読
み書き計算のドリル教材を産学連携体制で作成し、比較対象試験を行った。結果として、
学習療法を行った認知症高齢者の前頭前野機能全般の改善が認められ、生活の質の向上も
認められた。また、同様の読み書き計算による生活介入を、健康な社会生活を行っている
高齢者に行ったランダム化比較対象試験(Uchida & Kawashima, 2008)でも、高齢者の全般
的な認知機能や生活の質の向上に成功している。
<「脳の健康教室」の展開>
開発した高齢者用の認知トレーニングプログラムは、㈱公文教育研究会・くもん学習療
法センターが、
「脳の健康教室」という名称で全国に提供をしており、平成 22 年度は、月
当たり平均で、全国 242 会場、3,855 人の高齢者が、平成 23 年度は、全国 260 会場、3,941
人の高齢者が、平成 24 年度は、全国 281 会場、4,050 人の高齢者が利用をした。
85
「脳の健康教室」の概要
認知症の改善や進行抑制を趣旨として開発された「学習療法」を応用して、認知症の予
防を趣旨とする「脳の健康教室」が、くもん学習療法センターによって展開されている。
これは、地方自治体や NPO 法人、ボランティア団体等を支援して実施されるものであり、
単なる健康教室にとどまらず、介護予防事業(地域支援事業)や地域コミュニティーづく
りの事業として取り組まれる例も増えている。各地域の成果は、定期的に開催されている
学習療法シンポジウム(旧:学習療法研究大会)で発表されている。
【目的】
① 読み書きや計算を中心とする「楽習」活動によって脳の健康づくり(認知症予防)を
行う。
② 教室サポーター(教室の運営を支援する住民ボランティア)によって地域の仲間づく
りを支援する。
③ さらに、教室サポーターが中心となって、受講者の社会参加へのきっかけづくりを支
援することで、地域コミュニティーの形成を支援する。
【教室の内容】
86
【事業実施の仕組み】
くもん学習療法研究会は、教室の主催者(地方自治体等)と実施契約を結び、教材の提
供や情報・ノウハウの提供、運営支援を行って、実施料をフィートして受け取る仕組みに
なっている。
<国際交流の促進>
平成 23 年 7 月にトリノ大学(イタリア)
、平成 24 年 4 月にユバスキュラ大学(フィンラ
ンド)
、平成 25 年7月にテマセク・ポリテクニック(シンガポール)と、それぞれ部局間
学術協定を結び、本研究成果及び周辺技術のノウハウの提供を主目的とした国際交流を開
始した。
国際交流の概要
平成 23 年 11 月、トリノ大学と部局間学術交流協定を締結した。トリノ大学は、イタ
リア・ピエモンテ州トリノにある国立大学で、ヨーロッパで最も伝統があり、格式の高い
大学である。12 学部 10 研究所、教授約 700 名、学生 6 万 7 千名を擁し、イタリア国立
大学ではミラノ大、ローマ大と並びトップ 3 にランクされる総合大学である。平成 23 年
度よりトリノ大学心理学部とスマート・エイジング国際共同研究センターの間で、認知加
齢、認知刺激、脳機能マッピングに関する共同研究を開始しており、平成 24 年度には博
士研究員の受け入れ、東北大学より教員の派遣を行う予定である。
87
平成 24 年 4 月、フィンランド・ユヴァスキュラ大学と部局間学術交流協定を締結した。
ユヴァスキュラ大学は、1934 年に設立された国立大学で、自然科学および人間科学領域
を中心とした 7 学部 6 研究所、教員約 1400 名、学生約 1 万 5 千名を擁し、フィンラン
ド国立大学ではヘルシンキ大に次ぐ 2 位にランクされる総合大学である。平成 24 年度よ
りユヴァスキュラ大学とスマート・エイジング国際共同研究センターの間で、認知加齢、
認知刺激、運動生活介入、脳機能マッピングに関する共同研究を開始した。平成 24 年度
には東北大学より教員の派遣も行う予定である。
② 学習障害のコホート調査の発展
<東北大学加齢医学研究所・認知機能発達寄付研究部門における研究の展開>
平成 20 年に東北大学加齢医学研究所に設立した、認知機能発達寄附研究部門 8において
研究を継続している。
東北大学加齢医学研究所・認知機能発達寄付研究部門の概要
人間の脳と心の関連を脳機能イメージング装置によって解明しようとする脳科学研究
を、教育学や認知心理学と融合することにより、子ども達の心身の健やかな成長や発達を
促し、学習の意欲、論理的思考力、創造性、知的好奇心、探究心などを向上させる新しい
具体的な教授・学習システムの研究開発を行う。本部門は、3 名の博士課程、2 名の修士
課程院生を迎えて平成 25 年度に設置された。
本寄附部門の設置の背景には、現代の社会構造の変化、特に、情報化、個人化、少子化、
競争社会の激化、価値観の変化など、子どもを取り巻く環境の変化は著しく、現在の教育
のあり方はこの変化に十分対応できているとはいえず、その対策は急務であるとの問題意
識がある。
近未来の研究目標は、①教育の客観的評価方法の開発、②脳を育む教育システムの開発、
③心を育む生活環境の提案、である。①教育の客観的評価方法の開発では、教授・学習法
の妥当性、有効性を、脳機能イメージングや認知心理学手法によって定量的に評価可能な
手法の開発を目指す。②脳を育む教育システムの開発では、学習者の認知特性に応じて知
的能力を高める、発達段階および学習内容に応じた認知特性別学習といった、新しいオー
ダーメード型の教授・学習システムの開発を目指す。③心を育む生活環境の提案では、発
達段階に応じて、生活習慣、親子のコミュニケーション、学習などが認知機能発達に与え
る影響について解明する。
本寄附研究部門の研究によって、心身の健やかな成長や発達を促し、学習の意欲、論理
8
参考 URL:http://www.fbi.idac.tohoku.ac.jp/dcn/index.html
88
的思考力、創造性、知的好奇心、探究心などを向上させる新しい具体的な教授・学習シス
テムの基礎理論が完成することが期待される。学校などの教育現場や自治体の教育関係者
などとも協調し、連携研究を推進していく予定である。
<仙台市教育委員会との連携協力>
平成 22 年 1 月に仙台市教育委員会と連携協力に関する協定を結び、子どもの認知機能発
達研究において連携を開始した。
東北大学加齢医学研究所と仙台市教育委員会との連携協力の概要
平成 22 年 2 月 19 日、東北大学加齢医学研究所と仙台市教育委員会は、組織的連携を通
じて双方の教育と研究の充実と発展に資することを目的とした「東北大学加齢医学研究所
と仙台市教育委員会との連携協力に関する協定」を締結した。
【背景】
仙台市教育委員会では、確かな学力育成プランを推進している。このプランは、IT 化の
急速な進展や国際競争の激化など社会経済の在り方が大きく変化している中、子供たちが
将来、仕事や実生活で頻繁に直面するであろう、判断に迷う困難な状況を、自らの力で克
服する力、つまり社会で自立し、
「生きる力」を育成することを最終目標としている。
東北大学加齢医学研究所と仙台市教育委員会とは、教育学分野、認知科学分野において
密接な関係を保ってきています。研究面では、川島加齢医学研究所教授らと、脳機能イメー
ジングを用いた子どもの認知機能発達研究において連携している。
この子どもの認知発達研究では、人間の脳と心の関連を脳機能イメージング装置によっ
て解明しようとする脳科学研究を、教育学や認知心理学と融合することにより、子ども達
の心身の健やかな成長や発達を促し、学習の意欲、論理的思考力、創造性、知的好奇心、
探究心などを向上させる新しい具体的な教授・学習システムの研究開発を行うもので、世
界的に大きな注目を集めており、仙台市教育委員会・東北大学の連携による大きな成果が
すでにあがり始めている。
【組織的連携協力の趣旨と事業の内容】
東北大学加齢医学研究所と仙台市教育委員会は、両機関の連携や協力、人材交流をさら
に発展させ、相互の教育能力と研究開発能力及び人材等を活かした総合力を発揮すること
が、教育及び学術研究の発展並びに教育行政関連技術の水準の向上に新たに重要な役割を
果たすと考え、本研究所及び仙台市教育委員会の研究開発、教育・人材育成などに係る相
互協力が可能なすべての分野において、互恵の精神に基づき具体的な連携・協力を行うた
め、連携協力協定を締結した。
89
具体的な連携内容としては、当面は、子どもたちの学習意欲を科学的に分析し、学習意
欲を伸ばすことを目的としたプロジェクトを、生命科学研究科、文学研究科等の若手教員
と部局横断型プロジェクトチームを形成し推進していく予定である。
<「学習意欲」の科学的研究に関するプロジェクトの推進>
研究代表者は、平成22年より、宮城県教育委員会「
『学ぶ土台づくり』推進プログラム策
『学習意欲』の科学的研究に関するプロジェクト」
定懇話会 9」座長、仙台市教育委員会「
座長として、現場とリンクした研究の発展と、公教育に研究成果の還元(活用)を行って
いる。
宮城県教育委員会「学ぶ土台づくり」推進プログラム策定懇話会の概要
子どもの成長にとって重要な時期である幼児期において、幼稚園及び保育所等の枠組み
を超え、質の高い教育及び保育を提供できるよう、関係する各主体が連携しながら取り組
むべき事項について定める「学ぶ土台づくり」推進プログラムを策定するに当たり、広く
意見を聴取するため、
「学ぶ土台づくり」推進プログラム策定懇話会を設置した。
【
「学ぶ土台づくり」推進プログラム】
子どもの心と知能は、小学校就学前の幼児期までに大きく成長する。このため、宮城県
では、幼児期を、社会性や道徳性が芽生え、学ぶ力の源となる好奇心や探究心が養われ、
他者とのかかわりが大きく広がるなど、障害にわたる人間形成の基礎を築く時期、すなわ
ち「学ぶ土台づくり」の時期ととらえ、幼児期の教育の一層の充実に向けて、家庭、地域
社会、教育現場、行政が一体となって取り組みを推進する「学ぶ土台づくり」推進計画を
策定した(平成 23 年 3 月)
。計画における目標と、各目標に即した施策は以下の通り。
目標 1:親子間の愛着形成の促進
施策 1:親子のかかわりの促進
施策 2:親の育ちを支援する環境づくり
目標 2:基本的生活習慣の確立
施策 3:社会総がかりの取組による基本的生活習慣の確立
施策 4:体力の向上と食育の推進による望ましい食習慣の確立
施策 5:ワーク・ライフ・バランスの促進
目標 3:豊かな体験活動による学びの促進
施策 6:人とかかわる体験の充実
施策 7:遊びの環境づくり
9
参考 URL:http://www.pref.miyagi.jp/site/manabudodai/list1144-2618.html
90
目標 4:幼児教育の充実のための環境づくり
施策 8:幼・保・小の連携と小学校への円滑な接続
施策 9:特別支援教育の推進と理解の促進
施策 10:地域における支援体制の充実
仙台市教育委員会「学習意欲」の科学的研究に関するプロジェクトの概要
仙台市教育委員会では、平成 22 年 2 月、東北大学と共同研究を締結し、脳科学の知見
を活用して、科学的に研究するプロジェクトを立ち上げた。学校現場での経験や実例、ま
た、学習意欲についてのデータ等を基に、脳科学や認知心理学の観点から、東北大学川島
隆太教授を中心とした学習意欲について科学的に分析するプロジェクト会議(2 年目)を
開催した。児童生徒の生活習慣や学習環境の改善に活用するための小学校 2 年生以上で実
施している生活・学習状況調査の質問項目を検討した。また、推進校においては、授業観
察及び視線測定の予備調査を実施した。
平成 23 年 5 月 25 日 ・震災に伴う、平成 23 年度生活・学習状況調査の質問項目改訂
・推進校への協力依頼
6 月 3 日 ・仙台市立荒町小学校にて、授業観察と学習意欲についての意見交換
8 日 ・仙台市立富沢中学校にて、授業観察と学習意欲についての意見交換
・平成 23 年度生活・学習状況調査の質問項目決定
7 月 8 日 ・仙台市立富沢中学校にて、授業観察及び視線測定の予備調査実施
13 日 ・仙台市立荒町小学校にて、授業観察及び視線測定の予備調査実施
14 日 ・平成 23 年度標準学力検査及び生活・学習状況調査実施
~12 月 ・授業観察及び視線測定の映像分析検討
平成 24 年 1 月 ・授業観察・視線測定の映像分析から詳細分析計画立案
・平成 24 年度生活・学習状況調査の質問項目改訂
2 月 ・平成 24 年度生活・学習状況調査の質問項目決定
・生活・学習状況調査の結果分析報告
3 月 ・全教職員に学習意欲に関する内容を記載したリーフレットを配布
→リーフレットは生活指導などに活用されている
③ 事後評価における指摘事項への対応
事後評価において、ランダム化比較試験の実施が課題とされていたが、ランダム化比較
試験を行い、プロトコールを論文発表し、結果を現在投稿中である(Nouchi R, Taki Y,
Takeuchi H, Hashizume H, Nozawa T, Sekiguchi A, Nouchi H, Kawashima R
"Beneficial effects
of reading aloud and solving simple arithmetic calculations (Learning therapy) on a wide range of
cognitive functions in the healthy elderly: Study protocol for a randomized controlled trial" Trials,
13:32, 2012.)
。
91
(2) 研究開発成果の社会での適用・定着(社会実装)状況及び社会的課題の解決への貢献状況
① 高齢者の認知機能向上システム
㈱公文教育研究会・くもん学習療法センターを通して、全国の自治体において、高齢者
の認知機能向上システムが活用されている(
「脳の健康教室」の展開)
。本取り組みは、平
成 18 年度より実施されているものであり、
現在も実施中である。対象は一般高齢者である。
超高齢社会において、高齢者がいつまでもイキイキと活動を続けることができるようにす
る点が貢献のポイントであり、今後、研究をより深化させ、海外展開を含めて研究成果の
より一層の還元に努める予定である。
「脳の健康教室」の効果
「脳の健康教室」は、単に認知症予防に効果があるだけでなく、生活のハリ・リズムを
作り出し、生きる意欲を高める効果や、教室の受講者同士の交流、さらには地域コミュニ
ティーのつながりを深める効果がある。受講者の実際の声は以下の通りである。

「以前は一度には覚えられなかった電話番号が教室に通いはじめてからすっと頭に
入っていくんですね。お店で買い物をしてもレジよりも早く計算ができるよういなっ
て、店員さんから驚かれました。」(受講者 C さん)

「週 1 回の通学をしているうちに、今までのメリハリのない生活からリズムが生まれ
てきました。
・・・また、地域においても積極的な行動ができるようになりました。
町内会や老人会、交通安全協会の役員も引き受けることになり、ますます忙しい日々
を送っております。
」
(受講者 B さん)

