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No.
116
November 2003
■金沢医科大学創立30周年記念行事
記念式典、記念講演会、記念祝賀会
第30回金沢医科大学神経科学セミナー
テーマ: 神経眼科学の基礎と臨床
■学事
第17回医学教育に関するワークショップ
教育講演会 テーマ: 最新の医学教育の動向
第31回解剖体合同追悼法要
平成15年度オープンキャンパス/進学説明会
平成15年度父兄会
■学生のページ
第32回内灘祭
第6回ハワイ大学夏期語学・医学研修報告
ハワイ大学医学部プレ・クリニカル研修報告
医学部学生のメディカル・ホームステイ報告
学生の表彰
シリーズ: 私が医師になりたい理由・なった理由
■学術
第30回日本電顕皮膚生物学会
第23回日本眼薬理学会・第14回国際眼研究会議日
本部会合同会議
日本肝臓学会市民公開講座
第19回北陸ストーマ研究会
北國がん基金研究助成
NIH「シェーグレン症候群研究」に本格的研究助成
本学血液免疫内科学が研究助成金を獲得
■病院
第24回関連病院会議
平成15年度医療監視
病院新館に大型絵画寄贈
第17回喘息サマースクール
■管理・運営
金沢医科大学点検・評価報告書2002年度版発刊
■随想・報告
米国タフツ大学留学記
時々の日の丸
夢と現実
■教室紹介
腎臓内科学、神経精神医学
□金沢医科大学創立30周年記念事業募金
□金沢医科大学学術振興基金募金
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KMU ANNIVERSARY 3 0t h
金沢医科大学創立30周年記念行事
盛会裡に行われる
2003.9.13
本部棟4階講堂で行われた記念式典
本学創立30周年記念行事が病院新館の完成に合わせて平
成15年9月 13 日(土)に、記念式典・講演会・祝賀会・病
院見学会の形で行われた。北陸3県国公私立大学、本学関
連病院、県内自治体関係者、本学の後援組織である北辰同
窓会、北斗会、後援協力会、橘会及び本学と姉妹校提携を
結んでいる米国マーサ大学の医学部長、副医学部長等の各
界の来賓を迎えて盛会であった。
記念式典は午前10 時から約250 名の来賓を迎え、本学本
部棟4階講堂において執り行われ、小田島粛夫理事長の式辞
に続いて、遠山敦子文部科学大臣(代読:小松弥生文部科
学省高等教育局医学教育課長)、森喜朗衆議院議員、川
明 日本私立医科大学協会会長、アン・ジョウブマーサ大
学医学部長からご祝辞をいただいた。
引き続き功労賞として、元本学理事長を務められた西東
利男先生と初代病院長の吉田清三先生(代理)に感謝状と
記念品が贈られた。11時から記念講演会が行われ、迫田朋
子NHK教育番組センターチーフディレクターにより「安全
で質の高い医療を」と題してご講演いただいた。
祝賀会は午後0時 30 分から病院新館1階ロビーにおいて約
490名の来賓・教職員の参加のもと行われた。最初に本学ク
ラシック音楽同好会の学生による校歌合唱とブランデンブ
ルグ協奏曲の演奏に続き、竹越襄学長及び内田健三病院長
による乾杯の発声で祝宴が始まった。
本学の創立 30周年記念事業は、① 病院新館の建設、②
学生クラブハウスの建設、③医学教育海外交流基金の設立、
④ 創立30周年記念番組の制作、⑤ 金沢医科大学三十年史
の刊行の5つの事業が企画され、病院新館の完成にあたり、
9月8日(月)から 10日(水)までの3日間、オープンホス
ピタルとして地域の一般の方々を対象に見学会を行い、延
べ3,610人の見学があった。また、記念式典当日には、記念
行事招待者にも病院見学会を行った。
「金沢医科大学三十年史」は姉妹編として作られた「金沢
医科大学創立30周年記念誌」とセットで完成し、記念式典
出席者、在学生の父兄、記念募金された方々に贈呈された。
西東利男先生に感謝状が贈られる
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KMU ANNIVERSARY 30th
記念式典
式 辞
理事長
小田島 粛 夫
本日、森先生はじめ多
数のご来賓各位のご臨席
を賜り、学校法人金沢医
科大学の創立 3 0 周年記
念式典を開催できますこ
とは本学関係者一同にと
り誠に光栄とするところ
であります。ご臨席賜り
ました関係者各位に心か
らお礼を申し上げます。
本学は「人間性豊かな
良医の育成」を建学の精
神として、昭和47年この
内灘の地に開学され、こ
の度、創立30周年を迎えることになりました。
昭和30年代・40年代は医学研究が加速され急速に発展し
た時代ですが、この様な研究重視の中で本学は、医科大学
の本来の使命である医師の養成を目的として創立されまし
た。しかし、草創期特有の混迷と模索状態が続き、結果と
して教育が混乱し、最終的には教育の基本である教員と学
生の信頼関係が失われ教育荒廃の事態が起こりました。そ
の後、大学院設置を境に関係者各位のご協力と教職員の努
力によって教員と学生の信頼関係が回復し、教育環境が急
速に改善いたしました。
この様な教育環境の改善を機会に本学の過去を総括し、
そのレゾンデートル(存在理由)を確認する目的で全学の
総意をお聞きし、また、Reverentia Vitae(生命への畏敬)
を本学の精神的指針と致しました。大学ルネッサンスと位
置づけられたこの一連の努力が大学としての基盤を確固た
るものにし、Reverentia Vitaeは本学の教育、研究、そして
診療の精神的なよりどころとなりました。
医学教育においては全国的にコアカリキュラムが導入さ
れPBL などの教育技法も定着し、医師として基本的に必要
な医学知識の修得については特に問題はなく、卒業時の学
力においても大学間の格差はなくなりつつあります。しか
し、21世紀の社会における医学教育においては人間性を育
むための教育が大きな課題になると考えております。
20世紀を自然科学の時代とすれば21世紀は生命科学の時
代ということができます。自然科学や生命科学は我々の生
活を豊かにし難病の治療を可能にしましたが、この科学技
術文明は大きな矛盾を内包していることは否定できません。
その弱点をカバーするために人間はヒューマニズムを考え
出し、それによって社会を必死に支えてきたと思われます。
しかし、現代社会はこのヒューマニズムの精神を忘れ、
欲望の追求と肥大化を容認する無規制状態、アノミー社会
へと進んでおり生命の尊厳すらも軽視されつつあると言っ
ても過言ではありません。
このような21 世紀の無規制状態、アノミー社会において
は、教育の基本理念である人間形成と人格の陶冶に立脚し
た「人間性豊かな良医の育成」が重要であると考えており
ます。平成10 年には良医の育成で大きな成果を挙げアメリ
カにおいて高い評価を得ているマーサ大学と協定を結び、
学生と教員の相互交流を行っておりますが、さらにハワイ
大学やバーモント大学との教育交流も進めております。
教育の重視が研究や診療の軽視と誤解される可能性があ
りますが、医師を養成する医科大学においては研究なくし
て医学教育は成り立たないと考えております。昭和57年に
大学院を開設して以来今日まで、総合医学研究所を創設す
るなど研究の活性化に努めてまいりました。昭和60年には
中国医科大学、中日友好病院および同済医科大学と姉妹提
携を結び研究者の交流を進めておりますが、本年度は国際
協力事業団の第1回草の根技術協力事業に選ばれて名誉教
授を中心に参画することになっております。
平成10年には文部省からの補助によって総合医学研究所
にハイテクリサーチセンターが併設され、学外との共同研
究の窓口的な役割を果たしております。また、本年4月には
大学院の全面改組が認可され、学長を中心に研究体制の改
組が進められております。
最近、問題になっている医療事故防止の原点は「患者本
位の医療の実践」であると思っております。
「患者本位の医
療」は、単に医療の問題ではなく良医の育成のためにも極
めて重要であり、本学では開学以来、患者中心の医療、患
者に優しい医療を実践して参りました。更に、新病院の完
成を機会に内科と外科の壁を無くし、患者が最も適切な治
療を受けられる診療システムを採用することに致しました。
また、本学独自の1患者1カルテシステムはまさに患者中心
の医療を実践することを目的としたものですが、この1患者
1カルテシステムの思想が電子カルテ開発の基本になりまし
た。本学では平成12年に全国に先駆けて電子カルテを完全
実施し、診療のみならず学生の教育にも活用しております。
大学病院は医学教育の場としての役割が重要ですが、さ
らに高度先進医療を中心とした地域の基幹病院としての役
割も求められております。将来、医学研究や医療技術開発
が進めば医学教育病院と高度先進医療を中心とした病院と、
機能分離が必要であると思っております。
なお、30周年記念事業の一つとして建設され、今日、皆
さんにご披露させていただく病院新館は故村上理事長時代
に計画されたもので本学の医学・医療の永年の夢を実現す
創立30周年記念式典の式辞、祝辞はイントラネット(学内)を通じてビデオ・オン・デマンド形式でご覧になれます。
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KMU ANNIVERSARY 3 0t h
るマイルストンの一つでもあります。
創立 30 周年を「歴史を振り返り、大学の明日を考える」
機会にしたいと思っておりますが、この30 年の歴史を る
と、時には他大学が決して経験したことのないような事件
も起こりました。しかし、その都度、皆さんのご支援と教
職員の大学に対する熱き思いが問題解決の原動力になりま
した。このエネルギーこそが今後予想される少子化などの
諸問題を克服し、本学の明日の発展を約束するものである
と信じております。
本学創設以来、ご支援ご協力頂きましたご来賓の皆様、
献身的な努力を惜しまなかった教職員、卒業生および関係
者の皆さんに心からお礼を申し上げ、今後の支援、ご協力
をお願いして式辞とさせていただきます。
平成15年9月13日
祝 辞
文部科学大臣
遠山 敦子 殿
(代読)
の健康意識の高まりなどの中で、医科大学に対する期待も
これまでにもまして大きなものとなっております。
このような中、貴大学ではハード面では教育・研究・診
療のための最先端設備を導入する一方、ソフト面では知識
の詰め込み教育を排し、6年一貫教育、少人数教育、早期の
臨床体験学習の導入、学生による授業評価など、様々な教
育改革を実施するとともに積極的な国際交流の推進など、
継続的な教育研究体制の改善・充実に取り組んでこられま
した。特に、今回の30 周年記念事業の一つである「医学教
育海外交流基金」の設立並びに「病院新館」の建設は、貴
大学が国際的にも飛躍され、また、社会から期待される質
の高い患者中心の医療を実践していかれる上で、誠に心強
い限りであります。
これまでに築かれた輝かしい伝統と実績を基に、今後と
も教職員各位の一層のご研鑚とご尽力により、金沢医科大
学が益々の充実、発展を遂げられますことを祈念いたしま
してお祝いの言葉といたします。
平成15年9月13日、文部科学大臣遠山敦子 代読。
本日は誠におめでとうございます。
平成15年9月13日
(小松弥生課長)
ご紹介いただきました、
文部科学省高等教育局医
学教育課長の小松でござい
祝 辞
衆議院議員・本学顧問
森 喜 朗 殿
ます。遠山敦子文部科学大
臣にご招待をいただいたの
ですけれども、他の公務が
ございまして参ることがで
きません。代わって、私が
祝辞を代読させていただき
たいと存じます。
金沢医科大学が創立30
小松弥生 文部科学省高等教育局
周年を迎えられましたこ
医学教育課長
とを、心からお喜び申し
上げます。
貴大学は昭和47年に「人間性豊かな良医の育成」を教育
の基本目標として創立されて以来、早や30 年となりました。
この間、医科大学及び大学病院の役割である教育・研究・
診療のすべての面において充実を図られ、着実な発展を遂
げられ、多くの有為な人材を輩出し、我が国の医学の進
展・医療活動の向上に貢献されたことは、誠に大きな業績
であります。
今日に至るまでの歴代の理事長、学長をはじめ教職員並
びに関係各位のたゆみないご努力に深く敬意を表する次第
でございます。
ご承知のとおり、我が国の医学・医療を取り巻く環境の
変化は著しく、医療技術の高度化、高齢社会の進展、国民
30 年おめでとうござい
ます。
ただいま遠山大臣の祝
辞を代読された小松課長
は、石川県に御縁がござ
いまして、ご主人は、か
って石川県庁にしばらく
お勤めになっておられま
した。金沢大学の総合移
転の一番大事な時に、当
時の文部省から石川県庁
に3年ばかり出向されま
した。その間、小松さん
は石川高専におられたの
です。文部科学省というのは、なかなか良きはからいをさ
れます。遠山大臣は公務だということですが、金沢医科大
学の30年のお祝いに、ぜひ医学教育の直接の課長である小
松さんを派遣したいと思われたのだと考えます。今日、小
松課長はきっと何かといろんな意味で思い出深いところに、
大臣の代理でお見えになったのだと思います。
小田島先生の式辞を伺っておりますと、本当にいろいろ
なことがございました。小田島先生は非常に上手な表現を
なさいましたけれども、大変厳しく苦しい時期があったこ
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KMU ANNIVERSARY 3 0t h
とはよく承知いたしております。
大学ができましたのは昭和47年です。私が国会議員に当
選したのは昭和44年の末ですから、まだ若き国会議員一期
生の時でした。当時、いわゆる、無医大県解消計画が提唱
されており、国立大学で医学部のない地域が随分ございま
した。なぜか数多くの私立医科大学が創設される時代でも
ございました。金沢医科大学も益谷衆議院議長を中心に創
設されました。埼玉医大、自治医大などのたくさんの医科
大学ができました。
本来の大学教育、医学教育、大学病院のあり方に対する
専門家のみなさんの意見よりも、むしろ政治家、医学に対
しては部外者の人たちの考え方が強く反映されていた時代
でした。一種の投資として医科大学の設立が行われていた
と思います。私はなぜかそのことが心配になっておりまし
た。私はまだ1年生議員で意見をつまびらかにはしておりま
せんでしたが、
「こういう形で医科大学が設立されて本当に
よいのか」という思いがありました。
私はこの金沢医科大学の創生期に大変難しい問題に遭遇
したことを覚えております。小田島先生は、
「一時期、教員
と学生との間に意思の疎通を欠くような荒廃した時期があ
った」と述べられました。私は、先生のご指摘は違うと思
います。端的に言えば、この時期は経営する理事長側と教
学側との意見が一致していなかったことが原因と考えてお
ります。医学教育に対する基本的認識がなく、寄付金を集
めて大学や病院をつくればよいと考えた方たちがこの金沢
医科大学に困難をもたらしたと考えています。
「何のために
医科大学や医科大学病院をつくるのか」ということを熟知
しなければなりません。
今、石川県の看護師協会の最も有力な指導者でもありま
す新谷喜美子さんは、当時、看護部長をしておられました。
新谷さんをはじめとした教職員たちが連署した長い巻物を
亡くなられた鈴木建設の鈴木菊男さんが私の家に持ってこ
られて、
「この医科大学は一握りの人たちのものではない。
我々が医学教育を実践していく大事な学び舎なので、ぜひ
何とか再建をしたい」という大変な情熱を示されまして、
私も微力でございましたがお手伝いさせていただきました。
金沢医科大学30 年の歴史を振り返ってみますと、改めて
歴代理事長、歴代学長、歴代病院長の大変なご苦労のおか
げでここまで素晴らしい医科大学に成長されたと思います。
これらの皆様に心から敬意を表します。私は自分のことの
ように感無量でございます。
さらに金沢医科大学の発展には多くの本学関係者、教職
員の努力もございました。また、ここには国立の金沢大学
という良き隣人もあり、医師の派遣等の協力もこの繁栄を
もたらしたと思っております。ますますご発展をしていた
だきたいと思います。
小田島先生の話をメモしておりました。この30周年の二
つの大きな記念事業として、外国大学との国際交流、病院
新館の建設がございました。私は最近できるだけおもしろ
い新聞記事はコピーを残しております。8月の北国新聞には
「金沢医科大学交流基金を創出。航空運賃全額補助も」とい
う記事があり、学生の海外研修を支援していくこと、睡眠
障害センターを開設すること、新病棟オープンに併せて臓
器別24 科に再編することが書かれていました。私は記事を
大事に持っておりました。
私は無医大県解消という話をしました。当時の文部省は、
全都道府県に国立大学医学部、国立医科大学をつくりまし
た。ところが、最近は医師会から医師が多すぎるということ
で、これ以上医師の養成は必要ないという話がでまして、国
立大学の医学部では定員の2割をカットしています。私立大
学の医学部に定員のカットを求めますと、経営に問題が出
てくるというので、現状では国立大学だけ定員を抑えてい
ます。これは医師会等によって強い働きかけがあった結果だ
と聞いております。せっかく大きな金をかけているのだか
ら、優秀な医者を育てることが大事なことだと思います。
先日、小泉総理がポリープを取りました。総理は厚生大
臣をしていた割にはあまり専門的な知識がありません。
「内
視鏡を入れたらポリープが見つかったので、エライことだ
と思っていたけれど、そのまますぐにチョッチョッとメス
で取った。すごい医学の発展だ」と驚いていましたので、
「総理、こんなことに驚いたらだめです。これは10年も前か
らやっていますよ」と私が言いました。
厚生省は内視鏡手術をなかなか認めませんでした。レー
ガン大統領の主治医だった日本人のドクター・シンヤ(新谷
弘実氏/編集部註)という医師が、時々日本に戻る度に、
私は1個5万円でポリープを5∼6個取ってもらいました。当
時の厚生省は内視鏡手術を全然理解していなかったのです。
今ではどこでも内視鏡手術は行われています。画面で自分
の胃や腸を見て、これを取りますよと言いながら手術され
るというふうに大きく変わってきました。このように医学
はどんどん進んでいるのであります。
私は昨年7月に前立腺ガンの手術を受けました。7月 14
日、自分の誕生日に開腹手術をしようと思って全部準備を
しておりました。ここで手術をして第2の森喜朗を始めよう
と思って観念をしておりましたときに別の病院から電話が
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KMU ANNIVERSARY 3 0t h
かかってきて、
「こちらで話を聞いてみませんか」と言うの
でその病院に相談に行きました。丁度中国から帰ってきて、
明日から入院して手術だという日でした。
「内視鏡でうちは
やりますよ」と言うので「どこにメリットがあるのですか」
と聞いたら「開腹手術するとあなたの脂身の多いお腹はな
かなかくっつかない。したがってひと月ぐらいは我慢して
もらわないといけない。場合によってはひと月半寝てなき
ゃならない。そんなことをしていたら足腰が駄目になりま
す」と言われました。それで「内視鏡の手術はどうするか」
と聞いたら「こちらからカメラを入れまして、横から鉗子、
ピンセット、メスを入れて画面に映った腫瘍をロボットで
やります」と説明されました。
「そんなに簡単にできるので
すか」と聞いたら「寝てれば手術は終わります。手術後1週
間で退院していただいて結構です」ということでした。実
際は5日目で退院して 10 日目でゴルフを始めていましたの
で、すごいなと思いました。
その時、大学の若い医者達に「君も内視鏡手術ができる
のか」と聞きましたら、
「僕はできません」と答えました。
「やりたいですか」と聞くと「やりたいです」
、
「どうしたら
いいですか」と聞くと「習いに行きたいです。行けばやれ
るようになれます」と彼らは言いました。そういうことが
できるのならどうしてやらせてあげないのでしょうか。アメ
リカ、フランス、ドイツでどんどん勉強して技術を身に付
ければ、画面を見ながら日本で手術をすることも可能です。
医師過剰だと医師会から文句を言われるなら、国で資金を
出して、新しい学問や知識を身に付けさせるためには世界
中で勉強してもらったらよいのです。大学も新しい装置を
東芝やシーメンスなどの企業と共同研究開発してつくって
います。大学でも私費で研究開発をやっていく時代になっ
たと思います。まさに小田島先生がおっしゃった「生命科
学の新しい時代」です。
先週の日曜日、東京で心臓学会の学術集会があり、金沢
大学の大先輩の岩先生、本学からも小山先生がお見えにな
られました。そこで私もスピーチをしました。その時に私
はある大学から電話機のような機械を預かりました。その
機械のボタンを押して、私のここに 3 0 秒当てて止めると
「入りました」サインがピピッと鳴ります。その後、契約し
ている病院へ電話で送信します。しばらく待ってから病院
に電話をかけると「あなたの心臓は問題ありません」と知
らせてくれます。体がおかしいなという時にすぐこの機械
を使います。病院には契約した患者すべての心電図があり
ます。医師が24時間担当しなければなりません。この機械
で相当の人が助かるだろうと思いますが、まだ文部科学省
や厚生労働省は理解していません。
また、長い間、救急救命士の救急車の中での患者への医
療処置の範囲が非常に制限されていました。手当てをして
あげれば生き延びられる人でも、救急救命士の医療処置の
範囲が非常に制限されて患者に触れられないということで
車の中で命を落とした例もかなりありました。フジテレビ
の報道2001の黒岩さんがその問題を提起して、救急救命士
の医療処置の範囲がやっと拡大されました。医学はさらに
進化していくと思います。
私は科学技術に対して思い切った予算をつけるべきだと
思います。森内閣の時にはかなりの助成予算をつけました。
お金をばらまくのではなく、新しい先駆的技術を開発する
意欲を持つ人たちに対して、国がしっかりとバックアップ
をしてあげることが、この社会に寄与することになると思
います。
大変余計なことを申しあげました。30余年の歩みにより、
素晴らしい金沢医科大学になりました。ますますこの大学
を充実させていただきたいと思います。今後も日本の医学
の先駆者として発展をされ、日本の医学教育をリードして
いただきたいと心からお願い申しあげてご挨拶といたしま
す。おめでとうございました。
祝 辞
日本私立医科大学協会会長
川
明
殿
金沢医科大学におかれ
まして、本日ここに創立
30 周年記念式典が挙行さ
れるにあたり、日本私立
医科大学協会を代表いた
しまして、一言お祝いの
ごあいさつを申し上げま
す。
昭和 47 年、「良医を育
てる」「知識と技術をき
わめる」「社会に貢献す
る」という建学の精神を
掲げられて、この金沢近
郊の自然に恵まれた地に
開学されて以来、着実な発展の道を歩まれ、このたびめで
たく、創立30周年をお迎えになり、また、かねてから進め
てこられました新しい時代に対応する附属病院新館の建設
もこの機会に竣工されまして、誠におめでたく衷心よりお
慶び申し上げます。
ご承知のとおり、我が国の医療を取り巻く社会のニーズ
は、変動が著しく、それに対応して種々の新しい施策を講
じていく必要があり、私ども医科大学としましても、また
高度先進医療を担い、特定機能病院の承認を受けている附
属病院としましても、独自の個性を発揮し、地域での存在
価値の確立のために、常に新しい変革が求められておりま
す。金沢医科大学におかれましては、小田島理事長先生を
はじめとする教職員のみなさまの大変なご努力があって、
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KMU ANNIVERSARY 3 0t h
特にこの十年間には、着実な飛躍をなされて参りました。
平成7年には、外部からの第三者評価機関ともいえる「イギ
リス医学協議会(GMC)の審査」で高い評価をうけられて
おり、また、平成8年には「西日本医科学生総合体育大会」
及び「全日本医科学生体育大会」を主管され、平成9年に
は「良医を求めて」を基調テーマとした「第29回日本医学
教育学会」を開催されており、これに関連して、平成12年
には「第20 回国内医科大学視察と討論の会」をご担当にな
りました。これらを矢継ぎ早に成功裏に成しとげられまし
たことは、外部からも高く評価されており、誠にすばらし
いことと私どもは感銘いたしている次第です。
また、金沢医科大学病院におかれましては、創設当初か
ら良医を育成する教育病院として、患者中心の医療を目標
に掲げられ、
「1患者1カルテ方式」を導入されております。
これらは医師中心の医療が当然であった当時としては中々
踏み切ることができない難事業であったと推察いたします。
しかし、このことが全国に先駆けて電子カルテを自ら開発、
稼働を開始され、平成12 年からは全診療科で完全実施され
たことにつながっているものと思っております。今後、診
療情報に関するセキュリティが確保され、また適切な形で
情報が開示され、患者さんに分かりやすいインフォーム
ド・コンセントの実施が可能となり、さらには臨床教育に
も有用性を発揮されることと確信いたしております。
ここ30 年の歴史を積み上げ、立派な基盤を確立されてこ
られました金沢医科大学の全教職員の方々、関係各位の皆
様のご尽力に対しまして深い敬意を表し、心からお祝い申
し上げる次第であります。
貴学には今後とも、この30年の輝かしい歴史のもと、教
育、研究、診療を通じて、変わりゆく社会に対する新たな
る貢献に向けて一層のご活躍と更なるご発展を期されます
ことを念願いたすものであります。
本日は、誠におめでとうございます。心からお祝いを申
し上げますと共に、ご関係者各位のご健勝を祈念いたしま
して、祝辞とさせていただきます。
平成15年9月13日
Jobe医学部長の通訳をされるLin教授
祝 辞
米国マーサ大学医学部長
Ann C. Jobe 殿
(日本語で) 小田島理
事長、竹越学長、来賓の
皆様、本日は、この大変
おめでたい金沢医科大学
創立30周年とかくも豪華
な新病棟の落成式に私を
招待してくださり、誠に
光栄の至りに存じます。
有難うございます。
The affiliation agreement between Mercer and
Kanazawa was signed in
Macon,
Georgia
on
September 29, 1998 −five
years ago. The first group of medical students from Kanazawa
Medical University visited Mercer University School of
Medicine in July 2000. The fifth group of students will visit in
Spring 2004.
As we celebrate our achievements and mark anniversaries,
looking back at history is important, but we also need to look forward to the future. Our medical schools both face challenges in
the years ahead. We must commit to bringing our best efforts to
solve the problems in our health care systems and to meeting the
needs of our patients and communities.
I am committed to improving the safety and quality of the
health care we provide in America. I support the aims for the
21st century health care system advocated by the Institute of
Medicine. They proposed six aims for improvement focused on
six areas designated by the letters STEEEP.
Health care should be:
“S”
SAFE − avoiding injuries to patients from care that is intended
to help them.
“T”
TIMELY − reducing waste and sometimes harmful delays for
those who receive care and those who give care.
“E”
EFFECTIVE − providing services based on scientific knowledge to all who could benefit and refraining from providing services to those not likely to benefit (avoiding under-use and overuse, respectively).
“E”
EFFICIENT − avoiding waste, including waste of equipment,
supplies, ideas, and energy.
“E”
EQUITABLE − providing care that does not vary in quality
because of personal characteristics such as gender, ethnicity, geographic location and socioeconomic status.
And finally, and most importantly,
“P”
PATIENT-CENTERED − providing care that is respectful of
and responsive to individual patient preferences, needs, and val-
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KMU ANNIVERSARY 3 0t h
ues and ensuring that patient values guide all clinical decisions.
May we always strive for what is embodied in this quote
from Winston Churchill: “We make a living by what we get. We
make a life by what we give.”
[日本語訳]
金沢医科大学とマーサ大学医学部は、5年前の1998年9月
29 日、ジョージア州メーコンにおいて協定に調印し、2000
年7月に金沢からの第1回交換留学生を受入れ、来春 2004
年には第5回目の交換留学生迎える予定です。
このように成果を祝福し記念して過去の歴史を振り返る
ことは大切ですが、それとともに将来に目を向けることを
忘れてはならないと思います。私ども両大学は共にこれか
らチャレンジすべき多くの課題に直面しており、医療シス
テムに関する諸問題の解決に最善の努力を尽くし、患者や
社会のニーズに応じるよう取り計らわねばなりません。
私にはアメリカ社会に提供する医療の「安全と質」を改
善してゆく責務があります。私は米国医学研究所(U . S .
Institute of Medicine)が提唱している21 世紀の医療におけ
る目標を支持しております。次の STEEEP の頭文字で表さ
れる、医療の改善を目指す6つの目標です。
「S」
“Safe”
医療は安全でなければならない。患者を助けるつもりで
患者に傷害を与えることになるような事は避けること。
「T」
“Timely”
時間の浪費を少なくし、時として治療を受けようとする
人や治療を施す人に害となるような遅れを少なくすること。
「E」
“Effective”
科学的知識に基づいた治療を提供し、効果をもたらすと
思われる患者にはそれを与え、その可能性が無いような患
者にはそれを控えること。そして過少(under-use)や過剰
(over-use)を避けること。
「E」
“Efficient”
浪費を避けること。医療機器や医療材料、アイデアやエ
ネルギーの浪費を含めて、これを避けること。
「E」
“Equitable”
公平であること。性、民族、出身地、社会的・経済的地位
などの個人的特性により差別した治療を行わないこと。
「P」
“Patient-centered”
最後に最も重要なもので、個々の患者の希望、ニーズ、
そして患者の人間としての価値を重んじ、かつ、それに応
えられる医療を提供し、そして患者の人間としての価値が
全ての臨床的判断を導くことを保証するものであること。
最後に、私どもはウインストン・チャーチルの次の言葉
がどういうことを意味しているかを常に考えようとしてい
ることをお伝えしたいと思います。
“We make a living by what we get. We make a life by what
we give.”
