2011年度 学部共通科目 「科学と人間」 第2回 講義 「優生学とナチスの

資料について
入口付近(教室後方)に置いてある
資料(2種類)を各自1部ずつ取る
こと!
講義内容をまとめたレジュメを,HPから印刷し
て持参することになっていました。特別な理由
があって,もって来られなかった人は,申し出て
ください。(いま)
2013年度 学部共通科目
「科学と人間」
第9回(6月14日)
講義担当
(今井晋哉+渡部稔)
http://web.ias.tokushima-u.ac.jp/
shin-kokusai/scienceandhumanity/top.html
目次
人種主義の興隆と急進化(続)
4.人種主義の疑似科学性と恣意性
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優生学の西洋史
1.優生学の成立と発展
2.断種法の歴史(概略)
3.ドイツにおける優生学・優生政策の形成と展開
4.ナチ・ドイツによる「内」に向けた人種主義政策
4.(1)疑似科学性
●人種間優劣を前提にした生物学者・人
類学者・医師たち
人種主義の「証明」のために「科学的」手法を
用いた。その際「アーリア人種」の優秀性
を予め想定。
4.(2) 「ユダヤ人」規定の問題
●「ニュルンベルク人種法」
★宗教という文化的・社会的要素を「人種」
の定義に使用。
★「科学的」人種主義を装っていたナチスの
反ユダヤ主義とは矛盾。
1.(1)優生学
●遺伝的に「優れた」人間を増やそうとする学
問。
優れた人間集団の維持,育成のためには,
劣等形質の排除と優良形質の保護・育成
が不可欠だとする考えにもとづく。
1.(2)成立と拡大
★19世紀末にイギリスで成立。
★1910年代を境にアメリカ合衆国が中心に。
★優生学/政策
促進的/積極的(positive) ―
「優良な」遺伝形質の増殖を目指す。
抑制的/消極的(negative) ―
「劣等な」遺伝形質の抑制・排除を目指す。
1.(3)人種主義との結合
●人種の優劣は遺伝に由来するという観点(思
い込み)から優生学と人種主義は結合。
●ドイツでは「人種衛生学」の名で広まる。
2.断種法の歴史(概略)
1907年:アメリカ合衆国インディアナ州で世界
初の断種法成立
1909年:カリフォルニア州で断種法成立
1913年:カリフォルニア州断種法改定
→抜群に多い実施件数
1928年:スイスの一部の州で,精神障害者に
断種を強制する法を制定
1933年:ナチス断種法の制定と実施
3.(1)ドイツ優生学の基本的特徴
(超概略)
●基本的主張
★文明・文化の発達→淘汰(自然選択)を阻害,
人間の「変質」(退化)
★種の持続・進化のためには,場合によっては
個々の要素を犠牲にすることも必要。
★相互扶助には批判的。
★「遺伝性」疾患・「障害」をもつ人々の結婚の
禁止,断種
3.(1)ドイツ優生学の基本的特徴
(超概略)
●ドイツの「人種衛生学」の興隆と普及
→★遺伝的要因を環境や教育・訓練より重
視する学説が盛行。
→★個人の価値は,人類全体あるいは特定の
人種の未来に対する貢献度によって決定
されるとする傾向が強まる。
3.(2)ヴァイマル共和国期の
優生政策の動向
①婚姻前検診の推奨
②幻の断種法
◎この時代のドイツ政府
社会福祉の充実,国民生活の向上と保護を
重視→公的支出の増大
★世界大恐慌→財政危機
→社会福祉の対象者の選別
→「価値のない者」の排除
4.(1)ナチ・ドイツによる「促進的
(positive)」優生政策
●ナチス
最優秀で支配的地位にあるべきドイツ民族
(「アーリア人種」)は自身も健康でなければな
らない。
★婚姻・出産・育児に関して「健康」な女性を優
遇,保護。「健康」な女性の妊娠中絶を禁止。
★ 「レーベンスボルン(「命の泉」)協会」の活動
4.(2)ナチ・ドイツによる「抑制的
(negative)」優生政策
1933年:「遺伝病をもつ子孫を予防するた
めの法律」(=断種法)制定
★「精神薄弱」カテゴリーの肥大=拡大解釈
ナチ社会の規範からの逸脱は,遺伝的素質
による「精神薄弱」に起因するとみなされた。