「
(震災・津波で)何もなくなってしまったから、みんな家に引き込んでしまって、
・・・
隣近所だって誰がいるのかわからない。しかし、教室が始まって、笑い声が聞こえる
のはここだけですよ。
・・・みんなで顔をあわせる木曜日が楽しみ。ここに来れば病
院に行かなくてもいい。
「医者いらず」ですよ。教室がなかったら、もうボケてしまっ
たかもしれないね。
」
(宮城県・石巻市の A さん(79 歳)
)
資料:くもん学習療法センター資料より
② 生活習慣と健常児の認知機能の関連解析結果の活用
本研究終了後の発展状況で既述した通り、宮城県教育委員会、仙台市教育委員会におい
て、生活習慣と健常児の認知機能の関連解析の結果が活用されている。本取り組みは平成
22 年度より実施されているものであり、現在も実施中である。対象は、上記地域の公立小
中学校に通う児童・生徒及びその保護者、教員であり、基本的生活習慣を見直すことによ
り子ども達を健全に発育させることに貢献している。
また、兵庫県小野市教育委員会においては、本研究代表者は教育行政顧問として、保育、
92
初等中等教育に関するアドバイスを行っている。
今後、研究をより深化させ、海外展開を含めて研究成果のより一層の還元に努める予定
である。
3.3.3.2. 研究開発成果がもたらした科学技術的、社会的及び経済的な効果・効用、波及効果
(1) 研究者・関与者の活動は、科学技術的・社会的な面での人材育成・キャリアパスの開
拓や人的ネットワークの展開に繋がったか。
① 若手人材の育成・キャリアパスの開拓
ポスドクが新たな雇用を得た。プロジェクトメンバーが、研究開発成果を踏まえて研究
活動を継続しながらさらに経験や実績を積み上げている。獲得ポストの例としては、九州
大学研究員、京都大学研究員、理化学研究所研究員、国立精神神経センター研究員、ノー
スウエスタン大学研究員、カリフォルニア大学研究員、スタンフォード大学研究員、青森
県庁職員、MathWorks 社職員、等が挙げられる。
② 人的ネットワークの拡大
新たな共同研究や研究プロジェクトにつながっている。本研究開発で構築した手法や成果
を利用したいと希望する研究者、地域や現場で活動する人々(研究活動や成果を受け継いで
展開する人)との交流や協働が増えている。また、新たな学術・研究分野を開拓しうる人材
が育っている。新たに立ち上がった共同研究の例としては、以下が挙げられる。
 「学習意欲」の科学的研究に関するプロジェクト(仙台市教育委員会)
 「学ぶ土台づくり」推進プログラム(宮城県教育委員会)
 国際学術協定:AARP(米国)、トリノ大学(イタリア)、ユバスキュラ大学(フィ
ンランド)、テマセク・ポリテクニクス(シンガポール) 以上、高齢者の認知機
能向上に関する研究
 国際共同研究:クレルモン第二大学(フランス) 発達障害児の認知発達国際比較
研究
(上記の他に国内共同研究、産学連携研究等、多数あるが、詳細は非開示)
(2) 研究者・関与者の活動は、社会の幅広い関与者(ステークホルダー※)にどのような
社会面(教育面)
・経済面での影響・効果をもたらし、研究開発成果の社会での活用・
拡大・定着に繋がっているか。
(※当初想定していなかったステークホルダーも含む)
㈱公文教育研究会・くもん学習療法センターを通して、全国の自治体において、高齢者
の認知機能向上システムが活用されており、一般の高齢者において、いつまでもイキイキ
93
と活動を続けることができるようになる効果を発揮している。
2011 年には、米国オハイオ州クリーブランドのエライザ・ジェニングス海外発の学習療
法実践研究がスタートした。この取り組みで入所者がどのように変わったかを追跡したド
キュメンタリー映画「僕がジョンと呼ばれるまで」が作られ、2014 年春に日本全国で公開
予定である。
また、宮城県教育委員会、仙台市教育委員会、小野市教育委員会において、生活習慣と
健常児の認知機能の関連解析の結果が活用されており、上記地域の公立小中学校に通う児
童・生徒及びその保護者、教員において、基本的生活習慣を見直すことにより子ども達を
健全に発育させることに貢献している。
94
3.3.4. 付属資料
3.3.4.1. 主要研究者動静表
氏名
研究期間中の所属・役職
現在の所属・役職
川島 隆太
東北大学加齢医学研究所 教授
東北大学加齢医学研究所 教授
辻一郎
東北大学大学院医学研究科 教授
東北大学大学院医学研究科 教授
杉浦元亮
東北大学加齢医学研究所 准教授
東北大学加齢医学研究所 准教授
瀧靖之
東北大学加齢医学研究所 准教授
東北大学加齢医学研究所
東北メディカル・メガバンク機構 教授
栗山進一
東北大学大学院医学研究科 准教
授
東北大学大学院医学研究科
分子疫学分野 教授
横山悟
東北大学加齢医学研究所 助教
東北大学加齢医学研究所 助教
泰羅 雅登
日本大学大学院総合科学研究科
教授
東京医科歯科大学大学院医歯学総合研
究科
吉田 甫
立命館大学大学院文学研究科 教
授
立命館大学文学部 特任教授
大川一郎
立命館大学大学院文学研究科 教
授
筑波大学人間学群心理学類 教授
土田宣明
立命館大学大学院文学研究科 教
授
立命館大学応用人間科学研究科 教授
田島 信元
白百合女子大学文学部 教授
白百合女子大学文学部 教授
3.3.4.2. 研究開発プロジェクト終了後(平成 21 年 12 月以降)の主要研究成果
(1) 論文
論文名
著者
Takeuchi H, Sekiguchi A,
Taki Y, Yokoyama S,
Training of working memory
Yomogida Y, Nozomi K,
1
impacts structural connectivity
Yamanouchi T, Suzuki S,
Kawashima R
Breakfast Staple Types Affect
Taki Y, Hashizume H, Sassa
Brain Gray Matter Volume
Y, Takeuchi H, Asano M,
2
and Cognitive Function in
Asano K, Kawashima R
Healthy Children
Working memory training
using mental calculation
Takeuchi H, Taki Y, Sassa Y,
3 impacts regional gray matter Hashizume H, Sekiguchi A,
of the frontal and parietal
Fukushima A, Kawashima R
regions
95
掲載媒体
年月
ournal of
Neuroscience,0: 3,pp,
297-303,
2010
PLoS ONE, 5(12):
e15213, 1-8
2010
PLoS ONE, 6(8):
e23175
2011
Effects of training of
4 processing speed on neural
systems
Nutritional quality of
5 breakfast affects cognitive
function: an fMRI study
Correlation between gray
matter density-adjusted brain
6 perfusion and age using brain
MR images of 202 healthy
children
Gender differences in
partial-volume corrected brain
7
perfusion using brain MRI in
healthy children
8
Cognitive Interventions to
Improve Prefrontal Functions
Takeuchi H, Taki Y,
Hashizume H, Sassa Y,
Nagase T, Nouchi R,
Kawashima R
Journal of
Neuroscience, 31(34):
pp, 12139-12148
2011
Akistuki Y, Nakagawa S,
Sugiura M, Kawashima R
Neuroscience &
Medicine, 2: pp,
192-197
2011
Taki Y, Hashizume H, Sassa
Human Brain
Y, Takeuchi H, Wu K, Asano ,
Mapping, 32, pp,
Asano K, Fukuda H,
1973-1985
Kawashima R
2011
Taki Y, Hashizume H, Sassa
Y, Takeuchi H, Wu K, Asano
M, Asano K, Fukuda H,
Kawashima R
NeuroImage, 58, pp,
709-715
2011
Tachibana Y, Akitsuki Y,
Kawashima R
Brain Research
Journal,3:pp, 3-4,
Article 1
2011
NeuroImage,59:pp,
1023-1027
2012
PLoS ONE, 7(1):
e29676
2012
NeuroImage, 60:pp,
471–475
2012
NeuroImage, 60:pp,
2035–2041
2012
Trials, 13:pp,32
2012
International Journal
of Psychology
Research,
Volume7Issue2,Articl
e4
2012
Taki Y, Hashizume H, Sassa
Correlation among body
Y, Takeuchi H, Asano M,
height, intelligence, and brain
Asano K, Kotozaki Y, Nouchi
9
gray matter volume in healthy
R, Kai W, Fukuda H,
children
Kawashima R
Nouchi R, Taki Y, Takeuchi H,
Brain training game improves Hashizume H, Akitsuki Y,
Shigemune Y, Sekiguchi A,
10 executive functions and
processing speed in the elderly Kotozaki Y, Tsukiura T,
Yomogida Y, Kawashima R
Taki Y, Thyreau B,
Sleep duration during
Hashizume H, Sassa Y,
weekdays affects hippocampal
Takeuchi H, Wu K, Kotozaki
11
gray matter volume in healthy
Y, Nouchi R, Asano M, Asano
children
K, Fukuda H, Kawashima R
The correlation between brain Sassa Y, Taki Y, Takeuchi H,
gray matter volume and
Hashizume H, Asano M,
12
empathizing and systemizing Asano K, Wakabayashi A,
quotients in healthy children Kawashima R
Beneficial effects of reading
aloud and solving simple
arithmetic calculations
Nouchi R, Taki Y, Takeuchi H,
(Learning therapy) on a wide Hashizume H, Nozawa T,
13
range of cognitive functions in Sekiguchi A, Nouchi H,
Kawashima R
the healthy elderly: Study
protocol for a randomized
controlled trial
Varidity and reliability of the
14 fectionate parental attitude
scale
Tachibana Y, Tajima N,
Kawashima R
96
15
16
17
18
A new mother-child play
activity program to decrease
parenting stress and improve
child cognitive abilities: a
cluster randomized controlled
trial
Beneficial effects of
short-term combination
exercise training on diverse
cognitive functions in healthy
elderly people: Study protocol
for a randomized controlled
trial
Linear and curvilinear
correlations of brain gray
matter volume and density
with age using voxel-based
morphometry with the Akaike
information criterion in 291
healthy children
Linear and curvilinear
correlations of brain white
matter volume, fractional
anisotropy, and mean
diffusivity with age using
voxel-based and
region-of-interest analyses in
246 healthy children
Tachibana Y, Fukushima A,
Saito H, Yoneyama S, Ushida PLoS ONE,
K, Yoneyama S, Kawashima 7(7):e38238
R
2012
Nouchi R, Taki Y, Takeuchi H,
Hashizume H, Nozawa T,
Trials, 13:pp,200
Sekiguchi A, Nouchi H,
Kawashima R
2012
Taki Y, Hashizume H,
Thyreau B, Sassa Y, Takeuchi
Human Brain
H, Wu K, Kotozaki Y, Nouchi
Mapping, in press
R, Asano M, Asano K, Fukuda
H, Kawashima R
Taki Y, Thyreau B,
Hashizume H, Sassa Y,
Human Brain
Takeuchi H, Wu K, Kotozaki
Mapping, in press
Y, Nouchi R, Asano M, Asano
K, Fukuda H, Kawashima R
Takeuchi H, Taki Y, Nouchi
Effects of working
R, Hashizume H, Sekiguchi
memory-training on functional
A, Kotozaki Y, Nakagawa S,
19
connectivity and cerebral
Miyauchi CM, Sassa Y,
blood flow during rest
Kawashima R
Cortex, in press
(2) 発表・講演
招待講演
発表・講演名
講演者
1 Prevension of cpognitive ageing
Kawashima R
The effects of working memory
training and processing speed
2
training on neural systems and
cognitive functions
Takeuchi H,
Taki Y,
Kawashima R
Role of the medial frontal cortex
3
in communication
Kawashima R
4 スマート・エイジング
川島隆太
97
シンポジウム・セミナー名
(会場)
5th Intensive Course on
Clinical Neuropsychpologyfor
Physicians(Seville, Spain)
7th International Conference
on Cognitive Science(Beijing,
China)
29th International Congress of
Clinical
Neurophysiology(Kobe,
Japan)
第 111 回日本耳鼻咽喉科学
会総会(仙台)
年月
2010.3
2010.8
2010.10
2010.5
野内類, 川島 日本教育心理学会第 52 回総
隆太
会(東京)
子どもの生活習慣づくり
脳科学からみた、早寝、早起き、
6
川島隆太
フォーラム(文部科学省)(福
朝ご飯の大切さ
岡)
リベラルアーツカフェ~静岡
の教養~シリーズ企画1:脳
脳科学と教育―脳から考える子
科学と教育Ⅱ, 大学ネット
7
野内類
ども・大人の学び―
ワーク静岡, 科学交流フォー
ラム(静岡)
親子の遊びを用いた、脳と心を
第 30 回仙台子どものこころ研
8 育む母子保健プログラムについ 立花良之
究会(仙台)
て
平成 21 年度第 4 回発達障害
発達障害児の児童期における問
児特別支援教育保護者研修
9 題への対応 ~児童思春期精神 立花良之
講座(東北福祉大学特別支
科医の立場から~
援教育研究センター)(仙台)
5th Intensive Course on
clinical Neuropsychology for
10 Prevention of Cognitive Ageing Kawashima R
Physicians, Satellite
Symposium(Cadiz, Spain)
5th Intensive Course on
clinical Neuropsychology for
11 Prevention of Cognitive Ageing Kawashima R
Physicians, Satellite
Symposium(Granada, Spain)
スマート・エイジング(Smart
台日高齢者社会セミナー(台
12
川島隆太
Aging)
北)
Prevention and
Cognitive stimulation for
non-pharmacological
Kawashima R
13 prevention and treatment of
treatment of memory
memory disorders
disorders(Helsinki, Finland)
2011 International Conference
of Exercise for 3Q – Health
Brain exercise for cognitive
Kawashima R Quotient, Emotion Quotient
14
function
and telligence
Quotient(Taipei, Taiwan)
日本心理学会第 75 回大会
15 脳は鍛えることができるか?
川島隆太
(東京)
Positive に老いる - スマート・エ
ヒューマンインタフェースシン
16
川島隆太
イジング研究の展開
ポジウム 2011(仙台)
スマート・エイジングとエンターテ 野内類, 川島 次世代ヘルスケア技術シンポ
17
イメントの関わり
隆太
ジウム(東京)
27th International Conference
Cognitive Training for Dementia
Kawashima R of Alzheimer's Disease
18
Care and Prevention
International(London, UK)
Smart Ageing. Improve Cognitive
2012 International Ph.D.
Functions by Intervention
19
Kawashima R Intensive School(Torino,
Methods Driven by Cognitive
Italy)
Neuroscience
Fostering Active Ageing:
From Cognitive Intervention
20 Smart Ageing
Kawashima R
to Smart Mobility(Milano,
Italy)
5
高齢者への認知トレーニングの
効果とスマート・エイジング
98
2010.8
2010.1
2010.12
2010.2
2010.2
2010.3
2010.3
2010.12
2011.9
2011.10
2011.9
2011.9
2011.02
2012.3
2012.9
2012.9
21 前頭葉 –発達・加齢・可塑性–
瀧 靖之
脳 MRI から見る脳の発達、加
齢、可塑性
瀧 靖之
22
23 朝ごはん習慣とこころの働き
野内類
学習意欲と学力向上の関係につ
荒木 剛
いて
学習意欲をいかに支えるか~生
25
荒木 剛
活・学習状況調査の解析から~
学習意欲と学力向上について~
26
荒木 剛
学習意欲をいかに支えるか~
24
Cognitive training for smart
27 ageing" International
Symposium
Kawashima R
28 Learning Therapy
Kawashima R
スマート・エイジング ~脳機能
29 解析学が拓く新しい超高齢社会 川島隆太
~
スマート・エイジング ~脳科学
30
川島隆太
の研究成果を社会実装する~
学力向上と学習意欲の関係~
31 仙台市生活・学習状況調査から 荒木 剛
見えてきたもの~
口頭講演
発表・講演名
第 4 回お茶の水
Neuroimaging Conference(東
京)
第 11 回老年医学研究会(仙
台)
世田谷区立松沢小学校・学
校保健委員会(東京)
2012.12
仙台市教育局研修会(仙台)
2012.5.30
高齢者と学習障害の脳機能改
善コホート研究
情報処理学会第 75 回全国大
会(仙台)
2013.3
第 50 回日本伝熱シンポジウ
ム(仙台)
2013.5
東北心理学会第 67 回大会企
画シンポジウム(仙台)
2013.5.12
講演者
川島隆太
99
2012.9
仙台市立沖野小学校 PTA 総
2012.8.22
会(仙台)
青葉区 PTA 連合研修会(仙
2012.10.17
台)
International Symposium
"Physical Activity and Health
2013.1
Promotion during Life
Course"( Jyvaskyla, Finland)
International congress for
Preconditions for good
2013.1
life(Helsinki, Finland)
瀧 靖之, 橋爪 寛,
161 人の健常小児 MRI を用い
佐々祐子, 竹内 光,
32 た、年齢と局所灰白質量及び局
浅野孝平, 浅野路子,
所安静時血流量との相関
川島隆太
瀧 靖之, 橋爪 寛,
Relationship between gray matter
佐々祐子, 竹内 光,
volume and age in 274 healthy
Kai Wu, 野内 類, 事
33 Japanese children applying
崎由佳, 浅野路子, 浅
voxel-based morphometric
野孝平, 福田 寛, 川
analysis.
島隆太
朝ごはん習慣が認知・健康・社
34 会的成功に及ぼす影響―朝ご 野内類, 川島隆太
はんとスマート・エイジング―
MRI を用いた健常小児の脳形 瀧 靖之, 佐々祐子,
35
態の発達
川島隆太
36
2012. 9
シンポジウム・セミナー名
(会場)
年月
第 69 回日本医学放射
線学会総会(横浜)
2010.4
第 33 回日本神経科学
会(神戸)
2010.9.
日本心理学会第 74 回
大会(大阪)
2010.9
日本心理学会第 74 回
大会(大阪)
JST「脳科学と教育」研
究開発領域「高齢者と
学習障害の脳機能改
善コホート研究」報告
会(札幌)
2010.9
2010.1
37
高齢者と学習障害の脳機能改
善コホート研究
川島隆太
Taki Y, Hashizume H,
Thyreau B, Sassa Y,
Sleep duration during weekdays
Takeuchi H, Wu K,
is associated with hippocampal
Nouchi R, Kotozaki Y,
38
gray matter volume in healthy
Asano M, Asano K,
children
Fukuda H, Kawashima
R
瀧 靖之, Benjamin
多数の健常小児 MRI を用いた Thyreau, 橋爪 寛,
39 年齢と局所灰白質体積変化量と 佐々祐子, 竹内 光,
の相関に関する縦断研究
浅野孝平, 浅野路子,
川島隆太
Anatomical correlates of
40 non-native speech sound
production in children
H. Hashizume
Relationship between VIQ / PIQ
41 and regional gray matter volume
in healthy children
M. Asano
JST「脳科学と教育」研
究開発領域「高齢者と
学習障害の脳機能改
善コホート研究」報告
会(福岡)
2010.2
第 35 回日本神経科学
大会(名古屋)
2012.9
第 72 回日本医学放射
線学会総会(横浜)
2013.4
University College
London-Tohoku
University Joint
Symposium
University College
London-Tohoku
University Joint
Symposium
2013.2
2013.2
ポスター発表
発表・講演名
Improve cognitive functions of
42 seniors by reading and solving
arithmetic problems
Age-dependent brain activation
43 involved in foreign language
sound imitation: an fMRI study
The children's
Empathy-Systemizing quotient:
44
Regional gray matter volume
relates to cognitive style
講演者
Nakamura K, Taira M,
Kawashima R
Hashizume H, Taki Y,
Sassa Y, Asano M,
Asano K, Takeuchi H,
Jeong H, Sugiura M,
Kawashima R
Sassa Y, Taki Y,
Hashizume H,
Takeuchi H, Asano M,
Asano K, Kawashima
R
Takeuchi H, Taki Y,
The effects of the training of
Nagase T, Sassa Y,
45 simple processing speed tasks on
Hashizume H,
brain structures
Kawashima R
Relationship between cerebral
blood flow and age using arterial
46 spin labeled perfusion magnetic
resonance imaging in healthy
children
Taki Y, Hashizume H,
Sassa Y, Takeuchi H,
Asano M, Asano K,
Kawashima R
100
シンポジウム・セミナー名
(会場)
18th European
Congress of
Psychiatry(Munich,
Germany)
16th Annual Meeting
of the Organization for
Human Brain
Mapping(Barcelona,
Spain)
16th Annual Meeting
of the Organization for
Human Brain
Mapping(Barcelona,
Spain)
16th Annual Meeting
of the Organization for
Human Brain
Mapping(Barcelona,
Spain)
16th Annual Meeting
of the Organization for
Human Brain
Mapping(Barcelona,
Spain)
年月
2010.3
2010.6
2010.6
2010.6
2010.6
16th Annual Meeting
Asano K, Taki Y,
Correlation between cognitive
of the Organization for
Hashizume H, Sassa Y,
Human Brain
47 style and brain activity in delayed
Asano M, Takeuchi H,
Mapping(Barcelona,
matching tasks in children
Lee M, Kawashima R
Spain)
16th Annual Meeting
Akitsuki Y, Nakagawa
Nutritional quality of breakfast
of the Organization for
S, Higuchi T, Shimizu
Human Brain
48 affects cognitive function: an
M, Hamada K,
fMRI study
Mapping(Barcelona,
Kawashima R
Spain)
橋爪 寛, 瀧 靖之,
Age-dependency in brain
佐々 祐子, 浅野 路
activation involved with imitation 子, 浅野 孝平, 竹内 第 33 回日本神経科学
49
of unfamiliar foreign language
光, ジョン ヒョンジョン, 会(神戸)
sound: an fMRI study
杉浦 元亮, 川島 隆
太
浅野孝平, 瀧 靖之,
Correlation between cognitive
橋爪 寛, 佐々祐子,
第 33 回日本神経科学
50 style and brain activity in delayed 浅野路子, 竹内 光,
会(神戸)
ジョン ヒョンジョン, 川
matching task in children
島隆太
17th Annual Meeting
Nagase T, Takeuchi H,
The effects of the training of
of the Organization for
Taki Y, Sassa Y,
Human Brain
51 simple numerical calculation on
Hashizume H,
brain structures
Mapping(Quebec,
Kawashima R
Canada)
Sex difference in correlation
17th Annual Meeting
Asano K, Taki Y,
between cognitive style and brain
of the Organization for
Hashizume H, Sassa Y,
Human Brain
52 activity during visual delayed
Takeuchi H, Lee M,
matching to sample task in
Mapping(Quebec,
Kawashima R
children
Canada)
Hashizume H, Taki Y,
Sassa Y, Thyreau B,
Society for
Developmental changes in brain
Asano M, Asano K,
Neuroscience 41th
activation involved in unfamiliar
Takeuchi H, Nouchi R, Annual
53
speech sound imitation in
Kotozaki Y, Jeong H,
Meeting(Washington
children
Sugiura M, Kawashima D.C., USA)
R
瀧 靖之, 橋爪 寛,
Gender differences in
佐々祐子, 竹内 光,
partial-volume corrected brain
Kai Wu, 野内 類, 事 第 34 回日本神経科学
54
perfusion using brain MRI in
崎由佳, 浅野路子, 浅 会(横浜)
healthy children
野孝平, 福田 寛, 川
島隆太
瀧 靖之, Thyreau
Benjamin, 橋爪 寛,
第 48 回日本医学放射
健常小児における磁化移動比
佐々祐子, 竹内 光, 線学会秋季臨床大会
55
と年齢との相関
浅野路子, 浅野孝平, (長崎)
川島隆太
荒木 剛, 杉浦元亮,
学習意欲の発達的変化と生活
日本発達心理学会第
56
筒井健一郎, 池田和
環境の影響
23 回大会(名古屋)
浩, 川島隆太
101
2010.6
2010.6
2010.9
2010.9
2011.6
2011.6
2011.11
2011.9
2012.9
2012.3
Verbal cognitive style correlates
57 regional gray matter volume in
the right cerebellum in children
Neural correlates of deception in
58 social contexts in normally
developing children
Anatomical correlates of
59 non-native speech sound
production in school children
(3) 書籍・報告書等
書籍・報告書名
Effects of working memory
1 training on cognitive functions
and neural systems
2 学習療法
3
4
5
6
7
Asano K, Taki Y,
Hashizume H, Thyreau
B, Sassa Y, Asano M,
Takeuchi H,
Kawashima R
19th Annual Meeting
of the Organization for
Human Brain
Mapping(Seattle,
WA,USA)
19th Annual Meeting
Yokota S, Taki Y,
of the Organization for
Hashizume H, Sassa Y,
Human Brain
Thyreau B, Tanaka M,
Mapping(Seattle,
Kawashima R
WA,USA)
Hashizume H, Taki Y,
19th Annual Meeting
Thyreau B, Sassa Y,
of the Organization for
Asano M, Asano K,
Human Brain
Takeuchi H, Jeong H,
Mapping(Seattle,
Sugiura M, Kawashima
WA,USA)
R
著者
出版社
2013.6
2013.6
2013.6
年月
Takeuchi H, Taki Reviews in the
Y, Kawashima R Neurosciences, 21: 427-449
2010
川島隆太
2011
臨床と研究,88: 53-56,
日本臨牀 増刊号:認知症
社会的活動による認知症予防 川島隆太
学(下),pp212-216
Effects of processing speed
Reviews in the
Takeuchi
H,
training on cognitive functions
Neurosciences, 23(3):
Kawashima R
and neural systems. (review)
289-301
Taki
Y, The Open Neuroimaging
Brain Development in Childhood
Kawashima R
Journal, 6: 103-110
Mental Exercises for Cognitive
J Prev Med Public Health,
Kawashima R
Function: Clinical Evidence
46: s22-27
元気な脳が君たちの未来をひ
川島隆太
くもん出版
らく
2011
2012
2012
2013
2012
(4) 新聞・テレビ等
内容
1 日本農業新聞 大事な日の朝 ご飯で力発揮
2 読売新聞 「毎日食べる」の 51% 第一志望の大学合格
3 朝日小学生新聞 やっぱり朝食は大切
4 河北新報 学習意欲 来月調査へ
5 読売新聞 「学ぶ意欲って何」
6 河北新報 「生きる力」授業策定へ
7 大学新聞 朝食習慣が合格への近道
8 河北新報 朝食で大学合格率アップ
9 毎日新聞 時代を駆ける(1)
10 毎日新聞 時代を駆ける(2)
11 毎日新聞 時代を駆ける(3)
12 毎日新聞 時代を駆ける(4)
102
年月
2010.1.13
2010.1.13
2010.1.26
2010.3.9
2010.3.9
2010.3.13
2010.4.1
2010.4.9
2010.6.15
2010.6.16
2010.6.17
2010.6.18
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
24
25
26
27
28
29
30
31
32
33
34
35
36
37
38
39
40
41
内容
年月
毎日新聞 時代を駆ける(5)
毎日新聞 時代を駆ける(6)
毎日新聞 時代を駆ける(7)
毎日新聞 時代を駆ける(8)
毎日新聞 時代を駆ける(9)
読売新聞 家庭ではぐくむ読解力
読売新聞 朝食毎日取ると「幸福」実感
東京新聞 毎日朝食なら幸福度↑
日本農業新聞 朝食で幸せ
河北新報 低学年は逆効果
化学工業日報 栄養バランス食品 脳の活動高める
長野日報 読書で脳を鍛えよう
熊本日日新聞 脳を育む生活習慣
徳島新聞 脳鍛える習慣を
産経新聞 「書く」「読む」脳を鍛える
読売新聞 脳を鍛えよう 小野の児童に講演
神戸新聞 脳の鍛え方解説
神戸新聞 「脳トレ」を学びに活用
高知新聞 睡眠、朝食 子どもに重要
朝日新聞 作動記憶のトレーニングで脳全体の機能向上
読売新聞 文字・活字文化の将来とデジタル教科書を考える
神戸新聞 寝る子は脳もよく育つ
朝日新聞、他 17 紙 寝る子は脳育つ
熊本日日新聞 くまもと子育てトーク
河北新報 みやぎっ子ルルブル推進会議 2012
教育医事新聞 子供の脳を育てる
読売新聞 賢く年をとる
産經新聞 仙台発の成果 世界へ発信
THE PLAIN DEALER Eliza Jennings spreads SAIDO Learning throughout its
2010.6.19
2010.6.22
2010.6.23
2010.6.24
2010.6.25
2010.9.14
2010.9.17
2010.9.21
2010.9.22
2010.12.29
2011.1.14
2011.7.15
2011.8.16
2011.9.20
2011.11.3
2011.11.3
2011.11.3
2011.11.13
2012.2.13
2012.7.20
2012.8.8
2012.9.18
2012.9.18
2012.10.14
2012.11.3
2013.1.1
2013.3.24
2013.4.9
2013.6.20
(5) 特許
なし
(6 )獲得グラント
なし
(7) その他
受賞名
タイトル
年月
平成 21 年度科学技術分野の文
1
脳機能のスマートエイジング法の開発
平成 21 年 4 月
部科学大臣表彰科学技術賞
高齢者への学習介入による認知症の改善・
2 井上春成賞
平成 21 年 7 月
予防の実践
3 河北文化賞
平成 25 年 1 月
103
104
3.4. 言語の発達・脳の成長・言語教育に関する統合的研究
(研究代表者:萩原 裕子)
105
3.4.1. 研究開発プロジェクトの概要
研究開発領域
「脳科学と社会」研究開発領域
研究開発プログラム名
研究開発プログラム「脳科学と教育(タイプⅡ)
」
研究開発プロジェクト名
言語の発達・脳の成長・言語教育に関する統合的研究
研究代表者(現所属)
萩原 裕子(首都大学東京 大学院人文科学研究科 教授)
研究実施期間
平成 16 年 12 月~平成 21 年 11 月(2004 年 12 月~2009 年 11 月)
※現所属は、追跡調査時のものを記載
3.4.1.1. 研究開発の概要と研究開発目標
本研究開発プロジェクトは、言語習得、とりわけ母語および外国語としての非母語習得
のメカニズムについて、日本語を母語として英語を学習する幼稚園児、小学生、大学生、
および日本語を外国語として学習する大学生を対象として、行動調査や脳機能計測実験に
よる追跡調査を行う。言語の発達と学習に関わる要因を特定し、その神経基盤を明らかに
することにより、日本人の外国語学習への科学的基盤を提供することを目的とする。
3.4.1.2. 研究開発の実施体制
※所属・役職は研究開発プロジェクト実施期間中のものを記載
(1) 機能計測研究グループ
氏名
期間中の所属・役職
担当
参加期間
萩原 裕子
首都大学東京・大学院人文
科学研究科 教授
研究総括、言語・脳研究
全般
平成 16 年 12 月~
平成 22 年 3 月
尾島 司郎
科学技術振興機構 研究員
ERP,fNIRS 計測および解
析
平成 17 年 4 月~
平成 22 年 3 月
杉浦 理砂
首都大学東京・大学院人文
科学研究科 リサーチアシ
スタント 特任准教授
脳データの解析
平成 19 年 12 月~
平成 22 年 3 月
松葉 裕子
科学技術振興機構 技術員
小学校・研究参加者との
連絡、言語テスト実施
平成 18 年 12 月~
平成 22 年 3 月
栗城 眞也
北海道大学
電子科学研究所 教授
脳計測アドバイザー
平成 16 年 12 月~
平成 21 年 3 月
中込 和幸
鳥取大学医学部 教授
脳計測アドバイザー
平成 16 年 12 月~
平成 21 年 11 月
伊藤 憲治
東京大学医学部 助教
脳計測アドバイザー
平成 16 年 12 月~
平成 21 年 11 月
柿木 隆介
自然科学研究機構・生理学
研究所 教授
脳計測アドバイザー
平成 19 年 4 月~
平成 21 年 11 月
定藤 規弘
自然科学研究機構・生理学
研究所 教授
脳計測アドバイザー
平成 19 年 4 月~
平成 21 年 11 月
星野 崇宏
名古屋大学
経済学部 准教授
質問紙データの統計解析
平成 19 年 4 月~
平成 21 年 11 月
106
牧 敦
㈱日立製作所基礎研究所
主管研究員
fNIRS アドバイザー
平成 20 年 4 月~
平成 21 年 11 月
桂 卓成
㈱日立製作所基礎研究所
研究員
fNIRS データ解析補助
平成 20 年 4 月~
平成 21 年 11 月
壇 一平太
(独)食品総合研究所 主任
研究員
子供の標準脳作成、
fNIRS データの投射、脳
計測全般
平成 20 年 4 月~
平成 21 年 11 月
飯田 香緒里
㈶日本英語検定協会 制作
部児童英検担当
英語テスト開発・評価
平成 18 年 4 月~
平成 21 年 11 月
仲村 圭太
㈶日本英語検定協会 制作
部児童英検担当
英語テスト開発・評価
平成 18 年 4 月~
平成 21 年 11 月
国語テスト開発・作成
平成 18 年 4 月~
平成 21 年 11 月
国語テスト開発・作成
平成 18 年 4 月~
平成 21 年 11 月
国語テスト開発・作成
平成 18 年 4 月~
平成 21 年 3 月
鎌田 恵太郎
萬治 理
小沢 香里
㈱ベネッセ・コーポレー
ション・ベネッセ教育研究
開発センター 主席研究員
㈱ベネッセ・コーポレー
ション 小中学校事業部開
発セクション
㈱ベネッセ・コーポレー
ション 小中学校事業部開
発セクション
星 詳子
東京都精神医学総合研究所
Research Director
fNIRSアドバイザー
平成 16 年 12 月~
平成 19 年 3 月
窪園 晴夫
神戸大学・文学部 教授
音声学・音韻論の専門知
識の提供
平成 16 年 12 月~
平成 19 年 3 月
杉崎 鉱司
三重大学・文学部 講師
言語習得論の専門知識の
提供
平成 16 年 12 月~
平成 18 年 3 月
担当
研究統括、脳機能計測
(ERP)
、メタ言語能力発
達調査
参加期間
(2) 母語獲得研究グループ
氏名
期間中の所属・役職
平成 16 年 12 月~
平成 21 年 11 月
小泉 政利
東北大学・大学院文学研究
科 准教授
行場 次朗
東北大学・大学院文学研究
科 教授
脳機能計測(ERP, NIRS)
平成 16 年 12 月~
平成 21 年 11 月
才田 いずみ
東北大学・大学院文学研究
科 教授
実験刺激(音声ファイル
等)作成
平成 16 年 12 月~
平成 21 年 11 月
金子 義明
東北大学・大学院文学研究
科 教授
言語発達調査
平成 16 年 12 月~
平成 21 年 11 月
阿部 宏
東北大学・大学院文学研究
科 教授
認知発達調査
平成 16 年 12 月~
平成 21 年 11 月
福光 優一郎
東北大学・文学部・研究員
文法処理神経基盤発達調
査
平成 17 年 4 月~
平成 21 年 11 月
柴田 寛
東北大学・文学部・研究員
日本学術振興会特別研究員
意味処理神経基盤発達調
査
平成 17 年 4 月~
平成 18 年 3 月
107
栗原 通世
国士舘大学・21 世紀アジア
学部 講師
談話処理神経基盤発達調
査
平成 17 年 4 月~
平成 18 年 3 月
田中 章浩
Department of Psychology
and Health, Tilburg
University 客員研究員
脳機能計測(NIRS)
平成 17 年 12 月~
平成 21 年 11 月
郷路 拓也
東北大学・文学部・研究員
文法能力調査
平成 18 年 6 月~
平成 20 年 3 月
田中 幹大
東北大学・文学部・研究員
脳機能計測(ERP, NIRS)
平成 19 年 9 月~
平成 21 年 3 月
脳機能計測(MRI)
平成 20 年 4 月~
平成 21 年 3 月
東北大学・大学院文学研究
科・専任研究員
金 情浩
東北大学・大学院文学研究
科 助教
(3) 非母語としての英語教育研究グループ
氏名
期間中の所属・役職
担当
参加期間
遊佐 典昭
宮城学院女子大学 教授
宮城学院女子大学グルー
プの全ての研究項目
平成 16 年 12 月~
平成 21 年 11 月
足立 智昭
宮城学院女子大学 教授・幼
稚園長
幼児教育全般
平成 16 年 12 月~
平成 18 年 3 月
畑山 みさ子
宮城学院女子大学 教授・幼
稚園長
幼児教育全般
平成 18 年 4 月~
平成 21 年 3 月
Chris Huston
宮城学院女子大学 准教授
実験デザイン協力
平成 16 年 12 月~
平成 19 年 8 月
山崎 敦子
宮城学院女子大学附属幼稚
園 教諭
幼児教育実践
平成 16 年 12 月~
平成 18 年 3 月
Maristela,
Cuadra
宮城学院女子大学 非常勤
英語講師
幼児英語教育
平成 17 年 4 月~
平成 19 年 7 月
氏家 晶子
宮城学院女子大学 非常勤
講師
音声実験実施
平成 17 年 4 月~
平成 19 年 8 月
高橋 奈穂
宮城学院女子大学 非常勤
講師
音声実験実施
平成 17 年 4 月~
平成 19 年 3 月
福地 和則
仙台電波工業高等専門学校
教授
大人の第二言語習得
平成 16 年 12 月~
平成 21 年 3 月
平川 眞規子
東京国際大学 教授
大人と子供の第二言語習
得
平成 16 年 12 月~
平成 21 年 11 月
白畑 友彦
静岡大学 教授
第二言語習得論全般
平成 16 年 12 月~
平成 19 年 3 月
木口 寛久
宮城学院女子大学 准教授
言語理論と獲得研究
平成 18 年 4 月~
平成 21 年 3 月
那須川 訓也
東北学院大学 准教授
音韻論、大学生の VOT
獲得
平成 18 年 4 月~
平成 21 年 11 月
108
伊藤 千春
めるへんの森幼稚園 教諭
幼児教育全般
平成 18 年 4 月~
平成 21 年 11 月
John Broman
明泉幼稚園 副園長
英語イマージョン教育
平成 18 年 4 月~
平成 21 年 3 月
Donna
Mandeville
ニューデースクール 非常
勤英語講師
幼児英語教育
平成 19 年 9 月~
平成 21 年 8 月
Daniela Lupsa
岩手県立大学・共通教育セ
ンター 講師
幼稚園児の形態知識調査
平成 20 年 4 月~
平成 21 年 11 月
金情浩
東北大学・大学院文学研究
科 専門研究員
fMRI 実験計測実験
(4) 非母語としての日本語教育研究グループ
氏名
期間中の所属・役職
担当
平成 20 年 4 月~
平成 21 年 11 月
参加期間
酒井 弘
広島大学・大学院教育学研
究科 准教授
広島グループのすべての
研究の統括
平成16年12月~
平成21年11月
迫田 久美子
広島大学・大学院教育学研
究科 教授
日本語能力調査紙の開発
及び調査の実施
平成16年12月~
平成21年11月
宮谷 真人
広島大学・大学院教育学研
究科 教授
事象関連電位計測実験の
実施
平成16年12月~
平成21年11月
松見 法男
広島大学・大学院教育学研
究科 准教授
日本語能力調査への助言
平成17年4月~
平成18年3月
松崎 寛
広島大学・大学院教育学研
究科 准教授
日本語能力調査への助言
平成17年4月~
平成18年3月
今泉 敏
県立広島大学 教授
事象関連電位計測実験へ
の助言
平成16年12月~
平成19年3月
玉岡 賀津雄
広島大学留学生センター
教授、麗沢大学 教授、名古
屋大学 教授
日本語能力調査紙の開
発・データ分析
平成16年12月~
平成21年11月
宮岡 弥生
広島経済大学 准教授
日本語能力調査紙の開
発・調査の実施
平成16年12月~
平成21年11月
吉村 めぐみ
科学技術振興機構 研究員
心理言語学実験実施,日
本語能力調査紙の開発及
び調査の実施
平成17年4月~
平成20年9月
才田 いずみ
東北大学 教授
日本語能力調査への助言
平成16年12月~
平成18年3月
堀場 裕紀江
神田外語大学 教授
日本語能力調査への助言
平成17年4月~
平成18年3月
平川 眞規子
東京国際大学 教授
文教大学 教授
日本語能力調査への助言
平成17年4月~
平成18年3月
小野 創
広島大学 研究員
関西外国語大学 講師
日本語能力調査紙の開発
及び調査の実施
平成18年10月~
平成21年11月
張 超
広島大学大学院教育学研究
科 大学院生
上海海事大学 講師
日本語能力調査紙の開発
平成17年4月~
平成18年3月
109
桜木 ともみ
カリフォルニア大学サンタ
バーバラ校 講師
日本語能力調査紙の開発
及び調査の実施
平成 18 年 4 月~
平成 20 年 9 月
福田 倫子
広島大学大学院教育学研究
科 助教、文教大学 准教授
日本語能力調査紙の開発
及び調査の実施
平成 18 年 4 月~
平成 21 年 11 月
(5) 言語能力検査・評価法グループ
氏名
期間中の所属・役職
長谷川 信子
担当
言語理論(統語・形態・
神田外語大学・言語科学研究
意味)と言語能力評価、
科/言語科学研究センター
言語検査テスト開発、グ
教授/研究センター長
ループ統括
参加期間
平成 16 年 12 月~
平成 21 年 11 月
井上 和子
神田外語大学・言語科学研
究センター 顧問
言語理論(統語)と言語
能力評価
平成 16 年 12 月~
平成 21 年 11 月
小林 美代子
神田外語大学 教授
熊本大学 教授
言語教育と英語能力判定
テスト開発・評価
平成 16 年 12 月~
平成 21 年 9 月
平成 21 年 10 月~
平成 21 年 11 月
堀場 裕紀江
神田外語大学 教授
認知心理学と言語理解、
言語能力判定テスト開
発・評価
平成 16 年 12 月~
平成 21 年 11 月
山田 昌史
神田外語大学・言語科学研
究センター 常勤研究員
言語教材・テスト分析、
データ収集・整理
平成 16 年 12 月~
平成 18 年 3 月
神谷 昇
東京都立大学 大学院生
神田外語大学・言語科学研
究センター 常勤研究員
データ収集・整理
言語教材・テスト分析、
データ収集・整理、児童
英語教材の言語学的分析
平成 18 年 1 月~
平成 18 年 3 月
平成 18 年 4 月~
平成 21 年 11 月
松本 順子
神田外語大学・留学生別科
非常勤講師
語彙データ調査
平成 17 年 4 月~
平成 17 年 6 月
鈴木 秀明
神田外語大学・留学生別科
非常勤講師
語彙データ調査
平成 17 年 4 月~
平成 17 年 6 月
小林 ひとみ
ヒューマンアカデミー 非
常勤講師
語彙データ調査
平成 17 年 4 月~
平成 17 年 6 月
Paul Joyce
神田外語大学 講師
英語能力テスト形式開発
平成 18 年 1 月~
平成 19 年 1 月
山田 一美
大東文化大学 非常勤講師
データ入力、児童英語テ
キスト分析
平成 17 年 12 月~
平成 18 年 2 月
アマンダ・
ヨット
㈲コスモポリタンビレッジ
副社長
児童英語教材・語彙デー
タ検閲
平成 18 年 4 月~
平成 18 年 5 月
長谷部 郁子
学習院女子中等科・女子高
等科 非常勤講師
データ入力、児童英語テ
キスト分析
平成 18 年 8 月~
平成 18 年 8 月
Brad Curabba
神田外語大学 講師
テストおよび音声刺激作
成
平成 18 年 6 月~
平成 18 年 6 月
Nathalie
Montoya
個人での英語指導実践者
教師
テストおよび音声刺激作
成
平成 18 年 6 月~
平成 18 年 6 月
110
David
O'Donnell
神田外語大学 講師
テストおよび音声刺激作
成
平成 18 年 7 月~
平成 18 年 7 月
Sarah Osboe
神田外語大学 講師
テストおよび音声刺激作
成
平成 18 年 7 月~
平成 18 年 7 月
Chris Stillwell
神田外語大学 講師
テストおよび音声刺激作
成
平成 18 年 9 月~
平成 19 年 1 月
Tara Waller
神田外語大学 講師
テストおよび音声刺激作
成
平成 18 年 9 月~
平成 19 年 1 月
田川 憲二郎
尚美学園大学 非常勤講師
テキスト分析
平成 18 年 12 月~
平成 19 年 8 月
古橋 枝利子
育伸ゼミナール辰巳台校
英語常勤講師
テスト実施・調査
平成 19 年 2 月~
平成 19 年 2 月
Sayuri
Gunawardene
津田塾会 英語教師
テスト実施および方法指
導
平成 19 年 2 月~
平成 19 年 2 月
國分 有穂
武蔵高等学校・中学校 非常
勤講師
テスト実施の協力
平成 19 年 3 月~
平成 19 年 11 月
(6) バイリンガル研究グループ
氏名
期間中の所属・役職
担当
参加期間
松岡 和美
慶應義塾大学経済学部 教
授
バイリンガル研究の総
括、調査の実施
平成 16 年 12 月~
平成 21 年 11 月
杉岡 洋子
慶應義塾大学経済学部 教
授
調査結果の解析
平成 19 年 4 月~
平成 21 年 11 月
森 聡美
立教大学法学部 異文化コ
ミュニケーション学部 准
教授
調査結果の解析
平成 19 年 4 月~
平成 21 年 11 月
111
3.4.1.3. 研究開発の内容
(1) 小学生の言語習得の脳機能コホート研究
小学生を対象として、テスト(国語・英語テスト)、言語環境や生育環境に関するアンケー
ト調査、及び移動脳機能計測車「わくわく脳科学」号を利用し、事象関連電位(ERP)と
光トポグラフィー(NIRS)による脳計測の追跡調査を実施し、母語の発達的変化、母語の
発達と非母語習得の類似性、
非母語活動が母語の発達に与える影響などの観点から分析し、
結果について考察した。
(2) 幼稚園児の言語習得研究
英語接触量の異なる 4 グループの幼稚園児に対して、母語の発達・行動調査、日本語と
英語に関する NIRS と ERP による脳計測の追跡調査を実施し、収集したデータより、母語
の発達的変化、非母語活動が母語の発達に与える影響などの観点から分析し、結果につい
て考察した。
(3) 大学生への英語短期教授効果の研究
1 ヶ月間の教授による学習効果と半年後の持続効果を、fMRI を用いて実験研究した。ま
た、大学生と幼稚園児を対象に、英語の発音について VOT 値を指標として調査し、効率
的な教授・学習法と英語の発音に関して具体的な提言を行った。
(4) 母語および学習環境の相違が非母語の学習に与える影響の解明
日本語を外国語として学習している中国人、韓国人、アメリカ人の大学生を対象として、
「日本語能力試験」の出題基準を参考に、中国、韓国、アメリカにおいて大規模な海外調
査を行い、重回帰分析、共分散構造解析などの統計的手法を使用して、日本語学習者の言
語能力の構成要因に、母語・母文化および学習環境や教授法が及ぼす影響を分析した。
(5) 言語学・応用言語学に基づく外国語能力の検査、判定、評価法の開発
既存の児童英語教材の分析と、テストの枠組み開発の知見をもとに、
「児童英語能力判定
テスト」を開発し、早期英語学習者を対象にテストを行い分析した。また「児童英語用の
語彙リスト」も開発した。
(6) 母語および学習環境の相違が非母語の学習に与える影響の解明
アメリカ在住の日英同時バイリンガルの幼児と母親のビデオ撮影を行い、発話データ
ベースを作成し、文法発達過程の理論的な分析を行った。
112
3.4.1.4. 研究開発の成果
(1) 母語の単語処理の定着過程を、時間分解能の高い ERP を用いて捉えることに成功した

平均年齢 7 歳児グループと平均年齢 9 歳児グループの日本人小学生を対象として、モ
ニターに視覚提示された絵の内容と聴覚提示された日本語の簡単な単語が意味的に
合っていない場合に出現するミスマッチ反応を指標に据え、追跡調査した結果、簡単
な単語の使用における脳内処理の迅速化が、9 歳頃までは進行していることが分かっ
た。

脳内処理の時間的変化は、脳の成熟、特に言語機能の優位半球への一側化、日常にお
ける言語使用、文字学習による音韻認識能力の促進などの相互作用で引き起こされる
ものと推測され、言語機能の神経回路網の効率化がこの時期、段階的に進行している
ことが示唆された。
(2) 小学生の外国語学習の神経基盤を解明した

小学生を対象として、モニターに視覚提示された絵の内容と聴覚提示された英単語が
意味的に合っていない場合に現れる ERP のミスマッチ反応を指標に据え、追跡調査を
行った結果、英語学習の進行にともなって出現する脳反応の変化(broad Negativity
bNeg -> N400 -> Late Positive Component LPC の 3 つの ERP 成分の出現順序)は、母語
の獲得に見られる脳反応の変化と同じプロセスを辿ることが分かった。

ヒトの言語獲得プロセスは学習環境によらず強い生物学的制約を受けていることを初
めて脳科学の観点から示した。

外国語学習への言語環境・社会的要因の影響について、保護者へのアンケートと電話
による聞き取り調査を行い、習熟にともない変化する 3 つの ERP 成分のそれぞれにつ
いて、環境要因(接触開始年齢、学習経過年数、生涯接触時間数など)の影響を単回
帰分析により評価した結果、子供の外国語学習では学習期間の長さよりも、その期間
内に全体で費やした時間数に、脳反応の変化はより強く関係していることが明らかに
なった。
(3) 「音」の処理から言語処理へのプロセス可視化に成功した

小学生の脳データから、英語の初期学習過程において、言語処理に関わる脳の平均的
な解剖学的位置と脳の認知機能を探った結果、子供の脳では、左半球での分節音素に
関する処理と、右半球での超分節音素(アクセント、リズム、イントネーション等)
に関する処理が並列的に行われているものと推測された。

NIRS という簡易な脳計測法により、子供脳における「音」の処理という低次の聴覚
処理から、高次の連合野における「言語」処理への移行過程を可視化した研究は世界
にも類例がなく、発達脳科学の視点からみて極めて意義深い。
113
(4) fMRI を用いて言語学の仮説である「普遍文法」の可能性を脳科学で研究した

サブリーダーの遊佐グループは、普遍文法の原理の一つである「構造依存性」に着目
し、日本人大学生に、約 1 ヶ月間、複文の否定倒置構文は教えず、否定倒置構文に基
づく単文の構造のみを様々な方法で教えた。そこで、fMRI を用いた脳機能計測で、教
えた単文と、教えなかった複文の文法性判断と脳活動を、教える前と後で測定、何も
教えなかったグループに比べて、単文を教えたグループでは、教授後、単文のみなら
ず複文においても誤答率が下がり、かつ左下前頭回(BA44/45)で脳活動が上昇する
ことを実証した。

さらに 6 ヶ月後の計測でも同様の結果を得ており、英語学習者を対象に英語の否定倒
置構文を具体例として、言語学の仮説である「普遍文法」の実在可能性の検証に成功
した。

