2 社会動向の変化 2.1 少子高齢化の進展 (1) 高齢化スピードの国際比較 近年の社会構造における最も大きな変化として、まず、少子高齢化が挙げられる。我が国は世界に 類を見ないスピードで高齢化が進展しており、下図のとおり、全人口に占める 65 歳以上人口の割合が 10%から 20%に増加するに要する期間は 21 年間と見込まれており、米国との比較では僅か 1/3 の期間 であり、急激な構造的変動が生じている。 図表:全人口に占める65歳以上人口の割合が10%から20%に増加するのに要する期間 (年) 65歳以上の人口 が20%になる年 2040 2030 2020 2010 2000 44 61 21 1990 73 1980 43 44 65 64 75 49 50 62 51 76 61 66 78 86 1970 1960 1950 1940 65歳以上の人口が10% から20%になるのに要 する年数 65歳以上の人口 が10%になる年 1930 1920 フ ラ ン ス ド イ ツ ギ リ シ ク イ タ リ ア オ ラ ン ダ ノ ル ウ ェー デ ン マ ャ ブ ル ガ リ ア ー ス ト リ ア ベ ル ギ ポ ル ト ガ ル ス ウ デ ン ス イ ス 英 国 ー オ ェー 米 国 ー カ ナ ダ ー 日 本 オ ス ト ラ リ ア 資料:UN, The Sex and Age Distribution of World Population:1994 による推計人口に基づき、(株)三菱総研作成。 ただし日本は、総務庁統計局「国勢調査報告」および国立社会保障・人口問題研究所「将来人口推計」による。 8 (2) 出生率・平均寿命の変化 我が国の少子高齢化の主要因は、 「出生率の低下」と「平均寿命の向上」である。 下図のとおり、全国の合計特殊出生率は 1984 年以降、ほぼ一貫して低下し続けている。岐阜県は全 国より高い水準をほぼ保持しているものの、全国と同様に右肩下がりの傾向が続いている。 一方、平均寿命に関しては男性・女性とも一貫して上昇しており、1995 年時点では 1980 年に比べ て男性が約 3 歳、女性が約 4 歳上昇している。なお、岐阜県の平均寿命を全国平均と比べると、女性 は全国平均より低いものの男性は高い傾向となっている。 図表:合計特殊出生率の変化 2.00 1.83 合計特殊出生率(%) 1.80 1.76 1.77 1.75 1.74 1.76 1.85 1.81 1.79 1.80 1.81 1.76 1.72 1.72 1.74 1.69 1.69 1.66 1.60 1.58 1.57 1.57 1.55 1.54 1.54 1.53 1.49 1.50 1.51 1.49 1.50 1.40 1.47 1.41 1.46 1.42 1.43 1.43 1.39 1.40 1.38 1.34 1.20 1.00 全国 岐阜県 資料:厚生労働省「人口動態統計」 ※合計特殊出生率=母の年齢別出生数/年齢別女子人口 (15 歳から 49 歳までの合計) 図表:平均寿命の変化 84.0 平均寿命 83.2 82.0 81.7 80.8 平均寿命(歳) 80.0 80.3 79.0 78.0 79.1 77.9 78.5 74.0 80.1 80.0 79.2 77.9 76.7 76.3 75.5 76.0 74.1 75.0 76.3 76.0 83.0 82.1 77.2 76.7 73.6 72.0 全国:男女平均 岐阜:男女平均 全国:男性 全国:女性 資料:厚生労働省「生命表」 9 岐阜県:男性 岐阜県:女性 (3)総人口の推移 我が国の総人口は 2000 年時点で約 1 億 2700 万人であるが、近年の出生率の低迷を要因にして人口 増加率は年々低下し、ここ数年ではほぼ 0.2%増程度に止まっている。 一方、岐阜県においても人口の増加は頭打ちとなっており、人口増加率は減少傾向にある。 (なお、 1999 年は総務省「人口推計」、2000 年は総務省「国勢調査」の統計データのため、この間の人口変化に 関する解釈には留意が必要) 対前年増加率 2000年 1999年 1998年 1997年 1996年 1995年 1994年 1993年 1992年 1991年 1990年 0.0% 1989年 115,000 1988年 0.2% 1987年 118,000 1986年 0.4% 1985年 121,000 1984年 0.6% 1983年 124,000 1982年 0.8% 1981年 127,000 1980年 総人口(単位:千人) 図表:全国の総人口推移 総人口 増加率 