(訳:古本郁美)
本学エンブレムを彫り込んだクリスタルガラスの記念品
9
KMU ANNIVERSARY 3 0t h
記念講演会
安全で質の高い医療を
迫田 朋子
今日のテーマは『安全で質の高い
医療を』です。私は、この30 周年記
念行事に医療安全をテーマに選ばれ
たことを大変尊敬します。医療事故、
医療安全を真剣に考えておられるこ
との証左であり、これらの問題意識
を皆様が共有していらっしゃると理
解します。
Human Errorを防ぐシステム
先程、アン・ジョウブ先生のお話
の中で、アメリカ医学研究所の医療
事故に対する報告書のタイトルは
『To Err is Human』でした。この『To
迫田朋子氏
Err is Human』
、人は誰でも間違える
という意味ですけれども、
「しかし間
違いを防ぐことはできる」と続きます。間違いを防ぐこと
ができるのも人間であります。
日本では、4年前に横浜市立大学で患者取り違い事件が起
きたあと、いくつかの大きな大学病院や公立病院で医療事
故が続けて起きました。その後、政府に医療安全対策検討
会議ができまして、平成13年を患者安全推進元年とし、政
府一丸となって取り組んできたのはご承知のとおりです。
昨年4月、報告書がでました。私は医療安全対策検討会議
の様々な関係者にお話を伺いましたが、医療事故対策には
3つの重要なポイントがあると考えます。
1つは、事実をオープンに語り、再発を防ぐことです。医
療訴訟を起こした患者や家族の話を聞きますと、皆様が口
をそろえて「事実を知りたい」とおっしゃいます。自分の娘
や妻が亡くなった理由や経過、自分が障害を持った理由や
経過を知りたいということです。
「同様の事故が繰り返され
るのではたまらない。自分の娘の死は無駄になってしまって
いる。事実を知って再発防止につなげたい」ということを、
おっしゃいます。取材をしてみて、医療訴訟の原告のかなり
の方が医療関係者であることが分かりました。東京女子医
大の被害者のお父さんは歯医者さん、東海大事件の被害者
のお父さんはマッサージ師でした。2人とも、ある程度医療
知識がある方でした。それと内部告発やミスがはっきりして
いる場合以外は、事実関係の情報が充分に得られないと感
じている人が非常に多いのです。弁護士たちは、裁判にな
るのは医療事故のごく一部だと言っています。
医療安全対策検討会議のメンバーに航空機事故専門の黒
NHK教育番組センターチーフディレクター
田先生がいらっしゃいます。リスク
マネージメントの考え方を医療の中
に入れるべきだと主張されました。
それに対し、被害にあった患者や家
族は「一つだけ忘れないでほしい。
航空機事故はパイロットも共に被害
にあう。医療の場合は、患者は被害
にあうけれども医師は被害にあわな
い。航空機では機体の設計が問題に
なるが、医療では原因が人間にあり、
患者を含めて関係者の意見を聞いて
共に考える姿勢がない限り、防げな
い」と言います。ヒヤリ・ハット報
告が義務化されていくことは大事で
すけれど、そこにどうやって患者の
意見を組み入れていくか、それがこ
れからの課題ではないかと思います。
2つ目は、診療マネージメントです。例えば、多くの病院
では診療科または先生ごとに使う人工呼吸器が違います。
看護師が他の科から異動して来た時、他の科の医師が手伝
いに来た時など、違う機械が置いてあり使い勝手が違えば
混乱が起きます。これは病院全体の診療マネージメントの
問題です。また、違うメーカーから同じ種類の薬や類似し
た名前の薬を仕入れています。薬を間違えないようにする
ことは、診療科ごとの努力ではなく病院全体の診療に対す
るマネージメントの問題です。専任の麻酔科医が足りない
ときにどう考えていくかも、診療に対するマネージメント
の問題になります。このような診療全体をマネージメント
していく考え方が、病院全体の取り組みとして医療の質や
安全を上げていくために必要だと思います。
3つ目は、医薬品や医療用具に関わる安全性の向上です。
これは報告書にも項目を挙げて述べられています。4月に施
行された薬事法の改正で、医療機関は医薬品の副作用や医
療用具の不具合についておかしいと思ったときにはすぐ報
告しなければなりません。今までは製薬メーカーに対して
のみ求められていたものが、医療の一番最先端にいる医師、
医療関係者にも求められることになりました。副作用等を
二度と繰り返さないために、自分の病院だけではなく他の
病院で同じ過ちを繰り返さないために義務付けられました。
このように検討会議では、主に医療事故を防ぐシステム、
制度としての対策が検討されてきました。
しかし、私は、今日はあえて、人の問題が大事だと、お
この記念講演は、イントラネット(学内)を通じてビデオ・オン・デマンド形式でご覧になれます。
10
KMU ANNIVERSARY 3 0t h
伝えしたいと思います。間違えない仕組みを作ることは大
事です。しかし、その上に、人がどう考えるか、どう行動
するかが、とても大切だと思うのです。
横浜市立大で取り違い事件が起きた後、3年目に取材した
ときには、横浜市立大の皆様は、チームを超えて互いに声
を掛け合うことを、キャッチフレーズとして運動していまし
た。事件の最中におかしいと思った人は中にいて、あの時一
言声をかけていればと身にしみて思っていたのです。医療事
故にならないように、日常の医療の中で、ほんの些細なこと
でも変だなと思ったときにはちょっと確認し合うという、そ
ういうことがいかに大切なのかと気付かれたのだと思いま
す。病院をあげて、医師、看護師、物を運搬する人、掃除
のおばさんまでも皆が同じ場に集まって確認していました。
根本は人間の力です。医療の安全は人と人との関係の中で
くみ上げていくものだと、改めて思いました。
医療は不確実なもの、患者から学ぶ
様々な医療現場や先端医療に関わっている医師の仕事振
りを拝見して、私は3つのことが分かりました。1つは、良
い医者、常に最先端を行っている医者は、患者から学ぶと
いう姿勢を必ず持っている。自身でできることとできない
ことをはっきりと自覚して、できないことは他の専門家に
任せるという態度がはっきりしている。さらに、情報を隠
さずにオープンにし、人とディスカッションする態度を常
に持っています。
コムル(COML: Consumer Organization for Medicine &
Law)という患者団体があります。コムルと何人かの先生が
中心になり、当時の厚生省から研究費をもらって、
「医師に
かかる十か条」を作ったことがあります。十か条目に「医
療は不完全なものである。医師も間違うことがある」とい
うニュアンスで、医療は不確実なものであるという文章が
ありました。発
表されるとき
に、厚生省から
医師会の意見も
取り入れてほし
いと言われ、意
見を聞くために
持っていきまし
た。医師会では、
十か条目は問題
である、患者が
医療に不信を持
ち、医師と患者
の信頼関係が壊
れてしまう、納
得できないとの
ことで、「よく
医師と相談しま
しょう」という意味の文章に変更されました。
どうでしょうか。私はやはり医療は不確実なものだと思
います。医療は不確実なものであるからこそ、互いにきち
んと話をして決めていくものだと思います。医療者側が絶
対であり間違わないという態度であるなら、現状からいつ
までも抜けられないと思います。私が皆様に伝えたい「患
者から学ぶ」ことも、オープンに語ることも同じことです。
医療は不確実であり、自分ができることとできないことを
はっきりさせることが大事です。
私は、約6年前、日本大学の救命救急センターで半年程取
材を続けて、NHK スペシャル「柳田邦男の生と死をみつめ
て」という番組を制作しました。番組で脳の低体温療法を
取り上げたことがあります。重症の脳障害患者の脳神経細
胞が死んでいく過程で、脳の温度が上昇していき、温度の
上昇によってさらに神経細胞が死んでいくという現象があ
り、これに対して脳を保護するために低温にするというや
り方です。グラスゴーコーマスケールが3から4という重体
の患者を助ける医者を追ったドキュメンタリーでした。
患者の脳の温度が42℃にもなり低体温療法が始められま
した。医師は患者の様子を常に観察して様々なデータを集
め、例えば、どのホルモンが下がってしまうのか、何が起き
てこの結果になるのかなど、どういうことをしていけば良い
のかと常に考えながら、患者からデータをとり判断します。
私がすごいと思ったのは、 ICUに薬剤師が 24時間常駐し、
薬のことは薬のプロフェッションに任せる形をとっているこ
とでした。取材している間にMRSA の院内感染が発生しま
した。当時、院内感染は大きな社会問題でしたので、メデ
ィアの人間がずっと院内にいるのは医療現場の皆様には非
常に好ましくないことだったと思います。しかし、そうした
院内感染もあり得る医療の現場、ミスもあり、医療スタッ
フ同士の意見の違いもある。そういう医療現場の姿を丸々
見せてしまうような長期取材の受入れは、医療機関として
自信の表れと言えますが、大変な決断だったと思います。
一方、この反対の例が薬害エイズです。安部英氏の裁判
はまだ続いています。私は、80 年代の半ばぐらいから、薬
害エイズの血友病の患者たちとずっとお付き合いをしてきま
した。80年代初めまでは、血友病の患者と血友病の専門医
は非常に友好的であり、患者には医師への信頼がありまし
たし、製薬業界も非常に信頼していました。医師は血友病
の子供のためのサマーキャンプを催し、血友病の患者の在
宅自己注射を厚生省に働きかけをするなど患者のメリット
になることを一生懸命努力してきました。ところがHIV 感
染が起きた時に、まだ誰もがHIV 感染の治療に無知だった
にもかかわらず、血友病の専門医たちは自分たちを絶対化
して情報を隠し、例えば感染した事実すら伝えないことが
起きました。このとき、血友病の患者たちは彼らに失望し、
HIVの治療を一緒に考えてくれる医者を自分たちで探し始め
つ て
ました。伝手をたどって東京大学医科学研究所に行き、感
染症の専門医たちとともに未知のHIVの治療をどうしてい
11
KMU ANNIVERSARY 3 0t h
くのか考えました。医科研の医師たちは、例えば、動物実
験の結果しかないけれどもインターフェロンをやってみるか
と患者に尋ねます。患者と医師が納得した上で使ってみま
す、状態をみて相談しながら次の治療方針を決めていくと
いうことが始まりました。データを1つの医療機関だけでは
なく日本全国の医療機関で共有したいという思いから、HIV
訴訟の和解を機に、国立国際医療センターにエイズ治療の
専門のACC(エイズ治療・研究開発センター)が設置され
ました。エイズ学会に取材に行きますと患者も来ています。
「あれは僕のデータだ。この前、先生が僕のデータを使って
いいかと聞いてきた」などと患者が言っています。個人のデ
ータを皆の共有のものとして新たなエイズ治療法を探ってい
くということが行われているのです。このような意味で、患
者から学ぶことは非常に重要です。この姿勢こそ医療の安
全と質の向上につながってくるのだと思います。
金沢医大の良医教育について
金沢医科大学では、最近、学生が患者を一日エスコート
するということを、医学教育の一環に採り入れられている
とのことです。例えば、病院に来られた患者を最初の受付
のところから最後帰るところまでずっと患者に付いて学生
が案内する、これは皆様が思っている以上に大変効果があ
ることだと思います。
医療者は、どうしても患者を点でしか見られません。診
察室に入ってきた以降のことしかわからない。その前に2時
間待っているかもしれない。診察室が分からないで病院の
中を迷っていたかもしれない。呼ばれる前の不安な気持ち
はどうだった、本当はちょっとお腹が空いているのかもし
れない。トイレに行きたいけれども呼ばれるかもしれない
から我慢していようなど、様々な患者の思いは診察室の医
師にはわかりません。
学生時代に病院の中を案内して患者と一緒に歩いて、患
者の思いを感じることは重要です。この経験があると、そ
の後の患者に対する態度が全然違ってきます。医師になっ
たときには患者の思いを想像できるようになると思います。
さらに私が感心したことは、数人の学生で治療方針などを
ディスカスする教育方式の中で、1年間のメンバーをくじ引
きで決めることです。組織で働いている人間の中には、い
やな奴だとか、話をしても通じない奴だとか、たくさんい
ます。これからは、チーム医療がとても大事で、何かあっ
た時には声を掛け合うことがとても大切ですが、いやな相
手にはなかなかできません。医療現場では、互いの意見を
聞き合うこと、自分がおかしいと思ったら伝えることが大
切です。人とのコミュニケーションの訓練はとても大切で、
学生時代から毎年毎年メンバーを替えての訓練の意義は、
多分今すぐ効果は出てこないと思いますが、5年、10年する
と大きな効果が現れると思います。そういう意味でこれか
らの金沢医科大学の学生たちには、大きな期待ができるの
ではないかと思いました。
医療事故を取材していますと、確かにとても厳しい時代
になってきたと思います。東京女子医大の裁判の初公判で
は、非常に優秀な医師だといわれていた外科医が、手錠に
腰縄という形で出廷していました。残念ながら、事実を知
る方法がない患者側には裁判は仕方がないことだと思えま
す。裁判となりメディアに公開される前に、患者に情報を
きちんと伝えてほしい。事実を伝え、きちんと話し納得を
得るようにしてほしい。患者から学ぶ、患者の声を聞いて、
その思いを察することを是非考えてほしいと思います。
今、製薬工業協会、製薬会社団体の人たちもペーシェン
トグループを作って患者団体の皆様と交流を図っています。
今までは製薬業界のお得意様は、医者、医療関係者でした。
しかし今は、実際のお客は患者だと、盛んに患者団体にア
プローチしています。患者の支持がなければ薬の治験もで
きません。積極的に患者と付き合い、患者に直接情報を伝
えて患者の判断を仰ぐという、患者サポートの形を探って
いるのです。これから、様々な医療制度の改革があります
けれども、医療の主人公は患者であるという視点から、も
っと患者の声を吸い上げていくことが必要だと思います。
患者の思いを積極的に捕まえた人たちが、これからの医療
の中心になっていくのだと思います。患者から学ぶ、患者
の声を聞くことが「医療の安全と質の向上」の一番大事な
ポイントです。このポイントに重点を置いて、新しい金沢
医科大学を目指していただきたいと思います。
本当に30周年おめでとうございます。ぜひ良医を、良い
医者を育てていってください。ご清聴ありがとうございま
した。
(平成15年9月13日記念講演より抄録)
〈講師略歴〉
東京大学医学部保健学科卒業
1980年 NHK入局、アナウンス室アナウンサー
「おはようジャーナル」で医療、福祉、健康などについ
てリポーター・司会者をつとめる
NHKスペシャル「脳死移植」等の制作に従事
1997年 NHK解説委員室、解説委員(医療・保健・福祉分野)
2003年 教育番組センター文化・福祉番組部チーフディレクター
著 書:「医療現場取材ノート」筑摩書房(1999年)
、
「グローバル8つの物語」国際開発ジャーナル社(共著,
1999年)、その他
12
KMU ANNIVERSARY 3 0t h
記念祝賀会
30周年を祝して
祝賀会場(病院新館1階ロビー)
創立 30 周年記念式典、記念講演会に引き続
いて、祝賀会が、平成15年9月 13日(土)午後
0時 30分から文部科学大臣代理、私立医科大学
協会会長、マ−サ大学医学部長はじめ各関係ご
来賓、本学関係者の約490 名の出席のもと、新
築成った本学病院新館1階外来中央ホールと待
合いコーナーの全フロアを利用して行われた。
最初に、本学学生クラシック音楽同好会のメ
ンバーによる祝演奏が行われた。曲目は開会の
ファンファーレ、校歌斉唱、そしてバッハのブ
ランデンブルグ協奏曲第5番第一楽章で、約 20
分間にわたって一同が聞き入った。
次に竹越 襄学長と内田健三病院長のお二人
の音頭で乾杯が行われ、歓談のパーティーが開
始された。参加者は前記の他に本学名誉教授、
橘会、北辰同窓会、北斗会、後援協力会、本学
教職員、新館建設工事関係者各位、その他各関
係者がお祝いのために参会されて盛大に行われ
た。
お祝いの料理は、ホテル日航金沢、金沢ニュ
ーグランドホテル、ホテルイン金沢にお願いし
て、それぞれ自慢の料理を調理していただき、
評判は上々であった。
以上のように、創立30周年記念祝賀会はこれ
らの計画、運営に当たった記念事業常任委員
会、各関係部署、事務職員の方々、看護部のス
タッフ及び参加学生クラシック音楽同好会をも
加えて新館完成を喜び合い、盛会のうちに無事
終了した。
(経理管財部尾張昊記)
学生クラシック音楽同好会による校歌斉唱
学生 クラシック音楽同好会による演奏
学長と病院長による乾杯
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KMU ANNIVERSARY 3 0t h
病院新館見学会
高度医療の設備と快適環境を
金沢医科大学の創立30 周年記念事業の一環である病院新
館の完成見学会が去る9月 13日、創立30周年記念式典、祝
賀会のご招待者を対象に行われた。
患者様との相互信頼関係を軸とした安全で質の高い信頼
される医療の提供と将来の医療のあり方に配慮した教育、
研究、診療の環境を整備充実させた新館の完成により、北
陸地方における第一級の総合医療センターとしての第1次リ
ニューアル計画が完了した。
当日は、新館の病棟部門、外来部門、中央診療部門を中
心に最上階の 12階から1階までの見学コースを設定し、院
内の14部課から約40名の看護師、薬剤師、コメディカル職
員、事務職員等が25カ所の誘導案内位置で見学者への応対
にあたった。
当日最初の見学者は、式典の主賓の文部科学省高等教育
局の小松弥生医学教育課長と福井医科大学の須藤正克学長
のお二人であった。記念式典開始前の時間を利用して見学
に来られ、12 階の会議室・レストランフロアからの日本海
と内灘砂丘の壮大なロケーションに驚嘆されつつ、見学順
路に沿って新館の内部を医療者の立場や患者様の立場で熱
心に見学された。特別個室フロアの見学では、部屋の広さ
と室内装備の充実度に感心されていた。須藤学長は、ご自
身が個室病室の構造設計等をチェックされた経験から、個
室内のレイアウトや浴室のシャワー設備等について使用時
の細かい意見を頂戴した。
記念式典終了後には、本学顧問の森喜朗衆議院議員も見
学され、最上階から1階の外来部門まで予定時間を超過して
精力的に館内を見学されていた。特に2階の内視鏡センター
では、ご自身の内視鏡手術の経験談を話されながら、医学
の進歩の目覚ましさ、医療機関の機能分担、医療技術の進
歩に対応した国の診療報酬の適切な評価に対する対応など
のお話をうかがった。
祝賀会終了後には、日本私立医科大学協会の川 明 会
長、本学の姉妹校であるアメリカジョージア州のマーサ大
学のアン・ジョウブ医学部長ほか大勢の来賓の方々が見学
された。日本私立医科大学協会の川 会長は、病棟のスタ
ッフステーションや隣接のHCU(重症患者病室)
、臨床教育
学習室、中央手術部、集中治療センター、ハートセンター、
内視鏡センターなどの中央診療施設や外来診察室などのス
ペースや仕様、運営体制を熱心にご覧になられた。その後、
同行した内田健三病院長と外来の面談室で今後の医療行政
の方向やDPC(Diagnosis Procedure Combination, 包括評価)
への考え方、厳しい医療環境などについて話をされた。見
学会にはこのほか退職された先生方や元看護関係者の皆さ
んも多く来場され、お互いの近況や新館に対する感想など
の話題で盛り上がり、久しぶりに懐かしい交流がみられた。
(病院事務部中農理博記)
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KMU ANNIVERSARY 3 0t h
オープンホスピタル
2003.9.8 ∼ 10
病院新館は平成15年8月末日に完成し、地域の方々や患
者の皆様に新築の病院をみていただくオープンホスピタル
が9月8日(月)
、9日(火)
、10日(水)の3日間、午前9時
から午後3時にわたって実施された。
このオープンホスピタルは、事前に新聞・テレビ等で広
報された効果もあり、受診中の患者さんや入院患者さん以
外にも県立中央病院、金沢大学附属病院、国立金沢病院の
医療関係者をはじめ県内・県外から多くの方が見学され、3
日間の新館見学受付者は当初の予測を大幅に上回り、8日
910 人、9日 1,340人、10 日1,358 人の計3,608 人、受付をさ
れずにコースを廻られた本学医療関係者の見学者を含める
と約4,000人の見学者数となった。
見学コースは以下のとおり設定された。
新館12階 大会議室、展望レストラン等
新館11階 特別室フロア
新館10階 4床室、一般個室、スタッフステーション
新館 5階 血液透析センター
新館 3階 中央手術室
新館 2階 ハートセンター、外来診察室
期間中の見学者には「新館概要パンフレット」と小冊子
「くすりと健康・食事と健康・病気と食事」が配布された。
新館は患者のセキュリティ、プライバシー、バリアフリ
ー、アメニティなどのニーズを考慮した安全で信頼される医
療と、外来診療における内科・外科の枠を取り払う臓器別
診療体制や入院診療における臓器や症状等で関連する専門
診療機能の統合など質の高い医療の提供、臨床教育・研修
設備の充実等を目的に建設されたが、今回、見学された
方々からの感想としては、
「非常に立派な施設設備が揃って
おり、この病院で治療をうけたい」
、
「患者の名前を呼ぶこと
なく診察を受けることができるプライバシーに配慮したシス
テムに感動した」
、
「病室から見る景観がすばらしく、全ての
病気が治る気がする」
、
「このような設備が整った近代的な病
院が近くにあり安心できる」といった感想が多く聞かれた。
また、
「新館に再来受付がなく本館受付から診察室までが遠
い」などの感想もあった。
今回のオープンホスピタルの期間を通して患者さんはも
とより、地域の住民の方々の本院に対する期待と役割の大
きさを強く感じ、今後、全職員が一体となって特定機能病
院としての機能をさらに充実させ、地域の中心的医療機関
として健康と福祉の一層の充実発展に寄与しなければなら
ないという使命感を新たにした3日間であった。
(診療支援課組村勝行記)
ダイニング、デイルーム
特別室
個室的な4人部屋
スタッフステーション
透析センター
新生児室
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KMU ANNIVERSARY 3 0t h
病院新館 竣工修祓式
2003.9.6
関係者16名によるテープカット
病院新館の竣工修祓式が平成15年9月6日(土)、病院新館において
小田島粛夫理事長はじめ、本学、大学関連団体、石川県、内灘町、医
師会、設計 JV および施工 JV 各社の各関係者約 150 名の参列のもと、
厳粛に執り行われた。当日は生憎の雨で天候が懸念されたが、式典開
始の前には雲の切れ間から陽が差すほどに回復した。
午前10時から1階中央ホールにおいて、理事長をはじめ関係者16 名
によるテープカットが行われ、エスカレーターの初乗り、九谷陶壁前
の廻り階段の渡り初めが行われ、晴れやかな幕開けとなった。
引き続き12階大会議室において小濱神社神官による神事が厳かに行
われた。
ついで会場を12階レストランに移して直会(なおらい)が行われた。
小田島理事長の施主挨拶の後、木村博承石川県健康福祉部次長の祝辞
をいただき、その後設計者および施工者13社の代表者へ感謝状の贈呈
が行われ、設計者および施工者を代表して㈱日本設計の内藤徹男代表
取締役会長から謝辞が述べられた。
引き続き、梅田俊彦石川県医師会会長の発声で乾杯が行われ、和や
かな雰囲気のうちに歓談が行われ、その後新館の見学に移り竣工修祓
式は無事終了した。
(施設整備推進室森豊茂記)
設計者および施工者13社へ感謝状を贈呈
木村博承石川県健康
福祉部次長
梅田俊彦石川県医師会
会長
16
KMU ANNIVERSARY 3 0t h
第 30 回
金沢医科大学神経科学セミナー
2003.8.23 ∼ 24
テーマ
神経眼科学の基礎と臨床
1974年から30年にわたって続けられた金沢医科大学神経
科学セミナーの最後をかざることになった今回のセミナー
は、本学30 周年記念行事の一つとして、金沢医科大学と同
神経内科学教室の主催の形で、平成15年8月 23、24 日の両
日にわたってホテルイン金沢において開催された。
今回はテーマを神経眼科学・神経耳科学にしぼることに
し、最後のセミナーを意義あるものとすべく、過去にも多く
の聴衆に好評を得ており、また多くの参加者から希望され
ていたテーマとして『神経眼科学の基礎と臨床』が選ばれ
た。このテーマを実りあるものにするため、外国人演者をア
メリカからHoyt教授、オーストラリアからHalmagyi教授、
カナダからSharpe教授の3名にしぼり来沢をお願いしたとこ
ろ幸運にも3名から快諾がえられ、この3名に本学からの講
演者として廣瀬が加わりプログラムが組まれた。今回は最
後のセミナーであり、多くのわが国神経学関連の先生方に
も出席いただき討論に加わっていただきたく、著名な数名
の専門家に招聘状をさしあげた結果、神経耳科専門で過去
の講演者でもある小松崎 篤先生(東京医科歯科大学名誉教
授)内野善生教授(東京医科大学)
、また神経内科分野では
里吉栄二郎国立精神・神経センター名誉総長、田代邦雄北
海道大教授、山本悌司福島県立医大教授、清水夏繪帝京大
教授、山本 子藤田保健衛生大教授らの出席をえた。お陰
で総勢登録者85名の出席が得られ、神経科学セミナーの出
席者数としては近年では特筆すべき会となった。
[第1日目]
最初の講演は、 廣瀬源二郎教授 が Primary Position
Upbeat Nystagmus の病態生理とその責任病巣と題して、
本学で経験した稀有な症例を詳細に神経眼科・耳科的に検
討してその特徴を明らかにし、その責任病巣が今まで報告
されていない延髄背側正中にあるNucleus intercalatus of
Staderini にあることを初めて報告した。ビデオを使った講演
田代邦雄先生(左)
、小松崎篤先生
開会の挨拶をする廣瀬源二郎先生
であり眼球運動異常の記録を症状として示し、聴衆にわか
りやすく解説した。
次 い で Halmagyi 教授 が Neurology of Eye Movement
Disorders を講演した。眼球運動の解剖学的説明から、その
異常による眼球運動異常をビデオで示しながら解説し、き
わめて判りやすく教育的な講演であり、講演後の討論も極
めて活発に行われた。次いで今回のセミナーの本命ともいえ
る国際神経眼科学会の創始者でカリフォルニア大サンフラン
シスコ校の Hoyt 教授が Alterations in the Appearance of the
Retinal Peripapillary Nerve Fiber Layer in Neurologic
Disease と題して、眼底所見からだけでも神経疾患の特殊な
状態を、長年の経験に基づき診断できることを示された。神
経疾患を毎日診ている我々にとり、極めて有益な講演であ
り全ての出席者は深い感銘を受けた。第1日最後はトロント
大学 Sharpe 教授が Gaze Palsies と題して眼筋麻痺の神経学
を詳細に講演された。その内容は米国神経学会の教育講演
で過日行われたものであり、その講演レベルも卒後教育と
しては極めて至適であった。また彼の抄録は米国で使用さ
れたものと同じであり、図をたくさん盛り込んだ便利な解説
清水夏繪先生(中央左)
、山本
子先生
このセミナーの全講演は、インターネット(全世界)を通じてビデオ・オン・デマンド形式でご覧になれます(http://www.kanazawa-med.ac.jp/)
。
17
KMU ANNIVERSARY 3 0t h
廣瀬源二郎教授(本学神経内科学)
M.G.Halmagyi 教授 (Department of Neurology and Neuro-Otology
Royal Prince Alfred Hospital, Sydney)
M.F.Hoyt教授(Department of Ophthalmology & Neurosurgery
University of California San Francisco )
J.A.Sharpe教授(Department of Neurology, University of Toronto)
書として長く我々の手元に残るであろう。
[第2日目]
第2日にも3名の外国人講師が講演された。シドニー大学
Halmagyi 教授が Neurology of Vertigo と題してめまい患者
をいかに診断して治療するかを、ベッドサイドの神経学的
検査法を含めて実技を交えて説明された。我々のような専
門家にも有用な講義であり、お招きした神経耳科専門の先
生方も深く魅了されたようであった。 S h a r p e 教授 も
Diplopia: Diagnosis and Investigation と題して、複視患者
の診断と検査について懇切にビデオを交えて講演され、有
意義な講演であった。最後に H o y t 教授が C o n t e m p o r a r y
Neuro-Ophthalmologic Vignettés for Neurologists と題し
て、幾つかの神経眼科学の臨床的な発見・進歩を語られた
らんしょう
が、その中にわが国神経眼科学の濫觴ともなるすぐれた研
究として、1930年代の東大眼科学井上教授の頭部外傷に伴
里吉栄二郎先生
山本悌司先生
内野善生先生
う視野欠損の詳細な報告について言及され、日本人の立派
な業績として誇りとすべきであることを講演された。出席
者一同は自国の研究者の立派な業績への無知を知らされる
とともに、かかる研究業績を伝え残すことの重要さを知ら
され、多くの出席者が感動した。
最後に出席者全員が演台に上がり最後のセミナーの記録
を残すべく記念撮影をして、金沢医科大学神経科学セミナ
ーは30年の幕を静かに閉じた。
30年にわたり援助を惜しまれなかった歴代学長、病院長、
セミナー運営委員の方々および研究支援課職員に感謝したい。
本セミナーの内容のビデオ記録を、本学ホームページを
とおして広く世界からアクセスできることが、海外および
国内研究者から大変有用であるとする意見が寄せられた。
これも特筆すべき本学の貢献として、ここに書き留めたい。
(廣瀬源二郎記)
18
学 事
第17回 医学教育に関するワークショップ
「標準試験問題・共用試験問題の適切な作成」
講 師 齋藤宣彦先生(聖マリアンナ医科大学代謝・内分泌内科学教授、日本医学教育学会会長)
日 時 平成15年8月6日(水)
場 所 A31講義室、教養棟
も齋藤先生をお招きして問題作成の指導を受けることとな
った。このような意味から、今回のワークショップは従来
の形式とは若干様相を異にした。
33名の教員が参加し、まず9時 30分に正面玄関前で全員
の記念撮影を行った。続いてA31講義室に移り、竹越学長
の挨拶の後、鈴木教務部長の司会により、齋藤先生が客観
試験問題作成にあたっての基礎知識について説明をされた。
その後教養棟に場を移し、各グループに分かれて、一人一
題づつMCQ問題を作成した。午後からは各自作成した問題
を提示し、全員参加のもとに齋藤先生が一題づつブラッシ
ュ・アップした。
以上のように、かなり内容が濃厚なプログラムであった
が、参加者全員熱心にMCQ問題作成、ブラッシュ・アップ
作業に取り組み、非常に有意義なワークショップであった。
(教務部副部長大原義朗記)
齋藤宣彦先生
第17回「医学教育に関するワークショップ」は、平成15
年8月6日(水)聖マリアンナ医科大学の齋藤宣彦教授をお
招きして、
「標準試験問題・共用試験問題の適切な作成」と
いうテーマのもとに開催された。先生のご専門は代謝・内
分泌内科学であるが、そのほか、共用試験システムに関す
る研究班・専門委員会にも参加されている。また全国医学
部・医科大学に示されたモデル・コア・カリキュラムを軸
とした共用試験の準備・実行を担っておられる。さらに共
用試験実施機構(Common, CATO)の Computer-Based
Testing (CBT)医科CBT問題評価分科会長、共用試験実施
機構医科問題作成分科会委員として活躍しておられる。こ
のように、先生はわが国の医学教育界の重鎮であり、本年4
月から日本医学教育学会会長に就任されている。
平成17年度から共用試験が本格的に導入されることは既
に決定されており、全ての医学部および医科大学が共用試
験に参加することを表明している。CBT に関しては、全参
加大学から提出された問題がブラッシュ・アップされて使
用される。先生を始めとして共用試験実施機構の先生方は
この夏それぞれ手分けをして、全国の各医学部、医科大学
を行脚し、問題作成の指導を行っている。ちなみに本学か
ら提出された問題の昨年の採択率は全国でトップ12以内に
ランクされている。ただ学内からの問題の中にはまだまだ
ブラッシュ・アップが必要な問題も散在しており、本学で
19
教育講演会
「最新の医学教育の動向」
講 師 齋藤宣彦先生(聖マリアンナ医科大学教授、日本
医学教育学会会長)
日 時 平成15年9月30日(火)午後1時30分∼午後3時
場 所 A31講義室
平成15年9月 30日(火)
、A31講義室において、新カリキ
ュラムのユニット責任者、週責任者、各教室教授および教
育担当者、カリキュラム委員約60名を対象に教育講演会が
開催された。齋藤先生には8月6日にも共用試験実施機構の
立場から適切なMCQ問題作成に関するワークショップのタ
平成16年度
入学試験説明会
全国8ヵ所で開催
平成16年度本学入学試験の説明会が例年のように全国
8カ所(金沢、札幌、岡山、仙台、福岡、東京、名古屋、
大阪)において、平成15 年7月 29 日(火)から8月8日
(金)にわたって受験生やその家族、高校の進路指導教諭
等を対象として開催された。出席者は上記8カ所で受験
生72名、父母等92名、教員15名の延べ179名(前年198
名)であった。
説明会では入試実施委員から「本学の概要」・「教育
方針」・「学生生活」・「平成16年度入試要項」等につい
て詳細な説明が行われた。さらに説明の中で昨年創立30
周年記念事業として作成したテレビ番組のダイジェスト
版「医学教育は、いま−金沢医科大学の挑戦−」を放映
した。
参加者からは「ビデオは貴大学の様子、教育方針が分
かりやすく、共感するところも多くあり、とても感動し
ました」や「ビデオの内容が私自身の価値観と非常に近
スクフォースを実行していただ
いたが、今回は医学教育学会会
長として激動の医学教育の動向
について講演していただいた。
これまでの医学教育には、講
座や教員中心の知識伝授型であ
る事や膨大になった医学知識に
対応できなくなったことなど、
多くの問題点が指摘されるよう
になった。精選された基本的内
齋藤宣彦先生
容を重点的に履修させるモデ
ル・コア・カリキュラムに代表
される一連の医学教育改革が必要になっている現況が説明
され、生涯にわたり自ら課題を探究し問題を解決してゆく
能力を身につけられるような、学生主体の学習方法に積極
的に転換する事が必要である。 このため各大学では PBL
tutorial を取り入れたカリキュラムの再編が実施されている。
学生の臨床実習を参加型実習で実施するため、さらに社会
に対して質を保証するための共用試験(OSCEとCBT)の導
入と実施にいたる経過や今後の展望について熱く語られた。
特にCBTの質の確保のため精度の高い問題の作成が必要で
あることを強調された。また、今後の医師国家試験の動向
や共用試験との関係、卒後研修の義務化に向けたマッチン
グプログラム、教員評価などについても説明され、激動の
医学教育の詳細と改革への熱意が紹介された。
(教務部長鈴木孝治記)
いことの驚きとともに、ますます入学したいと強く思い
ました」など、ビデオに関する好評が多数の寄せられた。
また、
「編入学についてもう少し詳しい説明があれば良か
った」や「このような説明会を予備校に来てしていただ
けたらありがたいのですが」などの要望も寄せられた。
(入学センター村井幸美記)
ホテルイン金沢で行われた入学試験説明会
20
第31回
解剖体合同追悼法要
平成15年10月18 日(土)午後2時から真宗大谷派金沢別
院(東本願寺金沢別院)において、ご遺族をはじめとして、
天寿会員、本学教職員約 490名が参列して第31 回解剖体合
同追悼法要が厳かに執り行われた。
この法要は毎年秋に開催されており、今回は、平成14 年
9月1日から平成 15年8月 31日までの1年間に、系統解剖の
ためにご遺体を本学に献体された方々と、病院で病理解剖
を受けられた方々合計144名の崇高な篤志に感謝し、ご冥福
をお祈りするために開催された。
はじめに竹越襄学長から「医学教育はもちろん、優れた
医師の育成と医学の進歩、発展のために尊いご遺体を捧げ
られたご本人並びに、同意いただいたご遺族の方々の深く
ご理解ある志に対して、深甚なる敬意と感謝の念を捧げた
い」との追悼のことばがあり、続いて小田島粛夫理事長か
らお礼の挨拶が述べられた。
引き続き、144 柱のご尊名が朗読され読経の流れるなか、
参列者一人一人が焼香し、故人のご冥福をお祈りして法要
を終了した。
(教学課堀 愉記)
墓参行事
平成 15 年8月 11 日(月)午後1時から本学納骨堂にお
いて解剖学教授、天寿会役員・会員、関係教職員が参列
して旧盆の墓参が行われた。
最初に解剖学教室を代表して平井圭一教授、篠原治道
教授の両教授と、天寿会を代表して会長代行の杉村みつ
いさんが献花を行った。続いて天寿会役員、関係教職員
が献花し故人のご冥福をお祈りした。また、一般会員の
方々の希望者も参列し、医学教育、研究のために献体さ
れた御霊に感謝を捧げた。
墓参終了後、納骨堂前に設営したテントの下で、解剖
学教員と天寿会員がなごやかに懇談し、互いに交流を深
めた。
(教学課堀 愉記)
平成15年度
実験動物慰霊祭
平成 15年 10 月 29日(水)12 時 30分より本部棟1階学
生ラウンジ横において、平成 15年度実験動物慰霊祭が、
勝田省吾副学長、西川克三総合医学研究所長ほか教職員、
学生ら 2 0 6名が出席して行われた。読経が流れるなか、
出席者が医学の発展に寄与した実験動物の御霊に深い感
謝の意を捧げた。
最後に、動物実験委員会の中川秀昭委員長より、実験
動物(本学における過去1年間の実験動物使用数: 5,959
匹)の果たした役割が、人類の福祉に大きく貢献してい
ることを再認識し、今後も動物福祉を念頭に置き、常に
必要最小限を留意しつつ、日々研究に邁進し、さらなる
医学の発展に努めていきたいとの挨拶があり、平成 1 5
年度実験動物慰霊祭を閉じた。
(総医研共同利用部門荒井剛志記)
21
医学部第2学年
看護体験実習・体験報告会
昨年からEarly Clinical Exposure(早期臨床体験)の一環
として看護体験実習が医学部第2学年に取り入れられ、今年
で2回目となり、平成 15年8月 25 日(月)から 28日(木)
までの4日間実施された。
本実習が第2学年において行われる目的は二つに集約され
る。第一に、医学部の低学年において早期に医療現場を体
験することにより医学を学ぶための motivation を高めるこ
と。第二に、看護師さんの実際の仕事を肌で感じることに
より、チーム医療や患者中心の医療を学ぶことである。
実習に入る前のオリエンテーションでは、はじめに第2学
留学生情報
(2003年6∼9月)
年主任大原義朗教授から実習の目的・内容の説明があり、
引き続き、消化器内科学島中公志先生から感染予防の知識、
辻口徹子看護部長より全般的な説明を受けた。第2学年の
学生は第2学期の第1週にあたる4日間、5、6人ずつのグル
ープで21の病棟に配属され、実習に入った。
医師および保健師、助産師、看護師法に抵触しない範囲
で以下の10項目の体験実習を行った。
(1)引継カンファランスへの参加
(2)入院患者の誘導、入院時のオリエンテーションの見学
(3)患者搬送等の実習
(4)ベッドメーキングをはじめ療養環境の整備
(5)患者の訴えの聴取と記録の作成
(6)バイタルサインのチェック、3測表の作成
(7)医療介助の見学
(8)介護業務(体位変換、食事、清潔、排泄、歩行、寝衣
交換)
(9)看護問診、入院診療計画書、看護診断、看護計画、看
護記録の作成
(10)医師および他職種との連絡および報告
実習報告会は、実習終了後の8月29 日(金)に開き、各
グループが実習で何を体験できたか、何を感じたかを発表
し、さらに清水由美子看護師長および浜田悦子看護師長か
ら実習全体に付す総括コメントをいただいた。
看護師さんの仕事の大変さ、また、看護師さんがいかに
患者さんと密に接し患者さんから多くの情報を得ているか
を知り、チーム医療の重要性を体感したとの発表が多かっ
