農業法人設立の手引き (平成21年度版) 福島県農業会議 (福島県農業法人支援センター) 目 次 第一章 法人制度について ……………………………………………………………………… 1 Ⅰ 法人の種類 ………………………………………………………………………………… 1 Ⅱ 農業法人について ………………………………………………………………………… 2 Ⅲ 農地法と農業生産法人 …………………………………………………………………… 3 Ⅳ 農業法人と農業生産法人との違い ……………………………………………………… 4 ※農地法等の一部を改正する法律のポイント ……………………………………………… 9 第二章 法人化するメリットとデメリット …………………………………………………… 16 Ⅰ 制度上のメリット ………………………………………………………………………… 16 Ⅱ 経営上のメリット ………………………………………………………………………… 21 Ⅲ 法人化によるデメリット ………………………………………………………………… 21 第三章 法人化するための条件整備 …………………………………………………………… 22 Ⅰ 法人化する事前のチェック「何のため、法人を作るか」……………………………… 22 Ⅱ 個人事業から法人化に移行するための準備 …………………………………………… 22 Ⅲ 任意組合から法人化に移行するための準備 …………………………………………… 23 Ⅳ 法人設立にあたっての留意事項 ………………………………………………………… 24 Ⅴ 農事組合法人と合同会社、株式会社の特徴 …………………………………………… 27 第四章 株式会社(非公開会社)の設立について …………………………………………… 29 Ⅰ 株式会社設立の手続きと手順 …………………………………………………………… 29 Ⅱ 定款の作成 ………………………………………………………………………………… 35 Ⅲ 定款の記載の仕方(株式会社模範定款)………………………………………………… 36 Ⅳ 手続き前の準備事項 ……………………………………………………………………… 51 Ⅴ 定款の認証手続き ………………………………………………………………………… 52 Ⅵ 出資の払込み方法 ………………………………………………………………………… 55 Ⅶ 設立登記申請手続き ……………………………………………………………………… 56 Ⅷ 諸官公署への届出 ………………………………………………………………………… 76 第五章 法人税及び社会保険関係 ……………………………………………………………… 77 Ⅰ 法人に係る税制 …………………………………………………………………………… 77 Ⅱ 個人の経営資産等を法人に移行する方法 ……………………………………………… 85 Ⅲ 農業法人に関係する社会保障制度 ……………………………………………………… 99 第一章 法 人 制 度 に つ い て Ⅰ 法 人 の 種 類 法人(本冊子は、私法人をいう)とは、人(法人に対して、特に自然人という)以外のも ので、法律によって権利能力が認められたもの(団体・組織)です。自然人と同様に社会生 活上の権利をもつことができる主体と認められることにより、法人として契約等の法的取引 が可能となる反面、納税等の義務や不法行為に対する責任を負うことになります。 法人には、一定の目的のための人の結合体である社団法人と、一定の目的に捧げられた財 産である財団法人の2種類があります。いずれの法人も民法、その他商法、協同組合法等の 法律に基づき設立され規制されてますが、その目的や性格により「公益法人」 「営利法人」 「中 間法人」に分類されます。 1 「公益法人」は、公益すなわち不特定多数の者の利益を目的とする法人で、民法に基づ き認可された社団法人、財団法人等があります。 2 「特定非営利活動法人」は、ボランティア活動等不特定かつ多数のものの利益の増進に 寄与することを目的とする法人で、特定非営利活動法人法に基づき認証された法人で、一 般的には「NPO法人」といわれている法人です。 3 「営利法人」は、商行為その他の営利行為を行うことを目的とした法人で、会社法に基 づき設立される株式会社等一般的に「会社法人」といわれている法人です。 4 「中間法人」は、相互扶助ないし、共同の利益増進を目的とした法人で、協同組合法等 特別法に基づき設立される農業協同組合、労働組合、中間法人等があります。 公益法人 (公益を目的とした法人) 法 特定非営利活動法人 民 法 法 人(社団法人・財団法人) (民法) 学 校 法 人(私立学校法) 宗 教 法 人(宗教法人法) NPO法人(特定非営利活動法人法) 株 式 会 社(会社法) 営利法人 合 資 会 社( 〃 ) (営利行為を目的とした法人) 合 名 会 社( 〃 ) 人 合 同 会 社( 〃 ) ※既在の有限会社は、従前の規律を 維持し「特例有限会社」として存 続する。 協 同 組 合(各種協同組合法) 中間法人 農事組合法人(農業協同組合法) (共同の利益増進を 中 間 法 人(中間法人法) 目的とした法人等) 共 済 組 合(各種共済組合法) 労 働 組 合(労働組合法) そ の 他 ― ― 1 以上のとおり、法人は法律に基づき設立され、運営されなければなりません。 地域営農集団や、任意の機械利用組合は、人の結合体(社団)ですが、法律に基づいて設 立された組織でないため、法人として認められず、土地の売買契約や、賃貸借契約を組織名 で行うことができないのです。ただし、税法上は、「人格のない社団」という「みなし法人」 の定めがあり、法人税の課税対象になることもあります。 Ⅱ 農業法人について 農業を営むことを目的とする法人(通称「農業法人」と呼ばれています。)を設立する場 合、制度上大きく分けて二つの方法があります。 一つは会社の形態をとる会社法人ともう一つは、組合の形態をとる組合法人です。 会社法人は営利行為を行うことを目的とした法人で会社法に定められてる「株式会社」・ 「合名会社」・ 「合資会社」・「合同会社」の4種類があります。 組合法人は、組合員の共同の利用増進を目的とした法人で農業協同組合法に定められてい る「農事組合法人」です。この法人は、農業だけに限定された法人であることと目的の相違 から会社法人と比較した場合、事業や組織運営上の制限など大きな違いがあります。それぞ れの法人の主な特徴は次のとおりです。 1 会 社 法 人 会社法人は4種類ありますが、その基本的な違いは第1に出資者の責任範囲が、有限責 任か、無限責任かの違いです。第2に出資者を特定の人に限定するか広く募集するか公開 性の違いにあります。 有限責任=出資者は、自分の出資額の範囲内で会社に責任を負います。 無限責任=出資者は、会社と連帯して全ての責任を負います。 ① 株 式 会 社 資本金を細分化した株式を発行し、広く多くの人から大きな資本を集めることができ ます。なお、資本金の制限はありません。 株式の所有者(出資者のこと)を株式といいます。株主は有限責任で、株式の売買は 自由です。ただし定款で株主の譲渡制限を定めることができます。 また一般の株主は経営には参画せず、経営は取締役会が行います。 このように株式会社は、資本と経営を分離し、人的関係よりも資本の結びつきの色彩 が強い会社です。 ② 合 名 会 社 社員(出資者のこと)は無限責任を負い、原則として全員が代表権を有します。 従って、家族や親族等人的信頼関係に立つ少人数の共同経営の会社です。 ③ 合 資 会 社 合名会社の出資者は無限責任社員だけなのに対し、合資会社は無限責任社員と有限責 ― ― 2 任社員とでなる会社で、会社の経営は無限責任社員が、執行します。 社員の出資持分の譲渡は制限されており、しかも有限責任社員が、いなくなれば、解 散するか、合名会社への組織変更が必要となり、人的な結合の強い会社です。 ④ 合 同 会 社 合同会社は有限責任社員のみで構成され、かつ組織の内部自治を認める新しい会社類 型で、創業やジョイントベンチャーなどの活用が期待されています。 株式会社とは違い、利益や権原の配分が出資金額の比率に拘束されません。また、取 締役会や監査役も設置する必要がありません。 ただし、意志決定は、原則として社員全員の同意で行い、業務執行も各社員が行うこ ととなります。(定款で一部の社員のみを業務執行社員と定めることも可) 2 農業協同組合法による法人=農事組合法人 農業だけに限定された組合法人ですので、設立にあたっては、3人以上の農業者が発起 人となることが必要です。また設立後も組合員は3名以上いることが要件となっています。 農事組合法人には、出資制農事組合法人と非出資制農事組合法人がありますが、農業経 営を行う場合は、出資制の農事組合法人でなければなりません。 なお、取り組める事業の範囲は、農業協同組合法で次のとおり定められています。 ⑴ 農業に係る共同利用施設の設置又は、農作業の共同化に関する事業 ⑵ 農業経営の事業(これとあわせ行う林業) ⑶ 前記に掲げる農業に関連する事業 以上の事業のうち、 ① 農業に係る共同利用施設の設置又は農作業の共同化に関する事業のみを行う農事組 合法人は通称1号法人と言われ出資制と非出資制のどちらでも良いことになっています。 ② 農業経営を行う農事組合法人を通称2号法人といい、必ず出資制でなければなりま せん。なお2号法人は、上記の事業全てを行うことが可能です。 Ⅲ 農地法と農業生産法人 農業を行う場合、農地等を利用して行う経営と農地等を利用しないで行う経営があります。 このうち、農地等を利用して事業を行う法人は、農地法で定められた農業生産法人の要件 を備えることが必要です。農業生産法人とは、農地等の権利(所有権及び賃貸借権等の使用 収益権)の取得が認められる法人を意味し、農地法上で規定している呼び名です。 農業生産法人の要件の1つとして、法人の種類が定められています。認められている法人 は、農事組合法人、合名会社、合資会社、合同会社及び株式会社の5種類です。 さらに、事業要件、構成員要件、経営者責任要件があり、これらの要件を全て満たしてい ることが必要です。 ― ― 3 Ⅳ 農業法人と農業生産法人との違い 「農業法人」は、農業を事業目的とする法人の総称で、「農業生産法人」は、農地の権利取 得が認められる法人で農地法で規定された名称です。 農業経営を行う法人 ( 号法人) 会 社 法 人 株式会社(会社法) 合名会社( 〃 ) 合資会社( 〃 ) 農地を利用する法人=農業生産法人 ︵農地法︶ 組 合 法 人 農 業 法 人 農事組合法人 (農協法) 農業に係る共同利用施設の 設置又は農作業の共同化に 関する事業を行う法人 ( 号法人) 合同会社( 〃 ) (注)「農業生産法人」は、農地法に基づいて設立される法人との誤解があるが、農地法では法人設立の条 文はなく、会社法や農協法に基づいて設立された法人のうち、農地の権利を取得できる一定の要件を 定めて、この要件を満たす法人を「農業生産法人」と総称している。 1 農業生産法人の要件 ⑴ 法人形態の要件 農事組合法人(注1) 合名会社 持分会社 合資会社 合同会社 株式会社(「公開会社」でないものに限る)(注2) (注1) 農業協同組合法による農事組合法人も農業法人に含まれますが、農業生産法人 としては「2号法人」に限られます。 (注2)「公開会社」とは、株式の譲渡制限の無い会社のことを言います。一方、「自社 が発行する全ての株式の譲渡を制限している」会社を「株式譲渡制限会社」と言 います。農業生産法人としては「株式譲渡制限会社」に限られます。 ⑵ 事 業 要 件 法人の主たる事業が農業(農業に関連する事業等も含む)であることが必要で、具体 的には、直近3ヶ年におけるその農業に係る売上高が、当該3ヶ年における法人全体の 売上高の過半を占めていることです。 ① 農業とは、農地を耕作して行う水田・畑作・果樹等の他、養畜・蜂も含まれます。 ― ― 4 ② 農業に関連する事業等とは、 ア.農畜産物を原料または材料として使用する製造・加工 イ.農畜産物の貯蔵・運搬または販売 ウ.農業生産に必要な資材の製造 エ.農作業の受託 オ.農業と併せ行う林業(材木育成のための植林・橅育・伐採や製炭も含む) カ.農事組合法人において、農業と併せ行う共同利用施設の設置・共同作業 関連事業 ①法人の農業に関連する事業 ●農畜産物の製造加工 ●農畜産物の貯蔵、運搬又は販売 ●農業生産に必要な資材の製造 ●農作業の受託 売上高>50%… ②農業と併せ行う林業 農 業 ③農事組合法人において、農業と併せ行う共同利用 施設の設置、又は農作業の共同化に関する事業 ●ライスセンターの設置運営や水稲の共同防除等 ④農業体験施設や民宿の設置及び運営 (農山漁村滞在型余暇活動のための基盤整備の促進に 関する法律に規定する施設の設置及び運営。役務の 提供であること) 農業と関連事業の売上高が過半ならば、 「その他の事業」を実施できる 売上高<50%… その他の事業 例 ●キャンプ場 ●造園 ●除雪 等 ※農事組合法人の事業要件には、農協法に基づく一定の制限があります。 ⑶ 構 成 員 の 要 件 構成員とは、法人を組織している出資者のことです。 出資者については、法人の根拠となっている法律で定められております。合同会社、 合名会社及び合資会社は「社員」、農事組合法人は「組合員」、株式会社は「株主」のこ とで、全員が次のいずれかに該当することが必要です。 ① 農地等の権利を提供した個人 法人に農地を現物出資または売り渡して所有権を移転した者 法人に農地等を貸付け、使用収益権(賃借権等)を設定または移転した者 ② 法人の農業(農業関連事業等含む)の常時従事者 その法人の行う農業に年間150日以上従事していること。 ― ― 5 その法人の行う農業に従事する日数が150日に満たない者にあっては、その日数が 年間次の算式により算出される日数(60日未満のときは60日以上)であること。 その法人の行う農業に必要な年間総労働日数 2 × 3 その法人の構成員数 ③ 農地保有合理化法人(㈶福島県農業振興公社) ④ 農業協同組合・農業協同組合連合会 ⑤ 地方公共団体 ⑥ アグリビジネス投資育成㈱ ⑦ 法人の行う事業に係る物資の供給若しくは役務の提供を継続して受ける者又は法人 の事業の円滑化に寄与する者 ただし、株式会社にあっては⑦に該当する者1人(1社)の議決権は、総数の10分 の1以下で、かつ⑦に該当する者の有する全議決権は、総議決権の4分の1以下に制 限されています。 また、持分会社にあっては、⑦に該当する者の数が、社員の総数の4分の1以下に 制限されています。 具体的な例として ア 産直契約をしている個人 イ ライセンス契約を結んでいる種苗会社 ウ 農畜産物の購入契約を結んでいる食品メーカー・スーパー・生協・流通業者 エ 農産物宅配の運送契約を結んでいる運送業者 オ 堆肥・苗木の供給契約を結んでいる農業資材業者 カ 農作業委託者 構成員要件の特例措置 農業経営基盤強化促進法に基づき、認定農業者である農業生産法人については、多様 な経営展開(分社化、のれん分け、共同法人の設立、加工・販売分野への進出等)がよ り容易になるよう、構成員要件について認定期間中の特例措置が講じられています。 【特例措置の概要】 当該法人の農業経営に係る物資の供給または役務の提供を受ける者又は当該農業経 営の円滑化に寄与する者の議決権の制限を次の通り緩和されます。 a 農業者、農業生産法人等の農業内部資本の議決権は無制限。 (既存の農業生産法人が 99.9パーセント出資の子会社設立も可能。ただし、最低1名以上の個人の出資者が必 要) b 物資の供給若しくは役務の提供を受ける者又は経営の円滑化に寄与する者のうち ― ― 6 農外資本からの議決権は総議決権の2分の1未満。(1社で2分の1未満の議決権取 得可能) 【特例措置適用の条件】 a 認定を受ける農業経営改善計画に、当該法人から物資の提供もしくは役務の提供を 受ける者又は当該経営の円滑化に寄与する者が当該経営の改善のために行う措置を 記載。かつ、この計画に基づいて議決権を取得。 b この特例措置は、認定期間中適用。 ⑷ 業務執行役員の要件 法人の農業(農業関連事業等も含む)の常時従事者たる構成員が、役員(取締役・理 事)の過半数を占め、かつその過半をしめる役員の過半数の者が農作業に従事しなけれ ばなりません。 例:役員8人の場合 農業に常時従事する構成員 (役員の過半)(原則として150日以上) 法人の農業に従事する 構成員でなくてもよい 農作業に従事しなければならない (常時従業構成員の過半)(原則として60日以上) 2 農業生産法人と農地法の特例 ⑴ 法人の農地等の取得 農地等の所有権の取得 農地等の貸借権、使用貸借権の設定 ⑵ 小作地の所有制限の適用除外 法人の構成員が法人に貸し付けた小作地に対しては、小作地の所有制限を適用しませ ん。 ⑶ 農業委員会への定期報告 農業生産法人は、毎年、営業年度終了後3ヶ月以内に「農業生産法人報告書」を農業 委員会に提出しなければなりません。定期報告しなかった場合、罰則規定により過料30 万円が処せられます。 ⑷ 農業生産法人の要件を欠くおそれのある場合 ① 農業委員会は、その法人に対し必要な措置をとるべきことを勧告します。 ― ― 7 ② 勧告を受けた法人が、所有する農地等を譲渡する旨農業委員会に申出た場合、農業 委員会に農地等のあっせんに努めなければなりません。 ⑸ 農業生産法人の要件を欠いた場合 ① 農業生産法人が要件を欠いた場合は、農業委員会は、その法人の所有する農地等、 その法人に貸し付けられている農地等、買収すべき農地等を公示し、その所有者に通 知します。 ② 公示があったときは、その法人は3か月以内に再び農業生産法人になるための要件 を備えるよう努力し、その要件をすべて回復すれば公示は取り消しされ、買収は免除 されます。 ③ 3か月以内に要件を回復することができなかったときは、その後3か月以内に、そ の法人は買収対象となる農地等を譲渡し、その法人に貸し付けている農地等の所有者 は返還を受けなければなりません。 その期間を過ぎてもそれが実施されない場合は、その農地等は最後の手段として国 が買収します。 ― ― 8 農地法等の一部を改正する法律のポイント 農地法等の一部改正が今国会で成立しました。これに伴い、農地を確保するため、転用規制を強化し、 貸借規制の緩和で有効利用を促進することとなります。年内には施行されますが、法律改正のポイントは 次のとおりです。 目的規定 ○現 行 法 の「農 地 を 耕 作 者 の 自 ら が 所 有 す る こ と を 最 も 適 当 で あ る」と す る 考 え を、 「農地の効率的な利用を促進する」との考えに改める。 ○農地を効率的に利用する耕作者による地域との調和に配慮した農地についての権利 取得を促進する。 ○耕作者の地位の安定と国内の農業生産の増大を図り、もって国民に対する食料の安 定供給の確保を図る。 責務規定 ○農地についての所有者、賃借権等の権利を有する者はその適正かつ効率的な利用を 確保しなければならない。 【テ ー マ ① 】 農地の転用規制及び農用地区域からの除外の厳格化 国・都道府県による公共施設の設置 公共施設とは学校、病院、社会福祉施設、庁舎、宿舎 《現行法》 《改正法》 農地転用の許可不要 都道府県知事等と協議 厳格化 農用地区域からの除外の厳格化 《現行法》 《改正法》 担い手への集積に影響を及ぼす場合 でも、他の要件を満たせば、やむを 得ないとして、除外を認める。 担い手への集積に影響を及ぼすおそ れがある場合 → 除外できない。 厳格化 ― ― 9 【テ ー マ ② 】 違反転用に対する罰則の強化 違反転用に対する罰則 《現行法》 《改正法》 罰則(個人) 3年以下の懲役 6月以下の懲役 または または 強化 300万円以下の罰金 30万円以下の罰金 1億円以下の罰金 罰則(法人の従事者等) 300万円以下の罰金 強化 原状回復命令と行政代執行 《現行法》 《改正法》 原状回復命令 違反転用者に対する原状回復命令 強化 ↓ (従わない場合等) 農林水産大臣または都道府県知事は 代執行できる(行政代執行) 農地の総量確保に向けた都道府県知事に対する国の要請 《改正法》 (新設) 農林水産大臣から都道府県知事に対して「農地転用許可事務の適切な執行」を 求めることができる 農地法等の一部を改正する法律案(概要) 該当文 ◆違反転用が行われた場合において、都道府県知事等による行政代執行制度を創設するとともに、違反転 用に対する罰則を強化(罰金額の引き上げ)する。 ◆農地の農業上の利用を確保するために特に必要がある場合において、農林水産大臣は、都道府県知事に 対し、農地転用許可事務の適切な執行を求めることができることとする。 ― ― 10 【テ ー マ ③ 】 農地の権利移動規制の見直し 農地の権利移動規制の見直し① 《現行法》 《改正法》 農地又は採草放牧地の権利移動の制限 「周辺の農地に影響を与えないこと」 を要件に追加 →これにより、地域における集落営 農の促進、担い手への利用集積等 を阻害するような権利取得は排除。 