この研究は、文法の中核である「構造依存性」の原理が感受性期を過ぎても働いてい
ることを示すもので、成人の第二言語習得にも母語獲得と同じく脳科学の手法によっ
て「普遍文法」が関与している可能性を初めて示す結果が得られている。
3.4.2. 研究開発プロジェクトの事後評価結果の概要
「事後評価報告書」に基づき、本研究開発プロジェクトに関するセンターの評価委員会
による事後評価結果を以下のように整理した。
(1) 総合評価
研究開発目標の達成度、学術的・技術的・社会的貢献、成果の社会における活用・展開
などを中心に総合的に判断して、ある程度の成果が得られたと評価する。
本プロジェクトは、脳科学的手法を活用して言語学的課題に取り組むという、我が国で
は比較的進んでいない分野に取り組んで、調査研究に有効な手法を確立し、外国語学習に
おける小学生の脳機能計測において、かなりのサンプル数のコホートデータの収集を行い、
堅実な成果を挙げている。その知見は今後の発達脳科学研究にとって重要であり、得られ
たデータにはそれなりの信頼性があり、その解釈と応用にも発展性があると考えられる。
一方で、研究開発の目的論的な問題設定と計画には、拡大解釈の懸念も一部に垣間見られ
るので、本格的な教育制度への社会応用に際しては、社会的観点と学術的観点からの整理が
求められ、慎重を要する面があると思われる。英語学習は、教育行政での今日的な話題であ
り、得られた成果の拡大解釈をされないよう、十分な配慮がなされることを望みたい。
言語は音韻、文法、語彙、語用、さらにより大きなコミュニケーション技法とのかかわ
りなど多面性をもつものである。言語現象の限られた一部分を切り取り、その結果を言語
習得全般に拡張することはもとより適切でない。社会的に関心を集め、インパクトの強い
問題であるので、その成果を、外国語学習一般に敷衍して解釈される可能性を意識し、慎
重に結論を導く必要がある。
114
(2) 目標達成の状況
本プロジェクトの研究開発目標は、ある程度達成されたと評価する。
本プロジェクトでは、母語及び外国語(非母語)の習得メカニズムを、行動調査及び脳
計測の手法を用いて明らかにすること、特に日本人の英語学習者の追跡調査により、言語
の発達と学習に関わる要因を特定し、その神経基盤を明らかにすることを目標としており、
明確で妥当な設定であった。
「移動脳計測車(わくわく脳科学)」を利用して効率的なデータ収集と解析を進め、論
文発表も順調に進められているが、NIRS による脳機能計測の縦断的なデータ解析は終了
せず、やや遅滞があった。
様々なテストバッテリーを開発し、事象関連電位(event-related potential:ERP)のコホー
ト研究で、母語の単語処理の発達が 7 歳から 9 歳の間に段階的に変化すること、外国語学
習にもっとも有意に関与している要因が接触時間であること等の発見、NIRS を用いた横
断研究で既知の単語は左半球で、未知の単語は右半球で処理され、習熟が進むに連れ、左
角回とブローカ野の活動が上昇することの発見等、目標を相当程度達成したと判断できる。
一方で、母語及び外国語(非母語)の習得メカニズムの解明については、本プロジェク
トは主としては単語処理に限定されていて、音韻や文法における脳機能については今後の
課題として残された。
(3) 学術的・技術的貢献
本プロジェクトの成果は、脳科学分野の科学や技術に、相当程度貢献したと評価する。
単語処理に限られるとはいえ、母語に関する脳機能の発達変化の過程、外国語の発達過
程も母語と同様であること、外国語の習得に生涯接触時間が重要であること等の発見は、
見るべき成果である。ただし、あくまでも単語を用いての研究であり、ここでの結果を、
階層を上にたどって言語へ拡大解釈しないような注意が必要である。また、ERP に関する
統計的解析結果については、より詳細な分析が望ましい。
本研究は、言語に関する脳科学にコホート研究の手法をどう活用するか、という方法論
的問題についても貢献がある。国際的に見ても脳計測と結びついた、発達的視点を加えた
言語習得過程の研究は少ない。我が国では進んでいるとはいえないこの分野にあって、新
しい手法を活用し、国際的なレベルに到達出来たことは評価に値する。
統計的解析に関しては、単項目ごとの解析が多く他の要因との相互作用が論じられてい
ないこと、あるいは結論の再現性が論じられていない等、今後慎重な検討を要する部分も
多い。
例えば、
幼稚園児の外国語への集中接触が一時的に母語発達へ影響を与えるかとか、
小学校の英語教育は国語の成績へ影響しないか等の考察も、単に統計解析の結果を示すだ
けでは不十分で、言語の干渉が問題なのか、学習時間数の圧迫が問題なのかなど、他の視
点をも加味した今後の更なる解析を期待したい。
115
(4) 社会的貢献・成果の社会での活用・展開
本プロジェクトの成果は、学習・教育に関して科学的根拠を提供する上で、社会的に貢
献をし、今後もある程度貢献しうると評価する。
言語習得の問題に対して、科学的な根拠の重要性を明らかにし、そこから提供できるい
くつかの知見を示した。一方、外国語の学習時期が社会的・政治的な問題となっている現
在、性急な結論は有害であることも銘記すべきと考える。このようなデリケートな問題で
は十分な配慮が必要で、非科学的な主張に対しても、反論に当たっては十分な注意を払う
べきであろう。言語習得の問題は国際的にも関心が高く、日本語という特徴のある言語に
対し、移民環境ではない母語に囲まれた状況での脳測定を含む大がかりの調査は国際的に
も貴重なデータを提供したと考えられる。
社会への展開と言う意味では、小学校における英語教育に対する養育者の不安・期待に即
したプロジェクトではあるが、本格的な政策とするにはまだ研究の積み重ねが必要である。
興味深い知見が多く散見されはするものの、全容が明らかでないうちに部分的に成果を
一般に向けて発表することは、結果を過大に解釈される危険性があり、その点は今後も注
意を払う必要がある。
(5) 研究開発体制と管理運営
研究開発体制及び管理運営は、概ね適正・妥当であったと評価する。
中間評価の指摘を受けて、研究テーマを絞って研究開発体制を見直すことにより資源を集
中したが、当初から外国語と日本語母語の脳計測に研究資源を集約し、音韻や文法を含めた
データ収集が可能であれば、更なる成果が得られたであろう。なお、言語学者を研究代表者
として脳にかかわる実証的な研究を行ったことは、文理融合の観点から評価に値する。
(6) 費用対効果比
投入された研究開発費と予想される社会的貢献を考慮した費用対効果比については、比
較的高いと評価する。
「移動脳計測車(わくわく脳科学)
」の開発と有効利用、言語習得における脳機能に関す
る新たな研究分野の開拓など、費用対効果比は高い。
(7) 特記事項
ERP 成分に対する接触量効果の影響を、開始年齢、接触期間、生涯接触時間それぞれの
単回帰から解析し結論を導いているが、これら3変量を多変量として扱い、相互作用を解
析すると異なった結論になる可能性がある。時点間の相関を考慮したモデルを利用して再
分析を行うのがより望ましい。
本来の研究の目的から考えた場合、単純な語と意味の連合の記憶よりも、語の意味の深
い理解や用法、文法、音韻等が重要と考える。単純な語と意味の連合においては学習経験
の進展により処理の効率がよくなり、N400 のような反応がでることは不思議ではなく、少
116
なくとも言語以外での刺激を用いたカテゴリ学習を十分に行わせた後同じ反応がでないか
どうか検証する必要がある。
成果を可視化することは学校現場の教員や保護者の強い興味関心を引くが、幼児期の教育
で大切にされなければならないのは、目には見えにくい心情・意欲・態度であり、目に見え
即効性を求める早期教育に走る親心をあおるようなことにならないよう、注意されたい。
117
3.4.3. 研究開発プロジェクト終了後の展開
3.4.3.1. 研究開発成果の発展状況や活用状況
(1) 研究開発内容の進展状況
① 新たなグラント取得によるプロジェクトの継続・発展
本プロジェクト終了後の翌平成 22 年 4 月から 3 年間、科学研究費基盤研究 A において、
日本人小学生の英文法獲得の脳機能研究を実施した(
「脳機能にもとづく言語習得メカニズ
ムの解明:学童期の横断的研究」
、平成 22~24 年度、研究代表者:萩原裕子)。同研究は、
事後評価で指摘された単語処理以外の言語習得の解明を加味したもので、日本で英語イ
マージョン教育を受けている健常な小学生 92 名(2 年生 28 名、4 年生 36 名、6 年生 28 名)
を対象に実施し、句構造規則(語順)違反文を処理する際の脳活動量や活動部位が学習と
ともに変化するのか、変化するならばどのような変化かを検討した。また計測時間の短縮
のために、機能的近赤外分光法(NIRS)と事象関連電位(ERP)を併用した同時計測系を
確立した。
この研究の結果、英語習熟度の違いにより語順違反文処理時の脳反応に顕著な差がみら
れ、外国語環境で学ぶ小学生が、学習による英語習熟度の増加に伴い、文法規則(句構造
規則)を認知できる能力を獲得し、英文の聴覚刺激に対し、脳内で語順の違反を自動的に
処理する能力を備えていく過程を、脳内処理の差異として可視化することに成功した。さ
らに母語ではなく、外国語文法処理においても、習熟度とともに機能分化(左半球への側
性化)が進むことが示された。
ただし、この習熟度に伴う左半球への側性化は、発達と関連するものであるか、または
発達とは独立に学習による習熟度の増加のみに起因するものであるかを明らかにすること
はできなかった。そのため、補完研究として、平成 24 年度に中学から本格的に英語学習を
開始した公立中学校の学生約 90 名を対象に同様の実験を実施しており、解析条件の最適化
も含め、解析中である。
また、首都大学東京学長裁量枠傾斜的研究費を利用して、本プロジェクトで得た脳デー
タの活用にも取り組んでいる(
「言語機能の脳科学・遺伝学的研究」、平成 23~25 年度、研
究代表者:萩原裕子)
。同研究では、平成 22 年秋に小学生のコホート参加者に再びアクセ
スし、約 300 名から同意の下で唾液を採取し、遺伝子多型をもつ代表的な COMT 遺伝子を
標的として、脳データ、言語データとの相関を調べたものである。
その結果、NIRS による日英単語復唱課題の日本語高頻度語で COMT 効果が得られ、言
語処理に COMT が関与することが示唆された。同研究は、現在論文査読中の段階にある。
一方、ERP による英語の/l/と/r/の音声知覚のミスマッチ課題では COMT 効果は見られな
かった。その他、言語以外での刺激課題もその後の調査に含めており、言語課題との相関
分析を進めている。
なお、科学研究費基盤研究 A、首都大学東京学長裁量枠傾斜的研究費とも、脳計測実験
についは、本事業で開発した移動脳計測車「わくわく脳科学号」を有効活用し、現在準備
118
中の言語習得のプロジェクト(来年度から 5 年計画)においても、活用する意向である。
② 日英単語復唱課題のデータを活用した脳活動の性差研究
よりよい教育を提供する点で見過ごせないテーマの一つに、学習における性差の問題が
ある。この問題に対して、小学生 484 名(男子 236 名、女子 248 名)の NIRS による日英
単語復唱課題のデータの解析を実施した。
その結果、学習初期では脳活動に性差はないが、
習熟度が増すにつれて神経回路の使い方と脳の活動部位において、性差による違いを解明
しており、同研究においても現在論文査読中となっている。
③ ERP を利用し、
「普遍文法」の課題に対して脳科学の手法からさらなる解明に挑む
研究代表者は、期間中に実施した fMRI を利用した「普遍文法」の課題解明とは別に、
日本人大学生の英語形態統語処理の習得に関する研究(Tatsuta and Hagiwara, 2014)を実施
し、
「普遍文法」の問題を別の角度から事象関連電位(ERP)により追究し、その存在の可
能性を明らかにした。
現状のところ、12 才以下の子供への長時間の fMRI 計測が認められていない日本の現状
では、小学生を対象とした上記のような研究は不可能であるが、今後は NIRS/ERP 同時計
測や解析技術の開発を進め、幼児や小学生を対象に「普遍文法」及び言語学への脳科学の
アプローチによる研究、ならびに「ヒトの言語機能は遺伝的に規定された属性」という基
本概念の検証をゲノム科学との連携で進めていく考えを示している。
④ 新たな研究チームによる研究
「思春期」
「自己制御」をキーコンセプトとした、新しい総合人間科学を創出する「精神
機能の自己制御理解にもとづく思春期の人間形成支援学」
(文部科学省科学研究費補助金新
学術領域研究、領域代表:東京大学大学院医学系研究科 笠井清登)は、行動調査とともに
脳機能計測する本プロジェクトのコホート調査を参考に、その手法を採用したプロジェク
トである。同プロジェクトには、萩原・酒井両教授も「メタ認知・社会行動の発達にもと
づく自己制御」
の研究分担者として参加しており、分野横断的な研究チームの形成に繋がっ
ている。
119
文部科学省
科学研究費補助金 新学術領域研究
「精神機能の自己制御理解にもとづく思春期の人間形成支援学」の概要
本領域は、人間における自己制御精神の成立、思春期における発達過程を個人・集団レ
ベルで解明し、分子から社会までの統合的・学際的アプローチによって、
「思春期における
自己制御精神の形成支援」を目指す、新たな人間科学を確立することを目的とし、
「A01 集
団研究 思春期の自己制御性の形成過程」「A02 個体研究 メタ認知・社会行動の発達にも
とづく自己制御」
「A03 個体研究 統合的アプローチによる自己制御の形成・修復支援」の
個体研究の連携により進められる。
「A01 集団研究 思春期の自己制御性の形成過程」
思春期における精神機能の自己制御性の形成過程を解明するため、10 代の地域標本から
なるティーンコホートを対象に、精神医学、心理学、行動学的な調査を行う。
「A02 個体研究 メタ認知・社会行動の発達にもとづく自己制御」
神経科学、認知科学、言語学の融合により、精神機能の自己制御とその思春期発達の神
経基盤を明らかにする。これは、自己制御の内外過程であるメタ認知・社会認知機能に注
目し、動物とヒトを対象とした比較認知科学的アプローチを用いて社会適応的自己制御の
神経基盤とその思春期発達を明らかにする。
「A03 個体研究 統合的アプローチによる自己制御の形成・修復支援」
思春期における精神機能の自己制御の形成過程(A01)と神経基盤(A02)の理解にもと
づき、
分子~神経モジュレーション~心理・社会的介入までの幅広いアプローチによって、
思春期の若者が精神機能の自己制御性を育み、それによって自己を発展させ、成熟した人
間形成に至る過程の支援策を開発する。
資料:同研究ホームページ(http://npsy.umin.jp/amsr/)
120
(2) 研究開発成果の社会での適用・定着(社会実装)状況及び社会的課題の解決への貢献状況
平成 23 年度より、小学校において新学習指導要領が実施され、第 5・第 6 学年で年間 35
単位時間、週 1 コマ相当の「外国語活動」が必修化されている。それに伴い、地域の学校
のモデルとなる拠点校を全国に指定し、ALT や地域人材の活用も含めた実践的な取り組み
を推進、教材として、英語ノートを推奨している。こうした流れの中、脳科学の視点から
の言語習得に関する研究は一層重視され、言語教育への活用を可能とする成果が期待され
ている。一方で、本研究グループでは、国策にも絡む重要事項であるが故に、慎重を期す
必要がある分野であり、情報発信を含め、社会実装の取り組みには充分注意を払うべきと
の認識を有している。
① 講演及びマス媒体掲載による認知度の向上(内容を精査し情報発信)
本プロジェクトにおける研究成果は、数々のシンポジウム等での発表に加え、一般向け
の講演活動、さらに各専門紙ならびに一般紙での記事掲載などで、研究者のみでなく、生
活者に対しても認知度が高まった。
表 3 本研究成果の新聞掲載事例
媒体名
サイエンスポータルレビュー
科学新聞
全国へきち教育新
聞
日刊工業新聞
読売新聞
朝日小学生新聞
教育新聞
朝日新聞
日刊工業新聞
都政新報ひと欄
題名
「社会技術研究開発は文系 理系でまずは壁に?」
「子供の母語処理速度7才を過ぎても向上、首都大、脳波
で解明」
「基本単語の脳内処理7才を過ぎてもスピードアップ 9 才
には定着へ」
「小学生英語での脳活動 首都大学東京が解明」
「英単語難しいと右脳、簡単なら左脳」
「英語慣れると「音声」から「言語」へ」
「小学生の英語、音声から言語へ、右脳から左脳へ」
「英語まずは音から子どもの脳の働き分析」
「単語の脳内処理能力 7 才過ぎても発達」
「
「わくわく脳科学」で追跡調査」
掲載日
2010.2.22
2011.2.11
2011.2.15
2011.2.24
2011.2.24
2011.2.28
2011.3.7
2011.3.11
2011.3.25
2011.4.19
ただし、外国語学習の問題は国民の関心事であるが故に、性急な結論は有害ともなり得
ない。そのため、研究代表者は、研究結果を中心とする情報発信とし、期待を過剰に煽る
発言は控えている他、国際学術誌での論文発表前の結果は一切公表しない、プレスリリー
スの文面には極めて慎重な表現を用いる等の措置をとっている。
② 学術的観点からの実証データの積み重ねを継続
過去 7 年間に渡る継続した小学生の大規模調査の実施により、膨大な量の行動データと
脳データを蓄積した。これを今後有効に活用するするとともに、小学生から中学生や高校
121
生にも対象を拡大する考えを有している。
将来的には教育制度への応用等、国政策への提言も期待されるが、前述の通り本研究グ
ループの慎重な姿勢から、相応の時間をかけながらこれに対応していくと思われる。本研
究グループでは、まずは、学術的観点から、一歩一歩研究を積み重ね、高いレベルの国際
学術誌での論文発表を優先しつつ、堅牢な結果にもとづいて慎重に成果を公開していくべ
きという方針をとっている。
3.4.3.2. 研究開発成果の社会での適用・定着(社会実装)状況及び社会的課題の解決へ
の貢献状況
(1) 研究者・関与者の活動は、科学技術的・社会的な面での人材育成・キャリアパスの開
拓や人的ネットワークの展開に繋がったか。
① 若手人材における研究職の獲得
本プロジェクトに関わった人材のうち、大学院生 6 名が学位を取得し、日本学術振興会
(JSPS)のポスドクに 2 名が採用、その他の人材も大学の専任ポスト及び民間企業の研究
所に就職している。また、当時のポスドク 5 名については、大学の専任ポストに就き活躍
している。
■東北大学大学院文学研究科
【大学院生】
 A 氏:PhD 取得後、東北大学工学研究科 PD(JSPS)、その後㈱花王研究所に就職
 B 氏:PhD 取得後、京都大学文学研究科 PD(JSPS)
 C 氏:PhD 取得後、立教大学現代心理学部心理学科 助教として採用
 D 氏:PhD 取得後、国士舘大学・21 世紀アジア学部講師として採用
【ポスドク】
 E 氏:茨城大学人文学部講師として採用、その後、津田塾大学学芸学部准教授
 F 氏:昭和大学富士吉田教育部講師として採用
 G 氏:新居浜工業高等専門学校講師として採用
■広島大学大学院教育学研究科
【大学院生】
 H 氏:PhD 取得後、上海海事大学講師として採用
【ポスドク】
 I 氏:関西外国語大学講師として採用、その後近畿大学理工学部准教授
■首都大学東京人文科学研究科
【大学院生】
 J 氏:PhD 取得後、宇都宮大学大学教育基盤センター専任講師
【ポスドク】
 K 氏:滋賀大学教育学部専任講師として採用
122
② サブチームリーダーにおける新たな研究分野の開拓
本プロジェクトにおいての「母語獲得研究グループ」のリーダーを務めた東北大学小泉
政利准教授は、日本学術振興会科学研究費補助金基盤研究(S)で研究代表者として新たな
チームを率いている。小泉氏が手掛けている「OS 言語の文処理メカニズムに関するフィー
ル ド 言 語 認 知 脳 科 学 的 研 究 」( 平 成 22 ~ 26 年 度 、 研 究 ホ ー ム ペ ー ジ :
http://www.sal.tohoku.ac.jp/ncl/ja/research.html)は、日本語や英語等多くの言語の理解(聞く、
読む)や産出(話す、書く)の際に、主語(S)が目的語(O)に先行する語順(SO 語順
=SOV,SVO,VSO)の方が、主語が目的語に後続する語順(OS 語順=OSV,OVS,VOS)より
も選好されている要因について、OS 語順を基本語順に持つ OS 型言語で検証するものであ
る。この研究では、①言語能力の解明、②言語進化の研究に貢献、③言語と文化の多様性
の確保・促進、④「フィールド言語認知脳科学」研究分野創出、に対する成果と意義が期
待されている。
また同じく「非母国語としての日本語教育研究グループ」リーダーを務めた広島大学酒
井弘教授も、日本学術振興会科学研究費補助金基盤研究(A)「言語の多様性と認知神経シス
テムの可変性―東アジア言語の比較を通した解明―」
(平成 21~25 年度、研究ホームペー
ジ:http://home.hiroshima-u.ac.jp/~cbl/project.html)の研究代表者となりチームを率いている。
同研究は、東アジア言語の認知神経科学的研究の分野で各国を代表する研究者が国際的に
連携し、東アジア言語間で生じている多様性と可変性を言語処理の認知神経システムの視
点から明らかにするものである。
両氏とも新たな研究分野を開拓しており、今後の活躍が期待される。
なお、こうした小泉氏及び酒井氏のサブリーダーの新たな研究は、研究代表者である萩
原氏の「脳機能にもとづく言語習得メカニズムの解明:学童期の横断的研究」
(基盤研究 A)
の研究とともに統語配列によってできる「文の構造」が人間言語に固有な特徴であること
を前提として、
「人間言語の基本語順とは何か」を明らかにするという問題意識を共有した
ものとなっている。具体的には、
「人間が文を獲得したり処理したりする際に、ある普遍的
な語順(SVO/SOV)が基準になっているのか、それとも個別言語の語順が基本なのか」
「獲
得や処理で最も負荷が少ない語順は何か」
「言語の語順は一般認知機構とどのような関係が
あるのか」という問題である。例えば、萩原氏の日本人小学生の英文法学習の研究では、
母語である日本語の語順(SOV)が英語の語順(SVO)の習得に影響を及ぼすのか、小泉
氏のカクチケル語の研究では、非標準語順(VOS)を母語とするカクチケル語話者は、文
の理解と産出でも VOS 語順が最も処理しやすいのか、それとも認識論的に優位な
SVO/SOV 語順が処理しやすいのか、酒井氏のアジア諸言語の研究では、中国語、韓国語、
日本語の母語話者にみられる文理解と産出の普遍性と個別性について語順を中心に比較検
討している。また、三者いずれも、行動実験(読み実験、視線計測等)と脳科学の手法(ERP、
fMRI、NIRS)を組み合わせて文処理の神経基盤を明らかにすることを目的としている。
生成文法理論では、1)言語知識、2)言語処理(文理解、文産出)、3)言語獲得、4)言
123
語喪失(失語症)
、5)言語の脳科学(神経学的基盤)、6)言語の起源と進化(遺伝学的基
盤)をリサーチクエスチョンとし、1)で仮定された概念を基に、その実在性を 2)~6)
の領域においてそれぞれ解明していく手法をとっている。上記 3 つの研究は、それぞれ取
り上げた言語や対象となる人口群、調査・実験の手法が異なりはするものの、解明すべき
問題は共通していると言えよう。
(2) 研究者・関与者の活動は、社会の幅広い関与者(ステークホルダー※)にどのような
社会面(教育面)
・経済面での影響・効果をもたらし、研究開発成果の社会での活用・
拡大・定着に繋がっているか。
(※当初想定していなかったステークホルダーも含む)
① 言語習得のメカニズム研究の影響
本プロジェクトで開発した NIRS データの解析手法は、2011 年に Cerebral Cortex 誌で論
文発表後、国内外の多くの研究者に適用されるようになった。また、2011 年以降に数多く
の論文を出版しているが、それらも他の研究論文に引用されている。
言語の学習に関わる遺伝子と脳のメカニズム、その個人差が明らかになると、一人一人
に合ったオーダーメードのよりよい教育を提供できる可能性が見出せる。言語の遺伝子研
究は未開拓の分野であり、今後の発展が期待される。
② 児童英語用の語彙リストの活用
プロジェクト期間中に開発した「語彙リスト」は、神田外国語大学言語科学研究センター
(CLS)のホームページに格納しており、研究者・院生・教育関係者を対象に「子ども用
語彙リスト(KUISEY500)」から申し込むことが可能になっている。これまでに、千葉県
教育庁、八千代市教育委員会など、10 件ほどで活用された。
この語彙リストは、文部科学省が希望する小学校等に配布してきた外国語活動教材であ
る「英語ノート」に加味して作成したが、文部科学省では平成 24 年度以降、
「英語ノート」
から『Hi Friends!』に移行しており、現在「語彙リスト」もそれに準じた改訂を行ってい
る最中である。
124
図 7 子ども用語彙リスト
資料:言語科学研究センター(CLS)サイト(http://www.kandagaigo.ac.jp/kuis/labo/cls/)
125
3.4.4. 付属資料
3.4.4.2. 主要研究者動静表
氏名
現在の所属・役職
研究期間中の所属・役職
萩原 裕子
首都大学東京・大学院人文科学研 首都大学東京・大学院人文科学研究科 教
授
究科 教授
小泉 政利
東北大学・大学院文学研究科准
東北大学・大学院文学研究科 准教授
教授
行場 次朗
東北大学・大学院文学研究科
東北大学・大学院文学研究科 教授
教授
郷路 拓也
東北大学・文学研究科・研究員 津田塾大学学芸学部英文学科 准教授
遊佐 典昭
宮城学院女子大学 教授
福地 和則
仙台電波工業高等専門学校 教
仙台高等専門学校 教授
授
酒井 弘
広島大学・大学院教育学研究科
広島大学・大学院教育学研究科 教授
准教授
堀場 裕紀江
神田外語大学 教授
小野 創
長谷川 信子
井上 和子
小林 美代子
宮城学院女子大学英文学科 教授
神 田 外語 大学 大学 院 言語 科 学研 究科
教授
広 島 大 学 研 究員 / 関西 外 国
語大学 講師 /近畿大学 講師
神田外語大学・言語科学研究科教
授/言語科学研究センター セ
ンター長
神田外語大学・言語科学研究セ
ンター 顧問
神田外語大学
熊本大学 教授
近畿大学理工学部教養基礎教育部門 准
教授
神田外語大学大学院 教授/神田外語大
学外国語能力開発センター センター長
/児童英語教育研究センター 顧問
神田外語大学名誉教授・学術顧問
熊本大学大学院社会文化科学研究科 教
授
3.4.4.3. 研究開発プロジェクト終了後(平成 21 年 12 月以降)の主要研究成果
(1) 論文
論文名
著者
Explicit article instruction in
Neal Snape and Noriaki
1 definiteness, specificity,
Yusa
genericity and perception
2 普遍文法
遊佐 典昭
126
掲載媒体
年月
Whong, M., Gil, K-H., &
Marsden,
H.
(eds.),
Universal Grammar and the
Second
Language
2013
Classroom.
Dordrecht:
Springer.pp.161-183. 2013.
DOI;
10.1007/978-94-007-6362-3
JACET SLA 研究会『第二
言 語 習 得 と 英 語 科 教 育 2013
法』pp.78-91, 開拓社
Semantic categories and
contexts
3
of written words affect the
early ERP component
Effect of second language
exposure on brain activity
4
for language processing
among preschoolers
5
言語の脳科学:感受性期以
降の統語発達を中心に
6
児童英語で扱われる機能
語
小学 5、6 年生の英語語彙
7 知識:音声・意味・文字の
結びつきに関して
8
Structure Dependence in the
Brain
9 ナル動詞と英語教育
10
脳科学から見た第二言語
獲得
Semantic relatedness
between
11 words in each individual
brain: An event-related
potential study
Sound to language: different
cortical processing for first
and second languages in
12
elementary school children
as revealed by a large-scale
study using fNIRS
Hata, M., Homae, F., and
Hagiwara, H
NeruoReport, 24(6): 292-7
Hidaka, S., Shibata, H.,
Kurihara, M., Tanaka, A.,
Neuroscience Research,
Konno, A., Maruyama, S.,
73,pp,73-79
Gyoba, J., Hagiwara, H.,
and Koizumi, M
KLS 32: Proceedings of the
Thirty-Sixth Annual
遊佐 典昭
Meeting of the Kansai
Linguistic Society, 323-333
Scientific Approaches to
Language 11 号
(p 277-297)
町田なほみ
神田外語大学言語科学研
究センター, 神田外語大
学.
笠原究・町田なほみ・長 JES Jornal Vol. 12 (p
田恵理・高梨庸雄・吉澤 90-101), 小学校英語教育
小百合
学会
Five Approaches to
Language Evolution:
Proceedings of the
Workshops of the 9th.
International Conference on
the Evolution of Language,
Noriaki Yusa
Luke McCrohon, Tomomi
Fujimura, Koji Fujita,
Roger Martin, Kazuo
Okanoya, Reiji Suzuki and
Noriaki Yusa (eds.) 25-26,
2012
藤田耕司他編『最新言語
理論を英語教育に活用す
遊佐 典昭
る』開拓社 336-347
佐野富士子、岡秀夫、遊
佐典昭、金子朝子(編)
『英語教育学大系 第 5
遊佐 典昭
巻 第二習得研究』pp.
109-117. 大修館
Hata, M., Homae, F., and
Hagiwara, H
2013
2013
2012
2012
2012
2012
2012
2011
Neuroscience
Letters, 501(2), pp,72-77.
2011
Sugiura, L., Ojima, S.,
Matsuba-Kurita, H., Dan, I., Cerebral Cortex, 21 (10),
Tsuzuki, D., Katura, T., and pp, 2374-2393.
Hagiwara, H
2011
127
13
14
15
16
17
18
19
An event-related potential
investigation of lexical
pitch-accent in auditory
Japanese
Age and amount of
exposure to a foreign
language during childhood:
Behavioral and ERP data on
the semantic comprehension
of spoken English by
Japanese children
Second language instinct
and
instruction effects: Nature
and nurture in second
language acquisition
The
acceleration of spoken-word
processing in children’s
native-language
acquisition: An ERP cohort
study
Effects of development and
non-native language
exposure on the semantic
processing of native
language in preschoolers
Effects of development and
foreign language activities
on
the semantic processing of
native language in preschool
children
Neural correlates of
foreign-language learning in
childhood: A 3-year
longitudinal ERP study
Koso, A., Ojima, S., and
Hagiwara, H
Brain Research, 1385, pp,
217-228
2011
Ojima, S., Matsuba-Kurita,
Neuroscience Research, 70
H., Nakamura, N., Hoshino,
(2), pp,197-205
T., and Hagiwara, H
2011
Yusa, N., Koizumi, M.,
Kimura, N. Uchida, S.,
Yokoyama, S., Miura, N.,
Kawashima, R., and
Hagiwara, H
Journal
of Cognitive Neuroscience,
23 (10), pp,2716-2730
2011
Ojima, S., Matsuba-Kurita,
H., Nakamura, N., and
Hagiwara, H
Neuropsychologia, 49 (5),
pp,790-799
2011
Takahashi, J., Suzuki, Y.,
Shibata, H., Fukumitsu, Y.,
Gyoba, J., Hagiwara, H.,
and Koizumi, M
Tohoku
Psychologica Folia, 69,
pp,8-22
2011
Takahashi, J., Suzuki, Y.,
Shibata, H., Tanaka, J.,
Gyoba, J., Hagiwara, H.,
and
Koizumi, M.
Neuroscience
Research, 69 (3),
pp,246-251
2011
Ojima, S., Nakamura, N.,
Journal of Cognitive
Matsuba-Kurita, H.,
Neuroscience, 23 (1),
Hoshino, T., and Hagiwara,
pp,183-199
H
2011
(2) 発表・講演
発表・講演名
Effective inputs of
1 prepositions for young
learners,
Social interaction affects
neural measures of
2
syntactic processing:
evidence from fMRI,
Effects of social
interaction on Broca’s
3 area: Adult acquisition of
Japanese sign language
syntax,
講演者
町田なほみ
シンポジウム・セミナー名
(会場)
第 39 回全国語学教育学会
(JALT)年次国際大会、神戸
コンベンションセンター
年月
2013.10.26
Noriaki Yusa,
Masatoshi
Koizumi and
Jungho Kim
19th International Congress of
Linguists, University of
Geneva, Switzerland
2013.7.26
Noriaki Yusa,
Masatoshi
Koizumi and
Jungho Kim
The 9th International
Symposium on Bilingualism,
Nanyang Technological
University, Singapore
2013.6.12
128
4
言語理論から見た英語
遊佐 典昭
教育
日立製作所中央研究所
2013.5.27
5
Imaging language
processing in the brain
Noriaki Yusa
The English Society of Japan
6th
International
Spring
Forum, University of Tokyo
2013.4.27
遊佐 典昭
群馬県立女子大学
2013.2.28
遊佐 典昭
広島大学
2013.2.19
萩原 裕子
首都大学東京 PRI シリーズ特
別講座
2013.1.25
萩原 裕子
㈱日立製作所、中央研究所
2012.11.30
分子と社会をつなぐ脳〜生
命・神経・言語科学が切り拓く
未来〜(首都大学東京南大沢
キャンパス)
2012.11.8
首都大学東京、高大連携企画
2012.10.26
脳科学から見た第二言
語獲得
第二言語獲得研究と関
7 連領域:言語発達の脳科
学
言語機能の脳科学・生物
8 学的基盤〜言語研究が切
り拓く人間の未来〜
脳科学からみた英語学習
9
〜ヒトの言語能力研究〜
6
脳と遺伝子からみる言語と
萩原 裕子
10
その学習
ことばの生物学への挑戦
11 〜脳と遺伝子から言語を
探る〜
Articles in L2 English:
Can instruction improve
12
learners’ perception of
articles?
萩原 裕子
SECOND LANGUAGE
Noriaki Yusa and
RESEARCH FORUM 2012,
Snape Neal
University of Pittsburgh
2012.10.19
The 16th Engineering
Academy
Round-Table-Meeting
Toward effective English
13 education based on brain
Hagiwara, Hiroko Symposium, “Engineering
2012.9.24
science
towards Human Security and
Well-Being”(Hilton Fukuoka
Sea Hawk, Fukuoka, Japan)
第84回日本英文学会シンポ
生成文法に基づいた第
ジウム「言語理論からみた第
二言語獲得研究――英語教 2012.9.15~9.16
14 二言語獲得研究は、英語 遊佐 典昭
教育に貢献できるのか
育との接点を求めて」,専修
大学
日本私立小学校連合会・平成
脳はどのように言語を処理
24 年度全国教員夏季研修会
萩原 裕子
15
2012.8.22
しているのか
(東京アルカディア市ヶ谷)
大学英語教育学会2012
脳機能からみた外国語と
萩原 裕子
16
年度中部支部総会英語教育
2012.6.2
しての英語習得
フォーラム(名城大学,名古屋)
第84回日本英文学会シンポ
ジウム「言語理論からみた第
生成文法に基づいた第
二言語獲得研究――英語教
17 二言語獲得研究は、英語 遊佐 典昭
2012.5.26
育との接点を求めて」, 専修
教育に貢献できるのか
大学
第二言語獲得研究の新
18
遊佐 典昭
慶応言語学コロキアム
2012.5.12
たな展開
実験言語学から見た第
19
遊佐 典昭
明海大学応用言語学会
2012.3.17
二言語獲得研究
129
A cohort study on child
language acquisition and
20 brain development,
Workshop on Language
and the Brain
Structure dependence in
the brain ,orkshop on
21
Language and the
Brain
The 9th International
Conference on the Evolution of
Hagiwara, Hiroko Language (Evolang
2012.3.13
IX)( Kyoto,
Japan)
The 9th International
Conference on the Evolution of
Yusa, Noriaki
2012.3.13
Language (Evolang IX) ,
(Kyoto, Japan)
外国語教育メディア学会関東
脳科学からみた小学校英
支部 早期外国語教育研究部
萩原 裕子
22
2012.1.14
語
会(成城ホール,東京)
Neuroimaging Evidence
for the Poverty of the
23 Stimulus Problem in
Noriaki Yusa
Ling50@MIT
2011.12.9-10
Second Language
Acquisition
言語進化研究の実証的か
日本英語学会第29 回大会シ
24
萩原 裕子
2011.11.13
つ生産的な方法とは
ンポジウム(新潟大学)
第二言語獲得における
個別性と普遍性
日本英語学会第9回大会シン
25 言語と言語の接点から
遊佐 典昭
2011.11.13
ポジウム、新潟大学
見る言語知識の普遍性
と個別性
全国英語教育研究団体連合
会(全英連)平成23 年度夏季
脳機能から見た外国語と
萩原 裕子
26
2011.7.28
全国理事会高校部会・研究協
しての英語習得
議会(北とぴあ,王子,東京)
笠原究・長田恵
小学 5、6 年生の英語語彙
第11回小学校英語教育学会
理・高梨庸雄・町
(JES)大阪大会、大阪教育大
2011. 7.18
27 知識:音声・意味・文字の
田なほみ・吉澤
結びつきに関して
学柏原キャンパス
小百合
第二言語獲得研究の可
28
遊佐 典昭
三重大学言語学コロキアム
2011.7.15
能性
第二言語獲得の普遍性
29
遊佐 典昭
名古屋学院大学
2011.7.14
と個別性
関西言語学会第36 回大会シ
言語発達の脳科学
ンポジウム「第二言語の脳科
30 —小学生のコホート研究 萩原 裕子
2011.6.11
学」(大阪府立大学,中百舌鳥
を中心に—
キャンパス)
関西言語学会第36 回大会シ
言語発達の脳科学
ンポジウム「第二言語の脳科
31 —感受性期以降の統語獲 遊佐 典昭
2011.6.11
学」(大阪府立大学,中百舌鳥
得を中心に—
キャンパス)
関西言語学会第36 回大会シ
言語発達の脳科学
ンポジウム「第二言語の脳科
32 —幼稚園での英語活動を 小泉 政利
2011.6.11
学」(大阪府立大学,中百舌鳥
めぐって—
キャンパス)
Foreign language learning
and brain science: a cohort
Biennial IMBES Conference
study, Results from various
2011.6.2~6.4
33
Hagiwara, Hiroko 2011, held at Catamaran
studies in the JST
Resort(San Diego, CA, USA)
“Brain-Science &
Education” Program
130
Explicit instruction of
article choice and the
perception of the /a/-s.
34
Colloquium on Generative
SLA and Classroom
Language Teaching.
An ERP study on the
semantic processing of
native language in
35 preschoolers: The effects
of development and
non-native language
exposure
Snape, Neal and
Noriaki Yusa.
American Association of
Applied Linguistics 2011
Annual Conference. Chicago
Takahashi, J.,
Suzuki, Y.,
Shibata, H.,
Fukumitsu, Y.,
Gyoba, J.,
Hagiwara, H., &
Koizumi, M
Tohoku International
Symposium on
Multidisciplinary
Neuroscience(Sendai.)
早稲田大学英語英文学会講
演(早稲田大学)
財団法人生存科学研究所主
催 第三回応用脳科学シンポ
ジウム「「未来」という人間特有
の意識は何をもたらすのか?」
(産経ホール,東京)
立命館大学言語情報処理研
究科学術講演会(立命館大
学,京都)
日本第二言語習得学会
(J-SLA) 秋の研修会(中央
大学理工学部)
富士通—理研研究会(埼玉県
和光市,理化学研究所)
36 言語習得の脳科学と教育 萩原 裕子
思考するための言語
37 —意識下で回る音韻ルー 萩原 裕子
プ、そして未来時制—
38 言語の脳科学と教育
39
萩原 裕子
脳機能に基づく言語習得
萩原 裕子
のメカニズム
40 小学生の言語習得
萩原 裕子
英語教育への新しい切り
口、脳科学が取り持つ理
41 系と文系の融合
—科学技術の未来への
キーワード—
萩原 裕子
42
脳の発達と外国語学習
萩原 裕子
—学童期の縦断的研究—
2011.3.28
2011.1.21~
1.23
2010.12.4
2010.12.4
2010.10.30
2010.10.3
2010.7.12
JST 領域架橋型シンポジウム
シリーズ(東京両国、KFC
ホール)
2010.2.20
津田塾会言語科
学研究所講演(東京千駄ヶ
谷、津田塾ホール)
2009.12.23
(3) 書籍・報告書等
なし
(4) 新聞・テレビ等
内容
1
科学新聞「子供の母語処理速度7才を過ぎても向上、首都大、脳波で解明」
3
全国へきち教育新聞「基本単語の脳内処理7才を過ぎてもスピードアップ
9 才には定着へ」
日刊工業新聞「小学生英語での脳活動 首都大学東京が解明」
4
読売新聞「英単語難しいと右脳、簡単なら左脳」
2
131
年月
2011.2.11
2011.2.15
2011.2.24
2011.2.24
内容
年月
5
朝日小学生新聞「英語慣れると「音声」から「言語」へ」
2011.2.28
6
教育新聞「小学生の英語、音声から言語へ、右脳から左脳へ」
2011.3.7
7
朝日新聞「英語まずは音から子どもの脳の働き分析」
2011.3.11
8
日刊工業新聞「単語の脳内処理能力7才過ぎても発達」
2011.3.25
9
都政新報ひと欄「「わくわく脳科学」で追跡調査」
2011.4.19
『科研費NEWS』 2011 年度 VOL. 1 科研費からの成
果展開事例「小学生の英単語処理に関する脳活動基本パターンの解明」
11 サイエンスポータルレビュー「社会技術研究開発は文系 理系でまずは壁に?」
10
2011.6.20
2010.2.22
(5) 特許
なし
(6) 獲得グラント
グラント名
文部科学省科学
1 研究費基盤研究
A
文部科学省科学
2 研究費基盤研究
S
文部科学省科学
3 研究費新学術領
域研究
首都大学東京学
4 長裁量枠傾斜的
研究費
文部科学省科学
5 研究費基盤研究
A
文部科学省科学
6 研究費挑戦的萌
芽研究
タイトル
採択者
脳機能から見た言語習得メカ
ニズムの解明:学童期の横断的 萩原裕子
研究
OS型言語の文処理メカニズム
に関するフィールド言語認知 小泉政利
脳科学的研究
精神機能の自己制御理解にも
とづく思春期の人間形成支援 萩原裕子
学
(7) その他
なし
132
実施年度
48,230 千円
2010~2012
166,100 千円 2010~2014
55,000 千円
2011~2015
36,100 千円
2011~2013
酒井弘
37,180 千円
2011~2013
萩原裕子
3,640 千円
2012~2013
言語機能の脳科学・遺伝学的研
萩原裕子
究
言語の多様性と認知神経シス
テムの可変性—東アジア言語
の比較を通した解明—
母語の文法獲得における文法
機能の側性化メカニズムの解
明に向けて
配分額
3.5. 教育のためのバイオメンタル技術の開発
(研究代表者:六反 一仁)
133
3.5.1. 研究開発プロジェクトの概要
研究開発領域
「脳科学と社会」研究開発領域
研究開発プログラム名
研究開発プログラム「脳科学と教育(タイプⅡ)
」
研究開発プロジェクト名
教育支援のためのバイオメンタル技術の開発
研究代表者(現所属)
六反 一仁(徳島大学大学院 ヘルスバイオサイエンス研究部
教授)
研究実施期間
平成 16 年 12 月~平成 21 年 11 月(2004 年 12 月~2009 年 11 月)
※現所属は、追跡調査時のものを記載
3.5.1.1. 研究開発の概要と研究開発目標
新入大学生からコホート集団 377 名を形成して、質問紙による調査(心理、行動、生活習
慣、生活リズム、睡眠週間、食習慣、及び養育環境)、DNA チップによる末梢血遺伝子発
現解析、唾液の内分泌検査、及び光トポグラフィーによる前頭葉機能検査を行い、同時に、
追跡調査を実施して、生物学的指標をもとにした心の疾患発症の予知・予防に有効な社会
技術システム(バイオメンタル技術)の開発を目指した。大学生の病的ストレス応答を検
出・診断するため、コホート研究と平行し、うつ病と慢性疲労症候群患者の解析も行った。
具体的には、
1)コホート研究を通じた大学生の心の疾患と環境リスク要因の解明
2)心の疾患の診断と予知に有用な遺伝子の同定、
3)上記遺伝子を用いた心の診断技術
4)生物学的指標をもとにした新たな非侵襲的バイオメンタル技術
5)環境生物学と医学、パーソナリティ研究のための新たな評価技術
を最終目標とした。
3.5.1.2. 研究開発の実施体制
※所属・役職は研究開発プロジェクト実施期間中のものを記載
(1) 徳島大学グループ
氏名
期間中の所属・役職
担当
参加期間
六反 一仁
大学院ヘルスバイオサイエン
ス研究部 教授
DNA チップ解析,
研究統括
平成 16 年 12 月~
平成 21 年 11 月
河合 智子
大学院ヘルスバイオサイエン
ス研究部 講師
遺伝子発現解析
平成 18 年 4 月~
平成 21 年 9 月
棚橋 俊仁
大学院ヘルスバイオサイエン
ス研究部 助教
遺伝子発現解析
平成 20 年 4 月~
平成 21 年 11 月
湊 紀代
JST 技術員
コホートの追跡調査全般
平成 17 年 1 月~
平成 21 年 11 月
大森 哲郎
大学院ヘルスバイオサイエ
ンス研究部 教授
行動心理調査
平成 17 年 4 月~
平成 21 年 11 月
134
住谷 さつき
大学院ヘルスバイオサイエ
ンス研究部 講師
光トポグラフィー
検査
平成 16 年 12 月~
平成 21 年 11 月
森口 博基
病院 教授
ソフト開発
平成 19 年 4 月~
平成 21 年 11 月
森川 富明
病院 准教授
ソフト開発
平成 19 年 4 月~
平成 21 年 11 月
岡田 達也
病院 教授
ソフト開発
平成 19 年 4 月~
平成 21 年 11 月
森田 恭子
大学院ヘルスバイオサイエ
ンス研究部 講師
バイオインフォマティク
ス
平成 16 年 12 月~
平成 17 年 9 月
増田 清士
大学院ヘルスバイオサイエ
ンス研究部 助教
生体資料採取・抽出
平成 18 年 4 月~
平成 20 年 9 月
上野 修一
大学院ヘルスバイオサイエ
ンス研究部 助教授
性周期の解析
平成 16 年 12 月~
平成 18 年 3 月
友竹 正人
大学院ヘルスバイオサイエ
ンス研究部 助教
行動心理調査
平成 16 年 12 月~
平成 17 年 3 月
石元 康仁
病院 講師
行動心理調査
平成 16 年 12 月~
平成 18 年 6 月
(2) 大阪大学グループ
氏名
期間中の所属・役職
担当
中山 邦夫
大学院医学系研究科 医学
部 講師
睡眠様態の解析,
研究統括
参加期間
平成 16 年 12 月~
平成 21 年 11 月
呂 玉泉
大学院医学系研究科 医学
部 講師
養育環境の解析
平成 16 年 12 月~
平成 21 年 11 月
田 麗
大学院医学系研究科
JST 特任研究員
生活習慣の解析
平成 19 年 4 月~
平成 21 年 11 月
翁 華春
大学院医学系研究科
ST 特任研究員
睡眠様態の解析
平成 16 年 12 月~
平成 21 年 10 月
森本 兼曩
大学院医学系研究科 教授
研究統括
平成 16 年 12 月~
平成 18 年 8 月
屈田 力
大学院医学系研究科
JST 特任研究員
研究統括
平成 16 年 12 月~
平成 18 年 8 月
戸田 雅裕
大学院医学系研究科 講師
唾液分析,研究統括
平成 16 年 12 月~
平成 20 年 9 月
135
(3) 日立グループ
氏名
期間中の所属・役職
ライフサイエンス推進事業
我妻 雅子
部 バイオテクノロジーセ
ンタ センタ長
ライフサイエンス推進事業
部 バイオテクノロジーセ
斎藤 俊郎
ンタ 主任研究員
ライフサイエンス推進事業
奈良原 正俊
部 バイオテクノロジーセ
ンタ 技師
ライフサイエンス推進事業
部 バイオテクノロジーセ
太田 雅之
ンタ 技師
担当
参加期間
遺伝子発現測定グループ
統括
平 成 16 年 12 月 ~
平成19年3月
遺伝子発現の測定,本研
究用DNAチップの改良
平成18年9月~
平成19年3月
遺伝子発現の測定,本研
究用DNAチップの改良
平 成 16 年 12 月 ~
平成19年3月
解析ソフト開発
平 成 16 年 12 月 ~
平成19年3月
3.5.1.3. 研究開発の内容
(1) コホート集団の形成と調査・解析
【コホート集団の形成】2005 年、2006 年、2007 年、2009 年の医学部新入生を対象に、書
面で同意を得た 377 名を対象とし最終的に 377 のコホート集団を形成。全員に質問紙によ
る調査、唾液ストレスホルモン、遺伝子発現解析を行った。
【コホート集団の追跡調査】各年度のコホート集団については、追跡調査を継続。加えて、
1 年次最初の定期試験、2 年次人体解剖実習、3 年次光トポグラフィー、4 年次 CBT 試験の
ストレスイベントの調査を行い、
キャンパスイベント時のストレス応答について解析した。
アフィメトリクス社チップを用い、3 年間での遺伝子発現変化についても解析した。
(2) データの解析
【環境により発現される遺伝子解析】
コホート集団 377 名については、ストレス DNA チップ、アフィメトリクス社のヒト全
ゲノムチップ、あるいはアジレント社のヒト全ゲノムチップをもちいて、300 例の解析を
実施した。心理、行動、睡眠習慣、食習慣、及び養育環境により発現が影響される遺伝子
群を明らかにした。4 年次の CBT 受験者については、アフィメトリクス社のエクソンチッ
プを用いた心理的ストレス特異的な選択的スプライシングバリアントの同定、アジレント
社のマイクロ RNA チップを用いたストレス特異的マイクロ RNA(約 20 塩基からなる
non-coding RNA で、mRNA の分解、転写調節などの機能をもつ)の同定を行った。
【うつ病及び自閉症患者の遺伝子発現解析】
うつ病未治療患者 37 名と年齢構成と性比をマッチさせた健常人 91 名の遺伝子発現解析、
慢性疲労症候群 (CFS, chronic fatigue syndrome) 患者 64 名と性比と年齢構成を合わせた健
常人 70 名の遺伝子発現、さらに、成人の自閉症児、性・年齢を合わせたコントロール、自
閉症児をもつ母親(解析の対象とした自閉症児の母親とは異なる)、母親のコントロールの
各 21 名ずつ 4 つのグループ計 84 名の末梢血の遺伝子発現を解析した。
【ストレスによる抹消血の遺伝子発現解析】医師国家試験受験者に見られる慢性心理的ス
136
トレス応答遺伝子に加え、運動による身体的ストレス、低紫外線照射によるストレス、低
濃度のカドニウム環境ストレスによる末梢血の遺伝子発現の解析も行った。
さらに、各年代(20-60 歳代)の男女の健常人 200 名の発現データベースを構築した。
【唾液のストレスホルモンの評価】
唾液中のコルチゾルとクロモグラミン A について、
健常大学生の基礎データ、
定期試験、
人体解剖学実習、CBT 試験、国家試験でのストレスの評価に加え、クロモグラミン A の日
内変動、短期旅行ツアーのストレス軽減効果の判定、1 型アレルギーによる唾液ストレス
ホルモンの修飾、温泉療法によるストレス軽減効果の判定、将棋対極ストレス、などのス
トレス評価を行った。また、両親の養育態度に不満をもつ学生の cortisol awaking response
の解析を行った。
【光トポグラフィー測定】
平成 18 年度のコホート集団から、全てのデータが揃っている 31 名について、光トポグ
ラフィーを用いて前頭葉機能の解析を行い、前頭葉反応パターンと心理、行動、養育環境、
自閉症傾向との関連と遺伝子発現パターンとの関連について検討した。
【サイトカインの測定】
医学科学生 226 名について、Bio-plex(BioRad 社)の網羅的サイトカイン測定法を用い
て、血清中と唾液中の 50 種類のサイトカインを測定した。また、心理状態を反映するサイ
トカインの同定を行った。定期試験時の急性心理的ストレス応答サイトカイン、国家試験
受験者の慢性心理的ストレス応答サイトカイン、人体解剖実習中の身体的・心理的ストレ
ス応答サイトカインの測定をそれぞれ行った。特に、血清及び唾液のサイトカインを用い
た慢性ストレスの評価法を確立した。さらに、
民間病院勤務者 129 名のストレス評価を行っ
た。この新たな測定項目を加えることで、唾液を用いた非侵襲的なストレス評価の道を開
いた。
(3) 遺伝子発現情報と他のデータとの相関解析ソフトの開発
平成 19 年度に、計画通りに質問紙データのクラスター解析ソフト、各種調査票及び遺伝
子発現データとの相関解析ソフトを作成した(特願 2006-337753)が、市販のソフトを超える
には至らなかった。
(4) バイオメンタル技術の開発
【ストレス評価用 PCR アレイのデザイン】平成 17 年度入学の医学科コホート集団を用い
た人体解剖実習時のサンプル、平成 16、17、18 年度の医師国家試験受験者のサンプル、平
成 20 年度の CBT 試験から抽出した急性心理的ストレス、慢性心理的ストレスのそれぞれ
のマーカー遺伝子と内部標準を搭載したカード式リアルタイム PCR アレイの作成を行っ
た。また、うつ病診断用 PCR アレイに加え、病的疲労を評価するマーカー遺伝子を搭載し
た PCR アレイも作成し、後者は名古屋大学総合診療部で試験的に使用している。
【サイトカインを用いた慢性ストレス評価法の開発】遺伝子発現解析にかかるコスト、子
137
供にも使用できる唾液を用いた非侵襲的なストレス評価方の開発を加味し、計画にはな
かった血清及び唾液中のサイトカインを用いた慢性ストレス評価法を開発した。
(5) 各研究項目データの相関解析
質問紙の項目、唾液のストレスホルモン、遺伝子発現、光トポグラフィーによる前頭葉
機能、血中及びサイトカインの間の相関解析は全て実施。
3.5.1.4. 研究開発の成果
ストレス診断法、うつ病診断用 PCR アレイ、慢性疲労症候群診断用 PCR アレイ、唾液の
サイトカインを用いた非侵襲的慢性ストレス診断法を開発
(1) コホート集団の心理、行動、環境、生活習慣の特徴、遺伝子発現、唾液中のコルチ
ゾルとクロモグラミン A 及び 50 種類のサイトカインプロファイルの解析

