医療メディエーションと実践者教育

医療コンフリクト・マネジメント,1:13∼30,2012
総
説
医療メディエーションと実践者教育
中
西
淑
国立大学法人山形大学医学部
美
総合医学教育センター
医療メディエーションは様々な学問的な成果を背景にして日本で初めて試みられている医療紛争解決の方略であ
る。法社会学者の和田仁孝の解釈法社会学を基礎学問領域として構築されたものである。医療メディエーションは
患者と医療者,異なる職種間,同一職種間などでなされている医療で発生する様々なコンフリクトを当事者間で協
働的に対応していくためのモデルで,紛争処理のみならず,対人関係や医療の安全・質の改善にも応用できるモデ
ルである。また,一般的な交渉学にみられるような紛争処理交渉の合意領域を想定したり,手続きや結果の判定を
重視するメディエーションモデルとも異なる。こうした理由から様々な臨床現場に応用でき,医療の質・安全への
取り組みでも活用できるものである。研修の教育プログラムは日本医療メディエーター協会の下に3段階,各段階
が設定されており,なによりも理論と実践が一体となることが求められるためにロールプレイを中心とした参加学
習型で行っている。医療メディエーターの医療現場での実績調査は2009年に同協会が行い,その効果が認められた。
さらに医療メディエーションがヘルスケアメディエーションへと発展し,「対話を中心とする協働的文化」や「関
係の質が結果の質をもたらす医療の教育概念」として,理解されることを願う。
Key words: 医療メディエーション,解釈法社会学,医療安全教育,関係の質,当事者支援
するメディエーションモデルとは様相が異なる
はじめに
コンフリクトを認知の齟齬と定義づけ,過程中心的に,
近年,医療領域でも注目を集めているメディエーシ
ョンは,コンフリクト・マネ ジ メ ン ト の 1 つ で あ
る
。
解釈としてのリスクやナラティヴの転回を見つめてい
くメディエーションモデルである
。具体的には,
。メディエーションとは,対立する紛争当事者
「精神と生態学」の記述にあるベイトソンらによる
に対し,中立的第三者としてのメディエーターが当事
「地図は土地そのものではない,名前と名付けられた
者をケアし,援助することにより,当事者自身の紛争
ものとは別物である」,
「自己は物語によって構成され
解決能力を増進し,対話を通した自律的な紛争解決や
る」
,
「私たちが世界や自己を理解するために用いる言
問題克服を促進するモデルである
葉は,「事実」によって規定されない」等に示される
。
医療メディエーションとは患者と医療者,異なる職
社会構成主義のものの見方を含む新しい日本型のメデ
種間,同一職種間などで発生する様々なコンフリクト
ィエーションモデルである
を当事者間で協働的に対応していくためのモデルで,
1.コンフリクト・マネジメントと紛争過程論
紛争調整のみならず,対人関係や医療の安全・質の改
善にも応用できるモデルである
。
また,このメディエーションモデルは,従来型の
。
コンフリクトやコンフリクト・マネジメントは幅広
い学問の分野で研究がなされており,さまざまな分野
でその定義が有り学際的である
。日本では法律学,
BATNA(Best Alternative To a Negotiated Agree-
とりわけ法社会学の分野で精力的に研究がなされてい
ment)や ZOPA(Zone of Possible Agreement)な
る
どの概念を手掛かりに合意を模索する交渉モデルや,
諸要素の解析,解決へいたるプロセスモデルの提示,
手続きや結果をめぐる手続主宰者の評価・判断を重視
紛争解決制度のデザインなど,広範な問題が研究対象
別刷請求先:中西
淑美
〒990-9585
山形県山形市飯田西2-2-2
国立大学法人山形大学医学部
総合医学教育センター
。そこでは紛争の構造分析,それを構成する
とされている。
ここでいうコンフリクトとは,個人と個人から国家
と国家など,主体間の価値や利害の対立・紛争・軋轢
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中 西 淑 美
図1
紛争解決の諸方法(医療メディエーションの位置)
から,個人の心理的・感情的な 藤状態等までをも含
制度側の観点でなく当事者の視点をとる,②認知・解
む概念で,もっとも広くかつすべてに共通する要素と
釈の変容問題として紛争を捉える,③紛争を関係的実
しての意味では,
「認知・見解の齟齬」として定義で
践の動態たる交渉過程」と捉える (p30)の3つの
きる。また,紛争を本来あるべき秩序が一定の価値や
要素を紛争の分析的視点の柱としている。和田は以下
利害の対立により攪乱された除去されるべき現象と捉
の様にも記している。
「個人はある状態を唯一安定的
えるのではなく,
「当事者の視点を取り」
,
「認知・解
な問題像に織り上げてゆくのではなく,様々の,時に
釈の相互変容過程としての交渉過程」として えられ
は相互に矛盾する要素を含む立体的でポリセントリッ
ている
クな,しかもオープンエンドの柔軟なリアリティ像と
(図1)
。マネジメントとは,第7版の
「manOxford Advanced Learners Dictionaryでは,
して構成しているのである。個人の状況認知は,この
agement;the act or skill of dealing with people or
矛盾さえ含むトータルな問題像から,その時々の流動
situation in a successful way」と定義されており,
する関心に応じてある論争(群)に焦点を合わせ,そ
医療メディエーションでいうマネジメントとは,自分
れらを全景に他を後景に退けるという,いわば柔軟に
自身で,そのコンフリクトに対処していく「乗り越え
視点を移動させ得る遠近法を駆使して構成され続けて
の支援」として定義する。
いるのである」 (p39)
。また,法という知の体系の
さて,医療領域におけるコンフリクト・マネジメン
トの理論は,この分野で,わが国を代表する研究者,
和田仁孝教授が
言説構造と権力性,そこでの実践における抵抗につい
ても著述している 。
民事紛争交渉過程論 (1991) 民事
この様な理論を基礎に,1990年代後半頃より,和田
紛争処理論 (1994)等の著書で示された紛争解決理
の他分野の経験,中西の医療紛争の経験と対人関係論
論を基礎に,医療紛争の領域にわかりやすく移し替え
の視点を取り入れて「医療メディエーションモデル」
て紹介したことが始まりである 。つまり,訴訟のよ
がつくられたのである
うに法的・規範的に紛争を定義した上で解決を図るモ
。
この医療メディエーションモデルを
案した背景に
デルと異なり,紛争当事者の心理的 藤から社会的課
は,近年の医療事故訴訟件数の増加や患者の権利意識
題,法的問題に至るまで,統合的に当事者による当事
の高揚の中で,制度的にも裁判に代わる第三者的医療
者のための解決を支援することを目指す理論で,
「①
事故紛争処理の仕組みへの関心が高まった社会状況も
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医療メディエーションと実践者教育
表1 海外の対応人材とメディエーション活用
日本
フランス
イギリス
病院メディエーター
呼 称
医療対話仲介者
担い手
医療職
事務職
福祉職
医療職
活用(普及過程)
活用
診療報酬
配置の法的義務化
メディエーション
活用
義務化
M ediator Hopital
アメリカ
(ミシガン大)
1.苦情管理者
