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2014年度産学連携ツーリズムセミナーin 関西
パネルディスカッション
「関西が支える観光立国・日本」
コーディネーター
;
若林
靖永
氏
(京都大学
経営管理大学院
教授)
パネリスト
;
赤星
周平
氏
((公財)京都文化交流コンベンションビューロー
国際観光コンベンション部
小菅
謙一
氏
(西日本旅客鉄道(株)営業本部
住田
弘之
氏
(新関西国際空港(株)
村山
卓
氏
((株)ユー・エス・ジェイ
部長)
課長)
執行役員)
営業部
部長)
【テーマ説明】
■若林氏
それではこれから今日のこの「2014年度産学連携ツーリズムセミナーin関西」の
第2部のパネルディスカッションを始めたいと思います。コーディネーターは、京都大学
経営管理大学院の若林が務めます。
今日のこのパネルディスカッションのテーマだが、観光立国実現に向けて、「関西エリア
の果たす役割」というテーマで考えていきたいと思う。2020年の東京オリンピック・
パラリンピックということで、首都圏、東京にますます注目が集まり、観光客も集まるこ
とが期待をされている。同時に、日本各地で観光ということを戦略的に取り組み、地域の
活性化、まちづくり、産業振興、そして結構今日の学生の発表にもあったが、日本人、そ
して世界の人々が日本の文化とか、精神みたいなことを触れて学ぶ、そういう場にもなる
ということが期待されていて、そのような中で、ここ関西に、非常に大きな可能性と責務
があろうかと思う。このあたりを今日のこのパネルディスカッションでは、この関西のエ
リアが、観光戦略、観光で日本という国・地域を活性化しようという戦略の展開において、
関西がどのように頑張っていくのか、どのような可能性があるのかを一緒に考えていきた
い。
【テーマ1;観光立国を支える関西地区の現状の取り組み】
■若林氏
まず今日お集まりの4つの団体・企業から、最初に、観光立国を支える、この関西地区
での現状の観光に関する取り組みをどうしているのか。本当に変化する環境のもとで、新
しい取り組みがいろいろと進んでいる。
やはり変化する環境に対して、積極的に自らが変わることで、新しい需要を作り出す、
取り組むことで結果を出していくという取り組みが始まっている。そのようなことについ
て、それぞれ発言して欲しいと思う。では最初は、京都文化交流コンベンションビューロ
ーの赤星さんからお願いします。
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2014年度産学連携ツーリズムセミナーin 関西
■赤星氏
ただいまご紹介いただいた、京都文化交流コンベンションビューローの赤星と申します。
名前が非常に長い何の団体かと皆様思うかもしれないが、私どもは、京都府と京都市、そ
れから商工会議所、賛助会員に出資してもらっている、インバウンド、MICEを推進す
る公益財団法人である。
私どもの活動理念としては、コンベンション誘致だとか、インバウンドのお客さんを誘
致していく実行組織である。主にインバウンドについては、京都市の立てた方針に沿って、
現場というか、実際のプロモーションを行っており、いろいろな京都の中におけるステー
クホルダーと私どもが言っている関係各社事業者との調整、情報交換等によって、インバ
ウンド、それからMICEの推進をしている。
京都の現状としては、この後、データをもとに説明する。皆さんご存じのとおり、実は
私は東京の人間なのだが、京都はよそ者の私からしてみても、日本の宝と言うべき、古く
から、京都の皆様が大切に守るべき歴史、伝統、文化の集積、宝箱のような街である。一
方で、それが効果的に世界中に発信ができているのかという部分では、現状まだ課題がた
くさんあると。いま当事者となり、試行錯誤の上で進めている。
確かに京都といえば、皆さんがイメージしてもらえるように、非常に歴史的な日本の文
化の首都というようなイメージがあり、一方で、少しステレオタイプになっていて、新た
な、常に新しいものを求める観光客の皆さんのニーズというものに対して、効果的な発信
ができているのかということにおいては、まだまだ課題を残していると思う。
データ的なところから、京都の課題と私どもの取り組みを説明したい。このグラフは今
年度、平成26年度から始めた調査だ。これは何かというと、京都の宿泊ホテル25から、
今27軒くらいかと思うが、毎月どこの国の方がどれだけ泊まっているのかというデータ
を出してもらっている。
今までJNTOの統計で、毎月どの国の方が何人という統計はあったが、京都市におい
ては、京都市観光総合調査のデータでしか、どこの国がどのくらい増えているかというの
がわからなかった。実際どこの国のどの地方、もしくは都市が頑張られて、その影響を受
けて、この国が増えているとか、いろいろな生のデータの動きが取れていなかったのが、
これによってわかることがあるということが、非常に大きな前進であったのかなと思う。
これを見ると、通常、今、日本国においては、台湾、中国、韓国、そのような地区の皆
様が多いが、京都においては、非常に欧米化している。特に震災前は、アメリカが一番多
かったのだが、台湾に次いでアメリカ、それからオーストラリア、イギリスというように、
欧米が非常に強いのが特徴だと言えるかと思う。
少し特徴的な話題が1件ある。今年度については、非常にスペインが伸びている。今、
京都の私の把握している動きの中では、スペインがヨーロッパの中で1番か2番というよ
うな状況だ。これについては、様々なところにヒアリングしているが、観光プロモーショ
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2014年度産学連携ツーリズムセミナーin 関西
ンにおいて、今回非常にインバウンドが好調なのは、もちろん政府、JNTO、それから
行政の取り組みも大きいのだが、「一番大きいのは、やはり円安だ」ということを言う方が
非常に多い。このスペインについては、2年ほど前から、今日関西空港の方が来られてい
るが、関西空港をはじめ、トルコ航空などのプロモーションと連携して、関連するエージ
ェントが積極的に送客をしている。ある意味、連携における、しかも海外における連携に
おける成功事例だなと、自負している。
右側のグラフは昨年度と比較して、外国人が増えているというデータなのだが、これを
私どもは、インバウンド、欧州を担当しているセクションではあるが、やはり京都という
町は、圧倒的にシェアは、日本国内のお客様で、全体で90%、95%が国内の観光客に
よって支えられている場所であるし、また修学旅行も非常に大きなボリュームである。
インバウンド、インバウンドと、巷ではもてはやされており、私どももそれを担っては
いるが、これもひとたび何かトラブルというか、イシューというか、例えば、インフルエ
ンザが流行るとかいうだけで、シュリンクしてしまう市場である。
よって、全体の戦略の計画を担っている京都市が担当しているところだが、全体の京都
というインベントリー、宿泊施設をいかにこのポートフォリオを、バランスのとれたプロ
モーションを仕掛けていくのかが、非常に大事だと私自身思っている。
少し他都市との比較をしたいと思う。これは私どもがまだ発表していないのだが、今後
マーケティングをさらに強化していくために、いわゆるデータ解析会社と契約をして、こ
のような実態把握に努めていこうと思っている。このバルーンのパイが、いわゆる Rev.PAR