た。と同時に、いかに重要な役割を医師に求められている
かが浮き彫りになったとの声が聞かれた。今後の医学学習
の一助になる有意義な実習であった。
(第2学年副主任芝本利重記)
(学術交流室)
留学生の往来
2003年8月13日 中国・中国医科大学附属第一臨床学院眼科大学院生の陶津華氏が眼科学における11カ月間の研究を修
了し、研究証明書を授与された。
8月29日 中国・中国医科大学附属第二臨床学院放射線科講師の岳勇氏が放射線医学における1年5カ月間の研究
を修了し、研究証明書を授与された。
22
平成15年度金沢医科大学
オープンキャンパス /進学説明会 2003.8.24, 9.21
平成 15年度金沢医科大学オープンキャンパスは、8月 24
日(日)と9月 21日(日)の2回、本学キャンパスを会場に
開催された。
第1回目の8月 24日には 180名(受験生本人 85名、父母
95 名)、第2回目の9月 21 日には 74 名(受験生本人 37 名、
父母37名)の合わせて過去最多の254 名(昨年度は226名)
の参加があった。
オープンキャンパスは午前10 時に開会した。山田裕一入
試実施委員長から開会の挨拶があり、入試実施委員よりプ
ログラム等の説明のあと、参加者は4つのグループに分かれ
案内役の在学生がツアーガイドとなりキャンパスツアーを
行った。今年度も麻酔学と解剖学Ⅱ講座の協力による、
「救
急蘇生法」の実習体験や「解剖学」の模擬講義が行われ、
専門的な事柄が平明に解説され参加者はその雰囲気に溶け
込んでいた。また9月には完成した病院新館見学もコースに
取り入れ好評を得た。
8月 24 日の昼食会では、参加者と在学生、教職員が学生
食堂と本部棟学生ラウンジの2カ所で食事を取りながら和や
かな雰囲気のなかで歓談を行った。この間も受験生は、入
試種別のプレートをつけているお目当ての在学生に受験勉
強のことや学生生活のことなど、
「大学案内」では分からな
い在学生の立場からの生の声に聞き入っていた。
午後は入試説明会、電子カルテ、図書館見学、個別入試
相談、大学周辺環境のバスツアーも行われた。
短い時間ではあったが参加者は思い思いに本学を理解し
た模様で、午後3時には全てのプログラムを終了した。
本学のオープンキャンパスは受験生の視線で本学を見て
図書館で在学生の説明を熱心に聞く参加者
もらうことに重点をおいており、参加者の案内や説明など
をグループに分けて在学生が案内役となる形で実施してい
る。
毎回、約30 名の在学生の協力を得て実施しており、参加
者アンケートでも「教員が行うのではなく、学生が行うオ
ープンキャンパスという感じで、他の大学とは違った良さ
が多かったと思う」
、
「在学生との交流で、本音で話が出来
てよかった」
(受験生)
、
「在学生達が生き生きとして自分の
大学を説明しているところが印象に残った」
、
「教育現場の
ビデオでは、父親の私が心を洗われ感動しました」
(父母)
など受験生や父母からの感想もあり、大盛況であった。
(入学センター村井幸美記)
〈オープンキャンパスに協力した在学生から〉
市川 るり(第4学年)
私がオープンキャンパスのお
手伝いをさせていただいてから
3年になります。4年前のオー
プンキャンパスには編入学の受
験生として参加し、先輩方にい
ろいろな質問をしました。先輩
方は、どんな質問にもやさしく
答えてくださり、金沢医科大学
に合格したいという気持ちが大きくなっていったことを
覚えております。現在は在学生としてオープンキャンパ
スに参加し、受験生やそのご両親にいろいろなお話をさ
せていただいています。生活面に関わることや内灘の気
候、受験に向けての勉強や部活に関してのご質問など多
様な内容ですが、質問には正直に、そしてできるだけ正
確にお答えしています。病院の見学ツアーにもご一緒さ
せていただき、時には参加された受験生のご両親から医
師を目指すものとしての心得、これからの医療に対して
のご意見をいただくこともあります。このように私自身
オープンキャンパスのお手伝いをすることを通して自分
の学生生活を振り返ることができ、改めて医師を目指す
という初心を確認しています。来年度もオープンキャン
パスでたくさんの方々にお会いし、精一杯のお手伝いが
出来たらと願っております。
まさひろ
山口 昌大(第5学年)
初めてオープンキャンパスに参加した時、暇だからや
ってみようという安易な気持ちでした。しかし、受験生
23
や保護者の方々の医学を目指す
真剣な姿に、医学生として襟を
正される思いになると同時に、
微力ながらお手伝いしたいと考
え4年間、毎年参加してきまし
た。
オープンキャンパスでの学生
の役割は、① 大学内を誘導す
ること、②学風、学生生活、試験内容、対策などの質問
に学生の視点から率直にお伝えすることの2点です。参
加された方々はとても熱心で、時間が足りなくなるほど
質問されました。相手の熱意に接すると、
「この人たちの
ために何かしてあげたい」という気持ちが自然に湧いて
きて、僅かでも自分の知識をお伝えしようと思うのです。
約5時間と短い時間でもお話させていただいた方と翌春
に再会できると、仲間が入学したような不思議な喜びを
感じます。
これからもオープンキャンパスを通して金沢医科大学
をもっと知っていただき、その上で金沢医科大学はいい
なと思って下さる仲間にどんどん入学して欲しいと思い
ます。
平成15年度
父兄会
本年度の父兄会は、平成15年7月 26日(土)
、27日(日)
の両日、本学本部棟、教養棟、学生食堂を会場に開催された。
26 日(土)は、本部棟にて第6学年を対象とした説明会
と全学年を対象とした説明会が行われた。6学年対象の説明
6学年対象の説明会
平成15年度父兄会出席者数(平成14年度出席者数)
若山 恵子(第5学年)
私は5年間オープンキャンパ
スのお手伝いをさせていただき
ました。
毎年いろいろな発見があり
ました。1年目では、本学の先
生方の入試説明を聞いて評価
の仕方が改めてわかり、まるで
自分が入試業務に参加してい
る気分になりました。また5年目ともなると参加者や学
生達をまとめるリーダーという責任ある役になり、良い
経験をさせていただいたと思っています。
オープンキャンパスは受験生にとって大学の環境、雰囲
気を知る良い機会であり、実際そこでキャンパスライフ
を送っている私たち在学生が率直な意見を伝えたり、受
験生同士が仲間になるきっかけを提供したりと、お手伝
いする私たちにとって良い刺激を受ける場だと思います。
来春には、一人でも多くの新入生参加者と出会えるこ
とを願っています。
会では、新たに卒後臨床研修についての説明が加えられた。
説明会終了後、会場を学生食堂に移し懇親会が行われ、
勝田省吾副学長の挨拶の後、ご父兄を代表して、高橋義弘
様から乾杯のご発声をいただいた。各学年のテーブルでは、
ご父兄と教員、またご父兄の間同士で和やかに懇談が行わ
れた。
翌27日(日)は、午前9時から午後3時まで個別面談が行
われた。
(教学課堀 愉記)
懇親会
24
附属看護専門学校
高校生の一日体験入学
将来、看護師として看護業務に就くことを考えている高
校生を対象として、看護専門学校の実際を見て、看護の仕
事の素晴らしさを体験してもらい、適切な進学指導に役立
てるという目的のもとに、本学附属看護専門学校の一日体
験実習が、7月 28 日
(月)から 3 0 日(水)
にわたり3回実施され、
合計 193 名の高校生が
参加した。
午前9時 30 分、柳原
誠副校長の挨拶に始ま
り、ビデオによる本校
の紹介、本校教員によ
る患者の介助方法につ
いての講義と実演など
が行われた。昼には本
校在学生との昼食会が
もたれ、先輩との歓談
が行われた。午後には、
いしかわシティカレッジ
本学からの参加状況
石川県内の19の大学、短期大学、高等専門学校でつくる
「いしかわ大学連携促進協議会」
(会長・谷本正憲県知事)
は去る6月 23 日総会を開き、
「いしかわシティカレッジ」に
関する協定に合意し、本学もこの事業に参加することとな
った。
「シティカレッジ事業」は県内の高等教育機関に在籍
する学生に対し履修機会の拡大を図るために、他の高等教
育機関の授業科目の履修を認めたり、学外の一般社会人に
生涯学習の機会を提供する目的で、県内の高等教育機関の
授業科目を開放するものである。在学生については、授業
科目を提供する高等教育機関の間で単位互換協定を締結し、
「特別聴講学生」として授業料を払うことなく他の高等教育
機関の授業科目を履修することを可能とするものである。
また、一般社会人は受入れ大学等の定める授業料を納入し、
「科目等履修生」として授業を聴講できる。
本事業の開設記念として7月20日に河合隼雄文化庁長官、
8月8日にノーベル化学賞受賞者の野依良治名古屋大学教授
の特別講座が開催され、10月より参加各高等教育機関が提
供する「シティカレッジ」がスタートした。法律、環境、福
本学病院の病棟で看護の実際を体験実習し、看護部をはじ
め各階の師長や看護師、臨床指導者の懇切丁寧な協力と指
導を得て、無事に実習を終えることができた。
実習終了後学校に戻り、参加した高校生全員が「看護学
校一日体験入学に参加して」のテーマで感想文を書いて午
後4時頃に終了した。
本校では看護の仕事を正しく理解してもらい、また看護
職を希望する優秀な高校生の入学を期待して、多数の高校
生に参加してもらえるような『一日体験入学』を平成3年か
ら行っている。
(入学センター村井幸美記)
祉、国際社会、科学など26科目の授業が旧石川県庁新館シ
ティカレッジ教室で行われている。さらに、各高等教育機
関のキャンパスで受講できる33科目も提供されている。
旧県庁新館シティカレッジ教室には本学が次の3科目を提
供しており、11名の参加があった。
。
「戦争と平和」
担当教員:平口哲夫教授(火曜日開講19:10∼20:40)
「パズルやゲームにひそむ数理」
担当教員:吉野健一助教授(土曜日開講14:40∼16:10)
「ドイツ語を読もう」
担当教員:原 亮助教授(木曜日開講17:30∼19:00)
県内の他大学との連携協力の中で、本学の魅力を県内外
に発信する機会となることを期待したい。
(シティカレッジ専門部会委員、副学長勝田省吾記)
25
学生のページ
テーマ
/en/
内灘祭実行委員長 岩崎竜一朗(第4学年)
内灘祭は32 回を数えるが、今年
も10月4日(土)
、5日(日)の両
日、お陰様で事故もなく無事開催
することができ、実行委員一同協
力してくださった皆様に大変感謝
しております。
今年の内灘祭はテーマを「/e n /」
とし、私たちのまわりの環境とそ
の繋がりをイメージしました。私たちはいくつもの大きな
サークルの中で生活し、それらのサークルは様々な縁で繋
がっています。内灘祭を通して学生同士はもちろん教職員
や地域住民の方々と触れ合うことにより、自分たちの住む
コミュニティを理解し、人と人の縁の大切さを改めて考え
るきっかけにして欲しいという願いで準備を進め、開催に
至りました。
皆さんは今年の内灘祭をどうお感じになりましたか?
本学と内灘町の発展に何かしら貢献できればと思い、協賛
していただいた理容店の協力を得てチャリティーカット(簡
単なカット500円/回を骨髄バンクに募金)を行うという新
企画を検討していたのですが、なかなかうまくいかず断念
せざるをえませんでした。新しいことを企画するのは実行
委員会の永遠のテーマであるようです(来年の実行委員の
人に期待しています)
。新企画実現の夢が消えましたので、
カラオケ大会
体育館でのメインイベント、メインステージでの本部企画
などに全力を注ごうと準備を進めました。10月5日(日)の
メインイベントのガガガSPコンサートは800人近くの人が
来場し、そのためか各部活模擬店、メインステージでの本
部企画、フリーマーケット、展示会ともに大盛況でした。
今年から取り入れた部活対抗戦でのリレーも白熱した戦い
を見ることができました。今年も各部活の協力を得て、よ
りいっそうの巡回警備、徹底した飲酒検問を行いました。
私自身が内灘祭を経験するのは4回目ですが、実行委員長
としてやり終えた後の達成感は格別で、最後にメインステ
ージでの挨拶をした時は感無量でした。終わった後に、親
しい先輩から「今まで知っている学祭の中で一番楽しい学
祭だった。ありがとう」と言われた時には、本当に内灘祭
をしてよかったと思いました。また、内灘祭を通して多く
の人と触れ合い、たくさんの事を学べたという経験で自信
もつきました。慕ってくれる後輩がたくさんできたことも
大きな収穫でした。社会に出る前に、何か大きな団体(部
活動、学友会、内灘祭実行委員会など)に所属することは、
豊かな人間性を育み、人格を磨くよい機会になるのだ、と
いうことを改めて実感しました。良医になることを目指す
私たち金沢医科大学の学生には、こういう課外活動こそ必
要だと感じ、学生の皆さんには是非これからも積極的に参
加してほしいと思います。
最後に内灘祭を開催するにあたって、協力してくれた内
灘祭実行委員のみんな、支援してくださった学友会の皆様
や大学の先生方、職員の方々に、心から感謝しお礼を申し
上げます。本当にお疲れ様でした。
模擬店
26
学生のページ
第28回 附属看護専門学校祭
テーマ
一期一会
看学祭実行委員長 長村 純子(第2学年)
平成 15年 10月4日(土)午前9
時から、金沢医科大学附属看護専
門学校にて、「一期一会」をテー
マに第 2 8 回看学祭が行われまし
た。
人は多くの出会いの中で、一生
を左右されたり、人間形成に大き
な影響を受けたりすると言われて
います。いつも出会っている友人でも、今この時の出会い
は一生にただ一度の機会。だからこそ、その出会いの喜び
を大切にしたいと思います。私たち看護学生には、実習で
の患者様や医療スタッフとの出会い、学校での先生方や学
友との出会い、そして今回のような看学祭での出会いと、
たくさんの出会いがあります。そのすべての出会いを大切
にすることが、看護の始まりであり私たちに求められてい
ることではないでしょうか。出会いはすべて「一期一会」
。
そしてすべての「一期一会」が意味を持ちます。私たちは
この看学祭を通して人との出会いを楽しみ、心に残るもの
を得るために、テーマを「一期一会」と決めました。
講演会では日本画家の平木孝志先生に、今回の看学祭の
テーマである「一期一会」について、先生の趣味である茶
道の話を交えながら、とても楽しくユーモアあふれるお話
をしていただきました。
看護専門学校玄関前には、鮮やかな虹の中に白い鳥が飛
んでいる看板が飾られ、玄関内では献血の場を設け、学生、
教職員及び一般の方々の協力を得ることができました。学
内では看護展示、車椅子サッカー、足浴、音楽演奏、つぼ
マッサージなどが行われました。看護展示では「ほっとコ
ミュニケーション」をテーマに、言語的・非言語的コミュ
ニケーションについての発表を行い、体験コーナーでは電
音楽部による演奏
平木孝志先生による講演会
動車椅子サッカーの選手に来ていただき、車椅子での鬼ご
っこなどを体験する機会をつくりました。足浴では入浴剤
を使ってのフットケア、つぼマッサージでは背部を中心と
した10分マッサージを行い、順番待ちの列ができるほど好
評でした。食堂では音楽部による演奏が行われ、集まった
人たちは息の合った演奏とパワフルなボーカルに大きな拍
手を送っていました。
また今回は、9月に行った宿泊研修の際に作成した山のも
のを使った作品や、学校行事・寮生活・ボランティア活動
などでの写真、自慢のペットの写真、教員の学生時代の写
真などを展示した「くつろぎ空間」と題した作品展も行い
ました。
今年は学生の出身高校へ看学祭ポスターとパンフレット
を郵送し、さらに内灘町にあるコンビニや各種店舗、保育
園、特別養護老人ホームなどに、看学祭ポスターを貼らせ
てもらえることができ、内灘町住民の方に強く訴えること
ができ、例年よりも多くの一般の方々が訪れてくださいま
した。
授業や実習が忙しい中で各代表、教職員、そして学生一
人ひとりが自分の役割をしっかりと自覚し、団結して準備
を進めることができました。皆でひとつのことを成し遂げ
る喜び、人と人との出会いの喜びを実感し、思い出深い学
園祭にすることができました。来ていただいた方々に心か
らお礼を申し上げます。
フットケアのコーナー
27
学生のページ
ハワイ大学夏期語学・医学研修報告
第6回 夏期語学・医学研修報告 (ハワイ大学、期間:200 3年7月28日∼8月16日)
糸田川和也(第1学年)
ウェルカムパーティーにて。後列左から荒山わかな、糸田川和也、
坂部亜希。前列左から小倉慶雄、関本順、奥健治
私が第6回夏期語学・医学研修に参加したきっかけの一つ
は、実際に経験された先輩方から何度か聞いたこの研修の
すばらしさの話だった。しかし研修に参加し全カリキュラ
ムを終えた時、私の中での先輩方の体験談は色あせてしま
ったほど、自分自身の体験は素晴らしかったのである。ま
さに「百聞は一見に如かず」を実感した。
研修の目的は、英語コミュニケーション能力とグローバ
ルな見識を身につけ、医学・医療への理解を深めることで
あった。だが私は率直なところ、まだ目的を達成できたと
は思っていない。しかし短期間ではあったが3週間の研修期
間は、確実に私に何らかの変化をもたらした。また、他国
の人とコミュニケーションをとり、友達になり、お互いの
価値観を理解し合ったり、関連病院を見学し海外の医療事
情を垣間見たなど自分の研修目的を達成する手掛りは多数
あった。
この研修で得たものは計り知れない。自分とは異なる価
値観、国境を越えた友情、英語の若干の上達、自国とは異
なる国民性、海外の学生の実情・・・例を挙げればきりがな
い。その中でも医学生として得られた活力、海外での医学
生の社会的認知度やモチベーションの高さを知ることがで
き、今の私の医学生としての自覚とモチベーションの低さ
を浮き彫りにさせられた。他国の医学生に負けてはいられ
ないと思い、抱いた活力は忘れられない。
振り返ってみて、今回の研修に参加して本当に良かった
と思う。今回の経験は将来医者として活躍する場において
も必ず役立つものと思う。興味がある人は勇気を出して研
修に参加することをぜひお勧めしたい。自分自身の取り組
み方次第で、一生忘れられない貴重な体験が得られるに違
いない。
荒山わかな(第1学年)
今年の夏、私はハワイ語学研修に参加し、3週間をハワイ
で過ごした。この間、様々な経験を通して私は心身共に成
長することができた。
私にもっとも大きな影響を与えたのは、ハワイ大学の学
生たちとの交流であった。今まで年の近い人たちと英語で
話す機会が少なかったので、英語を話すこと自体が億劫で
あった。しかし、彼らとは家族や夢、恋愛のことなど話が
尽きることはなかった。そうしているうちに英語を話すこ
とについて身構えることがなくなり、気楽に振舞えるよう
になった。誰とでもオープンに接しコミュニケーションを
楽しもうと思える度胸をつけることができた。
研修中にハワイの医療施設を見学する機会もあった。軍
の医療施設を訪れた時、私はそこに日本の医療現場との大
きな違いを見た。そこで働くスタッフは、医師、看護師、医
療技師など職種の違いに関係なく、お互いを尊敬しあいお
互いを大事にしていた。また患者に対しては症状や原因、治
療法などの情報を全て伝え、その後の選択権を患者に任せ
ていた。こうして、患者は自分の人生を自分で作ることが
できるのだ。このような医療現場が広く存在すれば、病を持
ポリネシアン文化センターにて
28
学生のページ
ハワイ大学夏期語学・医学研修報告
つ人でも生きることに対する思いが根強くなるであろう。
今回の研修で、私は自分自身を成長させ、また将来に自
分が持つべき信念を見つけることができた。この先もそれ
らを忘れることなく成長を続け、様々な出会いを大切にし
ていきたい。
坂部 亜希(第1学年)
私は今回このハワイの語学研修に参加して本当に良かっ
たと思います。ハワイではたくさんのことを経験し、学び、
自分の視野を広げることができました。今までこのような
研修に参加したことがなく、海外にも1回しか行ったことが
なかったので、やることすべてが初めてで、驚きと発見の
連続でした。ハワイ大学の授業では、英語を学ぶ他に英語
で自己紹介したり、皆の前で発表したりしました。私は英
語力がほとんどなかったのでとても大変でしたが、今終わ
ってみると少しですが英語力がついた気がします。英語で
話すということにも抵抗がなくなりました。そして医療施
設の見学では、こちらの国の医療システムについていろい
ろ知ることができ、とても貴重な体験になりました。また
私が最も印象に残ったのは、こちらの国で出会った人達で
す。皆気さくに話しかけてくれて、会うたびにハグをして
くれてとてもうれしかったです。またこちらの人は考え方
や心が日本人よりも広くてオープンだと感じました。私も
そのような心の広い人になりたいと思いました。今回の研
修で私は、もっと英語力を身に付けたいと思いました。そ
してもっといろんな国に行って、たくさんの人と出会った
り話したりして、たくさんのことを経験してみたいと強く
感じました。
よしお
小倉 慶雄(第1学年)
今回の語学研修において、私は英語学だけでなく、多く
のことを学ぶことができた。平日の少人数制授業とネイテ
ィブスピーカーの教師により、受け身でなく、自ら英語を
話していくという心構えを持つことができた。授業のプロ
グラムの中にもショップの店員に取材しなくてはできない
宿題があったり、他人が理解できるようなプレゼンテーシ
ョンを英悟でしなくてはならなかったりと大変だが、良い
経験になるものばかりだった。そして食事を自分たちでと
る制度というのも良い英語学習の場になったと言える。
また、プログラム中のフォローシップ活動は自分のコミ
ュニケーション能力を大きく伸ばすことができたと思う。多
くの見知らぬ外国の人々と会い、とても仲良く会話ができ、
更に宗教文化についても知ることができ、忘れられぬもの
となった。病院見学も、日本で見られない医療体制や普段
入れない軍病院を見ることができた上に、案内を英語で聞
き取るということもでき、良い勉強になった。これらのプ
ログラムは続けるべきであると思った。
この他にも休日の自由行動などで多くの新しいことを経
験し、学ぶことができた。ハワイは日本人が多く、現地で
語学研修が行われたハワイ大学キャンパス内ハワイ移民インタ
ーナショナル・カンファレンス・センター前にて
日本語を習得している人もいるのであまり英語が上達しな
いのでないかという疑問もあるだろうが、私はハワイだか
らこそ今回の研修が英語学だけでなく、様々なことが学べ
た要因ではないかと思っている。私は留学経験がないので、
この経験を後に生かしていきたい。
奥 健治(第1学年)
私はハワイの語学・医学研修へ参加申し込みをするとき、
本学に入ったばかりであったこともあり、行くかどうかとて
も迷いました。しかし、結論としてはハワイへ行ってとても
良かったのです。ハワイへ行く前は、色々と心配があり、ハ
ワイでどうしたらよいのか分からなくなるのではないかなど
と思っていたところ、実際にハワイへ行くとサポートが適度
になされていました。ハワイでの生活は、適当そのもので、
平日の午前中は大学へ行って授業を受けることに決まって
いるものの、午後からは自由行動で、やりたいことが何でも
できました。午前中は授業といっても、このプログラムに参
加している人たち十数人で集まり、原則的には英語だけを
使いしゃべるという、とても気楽なものでした。また、午後
の自由時間は英語を実際に使えたのでとても役に立ちまし
た。積極的に英語を使おうとして行けば、とても英語の勉
強になると思います。私たちは病院見学にも行きました。民
間の病院と軍の病院に行き、双方で得るものがあり、とて
も面白くためになったと思っています。
しゅん
岡本 順(第1学年)
初めて留学を経験する私にとってハワイという場所は非
常に都合が良かった。当初ハワイ留学を申し込んだときに
は不安が大きかったのだが、実際に行ってみると親日家は
多いし、日本人慣れしているのかすべての人がとても優し
かった。3週間のプログラムの中で最も英語の勉強になり印
象深かったものは、主に土日の宿題として課せられた
29
学生のページ
ハワイ大学夏期語学・医学研修報告
Fieldwork であった。これは、ハワイのいろいろな観光名所
についてQuestion が用意されており、実際に足を運んでや
ってこいというもので、当然そこにいる人に尋ねないとで
きないのだ。せっかくショッピングセンターに行っても、そ
のほとんどの時間を費やすことになり、観光客のようには
なかなか楽しめないのだが、その分、現地の人と話せる機
会が持てたし、本物の発音にも接することができた。教室
の中でも先生が聞き取りやすいようにしてくれるような、ゆ
っくり、はっきりの発音ではないので、スムースに理解す
るのは難しいが、ジェスチャーや表情を見る余裕ができる
と何を言っているのか分かってくる。町の人と会話をする
のに慣れてきた2週目以降は見ず知らずの黒人とバスケをす
るなど活動的になるのに慣れた。しかし、ハワイの良さは3
週間という短期間では満足できず、もし次回訪れることが
あれば、まだまだ行ってみたいところがある。アラモアナ
クラブ
活動
美術部
病院新館小児科待合室の壁画
「むか∼し むかし」の制作
美術部部長 鎌田 真弓(第4学年)
7月、部員みんなで最後までチェックを入れながら塗り、
洗浄・保護加工をした13枚の絵は、部員の見守る中、工
事現場の方の手で病院新館小児科外来の壁に1枚の壁画と
して完成しました。取り付けを完了し1枚の大壁画として
仕上がった瞬間、思わずみんなで拍手し完成を祝いまし
た。1枚1枚ばらばらに塗っていた物が1つの大きな絵に完
成されたのを見て、部員一同、感無量でした。半年間、時
間をやりくりしながら塗り続けた壁画には、私たちの多く
の思い出が詰っています。絵の描き方は個人個人で違いま
すから、壁画の中身も多様な個性がまじり合っています。
フェアウェルパーティーにて
ショッピングセンターの中や、ハナウマベイ、ホノルル空
港での小型飛行機操縦体験は何度行っても飽きないだろう。
それもまた、この壁画の魅力になっていると思います。そ
して同時に、美術部の集団としての個性も表れていると思
いました。今年で引退する私たち4年生にとっては、思い
がけない引退制作になりましたし、壁画制作をやりきった
という達成感はかけがえのない宝物です。
部員の中で一番思い入れが深いであろう原作者の福井智
子さんは、
「小児科病棟の壁画作成という素晴らしい機会
をいただいた事に大変感謝しています。自分自身が描いて
いてとても楽しい気持ちになれたので、病院を受診される
子供達や親御さんの緊張もきっと和らぐことでしょう」と、
制作を終えての思いを語っています。彼女の言う通り、部
員全員がとても楽しんで色を塗りました。その楽しさが小
児科を訪れる方々に伝わればと思います。そして病院とい
う場の緊張感を和らげるのに、少しでも役立てばと願って
やみません。
最後に、この仕事を下さった先生方や関係者の方々、協
力してくださった方々に心からのお礼を言いたいと思いま
す。本当にありがとうございました。
30
学生のページ
ハワイ大学夏期語学・医学研修報告
プレ・クリニカル研修報告 (ハワイ大学医学部、期間:20 03年7月28日∼8月8日)
“Learning from the Patient”Workshopで
としかつ
学んだこと
三井 俊賢(第5学年)
Kuakini Health Systemにて、右端が三井
私たちはハワイ大学医学部で、1、2年用のトレーニング
内容とほぼ同じ内容を2週間体験してきました。ハワイ大学
の医学生は講義ではなくPBL や模擬患者を用いたcase study
で医学を学んでいます。ハワイ大の3年生(日本の医学部5、
6年に相当する)とhospital round を一緒に行って、私たち5
年生との差を感じました。3年生で病棟実習が始まるとすぐ
に実際の患者さんを診察できるように、彼らは実践的なト
レーニングを実習以前に十分受けており、この事が差とし
て感じられたのだと思います。
アメリカの医療は進んでいるとよく言われていますが、生
存率などの統計をみると日本が上回る例もあります。本当
にそのような噂や憧れだけでアメリカでの研修を志しても
いいのだろうか、それに対して何か答えを得られればとい
うのが私の研修目的でした。この研修で、アメリカの卒後
研修で学べることは多いと実感でき、さらなる希望を持つ
ことができました。そう考えたのも、ハワイでたくさんの
方からアメリカの卒後研修についての実際の話を聞けたこ
と、そしてアメリカで行われている実践的なトレーニング
が自分には効果的だと思えたからです。
人だけで行われたmorning round が、とても丁寧だったこと
でした。患者さんの一人に、気管切開のために声を出すこ
とのできない方がいましたが、Dr. Tokeshiは患者さんの唇
の動きを読み取ることで理解しようと努力し、分からない
ときはノートに書いて筆談をしていました。Dr.Tokeshiは、
すべての患者さんとよく話しをすることが最も大切で、患
者さんの体調や精神状態を理解するのに最もよい方法だと
言っていました。私は、これはすべての医師がすべての患
者さんに対して行うべきことであり、患者さんとの信頼関
係を深めていくためにも見習わなければならないことの一
つであると思いました。
Dr. Tokeshi は学生を尊重し、学生のpatient presentation を
注意深く聞き、患者さんについての彼らの意見を求め、彼
らが失敗することがあっても決して責めたりしませんでし
た。このことはワークショップでのDr. Green、Dr. Little、そ
してDr. Yamadaにも共通していて、私達が失敗したり、間
違えたことを言っても、決して軽蔑したりはしませんでし
た。先生方は常に私達の長所を見つける努力をしてくれて、
同じ失敗をしないようにする方法を考えてくれました。私
は4年生なので知らないこともたくさんありましたが、失敗
から学ぶことの大切さを知り、以前よりも自信を持つこと
ができるようになりました。私はこれからもチャレンジを
することを恐れず、失敗を怖がらないでがんばっていこう
と思います。
この他に、PBL や模擬患者さんを使ってのClinical Skills
Assessmentなどを体験し、放課後や週末にはいろいろなとこ
ろに行く機会を与えていただきました。これらの活動を通し
て、このワークショップに参加した日本の他の医学生達と
も理解を深めお互いに助け合うことができたと思います。
このワークショップは私にとって大きなチャレンジでし
たが、今までの体験の中で最もよいもののひとつとなりま
した。このような貴重な経験を与えてくださったハワイ大
学の方々、そして援助をしてくださった野口財団にはとて
も感謝しております。これからもこのワークショップで学
んだことを活かし、患者さんに必要とされるような医者に
なるように努力すると共に、日本の医学教育をよりよくす
る努力もしていきたいと思います。
市川 るり(第4学年)
このワークショップで最も心に残った体験のひとつは、
Kuakini 病院のmorning roundの見学でした。この病院では、
朝4時頃から、2年生と3年生の2人の医学部生が患者さん
の回診を始め、physical examinationとカルテの記入までを
行っていました。彼らはまだ2年生と3年生にもかかわらず
十分な自信をもち、医療についての知識と技術は、同じ学
生とは思えないほどすばらしいものでした。また、私達は
朝6時から始まるDr. Tokeshiの回診も見学することができ
ました。私が一番驚いたことは、Dr. Tokeshiと指導学生の3
Green先生によるオリエンテーション。後列左から2番目が市川
31
学生のページ
メディカル・ホームステイ報告
医学部学生のメディカル・ホームステイ報告
〈研 修 先〉
医療法人社団明芳会 新戸塚病院
院 長
林 暁 先生(昭和53年卒業)
〒244-0805 横浜市戸塚区川上町690-2
TEL 045-822-4151 FAX 045-823-3850
〈研修期間〉平成15年8月19日∼21日
林先生(前列左から2人目)とスタッフの方々と私(前列左か
ら3人目)
あおい
五十畑 葵(第4学年)
今回私は、夏休み中の8月19日から3日間メディカルホー
ムステイに参加しました。研修先は、本学第一期生の林 暁
先生が院長をされている新戸塚病院です。今まで、国際医
療交流会の活動の一環として日本またはタイなどの病院を
見学してきましたが、私の意識はかなり漠然としたもので
した。臨床科目の講義を次々と学ぶものの、教科書を読む
だけではなかなか臨床現場のイメージが湧かず、行き詰ま
ることもありました。そこで、医師とは実際にどんな仕事
をしているのか、今勉強していることの中で何が臨床で大
切なのか知りたくなった、というのが今回メディカルホー
ムステイに参加することにした理由です。
新戸塚病院は神奈川県横浜にありながら、緑が多く、富
士山も一望できる閑静なところにある療養型の病院(236
床)です。林先生とともに、本学出身の布施順寛先生が働
いていらっしゃいました。初日に、林先生から新戸塚病院
について説明していただきました。慢性期の疾患、つまり
急性期の疾患を扱う病院を退院しさらに長期入院が必要と
なる方が中心です。また、ここでは医療保険が適用されま
す。つまり、介護保険が適用される老人ホームなどと違っ
て医師や看護師の数も多く、しっかりとした医療が受けら
れる分、費用がかかってくるということになります。
私は院長先生と一緒に、入院前のカウンセリングに参加
させていただきました。この病院では、ケースワーカーが
入院希望者の家族と面接し、あらかじめ患者についての
様々な情報を聞いてまとめます。この情報が患者の治療に
大変役に立つものとなるのです。カウンセリングで、患者
の家族には病院の方針とシステムについて分かりやすく説
明し、院長先生自ら家族の方とお話をされ、患者を中心と
した良いチームが作れると判断されて初めて入院が決定し
ます。高齢者の病気とはどんなもので、どのようにとらえ
ていくべきなのか、大変分かりやすく説明され、家族の方
も納得されているのが印象的でした。入院前のカウンセリ
ングで十分に話し合い、患者を含め家族についても詳しく
把握することが重要であると分かりました。
研修初日に入院される患者さんに、はじめから付き添わ
せていただきました。陳旧性心筋梗塞、糖尿病、心不全、
視力障害、痴呆などをもつ高齢の女性で、多少の不穏が見
られました。私は医師に付き添って診察や処方をするとこ
ろを見学させていただき、糖尿病のコントロールについて
詳しく教えていただきました。入院初日からの見学という
こともあり、私にとって印象深い患者さんとなりました。
2日目は神経内科の先生と一緒に朝の回診を行いながら、
パーキンソン病の方の診察を細かく見せていただきました。
また、神経学的な診察方法の基本も一通り親切に教えてい
ただくことができました。回診中、突然二人の方の容態が
悪くなり、不幸にも一人の女性の方のご臨終に立ち会うこ
ととなってしまいました。その時の医師の対応や患者の家
族との接し方など、肌で実感することができました。新戸
塚病院では、1カ月に7、8人の方が亡くなるそうです。先生
は、
「看取ることも医師の仕事である」とおっしゃっていま
したが、患者の安らかな死を目の当たりにして、
“人の死”
について考えさせられました。様々な疾患を同時に抱える
高齢者が残りの余生を穏やかに過ごせるように、医師が病
状をコントロールするということは大変重要な仕事である
と感じました。高齢化社会の日本には、これからますます
必要となることだと思います。
さらに、看護部やリハビリテーション部の見学もさせて
いただきました。看護師と医師のコミュニケーションがし
っかりと取られており、手際よく仕事をされているのが印
象的でした。障害を持った高齢者が、ADL(activities of
daily living: 日常生活動作)を改善しながら、残った能力を
維持させつつできる範囲のことを自分で行っていくように、
看護やリハビリが行われていました。また今回初めて言語
聴覚士の仕事も見せていただき、興味深かったです。
3日間という短い間でしたが、医師がどんなことを考えな
がら仕事をしているかが分かりました。見学しながら疑問
に思ったこと、分からなかったことなどをメモし、多くの
ことを吸収しようと頑張りました。今回の体験は、これか
らの自分の勉強に必ず役立つことと思います。私が研修す
るにあたり、お世話してくれた方々が親身にご指導くださ
り大変感謝しています。また、日頃思っていることについ
ても気軽にお話を聞くことができて、大変有意義な研修だ
ったと思います。院長の林先生、布施先生、ご指導くださ
った先生方に出会えたことは、私にとってとても貴重な経
32
学生のページ
メディカル・ホームステイ報告
験となりました。先生方のおっしゃった一言一言を胸に刻
み、良い医師を目指してこれからも勉学に励みたいと思い
ます。本当にありがとうございました。
〈研 修 先〉
横浜相原病院
院 長
吉田勝明 先生(昭和57年卒業)
〒939-1571 横浜市瀬谷区阿久和南2-3-12
TEL 045-362-7111 FAX 045-362-7306
〈研修期間〉平成15年7月14日∼16日
吉田先生(中央)と 左から紺田、平林、大西、青木
青木 洋文(第4学年)
まず始めに、今回お世話をしていただいた吉田院長先生、
横浜相原病院の先生方、布村さん、また本学の教学課の
方々に心から感謝いたします。そしてこの文章を読んでく
れる後輩や同級生に、このプログラムを勧めたいと思いま
す。ことに、横浜相原病院をお勧めします。
僕には医学部に入った理由というものが特にありません。
手に職を持っていた方がやっぱりいいな、というくらいの
動機しかありませんでした。が、今はこの金沢医科大学に
入って本当に良かったと思うのです。ここに来たからこそ
出会うことができた人たちやチャンスがあったのですから。
今回のメディカルホームステイも、本当に素晴らしいも
のでした。横浜相原病院は、精神科と心療内科、それにデ
イケアの施設も隣にあるベッド数も多い病院でした。研修
では、作業療法に実際に参加させてもらったり(僕たちは
音楽療法)
、患者さんと一緒に歌を歌ったり、ゲームをした
りしました。ここで気づいたのですが軽度の精神疾患や痴
呆の方とは、普通に接することができ、健常人と何ら変わ
りは無いものであるということでした。自分の中にある漠
然とした精神科に対するイメージはもろくも崩れ去りまし
た。現場を肌で触れてみるという試みがいかに大切である
かということを、改めて思い知らされました。他には精神
科の先生の講義を聴講したり、医局のミーティングや、心
療内科の診察現場を見学させてもらいました。
今回の研修でどうしても忘れられない出来事があります。
それは、吉田院長先生の外来診察を見学させてもらってい
る時のことです。僕と同級生は、院長先生の後ろに椅子を
おいて座って患者さんが来られるのを待っていました(僕
にとって外来の見学は初めての経験でした)
。そのうち最初
の患者さんが入って来られました。患者さんにしたら、普
段ならいないはずの見学者に戸惑いを覚えます。ましてや、
心が疲れている人たちが救いを求めて来られる科です。が、
僕はといえば、自己紹介をするべきかどうか迷っていて、そ
の場の雰囲気にあたふたしていました。しかし院長先生は
さりげなく、
「あのね、おばあちゃん後ろにいる子達は僕の
後輩なの。いろいろ勉強させてあげてね」と紹介をしてく
ださいます。患者さんはこっちを見て軽く挨拶してくださ
いました。僕も合わせて会釈しました。その時です。院長
先生はそれまでの柔らかな物腰とは変わって、急に「人と
話をする時は、同じ目線の高さでやるんだ!」・・・僕はハッ
としてすぐ立ち上がり礼をしたのですが、その後もずっと
先生の言葉が耳に残っていました。
医者って何なんだろう? 治療できることって確かにすご
い。けどそれは他人より優れていると比較するものではな
いんじゃないか? そもそもそれ以前に他人とのコミュニケ
ーションのとり方について、僕はどうなんだ? どこまで他
人のことを理解しようとしているだろうか? そんな疑問が
ふつふつと湧いてきて、その日はずっとそのことについて
考えていました。
僕はまだ4年生です。来年からようやくBSLで臨床を経験
することができます。医者になるためにはもちろんたくさ
ん勉強しなければならない。当たり前のことです。勉強は
一人でもできる。でももうひとつ大事なことがやっぱりあ
ると僕は思う。医療は人と関わらざるを得ません。
「人」と
接するということを大切にしたい。身体を治療するのでは
なく、その「人」を診てあげられるような医者になりたい。
そのためには人の気持ちを分かろうとする気持ちを大切に
したいし、いろんな現場に自ら足を踏み入れていかなけれ
ば分からない。それを今回の研修で学べたと思う。
もう一度この場をお借りして、お世話していただいた吉
田院長先生、横浜相原病院のみなさん、布村さんにお礼を
申し上げます。最後に、これを読んだあなた、
“メディカル
ホームステイを体験しよう!”