(Complaint Manager) 1.Risk M anager
2. PALS( Patient 2.Patient Advocate
Advice& LiasonService)
1.医療職
2.事務職
1.医療職
2.事務職
いずれも技能として活 いずれも技能として活
用あり
用あり
配置の法的義務化
兼務
医療機能評価機構プログラムの海外への普及
〇台湾:医療者継続教育機関でメディエーター研修モデル導入,2013年開始予定
〇中国:医療人民調解決委員会の研修プログラムとして採用,2012年秋実施予定
あ っ た。1990年 代,特 に 裁 判 外 紛 争 処 理(ADR:
構成」
,「保険を含む補償制度の完備」という3つの条
Alternative Dispute Resolution)が注目されるよう
件が全て満たされる必要がある。さらに加えて,
「事
になり始めていた。この ADR は,その法制度や社会
故情報の解析とフィードバック」,
「医療者の再教育シ
構成の差異はあるにしろ,海外では仕組みがさまざま
ステム」なども制度として 慮に入れる必要がある。
に工夫され,実際に運用されている(表1)
。和田・
しかし,このようなシステムは一朝一夕にできるもの
中西は ADR の発想をさらに拡張して,医療有害事象
ではない。仮に外部で有益な体制がつくられても,病
から発生する認知のずれを紛争化以前の初期から当事
院内,すなわち医療現場で発生した有害事象に対して
者間による自律的解決を目指す試みに活用すべくモデ
初期対応が適切になされなければ,医療が有する不確
ル構築に着手した。医療紛争は他の紛争領域と比べ,
実性などの特異性と死や回復不能な身体的障害を含む
その解決が非常に難しい領域である。この理由として,
事案故の感情的コンフリクトが強いが故に,結局,外
善管なる医療行為を前提にしながら多くが侵襲行為を
部システムが有効に機能しなくなる可能性は否定でき
伴い,また医療の不確実性,複雑性,偶有性のために,
ない。すなわち,医療現場での有害事象発生時の初期
第1に生命・身体というかけがえのない価値が損なわ
対応が,全体の対応システムの基盤として重要な要と
れることから発生する怒りを伴う激しい感情的な対立
なっているといえよう。医療メディエーションモデル
が発生する,第2に有害事象をめぐって過失や因果関
はこのような役目を担うことになる。対話を通じて当
係など事実の認定が法的にも医療的にも困難な場合が
事者間で共通了解を形成し,問題の自律的克服を支援
多い,第3に交通事故などと比べて被保険者数も限ら
するメディエーション(対話促進型)のアプローチこ
れていることから効率的な賠償保険や補償制度の構築
そが,医療メディエーションであるとも言える 。
が難しいこと,によると えている。
メディエーションには,二つの定義がある。一つ目
医療での ADR については,海外では,多様なモデ
は,狭義のメディエーション(制度的手続)としてあ
ルが存在する。①外部法的評価提案型,②外部対話促
り,第三者紛争解決機関手続としてのメディエーショ
進型,③医療機関内対話促進型として整理が可能で,
ンで,紛争解決,賠償額をめぐる合意形成など紛争解
院内の初期対応としての医療メディエーションと共通
決が目的である。たとえば,米国では,医療事故に関
点を有するのは③である 。
して裁判所がメディエーション(この場合調停という
2.初期対応モデルとしての医療メディエーション
訳語が適切であろう)前置主義をとっている州(ワシ
有効な医療事故対応システムが構築されるためには,
「感情的対立の処理」
,「事実認定の意味と仕組みの再
ントン DC やメリーランド州)もあるし,弁護士が調
停人として病院と患者家族の間に入って行う場合もあ
医療コンフリクト・マネジメント
Vol. 1
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中 西 淑 美
る。我が国で推進されている医療メディエーションへ
理解するだけでも,そうした理解が誤っていることは
の批判の多くは,この狭義のイメージに基づく批判が
明らかになる。多数の参 文献の議論で示されている
多く,焦点がずれているといわざるを得ない。二つ目
ように,コンフリクトをめぐる学問のパラダイムシフ
の定義は,広義のソフトウェアとしてのメディエーシ
トの先端に医療メディエーションは位置している
ョンである。これは,関係調整のソフトウェア・モデ
前述したように,医療メディエーションは,説得を
ルとしてのメディエーションであり,英米では小学校
したり,情報をどちらかの当事者に有利にあるいは不
や中学校で教科として子供たちに教えられたり,職場
利に操作したりするものではない。当事者の認識が,
の管理職の関係調整機能として研修がなされるなど,
事故をめぐる客観的事実,さらには相手方当事者の認
社会各層で後半に研修されている。この場合,目的は
識の語りを踏まえて,自省的に変容していくプロセス
対話促進による関係調整である。我が国の院内医療メ
を促進するモデルである。ここで指摘しておかねばな
ディエーションはこの意味にほかならない。また,こ
らないポイントは,医療メディエーションは,対話の
の場合,メディエーターという呼称が不適切という批
中で当事者に「再帰的な問いかけ」を求めている点で
判もあるが,海外でも,上記の職場メディエーション
ある。即ち,他者を通じて自分自身との対話の「場」
では,インハウス・メディエーターと呼ばれることも
が形成される点である 。
あるし,フランスでは2002年の無過失補償制度を規定
現在,QOL 研究など,従来のアプローチではとら
する法律の中で,各病院にメディエーターを置くこと
えきれない現象が科学的対象として見直され,主観評
が法的義務として位置づけられている。フランスでは,
価の科学的検証が発展してきている。今後の医療の大
呼称は「病院メディエーター」であり,メディエータ
きな流れの1つとして患者の主観評価の変動を科学的
ーの語が用いられている。ほとんどの場合,医師や看
にどのように研究するかという課題がクローズアップ
護師など医療職が病院メディエーターとして配置され
されている。さまざまな質を捉える際,指標やアウト
ている。このように海外を見ても,これを院内の初期
プットに重きが置かれることが多いが,医療メディエ
対応モデルの担い手をメディエーターと呼ぶ例は,決
ーションでは,その関係的な主観評価の変容を捉えて
してまれではない。表1に示したように,海外の対応
いくプロセスを重視する。質に関しては,医療安全の
人材とメディエーション活用状況を参照されたい。役
項で後述することにするが,主観的評価をめぐる課題
割が限定的な国,制度化している国,今後に発展が期
の顕著なものが,まさに,コンフリクト状況の様相で
待される国など,その運用は様々であるが事実である。
あることは間違いなく,その変容のあり方は,医療の
医療臨床メディエーションは「医療」の基盤である
質への患者評価への影響過程として,非常に重要であ
対話のソフトウェアである。そもそも,医療は対話を
る。
基盤としている。その意味では,医療臨床メディエー
このモデルでは,何よりも相手の当事者の話を「よ
ションとは,広義の医療行為のひとつであるともいえ
く聴く」
(listen for the stories)ことを重視してい
る。
る
⑴ 医療メディエーションへの誤解
対して医療者が専門家としての自律性(autonomy)
。表層的な紛争対応ではなく,患者・家族に
このモデルについて,クレームバスターだとか,医
に立脚し,受容と共感をともなった再帰的な思 過程