(Revenue per Available Room)と私どもが呼んでいる、業界用語で、ホテルの皆さん知って
いると思う。縦軸がADR;平均単価で、横軸がいわゆる稼働率だ。
どの都市がどこに位置しているのかを簡単に説明しているのだが、ご覧のとおり、昨年
対比のデータでは大阪が圧倒的に伸ばしている。このパイが大きければ大きいほど健全と
いうことなのだが、大阪、そして京都が非常に単価も伸ばし、稼働も伸ばしており、それ
によって、全体の Rev.PAR も伸びているというような状況だ。
今日は、「関西」というテーマなので、京都、大阪、神戸と合わせていくと、かなりいい
数字になる。簡単に説明すると、ある統計バンクの推計では、いわゆる大阪のお客さんを
吸収しきれなくなっている現状がある。それで神戸のほうに流れてきていると。もちろん
神戸自身もプロモーションやっていると思うが。東京は昨年度、このバルーン大きかった
のだが、若干東京はいま供給過多になってきているのかなという展開だ。
少しわかりにくいかもしれないので、次のスライドで説明したい。これがいわゆる
Rev.PAR の各都市を比較しているものだ。1月から12月のデータだが、ご覧のとおり、
パリが高い。これは円換算しているのだが、ラグジュアリーホテルからミドルホテルまで
すべて入っているが、非常に高い。ニューヨークも高い。
これを見ると、日本は、高いからとか、円安の影響があってだいぶ安くしてもまだ高い、
というような風評があると思うが、私は決してそうは思わない。逆に東京も京都も、もっ
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と強気に値段を上げてもよいと思うぐらいの価格差があると思う。
また大阪は、先ほど話をしたが、昨年対比で見ると、USJ、それからLCCの就航増
によるところが大きいかと思うが、非常にパフォーマンスを今上げている。京都は、その
影響もあってか、非常に単価も増しているような状況だ。
ただ、京都は大きな弱点を持っている。そのうちの1つが、この繁閑ギャップとわれわ
れが呼んでいるもので、正直4月と11月、誰ももう泊まれることができないぐらいだ。
一方で、1月、2月、まさにこの時期なのだが、非常にここで下がってくる。
いま京都市と私どもで、この1・2月のギャップを埋めるべく、いろいろな施策、イベ
ント、プロモーション等を仕掛けて、情報発信を仕掛けている。やはりここを埋めること
が、安定して高水準を維持することが、例えば事業者だとすると、安定した雇用を生み出
すことにもなる。投資家の視点から見ても、いま現在どんどん京都の町屋が取り壊されて、
マンションが建っている。
それはなぜかというと、不動産屋側の視点からいくと、安定的にやはり収益を上げるの
がマンションだからだ。ホテルだと、どうしても繁閑ギャップがあって、安定した収益が
確保できないというところがある。このあたりをどのような形で民間事業者と一緒に、京
都市民の皆様と一緒に、この閑散期を平準化していくのかと。これが非常に大きな私ども
のチャレンジになってくるのかなと思う。
そもそもどれくらいのキャパシティがあるのかというところのデータも持ってきた。東
京は、圧倒的に客室数が多い。大阪、京都、神戸ではこの程度だ。京都の説明をすると、
今後も恐らく、この調子でいくと、インバウンドさはらに増えていくことが予想されてい
る。シーズンによって、非常に京都のキャパシティは限界に近づいているところもある。
それから、これは京都そして都市の特性ではあるのだが、京都の非常に優れた美しい景
観を守っていく、未来につなげていくために、景観政策を、市長をはじめ、強いリーダー
シップで実施している。このことは、京都はもっとこれをやるべきだという、お褒めの言
葉をいただける政策だと私は思っているが、一方、先ほどホテルというか、大型ホテルの
進出を考えた時に、やはり大型の施設を作れないというネックもある。
そのような中で、大幅なキャパシティ増が、需要に対して供給が追い付いていかないこ
とが今後想定される中で、やはり宿泊施設をもっと新規の誘致をプロモーションしていく
必要がある。それから現状あまりホテルほど高稼働はしておらず、インバウンドにもなか
なか対応できていない旅館を有効活用していく、旅館をもっと世界にプロモーションをし
ていくということが重要である。それから繁閑ギャップの改善。このようなことが必要に
なってくると思う。
あとは大型の国際会議が入ってきた時に、京都単体では、当然キャパシティが足りなく
なる。そのような時に、しっかりと連携をして、事前に情報交換だとか、何らかの移動に
対するインセンティブを与えるとか、そのような関西としての連携を出していくことが重
要だと考えている。
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以上のことが、私どもコンベンションビューローとして、もちろん京都市の施策の流れ
に沿って実行していくのだが、やはりキャパシティが非常に限られている。ややもすると、
訪日外国人客2,000万人に向けて、「数」を、というようなプロジェクトもあるが、や
はり私どもとしては、「量」も非常に重要なKPIであり、1人当たりの消費単価を上げて
いく、1人当たりの支出を取っていく、最大利益を取っていくということが必要なのかな
と思う。
そのためには、まずMICEを推進していきたいと思っている。これは特に閑散期に一
定のインセンティブを有することで、閑散期対策につながるということと、MICEに参
加する方は、通常のレジャーで来る方よりもハイレベルな方が多いということで、非常に
ここは推進をしていくところだ。
それからもう一方、レジャーについても、高品質な、いわゆる「目利き層」と私ども呼
んでいるような、京都のいわゆる文化等にリテラシーの高い方々を呼んでいくことが非常
に重要である。
流行りに乗って、特定の地域に偏ったプロモーションを実施するといったことではなく
て、やはりわれわれの売りたいもの、見せたいもの、そのようなものをしっかりと受容で
きる層を目がけて、セグンメントしてプロモーションしていくこと、そのようなことが非
常に重要だと思っている。すいません、ちょっと押してしまったが、このような取り組み
をしている団体だ。以上です。
■若林氏
赤星さん、どうもありがとうございました。京都市のインバウンドの戦略、そして実行
ということを担っているということで、現状と、MICEの重点といった方法での取り組
みを強めていくということでのご紹介であった。
では続いて、西日本旅客鉄道の小菅様、よろしくお願いいたします。
■小菅氏
はい、JR西日本の小菅と申します。よろしくお願いいたします。スライドに沿って説
明する。まずタイトルだが、産学連携による観光開発と関西の活性化の取り組みというこ
とで、本日産学連携ツーリズムセミナーなので、大学生の皆さんも来ており、先ほどの発
表は、楽しく、また勉強させてもらった。
大学の皆さんと私ども企業が連携すると、非常に大きなパワーになると感じていて、そ
のような観光開発の取り組み、そして最終的にそのような取り組みの延長線上に、関西の
活性化というものがあればという願いを込めて話をしたいと思う。
あと私は、宣伝クロスメディアという係の課長をやっており、主に情報を発信する、お
客様に情報を伝えていくという仕事をやっているわけで、昨今いろいろメディアが出てき
ている中で、お客様になかなかメッセージが伝わりにくい、そういう時代を迎えていると
