高落差ポンプの開発と性能実験について

消防科学研究所報 19号(昭和57年)
高落差ポンプの開発と性能実験について
Development o
f and Performance Tests
on A High Head Pump
I
度
辺
エ
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井
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一
一
一
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e
1
. はじめに
平常 時 の火災はもちろん,特に 震 災時の消防力
を確保 するために,河川等の自然水利を有効に活
用する方法等の開発が重要な研究課題になってい
る。現用の普通ポンプ lドの吸水限界は約 8mで
,
もしこれ以上落差があると近くに水源があっても
これを利用することができなし、。そこで今回,こ
のような問題を解決するため,普通ポンプ車では
吸水不能な高落差水利でも有効に揚水できる高落
差ポンプを試作し,その性能実験を行ったので,
写真 1 高落差ポンプ外観
その概要を報告する。
2
. 構造・諸元及び原理
ヒンと持水ポンプは司上下に組み込まれており,
水位が約 1
5
c
mの浅い水利からでも揚水可能である。
高落差ポンプの構造は,写真 l及び図 lに示す
また,ホースの接続口は,すべて上向きに設け,
とおりてい'本体は水流駆動タービン及び掲 7
)
(ポン
)等による損失をできるだけ小き
ホースの折れ曲 1
プによって構成されている。タービンの羽根卓と
くした。
ポンプの羽 根車 は,同 一 軸で結合されているので,
場
! 水 原理は , 図 2に示すとおりて¥ 高落 差ポン
タービンの回転は,そのまま羽恨車に伝達される。
プを水中に投入し,ポン プ車 の水そうからホース
各部の諸元は,表 lのとおりである。駆動タ
を介して水流タービンに水を循 環さ せると,水の
反動力で羽 出 車 が回転し,これに伴い揚水ポンプ
・ 第三 研究室長
・第三研究室
が駆動 して貯水池等の水が, 吐出 口に結合したホ
(7
1)
判定し.
駆動水
(l~. 水
t
;
:
jJ
K性能及 ひ実際の 運用に耐 え得るかど
うかの 実 験 を行った。
(
1
) 実験方法
r
r
図 3 に 示 す 実 験 体系に t~ 在差 ポンプと水そ
う付ポン プヰL(
:
W M(水量 1 トン)を 結合 し
, 高
沼 差 ポンプの水流タービン入口 ,出口及び 1 ~j 水
。ト門
ポンプ吐出 口に ブルトン 管式圧 力計,また,ポ
ンプl/lの放口及び均水ポンプに述結したホース
に電磁式流量計 を設定し ,ポ ンプ車 の放 口圧 力
(ポンプ車五E
用圧力)を 5k
g
/
c
m'から 1
7
k
g/
α
n
'
ま
で順 次あげて各部の圧 力 と吐出水量 を計測した。
なお,揚水ポンプの吐出水量 を変化させるため
8
m
mから 4m
mごと に
ノズル口径を 倖口によって 1
3
8
m
mまで変化させた。ホ
2
3
5世
スは,原則として各
ラインとも 6
5
m
mホースを使用した。
図 1 高落差ポンプ構造図
ノズル
工〉壬
表
1 高落差ポンプ諸元
外
径
2
3
5
m
m
高
さ
3
7
0
m
m
重
量
2
7k
g
「
タービン駆動形式
フランンス型反動水車
タービン材質
背 鈴l鋳 物 (SC)
ポ
./
ポン
プ型式
l段ボリュートポ ンプ
プ材質
ねずみ鋳鉄 (FC)
計
ースによって向所まで均水される。
3
. 性能実験
試作した高落差ポンプについて,揚水落差
om.