資料:総務省「国勢調査(1980 年から5年周期)」「人口推計(国勢調査以外の年)」 図表:岐阜県の総人口推移 2,200 0.8% 0.6% 0.4% 2,000 0.2% 対前年増加率 総人口(単位:千人) 2,100 0.0% 1,900 -0.2% 2000年 1999年 1998年 1997年 1996年 1995年 1994年 1993年 1992年 1991年 1990年 1989年 1988年 1987年 1986年 1985年 1984年 1983年 1982年 1981年 -0.4% 1980年 1,800 総人口 増加率 資料:総務省「国勢調査(1980 年から5年周期)」「人口推計(国勢調査以外の年)」 ※「国勢調査」と「人口推計」との間では、人口の増減数に関する解釈上留意が必要 10 (4)年齢別人口構成比の変化 年齢3区分の構成比は、1980 年から 2000 年の間で老年人口(65 歳以上)の割合が約 2 倍となり、 その一方で年少人口(14 歳以下)は約 1/2 に減少している。岐阜県に関しても全国平均とほぼ同様で あるが、2000 年時点において老年人口の割合は全国平均よりやや高く、生産年齢人口(15〜64 歳)が 低い状況となっている。 図表:全国の人口構成比 100% 9.1% 10.3% 12.1% 14.6% 17.2% 80% 60% 老年人口 (65歳-) 67.4% 68.2% 69.7% 69.5% 68.2% 生産年齢人口 (15−64歳) 年少人口 (0−14歳) 40% 20% 23.5% 21.5% 18.2% 16.0% 14.6% 85年 90年 95年 00年 0% 80年 資料:総務省「国勢調査」 図表:岐阜県の人口構成比 100% 8.2% 10.9% 12.7% 15.3% 18.3% 80% 老年人口 (65歳-) 60% 68.4% 67.0% 68.5% 68.1% 66.8% 生産年齢人口 (15−64歳) 年少人口 (0−14歳) 40% 20% 23.4% 22.1% 18.8% 16.6% 14.9% 90年 95年 00年 0% 80年 85年 資料:総務省「国勢調査」 11 下図は年齢5歳区分の構成比であるが、これから読み取れる特徴としては、団塊世代及び団塊ジュ ニア世代が全人口に占める割合が突出して高いことである。 団塊世代はそのボリュームの大きさから、 我が国のみならず米国においても消費トレンドに大きな影響を与えてきていると言われている。 我が国においては「団塊世代は数年後に 60 歳の定年期に達し」 、さらに「団塊ジュニア世代は結婚 し子供を持つようなり」 、互いに大きなライフステージの転換期を迎える。そのため、こうしたボリュ ームの大きい世代のライフステージの変化は、今後の消費構造に対しても大きな影響を及ぼすものと 見込まれる。 図表:全国、岐阜県の人口構成比(1999年) 資料:総務省「人口推計」 8.00% 7.00% 6.00% ︵ 構 成 比 5.00% 団塊世代 団塊ジュニア世代 ︶ 4.00% 59 04歳 3.00% 10 -1 4 15 -1 9 20 -2 4 25 -2 9 30 -3 4 35 -3 9 40 -4 4 45 -4 9 50 -5 4 55 -5 9 60 -6 4 65 -6 9 70 -7 4 75 -7 9 80 歳 以 上 % 全 国 岐阜県 12 2.2 情報化社会の到来 昨今の IT 革命は産業革命に次ぐパラダイムシフトと言われるように、国民の社会生活に対しても 様々な構造的変革をもたらしている。 国内の通信インフラの契約状況を見ると、1995 年度に契約数が 1000 万だった携帯電話が、わずか その 5 年後に約 6 倍の 6000 万に達し、 一気に一般加入電話契約数を上回るまでに市場が拡大している。 また、インターネットの普及も目覚ましく、2000 年時点では世帯普及率が 34%と前年の約 2 倍に拡 大している。特に家庭への普及に関しては、それまで課題とされていた通信回線の大容量化・高速化・ 低価格化が、ISDN 回線、さらに DSL 回線の登場により解消されつつあり、インターネットの普及にさ らなる拍車がかかり、今後も通信インフラのブロードバンド化とともに、大幅な普及拡大が見込まれ る。 