平成 17-21 年度の新入生から書面で同意を得た 377 名
(男 198 名、
女 179 名)
のコホー
ト集団を形成し、質問紙による心理、行動、環境、生活習慣の特徴を解析し、大学生
の心身と生活習慣及び養育環境の特徴の基礎データを得た。また、プロバイオティク
ス、シックハウス、短期旅行ツアー、及び携帯電話使用などの環境要因によるストレ
ス軽減効果と心理・行動変化を明らかにした。

ストレス DNA チップ、
アフィメトリクス社あるいはアジレント社のヒト全ゲノムチッ
プを用いて、遺伝子発現に対して 300 例の解析を完了した。

唾液ストレスマーカーの有用性、血中サイトカインの個人差・性差、不安・うつ・神
経症傾向を反映するサイトカインの特定ならびに急性心理的ストレス応答サイトカイ
ンの同定に成功した。
(2) 国家試験受験者の慢性心理的ストレスの解析

慢性心理的ストレス応答遺伝子の同定と、サイトカインを用いた新たな慢性ストレス
評価法を確立した。
(3) CBT 試験受験者を用いた新たな RNA マーカーの探索

CBT 試験受験者を用い、急性ストレス特異的にスプライシングパターンを変化させる
14 遺伝子、および急性ストレスマーカーとして、3 つのマイクロ RNA を同定した。
(4) うつ病患者の末梢血の遺伝子発現解析

うつ病関連遺伝子、病状を反映する遺伝子、治療に反応する遺伝子を同定し、6 遺伝
子あるいは 24 遺伝子を用いたうつ病の診断法を開発して、うつ病診断用 PCR アレイ
を作成した。
138
(5) 慢性疲労症候群患者(CFS)の末梢血の遺伝子発現解析

ストレス評価用 DNA チップを用い、マーカー遺伝子を用いた鑑別診断の有用性を確
認するとともに、ヒト全ゲノムチップを用い、慢性疲労症候群の診断用 PCR アレイを
作成した。
(6) 自閉症の遺伝子発現解析

自閉症児とそのコントロール間で発現が異なる 25 遺伝子、母親間で発現の異なる 101
遺伝子を抽出した。
(7) 唾液中の非侵襲的バイオマーカーの探索

非ストレス群、定期試験受験者、医師国家試験受験者の唾液のサイトカインプロファ
イリングによる慢性ストレスの評価を行い、予備的な結果ながら唾液を用いても慢性
心理的ストレスを評価できることを示した。
139
3.5.2. 研究開発プロジェクトの事後評価結果の概要
「事後評価報告書」に基づき、本研究開発プロジェクトに関するセンターの評価委員会
による事後評価結果を以下のように整理した。
(1) 総合評価
研究開発目標の達成度、学術的・技術的・社会的貢献、成果の社会における活用・展開
などを中心に総合的に判断して、かなりの成果が得られたと評価する。
本プロジェクトでは、精度の高い慢性疲労症候群鑑別診断 PCR アレイの開発、自閉症に
特有の遺伝子発現パターンの発見、ストレス評価用 DNA チップの応用、非侵襲ストレス評
価法の開発、RNA マーカーの探索開始など、かなりの成果が得られた。また、うつ病及び
慢性疲労症候群のマーカー遺伝子の臨床応用、包括的ストレス評価技術の応用、サイトカイ
ンを用いたストレス・うつ病診断など、実用化に向けての取り組みが見られ、この課題の今
後の取り組みに期待したい。
社会的には、義務教育と高等教育の調査で積み残された大学生の心の疾患に対する深刻な
現状を認識し、養育環境が大学生の心理・行動に与える影響を明らかにするなどの貢献が
あった。また、ストレスに過剰な応答を引き起こす遺伝子群を特定し、うつ病患者に特有の
遺伝子発現を発見した成果は、発症の予知に結びつく可能性がある。
学術的に有用な研究モデルを抽出し、これからさらに発展する可能性を秘めた成果を得た
点は高く評価できる。ただし、得られた成果を脳科学と結びつけるには今一歩の発展を要す
る。また、得られた成果を社会に応用し、教育支援のための制度設計に資するものとするた
めには、より慎重な吟味と新たなる展開が必要と思われる。
(2) 目標達成の状況
本プロジェクトの研究開発目標は、相当程度達成されたと評価する。
研究開発目標として、大学生のコホートから心の疾患を引き起こすハイリスクグループ
の生物学的指標の抽出、心の疾患の予知に有効なマーカー遺伝子の同定とその測定技術の
開発、生物学的指標を用いた新たな非侵襲的バイオメンタル技術の開発などを設定してお
り、明確で妥当であった。遺伝子発現解析、唾液のストレスホルモン評価、サイトカイン
測定、PCR アレイの開発については順調に進捗したが、脳機能に関連した項目については
やや遅滞がみられた。目標達成に関して、大学生の心の疾患への環境リスク要因の解明な
ど、相当程度が達成されたと判断できる。ただし、簡便なバイオマーカーの同定には至ら
ず、遺伝子解析についても再現性の確認については課題として残された。
140
(3) 学術的・技術的貢献
本プロジェクトの成果は、脳科学分野の科学や技術にもある程度貢献したと評価する。
末梢血遺伝子発現解析による精神疾患、特にうつ病の診断技術の進歩に貢献している。
これまで困難であったストレス反応の客観的な評価技術として、各種ストレスのマーカー
遺伝子の同定に成功し、新たなストレス研究に結びつく可能性を示した。
一方、前頭葉の反応と関連する末梢血遺伝子の発現変化を見出しているが、今後データ
の信頼性の向上に取り組んで、脳の精神活動を末梢血でモニターできる可能性を示せれば
大きな貢献となる。
(4) 社会的貢献・成果の社会での活用・展開
本プロジェクトの成果は、学習・教育に関する科学的根拠を提供するうえで、社会的に
貢献し、今後も相当程度の貢献をなしうると評価する。
大学生の心の病の診断、予知、治療に貢献するための一歩を築いたが、学習・教育の課
題に成果をどう生かすかはこれからの問題である。うつ病や慢性疲労性症候群のマーカー
遺伝子の臨床応用、ストレス評価技術の学校や職場での応用等の実用化に向けた取り組み
がみられ、精神疾患発症の多い思春期~若年成人のストレス管理につながることが期待さ
れるので、今後の活用次第で十分に貢献しうると判断する。
大学の学生を対象とした調査として必要な倫理的な配慮はなされていたと思われるが、
成果の社会への展開にあたってはより一層の人権や倫理面への配慮が望まれる。
(5) 研究開発体制と管理運営
研究開発体制及び管理運営は、概ね適正・妥当であったと評価する。ただし、所属の学
生を対象に行う調査が主であるため、きわめて慎重な倫理的配慮が必要である。
当初参画していた企業が撤退したが、これに対し適切な対応がとられた。なお、多分野
の専門家のさらに積極的な関与があれば、研究デザインの策定の段階で改善できた部分が
あったかもしれない。
(6) 費用対効果比
投入された研究開発費と予想される社会的貢献から考慮した費用対効果比については、
比較的高いと評価する。
うつ病や慢性疲労性症候群のマーカー遺伝子の臨床応用、ストレス評価技術の学校や職
場での応用などに実用化に向けた取り組みがみられ、そのような応用展開が発展すれば、
141
投入研究開発費にさらに十分に見合う効果が得られると期待される。
(7) 特記事項
多くの興味ある試験および解析を行っているが、統計解析は全体を通じて探索的かつレ
トロスペクティブである。発見した種々のマーカーも多重性による p-value の調整、あるい
はバイオマーカーにつきものの外れ値等を検証しないと信頼性が不足すると考える。
コホート集団のストレス遺伝子の発現やうつ病関連遺伝子の同定などは、今後研究の発
展が期待される。さらに、免疫関連遺伝子の異常がなぜうつ病の発症に関連するかなどに
ついて、研究の方向性が示された事にも意義があると考える。
教育、特に幼児期の教育が目指すところは、個に応じつつ「心情・意欲・態度」をはぐく
むことである。しかし、幼児期にふさわしい教育は「見えない教育」であり、一般社会には
理解されにくい。一方、
「目に見えることを求める」親たちは早期教育に走り、その結果、
受け身に「させられ・比べられ続けた」養育環境が問題を引き起こしている可能性が、本プ
ロジェクトの成果から示唆されている。このような科学的な最新の研究成果が、一般社会、
特に若い親たちに届けられることも重要と考える。
142
3.5.3. 研究開発プロジェクト終了後の展開
3.5.3.1 研究開発成果の発展状況や活用状況
(1) 研究開発内容の進展状況
① 他グループとの共同研究継続による末梢血白血球の遺伝子発現を用いた精神・神経疾
患の診断の発展
本プロジェクトをきっかけに共同研究を開始した神尾グループとの自閉症スペクトラム
(ASD)の解析は、その後も継続し、プロジェクト終了後、世界で初めて末梢血白血球に
見られる自閉症特有の遺伝子発現の変化が報告されている(3.5.8.2.(1)論文 No13「PLoS
One 2011」参照)
。この中で、末梢白血球においてもニューロンネットワーク異常に関連し
た遺伝子発現変化を捉えることができることも証明された。
その後も、
認知リハビリテーション・プログラムによる遺伝子発現の変化を明らかにし、
末梢白血球の遺伝子発現を用いた ASD の病態解析を継続。ASD の末梢血に見られる特徴
的なマイクロ RNA の発現変化とその病態生理学的意義を捉えることに成功した。現在、
これらの成果に対し、論文を準備中である。
② サイトカインを用いたストレス・ストレス関連疾患の評価・診断技術の特許出願
DNA チップによる遺伝子発現解析の評価・診断技術の実用化研究は、当初民間企業との
共同研究により実用化を進める計画であったが、プロジェクト期間中、企業における部門
廃部やコストダウンがうまく行かなかったことで中断することになった。そのため、血中
メディエーター(50 種類のサイトカイン、ケモカイン及び増殖因子)を用いたストレス・
ストレス関連疾患の評価診断技術の開発を進めることになった。この中で、健常者の急性
心 理的 ストレ ス応 答サイ トカ インと して MIF を 新た に同定 (同 論文 No.19 「 Int J
Psychophysiol 2010」参照)することに成功したほか、炎症性サイトカイン(G-CFS、
IFN-gamma、IL-1beta)に加え、Th2 サイトカイン(IL-4、IL-5、IL-13)と beta-NGF が急
性心理的ストレス応答性サイトカインであること(同論文 No.10「Psychophysiology 2012」
参照)
、
特性不安とうつ状態を反映するサイトカインとして VEGF と IL-1beta
(同論文 No.15
「Int J Psychophysiol 2011」参照)の報告を達成している。
これまでに慢性心理的ストレスを評価できるバイオマーカーは開発されていない。この
研究によって、慢性心理的ストレスの新しい評価法として、4 種類のサイトカインを用い
た慢性ストレスの評価法の特許出願による権利化を実現し(特許第 4717962 号)、さらに、
うつ病の診断に有用なサイトカインを見出し、うつ病診断法の特許出願
(特願 2010-230087)
も実現させている。
サイトカインを用いたうつ病の評価・診断に関しては、メランコニー型のうつ病といわ
ゆる新型(非典型的)うつ病では、変化が全く異なるため、かなりの症例の解析が必要で
ある。このため、現在は、慢性ストレスの診断技術(特許第 4717962 号)を用いたメンタ
ルヘルスへの応用を計画している。
143
③ 新たなグラント取得により RNA バイオマーカー(選択的スプライシングバリアント及
び non-coding RNA)の探索を展開
科学研究費補助金基盤研究(B)の「ストレス評価・うつ病予知をめざすRNAバイオロジー
、科学研究費補助金挑戦的萌芽研究の「ストレス特異的スプ
研究(平成 22~24 年度) 10」
ライシングバリアントを指標とした新たなストレス評価技術(平成 22~23 年度)11」及び
「マイクロRNAを用いたストレスコーピング反応の評価・診断技術の開発(平成 24~25
年度) 12」の研究プログラムを主体に、遺伝子の転写後調節機構ならびにノンコーディン
グRNAを介したストレス応答の研究が進められている。ここでは、まず平成 23 年までに、
エクソンアレイを用いて、心理的ストレス時に末梢血白血球に出現する選択的スプライシ
ングバリアントの探索を実施し、心理的ストレス特異的なHMG-1 遺伝子の選択的スプライ
スバリアント(同論文No.18「Neurosci Lett 2010」参照)
、ならびに慢性心理的ストレス時
のグルココルチコイド受容体(GR)の選択的スプライスバリアント(GR-beta)の出現(同
論文No.14「Stress 2011」参照)を発表した。
遺伝子の非翻訳領域から転写されるノンコーディング RNA は、発達や生理機能の調節
に重要であり、がんをはじめとする疾患との関連も注目されている。特に、19-22 塩基の
マイクロ RNA は、遺伝子発現の重要な転写後調節機構の一つとして、広範囲の遺伝子発
現の tuning や buffering を行っている。さらに、個々のマイクロ RNA の遺伝子をノックア
ウトした実験動物では、通常の飼育環境では代償機構のため表現型の異常は現れないが、
ストレスに曝された場合、様々な異常が現れることが報告され、特定のマイクロ RNA は、
環境変化に適応するための遺伝子発現を調節するストレスコーピング反応に重要ではない
と考えられている。こうした中で、世界で初めてこのマイクロ RNA を介したストレス応
答にも着手、平成 24 年以降、論文にてその成果を発表している。まず、マイクロ RNA ア
レイを用いて末梢全血中のマイクロ RNA を網羅的に解析し、約 100 種類のマイクロ RNA
を検出。この中から心理的ストレス応答に反応する 3 種類のマイクロ RNA(miR-16、
miR-144/miR-144*)を発表した(同論文 No.9「Neurosci Lett 2012」参照)
。特に、miR-16
は炎症性サイトカインの mRNA をターゲットにして、急性ストレス時の炎症性サイトカイ
ンの過剰反応を抑制する役目を果たす可能性を報告(同論文 No.9「Neurosci Lett 2012」参
照)したことの意義は大きい。さらに、慢性心理的ストレス(医師国家試験受験者)のマ
イクロ RNA についても解析を実施し、miR-16、miR-144/miR-144*を含む 7 種類のマイク
ロ RNA を同定している(同論文 No.1「PLoS One 2013」参照)
。この慢性ストレス応答性
マイクロ RNA の再現性、普遍性について、現在、高不安、高うつ状態、及び遺伝子発現
異常を有する民間病院職員を対象とした解析を行い、同様の結果を得ている。さらに、精
度と再現性を高めるため、一般人の異なったストレスモデルでの検証を継続し、一般的に
10
11
12
参考 URL:http://kaken.nii.ac.jp/d/p/22390146
参考 URL:http://kaken.nii.ac.jp/d/p/22659142
参考 URL:http://kaken.nii.ac.jp/d/p/25670352
144
汎用できる評価法として確立している。また、慢性疲労症候群で発現が増加する自閉症者
の末梢白血球に発現するマイクロ免疫系
(特に炎症反応)
に関与する 3 種類のマイクロ RNA
の顕著な発現変化も捉えられた。
ヒト全血中のマイクロ RNA は、これまでのストレスメデイエーターと異なり、極めて
個人差が小さいことが特徴である。これらの研究は未だ予備的な研究段階であるが、スト
レス特異的 RNA 分子は、ストレス脆弱性の評価・診断を可能にする次世代バイオマーカー
となる可能性が期待されることもあり、現状、研究代表は、この研究を主体に展開を進め
ている状況にある。
④ 研究分担者として別プロジェクトでストレス健診法の開発・実践および脳イメージン
グとの関連研究を展開
本プロジェクトで実施した遺伝子発現解析を用いたストレス・ストレス関連疾患の評
価・診断に関する研究、および脳イメージングとの関連研究は、科学研究費補助金新学術
(平
領域研究(研究領域提案型)計画研究「社会疫学による健康格差のメカニズム解明 13」
成 21~25 年度、研究代表者:東京大学大学院医学系研究科 川上憲人教授)に六反研究代
表が研究分担者という立場で参画し、研究を継続させている。
同研究では、質問紙(STAI と SDS)、唾液コルチゾル、血清サイトカイン、及び末梢血
白血球の遺伝子発現解析からなるストレス健診法を確立し、岐阜県の民間病院の職員 102
名を対象にストレス健診を実施。89 名が女性職員であることを踏まえ、22 名のうつ病パ
ターン、7 名の発達障害パターン、7 名の慢性疲労症候群パターンを見出し、個別面接を経
て診断を確定させることに成功した(未発表)
。さらに、徳島県の民間病院職員の協力を得
て、SES、本人及び世帯の収入、正規と非正規雇用、いじめ等を質問紙で調査し、90 名の
回答を回収、完全回答者 73 名(男 16、女 57 名、平均年齢 43.6 歳)について末梢血遺伝子
発現と各質問紙の項目との相関解析も行い、12 名の病的ストレス反応を検出しており、現
在その解析を進めている。同分野も当初民間企業との間で進める予定で中断することに
なったものであるが、別プロジェクトへ参加することで研究を継続させ、高コストではあ
るが、精度の高いストレス健診法の確立へと発展させている。
脳イメージングとの関連研究では、名古屋大学大平英樹教授のグループと連携し、社会
階層尺度(SES)の low 群と high 群での白血球の遺伝子発現パターンの比較と fMRI との
関連を調べ、SES により影響される意思決定部位と low group で 2 倍以上発現が増加した
54 遺伝子と半分以下に発現が低下した 67 遺伝子を同定することに成功している(論文作
成中)
。
また事後評価で指摘のあった脳の精神活動と末梢血の遺伝子発現との関連について
も、この共同研究の中で取り組み、トリアストレステスト(10 名)あるいは心理タスク(14
名)と fMRI を施行した学生遺伝子発現解析を実施した。その中で、上記の社会階層尺度
(SES)low 群と high 群で fMRI と白血球の遺伝子発現パターンの比較において、SES に
関連する脳部位と 121 遺伝子の発現変化を捉え、パスウエイ解析で Behavior(p=7.14E-04)
13
参考 URL:http://kaken.nii.ac.jp/d/p/21119003
145
Nervous System Development and Function(p=7.14E-04)の発現変化を見出している。しかし
ながら、脳イメージングは、変数と情報があまりにも少なく、約 2 万の遺伝子発現データ
との関連解析を行うと、必ず有意に変動する遺伝子が検出されてしまう。さらに、fMRI
などのイメージングの個人差データに乏しく、脳イメージング解析を数多くの被験者に行
うことは物理的に難しく、信頼性の高い関連解析を行うには、まだ、多くの時間と労力が
必要とされる。
⑤ 遺伝子解析及び統計解析の精度向上に向けた取り組み
1)アレイ技術の進歩(検出感度の向上やプローブの変更等)により、アレイのバージョ
ンアップの度に旧バージョンの発現データが使えなくなる(検出技術面での問題)、2)個
人差が大きく、かつ、2 万近い遺伝子の発現情報があるため、十分な規模のコホート集団
がないと再現性に乏しくなる、3)心の疾患についてはヘテロな集団であり、解析技術、コ
ホート集団、対象疾患による誤差をなくすため、絶えず再現性の確認が重要となる、等 DNA
マイクロアレイを用いた遺伝子発現解析とバイオマーカーの同定作業における問題点は多
い。その克服に向けて定量的 PCR(リアルタイム PCR)による確認作業を行っている。た
だ、遺伝的素因が強い自閉症スペクトラム(同論文 No.13「PLoS One 2011」参照)や身体
症状の強い慢性疲労症候群(既存論文「Mol Med, 2008」参照)のマーカー遺伝子は発現変
化が大きく(2 倍以上)
、リアルタイム PCR でも再現性良く変化を確認できたが、うつ病
のマーカー遺伝子の発現変化は、自閉症スペクトラムや慢性疲労症候と比較して発現変化
が小さく(1.5 倍以下)
、集団が変わると再現性に乏しくなるのが実情である。さらに、典
型的な、メランコニー型(内因性)うつ病といわゆる非定型(新型)うつ病は、発現変化
が全く異なることなど、ヘテロな疾患ともいえるうつ病のマーカー遺伝子の同定は極めて
難しく課題解決には達していない。ただし、健常大学生のコホート調査において、うつ病
パターン(古典的な内因性うつ病)が約 10%の健常者に見られることを見出したのは大き
な成果と言え、民間企業職員にも広げられている。特に、民間企業職員ではレトロスペク
ティブにうつ病様のイベント歴を確認できている点は特筆される。現在は、大学生の追跡
調査を行っており、プロスペクテイブな成果が期待されるところである。
統計解析の調整・検証については、コホート集団の研究継続において、マーカー候補遺
伝子は全てリアルタイム PCR にて定量し確認作業を行っている。この際も、マーカー候補
遺伝子の数が多い場合は、multiple test correction を行っている。また、サイトカイン値と
各種質問紙による心理行動評価値に関する外れ値については、プログラム終了後に、論文
を誌上発表する際に全て外れ値の問題は解決して誌上発表している。
⑥ 心の疾患の診断技術への転換
臨床現場での精神疾患の診断も重要であるが、うつ病、自閉症、慢性疲労症候群の診断
と病態解析については、特にそれぞれの専門グループ(神尾グループ、渡辺グループ等)
と共同研究を継続させ、取り組み強化を進めている。これらの疾患については、遺伝子発
146
現解析ではほぼ終了しており、発現変化をきたすエピジェネテイック要因の探索を進めて
いる段階にある。今後は、社会実装に向けて、これらの成果を順次誌上発表し、認知度強
化に努めることが求められる。
(2) 研究開発成果の社会での適用・定着(社会実装)状況及び社会的課題の解決への貢献状況
現段階においては、再現性の追求を重視し、本プロジェクトに関わり社会に適用・定着
した事例はない。具体的な社会実装のまでは、さらに時間、労力、研究費とともに民間企
業の技術とノウハウなども必要とみられる。
しかしながら、社会での適用・定着(社会実装)加味した取り組みは進めており、以下
にその内容を記す。
① 包括的ストレス検診への適応
本プログラムや他のいくつかの支援事業により、遺伝子発現、質問紙、唾液検査、サイ
トカイン測定を含めた包括的なストレス診断技術の基盤はすでにできあがっており、試験
的評価が行われている。社会的には疾患予防の観点から、職場や教育現場での心の検診シ
ステムの構築へシフトさせていく意向は強く、研究成果が期待されている。これまでの研
究成果において、特にサイトカインを用いた慢性ストレス評価(特許第 4717962 号)とマ
イクロ RNA を用いたストレス評価(同論文 No.9「Neurosci Lett 2012」及び論文 No.1「PLoS
One 2013」参照)は、費用と信頼性・再現性の面から期待できるバイオマーカーと考えら
れる。マイクロ RNA が作用するためには、標的 mRNA の濃度、拮抗する RNA 結合蛋白
質の濃度に対する相対的なマイクロ RNA 量が重要なため、十分量に発現しているマイク
ロ RNA が対象となる。また、これまでのストレスマーカーと異なり、全血中の濃度に関
して個人差が極めて小さいこと、マイクロ RNA は多段階のプロセッシングを経て生成さ
れるため、比較的遅い反応(コーピング反応)として現れること、さらに、急性よりも慢
性ストレスでより発現変化が顕著になることなどから、ワンポイントの測定で信頼性・再
現性に優れたストレスマーカーとなる可能性がある。
実用化に向けては、知的所有権を取得して起業化を目指す戦略はとらず、広く公表して
汎用できるストレスマーカーとすることが検討されている。現在、ストレスの指標として
マイクロ RNA を用いたストレス評価に興味をもった民間企業 2 社から共同研究の依頼が
来ており、再現性・信頼性を確認した後、ストレス評価技術として実用化する計画である。
② ストレス検診を応用した食品の開発
ストレス関連疾患と遺伝子発現研究は、民間企業の抗ストレス食品の開発へと応用研究
が進んでいる。具体的には、プロバイオティクスによる健常大学生のストレス緩和作用と
過敏性腸症候群患者の治療を行い、遺伝子発現検査を行ってストレス緩和に関連する遺伝
147
子群や過敏性腸症候群の病状に関連する遺伝子群をそれぞれ報告している 14。現在、包括
的ストレス検診技術を用いて、カルピス株式会社とストレス緩和飲料の開発を行っている。
カルピス㈱との共同研究は、2007 年から開始され、継続して乳酸菌の抗ストレス作用につ
いて健常被験者と過敏性大腸炎患者を対象とした被験者実験を継続して行ってきている。
この間、開発した包括的なストレス評価(遺伝子発現、質問紙による心理・行動解析、サ
イトカイン測定、唾液コルチゾル測定)を用い、乳酸菌の抗ストレス作用を確認、平成 26
年にストレス緩和作用をアピールした新製品が発売される予定であり、その時、明らかな
社会実装事例へと発展する(内容に関しては、秘匿義務があるため未公開)
。
3.5.3.2. 研究開発成果がもたらした科学技術的、社会的及び経済的な効果・効用、波及効果
(1) 研究者・関与者の活動は、科学技術的・社会的な面での人材育成・キャリアパスの開
拓や人的ネットワークの展開に繋がったか
① 人材の研究・教育職の獲得
本プロジェクトに携わった教員と大学院生は、それぞれ以下のポストを得て現在も活躍
している(
( )内は研究グループに加わった時の立場)
。