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2014年度産学連携ツーリズムセミナーin 関西
思っている。
よって、そのあたりについて、私が感じていることについて話をしながら、事例も紹介
しながら、少し駆け足になるかもしれないが、話をしたいと思う。
まずクロスメディアということだが、宣伝業界では当たり前の言葉になっているが、様々
なメディアをクロスさせることだ。私どもにとって、宣伝というと、交通広告等の駅だと
か、社内の媒体を私どもが持っているので、そのようなものをメインにマスメディアであ
るテレビCMなどと組み合わせていくのが基本の宣伝展開であった。
ただ、昨今環境変化ということで、皆さんもお手元にスマホとか持っていると思うが、
ウェブとかスマホが進展していくにあたり、お客様がテレビなどのいわゆるマスメディア
だけではなくて、いろいろな媒体を通じて情報を取れるようになる。そうだとすると、私
どももそのような各メディアに情報を落としていかないといけない。このようなクロスメ
ディアの展開が必要になってきているということだ。
さらに単にメディアを使い分けるというだけではなくて、他者、大学の皆様、各企業の
皆様、自治体の皆様と一緒に連携していくということが大切だと感じている。
情報発信ということを話したが、先ほど平安女学院大学のプレゼンにも、観光客の皆さ
んに観光地の魅力を伝える前に、「発掘」という言葉があったかと思う。発掘して、伝達、
発信とプレゼンしていた。発掘と発信が重要だ。
「観光」というと、少し固くなるので、「おでかけ」という言葉を私はよく使う。
例えば、神戸に住んでいる人間が、京都にちらっと「おでかけ」する。これも1つの観
光需要につながると思う。よって、「観光」という狭い単語ではなく、「おでかけ」という
ことで少し捉えた時に、ではどのように「おでかけ」需要が高まるのか。次の3つの視点
でいつも考えている。
まず「関西の魅力」。そして「関西に来るための商品」、私どもで言うと、切符や旅行会
社の旅行商品。さらに「そのような魅力をどうやってお客様に伝えるのかの情報伝達力」。
この3つがすべてしっかりと整備されないと、なかなか需要というのは高まらないと思う。
さらにこの「情報伝達力」というものを分解した時に、マス広告があったり、いろいろ
な広告があったり、私どものやっているウェブメディア、特にスマホでいろんな移動中に
ご覧になられることも多いので、このようなウェブメディアも含めて、「情報発信力」を高
めていくということが大事だと思う。
このウェブメディアでは、「おでかけネット」というのは、皆さん知っているかもしれな
いが、
「マイ・フェイバリット関西」という、関西の魅力を伝えるサイトも立ち上げている。
これは3年ほど前に立ち上げた。関西に住んでいる方でも、まだまだ知らないと思う。
それでも、そのような点でもメッセージを伝えていく、知らせていくというのは難しいと
思うが、おでかけ情報や、あるいは関西に来る旅行商品、宿泊プランといったものも提案
しているようなサイトである。こちらCMを作っているので、少しご覧いただければと思
う。(CM流れる)
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このCMはUSJ様にも協力いただいている。関西の魅力をどうやって伝えるのかとい
うことで、少しキャピキャピしたCMではあるが、若い女性をターゲットに、このように
スマホで旅行情報を取りながら、関西の街歩きを楽しみませんかという狙いで作った。
これをどうやって伝えるのか、いろいろ悩んだ。最初の2年ぐらい、いろいろな文字を
書いて、「マイ・フェイバリット関西」って、こんなサイトですと伝えたが、なかなか伝わ
らなかった。そこで、昨年の10月、中条あゆみさんというモデルを使い、このようなポ
スターはもしかすると大阪に来られた方は見たかもしれないが、パッと見て、何かはわか
らない。きれいな中条あゆみさんが映っているポスターではあるが、このポスターを見て、
何かなと思ってもらうことが大事だ。
これにより検索が発生し、ウェブサイトにいくということで、様々な媒体を使って、ウ
ェブサイトに誘導することに成功した。文字をたくさん入れて発信した時の倍以上のウェ
ブサイトの閲覧数がった。いろいろな工夫をすることで、お客様の目を引くことができる
かなと思う。
あと「JRおでかけネット」というのも私どもの軸となるサイトだ。様々なキャンペー
ンをやっているが、駅の情報とか、鉄道の情報も含めて、この「おでかけネット」を提供
しているが、なかなかウェブサイトというものも埋もれてしまう。先ほど来、大学生の皆
さんのプレゼンにも、「情報発信」とか、「SNS」というような話があったが、本当にた
くさんの方が情報発信しているので、埋もれてしまう。よって、埋もれないために何をす
べきなのかという意味で、いろいろな方とコラボするのが大事だ。
いつも、他者と連携をする時、A社とB社が手を握るという時に、どうしてもお客様を
囲い込んでいるところに取り合いになる部分がある。重なっている部分というのは、お客
様を、こっちに来て、あっちに来てということで、取り合うのだが、実は囲い込んでいる
お客様というのは、結構独立して囲い込んでいる部分がある。
よって、一緒に何かプロジェクトをやることで、それぞれのお客様に情報発信すること
ができるようになる。私どもとしては、いろいろな方と組んで、私どもに力をもらう、あ
るいは私どもにできることを提供する、そのような関係が築けるのではないかと思う。
私ども3社の連携ということで、これは「地域の皆様」、「旅行会社の皆様」と、それぞ
れの強みを生かした連携というのを進めてきた。東京から中国エリアに、「DISCOVE
R
WEST」というプロモーションでお客様を誘う。そのような、それぞれの強みを活
かしてやる取り組みをやってきた。ただ、若干最近状況が変化している。
この3社の連携に、「お客様」に参加いただくということが大事だと思っている。これは
何かと言うと、私どもはこれまでは、私ども企業がお客様、複数のお客様に情報発信する。
1対Nの関係があったと思う。これが最近は、皆さんから情報発信される。Facebook とか、
SNSで情報発信をされることで、N対N、いわゆる多数の方が多数の方に情報発信する
という関係ができてきている。ということは、お客様に私どものプロジェクトに参加して
いただき、そのお客様にも情報発信していただく。そのような取り組みは、参加者皆様が
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2014年度産学連携ツーリズムセミナーin 関西
ハッピーになれる。
3社の連携にお客様がいる。北陸新幹線開業ということで、詳しくは後ほどサイトをご
覧いただければと思うが、「北陸カレッジ」として、大学の皆様と北陸の観光開発を進める
という取り組みをやっている。
実際に現地に行ってもらい、大学生の皆様が若者目線で旅行プランを提案する。それを
Facebook で情報発信する。その結果として、大学の皆さんが、先ほどプレゼンしたように、
旅行会社の皆様にその内容をプレゼンする。それが商品化される。このような一連の取り
組みをやっている。
これで私どもが気づかされるのが、やはり旅行を経験したことがない、新幹線に乗るの
が初めてという大学生の皆さんもたくさんいることだ。そのような方がどのようなところ
に旅行の素晴らしさを感じるのか、本当に意見をうかがっていると、私どもが気づかされ
る。そのような取り組みだ。
