国産リチウム資源創生に関する調査研究

22 Ⅱ (2) 01
産業活動と循環型経済社会の構築に関する調査研究
国産リチウム資源創生に関する調査研究
平成23年3月
財団法人
企 業 活 力 研 究 所
委 託 先
株 式 会 社
K R I
この事業は,競輪の補助金を受けて実施したものです
http://ringring-keirin.jp
要 旨
本調査研究は、リチウム(以下、Li)資源の需給見通し、供給構造に内在する課題、
資源確保に向けた国内外の動き等を踏まえた上で、新たな供給源として期待されるリチ
ウムイオン二次電池(以下、LIB)からの Li 資源回収技術、海水からの Li 資源回収技
術についての技術開発状況を俯瞰し、その実用性・経済性を評価することで、国産 Li
資源の創生に向けた技術開発の方向性を明らかにすることを目的としている。
Li 資源の需給に関しては、今後、LIB の普及・拡大によって Li 資源の需要は大幅な
増加が見込まれるものの、既存供給元の増産計画や新たな資源開発の動きがあるため、
ただちに逼迫するとは言えない。しかし、Li 資源は、産出国が偏在していること、供
給構造が寡占的であること、さらには資源ナショナリズムの台頭による資源価格高騰の
可能性も否定できないこと等の課題があり、長期安定供給には不安があることが分かっ
た。
このため、現在、官民連携の下、Li 資源確保のための取り組みが進められており、
LIB からの Li 資源回収技術の開発、海水からの Li 資源回収技術の開発も、こうした取
り組みの一環として位置付けられる。
このうち、LIB からの Li 資源回収技術に関しては、現状の技術レベルでは経済性は
確保できていないものの、使用済み LIB が大量に発生する 10 年程度先を睨みながら、
Li 含有液からの Li 回収に関する技術課題解決に向けて官民が集中的に取り組みことに
よって事業化への道が拓けてくるものと考えられる。
一方、海水からの Li 回収技術に関しては、乗り越えるべきハードルが高く、長期的
な展望で取組む必要がある。特に有望な要素技術である吸着法の技術開発を優先的に進
めることが重要である。
以上の調査結果を踏まえて、国産 Li 資源の創生に向けた技術開発の方向性として、
以下の 3 点を明らかにした。
(1)使用済み LIB から Co、Ni 等を回収した後の Li 含有液からの Li 回収技術の確立
(2)LIB から回収した Li 資源の用途開発、適用可能性の検討
(3)吸着剤技術を用いた硫酸塩かん水からの Li 回収技術の早期確立
なお、本報告書は、財団法人企業活力研究所が財団法人JKAより自転車等機械工業
振興事業に関する補助金の交付を受けて実施した調査研究の成果を取りまとめたもの
です。
調査研究概要
1.研究の背景と目的
リチウム(以下、Li)は、主要用途であるリチウムイオン二次電池(以下、LiB)が、
①我が国が世界をリードする国際競争力を有すること、②我が国の主要産業である電
子・電気及び自動産業の将来に大きく関わる製品であること、③技術力を有していても、
将来的に資源制約により国際競争力を喪失する可能性があること等から、新たな供給源
を含めた資源の長期安定確保のあり方を検討することが重要である。
このため、Li の需要動向、供給動向、供給構造に内在する課題、資源確保に向けた
国内外の動き等を踏まえた上で、新たな供給源として期待される LIB からの Li 資源回
収技術、海水からの Li 資源回収技術についての技術開発状況を俯瞰し、その実用性・
経済性を評価することで、国産 Li 資源の創生に向けた技術開発の方向性を明らかにす
ることを目的としている。
2.Li 資源の需要動向と将来見通し
我が国は、現在、Li 資源の全量を海外から輸入している。Li 資源の用途のうち、近
年 LIB 用途が急速に拡大している。現在は小型家電用 LIB の需要が中心であるが、今
後、車載用 LIB の本格普及が始まれば、これまで以上に Li 資源の急激な需要拡大が起
こるものと考えられる。
LIB の普及・拡大には、電池容量の向上と安全性の向上が重要な課題と考えられるが、
技術開発競争が活発化しており、こうした技術的な課題は改善に向かうものと思われる。
本調査研究では、次世代自動車のすべての車種に LIB が使用されという仮定をおい
た場合、新たに発生する需要と、新興国の経済発展等に伴い引き続き堅調な需要増加が
見込まれる既存用途向けの需要を合わせると、2020 年における Li 資源の需要は、250
千t-LCE と 2008 年の約 2 倍に拡大することを見込んだ。
3.Li 資源の供給動向と将来見通し
SQM 社、Chemetall 社、FMC 社、Talison 社が主要な Li 資源供給会社であり、こ
の 4 社が、チリ、アルゼンチン、アメリカ、オーストラリアの 4 カ国において 5 つの
プラントを稼動させている。その生産能力は年間約 13 万 t-LCE である。2020 年ごろ
には、既存供給源の生産量拡大、新規資源開発により供給能力は倍加するものと考えら
れる。また、ボリビアなどで新たな資源開発の動きもあることから、Li 資源需要が急
拡大したとしても、ただちに逼迫するとは言えないが、Li 資源には、地域的な偏在性、
寡占的な供給構造、さらには資源ナショナリズムの台頭による資源価格高騰の可能性も
否定できないこと等の課題があり、長期安定供給には不安がある。
4.国産 Li 資源創生に関する技術開発
経済産業省は、2010 年 6 月に公表した「エネルギー基本計画」において、Li を、
その安定供給のために政策資源の集中投入が必要と考えられる「戦略レアメタル」と
して特定しており、これに先だって策定された「レアメタル確保戦略」では、海外資
源確保やリサイクル技術開発の推進が示されている。
こうした背景の下、現在、官民連携により、Li 資源確保のための取り組みが進めら
れており、LIB からの Li 資源回収技術の開発、海水からの Li 資源回収技術の開発も、
こうした取り組みの一環として位置付けられる。
このうち、LIB からの Li 資源回収技術に関しては、現状の技術レベルでは経済性は
確保できないものの、使用済み LIB から Co、Ni などの有価金属を回収した後に産業廃
棄物として処分されている Li 含有液から、炭酸 Na や炭酸ガスを用いて炭酸 Li 回収を
行う方法は比較的有望な方法と考えられる。使用済み LIB が大量に発生する 10 年程度
先を睨みながら、コスト低減や反応効率向上のための新たな技術開発を官民で集中的に
進めることにより、実用化への道を拓くことが可能になるものと思われる。
また、LIB リサイクルにより回収された Li 資源は純度等の問題から、再び LIB の正
極材材料としては利用されないことも想定されるため、新たな用途開発を検討すること
も重要である。
海外鉱物資源による Li 確保に代えて海水・地熱水から Li を回収する技術開発も進め
られているが、乗り越えるべきハードルが高く、長期的な展望で取り組むことが妥当で
ある。海水中に含まれる Li の微量成分を回収する方法として有望なものの 1 つに吸着
法がある。この技術を塩湖からの Li 回収で実用化させることにより、当該技術の開発
が進展し、引いては塩湖以外からの Li 回収への道を拓くことにも繋がるものと期待さ
れる。
5.国産 Li 資源創生に向けた技術開発の方向性
以上の調査結果を踏まえて、国産 Li 資源の創生に向けた技術開発の方向性として、
以下の 3 点を明らかにした。
(1)使用済み LIB から Co、Ni 等を回収した後の Li 含有液からの Li 回収技術の確立
(2)LIB から回収した Li 資源の用途開発、適用可能性の検討
(3)吸着剤技術を用いた硫酸塩かん水からの Li 回収技術の早期確立
最後に、Li 資源創生のための技術開発は、民間企業の取り組みを十分踏まえつつ、
引き続き、国等の支援や産学官の連携によって推進を図っていくことが重要であること
を示した。
目 次
1 章 研究の背景と目的················································· 1
1.1
研究の背景 ····················································· 1
1.2
研究の目的 ····················································· 1
1.3 研究の射程(スコープ)・用語の定義······························ 1
2 章 Li 資源の需要動向と将来見通し ···································· 3
2.1
Li 資源の需要 ··················································· 3
2.2
LIB の開発動向 ················································· 7
2.3 Li 資源の将来需要予測 ··········································· 30
3 章 Li 資源の供給動向と将来見通し ···································· 35
3.1
主な供給元 ····················································· 35
3.2
供給企業 ······················································· 38
3.3 新規供給源開発 ················································· 45
3.4 供給リスク ····················································· 47
4 章 国産 Li 資源創生に関する技術開発 ·································· 49
4.1 我が国における Li 確保戦略······································· 49
4.2 LIB リサイクル技術とその経済性 ································· 53
4.3 海水・地熱水からの国産 Li 資源創生技術とその可能性 ··············· 73
5 章 国産 Li 資源創生に向けた技術開発の方向性 ·························· 92
5.1
調査研究のまとめ ··············································· 92
5.2
国産 Li 資源創生に向けた技術開発の方法性························· 93
参考文献 ······························································ 95
用語集 ································································ 101
委員会名簿 ···························································· 104
1. 研究の背景と目的
1.1 研究の背景
日本は世界有数の経済大国であると同時に、資源・エネルギーの大消費国である。日
本はその経済力の源である独自の技術開発力を生かした高付加価値製品づくりにおい
て、国際競争力を保ち、世界をリードしている。一方で、日本保有の資源・エネルギー
は脆弱で、その多くを輸入に頼らざるを得ない状況にある。中国をはじめとする新興国
が経済発展により、今後、更に資源・エネルギーの需要が増え続けることは確実であり、
その安定供給は日本の国際競争力維持・強化のための重要な課題である。
本調査研究が対象としているリチウム(以下、Li)資源については、主要用途である
リチウムイオン二次電池(以下、LIB)が、①世界をリードする国際競争力を日本が有
すること、②日本の主要産業である電子・電気及び自動車産業の将来に大きく関わる製
品であること、③技術力を有していても、将来的には資源制約により国際競争力を喪失
する可能性があることから、早急な対策が求められている。
1.2 研究の目的
以上を踏まえて本調査では、Li 資源量、需要動向、市場・技術開発・政策などの動
向について調査を行い、Li 資源をめぐるさまざまな状況を把握するとともに、現在、
我が国において研究が進められているリサイクルや海水・地熱水からの単離・回収な
ど国産 Li 資源確保技術の可能性と課題を明らかにすることを目的とする。
1.3 研究の射程(スコープ)・用語の定義
まず、Li の需要に大きな影響を及ぼす LIB の動向に着目し、Li 資源の将来需要動
向を調査する。また技術的側面から LIB に代わる蓄電方法の可能性についての検討も
行う。
次に、Li 供給源の調査を行うと共に、Li 資源の新たな供給源となりうる LIB のリサ
イクル技術、海水・地熱水からの Li 資源採取技術の最近の技術開発動向や資源供給状
況に対応したコスト面からの普及可能性などの検討を実施する(図 1.3-1)。
図 1.3-1
本調査の全体像
1
表 1.3-1 に本検討で使用した用語の定義をまとめる。
表 1.3-1
用語の定義
略字
英語表記
正式表記/意味
Li
Lithium
リチウム
LIB
Lithium Ion Battery
リチウムイオン二次電池
JOGMEC
Japan Oil, Gas and
Metals National Corporation
独立行政法人
石油天然ガス・金属鉱物資源機構
LCE
Lithium Carbonate Equivalent
単位:炭酸リチウム換算した場合のリチウム量
EV
Electric Vehicle
電気自動車
NEDO
New Energy and Industrial
Technology Development Organization
独立行政法人
新エネルギー・産業技術総合開発機構
Battery RM2010
NEDO二次電池利用技術開発ロードマップ
Pb二次電池
鉛蓄電池
Ni-Cd二次電池
ニッケル・カドミウム二次電池
Ni水素二次電池
ニッケル水素二次電池
HEV
Hybrid Electric Vehicle
ハイブリッド電気自動車
電中研
財団法人 電力中央研究所
LiCoO2
コバルト酸リチウム
LiNiO2
ニッケル酸リチウム
LiNi1/2Mn1/2O2
ニッケル-マンガン系酸化物
LiNi1/3Mn1/3Co1/3O2
ニッケル-マンガン-コバルト系酸化物
LiMn2O4
マンガン酸リチウム
LiFePO4
リン酸鉄リチウム
デンドライド状
樹枝状
SEI
Solid Electrolyte Interface
固体電解質界面
LTO
チタン酸リチウム(Li4Ti5O12)
EC
Ethylene Carbonate
エチレンカーボネート
PC
Propylene Carbonate
プロピレンカーボネート
SPE
Solid Polymer Electrolyte
高分子固体電解質
PEO
Polyethylene Oxide
ポリエチレンオキシド
P(VdF+HFP)
不均一型高分子ゲル電解質
S-S結合
Sulfur-Sulfur bond
硫黄-硫黄結合
PHEV
Plug-in Hybrid Electric Vehicle
プラグインハイブリッド電気自動車
SQM社
Sociedad Quimica y Minera de Chile
SQM社
FMC社
FMC Lithium
FMC社
Talison社
Talison Lithium
Talison社
CCHEN
COMISION CHILENA DE ENERGIA NUCLEAR
チリ原子力委員会
JST
Japan Science and Technology Agency
独立行政法人科学技術振興機構
PAS
Polyarylene Sulfide
ポリアリーレンスルフィド
AIST
National Institute of Advanced
Industrial Science and Technology
独立行政法人 産業技術総合研究所
Li2O
酸化リチウム
2
2. Li 資源の需要動向と将来見通し
本章第 1 節では、現在の Li 需要動向を明らかにする。第 2 節では今後、Li 消費量に
大きな影響を与えると考えられる LIB の技術開発動向、および 2030 年ごろを見据えた
次世代二次電池の技術開発動向を明らかにする。第 3 節では上記の結果を踏まえ、Li
資源の将来需要を予測する。
2.1 Li 資源の需要
2.1.1 世界
図 2.1.1-1 に、Li 製品別、用途別の需要を示す。Li 製品別で見ると、炭酸 Li、Li 精
鉱、水酸化 Li の需要が多い。Li 精鉱は、最終的には炭酸 Li などに加工され取引され
る。用途別では、主にバッテリー、ガラス添加剤、フリット(釉薬)としての需要が多
い。
図 2.1.1-1 Li の製品別、用途別需要(2009 年)
出典:独立行政法人 石油天然ガス・金属鉱物資源機構(Japan Oil, Gas and Metals National
Corporation、以下 JOGMEC)資料 1)を元に KRI 作成
英国調査会社 Metal Bulletin が 2009 年から主催し開催された Lithium Supply &
Market
20092)および 20101)によれば最近(2004-2008 年)の世界の全 Li 需要(炭
酸 Li 換算)の年平均伸び率は 5~7 %であるのに対し、LIB 用 Li 需要は 20~22 %と
著しい需要の伸びを示している。2008 年の世界の全 Li 需要は炭酸 Li 換算で約 120 千
t-LCE*1である。
*1 LCE = Lithium Carbonate Equivalent, 炭酸 Li に換算した Li 量 “重さの単位-LCE”として表記
3
地域別の需要を見ると、アジア全体(アジア+日本)で世界の半分以上(53 %)を
占める。日本は大きな需要国であり、世界の Li 資源の約 11 %を利用している(図
2.1.1-2)。
図 2.1.1-2 地域別 Li 需要(2007 年)
出典:JOGMEC 資料を元に KRI 作成 2)
2.1.2 日本
日本は現在Li資源の全量を外国から輸入している。1989~1994年の輸入量は毎年5
千 t-LCE程度で推移していたが、Li資源の新たな利用分野であるLIBの普及に伴って、
1995年頃から輸入量は徐々に増加し2008 年には約15千 t-LCEに達した(図2.1.2-1)。
図 2.1.2-1 日本の Li 資源輸入量推移
出典: JOGMEC レアメタル備蓄データ集 3)、
社団法人 電池工業会 HP 統計データ 4)を元に KRI 作成
4
輸入形態を製品別にみると、炭酸Li(75 %)および水酸化Li(21 %)がほとんど
である(図2.1.2-2)。
図 2.1.2-2 日本の Li 製品別輸入割合(2008 年)
出典:JOGMEC 鉱物資源マテリアルフロー2009 を元に KRI 作成 5)
各製品の主な用途は、表2.1.2-1に示すとおりである。炭酸Liは、耐熱ガラス用添加剤
用途に加え、近年は、LIBの正極材料用途が増えてきている。水酸化Liは、耐水性に優
れ高温・低温下でも劣化しないグリース、炭酸ガスとの反応活性の高さを用いた炭酸ガ
ス吸収剤としての用途に加え、LIBの電解質、重合反応触媒、セラミックスの原料とし
ても用いられる。その他、臭化Liは吸湿性が強く、ビル、工場などの大型吸収式冷凍機
の冷媒や乾燥剤、塩化Liは防湿剤、金属Liは一次電池の負極材などに使われている。
表 2.1.2-1 Li 製品の主要用途
製品名
主要用途
LIB用電極材原料、ガラス添加剤(融点降下作用など)、
炭酸Li 陶磁器等の釉薬、製鉄連鋳用フラックス、弾性表面波フィ
ルター、各種化学品・医薬原料
水酸化Li グリース添加剤(自動車用など)、炭酸ガス吸収剤
臭化Li 大型吸収式冷凍機用冷媒吸収液、湿式除湿機の除湿液
塩化Li 防湿剤
Li電池(一次)負極材、合成ゴム製造触媒(ブチルLi)原
金属Li
料、精密化学反応剤原料
出典:JOGMEC 資料を元に KRI 作成 6)
Li製品の用途別消費量では、2005年まではガラス添加剤が最大用途であったが、2006
年にはLIB用途がガラス添加剤とほぼ同じ消費量(7千 t-LCE)となった(図2.1.2-3)。
Li資源消費量を10年前と比較した図2.1.2-4でも、その他の用途に比べ、LIB用途が約5.7
倍と、著しく拡大していることがわかる。日本の全Li資源使用量は2008年には17千
t-LCEと1998年の約2倍となっている。
5
図 2.1.2-3 日本における用途別 Li 消費量
出典:JOGMEC 鉱物資源マテリアルフロー 2009 を元に KRI 作成 7)
図 2.1.2-4 日本の用途別 Li 資源消費の変化(2008 年消費量/1998 年消費量)
出典:JOGMEC 鉱物資源マテリアルフロー 2009 を元に KRI 作成 7)
Li資源の需要は国内外問わず、世界的に伸びている。中でもLIB用Li資源の需要の伸
びが他の用途に比べ著しく、普及し始めてからわずか10数年の間にLi資源世界需要の
20 %を占めるに至った。
現在の LIB 用 Li 需要は、PC や携帯電話などの小型家電用 LIB の需要が大半である。
今後、車載用 LIB の本格普及が始まれば今まで以上に急激な需要増加が起こるものと
考えられる。
6
2.2 LIB の開発動向
LIB は、正極、負極、電解質、セパレータおよび容器から構成されており、Li 資源
は主として正極中に含まれる。
正極の種類によって LIB 中の Li 資源含有量は異なるが、
おおよそ 1 kWh 当り 0.5~1 kg-LCE と考えられる 1)。例えば 24 kWh の LIB を搭載
している市販電気自動車(以下、EV)の場合、EV1 台中の Li 資源含有量は約 12~24
kg-LCE と推定される。仮に 2008 年の新車販売台数約 7,000 万台のうち 10%が EV で
あったとすると、
年間 80~160 千 t-LCE の新たな Li 資源需要が発生することになる。
これは現在の総需要(120 千 t-LCE)に匹敵する数量であり、EV 普及による Li 資源
需要への影響は非常に大きい。
そこで 2.2 節では、Li 資源の需要に大きな影響を与える LIB が今度も拡大していく
のか、技術開発が進んだとしても同様に Li 資源が使われ続けるのか、今後、Li 資源を
使わないような蓄電技術が実用化されていくのかについて検討を行い、二次電池技術開
発の現状を把握することで、中長期的な Li 資源需要予測に資する情報をまとめる。
2.2.1 二次電池開発の全体動向
経済産業省は、「資源の乏しい我が国が、将来にわたり持続的発展を達成するため、
革新的なエネルギー技術の開発、導入・普及によって、各国に先んじて次世代型のエネ
ルギー利用社会の構築に取り組んでいくことは極めて重要である。」2)という考え方の
もと、日本の強み技術である二次電池技術開発を推進するべく 2009 年 6 月には「独立
行政法人
新エネルギー・産業技術総合開発機構( New Energy and Industrial
Technology Development Organization、以下 NEDO)次世代自動車用蓄電池技術開
発ロードマップ 2008」、2010 年 4 月に「次世代自動車戦略 2010」
、
2010 年 5 月に「NEDO
二次電池技術開発ロードマップ(Battery RM2010)」を作成した。
2010 年度には、NEDO において 5 つの研究開発プロジェクト(合計予算規模 105 億
円)が実施されており、日本政府は二次電池市場の発展を強力にサポートしている(表
2.2.1-1)。
表 2.2.1-1 NEDO における二次電池技術開発プロジェクト
実施年度
プロジェクト名
2006~2010 系統連系円滑化蓄電システム技術開発
2010年度
予算規模
(億円)
概要
風力発電及び大規模太陽光発電の出力変動を緩和するために必要な大型・安価・長
寿命の蓄電システムの開発
7.6
2007~2011
次世代自動車用高性能蓄電システム技術開発
(通称Li-EAD)
次世代のハイブリッド自動車や電気自動車に使用する高性能リチウムイオン電池や新
しい原理の二次電池、およびモーター等の周辺機器の開発
24.8
2009~2015
革新型蓄電池先端化学基礎研究事業
(通称RISING)
産学官が集中して研究する拠点を整備し、最先端の評価・分析技術を駆使して電池の
基礎的な反応原理・反応メカニズムを解明することで既存の二次電池の信頼性向上等
の性能向上および革新型二次電池の実現に向けた基礎技術の確立を実施
30
2010~2014 蓄電複合システム化技術開発
分散電源の大量導入を可能にするため、需要側に設置する二次電池及びその利用技
術の開発、二次電池技術を用いたエネルギーマネージメントシステムの実証、国際展
開も視野に入れたシステムとしての評価技術開発、標準化等の実施
41
2010~2014 蓄電池材料共通評価技術開発
高性能二次電池を実現するために開発される新材料の性能や特性について、的確か
つ迅速に評価できる技術の開発
1.2
7
出典:NEDO HP3)から KRI 作成
二次電池には LIB 以外にも鉛蓄電池(以下 Pb 二次電池)、ニッケルカドミウム電池
(以下 Ni-Cd 二次電池)、ニッケル水素電池(以下 Ni 水素二次電池)などがあるが、
LIB はその他の二次電池に比べて重量エネルギー密度が大きく(軽量)、体積エネルギ
ー密度も大きい(小型)という利点から、1990 年代の製品化以降、PC や携帯電話など
の民生部門用途を中心に急速に普及した(図 2.2.1-1、図 2.2.1-2)。
図 2.2.1-1 各種二次電池の特徴
出典:次世代電池 20104)を元に KRI 作成
図 2.2.1-2 各種二次電池の生産金額推移
出典:電池工業会統計 HP5)を元に KRI 作成
8
上記の利点により、自動車各社も車載用 LIB の開発を進めており、今後は車載用蓄
電池としての LIB の本格普及が進んでいくと思われる。コストダウンなどが進めば現
在 Ni 水素二次電池が使われているハイブリッド電気自動車(以下、HEV)分野、さら
には Pb 二次電池や Ni-Cd 二次電池が使われている工場の蓄電システムなどの産業部門
用途への適用拡大も進むと思われる(表 2.2.1-2)。
表 2.2.1-2 二次電池の代表的な用途
二次電池種類
用途
LIB
携帯電話、ノートパソコン、ビデオカメラ、デジタルカメラなど
Ni水素電池
小型:ヘッドホンステレオ、シェーバー、ノートパソコンなど
中型:ハイブリッド車、電動アシスト自転車など
Pb二次電池
自動車、二輪車、電気自動車やフォークリフトなど
無停電電源装置(UPS等)、病院や公共設備の非常用電源
Ni‐Cd二次電池
小型:コードレス電話、電動歯ブラシ、シェーバーや電動工具、非常灯など