図表:通信回線、携帯電話・PHS の契約数 7000 契約数(万契約) 6000 5000 一般加入電話 携帯電話 4000 3000 2000 ISDN回線 1000 PHS DSL回線 0 ※DSLの2001年度は2001年10月末時点のデータ 資料:総務省「情報通信白書」平成13年版 図表:インターネットの普及率 (%) 95.8 100 88.6 90 80.0 80 68.2 70 60 50.4 50 44.8 40 34.0 31.8 30 20 19.2 12.3 11.7 5.8 10 3.3 6.4 19.1 11.0 0 1995年 1996年 1997年 1998年 1999年 2000年 大企業(従業員300人以上)普及率 中小企業(従業員5〜299人以下)普及率 世帯普及率 資料:総務省「情報通信白書」平成13年版(1995 年の中小企業・世帯のデータはなし) 13 2.3 「大量生産・大量消費社会」から「循環型社会」への移行 我が国の国民生活は、戦後の貧困社会を経て高度成長期に突入後、生活水準が大幅に向上し社会構 造は「大量生産・大量消費型」となった。 しかし、世界的にも生活水準がトップクラスになると同時に社会には、モノが溢れ始めた。このよ うな状況は下図のように、 主要耐久財の世帯普及率が飽和点に達しつつある情勢からも明らかである。 また、それまでの「大量生産・大量消費型」の社会システムである故の負の遺産である自然環境の 崩壊が進行したことなどから、現在の社会システムは製品のリサイクル等に代表されるいわゆる「循 環型社会」へと移行しつつある。 我が国では 2001 年から家電リサイクル法が施行され、エアコン、テレビ、冷蔵庫、洗濯機がその 対象となっている。今後においても自動車、パソコンなどが対象製品となる予定であり、社会全体と してリサイクルシステムの確立が急務となっている。 なお、下図のとおり厚生労働省発表によるリサイクル率は年々上昇しており、岐阜県は千葉県に続 いて全国 2 位の水準となっている。 図表:主要耐久消費財の世帯普及率 100 90 80 世帯普及率(%) 70 洗濯機 冷蔵庫 カメラ 掃除機 60 乗用車 50 40 ルームエアコン カラーテレビ プッシュホン 30 電子レンジ 20 VTR 10 0 資料:内閣府「消費動向調査」 リサイクル率(%) 図表:リサイクル率 20.0 18.0 16.0 14.0 12.0 10.0 8.0 6.0 4.0 2.0 0.0 18.1 16.8 15.3 15.2 13.9 8.0 1993年度 9.9 9.1 1994年度 10.3 1995年度 1996年度 全国 岐阜県 11.0 1997年度 資料:厚生労働省「日本の廃棄物処理」 リサイクル率=(市町村による資源回収量+市民団体による廃品回収等による集団回収量)÷(市町村によるごみ 処理量+市民団体による廃品回収等による集団回収量) 14 2.4 安全神話の崩壊 我が国の治安は「世界でもトップクラス」とも言われてきたが、昨今、その状況は一変しつつある。 下図のとおり刑法犯罪認知件数(人口 1000 人当たり)は 1990 年代中頃から急激に増加基調に転じ ており、かつ犯罪そのものが凶悪化・低年齢化・国際化しており、それまでの安全神話が崩壊してい る。 なお、岐阜県における人口当たり刑法犯罪認知件数(人口 1000 人当たり)は、それまで全国平均を 大きく下回っていたものの 2000 年には全国平均とほぼ肩を並べるまでに急激に上昇している。 さらに、 犯罪内容別に見ると、人口当たりの「窃盗犯罪」の件数が 1980 年には全国の約 1/2 であったものが、 2000 年には全国を上回るまでに増加した。 また、安全神話の崩壊はこうした犯罪の側面からだけではなく、O‑157 等の食中毒事件や狂牛病問 題等に代表される「食生活分野」 、薬害エイズ問題や各種医療事故問題等に代表される「医療分野」 、 環境破壊を要因とした自然災害等に代表される「住生活分野」等、多岐に渡る分野において散見され る。 図表:刑法犯認知件数(人口1000人当たり) 人口1000人当たりの刑法犯認知件数 (件/1000人) 25 20 15 10 5 0 全国 岐阜県 資料:警察庁「犯罪統計書」 図表:刑法犯内容別の認知件数(人口1000人当たり) 資料:警察庁「犯罪統計書」 17.4 18 1980年 2000年 16.8 人口1000人当たりの刑法犯認知件数 (件/1000人) 16 14 12 10.0 10 8 5.5 6 4 2 0 0.1 0.1 0.04 0.06 0.4 0.5 0.2 0.2 全国 岐阜県 全国 岐阜県 凶悪犯罪 粗暴犯罪 全国 岐阜県 窃盗犯罪 0.8 0.4 0.4 0.4 0.1 0.1 0.03 0.1 全国 岐阜県 全国 岐阜県 知能犯罪 資料:警察庁「犯罪統計書」 15 風俗犯罪
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