さらにそれを発展させて、修学旅行誘致ということで、南九州の自治体の皆様とも組ん
でいる。やはりそれぞれの方がいわゆる強みというのを持っている。そのような強みを組
み合わせることで、私どもが1社ではできないことができるようになるということだ。
後ほどまた時間があれば、「マイ・フェイバリット関西」での連携の取り組みについても
説明したいと思う。少し押してしまったが、どうもありがとうございました。
■若林氏
小菅様、ありがとうございます。
「北陸カレッジ」の話ですが、この関西支部、首都圏エ
リアで、北陸に本当に初めてという人たちもいそうである。北陸に行ったことがないとい
うことだ。そのような学生を発掘して、そして発掘から、旅行商品になり、情報発信をし
ていくということで、発掘ということを進めることで、この鉄道ビジネス、鉄道需要を作
っていこうという取り組みを、お客様を一緒に作っていく。そしてお客様自身がどんどん
情報発信するということに注目された取り組みで、今日の学生の皆さんの発表にも非常に
つながる取り組みだと思う。
では続いて、今度は、特にインバウンドということであると、その入り口にあたるのが、
国際空港ということになる。新関西国際空港の住田様、よろしくお願いいたします。
■住田氏
紹介いただきました住田です。私のほうは、航空営業担当の執行役員なので、航空会社
それからインバウンドの人たちに喜んでもらうためにはどのようにしたらよいかと考える
セクションだ。主にインバウンドとして、今やっていること、その成果につき少し話をし
たい。
この風景は皆さん見たことないかもしれないが、これは皆さんがパイロットになったら
見える風景だ。着陸する時は、このような感じで関西空港にアプローチをしてくるという
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ことだ。また、すごくきれいな空港だということで、外国のパイロットからも大変人気が
ある。
関西空港は、2012年に、約3年前に伊丹と経営統合をして、今2つの空港を運営し
ている。よって、関西空港株式会社でなくて、先ほど司会の方もなかなか言えなかったよ
うに、「新」関西国際空港株式会社というのが社名である。
旅客数というのが1つのポイントだが、1,936万人というのが、去年2014年の
1月から12月までの実績だ。1,936万人のお客様が国際線、国内線合わせて空港を
利用してもらった。
この1,936万人というのは、世界の空港で言ったら、何番目ぐらいだと思うか?な
かなか出てこないかもしれないが、だいたい100番目ぐらいだ。よって、それが50番
ぐらいになるように頑張り、これからもっともっとたくさん利用してもらい、あるいは皆
さんのような若い日本の力を発揮するために、皆さんに利用して欲しいと思っている。
今日は、貨物の話はあまりしないが、参考までに貨物取扱量は70万トン。これが世界
では何番目かと言うと、意外にこれは健闘している。30位だ。ということで、長い滑走
路が2本あり、陸地から5キロ離れて、24時間利用できるということから、非常にみん
なから好かれる空港となっている。
関西の人たちからは、少し遠くて大変と言われているが、外国の人たちから、特に何か
好かれるようになってきている。
1,936万人の内訳は、国際線で、日本人が649万人、外国人が628万人。国内
線で632万人ということだ。青いグラフが日本人、赤いグラフが外国人ということなの
で、すごく比率が変わってきているのがわかる。10年前は、1対4で、外国人が1、日
本人が4。数年前が、外国人が1で、日本人が2。去年は、これはよく計算すれば、49
対51となり、逆転が近い。
恐らく2015年には、赤い(外国人)ほうが青い(日本人)ほうよりも大きくなるか
もしれない。たくさんの外国人に来てもらっているということかと思う。
おかげさまで、現在1,000便、週1,000便という規模まで、国際線の便数は増
えてきている。国際線の場合は1日に1便とは限らない。水曜と木曜と土曜とか、そのよ
うになっているので、週換算になっているが、1,000便程度だ。よって、1日に14
0便程度になる。国際線の貨物便も合わせてなので、国際線の旅客便だけでは覚えやすい、
週770便ということになる。
この10年間ずっといろいろなことあったが、全体として伸びてきている。私が強調し
たいのは、13年前はこのような航空営業部門というのが無かった。したがって、航空会
社の人がいろいろと相談に来ると、いい言葉ではないが、たらい回しにしていたわけだ。
そこで私ども何人かの若手、私も当時は若手だから、若手が立ち上がった。何とかワン
ストップサービスというのを設けようということを考えた。それでいろいろあったが
結果として、航空営業部ができたということで、4人でスタートしたが、それが8人、
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20人、今は40人と増えている。ということで、みんなでセールスしていこうというこ
とになってきたわけだ。
その成長とともに数が伸びてきているということになるので、この十何年の不断の努力
は、非常に私どもとしても、誇りに思う。
それから次に、結果として、現在、アジアにものすごく強いネットワークがある。全部
を100とすれば、82%がアジア便。うち半分ぐらいが中国便ということになる。
これは言い換えると、アジアに強いということは、欧米に弱いということでもある。そ
れはこれから伸びていくとして、結構な会社にセールスしている。66社も就航している。
写真、航空の写真マニアの方にはこたえられないぐらい、いろいろな飛行機が見えるわけ
だ。それも1つのセールスポイントだ。
このように世界各地に行っているが、アジアがなぜ多いかというと、東京に比べると、
アジアまで1時間近い。これはものすごく効果的だ。アジアに1時間早く行って、1時間
早く帰れるということが1つ、私どもの売りとして、アジアの玄関口としての特徴がある。
このように、900便以上週に飛んでいるのだが、その計画が926.7便だったのだ
が、その後の、この11月、12月、1月、2月で、いろいろまた増えてきている。特に
中国、韓国、台湾、香港というような、近場のアジアで、また新しい航空会社がどんどん
就航しだしている。それはLCCなので、サービスはいらない。いい意味での競争をして
いるという状況だ。現状を報告しました。
■若林氏
はい、住田様、ありがとうございました。最初に、航空営業部というのは非常に印象的
で、本来なら空港であれ、港湾であれ、いかにそれにはマーケティングをすることかと。
いかにユーザーの皆さんに使い勝手をよくして、ユーザーを集めるかという、この手の公
共的なインフラ事業のマーケティング観点、競争原理。なかなかそうは言っても、これま
ではそのような体質ではない。関西空港では、航空営業部が積極的に航空会社に働きかけ
をして、その後、いろいろな希望とか、条件を聞きながら、こうやって取り組みを進めて
きた結果、このような成長を成し遂げてきたという報告だったかと思う。
それでは最後に、ユニバーサル・スタジオ・ジャパン。本当にユニバーサル・スタジオ・
ジャパンが元気になってくると、何か大阪や関西が元気になってくるかもしれない。勝手
に、大阪や関西の1つの顔にもうすでになっていて、とてもUSJが元気なことが、何か
私たち自身がもう元気になるような、そんな印象を持っている。そのようなUSJの近年
の快進撃が、最近はあちらこちらで取り上げられているようにも思うが、USJの村山様
からご紹介をいただけたらと思う。よろしくお願いいたします。