図3 実 験 体 系 図
9m. 24.5mの各高さで吐出水量 及び l
吐出圧力を
T
ターピ;, 1
P
H・ ポ / プ j
高 落 差 ポ ンプ
写 真 2 落差別目 5m (奥多摩湖)での実施状況
① -ポンプ車
②ぃ ホース
③ … 高落差ポンプ
図2 吸水原理図
(72)
量 に大きく 彬轡 していることを 示 している。
ポンプ事からの 駆動 水 量 は,ポン プ革 運 用 圧
力が一 定 なら,同 一 落差 では偽水ポンプからの
吐出水 量に係わらず 一定であるが落 差 がつくと
駆動 水量 は減 少 し,ポン プ革 運 用 圧 力 1
2kg/c
m
'
では 薄差 9mの 場合 , 落差 Omの時よ り約 5% .
辺先 24.5mでは約 12.6%i
成少している。ポンプ
車運用 圧 力が高 くなるとこの減少の割合は,小
さくなる。
写真 3 貯水池に高落差ポンプを投入した状況
25
20
(
2
) 実験結果
各洛差での故大吐出水 i
E
.
は, 表 2のとおりで
¥、¥
-
i
&1
5
車 運用圧 力をノマ ラメータ ー に して ,
ある c ポ ン7・
王
室
(m)
Vふ
110
落差 とj
成大吐出水 量の 関 係を求めると,図 4の
表 2 各落差での最大吐出水量 (i/min)
品企:
O
9、O
24.5
9似
5
470
220
O
7
580
320
O
1
0
720
510
O
1
2
800
590
180
図4 落差ー吐出水量曲線
l
l
1
'
日
上
15
1
7
減
920
710
300
980
770
400
山
圧
4
力 3
(
k
g
l
岬)
※ポン プ卓圧力 1
6
k
g/cm'
15rha
1
2ド舵ザ
"
"
"
山句.
.
.
ような落差
1000
一一吐 I
Hi
j
f
(
j
置付 Im
;
n
)
吐 出7K.
J
d曲線力、 得られ,各沼差 で
。
とれ粧 の揚水 量 を得られるかを知ることができ
る。また,ポン プ車運用 圧 力をノぞラメ
タ
ポ /プ :
;
I
i
)<艇が
運 用圧 力
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吐 出 流1
1
)
:
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Im
;
n
)
に
図 5 ポンプ性能曲線(落差
して 吐出圧 力と 吐出 水量 の関係 を求めると , 図
∞
"
om)
5 一回 7 のよ 7 な各沼 差 での;t~ン プ性 能 曲 線 を
得 ることが で きる。
7
点差 Omの場合,ポン プ車
運用圧 力 1
6
k
g
/
c
m
'て4
.6kg/c
m
'
. 350,
R/minと C
]
級可知ポン プに近い性能を示 して いる。
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o差、ヵ
~1 加 す ると 同 ー ポン プ車 運用圧 力で は当 然防水
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庄
1
J
ポン プ1
吐出圧 力,吐出水 量 とも 減 少するが,減
3
ル
.
".
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図 6 ポンプ性能曲線(落差 9m)
きい 程著 し く,日土,'Llr[)
Jよりも.落 差 が
日土出水
(73)
ン用
o ;w
臥
当
日
時力
曲
する。この傾 向は. 吐 出口の ノスルの 口径 が大
U
7
8差 、
カ 大きくるる 程 減少
同日ポ運
また.ポンプ車 運用圧力を 上昇させた i
昨の吐 出
水置の 増加 の 割合 も
,
1hf
町肝
ハU
仙
2岬
き し 落差 が大きくなる程この傾向 は著 しい
。
同
(
k
g/
c
m
')
WM プ 圧
少の 割 合 は
, 吐出 圧 力よ りも 吐出水誌 の方が大
4
ートノズルを使用した場合,ポンプ車 運用圧
m
'
てi
i,ノズル圧力1.1kg/cm',放水量
力 17kg/c
240e/min, 口 径 22mmの場合.ポンプ車運用
m
'
て'
.
i
i
. ノズル圧力 1.0kg/αn
', 放
圧力 17kg/c
水量 300e/minとなる 。
落差 17mでは,口径 16mll1のストレ
トノズ
ルを使用し,ポ ンプ車圧力 15kg/clずで運用す
れば,ノズル圧力 2.6kg/cm',放水量 270e/min
となり,火点が近い場合は.直接放水するこ
o
∞ z
∞ 3∞ 岨 o ∞
吐出水量(e
,
/min)
図7
副羽
∞ 飴o
7
900
とも可能である 。
(
2
) 本ポンプは.タービンの最大駆動圧力(タ
ービン入口圧力と出口圧力の 差 )カ、
10kg/c
m
'
ポンプ性能幽線(落差 24.