療者の擁護などと単純化して えられていることがあ
を自身において行いながら,情報の開示と交換・共有
る。あるいは,このモデルが持つ理論や技法に対して,
を行うことを医療メディエーションは求めている。別
クレーム処理のハウツーモノではないか,方法論が主
のかたちで表現してみると,専門家にとっての専門知
観的であると苦言を呈す人もいる。しかし,先に挙げ
識・技術・経験とそれを基にする医療行為より生じた
た和田のコンフリクトの過程理解や背景の社会科学理
有害事象とそれへの内省(反省),他方では病気や治
論の基盤をきちんと読みこなし理解したうえで,その
療に伴って生じた有害事象が患者・家族にもたらす生
知見の上に医療メディエーション概念を位置付ければ,
活や人生の価値等への影響の2つの要素を相互に共有
そうした表層的な批判は出てこないはずである。批判
し理解し合い,専門と非専門を埋める過程といえよう。
は,批判すべき相手の理論を正確に理解したうえでな
さて,医療メディエーションにおける「医療事故後
されなければ,意味を持たない。また,そこまで踏ま
の対応において前提とされるべき重要な理念」に関し
えなくとも,医療メディエーションのモデルを正確に
て,医学界新聞で紹介されたことがある。ローズマリ
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医療メディエーションと実践者教育
ー・ギブソン氏の論
である。
(http://www.igaku-
shoin.co.jp/paperDetail.do?id=PA02939 03)
族の指摘を参 に,独自に工夫され練り上げられてき
たまったく新たな倫理的 え方であり,モデルである。
ここで提示されたことは,まさに我が国で広がりつ
海外に比肩するもののない,この論稿で示されたこと
つある医療メディエーションの理念と軌を一にするも
以上に,精緻で微細な倫理的配慮を伴う独自のモデル
のであり,常に医療メディエーションの教育・実践に
としてそれは成長してきている。
おいて強調されているものである。これらは,まさに
日本の医療メディエーション・モデルについての誤
我が国で展開されつつある医療メディエーションの理
解を除けば,ローズマリー・ギブソン氏の示す患者家
念と実践の描写そのものであるため,医療メディエー
族対応の理念は,日本の医療メディエーションの理念
ションを推進しつつある者として,医療メディエーシ
そのものであり,今後の医療メディエーションのいっ
ョンの理念の再確認のために,下記に掲げる。
そうの推進のための力強い応援にほかならない。
・明らかになった事実は担当医あるいは責任者が伝
える
⑵ 医療メディエーションモデルとは
前項で述べたように,医療メディエーションとは,
・メディエーターは代理をしたり肩代わりはしない
患者と医療者の対話の促進を通じて,情報共有を進め,
・その場限りの対応で終わらせない
認知齟齬(認知的コンフリクト)の予防,調整を支援
・家族・患者への継続的なケアを提供する
する関係調整モデルである。
・両当事者への赦しと癒しの場の提供をする
・情報共有と誠実な対応のみが患者家族・医療者双
方にとってのケアとなる
・解決を急がず,継続的な終わりなき対話を支援す
る
医療メディエーションの研修を受けた方はすべて,
対話を促進し,当事者の再帰的思 を自ずと湧出す
るためには,医療メディエーションモデルでは4つの
事柄が循環することを主張している。すなわち,①ケ
アと倫理,②真実開示,③医学的適応と判断,④事実
検証を循環することである。そして,実際の過程では,
以下の7つの事項が重要である。
また医療メディエーションを正しく理解している者な
第1に解決は当事者自身が練り上げていき,合意に
ら,誰でも,この論 のあるべき理念を具体化するモ
よってのみ達成される。第2に対話の進め方は柔軟で
デルこそが医療メディエーションであり,常にメディ
あり,また,解決内容も違法でない限り,謝罪も含め
エーター役割の目標理念として強調されている点であ
自由に決められる。第3に当事者が向き合い適切な対
ることは明白であろう。
話がなされることで,疑念が払しょくされ,理解が促
この論 で問題なのは,著者が日本の医療メディエ
進される。第4に過去の出来事より,将来へ向けた
ーションの理念やモデルを知らないため,単純に「患
造的な解決を える。第5に対立点を強調するのでは
者と医療者の間に割って入り医療者の肩代わりをする
なく,共通する,共存しうるインタレスト,ニーズに
存在」であるかのように捉えている点である。これは,
焦点を合わせる。第6に対面的に向き合うことで率直
我が国の医療メディエーターの働きとはまったく異な
なコミュニケーションが可能となる。第7にメディエ
ることは言うまでもなく,むしろ最悪の関わり方とし
ーターは,中立的なケアの提供を通じ,対話を促進す
て否定されているものである。我々が力説しているの
るが,介入は控え,あくまでも当事者自身の自助能力
は,医療メディエーターを一人作ればいいという場当
の回復援助と合意形成援助に努める,という7つの事
たり的なことではなく,組織で取り組むべきことであ
項である。
り,医療人としての基本的な平和教育である。人が人
さらに,医療メディエーション過程を科学的,合理
を尊重し,お互いに思いやり,情報を共有しあい,そ
的,相互承認的におこなうための分析的手法として,
の人を観る(診る・看る)ことの重要性である。この
紛争構造理解を容易にする Felsteiner らの要求生成
あたりは,医療メディエーションを真摯に学び実践を
の NBC(Naming,Blaming,Claiming)モ デ ル,
していれば,医師教育にも,患者教育にも,すべての
ハーバード交渉モデルを社会構成主義の観点から脱構
医療者教育に必要な要素であると想起できよう。
築し深化させた構造分析モデルを活用する
。拓か
我が国の医療メディエーションは,ローズマリー・
れた対話の「場」を促進し,そこで語られる様々な言
ギブソン氏が示した「患者家族対応の理念」を,まさ
葉・思い・文脈を医療分野に社会構成主義的に適合さ
に現場で体現すべく,現場の医療者・患者・被害者遺
せた独自の IPI(Issue,Position,Interest)の重層
医療コンフリクト・マネジメント
Vol. 1
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中 西 淑 美
円錐の構造過程分析を用いていくのである 。環境設
mediation)
定,非言語コミュニケーション,開放型質問・閉鎖型
これは,最終的には当事者の合意で解決する点は,
質問などの対話スキル,受容・共感・傾聴等の聴くス
同じであるが,その過程で,メディエーターが,積極
キル,問題解決/認知変容のための理念に基づいたカ
的に介入したり,専門家としての自分の判断を示した
ウンセリングスキル等を含んでいるが,それらは認知
りするタイプのメディエーションモデルである。感情
ベースの情報共有と感情ベースの共感醸成の相互作用
的なコンフリクトの強い医療紛争では不適合と思われ
の中で複雑に構成されていく個人の紛争構造をナラテ
るが,我が国では,裁判所の調停や,第三者機関とし
ィヴを通して受容しながら,対話を拓いていくための
ての医療事故 ADR など,事実を確認し解決案を第三
補助技能という位置づけである。
者が提示する形の評価型のメディエーションのタイプ
こうしたメディエーションモデルの基本的 え方や
が多い。
スキルについては,北米での研究や実践が積み重ねら
④ ナラティヴメディーション(Narrative mediation)