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■村山氏
はい、ユニバーサル・スタジオの村山です。よろしくお願いいたします。今日は、われ
われの集客マーケティング、特に遠方からの集客について、少し話しをしたい。
最初に、概況というか、ここ数年のUSJの集客なのだが、2014年の7月についに
ハリーポッターがオープンして、今とても非常に好調に推移しているということだ。
今度はエリア別にそれを見た時に、先ほどの大阪のホテルのADRとか、Rev.PAR の話
があったが、ここにあるように、今のUSJもハリーポッターができてから、どこが一番
伸びているかと言うと、伸び率の一番は海外だ。次が関西圏外だ。特に関東エリア、九州
エリアからの伸びが非常に大きくなっている。要は、これらのエリアからの集客が今のハ
リーポッターでの集客の好調を維持している、最大の要因ということだ。
先ほど話をしたように、2014年の7月にハリーポッターがオープンした。だから今
USJは好調ですという、実はそんな簡単な話ではなくて、特に遠方の集客を伸ばすため
には、様々な調査をしている。要は何の調査かというと、遠方から来るお客様のニーズを
徹底的に理解するということが必要になる。
何が言いたいかというと、プロダクト、ここで私たちがプロダクトと言うと、ハリーポ
ッターの場合は、ハリーポッター自身がプロダクトだ。そのハリーポッターがUSJにあ
るということの認知を取らなくてはいけない。関西の方も、例えば、今日関東の方はいな
いと思うが、テレビコマーシャルの量というのは、2013年度と2012年度と比べる
と、圧倒的に増えた。USJは圧倒的なCMを公開した。
これで何をわれわれが獲得したかと言うと、認知率だ。結果として、関東でも、だいた
い90数パーセントの認知を取った。これどういうことかというと、例えば東京で10人
の人をアトランダムに集めて、ハリーポッターがUSJにできたこと知っていますか?と
聞くと、10人中9人の人が知っているというような認知率だ。これは驚異的な数字だ。
しかしながら、遠方から来るお客様は、その認知を得た後に、来場予想をしながら検討
を始めているわけだ。東京からのお客様だと、例えば北海道に行こうかな、沖縄に行こう
かな、それとも関西USJに行こうかと、そのような検討に入っているわけだが、その際
に、お客様がどういったプロセスで旅行を決定していくのか、旅行先を決定していくのか
ということを、このハリーポッターがオープンする前からずっと調査をしている。
ここにある図になるわけだ。この図はシリンダーになっているが、下から徐々に徐々に
検討の段階が進む。最初は「魅力的なコンテンツがあるか?」。次に「ほかの旅行先では得
られないものか?」。さらに「必ず体験できるか?」、「同行者全員が楽しめるか?」。最後
に「予算に見合う価値があるか?」
。これらがこうシリンダーの中で溜まっていって、パッ
とあふれると、こぼれる時に、購買が発生する。
要は、観光立国・日本と、いろいろと言っているが、自治体などの調査費用を見ている
と、数百万円など、とても低い。何が言いたいかというと、観光立国をする上で、徹底的
にしていかなくてはいけないのは、自治体の調査だ。市場調査、消費者のニーズの調査と
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いうことを徹底的にやるべきだ。それをしないで、例えばどこかの市は、台湾との何かプ
ロモーションを仕掛けたと。それは、結局その市が、言いたいことを言っているだけで、
まったくニーズにかなっていない。伝えるチャネルもまったく理解しないまま、自己満足
でプロモーションしている自治体が多数あることが、今、日本の現実なのだ。だから、伝
わらないのだ。
これはUSJとしても一緒だ。ハリーポッターができたからと言って、胡坐をかいて何
もしなかったら、お客さんは来ない。だから認知を獲得して、来場意向を作って、遠方か
ら来るお客さんのニーズに応えるような旅行商品や、メッセージをきちんと整えて、その
チャネルに乗せて伝えていくということが非常に重要だということになる。
例えば、いろいろな調査をすると、
「大阪に来る」方、
「京都に来る」方、
「USJに来る」
方というのは、これはおおまかだが観光がメインだ。そのようなニーズを持って来るわけ
だ。実は調査によると、実際は、「USJに来る」、「大阪に来る」「京都に来る」、すごく重
なっている部分が多くあると言われている。
われわれは集客ビジネスなので、消費者重視だ。コンシューマーのセグメントに分けて、
メッセージや、旅行商品の中身といったものを整理する時に使っている、このコンシュー
マーセグメントが重要だ。
例えば縦軸は予算だ。横軸は、USJ単独の意向が左側で、右側がUSJと関西の周遊
意向だ。このようにお客さんのタイプがいろいろあるわけだ。例えばUSJ単独で、独身
女性で、グループCというのがある。コストもあまりかけたくないといった場合は、例え
ば高速バスと弾丸ツアーでUSJに行く旅みたいな旅行商品を作っていくわけだ。
あとは関西周遊をしたくて、しかも高予算で来たいファミリー、そういったお客様には、
われわれ、いろいろパートナーホテルとか、JRとか、いろいろなパートナーの方がいる
ので、その方たちと組みながら、周遊パスをつけた旅行商品、関西を周遊できるようなパ
スをつけた旅行商品などを作っていくということだ。
でも実際は、ビジネス上のこの消費者セグメンテーションだけでは、ビジネスはできな
くて、この後に、今日は映さないが、ショッパーセグメンテーションというのがあり、今
度購買をする際に、どのようなチャネルを伝えながら購買されるか、となってくると、こ
こに書いてあるセグメンテーションとは、大きくまた変わってくる。この消費者セグメン
テーションというのは、あくまで、どのような旅行商品、どのようなプロダクトがお客さ
んのニーズに合っているのかというのを考える時に使っているわれわれのツールなのだ。
先ほど話をしたように、コンシューマーセグメントの右側の関西周遊をしながらUSJ
に来るお客様は、ものすごい数が関西経由で来る。われわれは、別に大阪にこだわってい
るわけではなくて、京都、神戸、京阪神だ。そのようなところと連携をしながら、商品と
いうプロダクションを作っていきたいと思っているのだが、いま関西の最大の問題は、ブ
ランドが無いというか、例えばメッセージでも関西を一言で伝えるようなメッセージが無
いということだ。
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2014年度産学連携ツーリズムセミナーin 関西
よって、なかなか、「関西」のどの域まで括るかというところも1つの問題だが、実際に
インバウンド、台湾とか香港とか、成熟している市場へ、関西滞在型の旅行につき、
「京都」
とか「大阪」とかにこだわっていないで、
「関西」としてのブランドというのを作りながら、
メッセージをしっかり発信して、コミュニケーションをしっかりと実施していくというこ
とが必要になってくるのではないかと思う。以上です。
■若林氏
はい、村山さん、どうもありがとうございました。集客マーケティングということで調
査をして、そのデータからどう読み取っていくかということがあるわけだが、そこから消
費者についての分析を踏まえて、そして、そこで仮説を立てて、検証しながら戦略を立て
る。マーケティングがとてもデータに基づいており、地道に、戦略的に進めて、1つ1つ、