5m)
各落差でのタービン流入水量とポンプの吐出
で設計されている。 実験の結果からいずれの
水量 の比は,図 8のとおりである 。落差 Omの
落差の場合もポンプ車運用圧力が 15kg/c
m
'
を
場合,流入水量 に対して最大約 92%の吐出水量
超えると,この駆動圧力が 10kg/川以上にな
が得られるが,落差 24.5mになると約 38%と半
ることが確認されているので実際に運用する
分以下に減少している。
場合,ポンプ車運用圧力を最高 15kg/cm'にお
ポンプの総合効率は,落差 Omの場合,最高
jminを得ることを目標
さえ,吐出水量 500Q
で13.6%,落差 24.5mでも 10.0%と他の水カタ
とすれば,放水のために中継隊形をとったと
ービンを駆動源にする機器とほぼ同等の効率を
し て も 吸 水 落 差 は , 最 大 17m前後であると
示している。
思われる。
(
3
) ポンフ。
の吸水性能を低下させる要素として
4 考 察
タービン出口にかかる背圧カ、ポンプ駆動力に
(
1
) 今回試作したポン 7・の性能を要約すると,
大きく 影響するので,タービン出口からポン
落 差 24.5mで防水ポンプの吐出口に 65mmホー
プ車水そうへの戻り水の通るホ
スは.折れ
ス (20m) 2本を結合し,口径 18mll1のストレ
曲り等がないよう特に配意する必要がある。
100
90
80
ポンプ車圧力
1
5
k
g
/
c
m
'
ノ ズ Jレ口径
3
8
m
m
70
60
ポンプ車圧力
l
S
k
g
/
c
m
'
ノズノレ口径
ポンプ車圧力
O
l
S
k
g/
c
f
ザ
5
3
0
m
m
ノズル口径
1
8
m
m
1
0
1
5
- ー 落 差 (m)
図 8 タービン流入水量ーポンプ揚水量比(吐出流量比)
(7
4)
2
0
25
(
4
) 通常の水そう付ポンプ車の積載水量を 1m
'
しなくてもよいものと思われる。
とすると,高落差ポンプに 20m ホース 3本
(
6
) 本ポンプは,圧力よりも吐出水 量 を得るこ
(往復 6本)を結合した場合,ホ ース.ポン
とを目標にしているため.放水するには,原
プの中へ充てんされる水量は.約 416e
で.
則として揚水した水を何らかの方法て力日圧し
e
ポンプ車水そうの中には,約 5
8
4 の水が残
てやらなければならない。
1
).高落差ポンプを駆動させるには十分な水
揚水した水をポンプ車の水そうへ入れ,ポ
量 である。従って.ポンプ車に椴載されてい
ンプ車のポンプで駆動水とともに加圧し.放
る水量からみると,ポンプ車と高落差ポンプ
口コソク開度の調整により冷水した分だけ放
とのホース結合本数は,往復 6本以内が適当
水するという運用も.ポンプ車のポンプ性能
であると思われる。
から考えて十分可能であると思われる。
(
5
) ポンフ。車運転中にタービン駆動 m
l
jのホース
5. お わ り に
ライン等からの漏水によるものと思われるポ
ンプ車水そうの減水は. 60分運転して 5
0e
程
高落差ポンプの研究については.今後本体の軽
度であるから,ポンプ車の運転にはほぼ支障
量化, 収納を答易にするためにタービン駆動側の
ないものと思われ,また,運転中の水そうの
ホースから遠隔操作によって水を抜くことのでき
水温の上昇も 9
0分の運転で 1
3-15.Cて¥ポン
る排水弁等について検討していきた L。
、
プ車のポンプ性能に及ぼす影響は,特に考慮
(75)