権利取得しようとする農地にのみ着 目した要件 要件追加 農業委員会の新たな役割:周辺農地への影響を確認(現地調査) 農地の権利移動規制の見直し② 《現行法》 《改正法》 ●個人 農作業に常時従事すること ●法人 要件緩和 農業生産法人であること 条件付きで①農作業に常時従事しな い個人、②農業生産法人以外の法人 (一般株式会社)の貸借が可能 (条件)当事者間で「農地を適正に利 用していない場合に貸借を解除する 旨の条件」を契約に付すこと。 要件追加 《改正法》 (新設) ①地域の他の農業者と適切な役割分担し、継続的・安定的に経営を行う見込みで あること。 ②法人は、業務執行役員のうち 1 人以上が農業に常時従事。 農業委員会の新たな役割 ①許可をしようとするときは市町村長に通知(これに対して、市町村長は意見 を述べることができる) ②当事者間で解除されない場合に、農業委員会が許可を取り消す義務 農地法等の一部を改正する法律案(概要) 該当文 ◆農地の貸借について、農地を適正に利用していない場合に貸借を解除する旨の条件を契約に付させるこ とにより、農作業に常時従事すること(個人の場合)及び農業生産法人であること(法人の場合)の要 件を課さないことができることとする。なお、契約による貸借の解除がなされない場合には許可を取り 消すことにより、農地の適正な利用を担保する。 他 ― ― 11 【テ ー マ ④ 】 農地としての適正利用の担保措置 事 後 監 視 ・ 是 正 《改正法》 (新設) 対象:農作業に常時従事しない個人 農業生産法人以外の法人(一般株式会社) ①報告の義務 毎年、農地等の利用状況を農業委員会に報告 ②是正 次の場合に農業委員会は勧告することができる。 ○周辺農地等の効率的かつ総合的な利用に支障がある場合 ○地域の農業者と適切に役割分担のうえ、継続的・安定的に経営を行っていな い場合 ○法人の場合、業務執行役員のいずれもが農業に常時従事していない場合 ③勧告後の対応 ○勧告に従わない場合 → 取消さなければならない。 ○取消した農地が効率的で適正に使われない恐れがある場合 → 所有権移転または使用収益権の設定等のあっせん等を行う。 農業委員会の新たな役割 ①報告を受ける ②勧告することができる(3つの場合) ③勧告に従わない場合は許可を取消す(義務) ④取消し後の適正な利用を担保するため、あっせん等を行う 農地法等の一部を改正する法律案に対する修正案要綱 該当文 ◆1 農業委員会等は次のいずれかの場合には、二の許可を受けた農地等の賃貸借者等に対し、相当の期 限を定めて、必要な措置を講ずべきことを、勧告することができるものとすること。 (場合は略) ◆2 農業委員会等は1の勧告を受けた者がその勧告に従わなかったときは、二の許可を取消さなければ ならないものとする。 ◆3 農業委員会は、2の許可の取消しがあった場合等において、その農地等の適正かつ効率的な利用が 図られない恐れがあると認めるときは、その農地等の所有者に対し、当該農地等についての所有権の 移転または使用収益権のあっせんその他の必要な措置を講ずるものとすること。 他 ― ― 12 【テ ー マ ⑤ 】 農 業 生 産 法 人 の 要 件 議 決 権 制 限 の 緩 和 《現行法》 《改正法》 関連事業者の議決権制限 1構成員は総議決権の1/10以下 関連事業者の議決権の合計は 総議決権の1/4以下 1構成員は総議決権の1/4以下 関連事業者の議決権の合計は 総議決権の1/4以下(現状維持) 要件緩和 例外 例外 農業経営改善計画の認定による場合 農業内部 :制限無し 農外の者の議決権の合計は 総議決権の1/2未満 農業生産法人と連携して事業を実施する 一定の関連事業者が構成員である場合 関連事業者の議決権の合計は 総議決権の1/2未満 《改正法》 (追加) 法人への農作業の委託者(例:集落営農法人等)を議決権制限を受けない構成員 とする。 【テ ー マ ⑥ 】 面 的 集 積 組 織 の 再 編 委任・代理方式による農地のプールと再分配 《改正法》 (新設) 農用地利用集積円滑化事業の創設 実施主体:市町村、市町村公社、農協 ①農地所有者を代理して、売渡し、貸付け、作業委託ができる。 ②現行の農地保有合理化事業(農地売買等事業、研修等事業)を継続実施できる。 農業委員会の新たな役割:面的集積組織との連携 農地法等の一部を改正する法律案(概要) 該当文 ◆農地を面的にまとめることにより効率的に利用できるようにするため、市町村、市町村公社、農業協同 組合等が、農地の所有者の委任を受けて、その者を代理して農地の貸付け等を行うこと等を内容とする 農用地利用集積円滑化事業を創設する。(現行の農地保有合理化のための転貸事業等もこの事業として 実施できることとする。) なお、貸付け等の実施に当たっては、農用地利用集積計画の仕組みを活用する。 ― ― 13 【テ ー マ ⑦ 】 遊 休 農 地 対 策 の 強 化 全ての遊休農地を対象とした仕組み 《現行法》 《改正法》 遊休農地のうち要活用農地に限定し 全ての遊休農地を対象にした措置 た措置 強化 《改正法》 (新設) 農業委員会は毎年、利用状況調査を実施 農業者・農業団体から遊休農地である旨の申し出が可能 所有者がわかる場合には利用権設定 ができる。 農業委員会が所有者が分からない旨 強化 を公告した遊休農地について、農地 保有合理化法人等は都道府県知事の 裁定を受けたうえで、利用権を取得 できる。 農業委員会の新たな役割 ①毎年、利用状況調査を実施(義務)+ 日常的な把握 ②遊休農地である旨の通知・公告(現行法では市町村長) ③遊休農地である旨の申し出を受け付け 【テ ー マ ⑧ 】 そ の 他 の 重 要 改 正 点 農用地利用集積計画策定の同意要件の緩和 《現行法》 《改正法》 農用地利用集積計画策定するとき 5年以内の利用権設定は 共有農地については全員の同意 共有持分の1/2を越える同意 緩和 ― ― 14 【テ ー マ ⑧ 】 そ の 他 の 重 要 改 正 点 (続き) 下限面積要件の弾力化 《現行法》 《改正法》 農地の権利取得の下限面積 原則50アール以上 (設定は都道府県知事の判断) 農業委員会が地域の実情に応じて引 き下げられる。 緩和 農業委員会の新たな役割:下限面積の設定 相続等による農地取得の届け出 《改正法》 (新設) 相続等で許可を受けることなく農地を取得した場合は農業委員会に届け出なけれ ばならない。 農業委員会の新たな役割:農地の保有・利用状況の把握(届け出受理) 標準小作料制度の廃止 《改正法》 《現行法》 農業委員会は小作料の標準額を定める ことができる。 廃止 標準小作料は廃止 → 実勢借地料の情報を提供 農業委員会の新たな役割:借賃の動向など農地情報の確保 特定農業法人の範囲の拡大 《現行法》 《改正法》 農業生産法人に限定 農業生産法人以外の法人に拡大 拡大 賃貸借の存続期間:民法の20年から最大50年以内 小 作 地 所 有 制 限 の 撤 廃 相続税納税猶予制度の見直し ― ― 15 第二章 法人化するメリットとデメリット Ⅰ 制度上のメリット ⑴ 合法的に節税することができます。 ① 法人税適用による節税効果が期待できます。 ② 消費税が、法人成り後(資本金1,000万円以上の法人を除く)の2営業年度は免除 となります。 ③ 役員退職金の支給については、法人税の損金になりますが、退職金を受給した人に 対する所得税の所得控除額も大きくなっています。また、死亡退職金についても法定 相続人1人につき500万円の非課税枠があります。 法人と個人との税制上の取り扱いについて 個 人 事 業 の 場 合 株 式 会 社 の 場 合 所 得 に 対 す る 課 税 (所得税) ○累進税率による所得税の課税 1,000円∼ 1,949,000円 1,950,000円∼ 3,299,000円 3,300,000円∼ 6,949,000円 6,950,000円∼ 8,999,000円 9,000,000円∼17,999,000円 1,800万円以上 5% 10% 20% 23% 33% 40% (法人税) ○定率による法人税の課税 資本金1億円超の場合 資本金1億円以下の場合 年所得800万円以下の金額(注1) 年所得800万円超の金額 30% 18% 30% 青色申告者の控除 65万円の特別控除 原則として6月以上従事し、生計を一にす る親族に対する給与(届出が必要) 会社の代表的な損金(経費) 役員に対する報酬や退職金 親族に対する給料・地代家賃 交際費(資本金等の額により控除できる限 度額あり) 一定の生命保険料 など 繰越控除(青色申告者) 純損失の繰越控除が3年間できます。 繰越控除 欠損金の繰越控除が7年間できます。 欠損金の繰戻しによる還付制度があります。 ○事業税が課税されません。 (注2) ○法人事業税が課税されます。 資本金1億円以下の場合 年所得400万円以下の金額 年所得400万円超800万円以下の金額 年所得800万円超の金額 2.7% 4.0% 5.3% ○地方法人特別税 (資本金1億円以下の場合) 事業税所得割×税率(81%) 所得に対しては 約2%∼4% ○個人住民税(所得割) 一律 県 民 税:4% 市町村民税:6% 10% ○法人住民税(法人税割) 法人税額×税率(標準税率17.3%) 所得に対しては 約3%∼5% (法人市民税は市町村毎に異なります) (注1) 平成21年度改正により平成21年4月1日から平成23年3月31日までの間に終了する各 事業年度の法人税率が引き下げられました。(現行は22%) (注2) 平成20年10月1日以後に開始する事業年度から、事業税率が引き下げられ地方法人特 別税が創設されました。 ― ― 16 個人経営と法人経営の納税額比較(概算) 個 人 経 営 [所得金額] 1,000万円 法人経営 役 員 報 酬 1,000万円 840万円 [控除] (青色申告特別控除) 65万円 給与所得控除(注1) 基礎控除 204万円 38万円(住33万円) 38万円(住33万円) (注1) 役員報酬 840万円 [課税所得金額] [所得税・法人税額] 897万円(住902万円) 142.71万円 160万円 28.8万円 [事業税額] 4.32万円 [地方法人特別税] 3.49万円 [住民税額(県)] 598万円(住603万円) 76.85万円 36.18万円 3.64万円 24.22万円 所得割 (36.08万円) (1.44万円) (24.12万円) 均等割 (0.1万円) (2.2万円) (0.1万円) [住民税額(市町村) ] 54.12万円 8.54万円 36.48万円 所得割 (6万円) (3.54万円) (36.18万円) 均等割 (0.3万円) (5万円) (0.3万円) [納税額合計] 233.31万円 48.79万円 137.55万円 186.34万円 ※ 資本金1,000万円以下の株式会社の1戸1法人を想定し、役員報酬として840万円を支払い、 個人の住民税は県・町とも33万円を基礎控除して試算しました。 ※ 個人経営の所得金額は青色申告特別控除前の金額として試算しました。 (注1) 社長とその同族関係者等で90%以上の株式を保有し、かつ、常務に従事する役員が過半 数を占める法人については、その社長の役員報酬額のうち、その給与所得控除額相当額を 法人税額の計算上損金に算入しない(所得にプラスする)規定があります。この適用を受 ける法人(同族会社)は増税となります。 なお、中小企業等(同族会社)は下記の適用除外規定が設けられています。 ① 同族会社の課税所得額と社長の役員報酬の合計額の直前3年の事業年度の平均額が 1,600万円以下である場合。 ② 同族会社の課税所得額と社長の役員報酬の合計額の直前3年の事業年度の平均額が 1,600万円超3,000万円以下であり、かつ、社長の役員報酬の占める割合が50%以下であ る場合。 ― ― 17 ⑵ 大きな資金を集めやすくなります。 ① 制度資金の融資限度枠が拡大されます。 スーパーL資金 個人 1億5千万円→ 法人 5億円 農業近代化資金 個人 1,800万円→ 法人 2億円 ② 農業法人投資育成制度による資金の確保ができます。 一定の要件を満たした場合、アグリビジネス投資育成株式会社による出資が受けら れます。出資限度額は、増資後の発行済み持分総数の2分の1以内です。 ③ 財務管理の充実と経理の公開により、信用度が増して金融機関からの事業資金の拡 大も可能となります。 〈参考:日本政策金融公庫(農林水産事業)パンフレット抜粋〉 スーパーL資金[農業経営基盤強化資金] 農業経営改善計画の認定を受けられた方の自主性と創意工夫を活かした経営改善を、資金面で応援する総合 的な資金制度です。 ●ご利用いただける方 認定農業者(農業経営改善計画を作成して市町村長の認定を受けた個人・法人) なお、個人の場合、簿記記帳を行っていること又は、今後簿記記帳を行うことが条件となります。 ●資金の使いみち 農業経営の改善を図るために必要な資金 農 地 等………取得のほか、改良・造成も対象となります。 家 畜 果 樹 等………購入費、新植・改植費用のほか、育成費も対象となります。 経 営 の 安 定 化………負債の整理(制度資金は除く。)などが対象となります。 施 設 ・ 機 械………農産物の処理加工施設、店舗などの流通販売施設も対象となります。 その他の経営費………規模拡大や設備投資などに伴って必要となる原材料費、人件費などが対象となり ます。 法人への出資金………個人が法人に参加するために必要な出資金等の支払いが対象になります。 ●融 資 の 条 件 償 還 期 限:25年以内(うち据置期間10年以内) 融資限度額:個人 1億5,000万円(特認3億円) 法人 5億円(特認10億円) (このうち経営の安定化のための資金の融資限度額は、個人3,000万円、法人1億円) 金 利:借入時の金利は、金融情勢により変動します。 最新の金利は、融資機関にご照会ください。 ※平成19年4月から22年3月までの間は、実質無利子となる利子助成の拡大措置が受けられます。 農林水産省では、意欲と能力のある担い手に施策を集中する農政の抜本的改革にあたり、平成19年度から 平成21年度までの3年間を「集中改革期間」として、担い手の育成・確保に取り組むこととしています。 スーパーL資金についても、今まで以上に強力に認定農業者の経営を応援できるよう、平成19年度から内 容が拡充されました。 ― ― 18 実質無利子化のための利子助成の拡大 集中改革期間中にご融資するスーパーLについて、農山漁村振興基金からの利子助成が拡大され、地域に よっては、実質無利子となります。 資金の使いみち 農地等、施設・機械、家畜果樹等、その他の経営費、法人への出資金 ※経営の安定化(負債の整理など)は、対象外です。 利子助成の対象と 個人 1億円、法人 3億円 な る 融 資 限 度 額 ただし、500万円以下のご融資については、対象外となります。 対 象 期 間 平成19年4月1日∼平成22年3月31日までに、融資決定されたもの。 ※ご返済が完了するまで、利子助成措置は継続します。 (注) 1 県、市町村の利子助成の条件によっては、無利子とならない場合があります。 2 県、市町村の利子助成に係る助成金の交付日は、資金の約定償還日と異なりますので、一時的に利息の支払が 必要となります。 金利に対する助成 〈平成18年度まで〉 〈平成19年度∼21年度〉 農山漁村振興基金の助成 県・市町村の助成 農山漁村振興基金の 助成拡大 自己負担 県・市町村の助成 実質無利子となります。 無担保・無保証制度の拡充 ① クイック融資制度(新設) ご提出いただいた決算書等をもとに、公庫の企業経営診断手法(スコアリング手法)を活用し、最速1週間 で無担保・無保証融資の可否を回答します。 対 象 と な る 方 企業経営診断手法(スコアリング手法)による判定が、一定水準以上となった方 資金の使いみち 農地等、施設・機械、家畜果樹等、その他の経営費、法人への出資金 ※経営の安定化(負債の整理など)は、対象外です。 融 資 限 度 額 1回あたりのご融資額が500万円以下 (注)1の「実質無利子化措置」の対象にはなりません。 ② 円滑化融資制度(拡充) 経営が良好な方に無担保・無保証でご融資する制度です。本制度による融資残高がある場合でも、限定額の 範囲内で追加のご融資ができるようになりました。 ― ― 19 対象となる方 資金の使いみち 農業経営改善計画の目標水準に達していること 過去5年間において制度資金の延滞がないこと など 農地等、施設・機械、家畜果樹等、その他の経営費、法人への出資金 ※経営の安定化(負債の整理など)は、対象外です。 ●個人経営の場合 ●法人経営の場合 融 資 限 度 額 1,000万円 売上高 融資限度額 5,000万円未満 2,000万円 5,000万円以上 1億円未満 3,000万円 1億円以上 5,000万円 ただし、資本金に準備金、剰余金等をプラスした 貸借対照表上の資本額を上限とします。 本制度の融資残高があっても、上記限度額と融資残高の差額分をご利用できるようにな りました。 要 件 ①過去3期(災害時の特殊年を除く)の通 ①過去3期(災害時の特殊年を除く)の通 算当期利益が黒字であり、かつ、それを 算農業所得が黒字であること 内部留保することにより資本蓄積を図っ ②担い手育成総合支援協議会の経営診断等 てきていること を受診すること ②今後5年間の資本増強計画を作成してい ること ③㈳日本農業法人協会経由の経営診断を受 診すること 経営診断にあたっては、過去3期分の税務申告書(写し)及び決算報告書をご提出く ださい。 個人経営で貸借対照表を作成されていない方は、所定の様式により、簡易貸借対照表 を作成していただく必要があります。 (注) 1 融資対象物件の担保提供が可能な場合は、担保にご提供いただくことがあります。 2 ご融資額が、500万円を超える場合は、1の「実質無利子化措置」の対象となります。 ◆借入手続と相談窓口は次のとおりです (農業近代化資金、農業改良資金、経営体育成強化資金と共通です。) ■借入手続 ●借入希望者(農業者) ↓ ① 経営改善資金計画書・借入申込希望書を作成 ↓ 経営改善資金計画書の作成でお困りの時は、普及指導センター等に相談していただくこともできます。 ② 窓口機関(農協・銀行等、公庫のいずれか)に提出 ↓ 計画書等の提出は、実際に資金が必要な時期より極力早くされることをお奨めします。 ③ 審 査 等 ↓ 関係融資機関や保証機関が相互に連携をとりあい、もっとも適切な資金を選択。 ④ 融資可否の回答(原則1月半以内※) 融資を行わない場合は、その理由をご説明します。 ※借入申込額が500万以下の場合は、最速1週間で回答します。 ■相談窓口 農協・信農連・日本政策金融公庫(農林水産事業)等の融資機関、普及指導センター、市町村、担い手育成 総合支援協議会等でご相談に応じます。(最寄りの窓口機関がご不明の方は、都道府県の農業制度資金担当課、 普及指導センターに照会してください。) ●その他 ⑴ 税制上の優遇措置(登録免許税) 当公庫を債権者とする抵当権設定登記に必要な登録免許税(債権額の4/1000)が免除されます。 ⑵ ご返済金の自動引き落とし 公庫支店の直接貸付の場合は、みずほ銀行または郵便局口座からの自動引き落としによるご返済が可能で す。詳しくは、公庫支店にお問い合わせください。 ― ― 20 ⑶ 社会保険等の恩恵を受けられます。 ① 政府管掌の健康保険に加入できます。 ② 厚生年金に加入できます。 ③ 雇用保険、労災保険(役員の加入も可能)に加入できます。 ④ 退職金共済制度に加入できます。 Ⅱ 経営上のメリット ⑴ 企業経営の確立(経営管理能力の向上) ① 家計と経営の分離による利潤追求が図れます。 ② 利益の内部留保による経営の拡大発展と体質強化が図れます。 ③ 複式簿記に留まらず戦略会計など企業会計方式を導入することで財務管理の充実と 経営拡大が図れます。 ④ 給与制・休日制の導入や社会保障の充実など就業条件の近代化が図れます。 ⑤ 会社の組織体制をつくりあげ、役員や従業員などの役割や責任を明確にしていくこ とで事業の拡大が図れます。 ⑵ 社会的信用力の向上 法人は、法律に基づき設立登記、経営内部の報告が義務づけられていることから、金 融機関や取引先からの信用力が向上します。 さらに法人というイメージ向上により資材の購入、農産物の販売交渉、従業員の確保、 規模の拡大なども有利になります。 ⑶ 就業条件の整備と人材確保 ① 給料制度、休日制度、社会保険制度、退職金制度等の導入による就業条件の整備で、 人材の確保が容易になります。 ② 経営の継承者は、農家の後継者でなくとも、構成員、従業員等の中から意欲ある有 能な後継者を確保することが可能となります。 Ⅲ 法人化によるデメリット ⑴ 事務処理の煩雑化 複式簿記による記帳、決算が義務づけられるなど、事務処理が煩雑になります。 ⑵ 管理コストの増大 健康保険、年金厚生、社会保険制度の適用、さらに給与制の実施や休日制の導入等就 業条件の整備に伴い、経営管理コストは増大します。 ⑶ 納 税 義 務 赤字決算でも、地方税の均等割(最低7.2万円)は納付しなければなりません。 ⑷ 農業者年金の加入資格の喪失 厚生年金への加入となるため、農業者年金の資格は喪失となります(ただし、厚生年 金との通算制度があります)。 ⑸ 相続税・贈与税の納税猶予の打ち切り 農地等の相続税や贈与税の納税猶予を受けている農業者が法人化する場合、その農地 等または農地等の利用について一定の条件より外れれば納税猶予が打ち切りになります。 ― ― 21 第三章 法人化するための条件整備 Ⅰ 法人化する事前のチェック「何のため、法人を作るか」 農業者は、営利を目的に農業という個人事業を営んでいますが、これを法人(会社組織、 組合組織)にしようとする目的は何なのか、もう一度真剣に考え、決して安易な気持ち・考 えで、始めないことが最も重要なことです。 1 自問自答のチェックポイント ① 何のため、法人を作るのか。 ② どんな事業を行うか。 ③ 最後までやり抜く信念と決意を持っているか。 ④ 配偶者の理解と協力を得られるか。 2 複数の人々と一緒に法人を作る場合、さらに次の事項もチェック。 ① 経営者として、しっかりとした経営理念と抱負を持っているか。 ② その経営理念や抱負に共鳴し、事業に対する情熱に共感している人達であるか。 ③ 全員が経営者の下で、自ら補佐役に甘んじることができるか、又、お互いに理解・信 頼し合うことができるか。 3 そ の 他 ① 複式簿記の記帳・決算等経営管理能力を有する人がいるか。 ② 企画・開発能力及び洞察力・決断力・実行力等の能力を備えているか。 Ⅱ 個人事業から法人化に移行するための準備 個人事業である農業経営から法人化に円滑に移行するためには、次の第1、第2ステップ を実践し、第3ステップに進んでいくことが必要です。 第1ステップ …生業農業からの脱却 ① 農業者ではなく経営者としての自覚を持つこと。 ② 経営に関する知識や情報の収集に努めること。 ③ 複式簿記の記帳・決算を行うこと 第2ステップ …経営管理の徹底 ① 経営者として、経営理念や今後の方針を明確化すること。 ② 簿記、作業日誌等の記帳・集計・分析検討の上、目標と計画の樹立、実践を行うこと。 ③ 経営内部だけでなく外部の情報も収集分析すること。 第3ステップ …法人化に向けての実践 ① 経営者として、経営目標並びにその目標達成のための経営計画を樹立して、家族の ― ― 22 皆さんに説明し理解と協力を得ること。 ② 複式簿記による記帳、集計、決算を実践するとともに、経営分析を行い経営目標と経 営計画樹立の上、実践、経営管理(財務、生産技術等々)を行うこと。特に財務管理に ついては、資金繰り表、試算表を出来れば毎月(少なくとも四半期毎)に作成すること。 ③ 貸借対照表を分析し、財務バランスを考慮して経営基盤の拡大を図り、自己資本の 蓄積を図りつつ経営体質の強化に努めること。 ④ 家族に対しても月給制を導入し、毎月給与を支払うとともに週に最低1回の定休日 を制定し実践すること。 なお、月給及び賞与は経営体質を強化しつつ、他産業従事者並みになるよう努力し ていくこと。 Ⅲ 任意組合から法人化に移行するための準備 任意組合(機械利用組合等)から法人化移行を円滑に進めるためには、次の第1、第2ス テップを実践し、第3ステップに進んでいくことが必要です。 第1ステップ …代表者と組合員の関係 ① 代表者である組合長は、真の経営者であること。 ② 組合長は、経営者として経営理念や方針を明確にすること。 ③ 組合員は、組合長の経営理念や抱負に共鳴し、自ら補佐役または単なる出資者に甘 んじることが出来ること。 第2ステップ …法人化のねらい・目的・構想の明確化 ① 法人化するねらいとその性格、目的を明確にすること。 (その目的によって、会社法 人か組合法人か決まる) ② 法人に参加する人と参加しない人との調整及び任意組合の将来的方向を検討すること。 ③ 地域農業者等に対して法人のねらい、地域への貢献を説明し、理解と協力が得られ るようにすること。 第3ステップ …法人化に向けての実践 ① 事業内容を見直し、新しい経営方針・事業計画に基づいた事業の拡大実践を図るこ と。 ② 複式簿記による記帳・集計・決算を行うとともに経営分析の上、毎年経営目標と経 営計画を策定し実践すること。 ③ 財務管理(少なくとも四半期毎、出来れば毎月試算表と資金繰り表の作成)生産技 術管理・労務管理等の経営管理を徹底すること。 ④ 就業規則を定め、定休日制、月給制を実施すること。なお、給与等は事業拡大を図 りつつ他産業並みになるように努めること。 ⑤ 任意組合の将来の方向についての具体的な検討 ― ― 23 「解散するのか、しないのか」を最初に検討することが必要です。その結果によっ て具体的な方向が検討されます。 ア.解散する場合 ・組合資産の処分方法 ・法人の構成員となる人とならない人及び、経営を担当する人員等役割の明確化 イ.解散しない場合 ・今後の組合の運営方法 ・新たに設立する法人との関係 (一部資産のリース方式等) ウ.補助事業で導入した施設等への対応 ⑥ 法人設立後の中長期(5年程度)計画の検討 Ⅳ 法人設立にあたっての留意事項 1 農業者年金との関係 ⑴ 経営移譲年金の受給者が法人の構成員(出資者)になった場合、経営移譲年金が支給 停止になりますので注意が必要です。 ⑵ 法人設立後、厚生年金の適用事業所になった場合、農業者年金の加入資格を失います。 ただし、政策支援対象者について、その法人が農業生産法人の場合は、厚生年金等の加 入期間も「カラ期間」として「農業者年金期間」に算入されます。 2 農地等の贈与税納税猶予制度と相続時精算課税制度との関係 既に農地等に係る贈与税の納税猶予の特例の適用を受けている者が、一括して納税猶予 の適用を受けている農地等について、平成17年4月1日∼平成23年3月31日までの間に一 定の要件を満たす農業生産法人に対し、使用貸借による権利の設定をした場合、贈与税の 納税猶予の特例が継続されます。 また、平成15年1月1日以降の贈与については、相続時精算課税制度を選択することが できます。本制度では、贈与段階での課税について相続時の精算を前提にした概算払いと 考え、贈与税を大幅に軽減します。この制度を選択すると、非課税枠が2,500万円となり、 複数年にわたり利用できます。 将来、法人化の意向がある農業者の方が、今後農地等の贈与を受ける場合、本制度を活 用することも選択肢の一つであると思います。 ― ― 24 贈与税納税猶予制度適用農地等に係る法人化特例の概要 農地等の一括生前贈与 【贈与税納税猶予制度の目的】 贈与税の納税猶予の適用 農地等の相続による細分化防止 【法人化特例の目的】 法人化特例の適用 法人化による農業経営の規模拡大、農地の利用集積 【法人化特例の内容】 認定農業者又は特定農業法人で ある農業生産法人 贈与税の納税猶予の適用農地等 1 特例措置の対象者 既に農地等の一括生前贈与を受けて贈与税の納税猶予の適用を受けている受贈者である こと。 2 農業生産法人又は特定農業法人の要件(①又は②のいずれかの要件全てを満たしている こと) ① 認定農業者(注1) ⅰ)特例対象者が当該農業生産法人の代表権を有する役員であること。 ⅱ)特定対象者の当該農業生産法人における農業従事日数が年間150日以上で、農作業 従事日数が年間60日以上であること。 ② 特定農業法人(注2) ⅰ)特例対象者が当該農業生産法人の常時従事役員(代表者である必要なし) であること。 ⅱ)特例対象者の当該農業生産法人における農業従事日数が最短で60日最長で150日(注3) 以上で、農作業従事日数が年間60日以上であること。 (注1)農業経営改善計画の有効期間が経過した場合にあっては、一定の期間内に新たな農業経営改善計画の認定を受けた認 定農業者であること。 (注2)特定農用地利用規程の有効期間が経過した場合にあっては、一定の期間内に新たな特定農用地利用規程に位置付けら れた特定農業法人であるか、又は農業経営改善計画の認定を受けた認定農業者であること。 (注3)特定農業法人である場合の農業従事日数は①又は②のいずれか多い日数 ① 当該特定農業法人の経営面積に相当する必要農業従事日数(農地面積(ha)×33日/haにより算出)を構成員 数で除した日数(60日を下回る場合は60日) ② 贈与税納税猶予適用農地等に相当する必要農業従事日数(農地面積(ha)×33日/haにより算出) 3 特例の措置期間 平成17年4月1日∼平成23年3月31日までの間 納税猶予の継続 【法人化特例のイメージ】 法人のエリア 贈与税納税猶予農地等 使用貸借権の設定 ○ ○ ○ ○ ― ― 25 ○ 3 補助事業で導入した施設・機械 ⑴ 補助金を受けて取得した施設・機械等の固定資産を法人に引き継ぐ場合、補助金の返 還命令の対象とならないよう、事前に県・市町村の指導を受けて、補助事業の目的から 逸脱しない範囲で必要な手続きを行うことが必要ですので注意して下さい。 ⑵ 補助金を受けて取得した施設・機械等を法人に現物出資したり譲渡した場合、各個人 の持ち分に応じ譲渡所得税が課税されることがあります。 (帳簿価額は、補助金分圧縮記 帳されていることに注意が必要です) 4 借入資金関係について ⑴ 農業経営のために借り入れている資金等がある場合は、借入先及びその借入金の残高 を調査の上、当該金融機関に予め連絡をし、借入金の対応策について検討しておくこと が必要です。 ⑵ スーパーL資金等制度資金については、農林漁業金融公庫等の融資機関及び県・市町 村等の指導を受けて下さい。 5 経営資産の引き継ぎ関係 6 その他取引先関係 ― ― 26 Ⅴ 農事組合法人と合同会社、株式会社の特徴 根 拠 法 目的と性格 事 農事組合法人 合 同 会 社 株式会社(株式譲渡制限会社) 農業協同組合法 会 社 法 会 社 法 協業を図ることにより組合 員の共同の利益を増進する ことを目的としたもの。 他の法人が資本的であるの に対し、労働的である。 商行為その他営利行為を行 うことを目的とする。 株式会社のような機関設計 や株式の権利といった強制 的な規定がなく、総社員の 同意に基づいて会社の定款 変更や会社の意思決定がで きるなど迅速な会社運営が 可能であり、小規模企業に 最適な会社組織。 業 ①機械や施設を設置して行う 共同利用及び農作業の共同 化(1号事業) (員外の利 用分量は、1/5を超えて はならない) ②農業経営及び農業と併せて 行う林業(2号事業) ③その農業に附帯及び関連す る事業 営利事業一般 商行為その他営利行為を行 うことを目的とする。 経営外部から資金を集めや すい。 構 成 員 ①資格 農民等で定款に定めるもの ②数 3人以上(上限なし) ①資格 制限なし(ただし、農業生産法人となる場合には、農地法 の要件を満たす必要がある) ②数 1人以上(上限なし) 発 起 人 3人以上の農民 1人以上 資 ①現金出資と現物出資 ②出資は1口均一(金額に制 限なし) ③出資の分割払い込みも可 (現物出資は第1回目に一 括払込) ①現金出資と現物出資 出 ①現金出資と現物出資 ②株券の発行は任意 (定款で定めた場合は発行 できる) 資 本 金 制限なし 議 決 権 各組合員は出資口数に関係な 原則全員一致 く1人1票 (定款で変更可) 各株主は原則として出資1株 につき1票 理事:1人以上 業務執行社員(任意) 資格:理事はその農事組合 法人の農民の組合員 でなければならない。 監事(任意) 資格:組合員以外の者もな りうる(置いた場合) 。 役員の任期 3年以内で定款に定める。 取締役会をおかない場合 取締役は1人。2人以上の 場合の代表取締役は任意。 取締役会をおく場合 取締役は3人以上。代表取 締役は必要。 任期は2年。定款で10年ま で延長可。 役員・会社の 機 関 ― ― 27 根 拠 法 農事組合法人 合 同 会 社 株式会社(株式譲渡制限会社) 農業協同組合法 会 社 法 会 社 法 監査役 取締役会設置会社では必要 (1人以上) それ以外は原則任意。任期 は原則4年。 会計参与 任意。任期は原則2年。定 款で10年まで延長可。 会計監査人 任意 地 区 組合員の資格を有する区域の 範囲(定款記載事項) 。 定めなし 雇用労働力 法人の事業に常時従事する者 のうち組合員及び組合員と同 一世帯に属する者以外の者が 常時従事者数の2/3以下で あること 制限なし 税 ①法人税率(確定給与を支払 わない農事組合法人) 年所得800万円以下(注) 18.0% 年所得800万円を超える金額 22.0% ②従事分量配当を損金に算入 ※役員報酬の支給と併給可能。 ※従事分量配当は消費税の 課税仕入れに該当します。 ③解散した場合の清算所得に 対する法人税率 20.5% ④事業税 農業生産法人の要件を満た す農事組合法人が行う農業 に対して事業税はすべて非 課税となります。(作業受 託は請負なので課税) ①法人税率(資本金1億円以下の中小法人) 年所得800万円以下(注) 18.0% 年所得800万円を超える金額 30.0% 金 ②役員報酬を損金に参入 ※「特殊支配同族会社」となった場合、社長の役員報酬と 所得金額によっては給与所得控除額分が損金になりません。 ③解散した場合の清算所得に対する法人税率 27.1% ④事業税 資本金1億円超 外形標準課税 資本金1億円以下 年400万円以下の所得 2.7% 年400万円超800万円以下の所得 4.0% 年800万円超の所得 5.3% 農業協同組合等に該当の場合 年所得400万円以下 2.7% 年所得400万円超 3.6% 設立コスト 公証人の認証手続き不要 (認証手数料不用) 定款に添付する収入印紙税 が不課税 設立、定款の変更等の登記 にかかる登録免許税非課税 公証人の認証手続き必要(認証手数料必要) 定款に添付する収入印紙税必要 設立、定款の変更等の登記にかかる登録免許税必要 (資本金の7/1,000) (注) 平成21年度改正により平成21年4月1日から平成23年3月31日までの間に終了する各事業年度 の法人税率が現行22%より引き下げられました。 ― ― 28 第四章 株式会社(非公開会社)の設立について 株式会社はその規模によってさまざまな形態がありますが、ここでは比較的小規模で設立 しやすく、一般的に最も多いと思われる非公開会社の発起設立手続を挙げます。 非公開会社とは、定款に全ての株式に株式譲渡制限の定めがある会社の事です。この規定 があると、株式を誰かに譲渡する為には、会社の承認が必要になります。 発起設立手続とは、発起人が株式の全部を引き受ける設立手続の事です。 Ⅰ 株式会社設立の手続きと手順 1 会社の基本的な事項の検討 ⑴ 発起人(株主)を決める 発起人は、1人でも複数でも良く、複数の場合は全員で設立に関する事項を決めてい きます。発起人が確定したならば、どの様な会社にするのかを話し合うために発起人会 を開催し、発起人会議事録を作成します。発起人が1人の場合には、発起人決定書がこ れに代わります。 ⑵ 設立に関する事項 発起人は、下記の設立に関する事項を決めていきます。 ①定款(会社の根本規則)の内容 商号(会社の名前)、本店(本社の場所)、目的(事業内容)、 発行可能株式総数(会社が発行できる株式の総数) ②資本金額 ③発起人が割当てを受ける設立時発行株式の数 ④その引換えに払い込む金銭の額(会社に出資する金額) ⑤設立時の役員(設立時取締役、設立時監査役) ⑥決算日等 2 定款の作成と公証人の認証 ⑴ 定款の作成 定款とは、会社の根本規則です。その内容について充分検討した上で決定し、定款を 作成します。 ⑵ 公証人の認証 定款を3部作成し、社員の実印を押印し、印鑑証明書を添付して、公証人役場で認証 を受けます。 3 出 資 の 履 行 ⑴ 発起人は出資金を、発起人(代表取締役予定者)の口座に振り込みます。 ― ― 29 ⑵ 現物出資の場合は、その財産を発起人(代表取締役予定者)に引渡します。 ただし、定款に現物出資者の氏名、出資財産、その評価額とその者に与える設立時発 行株式の数が記載されていないと、現物出資は無効になります。 4 設立時取締役等による調査 設立時取締役(監査役を置く会社の場合は、設立時取締役と設立時監査役)は、その選 任後(定款で選任している場合は、出資の履行後)遅滞無く、次の事項を調査しなければ なりません。 ① 現物出資の場合、定款に記載された価額が相当であること ② 現物出資の場合で、定款に記載された価額が相当であることについて弁護士等の証明 を受けた場合、その証明が相当であること ③ 出資の履行が完了していること ④ 株式会社の設立手続が法令又は定款に違反していないこと。 5 設立時代表取締役の選定 設立時取締役が複数いる場合、設立時取締役の中から、会社を代表する設立時代表取締 役を選定します。 6 設立登記の申請 4の設立時取締役等の調査が終了した日から2週間以内に、設立登記申請書を作成し、 設立時代表取締役か代理人(司法書士等)が所轄の登記所に設立登記の申請をします。 7 関係官公署等への届出 ⑴ 登記完了後、印鑑カード、登記事項証明書(登記簿謄本)、代表取締役の印鑑証明書 の交付申請を行います。 ⑵ 税務署、県税事務所、市町村役場、労働基準監督署、公共職業安定所、社会保険事務 所などに届出書を提出します。 ― ― 30 機 関 設 計 に つ い て 非公開会社(譲渡制限会社) 公開会社 株式会社 Aタイプ Bタイプ Cタイプ ①商 号 株式会社 ②株 主 の 責 任 有限 ③株 主 数 1人以上 ④最 低 資 本 金 1円 ⑤最高議決機関 株主総会 有 ⑥株式譲渡制限 Dタイプ 無 ⑦取 締 役 会 無 有 有 要(必ず) ⑧取 締 役 人 数 1人以上 3人以上 3人以上 3人以上 ⑨取 締 役 任 期 2∼10年 2∼10年 2∼10年 2年 ⑩代 表 取 締 役 任意 要(必ず) 要(必ず) 要(必ず) ⑪監 査 役 人 数 任意 1人以上 設置しない 1人以上 ⑫監 査 役 任 期 4∼10年 4∼10年 ⑬会 計 参 与 任意 任意 要 任意 ⑭決 算 公 告 要(必ず) 要(必ず) 要(必ず) 要(必ず) ― ― 31 4年 株式会社設立手続き(発起設立)のフローチャート 発起人の決定 発起人会の開催 定款記載事項の検討 定款の作成 公証人役場 定款の認証 検査役の調査 出資金の払込 現物出資の給付 設立時代表取締役 の選定 設立時取締役等 の調査 2週間以内 登 記 所 設立登記申請 印鑑届の提出 登記完了 会社成立 登 記 所 印鑑カード交付申請 登記事項証明書 印鑑証明書交付申請 官公署への提出 ― ― 32 ※定款に現物出資の 記載がある場合のみ 株式会社設立に関する事項メモ 商 号 本店所在地 目 的 1 5 2 6 3 7 4 8 取締役会を設置 ( . . 生) ( . . 生) ( . . 生) ( . . 生) ( . . 生) ( . . 生) ( . . 生) ( . . 生) ( . . 生) ( . . 生) ( . . 生) ( . . 生) ( . . 生) ( . . 生) ( . . 生) ( . . 生) ( . . 生) ( . . 生) ※3人以上 する場合 ( . . 生) ( . . 生) ( . . 生) 代表取締役 取締役会を設置 取締役 しない場合 監査役︵任意︶ 役 員 予 定 者 ( . . 生) 監 査 役 等 取締役 ( . . 生) ( . . 生) ( . . 生) ( . . 生) 代表取締役 ( . . 生) 発行可能株数 株 設立時発行株数 株 1 株 の 金 額 円 資 本 金 円 課税標準金額 万円 登 録 免 許 税 万円 事 業 年 度 株主総会 ― ― 33 月 発起人氏名 1. 〒 2. 〒 3. 〒 4. 〒 5. 〒 6. 〒 7. 〒 8. 〒 9. 〒 10. 〒 11. 〒 12. 〒 現物出資者氏名 手続事項 住 所 引受株式数 金額 出資財産の明細 引受株式数 財産の価格 年月日 手続事項 手続日程 ― ― 34 年月日 Ⅱ 定 款 の 作 成 1 定款とは 定款は、全ての会社に必要なもので、会社の組織及び活動を定める根本規則です。設立 にあたってこれを作ることが、法律で義務づけられています。 会社設立に際して作成する定款のことを「原始定款」と呼び、これには公証人の認証が 必要となります。 2 定款の記載事項 定款の記載事項は、絶対的記載事項、相対的記載事項、任意的記載事項に分けることが できます。 ⑴ 定款の絶対的記載事項 定款に必ず記載しておかなければならない事項で、その記載を1つでも欠くか、その 記載が1つでも違法であるときは、定款全体が無効となります。 具体的には、次の6つの事項です。 ① 目的(会社の事業内容) ② 商号(会社の名称) ③ 本店の所在地(本店の所在する市町村) ④ 設立に際して出資される財産の価額又はその最低額 (設立時の出資金額) ⑤ 発起人の氏名又は名称及び住所 ⑥ 発行可能株式総数(会社が発行することのできる株式の総数) ⑵ 相対的記載事項 定款に記載しなくても定款自体の効力に影響はありませんが、その定めを設ける場合 は、定款に記載しておかないと法的効力を生じないとされる事項です。 