このような結果、数字を出したと。単にもう新しいアトラクションができたから当たった
というような、そのようなことではないということだ。ありがとうございます。
【会場との質疑応答】
■若林氏
それでは、だいぶ実は最初のそれぞれの団体企業様がどのような取り組みをしているか
ということの紹介にだいぶ時間を費やしたので、ここからは少し駆け足でと思う。まずは
ここで一度と言うか、最後に回すと時間が取れなくなる可能性があるので、ここまでのと
ころでフロアから何か質問とか、感想とか、1人、2人、3人ほど、まず取って、その後
で、これからの関西のエリアで、どのような取り組みが求められるのか。そして学生の皆
さんに期待することやメッセージともらうことで、時間通り何とか進められたらと思って
いる。
ということで、会場から何か質問、感想はありますか?この方にこんなことを聞きたい
と指名していただいて結構なので、よろしくお願いします。いかがでしょうか。
■質問者1
いろいろ勉強になるお話ありがとうございます。皆さんの話を聞いて、
「関西」と言うと、
今、アジアのお客さんが多いと思うが、最初の赤星さんの話で、京都はどちらというと、
そのようなところではなくて、違うところの外国人のお客さんを狙っていく、そのような
戦略を立てているという話を聞いた。最後、村山さんが話をした中で、関西全体で、観光
というか、広域の観光に取り組んでいく場合に、ヨーロッパなどのお客様も多いし、少し
客層が大阪とは違う気がする。その場合、京都は、どのようなことを考えているのかを、
私は京都の人間なので、京都で教えている者なので気になるので、少し教えて欲しい。
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2014年度産学連携ツーリズムセミナーin 関西
■若林氏
はい、ありがとうございます。先ほどのデータでは、もちろん台湾、中国も宿泊数とし
ては1位と3位を占めているので、多数アジアから伸びていることはあると思うが、赤星
さん、いかがでしょうか。
■赤星氏
はい。今、若林先生が話をしたとおりで、いま圧倒的にナンバーワンは台湾だ。先ほど
私が話をした、欧米の比率が高いというのは、商習慣的な問題も京都は大きいのでは思う。
特に東南アジアが今非常に伸びている。中国のメインランドが非常に伸びているのだが、
FITという個人旅行よりも、団体旅行が非常に多い。まさにいろいろなところとタイア
ップが必要で、例えば、USJともいろいろと相談した。やはり一番の京都の難点は、東
南アジアのエージェントが京都に求めてくるのは、年間を通じた要は在庫の供給なのだ。
しっかり年間を通じてレギュラーで宿泊を出していく、そうであれば送客をするというス
タンスである。
かたや京都の宿泊施設のスタンスは、もちろんそのような要求に対応している施設もあ
るが、圧倒的に現状は、やはり4月、11月は国内でしっかり埋まってしまうので、安定
した在庫の供給ができない。必然的にパッケージツアーを京都へ送り込める比率が非常に
まだ弱い状況だ。
ただ、私どもは、先ほども話をしたと思うが、特定の地域にフォーカスをあえてしない。
あえてターゲット像をある程度、「目利き層」としてフォーカスしている。それは何かとい
うと、今、中国も東南アジアも非常に経済成長に伴って、
「目利き層」といわれる、より裕
福な層や中間層も成長しており、そのような方がどんどん個人旅行で来ているので、比率
としてはアジアも伸びてきている。
よって、特に欧米をフォーカスするとか、アジアをフォーカスするということは、私ど
も、少なくともコンベンションビューローの立場では考えていない状況である。
■若林氏
ということなので、京都市全体ではいろいろあるが、戦略的に重点的な取り組みで、先
ほどのような話があったということだ。別に排除するのが、京都全体の観光戦略ではない。
それではほかに、質問、感想等ありましたらお願いします。
■質問者2
先ほど村山部長から、関西はブランドが無いという話があったが、あえてブランドがあ
るとすれば、どのようなところなのでしょうかということをすごく聞きたいと思う。その
理由も聞きたい。よろしくお願いします。
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2014年度産学連携ツーリズムセミナーin 関西
■若林氏
はい、質問ありがとうございました。村山部長が自ら話をしたことなので、最後、村山
さんにきちんと引き取ってもらわないとまずいかなと思うが、関西ではブランドが無いと
言う時に、私がまず第1に思うことは、「関西」という言葉でアンケートを取ったら、世界
の誰がここのこういうエリアだとわかるのか。つまり、「関西」という言葉が、ある種の知
識やイメージと結びついて、多くの方々に認知されているかというとどうだろうか。
「東京」
は認知されている。「京都」も「大阪」もそうだ。しかし、
「関西」と言った瞬間、
「関西」
という言葉が通用するのは日本だけで、世界のどこに「関西」が知られているのか。そも
そもブランドになるというのは、その言葉が強いイメージとか、知識とかと結びついて、
多くの人に知られている。つまりブランド連想と学問的にはいうのだが、ブランド連想が
成立していないようなブランドはブランドではない。
そのような意味では、なかなか世界で、「関西」という名前で発信しても、それどこの国
ということになる。「三都物語」という言葉もあったが、それは大阪、京都、神戸と言った
ほうが、まだしっかりとわかるかもしれない。
その次に、「関西のメッセージ」は何かということだ。「関西って何やねん」という話に
なった時に、
「京都」、「神戸」、「大阪」は、ポリシーとかメッセージを、結構それぞれ意識
したプロモーションをやっているが、「関西」を代表するプロモーションは何なのか。これ
も確かに言うとおり、まだはっきりしていないと思う。やはり村山さんに答えていただく
のがまず必要だと思うので、「関西」にブランドが無いというのはどういう認識なのか。そ
のあたりの話をして欲しい。
■村山氏
今、ほぼ若林先生が答えたのだが、私もまったく同じ意見だ。確かに「関西」というワ
ード自体がまったく認知がないワードなので、例えば、われわれも「関西」というのを海
外でリスティング広告をやると、だいたい失敗する。「関西」では誰も調べないのだ。「京
阪神」という人もいるが、これも全然響かない。ここにジレンマがあって、一方で、香港
の人がこちらに、関西に来る場合には、関西で、京阪神で滞在するのだ。
よって、若林先生が話す通り、何かワードをパっと聞いて、それで京阪神なら京阪神の
エリアをイメージするようなものが無い。それはいきなり思いつ付くものではない。例え
ばわれわれも同じことをやっているのだが、クリスマスツリーを作るのに、われわれがや
ったのは、「人工のクリスマスツリーでは電飾が世界一です」と。いろいろやるのだが、結
局メッセージが非常に重要になってくるわけだ。「大切な人と見たいクリスマス」とかであ
る。そのようなメッセージを、フレームメッセージとか言うのだが、それもいろいろ調査
で出てくる。
例えば、京阪神の旅行をした人に、いろいろな調査をかける。そうすると、言葉だけで
の調査だが、その中で、例えば、「サービスは日本で、アジアでも一番のサービス」だと思
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2014年度産学連携ツーリズムセミナーin 関西
う。または、
「もう1回行きたいエリアナンバーワン」とか、そういったフレームメッセー