棚橋俊仁氏(助教)
:徳島大学医学部講師を経て現在神戸薬科大学・准教授

河合智子氏(講師)
:結婚して退職。現在は成育医療センター研究員

冨永久美子氏(大学院生)
:2007 年に学位取得後米国 NIH へポスドクとして留学

増田清士氏(大学院生)
:2008 年に学位取得後 NIH にポスドクとして留学した後、徳
島大学・助教を経て現在は講師

西田憲生氏(大学院生)
:2009 年に学位取得後コロンビア大学留学、現在は徳島大学・
助教

佐々木秀幸氏(大学院生)
:2009 年に学位取得、サントリー研究所勤務

山本悠太氏(大学院生)
:2010 年に学位取得、和歌山県立医科大学・助教

勝浦桜子氏(大学院生)
:2011 年に学位取得、徳島大学・助教

山岸直子氏(大学院生)
:2013 年に学位取得、徳島大学特任助教

神里茉衣氏(大学院修士学生)
:2009 年の学位(修士)取得、シスメックス㈱勤務
② 他プロジェクト関係者との共同研究への発展
神尾グループとは、自閉症スペクトラム(ASD)の共同研究を継続して実施し、共著論
文の発表、日本精神神経学会シンポジウムでの共同発表等を実施した。さらに現在は、認
知リハビリテーション・プログラムによる遺伝子発現の変化と ASD に特徴的なマイクロ
RNA の発現変化についての共同研究を進めており、近く成果を誌上発表する予定となって
14
参考 URL:http://www.calpis.co.jp/laboratory/thesis/2011/o_0829.html
148
いる。
また渡辺グループとは、特に疲労研究との交流を継続、名古屋大学医学部総合診療部の
伴教授グループも加わって
「慢性疲労症候群の遺伝子発現解析」の共同研究を進めている。
渡辺グループらとは、本年の日本ストレス学会から、日本睡眠学会、日本疲労学会、及び
日本ストレス学会の合同シンポジウムを開催する計画であり、これを契機に、包括的なス
トレス・疲労・睡眠研究を進展させる考えである。
③ 新たな人的ネットワークの形成、異分野研究者との連携の発生
本プロジェクト終了後、新たに川上憲人教授が代表研究者を務める科学研究費補助金新
学術領域研究「社会疫学による健康格差のメカニズム解明」に分担研究者として六反教授
が参画し、本プロジェクトで確立したストレス評価技術を用いた社会格差と健康障害のメ
カニズムの解明研究を行っている。この新領域の研究を通じて、異分野(社会科学、社会
医学、経済学、心理学)との交流ネットワークが形成されている。
さらにその過程で、名古屋大学の大平英樹教授の研究グループと「意思決定に関与する
脳部位と遺伝子」における共同研究へと発展した。
また大阪大学経済研究所(現在は高知工科大学)の西條辰義教授グループとも研究交流
が始まり、経済行動と関連する遺伝子遺伝子の研究を進め、脳活動の末梢モニターの可能
性追求を実施、現在早稲田大学の心理学教室を含めて経済行動を左右する遺伝子探索の共
同研究を進めている。
本プロジェクトによって、新たな学問分野として、上述のような「経済活動と遺伝子」
、
「意思決定を左右する遺伝子」などの萌芽研究が生まれた。また、RNA を介したストレス
応答の研究の中でも、心理的ストレス特異的な選択的スプライシングバリアント(科研費
萌芽研究「ストレス特異的スプライシングバリアントを指標とした新たなストレス評価技
術」
、研究代表者:六反一仁)や心理ストレス応答性マイクロ RNA(前述)などは、世界
に先駆けた成果発表として注目を集めている。
(2) 研究者・関与者の活動は、社会の幅広い関与者(ステークホルダー※)にどのような
社会面(教育面)
・経済面での影響・効果をもたらし、研究開発成果の社会での活用・
拡大・定着に繋がっているか。
(※当初想定していなかったステークホルダーも含む)
末梢血白血球の遺伝子発現を用いたストレス・ストレス関連疾患の研究である世界に先
駆けて初めた本プロジェクトは、広く国内外で認知されることになった。特に、ストレス
評価に「質的な評価」の概念と、その重要性を広めたことは大きな意味を持つ。また、精
神活動を末梢血でモニターすること、脳内ニューロンネットワークの異常を末梢血でも捉
えることができることなど、臨床現場での評価診断技術の新しい方法論を提供したことも
重要な要素となった。
メッセンジャーRNA のバイオマーカーの探索から、RNA プロセッシングや non-coding
149
RNA の研究へと発展させたことで、マイクロ RNA を用いたストレスコーピングの評価の
可能性を見出し、新たなストレス研究へと発展できたことは、本プロジェクトの存在意義
を知らしめることになったと言える。
150
3.5.4 付属資料
3.5.4.1. 主要研究者動静表
氏名
研究期間中の所属・役職
徳島大学大学院ヘルスバイオサイ
六反 一仁
エンス研究部 教授
徳島大学大学院ヘルスバイオサイ
河合 智子
エンス研究部 講師
徳島大学大学院ヘルスバイオサイ
棚橋 俊仁
エンス研究部 助教
徳島大学大学院ヘルスバイオサイ
大森 哲郎
エンス研究部 教授
徳島大学大学院ヘルスバイオサイ
森田 恭子
エンス研究部 講師
徳島大学大学院ヘルスバイオサイ
増田 清士
エンス研究部 助教
大阪大学大学院医学系研究科
中山 邦夫
医学部講師
大阪大学大学院医学系研究科
呂 玉泉
医学部講師
大阪大学大学院医学系研究科
戸田 雅裕
講師
日立ライフサイエンス推進事業部
斎藤 俊郎
バイオテクノロジーセンター 主任
研究員
現在の所属・役職
徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研
究部 教授
国立成育医療研究センター勤務
神戸薬科大学大学院 医療薬学講座 准
教授
徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研
究部 教授
出産を契機に退職
徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研
究部 講師
松下病院勤務
大阪大学大学院医学系研究科 助教(医
学部講師)
大阪歯科大学 歯学部講師
日立ハイテクノロジー勤務
3.5.4.2. 研究開発プロジェクト終了後(平成 21 年 12 月以降)の主要研究成果
(1) 論文
論文名
1
2
3
4
著者
掲載媒体
Honda M, Kuwano Y,
Chronic academic stress
Katsuura-Kamano S, Kamezaki PLoS One. 2013 Oct
increases a group of
Y, Fujita K, Akaike Y, Kano S, 9;8(10):e75960.
microRNAs in peripheral
Nishida K, Masuda K, Rokutan PMID:24130753
blood
K.
Int J Mol Sci. 2013
Aug
NF90 in posttranscriptional
Masuda K, Kuwano Y, Nishida
19;14(8):17111-21. doi:
Gene Regulation and
K, Rokutan K, Imoto I.
MicroRNA Biogenesis.
10.3390/ijms14081711
1.
Methods Mol Biol
2013;1048:285-308.
Application of DNA
Masuda K, Kuwano Y, Nishida
doi:
Microarray Technology to
K, Rokutan K
10.1007/978-1-62703-5
Gerontological Studies
56-9_19.
Downregulation of
Kurokawa K, Akaike Y,
serine/arginine-rich splicing Masuda K, Kuwano Y, Nishida Oncogene (in press)
factor 3 induces G1 cell
K, Yamagishi N, Kajita K,
doi:10.1038/onc.2013.8
cycle arrest and apoptosis in Tanahashi T, Rokutan
6
colon cancer cells
K
151
年月
2013
2013
2013
2013
Chronic inhibition of tumor
cell-derived VEGF enhances
5
the malignant phenotype of
colorectal cancer cells
Associations between
chronotype and salivary
6
endocrinological stress
markers
Yamagishi N, Teshima-Kondo
BMC Cancer 13:229.
S, Masuda K, Nishida K,
doi:10.1186/1471-2407
Kuwano Y, Dang DT, Dang LH,
-13-229
Nikawa T, Rokutan K
2013
Toda M, Kawai T, Takeo K,
Rokutan K, Morimoto K
Endocrine Res. 38: 1-7.
doi:10.3109/07435800.
2012.683225
2013
Ets1 and heat shock factor 1
regulate transcription of the
7
Transformer 2beta gene in
human colon cancer cells
Kajita K, Kuwano Y, Kitamura
N, Satake Y, Nishida K,
Kurokawa K, Akaike Y, Honda
M, Masuda K, Rokutan K
J Gastroenterol. (in
presss)
http://link.springer.com
/article/10.1007%2Fs00
535-012-0745-2
2013
Molecular features of triple
negative breast cancer cells
8
by genome-wide gene
expression profiling analysis
Komatsu M, Yoshimaru T,
Matsuo T, Kiyotani K, Miyoshi
Y, Tanahashi T, Rokutan K,
Yamaguchi R, Saito A, Imoto S,
Miyano S, Nakamura Y, Sasa
M, Shimada M, Katagiri T
Int J Oncol. 42:
478-506.
doi:10.3892/ijo.2012.1
744
2013
MicroRNAs miR-144/144*
and miR-16 in peripheral
blood are potential
9
biomarkers for naturalistic
stress in healthy Japanese
medical students
Katsuura S, Kuwano Y,
Yamagishi N, Kurokawa K,
Kajita K, Akaike Y, Nishida K,
Masuda K, Tanahashi T,
Rokutan K
Neurosci Lett.
2012;516(1):79-84.
doi:
10.1016/j.neulet.2012.0
3.062.
2012
Psychophysiology
2012;49(7):991-997.
doi:
10.1111/j.1469-8986.20
12.01371.x.
2012
Kurokawa K, Tanahashi T, Iima
J
Gastroenterol
T, Yamamoto Y, Akaike Y,
47(8):883-895
Nishida K, Masuda K, Kuwano
Y, Murakami Y, Fukushima M,
Rokutan K
2012
Masuda K, Kuwano Y, Nishida
K, Rokutan K.
Age Res Rev
11:423-431
2012
Kuwano Y, Kamio Y, Kawai T,
Katsuura S, Inada N, Takaki A,
Rokutan K
PLoS One 6, e24723
2011
Kurokawa K, Tanahashi T,
Murata A, Akaike Y, Katsuura
S, Nishida K, Masuda K,
Kuwano Y, Kawai T, Rokutan
K.
Stress 14, 431-438
2011
Circulating cytokine
Kamezaki Y, Katsuura S,
signatures in healthy
Kuwano Y, Tanahashi T,
10
medical students exposed to
Rokutan K
academic examination stress
Role of miR-19b and its
target mRNAs in
11
5-fluorouracil resistance in
colon cancer cells
General RBP expression in
12 human tissues as a function
of age
Autism-Associated Gene
Expression in Peripheral
Leucocytes Commonly
13 Observed between Subjects
with Autism and Healthy
Women Having Autistic
Children
Effects of chronic academic
stress on mental state and
expression of glucocorticoid
14
receptor alpha and beta
isoforms in healthy Japanese
medical students,
152
15
16
17
18
19
20
21
22
Circulating vascular
endothelial growth factor is
independently and
negatively associated with
trait anxiety and depressive
mood in healthy Japanese
university students
Skipping of an alternative
intron in the srsf1 3'
untranslated region
increases transcript stability
nterleukin-18 deficiency
reduces neuropeptide gene
expressions in the mouse
amygdala related with
behavioral change
Brief naturalistic stress
induces an alternative splice
variant of SMG-1 lacking
exon 63 in peripheral
leukocytes
High-throughput screening
of brief naturalistic
stress-responsive cytokines
in university students taking
examinations
メンタルヘルスを支える新た
なストレスバイオマーカー
選択的スプライシング反応
による遺伝子発現制御
ASD に特徴的な末梢血白
血球の遺伝子発現
Katsuura S, Kamezaki Y,
Yamagishi N, Kuwano Y,
Nishida K, Masuda K,
Tanahashi T, Kawai T, Arisawa
K, Rokutan K
Akaike Y, Kurokawa K, Kajita
K, Kuwano Y, Masuda K,
Nishida K, Wan Kang S,
Tanahashi, T, Rokutan K
Yamamoto Y, Tanahashi T,
Katsuura S, Kurokawa K,
Nishida K, Kuwano Y, Kawai T,
Teshima-Kondo S, Chikahisa S,
Tsuruo Y, Sei H, Rokutan K
Kurokawa K, Kuwano Y,
Tominaga K, Kawai T, Katsuura
S, Yamagishi N, Satake Y,
Kajita K, Tanahashi T, Rokutan
K
Katsuura S, Kamezaki Y,
Tominaga K, Masuda K,
Nishida K, Yamamoto Y, Takeo
K,Yamagishi N, Tanahashi T,
Kawai T, Rokutan K
桑野由紀、勝浦桜子、増田清
士、棚橋俊仁、六反一仁
黒川憲、棚橋俊仁、増田清
士、桑野由紀、六反一仁
六反一仁、桑野由紀、増田清
士、西田憲生、神尾陽子
Int J Psychophysiol 81,
38-43
2011
J Med Invest 58,
180-187
2011
J
Neuroimmunol.
15;229(1-2):129-39
2010
Neurosci
Lett.;484(2):128-32
2010
Int J Psychophysiol.
77(2):135-140
2010
四国医学雑誌 第 66
2010.12
巻 第 5, 6 号
四 国 医 学会 雑 誌. 第
2010
66 巻 5, 6 号、157-162
精
神
経
誌
2012
SS470-SS474
(2) 発表・講演
招待講演
シンポジウム・セミナー名
年月
(会場)
th
Morning Lecture in The 11
Detection and application of
International Congress of
1 novel stress markers in
Rokutan K.
2012.8.30
Hyperthermic Oncology(Kyoto,
peripheral blood
Japan)
第 107 回日本精神神経学会学術総
自閉症スペクトラム成人
会 シンポジウム:精神医学にお
六反 一仁、桑
と自閉症児の母親に共通
ける 発達障害再考:自動機から
野 由紀、神尾
2
2011.10.27
する末梢白血球の遺伝子
成人期へのさまざまな発達軌跡
陽子
発現の特徴
(ホテルグランパシフィック LE
DAIBA ,東京)
発表・講演名
講演者
遺伝子発現解析からみた
慢性疲労症候群の病態
六反 一仁
第 7 回日本疲労学会総会・学術集
会 特別講演(名古屋大学,名古屋 2011.5.21
市)
4 ストレスバイオロジー研
六反 一仁
第 13 回精神神経内分泌免疫学研
3
153
2011.1.8
究の現状
環境と遺伝子の研究から
5 社会ニーズに応えるスト
レスマーカーを探る
六反 一仁
6 ストレスマーカーの現状
六反 一仁
心と遺伝子を探るストレ
スゲノミクス研究
六反 一仁
7
究集会 特別講演(徳島大学,徳島
市)
ヒューマンストレス産業技術研
究会第 20 回記念フォーラム「ス
トレス診断と計測評価」招待講演 2010.11.12
(産業技術総合研究所関西セン
ター,大阪市)
第 26 回日本ストレス学会学術総
2010.11.6
会 教育講演(九州大学,福岡市)
2010 日本歯周病学会秋期学術大
会(第 53 回)特別講演(サンポー 2010.9.19
ト高松,高松市)
末梢血遺伝子発現プロ
ファイリングの脳科学・
8 パーソナリテイ研究への 六反 一仁
応用-その可能性と実際
-
ストレスゲノミクス研究
の現状と展望―臨床で求
9
六反 一仁
められる「心と遺伝子」研
究―
10 ストレスマーカーの現状
なぜストレスで病気にな
11 るのか?-心の疾患患者
にみられる病的な反応-
口頭講演
発表・講演名
健常大学生の医師国
家試験ストレスに応答
12
する末梢血マイクロR
NAの検索
選択的スプライシング
13 因 子 Tra2β を介 した
Bcl-2 の転写後調節
精神的ストレスに応答
14 するヒト末梢血マイクロ
RNAの発現
HIPK2 はクロマチン構
成因子 HP1γと相互作
15
用し DNA 修復を制御
する
酸化ストレスと選択的
16 スプライシングのクロス
トーク
酸 化 スト レ ス 下 で の 、
HuR による transformer
17
2-beta の選択的スプラ
イシング制御機構
2010 アジレントゲノミクス
フォーラム 招待講演(国際
ファッションセンター,東京都)
2010.6.11
京都消化器医会例会 特別講演
(京都府医師会館,京都市)
2011.6.11
六反 一仁
第 26 回日本ストレス学会学術総
会 教育講演(福岡)
2010.11.6
六反 一仁
第 176 回名西郡名東郡医師会学術
2010.4.13
講演会 特別講演(徳島)
講演者
西田憲生、本田真奈美、桑野
由紀、藤田絹代、梶田敬介、
赤池瑶子、増田清士、六反一
仁
桑野由紀、梶田敬介、佐竹
譲、赤池瑶子、本田真奈美、
藤田絹代、西田憲生、増田清
士、六反一仁
本田真奈美、桑野由紀、佐竹
譲、梶田敬介、赤池瑶子、藤
田絹代、西田憲生、増田清
士、六反一仁
赤池瑶子、増田清士、黒川
憲、佐竹譲、梶田敬介、本田
真奈美、藤田絹代、西田憲
生、桑野由紀、六反一仁
シンポジウム・セミナー名
(会場)
第 28 回日本ストレス学
会学術総会(札幌)
年月
2012.12.1
第 7 回臨床ストレス応答
2012.11.24
学会大会(東京)
第 7 回臨床ストレス応答
2012.11.24
学会大会(東京)
第 7 回臨床ストレス応答
2012.11.24
学会大会 (東京)
黒川憲、棚橋俊仁、六反一仁
第 53 回日本消化器病学 2011.10.20
会大会(福岡市)
~10.23
赤池瑶子、増田清士、山岸直
子、黒川憲、佐竹譲、梶田敬
介、本田真奈美、西田憲生、
桑野由紀、六反一仁
第 6 回臨床ストレス応答
2011.114~
学会大会(名古屋大学,
11.5
名古屋市)
154
梶田敬介、桑野由紀、山岸直
酸 化 ス ト レ ス 応 答 性 子、黒川憲、佐竹譲、赤池瑶 第 6 回臨床ストレス応答
18 Tra2-beta mRNA によ 子、本田真奈美、西田憲生、 学会大会(名古屋大学,
増田清士、棚橋俊仁、六反一 名古屋市)
る細胞老化の制御
仁
本田真奈美、桑野由紀、山岸
精神的ストレスに応答 直子、黒川憲、佐竹譲、梶田 第 27 回日本ストレス学
19 するヒト末梢血マイクロ 敬介、赤池瑶子、西田憲生、 会 学術 総会 (東 京国 際
RNA の発現
増田清士、棚橋俊仁、六反一 交流館, 東京都)
仁
Autism-associated gene
Joint Academic
桑野由紀、神尾陽子、河合智
expression signatures
Conference on ASD
子、勝浦桜子、稲田尚子、高
20
in peripheral blood
2011(日本財団ビル,東
木晶子、六反一仁
京都)
leucocytes
Alternative splice
Yuki Kuwano, Ken Kurokawa,
variants of SMG-1 as a
The 7th World Congress
Sakurako Katsuura, Naoko
potential marker for
Yamagishi, Yuzuru Satake,
on Stress(Leiden,
21
brief naturalistic
Keisuke Kajita, Toshihito
Netherlands)
stressors in peripheral
Tanahashi, Kazuhito Rokutan
leukocytes
血中 VEGF 濃度は健
勝浦桜子、亀崎佳子、山岸直
常大学生の不安やう
子、黒川憲、佐竹譲、梶田敬 第 26 回日本ストレス学
22 つ状態の新たなバイ
介、桑野由紀、棚橋俊仁、六 会学術総会(福岡)
オマーカーとなりう
反一仁
る
血清免疫因子を用い
た慢性的な心理的ス 亀崎佳子、勝浦桜子、六反一 第 26 回日本ストレス学
23
トレス応答性の客観 仁
会学術総会(福岡)
的評価方法
黒川憲、棚橋俊仁、赤池瑶
スプライシング調節因
子、勝浦桜子、山岸直子、佐
子 SFRS3 による細胞
第 5 回臨床ストレス応答
竹譲、梶田敬介、暮部裕之、
24
周期とアポトーシスの
学会大会(徳島)
増田清士、桑野由紀、六反一
制御機構
仁
Splicing factor,
赤池瑶子、黒川憲、北村奈瑠
arginine/serine-rich 1
第 5 回臨床ストレス応
香、梶田敬介、増田清士、桑
25
(SFRS1) の大腸癌細
答学会大会(徳島)
野由紀、棚橋俊仁、六反一仁
胞での機能解析
ヒト transformer 2 beta 佐竹譲、桑野由紀、梶田敬介、
遺伝子における選択 黒川憲、山岸直子、勝浦桜子、第 5 回臨床ストレス応
26
的スプライシング制 北村奈瑠香、増田清士、棚橋 答学会大会(徳島)
御機構の解明
俊仁、六反一仁
勝浦桜子、桑野由紀、山岸直
試験ストレスによっ
子、黒川憲、佐竹譲、梶田敬 第 5 回臨床ストレス応
27 て変化するヒト末梢
介、増田清士、棚橋俊仁、六 答学会大会(徳島)
血 miRNA の同定
反一仁
VEGF 遺伝子領域に
山岸直子、近藤茂忠、増田清
コードされた新規腫
士、勝浦桜子、黒川憲、佐竹 第 5 回臨床ストレス応
28 瘍 促 進 性 non-coding
譲、桑野由紀、棚橋俊仁、六 答学会大会(徳島)
RNA の同定と機能解
反一仁
析
155
2011.114~
11.5
2011.11.20
2011.12.2
2010.8.25
~8.27
2010.11.5
~11.6
2010.11.5
~11.6
2010.11.19
~11.20
2010.11.19
~11.20
2010.11.19
~11.20
2010.11.19
~11.20
2010.11.19
~11.20
血清中免疫系因子を
用いた慢性的な心理 石川友紀子、亀崎佳子、勝浦 第 5 回臨床ストレス応 2010.11.19
29
的ストレス応答性の 桜子、六反一仁
答学会大会(徳島)
~11.20
客観的評価方法
ポスター発表
シンポジウム・セミナー名
発表・講演名
講演者
年月
(会場)
High-throughput screening
Honda M, Katsuura S,
The International
of immunomodulators
Kuwano Y, Yamagishi N,
Conference on Social
identifies VEGF as a
Kurokawa K, Satake Y, Kajita
2011.8.6
Stratification and
30 potential biomarker for trait
K, Akaike Y, Nishida K,
Health 2011(Tokyo
anxiety and depressive
Masuda K, Tanahashi T,
University,Tokyo)
mood in healthy Japanese
Rokutan K
university students
High-throughput screening Sakurako Katsuura, Yoshiko
of brief naturalistic
Kamezaki, Yuki Kuwnao,
The 7th World
2010.8.25
stress-responsive cytokines Naoko Yamagishi, Ken
Congress on
31
~8.27
in Japanese university
Kurokawa, Yuzuru Satake,
Stress(Leiden,
students taking
Toshihito Tanahashi, Kazuhito Netherlands)
examinations
Rokutan
High-throughput screening
Sakurako Katsuura, Yoshiko
of immunomodulators
Kamezaki, Yuki Kuwnao,
The 7th World
identifies VEGF as a
2010.8.25
Naoko Yamagishi, Ken
Congress on
32 potential biomarker for trait
~8.27
Kurokawa, Keisuke Kajita,
Stress(Leiden,
anxiety and depressive
Toshihito Tanahashi, Kazuhito Netherlands)
mood in healthy Japanese
Rokutan
university students
(3) 書籍・報告書等
書籍・報告書名
遺伝子多型,ストレス反応における、スト
1
レス百科事典、第 1 巻 pp102-107
遺伝的素因,ストレス環境に対する、スト
2
レス百科事典、第 1 巻 pp108-112
視床下部-下垂体-副腎軸活性と機能
3 に関する遺伝子変異,家畜の、ストレス百
科事典,第2巻 pp1111-1113
初期発達における遺伝子-環境の相互
4 作用、ストレス百科事典第2巻
pp1282-1288
著者
出版社
年月
六反 一仁
丸善出版
2009.12
六反 一仁
丸善出版
2009.12
六反 一仁
丸善出版
2009.12
六反 一仁
丸善出版
2009.12
(4) 新聞・テレビ等
なし
(5) 特許
出願
名称:慢性ストレスの評価方法
発明者:六反一仁、河合智子、亀崎佳子
権利者:片倉工業株式会社、徳島大学
種類:特許権
156
番号:特願 2010-533154
取得年月日:平成 22 年 8 月 19 日
国内外の別:国際
名称:うつ病の診断のためのデータの提供方法
発明者:六反一仁、亀崎佳子、納屋伸一、比嘉友紀子、菅井睦美、池田真弘、保坂由美子、
樋口景子、神里茉衣
権利者:片倉工業株式会社、徳島大学
種類:特許権
番号:PCT/JP2011/053836
出願年月日:平成 23 年 2 月 22 日
国内外の別:国際
取得
名称:慢性ストレスの評価方法
発明者:六反一仁、河合智子、亀崎佳子
権利者:片倉工業株式会社、徳島大学
種類:特許権
番号:特許第 4717962
取得年月日:平成 23 年 4 月 8 日
国内外の別:国際
(6) 獲得グラント
グラント名
1
2
3
4
科学研究費補助
金基盤研究(B)
タイトル
採択者
ストレス評価・うつ病予知を
めざすRNAバイオロジー研 六反一仁
究
ストレス特異的スプライシ
ングバリアントを指標とし 六反一仁
た新たなストレス評価技術
科学研究費補助
金挑戦的萌芽研
究
科学研究費補助
金 新学術領域研 社会疫学による健康格差の
川上憲人
究(研究領域提案 メカニズム解明
型)
「計画研究」
マイクロ RNA を用いたスト
挑戦的萌芽研究 レスコーピング反応の評
六反一仁
価・診断技術の開発
(7) その他
なし
157
配分額
実施年度
18,720 千円
2010~2012
3,190 千円
2010~2011
32,500 千円
2009~2013
3,640 千円
2013~2014
158
3.6. 非侵襲的脳機能計測を用いた意欲の脳内機序と
学習効率に関するコホート研究
(研究代表者:渡辺 恭良)
159
3.6.1. 研究開発プロジェクトの概要
研究開発領域
「脳科学と社会」研究開発領域
研究開発プログラム名
研究開発プログラム「脳科学と教育(タイプⅡ)
」
研究開発プロジェクト名
研究代表者(現所属)
研究実施期間
非侵襲的脳機能計測を用いた意欲の脳内機序と学習効率に関
するコホート研究
渡辺恭良(理化学研究所 ライフサイエンス技術基盤研究セン
ター センター長)
平成 16 年 12 月~平成 21 年 11 月((2004 年 12 月~2009 年 11
月)
※現所属は、追跡調査時のものを記載
3.6.1.1. 研究開発の概要と研究開発目標
意欲と疲労の計測により学習意欲低下の実態とその要因を探り、脳科学によるメカニズ
ムの解明とその対策法の発案に資する。そして、高効率学習のための、学習意欲の評価系
及び学習意欲低下の早期発見・予防方策の開発・提言や教育現場での実践を実現させる。
小学校 4 年から中学校 3 年の健常児童・生徒と小児慢性疲労症候群(Childhood Chronic
Fatigue Syndrome, CCFS)患児を対象として、質問票調査、睡眠リズム・行動量測定、認知
機能検査、機能的磁気共鳴画像法(functional Magnetic Resonance Imaging, fMRI)や事象関
連電位、遺伝子多型解析を施行し、
「学習意欲」の評価方法および学習意欲低下の早期発見・
予防方策の開発・提言を行う。各目標は以下である。
1.「学習意欲」の評価法と脳科学の確立
2.学習意欲低下モデルとしての不登校児における「学習意欲」の評価法と脳科学の確立
3.上記 2 点の研究成果より、学習意欲低下の関連因子および危険因子の特定
4.学習意欲低下の早期発見・予防のための方策の提言
160
3.6.1.2. 研究開発の実施体制
※所属・役職は研究開発プロジェクト実施期間中のものを記載
(1) 学習意欲機序研究グループ
氏名
渡辺 恭良
片岡 洋祐
和田 康弘
期間中の所属・役職
(独)理化学研究所 分子イメージン
グ科学研究センター センター長、
大阪市立大学教授
大阪市立大学 客員教授、(独)理化学
研究所 分子イメージング科学研究
センター 分子プローブ動態応用研
究チーム 客員研究員
(独)理化学研究所 分子イメージン
グ科学研究センター 分子プローブ
動態応用研究チーム 研究員
担当
参加期間
研究実施項目全般
平成 16 年 12 月~
平成 21 年 11 月
意欲の脳内メカニ 平成 18 年 4 月~
ズム研究
平成 21 年 3 月
fMRI data 解 析 法 平成 16 年 12 月~
平成 21 年 3 月
開発
田中 雅彰
大阪市立大学 講師、(独)理化学研究
所 分子イメージング科学研究セン fMRI 実行・data 解 平成 16 年 12 月~
平成 21 年 11 月
ター 分子プローブ動態応用研究 析
チーム 客員研究員
福田 早苗
大阪市立大学 特任講師、(独)理化学
研究所 分子イメージング科学研究 学習意欲と陽性因 平成 18 年 4 月~
平成 21 年 11 月
センター 分子プローブ動態応用研 子
究チーム 客員研究員
(独)理化学研究所 分子イメージン
グ科学研究センター 分子プローブ 意欲と疲労度計測
機能評価研究チーム 研究員
(2) fMRI 研究グループ
水間 広
氏名
期間中の所属・役職
担当
定藤 規弘
生理学研究所 教授
fMRI
神作 憲司
生理学研究所 助手
fMRI
田邊 宏樹
生理学研究所助手
fMRI
平成 16 年 12 月~
平成 18 年 3 月
参加期間
平成 16 年 12 月~
平成 21 年 11 月
平成 16 年 12 月~
平成 18 年 5 月
平成 16 年 12 月~
平成 21 年 11 月
(3) 集中力・疲労度研究グループ
氏名
尾上 浩隆
彦坂 和雄
期間中の所属・役職
担当
(独)理化学研究所 分子イメージン
グ科学研究センター 分子プローブ
総括・PET実験
機能評価研究チーム チームリー
ダー
川崎医療福祉大学 医療技術学部
神経活動の記録
感覚矯正学科 教授
161
参加期間
平成16年12月~
平成21年11月
平成16年12月~
平成21年3月
(4) 学習障害児研究グループ
氏名
期間中の所属・役職
担当
参加期間
友田 明美
事象関連電位、画像
熊本大学大学院 医学薬学研究部 解析を用いた認知・ 平成16年12月 ~
学習意欲に関する脳 平成21年11月
小児発達学分野 准教授
機能の解析
三池 輝久
熊本大学大学院 医学薬学研究部
不登校、および留年、
小児発達学分野 名誉教授、兵庫県
平成16年12月 ~
休学、退学学生の支
立総合リハビリセンター 小児睡眠
平成21年11月
援的治療とその評価
障害医療センター長
不登校、および留年、
熊本大学大学院 医学薬学研究部
平成16年12月 ~
休学、退学学生の支
小児発達学分野 助教
平成21年11月
援的治療とその評価
(5) 教育環境・学習効率研究グループ
氏名
期間中の所属・役職
担当
参加期間
平成 16 年 12 月~
松村 京子
兵庫教育大学大学院 教授
研究計画・実施・総括 平成 21 年 11 月
平成 16 年 12 月~
服部 英雄
兵庫教育大学附属小学校 教諭 授業計画・実施・評価
平成 21 年 3 月
平成 16 年 12 月~
坂本 貢孝
同上
授業計画・実施・評価
平成 20 年 3 月
平成 16 年 12 月~
高岡 昌司
同上
授業計画・実施・評価
平成 19 年 3 月
平成 18 年 4 月~
中田 高俊
同上
授業計画・実施・評価
平成 21 年 3 月
平成 18 年 4 月~
勝部 浩子
同上
授業計画・実施・評価
平成 19 年 3 月
平成 18 年 4 月~
