日本 初公開 アルバム 上野彦馬、弟幸馬と友人たち(ライデン大学所蔵) 職業写真師 上野彦馬の誕生 文久2(1862年) 、まだ未熟な腕前だった彦馬が 日本最初期の写真館を長崎につくりました。 腕利きの外国人写真師に学び、経験を重ねながら 熟練された技を究めていきました。 彦馬の幕末写真を追って、その変遷をたどります。 ◆ オープニングセレモニー ◆ ◆ 記念ギャラリートーク ◆ 【10:00∼】 10月10日 (木) 「初期上野彦馬の作品と作風」 長崎大学名誉教授 姫野順一氏 ◆ 講座とミニトーク ◆ 【10:30∼】 10月10日 (木) 「古写真ガイド入門編 −幕末・明治の長崎にタイムトリップしてみよう−」 ◆ 幕末にタイムスリップ!? ◆ 川野紘二氏・中島恭子氏 (長崎居留地研究会) 【13:30∼15:30】 10月17日 (木) 長崎市立図書館 新興善メモリアルホール あなたの幕末風写真を プレゼントします! 詳細は別途おしらせします。 画像全点を日本初公開! オランダ・ライデン大学所蔵 W.A.コックアルバム (木) (日) 10/10 ∼27 開場時間:10 時∼ 18 時 場 所:多目的ホール 入場無料 長崎市立図書館 会期中休館日:10/15(火)、10/22(火) 長崎市興善町1-1 TEL:095-829-4946 主催 : 長崎大学附属図書館 ・ 長崎市立図書館 長崎大学附属図書館古写真事業25周年記念事業 【全体解説】 ライデンと長崎に残る3冊の 初期上野彦馬アルバムについて 上野彦馬は、文久2 (1862)年、長崎の中島川河畔で職業写真師として上野撮影局を開業しました。こ の古写真展示会は、「職業写真師上野彦馬の誕生」をテーマとし、彦馬の幕末写真に焦点を当てて、彦 馬の初期作品が比較できるように構成されています。写真の出所は、『W.A.コックアルバム』(オラン ダ・ライデン大学所蔵)、『上野彦馬撮影局-開業初期アルバム』(江崎べっ甲店所蔵)、『武藤文庫上野 彦馬幕末アルバム』(長崎大学所蔵)で、初期の彦馬を代表する3冊のアルバムです。また、このよう に彦馬の幕末作品を一同に集めて展示するのは初めての試みです。特に、オランダ・ライデンに残る 『W.A.コックアルバム』の全画像を、彦馬作品としての位置づけを検証しながら、詳しい解説をつけて 紹介するのは国内初のことです。 『W.A.コックアルバム』の原所有者ウィレム・アーノルダス・コック(Willem Arnoldus Kok, 1845-1916) は、オランダ海軍の士官として1864年5月に軍艦アムステルダム号に乗船して日本に出発し、1865年5月 18日に帰国するまでの間に、これらの写真を集めました。アルバムの見返しには、オランダ語で次のよ うに書かれています。 「上級士官W.A.コックの(この)アルバムは、1864年および65年にオランダ海軍の上級蒸気外論船アム ステルダム号による航海中に購入され収集された。このアルバムは1864年6月20日に長崎で購入され、 たとえば上野彦馬、オノサさん、ミトリコさん(ミドリさん)、タマサさんといった友人からもらった肖 像写真や、購入した写真を収載している。W.A.コック」 この記述により、アルバムに収載されている写真は1864年前後に撮影されたことが分かります。つま り、このアルバムには彦馬が開業した最初期の写真が含まれているわけです。このアルバムには、イタ リア生まれのイギリス人写真師フェリーチェ・ベアト(Felice Beato, 1832-1909)の作品も多く含まれて いるのですが、コックの長崎訪問はベアトと重なっていました。ここから彦馬とベアトの交流も垣間見 えてきます。 江崎家に彦馬の幕末アルバムが収蔵されたのは、上野家と同じく、井手家から姉妹を長男の嫁に迎え たことからでした。つまり、江崎家のアルバムは彦馬の私家版であり、収載されている写真は彦馬の保 存版ということになります。時期は、ライデン大学のコックアルバムより少し後の1865年前後です。江 崎家アルバムには、ベアトの大判の作品も収載されていて、彦馬へのベアトの影響をうかがうことがで きます。 長崎高等商業学校教授であった武藤長蔵博士によって収集された長崎大学の「武藤文庫」に含まれる 幕末の彦馬アルバムは、来歴の詳細は不明ですが、江崎家アルバムよりも新しく、1867年前後の彦馬作 品を収載しています。 今回の展示会で3冊のアルバムの写真をつぶさに比較してみると、上野撮影局の撮影スタジオの変遷 が分かり、作風の変容も観察できます。観覧の皆様の新発見とご指摘を期待いたします。 長崎大学名誉教授(前附属図書館長) 姫 野 順 一
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