相対的記載事項は非常にたくさんあるので、ここでは一般的な中小会社において問題 になりうる特に重要なものを挙げておきます。 ① 現物出資者の氏名、出資する財産、その価額、その者に対して割り当てる株式の数 ② 株式の譲渡制限の定め(非公開会社) ③ 株券発行の定め ④ 株主総会、取締役会の招集通知期間短縮の定め ⑤ 株主総会の定足数、決議要件の法定要件と異なる定め ⑥ 取締役会を置く旨の定め ⑦ 監査役を置く旨の定め ⑧ 取締役、監査役を株主に限定する旨の定め(非公開会社の場合のみ) ⑨ 取締役、監査役の任期伸長の定め ― ― 35 ⑶ 任意的記載事項 上記、絶対的記載事項、相対的記載事項以外の事項で、会社法の規定に違反しないも のです。定款に記載すると、株主や会社の機関を拘束する効力があります。 一般的に定められている主な任意的記載事項は次のとおりです。いずれも任意的記載 事項とはなっていますが、定款に記載しておくと便利です。 ① 営業年度 ② 公告方法 ③ 定時株主総会の招集時期 ④ 株主総会の議長 ⑤ 取締役、監査役の員数 ⑥ 株主名簿の基準日 Ⅲ 定款の記載の仕方 定款は3通作成します。 3通の内訳は、公証人役場保存用、登記申請用、会社保存用となります。 株式会社○○定款 第1章 総 則 (商 号) 第1条 当会社は、株式会社○○○○と称する。 留意点 ⑴ 必ず、株式会社の四文字を、社名の頭か最後に入れる。 (株式会社○○○○、○○○○株式会社) ⑵ 漢字(常用漢字以外も含む)、ひらがな、カタカナの日本語の他に、 ローマ字、アラビア数字及び一部の符号を使うこともできる。 ⑶ 他人が登記した商号と同一であり、その営業所の所在場所も同一であ るときは、その商号を用いることはできません。 ― ― 36 (目 的) 第2条 当会社は、次の事業を営むことを目的とする。 1.○○○(農畜産物)の生産販売 2.○○○(農畜産物)を原材料とする○○○(食料品)の製造販売 3.○○○(農畜産物)の貯蔵、運搬及び販売 4.○○○(農業生産に必要な資材)の製造販売 5.農作業の受託 6.前各号に付帯関連する一切の事業 留意点 ⑴ 第三者がみてわかるよう簡潔に書くこと。 ⑵ 箇条書きにすること。項目が多いときは、各項目の頭に算用数字で通 し番号をつけること。 ⑶ 最後に「前各号に付帯する一切の事業」と入れておくと、付帯する事 業も会社の目的に含まれるので、入れておくのが望ましい。 ⑷ 農地に基づく農業経営を行う場合は、農地法で定められている農業生 産法人の事業要件を満たすこと。 (本店の所在地) 第3条 当会社は、本店を○○県○○市に置く。 留意点 記載方法は二通りあります。 ① 「福島県福島市中町8番1号」と町名地番まで全て記載する方法。 ② 「福島県福島市」と最小行政区画である市町村まで記載する方法。 将来、同一市町村内で本店を移転する可能性があるような場合は、② の記載の方が本店移転の手続が楽になります。 (公 告 方 法) 第4条 当会社の公告方法は、官報に掲載する方法とする。 ― ― 37 留意点 ⑴ 株式会社は、法律上公告が義務付けられている事項があるので、予め 公告方法を定めておく必要があります。 公告方法は3通りあります。 ① 「官報に掲載する方法」 ② 「時事に関する日刊新聞紙に掲載する方法」 (例、当会社の公告方法は、日本経済新聞に掲載する方法とする。) ③ 「電子公告」(インターネット上にホームページなどで公開) (例、当会社の公告方法は、電子公告とする。) ⑵ 官報は公告費用が他よりも安く、インターネットの知識が無くともで きるので、会社の公告方法として一般的です。又、公告方法を定款に定 めなかった場合は、会社法により公告方法は官報とされます。 第2章 株 式 (発行可能株式総数) 第5条 当会社の発行可能株式総数は、○○○○株とする。 留意点 ⑴ 発行可能株式総数とは、会社が発行することのできる株式の数の事で す。将来、株式を発行して出資金を募り、会社の規模を大きくする時の 為に、設立時に発行する株式の数よりも多く定めておきます。 ⑵ 非公開会社の場合は、発行可能株式総数の上限が定められていないの で、自由に定める事ができます。例)発行済株式総数の10倍の数 (株式の譲渡制限) 第6条 当会社の株式を譲渡により取得するには、取締役会の承認 を受けなければならない。 留意点 ⑴ 本来株式は、自由に譲渡できるのが原則ですが、株式の譲受けによっ て好ましくない第三者が株主として経営に関与することがあります。ま ― ― 38 た、農業生産法人として、農地を利用して農業の経営を行う場合には、 農地法により、上記の株式の譲渡制限が必要とされています。そこで、 定款において、全部の株式の内容として株式の譲渡について会社の承認 を必要とする旨の譲渡制限を設けることができます。 ⑵ 株式譲渡の承認機関については、原則として株主総会(取締役会設置 会社においては、取締役会)の決議によらなければならないとされてい ます。ただし、定款で定めれば、例えば取締役会を設置しない会社では、 「取締役の決定」や「代表取締役」とすることができます。いずれであ るかによって、上記定款の下線部分を書き換えます。 (株券の不発行) 第7条 当会社の株式については、株券を発行しない。 (相続人等に対する株式の売渡請求) 第8条 当会社は、相続その他の一般承継により当会社の株式を取 得した者に対し、当該株式を当会社に売り渡すことを請求す ることができる。 (基 準 日) 第9条 当会社は、毎事業年度末日の最終の株主名簿に記載又は記 録された議決権を有する株主をもって、その事業年度に関す る定時株主総会において権利を行使することができる株主と する。 ② 前項のほか、株主又は質権者として権利を行使すべき者を 確定する必要がある場合には、取締役会の決議により、予め 公告して臨時に基準日を定めることができる。 留意点 いつの時点の株主が定時株主総会で権利を行使することができるのかとう いうことを定めたのが基準日です。あらかじめ定款で定めておくのが一般的 です。 ― ― 39 第3章 株 主 総 会 (招 集) 第10条 定時株主総会は、毎事業年度の終了後3か月以内に招集し、 臨時株主総会は必要がある場合には、いつでも招集すること ができる。 留意点 定時株主総会は、毎事業年度の終了後一定の時期に招集しなければならず (会社法296条1項)、臨時株主総会は、必要がある場合には、いつでも、招 集することができます(同条2項)。 「一定の時期」とは、基準日から3ヵ月以内と解されています。ただ、法 人税の申告書類の提出期限が営業年度終了の日の翌日から2ヵ月以内である ことから「2ヵ月以内」と定める会社も多いようです。 なお、招集通知は、総会の日の2週間前までに発する必要があります(同 299条1項)。ただし、非公開会社では、書面又は電磁的方法による議決権行 使を定めた場合を除き、総会の日の1週間前までに発すれば足りるとされて います(同条同項)。さらに、非公開会社で、取締役会非設置会社については、 定款で1週間を下回る期間を定めることができます(同条同項)。 (議 長) 第11条 株主総会においては、取締役社長が議長となる。ただし、 取締役社長に事故があるときは、あらかじめ取締役の過半数 をもって定めた順序により他の取締役が議長となる。 (決議の方法) 第12条 株主総会の決議は、法令又は定款に別段の定めがある場合 を除き、議決権を行使することができる株主の議決権の過半 数を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の過半 数をもって行う。 ② 会社法第309条第2項に定める株主総会の決議は、議決権を 行使することのできる株主の議決権の3分の1以上を有する ― ― 40 株主が出席し、出席した当該株主の議決権の3分の2以上に 当たる多数をもって行う。 (株主総会議事録) 第13条 株主総会の議事については、法務省令に定めるところによ り議事録を作成し、議長、議事録の作成に係る職務を行った 取締役及び出席した取締役がこれに署名若しくは記名押印又 は電子署名を行う。 第4章 取締役、取締役会、監査役 ※取締役会を設置する会社と設置しない会社によって機関構成が異な ります。該当する部分のみを選んで作成して下さい。 (取締役会の設置) 第14条 当会社は、取締役会を置く。 留意点 ⑴ 株式会社は、定款の定めによって、取締役会、会計参与、監査役、監 査役会、会計監査人または委員会を置くことができます。 ⑵ また、非公開会社であって監査役会も委員会も置かない会社について は、取締役会の設置は強制せず、取締役の員数も1名で足ります。本記 載例は、取締役会を設置する場合の定款の定めですが、設置しない場合 は、定款の同条項を削除し、条項を繰り上げます。 (監査役の設置) 第15条 当会社は、監査役を置く。 留意点 ⑴ 取締役会設置会社(委員会設置会社を除く)は、監査役を置かなけれ ばなりません。本記載例は、かかる場合の定款の定めです。もっとも、 公開会社でない場合においては、会計参与を置けば、監査役を置く必要 ― ― 41 はありません。 ⑵ 取締役会を設置しない会社であれば、監査役の設置は任意です。監査 役を設置しない場合には、定款の同条項を削除し、条項を繰り上げます。 (取締役の員数) 第16条 当会社の取締役は3名以上とする。 留意点 ⑴ 取締役は必須の機関であり、定款に別段の定めがある場合や取締役会 設置会社である場合を除き、会社の業務執行を行います。 取締役会を設置する会社においては、取締役を3名以上おく必要があ ります。本定款記載例は、このことを確認する趣旨です。 ⑵ 取締役会を設置しない会社については、取締役の人数についての制限 はなく、取締役は1名でも足ります。もし、取締役を2名以上おく場合 には、定款に別段の定めがある場合を除いて、取締役の過半数で決する ことになります。 ⑶ なお、取締役の人数の上限については会社法に制限はなく、定款で 「○名以内」と記載することも任意的記載事項として認められます。 (取締役の選任の方法) 第17条 当会社の取締役及び監査役は、株主総会において、総株主 の議決権の3分の1以上を有する株主が出席し、その議決権 を過半数の決議によってこれを選任する。 ② 取締役の選任については、累積投票によらない。 留意点 ⑴ 取締役は、株主総会の決議によって選任されます。その決議要件は、 定款の定めにより、定足数について「3分の1以上の割合」とすること や、表決数について「過半数を上回る割合」とすることができます。 ⑵ 会社法は、株主総会において2人以上の取締役を選任する場合には、 定款に別段の定めがあるときを除き、累積投票によることができます。 累積投票は、株式1株につき選任すべき取締役の数と同数の議決権が 与えられる制度ですが、実際には、多くの会社は、この制度を定款の規 ― ― 42 定をもって排除しています。 (取締役及び監査役の任期) 第18条 取締役の任期は、その選任後2年以内、監査役の任期は、 その選任後4年以内に終了する事業年度のうち最終のものに 関する定時総会の終結の時までとする。 ② 補欠又は増員として選任された取締役の任期は、在任する 取締役の任期の満了すべき時までとする。 ③ 補欠として選任された監査役の任期は、退任した監査役の 任期の満了する時までとする。 留意点 ⑴ 本定款記載例第1項は、会社法に関して取締役及び監査役の任期の原 則的なものを定めたものです。 取締役の場合にはこれを定款又は株主総会の決議によって短縮するこ とが認められています。 なお、非公開会社(委員会設置会社を除く)は、定款で定めることに より、取締役の任期を選任後10年以内に終了する事業年度のうち最終の ものに関する定時総会の終結の時まで、伸長することも認められています。 ⑵ 本定款記載例第2項のように、取締役については、在任の取締役との 任期残存期間をそろえる趣旨から、補欠・増員の取締役について定款の 定めにより任期を短縮することが行われます。 ⑶ 監査役については、監査役の独立性を保障する趣旨から、補欠監査役 の場合を除いて任期の短縮はできません。また、非公開会社における監 査役については、定款に定めれば、取締役と同様にその任期を選任後10 年以内とすることもできます。 定款記載例第3項は、補欠監査役について定款の定めより、監査役の 前任者の任期の残存期間として任期を短縮したものです。 なお、監査役を設置しないときには、監査役に関する下線部分を削除 します。 ― ― 43 (代表取締役及び役付取締役) 第19条 代表取締役は、取締役会の決議によって選定する。 ② 取締役会の決議をもって、取締役の中から、社長を1名選 任し、必要に応じて、会長、副社長、専務取締役、常務取締 役各若干名を選定することができる。 留意点 取締役会非設置会社の場合には、代表取締役を定めることは任意であるの に対して、取締役会設置会社では、取締役会の決議によって取締役の中から 代表取締役を選定する必要があります。 また、会社法上は、取締役と代表取締役の区別のみですが、実際は上記の ような役付取締役を設けることが一般的です。 (取締役会の招集) 第20条 取締役会は、法令に別段の定めがある場合を除き、取締役 社長が招集し、議長となる。 ② 取締役社長に事故があるときは、取締役会においてあらか じめ定めた順序に従い、他の取締役が取締役会を招集し、議 長となる。 留意点 取締役会は、各取締役が招集します。ただし、取締役会を招集する取締役 を定款又は取締役会で定めたときは、その取締役が招集します。 本記載例は、取締役会の招集権者を定款で定めるとともに、取締役会の議 長についても定めるものです。取締役会を設置しない会社については、上記 定款20条は削除して、条項を繰り上げます。 (取締役会の招集通知) 第21条 取締役会の招集通知は、各取締役及び各監査役に対し、会 日の3日前までに発する。ただし、緊急の場合には、この期 間を短縮することができる。 ② 取締役及び監査役の全員の同意がある場合には、招集の手 ― ― 44 続きを経ないで取締役会を開催することができる。 留意点 ⑴ 取締役会を招集する者は、原則として、取締役会の日の1週間前まで に、各取締役(監査役設置会社にあっては、各取締役及び各監査役)にそ の通知を発しなければなりません。しかし、機動的な開催を図るために、 定款の定めにより、これを下回る期間(例えば3日前)前までに通知を発す ることができます。 ⑵ 取締役(監査役設置会社にあっては、取締役及び監査役)の全員の同 意があるときは、招集の手続きを省略することができます。本記載例第 2項は、会社法の定めを確認的に表示するものです。 (取締役会の決議方法) 第22条 取締役会の決議は、議決に加わることのできる取締役の過 半数が出席し、その過半数をもって行う。 留意点 本記載例は、取締役会の決議方法について会社法の規定を確認的に表示す るものです。 定款で定めれば、定足数及び表決数につきこれを加重する要件を定めるこ とができます。 (取締役会の決議の省略) 第23条 取締役が取締役会の目的である事項について提案をした場 合において、当該提案につき議決に加わることのできる取締 役の全員が書面により同意の意思表示をしたときは、当該提 案を可決する旨の取締役会の決議があったものとみなす。 留意点 取締役会は原則として、会議を開催して決議をなすべきですが、会社法は 例外的に一定の要件のもと定款の定めにより、会議を開かずに書面による決 議をなすことができるとしています。 ― ― 45 (取締役会議事録) 第24条 取締役会の議事については、法令に定める事項を記載又は 記録した議事録を作成し、出席した取締役及び監査役がこれ に記名押印又は電子署名する。 留意点 取締役会の議事については、法務省令で定めるところにより、議事録を作 成し、議事録が書面をもって作成されているときは、出席した取締役及び監 査役は、これに署名し、又は記名押印しなければなりません(議事録が電磁 的記録によって作成されているときは、電子署名による)。 本記載例は、会社法の内容を定款において確認的に表示するものです。 (取締役及び監査役の報酬等) 第25条 取締役及び監査役の報酬等については、それぞれ株主総会 の決議によって定める。 留意点 ⑴ 取締役の報酬等について次に掲げる事項は、定款に当該事項を定めて いないときは、株主総会の決議によって定めます。定款において取締役 の報酬について定めることはほとんどありません。本定款記載例は、か かる定款の定めがない場合に株主総会の決議による旨の会社法の規定を 確認的に表示するものです。 ⑵ 監査役についても、会社法は「定款にその額を定めていないときは、 株主総会の決議によって定める」としています。本記載例は、監査役に ついてもこれを確認的に表示しています。監査役を置かないときには、 下線部分を削除します。 第5章 計 算 (事 業 年 度) 第26条 当会社の事業年度は、毎年○月○日から翌年○月○日まで とする。 ― ― 46 (剰余金の配当等) 第27条 当会社は、株主総会の決議によって、毎年○月○日の最終 の株主名簿に記載又は記録ある株主、登録株式質権者(以下 「株主等」という。)に対して剰余金の配当を行う。 ② 前項に定める場合のほか、当会社は、基準日を定め、その 最終の株主名簿に記載又は記録ある株主等に対して、剰余金 の配当を行うことができる。 第6章 附 則 (設立に際して発行する株式等) 第28条 当会社の設立に際して発行する株式(以下「設立時発行株 式」という。)の総数は、普通株式○○株とし、発起人がその 全部を引き受ける。 ② 発起人が前項の設立時発行株式と引換えに払い込む金銭の 額は、1株につき金○○円とする。 (設立に際して出資される財産の価額又はその最低額) 第29条 当会社の設立時に際して発行する財産の最低額は、金○○ 円とする。 ② 当会社の設立資本金は、金○○円とする。 留意点 現物出資がない場合は、財産の価額と設立資本金は同額となります。現物 出資がある場合は財産の価額には設立資本金と現物出資する資産の合計金額 を記入します。 (成立後の資本金の額) 第30条 当会社の成立後の資本金の額は、設立に際して株主となる 者が払込み又は給付をした財産の額とする。 ― ― 47 留意点 資本金というのは会社のお金です。会社成立後、事業の為に自由に使えま す。(例、仕入れ、給料、事務所の家賃の支払い等)。 設立時発行株式数×1株当りの金額が資本金の額となります。 平成18年5月1日より、資本金の額に制限が無くなりましたので、資本金 額は自由に決められます。 (発 起 人) 第31条 発起人の氏名、住所及び発起人が設立に際して割当てを受 け、引き受けた株式数は、次のとおりである。 住所 氏名 ○○○○ 普通株式○○株 住所 氏名 ○○○○ 普通株式○○○株 ② 現物出資をする者の氏名、当該財産及びその価額並びにそ の者に対して割り当てる設立時発行株式の種類及び数は、次の とおりである。 1.① 現物出資者の氏名 ○○○○ ② 現物出資の財産 ○○製 乗用車 車種名 ○○ 型式番号 ○○ 車体番号 ○○ 1台 ③ その価額並びにその者に対して割り当てる設立時発 行株式の数 金○○万円 普通株式○○株 2.① 現物出資者の氏名 ○○○○ ② 現物出資の財産 土地 所在 福島県○市○町○丁目○番地 地番 ○番 地目 宅地 地積 ○○㎡ ― ― 48 ③ その価額並びにその者に対して割り当てる設立時発 行株式の数 金○○万円 普通株式○○株 留意点 現物出資がある場合、第2項のように記載します。現物出資が無い場合は、 第1項のみになります。 (最初の事業年度) 第32条 当会社の最初の事業年度は、会社成立の日から平成○○年 ○○月○○日までとする。 留意点 会社成立の日からその会社の事業年度の末日までとします。 (設立時取締役及び設立時監査役) 第33条 当会社の設立時取締役及び設立時監査役は、次のとおりと する。 住所 設立時取締役 氏名 ○○○○ 住所 設立時取締役 氏名 ○○○○ 住所 設立時監査役 氏名 ○○○○ 留意点 ⑴ 監査役は、その会社の取締役、支配人その他使用人と兼ねることができ ません。監査役を置かない場合は、設立時監査役の記載を削ってください。 ⑵ 農地法に基づく農業経営を行う場合は、農業生産法人の経営責任者の 要件を満たさなければなりません。 ― ― 49 以上、株式会社○○設立のため、この定款を作成し、発起人が次に 記名押印する。 平成○年○月○日 発起人 ○○○○ ㊞ 発起人 ○○○○ ㊞ ― ― 50 Ⅳ 手続き前の準備事項 1 発起人、取締役予定者の印鑑証明書 ⑴ 定款を公証人役場で認証してもらう時、発起人全員の印鑑証明書を各1通提出します。 ⑵ 設立登記申請のとき、取締役全員の印鑑証明書を各1通提出します。 ⑶ 印鑑証明書の有効期限 定款認証の公証人役場提出 3ヶ月以内 設立登記申請の登記所提出 3ヶ月以内 2 会社の印鑑の注文 ⑴ 代表者印(登録印) 設立登記の申請をするには、代表者の印鑑を登記所に届けることが必要ですので、商 号が決まりましたら、できるだけ早く発注してください。 登記所に届ける代表者印には、大きさの制限があります。 印鑑の大きさは、辺の長さが1㎝を超え、3㎝以内の正方形の中に納まるものでなけ ればなりません。なお、形や文字については制限がありません。 一般的に使われているのは、二重丸になって いる「巻印」で、外側に会社名を入れ、内側 の円内は「代表取締役之印」としています。 株 式 社 式 株 会 社 会 ⑵ 社印、銀行印、ゴム印等の用意 登記には関係ありませんが、社印(角印)、銀行取引印鑑、ゴム印(住所、社名、代 表者名等)も発注しておいた方が良いでしょう。 3 登記申請書の用意 ⑴ 管轄の登記所で用紙の確認を行い、備え付けの用紙があれば交付してもらいます。又、 A4横書きで自分で作成してもかまいません。 4 出 資 金 の 準 備 ⑴ 会社の資本金とする為の出資金を準備します。 ⑵ 定款の認証後、発起人(代表取締役予定者)の口座に出資金を振り込むことになりま す。発起人は各自引き受けた株式数に応じて出資金を準備しておく必要があります。 ― ― 51 Ⅴ 定款の認証手続き 1 定 款 の と じ 方 定款の作成が終わったら、A4判の用紙に印刷し、ホッチキスなどにより綴ります。全 ての見開きに発起人全員の割印を押します。 後記のような「袋とじ」にする方法の場合であれば、裏表紙に発起人全員の契印を押す だけで足り、見開きに割印をする事は不要です。 2 定 款 の 認 証 作成した定款の内容に誤りが無いことを、公証人に認証してもらいます。 以下、公証人の認証を受けるための手続について説明します。 ⑴ 発起人全員が出頭するか、代理人に依頼する。 発起人全員が実印(印鑑証明書の印)を持って公証人役場に出頭するのも良いのです が、一般的には、代理人に手続を委任して行うことになります。 代理人には発起人の1人がなるか、司法書士、弁護士等の第三者がなるのが通例です。 ⑵ 持参するもの 公証人役場に出頭する時に持参するものは次のとおりです。 ① 定款3通(そのうち1通に4万円の収入印紙を貼り付ける。これが公証役場保存用 となる。) ② 発起人全員の印鑑証明書各1通(発行後3か月以内) ― ― 52 ③ 認証手数料5万円(現金)と謄本交付手数料(用紙1枚当たり250円)2,000円∼ 3,000円程度 ④ 代理人出頭の場合、委任状(54ページ)と代理人の印鑑証明書と印鑑 ⑶ 注意事項 ① 定款と委任状には、発起人の捨印を押しておきます。 (公証人が内容を検討の上、誤りがあった場合には訂正します。) ② 公証人役場で定款の受理が決まってから、収入印紙を定款の1枚目(表紙がある場 合は、表紙の裏面)に貼り付けし、消印します。 ③ 認証が終わると、1通(収入印紙を貼付したもの)は、公証人役場が保管し、2通 を返してくれます。そのうちの1通は、認証済の認証がされた「謄本」として、設立 登記申請書に添付し、登記所に提出することになります。他の1通は、「正本」(原始 定款)として会社で保存して下さい。 ― ― 53 委 任 状 (住所) (氏名) 上記のものを代理人と定め、次の権限を委任します。 1 ○○株式会社の定款につき発起人の記名押印を自認し、公証人の認 証を受ける嘱託手続き一切の件。 平成○年○月○日 ○○株式会社 発起人 ○○○○ ㊞ 発起人 ○○○○ ㊞ ― ― 54 Ⅵ 出資の払込み方法 定款の認証後、各発起人は引き受けた株式数に応じて、出資金を発起人(代表取締役予定 者)に払込みます。出資の方法は、現金出資、現物出資のどちらの方法でも構いませんが、 現物出資をする場合は、定款に記載しておかないと効力が生じません。 1 出資金の払込み方法 ⑴ 定款の認証後、各発起人は発起人(代表取締役予定者)個人の口座に、それぞれの出 資金額を振り込みます。発起人それぞれ個別に振り込んでください。 ⑵ 代表取締役は、その選定後「払込があったことの証明書」(64ページ)を作成し、通 帳の表紙、口座名義人等の記載のあるページ、入金の記載があるページのコピーを綴り 割印をします。 2 現物出資の方法 ⑴ 現物出資をする発起人は、現金出資の払込と同時に代表取締役予定者に財産を引渡し ますが、その方法は「財産引継書」 (66ページ)を2通作成(1通は設立登記申請、1 通は会社保管)し、発起人(代表取締役予定者)に提出します。 ⑵ 現物出資の財産は、会社成立の日付で所有権が移転します。なお、不動産を現物出資 した場合の所有権移転登記は後日でもよいことになっています。 ⑶ 現物出資の場合、出資財産の評価額の調査のため、裁判所に検査役の選任を申請しま す。「検査役の調査報告書」の交付を受け、登記申請書に添付することになります。 ただし、次の場合には、検査役の調査を省略できます。 ① 現物出資の価格の総額が500万円を超えない場合 ② 現物出資の財産が市場価格のある有価証券の場合で、定款で定めた価格がその相場 以下である場合 ③ 現物出資の財産の正当性につき、弁護士、弁護士法人、公認会計士、監査法人、税 理士、税理士法人の証明を受けた場合。 (ただし、現物出資の財産が不動産である場合には、不動産鑑定士の鑑定評価も受け ることが必要になります。) ⑷ 現物出資した発起人には譲渡所得税、会社には不動産取得税の税金が係ることになり ます。 3 調査報告書の作成 出資完了後、設立時取締役(監査役を置く場合は、設立時取締役と設立時監査役)は、 出資履行後遅滞なく、次の事項を調査しなければなりません。 ① 現物出資の場合、定款に記載された価額が相当であること ② 現物出資の場合で、定款に記載された価額が相当であることについて弁護士等の証 明を受けた場合、その証明が相当であること ― ― 55 ③ 出資の履行が完了していること ④ 株式会社の設立手続が法令又は定款に違反していないこと。調査後、調査報告書 (67、68ページ)を作成します。 Ⅶ 設立登記申請手続き 出資金の払込み(現物出資のときは、その財産の引渡し)が完了すると、設立登記の申請 手続きを本店の所在地を管轄する登記所において行うことになります。 1 代表取締役が申請 原則として、代表取締役が登記所に申請することと定められています。 なお、代表者が申請できない場合は、代理人(司法書士等)に依頼します。 2 登記の申請期間 設立時取締役等の調査終了した日の翌日から起算して2週間以内 3 登記する事項 登記を義務づけられている事項はさまざまあるのですが、ここで今取りあげている小規 模な会社の設立手続で問題となるのは、次のとおりです。 ① 目 的 ② 商 号 ③ 本店の所在場所 ④ 発行可能株式総数 ⑤ 発行済株式総数 ⑥ 取締役の氏名 ⑦ 代表取締役の氏名及び住所 ⑧ 監査役設置会社であるときは、その旨及びその氏名 ⑨ 公告方法 4 提出する書類 ① 設立登記申請書 1通 ② 登記事項を記載した書面 1通 ③ 登録免許税納付用貼付台紙(白紙) 1枚 ④ 定款(公証人の認証を受けたもの) 1通 ⑤ 払込があったことの証明書 (代表取締役作成、入金した通帳の写しを付けて割印したもの) 1通 ⑥ 資本金の計上に関する設立時代表取締役の証明書 1通 ⑦ 設立時代表取締役選定決議書 1通 ⑧ 設立時取締役、設立時代表取締役及び設立時監査役の就任承諾書 各1通 ⑨ 取締役の印鑑証明書 各1通 ― ― 56 ⑩ 登記事項を記録した磁気ディスク 1枚 ⑪ 代表取締役の印鑑届書 1通 (登記の申請人である代表取締役の印鑑を届けなければなりません。 この届書は添付書類ではありませんが、登記申請書と一緒に提出するものです。) その他、下記の場合それぞれ添付書類となります。 ⑴ 定款で本店所在地を地番まで定めていない場合 本店所在地の決議書 ※発起人間で本店の所在地を地番まで定める必要があります。 ⑵ 定款に現物出資の定めがある場合 検査役の報告書及びその附属書類 検査役の報告に関する裁判があったときは、その謄本検査役の調査を省略できる 場合 設立時取締役(及び設立時監査役)の調査報告書及びその附属書類 弁護士等の証明書及びその附属書類 有価証券の市場価格を証する書面 ※現物出資の内容によって、添付書類が変わってきます。 ⑶ 登記申請を委任する場合 登記申請委任状 5 設立登記申請書の記載の仕方 株式会社設立登記申請書(59ページ)の作成上の留意点は次のとおりです。 ① 「本店」には本店所在地を地番まで記載します。 ② 「登記の事由」に記載する年月日は、設立手続の終了年月日です。 具体的には、設立時取締役等の調査が終了した日です。 ③ 「課税標準金額」は資本金の額を記載します。 ④ 「登録免許税」は資本金の額の1000分の7の額です。ただし、その額が15万円に満た ない場合は、15万円になります。また、100円未満の端数があるときは、その端数金額 は切り捨てます。 ⑤ 「添付書類」 添付する書類を登記申請書のとおり、通数まで記載します。 ⑥ 「申請年月日」は登記所への提出日を記載する。 ⑦ 「申請人」の記載は、本店の所在地、商号を記載し、その下に代表取締役の住所、氏 名を記載する。 ⑧ 法務局は出張所まで記載する。 6 登記事項を入力した磁気ディスクの提出 登記事項を入力した磁気ディスクを登記申請書と一緒に付けて申請します。登記申請に ― ― 57 認められている磁気ディスクとは、フロッピーディスク、CD − ROM、CD −Rです。 記録の内容は、別紙記録例(60ページ)に従って入力してください。そのまま登記され ますので、一字一句間違いの無いように正しく入力してください。 記録上の注意点は、次のとおりです。 ① すべて全角文字で入力してください。 ② ファイルはテキスト形式で保存してください。 ③ ファイル名は「株式・設立 .TXT」としてください。 ④ 磁気ディスクには、フォルダを作成しないでください。 ⑤ 磁気ディスクには、設立する会社の商号を記載した紙を貼り付けてください。 7 代表取締役の印鑑届 設立登記の申請と同時に、「代表取締役の印鑑届」を提出します。 8 登記完了後の手続 ⑴ 印鑑カード交付申請(70ページ) 設立登記手続完了後、会社代表者の印の印鑑カードの交付申請を行います。以降、印 鑑カードを提示して、会社代表者の印鑑証明書の交付を受ける事になります。 ⑵ 印鑑証明書の交付申請(71ページ) 印鑑カードを提示して、印鑑証明書の交付申請をします。1通当たり500円です(登 記印紙で納めます)。 ⑶ 登記事項証明書の交付申請(72ページ) 会社の登記事項証明書の交付申請をします。1通当たり1,000円です。(登記印紙で納 めます) 。 ― ― 58 株式会社設立登記申請書 1.商 号 ○○株式会社 1.本 店 福島県○市○町○丁目○番○号 1.登記の事由 平成○年○月○日発起設立の手続終了 1.登記すべき事項 別紙のとおり 1.課税標準金額 金○○万円 1.登録免許税 金○○円 1.添付書類 定 款 1通 本店所在地の決議書 1通 設立時代表取締役を選定したことを証する書面 1通 設立時取締役、設立時代表取締役、設立時監査役の就任承諾書 ○通 取締役の印鑑証明書 ○通 払込みがあったことを証する書面 1通 資本金の額の計上に関する証明書 1通 (現物出資がある場合、他にも添付書類が必要になります。) 以上のとおり登記の申請をします。 平成○年○月○日 (本店) 申 請 人(商号) ○○株式会社 (住所) 代表取締役(氏名) ○印 福島地方法務局 ○○出張所 御中 ― ― 59 (登記事項記録例) 下記登記事項を入力したものを磁気ディスクに保存し、法務局に提出します。 なお、印刷した別紙は、登記申請書、別紙、印紙台紙の順に綴じ、その間に割印し ます。 「商号」○○株式会社 「本店」福島県○市○町○丁目○番○号 「公告をする方法」官報に掲載してする 「目的」 1 ○○ 2 ○○ 3 前各号に付帯する一切の業務 「発行可能株式総数」○○株 「発行済株式の総数」○○株 「資本の額」金○万円 「株式の譲渡制限に関する規定」 当会社の株式を譲渡により取得するには、株主総会の承認を受けなければならない。 「役員に関する事項」 「資格」取締役 「氏名」○○○○ 「役員に関する事項」 「資格」取締役 「氏名」○○○○ 「役員に関する事項」 「資格」代表取締役 「住所」福島県○市○町○丁目○番○号 「氏名」○○○○ 「役員に関する事項」 「資格」監査役 「氏名」○○○○ 「監査役設置会社に関する事項」 監査役設置会社 「登記記録に関する事項」 設立 ― ― 60 決 議 書 平成○年○月○日○○株式会社創立事務所において発起人全員出席しその 全員の一致の決議により、本店所在地を次のとおり決定した。 本店 福島県○市○町○丁目○番○号 上記決定事項を証するため、発起人の全員は、次のとおり記名押印する。 平成○年○月○日 ○○株式会社 発 起 人 ○○○○ ㊞ 発 起 人 ○○○○ ㊞ ― ― 61 決 議 書 平成○年○月○日○○株式会社創立事務所において設立時取締役全員出席しその 全員の一致の決議により、次のように設立時代表取締役を選定した。なお、被選定 者は即時その就任を承諾した。 住所 福島県○市○町○丁目○番○号 設立時代表取締役 ○○○○ 上記設立時代表取締役の選定を証するため、設立時取締役の全員は、次のとおり 記名押印する。 平成○年○月○日 ○○株式会社 出席設立時取締役 ○○○○ ㊞ 同 ○○○○ ㊞ 同 ○○○○ ㊞ ― ― 62 就 任 承 諾 書 私は、平成○年○月○日、貴社の設立時取締役(又は設立時代表取締役、 設立時監査役)に選任(設立時代表取締役の場合は選定)されたので、その 就任を承諾します。 平成○年○月○日 設立時取締役 ○○○○ ㊞ (設立時代表取締役、設立時監査役) ○○株式会社 御中 ― ― 63 証 明 書 当会社の設立時発行株式については以下のとおり、全額の払込みがあった ことを証明します。 設立時発行株式数 ○○株 払込みを受けた金額 金○○円 平成○年○月○日 ○○株式会社 設立時代表取締役 ○○○○ ㊞ ※作成上の注意点 登記所に届け出る印鑑を押印します。 入金があった預金通帳の表紙、口座名義人等の記載されたページ、入金が記載 されたページの写しを合わせてとじて、当該書面に押印した印鑑を契印しま す。また添付した預金通帳の写しの入金又は振込に関する部分にマーカー又は 下線を付す等して、払い込まれた金額が分かるようにしてください。 ― ― 64 資本金の額の計上に関する証明書 ①払込をうけた金額(会社計算規則第74条第1項第1号イ) 金○○円 ②資本金及び資本準備金の額として計上すべき額から減ずるべき額と定め た額(会社計算規則第74条第1項第2号) 金0円 ③資本金等限度額(①−②) 金○○円 資本金○○円は会社法第445条及び会社計算規則第74条の規定に従って計 上されたことに相違ありません。 平成○年○月○日 ○○株式会社 設立時代表取締役 ○○○○ ㊞ ― ― 65 財 産 引 継 書 1 現物出資の目的たる財産の表示 ⑴ 所 在 福島県○市○町○丁目○番地 家屋番号 ○○番 種 類 事務所 構 造 木造瓦葺二階建 床 面 積 1階 ○○平方メートル 2階 ○○平方メートル この価格 金○万円 ⑵ 普通商用自動車 トヨタ カローラバン ○○型 平成○年式 車体番号 ○○○○ この価格 金○万円 私所有の上記財産を現物出資として給付します。 平成○年○月○日 住所 発起人 氏名 ㊞ 商号 ○○株式会社 発起人 御中 ― ― 66 調 査 報 告 書 (現物出資がない場合) 平成○年○月○日○○株式会社(設立中)の取締役及び監査役に選任され たので、会社法第93条の規定に基づいて調査をした。その結果は次のとおり である。 調査事項 1 平成○年○月○日までに払込みが完了していることは設立時代表取締役 ○○が作成した払込みがあったことの証明書により認める。 2 上記事項以外の設立に関する手続が法令又は定款に違反してないことを 認める。 上記のとおり会社法の規定に従い報告する。 平成○年○月○日 ○○株式会社 設立時取締役 ○○○○ ㊞ 同 ○○○○ ㊞ 設立時監査役 ○○○○ ㊞ ― ― 67 調 査 報 告 書 (現物出資がある場合) 平成○年○月○日○○株式会社(設立中)の取締役及び監査役に選任され たので、会社法第93条の規定に基づいて調査をした。その結果は次のとおり である。 調査事項 1 定款に記載された現物出資財産の価額に関する事項(会社法第33条第10 項第1号及び第2号に該当する事項) 定款に定めた、現物出資をする者は発起人○○であり、出資の目的たる 財産、その価格並びにこれに対し割り当てる設立時発行株式の種類及び数 は下記のとおりである。 イ 福島県○市○町○番○号の宅地 ○○㎡ 定款に記載された価額 金○○円 これに対し割り当てる設立時発行株式 普通株式 ○○株 ① 上記イについては、時価○○円と見積もられるべきところ、定款に記 載した評価価額はその約4分の3の金○○円であり、これに対し割り当 てる設立時発行株式の数は○○株であることから、当該定款の定めは正 当なものと認める。 2 発起人○○の引受けにかかる○株について、平成○年○月○日現物出資 の目的たる財産の給付があったことは、別紙財産引継書により認める。 3 平成○年○月○日までに払込みが完了していることは株式会社○○銀行 の払込金受入証明書により認める。 4 上記事項以外の設立に関する手続が法令又は定款に違反してないことを 認める。 上記のとおり会社法の規定に従い報告する。 平成○年○月○日 ○○株式会社 設立時取締役 ○○○○ ㊞ 同 ○○○○ ㊞ 設立時監査役 ○○○○ ㊞ ― ― 68 ― ― 69 ― ― 70 ― ― 71 ― ― 72 登記申請書類のそろえ方 ●上に重ねるグループ (ホッチキスか、こよりでとじる) 割印する 磁気 ディスク ︵クリップでとめる︶ ●下に重ねるグループ 印鑑届書 (印鑑証明書) ― ― 73 委 任 状 ※封筒に入れて提出する 取締役の印鑑証明書 (ホッチキスなどでとじない) 取締役・監査役の 就任承諾書 ●中間に重ねるグループ 代表取締役の 選定決議書 資本金の計上に 関する証明書 払込みがあった ことの証明書 定 款 登録免許税納付用台紙 別紙︵登記事項を 記載したもの︶ 株式会社 設立登記申請書 登 記 所 へ の 提 出 の 書 類 書類の種類 部数 備考 設立登記申請書 1通 A4版横書きで記入する。 登記事項を記載した書面 1通 磁気ディスクに保存したものを 印刷したもの 登録免許税納付用台紙 1通 白紙 定款 1通 公証人の認証を受けたもの 本店所在地の決議書 1通 定款で本店所在地の地番まで 記載していないときにつける 設立時代表取締役を選定したことを証する書面 1通 設立時取締役で決議をしたもの 設立時取締役、設立時代表取締役、 それぞれの役職ごとに1通ずつ 各1通 設立時監査役の就任承諾書 つける 取締役の印鑑証明書 各1通 取締役全員のものが必要 払込があったことを証する書面 1通 設立時代表取締役の名前で作成 検査役の調査報告書及びその附属書類 必要数 検査役の報告に関する裁判の謄本 必要数 有価証券の市場価格を証する書面 必要数 資本金の額の計上に関する証明書 1通 設立時代表取締役の名前で作成 登記申請委任状 1通 代理人が登記申請を行う場合の み 登記事項を記録した磁気ディスク 1枚 登記事項を記録した FD 等 現物出資がある場合のみ、問題 設立時取締役及び設立時監査役の となる。 必要数 その内容により、添付書類が変 調査報告書及びその附属書類 わってくる。 弁護士等の証明書及びその附属書類 必要数 ― ― 74 〔参 考〕 株式会社設立に係る主な費用 項 目 定款認証 登記申請 内 容 金 額 備 考 収入印紙代 40,000円 定款認証手数料 52,000円 謄本の交付手数料 約3,000円 登録免許税 150,000円 資本金額によって異 (収入印紙代) なる。 (資本金の0.7% で最低15万円) 定 款 認 証 手 続、 司法書士等への報酬 登記申請手続の 委任 その他 ※ それぞれの事務所の 報酬額基準表による 印鑑代(代表者印、銀行印、角 20,000円 印、ゴム印等) ∼40,000円 登記事項証明書等、その他雑費 10,000円位 合 計 300,000円位 ※ 登記申請手続等を委任した場合、別途費用がかかります。 ― ― 75 Ⅷ ― ― 76 第五章 法人税及び社会保険関係 Ⅰ 法人に係る税制 1 各事業年度の所得に対する法人税 ⑴ 法人の課税標準所得 法人税の課税標準は各事業年度の所得の金額とされています。 各事業年度の所得は次の算式により、その事業年度の益金の額から損金の額を控除し た金額になります。 (益金の額)−(損金の額)=所得金額 ⑵ 益 金 の 額 各事業年度の益金の額(法22②)に算入すべき金額は別段の定めがあるものを除き次 のようになります。 ① 資産の販売 ② 有償又は無償による資産の譲渡又は役務の提供 ③ 無償による資産の譲り受け ④ その他の取引で資本等取引以外に係るその事業年度の収益の額 ⑶ 損 金 の 額 各事業年度の損金の額(法22③)に算入すべき金額は別段の定めがあるものを除き次 のようになります。 ① その事業年度の収益に係る売上原価、完成工事原価等の額 ② その事業年度の販売費、一般管理費その他の費用(償却費以外の費用で当該事業年 度末日までに債務の確定しないものを除く)の額 ③ その事業年度の損失の額で資本等取引以外の取引に係るものの額 (注) 資本等取引とは、法人の資本等の金額の増加又は減少を生ずる取引及び法人が 行う利益又は剰余金の分配(中間配当等による金銭の分配を含む)をいう。 法人の課税所得に対する税率 法人の種類 税率 資本金1億円超の普通法人 30% 資本金1億円以下の普通法人 年所得800万円以下の部分(注1) 18% 年所得800万円超の部分 30% 協同組合等(注2) 年所得800万円以下の部分(注1) 18% 年所得800万円超の部分 22% ― ― 77 (注1) 平成21年度改正により平成21年4月1日から平成23年3月31日までの間に終了 する各事業年度の法人税率が現行22%より引き下げられました。 (注2) 農事組合法人は農業協同組合等に該当しますが、給与支払いを行う場合は、普 通法人の税率が適用されます。 清算所得に対する税率 普通法人 27.1% 協同組合等 20.5% 2 地方税について 法人は各事業年度終了の日の翌日から2か月以内に確定した決算に基づき、所得金額又 は、欠損金額、法人税額等の申告書を提出しますが、これと同時に都道府県民税・市町村 民税等地方税の申告が必要です。 地方税の計算は、法人税割と均等割からなっています。 ⑴ 都 道 府 県 民 税 ① 法 人 税 割 法人税額×標準税率 5/100(制限税率 6/100) ② 均 等 割 ア 資本等の金額が50億円を超える法人 年880,000円 イ 資本等の金額が10億円を超え50億円以下の法人 年594,000円 ウ 資本等の金額が1億円を超え10億円以下の法人 年143,000円 エ 資本等の金額が1,000万円を超え1億円以下の法人 年 55,000円 オ 上記の法人以外の法人等 年 22,000円 ※均等割には「森林環境税(均等割額の10%)」が含まれています。 ⑵ 市 町 村 民 税 ① 法 人 税 割 法人課税額×標準税率 12.3/100(制限税率 14.7/100) ② 均 等 割 ア 資本等の金額50億円を超える法人で市町村内に有する事業所等(以下同様)の従 業者数が50人を超えるもの 3,000,000円 イ 資本等の金額が10億円を超え50億円以下の法人で従業者数が50人を超えるもの 1,750,000円 ウ 資本等の金額が10億円を超える法人で従業者数が50人以下のもの 410,000円 エ 資本等の金額が1億円を超え10億円以下の法人で従業者数が50人を超えるもの 400,000円 オ 資本等の金額が1億円を超え10億円以下の法人で従業者数が50人以下のもの 160,000円 カ 資本等の金額が1,000万円を超え1億円以下の法人で従業者数が50人を超える もの 150,000円 ― ― 78 キ 資本等の金額が1,000万円を超え1億円以下の法人で従業者数が50人以下のもの 130,000円 ク 資本等の金額が1,000万円以下の法人で従業者数が50人を超えるもの ケ 上記の法人以外の法人等 120,000円 50,000円 (注) 上記の金額は標準税率を示したもので、市町村では制限税率までの範囲で課税 できます。制限税率は標準税率の最高1.2倍です。 ⑶ 事 業 税 法人税の課税所得 × 税率 (平成20年10月1日以後に開始する事業年度から税率が引下げられました) 資本金の額が1億円超の普通法人 外形標準課税 資本金の額が1億円以下の普通法人 ア 課税所得金額が400万円までの部分 2.7% イ 課税所得金額が400万円を超え800万円以下の部分 4.0% ウ 課税所得金額が800万円を超える部分及び清算所得 5.3% (注) 事業税についても標準税率の他、地域によって制限税率があります。 ⑷ 地方法人特別税 平成20年10月1日以後に開始する事業年度より新たに創設されました。 資本金の額が1億超の普通法人 事業税の所得割 × 税率(148%) 資本金の額が1億以下の普通法人 事業税の所得割 × 税率( 81%) ⑸ 農事組合法人の特例 ◇「協同組合等」…1号法人と2号法人で事業に従事する組合員に対し給与を支給し ない法人 ◎法人税 年所得800万円以下 18% 年所得800万円超 22%(普通法人 30%) ◎従事分量配当及び利用分量配当が損金算入 ※ 従事分量配当は消費税の課税仕入れに該当します。 ◎清算所得の法人税率 20.5%(普通法人 27.1%) ◎事業税 農業生産法人が行う農業に対しては事業税が非課税です。 作業受託作業は請負業に該当しますので事業税が課税されます。 農業協同組合等に該当の場合 年所得400万円以下 2.7% 年所得400万円超 3.6% 3 農業生産法人に関連する税金の特例 ⑴ 農業経営基盤強化準備金制度 この制度は、青色申告している認定農業者(個人・農業生産法人)等が、水田経営所 ― ― 79 得安定対策交付金などの交付金を受け一定の計画に基づき「農業経営基盤強化準備金」 として積み立てた場合に、その金額を損金算入できるという制度です。積み立ての対象 となる交付金は、①水田経営所得安定対策(生産条件不利補正交付金、収入現象緩和交 付金、担い手経営革新促進交付金)、②米政策改革推進対策(水田農業構造改革補助金、 水田農業構造改革交付金、耕畜連携水田活用対策事業費補助金のうち取組面積助成事業 に係るもの) 、③農地・水・環境保全向上対策(営農活動支援交付金(地方公共団体が これと一体的に交付するものを含む))です。 また、 「農業経営基盤強化準備金」を積み立てた認定農業者等が、農用地等を取得し た場合には、その準備金を取り崩し圧縮記帳(損金)することができます。ただし、減 価償却資産である農業機械等の圧縮記帳は、課税の繰り延べになります。 この、農業経営基盤強化準備金は、積立事業年度より5年経過して取り崩しがなかっ た場合、積立事業年度6年目より取り崩して益金算入となります。 なお、この規定は適用期限の延長により平成23年3月31日までの間に開始する事業年 度において適用されます。 ⑵ 肉用牛売却による課税所得の特例 農業者が肉用牛を一定の方法で売却した場合、その売却した肉用牛のうち、売却価格 100万円未満の免税対象飼育牛の売却利益に相当する額を損金の額に算入することがで きます。 (ただし、売却頭数が年間2,000頭を超える場合、その超える部分の所得と、売 却価格が50万円以上の乳用種を除外します。) ⑶ 法人に農地等を現物出資した場合の800万円特別控除 法人に、お金ではなく農地や建物、農機具などを現物で出資した場合には、個人が法 人に資産を売却したものとみなして譲渡所得税が課税されます。 そのうち農地等の現物出資には、譲渡所得のうち800万円が控除されます。また、農 地保有合理化法人が行う「農業生産法人出資・育成事業」(農地保有合理化法人が農業 生産法人に現物出資して、法人の規模拡大を支援する)のために農地を売却した場合に も、800万円が控除されます。 ⑷ 贈与税納税猶予制度適用農地等に係る法人化特例 平成17年3月31日までに農地等に係る贈与税の納税猶予の特例の適用を受けている者 が、一定の要件を満たす農業生産法人に対し、一括して納税猶予の適用を受けている農 地等について、平成23年3月31日までに使用賃借による権利の設定をした場合、その設 定した旨の届出書が納税地の所轄税務署長に提出されたときは、その権利の設定はな かったものとみなして贈与税の納税猶予の特例が継続されます。 ① 認定農業者(注1) ア 当該受贈者が当該農業生産法人の代表権を有する役員であること。 イ 当該受贈者が当該農業生産法人の常時従事者(年間150日以上)であり、かつ、 ― ― 80 農作業(年間60日以上)に従事すること。 ② 特定農業法人(注2) ア 当該受贈者が当該農業生産法人の役員(代表者でなくても可)であること。 イ 当該受贈者が当該農業生産法人の常時従事者(最短で年間60日最長で年間150 日(注3)以上)であり、かつ、農作業(年間60日以上)に従事すること。 (注1) 農業経営改善計画の有効期間が経過した場合にあっては、一定の期間内に新た な農業経営改善計画の認定を受けた認定農業者であること。 (注2) 特定農用地利用規程の有効期間が経過した場合にあっては、一定の期間内に新 たな特定農用地利用規程に位置付けられた特定農業法人であるか、又は農業経営 改善計画の認定を受けた認定農業者であること。 (注3) 特定農業法人である場合の農業従事日数は①又は②のいずれか多い日数 ① 当該特定農業法人の経営面積に相当する必要農業従事日数〔農地面積×農林水 産大臣が定める日数(33日/ ha)により算出〕を構成員数で除した日数(60日 を下回る場合は60日) ② 贈与税納税猶予適用農地等に相当する必要農業従事日数〔農地面積×農林水産 大臣が定める日数(33日/ ha)により算出〕 ⑸ 相続税納税猶予制度適用農地等に係る特例 ① 市街化区域以外の農地等について、農業経営基盤強化促進法の規定に基づき貸し付 けられているものは継続して納税猶予の適用を受けることができます。 ※ ただし、現行制度であった、20年間の営農継続により猶予税額が免除される措置 は平成21年度税制改正により廃止されました。 ※ 贈与税納税猶予制度適用、市街化地域内の農地等については現在この適用があり ません。 ② 納税猶予期間中に身体障害等のやむを得ない事情により営農継続が困難となり、農 地を貸し付した(営農を廃止した)場合でも納税猶予が継続されます。 ⑹ 青色申告を提出する個人又は法人が「米穀の新用途への利用の促進に関する法律」に 規定する「生産製造連携事業計画」について認定を受け、平成23年3月31日までの間に 「新用途米穀加工品等製造設備(例えば米粉製造設備など)」を取得した場合には、取得 価格の30%を特別償却できます。 4 そ の 他 ⑴ 農地等の譲渡所得の特別控除 農地等を農振法に基づく農業委員会のあっせんや農業経営基盤強化促進法に基づいて 譲渡した場合及び農地保有合理化法人に譲渡した場合などは、譲渡所得から最高800万 円の特別控除額が控除されます。 ― ― 81 ⑵ 中小企業投資促進税制 ① 青色申告書を提出する中小企業者又は農業協同組合等で、平成22年3月31日までの 間に一定の機械装置、器具備品等を取得し、一定の事業の用に供した場合、その取得 価額の7%の税額控除又は30%の特別償却(リースの場合には、リース費用の総額の 60%について7%の税額控除を適用)を認める制度です。 ② 適用対象設備等 その製作の後事業の用に供されたことのない(新品の)次の設備等です。 ア 1台又は1基の取得価額が160万円以上の機械及び装置 (リースの場合はリース料の総額が210万円以上) イ 1台又は1基、若しくは同一種類の複数設備の合計の取得価額が120万円以上の 電子計算機(パソコン等)又はデジタル複合機(デジタル複写機は該当しません) (リースの場合はリース料の総額が160万円以上) ウ 取得価額が70万円以上のソフトウエア (リースの場合はリース料の総額が100万円以上) エ 車輌及び運搬具(車輌総重量3.5トン以上のもの) オ 内航運送業及び内航船舶貸渡業の用に供される船舶 ③ 税額控除額 基準取得価額×7%(リースの場合にはリース費用の総額×60%×7%) ただし、その事業年度の所得に対する法人税額の20%に相当する金額を限度とします。 例えば、1千万円の機械を購入した時は、70万円の控除を受けることができま す。(ただし、その年の事業所得が200万円の時は、所得の20%の40万円が控除額 の上限となります。) メリット:減価償却額は通常通りですが、所得税額又は法人税額の控除が行える ため、長期トータルの税額でみると納税額は減ります。 ④ 特別償却限度額 基準取得価額×30% ここで基準取得価額とは、内航船舶については取得価額の75%相当額、その他の対 象設備等については、その取得価額をいいます。 ― ― 82 初年度、上乗せして特別償却 特別償却分は早期に投資回収 普通減価償却額 メリット:投資初年度の負担が大きく軽減され、キャッシュフローの改善に役立 ちます。また、償却期間が短縮されるため新規投資へのインセンティ ブ効果が高まります。ただし、初年度以後においては減価償却額が減 少して利益が多くでるため、償却が終了するまでのトータルの所得税 額又は法人税額でみると、納税額は変わりません。 ⑶ 人材投資促進税制 中小企業者等において、適用する事業年度(単年度)の労働費用に占める教育訓練費 の割合が0.15%以上の場合、割合に応じて当該教育訓練費の総額の8∼12%に相当する 額を税額控除できます。 ⑷ 研究開発促進税制・中小企業技術基盤強化税制 平成22年3月31日までの間に開始する各事業年度において損金の額に算入される試験 研究費の額がある場合、その試験研究費の額の一定割合の金額をその事業年度の法人税 額から控除できます。 控除額の計算としては、試験研究費の総額を一定割合(8∼12%)で税額控除するの に加え、①試験研究費の増加額の5%を税額控除するか②売上高の10%を超える試験研 究費部分に税額控除割合を乗じた額を税額控除するか選択適用できます。ただし、控除 の限度は最大で法人税額の30%です。 ⑸ エネルギー需給構造改革投資促進税制 平成22年3月31日までの間にエネルギーの有効利用または石油以外のエネルギー資源 の利用に著しく資する機械その他の減価償却資産で1台又は1基の取得価額が200万円 以上のものを所得等し、その日から1年以内に事業の用に供した場合には、その基準取 得価額の30%の特別償却又は7%の税額控除の選択適用ができます。(農業用機械等で は、施設園芸用地熱利用温風発生装置等を取得等した場合に適用できます) ⑹ 少額減価償却資産の取得価額の損金算入制度 平成20年4月1日から平成22年3月31日までの間に取得価額が30万円未満の減価償却 ― ― 83 資産を取得し、かつ、事業の用に供した場合、その事業年度で年間300万円を限度とし て全額損金算入できます。 なお、年間300万円を超える部分の金額に相当する減価償却資産については通常の有 形固定資産として資産計上し、減価償却を行うこととなります。 ⑺ 情報基盤強化税制 中小企業等が平成22年3月31日までの間に高度な情報セキュリティーが確保された一 定の情報システム等を取得等し事業の用に供した場合、その基準取得価額の50%の特別 償却又は10%の税額控除(法人税額の20%相当額を限度)の選択適用ができます。 対象設備は、一定の OS 及びこれと同時に設置されるサーバーや、一定のデータベー ス管理ソフトウエア及びこれと同時に設置されるアプリケーションソフトウエアなどで す。資本金1億円以下の法人の場合、取得価額の合計金額の基準は、70万円以上、また リース投資も対象となります。(リース費用の総額420万円以上) ⑻ 欠 損 金 ① 青色申告を提出している法人は欠損金を7年間繰越すことができます。 (欠損金の繰越控除制度) ② 青色申告を提出する中小企業等は当期事業年度において欠損金を生じた場合、欠損 金を前期の所得に繰り戻し計算を行い前期の法人税額の一部または全部を還付するこ とができます。(欠損金の繰戻還付制度) ⑼ 接待交際費の損金算入限度額 1人当たり5,000円以下の飲食費(役職員の間の飲食費(福利厚生費等に該当するも の)を除く。)が、その支出した事業年度の損金の額に算入できます。 資本金1億円以下の法人については、定額控除額(年間400万円)までの金額の損金 算入割合が90%とされています。 ⑽ 取引相場のない株式等に係る相続税の納税猶予 事業承継相続人が、非上場会社を経営していた被相続人から相続等によりその会社の 株式等を取得し、その会社を経営していく場合、事業承継相続人が納付すべき相続税の うち、相続等により取得した議決権株式等(発行済議決権株式の総数等の3分の2に達 するまでの部分)に係る課税価格の80%に対応する相続税の納税が猶予されます。 ⑾ 中小企業等については、その他貸倒引当金の特例があります。 ※ 法人の税制については、平成21年4月1日から平成22年3月31日の期間を対象に記載しています。 ― ― 84 Ⅱ 個人の経営資産等を法人に移行する方法 法人成りに伴い、経営に必要な資産等の財産を個人事業から法人に移す方法は、①現物出 資で行う方法、②リース、又は賃貸借で行う方法、③財産の引継ぎで行う方法があります。 一般的には「リース又は賃貸借」と「財産の引継ぎ」で行われています。「財産の引継ぎ」 にあたっての留意点は次のとおりです。 1 財産の引き継ぎ日 原則として法人の設立日に財産を引き継ぐことになります。 2 引き継ぐ財産の確定 ⑴ 財産の引き継ぎ前に個人事業の決算を行い、個人に残す財産と法人に引き継ぐ財産を 決めます。 ⑵ 引き継ぐ財産が確定したならば、 「引き継ぐ資産」と「引き継ぐ負債」とに区分した「引 き継ぎ財産一覧表」を作成し、財産の引継ぎを行います。なお、この場合「引き継ぎ資 産」と「引き継ぎ負債」を別にしてその金額の合計額を算定し記入してください。 3 引き継ぎ後の法人の会計処理 財産の引継ぎがあったときは、「引き継ぎ資産」を貸借対照表の資産の部、「引き継ぎ負 債」は負債の部に記帳します。 さらに、 「引き継ぎ資産」と「引き継ぎ負債」との差額については、 ア 引き継ぎ資産>引き継ぎ負債の場合は、その差額を「未払金」又は「借入金」とし て負債の部に記帳します。 イ 引き継ぎ資産<引き継ぎ負債の場合は、その差額を「貸付金」として、資産の部に 記帳します。 4 財産の引き継ぎと税金の関係 財産の引き継ぎは、原則として譲渡であり、譲渡益に対しては譲渡所得税の課税の対象 となりますので、注意してください。 ⑴ 土地・建物の引き継ぎ(分離譲渡所得) 土地・建物の引き継ぎは、個人から法人へ売買(譲渡)があったものとみなされ、譲 渡所得税(分離課税)の対象となります。 ① 土地の譲渡所得税={時価−(取得価額+譲渡経費) }×税率であり、一般的には 課税対象になるため、財産の引き継ぎではなく、賃貸借権の設定で行われています。 なお、農業生産法人については、農地を現物出資した場合は、譲渡所得の特別控除 が800万円まで認められます。 ② 建物の譲渡所得は引き継ぎ価額(時価)−帳簿価額(取得価額から減価償却の累計 額を差し引いた価額)=譲渡益(譲渡損)で計算します。 ⑵ 車輌・農機具・家畜・樹木等の減価償却資産の引き継ぎ(総合譲渡所得) ― ― 85 引き継ぎ価額(時価)−帳簿価額(取得価額から減価償却の累計額を差し引いた価額) =譲渡益(譲渡損)で計算します。 ① 譲渡益が発生した場合は、譲渡所得税が課税されますが、50万円までの控除が認め られます。 ② 帳簿価額が引き継ぎ価額を上回れば譲渡損が発生します。この場合は、個人の農業 所得と損益通算が認められます。 ⑶ 育成中の家畜・未成園・未収穫農産物の棚卸資産の引き継ぎ(農業所得) これらの資産は、法人成りでは原則として、引き継ぐことになります。 そして、その引き継ぎ代金は、個人の農業所得に計上し、法人としては損金に算入す ることになります。 ① 牛馬・果樹等の未成熟の生物を引き継ぐ場合は、種類別に「在庫内訳書」を作成し ます。引き継ぎ価額は時価(市場価額)ですが、市場価額が不明の場合は、育成原価 による帳簿価額を引き継ぎ価額とします。 ② 未収穫農産物は引き継ぎ価額の算定が難しいので、無評価で行うことが認められま す。 ⑷ 飼料・肥料等生産資材の在庫資産の引き継ぎ(農業所得) これらの生産資材の在庫を法人が引き継ぐことが出来ますが、この場合種類別に数量 を拾い上げ、取得原価により金額を算定します。 この引き継ぎ価額は、個人の農業所得に計上し、法人としては損金に算入します。 ⑸ その他の財産の引き継ぎ 現金・預金及び借入金の引き継ぎもできますが、これらの財産については、課税され ません。 ただし、貸倒れが確定している不良債権(回収不能な売掛金、未収金、貸付金等)を 引き継ぎした場合は、貸倒損失が発生しても損金算入は認められません。 ― ― 86 法人形態 農 事 組 合 法 人 株 式 会 社 根 拠 法 農 業 協 同 組 合 法 法 人 税 法 税 金 ①法人税率(確定給与を支払わない農 ①法人税率(資本金1億円以下の中小 法人) 事組合法人) 年所得800万円以下(注) 18.0% 年所得800万円以下(注) 18.0% 年所得800万円を超える金額 22.0% 年所得800万円を超える金額 30.0% ②従事分量配当を損金に算入 ②役員報酬を損金に参入 ※役員報酬の支給と併給可能です。 ※「特殊支配同族会社」となった場 ※従事分量配当は消費税の課税仕入 合、社長の役員報酬と所得金額に よっては給与所得控除額分が損金 れに該当します。 になりません。 ③解散した場合の清算所得に対する法 ③解散した場合の清算所得に対する法 人税率 20.5% ④事業税 人税率 27.1% ④事業税 農業生産法人の要件を満たす農事組 資本金1億円超 外形標準課税 合法人が行う農業に対して事業税は 資本金1億円以下 すべて非課税となります。 (作業受 年400万円以下の所得 託は請負なので課税) 2.7% 年400万円超800万円以下の所得 4.0% 農業協同組合等に該当の場合 年800万円超の所得 年所得400万円以下 2.7% 年所得400万円超 3.6% 5.3% (注) 平成21年度改正により平成21年4月1日から平成23年3月31日までの間に終了 する各事業年度の法人税率が現行22%より引き下げられました。 ― ― 87 経営資産の移行方法別分類 会社設立直前の貸借対照表及び資産台帳、借入金明細等から、個人に残す財産、法人に引 き継ぐ財産に分類する。 勘定科目 法人に引き継ぐ(譲渡)財産 リース・貸借する財産 ― ― 88 個人に残す財産 設 備 賃 貸 料 算 定 表 1 資産賃貸料の価額は、通常世間一般の時価相場によりますが、親子関係にある会社や同 族会社などでは合理的に決定する必要があります。 税務上は原則として時価により(時価法)、時価が明らかでない場合、原価法によらざ るをえません。 2 原価法による賃貸料の算定は表のとおりです。 貸 与 資 産 資 産 維 持 費 用 減価償却費 固定資産税 損害保険料 支払利息 (修 繕 費) 計 Ⓐ 利益(Ⓐ×%)Ⓑ 相当賃貸料Ⓐ+Ⓑ 3 総合勘案の結果、適正な賃貸料等次のように決めます。 決定賃貸料 円 賃料支払日 支払の方法 ― ― 89 合 計 農業法人の標準勘定科目 (社団法人日本農業法人協会制定) 1.資 産 勘 定 科 目 解 説 備 考 消 費 税 資 産 の 部 流 動 資 産 当 座 資 産 現 金 通貨および通貨代用証券 × 当座勘定取引契約に基づく決済用預 借越は短期借入金に振替 当 座 預 金 普 通 預 金 普通預金契約に基づく預金 × 定 期 預 金 一定期間の預入れを約定した預金 × 定 期 積 金 そ の 他 預 金 受 取 売 手 証 × 額の給付を受ける掛金 上記以外の預金 納税準備預金、貯蓄預金、通 知預金、金銭信託等 × 通常取引による手形債権 × 金 通常取引による営業上の未収金 × 金銭債権に対する取立不能見込額 × 掛 価 定額定期払込みにより満期に契約金 × 形 △貸 倒 引 当 金 有 金 券 一時所有目的の市場価格のある有価 譲渡△(5%換算) 証券 棚 卸 資 産 商 品 販売目的で購入した物品 × 製 品 販売目的で生産した物品 × 中間製品で販売可能なもの 荒茶など 生産目的で消費される物品 種子、冷凍精液、肥料、飼料、 半 製 品 原 材 料 仕 掛 品 貯 蔵 品 敷料、諸材料 製品生産のため製造中のもの 未収穫農産物、販売用動物 生産・販売以外の目的で貯蔵される 包装材料、収入印紙等 物品 × × × × その他の流動資産 前 渡 金 商品・原材料等購入のための前払金 有形減価償却資産購入の前払 金は「建設仮勘定」 継続的役務提供に対する前払金で1 税法上は一般に損金算入可 × 前 払 費 用 未 収 収 益 継続的役務提供による未収金 1年超のものを含む × 未収消費 税 等 消費税・地方消費税の未収金 確定申告による還付額 × 短 期 貸 付 金 未 立 収 入 替 金 金 年内に費用となるもの 取引先、従業員等に対する1年以内 × の返済期限の貸付金 固定資産の売却等による営業外の未 × 収入金 取引先等に対する一時的な立替払金 顧客負担製品等送料、従業員 負担概算雇用保険料 ― ― 90 × × 勘 定 科 目 仮 払 解 説 金 仮 払 配 当 金 仮払法人 税 等 (仮払消費税等) 繰延税金 資 産 備 考 消 費 税 帰属すべき勘定又は金額の確定しな 貸借対照表に計上するのはや い支払金 × むをえない場合に限る 従事分量配当見合いとして支給した × 金額 法人税等から控除される予定納税 源泉所得税、利子割、中間法 額、利子配当の源泉徴収税額 人税等。確定申告還付額 税抜経理方式の場合の課税仕入れ中 中間納付消費税等を含む の消費税相当額 税効果会計の適用による資産計上額 × ○(×中間納付) 1年超のものは長期繰延税金 × 資産 固 定 資 産 有形固定資産 建 物としての実体をもつ固定資産 物 建物付属 設 備 構 機 築 械 物 装 置 車 両 運 搬 具 器 具 備 生 繰 品 物 延 生 物 一括償却 資 産 土 地 建 設 仮 勘 定 育 成 仮 勘 定 土地に定着する工作物で周壁、屋根 ○ を有するもの 建物に固着して使用価値を増加させ ○ るもの又は維持管理上必要なもの 建物以外の土地に定着した工作物、 ○ 土木設備 運動機能をもつ機具又は工場等の設 ○ 備 人、物の運搬を主目的とする機具 ○ 移設容易な家具、電気・事務機器等 パイプハウス、ホダ木、防除 の機具 用ヘリコプタを含む 減価償却資産である生物 搾乳牛、果樹など 税法固有の繰延資産として経理する バラの親株など 生物 ○(×自己育成) ○(×自己育成) 一括償却を選択した取得価額20万円 ○ 未満の減価償却資産 営業目的で所有する土地 投資目的は「投資不動産」 有形固定資産の建設による支出 × ○(×労務費 相 当額) 育成中の生物に対する支出 同上 △減価償却累計額 無形固定資産 ○ × 物としての実体をもたない固定資産 法律上の権利など 生乳の生産枠など 営 業 種 有償で譲り受けた超過収益力 商 標 権 登録に基づく商標の独占的使用権 ○ ○ 実 用 新 案 権 ○ 意 権 ○ 権 ○ 育 匠 成 者 ソフトウ ェ ア 土地改良負担金 借 家 権 借 地 権 電 話 加 入 権 ソフトウェアの購入、委託開発費用 受益者負担金のうち公道等取得費対 ○ 税法上の繰延資産 応部分 ×(事業者の 定 めによる。) 礼金、権利金 × 加入電話契約に基づく工事負担金 ― ― 91 ○ 勘 定 科 目 解 説 備 考 消 費 税 投 資 等 譲渡△(5%換算) 投資有価 証 券 長期保有目的の有価証券 関係会社 株 式 親会社、子会社、関連会社の株式 出 出資による持分 資 金 関係会社出資金 長 期 貸 付 金 破 産 等 債 権 長期前払 費 用 客 土 保 険 積 立 金 経営安定積立金 長 期 預 け 金 繰延税金 資 産 JA出資金 譲渡△(5%換算) 親会社、子会社、関連会社に対する 出資金 取引先、従業員等に対する1年超の × 貸付金 破産債権、再生債権、更生債権その 不渡手形を含む 他これらに準ずる債権 1年を超えて費用となる前払費用 未経過分信用保証料など 客土で支出の効果が1年以上に及ぶ 税法上の繰延資産 もの 積立保険料・共済掛金 × × ○ × 作目別の経営安定対策の拠出金 品目横断的経営安定対策のナ ラシ対策の積立金 取引開始に伴って差し入れる保証金 × × 等 税効果会計の適用による資産計上額 × 繰 延 資 産 創 立 費 開 業 費 開 発 費 法人設立のため特別に支出する費用 定款作成費用、設立登記費用 ○(×定款認証 料・登録免許税) 開業準備のため特別に支出する費用 ○ 市場開拓等のために特別に支出する ○ 費用 消費税 ◎=課税売上げ、△=非課税売上げ、○=課税仕入れ、×=非課税仕入れ又は課税対象外 2.負債・純資産 勘 定 科 目 解 説 備 考 消 費 税 負 債 の 部 流 動 負 債 買 掛 金 短 期 借 入 金 未 払 金 通常取引による営業上の未払金 返済期限が1年以内に到来する借入 固定資産の購入等による営業外の未 未 継続的役務提供に対する未払金 用 固定資産税、労働保険料 払金 配当に対する未払金 費 × 金 未 払 配 当 金 払 × × × × 未 払 法 人 税 等 法人税、住民税及び事業税の未払金 確定申告による納税額 × 未 払 消 費 税 等 消費税の未払金 確定申告による納税額 × 前 受 金 預 り 金 受注品等に対する代金受入額 受け入れた金銭等で返還すべき債務 × 源泉所得税、住民税、社会保 険料 ― ― 92 × 勘 定 科 目 仮 受 解 説 金 (仮受消費税等) 賞 与 引 当 金 備 考 帰属すべき勘定又は金額の確定しな 消 費 税 × い受取金 税抜経理方式の場合の課税売上げ中 決算整理で清算 の消費税相当額 使用人の賞与に充てるため繰り入れ ◎ × た額 繰 延 税 金 負 債 税効果会計の適用による負債計上額 × 固 定 負 債 長 期 借 入 金 返済期限が1年を超える借入金 × 役員等長期借入金 長 期 未 払 金 × 弁済期限が1年を超える未払金 × 退職給付引当金 × 繰延税金負債 × (圧縮特別勘定) × (農用地利用集積準備金) × (農業経営基盤強化準備金) × 純 資 産 の 部 株 主 資 本[Ⅰ] 資 本 金[1] × 株主、社員、組合員が拠出した資本 資本剰余金[2] 資本準備金[⑴] 払込剰余金、 (農)の加入金 その他資本剰余金 × × [⑵] 利益剰余金[3] 利益準備金[⑴] × その他利益剰余金 [⑵] 特別償却準備金 特別償却に代えて損金算入額を利益 × 処分により積み立てた額 農用地利用集積準備金 農業収入の9%を利益処分により積み立てた額 特定農業法人のみ 農業経営基盤強化準備金 生産条件不利補正交付金、収入減少影響緩和交付 金、担い手経営革新促進交付金、水田農業構造改 革補助金、水田農業構造改革交付金、耕畜連携水 田活用対策事業費補助金のうち取組面積助成事業 に係るもの、営農活動支援交付金(地方公共団体 がこれと一体的に交付するものを含む。) × 圧 縮 積 立 金 圧縮記帳による損金算入額を利益処分により積み立てた額 × 圧縮特別勘定 翌年度以降の圧縮記帳のため特別勘定に経理した金額 × (その他目的積立金) 別 途 積 立 金 × × 特定の目的を定めていない任意積立金 × 従来の当期未処分利益 繰越利益剰余金 ×(事業分量配当は 課税売上げ返還) 自 己 株 式[4] × 評価・換算差額等[Ⅱ] その他有価証券評価 × 差額金[1] ― ― 93 勘 定 科 目 解 説 備 考 消 費 税 繰延ヘッジ損益 [2] 土地再評価差額金 × [3] 新 株 予 約 権[Ⅲ] 消費税 ◎=課税売上げ、△=非課税売上げ、○=課税仕入れ、×=非課税仕入れ又は課税対象外 3.損益計算書 勘 定 科 目 解 説 備 考 消 費 税 売 上 高 製 品 売 上 高 商 品 売 上 高 製品の販売金額 適宜、作目別売上高に区分す る(稲作売上高、等) 商品の販売金額 仕入販売収入 固定資産である生物の売却収入 廃牛、廃豚の売却収入、適宜、 生 物 売 却 収 入 作目別に区分する(廃牛売上 ◎③ ◎①又は② ◎④ 高、廃豚売上高) 作 業 受 託 収 入 価 格 補 填 収 入 農作業等の作業受託による収入 農畜産物の価格安定基金等による補 品目横断的経営安定対策の数 填金 量払いの交付金 その他事業売上高 売 上 原 価 ◎④ 適当な名称をつけること × ◎ 商品の仕入原価、製品の製造原価 期首商品製品棚卸高 商品・製品の期首在り高 × 当期商品仕入高 商品の当期における仕入高 当 期 製 品 製 造 原 価 製品の当期における製造原価 生 物 売 却 原 価 △期末商品製品棚卸 ○ (製造原価報告書より) 固定資産である生物の売却直前の帳 × 簿価額 商品・製品の期末在り高 × 高 △事 業 消 費 高 売 上 総 利 益 事業用に消費した製品の評価額 飼料費、広告宣伝費、福利厚 生費等振替高 × =売上高−売上原価 販売費及び一般管理費 (販売費及び管理費明細より) 営 業 利 益 =売上総利益−販売費及び一般管理費 営 業 外 収 益 金融収益その他営業外の経常的収益 臨時的収益のうち少額のもの を含む 受 受 取 取 利 配 当 息 金 預貯金および貸付金に対して受け取 △ る利息 株式や出資金などに対して受け取る × 配当金 受 取 地 代 家 賃 一 般 助 成 収 入 △(○非住宅) 経常的に交付される助成金 雇用調整助成金など 産地づくり対策の交付金 一部、圧縮記帳の対象、品目 作 付 助 成 収 入 横断的経営安定対策の面積払 いの交付金 ― ― 94 × × 勘 定 科 目 雑 収 解 説 入 営 業 外 費 用 その他の営業外収益 備 考 消 費 税 ダンボールや肥料袋の売却代 ◎ 金など 金融費用その他営業外の経常的費用 臨時的損失のうち少額のもの を含む 支 払 利 息 借入金の支払利息 信用保証料を含む × 旧「支払割引料」勘定 × 手 形 譲 渡 損 手形の割引・裏書により生じた損失 創 立 費 償 却 繰延資産に計上した創立費の償却額 開 業 費 償 却 繰延資産に計上した開業費の償却額 廃 畜 処 分 損 生物の処分により生じた損失 廃 畜 処 理 費 生物の処分に伴う処理費用 ○ 失 その他の営業外費用 ○ 雑 損 経 常 利 益 × × 未償却残高 × =営業利益+営業外収益−営業外費 用 特 別 利 益 臨時利益及び過年度損益修正益 前期損益修正益 固定資産売却益 × 固定資産の売却による利益 投資有価証券の売却による利益 資 産 受 贈 益 資産の無償・低額譲受けによる利益 受 取 共 済 金 保 険 差 益 国庫補助金収入 償却債権取立益 ×(◎④売却 収 入) 投資有価証券売却益 経営安定補填収入 売却収入−未償却残高 時価−購入対価 × 収穫共済など棚卸資産に対する共済 × 金・保険金 経営安定対策の補填金のうち生産者 経営安定対策補填金(拠出相 拠出金以外の部分 当分控除後) 固定資産に対する共済金・保険金か 圧縮記帳の対象 × × ら災害損失を控除した額 固定資産の取得のため交付された補 圧縮記帳の対象 × 助金 過年度に貸倒処理済の債権の回収額 貸倒回収 貸 倒 引 当 金 戻 入 額 前期繰入れ貸倒引当金の当期の戻入額 × 特 別 損 失 臨時損失及び過年度損益修正損 前期損益修正損 役員退職慰労金 固定資産売却損 固定資産除却損 災 特 害 別 損 償 却 失 費 × 役員に対する退職金 × 固定資産の売却により生じた損失 未償却残高−売却収入 × (◎④売却 収 入) 固定資産の除却により生じた損失 未償却残高 災害による固定資産の損失(保険金 未償却残高+減失経費−(保 等で補填された額を除く) 険金収入) 租税特別措置法による特別償却費 × ×(○減失経費) × (固定資産圧縮損) × (圧縮特別勘定繰入額) × (農用地利用集積準備金繰入額) × (農業経営基盤強化準備金繰入額) × 税引前当期純利益 =経常利益+特別利益−特別損失 法人税、住民税及び事 当期の法人税、住民税、事業税の見 業税 積計上額 ― ― 95 源泉税額+予定・確定納税額 × 勘 定 科 目 解 説 備 考 消 費 税 法人税等調整額 × 当 期 純 利 益 =税引前当期利益−法人税等 消費税 ◎=課税売上げ(①=第1種事業、②=第2種事業、③=第3種事業、④=第4種事業、⑤=第5種事業)、 △=非課税売上げ、○=課税仕入れ、×=非課税仕入れ又は課税対象外 4.製造原価報告書 勘 定 科 目 解 説 材 料 費 原材料の期首在り高 × 種籾その他の種子、種芋、苗類など 種 苗 費 素 蓄 費 肥 料 費 肥料の購入費用 飼 料 費 飼料の購入費用、自給飼料の振替額 △飼 料 補 填 収 入 農 薬 費 敷 料 費 材 材 料 料 仕 入 費 高 △期 末 材 料 棚 卸 高 労 務 費 賃 金 手 消 費 税 物品の消費に生ずる原価 期首材料棚卸高 諸 備 考 ○ の購入費用 種付費用、素畜購入費用 ○ (×運送保 険 料) ○ ○(×自給飼料) 配合飼料価格安定基金の補填金 農薬、家畜用の薬剤費の購入費用 × 共同防除負担金を含む ○(×防除負 担 金の一部) 敷料の購入費用 ○ 被覆用ビニール、鉢、針金などの購 ○ 入費用 加工品の材料の購入費用 自給材料の振替額を含む 原材料の期末在り高 ○ × 労働用役の消費により生ずる原価 当 雑 給 賞 与 法 定 福 利 費 福 利 厚 生 費 作 業 用 衣 料 費 外 注 費 生産業務に従事する常雇の従業員の × 労賃 生産業務に従事する臨時雇の従業員 × の労賃 生産業務従業員の臨時的な給与 労働保険料、社会保険料の事業主負 × 退職金共済掛金を含む 担額 生産業務従業員の保健衛生、慰安、 非課税通勤手当含む 慶弔等費用 作業服、軍手、長靴、地下足袋など × ○(×慶弔金) ○ の購入費用 作業請負に対して支出する原価 賃耕料、刈取料などの農作業委託 ○ 作 業 委 託 費 診 療 衛 生 費 獣医の診療報酬等 ○ 料 家畜の育成、肥育の委託料 ○ ヘルパー利用料 酪農などヘルパーの利用料 委 加工品の委託による加工費用 預 託 託 加 工 費 料、共同施設利用料 ― ― 96 雇用契約によるものを除く ○ ○ 勘 定 科 目 解 説 製 造 経 費 農 具 費 工 場 消 耗 品 費 修 動 繕 力 光 費 熱 備 考 消 費 税 材料費、労務費、外注費以外の原価 費 取得価額10万円未満又は耐用年数1 ○ 年未満の農具購入費用 加工品の製造に際して消耗される物 ○ 品の費用 生産用固定資産の修理費用 ○ 生産用の電気、水道料金やガソリン、 ○ 軽油などの燃料費 作物や農業用施設の共済掛金、価格 経営安定対策は経営安定対策 損失補てん負担金など 積立金 とも補償拠出金 転作のとも補償拠出金 受取額は転作助成収入 減 価 償 却 費 生産用の固定資産の減価償却費 × 支 払 小 作 料 農地の地代(小作料) × 地 代 貸 借 料 土 地 改 良 費 特 許 使 用 料 共 済 租 掛 税 公 金 課 農業用施設の敷地の地代、農業用建 × × ○(×地代) 物の家賃、農機具の貸借料 土地改良事業の費用のうち毎年の必 × 要経費になる部分 種苗などのパテント使用料 ○ 生産用の固定資産に対する固定資産 × 税・自動車税など 当期総製造費用 期首仕掛品棚卸高 仕掛品(未収穫農産物、販売用動物 × 等)の期首在り高 △育成費振替高 育成中の生物に対する当期の支出と × して原価から控除する額 △期末仕掛品棚卸高 仕掛品(未収穫農産物、販売用動物 × 等)の期末在り高 当期製品製造原価 製品の当期における製造原価 (損益計算書へ) 消費税 ◎=課税売上げ、△=非課税売上げ、○=課税仕入れ、×=非課税仕入れ又は課税対象外 5.販売費及び一般管理費明細 勘 定 科 目 解 説 役 員 報 酬 役員に対する給料 給 料 手 当 販売業務に従事する常雇の従業員の 給料 販売管理業務に従事する臨時雇の従 給 賞 与 販売管理業務従業員の臨時的な給与 法 職 定 福 金 利 費 消 費 税 × 雑 退 備 考 業員の給料 退職に伴って支給される臨時的な給 与 販売管理業務従業員の社会労働保険 退職金共済掛金を含む 料の事業主負担額 ― ― 97 × × × × × 勘 定 科 目 福 利 厚 生 解 説 費 販売管理業務従業員の保健衛生、慰 備 考 非課税通勤手当を含む 安、慶弔等の費用 賞 与 引 当 金 繰 入 額 賞与引当金の当期繰入額 荷 造 運 賃 ○ 運送費用 売 手 数 料 JAや市場の販売手数料 広 告 宣 伝 費 ○(×慶弔金) × 出荷用包装材料の購入費用、製品の 販 消 費 税 ○ 不特定多数への宣伝効果を意図して ○ 支出する費用 取引先の接待、供応、慰安、贈答の 交 際 費 会 議 費 打合せ等の費用 ○ ○ 旅 費 交 通 費 出張旅費、宿泊費、日当等の費用 事 務 通 信 費 車 店 図 支 両 舗 書 経 研 払 修 費 修 報 繕 ○(×慶弔金) ため支出する費用 事務用消耗品費、通信費、一般管理 振込手数料、事務用品の貸借 用の水道光熱費 料を含む ガソリン代、車検費用等販売管理用 自賠責・任意保険料を除く 車両の維持費用 ○ ○ 費 店舗用消耗品費、水道光熱費 ○ 費 新聞図書費、研修費 ○ 酬 税理士、司法書士等の報酬 源泉徴収が必要 ○ 費 販売管理用固定資産の修理費用 ○ 減 価 償 却 費 販売管理用の固定資産の減価償却費 × 開 発 費 償 却 繰延資産に計上した開発費の償却額 × 地 支 租 代 払 家 保 税 険 公 賃 販売管理用土地・建物の貸借料 料 販売管理用固定資産の保険料 課 費 同業者団体等の会費 寄 付 金 損 失 法人協会会費など 事業に直接、関連の無い者への金品 社会事業・神社等への寄贈金 の贈与 売掛金などの売上債権の貸倒れによ 費 ○ もの (損益計算書へ) 消費税 ◎=課税売上げ、△=非課税売上げ、○=課税仕入れ、×=非課税仕入れ又は課税対象外 ― ― 98 × × 一般管理費用で他の勘定に属さない 合 計 × 貸倒れ る回収不能額 貸 倒 引 当 金 繰 入 額 貸倒引当金の当期の繰入額 雑 × × 税など 会 倒 自賠責保険料 印紙税、税込経理方式の場合の消費 諸 貸 ○(×地代) Ⅲ 農業法人に関係する社会保障制度 1 労災保険(労働者災害補償保険法) 『労災保険』は、労働者が業務上の事由又は通勤によって負傷したり、病気に見舞われ たり、あるいは、不幸にも死亡された場合に被災労働者や遺族を保護するため必要な保険 給付を行うものです。