大型:病院などの非常用電源
出典:電池工業会 HP6)を元に KRI 作成
現状の LIB 市場は、日本の三洋電機株式会社(以下、三洋電機)、ソニー株式会社
(以下、ソニー)、パナソニック株式会社(以下、パナソニック)、日立マクセル株式
会社(以下、日立マクセル)、韓国の三星 SDI、LG 化学、中国の BYD、BAK、香港
の ATL が主要なプレーヤである。日中韓 3 か国の企業で世界シェアの 95 %を占有し
ている(図 2.2.1-3)。
図 2.2.1-3 LIB の世界シェア(2008 年)
出典:リチウムイオン電池この 15 年と未来 7)を元に KRI 作成
日本企業は 48 %と韓国企業(24 %)、中国企業(23 %)に比べ、大きなシェアを
獲得しているが、近年韓国、中国企業にシェアの面で追い上げられている。また特許出
9
願においても、中国への出願においては、今後、中国企業等からの出願件数が日本企業
等からの出願件数を上回ると予想されるなど、研究開発の面でも激しい競争が行われて
いる 8)。
一方、LIB のさらなる普及拡大に向けては、性能、安全性、コスト競争力の向上など
解決しなければいけない課題も多い。NEDO は、「NEDO 二次電池技術開発ロードマ
ップ」において、容積エネルギー密度、重量エネルギー密度、出力密度、サイクル寿命
*2、カレンダー寿命*3、コストを普及にむけた課題として挙げるとともに、その時間軸
ごとの目標値を示している(図 2.2.1-4)。
図 2.2.1-4 車載用二次電池の技術開発ロードマップ
出典:NEDO 二次電池技術開発ロードマップ 2)より
本ロードマップにおける 2030 年頃の車載用二次電池の容積エネルギー密度、重量エ
ネルギー密度の目標値はそれぞれ 1,000 Wh/L、500 Wh/kg である。財団法人
央研究所(以下、電中研)の試算
電力中
9)によると、現行材料の組み合わせにより高出力化
を犠牲にしてエネルギー密度を重視した LIB のエネルギー密度限界値は、それぞれ約
800 Wh/L、300 Wh/kg と見積もられている。このため、この目標値は既存 LIB の改良
だけでは到達できない数値となる。
よって、本報告書では、二次電池技術開発動向に関して、2.2.2 既存 LIB の技術開発、
2.2.3 次世代二次電池の技術開発に分けて検討を進める。
2.2.2 既存 LIB の技術開発
LIB は、正極、負極、電解質、セパレータおよび容器から構成されている。LIB を充
*2 DOD※1=100%、1C※2 放電、初期容量に対して残容量が 85 %に達する回数。現状値=約 1000 回。
※1 Depth of Discharge、充電容量に対する放電容量の割合
※2 電池の全容量を 1 時間で放電させるだけの電流量
*3 カレンダー寿命とは、使用・未使用にかかわらず、製造後いつまで使えるか、持つかという寿命のこ
と
10
電すると、正極から Li イオンが抜け出し、電解質を介して移動し負極へと達するとと
もに、その Li イオンが負極に取り込まれる。逆に放電時には負極に取り込まれていた
Li イオンが放出され、正極に再び取り込まれる。正、負極の間で Li イオンを運ぶ役割
を担うものが電解質であり、セパレータは正極と負極が接触して短絡するのを防ぐ役割
を担う(図 2.2.2-1)。
図 2.2.2-1 LIB の充放電メカニズム
出典:次世代電池 201010)を元に KRI 作成
既存の LIB において Li 資源需要に直接関係するのは、Li 資源が利用される正極と電
解質である。しかし、LIB の性能向上は LIB の市場拡大をもたらし、結果として Li 資
源需要も増大させる。このため、LIB の性能向上に大きく影響する正極、負極、電解質
の技術開発状況をまとめた(表 2.2.2-1)。
表 2.2.2-1
Li 資源需要に影響を与える既存 LIB の構成要素
LIBの
構成要素
Li資源を
直接利用
LIB性能向上に
直接寄与
正極
○
○
負極
×
○
電解質
○
○
セパレータ
×
×
容器
×
×
出典:KRI 作成
11
1)
正極材
EV 用二次電池として LIB を利用するためには、安全性や耐久性などは勿論、エネル
ギー密度の向上と低コスト化が大きな課題である。これらの課題に対しては、正極材、
負極材両方の開発が重要であるが、短期的には正極材の開発による課題解決が先行する
と考えられる。
現在主流の正極材は、層状岩塩構造をもつコバルト酸 Li(LiCoO2)である。LiCoO2
は、電極密度が高い、電圧が高い、充放電効率が高いなどの正極材として優れた特性を
もち、高エネルギー密度を求められる携帯電話や PC 用 LIB として幅広く採用されて
いる。一方で、主要構成元素のコバルト(以下、Co)が高価であり、耐熱性・熱安定
性の問題もあることから、Co を含まない正極材の開発が進められている。
正極材の代替材料候補として、ニッケル酸 Li(LiNiO2)、ニッケル-マンガン系酸化
物(LiNi1/2Mn1/2O2)、ニッケル-マンガン-コバルト系酸化物(LiNi1/3Mn1/3Co1/3O2)、
マンガン酸 Li(LiMn2O4)、リン酸鉄 Li(LiFePO4)などの材料が検討されている。
LiNiO2 は LiCoO2 と同じ結晶構造(α-NaFeO2 型)であるため、LiCoO2 と同様の電
池特性が期待できる。LiCoO2 と比べると、電位は若干低くなるが理論容量はほぼ同じ
であり、さらに利用可能な充放電容量が約 1.2 倍程度大きくなる。一方で、高純度化合
物の合成が困難、サイクル特性*4や熱的安定性が悪いという短所もある。用途としては、
小型で高容量・高エネルギー密度を求められる高機能携帯電話や小型ノート PC への適
用が多い。
LiNiO2 の短所を克服すべく検討されている LiNi1/2Mn1/2O2 や LiNi1/3Mn1/3Co1/3O2 は、
Co の使用量低減による低コスト化、Ni を用いることによる容量維持、Mn を用いるこ
とによる高い耐熱性の付与が可能となる正極材として注目されている。さらに充放電に
よる酸化還元反応は Ni や Co によって進むため Mn の価数変化による結晶の不安定化
が起こらないという利点もある。
LiMn2O4 は LiNiO2 に比べ容量は低下するが、耐熱性が高い材料である。しかし、サ
イクル特性が劣化することが知られており、その対策として Mn の一部分を他の金属で
置換するなど検討が進められている。用途としては、高エネルギー密度は求められない
が、高出力と高耐熱性を要求される電動工具や電動バイクなどの中型用途に適している。
安全性が高いことから EV への適用の可能性もあると考えられる。
LiFePO4 は熱的安定性に優れ、高電位、高容量であり、サイクル特性も良い。原料も
安価であり、EV 用途として有望な正極材である。一方で、活物質内の Li 拡散速度が
*4 充放電を繰り返すことによる充電容量など性能の変化
12
遅く、電子伝導性も低いため高速充放電には適していないという特徴もある。このため
表面状態の改質や導電材料のコーティングによる改善が進められている。
各正極材の特徴を表 2.2.2-2 にまとめる。
表 2.2.2-2 各正極材の特徴と車載用途への適用可能性
容量
サイクル
特性
出力
耐熱性
コスト
車載用途への
適用可能性
LiMn2O4
△
△
◎
○
○
○
LiFePO4
×
○
○
◎
◎
○
LiNi1/3 Mn1/3 Co1/3 O2
○
○
○
○
△
△
LiCoO2
◎
○
◎
△
×
△
LiNiO2
◎
×
○
×
△
△
分類
出典:委員会による議論を元に KRI 作成
各正極材の特徴から、大きな Li 資源需要源となりうる EV 用 LIB は、安全性の観点
から耐熱性の高い LiMn2O4、LiFePO4 を中心に拡大し、既存の小型家電用 LIB に関し
ては LiCoO2 や LiNiO2 から性能を維持しつつコストの安い LiNi1/3Mn1/3Co1/3O2 へシフ
トしていくものと思われる。
代表的な正極材の性能データをもとに、各正極材における Li 含有量を推計した(表
2.2.2-3)。EV 用に検討されている LiMn2O4、LiFePO4 の Li 含有量は 0.46~0.49
kg-LCE/kWh と少なく、小型家電に利用されている LiCoO2 などの Li 含有量は 0.61
~0.72 kg-LCE/kWh と多い。
表 2.2.2-3 正極材、LIB 中の Li 含有量
正極材分類
平均電圧
容量密度 容量密度 エネルギー エネルギー
正極材中の
分子量
(理論)
(工業) 密度(工業) 密度の逆数
Li含有量
mAh/g
mAh/g
Wh/kg
kg/kWh
wt%
148
105
410
2.44
181
3.8
1kWhLIB中の
Li含有量
kg-LCE/kWh
0.49
LiMn2O4
V
3.9
LiFePO4
3.4
169
150
510
1.96
158
4.4
0.45
LiNi1/3Mn1/3Co1/3O2
3.5
278
150
525
1.90
97
7.2
0.72
LiCoO2
3.7
274
140
524
1.91
98
7.0
0.71
LiNiO2
3.6
274
170
612
1.63
98
7.1
0.61
*負極がグラファイトの場合の数値
出典:委員会による議論を元に KRI 作成
2)負極材
LIB の負極材は、放電の際には自身が酸化する。酸化する力が強いほど、大きな電池
電圧を得ることができるため、標準電極電位の低い材料が用いられる。電気化学当量に
ついては、正極と同様に小さい材料が望ましい。
13
金属 Li は元素の中で最も低い標準電極電位をもち、比重も金属の中で最も小さいた
め、負極材として理想的な材料ではあるが、一次電池として実用化されているのみで、
現在二次電池としては使用されていない。これは、サイクル特性の悪さと安全性の低さ
が原因である。金属 Li を負極として用いた場合、金属 Li の溶解・析出によって充放電
が進行する。充電時には負極金属 Li 表面に、均一に Li が析出することが望ましい。し
かし実際には小さな金属片として負極表面から遊離したり(はがれたり)、デンドライ
ト状(樹枝状)に成長したりする。これらが、サイクル特性の悪さや安全性の低さの原
因となり、二次電池としての実用化を阻んでいる。
負極材料の技術マップが NEDO から示されている(図 2.2.2-2)。
図 2.2.2-2 LIB 用負極材料技術マップ
出典:NEDO 次世代自動車蓄電池技術開発ロードマップ 200811)
民生小形用 LIB の負極材としては、主に炭素材料が用いられている。この他、酸化
物系負極材、さらなる高容量化、高エネルギー密度化を目指した合金系負極材などへの
チャレンジングな取り組みが行われている。炭素材料は金属 Li と比較すると容量は小
さい(Li:3860 mAhg-1、黒鉛:372 mAhg-1;LiC6)が電位が卑*5(黒鉛:0.07 ~ 0.23 V;
Li/Li+)で充放電が進行するため、高い電池電圧を得ることができる。サイクル特性も
よいことから、現在の民生小形用 LIB において主流の負極材である。放電電位が低い
ため、電解質を分解してしまうという問題があるが、活物質表面に SEI(Solid
Electrolyte Interface)とよばれる被膜を形成することでこの問題を軽減している。炭
*5 「電位が低い」と「電池電圧が低い」の混同を避けるため、電位が低い場合は「電位が卑」と表す。
合わせて電位が高い場合は「電位が貴」と表現する。
14
素材料についてはこれまで多くの研究がなされており、容量密度的にはほぼ限界に達し
ている。
酸化物系負極材は、金属酸化物の結晶中に Li+が出入りする、正極材と同様の反応に
よって充放電反応が進行する。Li+の出入りする電位が卑であれば負極として利用する
ことができる。後述する合金系負極材と比べると容量は低いが、サイクル特性の良いも
のが多い。また、放電電位が炭素材料に比べて貴であり、SEI やデンドライトの生成が
抑制できるため、安全性向上の可能性が高い。
合金系負極材は Li との合金化、脱合金化によって充放電反応を行う。
xLi+ + M + xe- ⇌
LixM
(M は金属)
充電時に Li と合金をつくるため、不均一 Li が析出しにくい。放電電位も比較的卑で
あるため、大きな電池電圧を得ることができ、容量密度も高い。しかし、充放電にとも
なう体積膨張が大きく、充放電を繰り返すと合金が微粉化してしまう問題がある。合金
化に関与しない金属を加えるなどの方法による、サイクル特性の向上が検討されている。
実用化されている材料としては、ソニーのスズ系アモルファス負極(スズ、コバルト、
炭素などのアモルファス)、株式会社東芝(以下東芝)のチタン酸 Li(Li4Ti5O12、以
下 LTO)が挙げられる。どちらも、高容量化、充電特性の向上を実現している。
Li 資源を含んでいる LTO は、LTO を微粒子化することで、急速充放電が可能とな
り、また、電圧が低く、エネルギー密度が小さいという特徴を備える。用途としては、
EV などへの適用が検討されている。このため、新たな Li 需要として動向が注目され
る。
3)電解質
電解質は、充放電において Li イオンの通り道としての重要な役割を担っているため、
高い Li イオン伝導性が求められる。同時に、低い電子伝導性も求められる。電子伝導
性が高いと、自己放電が進行しやすくなってしまうため長期保存性に問題が生じる。ま
た、高い電池電圧下で使用するため、広い電位窓(広い酸化還元電位で安定)が要求さ
れる。
現在の民生小形用 LIB では、LiPF6 を電解質として用いたエチレンカーボネート
(EC)系電解液が用いられている。EC は単独では使用されず、直鎖カーボネートなど
を添加して、電解質の凝固点と粘度を下げて用いられる。
EC のような有機電解液の大きな課題の一つである難燃性の付与を目的として、リン
やホウ素化合物などを添加する検討もなされてきた。これらの化合物には、燃焼時に酸
素を遮断する作用がある。
このほか電解液としては、固体電解質、ゲルポリマー電解質などが検討されている(図
2.2.2-3)。詳細は、2.2.3 で説明する。
15
図 2.2.2-3 LIB 用電解質材料の技術マップ
出典:NEDO 次世代自動車蓄電池技術開発ロードマップ 200811)
LiPF6 中には Li 資源が用いられているが、含まれている量は 0.026 kg/kWh 程度で
あり、正極材に比べると 1/20 程度である。
16
2.2.3
次世代二次電池の技術開発動向
NEDO二次電池技術開発ロードマップ(Battery RM2010)2)では2030年頃から革
新型二次電池が実用化されると予測している。具体的には、全固体LIB、金属-空気
電池、多価カチオン電池などが想定されている。現状のLIBの課題は、まず第一に「耐
久性」と「コスト」、次に「安全性向上」と「容量増大」である。
本節では、安全性向上を目的とした全固体LIBの現状および、飛躍的な容量向上が
期待される(Liなどの)金属-空気電池、Li-硫黄電池を解説し、多価カチオン電池
についても触れる。最後に、近年、難燃性への期待から電解液への適用が検討されて
いるイオン液体技術の開発の現状について述べる(図2.2.3-1)。
図 2.2.3-1 次世代二次電池技術
出典: KRI 作成
本節の要点を表2.2.3-1としてまとめた。
17
表2.2.3-1 次世代電池の技術動向まとめ①
目的
タイプ
方法
具体的技
術
安全性改良
リチウムイオン電池
固体電解質
リチウムイオン電池
固体電解質
リチウムイオン電池(LPB)
ゲルポリマー電解質
高分子固体電解質
ポリマーゲルマトリックス中に電解液を
含有
安全性の向上、電池のフレキシブル化、 ラミネートケース使用ができるなど電池
セパレーターが不要になることによる薄 形状の自由度が高い、着火しにくく安全
特長
膜電池化可能。
性に優れている、プロピレン成分は酸化
が抑制されるためサイクル性の劣化が
低減される。
60℃におけるイオン伝導性が約1×10 2種類の高分子ゲル電解質が実用化さ
3
S/cmである高分子固体電解質(分岐 れている。1つは均一型ゲルで、ポリ
型ポリエチレンオキサイド)を使用し、炭 マーと溶媒が均一な相を形成しており、
PEO系がその代表である。他の1つは不
素系負極とオリビン系正極材料
均一型で、ポリマーの結晶部がゲルの
現状の (LiFePO )を用い、初回クーロン効率
4
骨格を形成し結晶ネットワーク間に存在
到達レベル 77%、可逆容量は正極基準で
する非晶質部分が溶媒によりゲル化し
128mAh/g、80サイクル時の容量は初期
たもの。一般的には不均一型のほうが
の60%程度であったとの報告例あり。
イオン伝導率を大きくできる。
無機固体電解質
リチウムイオン電池
イオン液体電解液
水、有機溶媒に続く第3の液
体としてリチウムイオン電池
用電解質溶媒として検討
発火性の向上以外に、無機固体電解質には対
アニオンや溶媒が含まれないことが様々な副反
応の可能性を減らしており、サイクル性などの電
池信頼性向上に有利。
(1)難燃性・難揮発性
(2)広い液体温度域
(3)イオン伝導性
(4)高いイオン濃度
(5)電気化学的安定性
正極活物質LiCoO2粒子表面に緩衝層(例:
30℃において液体状態であ
Li4Ti5O12)を形成した後に固体電解質と混合し緩 り、イオン伝導率は10-3S/cm
衝層を形成。負極として黒鉛を組み合わせて作 以上、リチウムカチオン輸率
成した全固体リチウムイオン電池は市販のリチ は0.5~0.6、200サイクル以上
安定して充放電が可能との
ウムイオン電池に匹敵する出力密度とエネル
報告例あるが実用性能評価
ギー密度を有していたとの報告例あり。
は未公開。
高出力化のため、さらなる伝導性の向 (1)高分子固体電解質や無機固体電解 (1)急速充電適性の付与
(1)イオン伝導度向上
-3
上が必須(室温でのイオン伝導度を1桁 質に比べ安全性に限界がある。
(2)低温特性改良(-30℃でも10 S/cm程度の伝 (2)低温特性
以上向上、リチウムイオン輸率を有機電 (2)耐酸化還元性については有機電解液 導度を確保)
(3)出力特性の向上
課題
解液と同等以上に高める、-30℃で10 の性質がほぼそのまま出るので、これら (3)保存時の電池内部の充填材パッキング状態 (4)コスト高
3
-4
の問題を解決する必要がある。
の変化による導通性の劣化防止
~10 S/cmの伝導度を確保)。
(3)電解液とP(VdF+HFP)ゲル電解質中 (4)硫化物系電解質の安全性に関する現象把握
の溶媒との強い相互作用を低減
や評価が必要。
日東電工、ダイソー、三菱製紙、三井化 松下電池、ソニー、日立マクセル、エイ 出光興産、住友電気工業、松下電器産業、オハ AIST、関西大学、日本合成
学、住友ベークライト、日本曹達。その ティーバッテリー、三洋電機、NEC、古川 ラ。その他、ダイソー、トヨタ自動車(NIMSとの共 化学工業など
他、ブリジストン、日本油脂、第一工業 電気工業など
同開発)、NIMS、大阪府立大、ジオマテック(全固
製薬、日本合成化学工業、東洋合成工
体薄膜電池)
業、電力中央研究所、横浜国立大学、
【海外】
研究開発 首都大学東京
Front Edge Technology社(電子デバイス用全固
機関・企業 【海外】
体薄膜電池(2009))
Bollore社(スーパーキャパシタとLi金属
infinite Power Solutions社(全体薄膜電池
ポリマー電池(LMP)を搭載したEV発表
(2010))
(2008))
GS NanoTech(旧Nuricell社 韓国)(全体薄膜電
STMicroelectronics
池)
18
表2.2.3-1 次世代電池の技術動向まとめ②
容量増大
リチウム-硫黄電池
硫黄(理論容量:1,672mAh/g)系を正極に、リチウ
方法
ム(理論容量:3860 mAh/g)系を負極に使用
(1)正極(空気極)の設計
硫黄活物質の電解液への溶出抑制のため固体
具体的技 (2)電解質設計(ゲルポリマー有機電解質、水溶液系電解質+リチウ 電解質導入
術
ム-保護皮膜複合負極、正極・負極に異なる電解液を使う方法など) メカニカルミリングなどにより合金化し(例:硫黄・
銅正極)活物質の電子伝導性付与
リチウム-空気電池は活物質のみで計算すると11,140 Wh/kgと最も 電圧は2V程度だが、理論エネルギー密度は2,600
高容量。
mWh/g、リチウムイオン電池の理論エネルギー
特長
密度570mWh/gに比べてはるかに大きい。
目的
タイプ
金属(リチウム)-空気電池
負極に金属、正極に空気中の酸素を使用
(1)亜鉛負極は一次電池の負極としては優れた特性を示すが、二次電
池での充放電反応は析出溶解過程であるため、デンドライトによるサ
イクル劣化が問題。
(2)リチウム負極では、実容量570mAh/gという報告あり(Abraham,
現状の 1996年)。しかし、リチウム金属の反応に起因するサイクル劣化を防止
到達レベル するために、リチウム-保護皮膜複合負極が検討提案されている。
(3)リチウム負極、2種類の電解液(負極用:有機電解液、正極用:アル
カリ性水溶性ゲル)、リチウムイオン固体電解質セパレーターを組み合
わせる方式も検討されている。
課題
多価カチオン電池
負極に一価のリチウムに替えて多価カチオ
ンを使用
マグネシウム塩を含有するポリエーテル化合
物を重合硬化させたマグネシウムイオン伝導
性ポリマー固体電解質、マグネシウムイオン
伝導性ゲル電解質、など
1つの多価カチオンが動くことで複数の電子
が移動し、高容量化が図れると言われてい
る。
硫黄活物質の絶縁性改善のためメカニカルミリン 正極に酸化物材料(V2O5等)、負極にマグネ
グによって複合化した硫黄・銅を正極に用い、リチ シウム、カルシウム、アルミニウム等の金属
ウム・インジウム合金負極とLi2S・P2S5のような固 が主に検討されている。
体電解質と組み合わせにより、硫黄と銅の重量
当たり約650 mAh/gの電池容量に到達している例
がある。
(1)サイクル性能の劣化やガスの発生を実用可能なレベルにまで改善 硫黄活物質の
多価カチオン伝導材料開発
(2)充放電がクローズドシステムとして実現できること
(1)電解液への溶出抑制
固体電解質を用いる場合は、固体電解質の課題
も加わる。
(2)電子伝導性付与
トヨタ自動車、オハラ、AIST(有機電解液を組み合わせたリチウム空気 大阪府立大
電池の開発)、京都大学(トヨタ自動車と共同開発)、三重大学
(NASICON系ガラスセラミックスの水溶液安定性に関する研究)、九州
大学(ニッケル系材料)など
【海外】
研究開発 IBM(リチウム空気二次電池の研究開発。産学連携による研究開発
機関・企業 で、IBMの研究開発部門であるIBMリサーチのアルマデン研究所(カリ
フォルニア州)による研究開発を行う。送電網での電力貯蔵に利用す
ることも想定)
St.Andrews大学(携帯電話に使用されるリチウムイオン二次電池の8
倍の重量エネルギー密度を持つリチウム空気電池の開発)
19
トヨタ、京都大学、東京大学、東北大学、
AIST、日本触媒、山口大学、松下電器産業
1) 全固体 LIB
(1) 固体電解質開発の目的
固体電解質を用いると LIB はすべて不燃性材料より構成されることになり、電池の
安全性は極めて高いものになる。これが固体電解質開発の最大の目的である。現在 LIB
には液体有機電解質が使用されている。液体有機電解質には高い Li 伝導度を得るため
高い誘電率*6と低い粘度が求められる。この要求を満たすため、現在は高い誘電率を
有するものの、粘度の高いプロピレンカーボネート(以下、PC)や EC などの環状カ
ーボネート類と、誘電率が少し低いものの粘度が低い鎖状カーボネート類やエーテル
類を混合したものが用いられている。これらの有機溶媒は可燃性物質であり、特に粘
度を低下させるために混合する有機溶媒は引火点が低いものが多いため、安全性の観
点で懸念がある。
その他、固体電解質は液漏れの心配が無くなる、電解質による容器の腐食が軽減され
る、など利点が大きく、検討が進められている。
(2) 固体電解質の種類
固体電解質は、高分子固体電解質(Solid Polymer Electrolyte:以下、SPE)と無
機固体電解質に大別される。固体電解質の共通の弱点はイオン導電性が溶液に比べ劣
ること(液体電解質が 10-2 S/cm 台であるのに対し 10-3 S/cm)である。さらに固体で
構成することによる電池内導通性も大きな課題である。
高分子固体電解質のイオン伝導率を向上させる方法として、高分子に有機溶媒を加
えたゲルポリマーに無機電解質を添加したゲルポリマー電解質の開発も行われてきた。
便宜上リチウムポリマー電池(LPB)と呼ばれている 12)。
(3) 各論
① 高分子固体電解質(SPE)
i) 経緯と現状
高分子であるポリエチレンオキシド(PEO)と Li 塩からなる複合体がイオン導電性
を示すことが 1970 年代に見出されて以来、LIB への SPE の適用が検討されてきた 13)。
今までに見出された SPE の中で最も高いイオン伝導度を示すのは PEO とその誘導
体であるが 14)、その室温でのイオン伝導度は 10-4 S/cm 程度で、Li イオンの輸率(全
伝導度に対する Li イオンの伝導度の割合)が 0.1-0.3 程度なので実用レベルには達し
ていない。さらに、室温から氷点下にかけてイオン伝導度の温度依存性がさらに強く
なり、氷点下での電池駆動はほとんど不可能な状況である。
*6 溶媒の誘電率が高いと、リチウムイオンと陰イオンとの相互作用が小さくなるため、高い Li 伝導度
が得られる。
20
ii) 長所
SPE は通常の液体有機電解質と異なり、Li イオンの輸送を担うばかりでなく、正極
と負極の接触を防ぐためのセパレータとしての役割も担う。結果として、安全性の向
上、電池のフレキシブル化、セパレータが不要になることによる薄膜電池化の利点が
期待される。
iii) 課題
SPE を用いた電池の高出力化にはさらなるイオン導電性の向上が重要となる。具体
的には、室温でのイオン伝導度を 1 桁以上向上させるだけでなく、Li イオンの輸率を
有機電解液と同等以上に高め、また、-30℃で 10-3-10-4 S/cm の伝導度を確保するこ
とが求められる。その技術困難度は極めて高い。現在、下記基礎的検討(a~c)や応
用的な検討(d)が進められている。
a) 高いイオン伝導度と力学的強度を併せ持つ高分子の実現(ポリマーアロイ、無機粒
子との複合化など)
b) Li 塩の分子設計(高分子化、高濃度でも会合しにくい塩、など)
c) 電極/電解質の固体界面設計
d) SPE の柔軟である特長を生かしたラミネート*7や高レート適性*8を実現するための
電極の 3 次元化 といったプロセス技術の工夫 15,16)
iv) 特許出願からみたプレーヤ
2001年から2008年の間の公開件数ベースで見た場合、日東電工株式会社(以下、日
東電工)(34件)が最も多く、次いでダイソー株式会社(以下、ダイソー)(26件)、
三菱製紙株式会社(以下、三菱製紙)(26件)、三井化学株式会社(以下、三井化学)