羽田野 崇
同上
授業計画・実施・評価
平成 21 年 3 月
平成 18 年 4 月~
高山 宗寛
同上
授業計画・実施・評価
平成 21 年 3 月
平成 18 年 4 月~
植田 悦司
同上
授業計画・実施・評価
平成 21 年 11 月
平成 16 年 12 月~
井上 良典
同上
授業計画・実施・評価
平成 17 年 3 月
平成 18 年 7 月~
原田 幸俊
同上
授業計画・実施・評価
平成 21 年 3 月
Steinsiek Richard
平成 18 年 7 月~
同上
授業計画・実施・評価
Ichiro
平成 21 年 11 月
平成 20 年 4 月~
長谷川 幸一
同上
授業計画・実施・評価
平成 21 年 11 月
平成 20 年 4 月~
永倉 仁貴
同上
授業計画・実施・評価
平成 21 年 11 月
平成 20 年 4 月~
伊田 隆
同上
授業計画・実施・評価
平成 21 年 3 月
平成 20 年 4 月~
古賀 智子
同上
授業計画・実施・評価
平成 21 年 3 月
上土井 貴子
162
新宮 真也
同上
授業計画・実施・評価
中地 吉人
同上
授業計画・実施・評価
藤本 将宏
同上
授業計画・実施・評価
小寺 研
同上
授業計画・実施・評価
佐々 敬政
同上
授業計画・実施・評価
柴田 順次
同上
授業計画・実施・評価
森
同上
授業計画・実施・評価
泰樹
平成 20 年 4 月~
平成 21 年 11 月
平成 20 年 4 月~
平成 21 年 11 月
平成 20 年 4 月~
平成 21 年 11 月
平成 20 年 4 月~
平成 21 年 11 月
平成 20 年 4 月~
平成 21 年 11 月
平成 20 年 4 月~
平成 21 年 11 月
平成 20 年 4 月~
平成 21 年 11 月
(6) 遺伝要因・環境要因研究グループ
氏名
橋本 亮太
功刀 浩
沼川 忠弘
期間中の所属・役職
担当
参加期間
総括、遺伝子解析、
平成 16 年 12 月~
認知機能解析、被験
平成 21 年 11 月
者リクルート
平成 16 年 12 月~
遺伝子解析
平成 18 年 3 月
神経細胞培養機能解 平成 16 年 12 月~
析
平成 18 年 3 月
大阪大学大学院
医学系研究科特任准教授
国立精神・神経センター
神経研究所部長
国立精神・神経センター
神経研究所部長室長
3.6.1.3 研究開発の内容
(1) 健常児前向きコホート研究を行った
大阪、兵庫、熊本の小中学生を対象に、質問票調査を 5 回実施した。その一部の健常児
童・生徒に関しては、紙・パソコン版の認知機能検査、fMRI を中心とした非侵襲的脳機能
イメージング計測、遺伝子多型解析を施行し、その遺伝・環境要因および認知機能・脳機
能を含めて検討を行った。なお、本コホート研究に参加した一部の児童生徒の保護者およ
び教職員に対し、生活習慣、睡眠に関するアドバイスを小児科医が行った。また、児童生
徒による生活リズム・疲労・学習意欲についてのグループ検討会を実施し、睡眠を含めた
生活習慣改善のための意欲喚起の機会を設けた。
(2) CCFS 患児前向きコホート研究を行った
中学生の CCFS 患児を対象に、健常児童・生徒との横断研究との比較研究および CCFS
患児における追跡調査を実施した。追跡間隔は、健常児童・生徒と同じく 6 ヶ月であった。
なお、
本コホート研究に参加した一部の児童生徒の保護者および教職員に対し、生活習慣、
睡眠に関するアドバイスを小児科医が行った。また、児童生徒による生活リズム・疲労・
学習意欲についてのグループ検討会を実施し、睡眠を含めた生活習慣改善のための意欲喚
起の機会を設けた。
163
(3) 教育環境における学習意欲・疲労と学習効率の研究を行った
授業中の生徒と教師のやり取りの中で、教師のどのような発言や指示が児童の学習意欲を
喚起するかを、生徒と教師の発言、行動の相互作用分析、生徒の自己評価などにより明らか
にした。また、放課後を活用した個別学習により学習意欲を向上させる試みを実施した。
(4) 動物、成人における意欲・学習・疲労に関する基礎研究を行った
児童・生徒を対象としたコホート研究を実施する前に、霊長類などでの意欲・学習・疲
労の検討、大学生での学習意欲の検討を実施した。また、大学生と児童・生徒間の注意配
分課題遂行時の脳神経活動についても比較検討し、認知機能の発達的側面を明らかにした。
3.6.1.4. 研究開発の成果
(1) 遺伝要因・環境要因に関する成果
① 健常児童・生徒
1,000 名近い児童・生徒を対象に、3 年度にわたり 6 か月おきに計 5 回の追跡調査を実施
した。その結果、疲労度が強くなった児童・生徒では学習意欲低下が認められ、特に「自
発学習」
「学習の目的」
「学習の楽しさ」といった学習意欲の因子が疲労の影響を受けるこ
とが明らかとなった。
② CCFS 患児
CCFS 患児と健常児の差は、睡眠時間や食事など数々の生活習慣に顕著に現れた。これ
は、CCFS 患児が、学校へ行っていないことが大きな原因なのか、逆にこのような生活習
慣であるから学校へ行けないかについては、今後の検討が必要である。
③ 遺伝要因
Disrupted-In-Schizophrenia 1(DISC1)遺伝子が孤発性の成人の CFS、統合失調症、うつ
病患者と関連することを見出した。さらに、その関連する多型(Ser704Cys)が、細胞内情
報伝達因子である Akt や ERK の活性化に関与する機能的な多型であり、しかも脳構造に影
響を与えるものであることを発見した。この Cys 多型は、CCFS 患児にて障害される選択
的注意機能に関連する遺伝要因であり、しかも CCFS 患児のリスク多型であることを見出
した。これらの結果は DISC1 遺伝子が CCFS 患児の遺伝的リスクや脳機能障害に関わって
いることを示唆する。
(2) 脳機能・認知機能に関する成果
① 健常児童・生徒
200 名近い児童・生徒を対象に、3 年度にわたり 1 年おきに計 3 回の紙・パソコン版の認
知機能検査による追跡調査を実施した。その結果、注意配分機能(二つ以上のことこと同
時に行う能力)や注意転換機能(注意を柔軟に切替える能力)が学習意欲または疲労度と
164
密接に関係することを明らかにした。これらの注意機能は、小学生から中学生にかけて著
しく発達する認知機能であることも判明した。これらの結果は、学習意欲低下および疲労
が思春期の注意配分・転換機能の発達に影響を及ぼすことを示唆する。
注意配分課題遂行時に、疲労度が高いほど左下前頭回の過活動が観察されることを fMRI
研究により明らかにした。また、課題に対する意欲が高いほど内側前頭前野の活性低下が
認められた。よって、注意配分機能に疲労・意欲が影響を及ぼす神経基盤として、疲労と
左下前頭回、および意欲と内側前頭前野の関連性を明確にした。
② CCFS 患児
健常児の学習意欲低下と疲労と共通し、CCFS 患児の注意配分・転換機能も低下してい
ることがわかった。また、6 ヶ月間の抗うつ薬と認知行動療法の併用療法により、自覚的
疲労度と注意転換機能が改善し、これらの改善度は互いに相関関係にあることを明らかに
した。
注意配分課題を用いた fMRI 研究から、健常児の疲労と同様に、CCFS 患児の疲労が高い
ほど左下前頭回がより活性化することがわかった。また、患児においてのみ、右中前頭回
の特異的な賦活が認められた。よって、慢性疲労は非効率的な過剰な神経活動を要するこ
とが明らかとなった。また、健常児と共通し、内側前頭前野の活性低下が認められたが、
課題に対する意欲との相関関係はみられなかった。
(3) 教育環境における学習意欲・疲労と学習効率の研究に関する成果
実際の授業の発話分析の結果、教師やクラスの他児から受容されていると感じることに
より、意欲が高まる事例が見られた。また、達成したときの有能感や自信が意欲につながっ
ている事例もみられた。さらに、児童の意欲的発言が多いクラスほど、教師の励まし・助
言は少なく、児童の意欲的発言が少ないクラスほど教師の励まし・助言が多くなっている
ことがわかった。
小学校低学年の予防的支援の成果としては、内発的な学習意欲を喚起するためには、課
題終了時にポジティブ情動を持たせる指導が重要であることがわかった。そのためにはあ
る程度、課題の結果が良く、達成感を感じられることが必要であると考えられることがわ
かった。
子どもたちの学習意欲を高めるためには、小学校の低学年の段階では予防的学習支援を、
高学年の学習意欲低下傾向のある児童に対しては個別指導を行うといった階層的支援が効
果的と考えられることがわかった。
(4) 動物、成人における意欲・学習・疲労に関する基礎研究に関する成果
① fMRI を用いた学習意欲の神経基盤の検討
金銭的報酬による線条体の被殻の賦活度は学習意欲や課題成績とは関連がみられない一
方、達成感報酬による被殻の活性度は普段の学習意欲および課題成績との関連を認めたこ
165
とから、学習意欲を規定する重要な脳部位が、線条体(特に、被殻)であることを明らか
にした。学習意欲喚起の一因である他者からの良い評判(褒め)は、報酬としての価値を
持ち、脳内において金銭報酬と同じように線条体で処理されていることも明らかにした。
② 意欲と精神疲労の脳内葛藤の神経メカニズムの検討
注意と覚醒度に及ぼす意欲や精神疲労の調整系の神経メカニズムの解明を行うために、
断眠負荷をさせたサルを対象とした基礎的な実験を行った。意欲行動の低下に視床の
gamma-aminobutyric acid(GABA)神経系機能の変調が関係していることが明らかになった。
3.6.2. 研究開発プロジェクトの事後評価結果の概要
「事後評価報告書」に基づき、本研究開発プロジェクトに関するセンターの評価委員会
による事後評価結果を以下のように整理した。
(1) 総合評価
研究開発目標の達成度、学術的・技術的・社会的貢献、成果の社会における活用・展開
などを中心に総合的に判断して、かなりの成果が得られたと評価する。
本プロジェクトでは、
「学習意欲低下」という社会的問題に、アンケート調査、行動計測、
脳イメージングなどの手法を活用して取り組み、学習意欲低下児の評価・スクリーニング
法の確立、学習意欲に関連する報酬系の脳座位の特定、注意配分機能の重要性の発見、生
活習慣(特に睡眠・朝食)と家族関係、学習意欲低下の予測因子としての中一ギャップの
存在、さらにこれらを総合した学習意欲低下予防策の提言など、多くの成果を挙げたと評
価できる。これまで教育現場では感覚的にしか把握されていなかった、意欲と学習効率に
関する関係を、脳科学的手法を使って、定量的科学的に検討する道筋をつけた点も評価さ
れる。
学習意欲を定量的に評価する質問票の開発、学習意欲と関連する脳部位の同定などは、
学習意欲に関するコホート研究にとって重要な前進である。また、脳科学的方法と、社会
調査的手法を融合するしくみを構築して運用した点で、今後の脳科学と社会との関係を考
える上で、有用な成果が得られた。
ここで提言されている「学習意欲低下」の早期発見・予防のための 2 段階評価法を取り
入れて、教育現場や家庭を対象にした大規模・介入効果実証のコホート研究が開始される
ことを期待したい。
(2) 目標達成の状況
本プロジェクトの研究開発目標は、かなりの程度達成されたと評価する。
166
研究開発目標は、意欲と疲労の計測を用いて、学習意欲低下の実態とその要因を探り、
脳科学によるそのメカニズムの解明と対策法の開発に資し、学習意欲低下の早期発見・予
防方策を確立することであり、ほぼ明確で妥当と判断できる。当初はグループ間の連携が
不十分で、統一的な目標に欠けていたが、中間評価以降、目標が絞り込まれ、ほぼ遅滞な
く進捗したと考えられる。
学習意欲評価法の確立、その脳座位の特定、意欲低下に関連する予測因子の特定などの
成果が挙げられ、脳科学によるメカニズムの解明は残されたが、目標をある程度達成した
と判断できる。
(3) 学術的・技術的貢献
本プロジェクトの成果は、脳科学分野の科学や技術に相当程度貢献したと評価する。
意欲という重要であるが科学的には難しい問題に積極的に取り組み、多くの異なる方法、
異なる分野の研究を統合し、
その解明に向けて一歩前進し、見るべき成果を挙げたことは、
高く評価される。特に、学習意欲と関連する脳部位が線条体であること、他者からの良い
評判によって線条体の活動が高まること、注意配分機能は中学生でも未成熟で成人にかけ
て発達すること、等の成果が認められる。疲労と意欲に関する統合的な研究は国際的にも
あまり試みられておらず、一流の国際誌に論文が掲載されるなど、得られた成果は国際水
準に比肩しうるものと判断できる。
ただ、小児の慢性疲労症候群は、さまざまな精神疾患に発展する可能性の高い臨床症候
群であり、その遺伝的要因を調べようとしても他の精神疾患の遺伝的素因と区別がつきに
くく、
「疲労の脳科学」のモデル疾患として最適とはいえないと思われる。むしろ、思春期
以降のうつ病や統合失調症等の発症を予見する前駆的サインととらえ、標準的な精神保健
学的視点から、小児の抑うつ、疲労の問題に取り組む方向も考えてみたらよい。
(4) 社会的貢献・成果の社会での活用・展開
本プロジェクトの成果は、学習・教育に関する科学的根拠を提供するうえでかなりの貢
献をし、今後も貢献しうると評価する。
本研究は脳科学と教育に関わる研究の社会的な使命をよく理解し、問題の重要性を明ら
かにするとともに、異分野の協力の重要性を明らかにしている。特に、疲労の自覚が学童
期から思春期にかけて急増していることを指摘し、これは、今後、教育現場における重要
な検討課題になると思われる。
具体的な社会貢献は今後の課題であるが、科学的根拠の確立を引き続き追及すれば、教
167
育現場や家庭における学習意欲低下の早期発見・予防に貢献しうると考える。調査参加校
への成果のフィードバック、講演会や授業が実施されており、学習意欲低下防止をうたっ
たホームページが試作されている点も評価できる。
不登校児本人の力ではどうしようもなく、悪循環に陥っていく実態が少しでも改善され、
未来を生きる子ども達が「意欲的に生きる」ことができることにつながれば、と期待する
ものである。また、熊本県下で小規模に実施された「睡眠授業」で、生徒自身が体験的に
学んだことを取り入れ、主体的に生活環境を改善していく姿勢はまさに「生きる力」であ
り、今後も継続されることを期待したい。
(5) 研究開発体制と管理運営
研究開発体制及び管理運営は、概ね適正・妥当であったと評価する。
当初は 6 つのグループがそれぞれのテーマで研究開発を進め、発散する傾向が見られた
が、中間評価以降は研究代表者の元、各グループが情報交換・連携を密にし、それぞれの
研究開発の高密度化とともにプロジェクト全体の取りまとめが有効になされた。
(6) 費用対効果比
投入された研究開発費と予想される社会的貢献についての費用対効果比は、比較的高い
と評価する。
社会的ニーズを考えたとき、この成果が今後社会における応用展開に繋がれば、投入研
究開発費に十分見合う効果が得られる。
(7) 特記事項
多くの興味ある知見を得ているが、例えば学習意欲と家族の褒めや成績との関係、ある
いは疲労と睡眠時間の関係等は因果関係が逆の可能性も考えられないわけではない。また、
睡眠の質も考慮する必要があるかもしれない。家族と長く過ごすことは成績の良い子の特
性かも知れず、問題児には苦痛で逆効果となるかも知れない。以上のように、得られた結
果は多様に解釈出来る可能性がある。総じて多くのリスク要因が個別に解析されており、
今後更に研究を進める場合には、遺伝と環境要因の相互作用を考慮した大局的なモデルに
よる説明を期待したい。
学習意欲と疲労の関係は、単に疲労が原因で学習が結果という図式は考えにくく、相互
が循環的に影響しあっていると考えられる。両者に介在する要因も、例えば遺伝的因子、
一般的な健康状態、性格、家庭環境、学校環境、友人関係、睡眠時間など多数あると考え
168
られ、二つの変数の間の単純相関ではなく、多数要因を考慮し、要因間の相関を考慮した
因果モデル(例えば潜在構造モデルなど)を検討する必要がある。また、慢性疲労症候群
の子どもと健常の子どもでは、疲労と学習意欲の関係のメカニズムが異なるとも考えられ
るので、他の要因との相互作用を組み入れた分析をし、結論を注意深く出す必要がある。
学習意欲と関係する脳部位が同定できたことは科学的には重要であるが、教育的応用に際
して、十分な配慮が必要である。
169
3.6.3. 研究開発プロジェクト終了後の展開
3.6.3.1. 研究開発成果の発展状況や活用状況
(1) 研究開発内容の進展状況
① 子どもの学習意欲低下と疲労の問題の重要性
本邦における約 5,500 名の小中学校の教員を対象とした 2010 年の疫学調査(ベネッセ教
育総合研究所、2010)では、学習意欲の高い小学生が以前より減少したと感じる小学校教
員は 35%であり、2002 年の 29%、2007 年の 35%と比べ大きな変化はみられない。一方、
学習意欲の高い中学生が以前より減少したと感じる中学校教員は、2002 年は 36%、2007
年は 43%、2010 年は 47%と、学習意欲低下児は増加傾向にある。
本研究プロジェクトで明らかにされた「学習意欲の低下因子である疲労」については、
2007 年では本調査項目に含まれていなかったが、2010 年に新たに加えられたことから、子
どもの疲労の問題の社会的認識度が高まっていることが伺える。疲労している小中学生が、
以前より増えたと感じる小学校教員は 65%、中学校教員は 61%と非常に高く、小中学生の
疲労児が高率に存在することを示唆する。
2011 年 3 月 11 日に発生した東日本大震災による被災児童のメンタルヘルスの問題が懸
念されている。約 3,000 名の未就学児の母親を対象とした 2012 年の調査(ベネッセ次世代
育成研究所、2012)では、震災前に比べストレス関連行動が増加した東北地域の子どもは
61%と他地域の 20%と比較し各段に高い。また、抑うつ症状ともとれる気分の落ち込みも、
東北地域で 46%と他地域の 20%よりも高い。ストレスの蓄積や抑うつ状態は、疲労の関連
因子であり、ひいては学習意欲低下を引き起こすことが懸念される。
以上のように、平成 21 年以降もなお、日本の社会全体で子どもの学習意欲低下と疲労の
問題解決は喫緊の課題であり、かつ、未曾有の大震災の被災地である東北地方の子ども達
については、特に、縦断的調査の枠組みで、疲労と学習意欲を含めたメンタルヘルス対策
が求められている。
② 睡眠介入指導の実践
本研究プロジェクトの分担研究者の三池輝久氏(兵庫県立リハビリテーション中央病院
子どもの睡眠と発達医療センター・センター長。現特命参与)は、2007 年より福井県若狭
町、2011 年より青森県三戸町と兵庫県加古川市の小中学校にて、睡眠介入指導(①14 日間
の筆記型睡眠表作成による「子どもの生活リズム実態調査」の実施、②睡眠表の A~D の
4 段階評価(A:問題のない健全な睡眠覚醒リズム、D:睡眠欠乏が明確で学校社会生活困
難となる危険性が高い)
、③D 判定者の保護者・児童に対する面談、④保護者への「睡眠の
重要性」に関する講演会開催、⑤子どもたちへの「睡眠の重要性に関する授業」を実施し
ている。
170
【参考:若狭町における取り組みの経緯と成果】
2005~2007 年当時、福井県若狭町上中中学校には五つの小学校からの卒業生が進学して
おり、この中で中学進学後に生じる三宅小学校卒業生の不登校者数が、他の四つの小学校
卒業生よりも際立って多いことが指摘されていた。例えば、上中中学校の不登校者数は
{2005 年:15(7)名/314 名(4.8%)
、2006 年:15(6)名/327 名(4.6%)
、2007 年:15
}であったが、三宅小卒業生(カッコ内数字)がその半数近くを
(7)名/321 名(4.7%)
占め、同小卒業生が同中学で不登校になる率が 10%を超えていることが注目されていた。
三宅小学校では、当時の卒業生の在学中、在校生における欠席日数、遅刻、保健室訪問、
などの調査を行い背景を探ったが、特に他校と異なる問題点を発見できず、原因・背景の
推定には至らなかった。
しかし、
「慢性睡眠不足状態を予防することが不登校状態への進行を予防する」とする三
池氏の仮説に共感した元校長(前田勉氏)の働きかけで調査が開始された。当時、三宅小
学校と対極にあると考えられた野木小学校では上中中学校進学後に不登校になる率が 0%
であり、この両校を対象とした睡眠状況の比較により、三宅小学校生徒の睡眠時間が 6 年
生になった時点で大幅に短縮していることが分かった(図 8)
。中学進学後は両校出身者共
に同じように睡眠時間は短縮するが、睡眠欠乏の慢性化・蓄積と言う意味で、小学校時点
の状況に問題があるのではないかと考えられた。
そうした状況のもとで、三宅小学校における本プロジェクトが始まった。さらに、2007
~2008 年の調査状況から、このプロジェクトは生活習慣として生活リズムが固定する前に
(小学校低学年から)開始する必要があると判断されたため、2009 年からは 1~6 年生全員
に行われるようになった。その後、次第に本プロジェクトに対する保護者や学校側の理解
と協力が大きくなってきており、地域ぐるみで受け入れられる状況になっている。プロジェ
クト開始から 7 年目を迎える 2013 年には、三宅小学校出身者の不登校は 0 となり、波及効
果として全体としてもほぼ 0 になっている。
福井県内の他の小学校からも実施依頼が寄せられているが、現状では前田勉元校長が自
己資金を投入し三池氏もボランティア的に活動を行っている状況であり、取り組みを拡大
することが難しい状況にある。
171
図 8
三宅小学校(2007 年実施)
野木小学校(2007 年実施)
表 4 三宅小学校出身者の上川中学校における不登校者数推移
本プロジェクトはその有効性が確認されつつあるだけでなく全国的に展開すべき運動で
あることが確かめられつつあり、また、小学校以前からの生活習慣の改善が必要な症例も
見られることが明らかになっているため、
今後は、
全国的な乳幼児期からの介入の検証や、
抗疲労(抗不登校)
・学習意欲向上、発達障害の予防の意味からも大規模研究プロジェクト
の実施が期待されている。
③ 幼児・小学校低学年児童をフィールドとする研究の展開
本研究プロジェクトは、小学校高学年から中学生の学習意欲・疲労と認知機能の関係を
明らかにし、注意配分・注意転換機能が小学生から中学生にかけて発達することを報告し
た。一方、近年、注意転換に加えて、抑制、ワーキングメモリを含めた実行機能は就学前
後に著しく発達すること、就学前の実行機能が小学校低学年の算数や国語の基礎学力に関
係することが注目されている。また、小学校入学後、授業中に子どもたちが教師の話を聞
かない、立ち歩くなどの小 1 プロブレムが問題となっている。本プロジェクトの分担研究
者の松村京子氏は、発展的研究として、対象を幼児や小学校低学年児童に下げて研究を進
172
めている。具体的には、実行機能を向上させるためのSocial Thinking & Academic Readiness
Training(START)プログラムの開発を行うとともに、子ども達の注意集中、注意転換、ワー
キングメモリ等への効果を測定している。その結果として、就学前に、行動の抑制、注意
の切り替え、ワーキングメモリを向上させることによって、入学後の学習がスムーズに行
われ、学習意欲の低下も防ぐことが示唆されている 15。
④ 教員の指導力向上に関する研究の展開
本研究プロジェクトで明らかにした学習意欲・疲労の実態や小学生から中学生への変化
について、教員、教員志望学生、教育委員会スタッフなどや保護者に広く理解を促すこと
が重要である。子ども達の疲労や学習意欲の低下に関する科学的な知見について、教員や
教員志望学生が学ぶことにより、個々の教育現場での取り組みが増し、子どもの意欲低下
や不登校問題への寄与が期待できる。また、教師の指導力に関する研究の推進は、従来か
ら経験的に行われてきた指導技術の伝達方法を大きく変え、教員養成教育へも大きく貢献
できる。実際に、米国ピッツバーグ大学では、松村氏と細谷氏の学術論文(Hosotani, R. &
Imai-Matsumura, K., Teaching & Teacher Education, 27: 1039-1048, 2011; 細谷&松村、発達心理
学研究、23(3): 331-342、2012)を基にした大学カリキュラム開発研究が始まっている。日
本でも、定員 300 名という日本で最も大規模な教員養成系の大学院を持ち、現職教員の再
教育をミッションとする兵庫教育大学大学院での必修授業の中に、本研究成果を取り入れ
ている。また、松村氏は各地の教育委員会主催の講演会や研修会で本研究成果について講
演活動を行っている。さらに、本研究プロジェクトを基に、子どもの学習意欲を高めるた
めの教師の指導力向上に関する科学的、実証的研究も展開している。具体的に、アイ・ト
ラッカーを用いた、教師が授業中の子どもに気づく能力を把握する研究(Yamamoto, T. &
Imai-Matsumura, K., Innovative Teaching, 2(1): Article 6, 2013)や、子どもの注視を促す教材
に関する研究(大隅&松村、発達心理学研究、24(3)、in press)などを実施しており、今後
の展開が期待される。
⑤ 注意欠陥多動性障害(ADHD)治療薬の効果検証
注意欠陥多動性障害(Attention Deficit Hyperactivity Disorder, ADHD)は、年齢あるいは
発達に不釣り合いな不注意、衝動性、多動性や学習意欲低下等を特徴とする発達障害の一
つで、社会的な活動や学校生活への適応が困難をきたす。ADHD の治療薬として一般的に
用いられているメチルフェニデート徐放剤は、ADHD 患児の脳内で不足する細胞外ドーパ
ミンの濃度を増加させる薬理作用を有する。本研究プロジェクトで発見した学習意欲中枢
である線条体(Mizuno, K. et al., Neuroimage, 42(1): 369-378, 2008)はドーパミン神経が豊富
に存在しているため、ADHD 患児で線条体の機能が低下している可能性があった。研究代
表者は、友田明美氏(本研究の分担研究者)らと共同で、fMRI を用いて ADHD 患児の線
15
参考 URL(加西市教育委員会ホームページ)
:http://www.city.kasai.hyogo.jp/01kura/07kyoi/19star01.htm
173
条体の機能に対する、メチルフェニデート徐放剤の 3 ヶ月間の投薬治療効果を検証した。
投薬治療により、ADHD の重症度が改善し、学習意欲の程度も上昇した。また、投薬前の
ADHD 患児において、金銭的知覚時の線条体の活性度は健常児に比べて低く、治療後は線
条 体の活 性度が 健常児と 同程度 まで改 善するこ とが認 められ た( Mizuno, K. et al.,
Neuroimage: Clinical, 2: 366-376, 2013)
。このように、本研究プロジェクト成果を基に、小児
慢性疲労症候群だけでなく学習意欲低下を呈する他の小児疾患への応用研究が進められて
いる。
⑥ 抗過労食の研究の展開
疲労と学習意欲に関連する生活習慣として、
「睡眠」だけでなく「食事」も挙げられ、抗
疲労食の概念形成およびその科学的効果を立証していくことが計画されている。子育てや
仕事で多忙や女性における食習慣の改善により抗疲労効果が認められた成果も活用し、親
子の食習慣改善による親子の抗疲労効果を検討していく予定である。また、小中学生の疲
労児は 10~20%であるが、成人の慢性疲労者は約 40%にも達する。母親の慢性疲労や生活
ストレスが子ども心身に与える影響について、食習慣を含む環境要因と遺伝要因を検証し
ていく予定である。
⑦ 事後評価における指摘事項への対応
<2 段階評価法による追跡調査の実施>
学習意欲低下の早期発見・予防のための 2 段階評価法(第 1 段階:質問票調査にて学習
意欲低下ハイリスクの児童・生徒を抽出、第 2 段階:認知課題や脳機能イメージング課題
による評価)を活用した大規模・介入効果実証のためのコホート研究実施のためには、一
施設はもとより各都道府県の規模における研究では不十分であり、国家規模の長期的なコ
ホート研究体制を整える必要がある。
そのようなコホート研究の実現には至っていないが、
小規模ながら、介入効果実証のための追跡研究を、文部科学省科学研究費補助金・基盤研
究(B)
「思春期の易疲労性と疲労回復性の定量評価法を活用した抗疲労研究(平成 25~27
年度)
」の枠組みで実施予定である。また、現行の三池氏による睡眠介入指導による抗疲労・
疲労軽減効果に関する調査は継続されている。松村氏による未就学児や小学校低学年児童
を対象とした、実行機能向上のための START を導入した学習意欲低下の予防に資する研
究および子どもの学習意欲を高めるための教師の指導力向上に関する科学的、実証的研究
も継続されている。これらの研究成果も大規模・介入効果実証のためのコホート研究実施
のに向けて活用する予定である。
<遺伝と環境要因に関する介入研究の実施>
遺伝と環境要因の相互作用を考慮した大局的なモデルを立てる必要性はあるが、そのた
めには、大規模コホート研究の実施を要する。本研究プロジェクトの最終報告書にも記載
されているが、特に、遺伝子検査について、現在もなお、このような先端科学が一般で広
く受け入れられる土壌は整っておらず、被験者協力は得難い状況にある。そうした中、大
174
阪市立大学の横山美江氏らは、主に子どもの発達と体格指数(Body Mass Index, BMI)の観
点から双生児研究を進めており(Yokoyama, Y. et al., Twin Res. Hum. Genet., 1-8, 2013 (in
press); Yokoyama Y., Twin Res. Hum. Genet., 16(1): 231-236, 2013.)
、今後、メンタルヘルス研
究を推進していく予定である。環境要因に関しては、子どもの睡眠を中心とする生活習慣
の乱れが、疲労を蓄積させ、やがて学習意欲低下に導くと仮説を立てている。各要因につ
いて個別の介入研究を行い、この仮説を立証していく予定である。
<学習意欲と疲労の各要因間の相関を考慮した因果モデルの検証>
学習意欲と疲労の各要因間の相関を考慮した因果モデルの設定は、両者の関係性を明確
化するための手法であり今後も検討していく予定である。一方で、具体的な介入試験の視
点でみれば、睡眠時間などの疲労と学習意欲の共通関連因子は、実際の介入により、疲労
と学習意欲の双方の改善が期待される。また、未就学児や小学校低学年児童の認知機能に
対する介入、特に、実行機能を向上させるための START を活用した介入による疲労と学
習意欲低下の予防効果が期待できる。子どもの疲労克服・学習意欲向上社会の形成を目指
した介入研究を今後進めていく予定である。
小児慢性疲労症候群患児においても睡眠障害の治療は積極的になされているため、小児
慢性疲労症候群患児と健常児の疲労と学習意欲に対する睡眠介入効果の比較を行い、両者
の疲労と学習意欲の関係のメカニズムの相似性と相違性を追究していく予定である。
⑧ 研究期間中のコホート調査と、終了後に展開されているコホート調査の関係
上記の調査研究においては、全て本研究プロジェクト以外の被験者を対象としており、
研究プロジェクト終了後に、コホートを追跡調査した案件はない。
(2) 研究開発成果の社会での適用・定着(社会実装)状況及び社会的課題の解決への貢献状況
① 睡眠改善指導による慢性疲労と不登校予防への貢献
本研究プロジェクトで明らかにした学習意欲・疲労と密接に関連する睡眠時間に焦点を
当てた、子どもに対する睡眠授業(眠育)や保護者に対する講演等の睡眠介入指導が展開
されている。全ての児童の筆記型睡眠表に対し、医師がコメントを記載することで調査参
加者の意欲を喚起するなどの工夫も行われている。本取り組みを主導しているのは、三池
輝久氏(兵庫県立リハビリテーション中央病院子どもの睡眠と発達医療センター長。現特
命参与)であり、取り組みの期間は 2007 年~現在である。
本取り組みは、福井県若狭町、青森県三戸町および兵庫県加古川市の小中学生を対象と
するものであり、小中学生の睡眠覚醒(生活)リズムの是正、疲労回復や不登校対策に貢
献している。本取り組みにおいては、複数年の継続した睡眠介入指導が重要であり、今後
も大規模研究への展開を検討している。睡眠授業は、熊本県のみならず福井県、青森県お
よび兵庫県と広がりをみせており、今後も追跡研究の枠組みで継続していく予定である。
また、睡眠授業等を社会実装するため、新しく 2013 年 7 月に開所した「大阪市立大学健康
175
科学イノベーションセンター」
の活動として、
他の項目も含めた啓発事業を計画している。
② 学習意欲低下の予防:就学前児及び小学校低学年児童の実行機能向上のための START
プログラムの提供
本プロジェクトの発展的研究として、対象を幼児や小学校低学年児童に下げて研究を進
めており、実行機能を向上させるための START プログラムの開発を行い、子ども達の注
意集中、注意転換、ワーキングメモリ等への効果測定を行っている。指導者や教育委員会
や学校の理解と協力を得るために、START プログラムのチュートリアル DVD(医学映像
教育センター)
を作成したり、
介入の効果を客観的に把握するなどの工夫が行われている。
本取り組みを主導しているのは、松村京子氏(兵庫教育大学大学院連合学校教育学研究科・
教授・研究主幹)であり、取り組みの期間は 2009 年~現在である。
本取り組みは、兵庫県加西市、伊丹市、川西市、大阪市、福岡県新宮町の就学前児や小
学校低学年児童を対象とするものであり、小学校入学後、授業中に子どもたちが教師の話
を聞かない、立ち歩くなどの小 1 プロブレムが問題となっている。就学前に、行動の抑制、
注意の切り替え、ワーキングメモリを向上させることによって、入学後の学習がスムーズ
に行われ、学習意欲の低下も防ぐ効果が期待される。本取り組みでは、指導者の理解と意
欲、教育委員会や学校の理解と協力が重要なポイントであり、今後、より多くの地域での
実施を検討している。
③ 教師の指導力向上のための教育・訓練
兵庫教育大学大学院での必修授業の中に、本研究成果を取り入れたり、各地の教育委員
会主催の講演会や研修会で本研究成果について講演活動を行うなどの取り組みを進めてい
る。
本取り組みを主導しているのは、松村京子氏(兵庫教育大学大学院連合学校教育学研究
科・教授・研究主幹)であり、教師や保護者の興味を引き、実践へと促すための意欲を喚
起すること、また、教師の指導力に関する研究については、研究成果が蓄積されるような
科学的・実証的な指導力の評価方法を検討する、などの工夫が行われている。教師の指導
力向上に関する研究や講演等については 2009 年~現在、大学院での授業は 2011 年~現在
の期間において実施されている。
こうした取り組みを通じて、子ども達の疲労や学習意欲の低下に関する科学的な知見に
ついて、教員や教員志望学生が学ぶことにより、個々の教育現場での取り組みが増し、子
どもの意欲低下や不登校問題への寄与が期待できる。また、教師の指導力に関する研究の
推進は、従来から経験的に行われてきた指導技術の伝達方法を大きく変え、教員養成教育
へも大きく貢献できることが期待される。教育現場や保護者への伝達の機会の確保と拡充
が重要なポイントであり、今後は、教育現場及び保護者の理解の浸透や師の指導力の科学
的解明と教育現場への展開をさらに図る予定である。
176
④ fMRI の技術活用による ADHD における線条体の機能評価
本研究プロジェクトで開発した fMRI の技術が、ADHD の線条体の機能評価および治療
効果判定に有用であることを立証する取り組みを展開している。もともとの成人用の fMRI
技術を、小児用へと改訂・修正する作業を工夫している。本取り組みを主導しているのは、
友田明美氏(福井大学・教授)
、水野 敬氏(理化学研究所・基礎科学特別研究員)、および
代表研究者である。
本取り組みの対象は、10~16 歳の ADHD 患児であり、ADHD の治療薬であるメチルフェ
ニデート徐放剤の治療効果の評価に有用(Mizuno, K. et al., Neuroimage: Clinical, 2: 366-376,
2013)である。fMRI で使用する課題のデザイン等、精緻な条件設定が重要であり、今後は、
ADHD 以外の学習意欲低下や線条体の機能低下が疑われる小児疾患への応用を進める予
定である。
⑤ 妊産婦の産褥前後のストレス軽減への貢献
本研究プロジェクトで重要性が明らかになった睡眠・行動リズムを主たるエンドポイン
トとした介入研究を実施している。本取り組みにおいては、実際の実験実施場所にて、簡
易にデータ測定ができることが重要である。本取り組みを主導しているのは、辻理恵氏(大
阪市立大学・大学院生)
、横山美江氏(大阪市立大学・教授)
、福田早苗氏(理化学研究所・
上級研究員)であり、取り組みの期間は 2012 年~現在である。
本取り組みの対象は、妊産婦であり、産褥前後のストレス軽減に貢献するものである。
3.6.3.2. 研究開発成果がもたらした科学技術的、社会的及び経済的な効果・効用、波及効果
(1) 研究者・関与者の活動は、科学技術的・社会的な面での人材育成・キャリアパスの
開拓や人的ネットワークの展開に繋がったか
① 若手人材の育成・キャリアパスの開拓
本研究実績をきっかけとして、本研究プロジェクトメンバーが下記のステップアップを
図っている。