れており,その過程で,大きく分けると4つのメディ
筆者らが提唱しているメディエーションの基礎であ
エーションモデルが提起されている 。
り,IPI 展開も,実はもともとのハーバードのモデル
① ト ラ ン ス フ ォ ー マ テ ィ ヴ モ デ ル(Transfor-
を,ナラティヴ・アプローチの観点から読み替えたも
mative mediation)
のである。
「現実」は語ることを通して認知構成され
紛争当事者の状況認知を変容させることに主眼を置
るものと捉え,当事者相互が問題に関する認知を「語
くモデルで,バラック・ブッシュ(Robret A.Baruch-
りなおす(restoring)」ことにより,新たな現実の認
Bush)とフォルジャー(Joseph P.Folger)によって,
知を構成していく過程としてメディエーションをとら
提起されたもので,
“The Promise of M ediation”と
える。ナラティヴセラピーにおける「外在化」や「無
いう本にまとめられている。特徴的な key word は,
知のアプローチ」などを応用したメディエーションの
Empowerment(エンパワーメント)と Recognition
見方である。
(気づきの促進)である。思いをそのまま共感的に受
さて,感情的 藤が深く,専門的にも複雑な医療紛
け止め,承認し,将来志向的で 造的な視点への変容
争に対応するためには,場面に応じてこれらのモデル
を見つめていく。具体的な問題の解決それ自体よりも,
を組み合わせた,複合的メディエーション過程が必要
その前提となる紛争当事者の認知の変容に主眼をおい
になる。ナラティヴメディエーションを基盤に,感情
たメディエーションモデルである。
的 藤への対処が重要な初期段階では,トランスフォ
② ファシリテーティヴモデル(Facilitative media-
ーマティヴメディエーションのモデルが,それぞれ適
tion, Problem solving mediation)
していると一般には言える。しかし,我々が構築した
ファシリテーティヴメディエーションでは,今,両
医療メディエーションモデルは,これらモデルの単純
当事者の間に存在している問題そのものに焦点をあて,
なつぎはぎではなく,よち徹底した社会構成主義にお
その解決を
えていく。ここでは,IPI 展開という分
けるナラティヴ・アプローチを基盤理念とし,すべて
析手法を用いて,争点化している表面上のイシューで
のモデルを脱構築的に統合した理論モデルであり,ま
はなく,より深いニーズやインタレストといったレベ
た北米型モデルが生まれた文化とは異なる日本の文化
ルでの「課題」を えていく。問題を,深いしばしば
や制度,医療体制に適した独自の,まったく新たなメ
不可視の欲求であるインタレストの観点から探求し,
ディエーションモデルということができよう。
再定義していき,解決に向かうための真の「課題」を
⑶ 医療メディエーションの特徴
当事者自身の力でみつめていけるように,対話促進し
アメリカでのメディエーションの実情を Hyman ら
ていくメディエーションモデルである。ここで重要な
の論文にみることができる が,日本型医療メディエ
ことは,「人」と「問題」を切り離すこと,双方が納
ーションにおける大きな違いは,当事者性とインタレ
得可能な win/win 解決をめざすこと,将来にとって
ストに関する理論展開である。具体的には,医療メデ
当事者の望むベストな解決を目指すことになるモデル
ィエーションを「当事者の視点に立つ」当事者間の動
である。そのため,対話促進型モデルでありながら,
態的関係および認知変容過程として捉えている点であ
問題解決メディエーションとも呼ばれている。
る。このことから以下の点が「医療メディエーショ
③ 評 価 型 メ デ ィ エ ー シ ョ ン モ デ ル(Evaluative
ン」の特徴としてあげることができる。
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医療メディエーションと実践者教育
①
社会構成主義的認識論に基礎をおいている
ができる 。
「医療安全管理者は,医療機関の管理者
②
対話過程を,情報共有と認知変容によって,現
から委譲された権限に基づいて,安全管理に関する医
実像が変化するプロセスとして理解する
③
④
⑤
⑥
療機関内の体制の構築に参画し,委員会等の各種活動
ナラティヴが交錯する中で相対的な事実をめぐ
の円滑な運営を支援する。また,医療安全に関する職
る客観性と発展性を巻き込みつつ過程に組み込ま
員への教育・研修,情報の収集と分析,対策の立案,
れてゆく
事故発生時の初動対応,再発防止策立案,発生予防お
対話過程により,当事者の,当事者のための当
よび発生した事故の影響拡大の防止等に努める。そし
事者による動態的な認知変容が進行し,自律的な
て,これらを通し,安全管理体制を組織内に根づかせ
解決へ至る
機能させることて,医療機関における安全文化の醸成
対話を促すスキルは知識的技能を超えた,暗黙
を促進する」とし,以下の項目を挙げている。
知・身体知としての能力的技能に昇華されること
1)安全管理体制の構築,
が必須である
2)医療安全に関する職員への教育・研修の実施,
認知のずれへの初期対応に重点を置き,感情に
対する丁寧で慎重なケアと倫理に重きを置く
⑷ 医療の質・安全との関係
3)医療事故を防止するための情報収集,分析 ,
対策立案,フィードバック,評価,
4)医療事故への対応,
Juran は,質とは効用への適合である(Quality is
fitness for use.)と定義している。ISO(International
5)安全文化の醸成,であり,医療安全面にも改善
としての質の要求が含まれている。
Organization for Standardization)では,質とは,
医療メディエーションは有害事象が発生し,当事者
本来備わっている特性の集まりが要求事項を満たす程
間でコンフリクトが発生した場合に,当事者間の対話
度,と定義している。最近は,質を製品・サービスの
を介して事実検証や医学的検討などの検証を行いなが
質に止まらず,組織の質,職員の質,環境負荷に関す
ら,当事者自身が認識を変容し,新しい「関係性の
る質,すなわち総合的質として捉えられている 。さ
質」として信頼関係を構築してゆく過程とみることが
らに,Kimm は質として「思
の質」
,
「行動の質」,
できる。この対話はナラティヴを土台としてなされる
「結果の質」
,「関係の質」という4つの質を提案して
ので,両当事者の主張などに対して行う IPI 分析によ
いる 。特に「結果の質」を高めるには「関係の質」
り安全や質の問題点が具体的なイシューとして抽出さ
を高めることが重要性について述べている。この関係
れる。そこでは個人の資質,組織やチームの能力,組
性とは「人との関係」をさしている(筆者は,大阪大
織管理の問題も具体的な形で現れる。このように質管
学時代に,
「医療対人関係論」として,医療メディエ
理における「関係性の質」を改善する側面を医療メデ
ーション概念によるコンフリクト・マネジメントのシ
ィエーションは有しているといえよう。さらにコンフ
ラバスを作成し学生に提供していた教育歴がある )
。
リクトは様々な場面で生じ,おのおのに対して医療メ
構造,過程,結果で質をとらえる えもある。医療
ディエーションが行われ,リスクマネジメント,コン
の質を診療の質,付帯サービスの質,提供体制の質,
フリクト・マネジメント,クライシスマネジメントに
経済性に分けることもできる。