(12件)、住友ベークライト株式会社(以下、住友ベークライト)(10件)、日本曹
達株式会社(以下、日本曹達)(10件) となっている。日東電工に関しては多孔質材
料による電解質物質の担持に関する技術も含んだ件数となっている。日東電工から出
願されている特許ではダイソーと共同で出願しているものもあり、協力関係が構築さ
れていると考えられる。ダイソーに関しては、そのほかにも日立化成工業株式会社や
日産自動車株式会社とも関係を構築している。三菱製紙は日本ユニカー株式会社との
共同出願が多い。三井化学に関しては、三洋電機との共同出願が見られる。住友ベー
クライトおよび日本曹達に関しては、単独での出願となっている。これらの企業以外
にも、株式会社ブリヂストンがフォスファゼン(無機高分子の一種)系材料を用いた
電解質開発を行っている。
*7 表面に薄いフィルムを貼る加工方法。ここでは、SPE をフィルムとして電極に貼る加工方法や SPE 表
面にフィルムを貼る加工方法などという意味。
*8 高レートとは一度に流せる電流量の数値が高いこと
21
なお、本領域は2002年以降公開件数が低下する傾向にあり、技術ポートフォリオと
しては徐々に飽和しつつあることを示唆している。
② ゲルポリマー電解質(LPB)
i) 経緯と現状
1994 年に米国の Bellcore 社(Bell Communications Research, Inc.)によって開発
され 17)、1999 年にソニーが発売したゲルポリマー電解質 LIB12,17)は、ポリマーゲルマ
トリックス中に電解液を含有する。現在、2 種類の高分子ゲル電解質が実用化されて
いる。1つは均一型ゲルで、ポリマーと溶媒が均一な相を形成しており、PEO 系がそ
の代表である。他の1つは不均一型で、ポリマーの結晶部がゲルの骨格を形成し結晶
ネットワーク間に存在する非晶質部分が溶媒によりゲル化したもので、一般的には不
均一型のほうがイオン伝導率を大きくできる 12)。Bellcore 社によって開発された不均
一型高分子ゲル電解質 P(VdF+HFP)は溶媒 EC/PC/1M LiPF6 でイオン伝導率>10-3
S/cm といわれる 12)。
ゲル強度とイオン伝導度をバランスさせるポリマー最適設計を行うことにより電解
液溶媒に対してポリマーゲルマトリックスの占める体積は 8-9 %程度 18)となり、得ら
れたゲル電解質のイオン伝導度は液体電解液に対しやや劣る程度であり、放電特性の
負荷(抵抗)依存性と温度依存性も遜色ない結果が得られている。1C/1C*9の充放電サ
イクル特性は 1,000 回後に 80 %の容量を維持した 16)。
ii) 特長
通常の液体有機電解質に比べ、以下のような長所がある。
a) 漏液の心配がないため、ラミネートケース使用ができるなど電池形状の自由度が高
い。
b) 薄型設計により表面積が大きく放熱しやすく、有機電解液がポリマーゲルマトリッ
クス中に閉じ込められていることにより着火しにくいため、安全性に優れている。
c) ポリエチレン系セパレータは正極による酸化を受けるため、サイクル性が劣化する
が、プロピレン成分は酸化が抑制されるためサイクル性の劣化が低減される。
iii) 課題
その一方で、以下の点についてさらに改善を要する。
a) ゲルポリマー電解質は電池に壊れるほどの圧力が加わる時や温度上昇時などの一
定基準以上の条件下では、含浸した有機電解液が分離するので、高分子固体電解質
や無機固体電解質に比べ安全性に限界がある。
b) 耐酸化還元性については有機電解液の性質とほぼ同等となるため、これらの問題を
*9 1C は、電池の全容量を 1 時間で放電/充電させるだけの電流量
22
解決することが重要である 14)。
c) 電解液溶媒が、電解質である P(VdF+HFP)と強い相互作用を持つため高出力放電
に不利である。
③ 無機固体電解質(セラミック固体電解質)
i) 経緯と現状
無機固体電解質を用いた全固体 LIB の出力電流は液体有機電解質系と同じ活物質を
用いても 1 mA・cm-2 程度が限界であり、数分の一に満たないものであった。その原
因は、固体電解質の低いイオン導電性にあると考えられてきた。しかし、近年 thio-
LISICON と呼ばれる一群のガラス状態となる硫化物の結晶化ガラスのなかに 10-3
S/cm 半ばの固体電解質が見出され、検討が進んでいる
19)。液体有機電解質の電気伝
導度は高いもので 10-2 S/cm 台だが、陰イオンと溶媒分子の伝導の寄与により Li イオ
ンの輸率は 0.3-0.4 である。高分子電解質では Li イオン以外に対アニオンも移動する
ため、例えば PEO 系において輸率は 0-0.7 である。それに対し、無機固体電解質では
Li イオンの輸率が 1 である。電池性能には Li イオン伝導度が反映されるため実質的
な輸率が重要であり、この点で無機固体電解質の導電性は液体有機電解質系に匹敵し
うる水準に達したとみなされている。この事実は、出力の律速段階が電極活物質と電
解質の界面にあることを強く示唆するものであり、近年、固体電解質表面の修飾が活
発に検討され目覚ましい性能向上が図られた。
ii) 長所
難燃性の向上以外に、無機固体電解質には対アニオンや溶媒が含まれないことが
様々な副反応が起こる可能性を減らしており、サイクル性などの電池信頼性向上に有
利な点となっている。
iii) 課題
実用化するためには、以下の点について更なる改善を要する。
a) 急速充電適性の付与と低温特性(-30 ℃でも 10-3 S/cm 程度の伝導度)の確保。
b) 保存時の電池内部の充填材パッキング状態の変化による導通性の劣化防止の解決。
c) 電極と電解質の固体-固体接合の形成・維持の困難さ。
d) 安全性に関する現象把握や評価(特に、硫化物系電解質は水と接触すると危険な硫
化水素(H2S)を生成する懸念があるため重要)20)。
iv) 特許出願からみたプレーヤ
2001年から2008年の間の公開件数ベースで見た場合、出光興産株式会社(以下、出
光興産)(43件)が最も多く、次いで住友電気工業株式会社(以下、住友電気工業)
(19件)、パナソニック(13件)、株式会社オハラ(以下、オハラ)(12件)、大阪
府立大学・辰巳砂昌弘教授(6件)となっている。出光興産では硫化物系のガラスおよ
23
びガラス・セラミックス材料を中心とした開発に注力している。また、辰巳砂氏や独
立行政法人物質・材料研究機構との共同出願があることから、産学連携を活用した開
発が行われているものと考えられる。住友電気工業やパナソニックでは硫化物系の材
料や製造方法に関する開発が行われている。オハラの場合は出光興産に近い領域が注
力領域であり、ガラス・セラミックス複合体材料の開発を行っている。
なお、この領域では2006年以降、特許公開件数が急増する傾向にある。
v) 実用化の検討
出光興産
21)は、硫化
Li をベースとした固体電解質の開発を 1999 年から行ってい
る。2009 年 1 月には、この固体電解質を用いて、名刺サイズ(55 mm×91 mm)で、
容量が 100 mAh のラミネート型 LIB セルを試作しており、2010 年 3 月、『第 1 回国
際二次電池展』において、展示も行っている。セルの厚さは 4-5 mm。1 セル当たりの
出力電圧は 3.7 V である。また、同セルを 4 個直列に接続することで、12 V の定格出
力電圧を持たせた LIB モジュールを試作し、それを用いてカーナビゲーションシステ
ムを動作させるデモンストレーションを行った。この全固体 LIB は、100 ℃の環境下
でも良好な充放電サイクル特性を持つ。また、一時的に 250 ℃を超える温度環境にな
る、鉛フリーはんだのリフロー工程を経た後でも充放電ができること、20 V まで過充
電しても電解質が分解しないこと、過放電の後でも二次電池として利用できることな
ども、従来の LIB と異なる特徴だとしている。同社は、2012 年から固体電解質と全
固体 LIB を販売することを計画している。
2) 金属-空気電池 22)
(1)
はじめに
金属-空気電池の開発は、電池容量の向上を最大目的とするものである。原理自体
は 20 世紀の初頭に発明されており、負極に金属の酸化還元反応を、正極に空気中の酸
素の酸化還元反応を利用した電池である。正極活物質である酸素は電池セルに含まれ
ておらず空気中に無尽蔵に存在するので理論的に正極の容量が無限となり、大容量電
池技術として注目されてきた。亜鉛負極を用いた一次電池が補聴器用電源として実用
化されている。この場合、電解液はアルカリ金属水酸化物が用いられるが、現在は水
酸化カリウムを用いるものが主流である。化学反応としては、以下であり電圧は 1.35
~1.4 V である。
正極: O2 + 2H2O + 4e- → 4OH-
負極: Zn + 4OH- → ZnO + H2O + 2OH- +4e-→ Zn(OH)42-
24
二次電池とした場合、理論容量およびエネルギー密度が LIB を超える可能性がある
ため、電気自動車用の次期二次電池候補としても研究されている。図 2.2.3-2 に Li-
空気電池の原理図を示す。
正極
図 2.2.3-2 Li-空気電池の原理図
出典:次世代型二次電池材料の開発 22)に KRI にて一部加筆
(2)
正極
空気極は空気に接するガス供給層と反応層(もしくは触媒層)から構成される 2 層
構造が採用される場合が多い。ガス供給層は、通常炭素材料およびバインダーからな
り、反応層にスムースにガスを供給する役割を有する。反応層も基本的には炭素材料
およびバインダーからなり、放電時の酸素還元反応および充電時の酸素発生反応に対
する過電圧が非常に大きいため、貴金属や金属酸化物などの電極触媒を添加すること
が多い。電極反応は固相(炭素材料または触媒)-液相(電解液)-気相(酸素)が
接触する 3 相界面で進行する。正極である空気極では、放電時に空気中の酸素を活物
質とする電気化学的還元反応が進行する。また、充電の場合、逆反応である酸素の発
生反応が進行する。
(3)
負極
負極では様々な金属種が探索されている状況である。一次電池で用いられている亜
鉛の他、鉄、Li、カルシウム、マグネシウム、アルミニウムなどが研究開発されてい
る。
負極側に最も軽い金属であるLiを使うLi-空気電池は理論エネルギー密度が最も高
い。このため、金属Liを負極として使いこなす技術開発を進めてしていくことが求め
られる。金属Liを負極とする蓄電池を最初に報告したのは、1996年米国のAbrahamで、
電解質にはゲルポリマーを用いている 23)(その後も現在に至るまで欧米では有機系電
25
解質を用いたLi-空気電池が主流である)。正極は活物質は無いので、その重量を多
孔質カーボン材料+触媒+バインダーの重量としている。正極も含めた亜鉛-空気電
池の理論エネルギー密度は1,350 Wh/kgであるのに対し、Li-空気電池は活物質のみ
で計算すると11,140 Wh/kgと一桁高い値が見込まれた。しかし、実際に放電すると
570 mAh/gという結果であった。一方2004年には、Viscoらが水溶液系電解質を用い
たLi-空気電池の報告を行っている 24)。この電池は金属Liを水溶液から保護するため
界面に緻密な固体電解質膜を配置してある。
(4) 課題
Li-空気電池の課題は、使用可能な電解質、充電可能な空気極がないことである。
また、以下の反応によるサイクル性能の劣化やガスの発生が挙げられる。
① 酸素が空気極の触媒表面で電解液中のLiイオンと反応し、正極に固体の反応生成物
(Li2OとLi2O2)が蓄積し細孔を目詰まりさせ、放電が止まる。
② 空気中の水分が水溶液あるいは有機電解液中に溶け込み金属Liと反応すると危険
な水素ガスを発生する。
③ 充電時に炭素が酸化され炭酸Liが発生するためサイクル性が劣化する。
④ 空気中の窒素が金属Liと反応して放電を妨害する懸念がある。
このように、水溶液系および有機系電解質を用いたLi-空気電池では、いくつかのLi
イオンの反応を防止することが重要となる。
3) Li-硫黄電池 25)
Li-硫黄電池は、硫黄-硫黄結合(Sulfur-Sulfur bond、以下 S-S 結合)を有する
硫黄系化合物を正極活物質として使用し、Li のようなアルカリ金属、または Li イオ
ンなどのような金属イオンの挿入/脱挿入が起こる炭素系物質を負極活物質として用
いる二次電池である。還元反応時(放電時)S-S 結合が切れながら S の酸化数が減少
し、酸化反応時(充電時)S の酸化数が増加しながら S-S 結合が再び形成される酸化
-還元反応を利用して電気的エネルギーを保存及び生成する。
硫黄(S8:理論容量 1672 mAh/g)を正極に、金属 Li(理論容量:3860 mAh/g)
を負極に用いた Li-硫黄電池は電圧は 2 V 程度と、3.6 V の LIB よりは低いが、理論
エネルギー密度は 2,600 mWh/g となり、LIB の理論エネルギー密度 570 mWh/g
(実際の容量は約 220 mWh/g、正極: 約 350 mAh/g、負極: 約 600 mAh/g)に比べて
はるかに大きい。これまで開発されている電池の中でエネルギー密度面で最も有望な
ものである。また、正極活物質として用いられる硫黄系物質は、それ自体が安価で無
毒であるという長所がある。
しかし、まだ商業化に成功した例はないのが実情である。Li-硫黄電池が商業化で
26
きない最大の理由は、硫黄を活物質として用いると、投入された硫黄の量に対する電
池内の電気化学的な酸化還元反応に関与する硫黄の利用率が低いため、実際には極め
て低い電池容量を示すためである。具体的には、従来の有機電解液を用いた場合、活
物質の溶出を抑制することは困難であり、硫黄の活物質としての利用率が低下し、サ
イクル劣化も大きい。
その克服のために、Li2S・P2S5 のような固体電解質を用い全固体型 Li-硫黄電池が
作成されたが、サイクル特性は向上したものの、硫黄自身の絶縁性のため活物質とし
ての利用率が著しく低く低容量であった。この絶縁性改善のためメカニカルミリング
*10によって複合化した硫黄・銅を正極に用い、Li・インジウム合金負極と上記固体電
解質と組み合わせ、硫黄と銅の重量当たり約 650 mAh/g の電池容量に到達している例
がある。
さらに、単体硫黄(S8)や様々な金属硫化物について、微細粒子化や炭素複合化などに
よる実用化を目指した高容量正極材料開発が精力的に検討されている。
このほか、Li-硫黄電池は硫黄が多硫化物を形成してしまうため、自己放電が大き
いこと、硫化水素が発生する危険性など多くの課題がある。
図2.2.3-3 全固体型Li-硫黄電池の例
出典:次世代型二次電池材料の開発25)
4) 多価カチオン電池
多価カチオン電池は、1 つの多価カチオンが動くことで複数の電子が移動し、高容
量化が図れると言われている。 正極に酸化物材料(V2O5 など)、負極にマグネシウム、
カルシウム、アルミニウムなどの金属が主に検討されている。
具体的研究例としては、マグネシウム塩を含有するポリエーテル化合物を重合硬化
させたマグネシウムイオン導電性ポリマー固体電解質、マグネシウムイオン導電性ゲ
*10 固体の状態で成分金属の粉末を機械的に混合(ミリング)するだけで,化学反応を起こさせて合金を
創る方法。
27
ル電解質、などの開発が進められているが、総じて言えば、大学、企業での研究段階
である。
図2.2.3-4 多価カチオン電池の例
出典:次世代型二次電池材料の開発25)
5) イオン液体の電解質への適用
(1) はじめに
イオン液体とは、1992 年に Wilkes らによって初めて報告されたイオンのみで構成
される液体である 26)。その構成イオンは溶媒がないにもかかわらず電離しており、イ
オン液体を構成するカチオン・アニオンの組み合わせによっては室温以下の温度で液
体状態を示す。一般に、①難燃性・難揮発性、②広い液体温度域、③イオン導電性、
④高いイオン濃度、⑤電気化学的安定性、という特徴を有する 27,28)。
この特徴、とりわけ難燃性への期待から、水、有機溶媒に続く第 3 の液体として LIB
用電解質溶媒として検討されている(表 2.2.3-2)。
(2)
経緯と現状
イオン液体の実用化のために以下に示すような検討が精力的になされているが、室
温でのイオン伝導度の一桁以上の向上、低温域(-30 ℃)での 10-3 S/cm 程度の伝導
度の確保、出力特性の向上に加え、コストの課題も抱えておりまだまだ改善すべき点
は多い。
① LIB 負極の作動電位は低いため耐還元性に優れた電解液が選択される。典型的なイ
オン液体の耐還元安定性はカチオン種に依存すると考えられており、芳香族系カチ
オン(イミダゾリウム系、ピリジニウム系)に比べ、脂肪族系カチオン(ピロリジ
ニウム系、アンモニウム系)の方が安定となる傾向がある 29)。
② 芳香族系カチオンであるイミダゾリウム系から構成されるイオン液体は、やや粘性
率の低いイオン液体となる。Li により還元されやすいため、添加剤の使用や比較
28
的作動電位が貴な負極である Li4Ti5O12 を用いた例がある。
③ 脂肪族系カチオンを用いるイオン液体は添加剤無しでも電解液使用が可能である
(表 2.2.3-1、a)30)。
④ 炭素負極ではイミダゾリウム系カチオンや脂肪族系カチオンが Li イオンに優先し
て炭素層間に挿入されるため、Li イオンの挿入脱離反応が困難であると報告され
てきた。そのため EC やビニレンカーボネートを添加することにより良好な SEI
皮膜を形成させ、Li イオンの挿入脱離反応の可逆性を向上させる試みがなされて
いる。一方、[(FSO2)2N]-アニオンを含むイオン液体を用いることにより Li イオン
の挿入脱離反応が可能であることが見出されている(表 2.2.3-1、b)31)。
⑤ イオン液体の耐酸化性はアニオン種でほぼ決まると考えられている。イオン液体の
酸化限界電位は、LiCoO2、LiMn2O4、LiFePO4 など汎用の正極材料ばかりでなく、
LiMn1.5Ni0.5O4 の作動電位よりも高く充放電可能であり、5 V 級 LIB 用電解液とし
ての可能性もある。
⑥ イオン液体のイオン種や物性と電極反応速度との関連を系統的に検討した例は少
ないが、表 2.2.3-1、c に示すように 55 ℃におけるレート特性は液体電解液を用い
た電池の室温でのレート特性を上回る例がある 32)。
⑦ イオン液体中では Li イオンの輸率は低いので電池内の Li イオンの濃度分極が大き
くなり高電流化には不利となる。Li イオンをカチオンとするイオン液体が設計で
きれば、高い Li イオン濃度と輸率を有する Li イオン電池が実現できる可能性があ
る。そのための1つの試みが、表 2.2.3-1、d に示した glyme を Li イオンの配位子
にする方法であり、この領域の今後の展開が期待される 33)。
表 2.2.3-2 イオン液体を用いた LIB 例
負極
a 金属Li
b
炭素負極
材料
正極
電解液に用いたイオン液体(カチオン・アニオン)
[N-methyl-N-propylpiperidinium]・[(CF3SO2)2N]
-Li[(CF3SO2)2N]
結果
[1-alkyl-3-methylimidazolium]・[(CF3SO2)2N]
-Li[(FSO 2)2N]
添加剤なしで炭素電極に良好なSEI被膜が形成される。
30サイクル後もおよそ360 mAh/gの充放電容量を維持
負極の充放電効率が95 %以上
c 金属Li
LiCoO2 [5-azoniaspiro[4,4]nonane]・[(FSO 2)N(SO2CF3)]
d 金属Li
LiCoO2 [Li(glyme)]・[(CF3SO2)2N]
55 ℃のレート適性は1MLiPF6を含むEC/DMC(1:1)の室温の
レート適性を上回る。
30 ℃において液体状態であり、イオン伝導率は10 -3 S/cm以上、
リチウムカチオン輸率は0.5-0.6、200サイクル以上安定して
充放電が可能であった。
出典:機能材料 27)、次世代型リチウムイオン二次電池 28)を元に KRI 作成
29
2.3 Li資源の将来需要予測
Li 資源の将来需要動向は LIB を搭載した EV などの需要がどのようになるかに大きく依
存する。一方でそれらの市場を予測することは、LIB やモーターなどの技術的要素だけで
なく、充電器を含めたインフラの状況、顧客の嗜好、各国の政策などが複雑に絡み合うた
めに非常に難しい。本調査においては、これまでの調査結果から得られた知見や専門の市
場調査会社などが実施した予測を利用して、Li 資源の将来需要予測を実施する。
2.3.1
次世代自動車の市場予測 1)
2008年の世界自動車販売市場は、成長著しい新興国市場において約3,100万台、需要の安
定している先進国市場では、北米約1,600万台、欧州約1,500万台、日本約500万台(全世界
で約6,800万台)であった(図2.3.1-1)。
先進国市場:需要は安定
新興国市場:爆発的に需要増加
2008年実績
世界市場
6,800万台
新興市場
3,100万台
日本
500万台
欧州
1,500万台
北米
1,600万台
図 2.3.1-1 世界自動車市場の推移(台数)
出典:次世代自動車戦略 20101)を元に KRI 作成
1)各社の次世代自動車市場予測
民間会社は、2020年までに上記世界市場の10~20 %程度(400~1,876万台)がHEV、
PHEV、EVなどに置き換わると予想している。以下に、各社の予想をまとめる。
・ 株式会社富士経済(以下富士経済)2)は2020年のHEV・EV・PHEV世界市場を調査し、
以下のようにまとめている。HEVの市場は、2015年には各社のハイブリッドシステムの
開発が完了することなどから、2015年には451万台、その後は車種が拡充され、市場も
急拡大し、2020年には1,476万台に達すると予測される。EVの市場は、充電インフラの
30
整備に時間を要するが、日本以外にも補助金制度が充実している北米や、充電インフラ
の積極的な整備を推進する欧州の市場が大幅に伸び、2015年には36.5万台、2020年には
215万台が予想される。PHEVの市場は、当面は国土が広く航続距離の長い北米、欧州
市場が需要の中心となり、2015年には24万台、2020年には175万台が予想される。
・ 株式会社富士キメラ総研(以下富士キメラ)3)は、「2009年のHEV/EVの生産台数は、
日本国内で71万台、世界市場では77.8万台となった。2010年も世界市場では、60 %以
上の伸びを示すと見込まれる。2011年以降もHEV主導のこの流れは年率20 %以上で市
場が拡大して行くと予測する。2015年のHEV/EVの世界の生産台数は、410万台を超
え、2020年の予測では720万台となり、自動車の世界生産台数(9,940万台/2020年予
測:富士キメラ総研)の7.2 %を占めるまで成長する。この予測は、今後中国やインド
などの新興国の自動車需要が、世界の自動車需要を牽引していく事から、小型モデルや
低価格車を中心に需要が増大するが、中国の富裕層の拡大や、インドのモータリゼーシ
ョンが急成長する場合は、HEV、EVの需要も同様に生まれることが想定され、2020年
には自動車の世界生産台数の10 %近くまで拡大する可能性もある。」と報告している。
・ 株式会社矢野経済研究所(以下矢野経済)4)は、次世代自動車の世界生産台数について、
HEV・PHEVは2015年段階で360万台程度(販売総数の5 %)、2020年段階で580万台
程度(同7.3 %)と予測している。またEVに関しては、走行距離の制約や車両価格、充
電インフラなどの課題があり、大量普及には至らず、2015年の段階で約100万台、2020
年の段階で200万台を超えないレベルになるとしている。
このほか、Li資源生産会社であるSociedad Quimica y Minera de Chile(以下SQM社)5)、
Chemetall社6)もそれぞれ独自に世界市場の予測を行っている。(表2.3.1-1)。
31
表 2.3.1-1 2020 年の次世代自動車市場予測(世界)
Chemetall
富士経済 富士キメラ 矢野経済 SQM
推定1 推定2
万台
HEV
1476
180
360
580
PHEV
175
60
120
EV
215
200
360
120
合計
1,866
720
580 625
600
600
*富士経済、富士キメラ、矢野経済は日本の民間調査会社
SQM社、Chemetal社はLi資源生産企業
出典:各社市場予測データから KRI 作成 2~6)
また、SQM社5)は2030年における予測も発表しており、HEV、PHEV、EV 合計で
1,500-2,000万台程度普及するとしている。
2)車載用Li資源需要の試算
1)の次世代自動車市場予測を元に、今後需要が増えると予想される車載用LIBに使用さ
れるLi資源需要を試算する。
車載用電池としては、既存もしくは開発中のHEV、PHEVやEVにはそれぞれ1.3 kWh、
5.2 kWh、16~24 kWhの蓄電池が搭載されている。2030年までには、さらに高性能化する
ことが予想されるが、本調査ではこの数値を用いて試算する。EVに関しては中間値である
20 kWh/台を用いた(表2.3.1-3)。
表 2.3.1-3 計算に使用した車載用電池の電池容量
電池容量
(kWh/台)
HEV
PHEV
EV
1.3
5.2
20
出典:各メーカ HP を元に KRI 作成
また、2.2 節より車載用 LIB としては、2030 年までは既存 LIB の改良品が使用され、
使われる正極材は Mn 系、リン酸鉄系が多いと予測される。そこで、正極材中の Li 含有量
は 0.45 kg-LCE/kWh と仮定した。
全ての車種(HEV,PHEV,EV)において LIB が使われると仮定すると、2020 年までに
は最大で約 35 千 t-LCE の Li 資源の需要があると予測される(表 2.3.1-4)。
32
表 2.3.1-4 2020 年の次世代自動車用 Li 資源需要予測
富士経済 富士キメラ 矢野経済
HEV
PHEV
EV
合計
8,635 4,095 19,350 32,080
28,620
SQM
t-LCE
1,697 18,000 19,697
24,844
Chemetall
推定1
推定2
1,053
1,404
32,400
34,857
2,106
2,808
10,800
15,714
*富士経済、富士キメラ、矢野経済は日本の民間調査会社
SQM社、Chemetal社はLi資源生産企業
出典:KRI 作成
2.3.2 将来需要予測
1)2020-2030年のLi資源需要
(1) 既存のLi資源需要
Li 資源の既存主要用途はバッテリー(小型家電用 LIB)および耐熱ガラスである。この
2 分野は先進国の安定的な需要が期待でき、加えて成長著しい新興国における需要増加も
期待できる。また、2.2 節 LIB の開発動向より、小型家電用 LIB は今後も Co 系正極材が
採用され、中期的には三元系の正極材へとシフトしていくと予想される。しかし、現在使
用されている Co 系正極材と三元系正極材は、Li 含有量がほぼ同じ( Co 系 0.71