ジ、そういったものを調査の中から編み出して作りながら、それをプロモーションの時で
も同じようなメッセージを使っていくと、逆にだんだんブランドが見えてきて、ひと言で
このエリアを表すのはこういうものだといようなこともできるわけだ。
問題は、今あるものだ。それぞれの関西エリアの自治体がバラバラにやってしまうので、
すごく良くない状況だと思っている。
【テーマ2;2020 年以降を見据えて関西地区で取り組むべきこと
参加している学生へのメッセージ】
■若林氏
ありがとうございました。では、持ち時間がだいたい5時までということですから、そ
ろそろ最後巻きにかかろうかと思う。したがって、今日は「関西」という企画ではあるの
だが、「関西」というブランドが本当に世界に打って出るのかというのは、実は結構悩まし
いかもしれないというのが今日、村山さんからのご指摘で考えたことである。
思い浮かべないことを新たに思い浮かべようと思ったら、膨大なお金や、予習とか、歴
史がないと拾えないので、そのようなことを今から始めるのかというわけである。それよ
りも今もうすでに知られているものを大事にしたほうが、プロモーション効果が高いかも
しれないので、「関西」ということで外に出していくということの議論というのは、1つ面
白いなと思う。
一方で、
「関西」ということで魅力的なものがあって、それが連携していくということで、
実際に多くの世界から、また国内での観光客がいろいろ楽しまれる。よって、現実に観光
の楽しみ方としては、関西のエリアが成立しているわけで、そのあたりのことが少し課題
として指摘されたように思う。
それでは最後、1つは、今の議論につながる話だが、「これから関西地区ということでど
のような取り組みを進めようとするのか」ということ、これからということだ。そして、
もう1つ今日集まっている「学生の皆さんに対してアピールしたいこと」という、この2
つのお題で、それぞれまたパネリストの皆さんに発言してもらい、特にまとめるというこ
とはいらないかと思うので、この場でパネルディスカッションを終えたいかと思う。それ
ではまず赤星さんからよろしくお願いいたします。
■赤星氏
はい、今後の課題は、これからやはり2020年、東京オリンピック・パラリンピック
に向け、京都市が大きな戦略というか、計画、観光の計画を打ち出した。私どもがいかに
そのミッションを受けて、
「京都」というか、
「関西」、あえて「京都」と言わせてもらうが、
どのように、世界人類の宝としての「京都」を世界中に広めるのか。先ほど村山さんの話
にもあったが、残念ながらそんなに潤沢にマーケティングにかけられる予算が無い。これ
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2014年度産学連携ツーリズムセミナーin 関西
は京都にかかわらず、すべての自治体は同じ悩みを抱えていると思う。
当然それをどのようにお金をかけていくのかということも、私どものような外郭団体が
考えていかなくてはいけない。1つ、大きなヒントというか、京都が自ら「京都」と掲げ
ないのであれば、先ほどJR西日本さんから話があったが、われわれの価値を高めてくれ
るだろう相手を戦略的にパートナーとして見つけてきて、彼らに京都の話をしてもらう。
彼らが「京都」という資源を使って物事を発信してもらうという、いわゆるタイアップ的
なものを去年から非常に力を入れ、私個人的にも入れている。
例えば、今京都の四条にライカというカメラ屋さんが立ち上がった。東京に旗艦店があ
るのだが、最初は大阪に立ち上げようとした。ただ、多分売り上げだとか、そのようなこ
とを考えても大阪なのだとうが、あえて京都の祇園のど真ん中にぶつけてきたと。
何を意味しているかというと、世界中の「ライカファン」という方々がいる。その方々
が、やはりライカというカメラをこよなく愛していて、ある程度高いカメラ屋さんが京都
にできたということは私どもが発信しなくても、自然にライカさんが京都というステージ
を使って発信をすることになる。
また、先に提携したトリップアドバイザーは世界的なサイトとして、今活躍している。
その中で意識的に京都と提携をしてもらい、あえてオフライン、オンラインの中ではなく、
オフラインの中でトリップアドバイザーを使っていくことで、私どもが仕掛けていく。私
どもは、お金が無いなどと言ったら怒られるが、やはり民間の企業様に比べると、マーケ
ティング予算が非常に少ない中で、いかに京都のイメージを保つパートナーを選んで連携
することだと思っている。
先ほど関西の連携という話もあったが、私個人的な考え方としては、やはりさっき議論
にあったとおり、今から新たに立ち上げるというのは、少々負担が大きいのかなというと
ころもある。やはり戦略的にお互いがウィンウィンになれるような関係の中で、しっかり
とお互いの良さを引き出していくような連携の仕方というのが、これから基本になると思
っている。
今日お集まりの方は学生の方が非常に多いと聞いている。先ほど大学生の皆さんの講演
の中であったが、やはり京都は大学の町だ。いま京都市も強く危機感を持っているのは、
観光産業の非正規社員のパーセントが非常に高い状況ということだ。これはやはり無くし
ていって、産業として安定させていくということも非常に重要だ。やはり観光は1にも2
にも3にも、人だと思っている。
やはり学生の方々がこのような集客産業であったり、町のビジネスであったり、サービ
ス産業を目指させるような取り組みを業界の皆様と一体になって、行政の皆様と一体とな
って作っていきたい。やはり目指す人がいない産業というのは、これほどシュリンクして
いく産業はないと思っているので、皆様とも何かの縁なので、今後も何なりとご意見、ご
指導いただければと思います。以上です。
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■小菅氏
時間がないので簡潔に話をすると、今私どもでは「関西」をどう表現するかについては、
「マイ・フェイバリット関西」というサイトで、関西の魅力を情報発信している。「関西」
は村山部長も話をしたようにブランドが無い。
私どもが今トライしているのは、では逆に、いろいろな切り口で「関西」というものを
表現していこうということで、文具からカフェ、パン屋、家島、これは姫路のほうの島だ
が、いろいろな切り口で「関西」を表現していく。先ほど村山部長の話の中に、旅行先決
定プロセスということで、シリンダーの話があった。
1つ大きなブランドがあれば、水が溜まってあふれるという形で、選んでもらえる。た
だ「関西」にそれが無いとすれば、様々な切り口で、その魅力というものを積み上げてい
くということも1つかなと思う。それを積み上げることで、「関西」というのは、他と比べ
て、「何かいろいろなものがあるよね」ということで選んでもらえる。そのようなことを考
えつつ、実は今日、新しいテレビCMを放映し始めた。これは関西では放映しないのだが、
岡山、広島、福岡エリアで、山陽新幹線が来月の10日に40周年を迎えるのを記念して、
関西のブランディングとまではいかないが、新しい魅力を情報発信したい。そのような思
いで、先ほど話題に出た、滝川クリステルさんをイメージキャラクターとして作っている
ので、少しそれをご覧いただきたい。(CM放映)
少し宣伝めいてしまったが、いろいろな積み上げが、関西ブランドだということも表現
できているのかなと。私も関西人なのだが、まだまだ知らないことがある。この映像を見