福田早苗(当時・JST 研究員)が本研究実績をきっかけとし、大阪市立大学・特任講
師、理化学研究所・上級研究員の職務を得た。

水野敬(当時・JST 研究員)は本研究実績により理化学研究所・基礎科科学特別研究
員および大阪市立大学・特任講師の職務を得た。

高野美雪(当時・臨床心理士)は本研究実績を業績成果とし、九州ルーテル学院大学
の准教授の職務を得た。

山野恵美(当時・大学院生)は本研究成果により学位取得後、特任助教の職務を得た。

川谷淳子(当時・大学院生)は本研究成果で学位取得後、病院助手の職務を得た。
177

石井 聡(当時・大学院生)は本研究プロジェクトを経て学位取得後、病院講師の職務
を得た。
② 人的ネットワークの拡大
本研究プロジェクトの成果を基に、以下の共同研究が進展している。
(ア) 文部科学省科学研究費補助金・基盤研究(B)
「思春期の易疲労性と疲労回復性の定量
評価法を活用した抗疲労研究」
、2013~2015 年度、研究代表者:水野敬
(イ) 文部科学省科学研究費補助金・基盤研究(B)
「脳画像解析と遺伝子多型解析の融合に
よる注意欠陥多動性障害(ADHD)の病態解明」、2012~2014 年度、研究代表者:友
田明美
(ウ) 文部科学省科学研究費補助金・基盤研究(C)
「子どもの疲労の神経基盤解明による治
療法の開発-慢性疲労と PC・携帯電話依存の関連」、2012~2014 年度、研究代表者:
川谷淳子
(エ) 人間総合科学大学の門田美惠子、青木清らは子どもの意欲研究を進展させており、門
田美惠子「小学校第 6 学年児童の登校意欲に影響を与える生活実態」
(日本心身健康
科学会第 8 巻 2 号 2012 年)等の成果発表を行っている。
③ 新たな学問分野や技術開発への展開
本研究プロジェクトの成果を活用することで、以下の学際領域研究が進展している。
(ア) 文部科学省科学研究費補助金・新学術領域研究公募研究「学習意欲と疲労耐性による
強化学習の神経基盤研究」
、2013~2014 年度、研究代表者:水野 敬
(イ) 文部科学省科学研究費補助金・新学術領域研究公募研究「内発的報酬による社会・個
体学習強化の神経基盤に関する研究」、2011~2012 年度、研究代表者:水野 敬
(2) 研究者・関与者の活動は、社会の幅広い関与者(ステークホルダー※)にどのような
社会面(教育面)
・経済面での影響・効果をもたらし、研究開発成果の社会での活用・
拡大・定着に繋がっているか。
(※当初想定していなかったステークホルダーも含む)
① 関連研究分野の発展、大学・企業の研究開発力の向上等
本研究プロジェクト終了後も、睡眠授業だけでなく、本研究プロジェクト全体の成果に
ついて、小中学生・教員・一般人を対象とした講演、小中学校教員を目指す大学生への特
別講義、教育研究を行う大学院生を対象としたゼミトーク等を多数実施し、本研究分野の
認知度の向上が図られている。また、最近では、企業を対象とした子どもの学習意欲・疲
労にも焦点を当てた健康科学セミナーを実施し、これまで殆ど手つかずであった産業界と
の連携研究も進める予定である。
178
② コミュニケーションロボットの開発
本研究では、小中学校性の疲労・意欲低下について様々な成果が得られたが、これらの
成果などを契機として、高齢者の疲労・意欲低下の低減や克服についても注目されること
になった。高齢者の疲労・意欲低下の低減や克服を目指したコミュニケーションロボット
(名称:
「うなずきかぼちゃん」
)がピップ株式会社から開発されるとともに、この製品の
抗疲労・意欲向上効果を、研究代表者のグループは科学的に実証し、販売されるに至って
いる。研究代表者のグループは、この製品に対して、高齢者を対象とした抗疲労・意欲試
験を実施し、その抗疲労・意欲向上効果を科学的に実証し、その成果を論文などの手段で
発信した。
論文:1.
Tanaka, M., Ishii, A., Yamano, E., Ogikubo, H., Okazaki, M., Kamimura, K., Konishi, Y., Emoto,
S., Watanabe, Y. Cognitive dysfunction in elderly females with depressive symptoms. Med Sci
Monit, 18(12): 706-711, 2012.
論文 2.
Tanaka, M., Ishii, A., Yamano, E., Ogikubo, H., Okazaki, M., Kamimura, K., Konishi, Y., Emoto,
S., Watanabe, Y. Effect of a human-type communication robot on cognitive function in elderly
women living alone. Med Sci Monit, 18(9): 550-559, 2012.
【参考】コミュニケーションロボット(うなずきかぼちゃん)の概要
「うなずきかぼちゃん」は、素朴な風貌と明瞭な発話、うなずき動作で高齢者に安ら
ぎを与えることを狙いとした、高齢者向けコミュニケーション型セラピーロボットで、
ピップ株式会社と株式会社ウィズとの共同開発により誕生した。2011 年 11 月 21 日に発
売開始されている。
研究代表者のグループとの共同研究の結果、高齢者の認知機能を高め、抗疲労・癒
し効果があることが確認された。
「うなずきかぼちゃん」の導入シーンとしては、個人であれば、高齢者(独居・夫婦
世帯)での利用が多く、本人が購入するケースと、子どもから親へのプレゼントという
形で購入されるケースがある。施設であれば、デイサービスセンターでの利用が中心で
ある(高齢者の利用が大半である)
。
発売開始より現時点までに 7,000 台売れている(1 台 2 万円)。販売状況について、地
域的な特性・違いはほとんどない。高齢者向けサービスとして注目を集めており、今春
には市場調査を手掛ける㈱富士経済から商品動向・市場規模の取材を受けている。
今後、見守り機能(センサー機能)を付加して、
「見守りかぼちゃん」に発展させてい
くことが進められている。例えば、かぼちゃんへのアクセス(タッチ等)が減少したら、
家族や関係者に知らせる等の機能である。また、動力源は現在、電池式であり、取替え
は高齢者にとっては面倒なので、ワイアレス給電の形も検討されている。
研究代表者のグループは、うなずきかぼちゃんの効果検証を中心に指導・助言してお
り、今後も、幅広く様々な面でピップ社と協力・連携を継続する予定である。
179
③ 本研究の発展的研究による効果
前述した通り、本研究終了後も多数の発展的研究(社会実装・臨床応用を含む)が実施
されており、関係各方面で効果を上げている。
(ア) 「睡眠改善指導による慢性疲労と不登校予防研究」は、福井県若狭町、青森県三戸町
および兵庫県加古川市の小中学生を対象とするものであり、小中学生の睡眠覚醒(生
活)リズムの是正、疲労回復や不登校対策に貢献している。
(イ) 「学習意欲低下の予防:就学前児及び小学校低学年児童の実行機能向上のための
START プログラムの開発」は、兵庫県加西市、伊丹市、川西市、大阪市、福岡県新宮
町の就学前児や小学校低学年児童を対象とするものであり、小学校入学後、授業中に
子どもたちが教師の話を聞かない、立ち歩くなどの小 1 プロブレムが問題となってい
る。就学前に、行動の抑制、注意の切り替え、ワーキングメモリを向上させることに
よって、入学後の学習がスムーズに行われ、学習意欲の低下も防ぐことができる
(ウ) 「教師の指導力向上のための教育と研究」は、現職教員及び教員志望学生や保護者を
対象とするものである。子ども達の疲労や学習意欲の低下に関する科学的な知見につ
いて、教員や教員志望学生が学ぶことにより、個々の教育現場での取り組みが増し、
子どもの意欲低下や不登校問題への寄与が期待できる。また、教師の指導力に関する
研究の推進は、従来から経験的に行われてきた指導技術の伝達方法を大きく変え、教
員養成教育へも大きく貢献できる。
(エ) 「fMRI の技術活用による注意欠陥多動性障害における線条体の機能評価研究」は、10
~16 歳の注意欠陥多動性障害患児を対象としており、注意欠陥多動性障害の治療薬で
あるメチルフェニデート徐放剤の治療効果の評価に有用である。
(オ) 「妊産婦におけるアロマや音楽を用いた産褥前後の緩和療法の影響研究」は、妊産婦
を対象とするものであり、産褥前後のストレス軽減に貢献するものである。
180
3.6.4 付属資料
3.6.4.1. 主要研究者動静表
氏名
研究期間中の所属・役職
理化学研究所分子イメージング科
渡辺 恭良
学研究センター センター長
大阪市立大学 教授
大阪市立大学 講師
理化学研究所分子イメージング科
片岡 洋祐
学研究センター分子プローブ動態
応用研究チーム 客員研究員
大阪市立大学 講師
理化学研究所分子イメージング科
田中 雅彰
学研究センター分子プローブ動態
応用研究チーム 客員研究員
大阪市立大学 特任講師
理化学研究所分子イメージング科
福田 早苗
学研究センター分子プローブ動態
応用研究チーム 客員研究員
理化学研究所分子イメージング科
学研究センター分子プローブ機能
水間 広
評価研究チーム 研究員
理化学研究所分子イメージング科
野崎 聡
学研究センター分子プローブ動態
応用研究チーム 研究員
現在の所属・役職
理化学研究所ライフサイエンス技術基盤研
究センター センター長
大阪市立大学 教授
理化学研究所ライフサイエンス技術基盤研
究センター細胞機能評価研究チーム チー
ムリーダー
大阪市立大学大学院 医学研究科 講師
理化学研究所ライフサイエンス技術基盤研
究センター 上級研究員
理化学研究所ライフサイエンス技術基盤研
究センター 研究員
理化学研究所ライフサイエンス技術基盤研
究センター 研究員
水野 敬
理化学研究所ライフサイエンス技術基盤研
理化学研究所分子イメージング科
究センター 基礎科学特別研究員
学研究センター分子プローブ動態
大阪市立大学大学院医学研究科 特任講
応用研究チーム 研究員
師
笹部 哲也
大阪市立大学客員研究員
大阪市立大学医学部研究科 客員研究員
定藤 規弘
生理学研究所 教授
生理学研究所 教授
田邊 宏樹
生理学研究所 助手
齋藤 大輔
尾上 浩隆
田原 強
友田 明美
三池 輝久
生理学研究所 特別訪問研究員
名古屋大学大学院環境学研究科
准教授
福井大学子どものこころの発達研究セン
生理学研究所 研究員
ター 特命准教授
理化学研究所分子イメージング科 理化学研究所ライフサイエンス技術基盤研
学研究センター分子プローブ機能 究センター生体機能評価研究チーム
評価研究チーム チームリーダー チームリーダー
理化学研究所分子イメージング科
理化学研究所ライフサイエンス技術基盤研
学研究センター分子プローブ機能
究センター 研究員
評価研究チーム チームリーダー
福井大学子どものこころの発達研究セン
熊本大学大学院医学薬学研究部 ター 教授
小児発達学分野 准教授
自然科学研究機構生理学研究所 客員教
授
熊本大学大学院医学薬学研究部
小児発達学分野 名誉教授
兵庫県立リハビリテーション中央病院 子ど
兵庫県立総合リハビリセンター 小 もの睡眠と発達医療センター 特命参与
児睡眠障害医療センター長
181
上土井 貴子
高野 美雪
松村 京子
橋本 亮太
功刀 浩
熊本大学大学院医学薬学研究部 熊本大学大学院医学薬学研究部小児発達
小児発達学分野 助教
学 助教
熊本大学大学院医学薬学研究部
九州ルーテル学院大学 准教授
小児発達学分野 臨床心理士
兵庫教育大学大学院 教授
兵庫教育大学大学院 教授
大阪大学 連合小児発達学研究科 附属
子どものこころの分子統御機構研究セン
大阪大学大学院医学系研究科
ター,准教授,専任
特任准教授
医学系研究科,情報統合医学講座精神医
学教室,兼任
国立精神・神経センター神経研究
国立精神・神経センター神経研究所 部長
所 部長
3.6.4.2. 研究開発プロジェクト終了後(平成 21 年 12 月以降)の主要研究成果
(1) 論文
国際誌
論文名
Neural effects of prolonged
1 mental fatigue: a
magnetoencephalography study
Neural correlates of central
2
inhibition during physical fatigue
3
Effects of chicken essence on
recovery from mental fatigue
Neurocognitive impairment in
4 childhood chronic fatigue
syndrome
著者
Ishii, A., Tanaka, M.,
Shigihara, Y., Kanai, E.,
Funakura, M., Watanabe, Y
Tanaka, M., Ishii, A.,
Watanabe, Y.
Yamano, E., Tanaka, M.,
Ishii, A., Tsuruoka, N.,
Abe, K., Watanabe, Y
Mizuno, K., Watanabe, Y
Mizuno, K., Tanaka, M.,
Divided attention of adolescents
Fukuda, S.,
5 related to lifestyles and academic
Imai-Matsumura, ,
and family conditions.
Watanabe, Y.
Osmotic release oral
system-methylphenidate
improves neural activity during Mizuno, K., Yoneda, T.,
Komi, M., Hirai, T.,
6 low reward processing in
children and adolescents with
Watanabe, Y., Tomoda, A
attention-deficit/hyperactivity
disorder
Fatigue sensation induced by the
sounds associated with mental
Ishii, A., Tanaka, M.,
Iwamae M., Kim, C.,
7 fatigue and its related neural
activities: revealed by
Yamano, E., Watanabe, Y
magnetoencephalography
Tanaka, M., Yamada, H.,
Fatigue-recovering effect of a
8
Nakamura, T., Ishii, A.,
house designed with open space.
Watanabe, Y.
182
掲載媒体
年月
Health Education
Journal, 71(2): 165
2013
Health Education
Journal, 71(2): 165
2013
Health Education
Journal, 71(2): 165
2013
Health Education
Journal, 71(2): 165
2013
Health Education
Journal, 71(2): 165
2013
Health Education
Journal, 71(2): 165
2013
Health Education
Journal, 71(2): 165
2013
Health Education
Journal, 71(2): 165
2013
Two different types of mental
9 fatigue produce different styles
of task performance
Two types of mental fatigue
10 affect spontaneous oscillatory
brain activities in different ways
Teachers’ gaze and awareness of
11 pupils’ behavior: using an eye
tracker
The neural substrates associated
with attentional resources and
12 difficulty of concurrent
processing of the two verbal
tasks
Supraspinal regulation of
13
physical fatigue
Shigihara, Y., Tanaka, M.,
Ishii, A., Tajima, S., Kanai,
E., Funakura, M.,
Watanabe, Y
Shigihara, Y., Tanaka, M.,
Ishii, A., Kanai, E.,
Funakura, M., Watanabe, Y
Health Education
Journal, 71(2): 165
2013
Health Education
Journal, 71(2): 165
2013
Yamamoto, T.,
Imai-Matsumura, K.
Health Education
Journal, 71(2): 165
2013
Mizuno, K., Tanaka, M.,
Tanabe, H. C., Sadato, N.,
Watanabe, Y
Health Education
Journal, 71(2): 165
2012
Tanaka, M., Watanabe, Y.
Health Education
Journal, 71(2): 165
2012
Health Education
Journal, 71(2): 165
2011
Health Education
Journal, 71(2): 165
2012
Health Education
Journal, 71(2): 165
2012
Health Education
Journal, 71(2): 165
2012
Health Education
Journal, 71(2): 165
2012
Health Education
Journal, 71(2): 165
2012
Health Education
Journal, 71(2): 165
2012
Health Education
Journal, 71(2): 165
2012
Tanaka, M., Ishii, A.,
Cognitive dysfunction in elderly Yamano, E., Ogikubo, H.,
Okazaki, M., Kamimura,
14 females with depressive
symptoms
K., Konishi, Y., Emoto, S.,
Watanabe, Y.
anaka, M., Ishii, A.,
Impaired selective attention
Shigihara, Y., Tajima, S.,
15
caused by mental fatigue
Funakura, M., Kanai, E.,
Watanabe, Y
Effect of mental fatigue on the
Tanaka, M., Shigihara, Y.,
16 central nervous system: an
Ishii, A., Funakura, M.,
electroencephalography study
Kanai, E., Watanabe, Y
Tanaka, M., Ishii, A.,
Effect of a human-type
Yamano, E., Ogikubo, H.,
communication robot on
Okazaki, M., Kamimura,
17
cognitive function in elderly
K., Konishi, Y., Emoto, S.,
females living alone
Watanabe, Y
Changes in reaction time,
Kuratsune, D., Tajima, S.,
coefficient of variance of
Koizumi, J., Yamaguti, K.,
reaction time, and autonomic
Sasabe, T., Mizuno, K.,
Tanaka, M., Okawa, N.,
18 nerve function in the mental
fatigue state caused by long-term Mito, H., Tsubone, H.,
computerized Kraepelin test
Watanabe, Y., Inoue, M.,
workload in healthy volunteers
Kuratsune, H
Effects of daily levels of fatigue Shigihara, Y., Tanaka, M.,
and acutely induced fatigue on
Mizuno, K., Ishii, A.,
19
the visual evoked magnetic
Yamano, E., Funakura, M.,
response
Kanai, E., Watanabe, Y.
Neural substrates activated by
viewing others expressing
Ishii, A., Tanaka, M.,
20
fatigue: revealed by
Yamano, E., Watanabe, Y
magnetoencephalography
Fatigue-associated alterations of
Tanaka, M., Shigihara, Y.,
cognitive function and
Funakura, M., Kanai, E.,
21
electroencephalographic power
Watanabe, Y.
densities
183
Academic and family conditions
associated with intrinsic
22
Tanaka, M., Watanabe, Y
academic motivation in Japanese
medical students: a pilot study
Association between lifestyle
and school attendance in
23
Tanaka, M., Watanabe, Y
Japanese medical students: a
pilot study
Tanaka, M., Yamada, H.,
Effects of pellet stove on
24
Nakamura, T., Watanabe,
recovery from mental fatigue
Y
Cognitive dysfunction and
Kawatani, J., Mizuno, K.,
mental fatigue in childhood
Takano, M., Joudoi, T.,
25
chronic fatigue syndrome - A
Shiraishi, S., Fukuda, S.,
6-month follow-up study
Watanabe, Y., Tomoda, A
Low visual
Mizuno, K., Tanaka, M.,
information-processing speed
Fukuda, S., Yamano, E.,
Shigihara, Y.,
26 and attention are predictors of
fatigue in elementary and junior Imai-Matsumura, K.,
high school students
Watanabe, Y
Relationship between cognitive Mizuno, K., Tanaka, M.,
functions and prevalence of
Fukuda, S.,
27
fatigue in elementary and junior Imai-Matsumura, K.,
high school students
Watanabe, Y
Changes in cognitive functions
Mizuno, K., Tanaka, M.,
of students in the transitional
Fukuda, S., Sasabe, T.,
28
period from elementary school to Imai-Matsumura, K.,
junior high school
Watanabe, Y
Relationship between cognitive Mizuno, K., Tanaka, M.,
function and prevalence of
Fukuda, S.,
29
decrease in intrinsic academic
Imai-Matsumura, K.,
motivation in adolescents
Watanabe, Y
Tanaka, M., Mizuno, K.,
Autonomic nervous alterations
Yamaguti, K., Kuratsune,
H., Fujii, A., Baba, H.,
30 associated with daily level of
fatigue
Matsuda, K., Nishimae, A.,
Takesaka, T., Watanabe, Y.
Central inhibition regulates
Tanaka, M., Shigihara, Y.,
31 motor output during physical
Watanabe, Y
fatigue
Neural compensation
32 mechanisms to regulate motor
Tanaka, M., Watanabe, Y
output during physical fatigue
Central regulation of physical
Tsutsumi, K., Tanaka, M.,
33 fatigue via mirror visual
Shigihara, Y., Watanabe,
feedback
Y.
Emotional experience,
expression, and regulation of
Hosotani, R.,
34
high-quality Japanese elementary Imai-Matsumura, K
school teachers
Miike, K., Aoki, M.,
Proteome profiling reveals
Yamashita, R., Takegawa,
35 gender differences in the
Y., Saya, H., Miike, T.,
composition of human serum
Yamamura, K
184
Health Education
Journal, 71(2): 165
2012
Health Education
Journal, 71(2):
165-172
2012
Medical Science
Monitor, 18(3):
148-153
2012
Brain &
Development, 33(10):
832-841
2011
Behavioral and Brain
Functions, 7: 20
2011
Brain &
Development, 33(6):
470-479
2011
Brain &
Development, 33(5):
412-420
2011
Behavioral and Brain
Functions, 7: 4
2011
Behavioral and Brain
Functions, 7(1): 46
2011
Brain Research,
1412(2011): 37-43
2011
Brain Research,
1395(2011): 46-52
2011
European Journal of
Sport Science, 11(3):
171-175
2011
Teaching & Teacher
Education, 27:
1039-1048
2011
Proteomics, 10(14):
2678-2691
2010
Effort-reward imbalance for
36 learning is associated with
fatigue in school children
Temperament and character as
predictors of fatigue-induced
37 symptoms among school
children in Japan: A 1-year
follow-up study
Fukuda, S., Yamano, E.,
Joudoi, T., Mizuno, K.,
Tanaka, M., Kawatani, J.,
Takano, M., Tomoda, A.,
Imai-Matsumura, K.,
Miike, T., Watanabe, Y
Yamano, E., Fukuda, S.,
Joudoi, T., Mizuno, K.,
Tanaka, M., Kataoka, Y.,
Kawatani, J., Takano, M.,
Tomoda, A.,
Imai-Matsumura, K.,
Miike, T., Matsuda, F.,
Watanabe, Y
Behavioral Medicine,
36(2): 53-62
2010
Comprehensive
Psychiatry, 51(3):
256-265
2010
国内誌
38
39
40
41
42
43
44
45
46
47
48
49
50
51
論文名
知的障害児・自閉症児における
文字への注視を促す支援教材
に関する視線分析研究
児童のつまずきに応じた算数の
個別学習支援による学習意欲
の変容
通常学級における多動児のワー
キングメモリ支援による行動改善
に関する実証的研究
急性~亜急性~慢性疲労に共
通する自律神経機能の変調
慢性疲労は脳からの危険信
号!
著者
掲載媒体
年月
Health Education
Journal, 71(2): 165
2013
細谷里香、北川里奈、松 Health Education
村京子
Journal, 71(2): 165
2013
小林裕子、松村京子
Health Education
Journal, 71(2): 165
2013
水野敬、渡辺恭良
Health Education
Journal, 71(2): 165
Health Education
Journal, 71(2): 165
大隅順子、松村京子
渡辺恭良
水野敬、定藤規弘、松村
小児慢性疲労症候群の注意配
Health Education
京子、三池輝久、渡辺恭
分機能障害
Journal, 71(2): 165
良
疲労の中枢神経系機構解明を
Health Education
田中雅彰、渡辺恭良
目指した脳磁図研究
Journal, 71(2): 165
児童と関わるときの教育実習生
Health Education
の情動能力-優れた教師との 細谷里香、松村京子
Journal, 71(2): 165
比較-
アフタースクールにおける小学
Health Education
校 1 年生の学習行動と内発的学 細谷里香、松村京子
Journal, 71(2): 165
習意欲に関する研究.
認知特性と個別ニーズに基づ
Health Education
学習支援―算数の遅れが顕著 細谷里香、松村京子
Journal, 71(2): 165
な小学4年生の事例―
Health Education
子どもの疲労と学習意欲の科学 水野敬、渡辺恭良
Journal, 71(2): 165
アフタースクールにおける個別
富井和美、細谷里香、松 Health Education
学習支援―算数が苦手な低学
村京子
Journal, 71(2): 165
年児童の事例を通して―
疲労とは? 疲労の計測と疲労
Health Education
渡辺恭良
の分子神経メカニズム
Journal, 71(2): 165
脳と心 脳の最新科学、そして
Health Education
渡辺恭良
心との関係
Journal, 71(2): 165
185
2013
2012
2012
2012
2012
2011
2011
2010
2010
2010
2010
52 労のバイオマーカー
渡辺恭良
Health Education
Journal, 71(2): 165
特集:疲労を科学する「生理学
田島世貴、山口浩二、倉 Health Education
53 的バイオマーカーによる疲労の
恒弘彦、渡辺恭良
Journal, 71(2): 165
計測」
特集:疲労を科学する「疲労
Health Education
54
渡辺恭良
とは?疲労の分子神経基盤」
Journal, 71(2): 165
55 疲労の分子神経メカニズム
渡辺恭良
Health Education
Journal, 71(2): 165
2010
2010
2010
2010
(2) 発表・講演
招待講演
発表・講演名
講演者
Changes in cognitive functions of
students in the transitional period
1 from elementary school to junior 水野敬
high school(優秀論文賞受賞講
演)
疲労・慢性疲労のバイオマー
2 カーと脳機能・分子イメージン 渡辺恭良
グ
3
応用脳科学の発展に向けた異
分野融合研究の取組み
渡辺恭良
4 疲労と脳機能障害
渡辺恭良
Functional loss of adolescence
5 ADHD and its recovery by
therapeutics.
Mizuno, K
Investigation of neural substrates
associated with fatigue and
6
Mizuno, K
motivation using functional
neuroimaging
口頭講演
発表・講演名
小児の疲労・慢性疲労による意
欲低下の神経基盤
脳磁図計を用いた精神的スト
8 レスに対する生体反応の個人
差に関する検討
7
講演者
水野敬
シンポジウム・セミナー名
(会場)
第 54 回日本小児神経学
会総会(札幌)
2012.5.18
第 17 回日本心療内科学
2012.5.18
会総会・学術大会(福岡)
第 35 回日本神経科学大
会ランチョンセミナー
(名古屋)
第 6 回日本疲労学会総
会・学術集会(大阪)
The 14th Conference of
Peace through Mind Brain
Science: Advances in
Molecular Medicine and
Imaging: Between Bench
and Bedside(Hamamatsu,
Japan)
The 13th Conference of
Peace through Mind/Brain
Science(Hamamatsu,
Japan)
シンポジウム・セミナー名
(会場)
第 9 回日本疲労学会総
会・学術集会(秋田)
山野恵美、田中
第 9 回日本疲労学会総
雅彰、石井聡、
会・学術集会(秋田)
渡辺恭良
186
年月
2012.9.12
2010.6,26
2012.2.14
2010.2.23
年月
2013.6.8
2013.6.8
9 疲労の脳磁図研究
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
24
25
26
27
身体的疲労の評価に関わる神
経メカニズムの脳磁図研究
田中雅彰、石井
聡、山野恵美、
渡辺恭良
石井聡、田中雅
彰、山野恵美、
渡辺恭良
山本剛、松村京
子
細谷里香、北川
里奈、松村京子
小林裕子、松村
京子
藤原奈奈子、松
村京子
第 9 回日本疲労学会総
会・学術集会(秋田)
2013.6.7
第 9 回日本疲労学会総
会・学術集会(秋田)
2013.6.7
授業中の子どもの行動への教
第 15 回日本教育実践学
師の気づきと視線
会研究大会
個別支援を通した学習不振児
第 15 回日本教育実践学
の学習意欲変容プロセス
会研究大会
学校・家庭・医療の連携による
第 15 回日本教育実践学
ADHD 児の支援
会研究大会
START プログラムが就学前児
第 15 回日本教育実践学
の実行機能に及ぼす効果
会研究大会
対人関係場面におけるソー
岡脇誠、松村京 第 15 回日本教育実践学
シャル・シンキングのアセスメ
子
会研究大会
ントツールの開発
第 8 回日本疲労学会総
疲労と意欲の神経基盤
水野敬
会・学術集会(東京)
田中雅彰、石井
慢性疲労の中枢神経系機構解
第 8 回日本疲労学会総
聡、山野恵美、
明を目指した脳磁図研究
会・学術集会(東京)
渡辺恭良
石井聡、田中雅
脳磁図計測による疲労の中枢
第 8 回日本疲労学会総
彰、山野恵美、
神経系メカニズムの解明
会・学術集会(東京)
渡辺恭良
田中雅彰、石井
Neural substrates of central
第 35 回日本神経科学会
聡、山野恵美、
inhibition during physical fatigue
大会(名古屋)
渡辺恭良
Neural substrates related to the
classical conditioning of mental 石井聡、田中雅
第 35 回日本神経科学会
fatigue sensation in human: a
彰、山野恵美、
大会(名古屋)
magnetoencephalography study 渡辺恭良
特別支援学校生徒に文字への
注視を促すための支援
授業中の児童の行動に対する
教師の視線研究
就学準備のための START プロ
グラムの実践とその効果
子どもに対する教師の情動的
アプローチ
疲労による自律神経機能の変
調
精神神経内分泌免疫研究の展
開-諸領域における生理指標
を利用した研究-医学研究の立
場から
fMRI による注意欠陥多動性障
害(ADHD)の報酬系に対する
メチルフェニデート徐放剤投
薬効果の検証(ポスター発表も
有り)
2012.11
2012.11
2012.11
2012.11
2012.11
2012.6.2
2012.6.2
2012.6.2
2012.9.19
2012.9.19
大隅順子、松村
京子
山本剛、松村京
子
藤原奈奈子、松
村京子
細谷里香、松村
京子
水野敬、渡辺恭
良
第 14 回日本教育実践学
2011.11
会研究大会
第 14 回日本教育実践学
2011.11
会研究大会
第 14 回教育実践学会研
2011.11
究大会
第 14 回日本教育実践学
2011.11
会研究大会
第 64 回日本自律神経学
2011.10.28
会総会(秋田)
福田早苗
第 75 回日本心理学会大
会(東京)
水野敬、友田明 第 6 回日本分子イメージ
美、米田哲也、 ング学会総会・学術集会
(神戸)
渡辺恭良
187
2011.9
2011.5.26
小児慢性疲労症候群の脳機能
第 7 回日本疲労学会総
水野敬
2011.5.21
低下のメカニズム
会・学術集会(名古屋)
田中雅彰、鴫原
疲労の中枢神経系機構解明を 良仁、石井聡、 第 7 回日本疲労学会総
2011.5.21
29
目指した脳磁図研究
山野恵美、渡辺 会・学術集会(名古屋)
恭良
fMRI を用いた ADHD における 水野敬、友田明
第 2 回日本 AD/HD 学会総
2011.3.6
30 報酬系の神経基盤に関する検 美、米田哲也、
会(東京)
討
渡辺恭良
疲労と生活習慣の関連の検討、
第 18 回日本産業ストレ
31
福田早苗
2011.1
今後の課題も含めて
ス学会(神戸)
水野敬、川谷淳
機能的 MRI を用いた思春期の
子、上土井貴子、 第 52 回日本小児神経学
2010.5.21
32 慢性疲労による注意配分機能
友田明美、三池 会総会(福岡)
低下の神経基盤に関する検討
輝久
川谷淳子、上土
小児型慢性疲労症候群におけ
井貴子、水野敬、 第 52 回日本小児神経学
2010.5.21
33 るコホート研究-Advanced Trail
高野美雪、友田 会総会(福岡)
Making Test を用いた検討
明美、三池輝久
Brain activity involved in reward
11th World Congress of