kg-LCE/kWh、三元系 0.72 kg-LCE/kWh:詳細は 2.2 節参照)であるため、小型家電用
LIB の Li 需要は正極材が変わっても大きな変化はないと考えられる。
よって、既存 Li 資源の需要においては、従来どおり年平均 5 %の需要増加が続くと仮
定した。既存 Li 資源需要は、2020 年には、現在の 120 千 t-LCE/y から 95 千 t-LCE/y 増
加し、215 千 t-LCE/y の需要が見込まれると予測した。
(2) 車載用LIB向けLi資源需要
2.3.1の試算結果から、2020年時点でのLi資源は35千 t-LCE/yの需要が見込まれる。使わ
れる車載用LIBに関しては安全性などの面から、Mn系、リン酸鉄系の正極材が中心であり、
現状技術を改良したものであると予想される。
以上の結果から、2020年におけるLi資源の需要は、既存Li資源需要として215千 t-LCE/y、
車載用LIB向けLi資源需要として35千 t-LCE/y 、合計250千 t-LCE程度の需要になると予
測した。LIBに関しては、2020年から2030年にかけても現状の改良型の正極材が使われる
もの思われる。またLIB用負極材としてはLiを含んだLTOの採用が徐々に進んでいくと予想
される。
33
2) 2030年以降のLi資源需要
2030年以降実用化が期待されている次世代二次電池に関してもLi資源を利用するタイプ
が多い。全固体LIBは正極材、電解質に、金属空気電池は負極材にLi資源を用いる。
2030年以降も既存のLIB、次世代二次電池ともにLi資源を利用することが予想されるため、
二次電池の需要増大に伴って、Li資源の需要は伸びていくものと思われる。
34
3. Li 資源の供給動向と将来見通し
3.1. 主な供給元
Li 資源は塩湖・鉱山から得ることが可能である。塩湖由来の Li 資源の多くはチリ、ア
ルゼンチン、アメリカ、鉱石由来の Li 資源の多くはオーストラリアであり、計 4 カ国が主
な供給国である。供給企業としては、チリの SQM 社、ドイツの Chemetall 社、アメリカ
の FMC lithium 社(以下 FMC 社)、オーストラリアの Talison lithium 社(以下 Talison
社)の 4 社、供給源である主な塩湖・鉱山としては、チリの Atacama 塩湖、アルゼンチ
ンの Hombre Muerto 塩湖、アメリカの Silver Peak 塩湖、オーストラリアの Greenbushes
鉱山の計4ヶ所である。Li 資源は、供給国別にみても 4 ヵ国、供給企業別にみても 4 社、
供給源別にみても 4 ヵ所による寡占状態である(表 3.1.1-1)。
なお、中国も大量の Li 資源を保有しており、生産も行っている。しかしながら、Li の
化学品を扱っているメーカからのヒアリングによると、中国産の Li 資源は、塩湖・鉱山由
来いずれも品質が安定しないため日本国内で使うのは難しいとのことであった(ただし、
Talison 社から輸入した Li 鉱石由来の Li 製品は日本に輸出しているとされる)。そのた
め本報告の中では、中国に関しては触れていない。
表 3.1-1 主な Li 資源供給元
供給国
供給企業
供給源
チリ
アルゼンチン
アメリカ
オーストラリア
Chemetall社(ドイツ)
SQM社(チリ)
FMC社(アメリカ)
Talison社(オーストラリア)
Atacama塩湖(チリ)
Hombre Muerto塩湖(アルゼンチン)
Silver Peak塩湖(アメリカ)
Greenbushes鉱山(オーストラリア)
出典:KRI 作成
Li 資源供給企業の大手 4 社は、チリ、アルゼンチン、アメリカ、オーストラリアの 4 カ
国で 5 つのプラントを稼動しており、その生産能力の合計は年間約 131.5 千 t-LCE であ
る。各社の生産能力は、SQM 社の Atacama 塩湖プラントが最も大きく 40 千 t-LCE、次
いで Talison 社の Greenbushes 鉱山が 38 千 t-LCE、Chemetall 社の Atacama 塩湖プラ
ントが 27 千 t-LCE、FMC 社の Hombre Muerto 塩湖が 17.5 千 t-LCE、Chemetall 社の
Silver Peak 塩湖が 9 千 t-LCE である(図 3.1-1)1)。
2008 年の Li 資源の供給源は、塩湖が 62 %、鉱石が 23 %である(その他は除く)。
供給国別の Li 資源生産割合は、チリ 45 %、オーストラリア 23 %、アルゼンチン 14 %、
アメリカ 3 %であり、上位 4 カ国で 85 %のシェアを占める(図 3.1-2)。
Li 資源の生産量は、2000 年から 2008 年にかけて約 2 倍に増加し、120 千 t-LCE とな
35
った。特に、FMC 社、Talison 社の生産量は、それぞれ 2.5 倍、3 倍と、大幅に増加して
いる。SQM 社、Chemetall 社は、上記 2 社には及ばないものの、それぞれ 1.5 倍、1.3 倍
と生産量を増やしている(図 3.1-3)。
生産者:Chemetall社
国:アメリカ
場所:Silver Peak塩湖
生産能力:9千 t-LCE/y
生産者:FMC社
国:アルゼンチン
場所:Hombre Muerto塩湖
生産能力:17.5千 t-LCE/y
生産者:SQM社
国:チリ
場所:Atacama塩湖
生産能力:40千 t-LCE/y
生産者:Chemetall社
国:チリ
場所:Atacama塩湖
生産能力:27千 t-LCE/y
生産者:Talison社
国:オーストラリア
場所:Greenbushes鉱山
生産能力:38千 t-LCE/y
図 3.1-1 主要な Li 資源供給企業、供給国、供給源と Li 資源生産能力
出典:各社 HP2-5)、JOGMEC 資料 1)を元に KRI 作成
図 3.1-2 供給源、供給国別 Li 資源生産割合(2008 年)
出典:JOGMEC 資料 6)から KRI 作成
36
図 3.1-3 主要供給企業の Li 資源生産量推移
出典:JOGMEC 資料 6)から KRI 作成
日本は Li 資源のほぼ全量を外国からの輸入に依存している。特にチリからの輸入が多く、
2010 年において、日本の Li 資源の約 80 %はチリからの輸入である。一方、1996 年には
約 50 %のシェアを占めていたアメリカからの輸入は徐々に減少している。現在は数%を
占める程度である。アルゼンチンからの輸入もアメリカ同様数%程度のシェアである(図
3.1-4)。
16
その他
12
アルゼンチン
10
8
アメリカ
6
4
チリ
2
2010
2009
2008
2007
2006
2005
2004
2003
2002
2001
2000
1999
1998
1997
1996
1995
1994
1993
1992
1991
1990
1989
0
1988
日本の炭酸Li輸入量(千 t-LCE/y)
14
年
図 3.1-4 日本の炭酸 Li 輸入量推移
出典:財務省貿易統計 7)から KRI 作成
37
3.2 供給企業
1) Chemetall 社
Chemetall 社はドイツ Rockwood Holdings 傘下の大手化学メーカである。1967 年から
米国ネバダ州の Silver Peak 塩湖にて Li 資源の生産を開始し、1984 年にチリ Atacama 塩
湖からの生産も開始した。チリ Atacama 塩湖では子会社である Sociedad Chilena de Litio
社が、アメリカ Silver Peak 塩湖では Chemetall Foote Corp 社が Li 資源の生産を行って
いる(図 3.2-1)。
Rockwood Holdings, Inc.
売上 :3,380百万 USD
従業員:10,000人
Chemetall Group
売上 :1,233百万 USD
従業員:3,008人
Lithium Division
Chemetall Foote Corp.
Sociedad Chilena de
Litio Ltda.
アメリカ Silver Peak塩湖
にてLi資源を生産
チリ Atacama塩湖
にてLi資源を生産
Chemetall Taiwan Ltd.
Chemetall GmbH
Lithium Division
図 3.2-1 Chemetall 社における Li 事業
出典:Rockwood 社 HP1)から KRI 作成
アメリカの Silver Peak 塩湖は、1967 年に Li 資源の商業生産を開始した最も古い塩湖
であり、かん水中の Li 濃度は 0.016 %である(海水中の Li 濃度の約 1,000 倍)。商業生
産されている塩湖の中では標高が一番低く(1,300 m)、蒸発量は年間 1,300 mm である。
年間の Li 資源生産能力は 9 千 t-LCE とされる(図 3.2-2)。
38
7.5 km
Silver Peak塩湖プラント
場所:アメリカ・ネバダ州
リチウム生産能力:
9,000 t-LCE/y
蒸発量:1,000 mm/y
Li濃度:0.016%
標高:1,300m
5 km
図 3.2-2 Chemetqall 社 Silver Peak 塩湖プラント
出典:Google Earth、JOGMEC 資料 2)から KRI 作成
チリの Atacama 塩湖では、Chemetall 社(1 ヵ所)と SQM 社(2 ヵ所)がプラントを
操業している。Chemetall 社のプラントは最も南側にある(図 3.2-3)。
SQM社のプラント
硫酸塩かん水地域
のため既存技術で
はLi回収不可
硫酸塩かん水地域
肥料のみ生産
SQM社プラント
塩化物かん水地域
23 km
肥料・Liを生産
塩化物かん水地域
のため、Li回収可能
Chemetall社プラント
塩化物かん水地域
Liのみ生産
標高2300m
17 km
図 3.2-3 Atacama 塩湖における Li 資源の生産
出典:Google Earth、JOGMEC 資料 2)から KRI 作成
39
Atacama 塩湖のかん水中 Li 濃度は 0.16 %であり、海水の 10,000 倍である。この地域
は年間を通して降水量が非常に少ないため、年間の蒸発量は 3,200 mm にも達し、エネル
ギーを投入することなく太陽熱のみで Li の濃縮が可能である。しかし、エネルギーを必要
としない一方で、濃縮には 1 年近い時間を要する(図 3.2-4)。
6.5 km
Atacama塩湖プラント
場所:チリ・第Ⅱ州
リチウム生産能力:27,000
t-LCE/y
蒸発量:3,200 mm/y
Li濃度:0.16%
標高:2,300m
4 km
図 3.2-4 Chemetall 社 Atacama 塩湖プラント
出典:Google Earth、JOGMEC 資料 2)から KRI 作成
2)SQM 社
SQM 社は、1968 年にチリに設立され肥料事業を中心に、本拠地であるチリ国内はもと
より日本や世界各国で事業を展開している。当初、チリ経済開発公社が株式を所有してい
たが、1983 年から株式売却を開始、1988 年に民営化されている。2007 年には、チリの投
資会社 Pampa Group が筆頭株主となり、子会社を含めて SQM 社の株式を 32 %所有し
ている。
SQM 社は Atacama 塩湖にて 1995 年から塩化カリウム、1997 年から炭酸 Li の生産を
開始した。Atacama 塩湖に 2 ヶ所のプラントを保有しているが、北側のプラント付近は硫
酸塩かん水地域のために技術的に Li 資源の回収ができず、肥料のみを生産している。中央
のプラントは塩化物かん水地域のため、肥料とともに Li 資源の生産を行っている(図 3.2-3
参照)。SQM 社にとって Li 資源は肥料の副産物という位置づけであり、売上に占める Li
関連製品の割合は 11 %(180 百万 USD*11)に過ぎない(図 3.2-5)。
*11 United States Dollars
40
SQM
売上 :1,682百万 USD
ヨウ素関連製品
246百万USD
(全体売上の15%)
リチウム関連製品
180百万 USD
(全体売上の11%)
肥料
931百万USD
(全体売上の55%)
塩化カリウム
106百万USD
(全体売上の6%)
その他
219百万USD
(全体売上の13%)
図 3.2-5 SQM 社における Li 事業売上(2008 年)
出典:SQM 社 HP3)から KRI 作成
SQM 社のプラントは肥料の採取も行うために、Chemetall 社のプラントとは異なり、
小さなポンド(図 3.2-6 水色部分、細かく区画された池)を数多く有する。その他の条件
に関しては基本的には Chemetall 社と同様である。このプラントは世界最大規模の Li 資
源生産プラントである。
8 km
4 km
Atacama塩湖プラント
場所:チリ・第Ⅱ州
リチウム生産能力:40,000
t-LCE/y
蒸発量:3,200 mm/y
Li濃度:0.15%
標高:2,300m
図 3.2-6 SQM 社 Atacama 塩湖プラント
出典:Google Earth、JOGMEC 資料 2)から KRI 作成
41
3)FMC 社
FMC lithium 社は、アメリカの化学大手 FMC グループの子会社である。1985 年に世
界最大級の Li 生産企業 Lithium Corporation of America を買収して、ノースカロライナ
州の Li 鉱山からの Li 資源生産を行っていたが、その後コスト競争力がなくなったため、
同 Li 鉱山からは撤退し、1994 年にコスト競争力確保が見込めるアルゼンチンの Hombre
Muerto 塩湖の開発に着手し、1997 年より Li 資源の生産を開始している。
2009 年の実績では、Li 関連製品の売上は FMC 社全体の売上の 23 %(173 百万 USD)
である。FMC 社は医薬や LIB 用の高付加価値 Li 製品に力を入れている(図 3.2-7)。
図 3.2-7 FMC 社の売上比率(売上全体は 753 百万 USD)
出典:FMC 社 HP4)から KRI 作成
Hombre Muerto 塩湖は、かん水中の Li 濃度は若干低いものの(Atacama 塩湖の半分、
0.069 %)、Mg などの不純物濃度が低いなどの有利な点も有する。標高は 4,000 m であ
り、商業生産されている塩湖の中では一番高い。蒸発量は年間 2,400 mm である(図 3.2-8)。
42
Honmbre Muerto塩湖プラント
場所:アルゼンチン
リチウム生産能力:17,500 t-LCE/y
蒸発量:2,400 mm/y
Li濃度:0.069%
標高:4,000m
1 km
1.25 km
図 3.2-8 FMC 社 Hombre Muerto 塩湖プラント
出典:Google Earth、JOGMEC 資料 2)から KRI 作成
4)Talison 社
オーストラリアに本社を置く Talison 社は、大手 4 社のうちで唯一、商業的に鉱山開発
を行っている会社である。鉱山由来としては世界最大の Li 資源生産企業である。オースト
ラリアでの Li 資源の生産は、全量が Talison 社によるものであり、西オーストラリア州に
あ る 世 界 最 大 の ス ポ ジ ュ メ ン * 12 鉱 山 で あ る Greenbushes 鉱 山 を 保 有 し て い る 。
Greenbushes 鉱山のスポジュメン鉱石は高グレードであり、他の鉱山から産出されるスポ
ジュメン鉱石の数倍の Li2O を含有している(約 3.5 %)。歴史は古く、すでに 25 年以上
の操業実績を持つ(図 3.2-9)。
Talison 社は、このスポジュメン鉱石を精鉱して 7 %程度まで Li2O 濃度を高めた後に
各国に輸出している。ケミカルグレードとテクニカルグレードの 2 種類の精鉱を取り扱っ
ているが、LIB に使われるケミカルグレード品は全量中国に輸出しているとされる。
*12 スポジュメン(spodumene)とは、Li とアルミニウムを含む単斜輝石。化学組成:LiAlSi2O6。不純物が
アルミニウム原子と置換されることによりさまざまな色を示す。
43
鉱石採掘上(ほぼ露天
掘りのような状況)
Greenbushes鉱山プラント
場所:オーストラリア
リチウム生産能力:38,000 t-LCE/y
Li2O濃度:3.5-3.9 wt%
図 3.2-9 Talison 社 Greenbushes 鉱山プラント
出典:Google Earth、Talison 社資料 5)から KRI 作成
44
3.3 新規供給源開発
1)既存供給源の拡張
Chemetall 社は、保有する 2 プラントの拡張計画を発表している。Silver Peak 塩湖で
の生産能力を 18 千 t-LCE/y、Atacama 塩湖での生産能力を 50 千 t-LCE/y にする計画で
ある。Silver Peak 塩湖での拡張計画は、アメリカのエネルギー省(Department of Energy,
DOE)の補助金を 28.4 百万 USD 得ている。自己資金も含めて総額 56.8 百万 USD の投
資を行う予定であり、市場での競争力を高めるために、生産能力拡張だけでなく、高付加
価値化のための精製設備の設置、ランニングコスト低減のためのインフラ整備なども行う
計画である 1)。
SQM 社は Atacama 塩湖の生産能力を現在の 1.5 倍の 60 千 t-LCE/y にする計画である
2)
。
FMC 社は Hombre Muerto 塩湖における生産能力を 23 千 t-LCE/y に拡張する予定であ
る。また、新規塩湖開発も検討している 3)。
Talison 社は、23 百万 AUD*13を投資して、現在の 1.5 倍以上の 62 千 t-LCE/y とする
計画である。中国の旺盛な需要に対応するために LIB 用ケミカルグレードの精鉱のみを増
産対象としており、2011 年までに現状の 22 千 t-LCE/y から 46 千 t-LCE/y に倍加させる
予定である 4)。
増産後の既存供給元の Li 資源年間生産能力は、2008 年の約 130 千 t-LCE から 1.6 倍の
約 210 千 t-LCE になる(表 3.3-1)。
表 3.3-1 主要企業の増産前後の Li 資源生産能力
(単位:千 t-LCE/y)
現状
増産後
増産後/現状
SQM 社
40
60
1.5 倍
Chemetall 社
36
68
1.9 倍
17.5
23
1.3 倍
38
62
1.6 倍
131.5
213
1.6 倍
FSC 社
Talison 社
合 計
出典:各社資料から KRI 作成
2)新規 Li 供給源の開発
既存の供給元以外でも、現在、世界中で様々な Li 資源の開発が計画されており、我が国
においても海外の Li 資源確保元の多様化の観点から、経済産業省との連携の下、日本企業、
*13 Australian Dollar
45
特に商社が関与している案件がいくつかある。その多くは数年以内の操業を予定している。
既存の商業生産塩湖は、Li 濃度が高い、共存イオンが少ない、塩化物系かん水である、な
ど低コストで Li 資源を生産できる条件を揃えているが、新規供給源がどの程度のコストで
生産できるか不明である。日本企業が関係している案件が予定通り進めば、それだけでも
この数年の間に供給量は 68 千 t-LCE/y 増加すると予想される(表 3.3-2)。
表 3.3-2 日本企業の関与する Li 供給源の開発計画
賦存量
商社名
カウンターパート
生産能力
リチウム源
操業予定
事業形態
(千 t-LCE) (千 t-LCE/y)
三菱商事・
住友商事
ボリビア他民族国
ボリビア
産業化に向けた研究及び
5,550
鉱山公社
10
2015
ウユニ塩湖
開発に関する覚書を締結
アルゼンチン
豊田通商
オロコブレ社
事業化調査を約する覚書を締結、
-
15
2012
オラロス塩湖
事業時は、共同出資会社を設立予定
オーストラリア
ギャラクシー・
三菱商事
ラベンソープ・鉱
272
17
2011 長期の供給契約を締結
700
10
2013
リソーシーズ社
山
カナダ
カナダ
日中韓への独占
住友商事
リチウムコープ社 ケベック州・鉱山
シンボル
マーケティング権を獲得
アメリカ
伊藤忠商事
出資。日中韓を含めた
-
16 数年以内
マイニング社
地熱かん水
アジア向け総販売代理店権を獲得
双日
具体的な案件なし
-
-
-
-
-
丸紅
具体的な案件なし
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
新規生産
68
能力合計
出典:委員会資料、JOGMEC
46
HP、各社プレス発表 5-8)から KRI 作成
3.4 供給リスク
計画通り Li 資源の開発が進むと仮定すると、Li 資源の供給能力はこの数年の間にほぼ
倍加することになる。2 章で検討した需要予測を踏まえると、数字上は大きな問題はない
ように思われる。一方、Li 供給源である塩湖や鉱山にはそれぞれいくつかの問題点がある。
1) 塩湖からの Li 資源供給における問題点
・生産に 1 年以上の時間がかかる
塩湖からの Li 資源供給において最大の問題は、天日干しによって Li を濃縮するために、
生産に 1 年以上の時間を要することである。そのため、急激な需要拡大に対応できない。
・天日濃縮しているため天候の影響を受ける
天日干しのため、天候の影響も受けやすい。Atacama 塩湖は通常であれば 1 年の間にほ
とんど雨は降らない。しかしながら今後、地球温暖化の影響などで気候が変わる可能性も
ある。世界の需要の半分を生産する Atacama 塩湖での生産がストップしてしまうと、供
給不足に陥る恐れがある。実際に、2006 年の価格高騰の際は、Chemetall 社は天候不順が
原因であると説明している。
・政策上のリスク
最大産出国ではチリでは、Li 資源を核融合に利用可能と考えられる戦略物質として規定
している。そのため、Li 資源の調査・開発・生産には、チリ原子力委員会(CCHEN)の
事前認可が必要となり、簡単に増産することができない。
2010年9月、SQM社はCCHENにLi資源の生産能力拡大を申請していたが、CCHENは拒
絶している。これを受けて、SQM社、Chemetall社は、「国による規制は、安定供給への信
頼性の低下を招く。結果として、チリ以外での事業拡大を実施せざるを得ない」とのコメン
トを発表しており、実際にChemetall社はチリ依存の現状を脱却すべく、アメリカ政府と共
同で、Silver Peak塩湖におけるLi生産能力拡大を進めている。
2)鉱石からの Li 資源供給における問題点
・製造コストは既存塩湖の 2 倍
鉱石は塩湖に比べて容易に増産に対応できるなどメリットも有しているが、製造コスト
は相対的に高い 1)。
・品質の面で既存塩湖に劣る
鉱石由来の Li 資源は、中国においては LIB 用に使われているが、純度の問題から、日
本企業には採用されておらず、品質の面で課題を残している。仮に品質の面をクリアして
いたとしても、新規供給源から LIB 用正極材に採用されるまでは、数多くのテストを行わ
なければならず、塩湖からの供給が滞ったからといって、すぐに鉱石からの供給に切り換
47
えることは難しい。
・製造時の廃棄物処理の問題
鉱石から Li 資源を作る際に、大量の廃棄物が発生する。現状ではそれほど問題にはなっ
ていないが、今後生産量が増えていけば、環境への影響や処分場所の不足などの問題がで
てくる可能性もある。それらの問題への対応のためにさらに製造コストがあがることも予
想される。
以上のように、現在、我が国において LIB 正極材料として使用される高品位の塩湖由来
の Li 資源の供給については、将来、供給障害が発生するリスクを否定できない。また、こ
れを鉱山由来の Li 資源で代替することも品質等の問題から容易でない。加えて、Li 資源
は賦存地域が偏在しており、寡占的供給構造や資源ナショナリズムの台頭の可能性等を考
慮すると、Li 資源の長期安定供給のためには、新たな供給源開発を検討する必要があると
考える。
48
4.国産 Li 資源創生に関する技術開発
4.1 我が国における Li 確保戦略
経済産業省は、レアメタルを「地球上の存在が稀であるか、技術的・経済的な理由で抽
出困難な金属のうち、現在工業需要があり、今後も需要があるものと、今後の技術革新に
伴い新たな工業用需要が予測されるもの」と定義しており、Li もレアメタルとして分類し
ている(図 4.1-1)。
図 4.1-1 日本におけるレアメタル 31 鉱種
(レアアースは 17 鉱種で1鉱種)
出典:経済産業省
レアメタル確保戦略 1)
同省は、2010年6月に公表したエネルギー基本計画2)において、Liを、需要拡大の見込み
や特定産出国への偏在性、依存度、供給障害リスク等の観点から、安定供給のために政策資
源の集中投入が必要と考えられる「戦略レアメタル」として特定した。
海外資源開発に加え、リサイクルによる供給源確保や代替材料開発もあわせて推進するこ
とにより、Liを含めた戦略レアメタル全体の自給率を2030年に50 %以上とすることを目標
としている。
エネルギー基本計画に先だって2009年7月に作成された「レアメタル確保戦略」では、
「海
外資源確保、リサイクル、代替材料開発、備蓄という4つの柱を強化することで、レアメタ
ル安定供給体制の構築を図る」としている(図4.1-2)。
49
日本政府は、Li資源については、その安定供給に向けて、海外資源確保とリサイクル技術
開発を中心に推し進める方針である。
図 4.1-2 レアメタル確保戦略のポイント
出典:経済産業省
50
レアメタル確保戦略 1)
また、これらを背景に、すでに Li 資源と密接な関係のある伊藤忠商事を始め国内商社は、
上流の Li 資源確保から下流の Li リサイクル、リユースにまでビジネスを広げつつあり(図
4.1-3)、車載電池の家庭内リユースに向けた自動車メーカ、住宅メーカ等の連携の動きも
みられるなど民間企業の動きも活発化しつつある。
Li資源
正極材
アメリカ
中国
カナダ
アメリカ
Simbol Mining Corporation
地熱発電所の使用済み
地熱かん水に含まれるLiを回収
生産量 16,000 t/y-LCE(計画値)
(最大64,000 t/y-LCEの生産能力)
湖南杉杉新材料有限公司
現状生産能力 : 4,000 t/y
今後の生産品目:
Co、Mn、三元、リン酸鉄系
Toda Advanced Material
を2社の合弁へ
生産能力 4,000 t/y
正極材生産合弁会社
生産能力 4,000 t/y
投資額 70百万USD
生産開始 2011/1(予定)
SPC
出資比率
1:1
出資比率
1:1
出資比率
1:1
出資
日中韓、アジアへの総販売
代理店権の獲得
(JOGMECの融資を検討)
補助金
(35百万USD)
伊藤忠商事
伊藤忠都市開発
戸田工業
子会社
補助金
(35百万USD)
出資比率 5%
静岡ガス
東京都マンションへの
EnerDel製LIBの導入
出資
・THINK社EVの日本国
内独占販売権、アジア
市場での優先販売権
Toda America Inc.