また、労働者の社会復帰の促進など、労働者の福祉の増進を図るた めの事業も行っています。 ⑴ 農業生産法人(農地利用の法人)に対しての適用 農業生産法人『農事組合法人(2号法人) 、合名会社、合資会社、有限会社で農地法 に規定された要件を満たすもの』の主たる事業である土地の耕作等の農業経営の事業 は、次のようになります。 ① 事業の種類番号 95 農業 ② 労災保険率 12/1,000(賃金総額に乗じます。) ※ 保険料は、全額事業主負担です。 ③ 対 象 者 労働者及び業務執行権のない役員 ④ 特別加入制度 代表者及び代表者以外の役員については、『労働保険事務組合』に事務処理を委託 し、労働局長から特別加入の承認をうけることによって、労働者と同様、業務災害ま たは通勤災害を被った場合に、労災保険から給付を受けることができます。 ⑤ 保険関係成立届と申告納付期限 ◇ 保険関係が成立(事業が開始された日)したときは、「保険関係成立届」「概算保 険料申告書」を保険関係成立の日の翌日から10日以内に労働基準監督署へ提出しな ければなりません。 ◇ 継続事業の概算保険料は、毎年7月10日まで (ただし、年度の中途に保険関係が成立した事業については、保険関係成立の日 から50日以内に申告納付しなければならない。) ◇ 継続事業の確定保険料は、翌年度の7月10日まで (ただし、保険年度の中途に保険関係が消滅した事業については、保険関係消滅 の日から50日以内に申告納付しなければならない。) ◇ 延 納 労災保険料の概算保険料が、20万円以上の場合は延納申請ができ、この場合は、 原則としてその保険料を3回に分けて7月10日、10月31日、1月31日まで、それぞ れ納付することになります。 ◇ 事務組合に委託している場合は、事務組合の取扱方法により納付することになります。 ― ― 99 ⑵ 農業(畜産等)・農業に関連する事業の法人に対する適用事例 農業法人に対する労災保険の適用については、『適用単位としての事業』『事業細目』 等によって適用されます。 ※ 温室、フレーム等で「しいたけ」「いちご」「トマト」等を栽植、栽培を行う事業 ……『農 業』 労災保険率 12/1,000 ※ 畜産業、養鶏業等の事業 ……『農 業』 労災保険率 12/1,000 ※ 農畜産物を原料として食料品の製造をする場合で、それが適用単位の事業と判断さ れたときは、 ……『食料品製造業』 労災保険率 6.5/1,000 ※ 植林、造林または木炭の製造等の事業 ……『林業(その他の林業)』 労災保険料 60/1,000 ※ 農業法人が行う事業は、種々ありますので、労働基準監督署等に相談して下さい。 ⑶ 労災給付の種類 療養補償給付(業務災害) 障害補償給付(業務災害) 療 養 給 付(通勤災害) 障 害 給 付(通勤災害) 休業補償給付(業務災害) 遺族補償給付(業務災害) 休 業 給 付(通勤災害) 遺 族 給 付(通勤災害) 傷病補償年金(業務災害) 葬 祭 料(業務災害) 傷 病 年 金(通勤災害) 葬 祭 給 付(通勤災害) 2 雇用保険(雇用保険法) 『雇用保険』は、労働者が失業した場合に、労働者の生活の安定を図るとともに、再就 職を促進するため必要な給付を行うものです。また、失業の予防、雇用構造の改善等を図 るための事業も行っています。 ① 雇 用 保 険 率(平成21年度のみの暫定措置) 農業 13/1,000 (事業主 8/1,000、被保険者 5/1,000) ② 対 象 者 事業所に雇用されている者。 ◇ 会社・団体の代表者は、被保険者になれません。 ◇ 法人の代表者と同居している親族については、個人事業主と同居の親族の場合と同 様、原則として被保険者になれません。 ③ 保険関係成立届と保険料の申告・納付等 「保険関係成立届」「雇用保険適用事業所設置届」「雇用保険被保険者資格取得届」を 保険関係成立の日の翌日から10日以内に公共職業安定所へ提出します。 保険料の申告は、福島労働局総務部労働保険徴収室へ提出します。 ― ― 100 納付・納期は、労災保険と同様です。 また事務組合に委託した場合も同様です。 ④ 雇用保険の給付等 求 職 者 給 付 給付4制度あり 就職促進給付 給付3制度あり ア 失業等給付 教育訓練給付 給付1制度あり 雇用継続給付 給付3制度あり 雇用安定事業 イ 二 事 業 能力開発事業 (注)6.援助・助成金の活用 を参照して下さい。 3 健康保険(健康保険法) 『健康保険』は、我が国の六つの公的医療保険制度のなかの、民間の勤労者や健保法第 69条の4の規定による労働者の医療保険制度として、勤労者(加入者)が、業務外の事由 によって病気やけがをしたり、死亡したり、又は出産したりしたときや、その被扶養者が これらの保険事故にあったときに備えて、被保険者と事業主とが保険料を負担して、被保 険者とその被扶養者の保険事故に関して保険給付を行い、勤労者やその家族の生活の安定 を図ることを目的としています。 ⑴ 健康保険(政府管掌)制度加入(75歳になるまで) 農業法人を設立することにより、「国民健康保険」から「健康保険(政府管掌) 」に加 入の変更をする手続きが必要です。 ⑵ 健康保険新規適用届 社会保険事務所へ提出します。 適用にあたっては、現在、適用事業所の現況について調査をしてから受付けしています。 調査時に持参する書類等は、社会保険事務所によって若干異なりますが、つぎのよう になっています。 ① 持参する諸帳簿 出勤簿、労働者名簿、賃金台帳、源泉所得税納付書(原本)、現金出納簿、総勘定 元帳、賃金規定等(パート・日雇等の賃金台帳・出勤簿・労働者名簿) ② 適用に必要な諸届 新規適用事業所現況書、資格取得届、被扶養者届 等 ③ 届書に添付する書類 ・法人の登記簿謄本、定款(写)、報酬を取り決めた議事録 ・労働保険(労災、雇用)成立届の写 ・年金手帳及び老齢年金・通算老齢年金証書 ― ― 101 ・保険料は、預金口座振替により納入するよう保険料納入告知書送付依頼書 ⑶ 健康保険の給付等 ① 保険料率 82/1,000 介護保険に該当となる被保険者93.9/1,000 ・被保険者と事業主が半分ずつ負担します。 ・標準報酬月額に保険料率を乗じて計算します。 ・総報酬制の導入により賞与からも毎月の保険料と同率の保険料の納付があります。 (ただし、年度(毎年4月1日から翌年3月31日まで)の累計額540万円となります。) ② 保 険 給 付 ア 医療給付(健保の負担割合) ・療養の給付 70歳以上 1割(現役並み所得者は3割) ・家族療養費 義務教育就学後70歳未満 3割(被保険者、被扶養者ともに) 義務教育就学前 2割 以下、給付の費目を記載します。 入院時食事療養費 入院時生活療養費 保険外併用療養費 訪問看護療養費 家族訪問看護療養費 高額療養費 高額介護合算療養費 イ 現金給付 傷病手当金、出産手当金、移送費、家族移送費、出産育児一時金、 家族出産育児一時金、埋葬料、家族埋葬料 4 厚生年金保険(厚生年金保険法)(70歳になるまで) 『厚生年金保険』は、我が国の七つの公的年金制度のなかの一般勤労者の年金制度とし て、勤労者(加入者)が年をとったり、病気やけがで働くことができなくなったり、ある いは、死亡したときに備えて、加入者全員で保険料を出し合い、また事業主も半分を負担 して、老後は老齢厚生年金、障害者には障害厚生年金、死亡のときは遺族に遺族厚生年金 などを支給し、勤労者やその家族の生活安定を図ることを目的とした制度です。 (注)JR、JT、NTTの共済組合は、平成9年4月に厚生年金に統合されました。 ⑴ 厚生年金保険(農林年金)制度加入 農業法人を設立することにより、「国民年金」「農業者年金」から「厚生年金保険」に 加入の変更をする手続きが必要です。 ただし、『農事組合法人』の役員・従業員については、『農林年金(農林漁業団体職員 共済組合法) 』の組合員の資格を取得し、組合の給付を受けることになります。 ⑷農 林年金 参 照 ⑵ 厚生年金保険新規適用届 社会保険事務所へ提出します。この新規適用届は、 『3 健康保険⑵』に記載した届 ― ― 102 出時と一緒に手続することになっています。 ⑶ 厚生年金保険の給付等 ① 保険料率 153.50/1,000(平成21年9月から157.04/1,000に改正予定) ・被保険者と事業主が半分ずつ負担します。 ・標準報酬月額に保険料率を乗じて計算します。 ・総報酬制の導入により賞与からも毎月の保険料と同率の保険料の納付があります。 (ただし、上限は150万円となります。) ② 保険給付の種類 老齢厚生年金 障害厚生年金・障害手当金 遺族厚生年金 5 退 職 金 制 度 ⑴ 中小企業退職金共済(中小企業退職金共済法) 従業員のための退職金制度です。 ① 掛 金 月 額 一 般 従 業 員 最低限 5,000円 最高額 30,000円(16種類) パート従業員 最低限 2,000円 最高額 30,000円(19種類) ※ 掛金の負担は、全額事業主が負担(事業経費)します。 ② 国 の 助 成 ア 新たに加入する事業主に、掛金の1/2(上限5,000円)を加入後4か月目から 1年間、国の助成があります。 イ 18,000円以下の掛金日額の増額に対して増額分の1/3を増額月から1年間、国 の助成があります。 ③ 基本退職金額(掛金10,000の場合)の例 3年 360,000円 5年 608,200円 7年 867,600円 10年 1,265,600円 退職金=基本退職金+付価退職金 ※付価退職金は、予定運用利回りを上回った場合に上積みする退職金。 ア 退職金は、従業員に事業団から直接支払われます。 イ 退職金は、税法上退職所得とされます。 ④ 契 約 の 締 結 中小企業者が、中小企業退職金共済事業団と『退職金共済契約』を締結します。 ⑤ 加 入 の 申 込 み 各金融機関 ― ― 103 ⑵ 小規模企業共済(小規模企業共済法) 事業主のための退職金制度です。 ① 加入できる者 ア.常時使用する従業員の数が20人以下の農業、建設業、製造業、運輸業等(商業、 サービス業等は5人以下)の個人事業主及び会社の役員 イ.事業に従事する組合員の数が20人以下の企業組合の役員 ウ.常時使用する従業員の数が20人以下の協業組合の役員 ② 毎月の掛金 最低1,000円で500円きざみ、最高70,000円まで ③ 共済金の種類 共 済 金 A (事業の廃止……個人事業主の死亡、会社等の解散により退任したと き等) 共 済 金 B (会社等の役員が死亡、疾病、負傷により退任したとき等) 老齢給付……65才で180ヶ月以上掛金納付の場合 準 共 済 金 (会社の役員が解散、死亡、疾病、負傷以外の理由で退任したとき等) 解約手当金 (上記以外の理由で解散するとき) ④ 基本共済金の支払額 一時金支払い方式で支給希望の場合 掛金月額10,000円の例 5年目 10年目 15年目 (60ヶ月目) (120ヶ月目) (180ヶ月目) 掛金合計 600,000円 1,200,000円 1,800,000円 共済金A 621,400円 1,290,600円 2,011,000円 共済金B 614,600円 1,260,800円 1,940,000円 準共済金 600,000円 1,200,000円 1,800,000円 実際の共済金は、この基本共済金に付価共済金がある場合には、その額が加算され 支給されます。 ※ 共済金は、税法上退職所得扱いです。 ※ 準共済金、解約手当金は、掛金納付月数が12ヶ月以上の場合に支払われます。 (12か月未満の場合は掛け捨て) ⑤ 加 入 の 申 込 み 金融機関(代理店)の窓口で ⑥ 共済契約の成立 加入申込を中小企業事業団が承諾したときに、その申込みをした日にさかのぼり成 立します。 ― ― 104 6 援助・助成金の活用 さきに記載した、2.雇用保険④の雇用保険法による『二事業』等により各種の援助・ 助成制度があります。(別紙参照) このうち農業法人の経営にあたって、最も多く活用されると思われる制度を記載します。 ⑴ 特定求職者雇用開発助成金 従業員の雇用確保に関連して、この援助・助成金の活用をお勧めします。 ① 受給できる事業主 公共職業安定所の紹介により、高年齢者(60歳以上65歳未満の求職者)などを継続 して雇用する労働者として雇入れし、助成金の支給終了後も相当期間雇用することが 確実である事業主(その他条件あり) ② 受 給 で き る 額 雇入れ後1年間(例外あり)に対象労働者に対して事業主が支払った賃金に相当す る額として算定した額の1/3(中小企業) ③ 手 続 き 先 公共職業安定所 7 農業経営と労働基準法 農業の事業に従事する労働者(林業従事者は除く)については、天候などの自然条件に 左右される業務であるため、労働基準法上、下記の事項が適用除外となっています。 ① 法定労働時間 ② 非常災害時の時間外・休日労働 ③ 休 憩 ④ 休 日 ⑤ 時間外・休日労働 ⑥ 時間外・休日労働の割増賃金 ⑦ 年少者の労働時間・休日 ⑧ 女子の労働時間・休日 (注)年少者及び女子の深夜業禁止、深夜業に対する割増賃金、年次有給休暇につい ては、適用除外はされません。 ― ― 105 雇用保険適用の事業主の方への助成金・給付金について [支給の対象] [給付金名( ( )は給付金内のメニュー)] 代表的な要件で整理したものです。 雇 用 の 維 持 等 1.雇用調整助成金……………………………………………………………………………………… 2.定年引上げ等奨励金 ………… (中小企業定年引上げ等奨励金:70歳定年引上げ等モデル企業助成金:中小企業高年齢者雇用確保実現奨励金) 再 新 就 た 職 な 支 雇 援 入 れ 等 3.〔労働移動支援助成金〕(求職活動等支援給付金:再就職支援給付金)……………………………………… 等 ※4.特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者雇用開発助成金:緊急就職支援者雇用開発助成金) ……………… 5.地域雇用開発助成金 ………………… (雇用開発奨励金:中核人材活用奨励金:沖縄若年者雇用促進奨励金:地方再生中小企業創業助成金) 6.通年雇用奨励金……………………………………………………………………………………… ト ラ イ ア ル 雇 創 能 力 開 発 用 ※7.試行雇用奨励金……………………………………………………………………………………… 8.雇用支援制度導入奨励金…………………………………………………………………………… 9.若年者雇用促進特別奨励金………………………………………………………………………… 10.精神障害者ステップアップ雇用奨励金及びグループ雇用加算奨励金………………………… 業 11.〔自立就業支援助成金〕(受給資格者創業支援助成金)…………………………………………………… 12.〔自立就業支援助成金〕(高年齢者等共同就業機会創出助成金)…………………………………………… 等 13.職場適応訓練費……………………………………………………………………………………… 14.キャリア形成促進助成金 ………… (訓練等支援給付金:職業能力評価推進給付金:地域雇用開発能力開発助成金:中小企業雇用創出等能力開発助成金) 15.〔人材確保等支援助成金〕 中小企業のための各種給付金 …………………… (中小企業人材確保推進事業助成金:中小企業基盤人材確保助成金:中小企業人材能力発揮奨励金) 16.試行雇用奨励金(技能継承トライアル雇用) …………………………………………………………… 17.中小企業雇用安定化奨励金………………………………………………………………………… 介護労働者の雇用管理改善等 18.〔人材確保等支援助成金〕(介護基盤人材確保助成金) ………………………………………………… 19.〔人材確保等支援助成金〕(介護雇用管理助成金)……………………………………………………… 20.介護福祉助成金……………………………………………………………………………………… パートタイム労働者の均衡待遇推進等 21.短時間労働省均衡待遇推進等助成金……………………………………………………………… 育児・介護労働者の 雇用管理改善等 22.〔育児・介護雇用安定等助成金〕(中小企業子育て支援助成金)………………………………………… 23.〔育児・介護雇用安定等助成金〕(両立支援レベルアップ助成金)……………………………………… 24.〔育児・介護雇用安定等助成金〕(育児休業取得促進等助成金(育児休業取得促進措置:短時間勤務促進措置)) ………… 建設労働者の雇用改善等 障害者の雇用の促進および雇用の継続 25.〔人材確保等支援助成金〕 (建設教育訓練助成金:建設事業主雇用改善推進助成金:建設事業主団体雇用改善推進助成金) ……………………… 26.障害者雇用納付金制度に基づく助成金…………………………………………………………… ※一部、一般会計から支出されます。 [取扱機関について]最寄りの機関にお問い合わせ下さい。 局……都道府県労働局・公共職業安定所(ハローワーク) 雇……(独)雇用・能力開発機構 都道府県センター 21……(財)21世紀職業財団 地方事務所 ― ― 106 各種助成金は、労働者の職業の安定に資するために、失業の予防、雇用機会の増大、雇用 状態の是正、労働者の能力開発等を図る目的で支給されます。 支給要件、支給額、手続き等については、「問い合わせ先」にご照会下さい。 (このパンフレットの記述は平成20年10月1日現在のものです。) [取扱機関] [支給対象となる事業主] ………………………………… 局 事業活動の縮小に伴い雇用調整を行った事業主 ………………………………… 高障 定年の引上げや定年の定めの廃止を実施した事業主等 ………………………………… 局 離職を余儀なくされる労働者の再就職援助のための措置を講じた事業主 ………………………………… 新たに高年齢者、障害者等の就職が特に困難な者又は緊急就職支援者を雇い入れた事業主 雇用機会の増大が必要な地域等で求職者等を雇い入れることに伴い、事業所を設置・整備あるいは創業した事業主 ………………………………… 局 又は中核人材労働者を雇い入れた事業主 ………………………………… ………………………………… ………………………………… 局 ………………………………… ………………………………… 季節労働者の雇用の安定を図った事業主 中高年齢者や若年者等の特定の求職者を短期間の試行雇用として雇い入れた事業主 精神障害者をステップアップ雇用により雇い入れた事業主 ………………………………… 局 ………………………………… 高障 雇用保険の受給資格者が、創業した法人等の事業主 高年齢者等が共同して創業した法人の事業主 ………………………………… 局 雇用保険の受給資格者等に職業訓練等を受講させた事業主 ………………………………… 雇 労働者に職業訓練等を受講させた事業主 ………………………………… 雇 ………………………………… 局 ………………………………… 労働力の確保及び良好な雇用の機会の創出のための雇用管理改善等を行った中小企業事業主等 有期契約労働者を通常の労働者(正社員)に転換させた中小企業事業主 ………………………………… 局 ………………………………… 介 ………………………………… 介護労働者の雇用管理の改善を行った事業主 ………………………………… 21 パートタイム労働者と通常の労働者との均衡待遇推進のための措置を講じた事業主 ………………………………… 育児・介護を行う労働者の雇用の安定に資する措置を講じた事業主等又は、 21 …………………………………育児休業者又は介護休業者に対して職場適応性や職業能力の低下を防止し、回復を図る措置を講じた事業主 ………………………………… 局 労働者に対して育児休業又は養育のための短時間勤務制度を利用させ、経済的支援を行う事業主 ………………………………… 雇 建設労働者の雇用の改善を図る事業主等 ………………………………… 高障 障害者の雇用にあたって施設・設備の整備等や雇用管理等を図る事業主 高障…… (独)高齢・障害者雇用支援機構 介……(財)介護労働安定センター 厚生労働省「雇用の安定のために 事業主の方への給付金のご案内」より ― ― 107 「農業法人設立の手引き」 発 行 平成21年7月 編 集 福島県担い手育成総合支援協議会 福島県農業会議 http://www.fnkaigi.com/ 〒960−8043 福島市中町八番二号 TEL 024−524−1201 FAX 024−524−1204 印 刷 陽光社印刷株式会社
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