大西 尚子(第4学年)
思春期の混沌とした時期に自分の精神構造について考え、
人間の心理と精神構造について強い興味が湧いたのがきっ
かけで、将来は精神科医になりたい・・・と思っていました。
しかし、精神科は一般的に足を踏み入れにくい雰囲気があ
り、実際「精神科」と聞くだけで、ちょっと変わってい
る・・・といったイメージがあることは否めません。私自身、
精神科に興味があるにもかかわらず、現実を知らないとい
う矛盾に疑問を持ち今回、メディカルホームスティで横浜
相原病院にお世話になりました。
横浜相原病院は、精神科、神経科、心療内科の3部門か
らなり、500 床を超えるベッド数、300人以上のスタッフを
もつ大規模な病院です。病院というのは、一般に暗く重い
雰囲気が漂います。特に精神科は閉ざされた世界だと思っ
ていましたが、一歩院内に踏み込むとその考えは崩れ去り
ました。どのスタッフも、すれ違う患者さんやスタッフ同
33
メディカル・ホームステイ報告
士で挨拶を交わします。挨拶という基本的なことが、病院
中に爽やかで明るい印象を与えていました。そして、私た
ちはとても気持ちよく3日間の病院実習を行うことができた
のです。スケジュールは以下のようなものでした。
1日目:作業療法・音楽療法→院内見学→薬局見学
2日目:思春期グループ活動→老人デイケア→心療内科カン
ファレンス→講義→精神科デイケア(調理実習)
3日目:院長外来の見学→大原名誉院長の講義→心理検査
の読み方
作業・音楽療法と精神科デイケア
精神を病んでいる人に健康的な生活を送らせること、自
信を取り戻させるということが精神科の作業療法、デイケ
アに通じる目的です。つまり、形だけでも健康な状態にす
れば自ずと精神面も回復し、簡単な作業を成功させること
により、自尊心が少しずつ高まるという考えからくるもの
です。
作業療法の内容にも種類があり、患者の段階によって参
加するグループが変わります。うつ病の患者にあまりにも幼
稚な作業を与えると、逆に自尊心を減らす方向に働いてし
まう。負荷の大きいものを与えると、失敗という負のリスク
が高まる。患者に合ったものを慎重に判断する必要がある
と感じました。横浜相原病院では退院に近い患者さんに対
して、作業療法に陶芸を取り入れていましたが、長時間か
けて(神経質で細やかな性格の方が多いため)作り上げた
作品が、万が一焼きの段階で壊れてしまったら・・・と、毎回
緊張するという作業療法士の言葉に考えさせられました。
デイケアは、退院後の患者のケア、入院ほどではない患
者、退院間近の患者が、院外の生活に慣れるためといった
目的で行われています。比較的軽度な症状の患者の性質と
して共通するもの、それは純粋さだと思いました。普通な
らばある程度のストレスには適応したり、感覚を麻痺させ
たり鋭敏にしたりと柔軟性がありますが、彼らは少しばか
り柔軟性に欠け、ストレスをまっすぐに受け止めるだけの
ことです。作業を忠実に一生懸命する姿、私に話しかけよ
うとする顔などを見ると、
「あなたと私とどっちが病的かわ
からないな。というよりも、人はみんな精神的に病気かも
しれない」と思うこともありました。精神科の治療には、日
常生活の様子、活動中の状態などの把握が大切で、作業療
法士、理学療法士、音楽療法士、ヘルパーの必要性が高く、
医師、看護師、心理療法士とともに治療法を行っているこ
とはとても印象深いことでした。
外来
精神科では器質的な障害は比較的少なく、治療において
も内科的治療に加え、発症の環境的要因の改善が必要とな
ります。診察でどういう風に、どれだけ患者の話を引き出
すのか、そして患者が出すSOSをどの辺りから感じ取って
いるのか、とても興味を持って診察を見学させていただき
ました。外来では一人あたりの診察時間が長く、画一的で
はない診察が行われていました。先生に対する患者の信頼
感を感じ、
“先生のために頑張る”といった雰囲気さえ伝わ
ってきました。精神的に不安定状態にある人にとって、拠
り所となる揺るぎのない信頼関係は不可欠だと思います。
その中で、心の拠り所となりながらも、依存しすぎず自律
の道を示すということはとても時間がかかり、注意深いケ
学生のページ
アが必要です。患者にとって何が必要か、患者が何を求め
ているかを考え慎重かつ適切に言葉を選ぶことは、とても経
験の要ることではないかと思いました。院長先生が「人間
性の豊かな医師」になることの大切さと意義について、私
達に話して下さったことは印象に残っています。
また、森田療法の権威である大原健一郎先生の講義や先
生の著書を頂き、夏休みの間いろいろ考えさせられる機会
を与えてもらいました。たった3日間という短期間でしたが、
この研修で学んだ事は多く、私にとって大きなものとなるの
は確実です。このような充実した経験をさせていただき、心
から感謝しています。最後になりましたが、吉田先生を始
め、横浜相原病院のスタッフの皆さんにお礼申しあげます。
平林 真澄(第4学年)
今回メディカルホームステイで横浜相原病院にお世話に
なった。初めての医療現場での研修だったので少し緊張し
たが、精神科・心療内科の現場を見学したいと思っていた
ので楽しみだった。初日にまず驚いたことは、病院内で従
業員の方々全員が、「おはようございます」と挨拶を交わし
ていたことである。挨拶をすることは当たり前のことだが、
これによって病院全体の絆が深まり、チーム医療として活
きてくるのだろうと思った。
1日目には作業療法と、その一環として音楽療法を体験し
た。音楽療法は一見小学校や中学校の音楽の授業のようだ
ったので、音楽を通じたレクリエーション的なものかと思
っていたが、音楽療法士や作業療法士の方が患者さんの様
子を細かくチェックし、次回はどうすればよいかと患者さ
ん一人一人について考えていて驚いた。その後、病院内を
見学させてもらったのだが、病棟は、私が今までお見舞い
などで行ったことのある病院とは違っていた。精神科での
入院生活は、普段の生活から離れて少しだけ休憩するよう
な雰囲気で、お風呂があったり洗濯物が干してあったりと
生活感があった。また、日曜などスタッフが少ない時には
ビデオ鑑賞会などが行われており、患者さんを退屈させな
いような工夫がされていた。
2日目は不登校の中学生・高校生が臨床心理士の方々と話
しているところを見学した後、心身医学の講義をしていた
だき、その後カンファレンスに参加させていただいた。カ
ンファレンスでは医師、看護師、臨床心理士、作業療法士
の方がそれぞれの方向から患者さんがどんな状況だから、
どう治療していけばよいかといった意見を交わしていた。医
師だけが、治療を行うのではないという事を強く感じた。
3日目は外来見学をさせていただき、午後は心理テストを
実際に行ってみた。外来見学では様々な患者さんを見学さ
せていただいたが、もし自分がそういう状況におかれたら病
気になっているかもしれないと思った例もあった。院長先生
の診察はすばらしく、ある時は患者さんと友達のような感覚
で心を開いて診療なさっていて、感動の一言であった。
3日間という短い期間しか研修できなかったが、とても内
容の濃い3日間で良い経験になったと思う。今まで精神科に
関してなんとなく偏見を持っていたが、実際に患者さんと
話してみると、健康な人と何ら変わりがないと感じた。ま
た、精神科以外を受診した人の10人に1人はうつ病であり、
34
学生のページ
メディカル・ホームステイ報告
今後この数は増えていくとのことで、精神科に限らず患者
さんの心のケアというものがこれからの医療には重要にな
ってくると思った。「熱いハートとクールな頭で患者さんを
診てあげて下さい」という院長先生の言葉が印象的だった。
そんな良医になりたいと思う。最後に、来年もメディカル
ホームステイが行われると思うので、横浜相原病院に応募、
参加することをお勧めしたい。この事は今回参加した4人全
員が思っており、理由は参加した者のみが分かると思う。
院長先生、病院のみなさん、本当にお世話になり有り難う
ございました。
え
〈研 修 先〉
医療法人真正会 霞ヶ関中央病院
霞ヶ関南病院
副院長
齊藤克子 先生(昭和58年卒業)
〒350-1175 埼玉県川越市笠幡5024-103
TEL 049-231-5121 FAX 049-231-5457
〈研修期間〉平成15年7月23日∼25日
り
紺田 衣里(第4学年)
5学年の臨床実習を半年後に控えた今、実際の臨床の現場
への興味が強くなった私は、4年生の夏休みを利用して横浜
市の吉田勝明先生のもとでメディカルホームステイをさせ
ていただきました。横浜相原病院は「名病院よりも良病院
を」という理念をもち、精神科、神経科、心療内科、内科が
設置されており、その他老人デイケアや、不登校の生徒の
グループ活動など様々な施設がありました。
精神科の病院に足を踏み入れたことがなかった私は、そ
れまで精神科にとても暗いイメージを持っていましたが、そ
れは一変しました。スタッフのみなさんや病院の雰囲気が
とても明るく、さらに患者さんたちは見た感じでは普通の
人と変わらないので、人の精神の難しさを改めて感じまし
た。作業療法や音楽療法、不登校の生徒の活動に一緒に参
加させていただきました。集団に慣れてもらうのが目的だ
そうです。その後のミーティングにも参加させていただき、
作業療法士や音楽療法士の方にじっくりお話を聞く事がで
き、心理療法士の方に心理療法や心理テストについて講義
していただけて本当によかったです。
心療内科のカンファレンスも見学させていただきました。
医師一人ではなく、看護師や作業療法士、心理療法士など
スタッフとの話し合いに時間をかけ、よく話し合っている
のを目の当たりにし、こうすることで患者さんの変化を見
逃さず、いろいろな方面からの治療の確認ができるのだと
思いました。医療とは決して医師一人の力ではなく、チー
ムの力なのだと痛感しました。
外来見学では、教科書でしか知らない症例の患者さんを
直接見ることができました。その中で、患者さんと吉田先
生との信頼関係をはっきりと感じました。患者さんの中に
は、何時間待ってもいいから吉田先生に診てもらいたいと
いう方も多いそうです。私も吉田先生のように、患者さん
から信頼され慕われる医師になりたいと心から思いました。
吉田先生のほかに、大谷先生や大原健一郎先生といった
有名な先生の講義を受けることができうれしく思っていま
す。3日間という短い時間の中でスケジュールを組んでいた
だき、とても有意義な研修となりました。吉田先生を始め、
お世話になった先生方やスタッフの方々に、心から感謝い
たします。また、活躍されている卒業生の先生と接する機
会を作っていただき、ありがとうございました。この夏の
メディカルホームステイでの体験で、将来医師となる自覚
を再認識しました。生涯忘れることのできない、良い出会
い、良い体験となったと思っています。
齊藤先生(左)とともに
老人医療の現場をみて
櫻井 真理(第4学年)
7月 22日、翌日からのメディカルホームステイに向けて、
私は夜行列車に乗っていました。行き先は埼玉県川越市。
車窓から見える景色がビルから一軒家へと変わっていき、
静かな駅で降りて更に車で7∼8分ほど行ったところにその
病院はありました。
「医療法人真正会 霞ヶ関中央病院・霞
ヶ関南病院」です。
医療法人真正会は「老人にも明日がある」という理念を
掲げ、地域高齢者医療及び福祉に力を注いでおり、設立30
年になるそうです。総病床285という2つの大きな病院のほ
かに、介護老人福祉施設(真寿園)・診療所・訪問医療クリ
ニック・病院の併設機関として、訪問看護ステーション・
ホームヘルパーステーション・在宅看護支援センター・デ
イホスピタルがあります。私は3日間の日程の中でほぼ全て
の施設を見せていただくことになりました。
運の良いことに、ちょうどその日は病院の新人研修の日
であったので、新人の看護師・作業療法士・介護福祉士・
ソーシャルワーカーに対する理事長先生の講話を聞くこと
ができました。そこで私ははじめて、老人医療の現状と病
院のあり方について考えさせられることになります。講話
の中で驚いた点が2つあります。1つはこの病院ではソーシ
ャルワーカーやケアマネージャーの人数がとても多いこと。
2つ目には病院の収入・支出をすべて明らかにしてパンフレ
ットにも掲載しているということです。患者さまが病院の
全てを見て選んで欲しい、という思いが感じられました。ま
た、
「この病院では医師も看護師も作業療法士も、職員はみ
んな対等です。どんどん意見をぶつけていきましょう」と
いう言葉を聞いて、この霞ヶ関南病院が老人病院ランキン
35
メディカル・ホームステイ報告
グ全国第一位であるのは、こういった姿勢があるからこそ
だと感じました。
真正会が他の老人病院に先駆けて行っていることの一つ
に、リハビリがあります。霞ヶ関南病院の中には大きなリ
ハビリセンターがあり、何十人もの老人が歩行訓練や入浴
訓練などを同時に行っています。そこは私が今まで見たど
んな施設よりも明るく、リハビリに真剣にとりくむ老人の
姿が印象的でした。
私の祖母は私が大学2年の秋に、富山県のある老人病院で
亡くなりました。93歳でした。祖母は大腿骨頚部骨折で入
院して以来寝たきりとなり、一度もわが家で生活すること
なく病院で死んだのです。悲しかったに違いありません。寝
たきりになってしまった原因は、骨折後のリハビリをほと
んどしなかったことにあると思います。今回最先端のリハ
ビリ施設をみて、もしあのとき祖母がリハビリをしてもう
一度自分で動けるようになっていたら、また違う生き生き
とした老後があったのでは、という思いがいっそう強くな
りました。
最終日、私は訪問診察に同行しました。訪問診察は自分
で病院を訪れることができない患者さんの診察が目的です。
訪問診察はまだまだ全国的には広まってない分野なのだそ
うです。確かに医師が診察できる人数が限られてくるなど
のデメリットはありますが、自分の家で過ごすことができ
るということは患者にとって一番嬉しく、重要なことのよ
うな気がします。訪問診察を行う病院がこれからたくさん
増えればいいと感じました。
今回のメディカルホームステイでは「老人医療」という、
大学病院などの急性期病棟だけでは知ることのできない分
野を自分の目で見ることができました。今回参加しなけれ
ば、一生見ることがなかったかもしれません。高齢化社会
を迎えるにあたり、よりいっそう充実させていかなければ
ならない分野だと思います。ちなみに、理事長先生のご自
宅にホームステイさせていただいたのですが、先生のきさ
くな人柄もあって勉強の場以外にも楽しいことが盛りだく
さんでした。
今回参加して貴重な経験をすることができ、感謝してい
ます。
〈研 修 先〉
医療法人 大牟田共立病院
院 長
緒方盛道 先生(昭和53年卒業)
〒836-0012 福岡県大牟田市明治町3-7-5
TEL 0944-53-5461 FAX 0944-56-5949
〈研修期間〉平成15年8月19日∼21日
メディカル・ホームステイに参加して
星野 芳史(第4学年)
僕達は今年の夏、メディカルホームステイで福岡県大牟田
市にある大牟田共立病院を訪れ、病院やその関連施設で院
長の緒方先生や職員の方々のお話を聞き、見学をさせていた
学生のページ
左から馬場、人羅、緒方先生、星野
だきました。大牟田市は総人口における高齢者の比率の大き
い都市であり、大牟田共立病院はこの地域の特性に応じた高
齢者の慢性疾患治療のための療養型病院で、デイケアや訪問
看護ステーションもあり、介護支援事業所、特別養護老人ホ
ームといった関連施設もありました。僕がこの病院を見せて
いただいて感じたのは、病院と関連施設が地域の特性、必要
性に合わせて機能していて、地域の高齢者にとって無くては
ならないものになっているということです。
病院では、慢性疾患をいくつも抱え、治療と共に食事や
入浴などの介助の必要な患者さんが多く入院していました。
緒方先生の回診に付かせていただいて、聴診や触診の様子
を見せていただき、また高齢者では慢性疾患をいくつも抱
える患者さんがおられるということを知りました。大牟田
共立病院は、痴呆老人の人権を尊重するために、身体を拘
束するなど患者さんの自由を制限する一切の行動を廃止し
ようという理念を掲げており、高齢者医療という面で先取
的に取り組んでいるということも教わりました。デイケア
では、通所リハビリ、通所介護という目的で高齢者の方が
たくさん訪れていました。来ている人達は友達と談話した
り、誕生会に参加したりしていて、この人達にとってはこ
のデイケアが、僕たちが学校へ行って友達と会うような居
場所になっているのだと思いました。介護支援事業所では、
介護保険の仕組みやケアマネージャーと呼ばれる介護支援
専門員の役割について教えていただきました。介護につい
て自分が知らなかったことをたくさん聞けたので、とても
ためになりました。
緒方先生の弟さんが働いていらっしゃる特別養護老人ホ
ームは、一人一人の居住空間がとても広く、入居者がリラ
ックスして生活できるような施設で、ここまで出来るのか
と、正直言って驚くような良い環境でした。大牟田共立病
院でここまで充実した医療や介護が実現されているのは、
病院職員の方々の意気込みと努力、工夫によるものだと思
いました。患者さんにとって必要なことは何か、注目すべ
き問題点や、自分達に出来ることを追求し続けるという姿
勢を職員の方々から感じ取ることができ、向上心を持つこ
とがやりがいにつながっているのだと感じました。
一つの都市の高齢者医療の中核を担っているこの病院と
関連施設を見学して、新しい広い視点から医療のあり方を
見ることが出来ました。このような貴重な体験が出来たの
は、お世話になった院長の緒方先生をはじめとする職員の
方々のおかげです。本当に有難うございました。
36
学生のページ
メディカル・ホームステイ報告
ひとら
人羅 悠介(第4学年)
今回私たち3人は、福岡県大牟田市にある大牟田共立病
院で研修をさせていただきました。緒方院長先生のお話に
よると大牟田市は、以前は炭坑の街として大変栄えていた
そうですが、近年は炭坑閉鎖のため若い人手が離れて行き、
お年寄りの方が増え、今では人口10万都市の中では全国で
最も高齢者の多い街になったそうです。そのため大牟田共
立病院は、地域の特性に合わせて高齢者介護を主とした病
院に変化していったことを知りました。
病院では、内視鏡やエコー、CT 撮影の現場を実際に見せ
ていただいたり、また看護部長さんから、数年前まで行っ
ていた痴呆患者さんの身体拘束の実態を教えていただき、
現在では身体拘束の完全廃止に向けて様々な努力をされて
いることがわかりました。そして、院長先生の老人ホーム
往診や病院回診に付き添わせていただき、初めて聴診器を
使い心音や呼吸音を聞くことができました。また、触診を
させていただいたりレントゲン写真を見せていただいたり
と、これから私が医師を目指すうえで、モチベーションを
高める非常に良い機会になりました。
病院見学最終日は、特別養護老人ホーム「木漏れ日」を見
学させていただきました。初めに院長先生の弟さんに説明
を受け、その後で施設見学をさせていただいたのですが、話
に聞いていた以上に大変立派な建物で驚きました。4人部屋
にしても、1人あたりの居住空間は極めて広く、老人ホーム
というよりはむしろ高級ホテルのようで、将来私の体が不
自由になった時はお世話になりたいと感じさせられるほど
のものでした。ただ立派なだけではなく、お年寄りが少し
でも運動を行う環境を作り出すために、歩行が可能な方の
部屋には室内ではなく室外にトイレを置くなどの細かい気
配りがなされていました。しかしこういった施設は増えて
きたとはいえまだまだ数が足りないのが現状で、この施設
だけでも200人待ちの状態で、これからはこのような施設の
さらなる充実が必要不可欠であることを実感しました。
今回の研修は私にとって、大変実りあるものとなりまし
た。私達のために忙しいスケジュールを調整していただい
た緒方院長先生、看護課長の山下さん、その他たくさんの
病院関係者の方々には感謝してもしきれないくらいの気持
ちです。本当にありがとうございました。
あつのり
馬場 淳徳(第4学年)
8月 19 日から21 日の3日間、福岡県の大牟田共立病院で
研修させていただきました。大牟田市は実家の鹿児島から
近く、また今回の実習は星野君、人羅君と3人で実習できる
ということだったので不安もなく、実習前から期待で胸が
いっぱいでした。大牟田駅まで迎えに来ていただいた山下
看護課長に連れられて病院に向かい、緒方院長先生に挨拶
した後、早速実習へと移りました。院長先生とグループホ
ームに往診に出かけ、はじめはどのような感じなのか全く
想像がつきませんでしたが、フォンレックリングハウゼン
病やアルツハイマーなど大学の講義で習った重篤な病気を
患っておられる患者様に会い、
「これが現場なのか」と、今
まで教科書の上でしか見てこなかった事が現実に起きてい
るのだということを実感しました。
3日間で実習した内容は内視鏡、CT、エコー、リハビリテ
ーション、老人介護保健施設の見学や院長回診への参加、
看護部長による“抑制”についての説明など豊富で、特に
この実習では、診療を受けたり入院をされている患者様の
気持ちについて考えさせられるような体験をする事が多かっ
たのが印象に残っています。内視鏡室では麻酔薬のキシロ
カインスプレーを舌にかけてもらったり(苦い)
、抑制の説
明をしていただいた時には実際に縛られたり(痛い上に全く
動けない)などと、想像もつかなかったようなことを体験し
ました。大牟田共立病院ではベッド横の小さい柵を除いて
抑制を行っていません。実際に縛られてみて、自分がされて
嫌だったのだから患者様もこんなことをされたら絶対に嫌だ
ろうし、もし自分が医師となった時に抑制をすべきか否かの
選択をせまられた場合でも別な手段を考え、抑制を避ける
方向に持っていかなければならないと思いました。
大学の講義やアドバンストコースの中でも、患者様の視
点に立った医療を目指すことが医療従事者として大切だと
聞いてきましたが、実際現場に触れることでその意味の大
きさを知ることができたと思います。このような機会を提
供してくださった大学関係者の方々、お世話いただいた教
学課、北辰同窓会の皆様、そして3日間いろいろな面で研修
をサポートしていただいた緒方院長先生、山下看護課長を
はじめ大牟田共立病院のスタッフの皆様にこの場を借りて
お礼を申し上げたいと思います。貴重な体験をさせていた
だきありがとうございました。
〈研修期間〉平成15年7月23日∼25日
す
み
え
中村寿美得(第4学年)
いつもの夏休みならば、まず初めに何をして遊ぼうかと
心を弾ませるところですが、4年の夏休みともなると、少し
は医学生らしいことをしたくなるのかも? 臨床科目の講義
を学び始めると、実際の医療現場はどうなのかを知りたく
なりました。知識もろくに無い私が実際の医療に接しても
何か得られるのだろうか、邪魔になるのではないかという
不安もありましたが、せっかくの機会だし!と意を決して、
メディカルホームステイを体験してみることにしました。
なぜ大牟田共立病院にしたかというと…。大牟田市とい
う所は非常に高齢化の進んだ都市で、十万人規模の都市で
は日本一の高齢化率なのだそうです。私の住んでいる田主
丸という町も、大牟田と同じようにとても高齢者の多い所
で、私が医者になる数年後の田主丸を考えるには、今の大
牟田の医療現場を見てみるとよいのではないかと思い、大
牟田共立病院にメディカルホームステイをすることに決め
たのです。
大牟田共立病院は、内科、心療内科、循環器科、消化器
科、呼吸器科、リウマチ科、アレルギー科、リハビリテー
ション科、老人デイケアなどが設置されています。初日の
朝、緊張のためものすごく早起きしてしまいました。よー
し、完璧に用意して行こうと思った矢先、アクシデント発
生。父親にケースごとコンタクトレンズを捨てられてしま
37
学生のページ
メディカル・ホームステイ報告
緒方先生とともに
ったのです。これは何かイヤな予感がするゾと思いながら、
鼻まで下がりそうなド近視の眼鏡を手で押さえつつ、大牟
田の地に降り立ちました。
大牟田共立病院の第一印象は、今思い返してもとても良
いものでした。人に優しい医療、真心の医療を目指してい
るとのことで、すれ違う際の挨拶一つにしても気持ちいい
程に清々しく、皆さん明るく生き生きとして、どこも素敵
な笑顔があふれていました。きっとスタッフを含め一人ひ
とりが高い意識をもち、やりがいを持ってよりよい環境づ
くりに徹しているからだと思いました。また、病院には慢
性期の疾患の方が多く入院されていて、療養型の病院もあ
り、院内にはゆっくりとした時間が流れていて、音楽、絵
画、花、照明など、どれもが患者さんに優しいものばかり
でした。患者さんの立場、目線で物事が考えられているか
らこそ、このような良い空間作りができるのだと思いまし
た。これからの高齢化社会における医療サービスは、こう
なっていくべきなのだと改めて思いました。
私は、この病院で初めて「抑制」というものを知りまし
た。この「抑制」とは、痴呆などの患者さんが暴れたり徘
徊したりできないようにしたり、ベッドから落ちないよう
にしたり、また看護や介護をしやすくするために、手足を
紐できつく縛りつけたり、鍵のついた服を着せたりする看
護手段のことです。大牟田共立病院ではこの「抑制」を廃
止しようと、抑制廃止福岡宣言に署名している27 病院のう
ちの一つです。
「抑制」は患者さんの身体的な自由を奪うだ
けでなく、人としての誇りをも奪います。また紐で縛られ
ていたら、おちおち安心して眠ることもできないはずです。
それを見た患者さんのご家族も傷つくだろうし、
「抑制」を
行う側(看護師さんや介護士さん)の心をだんだん失わせ
ることにもつながると思います。この「抑制」という問題
に対して疑問を持つ人は多くても、それを改めて問題視し
て大きく取り上げ、新しい考え方を広めていくことは容易
ではありません。心身ともに大きなパワーが必要だと思い
ます。中には抑制廃止に鼻で笑う方もおられたのだそうで
す。信じられませんでした。もしも自分の親がベッドに縛
りつけられているのを目の当たりにしたら??…“外して
ほしい”と思うのが本当だと思います。
「あなたがウインドーショッピングを楽しいと思うよう
に、痴呆の患者さんもあちこち行ってみたいんよ。点滴を
嫌がって自分で外す患者さんもいるけど、抑制はしないの。
本当なら治療のために必要だと判断して医師が指示したも
のだから、ちゃんとやらなければいけないのだろうけど、私
達は“元気になったけん外したとよ”とか“もういらんっ
ちゃないと?”とか“外す元気があるならこのまんまで様
子をみとこうや!!”と考えるの」 そうおっしゃる看護
師長さんの言葉に、はっとさせられました。大牟田共立病
院のモットーである“患者様の痛みを自分の痛みとし、い
たわりの心で接すること”がここにあると思いました。今
までいろいろな講義を受けてきたのに、こんな普通のこと
さえ考えてもみなかった自分に気づかされ、とてもショッ
クを受けました。
3日間という短い期間ではありましたが、普段の講義では
得ることのできない大切なものをたくさんいただきました。
この体験を生かし、私も大牟田共立病院のスタッフの方々
のように、心ある医療が行える医師になれるよう努力しま
す。最後になりましたが、このような機会を与えてくださ
った大牟田共立病院の皆様と本学の先生方に深く感謝いた
します。
〈研 修 先〉
中山整形外科クリニック
院 長
中山治樹 先生(昭和55年卒業)
〒612-8083 京都市伏見区京町9-40
TEL 075-605-0180 FAX 075-605-0280
〈研修期間〉平成15年7月28日∼30日
中山先生と私(左から3人目)
中山整形外科クリニックで学んだこと
よりこ
山尾 依子(第5学年)
私は今回の3日間の実習で中山先生から様々なことを学び
ました。その中で私が一番心に残ったことは患者さんに対
する接し方、また患者さんの立場になって考えることです。
まず、クリニックの建物を見て中山先生の患者さんに対
する配慮がわかりました。整形外科を訪れる患者さんの多
くは歩行困難で受診しますが、医院でよく見かけられるス
リッパの履き替えは、このような方には負担となります。そ
れを考慮しクリニック内は土足でそのまま上がることがで
きます。しかし、クリニックの中は非常に清潔でした。様々
なクリニックの中から患者さんに選んでもらうためには、こ
38
学生のページ
の清潔感は重要なポイントであると思います。
次に実際の診察で見られたことは、待ち時間をいかにし
て短くするかということに配慮されていることです。中山
先生は、患者さんが病院に対してもっとも不満を感じる点
は、待ち時間の長さだとおっしゃっていました。適度な時
間でスムーズに診察を行い患者さんの回転をよくしておら
れましたが、しっかりと患者さんの話を聞いておられ、こ
れは先生の今までの経験による絶妙な時間感覚によるもの
だと感じました。
3日間の実習でいろいろな患者さんと接することができ、
クラブ
活動
メディカル・ホームステイ報告
学んだことは、患者さんは昔の町医者的な存在としてクリ
ニックを訪れるので、開業医には看板に掲げた分野だけで
なく、幅広い医学の知識が必要だということです。私も、
何にでも対応できる能力をもった経験豊富な医師になりた
いと思いました。様々な経験をしてこそ、患者さんの立場
になって考えることができ、患者さんから信頼されること
につながると思いました。来年メディカルホームステイに
参加できる後輩たちに、中山整形外科クリニックでの研修
をお勧めします。ありがとうございました。
クラシック音楽同好会
創立30周年記念式典での演奏を終えて
クラシック音楽同好会部長 小幡 綾(第4学年)
2003 年9月 13日(土)の金沢医科大学創立30 周年記念
式典に当って、夏休み前に「記念式典での演奏」について
お話をいただきました。こんな大きな舞台で演奏できるの
は、またとないチャンスだと思いました。我が同好会は昨
年立ち上がったばかりで、学内でまだあまり知られていな
いからです。
創立30周年記念という事なので、プログラムには校歌を
入れることにしました。この同好会には、2学年の小嶋暎
美子さんをはじめとしたコーラス部隊があります。ほとん
どのメンバーが他の部活と兼部しているため、練習時間が
なかなか取れませんでしたが、週1回のペースで練習を始
めました。しかし大きな問題にぶつかったのです。なんと
ピアノ伴奏用の楽譜がなかったのです! 学生便覧にメロ
ディーと歌詞だけの楽譜は掲載されているのですが、
コーラスだけでは見栄えがしません。悩んだあげく、
自分でピアノ伴奏用の楽譜を作ることにしました。
私たちの演奏時間は約15 分与えられていたので、
校歌の他にもうひとつ式典にふさわしい曲目を考え
ました。クラシック音楽同好会の創始者である河田
奈都子先輩(5学年)に相談し、ピアノ・バイオリ
ン・クラリネットの三重奏にアレンジしたバッハ作
曲ブランデンブルグ協奏曲5番第一楽章ということ
に決定しました。
本番当日は朝から緊張しておりましたが、部長の
私が顔をひきつらせてはいけないと思い、私以上に
緊張していた他の演奏者たちに「笑顔で今まで練習
してきたことだけを出せばいいからね!」と声をか
け、演奏に臨みました。会場には多くの先生方がい
らしており、いざピアノの前に座ると手がこわばり
ましたが、演台に立って私の伴奏を待つコーラス隊に笑顔
をむけ、校歌の演奏から音楽会が開始されました。
演奏がすべて終わると、先生方に、「演奏、良かった
よ!」と温かいお言葉をかけていただき、8月から1カ月あ
まり練習してきてよかったと、ほっとしました。本番を成
功に導けたのは、病院関係者の方々、教学課の山本さんを
はじめとする皆さま方のお力添えのおかげだと思っていま
す。この場をお借りしてお礼申し上げます。
私たちはこの1年間で、病院や内灘祭で計5回の演奏会
を行ってきました。特に患者さんの前で演奏する病院コン
サートでは、演奏を聞いて涙を流して感動された患者さ
ん、一緒に音楽にのってくださる方など、たくさんの温か
い聴衆がいらっしゃいました。クラシック音楽同好会の活
動目的のひとつは、
「演奏で人々の心を癒す」です。患者
さんは身体に不調を感じ不安を抱えて病院に来ます。そん
な中、私たちの演奏が少しでもその不安を取り除くお手伝
いになったらという思いで、これからも多くの場で活動を
続けていく予定です。皆さんも是非、私たちの演奏を聞き
に来てください。
39
学生のページ
学生の表彰
課外活動の功績を讃える
平成15年10月27日(月)学長室において、今年度、課外
活動において優秀な成績を修めた学生および団体の表彰が
行われた。受賞者には、竹越襄学長から、
「金沢医科大学学
生表彰規程」に基づき表彰状が手渡され、
「コアカリキュラ
ムの導入により、なかなか課外活動に時間を割くことは困
難な状況にあると思うが、今後も学業と課外活動を両立さ
せて、より一層がんばっていただきたい」との激励の言葉
が述べられた。
(教学課山本健司記)
〈受賞者〉
○テニス部
岡村 基弘(第6学年)
松永 尚治(第4学年)
第46回北信越学生テニストーナメント
男子ダブルス 準優勝
○剣道部
櫻井 真理(第4学年)
平成15年度春季関西医歯薬学生剣道大会
女子個人 第3位
○空手道部