ついての課題も明らかにされる,と えている。
質の管理の基本的な えは,ばらつきを一定の限度
医療メディエーションでは,事実の検証と医学的検
内にする標準化と平 値を上げ続ける継続的改善であ
証を双方向的に紡いでいくことは前述した。特に,医
る。医療では質向上方法としてプロセスアプローチを
療側が見落としがちな患者側が対話のなかで示す疑問
クリティカルパス,診療ガイドラインなどで,またア
や,見解のなかに,患者・家族の視点から見た医療の
ウトカムアプローチとして臨床指標,クリニカルイン
質・安全や安心の医療への示唆を活かすためには,医
ジケーター,例えば院内感染症発生率等を設けてい
療メディエーションによるナラティヴ転回が重要であ
る 。有害事象に対しては前述以外にヒューマンエラ
る。医学的検証が誠実に正直に行われ,医療側の視点
ーとシステムエラーとに分け,さらに組織構成員の資
と患者側の視点が双方向的に情報共有されるなかで,
質や組織管理体制として質の検討がなされている 。
有害事象をめぐる認識も共有され,将来の医療安全,
医療安全面からは,平成19年に策定された厚生労働
医療の質の改善へ向けた示唆も生まれてくる。こうし
省の医療安全管理者の業務指針にその内容をみること
た医療安全を えていく上で,両当事者のナラティヴ
医療コンフリクト・マネジメント
Vol. 1
19
中 西 淑 美
から,医療の質・安全・改善につなげることを時系列
ては,① IC 場面での関与,②告知場面での関与,③
表を作成し医療安全分析で検証していくことは前提に
終末期における関与,④診療・看護・介護・日常場面
なり,そのうえでの IPI 分析をすることになる。また,
での関与がある。
その事実検証を,医療者・患者ともに情報の開示と共
⒝ 医療メディエーターの中立性
有を図っていくことで,はじめて,医療安全と質とい
医療メディエーターの中立性とは,構造的中立性で
う当事者から見た不可視の状況を可視化していくこと
なく,信頼に基づく不偏性を保つことである。このた
が可能になる。こういった医療安全に,医療メディエ
めに行動規範が日本医療メディエーター協会のホーム
ーション概念による原因分析により,信頼が再構築さ
ページ http://jahm.org/に示されている。
れることになる。従来型の医療安全対策や分析手法に
⒞ 医療メディエーターの倫理
加え,医療メディエーション概念による NBC,IPI
医療メディエーターの倫理とは,①医療機関側に
分析との関係により,当事者のナラティヴによる安心
“逃げない,隠さない,ごまかさない”の三つの真実
安全の管理手法を,Narrative Based Safety Man-
開示の対話姿勢を求める。②どちらかに有利になるよ
agement(NBSM :2010年日本医療・病院管理学会
うに意図しない。③両当事者を主体とし,双方が協調
にて中西提案)という
的に対話することを支援する。
。
3.医療メディエーション研修
⑴ 医療メディエーターとは
医療メディエーターは医療者と患者間で発生する院
内の苦情や事故後の初期対応の際に,また,医療者間
⒟ 医療メディエーター(医療対話仲介者)の約
束・行動倫理
① 医療メディエーターの約束1―伝言的仲介でな
く直接対話を促進させる
のコンフリクト状況の時に,医療メディエーションの
まず,メディエーターの役割の理念となるのは,あ
アプローチを用いて両当事者間の対話の橋渡しをする
くまでも,当事者が自分自身で問題を乗り越える,そ
役割を担う人である。その際に,医療メディエーター
の基盤となる支援にほかならない。
「何かを提供する」
は介入や指示・指導は行わず,さらに法律的な解決に
支援ではなく,「何かをその人自身が自分の中から見
も関与しない。当事者間の溝は在るものとして,無理
出すこと」への支援である。答えは第三者の中にある
に溝を埋めようとはしない。そこに何の主張があるの
のではなく,常に当事者自身の中にある。対話の場を
か,それは事実の主張なのか,要求の主張なのか,感
設定し,医療者の言い分を患者に伝えたり,そのよう
情の主張なのか,怒りの元になる感情の主張は何なの
な伝言による間接的な仲介はしない。問題を克服でき
か,両当事者の思いや文脈と事実の狭間に何が横たわ
るのは当事者だけであり,その当事者を尊重し支える
っているのかに傾聴する。語りえぬものにこそ,真実
というケアの理念をもつ。
がある。これを対話の中で可視化し,当事者が認知す
ることを支援する。このために参加型学習による体験
② 医療メディエーターの約束2―判断・評価・意
見の表明や提案はしない
的習得学習が不可欠である。その上に医療メディエー
メディエーターは,あくまでも当事者の対話による
ションの「専門知識」
,「専門技法」の習得と「倫理性
問題克服を支援する役割であるから,自分の意見や見
の涵養」を求めている。
解の表明,評価や判断の提示などはしない。その根拠
⒜
実践者としての医療メディエーション
医療メディエーターとしては,2つのレベルがある。
は,第1に,そのような発言は簡単なものでもあって
も,いずれかの当事者に何かをしてあげることになり,
いずれもソフトウェアとして役職としてのメディエー
患者と医療者の当事者自身による問題克服を尊重する
ターであり,第一のレベルは,日常レベルの安心・安
メディエーターのケアの理念に反することになる。第
全にかかわる情報交流のための対話の支援である。第
2に,医療メディエーターは,病院の職員であるから
二のレベルは,事故や苦情の対応時の説明や,正直な
こそ,そのような中身に踏み込んだ発言をしてはなら
対話の支援である。
ない。そうした発言は,病院側に立つことになったり,
そのため,汎用対話モデルとしてのメディエーショ
患者側に立つことにもなったりすることになるため,
ンとして,第三者的立場で臨むセッションとしてのメ
メディエーターの役割理念および不偏性を損なうこと
ディエーションと対話の三極構造をメタ認知次元で保
になる。第3に,患者側ないし医療者側に,そうした
持するセルフメディエーションがある。運用場面とし
発言は友好的発言や敵対的発言であると認識されるこ
20
医療メディエーションと実践者教育
図2
現行(平成24年度)医療コンフリクト・マネジメントセミナー概要図
とになり,メディエーターへの信頼が失われ,メディ
の支援のかかわりがプロセスとして受容されるように
エーションの場が崩れてしまうことになりやすいため
なる(過程的中立性)。事故に関わったり,苦情を向
である。
けられた医療者側に対してもケアの姿勢で共感的に受
③
医療メディエーターの約束3―解決ではなく,
情報共有と関係構築を目的とする
医療メディエーションの目標は先にも述べたように,
け止めていかねばならない。
医療メディエーションの過程では,メディエーター
は患者や医療者の「言葉でなく心を聴く」姿勢の中で,
関係の再構築である。メディエーターの目的は,
「つ
その深い想いを見つめ,互いに表層の対立の背景にあ
なぐこと」であって,
「解決すること」ではない。
る何かに気づくことを支援していく。そのために,メ
先にも述べたように,メディエーターは,あくまで
もケアの理念を基盤に,患者と医療者の情報共有によ
ディエーター自身,患者や医療者の深い想いに気づき,
寄り添うセンスとマインドを身につけていなければな
る関係構築を支援することが目標である。メディエー
らない。そうした姿勢が身についたとき,はじめて
ターの支援によって,深い情報共有がなされ,関係が
「スキル(技法)
」が「ウィル(姿勢)」の真の反映と
構築されていけば,自然に,患者と医療者との間で,
して表れてくる。
