Liイオン電池 (電極反応分布のin situ断面観察) ―Ⅲ. 安全性向上へ向け

Technical News
●リチウムイオン電池
(電極反応分布の in situ 断面観察)
―Ⅲ. 安全性向上へ向けた Li デンドライト発生過程の解析―
TN424
Analysis of Li Dendrite Deposition Process toward Safety Improvement of Li-ion
Batteries
[概
要]
電気自動車への応用に向け高度な安全性と信頼性が要求されるリチウムイオン電池(LIB)開発において、
短絡の原因の一つと考えられている負極上への Li デンドライト析出を抑制することは、LIB 誕生以来の重
要な課題の一つです。本稿ではカラーコンフォーカル顕微鏡を備えた電気化学反応可視化システム(ECCS
B310, レーザーテック(株)製)を用いて、LIB を過充電した際に発生した Li デンドライトの挙動を捉えた事
例を紹介します。
[事
例]
密閉された観察セル中で LIB を作製し、過充電させ負極(カーボン)から金属 Li が析出する様子を断面から
in situ 観察しました。充電を開始し 4.2 V を超えた付近から負極に Li デンドライトが発生し始めました(図
A)。その後、高電圧になるにつれてデンドライトが成長し(図 B)、充電を止めると収縮しました(図 C)。これ
は金属 Li から負極へと Li が拡散しているためと考えられます。放電を始めると負極活物質がステージⅠ
(LiC6: 金色)からステージⅢ(LiC18: 青色)へと変化する様子が観測されました。しかしながら放電を止めると
再び Li デンドライトから Li が供給され負極活物質はステージⅡ(LiC12: 赤色)へと変化しました。
Li デンドライトの動的挙動は本手法のような in situ 分析によって可能となります。本実験で観測された
デンドライトで最も危険な状態(図 B)は、電池を解体してから分析しようとすると、すでに収縮した図 C の
状態になってしまい電池の危険性を過小評価してしまう恐れがあります。本実験により電池の安全性評価
における in situ 分析の重要性が示されました。
C. デンドライト収縮
収縮
B. デンドライト成長
D. 放電
Li+の動き
デンドライト→カーボン
5
AB
A. デンドライト発生
負極
Voltage / V
成長
Li+の動き
デンドライト→カーボン
C
4
青色=ステージⅢ
E
D
3
E. デンドライトからのLi拡散
充電
放電
OCV
OCV
2
セパレータ側に発生
0
正極
20
40
60
80
赤色=ステージⅡ
time / min
【注】充放電曲線中の A~E は観察像と対応している。
図 観察セルを用いた充放電曲線と観察像
作成:大阪事業所 (HK1307)4-R0-(45)
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