宮尾 昌(第3学年)
平成15年度北陸武道連合会春季大会
一般の部(中量級) 優勝
○サッカー部
サッカー部
2003年度関西医科学生サッカー大会 優勝
錦野 匠一(第4学年)
わかふじ国体サッカー競技代表選手選抜
○スキー部
田中 康規(第2学年)
第55回西日本医科学生総合体育大会冬季大会
新人戦 男子大回転 準優勝
○陸上部
羽柴奈穂美(第5学年)
第55 回西日本医科学生総合体育大会陸上競技部門
女子槍投げ 優勝
○水泳部
兼井 彩子(第2学年)
第54 回西日本医科学生総合体育大会水泳競技部門
女子50メートル平泳ぎ 優勝
○準硬式野球部
平成15年度秋季北信越大学準硬式野球大会第3位
わかふじ国体に参加して
しょういち
錦野 匠一(第4学年)
今年の9月 1 3 日(土)∼ 1 6 日
(火)
、成年男子サッカー競技にお
いて、石川県代表として第 5 8 回
国民体育大会「わかふじ国体」に
参加した。サッカー競技において、
国体はアマチュア最高峰の大会と
され、実際に勝ち残るチームは、
J F L (J1、J 2、J F L 、地域リーグ、
県リーグの順に組織されている)
主体のチームばかりである。そして、必ずといってもいい
程 J リーグ経験者がいる。そのようなチームのいる中で、北
信越リーグという地域リーグに参加している社会人チーム
で構成された石川県選抜は、全国4位という好成績を残すこ
とが出来た。そのチームに、私は唯一の学生として参加し
た。普段は医学生の中にいるため、社会人に混じり練習や
大会に参加することは非常に新鮮で、さらに人間関係を一
から築き上げていくことは自分の価値観を拡げる上で有意
義であった。
今回の国体参加は、県サッカー協会の方から国体選抜の
セレクションを受けてみてはどうかという一言から始まっ
た。また、開催地が地元の静岡・藤枝市であったこともき
っかけだった。4月当時、私はサッカー部の主将であり、部
活と国体の両方を行うことは時間的に厳しかったが、藤枝
東高校時代に全国大会を逃した悔しさやせっかくのチャン
スを逃したくないという思いから、セレクションを受ける
ことを決めた。そしてセレクションに合格し、さらにその
後の3度にわたる選考を経て、最終16 名に選ばれ国体に参
加することになった。
振り返ると、週5日の部活動、部活勧誘、夜に行われる週
1、2日の国体練習に加え、定期試験とこの4年間で最も忙
しい一学期を過ごした気がする。夏休みは、部活の午前・
午後の二部練習、夜の国体練習で一日3回練習する日も少
なくなかった。部活は最後の西医体参加でもあるので、両
方とも全力で取り組んだ。
この半年間の努力は、全国大会4位という結果と、準決
勝・3位決定戦で観衆 5,000人の前でプレーすることで得た
自信によって報われたと思う。また、この国体では普段の
机上の勉強では学べないものを学んだ気がする。
私は今4年生で、2月には CBTが控えており、また来年度
のBSLに向けて知識を整理する大事な学年でもある。この
ような現状ときちんと向き合い、勉強面でもサッカー同様
に努力することが大切だと思う。医学生である以上、医師
になるための努力をすることは当然であるが、それを踏まえ
た上で、自分のやりたい事でも目標をもつことは、将来医
師になってから必ず活きてくると思う。これからは共用試験
(CBT)を視野に入れつつ、現在所属する金沢サッカークラ
ブで出場する天皇杯に向け、頑張っていきたいと思う。
最後になりましたが、国体に参加するにあたり、多くの
先生方のご協力を頂いたことを心から感謝いたします。あ
りがとうございました。
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学生のページ
シリーズ: 私が 医師になりたい理由・ 医師になった理由 ⑧
私が医師になりたい理由
私が 医師になりたい理由
よしお
小倉 慶雄(第1学年)
安田利奈子(第3学年)
私は両親が歯科医師、祖父
母と伯母が医師でお互いの家
が近いこともあって、幼い頃
から常に一緒に生活をしてい
ました。
特に祖父は 8 1 歳の現在で
も、朝6時半の出勤、夕方6時
半の帰宅という勤務医として
の毎日を週6日続け、医療だけでなく随筆も書いたり
して、精神的に余裕のある生活をしているように見え
ます。私は、祖父があの年齢で人の役に立つ仕事を続
けていることがとても素晴らしいと思っています。
私のこの 20 年の人生は医師の仕事を実際に見、一緒
に生活する環境であったため、医師を間近に感じその
職業の素晴らしさに触れ、自分が医師を志すことはご
く自然のことでした。特に私が医療、そして医師の素
晴らしさを心から感じたのは、小学校6年生の時でし
た。学校で遊んでいた時、右手首を骨折してしまった
のですが、少し痛いだけだったので、保健室に行かず
そのまま帰宅してしまったのです。その日は母と一緒
に何かをする用事があったので帰りに待ち合わせをし
ていたのですが、母は私を見るなり右手の様子を見て
異変には気づいたもののどうすればいいのかわからず
に、おろおろしていました。その時たまたま近くを通
った親子の父親らしき人が、「大変だ!そのまま手を動
かさないで!」と言って駆け寄って来てくれました。
そして、すぐさま近くの書店に入っていきダンボール
の切れ端とビニール紐を持ってきて、もの凄い速さで
即席のギブスを作って私の手を固定してくれました。
さらに救急車を呼んで、見送りまでしてくれました。
その間も私を励ましてくれたことを覚えています。後
で聞いたのですが、その人は医師でその日はたまたま
休日だったということでした。私はその対応の速さと
心強い励ましに感動し、今でもその印象を忘れること
ができません。
私は現在1学年であり、これから続く医師への道は
まだまだ長く、そして険しいものに違いありません。
ですが、受験時に得た毎日の学習の積み重ねの大切さ
と、幼い頃に会ったあの医師への感動を忘れずに、そ
の時その時で最善をつくして努力していきたいと思っ
ています。
私は家族や親戚の中に医師
がいる環境で育ちました。そ
のため小さい頃から自然に医
療関係の仕事に興味を持ち始
め、小学生の頃は看護師に憧
れを抱いていましたし、中学
生の頃は当然のように自分は
医師を目指すだろうと思って
いました。しかし高校生になる頃、その方向性が少し
変わる出来事がありました。
それは私自身が心理的不適応に陥ったことです。毎
日が不安でどうしようもなく、涙が止まらなかったり、
死んでしまいたいと思うこともあったほどです。そん
な時出会ったのが心理学の本でした。自分自身につい
て自問自答を繰り返す中、自分の心の状態を一般現象
として捉えられる心理学に私は興味を持つようになり
ました。臨床心理士という資格があることを知ったの
もこの頃です。辛い時期を乗り越えて人生観や物事の
捉え方が変わると、毎日の生活が非常に生き生きとし
たものになることを実感した私は、この経験を生かし
て人の役に立ちたいと思うようになりました。そして
私は臨床心理士を目指し、心理学科に入学しました。
大学では臨床心理学を含む多分野にわたる心理学を
学びました。その中で私の心を捉えたのは、臨床心理
学ではなく認知心理学や脳神経科学でした。臨床心理
学では、心理臨床活動において常に流動し変容しつつ
ある人間の心にアプローチするという特質上、個人の
独自性・個別性が重視されます。一方、一般の心理学
は物理学や生物学などに基礎をおいた自然科学的方法
論で研究が行われ、客観性と一般性が重視されます。
認知心理学を学ぶ中で、心理行動には人間のハード面
すなわち身体の基本的構造や生体内で起こる様々な化
学反応が影響することを知り、私は個人の心理的特質
だけでなく、心と身体を包括する全体としての人間を
より一般的に知りたい、その上で問題を抱えた人を理
解しサポートする仕事をしたいと思うようになりまし
た。そしてあらためて、医師を志す決意をしたのです。
現在、臨床医学を学び、要求される知識と技術の量
に身の引き締まる思いを抱いています。将来は一般的
な知識・技術はもちろん、患者さんが唯一の存在であ
ることを忘れない「心」を持った医師となり、患者さ
んが“その人らしく”、“その人にとって一番良い人生”
を送れるような手助けをしたいと思っています。
41
学生のページ
今までこの欄の筆者は本学を卒業した先生方にお願いしていましたが、今号からこの枠をはずしました。そ
してまず、昨年・一昨年と続けて学生からThe Teacher of the Year に選ばれた廣瀬源二郎教授と野島孝之教授か
ら原稿を頂戴しました。お二人の先生の「理由(わけ)
」を聞いて、なぜかほっとした気持ちになりませんか?
(学生のページ担当編集委員川上重彦・相野田紀子)
私が医師になった理由
廣瀬源二郎(神経内科学教授)
眼科医の次男として育った
環境が影響したのであろうか、
自然に医師になっていた。と
はいえその間に色々の出来事
が頭に浮かんでくる。
私には4つ上の兄がおり、
先に医学部に進んでいた背景
がある。私には、高校時代で
もどうしてもなりたいという職業は無かったように思
う。高校卒業真近になり、教育には殆ど口を出したこ
とのない父に「将来何になりたいか」と初めて問われ
たことがある。不意のことであり、咄嗟に「外交官か
建築家かな」と答えると直ぐに、「外交官で出世するに
は家柄が大事だぞ、八高や京大の友人にもそんなに偉
くなったのはいない。おれの家系ではだめだよ」。「建
築家は一種の芸術家だ。成功者はほんの一握りしかい
ないよ」。「医者は長男一人で沢山だ。それより弁護士
はどうかな。友達で十分活躍しているのが多いよ」と
言われた。諭されたのか勧められたかどうかはわから
ないが、それ以上の会話は無かったように思う。大学
受験直前に肺結核となり、これと戦いながらの受験生
活に華麗な未来の希望などはあり得なかった。結核を
恐れながらの生活で、治るかどうか心配しながらそれ
を自分で見届けようと自然に医学部に進んだようであ
る。入学後時々でる血痰におびえつつ学生生活をおく
るのは嫌になり、医学部2年でサナトリウム療養、1年
後には肺切除を行い、結核病巣を完全に身体から取り
除いてから私の新たな生活が始まったといえる。
医師になった理由はあまりはっきりしないが、両親
に強要されたこともなく、高校教師に勧められたこと
もない。恐らく私なりに色々考えたすえの決断だった
のであろう。その決断に何ら悔いは無く、きわめて妥
当であったと思っている。
私が 医師になった理由
野島 孝之(臨床病理学教授)
大学に在籍しているため、
職業欄に教員と記入すること
が多いが、教育者、研究者、
そして、病理医と贅沢にも3
つも兼務している。どのよう
な立場でも、その時間を一生
懸命努めることが大切である
と心掛け、学内外でそれなり
に評価されていると思う。
私自身に関して言えば医師になった理由は曖昧であ
る。同世代、あるいは、現在も同様の方もいるだろう
が、周囲に医療従事者もいなく、何となく医学部を受
け、卒業と同時に医師になった一人である。
医学部卒業時、外科に進むつもりで、その前に基礎
的な勉強をしたいと考え、臨床に一番役立つ分野とし
て病理学の大学院を選択した。院修了後20年を超えた
が、これほど長く病理医をやっているとは考えてもみ
なかった。病理が面白いと思ったのは、留学した米国
の病理学教室であった。当時の日本の病理学と異なり、
人体病理学(病院病理学)が主体で、病理医の数、シ
ステムも全く違っていた。直接投薬や手術をすること
はないが、患者のための病理学であり、臨床医を束ね
るいわばオーケストラの指揮者にみえた。いくつかの
国立大学を中心に日本の病理も徐々にそのスタイルに
向かっている。
高校時代に将来の進路、職業を決めるのが普通とな
っている。3年生になると、理系、文系に分かれるが、
私は当時運動系クラブに熱中し、数学や物理よりも国
語、社会の方が興味深かったというだけで、文系のク
ラスに入った。卒業間際に医学部に進路を変更したが、
医師という社会的ステータス、そして何よりも食いは
ぐれがないだろうということが、大きかったと思う。
進学した高校の校風にもよるだろうが、昨今は1、2年
時の成績で簡単に理系、文系と振り分け、職業を絞り
込み、他の可能性を否定していく作業が行われている。
職業選択は一生を左右する大切なことで、もっとゆっ
くり考える時間を与えるべきだろうし、何回も試行錯
誤があってよいと思うが、今の若い人たちをみている
と現実は厳しく、辛いように思える。
42
学 術
第30回
日本電顕皮膚生物学会
名誉会長:皮膚科学 石崎 宏教授
会長:皮膚科学 柳原 誠教授
日時:平成15年9月12日(金)
、13日(土)
会場:金沢ニューグランドホテル
会場:金沢市文化ホール
特別講演の田中卓二教授に感謝状を渡す柳原誠会長
日本電顕皮膚生物学会が、平成 15 年9月 12日(金)
、13
日(土)の2日間、石崎宏教授を名誉会長、柳原誠教授を
会長として開催された。この学会は、昭和40年に福代良一
前教授(当時は金沢大学教授)および廣根孝衞元教授(現
在金沢大学名誉教授)が中心となり「電顕研究会」の名で
開催されたのが端緒で、その後、昭和49年に「皮膚科電顕
研究会」と名称が変更されるとともに全国規模の研究会に
なり、平成4年からは「日本電顕皮膚生物学会」へと発展
し、現在に至っている。国外との交流も盛んで、4年に1回
欧州の皮膚電顕学会とのJoint Meetingが日欧交互に開催さ
れている。
今回は皮膚科電顕研究会発足以後30 回目の会合になるの
を記念し、
「電顕のこれまでとこれから」をテーマとして開
皮膚科学
催された。
廣根名誉教授が電顕研究会の揺籃期から正式な学会の発
会に至るまでをエピソードを交えながら回顧された。続い
て、第一線で活躍中の清水宏教授(北海道大学)
、山本明美
助教授(旭川医科大学)により「電顕の夢」が発表された。
招請講演では安藤敏夫教授(金沢大学大学院自然科学研
究科)が「高速原子間力顕微鏡―液中ナノメーター世界の
高速撮影―」の演題で最新技術を解説された。
特別講演では田中卓二教授(本学病理学第一)が「食べ
物と発癌、その予防」を発表された。
一般講演では9月 12日には基礎的、分子生物学的分野の
研究、13日には臨床研究が報告され、実りある討議がなさ
れた。
(皮膚科学望月隆記)
望月 隆 助教授
日本医真菌学会にて優秀発表賞受賞
皮膚科学教室の望月 隆助教授が日本医真菌学会総会において優
秀発表賞を受賞した。
2003年10月16日から17日まで東京都港区新橋の「第1ホテル東
京」において第47 回日本医真菌学会総会が開催された。本学会に
おいて3題の優秀発表賞と3題の優秀ポスター賞が選ばれた。特に
先の3題はプログラム抄録集で既にプレナリーセッションとして選
出されていたもので、学会から高く評価されていた事が分かる。
発表は「Arthroderma benhamiae における交配試験とITS領域の塩
基配列による系統関係の不一致」
(望月隆、河崎昌子、田邉洋、石崎宏)というもので白癬菌の一種アルスロデル
マ・ベンハミエにおいて、種やレースの同定に用いられる手技である交配試験結果とDNA塩基配列から推定される
系統関係が乖離している事を指摘したものである。この事実を明確に示した報告は初めてであって、その重要性が
認識され評価されたものと考える。
(皮膚科学河崎昌子記)
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る国内でも数少ないユニークな学会の一つであり、会員数
が360名と少ないが、全国から280名の参加者が集まり活発
な討論が行われ、無事盛会裡に学会を終了することができ
た。
学会第1日目には特別講演「ゲノム創薬の現状と未来」
(京都大学大学院・薬学研究科辻本豪三教授)、教育講演
「Cyclophotocoagulation:Laboratory and Clinical Observations」
(M.
Bruce Shields, Department of Ophthalmology & Visual
合同会議会長:眼科学 高橋信夫教授 Science,
Yale University School of Medicine)およびシンポジ
日時:平成15年9月19日(金)、20日(土)
ウム「内眼炎の薬物療法
―基礎と臨床―」また、第2日目
会場:金沢市アートホール・ホテル日航金沢
は特別講演「ボツリヌストキシンの使い方」
(川崎医科大学
田淵昭雄教授)、
「緑内障神経保護の展望」(広島大学三嶋
弘教授)、およびシンポジウム「点眼薬による眼表面の反
第 23回日本眼薬理学会
応」といずれも充実した内容の発表と活発な討論があり、
(会長:眼科学高橋信夫
大変有意義な学会であった。高橋信夫教授が会長として担
教授)・第14回国際眼研
当された日本眼薬理学会は毎年、眼薬理学に関する報告が
究会議日本部会(会長:
主であるが、今回は第14回国際眼研究会議日本部会と同時
富山医薬大早坂征次教
開催のため、眼科領域の全般から演題が集まったことも本
授)合同会議(日本眼科
合同会議の特徴の一つになった。
学会専門医制度生涯教育
(合同会議事務局、眼科学福田正道記)
事業)が平成15 年9月 19
日(金)・ 20日(土)の
2日間、金沢市アートホ
会長の高橋信夫教授
ール(ポルテ金沢6階)
およびホテル日航金沢において開催された。眼薬理学会は
23年前に眼薬理・毒性学の進歩発展を図ることを目的とし
て、基礎(薬学部)と臨床(医学部)が共同で運営してい
第23回 日本眼薬理学会 ・
第14回 国際眼研究会議日本
部会合同会議
日本肝臓学会市民公開講座
主催: 社団法人日本肝臓学会
開催責任者: 消化器内科学 高瀬修二郎教授
日時: 平成15年9月20日(土)
会場: 金沢市文化ホール
日本肝臓学会が主催する市民公開講座は、毎年全国の5
地区を選択して開催されてきているが、今年度は北陸地区
が担当することとなり、平成15年9月 20日(土)
、金沢市文
化ホールにおいて行われた。開催責任者は本学消化器内科
高瀬修二郎教授で、司会ならびに講師は本学消化器内科と
栄養部が担当した。
テーマとして、
「生活習慣と肝臓の病気」がとりあげられ、
4題の講演が行われた。先ず「肥満と肝臓の病気」について
川原弘(消化器内科助教授)
、次いで「お酒と肝臓の病気」
について開催責任者の高瀬修二郎、
「肝臓病によい食生活」
について中川明彦(本学病院栄養課長)
、そして「お薬と肝
臓の病気」について堤幹宏(消化器内科助教授)が担当し
た。各演者は、工夫を凝らした動画や写真そして絵などの
スライドを用いて、一般の方々が理解しやすい解説に心配
りをされ、市民の健康を願う熱意がすべての参加者に伝わ
っていたように思われた。講演の後、
「肝臓の病気―よろず
相談」と題し、参加者からの質問を中心とした質疑応答が
行われた。会場内から多数の質問がなされたため予定時間
を超過したが、演者から平易かつ丁寧な指示や指導がなさ
れていた。途中休憩のない2時間半に及ぶ講演会であった
が、終了後も会場内のあちらこちらで演者を囲んで質問が
なされ、さらには演者の外来担当日を聞いて受診を希望さ
れる参加者もいた。なお、幅広い年齢層の方々が参加され
た点においても、実りあるものとなった。
本邦ではウイルスによる肝障害の対策が急務とされてい
るが、異なった視点からの肝臓病予防対策の必要性が提示
された点において、本講座は高く評価されると思われた。
(消化器内科学島中公志記)
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第19 回
北陸ストーマ研究会
当番世話人:一般外科・消化器外科学 高島茂樹教授
日時:平成15年9月6日(土)
会場:内灘町文化会館
開会の挨拶をする高島茂樹教授
北陸ストーマ研究会は、コロストミーケアやウロストミ
ーケアの向上を目的に北陸地方の医師、看護師を中心に設
立された研究会で今年で19回目を迎える。毎年、コロスト
ーマやウロストーマのケア上の問題点などについて最新の
治療法や日常診療において難渋した症例などについて活発
な意見交換が行われている。
今年は9月6日(土)、一般外科・消化器外科学教室の高
島茂樹教授が第1回目の本研究会に続いて再度当番世話人と
して第19回北陸ストーマ研究会を内灘町文化会館において
主催された。高島教授の開会の辞を皮切りに一般演題が始
まり、北陸3県からの医師、看護師など120人の出席者によ
って活発な討論が展開された。また、2階の展示ホールでは
ストーマケア用品の展示および使用法の説明が行われ多数
の看護師さんが最新のケア用品について説明を受けていた。
今回の研究会は、一般演題としては過去最多の16 題の演
題が集まり、その内容としては臨床において苦労した症例
や各施設で行っているストーマ患者のケアさらにはスタッ
フ教育などの問題点、研究成果の報告などさまざまで、発
表の内容からは各施設の研究成果や努力がうかがえた。ま
た、会場からは日常ストーマに携わり日々疑問に感じてい
る点などについて質問が飛び出し活発な意見交換が行われ
た。
また、特別講演として「ウロストーマの管理とその問題
点」というテーマで国立金沢病院泌尿器科医長である勝見
哲郎先生にご講演頂いた。講演終了後は、会場からさまざ
まな質問が飛び出し実りある討論が繰り広げられ有意義な
研究会であった。
(一般外科・消化器外科学吉谷新一郎記)
北國がん基金研究助成
佐川 元保 呼吸器外科助教授
長内 和弘 呼吸器内科学講師へ
財団法人北國がん研究振興財団は、このほど第17回北
國がん基金助成の対象として、17件の推薦応募の中から
研究活動助成6件、啓発活動助成1件を選定した。
本学からは、研究活動部門で呼吸器外科佐川元保助教
授並びに呼吸器内科学長内和弘講師の2件が選ばれた。
贈呈式は10 月8日(水)午後2時から、金沢市の北國
新聞会館で行われ、それぞれの研究に100 万円の助成金
が授与された。
佐川助教授の研究は「多検出器 CTで作成した仮想気
管支鏡と極細径気管支鏡および得られた検体の遺伝子解
析を用いた肺野微小肺癌の診断法の確立」であり、コン
ピュータ画像と気管支鏡との組み合わせで末梢の肺組織
から組織を採取、遺伝子診断する。
また、長内講師の研究は「Rab低分子量Gタンパク質
による細胞内小胞輸送機構を標的にしたがん細胞への新
たな分子標的治療戦略の構築」であり、ある種のがん細
胞に高発現するRabタンパク質の機能を抑制した場合の
助成金を受ける
佐川元保助教授
長内和弘講師
変化を解析し、新たながん治療法を構築することである。
この両研究は、今後、がんの診断・治療法を確立発展す
るうえで、ますます期待、注目されている。
(学報編集部)
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N I H (アメリカ国立衛生研究所)
「シェーグレン症候群研究」に本格的研究助成
−金沢医科大学血液免疫内科学が研究助成金を獲得−
近年 NIHがシェーグレン症候群研究に対して研究助
成を始めていたが、今回は NIH が本格的に研究助成を
スタートさせたもので、5グループ(北米、南米、ヨー
ロッパ、中国、日本)全体に対して5年間にわたり
10,000,000 ドル(11億円相当)を助成すものである。約
1年間にわたる審査の結果、カリフォルニア大学サンフ
ランシスコ校(UCSF)歯学部学部長のTroy Daniels教
授を責任者とする5グループが助成を受けることが本年
9月 30日に決定した。研究目的は、1. 国際診断基準の確
立、2. 患者データの収集、3. 将来の研究に備えた全世
界的なデータベースの構築である。助成金もさることな
がら、とうとうNIH がシェーグレン症候群を自己免疫
疾患のプロトタイプと認定し、本格的な研究助成に乗
り出してくれたことに対してついに時が来たという感慨
を持っている。日本の厚生労働省もこれに続いてくれる
ことを期待したい。金沢医科大学のグループは血液免疫
内科学のメンバー(菅井、小川、河南、下山、得野、
初道)と北川助教授(眼科学)、瀬上教授(口腔外科
学)の構成である。応募に際して気の遠くなるような複
雑な書類の作成はすべて小川助教授が担当して見事に
作り上げた。彼の努力に負うところが大である。今回の
決定に関しては私が3月定年退職後、嘱託教授として本
学に籍を置いてもらったことにより、我々が助成を受け
ることが出来たことを本学に心よりお礼を申し上げねば
ならない。今回の競争はかなり激しいものがあり、私自
身はアメリカのもう一つのグループからも勧誘され、断
った後からも自分のグループが最有力だから自分のグル
ープと両方に属してほしいと依頼されるなどかなり強引
なものがあった。
私自身はたまたま、UCSF の責任者の Daniels 教授、
その下で指揮を執っているGreenspan 教授、更に助手の
R. Jordan助教授の3人とは関係が深いという偶然があっ
た。Daniels 教授は私と同年で、32年前の UCSF留学時
代に口唇小唾液腺生検の方法を教えてもらって以来、
奥さんや子供たちとも親しくしている。彼は誠実を絵に
描いたような人物で、彼がDeanになったと聞いた時は、
彼のような人物がアメリカでもトップになれるのかと正
直驚き、うれしかったことがある。昨年我々が主催した
金沢での「国際シェーグレン症候群シンポジウム」では
長年続いている国際診断基準の論争に決着をつけるた
めにDaniels 教授にシンポジウムの座長を頼み、診断基
準の方向性の決定のためにサンフランシスコで意見を交
換して準備をした仲でもある。また、このシンポジウム
にはNIH からDr. Pillemerをシンポジストに加えてNIH
の動きに合わせた。Greenspan 教授はやはり私の留学時
代の共同研究者でいろいろやり合った仲で、彼の論文に
は私の名前が載っている。Jordan助教授は8年前に小田
島学長(当時)のお力添えで、ロンドンから血液免疫内
科学教室へやって来て3カ月間我々と一緒に研究をした
人物で、血液免疫内科学のメンバーやナースの多くは彼
を良く知っている。これら3人と我々がグループを組む
ことによって仕事がスムースに運ぶことが期待される。
今回の大型プロジェクトはかなりハードで、
「日本シ
ェーグレン症候群研究会」(事務局:本学血免内科学)
の世話人会で全面的に協力してくれることが認められ、
日本からは充実したデータが出るものと期待される。
今後、本学ではIRBでこのプロジェクトを認めていた
だくことや、関係各科のサポートを頂く必要があり、改
めて関係各科のご協力をお願いしたい。
(名誉教授・血液免疫内科学菅井進記)
46
平成15年度科学研究費補助金に3件が追加採択される
平成15年10 月に、平成15年度科学研究費補助金(文部科学省・日本学術振興会)の追加採択が次のとおりあった。平成
15 年4月に既に 45件が採択されたが、今回3件追加となった。ただし、都合により内定辞退したものが6件、転入が1件あ
り、その結果、43件57,000千円の採択となっている。
なお、昨年度は最終的に55件69,666千円であったので、12件12,666千円の減となった。
基盤研究(C)一般
島田ひろき (解剖学Ⅰ講師)
パラコートの急性毒性機構に関与する新規ミトコンドリア酵素の研究
1,800 千円
基盤研究(C)一般
佐々木 洋 (眼科学講師)
日本人の白内障病型別発症率と発症・進行予測および危険因子探索
1,600 千円
萌芽研究
土屋 博 (老年病学講師)
圧負荷心筋肥大における核骨格による情報伝達、及び遺伝子発現制御の研究
1,400 千円
◇平成15年度科学研究費補助金採択状況 (件数)
平成15年度 学会開催一覧(学会開催補助金申請に基づく)
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大学院医学研究セミナー
金沢医科大学総合医学研究所年報 第14巻/2003 刊行
高血圧の分子生物学
講 師 荻原俊男先生(大阪大学大学院医学系
研究科加齢医学教授)
日 時 平成15年10月3日(金)18:00∼19:30
場 所 病院4階C41講義室
担 当 高齢医学 松本正幸教授
〔講師紹介〕
荻原先生は昭和43年に大阪大学医学
部を卒業、昭和49年には米国アリゾナ
大学内科研究員、昭和63年大阪大学老
年病医学講座(第四内科)教授、平成
B5版、94頁
金沢医科大学総合医学研究所年報は研究所員の活動
と研究内容、成果などを紹介するもので、昨年度より
内容を全面的に見直し研究所概要と研究活動等も掲載
することとしました。今年10 月に発行された第14 巻に
は、① 研究所概要、② 部門の活動状況、③ 2002年研
究報告、④ 2002 年部門別業績、⑤ 研究活動・その他
の内容が収載されています。
この年報は、学内外の研究者との交流と共同研究の
促進、研究所の活性化に寄与することを目的として、
学内はもとより、学外の大学、研究機関、病院及び図
書館に配布されています。
(研究所年報編集委員長松井忍記)
10年大阪大学大学院医学系研究科加齢
医学講座教授として現在に至る。高血
圧の成因・治療に関する研究を一貫し
て行い、特にレニン・アンジオテンシ
ン系を中心に、分子生物学的手法を導入、高血圧・糖尿病・老
年病などの遺伝子解析、循環器疾患の遺伝子治療を教室のテー
マとして精力的に行う他、老年者高血圧のガイドライン作成な
ど老年病の分野でも活躍中であり、2001年には世界初のHGF遺
伝子治療の臨床応用も開始されている。
〔セミナーの内容〕
講演は本態性高血圧のモザイク理論の紹介から始まり、高血
圧症を数多くの環境因子や遺伝因子が複雑に関与した m u l t ifunctional な疾患と捉えた上で、個々の因子、特に遺伝的因子に
ついての最新の知見が紹介された。荻原教授は高血圧遺伝子と
して数十ほどの遺伝子を挙げ、その一つ一つの遺伝子による血
圧上昇効果は、たかだか2mmHg程度であるが、いくつかの因子
が重なることにより高血圧が発症することを示された。そして、
最新の分子生物学の手法により個々の高血圧遺伝子に存在する
SNPs を解析することで、高血圧やその合併症の発症を予測でき
ることから、今まで「体質」という曖昧な説明ですまされてい
た個々の患者の特徴を分子生物学的に正確に評価することで
個々の患者に適した医療、すなわちテーラーメード医療が実現
できることを強調された。また臨床研究の分野では、荻原教授
が長年続けられている吹田研究の成果を示され、本邦における
高血圧患者の予後と遺伝的背景に関する貴重なエビデンスが紹
介された。さらに後半では、アンチセンス法、デコイ法、リボ
ザイム法などによる遺伝子発現の抑制を目的とした遺伝子治療、
HGFなどの遺伝子導入によるASOの遺伝子治療などが紹介され
た。講演後の質疑応答では特に多因子疾患である高血圧症の遺
伝子治療の戦略について活発な議論が交わされた。今回の荻原
先生の講演は昨年と同じ「高血圧の分子生物学」という演題で
あったが、その内容の半分以上は新しい情報で置き換えられて
おり、荻原教授が常に新知見を見いだされていることを感じさ
せる講演であった。
(高齢医学中橋毅記)
48
大学院医学研究セミナー
新しい人工股関節の開発
細胞外マトリックス代謝酵素(MMP /
ADAM)の活性調節と新規機能
講 師
講 師 岡田保典先生
(慶應義塾大学医学部病理学教授)
日 時 平成15年10月10日(金)18:00∼19:30
場 所 病院4階C41講義室
担 当 病理病態学 勝田省吾教授
日 時
場 所
担 当
松本忠美教授(金沢医科大学大学院医
学研究科運動機能病態学教授)
平成15年10月9日(木)18:00∼19:30
基礎研究棟3階セミナー室
運動機能病態学 松本忠美教授
〔セミナーの内容〕
人工関節は、股、膝、肩、肘など
に多く用いられ、人工臓器の中でも
最も人類が益を得ている人工臓器の
一つである。中でも、人工股関節は、
約30年前から人体に用いられる様に
なり、最も歴史のある人工関節であ
る。しかし、現在、日本で用いられ
ている人工股関節は、欧米製が主流
を占め、日本人に適合しない場合がある。その理由は、欧
米人においては加齢などによる一次性の変形性股関節症が
多い一方で、本邦においては先天性股関節脱臼や臼蓋形成
不全などから生じる二次性の変形性股関節症が多いためで
ある。日本人に最適な人工股関節ステムを作成するために
は日本人の大腿骨形態を解析する必要があった。従来レン
トゲンやCTを用いた解析がなされてきたが、正確性に欠け
るため、三次元的な解析が望まれていた。そこで我々は、
日本人の変形性股関節症患者の三次元CT からCAD ソフト
を用いて大腿骨の立体画像を構築し、三次元的形態解析を
行った。その結果、日本人変形性股関節症の約90%を占め
る二次性の変形性股関節症の大腿骨近位形態は、主に3タ
イプに分類された。一つは、欧米の一次性変形性股関節症
と類似のもの(約40%)
、一つは、大腿骨頸部の後方面の前
方傾斜が強いもの(約26%)
、他の一つは、大腿骨頸部内側
傾斜が急峻なもの(約30%)であった。更にバーチャルモ
デルを用いたコンピューターシュミレーションによる適合
性試験を行ったところ、現在使用している欧米製ステムは
後者2タイプの大腿骨において有意に適合性が悪かった。以
上より3タイプの大腿骨に各々適合する人工股関節ステムを