DOE
Ener1
資本金 1.3百万USD
売上高 34.8百万USD
三島市戸建住宅への
EnerDel製LIBの導入
31%出資
米国政府
補助金
118.5百万USD
100%子会社
車載用LIBの定置用へのリユースを検討
THINK Holdings
EVメーカ
2012年売上計画 22千台
国内
ノルウェー
アメリカ
LIBリユース
EV
LIB
LIB供給
EnerDel
車載用LIBメーカ LIB供給
VOLVO社
図 4.1-3 日本企業の Li 資源利活用ビジネス
出典:伊藤忠商事 HP3)から KRI 作成
一方、LIB 産業において競争力を有する中国・韓国も我が国と同様に、Li 資源確保に向
けて動いている。中国では、粗原料を安定的に確保するために自国内の塩湖や鉱山の開発
を積極的に推進し、世界の価格高騰に影響されない体制の構築を進めつつある。日本と同
じく鉱山・塩湖を保有していない韓国では、海外資源確保やリサイクルによって、現在 12%
の Li を含むレアメタル 10 種の自給率を、2009 年の 12%から 2018 年までに 80%に引き
上げる方針を打ち出しており、2018 年までに約 222 億円を投じて、Li などのレアメタル
10 種についての抽出技術やリサイクル関連の新技術を開発することも予定している 4)。さ
らに 2009 年には、韓国政府は POSCO 社とともに総額 300 億ウォンを投資し、海水から
の Li 回収の実証試験を行うことを決めた。その POSCO 社は 2010 年に、海水からの Li
回収技術に関するノウハウを有する日本のゼネシス社の買収も行っており、海水からの Li
回収技術の実用化に向けた取り組みを進めつつある 5,6)。
51
以上のような国内外の動向を踏まえ、本章では、第 2、3 節において新規 Li 供給源とし
て期待できる LIB リサイクル技術開発、海水・地熱水からの Li 回収技術開発の現状を明
らかにすることで、Li 資源確保のあり方を検討するに上で参考となる情報の収集・分析を
行うこととする。
52
4.2 LIB リサイクル技術とその経済性
現状では、Li 含有製品のリサイクルはほとんど行われていない 1)。特に最大の需要を占
める LIB に関しては、Co、Ni などの高価な金属の回収は行われているものの、Li など比
較的安価な金属は経済性の面から回収されずに廃棄されている。
2 章の結果から、今後は車載用も含めて LIB の需要増加が見込まれる。需要の増加とと
もに大量発生する使用済み LIB からの Li 資源リサイクル技術開発は、Li 資源確保の観点
からも、資源循環の観点からも重要であると考える。
4.2.1 国内外における政府の取り組み動向
1) 国内
日本政府は「エネルギー基本計画」や「レアメタル確保戦略」において、LIB からの Li
資源リサイクル技術開発を推進する方向性を示している。
すでに具体的な検討も進められており、小型 LIB のリサイクルに関しては、経済産業省
の設置した「使用済小型家電からのレアメタルの回収及び適正処理に関する研究会
リサ
イクルワーキンググループ」にて議論され、そこでは小型家電に含まれる Li などの 13 種
のレアメタルがリサイクルすべき鉱種として検討されている 2)。
車載用 LIB のリサイクルに関しては、2010 年 4 月に公表した「次世代自動車戦略 2010」
において、今後のアクションプランとして車載用 LIB の「資源循環システムの構築」を提
言している。リサイクル技術開発だけでなく、回収方法なども含めたリサイクルシステム
の構築、リユース・リサイクルを容易にする電池設計の推進など、官民挙げて戦略的に進
める計画である。
こうした官民の動向を踏まえて、公的資金を活用したリサイクル技術開発がスタートして
いる。
民間企業が受託したプロジェクトとしては、日鉱金属株式会社(現:JX日鉱日石金属株
式会社)が経済産業省から受託した「平成21年度産業技術研究開発委託費(リチウムイオン
電池からのレアメタルリサイクル技術開発事業)」(予算:12.4億円)3)、株式会社シンコ
ーフレックス社がJOGMECから受託した「平成22年度レアメタル製錬・回収技術調査(マ
ンガン系リチウムイオン二次電池屑からのレアメタル回収技術の基礎研究)」(予算:1.6
千万円)4)、日本磁力選鉱株式会社が北九州市から受託した「平成22年度 北九州市環境未
来技術開発助成事業(廃棄リチウムイオン電池からの金属回収プロセスの開発)」(予算:
2千万円)5)の3つがある。
研究機関が受託したプロジェクトとしては、北九州市立大学・吉塚和治教授が環境省か
ら受託した「平成 21 年度循環型社会形成推進科学研究費補助金の交付対象事業(有価廃
棄物からのレアメタルのリサイクルシステムの開発)」(予算:6.5 千万円)6)、山口大学・
53
仁科辰夫教授が独立行政法人科学技術振興機構(Japan Science and Technology Agency,
JST)から受託した「リチウムイオン二次電池のリサイクル・再生利用に関する研究
(2008-2010)」(予算:総額 1.9 千万円)7)などがある。
いずれのプロジェクトもこの数年の間に始まったプロジェクトであり、日本国として本
格的に LIB のリサイクル技術開発に取組み始めたことが分かる。
さらに、2009 年 3 月に NEDO がまとめた「3R 分野における技術戦略マップの更新に
関する調査(平成 20 年度)」では、NEDO が取組むべき技術開発テーマの候補として、
「ハイブリッド・電気自動車リチウムイオン電池の高効率回収・リサイクルシステムとプ
ロセス開発」を挙げている。今後、NEDO による LIB のリサイクル技術開発が始まる可
能性も高い 8)。
2) 海外
欧米においても日本同様、公的資金を活用した LIB からの Li 資源リサイクル技術開発
を進めている。
(1) アメリカ
2009 年、アメリカは米国再生・再投資法(American Recovery and Reinvestment Act,
ARRA)の下で、新しい先進的電池と電気自動車部品の製造、および、電気自動車の普及
に関する 48 件のプロジェクトに対し、総額 24 億 USD の助成をおこなった 9)。電池全般
のリサイクル事業を行っている TOXCO 社は、LIB リサイクル工場建設を目的として 9.5
百万 USD の助成を受けている。TOXCO 社は、自社による投資も含めて総額 19 百万 USD
を使って、オハイオ州ランカスターに車載用 LIB リサイクル工場の建設を進めている。
以下に工場の概要を示す 10)。
・ リサイクルは、典型的な 3 種類の正極材を想定している。
・ 汚染防止のため 3 種類の正極材は全て別ラインで処理を行う。
・ 助成対象設備としては、ハンマーミル、シュレッダー、排水用タンク、排水処理タン
ク、溶剤抽出設備、振動篩い機、コンベヤー、材料分別機、集塵機、攪拌機、蒸留・
濃縮装置、フィルタープレス、キルン、分析機器、フォークリフト、倉庫、オフィス
基材などである。
54
(2) 欧州
ドイツ環境省は、2010 年から 2 年間、12 の関係機関に総額 840 万 EUR*14を助成して、
「LithoRec」と名づけた LIB のリサイクルプロジェクトを進めている。LithoRec プロジ
ェクトは、「今後 EV の大幅な増加とともに、Li 需要も大きく増大する。その需要を満た
すために、LIB 中 Li のリサイクル技術開発を行い、正極材として再利用できるようにする」
ことを目的としている。チリ、アメリカにて Li 資源の開発を行っている Chemetall 社も
このプロジェクトに参画している。Chemetall 社は、LIB リサイクルパイロットプラント
建設を目的として、ドイツ環境省から 840 万 EUR のうち 570 万 EUR の助成を得た。
Chemetall 社は LIB リサイクル技術開発に力を入れる計画で、助成とは別に今後 3 年間
(2009-2011 年頃)で 880 万 EUR の投資を計画している 11)。
大手正極材メーカ Umicore 社は、デンマークに LIB リサイクル工場の建設を進めてい
る。2011 年の事業化をめざし、2,500 万 EUR 投資して、LIB 7,000 t/y の処理量を有する
リサイクル工場を建設する。Li は回収対象とはしていない 12)。
公的資金を活用した民間企業による LIB リサイクル技術開発の状況を表 4.2.1-1 にまと
める。
表 4.2.1-1 公的資金を活用した民間企業による LIB リサイクル技術開発
公的資金
状況 企業
地域
自社投資
事業年度
補助主体
金額
2009-2010
経済産業省
12.4億円
不明
2010
北九州市
2千万円
不明
研究 (株)シンコーフレックス 静岡
2010
JOGMEC
1.6千万円
不明
事業 TOXCO社
アメリカ
2010
DOE
9.5百万USD
9.5百万USD
実証 Chemetall社
ドイツ
2009-2011
ドイツ環境省
5.7百万EUR
8.8百万EUR
実証 JX日鉱日石金属(株)
国内 研究 日本磁力選鉱(株)
敦賀
北九州
海外
出典:各社、各機関 HP3-5,9-11)を元に KRI 作成
*14 EURO
55
4.2.2
LIB リサイクル技術
1) 現状
LIB から有価金属を回収する方法は、乾式精錬と湿式精錬の 2 種類に大分することがで
きる。乾式精錬は主に溶鉱炉などを使用しておこなう精錬で、金属や金属化合物の融点を
利用する方法であり、湿式精錬は水や有機溶媒などを利用する精錬で、金属や金属化合物
の酸への溶解性や抽出試薬との相性などを利用する方法である。現状では乾式製錬や湿式
製錬によって LIB 中の Co はリサイクルされている。
LIB からの Li 資源回収にあたっては、乾式製錬を用いると Li を回収することができな
いため、湿式精錬を利用する必要がある。湿式精錬を用いた使用済み LIB の標準的なリサ
イクルフローを図 4.2.2-1 に示す。まず、物理プロセスによって電池を分解した後、化学
プロセスによって溶解、精製を行う。Co や Ni など比較的高価な資源の回収は行われてい
るが、それらを分離・除去した後の Li 含有液は廃棄されている。
物理的プロセス
使用済みLIB
分解・分離
電極に含まれる金属
その他の材料
化学的プロセス
酸処理(酸溶解)
濾過
残渣
Co、Ni、Liなど含有液
溶媒抽出などの分離処理
Co, Niの回収
Li含有液
廃棄
図 4.2.2-1 湿式製錬による LIB の標準的なリサイクルフロー
出典:KRI 作成
図 4-2.2-2 に物理的および化学的プロセスの代表的な処理方法を記載する。これらの処
56
理方法を組み合わせることで、より効率よく目的の金属を回収することができる。
機械的処理
熱的処理
物理的プロセス
機械化学的処理
溶解処理
リサイクルプロセス
酸溶解処理
生物溶解処理
化学的プロセス
溶媒抽出処理
化学析出処理
電気化学的処理
図 4.2.2-2 リサイクルプロセスの分類
出典:KRI 作成
(1) 物理的プロセス
物理的プロセスは、使用済み LIB を解体してプラスチックなどの構成物を取り除き、化
学プロセスが進行しやすくさせることを目的としたプロセスである。以下に代表的な物理
プロセスの概要を記載する。
・ 機械的分離処理
使用済み LIB を押しつぶしたり、切り刻んだりした後、ふるいにかけて分離する処理方
法。外装や容器を外し、電極剤を含む金属成分を取り出す目的で、前処理として用いられ
ることが多い。
・ 熱的処理
数百度に加熱してカーボンや電解液、プラスチックなどを燃焼させて取り除く処理方法。
シンプルな処理で金属成分のみを得ることができるが、有害なガスが発生する可能性があ
る。
・ 機械化学的処理
メカノケミカル反応を利用して、LiCoO2 を水溶性の化合物にして分離する処理方法。
・ 溶解処理
集電体*15についたままの LiCoO2 を N-メチルピロリドンのような溶媒に浸し、集電体と
LiCoO2 などを分離する処理方法。溶媒が高価であることなどを考慮すると、スケールアッ
*15 電池で電気とりだす端子のこと
57
プの際には溶媒のリサイクルも検討すべきである。
(2) 化学的プロセス
化学的プロセスは、金属を酸などで溶解し抽出や析出、電気的還元などを用いて金属成
分を分離、精製することを目的としたプロセスである。Li 化合物は昇温度が比較的低く、
水にも溶解しやすいため、その精製には化学的プロセスが適している。
・ 酸溶解処理
H2SO4、HCl、HNO3 などを用いて金属成分や電極材料などを溶解する処理方法。抽出
や化学析出の前処理として使用される。
・ 生物溶解処理
バクテリアなどの生物を利用して金属を回収する処理方法。運用コストが低く、環境負
荷も小さいことから、コバルトや Li に関する研究が行われているが、現時点では基礎研究
段階である。
・ 溶媒抽出処理
溶媒抽出法を用いて金属を分離、回収する処理方法。回収効率・分離能力ともに高く、
エネルギー投入も少ないが、使用する試薬や溶媒にコストがかかる。使用試薬の低コスト
化やリサイクルが課題である。
・ 化学析出処理
沈殿剤の投与や pH 調整によって金属成分を沈殿させて回収する処理方法。回収効率・
分離能力ともに高く、エネルギー投入も少ない。使用する沈殿剤がキーとなる。
・ 電気化学的処理
電気化学的還元によって、金属を分離、回収する処理方法。高純度の Co を得ることが
できるが、多くの電力を必要とする。
2) 技術開発動向
現時点ではまた事業化に至っていない LIB からの Li 資源リサイクル技術に関する国内
外の技術開発動向を公開情報を用いて整理を行い、実用化に向けた課題などの抽出を試み
た。
(1) 国内の技術開発動向
中央光学出版の特許検索データベース CKS WEB を用いて、LIB リサイクルに関する日
本国内出願特許の検索を行った。検索範囲は、公開と公表特許、出願日は 1989 年-2010
年 1 月の約 20 年間とした。検索キーワードは、要約と請求項の範囲に、Li を含み、且つ、
回収、採取、吸着、リサイクル、分離、捕集、採集、抽出のいずれかの言葉を含むものと
58
した。その結果、4,521 件の特許が得られた。その中から、要約・抄録をもとに該当特許
を抽出した。LIB リサイクルに関する特許は 55 件であり、そのうち Li の回収も行ってい
る特許は 30 件であった(表 4.2.2-1)
表 4.2.2-1 特許検索条件(日本国内出願)
検索データベース
中央光学出版 CKSweb
検索範囲
公開+公表特許
出願日
検索結果
1989年1月~2010年1月
要約・請求項
リチウム * (回収 + 採取 + 吸着 +
リサイクル + 分離 + 捕集 + 採集 + 抽出)
4,521件
うちLIBリサイクル関する特許
55件
検索式
うちLIB中のLi回収に関する特許 30件
出典:KRI 作成
出願人上位 5 組織が全体の 50 %超を出願している。上位からトヨタ自動車株式会社(以
下トヨタ自動車)5 件、住友金属鉱山株式会社(以下住友金属鉱山)4 件、JX 日鉱日石金
属株式会社(以下 JX 日鉱日石金属)3 件、カワサキプラントシステムズ 2 件、台湾の工
業技術研究所 2 件である(表 4.2.2-2)
表 4.2.2-2 LIB からの Li 回収技術特許に関する主要出願人
出願人
トヨタ自動車株式会社
住友金属鉱山株式会社
JX日鉱日石金属株式会社
カワサキプラントシステムズ株式会社
財団法人工業技術研究院
エフエムシー・コーポレイション
ティーエムシー株式会社
科学技術振興事業団
株式会社ジャパンエナジー
株式会社神鋼環境ソリューション
株式会社東芝
住友大阪セメント株式会社
出光興産株式会社
松下電器産業株式会社
川崎重工業株式会社
中澤 博幸
川崎重工業株式会社,
財団法人地球環境産業技術研究機構
多摩化学工業株式会社,
株式会社東芝
大東化学株式会社、
野村興産株式会社
総計
総計
5
4
3
2
2
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
30
出典:KRI 作成
59
1991 年からの 7 年間は 2 件のみの出願であるが、1998 年以降の 11 年間は、2000 年を
除いて毎年出願がある(表 4.2.2-3)。
6
5
3
2
1
2009
2008
2007
2006
2005
2004
2003
2002
2001
2000
1999
1998
1997
1996
1995
1994
1993
1992
0
1991
件
4
出願年
図 4.2.2-3 LIB からの Li 回収技術特許の出願数推移
出典:KRI 作成
60
上位 4 の特許を概観する。
①トヨタ自動車
トヨタ自動車は Co、Ni 系正極材の LIB を主としてリサイクルの検討を行っている。真
空加熱処理・酸浸出後、炭酸 Na もしくは炭酸ガスを用いて化学処理を施すことで炭酸 Li
を回収している特許が 4 件あった。1 件は、Li、Ni、Co の分離を行うことなく、直接、正
極材の製造を行う特許であった。
・特開 2005-26088 「リチウム電池の処理方法およびリサイクル方法」
Co、Ni 系 LIB を対象として、リサイクルを実施している。前処理として真空加熱処理
を行った後、Li、Co、Ni を塩酸にて浸出させた。LiOH の添加により Co、Ni、Li 水酸化
物を作り、それら水酸化物の溶解度差を利用して Co、Ni を沈殿させて分離、Li 含有液を
得ている。得られた Li 含有液に炭酸ガスをバブリングすることで炭酸 Li を析出させた。
得られた炭酸 Li は、Ni 含有量が少なく、正極材原料として利用可能であるとしている。
炭酸ガス吹き込み後のろ液中には、炭酸 Li が溶けているため、Li 含有液に戻して再利用
する(図 4.2.2-4)。
Co、Ni系LIB
ろ過
有機溶媒除去
真空加熱
処理
電解質除去
析出物
Li含有溶液
セパレータ除去
結着剤除去
炭酸ガス吹き込み
150 kPa
60 ℃
電池容器切断
集電体分離
ろ過
炭酸Liが溶解して
いるろ液を返送
ろ液
電極材回収
乾燥
塩酸で溶出
炭酸Li
ろ過
Ni含有率 0.018%以下
LiOH混合
炭酸ガス吹き込みによりLiを炭酸Liとして回収
Co、Ni、Liの水酸化物が生じる。
25℃の水(100g)に対する溶解度の差を用いて分離。
LiOH:
2.5 g
Ni(OH)2: 7.5×10-4 g
Co(OH)2: 8-22×10-4 g
図 4.2.2-4 特開 2005-26088 における LIB からの Li 回収技術
出典:特開 2005-26088 を元に KRI 作成
61
・特開 2005-26089 「リチウム電池、その製造方法ならびに処理方法」
特開 2005-26088 と同様の前処理を行った後、70-100 ℃、0.1-0.2 MPa という加圧・加
熱下で加水分解による浸出処理をいった。炭酸 Li の析出には、炭酸ガスを用いた。得られ
た炭酸 Li の回収率は 98.6 %であった(サンプル 1)。
また、比較例として Li、Co、Ni の浸出に塩酸、Li と Co、Ni の分離に NaOH、炭酸 Li
の析出に Na2CO3 を用いた試験を行った(サンプル 2)。その結果、サンプル 2 は、サン
プル 1 の Na 濃度の約 20 倍となった。これはサンプル 2 では、NaOH や Na2CO3 を工程
内で使用したためであると考えられる。アルカリ金属同士である Li と Na の分離は難しく、
薄膜分離装置などを用いて精製工程を行わなければいけないため、コストアップ要因とな
る(図 4.2.2-5)。
Co、Ni系LIB
有機溶媒除去
真空加熱
処理
電解質除去
セパレータ除去
結着剤除去
加水分解処理
70-100 ℃
0.1-0.2 MPa
20分程度
水で溶出
集電体分離
25℃の水(100g)に対する溶解度の差を用いて分離
LiOH:
2.5 g
Ni(OH)2: 7.5×10-4 g
Co(OH)2: 8-22×10-4 g
不溶分
ろ過
電池容器切断
予想される反応
(1)3LiNiO2+2H2O→3NiOOH+Li2O+LiOH
(2)2NiOOH+H2O→2Ni(OH)2+1/2 O2
(3)Li2O+H2O→2LiOH
(4)Li+H2O→LiOH+1/2 H2
Li含有溶液
電極材回収
塩酸で溶出
炭酸ガス吹き込み
150 kPa
60 ℃
炭酸Liが溶解して
いるろ液を返送
NaOH添加
不溶分
ろ液
ろ過
ろ過
炭酸Na添加
乾燥
炭酸Li
炭酸Li
サンプル2
炭酸Naによって、Liを炭酸Liとして回収
(Na含有量高い(0.045重量%))
98.6 mol%のLiを回収
サンプル1
炭酸ガス吹き込みによりLiを炭酸Liとして回収
(Na含有量低い(0.0002重量%))
図 4.2.2-5 特開 2005-26089 における LIB からの Li 回収技術
出典:特開 2005-26089 を元に KRI 作成
62
・特開 2006-4883 「リチウム電池処理方法」
上記 2 特許と同様に前処理は真空過熱処理を採用している。前処理後、正極材のみを取
り出してシュウ酸を使って Li と Co、Ni を分離、Li 含有ろ液に水酸化 Ca を添加して Li
と Al を分離、Li 含有液を得た。
炭酸 Li の析出方法は上記 2 特許と同様である(図 4.2.2-6)
。
・特開 2006-4884 「リチウム電池処理方法」
特開 2006-4883 のフローからシュウ酸処理の工程を省いた特許である。シュウ酸を用い
ないために薬品コストは下がるが、浸出工程に非常に長い時間がかかる。例えば、本特許
の実施例では、電極体を 14 日間、水酸化 Ca 溶液に浸漬させている。得られた炭酸 Li の
回収率 81.5 wt%も、特開 2006-4883 の 91.6 wt%と比較して低い(図 4.2.2-7)。
・特開 2006-236859 「リチウム電池の処理方法」
上記 4 件の特許とは異なり、前処理は放電、有機溶媒を使った電解液の抽出を行うのみ
である。また、最終目的物質も炭酸 Li ではなく、正極活物質である。LIB から正極材を取
り出した後、硫酸中で加熱処理を行い、不溶分と LiOH を混合して 600℃、8 時間加熱処
理することで正極活物質を製造している(図 4.2.2-8)。
Co、Ni系LIB
ろ過
有機溶媒除去
真空加熱
処理
Li含有溶液
電解質除去
(11,100 ppm)
セパレータ除去
炭酸ガス吹き込み
結着剤除去
電池ケース、蓋
150 kPa
60 ℃
電池容器切断
電極体取出し
負極集電体
正極シート分別
正極集電体
シュウ酸処理
不溶物
Co、Ni含有
ろ過
析出物
ろ過
炭酸Liが溶解して
いるろ液を返送
ろ液
乾燥
炭酸Li
91.6wt%の回収率
水酸化Ca添加
Co、Ni、Liのシュウ酸塩、酸化物が生じる。
18℃の水(100g)に対する溶解度の差を用いて分離。
Li2C2O4:
8g
Ni(OH)2: 3×10-4 g