問題が克服されていく可能性が開けてくる。直接,医
これは,医療メディエーションの学びが,メタ認知
療者に向き合い,そして真摯な対応を受けることで初
的アプローチによるプロフィシャンシー
めて,患者も問題を乗り越えていけるのだということ
(Proficiency)
,す な わ ち コ ン ピ テ ン シ ー(Compe-
を忘れてはならない。メディエーターはあくまでも黒
tency)の高い集団における能力の熟達度の醸成を目
子の役割に徹する必要がある。
指す教育理論ともつながってくる。このプロフィシャ
④
医療メディエーターの約束4―分け隔てのない
ケアの姿勢で心を聴く
メディエーターは,事故や出来事に関わって傷つい
ンシーについては,いずれ論 を上梓する予定である
が,このこと理解するためには,中島敦の名人伝を題
材にした和田の議論が参
になる
。想像力のない
ているすべての人(患者だけでなく事故に関わった医
単純化された技術の習得でなく,
「姿勢」の発現とし
療者も含む)に,分け隔てのないケアの姿勢を基礎と
ての「スキル」とは何かについて,適切な教育研修を
する。これがメディエーターの関わりに偏りのない姿
受ける中で,メディエーターは体感的に理解し,その
勢という意味での不偏性を供与する。この姿勢があれ
姿勢の涵養に努める必要がある。そうした姿勢こそ医
ば,構造上は中立でなくとも,患者側との間でも,メ
療メディエーターへの信頼の糧となっていくのである。
ディエーターへの信頼が構築され,第三者的な位置で
さて,医療メディエーターは免許資格ではないが,
医療コンフリクト・マネジメント
Vol. 1
21
22
<基礎編>
医療メディエーター養成講
座 基礎編
看護師,医師など,医療機
関 の 現 職 員(事 務 職 も 含
む)で,医 療 コ ン フ リ ク
ト・マネジメントに興味の
ある方。また,医療の質の
向上の一端として,医療現
場で実践できる方。
24名
プログラム
対象
定員
24名
看護師,医師など,医療機
関 の 現 職 員(事 務 職 も 含
む)で,医 療 コ ン フ リ ク
ト・マネジメントに興味の
ある方。また,医療の質の
向上の一端として,医療現
場で実践できる方。
■このプログラムは,日本
医療メディエーター協会の
認定プログラムです。
協調的交渉のための実践的
な医療コンフリクト・マネ
ジメントとは何かを学ぶ
1)医療コンフリクト・マネ
ジメントと医療 ADR につ
いて
2)医療メディエーションの
定義と構造
コンフリクトとは何か,コ
ンフリクト・マネジメント,コンフリクトとは何か,コ
メディエーションとは何か,
医療メディエーションの理 ンフリクト・マネジメント
と医療安全の関係,メディ
論と技法の基礎の導入を学 エーションとは何か,医療
ぶ。
※「導入編」はインターネ メディエーションの理論と
技法の基礎を学ぶ。
ット配信のオンデマンド講
義もあり
医療メディエーター養成講
座 導入編
医療コンフリクトマネジメ
ント総論
■このプログラムは,日本
医療メディエーター協会の
認定プログラムです。
1日目
協調的交渉のための実践的
な医療コンフリクト・マネ
ジメントとは何かを学ぶ
1)医療コンフリクト・マネ
ジメントと医療 ADR につ
いて
2)医療メディエーションの
定義と構造
2日目
協調的交渉のための実践的
な医療メディエーションの
理論と技法を学ぶ
1)医療メディエーションの
具体的技法についての総論
2)スキルプレイとロールプ
レイを通して,医療メディ
エーションを学ぶ
※事前に,インターネット
にてオンデマンド講義(導
入編)を各自ご受講いただ
きます。内容は90分程度の
講義映像です。
※プログラムは変更になる
場合があります。
概要
サブタイトル
タイトル
<導入編>
医療メディエーション研修の内容
医療メディエーター 養成講座
【基礎編】の修了者を対象にし
たフォローアップ講座です。今
回は,基礎編で学んだ内容の中
でも特に「IPI 分析」に光を当
て,紛争の IPI 構造から事案の
分析演習まで,丁寧に復習して
いきます。
■このプログラムは,日本医療メデ
ィエーター協会の認定プログラムで
す。
1日目
両当事者の紛争過程に沿った医療コ
ンフリクト・マネジメントとは何か
を学ぶ
2日目
医療事故ケースから,医療メディエ
ーションの理論と技法の実践を学ぶ
※プログラムは変更になる場合があ
ります。
両当事者の紛争過程に沿った医療コ
ンフリクト・マネジメントとは何か
を学ぶ。医療苦情事例を展開し,医
療メディエーションの理論と技法の
実践を学ぶ。
<I>Intermediate(旧継続編)
医療メディエーター養成講座 Iコ
ース
∼医療メディエーションの理論と技
法∼
■このプログラムは,日本医療メディ
エーター協会の認定プログラムです。
実際の事案を通して事例を展開し,
⑴受け止める:1対1の直接対応,
⑵進める:初期ケアリング対応,⑶
広げる:高次初期の対応,⑷仕上げ
る:合意へ向けての高次後期の対応
を学びます。
また,RCA,メディカルセーファ
ー,SHELL,4M 4E な ど,リ ス ク
マネジメント的な事故分析の知識や
経験を生かすことができ,それを医
療メディエーションの中に反映させ
ていくことを学びます。
1.事例演習
2.事例演習∼受け止める
(直接対応)
3.事例演習∼進める(初期ケアリン
グ対応)
4.事例演習∼広げる(高次の対応)
5.事例演習∼仕上げる(合意に向け
て)
6.ディスカッションと振り返り
※プログラムは変更になる場合があ
ります。
ロールプレイを中心として,患者側
の思い,医療者側の思いから,医療
の質や安全を真摯に見つめ,スキル
からウィルへ向けての医療メディエ
ーション,そして医療コン フリク
ト・マネジメントとは何かを理論と
実践を通して融合していきます。
<A>Advanced(旧応用編)
医療メディエーター養成講座 Aコ
ース
∼事例を展開する医療メディエーシ
ョンの実践∼
IPI 分析編について は,IPI に
ついてまだ理解が足りない…倫
本講座をお申込いただく時点におい
理面で適応したい,院内のコン
て,
フリクトに使いたい…と感じて
①本講座の「継続編」
,もしくは他
いる方,IPI 分析の練習をした
本講座をお申込いただく時点におい 機関で同内容の講座を修了後,6か
い方に倫理編では,臨床倫理4
て,
月以上経過していること。
分割法で事例検討し,そこから,
①本講座の「基礎編」
,もしくは他 ②院内の紛争において,継続編修了
臨床倫理におけるメディエーシ
機関で同内容の講座を修了後,6か
後メディエーション実践経験が3例
ョン概念の活用,臨床倫理4分
月以上経過していること。
以上あること。
割法で事例検討し,そこから, ・コンフリクトとは何か
③医療コンフリクト・マネジメント
臨床倫理におけるメディエーシ ・協調型交渉とメディエーショ ②院内の紛争において,メディエー
ション実践経験が3例以上あること。 の概念について知識と理解があるこ
ョン概念の活用,IC ・終末期 ン
以上の条件を満たした方を対象に,
と。
医療・医療安全の視点から,グ ・ IPI 分析(復習)
講師による事前課題審査を行います。④今後も院内でメディエーションを
ループ討論し共有します。
・事例演習
本審査に合格された方のみご受講い 実践することが予測され,院内で普
・協調型交渉と医療メディエー ※受講者の申込状況により,プ ただけますので,予めご了承くださ 及・啓発に積極的に取り組めること。
ション
ログラム内容の変更があります。
い。
⑤積極的に医療コンフリクト・マネ
・紛争の NBC と IPI 構造(イ