て、「これどこなのかな?」と思った方も多いと思うが、そのようなものをしっかりと発掘
して、それを発信していくということが、今後2020年を見据えた上で大事なのかなと。
理事長が冒頭に話をしたように、その積み上げが、国内の旅行需要を喚起するだけでは
なくて、最終的にインバウンド需要も喚起するのであろう。その頃には、インバウンドも
リピーター化してくると思う。1回関西行ったから、次はやめようというのではなくて、
いろいろな切り口があれば、何回も関西に行きたくなる。そのようなことにつながってい
くのではないか。ブランディングの答えが出ていないが、このようにいろいろな切り口を
模索しながら、「関西」のブランド化というのを目指していきたいと思う。ありがとうござ
いました。
■住田氏
「関西」のブランドということを、いつも皆さん言うのだが、20年間関西空港で働い
てきた人間としては、「関西」という言葉が入っていて、わりと珍しい会社なのだ。「関西」
というのは、関西空港ができて、20年間やってきたことの中で、結構外国では、フライ
トボードに「KANSAI」と書いたりするので、それなりにわかってきたと。ただわか
らないところは、一生懸命私どもが、「関西大阪」とか、「関西京都」とか、関西のあとに
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2014年度産学連携ツーリズムセミナーin 関西
別の言葉をつけて話をしながら説明している。
私は、「関西」のブランドは「医薬品」と「食」だと思っているので、その話をしたい。
確かにこれから何かを作るのではなくて、「医薬品」と「食」。私どもは、「食」ということ
で、なんと食の輸出の関係のコーディネーターをずっとやっている。オール関西食輸出推
進委員会と結びついている。私がそこの委員をやっているが、それでインバウンドの人た
ちに聞いたら、韓国も台湾も中国もタイもアメリカもフランスも、「関西の食」というのは
何も知らない。
ということなので、これを少し輸出してみようと、それは商社とか大きいところを使っ
て船でやるのではなくて、長年今まで輸出しようと思っても少量で小さな会社だからでき
なかった人たちを集めて、組合を作って、関西でできたものを、関西で生産されたものを
オール関西でそれを輸出していこうと、関西空港を使って、それを輸出していこうという
取り組みを始めている。要するに、チャンスを広げるポイントになっているかもしれない
ので、紹介しておきたい。
ほかに大事な点として、例えばフルーツなどは、ものすごくたくさん関西空港から輸出
しているものがある。例えば、ぶどうは半分以上関西空港から輸出している。桃は3分の
1も関西空港から輸出している。
このようなことはあまり知られていなくて、それを知ってもらうということと、実際に
もっと輸出してみようということで、海外の人たちに海外でおいしいものを、関西のおい
しいものを「ふるまう」
。そうすると、関西に行きたくなる。そうしたら、このインバウン
ドの人たちが関西へ行こうとして、飛行機に乗って、関西空港を通じて、京阪神に行くか
ら、インバウンドの人たちが増える。インバウンドの人たちが増えたら、地域がそれなり
に潤うと。このような関係が成り立つのではという感じがするので、2020年に向けて、
このような取り組みを続けていきたい。
あとは安倍首相も日本の農産物輸出について、2020年までに1兆円を目指している。
そのようなことも関係してくるので、実は、関西の取り組みと世論の取り組みは連携でき
る、一体になっているのではないかと。インバウンドと「食」。これをキーワードに「関西」
を広めていきたい。オール関西で伸びていきたいという取り組みをしている。
以上だが、あと学生さんたちにお願いしたいのは、やはり、とにかく何でもいいから海
外に行きましょう。パスポートを取って、海外に行きましょう。パスポートを1回無料に
してくれよ、成人式の日にパスポートを無料で配布してくれというお願いを私はずっと言
っているのだが、とにかく海外に行こうと。関西空港から、アジアが強いので、アジアに
行って欲しい。それでアジアの人たちと実際に片言でも何でもいいから話をしましょう。
日本だけにいるよりは、アジアの人たちと話をすると、ものすごく元気をもらえる。彼
らは自分たちが幸せになることについて貪欲であるし、そのこと自体私は素晴らしいこと
だと思う。ぜひ体験してもらいたい。日本にいただけではなかなかうまくいかない。実際
に行ってみて欲しいということだ。
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2014年度産学連携ツーリズムセミナーin 関西
そして今度は、外国の方がどんどん来る。その人たちには、関西の人が、日本の良さを
伝えられるように、もっと知識とノウハウと、いろいろなものを積んで欲しい。なかなか
私だって、こんな年なのだが、なかなか的確に関西を説明できないかもしれない。だから
日々努力している。そのようなことをぜひやって欲しいと思う。そうすれば、2020年
は素敵な年になっていくのではと思う。以上です。
■村山氏
USJとしては、これからもお客様の予想をいい意味で裏切るようなプロダクトをどん
どん出していきたい。ハリーポッターができて、ある意味、全国区にやっとなったという
感じがするが、これから本格的に海外を意識したようなプロダクトというのもどんどん展
開しようと思う。そのいい例が、今私どもがイベントでやっている、ユニバーサル・クー
ルジャパンだ。これはUSJというのは、だいたい海外のコンテンツを使って、イベント
とかアトラクションを展開してきたのだが、今回このクールジャパンというのは、プロダ
クトもコンテンツもメイド・イン・ジャパンなのだ。
実際にプレオープンの時に、メディアをいっぱい招聘したのだが、海外のメディアにと
って、アジアだけではなく、欧米のメディアも来て、非常に評価の高いイベントになった。
このように世界に発信できるようなプロダクトを、ハリーポッターもそうだが、継続的に
展開していくというのが、私どもに課せられている。
観光産業を目指す学生の方々に言いたいのだが、これは去年、同じようなことを言って
いると思うが、やはり観光学とか、観光というところの学問というのは、何か新たにどこ
かのエリアで、すごく良いものがあったらこれを伝えたいとかということもすごく重要だ
し、観光客がどういうニーズがあるかとか、リサーチするのも非常に重要なのだ。しかし、
やはり観光学もほかのビジネスと一緒で、マーケティングというものを徹底してやってい
ただきたいと思う。今、実際、私もまだ全然勉強が足りないが、いろいろな人たちと連携
をしていった時に、やはり思い付きの提案とか、そのようなものが非常に多くて、根拠が
無い提案とか、ニーズを良く理解しないまま、先ほど言ったように、
「自分がこうやりたい
な」というような施策がやはりとても多く、自治体によっては、それによって失敗して、
赤字を被るところも出てきている。
だから危ない。よって、この観光業も消費財もみんな一緒で、やはりマーケティング、
広義の意味でのマーケティングというものを徹底して、勉強していただいて、ぜひとも観
光産業というところに皆さんに入ってきていただきたいなと思う。
■若林氏
はい、ありがとうございました。では以上で、第2部のパネルディスカッションを終わ
らせていただきたいと思います。パネリストの皆さん、どうもありがとうございました。
以上
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