Co(OH)2: 3.5×10-3 g (25℃の水への溶解度)
炭酸ガス吹き込みによりLiを炭酸Liとして回収
図 4.2.2-6 特開 2006-4883 における LIB からの Li 回収技術
出典:特開 2006-4883 から KRI 作成
63
Co、Ni系LIB
有機溶媒除去
電解質除去
真空加熱
処理
Li含有溶液
セパレータ除去
炭酸ガス吹き込み
結着剤除去
電池容器切断
電池ケース、蓋
ろ過
電極体取出し
負極集電体
水酸化Ca添加
不溶物
Co、Ni含有
ろ過分離
炭酸Liが溶解して
いるろ液を返送
150 kPa
60 ℃
ろ液
乾燥
炭酸Li
85wt%の回収率
Ni、Coは、水酸化Ca添加により、
水酸化Caに不溶なNi-Al複合化合物、
Co-Al複合化合物を形成
炭酸ガス吹き込みによりLiを炭酸Liとして回収
図 4.2.2-7 特開 2006-4884 における LIB からの Li 回収技術
出典:特開 2006-4884 から KRI 作成
Co、Ni系LIB
放電
電解液抽出
有機溶媒浸漬
電池容器切断
正極ユニット取り出し
正電極材剥離
正電極材
正極集電箔
硫酸加熱処理
(150℃)
ろ過
不溶分とLi(OH)2を混合加熱
(600℃、8時間)
ろ液
LIB由来Li分も
一部、溶出
正極活物質
(Li、Ni含有)
炭酸Liとしては回収せずに、
正極材から正極材に直接リサイクル
図 4.2.2-8 特開 2006-236859 における LIB からの Li 回収技術
出典:特開 2006-236859 から KRI 作成
64
②住友金属鉱山
・特開 2007-122885 「リチウムイオン電池からの有価金属回収方法」
トヨタ自動車の特許とは異なり、前処理に熱を使わない方法を採用している。また、Co、
Ni は化学沈殿させて除去し、Li のみ溶媒抽出によって分離回収している。炭酸 Li は炭酸
Na を使って析出させている。
・特開 2006-57142 「リチウムの回収方法」
溶媒抽出は、抽出液の Li 濃度が低い(1-2 g/L)。炭酸 Li の溶解度を考えると、5 g/L
程度まで濃縮する必要がある。Li の抽出剤の検討を行い、5 回逆抽出を繰り返すことによ
って 17 g/L まで Li 濃度を高めている。
③JX 日鉱日石金属
・特開 2009-193778 「Co、Ni、Mn 含有リチウム電池滓からの有価金属回収方法」
三元系の LIB から抽出剤を用いて Mn、Co、Ni を分離し、Li 溶液を得ている。Li 溶液
中に Co、Ni、Mn はほとんど含まれないが、Li 濃度は 2.9 g/L と低いので、濃縮する必要
がある(図 4.2.2-8)。
三元系LIB
酸処理
(硫酸or塩酸or硫酸+過酸化水素)
Mn、Co、Ni、Li含有溶液
Mn抽出剤
D2EHPA
Mnの抽出
Mn溶液
Coの抽出
Co溶液
Niの抽出
Ni溶液
Co抽出剤
PC-88A
Ni抽出剤
PC-88A
溶媒抽出法によって得られる
Li含有液のLi濃度は低い
→逆抽出によって濃度を
高めることは可能
Li含有液
(Li濃度2.9g/L)
図 4.2.2-8 特開 2009-193778 における LIB からの Li 回収技術
出典:特開 2009-193778 から KRI 作成
65
・特開 2010-229534 「ニッケルとリチウムの分離回収方法」
三元系の LIB から Mn、Co を取り除いた後の Li と Ni の分離に関する特許である。上
記特許とは異なり、2 つの抽出剤を用いている。また Li 溶液から炭酸 Li を得るために、
炭酸 Na を用いている(図 4.2.2-9)。
Ni、Li溶液
Ni抽出剤
PC-88A
Ni抽出剤
D2EHPA
Niの抽出
Li溶液
Ni溶液
炭酸Liが溶解して
いるろ液を返送
炭酸Na添加
ろ液
炭酸Li
炭酸Naによって、Liを炭酸Liとして回収
図 4.2.2-9 特開 2010-229534 における LIB からの Li 回収技術
出典:特開 2010-229534 から KRI 作成
④カワサキプラントシステムズ
・WO2007/074513 「リチウム二次電池から有価物質を回収するための回収装置及び回収
方法」
・WO2007/088617 「リチウム二次電池から有価物質を回収するための回収方法及び回収
装置」
カワサキプラントシステムズは、電気透析法を用いて炭酸 Li ではなく、金属 Li を得る
特許を 2 件出願している。
66
(2) 海外の技術開発動向
海外の LIB からの Li 回収技術に関して、公開情報をもとに整理を行った。アメリカの
TOXCO 社、フランスの Recupyl 社の Li 回収技術を纏めた。いずれも炭酸ガスを用いて炭
酸 Li として Li の回収を試みている。
①TOXCO 社 13)
TOXCO 社は、1998 年に LIB からの Li 回収プロセスに関する特許を出願している。同
社の技術では、LIB 解体時の火災などのリスクを軽減させるため、液体窒素を用いて冷凍
粉砕している。粉砕後、プラスチック部分などを篩い分けし、酸溶解する。Li は CO2 をバ
ブリングさせることで、炭酸 Li として回収している。LIB からの Li 回収効率は 97 %に
なる(図 4.2.2-10)。
LIB
冷凍粉砕・選別
液体窒素で冷やした後分解。プラスチックなど
を篩い分け
H2SO4を用いて金属成分を溶解
酸溶解
Li含有溶液
LiOHを用いてpHを調整
CO2バブリングさせ、炭酸Liとして回収
炭酸化
炭酸Li
回収率97%
図 4.2.2-10 TOXCO 社 Li 回収技術
出典:TOXCO 社 US Patent14) をもとに KRI 作成
②Recupyl15)
フランスの Recupyl 社は、320 t/y の LIB を処理できるプラントをシンガポールに建設
している。Recupyl 社はリサイクル可能な資源すべての回収を目標としている。LIB 解体
時の火災などのリスクを軽減させるため、不活性ガス下にて LIB を解体するのが特徴であ
る(図 4.2.2-11)。
67
LIB
不活性雰囲気下で粉砕
不活性ガス+CO2
分別
酸処理
Li溶液
炭酸Li
精製
Co回収
図 4.2.2-11 Rucupyl 社 Li 回収技術
出典:Prospective Environmental Assessment of Lithium
Recovery in Battery Recycling16) をもとに KRI 作成
3)実用化に向けた課題
公開情報調査および委員会での議論の結果、従来の LIB からの Li 資源回収方法として
は、
・ Co や Ni などを分離した後の Li 含有液に炭酸 Na を投入して炭酸 Li として回収する方
法
・ Co や Ni などを分離した後の Li 含有液に炭酸ガスを吹き込んで炭酸 Li として回収す
る方法
・ LIB から取り出した正極材を酸処理・水熱処理することで、再生正極材として回収す
る方法
・ 電気透析法を用いて金属 Li として回収する方法
があることが分かった。
上記回収方法における課題は以下の通りである。
・ 炭酸 Na を用いて炭酸 Li を回収する方法では、得られた炭酸 Li 中の Na 濃度が高く、
そのままでは LIB 用正極材に適用することが難しい。精製を行うにしても、アルカリ
金属である Li と Na の分離は難しく、薄膜分離装置などを用いる必要があり、経済的
な回収ができなくなる。
・ 炭酸ガスを用いて炭酸 Li を回収する方法は、炭酸 Na を用いる方法と比較して、得ら
68
れた炭酸 Li の純度が高く、正極材への適用が期待できる。しかしながら、Li 含有液と
炭酸ガスの反応は気液反応であるために、効率はあまり良くない。さらに不純物のな
い炭酸ガスを用いるとなるとコストもかかる。
・ 使用済み LIB の正極材を同じように正極材として再生利用することに関しては、要求
される純度等を考えると市場から受け入れられる可能性は低いと思われる。
・ 電気透析法は、初期投資もランニングコストも非常に高い。得られる金属 Li の価格は
高いが、用途が限定されるし、需要も正極材と比較すると非常に小さい。
下表 4.2.2-3 に、LIB からの Li 資源回収方法とその課題をまとめる。
表 4.2.2-3 LIB からの Li 資源回収方法とその課題
Li 回収対象
Co、NI などを分離した
Li 含有液
Co、NI などを分離した
Li 含有液
酸処理した正極材
Co、NI などを分離した
Li 含有液
Li 回収形
Li 回収方法
態
課 題
炭酸 Na 添加
炭酸 Li
炭酸 Li 中の Na 濃度高
炭酸ガス・吹き込み
炭酸 Li
反応効率・コスト
水熱反応
正極材
再生正極材の用途
電気透析
金属 Li
金属 Li の適用先少ない
出典:委員会での議論から KRI 作成
委員会での議論の中で、今後、実用化を見据えたときに可能性の高い方法は、Co、Ni
などを分離した Li 含有液から、炭酸 Na、炭酸ガスを用いた炭酸 Li 回収であるという結果
に至った。正極材の再生や、金属 Li の回収に関しては、リサイクルした後に販売する市場
が小さく適用は難しいと考える。
なお、炭酸 Na、炭酸ガスいずれの方法を用いたとしても、低コストで高純度な炭酸 Li
の製造方法の確立が技術課題になる。
4)課題の解決手段
(1)炭酸 Na による炭酸 Li の回収技術
・ Na を多量に含む炭酸 Li からの Na 除去技術の開発
日本化学工業の特開 2010-265142 では「炭酸リチウムと二酸化炭素とを水溶媒中で反応
させた水溶液を、アルカリ領域のpH に調整してキレート処理した後、加熱処理すること
69
により、Ca や Mg といった異種金属やその他の不純物含有量の極めて低減された炭酸リチ
ウムを得ることができる。」、また、トヨタ自動車の特開 2005-26089 では、「アルカリ
金属である Li と Na の分離は難しく、薄膜分離装置などを用いて精製工程を行わなければ
いけない」としている。
日本化学工業の特許では、炭酸 Na で炭酸 Li を得た後に炭酸ガスによって処理すること
になり効率が悪い。トヨタ自動車の特許によると、Li 中に Na が混入してしまうと複雑な
分離工程を行わなければならず、技術的にも経済的にも難しいと思われる。
・ Na を多量に含んでいても利用可能な炭酸 Li の用途探索
ヒアリングの結果、LIB やガラス添加剤用途の炭酸 Li は高純度が求められるため、Na
を多量に含む炭酸 Li を適用することは難しいが、その他の用途であれば適用できる可能性
があることが分かった。求められるスペック、需要、価格によっては、純度の低い Li 資源
でも利用できる可能性もある。
(2)炭酸ガスを用いた炭酸 Li の回収技術
・ 炭酸ガスと Li 含有液の効率的な反応
日本化学工業の特開 2009-57278 によれば、炭酸ガスと Li 含有液の反応は、炭酸ガスの
導入量、温度、pH などを制御することで最適化を計ることが可能である。使用済 LIB か
ら得られる Li 含有液における炭酸ガス吹き込みの最適設計を行うことで、低コスト化をは
かることが可能である。
・ 低コストな炭酸ガスの利用
一般的に市場に流通している炭酸ガスは高純度に精製されているため、当該回収技術に
そのまま用いるにはコストが高いと考えられる。求められる炭酸ガスのスペックによって
は、各種産業排ガスの適用可能性もある 17)。
4.2.3
LIB リサイクル技術の経済性
これまで LIB からの Li 回収に関して、具体的な経済性に言及した報告はない。ここで
は炭酸 Na、炭酸ガスを用いたリサイクルフローを示し、経済性に関する考察を行う。
1)経済性に影響を与える因子
(1)炭酸 Na による炭酸 Li の回収技術
4.2.2 での検討結果から、炭酸 Na を用いた炭酸 Li の回収に関して、経済性に大きく影
響を与えるのは、炭酸 Na のコストと Na 除去のためのコストの 2 点である(図 4.2.3-1)。
つまり
70
経済性に大きく影響を与える因子=(炭酸 Na のコスト)+(Na 除去のためのコスト)
となる。炭酸 Na は汎用品であり大きく価格は変動するものではないが、使用量が多けれ
ば安く購入可能である。
Na 除去工程の適用のためには新たな技術開発を行う必要があり、
現時点でコストは不明である。この他、回収した炭酸 Li のろ過、乾燥などにもコストはか
かる。
Li含有溶液
経済性に影響を与える因子①
炭酸Naのコスト
炭酸Na
Liと炭酸Naの反応
炭酸Liが溶解して
いるろ液を返送
ろ過
ろ液
乾燥
炭酸Li
(高濃度Na)
正極材以外の用途探索
経済性に影響を与える因子②
Na除去のためのコスト
Na除去
(薄膜分離装置など)
炭酸Li
正極材用途
として再利用
図 4.2.3-1 炭酸 Na を用いた炭酸 Li の回収において経済性に影響を与える因子
出典:KRI 作成
(2)炭酸ガスを用いた炭酸 Li の回収技術
上記の検討結果から、炭酸ガスを用いた炭酸 Li の回収において、経済性に大きく影響を
与えるのは、炭酸ガスのコストと、Li と炭酸ガスの反応効率の 2 点である(図 4.2.3-2)。
つまり
経済性に大きく影響を与える因子=
(炭酸ガスのコスト)×(Li と炭酸ガスの反応効率)
となる。
産業用に用いられる高純度炭酸ガスの価格は高いが、安定して大量に利用すれば大幅に
安く調達できる可能性もある。炭酸ガスとの反応効率は吹き込み方法、温度、pH よって
効率化することは可能である。いずれも明確な数値は得られていない。このほか、回収し
71
た炭酸 Li のろ過、乾燥などにもコストはかかる。
経済性に影響を与える因子①
炭酸ガスのコスト
各種産業排気ガス
精製
Li含有溶液
高純度
炭酸ガス
炭酸Liが溶解して
いるろ液を返送
精製排気ガス
(炭酸ガス含有)
経済性に影響を与える因子②
Liと炭酸ガスの反応効率
Liと炭酸ガスの反応
ろ過
ろ液
乾燥
炭酸Li
正極材用途
として再利用
図 4.2.3-2 炭酸ガスを用いた炭酸 Li の回収において経済性に影響を与える因子
出典:KRI 作成
2)経済性確保のための技術課題と今後の展望
ヒアリングおよび委員会での議論の結果、現状の技術では、使用済み LIB からの経済的
な Li 回収は難しいことが確認された。しかしながら、現状、使用済み LIB から Co、Ni
などの有価金属を回収した後に産業廃棄物として処分されている Li 含有液から、炭酸 Na
や炭酸ガスを用いて炭酸 Li 回収を行う方法が比較的有望であり、前者については炭酸 Na
のコストおよび Na 除去のためのコストの低減、後者については炭酸ガスのコスト低減と
Li と炭酸ガスとの反応効率向上のための技術開発を進めることにより、事業化への道が拓
けるものと思われる。
今後、使用済み車載 LIB が大量発生するのは電池寿命を考慮すると 10 年程度先のこと
であり、日本政府も積極的に LIB からの Li リサイクルを推し進める方針であるので、技
術課題解決に向けた取り組みを官民が集中的に行うことにより、使用済み車載 LIB の大量
発生が顕在化する前に、リサイクル技術が実用化される可能性は十分あるものと考えられ
る。
72
4.3 海水・地熱水からの国産 Li 資源創生技術とその可能性
海水中の微量成分を回収する技術は、オイルショックによりエネルギー資源問題が顕在
化した 1970 年代から、原子力発電・核融合に必要なウラン、Li を中心に活発に行われた。
また、造船業界でも、船の新しい利活用として海洋資源の採取を検討していた。1990 年
代に入ると、ウラン、Li の価格低下に伴い、海水希薄資源採取は経済性があわないと判断
され、限られた研究機関で技術開発が進められるという状況になった。しかし 2000 年代
に入り、新興国の経済発展や資源ナショナリズムの台頭により、石油を始めとするエネル
ギー資源や希少金属の価格が高騰し、海水・地熱水からの資源採取が、再び注目され始め
ている。
海水中には、様々な有価物が含有されているが、海水中に存在する元素の濃度は希薄で
あり、経済的かつ高純度に回収することが極めて困難である。従って、現在実用的に回収・
利用されている海水中の成分は、塩化 Na、塩化 Mg、臭素などに限定されているが、海水
中の Li 濃度も他元素と比べると高く、技術開発次第では経済的な回収の可能性があると考
えることができる。
日本は、海洋資源という観点から見ると世界有数の資源国であり、200 海里面積では世
界 6 位、体積では 4 位である(図 4.3-1)。海水中の Li 濃度は 0.17 ppm であるので、日
本国内には、170 億 t-LCE という膨大な Li 資源が賦存していることになる。海水は魅力
的な Li 源である。
表 4.3-1 200 海里面積(左)と 200 海里体積(右)の上位 10 か国
200海里面積
百万km2
1 アメリカ
10.7
2 ロシア
8.03
3 オーストラリア
7.87
4 インドネシア
6.08
5 カナダ
5.8
6 日本
4.46
7 ニュージーランド
4.4
8 ブラジル
3.638
9 チリ
3.635
10 キリバス
3.43
200海里体積
百万km3
1 アメリカ
33.8
2 オーストラリア
18.2
3 キリバス
16.4
4 日本
15.8
5 インドネシア
12.7
6 チリ
12.5
7 ミクロネシア
11.7
8 ニュージーランド
11.4
9 フィリピン
10.7
10 ブラジル
10.5
順位
順位
出典:
海洋政策研究財団 HP1)を元に KRI 作成
地熱水も同様に注目されている。地熱水は、高温であることや重金属が含まれるために
海水以上に難しい側面もあるが、溶存量は海水よりも大きい。例えば、国内の有馬温泉中
には平均で約 48 mg/L(約 48 ppm)、放流されている Li 量は 51 千 t-LCE/y という報告
もある。この Li 濃度は海水の 300 倍近くである 2)。
73
4.3.1
Li 回収技術
1)現状
海水・地熱水からの Li 回収技術は実用化には至っていない。
海水中の微量成分を回収する方法としては、吸着法、浮選法、溶媒抽出法、共沈法、生
物濃縮法などが考えられるが、大量の海水・地熱水を利用できる操作性、採取効率、大規
模化による経済性などを考慮すると、吸着法が最も有望と考えられる 3)(表 4.3.1-1)。
地熱水も同様の技術が適用可能と考えられるが、地熱水に関するデータは非常に少ない
ため、ここでは海水を中心に論じていくこととする。
表 4.3.1-1 海水からの Li 回収技術について
方法
操作性
採取効率
経済性
総合評価
吸着法
固体吸着剤に目的物質を吸着させ回収
○
○
△
○
浮選法
比重により分離し回収
△
○
×
×
金属イオンを含んだ水溶液を有機溶剤を
接触させることにより、金属イオンを有機
溶媒中へ移動させ回収
×
○
×
×
溶液に沈殿剤を加え、その沈殿物に希
薄イオンを吸着させ回収
×
○
×
×
生物の体内に蓄積し回収
○
△
△
△
溶媒抽出法
共沈法
生物濃縮法
出典:海洋開発ニュース 3)を元に KRI 作成
海水中には Li の他に、Na、K、Mg など性質の良く似た元素が Li の 1 万倍以上溶解し
ている。これら共存元素から Li のみを選択的に回収するのは非常に難しい。
独立行政法人産業技術総合研究所(以下 AIST)大井健太氏は、この課題を解決するた
めに、1980 年代半ばに Li 選択性をもつスピネル型 Mn 酸化物を開発した。この吸着剤は、
イオン鋳型法と呼ばれる手法で製造される。Li 自身を用いて Li に最適な鋳型を作ること
に特徴がある。Li を Mn 化合物と混ぜ焼き固めると Li を囲んで鋳型が生成する。これを
酸処理により Li を溶出させると、Li のあった場所に Li の大きさの穴が形成される。この
穴は Li を取り込むのに最適な大きさ、形状をしているため、溶液につけるだけで溶液中の
Li を選択的に吸着することができる
(図 4.3.1-1)。
この吸着材の理論吸着量は酸化 Li(Li2O)
換算で 4 %以上に達する。これは Li 鉱石に匹敵する含有量である。
74
Li化合物
Mn化合物
混合・焼結
酸処理
Liの脱離
吸着剤
図 4.3.1-1 大井氏の開発した吸着剤(左:合成方法、右:吸着イメージ図)
出典:海洋開発ニュース 3)を元に KRI 作成
吸着剤を用いて海水から Li を回収する場合、吸着剤を大量の海水と接触させることが重
要である。そのため、吸着剤の形状も重要になる。一般的には、バインダーを用いて吸着
剤を造粒している(図 4.3.1-2)。Li 吸着後に酸処理工程を行うため、バインダーには、耐
酸性も求められる。有機・無機の各種バインダーを用いた研究が行われている。
図 4.3.1-2 吸着剤イメージ図
出典: KRI 作成
造粒した吸着剤を用いて Li を吸着させた後は、酸によって脱着することできる。得られ
た脱着液の Li 濃度は 2,000 ppm 程度となる。脱着液を加熱濃縮し、アルカリ添加による
不純物除去などを行うことで、目的とする Li 化合物を得ることができる。
脱着液からの Li の濃縮分離は、基本的には既存のかん水・鉱石からのプロセスと同様に
なるので、海水から Li 回収するための主となる技術開発要素は、吸着剤とその周辺技術開
発である(図 4.3.1-3)。
75
海水からのLi回収において
主となる技術開発要素
海水
0.17 ppm
吸着剤
塩酸
吸着剤
移動
脱着
設備
吸着
設備
排海水
吸着剤
返送
脱着液
2千 ppm
熱
各種分離剤
濃縮
設備
濃縮液
10千 ppm
分離
設備
Li化合物
図 4.3.1-3 海水からの Li 吸着フロー
出典:海洋開発ニュース 3)を元に KRI 作成
吸着材の技術開発は、1980 年代から AIST の大井氏が先導して研究を実施してきた。大
井氏の開発した二段階鋳型法による吸着剤は、吸着剤 1 g あたり 40 mg の Li を吸着する
という。大井氏の吸着剤は、ハンドリング性等向上のためにポリ塩化ビニル(PVC)を用
いて造粒する。また北九州市立大学の吉塚氏も吸着剤の研究を行っている。大井氏の吸着
剤より吸着量は劣るが、バインダーとして無機材料を用いることで耐酸性を高め、繰り返
し利用に耐えうる吸着剤を開発した。
2)吸着剤の技術開発動向
Li 吸着剤に関する技術開発動向を整理し、実用化に向けた課題などの抽出を行うために、
中央光学出版の特許検索データベース CKS WEB を用いて、Li 吸着剤に関する国内特許の
検索を行った。検索範囲は、公開と公表特許、出願日は 1989 年-2010 年 1 月の約 20 年間
とした。検索キーワードは、要約と請求項の範囲に、Li を含み、且つ、回収、採取、吸着、
リサイクル、分離、捕集、採集、抽出のいずれかの言葉を含むものとした。その結果、4,521
件の特許が得られた。その中から、要約・抄録をもとに該当特許を抽出した。Li 吸着剤に
関する特許は 26 件であった(表 4.3.1-2)