作成、選択使用することにより更に長期の良好な臨床成績
が期待できる。
(運動機能病態学松本忠美記)
〔講師紹介〕
岡田保典先生は昭和 4 9 年金沢大
学医学部を卒業、昭和 5 3 年金沢大
学大学院医学研究科(病理学第一)
を修了され、平成6年金沢大学がん
研究所教授、平成9年慶應義塾大学
医学部教授に就任。組織破壊の分子
病理を専門とされ、細胞外マトリッ
クスの分解に中心的役割を果たすマ
トリックスメタロプロテアーゼ(MMP)研究の第一人者とし
て活躍されている。
〔セミナーの内容〕
先ず始めに、関節滑膜組織の発育と超微構造、関節リウ
マチ(RA)における組織破壊とMMP/ADAMの役割につ
いてわかりやすく説明された。この中で、滑膜細胞から分
泌され血液中に吸収されるMMP-3 を特異的かつ高精度に測
定する技術を開発し、RA患者の早期診断、関節軟骨・骨破
壊進行の予測、治療効果の判定に有用な血清学的診断法を
確立したことも述べられた。次いで、がんの浸潤・転移に
おけるMMPs の役割について述べられた。ヒト癌細胞の浸
潤・転移には、癌細胞自身が細胞膜上でMMP-2/TIMP-2
/MT1-MMP 系や MMP-7 /CD151 系を用いて、潜在型の
MMP-2 やMMP-7 を活性化し、細胞表面で細胞外マトリッ
クスを分解することを示された。更に、MMP-2 ノックアウ
トマウスを用いた実験的心筋梗塞で梗塞部へのマクロファ
ージの浸潤が抑えられ、心破裂による死亡率が低下すると
の最新のデータが示され注目された。最後に、M M P /
ADAM は細胞外マトリックス代謝にとどまらず、細胞−細
胞外マトリックスインターフェイスにおける種々の分子の
分解を通して生体内での細胞機能を変化させるとまとめら
れた。
MMP とADAMの概説、最新の研究を拝聴する機会とな
り、参加者にとって有意義なセミナーであった。
(病理病態学勝田省吾記)
49
大学院特別講義
悪性リンパ腫の病理
肺移植医療の現況と課題
講 師
講 師 近藤 丘先生(東北大学加齢医学研究所
呼吸器再建分野教授)
日 時 平成15年10月20日(月)17:00∼18:30
場 所 病院4階会議室
担 当 呼吸機能治療学 栂 博久助教授
森 茂郎先生
(東京大学医科学研究所教授)
日 時 平成15年10月1日(水)17:00∼18:00
場 所 病院4階C41講義室
担 当 腫瘍病理学 田中卓二教授
〔講師紹介〕
今回の大学院特別講義は東京大学
医科学研究所人癌病因遺伝子分野の
森茂郎教授にお願いした。森教授は
血液病理学、悪性リンパ腫の発症機
序と診断がご専門で、現在(社)日
本病理学会理事長の重職を努められ
ている。
〔特別講義の内容〕
今回のテーマは、
「悪性リンパ腫の病理:特に遺伝子転座
と悪性リンパ腫発症、その考察」であり、染色体転座は何
故生ずるか?と悪性リンパ腫発生との係りを修復遺伝子の
観点から最新の成果を中心に概説された。
不適切な修復は転座のような染色体再構成に繋がる。多
くの血液がんや肉腫において、染色体転座はその発生にお
ける原因的要因である。森教授のグループは、最近ヒトび
まん性大細胞型Bリンパ腫のt (3;6) 染色体転座点6q15より
新規遺伝子 U 5 0 H G を同定し、そのイントロンには U 5 0
snoRNAをコードしているが、遺伝子自体はprotein non-coding geneであることを明らかにした。これまで、snoRNAと
疾患との関連を示した報告はない。研究グループはこの遺
伝子領域を欠失した悪性リンパ腫症例ではU50 が検出され
ないことを示し、snoRNA発現低下が癌化に関与している可
能性を示唆した。次いで、U50欠損マウス作製を目的とし
てマウスU50(mU50)のホスト遺伝子を単離した。マウス
ではmU50HG-aおよび mU50HG-b の2つのホスト遺伝子が
存在し、各々mU50 を1箇所および2箇所のイントロンにコ
ードしていることが判明した。両遺伝子はマウス染色体
9E3-F1にb-a の順にマップされ、この領域はヒト染色体6q15
領域とシンテニーの関係にあるが、U50配列を除いてはホス
ト遺伝子同士に塩基配列類似性はなかった。
最後に、森教授は、血液がんなど多くの悪性腫瘍におけ
る転座機構の解析により、壊れた染色体の不適切な修復に
関与する特異的なdouble strand break(DSB)修復経路を見
出すであろうと強調され、活発なdiscussionがなされた。
(腫瘍病理学田中卓二記)
〔講師紹介〕
たかし
近藤 丘 教授は昭和50年東北大学
医学部を卒業して東北大学抗酸菌病
研究所呼吸器外科に入局した。そこ
でラットとサルを用いた肺移植の研
究を開始し、その後 C e d a r s - S i n a i
Medical Center, Los Angeles に留学し
た。帰国後は肺移植の実施準備と国
内ネットワークの作成に御尽力され
た。平成12年東北大学加齢医学研究所呼吸器再建分野教授
に就任された。同年国内初の脳死肺移植を成功させた。
〔特別講義の内容〕
まず国内の脳死肺移植と生体肺移植の現在までの経過を
話された。本邦では脳死肺移植は8例、生体肺移植は16例
が施行された。しかし、その数は肺移植のレシピエントの
登録数には遠く及ばず、移植待機中に不幸な転帰をとる患
者さんが多い現状を示された。また4大学で肺移植が施行さ
れているが、各施設ごとの症例数は少なく、経験を蓄積す
ることが困難であるなどの問題点が指摘された。次に実施
された肺移植の実際をビデオで供覧してくださった。移植
された肺が動きだし肺の色が白からピンクに変化していく
画像は感動的であった。移植ドナー/レシピエントの適応
基準、手術方法、術後合併症、ドナー肺保存などについて
説明された。特に適応疾患に関しては欧米で多い肺気腫が
日本では少ないこと、東北大で開発した保存液(EP4)は急
性期拒絶反応の予防のために有効であることなど興味深い
内容が説明された。続いてドナーの意志がありながら、そ
の意志が生かされていないなど幾つかの社会的問題点の説
明がなされた。最後に移植前は死を待つだけであった患者
さんが移植後には子供と遊ぶことができるようになったり、
スポーツの祭典に参加し人生をエンジョイしている感動的
な画像を供覧してくださった。参加者一同が多くの感銘を
受けた大学院特別講義であった。
(呼吸機能治療学佐久間勉記)
50
病 院
第24回
関連病院会議
第 24回関連病院会議が、平成 15 年8月1日(金)にホテ
ル日航金沢において開催された。この会議は、病病・病診
連携を深め、それぞれの機能に応じて患者さんの紹介・逆
紹介の推進を図り、地域に密着した特定機能病院としてそ
の使命と責任をはたしつつ、より一層地域の発展に貢献す
ることを目的として毎年開催されている。
今回は、76関連病院から80 名の病院長、事務長等が出席
し、本学からは内田健三病院長をはじめ副院長、各科診療
科長、医局長等、合計135名が出席して、地域における医療
連携の推進などについて意見交換が行われた。
内田病院長の挨拶の後、特別講演として、神経内科学の
堀有行先生から「睡眠障害の診断と治療」と題して講演が
行われた。
引き続いて竹越襄学長から挨拶を兼ね、
「医学教育におけ
る最近の動向」について紹介がなされ、その後、懇談会に
入り、本学病院の現況報告として内田病院長から患者紹
介・逆紹介実績について報告がなされた。また、昨年度か
らの企画として本院の専門外来が紹介され、今回は、白内
障眼内レンズ外来、糖尿病外来、嚥下外来の3つの紹介があ
った。さらに、来年度から義務化となる新医師臨床研修制
度について総合診療科の神田享勉教授から説明があり、9月
に竣工した病院新館について施設整備推進室の大田修部長
から報告がなされた。
一方、関連病院からの報告として、松原病院理事長の松
原三郎氏から「老人性痴呆疾患治療病棟の構造と機能につ
いて」
、八尾総合病院病院長の藤井久丈氏から「ISO 9001
(医療及び社会事業)の取得」と題して、それぞれの取り組
み、経過と今後について報告がなされた。
懇談会終了後の懇親会では、和やかな雰囲気の中で活発
な意見交換が行われ盛会裡に終了した。
(地域医療連携事務課中新茂記)
神経内科学堀有行講師による特別講演
平成15年度
医療監視
平成 15年8月 28日(木)
、29日(金)の両日、午前10 時
から午後4時にわたり、厚生労働省東海北陸厚生局によって
医療法第 25条第3項の規定に基づく立入検査(厚生労働大
臣が特定機能病院に対して行う立入検査)が実施された。
29日は、石川県健康福祉部医療対策課、石川県石川中央
保健福祉センター・河北地域センターによって、医療法第
25 条第1項の規定に基づく医療監視(石川県知事が病院に
対して行う立入検査)も同時に行われた。
東海北陸厚生局による立入検査は、医療監視員3名によ
り、第1日目は特定機能病院の医療安全管理体制の確保状
況及び管理運営状況について、第2日目は医療安全管理体
制、院内感染対策、医療廃棄物処理について、それぞれ実
地検査を含めて行われた。また、石川県による29 日の医療
監視は、石川県係官・保健所係官計10名により、担当毎に
事前提出資料に基づき、医療安全管理、管理運営に関する
諸記録及び診療録(電子カルテ)
、医療従事者の充足状況、
診療用放射線管理、毒薬・麻薬等の適正管理、院内感染対
策、医療廃棄物管理、レジオネラ対策、防災・防火対策、
食品・栄養・食中毒対策、職員健康管理について書類審査
及び実地検査が行われた。
29 日午後4時からは、東海北陸厚生局奥田丈彦医療監視
専門官、河北地域センター菊池修一所長により検査結果の
講評が行われた。奥田医療監視専門官からは、改正医療法
に伴い医療安全対策に追加された項目、専任の安全管理者
や相談窓口の役割分担、医療安全対策の院内各部署への周
知徹底方法などについて指導があった。そして、菊池修一
所長からは、職員の健康管理について医師の定期健診受診
率・再受診率の向上を図るよう指導がなされた。
(管理課疋田勉記)
51
病院を美術館に
一水会・二紀会の方々から病院新館に大型絵画の寄贈
病院新館落成記念絵画寄贈者ご芳名(五十音順、敬称略)・作品名
〈油彩画〉
赤井 かね(ききょう、くだもの−西洋なし、小菊、しくらめん、つばき、
つぼとぶどう、デコイとつぼ2個、とりかごと花、人形、バラ、
ポピーの絵、マンドリン演奏、りんごとぶどう)
石瀬 律子(メモリーⅡ)
宇野のり子(窓辺・想)
北川 鉄人(白山新雪夕映) 坂井 信子(春光)
篠島 外寿(追憶の譜)
清水 練徳(霞沢−上高地)
大丸 七代(春を待つ)
武田三起子(浪漫)
田端 光子(水族館)
鶴越 洋子(トランクの中から)
永田 弘子(休日)
東野 英一(仲よし)
松下 久信(水辺の春)
松田 寧子(北の入江)
箕崎 総子(黄バラの詩)
宮城 静子(散居村五月)
渡辺 明(北欧の港)
〈木版画〉
谷内 正遠(金沢の町並 雨宝院あたり、金沢の町並 白菊町あたり、
河北潟のゆうやけ、雑木林と宝達山、柴山潟より白山、
竹やぶと家、長屋門とくずの花、のと福浦港、
ハサ木のある風景、窓からみるネコ)
オープンした病院新館には美しい壁面が多く、その壁面を見事に利用するかたちで大型の絵画が設置されて美術館の雰囲気を
つくっている。石川県在住の一水会や二紀会の方々、日本板画院同人、北川内科クリニックの院長先生などの皆さんのご好意で、
4号から 100号の色彩豊かな大型の油彩画、木版画など約40点が寄贈され、病院新館の1階から12階までのホール、ダイニング
ルーム、レストランなどのパブリックゾーンを飾った。新聞紙上でも「癒しのギャラリー誕生」と紹介されたが、病院本館のア
マチュアの美術愛好家の作品を展示している「ふれあい展示コーナー」に加えて、来院あるいは入院患者の皆様やご家族の皆様、
そして病院職員にも芸術とのふれあいによって目を楽しませ、心を和ませる大きな役割が期待される。
(中農理博、井上善博記)
病院1階中央ホール九谷陶板壁画
「やすらぎ、癒し、再生」
《作品解説と制作意図》
この陶壁は遥か医王山を背景にし、朝陽を全面に浴びた河北潟から泳ぎ、飛び
立ちつつある白鳥や、緑の木々をイメージし、表現したものであります。
淡い黄色を基調に清潔感を最も大切にし、温かさや静けさを表し、広大な河北
潟で泳いでいる白鳥の姿は、やすらぎ、癒しを、そして飛び立つ白鳥は再生を、そ
れは将に生命の尊厳と美しさを表現したものです。後方の医王山を中心とした背
景は距離感を感じさせるため、淡く描き、近くの白鳥や木々を強調し、相乗効果
を試みました。
九谷焼の陶壁は洋画、或いは日本画と違って、その表現は大変困難なものであ
ります。素地は焼成時迄に2割の収縮があり、釉薬は焼き上がりと全く異なり、そ
の中で一つの作品を作家として自分の思いに近づけていくには、繰り返し色実験
を重ねるため、日数がかかり、苦労の多いものです。特にこの陶壁は黄色を基調
とした中で金沢医科大学病院のもつ使命感を大切にし、また周囲の色彩、材質、そ
してその空間に合わせ、見られる人々の心が洗われる様な清々しい気品ある作品
に仕上げることに、努力専念致しました。
(日展評議員・石川県陶芸協会会長武腰敏昭記)
〈陶歴〉
昭和37年
昭和61年
平成元年
金沢美術工芸大学卒業
第18回日展に於て作品「蒼い花器」特選受賞
第21回日展審査員
平成 8年
平成13年
日展評議員に就任
石川県文化功労賞受賞、第33 回日展に於て作品
「静寂」内閣総理大臣賞受賞
52
小児科ドリーミングキッズ主催
第17回
喘息サマースクール
ました。今回のサマースクールでも参加児童の服薬管理・
指導が重要な項目となりました。このため、小児病棟看護
師や薬剤師の存在意義は大きく、その存在の必要性を強く
感じた次第です。
またボランティアスタッフの中には、かつて気管支喘息
を患っていた学生が複数名おり、彼らがOB・OG として参
加してくれたことは、子供達にとっても新鮮に映ったよう
で、大変に嬉しいこととなりました。今後ともこの行事が
長く継続されることを希望して止みません。
この度の開催に先立ち、関係病院の諸先生方をはじめ、
本院看護部・薬剤部・管理課をはじめ関係部署の皆様、さ
らには本学医学部・附属看護専門学校をはじめとした関係
部署の皆様の多大なご協力をいただきましたことを、心よ
り篤くお礼申し上げ、今後とも更なるご指導とご協力のほ
どをお願い申し上げます。
(山蔭仁嘉記)
キャンプファイア
第 17回喘息サマースクールを平成15 年8月3日(日)か
ら5日(火)の2泊3日の日程で、国立能登青年の家(羽咋
市)で開催しました。 皆様のおかげさまをもちまして、本
行事も17回目を迎えることができました。
この行事は、気管支喘息を患う児童が、親元を離れて、
同じ疾患を抱える同年代の仲間と共同生活を通じて、喘息
に対する知識を深めてもらうことを目的とし、同時に安心
して多彩な行事を楽しめるようにと企画されたものです。
本年は、昨年よりも参加児童が増えて20名となり、これ
に本学医学部学生と看護学生を中心とした学生ボランティ
アスタッフ 21 名、小児科医師4名、本院小児病棟看護師2
名、薬剤師1名、理学療法士1名、更にキャンプファイア指
導員として本学職員の濱中豊さんが参加して下さり、総勢
50名での開催となりました。
本年は、初めての試みとして、当院薬剤部で小児病棟を
担当していただいている政氏藤玄先生に参加していただき、
子供達を対象に「お薬のお話」と題した講義をしていただ
きました。また公立羽咋病院で理学療法士をされておられ
る中村佳代先生より「腹式呼吸について」と題した講義と
実技指導をしていただきました。
冷夏と言われながらも、幸いにして全日程が晴天に恵ま
れ、柴垣海岸近くの豊かな自然の中で過ごすことができま
した。小児科医師による「喘息の話」
、キャンプファイア、
肝試しといった恒例行事以外に、磯遊びや地引き網、ディ
スクゴルフ、押し花作りなど、いろいろな楽しいレクリエ
ーション活動が体験できたことは、児童達の有意義な人生
を送るうえにおいても大変価値ある行事であると思ってお
ります。
小児気管支喘息の治療は、近年の薬物治療の進歩に伴い、
その内服薬・吸入薬の種類や服薬方法が複雑・多彩となり
フリスビーに挑戦
フリスビーに挑戦
吸入指導
53
管理・運営
金沢医科大学
点検・評価報告書
2002年度版
発刊
今般「金沢医科大学点検・評価報告書2002年度版」が、平成15年10月
1日付けで発刊された。
本学は平成14年6月に大学基準協会に対して「加盟判定審査」の申請
を行い、平成15年4月1日付けで、「正会員」として加盟・登録を承認さ
れたが、本報告書は、大学基準協会へ加盟判定審査用調書として提出し
た「点検・評価報告書」
、
「大学基礎データ調書」および大学基準協会か
らの「審査結果」の全容を取りまとめたものである。
本学はこれまでにも自主的な点検・評価活動を行い、教育・研究・診
療における現状を認識し、分析のうえ公表してきたが、本学の諸活動を
本学自らが厳密に検証、評価することには自ずから限界があり、単なる
自己点検・自己評価のみでなく、外部評価を受けることで教育研究水準
を維持、向上させ、社会に対して広くその責任と役割を明確にすること
が重要であるという観点から、大学基準協会による客観的な大学評価を
受け、問題点を整理のうえ改革・改善に結びつけ、活性化を目指すこと
となった。
この報告書には、本学の現状と課題、将来への展望が全学的に掲載さ
れており、大学基準協会から指摘された様々な問題点についても全て確
認することができる。
本学は、これを広く学内外に配付・公表することで、さらなる評価を
受けることとなるが、今後、組織的な点検・評価活動を継続的に行い、改
革・改善を推進していく予定である。
(学長室坂田真一記)
教務部長に 鈴木孝治教授
再任
学生部長に 川上重彦教授
再任
認定マーク
教務部副部長に 飯塚秀明教授、大原義朗教授、松井 忍教授、安田幸雄教授 再任
学生部副部長に 土田英昭教授、上田善道教授 再任
平成15年10 月23 日に開催された第679回医学部教授会において、教務部長に鈴木孝治教授(泌尿器科学)
、学生部長に川
上重彦教授(形成外科学)が選ばれ、11月1日付けで就任した。鈴木教務部長及び川上学生部長の任期は、平成16年8月 31
日までとなっている。
また、教務部副部長には、飯塚秀明教授(脳神経外科学)
、大原義朗教授(微生物学)
、松井忍教授(総合医学研究所)
、
安田幸雄教授(医学教育学)が就任し、学生部副部長には、土田英昭教授(麻酔学)
、上田善道教授(病理学Ⅱ)が就任し
た。
54
曽根潮児名誉教授 ご逝去
故 曽根潮児名誉教授お別れ会
曽根潮児名誉教授は、平成
1 5 年 7 月 1 0 日、午後 1 1 時 3 0
分、消化管出血のため逝去さ
れました。享年 7 9 歳でした。
先生は、昭和 4 9 年から平成6
年まで金沢医科大学解剖学Ⅰ
講座の教授として肉眼解剖学
の教育に力を注ぎ、退職後は、
本学の北辰同窓会の発展に尽
力され、亡くなられる直前ま
で同窓会理事長として活躍されました。御遺体は、生前か
らの本人の強い意向により、金沢医科大学に献体されまし
た。また、葬儀は一切不要とのご意志を示しておられまし
た。しかし本学には、曽根先生の教え子を含め、関係の深
い方々も多くおられることからせめてお別れ会だけでもと
解剖学教室主催の「故曽根潮児名誉教授お別れ会」をアナ
トミーセンターで、7月15日午前11時より開催しました。
お別れ会は、多くの花に囲まれた遺影を前に当教室の平井
圭一教授のお別れの言葉、金沢大学解剖学教室の田中重徳
教授の偲ぶ言葉が捧げられ、引き続き、ご遺族、金沢医科大
学理事長、学長、副理事長、副学長、常務理事をはじめ、
150余名の方々が一人ひとり献花台に進み、それぞれの思い
を込めて白バラの献花を行いました。献体された御遺体は、
一部組織標本と全身骨格標本として、解剖学実習室に安置
され、永く医学教育に寄与することになっております。
お別れの言葉を述べる平井圭一教授
心からご冥福をお祈り致します。
(解剖学I教室東伸明記)
故 曽根潮児北辰同窓会理事長を偲ぶ会
北辰同窓会では曽根潮児北辰同窓会理事長のご逝去を悼
み、金沢医科大学創立30周年記念式典が行われた平成15 年
9月 13日(土)午後6時からホテルイン金沢において「故曽
根潮児先生を偲ぶ会」を開催した。
先生は金沢医科大学教授を定年ご退任のあと北辰同窓会
理事長として北辰同窓会の発展とくに全国各地の同窓会支
部の設立に大きく寄与された。偲ぶ会にはご遺族、大学関
係者、全国からの卒業生約 200 名が参列し、先生のご冥福
をお祈りした。
(編集部)
曽根潮児名誉教授夫人より本学へご寄付
曽根潮児名誉教授は、平成15年7月 10日(木)に逝去
されました。享年79歳でした。先生は、昭和49年から平
成6年まで金沢医科大学解剖学Ⅰ講座の教授として20 年
間本学の解剖学の教育、研究に力を注ぎ、学生部長、図
書館長、評議員を歴任されました。退職後は亡くなられ
るまで本学の北辰同窓会理事長として、同窓会の発展に
尽力、また、本学の天寿会の監事として活躍されました。
先生は葬儀は一切不要とのご意志を示しておられ、ご
本人の強い遺志により、金沢医科大学に献体されました。
しかし、本学には、先生の教え子を含め多くの関係者が
おり、7月 15 日に解剖学教室主催の「故曽根潮児名誉教
授お別れ会」
、9月 13日には北辰同窓会主催の「故曽根潮
児名誉教授を偲ぶ会」が開催され、ご遺族ならびに理事
長、学長はじめ多くの
関係者が参列しました。
この度、曽根潮児名
誉教授の節子夫人から
故人が受けたご厚情に
対する感謝の気持ちと
ともに、医学教育発展
曽根潮児名誉教授夫人
のために役立てて欲し
いと学術振興基金へ寄付の申し出があり、9月30日(火)
役員応接室において常勤役員の出席のもと、節子夫人か
ら本学に100万円が寄付されました。これを受け、小田島
粛夫理事長から節子夫人へ感謝状と記念品が贈呈されま
した。
(教育研究事業推進室中山正喜記)
55
随想・報告
報 告
米国タフツ大学留学記
循環器内科学助教授
梶 波 康 二
はじめに
2002年8月から2003年8月までの1年
間、アメリカ合衆国マサチューセッツ
州ボストン市のタフツ大学へ留学する
機会をいただきました。全米有数の学
術都市ボストンでの生活は、生まれも
育ちも北陸である私にとって大変刺激
的なものでした。順不同ではあります
が、いくつかのエピソードをご紹介し、
留学生活の報告とさせていただきます。
英語は「耳」
国際ロータリー財団奨学生応募のた
めにTOEFLの語学試験にチャレンジし
たのが留学準備のスタートでした。勉
強不足が災いし点数が今一歩であった
ため、タフツ大学での研究に先んじた
語学学校通いからボストン生活がスタ
ートしたのです。しかし、この「学生
生活」は予想以上に有意義でした。多
写真 1: ラボのメンバーとボストン市内のチャールズ川のボート上で撮影した写真と寄せ書
種多様な目的で世界中から集まった
き。右より Schaefer 教授、私、Meg(共同研究者)、Peg(テクニシャンかつ私の英語の先
「若者」を知ったこと、さらにはアメリ
生)。背景に見える鏡張りの高層ビルは Boston-Skyline の一つとして有名な John-Hancock
Tower。最上階の展望台は、同時多発テロ以降閉鎖されています。
カ方式の教室を体験できたことは、本
学において医学生と接する私にとって
あったからです。研究テーマとしては、抗動脈硬化治療に
多くの新発見をもたらしてくれました。タフツ大学の研究
対する反応性を決める遺伝素因の探索を選びました。近未
室では、私と机をならべていた実験助手に日常英会話の先
来の医療として期待されている「症例ごとの背景因子を考
生をお願いし、1年間お付き合いしてもらいました。そのお
慮した個別化医療」の実現にむけて、薬剤の有効な人とそ
陰で、文法そっちのけで会話する度胸は身についたように
うでない人の間に遺伝子レベルでどのような違いがあるか、
思いますが、1年経っても聞き取れない子音が多数ありまし
を探るものです。
た。英語学習は「耳」からはじまること、私にはその「耳」
テーマは格調高いのですが、具体的手技としてはPCR で
が備わっていないことが、私の英語上達不良の理由(言い
増幅した遺伝子のDNA塩基配列を解析する単調な作業の繰
訳?)と都合よく解釈した次第です。もっとも、このよう
り返しです。これを能率的に、しかも集中力を持続させつ
な私でもアパートの賃貸契約交渉などを一人で行うことが
つ継続するため、自分自身に対し音楽療法の導入を試みま
できたことから判断すると、異国での生活は「案ずるより
した。この時ばかりは「英語」から解放されることが重要
生むが易し」であるようです。
と思い、廉価版のクラシックCD を聴き始めたところ不思議
研究と音楽療法
な程に実験結果が安定したのです。
「留学生の実験成果にお
よぼす音楽療法の効果」は、今回の留学における「第二の
タフツ大学を留学先に選んだ理由は、Lipid Metabolism
研究成果」であったと言えましょう。
Laboratoryの責任者であるE. J. Schaefer教授が、Framingham
ラボにおける研究の進め方についても印象的なことが多
研究のメンバーとして、心血管疾患の危険因子を脂質代謝
数ありました。
「何故その研究を行う必要があるのか?」に
ならびに遺伝素因の面から幅広く研究してきた第一人者で
56
とそうでない人の格差が大きく、簡
単な荷物の一時預かりも断られるこ
とがしばしばありました。交代時の
引継ぎが不十分なこともしばしばで、
英語によるコミュニケーションが不
安な私は、日本からの荷物が順調に
届くかどうかヤキモキしてばかりで
した。これもアメリカの「個人主義」
の産物なのかもしれませんが、勤勉
な日本人のすばらしさを再確認した
次第です。
氷点下20℃の「痛み」
2002∼03 年の冬は、ボストンでは
20年ぶりの寒さだったとか。11月上
旬に初雪が降り、下旬には市内の
Charles川が氷結したのには驚かされ
ました。乾燥した寒風が吹く夜には
氷点下20 ℃を記録し、まさに冷凍庫
写真2: Prudential Tower(地上45 階、テロ後も未閉鎖)から見たボストン市内の冬景色。ビク
「顔
トリア調の赤レンガのアパートが建ちならぶBack Bay地区と、水面の2/3が氷結したチャー 状態です。ここまで寒くなると、
ルズ川(白く見える部分が氷です)
。
が痛い」
、
「立ち止まれない」
、といっ
た形容がピッタリであることを知り
ついて、Schaefer教授と1対1で話し合い、お互いが納得し
ました。あまりの寒さに、地下鉄駅構内で生活しているホ
た上でスタートするというものです。これは、大学院生か
ームレスの人たちの健康被害が新聞紙上を賑わしたことも
ら助教授まで一貫したスタイルでありました。また毎週の
ありました。
カンファレンスにおいて自分の行う研究の意義ならびに成
アメリカでこそ意識できた日本
果を明確に説明することが、大学院生から教授レベルのベ
テラン研究者、さらにはテクニシャンまでラボのメンバー
渡米したのが同時多発テロ一周年直前の緊迫した真っ只
全員に課せられていました。その場で展開される討論にお
いては、初心者もベテランも全く等しいチャンスが与えら
れます。私も計3回の洗礼を受けましたが、大学院生からの
基本的だが鋭い質問に最も冷や汗をかいたのを昨日のこと
のように覚えています。アメリカ流が全ての面で優れてい
る訳ではないと思いますが、お互いに意見を交えるチャン
スを数多く設けることの利点を実体験できたことは大きな
収穫でした。
個人主義と日本人の勤勉性
金曜日16時30分ともなれば、事務部門に担当者の姿が見
えないことは稀ではなく、何かを依頼することは至難の業
です。しかし施設入り口のガードマン記録によると、週末
でも早朝6時に実験のためやってくる大学院生が複数確認で
きました。個人の責任において何事もやり遂げなければな
らない、究極の個人主義を見た気がしました。週休2日と3
週間以上の夏休みを謳歌できるのは、休日返上で頑張り続
けた結果、優れたポジションをつかんだ人だけのようです。
私の住まいは、小澤征爾が活躍したシンフォニーホール
近くに1905年に竣工したホテルを改造したアパートの一室
でした。赤レンガ造りの古めかしい外観は、
「Bostonian(ボ
ストン人のこと)
」好みだとのこと。しかし、入り口に24時
間3交代で座っている「コンシェルジェ」は、信用できる人
写真4: ボストンに春を呼ぶボストンマラソンの舞台裏。Prudential
Tower(その展望台から写真2を撮影したビル)近くのゴール地点
を過ぎたところで、多くのボランティア(黄色のジャケットを着て
いる)が完走したランナーにバナナ(机の上の箱は全部バナナ)や
飲み物を渡すために待機しているところ。スクールバスは、スター
ト地点で各ランナーから預った荷物をゴール地点まで運んで待機
しているものです。瀬古利彦が日本人として唯一の優勝者として
名を連ねていることを、ボストン市民の皆が良く知っていたことが
印象的でした。観客がランナーに接触しないように歩道と車道は
臨時柵で仕切られています。
57
人街に隣接しています)が、
「日本」
ならびに「日本人」を強く意識せざ
るを得なかったボストン生活でし
た。
終わりに
留学記が雑多な文章の集まりに
なったことをお許しください。最後
になりましたが、今回の留学をお許
しいただき、また限りないお力添え
をいただきました竹越襄先生ならび
に循環器内科学教室の皆様方に改
めてお礼申し上げます。また小田島
理事長をはじめ本学内および関連
施設の皆様方、さらには日米のロ
ータリー財団関係者の方々に心か
ら感謝申し上げます。アメリカで生
活できたことは、不惑を超えた私に
とりまして極めて貴重な体験であり
写真3: ボストン交響楽団の演奏会。アパートから徒歩2分の距離で、しかもカジュアルな服装で ました。留学の希望をお持ちの皆
クラシックが気軽に楽しめたことはリフレッシュには最適でした。残念ながら小澤征爾はウイー 様、年齢を理由に躊躇う必要はあ
ンへ去った後でしたが。
りません。新しい世界を経験できる
ことの素晴らしさを強調し、私の留
中で、滞在中の3月にはイラク戦争開始、引き続くバグダッ
学報告を終わらせていただきます。
ト陥落など、世界情勢が大変緊迫した1年でした。これらの
研究成果
イベントを、その当事国であるアメリカ国内で経験したこ
Kajinami K, Brousseau ME, Ordovas JM, Schaefer EJ. CYP3A4
とは、日本と世界を考える上で極めてインパクトの大きい
genotype and plasma lipoprotein levels before and after treatment
with atorvastatin in primary hypercholesterolemia. Am J Cardiol
ものでした。留学生の身元確認目的の書類を1年間に3回提
(in press)
出するなど、アメリカ在留外国人に対するチェックは厳し
Kajinami K, Brousseau ME, Nartsupha C, Ordovas JM, Schaefer
さを増すばかりであったことが一例です。私はと言えば、中
EJ. ATP binding cassette transporter G5 and G8 genotypes and
東出身者のように街で職務質問されることもなく、中国語
plasma lipoprotein levels before and after treatment with atorvasで話し掛けられただけでした(タフツ医学部は大きな中国
tatin. (in submission)
58
随 想
時々の日の丸
名誉教授・泌尿器科学
津 川 龍 三
平成 11 年7月の国会
決議で、君が代、日の
丸問題が本来あるべき
姿に落ち着いてから4
年が過ぎた。
本学卒業の諸君も多
くは家庭を持ち子供さ
んもおられるだろう。
子育てのお役に立てば
と思い、現在金沢市教
育委員会の委員長であ
る立場もあり、私の日
の丸にまつわる経験を
本部棟の国旗。右に立つのは大学の校旗 平成15年9月13日創立30周年記念式典ステージ
少々述べてみたい。
れよあれよと言う間もあらばこそ、金メダルは帽子のまま
金沢大学泌尿器科に入局の当時、前立腺肥大症に対する
の首にかけられた。銀、銅の選手は脱帽して受けていた。
治療は恥骨上式または後式のいわゆるopen surgeryであっ
「帽子を取らなかったのは髪が乱れていたから」が彼女の弁。
た。アメリカの文献には経尿道的電気切除術(TUR-P、こ
翌日の某PTA の会で非難の意見が多く出た時、当時の森文
れはopenでなく、内視鏡を使うendoscopic surgery)の報告
部大臣が、
「親の世代にも責任があるでしょう」と言ったと
がしばしば見られるようになった。俄然好奇心がわき、是
いう。コーチらもスポーツマンである前に日本人であって
非見てみたいと思った。若造で金はなし、いろいろ考えた
ほしかった。コーチや彼女を教えた小、中学校の先生、親
末、アメリカ航路(当時は医師を乗せないと出航不可)の
をはじめ家庭教育はいかがだったのだろうか?