※基礎編の受講から1年半以上たっ ジメントについて学ぶ意欲があるこ
シュー,ポジション,インタレ
ている場合には,基礎編フォローア と。
スト)
ップの受講,もしくは基礎編の再受 以上の条件を満たした方を対象に,
・ IPI 分析(復習)
講をお勧めいたします。
講師による事前課題審査を行います。
・事例演習・ある医療処置を題
本審査に合格された方のみご受講い
材に,演習・グループ討論し,
ただけますので,あらかじめご了承
語りを見つめていきます。
ください。
※受講者の申込状況により,プ
ログラム内容の変更があります。
24名
30名
24名
18名
■ IPI 分析編:医療メディエー
ター養成講座【基礎編】の修了
者を対象にしたフォローアップ
講座です。今回は,基礎編で学
んだ内容の中でも特に「IPI 分 医療メディエーター 養成講座
析」に光を当て,紛争の IPI 構 【基礎編】の修了者を対象にし
造から事案の分析演習まで,丁 たフォローアップ講座です。医
寧に復習していきます。
療メディエーションの理論や具
■倫理メディエーション編:日 体的技法など,基礎編で学んだ
常の診療や看護の場面での意思 内容を振り返り,スキルプレイ
決定におけるメディエーション とロールプレイを通して理解を
を学びます。
深めていきます。
■医療安全編:医療安全と改善
などに役立てる,事故につなが
る失敗学の視点でコンフリクト
とメディエーションを学びます。
医療メディエーター養成講座・
基礎編の修了者を対象にしたフ
ォローアップ講座です。フォロ
ーアップの中でも高いレベルを
目指し,Iコース合格に向けて
徹底的に理論や技法に対する理
解を深めていきます。Iコース
やAコースを修了している方に
も,じっくり復習する機会とし
てお勧めの講座です。
<基礎編フォローアップ 各編> <基礎編フォローアップ 復習>
基礎編修了者のためのフォロー 基礎編修了者のためのフォロー
アップ ∼各テーマ編∼
アップ ∼復習編∼
表2
中 西 淑 美
医療メディエーションと実践者教育
表3
年 度
(平成)
報告件数
9年度以前
社団法人全国社会保険協会連合会有害事象報告・処理件数
継続中
裁判所扱件数
係争中
折衝中
45
4
1
40
10年度
43
1
1
41
11年度
45
3
2
40
3
12年度
49
2
47
1
1
2
13年度
45
3
2
40
1
1
3
14年度
43
2
3
2
36
15年度
46
2
8
8
28
16年度
51
3
4
13
31
17年度
39
2
2
28
7
18年度
46
5
2
31
8
19年度
41
3
33
5
20年度
27
3
2
18
4
21年度
24
2
20
2
22年度
28
1
1
25
1
計
572
20
38
184
330
表4
証拠保全
解 決
調停
1
地裁
高裁
最高裁
計
2
2
4
1
1
3
3
3
2
6
8
2
2
4
2
3
2
2
2
3
6
2
2
2
1
8
26
1
7
43
重症度と紛争・病院内メディエーションの状況
日本医療メディエーター協会会員における調査検討
調査期間:2009年の5∼6月の2回の追跡調査 有効回答数:2009年;156票(回答率50.2%)
事象重症度
(レベル)
発生数
紛争数
(%)
メディエーショ
ン実施数(%)
合意解決数
(%)
決裂数
(%)
メディエーショ
ン中(%)
5
132
32(24.2)
22( 68.8)
9(40.9)
5(22.7)
8(36.4)
4b
75
27(36.0)
14( 51.9)
10(71.4)
2(14.3)
2(14.3)
4a
170
8( 5.3)
9(100.0)
7(77.8)
1(11.1)
1(11.1)
3b
1182
60( 5.1)
42( 70.0)
26(61.9)
3( 7.1)
13(31.0)
3a
6213
35( 0.6)
11( 31.4)
9(81.8)
2(18.2)
0(0)
2
21504
25( 0.1)
15( 60.0)
11(73.3)
1( 6.7)
3(20.0)
1
53400
25(0.05)
14( 56.0)
12(85.7)
0(0)
2(14.3)
苦情・クレーム
5076
291( 5.7)
248( 85.2)
236(95.2)
2( 0.8)
10(4.0)
医療メディエーションの理論と実践についての上記教
日本医療機能評価機構の安全推進協議会教育プログラ
育モデルによる質保証のための認定制度も構築されて
ム部会の橋本廸生教授から教育プログラムの作成依頼
いる。医療メディエーター認定の対象は,医療機関内
を受けて2004年に試行プログラムを実施した
で医療メディエーションを実践する医療機関職員で医
して,2007年度からはプログラムそのものの質的体系
療有資格者に限定しない。
化を行い,現在の「導入・基礎編」(半日間・2日間
⑵ 研修内容とプログラム
20時間)
,「Iコース(旧継続編)
」(2日間16時間),
。そ
2000年,九州大学大学院での指導教官であった和田
「Aコース(旧応用編)
」
(2日間16時間),
「各種のテ
と筆者は初期プログラムを作成していたが,財団法人
ーマ設定によるフォローアップ編」
(1日間7時間),
医療コンフリクト・マネジメント
Vol. 1
23
中 西 淑 美
図3 有害事象と医療メディエーション評価
「トレーナー養成」(4日間32時間)という段階的な研
る学習について
修プログラムを構築した(表2,図2)
。
思 う90%(導 入 編)81%(基 礎 編)91%(応 用
4.医療メディエーション研修効果
編)100%(トレーナー編)(継続編は当時の調査デ
研修プログラムを終了した医療メディエーションの
実施効果について3つの調査資料を提示する。
ータはなかった)
⑶ 日本医療メディエーター協会調査報告
⑴ 全国社会保険協会連合会有害事象報告
2008年の医療メディエーション研修開始後,有害事
2009年の4月から5月にかけて行った調査報告を紹
介する
。
象報告件数が平成10年∼平成19年の年平 44.8件から
配 信 数311,有 効 回 答 数 は156,回 答 者 の 病 床 数
平成20年∼22年では26.3件に減少している。即ち、
(床)は371±294,スタッフ数(人)は603±545で あ
58.7%に減少した。係争中件数と裁判件数も減少した。
っ た。年 齢(歳)は49.7±8.3,経 験 年 数(年)は
むろん,要因別分析を行っている調査ではないが,結
20.9±11.4であった。また,認定メディエーターの内
果として,有害事象報告件数が減少したという事実は
訳は,基礎編116人,継続編27人,応用編13人であっ
あること否めない(表3)。
た。
⑵ 日本医療機能評価機構調査報告
① 重症度と紛争・病院内メディエーションの状況
平成19年度開催分で,導入編244名と基礎編148名の
表4に提示したが,医療メディエーターが関与した
結果は,前掲102の文献資料からの結果報告である。
事例の重症度はレベル5までと広範にわたっている。
① セミナーについて
紛争数はレベル4と5で上昇し,移行率は3b に対し
良かった91%(導入編)97%(基礎編)71%88%
(応用編)
100%(トレーナー編)
(継続編はこの当時1日版
であった)
普通9 %(導 入 編)2 %(基 礎 編)23%(継 続
て約5∼7倍に増加していた。メディエーション実施
比率は3a で31.6%を除いて50%以上であった。合意
解決数比率はレベル5を除き,レベル3b の62%以上
であった。決裂数比率はレベル5の23%を除き,0