抽出された 26 件のうち 17 件が AIST による出願(うち 16 件に大井氏の名前あり)、
北九州市立大の吉塚氏の関わっている特許は、財団法人北九州産業学術推進機構が出願し
た 1 件であった(表 4.3.1-3)。株式会社 神戸製鋼所は 5 件出願しているが、全て AIST
大井氏との共同出願である。
76
表 4.3.1-2 Li 吸着剤の特許検索結果
検索データベース
中央光学出版 CKSweb
検索範囲
公開+公表特許
出願日
検索結果
1989年1月~2010年1月
要約・請求項
リチウム * (回収 + 採取 + 吸着
+ リサイクル + 分離 + 捕集 + 採集 + 抽出)
4,521件
うちLi吸着剤に関する特許
26件
検索式
出典: KRI 作成
表 4.3.1-3 Li 吸着剤の特許件数(出願人別)
出願者
(共同出願は、各出願者ごとに1件としてカウント)
AIST
株式会社神戸製鋼所
クラレケミカル株式会社
チッソ株式会社
プラクスエア・テクノロジー・インコーポレイテッド
科学技術振興事業団
岩谷産業株式会社
財団法人北九州産業学術推進機構
三井金属鉱業株式会社
帝人エンテック株式会社
東ソー株式会社
東亞合成株式会社
総計
件数
17
5
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
32
出典: KRI 作成
図 4.3.1-4 に Li 吸着剤に関する特許の出願数推移を示す。1989 年、1990 の出願が最も
多く、それぞれ 7 件、5 件であった。その 12 件中 9 件が AIST による出願である。その後
は、1999 年および 2000 年に 3 件の出願があるほかは、1 件あるかないかという状況であ
った。
77
8
7
出願件数
6
5
4
3
2
1
2006
2005
2004
2003
2002
2001
2000
1999
1998
1997
1996
1995
1994
1993
1992
1991
1990
1989
0
出願年
図 4.3.1-4 Li 吸着剤に関する特許の出願数推移
出典: KRI 作成
(1)AIST 大井氏による吸着剤技術開発
AIST 大井氏による出願 15 件の中から、開発した Li 吸着剤の吸着量とその特徴をまと
めた(表 4.3.1-4)。
Mn 酸化物系吸着剤の製造方法改良に関する特許データから、吸着量の推移をみると
1990 年に一度、大きく性能が上がっていることが分かる。1990 年から 2000 年まで出願
はないが、2000 年に 37 mg/g まで Li 吸着能力を上げている(図 4.3.1-5)。この 37 mg/g
という吸着量は、AIST が出願した特許の中で、最大の吸着量を示している。
同じく 2000 年に出願した特許「膜状リチウム吸着材料、その製造方法及びそれを用い
たリチウム回収方法」では、吸着剤と海水との接触効率を上げるために、膜状吸着材料の
開発を行っている。15 mg/g の Li 吸着結果を得ている。2006 年に出願した特許「リチウ
ム吸着剤を含有する成形体およびその製造方法」も同様に海水との接触効率向上を目的と
しており、成形体は、上記特許「リチウム吸着剤の製造方法」を利用して製造している。
32 mg/g という結果を得ている。
その他に、Mn 酸化物系以外の吸着剤や Mn 酸化物に他の金属を添加した吸着剤の研究
も行っているが、吸着量という観点からはそれほど良い結果は得られていない。
78
表 4.3.1-4 AIST 大井氏の Li 吸着剤特許および吸着量
吸着量
出願番号
発明の名称
2006-314189
リチウム吸着剤を含有する成形
体およびその製造方法
mg/g
多孔質粒状リチウム吸着剤の製
造方法
膜状リチウム吸着材料、その製
2000-085880 造方法及びそれを用いたリチウ
ム回収方法
2001-094350
2000-036377
選択的リチウム分離剤及びその
製造方法
2000-239027 リチウム吸着剤の製造方法
平11-293451
平11-142701
平04-215392
平02-085945
新規なリチウム吸着剤及びその
製造方法
複合型リチウム吸着剤及びその
製造方法
リチウム吸着剤及びその製造方
法
粒状のリチウム吸着剤およびそ
の製造方法
特徴
32
Mn酸化物系繊維状吸着剤
8
バインダーを用いたMn酸化物吸着剤
15
Mn酸化物系膜状吸着剤
-
Al-Si酸化物
37
Mn酸化物吸着材の製造方法改良
19
Cr酸化物 32
Biなどを添加したMn酸化物 20
Mgなどを添加したMn酸化物 3.3
バインダーを用いたMn酸化物 平02-044203
リチウム吸着剤の製造方法
28.5
Mn酸化物吸着材の製造方法改良
平02-044204
リチウム吸着剤の製造方法
27.9
Mn酸化物吸着材の製造方法改良
平02-044205
リチウム吸着剤の製造方法
12
Mn酸化物吸着材の製造方法改良
平01-246847
リチウム吸着剤の製造方法
18.3
平01-246848
リチウム吸着剤の製造方法
11
Mn酸化物吸着材の製造方法改良
3
バインダーを用いたMn酸化物吸着剤
平01-141545
平01-141546
粒状リチウム吸着剤及びそれを
用いたリチウム回収方法
リチウム吸着剤及びそれを用い
たリチウム回収方法
4.9
PVAによって造粒したMn酸化物吸着剤
多孔質膜に含包されたMn酸化物吸着剤
出典: KRI 作成
40
35
Li吸着量(mg/g)
30
25
20
15
10
5
0
1988
1990
1992
1994
1996
1998
2000
2002
出願年
図 4.3.1-5 Li 吸着量の推移
出典: KRI 作成
79
①特開 2001-157838 「リチウム吸着剤の製造方法」
1M 塩化マンガン水溶液中に、過酸化水素 10 wt%を含む 1M アンモニア水を添加し、生
成する沈殿を捕集し、ろ過、水洗、乾燥することにより、γ‐オキシ水酸化マンガンをかっ
色固体として得た。次に、この固体を 1M 水酸化 Li 水溶液中に加え、120℃で 6 時間水熱
処理した。この LiMnO2 を空気雰囲気中、500℃で 4 時間加熱処理することにより、
Li2Mn2O5 を暗かっ色結晶として得た。次に、この結晶を 0.5 M塩酸水溶液中に3日間浸
せきして Li を完全に抽出したのち、ろ別し、乾燥することにより、式 MnO2・0.5H2O に
相当する組成をもつ Li 吸着剤を得ている(図 4.3.1-6、特許参照)。
1M塩化Mn水溶液
過酸化水素10wt%
を含む1Mアンモニア水
3日間浸漬
ろ過
ろ液
0.5M塩酸水溶液
ろ過
Li含有液
水洗、乾燥
乾燥
γ -オキシ水酸化Mn
Li吸着剤
1M水酸化Li
水熱処理
120℃、6時間
LiMnO2
加熱処理
500℃、4時間
Li2Mn2O5
図 4.3.1-6 Li 吸着剤の合成フロー
出典: KRI 作成
以上の結果、既存吸着剤の実験室レベルでの性能は、
・ 吸着剤の Li 吸着性能は吸着剤 1g あたり 37 mg である。
・ バインダーとしてはポリビニルアルコール(PVC)を用いる。
・ PVC を用いて造粒した造粒材は吸着剤 1g あたり Li を 32mg 吸着する。
であることが分かった。
3)吸着剤技術を用いた実証事業
吸着剤を用いた Li 回収に関しては、公的支援の下、いくつかの実証事業が行なわれてい
80
る。代表的な事業は、AIST 大井氏による発電所温排水を利用した実証事業(2003-2004
年度事業)、北九州市立大学吉塚氏による伊万里湾における実証事業である(2002-2004
年度事業)。
その他、財団法人エンジニアリング振興協会は、西表島、沖ノ鳥島にて、大井氏の吸着
剤技術を用いて Li 回収試験を実施している。独立行政法人海上技術安全研究所(以下海上
技術安全研究所)の湯川和浩氏は、株式会社 IHI(以下 IHI)、三井造船株式会社(以下
三井造船)とともに、大井氏が作成した吸着剤を想定して海水からの回収プラントの設計
を行った。
なお、大井氏、吉塚氏は共に 2009 年度より JOGMEC のボリビア Uyuni 塩湖からの Li
回収事業に参画している。これらのプロジェクトは、彼らが開発した Li 吸着剤を硫酸塩か
ん水である Uyuni 塩湖に適用し、Li を回収しようとするものである(図 4.3.1-7)。
ウユニ塩湖実証(2009-)
ウユニ塩湖実証(2009-)
住友商事
三菱商事
プロジェクト年
AIST
大井氏
北九州市大
吉塚氏
横田工業商会
発電所温排水実証(2003-2004年)
伊万里湾海水実証(2002-2004)
AIST
大井氏
北九州市大
吉塚氏
中国電力
広島大
信川氏
横田工業商会
広島県立西部
工業技術センター
MEC
エンジニアリング
シバタ工業
佐賀大
池上氏
採取システム設計(2000-2002)
海上技術安全研
湯川氏
ゼネシス
三井造船
IHI
図 4.3.1-7 吸着剤を用いた Li 回収実証事業
出典: KRI 作成
(1)地域新生コンソーシアム事業
「海水リチウム採取の実用化技術の研究開発」
2002-2004 年度にかけて、「海水リチウム採取の実用化技術の研究開発」が経済産業省
の事業として行われた。
吸着性能が 15 mg/g・14 日の粒状吸着剤を月 220 t 生産できる吸着剤生産システムの開
発、低コスト(1,000 円/kg)吸着剤の製造技術開発、吸着性能を最大限発揮できる吸着シ
ステムの開発などを目標として技術開発および実証試験を行った。その結果、造粒装置の
81
改良により 15.4 mg/g・14 日の吸着性能をもつ吸着剤を開発、実海域から高純度の塩化 Li
を 900 g 採取することに成功している。
海水(発電所温排水を含む)からの Li 吸着は、直径 40 cm の円筒中に 14 kg(50 L)の
吸着剤を充填し、上部から海水を 9.3 t/h で通水し、上部から排出するシステムにて行った。
吸着日数は 22 日、通水量は 4,910 t であった。その結果、1 g の吸着剤当り 11 mg の Li
が回収できた(吸着工程)。吸着剤からの Li の脱着は塩酸を用いた。脱着液の Li 濃度は
2,500 ppm(150 g-Li/60L)であった(脱着工程)。この脱着液中には不純物が含まれて
いるので、水酸化 Li を用いて Mn、Mg の除去、キレート樹脂を用いて Ca の除去、無機
イオン交換体を用いて Na、K の除去を行った後、濃縮、晶析させて高純度の無水塩化 Li
を 900 g 回収した。
海水からの Li 回収率は約 18 %であった(濃縮・分離工程)
(図 4.3.1-8)
。
海水 9.3 t/h
脱着液
中和
塩酸
Mn、Mg除去
ろ過
キレート樹脂 Ca除去
40cmφ
の円筒
無機イオン交換体
脱着液
吸着剤
14kg(50L)
濃縮
Li濃度
2,500 ppm
晶析
(150 g-Li/60L)
吸着日数 22日
総通水量:4,910 t
吸着工程
Na、K除去
4N 無水塩化Li
(900g)
脱着工程
濃縮・分離工程
図 4.3.1-8 Li 回収の各工程(経済産業省事業)
出典: KRI 作成
(2)21 世紀 COE プログラム
「海洋エネルギーの先導的利用科学技術の構築」
2002年度からスタートした文部科学省の21世紀COEプログラム 「海洋エネルギーの先
導的利用科学技術の構築」プロジェクトにおいて、北九州市立大学の吉塚教授は「海洋深層
水からのリチウム回収・分離技術の確立」を担当し、研究を行った。その中で、伊万里湾の
海水からのLi回収実験を行っている。実証試験は、佐賀大学海洋エネルギー研究センターに
ある海水Li回収パイロットプラントを利用した(図4.3.1-9)。
82
伊万里湾の海水を精密ろ過ユニットに通して夾雑物などを取り除いた後、酸化マンガン系
吸着剤を60 kg充填したカラムに150日間、816 m3通液してLiを吸着した。吸着後、工業用
淡水をカラムへ1 m3通液して、海水の追い出しと吸着剤の洗浄を行った。Liの脱着には塩酸
を用いた。脱着液を蒸発乾固させ、塩化Liを33.3 wt%含む固形物を792 g得た。海水からの
Li回収率は36 %であり、海水濃度に比べてLiは約11,000倍に濃縮されていた(表4.3.1-5)。
塩酸
吸着剤
60 kg
脱着液
蒸発乾固
異物除去
のための
フィルター
脱着液
792gの固形物
(塩化Li含有率 33.3 wt%)
海水
0.2 m3/h
吸着日数 150日
総通水量:816 m3
吸着工程
脱着工程
濃縮工程
図 4.3.1-9 Li 回収の各工程(COE プログラム)
出典:KRI 作成
表 4.3.1-5 吸着剤を用いて海水から回収された固形物
LiCl
NaCl
KCl
MgCl2
CaCl2
MnCl2
SrCl2
含有率
(wt%)
33.3
20.4
3.3
8.2
13.4
19.4
2
濃縮率
(%)
11,000
0.26
0.94
0.57
0.57
0.57
0.57
出典:配管技術 4)を元に KRI 作成
83
(3)産業技術研究助成事業
「海洋エネルギーを利用した浮体式海水中リチウム採取システムの開発」
①採取システム設計の概要
2000-2002 年まで行われた経済産業省の産業技術研究助成事業にて、海上技術安全研究
所の湯川氏は、IHI、三井造船とともに海水からの Li 採取システムの研究を行った。湯川
氏は、メガフロートの研究者であり、その成果の応用先として本研究を行うに至った。海
上技術安全研究所が、海流の試験及びその成果を用いたシステム設計を行い、IHI と三井
造船が採取システムの概念設計とコスト算出を実施している。
検討の結果、吸着剤を充填した流動床発生装置とフロートから構成される採取システム
を提案している。設置場所は、吸着剤の効率を最大化するために、海流の速い紀伊半島沖
を選択した。採取システムの概略図を示す(図 4.3.1-10)。この採取システムは、ユニッ
ト化して複数結合することも可能としている。
フロート
吸着剤
336t
フロート平面形状
20 m × 20 m
コラム
平面形状
6m×6m
コラム長さ
60 m
排水量
6,047 t
吸着剤積層量
300 t
Li年間採取
目標値
318 t-LCE
コラム
アンカー
(海底と固定)
図 4.3.1-10 Li 採取システムの概略
出典:研究成果報告書 5)を元に KRI 作成
②当該採取システム設計をベースにした炭酸 Li 生産の経済性試算
当該研究では、上記採取システムを利用して炭酸 Li 生産の経済性試算を行っている。現
在の吸着剤の技術レベルをベースとした標準ケースと、吸着剤の高性能化など将来の技術
レベルを想定した将来ケースの 2 種類の前提条件を用いて試算した。その結果、海水から
の炭酸 Li 生産コストは、吸着剤が量産効果等により相当程度コストダウンされるという条
件付きではあるが、標準ケースでは約 1,200 円/kg-LCE、将来ケースでは 440 円/kg-LCE
と見込んでいる(炭酸 Li 生産コストは当該研究成果報告書の考え方をもとに KRI が一部
84
修正を加えたもの)(図 4.3.1-11、図 4.3.1-12)。将来ケースであれば、現状の炭酸 Li の
市場価格に近く、コスト競争力のある炭酸 Li の生産への道が拓ける可能があるが、この試
算は採取システムを構築するための設計段階のものであり、実用化のためには検討しなけ
ればいけない項目も多いと考えられる。
条件
吸着剤のべ量
年間サイクル
吸着能力
吸着日数
吸着剤初期購入量
吸着剤単価
吸着剤取替え間隔
脱着液コスト
アルカリ液コスト
晶析処理コスト
金利
設備償却期間
100,800
30
12.8
10
3,360
700,000
50
3
6
5
2.5
20
t-吸着剤/y
kg-Li/t-吸着剤
日
t
円/t
サイクル
千円/t-吸着剤
千円/t-吸着剤
千円/t-吸着剤
%
年
イニシャルコスト
(イニシャル吸着剤購入費)
海水リチウム浮体システム
浮体
係留システム
その他
陸上脱着・結晶化処理プラント
固定費総額
年間固定費
(2,352
74,600
26,000
44,000
1,600
3,000
74,600
4,744
百万円)
百万円
百万円
百万円
百万円
百万円
百万円
百万円
ランニングコスト
吸着剤取替え費用
脱着液コスト
アルカリ液コスト
晶析処理コスト
浮体補修費
吸着剤輸送費
人件費
年間運転費
1,411
302
605
504
520
110
50
3,502
百万円/y
百万円/y
百万円/y
百万円/y
百万円/y
百万円/y
百万円/y
百万円/y
Li回収コスト
年間Li回収量
炭酸Li換算
年間総コスト
炭酸Li回収コスト
1,290
6,838
8,246
1.2
t-Li/y
t-LCE/y
百万円
千円/kg-LCE
図 4.3.1-11 炭酸 Li 回収コスト試算(標準ケース)
出典:研究成果報告書 5)を元に KRI 作成
85
条件
吸着剤のべ量
1,008,000 t-吸着剤/y
年間サイクル
30
吸着能力
26.3 kg-Li/t-吸着剤
吸着日数
10 日
吸着剤初期購入量
33,600 t
吸着剤単価
700,000 円/t
吸着剤取替え間隔
100 サイクル
脱着液コスト
3 千円/t-吸着剤
アルカリ液コスト
6 千円/t-吸着剤
晶析処理コスト
5 千円/t-吸着剤
金利
2.5 %
設備償却期間
20 年
イニシャルコスト
(イニシャル購入費)
海水リチウム浮体システム
浮体
係留システム
その他
陸上脱着・結晶化処理プラント
固定費総額
年間固定費
ランニングコスト
吸着剤取替え費用
脱着液コスト
アルカリ液コスト
晶析処理コスト
浮体補修費
吸着剤輸送費
人件費
年間運転費
Li回収コスト
年間回収量
炭酸Li換算
年間総コスト
炭酸Li回収コスト
(23,520
552,000
195,000
330,000
12,000
15,000
552,000
35,101
7,056
3,024
6,048
5,040
3,900
800
200
26,068
26,510
140,505
61,169
0.44
百万円)
百万円
百万円
百万円
百万円
百万円
百万円
百万円
百万円/y
百万円/y
百万円/y
百万円/y
百万円/y
百万円/y
百万円/y
百万円/y
t-Li/y
t-LCE/y
百万円
千円/kg-LCE
図 4.3.1-12 炭酸 Li 回収コスト試算(将来ケース)
出典:研究成果報告書 5)を元に KRI 作成
86
(4)平成 20 年現場ニーズ等に対する技術支援事業
「かん水からのリチウム回収システム開発に関する共同スタディ」
「ウユニ塩湖かん水からのリチウム・ホウ素等の効率的抽出方法の開発に関する共同スタ
ディ」
2009 年、ボリビア Uyuni 塩湖かん水からの Li 回収システム開発が、JOGMEC 事業と
して行われた。Uyuni 塩湖のかん水は硫酸塩系であるため、既存技術での Li 回収は難し
い。そこで、既述のとおり、大井氏、吉塚氏の吸着剤技術を用いて試験を行っている。
大井氏の吸着剤を用いた結果、ベンチ試験スケールではあるが、吸着剤あたりの Li 吸着
量は 25 mg/g 以上、吸着工程での Li 回収率 95%以上を達成した。脱着、濃縮、分離、精
製工程を経て得たかん水からの炭酸 Li 回収率は 70%以上であった。ただし、炭酸 Li の沈
殿に炭酸 Na を用いた影響から、
不純物として Na が 0.1wt%程度混入している(表 4.3.1-6、
表 4.3.1-7)。
表 4.3.1-6 Uyuni 塩湖試験結果(Li 吸着量と回収率)
吸着実験
1回目
2回目
3回目
4回目
使用
かん水量
L
25
23
25.5
25
Li吸着量
Li回収率
mg/g
27.3
25
27
26.9
%
98
98
96
96
出典:共同スタディ報告書 6)を元に KRI 作成
表 4.3.1-7 Uyuni 塩湖試験結果(回収炭酸 Li の組成)
回収炭酸Li
2回目
3回目
4回目
平均
不純物含有量
重量 回収率 Na
g
%
99
76
0.12
101
70
0.11
104
73
0.14
101
73
0.12
Mg
K
wt%
0.1 <0.01
0.09 <0.01
0.08 <0.01
0.09 <0.01
Ca
Mn
<0.01
<0.01
<0.01
<0.01
未検出
未検出
未検出
未検出
出典:共同スタディ報告書 6)を元に KRI 作成
以上の実証事業の結果から、以下の知見が得られた。
・ 海水(発電所冷却水)からの Li 回収における吸着速度は、15.4 mg/g・14 日という値
を得た。
・ 吸着剤の酸による損失は1回の吸脱着あたり 0.1%以下である。
・ Li 濃度 2,500ppm という高濃度の脱着液を得ることが可能である。
87
・ 海水からも高純度の Li 化合物の製造が可能である。
・ 実海域での Li 回収に関しては、採取システムの設計レベルにとどまっている段階であ
る。
4)実用化に向けた課題
ヒアリング、委員会での議論の結果から、現状の技術状況と課題をまとめる(図 4.3.1-13)。
解決すべき技術課題のうち、最大の課題は吸着剤のコスト低減とであることが示されて
いる。現状では仮に量産したとしても数千円/kg のコストがかかる見込みである。また、
実海域での実証試験はほとんど行われておらず、事業性、経済性などを検討するに足る資
料も不足している。海水からの Li を回収技術は、要素技術だけでなく、採取システムの開
発も行わなければならないため、乗り越えるべきハードルが多い。
一方、上記実証試験の結果を踏まえると、当面は、海水ではなくボリビア Uyuni 塩湖か
らの吸着剤を用いた Li 回収は事業化に近いのではと思われる。Uyuni 塩湖でも海水と同
様の吸着剤を利用しているため、まずは Uyuni 塩湖などのかん水からの吸着剤を用いた
Li 回収技術を確立することが最初のステップとして重要であると考える。
要素技術
求められる性能
37 mg-Li/g
高い吸着量
吸着プロセス
現状
(実験室レベル)
速い吸着速度
15.4 mg-Li/g/14 d
(球状成形、 流動床吸着装置)
課題
Li吸着技術
脱着プロセス
吸着剤の低コスト化
数千円/kg
高濃度の脱着液
Li含有量 2,500 ppm
高い脱着率
吸着剤の溶解防止
高純度化
濃縮・
分離プロセス
高い収率での分離
塩酸によって高効率脱着
が可能
1プロセスで0.1%程度
の吸着剤が溶解
塩湖・鉱石からのLi製
造プロセスとほぼ同
様のため検討外
濃縮プロセスの低コスト化
図 4.3.1-13 海水からの Li 回収技術の現状
出典:KRI 作成
地熱水に関しては、現状、検討に足るべき資料がほとんどなく、立ち入った検討には至
らなかった。アメリカでは地熱水からの Li 回収事業を事業化しようと Symbol Mining 社
が技術開発を進めている。その会社に日本の伊藤忠商事も資本参加しており、数年後の事
業化を目指して取組んでいるおり、その動向を今後とも注視していく必要があろう。
88
4.3.2