船医として1航海することにした。給料も出る。しかも大学
次は国技館、先年、魁皇が優勝した時のこと。千秋楽、
院学生にとってはかなりの高額。
優勝力士表彰の前、国歌斉唱が行われた。魁皇の顔がテレ
1958年夏、川崎汽船の貨客船は神戸を出港、サンフラン
ビ画面にクローズアップされる。彼は歌っているのか? 口
シスコに寄り、パナマ運河に入った。翌朝であったか、向
は全く動いていない。これでは横綱になれまい、欠けてい
こうから日の丸を掲げた貨物船がやって来た。太平洋へ出
る。その後、大切なところで負け、未だに横綱になれてい
て日本ヘ帰るのだ。こちらの船員、あちらの船員、お互い
ないばかりか、平成15年秋場所の負け越しで次は角番。
に手を振りながらすれ違った。相手船の船尾の日の丸が見
海外からの一般人、留学生は口々に「日本人は国旗を大
えなくなった時、私の頬には思わず涙がこぼれ落ちたので
切にしていない。どうして?」と言う。海外ヘ出て日本を
ある。異国の地で去りゆく日の丸、それに涙する私。その
みれば、なるほどそうだと思う。肝腎の我が国では、広島、
予想もしなかった客観的事実に、私はやはり日本人なのだ
国立(クニタチ)で卒業式での国旗掲揚を巡り校長が窮地
と再認識した。目的のTUR はNY停泊中、市民病院ヘ行っ
に立たされ、やっと冒頭の法律ができたのである。
たが、時間の関係で、機器のみ実物を手にはしたが、手術
次代を担う児童生徒が、日本人として世界に通ずるシッ
見学とまではいかなかった。
カリしたアイデンティティーを持った社会人になれるよう、
東京ドームができた。どんなところか見たいと出かけた。
周囲の大人たちは心せねばなるまい。本学の本部棟前には
セ・リーグの日は満員。幸い今日は、西武−日本ハムでパ・
開学以来、日の丸が掲揚されている。すがすがしいものだ。
リーグ、丁度試合開始に間に合った。君が代が流れ、バッ
と同時に自分のしている教育、診療、研究は日本では? 世
クスクリーンに日の丸が映し出される。私は起立して歌っ
界では?と自問自答する機会を与えてくれたものである。
た。清原(現 巨人)もベンチ前で起立して唱和している。
今、アテネオリンピックに向け、長嶋JANが胸のすくよ
スタンドを見渡すと五分の入り、びっくりしたのは、立っ
うな試合をしている。ユニホームの背番号の上にも日の丸、
ているのはその2割、8割は坐ったまま、観客の国旗国歌に
長嶋の希望のデザインであるという。彼は野球を通じて次
対する意識は低い。ショックが収まると、これはわが国に
代の青少年に大切なメッセージ「for the flag」を発信してい
根の深い大問題が起きつつあると感じた。
るのだと思いたい。
次は長野オリンピック。モーグルでS嬢が優勝した。だが
表彰式には呆れた。君が代と共に日の丸が挙がっているの
に帽子も取らず、国歌には口をパクパク、テレビの前であ
(写真はフォトセンター中谷渉室長の撮影による。記して感謝す
る。
)
59
随 想
夢と現実
名誉教授・生化学Ⅰ
私はめったに夢を見ない。布団に潜り込んだ途端、パタ
ンキューで、アッという間に眠り込んでしまう。たまに夢
を見ても、起きた時にはすっかり忘れていて、思い出すこ
とができないのである。ところが先日の夢は、目が覚めた
後も比較的ハッキリと覚えていた。それはこういう夢であ
った。
或る所で、3人の演者による講演会があって、私は3人目
の演者の司会をすることになっていた。第一の演者の講演
会場を覗いたところ、幼稚園の教室のようなところで、黒
板に向かって、数人の人が、小さな腰掛けに窮屈そうに坐
って、演者が出てくるのを待っていた。いくら小さな部屋で
も、たった数人の聴衆ではガランとしている。いやに少ない
なと私は思った。第二の演者の講演会場も、やはり同じよ
うな状態だった。第三の演者の講演会場は、少し離れたと
ころにあるとみえて、私は、大勢の人達に混じって歩いてい
た。すると、少し歩いたところにうどん屋があって、2∼3
人の人達が、うどんを立ったまま食べている。立ち食いのう
どん屋だなと思った。うどんの好きな私は、早速その人達と
同じように、うどんを買って、立ったまますすった。
うどんをすすり終った時、講演時間まで残り僅かしかな
いことに気付き、少しあわてたが、同時に私は、演者がど
ういう人か知らないでいることに気がついた。演者を紹介
しなければならない司会者ともあるものが、何ということ
だ。いつもの、何とかなるというのんびりした性格が、ま
たここでも禍したなと思いながら、私は、近くの人に、
「今
度の演者はどういう人ですか」と聞いた。すると、その人
は、
「中学校の理科の先生ですよ」と言った。
「へー、中学
校の先生がねー」と、私はびっくりして言った。そして、そ
のまま会場に入った。
驚いたことに、会場は超満員で、部屋の周囲の壁沿いに
も、ギッシリ人が立っているだけではなく、演壇にも、生
真面目な顔をした人達が、黒板を背にして、真っすぐ前を
向き、気をつけの姿勢をして、何列にも重なって立ってい
るのである。丁度ベルリンフィルハーモニー交響楽団の音
楽堂のようだなと思った。カラヤンの指揮するベルリンフ
ィルハーモニー交響楽団の演奏会をテレビで見たが、楽団
の前だけではなく、横にも後ろにも聴衆が坐っていた。そ
れと同じように、黒板を使えないほど、演者の周囲を聴衆
が取り囲んでいたのである。私は、緊張した気持になって、
その人垣をもぐりぬけ、演壇の机の前に立ってしゃべりだ
した。 「本日講演してくださる方は、中学校の理科の先生
です。中学校の先生が、こんなに素晴らしい世界的研究を
されたということは、まさに驚くべきことであります」
。こ
こまで言ったとき、私は目が覚めた。何だ夢だったのか。そ
して、夢の内容を思い出して、思わず笑った。しかし、頭
は未だもうろうとしていた。
そのもうろうとした頭に、二週間ほど前、4年生のA子さ
んに頼まれ、能登石崎町の奉燈祭を見に行ったときの情景
が浮かんだ。1993年(平成5年)8月のことである。石崎町
は、七尾の町と和倉温泉との間にある小さな魚村であって、
毎年8月の第一土曜日に奉燈祭をすることになっている。か
つて私が金沢大学に奉職していたころ、金沢大学の事務官
岡 田 利 彦
で石崎町出身のTさんに、一泊で招待されて見に行ったこと
がある。驚いたことに、お祭だというので、石崎町のどの家
も開け放しであって家の奥の奥まで道路からまる見えであ
る。そこで町の人達が楽しそうに飲んでいた。石崎町の人
達は、かつては年に一度のこのお祭に、一年中せっせと働
いてためた金を使い果したという。それは祭の見物に来た人
達だれかれを問わず家に入れて、飲み食いのもてなしをした
からで、今でもその名残りがあるとTさんが話していた。私
もTさんの家で御馳走になり、ビールを浴びる程飲ませてい
ただいた。それから、Tさんの顔で、町の広場に面した家の
2階に入れていただき、奉灯が広場にもどってくるのを待っ
ていた。夜中の1時に近い頃、奉灯は、
「イヤサカサッサー」
という勇ましいかけ声とともに、一つまた一つと広場に集ま
り、互いにぶつかりあい、なかには隣の奉燈に飛び移り喧嘩
を始める者など、半裸の荒くれ男達のすさまじさを見せてく
れた。色白で丸顔のTさんも奉燈を担いでいたが、私を見て
にっこり笑った。石崎町の奉燈祭は、奉燈の立派さもさる
ことながら、海の男達の心意気を見せた男の祭である。そ
の迫力は、確かに一見の価値のある祭であった。
医科大4年生のA子さんにその話をしたら、ぜひ連れて行
ってくれとせがまれ、それなら家内にも見せたいと思い、家
内も連れて行くことにした。A子さんは一学年上の兄さんの
T君(5年生)を誘い、T君は同級生のM子さんを誘ったの
で、総勢5人になった。そこで、私の車に家内が乗り、A子
さんの車に学生達が乗って、能登海浜道路を石崎町に走っ
た。町の入口には、歓迎の横断幕が張られ、屋台が一杯並
んでお祭り気分を盛り上げていた。しかし、奉灯が動き出
すまでにはまだ少し時間があったので、私達は、港の岸の
石畳に座って、海からの快い夜風にあたりながら、8時から
打ち上げられる花火を待った。花火はたった15分間位であ
った。祭りの開始を告げる花火であろう。それから例の広
場に行った。広場には6台の奉燈が並んでいた。やがて奉灯
は、屈強な若者達に担がれて、
「イヤサカサッサー」という
掛け声とともに、せまい広場の空間を回っては、次々と西
側の辻を街の中に消えていった。奉燈が広場を回る度に、
広場の周囲の群衆が、ワーッと後ずさりする。家内とT君と
M子さんは、怖がって、群衆の後のベンチに上がり、人々
の頭越しに見ていたが、私とA子さんとは、群衆の前に出
ていって、群衆とともに逃げまどった。
もうろうとした私の頭に浮かんだのは、その時の情景で
あった。しかし、その情景も記憶が夢のようにぼやけてい
た。私は、これも夢ではなかろうかと思った。夢と現実と
が変に交錯して、何が夢で、何が現実かさえ分からなくな
っていた。一体、夢と現実とどこが違うのだ。何れも、頭
に描いている物語である。何れも、画面の周囲がぼやけて、
あいまいな部分があるではないか。確かなことは、現在、自
分がぼんやりと布団に坐っているということだけであると
思った。しかし、それも夢かもしれない。人生は、このよ
うに、夢のように過ぎ去っていくのであろうか。そんなこ
とを考えていると、何か詫しい思いが、フッと心をかすめ
るのであった。(これは、1 9 9 3 年8月 1 9 日執筆の文章を、
2003年10月の現在少し手直ししたものである。未発表)
60
資 料
規程の改正・制定
学校法人金沢医科大学事務規程
(平成15年10月1日改正)
金沢医科大学特別聴講生及び一般社会人等科目等履修生に関する
規程
(平成15年9月1日改正)
医学教育海外交流基金奨学金交付規程 (平成15年6月1日制定)
金沢医科大学病院診療科長・中央診療部門部長等任用規程
(平成15年8月1日改正)
金沢医科大学病院規程
(平成15年8月1日改正)
金沢医科大学病院部科長会規程
(平成15年8月1日改正)
金沢医科大学病院病院連絡会規程
(平成15年8月1日改正)
金沢医科大学病院リスクマネジメント規程(平成15年4月1日改正)
金沢医科大学病院医療安全対策委員会規程
(平成15年4月1日改正)
医療安全対策小委員会運営要領
(平成15年4月1日改正)
金沢医科大学病院医療事故調査委員会規程
(平成15年4月1日改正)
医学部教授会
第673回 平成15年7月10日(木)
議題(人事関連等)
1 前回(第672回)議事録確認について
2 教員採用について
3 辞職について
4 外国出張期間変更について
5 外国留学期間延長について
6 非常勤講師派遣について
7 その他
議題(教学関連)
1 平成16年度教務日程(案)について
2 平成15年度第2学年標準試験実施要領(案)について
3 平成15年度第4学年標準試験実施要領(案)について
4 平成15年度第5学年OSCEについて
5 一般聴講生の受入れについて
6 その他
〈報告事項〉
1 教務部からの報告について
2 ラグビー部不祥事に関する取り扱いについて
3 平成15年度「特色ある大学教育支援プログラム」について
4 有害薬品及び廃液等保管状況調査について
5 その他
〈協議事項〉
1 講座予算について
第674回 平成15年7月24日(木)
議題(人事関連等)
1 前回(第673回)議事録確認について
2 教員採用について
3 研究医採用について
4 研究員採用について
5 辞職について
6 出向先変更について
7 外国出張について
8 外国留学期間延長について
9 非常勤講師派遣について
10 その他
議題(教学関連)
1 平成15年度第2学年特別聴講生の取扱いについて
2 学生の懲戒処分について
3 金沢医科大学学生心得の一部改正(案)について
4 その他
〈報告事項〉
1 入試説明会及びオープンキャンパスの開催について
2 教務部からの報告について
3 研修医の募集について
4 平成 1 5 年度金沢医科大学共同研究及び奨励研究の選考につ
いて
5 その他
〈協議事項〉
1 卒業生定着のための活動について
第675回 平成15年8月28日(木)
議題(人事関連等)
1 前回(第674回)議事録確認について
2 病理学Ⅰ講座助教授候補者の選考について
3 教員採用について
4 医学部学内講師委嘱について
5 辞職について
6 出向について
7 出向期間短縮について
8 外国出張について
9 外国出張期間短縮について
10 協力研究員委嘱について
11 非常勤講師派遣について
12 その他
議題(教学関連)
1 平成15年度一般聴講生の受入について
2 いしかわシティカレッジに関する本学の対応等(案)について
3 平成15年度第2学年特別聴講生の実習の取扱について
4 その他
〈報告事項〉
1 平成16年度入学試験説明会実施報告について
2 教務部からの報告について
3 その他
第676回 平成15年9月11日(木)
議題(人事関連等)
1 前回(第675回)議事録確認について
2 外国出張について
3 外国出張期間短縮について
4 協力研究員委嘱について
5 非常勤講師派遣について
6 その他
議題(教学関連)
1 平成 1 6 年度入学試験(推薦・一般選抜・編入学・特別推薦
入学(AO入試))の各委員について
2 学生の表彰について
3 平成 15 年度第5学年実技試験(OSCE)実施要領(案)につ
いて
4 平成16年度入学試験実施に係る授業の取り扱いについて
5 その他
〈報告事項〉
1 第2回オープンキャンパスの開催について
2 教務部からの報告について
3 平成 1 6 年度科学研究費補助金(文部科学省・日本学術振興
会)の公募について
4 本学創立30周年記念行事について
5 その他
第677回 平成15年9月25日(木)
議題(人事関連等)
1 前回(第676回)議事録確認について
2 外国出張について
3 非常勤講師派遣について
4 その他
61
議題(教学関連)
1 平成 16 年度特別推薦入試( AO 入試)の受験資格及び出願要
件について
2 平成15年度卒業判定委員について
3 その他
〈報告事項〉
1 平成15年度オープンキャンパスの実施報告について
2 第29回教育懇談会について
3 平成15年度内灘祭について
4 医師の名義貸しに係る調査について
5 教授会親睦ゴルフ大会の開催について
6 その他
第161回 平成15年9月18日(木)
議題
1
2
3
4
5
前々回(第159回)議事録確認について
外国出張について
平成15年度実験動物慰霊祭について
総合医学研究所移転(案)について
その他
○組織図について
〈報告事項〉
1 平成 1 6 年度科学研究費(文部科学省・日本学術振興会)の
公募について
2 次回開催日について
3 その他
○市民公開セミナーのPRと協力要請について
大学院医学研究科教授会
第299回 平成15年7月24日
議題
1 前回(第298回)議事録確認について
〈報告事項〉
1 平成16年度大学院医学研究科学生募集対策について
2 第31回論文博士外国語試験の実施について
3 大学院医学研究科奨学金の返還について
第300回 平成15年8月28日
1 前回(第299回)議事録確認について
〈報告事項〉
1 平成16年度大学院医学研究科学生募集について
2 平成 15 年度「21 世紀 COE プログラム」の開示された審査結
果について
第301回 平成15年9月25日
1 前回(第300回)議事録確認について
2 平成15年度ティーチング・アシスタントの採用について
3 平成16年度大学院第2次募集選抜試験の日程等について 4 大学院新専攻担当教員の追加申請について
〈報告事項〉
1 第31回論文博士外国語試験の実施報告について
2 平成16年度大学院第1次募集選抜試験の実施報告について
3 平成16年度大学院学生募集について
第302回 平成15年10月9日
1 前回(第301回)議事録確認について
2 学位論文本審査委員の選出について
3 第31回論文博士外国語試験合否判定について
4 平成16年度大学院第1次募集選抜試験合否判定について
〈報告事項〉
1 大学院後期授業の実施について
総合医学研究所教授会
第159回 平成15年7月17日(木)
議題
1 前回(第158回)議事録確認について
2 外国出張について
3 平成15年度市民公開セミナーについて
4 平成15年度研究セミナー(仮称)の担当者について
5 第2学年PBLについて
〈報告事項〉
1 総合医学研究所年報Vol.14(2003)について
2 移転推進委員会からの報告について
3 次回開催日について
第160回 平成15年8月8日(金)持ち回り
議題
1 外国出張について
人 事
〈採用〉
紺谷 靖英 微生物学助手
山村 淳一 小児科学助手
横山 光輝 整形外科学助手
日高 康治 麻酔学研究医
作田 真記 呼吸器内科学研究員
田中ひとみ 看護部看護補助員
田村 和美 看護部看護補助員
横畑知恵子 看護部看護補助員
瀧澤利津子 看護部看護補助員
原島 要人 形成外科学助手
永井 康太 眼科学助手
杉江 茂幸 病理学Ⅰ助教授
青木富実子 歯科口腔科医員
長谷井麻希 皮膚科研修医
15.8.1
15.8.1
15.8.1
15.8.1
15.8.1
15.8.1
15.8.1
15.8.1
15.8.18
15.9.1
15.9.1
15.10.1
15.10.1
15.10.1
〈任命〉
循環機能検査 金光 政右 循環器内科学助教授
センター部長
循環機能検査 浅地 孝能 循環器内科学講師
センター副部長
ハートセンター 坂本 滋 胸部心臓血管外科学
部長
助教授
ハートセンター 金光 政右 循環器内科学
副部長
助教授
ハートセンター 北山 道彦 循環器内科学
副部長
講師
集中治療 喜多 一郎 先進医療研究部門
センター部長
教授
集中治療 池田 龍介 泌尿器科学助教授
センター副部長
集中治療 上野 桂一 一般外科消化器外科学
センター副部長
助教授
集中治療 和藤 幸弘 救急医学助教授
センター副部長
睡眠障害 栂 博久 呼吸器内科学助教授
センター部長
睡眠障害 友田 幸一 耳鼻咽喉科学教授
センター副部長
睡眠障害 窪田 孝 神経精神医学助教授
センター副部長
睡眠障害 堀 有行 医学情報学講師
センター副部長
睡眠障害 黄 正寿 呼吸器内科学講師
センター副部長
15.8.1
15.8.1
15.8.1
15.8.1
15.8.1
15.8.1
15.8.1
15.8.1
15.8.1
15.8.1
15.8.1
15.8.1
15.8.1
15.8.1
62
教務部長(再任)鈴木 孝治 泌尿器科学教授
学生部長(再任)川上 重彦 形成外科学教授
副院長
松本 忠美 整形外科学教授
健康管理センター部長事務取扱
教務部副部長
松井 忍 先進医療研究部門教授
(再任)
教務部副部長
安田 幸雄 医学教育学教授
(再任)
教務部副部長
飯塚 秀明 脳神経外科学教授
(再任)
教務部副部長
大原 義朗 微生物学教授
(再任)
学生部副部長
土田 英昭 麻酔学教授
(再任)
学生部副部長
上田 善道 病理学Ⅱ教授
15.11.1
15.11.1
15.11.1
15.11.1
15.11.1
15.11.1
15.11.1
15.11.1
15.11.1
15.11.1
〈昇任〉
医学部事務部長 古居 滋 学長室
(併) 学長室長
チーフリーダー
中央放射線部 西尾 寛 中央放射線部副技師長
技師長
看護部看護師長 杉澤 幸恵 看護部主任
中央放射線部 宮村 順二 中央放射線部主任
副技師長
中央放射線部 香坂 誠 中央放射線部主任
副技師長
中央放射線部 掛下 一雄 中央放射線部主任
副技師長
薬剤部課長代理 島野 喜友 薬剤部主任
薬剤部課長代理 山口 健三 薬剤部主任
中央臨床検査部 山田 浩久 中央臨床検査部
主任
臨床検査技師
リハビリテーション部 松本 雅美 リハビリテーション部作業療法士
主任
リハビリテーション部 池田 法子 リハビリテーション部理学療法士
主任
ME部主任
中川 透 ME部臨床工学技士
栄養課主任 山本 香代 栄養課栄養士
薬剤部主任 政氏 藤玄 薬剤部薬剤師
看護部主任 室谷 裕美 看護部看護師
看護部主任 向井美貴子 看護部看護師
看護部主任 不動 政代 看護部看護師
看護部主任 大河 正美 看護部看護師
看護部主任 森高真由美 看護部看護師
調理課主任 松井 祐二 調理課調理師
法医学講師 長野 亨 法医学助手
15.10.1
15.10.1
15.10.1
15.10.1
15.10.1
15.10.1
15.10.1
15.10.1
15.10.1
15.10.1
15.10.1
15.10.1
15.10.1
15.10.1
15.10.1
15.10.1
15.10.1
15.10.1
15.10.1
15.10.1
15.11.1
〈配置換〉
理事長室長 浅野進一郎 医学部事務部長
(併) 学長室長
広報監理室長 國府 克己 総合企画室長
(併) メディア情報センター部長
(併) メディア情報センター部長
15.10.1
理事長室 宮本 文夫 総合企画室チーフリーダー
チーフリーダー
理事長室
大野木辰也 総合企画室チーフリーダー
チーフリーダー
広報監理室スタッフ 森 秀男 総合企画室スタッフ
理事長室スタッフ 岡本 真一 総合企画室スタッフ
理事長室スタッフ 林 美代子 総合企画室スタッフ
理事長室スタッフ 長岡あゆみ 総合企画室スタッフ
秘書課事務員
岩本美香代 教育研究事業推進室事務員
人事厚生課
保志場順子 秘書課事務員
事務員
教育研究事業
木下 恵子 人事厚生課事務員
推進室事務員
15.10.1
15.10.1
15.10.1
15.10.1
15.10.1
15.10.1
15.10.1
15.10.1
15.10.1
〈退職〉
飛彈美映子
野崎 恵
辻村あかね
松井 裕
佐々木規之
岸川 博信
平敷 貴也
田中 一博
北山 和子
長谷川朋美
鍛冶めぐみ
矢花 ルミ
摺崎 寛子
大場 睦美
田中ひとみ
亀 文江
高橋 敬治
金田 孝子
結城奈津子
竹内 郁登
細田 香葉
宮西美詠子
呼吸器内科学研究員
看護部看護補助員
看護部看護師
病理学Ⅱ助手
胸部心臓血管外科学助手
脳神経外科学助手
形成外科学助手
薬剤部薬剤師
看護部看護師
看護部看護師
看護部准看護師
調理課調理師
看護部看護師
看護部看護補助員
看護部看護補助員
看護部看護補助員
呼吸器内科学教授
薬剤部薬品管理課課長代理
神経内科学助手
消化器内科学研究医
看護部看護師
看護部看護補助員
15.7.31
15.7.31
15.8.6
15.8.31
15.8.31
15.8.31
15.8.31
15.8.31
15.8.31
15.8.31
15.8.31
15.8.31
15.9.10
15.9.30
15.9.30
15.10.30
15.10.31
15.10.31
15.10.31
15.10.31
15.10.31
15.10.31
〈出向〉
早稲田智夫
H15.9.1∼H16.3.31 江別市立病院
(産科婦人科学助手)
藤田 信之
H15.9.1∼H16.3.31 姫川病院
(眼科医員)
井浦 俊彦
H15.9.16∼H16.3.31 山中温泉医療センター
(産科婦人科学講師)
藤澤 裕一
H15.10.1∼H16.3.31 富山県立中央病院
(形成外科研修医)
荻野 法之
H15.11.1∼H16.3.31 林整形外科医院
(整形外科学研究医)
15.10.1
人物往来 (1)
□岡田保典先生/慶應義塾大学医学部病理学教授/1978 年金沢大学大学院医学研究科博士課程修了/1994年金沢大学
がん研究所教授/1997 年より現職/米国NIH奨励研究員、日本結合組織学会賞、とやま賞、日本リウマチ学会賞、ノ
バルティス・リウマチ賞、井上春成賞等受賞/細胞外マトリックスの分解に中心的役割を果たすマトリックスメタロ
プロテアーゼ(MMP)研究の第一人者/2003 年10月10日、医学研究セミナーにおいて「細胞外マトリックス代謝酵
素(MMP/ADAM)の活性調節と新規機能」と題して講演/病理病態学(病理学Ⅱ教室)
63
平成15年度 外国出張一覧(上半期)
出張者(所属職名)
、出張先国、出張期間、学会名等、発表演題名等の順で記載した。
芝本 利重 (生理学Ⅱ教授)アメリカ合衆国 H15.4.10∼17 Experimental Biology 2003, Nitric oxide, but not carbon monoxide, attenuates mainly presinusoidal contraction induced by anaphylaxis in guinea pig liver.
長内 和弘 (呼吸器内科学講師)アメリカ合衆国 H15.4.10 ∼16 Experimental Biology 2003, Organ-specific expression of
Rab38 and its subcellular location.
杉田 真 (呼吸器外科講師)アメリカ合衆国 H15.4.11 ∼ 15 Experimental Biology 2003, Does FK506 improve lung
ischemia/reperfusion injury after lung transplantation ?
飯塚 秀明 (脳神経外科学教授)韓国 H15.4.18∼20 The Korean Neurosurgical Society, 1) Surgical management of the
upper cervical instability. 2) Posterior fixation using spinal instrumentation for cervical instability. 特別講演
瀬上 夏樹 (口腔科学教授)カンボジア H15.4.23∼5.5 NGOによるボランティア手術参加。
金山寿賀子 (循環器内科学講師)イタリア H15.4.26 ∼5.26 6th International Conference of Nuclear Cardiology, Global and
regional left Ventricular function assessd by ECG gated N-13 ammonia PET in patients with coronary artery disease.
飯塚 秀明 (脳神経外科学教授)アメリカ合衆国 H15.4.27∼ 5.1 2003 Annual Meeting of the American Association of
Neurological Surgeons, The role of Interleukin 1 β in the induction of apoptosis of hippocampal pyramidal neurons after transient
forebrain ischemia in the Mongolian gerbil.
藤澤 綾 (眼科学助手)アメリカ合衆国 H15.5.1 ∼ 5.10 The Accociation for Reseach and Vision in Ophthalmology,
Prevalence of cornea guttata Iceland-Reykjavik Eye Study.
阪本 明子 (眼科学助手)アメリカ合衆国 H15.5.1 ∼10 The Accociation for Reseach and Vision in Ophthalmology, The
correlation between light scattering intensities in crystalline lens and refraction change over five years-Raykjavik Eye Study.
小島 正美 (眼科学講師)アメリカ合衆国 H15.5.1 ∼10 The Association for Research in Vision and Ophthalmorogy, The
relationship between experimental room temperature and lens changes and ocular inflammation induced by microwave exposure.
幡
育穂 (眼科学研究員)アメリカ合衆国 H15.5.1 ∼10 The Association for Research in Vision and Ophthalmorogy, The
relationship between experimental room temperature and lens changes and ocular inflammation induced by microwave exposure.
小坂 健夫 ( 一 般 外 科 消 化 器 外 科 学 助 教 授 ) イ タ リ ア H15.5.3∼ 10 5th International Gastric Cancer Congress,
Combination chemotherapy comprising low dose 5-fluorouracil and cisplatin with or without leucovorin for the treatment of
advanced gastric cancer.
赤尾 浩慶 (循環器内科学研究医)アメリカ合衆国 H15.5.6∼14 4th Annual ATVB Conference, Increases in plasma osteopontin after coronary rotational atherectomy are associated with coronary lesion cell population.
瀬上 夏樹 (口腔科学教授)ギリシャ H15.5.12 ∼ 21 16th Internatioal Conference on Oral & Maxillofacial Suegery,
Temporomandibular joint arthroscopy: basic and advanced techniques.
釣谷伊希子 (衛生学講師)スイス H15.5.13∼21 5th International Symposium on Nutritional Aspects of Osteoporosis, Effect
of diet for weight loss on ultrasound bone mesaurement in Japanese university students.
佐藤 淳 (口腔科学講師)ギリシャ H15.5.15 ∼ 22 16th International Conference on Oral & Maxillofacial Suegery,
Clinical evaluation of arthroscopic eminoplasty for habitual dislocation of the temporomandibular joint: comparative study with conventional eminectomy.
金山 景錫 (口腔科学助手)ギリシャ H15.5.15 ∼ 22 16th International Conference on Oral & Maxillofacial Suegery,
Eminectomy by a direct approach to the articular eminence under local anesthesia for habitual dislocation of the temporomandibular
joint.
佐久間 勉 (呼吸器外科助教授)アメリカ合衆国 H15.5.15∼22 American Thoracic Society, Cold ischemia preserves alveolar epithelial fluid transport in ischmia-reperfusion lung injury in rats.
石垣 昌伸 (呼吸器内科学助手)アメリカ合衆国 H15.5.17 ∼23 ATS2003-99th International Coference, Apoptosis is main
rule in the epithelial repair capacity in acid-injure alveolar cell model.
平口 哲夫 (人文科学教授)韓国 H15.5.29∼6.1 韓国捕鯨文化の調査。
小島 正美 (眼科学講師)1: スペイン 2:ドイツ H15.6.6 ∼16 1:The Congress of the European Society of Ophthalmology,
2:Scheimpflug Club for Eye Research Meeting, 1:Visual acuity of three main types of lens opacities-Reykjavik Eye Study.
2-1:Difference of intraocular temperature rising patterns and ocular injury by near- and far-infrared exposure. 2-2: Effect of α-Lipoic
acid on diabetic-induced changes in rat lenses.
幡
育穂 (眼科学研究員) 1:スペイン 2:ドイツ H15.6.6∼16 1:The Congress of the European Society of Ophthalmology
2:Scheimpflug Club for Eye Research Meeting, 2:Effect of α-lipoic acid on diabetic-induced changes in rat lenses.
64
石川 勲 (腎臓内科学教授)ドイツ H15.6.6∼14 World Congress of Nephrology, Present status of renal cell carcinoma in
dialysis patients: questionnaire study in 2002.
佐々木 洋 (眼科学講師)1:スペイン 2:ドイツ H15.6.7∼16 1:The Congress of the European Society of Ophthalmology,
2:Scheimpflug Club for Eye Research Meeting, 1:Visual acuity of three main types of lens opacities-Reykjavik Eye Study2:Prevalence of retrodots in the ageing crystalline lens in icelandic population-Reykjavik Eye Study-.