∼18%であった。メディエーション中の百分率はレベ
編)6%(応用編)
ル5とレベル3のみが30%台と高かった。カイ二乗検
0%トレーナー編
定を用いてレベル5とレベル3b 又はレベル3a の間の
② 医療コンフリクト・マネジメントについての更な
24
比
を行ったところ,決裂数を除いて有意差( p <
医療メディエーションと実践者教育
図4 医療メディエーションの波及効果
0.05, p <0.01, p <0.0001)を 認 め た。レ ベ ル3b
わち,医療メディエーションを病院などに導入するこ
と3a 間ではメディエーション実施数と合意解決数,
とで診療において何らかの好ましい効果が得られると
決裂数の3項目では有意差を認めなかったが,メディ
推測できる。
エーション中では p <0.05と有意であった。
5.今後の展望
図3は医療メディエーターが重症度別にメディエー
国内では,中央医療審議協議会で医療メディエータ
ションを行った際の有効性を評価したものである,表
ーの配置に伴う効果のデータが厚生労働省より提示さ
3での3b∼4b の合意解決数の百分比は61.9∼77.8%
れ,平成24年4月より,患者サポート充実体制につい
であり,
「あまり有効ではない」,
「有効ではない」と
ての診療報酬加算が認められるに至った。 。患者・
いう評価と対応していることが判る。3a で「有効で
家族と地域,医療者がともに手を取り合うことで,真
はない」の評価がみられるのは,回答者のうち基礎編
の“チーム医療”協働実践の概念装置として医療メデ
修了者が75.3パーセントを占めていることが影響して
ィエーション教育が注目されたといえよう。
いると えられる。
②
今後,医療メディエーションの理解者と実践者が増
医療メディエーションの波及効果
加し,訴訟のような「非難と攻撃を中心にする紛争文
2009年に行った回答数156の結果を図4に示す。
「日
化」から,「対話を中心とする協調的文化」へ醸成さ
常診療での患者対応の質」,
「患者に向き合う姿勢」は,
れることを望みたい。また,客観的な効果やモデルの
それぞれ70パーセントを超えている。
有効性の検証を続けていく努力を続けかつ,さらなる
以上の3つの調査結果から推測できることは,医療
教育の充実に力を注ぐ必要がある。これまで以上に,
メディエーションを病院等で導入することにより,①
医師教育も含めた医療者教育,患者教育,市民教育の
医療を行う際の患者対応に質的変化がかなりはっきり
視点での展開が必要である。
と見られること,そのことは②有害事象件数報告数の
患者・家族と医療者関係が如何なる時にも対話の場
減少として現れている,③そのレベルは3a までに顕
を閉ざさず,対話が維持・促進されることで良好な信
著である,④3b 以上の重症度を有する例でも合意解
頼関係がより展開され,双方が納得のゆく医療を享受
決数が40.9∼81.8%を占めている,といえよう。すな
できることを目指したい。
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中 西 淑 美
Medical mediation and practitioner education
Toshimi NAKANISHI
General Medical Education Center
Faculty of Medicine, Yamagata University
M edical mediation is the first attempt in Japan to resolve medical disputes on the basis of the sociology of
law. The concept was developed by Professor Yoshitaka Wada, who specialized in the sociology of law by
formulating interpretive sociology of law as a basic research field.M edical mediation is a model to deal with
various levels of conflict in medical practice between the persons concerned, for example, between a patient
and a medical provider,among workers of different occupations,and among workers of the same occupation.
It is useful not only to resolve disputes but also to improve personal relationships and medical safety and
quality. It is also different from consensus building for negotiation of dispute resolution in a general negotiation theory and also different from a mediation model focusing on a procedure and a judgment of results.For
the reasons given above, medical meditation can be applied in various clinical settings to not only resolve
disputes but also improve personal relationships, treatment quality, and patient safety.
The educational program for medical mediation consists of 3 stages and was established by the Japan
Association of Healthcare Mediators. This program is performed through a participatory learning approach
including mainly role-playing, because it requires a combination of theory and practice. The association
investigated and appreciated the achievements of medical mediators in the medical scene in 2009.We hope that
medical mediation will develop into healthcare mediation and will be understood as Cooperative culture
focuses on dialog and a Medical education concept that the quality of relations influences the quality of
results.
Key words: medical mediation, interpretive sociology of law, medical safety education, quality of
relations, person-concerned support
30