Li 回収技術の可能性
海水・地熱水からの Li 資源の回収は、現状の技術レベルでは事業化は難しい。LIB から
の Li 回収の事業化よりも時間がかかると考える。
一方で、LIB リサイクルとは異なり、無尽蔵の Li 資源を確保できるという魅力もある。
海水からの Li 回収技術の事業化は、エネルギー基本計画に唱われた 2030 年以降を見据え
た長期的な視点で取組むのが現実的と思われる。ボリビア Uyuni 塩湖をはじめ、まずは硫
酸塩かん水からの Li 回収技術の開発・確立を進めるのが妥当と考える。その知見を活かし
て、発電所温排水などを利用した Li 回収、その後、実海域からの Li 回収を目指していく
べきであろう。
地熱水に関しては、海水の数百倍の Li 濃度を有しているものがあるとされるが、熱水で
あることから吸着剤には耐熱性が求められる。また一般に重金属など金属イオン濃度も高
いことから、その精製方法なども解決しなければならない。こうした技術的課題にも取り
組んでいくことが重要であろう。
1) 吸着剤技術を用いた硫酸塩かん水からの Li 回収技術開発
現在、JOGEMC はボリビア Uyuni 塩湖かん水からの Li 回収技術開発を行っている。
Uyuni 塩湖は 1,000 ppm 程度の Li 濃度を有するが、硫酸塩かん水であるために十分に天
日濃縮することができず、現状技術では事業化に至っていない。2009 年度の JOGMEC 事
業の結果から、日本の吸着技術を使うことで、短時間かつ高効率に Li を回収できる見込み
が立っている。近い将来経済性も見込めるとの見方もある。
海水からの Li 回収事業について事業化の道を拓いていくには、吸着剤の高性能化・低コ
スト化は必須である。そのためには、まずは吸着剤を用いた硫酸塩かん水から Li 回収技術
を確立することが重要と思われる。ボリビア政府は、Uyuni 塩湖からの Li 回収は 2015 年
から本格的にスタートさせる予定であり、事業化によって吸着剤の大量生産とこれに伴う
吸着剤のコストダウンを図るとともに、事業から得られた収益を使って、吸着剤の技術開
発を進めることで、高性能かつ安価な吸着剤の開発が可能になると考えられる。
2) 各種プラント排水からの Li 回収技術開発の検討
海水からの Li 回収技術は、吸着剤の高性能化が実現したとしても、海上における採取シ
ステムの開発が重要であり簡単ではない。湯川氏の研究結果から考えると、独立したシス
テムを海上に設置するのは非常に高コストであり実現性は低いと思われる。よって、吸着
剤の高性能化・低コスト化が実現した後のステップとしては、発電所や海水淡水化などの
海水を大量に利用・排出しているプラント、もしくは今後世界的に拡大が見込まれる洋上
風力発電プラントに付属して設置する方法が有力と考えられる。
89
プラント排水を利用するためには、圧力損失を考慮して新たなポンプシステムの導入な
どを検討しなければならない可能性もあるが、一から独立プラントを設置するよりは安価
になると思われる。洋上風力に関しては、日本においてはこれから本格導入されていく技
術であるので、新設のプラント建設時に併せて設置できる可能性もある。
特に海水淡水化プラントへの Li 回収システムの適用は実現性が相対的に高いものと思
われる。淡水化プラントの設置が進んでいる中東地域では、淡水製造後の濃縮排水による
環境問題が懸念されているという。さらに、濃縮排水は海水の 1.5~2 倍に Li が濃縮され
ているため、通常の海域に比べると効率よく回収することが可能であるとみられる。さら
に中東地域は肥料の需要が非常に高い。濃縮排水から Li だけでなく、K なども同時に回収
することができれば、新たな産業創出にもつながるものと思われる。
3) 国内地熱水における Li 含有量の測定と耐熱性吸着剤の研究開発
地熱水は高温であるために耐熱性の高い吸着剤が求められる上に、地熱水中には海水と
は違った種類のイオンが高濃度に含まれているため分離工程にも工夫しなければならない。
海水からの Li 回収技術とは違った視点で研究開発を進めることが重要である。
地熱水中には Li が高濃度で含有していると言われているが、温泉の性状が異なるように、
地域によって含有イオンは異なる。地熱水中の Li 資源回収技術を開発するためには、十分
な湯量があり、Li 濃度が高く、共存するイオン濃度とくに重金属類濃度が低いサイトの選
定が重要である。今回の調査において、有馬温泉の Li 濃度が高いという情報は得られたが、
その他の詳細情報は得ることができなかった。まずは、Li 資源開発を目的として、国内地
熱水の Li 含有量を把握することが重要になる。
事業化のためには、耐熱性の有する吸着剤の開発も求められる。北九州市立大の吉塚氏
は、アルミナバインダーを用いることで 60 ℃程度の温水でも適用可能な吸着剤を開発し
ている。これらの技術を基に、高性能化・高コスト化を図ると共に、海水とは違った共存
イオンの影響を把握することも重要となる。
Li 吸着剤の技術は、日本が独自に開発した優れた技術である。Li を戦略レアメタルとし
て位置づけている我が国においても、ただちに海水からの Li 回収を経済的に実現すること
は無理としても、まずは事業化が有望な硫酸塩かん水からの Li 回収技術の実証を行い、事
業化することが重要と考える。事業化によって吸着剤の大量生産とこれに伴う吸着剤のコ
ストダウンを図るとともに、事業から得られた収益を使って、吸着剤技術開発を行うこと
で、高性能かつ安価な吸着剤の開発が可能になると考える(図 4.3.2-1, Step1,2)。
その後、初期コストをそれほど必要としない国内もしくは海外でのプラント排水等を用
いた Li 資源回収技術開発を行い、事業化する(Step3,4)。ここで、海水からの Li 吸着技
術のノウハウの蓄積を行う。Step1-4 において、吸着剤の性能・コストの問題を解決し、
90
海水からの Li 回収技術の確立を行った後に、洋上での大規模 Li 回収事業の技術開発を行
うのが妥当であると考える。
日本
事業化による吸着剤の
高性能化、低コスト化
事業
Step2(海外)
Step1を事業化
海外
日本
研究
開発
海外
Step1(海外)
吸着剤技術を用いた
硫酸塩かん水からの
Li回収技術実証
2010年度
Step3(日本or海外)
上記吸着剤を利用したプ
ラント排水等からのLi資
源回収技術実証
20XX年度
Step4(日本or海外)
Step3を事業化
海水からのLi回収技術の
ノウハウの蓄積
20ZZ年度
図 4.3.2-1 海水・地熱水からの Li 資源回収事業化イメージ
出典:KRI 作成
91
5.国産 Li 資源創生に向けた技術開発の方向性
5.1 調査研究のまとめ
1)LIB を中心に需要拡大が見込まれる Li 資源
我が国は現在、Li 資源のほぼ全量を外国から輸入している。Li 資源の主な用途としては
耐熱ガラス用添加剤、グリース添加剤、防湿剤、LIB などがあるが、近年 LIB 用途が急速
に拡大している。現在の LIB 用 Li 需要は PC や携帯電話などの小型家電用 LIB の需要が
中心であるが、今後、車載用 LIB の本格普及が始まれば、これまで以上に Li 資源の急激
な需要拡大が起こるものと考えられる。
車載用電池としては LIB 以外にも Pb 二次電池、Ni-Cd 二次電池、Ni 水素二次電池など
があるが、LIB は軽量、小型という利点があり、自動車各社は車載用 LIB の研究開発を進
めている。
本調査委員会では次世代自動車のすべての車種(HEV、PHEV、EV)に LIB が使用さ
れという仮定等をおいて世界の Li 資源の需要予測を行ったが、2020 年における需要は、
新興国の経済発展等により堅調な需要増加が見込まれる既存用途向けと合わせて、250 千
t-LCE と 2008 年の約 2 倍に拡大する見込みとなった。
2)技術面の改良が進む LIB
LIB の普及・拡大には、性能、安全性、コスト競争力の向上など解決すべき課題も多い
が、その中でも優先的に解決すべき課題は、電池容量の向上と安全性の向上である。現在
の EV 用 LIB は、1回の充電で 100 キロ程度の走行距離とされているが、これでは長時間・
長距離走行には不十分である。長時間・長距離走行を可能にするためには電池容量を飛躍
的に高める必要があるが、高容量の LIB は安全性の面で課題が残る。
しかし、LIB の正極材、負極材や電解質についての技術開発は依然として活発であり(表
2.2.3-1 参照)、こうした技術的な課題はかなり改善に向かうものと思われる。もう一つ
の大きな課題はコストダウンであるが、性能、安全性の改善が図られれば量産効果による
コストダウンも期待できる。
3)供給不安のある Li 資源
我が国にとって重要な課題の一つが Li 資源の確保である。今後、需要の急速な拡大が見
込まれる Li 資源については、現在、世界中で様々な開発が計画されており、我が国におい
ても海外の資源確保の多様化の観点から、経済産業省支援のもと日本企業が関与している
案件もいくつかある。これらの多くは数年以内に操業が予定されており、Li 資源の供給能
力は数年の間にほぼ倍加することが見込まれることから、供給面の不安は無いように思わ
92
れる。
しかし、高品位である塩湖由来の Li 資源は、生産が天候に左右され、また生産に長期間
を要するため急激な需要拡大に対応できないという問題があることに加えて、産出国が偏
在していること、供給構造が寡占的であること、さらには資源ナショナリズムの台頭が生
じた場合の資源価格高騰の可能性等を考慮すると、Li 資源の長期安定確保のためには、新
たな供給源開発を検討する必要がある。
4)
緒につきつつあるリチウム創生技術
日本政府は「エネルギー基本計画」や「レアメタル確保戦略」において、レアメタルに
ついて海外資源開発、リサイクル、代替材料開発に関して政策資源の集中投入を行うこと
としているが、Li もこの対象となっている。
このような政策支援のもと、公的資金を活用した LIB からの Li 資源回収の技術開発が
スタートしているが、ヒアリングおよび本調査委員会の議論では、現状の技術レベルでは、
リサイクルによる経済的な Li 回収は難しいとの判断である。しかしながら、使用済み LIB
から Co、Ni などの有価金属を回収した後に産業廃棄物として処分されているの Li 含有液
から炭酸 Na や炭酸ガスを用いて炭酸 Li 回収を行う方法は比較的有望な方法と考えられ、
コスト低減や反応効率向上のための新たな技術開発が求められている。
海外鉱物資源による Li 確保に代えて海水・地熱水から Li を回収する技術開発も進めら
れているが、現状の技術レベルでは、事業化は難しい。
海水中に含まれる Li の微量成分を回収する方法として有望なものの 1 つに吸着法がある
が、吸着材の生産コストが高いこと等から現状では海水からの Li 回収には乗り越えるべき
ハードルが多い。しかし、海水ではなく塩湖からの Li 回収に吸着材を用いたことにより吸
着工程での Li 回収率 95%以上を達成した試験結果もある。
5.2
国産 Li 資源創生に向けた技術開発の方向性
以上の調査研究結果を踏まえて、国産 Li 創生の技術開発の方向性として、以下の 3 点を
示すこととする。
① 使用済み LIB から Co、Ni 等を回収した後の Li 含有液からの Li 回収技術開発
現状では Co、Ni などの有価金属を回収した後の Li 含有液は産業廃棄物として処分され
ている。炭酸 Na や炭酸ガスを用いて炭酸 Li として Li を回収する方法が研究されている
が、いくつかの課題があり実用化していない。
93
現状の課題である炭酸 Li からの Na の除去方法、炭酸ガスの製造方法、炭酸ガスと Li
含有液の反応効率の最適化に関する技術開発を行い、それらを解決することで、LIB から
の Li 資源リサイクルを事業化できると考える。
② LIB から回収した Li 資源の用途開発の検討
LIB に用いられる炭酸 Li に対する純度要求は非常に厳しい。多種多様な原料から作られ
るリサイクル品は品質の安定化が難しく、原料メーカとしてはその採用に慎重にならざる
を得ない現状がある。
LIB から回収した Li 資源を LIB 用途にリサイクルできることが理想ではあるが、別用
途での適用可能性があるのか、その時の要求品質、条件は何であるのかを明らかにするこ
とで、①の課題を解決しなくても LIB からの Li 資源リサイクルを低コストでの事業化の
可能性がある。
③ 吸着剤技術を用いた硫酸塩かん水からの Li 回収技術の早期確立
硫酸塩かん水は、高濃度の Li 資源を有していても、硫酸イオン濃度が高いために天日濃
縮することができず、現状技術では事業化できない。2009 年度の JOGMEC 実証事業の結
果から、日本が独自に開発した優れた吸着技術を適用することで、短時間かつ高効率に Li
を回収できることが分かっている。経済性も見込めるとの見方もある。
海水からの Li 回収事業を事業化するためにはハードルが多く、長期的にみても容易では
ない。まずは日本のオリジナル技術である Li 吸着剤を硫酸塩かん水に適用し事業化するこ
とが現実的であると考える。事業化によって吸着剤の大量生産を行い、吸着剤のコストダ
ウンを図るとともに、事業から得られた収益を使って、吸着剤技術開発を行うことで、高
性能かつ安価な吸着剤の開発が可能になると考える。
基礎研究段階にある技術開発、長期的な時間軸で推進すべき技術開発は、その必要性が
高いものであったとしても、民間企業の取り組みだけでは達成が難しい。
Li 資源の長期安定供給のために技術開発は、国の「エネルギー基本計画」や「レアメタ
ル確保戦略」にも掲げられているように、我が国産業の振興にとって重要な位置付けにあ
り、民間企業の取り組みを十分踏まえつつ、引き続き、前章第2節、同第3節で紹介した
ような国等の支援や産学官の連携によって推進を図っていくことが重要であるものと思わ
れる。
94
参考文献
2.1
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第1章
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2.3
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96
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3.1
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のリチウム回収システム開発に関する共同スタディ報告書」
100
用語集
言葉
英数字 1C
1M
LCE
Li塩
あ行
アモルファス
イオン液体
一次電池
エーテル類
エネルギー密度
塩化物かん水
塩湖
か行
会合
界面
加水分解
価数
活物質
カレンダー寿命
環状カーボネート類
かん水
キルン
キレート
グリース
結晶化ガラス
ゲル
高レート
さ行
サイクル寿命
サイクル特性
資源ナショナリズム
自己放電
脂肪族
集電体
充放電容量(=容量)
重量エネルギー密度
出力密度
スピネル型
スポジュメン
セパレータ
層状岩塩構造
意味
1Cは、電池の全容量を1時間で放電/充電させるだけの電流量
単位 M=mol/L
LCE = Lithium Carbonate Equivalent, 炭酸Liに換算したLi量 “重さの単
位-LCE”として表記
Liを含む塩
Liイオンと陰イオン(アニオン)とがイオン結合した化合物
非晶質
室温でも液体で存在する塩(陰イオン(アニオン)と陽イオン(カチオン)
とがイオン結合した化合物)
放電のみができる電池 ? 二次電池
エーテル結合(C-O-C)をもつ有機化合物
例:1,2-ジメトキシエタン(メチルメチルエーテル)、ジエチルエーテルなど
一時間で使い切るような電力、または一定の電力で何時間持つかを表
す(単位:Wh)
塩化物イオンを高濃度で含むかん水
陸に閉ざされた湖(内陸湖)の塩分(主成分は塩化ナトリウム)やその他
塩類の濃度が通常の淡水湖よりも高くなった湖
分子またはイオンが集まって、水素結合や分子間力などの比較的弱い
結び付きにより、一つの分子またはイオンのように動くこと
固体や液体の相と相の境界線
HとOHが分解生成物に付加する分解反応
イオン価(イオンになるときに出入りする電子の数)
電解質との化学反応によって、電子を放出したり、取り込んだりする物
使用・未使用にかかわらず、製造後いつまで使えるか、持つかという寿
命のこと
環状構造を持つカーボネート(炭酸エステル)類
例:PC(プロピレンカーボネート、炭酸プロピレン)、EC(エチレンカーボ
ネート、炭酸エチレン)など
塩分を含む天然の水
濃い塩分を含む水溶液
窯
ギリシャ語の「蟹の爪」に由来する。複数の配位座を持つ配位子による
金属イオンへの結合
潤滑剤の一種
ガラス中に微細な結晶粒子が析出したもの(通常、ガラスは非晶質の
ネットワーク構造をもつことにより、高い粘性を持ち流動性を失い、系全
体としては固体状になったもの
一度に流せる電流量の数値が高いこと
充放電により、初期容量に対して残容量がある割合まで低下するのに
かかる回数※割合は測定者ごとに定義が違う(本論では85%)
充放電を繰り返すことによる充電容量など性能の変化
自国に存在する資源を自国で管理・開発しようという動き
資源の所有権を強く意識する考え
蓄えられている電気の量が、時間の経過と共に徐々に減少する現象
環状不飽和結合をもたない有機化合物 ? 芳香族
電池で電気とりだす端子のこと
充電・放電時に消費したり取り出したりできる電気量(単位:Ah)。正極
材料や負極材料に関しては、材料の重量当たりの充放電容量として、
mAh/g、あるいはAh/kgとして表す。
単位重量当たりの電池の電力(単位:Wh/kg)
質量当たりの取り出せる電力(単位:W/kg)
結晶構造の一つ
スポジュメン(spodumene)とは、Liとアルミニウムを含む単斜輝石。化学
組成:LiAlSi2O6。不純物がアルミニウム原子と置換されることによりさ
まざまな色を示す。
分離膜
本論では、電池の中で正極と負極を隔離し、かつ電解液を保持して正
極と負極との間のイオン伝導性を確保する材料
結晶構造の一つ
101
た行
な行
言葉
体積エネルギー密度(=
容積エネルギー密度)
多価カチオン
多孔質材料
多硫化物
3
単位体積当たりの電池の電力(単位:Wh/L, Wh/m )
2価以上のカチオン(陽イオン)
多数の孔(穴)をもつ材料
硫黄-硫黄結合の鎖を含む物質。
環状でない、鎖状のカーボネート(炭酸エステル)類
直鎖カーボネート
例:DMC(ジメチルカーボネート、炭酸ジメチル)、MEC(メチルエチル
カーボネート)など
対アニオン
カチオン(陽イオン)と対をなすアニオン(陰イオン)
電圧
電位差(正極と負極の電位の差によって決まる)
電位
電位とは、単位電荷当たりの電気的ポテンシャルエネルギーの値
一般的には、溶媒に溶解した際に電離するもの
電解質
本論では、電池の電極間に存在し、イオン伝導を媒介するもの(LIBで
あれば、Liイオンが移動する媒体)
1モルの酸化もしくは還元反応を引き起こす電子の移動量を電荷量であ
電気化学等量
らわしたもの
イオン交換膜と電気の働きで溶液中のイオン性物質を分離し、脱塩・濃
電気透析
縮・精製・回収を行う方法
本論では、Liイオンを取り出している
電解析出のこと
電析
電極表面に金属または、金属酸化物結晶が生成すること
導通
電流が流れること
鉛蓄電池(Pb二次電池) 電極に鉛を用いた二次電池
二次電池
繰り返し充放電可能な電池 ? 一次電池
ニッケルカドミウム電池
正極に水酸化ニッケル、負極に水酸化カドミウムを用いた二次電池
(Ni-Cd二次電池)
ニッケル水素電池(Ni水
正極に水酸化ニッケル、負極に水素吸蔵合金を用いた二次電池
素二次電池)
濃度分極
は行
意味
配位子
バインダー
ハンマーミル
標準電極電位
電極反応の進行に伴って電極表面における反応物の濃度が減少することに
より生じる分極
金属と配位結合を形成し、錯体を形成できるもの
(配位結合:結合を形成する2つの原子の一方からのみ結合電子(不対
電子対)が分子軌道に提供される化学結合)
結着させる材料
多数のハンマーを外周に取り付けた円筒を回転させて、衝撃や摩擦に
より原料を粉砕する機械
ある電気化学反応(電極反応)について、標準状態(反応に関与する全ての
化学種の活量が1)かつ平衡状態となっている時の電極電位である。
不活性ガス
フラックス
芳香族
ま行
や行
窒素やヘリウムのような化学反応を起こしにくい気体のこと
溶融する際の融剤
環状不飽和結合をもつ有機化合物 ? 脂肪族
複数のポリマー(高分子)を混合することで、新しい特性を持たせた高分
ポリマーアロイ
子のこと
ポリマーゲルマトリックス 高分子ゲルの構造
固体の状態で成分金属の粉末を機械的に混合(ミリング)するだけで,
メカニカルミリング
化学反応を起こさせて合金を創る方法。
メガフロート
超大型浮体式構造物
モータリゼーション
自家用乗用車の普及のこと
価値のある金属
有価金属
貴金属やレアメタルなどをさす
有価物
廃棄物の中で価値のあるもの
電場におかれた物質の分極のしやすさを表す
誘電率
誘電率が高いと電気を多くためることができる
誘導体
ある化合物の一部を他の原子や置換基で置き換えたもの
輸率
全伝導度に対するLiイオンの伝導度の割合
溶解度
ある溶質がある溶媒にとける限度の量
電池の単位質量、あるいは単位体積当たりに蓄えられる電気量
容量密度
それぞれ、体積容量密度(単位:Ah/kg)、重量容量密度(単位:Ah/L)と
102
ら行
言葉
ラミネート
リチウムイオン二次電池
(LIB)
律速
リフロー工程
硫酸塩かん水
理論容量
意味
表面に薄いフィルムを貼る加工方法
電解質中のリチウムイオンが電気伝導を担う二次電池
速さを決定する最も主な要因。
はんだ付け方法の一つ
プリント基板上にはんだペースト(はんだの粉末にフラックスを加えて、
適当な粘度にしたもの)を印刷し、その上に部品を載せてから熱を加え
てはんだを溶かす方法
硫化物イオンを高濃度で含むかん水
理論的に求められた、単位質量あたりに蓄えられる容量(単位:Ah/g)
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委員会名簿
(委員長) 小久見 善八
京都大学 産官学連携センター 特任教授
(委 員)
吉塚
和治
北九州市立大学 国際環境工学部 教授
(委 員)
西 美緒
西美緒技術研究所 所長
(委 員)
日野
順三
JX日鉱日石リサーチ株式会社 執行役員
金属調査部副部長
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平成22年度調査研究事業
国産リチウム資源創生に関する調査研究
平成23年3月
財団法人 企業活力研究所
産業競争力研究センター
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