鈴鹿 有子 (耳鼻咽喉科学助教授)アメリカ合衆国 H15.6.7 ∼ 15 The Tenth Triennial Meeting of the International
Otopathology Society, Cases of eosinophilic otitis media.
小島 正美 (眼科学講師)アメリカ合衆国 H15.6.21∼28 The Bioelectromagnetics, The influence of experimental room
temperature for the evaluation of crystalline lens changes and ocular inflammation induced by microwave exposure on rabbit eyes.
藤田 拓也 (整形外科学講師)アメリカ合衆国 H15.6.23∼7.1 The Seventh Annual International Course on Globalspine.
出席(招待)
牧野田 知 (産科婦人科学教授)スペイン H15.6.27 ∼7.6 19th Annual Meeting of ESHRE, Ovarian blood flow analysis
after hCG injection.
早稲田智夫 (産科婦人科学助手)スペイン H15.6.27 ∼7.7 19th Annual Meeting of ESHRE, Ovarian blood flow analysis
after hCG injection.
田中 卓二 (病理学Ⅰ教授)アメリカ合衆国 H15.7.11 ∼ 17 American Association for Cancer Research 2003 Annual
Meeting, A COX-2 inhibitor, nimesulide, inhibits chemically-induced rat tongue carcinogenesis through suppression of cell proliferation activity and COX-2 and iNOS expression.
甲野 裕之 (病理学Ⅰ講師)アメリカ合衆国 H15.7.11∼ 20 American Association for Cancer Research 2003 Annual
Meeting, A novel geranylated derivative,ethyl 3 (4'-geranyloxy-3'-methoxyphenyl) -2-propenoate,synthesized from ferulic acid suppresses carcinogenesis and iNOS expression in rat tongue.
正木 康史 (血液免疫内科学講師)アメリカ合衆国 H15.7.20 ∼27 Pan-Pacific Lymphoma Conference, 1:Urine pseudouridine in lymphoma cases: comparison with other clinical parameters, 2: Immunoglobulin heavy chain gene and T cell receptor gamma
chain gene monoclonality by using polymerase chain reaction in lymphoma cases associated with Sjögren's syndrome.
奥田 鉄人 (整形外科学助手)アメリカ合衆 H15.7.26∼ 31 Spine Across the Sea 2003 Jointly Sponsored by the North
American Spine Socity and the Japan Spine Research Society, Comparative study on surgical manipulation and visibility between
METRxMicro discectomy and micro endoscopic discectomy.
大瀧 祥子 (英語教授)アメリカ合衆国 H15.8.5∼18 第6回金沢医科大学夏期国際語学・医学研修、第1回プレクリニ
カル研修引率。
川上 重彦 ( 形 成 外 科 学 教 授 ) オ ー ス ト ラ リ ア H15.8.8∼ 15 The 13th International Congress of the International
Confederation for Plastic, Reconstructive and Aesthetic Surgery, Craniofacial advances. パネル口演
高橋 孝 (総合診療科講師)タイ H15.8.11∼24 タイ国との共同臨床研究。
神田 享勉 (総合診療科教授)アメリカ合衆国 H15.8.13∼17 American Heart Association. 出席及び研究打ち合わせ。
瀧
鈴佳 (放射線医学講師)オランダ H15.8.22∼29 Annual Congress of the European Association of Nuclear Medicine,
Carotid artery stenosis: crrelation between regional cerebral blood flow and flow volumes of internal carotid and vertebral arteries
measured by color Doppler ultrasonography.
山本 達 (放射線医学教授)オランダ H15.8.23∼31 Annual Congress of the European Association of Nuclear Medicine,
Carotid artery stenosis: Crrelation between regional cerebral blood flow and flow volumes of internal carotid and vertebral arteries
measured by color Doppler ultrasonography.
山田 裕一 (衛生学教授)シンガポール H15.8.27∼29 健康調査打ち合わせ。
牧野田 知 (産科婦人科学教授)フランス H15.8.29∼9.7 13th World Congress on Ultrasound in Obstetrics & Gynecology,
A color Doppler study on the hemodynamics of the middle cerebral artery, umbilical artery, decending aorta and renal artery of normal fetuses: a longituidinal study in normal fetus.
柿沼 宏明 (小児科学助教授)オーストラリア H15.8.29∼9.7 Ⅸtn International Congress of Inborn Errors of Metabolism,
Mutational analysis of methylmalonyl-coa mutase gene in Japanese patients with methylmalonic aciduria.
井浦 俊彦 (産科婦人科学講師)フランス H15.8.30∼9.5 13th World Congress on Ultrasound in Obstetrics & Gynecology,
A color Doppler study on the hemodynamics of the middle cerebral artery,umbilical artery, descending aorta and renal artery of normal fetuses: a longituidinal study in normal fetus.
姫田 敏樹 (微生物学助手)アメリカ合衆国 H15.9.3 ∼7 5th International Symposium on Neuro Virology, Retroviral
expression system demonstrates that L* protein of Theiler's murine encephalomyelitis virus (TMEV) is essential for virus growth in
a macrophage-like cell lines.
兼氏 歩 (整形外科学講師)アメリカ合衆国 H15.9.3∼7 プロジェクト研究打ち合わせ。
松本 忠美 (整形外科学教授)アメリカ合衆国 H15.9.3∼7 プロジェクト研究打ち合わせ。
65
西村 正彰 (口腔科学助手)アメリカ合衆国 H15.9.7∼14 American Association Oral and Maxillofacial Surgeons Annual
Meeting, Immune cell analysis of synovial fluid in patients with Internal derangement of the temporomandibular joint.
市川 秀隆 (医動物学講師)中国 H15.9.9 ∼19 JICAプロジェクト(中国東北地方に於ける感染症予防と治療に関する
プロジェクト)設立のための会議出席。
野島 孝之 (臨床病理学教授)アメリカ合衆国 H15.9.12 ∼ 20 30th International Skeletal Society, Systemic lymphanqiomatosis.
赤井 卓也 (脳神経外科学講師)モナコ H15.9.13 ∼ 19 International Society for Pediatric Neurosurgery 31st Annual
Meeting, Complex central cortex in pediatric patients with malformations of cortical development.
佐久間 勉 (呼吸器外科助教授)スペイン H15.9.14∼ 22 Conference Ⅶ Nasal and Pulmonary Drug Delivery, Ex vivo
human lung model: Beta-adrenergic agonist therapy for pulmonary edema.
飯塚 秀明 (脳神経外科学教授)大韓民国 H15.9.18∼ 20 The 4th Biennial Korea-Japan Conference on Spinal Surgery.
Clinical significance of the canal diameter of the atlas in upper cervical instability.
兼氏 歩 (整形外科学講師)アメリカ合衆国 H15.9.20 ∼ 28 International Society for Technology in Arthroplasty,
Decrease in the radiolucent line between the bone and cement in the femur-cement creep by collarless polished tapered stem.
杉森 端三 (整形外科学助手)アメリカ合衆国 H15.9.20∼28 International Society for Technology in Arthroplasty, Threedimensional canal fill ratio and finite element analysis of a cementless anatomic stem.
西条 旨子 (公衆衛生学講師)オーストラリア H15.9.22 ∼27 15th Conference of the International Sciety for Environmental
Epidemiology, The effects of maternal environmental cadmium exposure on infant growth.
井口 晶晴 (呼吸器内科学助手)オーストリア H15.9.27 ∼ 10.4 13th European Respiratory Socirty Annual Meeting,
Clinical usefulness of energy-filtering transmission electron microscopy (EF-TEM) for the etiological diagnosis of occupational
interstitial.
藤川孝三郎 (細胞医学研究部門教授)イギリス H15.5.6 ∼ 10 The 1S T International Cytomics Conference, Expression of
membrane glicochain in polyploid and polyploidized Meth-A cells demonstrated by lectin binding.
高林 晴夫 (人類遺伝学研究部門臨床遺伝学助教授)オーストラリア H15.7.5∼12 研究打合せ及び調査研究。
竹上 勉 (分子腫瘍学研究部門教授)アメリカ合衆国 H15.7.10∼22 37th Annual Meeting of the US-Japan Cooperative
Medical Science Program.
宗 志平 (共同利用部門動物飼育センター講師)カナダ H15.8.2∼9 6th World Congress on Inflammation(IAIS).
松井 忍 (先進医療研究部門教授)オーストリア H15.8.31∼9.8 25th European Society of Cardiology. 参加
宗
志平 (共同利用部門動物飼育センター講師) 中国 H15.9.21∼24 2003 年在外中国人学者黒龍江省(哈爾濱)創
業商談会。
人物往来 (2)
□森 茂郎先生/東京大学医科学研究所人癌病因遺伝子分野教授/1967年東京大学医学部卒業/1973年東京大学助手
(医学部)/1974-1976 年State University of New York at Buffalo (Research Instructor)/ 1983年東京大学助教授(医学
部)・東京大学医科学研究所検査部長(附属病院)/1987 年東京大学教授・東京大学医科学研究所病理学研究部長/
1998 年東京大学医科学研究所副所長/2000 年(社)日本病理学会理事長/2003 年10月1日大学院特別講義において
「悪性リンパ腫の病理:特に遺伝子転座と悪性リンパ腫発症、その考察」と題して講演/腫瘍病理学(病理学Ⅰ教室)
□荻原俊男先生/大阪大学医学部大学院医学系研究科加齢医学講座教授/ 昭和43年大阪大学医学部卒業/昭和45年
大阪府立成人病センター調査部/昭和48年大阪大学医学部附属病院中央臨床検査部医員/昭和 49年米国アリゾナ大
学内科研究員/昭和50 年大阪大学医学部附属病院中央臨床検査部医員/昭和51年大阪大学老年病医学講座(第四内
科)助手/昭和56年同講師/昭和59年同助教授/昭和63年同教授(老人科長併任)/平成10年大阪大学大学院医学
系研究科加齢医学講座教授(老年・高血圧内科科長併任)/高血圧の成因・治療に関する研究を一貫として行い、特に
レニン・アンジオテンシン系を中心に分子生物学的手法を導入、高血圧・糖尿病・老年病などの遺伝子解析、循環器疾
患の遺伝子治療を教室のテーマとして精力的に行う他、老年者高血圧のガイドライン作成など老年病の分野でも活躍
中。2001年世界初のHGF 遺伝子治療の臨床応用も開始されている。平成15年10 月3日、大学院医学研究セミナーに
おいて「高血圧の分子生物学」と題して講演/高齢医学(老年病学教室)
66
《本学スタッフ新刊著書》
洲崎春海、間島雄一 編
内視鏡下鼻副鼻腔手術の実際と応用
法があるかなどが具体的に示されている。本書は、研修医
から専門医までの幅広い範囲の読者が理解でき、日常臨床
に即役立つ実践書である。
森山 寛ほか 編
村田英之・友田幸一
分担執筆
(ナビゲーションシステム の利用、
p133-137)
金原出版
B5版、152頁
定価:本体7,000円+税
2002年5月25日発行
ISBN4-307-37064-3
本書は、今日多くの施設で広く行われるようになった内
視鏡下鼻副鼻腔手術(Endoscopic Sinus Surgery: ESS)の基
本から、その技術を応用した新しい手術法、また適応疾患
の拡大など、臨床で即使える手引書として発刊された。こ
の中には近年の医用工学の融合から生まれたさまざまな手
術支援機器の最新情報も盛り込まれている。本学の村田助
手と友田教授が手術時の対応の項目の中のナビゲーション
システムの利用を分担執筆し、200例を超える症例の経験
からナビゲーションシステムを用いることで、特に再手術
例や正常構造が破壊されたような例で、危険部位を確認し
ながら安全な手術が行えることを強調している。これから
ESS を始めようとする方々に加えて、ESS の基本は習得し
たが、この分野でさらに飛躍を望む方々に役立つ一冊と考
えられる。
小田 恂 編
耳鼻咽喉科オフィスクリニック
―主訴への対応編―
友田幸一・村田英之
分担執筆
(吹き抜け骨折、p89-92)
医学書院
B5版、220頁
定価:本体8,000円+税
2002年5月15日発行
ISBN4-260-13252-0
本書は、耳鼻咽喉科外来を訪れる患者の訴えに速やかに
対応し、適切な処置を行い、訴えを取り除くという医療の
原点に立脚した実践書で、オフィスに常に常備できるよう
にコンパクトに製本されている。この中の第Ⅱ章、鼻症状、
鼻疾患の吹き抜け骨折の部分を友田教授、村田助手が分担
執筆している。吹き抜け骨折をどう診断し、治療のタイミ
ング、さらに保存的にどう経過をみるか、どのような手術
耳鼻咽喉科・頭頸部外科―処置・手術シリーズ No.1
耳鼻咽喉科外傷
堀口章子・友田幸一
分担執筆
(口腔内の熱傷、p94-96)
メジカルビュー社
A4版、144頁
定価:本体9,000円+税
2002年3月20日発行
ISBN4-7583-0850-0
本書は、数多くある解剖・臓器別の手術書と少し異なり、
切り口を変えて疾患別に項目が分類されている。第7巻は
耳鼻咽喉科、顔面領域の外傷を対象とし、骨折はもちろん、
熱傷や音響外傷なども含まれている。写真やイラストを中
心に処置、手術のポイントが強調され、同時に病態や診断
法も言及されている。さらに手術の限界やインフォームド
コンセントの仕方なども具体的に説明されており、臨床医
にとって大変参考になる図書である。この中で口腔内の裂
傷の項を堀口講師、友田教授が分担執筆している。本書は、
耳鼻咽喉科医のみならず形成外科医、口腔外科医、一般外
科医にも役立つものである。
(耳鼻咽喉科学友田幸一記)
67
Michael A. Matthay 編
Acute Respiratory Distress Syndrome
Reports and Proceedings
The 1st Summit of Japanese Traditional
Whaling Communities
Editor: The Institute of Cetacean Research and Japan Whaling
Association
Publisher: Nagato City and The Institute of Cetacean Research
Tsutomu Sakuma他 分担執筆
(Resolution of alveolar edema:
Mechanisms and relationship to clinical acute lung injury, p409-439)
発行:Marcel Dekker, Inc.
総頁数:B5版、657頁
定価:195 米ドル
ISBN 08247-4076-4
Lung Biology in Health and Diseaseシリーズの第 179 巻で
ある。急性呼吸窮迫症候群(Acute Respiratory Distress
Syndrome: ARDS)に関して、遺伝子学的研究結果から最
新の臨床知見まで詳細に記載されている。また、 S A R S
(Severe Acute Respiratory Syndrome)における肺傷害に関し
て12頁の記述がなされている。著者らは自らの最新の研究
成果を中心に肺傷害における肺胞水分の吸収機序と臨床的
意義を説明した。この本は呼吸器疾患に携わる医師にとっ
ては必読の本といえるであろう。
(呼吸器外科佐久間勉記)
佐久間 勉 著
呼吸器外科問題集
Tetsuo Hiraguchi 分担執筆:Prehistoric and Protohistoric
Whaling, and Diversity in Japanese Foods(p23-47)
A5版、150頁、2003年6月6日発行、非売品
前号で紹介した『第1回日本伝統捕鯨地域サミット開催
の記録』の英訳版。日本語版の表紙カバーと同じ絵図が英
語版ではハードカバーに直接印刷されている。なお、同記
録集の平口論文と森田論文は、海外広報用に短く書き改め
られ、小冊子Japanese Whaling: Its Roots and Living Tradition
(いまに生きる日本捕鯨の伝統とその源流、2003 年3月 26
日発行)にHiraguchi, T.: Use and Take of Cetaceans in
Prehistoric Japan − the Beginning of Cetacean Hunting(先史日
本における鯨類の利用と捕獲−積極的な鯨類捕獲の始まり
について)とMorita, K.:Vocational Right and the Social
Significance of the Whaling Industry(捕鯨産業の社会的意義
と生業権)と題して掲載されている。
(人文科学平口哲夫記)
佐久間 勉 著
呼吸器外科のX線画像集
発行:金沢医科大学出版局
B5版、136頁
定価:1,000円(953円+税)
医学部5、6学年生向けの呼吸器外科試験問題集である。
内容は55の問題、128の画像、問題に対する55の解答と解説
より構成されている。この問題集は平成14 年9月から1年間
にわたり、インターネットを介して毎週出題した問題をまと
めたものである。これは臨床実習の期間に経験する症例の不
足を補う目的で開始された。近年、肺癌を含む呼吸器外科の
対象疾患に関する医師国家試験問題が増加しており、本書が
その試験対策に役立つことを期待している。
(呼吸器外科佐久間勉記)
発行:金沢医科大学出版局
A4版、136頁
定価:1,000円(953円+税)
医学部学生、研修医、呼吸器専門の看護師向けのX線画
像集である。114 症例のX線、CT、MRI 画像などが掲載さ
れ、その症例ごとの病理組織学的診断、進行度、採用した
手術々式などが解説されている。近年肺癌を含む呼吸器外
科の対象疾患が増加しており、本書は医師国家試験対策の
みならず、それらの疾患の診断と治療に大いに役立つと思
われる。
(呼吸器外科佐久間勉記)
68
教室紹介
28
腎臓内科学教室
後列左から 佐藤一賢助手、山谷秀樹助手、足立浩樹助手、羽山智之助手、中川卓助手、森田恭子助手、
会沢美由紀研修医、梶原正伯研修医
前列左から 浅香充宏講師、友杉直久助教授、石川勲教授、由利健久助教授
金沢医科大学腎臓内科学教室は、昭和49年4月故篠田晤教授
え、将来、電子カルテとの連結が可能になる最新透析装置を3
によって開講され、同年9月に透析センターが開設されました。
台追加導入しました。なお血液透析室には個室を2室もうけ、
そして翌50年8月には石川 勲助教授(現教授)が赴任、5名の
感染症対策にも万全を期すようになっています。現在、維持透
教室員で診療研究活動が開始されました。平成6年9月石川教授
析や急性腎不全の治療、腎移植前後の透析をはじめ、SLE(ル
が主任教授になり、現在は助教授2名、講師1名、助手6名で構
ープス腎炎)やギランバレーに対する血漿交換など、常にフル
成されています。出向は浅ノ川総合病院に3名、恵寿総合病院
回転の状態です。また、急性腎不全の緊急透析は持続血液透析
に1名です。平成 15年8月までの在籍医師総数は 47名(金沢医
濾過も行っています。
科大出身者は34名)となっています。
腎移植は腎移植チームの一員として昭和50 年3月から現在ま
研究テーマは
でに255 例行い、泌尿器科と共同管理しています。このように
1.
当腎臓内科は、腎疾患の発症から根治療法としての腎移植まで
透析患者の多嚢胞化萎縮腎と腎癌の発生
2. 運動後急性腎不全の解明並びに急性腎不全の発生機序
一貫して扱う全国でも数少ない内科の一つです。しかし、最近
3.
では医療の進歩と患者の高齢化に伴い多科に渡る診療も増えつ
腎疾患の画像診断
4. 糸球体腎炎進展因子の調節機構
5.
つありますので、他科との連係のもと日々診療を行っています。
腎移植による透析合併症の改善機序、拒絶反応の早期診断
新患カンファレンスでは、電子カルテ、顕微鏡、ウィンドー
などが上げられます。とくに、1、2は当教室が世界に発信して
ズ、マックなどのパソコン画面を映しだせる61インチプラズマ
いる仕事です。
ディスプレイを駆使し、EBM(根拠に基づく医療)に基づく報
診療に関しては、新病棟の5階東病棟が腎臓内科の病棟とな
告が求められます。学生にもプラズマディスプレイを使い、電
り、これまで分散していた透析センターとCAPD室が組み込ま
子カルテや腎生検組織も直接標本を供覧しており、好評を得て
れました。ここでは末期腎不全の治療である血液透析、CAPD
います。
(腹膜透析)はもとより、腎泌尿器科として、根治療法の腎移植
なお当科は内科系で唯一の野球チーム「ネフロン」を持って
も同じ病棟で管理・治療ができるようになっています。これに
います。練習時間はほとんどとれませんが、ときどき、朝練習
より腎臓内科の病棟は腎臓病の早期発見(腎生検)から治療に
でカバーし、対抗試合にも参加しています。また夏は海岸での
至るまで、腎臓病全般を取り扱う腎総合センターに生まれ変わ
バーベキュー、冬はスキーツアー、春と秋のゴルフ大会他、い
る予定です。また血液透析室はこれまでの透析装置 19台に加
ろんな行事で交流を図っています。 (腎臓内科学由利健久記)
69
神経精神医学教室
後列左から 石川暁大学院生、広保究大学院生、小泉葉月研究補助員、小岩大輔大学院生、川村友美大学院生
中列左から 紋川明和研修医、野田実希大学院生、黒川園子助手、南野壽利助手、清水聰研修医、亀廣摩弥助手、北本福美講師
前列左から 平口真理講師、窪田孝助教授、地引逸亀教授、榎戸芙佐子助教授、岩崎真三講師、渡辺健一郎講師
現代はストレス社会とも高齢化社会とも言われており、統合
失調症(従来の精神分裂病)や躁うつ病はもとより、不登校や
神経症性障害から老年期の精神疾患に至るまで、神経精神医学
領域の果たす役割はどの年代においても非常に重要となってき
ている。
当教室は、1997年4月に鳥居方策名誉教授の後任として地引
逸亀教授が第3代主任教授に着任されて以降早や6年余りの歳月
が経ち、大学開講30周年を迎えた現在、研究・教育・臨床(診
療)のいずれの面においても着実に発展を遂げてきた。現在の
教室員は総勢28名で、教授1名、助教授2名、講師4名、助手3
名、医員1名、大学院生7名、臨床研修医4名、研究補助員1名
と出向講師1名、出向助手4名から構成され、マンパワーの点か
らも申し分なくなってきている。また、同窓生は77 名を数え、
全国各地で地域精神医療に活躍中である。
研究面では、主に①未治療の統合失調症患者におけるSPECT
を用いた非定型抗精神病薬の作用機序に関する研究、②ADHD
や摂食障害、wrist cutting syndromeなどの児童・思春期精神医
学の研究、③晩発性精神病の発病率と疾患分類に関する研究、
④失語、重複記憶錯誤や作話などの神経心理学的研究、⑤視覚
性ERPのP300からみた統合失調症患者の情報処理機能に関する
研究や健常高齢者の加齢(老化)に関する研究、⑥てんかんの
臨床研究、⑦健常成人やてんかん患者におけるf-MRIを用いた
記憶課題遂行中の脳内賦活部位に関する研究、⑧非定型抗精神
病薬の作用機序に関する動物(ウサギ)実験研究などがある。
どの研究もかなり軌道に乗ってきており、神経精神医学関係の
主要な学会には毎回必ず研究発表を行っている。また、その内
容は論文投稿され、大学院生の学位論文にも大きく関与してい
る。
臨床面では、外来診療は神経科精神科と心身医学科の2科で
行われており、入院診療は56 床(閉鎖34床、開放22床)の病
棟を維持している。一昨年の診療統計によると、年間患者数は
外来が新患:764名、再来:1,416名、合計2,180名を、入院が
220 名を数え、受診患者はその後も年々増加の一途を辿ってい
る。特に、近年はパニック障害、軽症うつ病、摂食障害、解離
性障害や人格障害などの近代社会における影響が密接に関与す
る疾患や、老年期痴呆などの高齢化に伴う疾患の割合が増加し
てきている傾向にある。また、新たな治療手技としては、統合
失調症や難治性うつ病の患者への磁気刺激療法の試みが開始さ
れている。ただ、今年オープンする病院新館(新棟)には、当
科は外来、病棟ともに移転することができないことがすでに決
定しており(心身医学科外来を除く)
、このことは残念な結果と
言わざるを得ない。
関連病院は北陸三県にまたがり多数存在し、各医局員が出向、
出張診療をしており、桜ヶ丘病院と松原病院は初期臨床研修機
関にも指定されている。その他、県内の保健所や児童相談所で
の相談業務、介護保健審査や臨床心理士が中心となって行って
いるスクールカウンセラーなど地域医療にも積極的に取り組ん
でいる。
医局行事は年間を通じて盛んで、新年会、送別会、花見会、
新入医局員歓迎会、北陸精神科医ゴルフコンペ(年3回)
、医局
看護部合同バーベキュー大会、教室懇話会・同窓会、忘年会、
などを和気藹々と和やかな雰囲気でこなしている。
すでに身体管理だけが求められる時代が過ぎ、精神管理を含
めた総合的医療が求められる今日、医局員一丸となって精神医
療の発展に貢献していく所存でありますので、今後とも大学職
員、同窓会各位をはじめとする関係諸氏の皆様のより一層のご
支援、ご指導、ご鞭撻をお願い申しあげます。
(神経精神医学岩崎真三記)
70
金沢医科大学創立30周年記念事業募金のお願い
趣意書
金沢医科大学は、昭和 47年に日本海側でただ一つの私立医科大学として金沢市に隣接する内灘の地に開学し
ました。「良医を育てる、知識と技術を極める、社会に貢献する」という建学の精神のもと、優れた教員を確
保し、最先端の教育、研究、医療設備を充実させ、次世代の医療の良き担い手の育成に努力してまいり、開学
以来29年を経て約2,400名の卒業生を世に送り出しました。
本学が、来る平成 14年には創立 30周年を迎えるのにあたって、21 世紀の社会が求める医育、医療に応える
ために、教育・研究施設のさらなる整備充実が必要となっており、また年月の経過に伴い、病院の建造物の老
朽化も目立っております。さらに患者さんの療養環境の改善、特定機能病院および教育病院として社会からの
負託に応え得る診療機能と教育機能の改善が、現場からの強い要望として出されるようになりました。
約 10 年にわたる検討を経て、この度、病院新棟の建設と教育施設の整備充実を、創立 30周年記念事業とし
て計画いたしました。病院新棟については、平成12年12月に着工し、平成15年の完成を予定しております。
これらの計画の実現には多額の資金を必要とします。本学では鋭意、自己資金の確保、経営の合理化などの
努力を行っておりますが、関係各位の格段のご支援を仰がねば、この計画を達成することは困難であります。
つきましては、経済情勢も大変厳しき折から誠に恐縮に存じますが、医学、医療の果たすべき役割、私学教
育の育成という観点から、何卒これらの趣旨をご理解いただき、格別のご協力を賜りたく心からお願い申し上
げます。
学校法人 金沢医科大学
理事長 小田島 粛夫
学 長 竹 越
襄
募集要項
寄付金の性格により手続上、個人対象の場合と法人対象の場合に区別されております。
1. 金 額
特定公益増進法人寄付金(個人対象)
10億円
受配者指定寄付金(法人対象)
7億5000万円
2. 募集期間
平成13年7月1日∼ 平成16年6月30日
3. 申込方法
個人用、法人用、それぞれの寄付申込書の所定の欄に必要事項をご記入の上、教育研究事業推
進室へご提出願います。
4. 税制上の特典 特定公益増進法人寄付金制度と受配者指定寄付金制度により、税制面での優遇があります。
詳細については、金沢医科大学教育研究事業推進室へお問い合わせください。
TEL 076(286)2211
内線 2720∼2724
FAX 076(286)8214
創立30周年記念事業募金寄付者ご芳名(敬称略) No.8(H15.8.6∼H15.10.21
〈個 人〉
尾張 祐樹(石川県)
澁谷 亮治(石川県)
金沢医科大学北斗会(石川県)原島 完司(石川県)
高田 稔(石川県)
東 美知子(石川県)
樋口 禮治(愛知県)
石坂 裕子(富山県)
青沼 宏(静岡県)
麻生 都(石川県)
中野 浩(愛知県)
八木 祥晴(石川県)
森田 恵美(石川県)
西出 正子(石川県)
間嶋めぐ美(石川県)
田所 壽夫(大阪府)
南 光代(石川県)
長 久代(石川県)
林 秀樹(富山県)
林 朋子(北海道)
加藤 義博(石川県)
西澤 誠(石川県)
若狭 久枝(石川県)
林 健太郎(石川県)
北川登美子(石川県)
浜中 豊(石川県)
受付順)
北川 伴次(石川県)
吉田 行夫(石川県)
大橋 和史(静岡県)
佐藤 州(静岡県)
赤尾 浩慶(石川県)
上田 文夫(石川県)
南 洋子(石川県)
福田 雅隆(石川県)
個人寄付金累計 1,202件 622,752,452円
71
〈法 人〉
喜生会(木戸外喜夫)
ニプロ㈱ ホテル金沢㈱ホテルイン金沢 浅ノ川(小市政男)
青和病院(青木劔一郎)
高陵クリニック(遠山龍彦)
トーアエイヨー㈱
日本臓器製薬㈱
新井病院(新井三郎)
持田製薬㈱
㈱大塚製薬工場
日本海ビューテイ㈱
㈱アズウェル
アストラゼネカ㈱
大塚製薬㈱
小野薬品工業㈱
キッセイ薬品工業㈱
協和発酵工業㈱
興和新薬㈱
沢井製薬㈱
㈱三和化学研究所
シェリング・プラウ㈱
第一製薬㈱
大正製薬㈱
武田薬品工業㈱
田辺製薬㈱
帝国臓器製薬㈱
帝人㈱
キリンビール㈱
富山化学工業㈱
ニプロファーマ㈱
日本化薬㈱
日本製薬㈱
日本たばこ産業㈱
ノバルティスファーマ㈱
バイエル薬品㈱
扶桑薬品工業㈱
ブリストル製薬㈲
三菱ウェルファーマ㈱
明治製菓㈱
山之内製薬 ㈱
雪印乳業㈱
日機装㈱
アムジェン ㈱
㈱アイビックス北陸
扇翔会(宮埼誠示)
誠林会(林松夫)
本田医院(本田一典)
ロート製薬㈱
(財)石川県予防医学協会
金城病院(山 幹雄)
森永乳業㈱ ㈱人材派遣北陸
澁谷工業㈱ 青梅医院(平岡久樹)
花北病院(齋藤悦郎)
エスエス製薬㈱
日本シェーリング㈱
㈱メディコスヒラタ
アベンティスファーマ㈱
科研製薬㈱
グラクソ・スミスクライン㈱
三共㈱
塩野義製薬㈱
大日本製薬㈱
中外製薬㈱
テルモ㈱
鳥居薬品㈱
日本ケミファ㈱
日本ワイレスレダリー㈱ ファイザー製薬㈱
丸石製薬㈱
明治乳業㈱
わかもと製薬㈱
栄研化学㈱
化研生薬㈱
真柄建設㈱
佐藤製薬㈱ 笠原病院(笠原文和)
紫蘭会(笠島學)
和楽仁(仲井信雄)
マルホ㈱
萬有製薬㈱
杏林製薬㈱
旭化成㈱
エーザイ㈱
カネボウ㈱
グレラン製薬㈱
参天製薬㈱
住友製薬㈱
大鵬薬品工業㈱
㈱ツムラ
東和薬品㈱
日研化学㈱
日本新薬㈱
日本ベーリンガーインゲルハイム ㈱
藤沢薬品工業㈱
三笠製薬㈱
メルク・ホエイ㈱
㈱ミノファーゲン製薬
㈱ヤクルト本社
メディキット㈱
㈲アカシア商会
エルメッドエーザイ㈱
押水クリニック
法人寄付金累計 333件 546,460,000円
金沢医科大学学術振興基金募金について
募集要項 学術振興基金の募金も従来どおり受け付けています。
1. 目標額:10億円
2. 寄付方法:寄付申込書等を本学教育研究事業推進室
にご請求ください。
(TEL 076-286-2211 内線 2720 ∼
2724、FAX 076-286-8214)折返し、寄付方法、税務
に関することなどをご連絡致します。
3. 本学は、平成15 年9月1日付で文部科学大臣より特定
公益増進法人であることの証明を受けております。
金沢医科大学学術振興基金への寄付者ご芳名(過去1年間の分、敬称略)
米地 稔(宮城県)
柴原 義博(宮城県)
小林 睦(東京都)
花田 紘一(福岡県)
鈴鹿 正剛(奈良県)
清水 伸一(愛媛県)
村上 哲志(福岡県)
高村 敬一(福井県)
辻 外幸(富山県)
曽根 節子(石川県)
三治 秀哉(石川県)
小嶋昭次郎(岐阜県)
稲尾 次郎(富山県)
鈴木 昌和(長野県)
医療法人社団順和会(富山県)
小田 政行(岐阜県)
由木 邦夫(栃木県)
鈴木 桂子(長野県)
72
http://www.kanazawa-med.ac.jp/
金沢医科大学のホームページです
本学では、多くの分野でインターネットが利用されています。Web、Mail、ライブや VOD
(ビデオ・オン・デマンド)はもとより、文献検索、地域の医療機関や全国の同窓生との連携、
各種事業の公示に利用されているほか、学内イントラネットも拡充されています。教育・研
究・医療の分野で大いに活用されることを期待します。
(広報委員会)
表紙写真
金沢医科大学報 第116号
金沢における医育の遺構 (1)
第四高等学校本館
中谷 渉
加賀藩によって始められた金沢における医学教
育は、明治20年の第四高等中学校の誘致へと実を
結び、四高の中に医学部が置かれることとなって
初めて、官立の医育の拠点となった。明治 25年に
完成した四高の本館は、今も金沢市の中心部で石
川県近代文学館として公開され、その美しい赤煉
瓦の建物は学都金沢の象徴として県民に親しまれ
ている。
しぐるゝや大講堂の赤煉瓦 久保田万太郎
(久保田万太郎、くぼたまんたろう、1 8 8 9 - 1 9 6 3、東京生まれ、
小説家・劇作家・俳人、小説「市井人」など、岸田国士らと劇
団文学座を結成、俳誌「春燈」を主宰、句集「流寓抄」など)
平成15年11月1日発行
発行者 金沢医科大学理事長 小田島 粛 夫
編 集 金沢医科大学概要・学報編集委員会
山下公一 西川克三 廣瀬源二郎
平井圭一 伊川廣道 川上重彦
木越俊和 朝井悦夫 谷口 豊 相野田紀子 太田隆英 國府克己
大石勝昭 坂井輝夫 木村晴夫
小平俊行 中谷 渉 寺井明夫
野沢幸雄 丸谷 良 中嶋秀夫
中川美枝子 青木孝太 平光志麻
発行所 金沢医科大学出版局
〒920-0293 石川県河北郡内灘町大学1−1
TEL 076 (2 8 6 ) 2 2 1 1
印刷 能登印刷株式会社