Tomoda, A.,
34 sensitivity in pediatric ADHD
Biological
2013.6.25
Mizuno, K.
before and after MPH treatment
Psychiatry(Kyoto, Japan)
2012 International
Conference on
Replacement of
Neanderthals by Modern
Neural substrates of motivation to
35
Mizuno, K
2012.11.24
Humans: Testing
learn and fatigue
Evolutionary Models of
Learning (RNMH)( Tokyo,
Japan)
ポスター発表
シンポジウム・セミナー名
発表・講演名
講演者
年月
(会場)
Individual differences in
personality traits afffect
山野恵美、田中雅
neural response against
第 36 回日本神経科学会
2013.6.22
36
彰、石井聡、渡辺
mental stress: a
大会(京都)
恭良
magnetoencephalography
study
Neural substrates related to
石井聡、田中雅
physical fatigue sensation for the
第 36 回日本神経科学会
2013.6.21
37
彰、山野恵美、渡
evaluation of ourselves: a
大会(京都)
辺恭良
magnetoencephalography study
水野敬、田島華奈
Low striatal activity during
子、川谷淳子、上
第 36 回日本神経科学会
2013.6.20
38 reward perception caused by
土井貴子、米田哲
大会(京都)
adolescent chronic fatigue
也、友田明美、渡
辺恭良
学校・家庭・医療の連携によ 小林裕子、松村京 第 24 回日本発達心理学
39
2013.3
る ADHD 児の支援
子
会大会
START プログラムが就学前児 藤原奈奈子、松村 第 24 回日本発達心理学
40
2013.3
の実行機能に及ぼす効果
京子
会大会
28
188
41
42
43
44
45
46
47
48
49
聴覚障害幼児における絵カー
ドへの視線に関する研究
メチルフェニデート徐放剤投
薬による注意欠陥多動性障害
(ADHD)の報酬系改善効果
の立証:薬理学的 fMRI 研究
精神的ストレスに対する生体
反応の個人差に関する検討:
MEG 研究
Decrease in the striatal activity
during reward processing by
adolescent fatigue.
Individual differences in
personality traits reflect neural
response against mental stress: a
magnetoencephalography study
精神的ストレスに対する生体
応答と気質の関連性の検討
児童のニーズに応じた算数支
援による学習意欲の変容
知的障害児・自閉症児への文
字への注視を促す支援教材に
関する研究
授業中の児童の行動への気づ
きに関する教師の視線分析研
究―教員志望学生との比較―
就学準備のための START プロ
グラムの実践とその効果
西岡美智子、松村 第 24 回日本発達心理学
京子
会大会
2013.3
水野敬、友田明 平成 24 年度生理研研究
美、米田哲也、渡 会:第 2 回社会神経科学
研究会(岡崎)
辺恭良
2013.1.31
山野恵美、田中雅
彰、石井聡、渡辺
恭良
水野敬、田島華奈
子、米田哲也、友
田明美、渡辺恭良
2012.9.30
第 35 回日本神経科学会
大会(京都)
2012.9.19
山野恵美、田中雅
第 35 回日本神経科学会
彰、石井聡、渡辺
大会(京都)
恭良
第 25 回日本健康心理学
会(東京)
細谷里香、北川里 第 23 回日本発達心理学
会大会
奈、松村京子
山野恵美
2012.9.19
2012.9.1
2012.3
大隅順子、松村京 第 23 回日本発達心理学
会大会
子
2012.3
第 23 回日本発達心理学
会大会
2012.3
山本剛、松村京子
藤原奈奈子、松村
京子
水野敬、田邊宏
思春期の疲労による注意配分
51
樹、定藤規弘、渡
機能低下の神経基盤
辺恭良
水野敬、田中雅
彰、田邊宏樹、川
Divided attention and childhood 谷淳子、上土井貴
52 chronic fatigue syndrome
子、友田明美、三
(CCFS)
池輝久、松村京
子、定藤規弘、渡
辺恭良
大学生による疲労と生活習慣
53
福田早苗
の実態
小 1 プロブレム防止のための
START プログラムの開発と効 松村京子、笹口浩
54
果-視線分析による集中力の 子
変容の検討―
Neurological relationship
水野敬、田邊宏
55 between divided attention and
樹、田中雅彰、定
motivation: an fMRI study
藤規弘、渡辺恭良
50
第 34 回日本生物学的精
神医学会(神戸)
189
第 23 回日本発達心理学
会大会
平成 23 年度生理研研究
会:社会神経科学研究会
(岡崎)
2012.3
2011.10.5
第 34 回日本神経科学会
大会(横浜)
2011.9.17
第 24 回日本健康心理学
会(東京)
2011.9
第 22 回日本発達心理学
会大会
2011.3
第 34 回日本神経科学会
大会(神戸)
2010.9.3
小児慢性疲労症候群患児と健
56 常児に共通する疲労と神経過
剰賦活の関係
57
小中学生における疲労関連症
状の持続及び出現の危険因子
小児慢性疲労症候群における
58 ATMT を用いた認知機能のコ
ホート調査
水野敬、田中雅
彰、鴫原良仁、福
田早苗、山野恵
美、川谷淳子、上
土井貴子、友田明
美、三池輝久、松
村京子、田邊宏
樹、定藤規弘、渡
辺恭良
山野恵美、福田早
苗、水野敬、田中
雅彰、上土井貴
子、川谷淳子、高
野美雪、友田明
美、松村京子、三
池輝久、渡辺恭良
川谷淳子、上土井
貴子、高野美雪、
水野敬、福田早
苗、山野恵美、友
田明美
第 6 回日本疲労学会総
会・学術集会(大阪)
2010.6.26
第 6 回日本疲労学会総
会・学術集会(大阪)
2010.6.26
第 6 回日本疲労学会総
会・学術集会(大阪)
2010.6.26
第 6 回日本疲労学会 公
開市民講座「慢性疲労の
2010.6.24
実態とその評価・対処法」
(大阪)
疲労・慢性疲労・意欲低下と
渡辺恭良
59
抗疲労・疲労克服
疲労-意欲-睡眠:分子-脳
第 40 回慶應ニューロサ
60 機能イメージング研究を中心 渡辺恭良
2010.5.29
イエンス研究会(東京)
に
教育実習生の児童に対する情 細谷里香、松村京 第 21 回日本発達心理学
61
2010.3
動調査・表出に関する研究
子
会大会
Society for Neuroscience's
Relationship between fatigue and Mizuno, K.,
42nd annual meeting
Tajima, K.,
62 brain activity during reward
2012.10.17
(Neuroscience 2012)( New
Watanabe, Y.
perception.
Orleans, U.S.A)
International Society for
Yamamoto, T.,
Comparison of the gaze of
the Study of Behavioral
Imai-Matsumura,
63 experienced and student
2012.7
Development 2012
K
teachers: using an eye tracker
Biennial Meeting
Tomoda, A.,
The 12th International
Attention deficit/hyperactivity
Mizuno, K.,
Child Neurology Congress
disorder (AD/HD) in childhood
Yoneda, T.,
- 11th Asian and Oceanian
64 and adolescence is associated
2012.5.29
Yatsuga, C.,
Congress of Child
with increased gray matter
Takiguchi, S.,
Neurology(Brisbane,
volume in the insula
Yamazaki, M.
Australia)
190
Risk factors of sleep disturbance
65 among school children in Japan:
The 2-year follow-up study
Yamano, E.,
Fukuda, S.,
Mizuno, K.,
Tanaka, M.,
Joudoi, T.,
Kawatani, J.,
Takano, M.,
Tomoda, A.,
Imai-Matsumura,
K., Miike, T.,
Watanabe, Y
Imai-Matsumura,
K., Sasaguchi, K.,
Betkowski, J. A.,
Schultz, D. A
Hosotani, R.,
Imai-Matsumura,
K
The effect of the START
program on self-control in first
66
grade elementary school
children: A video-tracking study
Emotional strategies used by
67 elementary school teachers when
interacting with children
How do good elementary school
Hosotani, R.,
teachers express and regulate
Imai-Matsumura,
68
their emotions in front of
K
children?
Worldsleep2011(Kyoto,
Japan)
2011.10.19
15th European Conference
on Developmental
Psychology
2011.9
15th European Conference
on Developmental
Psychology
2011.9
European Conference on
Educational Research 2011
2011.9
Mizuno, K.,
Neural substrates associated with
Tomoda, A.,
69 reward system of ADHD using
Yoneda, T.,
fMRI
Watanabe, Y
14th International Congress
of European Society for
Child and Adolescent
Psychiatry
(ESCAP)( Helsinki,
Finland)
2011.6.13
Interdisciplinary research of
neuroscience and education for
elucidating the neural
70
mechanisms of fatigue and
motivation to learn in children
and adolescents
Mizuno, K.,
Tanaka, M., Miike,
T.,
Imai-Matsumura,
K., Sadato, N.,
Watanabe, Y
The 16th Takeda Science
Foundation Symposium on
Bioscience ”Casting light
on life”(Tokyo, Japan)
2010.12.1
Excessive neural activation
during divided attention
71
processing in childhood chronic
fatigue syndrome
American Academy of
Mizuno, K.,
Children & Adolescent
Kawatani, J.,
Psychiatry (AACAP) 57th
Jodoi, T., Tomoda,
Annual Meeting(New
A., Watanabe, Y
York, U.S.A)
2010.10.28
セミナー・講演会
講演名
講演者
こどもの疲れ・やる気の脳科
水野敬
学からビジネス展開を考える
「疲れ&癒し」が心と体にも
73
水野敬
たらす影響
72
74 脳を育む生活リズム
75
上土井貴子
子どもの社会性の発達と生活
上土井貴子
リズム
76 子どもの疲れ・意欲と脳発達 水野敬
191
シンポジウム・セミナー名
(会場)
こどものウェルネスセ
ミナー(大阪)
フジッコ食育講演会(神
戸)
保育士・看護師・乳児研
修会(長崎)
玉名学校保健会総会(玉
名)
九州ルーテル学院大学
人文学部心理臨床学科
特別講義(熊本)
年月
2013.7.17
2013.7.12
2013.6.27
2013.6.19
2013.6.13
77
子どもの疲労、意欲と脳機能
水野敬
発達
78 発達障害とストレス・疲労
福田早苗
就学への準備教育-実行機能
松村京子
に注目して-
Emotional competence of
high-quality teachers and
80
松村京子
student teaches when interacting
with children.
79
ヒーリング人形による認知機
81 能向上・抗疲労・癒やし効果 田中雅彰
についての検証結果
82
脳を育む生活リズム~揺れ動
上土井貴子
く思春期に備える~
83 乳幼児の発育・発達について 上土井貴子
84 早寝・早起き・朝ごはん
上土井貴子
85 生活習慣と子どもの成長
上土井貴子
86
子どもの社会性の発達と生活
上土井貴子
リズム
87 生活リズムと脳
上土井貴子
88 現代人と疲労
田中雅彰
子どもの発達を見据えた教育
松村京子
-実行機能に注目して-
中学生の学習意欲、疲労と脳
90
水野敬
の発達
Neuro wellness studies with
companies, schools and
91
Mizuno, K
hospitals for quality of life
improvement.
89
92
MRI を用いた疲労の神経基盤
水野敬
研究
93 体の時計
上土井貴子
慢性疲労改善を目指した食生
94 活改善サポートシステムの構 福田早苗
築
情動・社会性の発達-ソー
95
松村京子
シャル・シンキングの構築-
96 乳幼児の発育発達について
上土井貴子
192
兵庫教育大学大学院連
合学校教育学研究科ゼ
ミトーク(神戸)
第 13 回発達障害を考え
る基礎と臨床の勉強会
(東京)
川西市教育委員会川西
市幼児教育研究会
ピッツバーグ大学 School
of Education ゲストトー
ク
ヘルスケアビジネス
フェア 2013 アンチ
ファティーグ(抗疲労)
ビジネスの最前線(大
阪)
宇城市子育て学習支援
事業(宇城)
緑川保育園子育ち講演
会(宇土)
山鹿幼稚園家庭教育学
級(山鹿)
水俣市学校給食フォー
ラム(水俣)
平成 24 年度芦北町教育
研究大会(葦北)
中央地区地域保健委員
会(下益城)
第 169 回市民医学講座
(大阪)
全国幼児教育研究協会
兵庫支部研修会
人権教育講演会(西宮)
SSI ProSemi 2012,
Kumamoto, Japan
2013.5.22
2013.5
2013.4.25
2013.3
2013.2.26
2013.2.26
2013.2.9
2013.2.2
2013.1.25
2013.1.21
2013.1.21
2013.1.17
2013.1.10
2013.1.8
2012.12.22
第 5 回創薬シンポジウム
「脳を視る、こころを観 2012.12.6
る」(熊本)
2 学期末授業参観及び全
2012.12.2
体会(上益城)
ライフイノベーション
研究成果企業化促進
2012.12
フォーラム(大阪)
福岡県高等学校養護教
2012.11.16
諭研究会第 2 回研修会
子育てほっとサポー
ター養成セミナー(熊
2012.10.30
本)
97 体の時計について
上土井貴子
98 生活習慣と子どもの成長
上土井貴子
99 体の時計について
上土井貴子
100 生活習慣と子どもの成長
上土井貴子
若葉小学校保健委員会
及び PTA 研修会(熊本)
嘉島町教育講演会(上益
城)
玉名市滑石小学校校内
講演会(玉名)
和水町地域学校保健委
員会(玉名)
慢性疲労改善を目指した食生
101 活改善サポートシステムの構 福田早苗
築
新技術説明会(東京)
102 子どもの意欲と疲れの脳科学 水野敬
第 4 回予防医学セミナー
「心と運動編」
(神戸)
103
子どもの生活リズムと心の発
上土井貴子
達
104 体の時計について
福田早苗
福田早苗
松村京子
松村京子
111 子どもの情動・社会性の発達 松村京子
112
113
114
115
116
117
疲労および脳機能イメージン
グ研究の最新知見
こどもの心の発達~コミュニ
ケーションの育み方~
「心の育て方~乳・幼・保・
小・中学生の心の発達~コ
ミュニケーションのはぐくみ
方~」
実行機能を高める START プ
ログラムの実践-学習準備の
ための教育-
子どもの生活リズムと心の発
達
思春期のゆれる気持ち~突然
の嵐に対処するには~
118 体の時計の話
2012.10
2012.9.30
学校保健委員会(熊本) 2012.9.30
食育講演会(球磨)
幼児期から児童期の発達を見
松村京子
通して
108
2012.10.11
上土井貴子
110
107
2012.10.23
熊本市立田迎南小学校
2012.9.27
学校保健委員会(熊本)
109
106
2012.10.26
上土井貴子
子どもの生活リズムと心の発
達
疲労改善による慢性疾患の予
防と改善
抗疲労食と、これからの健康
増進食への期待
情動・社会性の発達-情動を
コントロールする能力-
情動・社会性の発達-情動を
コントロールする能力-
105
2012.10.26
渡辺恭良
上土井貴子
2012.9.8
イノベーションジャパ
2012.9
ン 2012(東京)
大阪産業創造館食ビジ
2012.8
ネスセミナー(大阪)
たつの市養護教諭研修
2012.8.30
会
県立神戸聴覚特別支援
2012.8.29
学校公開研修会
加東市兵庫教育大学連
携講座「子育て支援講
2012.8.21
座」
加西市総合教育セン
2012.8.7
ター特別支援教育講座
花王㈱生物科学研究所
2012.8.3
講演会(栃木)
第 27 回益城町学校保健
2012.8.3
会全体研修会(上益城)
上土井貴子
第 2 回御船町学校保健会
(上益城)
2012.8.2
松村京子
岐阜市教育委員会岐阜
市幼保小教員研修
2012.7.30
上土井貴子
上土井貴子
上土井貴子
実行機能を高める START プ
松村京子
ログラムの実践
子どもの生活リズムと心の発
120
上土井貴子
達
119
193
第 61 回筑後地方保育研
究大会(久留米)
くまもと県民カレッジ
主催講座(熊本)
2012.7.15
2012.7.7
PTA 教育講演会
(下益城) 2012.6.30
加古川市教育研究所幼
児教育研修講座
たんぽぽ保育園乳幼児
学級(宇土)
2012.6.25
2012.5.26
121
高齢者の抗疲労・癒しと認知
田中雅彰
機能改善にむけて
122 疲労と学習意欲に関する研究 水野敬
The effect of the START
program on self-control in first
123
松村京子
grade and preschool children: A
video-based eye-tracking study.
就学前 START プログラムの
124 取り組みの成果と小学校への 松村京子
接続-実行機能への効果-
子どもの生活リズムと心の発
125
上土井貴子
達
126 脳の発達と教育
松村京子
127 学習意欲を育むための脳科学 水野敬
子どもの生活リズムと心の発
上土井貴子
達
子どもの発達を見据えた教育
129
松村京子
-実行機能に注目して-
子どもの生活リズムと心の発
130
上土井貴子
達~子育てのアドバイス~
128
131 体の時計について
上土井貴子
子どもの生活リズムと心の発
上土井貴子
達
生活リズムと脳~生活リズム
133
上土井貴子
と脳の関係~
132
134 学習意欲と疲労の脳科学
渡辺恭良
135 元気なからだと睡眠の関連
上土井貴子
充実した学校生活に向けての
松村京子
就学準備教育
就学準備のための指導-セル
137
松村京子
フコントロールと注意集中-
子どもの生活リズムと心の発
138
上土井貴子
達
136
139
子どもの生活リズムと心の発
上土井貴子
達
140
子どもの生活リズムと心の発
上土井貴子
達
141 疲れとやる気の脳科学最前線 水野敬
142
疲労を測る「疲労マーカーと
田中雅彰
動物、ヒトの疲労測定」
143
Evidence-based strategies to
develop anti-fatigue foods
田中雅彰
194
バリアフリー・ワーク
ショップ(大阪)
第 3 回ニューロウェルネ
ス研究会(東京)
ヴァージニア大学 Center
for Advanced Study of
Teaching and Learning に
おいてゲストトーク
加西市教育委員会教員
研修
月瀬小学校 PTA 講演会
(玉名)
鳥取県岩美町教育講演
会
青年教職員のための教
育研究集会・全体講演会
(鹿児島)
轟保育園子育て講座(宇
土)
加古川市教育委員会教
員研修
小坂小学校 PTA 講演会
(上益城)
力合小学校保健委員会
(熊本)
鏡小学校 PTA 講演会(八
代)
特別支援教育研修会(校
内研修)(玉名)
三井業際研究所技術部
会スローエイジング調
査研究委員会(東京)
熊本市立田迎南小学校
学校保健委員会(熊本)
加西市教育委員会教員
研修
伊丹市教育委員会公私
立幼稚園共同研究会
有明中学校学校保健委
員会(玉名)
上益城郡学校保健会保
健主事・養護教諭等合同
研修会(上益城)
第 2 回御船町学校保健委
員会(上益城)
熊本大学文学部心理学
特殊講義(熊本)
「抗疲労・癒し」科学的
研究の基礎と活用(大
阪)
中国・広州・花園酒家
2012.4.19
2012.3.28
2012.3.16
2012.3.3
2012.2.26
2012.2.18
2012.2.18
2012.1.28
2011.12.26
2011.12.12
2011.12.9
2011.12.4
2011.10.19
2011.10.7
2011.10.2
2011.9.30
2011.9.8
2011.8.17
2011.7.25
2011.7.22
2011.7.19
2011.7.19
2011.7.8
子どもの心の発達と生活リズ
上土井貴子
ム
子どもの心の発達と生活リズ
145
上土井貴子
ム
144
146 こどもの脳を育む生活リズム 上土井貴子
疲れのメカニズムと食事管理
147 -なんとなく疲れるな・・・を 福田早苗
解決する食事の秘訣ミニレクチャー「抗疲労食」
福田早苗
148
【疲労☆バスターズ】
149
抗疲労食-毎日の食事が疲れ
福田早苗
に効く
発達障害について~注意欠陥
上土井貴子
多動性症候群~
子どもとの情動応答的かかわ
151
松村京子
り
生活リズムと脳~生活リズム
152
上土井貴子
と脳の関係~
150
153
慢性疲労症候群に関する分子
水野敬
イメージング研究
就学準備のための指導-セル
松村京子
フコントロールと注意集中-
こどもの心と脳の発達と生活
155
上土井貴子
リズム
こどもの心の発達と生活リズ
156
上土井貴子
ム
154
157
脳を育てる生活リズム~今、
上土井貴子
なぜ早寝・早起き・朝ご飯~
子どもを育む生活リズム
158 今、なぜ早寝・早起き・朝ご 上土井貴子
飯
159 こどもを育む生活リズム
160
上土井貴子
脳を育む生活リズム~今なぜ
上土井貴子
早寝・早起き・朝ご飯~
161 こどもを育む生活リズム
上土井貴子
162 こどもを育む生活リズム
上土井貴子
163 こどもを育む生活リズム
上土井貴子
164 こどもを育む生活リズム
上土井貴子
195
鶴城中学校 PTA 家庭教
育講演会(宇土)
宇土市職員全体研修(宇
土)
妙音寺幼楽園保護者会
(宇城)
槙塚台地域食支援活動
講演会(堺)
第 14 回定期交流サロン
「健康価値の新発想!
『抗疲労食』でトーク
パーティー」(大阪)
東住吉区“すこやか東住
吉健康づくり元気アッ
プ事業”の記念講演会
(大阪)
宇城小中学校校長会(宇
城)
加西市教育委員会幼稚
園教諭研修会
小中合同講演会(八代)
2011.7.2
2011.5.28
2011.3.5
2011.3
2011.3
2011.3
2011.2.24
2011.2.5
2011.2.3
大阪市立大学市民公開
セミナー「分子イメージ
ングを活用する創薬の
2011.1.29
革新と診断高精細化の
推進」
(大阪)
加西市教育委員会幼稚
2010.11.27
園教諭研修会
長崎市立香焼保育所職
2010.11.20
員研修(長崎)
子育て講演会(大村)
2010.11.13
第 5 回「次世代」育成推
進フォーラム in氷川町 2010.11.4
(八代)
平成 22 年度宇城地域母
子保健関係者研修会(宇 2010.11.1
城)
第 55 回九州ブロックP
2010.10.30
TA研究大会(熊本)
人吉市立西瀬小学校第 2
回家庭教育学級講演会
2010.10.7
(人吉)
平戸市保育会研修会(平
2010.10.14
戸)
加茂川保育園育児講座
2010.9.22
(菊池)
久留米市立保育所職員
2010.8.20
研修会(久留米)
本妙寺保育園保護者勉
2010.8.21
強会(熊本)
165 こどもを育む生活リズム
上土井貴子
子どもを育む生活リズム~親
上土井貴子
としてできること~
学習意欲・登校意欲を高める
167 ために-日常における不登校 松村京子
の予防的アプローチ-
子どもを育む生活リズム~親
168
上土井貴子
としてできること~
166
双葉幼児園講演会(佐世
保)
小天子育て講演会(玉
名)
小野市養育委員会第 2 回
小野市不登校対策全体
会議
熊本県 PTA 等指導者研
修(天草)
長洲町立長洲中学校教
育講演会(玉名)
2010.7.31
2010.7.23
2010.7.13
2010.7.10
169 生活リズムと脳
上土井貴子
170 脳科学から見た生活リズム
上土井貴子
保育士研修会(長崎)
2010.6.29
上土井貴子
熊本市立山本小学校学
校保健委員会(熊本)
2010.6.23
上土井貴子
網田保育園保護者会(山
鹿)
2010.6.19
171
172
173
174
175
176
177
178
179
180
181
体の時計とテレビとゲームの
話
脳を育てる生活リズム~今、
なぜ早寝・早起き・朝ごはん?
~
情動知能を育むー充実した学
校生活のためにー
子どものこころの発達と生活
リズム
脳で育む生活リズム~なぜ
今、早寝、早起き、朝ご飯~
脳を育てる生活リズム~今、
なぜ早寝・早起き・朝ごはん?
~
「早寝・早起き・朝ごはん」
が子どもたちを育んでいく
学習意欲・登校意欲を高める
ためにー「脳科学と教育」プ
ロジェクトの成果を踏まえ
てー
脳を育てる生活リズム~今、
なぜ早寝・早起き・朝ごはん?
~
脳を育てる生活リズム~今、
なぜ早寝・早起き・朝ごはん?
~
脳を育てる生活リズム~今、
なぜ早寝・早起き・朝ご飯?
~
松村京子
上土井貴子
上土井貴子
疲労度測定・疾病予測のため
のソフトの開発
脳を育てる生活リズム~今、
184 なぜ早寝、早起き、朝ご飯?
~
「脳を育む生活リズム」~な
185 ぜ今、早寝・早起き・朝ごは
ん?~
「子どもの生活リズムと家庭
186
の役割」
2010.6.12
2010.4.10
2010.3.20
上土井貴子
子育て講演会(菊池)
2010.3.3
上土井貴子
国分幼稚園保護者会(霧
島)
2010.2.27
松村京子
第 11 回 NANA っくすリ
レー講座
2010.2.22
上土井貴子
霧島保育園保護者研修
会(霧島)
2010.2.13
上土井貴子
山鹿幼稚園第 3 回家庭教
育学級(山鹿)
2010.2.6
上土井貴子
宇城市家庭教育講演会
(宇城)
2010.2.2
182 テレビやゲームと生活リズム 上土井貴子
183
加西市教育委員会保護
者への講演
浄光保育園保護者会(霧
島)
人吉市乳児保育園育児
講座(人吉)
2010.7.3
福田早苗
上土井貴子
上土井貴子
上土井貴子
196
熊本市立本荘小学校学
校保健委員会(熊本)
大阪市立大学ニューテ
クノガイド 2010(大阪)
一般社団法人長崎市保
育会設立記念講演(長
崎)
くまもと県民カレッジ
主催講座「サテライト教
室」(人吉)
氷川町教育講演会(八
代)
2010.1.22
2010.1.14
2010.1.8
2009.12.21
2009.12.17
~今、なぜ早寝・早起き・朝
上土井貴子
ごはん?~
~今、なぜ早寝・早起き・朝
188
上土井貴子
ごはん?~
187
家庭教育学級講演(阿
2009.12.14
蘇)
第 2 回理事長・保育所
2009.12.7
(園)長研修会(鹿児島)
(3) 書籍・報告書等
書籍・報告書名
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
著者
Yasuyoshi
Biochemical indices of fatigue for Watanabe,
Hirohiko
anti-fatigue strategies and
Kuratsune, and
products
Osami Kajimoto
機能性食品の作用と安全性百
渡辺恭良
科
学校における情動・社会性の学
習-就学前から高等学校まで 松村京子編著
-
柘植雅義、篁倫
対人援助専門職のための発達
子、大石幸二、
障害者支援ハンドブック
松村京子編著
ビタミンの科学と最新応用技
渡辺恭良
術
渡辺恭良、福田
早苗、浦上浩、
抗疲労食
西澤良記
DVD 小 1 プロブレム予防のた
めの STRAT プログラム vol.3 松村京子原案・
友だち間の問題解決と感情コ 監修
ントロール
DVD 小 1 プロブレム予防のた
めの STRAT プログラム vol.4 松村京子原案・
不快な感情の理解と善意の解 監修
釈
小 1 プロブレム予防のための
松村京子原案・
STRAT プログラム vol.1 感情
監修
についての論理的な考え方
新・発達心理学ハンドブック第
松村京子
3 巻「時間と人間」
臨床発達心理学・理論と実践第
松村京子
1 巻「臨床発達心理学の基礎」
12 食品機能素材Ⅳ
渡辺恭良
出版社
年月
The Handbook of Operator
Fatigue, Ashgate Pub Co.
England, 209-224p
2012.8,30
丸善出版株式会社、
359-362pp
2012.7.30
日本学校保健会/丸善
2012.3
金剛出版
2012.2
株式会社シーエムシー出
版、22-30p
2011.8.31
オフィスエル(出版社)
2011.7.30
医学映像教育センター
2011.6
医学映像教育センター
2011.6
医学映像教育センター
2011.4
新曜社、p. 209-222
2011.4
ミネルヴァ書房、p.
2011.2
120-126
株式会社シーエムシー出
2010.11.30
版、53-59p
(4) 新聞・テレビ等
内容
年月
1
讀賣新聞「注意欠陥・多動性障害の子ども、脳の一部働き弱く意欲減退」
2013.3.31
2
福井新聞「ADHD 児脳の機能低下、画像で確認、少ないご褒美では満足で
きず」
2013.3.20
3
沖縄タイムス「慢性疲労病気のもと?」
2013.1.7
197
内容
年月
4
琉球新報「疲れは病気の危険因子」
2012.12.25
5
徳島新聞「疲れは病気の危険因子か」
2012.12.16
6
四国新聞「疲れは危険因子か」
2012.12.14
7
大分合同新聞「抗疲労食で元気に」
2012.12.8
8
福島民友「慢性疲労食事で克服」
2012.12.7
9
大阪日日新聞「疲れは病気の危険因子か」
2012.12.6
10 日本海新聞「疲れは病気の危険因子か」
2012.12.6
11 福島民報「疲れは病気の危険因子か?」
2012.12.3
12 神戸新聞「教育実践学会が研究大会
2012.11.6
いじめ背景など発表」
13 神戸新聞「日本教育実践学会研究大会を神戸で開催」
2012.11.2
14 神戸新聞「小 6~中 1、社会性が身に付く理由は、脳の注意機能が発達」
2012.8.18
15 きょういく朝日(8 月号)
「やる気科学的にアップ」
2012.8.1
16 沖縄タイムス「授業の残り時間提示でやる気増」
2012.6.27
17 東奥日報「あと○分表示、疲労感が軽減」
2012.6.12
18 日刊ゲンダイ「残り時間カウントダウンが仕事の効率を変える」
2012.6.9
19 高知新聞「授業あと 10 分!時間明示、疲労を軽減」
2012.6.9
20 長崎新聞「残り時間示すと疲労感軽減」
2012.6.8
21
秋田さきがけ「あと 10 分でやる気湧く!?疲労と意欲に影響、脳の働き明
らかに」
2012.6.8
22 産経エクスプレス「あと 10 分!でやる気アップ」
2012.6.8
23 中日新聞「残り△分で疲労感軽減」
2012.6.8
24 信濃毎日新聞「残り時間示すと疲労感軽減「あと 10 分」でやる気湧く」
2012.6.7
25 東京新聞「あと 10 分!疲労感軽減」
2012.6.7
26 日本経済新聞「残り時間、分かればやる気」
2012.6.7
27 夕刊フジ「残り時間教えると疲労感が軽減」
2012.6.7
28 神戸新聞「あと何分、分かれば意欲」
2012.6.1
29
教育医事新聞「小 1 プロブレム予防「START プログラム」DVD 全 4 巻 医
2012.2.25
学映像教育センターから発刊」
30 神戸新聞「注意欠陥多動性障害患者の脳の働き解明、客観的診断に期待」
2011.5.26
31 日本教育新聞「小 1 プロブレム予防 DVD 作る」
2011.4.18
32 神戸新聞「小 1 プロブレムを防げ」
2011.4.12
33 朝日小学生新聞「疲れをためない生活を」
2011.2.4
34 神戸新聞「脳機能余分に使用か」
2010.6.26
198
内容
年月
35 読売新聞「こころ脳」
2010.6.10
36 神戸新聞「学習意欲の向上には「ほめる」重要性強調」
2010.2.7
RIKEN Research Highlights “Patience reaps rewards: Brain imaging shows how
37 prolonged treatment of a behavioral disorder restores a normal response to
2013.4.28
rewards.”
38
いきいき、8 月号、188 号[疲れない体を作る。
「食事」と「睡眠」で予防・
2011.7.10
解消!]
39
Ph-PET Letter, Vol. 6「疲労と神経メカニズムについての神経科学と教育学の
2010.12.22
「学際的研究」」
(5) 特許
発明の名称:抗疲労食選定装置、及び、抗疲労食選定方法
発明者:福田早苗、渡辺恭良
出願番号:特許出願 2011-236991
出願日:2011 年 10 月 28 日
公開番号:特許公開 2013-97423
公開日:2013 年 5 月 20 日
(6) 獲得グラント
1
2
3
4
5
6
7
8
グラント名
タイトル
採択者
配分額
実施年度
文部科学省科学
研究費補助金・基
盤研究(B)
文部科学省科学
研究費補助金・新
学術領域研究公
募研究
文部科学省科学
研究費補助金・若
手研究(B)
文部科学省科学
研究費補助金・若
手研究(B)
第33回財団法人
石本記念デサン
トスポーツ科学
振興財団研究助
成
文部科学省科学
研究費補助金・基
盤研究(C)
文部科学省科学
研究費補助金・基
盤研究(B)
文部科学省科学
研究費補助金・基
盤研究(C)
思春期の易疲労性と疲労回復
性の定量評価法を活用した抗
疲労研究
水野敬
14,500 千円
2013~2015
学習意欲と疲労耐性による強
化学習の神経基盤研究
水野敬
3,900 千円
2013~2014
脳磁図を用いた運動プログラ
ムによる不安及びストレス軽
減効果の評価研究
山野恵美
4,160 千円
2013~2015
疲労認知メカニズムの統合的
理解をめざした脳磁図研究
石井聡
4,150 千円
2013~2015
運動疲労における神経基盤の
系統的検討
田中雅彰
500 千円
2013
小一プロブレム克服のための
実行機能育成プログラム:就学 松村京子 5,460 千円
前から小学校までの縦断研究
脳画像解析と遺伝子多型解析
の融合による注意欠陥多動性 友田明美 12,480 千円
障害(ADHD)の病態解明
子どもの疲労の神経基盤解明
による治療法の開発-慢性疲 川谷淳子 5,460 千円
労とPC・携帯電話依存の関連
199
2012~2015
2012~2014
2012~2014
グラント名
理化学研究所基
礎科学特別研究
員研究助成
文部科学省科学
10 研究費補助金・基
盤研究(B)
9
タイトル
採択者
配分額
実施年度
精神疲労・意欲低下の分子・神
経基盤研究
水野敬
3,000 千円
2012~2014
運動疲労時における中枢制御
機構の統合的解明
田中雅彰
9,400 千円
2011~2013
5,330 千円
2011~2013
水野敬
4,420 千円
2011~2012
内発的報酬による社会・個体学
習強化の神経基盤に関する研 水野敬
究
3,900 千円
2011~2012
報酬感と疲労感の脳内相互作
用メカニズムの解明
3,800 千円
2011~2012
脳機能イメージングを用いた
気質・性格とストレス反応に関 山野恵美
する研究
4,290 千円
2011~2012
疲労認知に関わる「ミラーシス
石井聡
テム」の研究
4,290 千円
2011~2012
子ども虐待の発生予防:乳児に
対する情緒応答性を高めるた 松村京子
めの研究
4,160 千円
2010~2011
トップダウンアプローチによ
る疲労感の神経メカニズムの
解明
1,638 千円
2010
こどもの疲労にかかわる物
文部科学省科学
理・心理・社会的環境の解明と 上土井
11 研究費補助金・基
貴子
予防
盤研究(C)
文部科学省科学
12 研究費補助金・若
13
14
15
16
17
18
手研究(B)
文部科学省科学
研究費補助金・新
学術領域研究公
募研究
財団法人中山隼
雄科学技術文化
財団・研究開発助
成費
文部科学省科学
研究費補助金・若
手研究(B)
文部科学省科学
研究費補助金・若
手研究(B)
文部科学省科学
研究費補助金・基
盤研究(C)
文部科学省科学
研究費補助金・研
究活動スタート
支援
疲労による自律神経機能変調
の分子神経メカニズム研究
水野敬
石井聡
(7) その他
受賞
受賞名
タイトル
理化学研究所主催「理化学研究 水野敬「脳機能イメージングの活用による
疲労、学習意欲と注意機能発達の神経基盤」
所研究奨励賞」
水野敬、友田明美、米田哲也、渡辺恭良「メ
生理学研究所主催「平成 24 年
チルフェニデート徐放剤投薬による注意欠陥
2 度生理研研究会トラベルア
多動性障害(ADHD)の報酬系改善効果の立
ワード」
証:薬理学的 fMRI 研究」
水野敬、田中雅彰、福田早苗、笹部哲也、松
日本小児神経学会主催「日本小 村京子、渡辺恭良「Changes in cognitive
3
functions of students in the transitional period
児神経学会優秀論文賞」
from elementary school to junior high school」
1
200
年月
2013.3
2013.1
2012.5